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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】Yボックス結合タンパク質1阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4741 20060101AFI20231208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231208BHJP
   C07K 14/82 20060101ALN20231208BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231208BHJP
【FI】
A61K31/4741 ZNA
A61P43/00
A61P35/00
A61P35/02
C07K14/82
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533819
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021061906
(87)【国際公開番号】W WO2022120242
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/121,674
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/256,609
(32)【優先日】2021-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511106053
【氏名又は名称】オレゴン・ヘルス・アンド・サイエンス・ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】マルホトラ サンジャイ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】テイラー ダニール
(72)【発明者】
【氏名】ディーライ アーピット
【テーマコード(参考)】
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045CA41
4H045EA20
(57)【要約】
新規のアゾポドフィロトキシン類似体化合物、それらを含む薬学的組成物、ならびに婦人科癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、神経細胞癌、前立腺癌、リンパ腫、および白血病を含む状態の処置における、Yボックスタンパク質1(YB1またはYBX1)の阻害剤としてのそれらの使用が、本明細書において提供される。抵抗性癌を抗癌剤および放射線による処置に対して感受性にするためにそれらを使用する方法も、提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物:
、またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグを、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、YB1タンパク質を発現する癌を経験している対象におけるYB1タンパク質活性を阻害する方法であって、
式中、Xは、
の群より選択され、R1、R2、R3、R4、およびR5は、H、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より、各場合において各々独立に選択され;
nは、1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R6は、H、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、-(CH2)n-C3-C6シクロアルキル、3~6員複素環、-(CH2)n-3~6員複素環、フェニル、および-(CH2)n-フェニルの群より選択され;C1-C6アルキル基は、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHより選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されており;C3-C6シクロアルキル、-(CH2)n-C3-C6シクロアルキル、3~6員複素環、-(CH2)n-3~6員複素環、フェニル、および-(CH2)n-フェニル基は、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの群より選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されており;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つは、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;
但し、Xが
であり、R2がFまたはCF3である場合には、R1、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つがHではない、
方法。
【請求項2】
式(I)の化合物が式(Ia)の化合物:
、またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグであり、
式中、n、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、請求項1の定義の通りである、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物が式(Ib)の化合物:
、またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグであり、
式中、n、R2、R3、R4、R5、およびR6は、請求項1の定義の通りである、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
式(I)の化合物が式(Ic)の化合物:
、またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグであり、
式中、n、R1、R3、R4、R5、およびR6は、請求項1の定義の通りである、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物が式(Id)の化合物:
、またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグであり、
式中、n、R1、R2、R4、R5、およびR6は、請求項1の定義の通りである、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物が式(II)の化合物:
、またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグであり、
式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、H、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
nは、1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R6は、H、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、-(CH2)n-C3-C6シクロアルキル、3~6員複素環、-(CH2)n-3~6員複素環、フェニル、および-(CH2)n-フェニルの群より選択され;C1-C6アルキル基は、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHより選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されており;C3-C6シクロアルキル、-(CH2)n-C3-C6シクロアルキル、3~6員複素環、-(CH2)n-3~6員複素環、フェニル、および-(CH2)n-フェニル基は、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されており;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つは、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;
但し、R2がFまたはCF3である場合には、R1、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つがHではない、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
式(I)の化合物が式(III)の化合物:
、またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグであり、
式中、nは、1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R1、R2、R3、R4、およびR5は、H、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つは、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;
但し、R2がFまたはCF3である場合には、R1、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つがHではない、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
R1が、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;R2、R3、R4、およびR5が、H、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択される、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
R3が、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;R1、R2、R4、およびR5が、H、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択される、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項7および8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
R1、R2、R3、R4、およびR5が、H、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも2つが、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択される、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項7、8、および9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
R1、R2、R3、R4、およびR5が、H、F、C1-C3フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも2つが、F、C1-C3フルオロアルキルの群より選択される、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項7、8、9、および10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
R1、R2、R3、R4、およびR5が、H、F、CF3、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうち少なくとも2つが、FおよびCF3の群より選択される、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項7、8、9、10、および11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
R1、R2、R3、R4、およびR5が、H、F、CF3、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも2つがFである、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項7、8、9、10、11、および12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
nが、1、2、3、4、および5の群より各場合において独立に整数である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
nが、1、2、3、および4の群より各場合において独立に整数である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
nが、1、2、および3の群より各場合において独立に整数である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
nが、2および3の群より各場合において独立に整数である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
nが1である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
nが2である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
nが3である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
nが4である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
nが5である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
nが6である、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
R6がHである、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
R6が、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの群より選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されたC1-C6アルキルである、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
R6がC3-C6シクロアルキルであり、C3-C6シクロアルキルが、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの群より選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されている、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
R6が-(CH2)n-C3-C6シクロアルキルであり、C3-C6シクロアルキル環が、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの群より選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されている、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
R6が3~6員複素環であり、複素環が、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの群より選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されている、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
R6が-(CH2)n-3-6員複素環であり、複素環が、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの群より選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されている、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
R6がフェニルであり、フェニル環が、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの群より選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されている、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
R6が-(CH2)n-フェニルであり、フェニル環が、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの群より選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されている、
またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、
請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの2つが、存在する場合、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択される、請求項1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの2つが、存在する場合、F、C1-C3フルオロアルキルの群より選択される、請求項1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの2つが、存在する場合、FおよびCF3の群より選択される、請求項1~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの3つが、存在する場合、FおよびCF3の群より選択される、請求項1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの4つが、存在する場合、FおよびCF3の群より選択される、請求項1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの2つが、存在する場合、Fである、請求項1~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの3つが、存在する場合、Fである、請求項1~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
薬学的に有効な量の請求項1~38のいずれか一項記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項40】
YB1タンパク質を発現する癌の処置のための医薬の調製における、請求項1~38のいずれか一項記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグの使用。
【請求項41】
YB1タンパク質を発現する癌を経験している対象におけるYB1タンパク質活性を阻害する方法であって、薬学的に有効な量の請求項1~38のいずれか一項記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグを、それを必要とする該対象へ投与する工程を含む、方法。
【請求項41】
癌を経験している対象におけるYB1タンパク質活性を阻害する方法であって、薬学的に有効な量の請求項1~38のいずれか一項記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグを、それを必要とする該対象へ投与する工程を含み、癌がYB1タンパク質を発現している、方法。
【請求項42】
対象におけるYB1タンパク質を発現する癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法であって、薬学的に有効な量の請求項1~38のいずれか一項記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグを、それを必要とする該対象へ投与する工程を含む、方法。
【請求項43】
対象におけるYB1タンパク質を発現する癌細胞を放射線による処置に対して感受性にする方法であって、薬学的に有効な量の請求項1~38のいずれか一項記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグを、それを必要とする該対象へ投与する工程を含む、方法。
【請求項44】
YB1タンパク質を発現する癌が、婦人科癌(卵巣癌、子宮内膜癌、卵管癌、および子宮頸癌を含む)、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、黒色腫、肝臓癌、多発性骨髄腫、軟部肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、神経膠芽腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ腫、腎臓癌、腎細胞癌、骨肉腫、膵臓癌、頭頸部癌、上咽頭癌、ならびに胃癌の群より選択される、請求項41、42、および43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
式(I)の化合物が、9-(3-フルオロフェニル)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6,9-ジヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]フロ[3,4-b]キノリン-8(5H)-オン(SU056)またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグである、請求項1~44のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規の化合物、薬学的組成物、ならびに婦人科癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、神経細胞癌、前立腺癌、リンパ腫、および白血病を含む状態を処置するためのYボックスタンパク質1(YB1またはYBX1)の阻害剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Yボックス結合タンパク質1(YB-1)は、腫瘍の進行および処置抵抗性(TR)の出現に関連する多機能性タンパク質である。ここで、本発明者らは、YB-1阻害を介して腫瘍の増殖および進行を強力に阻害するアゾポドフィロトキシン低分子SU056を報告する。このファーストインクラスのYB-1阻害剤は、卵巣癌(OC)細胞の細胞増殖、アポトーシス抵抗性を阻害し、G1期で停止させる。阻害剤処理は、スプライソソーム経路をダウンレギュレートしながら、アポトーシス経路およびRNA分解経路に関連するタンパク質の濃縮をもたらす。インビボで、SU056は、OCの進行を独立に抑制し、パクリタキセルと共に相乗効果を発揮して、観察可能な肝毒性なしに疾患進行をさらに低下させる。さらに、インビトロ機序研究は、薬物排出および多剤耐性1(MDR1)の阻害を介した疾患進行の遅延、ならびにエトポシドと比較して有意に低い神経毒性を示した。これらのデータは、YB-1阻害が、OC進行を低下させ、TRに拮抗し、患者の死亡率を減少させるための有効な戦略であり得ることを示唆している。
【0003】
Yボックス結合タンパク質1(YB-1、YBX1)は、DNAおよびRNAに結合する多機能性低温ショックタンパク質である。DNAおよびRNAに関連した細胞イベント、例えば、mRNA転写、スプライシング、パッケージング、安定性、および翻訳を制御する(Lyabin et al., 2014)。mRNA安定化は、任意の遺伝子の持続発現のための重要なイベントであり、YB-1は、5'末端のmRNA分解の阻止を介して、mRNAを頑強に安定化する(Evdokimova et al., 2001)。それは、MHCクラスII分子の負の制御因子として、Didierらによって最初に記載された(Didier et al., 1988)。YB-1の発癌性の役割は、多くの癌において十分に特徴決定されており、その増幅されたレベルは、多数の癌症例において見出されている(Goodarzi et al., 2015)。それは、疾患の進行および処置抵抗性に関連する複数の発癌性タンパク質、例えば、c-myc(Laird-Offringa et al., 1990)、c-fos(Blattner et al., 2000)、サイクリンB1(Maity et al., 1995)、HIF1α(Goodarzi et al., 2015)、Snail(Evdokimova et al., 2009)、およびMDR1(Bargou et al., 1997)について、短命のmRNAの安定性を増加させる。遺伝子ノックダウン研究は、多くの癌モデルにおいて、YB-1の阻害が、増殖を有意に停止させ、アポトーシスを誘導することを証明しており、このことは、疾患進行におけるその必須の役割を証明している(Evdokimova et al., 2009、El-Naggar et al., 2015)。YB-1は、増殖の活性化、癌細胞の幹細胞性の促進、増殖因子、サイトカインに対する応答、細胞ストレス応答、および膜P糖タンパク質、ATP依存性排出ポンプABCB1(MDR1)を介した薬物排出の促進における役割を介して、処置抵抗性(TR)の発症に関連している(Bargou et al., 1997、Saupe et al., 2015、Mo et al., 2016)。それは、A/Cリッチ領域との結合を介して、CD44エクソンのオルタナティブスプライシングにも関連している(Stickeler et al., 2001)。YB-1遺伝子は、高度に保存されており、癌患者のおよそ1%のみが変異を示すが、それにも関わらず、オルタナティブ遺伝子制御ネットワークを介して、広範囲の癌において過剰発現している。
【0004】
卵巣癌(OC)は、女性の全癌症例のわずか3%を占めるが、それにも関わらず、不相応な死亡率を引き起こす(Dietl, 2014、Jayson et al., 2014、Agarwal and Kaye, 2003)。外科的切除後の化学療法が、OC患者のための主な処置戦略である。白金系およびタキソール系の薬物ならびにそれらの組み合わせが、大多数のOC患者のための第一選択処置である(Seifter,1997)。大多数の女性が、ステージIII+でOCを有すると診断され、TRおよび疾患再発を高頻度に発症する。BRCA1/2変異、MYCの増幅、およびMDR1(ABCB1/P-gp)のアップレギュレーションが、OCにおけるTRの最も一般的な既知の原因である(Zeng et al., 2018、Christie and Bowtell, 2017、Sun et al., 2015)。患者ベースの研究は、多くの高悪性度上皮OC病変において、MYC増幅が、疾患進行およびTRに関連していることを示した(Jung et al., 2017、Jung et al., 2018)。YB-1の核局在は、MYC、MDR1、およびCD44の制御において重要な役割を果たす(Kang et al., 2013、Sobocan et al., 2020)。高悪性度卵巣漿液性癌試料の分析は、より高いYB-1発現を有する患者(生存期間中央値48.5ヶ月)は、より低いYB-1発現(生存期間中央値65ヶ月)と比較して短い生存期間を有していたことを示唆している(Kang et al., 2013)。OCのための手術および化学療法による一次処置の後には、パクリタキセルならびにPARP阻害剤(オラパリブ、パゾパニブ、およびニラパリブ)などの長期薬物使用を含む維持治療が行われ得るが、残念ながら、それでもアウトカムは限定されている(Franzese et al., 2019)。過去30年間の文献は、YB-1が、処置抵抗性を発症した癌を含む、卵巣癌およびその他の癌を処置するための可能性のある標的であることを強く示唆している。広範な調査の後であっても、YB-1を直接阻害し得る低分子阻害剤を開発するための努力は、多くはなされていない。YBX1遺伝子によってコードされるYボックス結合タンパク質1(YB-1)は、細胞シグナル伝達経路をモジュレートまたは制御するものとして注目されており、癌進行の分子マーカーおよび癌治療のための標的として理解され得る。
【0005】
Lashamらは、概説論文、YB-1:oncoprotein,prognostic marker and therapeutic target?,Biochem. J.(2013)449,11-13において、いかにして「YB-1が複数の増殖経路を制御し、細胞周期チェックポイントを乗り越え、複製による不死(replicative immortality)およびゲノム不安定性を促進し、血管新生を制御することができ、浸潤および転移において役割を果たし、炎症を促進する」のかを記載している。彼らは、YB-1低下によってアポトーシスが誘導された、または細胞増殖が阻害された細胞株、例えば、黒色腫、線維肉腫、肝臓癌、肺癌、膀胱癌、多発性骨髄腫、小児神経膠芽腫、乳癌(ER陰性)、乳癌(ER陽性)、前立腺癌、および結腸癌の細胞株をさらに記載している。
【0006】
Sobocan et al.(Can 2020, 12, 205)は、Yボックスタンパク質1(YB-1)およびmTORの二重標的化が、婦人科癌、例えば、卵巣癌、子宮内膜癌、卵管癌、および子宮頸癌における発癌活性の阻害を改善することを記載している。
【0007】
論文、Oncogenic Y-box binding protein-1 as an effective therapeutic target in drug-resistant cancer, Kuwano et al., Cancer Science, 2019, 110: 1536-1543は、ヒト悪性疾患、例えば、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、および胃癌の化学療法処置中に腫瘍多剤耐性が獲得される転写機序として関連付けられている、ABCB1トランスポーター遺伝子の転写活性化の促進におけるYBX2の機能を記載している。
【0008】
YBX1の発現の増加と黒色腫との関係は、論文、The increased expression of Y box-binding protein 1 in melanoma stimulates proliferation and tumor invasion, antagonizes apoptosis and enhances chemoresistance, Schittek et al., Int.J.Cancer:120, 2110-2118(2007)に記述されている。YB1過剰発現は、Kim et al., Mol. Cancer Ther.,30 Oct 2019,19(2),479-89によって記述されたように、結腸直腸癌細胞における放射線抵抗性にも関連付けられている。
【0009】
WO 2019/178091 A1(Malholtra et al., The Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University)は、GBP1阻害剤としての新規のN-ヒドロキシエチルジデヒドロアザポドフィロトキシン、および癌の処置抵抗性の克服においてそれらを使用する方法を教示している。その開示に含まれるのは、具体的な化合物、9-(3-フルオロフェニル)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6,9-ジヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]フロ[3,4-b]キノリン-8(5H)-オン(SU056);5-(2-ヒドロキシエチル)-9-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-6,9-ジヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]フロ[3,4-b]キノリン-8(5H)-オン;3-(5-(2-ヒドロキシエチル)-8-オキソ-5,6,8,9-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]フロ[3,4-b]キノリン-9-イル)ベンゾニトリル;および5-(2-ヒドロキシエチル)-9-(ピリジン-4-イル)-6,9-ジヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]フロ[3,4-b]キノリン-8(5H)-オンである。
【0010】
薬学的使用のためのYB-1の低分子阻害剤の必要性が未だに残っている。
【発明の概要】
【0011】
生物学的等価性は、薬化学者が、効力および選択性、吸収、分布、代謝、および排泄(ADME)の特性を最適化するため、リード構造を迅速に操作することができるため、合理的薬物設計のための重要なツールと見なされている。本明細書において、本発明者らは、構造情報に基づくアプローチを使用して、リード化合物の抗OC効果を最適化するため、生物学的等価体置換を使用し、その後、セルラーサーマルシフトアッセイ(CETSA)を介した標的同定を行った(Savitski et al., 2014)。インビトロおよびインビボの研究を通じて、本発明者らは、アゾポドフィロトキシン(AzP)低分子SU056が、化学療法によって媒介される細胞毒性に対して感受性にしながら、YB-1を強力に阻害し、OCの進行を低下させることを示した。
【0012】
1つの態様は、式(I)の化合物:
またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容される溶媒和物、水和物、異性体(光学異性体、ラセミ化合物、もしくはそれらのその他の混合物を含む)、互変異性体、同位体、多形、および薬学的に許容されるプロドラッグを提供し、
式中、Xは
の群より選択され;
R1、R2、R3、R4、およびR5は、H、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より、各場合において各々独立に選択され;
nは、1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R6は、H、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、-(CH2)n-C3-C6シクロアルキル、3~6員複素環、-(CH2)n-3~6員複素環、フェニル、および-(CH2)n-フェニルの群より選択され;C1-C6アルキル基は、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHより選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されており;C3-C6シクロアルキル、-(CH2)n-C3-C6シクロアルキル、3~6員複素環、-(CH2)n-3~6員複素環、フェニル、および-(CH2)n-フェニル基は、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHの群より選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されており;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つは、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;
但し、Xが
であり、R2がFまたはCF3である場合には、R1、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つがHではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1Aは、SU093のSU056への変換を図示する。図1Bは、様々な卵巣癌細胞に対するSU093およびSU056のIC50値を示す表である。図1Cは、それぞれのウェルからのコロニー形成の写真を示す。図1Dは、SU093およびSU056による処理の後に形成されたコロニーの数を示すグラフである。図1Eは、神経(SH-SY5Y、N27)細胞およびHEK293細胞におけるエトポシド、SU093、およびSU056による処理の%阻害値を表す表を提供する。図1Fは、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色されたOVCAR8細胞、SKOV3細胞、およびID8細胞の細胞周期分布の表を示す。図1Gは、アポトーシス細胞死に対するSU093およびSU056の効果を示すグラフである。図1Hは、細胞遊走アッセイの結果を示すグラフである。
図2図2Aは、42日間の薬物処置の後のマウスにおける対照と比較した腫瘍退縮の代表的な画像を示す。図2Bは、時間の関数としての腫瘍体積/マウスを示すグラフである。図2Cは、研究の終わりにおける腫瘍重量/マウスを示すグラフである。図2Dは、対照とSU093とSU056との間に有意差がないことを示す、42日間の終わりにおける肝毒性パラメータのグラフを提供する。図2Eは、肺転移アッセイからのH&E染色の画像を示す。図2Fは、肺転移結節の数のグラフを提供する。
図3図3Aは、媒体DMSO(左)およびSU056(右)によって処理された卵巣癌細胞における804種の可溶性タンパク質の熱安定性のヒートマップ表示を提供する。図3Bは、SU056によって処理された細胞および媒体細胞において計算されたタンパク質Tm値の密度分布を示すグラフである。図3Cは、SU056処理と媒体処理との間のTmシフトの密度分布のグラフを示す。図3Dは、SU056処理および媒体処理において計算されたTmの散布図を提供する。図3Eは、SU056処理の有り無し両方の6種のタンパク質についての融解曲線を示す。図3Fは、SU056処理時の上位6種のタンパク質の融解温度(Tm)の変化の表を提供する。
図4図4Aは、CETSAによって同定された上位3種の標的について実施されたウエスタンブロット分析を図示する。図4Bは、ID8腫瘍異種移植研究からの腫瘍試料の免疫組織化学についてのサブセット画像を提供する。図4Cは、SU056およびYB-1によって処理されたそれぞれのOC細胞における%阻害のグラフを示す。図4Dは、OC細胞についてのSU056のYB-1(IC50)のグラフを示す。図4Eは、OC細胞株に対するSU056の効果についてのYB-1阻害時間動態研究を図示するグラフを示す。
図5図5Aは、ビオチン化SU056の構造を示す。図5Bは、ビオチン化SU056を使用したプルダウンアッセイを図示する。図5Cは、SU093についての代表的なセンサグラムを提供する。図5Dは、S SU056についての代表的なセンサグラムを提供する。図5Eは、形質導入された細胞におけるYB-1発現を確認するウエスタンブロット分析を示す。図5Fは、SU056の細胞効果がYB-1発現に依存することを証明する画像を示す。図5Gは、SC、YBX1 shRNA1、YBX1 shRNA2を発現する異なる形質導入されたOVCAR8細胞に対するSU056のIC50値のグラフを提供する。
図6図6Aは、YB-1タンパク質安定性に対するSU056の効果を決定するためのシクロヘキシミドチェイスアッセイ、および経時的な倍率変化のグラフを図示する。図6Bは、YB-1、細胞周期マーカー、およびアポトーシス関連マーカーについて実施されたSDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を図示する。図6Cおよび図6Dは、SU056による処理時に存在量が増加するタンパク質において観察されたアポトーシス経路およびRNA分解経路の濃縮を表す。図6Eは、SU056による処理時に存在量が減少するタンパク質において観察されたスプライソソーム経路の濃縮のグラフを提供する。
図7図7Aは、パクリタキセル処理と組み合わせられたSU056のOVCAR8細胞およびSKOV3細胞の生存率に対する感作効果を表す表を提供する。図7Bは、SU056による同時処理がパクリタキセル排出を阻害することを示す、Alexa Fluor-488タグ付きパクリタキセル排出アッセイを示すグラフである。図7Cは、YB-1およびMDR1のイムノブロッティングのためのSDS-PAGEゲルを示す。媒体(C)、パクリタキセル、SU056、およびパクリタキセル+SU056のいずれかによって処理されたOVCAR8細胞。図7Dは、スフェロイドの倍率10倍の顕微鏡像を提供する。図7Eは、7日間のインキュベーションの後に定量化されたスフェロイド形成のグラフを提供する。図7Fは、対照と比較した腫瘍退縮を示す、28日間の薬物処置の後のマウスの代表的な画像を示す。図7Gは、時間の関数としての腫瘍体積/マウスを示すグラフである。図7H、研究の終わりにおける腫瘍重量/マウス。I)免疫組織化学染色。腫瘍切片をKi67で染色し、スライドをKI67染色についてスコア化した。示されたデータは、各群5匹のマウスからの平均値±SDである。* P<0.05、** P<0.01、*** P<0.001、それぞれの対照との比較。
図8図8Aは、37℃および53℃の温度に曝され、YB-1、TMSB10、およびPSMB2の発現について分析された、対照によって処理された細胞およびSU056によって処理された細胞に由来する細胞溶解物のウエスタンブロット分析を図示する。図8Bは、SU056(2.5&5μM)による3時間の処理の後、mCherry-YB1について共焦点顕微鏡を使用して画像化された細胞の倍率10倍の顕微鏡写真を図示する。図8Cは、SU056によって処理された2500個の細胞を表すグラフを示す。
図9図9は、パクリタキセル処理と組み合わせられたSU056のOVCAR8細胞およびSKOV3細胞の生存率に対する感作効果を表すグラフを示す。
図10図10は、SU056の薬物動態を表すグラフを示す。
図11図11Aは、MTTアッセイを使用して評価されたSU056の増殖阻害効果を表すグラフを提供する。図11Bは、SU056によって処理され、さらに7~10日間インキュベートされた細胞からのコロニー形成を表す画像を提供する。図11Cは、SU056処理後に形成されたコロニーの数を表すグラフを図示する。図11Dは、TNBC細胞における細胞周期分布に対するSU056の効果を表すグラフを提供する。
図12図12Aは、MDA-MB-231b細胞におけるSU056処理によるタンパク質翻訳関連分子の阻害についてのSDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を示す。図12Bは、MDA-MB-468細胞におけるSU056処理によるタンパク質翻訳関連分子の阻害についてのSDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を示す。図12Cは、SUM159細胞におけるSU056処理によるタンパク質翻訳関連分子の阻害についてのSDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を示す。
図13図13Aは、時間の関数としての腫瘍体積(MDA-MB-231)のグラフを示す。図13Bは、研究の終わりにおける腫瘍重量(MDA-MB-231)のグラフを示す。図13Cは、時間の関数としての体重(MDA-MB-231)のグラフを示す。図13Dは、時間の関数としての腫瘍体積(MDA-MB-468)のグラフを示す。図13Eは、研究の終わりにおける腫瘍重量(MDA-MB-468)のグラフを示す。図13Fは、時間の関数としての体重(MDA-MB-468)のグラフを示す。図13Gは、研究の終わりにおける腫瘍(MDA-MB-231)の代表的な画像を提供する。図13Hは、研究の終わりにおける腫瘍(MDA-MB-468)の代表的な画像を提供する。図13Iは、時間の関数としての腫瘍体積(SUTI151-PDX)を表すグラフを示す。図13Jは、研究の終わりにおける腫瘍重量(SUTI151-PDX)を表すグラフを示す。図13Kは、時間の関数としての体重(SUTI151-PDX)を表すグラフを示す。
図14図14Aは、BALB/cにおける4T1腫瘍異種移植片におけるSU056による阻害における時間の関数としての腫瘍体積(4T1)のグラフを示す。図14Bは、研究の終わりにおける腫瘍重量(4T1)のグラフを示す。図14Cは、時間の関数としての体重(4T1)のグラフを示す。図14Dは、研究の終わりにおける腫瘍(4T1)の代表的な画像を提供する。図14Eは、時間の関数としての腫瘍体積(4T1)のグラフを示す。図14Fは、研究の終わりにおける腫瘍重量(4T1)のグラフを示す。図14Gは、時間の関数としての体重(4T1)のグラフを示す。
図15図15Aは、マウスにおける体重の変化によって反映されるように、SU056処置が、マウスおよびラットにおいて耐容性が良いことを示すグラフを示す。図15Bは、ラットにおける体重の変化によって反映されるように、SU056処置がマウスおよびラットにおいて耐容性が良いことを示すグラフを示す。図15Cは、異なる濃度でのSU056処置が、マウスにおいて死を引き起こさなかったことを示すデータの表を示す。図15Dは、異なる濃度のSU056処置が、ラットにおいて死を引き起こさなかったことを示すデータの表を示す。図15Eは、SU056が40分という平均半減期を有したことを示すグラフを示す。
図16図16は、図示された細胞株におけるYBX1の正規化された発現測定値を示す。
図17図17は、TNBC細胞において、SU056処理が翻訳開始因子を阻害したことを証明するSDS-PAGEおよびウエスタンブロットを表す。
図18図18は、TNBC細胞において、SU056処理が翻訳開始因子を阻害したことを証明するSDS-PAGEおよびウエスタンブロットを表す。
図19図19は、TNBC細胞において、SU056処理が翻訳開始因子を阻害したことを証明するSDS-PAGEおよびウエスタンブロットを表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
前記の条件において、R2がFまたはCF3であり、R1、R3、R4、およびR5が各々Hである化合物は、R4がFまたはCF3であり、R1、R2、R3、およびR5が各々Hである場合と同じ置換パターンを示す、フェニル環の回転性が理解される。R4にFまたはCF3基を有するものとして化合物を見なすことは、R1、R2、R3、およびR5のうちの少なくとも1つがHではないという条件を示す。
【0015】
前記の式(I)の範囲内に、それぞれ、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、または式(Id)の化合物を各々含む、4つの付加的な別々の態様が存在することも理解される。各態様において、(n、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6を含む)全ての変数が、存在する場合、前記の式(I)について定義された通りであり、式(Ia)の化合物は、R2がFまたはCF3である場合、R1、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つがHではないという条件を有する。
【0016】
もう1つの態様は、X、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが1、2、3、4、および5の群より各場合において独立に選択される整数である、前記と異なる定義の式(I)の化合物を含む。
【0017】
さらにもう1つの態様は、X、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが1、2、3、および4の群より各場合において独立に選択される整数である、前記と異なる定義の式(I)の化合物を含む。
【0018】
さらなる態様は、X、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが1、2、および3の群より各場合において独立に選択される整数である、前記と異なる定義の式(I)の化合物を含む。
【0019】
さらなる態様は、X、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが2および3の群より各場合において独立に選択される整数である、前記と異なる定義の式(I)の化合物を含む。
【0020】
さらなる態様は、X、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが2である、前記と異なる定義の式(I)の化合物を含む。
【0021】
さらなる態様は、X、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが3である、前記と異なる定義の式(I)の化合物を含む。
【0022】
式(I)の化合物を含む前記の態様の各々において、X、R1、R2、R3、R4、R5、およびnが具体的な態様について定義された通りであり、R6がHである、さらなる態様が存在する。
【0023】
1つの態様は、式(II)の化合物:
またはその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、H、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
nは、1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R6は、H、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、-(CH2)n-C3-C6シクロアルキル、3~6員複素環、-(CH2)n-3~6員複素環、フェニル、および-(CH2)n-フェニルの群より選択され;C1-C6アルキル基は、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHより選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されており;C3-C6シクロアルキル、-(CH2)n-C3-C6シクロアルキル、3~6員複素環、-(CH2)n-3~6員複素環、フェニル、および-(CH2)n-フェニル基は、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO2、およびOHより選択される0個、1個、2個、3個、または4個の置換基で置換されており;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つは、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;
但し、R2がFまたはCF3である場合には、R1、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つがHではない]。
【0024】
もう1つの態様は、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが1、2、3、4、および5の群より各場合において独立に選択される整数である、式(II)の化合物を含む。
【0025】
さらにもう1つの態様は、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが1、2、3、および4の群より各場合において独立に選択される整数である、式(II)の化合物を含む。
【0026】
さらなる態様は、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが1、2、および3の群より各場合において独立に選択される整数である、式(II)の化合物を含む。
【0027】
さらなる態様は、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが2および3の群より各場合において独立に選択される整数である、式(II)の化合物を含む。
【0028】
さらなる態様は、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが2である、式(II)の化合物を含む。
【0029】
さらなる態様は、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6が前記の定義および条件の通りであり、nが3である、式(II)の化合物を含む。
【0030】
式(II)の化合物を含む前記の態様の各々において、R1、R2、R3、R4、R5、およびnが具体的な態様について定義された通りであり、R6がHである、さらなる態様が存在する。
【0031】
さらなる態様は、式(III)の化合物:
またはその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、nは、1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R1、R2、R3、R4、およびR5は、H、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つは、F、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;
但し、R2がFまたはCF3である場合には、R1、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも1つがHではない。
【0032】
もう1つの態様は、nが1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;R1がF、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;R2、R3、R4、およびR5がH、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択される、式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0033】
さらにもう1つの態様は、nが1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;R3がF、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択され;R1、R2、R4、およびR5がH、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択される、式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0034】
さらなる態様は、
nが1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R1、R2、R3、R4、およびR5がH、F、C1-C4フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも2つがF、C1-C4フルオロアルキル、およびSF5の群より選択される、式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0035】
さらなる態様は、式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、nが1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R1、R2、R3、R4、およびR5がH、F、C1-C3フルオロアルキル、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され;
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも2つがF、C1-C3フルオロアルキルの群より選択される。
【0036】
さらなる態様は、式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、nが1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R1、R2、R3、R4、およびR5がH、F、CF3、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され、
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうち少なくとも2つがFおよびCF3の群より選択される。
【0037】
さらなる態様は、式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、nが1、2、3、4、5、および6の群より各場合において独立に選択される整数であり;
R1、R2、R3、R4、およびR5がH、F、CF3、SF5、Cl、Br、I、OH、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、CN、NO2、およびOHの群より各々独立に選択され、
但し、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちの少なくとも2つがFである。
【0038】
もう1つの態様は、R1、R2、R3、R4、およびR5が前記の定義および条件の通りであり、nが1、2、3、4、および5の群より各場合において独立に選択される整数である、式(III)の化合物を含む。
【0039】
さらにもう1つの態様は、R1、R2、R3、R4、およびR5が前記の定義および条件の通りであり、nが1、2、3、および4の群より各場合において独立に選択される整数である、式(III)の化合物を含む。
【0040】
さらなる態様は、R1、R2、R3、R4、およびR5が前記の定義および条件の通りであり、nが1、2、および3の群より各場合において独立に選択される整数である、式(III)の化合物を含む。
【0041】
さらなる態様は、R1、R2、R3、R4、およびR5が前記の定義および条件の通りであり、nが2および3の群より各場合において独立に選択される整数である、式(III)の化合物を含む。
【0042】
さらなる態様は、R1、R2、R3、R4、およびR5が前記の定義および条件の通りであり、nが2である、式(III)の化合物を含む。
【0043】
さらなる態様は、R1、R2、R3、R4、およびR5が前記の定義および条件の通りであり、nが3である、式(III)の化合物を含む。
【0044】
薬学的組成物
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物も提供される。
【0045】
処置の方法
以下の処置の方法の各々は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容される溶媒和物、水和物、異性体(例えば、光学異性体、ラセミ化合物、もしくはそれらのその他の混合物)、互変異性体、同位体、多形、および薬学的に許容されるプロドラッグの使用に言及する。各方法は、使用される化合物が、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(II)、式(III)のもの、SU056等、またはそれらの薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグである、付加的な態様を提供することが理解される。
【0046】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグを、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1タンパク質活性を阻害する方法が提供される。
【0047】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグを、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、癌を経験している対象におけるYB1タンパク質活性を阻害する方法が提供される。異なる態様において、対象が経験している癌は、婦人科癌(例えば、卵巣癌、子宮内膜癌、卵管癌、および子宮頸癌)、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、ならびに胃癌の群より選択される。
【0048】
YB1タンパク質活性を阻害する方法は、YBX1発現と関連付けられている他の癌、例えば、急性骨髄性白血病(Zhou et al., Journal of Experimental & Clinical Cancer Research (2021) 40:353)、腎細胞癌(Ruan et al., Oncogene (2020) 39: 6113-6128)、膀胱癌(Xu et al., Oncotarget, 2017, Vol.8, No.39, pp.65946-65956)、骨肉腫(Fujiwara-Okada et al., British Journal of Cancer (2013)108, pp.836-847)、頭頸部癌(Kolk et al., British Journal of Cancer (2011)105, pp.1864-1873)、上咽頭癌(Zhou et al., Experimental Cell Research 361 (2017) pp.126-134およびBan et al., Journal of Cancer 2021, Vol.12(11), pp.3315-3324)の処置において使用され得る。
【0049】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグを、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法も提供される。本明細書において言及される癌の各々を、それらの関連する抗癌剤に対して感受性にするための別々の方法が、本明細書において含まれることが理解される。
【0050】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグを、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する癌細胞を放射線による処置に対して感受性にする方法も提供される。本明細書において言及される癌の各々を放射線治療に対して感受性にするための別々の方法が、本明細書において含まれることが理解される。
【0051】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、1つのレジメンにおいて、付加的な抗癌剤または放射線と同時に投与され得ることも理解される。他の態様において、薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、指定された抗癌剤および/または放射線治療のその後の投与の前に、1つの用量またはレジメンにおいて、それを必要とする対象へ投与されてもよい。
【0052】
いくつかの態様において、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が、初期の期間、例えば、1~7日間投与され、その後、指定された抗癌剤および/または放射線治療が、それを必要とする対象へ逐次投与されてもよい。
【0053】
さらなる態様において、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1種または複数種の指定された抗癌剤および/または放射線治療とは、投与の各組の間にいずれの処置も含まない不応期間を含め、または含めずに、各1~14日等の反復的な連続する期間に、それを必要とする対象へ投与されてもよい。
【0054】
他の態様において、式(I)の化合物が、初期の期間、例えば、1~7日間投与され、その後、第2の期間に、薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に有効な量の指定された抗癌剤および/または放射線治療との両方が、それを必要とする対象へ同時投与されてもよい。
【0055】
異なる態様において、本明細書に記載の処置に対して感受性にされる対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する癌細胞は、婦人科癌(例えば、卵巣癌、子宮内膜癌、卵管癌、および子宮頸癌)、白血病、リンパ腫、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、頭頸部癌、乳癌(例えば、三種陰性、ER陰性、ER陽性乳癌、およびプロゲステロン陽性)、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胃癌、ならびに神経細胞癌(例えば、神経膠腫)の群より選択される。
【0056】
婦人科癌
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する婦人科癌の処置の方法が提供される。
【0057】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に有効な量のmTOR阻害剤またはその薬学的に許容される塩とを、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する婦人科癌の処置の方法も提供される。いくつかの態様において、mTOR阻害剤は、シロリムス、エベロリムス、デフォロリムス、およびテムシロリムスの群より選択される。
【0058】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、YB1(YBX1)タンパク質を発現する婦人科癌を経験している対象における抗癌剤の効果を増強する方法も提供される。いくつかの態様において、式(I)の化合物による処置は、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する婦人科癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする。
【0059】
いくつかの態様において、婦人科癌を処置するために使用される抗癌剤は、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/プロテインキナーゼB(Akt)の阻害剤またはアンタゴニストである。
【0060】
いくつかの態様において、処置されるYB1(YBX1)タンパク質を発現する婦人科癌は卵巣癌である。他の態様において、処置される婦人科癌は子宮内膜癌である。さらに他の態様において、処置される婦人科癌は子宮頸癌である。
【0061】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のシスプラチンまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する卵巣癌の処置の方法も提供される。
【0062】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のタキサン化合物またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する卵巣癌の処置の方法も提供される。
【0063】
いくつかの態様において、本明細書に記述されるYB1(YBX1)タンパク質を発現する婦人科癌の処置の方法において使用されるタキサン化合物は、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルの群より選択される。
【0064】
対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する癌細胞を抗癌剤および/もしくは放射線による処置に対して感受性にするか、または癌を経験している対象におけるYB1タンパク質活性を阻害する方法の各々について、癌の試料細胞の中の発現YB1(YBX1)タンパク質の有無を検出する最初の工程と、YB1(YBX1)タンパク質が試料細胞の中に存在すると決定された場合、各方法について記載された当該の癌を経験している対象を、薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、エステル、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、同位体、多形、もしくはプロドラッグ、および具体的な方法によって示される任意の他の薬剤によって処置する工程とを含む、対応する方法が存在する。
【0065】
非限定的な例として、
(a)それを必要とする対象から収集された卵巣癌腫瘍試料の中の発現YB1タンパク質の有無を決定する工程、ならびに
(b)発現YB1タンパク質が卵巣癌腫瘍試料の中に存在すると決定された場合、
(i)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(ii)薬学的に有効な量のタキサン化合物またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程
を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する卵巣癌の処置の方法も提供される。
【0066】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のタキサン化合物またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する卵管癌(cancer)(卵管癌(carcinoma))の処置の方法も提供される。
【0067】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;
(b)薬学的に有効な量のタキサン化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(c)薬学的に有効な量のカルボプラチンまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する卵管癌(卵管癌)の処置の方法も提供される。
【0068】
いくつかの態様において、卵管癌を処置する方法におけるタキサン化合物は、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルの群より選択される。
【0069】
前立腺癌
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌の処置の方法も提供される。
【0070】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0071】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0072】
いくつかの態様において、式(I)の化合物の投与は、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌をタキサン抗癌剤による処置に対して感受性にする。いくつかの態様において、タキサン抗癌剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルの群より選択され、またはその薬学的に許容される塩である。
【0073】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;
(b)薬学的に有効な量のパクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルの群より選択されるタキサン化合物またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌の処置の方法も提供される。
【0074】
いくつかの態様において、式(I)の化合物の投与は、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌をアンドロゲン受容体阻害剤抗癌剤による処置に対して感受性にする。いくつかの態様において、アンドロゲン受容体阻害剤は、アパルタミド、エンザルタミド、ダロルタミド、およびアビラテロン酢酸エステルの群より選択される。
【0075】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のアパルタミド、エンザルタミド、ダロルタミド、およびアビラテロン酢酸エステルの群より選択されるアンドロゲン受容体阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌の処置の方法も提供される。
【0076】
いくつかの態様において、アパルタミドは、約100mg~約300mgの1日投薬量で、それを必要とする対象へ投与される。いくつかの態様において、アパルタミドは、1日当たり約240mgの投薬量で投与される。
【0077】
いくつかの態様において、抗癌剤は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストである。いくつかの態様において、LHRHアゴニストは、リュープロリド/リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、およびヒストレリンの群より選択される。
【0078】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のリュープロリド/リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、およびヒストレリンの群より選択される黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト化合物またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌の処置の方法も提供される。
【0079】
他の態様において、抗癌剤は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニストである。いくつかの態様において、LHRHアゴニストはデガレリクスである。
【0080】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のデガレリクスまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象における前立腺癌の処置の方法も提供される。
【0081】
他の態様において、抗癌剤は抗アンドロゲン剤である。いくつかの態様において、抗アンドロゲン剤は、フルタミド、ビカルタミド、およびニルタミドの群より選択される。
【0082】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のフルタミド、ビカルタミド、およびニルタミドの群より選択される抗アンドロゲン化合物またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌の処置の方法も提供される。
【0083】
前立腺癌を処置し、かつ/または前立腺癌転移を阻害するための本明細書における方法に関するいくつかの態様において、当該の前立腺癌は、アンドロゲン非依存性前立腺癌である。他の態様において、当該の前立腺癌は、去勢感受性前立腺癌である。他の態様において、当該の前立腺癌は、転移性去勢感受性前立腺癌である。さらなる態様において、処置されるYB1(YBX1)タンパク質を発現する前立腺癌は、非転移性去勢抵抗性前立腺癌である。他の態様において、前立腺癌は、ホルモン不応性前立腺癌(HRPC)である。
【0084】
黒色腫
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する黒色腫の処置の方法も提供される。
【0085】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する黒色腫転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0086】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現するメラノーマ細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0087】
従って、
(c)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(d)薬学的に有効な量のペムブロリズマブおよびニボルマブの群より選択されるPD-1阻害剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する黒色腫の処置の方法も提供される。
【0088】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のアテゾリズマブまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する黒色腫の処置の方法が、さらに提供される。
【0089】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;
(b)薬学的に有効な量のアテゾリズマブまたはその薬学的に許容される塩;ならびに
(c)薬学的に有効な量のコビメチニブおよびベムラフェニブの群より選択される第3の薬剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する黒色腫の処置の方法が、さらに提供される。
【0090】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のCTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する黒色腫の処置の方法も提供される。
【0091】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のインターロイキン-2(IL-2)
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する黒色腫の処置の方法も提供される。
【0092】
シスプラチン抵抗性
YB-1の発現または過剰発現は、いくつかの癌、例えば、乳癌、膀胱癌、および卵巣癌におけるシスプラチン処置に対する抵抗性にも関連付けられている。
【0093】
いくつかの態様において、処置される乳癌は、内分泌治療薬、例えば、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、例えば、タモキシフェンおよびトレミフェンに対して不応性である。いくつかの態様において、乳癌は、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)、例えば、フルベストラントおよびエラセストラントに対して不応性である。他の態様において、処置される乳癌は、アロマターゼ阻害薬、例えば、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、およびテストラクトンに対して不応性である。
【0094】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する癌をシスプラチンによる処置に対して感受性にする方法が、本明細書において提供される。
【0095】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する癌をタキサン化合物による処置に対して感受性にする方法が、本明細書において提供される。
【0096】
乳癌
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する乳癌の処置の方法も、提供される。
【0097】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する乳癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0098】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する乳癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。いくつかの態様において、本法は、それを必要とする対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する乳癌細胞を、アントラサイクリン系(例えば、ドキソルビシン、PEG化リポソームドキソルビシン、およびエピルビシン)、タキサン化合物(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル)、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シクロホスファミド、ビナレルビン、ゲムシタビン、イクサベピロン、エリブリン、ならびに白金剤(例えば、カルボプラチンおよびシスプラチン)の群より選択される1種または複数種の薬剤による処置に対して感受性にする。他の態様において、方法は、YB1(YBX1)を発現する乳癌細胞を放射線治療による処置に対して感受性にする。
【0099】
1つの態様は、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のドキソルビシン、PEG化リポソームドキソルビシン、エピルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シクロホスファミド、およびカルボプラチンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する乳癌の処置の方法を提供する。
【0100】
もう1つの態様は、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のパクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、PEG化リポソームドキソルビシン、エピルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン、イクサベピロン、およびエリブリンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する乳癌の処置の方法を提供する。
【0101】
結腸直腸癌
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する結腸直腸癌の処置の方法も提供される。
【0102】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する結腸直腸癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0103】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する結腸直腸癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0104】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量の5-フルオロウラシル、カペシタビン、イリノテカン、オキサリプラチン、およびトリフルリジンとチピラシルの群より選択される抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する結腸直腸癌の処置の方法も提供される。
【0105】
膀胱癌
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膀胱癌の処置の方法も提供される。
【0106】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膀胱癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0107】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膀胱癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0108】
(d)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;
(e)薬学的に有効な量のシスプラチン、シスプラチンと5-フルオロウラシル、およびマイトマイシンと5-フルオロウラシルの群より選択される抗癌剤またはその薬学的に許容される塩;
(f)治療的に有効な線量の放射線
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膀胱癌の処置の方法が提供される。
【0109】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量の
(i)ゲムシタビンおよびシスプラチン;
(ii)ドーズデンス(Dose-dense)のメトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、およびシスプラチン(DDMVAC);
(iii)シスプラチン、メトトレキサート、およびビンブラスチン(CMV);ならびに
(iv)ゲムシタビンおよびパクリタキセル
の群より選択される抗癌剤
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膀胱癌の処置の方法も、提供される。
【0110】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;
(b)薬学的に有効な量のドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、メトトレキサート、イホスファミド、およびペメトレキセドの群より選択される抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膀胱癌の処置の方法も、提供される。
【0111】
肝臓癌
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する肝臓癌の処置の方法も、提供される。
【0112】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する肝臓癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0113】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する肝臓癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0114】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のゲムシタビン、オキサリプラチン、シスプラチン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、カペシタビン、およびミトキサントロンの群より選択される抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する肝臓癌の処置の方法も提供される。
【0115】
肺癌
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する小細胞肺癌の処置の方法も、提供される。
【0116】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する小細胞肺癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0117】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する小細胞肺癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0118】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のシスプラチンとエトポシド、カルボプラチンとエトポシド、シスプラチンとイリノテカン、およびカルボプラチンとイリノテカンの群より選択される抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する小細胞肺癌の処置の方法も提供される。
【0119】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する非小細胞肺癌の処置の方法も提供される。
【0120】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する非小細胞肺癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0121】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する非小細胞肺癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0122】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のシスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ビナレルビン、エトポシド、およびプレメトレキセドの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する非小細胞肺癌の処置の方法も提供される。
【0123】
多発性骨髄腫
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する多発性骨髄腫の処置の方法も、提供される。
【0124】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する多発性骨髄腫転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0125】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する多発性骨髄腫細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0126】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のメルファラン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、エトポシド、ドキソルビシン、リポソーマルドキソルビシン、およびベンダムスチンの群より選択される抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する多発性骨髄腫の処置の方法も提供される。
【0127】
軟部肉腫
YB1(YBX1)タンパク質を発現する軟部肉腫、例えば、血管肉腫、隆起性皮膚線維肉腫、上皮肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、粘液線維肉腫、横紋筋肉腫、孤在性線維性腫瘍、滑膜肉腫、および未分化多形肉腫の処置の方法も、本明細書において提供される。
【0128】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する軟部肉腫、例えば、YB1(YBX1)タンパク質を発現する線維肉腫の処置の方法も、提供される。
【0129】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する軟部肉腫、例えば、YB1(YBX1)タンパク質を発現する線維肉腫を阻害する方法が、さらに提供される。
【0130】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する軟部肉腫細胞、例えば、YB1(YBX1)タンパク質を発現する線維肉腫細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0131】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のイホスファミド、ドキソルビシン、ダカルバジン(DTIC)、エピルビシン、テモゾロミド、ドセタキセル、ゲムシタビン、ビノレルビン、トラベクテジン、およびエリブリンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、YB1(YBX1)タンパク質を発現する軟部肉腫、例えば、YB1(YBX1)タンパク質を発現する線維肉腫の処置の方法も提供される。
【0132】
いくつかの態様において、抗癌剤イホスファミドが使用される時、イホスファミドの毒性効果から膀胱を保護するための薬物メスナも与えられる。他の態様において、抗癌剤は、頭字語MAIDで呼ばれることもある、メスナ、アドリアマイシン[ドキソルビシン]、イホスファミド、およびダカルバジンの組み合わせである。他の態様において、抗癌剤は、頭字語AIMで呼ばれることもある、アドリアマイシン[ドキソルビシン]、イホスファミド、およびメスナの組み合わせである。いくつかの態様において、本明細書における軟部肉腫を処置する方法において、抗癌剤は、局所(isolated)四肢灌流を使用して、それを必要とする対象へ投与される。
【0133】
骨肉腫:薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する骨肉腫の処置の方法も、提供される。
【0134】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する骨肉腫を阻害する方法が、さらに提供される。
【0135】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する骨肉腫細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0136】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のメトトレキサート、ドキソルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、シクロホスファミド、エトポシド、およびゲムシタビンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する骨肉腫の処置の方法も提供される。
【0137】
いくつかの態様において、前記のYB1(YBX1)タンパク質を発現する骨肉腫の処置の方法において、抗癌剤は、高用量メトトレキサート、ドキソルビシン、およびシスプラチンの組み合わせ(MAPレジメン)である。他の態様において、ドキソルビシンとシスプラチンとの組み合わせが投与される。他の態様において、イホスファミドとエトポシドとの組み合わせが使用される。さらに他の態様において、イホスファミドとエピルビシンとシスプラチンまたはカルボプラチンのいずれかとの組み合わせが投与される。
【0138】
ユーイング肉腫
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現するユーイング肉腫の処置の方法も、提供される。
【0139】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現するユーイング肉腫を阻害する方法が、さらに提供される。
【0140】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現するユーイング肉腫細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0141】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のシクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、イホスファミド、およびビンクリスチンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現するユーイング肉腫の処置の方法も提供される。
【0142】
いくつかの態様において、YB1(YBX1)タンパク質を発現するユーイング肉腫を処置する方法において、抗癌剤は、イホスファミドおよびエトポシドと交互の、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドの組み合わせであり、このレジメンはVDC/IEと呼ばれる。
【0143】
胃癌
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する胃(gastric)癌(胃(stomach)癌)の処置の方法も、提供される。
【0144】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する胃癌を阻害する方法が、さらに提供される。
【0145】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する胃癌細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0146】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量の5-フルオロウラシル、カペシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、エピルビシン、イリノテカン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびトリフルリジン+チプラシル(LONSURF(登録商標))の群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する胃癌の処置の方法も提供される。
【0147】
いくつかの態様において、前記のYB1(YBX1)タンパク質を発現する胃癌を処置する方法において、抗癌剤は、頭字語ECFで呼ばれることもある、エピルビシン、シスプラチン、および5-フルオロシルの組み合わせである。他の態様において、放射線と組み合わせられることもある、ドセタキセルまたはパクリタキセルと5-FUまたはカペシタビンのいずれかとの組み合わせ。もう1つの態様において、シスプラチンが、5-FUまたはカペシタビンのいずれかと共に投与され、放射線と組み合わせられてもよい。さらなる態様において、パクリタキセルおよびカルボプラチンが投与され、放射線と組み合わせられてもよい。他の態様において、ドセタキセル、シスプラチン、および5-フルオルラシル(DCF)の組み合わせが投与される。他の態様において、イリノテカンが、シスプラチン、5-フルオロウラシル、またはカペシタビンと共に投与される。さらに他の態様において、オキサリプラチンが、5-フルオロウラシルまたはカペシタビンと共に投与される。さらに他の態様において、トリフルリジン+チプラシル(LONSURF(登録商標))が与えられる。
【0148】
神経膠芽腫
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する多形神経膠芽腫(GBMまたは神経膠芽腫)の処置の方法も、提供される。
【0149】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する神経膠芽腫を阻害する方法が、さらに提供される。
【0150】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する神経膠芽腫細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0151】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のテモゾロミド、ベバシズマブ、ロムスチン、カルムスチン、フルゾパリル(fluzoparil)、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アンロチニブ(anlotinib)、グラスデギブ、およびバビツキシマブの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する神経膠芽腫の処置の方法も提供される。
【0152】
いくつかの態様において、前記の方法における神経膠芽腫は、YB1(YBX1)タンパク質を発現する小児神経膠芽腫である。いくつかの態様において、神経膠芽腫は、YB1(YBX1)タンパク質を発現する原発性神経膠芽腫である。他の態様において、YB1(YBX1)タンパク質を発現する続発性神経膠芽腫である。
【0153】
頭頸部癌
本明細書における「頭頸部癌」との言及は、口腔、咽喉(咽頭、例えば、上咽頭、中咽頭、および下咽頭)、喉頭、副鼻腔、鼻腔、ならびに唾液腺の癌のうちの任意のものをさす。頭頸部癌には、下咽頭癌、喉頭癌、口唇および口腔の癌、転移性頸部扁平上皮癌、上咽頭癌、中咽頭癌、副鼻腔および鼻腔の癌、ならびに唾液腺癌が含まれる。本明細書に記載の頭頸部癌の処置の方法の各々について、本段落に列挙された頭頸部癌の各々についての対応する方法も開示されることが理解される。
【0154】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌の処置の方法も、提供される。
【0155】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0156】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0157】
YB1(YBX1)を発現する頭頸部癌の処置に関するいくつかの態様において、対象を処置するために使用される抗癌剤は、放射線治療である。いくつかの態様において、利用される放射線は、外照射治療である。いくつかの態様において、処置は、薬学的に有効な量の1種または複数種のEGFR阻害剤を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む。他の態様は、それぞれ、薬学的に有効な量のラロトレクチニブ(Vitrakvi)および/またはラロトレクチニブを、それを必要とする対象へ投与することに関する。
【0158】
頭頸部癌を処置する他の方法は、免疫治療の使用、例えば、薬学的に有効な量のペムブロリズマブおよび/またはニボルマブの、それを必要とする対象への投与を含む。
【0159】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のパクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、およびカペシタビンの群より選択される抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌の処置の方法が、提供される。
【0160】
従って、
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のパクリタキセルおよびドセタキセルの群より選択されるタキサン化合物またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌の処置の方法も提供される。
【0161】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のシスプラチンまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌の処置の方法も提供される。
【0162】
いくつかの態様において、シスプラチンは、3週間毎に3回送達される約20mg/m2~約100mg/m2の用量で、それを必要とする対象へ投与される。
【0163】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のカルボプラチンまたはその薬学的に許容される塩;ならびに
(c)薬学的に有効な量の5-フルオロウラシル(5FU)およびセツキシマブの群より選択される薬物
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌の処置の方法も、提供される。
【0164】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のシスプラチンまたはその薬学的に許容される塩;ならびに
(c)薬学的に有効な量の5-フルオロウラシル(5FU)およびセツキシマブの群より選択される薬物
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌の処置の方法も、提供される。
【0165】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のシスプラチンまたはその薬学的に許容される塩;および
(c)薬学的に有効な量のパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌の処置の方法も、提供される。
【0166】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のカルボプラチンまたはその薬学的に許容される塩;および
(c)薬学的に有効な量のパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌の処置の方法も、提供される。
【0167】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のヒドロキシ尿素またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(c)薬学的に有効な量の5-フルオロウラシル(5FU)およびセツキシマブの群より選択される薬物
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する頭頸部癌の処置の方法も、提供される。
【0168】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のヒドロキシ尿素またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(c)薬学的に有効な量のカルボプラチン、ドキソルビシン、エピルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ブレオマイシン、およびメトトレキサートの群より選択される薬物
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する上咽頭癌の処置の方法が、さらに提供される。
【0169】
膵臓癌
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膵臓癌の処置の方法が、提供される。
【0170】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膵臓癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0171】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膵臓癌を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0172】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のゲムシタビン、5-フルオルラシル、オキサリプラチン、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル、カペシタビン、シスプラチン、およびイリノテカンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する膵臓癌の処置の方法が、提供される。
【0173】
神経細胞癌
式(I)の化合物は、神経細胞癌(脳および脊髄の癌)、例えば、髄芽腫、多形神経膠芽腫(GBM)、星状細胞腫(未分化星状細胞腫および毛様細胞性星状細胞腫)、上衣腫、ならびに乏突起神経膠腫を処置するため、かつ/または処置に対して感受性にするためにも使用され得る。神経細胞癌を処置するための、または神経細胞癌を本明細書に記載の処置に対して感受性にするための以下の方法の各々について、本段落に列挙された神経細胞癌の各々についての各タイプの別々の方法が含まれることが理解される。
【0174】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する神経細胞癌の処置の方法が提供される。
【0175】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する神経細胞癌転移を阻害する方法が、さらに提供される。
【0176】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する神経細胞癌を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。
【0177】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のカルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、シスプラチン、イリノテカン、シクロホスファミド、エトポシド、ロムスチン、メトトレキサート、プロカルバジン、テモゾロミド、およびビンクリスチンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する神経細胞癌の処置の方法が、提供される。
【0178】
いくつかの態様において、それを必要とする対象へ投与される薬学的に有効な量のカルムスチンは、Arbor Pharmaceuticals, LLCから入手可能なGLIADEL(登録商標)ウェーハ(カルムスチン留置用剤)製品などのカルムスチンのウェーハまたは留置用剤の形態である。
【0179】
白血病
本発明の方法には、白血病、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性(またはリンパ性)白血病(ALL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)の処置の方法も含まれ、ここで、当該の白血病細胞は、YB-1タンパク質を発現する。白血病の処置のための、または白血病の処置に対する感受性のための、本明細書に記載の各方法について、言及された白血病(AML、CML、ALL、およびCLL)の各々について、別々の対応する方法が理解されることが理解される。
【0180】
薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する白血病細胞を抗癌剤による処置に対して感受性にする方法が、さらに提供される。いくつかの態様において、対象を処置するために使用される抗癌剤は、放射線治療である。
【0181】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のダウノルビシンおよびイダルビシンの群より選択されるアントラサイクリン薬物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(c)薬学的に有効な量のシタラビンまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する急性骨髄性白血病の処置の方法も、提供される。
【0182】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のクラドリビン(2-CdA)、フルダラビン、ミトキサントロン、エトポシド、6-チオグアニン、ヒドロキシ尿素、プレドニゾン、デタメキサゾン、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、アザシチジン、およびデシタビンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する急性骨髄性白血病の処置の方法も、提供される。
【0183】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のヒドロキシ尿素、シタラビン(Ara-C)、ブスルファン、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、およびビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))の群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する慢性骨髄性白血病の処置の方法も、提供される。
【0184】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のイマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ボスチニブ(BOSULIF(登録商標))、ポナチニブ(ICLUSIG(登録商標))、およびアシミニブ(SCEMBLIX(登録商標))の群より選択される1種もしくは複数種のチロシンキナーゼ阻害剤抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する慢性骨髄性白血病の処置の方法も、提供される。
【0185】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のインターフェロンαまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する慢性骨髄性白血病の処置の方法も、提供される。
【0186】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のビンクリスチン、デキサメタゾン、イマチニブ、プレドニゾン、ドキソルビシン、およびダウノルビシンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する急性リンパ芽球性白血病の処置の方法も、提供される。
【0187】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のメトトレキサート、6-メルカプトプリン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびイマチニブの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する急性リンパ芽球性白血病の処置の方法も、提供される。
【0188】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のビンクリスチン、デキサメタゾン、プレドニゾン、ドキソルビシン、およびダウノルビシンの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する急性リンパ芽球性白血病の処置の方法も、提供される。
【0189】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のメトトレキサート、6-メルカプトプリン(6-MP)、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびイマチニブの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する急性リンパ芽球性白血病の処置の方法も、提供される。
【0190】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)薬学的に有効な量のイブルチニブ、アカラブルチニブ、イデラリシブ、およびデュベリシブの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する慢性リンパ性白血病の処置の方法も、提供される。
【0191】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)薬学的に有効な量のベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する慢性リンパ性白血病の処置の方法も、提供される。
【0192】
(a)薬学的に有効な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(c)薬学的に有効な量のリツキシマブ、オファツムマブ、およびオビヌツズマブの群より選択される1種もしくは複数種の抗癌剤またはその薬学的に許容される塩
を、それを必要とする対象へ投与する工程を含む、対象におけるYB1(YBX1)タンパク質を発現する慢性リンパ性白血病の処置の方法も、提供される。
【0193】
定義
「YB1」および「YBX1」という用語は、ヒトにおいてYBX1遺伝子によってコードされるタンパク質である、Yボックス転写因子またはヌクレアーゼ感受性要素結合タンパク質1としても公知のYボックス結合タンパク質1をさす。
【0194】
化学構造内の波線
は、示された構造が他の化学部分または基に結合している結合を示す。
【0195】
「複素環」または「複素環基」とは、本明細書において、炭素原子と、O、S、およびNより選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子とを含有する化学環をさす。「複素環」および「複素環式」という用語には、飽和環、部分不飽和環、および芳香環(即ち、芳香族複素環)を有する基が含まれる。5員複素環および6員複素環の例には、例えば、非限定的に、ピリジル、ジヒドロイピリジル(dihydroypyridyl)、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル(sulfur oxidized tetrahydrothiophenyl)、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、4-ピペリジニル、ピロリジニル、2-ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、トリアジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、2H-ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、モルホリニル、およびオキサゾリジニルが含まれる。
【0196】
「アルキル」という用語は、直鎖または分岐鎖の炭化水素をさす。例えば、アルキル基には、1~6個の炭素原子(即ち、C1-C6アルキル)、1~4個の炭素原子(即ち、C1-C4アルキル)、または1~3個の炭素原子(即ち、C1-C3アルキル)を有するものが含まれ得る。適当なアルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル(-CH(CH3)2)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、--CH2CH2CH2CH3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、--CH2CH(CH3)2)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、--CH(CH3)CH2CH3)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、--C(CH3)3)、1-ペンチル(n-ペンチル、--CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ペンチル(--CH(CH3)CH2CH2CH3)、3-ペンチル(--CH(CH2CH3)2)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH2CH3)、3-メチル-2-ブチル(--CH(CH3)CH(CH3)2)、3-メチル-1-ブチル(--CH2CH2CH(CH3)2)、2-メチル-1-ブチル(-CH2CH(CH3)CH2CH3)、1-ヘキシル(--CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ヘキシル(--CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3-ヘキシル(-CH(CH2CH3)(CH2CH2CH3))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CH3)2CH2CH2CH3)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH(CH3)2)、3-メチル-3-ペンチル(--C(CH3)(CH2CH3)2)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CH2CH3)CH(CH3)2)、2,3-ジメチル-2-ブチル(--C(CH3)2CH(CH3)2)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH3)C(CH3)3等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0197】
「アルコキシ」という用語は、前記定義のアルキル基が酸素原子を介して親分子に付着している、式-O-アルキルを有する基をさす。アルコキシ基のアルキル部分は、1~6個の炭素原子(即ち、C1-C6アルコキシ)、1~4個の炭素原子(即ち、C1-C4アルコキシ)、または1~3個の炭素原子(即ち、C1-C3アルコキシ)を有し得る。適当なアルコキシ基の例には、メトキシ(-O-CH3または-OMe)、エトキシ(-OCH2CH3または-OEt)、n-プロポキシ(-CH2-CH2-CH3)、イソプロポキシ(-CH(CH3)2)、n-ブチル(-CH2-CH2-CH2-CH3)、イソブトキシ(-CH2-CH(CH3)2)、sec-ブトキシ(-CH(CH3)CH2-CH3)、t-ブトキシ(-O-C(CH3)3または-OtBu)等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0198】
「シクロアルキル」という用語は、単環としての3~6個の炭素原子を有する飽和環、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基をさす。
【0199】
「対象」という用語は、処置、観察、または実験の対象となっている、または対象となるであろう動物、例えば、哺乳動物をさす。本明細書に記載の方法は、ヒトの治療および獣医学的適用の両方において有用であり得る。いくつかの態様において、対象は哺乳動物であり;いくつかの態様において、対象はヒトであり;いくつかの態様において、対象はネコおよびイヌより選択される。「それを必要とする対象」または「それを必要とするヒト」とは、ある特定の処置、例えば、本明細書に記載の式(I)、式(II)、もしくは式(III)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは共結晶による処置から利益を得るであろう疾患または状態を有し得る、または有すると推測される対象、例えば、ヒトをさす。これには、処置が疾患または状態の発症を防止するような、そのような疾患もしくは状態のリスクを有するか、またはそれに感受性であると決定され得る対象が含まれる。
【0200】
いくつかの態様において、本明細書における処置の方法に関する「それを必要とする対象」とは、例えば、腫瘍生検から、腫瘍試料が採取され、例えば、当技術分野において公知の免疫組織化学的技術またはウエスタンブロッティング技術を通じて、採取された材料の中に発現YBX1タンパク質の存在が同定される患者である。
【0201】
「有効量」、「治療的に有効な量」、または「薬学的に有効な量」という用語は、そのような処置を必要とする対象(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト)へ投与された時に、以下に定義されるような処置をもたらすため、十分な量をさす。治療的または薬学的に有効な量は、処置される対象および疾患状態、対象の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与様式等に応じて変動し、これらは当業者によって容易に決定され得る。例えば、式(I)、式(II)、もしくは式(III)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは共結晶の「有効量」、「治療的に有効な量」、または「薬学的に有効な量」は、YXB1の発現または活性をモジュレートし、それによって、適応症に罹患している対象(例えば、ヒト)を処置するため、または適応症の既存の症状を寛解させ、もしくは緩和するため、十分な量である。例えば、治療的にまたは薬学的に有効な量は、YXB1活性の阻害に応答する疾患または状態の症状を減少させるため、十分な量であり得る。
【0202】
いくつかの態様において、「有効量」とは、単独治療または組み合わせ治療において、1回または複数回、個体へ投与された時に、化合物による処置の非存在下での個体におけるYB-1活性と比較して、あるいは化合物による処置の前または後の個体におけるYB-1活性と比較して、約20%(20%阻害)、少なくとも約30%(30%阻害)、少なくとも約40%(40%阻害)、少なくとも約50%(50%阻害)、少なくとも約60%(60%阻害)、少なくとも約70%(70%阻害)、少なくとも約80%(80%阻害)、または少なくとも約90%(90%阻害)、YB-1を阻害するため、有効である主題の化合物の量である。
【0203】
いくつかの態様において、「有効量」とは、単独治療または組み合わせ治療において、1回または複数回、個体へ投与された時に、化合物による処置の非存在下での個体における腫瘍量と比較して、あるいは化合物による処置の前または後の対象における腫瘍量と比較して、約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、対象における腫瘍量を減少させるため、有効である主題の化合物の量である。本明細書において使用されるように、「腫瘍量」という用語は、癌を有する対象が保有している腫瘍組織の総量をさす。いくつかの態様において、「有効量」とは、単独治療または組み合わせ治療において、1回または複数回、個体へ投与された時に、化合物による処置の非存在下での個体における腫瘍縮小を観察するために必要とされる放射線治療の線量と比較して、約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、対象における腫瘍縮小を観察するために必要とされる放射線治療の線量を低下させるため、有効である主題の化合物の量である。いくつかの態様において、化合物の「有効量」は、1回または複数回、癌を有する個体へ投与された時に、腫瘍サイズの1.5-log、2-log、2.5-log、3-log、3.5-log、4-log、4.5-log、または5-logの低下を達成するため、有効である量である。
【0204】
いくつかの態様において、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、約0.2mg/kg~約10mg/kgの1日用量で投与され得る。他の態様において、約0.2mg/kg~約5mg/kgの1日用量で投与され得る。
【0205】
いくつかの態様において、化合物の有効量は、約50ng/kg体重~約50pg/kg体重(例えば、約50ng/kg体重~約40pg/kg体重、約30ng/kg体重~約20pg/kg体重、約50ng/kg体重~約10pg/kg体重、約50ng/kg体重~約1pg/kg体重、約50ng/kg体重~約800ng/kg体重、約50ng/kg体重~約700ng/kg体重、約50ng/kg体重~約600ng/kg体重、約50ng/kg体重~約500ng/kg体重、約50ng/kg体重~約400ng/kg体重、約60ng/kg体重~約400ng/kg体重、約70ng/kg体重~約300ng/kg体重、約60ng/kg体重~約100ng/kg体重、約65ng/kg体重~約85ng/kg体重、約70ng/kg体重~約90ng/kg体重、約200ng/kg体重~約900ng/kg体重、約200ng/kg体重~約800ng/kg体重、約200ng/kg体重~約700ng/kg体重、約200ng/kg体重~約600ng/kg体重、約200ng/kg体重~約500ng/kg体重、約200ng/kg体重~約400ng/kg体重、または約200ng/kg体重~約300ng/kg体重)の範囲の量である。
【0206】
いくつかの態様において、化合物の有効量は、約10pg~約100mg、例えば、10pg~約50pg、約50pg~約150pg、約150pg~約250pg、約250pg~約500pg、約500pg~約750pg、約750pg~約1ng、約1ng~約10ng、約10ng~約50ng、約50ng~約150ng、約150ng~約250ng、約250ng~約500ng、約500ng~約750ng、約750ng~約1pg、約1pg~約10pg、約10pg~約50pg、約50mg~約150gg、約150gg~約250gg、約250gg~約500gg、約500gg~約750gg、約750gg~約1g、約1mg~約50mg、約1mg~約100mg、または約50mg~約100mgの範囲の量である。その量は、1回量であってもよいし、または総1日量であってもよい。総1日量は、10pg~100mgの範囲であってもよいし、または100mg~約500mgの範囲であってもよいし、または500mg~約1000mgの範囲であってもよい。
【0207】
いくつかの態様において、化合物は単回投与される。他の態様において、複数回投与される。ある期間に複数回投与される場合、化合物は、ある期間に1日2回(qid)、1日1回(qd)、隔日(qod)、3日毎、週3回(tiw)、または週2回(biw)、投与され得る。例えば、化合物は、1日~約2年またはそれ以上の期間に、qid、qd、qod、tiw、またはbiw、投与される。例えば、化合物は、様々な要因に応じて、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、1年、もしくは2年、またはそれ以上の間、上記の頻度のうちの任意のもので投与される。
【0208】
有効量の主題の化合物の、癌を有する個体への投与は、(1)腫瘍量の低下;(2)(例えば、放射線治療に対する感受性に起因する)腫瘍縮小をもたらすために必要とされる放射線治療の線量の低下;(3)個体におけるある細胞から他の細胞への癌の蔓延の低下;(4)臨床転帰における罹患率または死亡率の低下;(5)(例えば、他の抗癌剤に対する感受性に起因する)他の抗癌剤と組み合わせられた時の処置の全長の短縮;および(6)疾患応答の指標の改善(例えば、癌の1つまたは複数の症状の低下)のうちの1つまたは複数をもたらし得る。処置方法が有効であるか否かを決定するため、多様な方法のうちの任意のものが使用され得る。例えば、主題の方法(subject method)によって処置された個体から得られた生物学的試料をアッセイすることができる。
【0209】
「阻害する」または「阻害」という用語は、生物学的な活性または過程の基線活性の減少、例えば、有意な減少を示す。「YB-1活性の阻害」とは、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは共結晶の存在に対する直接的または間接的な応答としての、そのような化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは共結晶の非存在下でのYB-1の活性と比べたYB-1活性の減少をさす。活性の減少は、化合物とYB-1との直接的な相互作用に起因するものであってもよいし、または本明細書に記載の化合物と、YB-1活性に代わりに影響する1つもしくは複数の他の因子との相互作用に起因するものであってもよい。例えば、化合物の存在は、YB-1と直接結合することによって、(直接的もしくは間接的に)他の因子によるYB-1活性の減少を引き起こすことによって、または(直接的もしくは間接的に)細胞もしくは生物に存在するYB-1の量を減少させることによって、YB-1活性を減少させ得る。いくつかの態様において、YB-1活性の阻害は、処置前の同じ対象、または処置を受けていない他の対象と比較され得る。「阻害剤」という用語は、薬学的にまたは治療的に有効な用量で、それを必要とするヒトへ投与された時に、所望の阻害活性を提供する化合物または薬剤をさすものと理解される。
【0210】
「薬学的組成物」という用語は、薬学的に有効な量の本明細書に記載の同位体(isotopic)化合物のうちの1つもしくは複数またはそれらの薬学的に許容される塩を含有しており、薬学的に許容される担体によって製剤化されており、他の添加剤を含んでいてもよく、哺乳動物における疾患の処置のための治療レジメンの一部として、政府規制当局の認可の下に製造され、または販売される組成物をさす。薬学的組成物は、例えば、単位剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ゲルカプセル、もしくはシロップ)での経口投与のため;(例えば、クリーム、ゲル、ローション、もしくは軟膏としての)局所投与のため;(例えば、粒子状の栓子を含まない無菌溶液としての、静脈内使用に適した溶媒系による)静脈内投与のため;または本明細書に記載の任意の他の製剤として製剤化され得る。適当な製剤の選択および調製のための従来の手順および成分は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Gennaro,Ed., Lippencott Williams & Wilkins (2005)および2013年に発行されたThe United States Pharmacopeia: The National Formulary (USP 36 NF31)に記載されている。
【0211】
本明細書において使用されるように、「薬学的に許容される賦形剤」とは、非限定的に、任意の全ての担体、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む、薬学的に許容される媒体である。薬学的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が、活性成分と非適合性でない限り、治療用組成物において使用されることが企図される。補足的な活性成分が、組成物に組み込まれてもよい。
【0212】
「薬学的に許容される担体」という用語は、患者において非毒性かつ非炎症性であるという特性を有する、開示された薬学的活性化合物もしくは治療用化合物またはそれらの薬学的に許容される塩以外の薬学的組成物中の任意の成分(例えば、活性同位体化合物を懸濁または溶解させることができる担体)をさす。賦形剤には、例えば、抗付着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、染料(色素)、皮膚軟化剤、乳化剤、増量剤(希釈剤)、フィルム形成剤もしくはコーティング、風味剤、芳香剤、流動化剤(流動性増強剤)、滑沢剤、保存剤、印刷インキ、吸着剤、懸濁化剤もしくは分散剤、甘味剤、または水和水が含まれ得る。例示的な賦形剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(リン酸水素カルシウム)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、セラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ステアリン酸、ショ糖、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトールが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0213】
「その薬学的に許容される塩」という用語には、例えば、無機酸との塩および有機酸との塩が含まれる。塩の例には、塩酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルフィン酸塩、硝酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、およびアルカン酸塩(例えば、酢酸塩、nが0~4であるHOOC-(CH2)n-COOH)が含まれ得る。さらに、本明細書に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、酸性塩の溶液を塩基性化することによって、遊離塩基を得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って、遊離塩基を適当な有機溶媒に溶解させ、溶液を酸で処理することによって、付加塩、具体的には、薬学的に許容される付加塩を作製することができる。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用され得る、様々な合成方法論を認識するであろう。
【0214】
式Iの化合物について、そのような化合物の薬学的に許容される塩、薬学的に許容される共結晶、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容される溶媒和物、水和物、異性体(例えば、光学異性体、ラセミ化合物、またはそれらのその他の混合物)、互変異性体、同位体、多形、および薬学的に許容されるプロドラッグも記載される。簡潔のため、前記の文中の形態のリストは、本明細書における化合物、式(I)、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(II)、式(III)のもの、SU056等の全てに関しては列挙され得ないが、本明細書中のいずれかの場所で適用された説明に、例えば、化合物、薬学的組成物、使用/処置の方法の説明、またはその他の言及に関連して、薬学的に許容される塩のみが含まれるとしても、各々、本明細書に開示され、含まれると理解される。
【0215】
「結晶形」という用語および関連する用語は、本明細書において、多形、溶媒和物、水和物、共結晶、およびその他の分子複合体を含み、塩、塩の溶媒和物、塩の水和物、塩のその他の分子複合体、およびそれらの多形も含むが、これらに限定されるわけではない、所定の物質の様々な結晶修飾をさす。物質の結晶形は、当技術分野において公知であるように、多数の方法によって得ることができる。そのような方法には、融解再結晶、融解冷却、溶媒再結晶、例えば、ナノポアまたは毛細管における制約された空間での再結晶、表面またはテンプレート、例えば、ポリマーにおける再結晶、添加剤、例えば、共結晶カウンター分子の存在下での再結晶、脱溶媒和、脱水、急速蒸発、急冷、徐冷、蒸気拡散、昇華、粉砕、および溶媒滴粉砕が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0216】
癌に関して本明細書において使用される「不応性」という用語は、1つまたは複数の処置に応答しない癌をさす。いくつかの態様において、癌は、1つまたは複数の化学療法剤に応答しない。他の態様において、癌は、放射線治療に応答しない。他の態様において、不応性癌は、1つまたは複数の化学療法剤および放射線治療に応答しない。不応性癌は、そのような処置の開始時に抵抗性である場合もあるし、または1回もしくは複数回の処置の過程を通じて抵抗性になる場合もある。化学療法の場合、不応性癌は、「化学療法抵抗性(chemotherapy resistant)癌」または「化学療法抵抗性(chemo-resistant)癌」とも呼ばれる。
【0217】
「アンドロゲン非依存性前立腺癌」または「ホルモン不応性前立腺癌(AIPC)」とは、精巣摘出術またはゴナドトロピン放出ホルモン(LHRH)アゴニストのいずれかによる一次アンドロゲン除去治療とそれに続く抗アンドロゲンの追加およびその後の耐薬の後に進行する前立腺癌である。いくつかの態様において、ホルモン不応性前立腺癌は、2週間を超える間隔で得られた前立腺特異抗原(PSA)レベルの2~3回の連続した上昇、ならびに/またはCTスキャンおよび/もしくは骨スキャンからの所見、骨痛、もしくは閉塞性排尿症状に基づき実証された疾患進行として定義される。いくつかの態様において、PSAレベルは、診断時または疾患の経過全体を通じて上昇しない。いくつかの態様において、前立腺癌は、進行前立腺癌である。いくつかの態様において、前立腺癌または転移性前立腺癌は、ホルモン阻止治療、例えば、アビラテロン(ZYTIGA(登録商標))、エンザルタミド(XTANDI(登録商標))、ビカルタミド(CASODEX(登録商標))、フルタミド(DROGENIL(登録商標))、または酢酸シプロテロン(CYPROSTAT(登録商標))による処置に対して抵抗性である。
【0218】
放射線処置に対して抵抗性の癌細胞は、内因的であっても、または経時的に獲得されたものであっても、「放射線抵抗性(radiation resistant)癌」または「放射線抵抗性(radioresistant)癌」と呼ばれる。これらの用語は、非抵抗性癌細胞より放射線処置に対する応答性が低い癌細胞を記載するためのものである。
【0219】
本明細書において開示され、かつ/または特許請求の範囲に記載された全ての範囲は、記載されたエンドポイントを含み、独立に組み合わせ可能である。例えば、「2から10」および「2~10」の範囲は、エンドポイントである2および10、ならびに考慮された単位の状況における全ての中間値を含む。例えば、請求項および原子は、平均数の状況で記載されるのでない限り、分数または小数点なしに、連続数で番号付けされるため、「請求項2~10」または「C2-C10アルキル」との言及は、単位2、3、4、5、6、7、8、9、および10を含む。一方で、「5~9のpH」または「5℃~9℃の温度」の状況は、整数5、6、7、8、および9、ならびに中間の全ての分数または小数の単位、例えば、6.5および8.24を含む。
【0220】
「有意」とは、統計的有意性の標準的なパラメトリック検定、例えば、スチューデントT検定において統計的に有意(p<0.05)である検出可能な変化を意味する。
【0221】
量に関して使用される「約」という修飾語は、記された値を含み、状況によって指示される意味を有する(例えば、特定の量の測定に関連する誤差の程度を含む)。いくつかの態様において、「約」という用語は、示された量プラスマイナス10%をさす。いくつかの態様において、「約」という用語は、示された量プラスマイナス5%をさす。
【0222】
本明細書中の記載は、例示的な方法、パラメータ等を記載する。しかしながら、そのような記載は、本開示の範囲を限定するためのものではなく、例示的な態様の説明として提供されていることが、認識されるべきである。
【実施例
【0223】
結果
薬物の設計および合成
本発明者らは、以前に、GBP1:PIM1活性をインビトロで阻止する有効なアゾポドフィロトキシンベースの低分子、9-(3-フルオロフェニル)-4-(2-ヒドロキシエチル)-6-メトキシ-4,9-ジヒドロフロ[3,4-b]キノリン-1(3H)-オンを発見し、その後、SU093と名付けた(Andreoli et al., J Med Chem,57,7916-32, 2014)。この研究は、SU093が、微小管を標的とする薬剤、例えば、パクリタキセルに対してより抵抗性の細胞株において、より高活性であることを明らかにした。この研究に動機付けられて、本発明者らは、フッ素(F)生物学的等価基が組み込まれたSU093アナログを設計して、OC疾患進行を低下させ、OC化学療法に対して感受性にすることができる、改善された阻害特性を有する最適化されたリード化合物SU056を開発した。
【0224】
生物学的等価基の導入および操作は、薬物の設計および開発のプロセスにおけるいくつかの利点、例えば、所望の生物学的特性または物理的特性の増強、毒性の低下、さらには、所定の薬物化合物の代謝の変更を提供する。水素の古典的な生物学的等価基と見なされているフッ素は、1955年にフッ素含有薬物(9α-フルオロコルチゾール)が最初に認可されて以来、広範に研究されてきた(Fried and Sabo,1954)。長年にわたり、薬物設計にフッ素を導入するためのいくつかの戦略が開発されてきた。フッ素の組み込みは、カルボニル基の近くに並んだ強い双極子モーメントの導入によって、薬物の親油性に影響を与える可能性があり、水素のそれと比較して、活性部位のファンデルワールス半径を増加させる(Gillis et al., 2015)。既知の薬物における水素またはメチル(CH3)基の直接置換は、細胞内酸化的代謝に対する基質の感受性の変更によって、効力の改善をもたらし得る。これは、タキソール誘導体(3'-ジフルオロビニルタキソイド)における2個のメチル基のフッ素への置換によって、効力が少なくとも1,000倍増強された、パクリタキセルのケースにおいて見られた(Kuznetsova et al., 2012)。さらに、このジフルオロタキソール誘導体は、CYP 450酵素による代謝的修飾に対して抵抗性であった。これらの観察に基づき、本発明者らは、生物学的等価基としてのフッ素を環Eに導入することによって、以前に報告された化合物SU093を修飾し、補足情報(supplementary information)に記載されるような、SU093(Andreoli et al., 2014)と類似の多成分反応を使用して合成される新たなAzP誘導体SU056を得た(図1A)。
【0225】
AzP処理は卵巣癌細胞の増殖を阻害する
AzP類似体を、卵巣癌細胞株パネル(OVCAR-3、OVCAR-4、OVCAR-5、OVCAR-8、およびSKOV-3)に対してスクリーニングし、細胞株HEK293、SH-SY5Y、およびN27においてさらにスクリーニングした。AzPの用量とヒト卵巣癌細胞株およびID8マウス卵巣癌細胞株の生存率との関係を試験した。図1Bに示されるように、SU056は、SU093と比較して48時間処理後のIC50値の減少を示し(OVCAR4細胞、OVCAR5細胞、およびID8細胞において、この減少は最大2倍であった)、この傾向は、図1Cおよび1Dに示されるクローン形成アッセイにも反映され、両方の阻害剤がOVCAR-8細胞およびID8細胞において用量依存的に有意にOCコロニー形成を減少させた。一方、SU093は、0.5μMおよび1μMの濃度でSKOV-3に中程度の影響を与える。
【0226】
エトポシドは、天然ポドフィロトキシンであり、多くの癌を処置するために使用されている認可された化学療法薬である。エトポシドの主な限界は、長期処置における神経障害および神経毒性の可能性である。神経細胞株SH-SYSYおよびN27に対するエトポシド、SU093、およびSU056の細胞毒性効果を、10μMの用量で48時間試験し、神経毒性プロファイルを比較した。MTTによってアッセイされた細胞生存率によって、SU056が、エトポシドより著しく低細胞毒性であり、49.54%(N27)および28.51%(SH-SY5Y)低毒性であることが見出された(図1E)。これらの結果は、生物学的等価体修飾が、神経毒性副作用を低下させながら、OC増殖の阻害における全体的な有効性を改善したことを示唆している。
【0227】
AzP処理は細胞周期停止、アポトーシス、および細胞遊走阻害を引き起こす
増殖阻害が、AzP処理によって見られたOC生存率の低下を駆動する支配的な要因であるか否かを決定するため、処理後の細胞周期分布を測定するため、ヨウ化プロピジウム染色およびアネキシン-FITC染色をフローサイトメトリーと共に使用した。データは、細胞周期のサブG1期およびG1期におけるOC株の有意な用量依存的な停止と、それに伴うS期またはG2/M期の細胞の割合の減少を示した(図1F)。SU056は、SU093より大きい細胞周期停止を示した。この傾向は、処理された各培養物におけるアポトーシス細胞の割合にも反映され、AzP処理は、全ての用量で、研究された各OC株において、アポトーシスを有意に増加させた(図1G)。さらに、細胞遊走についてのボイデンチャンバーアッセイにおいて、SU093は、異なるOC細胞株において40~46%(1μM、P<0.05)細胞遊走を阻害した。しかしながら、SU056処理は、同細胞株において78~87%(1μM、P<0.05)の阻害を引き起こしたため、最も効果的であった(図1H)。これらのデータは、SU056処理が、細胞周期停止を媒介し、増殖および遊走を有意に減少させることを示している。
【0228】
AzPはインビボで腫瘍の進行および転移を阻害する
これらの有望な結果から、本発明者らは、SU093およびSU056をインビボで試験することにした。C57BL/6マウスに、2×106個のホタルルシフェラーゼ(luc+)発現ID-8同系卵巣癌細胞を皮下移植した。腫瘍のサイズが100mm3に達した後、20mg/kgのSU093およびSU056(媒体対照は生理食塩水中30%PEG-300)による毎日の腹腔内処置を開始した。腫瘍増殖を、生物発光イメージング(IVIS)を介してモニタリングした。SU093およびSU056による処置は、処置期間を通じて媒体対照より腫瘍進行を有意に遅延させる(図2Aおよび2B)。42日目、腫瘍重量の最終評価は、SU056処置が腫瘍重量の2倍の低下をもたらし、SU093が腫瘍を1.5倍縮小させたことを示した(図2C)。これは、血液化学指標、例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、またはアルカリホスファターゼに対する有意な影響を伴わず(図2D)、このことから、毎日のSU056およびSU093が耐容性の良い処置レジメンであることが示された。
【0229】
それらの2種の薬物によって処理されたOC細胞の遊走能の有意な低下が以前に観察されたため(図1H)、本発明者らは、卵巣癌転移に対する薬物処置の効果も測定した。前記の実験の終わりに、肺を固定し、転移巣を手術用顕微鏡下で計数し、その後、H&E染色を行った。SU056によって処置されたマウスにおける転移の測定は、組織学的スコア化を介して評価されたように、肺転移の3倍の低下を示した(図2Eおよび2F)。これらのデータおよび全てのアッセイにおける優れた性能に基づき、SU056を、さらなる研究のために選択した。
【0230】
標的同定:SU056は発癌に関連するタンパク質と相互作用する
セルラーサーマルシフトアッセイ(CETSA)は、タンパク質-リガンド相互作用がタンパク質の熱安定性のシフトを引き起こすという原理に基づく(Savitski et al., 2014)。タンパク質がリガンドと相互作用した時、その熱安定性は増加し、この原理は、低分子または薬物候補が会合するタンパク質標的の同定を可能にする。SU056のタンパク質標的を同定するため、このアッセイを使用した。OVCAR8細胞をSU056(2.5μM)によって1.5時間処理し、タンパク質溶解物をサーマルシフトについて分析した。ヒートマップは、37℃と比較された、SU056の存在下および非存在下での、804種の可溶性タンパク質の熱安定性を表す(図3A)。媒体対照によって処理された細胞およびSU056によって処理された細胞の両方において、77%のタンパク質が同定され、これらのタンパク質のうちの97%が、融解曲線に適合させられる基準を満たした。DMSO処理プロテオームとSU056処理プロテオームとの間の熱安定性の圧縮は、SU056処理が細胞プロテオームの全体的な安定性を増加させることを示唆している(図3A、3B、および3C)。SU056処理は、804種の可溶性タンパク質のうち、6種のタンパク質の熱安定性を有意に増加させた(p値<0.01かつRSQ>0.7)(図3D)。これらの6種のタンパク質は、YBX1(YB-1)、TMSB10、SUMO2、PSMB2、TMSB4X、およびCALM3である(図3D)。SU056の有り無し両方のこれらのタンパク質の融解曲線は、SU056が、YB-1、TMSB10、SUMO2、PSMB2、TMSB4X、およびCALM3の熱安定性を、それぞれ、5.92±0.86℃、5.89±1.18℃、5.4±1.08℃、5.36±0.76℃、4.43±1.31℃、および4.03±1.07℃、増加させることを示唆している(図3Eおよび3F)。この結果は、ウエスタンブロッティング(WB)を使用してさらにバリデートされた(図8A)。これらの6種のタンパク質は、全て、発癌に寄与することが以前に報告されている。
【0231】
SU056処理はYB-1を阻害する
同定された6種の標的のうち、処理後のタンパク質発現のさらなる研究のため、SU056の存在下でのサーマルシフトが5°を超えるタンパク質を選択した。DMSOならびにSU056(1μM、2.5μM、および5μM)によって12時間処理されたOVCAR8細胞のウエスタンブロット分析は、SU056処理が用量依存的にYB-1タンパク質、TMSB10タンパク質、SUMO2タンパク質、およびPMSB2タンパク質を阻害することを示唆している(図4A)。SU056がYB-1発現を強く阻害すること、さらに、多くの発癌性タンパク質処置抵抗性因子との相互作用におけるYB-1の役割を考慮して、YB-1を、さらなるバリデーションのために選択した。SU056処置のインビボ効果を研究するため、免疫組織化学(IHC)を介してID8腫瘍異種移植試料を分析した。媒体およびSU056(20mg/kg)によって処置された腫瘍におけるYB-1およびMDR1の発現についてのIHCは、SU056がYB-1発現を強く阻害し、その後、下流のMDR1をダウンレギュレートすることを示唆している(図4B)。異なる卵巣癌細胞株におけるYB-1およびその下流タンパク質/活性に対するSU056のより広範な効果を同定するため、6種の異なる細胞株を選択し、SU056(2.5μM)によって12時間処理した。YB-1およびCD44の発現ならびに多剤耐性1(MDR1、ABCポンプによって媒介される排出)について細胞を分析した。結果は、この処理が、YB-1発現を28~56%阻害し、CD44発現の36~70%の減少およびMDR発現の41~63%の減少を伴うことを示唆している(図4C)。この結果は、SU056が遺伝的背景および癌のステージに関係なく、異なるOC細胞株において広くYB-1を阻害することを示唆している。SU056の50%YB-1阻害濃度(IC50)を計算するため、細胞株OVCAR4、OVCAR8、およびSKOV3を、SU056(0.01μM、0.1μM、1μM、10μM)によって12時間処理し、YB-1 ELISAを使用してYB-1発現を分析した。OVCAR4、OVCAR8、およびSKOV3のIC50値は、それぞれ、5.6±0.36μM、3.2±0.19μM、および3.7±0.21μMであった(図4D)。最後に、YB-1発現に対するSU056の時間動態および用量依存的効果を試験した。OVCAR4細胞、OVCAR8細胞、およびSKOV3細胞をSU056(1μM、2.5μM、および5μM)によって3時間、6時間、12時間、および24時間処理し、YB-1 ELISAを使用してYB-1発現を測定した。結果は、SU056処理が時間依存的かつ用量依存的にYB-1を阻害することを示唆している(図4E)。24時間の5μM処理は、3種のOC細胞全てにおいてYB-1を完全に(100%)阻害した(図4E)。この結果は、mCherryタグ付きYB-1を安定的に発現するOVCAR8細胞を使用してさらに確認された。YB-1 OVCAR8細胞の共焦点画像法および蛍光強度測定も、SU056処理がYB-1発現を時間依存的かつ用量依存的に阻害することを示唆している(図8Bおよび8C)。全体として、YB-1発現およびその下流因子の結果(図4)は、SU056がYB-1タンパク質およびその活性の強力な阻害剤であることを示唆している。
【0232】
SU056はYB-1と生物物理学的に結合し、その細胞活性はYB-1依存性である
以前に、本発明者らは、SU093が、GBP1と相互作用し、GBP1:PIM1相互作用を阻害することを報告した(Andreoli et al., 2014)。SU056は、SU093の第2世代低分子誘導体であり、SU093と同じ分子標的を有するか否かを確認するため、ビオチン化SU056を使用したプルダウンアッセイを実施した(図5A)。ビオチン化SU056によって処理された細胞およびタンパク質溶解物からのプルダウンは、SU056が、YB-1と物理的に相互作用するが、GBP1とは相互作用しないことを示している(図5B)。この結果は、SU093およびSU056は、構造的類似性を有するが、標的が極めて異なることを示唆している。このことをさらに支持するため、YB-1とSU093またはSU056との間の直交性の生物物理学的結合を測定するため、表面プラズマ共鳴(SPR)スクリーニングを実施した。Hisタグ付きYB-1タンパク質をGE NTAチップに固定化し、異なる濃度(1~100μM)のSU093およびSU056を、結合について試験した(図5CD)。SPRの結果も、SU056:YB-1が、SU093(図5C)と比較して、強い生物物理学的相互作用(図5D)を有することを支持する。YB-1発現に対するSU056活性の依存性をチェックするため、レンチウイルスshRNAベクターの形質導入を使用したYB-1ノックダウンによってトランスフェクトされたOVCAR8細胞も試験した。2種の異なるshRNA配列(YBX1-shRNA1およびYBX1-shRNA2)を使用したところ、両方とも、スクランブル対照(SC)によって形質導入された細胞と比較して、80~90%のYB-1の発現の阻害を与えた(図5E)。SU056(1μM)の有り無し両方で、これら3種の細胞株を使用して、クローン形成アッセイを実施した。結果は、YB-1ノックダウン細胞が、SC細胞と比較して、SU056処理に対してより抵抗性であることを示唆している(図5F)。さらに、IC50値を計算するため、ノックダウン細胞を使用して、細胞生存率アッセイも実施した。SC細胞に対するSU056のIC50は、3.54μM(±0.21)であり、YBX1-shRNA1およびYBX1-shRNA2については、それぞれ、15.84(±0.13)および19.15(±0.34)であった(図5G)。YB-1ノックダウンは、SCと比較しておよそ5倍、IC50値を増加させた。これらの結果は、SU056の効果がYB-1の細胞発現に依存することを示している。
【0233】
SU056はYB-1に関連したタンパク質および経路をモジュレートする
CETSA結果は、SU056がYB-1と物理的に相互作用し、YB-1およびその活性を阻害することを示している。YB-1タンパク質の安定性に対するSU056の効果を研究するため、シクロヘキシミドチェイス(CHX)アッセイを使用した。シクロヘキシミドは、タンパク質翻訳阻害剤であり、タンパク質の半減期を決定するための分子生物学ツールとして使用されている。OVCAR8細胞をCHXおよびDMSOまたはSU056(2.5μM)によって処理し、異なる時点(0分、30分、60分、120分、180分)でタンパク質溶解物を収集した後、YB-1イムノブロッティングを行った。結果は、SU056処理が、プロテアソーム分解をもたらし、YB-1の半減期をおよそ130分からおよそ40分に短縮することを示唆している(図6A)。YB-1は、CD44、ABCB1/MDR1、c-Myc、およびBcl-2を含む多くの発癌性タンパク質の転写および翻訳に関連している。DMSOまたはSU056(2.5μM、12時間)によって処理されたSKOV3細胞およびOVCAR8細胞に由来する全細胞溶解物のイムノブロッティングは、SU056処理がYB-1タンパク質を阻害することを示している(図6B)。続いて、CDK2、CDC25A、MDR1、CD44、c-Myc、およびBcl-2の発現が減少し、アポトーシス促進タンパク質Baxの発現が増加した(図6B)。SU056がもたらすプロテオーム変化を評価するため、DMSOおよびSU056(2.5μM、12時間)によって処理されたOVCAR8細胞のプロテオームプロファイリングを実施した。得られたプロテオミクスデータのGSEA KEGG分析は、SU056処理がアポトーシス(ES=0.792、p値-0.01)、RNA分解(ES=0.783、p値-0.03)、アラニン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸の代謝(p値-0.02)、アルギニンおよびプロリンの代謝(p値-0.04)、FcεRIシグナル伝達経路(p値-0.01)、T細胞受容体シグナル伝達経路(p値-0.02)、ナチュラルキラー細胞を介した細胞傷害(p値-0.03)、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)感染における上皮細胞シグナル伝達(p値-0.04)、およびFcγRを介した貪食作用(p値-0.05)の経路を有意に誘導することを示唆している(図6C~D、表1)。一方、SU056処理は、スプライソソーム経路も阻害する(ES=-0.413、p値-0.02)(図6CE、表1)。YB-1は、5'末端キャッピングを介してmRNAを保護し、安定化し(Evdokimova et al., 2001)、エクソンスプライシング(例えば、CD44のオルタナティブスプライシング)を増強する(Stickeler et al., 2001)。SU056処理を介したYB-1阻害は、スプライソソーム経路を阻害し、RNA分解およびアポトーシスを誘導する。これらの結果は、SU056が主にYB-1を標的とし、次に、癌の進行およびTRに関与する様々なYB-1に関連したタンパク質および経路を阻害することを示唆している。
【0234】
SU056処理を介したYB-1阻害はOCをパクリタキセルに対して感受性にする
YB-1は、シスプラチンおよびタキサンに対する薬剤耐性の出現に関与している(Kang et al., 2013、Mo et al., 2016)。従って、SU056が、YB-1をモジュレートするため、パクリタキセルなどの化学療法と相乗的に作用するか否かを試験した。これを測定するため、SU056とパクリタキセルとの用量依存的組み合わせ研究を実施した。MTTアッセイを使用して、SU056処理は、0.1nM、0.5nM、および1nMの用量でのパクリタキセルの細胞毒性効果を有意に強化することが見出された(図S2、7A)。0.5μMまたは1.0μM SU056による処理は、OC細胞株、OVCAR8およびSKOV-3の両方において細胞生存率を有意に低下させた。Chou-Talalay法を使用してコンビネーションインデックス(CI)を計算したところ、SU056およびパクリタキセルの組み合わせについて、1未満のCI値が見出された。1未満のCIは、SU056とパクリタキセルの増殖阻害効果との有意な相乗性を示唆する(図7A)。ABCB1/MDR1薬物排出ポンプも、癌におけるタキソール排出の増加およびその後のTRにおいて、YB-1と共に重要な下流の役割を果たすことが公知である。SU056が薬物排出に影響を与えるか否かを評価するため、インビトロでタキソール排出を測定するため、Alexa Fluor-488タグ付きパクリタキセルを使用した。結果は、SU056同時処理が、パクリタキセルのみによって処理された細胞と比較して、パクリタキセルの排出を有意に阻害することを示唆した(図7B)。排出は、主に、細胞表面に存在するATP結合カセットトランスポーター(ABCポンプ)によって駆動される(Genovese et al., 2017)。媒体、SU056、およびパクリタキセルの組み合わせによって処理されたOVCAR8細胞におけるMDR1およびYB-1の発現をウエスタンブロットを介して調べた。イムノブロットの結果は、単独のパクリタキセル処理が、YB-1およびMDR1の発現をアップレギュレートするため、十分であり、次いで、それが、SU056およびパクリタキセルの組み合わせ処理によって逆転されることを示している(図7C)。これらの結果は、SU056が、パクリタキセルの有効性と相乗的に作用することを強く示唆している。
【0235】
3Dスフェロイドは、薬物排出の増加を介してTR表現型を密接に模倣する代替腫瘍モデルである。OVCAR8細胞およびSKOV3細胞を、パクリタキセルおよびSU056の存在下または非存在下で、増殖因子合成培地によって超低接着プレートにおいて培養した。結果は、SU056およびパクリタキセルの組み合わせが、OC細胞によるスフェロイド形成を有意に阻害することを示している(図7Dおよび7E)。組み合わせによって処理された細胞は、媒体によって処理された細胞より78%(OVACR8)および83%(SKOV3)少ないスフェロイドを形成する(図7E)。
【0236】
インビボの薬物動態研究において、20mg/kg SU056の注射は、およそ45分のT1/2で、28.19μg/mLの最高血清濃度をもたらした。次いで、前記のように、OVCAR8 OC腫瘍を移植されたNOD-SCIDマウスにおいて、インビボのパクリタキセルおよびSU056による同時処置の相乗性を試験した。マウスに、毎日、SU056処置(10mg/kg)を与え、毎週、パクリタキセル処置(5mg/kg)を腹腔内投与した。パクリタキセルおよびSU056による処置は、両方とも、独立に、OC腫瘍増殖の有意な低下を示した。しかしながら、パクリタキセルおよびSU056の組み合わせは、OC腫瘍増殖のはるかに大きい低下を示し、処置期間中、疾患進行を効果的に安定化した(図7Fおよび7G)。薬物の組み合わせは、実験が終了するまで、腫瘍増殖に対する持続的な阻害効果を示した(図7H)。Ki-67染色を使用して、切除された腫瘍において増殖指数も測定したところ(図7I)、SU056およびパクリタキセルの両方が、独立した抗増殖効果を発揮し、組み合わせられた時には、相乗的に作用し、より大きい治療効果を生み出すことが示された。これは、SU056の存在下でのOVCAR8細胞からのパクリタキセル排出の減少に起因した可能性が高い。
【0237】
考察
卵巣癌(OC)は、女性における5番目に多い癌であり、アメリカ合衆国(USA)において全体5年生存率はわずか47.6%である。外科的切除および化学療法が、OCのための一次処置であるが、転移性OCの腹部蔓延によって手術が困難になり、タキサンまたは白金による化学療法処置後の2年再発率が80~90%と高いという限界がある(Jayson et al., 2014、Agarwal and Kaye, 2003)。パクリタキセルは、ある程度の効果を与えるが、再発した疾患は、高頻度にTRであり、腫瘍細胞は、進行中の処置にも関わらず、細胞毒性の分子機序を回避するか、または克服する(Singh and Settleman, 2010、Blagosklonny and Fojo,1999、Horwitz et al., 1986)。Soodのグループによるタキサン抵抗性OCにおけるTRの機序の調査は、処置されたOC患者において、YB-1が有意にアップレギュレートされており、高いYB-1発現を有する患者が、有意に短い全生存期間を有することを明らかにした(Kang et al., 2013)。ここで、本発明者らは、疾患進行を抑制することができ、化学療法と相乗的に作用することができる、新たな強力かつ高度に効果的なYB-1阻害剤として、ポドフィロトキシンのフッ素ベースの誘導体を報告する。
【0238】
βIII-チューブリンの過剰発現はパクリタキセル-TRの顕著なサインであり、GBP1:PIM1相互作用はその機能の活性化を助けることができる(De Donato et al., 2012、Mariani et al., 2011)。当グループは、以前に、インビトロでタキサン抵抗性を克服することができるGBP1:PIM1相互作用の阻害剤として、低分子ポドフィロトキシン(SU093)を報告した(Andreoli et al., 2014)。SU093の効力を改善するため、構造情報に基づく戦略および生物学的等価体置換戦略を通じて、第2世代の化合物ライブラリを構築した。このライブラリーのスクリーニングによって、フッ素ベースの誘導体SU056が、異なる作用機序によって、著しく改善された効力および安全性を有することが見出された。SU056を細胞毒性効果についてスクリーニングしたところ、SU093と比較して改善された有効性が見出された。SU093およびSU056は、いずれも、G1細胞周期停止を引き起こし、アポトーシス細胞死を増加させ、細胞遊走を阻害した。両化合物は、ID8異種移植モデルにおいても、腫瘍の進行および転移を阻害した。処置中、いずれの化合物も肝毒性を引き起こさなかった。各アッセイにおいて、SU056は、SU093またはその他のAzP誘導体より強力であることが判明し、従って、さらなる研究のため、選択された。
【0239】
SU056の標的を同定するため、セルラーサーマルシフトアッセイ(CETSA)を使用したところ、この化合物は、YB-1、TMSB10、SUMO2、PSMB2、TMSB4X、およびCALM3と相互作用することが見出された。標的同定は、SU056が、卵巣癌および/またはその他の癌において発癌性の役割を有するタンパク質を阻害することを示唆した。SU056処理は、種々のOC細胞株において用量依存的かつ時間依存的にYB-1の発現を減少させることが見出された。本発明者らの実験は、SU056処理が、YB-1と強く相互作用し、それに関連する下流のタンパク質および経路を阻害することをバリデートした。SU056はG1期でOC細胞を停止させ、G1/S期の主要なドライバー(CDK2およびCDC25A)も阻害する。一方、YB-1は、G1/S期進行を駆動するためのCDC25Aのリン酸化および活性化において役割を果たし(Zhao et al., 2016)、YB-1のノックダウンはG0/G1期停止をもたらす(Harada et al., 2014)。CD44、c-Myc、およびMDR1は、YB-1によって制御される最も顕著な発癌性下流タンパク質であり、SU056処理は、それらの発現を有意に阻害する。YB-1は、細胞質における核タンパク質フィラメント形成に関与するmRNA結合タンパク質である(Kretov et al., 2019)。YB-2およびYB-3と共に、YB-1は、一本鎖RNA/DNAの低温ショックドメインと結合する(Graumann and Marahiel,1998)。それは、細胞質および核の両方における核酸のシャトル輸送に関与している(Matsumoto and Wolffe,1998)。細胞質において、それは、RNA安定性、翻訳活性、およびオルタナティブスプライシングを制御する(Chansky et al., 2001)。核において、それは、発癌性タンパク質、例えば、MDR1の転写を制御するため、特異的プロモーター配列に結合する(Bargou et al., 1997)。SU056によって媒介されるYB-1阻害は、スプライソソーム経路を阻害しながら、RNA分解経路を有意にアップレギュレートし;この結果は、YB-1の機能に関する文献と一致する。総合すると、SU056:YB-1相互作用は、プロテアソーム分解を介して種々のOC細胞株におけるYB-1活性を阻害し、腫瘍の進行およびTRに関与する様々な下流因子を阻害する。これらの結果は、新薬候補としてのSU056のYB-1阻害特異的活性を確認している。
【0240】
さらに、パクリタキセルとの組み合わせにおけるSU056の効果も調査したところ、10mg/kgというより低い用量のSU056が、パクリタキセル処理の細胞毒性効果を強化することが見出された。この効果は、SU056との同時処理が、OC細胞におけるパクリタキセルの排出速度を低下させるためであり得る。癌細胞による薬物排出は、TRの発症の重要な機序のうちの1つである(Li and Nikaido, 2009、Gottesman and Pastan, 2015)。排出は、主に、細胞表面に存在するATP結合カセット(ABC)トランスポーターによって駆動される。このスーパーファミリーには、多剤耐性1(MDR1)としても公知のABCB1、P糖タンパク質、ABCC1(MRP1)、およびABCG2(BCRP/MXR)が含まれる(Fletcher et al., 2010)。パクリタキセルは、ABCB1の基質であり、パクリタキセル処理は、様々な癌の型においてその発現をアップレギュレートする(Gottesman and Pastan,1993)。ABCトランスポーターは、癌進行およびTRの両方の特徴であり、可能性のある治療標的と見なされている。ABCB1の化学的阻害剤は開発されているが、第1世代、第2世代、および第3世代の化合物は、これまでの臨床試験において失敗している。第1世代の化合物は、毒性の問題を有し、第2世代の化合物、例えば、Valspodarは、卵巣癌または腹膜癌の患者において、パクリタキセルまたはカルボプラチンとの組み合わせにおいて処置の利益を示さなかった(Lhomme et al., 2008)。第3世代の阻害剤、Zosuquidarも、利益を示さず(Ruff et al., 2009)、MDR1およびTR表現型の阻害は、未だ対処されていない臨床目標のままである。MDR1およびYB-1の発現に対するパクリタキセル、SU056、およびそれらの組み合わせの効果の試験において、パクリタキセル処理は、YB-1およびMDR1の両方の発現をアップレギュレートし、SU056は、単独で、またはパクリタキセルとの組み合わせにおいて、MDR1およびYB-1を有意に減少させることが見出された。このことは、SU056処理が、MDR1を阻害し、パクリタキセルのより高い細胞内濃度および活性をもたらすことを示すパクリタキセル排出データによって支持される。
【0241】
一般的な3D細胞培養モデルである腫瘍スフェロイドは、処理後の幹細胞性、排出、およびMDR1発現の変化を調べるため使用されている(Wartenberg et al., 2005、Wartenberg et al., 1998、Chen et al., 2017)。当研究において、パクリタキセルおよびSU056の組み合わせによるOC細胞の処理は、スフェロイド形成能力を有意に阻害し、そのことから、腫瘍形成能の減少が示された。タキサン抵抗性卵巣癌細胞株の以前のトランスクリプトーム分析は、YB-1およびMDR1の両方のレベルの上昇を明らかにしている(Sun et al., 2015、Kuwano et al., 2004、Shiota et al., 2014、Wu et al., 2007)。YB-1は、疾患進行およびTRに関与するABCトランスポーターおよび上皮間葉転換関連タンパク質の転写制御に関連する(Lim et al., 2018、Wu et al., 2014、Evdokimova et al., 2009)。SU056とパクリタキセルとによる同時処理は、OVCAR8異種移植モデルにおける腫瘍進行を止めるため、十分であった。このことは、さらに、本明細書に記載のSU056およびその類似体が、処置有効性を救済し、患者の生存率を増加させる、OCのための有望な戦略を提供することを示唆する。
【0242】
要約すると、生物学的等価体置換は、有効性の改善および毒性の低下のため、SU093を最適化し、SU056および本明細書に記述される対応する類似体の開発をもたらすための高度に効果的な化学的戦略であった。これらのAzP誘導体は、YB-1について報告された最初の阻害剤であり、最終的には、インビトロおよびインビボで、OC細胞をパクリタキセルの細胞毒性効果に対して感受性にしながら、細胞の増殖および遊走を減少させる。異なる動物モデル、他の癌の型、および免疫微小環境に対するSU056処置の影響を特徴決定するための付加的な研究は、臨床において処置抵抗性に対抗するためのSU056およびその類似体の可能性について、さらなる洞察を提供するであろう。
【0243】
材料および方法
化合物合成:以前に報告されたように、AzP誘導体SU093を合成し、特徴決定した(Andreoli et al., 2014)。SU056およびビオチン化SU056を、下記のプロトコルに従って合成した。
【0244】
SU056の合成
【0245】
アリールアミノアルコールSI(Kumar et al., 2010)(1mmol)、3-フルオロベンズアルデヒド(SIII)(1.2mmol)、L-プロリン(0.1mmol、10モル%)、およびテトロン酸(SII)(1.2mmol)の溶液を無水エタノール(4mL)で調製し、反応混合物を3~4時間還流した。アミノアルコール成分が消費され、TLC(9:1の50%EtOAc/Hex:MeCN)を介して蛍光スポットが出現した時、シリカゲルのスラリーを調製し、フラッシュクロマトグラフィによって精製し、SU056を固体として得た(0.203Gm 50%)。
【0246】
ビオチン化SU056の合成
【0247】
2-(9-(3-フルオロフェニル)-8-オキソ-6,9-ジヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]フロ[3,4-b]キノリン-5(8H)-イル)エチル3-((2-(5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)エチル)ジスルファネイル(disulfaneyl))プロパノエート:窒素雰囲気で、無水DMF(10.0mL)中の9-(3-フルオロフェニル)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6,9-ジヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]フロ[3,4-b]キノリン-8(5H)-オン(40.0mg、0.108mmol)の溶液を、3-[2-N-(ビオチニル)アミノエチルジチオ]プロパン酸(44.0mg、0.108mmol)、EDC.HCl(31.1mg、0.162mmol)、およびDMAP(19.8mg、0.162mmol)によって処理した。反応混合物を室温で18時間撹拌し、次いで、水(およそ10mL)で希釈した。次いで、混合物を酢酸エチル(2×25mL)で抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、その後、塩水溶液で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。粗生成物を、ジクロロメタン中の0~10%のメタノールを溶出液として使用して、シリカゲルでのCombiFlashクロマトグラフィによって精製した。合わせた純粋な画分を蒸発乾固させ、所望の生成物をオフホワイト固体(15.0mg、19%)として得た。
【0248】
一般的な合成:本明細書に記載の化合物は、当技術分野において公知の方法、例えば、論文、Synthesis of Novel Functionalized 4-Aza-2,3-didehydropodophyllotoxin Derivatives with Potential Antitumor Activity, Kumar et al., J. Heterocyclic Chem., 47(6), 1275-1282, November 2010に記載のものによって調製されてもよい。
【0249】
【0250】
2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イルアミノ)エタン-1-オールは、ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-アミンを含む無水ジクロロメタンおよびピリジンに、2-クロロエチルカルボノクロリデートを徐々に添加することによって調製され得る。混合物を室温で2.5時間撹拌し、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した後、さらに洗浄、濃縮、および乾燥を行う。
【0251】
【0252】
所望の置換を有するベンズアルデヒド化合物をエタノール中のテトロン酸と反応させ、30~90分間還流して、比較可能に置換された(Z)-3-ベンジリデンフラン-2,4(3H,5H)-ジオンを形成させ、次いで、をれを、2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イルアミノ)エタン-1-オールと反応させ、最終的に、関心対象の置換された5-(2-ヒドロキシエチル)-9-フェニル-6,9-ジヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]フロ[3,4-b]キノリン-8(5H)-オンを得ることができる。対応するクロロ類似体、9-(3-クロロフェニル)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6,9-ジヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]フロ[3,4-b]キノリン-8(5H)-オンの合成は、米国特許出願公開第2017/0342086号(Kumar)にも見られる。
【0253】
方法:
薬物動態研究:SU056血漿中濃度は、Agilent 1290 infinity II UHPLCを装備したAgilent 6490 iFunnelトリプル四重極(QQQ)質量分析計を使用した質量定量化分析によって決定された。分析用C18カラム、ZORBAX C18(Eclipse Plus、2.1×50mm、粒径1.8μm)が使用された。移動相は、0.1%ギ酸および4mMギ酸アンモニウムで緩衝された60%水と、0.1%ギ酸で緩衝された40%アセトニトリルとから構成されていた。移動相の流速は、0.4mL/分に設定され、カラム温度は30℃に調整された。エレクトロスプレーイオン化源は、ポジティブイオンモードで運転された。質量分析計のパラメータは、発生源温度550℃、ネブライザーガス(窒素)20psi、イオンスプレー(IS)電圧5000V、衝突エネルギー21Vとして最適化された。SU056、および内部標準(IS)、SU056の類似した類似体である4-(2-ヒドロキシエチル)-6-メトキシ-9-フェニル-4,9-ジヒドロフロ[3,4-b]キノリン-1(3H)-オンの検出のため、多重反応モニタリング(MRM)法が使用された。SU056についてのプリカーサーイオン[M+H]+およびプロダクトイオンは、それぞれ、m/z 370.0およびm/z 274.2でモニタリングされた。ISについてのプリカーサーイオン[M+H]+およびプロダクトイオンは、それぞれ、m/z 338.1およびm/z 260でモニタリングされた。既知濃度のSU056およびISを使用して検量線が作成され、異なる時点での血漿中のSU056の未知濃度を計算するため、この曲線が使用された。ゼロ時点において、SU056が20mg/kgの用量で各マウスに腹腔内注射された。注射の5分後、15分後、30分後、60分後、120分後、240分後、および360分後に、眼窩後から血液が収集された。7,000RPMでの10分間の遠心分離を介して、血漿が分離された。各試料から5μLの血漿が採取され、10μLのIS溶液および990μLのMSグレードアセトニトリルと混合され、次いで、30秒間ボルテックスされ、その後、RTで5分間インキュベートされた。混合物が11,000RPMで4℃で15分間遠心分離され、上清が収集され、再遠心分離によってさらに清浄化された。前記のHPLC/MS MRM法を使用して、SU056の濃度を決定するため、各タンパク質フリー血漿画分(n=3)が使用された。
【0254】
(表1)KEGG経路データベースを使用して、GSEAに従って、SU056による12時間の処理の後に濃縮されることが見出された最も有意な(平均p<0.05)過程。太字で示されたタンパク質は、各経路において濃縮されていた。
【0255】
細胞株:ヒト卵巣癌(OC)細胞株、OVCAR3、OVCAR4、OVCAR5、OVCAR8、およびSKOV-3は、NCI細胞株リポジトリ(DTP)から得られた。SH-SY5Y細胞株およびN27細胞株は、Dr. Manish Chamoli(Buck Institute、CA、USA)から得られた。ID8細胞およびルシフェラーゼタグ付きID8細胞は、Dr. Erinn Rankin(Stanford University、CA、USA)から得られた。スクランブル対照(SC)、YBX1ノックダウン(1&2)、およびmCherry-YBX1 OVCAR8細胞株は、レンチウイルスベースの形質導入を使用して作製され、ピューロマイシン耐性を使用して選択され、その後、細胞選別された。全てのOVCAR細胞が、10%FBS(Corning、USA;#35-015-CV)および1%抗生物質-抗真菌溶液(Gibco、USA;#15240062)が補足されたRPMI-1640(Corning、USA;#10-040-CV)で維持された。SKOV3細胞およびID8細胞は、10%FBSおよび1%抗生物質-抗真菌溶液が補足されたDMEM培地(Corning、USA;#10-013-CV)で維持された。全ての細胞が37℃で5%CO2で維持された。SH-SY5Y細胞およびN27細胞は、10%FBSおよび1%抗生物質-抗真菌溶液が補足されたDMEM/F12培地(Hyclone、#SH30525.01)で維持された。全ての細胞が37℃で5%CO2で維持された。OVCAR8細胞は、レンチウイルスベクターベースのプラスミドpLenti PGKブラストV5-LUC(w528-1)(Eric Campeau & Paul Kaufmanから贈与、Addgene#19166)を使用してルシフェラーゼによってタグ付けされ、ブラストサイジンを使用して選択された。ルシフェラーゼタグ付き細胞は前記のように維持された。
【0256】
細胞生存率アッセイ:細胞生存率は、標準的なMTTアッセイプロトコルを使用して評価された。簡単に説明すると、5,000個の細胞を96穴プレート(Corning-Costar、#3598)の各ウェルに播種し、24時間接着させた。細胞を、それぞれの時点について、それぞれの濃度の化合物によって処理した。各化合物のストック溶液をDMSOで調製した。DMSO濃度は、一定に保たれ、0.1%未満に維持された。各インキュベーション後、1×PBSで調製された50μLの0.5mg/ml MTT溶液を各ウェルに添加し、その後、37℃で5%CO2で1時間インキュベートした。次いで、MTT溶液および培地を除去し、MTTホルマザン結晶を1ウェルあたり100μLのDMSOに溶解させた。MTT結晶化を定量化するため、各ウェルについての570nmでの吸光度を、マルチモードプレートリーダーを使用して記録した。各吸光度値を、対照に対して正規化し、パーセント細胞生存率に変換した。
【0257】
クローン形成アッセイ:300個の懸濁OC細胞を12穴プレート(Corning-Costar、#3598)の各ウェルに播種し、接着のため、24時間インキュベートした。培地を、24時間後に、それぞれの濃度の試験化合物を含有する培地に交換し、媒体によって処理されたウェルに可視のコロニーが出現するまで、5~8日間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、その後、洗浄し、0.5%クリスタルバイオレットで1時間染色した。細胞をDI水を使用して脱染し、乾燥させた。コロニーを、倍率100倍の顕微鏡下で計数した。
【0258】
細胞周期分析:30,000個のOC細胞を12穴プレートの各ウェルに播種し、24時間インキュベートした。細胞を、それぞれの濃度の試験化合物によって6時間処理した。生細胞および死細胞の両方をトリプシン処理を介して収集し、細胞ペレットを70%エタノールで固定した。固定された細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)カクテル(サポニン-EDTA溶液中の80μg/mL RNase Aおよび50μg/mL PI)を使用して染色し、4℃で一晩インキュベートした。各試料を、Guava easyCyteフローサイトメーター(Millipore、Burlington、MA)を使用して分析した。FlowJoソフトウェアによって、各細胞周期の%細胞を計算した。
【0259】
アポトーシス細胞死アッセイ:細胞を播種し、前記の細胞周期分析アッセイと同様に処理した。処理された細胞を24時間インキュベートし、生細胞および死細胞の両方を収集した。細胞を、FITCアネキシンVアポトーシス検出キット(BD Pharmingen、San Jose、CA)を使用して、製造業者のプロトコルに従って、アネキシンVおよびPIで染色した。染色された細胞を分析するため、Guava easyCyteフローサイトメーターを使用した。
【0260】
細胞遊走アッセイ:1×105個の細胞を60mm細胞培養ディッシュ(Corning-Falcon、#353002)に播種し、24時間インキュベートした。細胞をそれぞれの濃度の各化合物によって12時間処理した。細胞をトリプシン処理し、各プレートについてコニカルチューブに収集した。細胞のペレットを再懸濁させ、血球計数器およびトリパンブルー染色を使用して生細胞を計数した。次いで、40,000個の生細胞を8ミクロントランスウェル(Corning-Falcon、#353097)の上部チャンバーに0.2%FBS培地で播種した。下部チャンバーは、10%FBS完全培地を含有していた。細胞を37℃で5%CO2で16時間インキュベートした。各トランスウェルを洗浄し、未遊走細胞を取り除き、75%エタノールを使用して固定した。固定されたトランスウェルを0.5%クリスタルバイオレットで1時間染色した。脱染されたトランスウェルメンブレンを切断し、DPX封入剤を使用してスライドにマウントした。遊走した細胞を倍率100倍の顕微鏡下で計数した。
【0261】
セルラーサーマルシフトアッセイ(CETSA):アッセイは以前に記載されたように実施された(Savitski et al., 2014)。簡単に説明すると、OVCAR8細胞を、70~80%コンフルエンシーで、媒体(DMSO)またはSU056(2.5μM)によって1.5時間処理した。細胞を採集し、1×PBSで2回洗浄した。細胞をペレット化し、PBSに再懸濁させた。1×106細胞/チューブ(100μL PBS中)を含む10本の異なるPCRチューブを両方の群について準備した。サーマルサイクラー(Biorad、CA、USA)を使用して、チューブをそれぞれの温度(37℃、41℃、44℃、47℃、50℃、53℃、56℃、59℃、63℃、67℃)に3分間曝した後、室温で2分間インキュベートした。各チューブを液体窒素中で急速凍結した。凍結/融解サイクルを使用して細胞を溶解し、可溶性画分および不溶性画分を、14000RPMでの4℃での30分間の遠心分離によって分離した。両群の各温度について等量の可溶性画分を、製造業者のプロトコル(TMT10plex(商標)アイソバリック標識試薬セット、#90110、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用して、Tandem Mass Tag(TMT)で標識した。TMTで標識された試料を、当グループによって以前に説明されたように(Going et al., 2018)、3回反復でLC-MS/MSを使用して分析した。
【0262】
CETSAタンパク質定量化、ノーマライゼーション、曲線適合、傾きおよび融点の推定、ならびに統計分析:媒体によって処理された試料およびSU056によって処理された試料の両方において、MaxQuant(Cox and Mann, 2008)を使用して同位体不純物について補正した後、対応する各TMTレポーターイオン強度を使用して、サムベース(sum-based)ブートストラップアルゴリズムによって、個々のペプチドスペクトルからタンパク質を定量化した。各試料において、各温度における可溶性画分のシグナルのlog2比を計算するため、最低温度を基準として使用し、可溶性画分において失われたシグナルの割合を推定するため、各シグナルを最高温度と比較した。以前に記載されたのと同じ原理を使用して(Savitski et al., 2014)、変性曲線のように、平衡状態にない熱力学的系における統計的挙動を記載するため、ボルツマン方程式によるS字曲線への曲線適合モデルを使用した。この目的のため、融解曲線の傾きおよび半値およびタンパク質の半分が変性した温度を計算するため、最初の曲線とボルツマン適合曲線との平方和の差を、Rによる力まかせの(brute-force)アルゴリズムを使用して最小化し、ボルツマン方程式を解いた。相関が0.75を超え、p値が0.01未満の適合曲線間の融点の差を、薬物の特異的相互作用剤と見なした。
【0263】
イムノブロッティング:100mm細胞培養に播種されたOC細胞の70%コンフルエンシーが得られた後、ディッシュを、それぞれの時間、それぞれの濃度のSU056によって処理した。処理の終わりに、細胞を収集し、Haltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific、#78440)が補足されたM-PER(商標)溶解溶液(Thermo Scientific、#78503)を使用して溶解した。等量(40~60μg)のタンパク質を8%/10%/12%SDS-PAGEゲル電気泳動を使用して分離した。次いで、タンパク質をPVDF膜(BioRad、#162-01277)に転写した。ブロッキングされた膜を、5%脱脂乳TPBSで調製されたそれぞれの一次抗体溶液と共に、穏やかに振とうしながら4℃で一晩インキュベートした。一次抗体によって探索した膜を洗浄し、HRPとコンジュゲートされたそれぞれの二次抗体によって探索した。タンパク質を、Immobilon(登録商標)CrescendoウエスタンHRP基質(Millipore、Germany)を使用して検出し、IVIS Luminaイメージングシステム(Perkin Elmer、Waltham、MA)で可視化した。以下の一次抗体および二次抗体を使用した:YB-1(Cell signaling technology(CST)、#8475;1:2000)、TMSB10(R&D Systems、#AF6429;1:2000)、SUMO2/3(CST、#4971;1:1000)、PSMB2(Bethyl Laboratories、#A303817AT;1:1000)、MDR1(CST、#13978;1:2000)、CD44(CST、#37259;1:1000)、c-Myc(Novusbio、#NB600-302SS;1:2000)、CDK2(CST、#2546;1:2000)、CDC25A(CST、#3652;1:1000)、サイクリンE(CST、#4132;1:2000)、Bax(CST、#5023;1:1000)、Bcl-2(CST、#2876;1:1000)、GBP1(Abnova、#H00002633-PW1、1:2000)、βアクチン(Novusbio、#NB600-501SS;1:10000)、抗マウスIgG HRP結合抗体(CST、#7076、1:5000)、および抗ウサギIgG HRP結合抗体(CST、#7074、1:5000)。
【0264】
全YB-1サンドイッチELISA:全YB-1タンパク質レベルを、製造業者のプロトコルに従うことによって、PathScan(登録商標)全YB1サンドイッチELISAキット(Cell Signaling、#12543)を使用して分析した。
【0265】
多剤耐性アッセイ:種々のOC細胞の多剤耐性に対するSU056の効果を、製造業者のプロトコルに従って、多剤耐性アッセイキット(フルオロメトリックMDRアッセイ)(Sigma-Aldrich、#MAK161)を使用することによってアッセイした。
【0266】
CD44 ELISA:種々のOC細胞のCD44発現に対するSU056の効果を、製造業者のプロトコルに従って、ヒトCD44 ELISAキット(比色)(Novusbio、#NBP1-86819)を使用してアッセイした。
【0267】
ビオチン化SU056を使用したプルダウンアッセイ:ビオチン化SU056を使用してタンパク質プルダウンアッセイを実施した。(1)細胞からのプルダウン:OVCAR8細胞を2.5μMビオチン化SU056によって1.5時間処理した。処理された細胞を収集し、Haltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific、#78440)が補足されたM-PER(商標)溶解溶液(Thermo Scientific、#78503)を使用して溶解した。300μgのタンパク質を磁気コンジュゲートストレプトアビジンビーズ(CST、#5947)と共に振とう器上で4℃で一晩インキュベートした。(2)細胞溶解物からのプルダウン:OVCAR8細胞を収集し、Haltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific、#78440)が補足されたM-PER(商標)溶解溶液(Thermo Scientific、#78503)を使用して溶解した。1000μgのタンパク質を10μMビオチン化SU056と共に振とう器上で4℃で一晩インキュベートした後、磁気コンジュゲートストレプトアビジンビーズ(CST、#5947)と共に4℃で一晩インキュベートした。両方のプルダウン後、ビオチン-ストレプトアビジンコンジュゲートをプルダウンし、磁気ラックを使用して洗浄した。3回洗浄した後、ビーズを2×SDS試料緩衝液に再懸濁させ、その後、90~100℃で5分間加熱した。試料を分離し、前記のイムノブロッティングと同様に、GBP1(Abnova、#H00002633-PW1、1:2000)およびYB-1(CST、#8475;1:2000)によって探索した。ビオチン化SU056(2.5μM)処理(インプット)の有り無し両方でのOVCAR8に由来するタンパク質溶解物の試料、ビオチンのみおよびストレプトアビジンビーズのみを使用したプルダウンからの試料も、実験対照として分離した。
【0268】
表面プラズモン共鳴(SPR):Biacore T200(GE Healthcare)装置を使用して25℃で実験を実施した。Hisタグ付き(N末端)YB-1タンパク質(Novusbio、#NBP2-30101)を、Hisタグを介してNTAチップ(GE Healthcare)上に捕捉し、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびN'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(GE Healthcare)を使用したアミンカップリング化学によって固定化した。全ての低分子(SU093およびSU056)分析実験を、5%DMSOが補足された時、pH7.4を与えるよう、pHが調整されたPBS(10mMリン酸緩衝液、2.7mM KCl、0.137 NaCl)ランニング緩衝液で実施した。結合を調査するため、最終濃度5%のDMSOを含む10mMストック溶液から調製された6つの異なる(1~100μM)濃度の化合物を、異なる固定化されたリガンド上に、30μl/分の流速で、75秒間または120秒間、注入し、再生時間は600秒とした。各注入の後、フローデリバリー系を50%DMSOで洗浄した。4.5~5.8%の範囲の連続濃度のDMSOを有するランニング緩衝液を注入することによって、DMSO溶媒補正曲線を生成した。固定化リガンドを欠く対照細胞において測定されたシグナルを差し引くことによって、全てのデータを非特異的結合について補正した。
【0269】
網羅的プロテオームプロファイリング:OVCAR8細胞を媒体またはSU056(2.5μM)によって12時間処理した。細胞を洗浄し、溶解した(1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む100mM重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB、Thermo Fisher Scientific))。製造業者のプロトコル(TMTsixplex(商標)アイソバリック標識試薬セット、#90061、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用して、試料を加工し、TMTで標識した。当グループによって以前に記載されたように(Going et al., 2018)、3回反復でLC-MS/MSを使用して試料を分析した。
【0270】
コンビネーションインデックスの計算:パクリタキセルとSU093またはSU056とについてのコンビネーションインデックス(CI)は、Chou-Talalay法(Chou, 2010)を使用して計算された。CI値はCampuSynソフトウェアを介して計算された。CI<1、CI=1、およびCI>1は、組み合わせの相乗効果、相加効果、および拮抗効果を示す。
【0271】
パクリタキセル排出アッセイ:OC細胞を5nM Oregon Green(商標)488とコンジュゲートされたパクリタキセル(Molecular Probes、#P22310)によって1時間処理した。細胞を洗浄し、10%FBSが補足されたフェノールレッドフリーDMEM培地中でインキュベートした。それぞれの各時点(30分、60分、120分、180分)の後、培地を収集し、浮遊細胞を除去するため、遠心分離した。培地中に排出されたパクリタキセルの蛍光強度を、マルチモードプレートリーダーを使用して、Ex 496およびEm 524で読み取った。
【0272】
スフェロイド培養:OC細胞を、hEGF、インスリン、ヒドロコルチゾンBPE、および2-メルカプトエタノールが補足されたMEGM培地(Lonza、#CC-3150)で、超低接着24穴プレート(Corning、#3473)に、1ウェル当たり100個の密度で播種した。細胞をそれぞれの各化合物によって処理し、6~8日間インキュベートした。スフェロイドの数を、倍率40倍の顕微鏡下で計数した。各ウェルからの5つの異なる視野を倍率100倍で画像化した。
【0273】
インビボ異種移植モデルおよび薬物有効性研究:全ての動物実験は、Animal Care and Use Committee of Stanford University、CA、USAによって審査され、認可された。ルシフェラーゼタグ付きID8細胞(2×106)またはOVCAR8細胞(5×106)を、それぞれ、6~7週齢の雌のC57BL/6マウスおよびNOD/SCIDマウスの右側腹部に移植した。腫瘍が100~200mm3の直径に増殖した後、それぞれの処置を開始した。ID8同系マウスモデルは、媒体(生理食塩水中の30%PEG-300)、20mg/kg SU093、および20mg/kg SU056によって、42日間、毎日、腹腔内(IP)処置された。処置の終わりに、各マウスから血液を収集し、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、およびアルカリホスファターゼ(ALKP)を含む肝毒性パラメータについて分析した。OVCAR8異種移植マウスモデルを、媒体(生理食塩水中の30%PEG-300)、5mg/kgパクリタキセル(週1回)、10mg/kg SU056(毎日)、パクリタキセル(5mg/kg、週1回)とSU056(10mg/kg、毎日)との組み合わせによって4週間処置した。両方の研究からのマウスを安楽死させ、腫瘍および種々の器官を収集し、中性緩衝ホルマリンで固定し、免疫組織化学的分析のため、さらに加工した。
【0274】
免疫組織化学:固定された腫瘍および器官をパラフィン包埋した。各ブロックを5μmの切片に切断し、ポリ-Lリジンによってコーティングされたスライドに固定した。パラフィン切片を脱パラフィンし、再水和した。抗原賦活化切片を一次抗体と共にインキュベートし、その後、HRPとコンジュゲートされた二次抗体と共にインキュベートし、ImmPACT(商標)DABキット(Vectorlabs、CA)を使用してDab染色を行った。対比染色された切片を脱水し、VectaMount(商標)(Vectorlabs)を使用してマウントした。ビオチン化ウマ抗マウスIgG(Vectorlabs、CA)およびウマ抗ウサギIgG(Vectorlabs、CA)を二次抗体として使用した。以下の一次抗体を使用した:YB-1(Cell signaling、#8475;1:100)および抗MDR1(Cell signaling、#13978;1:500)およびKi67(Biolegend、#350502;1:500)。
【0275】
統計分析:各データセットは、GraphPad Prism 6ソフトウェアを使用して統計的有意性について分析された。各結果は平均値±SDで表される。p値は、*を使用して以下のように示される:* P≦0.05、** P≦0.01、*** P≦0.001。
【0276】
本明細書において言及される癌細胞における発現YBX1タンパク質の存在は、当技術分野において公知の方法によって同定され得る。非限定的な例には、antibodies-online Inc、Jones Blvd 321、Limerick、PA 19464 (カタログ番号ABIN6975583)から入手可能なYBX1 ELISAキットが含まれる。
【0277】
ヒト試験のための免疫組織化学的方法において、YB1(D2B12)ウサギmAb#8475(https://www.cellsignal.com/products/primary-antibodies/yb1-d2b12-rabbit-mab/8475?site-search-type=Products&N=4294956287&Ntt=ybx1&fromPage=plpにおいてオンラインでCell Signal Technologyから入手可能)。
【0278】
意義
集中的な化学療法処置レジメンにも関わらず、診断の遅れおよび再発の高いリスクが、処置抵抗性(TR)と結び付き、高い死亡率を引き起こす、癌の処置を改善するため、新たな化学療法戦略が緊急に必要とされている。Yボックス結合タンパク質1(YB1またはYBX1)は、DNAおよびRNAに結合する多機能タンパク質であり、腫瘍の進行およびTRの出現に関連している。YB-1は、様々な発癌性タンパク質の転写、翻訳、およびRNA安定化において重要な役割を果たしている。YB-1の役割は、様々な癌において極めてよく確立されているが、これまで、利用可能な/報告された低分子阻害剤はない。本明細書において、本発明者らは、YB1阻害を介して疾患進行を阻害する新規アゾポドフィロトキシン(AzP)誘導体、SU056を報告する。このファーストインクラスのYB-1阻害剤は、卵巣癌(OC)細胞の増殖およびアポトーシスに対する抵抗性を強力に阻害し、G1期において細胞を停止させる。この処理は、アポトーシス経路およびRNA分解経路に関連するタンパク質の濃縮をもたらし、スプライソソーム経路をダウンレギュレートする。インビボで、SU056は、卵巣癌の進行を独立に抑制し、パクリタキセルと共に相乗効果を発揮して、肝毒性なしに疾患の進行をさらに低下させる。さらに、インビトロ機序研究は、薬物排出および多剤耐性1(MDR1)の阻害を介した疾患進行の遅延、ならびにエトポシドと比較して有意に低い神経毒性を示した。これらのデータは、YB-1阻害剤が、OC進行、TRを低下させ、患者の死亡率を減少させるための効果的な戦略であり得ることを示唆している。
【0279】
データの入手可能性
質量分析プロテオミクスデータは、データセット識別子PXD022332で、PRIDEパートナーリポジトリを介して、PRIDEアーカイブ(http://www.ebi.ac.uk/pride/archive/)に登録されている。
【0280】
参考文献
【0281】
図1:(A)SU056を得るための、SU093のリード最適化。(B)様々な卵巣癌細胞に対するSU093およびSU056のIC50値。SU093またはSU056によって処理されたOC細胞のクローン形成生存率。12穴プレートに1ウェル当たり300~500個の卵巣癌細胞を播種し、24時間接着させた。細胞をSU093およびSU056によって処理し、さらに7日間インキュベートした。各ウェルをクリスタルバイオレットで染色し、コロニーを10倍の顕微鏡下で計数した。(C)それぞれのウェルからの代表的なコロニー形成。(D)SU093およびSU056による処理の後に形成されたコロニーの数。(E)神経(SH-SY5Y、N27)細胞およびHEK293細胞における10μMの濃度のエトポシド、SU093、およびSU056による48時間の処理の%阻害値。(F)ヨウ化プロピジウム(PI)で染色されたOVCAR8細胞、SKOV3細胞、およびID8細胞の細胞周期分布。12時間処理後のG1期停止を示す、細胞周期分布に対するSU093およびSU056の効果。(G)アネキシン-FITC染色によって分析されたアポトーシス細胞死に対するSU093およびSU056の効果。両化合物は、24時間処理後に卵巣癌細胞においてアポトーシス細胞死を誘導する。(H)細胞遊走アッセイ。ボイデンチャンバーを通った16時間後の細胞の画像化は、SU093およびSU056による処理が、卵巣癌細胞の細胞遊走特性を有意に低下させることを示した。データは、3回反復試料の平均値±SDとして示される。* P<0.05、一元配置ANOVAとそれに続くダネット検定によって、それぞれの対照と比較して有意に異なる。
【0282】
図2。SU093およびSU056は、C57BL/6マウスにおけるマウス卵巣ID-8腫瘍異種移植片増殖を阻害する。1:1の比率でマトリゲルと混合されたID-8細胞をマウスに皮下注射し、腫瘍が100mm3に達した時、薬物処置を開始した。媒体(生理食塩水中の30%PEG300)または20mg/kgのSU093もしくはSU056のいずれかを、42日間、毎日、マウスに腹腔内(IP)注射した。(A)42日間の薬物処置の後のマウスの代表的な画像は、対照と比較して腫瘍縮小を示した。(B)時間の関数としての腫瘍体積/マウス。示されたデータは、各群5匹のマウスからの平均値±SDである。* P<0.05、それぞれの対照との比較。(C)研究の終わりにおける腫瘍重量/マウス。示されたデータは、各群5匹のマウスからの平均値±SDである。* P<0.05、** P<0.01、*** P<0.001、それぞれの対照との比較。(D)対照とSU093とSU056との間の有意差を示さない、42日間の終わりにおける肝毒性パラメータ。(E~F)肺転移アッセイ。(E)肺のH&E染色(赤矢印はID8異種移植片からの転移を示す)。スケールバー、250μm。(F)肺転移結節の数。示されたデータは、各群5匹のマウスからの平均値±SDである。* P<0.05、** P<0.01、*** P<0.001、それぞれの対照との比較。
【0283】
図3:セルラーサーマルシフトアッセイ(CETSA)を使用した標的同定。OVCAR8細胞のサーマルプロテオームプロファイルに対するSU056のディファレンシャルプロファイリング。OVCAR8細胞をDMSOまたはSU056(2.5μM)によって1.5時間処理した。細胞を収集し、各PCRチューブ内の106個の細胞を異なる温度(37℃、41℃、44℃、47℃、50℃、53℃、56℃、59℃、63℃、67℃)でインキュベートした。細胞を溶解し、等量の可溶性タンパク質をTMTで標識し、その後、LC-MS/MS分析を行った。(A)媒体DMSO(左)およびSU056(右)によって処理された卵巣癌細胞における804種の可溶性タンパク質の熱安定性のヒートマップ表示。(B)SU056によって処理された細胞(赤)および媒体細胞(青)において計算されたタンパク質Tm値の密度分布。(C)SU056処理と媒体処理との間のTmシフトの密度分布。(D)SU056処理および媒体処理において計算されたTmの散布図。有意値(p値<0.01、RSQ>0.7)および同定基準を満たしたタンパク質は、赤で強調されている。(E)SU056処理の有り無し両方で同定された上位6種のタンパク質(YB-1、TMSB10、SUMO-2、PSMB2、TMSB4X、およびCALM3)の融解曲線。(F)SU056処理時の上位6種のタンパク質の融解温度(Tm)の変化。
【0284】
図4:SU056はYB-1を阻害する。(A)「方法」セクションに記載されるように、OVCAR8細胞をSU056(1μM、2.5μM、および5μM)によって12時間処理し、全細胞溶解物を調製した。CETSAによって同定された上位3種の標的(YB-1、TMSB10、SUMO-2、およびPSMB2)について、SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を実施した。膜をストリッピングし、等しいタンパク質負荷を確実にするため、抗βアクチン抗体で再探索した。(B)YB-1およびMDR1の発現についての、対照群およびSU056群からのID8腫瘍異種移植研究からの腫瘍試料の免疫組織化学。サブセット画像は倍率20倍である:スケールバー、50μm。(C~E)異なる卵巣癌細胞株におけるYB-1およびその関連タンパク質に対するSU056の効果。(C)「方法」セクションに記載されるように、それぞれのOC細胞を2.5μM SU056によって12時間処理し、YB-1&CD44の発現および多剤耐性活性を測定した。それぞれの細胞株について、%阻害を計算し、対照と比較した。(D)OC細胞株についてのSU056のYB-1 50%阻害濃度(IC50)を、PathScan(登録商標)全YB1サンドイッチELISAキットを使用して、12時間の処理の後に決定した。(E)OC細胞株に対するSU056の効果についてのYB-1阻害時間動態研究。SU056(1μM、2.5μM、および5μM)によって、3時間、6時間、12時間、および24時間、細胞を処理した。PathScan(登録商標)全YB1サンドイッチELISAキットを使用して、YB-1をアッセイした。
【0285】
図5:SU056はYB-1と物理的に相互作用する。(A)ビオチン化SU056の構造。(B)ビオチン化SU056を使用したプルダウンアッセイ。「方法」セクションに記載されるように、OVCAR8細胞およびOVCAR8細胞溶解物から、プルダウンを実施した。両方のプルダウンを2回反復で実行した。(C~D)(C)SU093および(D)SU056についての代表的なセンサグラム。「方法」セクションに記載されるように、Hisタグ付きYB-1タンパク質をNTAチップに固定化し、異なる濃度のSU093およびSU056(1~100μM)を、物理的相互作用について試験した。(E~G)SU056の細胞効果はYB-1発現に依存する。レンチウイルスベクターを使用して、OVCAR8細胞に、スクランブル対照(SC)、YBX1 shRNA1、およびYBX1 shRNA2を安定的に発現させた。(E)形質導入された細胞におけるYB-1発現を確認するため、ウエスタンブロット分析を実施した。(F)12穴プレートに1ウェル当たり500個の細胞(SC、shRNA1、shRNA2)を播種し、24時間接着させた。形質導入された細胞をSU056によって処理し、さらに7日間インキュベートした。各ウェルをクリスタルバイオレットで染色し、コロニーを10倍の顕微鏡下で計数した。それぞれのウェルからの代表的なコロニー形成。(G)SC、YBX1 shRNA1、YBX1 shRNA2を発現する異なる形質導入されたOVCAR8細胞におけるSU056のIC50値。
【0286】
図6:SU056は、YB-1に関連したタンパク質および経路をモジュレートする。(A)YB-1タンパク質の安定性に対するSU056の効果を測定するためのシクロヘキシミドチェイスアッセイ(CHX)。データは、3回反復試料の平均値±SDとして示される。* P<0.05、一元配置ANOVAとそれに続くダネット検定によって、それぞれの対照と比較して有意に異なる。(B)「方法」セクションに記載されるように、全細胞溶解物を調製した。SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を、YB-1、細胞周期マーカー、およびアポトーシス関連マーカーについて実施した。膜をストリッピングし、等しいタンパク質負荷を確実にするため、抗βアクチン抗体で再探索した。(C~F)OVCAR8細胞株におけるSU056処理時のKEGG経路の濃縮を決定するため、プロテオミクス結果に対してGSEAを実施した。(C)SU056処理によってモジュレートされた経路の濃縮プロット。(D~E)アポトーシス経路およびRNA分解経路の濃縮が、SU056による処理時に存在量が増加するタンパク質において観察された。(F)スプライソソーム経路の濃縮が、SU056による処理時に存在量が減少するタンパク質において観察された。
【0287】
図7:SU056処理は、卵巣癌細胞をタキサン処理に対して感受性にする。(A)パクリタキセル処理と組み合わせられたSU056のOVCAR8細胞およびSKOV3細胞の生存率に対する感作効果。0.1μM、0.5μM、および1μM SU056によって処理され、その後、0.1nM、0.5nM、および1nMのパクリタキセルによって48時間処理された細胞は、相乗的な細胞毒性効果を示した。パクリタキセルおよびSU056についてのコンビネーションインデックス値。(B)Alexa Fluor-488タグ付きパクリタキセル排出アッセイは、SU056同時処理がパクリタキセル排出を阻害することを示した。(C)YB-1およびMDR1のイムノブロッティング。OVCAR8細胞を媒体(C)、パクリタキセル(0.5nM、P)、SU056(0.5μM、56)、およびパクリタキセル+SU056(P+56)のいずれかによって12時間処理し、細胞溶解物を調製した。方法セクションに記載されるように、タンパク質をSDS-PAGEゲル上で分離し、それぞれの抗体についてブロッティングした。膜をストリッピングし、負荷対照アクチンについて再探索した。スフェロイド形成アッセイ。500個の細胞を超低接着プレートにおいて培養し、各薬剤およびそれらの組み合わせによって処理した。スフェロイドを形成させるため、細胞を7日間インキュベートした。(D)倍率10倍でのスフェロイドの顕微鏡像。スケールバー、250μm。(E)7日間のインキュベーションの後にスフェロイド形成を定量化した。データは、3回反復試料の平均値±SDとして示される。* P<0.05、**P<0.01、*** P<0.001、一元配置ANOVAに続くダネット検定によって、それぞれの対照と比較して有意に異なる。(F~I)OVCAR8異種移植モデルにおけるSU056およびパクリタキセルの組み合わせ研究。NOD-SCID雌マウスに、1:1の比率でマトリゲルと混合されたOVCAR8細胞を皮下注射した。腫瘍が200mm3に増殖した時に薬物処置を開始した。媒体(生理食塩水中の30%PEG300)または10mg/kg SU056(毎日)および/もしくは5mg/kgパクリタキセル(週1回)のいずれかを、28日間(4週間)、マウスに腹腔内(IP)注射した。(F)対照と比較した腫瘍縮小を示す、28日間の薬物処置の後のマウスの代表的な画像。(G)時間の関数としての腫瘍体積/マウス。(H)研究の終わりにおける腫瘍重量/マウス。(I)免疫組織化学染色。腫瘍切片をKi67で染色し、スライドをKI67染色についてスコア化した。示されたデータは、各群5匹のマウスからの平均値±SDである。* P<0.05、** P<0.01、*** P<0.001(それぞれの対照との比較)。
【0288】
図8:(A)ウエスタンブロット分析を使用したCETSA結果のバリデーション。37℃および53℃の温度に曝された対照によって処理された細胞およびSU056によって処理された細胞に由来する細胞溶解物を、YB-1、TMSB10、およびPSMB2の発現について分析した。(B~C)SU056処理は、OVCAR8細胞におけるYB-1の発現を阻害する。mCheeryタグ付きYB-1を安定的に発現するOVCAR8細胞を、これらのアッセイのために使用した。(B)細胞を、SU056(2.5&5μM)による3時間の処理の後、mCherry-YB1について、共焦点顕微鏡を使用して倍率10倍で画像化した。(C)2500個の細胞を96穴プレート(黒色ウェル透明底)に播種し、SU056(1~5μM)によって、3時間および6時間、処理した。相対蛍光強度を、マルチモードプレートリーダーを使用して測定した。データを%生細胞によって正規化し、未処理細胞と比較した百分率で提示した。示されたデータは、各群5回反復からの平均値±SDである。* P<0.05、それぞれの対照との比較。
【0289】
図9:パクリタキセル処理と組み合わせられたSU056のOVCAR8細胞およびSKOV3細胞の生存率に対する感作効果。0.1μM、0.5μM、および1μM SU056によって処理され、その後、0.1nM、0.5nM、および1nMパクリタキセルによって48時間処理された細胞は、相乗的な細胞毒性効果を示した。
【0290】
図10:SU056の薬物動態。20mg/kgの用量の薬物の腹腔内投与の後の時間(分)の関数としてのSU056血漿中濃度の決定(n=3)。方法に記載されるように、注射後、血漿をそれぞれの時点で収集し、LC MS/MSを使用して分析した。
【0291】
図11:(A)SU056の増殖阻害効果をMTTアッセイを使用して評価した。TNBC細胞株(MDA-MB-231、MDA-MB-468、SUM159、4T1、E0771、およびEMT6)を96穴プレートに播種し、翌日、単独の媒体(DMSO)または新鮮な培地中の0.005~50μMのSU056によって処理した。48時間処理後、細胞生存率をMTTアッセイを使用して測定した。(B)12穴プレートに1ウェル当たり全部で300~600個の細胞を播種し、24時間接着させた。翌日、細胞をSU056によって処理し、さらに7~10日間インキュベートした。各ウェルをクリスタルバイオレットで染色し、コロニーを10倍の顕微鏡下で計数した。細胞のそれぞれのウェルからの代表的なコロニー形成。(C)SU056処理後に形成されたコロニーの数。(D)TNBC細胞の細胞周期分布に対するSU056の効果。MDA-MB-231細胞、MDA-MB-468細胞、およびSUM159細胞を、媒体またはSU056で、12時間および24時間、処理した。処理の終わりに、細胞を収集し、フローサイトメトリーを使用して分析した。G2/M期停止を示すSU056処理。SU056は、12時間目および24時間目に、細胞内のリン酸化ヒストンH3のレベルを誘導する。
【0292】
図12。TNBC細胞を12時間および24時間処理し、全細胞溶解物を調製した。SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を翻訳関連分子について実施した。等しいタンパク質負荷を確実にするため、βアクチンを探索した。SU056処理は、全てのTNBC細胞、(A)MDA-MB-231、(B)MDA-MB-468、および(C)SUM159においてタンパク質翻訳関連分子を阻害した。
【0293】
図13。SU056はTNBCモデルの腫瘍異種移植片を阻害する。MDA-MB-231(2×106細胞)、MDA-MB-468(5×106細胞)、および患者由来の異種移植片SUTI151-PDX(2×106細胞)をマウスに皮下注射し、腫瘍が100mm3に達した時に薬物処置を開始した。媒体(生理食塩水中の40%PEG)またはSU056(50mg/kg)のいずれかを、経管栄養を使用して、経口経路で、マウスに与えた。(A)時間の関数としての腫瘍体積(MDA-MB-231)。(B)研究の終わりにおける腫瘍重量(MDA-MB-231)。(C)時間の関数としての体重(MDA-MB-231)。(D)時間の関数としての腫瘍体積(MDA-MB-468)。(E)研究の終わりにおける腫瘍重量(MDA-MB-468)。(F)時間の関数としての体重(MDA-MB-468)。(G)研究の終わりにおける腫瘍(MDA-MB-231)の代表的な画像。(H)研究の終わりにおける腫瘍(MDA-MB-468)の代表的な画像。(I)時間の関数としての腫瘍体積(SUTI151-PDX)。(B)研究の終わりにおける腫瘍重量(SUTI151-PDX)。(C)時間の関数としての体重(SUTI151-PDX)。
【0294】
図14。SU056は、BALB/cにおける4T1腫瘍異種移植片を阻害する。マウスに4T1細胞を皮下注射し、移植の3日後に薬物処置を開始した。媒体(生理食塩水中の40%PEG)またはSU056(50mg/kg)のいずれかを、経管栄養を使用して、経口経路で、マウスに投与した。(A)時間の関数としての腫瘍体積(4T1)。(B)研究の終わりにおける腫瘍重量(4T1)。(C)時間の関数としての体重(4T1)。(D)研究の終わりにおける腫瘍(4T1)の代表的な画像。4T1異種移植片モデルにおけるパクリタキセルおよびSU056の組み合わせ。(E)時間の関数としての腫瘍体積(4T1)。(F)研究の終わりにおける腫瘍重量(4T1)。(G)時間の関数としての体重(4T1)。
【0295】
図15。SU056処置は、マウスおよびラットにおいて耐容性が良い。増加する濃度用量でのSU056処置は、(A)マウスおよび(B)ラットにおいて、体重の変化によって反映されるような食事行動を誘発しない。異なる濃度のSU056処置は、(C)マウスおよび(D)ラットにおいて死を引き起こさなかった。代謝プロファイリングのため、肝臓ミクロソームを使用した。(E)SU056は40分という平均半減期を有していた。
【0296】
図16は、癌細胞株についてのYBX1の基準に対して正規化された発現レベルを図示する:(a)肺 - IMR90、A549、MRC5、H1299、NHBE、NCIH460、およびBEAS2;(b)リンパ球 - JURKAT、MT4、BJAB、HEL細胞、HL60、およびRAJI;(c)乳房/乳腺 - MCF7、MCF10、MDAMB231、SKBR3、MDAMB468、およびMDAMB453;(d)線維芽細胞 - BJ、KB、HT1080、NHDF、およびTIG;(e)前立腺 - LNCAP、PC3DU145、およびC42;(f)その他 - NALM6、DAOY、JEG3、およびBEWO;(g)腎臓 - 293T、HEK293、293F、およびFLPIN TREX 293;(h)血液 - THP1、PLB985、CEM、およびHELAT4;(i)卵巣 - SKOV3、2008、およびOVCAR3;(j)皮膚 - HNSCCおよびA431;(k)肉腫 - LHCNM2およびU2OS;(l)リンパ系 - REHおよびRPMI8226;(m)結腸 - HCT116およびHT29;(n)子宮頸部 - HELAおよびHELA S3;(o)脳 - SHSY5YおよびSKNMC;(p)骨 - K562およびU2OS;(q)子宮 - BEWO;(r)膵臓 - PANC1;(s)神経芽細胞腫 - IMR32;(t)マクロファージU937;(u)肝臓 - HEPG2;(v)ケラチノサイト - HACAT;(w)神経膠 - H4;(x)結合組織 - G401;(y)骨髄 - KG1細胞;ならびに(a)膀胱 - T24。この情報は、Ma'ayan Lab Data Coordination and Integration Center at the Mount Sinai Center for Bioinformaticsによってオンラインで提供され、https://maayanlab.cloud/archs4/gene/YBX1#correlationにおいてアクセス可能である。
【0297】
図17:NCI-60細胞株パネルにおけるSU056のアッセイ。SU056をNCI-60細胞株パネルに対して5つの用量(100~0.01μM)で48時間アッセイし、IC50値を以下の表に提供した。増殖阻害を測定し、図17に見られるような、阻害なし(黒)から増殖阻害(白)までのヒートマップとして表示した。
NCI60 - IC50値
【0298】
図18、19、および20の各々において:TNBC細胞を12時間および24時間処理し、全細胞溶解物を調製した。SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を翻訳関連分子について実施した。等しいタンパク質負荷を確実にするため、βアクチンを探索した。SU056処理は、TNBC細胞において翻訳開始因子を阻害した。
【0299】
STARメソッド
主要な資源一覧
【0300】
ヒトYB-1タンパク質(Hisタグ)(Novus Biologicalカタログ番号NBP2-30101)は、ヒトYB1のアミノ酸1-324に相当する、N末端Hisタグを有する組換えタンパク質である。起源:大腸菌(E. coli)。遺伝子:YBX1。アミノ酸配列:
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5F
図5G
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A-1】
図11A-2】
図11B
図11C
図11D
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図14-1】
図14-2】
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
2023552368000001.app
【国際調査報告】