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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】XRF識別可能ブラックポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20231212BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20231212BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08L101/02
G01N23/223
C08K3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533678
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 IL2021051437
(87)【国際公開番号】W WO2022118320
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/121,066
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】282500
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518274043
【氏名又は名称】セキュリティ マターズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SECURITY MATTERS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】アロン,ハッガイ
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,テヒラ
(72)【発明者】
【氏名】カプリンスキー,モル
(72)【発明者】
【氏名】ダフニ,ロン
(72)【発明者】
【氏名】タル,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ナヒミアス,チェン
(72)【発明者】
【氏名】シャーデー,ハギット
(72)【発明者】
【氏名】シュミュエリ,ガル
(72)【発明者】
【氏名】ムスニカウ,ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】ヨラン,ナダフ
【テーマコード(参考)】
2G001
4J002
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001KA01
2G001LA05
2G001NA17
4J002AA011
4J002AA021
4J002AC011
4J002AC061
4J002BB021
4J002BB121
4J002DA037
4J002DD026
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002DF016
4J002DG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002GD00
4J002GR00
(57)【要約】
本出願の発明の主題は、黒色プラスチックの選別に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能材料を含む組成物であって、
前記組成物は、顔料製剤または強化製剤であり、
前記少なくとも1つのXRF識別可能材料は、前記カーボンブラックまたはそれを含む組成物を示すXRF識別可能シグネチャを提供するように選択される量で存在する
ことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
ポリマーまたはプレポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
カーボンブラック、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーおよび少なくとも1つのポリマーまたはプレポリマーの均質ブレンドを含む、XRF識別可能マスターバッチ組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーであることを特徴とする、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソプレン、天然ゴムおよびラテックスから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記カーボンブラックと前記少なくとも1つのXRF識別可能マーカーとの比率が、それぞれ少なくとも100:1であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記比率が、200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1または900:1であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
黒色プラスチックまたは黒色プラスチックから作製される物体を製造するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
前記黒色プラスチックが、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソプレン、天然ゴムおよびラテックスから選択されるポリマーを含むことを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
XRF識別可能なブラックポリマー原材料を提供するための方法であって、
一定量のXRF識別可能マーカーおよびブラックカーボンでポリマー原材料をマーキングする工程を含み、
前記XRF識別可能マーカーの量は、前記原材料の組成および/または生産プロファイル(原材料データ)を示す電磁放射線シグネチャを画定する
ことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記プロファイルが、製造日、製造場所、組成、非天然添加物の有無のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プラスチック材料の選別中に黒色プラスチックを識別する方法であって、
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーでマーキングされた黒色物体を含むプラスチック物体の集合体を、X線またはガンマ線放射線で照射する工程;
適用されたX線またはガンマ線放射線に応答して前記物体から到来するX線またはガンマ線信号を検出する工程;
検出された放射線信号にスペクトル処理を適用して、前記黒色プラスチックに関する所定の特性の存在、不存在、または任意の変化を示すデータを取得する工程
を含む、方法。
【請求項13】
空間的に分布した変調強度を有する少なくとも1つのX線またはガンマ線励起ビームで複数の物体を同時に照射する工程であって、前記物体の各々に到達するビームの強度は異なり、識別可能であり、前記複数の物体が黒色物体を含む、工程;
前記複数の物体から到来する二次X線放射線を検出し、前記複数の物体上の空間強度分布を示す信号を生成する工程;および
検出された空間強度分布に従って、前記複数の黒色物体のうちのどれが前記マーキング組成物によってマーキングされているかを識別する工程
を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記黒色物体が、黒色プラスチックを少なくとも1つのXRF識別可能マーカーでマーキングすることによって形成されることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記マーキングが、カーボンブラックおよび一定量のXRF識別可能マーカーでポリマーまたはプレポリマーをマーキングする工程を含み、前記量は、材料組成および/または製造プロファイル(材料データ)を示す電磁放射線シグネチャを画定することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マーキングが、その処理中に一定量のXRF識別可能マーカーでブラックポリマーをマーキングする工程を含み、前記量は、材料組成および/または製造プロファイル(材料データ)を示す電磁放射線シグネチャを画定することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
予め定められた識別可能な特性が、XRF識別可能なパターン濃度または暗号化コードを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
リサイクルプロセスにおいて黒色物体を選別する方法であって、
黒色物体に埋め込まれた電磁放射線シグネチャを示す測定データを提供する工程;
X線またはガンマ線放射線に応答して材料から放出される放射線を識別する工程であって、前記放射線は、前記シグネチャに特徴的なスペクトル特徴を有し、それによって、前記材料が黒色物体であるかどうかを決定する工程
を含む、方法。
【請求項19】
黒色材料リサイクルプロセスを管理する蛍光X線(XRF)法であって、
1つまたは複数の黒色プラスチック物体に埋め込まれた1つまたは複数の第1の電磁放射線シグネチャを示す第1の測定データを提供する工程;
測定されたデータを分析して、前記1つまたは複数の黒色プラスチック物体の各々について、それぞれのプラスチック材料状態データを決定する工程であって、それぞれのプラスチック物体状態データは、前記プラスチック物体の先行使用を示す、工程;
それぞれのプラスチック材料状態に基づいて、前記1つまたは複数の黒色プラスチック物体の各々について第1の選別データを生成する工程;および
前記第1の選別データに基づいて、前記1つまたは複数の黒色プラスチック物体の少なくとも1つに対するマーキングデータを生成する工程であって、前記マーキングデータは、前記1つまたは複数の黒色プラスチック物体のリサイクルプロセスを管理するための電磁放射線信号を提供するために、前記1つまたは複数のプラスチック物体の各々に導入される少なくとも1つのマーカーを示すデータを含む、工程
を含み、
前記測定されたデータの電磁放射線信号は、蛍光X線(XRF)信号を含み、前記少なくとも1つのマーカーを示す前記データは、XRF励起放射線に対してXRF応答信号によって応答する少なくとも1つのマーカーに対応する
ことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記黒色プラスチック物体の状態データおよび前記プラスチック物体の選別データの少なくとも1つを利用する工程、および、選別される前記黒色プラスチック物体の現在の状態を特徴付ける証明書データを生成および記憶する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのマーカーを示すデータが、前記プラスチック材料の再利用タイプごとに、前記プラスチック物体のライフサイクルを示すデータを対応する1つまたは複数のマーカーに関するマッチングデータと関連付けて記憶する、データベースから取得されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのマーカーを示すデータが、(a)リサイクルされる前記プラスチック材料の連続するライフサイクルの数、および(b)再生プラスチック物体の再利用のための連続する製品タイプ、に対応するデータを含み得ることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記方法がさらに、前記マーキングを内部に導入することによって選別された後に前記プラスチック物体中に存在する1つまたは複数の汚染物質要素によって生じる1つまたは複数の第2の電磁放射線信号を示す第2の測定データを提供する工程を含むことを特徴とする、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記方法がさらに、前記マーキングを内部に導入することによって選別された後に前記黒色プラスチック物体中に存在する1つまたは複数の汚染物質要素によって生じる1つまたは複数の第2の電磁放射線信号を示す第2の測定データを提供する工程、および、前記黒色プラスチック物体を特徴付ける証明書データを更新する工程を含むことを特徴とする、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
カーボンブラックおよび一定量の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの均質ブレンドを含む、XRF識別可能ペレット化粉末。
【請求項26】
前記量が、粉末組成および/または製造プロファイル(材料データ)を示す電磁放射線シグネチャを画定することを特徴とする、請求項25に記載の粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ブラックポリマーおよびそのマーキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、ポリマー産業において最も一般的な添加剤の1つである。これは、様々な分野および産業用の黒色プラスチックの調製において広く使用されている。一般的な用途には、建築および建設、ヘルスケア、パッケージング、家庭用品、電子機器および電気製品、ならびに自動車および航空機産業が挙げられる。
【0003】
黒色プラスチックは広く使用されるにもかかわらず、そのほとんどはリサイクルできない。これは主に、黒色プラスチックが、リサイクル工場において使用される一般的な光学選別システムによって識別できないという事実に起因する。したがって、黒色プラスチックから作られた製品は、通常、廃棄物として処理ラインの末端に到達することになる。
【0004】
特許文献1は、様々な産業用途のためのポリマーおよび少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む透明要素を製造するための、ポリマー材料およびXRF識別可能マーカーの製剤およびマスターバッチを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/069917号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
全般的説明
黒色プラスチックの使用を取り巻く健康上の懸念は、主に、ほとんどリサイクルされないという事実に由来する。この材料は、その耐久性および濃い色合いのために使用される工業用顔料添加剤の一種であるカーボンブラックからその色を得るので、リサイクルするのが容易ではない。黒色顔料は、異なる種類のプラスチック材料を分離するためにほとんどのプラスチック選別施設で典型的に使用される赤外線センサによって容易に識別されない。これは、これらのプラスチックおよびその化学添加剤が、最終的に埋め立て地または道端に放置されることを意味する。その後、毒性化学物質が環境に流れ込み、最終的に飲料水に入る可能性がある。
【0007】
黒色プラスチックに関して近年見られる広範な使用にもかかわらず、着色されていないプラスチックが、プラスチック製品のほとんどを占めているという事実と相まって、利用されている。したがって、黒色プラスチックの使用の増加および結果として生じる健康被害に対処するためにより良好な選別技術を開発する意欲はほとんど示されていない。カーボンブラックを、IRを吸収しない他の黒色顔料で置き換えることに投資された多大な努力は、カーボンブラックが他の黒色材料よりも優れていることが分かったため、失敗に終わった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術の発明者らは、黒色プラスチックの簡単で費用対効果が高く容易な検出を可能にし、したがって、その効率的な選別を可能にする独自の方法論を開発した。本発明の方法は、カーボンブラックに加えて、少なくとも1つのXRF識別可能材料を含む新規なカーボンブラック製剤の使用に関する。カーボンブラックの機械的および化学的特性を変化することなく、本発明の新規製剤を調製する際に、一定量のXRF識別可能材料をカーボンブラックに添加し、混合して、製品の履歴を概して識別する認証を追跡するために様々な製品に実装することができる新規顔料または補強材料を形成する。
【0009】
当技術分野で知られているように、「カーボンブラック」は、2.5μm未満の直径を有し、典型的にはナノメートル範囲の超微粒子から典型的になる微粒子物質である。カーボンブラックは、典型的には、高い表面積対体積比を有する純粋な炭素を含有する。顔料としては、カーボンブラックは、新聞インクの黒色着色顔料からハイテク材料の導電剤まで、様々な用途に広く用いられている。この材料はまた、ポリマー組成物またはそれを含む複合体の強度、特に耐摩耗性および引裂強度を高めるための補強剤としても使用される。
【0010】
カーボンブラックは、タイヤ構成要素(トレッド、サイドウォールおよびインナーライナーなど)、工業用ゴム製品を含む機械用ゴム製品、メンブレンルーフィング、自動車用ゴム部品(シールシステム、ホースおよび防振部品など)、および一般的なゴム製品(ホース、ベルト、ガスケットおよびシールなど)において、最も広く使用され費用対効果の高いゴム補強剤である。
【0011】
同様の名称にもかかわらず、カーボンブラックは、本発明の態様から除外されるブラックカーボンと混同されるべきではない。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様では、カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能材料を含む組成物が提供され、この組成物は、顔料製剤または補強製剤(として使用されるもの)であり、少なくとも1つのXRF識別可能材料は、カーボンブラックまたはそれを含む組成物を示すXRF識別可能シグネチャ(signature)を提供するように選択された量で存在する。
【0013】
同様に、カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能材料からなる組成物が提供され、この組成物は、顔料製剤または補強製剤(として使用されるもの)であり、少なくとも1つのXRF識別可能材料は、カーボンブラックまたはそれを含む組成物を示すXRF識別可能シグネチャを提供するように選択された量で存在する。
【0014】
本発明の組成物または製品に添加されるまたは存在するXRF識別可能材料の量、またはマーカーを含有する黒色物体を識別および選別する目的で使用される量は、材料特性または属性またはプロファイルを定義するシグネチャを提供する所定の量である。したがって、XRFで識別可能であるが、材料の他の特性を調節するために本発明の組成物または他の製品中に存在し得、したがって本発明に従って予め選択および添加されない塩または材料の量は、それから作製される組成物または製品を識別または読み取ることができる根拠となるシグネチャを提供しない。言い換えれば、組成物または製品を示すシグネチャを定義するために本発明に従って添加されないXRF識別可能材料の量の存在は、本発明の範囲内に入るものとみなされない。
【0015】
いくつかの実施形態では、組成物中のXRF識別可能マーカーの量は、50~300ppmである。いくつかの実施形態では、量は、50~70ppm、50~100ppm、50~150ppm、50~200ppm、50~250ppm、70~100ppm、70~150ppm、70~200ppm、70~250ppm、70~300ppm、100~150ppm、100~200ppm、100~250ppm、または100~300ppmである。言い換えれば、50~60ppm、50~70ppm、50~80ppm、50~90ppmまたは50~100ppmの量である。
【0016】
いくつかの実施形態では、定義されるように、組成物は、カーボンブラック、XRF識別可能材料、およびポリマーまたはプレポリマーを含むか、またはそれらからなる。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物は、分散、懸濁液または可溶化形態で本明細書に開示される成分を含む、固体組成物、分散または液体組成物の形態である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、濃縮物の形態であり、これは、その量を黒色物体が形成され得るポリマー材料または混合物に添加することによって希釈され得る。組成物から形成されるそのような物体中のXRF識別可能材料の量は、製品プロファイル、すなわち、製造日、製造場所、組成、非天然添加物の有無などのうちの1つまたは複数を示すXRF識別可能シグネチャを提供する。製品が、リサイクル製品、すなわち、以前に作製され使用されたポリマーまたはポリマー組成物である場合、プロファイルはそのような以前の使用に関するデータを含み得る。
【0019】
カーボンブラックおよび一定量の少なくとも1つのXRF識別可能材料を含む顔料製剤も提供される。
【0020】
カーボンブラックおよび一定量の少なくとも1つのXRF識別可能材料を含む顔料製剤も提供され、XRF識別可能材料の量は、顔料製剤の材料組成またはそれを用いてマーキングされる製品および/または製品の製造プロファイル(例えば、原材料データ)を示す電磁放射線シグネチャを定義する。プロファイルは、1つまたは複数の製造日、製造場所、組成、非天然添加物の有無などを含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、顔料製剤は、粉末またはペレット形態として提供され、少なくとも1つのXRF識別可能材料の量は、識別可能かつXRFシグネチャを有するXRFマーキング製品を提供するように選択される。
【0022】
また、例えば、ポリマーまたはポリマー複合体の少なくとも1つの機械的特性を改良するための補強剤が提供され、補強剤は、カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能材料を含む。いくつかの実施形態では、補強剤は、粉末またはペレット形態として提供され、少なくとも1つのXRF識別可能材料の量は、識別可能かつXRFシグネチャを有するXRFマーキング製品を提供するように選択される。
【0023】
さらに、カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの均質ブレンドを含む、ペレット化粉末が提供される。
【0024】
本発明の製剤のいくつかの実施形態では、顔料または補強製剤は、固体粉末製剤または固体材料の組み合わせとして、または液体懸濁液または分散形態で提供され得る。いくつかの実施形態において、このような製剤はまた、ポリマーまたはプレポリマーを含み得る。
【0025】
したがって、さらなる態様によれば、本発明は、カーボンブラック、少なくとも1つのXRF識別可能マーカー、および少なくとも1つのポリマーまたはプレポリマーの均質ブレンドを含む、XRF識別可能マスターバッチを提供する。いくつかの実施形態では、ポリマーは、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーである。いくつかの実施形態では、以下でさらに定義されるように、ポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソプレン、天然ゴム、およびラテックスから特に選択され得る。
【0026】
いくつかのさらなる態様によれば、本開示は、本発明の製剤、すなわち、カーボンブラック、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーおよび少なくとも1つのポリマー、例えば熱可塑性ポリマーを含む、製剤から形成されるかまたはそれを含む、製造品を提供する。
【0027】
さらにいくつかの他の態様によれば、本開示は、XRF識別可能な製造品を調製する方法を提供し、この方法は以下を含む:
(i)カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む混合物をペレット化する工程;
(ii)前記ペレット化から得られたペレットを少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドして溶融混合物を形成する工程;
(iii)溶融混合物を成形して前記製造品を得る工程。
【0028】
本明細書に記載されるように、カーボンブラックは、ゴムおよび他のポリマーを強化するために使用され、様々なゴム、プラスチック、インクおよびコーティング用途において、顔料、UV安定剤、および、導電剤または絶縁剤としても作用する。カーボンブラックがその色を与えるタイヤ以外に、カーボンブラックは、ガーデンホース、コンベヤベルト、プラスチック、印刷インクおよび自動車コーティングにも使用される。したがって、本発明の範囲内にある製造品は、タイヤ、プラスチック製品、印刷製品(2Dまたは3D製品)などを含む。
【0029】
本開示を通して述べられるように、カーボンブラックが使用される黒色プラスチックまたは他のブラックポリマーを選別することができないことから、適時に意思決定を行い、各黒色プラスチック材料に対して対応する選別データを生成する、好ましくは、前記黒色プラスチック材料に割り当てられた対応する証明書を生成することによって、原材料を適切にマーキングし、そのような黒色原材料、特に黒色プラスチック材料を含む様々な材料のリサイクルおよび再利用を管理するための、新規なアプローチの必要性が生じる。黒色原材料ならびに各黒色プラスチック材料の特性/状態のリアルタイム検査に基づいて生成されたそのような選別データは、前記黒色プラスチック材料の連続的なリサイクルによって製品のさらなる使用が可能になるかどうか、および適切な製品タイプを示す。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「材料」は、黒色物体などの物体、すなわち、カーボンブラックを含み、ポリマー、例えば黒色プラスチックから構成される物体を指す。物体または材料は、製造品であってもなくてもよい;また、例えば、特定の選別およびリサイクル段階中に許容されるように、非晶質または還元形態で選別される、細断または切断されたポリマー材料であってもよい。したがって、本明細書に開示される発明によれば、別段の記載または理解がない限り、「黒色プラスチック材料」という用語は、黒色プラスチック物体、または概して黒色物体を指す。
【0031】
本発明の技術により、生産ラインで進行する黒色プラスチック材料含有製品の自動検査および選別が可能になる。材料検査データに基づいて、選別データおよび関連する割り当てられた証明書データが生成される本発明の管理システムは、検査ステーションの一部であってもよい、または、検査ステーションとデータ通信するスタンドアロンシステムであってもよい。その後、選別/証明書データは、検査ステーションの下流の選別ステーションで適切にアクセスされ、使用され得る。
【0032】
プラスチック材料のライフサイクルは、黒色材料(未使用(virgin)黒色プラスチック材料またはリサイクル黒色プラスチック材料)の製造から、黒色プラスチック材料の次のリサイクルまでの期間を指す。黒色プラスチック材料のマーキングは、その製造中またはその後の任意の段階ですでに行うことができる。
【0033】
黒色プラスチック製品の製造は、ブラックカーボンと、天然ゴムまたは同様の製品などのポリマー材料またはプレポリマーとを含む組成物、および、そのような天然製品および1つまたは複数の再生プラスチック材料の組成物を利用することができ、天然プラスチック材料は、リサイクルされなかった(例えば、未使用)が、初めて黒色製品で使用されたプラスチック材料である。いくつかの場合において、リサイクルされた黒色プラスチック材料は、1回、2回またはそれ以上のリサイクルを受けた予め選択された濃度の黒色プラスチック材料を含むように設定され得る。特定のプラスチック材料の大規模なリサイクルおよび再利用を可能にするために、天然および再生プラスチック材料の検出および識別が使用される。
【0034】
様々なプラスチック材料(例えば、ポリマー材料)は、リサイクルプロセス中(すなわち、再生プラスチック材料/使用済みプラスチック製品に由来する製品の製造中)にマーキングされる。さらに、黒色プラスチック材料は、その製造中にまたは未使用プラスチックが主成分である黒色プラスチック製品の製造中に、未使用プラスチックとしてマーキングされてもよい。
【0035】
用語「プラスチック」は、天然および非天然または工業的に製造されたポリマーを包含する。したがって、プラスチック材料は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソプレン、天然ゴム(またはラテックス)、および他の種類のポリマーなどのポリマーであり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明の製造品または選別される物体は、カーボンブラック、ゴムまたは加工ゴム、および本明細書で定義される一定量のXRF識別可能材料を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、製造品または選別される物体は、リサイクルされたポリマー(またはプラスチックもしくはゴム)、リサイクルされていないポリマー(プラスチックまたはゴム)、カーボンブラック、および本明細書で定義される一定量のXRF識別可能材料を含む。
【0038】
黒色プラスチック材料は、プラスチック材料に埋め込まれた特定のマーキング(マーカー要素)によってマーキングされる。マーカーは、適切な分光計(リーダ)によって検出され得る電磁信号を放出してもよい。一例において、マーカーは、例えば、UV、X線回折(XRD)、または蛍光X線(XRF)マーカーなどの入射電磁放射線に応答して信号を放出する。以下の説明では、XRF技術の使用は、黒色材料の特性/条件を決定するための黒色プラスチック材料シグネチャの読み取りに関して、ならびにその選別データおよび証明書に従って、黒色プラスチック材料をマーキングすることに関して例示される。しかしながら、本発明の新規な手法の原理は、この特定のタイプのシグネチャ/マーキングに限定されないことを理解されたい。
【0039】
XRFマーカーは、その応答(シグネチャ)信号を検出および識別し得るXRF分光計(リーダー)による蛍光X線(XRF)分析によって検出および測定され得る。一例において、XRFリーダーは、エネルギー分散型蛍光X線EDXRF分光計である。XRFマーカーは柔軟である、すなわち、そのシグネチャ信号に悪影響を及ぼすことなく、広範囲の担体、材料、物質、および基質と組み合わされ、ブレンドされ、またはそれらと化合物を形成し、あるいはそれらの中に埋め込まれてもよい。
【0040】
XRFマーカーは、例えば、無機塩、金属酸化物、ビスまたはトリ金属原子分子、多原子イオン、および有機金属分子の形態であり得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT/IL2020/050794号およびPCT/IL2020/050793号に記載されている通り)。一例において、XRFマーカーは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018/069917号に記載されるように、無機材料(例えば金属)にまたは有機(例えばポリマー)材料と、ブレンドまたは適用され得る。この柔軟性により、XRFマーカー、またはいくつかのXRFマーカーを含むマーキング組成物(場合によっては、担体または添加剤などの追加の材料を含む)は、予め選択された特性セットを有するように設計され得る。さらに、XRFマーキングは、対象物の表面の下にマーカーが存在するが表面自体にはマーカーが存在しない場合、例えば、対象物が包装材料、汚れ、または埃によって覆われている場合にも、検出および識別することができる。さらに、XRF分析は、材料内に存在するマーカーの濃度ならびに材料内のマーカーの比率(相対濃度)の測定を可能にする。
【0041】
本発明は、黒色プラスチック材料のリサイクルおよび再利用に関する問題を克服するための新規なアプローチを提供する。特に、本発明は、ゴムなどの天然ポリマーのような未使用ブラックポリマーまたは黒色材料ポリマー、および再生プラスチック材料のマーキングおよび識別を可能にする。さらに、本発明の技術は、ポリマー材料がリサイクルを受けた回数を識別することを可能にする。さらに、黒色未使用材料および黒色再生プラスチック材料の両方を含む黒色製品の場合、製品の組成を決定すること、すなわち、未使用材料、1回リサイクルされたプラスチック材料、2回リサイクルされたプラスチック材料などの間の関係(例えば、比率)を測定することが可能である。この目的のために、1つまたは複数のマーカーのセットが、リサイクルプロセス全体の間に、リサイクルプロセスの各ラウンドにおいてリサイクルされた材料に導入される。さらに、本発明によれば、例えば未使用材料を含む製品の製造中に、未使用材料は、例えば、その製造中、または重合プロセス中、配合プロセス中、またはホットメルト処理(例えば、押出)中に、未使用材料に導入され得る1つまたは複数のマーカーによってマーキングすることもできる。
【0042】
1つまたは複数のマーカーは、プラスチック材料内に埋め込まれて、マーキングされた黒色プラスチック材料が得られ、マーキングされたプラスチック材料のライフサイクル中の任意の段階で、例えば、ペレットの物理的形態で、または製品の構成要素として、ならびに製品の製造中および製造後に(例えば、XRF分析によって)検出および識別され得る。
【0043】
したがって、本発明の別の広範な態様によれば、天然ゴムなどのXRF識別可能なブラックポリマー原材料を提供するための方法が提供され、この方法は、ポリマー原材料のサンプルを、一定量のXRF識別可能マーカーおよびブラックカーボンでマーキングする工程を含み、XRF識別可能マーカーの量は、原材料組成および/または生産プロファイル(原材料データ)を示す電磁放射線シグネチャを画定する。プロファイルは、1つまたは複数の製造日、製造場所、組成、非天然添加物の有無などを含み得る。
【0044】
当技術分野で知られているように、天然ゴムは、特定の種の樹木、主にHevea brasiliensisの樹木、または適切に名付けられたゴムの樹木から、液体樹液であるラテックスを抽出することによって作製される。ラテックスは、樹皮に切り込みを入れ、カップに流動樹液を集めることによって樹木から採取される。このプロセスはタッピングと呼ばれる。樹液が固まるのを防ぐために、アンモニアを添加してもよい。次いで、凝固と呼ばれるプロセスにおいて、酸を混合物に添加してゴムを抽出する。次いで、混合物をローラーに通して余分な水分を除去し、その後、細断し、切断し、洗浄して不純物を除去する。これが完了すると、ゴムの層をスモークハウス内のラックに掛ける、または空気乾燥させる。数日後、ゴムの層はベールに折り畳まれて、加工に供される。
【0045】
本発明によれば、ゴムは、その製造の任意の段階で、XRF識別可能マーカーおよびカーボンブラック材料で本明細書に詳述されるようにマーキングされ得る。ゴムが少なくとも1つの別の材料と混合される場合、ゴムは、少なくとも1つの別の材料と混合される前にマーキングされる。
【0046】
マーキングは、ラテックス採取の段階中、すなわちタッピング中;固化剤による樹液固化の前、最中または後;凝固前、凝固中または凝固後;または、ゴムを乾燥させた後、であり得る
【0047】
本発明はまた、リサイクルプロセスにおいて黒色材料を選別する方法を提供し、この方法は、以下を含む:
黒色材料に埋め込まれた電磁放射線シグネチャを示す測定データを提供する工程;
X線またはガンマ線(一次放射線)に応答して前記材料から放出される放射線(二次放射線)を識別する工程であって、前記放射線は、シグネチャに特徴的なスペクトル特徴(すなわち、特定のエネルギー/波長におけるピーク)を有し、それによって黒色材料の存在を識別する、工程。
【0048】
本発明はさらに、黒色材料のリサイクルプロセスを管理する方法を提供し、この方法は、以下を含む:
製品内の1つまたは複数の黒色プラスチック材料に埋め込まれた1つまたは複数の第1の電磁放射線シグネチャを示す第1の測定データを提供する工程;
測定されたデータを分析して、前記1つまたは複数の黒色プラスチック材料の各々について、それぞれのプラスチック材料状態データを決定する工程であって、それぞれのプラスチック材料状態データは、前記プラスチック材料の先行使用を示す、工程;
それぞれのプラスチック材料状態に基づいて、前記1つまたは複数の黒色プラスチック材料の各々について第1の選別データを生成する工程;および
前記第1の選別データに基づいて、前記1つまたは複数の黒色プラスチック材料の少なくとも1つに対するマーキングデータを生成する工程であって、前記マーキングデータは、前記1つまたは複数の黒色プラスチック材料のリサイクルプロセスを管理するための電磁放射線信号を提供するために、前記1つまたは複数のプラスチック材料の各々に導入される少なくとも1つのマーカーを示すデータを含む、工程。
【0049】
いくつかの実施形態では、方法は、黒色プラスチック材料状態データおよび前記プラスチック材料の選別データの少なくとも1つを利用する工程、および、選別される前記黒色プラスチック材料の現在の状態を特徴付ける証明書データを生成および記憶する工程をさらに含む。
【0050】
少なくとも1つのマーカーを示すデータは、プラスチック材料の再利用タイプごとに、前記プラスチック材料のライフサイクルを示すデータを対応する1つまたは複数のマーカーに関するマッチングデータと関連付けて記憶する、データベースから取得されてもよい。
【0051】
少なくとも1つのマーカーを示すデータは、(a)リサイクルされる前記プラスチック材料の連続するライフサイクルの数、および(b)再生プラスチック材料の再利用のための連続する製品タイプ、に対応するデータを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、黒色プラスチック材料状態データは、前記黒色プラスチック材料と製品に含まれる所定の黒色未使用材料との間の関係を示す。例えば、第1の測定データは、本明細書で定義されるように、前記所定の天然材料の1つまたは複数の電磁放射線シグネチャを示すデータも含む。
【0053】
少なくとも1つのマーカーは、本明細書に開示されるように、単一のマスターバッチにおいてカーボンブラックおよび他の追加の添加剤とともに、単一のパッケージ内でプラスチック材料に導入され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、方法は、前記マーキングを内部に導入することによって選別された後にプラスチック材料中に存在する1つまたは複数の汚染物質要素によって生じる1つまたは複数の第2の電磁放射線信号を示す第2の測定データを提供する工程をさらに含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、方法は、前記マーキングを内部に導入することによって選別された後に黒色プラスチック材料中に存在する1つまたは複数の汚染物質要素によって生じる1つまたは複数の第2の電磁放射線信号を示す第2の測定データを提供する工程、および、黒色プラスチック材料を特徴付ける証明書データを更新する工程をさらに含む。
【0056】
測定データの電磁放射信号は、以下のタイプのうちの少なくとも1つであってもよい:UV信号;X線回折(XRD)信号;蛍光X線(XRF)信号。
【0057】
いくつかの実施形態では、測定データの電磁放射線信号は、蛍光X線(XRF)信号を含む;そして、少なくとも1つのマーカーを示すデータは、XRF励起放射線に対するXRF応答信号によって応答する少なくとも1つのマーカーに対応する。
【0058】
本発明の別の広範な態様によれば、本発明は、黒色材料リサイクルプロセスを管理するための方法を提供し、以下を含む:
製品中の1つまたは複数のプラスチック材料の各々について、1つまたは複数のプラスチック製品タイプに関連して前記プラスチック材料の先行使用を示す黒色プラスチック材料状態データを提供する工程;
プラスチック材料状態データを分析し、それぞれのプラスチック材料状態に基づいて、前記1つまたは複数のプラスチック材料のそれぞれについて、選別データを生成する工程;
選別データに基づいて、前記1つまたは複数のプラスチック材料の少なくとも1つに対するマーキングデータを生成する工程であって、前記マーキングデータは、前記1つまたは複数の黒色プラスチック材料のリサイクルプロセスを管理するための電磁放射信号を提供するために、前記1つまたは複数の黒色プラスチック材料のそれぞれに導入される少なくとも1つのXRFマーカーを含む、工程;および
前記黒色プラスチック材料状態データおよび前記プラスチック材料の選別データの少なくとも1つを利用する工程、および、選別される前記黒色プラスチック材料の現在の状態を特徴付ける証明書データを生成および記憶する工程。
【0059】
また、プラスチック材料の選別中に黒色プラスチックを識別するための方法が提供され、以下を含む:
少なくとも1つのXRF識別可能マーカーでマーキングされた黒色物体を含むプラスチック物体の集合体を、X線またはガンマ線放射線で照射する工程;
適用されたX線またはガンマ線放射線に応答して物体から到来するX線またはガンマ線信号を検出する工程;
検出された放射線信号にスペクトル処理を適用して、黒色プラスチックに関する所定の特性の存在、不存在、または任意の変化を示すデータを取得する工程。
【0060】
いくつかの実施形態では、方法は以下を含む:
空間的に分布した変調強度を有する少なくとも1つのX線またはガンマ線励起ビームで複数の物体を同時に照射する工程であって、物体の各々に到達するビームの強度は異なり、識別可能であり、複数の物体が黒色物体を含む、工程;
複数の物体から到来する二次X線放射線を検出し、複数の物体上の空間強度分布を示す信号を生成する工程;および
検出された空間強度分布に従って、複数の黒色物体のうちのどれがマーキング組成物によってマーキングされているかを識別する工程。
【0061】
本発明はさらに、以下を含む方法を提供する:
空間的に分布した変調強度を有する少なくとも1つのX線またはガンマ線励起ビームで複数の物体を同時に照射する工程であって、物体の各々に到達するビームの強度は異なり、識別可能であり、複数の物体が黒色物体を含む、工程;
複数の物体から到来する二次X線放射を検出し、複数の物体上の空間強度分布を示す信号を生成する工程;および
検出された空間強度分布に従って、複数の黒色物体のうちのどれがマーキング組成物によってマーキングされているかを識別する工程。
【0062】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、実際にどのように実施され得るかを例示するために、非限定的な例としてのみ、添付の図面を参照して、実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1A】ペレット化前のカーボンブラック粉末中のマーカー系Aにおける異なる成分について濃度の関数としての強度を示すグラフ
図1B】ペレット化前のカーボンブラック粉末中のマーカー系Aにおける異なる成分について濃度の関数としての強度を示すグラフ
図1C】ペレット化前のカーボンブラック粉末中のマーカー系Aにおける異なる成分について濃度の関数としての強度を示すグラフ
図2A】ペレット化前のカーボンブラック粉末中のマーカー系Bにおける異なる成分について濃度の関数としての強度を示すグラフ
図2B】ペレット化前のカーボンブラック粉末中のマーカー系Bにおける異なる成分について濃度の関数としての強度を示すグラフ
図2C】ペレット化前のカーボンブラック粉末中のマーカー系Bにおける異なる成分について濃度の関数としての強度を示すグラフ
図3A】ペレット化後のマーカー系Aの3つの組合せについて濃度の関数としての強度を示すグラフ
図3B】ペレット化後のマーカー系Aの3つの組合せについて濃度の関数としての強度を示すグラフ
図3C】ペレット化後のマーカー系Aの3つの組合せについて濃度の関数としての強度を示すグラフ
図4A】ペレット化CB対粉末CB:マーカー系Aの濃度の関数としてのピーク強度
図4B】ペレット化CB対粉末CB:マーカー系Aの濃度の関数としてのピーク強度
図4C】ペレット化CB対粉末CB:マーカー系Aの濃度の関数としてのピーク強度
図5A】ペレット化CB-マーカー系の関数としてのB-パーツ強度を示すグラフ
図5B】ペレット化CB-マーカー系の関数としてのB-パーツ強度を示すグラフ
図5C】ペレット化CB-マーカー系の関数としてのB-パーツ強度を示すグラフ
図6A】ペレット化CB対粉末CB:マーカー系Bの濃度の関数としてのピーク強度を示すグラフ
図6B】ペレット化CB対粉末CB:マーカー系Bの濃度の関数としてのピーク強度を示すグラフ
図6C】ペレット化CB対粉末CB:マーカー系Bの濃度の関数としてのピーク強度を示すグラフ
図7A】マーカー系Aにおける異なる成分についてのCB MB中の濃度の関数としての強度を示すグラフ
図7B】マーカー系Aにおける異なる成分についてのCB MB中の濃度の関数としての強度を示すグラフ
図7C】マーカー系Aにおける異なる成分についてのCB MB中の濃度の関数としての強度を示すグラフ
図8A】マーカー系Bにおける異なる成分についてのCB MB中の濃度の関数としての強度を示すグラフ
図8B】マーカー系Bにおける異なる成分についてのCB MB中の濃度の関数としての強度を示すグラフ
図8C】マーカー系Bにおける異なる成分についてのCB MB中の濃度の関数としての強度を示すグラフ
図9】0.5質量%のCB MBローディングを含有する厚いサンプルにおけるマーカー系Bの3つの成分についての赤色スペクトル-ピークシグナルを示すグラフ;黒色-マーキングされていないサンプル
図10】2質量%のCB MBローディングを含む単一箔層におけるマーカー系Bの3つの成分についての青色スペクトル-ピークシグナル;黒色-マーキングされていないサンプル
【発明を実施するための形態】
【0064】
本開示は、ブラックポリマー製品をマーキング/識別するための手段および方法に関し、リサイクル目的のための黒色プラスチックの識別および選別を可能にする、蛍光X線(本明細書では「XRF」)を利用する特定のマーカー/識別可能な構成要素の開発に基づく。
【0065】
本明細書においてXRF検出可能/識別可能マーカーとして示される特異的マーキング/識別可能成分は、黒色プラスチック製造のプロセス中に添加(混合)される。
【0066】
以下の実施例に示されるように、XRF検出可能/識別可能マーカーは、黒色プラスチック製造プロセス全体にわたって、安定かつ活性(すなわち、検出可能)の両方のままであった。したがって、XRF検出可能な識別可能マーカーは、特に、乾式混合工程、ペレット化工程、配合(すなわち、マスターバッチ製造)工程、ブロー工程、または射出成形工程を含む、黒色プラスチック製造工程の各々において添加することができる。これによって、広範囲のXRF識別可能な中間生成物(例えば、粉末、ペレット化粉末またはマスターバッチ)ならびにプラスチック製品がもたらされる。
【0067】
その第1の態様によれば、本開示は、カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含むXRF識別可能カーボンブラック粉末を提供する。
【0068】
XRF識別可能カーボンブラックに関して本明細書で使用される粉末は、最大約100nmのサイズを有する微細乾燥粒子に関する。さらに、粒子は、少なくとも1つのカーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの乾燥ブレンドを指し得る。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、XRF識別可能カーボンブラック粉末は、XRF識別可能カーボンブラックのペレット化粉末の調製に使用するためのものである。いくつかのさらなる実施形態によれば、XRF識別可能カーボンブラック粉末は、ペレット化プロセスに供される。いくつかの実施形態では、乾燥ブレンドをペレット化する工程は、XRF識別可能カーボンブラックペレット化粉末を得るための湿式ペレット化プロセスによる。
【0070】
当業者によって理解されるように、XRF識別可能カーボンブラック粉末は、例えば、粉末を凝固させるためにペレット化に供される。
【0071】
いくつかの他の態様によれば、本開示は、カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの均質ブレンドを含むXRF識別可能カーボンブラックペレット化粉末を提供する。
【0072】
本発明によるXRF識別可能マーカーは、XRFシグネチャによって識別可能な、すなわちXRF分析(例えば、XRF分析器による)によって識別することができる、少なくとも1つの化合物または元素を含む物質であり、応答X線信号の分析であるXRF分析は、真空条件を伴わない非制御環境で動作し得るXRF分析器(例えば、ベンチトップ、モバイル、またはハンドヘルド装置であり得るエネルギー分散型XRF分析器)などの好適な分光計によって実施することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、XRFシグネチャを有する物質であり、XRFによって識別可能な1つまたは複数の元素を含む形態で選択され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、X線またはガンマ線(一次放射線)放射に応答して、元素に特徴的なスペクトル特徴(すなわち、特定のエネルギー/波長におけるピーク)を有するX線信号(二次放射線)(XRFシグネチャとしてのX線応答信号)を放出する元素の周期表の少なくとも1つの元素であるか、またはそれを含む。このような応答シグナルを有する元素は、XRF感受性であると考えられる。
【0075】
XRFシグネチャは、マーキング(材料組成、濃度など)、ならびにマーキングが上部にまたは内部に埋め込まれた特定の製品の表面/構造に依存し得る。
【0076】
XRF識別可能マーカーは、塩の形態であってもよい、または少なくとも1つの原子を含む物質であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、Si、P、S、Cl、K、Ca、Br、Ti、Fe、V、Cr、Mn、Co、Ni、Ga、As、Fe、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、LaおよびCeから選択される少なくとも1つの原子であるか、またはそれを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、少なくとも1つの金属原子であるか、またはそれを含む。
【0079】
いくつかの他の実施形態では、XRF識別可能マーカーは、少なくとも1つの金属塩または少なくとも1つの金属原子を含む物質を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、Mo、Ag、Cr、Ti、Mn、K、Ca、Sc、V、Co、Ni、Zn、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、CdおよびInから選択される原子であるか、またはそれを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、Mo、Ag、Cr、Ti、Mn、K、Ca、Sc、V、Co、Ni、Zn、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、CdおよびInから選択される少なくとも1つの原子を含む物質である。
【0082】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、Mo、Ag、Cr、TiおよびMnから選択される少なくとも1つの原子であるか、またはそれを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、Mo、Ag、Cr、TiおよびMnから選択される少なくとも1つの原子を含む物質である。
【0084】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、担体内の少なくとも1つの金属原子である。いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、ナノ粒子内の少なくとも1つの金属原子である。いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、ナノ粒子内のAg原子であるか、またはそれを含む。
【0085】
いくつかの他の実施形態では、XRF識別可能マーカーは、少なくとも1つの非金属原子であるか、またはそれを含む。いくつかの他の実施形態では、XRF識別可能マーカーは、P、Se、Br、S、Cl、IおよびSiの少なくとも1つの原子であるか、またはそれを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、二硫化モリブデン、酸化亜鉛、ステアリン酸マンガン、酸化マンガン、塩化マンガン、ジリシノール酸亜鉛、臭化カリウム、酸化クロ、臭化ナトリウム、酸化チタン、窒化チタン、臭化アンモニウムおよび酪酸カルシウムのうちの少なくとも1つの形態である。
【0087】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、酸化亜鉛、ステアリン酸マンガン、酸化マンガン、臭化カリウム、酸化クロム、二硫化モリブデン、臭化ナトリウム、酸化チタン、酸化マンガン、窒化チタン、臭化アンモニウムおよび酪酸カルシウムのうちの少なくとも1つの形態である。
【0088】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、酸化チタン、二硫化モリブデンおよび銀原子の少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つの形態である。
【0089】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マーカーは、酸化チタン、酸化マンガンおよび酸化クロムのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つの形態である。
【0090】
本明細書に記載されるように、XRF識別可能マーカーはカーボンブラックと混合される。
【0091】
識別可能なカーボンブラック中のカーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能なマーカーの量は、例えば、最終プラスチック製品に応じて変化し得る。特に断らない限り、識別可能なカーボンブラック中の少なくとも1つのXRF識別可能なマーカーの量またはその任意の比率は、XRF識別可能マーカー中の活性元素の量またはその比率を指す。言い換えれば、XRF識別可能マーカーが塩、例えば金属塩として提供される場合、XRF識別可能マーカーの量またはその任意の比率は、活性元素、すなわち金属原子を基準とする。
【0092】
概して、カーボンブラックと少なくとも1つのXRF識別可能マーカーとの間の比率が低いほど、XRF識別可能マーカーのローディングが多くなり、したがって検出が改善される。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明のペレット化生成物または組成物中のカーボンブラックと少なくとも1つのXRF識別可能マーカーとの間の比率は、それぞれ少なくとも100:1、または200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1または900:1である。
【0094】
いくつかの他の実施形態では、ペレット化生成物中のカーボンブラックと少なくとも1つのXRFマーカーとの間の比率は、それぞれ約100:1~約1000:1である。
【0095】
カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの均質ブレンドを含むXRF識別可能カーボンブラックペレット化粉末は、任意のサイズまたは形状であり得る。例えば、ペレット化粉末は、約30~約200グレーンの範囲のサイズを有するペレットの形態である。
【0096】
本明細書に記載されるように、XRF識別可能カーボンブラックのペレット化粉末は、いくつかの実施形態によれば、ペレット化プロセスによって生成され得る。
【0097】
本開示によれば、例えばペレット化粉末の形態であるXRF識別可能カーボンブラックは、マスターバッチ混合物を得るための配合プロセスにおいて使用するためのものである。いくつかの実施形態では、XRF識別可能カーボンブラックペレット化粉末は、マスターバッチ混合物の調製に使用するためのものである。
【0098】
いくつかの他の態様によれば、本開示は、カーボンブラック、少なくとも1つのXRF識別可能マーカー、および少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む均質ブレンドを含むXRF識別可能マスターバッチ(MB)混合物を提供する。
【0099】
XRF識別可能マスターバッチ(MB)混合物は、XRF識別可能カーボンブラックを使用することによって、あるいは、カーボンブラック、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーおよび少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを配合することによって、製造することができる。言い換えれば、本開示によるマスターバッチ混合物は、予め形成された少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと配合されたXRF識別可能カーボンブラックによって、あるいは3つの成分を個別に配合することによって、得ることができる。
【0100】
XRF識別可能マスターバッチ混合物中の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーの量は変化し得る。いくつかの実施形態では、マーキングされたマスターバッチは、少なくとも0.05%w/wの少なくとも1つのXRF識別可能マーカー、時には少なくとも0.08%w/w、時には少なくとも0.1%w/w、時には少なくとも2%w/w、時には少なくとも3%および時には少なくとも5%の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、マーキングされたマスターバッチは、約0.05%w/w~約5%の少なくとも1つのXRF識別可能マーカー、時には約0.1%w/w~約4%w/w、時には約0.5%w/w~約3%および時には約0.5%w/w~約2%の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、XRF識別可能マスターバッチ混合物は、少なくとも約20%、時には少なくとも約30%、時には少なくとも約40%、および時には少なくとも約50%の熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、XRF識別可能マスターバッチ混合物は、約40%の熱可塑性ポリマーを含む。
【0103】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー」は、当業者に既知の一般的な意味を有するものとして理解されるべきである。限定されないが、本発明に従って利用されるポリマーは、プラスチック材料であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは、熱可塑性ポリマーである、すなわち、固体または本質的に固体の材料が、加熱により高温流動性材料に変わり、十分に冷却されると可逆的に固化する特性を示す。この用語はまた、材料が高温流動性材料になる温度または温度範囲を有することを示す。
【0104】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコールおよび二軸配向ポリマーカーら選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP));ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリスチレン(PS);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン(PU);ポリアミド(PA);ポリアクリロニトリル;ポリイミド;ポリビニルアルコールおよび二軸配向ポリマーから選択される。
【0106】
このような実施形態では、ポリオレフィンは、ポリプロピレンおよびポリエチレンから選択される。
【0107】
いくつかの実施形態では、ポリマーはポリエチレンである。いくつかの他の実施形態では、ポリマーは低密度ポリエチレン(LDPE)である。
【0108】
本開示のマスターバッチは、成分の均質なブレンドを含むという条件で、液体、粒子物質、粒子などの形態であり得る。したがって、本開示によれば、XRF識別可能マーカーは、XRF識別可能マーカーを含まない同じポリマーの物理的特性(すなわち、光学的および機械的特性)に実質的に影響を及ぼすことなく、少なくとも1つのポリマー(ポリマー要素)に組み込まれ得る。
【0109】
少なくとも1つのポリマーに組み込まれているXRF識別可能マーカーに言及する場合、ポリマーおよび少なくとも1つのXRF識別可能マーカーは、それらの間の物理的相互作用によって密接に保持されていることを理解されたい。これにより、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーがポリマー内に均質に分布し、それによってXRFシグナルの増加に寄与することが示唆された。
【0110】
マスターバッチ混合物は、非ポリマー成分などの追加の成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、マスターバッチ混合物は、酸化防止剤、UV安定剤、難燃剤、顔料、安定剤および湿潤剤を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、マスターバッチは、粒子を含む粒子状物質の形態である。いくつかの実施形態では、マスターバッチはペレットの形態である。いくつかの実施形態では、各粒子は、少なくとも1つのXRF識別可能マーカー、カーボンブラックおよび少なくとも1つの熱可塑性ポリマーのブレンドを含む。
【0112】
本開示によれば、XRF識別可能なマスターバッチ混合物は、例えば、当技術分野で既知の任意の製造方法を使用することによって、製品の調製に使用することができる。いくつかの実施形態では、XRF識別可能なマスターバッチ混合物は、製造品の調製に使用するためのものである。
【0113】
したがって、いくつかの他の態様では、本開示は、カーボンブラック、少なくとも1つのXRF識別可能マーカー、および少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む均質ブレンドを含むXRF識別可能な製造品を提供する。
【0114】
本開示による製造品は、例えば、食品産業(例えば、包装または機器)、農業(例えば、ツール、バケツまたはフィルム)、化粧品産業(例えば、ボトル)または自動車産業(例えば、ティア)で使用されるプラスチック製品であり得るがこれに限定されない、任意のプラスチック製品でもよい。
【0115】
製造品は、例えば、物品のサイズ、形状に応じて、様々な量の少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含み得る。いくつかの実施形態では、製造品は、少なくとも2ppm、時には少なくとも4ppm、時には少なくとも8ppm、時には少なくとも12ppm、時には少なくとも16ppm、時には少なくとも20ppm、時には少なくとも24ppm、時には少なくとも41ppm、時には少なくとも50ppm、時には少なくとも60ppm、および時には少なくとも500ppmの少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、製造品は、約2ppm~約500ppmの少なくとも1つのXRF識別可能マーカー、時には約4ppm~約60ppm、時には約4ppm~約50ppm、時には約8ppm~約41ppmの少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む。
【0117】
以下の実施例にさらに示すように、マーキングされた黒色プラスチックを、マーキングされていない黒色プラスチックと区別することができた。具体的には、結果は、少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを使用する本発明のマーキングが、厚いサンプルおよび薄いサンプルを含む様々な製造品において有効であることを示す。
【0118】
理解されるように、製造品は、例えば、射出成形またはブロー成形を含む、当技術分野で既知の任意の方法によって得ることができる。また理解されるように、製造品の調製のためのプロセスは、マスターバッチ混合物、例えば本開示のXRF識別可能なマスターバッチ混合物を少なくとも1つの熱可塑性ポリマーで「希釈」する工程を含む。製造品の調製中に添加される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、マスターバッチ混合物と同じポリマーであってもよく、または異なるポリマーであってもよい。いくつかの実施形態によれば、ポリマーはマスターバッチ混合物であり、製造品の調製中に添加されるポリマーは少なくとも相溶性であり、時に同一である。
【0119】
本開示は、いくつかの態様によれば、XRF識別可能な製造品を調製する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(i)カーボンブラックおよび少なくとも1つのXRF識別可能マーカーを含む混合物をペレット化する工程;
(ii)前記ペレット化から得られたペレットを、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドして溶融物を形成する工程;
(iii)前記溶融物を成形して前記製造品を得る工程。
【0120】
非限定的な実施例
材料および方法
ベアカーボンブラック(CB)Printex 60A粉末および黒色生成物のサンプルを、バックグラウンド特性評価のために最初に受け取った。分析結果に基づいて、本明細書において「A」および「B」と表される2つのマーカー系が設計された。各マーカー系は、3つの成分の配列を含み、3つの異なる濃度で、合計6つのサンプルで試験した。
【0121】
マーカーAは、MoS、銀NPおよびTiNを含み、マーカーBは、TiN、CrおよびMnを含む。
【0122】
マーカーAおよびマーカーBそれぞれの3つの組合せを試験し、各組合せにおいて3つの成分の異なる量における3つの異なる組合せをCBと混合した。
【0123】
以下の表1および表2は、マーカーAおよびマーカーBの詳細を示す。
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
マーカー中の活性元素を参照すると、表3から分かるように、マーカーAおよびマーカーBの両方における第1の組合せは各元素を2000ppm含み、マーカーAおよびマーカーBの両方における第2の組合せは各成分を3000ppm含み、マーカーAおよびマーカーBの両方における第3の組合せは各成分を5000ppm含んだ。
【表3】
【0126】
異なるローディング(各マーカー系について、濃度1、濃度2、濃度3)を決定した後、6つのマーカーの組合せを、表1に詳述した量でCB粉末(バッチサイズ:各2kg)と約5分間機械的に混合し、標準的なペレット化工程に供した。次いで、マーキングされたペレット化CBサンプルを低密度ポリエチレン(LDPE)と配合し、マーカーの添加を補うために、各組合せについてローディング指示を送った。表4は、マーカーの添加(本来は40質量%のCBが添加される)を補うための理論的なローディングおよび実験的に添加された実際のローディングを示す。このように、マーカー系の濃度にかかわらず、全てのサンプルで実際にマーキングされたCBローディングは40%であり、MBにおけるマーカーのローディングが予想よりも低いことを示している。
【表4】
【0127】
マーカー中の活性元素を参照すると、マーカーAおよびマーカーBの両方における第1の組合せは各元素を806ppm含み、マーカーAおよびマーカーBの両方における第2の組合せは各元素を1210ppm含み、マーカーAおよびマーカーBの両方における第3の組合せは各元素を2016ppm含んだ。
【0128】
次に、上記7つのCB MBの全てを、0.5、1、および2質量%でLDPE樹脂と混合し、処理して、射出成形サンプル21個+SMX検出用ホイルサンプル21個の合計42個のサンプルを作製した。サンプルの組成を以下の表に示す。
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
結果
乾式混合工程
粉末形態のベア成分をCB粉末と約5分間機械的に混合した。均質性評価のために各濃度を3回測定した。マーカー系Aの3つの濃度についての検出結果を、表7および図1に示す。
【表7】
【0131】
ベアマーカー成分をCB粉末と数分間だけ混合したことを考慮すると、3つの成分は全て識別可能なピークを示し、全ての濃度を互いに分離することができる。均質性の指標である相対STD(=100*STD/平均)は、3つの成分全てについてかなり低く、CB粉末中のマーカー成分の良好な均質性を示唆している。
【0132】
マーカー系Bについての異なる成分の検出結果を、表8および図2に示す。同様に、各濃度を3回測定し、均質性を評価した。
【表8】
【0133】
マーカー系Bの3つの成分は、いずれも明確なピークを示した。マーカー系Aに示されているのと同様に、マーカー系Bもまた、各濃度において識別可能なピークを示し、全てのピークは互いに良好に分離されていた。しかしながら、2つのマーカー系を比較すると、マーカー系Bは全ての濃度においてより低い相対STD値を示し、マーカー系BがCB粉末中で潜在的により良好な分布を有することが示唆された。
【0134】
ペレット化工程
全ての成分をペレット化後に分析し、分散性を評価した。各濃度から3回の測定を行い、マーカー系Aの結果を表9および図3に示す。結果から明らかなように、全ての成分は、全ての濃度において10未満の相対STDを示し、良好な分散性を示した。
【表9】
【0135】
ペレット化前後の分散性の評価も、ペレット化前(粉末形態)およびペレット化後の成分の強度を比較することによって検討した。結果が図4にプロットされ、濃い色はペレット化後の成分を特定し、薄い色はペレット化前の成分を特定する。
【0136】
図4に示されるように、成分1および2はいずれも、ペレット化後により高いピーク強度を示し、分散性の向上を示唆した。他方、成分3は、ペレット化後にピーク強度の増加を示さず、乾燥混合工程において既に最大分散に達したと考えられる。
【0137】
マーカー系Aについて行ったのと同じことをマーカー系Bについて繰り返し、全ての成分をペレット化後に分析して分散性を評価した。各濃度から3回の測定を行い、マーカー系Bの結果を表10および図5に示す。図5に示すように、マーカー系Bの3つの成分はいずれも、マーカー系Aで得られた値より低い、全ての濃度で5未満の相対STDを示した。相対標準偏差が低いほど、CBにおける分散性は良好であり、マーカー系Bの分散性はマーカー系Aよりも優れていると結論付けることができる。これは、マーカー系BがCB粉末とより適合性であるという本発明者らのこれまでの主張を支持するものである。
【表10】
【0138】
ペレット化前後の分散性の評価もマーカー系Bについて検討し、結果を図6にプロットする。
【0139】
示されるように、3つの成分はいずれも、ペレット化後にピーク強度の増加を示し、この工程がCB中での高い分散性を達成するのに必須であることを示唆している。
【0140】
この工程を要約すると、ペレット化は、成分の検出性を増加させ、相対STD値を低下させ、両方の系における全ての成分の分散が改善されたことを示す。
【0141】
配合工程
全てのペレット化CBを40質量%で60質量%のLDPEと混合し、配合して、マーキングされたCB MBを生成した。マーカー系Aを含有するマーキングされたCB MBについての検出結果を、表11および図7に示す。予想通り、CBローディングの減少(MB中100から40質量%へ)に伴って、全ての成分の平均強度は低下するが、相対STDの大きな変化はなく、ペレット化後の得られた分散性が良好であるという本発明者らの観察が再び支持される。
【表11】
【0142】
マーカー系Bを含有するマーキングされたCB MBについての検出結果を、表12および図8に示す。マーカー系Aで観察されたのと同様に、CBローディングの減少(MB中100から40質量%へ)に伴って、マーカー系Bの全ての成分についての平均強度は、相対STDの大きな変化なしに減少する。
【表12】
【0143】
MB中の成分の強度をパーセンテージで測定し、それらがCBと同じ減少(100から40質量%へ)に従うかどうかを評価するために、式1を使用した:
【数1】
式中、
MBは、MB中の3つの成分の平均強度であり
は、ペレット化CB中の3つの成分の平均強度である。
【0144】
マーカー系AおよびBの異なる濃度についての平均結果を表13に示す。示されるように、全ての濃度は、MB中で平均40質量%の成分ローディングを示し、これはMB中のCBローディングと完全に一致した。これにより、成分が均質に分散しているという示唆が再び支持される。
【表13】
【0145】
サンプル製造ステップ
分散性分析
厚いサンプルにおける全ての組合せについての平均強度結果および相対STDを、マーカー系AおよびBについてそれぞれ表14および表15に示す。予想通り、全ての成分は、CB MBローディングの増加に伴って強度の増加を示した。相対STD値(=分散性)を見ると、成分濃度の増加に伴って明らかな傾向は観察されなかった。マーカー系Aにおいて、最終製品中で、成分1は良好な分散性を示し、成分2は分散性が悪く、成分3は中程度の分散性を示した。マーカー系Bにおいて、濃度1および2では、成分1は成分2および3と比較して劣った分散性(より高い相対STD値)を示した。濃度3では、全ての成分が分散性の低下を示した。
【表14】
【0146】
【表15】
【0147】
薄箔上の全ての組合せについての平均強度結果および相対STDも検討し、マーカー系AおよびBについてそれぞれ結果を表16および表17に示す。マーカー系Aについては分析を4つの箔層で行い、マーカー系Bについては単一の層で行った。厚いサンプルで示されたのと同様に、全ての成分は、CB MBローディングの増加と共に強度の増加を示し、これは、成分の実際のローディングがCB MBローディングの増加と共に増加することから予想された。さらに、成分の濃度が増加するにつれて、相対STDの傾向は観察されず、分散性が変化しなかったことが示された。厚いサンプルについてマーカー系Aについて与えられたのと同じ観察が、最終製品中で成分1は良好な分散性を示し、成分2は分散性が悪く、成分3は中程度の分散性を示した箔について見られる。マーカー系Bにおいて、全ての濃度において、成分1は成分2および3と比較して劣った分散性(より高い相対STD値)を示した。厚いサンプルとは異なり、濃度3は、濃度1および2と同様の分散性を示した。
【表16】
【0148】
【表17】
【0149】
マーキングされた製品とマーキングされていない製品との間の分離
目的は、約0.5~2質量%の範囲の異なるCB MBローディングを使用する様々な用途のために、マーキングされた製品をマーキングされていない製品と区別することができる1つのマーキング溶液を設計することであった。したがって、薄い(箔)サンプルおよび厚い(射出された)サンプルの両方に対する異なるCB MBローディングに適した正しいマーカー系濃度を見出すことを検討した。
【0150】
厚いサンプル(射出部分)
厚いサンプルについての結果を、マーカー系AおよびBについてそれぞれ表18および表19に示す。結果は、厚いサンプルについては、最も低いマーカー濃度(濃度1)が、95%を超える精度で、全ての異なるCB MBローディング(0.5、1および2質量%)において、マーキングされていないサンプルからマーキングされたサンプルを区別するのに十分であることを示す。
【表18】
【0151】
【表19】
【0152】
マーキングされたサンプルとマーキングされていないサンプルとの間の高い分離能を強調するために、0.5質量%のCB MBローディングにおけるマーカー系B濃度1のスペクトルを、図9に示す。黒色スペクトルは参照サンプル(無印)を表し、赤色スペクトルはマーキングされたサンプルを表す。明らかなように、3つの成分はいずれも良好なピーク再現性を示し、基準線と重複しない。
【0153】
薄いサンプル(25μm箔)
同じ分析を薄膜で行い、マーカー系Aの結果を表20に示す。4層以降(>100μm)から、全ての異なるCB MBローディング(0.5、1および2質量%)について、86%の最小精度で、マーキングされたサンプルとマーキングされていないサンプルとの間の良好な区別が得られる。予想通り、最低CB MBローディング(0.5質量%)では、最大マーカー濃度が必要とされ(濃度3)、CB MBローディングを1および2質量%に増加させると、必要とされるマーカー濃度は濃度2および濃度1に減少する。
【表20】
【0154】
マーカー系Bでは、優れた結果が得られた。表21の結果は、1層以降(>25μm)から、異なるCB MBローディング(0.5、1および2質量%)について、80%の最小精度で、マーキングされたサンプルとマーキングされていないサンプルとの間の良好な区別が得られることを示す。マーカー系Aで観察されたのと同じ傾向がここで見られ、最小CB MBローディング(0.5質量%)では、高いマーカー濃度(濃度3)が必要とされ、CB MBローディング(1および2質量%)の増加に伴って、必要とされるマーカー濃度が減少する(濃度2および濃度1)。
【表21】
【0155】
図10は、2質量%のCB MBローディングにおけるマーカー系B濃度1のスペクトルをプロットし、マーキングされたフィルムとマーキングされていないフィルムとの間の分離能力を示す。黒色スペクトルは参照サンプル(無印)を表し、青色スペクトルはマーキングされたサンプルを表す。明らかなように、3つの成分は全て良好なピーク再現性を示し、基準線と重複しない。
【0156】
異なるCBローディング間の区別
異なる濃度で同じ成分を使用することにより、複数のコードを生成するXRF識別可能マーカー能力を示す目的で、異なるCB MBローディングを分離する能力も検討した。
【0157】
マーカー系Aが、参照~0.5質量%、0.5~1質量%および1~2質量%のCB MBローディングの間で正確に分離する能力を表22に示す。結果は、濃度1において、全てのMB濃度を86%を超える精度で分離できることを示す。濃度2では、全てのMB濃度を95%を超える精度で分離することができる。驚くべきことに、濃度3では、全てのMB濃度を68%を超える精度で分離することができる。濃度3の強度結果から、1質量%のCB MBローディングは、0.5%MBから2倍の強度の増加を示さなかった。これは全ての成分に当てはまったので、本発明者らは、1質量%のCBローディングでは計量誤差があり得ると考える。異なる位置における9回の測定に基づいて、参照、0.5、1および2の間でピークのいずれも互いに重複しておらず、精度は統計のみに基づくことに留意されたい。
【表22】
【0158】
マーカー系Bが、参照~0.5質量%、0.5~1質量%および1~2質量%のCB MBローディングの間で正確に分離する能力を表23に示す。濃度1において、全てのCBMB濃度を98%を超える精度で分離することができる。濃度2において、全てのMB濃度を86%を超える精度で分離することができる。驚くべきことに、濃度3では、全てのMB濃度を68%を超える精度で分離することができる。これにより、全ての成分が濃度3において分散性の低下(=高い相対STD)を示したというセクション6.4.1における本発明者らの以前の観察が支持される。マーカー系Aについて述べたのと同じように、9回の測定に基づいて、参照、0.5、1および2の間でピークのいずれも互いに重複しておらず、精度は統計のみに基づく。
【表23】
【0159】
薄いサンプル(25μm箔)
マーカー系Aが、4層の箔上の参照~0.5質量%、0.5~1質量%および1~2質量%のCB MBローディングを正確に分離する能力を表24に示す。以下の表から分かるように、濃度3では、全てのMB濃度を86%の最小精度で分離することができる。成分1は、その濃度の増加と共に精度の増加を示したが、成分2は、全ての濃度において99.7%の精度を示した。異なる位置における9回の測定に基づいて、ピークのいずれも、参照、0.5、1および2の間で互いに重複しておらず、精度は統計のみに基づくことに留意されたい。
【表24】
【0160】
マーカー系Bが、単一箔層上の参照~0.5質量%、0.5~1質量%および1~2質量%のCB MBローディングの間で正確に分離する能力を表25に示す。マーカー系Bは、単一箔層で優れた結果を示し、濃度3では、全てのMB濃度を95%の最小精度で分離することができる。全ての成分は、それらの濃度の増加に伴って精度の増加を示した。マーカー系Aについて述べたのと同じように、9回の測定に基づいて、参照、0.5、1および2の間でピークのいずれも互いに重複しておらず、精度は統計のみに基づく。
【表25】
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
【国際調査報告】