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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】時計用アニメーション機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 45/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
G04B45/00 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534340
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021084321
(87)【国際公開番号】W WO2022122615
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】01550/20
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(31)【優先権主張番号】20212286.7
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523207504
【氏名又は名称】グルーベル フォルセイ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】GREUBEL FORSEY S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ステファン フォルセイ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン コルネイユ
(57)【要約】
時計(3)用のアニメーション機構(1)であって、駆動源(5)の影響の下で第1回転軸線(A1)周り及び第2回転軸線(A2)周りの回転によってアニメーション化されることを意図した第1装飾物(11)を支持する支持システム(13)を備え、前記支持システム(13)は、ケージ要素において前記第1回転軸線(A1)周りに枢動するように取り付けられた第1フレーム(13b)と、前記第1回転軸線(A1)に対してほぼ直交する前記第2回転軸線(A2)周りに前記第1フレーム(13b)内で枢動するように取り付けられた内部フレーム(13f)と、を備え、前記内部フレーム(13f)は第2装飾物(23)を支持し、また前記内部フレーム(13f)は、前記駆動源(5)によって直接的又は間接的に駆動されるように配置された駆動ホイール(15)に対して一緒に回転するよう剛固に固定された偏心駆動要素(15b)によって駆動されるように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(3)用のアニメーション機構(1)であって、駆動源(5)の影響の下で第1回転軸線(A1)並びに第2回転軸線(A2)の周りの回転によってアニメーション化されることを意図した第1装飾物(11)を支持する支持システム(13)を備え、
前記支持システム(13)は、前記第1回転軸線(A1)周りにケージ要素に枢動するように取り付けられた第1フレーム(13b)と、前記第1回転軸線(A1)に対してほぼ直交する前記第2回転軸線(A2)周りに前記第1フレーム(13b)内で枢動するように取り付けられた内部フレーム(13f)とを備え、前記内部フレーム(13f)は第2装飾物(23)を支持し、
前記内部フレーム(13f)は、前記駆動源(5)によって直接的又は間接的に駆動されるように配置された駆動ホイール(15b)に共回り可能に固定された偏心駆動要素(15b)によって駆動されるように配置される、機構。
【請求項2】
請求項1に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)は第3回転軸線(A3)周りに前記内部フレーム(13f)内で枢動するように取り付けられたシャフト(13h)によって支持され、前記シャフト(13h)は前記駆動ホイール(15)に対して同軸状である歯(17)と噛み合うピニオン(13l)に共回り可能に固定され、前記歯(17)は回転によってアニメーション化されるように固着又は配置される、機構。
【請求項3】
請求項1に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)は前記内部フレーム(13f)内で枢動するように取り付けられたシャフト(13h)によって規定される第3回転軸線(A3)周りに枢動するように取り付けられた補助フレーム(13p)に支持され、前記シャフト(13h)は前記駆動ホイール(15)に対して同軸状である歯(17)と噛み合うピニオン(13l)に共回り可能に固定され、前記歯(17)は回転によってアニメーション化されるように固着又は配置され、前記補助フレーム(13p)は該内部フレーム(13f)によって支持された中間伝動部(31)によって回転駆動されるように配置され、また前記シャフト(13h)に共回り可能に固定された歯付き機素(13q)によって駆動されるように配置される、機構。
【請求項4】
請求項1~3のうち何れか一項に記載の機構(1)において、前記偏心駆動要素(15b)はクランク又はレバーである、機構。
【請求項5】
請求項1~4のうち何れか一項に記載の機構(1)において、前記第2装飾物(23)は前記第1装飾物(11)に対して軌道運動を行うように配置される、機構。
【請求項6】
請求項2及び3の何れか一方に従属する場合の請求項5に記載の機構(1)であって、前記第2装飾物(23)は前記第3回転軸線(A3)周りに枢動するように配置された回転プレート(27)に支持される、機構。
【請求項7】
請求項6に記載の機構(1)において、前記回転プレート(27)は、前記回転プレート(27)に枢動的に取り付けられ且つ一方で該シャフト(13h)に対して一緒に回転するよう固定された歯付き機素(13n)と噛み合い、また他方で該内部フレーム(13f)に共回り可能に固定された補助固着ホイール(29)と噛み合うホイール(21)によって、回転駆動するように配置される、機構。
【請求項8】
請求項1~7のうち何れか一項に記載の機構(1)において、前記第2装飾物(23)はそれ自身の軸線(A5)周りに回転を行うように配置されている、機構。
【請求項9】
請求項1~8のうち何れか一項に記載の機構(1)において、前記第2装飾物(23)は前記内部フレーム(13f)の平面に対して上昇及び下降することができるように配置される、機構。
【請求項10】
請求項1~9のうち何れか一項に記載の機構(1)において、さらに、前記第2装飾物(23)の一部を囲むカバー(21a)を備える、機構。
【請求項11】
請求項1~10のうち何れか一項に記載の機構(1)において、前記カバー(21a)は前記第2装飾物(23)の周りに枢動するように配置される、機構。
【請求項12】
請求項2及び3の何れか一方に従属する場合の請求項11に記載の機構(1)において、前記枢動カバー(21a)は、前記シャフト(13h)に共回り可能に固定された歯付き機素によって回転駆動されるように配置されたホイール(21)に共回り可能に固定される、機構。
【請求項13】
請求項12に記載の機構(1)であって、かつ請求項7に記載の機構。
【請求項14】
請求項1~13のうち何れか一項に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)が第1の宝石又は第1の星に関する表現であり、前記第2装飾物(23)が第2の宝石又は第2の星に関する表現である、機構。
【請求項15】
請求項1~14のうち何れか一項に記載の機構(1)を備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計製作の分野に関する。より詳細には、少なくとも2つの装飾物を備えるアニメーション機構に関するものであり、後者は特に星に関する表現が可能である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(FR2988866)は、柔軟なベルトによる単一回転軸線周りの回転運動によって石をアニメーション化するために駆動ばねが配置された貴石又は半貴石のためのアニメーション機構を記載している。石は、定位置に石を保持する4つの爪又はアゴによってシャフトに取り付けられる。しかし、石の動きは単調で石の片方の面しか見ることができないため、着用者には常に同じ角度を見せ、結果的にその視覚性を制限する。
【0003】
特許文献2(CH708473)は、地球を表現する枢動ディスクと月の表現を規定する中心から外れた円形開口を備えたより大きな直径のディスクとを備える星に関するアニメーション機構を開示している。この機構が作動した時、地球の表現は回転し、月の表現は地球の周りに軌道に沿って回る。月の円盤の下にある補助円盤は、さらに月の位相を表示することを可能にする。この機構は実に興味深いが、平面の表示に限定される。
【0004】
グルーベルフォルセイ社(Greubel Forsey)により商品化された「GMT」ピースは、地球の北半球を3次元で表示しており、24時間スケールの前で回転している。この凸状の表現の視覚性は、特に赤道に近い場所を見たい場合に、及び月の表現が表示されていない点で、比較的制限される。
【0005】
特許文献3(CH707163)は、軸周りに軌道に沿って回る月の3次元表現が示され、その上に地球の表現が位置し得る、様々な機構の変化を記載している。しかし、月の表現の視覚性は制限され、他の異なる表示の可能性も比較的制限される。
【0006】
特許文献4(WO2006/050743)は、自動時計の巻上げ機構を記載している。時計が「装飾物」になり得ることを考慮しながらも、この文献は、本発明の意味における第2装飾物を開示していない。
【0007】
特許文献5(WO2013/004782)は、バネ付きテンプが外側リングの内側で枢動するように取り付けられた内側リングによって支持される「カルダン」トゥールビヨンを開示している。またしても、バネ付きテンプが「装飾物」であり得ることを考慮しながらも、本発明の意味における第2装飾物はそこに開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2988866号明細書
【特許文献2】スイス国特許発明第708473号明細書
【特許文献3】スイス国特許発明第707163号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/050743号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2013/004782号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は上記の欠点が少なくとも部分的に克服されるアニメーション機構を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
より具体的には、本発明は、請求項1によって定義されるようなアニメーション機構に関する。この機構は、駆動源の直接的又は間接的な影響の下で第1回転軸線周り及び第2回転軸線周りの回転によってアニメーション化されることを意図した第1装飾物を支持する支持システムを備える。駆動源は、機械的又は電気的であり、機構に専用のものであってもよいし、時計の駆動力を供給するものであってもよい。
【0011】
前記支持システムは、前記第1回転軸線周りにケージ要素に枢動するように取り付けられた第1フレームと、前記第1回転軸線に対してほぼ直交する前記第2回転軸線周りに前記第1フレーム内で枢動するように取り付けられた内部フレームとを備え(すなわち、前記内部フレームは前記第1フレームに枢着され、したがってカルダンシステムを定義する)、前記内側のフレームは第2装飾物を直接的又は間接的に支持する。前記内側フレーム(したがって、前記第1装飾物)は、前記駆動源によって直接的又は間接的に駆動されるように配置された駆動ホイールに共回り可能に固定された偏心駆動要素によって駆動されるように配置されている。
【0012】
これらの手段により、独創的なアニメーションが得られ、このように得られた上記2つの軸線の往復運動により、2つの装飾物を良好に視覚化することができる。このアニメーションは、特に装飾物が星に関する表現である場合、多数の可能性を表現できるが、これは発明の詳細な説明により明らかになるであろう。
【0013】
有利には、前記第1装飾物は、第3回転軸線周りに前記内部フレーム内で枢動するように取り付けられたシャフトによって支持され、前記シャフトは、回転によってアニメーション化されるように固着又は配置でき前記駆動ホイールに対して同軸状である歯と噛み合うピニオンに共回り可能に固定される。したがって、第1装飾物は自身の回転軸線周りに枢動することができる。
【0014】
別の変形では、前記第1装飾物は、上述のシャフトによって規定される第3回転軸線周りに枢動的に取り付けられた補助フレームによって支持される。前記補助フレームは、該内部フレームに支持された中間伝動部によって回転駆動されるように配置され、かつ前記シャフトに共回り可能に固定された歯付き機素によって駆動されるように配置される。
【0015】
第1装飾物は、必要があれば、このようにシャフトの回転速度とは異なる回転速度で枢動するように配置されることができる。
【0016】
有利には、前記偏心駆動要素は、クランク又はレバーであり、これは、比較的単純で容易に実施可能な解決策を代表する。
【0017】
有利には、前記第2装飾物は、前記第1装飾物の周りに軌道運動を行うように配置される。その場合、前記第2装飾物は、前記第3回転軸線周りに枢動するように配置された回転プレートによって支持されることができる。
【0018】
有利には、前記回転プレートは、前記回転プレートに枢動的に取り付けられ、且つ一方で該シャフトに対して一緒に回転するよう固定された歯付き機素と噛み合い、また他方で該内部フレームに共回り可能に固定された補助固着ホイールと噛み合うホイールによって、回転駆動する。前記シャフトが枢動する時、前記プレートはこのように回転駆動され、前記第2装飾物は第1装飾物の周りを軌道に沿って回る。
【0019】
有利には、前記第2装飾物は、それ自身の軸線周りに回転を行うように配置されることで、構成者にアニメーションに関する多くの可能性を与える。
【0020】
有利には、前記第2装飾物は、前記内部フレームの平面に対して上昇及び下降できるように配置される。これにより、特に、月の軌道が地球の赤道と共線でないという事実を表現すること又は単純にこの方法で別の物体をアニメーション化することを可能にする。
【0021】
有利には、該機構は、第1装飾物の一部を囲むカバーをさらに備える。これは、例えば、第1装飾物が太陽の表現であり、第2装飾物が地球の表現である場合に、地球の照明された部分を示すのに有用である。
【0022】
有利には、該枢動ガードは、前記第2装飾物に対して枢動するように配置される。これは、前記第1装飾物が地球の表現であり、前記第2装飾物が月の表現である場合に、月相などを示すのに有用である。その場合、前記枢動カバーは、前記シャフトに共回り可能に固定された歯付き機素によって回転駆動されるように配置されたホイールに共回り可能に固定されることができる。
【0023】
この機構は、特に時計に組み込むことを想定している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の他の詳細は、添付の図面を参照しながら、以下の説明を読めば、より明確に明らかになるであろう。
図1】本発明におけるアニメーション機構の概略的側面図であり、第1フレームは表されていない。
図2図1の機構の概略的平面図であり、視線は第1フレームの平面に対して直角である。
図3】本発明におけるアニメーション機構の変形例を示す、図1と同様の側面模式図である。
図4】本発明におけるアニメーション機構のさらに別の変形例を示す、図1と同様の概略的側面図である。
図5】本発明におけるアニメーション機構のさらに別の変形例を示す、図1と同様の概略的側面図である。
図6】本発明におけるアニメーション機構のさらに別の変形例を示す、図1と同様の概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1及び図2は、本発明によるアニメーション機構1の第1実施形態を示す。
【0026】
この第1実施形態は、特定の支持システム13によって支持される、第2装飾物23だけでなく第1装飾物11も備える。第1装飾物は3次元形状であり、宝石、その他の装飾物(彫刻、ガラス玉、石の一部など)又は、例えば地球の半球又は全体、任意の惑星、月、太陽、夜空の一部、任意のその他の星体の少なくとも一部分などを表現する星に関する表現であることができる。第2装飾物23は、第1装飾物11に対して中心がずれており、同様に立体的な形状(球体、半球等)である。それは、例えば、他の宝石や他の物体、第1装飾物11が地球の表現である場合の月の表現、第1装飾物11が太陽の表現である場合の惑星に関する表現、第1の物体が太陽の表現又は夜空の表現である場合の地球の表現、又は第1装飾物11が表現するものの衛星である他の物体の表現とすることができる。なお、前記装飾物11、23の各々は、支持システム13とは別個のものであり、ねじ、テンプ、脱進機、ばね、ホイール、支持体などの機能要素ではないことに留意されたい。言い換えれば、装飾物11、23は純粋に装飾的であり、運動又は支持機能のどちらにおいても、運動における機械的機能を有しないものである。
【0027】
支持システム13は、ケージ要素(図示せず)に対して装飾物11、23を、前記ケージに固着されるように配置された支持体13mに支持された一対のピボット13aによって連結する(図2参照)。
【0028】
これらのピボット13aは第1回転軸線A1を規定し、この第1回転軸線A1周りに図示された構造において概ね円形の環状リングによって形成された第1フレーム13b(図1を過剰にしないために図2のみに図示される)が枢動させられる。第1フレーム13bは、他の形態(楕円形、正方形、長方形など)も可能であり、完全なリングであることは義務付けられてはいない。このフレーム13bは、前記第1軸線A1に対して実質的に直交する第2回転軸線A2を規定する一対の中間ピボット13dを支持する。内部フレーム13fは、第1フレーム13bの内部でこの第2軸線A2の周りに枢動するように取り付けられ、第1装飾物11を支承する。内部フレーム13fは、図示の変形例では円形のプレートの形態をとっているが、他の形態(多角形、骨組み、その他の特別な形態)も可能である。
【0029】
図示の構造では、装飾物11は内部フレーム13fを貫通するシャフト13hによって支持される。前記シャフト13hは、前記内部フレーム13fに設けられた軸受13k内に取り付けられ、内部フレーム13fに対して枢動できる。
【0030】
上述の記載より、該支持システムは、カルダンジョイント支持を規定することで、内部フレーム13f及び2つの装飾物11、23に対して、軸線A1及びA2に関する2つの回転の自由度を付与し、並進の自由度はほぼないことが明らかである。内部フレーム13fに対するシャフト13hの枢動は、シャフト13hの幾何学的軸に対応する第3軸線A3周りに第3の回転の自由度を第1装飾物11に付与する。しかしながら、この第3の自由度は必須ではなく、その場合、第1装飾物11、及び随意的にシャフト13hも、内部フレーム13fに共回り可能に固定することができる。
【0031】
第3軸線A3周りの第1装飾物11の駆動は、シャフト13h内に固定されたピニオン13lの歯と、駆動ホイール15と同軸であり図示の構造においては固着されている円錐形の歯17との間の協力によって保証される。他の形態の歯も可能であり、例えば、クラウンリング又は他の特別なギアによって支持される内側円錐歯が挙げられる。さらに、歯17は、代替的に、シャーシに対して固着される代わりに、回転駆動されることも可能である。なお、第1装飾物11が内部フレーム13fに共回り可能に固定されている場合には、ピニオン13l及び歯17は存在しない。
【0032】
内部フレーム13f、したがって装飾物11及び23をアニメーション化するために、機構はさらに、駆動ばねを収容するバレル又は電気モータなどの駆動源5によって駆動されるように配置された歯付きホイール15aを備える駆動ホイール15、必要に応じて、駆動源5と駆動ホイール15との間に運動学的に介入できる任意な形態のトランスミッション9を備える。明らかに、補助的な歯付きホイールの介在、及び/又はベルトやチェーンなどの他の運動学的リンク形態の介在も可能である。駆動源5は、アニメーション機構専用とすることも、従来の時計ムーブメントの一部を構成することも可能である。
【0033】
その回転軸線A4が軸線A1及びA2の交点でほぼ交差するように配置された駆動ホイール15は、前記歯付きホイール15aに共回り可能に固定されシャフト15dによってそこに連結された偏心駆動要素15bもまた備える。図示のように偏心駆動要素15bはシャフト15d上に固着されたレバー又は曲げられたクランクの形態をとり、偏心要素15bの自由端はほぼ円形経路内にあるよう駆動させるためにシャフト13hの端部と協力し、シャフト13hの端部は、偏心要素の自由端に設けられた特別な軸受内で枢動できる。このようにして、駆動ホイール15が回転すると、内部フレーム13fは、回転の2つの自由度を有する複合運動によって駆動され、その振幅は、支持システム13の幾何学的形状と偏心駆動要素15bの半径とによって規定される。この運動は、軸線A1及びA2それぞれの周りに往復運動し、これにより、第1装飾物11の傾斜した軌道運動が生じる。
【0034】
同時に、シャフト13hに固定されたピニオン13lの歯が固着歯17上を転動し、これにより装飾物11が第3軸線A3の周りに枢動する。
【0035】
これらの手段により、装飾物11は、3つの軸線A1、A2、A3の周りに枢動する。
【0036】
駆動偏心15bの他の構造が可能であり、3つの回転軸線に関する所望の回転速度によって装飾物11をアニメーション化するために、ギア比が製作者の必要にあわせて適合され得ることは言うまでもないことである。
【0037】
また、随意的であるが、内部フレーム13fに固定される固着カバー25の存在も言及される。この固着カバー25は、例えば地球の影になる部分を隠すために、第1装飾物11の一部を覆うように配置される。
【0038】
上述したように、第3軸線A3周りの第1装飾物11の回転は必須ではない。その場合、固着歯17及びシャフト13hに固定されたピニオン13lは存在する必要がなく、したがって、第1装飾物11の動きは、2つの軸線A1及びA2周りの往復回転によってのみ規定される。
【0039】
次に第2装飾物23に移ると、シャフト13hには、これに共回り可能に固定された歯付き機素13nが装着されている。この歯付き機素13nは枢動カバー21aを有するホイール21と噛み合い、この枢動カバー21aは、第2装飾物23を部分的に囲みホイール21の軸線周りで枢動するように配置される。この変形例では、第2装飾物23は、内部フレーム13fに共回り可能に固定されており、したがって、それ自身の軸線周りに枢動しない。
【0040】
選択されたギア比及び駆動速度に応じて、この構造は、例えば、月の位相及び太陽によって照らされる地球のおおよその部分をリアルタイムで、又は加速アニメーションに従って(加速された現実に対応することも、空想的であることもできる)表現でき、何れの場合もカルダン運動は、(存在する場合には)それぞれのカバー21a及び25によって覆われている部分を除き、先行技術に関してより多くの角度から二つの装飾物11、23を見ることができる。
【0041】
しかしながら、簡略化された変形例では、要素13n及び21、及び/又は2つのカバー21a、25の一方、他方又は両方は、存在する必要はない。
【0042】
図3は、本発明によるアニメーション機構1の別の実施形態を示す。この変形例は、第2の物体23が内部フレーム13f上で軌道を描くように取り付けられる点で、図1及び図2のものとは異なる。第2の物体23及びそのカバー21aの軌道運動を得るために、該機構は、第2装飾物23を支持し且つ軸線A3周りに枢動できるようにシャフト13hに自由に取り付けられた回転プレート27をさらに備える。このプレート27はまたホイール21を支持しており、ホイール21は後者上で枢動するように取り付けられ、歯付き機素13nと噛み合う上側ホイール21b及び内部フレーム13fに固定された補助固着ホイール29と噛み合う下側ホイール21cを備える。ホイール21を構成する2つの歯付き機素21b、21cは、このようにしてプレート27の両側に配置される。
【0043】
第2装飾物23を支持するために、回転プレート27は、補助ホイール21bの一部を囲み、プレート27の見える側に第2装飾物23を位置するためにホイール21の中心を通って延びる延長部27aを備える。
【0044】
シャフト13h及び歯付き機素13nが枢動すると、ホイール21が回転駆動され、その下側ホイール21cが補助固着ホイール29上を転動する。このようにしてプレート27は軸線A3周りに枢動する。
【0045】
これらの手段により、第2装飾物23は第1装飾物11の周りを軌道に沿って回り、カバー21aは、第2装飾物23に対して上述したように移動する。
【0046】
図1及び図2の実施形態の文脈で上述したものと同じアニメーションも、この配置で得ることができる。
【0047】
図4は、本発明によるアニメーション機構1のさらに別の変形例を示しており、図3の変形例に対して第2装飾物23もそれ自身の軸線A5周りに枢動するように配置されている点で異なっている。これを行うために、第2装飾物23はホイール23aに共回り可能に固定され、このホイール23aはホイール21cに枢動するように取り付けられたサテライトホイール23bと噛み合い且つ差動ギアを形成するために補助ホイール21bに固定された補助歯21dと噛み合う。
【0048】
これらの手段により、第2装飾物23は、軸線A3周りで軌道に沿って回り、それ自身の軸線A5周りに枢動し、様々な構成要素の回転速度は、ギア比を変更することによって自由に選択できる。さらに、この変形例ではカバー2a、25は任意であり、軸A5は軸A3と平行であってもなくてもよく、これはすべての実施形態にも当てはまることは言うまでもない。
【0049】
この配置は、太陽に対する地球(又は他の惑星)の回転を実時間又は加速時間でアニメ化するのに特に適しているが、他のアニメーションも可能である。
【0050】
図5は、本発明によるアニメーション機構1の変形例を示しており、以下の本明細書で明らかになるように、図1図4のものとは異なっている。
【0051】
第1装飾物11は、シャフト13hによって支持される代わりに、軸線A3周りに枢動するように内部フレーム13fに取り付けられた補助フレーム13pによって支持される。このため、このフレーム13pは、歯付き機素13nから切り離されており、これら2つの要素13p、13nは、こうして互いに対して相対枢動することができる。第1装飾物11も補助フレーム13pに固定され、カバー21aは図1及び図2の実施形態と同様に配置されシャフト13hに固定された歯付き機素13nによって回転可能に駆動される。
【0052】
補助フレーム13pは、シャフト13hに固定されたピニオン13qから動力を得る任意な形式の中間伝動部31(ここでは、内部フレーム13fにおいて枢動される複数の中間ホイールで構成されている)によって軸線A3周りに駆動するのに役立つ周辺歯を備える。
【0053】
そのようにする際、2つの装飾物11、23のセットは軸線A3周りに枢動し、カバー21aの回転速度は、中間伝動部31のギア比、あるいは歯付き機素13nとホイール21との間の比を変更することにより、補助フレーム13pの回転速度に対して自由に選択することができる。
【0054】
図示しない変形例では、第1装飾物11は、補助フレーム13pの代わりにシャフト13hに共回り可能に固定され、これにより、2つの装飾物11、23は、異なる回転速度で軸線A3周りに枢動する。
【0055】
これらの配置により特に月の位相を表現することが可能になる。
【0056】
図6は、本発明によるアニメーション機構1のさらに別の変形例を示しており、図1及び図2のものとは以下のように異なっている。
【0057】
図6の機構1は、さらに、内部フレーム13fの平面に対して第2装飾物23を昇降させるように配置された昇降システム33を備える。
【0058】
この昇降システム33は、内部フレーム13fによって、その下側(すなわち、駆動ホイール15に面する側)で支持される。
【0059】
第2装飾物23は、ねじ山付きロッド33aによって支持され、このねじ山付きロッド33aは、ねじ山付きロッド33aが内部フレーム13fに対して枢動できないように、特別な手段(図示せず)によって前記内部フレーム13fに対して回転可能に割り出しされる。
【0060】
ねじ山付きロッド33aはねじ立て管33bに係合しており、その結果、ねじ立て管33bが軸線A5周りで一方向又は他方向へ回転することによって、ねじ山付きロッド33a及びそれによって第2装飾物23を、それぞれ上昇、下降させる。この回転は、図5の変形例と同様に、シャフト13hに共回り可能に固定された歯付き機素13qによって行われる中間伝動部31によって保証され、これが、後者と類似する要素が同じ参照符号を有する理由である。
【0061】
本変形例の中間伝動部31は、ねじ立て管33bに対して一緒に回転するよう固定され、且つ2つの反対の回転方向に枢動するように配置された対応する歯33c、33dと噛み合う部分的な歯31a、31bを有する2つのホイールからなる断続的なギアトレインを備える。部分的な歯31aを有する各ホイールは、その円周の半分にわたって延びる歯を有し、2つの歯は、2つのホイール31a、31bのそれぞれが反対の回転方向へ360°枢動することにより、先ずねじ立て管33bが一方のホイール31a、31bの制御の下で第1の回転方向へ駆動し、それからねじ立て管33bが他方のホイール31b、31aの制御の下で他方の回転方向へ駆動することを、対称的に、引き起こすように配置されている。一方のホイール31a、31bの回転方向を他方に対して逆向きにするため中間伝動部31の他の要素の詳細は当業者には容易に利用でき、ここでの説明を要しない。
【0062】
したがって、第2装飾物23は、機構1が動作している間上昇及び下降し、例えば、月の軌道は地球の赤道と同一平面ではないという事実に基づく地球の赤道面に対する月の動きを表すことができる。
【0063】
当然、本発明の枠組みを逸脱することなく、例えばオートマトンに類似するカムの組み合わせに基づいて、第2装飾物23を上昇及び下降させるための他の機構を例として想定することができる。
【0064】
本発明を特定の実施形態に関連して先に説明したが、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、他の追加の変形例も想定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(3)用のアニメーション機構(1)であって、駆動源(5)の影響の下で第1回転軸線(A1)並びに第2回転軸線(A2)の周りに回転されることを意図した第1装飾物(11)を支持する支持システム(13)を備え、
前記支持システム(13)は、前記第1回転軸線(A1)周りにケージ要素に枢動するように取り付けられた第1フレーム(13b)と、前記第1回転軸線(A1)に対してほぼ直交する前記第2回転軸線(A2)周りに前記第1フレーム(13b)内で枢動するように取り付けられた内部フレーム(13f)とを備え、前記内部フレーム(13f)は第2装飾物(23)を支持し、
前記内部フレーム(13f)は、前記駆動源(5)によって直接的又は間接的に駆動されるように配置された駆動ホイール(15b)に共回り可能に固定された偏心駆動要素(15b)によって駆動されるように配置される、アニメーション機構。
【請求項2】
請求項1に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)は第3回転軸線(A3)周りに前記内部フレーム(13f)内で枢動するように取り付けられたシャフト(13h)によって支持され、前記シャフト(13h)は前記駆動ホイール(15)に対して同軸状である歯(17)と噛み合うピニオン(13l)に共回り可能に固定され、前記歯(17)は回転されるように固着又は配置される、機構。
【請求項3】
請求項1に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)は前記内部フレーム(13f)内で枢動するように取り付けられたシャフト(13h)によって規定される第3回転軸線(A3)周りに枢動するように取り付けられた補助フレーム(13p)に支持され、前記シャフト(13h)は前記駆動ホイール(15)に対して同軸状である歯(17)と噛み合うピニオン(13l)に共回り可能に固定され、前記歯(17)は回転されるように固着又は配置され、前記補助フレーム(13p)は該内部フレーム(13f)によって支持された中間伝動部(31)によって回転駆動されるように配置され、また前記シャフト(13h)に共回り可能に固定された歯付き機素(13q)によって駆動されるように配置される、機構。
【請求項4】
請求項に記載の機構(1)において、前記偏心駆動要素(15b)はクランク又はレバーである、機構。
【請求項5】
請求項に記載の機構(1)において、前記第2装飾物(23)は前記第1装飾物(11)に対して軌道運動を行うように配置される、機構。
【請求項6】
請求項5に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)は第3回転軸線(A3)周りに前記内部フレーム(13f)内で枢動するように取り付けられたシャフト(13h)によって支持され、前記シャフト(13h)は前記駆動ホイール(15)に対して同軸状である歯(17)と噛み合うピニオン(13l)に共回り可能に固定され、前記歯(17)は回転されるように固着又は配置され、前記第2装飾物(23)は前記第3回転軸線(A3)周りに枢動するように配置された回転プレート(27)に支持される、機構。
【請求項7】
請求項5に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)は前記内部フレーム(13f)内で枢動するように取り付けられたシャフト(13h)によって規定される第3回転軸線(A3)周りに枢動するように取り付けられた補助フレーム(13p)に支持され、前記シャフト(13h)は前記駆動ホイール(15)に対して同軸状である歯(17)と噛み合うピニオン(13l)に共回り可能に固定され、前記歯(17)は回転されるように固着又は配置され、前記補助フレーム(13p)は該内部フレーム(13f)によって支持された中間伝動部(31)によって回転駆動されるように配置され、また前記シャフト(13h)に共回り可能に固定された歯付き機素(13q)によって駆動されるように配置され、及び前記第2装飾物(23)は前記第3回転軸線(A3)周りに枢動するように配置された回転プレート(27)に支持される、機構。
【請求項8】
請求項6に記載の機構(1)において、前記回転プレート(27)は、前記回転プレート(27)に枢動的に取り付けられ且つ一方で該シャフト(13h)に対して一緒に回転するよう固定された歯付き機素(13n)と噛み合い、また他方で該内部フレーム(13f)に共回り可能に固定された補助固着ホイール(29)と噛み合うホイール(21)によって、回転駆動するように配置される、機構。
【請求項9】
請求項7に記載の機構(1)において、前記回転プレート(27)は、前記回転プレート(27)に枢動的に取り付けられ、且つ一方で該シャフト(13h)に対して一緒に回転するよう固定された歯付き機素(13n)と、また他方で該内部フレーム(13f)に共回り可能に固定された補助固着ホイール(29)と噛み合うホイール(21)によって、回転駆動するように配置される、機構(1)。
【請求項10】
請求項に記載の機構(1)において、前記第2装飾物(23)はそれ自身の軸線(A5)周りに回転を行うように配置されている、機構。
【請求項11】
請求項に記載の機構(1)において、前記第2装飾物(23)は前記内部フレーム(13f)の平面に対して上昇及び下降することができるように配置される、機構。
【請求項12】
請求項に記載の機構(1)において、さらに、前記第2装飾物(23)の一部を囲むカバー(21a)を備える機構。
【請求項13】
請求項10に記載の機構(1)において、前記カバー(21a)は前記第2装飾物(23)の周りに枢動するように配置される、機構。
【請求項14】
請求項13に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)は第3回転軸線(A3)周りに前記内部フレーム(13f)内で枢動するように取り付けられたシャフト(13h)によって支持され、前記シャフト(13h)は前記駆動ホイール(15)に対して同軸状である歯(17)と噛み合うピニオン(13l)に共回り可能に固定され、前記歯(17)は回転されるように固着又は配置され、また前記枢動カバー(21a)は、前記シャフト(13h)に共回り可能に固定された歯付き機素によって回転駆動されるように配置されたホイール(21)に共回り可能に固定される、機構。
【請求項15】
請求項13に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)は前記内部フレーム(13f)内で枢動するように取り付けられたシャフト(13h)によって規定される第3回転軸線(A3)の周りに枢動するように取り付けられた補助フレーム(13p)に支持され、前記シャフト(13h)は前記駆動ホイール(15)に対して同軸状である歯(17)と噛み合うピニオン(13l)に共回り可能に固定され、前記歯(17)は回転されるように固着又は配置され、前記補助フレーム(13p)は該内部フレーム(13f)によって支持された中間伝動部(31)によって回転駆動されるように配置され、また前記シャフト(13h)に共回り可能に固定された歯付き器官(13q)によって駆動されるように配置され、及び前記枢動カバー(21a)は、前記シャフト(13h)に共回り可能に固定された歯付き機素によって回転駆動されるように配置されたホイール(21)に共回り可能に固定される、機構。
【請求項16】
請求項に記載の機構(1)において、前記第1装飾物(11)が第1の宝石又は第1の星に関する表現であり、前記第2装飾物(23)が第2の宝石又は第2の星に関する表現である、機構。
【請求項17】
請求項に記載の機構(1)を備える時計。
【国際調査報告】