IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルディアの特許一覧

特表2023-553737アキシャル3次元発光ダイオードを有する光電子デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】アキシャル3次元発光ダイオードを有する光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/08 20100101AFI20231218BHJP
   H01L 33/16 20100101ALI20231218BHJP
   H01L 33/44 20100101ALI20231218BHJP
   H01L 33/28 20100101ALI20231218BHJP
   H01L 33/30 20100101ALI20231218BHJP
   H01L 33/34 20100101ALI20231218BHJP
   H01L 33/10 20100101ALI20231218BHJP
   H01L 33/42 20100101ALI20231218BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/16
H01L33/44
H01L33/28
H01L33/30
H01L33/34
H01L33/10
H01L33/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537134
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021086030
(87)【国際公開番号】W WO2022129250
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】2013521
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ダーヌン,メディ
(72)【発明者】
【氏名】ナピエラーラ,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】クマレサン,ヴィシュヌヴァルダン
(72)【発明者】
【氏名】ジレ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】マーラ,マージョリー
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA11
5F241CA05
5F241CA12
5F241CA33
5F241CA34
5F241CA40
5F241CA41
5F241CA65
5F241CA66
5F241CA88
5F241CB15
5F241CB23
5F241CB29
5F241FF01
(57)【要約】
本開示は、光電子デバイス(10)に関し、光電子デバイス(10)は、発光スペクトルに第1の波長における最大値が含まれる電磁放射線を放出するように構成された活性領域(20)をそれぞれ備えるアキシャル発光ダイオード(LED)のアレイ(15)を備える。デバイスは、各LEDの被覆材(23)をさらに備え、被覆材(23)は、LEDの少なくとも一部にわたってLEDの側壁を囲む第1の材料で作られ、前記放射線に対して透明であり、各被覆材は10nmよりも大きい厚さを有する。デバイスは、被覆材の間に層(24)をさらに備え、層(24)は、第1の材料とは異なる第2の材料で作られ、前記放射線に対して透明であり、第2の材料は電気絶縁性であり、アレイはフォトニック結晶を形成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイス(10)であって、発光スペクトルに第1の波長における最大値が含まれる電磁放射線を放出するように構成された活性領域(20)をそれぞれ備えるアキシャル発光ダイオード(LED)のアレイ(15)を備え、前記デバイスは、前記発光ダイオード毎に、前記放射線に対して透明な、前記発光ダイオードの少なくとも一部にわたって前記発光ダイオードの側壁を囲む第1の材料で作られた被覆材(23)をさらに備え、前記被覆材の各々は10nmよりも大きい厚さを有し、前記デバイスは、前記被覆材の間に、前記放射線に対して透明な、前記第1の材料とは異なる第2の材料の層(24)をさらに備え、前記第2の材料は電気絶縁性であり、前記アレイはフォトニック結晶を形成する、
光電子デバイス。
【請求項2】
前記被覆材(23)の各々は、20nmよりも大きい厚さを有する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の波長における前記第1の材料の屈折率は、前記第1の波長における前記第2の材料の屈折率よりも厳密には大きい、
請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の波長における前記第1の材料の屈折率と、前記第1の波長における前記第2の材料の屈折率との差は、0.5よりも大きい、
請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記発光ダイオード(LED)の各々は、第3の材料の半導体素子(22)を備え、少なくとも部分的に前記被覆材(23)によって囲まれており、前記第1の材料の屈折率と前記第3の材料の屈折率との差は、0.5よりも小さく、好ましくは0.3よりも小さい、
請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の材料は、電気絶縁性である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記発光ダイオード(LED)毎に、前記被覆材(23)と前記発光ダイオード(LED)との間に介在する電気絶縁性コーティング(36)をさらに備え、前記コーティングの厚さは10nmよりも小さい、
請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記発光ダイオード(LED)の各々は、III-V族化合物、II-VI族化合物、またはIV族半導体もしくは化合物の部分(18、22)を備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の材料は窒化ケイ素または酸化チタンである、
請求項1~8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第2の材料は酸化ケイ素である、
請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記フォトニック結晶は、少なくとも第2の波長(λT1)で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されており、前記第2の波長(λT1)は、前記第1の波長とは異なるか、または前記第1の波長に等しい、
請求項1~10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
発光ダイオード(LED)が載置された支持体(12)を備え、前記発光ダイオードの各々は、前記支持体上に載置された第1の半導体部分(18)と、前記第1の半導体部分に接触した活性領域(20)と、前記活性領域(20)に接触した第2の半導体部分(22)との積層体を備える、
請求項1~11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記支持体(12)と前記発光ダイオード(LED)の第1の半導体部分(18)との間に反射層(14)を備える、
請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記反射層(14)は金属である、
請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記発光ダイオード(LED)の第2の半導体部分(22)は、前記発光ダイオード(LED)によって放出される放射線に対して少なくとも部分的に透明な導電層(26)で覆われている、
請求項12~14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
活性領域(20)をそれぞれ備えるアキシャル発光ダイオード(LED)を備える光電子デバイス(10)を設計するための方法であって、
前記光電子デバイス(10)の第1のターゲット波長を決定するステップと、
活性領域(20)の各々が、発光スペクトルに前記第1のターゲット波長が含まれる電磁放射線を放出するように、前記発光ダイオードの寸法を決定するステップと、
前記第1のターゲット波長で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するフォトニック結晶を得るために、前記発光ダイオードのアレイ(15)の寸法を決定するステップであって、前記発光ダイオード毎に、前記放射線に対して透明な、前記発光ダイオードの少なくとも一部にわたって前記発光ダイオードの側壁を囲む第1の材料の被覆材(23)を備え、前記被覆材の各々が10nmよりも大きい厚さを有し、前記被覆材(23)の間に、前記放射線に対して透明な、第1の材料とは異なる第2の材料の層(24)をさらに備え、前記第2の材料が電気絶縁性であるステップと
を含む、
方法。
【請求項17】
発光スペクトルに第1の波長における最大値が含まれる電磁放射線を放出するように構成された活性領域(20)をそれぞれ備えるアキシャル発光ダイオード(LED)のアレイ(15)を備える光電子デバイス(10)の製造方法であって、前記デバイスは、前記発光ダイオード毎に、前記放射線に対して透明な、前記発光ダイオードの少なくとも一部にわたって前記発光ダイオードの側壁を囲む第1の材料で作られた被覆材(23)をさらに備え、前記被覆材の各々は10nmよりも大きい厚さを有し、前記デバイスは、前記被覆材の間に、前記放射線に対して透明な、前記第1の材料とは異なる第2の材料で作られた層(24)をさらに備え、前記第2の材料は電気絶縁性であり、前記アレイはフォトニック結晶を形成する、
方法。
【請求項18】
前記発光ダイオード(LED)を形成することは、
前記アレイのピッチによって互いに分離される第2の半導体部分(22)を基板(42)上に形成するステップと、
活性領域(20)を前記第2の半導体部分の各々上に形成するステップと、
第1の半導体部分(18)を前記活性領域の各々上に形成するステップと、
前記第1の半導体部分、および/または前記第2の半導体部分、および/または前記活性領域の少なくとも一部の側壁を囲む第1の材料の被覆材(23)を、前記発光ダイオード毎に形成するステップと、
第2の材料の層(24)を形成するステップと
を含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基板(42)を除去するステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電子デバイス、特に、半導体材料をベースとした発光ダイオード(LED)を備える表示スクリーンまたは画像投影デバイス、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料をベースとしたLEDは、一般に、LEDによって提供される電磁放射線の大部分が放出されるLED領域である活性領域を含む。活性領域の構造および組成は、所望の特性を有する電磁放射線を提供するように適合される。
【0003】
ここで特に関心のあるのは、アキシャル型3次元LED、すなわち、それぞれが3次元半導体素子を備え、好ましい方向に沿って延び、3次元半導体素子の軸方向端部に活性領域を備えるエレクトロルミネッセンスダイオードを有する光電子デバイスである。
【0004】
3次元半導体素子の例としては、以下III-V化合物と称する、少なくとも1つのIII族元素および1つのV族元素を過半数とする半導体材料(窒化ガリウム(GaN)など)、以下II-VI化合物と称する、少なくとも1つのII族元素および1つのVI族元素を過半数とする半導体材料(酸化亜鉛(ZnO)など)、または、少なくとも1つのIV族元素を過半数とする半導体材料を備えるマイクロワイヤまたはナノワイヤがある。このようなデバイスは、例えば、仏国特許出願公開第2995729号明細書および仏国特許出願公開第2997558号明細書に記載されている。
【0005】
閉じ込め手段、特に単一量子井戸または多重量子井戸を含む活性領域の形成が知られている。単一量子井戸は、III-V族化合物、特にGaNなどの第1の半導体材料の2つの層(P型およびN型がそれぞれドープされた)の間に、III-V族化合物の合金および第3の元素、特にInGaNなどの第2の半導体材料(バンドギャップが第1の半導体材料と異なる)の層を挿入することにより作られる。多重量子井戸構造は、量子井戸と障壁層とを交互に形成する半導体層の積層体を備える。
【0006】
光電子デバイスの活性領域によって放出される電磁放射線の波長は、特に活性領域の寸法に依存し、特に活性領域の平均直径に依存する。さらに、活性領域の量子効率は、特に、活性領域を構成する層の結晶品質に依存する。活性領域を構成する層の結晶品質は、活性領域の平均直径が大きくなるにつれて劣化する傾向がある。
【0007】
LEDは、フォトニック結晶を形成するように、LEDアレイに配置することができる。特に、フォトニック結晶により、好ましい方向に沿ってLEDアレイによって放出される光ビームを得ることが可能となる。また、フォトニック結晶により、LEDアレイによって放出される放射線の波長をフィルタリングして、例えば、狭スペクトルの放射線の放出を促進することが可能となる。特に、フォトニック結晶の特性は、LEDアレイのLEDのピッチ、およびLEDの平均直径に依存する。
【0008】
一つの欠点は、適切な結晶品質を可能にしながら、所望の波長で各LEDからの好ましい放射線の放出を可能にするLEDの平均直径が、所望の特性を有するフォトニック結晶を得ることを可能にする平均LED直径と異なる場合があるということである。
【発明の概要】
【0009】
したがって、一実施形態の目的は、上述したLED光電子デバイスの欠点の全部または一部に対処することである。
【0010】
一実施形態の他の目的は、各LEDの活性領域が、III-V族化合物、II-VI族化合物、またはIV族半導体もしくは化合物をベースとした半導体材料の層の積層体を備えることである。
【0011】
一実施形態のさらなる目的は、III-V族化合物、II-VI族化合物、またはIV族半導体もしくは化合物をベースとしたアキシャル型三次元LEDの活性領域の発光スペクトルが所望の特性を有することである。
【0012】
一実施形態のさらなる目的は、光電子デバイスが所望の特性を有するフォトニック結晶を形成するLEDアレイを備えることである。
【0013】
一実施形態の他の目的は、LEDの活性領域が良好な結晶品質を有することである。
【0014】
一実施形態は、アキシャルLEDのアレイを備える光電子デバイスを提供し、各LEDは、発光スペクトルに第1の波長における最大値が含まれる電磁放射線を放出するように構成された活性領域を備える。デバイスは、LED毎に、前述した放射線に対して透明な、LEDの少なくとも一部にわたってLEDの側壁を囲む第1の材料の被覆材をさらに備え、各被覆材は10nmよりも大きい厚さを有する。デバイスは、被覆材の間に、前述した放射線に対して透明な、第1の材料とは異なる第2の材料の層をさらに備え、第2の材料は電気絶縁性であり、このアレイはフォトニック結晶を形成する。フォトニック結晶の特性は、特に結合を達成し選択効果を高めるために、コーティングされたLEDのアレイが共振空洞を形成するように有利に選択される。これにより、フォトニック結晶を形成しない被覆されたLEDのグループと比較して、光電子デバイスの発光面によってアレイの被覆されたLEDのグループによって放出される放射線の強度を、特定の波長において増幅することができる。
【0015】
これにより、第一近似としてLEDピッチと被覆材・LEDの集合体の平均外径とに基本的に依存するフォトニック結晶の特性を、第一近似として被覆材がない場合のLEDの平均直径に基本的に依存するLEDの活性領域の発光特性から解離することが可能となる。
【0016】
一実施形態によれば、各被覆材は20nmよりも大きい厚さを有する。これにより、被覆材がないLEDアレイと比較して、被覆材によってフォトニック結晶の光学特性を変化させることができる。
【0017】
一実施形態によれば、第1の波長における第1の材料の屈折率は、第1の波長における第2の材料の屈折率よりも厳密には大きい。これにより、被覆材がないLEDアレイと比較して、被覆材により、フォトニック結晶の光学特性を変化させることができる。
【0018】
一実施形態によれば、第1の波長における第1の材料の屈折率と第1の波長における第2の材料の屈折率との差は、0.5よりも大きい。第1の波長における第1の材料の屈折率と第1の波長における第2の材料の屈折率との差が大きければ大きいほど、フォトニック結晶がより効率的であり、被覆材の厚さを変えることによりフォトニック結晶の特性を変えることがより容易である。
【0019】
一実施形態によれば、各LEDは、第3の材料で作られた半導体素子を備え、少なくとも一部が前述した被覆材に囲まれており、第1の材料の屈折率と第3の材料の屈折率との差は0.5よりも小さく、好ましくは、0.3よりも小さい。これにより、第1の材料と第3の材料との間に屈折率の均一性が得られ、効率的なフォトニック結晶の形成が可能となり、光電子デバイスの設計を簡略化することが可能となる。
【0020】
一実施形態によれば、第1の材料は電気絶縁性である。そして、LEDの様々な部分の短絡からの保護は、被覆材によって達成される。
【0021】
一実施形態によれば、光電子デバイスは、LED毎に、被覆材とLEDとの間に介在する電気絶縁性コーティングをさらに備え、コーティングの厚さは10nmよりも小さい。LEDの個々の部分の短絡に対する保護は、電気絶縁性コーティングによって達成されるため、被覆材は絶縁材料でなくてもよい。これにより、有利には、被覆材を構成する材料の選択の自由度がさらに高まる。
【0022】
一実施形態によれば、各LEDは、III-V族化合物、II-VI族化合物、またはIV族半導体もしくは化合物の一部を備える。これにより、既知の方法に従ってLEDを製造することが可能となる。
【0023】
一実施形態によれば、第1の材料は窒化ケイ素または酸化チタンである。これにより、第1の波長における屈折率が、LEDを構成する材料の第1の波長における屈折率に近い第1の材料を使用することが可能となる。
【0024】
一実施形態によれば、第2の材料は酸化ケイ素である。これにより、第1の材料の第1の波長における屈折率と、第2の材料の第2の波長における屈折率との大きい差を得ることが可能となる。
【0025】
一実施形態によれば、フォトニック結晶は、少なくとも第2の波長で前述した電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されており、第2の波長は、第1の波長と異なるか、または第1の波長に等しい。有利には、共振ピークが第1の波長にある場合、第1の波長で放出される放射線の強度が増加し、発光スペクトルが狭くなり、第1の波長を中心とするようになる。アレイの寸法と各LEDの寸法とを解離させることで、第1の波長で共振ピークを形成するフォトニック結晶を設計することが容易になる。
【0026】
一実施形態によれば、光電子デバイスは、LEDが載置された支持体を備え、各LEDは、支持体上に載置された第1の半導体部分、第1の半導体部分に接触した活性領域、および活性領域に接触した第2の半導体部分の積層体を備える。
【0027】
一実施形態によれば、デバイスは、支持体とLEDの第1の半導体部分との間に反射層を備える。これにより、光電子デバイスからの光の取り出しが改善される。
【0028】
一実施形態によれば、反射層は金属である。
【0029】
一実施形態によれば、LEDの第2の半導体部分は、LEDによって放出される放射線に対して少なくとも部分的に透明な導電層で覆われている。
【0030】
また、一実施形態は、活性領域をそれぞれ備えるアキシャルLEDを備える光電子デバイスを設計するための方法を提供し、方法は、
各活性領域が、発光スペクトルに第1の波長における最大値が含まれる電磁放射線を放出するように、LEDの寸法を決定するステップと、
フォトニック結晶を得るために、前述したLEDのアレイの寸法を決定するステップとを含み、
アレイは、LED毎に、前述した放射線に対して透明な、LEDの少なくとも一部にわたってLEDの側壁を囲む第1の材料の被覆材を備え、各被覆材は10nmよりも大きい厚さを有し、被覆材の間に第1の材料とは異なる第2の材料の層をさらに備え、第2の材料は電気絶縁性である。
【0031】
また、一実施形態は、発光スペクトルに第1の波長における最大値が含まれる電磁放射線を放出するように構成された活性領域をそれぞれ備えるアキシャルLEDのアレイを備える光電子デバイスの製造方法を提供し、デバイスは、LED毎に、前述した放射線に対して透明な、LEDの少なくとも一部にわたってLEDの側壁を囲む第1の材料で作られた被覆材をさらに備え、各被覆材は10nmよりも大きい厚さを有し、デバイスは、被覆材の間に第1の材料とは異なる第2の材料で作られた層をさらに含み、第2の材料は電気絶縁性であり、アレイはフォトニック結晶を形成する。
【0032】
一実施形態によれば、LEDを形成することは、
アレイのピッチによって互いに分離される第2の半導体部分を基板上に形成するステップと、
活性領域を各第2の半導体部分上に形成するステップと、
第1の半導体部分を各活性領域上に形成するステップと、
第1の部分、および/または第2の部分、および/または活性領域の少なくとも一部の側壁を囲む第1の材料の被覆材を、LED毎に形成するステップと、
第2の材料の層を形成するステップと
を含む。
【0033】
一実施形態によれば、方法は、基板を除去するステップを含む。これにより、LEDの形成に適合する基板を使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
上記および他の特徴および利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0035】
図1】LEDを備える光電子デバイスの一実施形態の概略部分断面図である。
図2図1に示す光電子デバイスの概略部分透視図である。
図3図1に示す光電子デバイスのLEDの配置の一例を模式的に示す図である。
図4図1に示す光電子デバイスのLEDの配置の他の例を模式的に示す図である。
図5】LEDを備える光電子デバイスの他の実施形態の概略部分断面図である。
図6】放出される放射線の波長および方向に応じた、フォトニック結晶の被覆されていないLEDによって放出される光強度のグレースケール・マップである。
図7】放出される放射線の波長および方向に応じた、フォトニック結晶の被覆されたLEDによって放出される光強度のグレースケール・マップである。
図8】被覆されていないLEDと被覆されたLEDとについて第1の方向に沿って測定された波長に応じた、LEDのアレイによって放出される放射線の光強度の進化曲線を示す。
図9】被覆されたLEDについて第2の方向に沿って測定された波長に応じた、LEDアレイから放出される放射線の光強度の曲線を示す図である。
図10A図1に示す光電子デバイスの製造方法の一実施形態のステップを示す図である。
図10B】製造方法の他のステップを示す図である。
図10C】製造方法の他のステップを示す図である。
図10D】製造方法の他のステップを示す図である。
図10E】製造方法の他のステップを示す図である。
図10F】製造方法の他のステップを示す図である。
図10G】製造方法の他のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
同様の特徴は、様々な図面で同様の参照符号によって指定されている。特に、様々な実施形態の間で共通である構造的および/または機能的特徴は、同じ参照符号を有し得、同一の構造的、寸法的および材料的特性を有し得る。明確にするために、本明細書に記載された実施形態の理解に有用な動作及び要素のみが図示され、詳細に説明されている。特に、考慮される光電子デバイスは、詳述しない他の構成要素を含み得る。
【0037】
以下の開示では、特に指定しない限り、「前」、「後」、「頂部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置、若しくは「の上」、「の下」、「上側」、「下側」などの相対位置を修飾する用語、または「水平」、「垂直」などの方向を修飾する用語に言及する場合、図に示された向き、または通常の使用位置にある光電子デバイスを参照する。
【0038】
特に指定されていない場合、「約」、「略」、「実質的に」および「程度」という表現は、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。さらに、「絶縁体」および「導体」という用語は、本明細書では、それぞれ「電気絶縁性」および「導電性」を意味すると理解される。
【0039】
以下の説明では、層の内部透過率は、層から出る放射線強度と層に入る放射線強度との比である。層の吸収率は、1と内部透過率との差に等しい。本明細書の残りの部分では、層を通る放射線の吸収率が60%よりも小さい場合、層は放射線に対して透明であるという。本明細書の残りの部分では、層における放射線の吸収率が60%よりも大きい場合、層は放射線に対して吸収性を有するという。放射線が、最大値を有するガウス型スペクトルなどの一般的に「ベル型」のスペクトルを有する場合、放射線の波長、または放射線の中心波長もしくは主波長は、スペクトルの最大値に達する波長と呼ばれる。本明細書の残りの部分では、材料の屈折率は、光電子デバイスによって放出される放射線の波長範囲に対する材料の屈折率を指す。特に指定しない限り、屈折率は、有用な放射線の波長範囲にわたって実質的に一定であると考えられ、例えば、光電子デバイスによって放出される放射線の波長範囲にわたる屈折率の平均に等しい。
【0040】
アキシャルLEDとは、円筒形など、好ましい方向に沿って細長い形状の3次元構造を意味し、該3次元構造は、5nmと2.5μmとの間、好ましくは50nmと2.5μmとの間の、マイナーディメンジョンと呼ばれる少なくとも2つの寸法を有する。メジャーディメンションと称される第3の寸法は、最大のマイナーディメンションの1倍以上、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上である。いくつかの実施形態では、マイナーディメンションは、約1μm以下、好ましくは100nmと1μmとの間、より好ましくは100nmと800nmとの間であってよい。いくつかの実施形態では、各LEDの高さは、500nm以上、好ましくは1μmと50μmとの間であってもよい。
【0041】
図1及び図2は、それぞれ、LEDを有する光電子デバイス10の一実施形態を示す概略部分側断面図及び概略部分透視図である。
【0042】
図1において下から上へ、光電子デバイス10は、以下の要素を備える:
・ 支持体12;
・ 支持体12上に載置され、上面16を有する第1の電極層14;
・ 上面16上に載置されたアキシャル発光ダイオードLEDのアレイ15:各アキシャルLEDは、図1において下から上へ、電極層14に接触した下側半導体部分18(図2に示されない)と、半導体部分18に接触した活性領域20(図2に示されない)と、活性領域20に接触した上側半導体部分22(図2に示されない)とを備える;
・ 各アキシャル発光ダイオードLEDの絶縁性被覆材23(図2に示されない):発光ダイオードLEDの高さの少なくとも一部にわたって発光ダイオードLEDの側壁を囲む第1の絶縁材料で作られており、発光ダイオードLEDと発光ダイオードLEDを囲む絶縁性被覆材23とを備える集合体は、被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’を形成し、図2に被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’の外形のみが示されている;
・ 被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’の高さ全体にわたって被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’の間に延びる第2の絶縁材料の絶縁層24;
・ 発光ダイオードLEDの上側部分22に接触して発光ダイオードLEDを覆う第2の電極層26(図2に示されない);および
・ 第2の電極層26を覆い、光電子デバイス10の発光面30を画定するコーティング28(図2に示されない)。
【0043】
各発光ダイオードLEDは、活性領域20が下側部分18の延伸部にあり、上側部分22が活性領域20の延伸部にあるという点で、アキシャルであると言われ、下側部分18、活性領域20および上側部分22を備える集合体は、アキシャルLEDの軸と呼ばれる軸Δに沿って延びている。好ましくは、発光ダイオードLEDの軸は、平行し、面16に直交する。
【0044】
支持体12は、電子回路に対応してもよい。電極層14は、銀、銅、または亜鉛などの金属であってもよい。一例として、電極層14は、0.01μmと10μmとの間の厚さを有する。電極層14は、支持体12を完全に覆ってもよい。変形例では、電極層14は、LEDアレイのLEDグループの別個の制御を可能にするように、分離した部分に分割されてもよい。一実施形態によれば、面16は、反射性であってもよい。そして、電極層14は、鏡面反射を示してもよい。他の実施形態によれば、電極層14は、ランバート反射を示してもよい。ランバート反射を示す表面を実現する1つの方法は、導電性表面上に凹凸を形成することである。一例として、面16がベース上に載置された導電層の表面に対応する場合、一旦堆積された金属層の面16がレリーフを有するように、金属層の堆積前にベースの表面のテクスチャリングを行うことができる。
【0045】
第2の電極層26は、導電性で透明である。一実施形態によれば、電極層26は、インジウムスズ酸化物(またはITO)、アルミニウムもしくはガリウムでドープされたかもしくはドープされない酸化亜鉛、またはグラフェンなどの透明で導電性の酸化物(TCO)層である。一例として、電極層26は、5nmと200nmとの間、好ましくは20nmと50nmとの間の厚さを有する。コーティング28は、1つの光学フィルタ、または互いに隣り合って配置された複数の光学フィルタを含んでもよい。
【0046】
図1および図2に示す実施形態では、全ての発光ダイオードLEDが同じ高さを有する。例えば、絶縁層24の厚さは、絶縁層24の上面がLEDの上面と面一になるように、発光ダイオードLEDの高さに等しいように選択される。
【0047】
一実施形態によれば、半導体部分18および22ならびに活性領域20は、少なくとも一部が半導体材料で作られている。半導体材料は、III-V族化合物、II-VI族化合物、およびIV族半導体もしくは化合物からなる群から選択される。III族元素の例としては、ガリウム(Ga)、インジウム(In)またはアルミニウム(Al)が挙げられる。V族元素の例としては、窒素(N)、リン(P)または砒素(As)が挙げられる。III-N化合物の例は、GaN、AlN、InN、InGaN、AlGaNまたはAlInGaNである。II族元素の例としては、ベリリウム(Be)およびマグネシウム(Mg)を含むIIA族元素、ならびに亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、および水銀(Hg)を含むIIB族元素が挙げられる。VI族元素の例としては、酸素(O)およびテルル(Te)を含むVIA族元素が挙げられる。II-VI族化合物の例は、ZnO、ZnMgO、CdZnO、CdZnMgO、CdHgTe、CdTeまたはHgTeである。一般に、III-VまたはII-VI化合物の元素は、異なるモル分率で組み合わせることができる。IV族半導体材料の例は、ケイ素(Si)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素(SiC)合金、シリコンゲルマニウム(SiGe)合金、または炭化ゲルマニウム(GeC)合金である。半導体部分18、22は、ドーパントを含んでもよい。一例として、III-V化合物の場合、ドーパントは、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)もしくは水銀(Hg)などのII族P型ドーパント、炭素(C)などのIV族P型ドーパント、またはケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、硫黄(S)、テルビウム(Tb)もしくは錫(Sn)などのIV族N型ドーパントからなる群から選択されてもよい。好ましくは、半導体部分18はPドープGaNであり、半導体部分22はNドープGaNである。
【0048】
発光ダイオードLED毎に、活性領域20は封じ込め手段を含んでもよい。一例として、活性領域20は、単一量子井戸を含んでもよい。そして、活性領域20は、半導体部分18および22を形成する半導体材料とは異なる半導体材料を含み、半導体部分18および22を形成する材料のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを有する。活性領域20は、多重量子井戸を備えてもよい。この場合、量子井戸と障壁層とを交互に形成する半導体層の積層体を備える。
【0049】
図1および図2において、各発光ダイオードLEDは、円形底面およびΔ軸を有する筒形状を有する。しかし、各発光ダイオードLEDは、Δ軸と、正方形、長方形、または六角形のような多角形底面とを有する筒形状を有してもよい。好ましくは、各発光ダイオードLEDは、六角形底面を有する筒形状を有する。
【0050】
下側部分18の高さh1、活性領域20の高さh2、上側部分22の高さh3、電極層26の厚さ、およびコーティング28の厚さの合計を、発光ダイオードLEDの高さHと称する。
【0051】
絶縁性被覆材23を構成する第1の絶縁材料は、発光ダイオードLEDによって放出される放射線の波長に対して透明である。第1の絶縁材料の屈折率は、第2の絶縁材料の屈折率よりも厳密には大きい。一実施形態によれば、被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’は、フォトニック結晶を形成するように配置される。効果的なフォトニック結晶を有するためには、第1の絶縁材料と第2の絶縁材料との間に最大の屈折率ギャップを有することが望ましい。好ましくは、光学的観点から、被覆材23がLEDの下側部分18および上側部分22の「延伸部」を形成するために、第1の絶縁材料の屈折率と、LEDの下側部分18および上側部分22を構成する材料の屈折率との差ができるだけ小さい。第1の絶縁材料の屈折率と第2の絶縁材料の屈折率との差は、好ましくは0.5よりも大きく、より好ましくは0.6よりも大きく、理想的には1よりも大きい。好ましくは、第1の絶縁材料の屈折率とLEDの下側部分18および上側部分22を構成する材料の屈折率との差は0.5よりも小さく、好ましくは0.3よりも小さい。LEDの下側部分18および上側部分22を構成する材料がGaN系である場合、第1の絶縁材料の屈折率は、好ましくは2と2.5との間である。一実施形態によれば、絶縁性被覆材23を構成する第1の絶縁材料は、窒化ケイ素(Si)、または酸化チタン(TiO)である。一実施形態によれば、絶縁性被覆材23は、対応する発光ダイオードLEDの下側部分18、活性領域20、および上側部分22の全体にわたって延びている。他の実施形態によれば、絶縁性被覆材23は、対応する発光ダイオードLEDの下側部分18、および/または活性領域20、および/または上側部分22の一部のみにわたって延びている。絶縁性被覆材23の厚さは、10nmよりも大きく、好ましくは15nmと150nmとの間であり、より好ましくは15nmと50nmとの間である。一般に、絶縁性被覆材23の厚さは、特にフォトニック結晶の所望の特性に応じて、大幅に変化することができる。一実施形態によれば、絶縁性被覆材23の厚さは実質的に一定である。しかしながら、絶縁性被覆材23は、発光ダイオードLEDの下側部分18、および/または活性領域20、および/または上側部分22の高さ全体にわたって存在しなくてもよい。
【0052】
一実施形態によれば、絶縁層24を構成する第2の絶縁材料は、発光ダイオードLEDによって放出される放射線の波長に対して透明である。第2の材料の屈折率は1.6よりも小さく、好ましくは1.3と1.56との間である。絶縁層24は、酸化ケイ素(SiO)などの無機材料で作られてもよい。絶縁層24は、有機材料、例えば、ベンゾシクロブテン(BCB)またはパリレン系の絶縁性ポリマーであってもよい。
【0053】
一実施形態によれば、被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’は、フォトニック結晶を形成するように配置される。図2には12個の被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’が例として示されているが、実際には、アレイ15は、7~100,000個の被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’を備えてもよい。
【0054】
アレイ15の被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’は、行および列に配置されている(図2には、3行および4列が例として示されている)。アレイ15のピッチ「a」は、被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’の軸と、同じ行または隣接する行にある近くの被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’の軸との間の距離である。ピッチaは実質的に一定である。より具体的には、アレイのピッチaは、アレイ15がフォトニック結晶を形成するように選択される。形成されるフォトニック結晶は、例えば、2次元フォトニック結晶である。
【0055】
アレイ15によって形成されるフォトニック結晶の特性は、特に結合を達成し選択効果を高めるために、被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’のアレイ15が、Δ軸に垂直な面内の共振空洞とΔ軸に沿った共振空洞とを形成するように、有利に選択される。これにより、フォトニック結晶を形成しない被覆されたエレクトロルミネッセンスLEDのグループと比較して、アレイ15の被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’のグループによって発光面30を通って放出される放射線の強度を、特定の波長において増幅することができる。
【0056】
図3及び図4は、アレイ15の被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’の配置例を模式的に示す、面16と平行な面における断面図である。特に、図3は、いわゆる正方形網目配置を示し、図4は、いわゆる六角形網目配置を示す。
【0057】
図3および図4はそれぞれ、4行のLEDを示す。図3に示す配置では、各被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’は、行と列との交差点に位置し、行は列に垂直である。さらに、図3に示す配置では、発光ダイオードLEDは、面16に平行な平面において直径Dの円形断面を有し、被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’は、面16に平行な平面において直径D’の円形断面を有する。図4に示す配置では、1ライン上の被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’は、前後のライン上の被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’からピッチaの半分だけオフセットされている。さらに、図4に示す配置では、発光ダイオードLEDは、面16に平行な平面において平均直径Dの六角形断面を有し、被覆されたLEDは、面16に平行な平面において平均直径D’の六角形断面を有する。本明細書の残りの部分では、ある平面における素子の平均直径は、この平面における素子の断面の面積と同じ面積を有するディスクの直径と称される。変形例では、被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’の断面は、そこに含まれる発光ダイオードLEDの断面とは異なってもよい。一例として、被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’の断面は円形、その中の発光ダイオードLEDの断面は六角形であってもよい。
【0058】
六角形アレイ配置または正方形アレイ配置の場合、直径D’は、0.05μmと2μmとの間であってもよい。ピッチaは、0.1μmと4μmとの間であってもよい。
【0059】
さらに、一実施形態によれば、LEDの高さHは、各発光ダイオードLEDが、光電子デバイス10によって放出される放射線の所望の中心波長λでΔ軸に沿って共振空洞を形成するように選択される。一実施形態によれば、高さHは、k×(λ/2)×neffに実質的に比例するように選択され、neffは、関心のある光学モードにおける発光ダイオードLEDの有効屈折率であり、kは正の整数である。有効屈折率は、例えば、書籍「Semiconductor Optoelectronic Devices:Introduction to Physics and Simulation」(Joachim Piprek著)に定義されている。
【0060】
LEDが異なる中心波長で発光するLEDグループに分割される場合、それにもかかわらず、全てのLEDの高さHは同じであることができる。そして、各グループのLEDの共振空洞を得ることが可能な理論的な高さから決定することが可能となり、例えば、これらの理論的な高さの平均に等しい。
【0061】
一実施形態によれば、被覆された発光ダイオードLED’のアレイ15によって形成されるフォトニック結晶の特性は、少なくとも1つのターゲット波長で発光ダイオードLEDのアレイ15によって放出される光強度を増加させるように選択される。一実施形態によれば、各発光ダイオードLEDの活性領域20は、ターゲット波長とは異なる中心波長で最大値を有する発光スペクトルを有する。しかし、活性領域20の発光スペクトルは、ターゲット波長と重なり、すなわち、ターゲット波長における活性領域20の発光スペクトルのエネルギーは、ゼロではない。これにより、適切な結晶品質を有する活性領域20の製造を可能にする発光ダイオードLEDの平均直径Dを選択することが可能となる。各発光ダイオードLEDについて、被覆材23が発光ダイオードLEDの側壁を側壁の高さの一部のみにわたって覆うことができるという事実により、絶縁性被覆材23の厚さに加えて、フォトニック結晶の所望の特性を選択するために使用される追加のパラメータを用いることが可能となる。
【0062】
図5は、LEDを備える光電子デバイス35の他の実施形態を示す概略部分断面図である。光電子デバイス35は、図1に示した光電子デバイス10の全ての素子を備え、さらに、発光ダイオードLED毎に、被覆材23と発光ダイオードLEDとの間に介在する絶縁性コーティング36を含む。絶縁性コーティング36は、10nmよりも小さく、好ましくは5nmよりも小さい厚さを有する層に対応してもよい。コーティング36は、パッシベーション層に対応してもよい。コーティング36は、LEDによって放出される放射線に対して透明である。コーティング36は、十分に薄いので、被覆材23、コーティング36およびLEDを備える集合体の平均屈折率にほとんど影響しない。発光ダイオードLEDの異なる部分間の短絡の防止は、コーティング36によって達成されるので、被覆材23は、絶縁材料でなくてもよい。これにより、有利には、被覆材23を構成する材料の選択の自由度がさらに高まり、絶縁性材料、導電性材料、または半導体材料であってもよい。
【0063】
シミュレーションおよび試験が行われた。これらのシミュレーションおよび試験では、各発光ダイオードLEDについて、下側半導体部分18はPドープGaNで作られている。上側半導体部分22は、NドープGaNで作られている。下側部分18および上側部分22の屈折率は、2.4と2.5との間である。活性領域20は、InGaNの層に対応する。活性領域20の高さh2は、40nmに等しい。電極層14は、アルミニウムで作られている。絶縁層24は、BCBベースのポリマーで作られている。絶縁層24の屈折率は、1.45と1.56との間である。
【0064】
シミュレーションおよび試験では、LEDは円形底面である。高さh3は300nmと350nmとの間に等しく、全高Hは400nmに等しい。面16での鏡面反射が考慮されている。フォトニック結晶のピッチaは一定で300nmに等しい。
【0065】
図6及び図7は、LEDアレイ15によって放出される放射線の光強度のグレースケール・マップであり、x軸上では発光方向と発光面30に直交する方向との間の角度に応じ、y軸上では比a/λに応じ、λはLEDによって放出される放射線の中心波長である。図6については、LEDは、絶縁性被覆材23によって囲まれていない。図7については、各LEDは、屈折率が2.4と2.5との間で、25nmの厚さを有するTiOで作られた絶縁性被覆材23によって囲まれている。中心波長λの対応する値は、図6および図7の右側にさらに示されている。各グレースケール・マップには、共振ピークに対応する明るい領域が含まれている。
【0066】
本発明者らは、図7が、図6に実質的に対応し、Y軸に沿ってシフトしたことを強調した。これは、図6に存在する共振ピークが図7にも存在するが、比a/λのより低い値で得られることを意味する。これは、被覆されたエレクトロルミネッセンスダイオードLED’のピッチaおよび平均直径D’に主に依存するフォトニック結晶の特性が、発光ダイオードLEDの平均直径Dに依存する波長λから実質的に相関除去されていることを示す。
【0067】
一例として、図6では、発光角度が10°で、比a/λが約0.57に等しい場合に共振ピークが得られ、波長λが530nmで、平均直径Dが240nmに等しい場合に対応する。この同じ共振ピークは、図7において、約0.55に等しい比a/λの場合に得られ、260nmに等しい平均直径D’に対応する。したがって、TiOの絶縁性被覆材23の厚さが25nmの場合、LEDの平均直径の約20nmの増加に相当すると思われる。
【0068】
本発明者らは、さらなるシミュレーションにより、TiOの絶縁性被覆材23の厚さが30nmの場合、LEDの平均直径の約40nmの増加に相当し、TiO絶縁性被覆材23の厚さが50nmの場合、LEDの平均直径の約60nmの増加に相当する、と示した。
【0069】
なお、高さh1およびh3を変えることで、最適化を図ることができることが留意されたい。
【0070】
100nmに等しい高さh1、300nmに等しい高さh3、100nmに等しい高さh2、300nmに等しいフォトニック結晶のピッチa、および240nmに等しい平均直径Dというパラメータでシミュレーションおよび試験を行った。
【0071】
図8は、被覆されていない発光ダイオードLEDによって放出される放射線の波長λに応じた、発光面30に垂直な方向に対して±24°だけ傾斜した方向における光度I(任意単位(a.u.))の進化曲線C1、および被覆された発光ダイオードLEDのアレイ15によって放出される放射線の光度Iの進化曲線C2を示す。曲線C2について、各絶縁性被覆材23は、120nmに等しい厚さを有する。図9は、発光面30に垂直な方向に対して±5°だけ傾斜した方向についての曲線C2に類似する進化曲線C3を示す。
【0072】
図8に示すように、発光ダイオードLEDによって放出される放射線の中心波長とは異なる波長で曲線C2の共振ピークP1が得られる。図9に示すように、発光ダイオードLEDによって放出される放射線の中心波長とは異なる波長で、曲線C3の高い増幅率を有する共振ピークP3が得られる。このようにして指向性放射が得られる。
【0073】
図10A図10Gは、図1に示す光電子デバイス10の製造方法の一実施形態の連続するステップで得られる構造体の概略部分断面図である。
【0074】
図10Aは、下記の形成ステップの後に得られる構造体を示す図である。
【0075】
基板42上にシード層40を形成する。そして、シード層40から発光ダイオードLEDを形成する。具体的には、上側部分22がシード層40に接触するように、発光ダイオードLEDを形成する。シード層40は、上側部分22の成長を促進する材料で作られる。各発光ダイオードLEDについて、上側部分22上に活性領域20を形成し、活性領域20上に下側部分18を形成する。
【0076】
さらに、アレイ15を形成するように、すなわち、アレイ15の所望のピッチで行および列を形成するように、発光ダイオードLEDを設置する。図10A図10Gには、1つの行のみが部分的に示されている。
【0077】
LEDが設置される位置でシード層40の一部のみを露出させるように、シード層40上にLEDを形成する前に、図示しないマスクを形成してもよい。変形例では、LEDが形成される位置に設置されるパッドを形成するように、LEDの形成前にシード層40をエッチングしてもよい。
【0078】
発光ダイオードLEDの成長方法は、化学気相成長法(CVD)または有機金属化学気相成長法(MOCVD)(有機金属気相エピタキシー(MOVPE)としても知られている)であってもよい。しかし、分子線エピタキシー(MBE)、ガスソースMBE(GSMBE)、有機金属MBE(MOMBE)、プラズマアシストMBE(PAMBE)、原子層エピタキシー(ALE)またはハイドライド気相成長(HVPE)などの方法を使用することもできる。しかし、電気化学的な方法、例えば、化学浴堆積法(CBD)、水熱プロセス、液体エアロゾル熱分解、または電着を使用することもできる。
【0079】
LEDの成長条件は、アレイ15における全ての発光ダイオードLEDが実質的に同じ速度で形成されるようにする。したがって、半導体部分22および18の高さ、ならびに活性領域20の高さは、アレイ15における全てのLEDについて実質的に同じである。
【0080】
一実施形態によれば、半導体部分22の高さは、所望の値h3よりも大きい。これは、特にシード層40からの上側部分22の成長開始により、上側部分22の高さを正確に制御することが困難な場合があるからである。また、半導体材料を直接にシード層40上に形成すると、シード層40の直上の半導体材料に結晶欠陥が発生する場合がある。したがって、上側部分22の一部を除去したい場合がある。
【0081】
図10Bは、被覆された発光ダイオードLED’を得るために発光ダイオードLEDを覆って窒化ケイ素などの第1の絶縁材料の被覆材23を形成した後に得られる構造体を示す。一実施形態によれば、被覆材23は、CVDによって形成される。他の実施形態によれば、図10Aに示す構造体全体上に第1の絶縁材料の層を堆積させ、該層は発光ダイオードLEDの高さよりも大きい厚さを有する。その後、被覆材23を画定するために、第1の絶縁材料の層を部分的にエッチングする。
【0082】
図10Cは、酸化ケイ素などの第2の絶縁材料の層24の形成後に得られる構造体を示す。層24は、図10Bに示す構造体上に充填材料の層を堆積させることによって形成され、例えば、該層は発光ダイオードLEDの高さよりも大きい厚さを有する。その後、第2の絶縁材料の層および被覆材23を平坦化するように部分的に除去して、半導体部分18の上面を露出させる。次いで、層24および被覆材23の上面を、各半導体部分18の上面と実質的に面一にする。変形例では、方法は、半導体部分18を部分的にエッチングするエッチングステップを含んでもよい。
【0083】
図10Dは、前のステップで得られた構造体上に電極層14を堆積させた後に得られる構造体を示す。
【0084】
図10Eは、例えば金属間ボンディング、または熱圧着、または支持体12側で共晶を使用したはんだ付けによって層14を支持体12に取り付けた後に得られる構造体を示す。
【0085】
図10Fは、基板42およびシード層40を除去した後に得られる構造体を示す。さらに、層24、被覆材23および上側部分22を、各上側部分22の高さが所望の値h3を有するようにエッチングする。有利には、このステップにより、LEDの高さHを正確に制御し、結晶欠陥を有する可能性のある上側部分22の部分を除去することが可能となる。
【0086】
図10Gは、電極層26の堆積後に得られる構造体を示す。
【0087】
本方法は、図10Gに示す構造体の全体又は一部上に少なくとも1つの光学フィルタを形成することをさらに含んでもよい。
【0088】
様々な実施形態および変形例が説明された。当業者は、これらの実施形態及び変形例の特定の特徴を組み合わせてもよく、他の変形例も当業者により容易に想起されることを理解するであろう。特に、上述したコーティング28は、一または複数の光学フィルタ以外の追加の層を含んでもよい。特に、コーティング28は、反射防止層、保護層などを含んでもよい。最後に、本明細書で説明した実施形態および変形例の実用化は、本明細書で提供した機能的な説明に基づいて、当業者の能力の範囲内である。さらに、LEDを構成する材料の屈折率値は、III-VI族化合物LEDの場合について記載されている。LEDがII-VI族化合物、またはIV族半導体もしくは化合物をベースとした場合、これらの数値の屈折率値を適合させる必要があることは明らかである。
【0089】
本特許出願は、本明細書の一部とみなされる仏国特許出願第20/13521号明細書の優先権を主張している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイス(10)であって、発光スペクトルに第1の波長における最大値が含まれる電磁放射線を放出するように構成された活性領域(20)をそれぞれ備えるアキシャル発光ダイオード(LED)のアレイ(15)を備え、前記デバイスは、前記発光ダイオード毎に、前記放射線に対して透明な、前記発光ダイオードの少なくとも一部にわたって前記発光ダイオードの側壁を囲む第1の材料で作られた被覆材(23)をさらに備え、前記被覆材の各々は10nmよりも大きい厚さを有し、前記デバイスは、前記被覆材の間に、前記放射線に対して透明な、前記第1の材料とは異なる第2の材料の層(24)をさらに備え、前記第2の材料は電気絶縁性であり、前記アレイはフォトニック結晶を形成する、
光電子デバイス。
【請求項2】
前記被覆材(23)の各々は、20nmよりも大きい厚さを有する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の波長における前記第1の材料の屈折率は、前記第1の波長における前記第2の材料の屈折率よりも厳密には大きい、
請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の波長における前記第1の材料の屈折率と、前記第1の波長における前記第2の材料の屈折率との差は、0.5よりも大きい、
請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記発光ダイオード(LED)の各々は、第3の材料の半導体素子(22)を備え、少なくとも部分的に前記被覆材(23)によって囲まれており、前記第1の材料の屈折率と前記第3の材料の屈折率との差は、0.5よりも小さく、好ましくは0.3よりも小さい、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の材料は、電気絶縁性であり、有利には窒化ケイ素または酸化チタンである、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記発光ダイオード(LED)毎に、前記被覆材(23)と前記発光ダイオード(LED)との間に介在する電気絶縁性コーティング(36)をさらに備え、前記コーティングの厚さは10nmよりも小さい、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第2の材料は酸化ケイ素である、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記フォトニック結晶は、少なくとも第2の波長(λT1)で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されており、前記第2の波長(λT1)は、前記第1の波長とは異なるか、または前記第1の波長に等しい、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
発光ダイオード(LED)が載置された支持体(12)を備え、前記発光ダイオードの各々は、前記支持体上に載置された第1の半導体部分(18)と、前記第1の半導体部分に接触した活性領域(20)と、前記活性領域(20)に接触した第2の半導体部分(22)との積層体を備える、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記支持体(12)と前記発光ダイオード(LED)の第1の半導体部分(18)との間に反射層(14)を備える、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記発光ダイオード(LED)の第2の半導体部分(22)は、前記発光ダイオード(LED)によって放出される放射線に対して少なくとも部分的に透明な導電層(26)で覆われている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
活性領域(20)をそれぞれ備えるアキシャル発光ダイオード(LED)を備える光電子デバイス(10)を設計するための方法であって、
前記光電子デバイス(10)の第1のターゲット波長を決定するステップと、
活性領域(20)の各々が、発光スペクトルに前記第1のターゲット波長が含まれる電磁放射線を放出するように、前記発光ダイオードの寸法を決定するステップと、
前記第1のターゲット波長で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するフォトニック結晶を得るために、前記発光ダイオードのアレイ(15)の寸法を決定するステップであって、前記発光ダイオード毎に、前記放射線に対して透明な、前記発光ダイオードの少なくとも一部にわたって前記発光ダイオードの側壁を囲む第1の材料の被覆材(23)を備え、前記被覆材の各々が10nmよりも大きい厚さを有し、前記被覆材(23)の間に、前記放射線に対して透明な、第1の材料とは異なる第2の材料の層(24)をさらに備え、前記第2の材料が電気絶縁性であるステップと
を含む、
方法。
【請求項14】
発光スペクトルに第1の波長における最大値が含まれる電磁放射線を放出するように構成された活性領域(20)をそれぞれ備えるアキシャル発光ダイオード(LED)のアレイ(15)を備える光電子デバイス(10)の製造方法であって、前記デバイスは、前記発光ダイオード毎に、前記放射線に対して透明な、前記発光ダイオードの少なくとも一部にわたって前記発光ダイオードの側壁を囲む第1の材料で作られた被覆材(23)をさらに備え、前記被覆材の各々は10nmよりも大きい厚さを有し、前記デバイスは、前記被覆材の間に、前記放射線に対して透明な、前記第1の材料とは異なる第2の材料で作られた層(24)をさらに備え、前記第2の材料は電気絶縁性であり、前記アレイはフォトニック結晶を形成する、
方法。
【請求項15】
前記発光ダイオード(LED)を形成することは、
前記アレイのピッチによって互いに分離される第2の半導体部分(22)を基板(42)上に形成するステップと、
活性領域(20)を前記第2の半導体部分の各々上に形成するステップと、
第1の半導体部分(18)を前記活性領域の各々上に形成するステップと、
前記第1の半導体部分、および/または前記第2の半導体部分、および/または前記活性領域の少なくとも一部の側壁を囲む第1の材料の被覆材(23)を、前記発光ダイオード毎に形成するステップと、
第2の材料の層(24)を形成するステップと
を含む、
請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】