(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】抗菌ペプチドの生成を誘発するためのヒドロキシステアリン酸
(51)【国際特許分類】
A61K 8/365 20060101AFI20231222BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20231222BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231222BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20231222BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20231222BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A61K8/365
A61P17/16
A61P37/04
A61P1/02
A61K31/19
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023533740
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2021082733
(87)【国際公開番号】W WO2022117404
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】202021052758
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,トリシャ・クリータス
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ,リンパ
(72)【発明者】
【氏名】マジュムダール,アミターバ
(72)【発明者】
【氏名】マタパティ,ムルチュンジャヤ・スワーミー
(72)【発明者】
【氏名】ティンマイア,スリーニバサ
(72)【発明者】
【氏名】ワスカー,モリス
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC542
4C083AD411
4C083AD412
4C083BB01
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA07
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA77
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB09
4C206ZB35
(57)【要約】
本発明は、人体の外表面に適用された場合に抗菌性ペプチド(AMP)の分泌を誘発するためのヒドロキシステアリン酸の新たな使用に関する。本発明はさらに、ヒドロキシステアリン酸及び抗菌性ペプチド若しくは抗菌性脂質又はそれらの混合物の組み合わせを含む抗菌性組成物に関するものでもある。これは、微生物による攻撃に対して皮膚、頭皮及び口腔の免疫を改善する用途を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の外表面に適用されたときに抗菌性ペプチド(AMP)の分泌を誘発するためのヒドロキシステアリン酸の使用。
【請求項2】
ヒドロキシステアリン酸がケラチノサイトからのAMPの分泌を誘発する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記外表面の免疫を改善するための請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記外表面が皮膚、頭皮又は口腔を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記ヒドロキシステアリン酸が12-ヒドロキシステアリン酸である、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記使用が非治療的使用である、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
抗菌性ペプチド(AMP)の分泌を誘発することで身体の外表面に保護を提供する方法であって、ヒドロキシステアリン酸を前記外表面に適用する工程を含む方法。
【請求項8】
抗菌効果のためのヒドロキシステアリン酸及び抗菌性ペプチド若しくは抗菌性脂質又はそれらの混合物を含む組成物の使用。
【請求項9】
身体の外表面に抗菌効果を提供する方法であって、ヒドロキシステアリン酸及び抗菌性ペプチド若しくは抗菌性脂質又はそれらの混合物を含む組成物を前記外表面に適用する工程を含む方法。
【請求項10】
(i)0.000001~10重量%のヒドロキシステアリン酸及び(ii)0.000001~2重量%の抗菌性ペプチド若しくは抗菌性脂質又はそれらの混合物を含む抗菌組成物。
【請求項11】
前記組成物が(i)0.000001~10重量%のヒドロキシステアリン酸及び(ii)0.000001~1重量%の抗菌性脂質を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
化粧品的に許容される基材を含む、先行する請求項10又は11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記化粧品的に許容される基材が、クリーム、ローション、ジェル又は乳濁液である、先行する請求項10~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記化粧品的に許容される基材が、界面活性剤を含む、先行する請求項10~13のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚上でAMP(抗菌ペプチド)を生成するためのヒドロキシステアリン酸の新たな使用に関する。これには、微生物による攻撃に対する皮膚、頭皮及び口腔の免疫力を向上させる用途がある。本発明はまた、抗菌効果のためのヒドロキシステアリン酸とAMP若しくはAML(抗菌性脂質)又はそれらの混合物の組み合わせの使用、及びこの組み合わせを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、ウィルス及び細菌などの病原体の侵入から人体を守る主要な防御線である。皮膚組織は主要な防御器官として、常に環境と常時接触しているため、侵入する病原体からの脅威や攻撃に直面し、それを解決する必要がある。露出した皮膚表面は病原性外来細菌の攻撃を受けるだけでなく、常在性共生細菌と接触した状態であり、それらと相互作用する。このような外来微生物によるこれらのあらゆる困難にも関わらず、健常な皮膚は感染のない状態に保たれ、常在微生物叢の数もほぼ一定のままである。抗菌性ペプチド(AMP)が重要な部分を形成する高度な防御戦略を皮膚が備えていることから、皮膚組織と微生物の間の相互作用におけるこの平衡は維持されている。
【0003】
AMPは、皮膚自体の防御システムの必須の部分を形成する。AMPは本質的に遍在しており、代表的には、侵入する細菌、真菌、ウィルス及び寄生虫に対して広い活性スペクトルを示す。AMPは一般に短いペプチドであり、ヒトでは約90種類の異なるAMPが存在すると報告されている。一般に、AMPには二つの主要な物理的特徴があり、それは、a)カチオン電荷、及びb)かなりの割合の疎水性残基である。AMPのカチオン電荷は、負に帯電した微生物表面に対する選択性を促進するが、他方で、疎水性は微生物種の細胞膜との相互作用を促進する。
【0004】
本発明者らは、皮膚内のAMPレベルを高めるという経路を通じて、消費者に衛生上の利点を提供することに取り組んできた。本発明者らは、皮膚により優しく、それによって刺激が少ないと消費者が感知する天然分子の使用を通じてこれを提供しようと考えている。さらに、本発明者らはまた、侵入する感染性微生物を殺すか不活化することによって、身体に抗菌効果を提供しようとも考えている。
【0005】
具体的には、皮膚感染症の最も一般的かつ主要な原因物質の一つは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であり、さまざまな皮膚及び軟組織感染症を引き起こす。宿主の皮膚表面での黄色ブドウ球菌(S. aureus)のコロニー形成は感染の初期段階であり、より深い組織に侵入すると、微生物は複雑な戦略を用いることで感染を確立する。特に、黄色ブドウ球菌(S. aureus)は、細胞膜を損傷して溶解を引き起こす溶血素やロイコトキシンなどの多様な範囲の毒素を産生することにより、宿主の生来のシステムを乗り越える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような微生物から皮膚を保護するという目的を達成するために、様々な活性物質について調べ、広範な研究の結果、本発明者らは、一般的に使用される脂肪酸、すなわちヒドロキシステアリン酸が皮膚上のAMPレベルを高めることを見出した。さらに、そのように生成されたAMPは、外部から適用されたヒドロキシステアリン酸と相乗的に相互作用して、特に黄色ブドウ球菌(S. aureus)、緑膿菌(P. aeruginosa)などの感染性微生物に対する抗菌活性を提供する。抗菌効果は、ヒドロキシステアリン酸とAMP及び/又はAMLの組み合わせを含む組成物によって達成されることも判明した。
【0007】
ヒドロキシステアリン酸、特に12-ヒドロキシステアリン酸(12-HSA)は、クレンジング組成物中の脂肪酸混合物の一部として、又は化粧品の乳化剤としてパーソナルケアに使用されている。12-HSAは、潤滑剤として及びグリースの製造用に産業用途で広く使用されている。それは、石油掘削業界で潤滑剤として広く使用されている。本発明者らの知る限り、身体の局所表面上でAMPを生成するための活性物質としてのそれの使用は知られていない。
【0008】
本発明者らは、ヒドロキシステアリン酸を皮膚(皮膚自体、又は頭皮若しくは口腔であることができる)に適用すると、活性物質が、微生物による攻撃に対する皮膚の免疫を改善する上で重要な段階であることが知られているAMP生成を誘発する。したがって、消費者が得る利益は、ヒドロキシステアリン酸を含む組成物の適用により、将来攻撃する可能性のある細菌から皮膚が保護されることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、人体の外表面に適用された場合に抗菌性ペプチド(AMP)の分泌を誘発するためのヒドロキシステアリン酸の使用を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、身体の外表面に抗菌効果を提供する方法であって、ヒドロキシステアリン酸及び抗菌性ペプチド若しくは抗菌脂質又はそれらの混合物を含む組成物を前記外表面に適用する工程を含む方法を提供する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、(i)ヒドロキシステアリン酸及び(ii)抗菌性ペプチド若しくは抗菌脂質又はそれらの混合物を含む抗菌組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
これら及び他の態様、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を読むことにより、当業者には明らかとなるであろう。誤解を避けるために、本発明の1態様の任意の特徴を、本発明の他の任意の態様で利用することができる。「含む(comprising)」という言葉は、「含む(including)」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)」又は「構成されている(composed of)」とは限らない。言い換えれば、列記された段階又は選択肢は工程的である必要はない。留意すべき点として、下記の説明に記載されている例は、本発明を明確にすることを意図するものであり、本発明をそれらの例自体に限定することを意図していない。同様に、別断の断りがない限り、全てのパーセントは重量/重量パーセントであり、「wt%」と略することができる。動作例及び比較例を除いて、又は別断で明瞭に示されている場合を除き、材料の量又は反応条件、材料の物性、及び/又は使用を示す本説明における全ての数字は、「約」という単語によって修飾されているものと理解されるべきである。「xからyまで」の形式で表される数値範囲は、x及びyを含むものと理解される。特定の特徴について、複数の好ましい範囲が「xからyまで」の形式で記述される場合、異なるエンドポイントを組み合わせた全ての範囲も想到されることは明らかである。
【0013】
本明細書で使用される場合「皮膚」とは、哺乳動物、特にヒトの外表面を含むことを意味し、皮膚、頭皮、毛髪及び口腔を含む。本発明による使用は、ヒドロキシステアリン酸又は本発明による組成物をリーブオン製品又はリンスオフ製品に適用することによるものが考えられ、主に衛生上の利益のために人体に適用されるあらゆる製品を含むが、外観、クレンジング、臭気制御、又は一般的な美容改善することもできる。当該組成物は、液体、ローション、クリーム、泡剤、スクラブ、ジェル、固形石鹸又はトナーの形態であることができ、又は器具を用いて、又はフェイスマスク、パッド、ワイプ又は貼付剤を介して適用されることもできる。このような組成物の非限定的な例には、スキンローション及びクリーム、制汗剤、脱臭剤、脱毛剤、口紅、ファンデーション、マスカラ、サンレスタンナー、消毒剤、ジェル、スプレー又は日焼け止めローションなどのリーブオン製品、又はシャンプー、コンディショナー、シャワージェル、トイレバー、洗顔料、手洗い剤又はボディウォッシュ製品などのリンスオフ製品などがある。
【0014】
本発明で使用するためのヒドロキシステアリン酸は、好ましくは、ケラチノサイトからのAMPの分泌を誘発する。そうして分泌されたAMPは、体の外表面の免疫力を向上させる。外表面には、皮膚、頭皮又は口腔などがある。
【0015】
前記ヒドロキシステアリン酸が、10-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸又はトリヒドロキシステアリン酸(例えば、9,10,13-トリヒドロキシステアリン酸)又はトリヒドロキシステアリン又はグリセロールとヒドロキシステアリン酸のモノエステル、ジエステル若しくはトリエステルのような分解時に1以上のヒドロキシステアリン酸又はヒドロキシステアリン酸塩分子を生じる化合物であることが好ましい。これらのうち、10-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸及び9,10,13-トリヒドロキシステアリン酸がより好ましい。12-ヒドロキシステアリン酸(12-HSA)が最も好ましい。12-HSAは、下記で提供される構造を有する。
【化1】
【0016】
本発明により、ヒドロキシステアリン酸が、皮膚表皮の主要な細胞であるケラチノサイトを活性化して、本発明の利点、すなわち、抗菌性ペプチド(AMP)の分泌を誘発することが認められた。これにより、ヒドロキシステアリン酸が細菌に対する保護シールドを強化する、すなわち、外表面の免疫力を高める。したがって、ヒドロキシステアリン酸は、体自体の防御力を高めることにより、感染症から体を保護する。言い換えれば、当該活性物質は細菌から保護するために体の表面を準備するものである。これの利点は、それが長期間持続する保護、例えば細菌に対して最大24時間の保護を提供することである。
【0017】
本発明によるAMPの分泌を誘発するためのヒドロキシステアリン酸の使用は、好ましくは美容用途のためのものである、すなわちそれは非治療用途のためのものである。
【0018】
発明のさらに別の態様は、人体の外表面に適用された場合に抗菌性ペプチド(AMP)の分泌を予防的に誘導するためのヒドロキシステアリン酸に関する。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、抗菌性ペプチド(AMP)の分泌を誘発することによって身体の外表面に保護を提供する方法であって、ヒドロキシステアリン酸を前記外表面に適用する工程を含む方法に関するものである。好ましくは、その方法は非治療的である。
【0020】
本発明のさらに別の態様によれば、抗菌効果のための、ヒドロキシステアリン酸及び抗菌性ペプチド若しくは抗菌脂質又はそれらの混合物を含む組成物の使用が提供される。好ましくは、その使用は非治療的である。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、身体の外表面に抗菌効果を提供する方法であって、ヒドロキシステアリン酸及び抗菌性ペプチド若しくは抗菌脂質又はそれらの混合物を含む組成物を前記外表面に適用する工程を含む方法が提供される。好ましくは、この方法は非治療的である。
【0022】
本発明に従ってヒドロキシステアリン酸が使用される組成物は、以下の好ましい特徴を含み得る。ヒドロキシステアリン酸は、好ましくは0.000001~10%、より好ましくは0.00001~8%、さらにより好ましくは0.0001~7%、さらにより好ましくは0.0005~5%、さらにより好ましくは0.001~4%、さらにより好ましくは0.01~3%で存在し、さらにより好ましくは、組成物の0.1~1重量%を形成する。
【0023】
本発明による組成物は、所望の抗菌効果を得るために、ヒドロキシステアリン酸に加えて、抗菌性ペプチド(AMP)若しくは抗菌脂質(AML)又はそれらの混合物を含む。好ましくは、当該組成物はヒドロキシステアリン酸に加えてAMLを含む。好ましくは、その組成物は非治療用である。
【0024】
好ましくは、AMPは、ディフェンシン、例えばヒトβディフェンシン1、ヒトβディフェンシン2、ヒトβディフェンシン3、及びヒトβディフェンシン4;ヒスタチン、例えばヒスタチン5、ヒスタチン7;カテリシジン、例えばLL-37;デルムシジン、例えばデルムシジン1;S100ペプチド、例えばソリアシン;及びRNAseペプチド、例えばRNAse7から選択され、それらは本発明において個別に又は組み合わせて使用することができる。より好ましくは、AMPは、ヒトβディフェンシン1、ヒトβディフェンシン2、ヒトβディフェンシン3及びヒトβディフェンシン4、LL-37、並びにそれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、選択されるAMPは、ヒトβディフェンシン3、LL-37及びそれらの混合物である。
【0025】
最近の研究では、各種の抗菌性ペプチド(AMP)がケモカインを模倣し、早期警告シグナルとして機能することで宿主の自然免疫系及び適応免疫系を迅速に活性化する能力を有することが明らかになっている。それらは、抗原提示細胞を動員して活性化することができる。これらの強力な免疫刺激物質には、ディフェンシン、カテリシジン(LL-37)、好酸球由来神経毒(EDN)、及び高移動度グループボックスタンパク質1(HMGB1)などがある。例えば、ディフェンシン、LL-37、HMGB1及びEDNは、それぞれCCR6、FPRL-1、Toll様受容体(TLR2)と相互作用することでケモカイン活性及びサイトカイン活性を模倣する。これらの抗菌性ペプチドは、消化管、泌尿生殖器及び気管気管支樹の内側を覆う白血球、ケラチノサイト及び上皮細胞によって構成的に産生され、放出される。さらに、それらは有害な刺激物やサイトカインによっても誘発される。これらのペプチドはすべて、イン・ビボ免疫アジュバント効果を有する。これらのAMPは、宿主損傷から保護するために免疫系を迅速に動員する役割が認められて、現在では新しい用語「アラーミン」に分類されている。
【0026】
ヒドロキシステアリン酸と組み合わせて、相乗的抗菌活性を提供する抗菌性脂質(AML)には好ましくは、サピエン酸、スフィンゴシン、ジヒロロスフィンゴシン、パルミトレイン酸、ラウリン酸、フィトスフィンゴシン又はAMLの1以上の組み合わせなどがある。より好ましくは、AMLは、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、ラウリン酸及びこれらの混合物から選択される。
【0027】
本発明で使用するための各種抗菌性脂質の構造を以下に提供する。
【化2】
サピエン酸
【化3】
スフィンゴシン
【化4】
ジヒドロスフィンゴシン
【化5】
フィトヒドロスフィンゴシン
【化6】
パルミトレイン酸
【0028】
サピエン酸及びパルミトレイン酸は、通常、精製された形で抗菌剤に添加される。
【0029】
好ましくは、当該組成物は、組成物の0.000001~2重量%、より好ましくは0.00005~1重量%、さらにより好ましくは0.00001~0.1重量%、さらにより好ましくは0.0001~0.05重量%、さらにより好ましくは0.001~0.01重量%の範囲の量でAML若しくはAMP又はそれらの混合物を含む。
【0030】
AMLのヒドロキシステアリン酸の好ましい組み合わせには、
12-HSA+ラウリン酸、
12-HSA+フィトスフィンゴシン;及び
12-HSA+フィンゴシン
などがある。
【0031】
AMPのヒドロキシステアリン酸との好ましい組み合わせには、
12-HSA+LL-37、
12-HSA+ヒトβディフェンシン3
などがある。
【0032】
好ましくは、そのような組み合わせは、
12-HSA+LL37+ラウリン酸、
12-HSA+LL37+フィトスフィンゴシン、
12-HSA+LL37+フィンゴシン、
12=HSA+ヒトβディフェンシン3+ラウリン酸、
12-HSA+ヒトβディフェンシン3+フィトスフィンゴシン、
12-HSA+ヒトβディフェンシン3+フィンゴシン
から選択される。
【0033】
当該組成物は、好ましくは化粧品的に許容される基剤を含む。化粧品的に許容される基剤は、好ましくはクリーム、ローション、ジェル又は乳濁液である。化粧品的に許容される基剤が界面活性剤を含むことが特に好ましい。
【0034】
本発明の組成物は、スキンクレンジング用の製品として、或いはオーラルケア、スキンケア、頭皮若しくはヘアケア製品としての使用に適するように調製することができる。その製品は、固体、軟固体、液体、乳濁液、マイクロエマルション、ローション、クリーム、ジェル、又はエアロゾルの形態で送達することができる。
【0035】
スキンクレンジング
本明細書で使用される「クレンジング組成物」とは、クレンジング効果のために、哺乳動物、特にヒトの皮膚、毛髪及び/又は頭皮への局所適用のための組成物を含むことを意味し、そのような組成物は概して界面活性剤を含む。そのような組成物は、一般に、水で希釈した後に、数秒から最長数分までの期間にわたり、体の所望の局所表面に適用される。この適用期間の後、組成物は一般に水で洗い流されるか、又は拭き取られる。
【0036】
当該クレンジング組成物は、固体形態又は液体形態のいずれかの形式であり得る。固体の場合、それは好ましくは固形石鹸である。
【0037】
固形石鹸:
本発明のクレンジング組成物を調製するための石鹸は、好ましくはC8-C24石鹸、より好ましくはC10-C20石鹸、最も好ましくはC12-C18石鹸である。石鹸のカチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムであることができる。好ましくは、石鹸のカチオンはナトリウム、カリウム又はアンモニウムから選択される。より好ましくは、石鹸のカチオンはナトリウム又はカリウムである。落花生、大豆、獣脂、パーム、パーム核などの他の好適な油/脂肪に由来する脂肪酸も、他の所望の割合で使用することができる。
【0038】
アニオン性界面活性剤を含む化粧品的に許容される基剤は、クレンジング組成物中に存在する油中水型乳濁液以外の組成物の残りを形成する。したがって、化粧品的に許容される基剤は、一般にクレンジング組成物の80~99重量%を形成する。
【0039】
存在する場合、アニオン性界面活性剤、例えば石鹸は、クレンジング組成物の1~90重量%、好ましくは10~85重量%、より好ましくは25~75重量%の量で存在することが好ましい。当該クレンジング組成物は、好ましくは固体又は半固体の形態であり、最も好ましくは固体の形態である。好ましい固体組成物は、固形石鹸の形状である。
【0040】
他のアニオン性界面活性剤は、好ましくは、アルキルエーテルサルフェート、一級アルキルサルフェート、二級アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、又はエトキシル化アルキルサルフェートから選択される。当該クレンジング組成物において好ましい石鹸以外のアニオン性界面活性剤は、アルキルエーテルサルフェート、好ましくは天然又は合成源及び/又はスルホン酸からの1~3個のエチレンオキシド基を有するものである。特に好ましいのは、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムである。アルキルポリグルコシドも組成物中に存在してもよく、好ましくはC6-C16の炭素鎖長を有するものである。
【0041】
好ましいクレンジング組成物には、香料、顔料、防腐剤、皮膚軟化剤、日焼け止め剤、ゲル化剤及び増粘剤などの他の既知の成分が含まれていてもよい。これらの成分の選択は、ほとんど組成物の形式によって決まる。水が好ましい担体である。水が存在する場合、それは、組成物の少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、さらにより好ましくは少なくとも5重量%で存在することが好ましい。水が担体である場合、好ましいクレンジング組成物は、10~50重量%、より好ましくは12~40重量%の水を含む。
【0042】
本発明の組成物は、保湿バー又は液体組成物を通じて送達することもできる。脂肪アシルイセチオナート(例えば、イセチオン酸コシル(cocyl))を含む保湿バー組成物が特に好ましい。
【0043】
脂肪アシルイセチオナート(例えば、イセチオン酸ココイル)界面活性剤「製品」は、アニオン性アシルイセチオン酸塩界面活性剤と脂肪酸/脂肪酸石鹸の混合物と定義される。これらは、泡立ちがよく、皮膚に優しく、良好な皮膚軟化特性を有するため、パーソナルケアにおいて非常に望ましい皮膚又は髪のクレンジング製品、特にパーソナルケア製品で非常に望ましいパーソナルケア製品である。代表的には、脂肪酸イセチオン酸塩界面活性剤製品は、脂肪酸のエステル化によって、又はC8-C20の炭素鎖長を有する脂肪酸塩化物とイセチオン酸塩との反応によって製造される。脂肪アシルイセチオン酸塩を含む代表的な界面活性剤製品は、イセチオン酸塩に加えて、約40~95重量%の酸イセチオン酸塩と、5~50重量%、代表的には10~40重量%の遊離脂肪酸を、イセチオン酸塩に加えて、代表的には5%未満及び微量(2重量%未満)の他の添加剤を含む。脂肪酸石鹸は5~15重量%の範囲で含まれてもよい。ベタインのような他の界面活性剤が1~5重量%で含まれていてもよい。水は通常、組成物の2~8重量%で含まれる。
【0044】
液体クレンジング組成物:
本発明の液体クレンジング組成物は、通常、パーソナルクレンジングに使用される。それは好ましくは、低濃度の界面活性剤を含み、皮膚に優しい、身体、手又は顔の局所表面をクリーニングするための組成物である。界面活性剤は、液体クレンジング組成物の通常1~30重量%、好ましくは4~18重量%、より好ましくは6~12重量%で含まれる。
【0045】
本発明の液体クレンジング組成物に含まれる界面活性剤は、好ましくは、アニオン系、ノニオン系、カチオン系又は両性型であることができる。本発明の液体クレンジング組成物に含めるのに有用な界面活性剤は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)である。本発明で使用するSLESは、通常、1~3個のエトキシレート(EO)基を有することが好ましい。SLESは、好ましくは、組成物の3~15重量%で含まれる。本発明に含まれ得る他の界面活性剤は、ココアミドモノエタノールアミン(CMEA)である。CMEAは好ましくは、組成物の1~5重量%で含まれるい。本発明の液体クレンジング組成物の好ましい1態様は、界面活性剤がラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)とココアミドモノエタノールアミン(CMEA)の混合物を含む態様に関するものである。
【0046】
本発明の液体クレンジング組成物に含める別の有用な界面活性剤は、両性界面活性剤、好ましくはベタイン界面活性剤、より好ましくはアルキルアミドプロピルベタイン界面活性剤、例えばコカミドプロピルベタインである。好ましい実施形態では、当該組成物は0.1~5重量%、好ましくは0.5~4重量%、より好ましくは1~3重量%のベタイン界面活性剤を含む。
【0047】
本発明の液体クレンジング組成物に含めるためのノニオン類の界面活性剤は、好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類(Tween界面活性剤として販売)、脂肪アルコールエトキシレート(Brij界面活性剤として販売)、アルキルフェノールエトキシレート(Triton界面活性剤として販売)、脂肪エトキシレート(Myrj界面活性剤として販売)、及びアルキルポリグルコシド(Plantacare界面活性剤として販売)である。
【0048】
水は、本発明の液体クレンジング組成物における好ましい担体である。このような組成物においては、水は一般に70~95重量%で存在する。好ましい液体クレンジング組成物は、電解質、香料、顔料、防腐剤、皮膚軟化剤、日焼け止め、乳化剤、ゲル化剤及び増粘剤などの他の既知の成分を含んでもよい。
【0049】
本発明は、特に女性が使用するためのインティメート衛生製品にも使用することができる。このような製品は一般に、インティメート衛生状態を得るために使用する場合には女性に優しいpHで製剤された一定量の界面活性剤と皮膚軟化剤を含む液体として入手可能である。このような製品は、女性用衛生製品又は月経用衛生製品としても知られている。このような液体製品は、一般に、40~80重量%、好ましくは50~70重量%の範囲の多量の水を含む。それらはさらに、界面活性剤、例えばアニオン性及び/又は両性界面活性剤を含む。このような界面活性剤は、組成物の10~50重量%、好ましくは20~40重量%で含まれることが好ましい。このような製品に使用するのに特に好ましい界面活性剤としては、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ココアミドプロピルベタイン、又はそれらの混合物がある。さらに、当該製品には、皮膚に優しい感触を与えるのを助けるために、オイル、皮膚軟化剤、増粘剤及び他の添加剤が含まれていてもよい。一般に、乳酸のようなカルボン酸をそのような組成物に含ませることで、さらなる衛生上の利点が得られるようにする。このような製品のpHは、一般に2.5~6.0の範囲、好ましくは2.5~4.5の範囲である。
【0050】
オーラルケア
パーソナルケア組成物が経口ケア用に供給される場合、それは、研磨剤、増粘剤、保湿剤又は経口的に許容される界面活性剤であることができる美容上許容される基剤を含む。製品は、軟膏、ジェル、歯磨き剤、又はうがい薬の形で供給することができる。オーラルケア組成物は、好ましくは研磨剤を含む。ゲルは通常シリカを含むが、不透明クリームは通常、カルシウムベースの研磨剤、特にチョークを含む。
【0051】
好ましい練り歯磨き組成物は、5~60重量%のカルシウムベース研磨剤を有する。
【0052】
好ましい実施形態では、組成物は増粘剤を含む。代表的には、増粘シリカ、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はカルボマーが、本発明の組成物で使用するのに好ましい増粘剤である。増粘剤は、存在する場合、好ましくは、組成物の0.01~約10重量%、より好ましくは0.1~9重量%、最も好ましくは1.5~8重量%を構成する。
【0053】
好適な保湿剤は、好ましくは、本発明のオーラルケア組成物に使用される。グリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール又はそれらの混合物が好ましい保湿剤である。
【0054】
保湿剤は、オーラルケア組成物の10~90重量%の範囲で存在し得る。好ましくは、オーラルケア組成物は、界面活性剤を含む。好ましくは、当該組成物は、組成物の少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%、最も好ましくは0.5~7重量%の界面活性剤を含む。好ましいアニオン性界面活性剤は、ナトリウムラウリルサルフェート及び/又はナトリウムドデシルベンゼンスルホネートである。最も好ましくは、界面活性剤はナトリウムラウリルサルフェートである。
【0055】
水は、好ましくは、組成物の総重量の5~95%、特に10~75%、特に10~60%、さらに好ましくは10~45%で含まれ得る。
【0056】
本発明のオーラルケア組成物は、物理的特性及び性能を高めるために当技術分野で一般的である各種他成分を含むことができる。これらの成分には、抗菌剤、虫歯予防剤、プラーク緩衝剤、フッ化物源、ビタミン類、植物抽出物、脱感作剤、抗歯石剤、生体分子、香味剤、タンパク質性材料、保存料、乳白剤、着色剤、pH調節剤、甘味料、粒子状研磨材料、高分子化合物、組成物のpH及びイオン強度を緩衝するための緩衝剤及び塩、並びにそれらの混合物などがある。そのような成分は、代表的かつ集合的に、含まれるすべての範囲を含めて組成物の20重量%未満、好ましくは0.0~15重量%、最も好ましくは、組成物の0.01~12重量%を構成する。
【0057】
ヘアケア
本発明の好ましい態様によれば、組成物はヘアケア又はクレンジングに使用することができる。これを送達できる一つの媒体はシャンプーである。本発明の組成物、特にシャンプーは、アニオン性界面活性剤、例えばアルキルサルフェート及び/又はエトキシル化アルキルサルフェート界面活性剤を用いて製剤される。これらのアニオン性界面活性剤は、好ましくは1~20%のレベルで存在する。好ましいアルキルサルフェートは、C8-18アルキルサルフェート、より好ましくはC12-18アルキルサルフェートであり、好ましくはナトリウム、カリウム、アンモニウム又は置換アンモニウムなどの可溶化カチオンとの塩の形態である。1例としては、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)がある。好ましいエトキシル化アルキルサルフェートアニオン性界面活性剤は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)である。0.5~3、好ましくは1~3の平均エトキシル化度を有するSLESが特に好ましい。シャンプーは、好ましくは、両性界面活性剤、好ましくはベタイン界面活性剤、好ましくはアルキルアミドプロピルベタイン界面活性剤、例えばコカミドプロピルベタインをさらに含む。好ましい実施形態では、組成物は0.1~10重量%、好ましくは0.5~8重量%、より好ましくは1~5重量%のベタイン界面活性剤を含む。
【0058】
本発明の組成物、特にシャンプーからの活性物質の沈着を高めるために、一般にカチオン性ポリマーが組成物中に含まれる。本発明においても、組成物がさらに0.01~2.0%のカチオン性ポリマーを含有することが好ましい。カチオン性ポリマーは、好ましくはグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドである。
【0059】
本発明の組成物によってコンディショニングの利点がもたらされる場合、その組成物はヘアコンディショナーと呼ばれる。代表的には、ヘアケア組成物に使用される最も一般的なコンディショニング剤は、鉱油、トリグリセリドなどの天然オイル及びシリコーンポリマーの水不溶性油性材料である。コンディショニング効果は、油性材料が髪に付着して膜が形成されることによって実現され、それによって髪が濡れているときは櫛通りしやすく、乾いているときは扱いやすくなる。特に有用なコンディショニング剤はシリコーン化合物、好ましくは不揮発性シリコーン化合物である。組成物のpHは、好ましくは4.0以上であり、より好ましくは5.0~7.0の範囲である。
【0060】
ヘアコンディショニング組成物は、通常、単独又は混合して使用されるカチオン性界面活性剤から選択されるコンディショニング界面活性剤を含む。本発明によるコンディショナーに使用するのに特に有用なカチオン性界面活性剤は、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム又はステアラミドプロピルジメチルアミンである。本発明のヘアコンディショニング組成物は、好ましくは、脂肪アルコールをさらに含んでもよい。
【0061】
スキンケア
本発明の組成物は、スキンケアに使用することができる。スキンケアとは、組成物を皮膚に塗布し、通常は数時間後又は約1日後にシャワー又は入浴するまでその上に放置することを意味する。化粧品的に許容される基剤は、一般に、組成物の総重量の10~99.9%、より好ましくは40~85%の範囲の量で存在する。美容上許容される基材が水を含むことが特に好ましい。水は、好ましくは、組成物の総重量の30~90%、より好ましくは30~85%、最も好ましくは30~80%の量で含まれる。水に加えて、好適な担体類には、シリコーン、多価アルコール、炭化水素、トリグリセリド、及び増粘粉末などがある。
【0062】
本発明のスキンケア組成物は、皮膚への局所適用に適したトナー、ローション、クリーム、ムース、スクラブ、セラム又はジェルなどの任意の形態であり得る。当該組成物が、スキンローション又はクリームであることが好ましい。
【0063】
当該組成物は、共溶媒として作用するエモリエントオイルを含み得る。好適なエモリエントオイルには、例えば、アルコキシル化芳香族アルコールの脂肪カルボン酸とのエステル、ポリグリコール若しくはジオールと脂肪カルボン酸とのエステル、例えばトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリド、脂肪アルコール及び脂肪酸のエステル、ベンジルアルコールのアルコキシル化誘導体及びそれらの混合物などがある。好ましくは、エモリエントオイルは、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリドである。
【0064】
代表的には、そのような組成物は、日焼け止め組成物の総重量に基づいて、そしてそこに含まれるすべての範囲を含む、0.01~10%、より好ましくは0.1~8%、最も好ましくは1~6%の量の共溶媒を含む。
【0065】
組成物は、無機日焼け止め又は有機日焼け止めなどの日焼け止め剤をさらに含み得る。有機日焼け止めの例には、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、ヒュームドシリカなどのシリカである。本発明の組成物は、ジベンゾイルメタン誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体及びそれらの混合物からなる群から選択されるUV-A日焼け止め剤を含むことができる。本発明の組成物はまた、UV-B日焼け止め剤を含み得る。本発明の好適なUV-B日焼け止め剤は、ベンゾフェノン、アントラニル酸塩、サリチル酸塩、ケイ皮酸塩、樟脳、マロン酸ベンジリデン、トリアゾン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0066】
皮膚美白剤も本発明の組成物に組み込むことができる。
【0067】
スキンケア製品には、皮膚上に存在する微生物をほぼ瞬時に死滅させる消毒剤も含まれる。消毒剤は、好ましくは20~90重量%、好ましくは30~80重量%のC2~C4一価アルコールを含み、前記一価アルコールはエタノール、イソプロピルアルコール、又はそれらの組み合わせから選択される。消毒剤組成物は、エタノール及びイソプロピルアルコールの組み合わせを含んでもよい。最も好ましくは、アルコールは好ましくは40~75重量%であり、最適には組成物は55~70重量%のC2~C4一価アルコールを含む。
【0068】
好ましくは、消毒剤組成物は、30~80重量%、より好ましくは40~70重量%、最も好ましくは50~68重量%のエタノールを含むことができる。消毒剤は特定の多価アルコールを含むことができる。本発明による組成物中の多価アルコールは、好ましくはソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの組み合わせである。
【0069】
消毒剤は、好ましくは、0.01~1重量%の増粘剤を含む。より好ましくは、組成物は0.05~0.8重量%の増粘剤、最も好ましくは0.08~0.2重量%の増粘剤を含む。水は一般に、消毒剤組成物中に10~40重量%で存在する。より好ましくは、組成物は12~35重量%の%の水、最も好ましくは25~30重量%の水を含む。
【0070】
デオドラント製品
スキンケア組成物の特定の種類は、デオドラント組成物として知られているものである。これらの組成物は通常、腋の下領域のような体臭を発生する皮膚の領域に適用される。これらの製品は、臭気をマスキングするか、臭気の原因となる分子が生成されないようにするか、臭気の原因となる微生物を殺すか不活化することによって作用する。このような製品の一種は、人が発する汗の量を減らすか最小限に抑えるため、制汗製品としても知られている。
【0071】
これらの製品は、大まかに言えば、二つの方法の一方によって、美容的及び局所的に皮膚に適用することができる。接触法と呼ばれることもある一つの方法では、組成物を皮膚の表面全体にわたって拭き上げて、通過時に組成物の一部を沈着させる。非接触法と呼ばれることもある第2の方法では、組成物は、皮膚に近接して保持されたディスペンサーから噴霧される。スプレーの発生は、ポンプ又は圧搾可能な側壁などのディスペンサーの内容物に圧力を発生させる機械的手段によって、又は揮発する液化推進剤の一部から生じる内部生成圧力によって行うことができ、ディスペンサーは一般にエアロゾルと呼ばれる。
【0072】
大まかに言えば、接触組成物には2種類があり、そのうちの一つは液体であり、通常はロールオンディスペンサーを使用して適用されるか、又はおそらくワイプ内又はワイプ上に吸収され、第2の種類では、ゲル化した連続相を形成する担体液内に所望の活性物質が分布している。一つの変形形態では、担体流体は、所望の活性物質のための溶媒を含み、第2の変形形態では、活性物質は、オイル、通常はオイルの混合物に懸濁される粒子状固体として残る。
【0073】
スティック又は軟固体組成物
ワックス、小分子ゲル化剤、ポリマーなど、多くの異なる材料が連続油相のゲル化剤として提案されている。それらにはそれぞれ利点があり、その中で最も一般的な種類のゲル化剤の一つは、少なくとも容易に入手できること及び処理が容易であるために、特には直鎖脂肪アルコールワックスゲル化剤などのワックスを含むものであった。ゲル化したデオドラント組成物は、皮膚全体に、そして皮膚と接触して拭きあげることによって皮膚に局所適用され、それによって皮膚上に薄いフィルムを堆積させる。
【0074】
ロールオン
ロールオンから適用できる液体組成物は、大まかには、2種類に分けることができる、すなわち、活性物質が揮発性シリコーンなどの疎水性担体に懸濁されているものと、活性物質が担体液体に溶解しているものである。後者の方がより一般的であることが証明されている。溶解性担体液には主として2種類があり、すなわち主にアルコール性である、すなわち溶解性担体流体の大部分がエタノールを含む担体と、担体液が主として水である第2の種類である。前者は、エタノールが本来的に温和な殺菌剤であることから非常に一般的であったが、特にひげ剃りその他の除毛操作の際に容易に生じ得る組成物が適用された表面が損傷又は切れた場合、それが痛みを引き起こすことから、それの人気は低下した。
【0075】
アルコール製剤の代替である第2の種類の製剤は、活性物質の水溶液中の水不溶性又は非常に難水溶性の成分の分散液を含む。本明細書では、そのような組成物は乳濁液と呼ばれる。ロールオン乳濁液は、一般に、水溶性成分の分布を維持するために1以上の乳化剤を含む。
【0076】
エアロゾル組成物
デオドラント組成物は、上記の他の成分に加えて推進剤を含むエアロゾルによって送達することができる。
【0077】
本明細書における推進剤は、一般に、次の3クラス:i)圧縮によって液化された低沸点ガス、ii)揮発性エーテル、及びiii)圧縮非酸化性ガスのうちの一つと一致する。
【0078】
クラスi)は簡便には低沸点材料であり、代表的には-5℃以下、多くの場合-15℃以下で沸騰し、特にアルカン及び/又はハロゲン化炭化水素である。このクラスの推進剤は通常、エアゾール缶内の圧力で液化され、蒸発して圧力を生じて、組成物を缶から排出する。適切なアルカンの例には、特にはプロパン、ブタン又はイソブテンなどがある。第2のクラスの推進剤は、非常に揮発性のエーテルを含み、そのうちでこれまで最も広く使用されてきたエーテルはジメチルエーテルである。この推進剤は、比較的低い推進剤の基本製剤に対する重量比で、例えば5:95という低い重量比で有利に使用することができる。それは、例えば、圧縮性/液化性アルカンガスとの混合物として使用することもできる。第3のクラスの推進剤は、圧縮された非酸化性ガス、特に二酸化炭素又は窒素を含む。ネオンのような不活性ガスが、理論上の代替物である。
【0079】
スキンケア組成物はまた、物理的特性及び性能を高めるために当技術分野で一般的である他の成分を含み得る。好適な成分には、保湿剤、増粘剤、乳白剤、結合剤、着色剤及び顔料、pH調節剤、防腐剤、光学系、香料、粘度調整剤、生物学的添加剤、緩衝剤、コンディショナー、エッセンシャルオイル及び美肌成分、例えば抗炎症剤、冷却剤、制汗剤、老化防止剤、抗にきび剤、抗菌剤及び抗酸化剤などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
次に、以下の非限定的な実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0081】
実施例1~5:AMP遺伝子発現に対する12-HSA(濃度1μM)の効果
次のプロトコールを用いて、AMP遺伝子発現についてケラチノサイトに対して活性物質(12-HSA)を評価した。
【0082】
材料:
正常ヒト表皮ケラチノサイト細胞(NHEK)、EpiLifeケラチノサイト増殖培地(KGM)(抗生物質Pen-Strep含有)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Salone)(DPBS)、トリプシン-EDTA、トリプシン中和液、エタノール、RNA抽出キット(RNeasyキット)、RLT緩衝液、RT-PCRキット。
【0083】
手順:
1.NHEK細胞を解凍し、KGMで2~25cc、次に75ccフラスコで、1日おきに培地を交換し、5%CO2インキュベータ中37℃でインキュベートして、80%集密度になるまで増殖させる。
2.使用済みの培地を廃棄し、フラスコ内の付着した細胞をDPBSでリンスする。トリプシン-EDTAを加え、軽く叩いて付着した細胞を除去する。トリプシン中和剤を加え、それを静かに混和する。
3.内容物を15mLの管に移し、細胞を遠心する。上清を捨て、細胞をKGMに再懸濁させる。24ウェルTCプレートで1ウェル当たり30,000~50,000個の細胞を計数して蒔き、80~85%集密度になるまでインキュベートする(約2~3日)。1日おきに培地を交換する。分化培地(2mM CaCl2を含むKGM)を加え、2~3日間インキュベートする。
4.KGM中で活性剤を必要な濃度で調製する(使用する場合、エタノール溶媒の最終濃度は0.1%未満でなければならない。)。
5.分化培地を、活性物質を含む培地に交換し、24時間インキュベートする。
6.上清を捨て、DPBSで細胞を1回洗浄する。RLT緩衝液250μLを各ウェルに加えて細胞を溶解させ、内容物全体を1.5mL管に移す。抽出まで-80℃で保管する。
7.キットに従ってRNA抽出を行い、RNAを定量し、cDNA合成を実行し、cDNAサンプルについてリアルタイムqPCRを実行する。ハウスキーピング遺伝子に対して正規化された対照に対する相対発現レベルを計算する。
【0084】
上記のプロトコールを使用して、AMP遺伝子の発現を測定し、そのデータを以下の表1にまとめる。
【0085】
表-1:1μM(=0.00003重量%)濃度の12HSAによるAMP遺伝子発現
【表1】
【0086】
倍率変化は、活性物質(12-HSA)を使用しなかった対照と比較した遺伝子発現量の指標である。したがって、例えば、12-HSAを含むサンプルは、12-HSAを含まないサンプルよりも1.66倍多い遺伝子S100A7の発現を引き起こした。したがって、上記の表のデータは、12-HSAをケラチノサイトに使用すると、非常に多くのAMP遺伝子が対照よりも何倍も高く発現されることを示している。
【0087】
実施例6~10:各種濃度での12-HSA処理からの抗菌性ペプチドの発現
AMPの分泌に対する12-HSAの濃度の効果を調べるため、上記のリストからソリアシン(S100A7)AMPを選択した。使用した手順は以下の通りであった。
【0088】
AMP分泌についてケラチノサイトに対する活性物質(12-HSA)を評価するためのプロトコール
材料:
正常ヒト表皮ケラチノサイト細胞(NHEK)、EpiLifeケラチノサイト増殖培地(KGM)(抗生物質Pen-Strep含有)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Salone)(DPBS)、トリプシン-EDTA、トリプシン中和液、エタノール、ソリアシンELISAキット。
【0089】
手順:
1.NHEK細胞を解凍し、KGMで2~25cc、次に75ccフラスコで、1日おきに培地を交換し、5%CO2インキュベータ中37℃でインキュベートして、80%集密度になるまで増殖させる。
2.使用済みの培地を廃棄し、フラスコ内の付着した細胞をDPBSでリンスする。トリプシン-EDTAを加え、軽く叩いて付着した細胞を除去する。トリプシン中和剤を加え、それを静かに混和する。
3.内容物を15mLの管に移し、細胞を遠心する。上清を捨て、細胞をKGMに再懸濁させる。24ウェルTCプレートで1ウェル当たり30,000~50,000個の細胞を計数して蒔き、80~85%集密度になるまでインキュベートする(約2~3日)。1日おきに培地を交換する。分化培地(2mM CaCl2を含むKGM)を加え、2~3日間インキュベートする。
4.KGM中で活性剤を必要な濃度で調製する(使用する場合、エタノール溶媒の最終濃度は0.1%未満でなければならない。)。
5.分化培地を、活性物質を含む培地に交換し、72時間インキュベートする。
6.上清を回収し、-80℃で保存する。それを完全に解凍してから、ELISAを行ってAMP(ソリアシン)を測定する。
7.ELISAのため、必要な標準及びサンプル(未希釈及び希釈)の測定を行い、標準プロットを使用してサンプル中のAMPの量を計算する。
上記のプロトコールを使用して、ペプチドの発現を測定し、そのデータを以下の表2にまとめている。
【0090】
【0091】
上の表のデータは、12-HSAがケラチノサイトからのAMPの発現をかなりの量で引き起こし、これが広範囲の濃度にわたって観察されることを示している。
【0092】
理解すべき点として、本明細書に記載の実験は、相乗的な抗菌効果を評価するためのイン・ビトロアッセイで実施したものである。局所使用のための組成物を調製するのに実際に使用される濃度は、細胞レベルと比較したバルクでの濃度の差に影響を与える以下の理由により、桁違いに高くなる可能性があることが予想される。組成物は、非常に多くの追加成分を含む乳濁液又はゲルとして製剤することができる。油相と水相における所望の活性物質の濃度は、大きく異なることが予想される。それらはまた、分配係数、拡散速度、対流輸送速度、レオロジー特性などの非常に異なる物理的及び流体力学的特性を有する場合もある。したがって、組成物として製剤されるときに使用される濃度は、細胞レベルでの濃度とは大きく異なることが予想される。
【0093】
実施例11~26:抗菌効力の提供における12-HSAとAML若しくはAMP又はそれらの混合物との相乗作用
二種類の生物黄色ブドウ球菌(S. aureus)及び緑膿菌(P. aeruginosa)に対する、10μM(=0.0003重量%)の12-HSAと1μg/mL(=0.0001重量%)のAML(フィトスフィンゴシン)及び0.5μg/mL(=0.00005重量%)のAMP(LL-37)の組み合わせとの組み合わせの抗菌効力を調べた。その実験は、以下のアッセイを使用して行った。
【0094】
微量希釈アッセイ
材料:トリプチックソイ寒天(TSA)培地、AMP原液(LL37)、AML原液(フィトスフィンゴシン)、試験細菌(黄色ブドウ球菌(S. aureus)、緑膿菌(P. aeruginosa))、リン酸緩衝液(pH5.8)、D/E培地。
方法:
1.試験培養物をTSAプレートに接種し、インキュベータで37℃にて18~24時間インキュベートする。
2.培養物を掻き取り、10mMリン酸緩衝液に再懸濁させ、細胞数を1x10^8cfu/mLに調節する。
3.培養物を10mMリン酸緩衝液で連続希釈して、1X10^6cfu/mLを得る。
4.活性物質(水、エタノール又はDMSO中)、LL37(MilliQ水中)及びフィトスフィンゴシン(エタノール中)の10~100倍濃度原液を調製する。
5.96ウェルマイクロタイタープレートに、緩衝液、活性型LL37及びフィトスフィンゴシンを加え、水によって総量を165μLとする。適切な管理を維持する。
6.希釈培養液135μLを加え、混合し、37℃で4時間インキュベートする。
7.インキュベーション後、各反応液から小分けサンプルを取り出し、D/E培地でそれを1:10希釈することで中和する。
8.D/E培地でさらに希釈し、TSAプレート上に希釈液を蒔く。37℃で24時間インキュベートする。
9.翌日、コロニーをカウントし、対照と比較した回収率及び対数減少を計算する。
【0095】
各種サンプルの対数値(回収率)に関するデータを以下の表3及び4に示す。
【0096】
以下の実施例で使用されるヒドロキシステアリン酸、AMP及びAMLは、以下に示す供給業者及びカタログ番号から商業的に供給された。
12-HSA(TCI;H0308)、LL-37(Tocris;5213/1)、フィトスフィンゴシン(TCI;P1765)、サピエン酸(Chemscene;CS-0105451)、フィンゴシン(Sigma;S9666)、パルミトレイン酸(Sigma;P9417)。American Type Culture Collection(ATCC)番号とともに下記の表で言及されている細菌は、Chromachemieから入手したものである。
【0097】
表-3:黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC6538に対する抗菌薬の殺菌力
【表3】
【0098】
表-4:緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC15442に対する抗菌薬の殺菌力
【表4】
【0099】
表3及び4のデータは、12-HSAとAML及びAMPとの組み合わせが、それぞれの活性物質を個別に使用して得られる活性に比べて、相乗的な抗菌活性を与えることを示している。
【0100】
表-5:黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC6538に対する抗菌薬の殺菌力
【表5】
【0101】
表-6:緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC15442に対する抗菌薬の殺菌力
【表6】
【国際調査報告】