(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-07
(54)【発明の名称】セラミック基材複合材のための酸化バリア材料およびプロセス
(51)【国際特許分類】
C23C 4/11 20160101AFI20240131BHJP
C23C 4/134 20160101ALI20240131BHJP
C23C 4/129 20160101ALI20240131BHJP
【FI】
C23C4/11
C23C4/134
C23C4/129
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547412
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022015276
(87)【国際公開番号】W WO2022170068
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ディエンイン
(72)【発明者】
【氏名】ペグラー,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ドイベーディー,ゴーパル
(72)【発明者】
【氏名】ドーフマン,ミッチェル・アール
【テーマコード(参考)】
4K031
【Fターム(参考)】
4K031AA08
4K031AB02
4K031AB03
4K031CB42
4K031CB43
4K031CB48
4K031DA01
4K031DA04
(57)【要約】
環境バリアコーティングを適用する方法および環境バリアコーティング。本方法は、高温高速(HTHV)プロセスを介して高見かけ密度粉末を適用することを含む。高見かけ密度粉末は、希土類ケイ酸塩、ムライト、またはアルカリケイ酸塩のうちの少なくとも1つを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境バリアコーティングを適用する方法であって、
高温高速(HTHV)プロセスを介して高見かけ密度粉末を適用することを含み、
前記高見かけ密度粉末は、希土類ケイ酸塩、ムライト、またはアルカリケイ酸塩のうちの少なくとも1つを含む、環境バリアコーティングを適用する方法。
【請求項2】
前記アルカリケイ酸塩は、BaO、SrO、Al
2O
3、またはSiO
2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高見かけ密度粉末は、0.5重量%~10重量%のSiO
2混合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高見かけ密度粉末は、3.5×10
-6/k~6×10
-6/kの範囲の熱膨張係数を有する材料をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記HTHVプロセスは、200m/sより大きい粒子速度を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記HTHVプロセスは、400m/sより大きい粒子速度を生じさせる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記HTHVプロセスは、高温高速雰囲気プラズマ溶射プロセス、高温高速真空プラズマ溶射プロセス、または高温高速酸素燃料噴霧プロセスのうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記希土類ケイ酸塩は二ケイ酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記二ケイ酸塩はRE
2Si
20
7を含み、REはY、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuのいずれかであり得る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記希土類ケイ酸塩は低熱膨張係数一ケイ酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
環境バリアコーティングであって、
希土類ケイ酸塩、ムライト、またはアルカリケイ酸塩のうちの少なくとも1つを含む高密度コーティングを含む、環境バリアコーティング。
【請求項12】
前記アルカリケイ酸塩は、BaO、SrO、Al
2O
3、またはSiO
2を含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【請求項13】
前記高見かけ密度粉末は、0.5重量%~10重量%のSiO
2混合物をさらに含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【請求項14】
前記高見かけ密度粉末は、3.5×10
-6/k~6×10
-6/kの範囲の熱膨張係数を有する材料をさらに含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【請求項15】
前記希土類ケイ酸塩は二ケイ酸塩を含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【請求項16】
前記二ケイ酸塩はRE
2Si
20
7を含み、REはY、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuのいずれかであり得る、請求項15に記載の環境バリアコーティング。
【請求項17】
前記希土類ケイ酸塩は低熱膨張係数一ケイ酸塩を含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
1.発明の分野
熱成長SiO2酸化物(TGO)による破砕を回避するために気密環境バリアコーティング(EBC)を製造するための材料およびプロセス。
【背景技術】
【0002】
2.背景情報の考察
酸化および水蒸気攻撃からセラミック基材複合材(CMC)を保護するために、Si系CMC上に、環境バリアコーティング(EBC)が適用されている。現在、現状のEBC系は、Siボンドコートおよび希土類二ケイ酸塩中間層および/またはトップコートを含む。希土類二ケイ酸塩は、下にあるSiC基板の熱膨張係数(CTE)と近く一致する熱膨張係数を有する。高温ガスタービンエンジン環境では、水蒸気は微小亀裂を貫通し、その結果、コーティングはSiボンドコートの酸化を加速し、熱成長酸化物(TGO)が閾値厚みに達すると、EBCの破砕を引き起こす。熱成長SiO2酸化物(TGO)によって誘発される環境バリアコーティング(EBC)のこの破砕は重要なEBC破壊モードであるため、コーティング耐久性を改善するためにTGO成長速度を制御することは重要である。
【0003】
従来、空気プラズマ溶射(APS)プロセスは、通常、希土類ケイ酸塩コーティングを堆積させるために使用される。しかしながら、APSプロセスでは、粒子速度は、概して、より低く(<200m/s)、これは有意なSiO2損失を引き起こし、堆積された二ケイ酸塩コーティング中に希土類一ケイ酸塩相の含有をもたらす。一ケイ酸塩は一般に、二ケイ酸塩のCTE(=4.1×10-6/℃)よりもはるかに大きいCTE(=7.5×10-6/℃)を有するので、二ケイ酸塩コーティングに、より大きいCTEの一ケイ酸塩相を含めると、熱サイクル中に亀裂が発生する。コーティングにおけるそのような亀裂の存在は、シリコンボンドコートへの酸化種の輸送経路を提供し、TGOの急速な成長およびコーティングの早期の破壊をもたらす。したがって、二ケイ酸塩コーティング中の相組成を制御することは、非常に耐久性のあるEBCを達成するために重要である。加えて、従来のAPS EBCには多孔性および微小亀裂が常に存在し、それは、これらの微小亀裂を通る酸化性物質の拡散を促進し、シリコンボンドコート酸化を加速し、したがってEBCの耐久性を低下させることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概要
TGO成長速度を低減するために、シリコンボンドコート表面への酸化性物質の拡散を防止するために、気密性の酸化バリア層が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態は、気密EBCを製造するための材料およびプロセスを対象とする。そのような堆積された気密EBCは、高温の蒸気環境において優れた耐酸化性を示し、1316℃の蒸気環境において410時間曝露した後、TGO成長はほとんどなかった。
【0006】
実施形態は、例示的な高見かけ密度供給原料をEBC材料または原材料として使用することに関し、「高見かけ密度」は、ASTM B212に従って1.8g/ccより高いと定義される。例示的な高見かけ密度粉末は、コーティングプロセスにおいてSiO2損失を防止するよう所望される固体セラミックコアを有することができる。さらに、高温(すべてのまたは平均の測定粒子温度は、材料組成物の溶融温度を上回る)、高速(平均測定粒子速度は200m/s以上である)コーティングプロセス(HTHV)を使用して、例示的なEBCを堆積させる。このHTHVプロセスにおけるプラズマジェット中の粒子速度は、高密度コーティングを生成するために、200m/s超、好ましくは400m/s~800m/sである。非限定的な例として、実施形態による例示的な高見かけ密度粉末は、Yb2Si2O7供給原料または粉末であり得る。
【0007】
実施形態によれば、例示的な高見かけ密度粉末を用いて形成されたHTHVコーティングについて、蒸気環境中1316℃で410時間曝露した後、TGO成長はほとんどないことが見出された。
【0008】
高温高速(HTHV)溶射プロセスは、非限定的な例として、希土類ケイ酸塩EBC堆積、好ましくは二ケイ酸塩EBC堆積である例示的なコーティングを基板上に堆積させるために、使用することができる。例えば、HTHV適用プロセスによって達成される、より高い粒子速度(>200m/s)は、従来のAPSプロセスで利用可能なものより大きいので、高密度かつ微小亀裂のないEBCが堆積される。この高密度微細構造は、酸化性物質(すなわち、蒸気、酸素)に対する拡散障壁を提供し、したがって、シリコンボンドコートの酸化を防止する。さらに、実験結果は、高温高速(HTHV)プロセスを使用して作製された例示的なコーティングについて、蒸気環境中1316℃で410時間曝露した後にTGO成長がほとんどないことを実証した。非限定的な例として、例示的な希土類ケイ酸塩コーティングは、Yb2Si2O7/Siコーティングであり得る。
【0009】
プラズマジェットにおけるシリカ含有溶融粒子(希土類ケイ酸塩、好ましくは二ケイ酸塩およびムライトなど)の有意なSiO2損失を防止するために、高見かけ密度粉末供給原料、または原料として高見かけ密度粉末を使用して作製された供給原料粉末が好ましい。高見かけ密度粉末は固体セラミックコアを有し、これはコーティングプロセスにおいてSiO2損失を防ぐよう所望される。好ましい見かけ密度は1.8g/cc超、好ましくは2.2g/cc超である。
【0010】
高見かけ密度粉末、または高見かけ密度粉末を用いて作製される粉末は、11μm~125μm、好ましくは11μm~62μmの粒径分布を有する。
【0011】
高見かけ密度粉末供給原料を使用すると、例えば、HTHV堆積Yb2Si2O7コーティング中に約6.0v%のYb2SiO5相しか存在せず、これは、コーティングのCTEを基板のCTEと一致させるのに有利である。
【0012】
高見かけ密度粉末は、以下のプロセスを使用して製造することができる:
1.溶融/破砕;
2.凝集および焼結;ならびに/または
3.凝集およびプラズマ高密度化。
【0013】
高温高速溶射プロセスは、以下のプロセスのいずれでもよく、空気雰囲気または真空雰囲気で操作することができる。
1.高温高速雰囲気プラズマ溶射プロセス;
2.高温高速真空プラズマ溶射プロセス;または
3.高温高速酸素燃料噴霧プロセス。
【0014】
上記のプロセスのいずれにおいても、飛行中の粒子は、200m/sを超える、好ましくは400m/sを超える平均速度を有する。さらに、高温高速真空プラズマ溶射プロセスでは、真空は1mbar~100mbarの範囲である。
【0015】
実施形態による高見かけ密度粉末供給原料は、以下の化学的性質を有することができる:
1.希土類ケイ酸塩、好ましくは二ケイ酸塩、例えばRE2Si207であり、REは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのいずれかであり得る);
2.ムライト;
3.アルカリケイ酸塩(BaO-SrO-Al2O3-SiO2);
4.追加の0.5重量%~10重量%のSiO2混合物を伴う上記の化学的性質(1~3)のいずれか。
5.3.5×10-6/k~6×10-6/kの範囲の熱膨張係数を有する材料。
6.上記の任意の組み合わせ。
【0016】
本発明の他の例示的な実施形態および利点は、本開示および添付の図面を検討することによって確認され得る。
【0017】
図面の簡単な説明
以下の詳細な説明では、本発明の例示的な実施形態の非限定的な例として、以下の複数の図面を参照して本発明をさらに説明し、同様の参照番号は、図面のいくつかの図を通して同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】溶融/粉砕方法を用いて作製された例示的な粉末を示す。
【
図1B】凝集および焼結方法を用いて作製された例示的な粉末を示す。
【
図2A】
図1Aの例示的な粉末の、予備合金化された溶融/粉砕粉末を使用して作製された凝集および焼結粉末を示す。
【
図2B】
図1Bの例示的な粉末の、予備合金化された凝集および焼結粉末を使用して作製された凝集および焼結粉末を示す。
【
図3A】従来のAPSプロセスから生じるTGOと、本発明による高温高速プロセスから生じるTGOとを比較するSEM画像である。
【
図3B】従来のAPSプロセスから生じるTGOと、本発明による高温高速プロセスから生じるTGOとを比較するSEM画像である。
【
図4】従来のAPSプロセスを用いて形成された例示的なコーティングにおける相組成を、本発明による高温高速プロセスを用いて形成された例示的なコーティングにおける相組成と比較する表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本明細書に示される詳細は、例示を目的とし、本発明の実施形態の例示的な考察のみを目的とし、本発明の原理および概念的局面の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示される。この点に関して、本発明の基本的な理解に必要なものよりも詳細に本発明の構造的詳細を示す試みはなされておらず、本説明は、図面と共に、本発明のいくつかの形態が実際にどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【0020】
プラズマジェットにおけるシリカ含有溶融粒子(希土類ケイ酸塩、好ましくは二ケイ酸塩、およびムライトなど)の有意なSiO2損失を防止するために、高見かけ密度粉末供給原料、または原料として高見かけ密度粉末を使用して作製される供給原料粉末が好ましい。高見かけ密度粉末は固体セラミックコアを有し、これはコーティングプロセスにおいてSiO2損失を防ぐよう所望される。好ましい見かけ密度は1.8g/cc超、好ましくは2.2g/cc超である。
【0021】
高見かけ密度粉末は、以下のプロセスを使用して製造することができる:
1.溶融/破砕;
2.凝集および焼結;ならびに/または
3.凝集およびプラズマ高密度化。
【0022】
さらに、これらのプロセスに従って製造された粉末は、95v%を超える相純度を有する。
【0023】
図1Aおよび
図1Bは、高見かけ密度および高相純度粉末を示す。
図1Aに示すように、例示的な高見かけ密度粉末、例えば、Yb
2Si
2O
7粉末などの希土類ケイ酸塩は、溶融/粉砕方法を使用して作製することができる。このような溶融/粉砕された例示的なYb
2Si
2O
7粉末は、2.2g/ccを超える見かけ密度を有する。
図1Bは、高見かけ密度粉末、例えば、Yb
2Si
2O
7粉末などの希土類ケイ酸塩を示し、これは、凝集および焼結方法を用いて作製することができる。このような凝集および焼結された例示的なYb
2Si
2O
7粉末は、2.4g/ccを超える見かけ密度を有する。
図1Aおよび
図1Bの粉末は、95v%を超える相純度を有する。
【0024】
図2Aおよび
図2Bは、上記の高見かけ密度および高純度粉末(すなわち、予備合金化された粉末)を原材料として使用して作製された例示的な粉末を示す。したがって、上記の高見かけ密度および高相純度粉末を溶射EBCの供給原料として直接使用することに加えて、これらの高見かけ密度および高相純度予備合金化粉末は、相対的により低い見かけ密度の粉末製造のための原料としても使用することができる。これらの実施形態において、
図1Aおよび
図1Bに示される高見かけ密度および高相純度粉末は、10μm未満、好ましくは3μm未満のサイズに粉砕され、次いで、これらのより微細な粉末は、11μm~105μm、好ましくは11μm~62μmの範囲の所望の粒径分布に凝集および焼結され得る。
図2Aは、
図1Aの予備合金化された溶融/粉砕粉末を使用して作製された凝集および焼結された例示的な粉末、例えば、Yb
2Si
2O
7粉末などの希土類ケイ酸塩を示す。この凝集および焼結された例示的なYb
2Si
2O
7粉末は、1.4g/ccを超える見かけ密度を有する。
図2Bは、
図1Bの予備合金化された凝集および焼結粉末を使用して作製された凝集および焼結された例示的な粉末、例えば、Yb
2Si
2O
7コーティングなどの希土類ケイ酸塩を示す。このような凝集および焼結された例示的なYb
2Si
2O
7粉末は、1.6g/ccを超える見かけ密度を有する。これらの実施形態における利点は、予備合金化された、より高い見かけの粉末を原料として使用して作製されるこれらの低見かけ密度粉末が、高温溶射プロセスにおいて粒子からのSiO
2の損失を防止することができ、HTHVプロセスを使用して、これらの低見かけ粉末を使用して高密度コーティングを作製することができるように高純度コーティングをもたらすことができることである。
【0025】
さらに、例示的な高見かけ密度粉末または予備合金化処理された例示的な高見かけ密度粉末供給原料は、上記で特定された希土類ケイ酸塩に限定されず、以下の化学的性質を有することができる:
1.希土類ケイ酸塩、好ましくは二ケイ酸塩、例えばRE2Si207などであり、REは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのいずれかであり得る);
2.ムライト;
3.アルカリケイ酸塩(BaO-SrO-Al2O3-SiO2);
4.追加の0.5重量%~10重量%のSiO2混合物を伴う上記の化学的性質(1~3)のいずれか。
5.3.5×10-6/k~6×10-6/kの範囲の熱膨張係数を有する材料。
6.上記の任意の組み合わせ。
【0026】
実施形態による高見かけ密度粉末は、高温高速(HTHV)溶射プロセスを使用して堆積させてEBCを形成することができる。このHTHVプロセスは、従来のAPSプロセスを通して達成され得るよりも高い粒子速度(>200m/s)を生じさせるので、高密度、例えば、<5%の空孔率、および微小亀裂のないEBCを堆積させすることが見出されている。この高密度微細構造は、酸化性物質(すなわち、蒸気、酸素)に対する拡散障壁を提供し、したがって、シリコンボンドコートの酸化を防止する。好ましくは、HTHVプロセスは、400m/sより大きい粒子速度を生じさせる。
【0027】
さらに、HTHV溶射プロセスは、以下のプロセスのいずれでもよく、空気雰囲気中または真空雰囲気中で操作することができる。
1.高温高速雰囲気プラズマ溶射プロセス;
2.高温高速真空プラズマ溶射プロセス;または
3.高温高速酸素燃料噴霧プロセス。
【0028】
上記のプロセスのいずれかにおいて、飛行中の粒子は、200m/sを超える、好ましくは400m/sを超える平均速度を有する。さらに、高温高速真空プラズマ溶射プロセスでは、真空は1mbar~100mbarの範囲である。
【0029】
図3Aおよび
図3Bは、例示的なEBC系、例えばYb
2Si
2O
7/Si EBC系を90%H
2O~10%O
2環境に1316℃で410時間曝露した後のTGO成長を比較するSEM画像を示す。従来の低速度APSプロセスを使用して作製されたYb
2Si
2O
7/Si EBC系を示す
図3AのSEM画像は、Siボンドコートと適用されたYb
2Si
2O
7層との間に約11μmの厚みのTGOを示す。対照的に、高温高速(HTHV)プロセスで作製されたYb
2Si
2O
7/Si EBC系を示す
図3BのSEM画像は、SiボンドコートとYb
2Si
2O
7層との間に識別可能なTGO成長をほとんど示さない。
【0030】
図4は、従来の低速プロセスで作製された例示的なコーティング、例えばYb
2Si
2O
7などの希土類ケイ酸塩コーティングの相組成と、高速HTHVプロセスで作製された例示的なコーティングの相組成とを比較する表を提供する。この表から、低速APS堆積Yb
2Si
2O
7(二ケイ酸塩)コーティングの相組成は、約38.0v%のYb
2SiO
5(一ケイ酸塩)相を含むが、HTHV堆積Yb
2Si
2O
7(二ケイ酸塩)コーティング中には、約6.0v%のYb
2SiO
5(一ケイ酸塩)相のみが存在することが示される。この一ケイ酸塩Yb
2SiO
5は、二ケイ酸塩Yb
2Si
2O
7のCTE(=4.1×10
-6/℃)よりもはるかに大きいCTE(=7.5×10
-6/℃)を有するので、HTHVプロセスによって堆積された二ケイ酸塩コーティング中のCTE一ケイ酸塩相の体積減少は、熱サイクル中に亀裂を生じさせてシリコンボンドコートへの酸化種のための輸送経路を形成するAPSプロセスによって堆積されたコーティングと比較して、高密度かつ微小亀裂のないEBCをもたらすことになる。したがって、開示される実施形態に従って二ケイ酸塩コーティング中の相組成を制御することは、高耐久性EBCを達成するために有利である。しかしながら、低CTEを有するいくつかの希土類一ケイ酸塩は、上述の高速HTHVプロセスを介してEBCとして有利に利用され得ることが理解され得る。
【0031】
実施形態によると、
図5は、実施形態によるコーティング例を示す。例示的なコーティングは、例えば、40ミルを超える厚みを有するSiCまたはSi
3N
4などの基板上に形成される。例示的なコーティングは、基板上に、2μm~500μm、好ましくは25μm~200μmの厚みを有する堆積されたボンドコート層を含むことができる。このボンドコート層は、10%未満、好ましくは5%未満の空孔率を有するように、APS、HTHVまたは真空プラズマ溶射などの溶射プロセスによって、または物理蒸着プロセスもしくは化学蒸着プロセスによって、適用されることができる。さらに、ボンドコート層は、以下の化学的性質を有することができる:
1.Si;
2.Si酸化物、例えば、Al
2O
3、B
2O
3、HfO
2、TiO
2、TaO
2、BaO、SrO;
3.ケイ化物、例えばRESi、HfSi
2、TaSi
2、Ti
2Si
2;
4.RE
2Si
2O
7-Si;
5.RE
2Si
2O
7-ケイ化物;
6.ムライト-Si
7.ムライト-ケイ化物
8.上記の組み合わせ。
さらに、REは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuのいずれかであり得る。
【0032】
例示的なコーティングは、酸素および蒸気拡散を遮断するためにボンドコート層上に形成される酸化バリア層を含むこともできる。ボンドコート層上に堆積される酸化バリア層の厚みは、10μm~1000μm、好ましくは50μm~250μmとすることができる。この酸化バリア層は、実施形態に従って、10%未満、好ましくは5%未満の空孔率を有するようにHTHVプロセスによって適用される。さらに、酸化バリア層は、以下の化学的性質を有することができる:
1.希土類ケイ酸塩、好ましくは二ケイ酸塩、例えばRE2Si207であり、REは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuのいずれかであり得る;
2.ムライト
3.アルカリケイ酸塩(BaO、SrO、Al2O3またはSiO2);
4.追加の0.5重量%~10重量%のSiO2混合物を伴う1~3の化学的性質;
5.3.5×10-6/k~6×10-6/kの範囲の熱膨張係数を有する材料;
6.上記の任意の組み合わせ。
【0033】
前述の例は、単に説明の目的で提供されており、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。本発明を例示的な実施形態を参照して説明したが、本明細書で使用した語は、限定の語ではなく、説明および例示の語であることを理解されたい。変更が、本発明の範囲および精神からその局面において逸脱することなく、特許請求の範囲内で、現在述べられているように、および補正されるように、行われてもよい。本発明は、特定の手段、材料および実施形態を参照して本明細書に記載されてきたが、本発明は、本明細書に開示された詳細に限定されることを意図するものではなく、むしろ、本発明は、特許請求の範囲内にあるようなすべての機能的に等価な構造、方法および使用に及ぶ。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境バリアコーティングを適用する方法であって、
高温高速(HTHV)プロセスを介して高見かけ密度粉末を適用することを含み、
前記高見かけ密度粉末は、
1.8g/ccより大きい見かけ密度を有し、希土類ケイ酸塩、ムライト、またはアルカリケイ酸塩のうちの少なくとも1つを含
み、
前記高見かけ密度粉末の粉末は、固体セラミックコアを有する、環境バリアコーティングを適用する方法。
【請求項2】
前記アルカリケイ酸塩は、BaO、SrO、Al
2O
3、またはSiO
2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高見かけ密度粉末は、0.5重量%~10重量%のSiO
2混合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高見かけ密度粉末は、3.5×10
-6/k~6×10
-6/kの範囲の熱膨張係数を有する材料をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記HTHVプロセスは、200m/sより大きい粒子速度を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記HTHVプロセスは、400m/sより大きい粒子速度を生じさせる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記HTHVプロセスは、高温高速雰囲気プラズマ溶射プロセス、高温高速真空プラズマ溶射プロセス、または高温高速酸素燃料噴霧プロセスのうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記希土類ケイ酸塩は二ケイ酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記二ケイ酸塩はRE
2Si
20
7を含み、REはY、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuのいずれかであり得る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記希土類ケイ酸塩は低熱膨張係数一ケイ酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
環境バリアコーティングであって、
希土類ケイ酸塩、ムライト、またはアルカリケイ酸塩のうちの少なくとも1つを含む高密度コーティングを含む、環境バリアコーティング。
【請求項12】
前記アルカリケイ酸塩は、BaO、SrO、Al
2O
3、またはSiO
2を含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【請求項13】
前記高見かけ密度粉末は、0.5重量%~10重量%のSiO
2混合物をさらに含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【請求項14】
前記高見かけ密度粉末は、3.5×10
-6/k~6×10
-6/kの範囲の熱膨張係数を有する材料をさらに含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【請求項15】
前記希土類ケイ酸塩は二ケイ酸塩を含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【請求項16】
前記二ケイ酸塩はRE
2Si
20
7を含み、REはY、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuのいずれかであり得る、請求項15に記載の環境バリアコーティング。
【請求項17】
前記希土類ケイ酸塩は低熱膨張係数一ケイ酸塩を含む、請求項11に記載の環境バリアコーティング。
【請求項18】
前記見かけ密度は2.2g/ccより大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記高見かけ密度粉末の前記粉末は、15μm~125μmの粒径分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記高見かけ密度粉末の前記粉末は、15μm~62μmの粒径分布を有する、請求項19に記載の方法。
【国際調査報告】