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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】多発性骨髄腫の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20240214BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20240214BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240214BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K31/7088
A61K31/713
A61P35/00
A61P43/00 111
C12Q1/6827 Z ZNA
C12Q1/6841 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551770
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 US2022017844
(87)【国際公開番号】W WO2022182953
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/154,104
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508027464
【氏名又は名称】セルジーン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】ストング,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ハグナー,パトリック アール
(72)【発明者】
【氏名】ピアソール,ウィリアム エドワード
(72)【発明者】
【氏名】タクルタ,アンジャン
(72)【発明者】
【氏名】フリント,ジェニファー エリン
(72)【発明者】
【氏名】オルティス-エステベス,マリア
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ43
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC41
4C085AA13
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
多発性骨髄腫を治療する方法であって、多発性骨髄腫を有する対象に核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)の阻害剤を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。また、多発性骨髄腫が4:14染色体転座(t(4;14))を有すると以前に決定されている場合の使用方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性骨髄腫を治療する方法であって、多発性骨髄腫を有する対象に、核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)の阻害剤の治療有効量を投与する工程を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記多発性骨髄腫が、4:14染色体転座(t(4;14))を有すると以前に決定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記t(4;14)が、NSD2遺伝子の破壊をもたらす、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の転写開始部位の後に位置する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の翻訳開始部位の後に位置する、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の翻訳終止部位の前に位置する、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンの前に位置する、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソン中に位置する、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンの開始点と2番目のコードエクソンの開始点との間に位置する、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記NSD2遺伝子の破壊が、ゲノムリファレンスコンソーシアムヒトビルド38パッチリリース13(GRCh38.p13)のゲノム位置1,871,393またはその後に位置する、請求項3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記NSD2遺伝子の破壊が、GRCh38.p13のゲノム位置1,871,393とゲノム位置1,900,655との間に位置する、請求項3から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記NSD2遺伝子の破壊が、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655またはその後に位置する、請求項3から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記t(4;14)が、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655とゲノム位置1,982,207との間に位置する、請求項3から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記多発性骨髄腫が、短縮型NSD2タンパク質を発現する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多発性骨髄腫が、完全長NSD2タンパク質を発現する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記多発性骨髄腫が、高レベルの完全長NSD2タンパク質を発現する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記4:14染色体転座(t(4;14))が、インサイチュハイブリダイゼーション、PCR、RT-PCR、RNA配列決定、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、転写物インサイチュハイブリダイゼーション、全ゲノム配列決定、全エクソーム配列決定、混合ライゲーションプローブアッセイ、質量分析、および/またはMALDI-TOFを含む方法によって特定された、請求項2から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記NSD2の阻害剤が、抗体、小分子、アプタマー、siRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの第2の治療剤を投与する工程を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第2の治療剤が、化学療法剤、ステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、抗CD38抗体、抗SLAMF7抗体、抗体薬物コンジュゲート、および核外輸送阻害剤から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの第2の治療剤が、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、パノビノスタット、メルファラン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、エトポシド、ドキソルビシン、ベンダムスチン、デキサメタゾン、プレドニゾン、ダラツムマブ、イサツキシマブ、エロツズマブ、ベランタマブマホドチン-blmf、セリネキソール、パミドロネート、ゾレドロン酸、およびデノスマブから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの第2の治療剤が、
a)レナリドミド;
b)イベルドミド;
c)(S)-4-(4-(4-(((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン-4-イル)オキシ)メチル)ベンジル)ピペラジン-1-イル)-3-フルオロベンゾニトリル;
d)(i)レナリドミド、ポマリドミド、またはサリドマイド;および(ii)デキサメタゾン;
e)(i)カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、またはボルテゾミブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾン;
f)(i)ボルテゾミブまたはカルフィルゾミブ;(ii)シクロホスファミド;および(iii)デキサメタゾン;
g)(i)エロツズマブまたはダラツムマブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾン;
h)ボルテゾミブ、リポソームドキソルビシン、およびデキサメタゾン;
i)パノビノスタット、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾン;
j)エロツズマブ、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾン;
k)サリドマイドまたはボルテゾミブを伴うかまたは伴わない、メルファランおよびプレドニゾン;
l)ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン;
m)デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、およびシスプラチン;ならびに
n)ボルテゾミブを伴うかまたは伴わない、デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびエトポシド
から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
NSD2阻害剤による治療のために、多発性骨髄腫を有する対象を選択する方法であって、前記対象が、4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程を含み、前記対象がt(4;14)を有する場合、前記対象をNSD2阻害剤による治療のために選択する、方法。
【請求項24】
前記多発性骨髄腫を有する対象が、NSD2阻害剤による治療から利益を得ることになるか否かを予測する方法であって、前記対象が4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程を含み、前記対象がt(4;14)転座を有する場合、前記対象はNSD2阻害剤による治療から利益を得ると予測される、方法。
【請求項25】
前記t(4;14)が、NSD2遺伝子の破壊をもたらす、請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の転写開始部位の後に位置する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の翻訳開始部位の後に位置する、請求項25または請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の翻訳終止部位の前に位置する、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンの前に位置する、請求項25から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンに位置する、請求項25から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンの開始点と2番目のコードエクソンの開始点との間に位置する、請求項25から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記NSD2遺伝子の破壊が、ゲノムリファレンスコンソーシアムヒトビルド38パッチリリース13(GRCh38.p13)のゲノム位置1,871,393またはその後に位置する、請求項25から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記NSD2遺伝子の破壊が、GRCh38.p13のゲノム位置1,871,393とゲノム位置1,900,655との間に位置する、請求項25から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記NSD2遺伝子の破壊が、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655またはその後に位置する、請求項25から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記t(4;14)が、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655とゲノム位置1,982,207との間に位置する、請求項25から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記多発性骨髄腫が、短縮型NSD2タンパク質を発現する、請求項23から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記多発性骨髄腫が、完全長NSD2タンパク質を発現する、請求項23から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記多発性骨髄腫が、高レベルの完全長NSD2タンパク質を発現する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対象がt(4;14)を有するか否かを決定することが、インサイチュハイブリダイゼーション、PCR、RT-PCR、RNA配列決定、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、転写物インサイチュハイブリダイゼーション、全ゲノム配列決定、全エクソーム配列決定、混合ライゲーションプローブアッセイ、質量分析、および/またはMALDI-TOFを含む、請求項23から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
NSD2阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項23から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記NSD2の阻害剤が、抗体、小分子、アプタマー、siRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの第2の治療剤を投与する工程を含む、請求項40または請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの第2の治療剤が、化学療法剤、ステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、抗CD38抗体、抗SLAMF7抗体、抗体薬物コンジュゲート、および核外輸送阻害剤から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つの第2の治療剤が、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、パノビノスタット、メルファラン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、エトポシド、ドキソルビシン、ベンダムスチン、デキサメタゾン、プレドニゾン、ダラツムマブ、イサツキシマブ、エロツズマブ、ベランタマブマホドチン-blmf、セリネキソール、パミドロネート、ゾレドロン酸、およびデノスマブから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの第2の治療剤が、
a)レナリドミド;
b)イベルドミド;
c)(S)-4-(4-(4-(((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン-4-イル)オキシ)メチル)ベンジル)ピペラジン-1-イル)-3-フルオロベンゾニトリル;
d)(i)レナリドミド、ポマリドミド、またはサリドマイド;および(ii)デキサメタゾン;
e)(i)カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、またはボルテゾミブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾン;
f)(i)ボルテゾミブまたはカルフィルゾミブ;(ii)シクロホスファミド;および(iii)デキサメタゾン;
g)(i)エロツズマブまたはダラツムマブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾン;
h)ボルテゾミブ、リポソームドキソルビシン、およびデキサメタゾン;
i)パノビノスタット、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾン;
j)エロツズマブ、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾン;
k)サリドマイドまたはボルテゾミブを伴うかまたは伴わない、メルファランおよびプレドニゾン;
l)ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン;
m)デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、およびシスプラチン;ならびに
n)ボルテゾミブを伴うかまたは伴わない、デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびエトポシド
から選択される、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月26日に出願された米国特許仮出願第63/154,104号の優先権の利益を主張し、この文献は、あらゆる目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
II.分野
多発性骨髄腫を治療する方法であって、多発性骨髄腫を有する対象に、核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)の阻害剤を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。また、多発性骨髄腫が4:14染色体転座(t(4;14))を有すると以前に決定されている場合の治療方法も提供される。
【背景技術】
【0003】
III.背景
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄における形質細胞のがんである。通常、形質細胞は抗体を生成し、免疫機能に重要な役割を果たす。しかしながら、これらの細胞の制御されない増殖は、骨痛および骨折、貧血、感染症、および他の合併症につながる。多発性骨髄腫は、2番目に多い血液悪性腫瘍であるが、多発性骨髄腫の正確な原因は依然として不明である。多発性骨髄腫は、骨髄腫細胞がこれらのタンパク質を分泌しない(非分泌性骨髄腫と呼ばれる)一部の患者を除き(1%~5%と推定される)、血液、尿、および臓器において、限定はされないが、Mタンパク質および他の免疫グロブリン(抗体)、アルブミン、ならびにベータ-2-ミクログロブリンを含む、高レベルのタンパク質を引き起こす。パラプロテインとしても知られているモノクローナルタンパク質の略称であるMタンパク質は、骨髄腫形質細胞によって産生される特に異常なタンパク質であり、非分泌性骨髄腫を有するかまたは骨髄腫細胞が免疫グロブリン軽鎖を重鎖と共に産生する患者を除くほぼ全ての多発性骨髄腫の患者の血液または尿で見出すことができる。
【0004】
骨痛を含む骨格症状は、多発性骨髄腫の臨床的に最も重要な症状の一つである。悪性形質細胞は、骨からカルシウムを浸出させて溶解性病変を引き起こす破骨細胞刺激因子(IL-1、IL-6およびTNFを含む)を放出し;高カルシウム血症は別の症状である。サイトカインとも呼ばれる破骨細胞刺激因子は、骨髄腫細胞のアポトーシス、つまり死滅を防止することができる。患者の50パーセントは、診断時に、放射線学的に検出可能な骨髄腫関連骨格病変を有する。多発性骨髄腫の他の一般的な臨床症状としては、多発性神経障害、貧血、過粘稠度、感染症、および腎機能不全が挙げられる。
【0005】
細胞遺伝学的特徴は、多発性骨髄腫の重要な予後マーカーである。t(4;14)染色体転座を有すると新たに診断されたMM患者のほぼ15パーセントは、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が短いことを含む予後不良を示し、これは既存の治療では部分的にしか軽減されない。したがって、この部分集団に特異的な治療戦略が大いに必要とされている。Ortiz et al., Blood (2019) 134 (Supplement_1): 366。
【発明の概要】
【0006】
IV.概要
多発性骨髄腫を治療する方法であって、多発性骨髄腫を有する対象に、核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)の阻害剤を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0007】
また、多発性骨髄腫が4:14染色体転座(t(4;14))を有すると以前に決定されている場合の使用方法も提供される。
【0008】
以下の非限定的な実施形態が提供される。
【0009】
実施形態1は、多発性骨髄腫を治療する方法であって、多発性骨髄腫を有する対象に、核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)の阻害剤の治療有効量を投与する工程を含む方法である。
【0010】
実施形態2は、多発性骨髄腫が4:14染色体転座(t(4;14))を有すると以前に決定されている、実施形態1に記載の方法である。
【0011】
実施形態3は、t(4;14)が、NSD2遺伝子の破壊をもたらす、実施形態2に記載の方法である。
【0012】
実施形態4は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の転写開始部位の後に位置する、実施形態3に記載の方法である。
【0013】
実施形態5は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の翻訳開始部位の後に位置する、実施形態3または実施形態4に記載の方法である。
【0014】
実施形態6は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の翻訳終止部位の前に位置する、実施形態3から5のいずれか一つに記載の方法である。
【0015】
実施形態7は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンの前に位置する、実施形態3から5のいずれか一つに記載の方法である。
【0016】
実施形態8は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンに位置する、実施形態3から6のいずれか一つに記載の方法である。
【0017】
実施形態9は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンの開始点と2番目のコードエクソンの開始点との間に位置する、実施形態3から6のいずれか一つに記載の方法である。
【0018】
実施形態10は、NSD2遺伝子の破壊が、ゲノムリファレンスコンソーシアム(Genome Reference Consortium)ヒトビルド38パッチリリース13(GRCh38.p13)のゲノム位置1,871,393またはその後に位置する、実施形態3から9のいずれか一つに記載の方法である。
【0019】
実施形態11は、NSD2遺伝子の破壊が、GRCh38.p13のゲノム位置1,871,393とゲノム位置1,900,655との間に位置する、実施形態3から10のいずれか一つに記載の方法である。
【0020】
実施形態12は、NSD2遺伝子の破壊が、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655またはその後に位置する、実施形態3から10のいずれか一つに記載の方法である。
【0021】
実施形態13は、t(4;14)が、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655とゲノム位置1,982,207との間に位置する、実施形態3から10のいずれか一つに記載の方法である。
【0022】
実施形態14は、多発性骨髄腫が、短縮型NSD2タンパク質を発現する、実施形態1から13のいずれか一つに記載の方法である。
【0023】
実施形態15は、多発性骨髄腫が、完全長NSD2タンパク質を発現する、実施形態1から13のいずれか一つに記載の方法である。
【0024】
実施形態16は、多発性骨髄腫が、高レベルの完全長NSD2タンパク質を発現する、実施形態15に記載の方法である。
【0025】
実施形態17は、4:14染色体転座(t(4;14))が、インサイチュハイブリダイゼーション、PCR、RT-PCR、RNA配列決定、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、転写物インサイチュハイブリダイゼーション(transcript in situ hybridization)、全ゲノム配列決定、全エクソーム配列決定、混合ライゲーションプローブアッセイ(mixed ligation probe assay)、質量分析、および/またはMALDI-TOFを含む方法によって特定されていた、実施形態2から16のいずれか一つに記載の方法である。
【0026】
実施形態18は、NSD2の阻害剤が、抗体、小分子、アプタマー、siRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、実施形態1から17のいずれか一つに記載の方法である。
【0027】
実施形態19は、少なくとも1つの第2の治療剤を投与する工程を含む、実施形態1から18のいずれか一つに記載の方法である。
【0028】
実施形態20は、少なくとも1つの第2の治療剤が、化学療法剤、ステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、抗CD38抗体、抗SLAMF7抗体、抗体薬物コンジュゲート、および核外輸送阻害剤から選択される、実施形態19に記載の方法である。
【0029】
実施形態21は、少なくとも1つの第2の治療剤が、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、パノビノスタット、メルファラン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、エトポシド、ドキソルビシン、およびベンダムスチン、デキサメタゾン、プレドニゾン、ダラツムマブ、イサツキシマブ、エロツズマブ、ベランタマブマホドチン-blmf(belantamab mafodotin-blmf)、セリネキソール、パミドロネート、ゾレドロン酸、およびデノスマブから選択される、実施形態19に記載の方法である。
【0030】
実施形態22は、少なくとも1つの第2の治療剤が、
a)レナリドミド;
b)イベルドミド;
c)(S)-4-(4-(4-(((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン-4-イル)オキシ)メチル)ベンジル)ピペラジン-1-イル)-3-フルオロベンゾニトリル;
d)(i)レナリドミド、ポマリドミド、またはサリドマイド;および(ii)デキサメタゾン;
e)(i)カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、またはボルテゾミブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾン;
f)(i)ボルテゾミブまたはカルフィルゾミブ;(ii)シクロホスファミド;および(iii)デキサメタゾン;
g)(i)エロツズマブまたはダラツムマブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾン;
h)ボルテゾミブ、リポソームドキソルビシン、およびデキサメタゾン;
i)パノビノスタット、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾン;
j)エロツズマブ、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾン;
k)サリドマイドまたはボルテゾミブを伴うかまたは伴わない、メルファランおよびプレドニゾン;
l)ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン;
m)デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、およびシスプラチン;ならびに
n)ボルテゾミブを伴うかまたは伴わない、デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびエトポシド
から選択される、実施形態19に記載の方法である。
【0031】
実施形態23は、NSD2阻害剤による治療のために、多発性骨髄腫を有する対象を選択する方法であって、対象が4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程を含み、対象がt(4;14)を有する場合、対象をNSD2阻害剤による治療のために選択する、方法である。
【0032】
実施形態24は、多発性骨髄腫を有する対象が、NSD2阻害剤による治療から利益を得ることになるか否かを予測する方法であって、対象が4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程を含み、対象がt(4;14)転座を有する場合、対象はNSD2阻害剤による治療から利益を得ると予測される、方法である。
【0033】
実施形態25は、t(4;14)が、NSD2遺伝子の破壊をもたらす、実施形態23または実施形態24に記載の方法である。
【0034】
実施形態26は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の転写開始部位の後に位置する、実施形態25に記載の方法である。
【0035】
実施形態27は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の翻訳開始部位の後に位置する、実施形態25または実施形態26に記載の方法である。
【0036】
実施形態28は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2の翻訳終止部位の前に位置する、実施形態25から27のいずれか一つに記載の方法である。
【0037】
実施形態29は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンの前に位置する、実施形態25から28のいずれか一つに記載の方法である。
【0038】
実施形態30は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンに位置する、実施形態25から28のいずれか一つに記載の方法である。
【0039】
実施形態31は、NSD2遺伝子の破壊が、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンの開始点と2番目のコードエクソンの開始点との間に位置する、実施形態25から28のいずれか一つに記載の方法である。
【0040】
実施形態32は、NSD2遺伝子の破壊が、ゲノムリファレンスコンソーシアムヒトビルド38パッチリリース13(GRCh38.p13)のゲノム位置1,871,393またはその後に位置する、実施形態25から31のいずれか一つに記載の方法である。
【0041】
実施形態33は、NSD2遺伝子の破壊が、GRCh38.p13のゲノム位置1,871,393とゲノム位置1,900,655との間に位置する、実施形態25から32のいずれか一つに記載の方法である。
【0042】
実施形態34は、NSD2遺伝子の破壊が、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655またはその後に位置する、実施形態25から32のいずれか一つに記載の方法である。
【0043】
実施形態35は、t(4;14)が、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655とゲノム位置1,982,207との間に位置する、実施形態25から32のいずれか一つに記載の方法である。
【0044】
実施形態36は、多発性骨髄腫が、短縮型NSD2タンパク質を発現する、実施形態23から35のいずれか一つに記載の方法である。
【0045】
実施形態37は、多発性骨髄腫が、完全長NSD2タンパク質を発現する、実施形態23から35のいずれか一つに記載の方法である。
【0046】
実施形態38は、多発性骨髄腫が、高レベルの完全長NSD2タンパク質を発現する、実施形態37に記載の方法である。
【0047】
実施形態39は、対象がt(4;14)を有するか否かを決定することが、インサイチュハイブリダイゼーション、PCR、RT-PCR、RNA配列決定、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、転写物インサイチュハイブリダイゼーション、全ゲノム配列決定、全エクソーム配列決定、混合ライゲーションプローブアッセイ、質量分析、および/またはMALDI-TOFを含む、実施形態23から38のいずれか一つに記載の方法である。
【0048】
実施形態40は、NSD2阻害剤を投与する工程をさらに含む、実施形態23から39のいずれか一つに記載の方法である。
【0049】
実施形態41は、NSD2の阻害剤が、抗体、小分子、アプタマー、siRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、実施形態40に記載の方法である。
【0050】
実施形態42は、少なくとも1つの第2の治療剤を投与する工程を含む、実施形態40または実施形態41に記載の方法である。
【0051】
実施形態43は、少なくとも1つの第2の治療剤が、化学療法剤、ステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、抗CD38抗体、抗SLAMF7抗体、抗体薬物コンジュゲート、および核外輸送阻害剤から選択される、実施形態42に記載の方法である。
【0052】
実施形態44は、少なくとも1つの第2の治療剤が、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、パノビノスタット、メルファラン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、エトポシド、ドキソルビシン、ベンダムスチン、デキサメタゾン、プレドニゾン、ダラツムマブ、イサツキシマブ、エロツズマブ、ベランタマブマホドチン-blmf、セリネキソール、パミドロネート、ゾレドロン酸、およびデノスマブから選択される、実施形態42に記載の方法である。
【0053】
実施形態45は、少なくとも1つの第2の治療剤が、
a)レナリドミド;
b)イベルドミド;
c)(S)-4-(4-(4-(((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン-4-イル)オキシ)メチル)ベンジル)ピペラジン-1-イル)-3-フルオロベンゾニトリル;
d)(i)レナリドミド、ポマリドミド、またはサリドマイド;および(ii)デキサメタゾン;
e)(i)カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、またはボルテゾミブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾン;
f)(i)ボルテゾミブまたはカルフィルゾミブ;(ii)シクロホスファミド;および(iii)デキサメタゾン;
g)(i)エロツズマブまたはダラツムマブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾン;
h)ボルテゾミブ、リポソームドキソルビシン、およびデキサメタゾン;
i)パノビノスタット、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾン;
j)エロツズマブ、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾン;
k)サリドマイドまたはボルテゾミブを伴うかまたは伴わないメルファランおよびプレドニゾン;
l)ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン;
m)デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、およびシスプラチン;ならびに
n)ボルテゾミブを伴うかまたは伴わない、デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびエトポシド
から選択される、実施形態42に記載の方法である。
【0054】
V.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1A図1Aは、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)患者329名の生存確率を経時的に示す。
図1B図1Bは、329名のNDMM患者の全生存期間の密度プロットを示す。
図1C図1Cは、24か月未満の全生存期間を示す患者による特定およびグループ化を示す。
図2A図2Aは、NSD2タンパク質のコードを破壊する転座が、より短い全生存期間と相関することを示す。
図2B図2Bは、患者が3つの群:無破壊、前半破壊、後半破壊に分類され、各群は全生存期間の点で予後が漸増的に不良であることを示す。
図3A図3Aは、RNA-seqデータの分析が、3つの患者群:(1)DNA破壊がほとんどまたは全くない全長コード融合転写物群、(2)後半DNA破壊によって特徴付けられる短縮型融合転写物群、および(3)融合転写物発現が測定されない患者の少数のサブセットを特定したことを示す。
図3B図3Bは、短縮型融合タンパク質を発現する患者が、全長コード融合転写物を発現する患者または融合転写物を発現しない患者よりも全生存期間が劣ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
VI.発明の詳細な説明
A.定義
特に断りのない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。全ての特許、出願、公開出願および他の刊行物は、それらの全体が参照により組み込まれる。本明細書において用語に複数の定義が存在する場合は、特に明記しない限り、このセクションの定義が優先される。
【0057】
本明細書で使用される場合、本明細書および添付の特許請求の範囲では、不定冠詞「a」および「an」および定冠詞「the」は、文脈による明らかな別段の指示がない限り、単一の指示対象だけでなく複数の指示対象も含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、同義的に使用できる。「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、言及されるような記載された特徴または構成成分の存在を特定するように解釈されるべきであるが、1つまたはそれ以上の特徴もしくは構成成分またはその群の存在または追加を排除しない。さらに、「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、「からなる」という用語によって包含される例を含むものとする。結果として、「からなる」という用語は、本発明のより具体的な実施形態を提供するために、「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語の代わりに使用できる。
【0059】
「からなる」という用語は、主題が、それを構成する記載された特徴または構成成分のうち少なくとも90%、95%、97%、98%または99%を有することを意味する。別の実施形態では、「からなる」という用語は、任意の後続の列挙の範囲から、達成されるべき技術的効果にとって本質的ではないものを除く任意の他の特徴または構成成分を排除する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「または」という用語は、任意の1つまたは任意の組合せを意味する包括的な「または」として解釈されるべきである。したがって、「A、BまたはC」は、以下のうちいずれかを意味する:「A;B;C;AおよびB;AおよびC;BおよびC;A、BおよびC」。この定義の例外は、要素、機能、工程または行為の組合せが、何らかの形で本質的に相互に排他的である場合にのみ生じる。
【0061】
本明細書で使用される場合、特に断りのない限り、「約」および「ほぼ」という用語は、組成物または投与形の成分の用量、量または重量パーセントと共に使用される場合、指定の用量、量または重量パーセントから得られたものと同等の薬理学的効果を提供する、当業者によって認識される用量、量または重量パーセントを意味する。ある特定の実施形態では、「約」および「はぼ」という用語は、この文脈で使用される場合、指定の用量、量または重量パーセントの30%以内、20%以内、15%以内、10%以内、または5%以内の用量、量または重量パーセントを企図する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「GRCh38.p13」または「hg38」と略称される「ゲノムリファレンスコンソーシアムヒトビルド38パッチリリース13」という用語は、2019年2月28日付けのその名称のヒトリファレンスゲノムアセンブリを指す。GRCh38のGenBank受入番号は、GCA_000001405.28であり、RefSeqでも受入番号GCF_000001405.39で入手可能である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「NSD2」および「核受容体結合SETドメインタンパク質2」という用語は、NSD2ポリペプチドまたはそのポリペプチドをコードする遺伝子などの核酸を指すために同義的に使用される。NSD2ポリペプチドは、ヌクレオソームヒストンH3のリジン36を特異的にジメチル化するリジンヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)(EC2.1.1.357)であり、様々な生物学的プロセスでのクロマチン結合および遺伝子転写制御に関与する。
【0064】
UniProt ID O96028に見出されるヒトNSD2ポリペプチドの例示的なアミノ酸配列は、以下の通りである:
MEFSIKQSPL SVQSVVKCIK MKQAPEILGS ANGKTPSCEV NRECSVFLSK AQLSSSLQEG 60
VMQKFNGHDA LPFIPADKLK DLTSRVFNGE PGAHDAKLRF ESQEMKGIGT PPNTTPIKNG 120
SPEIKLKITK TYMNGKPLFE SSICGDSAAD VSQSEENGQK PENKARRNRK RSIKYDSLLE 180
QGLVEAALVS KISSPSDKKI PAKKESCPNT GRDKDHLLKY NVGDLVWSKV SGYPWWPCMV 240
SADPLLHSYT KLKGQKKSAR QYHVQFFGDA PERAWIFEKS LVAFEGEGQF EKLCQESAKQ 300
APTKAEKIKL LKPISGKLRA QWEMGIVQAE EAASMSVEER KAKFTFLYVG DQLHLNPQVA 360
KEAGIAAESL GEMAESSGVS EEAAENPKSV REECIPMKRR RRAKLCSSAE TLESHPDIGK 420
STPQKTAEAD PRRGVGSPPG RKKTTVSMPR SRKGDAASQF LVFCQKHRDE VVAEHPDASG 480
EEIEELLRSQ WSLLSEKQRA RYNTKFALVA PVQAEEDSGN VNGKKRNHTK RIQDPTEDAE 540
AEDTPRKRLR TDKHSLRKRD TITDKTARTS SYKAMEAASS LKSQAATKNL SDACKPLKKR 600
NRASTAASSA LGFSKSSSPS ASLTENEVSD SPGDEPSESP YESADETQTE VSVSSKKSER 660
GVTAKKEYVC QLCEKPGSLL LCEGPCCGAF HLACLGLSRR PEGRFTCSEC ASGIHSCFVC 720
KESKTDVKRC VVTQCGKFYH EACVKKYPLT VFESRGFRCP LHSCVSCHAS NPSNPRPSKG 780
KMMRCVRCPV AYHSGDACLA AGCSVIASNS IICTAHFTAR KGKRHHAHVN VSWCFVCSKG 840
GSLLCCESCP AAFHPDCLNI EMPDGSWFCN DCRAGKKLHF QDIIWVKLGN YRWWPAEVCH 900
PKNVPPNIQK MKHEIGEFPV FFFGSKDYYW THQARVFPYM EGDRGSRYQG VRGIGRVFKN 960
ALQEAEARFR EIKLQREARE TQESERKPPP YKHIKVNKPY GKVQIYTADI SEIPKCNCKP 1020
TDENPCGFDS ECLNRMLMFE CHPQVCPAGE FCQNQCFTKR QYPETKIIKT DGKGWGLVAK 1080
RDIRKGEFVN EYVGELIDEE ECMARIKHAH ENDITHFYML TIDKDRIIDA GPKGNYSRFM 1140
NHSCQPNCET LKWTVNGDTR VGLFAVCDIP AGTELTFNYN LDCLGNEKTV CRCGASNCSG 1200
FLGDRPKTST TLSSEEKGKK TKKKTRRRRA KGEGKRQSED ECFRCGDGGQ LVLCDRKFCT 1260
KAYHLSCLGL GKRPFGKWEC PWHHCDVCGK PSTSFCHLCP NSFCKEHQDG TAFSCTPDGR 1320
SYCCEHDLGA ASVRSTKTEK PPPEPGKPKG KRRRRRGWRR VTEGK 1365
(配列番号1)
【0065】
例示的なヒトNSD2遺伝子配列は、受入番号ENSG00000109685.19としてEnsemblから入手可能である。NSD2遺伝子は、4番染色体の順方向鎖のヌクレオチド1,871,393~1,982,207に位置する。
【0066】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「発現する」および「発現」という用語は、遺伝子発現を指し、核酸(例えばmRNA)の発現およびポリペプチドの発現を含む。したがって、「NSD2発現」は、NSD2 mRNAの発現および/またはNSD2タンパク質の発現を評価することによって決定することができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「治療する」という用語は、障害、疾患もしくは状態、または障害、疾患、もしくは状態に関連する症状の1つもしくはそれ以上の全体的もしくは部分的な緩和、またはそうした症状のさらなる進行もしくは悪化を減速もしくは停止させること、または障害、疾患、もしくは状態自体の原因を緩和もしくは根絶することを指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「予防する」という用語は、障害、疾患または状態の全体的または部分的な発症、再発または広がりを遅延および/または阻止するか;対象が障害、疾患、もしくは症状を得ることを妨げるか;または対象が障害、疾患、もしくは状態を得るリスクを低減する方法を意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「管理する」という用語は、特定の疾患または障害に罹患した患者におけるその再発を予防すること、疾患もしくは障害に罹患した患者が緩解状態のままである期間を延長すること、患者の死亡率を低減させること、および/または管理されている疾患もしくは状態に関連する症状の重症度の軽減もしくは回避を維持することを包含する。
【0070】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、化合物と関連する「有効量」または「治療有効量」という用語は、障害、疾患もしくは状態、またはそれらの症状を治療、予防、または管理することが可能な量を意味する。
【0071】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「対象」または「患者」という用語は、動物、および一部の実施形態では哺乳動物を含む。一部の実施形態では、対象または患者はヒトである。
【0072】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「試料」という用語は、対象から得られる試料を指す。試料は、任意の生物学的組織または液体に由来するものであってもよい。一部の実施形態では、試料は、ヒト、例えば対象または患者、例えばがん患者、例えば多発性骨髄腫患者に由来する。試料は、組織、組織の切片、細胞、液体、またはそれらの抽出物を含んでいてもよく、任意の手段により、例えば、血液、血清、生検、リンパ節生検、骨髄生検、針生検、吸引などから単離することができる。
【0073】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「再発性」という用語は、治療に応答し(例えば、部分奏功または完全奏功を達成し)、その後進行した障害、疾患、または状態を指す。治療は、1つまたはそれ以上の治療ラインを含んでいてもよい。一部の実施形態では、障害、疾患または状態は、1つまたはそれ以上の治療ラインで以前に治療されている。別の実施形態では、障害、疾患または状態は、1つ、2つ、3つ、または4つの治療ラインで以前に治療されている。一部の実施形態では、障害、疾患、または状態は、血液悪性腫瘍である。
【0074】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「不応性」という用語は、以前の治療に応答しなかった障害、疾患、または状態を指す。一部の実施形態では、障害、疾患、または状態は、1つ、2つ、3つ、または4つの治療ラインで以前に治療されている。一部の実施形態では、障害、疾患、または状態は、2つまたはそれ以上の治療ラインで以前に治療されており、直近の治療に応答しなかった。一部の実施形態では、障害、疾患または状態は、血液悪性腫瘍、特に多発性骨髄腫である。
【0075】
がん、例えば血液悪性腫瘍の文脈では、阻害は、なかでも、疾患進行の阻害、腫瘍増殖の阻害、原発腫瘍の縮小、腫瘍関連症状の軽減、腫瘍分泌因子の阻害、原発腫瘍または二次腫瘍の出現の遅延、原発腫瘍または二次腫瘍の発達の減速、原発腫瘍または二次腫瘍の発生の減少、疾患の二次的影響の減速または重症度の減少、腫瘍増殖の停止および腫瘍の退縮、無増悪期間(TTP)の増加、無増悪生存期間(PFS)の増加、全生存期間(OS)の増加によって評価することができる。OSは、本明細書で使用される場合、治療開始から、何らかの原因で死亡するまでの時間を意味する。TTPは、本明細書で使用される場合、治療開始から、腫瘍進行までの時間を意味する;TTPは死亡を含まない。一部の実施形態では、PFSは、治療開始から、腫瘍進行または死亡までの時間を意味する。一部の実施形態では、PFSは、化合物の最初の用量から、疾患の進行が最初に発生するまでまたは何らかの原因による死亡まで時間を意味する。一部の実施形態では、PFS率は、カプラン-マイヤー推定値を使用して計算される。無症候生存期間(EFS)は、治療開始から、疾患進行、何らかの理由による治療中止、または死亡を含む、あらゆる治療失敗までの時間を意味する。一部の実施形態では、全奏功率(ORR)は、奏功を達成した患者のパーセンテージを意味する。一部の実施形態では、ORRは、完全奏功および部分奏功を達成した患者のパーセンテージの合計を意味する。一部の実施形態では、ORRは、最良の奏功≧部分奏功(PR)である患者のパーセンテージを意味する。一部の実施形態では、奏功期間(DoR)は、奏功の達成から、再発または疾患進行までの時間である。一部の実施形態では、DoRは、奏功≧部分奏功(PR)の達成から再発または疾患進行までの時間である。一部の実施形態では、DoRは、奏功が最初に記録されてから、進行性疾患または死亡が最初に記録されるまでの時間である。一部の実施形態では、DoRは、奏功≧部分奏功(PR)が最初に記録されてから、進行性疾患または死亡が最初に記録されるまでの時間である。一部の実施形態では、奏功までの時間(TTR)は、化合物の最初の用量から、奏功が最初に記録されるまでの時間を意味する。一部の実施形態では、TTRは、化合物の最初の用量から、奏功≧部分奏功(PR)が最初に記録されるまでの時間を意味する。極端な場合、完全な阻害は、本明細書では、予防または化学的予防と呼ばれる。この文脈では、「予防」という用語は、臨床的に明らかながんの発症を完全に予防すること、またはがんの前臨床的に明らかなステージの開始を予防することをいずれも含む。この定義には、悪性細胞への形質転換の予防、または前悪性細胞から悪性細胞への進行を阻止もしくは逆転させることも包含されることが意図されている。これには、がんを発症するリスクのあるものの予防的治療が含まれる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「多発性骨髄腫」は、悪性形質細胞によって特徴付けられる血液学的状態を指し、以下の障害を含む:意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS);低リスク、中リスク、および高リスクの多発性骨髄腫;新たに診断された多発性骨髄腫(低リスク、中リスク、および高リスクの新たに診断された多発性骨髄腫を含む);移植適格および移植不適格の多発性骨髄腫;くすぶり型(低悪性度)多発性骨髄腫(低リスク、中リスク、および高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫を含む);活動性多発性骨髄腫;孤立性形質細胞腫;髄外形質細胞腫;形質細胞白血病;中枢神経系多発性骨髄腫;軽鎖骨髄腫;非分泌性骨髄腫;免疫グロブリンD骨髄腫;および免疫グロブリンE骨髄腫;およびサイクリンD転座(例えば、t(11;14)(q13;q32);t(6;14)(p21;32);t(12;14)(p13;q32);またはt(6;20);)などの遺伝子異常によって特徴付けられる多発性骨髄腫;MMSET転座(例えば、t(4;14)(p16;q32));MAF転座(例えば、t(14;16)(q32;q32);t(20;22);t(16;22)(q11;q13);またはt(14;20)(q32;q11));または他の染色体要因(例えば、17p13または13番染色体の欠失;del(17/17p)、非高二倍性、およびgain(1q))。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、染色体転座t(4;14)によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、多発性骨髄腫国際病期分類システム(ISS)に従って特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ISSによって特徴付けられるステージIの多発性骨髄腫(例えば、血清β2ミクログロブリン<3.5mg/Lおよび血清アルブミン≧3.5g/dL)である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ISSによって特徴付けられるステージIIIの多発性骨髄腫(例えば、血清β2ミクログロブリン>5.4mg/L)である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ISSによって特徴付けられるステージIIの多発性骨髄腫(例えば、ステージIでもIIIでもない)である。
【0077】
ある特定の実施形態では、多発性骨髄腫の治療は、下記に示されている応答およびエンドポイントの定義を使用して、多発性骨髄腫国際統一応答基準(IURC、International Uniform Response Criteria for Multiple Myeloma)によって評価してもよい(Durie BGM, Harousseau J-L, Miguel JS, et al. International uniform response criteria for multiple myeloma. Leukemia, 2006; (10) 10: 1-7を参照)。
【表1】

略語: CR、完全奏功; FLC、遊離軽鎖; PR、部分奏功; SD、安定疾患; sCR、厳格な完全奏功; VGPR、非常に良好な部分奏功。
a全ての奏功カテゴリーは、任意の新しい治療を導入する前の任意の時点でなされる2回の連続評価を必要とする; X線検査が実施された場合、全てのカテゴリーは、進行性骨病変または新たな骨病変の既知の証拠を必要としない。X線検査は、これらの奏功要件を満たす必要はない。
b反復骨髄生検による確認を必要としない。
cクローン細胞の存在/非存在はκ/λ比に基づく。免疫組織化学および/または免疫蛍光による異常κ/λ比の分析は、少なくとも100個の形質細胞を必要とする。異常なクローンの存在を反映する異常比は、κ/λ>4:1または<1:2である。
d以下の測定値のうちの少なくとも1つによって規定される測定可能な疾患: 骨髄形質細胞≧30%; 血清Mタンパク質≧1g/dl(≧10gm/l)[10g/l]; 尿Mタンパク質≧200mg/24時間; 血清FLCアッセイ: 関与FLCレベル≧10mg/dl(≧100mg/l); ただし、血清FLC比は異常である。
【0078】
本明細書で使用される場合、ECOGステータスは、下記に示されているような、東部共同腫瘍学グループ(ECOG)パフォーマンスステータス(Oken M, et al Toxicity and response criteria of the Eastern Cooperative Oncology Group. Am J Clin Oncol 1982;5(6):649-655)を指す。
【表2】

【0079】
ある特定の実施形態では、安定疾患またはその欠如は、患者症状の評価、身体診察、例えばFDG-PET(フルオロデオキシグルコース陽電子放射断層撮影法)、PET/CT(陽電子放射断層撮影/コンピューター断層撮影)スキャン、脳および脊椎のMRI(磁気共鳴画像法)を使用して画像化された腫瘍の可視化、CSF(脳脊髄液)、眼科検査、硝子体液試料採取、網膜写真、骨髄評価、および他の一般的に受け入れられている評価方法などの当技術分野で公知の方法によって決定することができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「同時投与」および「~と組み合わせて」という用語は、1つまたはそれ以上の治療剤(例えば、本明細書で提供される化合物および別の抗がん剤または支持ケア剤)を、同時に、並行して、または特定の時間的制限をもうけることなく順に投与することを含む。一部の実施形態では、薬剤は、細胞内にもしくは患者の体内に同時に存在するか、またはそれらの生物学的効果もしくは治療効果を同時に発揮する。一部の実施形態では、治療剤は、同じ組成物または単位投与形に存在する。他の実施形態では、治療剤は、別々の組成物または単位投与形に存在する。
【0081】
「支持ケア剤」という用語は、別の治療剤による治療による有害効果を治療、予防、または管理する任意の物質を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「導入療法」とは、疾患のために与えられた第1の治療またはがんなどの疾患において完全緩解を誘導する目的で与えられた第1の治療を指す。導入療法は、それ自体によって使用される場合には、最良に利用可能な治療として認められたものである。残存がんが検出される場合には、患者は、再導入と呼ばれる別の治療を用いて治療される。患者が、導入療法後に完全緩解にある場合には、緩解を延長するため、または患者を潜在的に治癒するために、追加の地固めおよび/または維持療法が与えられる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「地固め療法」とは、緩解が最初に達成された後に疾患のために与えられる治療を指す。例えば、がんのための地固め療法は、最初の療法後にがんが消失した後に与えられる治療である。地固め療法は、放射線療法、幹細胞移植またはがん薬物療法を用いる治療を含み得る。地固め療法はまた、強化療法および緩解後療法とも呼ばれる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「維持療法」とは、緩解または最良応答が達成された後に、再発を予防または遅延するために疾患のために与えられる治療を指す。維持療法は、化学療法、ホルモン療法または標的化療法を含み得る。
【0085】
「緩解」は、本明細書で使用される場合、がん、例えば多発性骨髄腫の兆候および症状の減少または消失である。部分緩解では、がんの兆候および症状の全てではなく一部が消失する。完全緩解では、がんの兆候および症状は全て消失するが、がんは依然として体内に存在している可能性がある。
【0086】
本明細書で使用される場合、「移植」は、幹細胞レスキューによる高用量療法を指す。造血(血液)幹細胞または骨髄幹細胞は、治療としてではなく、高用量療法、例えば、高用量化学療法および/または放射線照射などの後で患者をレスキューするために使用される。移植には、患者自身の幹細胞を回収して置換細胞として使用することを指す「自家」幹細胞移植(ASCT)が含まれる。一部の実施形態では、移植には、タンデム移植または多重移植も含まれる。
【0087】
「生物学的療法」という用語は、臍帯血、幹細胞および成長因子などの生物学的療法剤の投与を指す。
【0088】
B.治療対象の選択
一部の実施形態では、多発性骨髄腫を治療する方法であって、多発性骨髄腫を有する対象に、核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)の阻害剤を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0089】
一部の実施形態では、NSD2阻害剤で治療するために、多発性骨髄腫を有する対象を選択する方法であって、対象が4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程を含む方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、対象がt(4;14)を有する場合、対象をNSD2阻害剤での治療のために選択する。
【0090】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫を有する対象が、NSD2阻害剤による治療から利益を得ることになるか否かを予測する方法であって、対象が4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程を含む方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、対象がt(4;14)転座を有する場合、対象はNSD2阻害剤による治療から利益を得ると予測される。
【0091】
対象は、任意の利用可能な方法によって多発性骨髄腫を有すると特定することができる。一部の実施形態では、対象は、多発性骨髄腫を有することが以前に決定されている。
【0092】
一部の実施形態では、がん細胞は、t(4;14)染色体転座をもたらす染色体再編成を有する。一部の実施形態では、t(4;14)染色体転座は、NSD2遺伝子に存在する。
【0093】
一部の実施形態では、がん細胞は、t(4;14)染色体転座を有すると以前に決定されている。
【0094】
一部の実施形態では、t(4;14)染色体転座は、NSD2遺伝子の破壊をもたらす。
【0095】
一部の実施形態では、t(4;14)染色体転座は、NSD2遺伝子のタンパク質コード領域の破壊をもたらさない。
【0096】
一部の実施形態では、t(4;14)染色体転座は、NSD2遺伝子のタンパク質コード領域の破壊をもたらす。一部の実施形態では、NSD2遺伝子のタンパク質コード領域を破壊する転座は、より短い全生存期間と相関する。
【0097】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、短縮型NSD2タンパク質を発現する。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、短縮型または完全長NSD2タンパク質を含む融合タンパク質を発現する。一部の実施形態では、NSD2を含む短縮型融合タンパク質を発現する患者は、全長コード融合転写物を発現する患者または融合転写物を発現しない患者よりも全生存期間が劣る。
【0098】
一部の実施形態では、NSD2遺伝子の破壊は、NSD2遺伝子の最初のコードエクソンに位置する。
【0099】
一部の実施形態では、NSD2遺伝子の破壊は、転座切断点の位置に基づき、前半破壊である。前半破壊は、NSD2遺伝子の転写開始部位とNSD2遺伝子の翻訳開始部位との間の破壊である。一部の実施形態では、前半破壊は、GRCh38.p13のゲノム位置1,871,393とゲノム位置1,900,655との間に存在する。
【0100】
一部の実施形態では、NSD2遺伝子の破壊は、転座切断点の位置に基づき、後半破壊である。一部の実施形態では、後半破壊は、翻訳開始部位の後のNSD2遺伝子における破壊である。一部の実施形態では、後半破壊は、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655の下流の破壊である。一部の実施形態では、後半破壊は、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655とゲノム位置1,983,934との間の破壊である。
【0101】
一部の実施形態では、4:14染色体転座は、ゲノムリファレンスコンソーシアムヒトビルド38パッチリリース13(「GRCh38.p13」)のゲノム位置1,871,393の前に位置する。一部のそのような実施形態では、NSD2遺伝子には破壊は存在しない。
【0102】
一部の実施形態では、t(4;14)は、NSD2遺伝子の転写開始部位の後に位置する。一部の実施形態では、t(4;14)は、NSD2遺伝子の最初のタンパク質コードエクソンの開始点と2番目のタンパク質コードエクソンの開始点との間に位置する。一部の実施形態では、t(4;14)は、NSD2遺伝子の2番目のタンパク質コードエクソンの開始点にまたはその後に位置する。
【0103】
一部の実施形態では、t(4;14)は、GRCh38.p13のゲノム位置1,871,393にまたはその後に位置する。一部の実施形態では、t(4;14)は、GRCh38.p13のゲノム位置1,871,393とゲノム位置1,900,655との間に位置する。
【0104】
一部の実施形態では、t(4;14)は、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655にまたはその後に位置する。一部の実施形態では、t(4;14)は、GRCh38.p13のゲノム位置1,900,655とゲノム位置1,983,934との間に位置する。
【0105】
一部の実施形態では、t(4;14)染色体転座は、NSD2タンパク質発現を分析することによって、直接的または間接的に特定される。一部の実施形態では、NSD2タンパク質発現が決定され、参照(例えば、参照試料、または参照値、またはがんがNSD2ポリペプチドを発現するか否か、もしくはどの程度発現するか、および/もしくはどの形態で発現するかを示す任意の他の比較)と比較される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫でのNSD2発現は、非がん性細胞でのNSD2発現と比べて決定される。一部の実施形態では、患者試料、細胞、および/または細胞株でのNSD2発現の分析および定量化は、免疫組織化学的技術および/または免疫蛍光技術によって決定される。
【0106】
一部の実施形態では、t(4;14)染色体転座は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(リアルタイムRT-PCR、qRT-PCRを含むRT-PCR)、RNA配列決定(RNA-seq)、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、転写物インサイチュハイブリダイゼーション、全ゲノム配列決定(WGS)、全エクソーム配列決定(WES)、マルチプレックスライゲーション依存性プローブアッセイ(MLPA)、質量分析(MS)、および/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型MS(MALDI-TOF MS)を含む方法によって特定される。
【0107】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」という用語は、本明細書で使用される場合、少量の核酸、RNAおよび/またはDNAが増幅される手順を指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーを設計することができるように、目的の領域の末端またはそれ以降の配列情報が入手可能である必要があり;これらのプライマーは、増幅しようとする鋳型の逆鎖と配列が同一または類似することになる。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅された物質の末端と一致してもよい。PCRを使用して、特定のRNA配列を、全ゲノムDNAの特定のDNA配列を、および全細胞RNAから転写されたcDNAを、バクテリオファージ配列またはプラスミド配列などを増幅することができる。
【0108】
他のPCRベースの方法も使用することができる。PCR法の例は、文献に見出すことができる。PCRアッセイの例は、例えば、米国特許第6,927,024号に見出すことができる。RT-PCR法の非限定的な例は、米国特許第7,122,799号に見出すことができる。蛍光インサイチュPCRの非限定的な方法は、米国特許第7,186,507号に記載されている。
【0109】
一部の実施形態では、リアルタイム逆転写PCR(qRT-PCR)は、RNA標的の検出および定量化の両方に使用することができる(Bustin, et al., 2005, Clin. Sci., 109:365-379)。qRT-PCRによって得られる定量的結果は、一般に、定性的データよりも有益である。したがって、一部の実施形態では、qRT-PCRベースアッセイは、細胞ベースアッセイ中にmRNAレベルを測定するのに有用であり得る。qRT-PCR法は、患者治療をモニターするためにも有用である。qRT-PCRベースの方法の例は、例えば、米国特許第7,101,663号に見出すことができる。
【0110】
通常の逆転写酵素-PCRおよびアガロースゲルによる分析とは対照的に、リアルタイムPCRは定量的な結果をもたらす。リアルタイムPCRの追加の利点は、使用が比較的容易であり便利であることである。Applied Biosystems 7500などのリアルタイムPCR用の機器は、TaqMan Sequence Detection化学などの試薬と同様に市販されている。例えば、TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイを、製造元の説明書に従って使用することができる。これらのキットは、ヒト、マウスおよびラットmRNA転写物を迅速に信頼性高く検出および定量化するための、事前に調合された遺伝子発現アッセイである。例示的なPCRプログラムは、例えば、50℃で2分間、95℃で10分間、95℃で15秒間、次いで60℃で1分間の40サイクルである。
【0111】
「RNA配列決定」または「RNA-Seq」という用語は、典型的には(1)RNAを単離する工程;(2)リボソームRNAを枯渇させる工程;(3)cDNAを合成する工程;および(4)次世代配列決定法(NGS)によってcDNAを配列決定する工程を含む方法を指す。RNA-Seqの技術は当業者に周知であり、方法は、Waern et al., Methods Mol Biol., 2011, 759: 125-132; Wilhelm et al., Nature Protocols, 2010, 5(2):255-66; and Hoeijmakers et al., Methods Mol Biol., 2013, 923:221-39に記載されている。
【0112】
「インサイチュハイブリダイゼーション」または「ISH」という用語は、mRNAレベルを決定するために使用することできる技術を指す(A. K. Raap (1998) Mutat. Res. 400:287-298に総説されている)。インサイチュハイブリダイゼーション技術は、目的のmRNAにハイブリダイズする標識(例えば、蛍光標識またはジゴキシゲニン標識)オリゴヌクレオチドプローブと共に細胞をインキュベートし、次いで細胞を顕微鏡で検査することによって、細胞中のmRNAの視覚的検出を可能にする。
【0113】
より正確な遺伝子マッピングのために、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)技術を使用することができる。特に、高分解能FISH技術では(A. Palotie et al. (1996) Ann. Med. 28:101-106)、遊離クロマチン、DNAファイバー、または機械的に伸長された染色体を使用して、数キロベースから300kbまでの範囲のサイズの遺伝子配列をマッピングする。あるいは、遺伝子の染色体位置は、適切なゲノムデータベース、例えば、Entrez Genome Webサイト(国立バイオテクノロジー情報センター、ベセスダ、メリーランド州)にて利用可能なホモサピエンスゲノムデータベースから決定することができる。
【0114】
「全ゲノム配列決定」または「WGS」という用語は、本明細書で使用される場合、ゲノム全体を配列決定する方法を指す。
【0115】
「全エクソーム配列決定」または「WES」という用語は、本明細書で使用される場合、ゲノムの全てのタンパク質コード領域(エクソン)を配列決定する方法を指す。
【0116】
「質量分析」または「マススペック」または「MS」という用語は、本明細書で使用される場合、イオンの質量対電荷比を測定するための分析技術を指す。これは、試料をイオン化して異なる質量のイオンを分離し、イオン束の強度を測定することによってそれらの相対的存在量を記録することによって達成される。典型的な質量分析計は、イオン源、質量分析器、および検出器システムの3つの部分を含む。イオン源は、分析下の物質(分析物)をイオン化する質量分析計の一部である。次いで、イオンは、磁場または電場によって質量分析器へと移送され、そこで質量対電荷比(m/z)に従ってイオンが分離される。多くの質量分析計では、タンデム質量分析(MS/MS)の場合、2つまたはそれ以上の質量分析器が使用される。検出器は、イオンが表面を通過するかまたは表面に衝突する際に誘導される電荷または生成される電流を記録する。質量スペクトルは、質量分析器でm/zイオンをスキャンする際に検出器で生成されるシグナルを測定した結果である。例示的な質量分析の分析技術としては、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI)、高分解能質量分析(HRMS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)、および液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)が挙げられる。また、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)がイオン源であり、質量分析器が飛行時間型(TOF)質量分析計であるMALDI-TOF質量分析などのMALDI質量分析も例示的である。
【0117】
C.核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)の阻害剤
一部の実施形態では、NSD2の阻害剤は抗体である。「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、完全にアセンブリされた抗体、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)、Fv、および他の断片)、単鎖抗体、ダイアボディ、抗体キメラ、ハイブリッド抗体、二重特異性抗体、およびヒト化抗体などを包含する。
【0118】
一部の実施形態では、NSD2の阻害剤は小分子である。「小分子」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、合成無機、有機金属、および有機分子など、1,000ダルトン未満の分子を包含する。
【0119】
一部の実施形態では、NSD2の阻害剤はアプタマーである。「アプタマー」という用語は、本明細書で使用される場合、標的に特異的に結合するオリゴヌクレオチドまたはペプチド分子である。一部の実施形態では、アプタマーは、例えば、約15~約50ヌクレオチドなどの、約15~約100ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドである。
【0120】
一部の実施形態では、NSD2の阻害剤は、低分子干渉RNA(siRNA)である。「siRNA」または「低分子干渉RNA」または「短分子干渉RNA」または「サイレンシングRNA」という用語は、本明細書で使用される場合、相補的なヌクレオチド配列を有する特異的なRNAの発現を妨害する、長さが約20~約27塩基または塩基対の一本鎖または二本鎖の非コードRNAを指す。一部の実施形態では、siRNAは、mRNAの分解を引き起こし、タンパク質産物の翻訳を防止する。
【0121】
一部の実施形態では、NSD2の阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、標的遺伝子またはRNAの特定の配列に相補的であり、その発現またはスプライシングをモジュレートする一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。一部の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも15ヌクレオチドなどの少なくとも10ヌクレオチドであり、約15~約25ヌクレオチドなどの約15~約30ヌクレオチドであってもよく、天然に存在するヌクレオチドと比較して1つまたはそれ以上の修飾を含んでいてもよい。
【0122】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法で使用するための、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤の特定の量は、使用される阻害剤の特定の型、治療または管理されている多発性骨髄腫の型、疾患の重症度およびステージ、治療されている対象の年齢、身長、および/または体重;および患者に同時に投与される任意の適宜追加の活性剤などの要因によって決定される。
【0123】
D.使用方法
一部の実施形態では、多発性骨髄腫を治療する方法であって、多発性骨髄腫を有する対象に、核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)の阻害剤を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0124】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫を治療する方法であって、多発性骨髄腫を有する対象に、核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)の阻害剤の治療有効量を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0125】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、形質細胞白血病(PCL)である。
【0126】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、新たに診断された多発性骨髄腫である。
【0127】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、再発性または不応性である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、レナリドミドに対して不応性である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ポマリドミドに対して不応性である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ポマリドミドおよびプロテアソーム阻害剤の組合せに対して不応性である。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、およびイキサゾミブから選択される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ポマリドミドおよび炎症性ステロイドの組合せに対して不応性である。一部の実施形態では、炎症性ステロイドは、デキサメタゾンまたはプレドニゾンから選択される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ポマリドミドおよびCD38指向性モノクローナル抗体の組合せに対して不応性である。
【0128】
一部の実施形態では、患者において完全奏功、部分奏功、または安定疾患を達成するための方法であって、多発性骨髄腫を有する対象にNSD2の阻害剤を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0129】
一部の実施形態では、患者の多発性骨髄腫国際統一応答基準(IURC)(Durie BGM, Harousseau J-L, Miguel JS, et al. International uniform response criteria for multiple myeloma. Leukemia, 2006; (10) 10: 1 7を参照)で評価される治療応答を誘導するための方法であって、多発性骨髄腫を有する対象に、NSD2の阻害剤を投与する工程を含む方法も、本明細書で提供される。
【0130】
一部の実施形態では、患者において多発性骨髄腫国際統一応答基準(IURC)によって決定される厳密な完全奏功、完全奏功、または非常に良好な部分奏功を達成するための方法であって、多発性骨髄腫を有する患者にNSD2の阻害剤を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0131】
一部の実施形態では、患者において全生存期間、無進行生存期間、無症候生存期間、無増悪期間、または無病生存期間の増加を達成するための方法であって、多発性骨髄腫を有する対象にNSD2の阻害剤を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0132】
一部の実施形態では、NSD2阻害剤で治療するために、多発性骨髄腫を有する対象を選択する方法であって、対象が4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程を含み、対象がt(4;14)を有する場合、対象を、NSD2阻害剤での治療のために選択する方法も、本明細書で提供される。
【0133】
一部の実施形態では、NSD2阻害剤で治療するために、多発性骨髄腫を有する対象を選択する方法であって、
a)対象から試料を得る工程;
b)対象が4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程;
c)対象がt(4;14)染色体転座を有する場合、対象を、NSD2阻害剤での治療のために選択する工程
を含む方法が、本明細書で提供される。
【0134】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫を有する対象が、NSD2阻害剤による治療から利益を得ることになるか否かを予測する方法であって、対象が4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程を含み、対象がt(4;14)転座を有する場合、対象はNSD2阻害剤による治療から利益を得ると予測される、方法が、本明細書で提供される。
【0135】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫を有する対象が、NSD2阻害剤による治療から利益を得ることになるか否かを予測する方法であって、
a)対象から試料を得る工程;
b)対象が4:14染色体転座(t(4;14))を有するか否かを決定する工程;
c)対象がt(4;14)転座を有する場合、対象はNSD2阻害剤による治療から利益を得ると予測される工程
を含む方法が、本明細書で提供される。
【0136】
以前に多発性骨髄腫の治療を受けたが、標準治療に対して非応答性である患者、ならびに以前に治療されていない患者を治療する方法も、本明細書で提供される。多発性骨髄腫を治療しようとして外科手術を受けた患者、ならびに受けていない患者を治療する方法がさらに包含される。以前に移植療法を受けた患者、ならびに受けていない患者を治療する方法も、本明細書で提供される。
【0137】
本明細書で提供される方法は、再発性、不応性または抵抗性である多発性骨髄腫の治療を含む。本明細書で提供される方法は、再発性、不応性または抵抗性である多発性骨髄腫の予防を含む。本明細書で提供される方法は、再発性、不応性または抵抗性である多発性骨髄腫の管理を含む。一部のそのような実施形態では、骨髄腫は、原発性、二次性、三次性、四次性、または五次性の再発多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、微小残存病変(MRD)を低減、維持または排除する。一部の実施形態では、多発性骨髄腫患者におけるMRD陰性の割合および/または持続性を増加させる方法であって、多発性骨髄腫を有する対象にNSD2の阻害剤を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、低リスク、中リスク、および高リスクの多発性骨髄腫、新たに診断された多発性骨髄腫(低リスク、中リスク、および高リスクの新たに診断された多発性骨髄腫を含む)、移植適格および移植不適格の多発性骨髄腫、くすぶり型(低悪性度)多発性骨髄腫(低リスク、中リスク、および高リスクくすぶり型多発性骨髄腫を含む)、活動性多発性骨髄腫、孤立性形質細胞腫、髄外形質細胞腫、形質細胞白血病、中枢神経系多発性骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、免疫グロブリンD骨髄腫、および免疫グロブリンE骨髄腫などの様々な型の多発性骨髄腫を、多発性骨髄腫を有する対象にNSD2の阻害剤を投与することにより、治療、予防または管理する工程を包含する。
【0138】
別の実施形態では、本明細書で提供される方法は、t(4;14)以外の、またはそれに加えて、サイクリンD転座(例えば、t(11;14)(q13;q32);t(6;14)(p21;32);t(12;14)(p13;q32);またはt(6;20););MMSET転座(例えば、t(4;14)(p16;q32));MAF転座(例えば、t(14;16)(q32;q32);t(20;22);t(16;22)(q11;q13);またはt(14;20)(q32;q11));または他の染色体要因(17p13または13番染色体の欠失;del(17/17p)、非高二倍性、およびgain(1q))などの遺伝子異常によって特徴付けられる多発性骨髄腫を、NSD2の阻害剤を投与することによって治療、予防または管理する工程を包含する。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、多発性骨髄腫国際病期分類システム(ISS)に従って特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ISSによって特徴付けられるステージIの多発性骨髄腫(例えば、血清β2ミクログロブリン<3.5mg/Lおよび血清アルブミン≧3.5g/dL)である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ISSによって特徴付けられるステージIIIの多発性骨髄腫(例えば、血清β2ミクログロブリン>5.4mg/L)である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ISSによって特徴付けられるステージIIの多発性骨髄腫(例えば、ステージIでもIIIでもない)である。
【0139】
一部の実施形態では、方法は、NSD2の阻害剤を投与する工程を含む。一部の実施形態では、方法は、地固め療法としてNSD2の阻害剤を投与する工程を含む。一部の実施形態では、方法は、維持療法としてNSD2の阻害剤を投与する工程を含む。
【0140】
本明細書に記載の方法の1つの特定の実施形態では、多発性骨髄腫は、形質細胞白血病である。
【0141】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、高リスク多発性骨髄腫である。一部のそのような実施形態では、高リスク多発性骨髄腫は、再発性または不応性である。一部の実施形態では、高リスク多発性骨髄腫は、最初の治療から12か月以内に再発した多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、高リスク多発性骨髄腫は、遺伝子異常、例えば、del(17/17p)およびt(14;16)(q32;q32)のうちの1つまたはそれ以上によってさらに特徴付けられる多発性骨髄腫である。一部のそのような実施形態では、高リスク多発性骨髄腫は、1つ、2つまたは3つの以前の治療に対して再発性または不応性である。
【0142】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、p53突然変異によってさらに特徴付けられる。一部の実施形態では、p53突然変異は、Q331突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、R273H突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、K132突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、K132N突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、R337突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、R337L突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、W146突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、S261突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、S261T突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、E286突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、E286K突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、R175突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、R175H突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、E258突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、E258K突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、A161突然変異である。一部の実施形態では、p53突然変異は、A161T突然変異である。
【0143】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、p53のホモ接合型欠失によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、野生型p53のホモ接合型欠失によって特徴付けられる。
【0144】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、野生型p53によって特徴付けられる。
【0145】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、1つまたはそれ以上の発がん駆動因子の活性化によって特徴付けられる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の発がん駆動因子は、C-MAF、MAFB、FGFR3、MMset、サイクリンD1、およびサイクリンDからなる群から選択される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、C-MAFの活性化によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、MAFBの活性化によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、FGFR3およびMMsetの活性化によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、C MAF、FGFR3、およびMMsetの活性化によって特徴付けられる。ある特定の実施形態では、多発性骨髄腫は、サイクリンD1の活性化によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、MAFBおよびサイクリンD1の活性化によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、サイクリンDの活性化によって特徴付けられる。
【0146】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、染色体転座t(4;14)以外の、またはそれに加えて、1つまたはそれ以上の染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、染色体転座は、t(4;14)およびt(14;16)である。一部の実施形態では、染色体転座は、t(4;14)およびt(14;20)である。一部の実施形態では、染色体転座は、t(4;14)およびt(11;14)である。一部の実施形態では、染色体転座は、t(4;14)およびt(6;20)である。一部の実施形態では、染色体転座は、t(4;14)およびt(20;22)である。一部の実施形態では、染色体転座は、t(4;14)およびt(6;20)およびt(20;22)である。一部の実施形態では、染色体転座は、t(4;14)およびt(16;22)である。一部の実施形態では、染色体転座は、t(4;14)およびt(14;16)およびt(16;22)である。一部の実施形態では、染色体転座は、t(4;14)およびt(14;20)およびt(11;14)である。
【0147】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、Q331 p53突然変異によって、C-MAFの活性化によって、およびt(4;14)およびt(14;16)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、p53のホモ接合型欠失によって、C-MAFの活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(14;16)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、K132N p53突然変異によって、MAFBの活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(14;20)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、野生型p53によって、FGFR3およびMMsetの活性化によって、ならびにt(4;14)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、野生型p53によって、C-MAFの活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(14;16)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、p53のホモ接合型欠失によって、FGFR3、MMset、およびC MAFの活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(14;16)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、p53のホモ接合型欠失によって、サイクリンD1の活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(11;14)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、R337L p53変異によって、サイクリンD1の活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(11;14)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、W146 p53突然変異によって、FGFR3およびMMsetの活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(4;14)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、S261T p53突然変異によって、MAFBの活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(6;20)およびt(20;22)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、E286K p53突然変異によって、FGFR3およびMMsetの活性化によって、ならびにt(4;14)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、R175H p53突然変異によって、FGFR3およびMMsetの活性化によって、ならびにt(4;14)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、E258K p53突然変異によって、C-MAFの活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(14;16)およびt(16;22)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、野生型p53によって、MAFBおよびサイクリンD1の活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(14;20)およびt(11;14)での染色体転座によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、A161T p53突然変異によって、サイクリンDの活性化によって、ならびにt(4;14)およびt(11;14)での染色体転座によって特徴付けられる。
【0148】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、移植適格の新たに診断された多発性骨髄腫である。別の実施形態では、多発性骨髄腫は、移植不適格の新たに診断された多発性骨髄腫である。
【0149】
さらに他の実施形態では、多発性骨髄腫は、初期治療後の早期進行(例えば、12か月未満)によって特徴付けられる。さらに他の実施形態では、多発性骨髄腫は、自家幹細胞移植後の早期進行(例えば、12か月未満)によって特徴付けられる。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、レナリドミドに対して不応性である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、ポマリドミドに対して不応性である。一部のそのような実施形態では、多発性骨髄腫は、ポマリドミドに対して不応性であると予測される(例えば、分子的な特徴付けによって)。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、3つもしくはそれ以上の治療に対して再発性または不応性であり、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、オプロゾミブ、またはマリゾミブ)および免疫調節化合物(例えば、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはアバドミド)に曝露されたか、またはプロテアソーム阻害剤および免疫調節化合物に対して二重不応性だった。さらに他の実施形態では、多発性骨髄腫は、例えば、CD38モノクローナル抗体(CD38mAb、例えば、ダラツムマブまたはイサツキシマブ)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、またはマリゾミブ)、および免疫調節化合物(例えば、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはアバドミド)を含む3つもしくはそれ以上の以前の治療に対して再発性または不応性であるか、またはプロテアソーム阻害剤もしくは免疫調節化合物およびCD38mAbに対して二重不応性である。さらに他の実施形態では、多発性骨髄腫は、三重不応性であり、例えば、多発性骨髄腫は、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、オプロゾミブまたはマリゾミブ)、免疫調節化合物(例えば、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはアバドミド)、および本明細書に記載の1つの他の活性剤に対して不応性である。
【0150】
ある特定の実施形態では、腎機能障害またはその症状を有する対象において、再発性/不応性多発性骨髄腫を含む多発性骨髄腫を治療、予防、および/または管理する方法であって、NSD2の阻害剤を、腎機能障害を伴う再発性/不応性多発性骨髄腫を有する対象に投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0151】
ある特定の実施形態では、虚弱対象において、再発性/不応性多発性骨髄腫を含む多発性骨髄腫を治療、予防、および/または管理する方法であって、NSD2の阻害剤を、多発性骨髄腫を有する虚弱対象に投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。一部のそのような実施形態では、虚弱対象は、導入療法に不適格であること、またはデキサメタゾン治療に対して不耐容性であることによって特徴付けられる。一部のそのような実施形態では、虚弱対象は、高齢者、例えば65歳よりも高齢である。
【0152】
ある特定の実施形態では、多発性骨髄腫を治療、予防または管理する方法であって、対象にNSD2の阻害剤を投与する工程を含み、多発性骨髄腫が、四次再発性/不応性多発性骨髄腫である、方法が、本明細書で提供される。
【0153】
ある特定の実施形態では、多発性骨髄腫を治療、予防または管理する方法であって、対象にNSD2の阻害剤を導入療法として投与する工程を含み、多発性骨髄腫が、新たに診断された移植適格な多発性骨髄腫である、方法が、本明細書で提供される。
【0154】
ある特定の実施形態では、多発性骨髄腫を治療、予防または管理する方法であって、対象にNSD2阻害剤を他の治療または移植後の維持療法として投与する工程を含み、多発性骨髄腫が、他の治療または移植の前に新たに診断された移植適格多発性骨髄腫である、方法が、本明細書で提供される。
【0155】
ある特定の実施形態では、多発性骨髄腫を治療、予防または管理する方法であって、対象にNSD2の阻害剤を他の治療または移植後の維持療法として投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、他の治療および/または移植の前の新たに診断された移植適格多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、移植前の他の治療は、化学療法またはNSD2の阻害剤による治療である。
【0156】
ある特定の実施形態では、多発性骨髄腫を治療、予防または管理する方法であって、対象にNSD2の阻害剤を投与する工程を含み、多発性骨髄腫が、1つ、2つまたは3つの以前の治療に対して再発性または不応性である高リスク多発性骨髄腫である、方法が、本明細書で提供される。
【0157】
ある特定の実施形態では、多発性骨髄腫を治療、予防または管理する方法であって、対象にNSD2の阻害剤を投与する工程を含み、多発性骨髄腫が、新たに診断された移植不適格多発性骨髄腫である、方法が、本明細書で提供される。
【0158】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法の1つで治療しようとする対象は、NSD2の阻害剤の投与前に多発性骨髄腫治療で治療されていない。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法の1つで治療しようとする対象は、NSD2の阻害剤の投与前に多発性骨髄腫治療で治療されている。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法の1つで治療しようとする対象は、抗多発性骨髄腫治療に対する薬物抵抗性を発生させている。一部のそのような実施形態では、対象は、1つ、2つ、または3つの抗多発性骨髄腫治療に対する抵抗性を発生させており、治療は、CD38モノクローナル抗体(CD38 mAb、例えば、ダラツムマブまたはイサツキシマブ)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、またはマリゾミブ)、および免疫調節化合物(例えば、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、またはアバドミド)から選択される。
【0159】
本明細書で提供される方法は、患者の年齢に関わりなく対象を治療する工程を包含する。一部の実施形態では、対象は、少なくとも18歳またはそれよりも年長である。他の実施形態では、対象は、18、25、35、40、45、50、55、60、65、または70歳よりも高齢である。他の実施形態では、対象は65歳未満である。他の実施形態では、対象は65歳よりも高齢である。一部の実施形態では、対象は、65歳よりも高齢である対象などの高齢多発性骨髄腫対象である。一部の実施形態では、対象は、75歳よりも高齢である対象などの高齢多発性骨髄腫対象である。
【0160】
E.少なくとも1つの第2の治療剤との併用療法
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法(NSD2の阻害剤の使用)は、本明細書では「追加の薬剤」または「追加の活性剤」とも呼ばれる、少なくとも1つの第2の治療剤を対象に投与する工程をさらに含む。
【0161】
一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、化学療法剤、ステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、抗CD38抗体、および抗SLAMF7抗体、抗体薬物コンジュゲート、および核外輸送阻害剤から選択される。
【0162】
一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、パノビノスタット、メルファラン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、エトポシド、ドキソルビシン、およびベンダムスチン、デキサメタゾン、プレドニゾン、ダラツムマブ、イサツキシマブ、エロツズマブ、ベランタマブマホドチン-blmf、セリネキソール、パミドロネート、ゾレドロン酸、およびデノスマブから選択される。
【0163】
一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、レナリドミドである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、イベルドミドである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、(S)-4-(4-(4-(((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン-4-イル)オキシ)メチル)ベンジル)ピペラジン-1-イル)-3-フルオロベンゾニトリルである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、(i)レナリドミド、ポマリドミド、またはサリドマイド;および(ii)デキサメタゾンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、(i)カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、またはボルテゾミブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、(i)ボルテゾミブまたはカルフィルゾミブ;(ii)シクロホスファミド;および(iii)デキサメタゾンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、(i)エロツズマブまたはダラツムマブ;(ii)レナリドミド;および(iii)デキサメタゾンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、ボルテゾミブ、リポソームドキソルビシン、およびデキサメタゾンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、パノビノスタット、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、エロツズマブ、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、サリドマイドまたはボルテゾミブを伴うかまたは伴わない、メルファランおよびプレドニゾンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、およびシスプラチンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、ボルテゾミブを伴うかまたは伴わない、デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびエトポシドである。
【0164】
一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、ステロイドである。
【0165】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法にて使用される、本明細書で提供される少なくとも1つの第2の治療剤の特定の量(投薬量)は、使用される特定の薬剤、治療または管理しようとする多発性骨髄腫の型、疾患の重症度およびステージ、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤の量、ならびに患者に同時投与される任意の適宜追加の活性剤などの要因によって決定される。
【0166】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法にて使用される、本明細書で提供される少なくとも1つの第2の治療剤の投薬量は、前記活性剤に関してFDAまたは米国以外の国の同様の規制当局によって承認された市販の医薬添付文書(例えば、ラベル)に基づいて決定される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法にて使用される、本明細書で提供される第2の治療剤の投薬量は、前記治療剤に関してFDAまたは米国以外の国の同様の規制当局によって承認された投薬量である。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法にて使用される、本明細書で提供される第2の治療剤の投薬量は、前記治療剤のヒト臨床治験で使用された投薬量である。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法で使用される、本明細書で提供される第2の治療剤の投薬量は、例えば、第2の治療剤と本明細書で提供されるNSD2の阻害剤との間の相乗効果に応じて、前記治療剤に関してFDAまたは米国以外の国の同様の規制当局によって承認された投薬量または前記活性剤のヒト臨床治験で使用された投薬量よりも低い。
【0167】
また、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤の併用は、限定はされないが、外科手術、生物学的療法(例えば、チェックポイント阻害剤による免疫療法を含む)、放射線療法、化学療法、幹細胞移植、細胞療法、またはがん(例えば、多発性骨髄腫)の治療、予防もしくは管理に現在使用されている他の非薬物療法を含む従来療法と(例えば、その前、その間またはその後に)組み合わせることができるかまたは共に使用することができる。本明細書で提供されるNSD2の阻害剤と従来療法との併用は、ある特定の患者において予想外に効果的であるユニークな治療レジメンを提供することができる。特定の理論に限定されるものではないが、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、従来療法と同時に投与すると、相加効果または相乗効果をもたらすことができると考えられる。
【0168】
本明細書の他の箇所で考察されていように、限定はされないが、外科手術、化学療法、放射線療法、生物学的療法および免疫療法を含む従来療法に伴う有害なまたは望ましくない効果を低減、治療および/または予防する方法が、本明細書に包含される。本明細書で提供されるNSD2の阻害剤、および少なくとも1つの第2の治療剤成分は、従来療法に伴う有害効果の発生前、発生中、または発生後に、患者に投与することができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、デキサメタゾンである。
【0169】
また、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、本明細書に記載の多発性骨髄腫の治療および/または予防に有用な他の治療剤とさらに組み合わせることができるかまたは組み合わせて使用することができる。1つのそのような実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、デキサメタゾンである。
【0170】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫を治療、予防、または管理する方法であって、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤を、1つまたはそれ以上の追加の治療剤とさらに組み合わせて、および放射線療法、輸血、または外科手術と適宜さらに組み合わせて、患者に投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0171】
本明細書で使用される場合、用語「と組み合わせて(in combination)」は、1つより多くの治療(例えば1つまたはそれ以上の予防および/または治療剤)の使用を含む。しかしながら、用語「と組み合わせて(in combination)」の使用は、疾患または障害を有する患者に治療(例えば予防剤および/または治療剤)が投与される順序を限定しない。第1の治療(例えば、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤などの予防剤または治療剤)は、対象への第2の治療(例えば、少なくとも1つの第2の治療剤)の投与前(例えば5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、対象への第2の療法(例えば、少なくとも1つの第2の治療剤)の投与と同時に、または対象への第2の療法(例えば、少なくとも1つの第2の治療剤)の投与後(例えば5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に投与され得る。第1の治療および第2の治療は、独立して、対象への第3の治療(例えば、追加の予防剤または治療剤)の投与前(例えば5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、対象への第3の治療(例えば、追加の予防剤または治療剤)の投与と同時に、または対象への第3の治療(例えば、追加の予防剤または治療剤)の投与後(例えば5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に投与され得る。本明細書では、4剤併用も企図され、5剤併用も企図される。一部の実施形態では、第2の治療はデキサメタゾンである。
【0172】
本明細書で提供されるNSD2の阻害剤および1つまたはそれ以上の第2の治療剤の対象への投与は、投与の同一のまたは異なる経路により同時にまたは順に行われ得る。特定の治療剤のために用いられる投与の特定の経路の適性は、活性剤自体(例えば血流に入る前に分解されずに経口投与され得るかどうか)および治療されるがんによるであろう。
【0173】
本明細書で提供されるNSD2の阻害剤の投与の経路は、追加の治療に依存しない。一部の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、経口で投与される。別の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、静脈内に投与される。したがって、これらの実施形態によると、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、経口でまたは静脈内に投与され、追加の治療は、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、バッカル経由、鼻腔内、リポソーム経由、吸入を介して、膣内、眼内、カテーテルまたはステントによる局所送達を介して、皮下、脂肪内(intraadiposally)、関節内、くも膜下腔内、または徐放性剤形で投与され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤および追加の治療は、同一の投与様式によって、経口で、またはIVによって投与される。別の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、ある投与様式によって、例えば、IVによって投与され、一方、追加の薬剤(抗多発性骨髄腫剤)は、別の投与様式によって、例えば、経口で投与される。
【0174】
一部の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、静脈内または皮下に、および約1~約1000mg、約5~約500mg、約10~約350mg、または約50~約200mgの量で1日1回または2回投与される。追加の活性剤の特定の量は、使用される特定の薬剤、治療および/または管理される多発性骨髄腫の型、疾患の重症度およびステージ、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤の量、および対象に同時に投与される任意の適宜追加の活性剤によるであろう。
【0175】
1つまたはそれ以上の追加の活性成分または活性剤は、本明細書で提供される方法および組成物において、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤と共に使用され得る。追加の活性剤は、大分子(例えばタンパク質)または小分子(例えば合成無機、有機金属、または有機分子)または細胞療法(例えば、CAR細胞)であり得る。
【0176】
本明細書に記載の方法および組成物に使用することができる追加の活性剤の例としては、メルファラン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、エトポシド、ドキソルビシン、ベンダムスチン、オビヌツズマブ、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、オプロゾミブまたはマリゾミブ)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(本明細書に記載の、例えば、パノビノスタット、ACY241)などの脱アセチル化酵素阻害剤、BET阻害剤(例えば、GSK525762A、OTX015、BMS-986158、TEN-010、CPI-0610、INCB54329、BAY1238097、FT-1101、ABBV-075、BI894999、GS-5829、GSK1210151A(I-BET-151)、CPI-203、RVX-208、XD46、MS436、PFI-1、RVX2135、ZEN3365、XD14、ARV-771、MZ-1、PLX5117、4-[2-(シクロプロピルメトキシ)-5-(メタンスルホニル)フェニル]-2-メチルイソキノリン-1(2H)-オン、EP11313およびEP11336)、BCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクスまたはナビトクラクス)、MCL-1阻害剤(例えば、AZD5991、AMG176、MIK665、S64315、またはS63845)、LSD-1阻害剤(例えば、ORY-1001、ORY-2001、INCB-59872、IMG-7289、TAK-418、GSK-2879552、4-[2-(4-アミノ-ピペリジン-1-イル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリミジン-4-イル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルまたはその塩)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、デキサメタゾン;抗体(例えば、エロツズマブなどのCS1抗体、ダラツムマブまたはイサツキシマブなどのCD38抗体);またはGSK2857916もしくはBI836909などのBCMA抗体もしくは抗体コンジュゲート)、チェックポイント阻害剤(本明細書に記載)、またはCAR細胞(本明細書に記載);または抗SLAMF7抗体(本明細書に記載);または抗体薬物コンジュゲート(本明細書に記載);または核外輸送阻害剤(本明細書に記載)のうちの1つまたはそれ以上が挙げられる。
【0177】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物において、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤と共に使用される追加の活性剤は、デキサメタゾンである。
【0178】
一部の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目および8日目に4mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目、4日目、8日目および11日目に4mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に4mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、11日目、15日目および18日目に4mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、15日目、および22日目に4mgの用量で投与される。1つのそのような実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、10日目、15日目、および22日目に4mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、3日目、15日目、および17日目に4mgの用量で投与される。1つのそのような実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、3日目、14日目、および17日目に4mgの用量で投与される。
【0179】
一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目および8日目に8mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目、4日目、8日目および11日目に8mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に8mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、11日目、15日目および18日目に8mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、15日目、および22日目に8mgの用量で投与される。1つのそのような実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、10日目、15日目、および22日目に8mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、3日目、15日目、および17日目に8mgの用量で投与される。1つのそのような実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、3日目、14日目、および17日目に8mgの用量で投与される。
【0180】
一部の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目および8日目に10mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目、4日目、8日目および11日目に10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に10mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、11日目、15日目および18日目に10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、15日目、および22日目に10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、10日目、15日目、および22日目に10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、3日目、15日目、および17日目に10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、3日目、14日目、および17日目に10mgの用量で投与される。
【0181】
一部の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目および8日目に20mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目、4日目、8日目および11日目に20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に20mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、11日目、15日目および18日目に20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、15日目、および22日目に20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、10日目、15日目、および22日目に20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、3日目、15日目、および17日目に20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、3日目、14日目、および17日目に20mgの用量で投与される。
【0182】
一部の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目および8日目に40mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、21日サイクルの1日目、4日目、8日目および11日目に40mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に40mgの用量で投与される。1つのそのような実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、10日目、15日目、および22日目に40mgの用量で投与される。一部の他の実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、11日目、15日目および18日目に40mgの用量で投与される。他のそのような実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、8日目、15日目、および22日目に40mgの用量で投与される。他のそのような実施形態では、デキサメタゾンは、28日サイクルの1日目、3日目、15日目、および17日目に40mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、サイクル1の1日目、3日目、14日目、および17日目に40mgの用量で投与される。
【0183】
別の実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物において、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤と共に使用される追加の活性剤は、ボルテゾミブである。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物において、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤と共に使用される追加の活性剤は、ダラツムマブである。一部のそのような実施形態では、方法は、デキサメタゾンを投与する工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、本明細書で提供されるNSD2阻害剤を、本明細書に記載のプロテアソーム阻害剤、本明細書に記載のCD38阻害剤、および本明細書に記載のコルチコステロイドと共に投与する工程を含む。
【0184】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法に関連して、1つのチェックポイント阻害剤が、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤と組み合わせて使用される。別の実施形態では、本明細書で提供される方法に関連して、2つのチェックポイント阻害剤が、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤と組み合わせて使用される。さらに別の実施形態では、本明細書で提供される方法に関連して、3つまたはそれ以上のチェックポイント阻害剤が、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0185】
本明細書で使用される場合、用語「免疫チェックポイント阻害剤」または「チェックポイント阻害剤」は、1つまたはそれ以上のチェックポイントタンパク質を完全にまたは部分的に低減、阻害、干渉またはモジュレートする分子を指す。特定の理論に限定されるものではないが、チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化または機能を制御する。多数のチェックポイントタンパク質が公知であり、例えばCTLA-4およびそのリガンドであるCD80およびCD86;ならびにPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2がある(Pardoll, Nature Reviews Cancer, 2012, 12, 252-264)。これらのタンパク質は、T細胞応答の共刺激相互作用または抑制相互作用に関与すると思われる。免疫チェックポイントタンパク質は、自己寛容ならびに生理学的免疫応答の持続時間および幅を制御および維持すると思われる。免疫チェックポイント阻害剤は、抗体を含むか、または抗体由来である。
【0186】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤である。一部の実施形態では、CTLA-4阻害剤は、抗CTLA-4抗体である。抗CTLA-4抗体の例としては、限定はされないが、全てがその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第5811097号;同第5811097号;同第5855887号;同第6051227号;同第6207157号;同第6682736号;同第6984720号;および同第7605238号に記載されるものが挙げられる。一部の実施形態では、抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブ(チシリムマブまたはCP-675,206としても公知)である。別の実施形態では、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(MDX-010またはMDX-101としても公知)である。イピリムマブは、CTLA-4に結合する、完全ヒトモノクローナルIgG抗体である。イピリムマブは、商品名Yervoy(商標)として市販されている。
【0187】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1阻害剤である。PD-1/PD-L1阻害剤の例としては、限定はされないが、全てがその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第7488802号;同第7943743号;同第8008449号;同第8168757号;同第8217149号、ならびにPCT特許出願公開第WO2003042402号、同第WO2008156712号、同第WO2010089411号、同第WO2010036959号、同第WO2011066342号、同第WO2011159877号、同第WO2011082400号、および同第WO2011161699号に記載されるものが挙げられる。
【0188】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体である。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、BGB-A317、ニボルマブ(ONO-4538、BMS-936558、またはMDX1106としても公知)またはペムブロリズマブ(MK-3475、SCH900475、またはラモブロリズマブとしても公知)である。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブである。ニボルマブは、ヒトIgG4抗PD-1モノクローナル抗体であり、商品名Opdivo(商標)として市販されている。別の実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブである。ペムブロリズマブは、ヒト化モノクローナルIgG4抗体であり、商品名Keytruda(商標)として市販されている。さらに別の実施形態では、抗PD-1抗体は、ヒト化抗体CT-011である。CT-011の単独での投与は、再発時の急性骨髄性白血病(AML)の治療において応答を示さなかった。さらに別の実施形態では、抗PD-1抗体は、融合タンパク質AMP-224である。別の実施形態では、PD-1抗体は、BGB-A317である。BGB-A317は、Fc-ガンマ受容体Iに結合する能力が特に操作され、高親和性および優れた標的特異性でPD-1へのユニークな結合シグネチャーを有するモノクローナル抗体である。
【0189】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-L1阻害剤である。一部の実施形態では、PD-L1阻害剤は、抗PD-L1抗体である。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、MEDI4736(デュルバルマブ)である。別の実施形態では、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(MDX-1105-01としても公知)である。さらに別の実施形態では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブ(MPDL3280A、およびTecentriq(登録商標)としても公知)である。
【0190】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-L2阻害剤である。一部の実施形態では、PD-L2阻害剤は、抗PD-L2抗体である。一部の実施形態では、抗PD-L2抗体は、rHIgM12B7Aである。
【0191】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤である。一部の実施形態では、LAG-3阻害剤は、可溶性Ig融合タンパク質IMP321である(Brignone et al., J. Immunol., 2007, 179, 4202-4211)。別の実施形態では、LAG-3阻害剤は、BMS-986016である。
【0192】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、B7阻害剤である。一部の実施形態では、B7阻害剤は、B7-H3阻害剤またはB7-H4阻害剤である。一部の実施形態では、B7-H3阻害剤は、抗B7-H3抗体MGA271である(Loo et al., Clin. Cancer Res., 2012, 3834)。
【0193】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、TIM3(T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3)阻害剤である(Fourcade et al., J. Exp. Med., 2010, 207, 2175-86; Sakuishi et al., J. Exp. Med., 2010, 207, 2187-94)。
【0194】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、OX40(CD134)アゴニストである。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗OX40抗体である。一部の実施形態では、抗OX40抗体は、抗OX-40である。別の実施形態では、抗OX40抗体は、MEDI6469である。
【0195】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、GITRアゴニストである。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗GITR抗体である。一部の実施形態では、抗GITR抗体は、TRX518である。
【0196】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CD137アゴニストである。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗CD137抗体である。一部の実施形態では、抗CD137抗体は、ウレルマブである。別の実施形態では、抗CD137抗体は、PF-05082566である。
【0197】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CD40アゴニストである。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗CD40抗体である。一部の実施形態では、抗CD40抗体は、CF870,893である。
【0198】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、組換えヒトインターロイキン15(rhIL-15)である。
【0199】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、IDO阻害剤である。一部の実施形態では、IDO阻害剤は、INCB024360である。別の実施形態では、IDO阻害剤は、インドキシモドである。
【0200】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される併用療法は、本明細書に記載されるチェックポイント阻害剤の2つまたはそれ以上を含む(同一種類または異なる種類のチェックポイント阻害剤を含む)。さらに、本明細書に記載される併用療法は、本明細書に記載される疾患および当技術分野において認識されている疾患の治療に適切であれば、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の第2の治療剤と組み合わせて使用され得る。
【0201】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、それらの表面に1つまたはそれ以上のキメラ抗原受容体(CAR)を発現する1つまたはそれ以上の免疫細胞(例えば修飾免疫細胞)と組み合わせて使用され得る。一般に、CARは、第1のタンパク質(例えば抗原結合タンパク質)からの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の実施形態では、細胞外ドメインが、標的タンパク質、例えば腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異的抗原(TSA)に結合すると、シグナルは、免疫細胞を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインを介して生成され、例えば、標的タンパク質を発現する細胞を標的化し、死滅させる。
【0202】
細胞外ドメイン:CARの細胞外ドメインは、目的の抗原に結合する。ある特定の実施形態では、CARの細胞外ドメインは、前記抗原に結合する受容体、または受容体の部分を含む。ある特定の実施形態では、細胞外ドメインは、抗体またはその抗原結合性部分を含むか、または抗体またはその抗原結合性部分である。特定の実施形態では、細胞外ドメインは、一本鎖Fv(scFv)ドメインを含むか、または一本鎖Fv(scFv)ドメインである。一本鎖Fvドメインは、例えば、前記VLおよびVHが前記抗原に結合する抗体由来である場合、可動性リンカーによってVHに結合されたVLを含み得る。
【0203】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドの細胞外ドメインによって認識される抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異的抗原(TSA)である。様々な特定の実施形態では、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、限定はされないが、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、がん抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、B細胞成熟抗原(BCMA)、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫-24関連抗原(MAGE)、CD19、CD22、CD27、CD30、CD34、CD45、CD70、CD99、CD117、EGFRvIII(上皮増殖因子バリアントIII)、メソテリン、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマ代替リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAPI(プロステート1の6回膜貫通型上皮性抗原)、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、肉眼的嚢胞性疾患液体タンパク質(GCDFP-15)、HMB-45抗原、タンパク質メラン-A(Tリンパ球によって認識されるメラノーマ抗原;MART-I)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、神経フィラメント、神経特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシス(synaptophysis)、チログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼアイソエンザイムタイプM2(腫瘍M2-PK)の二量体形態、異常なrasタンパク質、または異常なp53タンパク質である。ある特定の他の実施形態では、CARの細胞外ドメインによって認識されるTAAまたはTSAは、インテグリンαvβ(CD61)、ガラクチン、またはRal-Bである。
【0204】
ある特定の実施形態では、CARの細胞外ドメインによって認識されるTAAまたはTSAは、がん/精巣(CT)抗原、例えばBAGE、CAGE、CTAGE、FATE、GAGE、HCA661、HOM-TES-85、MAGEA、MAGEB、MAGEC、NA88、NY-ES0-1、NY-SAR-35、OY-TES-1、SPANXBI、SPA17、SSX、SYCPI、またはTPTEである。
【0205】
ある特定の他の実施形態では、CARの細胞外ドメインによって認識されるTAAまたはTSAは、炭水化物またはガングリオシド、例えば、fuc-GMI、GM2(腫瘍胎児抗原-免疫原性-1;OFA-I-1);GD2(OFA-I-2)、GM3、GD3などである。
【0206】
ある特定の他の実施形態では、CARの細胞外ドメインによって認識されるTAAまたはTSAは、アルファ-アクチニン-4、Bage-1、BCR-ABL、Bcr-Ab1融合タンパク質、ベータ-カテニン、CA125、CA15-3(CA27.29\BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、Casp-8、cdc27、cdk4、cdkn2a、CEA、coa-1、dek-can融合タンパク質、EBNA、EF2、エプスタインバーウイルス抗原、ETV6-AML1融合タンパク質、HLA-A2、HLA-All、hsp70-2、KIAA0205、Mart2、Mum-1、2および3、neo-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Gage3,4,5,6,7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2、TRP2-Int2、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、RAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、RAGE、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、HRas、HER-2/neu、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72-4、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、13-カテニン、Mum-1、p16、TAGE、PSMA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、13HCG、BCA225、BTAA、CD68\KP1、C0-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB\70K、NY-C0-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90、TAAL6、TAG72、TLP、またはTPSである。
【0207】
様々な特定の実施形態では、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、S. Anguille et al, Leukemia (2012), 26, 2186-2196に記載されるように、AML関連腫瘍抗原である。
【0208】
他の腫瘍関連抗原および腫瘍特異的抗原は、当技術分野で公知である。
【0209】
TSAおよびTAAに結合し、キメラ抗原受容体を構築するのに有用である受容体、抗体、およびscFvは、当技術分野で公知であり、それらをコードするヌクレオチド配列も同様である。
【0210】
ある特定の実施形態では、キメラ抗原受容体の細胞外ドメインによって認識される抗原は、一般にTSAであるともTAAであるとも考えられないが、それにも関わらず腫瘍細胞または腫瘍によって引き起こされる損傷と関連する抗原である。ある特定の実施形態では、例えば、抗原は、例えば増殖因子、サイトカイン、またはインターロイキン、例えば血管新生または脈管形成と関連する増殖因子、サイトカイン、またはインターロイキンである。そのような増殖因子、サイトカイン、またはインターロイキンとしては、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、またはインターロイキン-8(IL-8)が挙げられ得る。腫瘍はまた、腫瘍に対して局所的な低酸素環境を作り出すことができる。そのため、他の特定の実施形態では、抗原は、低酸素関連因子、例えば、HIF-1α、HIF-1β、HIF-2α、HIF-2β、HIF-3α、またはHIF-3βである。腫瘍はまた、正常組織に対し局在化した損傷を引き起こし、損傷関連分子パターン分子(DAMP;アラーミンとしても公知)として公知の分子の放出を引き起こすことができる。他のある特定の実施形態では、したがって、抗原はDAMP、例えば熱ショックタンパク質、クロマチン結合性タンパク質高移動度グループボックス1(chromatin-associated protein high mobility group box 1)(HMGB1)、S100A8(MRP8、カルグラニュリンA)、S100A9(MRP14、カルグラニュリンB)、血清アミロイドA(SAA)であるか、またはデオキシリボ核酸、アデノシン三リン酸、尿酸、またはヘパリン硫酸であり得る。
【0211】
膜貫通ドメイン:ある特定の実施形態では、CARの細胞外ドメインは、リンカー、スペーサー、またはヒンジポリペプチド配列、例えばCD28由来の配列またはCTLA4由来の配列によって、ポリペプチドの膜貫通ドメインに結合される。膜貫通ドメインは、任意の膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインから得られるかまたは由来し得、そのような膜貫通ドメインの全てまたは部分を含み得る。特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、例えばCD8、CD16、サイトカイン受容体、およびインターロイキン受容体、または増殖因子受容体等から得られるか、または由来し得る。
【0212】
細胞内シグナル伝達ドメイン:ある特定の実施形態では、CARの細胞内ドメインは、T細胞の表面で発現され、前記T細胞の活性化および/または増殖を誘発する。タンパク質の細胞内ドメインまたはモチーフであるか、またはタンパク質の細胞内ドメインまたはモチーフを含む。そのようなドメインまたはモチーフは、CARの細胞外部分への抗原の結合に応答して、Tリンパ球の活性化に必要である一次抗原結合シグナルを伝達することができる。典型的には、このドメインまたはモチーフは、ITAM(免疫受容体活性化チロシンモチーフ)を含むか、またはITAM(免疫受容体活性化チロシンモチーフ)である。CARに好適なITAM含有ポリペプチドとしては、例えば、ゼータCD3鎖(CD3ζ)またはそのITAM含有部分が挙げられる。特定の実施形態では、細胞内ドメインは、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインである。他の特定の実施形態では、細胞内ドメインは、リンパ球受容体鎖、TCR/CD3複合体タンパク質、Fe受容体サブユニット、またはIL-2受容体サブユニットに由来する。ある特定の実施形態では、CARは、1つまたはそれ以上の共刺激ドメインまたはモチーフを、例えば、ポリペプチドの細胞内ドメインの一部としてさらに含む。1つまたはそれ以上の共刺激ドメインまたはモチーフは、共刺激性CD27ポリペプチド配列、共刺激性CD28ポリペプチド配列、共刺激性OX40(CD134)ポリペプチド配列、共刺激性4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、または共刺激性誘導性T細胞共刺激性(ICOS)ポリペプチド配列、または他の共刺激性ドメインもしくはモチーフの1つまたはそれ以上、またはこれらの任意の組合せであるか、またはこれを含むことができる。
【0213】
CARは、T細胞生存モチーフも含み得る。T細胞生存モチーフは、抗原による刺激後にTリンパ球の生存を促進する任意のポリペプチド配列またはモチーフであり得る。ある特定の実施形態では、T細胞生存モチーフは、CD3、CD28、IL-7受容体(IL-7R)の細胞内シグナル伝達ドメイン、IL-12受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン、IL-15受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン、IL-21受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン、または形質転換成長因子β(TGFβ)受容体の細胞内シグナル伝達ドメインであるか、またはこれに由来する。
【0214】
CARを発現する修飾免疫細胞は、例えば、Tリンパ球(T細胞、例えばCD4+T細胞またはCD8+T細胞)、細胞障害性リンパ球(CTL)またはナチュラルキラー(NK)細胞であり得る。本明細書で提供される組成物および方法で使用されるTリンパ球は、ナイーブTリンパ球またはMHC拘束Tリンパ球であってもよい。ある特定の実施形態では、Tリンパ球は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。ある特定の実施形態では、Tリンパ球は、腫瘍生検から単離されたか、または腫瘍生検から単離されたTリンパ球から拡大されたものである。ある特定の他の実施形態では、T細胞は、末梢血、臍帯血、もしくはリンパ液から単離されたか、または末梢血、臍帯血、もしくはリンパ液から単離されたTリンパ球から拡大されるものである。CARを発現する修飾免疫細胞を生成するために使用される免疫細胞は、当技術分野で許容された通常の方法(例えば血液採取後のアフェレーシスおよび適宜、抗体媒介性細胞単離または選別)を使用して単離され得る。
【0215】
修飾免疫細胞は、好ましくは、修飾免疫細胞が投与される個体にとって自己のものである。ある特定の他の実施形態では、修飾免疫細胞は、修飾免疫細胞が投与される個体にとって同種異系のものである。同種異系Tリンパ球またはNK細胞を使用して修飾Tリンパ球を調製する場合、個体における移植片対宿主病(GVHD)の可能性を低減するであろうTリンパ球またはNK細胞を選択することが好ましい。例えば、ある特定の実施形態では、ウイルス特異的Tリンパ球が、修飾Tリンパ球の調製のために選択され;そのようなリンパ球は、任意のレシピエント抗原に結合し、その結果、抗原によって活性化されるようになる本来の能力が大きく低下していると考えられるであろう。ある特定の実施形態では、レシピエントの媒介による同種異系Tリンパ球の拒絶は、宿主への、1つまたはそれ以上の免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、シクロホスファミドなどの共投与によって低減することができる。
【0216】
Tリンパ球、例えば非修飾Tリンパ球、またはCD3およびCD28を発現するか、またはCD3ζシグナル伝達ドメインおよびCD28共刺激ドメインを含むポリペプチドを含むTリンパ球は、CD3およびCD28に対する抗体、例えばビーズに付着した抗体を使用して増殖させることができる;例えば、米国特許第5948893号;同第6534055号;同第6352694号;同第6692964号;同第6887466号;および同第6905681号を参照されたい。
【0217】
修飾免疫細胞、例えば修飾Tリンパ球は、必要とされる場合、実質的に全ての修飾免疫細胞の死滅を可能にする「自殺遺伝子」または「安全スイッチ」を含んでもよい。例えば、修飾Tリンパ球は、ある特定の実施形態では、ガンシクロビルと接触したときに修飾Tリンパ球の死を引き起こす、HSVチミジンキナーゼ遺伝子(HSV-TK)を含み得る。別の実施形態では、修飾Tリンパ球は、誘導性カスパーゼ、例えば誘導性カスパーゼ9(iカスパーゼ9)、例えば、カスパーゼ9と特定の低分子医薬を使用した二量体化を可能にするヒトFK506結合タンパク質との融合タンパク質を含む。Straathof et al., Blood 105(11):4247-4254 (2005)を参照されたい。
【0218】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞と組み合わせて、様々な型またはステージの多発性骨髄腫を有する対象に投与される。ある特定の実施形態では、組合せ中のCART細胞は、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的化し、より特定の実施形態では、CAR T細胞は、bb2121またはbb21217である。一部の実施形態では、CAR T細胞は、JCARH125である。
【0219】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC阻害剤)などの脱アセチル化酵素阻害剤と組み合わせて、様々な型またはステージの多発性骨髄腫を有する対象に投与される。好適なDAC阻害剤またはHDAC阻害剤としては、例えば、1)ヒドロキサム酸誘導体;および2)短鎖脂肪酸(SCFA);3)環状テトラペプチド;4)ベンズアミド;5)求電子性ケトン;および/またはヒストン脱アセチル化酵素を阻害可能である任意の他の種類の化合物が挙げられる。ある特定の実施形態では、HDAC阻害剤は、例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはLAQ824である。ある特定の実施形態では、HDACはパノビノスタットである。ある特定の実施形態では、HDAC阻害剤はパノビノスタットであり、ボルテゾミブおよびデキサメタゾンと組み合わせて使用される。
【0220】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、抗SLAMF7抗体と組み合わせて、様々な型またはステージの多発性骨髄腫を有する対象に投与される。ある特定の実施形態では、抗SLAMF7抗体はエロツズマブである。ある特定の実施形態では、抗SLAMF7抗体はエロツズマブであり、レナリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせて使用される。
【0221】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、抗体薬物コンジュゲート、つまりコンジュゲーション部分または標識もしくは毒素などの薬剤にコンジュゲートされた抗体と組み合わせて、様々な型またはステージの多発性骨髄腫を有する対象に投与される。コンジュゲーション部分は、当業者にとって有用であると考えられる任意のコンジュゲーション部分であってもよい。例えば、コンジュゲーション部分は、インビトロまたはインビボで抗体の安定性を向上させることができるポリエチレングリコールなどのポリマーであってもよい。コンジュゲーション部分は治療活性を有してもよく、それにより抗体薬物コンジュゲートがもたらされる。コンジュゲーション部分は、標的細胞に有害な分子ペイロードであってもよい。コンジュゲーション部分は、検出または診断に有用な標識であってもよい。ある特定の態様では、コンジュゲーション部分は、直接共有結合を介して抗体に連結されている。ある特定の態様では、コンジュゲーション部分は、リンカーを介して抗体に連結されている。特定の態様では、コンジュゲーション部分またはリンカーは、抗体の1つまたはそれ以上の非天然アミノ酸を介して付着されている。
【0222】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるNSD2の阻害剤は、選択的核外輸送阻害剤(SINE)としても知られている核外輸送阻害剤と組み合わせて、様々な型またはステージの多発性骨髄腫を有する対象に投与される。ある特定の実施形態では、核外輸送阻害剤はレプトマイシンBである。ある特定の実施形態では、核外輸送阻害剤は、セリネキソール(KPT-330)などのエクスポーチン1(XPO1)阻害剤である。ある特定の実施形態では、核外輸送阻害剤はセリネキソールであり、デキサメタゾンと組み合わせて使用される。
【0223】
上述の詳細な説明および添付の例は、例示に過ぎず、本主題の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解される。当業者であれば、本開示の実施形態に対する様々な変更および改変は明らかであろう。本明細書で提供される化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤および/または使用方法に関するものを含むが、それらに限定されないそのような変更および改変は、その趣旨および範囲から逸脱することなくなすことができる。本明細書で参照される米国特許および刊行物は、参照により組み込まれる。
【実施例
【0224】
実施例1.新たに診断された多発性骨髄腫患者データセットの分析
新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)患者329名から試料を得た。329名のNDMM患者に由来する試料を、全エクソーム配列決定または全ゲノム配列決定のいずれかを使用して分析した。患者試料の各々は、以前に特定されたT4;14転座を有していた。図1Aは、329名のNDMM患者の生存確率を経時的に示す。
【0225】
次いで、24か月未満の全生存期間を使用して329名のNDMM患者のランドマーク分析を実施した。図1Bは、329名のNDMM患者の全生存期間の密度プロットを示す。次いで、24か月未満の全生存期間を示す患者により高リスク患者(HR)のサブセットを特定およびグループ化した(図1C)。MANTA出力を解析して、以前に特定されたT4;14転座に対応する4pに切断点を有する転座コールを抽出した。4番染色体と14番染色体との間の転座を抽出して、コール、転座パートナー位置、バリアント対立遺伝子頻度、および固定ゲノム点:FGFR3の転写開始部位からの転座の距離を含むデータ行列にした。これらのデータ行列を、高リスクと非高リスクとの規定の分離を用いた教師あり分析に使用した。次いで、24か月未満の全生存期間を示す患者に由来する試料であった高リスク患者試料のサブセットに対して、さらなるゲノム分析を実施した。
【0226】
さらなるゲノム分析は、核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)タンパク質のコードを破壊するか、またはNSD2タンパク質のコードを破壊しないかいずれかの転座に相関する全生存期間に差異があることを実証した。図2Aで実証されているように、NSD2タンパク質のコードを破壊する転座は、より短い全生存期間と相関する。
【0227】
次いで、患者データを、核受容体結合SETドメインタンパク質2(NSD2)遺伝子に関して3つの領域にグループ化した:(1)転写開始部位の上流、(2)標準的翻訳開始部位の上流、および(3)コード配列を破壊する遺伝子本体内。これら3つの領域の患者群のカプラン-マイヤープロットを作成した。これらのゲノム特徴(標準的な転写および翻訳開始部位)を使用して、患者を、3つの群:無破壊、前半破壊、および後半破壊に分類し、各群は、全生存期間の点で漸増的に不良な予後を示した(図2Bを参照)。無破壊は、ゲノムビルドGRCh38.p13に従って、順方向鎖のヌクレオチド1,808,872とヌクレオチド1,871,393との間に切断点を有するT4:14転座であると定義した。前半破壊は、ゲノムビルドGRCh38.p13に従って、順方向鎖のヌクレオチド1,871,393とヌクレオチド1,900,655との間に切断点を有するT4:14転座であると定義した。後半破壊は、ゲノムビルドGRCh38.p13に従って、順方向鎖のヌクレオチド1,900,655の後のNSD2遺伝子に切断点を有するT4:14転座であると定義した。この実施例は、NSD2遺伝子の破壊が、T4:14転座を有するNDMM患者の全生存期間の低減と相関することを実証する。
【0228】
実施例2.患者RNA-SEQデータの分析
融合転写物は、染色体再編成により生じ、多発性骨髄腫を含むある特定のがんの駆動因子である。NDMM患者RNA-seqデータを、STAR-fusionパイプラインで分析し、発現された融合転写物を特定した。最初のNSD2コードエクソンとの融合が生じて全長コード転写物が生成されるか、または後半のNSD2コードエクソンとの融合が生じて、短縮型転写物が生成されることが見出された。RNA-seqデータの分析は、3つの患者群:(1)タンパク質コード配列または翻訳されたタンパク質の破壊がない全長コード融合転写物群、(2)後半DNA破壊によって特徴付けられる短縮型融合転写物群、および(3)融合転写物発現が測定されない患者の少数のサブセットを特定した。融合転写物の発現に基づき、これら3つの患者群のカプラン-マイヤープロットを作成した。短縮型融合タンパク質を発現する患者は、全長コード融合転写物を発現する患者または融合転写物を発現しない患者よりも全生存期間が劣る(図3Bを参照)。
【0229】
上述の書面による仕様は、当業者が実施形態を実施するのに十分であると考えられる。上述の記載および実施例では、ある特定の実施形態が詳述され、本発明者らによって企図された最良の形態が説明されている。しかしながら、上述の内容が本文でいかに詳細に記載されているとしても、本実施形態は、多くの方法で実施することができ、添付の特許請求の範囲およびそれらの任意の均等物に従って解釈されるべきであることが理解されるだろう。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
【配列表】
2024507939000001.app
【国際調査報告】