(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】アセトフェノンの存在下でビスフェノールA(BPA)を作製するプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 37/20 20060101AFI20240220BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20240220BHJP
B01J 31/10 20060101ALI20240220BHJP
C08G 64/20 20060101ALI20240220BHJP
C08G 8/02 20060101ALI20240220BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C07C37/20
C07C39/16
B01J31/10 Z
C08G64/20
C08G8/02
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550134
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2022053775
(87)【国際公開番号】W WO2022179902
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイ ジェリコ ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】スライツ エリック
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4J029
4J033
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA23A
4G169BA23B
4G169BB01A
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4H006AA02
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4J033HA12
4J033HB00
(57)【要約】
本発明は、イオン交換樹脂触媒と硫黄含有助触媒とを含む触媒系を被毒することなく、アセトフェノンの存在下でビスフェノールAを作製する方法に関する。さらに、本発明は、ポリカーボネートを作製する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)触媒系の存在下で、原料フェノールと原料アセトンとを縮合させる工程であって、該触媒系が、イオン交換樹脂触媒と硫黄含有助触媒とを含む、工程、
を含む、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを作製する方法であって、
工程(a)において存在するアセトフェノンの量が、前記原料フェノールの総重量に対して、1ppm超であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記触媒系が、該触媒系において、工程(a)の開始時に、前記イオン交換樹脂触媒と共有結合もイオン結合もしていない、少なくとも一部、好ましくは少なくとも75モル%の前記硫黄含有助触媒を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)において存在するアセトフェノンの量が、前記原料フェノールの総質量に対して、1ppm超、かつ、5000ppm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アセトフェノンが前記工程(a)全体を通して存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(b)工程(a)の後に得られた混合物を、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA又はパラ,パラ-ビスフェノールAの少なくとも1つを含むビスフェノールA画分と、フェノール画分とに分離する工程であって、
前記フェノール画分が、未反応のフェノールとアセトフェノンとを含む、工程を追加的に含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)における前記分離を、結晶化法を用いて行うことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(c)工程(b)において得られた前記フェノール画分の少なくとも一部を、工程(a)において抽出物として使用する追加の工程を含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記硫黄含有助触媒が、メルカプトプロピオン酸、硫化水素、エチルスルフィド等のアルキルスルフィド、メルカプトアルキルピリジン、メルカプトアルキルアミン、チアゾリジン、アミノチオフェノール、及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)において存在する前記アセトフェノンは、前記原料フェノールにおける不純物として、前記工程(a)に導入されるものであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(i)請求項1~9のいずれか一項に記載の方法に従って、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを得る工程と、
(ii)ポリカーボネートを得るために、工程(i)において得られたオルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを、任意で少なくとも1つの更なるモノマーの存在下で重合する工程と、
を含むポリカーボネートを作製する方法。
【請求項11】
前記工程(i)が、前記オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールA中のアセトフェノンの量を低減するために、前記オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを精製する工程を更に含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記精製する工程を、結晶化法を用いて行うことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノールAを作製するプロセス及びポリカーボネートを作製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールA、すなわち、BPAは、ポリカーボネート又はエポキシ樹脂の製造において重要なモノマーである。BPAは、通常、パラ,パラ-BPA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェノール)プロパン;p,p-BPA)の形態で使用されるが、BPAの製造においては、オルト,オルト-BPA(o,o-BPA)及び/又はオルト,パラ-BPA(o,p-BPA)も形成され得る。BPAについて言及する場合、原則的には、パラ,パラ-BPAのことを指すが、少量のオルト,オルト-BPA及び/又はオルト,パラ-BPAも含まれる。
【0003】
現行の技術水準に従うと、BPAは、酸触媒の存在下で、フェノールとアセトンとを反応させて、ビスフェノールを得ることによって製造される。以前は、縮合反応の商業的なプロセスにおいて塩酸(HCl)が使用されていた。現在では、BPAの製造のための不均一系連続プロセスがイオン交換樹脂触媒の存在下で使用されており、ここで、このイオン交換樹脂は、架橋した酸官能化ポリスチレン樹脂を含む。最も重要な樹脂は、スルホン酸基により架橋したポリスチレンである。特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4、又は非特許文献1に記載されているように、ジビニルベンゼンが架橋剤として最も使用されている。
【0004】
高い選択性を達成するために、フェノールとアセトンとの反応を好適な助触媒の存在下で行うことができる。特許文献5及び特許文献6には、イオン交換触媒と、助触媒としてのメルカプトプロピオン酸又はメルカプタンとの存在下でビスフェノールAを作製するプロセスが記載されている。触媒は時間とともに失活することが知られている。失活は、例えば、特許文献7、特許文献8、特許文献9に記載されている。製造プロセスの主な目的の1つは、触媒系の性能及び滞留時間を最大限にすることである。したがって、この目的に対応するために、潜在的な被毒物質、副生成物、抽出物(educts)の不純物等を特定する必要がある。
【0005】
特許文献10では、イオン交換樹脂触媒と硫黄含有助触媒とを含む特定の触媒系であって、助触媒がイオン交換樹脂触媒と化学的に結合している、触媒系の使用が教示されており、また、かかる特定の触媒系を使用したフェノールとケトンとの縮合反応を触媒するプロセスも教示されている。さらに、特許文献10には、イオン交換樹脂触媒と化学的に結合していないバルク促進剤を利用せずに、フェノールとケトンとの縮合反応を触媒するプロセスが開示されている。
【0006】
同様に、特許文献11には、特定のカチオン性化合物によって変性した酸性イオン交換樹脂触媒の存在下でビスフェノールを作製するプロセスが記載されている。
【0007】
特許文献12には、抽出物におけるバイオ由来不純物の存在下でのバイオ由来フェノール及び/又はバイオ由来アセトンに基づくBPAの製造が記載されている。この文献では、促進剤が結合したイオン交換樹脂触媒、つまり、助触媒が化学的に結合した(すなわち、イオン結合した)イオン交換樹脂触媒の使用だけについて記載されている。この先行技術文献では触媒被毒については判断されていない。
【0008】
アセトフェノンは、原料フェノール中に存在し得る不純物の1つである。上述の通り、所望の反応においてあらゆる副反応、触媒の被毒等を回避するために、不純物を回避しようとする又は可能な限りその量を低減するのが通常である。
【0009】
しかしながら、(化石ベース又はバイオ由来のいずれであっても)原料フェノールからのアセトフェノンの除去には時間とお金がかかり、これにより、原料フェノールがより高価になる。最終的には、ビスフェノールA及びこのビスフェノールAから調製される各ポリマーのコストが増加する。さらに、原料フェノールにおけるアセトフェノンの濃度は、供給元及びこれらの原料の精製プロセスによって変化する。これは、様々な原料品質に対応する必要があることを意味し(例えば、仕様が或る特定の閾値を超える場合は、別の精製工程を行う必要がある)、プロセス及び原料供給元の選択における柔軟性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】英国特許第849965号
【特許文献2】米国特許第4427793号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0007791号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0621252号
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0177006号
【特許文献6】米国特許第4,859,803号
【特許文献7】欧州特許出願公開第0583712号
【特許文献8】欧州特許出願公開第10620041号
【特許文献9】独国特許出願公開第14312038号
【特許文献10】国際公開第2012/150560号
【特許文献11】欧州特許出願公開第1520617号
【特許文献12】米国特許第8,247,619号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chemistry and properties of crosslinked polymers, edited by Santokh S. Labana, Academic Press, New York 1977
【発明の概要】
【0012】
よって、本発明は、フェノールとアセトンとの縮合を介して、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを作製するプロセスであって、従来技術のプロセスよりも経済的なプロセスを提供することを目的としていた。さらに、本発明は、フェノールとアセトンとの縮合を介して、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを作製するプロセスであって、原料フェノールの品質の選択において、より柔軟性が高い及び/又はより高い柔軟性を許容するプロセスを提供することを目的としていた。この柔軟性は、原料フェノールにおける不純物としてのアセトフェノンの濃度に対して提供されることが好ましい。
【0013】
上述の課題の少なくとも1つ、好ましくはこれらの課題の全てが本発明によって解決された。驚くべきことに、イオン交換樹脂触媒と硫黄含有助触媒とを含む触媒系が、アセトフェノンによる触媒被毒の影響を受けにくいことが分かった。さらに、イオン交換樹脂触媒と硫黄含有助触媒とを含み、硫黄含有助触媒の少なくとも一部がイオン交換樹脂触媒と共有結合もイオン結合もしていない(すなわち、化学的に結合していない)触媒系が、アセトフェノンによる触媒被毒の影響を受けにくいことが分かった。さらに、通常、原料フェノールにおけるアセトフェノンの量は可能な限り低い。本発明の特定の触媒系はこの不純物によって影響を受けないため、触媒の寿命が短くなるリスクなく、より安価な原料フェノールを使用することができる。これにより、全体的なプロセスの費用効果がより高くなる。また、原料を精製するために必要なエネルギーがより小さくなるため、プロセスは環境保護的により有利になる。さらに、プロセスは、原料フェノールの品質の選択において、特に、これらの原料におけるアセトフェノンの濃度に対してより高い柔軟性を許容する。
【0014】
したがって、本発明は、
(a)触媒系の存在下で、原料フェノールと原料アセトンとを縮合させる工程であって、該触媒系が、イオン交換樹脂触媒と硫黄含有助触媒とを含む、工程、
を含む、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを作製するプロセスであって、
工程(a)において存在するアセトフェノンの量が、原料フェノールの総重量に対して、1ppm超であることを特徴とする、プロセスを提供する。
【0015】
本発明によると、「原料フェノール」及び/又は「原料アセトン」について言及する。「原料」という用語は、BPAを作製するプロセスにおいて適用された、特に添加された未反応の抽出物に対して使用される。特に、この用語は、(原料フェノールとして)反応に新たに添加されるフェノールと、BPAを作製するプロセスにおいてリサイクルしたフェノール(リサイクルフェノール)とを区別するために使用される。かかるリサイクルフェノールは、追加のアセトフェノンをプロセスに添加する可能性はない。(原料アセトンとして)反応に新たに添加されるアセトンと、BPAを作製するプロセスにおいてリサイクルしたアセトン(リサイクルアセトン)についても同様である。フェノール及び/又はアセトンについて言及する場合、特に明示しない限り、化学的化合物自体、又は原料フェノール及びリサイクルフェノールの両方及び/又は原料アセトン及びリサイクルアセトンの両方のいずれかの合計を意味することが好ましい。
【0016】
アセトフェノンは、BPAの反応の抽出物の1つである原料フェノールにおける不純物である。原料フェノールは、アセトフェノン不純物を含有する場合がある。例えば、フェノールの製造経路は、Arpe, Hans-Juergen, Industrielle Organische Chemie, 6. Auflage, Januar 2007, Wiley-VCHに記載されている。特に、フェノールを作製するプロセスは、ウルマン産業化学事典、フェノール及びフェノール誘導体の章に記載されている。Hock法としても知られるクメンの酸化は、圧倒的に主要なフェノールの合成経路である。フェノールの製造中に形成される被毒物質の中には、アセトフェノンがある。
【0017】
本発明のプロセスは、工程(a)において存在するアセトフェノンの量が、原料フェノールの総重量に対して、1ppm超、好ましくは1.5ppm超、より好ましくは2ppm超、より好ましくは2.5ppm超、より好ましくは3ppm超、更に好ましくは4ppm超、更に好ましくは5ppm超、更に好ましくは6ppm超、更に好ましくは7ppm超、更に好ましくは8ppm超、更に好ましくは9ppm超、更に好ましくは10ppm超、更に好ましくは11ppm超、更に好ましくは12ppm超、更に好ましくは13ppm超、更に好ましくは15ppm超、更に好ましくは20ppm超、最も好ましくは50ppm超であることを特徴とする。
【0018】
さらに、工程(a)において存在するアセトフェノンの量が、原料フェノールの総重量に対して、1ppm超、かつ、5000ppm以下、より好ましくは4500ppm以下、更に好ましくは4000ppm以下、更に好ましくは3500ppm以下、更に好ましくは3000ppm以下、更に好ましくは2500ppm以下、最も好ましくは2000ppm以下であることが好ましい。ここで提示した上限値を、上で提示した好ましい下限値と組み合わせることができることが理解される。原料フェノールにおけるMBFの量を求める方法は当業者に知られている。例えば、原料フェノールにおける2-アセトフェノンの量は、ASTM D6142-12(2013)に従って求めることができる。
【0019】
本発明によると、「ppm」は、好ましくは重量部に対して言及されている。
【0020】
本発明のプロセスは、アセトフェノンがプロセス工程(a)全体を通して存在することを特徴とすることが好ましい。本発明によると、本発明の触媒系を使用する場合、アセトフェノンがプロセス工程(a)で反応しない、又は非常にわずかな程度しか反応しないことが分かった。これは、アセトフェノンの少なくとも一部、好ましくは全てがプロセス工程(a)の完了時及び/又は得られるBPA中にも依然として存在することを意味する。プロセス工程(a)の開始時に存在するアセトフェノンに対して、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも75重量%が、プロセス工程(a)の完了時、好ましくは後述のプロセス工程(b)の開始時にも存在する。プロセス工程(a)の開始時に存在するアセトフェノンに対して、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも75重量%が、得られるオルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、又はパラ,パラ-ビスフェノールA中に存在する。
【0021】
好ましくは、本発明のプロセスは、
(b)工程(a)の後に得られた混合物を、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、又はパラ,パラ-ビスフェノールAの少なくとも1つを含むビスフェノールA画分と、フェノール画分とに分離する工程であって、
フェノール画分は、未反応のフェノールとアセトフェノンとを含む、工程を追加的に含むことを特徴とする。
【0022】
ビスフェノールA画分は、生成物として回収するか、及び/又は更に精製することが好ましい。高純度のビスフェノールを提供するために、製造プロセスには幾つかのバリエーションが存在する。この高純度は、ポリカーボネートの製造におけるモノマーとしてのBPAの使用において特に重要である。国際公開第0172677号には、ビスフェノールとフェノールとの付加物の結晶、及びこの結晶を製造し、最終的にビスフェノールを作製する方法が記載されている。付加物の結晶化によって、高純度のパラ,パラ-BPAを得ることができることが分かった。欧州特許出願公開第1944284号には、ビスフェノールを製造するプロセスであって、結晶化が連続懸濁結晶化装置を含む、プロセスが記載されている。BPAの純度に対する要求が高まっていること、及び開示された方法によって、99.7%超の非常に純粋なBPAを得ることができることが述べられている。国際公開第2005075397号には、ビスフェノールAを製造するプロセスであって、反応の際に生成する水を蒸留によって除去する、プロセスが記載されている。この方法によると、未反応のアセトンが回収され、リサイクルされ、経済的に有利なプロセスが得られる。
【0023】
本発明のプロセスは、工程(b)における分離を、結晶化法を用いて行うことを特徴とすることが好ましい。工程(b)における分離を、少なくとも1つの連続懸濁結晶化装置を用いて行うことが更に好ましい。
【0024】
母液サイクルを利用することが更に記載されていた。BPAは、反応後に、結晶化及び濾過によって溶媒から取り出す。母液は、典型的には、未反応のフェノールに溶解した5%~20%のBPAと副生成物とを含有する。さらに、反応の際に水が形成されるが、この水は脱水セクションにおいて母液から除去する。未反応のフェノールを含む画分は、更なる反応のためにリサイクルすることが好ましいが、これは、好ましくは、母液をリサイクルすることを意味する。この画分は、BPAを得るために、アセトンとの反応において未反応のフェノールとして再利用される。母液の流れは、常法に従い反応ユニットに再循環することが好ましい。
【0025】
典型的には、母液中の副生成物は、例えば、o,p-BPA、o,o-BPA、置換インデン、ヒドロキシフェニルインダノール、ヒドロキシフェニルクロマン、置換キサンテン、及びより高縮合の化合物である。また、アセトンの自己縮合及び原料中の不純物との反応の結果として、アニソール、メシチルオキシド、メシチレン、及びジアセトンアルコール等の更なる二次化合物が形成される可能性がある。
【0026】
母液のリサイクルにより、副生成物が循環流に蓄積し、触媒系の更なる失活につながる可能性がある。これは、触媒を長期間使用する場合、抽出物における初期不純物の影響と同様に、フェノールとアセトンとの反応又は不純物の1つの反応のいずれかからの反応自体で生じ得る副生成物の影響を考慮する必要があることを意味する。
【0027】
更に好ましくは、本発明によるプロセスは、
(c)工程(b)において得られたフェノール画分の少なくとも一部を、工程(a)において抽出物として使用する追加の工程を含むことを特徴とする。
【0028】
フェノール画分の上記一部が、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%のアセトフェノンを含むことが更に好ましい。ここで、アセトフェノンの重量パーセントは、原料フェノール中に存在するアセトフェノンと比較した場合のアセトフェノンの上記一部について言及している。
【0029】
導入されたアセトフェノン、副生成物及び/又は不純物(原料抽出物と共に添加されるもの、又は系で工程(a)においてアセトフェノンが存在するために形成され得るもののいずれか)の蓄積を回避するために、幾つかの選択肢が存在する。選択肢としては、特に、パージ流、廃水、オフガス及び生成物としてのBPA自体が挙げられる。主流は、例えば、母液の一部を排出するパージ流であると思われる。別のアプローチは、固液分離後並びに水及び残留アセトンの除去の前又は後に、循環流の全量の一部を、例えば、酸イオン交換体を充填した転位ユニットを通過させることを含む。この転位ユニットでは、BPAの調製からの副生成物の一部が異性化されて、p,p-BPAが得られる。アセトフェノンは、パージ流によって、少なくとも部分的に除去することができると考えられる。したがって、工程(b)において得られたフェノール画分の少なくとも一部を、工程(a)において抽出物として使用し、この流れの少なくとも一部をパージすることが好ましい。工程(b)において得られたフェノール画分の50体積%超を、工程(a)において抽出物として使用することが好ましい。ここで、体積%は、フェノール画分の総体積に対するものである。
【0030】
本発明によると、イオン交換樹脂と硫黄含有助触媒とを含む触媒系を使用する。これらの触媒系は当業者に知られている。特に、2つの異なる種類の触媒系が存在する。一方は、主に「促進触媒」と言われるもので、もう一方は主に「非促進触媒」と言われるものである。促進触媒は、イオン交換樹脂の一部と結合した助触媒を含む。この結合は、本来、イオン結合又は共有結合のいずれかである。かかる促進触媒系の例は、例えば、特許文献10、米国特許出願公開第2004/0192975号、特許文献12又は米国特許第5,414,151号に記載されている。一方、「非促進触媒」系においては、典型的には、助触媒はイオン交換樹脂と結合していない。
【0031】
本発明のプロセスにおいて使用することができるイオン交換樹脂は当業者に知られている。イオン交換樹脂は、好ましくは、酸性イオン交換樹脂である。かかるイオン交換樹脂は、2%~20%、好ましくは3%~10%、最も好ましくは3.5%~5.5%の架橋を有することができる。酸性イオン交換樹脂は、好ましくは、スルホン化スチレンジビニルベンゼン樹脂、スルホン化スチレン樹脂、フェノールホルムアルデヒドスルホン酸樹脂、及びベンゼンホルムアルデヒドスルホン酸からなる群より選択することができる。さらに、イオン交換樹脂は、スルホン酸基を含有することができる。触媒床は、固定床又は流動床のいずれかとすることができる。
【0032】
さらに、本発明の触媒系は硫黄含有助触媒を含む。硫黄含有助触媒は、1つの物質、又は少なくとも2つの物質の混合物とすることができる。好ましくは、硫黄含有助触媒は、メルカプトプロピオン酸、硫化水素、エチルスルフィド等のアルキルスルフィド、メルカプトアルキルピリジン、メルカプトアルキルアミン、チアゾリジン、アミノチオフェノール、及びこれらの混合物からなる群より選択される。促進触媒の場合、硫黄含有助触媒は、3-メルカプトメチルピリジン、3-(2-メルカプトエチル)ピリジン及び4-(2-メルカプトエチル)ピリジン等のメルカプトアルキルピリジン;2-メルカプトエチルアミン、3-メルカプトプロピルアミン及び4-メルカプトブチルアミン等のメルカプトアルキルアミン;チアゾリジン、2-2-ジメチルチアゾリジン、2-メチル-2-フェニルチアゾリジン及び3-メチルチアゾリジン等のチアゾリジン;4-メチルチオフェノール等のアミノチオフェノール、並びにこれらの混合物から選択されることが好ましい。非促進触媒の場合、硫黄含有助触媒は、メルカプトプロピオン酸、硫化水素、エチルスルフィド等のアルキルスルフィド、及びこれらの混合物からなる群より選択される。本発明によると、非促進触媒系を使用することが好ましい。これは、触媒系において、プロセス工程(a)の開始時に、硫黄含有助触媒の少なくとも一部、好ましくは少なくとも75モル%がイオン交換樹脂触媒と共有結合もイオン結合もしていないことが好ましいことを意味する。
【0033】
この場合、助触媒は、プロセス工程(a)の反応溶液に溶解させることが好ましい。助触媒は、プロセス工程(a)の反応溶液に均一に溶解させることが更に好ましい。本発明のプロセスは、硫黄含有助触媒が、メルカプトプロピオン酸、硫化水素、エチルスルフィド等のアルキルスルフィド、及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とすることが好ましい。最も好ましくは、硫黄含有助触媒は3-メルカプトプロピオン酸である。
【0034】
本発明の触媒系は、硫黄含有助触媒を含み、硫黄含有助触媒の全てが、イオン交換樹脂触媒と共有結合もイオン結合もしていないことが好ましい。これは、好ましくは、硫黄含有助触媒の全てをプロセス工程(a)に添加することを意味する。本発明によると、「化学的に結合していない」又は「共有結合もイオン結合もしていない」という表現は、プロセス工程(a)の開始時に、イオン交換樹脂触媒と硫黄含有助触媒との間に共有結合もイオン結合も存在しない触媒系を指す。ただし、これは、硫黄含有助触媒の少なくとも一部が、イオン結合又は共有結合を介して不均一系触媒マトリックスに固定される可能性があることを意味するものではない。いずれにしても、プロセス工程(a)の開始時に、硫黄含有助触媒のそのようなイオン結合又は共有結合は存在せず、それらが仮に形成されるとしても、時間とともに形成されていく。したがって、硫黄含有助触媒をプロセス工程(a)に添加することが好ましい。「添加」という用語は、アクティブなプロセス工程を表す。これは、上述のように、助触媒をプロセス工程(a)の反応溶液に溶解させることが好ましいことを意味する。追加的に、助触媒は、別の任意のプロセス工程で添加してもよく、又はプロセス工程(a)で2回以上添加してもよい。さらに、硫黄含有助触媒の大部分がイオン交換樹脂触媒と共有結合もイオン結合もしていないことが好ましい。これは、硫黄含有助触媒の少なくとも75モル%、更に好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%がイオン交換樹脂触媒と化学的に結合していないことを意味する。ここで、モル%は、プロセス工程(a)において存在する助触媒の合計に関連する。
【0035】
アセトフェノンは、原料フェノールに共通する不純物であるため、工程(a)において存在するアセトフェノンは、原料フェノール中の不純物としてプロセス工程(a)に導入されるものであることが好ましい。このような状況ではあるが、アセトフェノンの少なくとも一部は、別の理由により、プロセス工程(a)において存在し得る。例えば、プロセス工程(a)において存在するアセトフェノンの一部は、フェノールのリサイクルのために存在し得る。
【0036】
本発明によると、プロセス工程(a)において使用する原料フェノール及び/又は原料アセトンをバイオベースとすることができる。
【0037】
本発明に従って使用する場合、「バイオ由来」又は「バイオベース」という用語は、現在再生可能な資源から得られる(原料)フェノール及び/又は(原料)アセトンを指す。特に、この用語は、化石燃料由来のフェノールとは対極のものとして使用される。化石燃料材料においては同位体炭素C14の相対量がより少ないため、原料がバイオベースであるかどうかは、炭素同位体レベルの測定によって確認することができる。例えば、ASTM D6866-18(2018)又はISO16620-1~-5(2015)に従って行うことができるこのような測定は当業者に知られている。
【0038】
別の態様において、本発明は、
(i)任意の実施の形態又は好ましい実施の形態において、本発明のプロセスによるオルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを得る工程と、
(ii)ポリカーボネートを得るために、工程(i)において得られたオルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを、任意で少なくとも1つの更なるモノマーの存在下で重合する工程と、
を含むポリカーボネートを作製するプロセスを提供する。
【0039】
上で説明したように、本発明のオルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを製造するプロセスは、より経済的及び/又は環境保護的な方法で得ることができるBPAを提供する。したがって、本発明によるプロセスで得られたこのBPAを使用すると、本発明によるポリカーボネートを作製するプロセスも、より経済的及び/又は環境保護的となる。
【0040】
反応工程(ii)は当業者に知られている。ポリカーボネートは、既知の方法で、BPAと、炭酸誘導体と、任意の連鎖停止剤と、任意の分岐剤とから、相間ホスゲン化又は溶融エステル交換によって調製することができる。
【0041】
相間ホスゲン化においては、アルカリ性水溶液と、有機溶媒と、触媒、好ましくはアミン化合物とを含む二相混合物において、ビスフェノール及び任意の分岐剤をアルカリ性水溶液に溶解し、任意で溶媒に溶解させたホスゲン等の炭酸源と反応させる。反応手順は、複数の段階で行うこともできる。ポリカーボネートを作製するかかるプロセスは、例えば、H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, Vol. 9, Interscience Publishers, New York 1964 page 33 et seq.及びPolymer Reviews, Vol. 10, "Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods", Paul W. Morgan, Interscience Publishers, New York 1965, chapter VIII, page 325において、原理上は界面プロセスとして知られているため、基本的な条件は当業者によく知られている。
【0042】
代替的には、ポリカーボネートは、溶融エステル交換プロセスによって調製することもできる。溶融エステル交換プロセスは、例えば、高分子科学辞典、10巻(1969)、Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, H. Schnell, Vol, 9, John Wiley and Sons, Inc. (1964)、及び独国特許出願公開第1031512号に記載されている。溶融エステル交換プロセスでは、界面プロセスにおいて既に記載された芳香族ジヒドロキシ化合物が、好適な触媒及び任意の更なる添加剤の援助により、溶融物中で炭酸ジエステルによってエステル交換される。
【0043】
好ましくは、本発明によるポリカーボネートを作製するプロセスは、プロセス工程(i)が、アセトフェノンの量を低減するために、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを精製する工程を更に含むことを特徴とする。上述のように、本発明のプロセスにおいては、より安価な原料フェノールを使用することができる。しかしながら、これらのより安価な原料においてアセトフェノンが不純物として含まれる場合、この不純物は実質的に反応しないと考えられる。よって、アセトフェノンは、重合の前に除去することが好ましい。この除去は、上述の結晶化法を用いて行うことが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0044】
実施例で使用した材料は以下の通りである:
【0045】
【0046】
カラム反応器は、150gのフェノール湿式触媒を備えていた(反応器におけるフェノール湿式触媒の量:210ml~230ml)。カラム反応器を60℃に加熱した(反応中の触媒床温度:63℃)。フェノールと、アセトン(3.9重量%)と、MEPA(フェノールとアセトンとの質量の合計に対して160ppm)との混合物を調製し、60℃に加温した。この混合物を45g/時の流速でカラム反応器に圧入した。カラム反応器はサンプリングポイントを下部に有していた。サンプリングポイントの開口部を使用して、反応中に様々な試料を採取した。サンプリング時間は1時間とし、1時間ごとに採取する試料の量は45gとした。
【0047】
初回のラン(run)(標準ラン)を52時間行った。48時間後、49時間後、50時間後、及び51時間後のそれぞれで、試料を採取し、GCで分析した。
【0048】
2回目のラン(不純物ラン)を52時間行った。2回目のランの開始時に、(フェノールとアセトンとの質量の合計に対して)1670ppmのアセトフェノンを反応系に投与した。48時間後、49時間後、50時間後、及び51時間後のそれぞれで、試料を採取し、GCで分析した。その後、アセトンと、フェノールと、MEPAとの新たな混合物を使用して、3回目のラン(標準ラン)を52時間行った。48時間後、49時間後、50時間後、及び51時間後のそれぞれで、シリンジを介して試料を採取し、GCで分析した。次いで、4回目のラン(不純物ラン)を52時間行った。4回目のランの開始時に、(フェノールとアセトンとの質量の合計に対して)1680ppmのアセトフェノンを反応系に投与した。48時間後、49時間後、50時間後、及び51時間後のそれぞれで、試料を採取し、GCで分析した。最後に、5回目のラン(標準ラン)を52時間行った。48時間後、49時間後、50時間後、及び51時間後のそれぞれで、試料を採取し、GCで分析した。
【0049】
メタノールのガスクロマトグラフィー(GC)は、50m×0.25mm×0.25μmのサイズのAgilent J&W VF-1MSカラム(100%ジメチルポリシロキサン)を使用して、60℃で0.10分間保持し、12℃/分で320℃まで加熱し、この温度で10.00分間保持する温度プロファイルを用いて、300℃で、10/1のスプリットで1μlの試料を注入して行った。ここで、流量は18.3psi(1.26bar)の初期圧力で2ml/分である。
【0050】
アセトフェノン、フェノール、パラ,パラ-BPAのガスクロマトグラフィー(GC)は、50m×0.25mm×0.25μmのサイズのAgilent J&W VF-1MSカラム(100%ジメチルポリシロキサン)を使用して、80℃で0.10分間保持し、12℃/分で320℃まで加熱し、この温度で10.00分間保持する温度プロファイルを用いて、300℃で、10/1のスプリットで1μlの試料を注入して行った。ここで、流量は18.3psi(1.26bar)の初期圧力で2ml/分である。
【0051】
標準ランは、触媒及び助触媒の存在下での、アセトンとフェノールとのBPAを形成する反応を表している。標準ランから、各エラーバーを含めたアセトン変換率を推定することができる。この変換率は、不純物が触媒の失活に影響するかどうかを評価するためのベースラインを表すものであった。3回目及び5回目の標準ランにおけるアセトン変換率を、初回の標準ランの値と比較して、触媒に対するアセトフェノンの効果を求めた。アセトン変換率がこの変換率より低い場合、アセトフェノンがBPA触媒に影響することが示される。この種の評価が触媒被毒の決定に使用することができることを示すために、不純物としてメタノールを使用して参照ランを行った。メタノールは、例えば米国特許第8,143,456号に記載されているが、BPAプロセスにおける触媒に対する既知の被毒物質であることが現行の技術水準から知られている。それぞれ得られた結果を表1に示す。表に示す値は、各ランの際(48時間後、49時間後、50時間後、及び51時間後)に採取した4つの試料から得られた平均値である。
【0052】
【0053】
表1から明確に分かるように、初回、3回目、及び5回目の各標準ランにおいて、アセトン変換率が低下した。これは、触媒がメタノールによって被毒され、触媒活性を低下させる不可逆反応のために変換率を回復することができないことを意味する。
【0054】
以下の表に、不純物としてのアセトフェノンに対する初回のラン(標準ラン)、2回目のラン(不純物ラン)、3回目のラン(標準ラン)、4回目のラン(不純物ラン)、及び5回目のラン(標準ラン)の結果を示す。表に示す値は、各ランの際(48時間後、49時間後、50時間後、及び51時間後)に採取した4つの試料から得られた平均値である。
【0055】
【0056】
表2の結果から分かるように、フェノールとアセトンとのパラ,パラ-BPAへの反応におけるアセトフェノンの添加は、初回、3回目及び5回目の標準ランにおけるアセトン変換率の低下をほとんど引き起こさない。これは、使用した触媒系にとって、アセトフェノンが被毒物質ではないことを意味する。この効果は、各不純物ラン後に分かる。さらに、アセトフェノンはこの系において全く反応しないと考えられることが分かる(アセトフェノンOUTがアセトフェノンINとほぼ等しい)。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)触媒系の存在下で、原料フェノールと原料アセトンとを縮合させる工程であって、該触媒系が、イオン交換樹脂触媒と硫黄含有助触媒とを含む、工程、
を含む、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを作製する方法であって、
工程(a)において存在するアセトフェノンの量が、前記原料フェノールの総重量に対して、1ppm超であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記触媒系が、該触媒系において、工程(a)の開始時に、前記イオン交換樹脂触媒と共有結合もイオン結合もしていない、少なくとも一部、好ましくは少なくとも75モル%の前記硫黄含有助触媒を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アセトフェノンが前記工程(a)全体を通して存在することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
(b)工程(a)の後に得られた混合物を、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA又はパラ,パラ-ビスフェノールAの少なくとも1つを含むビスフェノールA画分と、フェノール画分とに分離する工程であって、
前記フェノール画分が、未反応のフェノールとアセトフェノンとを含む、工程を追加的に含むことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(c)工程(b)において得られた前記フェノール画分の少なくとも一部を、工程(a)において抽出物として使用する追加の工程を含むことを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記硫黄含有助触媒が、メルカプトプロピオン酸、硫化水素、エチルスルフィド等のアルキルスルフィド、メルカプトアルキルピリジン、メルカプトアルキルアミン、チアゾリジン、アミノチオフェノール、及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)において存在する前記アセトフェノンは、前記原料フェノールにおける不純物として、前記工程(a)に導入されるものであることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法に従って、オルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを得る工程と、
(ii)ポリカーボネートを得るために、工程(i)において得られたオルト,パラ-ビスフェノールA、オルト,オルト-ビスフェノールA、及び/又はパラ,パラ-ビスフェノールAを、任意で少なくとも1つの更なるモノマーの存在下で重合する工程と、
を含むポリカーボネートを作製する方法。
【国際調査報告】