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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】油圧装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/2064 20200101AFI20240405BHJP
【FI】
F04B1/2064
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565924
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2022061449
(87)【国際公開番号】W WO2022229374
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】21171132.0
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504265628
【氏名又は名称】インナス・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】INNAS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】アフテン,ペーテル アウグスティヌス ヨハネス
【テーマコード(参考)】
3H070
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB06
3H070BB15
3H070BB23
3H070CC37
3H070DD08
3H070DD85
(57)【要約】
ロータ(3、9、10、11、16~18、23)と、高圧ポート(6)および低圧ポート(7)を含むポート部材(5)とを備える油圧装置(1)である。ロータの外面(21)がポート部材(5)の外面(22)に面し、ポート部材(5)に対して回転軸(19)の周りの回転方向に回転可能である。ロータが、回転軸(19)の周りに互いに角度間隔をおいて配置された複数のシリンダ(11)と、それぞれのシリンダ(11)内で移動可能である複数の協働するピストン(10)とを備える。シリンダ(11)が、ロータの外面(21)でそれぞれの開放端(25)と連通し、開放端(25)の各々が、作動条件下で高圧ポート(6)および低圧ポート(7)と交互に連通する。複数のシリンダ(11)の各2つの連続するシリンダ(11)が、流体変位部材(26)を介して相互接続されている。流体変位部材は、2つの連続するシリンダ(11)の一方と連通する第1の開口(27)と、その2つの連続するシリンダ(11)の他方と連通する第2の開口(28)と、第1および第2の開口(27、28)の間で自由に移動可能であり、かつ、作動条件下で、第2の開口(28)と連通するシリンダ(11)内の圧力が第1の開口(27)と連通するシリンダ(11)内の圧力よりもそれぞれ高いか又は低い場合に、第1の開口(27)または第2の開口(28)のいずれかを実質的に塞ぐように構成された閉鎖要素(29)とを有する。ロータ(3、9、10、11、16~18、23)内で、各開放端(25)から離れた位置に、流動抵抗(30)が設けられ、1つのシリンダ(11)と連通する各2つの流体変位部材(26)の第1の開口(27)と第2の開口(28)が、その流動抵抗(30)の反対側でそのシリンダ(11)と流体連通している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(3、9、10、11、16~18、23)と、高圧ポート(6)および低圧ポート(7)を含むポート部材(5)とを備える油圧装置(1)であって、
上記ロータの外面(21)が上記ポート部材(5)の外面(22)に面し、上記ポート部材(5)に対して回転軸(19)の周りの回転方向に回転可能であり、
上記ロータが、上記回転軸(19)の周りに互いに角度間隔をおいて配置された複数のシリンダ(11)と、それぞれの上記シリンダ(11)内で移動可能である複数の協働するピストン(10)とを備え、
上記シリンダ(11)が、上記ロータの上記外面(21)でそれぞれの開放端(25)と連通し、上記開放端(25)の各々が、作動条件下で上記高圧ポート(6)および上記低圧ポート(7)と交互に連通し、
上記複数のシリンダ(11)の各2つの連続するシリンダ(11)が、流体変位部材(26)を介して相互接続され、
上記流体変位部材は、
上記2つの連続するシリンダ(11)の一方と連通する第1の開口(27)と、
上記2つの連続するシリンダ(11)の他方と連通する第2の開口(28)と、
上記第1および第2の開口(27、28)の間で自由に移動可能であり、かつ、作動条件下で、上記第2の開口(28)と連通する上記シリンダ(11)内の圧力が上記第1の開口(27)と連通するシリンダ(11)内の圧力よりもそれぞれ高いか又は低い場合に、上記第1の開口(27)または上記第2の開口(28)のいずれかを実質的に塞ぐように構成された閉鎖要素(29)とを有する、油圧装置において、
上記ロータ(3、9、10、11、16~18、23)内で、各開放端(25)から離れた位置に、流動抵抗(30)が設けられ、
1つのシリンダ(11)と連通する各2つの流体変位部材(26)の第1の開口(27)と第2の開口(28)が、上記流動抵抗(30)の反対側でそのシリンダ(11)と流体連通している
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧装置(1)において、
上記シリンダ(11)の各々は、上記流動抵抗(30)が設けられている通路(24)を通して、対応する上記開放端(25)と連通している
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧装置(1)において、
上記流動抵抗(30)は、上記通路(24)の局所的な狭窄によって形成されている
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の油圧装置(1)において、
各流体変位部材(26)の上記第1の開口(27)は、上記通路(24)内の第1のアパーチャ(31)を介して上記対応するシリンダ(11)と連通し、各流体変位部材(26)の上記第2の開口(28)は、上記通路(24)内の第2のアパーチャ(32)を介して上記対応するシリンダ(11)と連通している
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項5】
請求項4に記載の油圧装置(1)において、
上記第1のアパーチャ(31)は、上記第2のアパーチャ(32)よりも、上記開放端(25)から大きな距離にある
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項6】
請求項5に記載の油圧装置(1)において、
上記流体変位部材(26)の各々は、2つの連続する通路(24)のうちの一方の上記第1のアパーチャ(31)と上記2つの連続する通路(24)のうちの他方の上記第2のアパーチャ(32)との間に直線状のチャネルを備え、上記チャネルは、上記第1および第2の開口(27、28)の間に円筒状部分を有している
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項7】
請求項6に記載の油圧装置(1)において、
上記閉鎖要素はボール(29)であり、上記第1および第2の開口(27、28)は、上記ボール(29)と協働するそれぞれのシートによって囲まれており、それによって、上記ボール(29)が上記第1の開口(27)で上記シートに押し付けられたとき、上記第1の開口(27)を通る流体の流れが実質的に妨げられ、上記ボール(29)が上記第2の開口(28)で上記シートに押し付けられたとき、上記第2の開口(28)を通る流体の流れが実質的に妨げられるようになっている
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の油圧装置(1)において、
上記円筒状部分は、この円筒状部分が位置する回転位置で上記回転軸(19)に対して接線方向に延びる平面内にあるか、または、その平面に対して45°より小さい角度、好ましくは25°より小さい角度だけ傾斜している中心線を有する
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれか一つに記載の油圧装置(1)において、
上記ロータから上記ポート部材(5)へ向かう方向における上記チャネルの仮想的な延長線は、上記第2のアパーチャ(32)が位置する上記通路(24)の上記開放端(25)を通過している
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載の油圧装置(1)において、
上記外面(21、22)は共通の平面内にあり、
上記回転軸(19)は上記外面(21、22)に対して垂直に延び、
上記シリンダ(11)の中心線は上記回転軸(19)に対して平行に延び、
上記高圧ポート(6)および上記低圧ポート(7)は、上記回転軸(19)の周りに円弧状である
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項11】
請求項10に記載の油圧装置(1)において、
上記回転軸は第1の回転軸(19)であり、
上記ロータは、第2の回転軸(20)の周りに回転可能であるシャフト(3)と、上記第2の回転軸(20)に対して垂直に延びるフランジ(9)とを有し、
上記複数のピストン(10)は、上記第2の回転軸(20)の周りに等角度距離で上記フランジ(9)に固定され、
上記複数のシリンダは、上記通路(24)が設けられているバレルプレート(16)上に載っている別々のスリーブ(11)であり、
上記第2の回転軸(20)は上記第1の回転軸(19)と鋭角に交差し、それによって、上記シャフト(3)を回転させると、上記ピストン(10)の各々が上記協働するシリンダ(11)内で往復運動するようになっている
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一つに記載の油圧装置(1)において、
上記ポート部材(5)の上記外面(22)は、通過する開放端(25)の上記協働するピストン(10)が下死点(BDC)に到達する、上記低圧ポート(7)と上記高圧ポート(6)との間の第1のシールランド(8a)と、通過する開放端(25)の上記協働するピストン(10)が上死点(TDC)に到達する、上記低圧ポート(7)と上記高圧ポート(6)との間の第2のシールランド(8b)とを有し、
上記第1および第2のシールランド(8a、8b)の各々の長さは、上記回転方向で測られて、上記開放端(25)の各々の長さよりも大きい
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項13】
請求項12に記載の油圧装置(1)において、
上記低圧ポート(7)に隣接する上記第1のシールランド(8a)の縁と、上記第1のシールランド(8a)で上記ピストンが下死点(BDC)に到達する位置との間の距離が、上記回転方向で測られて、各開放端(25)の上記長さの半分であり、および/または、上記高圧ポート(6)に隣接する上記第2のシールランド(8b)の縁と、上記第2のシールランド(8b)で上記ピストン(10)が上死点(TDC)に達する位置との間の距離が、上記回転方向で測られて、各開放端(25)の上記長さの半分である
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の油圧装置(1)において、
上記第1のシールランド(8a)の上記長さは、上記回転方向で測られて、上記第2のシールランド(8b)の長さよりも大きい
ことを特徴とする油圧装置。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一つに記載の油圧装置(1)において、
上記油圧装置は、ポンプ、モータ、または変圧器である
ことを特徴とする油圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータと、高圧ポートおよび低圧ポートを含むポート部材とを備える油圧装置(hydraulic device)に関し、
上記ロータの外面が上記ポート部材の外面に面し、上記ポート部材に対して回転軸の周りの回転方向に回転可能であり、
上記ロータが、上記回転軸の周りに互いに角度間隔をおいて配置された複数のシリンダと、それぞれの上記シリンダ内で移動可能である協働するピストンとを備え、
上記シリンダが、上記ロータの上記外面でそれぞれの開放端と連通し、上記開放端の各々が、作動条件下で上記高圧ポートおよび上記低圧ポートと交互に連通し、
上記複数のシリンダの各2つの連続するシリンダが、流体変位部材を介して相互接続され、
上記流体変位部材は、
上記2つの連続するシリンダの一方と連通する第1の開口と、
上記2つの連続するシリンダの他方と連通する第2の開口と、
上記第1および第2の開口の間で自由に移動可能であり、かつ、作動条件下で、上記第2の開口と連通する上記シリンダ内の圧力が上記第1の開口と連通するシリンダ内の圧力よりもそれぞれ高いか又は低い場合に、上記第1の開口または上記第2の開口のいずれかを実質的に塞ぐように構成された閉鎖要素とを有する
ものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような油圧装置は、NL 1016738から公知である。この公知の油圧装置は、斜板に連結されたロータを有し、ロータの回転中にそれぞれのシリンダ内のピストンを各々下死点と上死点の間で移動させる。作動条件下では、上記シリンダの一部は高圧ポートに連通し、上記シリンダの別の一部は低圧ポートに連通する。各シリンダは、流体変位部材を介して、連続する、隣り合う、または隣接するシリンダと接続されている。上記流体変位部材は、その部材の第1の開口と第2の開口との間で自由に移動可能な閉鎖要素を備えている。作動条件下で、上記第2の開口と連通するシリンダ内の油圧流体(hydraulic fluid)の圧力が、上記第1の開口と連通するシリンダ内の油圧流体の圧力よりも高ければ、上記閉鎖要素は上記第1の開口に移動して上記第1の開口を実質的に塞ぐことができ、上記第1の開口と連通するシリンダ内の圧力が上記第2の開口と連通するシリンダ内の圧力よりも高ければ、上記閉鎖要素は上記第2の開口に移動して上記第2の開口を実質的に塞ぐことができる。上記閉鎖要素が上記第1の開口から上記第2の開口へ、またはその逆へ移動する間に、限られた体積の油圧流体が2つの連続するシリンダ間を流れる。
【0003】
作動条件下で、上記ロータの外周面にある開放端の1つが上記高圧ポートと上記低圧ポートとの間を移動するとき、すなわち上記ポート部材のシールランドに沿って移動するとき、上記開放端がシールランドによって閉じられている間に上記シリンダ内の上記ピストンの位置が変化することによって、その開放端と連通するシリンダ内の油圧流体の圧力が変化する。転流と呼ばれるこの圧力変化は、対応する開放端が上記高圧ポートと連通し始めるときにその高圧ポートの圧力が上記シリンダ内の圧力と異なる場合、および/または、対応する開放端が上記低圧ポートと連通し始めるときにその低圧ポートの圧力が上記シリンダ内の圧力と異なる場合に、騒音および振動の増加につながる可能性がある。公知の油圧装置は、過剰な油圧流体を連続するシリンダ間で移送できるシャトルとも呼ばれる流体変位部材によって、過剰な圧力差を抑制している。
【0004】
例えば、開放端の1つが、上記低圧ポートから上記高圧ポートに移動し、その開放端が上記低圧ポートと上記高圧ポートとの間のシールランドによって閉じられている場合を考える。考慮中の開放端と連通しているシリンダ内のピストンが下死点から上死点への方向に移動すると、考慮中の開放端と連通するシリンダ内の圧力は、移動中に上昇する。上記低圧ポートに連通する連続するシリンダは、より低い圧力に留まり、それによって、これらのシリンダを相互接続する流体変位部材の閉鎖要素は、その部材の上記第1および第2の開口の一方を実質的に塞ぎ、それによって、油圧流体が上記連続するシリンダに全く流れないか、または限られた量しか流れない。既に上記高圧ポートと連通している他の連続するシリンダは、その開放端が上記シールランドに沿って移動するとき、考慮中の開放端と連通するシリンダよりも高い圧力を最初に有するので、これらのシリンダを相互接続する流体変位部材の閉鎖要素も、その部材の上記第1および第2の開口の一方を実質的に塞ぐ。考慮中の開放端が上記シールランドに沿って移動する間に、対応するシリンダ内の圧力が上記高圧ポートの圧力(すでに高圧ポートと連通している連続するシリンダ内の圧力に等しい)を超えるとき、これらのシリンダを相互に接続する流体変位部材の閉鎖要素は、上記第1および第2の開口の一方から上記第1および第2の開口の他方へ移動するだろう。この移動の間、油圧流体は、考慮中の開放端と連通するシリンダから流体変位部材へ流れ、その部材の閉鎖要素を変位させる。その結果、それ以上の圧力上昇は回避される。
【0005】
連続するシリンダを相互接続する流体変位部材の閉鎖要素が、上記第1および第2の開口の他方を実質的に塞いでしまう前に、考慮中の開放端が、上記高圧ポートと連通し始める場合(その状態で、連続するシリンダは両方とも上記高圧ポートに連通する)、考慮中の開放端と連通するシリンダ内の圧力は、上記高圧ポートにおける圧力と均衡し、その結果、激しい圧力差が回避される。考慮中の開放端が上記高圧ポートと連通し始める前に、既に閉鎖要素が上記第1および第2の開口の他方を実質的に塞いでいる場合、考慮中の開放端と連通するシリンダ内の圧力は、上記高圧ポートの圧力よりもさらに上昇するだろう。上記シリンダ内の圧力は、上記高圧ポートの圧力が低下するにつれて、より早く高圧ポートの圧力に達するので、上記第1の開口と上記第2の開口との間の距離は、上記閉鎖要素の移動距離が、上記高圧ポートの比較的低い圧力での望ましくない圧力差を回避するのに十分であるようにすべきである。
【0006】
上記開放端が上記高圧ポートから上記低圧ポートに移動する際にも、前述と同様の効果が起こる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、改良された油圧装置を提供することである。
【0008】
この目的は、本発明による油圧装置によって達成され、この油圧装置は、上記ロータ内で、各開放端から離れた位置に、流動抵抗が設けられ、1つのシリンダと連通する各2つの流体変位部材の第1の開口と第2の開口が、上記流動抵抗の反対側でそのシリンダと流体連通していることを特徴とする。
【0009】
本発明の利点は、ロータの開放端が低圧ポートと高圧ポートとの間のシールランドに達する前に、上記流体変位部材の閉鎖要素が予め定められた位置に付勢されることである。作動条件下では、上記低圧ポートと連通する連続するシリンダは、対応する開放端からシリンダへの方向にそれぞれの流動抵抗を横切る圧力降下を引き起こす油圧流体の流れを生じさせる一方、上記高圧ポートと連通する連続するシリンダは、対応するシリンダから開放端への方向にそれぞれの流動抵抗を横切る圧力降下を引き起こす油圧流体の流れを生じさせる。各流体変位部材の上記第1の開口および上記第2の開口は、対応する流動抵抗の反対側にある2つの連続する又は隣り合うシリンダと連通するので、上記低圧ポートまたは上記高圧ポートのいずれかと連通する2つの連続するシリンダを相互接続する流体変位部材の閉鎖要素は、同じ方向に付勢されるだろう。その結果、或るシリンダと連通する開放端がシールランドに到着するとき、そのシリンダと後からシールランドに到着する連続するシリンダとを相互接続する流体変位部材の閉鎖要素は、その部材の第1の開口または上記第2の開口のいずれかを常に実質的に塞ぐだろう。これにより、流体変位部材の固定された基準状態にて、シールランドで圧縮または膨張を開始する機会が提供される。これにより、上記閉鎖要素が、例えば遠心力に依存して位置決めされるのが防止される。
【0010】
上記流体変位部材の閉鎖要素が上記第1の開口または上記第2の開口を実質的に塞ぐと、上記第1の開口または上記第2の開口を通る流体の流れがそれぞれ最小化されることが注記される。これは、上記第1の開口または上記第2の開口が完全に閉じられるか、または、ごく少量の流体が依然として上記第1の開口または上記第2の開口を流れることを意味する。後者の場合、流体の流れは、上記閉鎖要素が上記第1の開口と上記第2の開口との間を移動するとき上記第1の開口と上記第2の開口を通る流体の流れよりも、通常、遥かに小さくなるだろう。
【0011】
実用的な実施形態では、上記シリンダの各々は、上記流動抵抗が設けられている通路を通して、対応する上記開放端と連通している。上記通路の断面積は、それぞれのシリンダの断面積よりも小さくてもよい。上記通路および上記流体変位部材は、剛性ユニットとして形成され得る。
【0012】
上記流動抵抗は、上記通路の局所的な狭窄によって形成されていてもよい。
【0013】
一実施形態では、各流体変位部材の上記第1の開口は、上記通路内の第1のアパーチャを介して上記対応するシリンダと連通し、各流体変位部材の上記第2の開口は、上記通路内の第2のアパーチャを介して上記対応するシリンダと連通している。より具体的な実施形態では、上記流体変位部材の1つについて考えると、その部材の第1の開口は、上記シリンダの最初の1つに対応する通路の第1のアパーチャと流体連通しており、その部材の第2の開口は、作動条件下で上記シリンダの最初の1つに続く連続するシリンダに対応する通路の第2のアパーチャと流体連通している。
【0014】
好ましくは、上記第1のアパーチャは、上記第2のアパーチャよりも、上記開放端から大きな距離にある。この実施形態では、上記流動抵抗は、第1のアパーチャと第2のアパーチャとの間の通路の長さによって形成され得るからである。これにより、上記通路の局所的な狭窄が省略されるような単純な流動抵抗が提供される。
【0015】
上記流体変位部材の各々は、2つの連続する通路のうちの一方の上記第1のアパーチャと上記2つの連続する通路のうちの他方の上記第2のアパーチャとの間に直線状のチャネルを備え、上記チャネルは、上記第1および第2の開口の間に円筒状部分を有していてもよい。その結果、上記閉鎖要素はその円筒状部分内を移動する。
【0016】
実用的な実施形態では、上記閉鎖要素はボールであり、上記第1および第2の開口は、上記ボールと協働するそれぞれのシートによって囲まれており、それによって、上記ボールが上記第1の開口で上記シートに押し付けられたとき、上記第1の開口を通る流体の流れが実質的に妨げられ、上記ボールが上記第2の開口で上記シートに押し付けられたとき、上記第2の開口を通る流体の流れが実質的に妨げられるようになっている。これは、上記流体変位部材の単純だが有効な構成である。上記ボールはセラミックからなっていてもよい。さらに、上記流体変位部材のボールは、このボールが対応するシートに押し付けられたとき、上記第1の開口または上記第2の開口を実質的に塞ぐ限り、上記第1の開口と上記第2の開口との間の上記円筒状部分の直径よりも小さくてもよい。それにもかかわらず、上記閉鎖要素および/または上記シートの代替形状として、例えば小さなピストンなどが考えられる。代替的な実施形態では、上記閉鎖要素は、上記第1の開口と上記第2の開口との間の上記円筒状部分内にしっかりと嵌合する。この場合、本明細書で前述したような上記第1の開口および上記第2の開口での対応するシートは、省略され得る。その理由は、しっかりと嵌合する閉鎖要素が上記円筒状部分内のそれぞれの反対側の端位置にあるとき、その閉鎖要素が上記第1の開口および上記第2の開口を自動的に実質的に塞ぐからである。本明細書で前述したように、上記閉鎖要素は、上記第1の開口または上記第2の開口をそれぞれ実質的に塞ぐとき、上記第1の開口または上記第2の開口を通る最小限の漏れを許容してもよい。
【0017】
上記円筒状部分は、この円筒状部分が位置する回転位置で上記回転軸に対して接線方向に延びる平面内にあるか、または、その平面に対して45°より小さい角度、好ましくは25°より小さい角度だけ傾斜している中心線を有する。これにより、上記閉鎖要素での遠心力(それは、上記流動抵抗を横切る圧力差による上記閉鎖要素の変位に抗して働く可能性がある。)の影響が最小限に抑えられる。
【0018】
好ましい実施形態では、上記ロータから上記ポート部材へ向かう方向における上記チャネルの仮想的な延長線は、上記第2のアパーチャが位置する上記通路の上記開放端を通過している。これは、上記開放端を通して上記チャネルを穿孔する機会を提供するからである。この結果、後に部分的に閉じられ密閉される必要のある別の穴の穿孔が、省略され得る。
【0019】
特定の実施形態では、
上記外面(複数)は共通の平面内にあり、
上記回転軸は上記外面(複数)に対して垂直に延び、
上記シリンダ(複数)の中心線(複数)は上記回転軸に対して平行に延び、
上記高圧ポートおよび上記低圧ポートは、上記回転軸の周りに円弧状である。
【0020】
より特定の実施形態では、
上記回転軸は第1の回転軸であり、
上記ロータは、第2の回転軸の周りに回転可能であるシャフトと、上記第2の回転軸に対して垂直に延びるフランジとを有し、
上記複数のピストンは、上記第2の回転軸の周りに等角度距離で上記フランジに固定され、
上記複数のシリンダは、上記通路が設けられているバレルプレート上に載っている別々のスリーブであり、
上記第2の回転軸は上記第1の回転軸と鋭角に交差し、それによって、上記シャフトを回転させると、上記ピストンの各々が上記協働するシリンダ内で往復運動するようになっている。
このような構成は、フローティングカップ油圧装置と呼ばれる。上記バレルプレート上の上記シリンダの位置が、協働するピストンの実際の位置によって決められるからである。この実施形態では、上記チャネルは、上記ポート部材から上記シリンダへ向かう方向における仮想的な延長線を有することができ、この延長線は、その部材の上記開放端とは反対側の上記通路の入口を通過している。これは、上記入口を通して上記チャネルを穿孔する機会を提供するからである。
【0021】
一実施形態では、
上記ポート部材の上記外面は、通過する開放端の上記協働するピストが下死点に到達する、上記低圧ポートと上記高圧ポートとの間の第1のシールランドと、通過する開放端の上記協働するピストンが上死点に到達する、上記低圧ポートと上記高圧ポートとの間の第2のシールランドとを有し、
上記第1および第2のシールランドの各々の長さは、上記回転方向で測られて、上記開放端の各々の長さよりも大きい。
【0022】
上記低圧ポートに隣接する上記第1のシールランドの縁と、上記第1のシールランドで上記ピストンが下死点に到達する位置との間の距離が、上記回転方向で測られて、各開放端の上記長さの半分であってもよく、および/または、上記高圧ポートに隣接する上記第2のシールランドの縁と、上記第2のシールランドで上記ピストンが上死点に達する位置との間の距離が、上記回転方向で測られて、各開放端の上記長さの半分であってもよい。これは、上記第1および第2のシールランドが上記対応する通過する開放端を閉じ始めるとき、下死点と上死点が到達されることを意味する。
【0023】
上記第1のシールランドの上記長さは、上記回転方向で測られて、上記第2のシールランドの長さよりも大きくてもよい。その理由は、上死点から去った後は、上記シリンダ内のデッドボリュームのみが対応するピストンによって膨張されなければならないのに対し、下死点から去った後は、上記デッドボリュームと上記ピストンによって変位させられるべきボリュームとの両方が対応するピストンによって圧縮されなければならないからである。
【0024】
上記油圧装置は、ポンプ、モータ、または変圧器であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下、本発明を、非常に概略的な図面を参照して、例示的にこの発明の実施の形態を示しながら、説明する。
図1】本発明による油圧装置の一実施形態を示す断面図である。
図2図1の油圧装置のポートプレートの正面図である。
図3図1の実施形態のバレルプレートの拡大斜視図である。
図4図3と同様の図であり、その一部を拡大して示す図である。
図5図4の一部を拡大して示す断面図である。
図6図1に示す実施形態の機能を説明する概略図である。
図7図6と同様の図であり、他の実施形態の機能を説明するための図である。
図8図8は、図6と同様の図であり、さらに別の実施形態の機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、ポンプまたはハイドロモータなどの油圧装置1の内部部品が示されており、これらは公知の方法でハウジング2に取り付けられている。油圧装置1は、ハウジング2に回転自在に支持されたシャフト3を備えている。ハウジング2の片側には開口が設けられ、そこからシャフト3の歯付きシャフト端4がハウジング2から突出している。油圧装置1がポンプである場合には、歯付きシャフト端4にはモータが連結され得、油圧装置1がモータである場合には、従動工具が連結され得る。
【0027】
油圧装置1は、ハウジング2内に互いに間隔をあけて取り付けられたポートプレート5の形態にあるポート部材を備えている。図2は、ポートプレート5の1つをより詳細に示している。各ポートプレート5は、円弧状の高圧ポート6と円弧状の低圧ポート7とを含んでいる。高圧ポート6と低圧ポート7の間には、第1のシールランド8aと第2のシールランド8bがある。ポートプレート5は、その回転方向においてハウジング2に対して固定位置を有するが、代替実施形態(図示せず)では、それらのポートプレート5は、ハウジング2に対して回転可能であってもよい。シャフト3は、ポートプレート5のそれぞれの中央貫通穴を通って延びている。
【0028】
シャフト3にはフランジ9が設けられている。フランジ9の両側には、それぞれ圧入によって複数のピストン10が固定されており、この場合、それぞれの側に14個のピストン10が固定されている。図1に示すピストン10は別々の部品でできているが、単一体であってもよい。各ピストン10は、別々のシリンダ11と協働して、容積可変の圧縮室12を形成する。図1に示す油圧装置1は、28個の圧縮室12を有する。各シリンダ11は、シリンダ底13と、シリンダ底13から延びるシリンダジャケット14とを備えている。
【0029】
それぞれのシリンダ11のシリンダ底13は、2つのバレルプレート16によって支持されている。それらのバレルプレート16は、それぞれのボールヒンジ17によってシャフト3の周りに嵌め込まれ、キー18によってシャフト3に結合されている。その結果、バレルプレート16は、作動条件下でシャフト3とともに回転する。図3は、バレルプレート16の1つをより詳細に示している。シリンダ底13はそれぞれのバレルプレート16上に載っているが、それらのシリンダ底13はそれぞれのバレルプレート16に対して固定位置を持っていないことが注記される。
【0030】
図1は、バレルプレート16が、第2の回転軸20に対して角度をなすそれぞれの第1の回転軸19を中心に回転することを示している。シャフト3は第2の回転軸20の周りに回転可能であり、フランジ9は第2の回転軸20に対して垂直に延びている。ピストン10は、第2の回転軸20の周りに等角度距離で配置されている。ピストン10は、第2の回転軸20と平行に延びる中心線を有する。各ポートプレート5の円弧状の低圧ポート7と円弧状の高圧ポート6は、対応する第1の回転軸19の周りに延びている。第2の回転軸20とそれぞれの第1の回転軸19との間の角度は、実際には約9度であるが、より小さくても大きくてもよい。
【0031】
シャフト3を回転させると、バレルプレート16とシリンダ11がそれぞれの第1の回転軸19の周りに回転する。各シリンダ11は、協働するピストン10の周りで並進と旋回を組み合わせた運動を行う。各ピストン10は、下死点BDCと上死点TDCの間で、それの協働するシリンダ11に対して移動する。その結果、対応する圧縮室12の容積が変化する。
【0032】
各バレルプレート16は、フランジ9から離れる方向に向けられ、協働するポートプレート5の外面22に面する外面21を有している(図1~3参照)。バレルプレート16は、シャフト3の穴に取り付けられたスプリング23によって、それぞれのポートプレート5に押し付けられている。外面21、22は、それぞれの第1の回転軸19に対して垂直に延びている。ポートプレート5の外面22がフランジ9に対して傾斜しているせいで、バレルプレート16は、シャフト3と共に回転する間、ボールヒンジ17の周りで枢動(pivot)する。
【0033】
バレルプレート16の1つを考慮すると、バレルプレート16上に載っているシリンダ11は、それぞれのシリンダ底13にある中央貫通穴を介して、バレルプレート16にある協働する通路24と連通している。通路24は、図3および図4を参照すると、バレルプレート16の外面21にそれぞれの開放端25を有している。この場合、各バレルプレート16は14個の連続した開放端25を有し、これらは14個の連続したシリンダ11と連通している。作動条件下では、開放端25は、高圧ポート6および低圧ポート7を介して、それぞれハウジング2内に設けられた高圧ラインおよび低圧ライン(図示せず)と交互に連通する。
【0034】
実際に、図1に示す実施形態では、シャフト3、バレルプレート16、ピストン10、シリンダ11、ボールヒンジ17、キー18およびスプリング23は、それぞれのポートプレート5の外面22に面する外面21を有するロータの部品と考えられ得る。
【0035】
図3図5は、連続する通路24の各対が流体変位部材26を介して相互接続されていることを示している。このことは、連続するシリンダ11の各対も流体変位部材26を介して相互接続されていることを意味する。したがって、各バレルプレート16にも14個の連続する流体変位部材26が設けられている。流体変位部材26の各々は、各対の連続する通路24の間にチャネルを含み、互いに間隔をおいて配置された第1の開口27および第2の開口28を有している。そのチャネルは、第1および第2の開口27、28の間に円筒状部分を有している。ボール29の形態をした閉鎖要素は、第1および第2の開口27、28の間を自由に移動可能である。図3図5には、説明の便宜上、1つの流体変位部材26に2つのボールが示されているが、実際には、各流体変位部材26は単一のボール29を有している。
【0036】
図4を参照すると、第1の開口27は、一対の連続する通路24のうちの右側の通路24と連通し、第2の開口28は、一対の連続する通路24のうちの左側の通路24と連通している。第1および第2の開口27,28とボール29は、作動条件下で、第2の開口28と連通する通路24、すなわち図4における左側の通路24内の圧力が、第1の開口27と連通する通路24、すなわち図4における右側の通路24内の圧力よりも高い場合には、ボール29が実質的に第1の開口27を塞ぐ一方、ボール29は、作動条件下で、第1の開口27と連通する通路24、すなわち図4における右側の通路24内の圧力が、第2の開口28と連通する通路24、すなわち図4における左側の通路24内の圧力よりも高い場合には、第2の開口28を実質的に塞ぐように構成されている。
【0037】
ボール29が第1の開口27から第2の開口28に移動するとき、第2の開口28と連通する通路24に向かって流体を変位させ、ボール29が第2の開口28から第1の開口27に移動するとき、第1の開口27と連通する通路24に向かって流体を変位させる。したがって、第1および第2の開口27、28の間の距離が大きいほど、連続する通路24の各対の間で変位する流体の体積が大きくなる。
【0038】
通路24の1つを考えると、それは、通路24の相対する側に位置する2つの連続する流体変位部材26の第1の開口27および第2の開口28と連通している。2つの連続する流体変位部材26の一方の第1の開口27は、その通路24の第1のアパーチャ31を介して通路24と流体連通しており、2つの連続する流体変位部材26の他方の第2の開口28は、その通路24の第2のアパーチャ32を介して通路24と流体連通している。第1のアパーチャ31は、考慮中の通路24の開放端25から、第2のアパーチャ32よりも大きな距離にある(図4および図5参照)。通路24における第1のアパーチャ31と第2のアパーチャ32との間の距離は、作動条件下で第1のアパーチャ31と第2のアパーチャ32との間に流動抵抗30を形成する(その効果については以下で説明する。)。別の実施形態(図示せず)では、通路24の各々は、通路24の断面積が局所的に狭められる絞り(restriction)の形態で流動抵抗を備える。
【0039】
図4は、開放端25を通してドリルを挿入し、矢印の方向に穴をあけることによって、流体変位部材26が、各2つの連続する通路24の間に細長い段付き穴の形態でチャネルを穿孔することによって製造される仕方を、矢印で示している。この製造の仕方の利点は、流体変位部材26が完全にバレルプレート16内に位置するため、異なる部品間のシールが不要であることである。
【0040】
図5は、第1の開口27が第1のアパーチャ31に近いことを示している。第1の開口27は、ボール29と協働するシートによって囲まれているので、ボール29が第1の開口27で上記シートに押し付けられたとき、第1の開口27を通る流体の流れが妨げられる。同様に、第2の開口28は、ボール29と協働するシートによって囲まれているので、ボール29が第2の開口28の上記シートに押し付けられたとき、第2の開口28を通る流体の流れが妨げられる。第2の開口28のシートは、ボール29を段付き穴の円筒状部分に導入した後、ドリル穴にねじ込まれる貫通穴を含むソケットねじ32のテーパ端によって形成される。別の構造設計も可能であり、例えば、穿孔された穴の中にプレス、クランプ、または接着剤で固定されたシートが考えられる。
【0041】
細長い段付き穴の各々は、流体変位部材26の円筒状部分が位置する回転位置において、第1の回転軸19に対して接線方向に延びる平面に対してわずかに傾斜した中心線を有する。このことは、ボール29に対する遠心力の影響が制限されることを意味する。したがって、シャフト3の回転速度は、流体変位部材26の機能に限定的な影響を及ぼす。図1図5に示すような実施形態では、細長い段付き穴は、図4の矢印で図示したのとは反対側のバレルプレート16側から、好ましくは開放端25から離れた位置、すなわち、バレルプレート16のシリンダ底13が載っている側に位置するそれぞれの通路24の入口を介して、穿孔され得ることが、注記される。
【0042】
ボール29が第1の開口27または第2の開口28のシートに接して流体の流れを実質的に妨げ、漏れを最小限に抑える限り、ボール29が流体変位部材26の円筒状部分内にきつく嵌まる必要はない。
【0043】
油圧装置1の機能は、図6に示されており、この図には、説明の便宜上、高圧ポート6と低圧ポート7とを含むポートプレート5が直線的に示されている。さらに、11個のピストン10、シリンダ11、通路24、流動抵抗30、開放端25および流体変位部材26のみが示されている。流動抵抗30および開放端25を含む通路24、シリンダ11および流体変位部材26は、直線状のポートプレート5に沿って移動するユニットの部品(複数)として表されている。ポートプレート5に対するこのユニットの移動方向は、図6において矢印Xで示されている。ピストン10の各々は、対応する開放端25が低圧ポート7と高圧ポート6との間の第1のシールランド8aおよび高圧ポート6と低圧ポート7との間の第2のシールランド8bに沿って移動する間に、下死点BDCおよび上死点TDCを通過する。移動方向Xにおける各開放端25の長さは、その方向における第1および第2のシールランド8a,8bの各々の長さよりも小さく、このことは、第1および第2のシールランド8a,8bの各々を通過する間に、開放端25が或る期間内に第1および第2のシールランド8の一方によって閉じられることを意味する。
【0044】
好ましくは、低圧ポート7に隣接する第1のシールランド8aの縁と、第1のシールランド8aでピストン10が下死点BDCに達する位置との間の距離は、移動方向Xにおける開放端25の長さの約半分である。その理由は、通過するシリンダ11の各々における圧縮は、対応するピストン10の下死点BDCで実質的に始まるからである。同様に、高圧ポート6に隣接する第2のシールランド8bの縁と、第2のシールランド8bでピストン10が上死点TDCに達する位置との間の距離は、好ましくは、移動方向Xにおける開放端25の長さの約半分である。その理由は、通過するシリンダ11の各々における膨張は、対応するピストン10の上死点TDCで実質的に始まるからである。図2は、上記半分の長さを角度αによって示している。上記半分の長さは、第1の回転軸19の周りの回転方向で測られている。
【0045】
さらに、ピストン10が下死点BDCに達する第1のシールランド8aでの位置と、高圧ポート6に隣接する第1のシールランド8aの縁との間の距離は、第2のシールランド8bでピストン10が上死点TDCに達する位置と、低圧ポート7に隣接する第2のシールランド8bの縁との間の距離よりも大きい。これらの距離は、回転方向で測られて、図2においてそれぞれ角度β1およびβ2で示されている。β1がβ2よりも大きい理由は、上死点TDCを去った後はシリンダ11内のデッドボリュームのみが膨張しなければならないのに対し、下死点BDCを過ぎた後はデッドボリュームとピストン10によって変位させられるべきストロークボリュームとの両方が圧縮されなければならないからである。
【0046】
開放端25が第1または第2のシールランド8a、8bを通り、それによって閉じられるとき、開放端25と連通するシリンダ11内の圧力は、そのような期間中、ピストン10がまだ動いているので変化する。開放端25が高圧ポート6または低圧ポート7に達するとき、シリンダ11内の圧力と高圧ポート6または低圧ポート7での圧力は、騒音発生の原因となる過度の圧力差を避けるために、好ましくは同じであるか、または互いに近いことが望ましい。このことは、連続する通路24の各対の間の流体変位部材26によって達成され、以下に説明される。図6中のピストン10での矢印は、ピストン10の移動方向を示すとともに、開放端25が高圧ポート6または低圧ポート7と連通するときの通路24を通る油圧流体の流れ方向を示している。
【0047】
図6では、ピストン(複数)10のうちの1つ、その協働するシリンダ11、通路24および開放端25が、それぞれ参照番号10’、11’、24’および25’で示されている。図6に示す状況では、ピストン10’は下死点BDCに近づき、シリンダ11’は通路24’と開放端25’を介して依然として低圧ポート7と連通している。通路24’の左側にある流体変位部材26およびそのボール29は、それぞれ参照番号26’および29’で示される一方、右側の連続する流体変位部材26およびそのボール29は、それぞれ参照番号26''および29''で示されている。流体変位部材26’と協働する通路24’の連続する通路24は参照番号24''で示され、流体変位部材26''と協働する通路24’の連続する通路24は参照番号24'''で示されている。通路24'''のさらに連続する通路24は、24''''で示されている。
【0048】
図6に示すような状態では、流体変位部材26’は、その部材の第1の開口27を閉じることによって、通路24’から通路24''への流れを妨げる一方、流体変位部材26''は、その第1の開口27を閉じることによって、通路24'''から通路24’への流れを妨げる。流体変位部材26''のボール29''は、通路24'''と連通する高圧ポート6での上昇された圧力のせいで、その位置に保持される。流体変位部材26’のボール29’は、本発明によれば、流動抵抗30の存在のせいで、その位置に保たれる。通路24’内における流動抵抗30は30’で示され、通路24''内における流動抵抗30は30''で示されている。
【0049】
低圧ポート7と連通する開放端25は、ピストン10が上死点TDCから下死点BDCまで移動するシリンダ11とも連通しているので、作動条件下で、油圧流体は、協働する各通路24を通って低圧ポート7から各シリンダ11に流れる。このことは、各流動抵抗30の下流側、すなわち対応するシリンダ11が位置する側にて、その上流側、すなわち開放端25が位置する側よりも低い圧力を生成する。その結果、図6に示すように、低圧ポート7と連通する開放端25を相互に連結する流体変位部材26の配置は、流体変位部材26のそれぞれのボール29を、そのそれぞれの第1の開口27に対して上向きに付勢する。換言すれば、開放端25’が第1のシールランド8aに到達する前に、流体変位部材26’のボール29’は常に既に予め定められた位置にある。
【0050】
通路24を局所的に狭めることなく、通路24に沿って第1および第2のアパーチャ31、32間の距離を設けても、わずかな圧力降下しか引き起こさない可能性があるが、ボール29の重量が小さいので、流体変位部材26のボール29を変位させるのに十分である可能性がある、ということが注記される。例えば、ボール29の直径は4mm、重量は0.1gである。
【0051】
再び図6を参照し、開放端25’が移動方向Xにさらに移動する場合、その開放端25’は、対応するシリンダ11’内のピストン10’が下死点BDCに達するときに、第1のシールランド8aによって完全に閉じられる。シリンダ11’内の圧力は、開放端25’が閉じられている限り、下死点BDCを過ぎた後に上昇するだろう。上昇する圧力のせいで、流体変位部材26’の第1の開口27は塞がれたままであるが、シリンダ11’内の圧力が高圧ポート6での圧力を超えると、流体変位部材26''のボール29''は、通路24’から連続する通路24'''へ向かう方向に移動し、シリンダ11’内の圧力はもはや上昇しないか、少ししか上昇しない。その結果、開放端25’が高圧ポート6と連通し始めると、シリンダ11’内の圧力は、高圧ポート6での圧力と実質的に等しくなる。流体変位部材26''のボール29''の移動距離は、高圧ポート6での圧力レベルに依存する。高圧ポート6での圧力が比較的低いと、開放端25’が第1のシールランド8aに沿って移動している間にシリンダ11が既に低圧レベルに達するため、比較的長い移動距離が必要となる。
【0052】
開放端25’が第1のシールランド8aを通過した後、高圧ポート6に沿って移動すると、ボール29''は、ピストン10’が上死点TDCを通過する第2のシールランド8bに到着する前に要求されるそのボール29''の位置に移動されるか、または自動的にそのボール29''の位置に留まる。各流動抵抗30の下流側、すなわち開放端25が位置する側では、圧力は、上流側、すなわちシリンダ11が位置する側よりも低い。これにより、ボール29'''は、図6に示すように低い位置に付勢される。それによって、そのボール29'''は、第2の開口28を塞ぐことによって、その通路24'''から連続する通路24''''への流れを妨げる。
【0053】
開放端(複数)25がそれぞれの第1および第2のシールランド8a、8bに到達する前に、それぞれの流体変位部材26のボール29の各々が予め定められた位置を有することが重要である。仮に、例えば、図6のボール29’が、第1のシールランド8aに到着する前に、第1および第2の開口27、28の間のどこかの中間位置にあるとすれば、そのボール29’は、開放端25’を閉じる際に、まず正しい上方位置に移動されるだろう。そのことは、シリンダ11’内の圧縮の開始が遅れ、その結果、対応するピストン10’が下死点BDCを通過した後、シリンダ11’内における圧縮の不定の開始状態を招く。
【0054】
開放端25が第1のシールランド8aを通過するときに本明細書で説明したのと同様の効果が、開放端25が第2のシールランド8bを通過し、その開放端25と連通するシリンダ11のピストン10が上死点TDCを通過するときにも生じる。開放端25が第2のシールランド8bによって閉じられ、ピストン10が上死点TDCから下死点BDCに向かって移動するとき、シリンダ11内の圧力が低下し、それによって、作動条件下でシリンダ11とそのシリンダ11に続く連続するシリンダ11とを相互に連結する流体変位部材26のボール29が同じ位置に留まる、すなわち第2の開口28を閉じる。一方、他の連続する流体変位部材26のボール29は、シリンダ11内の圧力が低圧ポート7の圧力よりも低くなるとすぐに、第1の開口27に向かって変位され得るだろう。ボール29は、第1のシールランド8aに到達する前に、第1の開口27、すなわち図6における上方位置に移動するか、または自動的にその上方位置に留まる。
【0055】
図7は、流体変位部材26の配置が異なるが、図6に示す実施形態と同様に機能する代替実施形態を示している。この場合、低圧ポート7と連通する開放端25は、対応する流体変位部材26のボール29を上向きに付勢する。図7は、開放端25’が第1のシールランド8aに到達するとき、流体変位部材26’のボール29’が第1の開口27を塞ぐことを示している。開放端25''は既に高圧ポート6と連通しているので、流体変位部材26''のボール29''は下方位置に付勢され、その部材の第2の開口28を塞ぐ。開放端25’が第1のシールランド8aによって閉じられるとすぐに、ピストン10’は下死点BDCから動き始め、シリンダ11内の圧力が上昇し始めるだろう。その結果、ボール29’は直ちに下向きに移動し、通路24’から通路24''への流れを妨げる。続いて、シリンダ11’内の圧力が高圧ポート6での圧力を超えると、流体変位部材26''のボール29''は、通路24’から連続する通路24'''に向かう方向、すなわち上向きに移動する。しかし、開放端25’が高圧ポート6と連通するとすぐに、流体変位部材26の配置のせいで、ボール29''は下向きに付勢される。
【0056】
第2のシールランド8bでは逆の効果が得られる。図7を参照すると、ボール29'''は、ピストン10'''が上死点TDCに達するまで下方位置に留まる一方、開放端25'''は第2のシールランド8bによって閉じられる。上死点TDCを通過した後、ボール29'''は直ちに上向きに移動する。
【0057】
流体変位部材26のボール29は、それぞれ膨張または圧縮を開始するように、上死点TDCまたは下死点BDCを通過した後、第1および第2の開口27、28の間で直ちに変位しなければならないので、図7に示されるような流体変位部材26の配置の第1および第2のシールランド8a、8bは、移動方向Xで測られて、図6に図示されるような流体変位部材26の配置のものよりも大きくなるだろう。
【0058】
図8は、油圧装置1がモータとして適用される別の代替実施形態を示している。流動抵抗(複数)30および開放端(複数)25を含む通路(複数)24、シリンダ(複数)11および流体変位部材(複数)26は、図7および図8に示されたような実施形態における移動方向Xとは反対の移動方向Yに直線状のポートプレート5に沿って移動するユニットの部品(複数)として表されている。流体変位部材26の機能は、図6および図7に示されたような実施形態と同等である。
【0059】
本発明は、図面に示され、本明細書に記載された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲およびその技術的均等物の範囲内で異なる態様で変化され得る。例えば、油圧装置は、ブロック内にシリンダを有するスリッパ型(slipper type)軸流ポンプまたはモータであってもよいし、油圧装置は変圧器であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】