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特表2024-516895マルチパーティブロックチェーンアドレス方式
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】マルチパーティブロックチェーンアドレス方式
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/32 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
H04L9/32 200Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569707
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022059595
(87)【国際公開番号】W WO2022238066
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】2106641.0
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】318001991
【氏名又は名称】エヌチェーン ライセンシング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・パウノイウ
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・スティーヴン・ライト
(57)【要約】
ブロックチェーントランザクションを生成する方法であって、各セカンドパーティは公開鍵に関連付けられ、各公開鍵はインデックスに関連付けられ、方法は、共有ハッシュ値を備えるロックスクリプトを備えるトランザクションを生成することを備え、共有ハッシュ値は、各々が公開鍵のうちの1つのハッシュであるハッシュ値のシーケンスを備え、それぞれのインデックスに対応する位置に配置され、ロックスクリプトは、ロック解除スクリプトがターゲットインデックス、ターゲット公開鍵、およびターゲット署名を備えることを必要とし、ターゲットインデックスに対応する位置において共有ハッシュ値からハッシュ値を抽出し、ターゲット公開鍵のハッシュを生成するとともに、生成されたハッシュ値が抽出されたハッシュ値に整合することを必要とし、ターゲット署名が有効な署名であることを検証するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーントランザクションを生成するコンピュータにより実施される方法であって、前記ブロックチェーントランザクションが、ある金額のデジタル資産をファーストパーティから複数のセカンドパーティのうちの1つに移転するためのものであり、
各セカンドパーティが、それぞれの公開鍵に関連付けられ、各それぞれの公開鍵が、それぞれのインデックスに関連付けられ、
前記方法が、コーディネーティングパーティによって実行され、かつ
第1のブロックチェーントランザクションを生成するステップであって、
前記第1のブロックチェーントランザクションが、共有ハッシュ値を備える第1のロックスクリプトを備え、前記共有ハッシュ値が、ハッシュ値のシーケンスを備え、各ハッシュ値が、前記それぞれの公開鍵のうちの1つのハッシュであり、かつ前記それぞれの公開鍵に関連付けられた前記それぞれのインデックスに対応する前記シーケンスの中の位置に配置され、
前記第1のロックスクリプトが、第2のブロックチェーントランザクションの第1のロック解除スクリプトと一緒に実行されると、a)前記第1のロック解除スクリプトがターゲットインデックス、ターゲット公開鍵、およびターゲット署名を備えることを必要とし、ならびにb) i)前記ターゲットインデックスに対応する前記シーケンスの中の位置において前記共有ハッシュ値から前記ハッシュ値を抽出し、ii)前記ターゲット公開鍵のハッシュを生成するとともに、前記生成されたハッシュ値が前記抽出されたハッシュ値に整合することを必要とし、ならびにiii)前記ターゲット公開鍵にとって前記ターゲット署名が有効な署名であることを検証するように構成される、ステップと、
ブロックチェーンネットワークの1つまたは複数のノードと、前記ファーストパーティ、前記複数のセカンドパーティのうちの1つまたは複数と、1つまたは複数のサードパーティとのうちの少なくとも1つに利用可能な前記第1のブロックチェーントランザクションを作成するステップと
を備える、コンピュータにより実施される方法。
【請求項2】
前記第1のロックスクリプトが、ii)およびiii)を実行するように構成されたペイツーパブリックキーハッシュスクリプトを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハッシュ値の各々を取得するステップと、
前記共有ハッシュ値を生成するステップと
を備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記取得するステップが、
前記セカンドパーティのうちの1つまたは複数から前記それぞれの公開鍵のうちの1つまたは複数を受信するステップと、
前記1つまたは複数のそれぞれの公開鍵のそれぞれのハッシュ値を生成するステップと
を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数のそれぞれの公開鍵の各々が、その公開鍵に関連付けられた前記セカンドパーティから受信される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記取得するステップが、前記セカンドパーティのうちの1つまたは複数から前記ハッシュ値のうちの1つまたは複数を受信するステップを備える、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記セカンドパーティのうちの1つまたは複数から前記共有ハッシュ値を取得するステップを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記共有ハッシュ値が、ハッシュ値の前記シーケンスの連結である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーディネーティングパーティが前記複数のセカンドパーティのうちの1つである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーディネーティングパーティが前記ファーストパーティである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のロックスクリプトが、少なくとも、
第1のパラメータでの前記ターゲット公開鍵の乗算に基づいて第1の中間結果を生成するステップと、
前記第1の中間結果への第2のパラメータの加算に基づいて第2の中間結果を生成するステップと、
第3のパラメータでの前記第2の中間結果のモジュロに基づいて第3の中間結果を生成するステップと、
第4のパラメータでの前記第3の中間結果のモジュロに基づいて、予想されるハッシュを生成するステップと
を実行することによって前記ターゲット公開鍵の前記ハッシュを生成するように構成された、HFスクリプトを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1のロックスクリプトが、少なくとも、
第1のパラメータでの前記ターゲット公開鍵の乗算に基づいて第1の中間結果を生成するステップと、
前記第1の中間結果への第2のパラメータの加算に基づいて第2の中間結果を生成するステップと、
第4のパラメータでの前記第2の中間結果のモジュロに基づいて、予想されるハッシュを生成するステップと
を実行することによって前記ターゲット公開鍵の前記ハッシュを生成するように構成された、HFスクリプトを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のロックスクリプトが、少なくとも、
第4のパラメータでの前記ターゲット公開鍵のモジュロに基づいて、予想されるハッシュを生成するステップ
を実行することによって前記ターゲット公開鍵の前記ハッシュを生成するように構成された、HFスクリプトを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のパラメータが任意の非0数であり、
前記第2のパラメータが任意の数であり、
前記第3のパラメータが正数であり、
前記第4のパラメータが2^Lであり、Lがハッシュ結果の長さを規定するように選ばれる、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
pがsecp256k1楕円曲線を規定する素数であり、および/または
Lが32、64、128、160、256、もしくは512のうちの1つである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ブロックチェーントランザクションを生成するコンピュータにより実施される方法であって、前記ブロックチェーントランザクションが、複数のセカンドパーティのうちの1つにロックされた、ある金額のデジタル資産をロック解除するためのものであり、各セカンドパーティが、それぞれの公開鍵に関連付けられ、各それぞれの公開鍵が、それぞれのインデックスに関連付けられ、
第1のブロックチェーントランザクションが、共有ハッシュ値を備える第1のロックスクリプトを備え、前記共有ハッシュ値が、ハッシュ値のシーケンスを備え、各ハッシュ値が、前記それぞれの公開鍵のうちの1つのハッシュであり、かつ前記それぞれの公開鍵に関連付けられた前記それぞれのインデックスに対応する前記シーケンスの中の位置に配置され、
前記第1のロックスクリプトが、第2のブロックチェーントランザクションの第1のロック解除スクリプトと一緒に実行されると、a)前記第1のロック解除スクリプトがターゲットインデックス、ターゲット公開鍵、およびターゲット署名を備えることを必要とし、ならびにb) i)前記ターゲットインデックスに対応する前記シーケンスの中の位置において前記共有ハッシュ値から前記ハッシュ値を抽出し、ii)前記ターゲット公開鍵のハッシュを生成するとともに、前記生成されたハッシュ値が前記抽出されたハッシュ値に整合することを必要とし、ならびにiii)前記ターゲット公開鍵にとって前記ターゲット署名が有効な署名であることを検証するように構成され、
前記方法が、前記セカンドパーティのうちのターゲットセカンドパーティによって実行され、かつ
前記第2のブロックチェーントランザクションを生成するステップであって、
前記第2のブロックチェーントランザクションが、前記第1のブロックチェーントランザクションの前記第1のロックスクリプトおよび前記第1のロック解除スクリプトを参照する入力を備え、前記第1のロック解除スクリプトが、前記ターゲットセカンドパーティに関連付けられた前記それぞれの公開鍵、前記それぞれの公開鍵に関連付けられたそれぞれのインデックス、および前記ターゲットセカンドパーティに関連付けられた前記それぞれの公開鍵にとっての有効な署名を備える、ステップと、
ブロックチェーンネットワークの1つまたは複数のノードと、ファーストパーティと、前記複数のセカンドパーティのうちの1つまたは複数と、1つまたは複数のサードパーティとのうちの少なくとも1つに利用可能な前記第2のブロックチェーントランザクションを作成するステップと
を備える、コンピュータにより実施される方法。
【請求項17】
前記第1のブロックチェーントランザクションを生成するために前記ターゲット公開鍵および/またはそのハッシュ値をコーディネーティングパーティへ送るステップを備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
コンピュータ機器であって、
1つまたは複数のメモリユニットを備えるメモリと、
1つまたは複数の処理ユニットを備える処理装置と
を備え、前記メモリが、前記処理装置上で動作するように構成されたコードを記憶し、前記コードが、前記処理装置において実行されると請求項1から17のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される、コンピュータ機器。
【請求項19】
コンピュータ可読ストレージ上に記憶され、1つまたは複数のプロセッサにおいて実行されると請求項1から17のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のパーティのうちの1つによってロック解除され得るブロックチェーントランザクションの出力を生成する方法、およびそのような出力をロック解除するためのブロックチェーントランザクションを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックチェーンとは、ある形態の分散型データ構造を指し、ブロックチェーンの複製コピーが、分散ピアツーピア(P2P)ネットワーク(以下で「ブロックチェーンネットワーク」と呼ばれる)の中の複数のノードの各々において維持され広く公表される。ブロックチェーンはデータのブロックのチェーンを備え、各ブロックは1つまたは複数のトランザクションを備える。いわゆる「コインベーストランザクション」以外の各トランザクションは、1つまたは複数のコインベーストランザクションに戻る1つまたは複数のブロックに広がることがある、シーケンスの中の先行するトランザクションを戻って指し示す。コインベーストランザクションは以下でさらに説明される。ブロックチェーンネットワークにサブミットされるトランザクションは、新たなブロックの中に含められる。新たなブロックは、しばしば、「マイニング」と呼ばれる、プロセスによって作成され、そうしたプロセスは、複数のノードの各々が競合して「プルーフオブワーク」を実行すること、すなわち、ブロックチェーンの新たなブロックの中に含められるのを待っている、順序付けおよび有効化された保留トランザクションの規定されたセットの表記に基づいて、暗号パズルを解くことを伴う。いくつかのノードにおいてブロックチェーンがプルーニングされてよいこと、およびブロックの発行が単なるブロックヘッダの発行を通じて達成され得ることに留意されたい。
【0003】
ブロックチェーンにおけるトランザクションは、以下の目的、すなわち、デジタル資産(すなわち、いくつかのデジタルトークン)を運ぶこと、仮想化された台帳もしくはレジストリの中のエントリのセットを順序付けること、タイムスタンプエントリを受信および処理すること、ならびに/またはインデックスポインタを時間順序付けすることのうちの、1つまたは複数のために使用されてよい。ブロックチェーンはまた、ブロックチェーンの上部に追加の機能性を階層化するために活用され得る。たとえば、ブロックチェーンプロトコルは、追加のユーザデータ、またはトランザクションの中のデータへのインデックスの記憶を可能にし得る。単一のトランザクション内に記憶され得る最大データ容量に対して、あらかじめ指定された限定がなく、したがって、ますます複雑なデータが組み込まれ得る。たとえば、このことは、ブロックチェーンの中の電子文書、またはオーディオもしくはビデオデータを記憶するために使用されてよい。
【0004】
ブロックチェーンネットワークのノード(しばしば、「マイナー」と呼ばれる)は、後でより詳細に説明される分散トランザクション登録および検証プロセスを実行する。要約すれば、このプロセス中、ノードはトランザクションを有効化し、ノードがそれに対して有効なプルーフオブワーク解を識別することを試みるブロックテンプレートの中に、トランザクションを挿入する。有効な解が見つけられると、新たなブロックがネットワークの他のノードに伝搬され、したがって、各ノードがブロックチェーン上に新たなブロックを記録することを可能にする。トランザクションをブロックチェーンの中に記録させるために、ユーザ(たとえば、ブロックチェーンクライアントアプリケーション)は、伝搬されるべきネットワークのノードのうちの1つへトランザクションを送る。トランザクションを受信するノードは、有効化されたトランザクションを新たなブロックの中に組み込むプルーフオブワーク解を見つけるために競争してよい。各ノードは、トランザクションが有効となるための1つまたは複数の条件を含む、同じノードプロトコルを執行するように構成される。無効なトランザクションは、伝搬されることもブロックの中に組み込まれることもない。トランザクションが有効化され、それによって、ブロックチェーン上に受け入れられることを想定すると、その場合、(任意のユーザデータを含む)トランザクションは、不変の公的な記録としてブロックチェーンネットワークの中のノードの各々において、そのように登録およびインデックス付けされたままである。
【0005】
プルーフオブワークパズルを首尾よく解いて最新のブロックを作成したノードは、通常、「コインベーストランザクション」と呼ばれる新規トランザクションを用いて報酬が与えられ、新規トランザクションは、ある金額のデジタル資産、すなわち、いくつかのトークンを分配する。無効なトランザクションの検出および拒絶は、ネットワークのエージェントとして働く競合するノードのアクションによって執行され、不正行為を報告および遮断することが奨励される。情報の広範な発行は、ユーザがノードの実行を継続的に監査することを可能にする。単なるブロックヘッダの発行が、ブロックチェーンの進行中の完全性を参加者が保証することを可能にする。
【0006】
「出力ベースの」モデル(UTXOベースのモデルと呼ばれることがある)では、所与のトランザクションのデータ構造は、1つまたは複数の入力および1つまたは複数の出力を備える。任意の消費可能な出力は、トランザクションの前進しているシーケンスから導出可能な、ある金額のデジタル資産を指定する要素を備える。消費可能な出力は、UTXO(「未消費トランザクション出力」)と呼ばれることがある。出力は、出力の将来の償還に対する条件を指定するロックスクリプトをさらに備えてよい。ロックスクリプトは、デジタルトークンまたはデジタル資産を有効化および移転するために必要な条件を規定する述語である。(コインベーストランザクション以外の)トランザクションの各入力は、先行するトランザクションの中のそのような出力へのポインタ(すなわち、参照)を備え、指し示された出力のロックスクリプトをロック解除するためのロック解除スクリプトをさらに備えてよい。そのため、1対のトランザクションを考慮に入れると、それらを第1のトランザクションおよび第2のトランザクション(または「ターゲット」トランザクション)と呼ぶ。第1のトランザクションは、ある金額のデジタル資産を指定し、および出力をロック解除することの1つまたは複数の条件を規定するロックスクリプトを備える、少なくとも1つの出力を備える。第2の、ターゲットトランザクションは、第1のトランザクションの出力へのポインタ、および第1のトランザクションの出力をロック解除するためのロック解除スクリプトを備える、少なくとも1つの入力を備える。
【0007】
そのようなモデルでは、第2の、ターゲットトランザクションが、ブロックチェーンの中で伝搬および記録されるべきブロックチェーンネットワークへ送られるとき、各ノードにおいて適用される、有効性に対する基準のうちの1つは、第1のトランザクションのロックスクリプトの中で規定された1つまたは複数の条件のすべてをロック解除スクリプトが満たすことである。別の基準は、第1のトランザクションの出力が別のもっと前の有効なトランザクションによってすでに償還されていないことである。これらの条件のうちのいずれかに従って無効なターゲットトランザクションを見つける任意のノードは、それを(有効だが、場合によっては無効なトランザクションを登録するためのトランザクションとして)伝搬させることも、ブロックチェーンの中に記録されるべき新たなブロックの中にそれを含めることもしない。
【0008】
代替のタイプのトランザクションモデルは、勘定ベースのモデルである。この場合、各トランザクションは、過去のトランザクションのシーケンスの中の先行するトランザクションのUTXOを戻って参照することによるのではなく、むしろ完全な勘定残高への参照によって、移転されるべき金額を規定する。すべての勘定の現在の状態は、別個のノードによってブロックチェーンに記憶され、絶えず更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2021014233
【特許文献2】WO2020240295
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
UTXOを消費することは、一般に、通常は知識証明と呼ばれる、情報の必要な断片の知識をパーティが証明することを可能にする暗号方法に依拠する。たとえば、UTXOは、ハッシュされたときにハッシュパズルの一部を形成する特定のハッシュをもたらすデータを、消費するトランザクションの入力が含むことを必要とする、ハッシュパズルによってロックされてよい。その上、UTXOを消費するために複数の知識証明のうちの1つが使用されることを可能にする方式が存在する。そのような方式の例が国際特許出願WO2021014233およびWO2020240295に記載されている。より詳細については下のセクション8を参照されたい。しかしながら、両方の方式は欠点がある。WO2021014233およびWO2020240295において提示される方式は、それぞれ、マークル証明(Merkle proof)、および消費するトランザクションのロック解除スクリプトの中に追加の署名が提示されることを必要とする。(たとえば、トランザクションを処理および/または有効化するときの)計算要件および記憶要件の両方の観点から、マークル証明および署名のチェックは費用がかかる。
【0011】
したがって、既存の方式の同じ計算問題および記憶問題を受けない、複数のパーティにおける1つがUTXOを消費することを可能にする改善された方式を提供することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書で開示する一態様によれば、ブロックチェーントランザクションを生成するコンピュータ実装方法が提供され、トランザクションは、ある金額のデジタル資産をファーストパーティから複数のセカンドパーティのうちの1つに移転するためのものであり、各セカンドパーティは、それぞれの公開鍵に関連付けられ、各それぞれの公開鍵は、それぞれのインデックスに関連付けられ、方法は、コーディネーティングパーティによって実行され、第1のブロックチェーントランザクションを生成することであって、第1のブロックチェーントランザクションが、共有ハッシュ値を備える第1のロックスクリプトを備え、共有ハッシュ値が、ハッシュ値のシーケンスを備え、各ハッシュ値が、それぞれの公開鍵のうちの1つのハッシュであり、それぞれの公開鍵に関連付けられたそれぞれのインデックスに対応する、シーケンスの中の位置に配置され、第1のロックスクリプトが、第2のブロックチェーントランザクションの第1のロック解除スクリプトと一緒に実行されたとき、a)第1のロック解除スクリプトがターゲットインデックス、ターゲット公開鍵、およびターゲット署名を備えることを必要とし、ならびにb) i)ターゲットインデックスに対応する、シーケンスの中の位置において共有ハッシュ値からハッシュ値を抽出し、ii)ターゲット公開鍵のハッシュを生成するとともに、生成されたハッシュ値が抽出されたハッシュ値に整合することを必要とし、ならびにiii)ターゲット公開鍵にとってターゲット署名が有効な署名であることを検証するように構成されることと、ブロックチェーンネットワークの1つまたは複数のノード、ファーストパーティ、複数のセカンドパーティのうちの1つまたは複数、および1つまたは複数のサードパーティのうちの、少なくとも1つに利用可能な第1のブロックチェーントランザクションを作成することとを備える。
【0013】
本明細書で開示する一態様によれば、ブロックチェーントランザクションを生成するコンピュータ実装方法が提供され、トランザクションは、複数のセカンドパーティのうちの1つにロックされたある金額のデジタル資産をロック解除するためのものであり、各セカンドパーティは、それぞれの公開鍵に関連付けられ、各それぞれの公開鍵は、それぞれのインデックスに関連付けられ、第1のブロックチェーントランザクションは、共有ハッシュ値を備える第1のロックスクリプトを備え、共有ハッシュ値は、ハッシュ値のシーケンスを備え、各ハッシュ値は、それぞれの公開鍵のうちの1つのハッシュであり、それぞれの公開鍵に関連付けられたそれぞれのインデックスに対応する、シーケンスの中の位置に配置され、第1のロックスクリプトは、第2のブロックチェーントランザクションの第1のロック解除スクリプトと一緒に実行されたとき、a)第1のロック解除スクリプトがターゲットインデックス、ターゲット公開鍵、およびターゲット署名を備えることを必要とし、ならびにb) i)ターゲットインデックスに対応する、シーケンスの中の位置において共有ハッシュ値からハッシュ値を抽出し、ii)ターゲット公開鍵のハッシュを生成するとともに、生成されたハッシュ値が抽出されたハッシュ値に整合することを必要とし、ならびにiii)ターゲット公開鍵にとってターゲット署名が有効な署名であることを検証するように構成され、方法は、セカンドパーティのうちのターゲットセカンドパーティによって実行され、第2のブロックチェーントランザクションを生成することであって、第2のブロックチェーントランザクションが、第1のブロックチェーントランザクションの第1のロックスクリプトおよび第1のロック解除スクリプトを参照する入力を備え、第1のロック解除スクリプトが、ターゲットセカンドパーティに関連付けられたそれぞれの公開鍵、それぞれの公開鍵に関連付けられたそれぞれのインデックス、およびターゲットセカンドパーティに関連付けられたそれぞれの公開鍵にとっての有効な署名を備えることと、ブロックチェーンネットワークの1つまたは複数のノード、ファーストパーティ、複数のセカンドパーティのうちの1つまたは複数、および1つまたは複数のサードパーティのうちの、少なくとも1つに利用可能な第2のブロックチェーントランザクションを作成することとを備える。
【0014】
所与のパーティが、それらの公開鍵に対応する秘密鍵へのアクセスを有するという意味で、各セカンドパーティ(たとえば、ユーザ)は公開鍵に関連付けられる。したがって、各パーティは、そのパーティの公開鍵にリンクされ得る、すなわち、それを用いて検証され得る、署名を生成することができる。各パーティはまた、それぞれのインデックスに関連付けられる。このことは、各公開鍵がそれぞれのインデックスに関連付けられることと均等である。ロック解除されるために、第1のロックスクリプトは、セカンドパーティが、それらの公開鍵に関連付けられたインデックス、それらの公開鍵、およびその公開鍵を使用して検証され得る有効な署名を、消費するトランザクション(第2のトランザクション)のロック解除スクリプトの中で提供することを必要とする。その項目は、ロック解除スクリプトの中に必ずしもその順序で配置される必要があるとは限らない。
【0015】
第1のロックスクリプトは、セカンドパーティの公開鍵の各々のハッシュに基づいて生成される共有ハッシュ値を含む。これがハッシュ値に対する便利なラベルにすぎず、各セカンドパーティが共有ハッシュ値を受信するかまたは共有ハッシュ値へのアクセスを有するという意味で、ハッシュ値が必ずしも共有される必要があるとは限らないことに留意されたい。共有ハッシュ値は、複数のハッシュ値(すなわち、公開鍵ハッシュ)に基づくのでマルチハッシュ値と呼ばれることもある。共有ハッシュ値は、公開鍵ハッシュのシーケンスを備え、ここで、シーケンスの中の公開鍵ハッシュの順序は、それぞれの公開鍵ハッシュを与えるためにハッシュされるそれぞれの公開鍵に関連付けられたそれぞれのインデックスに基づく。たとえば、公開鍵ハッシュは、それぞれのインデックスに基づく順序で連結されてよい。
【0016】
実行されると、第1のロックスクリプトは、消費する(第2の)トランザクションのロック解除スクリプトの中で提供されるインデックスに基づいて、共有ハッシュ値から公開鍵ハッシュを抽出するように構成される。すなわち、ロック解除スクリプトの中でセカンドパーティによって提供されるインデックスは、そのインデックスに対応する位置において公開鍵ハッシュのシーケンスの中に配置されている公開鍵ハッシュを識別および取得するために使用される。実行されたロックスクリプトは、次いで、ロック解除スクリプトの中でセカンドパーティによって提供された公開鍵がハッシュして、抽出されたハッシュ値になることを検証する。加えて、実行されたロックスクリプトは、ロック解除スクリプトの中でセカンドパーティによって提供された署名が、提供された公開鍵にとっての有効な署名であることを検証する。これらのステップのうちの少なくともいくつかの順序が逆転されてよいことに留意されたい。
【0017】
本発明の実施形態は、コーディネータがマルチパーティアドレスを生成することを可能にし、ここで、パーティのグループのうちのいずれか1つによってロック解除され得るという意味で、アドレスは「マルチパーティ」である。たとえば、マルチパーティアドレスは、家族、企業、または団体などのメンバー間の共有された銀行口座として働いてよい。家族の例を取り上げると、支払いはマルチパーティアドレス(すなわち、銀行口座)へ送られることが可能であり、家族の任意のメンバー(すなわち、口座保持者)はそれらの資金を消費してよい。
【0018】
WO2021014233およびWO2020240295に記載されているマルチパーティ方式とは異なり、第1のロックスクリプトは、計算量的に費用がかかるマークル証明を実行することを伴うことも、追加の署名チェックを必要とすることもない。
【0019】
本開示の実施形態の理解を支援するために、またそのような実施形態がどのように効果に注ぎ込まれ得るのかを示すために、単に例として添付図面への参照が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ブロックチェーンを実施するためのシステムの概略ブロック図である。
図2】ブロックチェーンの中に記録されてよいトランザクションのいくつかの例を概略的に示す図である。
図3A】クライアントアプリケーションの概略ブロック図である。
図3B図3Aのクライアントアプリケーションによって提示されてよい例示のユーザインターフェースの概略モックアップである。
図4】トランザクションを処理するためのいくつかのノードソフトウェアの概略ブロック図である。
図5】マルチパーティアドレスへのトランザクション出力をロックするための例示のシステムを概略的に示す図である。
図6】共有ハッシュ値の生成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1. 例示のシステム概要
図1は、ブロックチェーン150を実施するための例示のシステム100を示す。システム100は、パケット交換ネットワーク101、通常、インターネットなどのワイドエリアインターネットワークを備えてよい。パケット交換ネットワーク101は、パケット交換ネットワーク101内でピアツーピア(P2P)ネットワーク106を形成するように構成されてよい複数のブロックチェーンノード104を備える。図示しないが、ブロックチェーンノード104は、ほぼ完全グラフとして構成されてよい。したがって、各ブロックチェーンノード104は、他のブロックチェーンノード104に強度に接続される。
【0022】
各ブロックチェーンノード104は、ノード104のうちの様々なノード104が異なるピアに属する、ピアのコンピュータ機器を備える。各ブロックチェーンノード104は、1つまたは複数のプロセッサ、たとえば、1つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)、アクセラレータプロセッサ、特定用途向けプロセッサ、および/またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ならびに特定用途向け集積回路(ASIC)などの他の機器を備える処理装置を備える。各ノードはまた、メモリ、すなわち、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読媒体の形態のコンピュータ可読ストレージを備える。メモリは、1つまたは複数のメモリ媒体、たとえば、ハードディスクなどの磁気媒体、ソリッドステートドライブ(SSD)、フラッシュメモリ、もしくはEEPROMなどの電子媒体、および/または光ディスクドライブなどの光媒体を採用する、1つまたは複数のメモリユニットを備えてよい。
【0023】
ブロックチェーン150は、データ151のブロックのチェーンを備え、ブロックチェーン150のそれぞれのコピーは、分散ネットワークまたはブロックチェーンネットワーク106の中の複数のブロックチェーンノード104の各々において維持される。上述のように、ブロックチェーン150のコピーを維持することとは、必ずしも全体的にブロックチェーン150を記憶することを意味するとは限らない。代わりに、ブロックチェーン150は、各ブロックチェーンノード150が各ブロック151のブロックヘッダ(以下で説明する)を記憶する限り、データからプルーニングされてよい。チェーンの中の各ブロック151は、1つまたは複数のトランザクション152を備え、トランザクションとは、このコンテキストでは、ある種類のデータ構造を指す。そのデータ構造の性質は、トランザクションモデルまたはトランザクション方式の一部として使用されるトランザクションプロトコルのタイプに依存する。所与のブロックチェーンは、全体にわたって、ある特定のトランザクションプロトコルを使用する。1つの一般のタイプのトランザクションプロトコルでは、各トランザクション152のデータ構造は、少なくとも1つの入力および少なくとも1つの出力を備える。各出力は、特性としてデジタル資産の数量を表す金額を指定し、特性の一例は、出力が暗号学的にロックされるユーザ103である(ロック解除され、それによって、償還すなわち消費されるために、そのユーザの署名または他の解を必要とする)。各入力は、先行するトランザクション152の出力を戻って指し示し、それによって、トランザクションをリンクする。
【0024】
各ブロック151はまた、ブロック151への連続した順序を規定するように、チェーンの中の以前に作成されたブロック151を戻って指し示すブロックポインタ155を備える。(コインベーストランザクション以外の)各トランザクション152は、トランザクションのシーケンスへの順序を規定するように以前のトランザクションに戻るポインタを備える(トランザクション152のシーケンスが分岐することを許容されることに注意されたい)。ブロック151のチェーンは、チェーンの中の最初のブロックであったジェネシスブロック(Gb)153まで戻って完全に進む。チェーン150の中で初期の1つまたは複数の元のトランザクション152は、先行するトランザクションではなくジェネシスブロック153を指し示した。
【0025】
ブロックチェーンノード104の各々は、トランザクション152を他のブロックチェーンノード104に転送し、それによって、ネットワーク106全体にわたってトランザクション152を伝搬させるように構成される。各ブロックチェーンノード104は、ブロック151を作成するように、および同じブロックチェーン150のそれぞれのコピーをそれらのそれぞれのメモリの中に記憶するように構成される。各ブロックチェーンノード104はまた、ブロック151の中に組み込まれるのを待っているトランザクション152の順序付きセット(すなわち、「プール」)154を維持する。順序付きプール154は、しばしば、「メモリプール(mempool)」と呼ばれる。本明細書におけるこの用語は、任意の特定のブロックチェーン、プロトコル、またはモデルに限定することを意図しない。それは、有効としてノード104が受け入れており、同じ出力を消費することを試みている任意の他のトランザクションをノード104が受け入れないように義務付けられるべき、トランザクションの順序付きセットを指す。
【0026】
所与の現在のトランザクション152jにおいて、その(または、各)入力は、トランザクションのシーケンスの中の先行するトランザクション152iの出力を参照するポインタを備え、現在のトランザクション152jの中でこの出力が償還すなわち「消費」されることになることを指定する。概して、先行するトランザクションは、順序付きセット154または任意のブロック151の中の任意のトランザクションであり得る。先行するトランザクション152iは、現在のトランザクション152jが作成され、さらにはネットワーク106へ送られる時間において、必ずしも存在することを必要とするとは限らないが、現在のトランザクションが有効となるために、先行するトランザクション152iが存在し有効化される必要がある。したがって、本明細書における「先行する」とは、必ずしも時間的なシーケンスの中で作成するかまたは送ることの時間とは限らない、ポインタによってリンクされた、論理シーケンスの中の先行要素(predecessor)を指し、したがって、そのことは、順序が狂ってトランザクション152i、152jが作成されるかまたは送られることを必ずしも除外するとは限らない(オーファン(orphan)トランザクションにおける以下の説明を参照)。先行するトランザクション152iは、先行者(antecedent)トランザクションまたは先行要素トランザクションと等しく呼ばれることがある。
【0027】
現在のトランザクション152jの入力はまた、入力許可、たとえば、先行するトランザクション152iの出力がロックされるユーザ103aの署名を備える。今度は、現在のトランザクション152jの出力が、新たなユーザまたはエンティティ103bに暗号学的にロックされ得る。したがって、現在のトランザクション152jは、先行するトランザクション152iの入力の中で規定された金額を、現在のトランザクション152jの出力の中で規定されるような新たなユーザまたはエンティティ103bに移転することができる。場合によっては、トランザクション152は、複数のユーザまたはエンティティの間で入力金額を分割するために複数の出力を有してよい(そのうちの1つは釣銭を出すための元のユーザまたはエンティティ103aであり得る)。場合によっては、トランザクションはまた、1つまたは複数の先行するトランザクションの複数の出力からの金額を一緒に集め、および現在のトランザクションの1つまたは複数の出力を再配布するために、複数の入力を有することができる。
【0028】
ビットコインなどの出力ベースのトランザクションプロトコルによれば、個々のユーザまたは団体などのパーティ103が、(手作業で、またはパーティによって採用される自動化プロセスによってのいずれかで)新規トランザクション152jを制定することを望むとき、制定するパーティは、それのコンピュータ端末102から受信者へ新規トランザクションを送る。制定するパーティまたは受信者は、最終的にこのトランザクションをネットワーク106の(今日では一般にサーバまたはデータセンターであるが、原理上は他のユーザ端末であり得る)ブロックチェーンノード104のうちの1つまたは複数へ送る。新規トランザクション152jを制定するパーティ103が、ブロックチェーンノード104のうちの1つまたは複数へトランザクションを直接送る場合があり、またいくつかの例では、受信者へ送らない場合があることも、除外されない。トランザクションを受信するブロックチェーンノード104は、ブロックチェーンノード104の各々において適用されるブロックチェーンノードプロトコルに従って、トランザクションが有効であるかどうかをチェックする。ブロックチェーンノードプロトコルは、通常、新規トランザクション152jにおける暗号署名が、予想される署名に整合することを、ブロックチェーンノード104がチェックすることを必要とし、そのことは、トランザクション152の順序付きシーケンスの中の以前のトランザクション152iに依存する。そのような出力ベースのトランザクションプロトコルでは、このことは、新規トランザクション152jの入力の中に含まれる、パーティ103の暗号署名または他の許可が、新規トランザクションが割り当てる、先行するトランザクション152iの出力の中で規定される条件に整合することを、チェックすることを備えてよく、この条件は、通常、新規トランザクション152jの入力の中の暗号署名または他の許可が、新規トランザクションの入力がリンクされる以前のトランザクション152iの出力をロック解除することを、少なくともチェックすることを備える。その条件は、少なくとも部分的には、先行するトランザクション152iの出力の中に含まれるスクリプトによって規定されてよい。代替として、それは、ブロックチェーンノードプロトコル単体によって単に固定され得るか、またはこれらの組合せに起因することができる。どちらにしても、新規トランザクション152jが有効である場合、ブロックチェーンノード104は、それをブロックチェーンネットワーク106の中の1つまたは複数の他のブロックチェーンノード104に転送する。これらの他のブロックチェーンノード104は、同じブロックチェーンノードプロトコルに従って同じテストを適用し、そのため、新規トランザクション152jを1つまたは複数のさらなるノード104に転送する等々である。このようにして、新規トランザクションは、ブロックチェーンノード104のネットワーク全体にわたって伝搬される。
【0029】
出力ベースのモデルでは、所与の出力(たとえば、UTXO)が割り当てられる(たとえば、消費される)かどうかの規定は、それがまだ、前方に位置する別のトランザクション152jの入力によって、ブロックチェーンノードプロトコルに従って有効に償還されているかどうかである。トランザクションが有効となるための別の条件は、それが償還することを試みる先行するトランザクション152iの出力が、すでに別のトランザクションによって償還されていないことである。再び、有効でない場合、トランザクション152jは、(無効としてフラグ付けされ警告のために伝搬されない限り)伝搬されないか、またはブロックチェーン150の中に記録されない。このことは、同じトランザクションの出力を取引人が2回以上割り当てようとする二重消費に対して保護する。勘定ベースのモデルは、一方、勘定残高を維持することによって二重消費に対して保護する。再び、トランザクションの規定された順序があるので、任意の1つの時間において勘定残高は規定された単一の状態を有する。
【0030】
トランザクションを有効化することに加えて、ブロックチェーンノード104はまた、通常はマイニングと呼ばれるプロセスの中でトランザクションのブロックを作成すべき最初となるために競争し、マイニングは「プルーフオブワーク」によってサポートされる。ブロックチェーンノード104において、ブロックチェーン150上に記録されるブロック151の中にまだ出現していない有効なトランザクションの順序付きプール154に、新規トランザクションが加えられる。ブロックチェーンノードは、次いで、暗号パズルを解くことを試みることによって、トランザクション154の順序付きセットからトランザクション152の新たな有効なブロック151を組み立てるために競争する。通常、このことは、ナンスが保留トランザクション154の順序付きプールの表記に連結およびハッシュされると、次いで、ハッシュの出力が所定の条件を満たすような、「ナンス」値を求めて探索することを備える。たとえば、所定の条件とは、ハッシュの出力がいくつかの既定の数の先頭に立つ0を有することであってよい。これがある特定のタイプのプルーフオブワークパズルにすぎず、他のタイプが除外されないことに留意されたい。ハッシュ関数の特性とは、それの入力に関して予測できない出力をハッシュ関数が有することである。したがって、この探索は、ブルートフォースのみによって実行されることが可能であり、したがって、パズルを解こうとしている各ブロックチェーンノード104において、かなりの量の処理リソースを費やす。
【0031】
パズルを解くべき第1のブロックチェーンノード104は、このことをネットワーク106に告知し、証明として解を提供し、その証明は、次いで、ネットワークの中の他のブロックチェーンノード104によって容易にチェックされ得る(ハッシュに解が与えられると、その解がハッシュの出力に条件を満足させることをチェックすることは簡単である)。第1のブロックチェーンノード104は、ブロックを受け入れ、したがって、プロトコル規則を執行する他のノードのしきい値コンセンサスにブロックを伝搬させる。トランザクション154の順序付きセットが、次いで、ブロックチェーンノード104の各々によって、新たなブロック151としてブロックチェーン150の中に記録されるようになる。チェーンの中の以前に作成されたブロック151n-1を新たなブロック151nが戻って指し示すことにも、ブロックポインタ155が割り当てられる。プルーフオブワーク解を作成するために必要とされる、たとえば、ハッシュの形態をなす、著しい量の取組みが、ブロックチェーンプロトコルの規則に従うべき、第1のノード104の意図をシグナリングする。そのような規則は、さもなければ二重消費として知られる、以前に有効化されたトランザクションと同じ出力をそれが割り当てる場合、トランザクションを有効として受け入れないことを含む。作成されると、ブロック151は、ブロックチェーンネットワーク106の中のブロックチェーンノード104の各々において認識および維持されるので修正され得ない。ブロックポインタ155はまた、連続した順序をブロック151に課する。ネットワーク106の中の各ブロックチェーンノード104において、順序付きブロックの中にトランザクション152が記録されるので、したがって、このことはトランザクションの不変の公的な台帳を提供する。
【0032】
任意の所与の時間においてパズルを解くために競争する異なるブロックチェーンノード104が、それらがいつ解を求めて探索し始めたのかまたはトランザクションが受信された順序に応じて、任意の所与の時間においてまだ発行されていないトランザクション154のプールの異なるスナップショットに基づいて、そのことを行っている場合があることに留意されたい。それらのそれぞれのパズルを最初に解く人はだれでも、どのトランザクション152が次の新たなブロック151nの中にどの順序で含められるのかを規定し、未発行トランザクションの現在のプール154が更新される。ブロックチェーンノード104は、次いで、未発行トランザクション154の新たに規定された順序付きプールからブロックを作成するために競争することを継続する等々である。2つのブロックチェーンノード104が互いの極めて短い時間内にそれらのパズルを解き、その結果、ブロックチェーンの矛盾する見方がノード104間で伝搬させられる場合である、起こり得る任意の「フォーク」を解決するためのプロトコルも存在する。要するに、最も長く伸びる、フォークのどのプロングも、最終的なブロックチェーン150になる。同じトランザクションが両方のフォークの中に出現するので、このことがネットワークのユーザまたはエージェントに影響を及ぼさないはずであることに留意されたい。
【0033】
ビットコインブロックチェーン(および、ほとんどの他のブロックチェーン)によれば、新たなブロック104を首尾よく構築するノードは、(ある金額のデジタル資産を、あるエージェントまたはユーザから別のエージェントまたはユーザに移転する、エージェント間またはユーザ間のトランザクションとは反対に)規定された追加の数量のデジタル資産を分配する、新たな特別な種類のトランザクションの中に、受け入れられた追加の金額のデジタル資産を新たに割り当てるための能力が与えられる。この特別なタイプのトランザクションは、通常、「コインベーストランザクション」と呼ばれるが、「開始トランザクション(initiation transaction)」または「生成トランザクション(generation transaction)」と呼ばれることもある。それは、通常、新たなブロック151nの最初のトランザクションを形成する。この特別なトランザクションが後で償還されることを可能にするプロトコル規則に従うために、プルーフオブワークは、新たなブロックを構築するノードの意図をシグナリングする。ブロックチェーンプロトコル規則は、この特別なトランザクションが償還され得る前に、償還期間、たとえば、100個のブロックを必要とすることがある。しばしば、通常の(非生成)トランザクション152も、そのトランザクションがその中で発行されたブロック151nを作成したブロックチェーンノード104にさらに報酬を与えるために、それの出力のうちの1つの中で追加のトランザクション料金を指定する。この料金は、通常、「トランザクション料金」と呼ばれ、以下で説明される。
【0034】
トランザクション有効化および発行にリソースが関与することに起因して、一般に、ブロックチェーンノード104の少なくとも各々は、1つまたは複数の物理サーバユニットを備えるサーバ、またはさらにはデータセンター全体の形態を取る。しかしながら、原理上、任意の所与のブロックチェーンノード104が、一緒にネットワーク化されたユーザ端末またはユーザ端末のグループの形態を取ることができる。
【0035】
各ブロックチェーンノード104のメモリは、それのそれぞれの1つまたは複数の役割を実行しブロックチェーンノードプロトコルに従ってトランザクション152を処理するために、ブロックチェーンノード104の処理装置上で動作するように構成されたソフトウェアを記憶する。本明細書においてブロックチェーンノード104にあるものとされる任意のアクションが、それぞれのコンピュータ機器の処理装置上でソフトウェアが動作することによって実行されてよいことが理解されよう。ノードソフトウェアは、アプリケーションレイヤ、またはオペレーティングシステムレイヤもしくはプロトコルレイヤなどの下位レイヤ、あるいはこれらの任意の組合せにおける1つまたは複数のアプリケーションの中に実装されてよい。
【0036】
消費するユーザの役割における複数のパーティ103の各々のコンピュータ機器102も、ネットワーク101に接続される。これらのユーザはブロックチェーンネットワーク106と相互作用してよいが、トランザクションを有効化することまたはブロックを構築することに参加しない。これらのユーザまたはエージェント103のうちのいくつかは、トランザクションにおいて送出者および受信者として働くことがある。他のユーザは、必ずしも送出者または受信者として働くことなくブロックチェーン150と相互作用してよい。たとえば、いくつかのパーティは、ブロックチェーン150のコピーを記憶する(たとえば、ブロックチェーンノード104からブロックチェーンのコピーを取得した)記憶エンティティとして働いてよい。
【0037】
パーティ103の一部または全部は、異なるネットワーク、たとえば、ブロックチェーンネットワーク106の上部に重ねられたネットワークの一部として接続されてよい。ブロックチェーンネットワークのユーザ(しばしば、「クライアント」と呼ばれる)は、ブロックチェーンネットワーク106を含むシステムの一部であると言われてよいが、これらのユーザは、ブロックチェーンノードの必要とされる役割を実行しないのでブロックチェーンノード104ではない。代わりに、各パーティ103はブロックチェーンネットワーク106と相互作用してよく、それによって、ブロックチェーンノード106に接続すること(すなわち、それと通信すること)によってブロックチェーン150を利用してよい。2つのパーティ103およびそれらのそれぞれの機器102、すなわち、ファーストパーティ103aおよびその人のそれぞれのコンピュータ機器102a、ならびにセカンドパーティ103bおよびその人のそれぞれのコンピュータ機器102bが、例示のために図示される。はるかに多くのそのようなパーティ103およびそれらのそれぞれのコンピュータ機器102が存在しシステム100に参加していることがあるが、便宜上、それらが図示されないことが理解されよう。各パーティ103は、個人または団体であってよい。純粋に例として、ファーストパーティ103aは本明細書でアリスと呼ばれ、セカンドパーティ103bはボブと呼ばれるが、このことが限定的でなく、アリスまたはボブへの本明細書における任意の参照が、それぞれ、「ファーストパーティ」および「セカンドパーティ」と置き換えられてよいことが、諒解されよう。
【0038】
各パーティ103のコンピュータ機器102は、1つまたは複数のプロセッサ、たとえば、1つまたは複数のCPU、GPU、他のアクセラレータプロセッサ、特定用途向けプロセッサ、および/またはFPGAを備えるそれぞれの処理装置を備える。各パーティ103のコンピュータ機器102は、メモリ、すなわち、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読媒体の形態のコンピュータ可読ストレージをさらに備える。このメモリは、1つまたは複数のメモリ媒体、たとえば、ハードディスクなどの磁気媒体、SSD、フラッシュメモリ、もしくはEEPROMなどの電子媒体、および/または光ディスクドライブなどの光媒体を採用する1つまたは複数のメモリユニットを備えてよい。各パーティ103のコンピュータ機器102上のメモリは、処理装置上で動作するように構成された少なくとも1つのクライアントアプリケーション105のそれぞれのインスタンスを備えるソフトウェアを記憶する。本明細書において所与のパーティ103にあるものとされる任意のアクションが、それぞれのコンピュータ機器102の処理装置上で動作するソフトウェアを使用して実行されてよいことが、理解されよう。各パーティ103のコンピュータ機器102は、少なくとも1つのユーザ端末、たとえば、デスクトップもしくはラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、またはスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを備える。所与のパーティ103のコンピュータ機器102はまた、ユーザ端末を介してアクセスされるクラウドコンピューティングリソースなどの1つまたは複数の他のネットワーク化リソースを備えてよい。
【0039】
クライアントアプリケーション105は最初に、1つまたは複数の好適なコンピュータ可読記憶媒体上の任意の所与のパーティ103のコンピュータ機器102に提供されてよく、たとえば、サーバからダウンロードされてよく、あるいはリムーバブルSSD、フラッシュメモリキー、リムーバブルEEPROM、リムーバブル磁気ディスクドライブ、磁気フロッピーディスクもしくはテープ、CDもしくはDVD ROMなどの光ディスク、またはリムーバブル光学ドライブなどのような、リムーバブル記憶デバイス上に設けられてもよい。
【0040】
クライアントアプリケーション105は、少なくとも「金銭管理(wallet)」機能を備える。これは2つの主な機能性を有する。これらのうちの一方は、次いで、ブロックチェーンノード104のネットワーク全体にわたって伝搬され、それによって、ブロックチェーン150の中に含められるべき、トランザクション152を、それぞれのパーティ103が作成し、許可し(たとえば、署名し)、1つまたは複数のビットコインノード104へ送ることを可能にすることである。他方は、その人が現在所有するデジタル資産の金額をそれぞれのパーティに戻って報告することである。出力ベースのシステムでは、この第2の機能性は、当該のパーティに属するブロックチェーン150全体にわたって散乱される様々なトランザクション152の出力の中で規定された金額を照合することを備える。
【0041】
注記: 所与のクライアントアプリケーション105の中に統合されるものとして様々なクライアント機能性が説明されることがあるが、このことは必ずしも限定的であるとは限らず、代わりに、本明細書で説明する任意のクライアント機能性が、代わりに、2つ以上の別々のアプリケーションの一組をなして実装されてよく、たとえば、APIを介してインターフェースするか、または一方は他方へのプラグインである。より一般的には、クライアント機能性は、アプリケーションレイヤ、もしくはオペレーティングシステムなどの下位レイヤ、またはこれらの任意の組合せにおいて実装され得る。以下はクライアントアプリケーション105に関して説明されるが、これが限定的でないことが諒解されよう。
【0042】
各コンピュータ機器102上のクライアントアプリケーションまたはソフトウェア105のインスタンスは、ネットワーク106のブロックチェーンノード104のうちの少なくとも1つに動作可能に結合される。このことは、クライアント105の金銭管理機能がトランザクション152をネットワーク106へ送ることを可能にする。クライアント105はまた、それぞれのどのパーティ103が受信者であるのかを、任意のトランザクションのためのブロックチェーン150に照会するために、ブロックチェーンノード104に接触することができる(または、実施形態では、ブロックチェーン150は、部分的にそれの公的な視界を通じてトランザクションの中に信用を与える公的な機構であるので、ブロックチェーン150の中の他のパーティのトランザクションを確かに検査する)。各コンピュータ機器102上の金銭管理機能は、トランザクションプロトコルに従ってトランザクション152を編成し送るように構成される。上記で提示したように、各ブロックチェーンノード104は、ブロックチェーンノードプロトコルに従ってトランザクション152を有効化し、およびブロックチェーンネットワーク106全体にわたってそれらを伝搬させるためにトランザクション152を転送するように構成された、ソフトウェアを動作させる。トランザクションプロトコルおよびノードプロトコルは互いに対応し、所与のトランザクションプロトコルは、所与のトランザクションモデルを一緒に実装して、所与のノードプロトコルとともに進む。同じトランザクションプロトコルが、ブロックチェーン150の中のすべてのトランザクション152に対して使用される。同じノードプロトコルが、ネットワーク106の中のすべてのノード104によって使用される。
【0043】
所与のパーティ103、たとえば、アリスは、ブロックチェーン150の中に含められるべき新規トランザクション152jを送ることを望むとき、(アリスのクライアントアプリケーション105の中の金銭管理機能を使用して)関連するトランザクションプロトコルに従って新規トランザクションを編成する。アリスは、次いで、アリスが接続されている1つまたは複数のブロックチェーンノード104へ、クライアントアプリケーション105からトランザクション152を送る。たとえば、これは、アリスのコンピュータ102に最も良好に接続されているブロックチェーンノード104であり得る。任意の所与のブロックチェーンノード104は、新規トランザクション152jを受信すると、ブロックチェーンノードプロトコルおよびそれのそれぞれの役割に従ってそれを処理する。このことは、新たに受信されたトランザクション152jが「有効」であるためのいくつかの条件を満たすかどうかを最初にチェックすることを備え、そのことの例がより詳細に手短に説明される。いくつかのトランザクションプロトコルでは、有効化のための条件は、トランザクション152の中に含まれるスクリプトによって、トランザクションごとに構成可能であってよい。代替として、条件は、単にノードプロトコルの内蔵機能であり得るか、またはスクリプトとノードプロトコルとの組合せによって規定され得る。
【0044】
新たに受信されたトランザクション152jが有効と見なされるためのテストをパスする条件において(すなわち、それが「有効化」される条件において)、トランザクション152jを受信する任意のブロックチェーンノード104は、そのブロックチェーンノード104において維持される、トランザクション154の順序付きセットに、有効化された新たなトランザクション152を加える。さらに、トランザクション152jを受信する任意のブロックチェーンノード104は、有効化されたトランザクション152をネットワーク106の中の1つまたは複数の他のブロックチェーンノード104に前方へ伝搬させる。各ブロックチェーンノード104は同じプロトコルを適用するので、次いで、トランザクション152jが有効であることを想定すると、このことは、それがまもなく全体的なネットワーク106全体にわたって伝搬されることを意味する。
【0045】
所与のブロックチェーンノード104において維持される保留トランザクション154の順序付きプールに入ることが許されると、そのブロックチェーンノード104は、新規トランザクション152を含む154のそれらのそれぞれのプールの最新のバージョンにおいてプルーフオブワークパズルを解くことを競合し始める(他のブロックチェーンノード104が、トランザクション154の異なるプールに基づいてパズルを解こうとしている場合があるが、そこに最初に達する人はだれでも、最新のブロック151の中に含められるトランザクションのセットを規定することを、想起されたい。最終的に、ブロックチェーンノード104は、アリスのトランザクション152jを含む順序付きプール154の一部に対してパズルを解く)。新規トランザクション152jを含むプール154に対してプルーフオブワークが行われていると、それは不変にブロックチェーン150の中のブロック151のうちの1つの一部になる。各トランザクション152は、もっと前のトランザクションに戻るポインタを備え、そのため、トランザクションの順序も不変に記録される。
【0046】
異なるブロックチェーンノード104は、所与のトランザクションの異なるインスタンスを最初に受信することがあり、したがって、新たなブロック151の中で1つのインスタンスが発行される前にどのインスタンスが「有効」であるのかの、矛盾する見方を有し、その点において、発行されたインスタンスが唯一の有効なインスタンスであることに、すべてのブロックチェーンノード104が合意する。ブロックチェーンノード104が、有効として1つのインスタンスを受け入れ、次いで、ブロックチェーン150の中に第2のインスタンスが記録されていることを発見する場合、そのブロックチェーンノード104は、これを受け入れなければならず、それが最初に受け入れたインスタンス(すなわち、ブロック151の中で発行されていないインスタンス)を廃棄する(すなわち、無効として扱う)。
【0047】
いくつかのブロックチェーンネットワークによって運用される代替のタイプのトランザクションプロトコルは、勘定ベースのトランザクションモデルの一部として「勘定ベースの」プロトコルと呼ばれることがある。勘定ベースの事例では、各トランザクションは、過去のトランザクションのシーケンスの中の先行するトランザクションのUTXOを戻って参照することによるのではなく、むしろ完全な勘定残高への参照によって、移転されるべき金額を規定する。すべての勘定の現在の状態は、ブロックチェーンとは別個の、そのネットワークのノードによって記憶され、絶えず更新される。そのようなシステムでは、トランザクションは、勘定の動作しているトランザクション勘定書(「ポジション」とも呼ばれる)を使用して順序付けられる。この値は、それらの暗号署名の一部として送出者によって署名され、トランザクション参照計算の一部としてハッシュされる。加えて、任意選択のデータフィールドも、トランザクションが署名されてよい。このデータフィールドは、たとえば、以前のトランザクションIDがそのデータフィールドの中に含まれる場合、以前のトランザクションを戻って指し示してよい。
【0048】
2. UTXOベースのモデル
図2は、例示のトランザクションプロトコルを示す。これは、UTXOベースのプロトコルの一例である。トランザクション152(「Tx」と短縮される)は、ブロックチェーン150の基本データ構造である(各ブロック151が1つまたは複数のトランザクション152を備える)。以下は、出力ベースまたは「UTXO」ベースのプロトコルへの参照によって説明される。しかしながら、このことはすべての可能な実施形態に限定的であるとは限らない。ビットコインを参照しながら例示のUTXOベースのプロトコルが説明されるが、それが他の例示のブロックチェーンネットワークにおいて等しく実施されてよいことに留意されたい。
【0049】
UTXOベースのモデルでは、各トランザクション(「Tx」)152は、1つまたは複数の入力202および1つまたは複数の出力203を備えるデータ構造を備える。各出力203は、(UTXOがすでに償還されていない場合)別の新規トランザクションの入力202のためのソースとして使用され得る未消費トランザクション出力(UTXO)を備えてよい。UTXOは、ある金額のデジタル資産を指定する値を含む。これは、分散台帳上のトークンのセット番号を表す。UTXOはまた、他の情報の中の、UTXOがそこから来たトランザクションのトランザクションIDを含んでよい。トランザクションデータ構造はまた、ヘッダ201を備えてよく、ヘッダ201は、入力フィールド202および出力フィールド203のサイズのインジケータを備えてよい。ヘッダ201はまた、トランザクションのIDを含んでよい。実施形態では、トランザクションIDは、(トランザクションID自体を除外する)トランザクションデータのハッシュであり、ノード104にサブミットされる未加工トランザクション152のヘッダ201の中に記憶される。
【0050】
たとえば、アリス103aは、当該の、ある金額のデジタル資産をボブ103bに移転するトランザクション152jを作成することを望む。図2では、アリスの新規トランザクション152jは「Tx1」とラベル付けされる。それは、シーケンスの中の先行するトランザクション152iの出力203の中でアリスにロックされている、ある金額のデジタル資産を取り、このうちの少なくともいくらかをボブに移転する。図2では、先行するトランザクション152iは「Tx0」とラベル付けされる。Tx0およびTx1は任意のラベルにすぎない。それらは必ずしも、Tx0がブロックチェーン151の中の最初のトランザクションであることも、Tx1がプール154の中のすぐ次のトランザクションであることも、意味するとは限らない。Tx1は、アリスにロックされた未消費出力203を依然として有する任意の先行する(すなわち、先行者)トランザクションを戻って指し示すことができる。
【0051】
アリスがアリスの新規トランザクションTx1を作成する時間において、または少なくともアリスがそれをネットワーク106へ送る時間までに、先行するトランザクションTx0が、すでに有効化されていてよく、ブロックチェーン150のブロック151の中に含められていてよい。先行するトランザクションTx0は、その時間においてすでにブロック151のうちの1つの中に含められていることがあるか、または依然として順序付きセット154の中で待っていることがあり、その場合、新たなブロック151の中にまもなく含められる。代替として、Tx0およびTx1は、作成されることおよび一緒にネットワーク106へ送られることが可能であるか、またはノードプロトコルが「オーファン」トランザクションをバッファリングすることを許容する場合、Tx1の後にTx0が送られることさえ可能である。トランザクションのシーケンスのコンテキストにおいて本明細書で使用する「先行する(preceding)」および「後続の(subsequent)」という用語は、トランザクションの中で指定されるトランザクションポインタによって規定されるような、シーケンスの中のトランザクションの順序を指す(どのトランザクションが他のどのトランザクションを戻って指し示すのかなど)。それらは、「先行要素」および「後継者」、または「先行者」および「子孫(descendant)」、「親(parent)」、および「子(child)」などに等しく置き換えられる場合がある。そのことは、それらが作成され、ネットワーク106へ送られ、または任意の所与のブロックチェーンノード104に到着する順序を、必ずしも暗示するとは限らない。とはいえ、先行するトランザクション(先行者トランザクションまたは「親」)を指し示す後続のトランザクション(子孫トランザクションまたは「子」)は、親トランザクションが有効化されるまで、また親トランザクションが有効化されない限り、有効化されない。それの親の前にブロックチェーンノード104に到着する子は、オーファンと見なされる。ノードプロトコルおよび/またはノード挙動に応じて、オーファンは廃棄されてよく、または親を待つためのいくらかの時間にわたってバッファリングされてもよい。
【0052】
先行するトランザクションTx0の1つまたは複数の出力203のうちの1つは、ここではUTXO0とラベル付けされる特定のUTXOを備える。各UTXOは、UTXOによって表されるある金額のデジタル資産を指定する値、および後続のトランザクションが有効化されるために、したがって、UTXOが首尾よく償還されるために、後続のトランザクションの入力202の中のロック解除スクリプトによって満たされなければならない条件を規定するロックスクリプトを備える。通常、ロックスクリプトは、特定のパーティ(それがその中に含まれるトランザクションの受益者)に金額をロックする。すなわち、ロックスクリプトは、通常、後続のトランザクションの入力の中のロック解除スクリプトが、先行するトランザクションがロックされるパーティの暗号署名を備える条件を備える、ロック解除条件を規定する。
【0053】
ロックスクリプト(scriptPubKeyとも呼ばれる)は、ノードプロトコルによって認識されるドメイン固有の言語で書かれたコードの断片である。そのような言語の特定の例は、ブロックチェーンネットワークによって使用される「Script」(大文字のS)と呼ばれる。ロックスクリプトは、トランザクション出力203を消費するためにどんな情報が必要とされるのか、たとえば、アリスの署名の要件を指定する。ロック解除スクリプトは、トランザクションの出力の中に出現する。ロック解除スクリプト(scriptSigとも呼ばれる)は、ロックスクリプト基準を満足するのに必要とされる情報を提供するドメイン固有の言語で書かれたコードの断片である。たとえば、それはボブの署名を含んでよい。ロック解除スクリプトは、トランザクションの入力202の中に出現する。
【0054】
そのため、図示の例では、Tx0の出力203の中のUTXO0は、UTXO0が償還されるために(厳密には、UTXO0を償還することを試みる後続のトランザクションが有効となるために)アリスの署名Sig PAを必要とするロックスクリプト[Checksig PA]を備える。[Checksig PA]は、アリスの公開鍵-秘密鍵ペアからの公開鍵PAの表記(すなわち、ハッシュ)を含む。Tx1の入力202は、(たとえば、実施形態ではトランザクションTx0全体のハッシュである、それのトランザクションID、TxID0によって)Tx1を戻って指し示すポインタを備える。Tx1の入力202は、Tx0の任意の他の可能な出力の間でそれを識別するために、Tx0内でUTXO0を識別するインデックスを備える。Tx1の入力202は、アリスが鍵ペアからのアリスの秘密鍵をデータの既定の部分(暗号法では「メッセージ」と呼ばれることがある)に適用することによって作成される、アリスの暗号署名を備えるロック解除スクリプト<Sig PA>をさらに備える。有効な署名を提供するためにアリスによって署名される必要があるデータ(すなわち、「メッセージ」)は、ロックスクリプトによって、もしくはノードプロトコルによって、またはこれらの組合せによって規定されてよい。
【0055】
ブロックチェーンノード104に新規トランザクションTx1が到着すると、ノードはノードプロトコルを適用する。このことは、ロックスクリプトの中で規定された条件をロック解除スクリプトが満たすかどうかをチェックするために、ロックスクリプトおよびロック解除スクリプトを一緒に動作させることを備える(ここで、この条件は1つまたは複数の基準を備えてよい)。実施形態では、このことは、2つのスクリプトを連結すること、すなわち、
<Sig PA> <PA> || [Checksig PA]
を伴い、ただし、「||」は連結を表し、「<…>」はスタック上のデータの場所を意味し、「[…]」は、ロックスクリプト(この例では、スタックベースの言語)によって備えられる関数である。等価的に、スクリプトを連結するのではなく、共通スタックを用いてスクリプトが次々に動作させられてよい。どちらにしても、一緒に動作させられるとき、スクリプトは、Tx0の出力の中のロックスクリプトの中に含まれるようなアリスの公開鍵PAを使用して、Tx1の入力の中のロック解除スクリプトが、データの予想される部分に署名するアリスの署名を含むことを認証する。この認証を実行するために、データ自体(「メッセージ」)の予想される部分も含められる必要がある。実施形態では、署名されたデータはTx1の全体を備える(そのため、平文でのデータの署名された部分を指定する別個の要素は、すでに本質的に存在するので含められる必要はない)。
【0056】
公開-秘密暗号法による認証の詳細は当業者に熟知されよう。基本的に、アリスがアリスの秘密鍵を使用してメッセージに署名しており、次いで、アリスの公開鍵および平文でのメッセージが与えられる場合、ノード104などの別のエンティティは、メッセージがアリスによって署名されているにちがいないことを認証することができる。署名することは、通常、メッセージをハッシュすること、そのハッシュに署名すること、およびこれをメッセージ上に署名としてタグ付けすることを備え、したがって、公開鍵の任意の保持者が署名を認証することを可能にする。したがって、データの特定の断片、もしくはトランザクションの一部などに署名することへの、本明細書における任意の参照は、実施形態において、データのその断片またはトランザクションの一部のハッシュに署名することを意味することができることに留意されたい。
【0057】
Tx1の中のロック解除スクリプトがTx0のロックスクリプトの中で指定される1つまたは複数の条件を満たす場合(そのため、図示の例では、アリスの署名がTx1の中で提供され、認証される場合)、ブロックチェーンノード104はTx1を有効と見なす。このことは、ブロックチェーンノード104が保留トランザクション154の順序付きプールにTx1を加えることを意味する。ブロックチェーンノード104はまた、ネットワーク106全体にわたってトランザクションTx1が伝搬されるように、ネットワーク106の中の1つまたは複数の他のブロックチェーンノード104にトランザクションTx1を転送する。Tx1が有効化されておりブロックチェーン150の中に含められていると、このことはTx0からのUTXO0を消費されたものと規定する。Tx1が未消費トランザクション出力203を消費する場合にしかTx1が有効であり得ないことに留意されたい。Tx1が、別のトランザクション152によってすでに消費されている出力を消費することを試みる場合、すべての他の条件が満たされるとしてもTx1は無効となる。したがって、ブロックチェーンノード104はまた、先行するトランザクションTx0の中の参照されるUTXOがすでに消費されているかどうか(すなわち、それが別の有効なトランザクションへの有効な入力をすでに形成しているかどうか)をチェックする必要がある。このことは、ブロックチェーン150が、規定された順序をトランザクション152に課することが重要である1つの理由である。実際には、所与のブロックチェーンノード104は、どのトランザクション152の中のどのUTXO203が消費されているのかをマークする別個のデータベースを維持してよいが、最終的には、UTXOが消費されているかどうかを規定するのは、ブロックチェーン150の中の別の有効なトランザクションへの有効な入力をそれがすでに形成しているかどうかである。
【0058】
所与のトランザクション152のすべての出力203の中で指定される総額が、それのすべての入力202によって指し示される総額よりも大きい場合、このことは、ほとんどのトランザクションモデルにおける非有効性にとっての別の根拠である。したがって、そのようなトランザクションは、伝搬されることもブロック151の中に含められることもない。
【0059】
UTXOベースのトランザクションモデルでは、所与のUTXOが全体として消費される必要があることに留意されたい。UTXOは、別の小部分が消費されながらUTXOの中で規定される金額の小部分を消費されたものとして「あとに残して行く」ことができない。ただし、UTXOからの金額は、次のトランザクションの複数の出力の間で分割され得る。たとえば、Tx0の中のUTXO0の中で規定される金額は、Tx1の中の複数のUTXOの間で分割され得る。したがって、アリスは、UTXO0の中で規定される金額のすべてをボブに与えることを希望しない場合、Tx1の第2の出力の中でアリス自身に釣銭を与えるために、または別のパーティに支払うために、その残りを使用することができる。
【0060】
実際には、アリスはまた、通常、アリスのトランザクション104をブロック151の中に首尾よく含めるビットコインノード104のための料金を含める必要がある。アリスがそのような料金を含めない場合、Tx0はブロックチェーンノード104によって拒絶されてよく、したがって、技術的には有効であるが、伝搬されなくてよくブロックチェーン150の中に含められなくてよい(ノードプロトコルは、それらが希望しない場合、トランザクション152を受け入れることをブロックチェーンノード104に強制しない)。いくつかのプロトコルでは、トランザクション料金は、それ自体の別個の出力203を必要としない(すなわち、別個のUTXOを必要としない)。代わりに、入力202によって指し示される総額と所与のトランザクション152の出力203の中で指定される総額との間の任意の差分が、トランザクションを発行するブロックチェーンノード104に自動的に与えられる。たとえば、UTXO0へのポインタはTx1への入力でしかなく、Tx1は1つの出力UTXO1しか有しない。UTXO0の中で指定されるデジタル資産の金額が、UTXO1の中で指定される金額よりも大きい場合、UTXO1を含むブロックを作成するためのプルーフオブワーク競争に勝利するノード104によって差分が割り当てられてよい。しかしながら、代替または追加として、トランザクション料金が、トランザクション152のUTXO203のうちのそれ自体の1つの中で明示的に指定され得ることが、必ずしも除外されるとは限らない。
【0061】
アリスおよびボブのデジタル資産は、ブロックチェーン150の中のどこかで任意のトランザクション152の中で彼らにロックされたUTXOからなる。したがって、通常、所与のパーティ103の資産は、ブロックチェーン150全体にわたって様々なトランザクション152のUTXO全体にわたって散乱される。所与のパーティ103の合計残高を規定する、ブロックチェーン150の中のどこかに記憶された1つの数はない。それぞれのパーティにロックされており前方に位置する別のトランザクションの中でまだ消費されていないすべての様々なUTXOの値を一緒に照合することは、クライアントアプリケーション105の中の金銭管理機能の役割である。それは、ビットコインノード104のうちのいずれかにおいて記憶されるようなブロックチェーン150のコピーを照会することによって、このことを行うことができる。
【0062】
スクリプトコードが、しばしば、概略的に(すなわち、厳密な言語を使用せずに)表されることに留意されたい。たとえば、特定の機能を表すために動作コード(オペコード)を使用してよい。「OP_...」は、Script言語の特定のオペコードを指す。一例として、OP_RETURNは、ロックスクリプトの冒頭においてOP_FALSEに先行されるとき、トランザクション内にデータを記憶できるトランザクションの消費不可能な出力を作成し、それによって、ブロックチェーン150の中に不変にデータを記録する、Script言語のオペコードである。たとえば、データは、ブロックチェーンの中に記憶することが望まれる文書を備える場合がある。
【0063】
通常、トランザクションの入力は、公開鍵PAに対応するデジタル署名を含む。実施形態では、これは楕円曲線secp256k1を使用するECDSAに基づく。デジタル署名は、データの特定の断片に署名する。いくつかの実施形態では、所与のトランザクションに対して、署名は、トランザクション入力の一部、およびトランザクション出力の一部または全部に署名する。それが署名する、出力の特定の部分は、SIGHASHフラグに依存する。SIGHASHフラグは、通常、どの出力が署名されるのか(したがって、署名する時間において固定されるのか)を選択するために署名の末尾に含まれる4バイトコードである。
【0064】
ロックスクリプトは、それが通常はそれぞれのトランザクションがロックされるパーティの公開鍵を備えるという事実を参照して、「scriptPubKey」と呼ばれることがある。ロック解除スクリプトは、それが通常は対応する署名を供給するという事実を参照して、「scriptSig」と呼ばれることがある。しかしながら、より一般的には、ブロックチェーン150のすべての適用において、UTXOが償還されるための条件が、署名を認証することを備えることは必須でない。より一般的には、任意の1つまたは複数の条件を規定するためにスクリプト言語が使用され得る。したがって、「ロックスクリプト」および「ロック解除スクリプト」というもっと一般的な用語が好ましいことがある。
【0065】
3. サイドチャネル
図1に示すように、アリスおよびボブのコンピュータ機器102a、120bの各々におけるクライアントアプリケーションは、それぞれ、追加の通信機能性を備えてよい。この追加の機能性は、(パーティまたはサードパーティのいずれかに誘発されて)アリス103aがボブ103bとの別個のサイドチャネル107を確立することを可能にする。サイドチャネル107は、ブロックチェーンネットワークとは別個にデータの交換を可能にする。そのような通信は、「オフチェーン」通信と呼ばれることがある。たとえば、これは、パーティのうちの1人がそれをネットワーク106へブロードキャストすることを選ぶまで、トランザクションがブロックチェーンネットワーク106上に(まだ)登録されているかまたはチェーン150上に進むことなく、アリスとボブとの間でトランザクション152を交換するために使用されてよい。トランザクションをこのようにして共有することは、「トランザクションテンプレート」を共有することと呼ばれることがある。トランザクションテンプレートは、完全なトランザクションを形成するために必要とされる1つまたは複数の入力および/または出力がなくてよい。代替または追加として、サイドチャネル107は、鍵、折衝された金額または期間、データ内容などの、任意の他のトランザクション関連データを交換するために使用されてよい。
【0066】
サイドチャネル107は、ブロックチェーンネットワーク106と同じパケット交換ネットワーク101を介して確立されてよい。代替または追加として、サイドチャネル301は、モバイルセルラーネットワーク、またはローカルワイヤレスネットワークなどのローカルエリアネットワーク、さらにはアリスのデバイス102aとボブのデバイス102bとの間の直接の有線リンクまたはワイヤレスリンクなどの、様々なネットワークを介して確立されてよい。一般に、本明細書におけるどこかで参照されるようなサイドチャネル107は、「オフチェーン」で、すなわち、ブロックチェーンネットワーク106とは別個にデータを交換するための、1つまたは複数のネットワーキング技術または通信媒体を介した任意の1つまたは複数のリンクを備えてよい。2つ以上のリンクが使用される場合、全体としてオフチェーンリンクのバンドルまたは集合は、サイドチャネル107と呼ばれることがある。したがって、アリスおよびボブがサイドチャネル107を介して情報もしくはデータなどのいくつかの断片を交換すると言われる場合、データのこれらのすべての断片が、厳密に同じリンクさらには同じタイプのネットワークを介して送られなければならないことを、このことが必ずしも暗示するとは限らないことに留意されたい。
【0067】
4. クライアントソフトウェア
図3Aは、本開示の方式の実施形態を実施するためのクライアントアプリケーション105の例示の実装形態を示す。クライアントアプリケーション105は、トランザクションエンジン401およびユーザインターフェース(UI)レイヤ402を備える。トランザクションエンジン401は、上記で説明した方式に従って、手短にさらに詳細に説明するように、トランザクション152を編成すること、サイドチャネル301を介してトランザクションおよび/もしくは他のデータを受信しおよび/もしくは送ること、ならびに/またはブロックチェーンネットワーク106を通じて伝搬されるべき1つもしくは複数のノード104へトランザクションを送ることなどの、クライアント105の下位トランザクション関連の機能性を実施するように構成される。
【0068】
UIレイヤ402は、機器102のユーザ出力手段を介してそれぞれのユーザ103に情報を出力すること、および機器102のユーザ入力手段を介してそれぞれのユーザ103から戻って入力を受信することを含む、それぞれのユーザのコンピュータ機器102のユーザ入力/出力(I/O)手段を介してユーザインターフェースをレンダリングするように構成される。たとえば、ユーザ出力手段は、視覚出力を提供するための1つもしくは複数の表示スクリーン(タッチスクリーンまたは非タッチスクリーン)、音響出力を提供するための1つもしくは複数のスピーカー、および/または触覚出力を提供するための1つもしくは複数の触覚出力デバイスなどを備える場合がある。ユーザ入力手段は、たとえば、(出力手段のために使用されるそれ/それらと同じかまたはそれ/それらとは異なる)1つまたは複数のタッチスクリーンの入力アレイ、マウス、トラックパッド、またはトラックボールなどの1つまたは複数のカーソルベースデバイス、音声または発声入力を受信するための1つまたは複数のマイクロフォンおよび音声または発声認識アルゴリズム、手または体を使うジェスチャーの形態の入力を受信するための1つまたは複数のジェスチャーベース入力デバイス、あるいは1つまたは複数の機械的なボタン、スイッチ、またはジョイスティックなどを備える場合がある。
【0069】
注記: 同じクライアントアプリケーション105の中に統合されるものとして、本明細書における様々な機能性が説明されることがあるが、このことは必ずしも限定的であるとは限らず、代わりにそれらは2つ以上の別々のアプリケーションの一組をなして実装されることが可能であり、たとえば、一方が他方へのプラグインであるか、またはAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を介してインターフェースする。たとえば、トランザクションエンジン401の機能性が、UIレイヤ402とは別個のアプリケーションの中に実装されてよく、またはトランザクションエンジン401などの所与のモジュールの機能性が、2つ以上のアプリケーションの間で分割される場合がある。また、説明する機能性の一部または全部が、たとえば、オペレーティングシステムレイヤにおいて実装され得ることも、除外されない。単一または所与のアプリケーション105などへ、本明細書におけるどこかで参照が行われる場合、このことが例のためにすぎず、より一般的には、説明する機能性が任意の形態のソフトウェアで実装され得ることが諒解されよう。
【0070】
図3Bは、アリスの機器102a上のクライアントアプリケーション105aのユーザインターフェース(UI)レイヤ402によってレンダリングされてよいUI500の一例のモックアップを与える。類似のUIが、ボブの機器102b上のクライアント105bまたは任意の他のパーティのクライアントによってレンダリングされてよいことが、諒解されよう。
【0071】
例として、図3Bはアリスの観点からUI500を示す。UI500は、ユーザ出力手段を介して別々のUI要素としてレンダリングされた1つまたは複数のUI要素501、502、502を備えてよい。
【0072】
たとえば、UI要素は、異なるオンスクリーンボタン、もしくはメニューの中の異なるオプションなどであってよい、1つまたは複数のユーザ選択可能要素501を備えてよい。ユーザ入力手段は、スクリーン上のUI要素をクリックもしくはタッチすること、または所望のオプションの名称を話すことなどによって、ユーザ103(この場合、アリス103a)がオプションのうちの1つを選択または別のやり方で操作することを、可能にするように配置される(本明細書で使用する「手作業で」という用語が、自動に対して対比をなすことを意図するにすぎず、必ずしも1つまたは複数の手の使用に限定するとは限らないことに、注意されたい)。
【0073】
代替または追加として、UI要素は1つまたは複数のデータ入力フィールド502を備えてよい。これらのデータ入力フィールドは、たとえば、スクリーン上の、ユーザ出力手段を介してレンダリングされ、データは、ユーザ入力手段、たとえば、キーボードまたはタッチスクリーンを通じてフィールドの中に入力され得る。代替として、たとえば、音声認識に基づいて、データが口頭で受信され得る。
【0074】
代替または追加として、UI要素は、情報をユーザに出力するための1つまたは複数の情報要素503出力を備えてよい。たとえば、これ/これらはスクリーン上でまたは可聴的にレンダリングされ得る。
【0075】
様々なUI要素をレンダリングし、オプションを選択し、データを入力する特定の手段が材料でないことが諒解されよう。これらのUI要素の機能性が、より詳細に手短に説明される。図3に示すUI500が図式化されたモックアップにすぎず、実際には、簡潔のために図示されない1つまたは複数のさらなるUI要素を備えてよいことも諒解される。
【0076】
5. ノードソフトウェア
図4は、UTXOまたは出力ベースのモデルの例における、ネットワーク106の各ブロックチェーンノード104上で動作させられるノードソフトウェア450の一例を示す。ネットワーク106上のノード104として分類されることなく、すなわち、ノード104の必要とされるアクションを実行することなく、別のエンティティがノードソフトウェア450を動作させてよいことに留意されたい。ノードソフトウェア450は、限定はしないが、プロトコルエンジン451、スクリプトエンジン452、スタック453、アプリケーションレベル決定エンジン454、および1つまたは複数のブロックチェーン関連機能モジュール455のセットを含んでよい。各ノード104は、限定はしないが、コンセンサスモジュール455C(たとえば、プルーフオブワーク)、伝搬モジュール455P、および記憶モジュール455S(たとえば、データベース)の3つすべてを含むノードソフトウェアを動作させてよい。プロトコルエンジン401は、通常、トランザクション152の様々なフィールドを認識し、ノードプロトコルに従ってそれらを処理するように構成される。トランザクション152j(Txj)が、別の先行するトランザクション152i(Txm-1)の出力(たとえば、UTXO)を指し示す入力を有して受信されるとき、プロトコルエンジン451は、Txjの中のロック解除スクリプトを識別し、それをスクリプトエンジン452に渡す。プロトコルエンジン451はまた、Txjの入力の中のポインタに基づいてTxiを識別し取り出す。Txiはブロックチェーン150上で発行されてよく、その場合、プロトコルエンジンは、ノード104において記憶されるブロックチェーン150のブロック151のコピーからTxiを取り出してよい。代替として、Txiはブロックチェーン150上でまだ発行されていないことがある。その場合、プロトコルエンジン451は、ノード104によって維持される未発行のトランザクションの順序付きセット154からTxiを取り出してよい。どちらにしても、スクリプトエンジン451は、Txiの参照される出力の中でロックスクリプトを識別し、これをスクリプトエンジン452に渡す。
【0077】
したがって、スクリプトエンジン452は、Txiのロックスクリプト、およびTxjの対応する入力からのロック解除スクリプトを有する。たとえば、Tx0およびTx1とラベル付けされたトランザクションが図2に示されるが、トランザクションの任意のペアに対して同じことが適用され得る。スクリプトエンジン452は、前に説明したように2つのスクリプトを一緒に動作させ、そのことは、使用されているスタックベースのスクリプト言語(たとえば、Script)に従って、スタック453上にデータを配置すること、およびスタック453からデータを取り出すことを含む。
【0078】
スクリプトを一緒に動作させることによって、スクリプトエンジン452は、ロックスクリプトの中で規定される1つまたは複数の基準をロック解除スクリプトが満たすか- すなわち、ロックスクリプトがその中に含まれる出力をそれが「ロック解除する」か否かを決定する。スクリプトエンジン452は、この決定の結果をプロトコルエンジン451に戻す。スクリプトエンジン452は、対応するロックスクリプトの中で指定される1つまたは複数の基準をロック解除スクリプトが満たすことを決定する場合、結果「真(true)」を戻す。そうでない場合、スクリプトエンジン452は結果「偽(false)」を戻す。
【0079】
出力ベースのモデルでは、スクリプトエンジン452からの結果「真」は、トランザクションの有効性のための条件のうちの1つである。通常、Txjの出力の中で指定されるデジタル資産の総額が、それの入力によって指し示される総額を上回らないこと、およびTxiの指し示される出力が、別の有効なトランザクションによってすでに消費されていないことなどの、同様に満たされなければならない、プロトコルエンジン451によって評価される1つまたは複数のさらなるプロトコルレベル条件もある。プロトコルエンジン451は、1つまたは複数のプロトコルレベル条件と一緒にスクリプトエンジン452からの結果を評価し、それらがすべて真である場合のみトランザクションTxjを有効化する。プロトコルエンジン451は、トランザクションが有効であるかどうかの表示をアプリケーションレベル決定エンジン454に出力する。Txjが確かに有効化されるという条件においてのみ、決定エンジン454は、Txjに関してそれらのそれぞれのブロックチェーン関連機能を実行するように、コンセンサスモジュール455Cと伝搬モジュール455Pの両方を制御することを選択してよい。このことは、ブロック151の中に組み込むためにコンセンサスモジュール455Cがトランザクション154のノードのそれぞれの順序付きセットにTxjを加えること、および伝搬モジュール455Pがネットワーク106の中の別のブロックチェーンノード104にTxjを転送することを備える。任意選択で、実施形態では、アプリケーションレベル決定エンジン454は、これらの機能のうちの一方または両方をトリガする前に、1つまたは複数の追加の条件を適用してよい。たとえば、決定エンジンは、トランザクションが有効であることとトランザクション料金を十分残すことの両方の条件においてのみ、トランザクションを発行することを選択してよい。
【0080】
本明細書における「真」および「偽」という用語が、単一の2進数字(ビット)だけの形態で表される結果を戻すことに必ずしも限定するとは限らないが、そのことが確かに1つの可能な実装形態であることにも留意されたい。より一般的には、「真」とは、成功した結果または肯定的な結果を示す任意の状態を指すことができ、「偽」とは、失敗した結果または否定的な結果を示す任意の状態を指すことができる。たとえば、勘定ベースのモデルでは、「真」という結果は、署名の暗黙的なプロトコルレベル有効化とスマート契約の追加の肯定的出力との組合せによって示される場合がある(個々の結果の両方が真である場合、全体的な結果が真をシグナリングするものと見なされる)。
【0081】
6. 暗号の概念
6.1 ハッシュ関数
ハッシュ関数Hは、任意のサイズのデータを固定長の出力にマッピングする。ハッシュ関数の一例は、
H0(x)=ax+b mod p mod q
のようなモジュラ関数であり、ただし、p、qは大きい素数であり、
【0082】
【数1】
【0083】
【0084】
【数2】
【0085】
である。
【0086】
SHA-256およびRIPEMD-160などの暗号ハッシュ関数は、追加の特性、すなわち、
・原像計算困難性、
・第2原像計算困難性、および
・衝突計算困難性
が満たされることを必要とする。
【0087】
6.2 楕円曲線
説明する実施形態において使用されてよい楕円曲線の一例は、
y2=x3+7 mod p
を満たす素体
【0088】
【数3】
【0089】
上の点(x,y)として定義される曲線secp256k1であり、ただし、p=2256-232-29-28-27-26-24-1である。無限大Oにおける関連する点と一緒に点(x,y)の集合は、有限集合
【0090】
【数4】
【0091】
を規定する。次いで、
【0092】
【数5】
【0093】
は楕円曲線群であり、ただし、+は曲線点加算演算である。
【0094】
【数6】
【0095】
は、素数位数が
【0096】
【数7】
【0097】
であり、我々はGによる
【0098】
【数8】
【0099】
という生成器ポイントを示す。スカラー乗算aGが、次いで、
【0100】
【数9】
【0101】
として定義される。
【0102】
6.3 楕円曲線デジタル署名アルゴリズム
公開鍵P=aGに対応する秘密鍵a∈{1,2,...,p-1}が生成されていることを想定する。ECDSA署名アルゴリズムは以下の通りである。
1. エフェメラル鍵を表す整数k∈{1,2,...,n-1}をランダムに選ぶ。
2. kG=(x,y)を算出する。
3. r=x mod nを算出する。r=0の場合、ステップ1に進む。
4. 素体
【0103】
【数10】
【0104】
におけるk-1を算出する。
5. メッセージのハッシュダイジェストmsg,e=SHA-256(SHA-256(msg))を算出する。
6. s=k-1(e+ar) mod nを算出する。s=0の場合、ステップ1に進む。
7. 署名(r,s)を出力する。
【0105】
公開鍵Pに対応する署名(r,s)は、SigPによって示される。時々、sPと書くことによってsとPとの間の関係を強調する。署名は、以下のステップを用いて、入力、すなわち、署名(r,s)、公開鍵P、およびメッセージmsgを用いて検証され得る。
1. メッセージハッシュダイジェストe=SHA-256(SHA-256(msg))を算出する。
2. 素体
【0106】
【数11】
【0107】
におけるs-1を算出する。
3. j1=es-1 mod nおよびj2=rs-1 mod nを算出する。
4. 点加算Q=j1G+j2Pを算出する。
5. Q=(x,y)≠Oでx mod n=rの場合、署名は有効であり、そうでない場合、署名は無効である。
【0108】
ここではメッセージハッシュダイジェストeがビットコイン仕様に関して算出されることに留意されたい。
【0109】
7. スクリプト
Script(大文字のS)は、いくつかのブロックチェーンプロトコルにおいて使用されるスクリプト言語の一例である。本発明の実施形態は、任意の1つの特定のスクリプト言語に限定されないが、Scriptはここでは例示的な例として使用される。ペイツーパブリックキーハッシュ(P2PKH:pay-to-public-key-hash)スクリプトの例示のロック解除スクリプトは、
<SigP> <P>
であり、ただし、Pは公開鍵であり、SigP=(r,sP)は、公開鍵Pおよび署名されたトランザクション(暗黙的に見なされる)に対応するECDSA署名であり、rはエフェメラル鍵から取得される。上記のスクリプトは、ロックスクリプト
OP_DUP OP_HASH160 <H(P)> OP_EQUALVERIFY OP_CHECKSIG
を有する出力をロック解除し、ただし、Hは、オペコードOP_HASH160に対応する暗号ハッシュ関数である。
【0110】
8. 既存のマルチパーティ出力方式
8.1 Rパズル
WO2020240295の中でRパズル支払い方式が導入された。形式(r',s')の署名が与えられると、対応する秘密鍵を使用して作成された署名が所与のr'を含む限り、それは任意の公開鍵がトランザクションをロック解除することを可能にする。
【0111】
ロック解除スクリプト
<SigP> <> <SigP,r'>
は、スクリプト
OP_DUP OP_3 OP_SPLIT OP_NIP OP_1 OP_SPLIT OP_SWAP OP_SPLIT OP_DROP OP_HASH160 <H(r')> OP_EQUALVERIFY OP_OVER OP_CHECKSIGVERIFY OP_CHECKSIG
をロック解除し、ここで、署名はSigP=(r,sP)およびSigP,r=(r',s'P)という形式をなす。sPおよびs'Pは、同じ公開鍵Pおよびメッセージmsgから生成される。したがって、エフェメラル鍵から導出されるr'を用いてSigP,r'が生成される限り、上記のロックスクリプトをロック解除するために任意の公開鍵Pが使用され得る。
【0112】
位数がO(1)の複雑度に関して、上記のスクリプトの記憶は無視でき、すなわち、それは、r'の知識を有するパーティの数とともにスケーリングしない。しかしながら、理論上、ロック解除スクリプトを有効化することの計算時間は位数がO(1)であるが、実際には、2つの署名をチェックすることは計算量的に費用がかかる。このことは、一般に、2つの署名を有効化するために検証者(たとえば、ブロックチェーンノード)がトランザクションを2回処理しなければならないからである。特に、トランザクションは、2回、すなわち、署名チェックごとに1回ハッシュされなければならず、ハッシングおよび楕円曲線算術などの、費用がかかるプロセスを必要とし、特に大きいトランザクションに対してハッシングはコストがかかる。
【0113】
8.2 マークル式スマート契約
WO2021014233は、マークル式スマート契約という発想を導入しており、それによって、いくつかのパーティは、それらの公開鍵を使用して形成された、マークルツリー(Merkle tree)のマークルルート(Merkle root)を含むトランザクションを消費することができる。そのようなトランザクションは、消費するパーティの署名を含むロック解除スクリプト、公開鍵、およびマークル証明を用いて消費され得る。m個のパーティの場合、ロック解除スクリプトを有効化するために必要とされる計算時間は、マークル証明に起因して位数がO(log2m)である。同様に、ロックスクリプトおよびロック解除スクリプトの空間は、各ハッシュのサイズが一定であるので位数がO(log2m)である。
【0114】
9. マルチパーティアドレス
本発明の実施形態は、複数のパーティのグループのうちの1つがUTXOを消費することを可能にする、新規のアドレス指定方式を提供する。図5は、そのような実施形態を実施するための例示のシステム500を示す。システム500は、ファーストパーティ501および複数のセカンドパーティ502を備える。図5には3つのセカンドパーティしか示されないが、一般にシステム500は任意の数のセカンドパーティ502を備えてよい。システム500はまた、コーディネーティングパーティ503を備える。コーディネーティングパーティ503は、パーティ502の第2のグループのうちの1つであってよく、すなわち、コーディネーティングパーティ503はセカンドパーティ502であってよい。他の例では、コーディネーティングパーティ503は、セカンドパーティ502のうちの1つではない。いくつかの例では、コーディネーティングパーティ503は、ファーストパーティ501と同じであってよい。
【0115】
ファーストパーティ501、セカンドパーティ502、およびコーディネーティングパーティ503の各々は、それぞれのコンピューティング機器、たとえば、コンピューティング機器102を運用する。たとえば、ファーストパーティ501、およびセカンドパーティ502の各々は、アリス103aおよび/またはボブ103bによって(というより、それらのそれぞれのコンピューティング機器102a、102bによって)実行されるものとして、上記で説明したアクションの一部または全部を実行するように構成されてよい。
【0116】
ファーストパーティ501は、第1の公開鍵に関連付けられる。セカンドパーティ502の各々は、それぞれの第2の公開鍵に関連付けられる。公開鍵に関連付けられることとは、そのパーティが、対応する秘密鍵へのアクセスを有する(たとえば、メモリの中に記憶する)ことを意味する。その上、セカンドパーティ502の各々は、それぞれのインデックスに関連付けられる。たとえば、セカンドパーティ502aのうちの第1のセカンドパーティ502aがインデックス1に関連付けられてよく、セカンドパーティ502bのうちの第2のセカンドパーティ502bがインデックス2に関連付けられてよい等々である。インデックスが連続している必要があることに留意されたい。たとえば、5人の第2の参加者がいる場合、5つのインデックスは1、2、3、4、および5であることになる。別の要件は、各セカンドパーティ502が一意のインデックスに関連付けられることであり、ここで、インデックスは、セカンドパーティ502のグループとともに一意である。セカンドパーティ502がインデックスに関連付けられることが、そのセカンドパーティ502のそれぞれの公開鍵がそのインデックスに関連付けられることと均等であることに留意されたい。
【0117】
コーディネーティングパーティ(または、「コーディネータ」)503は、第1のブロックチェーントランザクションを生成するように構成される。第1のブロックチェーントランザクションは、1つまたは複数の出力を備える。出力のうちの第1の出力(必ずしもトランザクションの出力の列挙の中で論理的に最初に出現する出力とは限らない)は、ある金額のデジタル資産をロックする。第1の出力は、第1のロックスクリプトを備える。第1のロックスクリプトは、本明細書で「共有ハッシュ値」または「マルチハッシュ値」と呼ばれるハッシュ値を備える。共有ハッシュ値は、各セカンドパーティの公開鍵のそれぞれのハッシュに基づく。より詳細には、共有ハッシュ値はハッシュ値のシーケンスを備え、各ハッシュ値は公開鍵ハッシュ、すなわち、公開鍵のハッシュである。公開鍵ハッシュは、対応する公開鍵のそれぞれのインデックスに基づくシーケンスをなす順序で配置される。たとえば、第1のインデックスを有する第1の公開鍵のハッシュが、シーケンスの中で1番目に配置されてよく、第2のインデックスを有する第2の公開鍵のハッシュが、シーケンスの中で2番目に配置されてよい等々である。公開鍵ハッシュのシーケンスは、関連付けられたインデックスに基づく順序で公開鍵ハッシュを連結することによって生成されてよい。公開鍵ハッシュを結合する他の好適な方法が使用されてよい。各公開鍵ハッシュは、それぞれの公開鍵に同じハッシュ関数を適用することによって生成される。任意の好適なハッシュ関数が使用されてよい。有利なハッシュ関数の例が以下に与えられる。
【0118】
第1のロックスクリプトは、消費するトランザクション(たとえば、第2のトランザクション)のロック解除スクリプトと一緒に実行されたとき、ロック解除スクリプトが少なくともインデックス、公開鍵、および署名を備えることを必要とするように構成される。第2のトランザクションのロック解除スクリプトの中に含まれるインデックス、公開鍵、および署名は、それぞれ、ターゲットインデックス、ターゲット公開鍵、およびターゲット署名と呼ばれる。第1のロックスクリプトが実行されると、第1のロックスクリプトは、共有ハッシュ値からハッシュ値を抽出する(すなわち、取得する)。共有ハッシュ値から抽出されるハッシュ値とは、ターゲットインデックス(すなわち、第2のトランザクションのロック解除スクリプトの中のインデックス)に対応するハッシュ値のシーケンスの中に配置されているハッシュ値である。
【0119】
第1のロックスクリプトはまた、実行されたとき、ターゲット公開鍵のハッシュを生成するとともに、ターゲット公開鍵の生成されたハッシュが抽出されたハッシュ値に整合する(すなわち、それと同じである)ことを検証するように構成される。この意味で、第1のロックスクリプトは、ターゲット公開鍵がハッシュして、予想されるハッシュ値、すなわち、事前計算されたハッシュ値になることを保証する。このことは、スクリプトがハッシュパズルを使用する際に実施されてよい。生成されたハッシュ値と抽出されたハッシュ値とが整合しない場合、第1のロックスクリプトの実行は失敗する。第1のロックスクリプトはまた、実行されたとき、ターゲット公開鍵を使用してターゲット署名を有効化するように構成される。言い換えれば、第1のロックスクリプトは、ターゲット公開鍵にとってターゲット署名が有効な署名であることを検証するように構成される。ターゲット署名の検証、および抽出されたハッシュ値と生成されたハッシュ値との比較は、任意の順序で実行されてもよい。いくつかの例では、第1のロックスクリプトは、抽出される公開鍵のためのペイツーパブリックキーハッシュ(P2PKH)スクリプトを備える。
【0120】
第1のブロックチェーントランザクションを生成させると、コーディネータ503は、有効なトランザクションの任意の他の要件が果たされることを想定して、それをブロックチェーンネットワーク106へ送ってよい。追加または代替として、コーディネータ503は、第1のトランザクションをファーストパーティ501へ送ってよい。たとえば、ファーストパーティ501は、第1のトランザクションの入力の中に署名を含めてよく、したがって、トランザクションに資金を供給する。ファーストパーティは、次いで、第1のトランザクションをブロックチェーンネットワーク106にサブミットしてよい。別の追加または代替のオプションとして、コーディネータ503が第1のトランザクションをセカンドパーティ502のうちの1つまたは複数へ送ってよい。セカンドパーティのうちの1つが、次いで、第1のトランザクションをブロックチェーンネットワーク106にサブミットしてよい。コーディネータ503が第1のトランザクションを1つまたは複数のサードパーティへ、すなわち、ファーストパーティ501およびセカンドパーティ502以外のユーザ、エンティティなどへ送ってよいことも除外されない。
【0121】
第1のロックスクリプト、および特に共有ハッシュ値を生成するために、コーディネータ503は、各セカンドパーティ502のそれぞれの公開鍵、各セカンドパーティ502の公開鍵のハッシュ値(公開鍵ハッシュ)、または共有ハッシュ値のうちの、少なくとも1つへのアクセスを必要とする。共有される値および公開鍵ハッシュのうちの少なくとも1つが利用可能である場合、第1のロックスクリプトの中に出現するのが共有ハッシュ値であるので、コーディネータ503は必ずしも公開鍵を必要とするとは限らない。コーディネータが公開鍵へのアクセスを有する場合、コーディネータ503は、各公開鍵にハッシュ関数を適用することによって公開鍵ハッシュを生成してよい。それぞれの公開鍵ハッシュを生成するために公開鍵に(オフチェーンで)適用されるハッシュ関数は、第1のロックスクリプトがターゲット公開鍵に(スクリプトの中で)適用するように構成される同じハッシュ関数である。
【0122】
公開鍵は、たとえば、ウェブページまたは他のそのようなリソースから、公的にアクセス可能であってよい。いくつかの例では、1つまたは複数のセカンドパーティ502は、それらのそれぞれの公開鍵をコーディネータ503へ送ってよい。セカンドパーティ502が、必要とされる公開鍵の一部または全部をコーディネータ503へ送ってよいことも、除外されない。
【0123】
公開鍵を取得する(たとえば、受信する)のではなく、コーディネータ503は、たとえば、セカンドパーティ502のうちの1つまたは複数から、公開鍵ハッシュおよび/または共有ハッシュ値を受信してよい。たとえば、セカンドパーティ502のうちの1つが、他のセカンドパーティ502の公開鍵および/または公開鍵ハッシュを取得してよく、コーディネータ503へ送られるべき共有ハッシュ値を生成してよい。
【0124】
いくつかの例では、公開鍵ハッシュを生成するために公開鍵に適用され、生成されたハッシュ値を生成するためにターゲット公開鍵に適用されるハッシュ関数は、線形ハッシュ関数、たとえば、暫定版において規定される線形ハッシュ関数
H0(x)=ax+b mod p mod q
であってよい。
【0125】
第1のロックスクリプトは、少なくとも4つの数学演算を実行するように構成されたハッシュ関数(HF:hash function)スクリプト[H0]を備えてよい。各演算は、ブロックチェーンスクリプト言語(たとえば、Script)の単一の関数(たとえば、オペコード)によって実行されてよい。代替として、演算の一部または全部が2つ以上の関数によって実行されてよい。第1の演算は、第1のパラメータでターゲット公開鍵を乗算することによって第1の中間結果を算出することを伴う。第1の演算は、前記乗算からなってよい。代替として、第1の演算は、1つまたは複数の追加の下位演算(たとえば、加算、減算など)を伴ってもよい。第2の演算は、第1の中間結果に第2のパラメータを加算することによって第2の中間結果を算出することを伴う。第2の演算は、前記加算からなってよい。第3の演算は、第3のパラメータを使用して第2の中間結果に対して第1のモジュロ演算を実行することに基づいて第3の中間結果を算出することを伴う。言い換えれば、第3の中間結果は、第3のパラメータで第2の中間結果を除算した後の剰余に基づく。第3の演算は、前記第1のモジュロ演算からなってよい。第4の演算は、第4のパラメータを使用して第3の中間結果に対して第2のモジュロ演算を実行することに基づいてハッシュ結果を算出することを伴う。言い換えれば、第4の中間結果は、第4のパラメータで第3の中間結果を除算した後の剰余に基づく。第4の演算は、前記第2のモジュロ演算からなってよい。たとえば、HFスクリプトは以下の形式
<a> OP_MUL <b> OP_ADD <p> OP_MOD <q> OP_MOD
を取ってよく、ただし、aは第1のパラメータであり、bは第2のパラメータであり、pは第3のパラメータであり、qは第4のパラメータである。当業者はオペコードを熟知されよう。
【0126】
第1のパラメータaは任意の非0数であってよく、ランダムに選ばれてよい。第2のパラメータbは任意の数であってよく、ランダムに選ばれてよい。第3のパラメータpは素数であってよく、特定の楕円曲線に関連してよい。たとえば、pは、いくつかのブロックチェーンによって使用されるSecp256k1楕円曲線を規定する素数、すなわち、p=2256-232-29-28-27-26-24-1であってよい。第4のパラメータnは2Lという形式を取り、ただし、Lはハッシュ結果の長さを規定するように選ばれる。一般に、Lは任意の好適な数、たとえば、32、64、128、160、256、512などであってよい。そのようなモジュロ(または、モジュロベースの)関数は、一様に選ばれる値に対して衝突の確率が無視できるという意味で、衝突に対してセキュアである。
【0127】
H0(x)=ax+b mod qまたは単にH0(x)=x mod qなどの、代替のハッシュ関数が使用されてよい。前者のハッシュ関数の場合、第1のロックスクリプトは、第1のパラメータでのターゲット公開鍵の乗算に基づいて第1の中間結果を最初に生成すること、次いで、第1の中間結果への第2のパラメータの加算に基づいて第2の中間結果を生成すること、および次いで、第4のパラメータでの第2の中間結果のモジュロに基づいて、予想されるハッシュ値を生成することによって、ターゲット公開鍵のハッシュを生成するように構成された、HFスクリプトを備えてよい。後者のハッシュ関数の場合、第1のロックスクリプトは、第4のパラメータでのターゲット公開鍵のモジュロに基づいてターゲット公開鍵のハッシュを生成するように構成されたHFスクリプトを備えてよい。HFスクリプトが既存のハッシュ関数オペコード、たとえば、OP_HASH160を利用してよいことも除外されない。
【0128】
たとえば、コーディネータ503によって、第1のトランザクションがブロックチェーンネットワーク106にサブミットされていると、第1のロックスクリプトによってロックされている第1のトランザクションの出力をロック解除するロック解除スクリプトを有するセカンドパーティ502のうちの1つによって、第2のトランザクションが生成され得る。セカンドパーティ502は、それらのインデックス、それらの公開鍵、および公開鍵に対応する秘密鍵を使用して生成された署名を、第2のトランザクションのロック解除スクリプトの中に含める。第2のトランザクションが、次いで、ブロックチェーンネットワーク106にサブミットされる。追加または代替として、第2のトランザクションは、ファーストパーティ501、セカンドパーティ502のうちの1つもしくは複数、および/またはサードパーティに利用可能にされてよい。
【0129】
以下は、説明する実施形態に従って1つまたは複数のパーティによってロック解除され得るロックスクリプトの例示の実装形態を提供する。
【0130】
以下の方式は、スクリプト有効化のための最適な計算時間を有する支払い方法を導入する。m個のパーティのグループが、共有される値
H(P1)||H(P2)...||H(Pm)
を作成し、ただし、||は連結演算子であり、HはオペコードOP_HASH160に対応する暗号ハッシュ関数である。したがって、H(Pi)は20バイトのハッシュ値である。公開鍵Piは、圧縮形式または非圧縮形式のいずれかで表現される。圧縮された公開鍵は、(+/-,Py)という形式を取り、ただし、Pyは公開鍵のy座標である。
【0131】
共有された値の中のそれの公開鍵Piの所有権をパーティiが証明するために、パーティiは、バイト20(i-1)におけるそれの開始位置を識別することができる。したがって、図6に示すように、パーティiは、それの署名および公開鍵と一緒にロック解除スクリプトの中でそれのインデックスiを指定しなければならず、すなわち、
【0132】
【数12】
【0133】
であり、ただし、ロックスクリプトは、
OP_1 OP_SUB <14> OP_MULT <H(P1)||H(P2)....||H(Pm)> OP_SWAP OP_SPLIT <14> OP_SPLIT OP_DROP OP_SWAP OP_DROP OP_1 OP_PICK OP_HASH160 OP_EQUALVERIFY OP_CHECKSIG
である。
【0134】
14が16進法で表現された整数20であることに留意されたい。
【0135】
これが、説明する実施形態を実施するために使用されてよいロックスクリプトの一例にすぎないことにも、留意されたい。一般に、ロックスクリプトは、説明したように機能するように構成される任意の形式を取ってもよい。
【0136】
コーディネータは、上記のロックスクリプトを有するトランザクションテンプレートを作成し、支払うパーティ(たとえば、ファーストパーティ501、またはセカンドパーティ502のうちの1つ)へそれを送る。
【0137】
パーティiがロック解除スクリプトの中にそれのインデックスを提供することによって、Piが有効であるかどうかをチェックするために必要とされる計算時間は位数がO(1)である。iを提供しないと、共有される値H(P1)||H(P2)....||H(Pm)の中の可能なm個の位置の各々においてPiの有効化を試みるために、ロックスクリプトが変更されなければならないことになる。このことは、位数がO(m)の計算時間を伴う、不必要なチェックを持ち込むことになる。上記のロックスクリプトを作成することの空間複雑度は、位数がO(m・length(ei))=O(m)である。
【0138】
いくつかのインデックスiにおいて別の公開鍵Pを用いてロックスクリプトを有効化することを希望する外部の攻撃者がいるなら、これはHが暗号学的であるので起こりそうにないハッシュ衝突H(P)=H(Pi)まで小さくなるので、この方式はセキュアである。言い換えれば、連結されたハッシュの共有される値と公開鍵Piおよびそれらのインデックスiの集合との間に1対1マッピングがある。
【0139】
10. 結論
本明細書における開示が与えられると、開示する技法の他の変形形態または使用事例が当業者に明らかになり得る。本開示の範囲は、説明する実施形態によって限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0140】
たとえば、上記のいくつかの実施形態は、ビットコインネットワーク106、ビットコインブロックチェーン150、およびビットコインノード104に関して説明されている。しかしながら、ビットコインブロックチェーンがブロックチェーン150の1つの特定の例であること、および上記の説明が任意のブロックチェーンに一般に適用されてよいことが、諒解されよう。すなわち、本発明は、決してビットコインブロックチェーンに限定されない。より一般的には、ビットコインネットワーク106、ビットコインブロックチェーン150、およびビットコインノード104への、上記の任意の言及は、それぞれ、ブロックチェーンネットワーク106、ブロックチェーン150、およびブロックチェーンノード104への言及と置き換えられてよい。ブロックチェーン、ブロックチェーンネットワーク、および/またはブロックチェーンノードは、上記で説明したようなビットコインブロックチェーン150、ビットコインネットワーク106、およびビットコインノード104の、説明する特性の一部または全部を共有してよい。
【0141】
本発明の好ましい実施形態では、ブロックチェーンネットワーク106はビットコインネットワークであり、ビットコインノード104は、ブロックチェーン150のブロック151を作成すること、発行すること、伝搬させること、および記憶することの、説明する機能の少なくともすべてを実行する。これらの機能の全部ではなく、1つまたはいくつかしか実行しない他のネットワークエンティティ(または、ネットワーク要素)があってよいことが、除外されない。すなわち、ネットワークエンティティは、ブロックを作成および発行することなく、ブロックを伝搬させることおよび/または記憶することの機能を実行してよい(これらのエンティティが好適なビットコインネットワーク106のノードとは見なされないことを想起されたい)。
【0142】
本発明の他の実施形態では、ブロックチェーンネットワーク106はビットコインネットワークでなくてよい。これらの実施形態では、ブロックチェーン150のブロック151を作成すること、発行すること、伝搬させること、および記憶することの機能の全部ではないが、少なくとも1つまたはいくつかをノードが実行してよいことが除外されない。たとえば、それらの他のブロックチェーンネットワークにおいて、「ノード」は、ブロック151を作成および発行するが、それらのブロック151を記憶せずおよび/または他のノードに伝搬させないように構成される、ネットワークエンティティを指すために使用されてよい。
【0143】
さらにより一般的には、上記の「ビットコインノード」104という用語への任意の参照は、「ネットワークエンティティ」または「ネットワーク要素」という用語と置き換えられてよく、そのようなエンティティ/要素は、ブロックを作成すること、発行すること、伝搬させること、および記憶することの役割の一部または全部を実行するように構成される。そのようなネットワークエンティティ/要素の機能は、ブロックチェーンノード104を参照しながら上記で説明した同様の方法で、ハードウェアで実装されてよい。
【0144】
上記の実施形態が単に例として説明されていることが諒解されよう。より一般的には、以下の声明のうちの任意の1つまたは複数に従って方法、装置、またはプログラムが提供されてよい。
【0145】
声明1. ブロックチェーントランザクションを生成するコンピュータ実装方法であって、トランザクションは、ある金額のデジタル資産をファーストパーティから複数のセカンドパーティのうちの1つに移転するためのものであり、各セカンドパーティは、それぞれの公開鍵に関連付けられ、各それぞれの公開鍵は、それぞれのインデックスに関連付けられ、方法は、コーディネーティングパーティによって実行され、かつ
第1のブロックチェーントランザクションを生成することであって、第1のブロックチェーントランザクションが、共有ハッシュ値を備える第1のロックスクリプトを備え、共有ハッシュ値が、ハッシュ値のシーケンスを備え、各ハッシュ値が、それぞれの公開鍵のうちの1つのハッシュであり、それぞれの公開鍵に関連付けられたそれぞれのインデックスに対応する、シーケンスの中の位置に配置され、第1のロックスクリプトが、第2のブロックチェーントランザクションの第1のロック解除スクリプトと一緒に実行されたとき、a)第1のロック解除スクリプトがターゲットインデックス、ターゲット公開鍵、およびターゲット署名を備えることを必要とし、ならびにb) i)ターゲットインデックスに対応する、シーケンスの中の位置において共有ハッシュ値からハッシュ値を抽出し、ii)ターゲット公開鍵のハッシュを生成するとともに、生成されたハッシュ値が抽出されたハッシュ値に整合することを必要とし、ならびにiii)ターゲット公開鍵にとってターゲット署名が有効な署名であることを検証するように構成されることと、
ブロックチェーンネットワークの1つまたは複数のノード、ファーストパーティ、複数のセカンドパーティのうちの1つまたは複数、および1つまたは複数のサードパーティのうちの、少なくとも1つに利用可能な第1のブロックチェーントランザクションを作成することとを備える。
【0146】
いくつかの実施形態では、ハッシュ値を抽出することは、インデックスiに対応する、シーケンスの中の位置iにおけるハッシュ値を識別することと、たとえば、スタック上にそれを配置することによって、ずっと運用されるためにそれを利用可能にすることとを備える。抽出されたハッシュ値は、次いで、生成されたハッシュ値と比較されてよい。
【0147】
声明2. 声明1の方法であって、第1のロックスクリプトは、ii)およびiii)を実行するように構成されたペイツーパブリックキーハッシュスクリプトを備える。
【0148】
声明3. 声明1または声明2の方法であって、
ハッシュ値の各々を取得することと、
共有ハッシュ値を生成することとを備える。
【0149】
声明4. 声明3の方法であって、前記取得することは、セカンドパーティのうちの1つまたは複数からそれぞれの公開鍵のうちの1つまたは複数を受信することと、1つまたは複数のそれぞれの公開鍵のそれぞれのハッシュ値を生成することとを備える。
【0150】
声明5. 声明4の方法であって、1つまたは複数のそれぞれの公開鍵の各々は、その公開鍵に関連付けられたセカンドパーティから受信される。
【0151】
声明6. 声明3~5のうちのいずれかの方法であって、前記取得することは、セカンドパーティのうちの1つまたは複数からハッシュ値のうちの1つまたは複数を受信することを備える。
【0152】
声明7. 前述の任意の声明の方法であって、セカンドパーティのうちの1つまたは複数から共有ハッシュ値を取得することを備える。
【0153】
声明8. 前述の任意の声明の方法であって、共有ハッシュ値は、ハッシュ値のシーケンスの連結である。
【0154】
声明9. 前述の任意の声明の方法であって、コーディネーティングパーティは複数のセカンドパーティのうちの1つである。
【0155】
声明10. 声明1~8のうちのいずれかの方法であって、コーディネーティングパーティはファーストパーティである。
【0156】
声明11. 前述の任意の声明の方法であって、第1のロックスクリプトは、少なくとも、
第1のパラメータでのターゲット公開鍵の乗算に基づいて第1の中間結果を生成するステップと、
第1の中間結果への第2のパラメータの加算に基づいて第2の中間結果を生成するステップと、
第3のパラメータでの第2の中間結果のモジュロに基づいて第3の中間結果を生成するステップと、
第4のパラメータでの第3の中間結果のモジュロに基づいて、予想されるハッシュを生成するステップと
を実行することによってターゲット公開鍵のハッシュを生成するように構成された、HFスクリプトを備える。
【0157】
声明12. 声明1~10のうちのいずれかの方法であって、第1のロックスクリプトは、少なくとも、
第1のパラメータでのターゲット公開鍵の乗算に基づいて第1の中間結果を生成するステップと、
第1の中間結果への第2のパラメータの加算に基づいて第2の中間結果を生成するステップと、
第4のパラメータでの第2の中間結果のモジュロに基づいて、予想されるハッシュを生成するステップと
を実行することによってターゲット公開鍵のハッシュを生成するように構成された、HFスクリプトを備える。
【0158】
声明13. 声明1~10のうちのいずれかの方法であって、第1のロックスクリプトは、少なくとも、
第4のパラメータでのターゲット公開鍵のモジュロに基づいて、予想されるハッシュを生成するステップ
を実行することによってターゲット公開鍵のハッシュを生成するように構成された、HFスクリプトを備える。
【0159】
声明14. 声明11~13のうちのいずれかの方法であって、第1のパラメータは任意の非0数であり、第2のパラメータは任意の数であり、第3のパラメータは正数であり、第4のパラメータは2^Lであり、Lはハッシュ結果の長さを規定するように選ばれる。
【0160】
声明15. 声明14の方法であって、pはsecp256k1楕円曲線を規定する素数であり、および/またはLは32、64、128、160、256、もしくは512のうちの1つである。
【0161】
声明16. ブロックチェーントランザクションを生成するコンピュータ実装方法であって、トランザクションは、複数のセカンドパーティのうちの1つにロックされた、ある金額のデジタル資産をロック解除するためのものであり、各セカンドパーティは、それぞれの公開鍵に関連付けられ、各それぞれの公開鍵は、それぞれのインデックスに関連付けられ、第1のブロックチェーントランザクションは、共有ハッシュ値を備える第1のロックスクリプトを備え、共有ハッシュ値は、ハッシュ値のシーケンスを備え、各ハッシュ値は、それぞれの公開鍵のうちの1つのハッシュであり、それぞれの公開鍵に関連付けられたそれぞれのインデックスに対応する、シーケンスの中の位置に配置され、第1のロックスクリプトは、第2のブロックチェーントランザクションの第1のロック解除スクリプトと一緒に実行されたとき、a)第1のロック解除スクリプトがターゲットインデックス、ターゲット公開鍵、およびターゲット署名を備えることを必要とし、ならびにb) i)ターゲットインデックスに対応する、シーケンスの中の位置において共有ハッシュ値からハッシュ値を抽出し、ii)ターゲット公開鍵のハッシュを生成するとともに、生成されたハッシュ値が抽出されたハッシュ値に整合することを必要とし、ならびにiii)ターゲット公開鍵にとってターゲット署名が有効な署名であることを検証するように構成され、方法は、セカンドパーティのうちのターゲットセカンドパーティによって実行され、かつ
第2のブロックチェーントランザクションを生成することであって、第2のブロックチェーントランザクションが、第1のブロックチェーントランザクションの第1のロックスクリプトおよび第1のロック解除スクリプトを参照する入力を備え、第1のロック解除スクリプトが、ターゲットセカンドパーティに関連付けられたそれぞれの公開鍵、それぞれの公開鍵に関連付けられたそれぞれのインデックス、およびターゲットセカンドパーティに関連付けられたそれぞれの公開鍵にとっての有効な署名を備えることと、
ブロックチェーンネットワークの1つまたは複数のノード、ファーストパーティ、複数のセカンドパーティのうちの1つまたは複数、および1つまたは複数のサードパーティのうちの、少なくとも1つに利用可能な第2のブロックチェーントランザクションを作成することとを備える。
【0162】
声明17. 声明16の方法であって、第1のブロックチェーントランザクションを生成するためにターゲット公開鍵および/またはそのハッシュ値をコーディネーティングパーティへ送ることを備える。
【0163】
声明18. コンピュータ機器であって、
1つまたは複数のメモリユニットを備えるメモリと、
1つまたは複数の処理ユニットを備える処理装置とを備え、メモリは、処理装置上で動作するように構成されたコードを記憶し、コードは、処理装置上にあるときに前述の任意の声明の方法を実行するように構成される。
【0164】
声明19. コンピュータ可読ストレージ上に組み込まれ、1つまたは複数のプロセッサ上で動作するときに声明1~17のうちのいずれかの方法を実行するように構成された、コンピュータプログラム。
【0165】
本明細書で開示する別の態様によれば、コーディネーティングパーティおよびセカンドパーティのアクションを備える方法が提供されてよい。
【0166】
本明細書で開示する別の態様によれば、コーディネーティングパーティおよびセカンドパーティのコンピュータ機器を備えるシステムが提供されてよい。
【符号の説明】
【0167】
100 システム
101 パケット交換ネットワーク
102 コンピュータ端末、コンピュータ機器
103 ユーザ、パーティ
104 ブロックチェーンノード
105 クライアントアプリケーション
106 ピアツーピア(P2P)ネットワーク
107 サイドチャネル
150 ブロックチェーン
151 データ、ブロック
152 トランザクション
153 ジェネシスブロック(Gb)
154 順序付きセット、順序付きプール
155 ブロックポインタ
201 ヘッダ
202 入力、入力フィールド
203 出力、出力フィールド、未消費出力、トランザクション出力、未消費トランザクション出力、UTXO
401 トランザクションエンジン
402 ユーザインターフェース(UI)レイヤ
450 ノードソフトウェア
451 プロトコルエンジン
452 スクリプトエンジン
453 スタック
454 アプリケーションレベル決定エンジン
455 ブロックチェーン関連機能モジュール
455C コンセンサスモジュール
455P 伝搬モジュール
455S 記憶モジュール
500 ユーザインターフェース(UI)
501 ユーザ選択可能要素
502 データ入力フィールド
503 情報要素
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
【国際調査報告】