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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】バイオマスの水熱処理
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20240517BHJP
   B01J 3/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B09B3/40
B01J3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571562
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2022064381
(87)【国際公開番号】W WO2022248653
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】21176048.3
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504346525
【氏名又は名称】ネーデルランツェ・オルガニザーティ・フォール・トゥーヘパストナトゥールウェテンシャッペレイク・オンダーズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ペルス, ヤン レンメルト
(72)【発明者】
【氏名】チェプリク, マリウス カジミェシュ
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA12
4D004BA03
4D004CA22
4D004CA40
4D004CC03
4D004DA06
(57)【要約】
本発明は、バイオマスの処理のための方法のための改善された方法であって、(a)バイオマスを処理液中に浸漬することによってバイオマスを水熱反応装置中で水熱処理に曝露するステップであり、ステップ(b)又は(c)から排出された廃液が、処理液として使用される、ステップと、(b)反応装置から液体を液体出口を介して排出させて溶液を得、同時に、又は後に、反応装置中に他の洗浄液体を導入するステップであり、洗浄液体が、反応装置中に導入される前に、ステップ(a)の動作温度より30℃低い温度以上に事前加熱される、ステップと、(c)反応装置から排出を行って、洗浄された水熱処理バイオマス及び廃液を得るステップとを含み、ステップ(a)及び(b)の少なくとも1つが、100~250℃の範囲の温度で行われる、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスの処理のための方法であって、
(a)バイオマスを処理液中に浸漬することによって前記バイオマスを水熱反応装置中で水熱処理に供するステップであり、ステップ(b)又は(c)から排出された廃液が、処理液として使用される、ステップと、
(b)前記反応装置から前記液を液体出口を介して排出させて溶液を得、同時に、又は後に、前記反応装置中に別の洗浄液体を導入するステップであり、前記洗浄液体が、反応装置中に導入される前に、ステップ(a)の動作温度より30℃低い温度以上に事前加熱される、ステップと、
(c)前記反応装置から排出を行って、洗浄された水熱処理バイオマス及び廃液を得るステップと
を含み、ステップ(a)及び(b)の少なくとも1つが、100~250℃の範囲の温度で行われる、方法。
【請求項2】
ステップ(b)が、
(b1)第1の洗浄ステップであり、第1の洗浄液体を前記反応装置中に導入し、前記反応装置から同時に及び/又は後に液体出口を介して排出を行って、溶液を得る、ステップと、
(b2)任意選択で、1つ又は複数の中間洗浄ステップであり、さらなる洗浄液体を前記反応装置中に導入し、同時に前記反応装置から液体出口を介して排出を行って中間洗浄廃液を得る、ステップと、
(b3)最終洗浄ステップであり、最終洗浄液体を前記反応装置中に導入し、前記反応装置から液体出口を介して同時に排出を行って最終洗浄廃液を得る、ステップと
を含み、洗浄液体がそれぞれ、前記反応装置中に導入される前にステップ(a)の動作温度に事前加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b2)が0~10の中間洗浄ステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水熱処理プラントにおいて行われ、少なくとも2つの水熱反応装置が当該方法を並行して行い、第1の反応装置からの中間洗浄廃液及び最終洗浄廃液の1つ又は複数が、第2の反応装置内で前記第1の洗浄ステップ又は前記中間洗浄ステップの1つ又は複数において洗浄液として使用され、好ましくは前記洗浄廃液の温度が150℃より上に維持される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)から排出された前記廃液がステップ(a)において処理液として使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)において排出後の洗浄された前記バイオマスが、圧力を低下させることによって、蒸気爆発又は制御圧力放出を受ける、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)からの前記廃液の温度が、典型的に蒸気の形態では、ステップ(a)に先立って、好ましくは熱交換器において又は前記処理液中への直接噴射によって、前記処理液を加熱するために使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)の前記処理の間の液体対固体(L/S)比率が、2~25の範囲、好ましくは15~20の範囲にある、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマスが、木質又は草本起原、すなわち、硬材、軟材、及び木、わら、竹、又はそれらの混合物を刈り込み又は切り刻むことから得られた木材を含む木材の、繊維状リグノセルロース系バイオマスを含み、好ましくは前記バイオマスが、サトウキビ収穫残留物(SHR)、空果房(EFB)、廃棄された新鮮果房(FFB)、中果皮、ココナッツ繊維、及び果皮から選択される繊維状バイオマスである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
好ましくは脱水、乾燥、及びペレット化のうちの1つ又は複数によって、前記洗浄された水熱処理バイオマスを処理して固体燃料ペレットにすることをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)で得られた前記溶液が、ステップ(b)で、好ましくはステップ(b3)で、好ましくは熱交換器において、前記洗浄液体を事前加熱するために使用され、及び/又は、ステップ(a)で得られた前記溶液が、それがリグニン収集容器中で100℃未満に冷却されるまで140℃より高い温度で保たれ、前記溶液からリグニンが沈殿する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、固体バイオマス由来燃料。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法、特にステップ(b1)によって得ることができる、溶液。
【請求項14】
少なくとも2つの水熱反応装置、(a)第1の水熱反応装置及び(b)第2の水熱反応装置の反応装置シーケンスを備えるバイオマスの水熱処理用の設備であって、
すべての反応装置が並行して作動し、
(1)水性バイオマス混合物を含むための反応装置内部;
(2)前記バイオマスを受けるための入口;
(3)前記処理液又は洗浄液体を受けるための入口;
(4)好ましくは蒸気を受けるための入口の形態となる、加熱手段;
(5)溶液又は廃液を放出するための出口;
(6)焙焼されたバイオマスを放出するための出口;
(7)プロセスガスを放出するための出口
を備え、
反応装置(a)の出口(5)が、反応装置(b)の入口(3)と流体接続され、前記シーケンスの前記最終反応装置の出口(5)が、反応装置(a)の入口(3)と流体接続されている、設備。
【請求項15】
出口(5)が、入口(3)との流体接続を閉じてリグニン収集容器との流体接続を開くことができるバルブを備える、請求項14に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]本発明は、バイオマス、特に繊維状バイオマスを処理して塩類及び他の不要成分を除去するための方法、並びに前記方法によって得られた固体燃料に関する。
【背景】
【0002】
[0002]焙焼は、農業廃棄物等の安価な低値バイオマスを高級燃料に変換する有用なプロセスである。焙焼プロセスにおいて、バイオマスは、適度に高温、典型的には、酸素を添加せずに200~320℃に加熱されて、ほとんどの残留水の除去、及びバイオマスの要素のおだやかな分解をもたらして気体フラクション、いわゆる「トールガス」を生成し、この「トールガス」は、水蒸気、二酸化炭素、小さな有機分子、及び圧縮可能固体生成物を含み、圧縮可能固体生成物は、例えば、石炭代用品として固体燃料に加工することができる。
【0003】
[0003]一例として、国際公開第2005/056723号は、焙焼プロセスであって、バイオマスは200~320℃で焙焼され、焙焼によって生成されるガスは、不純物及び可燃性材料を凝縮するように冷却される、焙煎プロセスを記載している。蘭国特許第1029909号は、加圧焙焼プロセスであって、水が熱処理中に液体状態のままである、加圧焙焼プロセスを記載している。この水熱処理は、バイオマスの焙焼及び塩類の遊離を引き起こし、それらは、水に溶解され、機械的手段によって除去することができる。しかし、水熱処理が、単一ステップにおいて行われ、後に脱水する場合、温度は、所望の燃料特性を生成するために比較的高い、例えば、草については190℃、又はヨシ及びわらについてはさらに210℃でなければならない。この温度で、水溶性フェノール及び他の望まれない副生成物は分解から形成される。次いで、絞り出された廃液は、消化されやすくなく、さらに有毒になり得る成分を含む。欧州特許第2206688号は、190~230℃、10~30barで、1~5時間バイオマスを炭化し、その後液体の湿式酸化処理によって、結果生じる固液を分離するための水熱方法を記載する。熱処理の目的はバイオマスの化学変換である。
【0004】
[0004]出願人は、国際公開第2013/162355号に記載されるように、水熱焙焼処理を開発し、それはTorwash(商標)と称される。Torwashで、塩分が高いバイオマスの焙焼が使用可能となり、塩類がTorwashの間に有効に除去されるからである。そのようなバイオマスは、従来の焙焼方法で有効に処理することができなかった。国際出願公開第2013/162355号に記載されるようなTorwashは、第1のステップ(160℃より低い事前洗浄)及び後のステップ(160℃を超える水熱処理)における新鮮な水の使用を必要とする。国際公開第2019/059768号は、100~400℃の温度及び高圧でバイオマス及びPOMEの混合物が加熱される焙焼ステップ、その後の後洗浄ステップを含む方法を記載する。焙焼の間の圧力は、典型的には4~50barの範囲にあると言える。洗浄ステップは、1~1.5barの範囲の圧力で10~50℃の範囲の温度で行われてもよい。洗浄は、必要とされる水の量を最小化するために、向流モードで行われてもよい。
【0005】
[0005]国際公開第2015/091861号は、液相において水を維持するほど高い圧力で、120~150℃の温度で水を使用して、バイオマスを洗浄することによって、セルロース性バイオマス中の不要な無機成分を低減する方法を記載する。固体セルロース性バイオマス材料は、向流方式で洗浄することができる。セルロース性バイオマス材料は、リグニンを含んでいてもよい。洗浄された固体バイオマスが、後に乾燥され及び/又は焙焼されてもよいことがさらに説明される。国際公開第2014/122163号は、熱バイオマス処理における熱回収の問題を記載し、蒸気を発生するために圧力損失を使用することを提案し、その後、凝縮によって熱交換器にその熱を放出するために使用される。特に、国際公開第2014/122163号は、蒸気及び空気で加圧された反応装置中で150~300℃の温度でバイオマスを熱処理に供することによって、バイオマスから燃料を調製する方法を記載し、熱処理の最終圧力は放出される。反応装置中の圧力の少なくとも一部は、不意に放出され、それによって、反応装置から圧力放出タンクに反応を放出する。その後、ガスは、ガスが凝縮されそれらの熱を放出する熱交換器に流れる。
【発明の概要】
【0006】
[0006]発明者らは、水熱処理(Torwashプロセス)が同じ条件下で、つまり、高温及び高圧下で後洗浄ステップと効率的に組み合わせ、それによってバイオマスの洗浄効率を向上させることができることが驚くべきことに分かった。カリウム及び塩化物の高い除去速度を達成することができ、得られた固体は、灰分含有量及び発熱量/カロリー値に換算して燃料ペレットの必要条件を満たす。さらに、バイオマスからリグニンを大部分取り除くことができる。別の利点は、後洗浄ステップの洗浄廃液を再利用することができ、水熱処理ステップで再使用することができ、水熱処理ステップの廃液は高温で除去され、その結果、その潜熱を熱交換器において入ってくる液体水に移動させることができ、それは、全プロセスをよりエネルギー効率的にする。
【0007】
[0007]したがって、本発明は、バイオマスの処理のための方法であって、
(a)バイオマスを処理液中に浸漬することによってバイオマスを水熱反応装置中で水熱処理に供するステップであり、ステップ(b)又は(c)から排出された廃液が、処理液として使用される、ステップと、
(b)反応装置から上記液を液体出口を介して排出させて溶液を得、同時に、又は後に、反応装置中に別の洗浄液体を導入するステップであり、洗浄液体が、反応装置中に導入される前にステップ(a)の動作温度より30℃低い温度以上に事前加熱される、ステップと、
(c)反応装置から排出を行って、洗浄された水熱処理バイオマス及び廃液を得るステップと
を含み、ステップ(a)及び(b)の少なくとも1つが、100~250℃の範囲の温度で行われる、方法に関する。
【0008】
[0008]本発明はさらに、本発明による方法を実行するためのシステム及び本発明による方法によって得ることができる固体燃料に関する。ここで、固体燃料は、洗浄された水熱処理バイオマスに相当する、又はそれから得ることができる。
[好ましい実施形態の一覧]
1.バイオマスの処理のための方法であって、
(a)バイオマスを処理液中に浸漬することによってバイオマスを水熱反応装置中で水熱処理に供するステップであり、ステップ(b)又は(c)から排出された廃液が、処理液として使用される、ステップと、
(b)反応装置から上記液を液体出口を介して排出させて溶液を得、同時に、又は後に、反応装置中に別の洗浄液体を導入するステップであり、洗浄液体が、反応装置中に導入される前にステップ(a)の動作温度より30℃低い温度以上に事前加熱される、ステップと、
(c)反応装置から排出を行って、洗浄された水熱処理バイオマス及び廃液を得るステップと
を含み、ステップ(a)及び(b)の少なくとも1つが、100~250℃の範囲の温度で行われる、方法。
2.ステップ(b)が、
(b1)第1の洗浄ステップであり、第1の洗浄液体を反応装置中に導入し、反応装置から同時に及び/又は後に液体出口を介して排出を行って、溶液を得るステップと、
(b2)任意選択で、1つ又は複数の中間洗浄ステップであり、さらなる洗浄液体を反応装置中に導入し、同時に反応装置から液体出口を介して排出を行って中間洗浄廃液を得る、ステップと、
(b3)最終洗浄ステップであり、最終洗浄液体を反応装置中に導入し、反応装置から液体出口を介して同時に排出を行って最終洗浄廃液を得る、ステップと
を含み、洗浄液体がそれぞれ、反応装置中に導入される前にステップ(a)の動作温度に事前加熱される、実施形態1に記載の方法。
3.ステップ(b2)が0~10の中間洗浄ステップを含む、実施形態2に記載の方法。
4.水熱処理プラントにおいて行われ、少なくとも2つの水熱反応装置がプロセスを並行して行い、第1の反応装置からの中間洗浄廃液及び最終洗浄廃液の1つ又は複数が、第2の反応装置内で第1の洗浄ステップ又は中間洗浄ステップの1つ又は複数において洗浄液として使用され、好ましくは洗浄廃液の温度が150℃より上に保たれる、実施形態2又は3に記載の方法。
5.ステップ(c)から排出された廃液がステップ(a)において処理液として使用される、実施形態1~4のうちのいずれか一つに記載の方法。
6.ステップ(c)において排出後の洗浄されたバイオマスが、圧力を低下させることによって、蒸気爆発又は制御圧力放出を受ける、実施形態1~5のうちのいずれか一つに記載の方法。
7.ステップ(c)からの廃液の温度が、典型的には蒸気の形態では、ステップ(a)に先立って、好ましくは熱交換器において又は処理液中への直接噴射によって、処理液を加熱するために使用される、実施形態1~6のうちのいずれか一つに記載の方法。
8.ステップ(a)の処理の間の液体対固体(L/S)比率が2~25の範囲、好ましくは15~20の範囲にある、実施形態1~7のうちのいずれか一つに記載の方法。
9.バイオマスが、木質又は草本起原、すなわち、硬材、軟材、及び木、わら、竹、又はそれらの混合物を刈り込み、又は切り刻むことから得られた木材を含む木材の、繊維状リグノセルロース系バイオマスを含み、好ましくはバイオマスが、サトウキビ収穫残留物(SHR)、空果房(EFB)、廃棄された新鮮果房(FFB)、中果皮、ココナッツ繊維、及び果皮から選択される繊維状バイオマスである、実施形態1~8のうちのいずれか一つに記載の方法。
10.好ましくは脱水、乾燥、及びペレット化のうちの1つ又は複数によって、洗浄された水熱処理バイオマスを処理して固体燃料ペレットにすることをさらに含む、実施形態1~9のうちのいずれか一つに記載の方法。
11.ステップ(a)で得られた溶液が、ステップ(b)で、好ましくはステップ(b3)で、好ましくは熱交換器において、洗浄液体を事前加熱するために使用され、及び/又は、ステップ(a)で得られた溶液が、それがリグニン収集容器中で100℃未満に冷却されるまで140℃より高い温度で保たれ、溶液からリグニンが沈殿する、実施形態1~10のうちのいずれか一つに記載の方法。
12.実施形態1~11のうちのいずれか一つに記載の方法によって得ることができる、固体バイオマス由来燃料。
13.実施形態1~12のうちのいずれか一つに記載の方法、特にステップ(b1)によって得ることができる、溶液。
14.少なくとも2つの水熱反応装置、(a)第1の水熱反応装置及び(b)第2の水熱反応装置の反応装置シーケンスを備えるバイオマスの水熱処理用の設備であって、
すべての反応装置が並行して作動し、
(1)水性バイオマス混合物を含むための反応装置内部;
(2)バイオマスを受けるための入口;
(3)処理液又は洗浄液体を受けるための入口;
(4)好ましくは蒸気を受けるための入口の形態となる、加熱手段;
(5)溶液又は廃液を放出するための出口;
(6)焙焼されたバイオマスを放出するための出口;
(7)プロセスガスを放出するための出口
を備え、
反応装置(a)の出口(5)が、反応装置(b)の入口(3)と流体接続され、シーケンスの最終反応装置の出口(5)が、反応装置(a)の入口(3)と流体接続されている、設備。
15.出口(5)が、入口(3)との流体接続を閉じてリグニン収集容器との流体接続を開くことができるバルブを備える、実施形態14に記載の設備。
【詳細な説明】
【0009】
[0009]本発明は、バイオマスの処理のための方法及び処理を行うためのシステム(反応装置)に関する。本発明による方法について本明細書に定義されたすべては、本発明によるシステムに等しく当てはまり、逆の場合も同じである。
【0010】
方法
[0010]第1の態様において、本発明は、バイオマスの処理のための方法であって、
(a)バイオマスを処理液中に浸漬することによってバイオマスを水熱反応装置中で水熱処理に供するステップであり、ステップ(b)又は(c)から排出された廃液が、処理液として使用される、ステップと、
(b)反応装置から上記液を液体出口を介して排出させて溶液を得、同時に、又は後に、反応装置中に別の洗浄液体を導入するステップであり、洗浄液体が、反応装置中に導入される前にステップ(a)の動作温度より10℃低い温度以上に事前加熱される、ステップと、
(c)反応装置から排出を行って、洗浄された水熱処理バイオマス及び廃液を得るステップと
を含み、ステップ(a)及び(b)の少なくとも1つが、100~250℃の範囲の温度で行われる、方法に関する。
【0011】
[0011]1つの実施形態において、ステップ(b)は、焙焼されたバイオマスを実質的に変更せずに、ステップ(a)の後に直接行われる。1つの実施形態において、ステップ(c)は、ステップ(b)の後に直接行われる。方法は、また、固体燃料の製造向けであると表すことができ、固体燃料は、ステップ(c)で、任意選択で、以下に定義されるようなさらなる洗浄及び処理ステップの後に、洗浄された水熱処理バイオマス材料として得られる。本発明者らは、本発明による方法で得られた固体燃料が機械的加圧によってより容易に脱水することができ、その結果、従来の乾燥焙焼プロセスの生成物をより容易にペレット化することができることが分かった。また、本発明による方法によって得られた固体燃料は、溶解可能でない又は溶出可能でない塩類を含み、それらは固体燃料としての適合性を向上させ、その結果、炉の汚損をより少なくする。
【0012】
[0012]本発明は、さらに、本発明による方法による得ることができる固体燃料に関する。本発明による固体燃料は、全灰分含有量が、未処理のバイオマスと比較して、高レベルのケイ酸塩、並びに低レベルのハロゲン化物及びアルカリ金属を含むことを特徴とすることが好ましい。本発明による固体燃料は、典型的にはペレットの形態である。
【0013】
[0013]本発明は、さらに、本発明による方法によって得ることができる抽出物、特にステップ(b1)の廃液に関する。本発明による高温での水での溶出から得られた抽出物は、100℃より低い温度で難溶性であるが、以下に定義された処理温度で、好ましくは150~250℃の範囲において水に容易に溶解可能な有機及び無機成分を含む。この抽出物は、本発明の文脈において溶液とも称する。本発明による抽出物は、消化及び発生有益化合物に対する適合性が改善する。
【0014】
[0014]任意の種類のバイオマス原料を使用することができたが、1つの実施形態において、方法は、高カリウム及び/又は塩化物含有量などの高塩分含有量を有するバイオマスを含む、標準な(乾燥)焙焼にわたってTorwashから利益を得るバイオマスで行われる。バイオマスが本来繊維状で、塩類の溶解の除去のための実質的な量の水を必要とする場合、利点は最大である。このように、好ましい実施形態において、バイオマスは、木質又は草本起原の繊維状リグノセルロース系バイオマスである。このバイオマスは、硬材、軟材、及び木を刈り込み、又は切り刻むことから得られた木材を含む木材であってもよい。草木の起原のバイオマスは、草、わら、干し草、わら、葉、竹、甜菜ヘッド、苔、刈り取った草、庭から出るごみ、食品産業からの残留物(例えば、サトウキビ収穫残留物(SHR)、空果房(EFB)、廃棄された新鮮果房(FFB)、ココナッツ繊維、中果皮、オリーブの穀粒、もみ殻)を含んでいてもよい。方法は、焙焼されたバイオマスの後洗浄が最も最適な結果をもたらすので、繊維状のバイオマスに特に有利である。特に好ましい実施形態において、バイオマスは、繊維状のバイオマスであり、好ましくは、硬材、軟材、及び木、わら、竹、又はそれらの混合物を刈り込み、又は切り刻むことから得られた木材を含む木材から選択され、好ましくは、バイオマスは、SHR、EFB、FFB、中果皮、ココナッツ繊維、竹、硬材、軟材、及び木を刈り込み、又は切り刻むことから得られた木材を含む木材から選択され、最も好ましくは、バイオマスは、SHR、EFB、FFB、中果皮、ココナッツ繊維、及び竹から選択される。
【0015】
[0015]ステップ(a)に供される前に、バイオマスは前処理されてもよい。そのような前処理は、ふるいにかける、又はさもなければ細かく刻む、切断、切り刻む及び/又は検査等によって砂、石、プラスチックなどの非バイオマス材料の除去を含み得る。前処理は、機械的前処理を含んでもよく、それはバイオマスの構造を、小さな粒子、例えば、直径0.1~10cmに破壊することを含んでいてもよい。機械的前処理は、例えば、チョッパー、石臼、ボールミル、押出機等を使用する細断、粉砕、研削、又は押し出しを含むことが好ましい。
【0016】
[0016]別の実施形態において、本発明による方法は、蒸気蒸留プロセスを交換することに理想的に適し、バイオマスは、揮発性成分、特に、油剤、テルペン又は香料などの不水溶性のものが除去される。蒸気ではぎ取られたバイオマスが廃棄物の流れと考えられる場合、これは、オレンジピールからのDリモネンの製造において特に有利である。オレンジピールを本発明による方法に供することは、Dリモネンの製造を可能にし、処理されたバイオマスを同時に価値のある生成物に変換する。また、蒸気ではぎ取られたバイオマスの熱及び圧力は、本発明による方法のステップ(a)において利用することができ、それは、さらに全プロセスのエネルギー効率を向上させる。
【0017】
ステップ(a)
[0017]本発明による方法のステップ(a)は、例えば、国際公開第2013/162355号の当業者に公知のような標準の水熱処理ステップである。この水熱処理は、大部分に所望の除塩を既にもたらす。灰分、特にハロゲン化物及びアルカリ金属は、腐食、スラグ化、汚損、及び凝集の問題を回避するために、固体燃料から除去される必要がある。関連イオンのうち、カリウム及び塩化物は、バイオマス中に最も豊富であり、したがって、バイオマス中の塩類は、K及びClよって十分に表されるが、限定されない。
【0018】
[0018]ステップ(a)の間、固相(バイオマス)及び処理液は、反応装置中に導入される前に100~250℃の範囲の温度に加熱される処理液中にバイオマスを典型的には浸漬することによって接触される。ステップ(a)は、「焙焼」又は「湿潤焙焼」とも称してもよい。バイオマスと処理液の混合物は、水熱処理材料を得るために高温で処理される。混合物は、例えば、懸濁液又は液体中に沈んだ固体の形態を取り得る。最良の結果が熱い処理液にバイオマスを沈めることで得られ、それが固体の量当たり必要とされる最低の量の液体で短い処理時間を可能とするからである。固相は、バイオマスによって形成され、任意の付着液を含む。
【0019】
[0019]処理液は、ステップ(b)又は(c)から排出された廃液を含み、バイオマスに添加する前に事前加熱される。そのような事前加熱は、反応装置から排出させる場合のそれが有する温度、好ましくは圧力で廃液を保つ形態を有利に取る。任意の付加的な熱は、方法又は任意の他の熱源で下流に放出され得る蒸気を使用して、反応装置に導入することができる。1つの実施形態において、処理液は、ステップ(b)又は(c)から排出された廃液の少なくとも50wt%、好ましくはステップ(b)又は(c)から排出された廃液の少なくとも80wt%、より好ましくはステップ(b)又は(c)から排出された廃液の少なくとも90wt%又は少なくとも95wt%を含む。1つの実施形態において、処理液は、ステップ(b)又は(c)から排出された廃液である(つまり、それからなる)。さらに以下に定義されるように、ステップ(b)が1つを超える洗浄ステップを含む場合、処理液は、ステップ(b)の第1の洗浄ステップでないステップ(b)からの廃液を含むことが好ましい。ステップ(b)が1つのみの洗浄ステップを含む場合、処理液がステップ(c)からの廃液を含むことが好ましい。別の実施形態において、処理液は、方法から得られた様々な廃液の組み合わせを含む。処理液は、また、水道水、新鮮な水、雨水、又は他の水性液体などの別の水供給源と組み合わせることもできる。
【0020】
[0020]発明者らは、驚くべきことに、ステップ(b)又は(c)から排出された廃液を水熱処理ステップ(ステップ(a))において処理液として使用することが、カリウム及び塩化物などのイオン、並びにバイオマスからの有機化合物の除去を妨げることが分かった。これらのイオンが低下した量で廃液に含まれていても、得られた固体燃料は、新鮮な水が使用される場合と同様に、流入バイオマスと比較して、これらのイオンにおいて使い果たされる。実際、ステップ(a)において得られた固体中の任意の残留するK及びCl含有種は、排出後に固体マトリックス内に残留する液体に含まれ、このようにしてステップ(b)で容易に除去される。そのため、本発明による方法によって得られた固体燃料を燃焼する場合の炉の腐食及び同様の問題は手近ではない。
【0021】
[0021]ステップ(a)に供される混合物での液体対固体(L/S)比率は、好ましくは2~25の範囲、より好ましくは15~20の範囲にある。これらのL/S比率は、液相中に存在する固体(それらは固体として分類される)及び固相中の液体(液体として分類される)を考慮に入れる。優れた結果は、好ましくは固体が十分に沈められる場合、15~20の範囲のL/S比率で得られた。これらの高いL/S比率で、バイオマスから塩類を有効に取り除くことができた。処理液中のバイオマスの完全な浸漬は、好ましいが、絶対に必要ではない。典型的には、ステップ(a)の初めの処理液から突き出るバイオマスは、速やかに崩壊し沈むであろう。
【0022】
[0022]ステップ(a)及び(b)の少なくとも1つは、「焙焼温度」とも称する100~250℃の範囲の温度で行われる。1つの実施形態において、少なくともステップ(a)は、少なくとも100℃、好ましくは100~250℃の範囲の温度で行われる。1つの実施形態において、少なくともステップ(b)は、少なくとも100℃、好ましくは100~250℃の範囲の温度で行われる。好ましくは、少なくとも(b)は、焙焼温度で行われ、最も好ましくはステップ(a)及び(b)の両方は、その温度領域内で行われる。1つの実施形態において、ステップ(a)及びすべての洗浄ステップ(b)の間の温度は、実質的に一定に保たれ、「焙焼温度」として本明細書で特定される。そのため、この実施形態による方法は、液体の温度を上昇低下させる必要がないことが有効であり、それはエネルギー消費量の点から役立つ。代替的な実施形態において、ステップ(a)は焙焼温度より低い温度で行われ、ステップ(b)は焙焼温度で行われる。この実施形態による方法は、(第1の)ステップ(b)から排出された溶液の消化率が有効であり、ステップ(a)が焙焼温度で行われる場合、排出された溶液と比較して改善する。
【0023】
[0023]バイオマスが十分に処理されることを確保するために、ステップ(a)及び(b)の少なくとも1つは、100~250℃の範囲、好ましくは120~230℃の範囲の焙焼温度で行われる。好ましくは、ステップ(a)及び(b)の両方はこの温度範囲内で行われる。この温度で、焙焼は行われる。この温度での水熱処理又は湿潤焙焼中に、バイオマスの繊維状構造の開口及びヘミセルロースの加水分解などの様々な反応がバイオマス内で行われる。ステップ(a)が160℃より低い温度などの比較的低温で行われ、ステップ(b)が175℃より高い温度などの高温で行われる場合、ヘミセルロース加水分解の分解化合物は、より熱い洗浄液が導入される前に、ステップ(b)の初めに排出の間に大部分取り除かれる。そのため、これらの分解化合物は、ステップ(b)の高温を受けることなく、反応装置から除去され、それら消化性に有益である。そのため、また、水熱処理の溶液は、消化及び発生価値のある化合物への適合性に関してさらに改善される。本発明者らは、そのような比較的低温では、有機化合物の抽出を可能とするためにバイオマスの繊維状構造が既に十分に開かれることが分かった。ステップ(b)のより高温では、焙焼反応はさらに行われ、バイオマスの構造はより脆くなり、より容易に圧縮可能であり、それは処理されたバイオマスからの固体燃料の製造に望ましい。本発明者らは、この特定の実施形態において、本発明の文脈のステップ(a)において焙焼のための最適温度が130~160℃の範囲、最も好ましくは約140℃であることが分かった。そのような温度は、バイオマス構造の十分な開口をもたらして洗浄により塩類を除去し、同時に十分な構造的完全性を保って固体構造を維持し、そこから水が除去されて固体燃料を得る。この実施形態では、ステップ(b)が175~250℃の温度で、最も好ましくは約190℃で行われることが好ましい。
【0024】
[0024]ステップ(b)が上記定義されるような焙焼温度で行われる場合、そのとき、ステップ(a)は、周囲温度(約15℃)~160℃の範囲の温度で行われてもよい。そのため、ステップ(a)は、塩類及び他の抽出物が実際の焙焼に先立って洗い流される事前洗浄ステップの機能を果たす。
【0025】
[0025]特に好ましい実施形態において、ステップ(a)は、100~250℃の範囲、好ましくは120~230℃の範囲の焙焼温度で行われる。ステップ(a)が行われる温度は、動作温度とも称する。水熱反応装置は、好ましくは、反応装置を動作温度に加熱する加熱手段を含む。好ましくは、蒸気は、反応装置を動作温度に加熱するために使用される。これは、反応装置に蒸気を導入することによって行われてもよく、それは、反応装置の温度及び圧力を上昇させるであろう。或いは、処理液は、熱交換器中などの反応装置中への導入に先立って蒸気によって加熱されてもよく、又は、蒸気は、反応装置中への導入に先立って処理液に注入されてもよい。導入された蒸気は、上昇する圧力を考慮して、反応装置中において凝縮し、処理液の一部になってもよい。蒸気は、また、反応装置が熱い処理液の導入によって加熱されるように、反応装置中への導入に先立って処理液を事前加熱するために使用されてもよい。蒸気のエネルギー効率が最もよい使用は、反応装置中に蒸気を直接注入することであり、これは、このように反応装置を加熱する好ましい方法である。好ましい実施形態において、蒸気は、プロセスオフガス、好ましくは本方法から生じる。例えば、圧力が放出される場合、蒸気はステップ(c)で発生される。有利には、この蒸気は採取され、ステップ(a)で反応装置を加熱するために使用される。これは、新しいバッチのバイオマスが方法の別のサイクルのための反応装置中に導入される場合、並行して作動する第2の反応装置、又は同じ反応装置であってもよい。
【0026】
[0026]ステップ(a)及び(b)は、典型的には、液相を液体に保つために高圧で行われる。典型的な圧力は、わずかに動作温度の蒸気圧力よりも高く、典型的には4~50bar、好ましくは12~25barの範囲にある。ステップ(a)及び(b)の期間は、ともに、典型的には5分~5時間、好ましくは10分~2時間、より好ましくは15分~1時間の範囲である。
【0027】
[0027]ステップ(a)は、溶液又は焙焼溶液と称する液相、及び処理された(焙焼された)バイオマス又は材料と称する固相をもたらす。ステップ(a)の終わりに、これらの両方の相は、反応装置にまだ含まれる。処理されたバイオマスは、反応装置において保たれ、ステップ(b)に供され(多重ステップ(b)の場合には、これがステップ(b1)に供される)、一方、溶液が反応装置から放出され、廃棄物として廃棄され、適合すると思われる場合に使用される。本発明による方法で得られた溶液は、相対的に高い量のリグニンを特徴とする。あるリグニンは、温水に十分溶解可能であるが、水が冷える場合に容易に沈殿するので、溶液がリグニン収集容器へ導かれ、そこで到着するまで、高温で保たれることが好ましい。溶液は、リグニン収集容器において放出されるまで、好ましくは少なくとも100℃で、より好ましくは少なくとも140℃又は少なくとも150℃、最も好ましくは焙焼温度で保たれる。そのため、リグニンは、リグニン収集容器に先立って沈殿されず、それは、システムの、沈殿されたリグニンでの汚損を回避する。その結果、リグニンは、制御された方法で溶液から分離され、そのさらなる適用を可能にする。溶液は、任意選択でリグニンの沈殿後に、適合すると思われる場合に使用されてもよい。溶液の可能な適用は、消化、典型的には嫌気性消化によるバイオガスの製造である。このように得られたバイオガスは、例えば、蒸気の発生によって反応装置を加熱するために有利に使用することができる。そのため、コスト効果及び全プロセスの更新性のさらなる向上が達成される。或いは、溶液は、バイオ系化学薬品及び生成物を得るために使用されてもよい。本発明は、また、消化及び発生価値のある化合物に特に好適な、ステップ(b)で、好ましくはステップ(b1)で得られた溶液に関する。
【0028】
[0028]ステップ(a)は、また典型的にはガス状生成物を提供し、それは、バイオマス及び場合により処理液中に存在する有機物の分解生成物を含む。ガス状生成物は、主にHOを含み、さらにしばしば、CO、及び場合によりCO、H、メタン、メタノール、ギ酸、及び酢酸の1つ又は複数を含む。このガス状生成物は、例えば、バイオガス(バイオSNG)の製造において適合すると思われる場合に使用することができる。1つの実施形態において、ステップ(a)のガス状生成物は、少なくとも存在する水の凝縮に供される。縮合生成物は、本発明による方法のステップ(a)又は蒸気発生において水源として使用することができる無塩液体である。
【0029】
ステップ(b)
[0029]ステップ(a)の終わりに、処理されているバイオマスを含む反応装置から、ステップ(b)で排出が行われる。排出は、反応装置からの液相(溶液)の除去を称し、それは、底でバルブを開くことによって、反応装置をデカントすることによって、又は浸漬管を介して液体を除去することによって例えば行われてもよい。ステップ(b)の間、また、洗浄液体は、反応装置中に導入される。洗浄液体の導入は、排出と同時に行われてもよく、そのような洗浄液体は、ステップ(a)で得られた溶液を置換する。反応装置を空にし、充填するためのそのような置換プロセスは、本技術分野において公知である。或いは、最初に、及び任意選択で、短時間の、典型的には5~15分の撹拌(例えば、反応装置内容物を撹拌又は振とう)後に、反応装置から排出が行われ、後に、洗浄液体で充填されてもよい。洗浄液体は、典型的にはステップ(a)の処理液と同じ入口を介して導入される。
【0030】
[0030]ステップ(b)で、ステップ(a)から生じる焙焼された固体生成物は洗浄され、後洗浄とも称する。ステップ(b)が焙焼温度で行われる場合も、ある焙焼がステップ(b)の間に行われる。これは、ステップ(a)が、比較的低温、例えば160℃未満で行われ、ステップ(b)が、焙焼温度で行われる場合、特に当てはまる。そのような事例において、ステップ(b)が少なくとも2つの洗浄ステップを含むことが特に好ましく、少なくとも第1の洗浄ステップは、焙焼温度で行われるべきである。従来の焙焼及びTorwashプロセスにおいて、バイオマスは焙焼ステップ(つまり、「前洗浄」)に供される前に洗浄されて、バイオマスからイオン及び他の抽出物をできる限り除去する。最終固体燃料中の塩素及びカリウムなどのイオンの存在は、望ましくない炉のスラグ化、汚損、凝集、及び腐食を引き起こす。これらのイオンは、そのような問題を回避するために、バイオマスから除去する必要がある。しかし、処理液が塩素、カリウム、及びナトリウムなどの塩類を含んでいてもよいので、ステップ(a)の前にイオンを除去することはあまり効率的でないことが分かった。本発明者らは、処理されたバイオマスが高温で洗浄される後洗浄ステップが、洗浄廃液がステップ(a)で処理液として、新鮮な水がステップ(b)で使用される場合、又はステップ(b)の最終洗浄ステップでの多重ステップの場合に、最適な結果をもたらしたことが分かった。本発明者らは、前洗浄ステップと比較して、後洗浄ステップによってバイオマス中に存在する望ましくないより大きな割合の元素を除去することができることがさらに分かった。理論に拘束されることなく、ステップ(a)の熱処理の前に、Cl、K、及び他の望ましくないイオンの一部は、バイオマスの構造的マトリックスに結合又は埋め込まれ、洗い流すことができないと考えられ、ステップ(a)における熱処理は、これらのイオンを解放し、その結果、実質的にすべての溶解可能なCl及びKは、洗い流すことができる。しかし、得られた固体が脆く容易に破損する可能性があり、その結果、後洗浄が、焙焼バイオマスの破損又は粉砕をもたらし得るので、乾燥焙焼バイオマス又はTorwashに供されたバイオマスに使用可能でない可能性がある。後洗浄は、典型的には固体を保存し、液体に透過するためのフィルターを使用するので、固体から剥がれる小片はこれらのフィルターを通過し、液体流を汚染し、又はフィルターの目詰まりを引き起こし得る。後洗浄のこれらの不都合な点にもかかわらず、本発明者らは、焙焼SHR上に成功裡に後洗浄ステップを行い、それは、その靭性、堅固な性質のため、焙焼材料の破損を引き起こさなかった。洗浄された固体のろ過は、固体の重要な破損を引き起こさず、その結果、固体の枝破片での液体流の汚染及びフィルターの目詰まりは観察されない。さらに、SHRの高い繊維含有量のために、Torwash後でさえ、焙焼された固体が開放構造を保存し、その結果、洗浄液体が固体との最適な接触を有し、イオンは有効に除去され、同時に、焙焼された材料の構造は著しく危険にさらされず、その結果、それらは、普通の焙焼製造固体燃料としてさらに扱うことができる。その理由で、上記定義されるように、本発明による方法のステップ(a)に供されたバイオマスが、木質又は繊維状バイオマスであることが好ましい。
【0031】
[0031]重要なことには、ステップ(b)に導入される洗浄液体は、動作焙焼温度より30℃低い温度以上に、好ましくは動作焙焼温度より10℃低い温度以上に事前加熱される。典型的には、ステップ(a)は、150~250℃などの100~250℃の範囲、好ましくは120~230℃の範囲の焙焼温度で行われ、ステップ(b)に導入された洗浄液体の温度は、少なくとも90℃、好ましくは少なくとも110℃であり、実際の温度より30℃より低い温度以上の温度でステップ(a)は行われる。そのため、反応装置は、方法全体にわたって高温のままであり、エネルギー損失が最小化される。好ましい実施形態において、洗浄液体の温度は、少なくとも動作焙焼温度、より好ましくは動作の焙焼温度より少なくとも10℃高い。
【0032】
[0032]洗浄液体の事前加熱は、本技術分野において公知の任意の方法で行うことができる。本発明による方法の特にエネルギー効率のよい実施形態では、洗浄液体は、方法自体から、例えば、個別の反応装置中で並行して実行される同じ方法から生じる。この実施形態はより詳細に以下に記載される。
【0033】
[0033]ステップ(b)は、高温で、好ましくはステップ(a)で定義されるのと同じ温度範囲で行われる。当業者が理解するように、ステップ(b)全体の間、特に、以下に定義されるような複数の洗浄ステップがある場合の温度は、変動してもよい。高温での洗浄液体の導入は、洗浄液体の導入とその排出との間の期間、温度の著しい低下が観察されない十分に高温でバイオマスを含む反応装置が保たれることを確保する。本技術分野では一般的なとおり、水熱反応装置が熱絶縁されて反応装置の内部からの熱損失を回避することが好ましい。
【0034】
[0034]ステップ(b)の洗浄は、洗浄液体の導入の終了から同じ液体の排出の開始と定義される洗浄時間とも称する持続時間の間続く。このように、ステップ(b)が複数の洗浄ステップを含む場合、ステップはそれぞれある洗浄時間を有する。この洗浄時間は、好ましくは1分~2時間の範囲、好ましくは2分~1時間の範囲、最も好ましくは5~30分である。ステップ(b)は、ステップ(a)の圧力の10%以内などの、ステップ(a)が行われるのとおよそ同じ圧力で好ましくは行われる。
【0035】
[0035]ステップ(b)は、典型的には洗浄ステップと称するが、いくつかの焙焼反応もステップ(b)の間に行われることは本発明の文脈で予見されることができる。これは、ステップ(a)が前洗浄ステップとして行われる場合、特に当てはまるが、ステップ(a)が既に実際の水熱処理ステップである場合でもあり得る。洗浄ステップ(b)は、少なくとも1つの洗浄ステップを含み、それは1回又は複数回繰り返されてもよい。そのような一連の洗浄ステップの最後は、最終洗浄ステップ、つまりバイオマスが反応装置から放出される前の最終洗浄ステップと称する。ステップ(b)は、また1つを超える洗浄ステップを含んでいてもよく、その場合には、ステップ(a)後に直接行われる第1の洗浄ステップは第1の洗浄ステップと称する。そして、最終洗浄ステップが行われる前に、1つ又は複数の中間洗浄ステップが行われてもよい。1つを超える洗浄ステップが行われる場合、上記定義されるように、各ステップの洗浄液体が事前加熱されるべきである。
【0036】
[0036]このように、好ましい実施形態において、ステップ(b)は、
(b1)第1の洗浄ステップであり、第1の洗浄液体を反応装置中に導入し、反応装置から同時に、及び/又は後に液体出口を介して排出を行って、溶液を得る、ステップと、
(b2)任意選択で、1つ又は複数の中間洗浄ステップであり、さらなる洗浄液体を反応装置中に導入し、同時に反応装置から液体出口を介して排出を行って中間洗浄廃液を得る、ステップと、
(b3)最終洗浄ステップであり、最終洗浄液体を反応装置中に導入し、同時に反応装置から液体出口を介して排出を行って最終洗浄廃液を得る、ステップと
を含む。
【0037】
[0037]好ましくは、本実施形態による方法のステップ(b2)が、0~10の中間洗浄ステップ、より好ましくは0~5の中間洗浄ステップ、最も好ましくは、1~2の中間洗浄ステップを含む。
【0038】
[0038]洗浄ステップの各々は液体廃液をもたらす。第1の洗浄ステップの液体排出物は、ステップ(a)の間に形成され、溶液と称する液体である。後の洗浄ステップはそれぞれ洗浄廃液を提供し、中間洗浄ステップの廃液は、中間洗浄廃液と称し、最終洗浄ステップの廃液は、最終洗浄廃液と称する。
【0039】
[0039]中間又は最終洗浄ステップからの洗浄廃液が、第1又は中間洗浄液体における洗浄液体として使用され、したがって、向流から固体流の段階的液体流れを行うことが特に好ましい。これは、廃液が緩衝液に保存される場合、又は2つ以上の反応装置が本発明による方法を並行して、しかし位相をずらして行う場合可能である。非緩衝化操作を行うために、平行反応装置の数は、ステップ(b)における繰り返しの数と少なくとも、好ましくはステップ(b)の間の洗浄ステップの数プラス1と少なくとも等しくなければならない。好ましい実施形態において、ステップ(b2)のうちのいずれかにおいて使用されるさらなる洗浄液体は、向流方式での下流の洗浄ステップからの廃液である。
【0040】
[0040]本発明の方法で使用された洗浄液体は、すべて水性であり、つまり、それらは水を含み、好ましくは、水は液体のみである。本発明者らは、最終洗浄ステップのみ、それはいくつかの実施形態では洗浄ステップのみであり、清浄水で行われるべきであることが分かり、一方、最適な除塩を維持している間、任意のさらなる上流の洗浄ステップについて洗浄廃液は好適であることが分かった。このように、最終洗浄液体は、カリウム及び塩化物などの、除去の目的であるイオンが実質的にないに違いない。このように、1つの実施形態において、ステップ(b3)において使用される水は、アルカリ金属(Li、Na、K、など)のイオン及びハロゲン化物(Cl、Brなど)のイオンが実質的にない。好ましい実施形態において、新鮮な水は、雨水、表層水、水道水、又は逆浸透水などの最終洗浄液体として使用される。アルカリ金属イオンとハロゲン化物の含有量は、本発明の利益、特に得られた固体燃料の詳細を達成するために最終洗浄液体として使用することができるようにこれら水源中で十分に低い。好ましくは、これらのイオンの各々の含有量は、個々に150mg/L未満、最も好ましくは90mg/L未満に保たれる。顕著に、比較的少量の最終洗浄液体は、本発明による方法で必要な新鮮な水のみであり、このように、新鮮な水が不足するエリアで行われるのに申し分なく好適である。実際、この少量の新鮮な水でイオンから除去されることができるバイオマスの量は、本技術分野において先例がない。
【0041】
ステップ(c)
[0041]ステップ(b)の終わりに、処理されているバイオマスを含む反応装置から、ステップ(c)で排出が行われる。排出は、反応装置からの液相(溶液)の除去を称し、底でバルブを開くことにより、又は反応装置のデカントにより例えば行われ得る。ステップ(c)の間、廃液が得られるが、さらなる液体は反応装置に導入されない。ステップ(c)からの廃液は、このように最終洗浄廃液と称し得る。このように、ステップ(c)の排出は、補充なしである。
【0042】
[0042]通常、ステップ(c)は、2つの段階、液体排出物が反応装置から排出される第1の段階、及び処理されたバイオマスが反応装置から除去される第2の段階において行われる。処理されたバイオマスは、反応装置を開くことによって得られてもよく、それは圧力を放出する。この圧力放出は任意の形態を取ってもよい。1つの実施形態において、圧力は瞬間的に放出され、バイオマスは蒸気爆発ステップに供される。圧力放出のために、反応装置中の残留水の少なくとも一部は、バイオマス構造の急膨張を引き起こす蒸気に蒸発する。或いは、圧力は徐々に放出又は制御される。蒸気爆発が行われる場合より少ない程度であるが、バイオマス構造のある程度の膨張が起こり得る、バイオマスが反応装置から得られた後、固体燃料に有利にさらに加工される。そのようなさらなる処理は、本技術において公知であり、脱水、乾燥、ミリング、及び造粒を含み得る。脱水は、遠心分離、ろ過、及び/又は機械的脱水などの本技術分野において公知の任意の方法で成し遂げることができる。液体と固体生成物のそのような分離は、固体材料の内部の任意の残留する液体を外に出すために多孔性の型を使用して、例えば、固体材料を圧迫する、圧搾する、又は遠心分離することによって向上され得る。典型的には、遠心分離機が使用される。ステップ(c)の排出後、固体材料の含水量は、典型的には65~80%などの50~90%の範囲であり、脱水ステップによって約50%に低下することができた。得られた固体材料の含水量によって、さらなる乾燥は有益であり得る。得られた固体の造粒は、ミリングを含み得、保存及び輸送するのが簡単な燃料ペレットを提供する。水熱処理プロセスの文脈において洗浄された固体を乾燥、ペレット化することは、本技術において周知である。好ましい実施形態では、ペレット化は、70~150℃の範囲、好ましくは100~140℃の範囲の温度で行われる。そのような温度でペレット化は、本発明による固体燃料ペレット内の凝集を向上させることが分かった。
【0043】
[0043]液体排出物及び処理されたバイオマスに加えて、ステップ(c)は蒸気を生じ、それは有利に方法における他のところで使用される。好ましくは、ステップ(c)において得られた蒸気は、熱源としてステップ(a)において使用される、又は液体に圧縮される。蒸気発生中に、メタノールとフルフラールのような光有機成分も、反応装置から蒸発し、したがって、蒸気流れに混入されてもよい。これらの成分は、蒸気と一緒に圧縮され、バイオマスからより重い有機成分よりも大きな程度に除去される。理論に拘束されることなく、ステップ(c)の間のバイオマスからの光有機成分の除去は、バイオマスから、及びこのようにして最終固体燃料からもより少ない臭気蒸発に結びつくと考えられる。
【0044】
[0044]ステップ(c)は、ステップ(a)で定義されるのと同じ温度範囲における開始温度で行われてもよい。好ましくは、ステップ(c)は、200~250℃、より好ましくは210~230℃などのこの範囲の上限の温度で開始する。特定の有利な実施形態において、ステップ(c)は、ステップ(a)の動作温度より少なくとも20℃高い温度で行われる。さらなる特定の有利な実施形態において、ステップ(a)及び(b)はおおよそ同じ温度で行われ、一方、ステップ(c)は少なくとも20℃高い温度で行われる。最も好ましくは、ステップ(c)が行われる温度は、20~50℃より高い。ステップ(c)の間、特に圧力が反応装置から放出される場合、温度は典型的には下がる。水の蒸発は、反応装置中の温度を下げる。ステップ(c)は、典型的にはおよそ100℃の温度で終了する。
【0045】
得られた燃料
[0045]本発明は、さらに、本発明による方法によって得ることができる又は得られる固体燃料に関する。本発明による固体燃料は、典型的にはペレット形態を有する。得られた固体燃料は、燃料ペレットとして優れた特性を有しており、ホワイトウッドペレットができるのと同様にして発電において石炭を置換することができるが、それらはそれほど価値がないバイオマス原料から作製される。本発明による方法は、高温での洗浄ステップを考慮して、入ってくるバイオマスからより多くの量のリグニンを除去する。同時に、塩化物及びカリウムを含む大量の灰分はバイオマスから除去される。
【0046】
[0046]本発明による固体燃料はバイオマスに基づく。言いかえれば、それはバイオマスから生じる。バイオマスの好ましい実施形態は上記定義され、高い灰分含有量を備えるバイオマス及び/又は本来繊維状のバイオマスを含む。特に好ましい実施形態において、バイオマスは繊維状バイオマスであり、好ましくは、硬材、軟材、及び木、わら、竹、又はそれらの混合物を刈り込み、又は切り刻むことから得られた木材を含む木材から選択され、好ましくは、バイオマスは、SHR、EFB、FFB、中果皮、ココナッツ繊維、竹、硬材、軟材、木を刈り込み、又は切り刻むことから得られた木材を含む木材から選択され、最も好ましくは、バイオマスは、SHR、EFB、FFB、中果皮、ココナッツ繊維、及び竹から選択される。
【0047】
[0047]好ましい実施形態において、固体燃料は、1~15wt%、好ましくは5~10wt%(乾燥重量)の灰分を特徴とする。具体的には、塩化物含有量は、固体燃料1kg当たり、好ましくは2~50mgの範囲、より好ましくは10~40mgである。同様に、カリウム含有量は、固体燃料1kg当たり、好ましくは50~500mgの範囲、より好ましくは200~400mgである。
【0048】
[0048]本発明による固体燃料の全灰分含有量は、入ってくるバイオマスの全灰分含有量と比較して、低減されてもよいが、これは必ずしもそうだとは限らない。どんな場合でも、本発明による固体燃料は、焙焼又は蒸気爆発によって得られた従来の固体燃料ペレットと比較してより有益な灰分組成物を有する。1つの実施形態において、より有益な灰分組成物は、入ってくるバイオマス中のそれらの含有量に比較して、塩化物及びカリウムによって典型的に表されるハロゲン化物及びアルカリ金属の含有量の低下によって定義される。当業者は、バイオマス、及び固体燃料の塩化物及びカリウムを容易に決定することができ、これらのイオンの低下のレベルを決定することができる。このように、固体燃料は、固体燃料が(乾燥重量に基づいて)生じるバイオマス中の灰分よりも5~95%低いことが好ましい。具体的には、カリウム含有量は、固体燃料が(乾燥重量に基づいて)生じるバイオマス中のカリウム含有量よりも50~99.9%低いことが好ましく、75~99%低いことが好ましく、最も好ましくは90~98%低い。同様に、塩化物含有量は、固体燃料が(乾燥重量に基づいて)生じるバイオマス中の塩化物含有量よりも好ましくは50~99.9%低く、90~99.5%低いことが好ましく、95~99%低いことが最も好ましい。ケイ酸塩などの典型的にはより高い融点を有する他の灰分は、バイオマスからより少ない程度に除去される。より低い溶融灰分がより大きな程度に除去されるので、本発明による固体燃料は、炉の汚損の機会がより低い。
【0049】
[0049]全灰分中の珪素含有量(SiOとして決定された)は、処理されたバイオマス中で、約50wt%から60~95wt%へ、好ましくは75~90wt%へ増加し得、それは、ケイ酸塩などの高溶融非浸出性塩類によって形成されている灰分のより大部分を示す。それらの塩類の存在は、それらが炉の汚損を引き起こさないので、固体燃料としての生成物の適合性を妨げない。他方、全灰分中の塩素の含有量は、処理されたバイオマス中に約3wt%~0.001~1wt%の低さ、好ましくは0.01~0.1wt%に低下してもよい。同様に、全灰分中のカリウムの含有量は、処理されたバイオマスに約9wt%から0.01~2wt%の低さ、好ましくは0.05~1wt%に低下してもよい。塩素及びカリウムの低下は、大幅に低減されている固体燃料中の低融点の容易に溶解可能な灰分を示す。これらの灰分は、固体燃料が燃焼される場合、普通、炉の汚損を増加させる。
【0050】
[0050]このように、好ましい実施形態において、全灰分に対する本発明による固体燃料の珪素含有量(SiOとして決定された)は、60~95wt%、好ましくは75~90wt%の範囲である。さらに好ましい実施形態において、全灰分に対する本発明による固体燃料の塩化物含有量は、0.001~1wt%、好ましくは0.01~0.1wt%の範囲であり、全灰分に対する本発明による固体燃料のカリウム含有量は、0.01~2wt%、好ましくは0.05~1wt%の範囲である。これらの好ましい範囲は、乾燥重量に基づいて1~15wt%、好ましくは5~10wt%の範囲の固体燃料中の全灰分含有量に典型的に関連する。
【0051】
[0051]固体燃料は優れた特性を有する。例えば、それは、固体燃料1kg当たり20~30MJの範囲、好ましくは21~25MJの範囲の発熱量を有する。バイオマスの開放構造及びヘミセルロースの分解を考慮して、固体燃料はより脆く、焙焼によって得られた従来のペレットと比較して容易に粉になる。他方、それらは、例えば、包装及び輸送の間にそれらを適切に扱うことができるのに十分に硬い。本発明による固体燃料は、焙焼によって得られた従来の燃料ペレットよりも一般に硬い。さらに、本発明者らは、150~300℃の範囲で加熱の際の固体燃料の粘着性が蒸気爆発によって得られた燃料ペレットと比較して低減されることが分かった。さらに、本発明による固体燃料は、従来の焙焼及びTorwashプロセスによって得られた固体燃料よりも良好な耐水性を有し、それらは濡れる場合にパルプに崩壊する傾向が少ないことを意味する。本発明による固体燃料は、湿潤環境での2、3日間それらの固体形状を保持し、一方、乾燥焙焼、Torwash、又は蒸気爆発によって得られた従来の固体燃料ペレットは、典型的に非常に迅速に崩壊する。本発明者らは、本発明による方法によって得られた固体燃料が、著しく低減された不快な臭気を示すことがさらに分かった。特に、本発明による方法のステップ(c)は、十分な光有機化合物が、処理されたバイオマスから除去されること、及びこれらの光有機化合物によって通常引き起こされる臭気が大幅に低減されることを確保する。
【0052】
設備
[0052]本発明はさらに、本発明による方法を行うために、特に、本発明による方法の実施形態のために設計され、2つ以上の反応装置が並行して作動する、バイオマスの水熱処理用の設備にさらに関する。このように、本発明による水熱処理設備は、その最も単純な構造において、(a)第1の水熱反応装置及び(b)第2の水熱反応装置を含み、両方の反応装置は平行であるが位相がずれて作動する。
【0053】
[0053]第1及び第2の水熱反応装置の両方は次のものを含む:
(1)水性バイオマス混合物を含むための反応装置内部;
(2)バイオマスを受けるための入口;
(3)処理液又は洗浄液体を受けるための入口;
(4)加熱手段;
(5)溶液又は廃液を放出するための出口;
(6)焙焼されたバイオマスを放出するための出口;
(7)プロセスガスを放出するための出口。
【0054】
[0054]ここで、反応装置(a)の出口(a5)は、反応装置(b)の入口(b3)と流体接続されて、反応装置(a)から得られた1つ又は複数の洗浄廃液が、反応装置(b)中で洗浄液体として使用されることを可能にする。水熱反応装置又は水熱処理反応装置は、本技術分野において公知であり、Torwash反応装置と称してもよい。本発明による処理設備の発明的利点は、主として設備を形成する反応装置シーケンスにおける反応装置間の接続に基づく。
【0055】
[0055]シーケンスにおける反応装置は、すべて上記定義されるような要素(1)~(7)を含む。これらの要素は、水熱処理の技術における当業者に周知である。加熱手段(4)は、上記定義されるように、ステップ(a)の動作温度で反応装置を操作するのに好適である。上記のように、この加熱手段は、好ましくは、反応装置に蒸気を導入するための入口の形態を取る。蒸気は、方法自体から、典型的にはステップ(c)から生じてもよく、及び/又は外部源からの蒸気が使用されてもよい。この入口は、シーケンスにおける反応装置、典型的には別の反応装置のガス出口と流体接続されてもよく、その結果、圧力が反応装置から放出される場合、反応装置から、典型的にはステップ(c)の終わりに蒸気が解放される。反応装置は、方法の様々な段階間に導入される熱負荷によって、各ステップ、及びステップ(b)の各段階で異なる温度で作動することができる。好ましい温度は、本発明による方法について上記定義される。
【0056】
[0056]好ましい実施形態において、出口(6)から放出される焙焼されたバイオマスは、脱水デバイス、ミリングデバイス、及び/又はペレットデバイスでさらに処理される。好ましくは、本発明による水熱処理設備は、脱水デバイス、ミルングデバイス、及びペレタイザーの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも脱水デバイス及びペレタイザー、最も好ましくは脱水デバイス、ミリングデバイス、及びペレタイザーを含む。脱水デバイス、ミリングデバイス、及びペレタイザーは、水熱処理設備の技術分野、及び固体燃料製造の文脈において公知である。処理設備の反応装置は、それぞれ、出口(6)を介して個別の脱水デバイス、ミルングデバイス、及び/又はペレット化デバイスに接続されてもよく、又は、反応装置の出口(6)は、単一の脱水デバイス、ミルングデバイス、及び/又はペレット化デバイスにともに接続されてもよい。このように、好ましい実施形態において、本発明による水熱処理設備は、少なくとも1つの脱水デバイスを含む。脱水デバイスは、水熱処理設備の技術分野、及び固体燃料製造の文脈において公知であり、任意の脱水デバイスも、本発明の文脈において好適である。好ましい脱水デバイスは、遠心機、フィルタープレス(例えば、ベルトフィルタープレス)、脱水スクリュー(スクリュープレス又は押出機)、ドラム増粘剤、及び重力ベルトを含む。このように、好ましい実施形態において、本発明による水熱処理設備は、少なくとも1つのミリングデバイスを含む。ミリングデバイスは、水熱処理設備の技術分野、及び固体燃料製造の文脈において公知であり、任意のミリングデバイスも本発明の文脈において好適である。ミリングデバイスは、また、焙焼及び任意選択で脱水されたバイオマスをミリング可能なミルと称してもよい。このように、好ましい実施形態において、本発明による水熱処理設備は、少なくとも1つのペレタイザーを含む。ペレタイザーは、水熱処理設備の技術分野、及び固体燃料製造の文脈において公知であり、任意のペレタイザーも本発明の文脈において好適である。出口(6)と、本明細書に記載された下流の処理装置と間の接続は、固体を輸送するための接続であり、それは、典型的にはコンベヤーベルトの形態を取る。
【0057】
[0057]本発明による水熱処理設備における反応装置の各々は、水熱処理のための反応装置である。反応装置内部(1)では、バイオマスの焙焼反応及び洗浄の両方が行われる。このように、水熱処理設備は、通常、上記定義された反応装置の上流に水熱処理反応装置や焙焼反応装置を含まない。設備の少なくとも2つの反応装置は、反応装置シーケンスを形成し、反応装置(a)は、シーケンスにおける第1の反応装置であり、反応装置(b)は、シーケンスにおける第2の反応装置である。シーケンスにおける反応装置の数は特に限定されないが、実際的見地から、典型的はシーケンスにおける2つ~12個の反応装置、好ましくは3つ~5つの反応装置がある。通常、シーケンスにおける反応装置の量は、方法の洗浄ステップの量の1つ内にある。このように、3つの洗浄ステップがある場合、反応装置の量は、好ましくは2つ~4つの範囲にある。最も好ましくは、シーケンスにおける反応装置の量は、方法の洗浄ステップの量と等しい。シーケンスにおける最終反応装置は、最終反応装置と称する。第2の反応装置は、最終反応装置であってもよい。設備中の反応装置の総数は、典型的には、本発明による方法で行われる洗浄ステップ(b)の量プラス1と等しい。このように、ステップ(b)が1つの第1の洗浄ステップ、1つの中間洗浄ステップ、及び1つの最終洗浄ステップを含む場合、設備は有利に4つの水熱反応装置を含む。
【0058】
[0058]各反応装置の出口(5)は、シーケンスにおける次の反応装置の入口(3)と流体接続される。ここで、「次の反応装置」は、液体流を時間とともに追跡する場合、本反応装置の第1の1つ下流である反応装置を称する。ここで、第1の反応装置は、シーケンスにおける最終反応装置の次の反応装置としての資格を得、その結果、反応装置の円形の配置が得られる。このように、最終反応装置の出口(5)は、第1の反応装置の入口(3)と流体接続され、その結果、第1の反応装置にも別の反応装置からの洗浄廃液が供給され得る。反応装置シーケンスが2つの反応装置を含む場合、反応装置(b)の出口(b5)は、反応装置(a)の入口(a3)と流体接続される。
【0059】
[0059]各反応装置について、出口(5)は、また、典型的には同じ反応装置の入口(3)と流体接続されて、洗浄廃液のうちの1つの使用が同じ反応装置において処理液として使用されることを可能にする。そのため、出口(5)は、反応装置から排出される廃液を移動させてシーケンスにおける同じ反応装置の入口(3)又は次の反応装置の入口(3)のいずれかへ導かれることを可能にするバルブを備える。同様に、入口(3)は、シーケンスにおける同じ反応装置の出口(5)又は前の反応装置の出口(5)のいずれかから得られる廃液の導入を可能にするバルブを備える。或いは、出口(5)又は入口(3)、又は両方は、2つの別個の出口又は入口の形態を取り、その1つは、同じ反応装置と流体接続され、その1つは、シーケンスにおける別の(前又は次の)反応装置と流体接続される。好ましくは、上記定義されるように、溶液が(副)生成物として設備から放出され、適合すると思われる場合に使用され得るように、各出口は構成される。この構造は、反応装置からバルブ、又は個別の出口としての形態を取ってもよい。設備中のすべての反応装置から放出される液体は、さらに処理される前に組み合わせられてもよい。このように、廃液(溶液)が設備から放出される出口(5)からの流体接続は、単一の廃液流れで組み合わせられてもよい。方法における各ステップ後、十分に循環した液体排出物は放出される。反応装置のより多くのカルーセルが並行して作動する場合、これらの最終液体排出物は組み合わせられ、単一の排出物流れで放出されてもよい。
【0060】
[0060]特に好ましい実施形態において、各反応装置の出口(5)は、リグニン収集容器、好ましくはシーケンスにおけるすべての反応装置用の単一のリグニン収集容器と流体接続される。同じ反応装置の各々の入口(3)、次の反応装置の入口(3)、及びリグニン収集容器への出口(5)の流体接続は、上記定義された方法によって決定されるように、1つ又は複数のバルブによって所望の時間で所望の接続を開いて制御される。リグニン収集容器への流体接続は、上記定義されるように、高温でそれを保ってリグニンの析出を回避するように構成される。好ましくは、この流体接続は、できるだけ短くしておく。
【実施例
【0061】
[0061]この実験において、空果房(EFB)は、本発明によって処理された。EFBは、含水量が8.9%(入手したまま)、灰分含有量が7.1wt%(乾燥量基準)、Cl含有量が2200mg/kg(乾燥基準)、K含有量が6300mg/kg(乾燥基準)であった。1バッチのEFB及び処理水は、2Lオートクレーブにおいて調製され、EFBがすべて処理水に浸漬されるように、EFB80.6g及び水1333gからなっていた。オートクレーブは閉じられ、215℃に加熱され、混合物は、連続的に撹拌されながら30分間処理された。この第1のステップは、水熱処理ステップ(a)を示した。
【0062】
[0062]水熱処理の終わりに、1172gの溶液は、オートクレーブの底から排出され、蒸気を回避するために80~90℃に出口で冷却された。オートクレーブ中の温度を180℃に下げた。1039gの脱イオン水の量は180℃で温度を維持しながら40ml/minの速度で添加した。EFBと水の混合物を15分間連続的に撹拌した。このステップは、洗浄ステップ(b)を示した。洗浄ステップの終わりに、1077gの洗浄液体(廃液)は、オートクレーブの底から排出され、100℃に冷却された。最後に、洗浄焙焼されたEFBの129gの量は、含水量が73%、したがって、乾燥物が27gでオートクレーブから回収された。表1に与えられるように、この方法の物質収支が計算された。
【0063】
[0063]焙焼されたEFBは、ペレット化装置の典型である120℃の温度で、密度が1075kg/mの適切な燃料ペレットにプレスされる。
【0064】
[0064]
【表1】
【0065】
[0065]全体の固体収率は約48%であった:73.4gの入力固体は、プレス生成物中に34.9gの出力固体として回収された。全体の物質収支は、2452gの入力及びその97%である又は74gの損失である2378gの出力を与える。ほとんどの質量損失は、排出された温水の蒸発に起因する可能性がある。さらに、ある質量損失は、水熱処理ステップでのCOの形成(約10g)により、及び底部排出管及び管におけるフィルター中のリグニンの堆積により起こった(約5~10グラム)。
【0066】
[0066]供給原料、液体排出物、及び固体プレス生成物の試料は、塩素(Cl)及びカリウム(K)含有量について解析された。当初のEFBの組成物及びEFBの洗浄焙焼プレス生成物は、表2にリストされる。分析を行うことができる前に試料がさらに乾燥されたので、ここで上記とは含水量が異なる。
【0067】
[0067]
【表2】
【0068】
[0068]材料の塩化物含有量は、2200から34mg/kg(乾量基準)に低下した。固体収率を考慮に入れる場合、塩化物の0.7%は生成物に残った。また、他の不要な元素の量は実質的に低下する。例えば、未処理のEFBは、6300mg/kgのカリウム(K)を含んでおり、それは、プレス生成物中にわずか300mg/kgのカリウムの量に減少した。さらに、プレス生成物中のEFBの発熱量は、19.5から21.9MJ/kgに増加し、それは、燃料の所定量の燃焼中に放出される熱の量を表す。プレス生成物は、優れた固体燃料の特性をすべて示す。灰分含有量は同じままであった。しかし、浸出可能で容易に溶解可能な塩類含有量は大幅に低減され、残留灰分形成成分は、シリコン酸化物が支配的である。
【0069】
[0069]総体的結論は、クリーンな木質ペレットに等しい特性を備える魅力的な固体燃料としての固形生成物において本発明による方法が行われるということである。これらのバイオ燃料ペレットは、ホワイトウッドペレット又はブラックペレットと同様に発電において石炭を置換するために使用することができる。さらに、溶液の除去がより高温及び圧力下で行われるので、バイオマスからリグニンを除去することができた。リグニンは、バイオ化学生成物を製造するために炭水化物の加水分解を閉鎖することができる物理的障壁として機能する高度に架橋したフェノール性ポリマーであり、このように、バイオマスからのその除去は、得られたバイオ燃料がより有力であることを可能にする。
【国際調査報告】