IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボレアリス エージーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ポリエチレンブレンド
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20240517BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240517BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20240517BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20240517BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20240517BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240517BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B29B17/02
C08J3/20 Z CES
B29B17/04 ZAB
B29B17/00
B09B3/35
B09B5/00 Q
B09B5/00 Z
B09B5/00 L
C08L23/06
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023572889
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022064702
(87)【国際公開番号】W WO2022253804
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21176834.6
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】トラン トゥアン アン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス フィリペ スザンナ
(72)【発明者】
【氏名】ナグル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】マチル ドリス
【テーマコード(参考)】
4D004
4F070
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4D004AA07
4D004AA46
4D004AB03
4D004AB05
4D004AB10
4D004CA04
4D004CA07
4D004CA08
4D004CA14
4D004CA40
4D004CA42
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA20
4F070AA13
4F070AB26
4F070FA06
4F070FA17
4F070FC05
4F401AA09
4F401AA11
4F401AA24
4F401AA26
4F401BA13
4F401BB09
4F401BB10
4F401CA02
4F401CA03
4F401CA14
4F401CA28
4F401CA58
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4F401FA20Z
4J002BB003
4J002BB02W
4J002BB02X
4J002BB033
4J002FB053
4J002FB05W
4J002FB05X
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
規定のCIELAB色を有するポリエチレンブレンド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンブレンドであって、
(i)0.1~10g/10分、好ましくは0.5~5.0g/10分、より好ましくは0.7~4.0g/10分、最も好ましくは1.0~3.0g/10分のメルトフローレート(ISO1133、5.0kg;190℃)、及び
(ii)950~970kg/mの密度(ISO1183)、及び
(iii)d2-テトラクロロエチレン可溶分のNMRにより測定された95.0重量%超、好ましくは97.0重量%超の量のC2画分、及び
(iv)80.0~91.0重量%の範囲の、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に従って決定されたホモポリマー画分(HPF)含有量、及び
(v)9.0~20.0重量%の範囲の、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に従って決定されたコポリマー画分(CPF)含有量、及び
(vi)任意選択で、0~2.0重量%、好ましくは0~0.5重量%の範囲の、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に従って決定されたiso-PP画分(IPPF)含有量であって、前記iso-PP画分(IPPF)は、104℃以上の温度で溶出するポリマー画分として定義され、前記ホモポリマー画分(HPF)、前記コポリマー画分(CPF)、及び前記iso-PP画分(IPPF)は合わせて100重量%になる、iso-PP画分(IPPF)含有量、及び
(vii)全ポリエチレンブレンドに対して0.01~2.00重量%の、(TGAによって測定された)無機残渣、及び
(viii)500~5000カウント/平方メートルの範囲内の、OCSカウント装置により10mのフィルムで測定されたサイズ100~299マイクロメートルのOCSゲル
を有し、
(ix)前記ポリエチレンブレンドは、
75.0~86.0のL
-5.0~0.0のa
5.0~25.0未満のb
の、DIN EN ISO11664-4に従って測定されたCIELAB色空間(L)を有するか、
又は
(x)前記ポリエチレンブレンドは、
86.0超~97.0のL
-5.0~0.0のa
0.0~5.0未満のb
の、DIN EN ISO11664-4に従って測定されたCIELAB色空間(L)を有する、ポリエチレンブレンド。
【請求項2】
リサイクル材料である請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項3】
以下の
a)0.1~25ppm、好ましくは0.1~20ppmの量の、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定されたリモネン、及び
b)10~500ppm、好ましくは10~300ppmの、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定された酢酸、ブタン酸、ペンタン酸及びヘキサン酸の群からなる脂肪酸の総量
のうちの1つ以上を含有する請求項1又は請求項2に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項4】
2.5以下、好ましくは2.0以下の臭気(VDA270-B3)を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項5】
以下の(10mのフィルムで測定された)OCSゲルカウント特性の1つ以上を有し、
a)サイズ300~599マイクロメートルのOCSゲル:100~2500カウント/平方メートル、
b)サイズ600~1000マイクロメートルのOCSゲル:10~200カウント/平方メートル、
c)サイズ1000マイクロメートル超のOCSゲル:1~40カウント/平方メートル、
すべて、OCSカウント装置により10mのフィルムで測定されたものである
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項6】
少なくとも825MPa、好ましくは少なくとも850MPa、最も好ましくは少なくとも910MPaの、EN ISO1873-2に記載される射出成形試験片(ドッグボーン形状、4mm厚さ)を使用する引張弾性率(1mm/分のクロスヘッド速度でのISO527-2;23℃)を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項7】
明細書に記載されるNMR分析に供される場合、アイソタクチックポリプロピレンに由来する単位を有さない請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項8】
大振幅振動剪断-非線形ファクタ(LAOS-NLF)(190℃;1000%)
【数1】
が2.1~2.9、好ましくは2.2~2.7、最も好ましくは2.3~2.6の範囲にあり、前記式中、
’は1次フーリエ係数であり、
’は3次フーリエ係数である
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項9】
ずり流動化係数(STF)
【数2】
が46.0超、好ましくは48.0~60.0である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項10】
多分散性指数(PI)
【数3】
が2.0超、好ましくは2.1~2.7であり、
前記式中、Gcはクロスオーバー弾性率であり、剪断貯蔵弾性率G’が剪断損失弾性率G”に等しいときの剪断貯蔵弾性率G’の値である
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項11】
以下の
j)好ましくは、高純度ポリエチレンを収集する別個の廃棄物収集物又は都市固形廃棄物から使用済みプラスチックゴミを提供する工程と、
k)ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、金属、紙及び木材から作られた物を選別し、これにより、使用済みプラスチック材料を提供する工程と、
l)着色した物を選別し、これにより、本質的に無色の物品の第1の中間ストリーム、及び本質的に白色を有する物品の第2の中間ストリームを提供する工程と、
m)任意選択で、手動検査によって不純物を選別する工程と、
n)ポリエチレン材料の2つのストリームを受け取る工程であって、第1のストリームは本質的に透明であり、第2のストリームは本質的に白色である工程と、
o)両方のストリームを別々に粉砕に供し、様々な洗浄剤を用いて水溶液中で洗浄し、続いて乾燥させ、風力選別し、スクリーニングして、2つの前処理されたストリームを得る工程と、
p)前記2つの前処理されたストリームを別々に、非ポリオレフィン及び着色部分を排除するためのさらなる選別に供する工程と、
q)押出してペレットにする工程と、
r)任意選択の100~130℃の範囲の温度で通気する工程と
から得ることができる請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項12】
ペレットの形態にある請求項1から請求項11いずれか1項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンドから作製された物品であって、好ましくは、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンドは、前記物品を作製するための反応物の少なくとも95重量%、好ましくは95重量%~98重量%に及ぶ、物品。
【請求項14】
ボトルである請求項13に記載の物品。
【請求項15】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンドと、少なくとも1種のバージンポリオレフィン及び/又はリサイクルポリオレフィンとを含有するブレンド。
【請求項16】
包装のための請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のポリエチレンブレンドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル物に由来するポリエチレンブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みごみに由来するリサイクル流を精製するための多くの試みがなされてきた。それらの手段の中でも、洗浄、ふるい分け、通気、蒸留等が挙げられてもよい。例えば、国際公開第2018046578号パンフレットは、包装廃棄物を含む混合着色ポリオレフィン廃棄物からポリオレフィンリサイクル物を製造するプロセスであって、廃棄物を水で冷間洗浄し、続いて60℃でアルカリ媒体で洗浄し、続いてフレーク色選別を行い、色選別された(白色、透明、他の色)モノポリオレフィンに富む画分を受け取ることを含むプロセスを開示する。次いで、これらの画分は50~155℃で処理される。Welle,F.(2005). Develop,a food grade HDPE recycling process. The waste & Resources Action Programme、オックスフォードシャー(Oxon)は、食品グレードのHDPEを調製することを目的としたミルクボトルのリサイクルを報告している。米国特許第5767230A号明細書は、揮発性不純物を含有するPCRポリオレフィンチップを、臭気活性物質等の揮発性不純物を実質的に低減するのに充分な空塔速度(表面速度)で加熱ガスと接触させることを含むプロセスを記載する。
しかしながら、いくつかの問題が残っている。第1の態様では、ベンゼンは、使用済みリサイクル物において頻繁に見出され、その起源は、依然として曖昧であるが、医療用包装、食品包装等の分野における最終用途の障害となる。残留量、すなわち微量のベンゼンは、嗅ぎ実験による臭気試験が不可能になるので、特に問題となる。従って、臭気に関してある程度の要求を有する最終使用が阻止される。第2の態様では、ノッチ付きシャルピー衝撃(23℃及び-20℃で)、ESCR、FNCT及び落下試験安定性等の従来の使用済みポリエチレンの機械的特性はかなり悪く、このため、高価でそれ自体望ましくない品質向上成分が必要になる。第3の態様では、色は、完全には対処されていないさらに別の問題として残っている。多くの再使用用途は、通常白色と表されるもの、又は代替的に、通常透明と表されるものに近い材料を必要とする。さらなる問題として、公知の使用済みリサイクル物は、OCSゲルカウントレベルが高すぎることによって反映されるように、均質性が高くないという問題を抱える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018046578号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5767230A号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Welle,F.(2005). Develop,a food grade HDPE recycling process. The waste & Resources Action Programme、オックスフォードシャー
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、より価値のあるポリエチレンブレンドを提供するという課題が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリエチレンブレンドであって、
(i)0.1~10g/10分、好ましくは0.5~5.0g/10分、より好ましくは0.7~4.0g/10分、最も好ましくは1.0~3.0g/10分のメルトフローレート(ISO1133、5.0kg;190℃)、及び
(ii)950~970kg/mの密度(ISO1183)、及び
(iii)d2-テトラクロロエチレン可溶分のNMRにより測定された95.0重量%超、好ましくは97.0重量%超の量のC2画分、及び
(iv)80.0~91.0重量%の範囲の、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に従って決定されたホモポリマー画分(HPF)含有量、及び
(v)9.0~20.0重量%の範囲の、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に従って決定されたコポリマー画分(CPF)含有量、及び
(vi)任意選択で、0~2.0重量%、好ましくは0~0.5重量%の範囲の、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に従って決定されたiso-PP画分(IPPF)含有量であって、このiso-PP画分(IPPF)は、104℃以上の温度で溶出するポリマー画分として定義され、上記ホモポリマー画分(HPF)、上記コポリマー画分(CPF)、及び上記iso-PP画分(IPPF)は合わせて100重量%になる、iso-PP画分(IPPF)含有量、及び
(vii)全ポリエチレンブレンドに対して0.01~2.00重量%の、(TGAにより測定された)無機残渣、及び
(viii)500~5000カウント/平方メートルの範囲内の、OCSカウント装置により10mのフィルムで測定されたサイズ100~299マイクロメートルのOCSゲル
を有し、
(ix)当該ポリエチレンブレンドは、
・75.0~86.0のL
・-5.0~0.0のa
・5.0~25.0未満のb
の、DIN EN ISO11664-4に従って測定されたCIELAB色空間(L)を有するか、
又は
(x)当該ポリエチレンブレンドは、
・86.0超~97.0のL
・-5.0~0.0のa
・0.0~5.0未満のb
の、DIN EN ISO11664-4に従って測定されるCIELAB色空間(L)を有する、ポリエチレンブレンドを提供する。
【0007】
本発明は、ペレット形態のポリエチレンブレンドにも関する。本発明はさらに、当該ポリエチレンブレンドから作製された物品、特にボトル、及び包装のための当該ポリエチレンブレンドの使用を提供する。なおさらなる態様では、本発明は、ポリエチレンブレンドと少なくとも1種のバージン(未使用の、virgin)ポリオレフィン及び/又はリサイクルポリオレフィンとのブレンドに関する。
【0008】
用語「ポリエチレンブレンド」は、密度に関して異なる2種の高密度ポリエチレン等の少なくとも2種の異なるポリエチレンの存在として定義される。例えば、異なる条件下で操作される2つの反応器から得られるバイモーダル(二峰性)ポリエチレンは、ポリエチレンブレンド、この場合、2つの反応器生成物のインサイツ(その場での、in-situ)ブレンドを構成する。
消費者ごみから得られるポリエチレンブレンドは、多種多様なポリエチレンを含むことが自明である。他のプラスチック、主にポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステルによる混入(汚染)に加えて、木材、紙、リモネン、アルデヒド、ケトン、脂肪酸、金属、及び/又は安定剤の長期分解生成物も見出されうる。そのような混入物質が望ましくないことは言うまでもない。
本発明のポリエチレンブレンドは、市販のリサイクル物のいくつかとしての大量生産の(非個性的な)ブレンドではないことを理解されたい。本発明に係るポリエチレンブレンドは、むしろバージンブレンドと比較されるべきである。
【0009】
用語「C2画分」は、定量的13C{1H}NMR分光法によって測定される、直鎖主鎖及び短鎖分岐に存在するエチレンに由来する反復-[C]-単位を意味し、反復は、少なくとも2つの単位を意味する。
C2画分は、
wtC2画分=fCC2全×100/(fCC2全+fCPP
として計算することができ、上記式中、
fCC2全=(Iddg-ItwoB4)+(IstarB1×6)+(IstarB2×7)+(ItwoB4×9)+(IthreeB5×10)+((IstarB4plus-ItwoB4-IthreeB5)×7)+(I3s×3)
及び
fCPP=Isαα×3
である。
詳細は実験部に与えられている。
【0010】
HDPE、LDPE又はLLDPE、ホモポリマー及びコポリマーのポリエチレンがリサイクルブレンド中に存在するので、分析的分離は、特徴付けのために必須となる。適切な方法は、クロス分別クロマトグラフィー(cross fractionation chromatography、CFC)による化学組成分析である。この方法は、Polymer Char(ポリマー・チャー)、バレンシア・テクノロジー・パーク(Valencia Technology Par)、ギュスターヴ・エッフェル(Gustave Eiffel) 8、パテルナ(Paterna) E-46980 バレンシア(Valencia)、スペインによって記載され、成功裏に実施されている。クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析は、ホモポリマー画分(HPF)及びコポリマー画分(CPF)並びに潜在的に存在するiso-PP画分(IPPF)への分画を可能にする。ホモポリマー画分(HPF)は、ホモポリマー-HDPEと同様のポリエチレンを含む画分である。コポリマー画分(CPF)は、ポリエチレンHDPEコポリマーと同様の画分であるが、LDPEの画分、LLDPEの画分もそれぞれ含むことができる。iso-PP画分(IPPF)は、アイソタクチックポリプロピレンを含み、104℃以上の温度で溶出するポリマー画分として定義される。ホモポリマー画分(HPF)、コポリマー画分(CPF)及び潜在的に存在するiso-PP画分(IPPF)は合わせて100重量%になる。100重量%がクロス分別クロマトグラフィー(CFC)実験内で可溶性である材料に対して示されていることは自明である。
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に加えて、本発明に係るポリエチレンブレンドは、d2-テトラクロロエチレン可溶分のNMRにより測定された95.0重量%超、好ましくは97.0重量%超の量のC2画分も特徴とする。パーセンテージは、NMR実験に使用されるd2-テトラクロロエチレン可溶性部分に対して示されている。用語「C2画分」は、エチレンモノマー単位から得ることができる、すなわちプロピレンモノマー単位から得られるものではないポリマー画分に等しい。
「C2画分」の上限は100重量%である。
【0011】
本発明は、本明細書に記載されるポリエチレンブレンドがバージンポリエチレンの直接的な置き換えを可能にするという驚くべき知見に基づく。
【0012】
本発明に係るポリエチレンブレンドは、典型的には、0.1~10g/10分のメルトフローレート(ISO1133、5.0kg;190℃)を有する。メルトフローレートは、例えば、限定されないが、拡大生産者責任スキームに、例えばドイツのDSDに由来するか、又は都市固形廃棄物から多数の事前選別画分に選別され、適切な方法でそれらから再び組み合わされた、使用済み(post-consumer)プラスチック廃棄物ストリーム(流れ、stream)を分割することによって影響される可能性がある。通常、MFRは0.5~5.0g/10分、好ましくは0.7~4.0g/10分、最も好ましくは1.0~3.0g/10分の範囲にある。
【0013】
本発明に係るポリエチレンブレンドは、d2-テトラクロロエチレン可溶分のNMRにより測定された95.0重量%超、好ましくは97.0重量%超、より好ましくは98.0重量%超、最も好ましくは99.0重量%超の量のC2画分を有する。
【0014】
通常、本発明に係るポリエチレンブレンドは、リサイクル材料である。
【0015】
典型的には、リサイクルの性質は、以下のうちの1つ以上の存在によって評価することができる。
(1)0.01重量%を超える(TGAにより測定された)無機残渣含有量と、同時に
500~5000カウント/平方メートルの範囲内の、OCSカウント装置(好ましくはOCS-FSA100、供給業者OCS GmbH(Optical Control System(オプティカル・コントロール・システム)))により10mのフィルムで測定されたサイズ100~299マイクロメートルのOCSゲルと、
あるいは、又は組み合わせて、
(2)0.5ppm以上の量の、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定されたリモネン、
あるいは、又は組み合わせて、
(3)10ppm以上の総量の、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定された酢酸、ブタン酸、ペンタン酸及びヘキサン酸から選択される群からなる脂肪酸。
【0016】
選択肢(2)及び(3)が好ましいことを理解されたい。「酢酸、ブタン酸、ペンタン酸及びヘキサン酸から選択される群からなる脂肪酸」は、(HS-SPME-GC-MSによりppm単位で決定された)酢酸、ブタン酸、ペンタン酸及びヘキサン酸の個々の量を一緒に加算することを意味する。
【0017】
固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)におけるリモネンの検出限界は0.1ppm未満であり、すなわち、微量のこれらの物質は容易にリサイクルの性質を明らかにする。
【0018】
無機残渣、ゲル、リモネン、及び脂肪酸の量はできるだけ少なくなければならないことは言うまでもない。
【0019】
固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定されたリモネンは、0.1~25ppm、さらにより好ましくは0.1~20ppmの量で存在し、かつ/又は固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定された酢酸、ブタン酸、ペンタン酸及びヘキサン酸の群からなる脂肪酸の総量は、少なくとも10~500ppm、より好ましくは10~300ppm、最も好ましくは10~180ppmの総量で存在することが特に好ましい。
【0020】
色に関しては、2つの実施形態を区別することができる:本質的に無色のブレンド及び本質的に白色のブレンド。
【0021】
第1の実施形態(本質的に無色)のポリエチレンブレンドは、
・75.0~86.0のL
・-5.0~0.0のa
・5.0~25.0未満のb
の、DIN EN ISO11664-4に従って測定されたCIELAB色空間(L)を有する。
【0022】
第2の実施形態(本質的に白色)のポリエチレンブレンドは、
・86.0超~97.0のL
・-5.0~0.0のa
・0.0~5.0未満のb
の、DIN EN ISO11664-4に従って測定されたCIELAB色空間(L)を有する。
【0023】
本発明に係るポリエチレンブレンドは、好ましくは、臭気(VDA270-B3)が2.5以下、好ましくは2.0以下であることを特徴とする。臭気を報告しない多くの商業的リサイクルグレードは、問題のある物質又は毒性の物質の存在に起因してVDA270によって示される臭気試験が禁じられているので、実際にはこの点において受け入れられないことさえあるということを理解されたい。
【0024】
本発明に係るポリエチレンブレンドは、以下の(10mフィルムで測定された)OCSゲルカウント(数)特性の1つ以上を有する。
a)サイズ300~599マイクロメートル:100~2500カウント/平方メートル、
b)サイズ600~1000マイクロメートル:5~200カウント/平方メートル、
c)サイズ1000マイクロメートル超:1~40カウント/平方メートル。
OCSゲルは、測定した10mフィルムの平均として計算された1平方メートル当たりのカウントとして与えられる。
【0025】
なおさらなる態様では、本発明に係るポリエチレンブレンドは、少なくとも825MPa、好ましくは少なくとも850MPa、最も好ましくは少なくとも910MPaの、EN ISO1873-2に記載される射出成形試験片(ドッグボーン形状、4mmの厚さ)を使用する引張弾性率(1mm/分のクロスヘッド速度でのISO527-2;23℃)を有する。通常、引張弾性率は、1100MPaを超えない。
【0026】
当該ポリエチレンブレンドが、本明細書に記載されるNMR分析に供される場合、アイソタクチックポリプロピレンに由来する単位を有さないことも好ましい。
【0027】
なおさらなる好ましい態様では、本発明に係るポリエチレンブレンドは、2.1~2.9、好ましくは2.2~2.7、最も好ましくは2.3~2.6のLAOS-NLF1000%(190℃)を有する。LAOS-NLF1000%は、以下のように定義される長鎖分岐含有量のレオロジー的尺度である。
【数1】
式中、
’は1次フーリエ係数であり、
G3’は3次フーリエ係数である。
【0028】
LAOS-NLF1000%のやや中程度又は低い値は、かなり低い、すなわち実質的に無視できる量のLDPE又はLLDPEを示す。LAOS-NLFはさらに、非線形ポリマー構造を示す。LDPE及びLLDPEを選別することとは別に、例えば異なる状態からの異なる供給源からの(値の決定後の)いくつかのリサイクルストリームを混合することによって、LAOS-NLFに影響を与えることが可能である。
【0029】
本発明に係るポリエチレンブレンドは、好ましくは、46.0超、より好ましくは48.0~60.0のずり流動化係数(shear thinning factor、STF)
【数2】
を有する。ずり流動化係数(STF)は、ポリエチレンの加工性を示す。ずり流動化係数(STF)は、所定のストリームを混合することによっても影響されうる。
【0030】
さらなる態様では、本発明に係るポリエチレンブレンドは、好ましくは、2.0超、より好ましくは2.1~2.7の多分散性指数(PI)
【数3】
を有し、上記式中、Gcはクロスオーバー弾性率であり、剪断貯蔵弾性率G’が剪断損失弾性率G”に等しいときの剪断貯蔵弾性率G’の値である。多分散性指数(PI)は、分子量分布の広さのレオロジー的測定値である。加工性、特に成形性の観点から、2.0超又は2.1~2.7の範囲内等のより高い値が好ましい。
【0031】
本発明に係るポリエチレンブレンドは、好ましくはペレットの形態で存在する。ペレット化は、揮発性物質の量が少なくなることに寄与し、均質化にも寄与する。
【0032】
本発明に係るポリエチレンブレンドのノッチ付きシャルピー衝撃強さは、好ましくは、23℃において35.0kJ/mより高く、より好ましくは23℃において45kJ/mより高い。-20℃において、本発明に係るポリエチレンブレンドのノッチ付きシャルピー衝撃強さは、好ましくは、23℃において18.0kJ/mより高く、より好ましくは22kJ/mより高い。
引張降伏点応力は、好ましくは25.0MPaより高い。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されるポリエチレンブレンドから作製される物品に関する。本発明に係るポリエチレンブレンドは、物品を作製するための反応物の少なくとも95重量%に及ぶことが好ましい。当該物品は、好ましくはボトルである。好ましい態様では、本発明に係るポリエチレンブレンドは、物品を作製するための反応物の95重量%~98重量%の範囲の量に及ぶ。好ましくは、物品は、本発明に係るポリエチレンブレンド及び添加剤のみから作製される。この実施形態では、この添加剤は、好ましくは、UV安定剤、酸化防止剤及び/又は酸捕捉剤からなる群から選択される。
【0034】
なおさらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されるポリエチレンブレンドと、少なくとも1種のバージン及び/又はリサイクルポリオレフィンとを含有するブレンドに関する。例えば、バージンポリエチレンホモポリマーをブレンドすることができる。
【0035】
本発明は、包装のための本明細書に記載されるポリエチレンブレンドにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係るポリエチレンブレンドを提供するプロセスは非常に厳しい。このプロセスは、
a)好ましくは、ポリエチレンを含有する別個の廃棄物収集物又は都市固形廃棄物から使用済みプラスチックゴミを提供する工程と、
b)ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、金属、紙及び木材から作られた物を選別し、これにより、使用済みプラスチック材料を提供する工程と、
c)着色した物を選別し、これにより、主に白色のボトル、主に白色のヨーグルトカップ、主に白色の缶、主に無色のパネル、主に無色の部品等を含む使用済みプラスチック材料を提供する工程と、
d)任意選択で、手動検査によって不純物を選別する工程と、
e)ポリエチレン材料の2つのストリームを受け取る工程であって、第1のストリームは本質的に透明であり、第2のストリームは本質的に白色である工程と、
f)両方のストリームを別々に粉砕に供し、様々な洗浄剤を用いて水溶液中で洗浄し、続いて乾燥させ、風力選別(ウィンドシフティング、windsifting)し、スクリーニング(ふるい分け)して、2つの前処理されたストリームを得る工程と、
g)上記2つの前処理されたストリーム(両方;別々に)を、非ポリオレフィン及び着色部分を排除するためのさらなる選別に供する工程と、
h)押出してペレットにする工程と、
i)任意選択の通気する工程であって、この通気は、好ましくは、少なくとも100℃の温度を有する空気流を使用して、使用済みプラスチック材料を100~130℃の範囲の温度に予熱することによって、そのような温度で少なくとも7時間又は好ましくは少なくとも20時間実施される、工程と
を含み、工程b)及びc)は、組み合わせるか、又は別々に行うことができる。
【0037】
通気は通常必要であるが、特定の状況下では省略されてもよい。
臭気制御及び評価は、いくつかの方法によって可能である。概要は、とりわけ、Demets,Rubenら、「Development and application of an analytical method to quantify odour removal in plastic waste recycling processes」、Resources,Conservation and Recycling 161(2020):104907によって提供される。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本発明は、
a)好ましくは、ポリエチレンを含有する別個の廃棄物収集物又は都市固形廃棄物から使用済みプラスチックゴミを提供する工程と、
b)ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、金属、紙及び木材から作られた物を選別し、これにより、使用済みプラスチック材料を提供する工程と、
c)着色した物を選別し、これにより、本質的に無色の物品の第1の中間ストリーム、及び本質的に白色を有する物品の第2の中間ストリームを提供する工程と、
d)任意選択で、手動検査によって不純物を選別する工程と、
e)ポリエチレン材料の2つのストリームを受け取る工程であって、第1のストリームは本質的に透明であり、第2のストリームは本質的に白色である工程と、
f)両方のストリームを別々に粉砕に供し、様々な洗浄剤を用いて水溶液中で洗浄し、続いて乾燥させ、風力選別し、スクリーニングして、2つの前処理されたストリームを得る工程と、
g)上記2つの前処理されたストリームを別々に、非ポリオレフィン及び着色部分を排除するためのさらなる選別に供する工程と、
h)押出してペレットにする工程と、
i)任意選択の、100~130℃の範囲の温度で通気する工程と
から得ることができる、本明細書に記載されるポリエチレンブレンドに関する。
【0039】
無機残渣は、必要であれば、溶液技術によって低下させてもよい。OCSゲルカウントパラメータは、着色材料等からの顔料等の混入(汚染)物質を回避するように制御することができる。手動選別は、好ましくは、小型携帯デバイスの形態でも容易に利用可能であるNIR分光法によって支援される。これにより、ポリプロピレン含有量を最小限に抑えることができる。密度は、比較的可撓性のポリエチレン物品の量を減少させることによって影響を受けることが可能である。ホモポリマー画分(HPF)及びコポリマー画分(CPF)の相対量は、風力選別(機械は風力選別装置(ウインドシフター)とも呼ばれる)によって制御することができ、気流を使用して、材料は、粒子のサイズ、形状、及び特に重量に応じて様々なストリームに分離される。例えば、ポリエチレンフィルム(すなわち、比較的高いコポリマー画分(CPF)を有するLLDPE/LDPE)を排除することができる。CIELABは、色選別と非ポリエチレンポリマー不純物の排除との組み合わせによって制御される。
【実施例
【0040】
実験
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の特定の態様及び実施形態を実証するために含まれる。しかしながら、以下の説明は例示に過ぎず、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないということは、当業者には理解されるはずである。
【0041】
試験方法
a)MFR
メルトフローレートは、190℃、5.00kgの荷重(MFR5)下で測定した。メルトフローレートは、ISO1133に規格化された試験装置が5.00kgの荷重の下で190℃の温度で10分以内に押し出す、グラム単位のポリマーの量である。
【0042】
b)密度
ISO1183-1に従う。
【0043】
c)NMR分光法によるC2画分並びに「連続C3」及び短鎖分岐を含む全般的な微細構造
定量的13C{1H}NMRスペクトルは、H及び13Cについてそれぞれ400.15及び100.62MHzで動作するBruker AVNEO 400MHz NMR分光計を用いて、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルを、125℃の13Cに最適化した10mm拡張温度プローブヘッドを使用し、すべての空気圧について窒素ガスを用いて記録した。およそ200mgの材料を、およそ3mgのBHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、CAS128-37-0)、及び溶媒中の緩和剤の60mM溶液を与えるクロム(III)アセチルアセトネート(Cr(acac)3){singh09}と共に約3mlの1,2-テトラクロロエタン-d2(TCE-d2)に溶解した。均一溶液を確保するために、ヒートブロック中での最初の試料調製のあと、そのNMRチューブを回転式オーブンの中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石の中へ挿入したあと、チューブを10Hzで回転させた。最適化した先端角(tip angle)、1sの繰り返し時間(recycle delay)、及びバイレベルWALTZ16デカップリングスキーム{zhou07、busico07}を使用して、NOEを伴わない標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で6144(6k)の過渡信号を取得した。
定量的13C{1H}NMRスペクトルを、独自のコンピュータープログラムを使用して処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基を間接的に基準とした。異なる短鎖分岐(B1、B2、B4、B5、B6plus)を有するポリエチレン及びポリプロピレンに対応する特徴的なシグナルを観察した{randall89、brandolini00}。
【0044】
孤立したB1分岐(starB1 33.3ppm)、孤立したB2分岐(starB2 39.8ppm)、孤立したB4分岐(twoB4 23.4ppm)、孤立したB5分岐(threeB5 32.8ppm)、4炭素より長いすべての分岐(starB4plus 38.3ppm)及び飽和脂肪族鎖末端から3番目の炭素(3s 32.2ppm)を含有するポリエチレンの存在に対応する特徴的なシグナルを観察した。一方又は他方の構造要素が観測可能でない場合、それは式から除外される。ポリエチレン骨格炭素(dd 30.0ppm)、γ-炭素(g 29.6ppm)、4s炭素及びthreeB4炭素(後で補償される)を含有する組み合わせたエチレン骨格メチン炭素(ddg)の強度は、ポリプロピレンからのTββを除いて、30.9ppm~29.3ppmから取得する。C2関連炭素の量は、下記式に従って、言及したすべてのシグナルを使用して定量した。
fCC2全=(Iddg-ItwoB4)+(IstarB1×6)+(IstarB2×7)+(ItwoB4×9)+(IthreeB5×10)+((IstarB4plus-ItwoB4-IthreeB5)×7)+(I3s×3)
【0045】
ポリプロピレン(PP、連続C3)の存在に対応する特徴的なシグナルが46.7ppm、29.0ppm及び22.0ppmで観察されたとき、PP関連炭素の量は、46.6ppmでのSααの積分を使用して定量した。
fCPP=Isαα×3
C2画分及びポリプロピレンの重量パーセントは、下記式に従って定量することができる。
wtC2画分=fCC2全×100/(fCC2全+fCPP
wtPP=fCPP×100/(fCC2全+fCPP
様々な短鎖分岐に対応する特徴的なシグナルを観察し、それらの重量パーセンテージを、関連する分岐はαオレフィンであるので、それぞれの重量分率を定量することによって開始して、定量した。
fwtC2=fCC2全-(IstarB1×3)-(IstarB2×4)-(ItwoB4×6)-(IthreeB5×7)
fwtC3(孤立したC3)=IstarB1×3
fwtC4=IstarB2×4
fwtC6=ItwoB4×6
fwtC7=IthreeB5×7
すべての重量分率の正規化は、すべての関連する分岐の重量パーセントの量をもたらす。
fsum重量%全=fwtC2+fwtC3+fwtC4+fwtC6+fwtC7+fCPP
wtC2全=fwtC2×100/fsum重量%全
wtC3全=fwtC3×100/fsum重量%全
wtC4全=fwtC4×100/fsum重量%全
wtC6全=fwtC6×100/fsum重量%全
wtC7全=fwtC7×100/fsum重量%全
【0046】
zhou07
Zhou,Z.、Kuemmerle,R.、Qiu,X.、Redwine,D.、Cong,R.、Taha,A.、Baugh,D.、Winniford,B.、J.Mag.Reson. 187(2007) 225
busico07
Busico,V.、Carbonniere,P.、Cipullo,R.、Pellecchia,R.、Severn,J.、Talarico,G.、Macromol.Rapid Commun. 2007、28、1128
singh09
Singh,G.、Kothari,A.、Gupta,V.、Polymer Testing 28 5(2009)、475
randall89
J.Randall、Macromol.Sci.、Rev.Macromol.Chem.Phys. 1989、C29、201.
brandolini00
A.J.Brandolini、D.D.Hills、NMR Spectra of Polymers and Polymer Additives、Marcel Dekker Inc.、2000
【0047】
d)CFCによるポリマー組成物分析 - ホモポリマー画分(HPF)、コポリマー画分(CPF)及びiso-PP画分(IPPF)の決定
化学組成分布、並びに特定の溶出温度での分子量分布並びに対応する分子量平均(Mn、Mw及びMv)(溶液中のポリマー結晶化度)を、Ortin A.、Monrabal B.、Sancho-Tello J.、Macromol.Symp.、2007、257、13-28によって記載されているように、完全自動クロス分別クロマトグラフィー(CFC)によって決定した。
【0048】
CFC装置(PolymerChar、バレンシア、スペイン)を使用して、クロス分別クロマトグラフィー(TREF×SEC)を実施した。4バンドIR5赤外線検出器(PolymerChar、バレンシア、スペイン)を使用して濃度をモニターした。ポリマーを160℃で180分間、約0.4mg/mlの濃度で溶解した。
【0049】
PET及びPAのように160℃でTCBに溶解しない存在しうるゲル及びポリマーの注入を回避するために、秤量した試料をステンレス鋼メッシュのMW0.077/D0.05mmに充填した。
【0050】
試料が完全に溶解すると、0.5mlのアリコートをTREFカラムにロードし、110℃で60分間安定化させた。ポリマーを結晶化させ、0.07℃/分の一定の冷却速度を適用することによって60℃の温度まで沈殿させた。不連続溶出プロセスは、以下の温度段階を使用して行う:(60、65、69、73、76、79、80、82、85、87、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、100、102、104、107、120、130)。
【0051】
第2次元、GPC分析では、Agilent(チャーチ・ストレットン(Church Stretton)、英国)からの3本のPL Olexisカラム及び1本のOlexis Guardカラムを固定相として使用した。溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB、250mg/L 2,6-ジtert ブチル-4-メチル-フェノールで安定化)を150℃で一定流量1mL/分で適用した。このカラムセットを、0.5kg/モル~11500kg/モルの範囲の少なくとも15種の狭いMWDのポリスチレン(PS)標準を用いてユニバーサルキャリブレーション(ISO16014-2:2003に従う)を使用して較正した。以下のMark Houwink定数を使用して、PS分子量をPE分子量当量に変換した。
PS=19×10-3mL/g、αPS=0.655
PE=39×10-3mL/g、αPP=0.725
【0052】
3次多項式フィッティング(当てはめ)を使用して較正データをフィッティングした。データ処理は、CFC装置とともにPolymerCharから提供されたソフトウェアを使用して行った。
【0053】
ホモポリマー画分(HPF)及びコポリマー画分(CPF)及びiso-PP画分(IPPF)の計算
ホモポリマー画分(HPF)、コポリマー画分(CPF)及びiso-PP画分(IPPF)を、以下のように定義する。
100%=CPF+HPF+IPPF
上記式に関し、IPPF画分は、104℃以上の温度で溶出するポリマー画分として定義する。
【0054】
低MW部分に対するTREFプロファイルのわずかな依存性に起因して、低MW限界の分子量限界は溶出温度(Tel)に依存する。低MW限界は下記式を使用して決定した。
低MW限界(HPF画分について)=0.0125×Tel+2.875
これを考慮して、HPF分率は、以下のアプローチを用いて計算する。
【数4】
上記式中、Hijは、対応するデータ処理ソフトウェアで得られる、対応する溶出温度(Tel)i及びlogM値jにおける2D微分分布である。
【0055】
e)無機残渣
TGA Discovery TGA5500を使用して、DIN ISO11358-1:2014に従ってTGAにより決定した。約10~30mgの材料を白金パンに入れた。試料を窒素下で20℃/分の加熱速度で加熱した。灰分は、850℃における重量%として評価した。
f)OCSゲル
厚さ約70μmのキャストフィルム試料を押し出し、CCD(電荷結合素子)カメラ、画像処理装置及び評価ソフトウェア(装置:OCS-FSA100、供給元OCS GmbH(Optical Control System))を用いて検査した。フィルムの欠陥を測定し、その円直径によって分類した。10mのフィルムを分析し、平方メートル当たりの値を平均として計算した。
キャストフィルムの調製、押し出しパラメータ
1. 出力25±4g/分
2. 押出機の温度プロファイル:200-210-210-200(溶融温度224℃)
3. 膜厚 約70μm
4. 冷却ロール温度 80℃
5. エアナイフ 6400NI/h(体積)
押出機の技術データ
1. スクリュータイプ:3ゾーン、窒化
2. スクリュー直径:25mm
3. スクリューの長さ:25D
4. 供給ゾーン:10D
5. 圧縮ゾーン:4D + 出力ゾーン11D
6. ダイ 150mm
欠陥は、サイズ(μm)/mに従って分類した。
100~299μm
300~599μm
600~999μm
1000μm以上
【0056】
g)CIELAB色空間(L
DIN EN ISO11664-4に従って測定されるCIE L均等色空間において、色座標は以下の通りである:L-明度座標;a-赤/緑座標であり、+aは赤を示し、-aは緑を示す;b-黄色/青色座標であり、+bは黄色を示し、-bは青色を示す。L、a、及びbの座標軸は、3次元CIE色空間を定義する。標準コニカミノルタColorimeter CM-3700A。
【0057】
h)リサイクルされた性質の評価
ha)リモネン含有量
リモネンの定量は、標品添加による固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用して行うことができる。
50mgの粉砕試料を20mLのヘッドスペースバイアル中で秤量し、異なる濃度のリモネン及びガラスコーティングされた磁気撹拌子を加えた後、シリコーン/PTFEで裏打ちされた磁気キャップでバイアルを閉じる。マイクロキャピラリー(10pL)を使用して、既知の濃度の希釈リモネン標品を試料に加える。0ng、2ng、20ng及び100ngの添加は、0mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg及び5mg/kgのリモネンに等しく、加えて6.6mg/kg、11mg/kg及び16.5mg/kgのリモネンの標品量を、本願において試験した試料のいくつかと組み合わせて使用する。定量にはSIMモードで得られるイオン93を用いる。揮発性画分の濃縮は、2cmの安定フレックス50/30pm DVB/Carboxen/PDMS繊維を用いたヘッドスペース固相マイクロ抽出によって60℃で20分間行う。脱着は、GCMSシステムの加熱した注入ポート中で270℃で直接行う。
GCMSパラメータ:
カラム:30m HP 5 MS 0.25×0.25
注入器:スプリットレス、0.75mm SPMEライナー、270℃
温度プログラム:-10℃(1分)
キャリアガス:ヘリウム5.0、31cm/秒線速度、定流量
MS:シングル四重極型、直接インターフェース、280℃インターフェース温度
取得:SIMスキャンモード
スキャンパラメータ:20~300amu
SIMパラメータ:m/Z93、100msの滞留時間
【0058】
hb)脂肪酸検出
脂肪酸の定量は、標品添加によるヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用して行う。
50mgの粉砕試料を20mLのヘッドスペースバイアル中で秤量し、異なる濃度のリモネン及びガラスコーティングされた磁気撹拌子を加えた後、シリコーン/PTFEで裏打ちされた磁気キャップでバイアルを閉じる。10μLのマイクロキャピラリーを使用して、既知の濃度の希釈遊離脂肪酸混合物(酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、任意選択でオクタン酸)標品を3つの異なるレベルで試料に添加する。0ng、50ng、100ng及び500ngの添加は、0mg/kg、1mg/kg、2mg/kg及び10mg/kgの各個々の酸に等しい。定量化のために、SIMモードで得られるイオン60を、プロパン酸を除くすべての酸に使用し、プロパン酸の場合にはイオン74を使用する。
GCMSパラメータ:
カラム:20m ZB Wax plus 0.25×0.25
注入器:ガラス裏打ちスプリットライナーで250℃で5:1に分割する
温度プログラム:40℃(1分)、6℃/分で120℃まで、15℃で245℃まで(5分)
キャリア:ヘリウム5.0、40cm/秒線速度、定流量
MS:シングル四重極型、直接インターフェース、220℃インターフェース温度
取得:SIMスキャンモード
スキャンパラメータ:46~250amu 6.6スキャン/秒
SIMパラメータ:m/z60、74、6.6スキャン/秒
【0059】
hc)金属
x線蛍光(XRF)によって決定した。
【0060】
hd)ベンゼン含有量
以下に記載するHS GC-MS 80℃/2hによる。
【0061】
静的ヘッドスペース(スタティックヘッドスペース)分析
適用した静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィー質量分析(HS/GC/MS)法のパラメータをここに記載する。
4.000±0.100gの試料を20mlのHSバイアル中で秤量し、PTFEキャップで密封した。
質量分析計をスキャンモードで操作し、全イオンクロマトグラム(TIC)を各分析について記録した。適用可能な方法パラメータ及びデータ評価に関するより詳細な情報を以下に示す。
【0062】
・HSパラメータ(Agilent(アジレント) G1888ヘッドスペースサンプラー)
バイアル平衡化時間: 120分
オーブン温度: 80℃
ループ温度: 205℃
トランスファーライン温度:210℃
低振盪
・GCパラメータ(Agilent 7890A GCシステム)
カラム: ZB-WAX 7HG-G007-22(30m×250μm×1μm)
キャリアガス: ヘリウム 5.0
流量: 2ml/分
スプリット: 5:1
GCオーブンプログラム:35℃、0.1分
10℃/分で250℃まで
250℃で1分
・MSパラメータ(Agilent 5975C inert XL MSD)
取得モード: スキャン
スキャンパラメータ:
Low mass(低質量): 20
High mass(高質量):200
Threshold(閾値): 10
・ソフトウェア/データ評価
MSD ChemStation E.02.02.1431
MassHunter GC/MS Acquisition B.07.05.2479
AMDIS GC/MS Analysis バージョン2.71
NIST Mass Spectral Library バージョン 2.0 g
・AMDISデコンボリューションパラメータ
Minimum match factor(最小合致ファクタ): 80
Threshold(閾値): Low(低)
Scan direction(スキャン方向): High to Low(高→低)
Data file format(データファイル形式): Agilent files(アジレントファイル)
Instrument type(装置タイプ): Quadrupole(四重極)
Component width(成分幅): 20
Adjacent peak subtraction(隣接ピーク引き算): Two(2)
Resolution(分解能): High(高)
Sensitivity(感度): Very high(非常に高い)
Shape requirements(形状要件): Medium(中)
Solvent tailing(溶媒テーリング): 44 m/z
Column bleed(カラムブリード): 207 m/z
Min.model peaks(最小モデルピーク): 2
Min.S/N(最小S/N): 10
Min.certain peaks(最小特定ピーク): 0.5
【0063】
データ評価
TICデータを、AMDISソフトウェアを用いてさらにデコンボリューションし(上記のパラメータを参照)、質量スペクトルライブラリ(NIST)に基づくカスタム標的ライブラリと比較した。このカスタム標的ライブラリには、選択した物質(例えばベンゼン)のそれぞれの質量スペクトルが含まれていた。認識されたピークが80のminimum match factorを示し、経験豊富な質量分析担当者が合致を確認した場合のみ、物質は「仮同定された」として認められた。
この研究において、「検出限界未満(<LOD)」という記述は、match factorが80未満(AMDIS)であるか又はピーク自体が認識さえされなかったかのいずれかである条件を指す。結果は、測定された試料、測定時刻、及び適用されたパラメータのみに言及する。
【0064】
i)臭気VDA270-B3
VDA270は、自動車におけるトリム材料の臭気特性の決定である。臭気は、VDA270(2018)変法B3に従って決定する。それぞれの試料の臭気は、瓶の蓋をできるだけ低く持ち上げた後、VDA270スケールに従って各評価者によって評価される。6段階スケールは、以下の等級からなる:等級1:知覚できない、等級2:知覚できるが、不快ではない、等級3:明らかに知覚できるが不快ではない、等級4:不快である、等級5:強く不快である、等級6:許容できない。評価者らは、評価中は静かなままであり、試験中に個々の結果を議論することによって互いに偏ることは許されない。評価者らは、その評価を別の試料を試験した後に調整することもできない。統計的理由から(及びVDA270によって受け入れられるように)、評価者らは、評価において工程全体を使用することを強いられる。従って、臭気等級は、すべての個々の評価の平均に基づき、整数に丸められる。
【0065】
j)引張弾性率及び引張破断ひずみ
EN ISO17855-2に記載の射出成形試験片(ドッグボーン形状、厚さ4mm)を用いてISO527-2(クロスヘッド速度=1mm/分;試験速度50mm/分、23℃)に従って測定した。測定は、試験片の96時間(h)のコンディショニング時間後に行った。
【0066】
k)衝撃強さ
EN ISO1873-2に従って調製した80×10×4mmの射出成形試験片に対して+23℃及び-20℃でのISO179-1eAに準拠したノッチ付きシャルピー衝撃強さ(1eA)(非計装化)として決定した。
【0067】
l)レオロジーパラメータ
動的剪断測定
ポリマーの融液(melt)の動的剪断測定による特性解析は、ISO規格6721-1及び6721-10に従う。測定は、25mm平行平板の配置を備えるAnton Paar(アントンパール) MCR501応力制御型回転レオメータで実施した。測定は、窒素雰囲気を使用し、歪みを線形粘弾性領域内に設定して圧縮成形平板で行った。振動剪断試験は、0.01~600rad/sの周波数範囲を適用し、ギャップを1.3mmに設定して190℃で行った。
【0068】
動的剪断実験では、正弦波的に変化する剪断歪み又は剪断応力(それぞれ歪み及び応力を制御したモード)でプローブを均一な変形に供する。制御歪み実験では、下記式で表すことができる正弦波歪みにプローブを供する。
γ(t)=γsin(ωt) (1)
加えた歪みが線形粘弾性領域の範囲内にあれば、得られる正弦波応力応答は下記式で与えられうる。
σ(t)=σsin(ωt+δ) (2)
上記式中、
σ及びγはそれぞれ応力振幅及び歪み振幅であり、
ωは角周波数であり、
δは位相差(加えた歪みと応力応答との間の損失角)であり、
tは時間である。
【0069】
動的試験結果は、典型的にはいくつかの異なるレオロジー関数、つまり剪断貯蔵弾性率G’、剪断損失弾性率G”、複素剪断弾性率G、複素剪断粘度η、動的剪断粘度η’、複素剪断粘度の異相成分η”及び損失正接tanδによって表され、上記レオロジー関数は以下のとおりに表すことができる。
【0070】
【数5】
【0071】
η(x kPa)は、式9に従って決定される。
η(x kPa)=(G=x kPa)に対するη[Pa.s] (9)
【0072】
例えば、η(2.7kPa)は、2.7kPaに等しい複素弾性率の値に対して決定される複素粘度の値によって定められる。
η(x rad/s)は、式10に従って決定される。
η(x rad/s)=(ω=x rad/s)に対するη[Pa.s] (10)
例えば、η(300rad/s)は、300rad/sの周波数掃引で決定される複素粘度の値によって定められる。
【0073】
ずり流動化係数ずり流動化係数(STF)及び多分散性指数(PI)
ずり流動化係数(STF)は、以下のように定義される。
【数6】
多分散性指数(PI)は、
【数7】
として定義され、上記式中、Gcはクロスオーバー弾性率であり、これは、剪断貯蔵弾性率G’が剪断損失弾性率G”に等しいときの剪断貯蔵弾性率G’の値として記述することができる。
【0074】
値は、Rheoplusソフトウェアによって定義される単点補間手順によって決定する。所与のG値に実験的に到達しない状況では、値は、前と同じ手順を使用して、外挿によって決定する。両方の場合(補間又は外挿)において、Rheoplusからのオプション「- Interpolate y-values to x-values from parameter(y値をパラメータからのx値に補間する)」及び「logarithmic interpolation type(対数補間タイプ)」を適用した。
【0075】
参考文献:
[1]「Rheological characterization of polyethylene fractions」、Heino,E.L.、Lehtinen,A.、Tanner J.、Seppala,J.、Neste Oy、ポルヴォー(Porvoo)、フィンランド、Theor.Appl.Rheol.、Proc.Int.Congr.Rheol、11th(1992)、1、360-362
[2]「The influence of molecular structure on some rheological properties of polyethylene」、Heino,E.L.、Borealis Polymers Oy、ポルヴォー、フィンランド、Annual Transactions of the Nordic Rheology Society、1995.)
[3]Definition of terms relating to the non-ultimate mechanical properties of polymers、Pure & Appl.Chem.、第70巻、第3巻、701-754頁、1998.
【0076】
大振幅振動剪断(large amplitude oscillatory shear、LAOS)
剪断流下での非線形粘弾性挙動の検討は、大振幅振動剪断に依って行った。この方法は、所与の時間tの間、所与の角周波数ωで課される正弦波歪み振幅γの印加を必要とする。印加される正弦波歪みが充分に高いならば、非線形応答が生成される。この場合、応力σは、印加された歪み振幅、時間及び角周波数の関数である。これらの条件下では、非線形応力応答は、依然として周期関数である。しかしながら、それはもはや単一の高調波正弦波(harmonic sinusoid)で表すことができない。非線形粘弾性応答から生じる応力[0-0]は、高調波寄与を含むフーリエ級数によって表すことができる。
σ(t,ω,γ)=γ.Σ[G’(ω,γ).sin(nωt)+G”(ω,γ).cos(nωt)] (1)
上記式中、
σは応力応答であり、
tは時間であり、
ωは周波数であり、
γは歪み振幅であり、
nは高調波数(harmonic number)であり、
G’はn次の弾性フーリエ係数であり、
G”はn次の粘性フーリエ係数である。
【0077】
非線形粘弾性応答を、大振幅振動剪断(LAOS)を適用して分析した。時間掃引測定は、標準双円錐ダイと連結したAlpha Technologies(アルファテクノロジーズ)製のRPA2000レオメータで行った。測定の過程の間、試験チャンバーを密封し、約6MPaの圧力を加える。LAOS試験は、190℃の温度、0.628rad/sの角周波数及び1000%の歪みを適用して行う。定常状態条件に達することを確実にするために、非線形応答は、測定あたり少なくとも20サイクルが完了した後にのみ決定する。大振幅振動剪断非線形ファクタ(Large Amplitude Oscillatory Shear Non-Linear Factor、LAOS_NLF)は、
【数8】
によって定義され、上記式中、
’は1次フーリエ係数であり、
’は3次フーリエ係数である。
【0078】
[1]J.M.Dealy、K.F.Wissbrun、Melt Rheology and Its Role in Plastics Processing:Theory and Applications、Van Nostrand Reinhold編、ニューヨーク(1990)
[2]S.Filipe、Non-Linear Rheology of Polymer Melts、AIP Conference Proceedings 1152、168-174頁(2009)
[3]M.Wilhelm、Macromol.Mat.Eng. 287、83-105(2002)
[4]S.Filipe、K.Hofstadler、K.Klimke、A.T.Tran、Non-Linear Rheological Parameters for Characterisation of Molecular Structural Properties in Polyolefins、Proceedings of Annual European Rheology Conference、135(2010)
[5]S.Filipe、K.Klimke、A.T.Tran、J.Reussner、Proceedings of Novel Non-Linear Rheological Parameters for Molecular Structural Characterisation of Polyolefins、Novel Trends in Rheology IV、ズリーン(Zlin)、チェコ共和国(2011)
[6]K.Klimke、S.Filipe、A.T.Tran、Non-linear rheological parameters for characterization of molecular structural properties in polyolefins、Proceedings of European Polymer Conference、グラナダ(Granada)、スペイン(2011)
【0079】
ボトルの製造:
外径90mm、壁厚0.6mm、全体高さ204mm及び円筒形マントルの高さ185mmを有する1Lボトルを、190℃の溶融温度及び15℃の金型温度を用いる単軸押出機を備えたB&W機での押出ブロー成形によって製造した。
【0080】
ボトルの落下試験(漸進性)
漸進性落下試験中、上記で定義した各ボトルを、増加していく高さから数回立て続けに落下させる。破壊が起こったとき、各ボトルについて試験を停止する。
落下試験は、上述のように押出ブロー成形した1Lボトルで実施する。ボトルを肩まで水で満たす。
各試験シリーズについて、少なくとも12本のボトルが必要である。4つのボトルを、下記表に従って選択する開始高さから同時に落下させる。予想される破壊落下高さは、事前試験において決定されているか、又は経験から選択されている。
【0081】
【表1】
【0082】
破壊を示すボトルを廃棄し、高さを上げながら残りのボトルを用いて試験を続ける。高さを増加させるステップ(一段階)のサイズは、開始高さに依存する。開始高さ0.5m未満では、ステップサイズは0.1mであるが、0.5m以上では、ステップサイズは0.25mである。各ボトルについて破壊落下高さを記録し、単独の値から、平均破壊落下高さを下記式に従って計算する。
【数9】
上記式中、
=平均破壊落下高さ
=個々の破壊落下高さ
=落下させた容器の総数
【0083】
実施例
別々のプラスチック廃棄物コレクション(特定のHDPEコレクションを提供する公共ゴミ集積所(civic amenity site))からのいくつかの使用済みプラスチックごみHDPEストリームを、ポリマーの性質及び色に関して粗く選別した。不純物を手動検査によってさらに分離した。このようにして受け取った無色(→IE1)及び白色部分(→IE2)の2つのストリームを(別々に)粉砕に供し、様々な洗浄剤を含む水溶液中で洗浄し、続いて乾燥させ、ふるい分けして、前処理したストリームを得た。前処理したストリームをさらに選別し、これにより着色部分及び非ポリオレフィンを減少させた。ペレットに押出した後、基材ペレットを少なくとも100℃に予熱した後、ペレットを120℃の空気で22時間通気した。本質的に無色の例IE1及び白色の例IE2を得た。比較目的のために、通常のリサイクル物CE1(Purpolen)及びバージンのバイモーダルポリエチレンCE2(低分子量ホモポリマーと高分子量コポリマーとのインサイツ混合物)を準備し、試験した。最終材料の結果を表1に示す。比較目的のために作製したバージンのバイモーダルポリエチレンCE2(低分子量ホモポリマーと高分子量コポリマーとのインサイツ混合物)は、エチレン及び極少量の1-ブテンを重合することによって作製した。
【0084】
すべての例を、CFCによるポリマー組成分析に供した。
【0085】
【表2(1)】
【表2(2)】
【表2(3)】
【表2(4)】
【0086】
発明例IE1及びIE2は、バージン材料とほぼ同程度に良好に機能したことが分かる。標準的なリサイクル物ブレンドと比較して、本発明のブレンドは、有意により低いOCSゲルカウントを有した。
ノッチ付きシャルピー衝撃特性は、バージンのインサイツバイモーダルブレンドCE2と比較した場合、発明例IE1及びIE2についてさらに良好であることが判明した。引張降伏点応力は、CE2と比較して、IE1及びIE2において同様のレベルであった。IE1及びIE2は、優れた加工性を示す優れた良好なLAOS-NLF、ずり流動化係数及び多分散性も有していた。
IE1及びIE2はボトルにすることができ、その際、これらのボトルは優れた品質(壁の平坦性(均一性、evenness)、溶着線及び外面平滑性)を有した。IE1及びIE2の加工性は、すべての評価した材料の中で最良であることさえ分かった。IE1及びIE2から作製したボトルは、落下試験においてCE2よりもさらに良好に機能した。
言い換えれば、バージンのバイモーダルポリエチレンの1:1置換が、多数の用途のために可能となり、その際に、ボトルの衝撃、加工性及び落下試験安定性に関して、さらなる驚くべき利点が観察される。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンブレンドであって、
(i)0.1~10g/10分、好ましくは0.5~5.0g/10分、より好ましくは0.7~4.0g/10分、最も好ましくは1.0~3.0g/10分のメルトフローレート(ISO1133、5.0kg;190℃)、及び
(ii)950~970kg/mの密度(ISO1183)、及び
(iii)d2-テトラクロロエチレン可溶分のNMRにより測定された95.0重量%超、好ましくは97.0重量%超の量のC2画分、及び
(iv)80.0~91.0重量%の範囲の、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に従って決定されたホモポリマー画分(HPF)含有量、及び
(v)9.0~20.0重量%の範囲の、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に従って決定されたコポリマー画分(CPF)含有量、及び
(vi)任意選択で、0~2.0重量%、好ましくは0~0.5重量%の範囲の、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)による化学組成分析に従って決定されたiso-PP画分(IPPF)含有量であって、前記iso-PP画分(IPPF)は、104℃以上の温度で溶出するポリマー画分として定義され、前記ホモポリマー画分(HPF)、前記コポリマー画分(CPF)、及び前記iso-PP画分(IPPF)は合わせて100重量%になる、iso-PP画分(IPPF)含有量、及び
(vii)全ポリエチレンブレンドに対して0.01~2.00重量%の、(TGAによって測定された)無機残渣、及び
(viii)500~5000カウント/平方メートルの範囲内の、OCSカウント装置により10mのフィルムで測定されたサイズ100~299マイクロメートルのOCSゲル
を有し、
(ix)前記ポリエチレンブレンドは、
75.0~86.0のL
-5.0~0.0のa
5.0~25.0未満のb
の、DIN EN ISO11664-4に従って測定されたCIELAB色空間(L)を有するか、
又は
(x)前記ポリエチレンブレンドは、
86.0超~97.0のL
-5.0~0.0のa
0.0~5.0未満のb
の、DIN EN ISO11664-4に従って測定されたCIELAB色空間(L)を有し、
前記ポリエチレンブレンドは、
a)使用済みプラスチックゴミを提供する工程と、
b)ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、金属、紙及び木材から作られた物を選別し、これにより、使用済みプラスチック材料を提供する工程と、
c)着色した物を選別し、これにより、本質的に無色の物品の第1の中間ストリーム、及び本質的に白色を有する物品の第2の中間ストリームを提供する工程と、
d)任意選択で、手動検査によって不純物を選別する工程と、
e)ポリエチレン材料の2つのストリームを受け取る工程であって、第1のストリームは本質的に透明であり、第2のストリームは本質的に白色である工程と、
f)両方のストリームを別々に粉砕に供し、様々な洗浄剤を用いて水溶液中で洗浄し、続いて乾燥させ、風力選別し、スクリーニングして、2つの前処理されたストリームを得る工程と、
g)前記2つの前処理されたストリームを別々に、非ポリオレフィン及び着色部分を排除するためのさらなる選別に供する工程と、
h)押出してペレットにする工程と、
i)任意選択の100~130℃の範囲の温度で通気する工程と
から得ることができるリサイクル材料である、ポリエチレンブレンド。
【請求項2】
以下の
a)0.1~25ppm、好ましくは0.1~20ppmの量の、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定されたリモネン、及び
b)10~500ppm、好ましくは10~300ppmの、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定された酢酸、ブタン酸、ペンタン酸及びヘキサン酸の群からなる脂肪酸の総量
のうちの1つ以上を含有する請求項に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項3】
2.5以下、好ましくは2.0以下の臭気(VDA270-B3)を有する請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項4】
以下の(10mのフィルムで測定された)OCSゲルカウント特性の1つ以上を有し、
a)サイズ300~599マイクロメートルのOCSゲル:100~2500カウント/平方メートル、
b)サイズ600~1000マイクロメートルのOCSゲル:10~200カウント/平方メートル、
c)サイズ1000マイクロメートル超のOCSゲル:1~40カウント/平方メートル、
すべて、OCSカウント装置により10mのフィルムで測定されたものである
請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項5】
少なくとも825MPa、好ましくは少なくとも850MPa、最も好ましくは少なくとも910MPaの、EN ISO1873-2に記載される射出成形試験片(ドッグボーン形状、4mm厚さ)を使用する引張弾性率(1mm/分のクロスヘッド速度でのISO527-2;23℃)を有する請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項6】
明細書に記載されるNMR分析に供される場合、アイソタクチックポリプロピレンに由来する単位を有さない請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項7】
大振幅振動剪断-非線形ファクタ(LAOS-NLF)(190℃;1000%)
【数1】
が2.1~2.9、好ましくは2.2~2.7、最も好ましくは2.3~2.6の範囲にあり、前記式中、
’は1次フーリエ係数であり、
’は3次フーリエ係数である
請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項8】
ずり流動化係数(STF)
【数2】
が46.0超、好ましくは48.0~60.0である請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項9】
多分散性指数(PI)
【数3】
が2.0超、好ましくは2.1~2.7であり、
前記式中、Gcはクロスオーバー弾性率であり、剪断貯蔵弾性率G’が剪断損失弾性率G”に等しいときの剪断貯蔵弾性率G’の値である
請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項10】
以下の
a)高純度ポリエチレンを収集する別個の廃棄物収集物又は都市固形廃棄物から使用済みプラスチックゴミを提供する工程と、
)ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、金属、紙及び木材から作られた物を選別し、これにより、使用済みプラスチック材料を提供する工程と、
)着色した物を選別し、これにより、本質的に無色の物品の第1の中間ストリーム、及び本質的に白色を有する物品の第2の中間ストリームを提供する工程と、
)任意選択で、手動検査によって不純物を選別する工程と、
)ポリエチレン材料の2つのストリームを受け取る工程であって、第1のストリームは本質的に透明であり、第2のストリームは本質的に白色である工程と、
)両方のストリームを別々に粉砕に供し、様々な洗浄剤を用いて水溶液中で洗浄し、続いて乾燥させ、風力選別し、スクリーニングして、2つの前処理されたストリームを得る工程と、
)前記2つの前処理されたストリームを別々に、非ポリオレフィン及び着色部分を排除するためのさらなる選別に供する工程と、
)押出してペレットにする工程と、
i)100~130℃の範囲の温度で通気する工程と
から得ることができる請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項11】
ペレットの形態にある請求項1に記載のポリエチレンブレンド。
【請求項12】
請求項1に記載のポリエチレンブレンドから作製された物品であって、好ましくは、請求項1に記載のポリエチレンブレンドは、前記物品を作製するための反応物の少なくとも95重量%、好ましくは95重量%~98重量%に及ぶ、物品。
【請求項13】
請求項1に記載のポリエチレンブレンドから作製された物品であって、好ましくは、請求項1に記載のポリエチレンブレンドは、前記物品を作製するための反応物の少なくとも95重量%、好ましくは95重量%~98重量%に及び、前記物品はボトルである物品。
【請求項14】
請求項1に記載のポリエチレンブレンドと、少なくとも1種のバージンポリオレフィン及び/又はリサイクルポリオレフィンとを含有するブレンド。
【請求項15】
包装のため請求項1に記載のポリエチレンブレンドを提供する方法
【国際調査報告】