(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】電気車両駆動部の伝動装置における騒音低減
(51)【国際特許分類】
F16H 63/50 20060101AFI20240521BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20240521BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20240521BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F16H63/50
F16H1/06
F16H61/02
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559056
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022059394
(87)【国際公開番号】W WO2022233535
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021111908.1
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー・ノルベルト
【テーマコード(参考)】
3J009
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3J009DA11
3J009EA11
3J009EA21
3J009FA05
3J552NB05
3J552PA70
3J552RC12
3J552TB03
3J552TB07
3J552UA08
3J552VA76W
5H125AA01
5H125BA00
5H125CA01
5H125EE01
(57)【要約】
【課題】電気駆動機械のロータシャフトが歯車伝動装置を用いて原動機付き車両の出力軸に結合されている、原動機付き車両の電気駆動機械の制御を改善する。
【解決手段】原動機付き車両の電気駆動機械を制御する方法であって、電気駆動機械のロータシャフトが、歯車伝動装置を用いて原動機付き車両の出力軸に結合されている、前記方法において、駆動機械の負荷変動Lにおいて、歯車伝動装置のフランク交替F前に、歯車伝動装置の歯車の共通の回転運動の適合のために駆動機械のトルクショックS,S2が設定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機付き車両の電気駆動機械(EM)を制御する方法であって、電気駆動機械のロータシャフト(2)が、歯車伝動装置(3)を用いて原動機付き車両の出力軸(6)に結合されている、前記方法において、
駆動機械の負荷変動(L)において、歯車伝動装置のフランク交替(F)前に、歯車伝動装置の歯車(4,5)の特に共通の回転運動(D)の適合のために駆動機械のトルクショック(S,S2)が設定されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
トルクショックが、少なくとも2つの符号の変更を伴うトルク勾配推移(M
・*
VF,M
・*
F1,M
・*
F2,M
・*
NF)を有していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラストフランクへの負荷変動時には減速させるようなトルクショック(S)が生じ、及び/又はトラクションフランクへの負荷変動時には加速させるようなトルクショック(S2)が生じることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
トルクショックが、フランク交替の開始前に終了することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
トルクショックがショック強度(A)によって決定されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
トルクショックがショック継続時間(t_ges)によって決定されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ショック継続時間が最大で50ミリ秒、特に最大で40、30又は20ミリ秒であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
トルクショックが、フランク交替からのショック間隔(t_1)によって決定されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ショック推移が偏差関数によって与えられ、及び/又はショック継続時間(t_ges)についての偏差関数が、そもそも負荷変動について設定された駆動機械の出力トルク推移を置換するか、若しくは該出力トルク推移に重なることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
原動機付き車両の電気駆動機械(EM)を制御する装置(SM)であって、電気駆動機械のロータシャフト(2)が、歯車伝動装置(3)を用いて原動機付き車両の出力軸(6)に結合されており、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されていることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動機械のロータシャフトが歯車伝動装置を用いて原動機付き車両の出力軸に結合されている、原動機付き車両の電気駆動機械を制御する方法及び手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
しばしば減速段として電気駆動機械に直接結合される歯車伝動装置について、負荷変動時にカタカタとした騒音が生じることが知られている。例えば、操車動作において、又はトラクション/スラスト交替時に駆動機械のモーメントゼロクロスにおいて当該不快な固体伝播音インパルスに至る。
【0003】
公知の方法においては、できる限り走行性の影響なしに、最良の場合には車両乗員による知覚なしに当該インパルスをモーメント介入によって低減するよう試みられる。当該モーメント介入は、フランク(歯面、噛合面)交替の時点及びその直前に導入され、モーメント勾配を低減するようにパラメータ化されている。
【0004】
ただし、これは、原因、すなわち騒音の励起に小さな影響しか有さず、特に、運転者による介入の知覚が回避されるべき場合には、介入の適用時間が厳密に制限されている。そのため、公知の方法は、追加的に、発泡部分又は別のカプセル措置によるアンダーボディ保護部における大規模な二次措置を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該背景から、本発明の課題は、電気駆動機械のロータシャフトが歯車伝動装置を用いて原動機付き車両の出力軸に結合されている、原動機付き車両の電気駆動機械の制御を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
各独立請求項は、その特徴によって当該課題を解決する対象を特定している。従属請求項は、本発明の有利な発展形態に関するものである。
【0007】
一態様によれば、原動機付き車両の電気駆動機械を制御する方法が開示され、ロータシャフト又はトルク伝達のために当該ロータシャフトに結合された駆動機械のモータ出力軸は、歯車伝動装置を用いて原動機付き車両の出力軸に結合されている。通常、ロータシャフトあるいはモータ出力軸は、変動するモータ出力トルクによって負荷を受け、当該モータ出力トルクは、加速するように作用し、制動するように作用し、又はアイドリング動作において回転運動の変化に影響しないように作用する。通常、出力軸は、原動機付き車両の駆動歯車に直接的に又は間接的に結合されているため、走行動作に基づき、変動する走行トルクで負荷を受けている。
【0008】
駆動機械の負荷変動時には、歯車伝動装置のフランク交替の前に一時的に、歯車伝動装置の歯車の特に共通の回転運動の適合(特に減速又は加速)のために駆動機械のトルクショックが設定されている。すなわち、一構成によれば、トルクショックがフランク交替前に制御され、及び/又は完全に終了される。
【0009】
トルクショックは、ここでは特に、そもそも特に負荷変動前、負荷変動時及び負荷変動後に設定される、時間にわたる出力トルク推移に基づくものであると理解され得る。
【0010】
すなわち、特に、トルクショック、すなわちそもそも負荷変動のために設定された駆動機械のトルク推移からの偏差の意味合いでのトルク介入は、互いに噛合する両歯車の周速が適合され、及び/又は互いに噛合する両歯車の相対周速が低減されるように選択されている。
【0011】
回転速度のどのような適合が行われるかは、特に負荷変動の種類に依存し、スラストフランクへの負荷変動においては減速させるようなトルクショックが設定されており、トラクションフランクへの負荷変動においては加速させるようなトルクショックが設定されている。
【0012】
これにより、フランク交替後に歯部の遊びにより互いに当接する両歯車のフランクがより小さな相対速度で衝突することを達成することが可能である。フランク交替時に現れる、遊びにより互いに衝突するフランクの相対速度にもかかわらず、低減/増大された絶対的な周速により、衝突時の衝撃はより小さく、これにより生じる騒音もより小さい。これにより、大きな騒音(しばしば「カチカチ音」として知覚される)による伝動装置の良好でない知覚品質を回避することが可能である。
【0013】
ここでは、負荷変動とは、狭義において、特に駆動機械の出力トルクのゼロクロスと理解されることができ、当該ゼロクロスは、特に、例えば前進ギヤ段と後進ギヤ段の間の切換時あるいはその逆、又は加速から制動への切換時あるいはその逆において、走行動作に基づきなされる。しかし、ここで、別の意味合いでは、フランク交替が終了するまでの負荷変動意思又は負荷変動状況の認識の推移全体も意図されている。抽象的に考察すれば、ここでの意味合いでは負荷変動の2つの種類:トラクションフランクへの負荷変動と、スラストフランクへの負荷変動とが存在する。
【0014】
互いに噛合する2つの歯車のフランク交替とは、ここでは特に、歯車のうち1つの最初に噛合している歯のフランクからつづいて噛合する歯のフランクへの歯車間の接触の移行と理解され得る。通常、当該フランク交替は遊びを伴うため、歯車軸のうち1つにおけるトルク変動時には、インボリュート歯によっても、新たなフランク接触の形成時に可聴な衝突が生じることがあり、当該衝突は、生じている異なるトルクにおいて、遊びを経過するときの追加的な相対速度に基づき生じる。このような衝突は、特に、(駆動部ひいてはシャフト及び歯車の)比較的低い回転速度において知覚可能である。
【0015】
係合している2つの歯車の共通の回転運動とは、ここでは特に、特にちょうどフランク交替が行われないときに両歯車が互いに依存して、すなわち互いに接触して推移する回転運動と理解され得る。このような依存した運動中には、トルクショックは、両歯車の互いに対する相対運動が引き起こされることなく、両歯車(ひいてはシャフト)の回転運動を適合させることが可能である。
【0016】
別の一態様によれば、電気駆動機械のロータシャフトが歯車伝動装置を用いて原動機付き車両の出力軸に結合されており、本発明の一構成による方法を実行するように構成された、原動機付き車両の電気駆動機械を制御する装置が開示される。
【0017】
本発明は、とりわけ、フランク交替前に、電気駆動機械のロータの制動又は加速のためのトルクショックの意味合いでの形成可能なトルク推移を偏差としてモーメント推移へ導入するという着想に基づくものである。当該モーメント推移は、特に、その大きさ、その継続時間及び/又はフランク交替に対する(フランク交替前の)時間的な間隔において適用可能であるとともに、例えば、モーメント閾値及び/又はモーメント勾配によって引き起こされることが可能である。トルクショックは、負荷変動によるフランク交替時の伝達装置シャフトの衝突速度を低減する。低減された衝突速度は、大幅により小さな固体伝播音インパルスひいてはより小さな騒音に寄与する。
【0018】
一構成によれば、特に直前及びその後に隣り合う駆動機械の出力トルク推移をもって考察して、トルクショックは、特にショック開始とショック終了の間の少なくとも2つの符号の変更を伴う、トルク勾配推移を有している。
【0019】
これにより、短い、最適な場合には運転者又は他の乗員又は傍観者にとって知覚可能でない時間において、駆動機械の出力トルク推移への比較的強い介入が可能である。
【0020】
一構成によれば、スラストフランクへの負荷変動時には減速させるようなトルクショックが生じ、及び/又はトラクションフランクへの負荷変動時には加速させるようなトルクショックが生じる。
【0021】
これにより、あり得る両負荷変動の種類における騒音低減を達成することが可能である。
【0022】
一構成によれば、トルクショックは、フランク交替の開始前に、特に「古い」フランクにおけるローラ接触の終了前に、したがって両歯車の運動が互いに依存しない遊び段階へ至る前に終了する。
【0023】
これにより、介入が遊び段階で行われないため、トルクショックの効果を正確に予測することが可能である;必要なトルクショックの配分(調整)が可能である。
【0024】
一構成によれば、トルクショックは、ショック強度、すなわち、特に現動作ケースについて通常の負荷変動トルクからのショックトルクの偏差によって決定される。特に、ショック強度、すなわちショックの振幅(規模)は、3~15Nm、特に5~10Nmである。
【0025】
当該ショック強度のトルクショックは、典型的には、騒動動作において、原動機付き車両の所望の走行挙動からの不都合な偏差として知覚されない。
【0026】
一構成によれば、トルクショックは、ショック継続時間、すなわち、特に現動作ケースについて通常の負荷変動トルクからのショックトルクの第1の偏差から最後の偏差までの継続時間によって決定される。特に、ショック継続時間は、最大で50ミリ秒、特に最大で40、30又は20ミリ秒である。
【0027】
最大でこのような継続時間を有するトルクショックは、典型的には、騒動動作において、原動機付き車両の所望の走行挙動からの不都合な偏差として知覚されない。
【0028】
一構成によれば、トルクショックは、フランク交替、特に負荷変動のゼロクロスからのショック間隔、すなわち、特に現動作ケースについて通常の負荷変動トルクからのショックトルクの第1の偏差から最後の偏差までの継続時間によって決定される。
【0029】
フランク交替からのショックの間隔の決定により、フランク交替の時点でショックの最適な作用が生じるように、例えば再振動(反射)の形態のショックの動的な作用を考慮することが可能である。
【0030】
一構成によれば、特にショック強度と、ショック開始とショック終了の間のショック継続時間とについてのショック推移は、偏差関数、例えば正弦関数、余弦関数又は多項式関数によって与えられ、及び/又はショック開始とショック終了の間のショック継続時間についての偏差関数は、そもそも負荷変動について設定された駆動機械の出力トルク推移についてのトルク設定を置換するか、又は当該トルク設定に重なる。
【0031】
ショック継続時間にわたって積分された駆動機械の標準出力トルク推移からのショックトルクの偏差は、伝動装置シャフトひいては係合している歯車への制動作用を表している。特に、ショック強度及びショック継続時間の相互作用によって、所望の制動作用を設定することが可能である。
【0032】
一構成によれば、本発明は、歯車伝動装置のスラストフランクにも、またトラクションフランクにも応用可能である。
【0033】
本発明の別の利点及び適用可能性は、図面に関連した以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】負荷変動時の騒音低減のための公知の方法によるトルク介入を示す図である。
【
図2】本発明の例示的な一構成によるトルクショックを示す図である。
【
図3】
図2に基づくトルクショックのパラメータの決定を示す図である。
【
図4】
図2及び
図3について記載された例示的な方法が行われる車両駆動部を大きく単純化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図4には原動機付き車両の電気駆動機械EMを有する電気車両駆動部1が示されており、電気駆動機械のロータシャフト2は、歯車伝動装置3を用いて、原動機付き車両の出力軸6と、これにおいて間接的に回転可能な2つの車輪8とに結合されている。
【0036】
歯車伝動装置3は歯車4,5を有する減速歯車段を備えており、歯車は、互いに噛合しており、したがって、歯部の不図示の遊びを除き、駆動機械EMの設定に合わせて、互いに依存して共通の回転運動Dを実行することが可能である。
【0037】
回転運動Dの設定は、電気駆動機械EMの制御装置SMによって、
図2及び
図3の実施例に対応しても行われる。
図1に記載された公知の方法も、車両駆動部1のハードウェア構成要素によって実行されることが可能である。
【0038】
図1には、グラフに基づき、駆動機械の負荷変動時の(公知の制御手段を有する)
図4に基づくハードウェアを有する電気車両駆動部を制御する公知の方法が示されている。
【0039】
フランク(歯面、噛合面)交替F*の範囲では、それ以前のもの(M・*
VF)(「・」は便宜上文字上のドットを表す。以下の記載及び特許請求の範囲の記載において同じ。)及びその後のもの(M・*
NF)よりも小さな絶対値を有するトルク勾配M・*
Fが形成されていることがモータ出力モーメントのトルク経過M*から見て取れる。
【0040】
対応して、電気駆動機械の(出力)回転数nの経過がなされる。
【0041】
加えて、固体伝播音加速度Kがグラフに記入されている。当該記載は、騒音についてのインジケータとして用いられる:固体伝播音加速度Kが大きくなればなるほど、騒音が大きくなると見込まれている。
【0042】
当該公知の解決手段では、フランク交替中にモーメント勾配M・*
Fの絶対値を低下させるという公知の対抗措置にもかかわらず、モータ出力モーメントM*のゼロクロス時に毎回固体伝播音加速度Kの大きなピークと、したがって伝動装置における不都合な騒音とが生じることがグラフから見て取れる。したがって、公知の方法では、手間のかかる高価な騒音遮断(遮音)が更に必要となる。
【0043】
これに対して、
図2及び
図3には、
図4に基づく車両駆動部2における電気駆動機械EMを制御する方法が記載されている:
【0044】
駆動機械EMの負荷変動時には、歯車伝動装置3のフランク交替Fの前に、歯車4,5の共通の回転運動Dの適合のために駆動機械のトルクショックSが制御される。
【0045】
これにより、フランク交替後に歯部の遊びにより互いに当接する両歯車4,5のフランクがより小さな相対速度で衝突する。これにより、大きな騒音による伝動装置の良好でない知覚品質を回避することが可能である。
【0046】
本実施例では、トルクショックSは、ここではM・*
F1からM・*
F2への、及びM・*
F2からM・*
NFへの少なくとも2つの符号の変更を伴うトルク勾配推移M・*V
F、M・*
F1、M・*
F2、M・*
NFを有している。これにより、短く知覚できない時間t_gesにおいて、駆動機械EMの出力トルク推移Mへの比較的強い介入が可能である。
【0047】
スラストフランクへの負荷変動Lの場合には減速させるようなトルクショックSが生じ、トラクションフランクへの負荷変動L2の場合には加速させるようなトルクショックS2が生じる。これにより、あり得る両負荷変動の種類における騒音低減を達成することが可能である。
【0048】
本実施例では、トルクショックLは、フランク交替Fの開始前に終了している。これにより、介入が遊び段階で行われないため、トルクショックLの効果を正確に予測することが可能である;必要なトルクショックSの配分(調整)が可能である。
【0049】
このとき、トルクショックSは、そのショック強度A、すなわち、特に時点tA_max=t_F-t_1における現動作ケースについてのフランク交替のための通常の負荷変動トルクMからのショックトルクの偏差によって決定される。ショック強度Aはこの間で約10Nmであり、これは、典型的には、車両動作中に走行挙動の影響として知覚されない。
【0050】
また、トルクショックSは、そのショック継続時間t_gesによって決定される。本実施例では、適切な走行状況において、特に操車時又は駐車時に知覚されないように、ショック継続時間t_gesは最大で40ミリ秒である。
【0051】
また、トルクショックSは、フランク交替からのFショック間隔t_1によって決定される。これにより、フランク交替の時点でショックの最適な作用が生じるように、例えば再振動(反射)の形態のショックの動的な作用を考慮することが可能である。
【0052】
実施例の車両駆動部1においては、制御装置SMの記憶部には、車両あるいは駆動部1の予期され得る動作状態について制御されるべきトルクショックSの決定が可能であるテーブルがメモリされている。テーブルは、試験及び/又はシミュレーション実行に基づきデータ化されているとともに、ショック強度A、ショック継続時間t_ges及びショック間隔t_1についての、設定された各動作状態に用いられるべき値を含んでいる。
【0053】
図3には、例示的な動作状態について、2つのグラフ(ショック間隔あるいはショック継続時間に対するショック強度がプロットされている)において、テーブルのデータ化のための試験/シミュレーションの結果が示されており、各グラフには、図示説明のためにトルクショックを決定するためのデータ点11,12が記入されており、当該データ点では、残った(維持される)固体伝播音加速度Kが最小であり、したがって、予期され得る騒音が最小である。
【0054】
記入された両データ点11,12の組合せに基づき、テーブルは、トルクショックが、示された動作状態について、パラメータであるショック強度A、ショック継続時間t_ges及びショック間隔t_1に基づいて決定されるように満たされる(書き込まれる)ことができるとともに、動作中に、負荷変動の発生時には、示された動作状態において制御されることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
2 ロータシャフト
3 歯車伝動装置
4,5 歯車
6 出力軸
A ショック強度
D 回転運動
EM 電気駆動機械
F フランク交替
K 固体伝播音
L 負荷変動
M モータ出力モーメントの経過
M・ トルク勾配
n 回転数の経過
S,S2 トルクショック
SM 制御装置(制御手段)
t_ges ショック継続時間
t_1 フランク交替からのショック間隔
【国際調査報告】