(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】位相変換器及びそれを含む無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H01P 9/00 20060101AFI20240614BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H01P9/00 A
H01Q1/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577959
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2022008686
(87)【国際公開番号】W WO2022270839
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0079968
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517099982
【氏名又は名称】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユソン
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ソク
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA02
5J047AA04
5J047AB01
5J047AB07
5J047BC12
5J047FD01
(57)【要約】
本発明は広帯域で損失が低い位相変換器及びそれを含む無線通信装置に関する。一実施例による無線通信装置は、無線通信モジュールと、第1アンテナと、前記無線通信モジュールと前記第1アンテナとの間で信号を伝送する第1伝送線路と、前記第1伝送線路上に配置された位相変換素子と、を含み、前記位相変換素子は、垂直方向に積層され、電気的に並列に連結された複数の共振単位要素を含むことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信モジュールと、
第1アンテナと、
前記無線通信モジュールと前記第1アンテナとの間で信号を伝送する第1伝送線路と、
前記第1伝送線路上に配置された位相変換素子と、を含み、
前記位相変換素子は、
第1方向の一側に配置され、垂直方向に互いに離隔して積層された複数の第1ポートを含む第1ポート部と、
前記第1方向の他側に配置され、前記垂直方向に互いに離隔して積層された複数の第2ポートを含む第2ポート部と、
前記第1方向に延び、前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのうちで前記第1方向に互いに対向するポート対のそれぞれを電気的に連結する複数の導線と、を含む、無線通信装置。
【請求項2】
前記複数の第1ポートのそれぞれは前記垂直方向に少なくとも一部が互いに重畳し、前記複数の第2ポートのそれぞれは前記垂直方向に少なくとも一部が互いに重畳する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのそれぞれは前記第1方向と交差する第2方向に延びる、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記複数の導電は前記垂直方向に互いに重畳しない、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記複数の導線のうちの少なくとも一部は、前記第1方向と交差する第2方向に互いに離隔して並んで配置された多重導線を含む、請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記複数の第1ポートは、前記垂直方向に延びる第1貫通ホールを介して電気的に互いに連結され、
前記複数の第2ポートは、前記垂直方向に延びる第2貫通ホールを介して電気的に互いに連結される、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記第1貫通ホール及び前記第2貫通ホールのそれぞれは、半円形平面形状を有するハーフスルーホールを含む、請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのそれぞれの前記第2方向の幅は前記第1方向の幅よりも大きく、
前記複数の導線のそれぞれの前記第1方向の長さは前記第2方向の幅よりも大きい、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記位相変換素子は、前記第1方向に互いに離隔した複数の第3貫通ホールを含むバリア部をさらに含み、
前記複数の第3貫通ホールのそれぞれは前記複数の導線から前記第2方向に離隔している、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項10】
第2アンテナと、
前記無線通信モジュールと前記第2アンテナとの間で信号を伝送する第2伝送線路と、をさらに含み、
前記複数の導線は、前記第2方向に前記バリア部を間に挟んで前記第2伝送線路と対向する、請求項9に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広帯域で損失が低い位相変換器及びそれを含む無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ディスプレイ装置の大型化及びスリム化の趨勢に応じて、ディスプレイ装置を壁掛け型に設置する場合が多く、モバイル機器のようにソースコンテンツを提供する外部機器との便利な無線連結のために、ワイファイ(Wi-Fi)やブルートゥース(登録商標)(BT)のような無線通信モジュールをディスプレイ装置に内蔵する趨勢である。
【0003】
ところが、大型ディスプレイ装置を壁掛け型に設置する場合、主にディスプレイパネルの背面に装着される無線通信モジュールの位置のため、壁とディスプレイパネルとの間から電波がディスプレイの前面の方向に進行しにくい。よって、ディスプレイ装置の無線通信モジュールとの無線連結対象となる外部機器が比較的近くにあっても優れた通信品質を示しにくい。
【0004】
したがって、無線通信モジュールとアンテナとの間の伝送経路に位相変換器を装着することにより、無線信号の進行方向(すなわち、放射パターン)を修正する方案が考慮されている。もちろん、進行方向を変える目的の他に、ダイポール(Dipole)アンテナにおいて一側のアンテナと他側のアンテナとの間に180度の位相差が発生するようにすれば、最大効率のアンテナ利得を具現することもできる。
【0005】
ところが、このような最大効率のアンテナ利得の具現は、機器の小型化のために、端部の長さが最小共振波長の1/2、短くは1/4に相当する端部の長さを有するアンテナが現在大部分の機器に適用されている実情の下で位相制御が一層難しい欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するために考案されたものであり、広帯域でより優れた位相変換性能を有する位相変換器及びそれを含む無線通信装置を提供するためのものである。
【0007】
本発明の課題は以上で言及した課題に限定されず、言及しなかった他の課題は以下の記載から当業者に明らかに理解可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施例による無線通信装置は、無線通信モジュールと、第1アンテナと、前記無線通信モジュールと前記第1アンテナとの間で信号を伝送する第1伝送線路と、前記第1伝送線路上に配置された位相変換素子と、を含み、前記位相変換素子は、第1方向の一側に配置され、垂直方向に互いに離隔して積層された複数の第1ポートを含む第1ポート部と、前記第1方向の他側に配置され、前記垂直方向に互いに離隔して積層された複数の第2ポートを含む第2ポート部と、前記第1方向に延び、前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのうちで前記第1方向に互いに対向するポート対のそれぞれを電気的に連結する複数の導線と、を含むことができる。
【0009】
例えば、前記複数の第1ポートのそれぞれは前記垂直方向に少なくとも一部が互いに重畳し、前記複数の第2ポートのそれぞれは前記垂直方向に少なくとも一部が互いに重畳することができる。
【0010】
例えば、前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのそれぞれは前記第1方向と交差する第2方向に延びることができる。
【0011】
例えば、前記複数の導線のうちの少なくとも一部は前記垂直方向に互いに重畳することができる。
【0012】
例えば、前記複数の導線は前記垂直方向に互いに重畳しなくてもよい。
【0013】
例えば、前記複数の導線のうちの少なくとも一部は、前記第1方向と交差する第2方向に互いに離隔して並んで配置された多重導線を含むことができる。
【0014】
例えば、前記複数の第1ポートは、前記垂直方向に延びる第1貫通ホールを介して電気的に互いに連結され、前記複数の第2ポートは、前記垂直方向に延びる第2貫通ホールを介して電気的に互いに連結され得る。
【0015】
例えば、前記第1貫通ホール及び前記第2貫通ホールのそれぞれは、半円形平面形状を有するハーフスルーホールを含むことができる。
【0016】
例えば、前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのそれぞれの前記第2方向の幅は前記第1方向の幅よりも大きく、前記複数の導線のそれぞれの前記第1方向の長さは前記第2方向の幅よりも大きくてもよい。
【0017】
例えば、前記位相変換素子は、前記第1方向に互いに離隔した複数の第3貫通ホールを含むバリア部をさらに含み、前記複数の第3貫通ホールのそれぞれは前記複数の導線から前記第2方向に離隔することができる。
【0018】
例えば、前記無線通信装置は、第2アンテナと、前記無線通信モジュールと前記第2アンテナとの間で信号を伝送する第2伝送線路と、をさらに含み、前記複数の導線は、前記第2方向に前記バリア部を間に挟んで前記第2伝送線路と対向することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による位相変換器及びそれを含む無線通信装置は次のような効果を有する。
【0020】
第一、パターン積層方式のチップタイプの形状に小型化することが可能である。
【0021】
第二、積層数及び層経路の多変化によって位相変化量及びインピーダンスマッチングの調節が可能である。
【0022】
第三、単一素子で低域通過フィルターの機能まで具現することが可能である。
【0023】
本発明で得られる効果は以上で言及した効果に限定されず、言及しなかった他の効果は以下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下で添付する図面は本発明に対する理解を手伝うためのものであり、詳細な説明と一緒に本発明の実施例を提供する。ただし、本発明の技術的特徴が特定の図に限定されるものではなく、各図で開示する特徴は互いに組み合わせられて新規の実施例として構成可能である。
【0025】
【
図1】一実施例による無線通信装置の構成の一例を示す図である。
【0026】
【
図2】一実施例による位相変換器の構造の一例を示す透視斜視図である。
【0027】
【
図3】他の実施例による位相変換器の構造の一例を示す透視斜視図である。
【0028】
【
図4】さらに他の実施例による位相変換器の構造の一例を示す透視斜視図である。
【0029】
【
図5】さらに他の実施例による位相変換器の構造の一例を示す透視斜視図である。
【0030】
【
図6】
図5に示す位相変換器が適用された無線通信装置の一具現例を示す図である。
【0031】
【
図7】実施例による位相変換器のカップリング特性を説明するための図である。
【0032】
【
図8】実施例による位相変換器の周波数帯域別特性を説明するための図である。
【0033】
【
図9】実施例による位相変換器の位相制御性能特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施例が適用される装置及び多様な方法について図面を参照してより詳細に説明する。以下の説明で使用する構成要素に対する接尾辞「モジュール」及び「部」は明細書作成の容易性のみを考慮して付与するか又は混用するものであり、それ自体として互いに区別される意味又は役割を有するものではない。
【0035】
実施例の説明において、各構成要素の「上(上側)又は下(下側)」、「前(前側)又は後(後側)」に形成されるものとして記載される場合、「上(上側)又は下(下側)」及び「前(前側)又は後(後側)」は二つの構成要素が互いに直接接触するか又は一つ以上のさらに他の構成要素が二つの構成要素の間に配置されて形成されるものを全部含む。
【0036】
また、本発明の構成要素の説明において、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものであるだけで、その用語によって当該構成要素の本質、順番や手順などが限定されない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」又は「接続」されていると記載される場合、その構成要素はその他の構成要素に直接的に連結されるか又は接続されることができるが、各構成要素の間にさらに他の構成要素が「連結」、「結合」又は「接続」されることもできると理解しなければならないであろう。
【0037】
また、以上で記載する「含む」、「構成する」又は「有する」などの用語は、特に反対の記載がない限り、該当の構成要素が存在し得ることを意味するものなので、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるものと解釈しなければならない。技術的又は科学的用語を含めたすべての用語は、他に定義しない限り、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。辞書に定義された用語のように一般的に使用される用語は関連技術の文脈上の意味と一致するものと解釈されなければならず、本発明で明白に定義しない限り、理想的に又は過度に形式的な意味と解釈されない。
【0038】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例による位相変換器を詳細に説明するに先立ち、
図1を参照して実施例による位相変換器が適用可能な無線通信装置の構成を先に説明する。
【0039】
図1は一実施例による無線通信装置構成の一例を示す。
【0040】
図1を参照すると、一実施例による無線通信装置は、無線通信モジュール200と、第1アンテナ310と、第2アンテナ320と、第1アンテナ310と無線通信モジュール200との間に配置された第1伝送線路410と、第2アンテナ320と無線通信モジュール200との間に配置された第2伝送線路420と、第1伝送線路410に直列に連結された位相変換器100と、を含むことができる。
【0041】
無線通信モジュール200は、一つ以上の無線通信プロトコルを支援することができる。ここで、無線通信プロトコルは、4G/5G、ブルートゥース(登録商標)(BT)、及びワイファイ(Wi-Fi)のうちの少なくとも一つを含むことができるが、これは例示的なものであり、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0042】
第1アンテナ310及び第2アンテナ320はダイポール(Dipole)アンテナを具現することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、第1アンテナ310及び第2アンテナ320はMIMO(Multiple Input Multiple Output)アンテナを具現することもできる。
【0043】
一方、第1アンテナ310及び第2アンテナ320は、アンテナ端子510、520を介してそれぞれ第1伝送線路410及び第2伝送線路420に連結され得るが、具現によっては(例えば、伝送線路と一体にパターンが形成される平面アンテナなど)アンテナ端子510、520を省略することもできる。
【0044】
位相変換器100は位相変換素子とも言え、無線通信モジュール200から第1伝送線路410及び第2伝送線路420に同時に出力される信号がそれぞれ第1アンテナ310及び第2アンテナ320に到逹するとき、両信号間の位相差を目標値に制御することができる。例えば、第1アンテナ310及び第2アンテナ320がダイポールアンテナを具現する場合、目標値は180度になり得る。もちろん、このような目標値は例示的なものであり、ビーム操縦が目的の場合、180度と異なる値が目標値になることもできる。反対に、信号を受信する場合、第1アンテナ310及び第2アンテナ320に同時に受信された信号が第1伝送線路410及び第2伝送線路420を介して無線通信モジュール200に到逹するとき、各伝送線路から入力される信号間の位相差も位相変換器100によって目標値になり得る。
【0045】
以下では、
図2~
図5を参照して実施例による位相変換器100の構造を説明する。
【0046】
図2は一実施例による位相変換器の構造の一例を示す透視斜視図である。
【0047】
図2を参照すると、一実施例による位相変換器100Aは、第1ポート部110Aと、第2ポート部120Aと、導線部130Aと、複数の貫通ホール141、142と、を含むことができる。
【0048】
第1ポート部110Aは1軸方向の一側に配置され、垂直方向(すなわち、3軸方向)に互いに離隔して積層された複数の第1ポート111、112、113、114を含むことができる。
【0049】
第2ポート部120Aは1軸方向第1ポート部110Aと対向する他側に配置され、垂直方向に互いに離隔して積層された複数の第2ポート121、122、123、124を含むことができる。
【0050】
導線部130Aを構成する複数の導線131、132、133、134のそれぞれは第1方向に延び、複数の第1ポート111、112、113、114及び複数の第2ポート121、122、123、124のうちで第1方向に互いに対向する(すなわち、3軸方向の高さが互いに相応する)ポート対のそれぞれを電気的に連結することができる。例えば、3軸方向に最上層に配置された第1ポート111と第2ポート121とは3軸方向に最上層に配置された導線131を介して電気的に連結され得る。
【0051】
複数の第1ポート111、112、113、114、複数の第2ポート121、122、123、124、及び複数の導線131、132、133、134のそれぞれは、銅のような導電性物質を含むことができる。また、複数の第1ポート111、112、113、114は3軸方向に延び、導電性を有する第1貫通ホール141によって電気的に連結され、複数の第2ポート121、122、123、124は3軸方向に延び、導電性を有する第2貫通ホール142によって電気的に連結され得る。第1貫通ホール141及び第2貫通ホール142のそれぞれは半円形平面形状を有するハーフスルーホール(half-through hole)の形状を有し得るが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0052】
一方、最下層の第1ポート114及び第2ポート124のそれぞれは第1伝送線路410と電気的に連結され得る。
【0053】
複数の第1ポート111、112、113、114のそれぞれは3軸方向に少なくとも一部が互いに重畳し、複数の第2ポート121、122、123、124のそれぞれは3軸方向に少なくとも一部が互いに重畳し得る。また、複数の第1ポート111、112、113、114及び複数の第2ポート121、122、123、124のそれぞれは2軸方向に延びる板形状を有し、2軸方向の長さw1は1軸方向の長さw2よりも大きくてもよい。また、複数の導線131、132、133、134のそれぞれの線幅w3は1軸方向の長さw4よりも小さくてもよい。また、線幅w3は複数の第1ポート111、112、113、114及び複数の第2ポート121、122、123、124のそれぞれの2軸方向の長さw1よりも小さくてもよい。
【0054】
例えば、複数の導線131、132、133、134は、3軸方向に少なくとも一部が互いに重畳し得る。しかし、他の具現によれば、複数の導線131、132、133、134のうちの少なくとも一部は互いに3軸方向に重畳しなくてもよい。
【0055】
上述した形態の位相変換器100Aで、第1ポート部110A及び第2ポート部120Aを構成するそれぞれのポート、及び導線部130Aを構成するそれぞれの導線のうちで3軸方向の高さが互いに相応する構成要素は共振単位を形成し、3軸方向に異なる高さを有する構成要素と電磁気カップリング(coupling)を形成する。このような電磁気カップリングによって電気的長さが制御される効果があり、電気的長さが制御されるというのは伝送線路上で位相定数(β:phase constant)を制御することができることを意味する。したがって、これは、実施例による位相変換器100Aが第1伝送線路410を通過する信号の位相を変化させることを意味する。
【0056】
結局、導線部130Aの線幅w3、線長さw4、積層数、導線間の距離(例えば、第3方向の導線間の離隔距離、第3方向の導線間の重畳有無など)を変化させることによってアンテナ間の多様な目標位相差値を得ることができる。
【0057】
具現において、第1ポート部110A及び第2ポート部120Aを構成するそれぞれのポート及び導線部130Aを構成するそれぞれの導線のうちで3軸方向の高さが互いに相応する構成要素、すなわち、共振単位要素は基板(図示せず)上に形成された単一導電性印刷パターンの形態に具現され得る。例えば、
図2に示すように、一実施例による位相変換器100Aは、総四つの共振単位要素を有すると言える。このような場合、位相変換器100Aは、4枚の基板を3軸方向に積層させて形成することができる。すなわち、最上層の共振単位要素111、121、131は最上層に配置された第1基板(図示せず)の上面に形成され、二番目の共振単位要素112、122、132は第1基板の下に配置される第2基板(図示せず)の上面に形成され、三番目の共振単位要素113、123、133は第2基板の下に配置される第3基板(図示せず)の底面に形成され、最下層の共振単位要素114、124、134は第3基板の下に配置される第4基板(図示せず)の底面に形成され得る。
【0058】
もちろん、
図2に示す線幅w3、線長さw4、第3方向の積層数、導線間の距離などは例示的なものであり、多様な変形が可能であるというのは当業者に自明である。
【0059】
図3は他の実施例による位相変換器の構造の一例を示す透視斜視図である。
【0060】
図3に示す他の実施例による位相変換器100Bは、
図2に示す位相変換器100A及び導線131’の構成を除いた残りの構成は同一である。したがって、
図2に示す位相変換器100Aとの相違点を主として説明する。
【0061】
図3を参照すると、他の実施例による位相変換器100Bは、共振単位要素を構成する各導線が第2方向に互いに離隔した複数の多重導線131’で構成される。
【0062】
図4はさらに他の実施例による位相変換器の構造の一例を示す透視斜視図である。
【0063】
図4に示すさらに他の実施例による位相変換器100Cは、
図2に示す位相変換器100Aに比べて、バリア部150Cが追加されたことを除いた残りの構成は類似している。したがって、
図2に示す位相変換器100Aとの相違点を主として説明する。
【0064】
図4を参照すると、さらに他の実施例による位相変換器100Cは、1軸方向に互いに離隔した複数の第3貫通ホール151、152を含むバリア部150Cを備える。バリア部150Cを構成する第3貫通ホール151、152のそれぞれは3軸方向に延び、導線部130Cから2軸方向に離隔し得る。
【0065】
また、第3貫通ホール151、152のそれぞれは半円形平面形状を有するハーフスルーホールの形態を有し得るが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0066】
具現において、前述した基板積層方式で位相変換器100Cが形成される場合、第3貫通ホール151、152のそれぞれは、各基板(図示せず)で共振単位要素に相当する導電性印刷パターンが形成される面に導電性ダミーパッドDPを形成し、ダミーパッドDPを第3方向に貫通するスルーホールを形成することで製作することができる。ここで、第3貫通ホール151、152のそれぞれの最上層及び最下層のダミーパッドDPは一体に形成され得る。
【0067】
一方、バリア部150Cは、位相変換器100Cが実装される基板(図示せず)に備えられたグラウンドと電気的に連結され得る。
【0068】
図5はさらに他の実施例による位相変換器の構造の一例を示す透視斜視図である。
【0069】
図5に示すさらに他の実施例による位相変換器100Dは、
図4に示す位相変換器100Cに比べて、バリア部150Dが導線131を基準に第2方向の両側に全部配置され、一側バリア部150Dを構成する貫通ホールの個数が増加したことに違いがある。
【0070】
図6は
図5に示す位相変換器が適用された無線通信装置の一具現例を示す。
【0071】
図6はさらに他の実施例による位相変換器100Dが第1伝送線路100Dと直列に連結されるように無線通信装置の基板に実装された形態の一例を示す。また、
図6で、第1アンテナ310及び第2アンテナ320の図示は省略し、それぞれに対応するアンテナ端子510、520を示す。
【0072】
図6を参照すると、前述したように、位相変換器100Dのバリア部150Dは基板のグラウンドパッドGP上に配置されることが分かる。2軸方向に位相変換器100Dの一側には第2伝送線路420が配置される。よって、導線部130Dは2軸方向にバリア部150Dを間に挟んで第2伝送線路420と対向するようになり、バリア部150Dがグラウンドと連結されるので、シールディング(shielding)の役割を果たして伝送線路間のEMC(Electro-Magnetic Compatibility)性能及びEMS(ElectroMagnetic Susceptibility)性能が向上する。
【0073】
仮に、
図6の位相変換器100Dが
図4に示すさらに他の実施例による位相変換器100Cに代替される場合、バリア部150Cが2軸方向に導線部130Cと第2伝送線路420との間にあるように位相変換器100Cを配置することが好ましい。
【0074】
一方、このような無線通信装置の基板実装において、アンテナ端子510、520を基準にアンテナの放射インピーダンスと伝送線路インピーダンスとが整合するように位相変換器を実装することが好ましい。
【0075】
以下では、
図7~
図9を参照して実施例による位相変換器100A、100B、100C、100Dの効果を説明する。
【0076】
図7は実施例による位相変換器のカップリング特性を説明するための図である。
【0077】
図7を参照すると、比較例による一般的な位相変換器はインダクタL及びキャパシタCの組合せで具現されることが一般的なので、インダクタLの間は直列に、キャパシタCは並列に連結された形態の等価回路が成り立つ。
【0078】
しかし、実施例による実施例による位相変換器100A、100B、100C、100Dは、共振単位要素別にインダクタンス及びキャパシタンスを一緒に有するL-C共振ブロックを形成し、共振ブロック単位で電磁気カップリングを成すようになる。また、共振単位要素が第1貫通ホール141及び第2貫通ホール142によって並列に連結されるので、抵抗は減少しながらも、単一の導線に比べて表皮効果(skin effect)が少なくて有利である。
【0079】
図8は実施例による位相変換器の周波数帯域別特性を説明するための図である。
【0080】
図8を参照すると、一般的な伝送線路は周波数が大きくなるのに伴って信号が一定の傾きに減衰するが、実施例による位相変換器100A、100B、100C、100Dが伝送線路に適用される場合、特定の周波数を基準にそれよりも低い周波数では一般伝送線路に比べて優れた伝送効率を示し、それよりも高い周波数では低域通過フィルター(LPF)を通過する特性を示す。よって、特定の周波数を無線通信モジュール200の主使用帯域よりも高く設定することにより、位相制御の効果はもちろんのこと、広帯域で高い伝送効率を得ながらも高周波雑音を低減することができる。ここで、特定の周波数は、線幅w3、線長さw4、第3方向の積層数、導線間の距離などの変化によって制御することができる。
【0081】
図9は実施例による位相変換器の位相制御性能特性を説明するための図である。
【0082】
図9を参照すると、比較例による一般的な位相制御器は周波数に対する電気的長さ(すなわち、β)が固定値を有するが、実施例による位相制御器は、線幅w3、線長さw4、第3方向の積層数、導線間の距離によって多様に可変することができる。よって、実施例による位相制御器が実装される無線通信装置のトポロジーに関係なく多様な目標位相差値を具現することができる。
【0083】
以上で実施例を中心に説明したが、これは単に例示であるだけで、本発明を限定するものではなく、本発明が属する分野の通常の知識を有する者であれば本実施例の本質的な特性を逸脱しない範囲内で以上で例示しなかった様々の変形及び応用が可能であることが分かるであろう。例えば、実施例に具体的に示した各構成要素は変形して実施することができるものである。そして、このような変形及び応用に係る相違点は添付の特許請求の範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならないであろう。
発明の実施のための形態
【0084】
発明の実施のための形態は前述した「発明を実施するための形態」で充分に説明された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
実施例による位相変換器及びそれを含む無線通信装置はディスプレイ装置などに適用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信モジュールと、
第1アンテナと、
前記無線通信モジュールと前記第1アンテナとの間で信号を伝送する第1伝送線路と、
前記第1伝送線路上に配置された位相変換素子と、を含み、
前記位相変換素子は、
第1方向の一側に配置され、垂直方向に互いに離隔して積層された複数の第1ポートを含む第1ポート部と、
前記第1方向の他側に配置され、前記垂直方向に互いに離隔して積層された複数の第2ポートを含む第2ポート部と、
前記第1方向に延び、前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのうちで前記第1方向に互いに対向するポート対のそれぞれを電気的に連結する複数の導線と、を含む、無線通信装置。
【請求項2】
前記複数の第1ポートのそれぞれは前記垂直方向に少なくとも一部が互いに重畳し、前記複数の第2ポートのそれぞれは前記垂直方向に少なくとも一部が互いに重畳する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのそれぞれは前記第1方向と交差する第2方向に延びる、請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記複数の導線は前記垂直方向に互いに重畳しない、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記複数の導線のうちの少なくとも一部は、前記垂直方向に互いに重畳する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記複数の導線のうちの少なくとも一部は、前記第1方向と交差する第2方向に互いに離隔して並んで配置された多重導線を含む、請求項4又は5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記複数の第1ポートは、前記垂直方向に延びる第1貫通ホールを介して電気的に互いに連結され、
前記複数の第2ポートは、前記垂直方向に延びる第2貫通ホールを介して電気的に互いに連結される、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記第1貫通ホール及び前記第2貫通ホールのそれぞれは、半円形平面形状を有するハーフスルーホールを含む、請求項7に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのそれぞれの前記第2方向の幅は前記第1方向の幅よりも大きく、
前記複数の導線のそれぞれの前記第1方向の長さは前記第2方向の幅よりも大きい、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記位相変換素子は、前記第1方向に互いに離隔した複数の第3貫通ホールを含むバリア部をさらに含み、
前記複数の第3貫通ホールのそれぞれは前記複数の導線から前記第1方向と交差する第2方向に離隔している、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記複数の第3貫通ホールのそれぞれは、半円形平面形状を有するハーフスルーホールを含む、請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記バリア部は基板のグラウンドパッド上に配置され、グラウンドと連結されている、請求項10又は11に記載の無線通信装置。
【請求項13】
第2アンテナと、
前記無線通信モジュールと前記第2アンテナとの間で信号を伝送する第2伝送線路と、をさらに含み、
前記複数の導線は、前記第2方向に前記バリア部を間に挟んで前記第2伝送線路と対向する、請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記第1アンテナと前記第1伝送線路とを連結する第1アンテナ端子と、
前記第2アンテナと前記第2伝送線路とを連結する第2アンテナ端子と、をさらに含む、請求項13に記載の無線通信装置。
【請求項15】
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナのそれぞれはダイポールアンテナに相当し、
前記位相変換器の目標値は180度である、請求項13又は14に記載の無線通信装置。
【請求項16】
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナに同時に受信された信号が前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路を介して前記無線通信モジュールに到逹するとき、前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路から入力される信号間の位相差が前記位相変換器の目標値に相当する、請求項13に記載の無線通信装置。
【請求項17】
前記複数の第1ポートのうちで最下層にある第1ポート及び前記複数の第2ポートのうちで最下層にある第2ポートは前記第1伝送線路と電気的に連結される、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項18】
前記複数の導線のそれぞれの前記第1方向と交差する第2方向の幅は前記複数の第1ポート及び前記複数の第2ポートのそれぞれの前記第2方向の幅よりも小さい、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項19】
前記複数の第1ポート、前記複数の第2ポート、及び前記複数の導線のうちで前記垂直方向の高さが互いに相応する構成要素は共振単位要素を形成する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項20】
前記共振単位要素は、単一の導電性印刷パターンの形態を有する、請求項19に記載の無線通信装置。
【国際調査報告】