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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ウロデシン塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20240704BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240704BHJP
   C07D 207/08 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C07D487/04 140
A61K31/519
C07D207/08 CSP
A61P19/06
A61P17/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P31/04
A61P33/00
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024503814
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022070369
(87)【国際公開番号】W WO2023001893
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】2110403.9
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524026311
【氏名又は名称】レーボロック・イミュノロジー・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】チャイ,シエンフォン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,チウホン
(72)【発明者】
【氏名】マーリング,トーマス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076CC07
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC34
4C076FF11
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZB38
(57)【要約】
本開示は、ウロデシンまたは7-[(3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-ピロリジン-1-イルメチル]-3,5-ジヒドロ-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-4-オンとして知られる化合物の新規なグルタル酸塩形態、およびそれを調製する方法に特に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウロデシン化合物:
【化1】
の薬学的に許容される塩であって、グルタル酸塩、マロン酸塩および/またはシュウ酸塩から選択される少なくとも1種の塩を含む、塩。
【請求項2】
ヘミグルタル酸塩を含む、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
ヘミL-グルタル酸塩を含む、請求項2に記載の塩。
【請求項4】
混合塩であり、ヘミコハク酸塩をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の塩。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のウロデシン塩化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的に許容される組成物。
【請求項6】
医薬における使用のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物または組成物。
【請求項7】
ウロデシンヘミグルタル酸塩またはウロデシンヘミL-グルタル酸塩を調製する方法であって、
(a)ウロデシン遊離塩基の水溶液を調製し、任意選択により室温で撹拌するステップと、
(b)グルタル酸またはL-グルタル酸をステップ(a)の混合物に添加し、任意選択により室温で30分間撹拌するステップと、
(c)ステップ(b)の溶液を凍結乾燥して、白色固体生成物を得るステップと、
(d)(c)の固体生成物を水に溶解し、任意選択により75℃に加熱し、エタノールを添加し、任意選択により75℃で30分間撹拌して、均質な溶液を形成するステップと、
(e)(d)の溶液へのアセトニトリルの滴下添加を、任意選択により60分かけて行うステップと、
(f)(e)の溶液を60分間、任意選択により75℃で、撹拌し、任意選択により溶液を60分かけて0℃に冷却するステップと、
(g)濾過し、アセトニトリルで洗浄して、ウロデシンヘミ塩グルタル酸ヘミ塩を得るステップと
を含む、ウロデシンヘミグルタル酸塩またはウロデシンヘミL-グルタル酸塩を調製する方法。
【請求項8】
ステップ(a)が、水中のウロデシン遊離塩基の調製において、遊離形態の反応体:
【化2】
の使用を必要とする、請求項7に記載のウロデシンヘミグルタル酸塩を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウロデシンまたは7-[(3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-ピロリジン-1-イルメチル]-3,5-ジヒドロ-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-4-オンとして知られる化合物の新規なグルタル酸塩形態、およびそれを調製する方法に特に関する。
【背景技術】
【0002】
構造的に:
【0003】
【化1】
【0004】
として知られる、ウロデシンまたは7-[(3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-ピロリジン-1-イルメチル]-3,5-ジヒドロ-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-4-オンとして知られる医薬化合物は、ヒト疾患に関与する、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)を含む複数の該当する酵素を阻害する。
【0005】
ウロデシンは、以下に限定されないが、痛風、皮膚障害、がん、B細胞およびT細胞媒介性疾患、細菌感染症ならびに原虫感染症を含む複数のヒト疾患の治療のために開発された。ウロデシンの使用は、例えば、米国特許第7553839号にも記載されている。
【0006】
さらに、化合物ウロデシンの医薬用塩は、文献において周知である。
これは、以下に限定されないが、塩酸塩、ジヒドロクロリド、臭化水素酸塩、ヘミ硫酸塩、p-トシル酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、L-酒石酸塩、L-乳酸塩、ステアリン酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩およびL-リンゴ酸塩を含む。さらに、化合物のC4有機二酸とのヘミ塩およびモノ塩は、コハク酸、フマル酸、L-リンゴ酸、マレイン酸、L-酒石酸、L-アスパラギン酸を含むことができ、当技術分野において例示されている。
【0007】
ウロデシンの複数の塩が記載されてきたが、その塩形態の多くは、医薬品における生成および/または適用の方法に最適ではない性質を示す。例えば、その塩酸塩または他の塩は、多形の異型を含有することが示されている。多形の異型がないか、またはその数が少なく、結晶形態で安定である医薬化合物の塩を得ることは望ましいことであり得る。
【0008】
混合塩は、非混合塩単独の物理的性質とは異なる物理的性質の可能性を提供する場合もあり、それ故、使用の適性が医薬品有効成分の性質に依存する薬物製品の製造において役立つ可能性がある。非混合塩と同様に、混合塩は多形であることが多く、これらのうち一部は不安定である。
【0009】
さらに、加工に関して、有用なウロデシン塩の作製に関連する考慮すべき技術上の障害が依然としてある。Org.Process Research and Dev.2009、13、928において言及されているように、遊離形態のウロデシンを複製することさえ、それ自体に課題がなくはないことは注目に値する。その次に、安定な塩を生成すること、およびそれを生成するための、信頼性が高くかつ堅実な方法を提供することは、第2の障害となる。ウロデシンの様々な塩を形成する方法が記載されてきたが、現在まで、そのような方法では、医薬品において必要とされる使用のための候補となる塩は、同定も生成もされていない。
【発明の概要】
【0010】
したがって、安定な塩(混合でも非混合でも)と、改良型のウロデシン医薬品の製造に有用となる、安定な塩の生成のためのプロセスとを開発することが望ましい。
第1の態様において、ここに開示される発明は、グルタル酸塩、マロン酸塩および/またはシュウ酸塩から選択される、少なくとも1種のウロデシンの塩を含む。
【0011】
そのような塩形態は、過去に、従来技術からは発見も特性決定も作製もされていないが、本発明者らは、詳細に研究して臨床的使用のための適切な追加の候補を作出し、該当する選択物を特性決定して、潜在的な医薬的適用のためのそれらの適性を判定した。これらの塩を最初の事例として生成することは困難であったため、そのような研究は、通例の塩の選択中に行われる単なる典型的な研究を超えるものであった。
【0012】
実施形態において、塩はヘミ塩を含む。ヘミ塩の化学量論は、安定な形態をもたらし、これは場合により、加熱および乾燥すると無水形態に変換し得る。しかしながら、安定なヘミ形態をもたらす方法を発見することは技術的な課題であり、これは本発明者らによって克服された。
【0013】
実施形態において、塩は、ウロデシンのヘミグルタル酸塩を含み、好ましい実施形態では、ウロデシンのヘミL-グルタル酸結晶塩を含む。
最初は生成するのが技術的に困難であったが、最終的に、ヘミL-グルタル酸塩の結晶形態は、当技術分野において公知のウロデシンの他の安定な塩形態と比較して、多形の異型を示さないことが判明した。多形を示さない物理的に安定な塩は、医薬品製造においてきわめて望ましい性質である。さらに、ヘミL-グルタル酸塩は、試験された他の塩と比較すると、きわめて良好な物理的安定性を有する。さらに、この選択された塩は、薬学的に許容されるコハク酸塩と比較して有利であったし、いくつかの条件で、2週間にわたり、分解がコハク酸塩より驚くほど分解が少ないことが示された。
【0014】
過去の開示は、本明細書において記載され、主張される本発明の範囲に属するウロデシンのある種の新規な塩の調製を確認するのにも、その特性決定を可能にするのにも有用ではなかった。当技術分野は、通常、ウロデシン遊離塩基を出発物質として使用して、対応する塩を調製する。この特定の形態が塩の選択に許容できる基準を満たすかどうかを解明するためになされた過去の研究はほとんどない。文献による指示が存在しないことは、再結晶という課題に関連するようであり、安定な結晶形態を作製する方法を見出すことは進歩性がある。なぜなら、当技術分野において、いかにしてそれを生成するかを教示または指示するものはなく、通例の方法は使用可能な結晶形態をもたらさなかったからである。特定の溶媒からの再結晶が、その形態、または安定で有用であると知られている他の特定の新規な形態をもたらすという指示は、従来技術にはない。
【0015】
本発明者らによって作製されたグルタル酸塩は、利用可能な他の塩と比較した際に、明らかな選択の候補でも明白な選択の候補でもなかった。通常、塩の選択は、安全性の考察を必要とし、他の有益な化学的および物理的性質、例えばグラフにおける明らかな鋭い回折ピーク、任意の明白な非晶質のピークの考察、溶媒の重量損失および様々な条件下で結晶形態を得る能力などを判定するためのいくつかの分析パラメーターの精査を含み得る。最初の精査では、グルタル酸塩は安全性考察を満たした。例えば、グルタミン酸は安全性について許容されるようであるが、他の点では、標準的な基準の下で、塩の即座の選択肢にはならない。例えば、最初の分析は、低結晶化度(鋭い回折ピークがない)およびいくらかの明白な溶媒の重量損失を示した。しかしながら、ヘミグルタル酸塩形態が安定な結晶を形成することができるかどうかは当技術分野における過去の研究からは不明であったため、これを解明し、判定するために、広汎なさらなる実験および試験が行われた。
【0016】
その次に、本出願人は、それを安定な結晶形態で得るために克服されることが要求される技術的な課題に遭遇した。例えば、ヘミグルタル酸塩が最初に作製されることが必要であり、安定な結晶を得るために、結晶化が標準化されるよりもむしろ、異なる溶媒で、異なる順序で、および異なる条件でのさらなる再結晶化が必要であった。本発明者らは、安定な結晶形態を確定することに成功した。実施形態において、塩がグルタル酸塩である場合、それは、(a)50%~100%結晶質であり得、より特定すると少なくとも50%結晶質、または少なくとも60%結晶質、または少なくとも70%結晶質、または少なくとも80%結晶質、または少なくとも90%結晶質、または少なくとも95%結晶質、または少なくとも98%結晶質、または少なくとも99%結晶質、または少なくとも99.5%結晶質、または少なくとも99.9%結晶質、例えば100%結晶質であり得ることが開示されている。
【0017】
さらに、有用で安定な塩混合物が、本明細書の試験によって妥当および実現可能にされる。ここで、追加の塩は安定であることが既に知られているが、新規なヘミL-グルタル酸塩をそれとともに含めることから利益を得ることができる。
【0018】
そのような組合せは、当技術分野の塩混合物に関連する問題、例えば不安定性および多形挙動に関する問題を回避する。したがって、一実施形態では、本発明は、少なくとも(本明細書において定義され、記載されるとおりの)グルタル酸塩を、さらなる第2の薬学的に許容され、物理的および化学的に第2の安定な塩を組み合わせて含む組成物を含み得る。実施形態において、この第2の塩は、ヘミコハク酸塩を含み得る。
【0019】
実施形態において、ウロデシンの塩は、異なる特性決定をされた塩、例えば非晶質のヘミ塩、例えばシュウ酸塩およびヘミマロン酸塩などから選択され得る。本発明者らは、初めて、代替であるこれらの塩の作製および特性決定もすることができ、そうすることにおいて、医薬品製造のさらなる代替の選択肢を提供することもできた。
【0020】
実施形態において、これらの塩の2種以上の組合せは、例えば、グルタル酸塩、ヘミグルタル酸塩もしくはヘミL-グルタル酸塩、およびマロン酸塩またはシュウ酸塩から選択され得る。
【0021】
本発明者らは、本発明の塩について、水中での良好な製剤安定性を確定することができ、したがって、製剤化して医薬品にするために有用な規模拡大の可能性を確定することができた。この研究は、例えば、動物試験および臨床試験における使用のためのIV製剤に関するさらなる研究を裏付けるのに役立つと考えられる。したがって、本発明は、本発明のウロデシンの塩形態、または本明細書の上記のとおりの塩組成物の混合物を含む医薬化合物にさらに関する。
【0022】
本発明は、薬剤として使用するための、治療有効量の、本明細書に記載の塩形態または本明細書に記載の本発明の塩混合物の組成物を含む医薬化合物にも及ぶ。その場合、当該医薬化合物は、PNPの阻害剤として使用するためのものであり得る。
【0023】
さらなる態様において、本開示は、ウロデシンのヘミグルタル酸塩またはヘミL-グルタル酸塩を調製する方法を提供する。再結晶の各ステップは、ヘミ塩またはヘミL-塩を得るためにきわめて重要であることが明らかになっている。特に、エタノールは、他の各ステップと連動して、ヘミグルタル酸塩の結晶の形成に必要であり、そうでない場合はモノ塩(1:1)などの他の塩のみしか得られず、これはあまり望ましくない。
【0024】
本開示は、ウロデシンヘミグルタル酸塩またはウロデシンヘミL-グルタル酸塩を調製する方法であって、
(a)ウロデシン遊離塩基の水溶液を調製し、任意選択により室温で撹拌するステップと、
(b)グルタル酸またはL-グルタル酸をステップ(a)の混合物に添加し、任意選択により室温で30分間撹拌するステップと、
(c)ステップ(b)の溶液を凍結乾燥して、白色固体生成物を得るステップと、
(d)(c)の固体生成物を水に溶解し、任意選択により75℃に加熱し、エタノールを添加し、任意選択により75℃で30分間撹拌して、均質な溶液を形成するステップと、
(e)(d)の溶液へのアセトニトリルの滴下添加を、任意選択により60分かけて行うステップと、
(f)(e)の溶液を60分間、任意選択により75℃で、撹拌し、任意選択により当該溶液を60分かけて0℃に冷却するステップと、
(h)濾過し、アセトニトリルで洗浄して、ウロデシンヘミ塩グルタル酸塩を得るステップと
を含む、方法を提供する。
【0025】
さらになお、上記の方法においてグルタル酸が添加されるとき、それは、結晶化プロセスにおいて助けになるように、所望の最終塩形態の量で添加され得る。
したがって、一部の実施形態では、本開示は、ウロデシンのグルタル酸塩、特にヘミグルタル酸塩またはヘミL-グルタル酸塩を調製する方法を提供する。
【0026】
上記の方法は、開示されるステップの1つまたは複数の後に、時間を保持するステップを含み得る。
実施形態において、上記のウロデシンヘミグルタル酸塩を調製する方法は、ステップ(a)が、ウロデシン遊離塩基の水溶液の調製において、遊離形態の反応体:
【0027】
【化2】
【0028】
の使用を必要とすることをさらに含み得る。
望ましくは、本発明による方法およびその実施形態は、従来技術では可能でなかったウロデシンのヘミグルタル酸塩の、信頼性が高くかつ堅実でもある生成を可能にする。
【0029】
この新規に記載される塩を同定すること、得ること、および所望される適用におけるこの先の医薬的および臨床的加工に必要なその塩の収率を高めることは、重要な実験法およびそのさらなる技術的変更によって可能となっている。したがって、同定可能で再現可能な新規な塩の候補の欠如に関連する、考慮すべき技術的な課題は克服されており、医薬におけるおよび疾患の治療におけるこの先の適用のための、製剤およびバッチ生産におけるその実使用の確認もされている。
【0030】
実施形態において、本開示の塩化合物は、以下の説明に追加で記載される特定の例に従って調製されることも可能である。
用語および略語:
本明細書で使用される場合、以下の用語および標準方法は、以下に記載される意味を有する。
【0031】
「API」という用語は、医薬品有効成分を指す。
「モノ」という用語は、化合物ウロデシンの塩の結晶構造においてAPI:酸がそれぞれ1:1の比であることを意味する。
【0032】
「ヘミ」という用語は、化合物ウロデシンの塩の結晶構造において、API:酸がそれぞれ2:1の比であることを意味する。
「不活性な有機溶媒」という用語は、反応に化学的に干渉しない溶媒を指す。
【0033】
「等構造(isostructural)」という用語は、同じタイプの結晶構造を有する結晶質を説明するのに使用され、例えば、新規な分子的実態が、結晶構造中で、単位格子を著しく妨げることなく、別の分子的実体と置き換わる場合に使用される。
【0034】
薬学的に許容される担体、賦形剤などの「薬学的に許容される」という用語は、薬理学的に許容でき、特定の化合物が投与される対象に対して実質的に無毒性であることを意味する。
【0035】
「薬学的に許容される塩」という用語は、医薬的使用に許容される可能性のある既知の標準化合物の生物学的な効果および性質を保持し、無毒性である塩を指す。
略語:
ACN:アセトニトリル
DSC:示差走査熱量計
DMSO:ジメチルスルホキシド
DVS:動的蒸気収着
EtOH:エタノール
FaSSIF:絶食状態模擬腸液
FeSSIF:摂食状態模擬腸液
HPLC:高速液体クロマトグラフ
MeOH:メタノール
NMR:核磁気共鳴
PLM:偏光顕微鏡法
RT:室温
RRT:相対保持時間
SGF:模擬胃液
TFA:トリフルオロ酢酸
TGA:熱重量分析器
THF:テトラヒドロフラン
TRS:総類縁物質
XRPD:X線粉末回折法
以下の図面は、本開示における塩の物理的および化学的性質を示す種々の分析試験の結果を表すグラフ分析を提供するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本開示に従って提供され、作製されたウロデシンのヘミL-グルタル酸塩のXRPDの標識されたパターンを示す。
図2】本開示に従って提供され、作製された同じウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の、DSCおよびTGAの重ね合わせを示す。
図3】本開示によるウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の、DVSの前後のXRPDの重ね合わせを示す。
図4】本開示に従って提供され、作製されたウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の試料の高溶解性を実証する、HPLCの重ね合わせを示す。
図5】本明細書の開示に従って提供されたヘミL-グルタル酸塩のXRPDの重ね合わせを示し、優れた固体状態の安定性を実証する。
図6】本開示に従って提供され、作製されたウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の規模拡大された試料の標識されたパターンを示す。
図7】本開示に従って提供され、作製されたウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の規模拡大された試料のDSCおよびTGAの重ね合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書に記載されるまさにその各例は、本発明の説明を目的とするものであるが、本開示の組成物または方法を完全に限定するというわけではない。
ウロデシン(遊離)由来のヘミ塩の同定および作製
可能性を精査中のウロデシンのヘミ塩の構造は以下のとおりである。
【0038】
【化3】
【0039】
調製の方法
ウロデシンコハク酸塩(A)からプレ-HPLCによって調製された遊離塩基ウロデシンは、水中で酸と2:1の比で混合され、次いで凍結乾燥されて、4種の有望なウロデシンの塩:
ウロデシンヘミマロン酸塩(B)、
ウロデシンヘミシュウ酸塩(C)、
ウロデシンヘミアジピン酸塩(D)、および
ウロデシンヘミL-グルタル酸塩(E)
の好ましいヘミ塩形態が得られることが期待された。
【0040】
いずれの場合にも、得られる塩生成物は、ヘミ塩が確実に生成されることが可能であるかどうか、および可能な場合、所望の構造形態で生成されることが可能であるかどうかを実際に解明するために、分析され、特性決定される必要があった。
結晶質/非晶質の塩形態:
結晶であることが知られている参照物であるヘミコハク酸塩は別にして、本開示において作製されるように試み、記載されている化合物は、結晶質状態または非結晶質(例えば非晶質)状態で存在する可能性がある。
【0041】
化合物が結晶状態で存在するか否かは、標準的な技術によって容易に判定されることが可能であり、この技術は本明細書において定義される。結晶およびその結晶構造は、単結晶X線結晶構造解析法、X線粉末回折法(XRPD)、示差走査熱量測定法(DSC)および赤外分光法、例えばフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を含む複数の技術を使用して特性決定される。様々な湿度の条件下での結晶の挙動は、重量蒸気収着試験によって、およびXRPDによっても分析されることが可能である。これらの技術は、生成された塩を特性決定し、その生成物がさらなる調査に最適であるかまたは適切でないかを確認するのに役立つ。
【0042】
特に、X線結晶構造解析法は、単結晶のX線回折の分析および解釈を必要とする。非晶質の固体において、結晶形態に正常に存在する三次元構造は存在せず、非晶形態における分子の互いに対する位置は、本質的にランダムである。
【0043】
結晶を得ようと試みて、調査用のヘミ塩を、水および他の有機溶媒から再結晶させた。本開示は、無毒性の薬学的に許容される溶媒を本明細書において提供される化合物の固体状態の構造(例えば結晶構造)に組み入れることによって形成される溶媒和物を提供する。そのような溶媒の例は、水、アルコール(例えばエタノール、イソプロパノールおよびブタノール)およびジメチルスルホキシドを含み得る。
【0044】
熱重量分析法(TGA)、示差走査熱量測定法(DSC)およびX線結晶構造解析法は、いかなる場合でも溶媒和物が形成されたかどうかを判定するのに役立つ。溶媒和物は、化学量論的溶媒和物または非化学量論的溶媒和物とすることができ、半水和物、一水和物および二水和物などの水和物を含んでもよい。代替として、得られた化合物は、無水(例えば無水結晶形態)であってもよい。
【0045】
取得に成功したのは3種の結晶質ヘミ塩(ウロデシンヘミコハク酸塩、ウロデシンヘミアジピン酸塩およびウロデシンヘミL-グルタル酸塩)のみであり、ヘミL-グルタル酸塩は、取得が特に困難であった。これらのうち、参照塩および参照合成方法のみが当技術分野から知られていただけであり、参照方法を使用してL-グルタル酸塩を実現するのは不可能であった。
【0046】
生成物の収率、NMRおよびLC-MS分析は、各々について以下のパラメーターで判定した。LC-MS方法:移動相:A:水(10mM NHHCO3)B:ACN、勾配:1.3分で5%から95%Bへ、流速:2.0mL/分、カラム:C18 4.6*50MM、3.5μm、オーブン温度:40℃。1H溶液NMRは、400MHz NMR分光計で、DMSO-d6を溶媒として使用して収集した。
【0047】
ウロデシンヘミコハク酸塩(A)
ウロデシン(500.00mg、1.89mmol)の水(30mL)溶液に、コハク酸(111.70mg、0.95mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、556.00mgの白色固体を得た。収率は91%であった。ヘミコハク酸塩(424.00mg)の他のバッチを400.00mgのウロデシンから調製した。980.00mgのウロデシンヘミコハク酸塩を3mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで30mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、702mgの白色固体結晶を得た。再結晶の収率は71.6%であった。
【0048】
【表1】
【0049】
ウロデシンヘミアジピン酸塩(D)
ウロデシン(910.00mg、3.44mmol)の水(50mL)溶液に、アジピン酸(251.60mg、1.72mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1056.00mgの白色固体を得た。収率は91%であった。1056mgのウロデシンヘミアジピン酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで30mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物を30分かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、920mgの白色固体結晶を得た。収率は87.1%であった。
【0050】
【表2】
【0051】
ウロデシンヘミL-グルタル酸塩(E)
従前の失敗:
ウロデシンヘミL-グルタル酸塩を3mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで30mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、320mgの白色固体を得た。1HNMRは、それがウロデシンモノL-グルタル酸塩であることを示した。得られた固体および母液を合わせ、濃縮し、油ポンプにより乾燥して、1055mgの白色固体を得た。
【0052】
しかしながら、上記の他の塩を生成するために以前に使用されたこのプロセス(水およびアセトニトリルなどを使用)は、白色固体モノ形態を生成した。グルタル酸塩の望ましいヘミ結晶形態は、この方法で得ることはできなかった。
【0053】
必要とされる新規な方法「J」:
最終的に、有用な結晶形態でのウロデシンヘミL-グルタル酸塩の生成の成功のために、結晶化プロセスのいくつかの技術的変更を調査することが必要とされた。
結局、混合溶媒プロセスを使用し、いくつかの相異なる溶媒を使用して、ヘミ-グルタル酸塩形態に特異的な新規な結晶化方法(「J」)が決定された:
ウロデシン(1000.00mg、3.78mmol)の水(50mL)溶液に、L-グルタミン酸(278.36mg、1.89mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1155.00mgの白色固体を得た。収率は90%であった。
【0054】
1055mgのウロデシンヘミL-グルタル酸塩を3mLの水に溶解し、次いで75℃に加熱し、15mLのエタノールを添加し、この温度で30分間撹拌して、均質な溶液を形成した。次いで30mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、810mgのウロデシンヘミL-グルタル酸塩を白色固体として得た。
【0055】
収率は76.8%であった。
分析(さらに下を参照)により、この固体は結晶ヘミL-グルタル酸塩であると判定され、いくつかのステップおよびエタノールの添加を含む新規な代替方法は、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩の効果的な再結晶に必要であることが確認された。
【0056】
したがって、特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される再結晶化のプロセスを使用して形成されるウロデシンヘミL-グルタル酸塩に関する。
【0057】
【表3】
【0058】
非晶質の塩:
他の2種のヘミ塩(ウロデシンヘミマロン酸塩およびウロデシンヘミシュウ酸塩)は非晶質であった。水およびアセトニトリル、テトラヒドロフラン、エタノールをこれら2種のヘミ塩の再結晶に使用したが、得られた固体はいずれも結晶ではなかった。
ウロデシンヘミマロン酸塩(B)
【0059】
【化4】
【0060】
ウロデシン(1000.00mg、3.78mmol)の水(50mL)溶液に、マロン酸(196.87mg、1.89mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1103mgの白色固体を得た。
【0061】
1103mgのウロデシンヘミマロン酸塩を10mLの水に溶解し、次いで75℃に加熱し、次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、625mgの白色固体を得た。収率は56.7%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶形態を合わせて、1025mgの白色固体を得た。
【0062】
1000mgのウロデシンヘミマロン酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで16mLのエタノールを添加し、この温度で30分間撹拌して、均質な溶液を形成した。次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、715mgの白色固体を得た。収率は71.5%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶形態を合わせて、980mgの白色固体を得た。
【0063】
1000mgのウロデシンヘミマロン酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで25mLのテトラヒドロフランを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。固体は現れなかった。0~4℃で3日間静置した後、固体は得られなかった。混合物を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥して、1000mgの白色固体を得た。
【0064】
1000mgのウロデシンヘミマロン酸塩を5mLの水に溶解し、次いで75℃に加熱し、次いで25mLのエタノールを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を室温で1日静置した。混合物を濾過し、濾過ケーキをエタノールで洗浄し、乾燥して、520mgの白色固体を得た。収率は52.0%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶形態を合わせて、969mgの白色固体を得た。
【0065】
【表4】
【0066】
ウロデシンヘミシュウ酸塩(C)
【0067】
【化5】
【0068】
ウロデシン(1000.00mg、3.78mmol)の水(50mL)溶液に、シュウ酸(170.33mg、1.89mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1045mgの白色固体を得た。
【0069】
1045mgのウロデシンヘミシュウ酸塩を10mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、712mgの白色固体を得た。収率は68.0%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶質を合わせて、915mgの白色固体を得た。
【0070】
900mgのウロデシンヘミシュウ酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで16mLのエタノールを添加し、この温度で30分間撹拌して、均質な溶液を形成した。次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、705mgの白色固体を得た。収率は77.7%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶質を合わせて、900mgの白色固体を得た。
【0071】
900mgのウロデシンヘミシュウ酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで25mLのテトラヒドロフランを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、716mgの白色固体を得た。収率は79.7%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶形態を合わせて、880mgの白色固体を得た。
【0072】
【表5】
【0073】
塩形態の特性決定試験
初めて作製された新規な塩、特に、ヘミグルタル酸塩、ヘミアジピン酸塩および2種の他の新たに形成された塩(これらは非晶質であった)を、特性/性質において、既知の塩と比較した。以前に特性決定されていなかったウロデシンのこれらの塩(アジピン酸塩、グルタル酸塩、マロン酸塩およびシュウ酸塩)は、上記の方法に従って、ついに調製された。例示的なウロデシンの薬学的に許容される塩であるヘミコハク酸塩を、比較用に選択し、当技術分野において公知の方法に従って作製した。
【0074】
特性および性質を、本明細書において、以下の説明の項に従い、標準的な分析手段を使用して決定した。
【0075】
分析技術
本明細書の考察は、偏光顕微鏡法(PLM)、X線粉末回折法(XRPD)、示差走査熱量測定法(DSC)および熱重量分析法(TGA)を含む種々の分析技術のグラフ形式の図面によって補助される。
【0076】
偏光顕微鏡法(PLM)
少量の試料(<1mg)をスライドガラスに載せ、流動パラフィンを一滴加え、スリップでカバーする。油中に分散した試料が、顕微鏡の接眼レンズおよびカメラ/コンピューターシステムを通して観察される。
【0077】
代表的な試料画像が取り込まれ、注釈がつけられて、粒径および晶癖が測定される。
X線粉末回折法(XRPD)
XRPDは、物質の構造的特性決定のために、粉末または微結晶質の試料に対して使用される技術である。
【0078】
X線粉末回折法(XRPD)のパターンを、最小40kVおよび40mAで作動するCuK源(1.54056オングストローム)を備えたBruker D8 Advanceで取得した。各試料について4~40度の間の2-シータをスキャンする。2-シータのステップ幅は0.05であり、スキャン速度は0.5s/ステップである。
【0079】
示差走査熱量測定法(DSC)
DSCは、試料と参照物との、温度を上げるために必要な熱量の違いが温度の関数として測定される、熱分析技術である。
【0080】
示差走査熱量測定法の分析を、TA Instrument DSCユニット(モデルDSC25)で行った。試料を非気密性アルミニウム皿に入れ、50mL/分で窒素パージしながら、周囲温度から300℃まで10℃/分で加熱した。
【0081】
熱重量分析法(TGA)
TGAは、温度の変化に対する重量の変化を判定するために、試料に対して実行される一種の試験である。
【0082】
熱重量分析法を、TA Instrument TGAユニット(モデル:TGA500)で行った。試料を白金皿に入れ、60mL/分(試料パージ)および40mL/分(バランスパージ)で窒素パージしながら周囲温度から300℃まで10℃/分で加熱した。
【0083】
動的蒸気収着(DVS)
水分収着プロファイルを、25℃でDVS水分バランスフローシステム(モデルAdvantage1.0)を使用して、以下の条件で作出した。試料サイズはおよそ10mg、25℃で60分間乾燥、吸着範囲0%~95%RH、脱着範囲95%~0%RH、およびステップ間隔5%。平衡基準は、最大120分間に5分で<0.01%の重量変化とした。
【0084】
含水量(KF)
3つの空試料を同時に測定し、次いで約10mgの試料(2つの試料を同時に試験した)を秤量して、カール・フィッシャー滴定-容量法によって試験した。
【0085】
1H NMR
1H溶液NMRは、Bruker 400MHz NMR分光計で、DMSO-d6を溶媒として使用して収集した。
結晶形態および非晶形態の性質が、以下の考察および表に要約されている。
【0086】
非晶質の塩の限定的な特性決定
要約表
【0087】
【表6】
【0088】
ウロデシンヘミマロン酸塩
2バッチのウロデシンヘミマロン酸塩のXPRDパターンは、この化合物が、明確な回折ピークのない非晶質であることを示した。したがって、さらなる特性決定は実行されなかった。
【0089】
ウロデシンヘミシュウ酸塩
XPRDパターンは、1バッチは小さい明確な回折ピークが1つのみで、結晶質が不十分であり、非晶質に近く、もう一方のバッチは非晶質であることを示した。したがって、さらなる特性決定は行われなかった。
【0090】
結晶塩の特性決定
ヘミコハク酸塩、ヘミアジピン酸塩およびヘミL-グルタル酸塩について、結晶形態の明らかな徴候があったことに続き、さらなる特性決定試験を行い、その後、溶解性を判定した。
【0091】
次の要約表は、3種の結晶塩を特性決定するために行われたさらなる分析試験の全結果を示す。
【0092】
【表7-1】
【0093】
【表7-2】
【0094】
ウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩は、目視観察により白色固体であり、PLM下で粒子および不規則な塊の形態に複屈折および非複屈折があった。XPRDのパターンは、図1に示されるようにこの化合物が結晶であることを示したが、おそらく結晶化度は低く、PLMの結果と一致していた。明確な回折ピークを示す情報は以下に提示される。
【0095】
【表8】
【0096】
図2に示されるように、DSCのトレースは、190.03℃で単一の融点を示した。TGA曲線下の室温から190℃までに、2.637%の重量損失が認められた。これは水の脱溶媒和が原因である可能性があり、その理由は、カール・フィッシャー滴定によって判定された含水量が2.53%であったからである。ウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩は、適度に吸湿性であり、DVSプロットでは25℃で0%RH~80%RHに2.53%の水の取り込みが観察され、結晶形態は、図3のXRPDの重ね合わせにおいて示されるようにDVSの前後で変化を示さなかった。DSC、TGAおよび含水量の結果に基づいて、ウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩は、無水物であると推測された。
溶解性試験
熱力学的溶解性試験を、3種の結晶ウロデシン塩について、水、SGF、FaSSIFおよびFeSSIFの中で、室温(21~25℃)にて24時間行った。溶解性試験の手順は次のとおりとした。各塩の適切な量を秤量してそれぞれ2mLガラスバイアルに入れ、次いで0.4mLの所望のビヒクル(水、SGF、FaSSIFおよびFeSSIF)を添加して、懸濁液を形成した。次いで、すべての試料を30秒間ボルテックスして均質に分散させ、一定温度の振盪培養器中に37℃、200rpmで24時間置いた。APIが溶解した場合、さらに物質を添加して懸濁状態を保持することとする。濃度、XRPDおよびpHを所望の各時点で試験した。結果の要約が以下に提示される。
【0097】
【表9】
【0098】
ウロデシンヘミアジピン酸塩、ウロデシンヘミコハク酸塩およびウロデシンヘミL-グルタル酸塩はすべて、37℃、24時間で高溶解性(約100mg/mL)を示した。図4は、4種のビヒクル(水、SGF、FaSSIF、FeSSIF)中での溶解性試験におけるウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩の試料のHPLCの重ね合わせを示す。
【0099】
水、FaSSIFおよびFeSSIF中のウロデシンヘミL-グルタル酸塩の残留固体のXRPDパターンは、初期固体形態と比較して変化し、それは、溶解性試験後のFaSSIF中の残留固体の1H NMRの結果に基づいて、遊離塩基(ウロデシン)であることが判明した。
【0100】
固体状態の安定性試験-ヘミL-グルタル酸塩
ウロデシンヘミL-グルタル酸塩の物理的および化学的安定性を調査するために、固体状態の安定性の可能性に焦点を当てたさらなる試験が、60℃(密閉)条件下および40℃/75%RH(開口)条件下で2週間実行された。これは、比較の手段を提供するため、ウロデシンヘミコハク酸塩についても行われた。
【0101】
固体状態の安定性のための手順は次のとおりとした。10mgのウロデシンヘミコハク酸塩およびウロデシンヘミL-グルタル酸塩を正確に秤量して、それぞれ40mL透明ガラスバイアルに入れ、次いで試料バイアルを対応する条件に配置した。湿度条件において開口される試料については、蓋をせず開口し、ピンホールを空けたアルミニウム箔で覆った。密閉される試料については、すべて蓋をした。
【0102】
0週間、1週間および2週間の時点で、対応する試料は、HPLCによる純度の判定用にサンプリングされて、化学的安定性を査定することになる。さらに、物理的安定性を評価するための外観およびXRPD試験用に、対応する条件下でもう1つの試料を調製した。
【0103】
固体安定性試験の結果は、2種の塩に、60℃および40℃/75%RHの各条件下で2週間、外観およびXRPDの変化はなかったことを示した。ヘミL-グルタル酸塩のHPLC試験の結果は図5に提示されている。60℃条件では、わずかな分解(0.3%~0.4%)が2週間の時点で両方の塩に観察された。40℃/75%RH条件では、ヘミL-グルタル酸塩には類縁物質が増加しなかったが、ヘミコハク酸塩は2週間で0.16~0.3%分解した。
【0104】
純度の結果に基づくと、40℃/75%RH条件下で、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩はウロデシンヘミコハク酸塩よりも化学的に安定していたようである。
結果は、以下の表の要約に示されている。
【0105】
【表10】
【0106】
ヘミL-グルタル酸塩は、60℃および40℃/75%RHの各条件下で2週間、外観および多形の変化がなく、ヘミコハク酸塩と比較してきわめて有利であり、良好な化学的および物理的安定性を有する。60℃条件で2週間の場合、この2種の塩に、同程度のきわめてわずかな分解(0.3%~0.4%)があった。
【0107】
要約すると、本出願人は、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩が、総じてウロデシンヘミコハク酸塩より化学的に安定していたと判定した。
したがって、本出願人は、初期の課題にもかかわらず、ヘミ-グルタル酸塩の結晶形態の作製に成功することができ、ヘミ-グルタル酸塩の結晶形態はウロデシンの利用可能な塩と比較して良好な物理的および化学的性質を示すと結論づけた。
【0108】
したがって、それは、医薬の製剤加工における有用な候補となり得る。
さらなる安定性は、例えば見込みのある例の製剤タイプ、例えば水性で、バッチ試験用の規模拡大生産のために良好な一貫した収率の可能性のあるものにおいて調査された。
【0109】
ヘミL-グルタル酸塩-水性製剤の安定性
新規に特性決定された塩に焦点を当てたさらなる試験を、水性静脈内(IV)製剤を支持する安定性データを提供するために行った。
【0110】
この製剤は、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩を純水中に0.1mg/mlの溶液濃度で含むものであった。試料の条件を21~25℃で維持し、光から保護した。
試験手順は以下のとおりとした。6.4mgの化合物ウロデシンヘミL-グルタル酸塩を秤量して50mL容量フラスコに入れ、溶解するまで超音波処理し、その容量に希釈した。標的濃度は0.10mg/ml(遊離塩基で計算)とした。二重反復試料は、4mlの溶液を8mLガラス瓶中に移すことによって調製し、すべての試料を室温で暗所に置いた。0日、3日、7日、10日および14日の所望の時点で、試料濃度をHPLCにより分析し、pH値を測定した。
【0111】
結果は、室温で14日間、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩の0.1mg/ml(遊離塩基で計算)の水溶液試料の外観、濃度および純度に有意な変化は観察されなかったことを示した。製剤は、14日間、物理的および化学的に安定していた。
【0112】
要約すると、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩は、水中0.1mg/mL(遊離塩基で計算)で、室温にて14日間、良好な製剤安定性を示し、規模拡大できる可能性が高いことが確定した。これは特に静脈内(IV)製剤において、動物試験を支持するために有用であり得る。
【0113】
塩を形成するプロセスの反復(1gの規模拡大のため)
最初に、ヘミ-グルタル酸塩形態の結晶塩生成のプロセスを反復して、この新規に確立された方法を使用する遊離形態からの塩の提供が、規模拡大に有用となる正確に同定された純粋な生成物を十分得るために、信頼性が高くかつ堅実であるかどうかを判定した。初期目標は、1gの所望の生成物を取得し、前述の生成物の分析データとの一貫性を判定することとした。
【0114】
1gのウロデシン(1000.00mg、3.78mmol)の水(50mL)溶液に、L-グルタミン酸(278.36mg、1.89mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1170.00mgの白色固体を得た。1170mgのウロデシンヘミL-グルタル酸塩を5mLの水に溶解し、次いで75℃に加熱し、16mLのエタノールを添加し、この温度で30分間撹拌して、均質な溶液を形成した。次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、1010mg(1g)の白色固体を得た。収率は79.0%であった。最終物質は、以下のとおり、最初にLC-MSおよびNMRによって確認した。
【0115】
【表11】
【0116】
次いで、以前と同様に、それをPLM、XRPD、DSCおよびTGAによって特性決定した。
ウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩は、目視観察により白色固体であり、PLM下で粒子および不規則な塊の形態に複屈折があった。
【0117】
図6に示されるXPRDパターンは、最終化合物が明確な回折ピークを有する結晶であり、この規模拡大の(1g)ヘミL-グルタル酸塩の多形は、上記の各表において言及された予備試験で得られたヘミL-グルタル酸塩と同じであることを示した。明確な回折ピークに関する情報は、以下の表に見出される。
【0118】
【表12】
【0119】
図7に見られるように、DSCトレースは、203.41℃で単一の融点を示した。TGA曲線の室温から195℃までに0.971%の重量損失のみが観察されただけであった。1gのヘミL-グルタル酸塩生成物は、無水物である可能性が高いと判定された。さらに、その結晶化度は初期結晶化からの著しい改善であり、この塩が、さらなる製剤試験における有用な候補になることをさらに証明した。新規な塩(ウロデシンの遊離形態由来のヘミ-グルタル酸塩)の特性決定および選択の成功、ならびに使用された再結晶化方法が、同じ一貫した物理的および化学的な固体安定性を有するこの生成物をもたらしたという検証に続き、完全な製造方法が調査された。
【0120】
ウロデシンヘミ-グルタル酸塩の完全な製造方法
遊離形態の生成物の再結晶化を含む完全なウロデシンの生成プロセスに従って所望の塩を生成することは、開示される完全な製造方法が(単純なウロデシンの遊離塩基から出発するよりむしろ)同じ有用な塩生成物をもたらしたことを確証するために必要であった。
【0121】
特に、最終のヘミ-グルタル酸塩がそのような方法によって確実に得られることは、この最終方法が、より規模の大きい実証バッチ(薬理学的な加工に適する)を得るために使用され得るという観点で、重要であった。
【0122】
特に注目すべきことに、当技術分野において報告された過去の技術的な課題を考慮すると、ウロデシンの遊離形態が確実に作製され得るのを確立することは重要であろう。なぜなら、それは、新規に開示されるヘミ-グルタル酸塩の効率的で信頼の高い再結晶化に必須であるからである。
【0123】
最初に、完全なプロセスの同定が確立された。以下は、基本的成分からの本発明のウロデシンヘミ-グルタル酸塩CG689Jの完全な合成生成の全体的な加工ステップを示すスキームである。
合成経路:
【0124】
【化6】
【0125】
本出願人は、最初、上記のスキーム条件に準拠して、上記の(および本明細書で上に記載されている)各ステップに従った。
【0126】
ステップJ-1
既知の方法に従って、ヒドロキシベンジル化を行った。
CG689-SM2(上記参照)のポリマーを、収率損失のすべての結果および主な理由において観察した。本出願人は、塩基を最適化し、BnOHを溶媒として置き換えるために予備試験を行った。なぜなら、長引く溶媒除去プロセスの間にポリマー形成が起こったからである。しかしながら結局、より良好な溶媒を同定することはできなかった。
【0127】
ポリマー不純物をCG689Gの熱濾過によって除去し、所望の中間体を約40%の収率で得た。
【0128】
ステップJ-2
化合物3のHCl塩を使用し、マンニッヒ反応をKCOの存在下で行った。
【0129】
ステップJ-3
水素化分解条件下で72時間後に、CG689Hのベンジル保護基を除去するのに成功した。しかしながら、塩基性の添加剤(水酸化アンモニウム溶液)を添加したにもかかわらず、ウロデシンが、好ましい遊離塩基(新規な塩を直接生成するために望ましいものであった)ではなく、まだ塩酸塩として得られたという課題が残った。
【0130】
イオン交換樹脂で処理した後、ウロデシンの遊離形態を、約33%の収率にて(2ステップにわたり)、高いHPLC純度およびキラル純度(それぞれ98.3%、99.7%)で得た。
【0131】
ステップJ-4
最終ステップは、前述のヘミ-グルタル酸塩形成の再結晶化プロセスに従って行われた。しかしながら、ウロデシンヘミ-グルタル酸塩が概して得られたものの、塩酸塩の不完全な解離は塩形態の混合物をもたらした。DSC熱量計およびXRPDで試験をすると、その結果は、前述の塩の選択の分析試験における生成されたヘミ-グルタル酸塩の所見と一致しない。同等の特性を有する正確な塩形態を得るためには、製造において再結晶化の前に代替の各ステップが必須であろうと結論づけられた。
【0132】
上記のスキームによるウロデシンの生成方法のさらなる技術精査を行った。本出願人は、ウロデシン塩酸塩化合物3が、ウロデシンCG689I遊離形態の前述の生成における主要成分であることに気づいた。ウロデシンの遊離塩基の取得の成功は重要な要素と確認された。
【0133】
【化7】
【0134】
実験研究後、本出願人により、ステップJ-2において化合物3の遊離塩基が(HCLではなく)反応相手として使用された場合、反応における後続の塩基の添加は必要ないと確定された。LC-MSにより、出発物質CG689Gの変換は>95%であると判定された。反応は以前に使用された機構より効率的で、生成量が多かった。重要なことであるが、この変化は、以前ステップJ-4に見られた塩酸塩の解離(上記)も回避した。
【0135】
この方法を使用するウロデシンの遊離形態CG689Iは、高いHPLC純度およびキラル純度(それぞれ99.1%、98.6%)で得られることが可能であった。分析試験により、上記のこのステップを変更することによって、ウロデシン由来の正確なヘミ-グルタル酸塩CG689Jの、信頼性が高くかつ堅実な生成が、ウロデシン製造の完全な方法から再度可能であったことが確認された。
【0136】
ウロデシンヘミ-グルタル酸塩(35g)の実証バッチ
次に、この新規な方法によってバッチ量(35g)のグルタル酸塩生成物を生成することは、医薬的加工および生物学的試験において使用するための可能性を実証するために望ましいことであった。
【0137】
その目的のため、変更されたプロセスにおいて記載されたとおり、代替の生成経路(ウロデシンプロセスにおいて化合物3の遊離形態を反応相手として使用する)を使用して、ウロデシンの遊離塩基CG689Iを作製した。その後、新規に確定された結晶化プロセス(本明細書の上記の「J」)を利用して、望ましいヘミ-グルタル酸塩CG689Jの最終の35g実証バッチを作製した。
実証バッチデータ
【0138】
【表13】
【0139】
実証バッチ1(35g)CP-0031535-13の分析:
【0140】
【表14】
【0141】
要約すると、所望の生成物ウロデシンヘミ-グルタル酸塩は、両方のバッチにおいて良好な収率で得られた。得られた生成物は、化学的に純粋であることが立証され、塩の特性は、前述の塩の選択試験において報告されたものと一致していた。したがって、新規に同定され、特性決定されたウロデシンの塩およびそれを作製するために使用されたさらなる新規な生成方法は、ウロデシン医薬品およびそれを使用する病態または疾患の治療を提供するためにきわめて有用な解決策であると考えられる。
【0142】
上記の各例は、本発明を説明する目的で提示されるものであり、本発明の範囲に限定を課すものと解釈されてはならない。上記のおよび各例に説明されている本発明の特定の実施形態に、本発明の根底にある原理から逸脱することなく、多くの変形および変更がなされ得ることは容易に明らかであろう。そのようなすべての変形および変更は、本願に包含されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウロデシン化合物:
【化1】
の薬学的に許容される塩であって、グルタル酸結晶塩を含む、塩。
【請求項2】
ヘミグルタル酸結晶塩を含む、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
ヘミL-グルタル酸結晶塩を含む、請求項に記載の塩。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のウロデシン塩化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的に許容される組成物。
【請求項5】
医薬における使用のための、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物または組成物。
【請求項6】
ウロデシンヘミグルタル酸結晶塩化合物またはウロデシンヘミL-グルタル酸結晶塩化合物を調製する方法であって、
(a)ウロデシン遊離塩基の水溶液を調製し、任意選択により室温で撹拌するステップと、
(b)グルタル酸またはL-グルタル酸をステップ(a)の混合物に添加し、任意選択により室温で30分間撹拌するステップと、
(c)ステップ(b)の溶液を凍結乾燥して、白色固体生成物を得るステップと、
(d)(c)の固体生成物を水に溶解し、任意選択により75℃に加熱し、エタノールを添加し、任意選択により75℃で30分間撹拌して、均質な溶液を形成するステップと、
(e)(d)の溶液へのアセトニトリルの滴下添加を、任意選択により60分かけて行うステップと、
(f)(e)の溶液を60分間、任意選択により75℃で、撹拌し、任意選択により溶液を60分かけて0℃に冷却するステップと、
(g)濾過し、アセトニトリルで洗浄して、ウロデシンヘミグルタル酸結晶塩化合物またはウロデシンヘミL-グルタル酸結晶塩化合物を得るステップと
を含む、ウロデシンヘミグルタル酸結晶塩化合物またはウロデシンヘミL-グルタル酸結晶塩化合物を調製する方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、水中のウロデシン遊離塩基の調製において、遊離形態の反応体:
【化2】
の使用を必要とする、請求項に記載のウロデシンヘミグルタル酸結晶塩化合物またはウロデシンヘミL-グルタル酸結晶塩化合物を調製する方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウロデシンまたは7-[(3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-ピロリジン-1-イルメチル]-3,5-ジヒドロ-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-4-オンとして知られる化合物の新規なグルタル酸塩形態、およびそれを調製する方法に特に関する。
【背景技術】
【0002】
構造的に:
【0003】
【化1】
【0004】
として知られる、ウロデシンまたは7-[(3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-ピロリジン-1-イルメチル]-3,5-ジヒドロ-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-4-オンとして知られる医薬化合物は、ヒト疾患に関与する、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)を含む複数の該当する酵素を阻害する。
【0005】
ウロデシンは、以下に限定されないが、痛風、皮膚障害、がん、B細胞およびT細胞媒介性疾患、細菌感染症ならびに原虫感染症を含む複数のヒト疾患の治療のために開発された。ウロデシンの使用は、例えば、米国特許第7553839号にも記載されている。
【0006】
さらに、化合物ウロデシンの医薬用塩は、文献において周知である。
これは、以下に限定されないが、塩酸塩、ジヒドロクロリド、臭化水素酸塩、ヘミ硫酸塩、p-トシル酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、L-酒石酸塩、L-乳酸塩、ステアリン酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩およびL-リンゴ酸塩を含む。さらに、化合物のC4有機二酸とのヘミ塩およびモノ塩は、コハク酸、フマル酸、L-リンゴ酸、マレイン酸、L-酒石酸、L-アスパラギン酸を含むことができ、当技術分野において例示されている。
【0007】
ウロデシンの複数の塩が記載されてきたが、その塩形態の多くは、医薬品における生成および/または適用の方法に最適ではない性質を示す。例えば、その塩酸塩または他の塩は、多形の異型を含有することが示されている。多形の異型がないか、またはその数が少なく、結晶形態で安定である医薬化合物の塩を得ることは望ましいことであり得る。
【0008】
混合塩は、非混合塩単独の物理的性質とは異なる物理的性質の可能性を提供する場合もあり、それ故、使用の適性が医薬品有効成分の性質に依存する薬物製品の製造において役立つ可能性がある。非混合塩と同様に、混合塩は多形であることが多く、これらのうち一部は不安定である。
【0009】
さらに、加工に関して、有用なウロデシン塩の作製に関連する考慮すべき技術上の障害が依然としてある。Org.Process Research and Dev.2009、13、928において言及されているように、遊離形態のウロデシンを複製することさえ、それ自体に課題がなくはないことは注目に値する。その次に、安定な塩を生成すること、およびそれを生成するための、信頼性が高くかつ堅実な方法を提供することは、第2の障害となる。ウロデシンの様々な塩を形成する方法が記載されてきたが、現在まで、そのような方法では、医薬品において必要とされる使用のための候補となる塩は、同定も生成もされていない。
【発明の概要】
【0010】
したがって、安定な塩(混合でも非混合でも)と、改良型のウロデシン医薬品の製造に有用となる、安定な塩の生成のためのプロセスとを開発することが望ましい。
第1の態様において、ここに開示される発明は、グルタル酸塩、マロン酸塩および/またはシュウ酸塩から選択される、少なくとも1種のウロデシンの塩を含む。
【0011】
そのような塩形態は、過去に、従来技術からは発見も特性決定も作製もされていないが、本発明者らは、詳細に研究して臨床的使用のための適切な追加の候補を作出し、該当する選択物を特性決定して、潜在的な医薬的適用のためのそれらの適性を判定した。これらの塩を最初の事例として生成することは困難であったため、そのような研究は、通例の塩の選択中に行われる単なる典型的な研究を超えるものであった。
【0012】
実施形態において、塩はヘミ塩を含む。ヘミ塩の化学量論は、安定な形態をもたらし、これは場合により、加熱および乾燥すると無水形態に変換し得る。しかしながら、安定なヘミ形態をもたらす方法を発見することは技術的な課題であり、これは本発明者らによって克服された。
【0013】
実施形態において、塩は、ウロデシンのヘミグルタル酸塩を含み、好ましい実施形態では、ウロデシンのヘミL-グルタル酸結晶塩を含む。
最初は生成するのが技術的に困難であったが、最終的に、ヘミL-グルタル酸塩の結晶形態は、当技術分野において公知のウロデシンの他の安定な塩形態と比較して、多形の異型を示さないことが判明した。多形を示さない物理的に安定な塩は、医薬品製造においてきわめて望ましい性質である。さらに、ヘミL-グルタル酸塩は、試験された他の塩と比較すると、きわめて良好な物理的安定性を有する。さらに、この選択された塩は、薬学的に許容されるコハク酸塩と比較して有利であったし、いくつかの条件で、2週間にわたり、分解がコハク酸塩より驚くほど分解が少ないことが示された。
【0014】
過去の開示は、本明細書において記載され、主張される本発明の範囲に属するウロデシンのある種の新規な塩の調製を確認するのにも、その特性決定を可能にするのにも有用ではなかった。当技術分野は、通常、ウロデシン遊離塩基を出発物質として使用して、対応する塩を調製する。この特定の形態が塩の選択に許容できる基準を満たすかどうかを解明するためになされた過去の研究はほとんどない。文献による指示が存在しないことは、再結晶という課題に関連するようであり、安定な結晶形態を作製する方法を見出すことは進歩性がある。なぜなら、当技術分野において、いかにしてそれを生成するかを教示または指示するものはなく、通例の方法は使用可能な結晶形態をもたらさなかったからである。特定の溶媒からの再結晶が、その形態、または安定で有用であると知られている他の特定の新規な形態をもたらすという指示は、従来技術にはない。
【0015】
本発明者らによって作製されたグルタル酸塩は、利用可能な他の塩と比較した際に、明らかな選択の候補でも明白な選択の候補でもなかった。通常、塩の選択は、安全性の考察を必要とし、他の有益な化学的および物理的性質、例えばグラフにおける明らかな鋭い回折ピーク、任意の明白な非晶質のピークの考察、溶媒の重量損失および様々な条件下で結晶形態を得る能力などを判定するためのいくつかの分析パラメーターの精査を含み得る。最初の精査では、グルタル酸塩は安全性考察を満たした。例えば、グルタル酸は安全性について許容されるようであるが、他の点では、標準的な基準の下で、塩の即座の選択肢にはならない。例えば、最初の分析は、低結晶化度(鋭い回折ピークがない)およびいくらかの明白な溶媒の重量損失を示した。しかしながら、ヘミグルタル酸塩形態が安定な結晶を形成することができるかどうかは当技術分野における過去の研究からは不明であったため、これを解明し、判定するために、広汎なさらなる実験および試験が行われた。
【0016】
その次に、本出願人は、それを安定な結晶形態で得るために克服されることが要求される技術的な課題に遭遇した。例えば、ヘミグルタル酸塩が最初に作製されることが必要であり、安定な結晶を得るために、結晶化が標準化されるよりもむしろ、異なる溶媒で、異なる順序で、および異なる条件でのさらなる再結晶化が必要であった。本発明者らは、安定な結晶形態を確定することに成功した。実施形態において、塩がグルタル酸塩である場合、それは、(a)50%~100%結晶質であり得、より特定すると少なくとも50%結晶質、または少なくとも60%結晶質、または少なくとも70%結晶質、または少なくとも80%結晶質、または少なくとも90%結晶質、または少なくとも95%結晶質、または少なくとも98%結晶質、または少なくとも99%結晶質、または少なくとも99.5%結晶質、または少なくとも99.9%結晶質、例えば100%結晶質であり得ることが開示されている。
【0017】
さらに、有用で安定な塩混合物が、本明細書の試験によって妥当および実現可能にされる。ここで、追加の塩は安定であることが既に知られているが、新規なヘミL-グルタル酸塩をそれとともに含めることから利益を得ることができる。
【0018】
そのような組合せは、当技術分野の塩混合物に関連する問題、例えば不安定性および多形挙動に関する問題を回避する。したがって、一実施形態では、本発明は、少なくとも(本明細書において定義され、記載されるとおりの)グルタル酸塩を、さらなる第2の薬学的に許容され、物理的および化学的に第2の安定な塩を組み合わせて含む組成物を含み得る。実施形態において、この第2の塩は、ヘミコハク酸塩を含み得る。
【0019】
実施形態において、ウロデシンの塩は、異なる特性決定をされた塩、例えば非晶質のヘミ塩、例えばシュウ酸塩およびヘミマロン酸塩などから選択され得る。本発明者らは、初めて、代替であるこれらの塩の作製および特性決定もすることができ、そうすることにおいて、医薬品製造のさらなる代替の選択肢を提供することもできた。
【0020】
実施形態において、これらの塩の2種以上の組合せは、例えば、グルタル酸塩、ヘミグルタル酸塩もしくはヘミL-グルタル酸塩、およびマロン酸塩またはシュウ酸塩から選択され得る。
【0021】
本発明者らは、本発明の塩について、水中での良好な製剤安定性を確定することができ、したがって、製剤化して医薬品にするために有用な規模拡大の可能性を確定することができた。この研究は、例えば、動物試験および臨床試験における使用のためのIV製剤に関するさらなる研究を裏付けるのに役立つと考えられる。したがって、本発明は、本発明のウロデシンの塩形態、または本明細書の上記のとおりの塩組成物の混合物を含む医薬化合物にさらに関する。
【0022】
本発明は、薬剤として使用するための、治療有効量の、本明細書に記載の塩形態または本明細書に記載の本発明の塩混合物の組成物を含む医薬化合物にも及ぶ。その場合、当該医薬化合物は、PNPの阻害剤として使用するためのものであり得る。
【0023】
さらなる態様において、本開示は、ウロデシンのヘミグルタル酸塩またはヘミL-グルタル酸塩を調製する方法を提供する。再結晶の各ステップは、ヘミ塩またはヘミL-塩を得るためにきわめて重要であることが明らかになっている。特に、エタノールは、他の各ステップと連動して、ヘミグルタル酸塩の結晶の形成に必要であり、そうでない場合はモノ塩(1:1)などの他の塩のみしか得られず、これはあまり望ましくない。
【0024】
本開示は、ウロデシンヘミグルタル酸塩またはウロデシンヘミL-グルタル酸塩を調製する方法であって、
(a)ウロデシン遊離塩基の水溶液を調製し、任意選択により室温で撹拌するステップと、
(b)グルタル酸またはL-グルタル酸をステップ(a)の混合物に添加し、任意選択により室温で30分間撹拌するステップと、
(c)ステップ(b)の溶液を凍結乾燥して、白色固体生成物を得るステップと、
(d)(c)の固体生成物を水に溶解し、任意選択により75℃に加熱し、エタノールを添加し、任意選択により75℃で30分間撹拌して、均質な溶液を形成するステップと、
(e)(d)の溶液へのアセトニトリルの滴下添加を、任意選択により60分かけて行うステップと、
(f)(e)の溶液を60分間、任意選択により75℃で、撹拌し、任意選択により当該溶液を60分かけて0℃に冷却するステップと、
(h)濾過し、アセトニトリルで洗浄して、ウロデシンヘミ塩グルタル酸塩を得るステップと
を含む、方法を提供する。
【0025】
さらになお、上記の方法においてグルタル酸が添加されるとき、それは、結晶化プロセスにおいて助けになるように、所望の最終塩形態の量で添加され得る。
したがって、一部の実施形態では、本開示は、ウロデシンのグルタル酸塩、特にヘミグルタル酸塩またはヘミL-グルタル酸塩を調製する方法を提供する。
【0026】
上記の方法は、開示されるステップの1つまたは複数の後に、時間を保持するステップを含み得る。
実施形態において、上記のウロデシンヘミグルタル酸塩を調製する方法は、ステップ(a)が、ウロデシン遊離塩基の水溶液の調製において、遊離形態の反応体:
【0027】
【化2】
【0028】
の使用を必要とすることをさらに含み得る。
望ましくは、本発明による方法およびその実施形態は、従来技術では可能でなかったウロデシンのヘミグルタル酸塩の、信頼性が高くかつ堅実でもある生成を可能にする。
【0029】
この新規に記載される塩を同定すること、得ること、および所望される適用におけるこの先の医薬的および臨床的加工に必要なその塩の収率を高めることは、重要な実験法およびそのさらなる技術的変更によって可能となっている。したがって、同定可能で再現可能な新規な塩の候補の欠如に関連する、考慮すべき技術的な課題は克服されており、医薬におけるおよび疾患の治療におけるこの先の適用のための、製剤およびバッチ生産におけるその実使用の確認もされている。
【0030】
実施形態において、本開示の塩化合物は、以下の説明に追加で記載される特定の例に従って調製されることも可能である。
用語および略語:
本明細書で使用される場合、以下の用語および標準方法は、以下に記載される意味を有する。
【0031】
「API」という用語は、医薬品有効成分を指す。
「モノ」という用語は、化合物ウロデシンの塩の結晶構造においてAPI:酸がそれぞれ1:1の比であることを意味する。
【0032】
「ヘミ」という用語は、化合物ウロデシンの塩の結晶構造において、API:酸がそれぞれ2:1の比であることを意味する。
「不活性な有機溶媒」という用語は、反応に化学的に干渉しない溶媒を指す。
【0033】
「等構造(isostructural)」という用語は、同じタイプの結晶構造を有する結晶質を説明するのに使用され、例えば、新規な分子的実態が、結晶構造中で、単位格子を著しく妨げることなく、別の分子的実体と置き換わる場合に使用される。
【0034】
薬学的に許容される担体、賦形剤などの「薬学的に許容される」という用語は、薬理学的に許容でき、特定の化合物が投与される対象に対して実質的に無毒性であることを意味する。
【0035】
「薬学的に許容される塩」という用語は、医薬的使用に許容される可能性のある既知の標準化合物の生物学的な効果および性質を保持し、無毒性である塩を指す。
略語:
ACN:アセトニトリル
DSC:示差走査熱量計
DMSO:ジメチルスルホキシド
DVS:動的蒸気収着
EtOH:エタノール
FaSSIF:絶食状態模擬腸液
FeSSIF:摂食状態模擬腸液
HPLC:高速液体クロマトグラフ
MeOH:メタノール
NMR:核磁気共鳴
PLM:偏光顕微鏡法
RT:室温
RRT:相対保持時間
SGF:模擬胃液
TFA:トリフルオロ酢酸
TGA:熱重量分析器
THF:テトラヒドロフラン
TRS:総類縁物質
XRPD:X線粉末回折法
以下の図面は、本開示における塩の物理的および化学的性質を示す種々の分析試験の結果を表すグラフ分析を提供するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本開示に従って提供され、作製されたウロデシンのヘミL-グルタル酸塩のXRPDの標識されたパターンを示す。
図2】本開示に従って提供され、作製された同じウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の、DSCおよびTGAの重ね合わせを示す。
図3】本開示によるウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の、DVSの前後のXRPDの重ね合わせを示す。
図4】本開示に従って提供され、作製されたウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の試料の高溶解性を実証する、HPLCの重ね合わせを示す。
図5】本明細書の開示に従って提供されたヘミL-グルタル酸塩のXRPDの重ね合わせを示し、優れた固体状態の安定性を実証する。
図6】本開示に従って提供され、作製されたウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の規模拡大された試料の標識されたパターンを示す。
図7】本開示に従って提供され、作製されたウロデシンのヘミL-グルタル酸塩の規模拡大された試料のDSCおよびTGAの重ね合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書に記載されるまさにその各例は、本発明の説明を目的とするものであるが、本開示の組成物または方法を完全に限定するというわけではない。
ウロデシン(遊離)由来のヘミ塩の同定および作製
可能性を精査中のウロデシンのヘミ塩の構造は以下のとおりである。
【0038】
【化3】
【0039】
調製の方法
ウロデシンコハク酸塩(A)からプレ-HPLCによって調製された遊離塩基ウロデシンは、水中で酸と2:1の比で混合され、次いで凍結乾燥されて、4種の有望なウロデシンの塩:
ウロデシンヘミマロン酸塩(B)、
ウロデシンヘミシュウ酸塩(C)、
ウロデシンヘミアジピン酸塩(D)、および
ウロデシンヘミL-グルタル酸塩(E)
の好ましいヘミ塩形態が得られることが期待された。
【0040】
いずれの場合にも、得られる塩生成物は、ヘミ塩が確実に生成されることが可能であるかどうか、および可能な場合、所望の構造形態で生成されることが可能であるかどうかを実際に解明するために、分析され、特性決定される必要があった。
結晶質/非晶質の塩形態:
結晶であることが知られている参照物であるヘミコハク酸塩は別にして、本開示において作製されるように試み、記載されている化合物は、結晶質状態または非結晶質(例えば非晶質)状態で存在する可能性がある。
【0041】
化合物が結晶状態で存在するか否かは、標準的な技術によって容易に判定されることが可能であり、この技術は本明細書において定義される。結晶およびその結晶構造は、単結晶X線結晶構造解析法、X線粉末回折法(XRPD)、示差走査熱量測定法(DSC)および赤外分光法、例えばフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を含む複数の技術を使用して特性決定される。様々な湿度の条件下での結晶の挙動は、重量蒸気収着試験によって、およびXRPDによっても分析されることが可能である。これらの技術は、生成された塩を特性決定し、その生成物がさらなる調査に最適であるかまたは適切でないかを確認するのに役立つ。
【0042】
特に、X線結晶構造解析法は、単結晶のX線回折の分析および解釈を必要とする。非晶質の固体において、結晶形態に正常に存在する三次元構造は存在せず、非晶形態における分子の互いに対する位置は、本質的にランダムである。
【0043】
結晶を得ようと試みて、調査用のヘミ塩を、水および他の有機溶媒から再結晶させた。本開示は、無毒性の薬学的に許容される溶媒を本明細書において提供される化合物の固体状態の構造(例えば結晶構造)に組み入れることによって形成される溶媒和物を提供する。そのような溶媒の例は、水、アルコール(例えばエタノール、イソプロパノールおよびブタノール)およびジメチルスルホキシドを含み得る。
【0044】
熱重量分析法(TGA)、示差走査熱量測定法(DSC)およびX線結晶構造解析法は、いかなる場合でも溶媒和物が形成されたかどうかを判定するのに役立つ。溶媒和物は、化学量論的溶媒和物または非化学量論的溶媒和物とすることができ、半水和物、一水和物および二水和物などの水和物を含んでもよい。代替として、得られた化合物は、無水(例えば無水結晶形態)であってもよい。
【0045】
取得に成功したのは3種の結晶質ヘミ塩(ウロデシンヘミコハク酸塩、ウロデシンヘミアジピン酸塩およびウロデシンヘミL-グルタル酸塩)のみであり、ヘミL-グルタル酸塩は、取得が特に困難であった。これらのうち、参照塩および参照合成方法のみが当技術分野から知られていただけであり、参照方法を使用してL-グルタル酸塩を実現するのは不可能であった。
【0046】
生成物の収率、NMRおよびLC-MS分析は、各々について以下のパラメーターで判定した。LC-MS方法:移動相:A:水(10mM NHHCO3)B:ACN、勾配:1.3分で5%から95%Bへ、流速:2.0mL/分、カラム:C18 4.6*50MM、3.5μm、オーブン温度:40℃。1H溶液NMRは、400MHz NMR分光計で、DMSO-d6を溶媒として使用して収集した。
ウロデシンヘミコハク酸塩(A)
ウロデシン(500.00mg、1.89mmol)の水(30mL)溶液に、コハク酸(111.70mg、0.95mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、556.00mgの白色固体を得た。収率は91%であった。ヘミコハク酸塩(424.00mg)の他のバッチを400.00mgのウロデシンから調製した。980.00mgのウロデシンヘミコハク酸塩を3mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで30mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、702mgの白色固体結晶を得た。再結晶の収率は71.6%であった。
【0047】
【表1】
【0048】
ウロデシンヘミアジピン酸塩(D)
ウロデシン(910.00mg、3.44mmol)の水(50mL)溶液に、アジピン酸(251.60mg、1.72mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1056.00mgの白色固体を得た。収率は91%であった。1056mgのウロデシンヘミアジピン酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで30mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物を30分かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、920mgの白色固体結晶を得た。収率は87.1%であった。
【0049】
【表2】
【0050】
ウロデシンヘミL-グルタル酸塩(E)
従前の失敗:
ウロデシンヘミL-グルタル酸塩を3mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで30mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、320mgの白色固体を得た。1HNMRは、それがウロデシンモノL-グルタル酸塩であることを示した。得られた固体および母液を合わせ、濃縮し、油ポンプにより乾燥して、1055mgの白色固体を得た。
【0051】
しかしながら、上記の他の塩を生成するために以前に使用されたこのプロセス(水およびアセトニトリルなどを使用)は、白色固体モノ形態を生成した。グルタル酸塩の望ましいヘミ結晶形態は、この方法で得ることはできなかった。
【0052】
必要とされる新規な方法「J」:
最終的に、有用な結晶形態でのウロデシンヘミL-グルタル酸塩の生成の成功のために、結晶化プロセスのいくつかの技術的変更を調査することが必要とされた。
結局、混合溶媒プロセスを使用し、いくつかの相異なる溶媒を使用して、ヘミ-グルタル酸塩形態に特異的な新規な結晶化方法(「J」)が決定された:
ウロデシン(1000.00mg、3.78mmol)の水(50mL)溶液に、L-グルタル酸(278.36mg、1.89mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1155.00mgの白色固体を得た。収率は90%であった。
【0053】
1055mgのウロデシンヘミL-グルタル酸塩を3mLの水に溶解し、次いで75℃に加熱し、15mLのエタノールを添加し、この温度で30分間撹拌して、均質な溶液を形成した。次いで30mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、810mgのウロデシンヘミL-グルタル酸塩を白色固体として得た。
【0054】
収率は76.8%であった。
分析(さらに下を参照)により、この固体は結晶ヘミL-グルタル酸塩であると判定され、いくつかのステップおよびエタノールの添加を含む新規な代替方法は、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩の効果的な再結晶に必要であることが確認された。
【0055】
したがって、特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される再結晶化のプロセスを使用して形成されるウロデシンヘミL-グルタル酸塩に関する。
【0056】
【表3】
【0057】
非晶質の塩:
他の2種のヘミ塩(ウロデシンヘミマロン酸塩およびウロデシンヘミシュウ酸塩)は非晶質であった。水およびアセトニトリル、テトラヒドロフラン、エタノールをこれら2種のヘミ塩の再結晶に使用したが、得られた固体はいずれも結晶ではなかった。
ウロデシンヘミマロン酸塩(B)
【0058】
【化4】
【0059】
ウロデシン(1000.00mg、3.78mmol)の水(50mL)溶液に、マロン酸(196.87mg、1.89mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1103mgの白色固体を得た。
【0060】
1103mgのウロデシンヘミマロン酸塩を10mLの水に溶解し、次いで75℃に加熱し、次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、625mgの白色固体を得た。収率は56.7%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶形態を合わせて、1025mgの白色固体を得た。
【0061】
1000mgのウロデシンヘミマロン酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで16mLのエタノールを添加し、この温度で30分間撹拌して、均質な溶液を形成した。次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、715mgの白色固体を得た。収率は71.5%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶形態を合わせて、980mgの白色固体を得た。
【0062】
1000mgのウロデシンヘミマロン酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで25mLのテトラヒドロフランを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。固体は現れなかった。0~4℃で3日間静置した後、固体は得られなかった。混合物を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥して、1000mgの白色固体を得た。
【0063】
1000mgのウロデシンヘミマロン酸塩を5mLの水に溶解し、次いで75℃に加熱し、次いで25mLのエタノールを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を室温で1日静置した。混合物を濾過し、濾過ケーキをエタノールで洗浄し、乾燥して、520mgの白色固体を得た。収率は52.0%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶形態を合わせて、969mgの白色固体を得た。
【0064】
【表4】
【0065】
ウロデシンヘミシュウ酸塩(C)
【0066】
【化5】
【0067】
ウロデシン(1000.00mg、3.78mmol)の水(50mL)溶液に、シュウ酸(170.33mg、1.89mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1045mgの白色固体を得た。
【0068】
1045mgのウロデシンヘミシュウ酸塩を10mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、712mgの白色固体を得た。収率は68.0%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶質を合わせて、915mgの白色固体を得た。
【0069】
900mgのウロデシンヘミシュウ酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで16mLのエタノールを添加し、この温度で30分間撹拌して、均質な溶液を形成した。次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、705mgの白色固体を得た。収率は77.7%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶質を合わせて、900mgの白色固体を得た。
【0070】
900mgのウロデシンヘミシュウ酸塩を5mLの水に溶解し、75℃に加熱し、次いで25mLのテトラヒドロフランを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、716mgの白色固体を得た。収率は79.7%であった。XRPDは、それが非晶質であることを示した。濾液を真空中で濃縮し、油ポンプにより乾燥した。得られた固体および非晶形態を合わせて、880mgの白色固体を得た。
【0071】
【表5】
【0072】
塩形態の特性決定試験
初めて作製された新規な塩、特に、ヘミグルタル酸塩、ヘミアジピン酸塩および2種の他の新たに形成された塩(これらは非晶質であった)を、特性/性質において、既知の塩と比較した。以前に特性決定されていなかったウロデシンのこれらの塩(アジピン酸塩、グルタル酸塩、マロン酸塩およびシュウ酸塩)は、上記の方法に従って、ついに調製された。例示的なウロデシンの薬学的に許容される塩であるヘミコハク酸塩を、比較用に選択し、当技術分野において公知の方法に従って作製した。
【0073】
特性および性質を、本明細書において、以下の説明の項に従い、標準的な分析手段を使用して決定した。
【0074】
分析技術
本明細書の考察は、偏光顕微鏡法(PLM)、X線粉末回折法(XRPD)、示差走査熱量測定法(DSC)および熱重量分析法(TGA)を含む種々の分析技術のグラフ形式の図面によって補助される。
【0075】
偏光顕微鏡法(PLM)
少量の試料(<1mg)をスライドガラスに載せ、流動パラフィンを一滴加え、スリップでカバーする。油中に分散した試料が、顕微鏡の接眼レンズおよびカメラ/コンピューターシステムを通して観察される。
代表的な試料画像が取り込まれ、注釈がつけられて、粒径および晶癖が測定される。
【0076】
X線粉末回折法(XRPD)
XRPDは、物質の構造的特性決定のために、粉末または微結晶質の試料に対して使用される技術である。
【0077】
X線粉末回折法(XRPD)のパターンを、最小40kVおよび40mAで作動するCuK源(1.54056オングストローム)を備えたBruker D8 Advanceで取得した。各試料について4~40度の間の2-シータをスキャンする。2-シータのステップ幅は0.05であり、スキャン速度は0.5s/ステップである。
【0078】
示差走査熱量測定法(DSC)
DSCは、試料と参照物との、温度を上げるために必要な熱量の違いが温度の関数として測定される、熱分析技術である。
【0079】
示差走査熱量測定法の分析を、TA Instrument DSCユニット(モデルDSC25)で行った。試料を非気密性アルミニウム皿に入れ、50mL/分で窒素パージしながら、周囲温度から300℃まで10℃/分で加熱した。
【0080】
熱重量分析法(TGA)
TGAは、温度の変化に対する重量の変化を判定するために、試料に対して実行される一種の試験である。
【0081】
熱重量分析法を、TA Instrument TGAユニット(モデル:TGA500)で行った。試料を白金皿に入れ、60mL/分(試料パージ)および40mL/分(バランスパージ)で窒素パージしながら周囲温度から300℃まで10℃/分で加熱した。
【0082】
動的蒸気収着(DVS)
水分収着プロファイルを、25℃でDVS水分バランスフローシステム(モデルAdvantage1.0)を使用して、以下の条件で作出した。試料サイズはおよそ10mg、25℃で60分間乾燥、吸着範囲0%~95%RH、脱着範囲95%~0%RH、およびステップ間隔5%。平衡基準は、最大120分間に5分で<0.01%の重量変化とした。
【0083】
含水量(KF)
3つの空試料を同時に測定し、次いで約10mgの試料(2つの試料を同時に試験した)を秤量して、カール・フィッシャー滴定-容量法によって試験した。
【0084】
1H NMR
1H溶液NMRは、Bruker 400MHz NMR分光計で、DMSO-d6を溶媒として使用して収集した。
結晶形態および非晶形態の性質が、以下の考察および表に要約されている。
【0085】
非晶質の塩の限定的な特性決定
要約表
【0086】
【表6】
【0087】
ウロデシンヘミマロン酸塩
2バッチのウロデシンヘミマロン酸塩のXPRDパターンは、この化合物が、明確な回折ピークのない非晶質であることを示した。したがって、さらなる特性決定は実行されなかった。
【0088】
ウロデシンヘミシュウ酸塩
XPRDパターンは、1バッチは小さい明確な回折ピークが1つのみで、結晶質が不十分であり、非晶質に近く、もう一方のバッチは非晶質であることを示した。したがって、さらなる特性決定は行われなかった。
【0089】
結晶塩の特性決定
ヘミコハク酸塩、ヘミアジピン酸塩およびヘミL-グルタル酸塩について、結晶形態の明らかな徴候があったことに続き、さらなる特性決定試験を行い、その後、溶解性を判定した。
【0090】
次の要約表は、3種の結晶塩を特性決定するために行われたさらなる分析試験の全結果を示す。
【0091】
【表7-1】
【0092】
【表7-2】
【0093】
ウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩は、目視観察により白色固体であり、PLM下で粒子および不規則な塊の形態に複屈折および非複屈折があった。XPRDのパターンは、図1に示されるようにこの化合物が結晶であることを示したが、おそらく結晶化度は低く、PLMの結果と一致していた。明確な回折ピークを示す情報は以下に提示される。
【0094】
【表8】
【0095】
図2に示されるように、DSCのトレースは、190.03℃で単一の融点を示した。TGA曲線下の室温から190℃までに、2.637%の重量損失が認められた。これは水の脱溶媒和が原因である可能性があり、その理由は、カール・フィッシャー滴定によって判定された含水量が2.53%であったからである。ウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩は、適度に吸湿性であり、DVSプロットでは25℃で0%RH~80%RHに2.53%の水の取り込みが観察され、結晶形態は、図3のXRPDの重ね合わせにおいて示されるようにDVSの前後で変化を示さなかった。DSC、TGAおよび含水量の結果に基づいて、ウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩は、無水物であると推測された。
【0096】
溶解性試験
熱力学的溶解性試験を、3種の結晶ウロデシン塩について、水、SGF、FaSSIFおよびFeSSIFの中で、室温(21~25℃)にて24時間行った。溶解性試験の手順は次のとおりとした。各塩の適切な量を秤量してそれぞれ2mLガラスバイアルに入れ、次いで0.4mLの所望のビヒクル(水、SGF、FaSSIFおよびFeSSIF)を添加して、懸濁液を形成した。次いで、すべての試料を30秒間ボルテックスして均質に分散させ、一定温度の振盪培養器中に37℃、200rpmで24時間置いた。APIが溶解した場合、さらに物質を添加して懸濁状態を保持することとする。濃度、XRPDおよびpHを所望の各時点で試験した。結果の要約が以下に提示される。
【0097】
【表9】
【0098】
ウロデシンヘミアジピン酸塩、ウロデシンヘミコハク酸塩およびウロデシンヘミL-グルタル酸塩はすべて、37℃、24時間で高溶解性(約100mg/mL)を示した。図4は、4種のビヒクル(水、SGF、FaSSIF、FeSSIF)中での溶解性試験におけるウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩の試料のHPLCの重ね合わせを示す。
【0099】
水、FaSSIFおよびFeSSIF中のウロデシンヘミL-グルタル酸塩の残留固体のXRPDパターンは、初期固体形態と比較して変化し、それは、溶解性試験後のFaSSIF中の残留固体の1H NMRの結果に基づいて、遊離塩基(ウロデシン)であることが判明した。
【0100】
固体状態の安定性試験-ヘミL-グルタル酸塩
ウロデシンヘミL-グルタル酸塩の物理的および化学的安定性を調査するために、固体状態の安定性の可能性に焦点を当てたさらなる試験が、60℃(密閉)条件下および40℃/75%RH(開口)条件下で2週間実行された。これは、比較の手段を提供するため、ウロデシンヘミコハク酸塩についても行われた。
【0101】
固体状態の安定性のための手順は次のとおりとした。10mgのウロデシンヘミコハク酸塩およびウロデシンヘミL-グルタル酸塩を正確に秤量して、それぞれ40mL透明ガラスバイアルに入れ、次いで試料バイアルを対応する条件に配置した。湿度条件において開口される試料については、蓋をせず開口し、ピンホールを空けたアルミニウム箔で覆った。密閉される試料については、すべて蓋をした。
【0102】
0週間、1週間および2週間の時点で、対応する試料は、HPLCによる純度の判定用にサンプリングされて、化学的安定性を査定することになる。さらに、物理的安定性を評価するための外観およびXRPD試験用に、対応する条件下でもう1つの試料を調製した。
【0103】
固体安定性試験の結果は、2種の塩に、60℃および40℃/75%RHの各条件下で2週間、外観およびXRPDの変化はなかったことを示した。ヘミL-グルタル酸塩のHPLC試験の結果は図5に提示されている。60℃条件では、わずかな分解(0.3%~0.4%)が2週間の時点で両方の塩に観察された。40℃/75%RH条件では、ヘミL-グルタル酸塩には類縁物質が増加しなかったが、ヘミコハク酸塩は2週間で0.16~0.3%分解した。
【0104】
純度の結果に基づくと、40℃/75%RH条件下で、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩はウロデシンヘミコハク酸塩よりも化学的に安定していたようである。
結果は、以下の表の要約に示されている。
【0105】
【表10】
【0106】
ヘミL-グルタル酸塩は、60℃および40℃/75%RHの各条件下で2週間、外観および多形の変化がなく、ヘミコハク酸塩と比較してきわめて有利であり、良好な化学的および物理的安定性を有する。60℃条件で2週間の場合、この2種の塩に、同程度のきわめてわずかな分解(0.3%~0.4%)があった。
【0107】
要約すると、本出願人は、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩が、総じてウロデシンヘミコハク酸塩より化学的に安定していたと判定した。
したがって、本出願人は、初期の課題にもかかわらず、ヘミ-グルタル酸塩の結晶形態の作製に成功することができ、ヘミ-グルタル酸塩の結晶形態はウロデシンの利用可能な塩と比較して良好な物理的および化学的性質を示すと結論づけた。
【0108】
したがって、それは、医薬の製剤加工における有用な候補となり得る。
さらなる安定性は、例えば見込みのある例の製剤タイプ、例えば水性で、バッチ試験用の規模拡大生産のために良好な一貫した収率の可能性のあるものにおいて調査された。
【0109】
ヘミL-グルタル酸塩-水性製剤の安定性
新規に特性決定された塩に焦点を当てたさらなる試験を、水性静脈内(IV)製剤を支持する安定性データを提供するために行った。
【0110】
この製剤は、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩を純水中に0.1mg/mlの溶液濃度で含むものであった。試料の条件を21~25℃で維持し、光から保護した。
試験手順は以下のとおりとした。6.4mgの化合物ウロデシンヘミL-グルタル酸塩を秤量して50mL容量フラスコに入れ、溶解するまで超音波処理し、その容量に希釈した。標的濃度は0.10mg/ml(遊離塩基で計算)とした。二重反復試料は、4mlの溶液を8mLガラス瓶中に移すことによって調製し、すべての試料を室温で暗所に置いた。0日、3日、7日、10日および14日の所望の時点で、試料濃度をHPLCにより分析し、pH値を測定した。
【0111】
結果は、室温で14日間、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩の0.1mg/ml(遊離塩基で計算)の水溶液試料の外観、濃度および純度に有意な変化は観察されなかったことを示した。製剤は、14日間、物理的および化学的に安定していた。
【0112】
要約すると、ウロデシンヘミL-グルタル酸塩は、水中0.1mg/mL(遊離塩基で計算)で、室温にて14日間、良好な製剤安定性を示し、規模拡大できる可能性が高いことが確定した。これは特に静脈内(IV)製剤において、動物試験を支持するために有用であり得る。
【0113】
塩を形成するプロセスの反復(1gの規模拡大のため)
最初に、ヘミ-グルタル酸塩形態の結晶塩生成のプロセスを反復して、この新規に確立された方法を使用する遊離形態からの塩の提供が、規模拡大に有用となる正確に同定された純粋な生成物を十分得るために、信頼性が高くかつ堅実であるかどうかを判定した。初期目標は、1gの所望の生成物を取得し、前述の生成物の分析データとの一貫性を判定することとした。
【0114】
1gのウロデシン(1000.00mg、3.78mmol)の水(50mL)溶液に、L-グルタル酸(278.36mg、1.89mmol)を添加した。この混合物を室温で30分間撹拌し、次いで凍結乾燥して、1170.00mgの白色固体を得た。1170mgのウロデシンヘミL-グルタル酸塩を5mLの水に溶解し、次いで75℃に加熱し、16mLのエタノールを添加し、この温度で30分間撹拌して、均質な溶液を形成した。次いで40mLのアセトニトリルを1時間かけて滴下添加した。次いでこの混合物をこの温度で1時間撹拌した。混合物を1時間かけて0℃に冷却した。混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、1010mg(1g)の白色固体を得た。収率は79.0%であった。最終物質は、以下のとおり、最初にLC-MSおよびNMRによって確認した。
【0115】
【表11】
【0116】
次いで、以前と同様に、それをPLM、XRPD、DSCおよびTGAによって特性決定した。
ウロデシンヘミ-L-グルタル酸塩は、目視観察により白色固体であり、PLM下で粒子および不規則な塊の形態に複屈折があった。
【0117】
図6に示されるXPRDパターンは、最終化合物が明確な回折ピークを有する結晶であり、この規模拡大の(1g)ヘミL-グルタル酸塩の多形は、上記の各表において言及された予備試験で得られたヘミL-グルタル酸塩と同じであることを示した。明確な回折ピークに関する情報は、以下の表に見出される。
【0118】
【表12】
【0119】
図7に見られるように、DSCトレースは、203.41℃で単一の融点を示した。TGA曲線の室温から195℃までに0.971%の重量損失のみが観察されただけであった。1gのヘミL-グルタル酸塩生成物は、無水物である可能性が高いと判定された。さらに、その結晶化度は初期結晶化からの著しい改善であり、この塩が、さらなる製剤試験における有用な候補になることをさらに証明した。新規な塩(ウロデシンの遊離形態由来のヘミ-グルタル酸塩)の特性決定および選択の成功、ならびに使用された再結晶化方法が、同じ一貫した物理的および化学的な固体安定性を有するこの生成物をもたらしたという検証に続き、完全な製造方法が調査された。
【0120】
ウロデシンヘミ-グルタル酸塩の完全な製造方法
遊離形態の生成物の再結晶化を含む完全なウロデシンの生成プロセスに従って所望の塩を生成することは、開示される完全な製造方法が(単純なウロデシンの遊離塩基から出発するよりむしろ)同じ有用な塩生成物をもたらしたことを確証するために必要であった。
【0121】
特に、最終のヘミ-グルタル酸塩がそのような方法によって確実に得られることは、この最終方法が、より規模の大きい実証バッチ(薬理学的な加工に適する)を得るために使用され得るという観点で、重要であった。
【0122】
特に注目すべきことに、当技術分野において報告された過去の技術的な課題を考慮すると、ウロデシンの遊離形態が確実に作製され得るのを確立することは重要であろう。なぜなら、それは、新規に開示されるヘミ-グルタル酸塩の効率的で信頼の高い再結晶化に必須であるからである。
【0123】
最初に、完全なプロセスの同定が確立された。以下は、基本的成分からの本発明のウロデシンヘミ-グルタル酸塩CG689Jの完全な合成生成の全体的な加工ステップを示すスキームである。
合成経路:
【0124】
【化6】
【0125】
本出願人は、最初、上記のスキーム条件に準拠して、上記の(および本明細書で上に記載されている)各ステップに従った。
【0126】
ステップJ-1
既知の方法に従って、ヒドロキシベンジル化を行った。
CG689-SM2(上記参照)のポリマーを、収率損失のすべての結果および主な理由において観察した。本出願人は、塩基を最適化し、BnOHを溶媒として置き換えるために予備試験を行った。なぜなら、長引く溶媒除去プロセスの間にポリマー形成が起こったからである。しかしながら結局、より良好な溶媒を同定することはできなかった。
【0127】
ポリマー不純物をCG689Gの熱濾過によって除去し、所望の中間体を約40%の収率で得た。
【0128】
ステップJ-2
化合物3のHCl塩を使用し、マンニッヒ反応をKCOの存在下で行った。
【0129】
ステップJ-3
水素化分解条件下で72時間後に、CG689Hのベンジル保護基を除去するのに成功した。しかしながら、塩基性の添加剤(水酸化アンモニウム溶液)を添加したにもかかわらず、ウロデシンが、好ましい遊離塩基(新規な塩を直接生成するために望ましいものであった)ではなく、まだ塩酸塩として得られたという課題が残った。
【0130】
イオン交換樹脂で処理した後、ウロデシンの遊離形態を、約33%の収率にて(2ステップにわたり)、高いHPLC純度およびキラル純度(それぞれ98.3%、99.7%)で得た。
【0131】
ステップJ-4
最終ステップは、前述のヘミ-グルタル酸塩形成の再結晶化プロセスに従って行われた。しかしながら、ウロデシンヘミ-グルタル酸塩が概して得られたものの、塩酸塩の不完全な解離は塩形態の混合物をもたらした。DSC熱量計およびXRPDで試験をすると、その結果は、前述の塩の選択の分析試験における生成されたヘミ-グルタル酸塩の所見と一致しない。同等の特性を有する正確な塩形態を得るためには、製造において再結晶化の前に代替の各ステップが必須であろうと結論づけられた。
【0132】
上記のスキームによるウロデシンの生成方法のさらなる技術精査を行った。本出願人は、ウロデシン塩酸塩化合物3が、ウロデシンCG689I遊離形態の前述の生成における主要成分であることに気づいた。ウロデシンの遊離塩基の取得の成功は重要な要素と確認された。
【0133】
【化7】
【0134】
実験研究後、本出願人により、ステップJ-2において化合物3の遊離塩基が(HCLではなく)反応相手として使用された場合、反応における後続の塩基の添加は必要ないと確定された。LC-MSにより、出発物質CG689Gの変換は>95%であると判定された。反応は以前に使用された機構より効率的で、生成量が多かった。重要なことであるが、この変化は、以前ステップJ-4に見られた塩酸塩の解離(上記)も回避した。
【0135】
この方法を使用するウロデシンの遊離形態CG689Iは、高いHPLC純度およびキラル純度(それぞれ99.1%、98.6%)で得られることが可能であった。分析試験により、上記のこのステップを変更することによって、ウロデシン由来の正確なヘミ-グルタル酸塩CG689Jの、信頼性が高くかつ堅実な生成が、ウロデシン製造の完全な方法から再度可能であったことが確認された。
【0136】
ウロデシンヘミ-グルタル酸塩(35g)の実証バッチ
次に、この新規な方法によってバッチ量(35g)のグルタル酸塩生成物を生成することは、医薬的加工および生物学的試験において使用するための可能性を実証するために望ましいことであった。
【0137】
その目的のため、変更されたプロセスにおいて記載されたとおり、代替の生成経路(ウロデシンプロセスにおいて化合物3の遊離形態を反応相手として使用する)を使用して、ウロデシンの遊離塩基CG689Iを作製した。その後、新規に確定された結晶化プロセス(本明細書の上記の「J」)を利用して、望ましいヘミ-グルタル酸塩CG689Jの最終の35g実証バッチを作製した。
【0138】
実証バッチデータ
【0139】
【表13】
【0140】
実証バッチ1(35g)CP-0031535-13の分析:
【0141】
【表14】
【0142】
要約すると、所望の生成物ウロデシンヘミ-グルタル酸塩は、両方のバッチにおいて良好な収率で得られた。得られた生成物は、化学的に純粋であることが立証され、塩の特性は、前述の塩の選択試験において報告されたものと一致していた。したがって、新規に同定され、特性決定されたウロデシンの塩およびそれを作製するために使用されたさらなる新規な生成方法は、ウロデシン医薬品およびそれを使用する病態または疾患の治療を提供するためにきわめて有用な解決策であると考えられる。
【0143】
上記の各例は、本発明を説明する目的で提示されるものであり、本発明の範囲に限定を課すものと解釈されてはならない。上記のおよび各例に説明されている本発明の特定の実施形態に、本発明の根底にある原理から逸脱することなく、多くの変形および変更がなされ得ることは容易に明らかであろう。そのようなすべての変形および変更は、本願に包含されるものとする。
【国際調査報告】