(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240709BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20240709BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20240709BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20240709BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240709BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
G02B5/30
C03C17/36
C03C17/34 Z
G02B5/26
B32B7/023
G02B27/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573332
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2022064177
(87)【国際公開番号】W WO2022253659
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ラロワイヨ, グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ロキニー, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヘヴェシ, カドサ
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
2H199
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4G059
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、p偏光反射コーティングが設けられた透明な基材を含む被覆基材、前記被覆基材を含む合わせグレージング及びヘッドアップディスプレイ(HUD)システムに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
b.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
c.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、
を基材表面から開始する順序で含む、p偏光反射コーティングであって、
更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、前記平均屈折率n及び前記平均消光係数kが、450nm、550nm、及び650nmの波長における値に対して計算される、p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む、被覆基材。
【請求項2】
任意選択の前記第1のコーティング及び前記第3のコーティングの高屈折率材料が、独立して、Zn、Sn、Ti、Nb、Zr、Ni、In、Al、Si、Ce、W、Mo、Sb、及びBiの酸化物、並びにそれらの混合物、又はSi、Al、Zr、B、Y、Ce、及びLaの窒化物、並びにそれらの混合物のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の被覆基材。
【請求項3】
任意選択の前記第1のコーティング及び前記第3のコーティングの高屈折率材料が、独立して、
-Zr、Nb、Sn、Zn、又はTiの酸化物、
-Ti、Zr、Nb、Si、Sb、Sn、Zn、Inのうちの2つ以上の混合酸化物、
-Si、Zr、Al、Bの窒化物、
-Si、Zr、Al、Bのうちの2つ以上の混合窒化物から選択される、請求項1に記載の被覆基材。
【請求項4】
任意選択の前記第2のコーティング及び前記第4のコーティングの低屈折率材料が、独立して、ケイ素酸化物、ケイ素オキシ窒化物、ケイ素オキシ炭化物、アルミニウム酸化物、混合ケイ素アルミニウム酸化物、混合ケイ素ジルコニウム酸化物、アルミニウムがドープされた亜鉛酸化物、又はそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の被覆基材。
【請求項5】
前記吸収性材料の少なくとも1つの層が、NiCr、W、Nb、Zr、Ta、Pd、Si、Ti、又はNi及び/若しくはCr及び/若しくはWに基づく合金、又はCr及びZrに基づく合金、又はW及びZr若しくはCrに基づく合金、又はW及びTaに基づく合金(任意選択で、Ti、Nb、Ta、Ni、及びSnから選択される追加の元素を含む)から選択されるか、又はTiN、CrN、WN、NbN、TaN、ZrN、NiCrN、若しくはNiCrWN、又はこれらの窒化物の混合物から選択される、請求項1に記載の被覆基材。
【請求項6】
前記吸収性材料の少なくとも1つの層に、少なくとも1つのバリア層を与えられている、請求項1に記載の被覆基材。
【請求項7】
前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、
a.前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも2つの隣接するコーティングの間のいずれかに挿入されるか、或いは、
b.前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入される、請求項1に記載の被覆基材。
【請求項8】
前記吸収性材料の第1の層とは区別される吸収性材料の第2の層を更に含み、前記吸収性材料の第2の層が、
a.前記第1、第2、第3、又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの誘電体の2つの隣接する層の間のいずれかに挿入されるか、或いは
b.前記第1、第2、第3、又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入され、前記吸収性材料の第2の層の場所が、前記吸収性材料の第1の層の場所とは異なる、請求項1~7のいずれか一項に記載の被覆基材。
【請求項9】
第1の表面及び第2の表面を有する外側ペインと、第1の表面及び第2の表面を有する内側ペインとを含む合わせグレージングであって、両方のペインが、前記内側ペインの第1の表面と前記外側ペインの第2の表面との間の接触を与える中間層材料の少なくとも1つのシートによって結合され、前記内側ペインが、その第2の表面上に、
a.任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
b.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
c.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、
を基材表面から開始する順序で含む、p偏光反射コーティングであって、
更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、前記平均屈折率n及び前記平均消光係数kが、450nm、550nm、及び650nmの波長での値に対して計算される、p偏光反射コーティング
を与えられた透明な基材を含む被覆基材である、合わせグレージング。
【請求項10】
前記内側ペインの第1の表面若しくは前記外側ペインの第2の表面のうちの少なくとも1つ上に、又は前記中間層に埋め込まれたn個のIR反射機能性層ベースの層と、n+1個の誘電体層とを含む赤外線反射コーティングを更に含み、各IR反射機能性層ベースの層が、2つの誘電体層の間に位置する、請求項9に記載の合わせグレージング。
【請求項11】
1)合わせグレージングに向かってp偏光を投射する光源と、
2)第1の表面及び第2の表面を有する外側ペインと、第1の表面及び第2の表面を有する内側ペインとを含み、両方のペインが、前記内側ペインの第1の表面と前記外側ペインの第2の表面との間の接触を与える中間層材料の少なくとも1つのシートによって結合されている合わせグレージング
とを含むHUDシステムであって、前記内側ペインが、その第2の表面上に、
a.任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
b.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
c.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、
を基材表面から開始する順序で含む、p偏光反射コーティングであって、
更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、前記平均屈折率n及び前記平均消光係数kが、450nm、550nm、及び650nmの波長での値に対して計算される、p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む被覆基材である、HUDシステム。
【請求項12】
前記投射光が、42~72度の角度において前記グレージングに入射する、請求項11に記載のHUDシステム。
【請求項13】
42~72°の入射角でグレージング上に光を投射するp偏光源を含むHUDシステムにおいて、前記p偏光を反射するための、
a.任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
b.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
c.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、
を基材表面から開始する順序で含む、p偏光反射コーティングであって、
更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、前記平均屈折率n及び前記平均消光係数kが、450nm、550nm、及び650nmの波長での値に対して計算される、p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む被覆基材の、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p偏光反射コーティングが設けられた透明な基材を含む被覆基材、合わせグレージング、及び前記被覆基材を含むヘッドアップディスプレイ(HUD)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイシステム、又はHUDシステムは輸送装置において広範囲に使用され、前記輸送装置のビューア又はドライバーの表示領域の車用グレージング上に情報を提供する。
【0003】
多種多様なHUDシステムが公知である。一般に、プロジェクションシステムは、ユーザーによって見ることができる投影画像を形成するための最終光学成分として部分ミラー(部分レフレクター及び部分ウィンドウ)と組み合わせられる。同時に、ユーザーは部分ミラーによって他の場面を見ることができる。部分ミラーは、ディスプレイの使用適性に影響を与える重要な成分である。一般的に、部分ミラーの反射能は、プロジェクターから光を反射するために十分でなければならないが、部分ミラーはまた、それによって十分な表示を提供するために十分に透明でなければならない。
【0004】
中国特許第104267498A号明細書において投射光源と、合わせガラスと、透明ナノメートルフィルムとを含むヘッドアップディスプレイシステムのためにHUDシステムの実施例が提供されており、ここで透明ナノメートルフィルムは、内側ガラス板の表面から外へ逐次堆積される交互の高反射率層及び低反射率層の少なくとも1つの積層構造物を含み、投射光源はp偏光を発生するために使用され、p偏光が透明ナノメートルフィルムに入り、透明ナノメートルフィルムからのp偏光の反射能は5%以上であり、p偏光の入射角は42度~72度の範囲である。p偏光を使用するHUDシステムの同様な例が、中国特許第206147178U号明細書及び中国特許第204166197U号明細書において提供されている。
【0005】
HUDシステムの更なる例が、米国特許公開第2019/064516A1号パンフレットにおいて提供されている。車用の投射アセンブリの例が、国際公開第2020/083649A1号パンフレットにおいて提供されている。
【0006】
HUDシステムは、前記投射光を反射するように機能する投射光の経路内に配置された薄層のコーティング、又はスタックを上手く利用する。投射光は、s偏光、若しくはp偏光など偏光されてもよく、又は投射光は偏光されなくてもよい。
【0007】
p偏光の入射光を使用するHUDシステムで働く場合、p偏光の反射率(Rp-pol)は、65°の前記p偏光の入射角で、それが最大10%に達するとき十分であると考えられる。しかしながら、ダッシュボードからの全反射が、ドライバーの視聴クオリティに影響を与えないことが重要である。
【0008】
したがって、ダッシュボードからの反射を最小限に抑えながら、最適化されたp偏光の反射を提供し、明瞭且つ鮮明な画像ディスプレイをHUDシステムにおけるグレージング上で反射するp偏光反射コーティングの必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
a.任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
b.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
c.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、
を基材表面から開始する順序で含む、p偏光反射コーティングであって、
更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、前記平均屈折率n及び前記平均消光係数kが、450nm、550nm、及び650nmの波長における値に対して計算される、p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む、被覆基材を提供する。
【0010】
本発明は、前記被覆基材を含む合わせガラス、及び前記被覆基材を含むHUDシステムを更に提供する。
【0011】
最後に、入射面において42~72°のグレージング上の入射角で光を投射するp偏光源を含むHUDシステムにおける前記被覆基盤の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
a.任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
b.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
c.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、
を基材表面から開始する順序で含む、p偏光反射コーティングであって、
更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、前記平均屈折率n及び前記平均消光係数kが、450nm、550nm、及び650nmの波長における値に対して計算される、p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む、被覆基材を提供する。
【0013】
本発明の範囲において、p偏光反射コーティングは、任意の入射角で入射するp偏光を反射することができる薄層のコーティング又はスタックを説明することを意図する。
【0014】
透明な基材は、ガラス基材であるか、又はポリ(メチルメタ)アクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、若しくはそれらの混合物を含むか、又はそれらからなるプラスチック基材であり得る。
【0015】
基材の透明性は、光透過率(T)が10%よりも優れているか、或いは20%よりも優れているか、或いは30%よりも優れている場合に考慮される。
【0016】
有利には、透明な基材はガラス基材である。
【0017】
ガラスは、従来のフロートガラス又は板ガラスなどの任意の種類のものであってもよく、任意の光学特性、例えば、10%を超える可視光線透過率、紫外線透過率、赤外線透過率、及び/又は総太陽エネルギー透過率の任意の値を有する任意の組成のものであってもよい。
【0018】
ガラスは、ソーダ石灰、ホウケイ酸塩、鉛枠ガラス、アルミノケイ酸ガラスであってもよい。ガラスは、普通の透明な着色された、又はエクストラクリアな(すなわち、低Fe含有量及び高透過率)ガラス基材であってもよい。ガラス基材の更なる例としては、透明な、緑色、ブロンズ、又は青緑色のガラス基材が挙げられる。
【0019】
ガラスの組成物は本発明の目的のために重大ではないが、ただし前記ガラス板は輸送又は建築用途のために適切である。ガラスは、透明ガラス、エクストラクリアなガラス又は所望の効果の関数として適切な量の1つ以上の成分/着色剤を含む着色ガラスであり得る。着色ガラスには、灰色、緑色又は青色フロートガラスが含まれる。状況次第では、着色ガラスが、適用される法律の限度内で最終グレージングの適切且つ所望の色を提供するのに有利である場合がある。
【0020】
特に適した着色ガラスは、車の外側から見られる時にすぐれた審美性を提供するので、緑色ガラスであり得る。緑色ガラスは、例えば、0.3~1.0重量%の範囲の量のFe2O3の形態の酸化鉄を有する、ソーダ石灰ガラスであり得る。好適なガラスの別のタイプは、例えば、Fe2O3の形態の酸化鉄を0.002~0.06重量%の量で含み、Cr2O3の形態のクロム含有量を0.0001~0.06重量%の範囲の量で含むソーダ石灰ガラスであり得る。
【0021】
透明な基材は、0.5mm~約15mm、或いは1mm~約10mm、或いは1mm~約8mm、或いは1mm~約6mmの範囲の厚さを有し得る。輸送用途において、ガラスは、1~8mmの範囲の厚さを有してもよく、他方、それらはまた、1~8mmの厚さに加えて、0.5~1mmの極薄ガラス、又は8~12mmのより厚めのガラスのような建築用途においてより薄め又はより厚めであり得る。
【0022】
ガラスは平らであるか、又は形状が用途のために必要とする場合は、ガラス支持体の特定の設計と正確に適合するように、まったく若しくは部分的に曲線状であり得る。
【0023】
ガラスは、アニールガラス、強化ガラス、又は熱強化ガラスであってもよい。
【0024】
本発明の範囲において、コーティング及び薄層の厚さは、特に明記されていない限り、nmで表される幾何学的厚さである。
【0025】
本発明の範囲において、高屈折率は、典型的には、550nmの波長において≧1.8、或いは≧1.9、或いは≧2.0、或いは≧2.1である。
【0026】
本発明の範囲において、低屈折率は、典型的には、550nmの範囲において、≦1.7、或いは≦1.6である。
【0027】
任意選択の第1のコーティング及び第3のコーティングの高屈折率材料は、独立して、Zn、Sn、Ti、Nb、Zr、Ni、In、Al、Si、Ce、W、Mo、Sb、及びBiの酸化物、並びにそれらの混合物、又はSi、Al、Zr、B、Y、Ce、及びLaの窒化物、並びにそれらの混合物のうちの少なくとも1つから選択され得る。すなわち、第3のコーティング及び存在する場合第1のコーティングは、同一又は異なる組成を有してもよい。
【0028】
特に、熱処理に耐え得る高屈折率材料を使用することができ、
-Zr、Nb、Sn、Zn、又はTiの酸化物、
-Ti、Zr、Nb、Si、Sb、Sn、Zn、Inのうちの2つ以上の混合酸化物、
-Si、Zr、Al、Bの窒化物、
-Si、Zr、Al、Bのうちの2つ以上の混合窒化物から選択され得る。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、高屈折率材料は、混合チタンジルコニウム酸化物、混合チタンケイ素酸化物、混合ニオブジルコニウム酸化物、混合ケイ素ジルコニウム窒化物、アルミニウムがドープされたケイ素窒化物、ジルコニウム酸化物、混合インジウムスズ酸化物、混合亜鉛リッチアルミニウム酸化物、混合アンチモンスズ酸化物、混合チタン亜鉛酸化物、混合亜鉛スズ酸化物から選択され得る。
【0030】
本発明のいくつかの代替実施形態では、高屈折率材料は、混合チタンジルコニウム酸化物、混合チタンケイ素酸化物、混合ニオブジルコニウム酸化物、混合ケイ素ジルコニウム窒化物、アルミニウムがドープされたケイ素窒化物、ジルコニウム酸化物、混合亜鉛スズ酸化物から選択され得る。
【0031】
最大偏光反射を提供するための好ましい高屈折率材料には、好ましさの低くなる順に、混合チタンジルコニウム酸化物、混合ケイ素ジルコニウム窒化物、混合チタンケイ素酸化物、アルミニウムがドープされたケイ素窒化物、及び混合亜鉛スズ酸化物が挙げられる。
【0032】
高屈折率コーティングに好ましい材料は、屈折率が≧2.0であるように、55/45~75/25重量%のTi/Zrの比の、好ましくは65/35重量%の比の混合チタンジルコニウム酸化物であるか、又は85/15~95/5重量%のTi/Siの比の、好ましくは92/8重量%の比の混合チタンケイ素酸化物である。そのような混合チタンジルコニウム酸化物コーティングは、良好な化学的及び機械的耐久性、熱処理時の安定性、並びに非常に低い吸収を提供する。
【0033】
任意選択の第2のコーティング及び第4のコーティングの低屈折率材料は、独立して、ケイ素酸化物、ケイ素オキシ窒化物、ケイ素オキシ炭化物、アルミニウム酸化物、混合ケイ素アルミニウム酸化物、混合ケイ素ジルコニウム酸化物、アルミニウムがドープされた亜鉛酸化物、又はそれらの混合物から選択され得る。第4のコーティング及び存在する場合第2のコーティングは、同一又は異なる組成を有してもよい。低屈折率材料は、アルミニウム、ホウ素、又は亜鉛などのドーパントを含有してもよい。一般に、コーティング中のドーパント濃度は、10重量%以下である。
【0034】
ケイ素及びジルコニウムの好ましい混合酸化物は、屈折率が≦1.7であるように、15重量%未満のZrOを含む。改善された耐薬品性が期待される場合、15重量%未満のZrOを含むそのようなケイ素及びジルコニウムの混合酸化物の層は、第4のコーティング中に存在し得、少なくとも5nm、或いは少なくとも10nmの厚さを有し得る。
【0035】
好ましいアルミニウムがドープされた亜鉛酸化物(AZOx)は、屈折率が≦1.7であるように10重量%未満のAlを含み、準化学量論的である。
【0036】
低屈折率層に好ましい材料は、任意選択で、アルミニウム若しくはホウ素がドープされたケイ素酸化物であるか、又はケイ素及びアルミニウムの混合酸化物であるか、ケイ素及びジルコニウムの混合酸化物である。
【0037】
高屈折率材料の550nmの波長での屈折率は、低屈折率材料の屈折率よりも高い。高屈折率材料及び低屈折率材料の屈折率は、少なくとも0.1の値だけ異なってもよく、好ましくは少なくとも0.2の値だけ、より好ましくは少なくとも0.25の値だけ異なってもよい。そのような屈折率の差は、最適な物質界面を可能にし、そのためp偏光の最適な反射を可能にする。
【0038】
p偏光反射コーティングは、任意選択で、高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングと、低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングとを含む。このコーティングの任意選択の対は、p偏光の改善された反射を提供するが、製造コストがより高い。
【0039】
本発明の範囲において、第1及び第2のコーティングは、任意選択で、両方ともp偏光反射コーティングで存在する。すなわち、光学的影響が提供されるべき場合には、両方の第1及び第2のコーティングが同時に存在する。
【0040】
任意選択の第1のコーティングは、上記の材料から独立して選択される高屈折率材料の1つ以上の層から構成される。存在する場合、第1のコーティングは、1~100nm、或いは2~80nm、或いは4~65nm、或いは4~15nmの厚さを有してもよい。
【0041】
任意選択の第2のコーティングは、上記の材料から独立して選択される低屈折率材料の1つ以上の層から構成される。存在する場合、第2のコーティングは、1~220nm、或いは2~210nm、或いは4~200nm、或いは100~200nmの厚さを有してもよい。
【0042】
第3のコーティングは、上記の材料から独立して選択される高屈折率材料の1つ以上の層から構成される。第3のコーティングは、40~150nm、或いは45~135nm、或いは50~125nmの厚さを有してもよい。
【0043】
第4のコーティングは、上記の材料から独立して選択される低屈折率材料の1つ以上の層から構成される。第4のコーティングは、400~200nm、或いは45~160nm、或いは50~150nmの厚さを有してもよい。本発明の範囲において、第4のコーティングは、本p偏光反射コーティングの最上層で最後のコーティングである。
【0044】
したがって、第1、第2、第3又は第4のコーティングの各々は、独立して1つの単一層からなってもよく、又は2つ以上の層を含んでもよい。第1、第2、第3又は第4のコーティングは、上記の材料のリストから選択されるとき、誘電体層と称されてもよい。
【0045】
場合によっては、アンダーコートが、透明な基材表面と接触して存在してもよい。そのようなアンダーコートは、第1、又は第2、又は第3、又は第4のコーティングのいずれかとも区別される。そのようなアンダーコートは、p偏光反射コーティングにいかなる光学的影響も提供しないが、基材からの拡散バリアとして機能してもよく、又は後続の層に対するシード層として機能してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のコーティング層が不在である場合、被覆基材は、
a.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
b.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、を基材表面から開始する順序で含み、更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、平均n及びkが、450nm、550nm、及び650nmの波長での値に対して計算される、p偏光反射コーティングが設けられた透明な基材を含む。
【0047】
「吸収性材料」とは、可視放射の一部を吸収する材料を意味する。
【0048】
吸収性材料は、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kによって特徴付けることができ、平均屈折率n及び平均消光係数kは3つの波長、すなわち450nm、550nm、及び650nmでのn及びkの値に対して計算される。
【0049】
したがって、平均屈折率nは、450nm、550nm、及び650nmの3つの波長での材料の屈折率の値を使用して計算される。平均消光係数kは、450nm、550nm、及び650nmの3つの波長での材料の消光係数の値を使用して計算される。
【0050】
当業者は、n及びkの光学パラメーターに精通している。Thin Film Center又はCODEなどの薄膜光学シミュレーションソフトウェアは、独自のデータベースを有しているだけではなく、既知の物理的な厚さで堆積した薄膜、及び特徴的な基材のn及びkの光学モデルを適合するための当業者が信頼できるツールも提供している。
【0051】
吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、NiCr、W、Nb、Zr、Ta、Pd、Si、Ti、又はNi及び/若しくはCr及び/若しくはWに基づく合金、又はCr及びZrに基づく合金、又はW及びZr若しくはCrに基づく合金、又はW及びTaに基づく合金(任意選択で、Ti、Nb、Ta、Ni、及びSnから選択される追加の元素を含む)から選択されてもよく、又はTiN、CrN、WN、NbN、TaN、ZrN、NiCrN、若しくはNiCrWN、又はこれらの窒化物の混合物から選択されてもよい。
【0052】
窒化物はまた、吸収が450nm~650nmの範囲にわたって、0.1を超えるkによって維持されるという条件で、部分的に酸化されてもよい。
【0053】
吸収性材料層には、前記吸収性材料層の上及び/又は下に、少なくとも1つのバリア層が与えられてもよい。そのようなバリア層は、5~50nmを構成する幾何学的厚さを有し得る。そのようなバリア層の例としては、窒化ケイ素又はアルミニウムがドープされた酸化亜鉛、若しくは酸化チタン又は混合チタンジルコニウム酸化物が挙げられる。
【0054】
すなわち、場合によっては、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、少なくとも1つの窒化ケイ素のバリアが設けられているか、又はそれぞれが独立して、5~50nmを構成する幾何学的厚さを有する窒化ケイ素から本質的に形成された第1の誘電体コーティング、及び窒化ケイ素から本質的に形成された第2の誘電体コーティングによって隣接されているNiCr又はNiCrWの層を含んでもよく、又は吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、それぞれが5~50nmを構成する幾何学的厚さを有する、アルミニウムがドープされた亜鉛酸化物から本質的に形成された第1の誘電体コーティング、及びアルミニウムがドープされた亜鉛酸化物から本質的に形成された第2の誘電体コーティングによって隣接されたPdの層を含んでもよい。そのような吸収性材料の層は、最適な光吸収を有する偏光の最適な反射を可能にする。
【0055】
吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、好ましくは、NiCr、W、Nb、Pd、Si、Ti、又はNi及び/若しくはCr及び/若しくはWに基づく合金から選択されてもよく、又はTiN、CrN、WN、NbN、TaN、ZrN、NiCrN、若しくはNiCrWN、又はこれらの窒化物の混合物から選択されてもよい。
【0056】
吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、好ましくは、NiCr、W、Pd、Si、Ti、又はNi及び/若しくはCr及び/若しくはWに基づく合金から選択されてもよく、又はTiN、CrN、WN、NiCrN、若しくはNiCrWN、又はこれらの窒化物の混合物から選択されてもよい。
【0057】
必須というわけではないが、吸収性材料の耐熱性が有用である場合があり、すなわち400℃の温度を超える熱処理の際に本質的に変化しないままであることが好ましい。
【0058】
場合によっては、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、互いに接触した1つ以上の単一層を含んでもよい。場合によっては、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、堆積条件によって提供されるとき、その厚さ全体にわたって段階的な組成を有してもよい。
【0059】
本発明の範囲において、吸収性材料は銀を含まない。銀のような材料は、その1を下回る低い屈折率nのために、p偏光の反射の必要な増強をもたらさない。また、本発明の範囲において、p偏光反射コーティングは、最終的には室内(部屋又は車)に面する基材の表面上に存在し、それは機械的及び化学的耐久性が必要とされ、銀などの材料はそれを提供することができず、銀は周囲の空気によって劣化及び/又は酸化され、p偏光反射コーティングを無効にするためである。
【0060】
吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、0.2~15nm、或いは0.5~15nm、或いは2~12nmの厚さを有してもよい。
【0061】
吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、
1)前記第1のコーティング(存在する場合)、第2のコーティング(存在する場合)、第3のコーティング又は第4のコーティングのうちの少なくとも2つの隣接するコーティングの間のいずれかに挿入されるか、或いは
2)前記第1のコーティング(存在する場合)、第2のコーティング(存在する場合)、第3のコーティング又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入される。
【0062】
吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも2つの隣接するコーティング間に挿入される場合、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が存在する場合、任意選択の第1のコーティングと第2のコーティングとの間に挿入されてもよく、又は存在する場合、第2のコーティングと第3のコーティングとの間に挿入されてもよく、又は第3のコーティングと第4のコーティングとの間に挿入されてもよいことを意味する。
【0063】
前記第1及び第2のコーティングが不在である場合には、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、隣接する第3のコーティング若しくは第4のコーティングの間のいずれかに挿入されてもよく、又は第3のコーティング若しくは第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入されてもよい。
【0064】
前記第1及び第2のコーティングが存在する場合には、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層は、
1)前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも2つの隣接するコーティングの間のいずれかに挿入され得るか、或いは、
2)前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入され得る。
【0065】
少なくとも1つの吸収性材料の層が、第4のコーティング上、又はその上部に位置しない場合、前記第4のコーティングは、薄層のスタックの最後の層である。
【0066】
そのような可能性を表すための模式的方法は、以下のように概説され得る:
-基材/H3/ABS/L4、又は
-基材/H1/ABS/L2/H3/L4、又は
-基材/H1/L2/ABS/H3/L4、又は
-基材/H1/L2/H3/ABS/L4、
ここで、H1及びH3は、第1及び第3のコーティング(高屈折率コーティング)を表し、L2及びL4は、第2及び第4のコーティング(低屈折率コーティング)を表し、及びABSは、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層である。
【0067】
吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入される場合、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、存在する場合、任意選択の第1のコーティング内に挿入されてもよく、又は存在する場合、任意選択の第2のコーティング内に挿入されてもよく、又は第3のコーティング内に挿入されてもよく、又はコーティング内に挿入されてもよいことを意味する。実際に、多数の層の存在は、少なくとも1つの吸収性材料の前記コーティングのいずれか1つの内部の挿入を可能にする。
【0068】
そのような可能性を表すための模式的方法は、以下のように概説され得る:
-基材/H3a/ABS/H3b/L4、又は
-基材/H3/L4a/ABS/L4b、又は
-基材/H1a/ABS/H1b/L2/H3/L4、又は
-基材/H1/L2a/ABS/L2b/H3/L4、又は
-基材/H1/L2/H3a/ABS/H3b/L4、又は
-基材/H1/L2/H3/L4a/ABS/L4b、
ここで、H1及びH3は、第1及び第3のコーティング(高屈折率コーティング)を表し、L2及びL4は、第2及び第4のコーティング(低屈折率コーティング)を表し、それぞれ、前記コーティングが少なくとも1つの吸収性材料層の挿入によって分割される場合、文字「a」及び「b」を伴い、及びABSは、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層である。
【0069】
p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む本被覆基材の利点は、入射偏光がガラスの被覆側から反射される場合、偏光増強因子(PEF)Rp-pol/Rv(in)(%)(p偏光反射/可視光線領域内の内部反射)が、42~72°のp偏光の入射角で、或いは65°の角度で、吸収性材料の少なくとも1つの層を含まない同じp偏光反射コーティングと比較すると、第3及び第4のコーティングのみが存在する場合に、少なくとも6%だけ、或いは少なくとも8%だけ、或いは少なくとも10%だけ増加されることである。第1、第2、第3及び第4のコーティングが存在する場合、偏光増強因子(PEF)Rp-pol/Rv(in)は、42~72°のp偏光の入射角度で、或いは65°の角度で、吸収性材料の少なくとも1つの層を含まない同じp偏光反射コーティングと比較すると、少なくとも3%だけ増加される。すなわち、Rp-polが増加され、一方、Rv(in)は同じレベルで維持される(最大5%の変動で)か、又は更には減少されるかのいずれかである。理論によって束縛されることを望むものではないが、選択された吸収性材料層は、被覆表面からのp偏光反射を改善し、一方では、吸収によって全反射を低減させると考えられる。
【0070】
本p偏光反射コーティングは、その吸収性材料層を含まない同じp偏光反射コーティングと比較して、吸収の増加を示す。本発明のp偏光反射コーティング中の吸収性材料層の存在によって付与される吸収の増加は、A光源、CIE 2°で、透明なガラス上で少なくとも1.5%の増加であり得る。場合によっては、増加は、少なくとも2%の増加であってもよい。場合によっては、増加は、少なくとも5%の増加であってもよい。銀の層が吸収性材料とみなされる場合には、本発明とは対照的に、そのような吸収の増加は観察されず、すなわち、そのような増加は<1.5%である。
【0071】
本p偏光反射コーティングは非導電性コーティングとみなされ、すなわち、そのシート抵抗は>100オーム/スクエアであり得る。これは、p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む本被覆基材が、先進運転システム(ADAS)での使用に適合するために、又はガラスを通しての電磁通信に適合するために、デコレーティングを必要としないという利点を提供する。これは、銀層が吸収性材料とみなされる場合には不可能であろう。
【0072】
本p偏光反射コーティングは、低放射率コーティングとはみなされない。低放射率コーティングは、典型的には、0.4以下、又は0.2以下の放射率によって特徴付けることができる。他方では、本p偏光反射コーティングは、0.5を上回る、又は0.6を上回る、又は更には0.7を上回る放射率によって特徴付けることができる。
【0073】
場合によっては、吸収性材料の第1の層とは区別される吸収性材料の第2の層が存在してもよく、但し、それは第1の吸収性材料層とは異なる位置にあることを条件とする。したがって、前記第2の吸収性材料層は、
1)前記第1のコーティング(存在する場合)、第2のコーティング(存在する場合)、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの誘電体の2つの隣接する層の間のいずれかに挿入され得るか、或いは
2)前記第1のコーティング(存在する場合)、第2のコーティング(存在する場合)、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入され得、吸収性材料の第2の層の場所が、吸収性材料の第1の層の場所とは異なる状態である。
【0074】
前記第1及び第2のコーティングが不在である場合には、吸収性材料の第2の層は、隣接する第3又は第4のコーティングの間のいずれかに挿入され得るか、又は第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入され得る。
【0075】
前記第1及び第2のコーティングが存在する場合には、吸収性材料の第2の層は、
1)前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも2つの隣接するコーティングの間のいずれかに挿入され得るか、或いは
2)前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入され得る。
【0076】
存在する場合、吸収性材料の第2の層は、吸収性材料の第1の層とは接触していない。
【0077】
吸収性材料の第1及び第2の層は、上述したように、同じ材料を含んでもよく、又は異なる材料を含んでもよい。
【0078】
被覆基材を提供する方法は、
-透明な基材を提供する工程と、
-下記を堆積させる工程であって、
a.任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
b.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
c.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、を堆積させる工程と、
-偏光増強材料の前記第1の層が、
-前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも2つの隣接するコーティングの間のいずれかに挿入されるように、或いは
-前記第1、第2、第3又は第4のコーティングのうちの少なくとも1つの内部に挿入されるように、吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を更に堆積させる工程と、を含む。
【0079】
異なるコーティングの堆積方法には、化学蒸着法(CVD)、プラズマ励起化学蒸着法(PECVD)、物理蒸着法(PVD)、マグネトロンスパッタリング、湿潤コーティングなどが含まれる。それぞれのコーティングの異なった層は、異なった技術を使用して堆積され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、第4のコーティング及び任意選択の第2のコーティングの低屈折率層は、中空カソードPECVD法などのPECVD方法によって堆積され得る。この方法は、コストの低減及び高い堆積速度の付加的な利点を提供する。
【0081】
吸収性材料の少なくとも1つの第1の層の堆積工程は、それが完全に酸化されず、それによって第1の層が効果的な偏光増強層として遂行することができるように行われるべきである。したがって、堆積中のガス雰囲気は、好ましくは、アルゴン、窒素、又はアルゴンと窒素の混合物である。後続の層の堆積中に酸化が生じ得るが、非酸化吸収性材料の少なくとも0.2nmの最小限の厚さが、本発明の範囲内で遂行するために必要である。
【0082】
堆積工程は、熱処理工程に続くことができる。熱処理は、熱処理のタイプ及びグレージングの厚さに従って、約3、4、6、8、10、12、又は更には15分間、空気中で少なくとも560℃の温度まで、例えば、560℃~700℃、特に約640℃~670℃にグレージングを加熱する工程を含む。処理は、加熱工程の後の急冷工程を含むことができ、ガラスの表面とコアとの間に応力差を導入して、衝撃がある場合に、いわゆる強化ガラスシートが安全に小片に破断するようにできる。冷却工程がそれほど強くないのであれば、ガラスは単に熱強化され、どのような場合でもより良い機械抵抗を提供する。
【0083】
本発明はまた、第1の表面及び第2の表面を有する外側ペインと第1の表面及び第2の表面を有する内側ペインとを含む合わせグレージングを提供し、ここで、両方のペインが、内側ペインの第1の表面と外側ペインの第2の表面との間の接触を与える中間層材料の少なくとも1つのシートによって結合され、内側ペインが、その第2の表面上に、
1)任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
2)高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
3)低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、を基材表面から開始する順序で含む、p偏光反射コーティングであって、更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、平均屈折率n及び平均消光係数kが、450nm、550nm、及び650nmの波長での値に対して計算される、p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む被覆基材である。
【0084】
すなわち、本発明はまた、中間層材料の少なくとも1つのシートによって一緒に結合された少なくとも2つのペインを含む合わせグレージングに関し、ペインの少なくとも1つは上記の被覆基材である。ペインは、上記の透明な基材から選択されてもよい。
【0085】
合わせグレージングは、第1の表面(P1)及び第2の表面(P2)を有する外側ペイント、第1の表面(P3)及び第2の表面(P4)を有する内側ペインと、を含む。合わせグレージングの外側ペインは、車又は建物の外部と接触しているペインである。内側ペインは、車又は建物の内部空間と接触しているペインである。2つのペインは、積層用シート又は中間層と接触保持され、2つのガラスシートの間の接着及び接触に役立つ。中間層は、内側ペインの第1の表面(P3)と外側ペインの第2の表面(P2)との間の接触を提供する。
【0086】
本合わせグレージングにおいて、被覆基材は内側ペインであり、前記シートは、p偏光反射コーティングが内側ペインの第2の表面上に存在するように、すなわちP4中に存在するように合わせグレージング中に存在する。したがって、内側ペインの第2の表面にはp偏光反射コーティングが設けられており、したがって、合わせグレージングの露出表面は、車又は建物の内部空間に面している。
【0087】
典型的に中間層は、0.3~0.9mmの全厚さを典型的に有する、熱可塑性材料、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、又はそれらの複数の層を含有する。中間層は、着色剤を含有し得、したがって着色中間層であり得る。
【0088】
いくつかの場合において、透明な基材が着色されていないとき、中間層は着色中間層であり得る。このような着色中間層は、外側から見る人の視点からすぐれた審美性を提供し得る。
【0089】
中間層は、2つのペインの間のその表面全体にわたって均一な厚さを有してもよく、又はその表面全体にわたって不均一な厚さを有してもよく、したがって、中間層は、「ウエッジ」中間層であってもよい。
【0090】
中間層は、本発明の当初の目的が損なわれない限り、最終用途が必要とする場合、吸光剤又は任意の他の光干渉ポリマーを含んでもよい。
【0091】
本発明の範囲において、n個の赤外線反射(IR)機能層ベースの層と、n+1個の誘電体層とを含む赤外線反射(IR)コーティングであって、各IR反射機能層ベースの層が2つの誘電体層の間に位置している赤外線反射(IR)コーティングが、任意選択で合わせガラスの外側ペインと内側ペイントの間に設けられてもよい。すなわち、赤外線反射(IR)コーティングが、内側ペインの第1の表面(P3)又は外側ペインの第2の表面(P2)のうちの少なくとも1つに適用されてもよく、又は中間層内に埋め込まれてもよい。
【0092】
したがって、本合わせグレージングは、n個の赤外線反射(IR)機能性層ベースの層と、n+1個の誘電体層とを含む赤外線反射(IR)コーティングであって、各IR反射機能性層ベースの層が2つの誘電体層の間に位置している赤外線反射(IR)コーティングを、内側ペインの第1の表面(P3)又は外側ペインの第2の表面(P2)のうちの少なくとも1つ上に更に含んでもよく、又は中間層内に埋め込んでもよい。そのような赤外線反射コーティングは、典型的には、0.1以下、又は好ましくは0.08以下、又はより好ましくは0.05以下の放射率によって特徴付けることができる。
【0093】
IRコーティングは、上記の全ての前述した実施形態と適合する。そのようなIRコーティングは、p偏光反射コーティングの機能性を損なうことがなく、すなわちp偏光反射コーティングは、HUDシステムにおいて、グレージング上に明瞭且つ鮮明な画像ディスプレイを反射するために有用なp偏光反射をなお提供する。
【0094】
本発明の範囲において、用語「下に(below)」、「下に(underneath)」、「下に(under)」は、基材から出発して層配列中の層の、次層に対する相対位置を示す。本発明の範囲において、用語「上に(above)」、「上の(upper)」、「上に(on top)」、「上に(on)」は、基材から出発して層配列中の層の、次層に対する相対位置を示す。
【0095】
本発明の範囲において、IRコーティング内の層の相対位置は、直接接触を必ずしも意味しない。すなわち、第1の層と第2の層との間に或る中間層が提供され得る。いくつかの場合において、層は、いくつかの複数の単独層(又は副層)から実際に構成され得る。
【0096】
いくつかの場合において、相対位置は直接接触を意味し得、明記される。
【0097】
IR反射金属機能性層(又は機能性層)は、白金、パラジウム、又は金で、15重量%未満で最終的にドープされた銀、アルミニウム、又はそれらの合金から作製され得る。機能性層は、5~22nm、或いは7~20nm、或いは8~18nmの厚さを有し得る。機能性層の厚さの範囲は、第2のコーティングの導電率、輻射率、日射防止機能及び光の透過率に影響を与える。
【0098】
誘電体層は典型的に、Zn、Sn、Ti、Zr、In、Al、Bi、Ta、Mg、Nb、Y、Ga、Sb、Mg、Siの酸化物、窒化物、オキシ窒化物又はオキシ炭化物及びそれらの混合物を含み得る。これらの材料は任意選択的にドープされ得、ここでドーパントの例には、アルミニウム、ジルコニウム、又はそれらの混合物が含まれる。ドーパント又はドーパントの混合物は、15重量%までの量で存在し得る。誘電体材料の典型的な例には、ケイ素系酸化物、ケイ素系窒化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、混合亜鉛-スズ酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素オキシ窒化物、チタン酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、ニオブ酸化物、アルミニウム窒化物、ビスマス酸化物、混合ケイ素-ジルコニウム窒化物、及びそれらの少なくとも2つの混合物、例えばチタン-ジルコニウム酸化物などが含まれるがそれらに限定されない。
【0099】
IRコーティングは、少なくとも1つの機能性層の下にシード層を含み得、及び/又はコーティングは、少なくとも1つの機能性層上にバリア層を含み得る。与えられた機能性層は、シード層、若しくはバリア層のどちらか又は両方が提供され得る。第1の機能性層は、シード層及びバリア層のどちらか一方又は両方が提供され得、第2の機能性層は、シード層及びバリア層のどちらか一方又は両方が提供され得、以降も同様である。これらの構造物は、互いに排他的ではない。シード層及び/又はバリア層は、0.1~35nm、或いは0.5~25nm、或いは0.5~15nm、或いは0.5~10nmの厚さを有し得る。
【0100】
また、IRコーティングは、少なくとも1つの機能性層の上に提供された且つそれと接触している、<15nm、或いは<9nmの厚さを有する犠牲材料の薄い層を含み得、それは、チタン、亜鉛、ニッケル、アルミニウムクロム及びそれらの混合物を含む群から選択され得る。
【0101】
IRコーティングは、任意選択的に、その下のスタックを損傷から保護することを意図された最終層として、トップコート又は最上層を含み得る。このようなトップコートは、Ti、Zr、Si、Alの酸化物、又はそれらの混合物、Si、Alの窒化物、又はそれらの混合物、炭素-ベースの層(例えば黒鉛又はダイアモンド状炭素など)を含有する。
【0102】
IRコーティングの例には、
*第1の層と、NiCrOxを含む第2の層との間に挟まれてこれらと接触する赤外線(IR)反射層を含むコーティングが含まれ、
*ここで、前記赤外線(IR)反射層に近い前記第2の層の第1の部分が前記赤外線(IR)反射層からさらに離れている前記第2の層の第2の部分ほど酸化されていないように、NiCrOxを含む少なくとも前記第2の層は酸化が段階的に行われる。
【0103】
また、IRコーティングの例には、誘電体層と、誘電体層の上に配置された亜鉛酸化物を含む第1の層と、亜鉛酸化物を含む第1の層の上に配置されてこれと接触する銀を含む赤外線(IR)反射層と、赤外線反射層の上に配置されてこれと接触するNiCrの酸化物を含む層と、NiCrの酸化物を含む層の上に配置されてこれと接触する亜鉛酸化物を含む第2の層と、亜鉛酸化物を含む第2の層の上に配置される別の誘電体層とを含むコーティング、又は第1の誘電体層と、少なくとも第1の誘電体層の上に配置される銀を含む第1の赤外線(IR)反射層と、少なくとも第1の赤外線反射層及び第1の誘電体層の上に配置された亜鉛酸化物を含む第1の層と、亜鉛酸化物を含む第1の層の上に配置されてこれと接触する銀を含む第2の赤外線反射層と、第2の赤外線反射層の上に配置されてこれと接触するNiCrの酸化物を含む層と、NiCrの酸化物を含む層の上に配置されてこれと接触する亜鉛酸化物を含む第2の層と、亜鉛酸化物を含む、少なくとも第2の層の上に配置された別の誘電体層とを含むコーティングが含まれる。
【0104】
IRコーティングの更なる適した例には、
・少なくとも基礎誘電体下層と基礎誘電体下層の組成と異なった組成である基礎誘電体上層とを含む基礎誘電体層であって、基礎誘電体上層が、亜鉛酸化物又はZnと少なくとも1つの付加的な材料Xとの混合酸化物のどちらかを含み、基礎誘電体上層におけるX/Zn重量比が0.02~0.5であり、且つXが、Sn、Al、Ga、In、Zr、Sb、Bi、Mg、Nb、Ta及びTiを含む群から選択される材料の1つ以上である、基礎誘電体層と、
・白金、パラジウム、又は金で、15重量%未満で最終的にドープされた銀、又はアルミニウム、又はその混合物などの第1の金属赤外線反射層と、
・第1のバリア層と、
・少なくとも中心誘電体下層と中心誘電体下層の組成と異なった組成である中心誘電体上層とを含む中心誘電体層であって、中心誘電体下層が第1のバリア層及び中心誘電体上層と直接接触しており、中心誘電体上層が、亜鉛酸化物又はZnと少なくとも1つの付加的な材料Yとの混合酸化物のどちらかを含み、基礎誘電体上層におけるY/Zn重量比が0.02~0.5であり、且つYが、Sn、Al、Ga、In、Zr、Sb、Bi、Mg、Nb、Ta及びTiを含む群から選択される材料の1つ以上である、中心誘電体層と、
・白金、パラジウム、又は金で、15重量%未満で最終的にドープされた銀、又はアルミニウム、又はその混合物などの第2の金属赤外線反射層と、
・第2のバリア層と、
・最上誘電体層と、を含む日射制御コーティングが含まれる。
【0105】
IRコーティングのなお更なる適した例には、
・少なくとも基礎誘電体下層と基礎誘電体下層の組成と異なった組成である基礎誘電体上層とを含む基礎誘電体層であって、基礎誘電体上層が、亜鉛酸化物又はZnと少なくとも1つの付加的な材料Xとの混合酸化物のどちらかを含み、基礎誘電体上層におけるX/Zn重量比が0.02~0.5であり、且つXが、Sn、Al、Ga、In、Zr、Sb、Bi、Mg、Nb、Ta及びTiを含む群から選択される材料の1つ以上である、基礎誘電体層と、
・白金、パラジウム、又は金で、15重量%未満で最終的にドープされた銀、又はアルミニウム、又はその混合物などの第1の金属赤外線反射層と、
・第1のバリア層と、
・少なくとも第2の誘電体下層と第2の誘電体下層の組成と異なった組成である第2の誘電体上層とを含む第2の誘電体層であって、第2の誘電体下層が第1のバリア層及び第2の誘電体上層と直接接触しており、第2の誘電体上層が亜鉛酸化物又はZnと少なくとも1つの付加的な材料Yとの混合酸化物のどちらかを含み、第2の誘電体上層におけるY/Zn重量比が0.02~0.5であり、且つYが、Sn、Al、Ga、In、Zr、Sb、Bi、Mg、Nb、Ta及びTiを含む群から選択される材料の1つ以上である、第2の誘電体層と、
・白金、パラジウム、又は金で、15重量%未満で最終的にドープされた銀、又はアルミニウム、又はその混合物などの第2の金属赤外線反射層と、
・第2のバリア層と、
・少なくとも第3の誘電体下層と第3の誘電体下層の組成と異なった組成である第3の誘電体上層とを含む第3の誘電体層であって、第3の誘電体下層が第2のバリア層及び第3の誘電体上層と直接接触しており、第3の誘電体上層が亜鉛酸化物又はZnと少なくとも1つの付加的な材料Yとの混合酸化物のどちらかを含み、第3の誘電体上層におけるY/Zn重量比が0.02~0.5であり、且つYが、Sn、Al、Ga、In、Zr、Sb、Bi、Mg、Nb、Ta及びTiを含む群から選択される材料の1つ以上である、第3の誘電体層と、
・白金、パラジウム、又は金で、15重量%未満で最終的にドープされた銀、又はアルミニウム、又はその混合物などの第3の金属赤外線反射層と、
・第3のバリア層と、
・最上誘電体層と、を含む日射制御コーティングが含まれる。
【0106】
このような積み重ね体において、基礎誘電体上層は、第1の赤外線反射層と直接接触していることができる。中心誘電体上層は、第2の赤外線反射層と直接接触していることができる。基礎誘電体層と中心の、第1及び第2の誘電体層との両方の上層は独立に、約3~20nmの範囲内の幾何学厚さを有し得る。付加的な材料X及びYの一方又は両方は、Sn及び/又はAlであり得る。基礎誘電体上層を形成する及び/又は中心誘電体上層を形成する混合酸化物中のZnの比率は、X/Zn比及び/又はY/Zn比が約0.03~0.3重量比であるようなものであり得る。第1の及び/又は第2の及び/又は第3のバリア層は、Tiを含む及び/又はTiの酸化物を含む層であり得、それらは、各々独立に0.5~7nmの幾何学厚さを有し得る。基礎誘電体上層及び/又は中心の及び/又は第2の及び/又は第3の誘電体上層は、独立に<20nm、或いは<15nm、或いは<13nm、或いは<11nm、及び>3nm、或いは>5nm、或いは>10nmの幾何学厚さを有し得る。赤外線反射層は、各々独立に2~22nm、或いは5~20nm、或いは8~18nmの厚さを有し得る。最上誘電体層は、Znと少なくとも1つの付加的な材料Maとの混合酸化物を含む少なくとも1つの層を含み得、ここで、その層のMa/Zn比は、0.02~2.0重量比であり且つMaは、Sn、Al、Ga、In、Zr、Sb、Bi、Mg、Nb、Ta及びTiを含む群から選択される材料の1つ以上である。
【0107】
このような日射制御コーティングの特定の例が以下の表Aに提供され、ここで、ZnSnOxは、酸素の存在下で、ZnとSnの合金又は混合物である目標物を反応性スパッタリングすることによって堆積されるZnとSnを含有する混合酸化物である。或いは、混合酸化物層は、亜鉛酸化物と付加的な材料の酸化物の混合物である目標物を、特にアルゴンガス又はアルゴンリッチ酸素含有雰囲気中でスパッタリングすることによって形成され得る。
【0108】
Tiバリアは、高純度アルゴン中又はアルゴンリッチ酸素含有雰囲気中にあるTi目標物をスパッタリングして、完全に酸化されていないバリアを堆積させることによって堆積される。基礎ZnSnOx誘電体層、中心ZnSnOx誘電体層及び最上ZnSnOx誘電体層の各々の酸化数は、必ずしも同じであることを必要としない。同様に、Tiバリアの各々の酸化数は同じであることを必要としない。各々の上位バリアは、その上位ZnSnOx酸化物層をスパッタ堆積する間にその下位銀層を酸化から保護する。これらのバリア層のさらなる酸化がそれらの上位酸化物層を堆積する間に起こり得るが、これらのバリアの一部分は金属形態のままであるか又は完全に酸化されていない酸化物の形態のままであり得、グレージングパネルの後続の熱処理のための及びその間のバリアを提供することができる。
【0109】
本発明に適した最適なIRコーティングは、以下の逐次層:
・ 基礎誘電体下層と基礎誘電体下層の組成と異なった組成である基礎誘電体上層とを含む基礎誘電体層であって、
・ 基礎誘電体下層が、0.5~2の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含み、
・ 基礎誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含む、基礎誘電体層
・ 金属銀を含む第1の赤外線反射層
・ 第1のバリア層
・ 中心誘電体下層と、第1のバリア層と直接接触しており且つ0.5~2の範囲のSn/Zn比を有するZnとSnの混合酸化物を含む中心誘電体下層の組成と異なった組成である中心誘電体上層とを含む中心誘電体層であって、
・ 中心誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含む、中心誘電体層
・ 金属銀を含む第2の赤外線反射層
・ 第2のバリア層
・ 最上誘電体層を含み得る。
【0110】
本発明に適したこのような最適なIRコーティングは、以下の逐次層及び幾何学厚さ:
・ 基礎誘電体下層と基礎誘電体下層の組成と異なった組成である基礎誘電体上層とを含む基礎誘電体層であって、
・ 基礎誘電体下層が、0.5~2の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含み、15~25nmの幾何学厚さを有し、
・ 基礎誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含み、5~15nmの幾何学厚さを有する、基礎誘電体層、
・ 金属銀を含み、8~16nmの幾何学厚さを有する、第1の赤外線反射層、
・ 3~8nmの幾何学厚さを有する、第1のバリア層、
・ 中心誘電体下層と、第1のバリア層と直接接触しており且つ0.5~2の範囲のSn/Zn比を有するZnとSnの混合酸化物を含む、58~74nmの幾何学厚さを有する中心誘電体下層の組成と異なった組成である中心誘電体上層とを含む中心誘電体層であって、
・ 中心誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含み、5~15nmの幾何学厚さを有する、中心誘電体層、
・ 金属銀を含み、8~16nmの幾何学厚さを有する第2の赤外線反射層、
・ 3~8nmの幾何学厚さを有する、第2のバリア層、
・ 14~22nmの幾何学厚さを有する、最上誘電体層、
・ 2~8nmの幾何学厚さを有する任意選択のトップコートを含み得る。
【0111】
本発明に適したさらなる最適なIRコーティングは、以下の逐次層:
・ 基礎誘電体下層と基礎誘電体下層の組成と異なった組成である基礎誘電体上層とを含む基礎誘電体層であって、
・ 基礎誘電体下層が、0.5~2の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含み、
・ 基礎誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含む、基礎誘電体層
・ 金属銀を含む第1の赤外線反射層
・ 第1のバリア層
・ 第2の誘電体下層と、第1のバリア層と直接接触しており且つ0.5~2の範囲のSn/Zn比を有するZnとSnの混合酸化物を含む第2の誘電体下層の組成と異なった組成である第2の誘電体上層とを含む第2の誘電体層であって、
・ 第2の誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含む、第2の誘電体層、
・ 金属銀を含む第2の赤外線反射層
・ 第2のバリア層
・ 第3の誘電体下層と、第2のバリア層と接触しており且つ0.5~2の範囲のSn/Zn比を有するZnとSnの混合酸化物を含む第3の誘電体下層の組成と異なった組成である第3の誘電体上層とを含む第3の誘電体層であって、
・ 第3の誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含む、第3の誘電体層、
・ 金属銀を含む第3の赤外線反射層
・ 第3のバリア層
・ 最上誘電体層を含み得る。
【0112】
本発明に適したこのようなさらなる最適なIRコーティングは、以下の逐次層及び幾何学厚さ:
・ 基礎誘電体下層と基礎誘電体下層の組成と異なった組成である基礎誘電体上層とを含む基礎誘電体層であって、
・ 基礎誘電体下層が、0.5~2の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含み、25~35nmの幾何学厚さを有し、
・ 基礎誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含み、5~15nmの幾何学厚さを有する、基礎誘電体層、
・ 金属銀を含み、10~16nmの幾何学厚さを有する、第1の赤外線反射層、
・ 3~8nmの幾何学厚さを有する、第1のバリア層、
・ 第2の誘電体下層と、第1のバリア層と直接接触しており且つ0.5~2の範囲のSn/Zn比を有するZnとSnの混合酸化物を含む、58~74nmの幾何学厚さを有する第2の誘電体下層の組成と異なった組成である第2の誘電体上層とを含む第2の誘電体層であって、
・ 第2の誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含み、5~15nmの幾何学厚さを有する、第2の誘電体層、
・ 金属銀を含み、10~17nmの幾何学厚さを有する、第2の赤外線反射層、
・ 3~8nmの幾何学厚さを有する、第2のバリア層、
・ 第3の誘電体下層と、第2のバリア層と接触しており且つ0.5~2の範囲のSn/Zn比を有するZnとSnの混合酸化物を含む、50~75nmの幾何学厚さを有する第3の誘電体下層の組成と異なった組成である第3の誘電体上層とを含む第3の誘電体層であって、
・ 第3の誘電体上層が、0.02~0.5の範囲のSn/Zn重量比を有するZnとSnの混合酸化物を含み、5~15nmの幾何学厚さを有する、第3の誘電体層、
・ 金属銀を含み、10~16nmの幾何学厚さを有する、第3の赤外線反射層、
・ 3~8nmの幾何学厚さを有する、第3のバリア層、
・ 20~40nmの幾何学厚さを有する、最上誘電体層、
・ 2~8nmの幾何学厚さを有する任意選択のトップコートを含み得る。
【0113】
ペインの表面上の任意選択のIRコーティングの堆積方法には、化学蒸着法(CVD)、プラズマ励起化学蒸着法(PECVD)、物理蒸着法(PVD)、マグネトロンスパッタリング、湿潤コーティングなどが含まれる。それぞれのコーティングの異なった層は、異なった技術を使用して堆積され得る。
【0114】
IRコーティングを保持するペインは、上記の熱処理に従って熱処理されてもよい。
【0115】
中間層中に埋め込まれる場合、IRコーティングは、プラスチック基材上に堆積され得、前記プラスチック基材は、次いで、中間層内の内側ペインの第1の表面と外側ペインの第2の表面との間に挿入され(両側で中間層材料によって挟まれ)得るか、又は一方の側で内側ペインの第1の表面及び外側ペインの第2の表面のうちの1つと接触し、且つ他方の側で中間層と接触し得る。
【0116】
プラスチック基材の例としては、薄いシートの形態のポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、ポリ(メタクリレート)、及びポリ(エチルアクリレート)などのポリアクリレート及びメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート-コ-エチルアクリレート)及びポリカーボネートなどのコポリマーが挙げられる。プラスチック基材それ自体は市販されているか、又は様々な前記技術分野において既知のプロセスによって調製することができる。
【0117】
プラスチック基材上のIRコーティングは、典型的には、前記技術分野において既知であり、本明細書では説明されない。いくつかは、少なくともEastman、又は3Mから商業的に利用可能であり得る。
【0118】
本発明の範囲において、p偏光反射コーティングを与えられた内側ペインは熱処理に供することができるが、但し、前記コーティングがそのような熱処理に耐えることができることを条件とする。場合によっては、第1のコーティングを与えられた内側ペインが熱処理に供される。
【0119】
いくつかの場合には、機械的拘束に対するその耐性を改善するために、熱処理によって外側ペインを機械的に補強することが有用であり得る。特定の用途のために、高温で合わせグレージングを曲げる必要がある場合がある。
【0120】
合わせグレージングは、平坦な基材の積層工程によって組み立てられてよく、又は湾曲した基材の曲げ工程によって組み立てられてもよく、この曲げ工程は、最初のペインを曲げる工程及び二番目の前記曲げたペインを積層する工程と、を含む。
【0121】
本発明はまた、
1)合わせグレージングに向かってp偏光を投射する光源と、
2)第1の表面及び第2の表面を有する外側ペインと第1の表面及び第2の表面を有する内側ペインとを含み、両方のペインが、内側ペインの第1の表面と外側ペインの第2の表面との間の接触を与える中間層材料の少なくとも1つのシートによって結合されている前記合わせグレージングとを含むHUDシステムを提供し、ここで内側ペインが、その第2の表面上に、
a.任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
b.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
c.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、を基材表面から開始する順序で含む、p偏光反射コーティングであって、更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、平均屈折率n及び平均消光係数kが、450nm、550nm、及び650nmの波長での値に対して計算される、p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む被覆基材である。
【0122】
すなわち、本HUDシステムは、
1)合わせグレージングに向かってp偏光を投射する光源と、
2)上記のような合わせグレージングであって、また上記の被覆基材を含む前記合わせグレージングと、を含む。
【0123】
すなわち、同等の方法で表現すると、本HUDシステムは、
1)合わせグレージングに向かってp偏光を投射する光源と、
2)中間層材料の少なくとも1つのシートによって一緒に結合された少なくとも2つのペインを含む合わせグレージングであって、ペインのうちの少なくとも1つが、上記の被覆基材である合わせグレージングと、を含む。
【0124】
光源は、典型的には、グレージングに向けての光投射を提供する。本発明の範囲における光源は、投射された光がp偏光であるように偏光板を含む。本発明の範囲において、光源は、したがって、p偏光を提供する。そのような光源は、グレージングに向けて投射される情報の有利な反射を可能にする。
【0125】
偏光を提供する光源は、典型的には、前記技術分野において既知であり、本明細書において説明されない。
【0126】
典型的には、投射光は、入射平面において42~72度でグレージングに入射している。
【0127】
p偏光光源を用いて、構成されている本HUDシステムの利点は、(Rp-pol)が65°の前記p偏光の入射角度で最大14%到達し得ることである。反射されたp偏光の値は、65°の角度で最大16%、最大18%、又は更には最大19%上昇し得る。
【0128】
本被覆基材は、輸送用途又は建築用途において有用であり得、ここで画像又はp偏光源からの光の投射を用いることができる。建築用途には、ディスプレイ、ウィンドウ、ドア、パーティション、シャワーパネルなどが含まれる。そのような建築用途において、鮮明画像の投射は、部屋情報、建物情報、エンターテイメント素材などを表示するために有用であり得る。
【0129】
輸送用途には、路上、空中、水中及び水上の輸送のためのそれらの手段、特に車、バス、列車、船、航空機、宇宙船、宇宙ステーション及びその他の自動車が含まれる。
【0130】
したがって本被覆基材は、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、サンルーフ、パノラマルーフ又は車のために有用な任意の他のウィンドウ、又は任意の他の輸送装置のための任意のグレージングであり得、ここで鮮明画像の投射は有用であり得る。投射及び反射される情報には、方向若しくは交通量などの任意の交通情報、又は速度、温度等の任意の車の状態の情報、又はエンターテイメント素材などが含まれ得る。広い視野は異なった視覚を可能にし、したがって、背が高め及び低めの閲覧者/ドライバーに適合可能である。
【0131】
場合によっては、IRコーティングが本合わせグレージングにおいて提供される場合、前記合わせグレージングは暖房可能なグレージングとして役立ち得る。そのような暖房可能なグレージングには、暖房可能な車用グレージング又は暖房可能なフロントガラスが含まれる。
【0132】
いくつかの実施形態では、本発明の他の実施形態と適合して、第2の光源がHUDシステム内に存在し得、二次画像又は情報を提供し得る。第2の光源は偏光を発することができないか又はp偏光を発するか若しくはs偏光を発することができるが、第1の光源と同一であるか又は異なる画像を提供するであろう。いくつかの場合において、画像又は情報は、第1の光源と第2の光源との間で異なっている。いくつかの場合において、拡張現実情報は、広い視野及び/又は投射範囲のために、光源の少なくとも1つによって投射され得る。
【0133】
本発明の範囲において、車用グレージング上のp偏光反射コーティングの存在は、ダッシュボードの全反射をドライバーにとって不快なレベルまで増加させることなく、最適なp偏光の光反射を可能にする。
【0134】
最終利用条件は、コーティングが、様々な種類の洗浄剤、湿度、汚染及び機械的摩耗への暴露を意味する、車又は建物の内部に暴露されるグレージングの外面上にあることを伴う。
【0135】
本発明はまた、42~72°の入射角でグレージング上に光を投射するp偏光源を含むHUDシステムにおいて、前記偏光を反射するための、
a.任意選択で、
i.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第1のコーティングであって、1~100nmの厚さを有する第1のコーティングと、
ii.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第2のコーティングであって、1~220nmの厚さを有する第2のコーティングと、
b.高屈折率材料の1つ以上の層から構成される第3のコーティングであって、40~150nmの厚さを有する第3のコーティングと、
c.低屈折率材料の1つ以上の層から構成される第4のコーティングであって、40~200nmの厚さを有する第4のコーティングと、を基材表面から開始する順序で含むp偏光反射コーティングであって、更に吸収性材料の少なくとも1つの第1の層を含み、前記吸収性材料の少なくとも1つの第1の層が、0.2~15nmの厚さを有し、前記吸収性材料が、1を超える平均屈折率n及び0.1を超える平均消光係数kを有し、平均屈折率n及び平均消光係数kが、450nm、550nm、及び650nmの波長での値に対して計算される、p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む被覆基材の使用を提供する。
【0136】
HUDシステム内の本被覆基材は、第1、第2、第3及び第4のコーティングが存在する場合、42~72°のp偏光の入射角で、或いは65°の角度で、任意のそのような吸収性材料層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、p偏光反射コーティングが少なくとも3%優れた偏光増強因子(PEF)Rp-pol/Rv(in)を有する状態で、前記HUDシステムの適切な機能性を可能にする。偏光増強因子(PEF)Rp-pol/Rv(in)におけるこの増加は、42~72°の偏光の入射角で、或いは65°の角度で、第3のコーティング及び第4のコーティングのみが存在する場合、少なくとも6%であり、或いは少なくとも8%、或いは少なくとも10%である。
【実施例】
【0137】
p偏光反射コーティングを与えられた透明な基材を含む被覆基材を、単一シートグレージングにおける光学モデリングソフトウェアによって調製又はシミュレートし、また積層形態で設置し、特定の光条件を考慮して、それらの光学パラメーターについて評価した。基材は、ガラスシートであった。前記ガラスシートのタイプ及び厚さ、コーティングの詳細及び試験条件は以降に提供される。光源は、通常の光又はp偏光を放射するように構成される。入射光に対してのグレージングの挙動は、以下の表に示される。
【0138】
全ての光学パラメーターは、反射又は透過レベルについては、D65抗原、2°に対して、及びカラーインデックス(a*及びb*)については、D65抗原、10°に対して与えられる。
【0139】
別記しない限り、全ての屈折率は、550nmの波長において測定される。
【0140】
本実施例では、透明なガラスは、4mmの単一シートとして記載されている場合を除き、1.8mmの厚さの透明フロートガラスが使用された。
【0141】
緑色ガラスは、0.3~1.0重量%の範囲の量のFe2O3の形態の酸化鉄を有するソーダ石灰ガラスであり、1.8mmの厚さのものを使用した。
【0142】
誘電体材料:
-TZO:2.19の屈折率(550nmにおける)を有する、55/45重量%の比の酸化チタン/酸化ジルコニウム
-TrZO:2.33の屈折率(550nmにおける)を有する、75/25重量%の比の酸化チタン/酸化ジルコニウム(この場合、「Tr」はチタンリッチの略である)
-TiO2:2.37の屈折率(550nmにおける)の酸化チタン
-TSO:2.17の屈折率(550nmにおける)を有する、92/8重量%の比の酸化チタン/酸化ケイ素
-SiO2:1.46の屈折率(550nmにおける)を示す酸化ケイ素
-SiZrO:1.57の屈折率(550nmにおける)を有する、65/35重量%の比の酸化ケイ素/酸化ジルコニウム
-AZOx:1.56の屈折率(550nmにおける)を有する、98/2重量%の比の準化学量論的酸化亜鉛/酸化アルミニウム
-SiN:2.03の屈折率(550nmにおける)を有する、90/10重量%の比のケイ素の窒化物&ケイ素を含むアルミニウム/アルミニウム
【0143】
吸収性(ABS)材料:
-Pd:純度99.9%のパラジウム
-NiCr:80/20重量%の比を有するニッケルクロム二元合金
-NiCrW:Ni/Cr/W比40/10/50重量%を有するニッケルクロムタングステン三元合金
-NiCrWN:Ni/Cr/W比40/10/50重量%を有するニッケルクロムタングステン三元合金の窒化物
-Si:90/10重量%のケイ素/アルミニウム比を含む添加されたアルミニウムを有するケイ素
【0144】
金属赤外線反射層材料:
-Ag:純度99.9%の銀
【0145】
様々な吸収性材料及び銀についての平均屈折率n及び平均消光係数kを表1に示す。この平均は、波長の3つの値に対して、すなわち、450、550及び650nmにおいて計算される。<1の平均屈折率nは、吸収性材料としては適していない材料を示している。<1の平均nを有する銀、金、銅、アルミニウムは、したがって、本発明の範囲において、吸収性材料としては好適ではない。
【0146】
外部反射(Rv(out))に関して測定されるパラメーターは、以下の通りであった:
a)A光源、2°
-Tv(%)=可視光線領域の透過
-Rv(out)(%)=8°の<<標準>>入射角における可視光線領域の外部反射
-Rv(in)(%)=入射角がグレージングの反対側から参照される場合(すなわち180°-65°)の、R115(in)とも称される、65°の入射角における全光の可視光線領域の内部反射-以下の実施例では、全反射とも称される
-Rp_pol(%)=入射角がグレージングの反対側から参照される場合(すなわち180°-65°)の可視光線領域での、及び65°の入射角における偏光の内部反射-Rp_pol115°とも称される
-R172(in)(%)=8°(又はグレージングの外面を参照する場合は172°)の<<標準>>入射角における可視光線領域の内部反射。
-Abs172(%)=吸収=100%-Tv(%)-R172(in)(%)
-PEF=偏光増強因子=Rp_pol(%)/Rv(in)(%)
b)D65光源、10°
-a*Rout=8°における外部反射のa*カラーインデックス
-b*Rout=8°における外部反射のb*カラーインデックス
-a*_Rin=a*R115=115°における内部反射のa*カラーインデックス
-b*_Rin=b*R115=115°における内部反射のb*カラーインデックス
-a*_Rp_pol=a*R115p_pol=p偏光について115°における内部反射のa*カラーインデックス
-b*_Rp_pol=b*R115p_pol=p偏光について115°における内部反射のb*カラーインデックス
-a*R172=172°における内部反射のa*カラーインデックス
-b*R172=172°における内部反射のb*カラーインデックス
【0147】
結果は一般的に、
・可視光線の透過-Tv(%)>70%
・内部反射の光学的特性、65°におけるRp-polは、内部反射(Rv(in))をそれぞれの比較例と同様なレベルで維持しながら、最大14%、又は16%、又は更には18%若しくは19%のレベルまで体系的に改良した
・シート抵抗を有するp偏光反射コーティングの非導電性は、>100オーム/スクエアであった
【0148】
全てのp偏光反射コーティングは、>0.5の放射率値を有していた。
【0149】
これらの結果は、請求の範囲のHUDシステムにおける本車用グレージングの適正を示す。
【0150】
実施例1及び2、比較例1
実施例1及び2並びに比較例1を調製し、コーティングを表2に示すように4mmの単一のシート透明ガラス状に堆積させた。
【0151】
吸収性材料Siを、目標のアルゴン雰囲気中で目標物からスパッタリングした。材料の少量部分は、後続の酸化ケイ素層をスパッタリングする際、及びフロントガラスの曲げのための後続の熱処理(静的又は動的炉内で670℃で10分間)の際に酸化される。必要なp偏光増強機能を提供するために、吸収値の増加(Abs172(%))によっても証明されるように、ケイ素の層は、非酸化形態のまま留まり、本明細書で定義されるような吸収性材料の目的に役立つことが証明された。
【0152】
【0153】
値は、実施例1及び2のp偏光反射コーティングが80%を超えるp偏光増強因子を伴い、許容可能な全反射(Rv(in))を管理しながらp偏光を反射する上でより効率的であったことを示す。これは、比較例1のABS層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、8%を超える増加を示した。
【0154】
吸収はまた、ケイ素のABS層によって達成されるように、比較例1の約2%の値から、実施例1及び2の8%を超える値まで増加した。
【0155】
実施例1及び2並びに比較例1は、>200オーム/スクエアのシート抵抗を有していた。
【0156】
実施例3及び4、比較例2及び3
実施例3及び4及び比較例2は、1.8mmの透明フロートガラスのシート上に堆積された実施例1及び2のスタックの積み重ね変形例であった。
【0157】
したがって、p偏光反射コーティングを保持する1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層し、それによってコーティングが車の内部(P4)に対して位置するようになる1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングが提供された。
【0158】
比較例2は、比較例1のコーティングを保持する1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層した1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングであった。
【0159】
比較例3は、コーティングを保持しない1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層した1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングであった。
【0160】
【0161】
値は、実施例3及び4のp偏光反射コーティングが90%を超えるp偏光増強因子を伴い、許容可能な全反射(Rv(in))を管理しながらp偏光を反射する上でより効率的であったことを示す。これは、比較例2のABS層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、10%を超える増加を示した。
【0162】
吸収はまた、ケイ素のABS層によって達成されるように、比較例2の約8%の値から、実施例3及び4の13%を超える値まで増加した。
【0163】
実施例3及び4並びに比較例2は、>200オーム/スクエアのシート抵抗を有していた。
【0164】
実施例5~7及び比較例4
吸収性材料としてケイ素を有する実施例5~7及び比較例4を、上記実施例3及び4に沿ってシミュレートした。
【0165】
p偏光反射コーティングを保持する1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層し、それによってコーティングが車の内部(P4)に対して位置するようになる1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングがシミュレートされた。コーティングの構造を表5に提供する。
【0166】
【0167】
値は、実施例5~7のp偏光反射コーティングが80%を超えるp偏光増強因子を伴い、許容可能な全反射(Rv(in))を管理しながらp偏光を反射する上でより効率的であったことを示す。これは、比較例4のABS層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、8%を超える増加を示した。
【0168】
吸収はまた、ケイ素のABS層によって達成されるように、比較例の約8%の値から、実施例5~7の13%を超える値まで増加した。
【0169】
実施例5~7並びに比較例4は、>200オーム/スクエアのシート抵抗を有していた。
【0170】
実施例8~10、比較例5及び6
p偏光反射コーティングを保持する1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層し、それによってコーティングが車の内部(P4)に対して位置するようになる1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングが提供された。コーティングの構造を表7に提供し、nmで示されたそれぞれの層の厚さを伴う。
【0171】
実施例8~10は、吸収性材料としてパラジウムを含み、それぞれが前記パラジウム層上に堆積された後続する酸化物の付加的な層を有するものがシミュレートされた。実施例8及び9において、後続の層は、高屈折率材料(それぞれTZO及びTiO2)の層であり、それによりABSは高屈折率を有する第3のコーティング層内に挿入された。実施例10では、後続の層は低屈折率層材料(AZOx)の層であり、そのためABSは第3のコーティングと第4のコーティングとの間に挿入された。
【0172】
比較例5は、いかなるABS層も含まなかった。
【0173】
比較例6は、TiO2の後続層を伴う銀層を含んでおり、そのため銀層は高屈折率を有する第3のコーティング層内に挿入された。
【0174】
【0175】
値は、実施例8~10のp偏光反射コーティングが88%を超えるp偏光増強因子を伴い、許容可能な全反射(Rv(in))を管理しながらp偏光を反射する上でより効率的であったことを示す。これは、比較例5のABS層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、12%を超える増加を示した。比較例6は、銀の存在が実際にp偏光反射を減少させたので、比較例5と比較して、p偏光増強因子の減少を示した。
【0176】
吸収はまた、パラジウムのABS層によってそのコーティング内の位置に関係なく達成されるように、比較例5の約8%の値から、実施例8~10の14%を超える値まで増加した。比較例5と比較すると、銀層の比較例6における吸収に及ぼす有意な影響はなかった(8.4%の値から8.7%の値まで)。
【0177】
実施例8~10並びに比較例5は、>200オーム/スクエアのシート抵抗を有しており、一方比較例6は、40オーム/スクエアのシート抵抗を有していた。
【0178】
実施例11~14、比較例7
p偏光反射コーティングを保持する1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層し、それによってコーティングが車の内部(P4)に対して位置するようになる1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングが提供された。コーティングの構造を表9に提供し、nmで示されたそれぞれの層の厚さを伴う。
【0179】
実施例11~14は、それぞれが窒化ケイ素の層の間に挟まれているNiCr、NiCrW又はNiCrWNのいずれかを吸収性材料として有するようにシミュレートされ、一方実施例14では、窒化ケイ素の1つの層のみがABS層の上に堆積された。実施例14は、両方とも低屈折率材料(n<1.7)であるSiZrOの副層によって覆われたSiO2の副層を有する第4のコーティングを含んでいた。実施例11~14では、ABS層は、したがって、TZOの層及びSiNの層を含む高屈折率を有する第3のコーティング層内に挿入される。
【0180】
【0181】
値は、実施例11~14のp偏光反射コーティングが85%を超えるp偏光増強因子を伴い、許容可能な全反射(Rv(in))を管理しながらp偏光を反射する上でより効率的であったことを示す。これは、比較例7のABS層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、13%を超える増加を示した。
【0182】
吸収はまた、ニッケルクロムを含むABS層によって達成されるように、比較例7の約8%の値から、実施例11~14の15%を超える値まで増加した。
【0183】
実施例11~14並びに比較例7は、>200オーム/スクエアのシート抵抗を有していた。実施例14は、他の実施例及び比較例と比較すると、SiZrOの最上層のために改善された耐薬品性の付加的な利点を有している。
【0184】
実施例15及び16、比較例8及び9
p偏光反射コーティングを保持する1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層し、それによってコーティングが車の内部(P4)に対して位置するようになる1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングが提供された。コーティングの構造を表11に提供し、nmで示されたそれぞれの層の厚さを伴う。
【0185】
比較例8及び9は、いかなるABS層も含有しないp偏光反射コーティングについての係属中のPCT出願PCT/EP2020/086578による実施例の再現であった。
【0186】
実施例15及び16は、それぞれ比較例8及び9にのっとって設計され、そのためコーティングは、第3のコーティング層と第4のコーティング層との間に挿入された吸収性材料、すなわちパラジウムの層を含んだ。
【0187】
【0188】
値は、実施例15及び16のp偏光反射コーティングが75%を超えるp偏光増強因子を伴い、許容可能な全反射(Rv(in))を管理しながらp偏光を反射する上でより効率的であったことを示す。これは、それらのそれぞれの比較例8及び9のABS層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、19%以上の増加を示した。
【0189】
吸収はまた、パラジウムのABS層によって達成されるように、比較例8及び9の約8%の値から、実施例15及び16の18%を超える値まで増加した。
【0190】
実施例15及び16並びに比較例8及び9は、>200オーム/スクエアのシート抵抗を有していた。
【0191】
実施例17及び18、比較例10
p偏光反射コーティングを保持する1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層し、それによってコーティングが車の内部(P4)に対して位置するようになる1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングが提供された。コーティングの構造を表13に提供し、nmで示されたそれぞれの層の厚さを伴う。
【0192】
比較例10は、いかなるABS層も含有しないp偏光反射コーティングについての係属中のPCT出願PCT/EP2020/086578による実施例の再現であった。
【0193】
実施例17及び18は、比較例10にのっとって設計され、そのため、コーティングは吸収性材料、すなわちパラジウムの層を含んだ。実施例17では、ABS層は第3のコーティング内に挿入されており、一方実施例18では、それは第3のコーティングと第4のコーティングとの間に挿入された。
【0194】
【0195】
値は、実施例17及び18のp偏光反射コーティングが80%を超えるp偏光増強因子を伴い、許容可能な全反射(Rv(in))を管理しながらp偏光を反射する上でより効率的であったことを示す。これは、比較例10のABS層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、4%以上の増加を示した。
【0196】
吸収はまた、パラジウムのABS層によって達成されるように、比較例10の7.8%の値から、実施例17及び18の10%を超える値まで増加した。
【0197】
実施例17及び18並びに比較例10は、>200オーム/スクエアのシート抵抗を有していた。
【0198】
実施例19及び20並びに11及び12
p偏光反射コーティングを保持する1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層し、それによってコーティングが車の内部(P4)に対して位置するようになる1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングが提供された。コーティングの構造を表15に提供し、nmで示されたそれぞれの層の厚さを伴う。
【0199】
実施例19及び20は、比較例11及び12のそれぞれにのっとって設計され、そのため、コーティングは吸収性材料、すなわちパラジウムの層を含んだ。これらの実施例では、ABS層は第3のコーティングと第4のコーティングとの間に挿入された。
【0200】
【0201】
値は、実施例19及び20のp偏光反射コーティングが68%を超えるp偏光増強因子及び17%以上のp-pol反射を伴い、同様な又はより低い全反射(Rv(in))を管理しながらそれらの対応する比較例11及び12のそれぞれよりもp偏光を反射する上でより効率的であったことを示す。これは、それぞれの比較例のABS層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、13%以上のp偏光増強因子の増加を示す。
【0202】
吸収はまた、パラジウムのABS層によって達成されるように、実施例19及び20の16%以上の値まで増加した。
【0203】
実施例19及び20並びにそれらのそれぞれの比較例11及び12は、>100オーム/スクエアのシート抵抗を有していた。
【0204】
実施例21、比較例13
p偏光反射コーティングを保持する1.8mmの透明フロートガラスのシートに、0.76mmのPVB中間層を積層し、それによってコーティングが車の内部(P4)に対して位置するようになる1.8mmの緑色フロートガラスのシートを含む合わせグレージングが提供された。コーティングの構造を表17に提供し、nmで示されたそれぞれの層の厚さを伴う。
【0205】
比較例13は、いかなるABS層も含有しないp偏光反射コーティングについての係属中のPCT出願PCT/EP2020/086578による実施例の別の再現であった。
【0206】
実施例21は、比較例13にのっとって設計され、そのため、コーティングは吸収性材料、すなわちパラジウムの層を含んだ。実施例21では、ABS層は第3のコーティングと第4のコーティングとの間に挿入された。
【0207】
【0208】
値は、実施例21のp偏光反射コーティングが84.7%のp偏光増強因子を伴い、許容可能な全反射(Rv(in))を管理しながらp偏光を反射する上でより効率的であったことを示す。これは、比較例13のABS層を含まないp偏光反射コーティングと比較すると、11.8%の増加を示す。
【0209】
吸収はまた、パラジウムのABS層によって達成されるように、比較例13の2.2%の値から、比較例21の9.1%の値まで増加した。
【0210】
実施例21及び比較例13は、>100オーム/スクエアのシート抵抗を有していた。
【0211】
したがって、前の実施例は、p偏光反射コーティングが設けられた透明な基材を含む被覆基材を提示しており、この被覆基材が、被覆基材の被覆された側にp偏光が入射し、したがってそれから反射するように、前記被覆基材を含むフロントガラス上にp偏光を投射するHUDシステムでの使用に適したものにするのに必要な偏光増強因子(PEF=Rppol/Rv(in)比)に対する特性を表示することを示している。
【0212】
少なくとも2つの金属銀層及び3つの誘電体層を含むIR反射コーティングが、内側ペインの第1の表面(S3)上に堆積され得るが、これは本実施例を特徴付けるものではない。他の選択肢として、PVB中間層内のPET上の金属IR反射フィルムを含んでもよい。
【0213】
2つのガラスシートが、異なる厚さを有する非対称積層構造が本発明の範囲内で提供されてもよい。これは、例えば、1.1~1.5mmのガラスシートで、又は更には0.5~1mmの極薄ガラスで積層された2.1mmのガラスシートを備えてもよい。また、透明ガラスシートが、青色又は灰色ガラスシートで積層され得る例も包含される。
【国際調査報告】