(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240711BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240711BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240711BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553409
(86)(22)【出願日】2023-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 CN2023095292
(87)【国際公開番号】W WO2024001605
(87)【国際公開日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】202210757543.2
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(71)【出願人】
【識別番号】521520935
【氏名又は名称】惠州市鼎元新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】肖 称茂
(72)【発明者】
【氏名】何 鵬
(72)【発明者】
【氏名】郭 鍔明
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】賀 雪琴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
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5H050CB11
5H050DA03
5H050EA01
5H050EA08
5H050EA10
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5H050EA23
5H050FA13
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本出願は、負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池に関する。
【解決手段】前記負極材料は、コアと、コアの表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを含み、前記コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に充填された活物質とを含み、前記多孔質炭素は、孔径が2nm以下の第1孔構造と孔径が2nmより大きい第2孔構造とを有し、第1孔構造の孔体積と多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、前記第2孔構造は、充填率が95%以上であり、本出願の負極材料は、体積膨張を効果的に抑制でき、レート性能が高く、容量が高く、サイクル性能が良いという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極材料であって、コアと、前記コアの表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを含み、前記コアは、多孔質炭素と、前記多孔質炭素の孔構造に充填された活物質とを含み、前記多孔質炭素は、孔径が2nm以下の第1孔構造と孔径が2nmより大きい第2孔構造とを有し、前記第1孔構造の孔体積と前記多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、前記第2孔構造は、充填率が95%以上であることを特徴とする負極材料。
【請求項2】
以下の(1)~(9)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は、前記多孔質炭素の間に分布する活物質をさらに含むこと、
(2)前記多孔質炭素のメディアン径D1と前記活物質のメディアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足すること、
(3)前記多孔質炭素のメディアン径D1と前記活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足すること、
(4)前記活物質は、メディアン径が1nm~300nmであること、
(5)前記活物質は、形態がドット状、球状、楕円球状及びシート状のうちの少なくとも1つを含むこと、
(6)前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含むこと、
(7)前記多孔質炭素は、材料がカーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料及びナノポーラスカーボン材料のうちの少なくとも1つを含むこと、
(8)前記多孔質炭素は、メディアン径が1nm~500nmであること、
(9)前記コアは、メディアン径が0.8μm~10μmであること。
【請求項3】
前記被覆層は、炭素層、金属酸化物層、ポリマー層及び窒化物層のうちの少なくとも1つを含み、前記被覆層は、以下の(1)~(5)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記炭素層は、材質がソフトカーボン、結晶性炭素、無定形炭素及びハードカーボンのうちの少なくとも1つを含むこと、
(2)前記金属酸化物層は、材質がSn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含むこと、
(3)前記窒化物層は、材質が窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン及び窒化タンタルのうちの少なくとも1つを含むこと、
(4)前記ポリマー層は、材質がポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含むこと、
(5)前記被覆層は、厚さが10nm~500nmであること。
【請求項4】
以下の(1)~(3)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は、比表面積が10m
2/g以下であること、
(2)前記負極材料は、メディアン径が0.5μm~20μmであること、
(3)前記負極材料は、空孔率が10%以下であること。
【請求項5】
負極材料の製造方法であって、
多孔質炭素と活物質を含む原料を真空混合して前駆体を得り、そのうち、前記多孔質炭素は、孔径が2nm以下の第1孔構造と孔径が2nmより大きい第2孔構造とを有し、前記第1孔構造の孔体積と前記多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、前記第2孔構造は、充填率が95%以上であり、前記真空混合は、真空度が10Pa以下である工程と、
前記前駆体を被覆処理して、負極材料を得る工程と、を含むことを特徴とする負極材料の製造方法。
【請求項6】
以下の(1)~(7)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
(1)前記多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足すること、
(2)前記多孔質炭素のメディアン径D1と前記活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足すること、
(3)前記活物質のメディアン径は1nm~300nmであること、
(4)前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含むこと、
(5)前記多孔質炭素は、カーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料及びナノポーラスカーボン材料のうちの少なくとも1つを含むこと、
(6)前記多孔質炭素は、メディアン径が1nm~500nmであること、
(7)前記多孔質炭素と前記活物質との質量比は、40:(10~80)であること。
【請求項7】
多孔質炭素及び活物質を含む原料の中に助剤及び溶媒を更に含み、以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
(1)前記助剤は、ポリビニルアルコール、n-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、パルミチン酸、テトラデカン酸、ウンデシル酸、脂肪酸、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及びポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1つを含むこと、
(2)前記溶媒は、フェノール、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸メチル、アセトン及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含むこと、
(3)前記助剤と前記多孔質炭素との質量比は、(0.05~3):100であること、
(4)前記溶媒と前記多孔質炭素との質量比は、100:(15~55)であること。
【請求項8】
以下の(1)~(5)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
(1)前記真空混合において、装置が二軸遊星式真空ミキサー、遊星式真空ミキサー、遊星式真空分散機、リボン真空ミキサー、多機能真空ミキサー、真空分散機及び真空乳化機のうちの少なくとも1つを含むこと、
(2)前記真空混合は、時間が0.5時間~15時間であること、
(3)前記真空混合後、さらに乾燥処理を行い、前記乾燥処理は、温度が-50℃~500℃であること、
(4)前記真空混合後、さらに乾燥処理を行い、前記乾燥処理は、時間が0.5時間~15時間であること、
(5)前記真空混合後、乾燥処理をさらに行い、前記乾燥処理は、装置がロータリーエバポレーター、真空オーブン、噴霧乾燥機、熱処理炉及び凍結乾燥機のうちの少なくとも1つを含むこと。
【請求項9】
前記前駆体を被覆処理して負極材料を得る工程は、具体的には、前記前駆体と被覆材料とを混合して熱処理する工程であり、以下の(1)~(13)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
(1)前記被覆材料は、炭素材料、金属酸化物、ポリマー材料及び窒化物のうちの少なくとも1つを含むこと、
(2)前記被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料、ポリマー材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含み、前記炭素材料は、ソフトカーボン、ハードカーボン、結晶性炭素及び無定形炭素のうちの少なくとも1つを含むこと、
(3)前記被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料、ポリマー材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含み、前記金属酸化物材料は、Sn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含むこと、
(4)前記被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料、ポリマー材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含み、前記ポリマー材料は、ポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含むこと、
(5)前記被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含み、前記窒化物材料は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン及び窒化タンタルのうちの少なくとも1つを含むこと、
(6)前記前駆体と被覆材料との質量比は、100:(5~100)であること、
(7)前記熱処理は、温度が400℃~900℃であること、
(8)前記熱処理は、保温時間が1時間~12時間であること、
(9)前記熱処理は、昇温速度が1℃/min~15℃/minであること、
(10)前記熱処理は、保護雰囲気で行い、前記保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1つを含むこと、
(11)前記前駆体と被覆材料を混合して熱処理を行った後、得られた材料を粉砕して篩分ける工程をさらに含むこと、
(12)前記前駆体と被覆材料とを混合して熱処理を行った後、得られた材料を粉砕して篩分ける工程を更に含み、前記粉砕装置は、機械式粉砕機、気流式粉砕機及び破砕機のうちの少なくとも1つを含むこと、
(13)前記前駆体と被覆材料を混合して熱処理を行った後、得られた材料を粉砕及び篩分ける工程を更に含み、前記篩分けは、スクリーンメッシュのサイズが10メッシュ~800メッシュであること。
【請求項10】
リチウムイオン電池であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の負極材料、又は請求項5~9のいずれか一項に記載の製造方法で製造された負極材料を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年6月29日付で中国国家知識産権局に提出した、出願番号が2022107575432、出願の名称が「負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本明細書に援用する。
【0002】
本出願は、負極材料の技術分野に関し、具体的には、特に負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
ケイ素は、地殻中の含有量が2番目に大きい元素であり、一般的な半導体材料であり、すでに現代のハイテク社会に不可欠な重要な技術基盤となっている。単体ケイ素は、エネルギー、半導体、シリコーン及び冶金工業などの面で幅広く用いられ、重用な役割を担っている。現在、成熟した商業用リチウムイオン電池の負極材料は、主に黒鉛系炭素材料であるが、炭素材料の理論的なリチウム貯蔵容量は、372mAh/gに過ぎず、高エネルギー密度材料に対する需要を満たすことができない。ケイ素は、リチウムイオン電池の負極材料として、高い理論容量(約4200mAh/g)を持ち、商業用黒鉛の10倍の容量を持ち、エネルギー貯蔵の面で非常に大きな将来性を持っている。
【0004】
現在、ケイ素負極材料は、サイクル過程において急激な体積膨張効果が存在するため、最終的に材料の粉化や破砕、電池のサイクル性能の深刻な減衰を引き起こす。そのため、容量が高く、サイクル性能に優れた負極材料をどのように製造するかは、リチウムイオン電池分野における困難な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本出願は、導電性が高く、体積膨張を効果的に抑制でき、負極材料の容量性能及びサイクル性能を高めることができる負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池を提供する。
【0006】
第1の態様において、本出願は、負極材料であって、コアと、前記コアの表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを含み、前記コアは、多孔質炭素と、前記多孔質炭素の孔構造に充填された活物質とを含み、前記多孔質炭素は、孔径が2nm以下の第1孔構造と孔径が2nmより大きい第2孔構造とを有し、前記第1孔構造の孔体積と前記多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、前記第2孔構造は、充填率が95%以上の負極材料を提供する。
【0007】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料は、前記多孔質炭素の間に分布する活物質をさらに含む。
【0008】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素のメディアン径D1と前記活物質のメディアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足する。
【0009】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素のメディアン径D1と前記活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足する。
【0010】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、メディアン径が1nm~300nmである。
【0011】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、形態がトッド状、球状、楕円球状及びシート状のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素は、材料がカーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料及びナノポーラスカーボン材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素は、メディアン径が1nm~500nmである。
【0015】
いくつかの代替的な実施形態において、前記コアは、メディアン径が0.8μm~10μmである。
【0016】
いくつかの代替的な実施形態において、前記被覆層は、炭素層、金属酸化物層、ポリマー層及び窒化物層のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
いくつかの代替的な実施形態において、前記炭素層は、材質がソフトカーボン、結晶性炭素、無定形炭素及びハードカーボンのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
いくつかの代替的な実施形態において、前記金属酸化物層は、材質がSn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
いくつかの代替的な実施形態において、前記窒化物層は、材質が窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン及び窒化タンタルのうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
いくつかの代替的な実施形態において、前記被覆層は、厚さが10nm~500nmである。
【0021】
いくつかの代替的な実施形態において、前記ポリマー層は、材質がポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料は、比表面積が10m2/g以下である。
【0023】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料は、メジアン径が0.5μm~20μmである。
【0024】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料は、空孔率が10%以下である。
【0025】
第2態様において、本出願の実施例は、負極材料の製造方法を提供し、
【0026】
多孔質炭素と活物質を含む原料を真空混合して前駆体を得り、そのうち、前記多孔質炭素は、孔径が2nm以下の第1孔構造と孔径が2nmより大きい第2孔構造とを有し、前記第1孔構造の孔体積と前記多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、前記第2孔構造は、充填率が95%以上であり、前記真空混合は、真空度が10Pa以下である工程と、
【0027】
前記前駆体を被覆処理して、負極材料を得る工程が含まれる。
【0028】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足する。
【0029】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足する。
【0030】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、メディアン径が1nm~300nmである。
【0031】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。
【0032】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素は、カーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料及びナノポーラスカーボンのうちの少なくとも1つを含む。
【0033】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素は、メディアン径が1nm~500nmである。
【0034】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素と前記活物質との質量比は、40:(10~80)である。
【0035】
いくつかの代替的な実施形態において、前記の、多孔質炭素及び活物質を含む原料を真空混合する前に、助剤及び溶媒を加える工程をさらに含む。
【0036】
いくつかの代替的な実施形態において、前記助剤は、ポリビニルアルコール、n-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、パルミチン酸、テトラデカン酸、ウンデシル酸、脂肪酸、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及びポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
いくつかの代替的な実施形態において、前記溶媒は、フェノール、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸メチル、アセトン及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含む。
【0038】
いくつかの代替的な実施形態において、前記助剤と前記多孔質炭素との質量比は、(0.05~3):100である。
【0039】
いくつかの代替的な実施形態において、前記溶媒と前記多孔質炭素との質量比は、100:(15~55)である。
【0040】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合は、装置が二軸遊星式真空ミキサー、遊星式真空ミキサー、遊星式真空分散機、リボン真空ミキサー、多機能真空ミキサー、真空分散機及び真空乳化機のうちの少なくとも1つを含む。
【0041】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合後、さらに乾燥処理を行い、前記真空混合は、時間が0.5時間~15時間である。
【0042】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合後、さらに乾燥処理を行い、前記乾燥処理は、温度が-50℃~500℃である。
【0043】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合後、さらに乾燥処理を行い、前記乾燥処理は、時間が0.5時間~15時間である。
【0044】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合後、乾燥処理をさらに行い、前記乾燥処理は、装置がロータリーエバポレーター、真空オーブン、噴霧乾燥機、熱処理炉及び凍結乾燥機のうちの少なくとも1つを含む。
【0045】
いくつかの代替的な実施形態において、前記の、前記前駆体を被覆処理して負極材料を得る工程は、具体的には、前記前駆体と被覆材料とを混合して熱処理する。
【0046】
いくつかの代替的な実施形態において、前記被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料、ポリマー材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0047】
いくつかの代替的な実施形態において、前記炭素材料は、ソフトカーボン、ハードカーボン、結晶性炭素及び無定形炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
いくつかの代替的な実施形態において、前記金属酸化物材料は、Sn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
いくつかの代替的な実施形態において、前記窒化物材料は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン及び窒化タンタルのうちの少なくとも1つを含む。
【0050】
いくつかの代替的な実施形態において、前記被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料、ポリマー材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含み、前記ポリマー材料は、ポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む。
【0051】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料と被覆材料との質量比は、100:(5~100)である。
【0052】
いくつかの代替的な実施形態において、前記熱処理は、温度が400℃~900℃である。
【0053】
いくつかの代替的な実施形態において、前記熱処理は、保温時間が1時間~12時間である。
【0054】
いくつかの代替的な実施形態において、前記熱処理は、昇温速度が1℃/min~15℃/minである。
【0055】
いくつかの代替的な実施形態において、前記熱処理は、保護雰囲気で行い、前記保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1つを含む。
【0056】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料と前記被覆材料とを混合して熱処理した後、得られた材料を粉砕して篩分ける工程をさらに含む。
【0057】
いくつかの代替的な実施形態において、前記粉砕装置は、機械式粉砕機、気流式粉砕機及び破砕機のうちの少なくとも1つを含む。
【0058】
いくつかの代替的な実施形態において、前記篩分けは、スクリーンメッシュのサイズが10メッシュ~800メッシュである。
【0059】
第3態様において、本出願の実施例は、リチウムイオン電池を提供し、第1態様に記載の負極材料、又は第2態様に記載の製造方法で製造された負極材料を含む。
【0060】
本出願の技術手段は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0061】
本出願の負極材料のコアは、多孔質炭素と活物質とを含み、多孔質炭素の第1孔構造は、マイクロ孔(平均孔径が2nm以下)であり、体積占有率が40%以上であるマイクロ孔は、活物質の膨張に対して別途な空間を提供し、体積膨張を効果的に緩和し、リチウムを挿抜する過程で負極材料が巨大な体積変化及び応力によって粉化することを回避又は低減する。多孔質炭素の第2孔構造は、孔径が2nmより大きい孔であり、活物質が多孔質炭素の第2孔構造に充填されることにより、第2孔構造の充填率が95%以上になるようにし、材料容量を向上させ、同時に材料による応力集中や電解液の浸透問題を回避し、負極材料に適当な数の小孔を保留し、孔径が大きすぎる孔を回避し、2種類の孔構造の相乗作用により本出願の負極材料は、体積膨張を効果的に抑制でき、レート性能が高く、容量が高く、サイクル性能が良いという利点がある。本出願の負極材料において、コアの表面の少なくとも一部に設けられた被覆層は、コアにおける活物質と電解液との直接接触を減少させ、負極材料と電解液との間の副反応の発生を減少させることにより、負極材料の比容量を向上させることができ、さらに負極材料の体積膨張を抑制し、負極材料の導電性を向上させ、同時にリチウムイオンの伝送効率を向上させ、負極材料のレート性能及びサイクル性能を向上させることに有利である。
【0062】
本出願の負極材料の製造方法は、多孔質炭素と活物質とを含む原料を真空混合することによって前駆体を得り、そのうち、多孔質炭素原料は、2種類の孔径の孔構造を含み、ここで、多孔質炭素の第1孔構造は、マイクロ孔(孔径が2nm以下)であり、多孔質炭素の第2孔構造は、孔径が2nmより大きい孔であり、本出願は、真空混合の方式により、活物質を多孔質炭素の大きい第2孔構造に充填させ、10Pa以下の真空圧力下で、第2孔構造の充填率を95%以上になり、第2孔構造の存在により材料に応力集中や電解液の浸透問題を回避する。最後に前駆体を被覆処理することは、一方では、電解液が負極材料内部に入って副反応を起こすことによって初回クーロン効率及び比容量が低下することを回避でき、他方では、活物質の体積膨張を緩和し、複合材料全体の体積膨張を低減し、電極片の膨潤を減少させることができる。本出願の製造方法は、簡単であり、特定の孔構造、特定のサイズの多孔質炭素を選択することにより、活物質が多孔質炭素内部の第2孔構造に充填され、体積膨張を効果的に抑制し、負極材料のレート性能、比容量及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本出願を更に説明する。
【
図1】本出願に係る負極材料の構造の第一模式図である。
【
図2】本出願に係る第2孔構造内に活物質が分布する多孔質炭素の構造模式図である。
【
図3】本出願に係る負極材料の構造の第二模式図である。
【
図4】本出願に係る負極材料の製造フローチャートである。
【
図5】本出願の実施例1で製造された負極材料のSEMチャートである。
【
図6】本出願の実施例1で製造された負極材料のXRDチャートである。
【
図7】本出願の実施例1で製造された負極材料の初回充放電曲線図である。
【
図8】本出願の実施例1で製造された負極材料のサイクル特性曲線図である。
図1、
図2及び
図3において、 1-コア 11-多孔質炭素 111-第1孔構造 112-第2孔構造 12-活物質 2-被覆層
【発明を実施するための形態】
【0064】
本出願の技術案をよりよく理解するために、以下は、添付の図面を参照して本出願の実施例を詳細に説明する。
【0065】
説明される実施例は、本出願の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではないことを明確にすべきである。本出願の実施例に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本出願の保護範囲に含まれる。
【0066】
本出願の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明することのみを目的とし、本出願を限定する意図はない。本出願の実施例及び特許請求の範囲に使用される単数形の「1つ」、「前記」及び「該」は、文脈で他の意味を明確に示さない限り、多数形も含むことが意図される。
【0067】
理解すべきことは、本明細書で使用される用語の「及び/又は」は、関連対象の関連関係を説明するものだけであり、三種類の関係が存在可能であることを示す。例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在し、AとBが同時に存在し、Bが単独で存在するという三種類の状況を示すことができる。また、本明細書における文字「/」は、一般的に前後関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0068】
本出願の実施例は、負極材料を提供し、
図1に示すように、負極材料は、コア1と、コア1の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層2とを含み、
図2に示すように、コア1は、多孔質炭素11と、多孔質炭素11の孔構造に充填された活物質12とを含み、ここで、多孔質炭素11は、孔径が2nm以下の第1孔構造111と孔径が2nmより大きい第2孔構造112とを有し、第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、40%以上であり、第2孔構造112は、充填率が95%以上である。
【0069】
上記の方案において、本出願の負極材料のコア1は、多孔質炭素11と活物質12とを含み、多孔質炭素11は、2種類の孔径の孔構造を含み、そのうち、多孔質炭素11の第1孔構造111は、マイクロ孔(孔径が2nm以下)であり、体積占有率が40%以上であるマイクロ孔は、活物質12の膨張に対して別途な空間を提供し、体積膨張を効果的に緩和し、リチウムを挿抜する過程で負極材料が巨大な体積変化及び応力によって粉化することを回避又は低減することができる。多孔質炭素11の第2孔構造112は、孔径が2nmより大きい孔であり、第2孔構造は応力集中や電解液の浸透を引き起こしやすいため、第2孔構造をできる限り充填する必要があり、多孔質炭素11の第2孔構造112内に活物質12が充填され、且つ第2孔構造112における活物質の充填率が95%以上であり、材料容量を向上させ、同時に第2孔構造による応力集中や電解液の浸透問題を減少させることができ、負極材料に適当な数の小孔を保留し、孔径が大きすぎる孔を減少させ、2種類の孔構造の相乗作用により本出願の負極材料は体積膨張を効果的に抑制することができ、レート性能が高く、容量が高く、サイクル性能が良いという利点がある。本出願の負極材料において、コアの表面の少なくとも一部に設けられた被覆層は、コアにおける活物質と電解液との直接接触を減少させ、負極材料と電解液との間の副反応の発生を減少させることにより、負極材料の比容量を向上させることができ、さらに負極材料の体積膨張を抑制し、負極材料の導電性を向上させ、同時にリチウムイオンの伝送効率を向上させ、負極材料のレート性能及びサイクル性能を向上させることに有利である。
【0070】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11は、孔径が2nm以下の第1孔構造111と、孔径が2nmよりも大きい第2孔構造112を有する。具体的には、第1孔構造111の孔径は、具体的には、0.05nm、0.07nm、0.1nm、0.3nm、0.5nm、0.8nm、1nm、1.5nm及び2nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。第2孔構造112の孔径は、具体的には、2.5nm、5nm、10nm、20nm、100nm、150nm、200nm、250nm及び300nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0071】
本出願の多孔質炭素において、第1孔構造111は、孔径が2nm以下の孔であり、第2孔構造112は、孔径が2nmより大きい孔であり、孔径が小さい第1孔構造111は、活物質12の体積膨張を効果的に緩和するとともに、電極膜の膨張を減少させ、電池の安全性を向上させることができ、第2孔構造112は、第1孔構造111に対して、孔のサイズがより大きく、孔径が大きい第2孔構造112内に活物質が充填され、第2孔構造による応力集中や電解液の浸透を減少させ、同時に負極材料の容量を向上させることができる。
【0072】
第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、具体的には、40%、45%、50%、55%、60%、65%及び70%などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。第1孔構造111の孔体積の割合が40%未満であると、シリコンの体積膨張を効果的に緩和することができず、第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、45%以上であることが好ましい。
【0073】
第2孔構造112の充填率は、具体的には、95%、96%、97%、98%及び99%などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。第2孔構造112の充填率が95%未満であると、材料に応力集中や電解液の浸透の問題が生じやすくなる。なお、第2孔構造112の充填率とは、孔における活物質12の充填率であってもよく、孔における被覆層材料及び活物質の充填率であってもよく、孔における活物質の充填率であることが好ましく、負極材料の容量の向上に有利である。
【0074】
いくつかの実施形態において、
図3に示すように、負極材料は、多孔質炭素11の間に分布する活物質12をさらに含み、即ち、活物質12は、多孔質炭素11の孔構造内に充填され、同時に活物質12は、多孔質炭素11粒子の間にも分布する。
【0075】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11のメジアン径D1と活物質12のメジアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足し、例えば、D1/D2は、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5及び6などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。多孔質炭素11のメディアン径D1と活物質12のメディアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足させることによって、活物質12と多孔質炭素11との結合が良好なコア構造が得られる。0.4≦D1/D2≦1の条件を満足する場合、大部分の活物質12は、多孔質炭素11の間に均一に分布し、多孔質炭素11を緩衝層として間接的に接触し、1≦D1/D2≦6の条件を満足する場合、大部分の活物質12は、多孔質炭素11の孔構造内に充填され、小部分の活物質12は、多孔質炭素11の間に均一に分布し、このように分布する活物質は、活物質12と活物質12との直接接触を大幅に減少させることができる。そのため、D1/D2の割合を制御することにより、高空孔率を有する多孔質炭素によって活物質12の体積膨張を緩衝し、活物質12間の直接接触を回避し、同時に負極材料の粉化を低減することができる。D1/D2の比率が6より大きい場合、即ち、多孔質炭素11の粒径が活物質12の粒径よりもはるかに大きく、一方では、多孔質炭素11と多孔質炭素11との間に分布する活物質12との結合性が悪くなり、他方では、コア1における多孔質炭素11の体積が活物質12の体積を超え、材料内部の空孔率が増加し、材料の容量が向上しない。D1/D2の比率が0.4より小さい場合、即ち、活物質12の粒径が多孔質炭素11の粒径よりもはるかに大きく、活物質12の間に直接接触しやすく、活物質と活物質との間の「衝突接触」が形成されやすく、リチウムを放出・吸蔵する過程において、発生した巨大な変形が活物質12の粉化や変形を引き起こしやすくなり、負極材料の構造安定性が低下する。多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足することが好ましい。
【0076】
X線回折法を用いて負極材料のコアのSEM断面をスキャンすることにより得られた元素分布スペクトルにおいて、C、活物質元素の分布面は、均一拡散状態である。
【0077】
いくつかの実施形態において、活物質は、形態がドット状、球状、楕円球状、及びシート状のうちの少なくとも1つを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、活物質は、メディアン径が1nm~300nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm及び300nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。活物質12の平均粒径は、5nm~200nmであることが好ましく、活物質の平均粒径は、5nm~80nmであることがさらに好ましい。
【0079】
いくつかの実施形態において、活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。理解されるように、多孔質炭素11との間の活物質と多孔質炭素11の第2孔構造に位置する活物質は、同じでもよいし、異なってもよいし、また一部が同じでもよいし、一部が異なってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11の間に位置する活物質及び多孔質炭素11の第2孔構造に位置する活物質がいずれもケイ素粒子である場合、コア1は、多孔質炭素11とケイ素粒子とを含み、ケイ素粒子は、多孔質炭素と共にコアを構成し、且つケイ素粒子は、多孔質炭素と均一に分布し、ケイ素粒子は、リチウム貯蔵容量を提供し、多孔質炭素11は、充放電過程におけるケイ素負極の体積変化を緩衝しつつ、ケイ素粒子の導電性を改善することにより、電池のレート性能を向上させることができる。多孔質炭素11は、第1孔構造111及び第2孔構造112を有し、そのうち、第1孔構造111の孔径が第2孔構造112の孔径より小さく、第2孔構造112内にケイ素粒子が充填され、ケイ素粒子が多孔質炭素で包まれているため、ケイ素の導電性を向上させることができる一方、ケイ素粒子が凝集することを回避でき、本実施例の負極材料では、ケイ素粒子が多孔質炭素11の間及び内部に位置し、負極材料の導電性を向上させ、負極材料のレート性能をさらに向上させ、同時にシリコンナノ粒子の体積膨張を緩和することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11は、カーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料(CMK)及びナノポーラスカーボン材料(NCP)のうちの少なくとも1つを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11は、メディアン径が1nm~500nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm及び500nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。多孔質炭素11のメディアン径は、5nm~200nmであることが好ましく、多孔質炭素11のメディアン径は、5nm~150nmであることがさらに好ましい。
【0083】
いくつかの実施形態において、コア1のメディアン径は、0.8μm~10μmであり、具体的には、0.8μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm及び10μmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0084】
いくつかの実施形態において、被覆層2は、炭素層、金属酸化物層、ポリマー層及び窒化物層のうちの少なくとも1つを含む。被覆層2の設置は、一方では、電解液が負極材料内部に進入して副反応を起こすことにより初回クーロン効率及び比容量が低下することができ、他方では、シリコンの体積膨張を緩和し、複合材料全体の体積膨張を低下させ、電極片の膨潤を減少させることができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、炭素層は、材質がソフトカーボン、ハードカーボン、結晶性炭素、無定形炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、金属酸化物層は、材質がSn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、窒化物層は、材質が窒化ケイ素、窒化アルミニウム(AlN)、窒化チタン(TiN)及び窒化タンタル(TaN)のうちの少なくとも1つを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、ポリマー層は、材質がポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、被覆層2は、厚さが10nm~500nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm、及び500nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。理解されるように、被覆層2は、ケイ素と電解液との接触を減少させ、パッシベーション膜の生成を減少させ、電池の可逆容量を向上させることができる。被覆層2の厚さを上記範囲内に制御することにより、負極材料の導電性を増加させ、負極材料の体積膨張を抑制し、同時にリチウムイオンの伝送効率を向上させ、負極材料の大倍率の充放電性能、サイクル性能及びその総合性能を向上させることに有利である。
【0090】
いくつかの実施形態において、負極材料は、比表面積が10m2/g以下であり、具体的には、1m2/g、2m2/g、3m2/g、4m2/g、5m2/g、6m2/g、7m2/g、8m2/g、9m2/g及び10m2/gなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。理解されるように、負極材料の比表面積を上記範囲内に制御することで、負極材料の体積膨張を抑制し、負極材料のサイクル性能を向上させることに有利である。
【0091】
いくつかの実施形態において、負極材料は、メディアン径が0.5μm~20μmであり、具体的には、0.5μm、1μm、3μm、5μm、8μm、10μm、15μm、18μm及び20μmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。負極材料は、メディアン径が0.8μm~12μmであることが好ましく、1μm~8μmであることがさらに好ましい。理解されるように、負極材料のメディアン径を上記範囲内に制御することにより、負極材料のサイクル性能の向上に有利である。
【0092】
いくつかの実施形態において、負極材料は、空孔率が10%以下であり、具体的には、1%、2%、2.5%、5%、7%、8.5%及び10%などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。負極材料は、空孔率が5%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましい。負極材料の空孔率が大きすぎると、材料のタップ密度が低下し、さらに材料のエネルギー密度が低下することになる。
【0093】
第2態様において、本出願は、前記負極材料の製造方法を提供し、
図4に示すように、
【0094】
工程S100では、多孔質炭素と活物質を含む原料を真空混合して前駆体を得り、そのうち、多孔質炭素は、孔径が2nm以下の第1孔構造と孔径が2nmより大きい第2孔構造とを有し、第1孔構造の孔体積と多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、前記第2孔構造は、充填率が95%以上であり、真空混合は、真空度が10Pa以下であり、
【0095】
工程S200では、前駆体を被覆処理して、負極材料を得る、ことが含まれる。
【0096】
上記の方案において、本出願の負極材料の製造方法は、多孔質炭素と活物質とを含む原料を真空混合することにより前駆体を得る方法であって、そのうち、多孔質炭素原料は、2種類の孔径の孔構造を含み、ここで、多孔質炭素11の第1孔構造111は、マイクロ孔(孔径が2nm以下)であり、多孔質炭素11の第2孔構造112は、孔径が2nmより大きい孔であり、本出願は、真空混合の方式により、活物質を多孔質炭素の大きい第2孔構造112に充填させ、10Pa以下の真空圧力下で、第2孔構造112の充填率を95%以上になり、第2孔構造112の存在により材料に応力集中や電解液の浸透問題を回避する。最後に前駆体を被覆処理することは、一方では、電解液が負極材料内部に入って副反応を起こすことによって初回クーロン効率及び比容量が低下することを回避でき、他方では、活物質の体積膨張を緩和し、複合材料全体の体積膨張を低減し、電極片の膨潤を減少させることができる。本出願の製造方法は簡単であり、特定の孔構造、特定のサイズの多孔質炭素を選択することにより、活物質が多孔質炭素11内部の第2孔構造112に充填され、体積膨張を効果的に抑制し、負極材料のレート性能、比容量及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0097】
以下、実施例を合わせて本出願の製造方法を具体的に説明し、
【0098】
工程S100では、多孔質炭素と活物質を含む原料を真空混合して前駆体を得り、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造とを有し、第1孔構造の平均孔径が2nm以下であり、第2孔構造の平均孔径が2nmより大きく、第1孔構造の孔体積と多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、第2孔構造の充填率は、95%以上であり、真空混合の真空度は、10Pa以下である。
【0099】
いくつかの実施形態において、第1孔構造111は、平均孔径が、具体的には、0.05nm、0.07nm、0.1nm、0.3nm、0.5nm、0.8nm、1nm、1.5nm及び2nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0100】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11は、孔径が2nm以下の第1孔構造111と、孔径が2nmより大きい第2孔構造112とを有し、第2孔構造112は、平均孔径が、具体的には、2.5nm、5nm、10nm、20nm、100nm、150nm、200nm、250nm及び300nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0101】
本出願の多孔質炭素において、第1孔構造111は、孔径が2nm以下の孔であり、第2孔構造112は、孔径が2nmより大きい孔であり、孔径が小さい第1孔構造111は、活物質12の体積膨張を効果的に緩和するとともに、電極膜の膨張を減少させ、電池の安全性を向上させることができ、第2孔構造112は、第1孔構造111に対して、孔のサイズがより大きく、孔径が大きい第2孔構造112内に活物質が充填され、第2孔構造112による応力集中や電解液の浸透を減少させることができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、具体的には、40%、45%、50%、55%、60%、65%及び70%などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。第1孔構造111の孔体積の割合が40%未満であると、シリコンの体積膨張を効果的に緩和することができず、第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、45%以上であることが好ましい。
【0103】
いくつかの実施形態において、本出願は、真空混合の真空度を10Pa以下に制御することにより、第2孔構造112の充填率が95%以上になるようにし、本出願において真空混合は、真空度が、具体的には、10-7Pa、10-6Pa、10-5Pa、10-4Pa、10-3Pa、10-2Pa及び10Paなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。本出願は、真空混合処理により多孔質炭素における活物質の充填率を制御することにより、活物質が多孔質炭素における第2孔構造にできるだけ充填され、真空度が10Paより大きいと、真空度が低すぎて、発生した作用力が活物質を対応する空孔内に充填することが難しく、第2孔構造の充填率が低下し、真空度が10-7Pa未満であると、別途な分子ポンプを配置する必要があり、別途なコストが増加する。
【0104】
いくつかの実施形態において、活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素のメジアン径D1と活物質のメジアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足し、例えば、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5及び6などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。理解されるように、多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2との比率を上記範囲内に限定し、得られた前駆体構造は、多孔質炭素11と、多孔質炭素11の孔構造内に充填された活物質12と、多孔質炭素11の間に分布する活物質12とを含み、多孔質炭素11は、活物質12と均一に分散され、良好に分散する構造体を形成することができ、活物質と活物質との間に直接接触が存在しないか、又は少量のみ存在し、大部分は、多孔質炭素を緩衝層として間接的に接触することで、高空孔率の多孔質炭素の粒子層によって活物質の体積膨張を緩衝し、同時に材料の粉化を減少させることができる。D1/D2の比率が6より大きい場合、即ち、多孔質炭素11の粒径が活物質12の粒径よりもはるかに大きく、一方では、多孔質炭素11と多孔質炭素11との間に分布する活物質12との結合性が悪くなり、他方では、コア1における多孔質炭素11の体積が活物質12の体積を超え、材料内部の空孔率が増加し、材料の容量が向上しない。D1/D2の比率が0.4より小さい場合、即ち、活物質12の粒径が多孔質炭素11の粒径よりもはるかに大きく、活物質12の間に直接接触しやすく、活物質と活物質との間の「衝突接触」が形成されやすく、リチウムを放出・吸蔵する過程において、発生した巨大な変形が活物質12の粉化や変形を引き起こしやすくなり、負極材料の構造安定性が低下する。多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足することが好ましい。
【0106】
いくつかの実施形態において、活物質は、メディアン径が1nm~300nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm及び300nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。活物質は、メディアン径が5nm~200nmであることが好ましく、5nm~80nmであることがさらに好ましい。
【0107】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素は、カーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料及びナノポーラスカーボン材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素は、メディアン径が1nm~500nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm、及び500nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0109】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素と活物質との質量比は、40:(10~80)であり、具体的には、多孔質炭素と活物質とケイ素材料との質量比は、40:10、40:20、40:30、40:40、40:50、40:60、40:70及び40:80などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。多孔質炭素と活物質の質量比を上記範囲内に制御することにより、均一に分散されたコア材料を得ることに有利であり、材料のサイクル性能及び構造安定性の向上に有利である。
【0110】
いくつかの実施形態において、真空混合は、装置が二軸遊星式真空ミキサー、遊星式真空ミキサー、遊星式真空分散機、リボン真空ミキサー、多機能真空ミキサー、真空分散機及び真空乳化機のうちの少なくとも1つを含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、真空混合は、時間が0.5h~15hであり、具体的には、0.5h、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h、14h及び15hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0112】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素及び活物質を含む原料を真空混合する前に、助剤及び溶媒を加える工程、即ち、工程S100は、多孔質炭素、活物質及び助剤を溶媒に入れて真空混合し、乾燥処理し、前駆体を得るという工程を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、助剤は、ポリビニルアルコール、n-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、パルミチン酸、テトラデカン酸、ウンデシル酸、脂肪酸、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及びポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1つを含む。上記助剤は、活物質及び多孔質炭素の孔構造の表面を修飾することにより、活物質粒子が多孔質炭素の孔内により浸透しやすくなるように促すことができる。
【0114】
いくつかの実施形態において、溶媒は、有機溶媒及び非有機溶媒のうちの少なくとも1つを含み、有機溶媒は、フェノール、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸メチル、アセトン及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含み、非有機溶媒は、水、液体アンモニア、液体二酸化炭素及び液体二酸化硫黄と超酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、助剤と多孔質炭素との質量比は、(0.05~3):100であり、具体的には、0.05:100、0.1:100、1:100、2:100及び3:100などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0116】
いくつかの実施形態において、溶媒と多孔質炭素との質量比は、100:(15~55)であり、具体的には、100:15、100:20、100:25、100:30、100:35、100:40、100:50及び100:55などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0117】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素と活物質を含む原料を真空混合した後、乾燥処理を行う。
【0118】
いくつかの実施形態において、乾燥処理は、温度が-50℃~500℃であり、具体的には、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃及び500℃などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。理解されるように、乾燥処理は、低温凍結乾燥処理であってもよく、高温乾燥処理であってもよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、乾燥処理は、時間が0.5h~15hであり、具体的には、0.5h、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h、14h及び15hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0120】
いくつかの実施形態において、乾燥処理は、装置がロータリーエバポレーター、真空オーブン、スプレードライヤー、熱処理炉、凍結乾燥機のうちの少なくとも1つを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、前駆体を被覆処理することは、具体的には、前駆体と被覆材料を混合して熱処理して負極材料を得るという工程を含む。被覆材料の被覆により、一方では、電解液が負極材料内部に入って副反応を起こすことによって初回クーロン効率及び比容量が低下することを回避でき、他方では、シリコンの体積膨張を緩和し、複合材料全体の体積膨張を低減し、電極片の膨潤を減少させることができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料、ポリマー材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、炭素材料は、ソフトカーボン、ハードカーボン、結晶性炭素、無定形炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、金属酸化物材料は、Sn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、窒化物材料は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン及び窒化タンタルのうちの少なくとも1つを含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、ポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、前駆体と被覆材料との質量比は、100:(5~100)であり、具体的には、100:5、100:10、100:20、100:30、100:40、100:50、100:60、100:70、100:80、100:90及び100:100などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。前駆体と被覆材料との質量比が100:100より小さくなると、被覆層の厚さが薄すぎることを招きて、負極材料の導電性の増加に不利であり、且つ負極材料の体積膨張抑制性能に対して弱いことにより、サイクル性能が悪化し、前駆体と被覆材料との質量比が100:5より大きくなると、被覆層の厚さが厚すぎることを招きて、リチウムイオンの伝送効率が低下し、負極材料の総合性能を低下させることになる。
【0128】
いくつかの実施形態において、熱処理は、温度が400℃~900℃であり、具体的には、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃及び900などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0129】
いくつかの実施形態において、熱処理は、保温時間が1h~12hであり、具体的には、1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h、10h、11h及び12hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0130】
いくつかの実施形態において、熱処理は、昇温速度が1℃/min~15℃/minであり、具体的には、1℃/min、2℃/min、3℃/min、4℃/min、5℃/min、6℃/min、7℃/min、8℃/min、9℃/min、10℃/min、11℃/min、12℃/min、13℃/min、14℃/min及び15℃/minなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0131】
いくつかの実施形態において、熱処理は、保護雰囲気で行い、保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1つを含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、熱処理後、得られた材料を粉砕して篩分ける工程をさらに含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、粉砕装置は、機械式粉砕機、気流式粉砕機及び破砕機のうちの少なくとも1つを含む。
【0134】
いくつかの実施形態において、篩分けは、スクリーンメッシュのサイズは、10メッシュ~800メッシュであり、具体的には、10メッシュ、50メッシュ、100メッシュ、200メッシュ、300メッシュ、400メッシュ、500メッシュ、600メッシュ、700メッシュ及び800メッシュであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0135】
第3態様において、本出願は、リチウムイオン電池を提供し、リチウムイオン電池は、上記負極材料又は上記製造方法で製造された負極材料を含む。
【0136】
当業者にとって明らかなように、以上で説明されたリチウムイオン電池の製造方法は実施例に過ぎない。本出願の内容を逸脱しない範囲内において、当該分野で通常使用される他の方法を採用することができる。
【0137】
以下、複数の実施例を分けて本出願の実施例を更に説明する。但し、本出願は、以下の具体的な実施例に限定されない。主請求項の範囲を変更せずに、適宜変更して実施してもよい。
【0138】
実施例1
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径17nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径20nmの多孔質炭素粒子を得り、そのうち、多孔質炭素粒子は、具体的には、カーボンブラックであり、多孔質炭素粒子の孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、60%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比50:25:25によってフェノールに置き、その後、遊星真空ボールミルにおいて真空度を0.1Paに制御し、2時間ボールミリングを行い、120℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とフェノール樹脂とを質量比50:45によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、820℃の条件で熱処理し、4時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して負極材料を得る。
【0139】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0140】
図6に示すように、本実施例1で製造された負極材料のXRD図であり、
図6から分かるように、製品の中にシリコンのピーク・トウ・ピークが存在する。
【0141】
図7に示すように、本実施例1で製造された負極材料の初回充放電曲線であり、
図7から分かるように、当該材料の初回充放電容量が高く、初回クーロン効率も高い。
【0142】
図8に示すように、本実施例1で製造された負極材料のサイクル特性曲線図であり、
図8から分かるように、当該実施例で製造された負極材料は、優れたサイクル性能を有し、100サイクルの容量維持率は、92.1%である。
【0143】
実施例2
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径50nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径40nmの多孔質炭素粒子を得り、そのうち、多孔質炭素粒子は、具体的には、カーボンブラックであり、多孔質炭素粒子の孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、45%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比50:25:25によってフェノールに置き、その後、遊星真空ボールミルにおいて真空度を0.1Paに制御し、2時間ボールミリングを行い、120℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とフェノール樹脂とを質量比50:45によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、820℃の条件で熱処理し、4時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して負極材料を得る。
【0144】
図5に示すように、本実施例1で製造された負極材料のSEMチャートであり、本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0145】
実施例3
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径30nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径50nmの多孔質炭素粒子を得る。多孔質炭素粒子は、具体的には、ケッチェンブラックである。多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、49%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比50:35:22によってイソプロピルアルコールに置き、その後、二軸遊星式真空ミキサーで真空度を0.01Paに制御し、4時間混合し、150℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とスクロースとを質量比50:55によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、920℃の条件で熱処理し、3時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して負極材料を得る。
【0146】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0147】
実施例4
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径20nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径30nmの多孔質炭素粒子を得る。多孔質炭素粒子は、具体的には、MCM-41であり、多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、55%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比50:31:18によってブタノール中に置き、その後、真空分散機において真空度を10-5Paに制御し、5時間混合し、220℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とグルコースとを質量比50:45によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、780℃の条件で熱処理し、5時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して、前記の負極材料を得る。
【0148】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0149】
実施例5
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径60nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径80nmの多孔質炭素粒子を得る。多孔質炭素粒子は、具体的には、規則性メソポーラスカーボン(CMK-3)であり、多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、62%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比40:25:25によってフェノールに置き、その後、リボン真空ミキサーにおいて真空度を1.5Paに制御し、2時間混合し、120℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とポリビニルアミンを混合し、350℃で熱処理する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して、前記の負極材料を得る。
【0150】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、ポリマー被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0151】
実施例6
(1)SiO粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径25nmのSiO粒子及びメディアン径20nmの多孔質炭素粒子を得る。多孔質炭素粒子は、具体的には、NCPである。多孔質炭素粒子のマイクロ孔の体積占有率は、70%である。
(2)篩分けたSiO粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比30:25:15によってフェノールに置き、その後、真空ミキサーにおいて真空度を3Paに制御し、8時間混合し、150℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とアスファルトとを質量比30:25によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、980℃の条件で熱処理し、3時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して、前記の負極材料を得る。
【0152】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するSiO粒子及び多孔質炭素の間に分布するSiO粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びSiO粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0153】
実施例7
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径50nmのナノケイ素及びメディアン径40nmの多孔質炭素粒子を得り、そのうち、多孔質炭素粒子は、具体的には、カーボンブラックであり、多孔質炭素粒子の孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、45%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比30:25:15によってフェノールに置き、その後、真空ミキサーにおいて真空度を5Paに制御し、8時間混合し、150℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とアスファルトとを質量比30:25によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、980℃の条件で熱処理し、3時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して、前記の負極材料を得る。
【0154】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布したナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布したシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0155】
実施例8
実施例2と異なり、工程(2)の真空度は、10-7Paに置き換える。
【0156】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造におけるシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造及び第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0157】
実施例9
実施例2と異なり、工程(2)の真空度は、10Paに置き換える。
【0158】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造におけるシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造及び第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0159】
実施例10
実施例2と異なり、前駆体と酸化チタンとを質量比50:35によって混合する。
【0160】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造におけるシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、酸化チタン被覆層であり、多孔質炭素には、第1孔構造及び第2孔構造が形成され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0161】
実施例11
実施例2と異なり、前駆体と窒化ケイ素とを質量比50:35によって混合する。
【0162】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造におけるシリコンナノ粒子及び多孔質炭素空孔に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、窒化ケイ素被覆層であり、多孔質炭素には、第1孔構造及び第2孔構造が形成され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0163】
実施例12
実施例2と異なり、シリコンナノ粒子のメディアン径は、50nmであり、多孔質炭素粒子のメディアン径の大きさは、250nmである。
【0164】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0165】
実施例13
実施例2と異なり、シリコンナノ粒子のメディアン径は、50nmであり、多孔質炭素粒子のメディアン径の大きさは、20nmである。
【0166】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0167】
実施例14
実施例2と異なり、多孔質炭素粒子は、具体的には、カーボンブラックであり、多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、40.1%である。
【0168】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0169】
実施例15
実施例1と異なり、工程(2)の真空度は、10-8Paに置き換える。
【0170】
比較例1
実施例1と異なり、多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、30%である。
【0171】
比較例2
実施例1と異なり、工程(2)の真空度は、15Paに置き換える。
【0172】
比較例3
実施例1と異なり、工程(2)におけるシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを遊星式ミキサーで混合処理する。
【0173】
<性能測定>
1.フッ化水素酸溶液を用いて負極材料のコアにおけるシリコンをエッチングし、BET空孔分布解析法で孔構造の孔体積の大きさを測定し、多孔質炭素の第1孔構造及び第2孔構造の孔体積が多孔質炭素に占める孔体積比を計算する。
【0174】
2.負極材料における活物質をエッチングする前に材料の第2孔構造の体積V1を測定し、シリコンをエッチングした後、第2孔構造の体積をV2として測定し、(V2-V1)/V2は第2孔構造における活物質の充填率である。
【0175】
3.マルバーン粒度分布測定装置を用いて材料のメディアン径を測定する。
【0176】
4.走査型電子顕微鏡下によって200個の炭素材料と活物質粒子を観察し、Nano measureを用いて2種類の物質のメディアン径を統計する。
【0177】
5.マイク TriStar3020型比表面積と孔径アナライザーを用いて負極材料に比表面積測定を行い、一定の質量粉末を秤取し、真空加熱状態で完全に脱気し、表面吸着質を除去した後、窒素ガス吸着法を用いて、窒素ガスを吸着する量により、粒子の比表面積を算出する。
【0178】
6.マイクロ孔分布解析法を採用して負極材料の孔体積を測定し、孔体積がΔVであり、負極材料の真密度Pを測定し、計算して負極材料の空孔率=ΔV/(ΔV+1/P)を得る。
【0179】
7、以下の方法で電気化学的性能を測定する。
【0180】
負極材料と、導電剤と、結着剤とを質量比94:1:5で水に溶解して混合し、固形分を50%に制御し、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥させ、負極極片を製造し、その後、従来の成熟したプロセスで製造された三元系正極極片(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物NCM523)と、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウムLiPF6/(エチレンカーボネートEC+ジメチルカーボネートDMC+エチルメチルカーボネートEMC)(v/v=1:1:1)の電解液と、Celgard2400セパレータと、シェルとを通常の生産プロセスで18650円筒形電池セルを組み立てる。円筒形電池の充放電試験は、Wuhan LAND electronics Co.,Ltd.製のLAND電池テスト用機器で、常温条件で、0.2Cで定電流充放電し、充放電電圧を2.75~4.2Vとする。初回可逆容量、初回充電容量及び初回放電容量を得る。初回クーロン効率=初回放電容量/初回充電容量。
【0181】
100サイクルを繰り返し、放電容量を、リチウムイオン電池の残容量として記録し、容量維持率=(残容量/初期容量)×100%。
【0182】
30サイクル極片膨張率(%)測定:負極材料をグラファイトに混合し、固定容量(450mAh/g)に調製し、極片になるように塗布し、極片の厚さD1を測定し、次にボタン式電池に組み立て試験し、30サイクルを循環した後、電池を取り外し、極片の厚さD2を再び試験する。極片膨張率=(d2-d1)/d1*100%。
【0183】
測定結果を表1に示す。
【0184】
【0185】
表1のデータから、本出願の実施例1~実施例13で製造された負極材料において、活物質が多孔質炭素の空孔に均一に分散され、良好に分散する構造体を形成し、活物質の間に直接接触が存在しないか、又は少量のみ存在し、大部分は、多孔質炭素を緩衝層として間接的に接触することで、多孔質炭素の高い体積占有率の第1孔構造によって活物質の体積膨張を緩衝することができ、負極材料のレート性能を向上させ、同時にシリコンナノ粒子の体積膨張を緩和することに有利であることがわかる。また、活物質が多孔質炭素に充填されることにより、多孔質炭素の第2孔構造の充填率は、95%以上であり、材料容量を向上させ、同時に材料による応力集中や電解液の浸透を回避することができ、本出願の負極材料は、体積膨張を効果的に抑制し、同時に良好な構造安定性を有し、レート性能が高く、容量が高く、サイクル性能が良いという利点があることがわかる。
【0186】
実施例15は、製造過程において真空処理の真空度が10-7Paより小さいことにより、第2孔構造の充填率が低下し、負極材料の構造安定性及び容量維持率が実施例1より低下する。
【0187】
比較例1から、多孔質炭素における第1孔構造の体積占有率が小さすぎると、負極材料が体積膨張を完全に緩和することができないことがわかる。
【0188】
比較例2から、真空処理における真空度が10Paより大きくなると、第2孔構造の充填率が低下し、負極材料の構造安定性及び容量維持率が低下することがわかる。
【0189】
比較例3から、従来の混合方法によって負極材料を調製し、第2孔構造の充填率は、45%であり、実施例1の99.4%よりはるかに低く、負極材料に応力集中が生じやすく、材料のサイクル性能が低下し、膨張率が大きいことがわかる。
【0190】
本出願は上記実施例により本出願の詳細なプロセス装置及びプロセスフローを説明したが、上記詳細なプロセス装置及びプロセスフローに制限されず、つまり、本出願は、上記詳細なプロセス装置及びプロセスフローがなければ実施できないわけではないことを、出願人が声明した。当業者にとって明らかなように、本出願に対するいかなる改良、本出願の製品の各原料の同等置換や補助成分の追加、具体的な方式の選択肢なども、本出願の特許請求の範囲及び開示範囲内に入っている。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年6月29日付で中国国家知識産権局に提出した、出願番号が2022107575432、出願の名称が「負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本明細書に援用する。
【0002】
本出願は、負極材料の技術分野に関し、具体的には、特に負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
ケイ素は、地殻中の含有量が2番目に大きい元素であり、一般的な半導体材料であり、すでに現代のハイテク社会に不可欠な重要な技術基盤となっている。単体ケイ素は、エネルギー、半導体、シリコーン及び冶金工業などの面で幅広く用いられ、重用な役割を担っている。現在、成熟した商業用リチウムイオン電池の負極材料は、主に黒鉛系炭素材料であるが、炭素材料の理論的なリチウム貯蔵容量は、372mAh/gに過ぎず、高エネルギー密度材料に対する需要を満たすことができない。ケイ素は、リチウムイオン電池の負極材料として、高い理論容量(約4200mAh/g)を持ち、商業用黒鉛の10倍の容量を持ち、エネルギー貯蔵の面で非常に大きな将来性を持っている。
【0004】
現在、ケイ素負極材料は、サイクル過程において急激な体積膨張効果が存在するため、最終的に材料の粉化や破砕、電池のサイクル性能の深刻な減衰を引き起こす。そのため、容量が高く、サイクル性能に優れた負極材料をどのように製造するかは、リチウムイオン電池分野における困難な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本出願は、導電性が高く、体積膨張を効果的に抑制でき、負極材料の容量性能及びサイクル性能を高めることができる負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池を提供する。
【0006】
第1の態様において、本出願は、負極材料であって、コアと、前記コアの表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを含み、前記コアは、多孔質炭素と、前記多孔質炭素の孔構造に充填された活物質とを含み、前記多孔質炭素は、孔径が2nm以下の第1孔構造と孔径が2nmより大きい第2孔構造とを有し、前記第1孔構造の孔体積と前記多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、前記第2孔構造は、充填率が95%以上の負極材料を提供する。
【0007】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料は、前記多孔質炭素の間に分布する活物質をさらに含む。
【0008】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素のメディアン径D1と前記活物質のメディアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足する。
【0009】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素のメディアン径D1と前記活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足する。
【0010】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、メディアン径が1nm~300nmである。
【0011】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、形態がトッド状、球状、楕円球状及びシート状のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素は、材料がカーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料及びナノポーラスカーボン材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素は、メディアン径が1nm~500nmである。
【0015】
いくつかの代替的な実施形態において、前記コアは、メディアン径が0.8μm~10μmである。
【0016】
いくつかの代替的な実施形態において、前記被覆層は、炭素層、金属酸化物層、ポリマー層及び窒化物層のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
いくつかの代替的な実施形態において、前記炭素層は、材質がソフトカーボン、結晶性炭素、無定形炭素及びハードカーボンのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
いくつかの代替的な実施形態において、前記金属酸化物層は、材質がSn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
いくつかの代替的な実施形態において、前記窒化物層は、材質が窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン及び窒化タンタルのうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
いくつかの代替的な実施形態において、前記被覆層は、厚さが10nm~500nmである。
【0021】
いくつかの代替的な実施形態において、前記ポリマー層は、材質がポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料は、比表面積が10m2/g以下である。
【0023】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料は、メジアン径が0.5μm~20μmである。
【0024】
いくつかの代替的な実施形態において、前記負極材料は、空孔率が10%以下である。
【0025】
第2態様において、本出願の実施例は、負極材料の製造方法を提供し、
【0026】
多孔質炭素と活物質を含む原料を真空混合して前駆体を得り、そのうち、前記多孔質炭素は、孔径が2nm以下の第1孔構造と孔径が2nmより大きい第2孔構造とを有し、前記第1孔構造の孔体積と前記多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、前記第2孔構造は、充填率が95%以上であり、前記真空混合は、真空度が10Pa以下である工程と、
【0027】
前記前駆体を被覆処理して、負極材料を得る工程が含まれる。
【0028】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足する。
【0029】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足する。
【0030】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、メディアン径が1nm~300nmである。
【0031】
いくつかの代替的な実施形態において、前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。
【0032】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素は、カーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料及びナノポーラスカーボンのうちの少なくとも1つを含む。
【0033】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素は、メディアン径が1nm~500nmである。
【0034】
いくつかの代替的な実施形態において、前記多孔質炭素と前記活物質との質量比は、40:(10~80)である。
【0035】
いくつかの代替的な実施形態において、前記の、多孔質炭素及び活物質を含む原料を真空混合する前に、助剤及び溶媒を加える工程をさらに含む。
【0036】
いくつかの代替的な実施形態において、前記助剤は、ポリビニルアルコール、n-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、パルミチン酸、テトラデカン酸、ウンデシル酸、脂肪酸、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及びポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
いくつかの代替的な実施形態において、前記溶媒は、フェノール、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸メチル、アセトン及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含む。
【0038】
いくつかの代替的な実施形態において、前記助剤と前記多孔質炭素との質量比は、(0.05~3):100である。
【0039】
いくつかの代替的な実施形態において、前記溶媒と前記多孔質炭素との質量比は、100:(15~55)である。
【0040】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合は、装置が二軸遊星式真空ミキサー、遊星式真空ミキサー、遊星式真空分散機、リボン真空ミキサー、多機能真空ミキサー、真空分散機及び真空乳化機のうちの少なくとも1つを含む。
【0041】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合後、さらに乾燥処理を行い、前記真空混合は、時間が0.5時間~15時間である。
【0042】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合後、さらに乾燥処理を行い、前記乾燥処理は、温度が-50℃~500℃である。
【0043】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合後、さらに乾燥処理を行い、前記乾燥処理は、時間が0.5時間~15時間である。
【0044】
いくつかの代替的な実施形態において、前記真空混合後、乾燥処理をさらに行い、前記乾燥処理は、装置がロータリーエバポレーター、真空オーブン、噴霧乾燥機、熱処理炉及び凍結乾燥機のうちの少なくとも1つを含む。
【0045】
いくつかの代替的な実施形態において、前記の、前記前駆体を被覆処理して負極材料を得る工程は、具体的には、前記前駆体と被覆材料とを混合して熱処理する。
【0046】
いくつかの代替的な実施形態において、前記被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料、ポリマー材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0047】
いくつかの代替的な実施形態において、前記炭素材料は、ソフトカーボン、ハードカーボン、結晶性炭素及び無定形炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
いくつかの代替的な実施形態において、前記金属酸化物材料は、Sn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
いくつかの代替的な実施形態において、前記窒化物材料は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン及び窒化タンタルのうちの少なくとも1つを含む。
【0050】
いくつかの代替的な実施形態において、前記被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料、ポリマー材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含み、前記ポリマー材料は、ポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む。
【0051】
いくつかの代替的な実施形態において、前記前駆体と被覆材料との質量比は、100:(5~100)である。
【0052】
いくつかの代替的な実施形態において、前記熱処理は、温度が400℃~900℃である。
【0053】
いくつかの代替的な実施形態において、前記熱処理は、保温時間が1時間~12時間である。
【0054】
いくつかの代替的な実施形態において、前記熱処理は、昇温速度が1℃/min~15℃/minである。
【0055】
いくつかの代替的な実施形態において、前記熱処理は、保護雰囲気で行い、前記保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1つを含む。
【0056】
いくつかの代替的な実施形態において、前記前駆体と前記被覆材料とを混合して熱処理した後、得られた材料を粉砕して篩分ける工程をさらに含む。
【0057】
いくつかの代替的な実施形態において、前記粉砕装置は、機械式粉砕機、気流式粉砕機及び破砕機のうちの少なくとも1つを含む。
【0058】
いくつかの代替的な実施形態において、前記篩分けは、スクリーンメッシュのサイズが10メッシュ~800メッシュである。
【0059】
第3態様において、本出願の実施例は、リチウムイオン電池を提供し、第1態様に記載の負極材料、又は第2態様に記載の製造方法で製造された負極材料を含む。
【0060】
本出願の技術手段は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0061】
本出願の負極材料のコアは、多孔質炭素と活物質とを含み、多孔質炭素の第1孔構造は、マイクロ孔(平均孔径が2nm以下)であり、体積占有率が40%以上であるマイクロ孔は、活物質の膨張に対して別途な空間を提供し、体積膨張を効果的に緩和し、リチウムを挿抜する過程で負極材料が巨大な体積変化及び応力によって粉化することを回避又は低減する。多孔質炭素の第2孔構造は、孔径が2nmより大きい孔であり、活物質が多孔質炭素の第2孔構造に充填されることにより、第2孔構造の充填率が95%以上になるようにし、材料容量を向上させ、同時に材料による応力集中や電解液の浸透問題を回避し、負極材料に適当な数の小孔を保留し、孔径が大きすぎる孔を回避し、2種類の孔構造の相乗作用により本出願の負極材料は、体積膨張を効果的に抑制でき、レート性能が高く、容量が高く、サイクル性能が良いという利点がある。本出願の負極材料において、コアの表面の少なくとも一部に設けられた被覆層は、コアにおける活物質と電解液との直接接触を減少させ、負極材料と電解液との間の副反応の発生を減少させることにより、負極材料の比容量を向上させることができ、さらに負極材料の体積膨張を抑制し、負極材料の導電性を向上させ、同時にリチウムイオンの伝送効率を向上させ、負極材料のレート性能及びサイクル性能を向上させることに有利である。
【0062】
本出願の負極材料の製造方法は、多孔質炭素と活物質とを含む原料を真空混合することによって前駆体を得り、そのうち、多孔質炭素原料は、2種類の孔径の孔構造を含み、ここで、多孔質炭素の第1孔構造は、マイクロ孔(孔径が2nm以下)であり、多孔質炭素の第2孔構造は、孔径が2nmより大きい孔であり、本出願は、真空混合の方式により、活物質を多孔質炭素の大きい第2孔構造に充填させ、10Pa以下の真空圧力下で、第2孔構造の充填率を95%以上になり、第2孔構造の存在により材料に応力集中や電解液の浸透問題を回避する。最後に前駆体を被覆処理することは、一方では、電解液が負極材料内部に入って副反応を起こすことによって初回クーロン効率及び比容量が低下することを回避でき、他方では、活物質の体積膨張を緩和し、負極材料全体の体積膨張を低減し、電極片の膨潤を減少させることができる。本出願の製造方法は、簡単であり、特定の孔構造、特定のサイズの多孔質炭素を選択することにより、活物質が多孔質炭素内部の第2孔構造に充填され、体積膨張を効果的に抑制し、負極材料のレート性能、比容量及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本出願を更に説明する。
【
図1】本出願に係る負極材料の構造の第一模式図である。
【
図2】本出願に係る第2孔構造内に活物質が分布する多孔質炭素の構造模式図である。
【
図3】本出願に係る負極材料の構造の第二模式図である。
【
図4】本出願に係る負極材料の製造フローチャートである。
【
図5】本出願の実施例1で製造された負極材料のSEMチャートである。
【
図6】本出願の実施例1で製造された負極材料のXRDチャートである。
【
図7】本出願の実施例1で製造された負極材料の初回充放電曲線図である。
【
図8】本出願の実施例1で製造された負極材料のサイクル特性曲線図である。
図1、
図2及び
図3において、 1-コア 11-多孔質炭素 111-第1孔構造 112-第2孔構造 12-活物質 2-被覆層
【発明を実施するための形態】
【0064】
本出願の技術案をよりよく理解するために、以下は、添付の図面を参照して本出願の実施例を詳細に説明する。
【0065】
説明される実施例は、本出願の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではないことを明確にすべきである。本出願の実施例に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本出願の保護範囲に含まれる。
【0066】
本出願の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明することのみを目的とし、本出願を限定する意図はない。本出願の実施例及び特許請求の範囲に使用される単数形の「1つ」、「前記」及び「該」は、文脈で他の意味を明確に示さない限り、多数形も含むことが意図される。
【0067】
理解すべきことは、本明細書で使用される用語の「及び/又は」は、関連対象の関連関係を説明するものだけであり、三種類の関係が存在可能であることを示す。例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在し、AとBが同時に存在し、Bが単独で存在するという三種類の状況を示すことができる。また、本明細書における文字「/」は、一般的に前後関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0068】
本出願の実施例は、負極材料を提供し、
図1に示すように、負極材料は、コア1と、コア1の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層2とを含み、
図2に示すように、コア1は、多孔質炭素11と、多孔質炭素11の孔構造に充填された活物質12とを含み、ここで、多孔質炭素11は、孔径が2nm以下の第1孔構造111と孔径が2nmより大きい第2孔構造112とを有し、第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、40%以上であり、第2孔構造112は、充填率が95%以上である。
【0069】
上記の方案において、本出願の負極材料のコア1は、多孔質炭素11と活物質12とを含み、多孔質炭素11は、2種類の孔径の孔構造を含み、そのうち、多孔質炭素11の第1孔構造111は、マイクロ孔(孔径が2nm以下)であり、体積占有率が40%以上であるマイクロ孔は、活物質12の膨張に対して別途な空間を提供し、体積膨張を効果的に緩和し、リチウムを挿抜する過程で負極材料が巨大な体積変化及び応力によって粉化することを回避又は低減することができる。多孔質炭素11の第2孔構造112は、孔径が2nmより大きい孔であり、第2孔構造は応力集中や電解液の浸透を引き起こしやすいため、第2孔構造をできる限り充填する必要があり、多孔質炭素11の第2孔構造112内に活物質12が充填され、且つ第2孔構造112における活物質の充填率が95%以上であり、材料容量を向上させ、同時に第2孔構造による応力集中や電解液の浸透問題を減少させることができ、負極材料に適当な数の小孔を保留し、孔径が大きすぎる孔を減少させ、2種類の孔構造の相乗作用により本出願の負極材料は体積膨張を効果的に抑制することができ、レート性能が高く、容量が高く、サイクル性能が良いという利点がある。本出願の負極材料において、コアの表面の少なくとも一部に設けられた被覆層は、コアにおける活物質と電解液との直接接触を減少させ、負極材料と電解液との間の副反応の発生を減少させることにより、負極材料の比容量を向上させることができ、さらに負極材料の体積膨張を抑制し、負極材料の導電性を向上させ、同時にリチウムイオンの伝送効率を向上させ、負極材料のレート性能及びサイクル性能を向上させることに有利である。
【0070】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11は、孔径が2nm以下の第1孔構造111と、孔径が2nmよりも大きい第2孔構造112を有する。具体的には、第1孔構造111の孔径は、具体的には、0.05nm、0.07nm、0.1nm、0.3nm、0.5nm、0.8nm、1nm、1.5nm及び2nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。第2孔構造112の孔径は、具体的には、2.5nm、5nm、10nm、20nm、100nm、150nm、200nm、250nm及び300nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0071】
本出願の多孔質炭素において、第1孔構造111は、孔径が2nm以下の孔であり、第2孔構造112は、孔径が2nmより大きい孔であり、孔径が小さい第1孔構造111は、活物質12の体積膨張を効果的に緩和するとともに、電極膜の膨張を減少させ、電池の安全性を向上させることができ、第2孔構造112は、第1孔構造111に対して、孔のサイズがより大きく、孔径が大きい第2孔構造112内に活物質が充填され、第2孔構造による応力集中や電解液の浸透を減少させ、同時に負極材料の容量を向上させることができる。
【0072】
第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、具体的には、40%、45%、50%、55%、60%、65%及び70%などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。第1孔構造111の孔体積の割合が40%未満であると、シリコンの体積膨張を効果的に緩和することができず、第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、45%以上であることが好ましい。
【0073】
第2孔構造112の充填率は、具体的には、95%、96%、97%、98%及び99%などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。第2孔構造112の充填率が95%未満であると、材料に応力集中や電解液の浸透の問題が生じやすくなる。なお、第2孔構造112の充填率とは、孔における活物質12の充填率であってもよく、孔における被覆層材料及び活物質の充填率であってもよく、孔における活物質の充填率であることが好ましく、負極材料の容量の向上に有利である。
【0074】
いくつかの実施形態において、
図3に示すように、負極材料は、多孔質炭素11の間に分布する活物質12をさらに含み、即ち、活物質12は、多孔質炭素11の孔構造内に充填され、同時に活物質12は、多孔質炭素11粒子の間にも分布する。
【0075】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11のメジアン径D1と活物質12のメジアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足し、例えば、D1/D2は、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5及び6などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。多孔質炭素11のメディアン径D1と活物質12のメディアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足させることによって、活物質12と多孔質炭素11との結合が良好なコア構造が得られる。0.4≦D1/D2≦1の条件を満足する場合、大部分の活物質12は、多孔質炭素11の間に均一に分布し、多孔質炭素11を緩衝層として間接的に接触し、1≦D1/D2≦6の条件を満足する場合、大部分の活物質12は、多孔質炭素11の孔構造内に充填され、小部分の活物質12は、多孔質炭素11の間に均一に分布し、このように分布する活物質は、活物質12と活物質12との直接接触を大幅に減少させることができる。そのため、D1/D2の割合を制御することにより、高空孔率を有する多孔質炭素によって活物質12の体積膨張を緩衝し、活物質12間の直接接触を回避し、同時に負極材料の粉化を低減することができる。D1/D2の比率が6より大きい場合、即ち、多孔質炭素11の粒径が活物質12の粒径よりもはるかに大きく、一方では、多孔質炭素11と多孔質炭素11との間に分布する活物質12との結合性が悪くなり、他方では、コア1における多孔質炭素11の体積が活物質12の体積を超え、材料内部の空孔率が増加し、材料の容量が向上しない。D1/D2の比率が0.4より小さい場合、即ち、活物質12の粒径が多孔質炭素11の粒径よりもはるかに大きく、活物質12の間に直接接触しやすく、活物質と活物質との間の「衝突接触」が形成されやすく、リチウムを放出・吸蔵する過程において、発生した巨大な変形が活物質12の粉化や変形を引き起こしやすくなり、負極材料の構造安定性が低下する。多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足することが好ましい。
【0076】
X線回折法を用いて負極材料のコアのSEM断面をスキャンすることにより得られた元素分布スペクトルにおいて、C、活物質元素の分布面は、均一拡散状態である。
【0077】
いくつかの実施形態において、活物質は、形態がドット状、球状、楕円球状、及びシート状のうちの少なくとも1つを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、活物質は、メディアン径が1nm~300nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm及び300nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。活物質12の平均粒径は、5nm~200nmであることが好ましく、活物質の平均粒径は、5nm~80nmであることがさらに好ましい。
【0079】
いくつかの実施形態において、活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。理解されるように、多孔質炭素11との間の活物質と多孔質炭素11の第2孔構造に位置する活物質は、同じでもよいし、異なってもよいし、また一部が同じでもよいし、一部が異なってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11の間に位置する活物質及び多孔質炭素11の第2孔構造に位置する活物質がいずれもケイ素粒子である場合、コア1は、多孔質炭素11とケイ素粒子とを含み、ケイ素粒子は、多孔質炭素と共にコアを構成し、且つケイ素粒子は、多孔質炭素と均一に分布し、ケイ素粒子は、リチウム貯蔵容量を提供し、多孔質炭素11は、充放電過程におけるケイ素粒子の体積変化を緩衝しつつ、ケイ素粒子の導電性を改善することにより、電池のレート性能を向上させることができる。多孔質炭素11は、第1孔構造111及び第2孔構造112を有し、そのうち、第1孔構造111の孔径が第2孔構造112の孔径より小さく、第2孔構造112内にケイ素粒子が充填され、ケイ素粒子が多孔質炭素で包まれているため、負極材料の導電性を向上させることができる一方、ケイ素粒子が凝集することを回避でき、本実施例の負極材料では、ケイ素粒子が多孔質炭素11の間及び内部に位置し、負極材料の導電性を向上させ、負極材料のレート性能をさらに向上させ、同時にシリコンナノ粒子の体積膨張を緩和することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11は、カーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料(CMK)及びナノポーラスカーボン材料(NCP)のうちの少なくとも1つを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11は、メディアン径が1nm~500nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm及び500nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。多孔質炭素11のメディアン径は、5nm~200nmであることが好ましく、多孔質炭素11のメディアン径は、5nm~150nmであることがさらに好ましい。
【0083】
いくつかの実施形態において、コア1のメディアン径は、0.8μm~10μmであり、具体的には、0.8μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm及び10μmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0084】
いくつかの実施形態において、被覆層2は、炭素層、金属酸化物層、ポリマー層及び窒化物層のうちの少なくとも1つを含む。被覆層2の設置は、一方では、電解液が負極材料内部に進入して副反応を起こすことにより初回クーロン効率及び比容量が低下することができ、他方では、シリコンの体積膨張を緩和し、複合材料全体の体積膨張を低下させ、電極片の膨潤を減少させることができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、炭素層は、材質がソフトカーボン、ハードカーボン、結晶性炭素、無定形炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、金属酸化物層は、材質がSn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、窒化物層は、材質が窒化ケイ素、窒化アルミニウム(AlN)、窒化チタン(TiN)及び窒化タンタル(TaN)のうちの少なくとも1つを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、ポリマー層は、材質がポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、被覆層2は、厚さが10nm~500nmであり、具体的には、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm、及び500nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。理解されるように、被覆層2は、ケイ素と電解液との接触を減少させ、パッシベーション膜の生成を減少させ、電池の可逆容量を向上させることができる。被覆層2の厚さを上記範囲内に制御することにより、負極材料の導電性を増加させ、負極材料の体積膨張を抑制し、同時にリチウムイオンの伝送効率を向上させ、負極材料の大倍率の充放電性能、サイクル性能及びその総合性能を向上させることに有利である。
【0090】
いくつかの実施形態において、負極材料は、比表面積が10m2/g以下であり、具体的には、1m2/g、2m2/g、3m2/g、4m2/g、5m2/g、6m2/g、7m2/g、8m2/g、9m2/g及び10m2/gなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。理解されるように、負極材料の比表面積を上記範囲内に制御することで、負極材料の体積膨張を抑制し、負極材料のサイクル性能を向上させることに有利である。
【0091】
いくつかの実施形態において、負極材料は、メディアン径が0.5μm~20μmであり、具体的には、0.5μm、1μm、3μm、5μm、8μm、10μm、15μm、18μm及び20μmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。負極材料は、メディアン径が0.8μm~12μmであることが好ましく、1μm~8μmであることがさらに好ましい。理解されるように、負極材料のメディアン径を上記範囲内に制御することにより、負極材料のサイクル性能の向上に有利である。
【0092】
いくつかの実施形態において、負極材料は、空孔率が10%以下であり、具体的には、1%、2%、2.5%、5%、7%、8.5%及び10%などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。負極材料は、空孔率が5%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましい。負極材料の空孔率が大きすぎると、材料のタップ密度が低下し、さらに材料のエネルギー密度が低下することになる。
【0093】
第2態様において、本出願は、前記負極材料の製造方法を提供し、
図4に示すように、
【0094】
工程S100では、多孔質炭素と活物質を含む原料を真空混合して前駆体を得り、そのうち、多孔質炭素は、孔径が2nm以下の第1孔構造と孔径が2nmより大きい第2孔構造とを有し、第1孔構造の孔体積と多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、前記第2孔構造は、充填率が95%以上であり、真空混合は、真空度が10Pa以下であり、
【0095】
工程S200では、前駆体を被覆処理して、負極材料を得る、ことが含まれる。
【0096】
上記の方案において、本出願の負極材料の製造方法は、多孔質炭素と活物質とを含む原料を真空混合することにより前駆体を得る方法であって、そのうち、多孔質炭素原料は、2種類の孔径の孔構造を含み、ここで、多孔質炭素11の第1孔構造111は、マイクロ孔(孔径が2nm以下)であり、多孔質炭素11の第2孔構造112は、孔径が2nmより大きい孔であり、本出願は、真空混合の方式により、活物質を多孔質炭素の大きい第2孔構造112に充填させ、10Pa以下の真空圧力下で、第2孔構造112の充填率を95%以上になり、第2孔構造112の存在により材料に応力集中や電解液の浸透問題を回避する。最後に前駆体を被覆処理することは、一方では、電解液が負極材料内部に入って副反応を起こすことによって負極材料の初回クーロン効率及び比容量が低下することを回避でき、他方では、活物質の体積膨張を緩和し、負極材料全体の体積膨張を低減し、電極片の膨潤を減少させることができる。本出願の製造方法は簡単であり、特定の孔構造、特定のサイズの多孔質炭素を選択することにより、活物質が多孔質炭素11内部の第2孔構造112に充填され、体積膨張を効果的に抑制し、負極材料のレート性能、比容量及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0097】
以下、実施例を合わせて本出願の製造方法を具体的に説明し、
【0098】
工程S100では、多孔質炭素と活物質を含む原料を真空混合して前駆体を得り、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造とを有し、第1孔構造の平均孔径が2nm以下であり、第2孔構造の平均孔径が2nmより大きく、第1孔構造の孔体積と多孔質炭素の総孔体積との比は、40%以上であり、第2孔構造の充填率は、95%以上であり、真空混合の真空度は、10Pa以下である。
【0099】
いくつかの実施形態において、第1孔構造111は、平均孔径が、具体的には、0.05nm、0.07nm、0.1nm、0.3nm、0.5nm、0.8nm、1nm、1.5nm及び2nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0100】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素11は、孔径が2nm以下の第1孔構造111と、孔径が2nmより大きい第2孔構造112とを有し、第2孔構造112は、平均孔径が、具体的には、2.5nm、5nm、10nm、20nm、100nm、150nm、200nm、250nm及び300nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0101】
本出願の多孔質炭素において、第1孔構造111は、孔径が2nm以下の孔であり、第2孔構造112は、孔径が2nmより大きい孔であり、孔径が小さい第1孔構造111は、活物質12の体積膨張を効果的に緩和するとともに、電極膜の膨張を減少させ、電池の安全性を向上させることができ、第2孔構造112は、第1孔構造111に対して、孔のサイズがより大きく、孔径が大きい第2孔構造112内に活物質が充填され、第2孔構造112による応力集中や電解液の浸透を減少させることができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、具体的には、40%、45%、50%、55%、60%、65%及び70%などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。第1孔構造111の孔体積の割合が40%未満であると、シリコンの体積膨張を効果的に緩和することができず、第1孔構造111の孔体積と多孔質炭素11の総孔体積との比は、45%以上であることが好ましい。
【0103】
いくつかの実施形態において、本出願は、真空混合の真空度を10Pa以下に制御することにより、第2孔構造112の充填率が95%以上になるようにし、本出願において真空混合は、真空度が、具体的には、10-7Pa、10-6Pa、10-5Pa、10-4Pa、10-3Pa、10-2Pa及び10Paなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。本出願は、真空混合処理により多孔質炭素における活物質の充填率を制御することにより、活物質が多孔質炭素における第2孔構造にできるだけ充填され、真空度が10Paより大きいと、真空度が低すぎて、発生した作用力が活物質を対応する空孔内に充填することが難しく、第2孔構造の充填率が低下し、真空度が10-7Pa未満であると、別途な分子ポンプを配置する必要があり、別途なコストが増加する。また、真空度が大き過ぎると、導入されたシリコンソースガスが、急速に吸い出され、反応が間に合わず、活物質の充填率が低下する。
【0104】
いくつかの実施形態において、活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、Ni、P及びCuのうちの少なくとも1つを含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素のメジアン径D1と活物質のメジアン径D2は、0.4≦D1/D2≦6の条件を満足し、例えば、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5及び6などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。理解されるように、多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2との比率を上記範囲内に限定し、得られた前駆体構造は、多孔質炭素11と、多孔質炭素11の孔構造内に充填された活物質12と、多孔質炭素11の間に分布する活物質12とを含み、多孔質炭素11は、活物質12と良好に均一に分散され、良好に分散する構造体を形成することができ、活物質と活物質との間に直接接触が存在しないか、又は少量のみ存在し、大部分は、多孔質炭素を緩衝層として間接的に接触することで、高空孔率の多孔質炭素の粒子層によって活物質の体積膨張を緩衝し、同時に材料の粉化を減少させることができる。D1/D2の比率が6より大きい場合、即ち、多孔質炭素11の粒径が活物質12の粒径よりもはるかに大きく、一方では、多孔質炭素11と多孔質炭素11との間に分布する活物質12との結合性が悪くなり、他方では、コア1における多孔質炭素11の体積が活物質12の体積を超え、材料内部の空孔率が増加し、材料の容量が向上しない。D1/D2の比率が0.4より小さい場合、即ち、活物質12の粒径が多孔質炭素11の粒径よりもはるかに大きく、活物質12の間に直接接触しやすく、活物質と活物質との間の「衝突接触」が形成されやすく、リチウムを放出・吸蔵する過程において、発生した巨大な変形が活物質12の粉化や変形を引き起こしやすくなり、負極材料の構造安定性が低下する。多孔質炭素のメディアン径D1と活物質のメディアン径D2は、0.5≦D1/D2≦4.5の条件を満足することが好ましい。
【0106】
いくつかの実施形態において、活物質は、メディアン径が1nm~300nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm及び300nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。活物質は、メディアン径が5nm~200nmであることが好ましく、5nm~80nmであることがさらに好ましい。
【0107】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素は、カーボンブラック、規則性メソポーラスカーボン材料及びナノポーラスカーボン材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素は、メディアン径が1nm~500nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm、及び500nmなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0109】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素と活物質との質量比は、40:(10~80)であり、具体的には、多孔質炭素と活物質とケイ素材料との質量比は、40:10、40:20、40:30、40:40、40:50、40:60、40:70及び40:80などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。多孔質炭素と活物質の質量比を上記範囲内に制御することにより、均一に分散されたコア材料を得ることに有利であり、材料のサイクル性能及び構造安定性の向上に有利である。
【0110】
いくつかの実施形態において、真空混合は、装置が二軸遊星式真空ミキサー、遊星式真空ミキサー、遊星式真空分散機、リボン真空ミキサー、多機能真空ミキサー、真空分散機及び真空乳化機のうちの少なくとも1つを含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、真空混合は、時間が0.5h~15hであり、具体的には、0.5h、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h、14h及び15hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0112】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素及び活物質を含む原料を真空混合する前に、助剤及び溶媒を加える工程、即ち、工程S100は、多孔質炭素、活物質及び助剤を溶媒に入れて真空混合し、乾燥処理し、前駆体を得るという工程を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、助剤は、ポリビニルアルコール、n-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、パルミチン酸、テトラデカン酸、ウンデシル酸、脂肪酸、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及びポリビニルピロリドンのうちの少なくとも1つを含む。上記助剤は、活物質及び多孔質炭素の孔構造の表面を修飾することにより、活物質粒子が多孔質炭素の孔内により浸透しやすくなるように促すことができる。
【0114】
いくつかの実施形態において、溶媒は、有機溶媒及び非有機溶媒のうちの少なくとも1つを含み、有機溶媒は、フェノール、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸メチル、アセトン及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含み、非有機溶媒は、水、液体アンモニア、液体二酸化炭素及び液体二酸化硫黄と超酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、助剤と多孔質炭素との質量比は、(0.05~3):100であり、具体的には、0.05:100、0.1:100、1:100、2:100及び3:100などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0116】
いくつかの実施形態において、溶媒と多孔質炭素との質量比は、100:(15~55)であり、具体的には、100:15、100:20、100:25、100:30、100:35、100:40、100:50及び100:55などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0117】
いくつかの実施形態において、多孔質炭素と活物質を含む原料を真空混合した後、乾燥処理を行う。
【0118】
いくつかの実施形態において、乾燥処理は、温度が-50℃~500℃であり、具体的には、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃及び500℃などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。理解されるように、乾燥処理は、低温凍結乾燥処理であってもよく、高温乾燥処理であってもよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、乾燥処理は、時間が0.5h~15hであり、具体的には、0.5h、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h、14h及び15hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0120】
いくつかの実施形態において、乾燥処理は、装置がロータリーエバポレーター、真空オーブン、スプレードライヤー、熱処理炉、凍結乾燥機のうちの少なくとも1つを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、前駆体を被覆処理することは、具体的には、前駆体と被覆材料を混合して熱処理して負極材料を得るという工程を含む。被覆材料の被覆により、一方では、電解液が負極材料内部に入って副反応を起こすことによって初回クーロン効率及び比容量が低下することを回避でき、他方では、シリコンの体積膨張を緩和し、複合材料全体の体積膨張を低減し、電極片の膨潤を減少させることができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、被覆材料は、炭素材料、金属酸化物材料、ポリマー材料及び窒化物材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、炭素材料は、ソフトカーボン、ハードカーボン、結晶性炭素、無定形炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、金属酸化物材料は、Sn、Ge、Fe、Si、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnの酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、窒化物材料は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン及び窒化タンタルのうちの少なくとも1つを含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、ポリアニリン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリドーパミン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、前駆体と被覆材料との質量比は、100:(5~100)であり、具体的には、100:5、100:10、100:20、100:30、100:40、100:50、100:60、100:70、100:80、100:90及び100:100などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。前駆体と被覆材料との質量比が100:100より小さくなると、被覆層の厚さが薄すぎることを招きて、負極材料の導電性の増加に不利であり、且つ負極材料の体積膨張抑制性能に対して弱いことにより、サイクル性能が悪化し、前駆体と被覆材料との質量比が100:5より大きくなると、被覆層の厚さが厚すぎることを招きて、リチウムイオンの伝送効率が低下し、負極材料の総合性能を低下させることになる。
【0128】
いくつかの実施形態において、熱処理は、温度が400℃~900℃であり、具体的には、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃及び900などであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0129】
いくつかの実施形態において、熱処理は、保温時間が1h~12hであり、具体的には、1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h、10h、11h及び12hなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0130】
いくつかの実施形態において、熱処理は、昇温速度が1℃/min~15℃/minであり、具体的には、1℃/min、2℃/min、3℃/min、4℃/min、5℃/min、6℃/min、7℃/min、8℃/min、9℃/min、10℃/min、11℃/min、12℃/min、13℃/min、14℃/min及び15℃/minなどであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0131】
いくつかの実施形態において、熱処理は、保護雰囲気で行い、保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスのうちの少なくとも1つを含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、熱処理後、得られた材料を粉砕して篩分ける工程をさらに含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、粉砕装置は、機械式粉砕機、気流式粉砕機及び破砕機のうちの少なくとも1つを含む。
【0134】
いくつかの実施形態において、篩分けは、スクリーンメッシュのサイズは、10メッシュ~800メッシュであり、具体的には、10メッシュ、50メッシュ、100メッシュ、200メッシュ、300メッシュ、400メッシュ、500メッシュ、600メッシュ、700メッシュ及び800メッシュであってもよく、当然のことながら、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0135】
第3態様において、本出願は、リチウムイオン電池を提供し、リチウムイオン電池は、上記負極材料又は上記製造方法で製造された負極材料を含む。
【0136】
当業者にとって明らかなように、以上で説明されたリチウムイオン電池の製造方法は実施例に過ぎない。本出願の内容を逸脱しない範囲内において、当該分野で通常使用される他の方法を採用することができる。
【0137】
以下、複数の実施例を分けて本出願の実施例を更に説明する。但し、本出願は、以下の具体的な実施例に限定されない。主請求項の範囲を変更せずに、適宜変更して実施してもよい。
【0138】
実施例1
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径17nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径20nmの多孔質炭素粒子を得り、そのうち、多孔質炭素粒子は、具体的には、カーボンブラックであり、多孔質炭素粒子の孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、60%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比50:25:25によってフェノールに置き、その後、遊星真空ボールミルにおいて真空度を0.1Paに制御し、2時間ボールミリングを行い、120℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とフェノール樹脂とを質量比50:45によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、820℃の条件で熱処理し、4時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して負極材料を得る。
【0139】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0140】
図6に示すように、本実施例1で製造された負極材料のXRD図であり、
図6から分かるように、製品の中にシリコンのピーク・トウ・ピークが存在する。
【0141】
図7に示すように、本実施例1で製造された負極材料の初回充放電曲線であり、
図7から分かるように、当該材料の初回充放電容量が高く、初回クーロン効率も高い。
【0142】
図8に示すように、本実施例1で製造された負極材料のサイクル特性曲線図であり、
図8から分かるように、当該実施例で製造された負極材料は、優れたサイクル性能を有し、100サイクルの容量維持率は、92.1%である。
【0143】
実施例2
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径50nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径40nmの多孔質炭素粒子を得り、そのうち、多孔質炭素粒子は、具体的には、カーボンブラックであり、多孔質炭素粒子の孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、45%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比50:25:25によってフェノールに置き、その後、遊星真空ボールミルにおいて真空度を0.1Paに制御し、2時間ボールミリングを行い、120℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とフェノール樹脂とを質量比50:45によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、820℃の条件で熱処理し、4時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して負極材料を得る。
【0144】
図5に示すように、本実施例1で製造された負極材料のSEMチャートであり、本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0145】
実施例3
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径30nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径50nmの多孔質炭素粒子を得る。多孔質炭素粒子は、具体的には、ケッチェンブラックである。多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、49%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比50:35:22によってイソプロピルアルコールに置き、その後、二軸遊星式真空ミキサーで真空度を0.01Paに制御し、4時間混合し、150℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とスクロースとを質量比50:55によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、920℃の条件で熱処理し、3時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して負極材料を得る。
【0146】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0147】
実施例4
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径20nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径30nmの多孔質炭素粒子を得る。多孔質炭素粒子は、具体的には、MCM-41であり、多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、55%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比50:31:18によってブタノール中に置き、その後、真空分散機において真空度を10-5Paに制御し、5時間混合し、220℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とグルコースとを質量比50:45によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、780℃の条件で熱処理し、5時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して、前記の負極材料を得る。
【0148】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0149】
実施例5
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径60nmのシリコンナノ粒子及びメディアン径80nmの多孔質炭素粒子を得る。多孔質炭素粒子は、具体的には、規則性メソポーラスカーボン(CMK-3)であり、多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、62%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比40:25:25によってフェノールに置き、その後、リボン真空ミキサーにおいて真空度を1.5Paに制御し、2時間混合し、120℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とポリビニルアミンを混合し、350℃で熱処理する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して、前記の負極材料を得る。
【0150】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、ポリマー被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0151】
実施例6
(1)SiO粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径25nmのSiO粒子及びメディアン径20nmの多孔質炭素粒子を得る。多孔質炭素粒子は、具体的には、NCPである。多孔質炭素粒子のマイクロ孔の体積占有率は、70%である。
(2)篩分けたSiO粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比30:25:15によってフェノールに置き、その後、真空ミキサーにおいて真空度を3Paに制御し、8時間混合し、150℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とアスファルトとを質量比30:25によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、980℃の条件で熱処理し、3時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して、前記の負極材料を得る。
【0152】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するSiO粒子及び多孔質炭素の間に分布するSiO粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びSiO粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0153】
実施例7
(1)シリコンナノ粒子、多孔質炭素粒子をBET試験機によって測定し、及びマルバーン粒度測定装置によって篩分け、メディアン径50nmのナノケイ素及びメディアン径40nmの多孔質炭素粒子を得り、そのうち、多孔質炭素粒子は、具体的には、カーボンブラックであり、多孔質炭素粒子の孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、45%である。
(2)篩分けたシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを質量比30:25:15によってフェノールに置き、その後、真空ミキサーにおいて真空度を5Paに制御し、8時間混合し、150℃で回転蒸発乾燥させて前駆体を得る。
(3)前駆体とアスファルトとを質量比30:25によって混合し、混合した材料を高温箱形炉に入れ、窒素ガスを導入し、980℃の条件で熱処理し、3時間保温する。
(4)得られたサンプルを粉砕、篩分け、分級して、前記の負極材料を得る。
【0154】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布したナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布したシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0155】
実施例8
実施例2と異なり、工程(2)の真空度は、10-7Paに置き換える。
【0156】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造におけるシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造及び第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0157】
実施例9
実施例2と異なり、工程(2)の真空度は、10Paに置き換える。
【0158】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造におけるシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造及び第2孔構造を有し、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0159】
実施例10
実施例2と異なり、前駆体と酸化チタンとを質量比50:35によって混合する。
【0160】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造におけるシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、酸化チタン被覆層であり、多孔質炭素には、第1孔構造及び第2孔構造が形成され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0161】
実施例11
実施例2と異なり、前駆体と窒化ケイ素とを質量比50:35によって混合する。
【0162】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造におけるシリコンナノ粒子及び多孔質炭素空孔に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、窒化ケイ素被覆層であり、多孔質炭素には、第1孔構造及び第2孔構造が形成され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0163】
実施例12
実施例2と異なり、シリコンナノ粒子のメディアン径は、50nmであり、多孔質炭素粒子のメディアン径の大きさは、250nmである。
【0164】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0165】
実施例13
実施例2と異なり、シリコンナノ粒子のメディアン径は、50nmであり、多孔質炭素粒子のメディアン径の大きさは、20nmである。
【0166】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0167】
実施例14
実施例2と異なり、多孔質炭素粒子は、具体的には、カーボンブラックであり、多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、40.1%である。
【0168】
本実施例で製造された負極材料は、コアシェル構造であり、コアは、多孔質炭素と、多孔質炭素孔構造に分布するシリコンナノ粒子及び多孔質炭素の間に分布するシリコンナノ粒子とを含み、シェルは、炭素被覆層であり、そのうち、多孔質炭素は、第1孔構造と第2孔構造を有し、第2孔構造内にシリコンナノ粒子が充填され、第1孔構造の体積占有率、第2孔構造の充填率、多孔質炭素のメディアン径及びシリコンナノ粒子のメディアン径の数値は、表1に示す。
【0169】
実施例15
実施例1と異なり、工程(2)の真空度は、10-8Paに置き換える。
【0170】
比較例1
実施例1と異なり、多孔質炭素粒子における孔径が2nm以下(マイクロ孔)の体積占有率は、30%である。
【0171】
比較例2
実施例1と異なり、工程(2)の真空度は、15Paに置き換える。
【0172】
比較例3
実施例1と異なり、工程(2)におけるシリコンナノ粒子と、多孔質炭素粒子と、ポリビニルアルコールとを遊星式ミキサーで混合処理する。
【0173】
<性能測定>
1.フッ化水素酸溶液を用いて負極材料のコアにおけるシリコンをエッチングし、BET空孔分布解析法で孔構造の孔体積の大きさを測定し、多孔質炭素の第1孔構造及び第2孔構造の孔体積が多孔質炭素に占める孔体積比を計算する。
【0174】
2.負極材料における活物質をエッチングする前に材料の第2孔構造の体積V1を測定し、シリコンをエッチングした後、第2孔構造の体積をV2として測定し、(V2-V1)/V2は第2孔構造における活物質の充填率である。
【0175】
3.マルバーン粒度分布測定装置を用いて材料のメディアン径を測定する。
【0176】
4.走査型電子顕微鏡下によって200個の炭素材料と活物質粒子を観察し、Nano measureを用いて2種類の物質のメディアン径を統計する。
【0177】
5.マイク TriStar3020型比表面積と孔径アナライザーを用いて負極材料に比表面積測定を行い、一定の質量粉末を秤取し、真空加熱状態で完全に脱気し、表面吸着質を除去した後、窒素ガス吸着法を用いて、窒素ガスを吸着する量により、粒子の比表面積を算出する。
【0178】
6.マイクロ孔分布解析法を採用して負極材料の孔体積を測定し、孔体積がΔVであり、負極材料の真密度Pを測定し、計算して負極材料の空孔率=ΔV/(ΔV+1/P)を得る。
【0179】
7、以下の方法で電気化学的性能を測定する。
【0180】
負極材料と、導電剤と、結着剤とを質量比94:1:5で水に溶解して混合し、固形分を50%に制御し、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥させ、負極極片を製造し、その後、従来の成熟したプロセスで製造された三元系正極極片(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物NCM523)と、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウムLiPF6/(エチレンカーボネートEC+ジメチルカーボネートDMC+エチルメチルカーボネートEMC)(v/v=1:1:1)の電解液と、Celgard2400セパレータと、シェルとを通常の生産プロセスで18650円筒形電池セルを組み立てる。円筒形電池の充放電試験は、Wuhan LAND electronics Co.,Ltd.製のLAND電池テスト用機器で、常温条件で、0.2Cで定電流充放電し、充放電電圧を2.75~4.2Vとする。初回可逆容量、初回充電容量及び初回放電容量を得る。初回クーロン効率=初回放電容量/初回充電容量。
【0181】
100サイクルを繰り返し、放電容量を、リチウムイオン電池の残容量として記録し、容量維持率=(残容量/初期容量)×100%。
【0182】
30サイクル極片膨張率(%)測定:負極材料をグラファイトに混合し、固定容量(450mAh/g)に調製し、極片になるように塗布し、極片の厚さD1を測定し、次にボタン式電池に組み立て試験し、30サイクルを循環した後、電池を取り外し、極片の厚さD2を再び試験する。極片膨張率=(d2-d1)/d1*100%。
【0183】
測定結果を表1に示す。
【0184】
【0185】
表1のデータから、本出願の実施例1~実施例13で製造された負極材料において、活物質が多孔質炭素の空孔に均一に分散され、良好に分散する構造体を形成し、活物質の間に直接接触が存在しないか、又は少量のみ存在し、大部分は、多孔質炭素を緩衝層として間接的に接触することで、多孔質炭素の高い体積占有率の第1孔構造によって活物質の体積膨張を緩衝することができ、負極材料のレート性能を向上させ、同時にシリコンナノ粒子の体積膨張を緩和することに有利であることがわかる。また、活物質が多孔質炭素に充填されることにより、多孔質炭素の第2孔構造の充填率は、95%以上であり、材料容量を向上させ、同時に材料による応力集中や電解液の浸透を回避することができ、本出願の負極材料は、体積膨張を効果的に抑制し、同時に良好な構造安定性を有し、レート性能が高く、容量が高く、サイクル性能が良いという利点があることがわかる。
【0186】
実施例15は、製造過程において真空処理の真空度が10-7Paより小さく、真空度が大き過ぎると、導入されたシリコンソースガスが、急速に吸い出され、反応が間に合わず、第2孔構造の充填率が低下し、負極材料の構造安定性及び容量維持率が実施例1より低下する。
【0187】
比較例1から、多孔質炭素における第1孔構造の体積占有率が小さすぎると、負極材料が体積膨張を完全に緩和することができないことがわかる。
【0188】
比較例2から、真空処理における真空度が10Paより大きくなると、第2孔構造の充填率が低下し、負極材料の構造安定性及び容量維持率が低下することがわかる。
【0189】
比較例3から、従来の混合方法によって負極材料を調製し、第2孔構造の充填率は、45%であり、実施例1の99.4%よりはるかに低く、負極材料に応力集中が生じやすく、材料のサイクル性能が低下し、膨張率が大きいことがわかる。
【0190】
本出願は上記実施例により本出願の詳細なプロセス装置及びプロセスフローを説明したが、上記詳細なプロセス装置及びプロセスフローに制限されず、つまり、本出願は、上記詳細なプロセス装置及びプロセスフローがなければ実施できないわけではないことを、出願人が声明した。当業者にとって明らかなように、本出願に対するいかなる改良、本出願の製品の各原料の同等置換や補助成分の追加、具体的な方式の選択肢なども、本出願の特許請求の範囲及び開示範囲内に入っている。
【国際調査報告】