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特表2024-527170向上した耐研磨性を有するバインダー組成物及びモルタル組成物、特にセルフレベリングモルタル組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-22
(54)【発明の名称】向上した耐研磨性を有するバインダー組成物及びモルタル組成物、特にセルフレベリングモルタル組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/00 20060101AFI20240712BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240712BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240712BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240712BHJP
   C04B 24/24 20060101ALI20240712BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20240712BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
C04B7/00
C04B22/08 Z
C04B22/06 Z
C04B22/14 B
C04B24/24 Z
C04B20/00 B
C04B28/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2017568475
(86)(22)【出願日】2016-06-03
(85)【翻訳文提出日】2017-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2016062723
(87)【国際公開番号】W WO2016193477
(87)【国際公開日】2016-12-08
(31)【優先権主張番号】15305862.3
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516343088
【氏名又は名称】ケルネオス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】トウゾウ,ベルーノ
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジアオ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,クシアオジャ
(72)【発明者】
【氏名】イ.イ,ビン
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB00
4G112MB23
4G112PA02
4G112PB03
4G112PB05
4G112PB11
4G112PB26
(57)【要約】
本発明は、少なくとも(a)1種のアルミン酸カルシウムセメントを含むバインダー組成物であって、前記アルミン酸カルシウムセメントが、その総重量に対する重量基準で、- その化学組成に関して、少なくとも50%以下のAl2O3と、- その鉱物組成に関して、少なくとも50%以上のCA相、好ましくは50%~70%のCA、及び0.8%~15%のCA2とを含み、前記アルミン酸カルシウムセメントが3800cm2/g以上のブレーン比表面積(BSA)を含み、及び前記アルミン酸カルシウムセメントが焼結によって得られる、バインダー組成物に関する。本発明は、上述のバインダー組成物を含み、且つ向上した耐研磨性を有するモルタル組成物、特にセルフレベリング及び/又は自己平滑化モルタルにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a)1種のアルミン酸カルシウムセメントを含むバインダー組成物であって、前記アルミン酸カルシウムセメントが、その総重量に対する重量基準で、
- その化学組成に関して、少なくとも50%以下のAlと、
- その鉱物組成に関して、少なくとも50%以上のCA、好ましくは50%~70%のCA、及び0.8%~15%のCA2と
を含み、
前記アルミン酸カルシウムセメントが3800cm/g以上のブレーン比表面積(BSA)を含み、及び
前記アルミン酸カルシウムセメントが焼結によって得られる、バインダー組成物。
【請求項3】
前記アルミン酸カルシウムセメントが、その総重量に対する重量基準で且つその化学組成に関して、
- 30%~50%、好ましくは40%~50%のAl
- 30%~45%、好ましくは35%~40%のCaO、
- 0.1%~5%のFe
を含む、請求項1又は2に記載のバインダー組成物。
【請求項4】
前記アルミン酸カルシウムセメントが、その総重量に対する重量基準で且つその鉱物組成に関して、少なくとも
- 50%~60%のCA相と、
- 0.8%~7%のCA2相と、
- 25%~45%のC2AS相と
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項6】
前記バインダー組成物の総重量に対する重量基準で、
- 1%~40%、好ましくは3%~35%、理想的には5%~30%の、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミン酸カルシウムセメント(a)と、
- 0%~80%、好ましくは15%~75%、理想的には20%~70%のポルトランドセメント(b)と、
- 0%~20%、好ましくは0.5%~15%、特に1%~10%の硫酸カルシウム(c)と、
- 0%~10%、好ましくは0%~8%、特に0.5%~5%の石灰(d)と
を含む、請求項5に記載のバインダー組成物。
【請求項7】
前記組成物の前記総重量に対する重量基準で、
- 10%~50%の、請求項1~6のいずれか一項に記載のバインダー組成物、
- 90%~50%の粒状体
を含むモルタル組成物。
【請求項12】
前記モルタル組成物の前記総重量に対する重量基準で、
- 15%~35%のポルトランドセメント、
- 4%~12%の、請求項1~4のいずれか一項に記載のアルミン酸カルシウム、
- 0.5%~10%の硫酸カルシウム、
- 0%~10%の添加剤、
- 55%~70%の前記粒状体
を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載のモルタル組成物。
【請求項15】
軟練りモルタル、特に軟練りセルフレベリングモルタル及び/又は自己平滑化モルタルを調製するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のバインダー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタルの分野、特にセルフレベリングモルタルの分野に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、バインダー組成物、特に少なくとも特定のアルミン酸カルシウムセメントを含むセルフレベリングモルタルなどのモルタルを調製するための水硬性バインダーに関する。
【0003】
本発明は、向上した耐研磨性又は耐摩耗性を有する床被覆を行うための、前記バインダー組成物と粒状体とを含むモルタル組成物にも関する。
【背景技術】
【0004】
セメントと、骨材と、水とを主成分とする水硬性バインダーを使用したスクリード及びスラブの構築のための従来の技術は周知である。そのようにして得られる可変性のコンシステンシーを有するペーストは、通常、粗い基材に塗布され、セメントの水和後に数時間かけて凝結し、ペーストが広げられた後に行われる多くの難しい二次的な作業が行われることで、平らで滑らかな表面を生じさせる。そのようなペーストは、通常、比較的硬く、更には可塑性であることがよく知られており、これらのペーストの取り扱い(混合、輸送、塗布、又は平滑化のいずれであっても)は、当業者に完全に公知の技術に従って部分的に機械化されていてもよく、又は完全に手作業であってもよい。
【0005】
そのようなバインダーを使用して得られる構造体の機械的特性は、たとえ有効な基準に対応しているとしても、長期の信頼性が不足していることも公知であり、また特にこれらの従来の混合物により生じる著しい水硬収縮及び低い機械的強度のため、10年の保証期間中に多くの構造体が重大なダメージを受けることが非常によくみられる。これらの技術的な問題のため、床被覆材の要件を満たすために、十分な均一性を得る目的でスクリード又はスラブを平滑化被膜又はセルフレベリング下地(SLU)で被覆することがしばしば必要とされることも留意すべきであろう。
【0006】
特に、平滑化被膜及びSLUは非常によく流動し、そのため、表面の性状及びこれらの表面の耐摩耗性を向上させつつ、粗いコンクリートスラブ表面を平らにできる特殊なモルタルである。通常、これらの平滑化被膜及びSLUは、カーペット、弾性床材PVC)、木質床又はタイル等などの軟らかい床材で被覆されることが意図されている。
【0007】
特に、表面又は構造体の迅速な再作業のために、用途に応じて、材料中に残留する水分によって決定される所定時間及び/又はコーティング時間で最低限の機械的強度水準に達する必要がある。
【0008】
[非特許文献1](Centre Scientifique et Technique du Batiment)の規定(“Produits et systemes de preparation de sols interieurs pour la pose de revetements de sols minces”guide technique pour l’avis technique et le classement P.Cahiers du CSTB,n°2893-Delivery n°370,June 1996)によれば、SLU製品は、機械的性能の基準(ペーストの均一性)、流動性(高さ30mm直径50mmのリング内に予め注ぎ入れたペーストの広がり径)及びゲル化時間を同時に満たす必要がある。
【0009】
バインダー組成物又はモルタルの製造、自己平滑化及び/又はセルフレベリングの品質について、並びに特に前記モルタルの凝結後の機械的耐性の向上について、技術文献中に多くの提案を見出すことができる。
【0010】
これは、特に、バインダーと、骨材と、ポリプロピレン繊維と、場合によりセルフレベリングスラリースクリード中で使用される混和材と、水とを含有するセルフレベリングモルタルスクリードの製造を推奨している国際出願国際公開第89/01916号パンフレットの事例であり、この中でのポリプロピレン繊維の量は乾燥成分から計算して0.05重量%~3重量%である。
【0011】
しかし、本出願人は、これらの化合物に関する問題が、モルタルが非常に連続的な長さにわたって広げられる場合の乾燥時の収縮の克服にあることを認識している。
【0012】
実際には、急硬性及び速乾性のセルフレベリングモルタルのための配合物は、重量基準で40%の水硬性バインダー(アルミン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ポルトランドセメント、及び添加剤)と、60%の骨材(砂及びフィラー)とを含み得る。例えば、公知のバインダー配合物は、配合物の総重量に対する重量基準で、およそ60%のポルトランドセメントと、20%のアルミン酸塩セメントと、他の水硬性バインダー(石灰、無水石膏等)と、添加剤とを含み得る。
【0013】
これらの添加剤は、例えば再分散可能な粉末又は液体のポリマーの場合がある。実際、SLUの耐摩耗性(wear resistance)又は耐摩耗性(abrasion resistance)を向上させるために、SLUモルタルの総重量に対して2重量%~5重量%の範囲の量で再分散可能な粉末又は液体のポリマーを添加することが従来技術から公知である。このようなポリマーは、例えば液体又は粉末の形態のポリビニルアルコール、ポリアミド、ラテックスである。
【0014】
しかしながら、これらのポリマーは非常に高価である。
【0015】
そのため、いくつかの市場では、再分散可能な粉末又は液体のポリマーは、SLUの総重量に対して1重量%以下などの少ない量でSLU中に使用されている場合がある。しかし、この種の配合物ではコストが大幅に削減されるものの、それと同時に研磨に対する表面の耐性が低くなり、これはSLUの凝結後に表面が機械的に研磨される場合に問題になり得る。この研磨作業は表面の平滑性を向上させるために実際に使用される場合がある。この作業が行われた後、研磨により生じた塵埃が取り除かれ、表面を覆う層(PVCなど)がこのSLUモルタル上に直接接着され得る。
【0016】
通常、セルフレベリングモルタルは、商品名Secar(登録商標)41、Secar(登録商標)51、又はCiment Fondu(登録商標)として市販されているアルミン酸カルシウムなどの溶融法によって得られる水硬性バインダーから作られる。
【0017】
しかし、溶融法は、実施に大量のエネルギーを必要とする(非常に高温まで加熱するため)という大きい欠点を有している。従って、それは非常にコストが高い。
【0018】
焼結法によりアルミン酸カルシウムを得る方法も公知であり、これはより多いアルミナ含有率のアルミン酸カルシウムを製造するために従来使用されており、これは耐火物工業において広く利用されている。アルミナ含有率と共に融点が高くなることから、焼結は溶融温度未満の温度でのクリンカの製造を可能にし、これはエネルギー的に低コストである。
【0019】
焼結によって製造されるアルミン酸カルシウムは、添加されたAlも含む場合があり、68~85%のAl、<1%のSiO、<0.5%のFe、26~31%のCaOである典型的な組成を有する。しかし、そのような高いアルミナ含有率は、セルフレベリングなどのほとんどの建築用途のためにはコストがかかり過ぎる。
【0020】
他方で、先行技術の中でも、64%未満のアルミナ含有率で焼結法により得られたアルミン酸カルシウムは、その鉱物組成において大きい割合のC12A7相と、比較的小さい割合のCA相とを示す。そのため、これは、できるだけ低い割合のC12A7相と高い割合のCA相とを必要とするセルフレベリングモルタルの製造に適していない。
【0021】
アルミン酸カルシウムセメントの特有の水硬特性、すなわち高品質のポルトランドセメントタイプと比較して非常に大きく早い強度発現、特に数時間かけての強度発現についての特性は、アルミン酸モノカルシウム相CAが実際に主に寄与している。
【0022】
C12A7相は水と速やかに反応し、モルタルが十分なセルフレベリング特性を有することを妨げる。
より高レベルのAlを含むアルミン酸カルシウムセメント中でのCA2と水との反応は、対照的に非常に遅い。
【0023】
そのため、先行技術では、好ましくは高価でなく同時に製造が容易である、良好な機械特性を有する新規なバインダー組成物及び新規なセルフレベリングモルタルを提供することが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Centre Scientifique et Technique du Batiment)の規定(“Produits et systemes de preparation de sols interieurs pour la pose de revetements de sols minces”guide technique pour l’avis technique et le classement P.Cahiers du CSTB,n°2893-Delivery n°370,June 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従って、本発明の目的は、上で列挙した欠点が少なくともある程度回避されるセルフレベリングモルタルのための新規な組成物を提供することである。特に、本発明の目的は、コストの増加なしにモルタルの研磨特性を向上させることが可能なセルフレベリング及び/又は自己平滑化モルタルの調製のための新規なバインダー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
従って、本発明の1つの目的は、少なくとも(a)1種のアルミン酸カルシウムセメントを含むバインダー組成物、特に水硬性バインダー組成物であって、前記アルミン酸カルシウムセメントが、その総重量に対する重量基準で、
- その化学組成に関して、少なくとも50%以下のAlと、
- その鉱物組成に関して、少なくとも50%以上のCA相、好ましくは50%~70%のCA、及び0.8%~15%のCA2と
を含み、
前記アルミン酸カルシウムセメントが3800cm/g以上のブレーン比表面積(BSA)を含み、及び
前記アルミン酸カルシウムセメントが焼結によって得られる、バインダー組成物を提供することである。
【0027】
焼結法により得られるアルミン酸カルシウムを含む本発明のバインダー組成物は、溶融によって得られるアルミン酸カルシウムを含むバインダー組成物よりも低コストである。
【0028】
更に、これは50%未満のAlを有していることから経済的である。また、これは、高いCA相割合を有しながらも低い割合のC12A7相(実施例に示される通り)を示し、そのため、セルフレベリングモルタルを得るために適した特性がバインダー組成物に付与される。
【0029】
従って、本発明は、水と速やかに反応し、そのため、比較的高い重量含有率のCA相及び低い重量含有率のCA2層を有しながらも、焼結により得られる通常のアルミン酸カルシウムバインダーよりも少ない重量含有率のアルミナを含む、焼結によって製造されるアルミン酸カルシウムバインダーを提供し、その結果、向上した研磨特性を可能にするセルフレベリングモルタルのための新規な組成物を提供する。
【0030】
本発明の別の目的は、粒状体と上述のバインダー組成物とを含む主にセルフレベリングモルタルであり、これは、良好な機械的特性を有しながらもモルタルにセルフレベリング特性及び自己平滑化特性を付与することができる。
【0031】
本発明によれば、セルフレベリングとは、専門的な又は特殊な工具を全く介入させることなしに、粗い表面全体にわたって広がったモルタルがそれ自体の水平な水準で固まる特徴を意味する。同様に、自己平滑化とは、例えば光沢表面を得るための特殊な仕上げの場合を除き、専門的な又は特殊な工具を全く介入させることなしに、粗い表面全体に広がったものがそれ自体の上に平滑な又は均一な表面を呈する特徴を意味する。
【0032】
本発明によれば、特段の規定がない限り、全ての重量パーセンテージはバインダー組成物又はモルタル組成物中の乾燥物質の重量に関して表現される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明のある実施形態の2つのモルタル(P3)組成物及び比較例としてのものの、時間(「h」時間又は「d」日)の関数としての圧縮強さ(MPa)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書の以降では、本発明の1つの実施形態による2つのモルタル(P3)組成物及び比較例(比較例)としてのものの、時間(「h」時間又は「d」日)の関数としての圧縮強さ(MPa)を示す図である、図1に示す添付の図面を参照する。
【0035】
驚くべきことに、本発明により、本発明のバインダー組成物中で、特定の化学組成及び特定の鉱物組成を含むより高い粉末度のアルミン酸カルシウムセメントを使用すると、特にこの組成物が再分散可能なポリマーを少しのみ含んでいるとしても、及びこれが他の特性に影響を与えることなく且つ製造コストを増加させることなく、向上した耐研磨性を有するセルフレベリング及び/又は自己平滑化モルタルのための組成物が得られることが示された。
【0036】
従って、本発明は、少なくとも(a)1種のアルミン酸カルシウムセメントを含むバインダー組成物、特に水硬性バインダー組成物であって、前記アルミン酸カルシウムセメントが、その総重量に対する重量基準で、
- その化学組成に関して、少なくとも50%以下のAlと、
- その鉱物組成に関して、少なくとも50%以上のCA相、好ましくは50%~70%のCA、及び0.8%~15%のCA2と
を含み、
前記アルミン酸カルシウムセメントが3800cm/g以上、好ましくは3900cm/g以上のブレーン比表面積(BSA)を含み、及び
前記アルミン酸カルシウムセメントが焼結によって得られる、バインダー組成物に関する。
【0037】
好ましくは、前記アルミン酸カルシウムセメント(a)は、その総重量に対する重量基準で且つその鉱物組成に関して、15%以下、特に11%以下、理想的には6%以下のCA2相を含む。
【0038】
本明細書において使用される「15%以下」には、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、5.5、4、4.5、3、3.5、2、2.5、1.5、1、及び0.8の値又はこれらの値の間に含まれる全ての範囲が含まれる。
【0039】
実際には、通常、前記アルミン酸カルシウムセメント(a)は、その総重量に対する重量基準で少なくとも0.8%のCA2相を含む。
【0040】
通常、前記アルミン酸カルシウムセメント(a)は、3800~6000の範囲、好ましくは4000~6000cm/gの範囲、特に4200~5000cm/gの範囲であるブレーン比表面積(BSA)を含む。
【0041】
更に、本明細書において使用される「3800~6000」の範囲には、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、5000、5100、5200、5300、5400、5500、5600、5700、5800、5900、及び6000の値又はこれらの値の間に含まれる全ての範囲が含まれる。
【0042】
従って、本出願人は、非常に驚くべきことに、ブレーン比表面積を増加させることにより(3800cm/g以上)、及びアルミン酸カルシウムセメントのCA含有率を増加させて好ましくはCA2含有率を減少させることにより、本発明のバインダー組成物が、他の特性への影響(流動性、凝結時間、強度発現、収縮、又は水中での膨張、平滑な表面...)なしで向上した表面硬度(研磨に関して)を有するモルタル組成物、特にSLUモルタルを形成できることを発見した。
【0043】
更に、本発明のバインダー組成物は取り扱い易く、そのため、モルタルの調製方法が複雑にならず、また上述の再分散可能な粉末又は液体のポリマーを含むバインダー組成物と比較して安価でもあるという利点を有する。
【0044】
本発明のもう1つの利点は、先行技術のモルタルで得られるのと等しい施工性を保持しつつ構造体の再作業が可能なことである。
【0045】
具体的には、本発明のバインダー組成物の前記アルミン酸カルシウムセメント(a)は、その総重量に対する重量基準で且つその化学組成に関して、
- 30%~50%、好ましくは40%~50%、理想的には42%~50%のAl
- 30%~45%、好ましくは35%~40%のCaO、
- 20%以下、好ましくは15%以下のSiO、Fe、TiO、又はこれらの混合物
を含む。
【0046】
本発明の意味では、30%~50%のAlには、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、又は50%の値が含まれる。
【0047】
好ましくは、本発明のバインダー組成物の前記アルミン酸カルシウムセメント(a)は、その総重量に対する重量基準で且つその化学組成に関して、3%~10%、特に4%~9%、典型的には5%~8%のSiOを含む。
【0048】
前記アルミン酸カルシウムセメント(a)のもう1つの特徴によれば、この1つは、その総重量に対する重量基準で且つその化学組成に関して、0.1%~5%、特に0.7%~4%、典型的には1%~3%、例えば1%~2.5%のFeを含む。
【0049】
通常、前記アルミン酸カルシウムセメント(a)は、その総重量に対する重量基準で且つその化学組成に関して、0.1%~5%、特に0.7%~4%、典型的には1%~3%、例えば1%~2.5%のTiOを含む。
【0050】
任意選択的には、前記アルミン酸カルシウムセメント(a)は、MgO、SO、KO、NaO、P、又はこれらの混合物などの微量の他の無機酸化物、及び/又はBa、Cr、Mn等などの微量の他の元素も含んでいてよい。
【0051】
有利には、アルミン酸カルシウムセメント(a)は、その総重量に対する重量基準で2%未満、好ましくは1%未満のこれらの他の無機酸化物のそれぞれを含んでいてもよい。これらの他の無機酸化物の重量含有率は0.05%~2%の範囲であってもよい。
【0052】
特に、前記アルミン酸カルシウムセメント(a)は、その総重量に対する重量基準で且つその鉱物組成に関して、少なくとも
- 50%~70%、好ましくは50%~60%、典型的には50%~55%のCA相、
- 0.8%~15%、好ましくは0.8%~11%、特に0.8%~7%のCA2相
を含む。
【0053】
本発明の意味では、CA相の50%~70%の値には、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、及び70%の値が含まれる。
【0054】
好ましくは、前記アルミン酸カルシウムセメント(a)は、その総重量に対する重量基準で且つその鉱物組成に関して、少なくとも25%~45%、好ましくは25%~40%、特に30%~35%のC2AS相を更に含む。
【0055】
アルミン酸カルシウムセメント(a)は、C12A7、C4A3$、C3A、a、b-C2S、ペロブスカイト、C2A(1-x)Fx、C2S、C2AS、C3Sなどの他の相(ここで、F、S、及び$は、それぞれセメント用語に従ってFe、SiO、及びSOを意味し、xは]0;1]に属する整数である)、又はこれらの混合も微量(アルミン酸カルシウムセメントの総重量に対して≦6重量%)含んでいてよい。
【0056】
例えば、アルミン酸カルシウムセメント(a)は、その総重量に対する重量基準で且つその鉱物組成に関して、少なくとも2%~6%、好ましくは3%~5.5%のペロブスカイトを更に含む。
【0057】
本発明のバインダー組成物中に含まれるアルミン酸カルシウムセメントは、通常、ボーキサイト、アルミナ、及び酸化カルシウムC(チョーク、石灰、石灰石)などの酸化アルミニウムAを豊富に含む物質を1100℃より高い温度のオーブン内で焼成することにより得られるであろう。これは、結晶化相を含み得る1種以上の焼結されたクリンカの形態で得られるか、その後の焼成に関わらず得られるアルミン酸カルシウムを含む様々な無機化合物の混合物から得られるであろう。使用されるオーブンは、トンネル炉や回転炉などのクリンカを製造するために従来使用されている任意のオーブンであってもよい。
【0058】
好ましくは、本発明のバインダー組成物中に含まれるアルミン酸カルシウムセメントは、焼結により、特にトンネル炉又は回転炉内でアルミナ粉末及び石灰を焼結させることにより得られる。
【0059】
特に、アルミン酸カルシウムバインダーは、
- 重量基準で少なくとも3%~10%のSiO、好ましくは4%~9%のSiO、30%~50%、好ましくは40%~50%のAl、0%~10%、好ましくは0.1%~5%のFe、30%~45%、好ましくは35%~45%のCaOを含むアルミン酸カルシウム粉末原料を混合する工程、
- この粉末原料を1200℃以上、好ましくは1300℃~1500℃の範囲の焼結温度までキルン中で加熱することにより、クリンカに変換する工程
を含む焼結方法によって得られる。
【0060】
当然、上述したアルミン酸カルシウムバインダーの特徴は、上述の焼結法によって得られるアルミン酸カルシウムバインダーについての類推により、ここでも適用される。
【0061】
本出願人は、驚くべきことに、本発明による焼結法が、CA相及び任意選択的にC2ASの存在と、比較的低い含有率のCA2相とのために迅速な水硬反応性を有しながらも、この方法によって得られる通常のアルミン酸カルシウムと比較して比較的低い含有率のアルミナを有するアルミン酸カルシウムセメントを得ることを可能にすることを発見した。
【0062】
そのため、このアルミン酸カルシウムセメントは、本発明のセルフレベリングモルタルの形成に適している。
【0063】
本発明のある実施形態によれば、本発明のバインダー組成物は、ポルトランドセメント(b)、硫酸カルシウム(c)、石灰(d)等、又はこれらの混合物などの別の水硬性バインダーも含んでいてよい。
【0064】
好ましくは及びこの実施形態によれば、本発明のバインダー組成物は、前記バインダー組成物の総重量に対する重量基準で、
- 1%~40%、好ましくは3%~35%、理想的には5%~30%の、上で定義したアルミン酸カルシウムセメント(a)と、
- 0%~80%、好ましくは15%~75%、理想的には20%~70%のポルトランドセメント(b)と、
- 0%~20%、好ましくは0.5%~15%、特に1%~10%の硫酸カルシウム(c)と、
-0%~10%、好ましくは0%~8%、特に0.5%~5%の石灰(d)と
を含んでいてもよい。
【0065】
ポルトランドセメント(b)は、特にセメント組成物に関する欧州規格EN197-1に従って標準化されたセメントであってもよく、例えば、CEMポルトランドセメント若しくはCEM2ポルトランドセメント又はこれらの混合物から選択されてもよい。
【0066】
硫酸カルシウムCaSO4(c)は、β-半水石膏又は無水石膏II、天然若しくは合成起源の石膏、又はこれらの混合物などの無水石膏及び/又は半水石膏の形態であってもよい。
【0067】
好ましくは、アルミン酸カルシウム(a)/硫酸カルシウム(d)の重量比は、0.5~4、より好ましくは1.5~3の範囲である。
【0068】
本発明のアルミン酸カルシウムセメント(a)を含むバインダー組成物により、粒状体及び添加剤の添加後、乾燥モルタル組成物を得ることができる。
【0069】
従って、本発明のもう1つの目的は、乾燥モルタル、特にセルフレベリングモルタル及び/又は自己平滑化モルタルを調製するための、上で定義したバインダー組成物の使用に関する。
【0070】
本発明のもう1つの目的は、前記モルタル組成物の(その乾燥形態における)総重量に対する重量基準で、
- 10%~50%の、上で定義したバインダー組成物と、
- 90%~50%の粒状体と
含むモルタル組成物に関する。
【0071】
本発明によれば、粒状体は、フィラー、骨材、又はこれらの混合物から選択されてもよい。
【0072】
本発明によれば、「フィラー」又は「微粒子」は、100マイクロメートル以下の粒径を有する無機化合物である。
【0073】
本明細書において使用される「フィラー又は微粒子」は、典型的には、シリカフューム、高炉スラグ、製鋼スラグ、フライアッシュ、ライムフィラー、微粒子状シリカ、熱分解及び沈降シリカを含むシリカ、もみ殻から回収されるシリカ、珪藻土シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、メタカオリン、チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニア、マグネシウムの金属酸化物、様々な形態のアルミナ(水和又は非水和)、アルミナ中空ビーズ、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、焼成粘土、標準又は膨張粘土、パーライト、バーミキュライト、軽石、流紋岩、シャモット、タルク、マイカ、任意選択的に中空であってもよいガラスビーズ若しくは膨張粒状ガラス、ケイ酸塩発泡粒、シリカエアロゲル、砂、粉砕砂利、砂利、小石、カーボネートブラック、シリコンカーバイド、コランダム、ゴム顆粒、木材、藁から選択される。
【0074】
通常、本発明の骨材は、好ましくは100μm~2mmの範囲の粒径を有しており、砂(けい砂など)又は任意の種類の合成若しくは天然の骨材(水に溶解しないケイ酸塩又はアルミノケイ酸塩など)から選択されてもよい。
【0075】
特に、本発明のモルタル組成物は、前記モルタル組成物の総重量に対する重量基準で0%~15%、好ましくは1%~8%、理想的には2%~5%の添加剤も含んでいてよい。
【0076】
通常、上述の添加剤は、再分散可能なポリマー、保水剤、及びレオロジー添加剤、凝結時間調整剤(凝結促進剤若しくは凝結遅延剤又はこれらの混合物など)から選択される。
【0077】
特に、本発明の組成物は、重量基準で2%以下、好ましくは1.5%以下、更には1%以下の再分散可能な粉末又は液体のポリマーを含む。実際、本発明の組成物は、組成物が低い含有率の再分散可能な粉末又は液体のポリマーのみを含んでいるとしても、向上した表面特性(耐研磨性、滑らかな表面)を有するSLUを得ることができる。
【0078】
上述したように、そのようなポリマーは、例えば液体形態又は粉末形態のポリビニルアルコール、ポリアミド、ラテックスである。
【0079】
本明細書において使用されるラテックスは、スチレン、スチレン誘導体、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ピバル酸ビニル、及びステアリン酸ビニルから選択されるエチレン性不飽和モノマー、VEOVA°9~11、(メタ)アクリルアミド、メタクリル酸の(C~C20)アルキルエステル、メタクリル酸と1~12個の炭素原子のアルカノールとの(C~C20)アルケニルエステル(アクリル酸及びメタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、n-ブチルエステル、イソブチルエステル、t-ブチルエステル、及び2-エチルヘキシルエステルなど)、ニトリル、アクリロニトリル、ジエン(1,3-ブタジエン、イソプレンなど)、2つのビニル基、2つのビニリデン基、又は2つのアルキレン基を有するモノマーのラジカル重合によって得られる1種以上のポリマーのエマルションを意味することが意図されている。
【0080】
本発明で使用される凝結促進剤は、公知の任意の種類のものであってもよい。これらを使用することにより、本発明のセルフレベリング又は自己平滑化モルタルの加工性を調節することができる。具体的な実施例としては、単独で又は組み合わせて使用されるアルミン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、炭酸カリウム、リチウム塩(水酸化リチウム、硫酸リチウム、及び炭酸リチウムなど)を挙げることができる。
【0081】
本発明で使用される凝結促遅延剤は、公知の任意の種類のものであってもよく、具体的な実施例としては、特に、単独で又は組み合わせて使用されるクエン酸、酒石酸、グルコン酸塩、及びホウ酸塩、並びにこれらの塩を挙げることができる。
【0082】
特に、凝結促進剤及び凝結遅延剤から選択される凝結時間調整剤は、組成物の総重量に対して0.05重量%~15重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%を占めていてもよい。
【0083】
保水剤及びレオロジー調整剤は、セルロースエーテル、グァーエーテル、デンプンエーテル、会合ポリマー、キサンタンガムやウェランガムなどのバイオ発酵により得られるポリマーを含む群から選択されてもよい。
【0084】
硬化後に組成物の内部に水分が移動することを抑制するために、その調製時に防水剤を添加することが興味深い。例示として挙げると、適切な防水剤の非限定的な例は、
- Si_H、Si(OMe)、Si(OEt)型の反応性基で官能化されていてもされていなくてもよいポリジメチルシロキサン型のシリコンオイル、例えば米国特許第5,373,079号明細書に記載されているものなど、これらのオイルに由来する水性エマルション、
- 米国特許出願公開第2,005,018,217,4号明細書に記載されているトリアルコキシシラン及びシラザンなどのオルガノシラン、例えばメチルシリコネートカリウムなどのシリコネート;パラフィン、ステアリン酸エステル及びオレイン酸エステル型のワックス、Novance companyから販売されているような植物油及びこれらの誘導体
である。
【0085】
これらの防水剤は、これらの特性に応じて、そのまま若しくは溶媒で希釈されて、又は水に分散若しくは乳化されて使用されるであろう。
【0086】
レオロジー添加剤は、最初に混合されたモルタルのレオロジーを改善する目的を有するモルタルの従来の成分である。そのようなテオロジー調製剤(theological additives)としては、カゼイン、スルホン化メラミンホルムアルデヒド、ポリオキシエチレン化ホスホネート(POE)、エチレンポリオキシドポリカーボネート(PCP)、及びこれらの混合物が挙げられる。そのような添加剤は市販品である。例として、CHRYSO Corporationから販売されているOPTIMA100(登録商標)及びPREMIA150(登録商標)製品、並びにSKW Corporationから販売されているMELMENT F10(登録商標)、MELFLUX PP100F(登録商標)、又はPERAMIN CONPAC 500(KERNEOSから販売)を挙げることができる。
【0087】
レオロジー添加剤は、好ましくは乾燥モルタルの総重量の0.1%~0.5%を占める。これらは、多くの場合、セルロースエーテル、並びにウェランガム及び多糖などの分離を抑制する機能を有する水溶性ポリマーと関連付けられる。
【0088】
通常、モルタルは、前記モルタル組成物の総重量に対する(その乾燥形態における)重量基準で、
- 15%~35%のポルトランドセメント、
- 4%~12%の、上で定義したアルミン酸カルシウム、
- 0.5%~10%の硫酸カルシウム、
- 0%~10%の添加剤、
- 55%~70%の前記粒状体
を含む。
【0089】
好ましくは、本発明の乾燥組成物の総重量基準の重量パーセンテージでの混合水の量は、10%~30%、好ましくは22%~26%の範囲である。
【0090】
最後に、本発明のもう1つの目的は、本発明の軟練りモルタルを配合するための、上で定義したバインダー組成物の使用である。
【0091】
本発明を以降の実施例により例示及び詳述する。全てのそのような実施例では、パーセンテージは組成物の総重量基準の重量で表されており、混合水の量はモルタルの乾燥成分の総重量基準の重量パーセントで示されている。
【実施例
【0092】
A)試験手順
所定の圧力を有する標準的な研磨工具の使用:
試験するアルミン酸カルシウムセメントを含有するSLUモルタルの研磨特性を評価するために、現場での研磨作業の典型となる所定の試験を本出願人が設計した。この試験のために、上にサンドペーパーが配置されているφ180mmの回転板から構成されている標準的な研磨工具である商標MUHEを使用する。回転速度は1500~3000rpmである。ここで使用されるサンドペーパーのグレードは常にP80である。
【0093】
研磨する表面にかけられる圧力は、研磨工具の設計のために一定であり、そのため、操作者とは無関係である。かけられる圧力は500Paである。表面は10秒間、30秒間、又は1分間研磨される。
【0094】
表面の状態の評価は、表面に掃除機をかけた後、研磨時に除去された製品の量を秤量することにより研磨後に示される。
【0095】
特に、この試験は温度及び湿度が調節された実験室(23℃/50%RH)内で行われ、次の工程を含む:
- 1~2.5kgのモルタルを準備し、ビニール袋内で原材料をブレンドする工程、
- 標準的なAFNORミキサー内において必要な水の比率で4分間モルタルを混合する工程、
- 縁(ゴム)を有する200×200mmのセメントボード上にSLUを流し込んでモルタルを含ませる工程(スラブの厚さは3mmであり、総流し込み量は約500gである)、
- スラブを実験室内で48時間保管する工程、
- 市販の円板型研磨機(商標MUHE)で試料を研磨する工程、
- サンドペーパーをかけた後に研磨(10回使用)を行う工程であって、研磨時間は10、30、又は60秒間である、工程、
- 研磨前後のSLU重量を測定する工程であって、取り除かれた重量の報告はグラム単位で報告される、工程。
【0096】
テーバー試験
テーバー試験は表面の耐摩耗性を評価するために設計される。これは、多くの場合、セルフレベラーの表面特性を評価するために十分であるが、研磨特性を測定するためには不十分であった。しかし、ここで報告されているいくつかの場合において意義深い結果が示された。テーバー試験はASTM規格D4060(重量減少)に記載されている。この試験では、レファレンスH-22を用いた2つの摩耗輪が、試験する試料で作られる回転円板の上を回転する。輪によって試料から取り除かれた重量は所定の回転数後に測定される。そのため、この試験は本研究で確立した研磨試験と大きく異なる。
【0097】
B)実施例1
1 - 試験したアルミン酸カルシウムセメントの組成
実施例のために、SLUモルタルのための水硬性バインダーとして4つの組成のアルミン酸カルシウムセメントを試験した。1つは比較例(以降では「比較例」)としてのものであり、3つは本発明(P1、P2、及びP3)によるものである。
【0098】
表1は、試験したアルミン酸カルシウムセメントの化学組成を示し、下の表2はその鉱物組成を示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
比較例は、参照試料として使用されている現行の市販品である。これは、50%より多いAlを含んでいるものの、CA含有率が非常に低い(45.4重量%のCA相)。
【0102】
試験した全てのアルミン酸カルシウムセメントは、石灰及び様々なボーキサイトグレードから約1400℃での焼結により製造した。その後、適切なブレーン比表面積(BSA)を得るためにこれらを粉砕した。
【0103】
2 - 試験したモルタルの組成
様々な上に列挙したセメントを、下の表3に示されているSLUモルタルの配合で試験した。この配合は、速硬型(24時間で10MPa超)で、3時間以内の凝結時間である典型的な平均性能のSLUである。無機バインダーは、多量のポルトランドセメントを含有する。短時間で強度を得るために速硬混合物(CAC+無水石膏)が添加される。
【0104】
【表3】
【0105】
3 - 結果
下の表4に、本発明の組成物のアルミン酸カルシウムセメントP1及びP2により、他の特性(平滑性、レオロジー等)に影響を与えることなしに向上した耐摩耗性を有するモルタルが得られることが示されている。特に、モルタルの表面は、より研磨に耐えることができる。
【0106】
【表4】
【0107】
表5にも、本発明の組成物のアルミン酸カルシウムセメントP3により、他の特性に影響を与えることなしに向上した耐摩耗性を有するモルタルが得られることが示されている。
【0108】
【表5】
【0109】
従って、驚くべきことに、この実施例1は、セメントの主な活性相であるCAの量を増加させ、ブレーンを増加させると、セメントの反応性を向上させることができ、これにより得られるモルタルの耐研磨性及び強度を向上できることを示す。
【0110】
C)実施例2
モルタルの別の組成を、GB/T28631-2012“Calcium aluminate agents for dry-mixed mortar”に従って試験した。この組成は次の通りである(表6)。
【0111】
【表6】
【0112】
試験したセメントは、4200cm/g又は3800cm/gのBSAを有する本発明のアルミン酸カルシウムP3、及び3800cm/gのBSAを有する比較例としてのものである。
【0113】
図1に示されているように、本発明の2つのアルミン酸カルシウムモルタルP3は、比較例のアルミン酸カルシウムセメントを用いて得られるモルタルと比較して、これが3800cm/gのBSAであるとしても、向上した圧縮強さを有するモルタルを得ることができる。
図1
【国際調査報告】