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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】CO2回収と連携した水素製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20240808BHJP
   C01B 3/48 20060101ALI20240808BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240808BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240808BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C01B3/38
C01B3/48
C01B3/56 Z
C01B32/50
B01D53/62
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506807
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 IT2021000039
(87)【国際公開番号】W WO2023012836
(87)【国際公開日】2023-02-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522055555
【氏名又は名称】ネクストケム テック エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】イアクアニエッロ, ガエターノ
(72)【発明者】
【氏名】コロッツィ, ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】パロ, エマ
(72)【発明者】
【氏名】アントネッリ, メニカ
(72)【発明者】
【氏名】ロマニュオーロ, サルヴァトーレ
(72)【発明者】
【氏名】タラスキ, ステファニア
【テーマコード(参考)】
4D002
4G140
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA13
4D002BA20
4D002CA07
4D002DA31
4D002EA07
4D002FA01
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB32
4G140EB37
4G140EB45
4G140FA02
4G140FB04
4G140FC01
4G140FC03
4G140FC04
4G140FE01
4G146JA02
4G146JB02
4G146JC10
4G146JC11
4G146JC28
4G146JC36
(57)【要約】
本発明は、炭化水素供給物から出発して水素を製造する方法に関する。前記水素製造方法は、前記炭化水素供給物を水蒸気と反応させ、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素(合成ガス)を含むガスストリームを得るステップであって、電力源によって得られる熱が供される、前記炭化水素供給物を水蒸気と反応させる前記ステップと、前記ガスストリームから二酸化炭素を除去することとを含む。本発明は、さらに、炭化水素供給物から出発する水素を製造するためのプラントであって、電気駆動式水蒸気改質装置と、前記電気駆動式水蒸気改質装置の下流に配置された少なくとも1つのCO回収システムとを備える、水素製造用プラントに関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮再循環ストリームに加えられた炭化水素供給物を蒸気と反応させ、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素(合成ガス)を含むガスストリームを得るステップと、
前記ステップからの前記ガスストリームの一酸化炭素を蒸気と反応させ、水素及び二酸化炭素が富化されたガスストリームを得るステップと、
前記富化されたガスストリームから水素を分離し、水素生成物ストリーム及び再循環ストリームを得るステップと、
前記再循環ストリームを圧縮し、圧縮再循環ストリームを得るステップと、
前記圧縮再循環ストリームと前記炭化水素供給物とを混合するステップとを含む、炭化水素供給物から出発して水素を製造する方法であって、さらに、
前記炭化水素供給物を水蒸気と反応させるステップに、電力源によって得られる熱を提供すること、
あるいは、
a)水素を分離する前に、COを水素及び二酸化炭素が富化された前記ガスストリームから除去すること、
又は
b)前記炭化水素供給物と混合する前に、前記圧縮再循環ストリームからCOを除去すること、
又は
c)水素を分離する前に、水素及び二酸化炭素が富化された前記ガスストリームからCOを除去し、かつ前記炭化水素供給物と混合する前に、前記圧縮再循環ストリームからCOを除去すること、を含む水素製造方法。
【請求項2】
蒸気と反応させる前に、圧縮再循環ストリームを加えた前記炭化水素供給物から、硫黄、塩化物、及びオレフィンを除去するステップを含む、請求項1に記載の水素製造方法。
【請求項3】
前記再循環ストリームから少なくとも一部の不活性成分を除去するステップを含む、請求項1又は2に記載の水素製造方法。
【請求項4】
前記再循環ストリームから少なくとも一部の不活性成分を除去する前記ステップでは、前記再循環ストリームの一部を間欠的又は連続的にパージすることによって、不活性成分を除去する、請求項3に記載の水素製造方法。
【請求項5】
前記パージストリームからCOを除去する、請求項4に記載の水素製造方法。
【請求項6】
前記再循環ストリームの7体積%以下をパージし、好ましくは、前記再循環ストリームの0.1~5体積%をパージし、より好ましくは、前記再循環ストリームの約2体積%をパージする、請求項4又は5に記載の水素製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水素製造方法であって、
水素を分離する前に、水素及び二酸化炭素が富化された前記ガスストリームからCOを除去する場合、前記炭化水素供給物と混合する前の前記再循環ストリームの組成が、
CH:14.5~15.5体積%
CO:0.5~1.0体積%
:34.5~35.5体積%
CO:15.5~16.5体積%
:31.5~32.5体積%
O:1.0~1.5体積%である、
水素製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水素製造方法であって、
前記炭化水素供給物と混合する前に、前記圧縮再循環ストリームからCOを除去する場合、前記炭化水素供給物と混合する前の前記再循環ストリームの組成が、
CH:11.5~12.5体積%
CO:13.0~14.0体積%
:29.0~30.5体積%
CO:16.0~17.0体積%
:26.5~27.5体積%
O:1.0~1.5体積%であり、
好ましくは、CH12.04体積%、CO13.64体積%、N29.56体積%、CO16.54体積%、H27.06体積%、HO1.15体積%である、
水素製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水素製造方法であって、
水素を分離する前に、水素及び二酸化炭素が富化された前記ガスストリームからCOを除去し、かつ前記炭化水素供給物と混合する前に、前記圧縮再循環ストリームからCOを除去する場合、前記炭化水素供給物と混合する前の前記再循環ストリームの組成が、
CH:12.0~13.0体積%
CO:0.5~1.5体積%
:31.0~32.0体積%
CO:14.5~15.0体積%
:38.5~39.5体積%
O:1.0~1.5体積%である、
水素製造方法。
【請求項10】
前記圧縮再循環ストリームを加えた前記炭化水素供給物と蒸気とを反応させる前記ステップにおいて、前記蒸気対炭素比が2.8~3である、先行請求項のいずれか一項に記載の水素製造方法。
【請求項11】
前記電気水蒸気改質に供給される前記電力は、再生可能資源、例えば太陽光、風力、又は水力から得られる、先行請求項のいずれか一項に記載の水素製造方法。
【請求項12】
炭化水素供給物から出発して水素を製造するためのプラントであって、
電気駆動式水蒸気改質装置と、
前記電気駆動式水蒸気改質装置の下流に配置された少なくとも1つのCO回収システムとを備える、水素製造用プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO回収と連携した水素製造方法であって、蒸気排出をゼロにするように構成された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のように、二酸化炭素は、多くの工業プロセスの副産物であり、炭素含有燃料の最終燃焼生成物である。そのような二酸化炭素は、産業現場及びエネルギー生産現場のガス状排出物で大量に生成され、建物の暖房、輸送などにおいては、少量かつ分散して放出される。
【0003】
いずれの場合においても、プロセス原料及び燃料のほとんどが化石由来であるため、排出されるCOは、人為的な炭素排出をもたらし、大気中のCO濃度の増加を引き起こして、気候変動の原因となる。
【0004】
COは、主要な温室効果ガスであり、定置型CO排出量が全世界のCO排出量の約60%を占めると推定されている[https://www.ipcc.ch/pdf/special-reports/srccs/srccs_chapter2.pdf[2018年4月にアクセス]]。
【0005】
CO固定排出をもたらす主要な産業部門は、発電所及びエネルギー集約型産業が代表的である。特に、精製産業部門は、総CO2固定排出量の約6%を占めている[Jiri van Straelen、Frank Geuzebroek、Nicholas Goodchild、Georgios Protopapas、Liam Mahony、CO2 capture for refineries、a practical approach、Energy Procedia 1(2009)179-185]。
【0006】
一方、水素の需要は、2018年にはほぼ75百万トンに達し、年間約6%増加しており[IEA.org/reports/the-future-of-hydrogen、2019年6月]、そのうちの50%超が水素化処理及び水素化分解として精製用途で使用され、残りの部分は、主にアンモニア及びメタノールの生産に使用されている。IEAによると、現在、約8億3000万トンのCOが、毎年の水素生産に関係している。この炭素フローは、今後数年間で、それぞれの単一化学プロセスに関連するCO排出量が、水素を作製することを含めて、技術選択を評価するための最初かつ主要なパラメータとなることから重要である。
【0007】
現在、特に原料として天然ガス又はオフガスを使用する精製産業において、水蒸気改質は、水素を生産するための最もコスト効果の高い技術である。天然ガス及び軽質ナフサの水蒸気改質は、H/CO比が最も高く、生産コスト(CoP)が最も低い非常に効率的なプロセスであるので、このような生産のための主力となっている。このようなプロセスは、精製産業におけるCO排出量の少なくとも最大20%を占める[J.van Straelen、F.Geuzebroek、N.Goodchild、G.Protopapas、L.Mahony、International Journal of greenhouse control、4(2010)316]。
【0008】
水蒸気改質プロセスにおいて、COの一部(典型的には総量の約50%~60%)は、水蒸気改質(CH+HO=CO+3H)におけるプロセス合成ガス中及び水性ガスシフト(CO+HO=CO+H)反応器や下流段階で生成される一方、他の部分(40%~50%)は、外部燃料燃焼によって供される熱により、吸熱反応に必要な熱入力が供給される水蒸気改質炉内でさらに生成される[G.Collodi、Chemical Engineering Transactions 19(2010)37].約0.9kgのCOが、HのNmあたりに生成されると推定されている。
【0009】
さらに、バーナが内部に設置された炉は、水蒸気改質装置の構成が非常に複雑になり、かなり大きなフットプリントの特徴を有するプラントとなる。
【0010】
実際、炭素中立のエネルギー及び生産システムを達成する上での主要な課題は、石油及び天然ガスなどの化石燃料資源に現在大きく依存している産業を脱炭化することである。化学産業で使用される最終エネルギー及び原料の将来の脱炭素化に最も有望な選択肢は、電気の形で生成される比較的豊富な風力と太陽光エネルギーの潜在的な可能性を熱、化学物質、及び燃料に変換することである。実際、電化には、持続可能性の向上、化石エネルギー及び原料の使用の低減に関する大きな進歩をもたらす可能性がある。従来の火力化学反応器の電化は、CO排出を低減するだけでなく、より柔軟でコンパクトな熱発生ソリューションを提供する可能性を有する。
【0011】
今後、電力コストが下がり、再生可能電力がますます利用可能になるという前提の下、水蒸気改質装置内で反応熱を供給する現在の燃焼ステップを電気デバイスに置き換えることは合理的であり、炉バーナからCO排出をもたらすことを排除し得る。
【0012】
さらに、熱交換の効率を最大化することが可能であることから、原料消費量の低減にも役立ち、プロセス側面からのCO排出を制限し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これらに基づいて、プロセスアーキテクチャの再構成が必要となる。
【0014】
従来技術によると、天然ガス原料の水蒸気改質を備えた従来の水素製造ユニット(HPU)のプロセスアーキテクチャには、以下の従来のプロセスステップが含まれる。
(i)天然ガス圧縮(図示せず)及び予熱、
(ii)オレフィンの水素化及び硫黄成分の除去(前処理ユニット1において)、
(iii)水蒸気改質(燃焼加熱水蒸気改質装置2内で)
(iv)蒸気発生及び蒸気加熱(図示せず)によるプロセスストリーム及び煙道ガスからの熱回収、
(v)シフト反応による一酸化炭素の変換(水性ガスシフト反応器3内で)、
(vi)圧力スイング吸着(圧力スイング吸着装置又はPSA4内で)による水素の精製。
【0015】
ステップ(ii)及び(iii)の間に、使用される炭化水素供給原料に応じて、前改質ステップを追加してもよい。
【0016】
図1を参照すると、従来の天然ガス水素製造ユニットのブロック図が示されている。図1には、余剰の蒸気が示されていないが、存在しており、以下に説明する。天然ガス原料は、下流の水蒸気改質触媒に悪影響を及ぼす化合物を除去するために、圧力下で前処理ユニット1に供給される。前処理ユニット1は、第1の水素化ステップ及び第2の脱硫ステップを、任意選択で1つのステップに組み合わせて、実施する。CoMox又はNiMox触媒を使用し、固定床触媒反応器で第1のステップを実施して、有機硫黄をHSに、有機塩素成分を塩化水素に水素化する。供給物に存在するオレフィンも、このステップで水素化される。
【0017】
必要とする水素(約3モル%、天然ガス原料で典型的な値)は、H生成物ストリームから再利用され、及び/又は、プラントの境界線より入手可能な水素源から取り出される。次いで、得られた水素化化合物は、通常、HS吸着のための、任意選択で塩化水素吸着材料を備える酸化亜鉛床と反応する、脱硫ステップに送られる。
【0018】
次いで、処理された原料は、選択された蒸気/炭素モル比の値(S/C=3mol/mol、標準値)に従って制御された量の蒸気と混合され、改質炉2の対流部において550℃(標準値)で予熱される。
【0019】
このプロセスの核心は、Ni触媒上での蒸気とメタンとの吸熱反応(反応1)である。
CH+HO⇔CO+3H ΔH=+206kJ/mol (1)
反応は、炉の放射部の外部燃料燃焼によって加熱された管状触媒反応器内で行われる。主蒸気改質反応に続いて、水性ガスシフト反応(反応2)は、第1の反応によって生成されたCOの一部を追加のH及びCOに変換する。
CO+H2O⇔CO2+H2 ΔH=-41kJ/mol (2)
供給物に加われたプロセス蒸気は、炭化水素の変換を向上させ、触媒上の炭素の析出を防ぐように、化学量論的量を超えている。高い水素収率を得るために、改質温度は、高い範囲(典型的には、850℃~920℃)で選択される。加熱ヒータ内の水蒸気改質反応を実施して、放射部の熱効率の低下に関連した余剰の熱の発生を引き起こす。余剰の熱は、通常、高圧蒸気発生を通じて対流部で回収される。
【0020】
これに加えて、プロセスガスボイラーで追加の蒸気を生成し、水蒸気改質装置の出口でプロセス合成ガスを冷却する。生成される蒸気全体は、プロセス自体に必要な量を超えるため、余剰の蒸気量は、副産物としてプラントの境界線で利用可能になる。次いで、冷却されたプロセスガスは、約320℃の入口温度で高温シフト変換段階(HTS)に供給される。
【0021】
HTSシフト反応器3は、合成ガス中に存在する一酸化炭素及び蒸気を水性ガスシフト反応(反応2)に従って追加の水素及び二酸化炭素に変換する、鉄/クロム/酸化銅触媒を使用した固定床断熱反応器である。場合によっては、低温での追加のシフト変換段階(LTS)が下流に設置され、実施される。
【0022】
シフト変換段階の出口でのプロセス合成ガスは、熱回収部及び最終冷却器を通じて約40℃まで冷却される。下流には、凝縮水の除去のための装置が設置され、そこから合成ガスがPSAユニット4に送られて生水素の精製が行われる。
【0023】
PSAユニットは、選択された吸着材料上で実施される短い吸着/脱着サイクルを通じて動作し、異なる時間段階で並列の容器内で動作する。
【0024】
水素は、設定圧力(例えば、精製用途では、通常、約20バールg)でPSAユニット4から放出される。PSAの水素回収係数は、最大90%の値を達成できるが、水素バランスは、生水素ストリームに存在する不純物とともに、オフガスストリームに放出され、低圧力(約0.3バールg)でPSAユニット4を離脱する。PSAユニット4は、最大99.9999%体積の水素純度に達し得る。精製産業における典型的な水素純度の仕様は、99.9%超である。
【0025】
ほぼ大気圧でPSAから回収され、かつ生成されたCOと残留水素とを含んでいるオフガス(このストリームの例示的な組成は18モル%のCH、10.24モル%のCO、45.10モル%のCO、26モル%のH、0.55モル%のHO)は、改質炉2にリサイクルされて戻され(再循環ストリーム)、この改質炉2では、残留水素とCOが補給燃料とともに燃焼され、生成された煙道ガスが煙突に送られる。
【0026】
また、二酸化炭素の回収及び貯蔵(CCS)は、通常、大気に放出されるストリーム中のCOを除去するが又はその含有量低減し、回収されたCOを永久貯蔵する場所に輸送するプロセスであることも知られている。CCSは、プロセスストリーム、ヒータ及びボイラ排気、並びに発電、精製、天然ガス処理、化学、セメント生産、及び鋼鉄生産を含む広範な高COフットプリント産業からの排気など、広い範囲にわたる大規模単一点源に適用することができる。
【0027】
異なる燃焼プロセスに関連付けられた、すなわち、後燃焼、前燃焼、及び酸素燃料燃焼の3つの主要なCO回収システムがある。
【0028】
後燃焼回収プロセスにおいて、COの除去は、燃焼が発生した後に実施される。燃焼プラントから出る煙道ガスは、典型的には、ガス混合物からCOを選択的に除去するために、化学的又は物理的吸着剤を使用して処理される。これは、煙道ガスが煙突を介して大気に放出される前に、煙道ガスからCOが除去されるエンドオブパイプソリューションである。
【0029】
燃焼後プロセスの利点は、新設備にのみ適しているのではなく、既存のプラントにも改修できることである[SUZANNE FERGUSON and MIKE STOCKLE、Carbon capture options for refiners、PTQ Q2 2012 77]。
【0030】
主な課題は、燃焼煙道ガス中のCO濃度が、通常、混合燃料ガス中のオフガス含有量に応じて、5体積%~20体積%でかなり低いことである。
【0031】
燃焼前回収プロセスでは、燃料(通常、石炭又は天然ガス)が燃焼前に前処理される。特に、一般に、合成ガスストリームにガス化又は改質された後、水性ガスシフト反応及び後続のガス浄化に供されて、COから生成された水素を分離する。合成ガスからCOを除去することには、主にガスの圧力に関連して圧縮エネルギー要件が低減されるという利点があるが、ガス浄化ステップは、通常、燃焼後プロセスで説明したものと同様の方法を使用して達成される。水素は、燃焼プロセスに投入する燃料として使用される一方、COは、圧縮、輸送、及び貯蔵のために濃縮形態で利用可能である。H/CO燃料ガス混合物中の高濃度(20%超)のCOは、CO分離を容易にする[S.T.Wismann、J.S.Engbaek、S.B.Vendelbo、F.B.Bendixen、W.L.Eriksen,K.Aasberg-Petersen,C.Frandsen,I.Chorkendorff、P.M.Mortesen, Electrified methane reforming:A compact approach to greener industrial hydrogen production,Science、2019、364、756-759]。
【0032】
酸素燃料燃焼では、空気の代わりに酸素が燃焼に使用される。これにより、後続の分離プロセスに影響を与える排気ガス中に存在する窒素の量が減少される。煙道ガスの主成分は、CO、水、粒子、及びSOである。粒子、SO、及び水が除去された後、残りのガスは、約80~98%(使用する燃料に応じて)の高濃度のCOを含む。
【0033】
CO回収のための前燃焼及び後燃焼技術の両方を、水蒸気改質プラントに適用可能である。
【0034】
前燃焼技術は、水性ガスシフト反応器から出る合成ガスストリームに適用される一方、後燃焼技術は、炉からの煙道ガスに適用される。
【0035】
しかしながら、第1の場合、プロセスから発生するCOのみが回収され、第2の場合、全てのCOが回収され得るが、合成ガス中のCOの部分圧と比較して、煙道ガス中のCOの部分圧が低いことを考慮すると、そのようなオプションのコストはより高くなる。また、煙道ガスは、大気圧付近で利用可能であるため、大規模のCO回収システムが必要となり、このようなオプションのコストをさらに高くしてしまう。
【0036】
電気水蒸気改質は、過去数年において多く研究されてきた。これに関連して、つい最近、Haldor Topsoeは、デンマーク工科大学と協力して実施している、水蒸気改質反応のために内部を触媒で被覆した管に、電力を適用することに基づく共同研究の結果を公表した[S.T.Wismann、J.S.Engbaek、S.B.Vendelbo、F.B.Bendixen、W.L.Eriksen,K.Aasberg-Petersen,C.Frandsen,I.Chorkendorff、P.M.Mortesen, Electrified methane reforming:A compact approach to greener industrial hydrogen production,Science、2019、364、756-759]。提案された解決方法の性能を確認するために、実験及びモデル調査が進行中である。最初の結果は、電気熱源と反応部位との間の密接な接触が、反応を熱平衡に近づけ、触媒利用を増加させ、望ましくない副産物の形成を制限し得、さらに現在の改質装置プラットフォームのサイズを一桁縮小可能であることを示した。
【0037】
以上の全てを鑑みると、炭化水素、特に天然ガスから出発して水素を製造することに伴われるCO排出量を低減又は除去する必要があることは明らかである。
【0038】
これに関連して、かつ政府規制が業界にCO排出を減らすようにますます迫っていることを考慮すると、本発明に係る解決方法として、従来技術による水蒸気改質装置における反応熱を供給する燃焼ステップの代わりに、熱交換効率を最大化し、天然ガスからHへの変換を向上させることにより、電気装置によって熱が供給され、天然ガス原料消費量を低減させることで、プロセス側からのCO排出も制限するステップを採用することを目的として提案する。
【0039】
これに関連して、本発明に係る解決方法として、最小のCO排出でCOストリームと水素ストリームを同時に生成可能にするために、電気水蒸気改質装置とCO回収技術との結合に基づいて、CO回収と連携した水素製造方法を提供することを提案する。
【0040】
さらに、本発明によると、生成されたCOストリームは、下流での使用の故を以て、価値を生み出すことができる。
【0041】
特に、本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法は、熱交換の効率を最大化し、天然ガスからHへの変換を向上させ、燃料燃焼に伴うCOの発生を除去するために、燃焼加熱水蒸気改質装置の代わりに電気水蒸気改質装置を使用することを含む。
【0042】
本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法は、従来の燃焼加熱水蒸気改質装置を電気加熱水蒸気改質装置に置き換えることにより、水素生成物の分離後に得られるストリームを供給物に再利用できるという革新的提案に基づいている。供給物の量が生成される水素の必要な純度に適合しない場合、少量のみをパージしてシステム内の不活性成分の蓄積を回避する必要がある。
【0043】
したがって、本発明は、従来技術による解決方法の限界を克服し、前述の技術的結果を達成することを可能にするCO回収と連携した水素製造方法を提供することを目的とする。
【0044】
本発明のさらなる目的は、当該CO回収と連携した水素製造方法を、実質的に限定されたコストで実現できることである。
【0045】
本発明の最終目的ではないが、実質的に単純信頼性があり、特に燃焼に関連する爆発のリスクが低い、CO2回収と連携した水素製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0046】
したがって、本発明の第1の具体的な目的は、水素製造方法であって、
-電気水蒸気改質装置、水性ガスシフト反応器、及び好ましくは圧力スイング吸着ユニットである水素分離ユニットを備える合成ガス製造システムに、生の炭化水素供給物、例えば、天然ガス若しくはバイオガス又は他の生の炭化水素供給物を供するステップと、
-前記電気水蒸気改質装置内で前記炭化水素供給物と蒸気とを反応させ、水素、CO、及びCOを含む合成ガスを生成するステップと、
-前記水性ガスシフト反応器内で前記合成ガスをシフトさせ、水素及びCO(並びに変換されていないメタン及び水)を含む水素富化合成ガスを形成するステップと、
-水素生成物ストリームと再循環ストリームとを提供する前記圧力スイング吸着ユニットにおいて、前記合成ガスから前記水素を分離するステップと、
-前記再循環ストリームを圧縮し、前記電気水蒸気改質装置に供給するステップと、
-前記プロセスからCOを除去するステップとを含む、水素製造方法。
【0047】
特に、本発明によると、合成ガス製造システムは、電気水蒸気改質装置の上流に脱硫化ユニットを備え、当該脱硫化ユニットでは、炭化水素供給物から硫黄、塩化物、及びオレフィンが除去される。
【0048】
特に、本発明によると、再循環ストリームの少なくとも一部又は全てが脱硫化ユニットに供給される。
【0049】
或いは、本発明によると、水素及びCOを含む当該水素富化合成ガスから、又は当該圧縮再循環ストリームから、又はその両方からCOが除去される。
【0050】
さらに、本発明によると、再循環ストリームの一部は、間欠的又は連続的にパージされ、特に、再循環ストリームの7体積%以下がパージされ、好ましくは再循環ストリームの0.1~5体積%がパージされ、最も好ましくは再循環ストリームの約2体積%がパージされる。
【0051】
また、本発明によると、圧縮再循環ストリームを加えた炭化水素供給物を蒸気と反応させるステップにおいて、蒸気対炭素比は、2.8~3で構成される。
【0052】
特に、本発明によると、上記の電気水蒸気改質に供給される電気は、再生可能資源、例えば、太陽光、風力、又は水力から得られる。
【0053】
最後に、本発明のさらなる具体的な目的は、炭化水素供給物から出発する水素を製造するためのプラントであって、電気駆動式水蒸気改質装置と、当該電気駆動式水蒸気改質装置の下流に配置された少なくとも1つのCO回収システムと、を備えることである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明は、好ましい実施形態によって、特に添付の図面の図を参照して例示的に以下に開示されるが、本発明を限定する目的ではない。
図1】-図1は、従来の天然ガス水素製造ユニットのブロック図を示す。
図2】-図2は、本発明の方法の第1の実施形態に係るCO回収と連携した水素製造用プラントのブロック図を示す。
図3】-図3は、本発明の方法の第2の実施形態に係るCO回収と連携した水素製造用プラントのブロック図を示す。
図4】-図4は、本発明の方法の第3の実施形態に係るCO回収と連携した水素製造用プラントのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明が提案するCO回収と連携した水素製造方法は、3つの異なる構成に従って実現され得る。
【0056】
図2を参照すると、電気水蒸気改質及びCO回収に基づく、本発明の方法の第1の実施形態に係るCO回収と連携した水素製造用プラントのブロック図が示されている。
【0057】
特に、本実施形態に係るCO回収と連携した水素製造方法は、天然ガス(NG)供給物を、圧力スイング吸着(PSA)ユニット14から発生する再循環ストリームと混合し、380℃に加熱し、前処理ユニット10に搬送して、そこで硫黄、塩化物、及びオレフィンを除去するステップからなる。次いで、精製されたプロセスストリームは、好ましい蒸気対炭素比である2.8~3で、蒸気と混合される。2.8の比率は、蒸気排出をゼロにするように最適化されている。活性を失うことなく低い蒸気対炭素比で作用可能な触媒を使用可能かどうかに応じて、蒸気対炭素比をさらに低下させることができる。
【0058】
続いて、ストリームは、熱交換器(図示せず)を通して550℃に予熱される。熱交換器は、好ましくは、温度が850℃~900℃である改質ストリームを熱交換流体として使用し、プロセスストリームを加熱する。改質ストリームの熱はまた、改質反応に必要な蒸気を生成するために異なる熱交換器で使用され得る。或いは、電気ヒータ又はガスヒータなどの独立型ヒータを使用することができる。特に、燃料燃焼に伴うCO発生を除去するために、電気ヒータを使用することが好ましい。或いは、電力消費を低減するために、空気と一部の天然ガスを燃焼させることによって実施されるガス加熱ステップの代わりに、電気ヒータを用いることができる。発生した煙道ガスは、煙突に送られる。この解決方法は、コンパクトではない。しかしながら、CO排出量の点ではより大きな影響を与えるが、再生可能な原料から生成される電力を利用する可能性からシステムの独立性をより高くする。
【0059】
次いで、予熱されたストリームは、電気水蒸気改質装置11の触媒を保護し、かつ、閾値触媒温度を既に超えた水蒸気改質装置11の触媒床に入ることを両方可能にする予熱されたストリームの温度で、水蒸気改質装置11に送られる。
【0060】
触媒床に沿って、反応の吸熱性と電気熱源によって提供される熱との両方に依存する温度プロファイルが確立され、触媒床の出口で850℃~900℃の範囲の温度が達成される。
【0061】
いくつかのプラント構成において、重質原料が主に使用される場合、水蒸気改質装置11の上流に、前改質ステップを設けることができる。この追加のステップにおいて、より低温で予備改質が起こる。
【0062】
続いて、改質ストリームが冷却され、改質ストリームの熱は、上記のように、好ましくは少なくとも部分的に回収されて、蒸気を生成するか、又は改質装置11の上流のプロセスストリームを予熱し、次いで、出口ストリームは、高温又は中温で、利用可能な熱に応じて、好ましくは340℃で、水性ガスシフト反応器12に送られ、そこでCOからCOへの一定の変換が達成される。
【0063】
水性ガスシフト変換は、全体プロセスにおける熱回収に応じて、高温(320℃~350℃の水性ガスシフト入口温度約)又は中温(約250℃~280℃の水性ガスシフト入口温度)で実施され得る。
【0064】
及びCOが豊富なストリームである水性ガスシフト反応器12から発生するプロセスストリームは、一連の熱交換器(図示せず)によって冷却されて、熱を回収する。次いで、CO回収ユニット13(すなわち、アミン、膜分離、極低温、吸着システム、及びそれらの組み合わせ)に送られ、COが分離され、純粋なCOストリームが捕集され、最終的には、価値を生み出す。
【0065】
最後に、Hが豊富なガスは、精製のためにPSAシステム14に送られ、一方でオフガス又は再循環ストリームは、圧縮機15で圧縮されて、プラントの前端に再利用される。パージガスの分割(合計2~3%の順で)により、メイン再循環ストリームから分離されて、再循環ストリーム中の蓄積を防ぐために、天然ガス中に存在するN又は他の不活性物質の量を管理する。
【0066】
図3を参照すると、本発明の方法の第2の実施形態に係るCO回収と連携した水素製造用代替プラントにおいて、CO回収段階は、PSAから回収及び圧縮再循環ストリームに設けられる。
【0067】
この代替構成によると、水性ガスシフト反応器12から発生するプロセスストリームは、熱回収後、精製のためにPSAシステム14に送られる一方、オフガス又は再循環ストリームは、圧縮機15で圧縮された後、CO回収ユニット13’に送られて、COが分離され(圧縮及びCO分離はまた、単一のユニットに統合され得る)、純粋なCOストリームが捕集されて、残りのストリームは、任意選択で約2~3重量%のパージ後、プラントの前端に再利用される。
【0068】
最終的に、本発明の方法の第3の実施形態において、CO2回収と連携した水素製造用プラントは図4に示されており、2つのCO回収ユニットが、水性ガスシフト反応器12の下流及びPSAユニット14の再循環ストリーム上の両方に設けられる。
【0069】
本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法は、以下の点により、従来の燃焼式加熱改質装置とCO回収との連携に基づく従来の技術のデメリットを克服する。
-生成されるCOの量が本質的に低いため、このパラメータを45%まで低減できる。
-より高い濃度のCOが存在するプロセスストリーム上でCO回収を行うため、CO回収効率が高い。
-高いCO回収効率により、大気に排出される総CO量(回収されなかった量)が低くなる。
【0070】
本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法は、電気水蒸気改質装置を動作させるために必要とされる電気を再生可能資源から生成するという前提に基づいて、COが生成しないようにする。しかしながら、エネルギー遷移の短期的なシナリオにおいて、再生可能エネルギーの利用可能性は、そのような技術に基づいて水素市場を完全に満足させない場合がある。本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法は、CO排出量の低減を可能にするために、燃焼式加熱改質装置と電気式加熱改質装置のCO排出量を等しくするには、化石/石炭からの電力の最大30~40%を受け入れ、残りの部分を再生可能エネルギーから賄うことを前提として、損益分岐点を試算した。
実施例1
本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法を使用して、表1に示す組成で天然ガス供給物を処理した。
【表1】
【0071】
本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法によって達成された主な技術的結果を、CO除去効率の2つの異なるレベルを想定し、従来の燃焼加熱水蒸気改質装置と比較して、図2を参照して開示される実施形態に従って天然ガスを処理することによって評価して、表2に示す。
【表2】
【0072】
SRは、水蒸気改質装置を表す。
【0073】
WGSは、水性ガスシフト反応器を表す。
【0074】
B.L.は、プラントの境界線を表す。
(*)CO除去ステップの任意の消費効用は考慮しない(CO回収ステップの実行のために電力又は天然ガスの消費を必要とする場合)
(**)パージガス中の残部
(***)プラントの前端でCOが再利用されるため、回収されたCO(%)は、示された回収効率(70%)よりも高い。
【0075】
水素への効率は、供給物(LHV)+燃料(LHV)/水素生成物(Nm)として計算され、LHVは低発熱量を表す。
実施例2
本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法によって達成される技術的結果は、従来の燃焼加熱水蒸気改質装置と比較して、図3を参照して開示される実施形態による、前述の実施例の同じ天然ガスを処理することによって評価された。これらの結果は、前述の実施例と同様に、CO除去効率の2つの異なるレベルを仮定して、表3に示される。
(表3を参照のこと)
【表3】
【0076】
SRは、水蒸気改質装置を表す。
【0077】
WGSは、水性ガスシフト反応器を表す。
【0078】
B.L.は、プラントの境界線を表す。
(*)CO除去ステップの任意の消費効用は考慮しない(CO回収ステップの実行のために電力又は天然ガスの消費を必要とする場合)
(***)プラントの前端でCOが再利用されるため、回収されたCO(%)は、示された回収効率(70%)よりも高い。
【0079】
水素への効率は、供給物(LHV)+燃料(LHV)/水素生成物(Nm)として計算され、LHVは低発熱量を表す。
実施例3
本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法によって達成される技術的結果は、従来の燃焼加熱水蒸気改質装置と比較して、図4を参照して開示される実施形態による、前述の実施例の同じ天然ガスを処理することによって評価された。これらの結果は、水性ガスシフト反応器の下流に設けられたCO回収ユニット13でのCO除去効率が70%であり、パージガスストリームに設けられたCO回収ユニット13’でのCO除去効率が80%であると仮定して、表4に示される。
【表4】
【0080】
SRは、水蒸気改質装置を表す。
【0081】
WGSは、水性ガスシフト反応器を表す。
【0082】
B.L.は、プラントの境界線を表す。
(*)CO除去ステップの任意の消費効用は考慮しない(CO回収ステップの実行のために電力又は天然ガスの消費を必要とする場合)
(***)プラントの前端でCOが再利用されるため、回収されたCO(%)は、示された回収効率(70%)よりも高い。
【0083】
水素への効率は、供給物(LHV)+燃料(LHV)/水素生成物(Nm)として計算され、LHVは低発熱量を表す。
【0084】
CO回収ユニットの設置タイプに関係なく、本発明に係るCO2回収と連携した水素製造方法は、最大45%までのCO排出量の低減を可能にする。
【0085】
不活性成分(窒素など)が天然ガスに含まれ得ることを参照して、重要な技術的ハイライトを述べる必要がある。
【0086】
本発明に係るCO2回収と連携した水素製造方法の特異な態様の1つは、実施形態とは関係なく、圧縮ステップが適用される場合、PSAから発生するオフガスを直接供給部に再利用することで、必要な補給水の量を減らすことが可能である。従来の燃焼式加熱改質装置においては、この解決方法は適用されない。その理由は、後者の場合、少なくとも1つのバーナの存在により、技術的な観点から見て、PSAからのオフガスを燃料部に戻して再利用し、それによって、必要な補給燃料の量を減らすとともに、PSAから発生するオフガスの再圧縮ステップを回避することがより便利であるからである。
【0087】
本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法の主な利点は、以下に強調される。
-燃焼加熱水蒸気改質装置と比較して、COの生成量が低減される。
-バイオガスが供給物として使用される場合、バイオガスが再生可能な原料であるため、全体システムは完全に炭素負荷が負になる。
-原料消費量を低減する。
-燃料消費をなくす。
-煙突が不要である。
-効率がより高い(LHVベース)。
-ノイズを低減する。
-水蒸気改質反応器のサイズを小さくする。
-PSAからの供給物を完全な回収して、炉で燃焼される代わりに、再利用及び補給水と混合することができる。
-蒸気対炭素比が好ましい範囲の2.8~3に維持される限り、蒸気は排出されない。
【0088】
さらに、電気は値段が安く、再生可能な資源からの供給が増えているため、本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法の利点が、時間の経過とともに増加するだろう。
【0089】
また、上記の第1の実施形態によると、改質装置11の上流のプロセスストリームも電気ヒータで予熱され、本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法は、以下の利点も含む。
-煙道ガスから熱を回収するための対流部が不要であることは、基本的に、煙突ガスダクトが不要であることを意味する。
-燃焼用空気供給システムが不要である。
【0090】
図2及び4に示された実施形態を参照すると、前燃焼におけるCO回収により、PSAの上流での水素分圧の増加が可能になる。したがって、PSAは、より小さなサイズになり得る。
【0091】
本発明に係るCO回収と連携した水素製造方法のさらに他の利点は、脱硫ステップを実施するために、プラントの境界線から水素の一部を再利用して戻すことを回避することができることである。実際、このようなステップに必要な水素の量は、すでにPSAから発生する再循環ストリームに含まれている。しかしながら、提案された解決方法によると、PSAから直接電気水蒸気改質装置に経路付けられた再循環ストリームでも機能し得る。この最後の場合、炭化水素供給原料の水素化脱硫を可能にするために、プラントの境界線からの水素が必要である。
【0092】
本発明に係るCO2回収と連携した水素製造方法の他の利点は、大気中に汚染物質が放出されない可能性があることである。この最後の利点は、再循環ストリーム(PSAオフガス)から生成される分割パージガスの最終用途に応じている。フレアに送られる場合、汚染物質の排出を引き起こす。一方、価値を生み出すことができる場合、環境への影響を低減できる。
【0093】
パージガスがフレアに送られたとしても、全体的なCO排出量は、CO回収と連携した従来の燃焼式加熱改質装置のCO排出量よりも有意に低い(約90%)。
【0094】
さらに他の利点は、プラント能力及び使用されるシフト反応器の種別に応じて、蒸気生成及び供給物の予熱などの追加サービスを行うために必要な熱を全て、プロセスストリームから発生する熱回収によって生成することができることである。
【0095】
本発明は、その好適な実施形態による、例示的であって限定的でない目的で開示されたが、本明細書に記載の特許請求の範囲において、その理由により、本開示から逃れることなく、当業者によって、任意の変形及び/又は改変がなされ得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮再循環ストリームに加えられた炭化水素供給物を蒸気と反応させ、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素(合成ガス)を含むガスストリームを得るステップと、
前記ステップからの前記ガスストリームの一酸化炭素を蒸気と反応させ、水素及び二酸化炭素が富化されたガスストリームを得るステップと、
前記富化されたガスストリームから水素を分離し、水素生成物ストリーム及び再循環ストリームを得るステップと、
前記再循環ストリームを圧縮し、圧縮再循環ストリームを得るステップと、
前記圧縮再循環ストリームと前記炭化水素供給物とを混合するステップと
前記再循環ストリームから少なくとも一部の不活性成分を除去するステップとを含む、炭化水素供給物から出発して水素を製造する方法であって、さらに、
前記炭化水素供給物を水蒸気と反応させるステップに、電力源によって得られる熱を提供すること、
あるいは、
a)水素を分離する前に、COを水素及び二酸化炭素が富化された前記ガスストリームから除去すること、
又は
b)前記炭化水素供給物と混合する前に、前記圧縮再循環ストリームからCOを除去すること、
又は
c)水素を分離する前に、水素及び二酸化炭素が富化された前記ガスストリームからCOを除去し、かつ前記炭化水素供給物と混合する前に、前記圧縮再循環ストリームからCOを除去すること、を含む水素製造方法。
【請求項2】
蒸気と反応させる前に、圧縮再循環ストリームを加えた前記炭化水素供給物から、硫黄、塩化物、及びオレフィンを除去するステップを含む、請求項1に記載の水素製造方法。
【請求項3】
前記圧縮再循環ストリームを加えた前記炭化水素供給物を前記蒸気と反応させる前記ステップにおいて、前記蒸気対炭素比が2.8~3である請求項に記載の水素製造方法。
【請求項4】
電気水蒸気改質に供給される電気は、再生可能資源、例えば太陽光、風力、又は水力から得られる請求項に記載の水素製造方法。
【請求項5】
前記再循環ストリームから少なくとも一部の不活性成分を除去する前記ステップでは、前記再循環ストリームの一部を間欠的又は連続的にパージすることによって、不活性成分を除去する、請求項に記載の水素製造方法。
【請求項6】
前記再循環ストリームの7体積%以下をパージし、好ましくは、前記再循環ストリームの0.1~5体積%をパージし、より好ましくは、前記再循環ストリームの約2体積%をパージする、請求項5に記載の水素製造方法。
【請求項7】
前記パージストリームからCOを除去する、請求項に記載の水素製造方法。
【請求項8】
前記再循環ストリームの7体積%以下をパージし、好ましくは、前記再循環ストリームの0.1~5体積%をパージし、より好ましくは、前記再循環ストリームの約2体積%をパージする、請求項に記載の水素製造方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の水素製造方法であって、
水素を分離する前に、水素及び二酸化炭素が富化された前記ガスストリームからCOを除去する場合、前記炭化水素供給物と混合する前の前記再循環ストリームの組成が、
CH:14.5~15.5体積%
CO:0.5~1.0体積%
:34.5~35.5体積%
CO:15.5~16.5体積%
:31.5~32.5体積%
O:1.0~1.5体積%である、
水素製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の水素製造方法であって、
前記炭化水素供給物と混合する前に、前記圧縮再循環ストリームからCOを除去する場合、前記炭化水素供給物と混合する前の前記再循環ストリームの組成が、
CH:11.5~12.5体積%
CO:13.0~14.0体積%
:29.0~30.5体積%
CO:16.0~17.0体積%
:26.5~27.5体積%
O:1.0~1.5体積%であり、
好ましくは、CH12.04体積%、CO13.64体積%、N29.56体積%、CO16.54体積%、H27.06体積%、HO1.15体積%である、
水素製造方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の水素製造方法であって、
水素を分離する前に、水素及び二酸化炭素が富化された前記ガスストリームからCOを除去し、かつ前記炭化水素供給物と混合する前に、前記圧縮再循環ストリームからCOを除去する場合、前記炭化水素供給物と混合する前の前記再循環ストリームの組成が、
CH:12.0~13.0体積%
CO:0.5~1.5体積%
:31.0~32.0体積%
CO:14.5~15.0体積%
:38.5~39.5体積%
O:1.0~1.5体積%である、
水素製造方法。
【請求項12】
炭化水素供給物から出発して水素を製造するためのプラントであって、
電気駆動式水蒸気改質装置と、
前記電気駆動式水蒸気改質装置の下流の水性ガスシフト反応器と、
前記水性ガスシフト反応器の下流の圧力スイング吸着ユニットと、
前記圧力スイング吸着ユニットの下流の水素生成物ストリーム及びオフガスストリームと、
前記オフガスストリームを前記炭化水素供給物に接続する再循環ストリームと、
圧縮機と、
前記電気駆動式水蒸気改質装置の下流に配置された少なくとも1つのCO回収システムと、
再循環ストリームから分離されるパージガスの分割と、
を備える、水素製造用プラント。
【国際調査報告】