(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】肥満症の処置に使用するための、ドミナントネガティブAMPKα1変異体を発現する小型細胞外小胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240808BHJP
A61K 38/45 20060101ALI20240808BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240808BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20240808BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240808BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240808BHJP
C12N 15/47 20060101ALN20240808BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240808BHJP
C12N 5/0784 20100101ALN20240808BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K38/45
A61K9/127
A61K9/50
A61K47/46
A61K48/00
A61P3/04
A61P43/00 111
C12N15/54
C12N15/47
C12N15/62 Z
C12N5/0784
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531566
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022071463
(87)【国際公開番号】W WO2023012076
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521125464
【氏名又は名称】ウニベルシダーデ デ サンティアゴ デ コンポステーラ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】509000747
【氏名又は名称】アンスティトゥー ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ レシェルシュ メディカル(イエヌエスエエールエム)
(71)【出願人】
【識別番号】524050763
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デアンジェ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルバンク エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ペレス ミゲル アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス マルティネス マリア デル カルメン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリアンツィトハイナ ラマロソン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA27
4B065CA44
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4C084ZA701
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4C084ZC191
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4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
(57)【要約】
本発明は、肥満症の処置を必要とする対象における肥満症の処置に使用するための小型細胞外小胞(sEV)の集団に関し、sEVは、作動可能に連結され、ステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にある、D168AドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1-DN)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をそれらの外膜において一過性に発現するように操作されている。当該集団は、sEVが前全身的に投与された場合、視床下部腹内側核に位置するSF1発現ニューロンにおいてそれらの効果を発揮することができるので、非常に安全かつ有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1-DN)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、小型細胞外小胞(sEV)の集団であって、前記AMPKα1-DN変異体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1からなることを特徴とし、
前記AMPKα1-DN変異体タンパク質は、作動可能に連結され、配列番号3と少なくとも98%の配列同一性を有するステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にあり、
前記sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をその外膜で発現するように操作されている、
小型細胞外小胞(sEV)の集団。
【請求項2】
前記ステロイド産生因子1(SF1)プロモータのアミノ酸配列が、配列番号3からなる、請求項1に記載の小型細胞外小胞の集団。
【請求項3】
リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した前記神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む前記融合タンパク質が、配列番号5、又は配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1又は2に記載の小型細胞外小胞の集団。
【請求項4】
肥満症の処置用又は予防用の、請求項1~3のいずれか一項に記載の小型細胞外小胞の集団。
【請求項5】
前記肥満症がレプチン受容体(LEPR)欠乏誘導性肥満症である、請求項4に記載の小型細胞外小胞の集団。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の肥満症の前記処置のウォッシュアウト後のリバウンド効果の改善用又は減少用の、請求項1~3のいずれか一項に記載の小型細胞外小胞の集団。
【請求項7】
前記リバウンド効果の前記改善又は低減が、処置ウォッシュアウトの少なくとも5日後に測定される、請求項6に記載の小型細胞外小胞の集団。
【請求項8】
前記小型細胞外小胞の投与が全身性であり、好ましくは静脈内である、請求項4~7のいずれか一項に記載の小型細胞外小胞の集団。
【請求項9】
全身投与された場合に、視床下部腹内側核(VMH)に位置するSF1発現ニューロンにおけるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化レベルを、未処置SF1発現細胞におけるAMPKの活性化レベルと比較して有意に減少させることができるが、前記減少は、副腎、精巣、又は脳下垂体からなるリストから選択される他のSF1発現組織では有意に減少しない、小型細胞外小胞(sEV)の集団であって、
前記小型細胞外小胞(sEV)の集団は、ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1-DN)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、前記AMPKα1-DN変異体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1からなり、
前記AMPKα1-DN変異体タンパク質は、作動可能に連結され、配列番号3と少なくとも98%の配列同一性を有するステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にあり、
前記sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をその外膜に発現するように操作され、
前記集団は、肥満症の処置を必要とする対象における全身投与経路を介した肥満症の処置用である、
小型細胞外小胞(sEV)の集団。
【請求項10】
前記ステロイド産生因子1(SF1)プロモータのアミノ酸配列が配列番号3からなる、請求項9に記載の集団。
【請求項11】
前記AMPKα1-DN変異体タンパク質のヌクレオチド配列が、配列番号2からなる、請求項9又は10に記載の集団。
【請求項12】
リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した前記神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む前記融合タンパク質が、配列番号5、又は配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の集団。
【請求項13】
リバウンド効果の改善又は減少が、処置のウォッシュアウト後少なくとも5日で測定される、肥満症、好ましくは食餌誘発性及び/又は遺伝性肥満症の前記処置の前記ウォッシュアウト後の前記リバウンド効果の前記改善用又は減少用の、請求項9~12のいずれか一項に記載の集団。
【請求項14】
前記処置が肥満症を回復又は改善することを含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の集団。
【請求項15】
前記全身経路が血管内経路である、請求項9~14のいずれか一項に記載の集団。
【請求項16】
前記小型細胞外小胞が、30nm~150nmのサイズ分布を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の集団、又は請求項9~15のいずれか一項に記載の集団。
【請求項17】
前記小型細胞外小胞が、ALIX、TSG101、CD9若しくはCD81、又はそれらの任意の組合せからなる群より選択される特異的マーカのうちの1つ以上を更に含む、請求項16に記載の集団又は集団。
【請求項18】
前記小型細胞外小胞が、GRP94マーカを欠くことを特徴とする、請求項16又は17のいずれかに記載の集団。
【請求項19】
前記小型細胞外小胞が、成熟抗原提示細胞におけるT細胞活性化因子分子の発現と比較して、少なくとも1つの前記T細胞活性化因子分子の統計的に有意に低下した発現を有することを特徴とする未成熟抗原提示細胞から産生又は得られる、請求項16~18のいずれか一項に記載の集団又は使用のための集団。
【請求項20】
前記抗原提示細胞が樹状細胞、好ましくはJAWS II細胞株であり、前記少なくとも1つのT細胞活性化因子分子が、主要組織適合遺伝子複合体II(MHC-II)、分化抗原群80(CD80)若しくは分化抗原群86(CD86)、又はそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のT細胞活性化因子分子である、請求項16~19のいずれか一項に記載の集団。
【請求項21】
前記小型細胞外小胞がエキソソームである、請求項16~20のいずれか一項に記載の集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ生物医学の分野に関する。特に、本発明は、肥満症の処置のための全身経路を介して投与される小型細胞外小胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満症は、世界中で年間数千人の死亡を引き起こす。これは、癌、心血管疾患及び2型糖尿病(T2D)を含むこの状態に関連する多くの直接的及び間接的な併存症に起因するが、最も予防可能な流行である1-6。肥満症の最も効果的な処置は肥満手術であり、これは体重を減少させるだけでなく、T2Dも改善する。しかし、肥満対象の大部分は肥満手術に適格ではない。更に、肥満手術の有害かつ危険な副作用を考慮して、革新的な抗肥満症薬を開発するための努力がますます増えている1、2、5。しかし、いくつかの現在の薬理学的主導の戦略が体重の減少においていくらかの有益な結果を示すとしても、それらのほとんどは、主に特異性の欠如に起因する望ましくない副作用を示す。
【0003】
更に、現在の戦略のほとんどは、エネルギーバランスの食物摂取成分を目標とするように設計されているが、それらの多くはエネルギー消費(EE)をトリガーしない。実際、体重の調節は複雑であり、複数の生物機能に相互接続されているため、新しい分子標的の同定によって処置の特異性を高めることは重要であると思われる1、2、5。AMPKは、低エネルギーの条件で活性化され、逆調節応答を促進する細胞ゲージである3、7~11。最近の証拠は、視床下部におけるAMPKの調節がエネルギーバランスを調節する古典的機構であることを実証している。特に、視床下部腹内側核(VMH)におけるAMPKα1のホルモン的、薬理学的又は遺伝的阻害は、褐色脂肪組織(BAT)熱産生を刺激する交感神経系(SNS)活性の増加をもたらし、EEを上昇させ、その後、摂食非依存性体重減少をもたらす12~18。細胞レベルでは、この作用はVMHのステロイド産生因子1(SF1)ニューロンで起こり、AMPKα1の特異的欠失は、マウスの食餌誘発性肥満症(DIO)に対する耐性及び代謝改善を促進する17、18。
【0004】
抗肥満症薬開発の有効性の鍵の1つは、その作用特異性である。これに関して、遺伝子治療の治療可能性は、(i)全身注射後のそれらの急速な分解を誘導する、血液等の体液内でのその低い安定性、(ii)その限られた組織特異性作用のために制限される。非特異的送達後のこれらの望ましくない結果に対抗するために、過去数十年はナノ医薬戦略の拡大を通じていくらかの刺激的な突破口を提供している。アデノウイルス又は合成ナノ粒子送達戦略は、再生医療において、又はいくつかの病状に対して開発されている。しかし、炎症-望ましくない応答を誘発する反復注射を含むいくつかの問題は、それらの
を制限した。したがって、目的の組織を標的化し、治療遺伝子を特異的に送達することができるが、免疫応答を誘導することも他の生物学的プロセスに影響を及ぼすこともない、新しい生物由来のナノ小胞を開発することが望ましい。
【0005】
細胞外小胞(EV)は、本質的に全ての細胞型によって放出される天然に存在するナノからマイクロサイズの膜小胞の異種集団である。EVは、標的細胞の再プログラミングを通して治療可能性を有し、細胞プロセス及び分泌物(細胞によって分泌される分子)の調節を可能にし、最終的には標的細胞の再プログラミング後の組織修復を促進することが示されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、肥満症の処置又は予防に使用するためのAMPKα1のドミナントネガティブアイソフォームをコードするプラスミドを送達するために全身投与される治療用ベクターとしての細胞外小胞の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ニューロン標的化樹状細胞由来sEVの生成及び特徴付けの図である。(a)Lamp2b-RVG小型細胞外小胞(sEV)の試料のナノ粒子追跡分析によって得られた曲線の例。グラフは、サイズ(nm)によるsEVの濃度(粒子/mL)を表す。(b)生成されたLamp2b-RVG sEVの電子顕微鏡観察では、特定の丸い形状及び約70nmの小胞の平均サイズが示される。(c)Lamp2b-RVG sEV中のALIX、TSG101、CD9及びCD81に対する抗体を使用するウェスタンブロッティング。(d、e)非ロードsEV(対照)、siRNA-Texas RedロードsEV(sEV-siRNA Texas Red)又はGFPプラスミドロードsEV(sEV-GFP)で2、6及び24時間処置したJAWS II細胞の共焦点顕微鏡写真。(f)DID標識天然(対照)又はDID標識Lamp2b-RVG sEV(Lamp2b-RVG)の30分、2、4及び6時間の静脈内注射後の生存マウスの代表的なMAESTRO画像。(g)DID標識天然(対照、n=3)又はDID標識Lamp2b-RVG sEV(Lamp2b-RVG、n=4)による注射の6時間後の単離された器官(肺、脾臓、肝臓、心臓及び腎臓)におけるDID蛍光のエクスビボ定量化。(h)DID標識天然(対照;n=3マウス/群)及びDID標識Lamp2b-RVG sEV(Lamp2b-RVG;n=4マウス/群)の注射6時間後に採取した、マウス脳、視床下部を区切る黒丸の代表的な画像。(i)DID標識天然(対照、n=3マウス/群)及びDID標識Lamp2b-RVG sEV(n=4マウス/群)の注射の6時間後に採取したマウス脳のDID蛍光のエクスビボ定量化。(j)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVで24時間処置したGT1-7細胞の代表的なpACCαウェスタンブロット画像(n=8試料/群)。β-アクチンをタンパク質ロードの対照として使用した。試料を同じゲルにロードしたが、並んでいなかった場合、黒い線を免疫ブロットに挿入した。(k)対照(非ロード、n=8試料/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVで24時間処置したGT1-7細胞におけるpACCαの定量(n=8試料/群)。データを平均±SEMとして表した。対照に対して*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図2】SF1-AMPKα1-DNロードsEVの定位的VMH注射のエネルギーバランスに対する効果の図である。(a)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる定位的VMH注射後のマウスのグラムで表される体重変化の図である。赤色矢印は注射の開始を示す(n=18匹/群)。(b)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる定位的VMH注射後のマウスのグラムで表される毎日の食物摂取量(n=18動物/群)。(c)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる定位的VMH注射の72時間後にマウスから採取したVMHの代表的なpACCα及びACCαウェスタンブロット画像。β-アクチンをタンパク質ロードの対照として使用した。試料を同じゲルにロードしたが、並んでいなかった場合、黒い線を免疫ブロットに挿入した。(d)VMH、弓状核(ARC)及び外側視床下部領域(LHA)において対照の%で表されるpACCα/ACCαの定量化(n=5~6マウス/群)。(e、f)対照(非ロード、n=16動物/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる72時間の定位的VMH注射後のマウスの代表的なサーモグラフィ画像(e)及びBAT肩甲骨間温度定量化(3日間の平均)(f)(n=17動物/群)。(g)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる定位的VMH注射の72時間後にマウスから採取したBATの代表的なUCP1ウェスタンブロット画像。α-チューブリンをタンパク質ロードの対照として使用した。試料を同じゲルにロードしたが、並んでいなかった場合、黒い線を免疫ブロットに挿入した。(h)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる定位的VMH注射の72時間後にマウスから採取したBATのUCP1タンパク質発現の定量化(n=5~7マウス/群)。データを平均±SEMとして表した。対照に対して**P<0.01及び***P<0.001。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図3】視床下部AMPK活性に対するSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置の効果の図である。(a)SF1-AMPKα1-DNロードsEVを静脈内注射したマウスにおける24時間でのSF1-AMPKα1-DNプラスミドのインビボ発現。特異的SF1-AMPKα1-DN及びHPRTプライマーを使用した代表的なアガロースゲル電気泳動。+対照はSF1-AMPKα1-DNプラスミドである。(b)対照(非ロード、n=6マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=6マウス/群)による静脈内注射の72時間後のVMHにおける代表的なpACCα及びACCαウェスタンブロット画像及びpACCαの定量化。β-アクチンをタンパク質ロードの対照として使用した。試料を同じゲルにロードしたが、並んでいなかった場合、黒い線を免疫ブロットに挿入した。(c)VMHにおける対照の%で表されるpACCα/ACCαの定量化。(d)対照(非ロード、n=6マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=5マウス/群)での静脈内注射72時間後のVMHにおけるAMPK活性の定量化。(e、f)対照(非ロード)sEV又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる静脈内注射の24時間後のVMHにおけるNeurotrace500/525(緑色)、pACCα(マゼンタ)陽性細胞及びマージされた反応性(e)並びにpACCα陽性細胞数の定量化(f)(視野ごとの定量化;10~12視野、4マウス/群)を示す代表的な画像。スケールバーは20μmを表す。(g、h)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(h)による静脈内注射の24時間後のVMHにおけるSF1細胞(視野ごとの定量化;2~3視野、4マウス/群)中のDAPI(青色)、SF1(赤色)、pACCα(緑色)及びマージされた反応性(g)並びにpACCα蛍光(h)の定量化を示す代表的な共焦点画像。矢印はpACC陽性SF1細胞を示す。スケールバーは20μmを表す。(i、j)1回の静脈内注射後のVMHにおけるSF1-AMPKα1-DNプラスミド発現の時間経過。特異的SF1-AMPKα1-DN及びHPRTプライマーを使用した代表的なアガロースゲル電気泳動(i)並びに異なる時点でのVMH(j)におけるSF1-AMPKα1-DNプラスミド発現の定量(n=4~5マウス/群)。MWM、分子量マーカ。データを平均±SEMとして表す。対照に対して*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図4】SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置のエネルギーバランスに対する効果の図である。(a、b)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVを3日ごとに6日間静脈内注射した後のマウスのグラム(a)及びパーセンテージ(b)で表される体重変化。赤色矢印は注射を示す(n=24~25マウス/群)。(c)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVを3日ごとに6日間静脈内注射した後のマウスのグラムで表される食物摂取量。赤色矢印は注射を示す(n=25マウス/群)。(d)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVを3日間ごとに6日間、静脈内注射した後のマウスのグラムで表される毎日の食物摂取量(n=25マウス/群)。(e~g)対照(非ロード、n=6マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=5匹マウス/群)を3日ごとに6日間、静脈内VMH注射した後のマウスの明期及び暗期の間のエネルギー消費(EE、e)、呼吸商(RQ、f)及び自発運動活性(LA、g)。(h)対照(非ロード、n=7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=8マウス/群)を3日ごとに6日間、静脈内VMH注射した後のマウスの脂肪あり(ATオン)及び脂肪なし(ATオフ)、AT offによるAT onを差し引いて得られた総AT、皮下AT(scAT)及び内臓AT(VAT)の画像上の脂肪組織(AT)を示す代表的なNMR画像。(i~k)グラムで表したAT質量の定量;対照(非ロード、n=7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=8マウス/群)を3日ごとに6日間、静脈内VMH注射した後のマウスの総AT質量(i)、scAT(j)及びvAT(k)。(l、n)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVの静脈内注射を28日間3日ごと(n=15マウス/群)、次いで14日間のウォッシュアウト(n=8匹マウス/群)した後のマウスの体重(l)及び体重変化(グラム(m)及びパーセンテージ(28-d1日目)(n)。赤色矢印は注射を示す。(o、p)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVの静脈内注射後のマウスの食物摂取量(o)及び毎日の食物摂取量(p)を3日ごとに28日間、次いで14日間のウォッシュアウト(n=15マウス/群)。赤色矢印は注射を示す。(q~s)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVを3日ごとに6日間静脈内注射し、次いで2週間のウォッシュアウトを行い、3日ごとに再度6日間注射した後のマウスの全処置期間(q)中及び各処置週間(r)中のグラムで表される体重変化。同じプロトコルに従って、対照(非ロード、n=7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=7マウス/群)の静脈内注射後のマウスのグラム数で表した食物摂取量(s)。赤色矢印は注射を示す。データを平均±SEMとして表す。対照に対して*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図5】BAT熱産生に対するSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置の効果の図である。(a~c)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVを3日ごとに6日間尾静脈に注射したマウスの代表的なBATサーモグラフィ画像(a)、毎日のBAT温度(b)(n=10マウス/群)及び平均BAT温度定量(c)[n=69~70マウス/群;ボックスプロットは、中央値(中央線)、25、75パーセンタイル(ボックス)及び10~90パーセンタイル(ひげ;それぞれ最小値及び最大値)を示す]。赤色矢印は注射を示す。(d、e)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVを3日ごとに6日間尾静脈に注射したマウスのBAT温度(℃)(d)及び食物摂取量(e)とグラムで表される体重変化(n=60個体/群)との相関分析。(f~h)対照(非ロード、n=8マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=8マウス/群)を3日ごとに6日間静脈内注射し、次いで2週間のウォッシュアウトを行い、3日ごとに再度6日間注射した後のマウスの4、14及び23日目の代表的なBATサーモグラフィ画像(f)、毎日のBAT温度時間経過(g)及び毎日のBAT温度ヒストグラム(h)。(i、j)対照(非ロード、n=8マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=8マウス/群)を3日ごとに6日間、次いで2週間のウォッシュアウト後に、3日ごとに再度6日間静脈内注射した後のマウスの代表的な尾基部のサーモグラフィ画像(i)及び平均尾基部の温度定量化(j)。データを平均±SEMとして表した。対照に対して*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。統計的有意性は、2つのスチューデントt検定によって評価した。但し、片側スチューデントt検定を使用したクロスオーバー実験(g)の2日目及び23日目のBAT温度を除く。
【
図6】BAT熱産生分子経路に対するSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置の効果の図である。(a、b)対照(非ロード、n=8~16マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=10~18マウス/群)を3日ごとに6日間静脈内注射した後のマウスのBATにおける、代表的なUCP1、UCP3、PGC1α及びPGC1βウェスタンブロット画像(a)及びそれらの発現の定量化(b)。α-チューブリンをタンパク質ロードの対照として使用した。試料を同じゲルにロードしたが、並んでいなかった場合、黒い線を免疫ブロットに挿入した。(c、d)基底レベル及び対照(非ロード、n=5マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=5マウス/群)の注射後のBATを示す代表的な軸方向、矢状及び冠状PET-CTスキャン画像(c)及び標準化取込み値(SUV)BAT/肝臓の比(d)。(e、f)対照(非ロード、n=7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVの注射後(n=7マウス/群)のマウス由来のscWATにおける、UCP1染色領域の、UCP1染色(e)及び定量化(f)を示す、抗UCP1抗体による代表的なscWAT免疫組織化学。スケールバーは100μmを表す。データを平均±SEMとして表す。対照に対して*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図7】SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置に対するアドレナリン遮断の効果。(a、b)対照(非ロード;n=6マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DN sEV(n=6マウス/群)を尾静脈に24時間注射したDIOマウスのスパイク/秒における代表的なBAT SNAトレース(a)及びその定量(b)(総計、遠心性及び求心性信号)。(c~f)対照(非ロード;n=6マウス/群)、SF1-AMPKα1-DNロードsEV単独(n=6マウス/群)又は特異的β3-ARアンタゴニスト、SR59230Aの存在下(n=6マウス/群)を注射したマウスの体重変化(グラム、c)毎日の食物摂取量(グラム、d)、代表的なBATサーモグラフィ画像(e)及び平均BAT温度定量(f)。(g、h)対照(非ロード;n=6マウス/群)、SF1-AMPKα1-DNロードsEV単独又は特異的β3-ARアンタゴニスト、SR59230A(n=6マウス/群)の存在下での静脈内注射後のマウスのBATにおける代表的なUCP1ウェスタンブロット画像(g)及びその発現の定量化(h)。α-チューブリンをタンパク質ロードの対照として使用した。試料を同じゲルにロードしたが、並んでいなかった場合、黒い線を免疫ブロットに挿入した。データを平均±SEMとして表した。対照に対して*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。#P<0.05及び##P<0.01 SF1-AMPKα1-DN対SF1-AMPKα1-DN+SR59230A。統計的有意性は両側ANOVAによって評価した。
【
図8】SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置の、熱的中性条件及びUCP1ノックアウトマウスにおけるエネルギーバランスに対する効果の図である。(a、b)熱中性条件下(30℃)に置かれた6日間3日ごとの、対照(非ロード、n=9マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=9マウス/群)の静脈内注射後のマウスのグラム(a)及びパーセンテージ(b)で表される体重変化。(c、d)対照(非ロード、n=9マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=9マウス/群)を、熱的中性条件下に置かれた6日間3日ごとに静脈内注射した後のマウスの食物摂取量(c)及び毎日の食物摂取量(d)。(e、f)熱的中性条件下に置いた、対照(非ロード、n=9マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=9マウス/群)を3日ごとに6日間静脈内注射した後のマウスの代表的なBATサーモグラフィ画像(e)及びBAT温度肩甲骨間温度定量化(f)。(g、h)対照(非ロード、n=5マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEV(n=7マウス/群)を3日ごとに6日間静脈内注射した後のマウスのBATにおける代表的なUCP1ウェスタンブロット画像(g)及びUCP1発現の定量化(h)。α-チューブリンをタンパク質ロードの対照として使用した。試料を同じゲルにロードしたが、並んでいなかった場合、黒い線を免疫ブロットに挿入した。(i、j)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVでの単回静脈内注射後の野生型(ucp1+/+、i、n=7マウス/群)及びucp1ヌルマウス(ucp1-/-、j、n=10マウス/群)のグラムで表される体重変化。赤色矢印は注射を示す。(k、l)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる単回静脈内注射後の野生型(k、n=7マウス/群)マウス及びucp1ヌルマウス(l、n=10マウス/群)の毎日の食物摂取。(m~p)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる単回静脈内注射後の野生型(m、n、n=7マウス/群)及びucp1ヌルマウス(o、p、n=10マウス/群)の代表的なBATサーモグラフィ画像(m、o)及びBAT温度肩甲骨間温度定量化(n、p)。データを平均±SEMとして表す。対照に対して*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図9】SF1-AMPKα1-DNロードニューロン標的樹状細胞由来sEVの特徴付けの図である。(a)天然sEV及びLamp2b-RVG sEVにおいてLamp2bに対する抗体を使用するウェスタンブロッティング。(b)天然sEV(n=4試料/群)及び天然対照%でのLamp2b-RVG(n=5試料/群)sEVのLamp2bレベルの定量化。(c)Jaws II細胞(レーン1)、未改変の天然sEV(レーン2)及びLamp2b-RVG sEV(レーン3)におけるGRP94に対する抗体によるウェスタンブロッティング。(d)SF1-AMPKα1-DNをコードするプラスミドの円形表示。(e)天然(左パネル)及びSF1-AMPKα1-DNロードLamp2b-RVG sEV(右パネル)の試料のナノ粒子追跡分析によって得られた曲線の例。グラフは、サイズ(nm)によるsEVの濃度(粒子/mL)を表す。(f)SF1-AMPKα1-DNロードLamp2b-RVG sEVの電子顕微鏡観察で、特異的な丸い形状及び約70nmの小胞の平均サイズを示す。(g)AMPK及びGAPDHの天然(レーン1)、Lamp2b-RVG(レーン2)、SF1-AMPKα1-DNロードLamp2b-RVG sEV(レーン3)及び陰性対照H2O(レーン4)のアガロースゲル電気泳動。(h)DNAse(レーン1)、DNAse+TritonX-100 0.2%(レーン2)及びTritonX-100 0.2%(レーン3)のAMPK及びGAPDHで処置したSF1-AMPKα1-DNロードLamp2b-RVG sEVのアガロースゲル電気泳動。(i)天然(n=6試料/群)及びLamp2b-RVG(n=6試料/群)sEVで24時間処置した初代星状細胞の対照%で発現されたpACCα/ACCαの定量。(j)天然(n=6)及びLamp2b-RVG(n=6)sEVで24時間処置したNeuro2A細胞における対照の%で発現したpACCα/ACCαの定量。データを平均±SEMとして表した。対照に対して***P<0.001。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図10】視床下部核解剖の対照の図である。ARC、VMH及びLHA解剖におけるPomc、Sf1及びHcrt/オレキシンmRNAレベルの定量[n=19~20マウス/群;ボックスプロットは、中央値(中央線)、25、75パーセンタイル(ボックス)及び10~90パーセンタイル(ひげ;それぞれ最小値及び最大値)を示す]。データを平均±SEMとして表した。Pomc ARC、Sf1 VMH及びHcrt LHAに対して***P<0.001。統計的有意性は両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図11】視床下部AMPK活性に対するSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置の効果の図である。(a)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVとの静脈内注射の24時間後の脳切片におけるGFAP(緑色)、pACCα(マゼンタ)及びマージされた反応性を示す代表的な共焦点画像。スケールバーは20μmを表す。(b)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVとの静脈内注射の24時間後の脳切片におけるIba1(緑色)、pACCα(マゼンタ)及びマージされた反応性を示す代表的な共焦点画像。スケールバーは20μmを表す。(c)pACCα及びSF1二重免疫蛍光に対する陰性対照。SF1(赤色)の有無にかかわらずDAPI(青色)、Alexa594、pACCα(緑色)の有無にかかわらずAlexa488、及び脳切片におけるマージされた反応性を示す代表的な共焦点画像。スケールバーは20μmを表す。(d)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVでの静脈内注射24時間後のARC、DMH及びPVH(視野ごとの定量化;4~12視野)におけるpACCα蛍光の定量。データを平均±SEMとして表した。統計的有意性は両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図12】中枢組織及び末梢組織に対するSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置の効果の図である。(a)対照(非ロード、n=6~7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=7マウス/群)sEVによる静脈内注射28日後の皮質、視床及び小脳におけるpACCα/ACCαレベルの定量化を、対照の%で表したもの。(b)対照(非ロード、n=6~7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=7マウス/群)sEVによる静脈内注射28日後の肝臓、副腎、精巣、BAT、心臓及び骨格筋におけるpACCα/ACCαレベルの定量化を、対照の%で表したもの。(c)対照(非ロード、n=5試料/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=5試料/群)sEVとの24時間のインキュベーション後の褐色脂肪細胞におけるpACCα/ACCαレベルの定量化を、対照の%で表したもの。(d)対照(非ロード、n=7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=7マウス/群)sEVによる静脈内注射28日後のng/mlで表される循環テストステロンレベルの定量化。(e)対照(非ロード、n=7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=7マウス/群)sEVによる静脈内注射28日後の精巣におけるステロイド産生酵素(STAR、p450scc及び17β-HSD3)のmRNAレベルの定量化を、対照の%で表したもの。(f)対照(非ロード、n=7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=6マウス/群)sEVによる静脈内注射28日後のng/mlで表される循環CORTレベルの定量。(g)対照(非ロード、n=5マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=6マウス/群)sEVによる静脈内注射28日後の副腎におけるステロイド産生酵素(STAR及びp450scc)のmRNAレベルの定量化を、対照の%で表したもの。(h)対照(非ロード、n=6マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=6マウス/群)sEVによる静脈内注射28日後のng/mlで表される循環LHレベルの定量。(i)対照(非ロード、n=6マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=7マウス/群)sEVによる28日間の静脈内注射後の下垂体におけるLHβサブユニットのmRNAレベルの定量化を、対照の%で表したもの。(j)0日目の対照(非ロード、n=5~6マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DN(n=4~5マウス/群)sEVの尾静脈への単回注射の1、2、3及び7日後のBAT UCP1レベルの定量。値は対照の%で表す。データを平均±SEMとして表した。対照に対して*P<0.05及び**P<0.01。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図13】循環パラメータ及び血行動態パラメータに対するSF1-AMPKα1-DN sEVによる全身処置の効果の図である。(a~i)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVでの28日間の静脈内注射後の循環レプチン(a)、GDF15(b)、IL-6(c)、IP-10(d)、トリグリセリド(e)、コレステロール(f)、NEFA(g)、AST(h)及びALT(i)の定量。(n=5~13マウス/群)。(j-m)対照(非ロード)又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVでの静脈内注射24時間後の心拍数(j、n=6マウス/群)、収縮期動脈圧(k、n=6マウス/群)、拡張期動脈圧(l、n=6マウス/群)及び平均動脈圧(m、n=6マウス/群)の定量化。データを平均±SEMとして表した。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって評価した。
【
図14】BAT及び骨格筋熱産生マーカに対するSF1-AMPKα 1-DN sEVによる全身処置の効果。(a)対照(非ロード、n=7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=7マウス/群)sEVによる静脈内注射28日後のBATにおけるUCP1タンパク質レベルの定量化。(b)対照(非ロード、n=6~7マウス/群)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=6~7マウス/群)sEVでの静脈内注射28日後の骨格筋における熱産生マーカ(Ucp3、Gpd2、PParγ、Sln、Ryr1、Atp2a2)のmRNAレベルの定量化を、対照の%で表したもの。データを平均±SEMとして表した。対照に対して*、**P<0.05 統計的有意性は、スチューデントt検定によって評価した。
【
図15】db/dbマウスにおけるエネルギーバランスに対するSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置の効果の図である。対照(非ロード;n=8野生型マウス;n=8db/dbマウス)又はSF1-AMPKα1-DNロード(n=7野生型;n=7db/dbマウス)sEVで静脈内処置した野生型マウス及びdb/dbマウスの、(A~B)体重;(C~D)体重変化;(E~H)毎日及び累積食物摂取量;(I及びK)脂肪量及び(J及びL)血清トリグリセリドレベル。データをMEAN±SEMとして表す。統計学的有意性は、混合効果分析(A~D)又は両側スチューデントt検定(E~L)によって決定した。*対照に対してP<0.05。
【
図16】db/dbマウスにおけるBAT熱産生及びWAT褐色化に対するSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置の効果の図である。対照又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVを静脈内注射した野生型マウス及びdb/dbマウスの、(A~B)代表的なpACCα及びACCαウェスタンブロット画像並びにVMHにおけるレベル(n=7マウス/群);(C-D)代表的なBATサーモグラフィ画像及びBAT温度(14日目;n=7~8マウス/群);(E~F)代表的なUCP1ウェスタンブロット画像及びBATにおけるレベル(n=6マウス/群);(G~H)代表的BAT UCP1染色及びレベル(n=7~8マウス/群)並びに(I~J)代表的sWAT UCP1染色及びレベル(n=7~8マウス/群)。ウェスタンブロット分析(A~B及びE~F)では、β-アクチン(VMH中;図示せず)及びα-チューブリン(BAT中)をタンパク質ロードの対照として使用した。試料を同じゲルにロードしたが、並んでいなかった場合、黒い線を免疫ブロットに挿入した。データをMEAN±SEMとして表す。統計的有意性は、片側スチューデントt検定を使用したdb/dbマウスにおけるBATの温度(D)を除いて、両側スチューデントt検定によって決定した。対照に対して*P<0.05、**P<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1-DN)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む小型細胞外小胞(sEV)の集団を提供し、AMPKα1-DN変異体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1、39又は41からなり、当該AMPKα1-DN変異体タンパク質は、作動可能に連結され、配列番号3と少なくとも98%、好ましくは100%の配列同一性を有するステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にあり、sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をそれらの外膜で発現するように操作されている。
【0009】
好ましくは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む融合タンパク質は、配列番号5、又は配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。
【0010】
好ましくは、sEVの集団は、食餌誘発性肥満症及び/又は遺伝性肥満症等の肥満症の処置又は予防に使用するためのものである。好ましくは、遺伝性肥満症はレプチン受容体(LEPR)欠乏誘導性肥満症である。
【0011】
好ましくは、sEVの集団は、肥満症の処置のウォッシュアウト後のリバウンド効果の改善又は減少に使用するためのものであり、好ましくは、リバウンド効果の当該改善又は減少は、処置のウォッシュアウトの少なくとも5日後に測定される。
【0012】
好ましくは、当該小型細胞外小胞の投与は、全身、好ましくは静脈内である。
【0013】
本発明は更に、全身投与された場合に、視床下部腹内側核(VMH)に位置するSF1発現ニューロンにおけるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化レベルを、未処置のSF1発現細胞におけるAMPK活性に対する効果の欠如と比較して有意に低下させることができる小型細胞外小胞(sEV)の集団を提供し、当該低下は、他のSF1発現組織、例えば非ニューロン組織/器官において有意に低下せず、好ましくは副腎、精巣又は脳下垂体からなるリストから選択され、当該小型細胞外小胞(sEV)の集団は、ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1-DN)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、AMPKα1-DN変異体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1、39又は41からなり、当該AMPKα1-DN変異体タンパク質は、作動可能に連結され、配列番号3と少なくとも98%、好ましくは100%の配列同一性を有するステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にあり、sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をそれらの外膜に発現するように操作されており、当該集団は、肥満症の処置を必要とする対象において、好ましくは全身投与経路を介して、肥満症の処置に使用するためのものである。
【0014】
好ましくは、AMPKα1-DN変異体タンパク質のヌクレオチド配列は、配列番号2からなる。好ましくは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む融合タンパク質は、配列番号5、又は配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。
【0015】
好ましくは、使用は、肥満症の処置のウォッシュアウト後のリバウンド効果の改善又は減少であり、リバウンド効果の当該改善又は減少は、処置のウォッシュアウトの少なくとも5日後に測定される。好ましくは、処置は、肥満症を回復又は改善することを含む。
【0016】
好ましくは、小型細胞外小胞は、30~150nmのサイズ分布を有する。好ましくは、sEVは、GRP94マーカを欠くことを特徴とする。好ましくは、sEVは、成熟抗原提示細胞におけるT細胞活性化因子分子の発現と比較して、少なくとも1つの当該T細胞活性化因子分子の統計的に有意な発現低下を有することを特徴とする未成熟抗原提示細胞から産生又は得られる。好ましくは、抗原提示細胞は樹状細胞、好ましくはJAWSII細胞株であり、少なくとも1つのT細胞活性化因子分子は、主要組織適合遺伝子複合体II(MHC-II)、分化抗原群80(CD80)若しくは分化抗原群86(CD86)、又はそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のT細胞活性化因子分子である。
【0017】
好ましくは、sEVはエキソソームである。
【0018】
一般的な定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別のことを明らかに示さない限り、複数の指示対象を含むことに留意されるべきである。更に、別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の要素の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明に包含されることが意図される。
【0019】
所与の量又は含量に関して「約」という用語は、±10パーセントの偏差を含むことを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素間の連言用語「及び/又は」は、個々の選択肢と組み合わせた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結合される場合、第1の選択肢は、第2の要素を伴わない第1の要素の適用可能性を指す。第2の選択肢は、第1の要素なしの第2の要素の適用可能性を指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素を一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のいずれか1つは、その意味の範囲内にあり、したがって、本明細書で使用される「及び/又は」という用語の要件を満たすと理解される。2つ以上の選択肢の同時適用性も、その意味の範囲内に含まれ、したがって「及び/又は」という用語の要件を満たすと理解される。
【0021】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形は、記載された整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含むが、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外しないことを意味すると理解される。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」又は「含む(including)」という用語で置き換えることができ、又は時には、本明細書で使用される場合、「有する(having)」という用語で置き換えることができる。前述の用語(comprising、containing、including、having)のいずれも、本発明の態様又は実施形態の文脈において本明細書で使用される場合はいつでも、「からなる(consisting of)」という用語で置き換えることができるが、あまり好ましくない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲の要素で指定されていない要素、工程、又は成分を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程を排除しない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「細胞外小胞」(EV)という用語は、生細胞から細胞外環境に放出された脂質二重層結合小胞を指す。これらの小胞は機能的核を欠き、複製することができない。従来、EVは、それらの特徴及び生合成経路に関して2つの主要なサブタイプ:エクトソーム及び小型細胞外小胞(sEV)に大別することができる。エクトソームは、100nm~1000nmのサイズ分布を有し、細胞質膜出芽によって生成される。エキソソームが含まれるsEVは、直径がより小さく(通常30~150nm)、多胞体(MVB)と原形質膜との融合によって放出される。sEVの成分は、それらの細胞起源及び潜在的な生物学的機能を示す。本発明との関連において、sEV又はエキソソームは、以下に詳細に説明するように、抗原提示細胞において産生されることが好ましい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という語句は、本明細書に開示されるsEVの集団の投与から利益を得るであろう対象、例えば哺乳動物対象、好ましくはヒトを含む。それを必要とする対象は、減量しようとしている人、又は減量を必要としている人であり得る。対象は、女性、好ましくはヒト女性であり得る。好ましくは、対象は男性、より好ましくはヒト男性である。より好ましくは、対象は肥満症であるか、又は肥満症の処置を必要としている。「個体」、「患者」又は「対象」という用語は、本出願では互換的に使用され、決して限定することを意味するものではない。「個体」、「患者」又は「対象」は、あらゆる年齢、性別及び身体的状態のものであり得る。
【0025】
「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、交換可能に使用され、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン又はシチジン;「RNA分子」)若しくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、又はデオキシシチジン;「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形態、又はそれらの任意のホスホエステル類似体、例えばホスホロチオエート及びチオエステルを、一本鎖形態又は二本鎖ヘリックスのいずれかで指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」又は「符号化配列」という用語は、遺伝子産物をコードするインビトロ又はインビボのポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの例では、遺伝子は、コード配列、すなわち遺伝子産物をコードする配列からなるか又は本質的になる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「AMP活性化プロテインキナーゼ」(AMPK)という用語は、細胞エネルギーの恒常性において役割を果たし、主に細胞エネルギーが低い場合にグルコース及び脂肪酸の取込み及び酸化を活性化する酵素を指す。これは高度に保存された真核生物タンパク質ファミリに属する。それは、酵母からヒトまで保存された機能性酵素を一緒に作る3つのタンパク質(サブユニット)からなる。これは、肝臓、脳、及び骨格筋を含む多くの組織で発現される。AMP及びADPの結合に応答して、AMPK活性化の正味の効果は、肝臓脂肪酸酸化の刺激、ケトン生成、骨格筋脂肪酸酸化及びグルコース取込みの刺激、コレステロール合成、脂肪酸合成及びトリグリセリド合成の阻害、脂肪細胞脂質生成の阻害、並びに膵臓ベータ細胞によるインスリン分泌の調節である。AMPKは、α、β及びγサブユニットによって形成されるヘテロ三量体タンパク質複合体である。本明細書で使用される場合、「AMPKα」は、AMPKタンパク質のサブユニットアルファ(α)を指す。その成分のアイソフォームの存在により、哺乳動物には12種類のAMPKが存在し、そのそれぞれが異なる組織局在化及び異なる条件下での異なる機能を有し得る。α、β及びγサブユニットはまた、異なるアイソフォーム中に見出され得る:γサブユニットは、γ1、γ2又はγ3アイソフォームのいずれかとして存在し得、βサブユニットは、β1又はβ2アイソフォームのいずれかとして存在し得、αサブユニットは、α1又はα2アイソフォームのいずれかとして存在し得る。本明細書で使用される場合、「AMPKα」は、AMPKタンパク質のサブユニットαのアイソフォーム1を指す。本明細書で使用される場合、「ドミナントネガティブAMPKα1変異体タンパク質」(AMPKα1-DN)という用語は、少なくとも点変異D168Aでのその活性部位の修飾によるAMPKα1、好ましくはラットAMPKα1タンパク質の不活性アイソフォームを指し、アミノ酸位置(168)は、野生型ラットAMPKa1配列、好ましくは配列番号40の野生型ラットAMPKa1配列に関して発現される。本発明の文脈において、「AMPKα1-DN」は、野生型ラットAMPKa1配列、好ましくは配列番号40の野生型ラットAMPKa1配列に関して少なくとも点変異D168でその活性部位を修飾することによるAMPKα1、好ましくはラットAMPKα1タンパク質の不活性アイソフォームを指し、AMPKα1-DNタンパク質の配列は、ラットAMPKα1タンパク質の配列(実施例に示すように)、又はAMPKα1タンパク質のヒト相同、又はヒトにおける処置のためのヒト化若しくはコドン最適化AMPKα1タンパク質等の、処置が適用される種に対応するラットAMPKα1タンパク質の相同配列であり得る。あるいは、ラットAMPKα1-DNは、マウス(Seoane-Collazo et al,2018,SF1-Specific AMPKα1 Deletion Protects Against Diet-Induced Obesity.Diabetes.2018 Nov;67(11):2213-2226を参照されたい)及びヒト細胞(Stein et al.2000.The regulation of AMP-activated protein kinase by phosphorylation.Biochem.J.(2000)345,437-443)等の他の動物において有効であったことが示されているので、AMPKα1タンパク質のラット配列を使用して、ヒト等の他の種を処置することができる。AMPKヒト配列を使用する場合、配列は、他の点変異、例えばT172A変異もまた又は代替で含み得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「核内受容体ステロイド産生因子-1(SF-1)」という用語は、腹内側核ニューロン集団の最終分化及び維持に不可欠な転写因子を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「SF1発現細胞又は組織」という用語は、SF1転写因子を発現することができる細胞又は組織を指す。好ましくは、SF1発現細胞は、VMH領域に位置するSF1発現ニューロンである。
【0030】
視床下部は、とりわけエネルギー代謝の調節に関与する弓状核(ARC)、腹内側核(VMH)、室傍核(PVH)、外側視床下部(LHA)及び背内側核(DMH)を含む解剖学的に異なる相互接続された視床下部核に組織化される。したがって、本明細書で使用される場合、「視床下部腹内側核」(VMH)という用語は、視床下部領域を指す。VMH領域は、褐色脂肪組織(BAT)熱産生を介して摂食行動及びエネルギー消費調節に関与することが知られている。VMHは、軸索投射を介して他の核に関連する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される希釈剤」とは、薬学的投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤を意味する。薬学的に有効な物質に対するそのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。許容され得る担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、本発明の範囲を限定するものではないが、以下が含まれる:追加の緩衝剤;防腐剤;共溶媒;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;EDTA等のキレート剤;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ポリエステル等の生分解性ポリマー;ナトリウム、多価糖アルコール等の塩形成対イオン;アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、及びトレオニン等のアミノ酸;ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、myo-イニシトース(myoinisitose)、myo-イニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール等の有機糖又は糖アルコール;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、[α]-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウム等の硫黄含有還元剤;ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、又は他の免疫グロブリン等の低分子量タンパク質;並びにポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー。
【0032】
タンパク質又はポリペプチド配列のアミノ酸残基の位置又は部位は、好ましくは、第1のアミノ酸残基から順に番号付けされ、第1のアミノ酸残基はその後、位置1に位置する。例えば、137アミノ酸のタンパク質は、137(最後のアミノ酸残基)まで1(第1のアミノ酸残基)の番号が付けられた残基を有する。好ましくは、第1の位置又は位置番号1は、窒素原子又は遊離アミノ基を有するポリペプチド鎖の5プライム(5’)末端に位置する第1のアミノ酸残基に対応する。したがって、番号付けは、好ましくは、タンパク質又はポリペプチドのN末端又は5’末端の第1のアミノ酸残基から始まり、タンパク質又はポリペプチドの3’末端又はC末端で終わる。好ましくは、アミノ酸残基の位置は、翻訳された成熟タンパク質のアミノ酸配列を使用して番号付けされる。
【0033】
2つ以上のヌクレオチド配列、ポリペプチド配列又はタンパク質配列の文脈における「配列同一性」又は「同一性パーセント」という用語は、配列比較アルゴリズム、好ましくはBLASTアラインメントツールを使用して、又は代替的に目視検査によって測定して、比較し、第2の分子と最大に対応するように整列させた場合に、同じである(「同一である」)か、又は同一であるヌクレオチド又はアミノ酸残基の指定されたパーセンテージを有する(「同一性パーセント」)2つ以上の配列又は部分配列を指す。「配列同一性」又は「同一性パーセント」は、核酸、ポリペプチド又はタンパク質中の同じ位置の同一のヌクレオチド又はアミノ酸の数を計算することによって決定することができる。同一性パーセントの計算は、2つ以上の配列間の最適なアラインメントの決定を含む。アラインメントは、限定されないが、核酸の非コード領域及びポリペプチド配列の切断又は伸長等、試験される配列のそれぞれにおける挿入及び欠失(すなわち、「ギャップ」)を考慮に入れることができる。Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)等のコンピュータプログラム及びアルゴリズムを使用して、同一性パーセントを決定することができる。BLASTは、米国国立バイオテクノロジー情報センターによって提供される多くのリソースの1つである。遺伝暗号は縮重であり、2つ以上のコドンが所与のアミノ酸をコードすることができるので、核酸が同一のポリペプチドをコードする場合、核酸のコード領域は同一であると考えられる。したがって、同一性パーセントは、核酸によってコードされるポリペプチドに基づいて計算することもできる。同一性パーセントは、完全長コンセンサスゲノム配列に基づいて、又はゲノム配列の一部に基づいて、例えば、限定されないが、個々のオープンリーディングフレーム(ORF)に基づいて計算することができる。
【0034】
本明細書に記載のタンパク質又はポリペプチドに関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大パーセント配列同一性を達成するために配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、参照配列(すなわち、それが由来するタンパク質又はポリペプチド)中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、BLAST等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当技術分野の技能の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0035】
好ましくは、本明細書で使用される「同一性のパーセント」は、局所的なアラインメントの文脈で決定され、すなわち、2つの配列をそれらの全スパンにわたってアラインメントすることを目的とする全体的なアラインメントとは対照的に、核酸塩基配列間の局所的な類似性の領域のアラインメントに基づく。したがって、本発明の文脈において、同一性パーセントは、好ましくは局所アラインメント比較アルゴリズムのみに基づいて計算される。
【0036】
説明
この研究の目的は、SF1ニューロンにおける視床下部AMPKの活性を特異的に低下させることによって、肥満症を処置又は予防するための新しい戦略を開発することである。この目的のために、本発明者らは、ドミナントネガティブAMPKα1変異体(AMPKα1-DN)をコードするプラスミドの担体として小型細胞外小胞(sEV)を使用した。sEVは、多小胞体に由来し、標的細胞の表現型及び機能を改変することができるタンパク質、脂質、及び遺伝情報を含み、これにより、それらが生理学及び病態生理学において重要な役割を果たすことが可能になる。視床下部SF1発現ニューロンにおいてのみこのAMPKα1-DN変異体の発現に特異性を付与するために、SF1プロモータを使用してその発現を駆動した。特に、任意の侵襲的な頭蓋手術/手順を回避するために、この研究の目的はまた、全身投与経路を使用して視床下部SF1ニューロン内のAMPKを特異的に標的とし、それらを潜在的な治療的使用のために手に入れやすくすることであった。
【0037】
したがって、本発明は、肥満症の処置又は予防に使用するために全身投与されるSF1-AMPKα1-DNロードsEVを提供する。未成熟樹状細胞を使用して大量のsEVを生成した。産生されたsEVに神経標的化能力を付与するために、未成熟樹状細胞を遺伝子改変して、(i)sEV膜で高発現するタンパク質であるリソソーム関連膜タンパク質2b(Lamp2b)から構成され、(ii)ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)への結合を介して血液脳関門(BBB)の通過を可能にする神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)由来の特定の糖タンパク質に融合した、融合タンパク質を一過性に発現させた。
【0038】
この戦略の有効性を試験するために、酵素AMPKの主要標的である調節キナーゼであるアセチル-CoAカルボキシラーゼα(pACCα)のリン酸化レベルを、SF1-AMPKα1-DNロードLamp2b-RVG sEVで処置した肥満症マウスにおいて、中枢投与経路及び全身投与経路を介して測定した。結果は、SF1-AMPKα1-DN sEVが摂食非依存性体重減少を誘導することを実証した。視床下部抽出物中のAMPK阻害の程度を制御するために使用されるpACCαのレベルもまた、VMH領域で特異的に低下したが、ARC又はLHA領域では低下せず、これはBAT熱産生の増加に関連していた(
図2)。全身投与すると、導入遺伝子はVMH試料でのみ検出されたが、SF1を発現する器官(すなわち、副腎、下垂体及び精巣)又はSF1を発現しない器官(すなわち、BAT、肝臓、骨格筋及び心臓)を含む他の評価器官のいずれにも検出されず(
図3a)、この処置の効果が神経細胞、特に、VMHのSF1発現ニューロンに限定されることを示し、この戦略が非常に特異的であることを実証している。更に、SF1-AMPKα1-DNロードsEVは、VMHにおけるACCαのリン酸化及びAMPK活性のレベルの有意な減少を誘導した(
図3)。
【0039】
更に、本発明者らは、肥満症マウスにおけるsEVによる処置がリバウンド効果、すなわち対照マウスの体重に追いつくための体重減少の迅速な回復を有するかどうかを研究した。
図4は、処置を中止した場合にsEVの効果が持続したことを示す。SF1-AMPKα1-DNロードsEVで処置したマウスは、対照sEVで処置したマウスと比較した場合、注射を中止した(ウォッシュアウト)2週間後まで体重の回復を示さなかった。これは、体重減少が一過性ではなく、ウォッシュアウト期間が処置マウスにおけるリバウンド効果を暗示しないことを示す。
【0040】
まとめると、これらのデータは、SF1-AMPKα1-DN変異体ロードLamp2b-RVG sEVが、体重減少を誘導するために特定のSF1発現ニューロンにおけるAMPK活性を特異的に下方制御又は阻害するのに適していることを支持し、したがって、sEVは、肥満症を処置又は予防するための潜在的な治療戦略を表す。
【0041】
第1の態様では、本発明は、肥満症の処置又は予防を必要とする対象における肥満症の処置又は予防に使用するための小型細胞外小胞(sEV)の集団の全身投与に関する。特に、第1の態様では、本発明は、肥満症の処置又は予防を必要とする対象における肥満症の処置又は予防に使用するためのsEVの集団の全身投与に関し、sEVは、作動可能に連結され、ステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にある、AMPKタンパク質、好ましくはAMPKα、好ましくはAMPKα1、最も好ましくはAMPKα1-DN(ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1変異体)タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2b(Lamp2b)に融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をそれらの外膜において好ましくは一過性に発現するように操作される。コード配列及び遺伝子発現制御配列又はプロモータは、コード配列の発現又は転写及び/又は翻訳を遺伝子発現制御配列の影響又は制御下に置くような方法で連結されている場合、作動可能に連結されていると言われる。例えば、ドミナントネガティブAMPKα1変異体タンパク質(AMPKα1-DN)は、AMPKα1-DNの発現レベルがSF1プロモータによって調節されるように、SF1プロモータに作動可能に連結される。一実施形態では、肥満症は、食餌誘発性肥満症及び/又は遺伝性肥満症である。一実施形態では、肥満症は遺伝性肥満症、好ましくはレプチン受容体(LEPR)欠乏誘導性肥満症である。
【0042】
好ましくは、sEVの集団はエキソソームである。一実施形態では、sEV又はエキソソームの集団は実質的に純粋な集団である。好ましくは、sEV又はエキソソームを単離する。本発明の文脈において、「単離」という用語は、sEV若しくはエキソソーム又はその集団が、それらが産生された環境又は細胞培養物内にないことを示す。sEV若しくはエキソソーム又はその集団は、周囲環境又は細胞培養から実質的に分離されている。いくつかの実施形態では、集団は実質的に純粋であるか、又はsEV若しくはエキソソームが豊富であり、sEV若しくはエキソソームの少なくとも約50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は100%を含む。一実施形態では、集団はsEV又はエキソソームにおいて純粋である。それらは、他の細胞と通信する手段として多くの細胞型によって放出され、したがって細胞内容物が集団から除去される可能性がある。細胞外小胞のカーゴには、それらが由来する細胞のタンパク質、脂質、核酸及び膜受容体が含まれる。単離されたという用語はまた、環境又は細胞培養物から、例えばそれらが由来する上清又はコンディショニング培地から除去されたsEV又はエキソソームの集団を包含する。
【0043】
一実施形態では、sEV又はエキソソームは球形又は円形である。更に、sEV又はエキソソームは、2nmを超えるサイズを有し得る。sEV又はエキソソームは、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm又は160nmを超えるサイズを有し得る。エキソソームは、実質的に160nm以上のサイズを有し得る。sEV又はエキソソームは、30nm~50nm、30nm~100nm、好ましくは30nm~150nm又は30nm~200nm等の範囲のサイズ分布を有し得る。サイズ分布は、様々な手段によって決定され得る。原則として、サイズは、サイズ分画及び関連するサイズカットオフを有する膜を通した濾過によって決定され得る。次いで、sEV又はエキソソームのサイズを、SDS-PAGEで成分タンパク質の分離を追跡することによって、又は生物学的アッセイによって決定することができる。サイズはまた、電子顕微鏡法又はナノ粒子追跡分析(NTA)によって決定され得る。
【0044】
本明細書で提供されるsEV又はエキソソームの集団は、AMPKタンパク質、好ましくはAMPKα、好ましくはAMPKα1、最も好ましくはAMPKα1-DN変異体タンパク質をコードする遺伝子を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むか又はそれをロードされ、当該遺伝子は、作動可能に連結され、SF1プロモータの制御下にある。好ましくは、集団のsEVのそれぞれに、AMPKタンパク質、好ましくはAMPKα、好ましくはAMPKα1、最も好ましくはAMPKα1-DN変異体タンパク質をコードする遺伝子を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドがロードされ、当該遺伝子は、作動可能に連結され、SF1プロモータの制御下にある。好ましくは、少なくとも1つのポリヌクレオチドはDNA、より好ましくはプラスミドである。したがって、SF-1の制御下でAMPK-DNをコードするプラスミド(SF1-AMPK-DNプラスミド)を設計することにより、AMPK-DNを、VMHに位置するSF1発現ニューロンにおいてのみ発現させることが可能になる。sEV又はエキソソームが標的細胞と融合されると、AMPKタンパク質、好ましくはAMPKα、好ましくはAMPKα1、最も好ましくはAMPKα1-DN変異体タンパク質は、標的細胞、好ましくは視床下部腹内側核(VMH)に位置するSF1発現ニューロンである場合にのみ発現される。sEVに様々なカーゴをロードするために使用される技術には、sEV及びリポソームを融合するための自由解凍サイクル、超音波処置、押出、サポニンによる透過化、及びエレクトロポレーションが含まれる。核酸をsEVにロードするためのいくつかの市販のキットが利用可能であり、当業者はそれらに精通しているであろう。好ましくは、少なくとも1つのポリヌクレオチド、好ましくはプラスミドは、主にsEV又はエキソソームのコアに位置する。
【0045】
一実施形態では、sEVのポリヌクレオチドに含まれるAMPKタンパク質、好ましくはAMPKα、好ましくはAMPKα1、最も好ましくはAMPKα1-DN変異体タンパク質は、少なくとも変異又はアミノ酸置換D168Aを含み、アミノ酸番号付けは、ラットのAMPKa1タンパク質に関して、好ましくは配列番号40の野生型ラットAMPKa1配列に関して表される。一実施形態では、AMPK、AMPKα、AMPKα1、AMPKα1-DNタンパク質のヌクレオチド又はアミノ酸配列は、げっ歯類、好ましくはマウスの配列である。別の実施形態では、AMPK、AMPKα、AMPKα1、AMPKα1-DN配列のヌクレオチド又はアミノ酸配列は、ヒトホモログ配列、又はマウス配列のヒト化若しくはヒトコドン最適化バージョンである。一実施形態では、sEV又はエキソソームに含まれる少なくとも1つのポリヌクレオチドによってコードされるAMPKα1-DN変異体タンパク質は、その全長にわたって配列番号1と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。一実施形態では、AMPKα1-DN変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、配列番号2と、その全長にわたって少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0046】
一実施形態では、sEV又はエキソソームに含まれる少なくとも1つのポリヌクレオチドにも含まれるステロイド産生因子1(SF1)ポリヌクレオチド配列は、その全長にわたって、配列番号3と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0047】
一実施形態では、作動可能に連結され、SF1プロモータの制御下にある、AMPKα1-DN変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、その全長にわたって配列番号4と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0048】
本明細書で提供されるsEV又はエキソソームは、リソソーム関連膜タンパク質2b(Lamp2b)に融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含むか又はそれからなる融合タンパク質を、好ましくは主にその外膜に、更に含むか又はそれにロードされ、当該融合タンパク質は、配列番号5と、その全長にわたって少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるか又はそれから本質的になる。「融合タンパク質」とは、本明細書では、少なくとも2つのドメインによって形成されるタンパク質を指し、少なくとも2つのドメインは、それらが単一の単位として合成又は翻訳されるように次々に連結されており、したがって融合タンパク質の2つのドメインは、単一のポリペプチドの一部である。この特定の場合において、融合タンパク質を含むか又は融合タンパク質からなるドメインは、RVGペプチド及びLamp2bタンパク質である。一実施形態では、融合タンパク質のドメインは、リンカーペプチドによって連結され得る。本明細書で使用される「リンカーペプチド」は、融合タンパク質のドメイン間に位置する短いペプチド配列である。リンカーペプチドは、融合タンパク質に含まれる2つのドメインに運動柔軟性を提供するように配置される。本発明に関連して、リンカーペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは少なくとも2つの連続するアミノ酸残基、任意選択で3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は20個以上のアミノ酸残基を有する。リンカーペプチドは、可撓性リンカー、剛性リンカー、及びインビボ切断可能リンカーを含む。
【0049】
本明細書に記載のsEV又はエキソソームの集団は、少なくとも1つのLamp2b-RVG融合タンパク質を含むことを特徴とする。その目的のために、参考文献28(本明細書の例を参照)に以前に記載されたように設計されたもの等のLamp2b-RVGプラスミドを、エキソソーム生成細胞、好ましくはエキソソーム生成未成熟樹状細胞にトランスフェクトして、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合された神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む融合タンパク質を一過性に発現させることができ、好ましくは、そのような融合タンパク質は、配列番号5と、その全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、sEV又はエキソソームは、それらを産生するために使用された細胞(以下、産生細胞と呼ばれる)に由来するマーカを更に含む。好ましくは、産生細胞は免疫細胞、より好ましくは抗原提示細胞、更により好ましくは樹状細胞である。好ましくは、産生細胞は哺乳動物細胞である。産生細胞は、初代細胞又は不死化細胞であり得る。一実施形態では、産生細胞は、免疫原性が低い細胞、好ましくは未成熟免疫細胞、好ましくは未成熟抗原提示細胞、最も好ましくは未成熟樹状細胞又は単球である。「未成熟」とは、本明細書では、活性化されていないか、生物学的に活性でないか、又は活性化マーカ若しくは分子を表面に提示しない細胞を指す。未成熟樹状細胞は、成熟樹状細胞とは異なる形態学的表現型を有する。未成熟樹状細胞は、丸い滑らかな表面を有するが、成熟樹状細胞等の成熟細胞は、複数の仮足を有する粗い表面を有する。未成熟樹状細胞は、MHC-II、CD80及びCD86等のT細胞活性化因子を欠く大量のエキソソームを産生する。したがって、一実施形態では、産生細胞、好ましくは未成熟樹状細胞は、主要組織適合遺伝子複合体II(MHC-II)、分化抗原群80(CD80)若しくは分化抗原群86(CD86)又はそれらの組合せ等の、活性化マーカ、好ましくはT細胞活性化因子マーカ又は分子を発現しない。一実施形態では、産生細胞は、未成熟不死化細胞、好ましくは未成熟不死化樹状細胞又は単球、最も好ましくはAmerican Type Culture Collection CRL-1194;ATCC;Manassas,VA,USAに由来するJAWS II細胞株、又は当該JAWS II細胞株に由来する細胞である。また、好ましくは、産生細胞は、好ましくはその外膜においてRVG-Lamp2b融合タンパク質を発現する遺伝子改変細胞である。一実施形態では、産生細胞は、成熟抗原提示細胞における当該T細胞活性化因子分子の発現と比較して、少なくとも1つのT細胞活性化因子分子の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%の統計学的に有意な発現低下を有することを特徴とする未成熟抗原提示細胞である。当該T細胞活性化因子分子の減少率は、当技術分野で公知の技術によって、例えばフローサイトメトリ又はRT-PCRによって測定することができる。
【0050】
産生細胞を馴化培地中で増殖させ、sEV又はエキソソームを産生し、当該培地に放出する。本発明の文脈において、「馴化培地」という用語は、細胞培養物の上清として理解される。sEV又はエキソソームの集団は、細胞内多小胞体が産生細胞の原形質膜と融合すると細胞外培地に放出されるので、sEV又はエキソソーム外膜は産生細胞の1つと同様である。したがって、一実施形態では、sEV又はエキソソームの集団は、細胞マーカ、好ましくは細胞未成熟樹状細胞(iDC)マーカについて陽性である。更に好ましくは、sEV又はエキソソームの集団は、ALIX、TSG101、CD9若しくはCD81、又はそれらの任意の組合せからなる群より選択される特異的エキソソームマーカの1つ以上を含む。別の実施形態では、sEV又はエキソソームは、MHC-II、CD80、CD86若しくはGRP94マーカ、又はそれらの任意の組合せを欠くことを特徴とする。一実施形態では、sEV又はエキソソームは未成熟表現型を有するので、それらは免疫原性が低い。
【0051】
好ましい実施形態では、第1の態様又はその実施形態のいずれかによる集団は、肥満症の処置又は予防を必要とする対象における肥満症の処置又は予防に使用するための未成熟樹状細胞(iDC)由来sEV又はエキソソームの実質的に純粋な集団を含み、iDC由来sEV又はエキソソーム、好ましくはiDC由来sEV又はエキソソームのそれぞれは、作動可能に連結され、SF1プロモータの制御下にある、AMPKタンパク質、好ましくはAMPKα、好ましくはAMPKα1、最も好ましくはAMPKα1-DN変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、iDC由来sEV又はiDC由来エキソソームは、Lamp2bに融合したRVGペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をその外膜に一過性に発現するように操作される。
【0052】
上記のように、結果は、本明細書に記載のsEV又はエキソソームの集団が、VMHに位置するSF1発現ニューロンにおけるpACCαのリン酸化レベル及び/又はAMPKの活性化レベルを減少又は低下させることができるという証拠を提供する。更に、本発明は、本明細書に開示される処置の顕著な特異性を示し、pACCαのリン酸化レベルを他の組織で評価した場合、pACCαレベルは、ARC、DMH及びPVH等の隣接視床下部核においても(
図11)、他の脳領域においても(皮質、視床、小脳、
図12A)低下しないことが見出された。これは、これらの脳領域におけるAMPKの活性化レベルが処置によって改変されなかったことを示す。更に、脳外の他の組織における処置の影響を調査し、全身処置が精巣、副腎及び下垂体機能等の他の生物学的プロセスにどのように影響を及ぼし得るかを解明するために、対照及びSF1-AMPKα1-DNロードsEVで処置したマウスの精巣及び副腎におけるテストステロン及びコルチコステロン(CORT)の循環レベル並びに重要なステロイド産生酵素のmRNA発現を分析した。データは、SF1-AMPKα1-DNロードsEVでの処置がこれらのパラメータのいずれにおいても有意な変化を誘導しなかったことを示した(
図12d及び
図12e)。同様に、下垂体産生がSF1によって調節されることが知られている黄体形成ホルモンの循環レベル(LH;
図12h)又はLHβサブユニットのmRNAレベル(
図12i)のいずれにも変化は見られなかった。全体として、これらの結果は、他の組織(下垂体、精巣及び副腎等のSF1を発現するものを含む)におけるAMPKシグナル伝達の鈍化に対する潜在的な副作用がおそらく無視できることを示唆しており、当該組織におけるAMPKの活性化レベルが処置によって影響又は改変されなかったことを確認しており、処置が有効であるだけでなく、安全かつ非常に特異的であることを示している。したがって、本明細書で提供される処置の安全なプロファイル及び高い特異性は、肥満症の処置におけるその治療的使用を保証する。安全なプロファイル及び高い特異性は、以下の実施例に示すように、この種の投与が局所(脳)投与よりも侵襲性が低いため、本明細書に記載のsEVの全身投与に関連するが、処置は非常に特異的であるため、AMPKシグナル伝達の減少は標的組織(脳のVMH領域に位置するSF1発現ニューロン)にのみ存在するため、標的外効果は見られない。
【0053】
これを考慮して、好ましい実施形態では、第1の態様又はその実施形態のいずれかによる肥満症の処置に使用するためのsEVの集団は、全身投与された場合、視床下部腹内側核(VMH)に位置するSF1発現ニューロンにおけるAMPK、好ましくはAMPKa1の活性化レベルを、未処置SF1発現細胞、好ましくは未処置SF1発現ニューロンにおけるAMPK、好ましくはAMPKa1の活性化レベルと比較して有意に減少させることができ、当該減少は、他のSF1発現細胞及び/又は組織、好ましくは非神経組織/器官、より好ましくは副腎、精巣、又は脳下垂体からなるリストから選択されるものにおいて統計的に有意ではない。したがって、AMPK阻害の結果として、外因性AMPKa1-DNアイソフォームはキナーゼ活性を欠き、したがってAMPKヘテロ三量体(α、β、γ;この場合、好ましくはα1)は適切に調節され得ず、下流の標的に対してそのリン酸化効果を発揮し得ない。「AMPK阻害」とは、本明細書ではAMPK活性化レベルの減少と呼ばれる。
【0054】
一実施形態では、処置の特異性を示す他のSF1発現細胞及び/又は組織の統計的に有意な減少の非存在は、女性における精巣の非存在の場合等、対象における当該SF1発現細胞及び/又は組織の非存在に起因し得る、並びに/あるいは当該細胞/組織の存在にもかかわらず、処置がそれらに影響を与えていないことに起因し得る。
【0055】
本明細書で提供される処置の安全性及び有効性を試験するために、視床下部腹内側核(VMH)に位置するSF1発現ニューロンのAMPKの活性化レベルを直接測定することに加えて、当該活性化レベルの減少を示す他の代用マーカを更に使用できることに留意されたい。例えば、アセチル-CoAカルボキシラーゼα(pACCα)のリン酸化レベルは、処置の有効性又は安全性の指標として使用することができる。したがって、一実施形態では、第1の態様又はその実施形態のいずれかによる全身経路を介した肥満症の処置に使用するためのsEVの集団は、全身投与された場合、視床下部腹内側核(VMH)に位置するSF1発現ニューロン中のpACCαのリン酸化レベルを、未処置のSF1発現細胞、好ましくはSF1発現ニューロン中のpACCαのリン酸化レベルと比較して有意に減少させることができ、当該減少は、他のSF1発現細胞及び/又は組織、好ましくは副腎、精巣、又は脳下垂体からなるリストから選択される細胞及び/又は組織では統計的に有意ではない。
【0056】
「統計的に有意」又は「有意」とは、本明細書では、データの結果が偶然のみでは説明できないという分析者による判定と呼ばれる。統計的仮説検定は、当業者がこの決定を行う方法である。この試験はp値を提供し、これは、結果が真に偶然のみによるものであると仮定して、データの結果ほど極端な結果を観察する確率である。0.1以下(好ましくは0.05、0.01、0.001以下)のp値は、本明細書では統計的に有意であると考えられる。例えば、VMHに位置するDF発現ニューロンにおけるpACCαレベル又はAMPKタンパク質の活性化レベルの減少は、VMHに位置する処置されたSF1発現ニューロンを未処置のSF1発現細胞又はニューロンと比較するために統計学的検定を実施した場合の統計学的に有意な低下又は減少であり、当該統計学的検定の結果として得られるp値は、0.1以下、好ましくは0.05、0.01、0.001以下である。
【0057】
本明細書では、「減少」又は「増加」とは、参照細胞又は値又は参照組織と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%のそれぞれ低下又は上昇を指す。好ましくは、増加は、参照細胞又は値又は参照組織に対して少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20倍の増加である。「参照細胞又は組織」とは、本明細書では、本明細書に記載のエキソソームのsEVで処置されていない細胞又は組織を指す。好ましくは、当該細胞又は組織は、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞、好ましくはニューロン、又は中枢神経系、好ましくはVMH領域からの細胞又は組織である。参照細胞はまた、任意のSF1発現細胞、好ましくは視床下部、好ましくはVMH領域に位置するSF1発現ニューロンであり得る。参照細胞はまた、単一の細胞、又は同じ対象若しくは対象の集団に由来する細胞の集団であり得る。参照細胞はまた、肥満症に罹患していない対象からの細胞、好ましくはSF1発現細胞であり得る。「参照値」とは、本明細書では、パラメータ、例えば未処置細胞又は参照細胞におけるpACCαのレベル又はAMPKタンパク質の活性レベルの平均的な既知の正確な測定値を指す。参照値は、より正確な測定機器からの反復測定の平均である。当業者は、当該参照値を得る方法を知っているであろう。
【0058】
好ましくは、SF1発現細胞は、視床下部腹内側核(VMH)に位置するニューロンである。リン酸化又は酵素活性のレベルは、「絶対的」定量又は「相対的」若しくは比較定量によって発現又は測定され得、それらは、適切な技術を使用して当業者によって計算することができる。pACCαのリン酸化レベルを測定するために使用される方法又は技術としては、限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリ、キナーゼ活性アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及び抗体アレイ、質量分析(MS)が挙げられる。AMPKタンパク質の活性レベルを測定するために使用される方法又は技術には、光学的、磁気共鳴及び核イメージング法(蛍光に基づく方法、例えば、in situザイモグラフィ、磁気共鳴に基づく方法)、質量分析に基づく方法、サンプリングに基づく方法(微小透析、電気浸透に基づく方法)、及び酵素活性測定法が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
上で説明したように、及び
図4に示すように、本明細書に記載のsEVで処置したマウスは、体重の著しい長期減少を示し、食物摂取量に変化はなかった。注目すべきことに、処置を中止した場合、sEVの効果は持続し、対照sEVで処置した対照マウスと比較した場合、処置を中止した後(ウォッシュアウト)、処置マウスは体重の取戻しを示さなかったことを表した。全体として、これらのデータは、RVG-Lamp2b融合タンパク質を含むSF1-AMPKα1-DNロードsEVの集団によって誘導される体重減少が一過性ではなく、処置ウォッシュアウトが、処置マウスを未処置マウスの体重に到達させるリバウンド効果をもたらさないことを示している。このデータは、本明細書に開示される処置が、処置のウォッシュアウト又は中止の間及び/又は後にリバウンド効果の改善又は減少を更に提供するという考えを支持する。「改善する」とは、本明細書では、患者の状態の改善、又は患者の状態に関連して耐えることが困難な状態を矯正する、又は少なくともより許容可能な状態にする努力をする活性を指す。特に、状態は、肥満症である。「リバウンド効果」とは、本明細書では、処置の効果(sEV又はエキソソームの集団)が過ぎたとき、又は患者がもはやそれに応答していないときの産生陰性症状と呼ばれる。リバウンド効果の例のモードとして、Kawashima(2019,doi:10.3389/fphys.2019.01483)による論文の
図3を参照すると、高脂肪食の最初のサイクルの40日間後に、処置マウスが対照マウスよりも有意に重かったことが観察される。したがって、「リバウンド効果」とは、本明細書では、基礎体重を処置なしの対象の体重と理解して、対象の基礎体重の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%又はそれを超える増加を意味する。
【0060】
好ましくは、リバウンド効果の減少又は改善は、処置ウォッシュアウト中又は処置ウォッシュアウト後の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は90日を超えて測定される。好ましくは、リバウンド効果の低下又は改善は、処置ウォッシュアウト中又は処置ウォッシュアウト後少なくとも5~15、5~20、5~30、又は5~40日の間に測定される。
【0061】
したがって、一実施形態では、sEV又はエキソソームの集団は、全身投与された場合、処置なし、処置のウォッシュアウト又は中止の間及び/又は後に、対象の基礎体重の少なくとも15%~20%の増加として好ましくは測定される、リバウンド効果を有意に減少又は改善することができる。一実施形態では、sEV又はエキソソームの集団は、全身投与された場合、肥満症又はその症状を有意に回復又は改善することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、sEV又はエキソソームは、処置される対象の自己細胞から産生されるか、又は処置される対象から単離された細胞から得られた。他の実施形態では、sEV又はエキソソームは、処置される対象に対する同種細胞から産生されるか、又は処置される対象以外のドナーから単離された細胞から得られた。特定の実施形態では、細胞は哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。特定の実施形態では、細胞は未成熟樹状細胞である。
【0063】
sEVの調製及び保存並びにそれらの組成
本明細書に記載の集団は、1つ以上の薬学的に許容される担体と共に、上で定義したsEV又はエキソソームの実質的に純粋な集団の有効量の水中油型エマルジョンを含む。「有効量」は、肥満症又は肥満症処置後のリバウンド効果を低減、改善、処置及び/又は予防するのに十分な量である。有効量は、処置される対象の年齢及び体重、疾患状態がどの程度進行しているか、患者の全般的な健康状態、症状の重症度、及びエマルジョンが単独で又は他の療法と組み合わせて投与されているかどうかを含むいくつかの要因に応じて変化するであろう。
【0064】
担体は、宿主に投与した場合に有害反応(例えば免疫応答)を誘発することなく生物学的に許容されるべきである。適切な薬学的に許容される担体は当技術分野で周知であり、医薬製剤の所望の形態及び投与様式によって異なる。例えば、それらは、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、潤滑剤等の希釈剤又は賦形剤を含み得る。典型的には、担体は、固体、液体若しくは気化性担体、又はそれらの組合せである。各担体は、製剤中の他の成分と適合性であり、対象に有害ではないという意味で「許容される」べきである。
【0065】
集団は、sEV又はエキソソームを含有するエマルジョンを含む組成物の一部であり得る。そのようなエマルジョンは、水中油型エマルジョンを含み得る。エマルジョンは、当技術分野で公知の手段によって作製され得る。それらは、新たに調製されたsEV若しくはエキソソーム、又は凍結乾燥されたsEV若しくはエキソソーム、又は油中に保存されたsEV若しくはエキソソームから作製され得る。エマルジョンは、少なくとも2つの不混和性液体、例えば水及び油から構成される不均一系であり、そのうちの1つは、通常、機械的撹拌プロセスによって他の液相全体に微細な液滴として均一に分散される。組成物は、少なくとも1つの乳化剤を更に含んでもよい。乳化剤(emulsifier)(「乳化剤(emulgent)」としても知られる)は、その動力学的安定性を増加させることによってエマルジョンを安定化する物質である。
【0066】
sEV又はエキソソームは、油中の懸濁液又は分散液として好都合に貯蔵され得る。この目的のために、新たに調製したsEV又はエキソソーム又は凍結乾燥エキソソームを油に懸濁又は分散させることができる。油は、植物油等の任意の適切な油を含んでもよい。sEV又はエキソソームは、例えばオリーブ油、パーム油、大豆油又はヤシ油中に懸濁又は分散され得る。sEV又はエキソソームは、任意の適切な割合で油に懸濁又は分散され得る。
【0067】
油中のsEV又はエキソソームの懸濁液又は分散液は、使用前に、例えば室温で保存することができる。油中のsEV又はエキソソーム懸濁液又は分散液は、エキソソームが貯蔵期間に続いて又は貯蔵期間後にsEV又はエキソソームの少なくとも1つの生物学的活性を示すようなものであり得る。生物学的活性は、肥満症処置後の肥満症又はリバウンド効果を矯正する、低下させる、改善する、処置する、予防する等の治療活性を含み得る。生物学的活性は、ドミナントネガティブAMPKα1タンパク質(AMPKα1-DN)の存在に由来し得、これはAMPK活性及びpACCリン酸化を減少させる。生物学的活性は、アセチル-CoAカルボキシラーゼα(pACCα)のリン酸化レベルの低下に由来し得る。sEV又はエキソソームは、貯蔵に続いて又は貯蔵後に、上で定義した生物学的活性の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%を示し得る。
【0068】
一実施形態では、組成物は医薬組成物である。医薬組成物は、好ましくは、約30~200nm、好ましくは30~150nmのサイズを有するsEVエキソソームの集団で濃縮される。sEV又はエキソソーム量は、例えば、Bradfordアッセイ(BioRad)又はBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用することによって、タンパク質量によって測定することができる。しかし、最適な用量は、既存の毒性及び有効性データを考慮して、投与経路、処置レジメン及び/又は投与スケジュールに従って選択される。好ましい実施形態では、組成物に含まれるsEV又はエキソソームの実質的に純粋な集団は、毒性作用の非存在下で重量減少又はBAT増加効果を提供することができる投与量である。
【0069】
更に、当該集団又は組成物又は医薬組成物は、その意図された投与経路と適合するように製剤化される。実施例に示されるように、また、上記で論じられるように、投与経路は、全身的又は局所的であり得る。局所投与経路には、脳室内投与又はより好ましくは、個別の視床下部核における特異的定位投与が含まれる。本明細書では、「全身投与経路」とは、組成物の循環系への直接的又は間接的な投与を指す。全身投与は、通常、局所投与よりも安全であるが、十分に許容されない可能性があり、又はオフターゲット効果を引き起こす可能性がある。しかし、本発明は、全身投与された場合の処置の安全性を示し、したがって、これは本明細書で提供される処置のための好ましい投与経路である。全身投与経路は、非経口経路、例えば血管内、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、脳室内、硬膜外、又はその他、並びに経口、経鼻、眼、又は直腸を含む。好ましい全身投与経路は血管内であり、本明細書では血管内投与と理解され、典型的には静脈内又は動脈内投与を含む。
【0070】
本発明による集団又は組成物又は医薬組成物を製造する方法は当技術分野で公知であり、それらは場合により、実質的に純粋なsEV又はエキソソームの集団を特異的に濃縮する工程を含む。このために、一般に、磁性粒子、濾過、透析、超遠心分離、ExoQuick(商標)(Systems Biosciences,CA,USA)及び/又はクロマトグラフィを含む方法等の、精製及び/又は濃縮のための任意の適切な方法を使用することができる。
【0071】
上で説明したように、本発明の主な目的は、肥満症を処置又は予防するためのsEVの安全で効果的な組織特異的集団を提供することである。本明細書で提供される使用は、短期又は3ヶ月を超える期間として定義される長期であり得る。本明細書で提供される肥満症を処置又は予防するための使用は、副作用及び/又は合併症、特にSF1発現組織におけるAMPKタンパク質の活性の抑制に由来する副作用及び/又は合併症を最小限に抑える。更に、本明細書で提供される使用は、II型糖尿病、心血管疾患、高血圧又は高コレステロール血症等の他の疾患又は肥満症関連疾患を同時に処置することができる。
【0072】
本発明の第2の態様は、第1の態様の下で定義されるsEVの集団を指し、sEVは、作動可能に連結され、ステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にある、AMPKタンパク質、好ましくはAMPKα、好ましくはAMPKα1、最も好ましくはAMPKα1-DN(ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1変異体)タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2b(Lamp2b)に融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をそれらの外膜において一過性に発現するように操作される。sEVは、本発明の第1の態様の下で上で特徴付けられているので、sEVに関連する全ての実施形態は、本明細書では第2の態様にも適用される。
【0073】
好ましくは、sEVの集団はエキソソーム、好ましくはエキソソームの純粋な集団である。一実施形態では、sEV又はエキソソームの集団は実質的に純粋な集団である。いくつかの実施形態では、集団は実質的に純粋であるか、又はsEV若しくはエキソソームが豊富であり、sEV若しくはエキソソームの少なくとも約50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は100%を含む。一実施形態では、sEV又はエキソソームは球形又は円形である。サイズに関する実施形態は、第1の態様の下で上で定義されており、本明細書に適用される。
【0074】
本明細書で提供されるsEV又はエキソソームの集団は、AMPKタンパク質、好ましくはAMPKα、好ましくはAMPKα1、最も好ましくはAMPKα1-DN変異体タンパク質をコードする遺伝子を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むか又はそれをロードされ、当該遺伝子は、作動可能に連結され、SF1プロモータの制御下にある。好ましくは、集団のsEVのそれぞれに、AMPKタンパク質、好ましくはAMPKα、好ましくはAMPKα1、最も好ましくはAMPKα1-DN変異体タンパク質をコードする遺伝子を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドがロードされ、当該遺伝子は、作動可能に連結され、SF1プロモータの制御下にある。
【0075】
一実施形態では、sEV又はエキソソームに含まれる少なくとも1つのポリヌクレオチドによってコードされるAMPKα1-DN変異体タンパク質は、その全長にわたって、配列番号1、39又は41と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0076】
一実施形態では、sEV又はエキソソームに含まれる少なくとも1つのポリヌクレオチドによってコードされるAMPKα1-DN変異体タンパク質は、配列番号40(野生型ラットAMPKα1配列)と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.2%、98.4%、98.6%、98.8%、99%、99.2%、99.4%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、但し、アスパラギン酸に対応する配列番号40の位置番号168のアミノ酸残基は、アスパラギン酸ではないアミノ酸残基によって置換されており、好ましくはアラニンによって置換される(変異D168A)。
【0077】
本明細書及び全文書を通して、アミノ酸残基の位置は、好ましくは、タンパク質又はポリペプチドのN末端から順に又は連続して番号付けされることに留意されたい。アミノ酸番号付け、したがって本明細書で定義されるAMPKα1-DN変異体タンパク質をもたらすアミノ酸置換の数は、異なるAMPKα1タンパク質内で変化し得ることにも留意されたい。例えば、配列番号40又は41における置換D168Aは、配列番号1における置換D169A(Myc-Tag及びG-リンカーを有するAMPKα1-DN変異体タンパク質アミノ酸配列)及び配列番号39における置換D156A(Myc-Tag及びG-リンカーを有さないAMPKα1-DN変異体タンパク質アミノ酸配列)に等しい。したがって、当該アスパラギン酸がAMPKα1タンパク質の配列に配置される番号付けにかかわらず、異なるアミノ酸残基について変更された場合、本明細書で定義されるAMPKα1-DN変異体タンパク質に到達することができることが理解されるべきである。好ましくは、AMPKα1-DN変異体タンパク質を生成するためにAMPKα1の配列において変異させるアスパラギン酸は、保存配列「NAKIADFGLS」のアスパラギン酸である。好ましくは、当該AMPKα1-DN変異体タンパク質は、細胞の内因性機能的対応物(AMPKα1野生型)の活性を損なうか又は低下させることができ、処置細胞、好ましくはVMH領域におけるpACCリン酸化レベルの低下をもたらすが、副腎、下垂体及び精巣等の他のSF-1発現組織では低下させない。
【0078】
第1の態様で上に説明したように、本明細書で提供されるsEV又はエキソソームは、好ましくは主にそれらの外膜に、リソソーム関連膜タンパク質2b(Lamp2b)に融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含むか又はそれからなる融合タンパク質を更に含むか又はそれをロードされ、当該融合タンパク質は、その全長にわたって配列番号5と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。この場合、融合タンパク質を含むか又はそれからなるドメインは、RVGペプチド及びLamp2bタンパク質である。一実施形態では、融合タンパク質のドメインは、リンカーペプチドによって連結され得る。
【0079】
一実施形態では、第2の態様又はその実施形態のいずれかによるsEVの集団は、治療に使用するためのものである。一実施形態では、第2の態様によるsEVの集団は、肥満症の処置又は予防を必要とする対象の肥満症の処置又は予防に使用するためのものであり、好ましくは、肥満症は、食餌誘発性及び/又は遺伝子誘発性肥満症、好ましくはレプチン受容体(LEPR)欠乏誘導性肥満症である。
【0080】
一実施形態では、第2の態様又はその実施形態のいずれかによるsEVの集団は、肥満症の処置のウォッシュアウト中及び/又はウォッシュアウト後のリバウンド効果の改善又は減少に使用するためのものである。「改善する」及び「リバウンド効果」の説明及び実施形態は、第1の態様の下で上に含まれ、本明細書に適用される。
【0081】
一実施形態では、sEVの集団は、好ましくは全身投与された場合、視床下部腹内側核(VMH)に位置するSF1発現ニューロン中のAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化レベルを、未処置SF1発現細胞中のAMPKの活性化レベルと比較して有意に減少させることができ、当該減少は、副腎、精巣、又は脳下垂体からなるリストから選択される他のSF1発現組織では有意に減少せず、
当該sEVの集団は、ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1-DN)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、AMPKα1-DN変異体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1、39又は41と少なくとも95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有することを特徴とし、
当該AMPKα1-DN変異体タンパク質は、作動可能に連結され、ステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にあり、好ましくは、当該SF1プロモータは、配列番号3と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有し、
sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をその外膜において一過性に発現するように操作され、
当該集団は、肥満症の処置又は予防において、好ましくは全身投与経路を介して、肥満症の処置又は予防を必要とする対象において使用するためのものである。
【0082】
一実施形態では、sEVの集団は、好ましくは全身投与された場合、視床下部腹内側核(VMH)に位置するSF1発現ニューロン中のAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化レベルを、未処置SF1発現細胞中のAMPKの活性化レベルと比較して有意に減少させることができ、当該減少は、副腎、精巣、又は脳下垂体からなるリストから選択される他のSF1発現組織では有意に減少せず、
当該sEVの集団は、ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1-DN)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、AMPKα1-DN変異体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号40(野生型ラットAMPKα1配列)と少なくとも95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有することを特徴とし、但し、配列番号40の168番目のアミノ酸残基が、アスパラギン酸に対応し、アスパラギン酸ではないアミノ酸残基で置換され、好ましくはアラニンで置換されており(変異D168A)、
当該AMPKα1-DN変異体タンパク質は、作動可能に連結され、ステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にあり、好ましくは、当該SF1プロモータは、配列番号3と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有し、
sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をその外膜において一過性に発現するように操作され、
当該集団は、肥満症の処置又は予防において、好ましくは全身投与経路を介して、肥満症の処置又は予防を必要とする対象において使用するためのものである。
【0083】
配列表
配列番号1:AMPKα1-DN変異体タンパク質アミノ酸配列。
注:(下線:Myc-Tag)
(灰色強調:G-リンカー)
(太字及び下線:変異D168→A(変異のアミノ酸番号付け又は位置は、ラットAMPKα1タンパク質に関するもの、好ましくは配列番号40のものである))
【0084】
配列番号2:ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1)変異体タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
注:下線(Myc-タグ配列)
【0085】
配列番号3:ステロイド産生因子1(SF1)ポリヌクレオチド配列。
【0086】
配列番号4:作動可能に連結され、SF1プロモータの制御下にあるAMPKα1-DN変異体タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
【0087】
配列番号5:融合タンパク質:リソソーム関連膜タンパク質2b(Lamp2b)に融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチド。
注:(下線なし:Lamp2b配列)
(下線:RVG配列)
【0088】
配列番号38:リソソーム関連膜タンパク質2b(Lamp2b)に融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドからなる融合タンパク質のヌクレオチド配列。
注:(下線なし:Lamp2b配列)
(下線:RVG配列)
【0089】
配列番号39:AMPKα1-DN変異体タンパク質アミノ酸配列(Myc-Tagペプチド及びG-リンカーなし)太字及び下線:変異D168->A(変異のアミノ酸番号付け又は位置はラットAMPKα1タンパク質に関するもの、好ましくは配列番号40のものである)
Met Glu Lys Gln Lys His Asp Gly Arg Val Lys Ile Gly His Tyr Ile
1 5 10 15
Leu Gly Asp Thr Leu Gly Val Gly Thr Phe Gly Lys Val Lys Val Gly
20 25 30
Lys His Glu Leu Thr Gly His Lys Val Ala Val Lys Ile Leu Asn Arg
35 40 45
Gln Lys Ile Arg Ser Leu Asp Val Val Gly Lys Ile Arg Arg Glu Ile
50 55 60
Gln Asn Leu Lys Leu Phe Arg His Pro His Ile Ile Lys Leu Tyr Gln
65 70 75 80
Val Ile Ser Thr Pro Ser Asp Ile Phe Met Val Met Glu Tyr Val Ser
85 90 95
Gly Gly Glu Leu Phe Asp Tyr Ile Cys Lys Asn Gly Arg Leu Asp Glu
100 105 110
Lys Glu Ser Arg Arg Leu Phe Gln Gln Ile Leu Ser Gly Val Asp Tyr
115 120 125
Cys His Arg His Met Val Val His Arg Asp Leu Lys Pro Glu Asn Val
130 135 140
Leu Leu Asp Ala His Met Asn Ala Lys Ile Ala Ala Phe Gly Leu Ser
145 150 155 160
Asn Met Met Ser Asp Gly Glu Phe Leu Arg Thr Ser Cys Gly Ser Pro
165 170 175
Asn Tyr Ala Ala Pro Glu Val Ile Ser Gly Arg Leu Tyr Ala Gly Pro
180 185 190
Glu Val Asp Ile Trp Ser Ser Gly Val Ile Leu Tyr Ala Leu Leu Cys
195 200 205
Gly Thr Leu Pro Phe Asp Asp Asp His Val Pro Thr Leu Phe Lys Lys
210 215 220
Ile Cys Asp Gly Ile Phe Tyr Thr Pro Gln Tyr Leu Asn Pro Ser Val
225 230 235 240
Ile Ser Leu Leu Lys His Met Leu Gln Val Asp Pro Met Lys Arg Ala
245 250 255
Thr Ile Lys Asp Ile Arg Glu His Glu Trp Phe Lys Gln Asp Leu Pro
260 265 270
Lys Tyr Leu Phe Pro Glu Asp Pro Ser Tyr Ser Ser Thr Met Ile Asp
275 280 285
Asp Glu Ala Leu Lys Glu Val Cys Glu Lys Phe Glu Cys Ser Glu Glu
290 295 300
Glu Val Leu Ser Cys Leu Tyr Asn Arg Asn His Gln Asp Pro Leu Ala
305 310 315 320
Val Ala Tyr His Leu Ile Ile Asp Asn Arg Arg Ile Met Asn Glu Ala
325 330 335
Lys Asp Phe Tyr Leu Ala Thr Ser Pro Pro Asp Ser Phe Leu Asp Asp
340 345 350
His His Leu Thr Arg Pro His Pro Glu Arg Val Pro Phe Leu Val Ala
355 360 365
Glu Thr Pro Arg Ala Arg His Thr Leu Asp Glu Leu Asn Pro Gln Lys
370 375 380
Ser Lys His Gln Gly Val Arg Lys Ala Lys Trp His Leu Gly Ile Arg
385 390 395 400
Ser Gln Ser Arg Pro Asn Asp Ile Met Ala Glu Val Cys Arg Ala Ile
405 410 415
Lys Gln Leu Asp Tyr Glu Trp Lys Val Val Asn Pro Tyr Tyr Leu Arg
420 425 430
Val Arg Arg Lys Asn Pro Val Thr Ser Thr Phe Ser Lys Met Ser Leu
435 440 445
Gln Leu Tyr Gln Val Asp Ser Arg Thr Tyr Leu Leu Asp Phe Arg Ser
450 455 460
Ile Asp Asp Glu Ile Thr Glu Ala Lys Ser Gly Thr Ala Thr Pro Gln
465 470 475 480
Arg Ser Gly Ser Ile Ser Asn Tyr Arg Ser Cys Gln Arg Ser Asp Ser
485 490 495
Asp Ala Glu Ala Gln Gly Lys Pro Ser Glu Val Ser Leu Thr Ser Ser
500 505 510
Val Thr Ser Leu Asp Ser Ser Pro Val Asp Val Ala Pro Arg Pro Gly
515 520 525
Ser His Thr Ile Glu Phe Phe Glu Met Cys Ala Asn Leu Ile Lys Ile
530 535 540
Leu Ala Gln
545
【0090】
配列番号40:野生型5’-AMP活性化プロテインキナーゼ触媒サブユニットα-1[ラット(Rattus norvegicus)]。NCBI参照配列:NP_062015.2
Met Arg Arg Leu Ser Ser Trp Arg Lys Met Ala Thr Ala Glu Lys Gln
1 5 10 15
Lys His Asp Gly Arg Val Lys Ile Gly His Tyr Ile Leu Gly Asp Thr
20 25 30
Leu Gly Val Gly Thr Phe Gly Lys Val Lys Val Gly Lys His Glu Leu
35 40 45
Thr Gly His Lys Val Ala Val Lys Ile Leu Asn Arg Gln Lys Ile Arg
50 55 60
Ser Leu Asp Val Val Gly Lys Ile Arg Arg Glu Ile Gln Asn Leu Lys
65 70 75 80
Leu Phe Arg His Pro His Ile Ile Lys Leu Tyr Gln Val Ile Ser Thr
85 90 95
Pro Ser Asp Ile Phe Met Val Met Glu Tyr Val Ser Gly Gly Glu Leu
100 105 110
Phe Asp Tyr Ile Cys Lys Asn Gly Arg Leu Asp Glu Lys Glu Ser Arg
115 120 125
Arg Leu Phe Gln Gln Ile Leu Ser Gly Val Asp Tyr Cys His Arg His
130 135 140
Met Val Val His Arg Asp Leu Lys Pro Glu Asn Val Leu Leu Asp Ala
145 150 155 160
His Met Asn Ala Lys Ile Ala Asp Phe Gly Leu Ser Asn Met Met Ser
165 170 175
Asp Gly Glu Phe Leu Arg Thr Ser Cys Gly Ser Pro Asn Tyr Ala Ala
180 185 190
Pro Glu Val Ile Ser Gly Arg Leu Tyr Ala Gly Pro Glu Val Asp Ile
195 200 205
Trp Ser Ser Gly Val Ile Leu Tyr Ala Leu Leu Cys Gly Thr Leu Pro
210 215 220
Phe Asp Asp Asp His Val Pro Thr Leu Phe Lys Lys Ile Cys Asp Gly
225 230 235 240
Ile Phe Tyr Thr Pro Gln Tyr Leu Asn Pro Ser Val Ile Ser Leu Leu
245 250 255
Lys His Met Leu Gln Val Asp Pro Met Lys Arg Ala Thr Ile Lys Asp
260 265 270
Ile Arg Glu His Glu Trp Phe Lys Gln Asp Leu Pro Lys Tyr Leu Phe
275 280 285
Pro Glu Asp Pro Ser Tyr Ser Ser Thr Met Ile Asp Asp Glu Ala Leu
290 295 300
Lys Glu Val Cys Glu Lys Phe Glu Cys Ser Glu Glu Glu Val Leu Ser
305 310 315 320
Cys Leu Tyr Asn Arg Asn His Gln Asp Pro Leu Ala Val Ala Tyr His
325 330 335
Leu Ile Ile Asp Asn Arg Arg Ile Met Asn Glu Ala Lys Asp Phe Tyr
340 345 350
Leu Ala Thr Ser Pro Pro Asp Ser Phe Leu Asp Asp His His Leu Thr
355 360 365
Arg Pro His Pro Glu Arg Val Pro Phe Leu Val Ala Glu Thr Pro Arg
370 375 380
Ala Arg His Thr Leu Asp Glu Leu Asn Pro Gln Lys Ser Lys His Gln
385 390 395 400
Gly Val Arg Lys Ala Lys Trp His Leu Gly Ile Arg Ser Gln Ser Arg
405 410 415
Pro Asn Asp Ile Met Ala Glu Val Cys Arg Ala Ile Lys Gln Leu Asp
420 425 430
Tyr Glu Trp Lys Val Val Asn Pro Tyr Tyr Leu Arg Val Arg Arg Lys
435 440 445
Asn Pro Val Thr Ser Thr Phe Ser Lys Met Ser Leu Gln Leu Tyr Gln
450 455 460
Val Asp Ser Arg Thr Tyr Leu Leu Asp Phe Arg Ser Ile Asp Asp Glu
465 470 475 480
Ile Thr Glu Ala Lys Ser Gly Thr Ala Thr Pro Gln Arg Ser Gly Ser
485 490 495
Ile Ser Asn Tyr Arg Ser Cys Gln Arg Ser Asp Ser Asp Ala Glu Ala
500 505 510
Gln Gly Lys Pro Ser Glu Val Ser Leu Thr Ser Ser Val Thr Ser Leu
515 520 525
Asp Ser Ser Pro Val Asp Val Ala Pro Arg Pro Gly Ser His Thr Ile
530 535 540
Glu Phe Phe Glu Met Cys Ala Asn Leu Ile Lys Ile Leu Ala Gln
545 550 555
【0091】
配列番号41:配列番号40に関してD168A変異を有する野生型5’-AMP活性化プロテインキナーゼ触媒サブユニットα-1[ラット(Rattus norvegicus)]。
Met Arg Arg Leu Ser Ser Trp Arg Lys Met Ala Thr Ala Glu Lys Gln
1 5 10 15
Lys His Asp Gly Arg Val Lys Ile Gly His Tyr Ile Leu Gly Asp Thr
20 25 30
Leu Gly Val Gly Thr Phe Gly Lys Val Lys Val Gly Lys His Glu Leu
35 40 45
Thr Gly His Lys Val Ala Val Lys Ile Leu Asn Arg Gln Lys Ile Arg
50 55 60
Ser Leu Asp Val Val Gly Lys Ile Arg Arg Glu Ile Gln Asn Leu Lys
65 70 75 80
Leu Phe Arg His Pro His Ile Ile Lys Leu Tyr Gln Val Ile Ser Thr
85 90 95
Pro Ser Asp Ile Phe Met Val Met Glu Tyr Val Ser Gly Gly Glu Leu
100 105 110
Phe Asp Tyr Ile Cys Lys Asn Gly Arg Leu Asp Glu Lys Glu Ser Arg
115 120 125
Arg Leu Phe Gln Gln Ile Leu Ser Gly Val Asp Tyr Cys His Arg His
130 135 140
Met Val Val His Arg Asp Leu Lys Pro Glu Asn Val Leu Leu Asp Ala
145 150 155 160
His Met Asn Ala Lys Ile Ala Ala Phe Gly Leu Ser Asn Met Met Ser
165 170 175
Asp Gly Glu Phe Leu Arg Thr Ser Cys Gly Ser Pro Asn Tyr Ala Ala
180 185 190
Pro Glu Val Ile Ser Gly Arg Leu Tyr Ala Gly Pro Glu Val Asp Ile
195 200 205
Trp Ser Ser Gly Val Ile Leu Tyr Ala Leu Leu Cys Gly Thr Leu Pro
210 215 220
Phe Asp Asp Asp His Val Pro Thr Leu Phe Lys Lys Ile Cys Asp Gly
225 230 235 240
Ile Phe Tyr Thr Pro Gln Tyr Leu Asn Pro Ser Val Ile Ser Leu Leu
245 250 255
Lys His Met Leu Gln Val Asp Pro Met Lys Arg Ala Thr Ile Lys Asp
260 265 270
Ile Arg Glu His Glu Trp Phe Lys Gln Asp Leu Pro Lys Tyr Leu Phe
275 280 285
Pro Glu Asp Pro Ser Tyr Ser Ser Thr Met Ile Asp Asp Glu Ala Leu
290 295 300
Lys Glu Val Cys Glu Lys Phe Glu Cys Ser Glu Glu Glu Val Leu Ser
305 310 315 320
Cys Leu Tyr Asn Arg Asn His Gln Asp Pro Leu Ala Val Ala Tyr His
325 330 335
Leu Ile Ile Asp Asn Arg Arg Ile Met Asn Glu Ala Lys Asp Phe Tyr
340 345 350
Leu Ala Thr Ser Pro Pro Asp Ser Phe Leu Asp Asp His His Leu Thr
355 360 365
Arg Pro His Pro Glu Arg Val Pro Phe Leu Val Ala Glu Thr Pro Arg
370 375 380
Ala Arg His Thr Leu Asp Glu Leu Asn Pro Gln Lys Ser Lys His Gln
385 390 395 400
Gly Val Arg Lys Ala Lys Trp His Leu Gly Ile Arg Ser Gln Ser Arg
405 410 415
Pro Asn Asp Ile Met Ala Glu Val Cys Arg Ala Ile Lys Gln Leu Asp
420 425 430
Tyr Glu Trp Lys Val Val Asn Pro Tyr Tyr Leu Arg Val Arg Arg Lys
435 440 445
Asn Pro Val Thr Ser Thr Phe Ser Lys Met Ser Leu Gln Leu Tyr Gln
450 455 460
Val Asp Ser Arg Thr Tyr Leu Leu Asp Phe Arg Ser Ile Asp Asp Glu
465 470 475 480
Ile Thr Glu Ala Lys Ser Gly Thr Ala Thr Pro Gln Arg Ser Gly Ser
485 490 495
Ile Ser Asn Tyr Arg Ser Cys Gln Arg Ser Asp Ser Asp Ala Glu Ala
500 505 510
Gln Gly Lys Pro Ser Glu Val Ser Leu Thr Ser Ser Val Thr Ser Leu
515 520 525
Asp Ser Ser Pro Val Asp Val Ala Pro Arg Pro Gly Ser His Thr Ile
530 535 540
Glu Phe Phe Glu Met Cys Ala Asn Leu Ile Lys Ile Leu Ala Gln
545 550 555
【0092】
本発明はまた、以下の条項を含む。
【0093】
1.全身投与された場合、視床下部腹内側核(VMH)に位置するSF1発現ニューロンにおけるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化レベルを、未処置SF1発現細胞におけるAMPKの活性化レベルと比較して有意に減少させることができるが、当該減少は、副腎、精巣、又は脳下垂体からなるリストから選択される他のSF1発現組織では有意に減少しない、小型細胞外小胞(sEV)の集団であって、
小型細胞外小胞(sEV)の当該集団が、作動可能に連結され、ステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にある、ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1-DN)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むことを特徴とし、sEVは、リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む少なくとも1つの融合タンパク質をそれらの外膜において一過性に発現するように操作され、
当該組成物は、肥満症の処置を必要とする対象における全身投与経路を介した肥満症の処置に使用するためのものである、
小型細胞外小胞(sEV)の集団。
【0094】
2.処置が、処置のウォッシュアウト中及び/又はウォッシュアウト後にリバウンド効果の改善又は減少を更に提供する、条項1に記載の使用のための集団。
【0095】
3.少なくとも1つのポリヌクレオチドによってコードされるドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1)変異体タンパク質が、配列番号1と、その全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項1又は2のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0096】
4.ドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが、配列番号2と、その全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、条項1~3のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0097】
5.ステロイド産生因子1(SF1)プロモータが、配列番号3と、その全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、条項1~4のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0098】
6.作動可能に連結され、ステロイド産生因子1(SF1)プロモータの制御下にあるドミナントネガティブAMP活性化プロテインキナーゼα1(AMPKα1)変異体タンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが、配列番号4と、その全長にわたって100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、条項1~5のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0099】
7.リソソーム関連膜タンパク質2bに融合した神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)ペプチドを含む一過性発現融合タンパク質が、配列番号5と、その全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項1~6のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0100】
8.小型細胞外小胞が、30~150nmのサイズ分布を有する、条項1~7のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0101】
9.小型細胞外小胞が、ALIX、TSG101、CD9若しくはCD81、又はそれらの任意の組合せからなる群より選択される1つ以上の特異的マーカを更に含む、条項1~8のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0102】
10.小型細胞外小胞が、GRP94マーカを欠くことを特徴とする、条項1~9のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0103】
11.小型細胞外小胞が、成熟抗原提示細胞におけるT細胞活性化因子分子の発現と比較して、少なくとも1つの当該T細胞活性化因子分子の発現が統計的に有意に低下していることを特徴とする未成熟抗原提示細胞から産生又は得られる、条項1~10のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0104】
12.抗原提示細胞が樹状細胞、好ましくはJAWS II細胞株であり、少なくとも1つのT細胞活性化因子分子が、主要組織適合遺伝子複合体II(MHC-II)、分化抗原群80(CD80)若しくは分化抗原群86(CD86)、又はそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のT細胞活性化因子分子である、条項1~11のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0105】
13.小型細胞外小胞がエキソソームである、条項1~12のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0106】
14.全身経路が血管内経路である、条項1~13のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【0107】
15.処置が肥満症を回復又は改善することを含む、条項1~14のいずれか一項に記載の使用のための集団。
【実施例】
【0108】
実施例1
方法
細胞培養
JAWS II樹状細胞株は、American Type Culture Collection(CRL-1194;ATCC;Manassas,VA,USA)から購入した。JAWS II細胞を、リボヌクレオシド、デスオキシリボヌクレオシドを含有し、20%(vol/vol)のウシ胎児血清(FBS)(Gibco,Life Technologies;Grand Island,NY,USA)、4mMのL-グルタミン(Lonza;Basel,Switzerland)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Lonza;Basel,Switzerland)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(GE Healthcare;Little Chalfont,Buckinghamshire,UK)及び5ng/mLのマウスGM-CSF(Miltenyi Biotec;San Diego,CA,USA)を補充したα最小必須培地(αMEM)(Lonza;Basel,Switzerland)で構成される完全培養培地中、37℃及び5%CO2のインキュベーター内で増殖させた。マウス視床下部GT1-7細胞株(Eduardo Dominguez;University of Santiago de Compostelaによって善意で提供される)を、4.5g/Lのグルコース、1mMのピルビン酸ナトリウム及び1mMのL-グルタミンを含有し、10%FBS(Gibco,Life Technologies;Grand Island,NY,USA)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(GE Healthcare;Little Chalfont,Buckinghamshire,UK)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Lonza;Basel,Switzerland)からなる完全培地中、5%CO2の37℃インキュベーター内で培養した。マウス神経芽細胞腫Neuro-2A細胞株(研究室Micro et Nanomedecines Translationnelles,University of Angers,Franceによって善意で提供される)を、10%(vol/vol)のFBS、10U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン及び1mMのピルビン酸ナトリウムを補充したDMEMからなる増殖培地中、37℃及び5%CO2で増殖させた。C57BL/6Jマウス49由来の不死化褐色脂肪細胞を、70%~80%のコンフルエンスに達するまで、10%FBS、20mMのHEPES、1nMのT3及び20nMのインスリンを含有するDMEM中の6ウェルプレートに2.5×105細胞/ウェルの密度で播種した。次いで、500nMのデキサメタゾン、1μMのロシグリタゾン、125μMのインドメタシン、及び500μMの3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)を44時間添加した。次いで、細胞を、分化するまで(4~5日)、T3及びインスリンのみを含有する培地中で培養した。初代皮質星状細胞を3日齢のC57BL/6マウスの大脳皮質から得て、4日間~6日間にわたって培養で維持した。これらの細胞を、10%FBSを補充したDMEM中で培養した。
【0109】
動物
成体(8~12週)の雄C57BL/6マウス(25g;Centro de Biomedicina Experimental;Santiago de Compostela,Spain又はJackson Laboratory,USA)、ヌードマウス(NRj:NMRI-Foxn1nu/Foxn1nu;Janvier Labs;Saint Berthevin,France)及びC57BL/6ホモ接合型UCP1ノックアウト(UCP1-KO;ucp1-/-)雄並びにそれらの対応する野生型同腹子50(GTH University of Lubeck,Germanyで飼育)を実験に使用した。実験は、動物実験に関する国際法に準拠して行われ、USC倫理委員会(プロジェクトID 15010/14/006)及びUniversity of Iowa Animal Research Committee(プロトコル8101549)によって承認された。動物を、制御された温度及び湿度条件下で、人工的な12時間明期(8:00から20:00)/12時間暗期サイクルで飼育し、通常の固形飼料食又は60%HFD(D12492;Research Diets,Inc;New Brunswick,USA)及び濾過した水道水を10週間自由に摂取させた。全ての手順について、動物を個別にケージに入れ、ストレスのない条件下での取り扱い手順に順応させた。実験は、動物実験に関する国際法に準拠して行われ、USC倫理委員会によって承認された(15012/2020/010)。
【0110】
プラスミド
Lamp2b-RVGプラスミドを前述28のように設計した。簡潔には、NheI及びBamHI制限部位を含むLamp2b配列(Seow Yiqi,University of Oxfordによって善意で提供される)をコードするプラスミドを、eGFPコード配列を除去するように注意しながら、pEGFP-C1骨格にクローニングした。RVGプライマー(フォワード:5’-TCG ATA CAC CAT TTG GAT GCC CGA GAA TCC GAG ACC AGG GAC ACC TTG TGA CAT TTT TAC CAA TAG CAG AGG GAA GAG AGC ATC CAA CGG GT-3’;リバース:5’-CCG GAC CCG TTG GAT GCT CTC TTC CCT CTG CTA TTG GTA AAA ATG TCA CAA GGT GTC CCT GGT CTC GGA TTC TCG GGC ATC CAA ATG GTG TA-3’)を、Lamp2bのN末端のXhoIとBspEIとの間に挿入した。ステロイド産生因子-1(SF1)プロモータの制御下にあるAMPKα1のドミナントネガティブ変異体(SF1-AMPKα1-DN)をコードするプラスミドを、Viraquest(North Liberty,IA,USA)から購入した。
【0111】
小型細胞外小胞の生成及び単離
JAWS II細胞を、トランスフェクションの前日に、完全培養培地(上記の組成を参照)中のT75細胞培養フラスコ中に5×106細胞の密度で播種した。トランスフェクション日に、MacsFectinトランスフェクション試薬(Miltenyi Biotec;San Diego,CA,USA)により、JAWS II細胞にLamp2b-RVGプラスミドを一過性にトランスフェクトした。製造業者のプロトコルに示されているように、350μLの無血清培地に希釈した20μgのLamp2b-RVGプラスミドを、350μLの無血清培地に希釈した40μLのMacsFectinに添加した。混合物を室温で20分間インキュベートして、細胞に添加する前にトランスフェクション複合体の形成を可能にした。24時間後、細胞培地をFBS-sEV非含有培地(200,000gを2回の超遠心分離FBSで補充した完全αMEM)と交換した。48時間後、細胞培地を回収し、300g及び2,000gで10分間2回遠心分離して、細胞及び細胞片をそれぞれ除去した。得られた上清を20,000gで30分間遠心分離して、大きなEVを除外した。Optima Max-XP超遠心機(Beckman Coulter;Brea,CA,USA)中でMLA-50ローターを使用して、4℃で2時間の200,000g遠心分離工程によって、大きなEV枯渇上清からsEVペレットを更に単離した。sEVペレットを、同じ事前の超遠心プロセスを使用してPBSで1回洗浄した後、PBSに再懸濁した。sEV試料を使用するまで-80℃に保った。
【0112】
電子顕微鏡法
sEVを、0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中の新たに調製した2.5%パラホルムアルデヒド(PFA)中で一晩固定した。sEVを、前述の超遠心分離プロセスによりペレット化し、2.5%グルタルアルデヒド溶液に再懸濁した。sEVを銅グリッド上に堆積させ、リンタングステン酸でネガティブ染色し、JEM1400透過型電子顕微鏡(JEOL;Peabody,MA,USA)により200kVで観察した。
【0113】
ナノ粒子追跡分析(NTA)
50μgの精製された、(i)天然の非修飾、(ii)Lamp2b-RVGニューロン標的化又は(iii)Lamp2b-RVG SF1-AMPKα1-DNロードsEVを1mLのPBSで希釈し、製造業者の指示に従ってNanoSight NS 300(Malvern Instruments;Orsay,France)を使用して37℃でサイズ分布を分析した。
【0114】
簡潔には、NTAは、目的の粒子の光散乱及びブラウン運動の両方の特性を適用して、液体懸濁液中のナノ粒子のサイズ分布を得る。60秒のビデオを記録し、その後、ストークス-アインシュタイン方程式を使用してサイズ分布を決定するNTAソフトウェアによって分析した。
【0115】
小型細胞外小胞ロード及び核酸含有量の評価
製造業者のプロトコルに従って、Exo-Fect(System Biosciences)を使用して、精製sEVに核酸-siRNA Texas Red(System Biosciences;Palo Alto,CA,USA)、GFPプラスミド又はSF1-AMPKα1-DNのいずれか-をロードした。簡潔には、sEV(50~300μg)を、10μLのExo-Fect溶液、20pmolのsiRNA Texas Red又は5μgのプラスミド(GFP又はSF1-AMPKα1-DN)及び70μLのPBSと共に37℃で10分間インキュベートした。
【0116】
次いで、Exo-Quick溶液(System Biosciences;Palo Alto,CA,USA)30μLを添加した後、混合物を4℃で30分間置いた。次いで、試料を14,000rpmで3分間遠心分離してsEVをペレット化した後、その後の使用に応じて適切な体積のPBSに再懸濁した。sEVを直接使用するか、又は更に使用するまで-80℃で保存した。
【0117】
SF1-AMPKα1-DNプラスミドによるロードを評価するために、精製SF1-AMPKα1-DNロードsEVを、0.2%TritonX-100(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA,USA)の非存在下又は存在下、37℃で10分間、RDD緩衝液(製造業者の指示に従って)で希釈したDNase I(RNase free,Qiagen,Valencia,CA,USA)で処置するか、又は処置しなかった。DNase活性を不活性化するために、試料を75℃で10分間加熱した。次いで、非消化sEV及びDNA消化sEVの両方を、AMPK又はGAPDH(対照として)プライマー(以下の配列)の存在下でエンドポイントPCRに供した。
【0118】
次いで、PCR反応の生成物を、0.001%臭化エチジウムを含有する2%アガロースゲル(Sigma-Aldrich;St.Louis,MO,USA)で泳動した。ゲルを、INFINITY VX2 1120Mゲル文書化システム(Vilber Lourmat;Collegien France)においてUV光で可視化した。・AMPK:フォワード:5’-ACG GCC GAG AAG CAG AAG CAC-3’;リバース:5’-TCG TGC TTG CCC ACC TTC AC-3’・GAPDH:フォワード:5’-AGT ATG TCG TGG AGT CTA C-3’;リバース:5’-CAT ACT TGG CAG GTT TCT C-3’。
【0119】
小型細胞外小胞の標識及び生体内分布分析
sEVを、製造業者のプロトコルに従ってDID溶液(励起最大:644nm;発光最大:665nm)(Vybrant(商標)DiD Cell、Molecular Probes;Eugene,OR,USA)で染色した。簡潔には、sEVを、PBS中の5μg/mLのVybrant(商標)DiD Cellと共に室温で10分間インキュベートし、PBS中で200,000g超遠心工程で2回2時間洗浄した。得られたDID標識sEVをPBS中で回収し、直接使用した。
【0120】
100μgのDID標識天然又はLamp2b-RVG sEVをヌードマウスに静脈内注射した。DID標識sEV生体内分布の分析には、マルチスペクトルイメージングシステムMAESTRO In-Vivo Fluorescence Imaging System(Cambridge Research&Instrumentation;Woburn,MA,USA)を使用した。DID標識sEV生体内分布を、イソフルランで鎮静させたマウスで異なる時間(30分、2、4及び6時間)に分析した。動物の屠殺後、単離された器官(肝臓、脾臓、肺、心臓、脳及び骨格筋)のそれぞれの蛍光も分析した。MAESTRO In-Vivo Fluorescence Imaging Systemソフトウェア(Cambridge Research&Instrumentation)によりデータを分析した。
【0121】
sEVによるインビトロ処置
sEVによる処置の24時間前に、(i)JAWS II細胞を、300μLの完全増殖培地を含むμ-Slide 8Well(Ibidi;Munich,Germany)中に2×104細胞の密度で播種し、(ii)GT1-7及び(iii)Neuro2A細胞を、1mLの完全増殖培地中に2×105細胞の密度で6ウェルプレートに播種し、(iv)初代皮質星状細胞を、1mLの完全増殖培地中に5×105細胞の密度で播種した。処置の当日に、JAWS II細胞を、固定前に非ロードsEV、siRNA Texas Red又はGFPロードsEV(全ての条件で1μg)とインキュベートし、それぞれの蛍光-siRNA Texas Red(励起最大:596nm及び発光最大:615nm)及びGFP(励起最大:488nm及び発光最大:509nm)-を共焦点顕微鏡法(CLMS700、Zeiss,ZEN fluorescence;Jena,Germany)によって異なる時間(2、6及び24時間)に評価した。他方では、GT1-7、Neuro2A細胞、褐色脂肪細胞及び初代皮質星状細胞を10μg/mLのSF1-AMPKα1-DNロードsEVで24時間処置した後、収集し、後の分析のためにタンパク質を抽出した。
【0122】
sEVによる定位処置
DIOマウスをケタミン-キシラジン麻酔(50mg/kg、腹腔内)下で定位フレーム(David Kopf Instruments;Tujunga,CA,USA)に置いた。
【0123】
以下の定位座標を使用して、32ゲージ針(Hamilton;Reno,NV,USA)を使用してVMHを両側に標的化した;17、18に示すように、ブレグマの後方1.7mm、正中線の外側±0.5mm及び深さ5.5mm。2μgの対照又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVを、100nL分-1の速度で10分間送達した(各注射部位で0.5μL)。体重、食物摂取量及びBAT温度(下記参照)の毎日の測定を行った。3日目に、動物を屠殺し、更なる分析のために器官を収集した(以下を参照)。
【0124】
sEVによる全身処置
100μgのSF1-AMPKα1-DN非ロード又はロードsEV(Bradfordによって測定された総sEVタンパク質含有量を考慮することによる間接定量化)を、実験に応じて対応する時間、マウスの尾静脈にそれぞれ3日間注射した。時間経過実験のために(時間経過のSF1-AMPKα1-DNプラスミドインビボ発現及びUCP1 BAT発現の両方)、マウスに1回注射し、対応する時点(24時間、48時間、72時間及び1週間)で屠殺した。体重、食物摂取量及びBAT温度(下記参照)の毎日の測定を行った。異なる実験手順の最後に動物を屠殺し、更なる分析のために器官を収集した(以下を参照)。各実験には1群当たり6~15匹の動物を使用し、これを2~6回繰り返した。β3-AR特異的アンタゴニストSR59230A([3-(2エチルフェノキシ)-1-[(1,S)-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-1-イルアミノ]-2S-2-プロパノール-オキサレート](DMSOに溶解した3mg/Kg/日;Tocris Bioscience;Bristol,UK)12、13、15~18、44を、初回静脈内注射の3日前から開始して、8:00及び20:00のサイクル開始時に1日2回皮下投与した。熱的中性実験のために、マウスを熱的中性条件(30℃)で収容した。マウスを、前述のように6日間の実験手順及び毎日の測定の前に温度変動(4日間毎日2℃上昇)に適応させた。
【0125】
温度測定
BATを取り巻く皮膚温度及び尾基部の温度を赤外線カメラ(B335:Compact-Infrared-Thermal-Imaging-Camera;FLIR;West Malling,Kent,UK)で記録し、12、13、15~18、44に示すように、特定のソフトウェアパッケージ(FLIR-Tools-Software;FLIR;West Malling,Kent,UK)で分析した。全ての場合において、選択した領域の平均温度を選択した。その領域のサイズ及びランドマークは、全てのマウスについて同様であった。放射率(ε)は0.95に設定した。結果分析の一貫性を得るために、BAT及び尾部温度記録を、全ての実験手順の間、常に同じ時間に毎日実施した。結果は、時間依存性効果を強調するための経時変化として、又は実験を通して行われた異なる毎日の測定の平均として提示される。
【0126】
間接熱量測定
動物を、本発明者らの以前の報告13、15~18、44、51のように、熱量測定システム(LabMaster;TSE Systems;Bad Homburg,Germany)を使用してEE、酸素消費量(VO2)、呼吸商(RQ)及び自発運動活性(LA)について分析した。
【0127】
核磁気共鳴
全ての研究は、440mT/mの勾配を有する9.4T水平ボア磁石(Bruker BioSpin,Ettlingen,Germany)で実施した。身体組成には、直角位相体積コイル(直径7cm)を使用した。NMR手順は、セボフルラン麻酔(70%NO2及び30%O2のガス混合物中で6%誘導及び3.5%維持)下で行った。MRI試験中、画像取得中の自発運動を最小限に抑えるために、歯棒、耳棒及び接着テープを使用して各動物をプレキシグラスホルダーに固定した。身体組成研究のために、反復時間/エコー時間(RT/ET)=1300/3.5ms、平均数(NA)=2、1mmの30個の冠状スライス、視野(FOV)=60×80mm、及びマトリクスサイズ=256×350(0.234×0.229mm/ピクセルの平面解像度)を有する高速低角度ショット(FLASH)シーケンスを、脂肪抑制オプションの有無にかかわらず取得して、「脂肪抑制」及び「脂肪」画像セットの両方を生成した。
【0128】
総取得時間は31分であった。ImageJソフトウェア(W.Rasband,NIH,USA)を使用してMR後処理を実行した。半自動画像処理を使用して、脂肪抑制オプションありとなしの同一登録画像セットを比較する脂肪マスク(総計(総AT)、皮下脂肪組織(scAT)及び内臓脂肪組織(vAT)の体積)を作成した。脂肪組織(0.9g/mL)及び他の組織(1.04g/mL)の標準密度を使用して、MRI体積を重量に変換した52-54。
【0129】
ポジトロン放出断層撮影-コンピュータ断層撮影
全身マイクロPET/CT(陽電子放射断層撮影-コンピュータ断層撮影)画像を、Albira PET/CT Preclinical Imaging System(Bruker Biospin;Woodbridge,CT,US)により取得した。マウスは、(7.4±1.85)MBqの2-18F-フルオロ-2-デオキシ-2-グルコース(18F-FDG)の注射を尾静脈に受けた。18F-FDG注射の45±10分後に取得を行った。Bruker Albira Suiteソフトウェアバージョン5.0を使用して画像を生成した。褐色脂肪及び肝臓領域を、AMIDEソフトウェア(http://amide.sourceforge.net/)に実装された画像ツールを使用して、半径6mmの目的の3次元球状体積を生成することによって描写した。したがって、平均標準化取込み値(SUV)を計算した17、18。
【0130】
交感神経活動(SNA)記録
SNAの多線維記録は、以前に記載されたように12、15、17、18、55、神経サブサービングBATから得た。各マウスをケタミン(91mg/kg体重)及びキシラジン(9.1mg/kg体重)の腹腔内投与で麻酔し、マウスがO2富化室内空気を自発的に呼吸するための妨げられない気道を提供するためにPE-50による挿管を行った。次に、持続麻酔剤α-クロラロース(初期用量:12mg/kg、次いで持続用量6mg/kg/時間)の注入のために、マイクロレナタンチュービング(MRE-40、Braintree Scientific;Braintree,MA,USA)を右頸静脈に挿入した。動脈圧及び心拍数の連続測定のために、別のMRE-40カテーテルを左頸動脈に挿入した。直腸プローブを使用して深部体温をモニターし、37.5℃で継続的に維持した。次いで、各マウスに、肩甲下BATに役立つ神経からの直接多線維SNAを装備した。双極白金-イリジウム電極(36ゲージ、A-Mシステム;Sequim,WA,USA)を神経下に懸垂し、シリコーンゲル(Kwik-Sil,WPI;Sarasota,FL,USA)で固定した。電極を高インピーダンスプローブ(HIP-511,Grass Instruments;West Warwick,RI,USA)に取り付け、神経信号を105倍に増幅し、Grass P5 AC前置増幅器により100Hz及び1,000Hzカットオフでフィルタリングした。増幅及びフィルタリングされた神経信号をスピーカシステム及びオシロスコープ(モデル54501A、Hewlett-Packard;Palo Alto,CA,USA)にルーティングして、定量化の目的でBAT交感神経記録の音声及び視覚品質を監視した。増幅され、フィルタリングされた神経信号はまた、バックグラウンドノイズ閾値を超える1秒当たりのスパイク数を分析するためにカーソルを利用するソフトウェア(MacLab Chart Pro,version7.0;Takoma,MD,USA)を含むMacLabアナログ-デジタル変換器(モデル8S、ADInstruments;Colorado Springs CO,USA)及びリセット電圧積分器(モデルB600C、University of Iowa Bioengineering;Iowa City,IA,USA)にも向けられた。
【0131】
安定した等温(37.5℃)条件下及び麻酔下で、ベースラインBAT SNAを30分間にわたって記録した。次いで、神経を遠位に切断して、更に15分間遠心性SNAを記録した。次に、記録部位の近位の神経を切断した後に残っている活動を記録することによって、バックグラウンドノイズを測定し、これを差し引いて実際のSNAを測定した。求心性神経活動は、総神経活動から遠心性を差し引くことによって決定した。神経記録中、心拍数と共に収縮期、拡張期、及び平均動脈圧を全ての動物で測定した。
【0132】
試料処理
マウスを脱臼及び断頭によって殺傷した。各動物から、VMH、皮質、視床及び小脳並びに末梢組織をウェスタンブロッティング及びリアルタイムRT-PCRのために回収し、直ちに氷上でホモジナイズしてRNA及びタンパク質レベルを保存した。これらの試料及び血清を、更なる処理まで-80℃で保存した。VMHの解剖は、以前に記載されたように12、13、15~18、44、顕微鏡下でマイクロパンチ手順によって行った。
【0133】
血液生化学
LH血清レベルを、15、56の他の箇所に詳細に記載されているように、Dr.AF Parlow(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases National Hormone and Peptide Program,Torrance,CA)によって供給される二重抗体法及びラジオイムノアッセイキットを使用して二連で測定した。血清テストステロンレベル及びCORTレベルを、RIAキット(MPBiomedicals,LLC;Santa Ana,CA,USA)を使用して測定した。レプチン循環レベルを、マウスELISAキット(#EZML-82K,Millipore;Billerica,MA,USA)を使用して測定した。コレステロール(#1001093,Spinreact;Barcelona,Spain)、トリグリセリド(#1001314,Spinreact;Barcelona,Spain)、遊離脂肪酸(NEFA Standard:270-77000及びNEFA-HR R2セット:436-91995 WAKO;Neuss,Germany)循環レベル並びにAST(#41272、AST)及びALT(#41282、ALT)活性(Spinreact;Barcelona,Spain)を、Multiskan GO分光光度計(Invitrogen-Thermofisher Carlsbad,CA,USA)における分光光度法によって測定した。GDF15血清レベルを、マウスELISAキット(Cloud Clone Corp.,Wuhan,China)を使用して測定した。
【0134】
血清サイトカイン(IL-6及びIP-10)を、Milliplexキット(Merk-Millipore,France)を製造者の説明書に従って用いて測定した。
【0135】
RT-PCR分析
精巣及び副腎分析のために、以下の特異的プライマーを使用して、以前に記載された57、58のようにリアルタイムPCR(SYBR GreenER(商標)qPCR SuperMix System;Invitrogen;Carlsbad,CA,USA)を行った:・STAR:フォワード:5’-AGT TCG ACG TCG GAG CTC TCT-3’;リバース:5’-TAC TTA GCA CTT CGT CCC CG-3’;・P450scc:フォワード:5’-GAT TGC GGA GCT GGA GAT GA-3’;リバース:5’-TCT TTT CTG GTC ACG GCT GG-3’;・17β-HSD3:フォワード:5’-CTG AGC ACT TCC GGT GAG AG-3’;リバース:5’-GGC CTT TCC TCC TTG ACT CC-3’;・LH β:フォワード:5’-GAG TTC TGC CCA GTC TGC AT-3’;リバース:5’-AGG AAA GGA GAC TAT GGG GTC T-3’・S11:フォワード:5’-CAT TCA GAC GGA GCG TGC TTA C-3’;
リバース:5’-TGC ATC TTC ATC TTC GTC AC-3’。
【0136】
骨格筋熱産生マーカのRNAレベルについては、以下の特異的プライマー及びプローブを使用してリアルタイムPCR(TaqMan;Applied Biosystems;Foster City,CA,USA)を行った:・Atp2a2:フォワード:5’-TCC GCT ACC TCA TCT CAT CC-3’;リバース:5’-CAG GTC TGG AGG ATT GAA CC-3’;・Gdp2:フォワード:5’-GAA GGG GAC TAT TCT TGT GGG T-3’;リバース:5’-GGA TGT CAA ATT CGG GTG TGT-3’;・Pparγ:フォワード:5’-TCG CTG ATG CAC TGC CTA TG-3’;リバース:5’-GAG AGG TCC ACA GAG CTG ATT-3’;・Ryr1:フォワード:5’-CAG TTT TTG CGG ACG GAT GAT-3’;リバース:5’-CAC CGG CCT CCA CAG TAT TG-3’;・Sln:フォワード:5’-GAG GTG GAG AGA CTG AGG TCC TTG G-3’;リバース:5’-GAA GCT CGG GGC ACA CAG CAG-3’;・Ucp3:フォワード:5’-GAG ATG GTG ACC TAC GAC ATC A-3’;リバース:5’-GCG TTC ATG TAT CGG GTC TTT A-3’。
【0137】
インビボでのSF1-AMPKα1-DN発現の分析のために、Trizol(Invitrogen;Carlsbad,CA,USA)で対応する時間に屠殺し、次いで、供給業者のプロトコルに従ってM-MLV酵素(Invitrogen;Carlsbad,CA,USA)を使用してcDNAに逆転写したマウス由来の組織から全RNAを単離した。
【0138】
対応するcDNAを、10μMの各プライマーを含有するPCR反応における鋳型として使用した(以下の配列を参照のこと)。PCRサイクル条件を以下のように設計した:95℃で3分間の初期変性工程、続いて95℃で30秒間の40サイクルの変性、55℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で45秒間の伸長。PCR産物を2%アガロースゲルで分析した。次のプライマーを使用した:・SF1-AMPKα1-DN:フォワード:5’-AAA CAC CAA GGC GTA CGG AA-3’;リバース:5’-TGG CGG CCG CTC TAG ATT AC-3’ ・HPRT:フォワード:5’-GGT TAA GCA GTA CAG CCC CA-3’;リバース:5’-TCC AAC ACT TCG AGA GGT CC-3’。
【0139】
AMPK活性アッセイ
AMPK活性を、CycLex AMPKキナーゼアッセイ(CY-1182;MBL International Corporation;Woburn,MA,US)を製造者の推奨及び他のもの59、60によって示されたものに従って測定した。簡潔には、5μgのVMHタンパク質を含有する10ulの溶解緩衝液を90μLのキナーゼアッセイ緩衝液に添加した。各試料を二連で分析し、U2OS WT又はAMPK KO細胞抽出物を対照として使用した。吸光度をMultiSkan Go(Invitrogen-Thermofisher;Carlsbad,CA,USA)で450/550nmで測定した。
【0140】
免疫組織化学
脳を4℃で4%PFA中で一晩後固定し、トリス緩衝生理食塩水(TBS、pH7.2)中30%スクロースを含有する溶液中で平衡化し、クライオスタット(CM3050S,Leica;Wetzlar,Germany)上で30μm冠状切片に切片化した。視床下部内側基底部の内側部分に沿った脳切片を選択した。脳切片を最初にTBSで洗浄し、SUMI溶液(TBS中0.25%のブタゼラチン及び0.5%のTritonX-100、pH7.2)でブロックし、SUMI溶液に溶解した以下の一次抗体と4℃で一晩インキュベートした:ウサギ抗pACCα-Ser79(PA5-17725,Invitrogen-Thermofisher;Carlsbad,CA,USA)、ヤギ抗GFAP(SAB2500462;Sigma-Aldrich;Saint Louis,MO,USA)及びヤギ抗Iba1(ab107519,Abcam;Cambridge,UK)。脳切片をTBSで洗浄し、SUMIに希釈したそれぞれの二次抗体:ロバ抗ウサギAlexa647(A21206,Invitrogen-Thermofisher;Carlsbad,CA,USA)及びロバ抗ヤギAlexa488(A21206,Invitrogen-Thermofisher;Carlsbad,CA,USA)と室温で2時間インキュベートした。切片をTBSで洗浄し、TBSに溶解したDAPI(D3571,Life Technologies;Carlsbad,CA,USA)及び/又はNeuroTrace(商標)500/525(N21480,Invitrogen-Thermofisher;Carlsbad,CA,USA)とインキュベートした。グリセロールに浸漬した20倍対物レンズ及びz方向に3μmの工程サイズを有する共焦点顕微鏡(TCS SP8 Leica;Wetzlar,Germany)を使用して、zスタックとして画像を取得した。ImageJ/FIJIを使用して、取得した画像を処理した。定量化は、優勢なニューロンプロファイリングを示したpACCα-Ser79染色(PA5-17725,Invitrogen-Thermofisher;Carlsbad,CA,USA)を使用した細胞体の可視化に基づいて行った。VMH内のニューロンにおけるpACCα-Ser79の存在及び非存在を、Neurotrace500/525(N21480,Invitrogen-Thermofisher;Carlsbad,CA,USA)との共染色を使用することによって評価した。pACCα-Ser79の区別される細胞染色は、定量化の一部として破棄されなかった。
【0141】
二重SF1及びpACCα-Ser79免疫蛍光染色
マウスを深く麻酔し、0.9%生理食塩水、続いて4%PFAを経心臓的に灌流した。脳を取り出し、4℃で4%PFA中で一晩後固定し、氷冷0.1MのPBSで洗浄して過剰の固定溶液を除去し、続いて4℃で一晩、0.1MのPBS中の30%スクロース(pH7.4)に移した後、-80℃で凍結した。クライオスタットにより厚さ20μmの切片を得た。VMHを中心とする切片を選択し(ブレグマから-1.34mm~-1.94mm)、SF1ニューロン及びpACCα-Ser79の二重免疫蛍光染色のために処理した。
【0142】
簡単に説明すると、脳切片を0.1MのPBSで5分間3回洗浄した後、ブロッキング溶液(0.3%TritonX-100を含有する0.1MのPBS中の5%正常ロバ血清)と室温で2時間インキュベートした。次に、切片を0.1MのPBSで5分間2回洗浄し、次いで、第1の一次抗体(SF1、0.1MのPBSで希釈した1:200;ab65815、Abcam;Cambridge,UK)と4℃で一晩インキュベートした。0.1MのPBSで5分間の3回の洗浄後、切片を、0.1MのPBS中のロバ抗ウサギAlexa Fluor594(1:1000;A21207、Life Technologies)と共に室温で2時間インキュベートした。
【0143】
2つの一次抗体を同じ種(すなわち、ウサギ)から得たので、両方の抗ウサギ一次抗体間の交差反応性を回避するために、脳切片をAffiniPure Fab断片ヤギ抗ウサギIgG(1:40;111-007-003、Jackson ImmunoResearch;West Grove,PA,USA)と共に室温で4時間インキュベートして、第1の一次抗体上の残りの開いた結合部位を飽和させた。Fab断片抗体の飽和濃度を決定するために、本発明者らは、滴定曲線を実施してFab断片抗体の最適濃度を決定した。広範に洗浄した後、切片を第2の一次抗体(pACCα-Ser79、0.1MのPBSで1:100希釈;PA5-17725、Invitrogen)と4℃で一晩インキュベートした。次いで、切片を0.1MのPBSで5分間3回洗浄した後、ロバ抗ウサギAlexa488(1:1000;711-545-512、Jackson ImmunoResearch)とRTで2時間インキュベートした。
【0144】
3回の0.1MのPBS洗浄からなる最終工程の後、切片を、DAPI含有Vectashield(Vector Laboratories;Peterborough UK)を使用してマウントし、イメージングまで4℃の暗所で保存した。
【0145】
油浸63倍対物レンズを備えた共焦点Leica TCS SP-5-X顕微鏡を使用し、3倍のズームを使用して画像を取得した。VMH切片の全ての写真(群当たりn=4匹の動物)について同様のイメージング条件を確実にするために、正確に同じ顕微鏡設定(レーザー出力及びゲイン)を使用して全ての写真を撮影した。画像を、最大強度投影が行われ、輝度及びコントラストが等しく調整されたFiji(NIH;Bethesda,MD,USA)にインポートした。定量化のために、切片当たりの各SF1陽性ニューロンを手動で選択し、pACCシグナルの強度を分析し、対照に対するパーセンテージとして表す。更に、他の視床下部核(ARC、DMH及びPVH)におけるpACCレベルをsEV注射の陰性対照として定量した。
【0146】
ウェスタンブロッティング
それらの特徴付けのために、10μgのsEVをPAGEで分離した。移動後、タンパク質をニトロセルロース膜に移し、以下の抗体とインキュベートした:Alix(Biolegend;San Diego,CA,USA)、CD9(BD Pharmingen;San Diego,CA,USA)、CD81、TSG101及びGRP94(Santa Cruz Biotechnology,Dallas,TX,USA)。JAWSのトランスフェクション効率の評価すること
【0147】
Lamp2b-RVG及びsEV、精製sEVの膜へのその移行を有するII細胞(天然又はLamp2b-RVG修飾)を、上記と同じウェスタンブロッティングプロトコルに従ってLamp2b(Abcam;Cambridge,UK)で免疫ブロットした。
【0148】
以前に示したように12、13、15~18、44、解剖したVMH又は末梢組織をホモジナイズし、以下の組成の緩衝液で溶解した:50mMのTris-HCl pH7.5、EGTA 1mM、EDTA 1mM、1%TritonX-100vol/vol、0.1mMのオルトバナジン酸ナトリウム、50mMのフッ化ナトリウム、5mMのピロリン酸ナトリウム、0.27Mのスクロース及びプロテアーゼ阻害剤カクテル。以前記載されたように12、13、15~18、44、タンパク質溶解物をSDS-PAGEに供し、PVDF膜に電気泳動転写し、以下の抗体でプローブした:pACCα-Ser79、ACCα(Cell Signaling,Danvers,MA,USA)、UCP1、UCP3、Lamp2b(Abcam;Cambridge,UK)、PGC1α、PGC1β、GRP94(Santa Cruz Biotechnology,Dallas,TX,USA)、β-アクチン、α-チューブリン(Sigma-Aldrich;St.Louis,MO,USA)及びGAPDH(Merck Millipore;Billerica,MA,USA)。
【0149】
次いで、各膜を対応する二次抗体:抗マウス又は抗ウサギ(DAKO;Glostrup,Denmark)と共にインキュベートした。値を、α-チューブリン(BAT、骨格筋及び心臓について)又はβ-アクチン(分析した組織の残りについて)のタンパク質レベルに関連して表した。sEVに関しては、ポンソーSによって測定されたタンパク質の総含有量に関して値を表した。ImageJ-1.33ソフトウェア(NIH;Bethesda,MD,USA)を使用して、オートラジオグラフィックフィルムをスキャンし、デンシトメトリによってバンドシグナルを定量した。全てのタンパク質の代表的な画像を、ロード対照の場合、上で説明したように、各タンパク質はそれ自体の内部対照(β-アクチン又はα-チューブリン)によって補正されたが、代表的なゲルが表示される。ゲルの画像を示す全ての図において、各写真の全てのバンドは常に同じゲルに由来するが、それらは明確にするためにスプライスされていてもよく、縦線でマークされている。
【0150】
統計分析
データを平均±SEMとして表し、データが相対化される場合、それらは適切な対照の割合として与えられる。統計的有意性は、事後ボンフェローニ検定に従う両側(少なくとも片側が指定される)スチューデントt検定(2つの群を比較した場合)又は両側ANOVA(2つを超える群を比較した場合)によって決定した。連続変数間の関係を単純相関(ピアソンの検定)によって分析した。P<0.05を有意とみなした。
【0151】
データの可用性
この研究の所見を支持するデータは、妥当な要求に応じて対応する著者から入手可能である。
【0152】
結果
ニューロン標的化樹状細胞由来sEVの作製及び特性評価
任意の送達有機系に必要とされるように、免疫学的に不活性な小胞は、宿主免疫反応を制限するように設計されなければならなかった
27、28。未成熟樹状細胞を使用して、主要組織適合遺伝子複合体II(MHC-II)並びに表面抗原分類80及び86(CD80及びCD86)等のT細胞活性化因子の低発現を有する大量のsEVを生成した27、28。産生されたsEVに神経標的化能力を付与するために、未成熟樹状細胞を遺伝子改変して、以前に報告されたように28、(i)sEV膜で高発現するタンパク質であるリソソーム関連膜タンパク質2b(Lamp2b)から構成され29、(ii)ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)への結合を介して血液脳関門(BBB)の通過を可能にする、神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)に由来する特定の糖タンパク質に融合された30、融合タンパク質を一過性に発現させた。Lamp2b-RVGプラスミドによるトランスフェクションの3日後、sEVを単離し、精製し、分析した。ニューロン標的化Lamp2b-RVG sEVは、天然のものと比較してより高いレベルのLamp2bの発現を示し(
図9a~
図9b)、sEV膜でのLamp2b-RVGの良好な統合を示唆した。興味深いことに、この戦略を使用すると、RVGはそれらの物理的特性に影響を及ぼすことなくsEVの外膜に局在化することが実証された
28。文献と一致して、Lamp2b-RVG sEVは、ナノ粒子追跡分析(NTA、カメラレベル9、シャッタ:607、及びゲイン:15、
図1a)によって決定されるように、30~150nmのサイズ分布を有していた。これらの結果は、電子顕微鏡分析によって確認された(
図1b)。2つの異なる方法(NTA及び電子顕微鏡法)によって得られたsEVのサイズはわずかに異なる。このサイズ差は、電子顕微鏡検査のためにsEVを染色する手順がそれらの脱水を誘発し、それらのサイズを低下させるという事実によって説明される
31。sEVは、ALIX、TSG101、CD9及びCD81等の特異的マーカを発現し(
図1c)、EV純度を評価するために一般的に使用されるマーカであるGRP94を欠いていた(
図9c)。
【0153】
sEVが核酸を効率的に送達する能力を、蛍光核酸プローブ、テキサスレッドで標識されたsiRNA、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするプラスミドを使用してインビトロで評価した。sEVに核酸を外因的にロードしたら、それらを未成熟樹状細胞と共に2、6又は24時間インキュベートし、共焦点顕微鏡を使用してそれぞれの細胞蛍光を分析した。siRNA-Texas RedロードsEVは、対照条件と比較して2時間後に未成熟樹状細胞の赤色蛍光を誘導した(非ロードsEV、
図1d)。同様に、GFPプラスミドロードsEVは、対照条件と比較して6時間後及び24時間後に未成熟樹状標的細胞の緑色蛍光を誘導した(
図1e)。
【0154】
次に、静脈内注射後にLamp2b-RVG sEVがBBBを通過する能力を評価した。sEVを近赤外色素DIDで標識し、これは脂質構造に組み込まれると蛍光を発する。DIDの非特異的な残留蛍光を回避するために、標識sEVを注射前に2回洗浄した。続いて、DID標識天然(対照)及びDID標識Lamp2b-RVG sEVをヌードマウスの尾静脈に注射した。麻酔をかけた生存マウスを、インビボ蛍光イメージングシステムMAESTROを使用して30分、2、4及び6時間でDID-蛍光スペクトル(励起最大:644nm;発光最大:665nm)を使用してイメージングした。蛍光ホールマウスイメージング(
図1f)からの分解能のレベルでは、DID-蛍光シグナルがどの組織から発生したかを正確に決定することができなかった。したがって、動物を6時間で屠殺し、異なる器官を回収し、蛍光をエクスビボで分析した。興味深いことに、sEVの2つの集団、天然(対照)及びLamp2b-RVGは、大部分が肺、脾臓及び肝臓に分布しており、対照のものと比較してLamp2b-RVG集団に対する肺標的化がより低い(
図1g)。
【0155】
この分布プロファイルは、これらの器官が高度に血管化されており、解毒プロセスに関与しているため、一貫している。興味深いことに、Lamp2b-RVG sEVは、天然のsEV対照状態と比較して、心臓(
図1g)及び脳(
図1h~
図1i)等のnAChR発現組織における有意に増加した局在化を示した。
【0156】
全蛍光に対する脳による取込みのパーセンテージは2.3±0.3%であり、蛍光を組織重量で補正すると、取込みのパーセンテージは5.3±0.7%蛍光/mgに上昇した。更に、脳内のDID特異的蛍光は、Lamp2b-RVG標的化戦略(対照:100±5.01;Lamp2b-RVG:129±0.65;P<0.01;
図1h-i)を使用して有意に増加し、中枢神経系(CNS)28へのsEVの標的化を増加させるためのその適合性を確認した。
【0157】
sEVが脳に到達できることを実証したら、次の工程は、排他的VMH、特にCNSにおいてこの因子を発現するユニーク細胞集団であるSF1細胞への送達の特異性を制限することであった32、33。
【0158】
このために、SF1プロモータ(SF1-AMPKα1-DN)の制御下で発現されるAMPKα1-DN変異体をコードするプラスミドを設計した(
図9d)。精製ニューロン標的化Lamp2b-RVG sEVに、続いてSF1-AMPKα1-DNをロードした。興味深いことに、ロードは、カメラレベル9(シャッタ:607、ゲイン:15)及び電子顕微鏡法(
図1a及び
図9e~
図9f)でNTAによって測定されるように、形態学的特性もsEVのサイズも変更しなかった。更に、封入されたSF1-AMPKα1-DNプラスミドの量を、sEVの溶解の有無にかかわらず、TritonX-100 0.2%(
図9g~
図9h)によりアッセイしたところ、sEVコアの膜及び内部にSF1-AMPKα1-DNプラスミドが存在することが示された。
【0159】
次いで、本発明者らは、視床下部細胞株GT1-7における、AMPKの主要な下流標的であるアセチル-CoAカルボキシラーゼα(pACCα)のリン酸化レベルをアッセイすることによってこの戦略の有効性を評価し、これは、SF1
34を内因的に発現し、多数のニューロン特性を有し
35、予備的AMPKニューロン研究の優れたモデルとなっている
36、37。データは、GT1-7細胞をSF1-AMPKα1-DNロードsEVと24時間インキュベートした場合、非ロード対照sEVと比較して、ACCαのリン酸化レベルが有意に減少したことを示した(
図1j~
図1k)。注目すべきことに、SF1を発現しない他のCNS由来細胞(例えば、初代星状細胞及びNeuro2A細胞)をSF1-AMPKα1-DNロードsEVとインキュベーションした場合、pACCレベルにおける変化が何ら見出されなかった(
図9i~
図9j)。まとめると、これらのデータは、SF1-AMPKα1-DN変異体をロードした生成されたLamp2b-RVG sEVが、(i)サイズ及び形態が均一であり、(ii)核酸を送達することができ、(iii)静脈内注射後に脳を標的化し、(iv)特異的にインビトロでSF1プロモータの制御下でAMPKα1活性を調節することを示す。
【0160】
SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる中枢処置は、肥満症マウスにおいて摂食独立体重減少を誘導した
最初に、本発明者らは、60%高脂肪食(HFD)を与えられた食餌誘発性肥満症(DIO)マウスのVMHにおけるSF1-AMPKα1-DNロードsEVの定位的中枢送達の有効性を評価した。結果は、この核内に投与した場合、SF1-AMPKα1-DN sEVが3日間摂食非依存性体重減少を誘導することを実証した(
図2a~
図2b)。次に、本発明者らは、以前に示されたように
15~17、顕微解剖された視床下部抽出物中のpACCα(AMPK活性の代用マーカ)のレベルをアッセイした。マイクロパンチの特異性を、それぞれSf1(VMHの特異的マーカ)、プロオピオメラノコルチン(Pomc;視床下部弓状核の特異的マーカ、ARC)及びヒポクレチン/オレキシン(Hcrt;視床下部外側領域の特異的マーカ、LHA)のmRNAレベルを測定することによって検証した(
図10)。本発明者らのデータは、SF1-AMPKα1-DNロードsEVが、VMHではACCαのリン酸化レベルの有意な減少を誘導したが、ARC又はLHAでは誘導しなかったことを示した(
図2c~
図2d)。これは、肩甲骨間領域の温度上昇及びBAT脱共役タンパク質1(UCP1)タンパク質レベルの上昇によって示されるように、BAT熱産生の増加に関連していた(
図2e~
図2h)。全体として、これらのデータは、AMPKα1-DNアイソフォームによるウイルス遺伝子媒介処置の効果、並びにSF1 AMPKヌルマウスの表現型を再現する
12~18。
【0161】
SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置は視床下部ニューロンAMPK活性を調節する
次に、本発明者らは、DIOマウスの視床下部におけるAMPK活性の調節におけるSF1-AMPKα1-DNロードsEVの全身投与の能力を調べることを目的とした。最初に、本発明者らは、ロードsEVの静脈内注射の24時間後に、いくつかの組織におけるSF1-AMPKα1-DN導入遺伝子の発現をアッセイすることによって、本発明者らの処置の効率を評価した。導入遺伝子はVMH試料でのみ検出されたが、SF1を発現する器官(すなわち、副腎、下垂体及び精巣)又はSF1を発現しない器官(すなわち、BAT、肝臓、骨格筋、及び心臓)を含む他の評価器官のいずれにも検出されなかった(
図3a)。全体として、このデータは、AMPKα1-DN導入遺伝子の発現が、VMHのSF1発現ニューロン(SF1駆動発現を考慮)を含むニューロン細胞(所与のRVG依存性向性
28、30)に限定されることを示し、本発明者らの戦略が特異的であることを実証した。これらの結果を確認するために、静脈内注射後のいくつかの組織におけるACCαのリン酸化レベルをアッセイした。SF1-AMPKα1-DNロードsEVは、VMHにおけるACCαのリン酸化レベル及びAMPK活性の有意な低下を誘導した(
図3b~
図3d)。これに関連して、SF1-AMPKα1-DN sEV処置マウスは、pACCα及びNeurotraceの共局在化によって実証されるように、対照と比較してVMH内のpACCα Ser79陽性ニューロンの数の有意な減少を示した(
図3e~
図3f)。本発明者らはまた、非神経細胞におけるpACCαの存在を、VMHにおけるグリア線維酸性タンパク質(星状細胞マーカであるGFAP)及びイオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba1、ミクログリアマーカ)の共染色によって評価した。しかし、本発明者らの分析では、GFAP又はIba1発現細胞とのpACCα共局在化は検出されなかった(
図11a~
図11b)。本発明者らの処置の特異性におけるより多くの洞察を得るために、本発明者らは、二重免疫蛍光アッセイによってVMHのSF1ニューロンにおけるpACCα-Ser79のレベルを分析した。本発明者らのデータは、pACC免疫反応性が、陰性対照と比較した場合、SF1-AMPKα1-DN sEVで処置したマウスのSF1ニューロンで有意に減少したことを示し(
図3g~
図3h)、この技術の特異性を実証した(
図11c)。
【0162】
注目すべきことに、pACCαレベルは、ARC、背内側(DMH)及び室傍(PVH)等の隣接視床下部核では減少しなかった(
図11d)。
【0163】
全体として、この証拠は、SF1-AMPKα1-DN導入遺伝子の発現がVMH内のSF1ニューロンで起こるが、他の視床下部細胞集団では起こらないことを実証している。
【0164】
SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる本発明者らの処置の特異性を更に確認するために、CNS及び末梢組織の他の部分におけるpACCレベルを調べた。試験した任意の他の脳領域(例えば、皮質、視床及び小脳;
図12a)又は肝臓、副腎、精巣、BAT、心臓及び骨格筋等の末梢組織(
図12b)におけるACCαのリン酸化レベルに変化は見られなかった。SF1-AMPKα1-DNロードsEVは、初代褐色脂肪細胞においてpACCαレベルの変化を誘導しなかった(
図12c)。これらのデータはまた、他の組織(精巣及び副腎等のSF1を発現するものを含む)におけるAMPKシグナル伝達の鈍化に対する潜在的な副作用がおそらく無視できることを示唆している。しかし、SF1細胞が少ない(例えば、精巣ライディッヒ細胞に限定される)末梢組織における総タンパク質抽出物に依存するアッセイの使用は
32、33、信頼性があるとは考えられないかもしれない。この制限を克服し、精巣及び副腎機能に対する処置の可能性のある影響を更に評価するために、対照及びSF1-AMPKα1-DNロードsEVで処置したマウスの精巣及び副腎におけるテストステロン及びコルチコステロン(CORT)の循環レベル並びに重要なステロイド産生酵素のmRNA発現を分析した。データは、SF1-AMPKα1-DNロードsEVでの処置が、テストステロン循環レベル(
図12d)、又はステロイド産生性急性調節タンパク質(STAR)、コレステロール側鎖切断酵素(P450ssc)及び17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ3型(17β-HSD3)等の精巣ステロイド産生に関与するいくつかの酵素のmRNAレベルのいずれにおいても有意な変化を誘導しなかったことを示した(
図12e)。一方、副腎機能は、循環CORTの変化(
図12f)又はP450ssc若しくはSTARのmRNA副腎レベルの変化(
図12g)が検出されなかったので、SF1-AMPKα1-DNロードsEVでの処置によって影響されなかった。同様に、下垂体産生がSF1によって調節されることが知られている黄体形成ホルモンの循環レベル(LH;
図12h)又はLHβサブユニットのmRNAレベル(
図12i)のいずれにも変化は見られなかった
38。
【0165】
SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置は、肥満症マウスにおいて摂食非依存性体重減少を誘導した
SF1-AMPKα1-DNロードsEVの体重調節における効率を評価するために、DIOマウスを使用した。特に、CNSへの直接投与を含むいかなる手順/手術も回避するために、マウスの尾静脈に全身注射した。
【0166】
最初に、SF1-AMPKα1-DN導入遺伝子が、ロードsEVによる末梢処置後にVMH SF1ニューロンにおいてどのくらい長く発現されたかを評価した。本発明者らのデータは、AMPKα1-DN導入遺伝子が24時間VMHで検出され得ることを示した(
図3i~
図3j)。しかし、中枢投与のみを含む実験(
図2h)を維持すると、BAT UCP1発現の増加は、静脈内注射後48hまで検出することができる(
図12j)。これらの理由から、本発明者らは、6日間にわたって3日ごとに1回の注射に基づく戦略を選択した。本発明者らは、6日間の処置(0日目及び3日目の注射)後に、SF1-AMPKα1-DNロードsEVの静脈内注射が、対照sEVと比較した場合、有意かつ顕著な摂食非依存性体重減少をDIOマウスにおいて誘導し(
図4a~
図4d)、同時にEEの増加を伴うことを見出した(
図4e)。しかし、呼吸商(RQ)及び自発運動活性(LA)は修正されなかった(
図4f~
図4g)。注目すべきことに、sEV誘発性体重減少は、核磁気共鳴分析によって実証されるように、脂肪過多の減少と関連していた(
図4h~
図4k)。
【0167】
次に、本発明者らは、DIOマウスにおけるsEV処置の長期効果(4週間、3日ごとの投与)を調査した。結果は、通常は体重を増加させた対照sEVで処置したマウスと比較した場合、SF1-AMPKα1-DNロードsEV注射DIOマウスは、食物摂取量に変化はなく(
図4o~
図4p)、体重の著しい長期減少を示した(
図4l~
図4n)。注目すべきことに、処置を中止した場合、sEVの効果は持続した。実際、SF1-AMPKα1-DNロードsEVで処置したDIOマウスは、対照sEVで処置したマウスと比較した場合、注射を中止した(ウォッシュアウト)2週間後まで体重の回復を示さなかった(
図4l~
図4m)。全体として、これらのデータは、SF1-AMPKα1-DNロードsEVによって誘導される体重減少が一過性ではなく、ウォッシュアウト期間が対照群の体重に追いつくのに十分なリバウンド効果を暗示しないことを示している。sEVの重量減少作用は、循環レプチンレベルを減少させる傾向と関連していたが(
図13a)、成長/分化因子15の変化は観察されなかった(GDF15;
図13b)。
【0168】
循環炎症マーカの評価は、インターロイキン-6(IL-6)レベル(
図13c)及びインターフェロンγ誘導性タンパク質10(IP-10)レベル(
図13d)の変化を示さず、sEV投与が全身性炎症反応を誘導しなかったことを示唆した。循環代謝パラメータに対するSF1ロードsEVの効果も評価した。本発明者らのデータは、ロードsEV処置群において有意に減少した非エステル化脂肪酸(NEFA)循環レベルを示し、これはBAT熱産生の増加と適合し(以下を参照)、総トリグリセリド又はコレステロールに変化はなかった(
図13e~
図13g)。最後に、本発明者らの処置の起こり得る有害作用を評価するために、本発明者らは、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)及びアラニントランスアミナーゼ(ALT)に対するSF1-AMPKα1-DNロードsEVの影響を分析したが、それらのいずれも変化しなかったので(
図13h~
図13i)、sEVの肝臓影響を除外した。重要な心血管パラメータ、すなわち心拍数(
図13j)又は動脈圧(収縮期、拡張期及び平均;
図13k~
図13m)のいずれにも変化は見られなかった。むしろ、SF1-AMPKα1-DN sEVで処置したマウスでは血圧が低くなる傾向があり(これは有意ではなかったが)、この処置によって誘発された体重減少と一致していた。これらのデータは、全身投与した場合のAMPK-sEVの心血管副作用の欠如を示している。
【0169】
最後に、SF1-AMPKα1-DNロードsEV処置の時間依存性効果についてより多くの洞察を得るために、本発明者らはクロスオーバー研究を行った。この新しい実験設定では、インターカレートした非処置期間を有する2サイクルプロトコルに従って動物を尾静脈に注射した。したがって、最初の注射の機能的効果がもはや観察されなくなると、新しい注射を行って新しい処置の効力を評価した。データは、両方の注入サイクルが予想される摂食非依存性体重減少を誘導したことを示した(
図4q~
図4s)。
【0170】
SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置は、肥満症マウスにおいてBAT熱産生を増加させた
次に、SF1-AMPKα1-DNロードsEVで処置したDIOマウスで観察された摂食非依存性体重減少がBAT熱産生の上昇に関連し得るかどうかを調べた。これは、これらの視床下部細胞におけるAMPKα1の遺伝的阻害又は除去が褐色脂肪活性を促進することを以前の証拠が示しているという事実によって12~18、23、及び本発明者らの定位実験(
図2e~
図2h)及び時間応答実験(
図12j)のデータによって正当化された。SF1-AMPKα1-DNロードsEVで処置したマウスは、注射後1日目からより高いBAT温度を示し、これは処置全体にわたって持続した(
図5a~
図5c)。
【0171】
提示された証拠は、SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる末梢処置が、摂食に関連する体重減少ではなく、BAT熱産生を誘発することを示唆した。したがって、BAT機能の調節を含む機構的実験を行う前に、本発明者らは、これらの変数間の可能な相関に対処することを目的とした。本発明者らのデータは、体重変化とBAT温度との間の非常に有意な負の相関を明らかにした(P<0.0001):SF1-AMPKα1-DNロードsEVを投与したマウスは、最も体重が減少し、BAT温度がより高かったマウスである(
図5d)。特に、食物摂取は両群で同様であり、関連性は見られなかった(
図5e)。全体として、この証拠は、BAT機能の増加がEEの増加をもたらし、このsEV戦略の体重減少効果を説明したことを示唆した。視床下部AMPKを標的とするこれらのsEVの熱産生効果に対する更なる洞察を得るために、本発明者らはクロスオーバー実験でBAT温度を分析した(
図4q~
図4s)。特に、処置を中止した場合、SF1-AMPKα1-DNロードsEV誘発BAT温度は対照/基礎値に戻り(
図5f~
図5h)、観察された効果が時間及び処置依存的であったことを示した。
【0172】
更に、本発明者らは、げっ歯類における周知の熱調節機構である尾基部温度に対するそれらの影響を調べた
39。ロードされたsEVは、尾基部温度のわずかであるが有意ではない上昇を誘導し(
図5i~
図5j)、尾部による熱放散の傾向を示した。
【0173】
SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置はBAT熱産生プログラム及びグルコース取込みを誘導した
SF1-AMPKα1-DNロードsEV処置DIOマウスのBATは、重要な熱産生性マーカ、例えば、UCP1、脱共役タンパク質3(UCP3)並びにペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ共活性化因子1α及びβ(PGC1α及びPGC1β)のタンパク質レベルの増加を示した(6日間の
図6a~
図6b及び28日間の
図14a)。これらのデータと一致して、SF1-AMPKα1-DNロードsEVの注射は、肝臓(対照組織として使用)と比較した場合、より高いBAT 18F-FDG取込みを誘導し(
図6c~
図6d)、より高いBAT活性化を示した。興味深いことに、SF1-AMPKα1-DNロードsEVの注射はまた、わずかに増加したUCP1染色によって示唆されるように、皮下白色脂肪組織(scWAT)の褐色化を増加させる有意でない傾向に関連していた(
図6e~
図6f)。
【0174】
全体として、この証拠は、視床下部SF1ニューロンを標的とするSF1-AMPKα1-DNロードsEVの全身投与がBAT活性の変化を誘導することを示している。注目すべきことに、この作用は、以下の2つの主な理由のために、褐色脂肪細胞(SF1が発現されていない場合)に対するsEVの非特異的作用に関連しない可能性が高い:(i)BAT AMPKα1の阻害はこの組織の活性化ではなく機能障害を引き起こすことが最近報告されており40、(ii)重要なことに、インビボでのsEV処置後(
図12b)又はインビトロでsEVを初代BAT脂肪細胞に与えた場合(
図12c)のいずれにおいても、交絡する非特異的作用の存在を除いて、AMPKシグナル伝達の変化はBATにおいて見られなかった。更に、骨格筋熱産生プログラムに変化は見られず(
図14b)、sEVの全身投与時に観察されるEEの増加が筋熱産生ではなくBATによって促進されることを示している。
【0175】
SF1-AMPKα1-DNロードsEV誘導BATによる全身処置は、SNSの活性化による熱産生及び体重減少を誘導した
BAT熱産生は、主に、β3アドレナリン受容体(β3-AR)を介してSNSによって制御される41~43。したがって、本発明者らは、VMH-SF1ニューロンにおけるAMPKα1を標的とするsEVの全身注射後のBATの調節がSNSによって媒介されるかどうかを調べた。SF1-AMPKα1-DNロードsEVは、マイクロニューログラフィによって直接記録された総BAT交感神経トラフィックを増加させた(
図7a~
図7b)。記録部位の遠位のBAT神経の横断は、遠心性交感神経活動の測定を可能にした。SF1-AMPKα1-DNロードsEVで処置したマウスは、対照と比較して有意に上昇した遠心性BAT交感神経活性(SNA)を示した。しかし、計算された求心性BAT神経活動は2つの群の間で異ならなかった。これらのデータは、SF1-AMPKα1-DNロードsEVが、求心性交感神経流出ではなく遠心性を刺激したことを実証しており、これは処置の中枢媒介効果と一致している。SNAデータと一致して、特定のβ3-ARアンタゴニスト、SR59230Aの皮下投与によるβ3-ARの薬理学的阻害
12、13、15~18、44は、摂食を妨げることなく、SF1-AMPKα1-DNロードsEVの末梢静脈内注射によって誘起される体重の減少を防止した(
図7c~
図7d)。
【0176】
β3-AR遮断後の増加した体重と一致して、SR59230Aによる処置は、BAT温度(
図7e~
図7f)及びUCP1タンパク質レベル(
図7g~
図7h)の増加を無効にした。注目すべきことに、単独で投与した場合、SR59230Aは、分析したパラメータのいずれにおいても変化を促進しなかった(対照+ビヒクルvs対照+SR59230A:(i)体重:-1.27±0.09vs-1.30±0.42、有意性なし;(ii)食物摂取量:2.49±0.07vs2.58±0.17、有意性なし;(iii)BAT温度:36.8±0.18vs36.7±0.07、有意性なし;(iv)UCP1 BAT:100±8.2vs84.1±8.3、有意性なし)。全体として、この証拠は、SF1-AMPKα1-DNロードsEVの全身注射が、摂食とは無関係に、VMHのSF1ニューロンに作用する体重減少を促進し、β3-AR活性化を介してSNSによるBAT熱産生の増加をもたらすことを示している。特に、示されるように、重要な心血管パラメータに変化が見られなかったという事実(
図13j~
図13m)は、sEVによって及ぼされる交感神経刺激がBATに特異的であることを示唆した。
【0177】
SF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置は、熱的中性条件におけるBAT熱産生及び体重減少を誘導した
本発明者らは、非熱的中性環境(マウスを収容する場合22~23℃)では、BATの基礎活性化がsEVの効果をマスクし得るため
41、45、SF1-AMPKα1-DNロードsEVの効果が周囲温度に依存するかどうかを調べることを目的とした。しかし、データは、熱的中性条件(30℃)に収容されたDIOマウスにおけるSF1-AMPKα1-DNロードsEVでの処置が、摂食とは無関係に(
図8c~
図8d)、顕著な体重減少を誘発し(
図8a~
図8b)、BAT熱産生の増加(
図8e~
図8f)及びBAT UCP1タンパク質含有量の増加(
図8g~
図8h)に関連することを示した。全体として、この証拠は、SF1-AMPKα1-DNロードsEVが、BAT熱産生を標的とすることによってエネルギーバランス及び体重を調節することを実証している。
【0178】
UCP1は、全身SF1-AMPKα1-DNロードsEVによって誘起される熱産生効果及び体重減少効果に不可欠である
最後に、本発明者らは、BAT熱産生及び体重に対するSF1-AMPKα1-DN sEVの効果が、UCP1発現に依存するかどうかを調べた。SF1-AMPKα1-DN sEVは、野生型マウスにおいて摂食非依存性であるが熱産生依存性の体重減少を誘導したが(
図8i、
図8k、
図8m及び
図8n)、この効果は、ucp1ヌルマウスでは全く存在しなかった(
図8j、
図8l、
図8o、及び
図8p)。全体として、これらのデータは、UCP1が熱産生及びエネルギーバランスに対するSF1-AMPKα1-DN sEVの中心的な効果を媒介するのに不可欠な役割を果たすことを実証し、同時に筋肉等の他の末梢組織からの寄与が無視できることを確認する。
【0179】
考察
現在の肥満症のパンデミックを阻止するための戦略の開発は、主に、(i)体重を調節する恒常性機構の固有の冗長性、(ii)逆調節応答の結果としての恒常性摂動に対する回復力(すなわち、摂食の減少はEEの減少をもたらす)、(iii)これまで利用可能であったほとんどの薬物の限定された特異性、及び(iv)有害な副作用に起因して妨げられてきた1~5。したがって、より正確な標的化、したがってより高い特異性を可能にする新しい遺伝的戦略/資源を生成することは興味深いであろう。
【0180】
それらの組成のために、sEVは、薬物のシャトルとして使用することができ、したがって、分子を特定の細胞に向けて運ぶために使用することができ19~22、したがって、予後、バイオマーカ及び革新的な治療のために利用される19~22、24~26。実際、生体適合性及び低い免疫原性等のそれらの特性は、それらをCNSに到達するのに理想的にする27、28。エネルギーバランスを調節する中心的な機構を標的とするために、BBBの交差は、目的の薬剤を送達する際の主要な課題である。この制限を回避するために、Lamp2bに融合したRVGペプチドをその表面に発現する操作されたsEVが開発され、特異的なニューロン標的化を可能にしたが28、任意の所与の脳領域の1つのニューロン集団に特異的ではない。本発明者らは、肥満症主導の状況において、目的のDNAプラスミドのカーゴとしてsEVを使用するこのアプローチを利用した。したがって、この研究では、本発明者らは、エネルギーバランスを調節する中枢経路及び正準経路、すなわち視床下部AMPK3、8、11、特にVMHのSF1ニューロンを標的とする送達ツールとしてsEVを開発した。
【0181】
特に、AMPK作用は高い解剖学的及びアイソフォーム依存的特異性を示し、食欲不振は、視床下部弓状核(ARC)のアグーチ関連タンパク質(AgRP)ニューロンにおけるAMPKα2アイソフォームの選択的消失によって誘発されるが46、VMHのSF1ニューロンにおけるAMPKα1活性の阻害は、SNS駆動BAT熱産生を刺激することによってエネルギー消費を増加させる17、18。注目すべきことに、SF1ニューロンにおけるAMPKα1の選択的消失を有するマウスはDIO18に対して耐性であり、このことは、視床下部集団においてこのアイソフォームを標的化することが肥満症に対する興味深い標的であり得ることを示唆している。しかし、この戦略の実施は、AMPKの末梢阻害に関連する任意の副作用が反対の効果、インスリン抵抗性の悪化及び糖尿病を有するので、高レベルの視床下部特異性を必要とし3、47、48、したがって、処置の特異性及び安全性の重要性を高めた。したがって、本発明者らは、SF1プロモータの制御下でAMPKα1-DN変異体をコードするプラスミドを外因的にロードしたsEVを開発した。特に、任意の中枢/脳操作を回避し、潜在的な治療的使用に許容され得る状態にするために、これらのsEVを尾静脈に末梢投与した。注目すべきことに、データは、SF1-AMPKα1-DNロードsEVが、(ucp1ヌルマウスにおける効果の欠如によって実証されるように)SNS媒介性UCP1依存性BAT熱産生の増加に起因して、顕著な摂食非依存性体重減少効果を促進し、全身性炎症応答又は肝臓及び心血管の副作用のいずれにも関連しないことを示した。注目すべきことに、この作用がSF1-AMPKα1-DNロードsEV注射マウスにおける食欲代償性変化の非存在下で起こるという事実は、本発明者らの長期及びクロスオーバー処置によっても実証されるように、典型的には食事療法介入を特徴付ける望ましくないリバウンド効果を排除するので、並進的関連性を有する5。
【0182】
注目すべきことに、本発明者らの共局在解析によって実証されたように、末梢組織に到達したにもかかわらず、SF1-AMPKα1-DNロードsEVは、VMH、特にSF1ニューロンにおけるAMPKシグナル伝達のみを調節した。これは、(i)ニューロン28に対するRVG媒介指向性及び(ii)AMPKα1-DN導入遺伝子のSF1駆動発現に起因する。注目すべきことに、(i)他の視床下部隣接核、(ii)精巣、副腎及び下垂体等の末梢SF1発現組織、並びに(iii)肝臓、BAT、心臓及び骨格筋等の末梢非発現SF1組織では、AMPK活性の検出可能な変化は見られなかった。全体として、これらのデータは、本発明者らが開発したSF1-AMPKα1-DNロードsEVによる全身処置が、VMHのSF1ニューロンにおけるAMPKα1機能を特異的に阻害することによって体重減少を誘導することができたことを示している。これは、視床下部ネットワークが、肥満症及び他の神経障害のための新しい治療可能性を開く末梢性に運ばれる薬剤によって選択的に標的化され得ることを実証する。この考えを強化するために、本発明者らのデータはまた、全身投与した場合、AMPK-sEVの肝臓及び心血管の副作用がないことを示した。これは、視床下部AMPKの標的化が、エネルギーバランス及び代謝を調節する末梢機構に作用する処置に関連する二次的効果のいくつかを迂回し得ることを示している5。
【0183】
肥満症に対する成功した処置法の開発のための戦略は、脳を標的とする固有の複雑さを考慮して、主に末梢アプローチに集中してきた。しかし、エネルギー恒常性を制御する視床下部機構に関する知識の増加により、別個の領域における神経回路の特異的調節が、薬物開発のための新規でより効果的な標的を提供し得ることが明らかになった。興味深いことに、肥満症の新しい処置法(レプチン、グレリン、グルカゴン様ペプチド-1アゴニスト、グルカゴン等)の開発の基礎となったエネルギーバランスにおける重要なプレイヤーの多くは1~6、視床下部AMPKを介して作用する可能性が高い3。
【0184】
しかし、CNSにおける特定のニューロンを標的とすることは、困難な作業であると考えられた。ここで、本発明者らは、肥満症の処置、炎症反応の制限、及び高度に選択的な細胞作用の増強におけるより伝統的な送達システムの代替としての天然バイオキャリアとして使用されるsEVの能力、すなわちVMHのSF1ニューロンにおけるAMPKα1についての証拠を提供する。したがって、遺伝学的ツールを有するsEVは、肥満症及び関連する併存症並びにおそらく他の神経疾患の処置のための新しい戦略の合理的な設計において新しい方法を開く。
【0185】
実施例2
遺伝性肥満症は2つのカテゴリーに分類される:メンデル型に遺伝する単遺伝子性肥満症は、典型的にはまれであり、早期発症及び重度であり、それぞれが小さな効果を有する数百の多型の結果である多遺伝子性肥満症である。単遺伝性肥満症の場合、治療選択肢は少ない。例えば、突然変異がリガンド、例えばホルモンの欠如を伴う場合(低ホルモン症候群をもたらす)、1つの可能性は補充療法であり得る。その戦略は、要因に応じて異なる程度の効率を与えている。しかし、変異がレプチン受容体(LEPR)又はメラノコルチン4受容体(MC4R)等の受容体上で起こる場合、治療選択肢はより限定され、肥満手術でさえ失敗する可能性がある。
【0186】
視床下部AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、全身レベルでのエネルギーバランス及び代謝の標準的な調節因子である。AMPKは、レプチンの食欲不振作用及び褐色脂肪組織(BAT)の熱産生作用の両方の重要な下流因子である。本発明者らは、BAT熱産生活性を調節する重要な集団である視床下部腹内側核(VMH)のステロイド産生因子1(SF1)ニューロンにおいて視床下部AMPKα1(ドミナントネガティブ変異体AMPKα1-DNの使用)を特異的に阻害するために、DNA配列のカーゴとして小型細胞外小胞(エキソソーム)を使用した。注目すべきことに、食餌誘発性肥満症(DIO)マウスをSF1-AMPKα1-DN sEVで全身(尾静脈内)処置した場合、これらのマウスは、交感神経活性化及びBATにおける脱共役タンパク質1(UCP1)依存性熱産生の増加に関連する顕著な摂食非依存性体重減少を示した。重要なことに、代謝、内分泌又は心血管の炎症反応又は他の有害作用は発生しなかった。
【0187】
この研究の目的は、db/dbマウスにおいてSF1-AMPKα1-DNを有するsEVを使用して、i)本発明者らの戦略が遺伝的形態の肥満症の処置に有効であるかどうか、及びii)BAT熱産生を調節する中心機構を標的とすることが、LEPR欠損症の処置のための新しい治療選択肢を提供し得るかどうかに対処することであった。
【0188】
1.材料及び方法
1.1.動物
雄ヌルLEPR(db/db)及び野生型(WT)同腹仔マウス(C57/BL/6J;8週齢;Janvier Labs)を実験に使用した。それらは、水及び標準的な実験室用食事(Scientific-Animal-Food-Engineering)への自由なアクセスを許された。7~8マウス/群を使用した。実験は、動物実験に関する国際法に準拠して行われ、USC倫理委員会(15012/2020/010)によって承認された。
【0189】
1.2 sEVの生成、検証、及び処置
sEVへのニューロン標的化能力を付与し、宿主免疫反応を制限するために、本発明者らは、前の実施例に示すように、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)への結合を介して血液脳関門(BBB)横断を可能にする、神経栄養性狂犬病ウイルス(RVG)に由来する特定の糖タンパク質に融合したリソソーム関連膜タンパク質2b(sEV膜で高発現されるタンパク質であるLamp2b)の融合タンパク質を発現するように遺伝子改変された未成熟樹状細胞を使用した。以前に実証されたように{Milbank、2021#56494}、電子顕微鏡法、ナノ粒子追跡分析(NTA)膜タンパク質マーカを使用して示されるように、sEVを深く特徴付けた。sEVに、SF1プロモータ(SF1-AMPKα1-DN)の制御下で発現されるAMPKα1-DN変異体をコードするプラスミドをロードして、それらの作用をVMH中のSF1細胞に限定した。示されるように、100μgの非ロードsEV又はSF1-AMPKα1-DNロードsEVを、3日ごとに2週間マウスの尾静脈に注射した{Milbank、2021#56494}。体重及び食物摂取量を毎日測定した。
【0190】
1.3.動物の測定
BAT温度(B335:Compact-Infrared-Thermal-Imaging-Camera;FLIR)及び核磁気共鳴(NRM;Whole Body Composition Analyzer;EchoMRI)を上記のように行った。
【0191】
1.4分析方法
血清トリグリセリドレベル、VMHアセチル-CoAカルボキシラーゼ(pACCα/ACCα)及びBAT UCP1ウェスタンブロッティング、並びにBAT及び白色脂肪組織(WAT)UCP1免疫染色を、同じキット(Spinreact)、抗体[(pACCα-Ser79及びACCα(Cell Signaling);UCP1(Abcam);β-アクチン、α-チューブリン(Sigma-Aldrich)、及び上記の試薬を使用して記載されるように行った。ウェスタンブロット画像では、全ての試料を同じゲルにロードしたが、試料を並べてロードしなかった場合は黒い線を挿入した。
【0192】
1.5統計分析
データをMEAN±SEMとして表す。統計学的有意性は、混合効果分析(時間経過処置について)又は対応のないスチューデントt検定によって決定し、P<0.05は有意であった。
【0193】
【0194】
2.2.全身SF1-AMPKα1-DN sEVは熱産生及び褐色化を増加させた
VMHのSF1ニューロンにおけるAMPKα1の阻害は、BAT上の交感神経緊張を増加させる古典的な機構であり、熱産生、エネルギー消費の増加及び体重減少をもたらす。本発明者らのデータは、SF1-AMPKα1-DN sEVの静脈内注射が両方のマウスモデルのVMHにおいてpACCαレベルを減少させることを示し(
図16A及び
図16B)、この視床下部核におけるAMPK活性の阻害における本発明者らの処置の有効性を実証した。
【0195】
次に、本発明者らは、熱産生機構に対するsEV媒介処置の効果を評価した。本発明者らの結果は、野生型マウスとSF1-AMPKα1-DN sEVで静脈内処置したdb/dbマウスの両方が、増大したUCP1タンパク質レベル(
図16E~
図16F)及び免疫反応性(
図16G~
図16H)のために、増大したBAT温度を示したことを表した(
図16C~
図16D)。最後に、本発明者らの結果は、db/dbマウス(野生型ではない)が皮下WAT(sWAT)においてより高いUCP1免疫反応性を示し、褐色化を示すことも実証した(
図16I~
図16J)。全体として、この証拠は、LEPR欠損マウス(及びその野生型)におけるSF1-AMPKα1-DN sEV誘発性体重減少がBAT熱産生の増加及びWAT褐色化に関連することを実証した。
【0196】
3.結論
遺伝的形態の肥満症に対する現在の処置の多くは、置換療法に機構的に基づいている。そのようなアプローチは、重要な受容体へのリガンド結合の欠如を代替するアゴニストの使用に基づく。肥満症誘発性LEPR欠損症に対する新しい戦略の探索は、依然として満たされていない臨床的必要性である。これらの患者の多くは、新しいMC4Rアゴニストで処置しても所望の治療応答を達成することができなかった。
【0197】
視床下部AMPKは下流LEPRに作用して、摂食とBAT熱産生の両方を調節する。更に、本発明者らは、sEVベースの戦略によるAMPKα1のセントラルターゲティングが、BAT熱産生を特異的に調節することによって、前臨床モデルにおけるDIOに対する適切なアプローチであることを示した。
【0198】
これを念頭に置いて、本発明者らは、LEPR欠損による完全なレプチン抵抗性のモデルであるdb/dbマウスにおけるSF1-AMPKα1-DN sEVの有効性を評価した。本発明者らの結果は、SF1-AMPKα1-DN sEVの静脈内注射がVMHのAMPK活性を阻害し、野生型マウス及びdb/dbマウスのBAT熱産生及び体重減少をもたらし、WAT褐色化も増加したことを実証した。注目すべきことに、SF1-AMPKα1-DN sEV誘発性体重減少は完全に摂食非依存性であり、このことは、本発明者らのアプローチと、食欲を標的とする他の戦略(例えば、セトメラノチド、又は更には恒常性及び/又は快楽の食物摂取を調節する他の視床下部細胞集団におけるAMPKに対するsEV)との組合せが、より有意な重量喪失を達成することを可能にし得ることを示唆している。これにより、エネルギーバランス方程式の両辺を標的とすることによって、LEPR欠損、ひいては任意のレプチン耐性状態に対するより一体的な処置が可能になる。
【0199】
したがって、本発明者らのデータは、褐色脂肪熱産生及びWAT褐色化を刺激することによって、視床下部AMPKのsEV媒介標的化がこの形態の遺伝性肥満症に対する適切なアプローチであり得ることを初めて明らかにした。
【0200】
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