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特表2024-532129PCSK9活性に関連する状態を治療するための化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】PCSK9活性に関連する状態を治療するための化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20240829BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240829BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K38/12
A61P3/06
A61K47/12
A61P9/10
A61P43/00 111
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/02
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509031
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 US2022040747
(87)【国際公開番号】W WO2023023245
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,973
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/251,972
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/263,095
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/311,622
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/371,685
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ダグラス・ジー
(72)【発明者】
【氏名】バンカ,プージャ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ゼシュン
(72)【発明者】
【氏名】クラパラ,アーティス
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,フー-ロン
(72)【発明者】
【氏名】コン,ジョンロク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルソローナ,リチャード・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デスモンド,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】マリグレス,ピーター・イー
(72)【発明者】
【氏名】マロータ,メラニー
(72)【発明者】
【氏名】アレイン,キャンディス
(72)【発明者】
【氏名】オコー,グレイス・エー
(72)【発明者】
【氏名】ディヌンツィオ,ジェームズ・シー
(72)【発明者】
【氏名】ノフシンガー,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】リ,リ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ダニエル・ジェー
(72)【発明者】
【氏名】マジョール,マジッド
(72)【発明者】
【氏名】ケプリンガー,ケネス・アラン
(72)【発明者】
【氏名】ション,ユシェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェフリング,ピーター・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンズ,ジョン・ディー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC21
4C076DD25
4C076DD26
4C076DD29C
4C076DD38
4C076DD41C
4C076DD41N
4C076DD46
4C076DD67
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE38
4C076EE48
4C076FF03
4C076FF04
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA17
4C084BA27
4C084BA28
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA11
4C084NA14
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC331
4C084ZC332
(57)【要約】
本開示は、式(I)[式中、A”は、薬学的に許容されるアニオンから選択される]の化合物をある量で対象に経口投与すること(ここで投与量は、約5mg~約300mgの式(I)の化合物である)によって、高コレステロール血症、並びに例えば、アテローム性動脈硬化、アテローム性動脈硬化性心血管疾患、冠動脈心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群又は関連する心血管疾患及び心血管代謝状態といったPCSK9活性に関連するその他の状態を治療する方法を提供する。本発明はまた、式(I)の化合物の特定の塩を含む、式(I)の化合物と、透過促進剤とを含む、医薬組成物に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療の必要がある対象の高コレステロール血症を治療する方法であって、
式(I):
【化1】
[式中、Aが、薬学的に許容されるアニオンである]
の化合物を、ある量で前記対象に経口投与することを含み、
投与される前記量が、約5mg~約300mgの前記式(I)の化合物である、方法。
【請求項2】
投与される前記量が、約10mg~約30mgの前記式(I)の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与される前記量が、10mg、12.5mg、15mg、17.5mg、18mg又は20mgの前記式(I)の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
投与される前記量が、10mg又は20mgの前記式(I)の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物が、透過促進剤を更に含む経口剤形で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記透過促進剤が、カプリン酸ナトリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記経口剤形が、180mgの前記透過促進剤を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物が、少なくとも14日間にわたって1日1回投与される単一経口剤形で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、スタチン療法で現在治療されているか、又は以前に治療された、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
治療後の前記対象のLDLコレステロールのレベルが、治療前のLDLコレステロールのベースラインレベルから低下している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
治療後の前記対象のLDLコレステロールの前記レベルが、治療前のLDLコレステロールの前記ベースラインレベルから50%超低下している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象がヒトである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記式(I)の化合物が、下記:
【化2】
【化3】
又は
【化4】
から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
低下の必要がある対象のLDL-Cを低下する方法であって、
式(I):
【化5】
[式中、Aが、カプレートアニオン又はアセテートアニオンから選択される薬学的に許容されるアニオンである]
の化合物を、ある量で前記対象に経口投与することを含み、
前記量が、約5mg~約300mgの前記式(I)の化合物である、方法。
【請求項15】
治療の必要がある対象のアテローム性動脈硬化性心血管疾患を治療する方法であって、
式(I):
【化6】
[式中、Aが、カプレートアニオン又はアセテートアニオンから選択される薬学的に許容されるアニオンである]
の化合物を、ある量で前記対象に経口投与することを含み、
前記量が、約5mg~約300mgの前記式(I)の化合物である、方法。
【請求項16】
かかる治療の必要がある対象のPCSK9活性を阻害する方法であって、
式(I)の化合物:
【化5】
[式中、Aが、カプレートアニオン又はアセテートアニオンから選択される薬学的に許容されるアニオンである]
の化合物を、ある量で前記対象に経口投与することを含み、
前記量が、約5mg~約300mgの前記式(I)の化合物である、方法。
【請求項17】
投与の必要がある前記対象が、式(I)の化合物の投与の約30分前に絶食する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
式(I):
【化8】
[式中、Aが薬学的に許容されるアニオンである]
の化合物及び透過促進剤を含む、医薬組成物。
【請求項19】
前記透過促進剤がカプリン酸ナトリウムである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
ポリエチレングリコール、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース又はそれらの組合せから選択される希釈剤を更に含む、請求項18又は19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記希釈剤が、結晶セルロース、ラクトース又はマクロゴール(PEG 4000)から選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物が、錠剤形態である、請求項18~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物が、カプセル剤形態である、請求項18~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記式(I)の化合物が、化合物1、化合物2又は化合物3である、請求項18~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記医薬組成物が、
a)前記医薬組成物の総重量に対して約1重量%~7重量%の式(I)の化合物と、
b)前記医薬組成物の総重量に対して約1重量%~75重量%の透過促進剤と、
c)少なくとも1種の希釈剤と
を含み、
d)滑剤及び/又は潤滑剤
を含んでもよい、請求項18~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記医薬組成物が、
a)前記医薬組成物の総重量に対して約2重量%~6重量%の式(I)の化合物と、
b)前記医薬組成物の総重量に対して約18重量%~74重量%の、カプリン酸ナトリウムである透過促進剤と、
c)PEG4000、結晶セルロース及びラクトースから選択される少なくとも1種の希釈剤と、
d)前記医薬組成物の総重量に対して0重量%~約3重量%の、二酸化ケイ素である滑剤と、
e)前記医薬組成物の総重量に対して0重量%~約2重量%の、ステアリン酸マグネシウムである潤滑剤と
を含み、
f)少なくとも1種の崩壊剤
を含んでもよい、請求項18~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年8月19日に出願された米国仮特許出願第63/234,973号、2021年10月4日に出願された米国仮特許出願第63/251,972号、2021年10月27日に出願された米国仮特許出願第63/263,095号、2022年2月18日に出願された米国仮特許出願第63/311,622号、及び2022年8月17日に出願された米国仮特許出願第63/371,685号の優先権を主張する。各出願の内容は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容全体を援用する。
【0002】
本開示は、高コレステロール血症、並びに例えば、アテローム性動脈硬化、アテローム性動脈硬化性心血管疾患、冠動脈心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群又は関連する心血管疾患及び心血管代謝状態といったPCSK9活性に関連するその他の状態を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プロタンパク質転換サプチリシン-ケキシン9(以下、「PCSK9」と呼ぶ)は、神経アポトーシス調節転換酵素I型(「NARC-1」)としても公知であり、分泌型サブチラーゼファミリーの9番目のメンバーとして同定されているプロテイナーゼK様サブチラーゼである。Seidah et al.,2003 PNAS 100:928-933を参照されたい。PCSK9は、セリンプロテアーゼの哺乳動物プロタンパク質転換酵素ファミリーに属し、N末端シグナル配列、プロドメイン、触媒ドメイン及びC末端ドメインを含有する。Seidah et al.,2012 Nat.Rev.Drug Discov.11:367-383を参照されたい。PCSK9転写調節の研究によって、この調節が、リポタンパク質代謝に関与する他の遺伝子では典型的なものである(Dubuc et al.,2004 Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:1454-1459)ような、コレステロール代謝に関与する他の遺伝子を用いて見られるようなステロール調節エレメント結合タンパク質で調節される(Maxwell et al.,2003 J.Lipid Res.44:2109-2119)ことが実証された。スタチンは、薬物のコレステロール低下効果による方式でPCSK9発現を上方制御することが示されている(上記)。加えて、PCSK9プロモータは、コレステロール調節、ステロール調節エレメント及びSp1部位に関与する2つの保存部位を有することが示されている(上記)。
【0004】
小胞体内にある間、PCSK9は、その唯一の触媒活性として、Gln-152残基とSer-153残基との間で自己切断を行う。Naureckiene et al.,2003 Arch.Biochem.Biophys.420:55-67;Seidah et al.,2003 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:928-933を参照されたい。プロドメインは、トランスゴルジネットワークを介したその後の輸送中にわたり、触媒ドメインとしっかりと会合した状態にある。自己切断による成熟は、PCSK9分泌及びその後の細胞外機能にとって重要であることが実証されている(Benjannet et al.,2012 J.Biol.Chem.287:33745-33755を参照されたい)。したがって、いくつかのエビデンスの群は、PCSK9が、特に肝臓LDLRタンパク質の量を低下し、それによって低比重リポタンパク質(low density lipoprotein、「LDL」)コレステロールを循環から取り除くための肝臓の能力を損なうことを実証している。
【0005】
マウスの肝臓におけるPCSK9のアデノウイルス媒介性の過剰発現は、LDLRのmRNA量には影響のない状態での、肝臓LDLRタンパク質の劇的な損失による循環低比重リポタンパク質コレステロール(「LDL-C」)の蓄積につながる(Benjannet et al.,2004 J.Biol.Chem.279:48865-48875;Maxwell&Breslow,2004 PNAS 101:7100-7105;Park et al.,2004 J.Biol.Chem.279:50630-50638;及びLalanne et al.,2005 J.Lipid Res.46:1312-1319)。マウスにおける循環LDL-Cレベルに関するPCSK9過剰発現の効果は、LDLRの発現に完全に依存しており、なおその上、PCSK9によるLDL-9の調節はLDLRタンパク質の下方制御によって媒介されていることを示している。これらの知見に従って、PCPK9を欠損するマウス、又はPCSK9 mRNAがアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害剤によって低下しているマウスは、より高いレベルの肝臓LDLRタンパク質と、循環LDL-Cを取り除くためのより高い能力とを有している(Rashid et al.,2005 PNAS 102:5374-5379;及びGraham et al.,2007 J.Lipid Res.48(4):763-767)。加えて、培養されたヒト肝細胞でのsiRNAによるPCSK9レベルの低下もまた、より高いLDLRタンパク質レベルとLDL-Cを取り込む能力の上昇につながる(Benjannet et al.,2004 J.Biol.Chem.279:48865-48875;及びLalanne et al.,2005 J.Lipid Res.46:1312-1319)。総合すると、これらのデータは、PCSK9作用は、LDLRタンパク質レベルを低下させることによってLDL-Cの上昇を引き起こすことを示している。
【0006】
遺伝子PCSK9でのいくつかの突然変異は、血漿中での低比重リポタンパク質(「LDL」)の粒子の顕著な上昇を特徴とする遺伝性代謝障害であり、早期性循環不全を引き起こし得る、家族性高コレステロール血症(autosomal dominant hypercholesterolemia、「ADH」)に関連していることが確定している。Abifadel et al.,2003 Nature Genetics 34:154-156;Timms et al.,2004 Hum.Genet.114:349-353;Leren,2004 Clin.Genet.65:419-422を参照されたい。後に発表された、AbifadelらによるS127R突然変異に関する研究では、かかる突然変異を有する患者が、(1)低比重リポタンパク質(「LDL」)、超低比重リポタンパク質(「VLDL」)及び中間比重リポタンパク質(「IDL」)などのアポB100含有リポタンパク質の過剰産生、及び(2)当該リポタンパク質の排除又は転換に関連する減少、に寄与する、血漿中でのより高い総コレステロール及びアポB100を呈することが報告されている(Ouguerram et al.,2004 Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:1448-1453)。
【0007】
したがって、PCSK9がLDLの調節にて役割を果たしていることは疑いようがない。PCSK9の発現又は上方制御は、LDLコレステロールの血漿レベルの上昇に関連しており、PCSK9の発現の対応する阻害又は欠損は、LDLコレステロール血症レベルの減少に関連している。PCSK9での配列変異に関連するLDLコレステロールレベルの減少は、冠動脈心疾患に対する保護作用を与えることが見出されている(Cohen,2006 N.Engl.J.Med.354:1264-1272)。
【0008】
臨床試験では、LDLコレステロールレベルの減少は、冠動脈イベントの割合に直接関連している(Law et al.,2003 BMJ 326:1423-1427)。生涯にわたる血漿LDLコレステロールレベルの適度な減少は、冠動脈イベントの発生率における実質的な減少に相関することが見出されている(Cohen et al.,2006 N.Engl.J.Med.354:1264-1272)。これは、非脂質関連心血管危険因子の有病率が高い集団についても当てはまる(上記)。したがって、LDLコレステロールレベル制御の管理から得られる利益は大きい。
【0009】
したがって、LDL調節におけるPCSK9の役割の拮抗作用を含む、心血管疾患の治療に有効な化合物及び/薬剤の同定が非常に望ましい。ただし、一般的には、PCSK9は血中を循環し、かつ細胞表面LDL受容体に最も適度な結合親和性を有するため、この機序を高血清LDLレベルに関する疾患の治療に利用しようとする試みは、これまでは例えば抗体といった大きい生体分子の使用に注目してきた。PCSK9特異的siRNA又はモノクローナル抗体(mAb)療法のいずれかが高コレステロール血症を有する患者でのLDL-Cを低下させることができるものの、これらの種類の療法はどちらも注射で投与される。PCSK9を標的とする薬物としての小ペプチド又は小分子の治療ポテンシャルは、調査がまだ始まったばかりである。例えば、Tombling et al.,Atherosclerosis 330(2021)52-60。加えて、かかる化合物を投与する経口投与経路、PCSK9活性の調節が役割を果たすことができる状態の療法への対応に非常に望ましい経路を利用するための剤形への製剤化に適した化合物は少ない。
【0010】
国際公開第2019/246349号は、心血管疾患及びPCSK9活性に関連する状態の治療に有用である環状ペプチド化合物を開示している。本開示は、高コレステロール血症及びPCSK9活性に関連するその他の状態を治療し、望ましくは同定されたPCSK9阻害剤の経口投与を含む方法を提供することで最新技術を前進させる。PCSK9阻害剤の新規塩形態もまた、本明細書で提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2019/246349号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Seidah et al.,2003 PNAS 100:928-933
【非特許文献2】Seidah et al.,2012 Nat. Rev. Drug Discov.11:367-383
【非特許文献3】Dubuc et al.,2004 Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:1454-1459
【非特許文献4】Maxwell et al.,2003 J.Lipid Res.44:2109-2119
【非特許文献5】Naureckiene et al.,2003 Arch.Biochem.Biophys.420:55-67
【非特許文献6】Seidah et al.,2003 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:928-933
【非特許文献7】Benjannet et al.,2012 J.Biol.Chem.287:33745-33755
【非特許文献8】Benjannet et al.,2004 J.Biol.Chem.279:48865-48875
【非特許文献9】Maxwell&Breslow,2004 PNAS 101:7100-7105
【非特許文献10】Park et al.,2004 J.Biol.Chem.279:50630-50638
【非特許文献11】Lalanne et al.,2005 J.Lipid Res.46:1312-1319
【非特許文献12】Rashid et al.,2005 PNAS 102:5374-5379
【非特許文献13】Graham et al.,2007 J.Lipid Res.48(4):763-767
【非特許文献14】Abifadel et al.,2003 Nature Genetics 34:154-156
【非特許文献15】Timms et al.,2004 Hum.Genet.114:349-353
【非特許文献16】Leren,2004 Clin.Genet.65:419-422
【非特許文献17】Ouguerram et al.,2004 Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:1448-1453
【非特許文献18】Cohen,2006 N.Engl.J.Med.354:1264-1272
【非特許文献19】Law et al.,2003 BMJ 326:1423-1427
【非特許文献20】Tombling et al.,Atherosclerosis 330(2021)52-60
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、高コレステロール血症並びに例えば、アテローム性動脈硬化、アテローム性動脈硬化性心血管疾患、冠動脈心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群又は関連する心血管疾患及び心血管代謝状態といったPCSK9活性に関連するその他の状態を治療する方法であって、式(I):
【化1】
[式中、Aは、薬学的に許容されるアニオンである]
の化合物を、ある量で投与する必要がある対象に経口投与することを含み、投与量が約5mg~約300mgである量の式(I)の化合物である、方法を提供する。
【0014】
本開示はまた、低下の必要がある対象のLDL-Cを低下する方法であって、式(I)[式中、Aは、薬学的に許容されるアニオンである]の化合物を、ある量で対象に経口投与することを含み、量が約5mg~約300mgである量の式(I)の化合物である、方法を提供する。
【0015】
本開示は、かかる治療の必要がある対象のアテローム性動脈硬化性心血管疾患を治療する方法であって、式(I)[式中、Aは、薬学的に許容されるアニオンである]の化合物を、ある量で対象に経口投与することを含み、投与量が約5mg~約300mgである量の式(I)の化合物である、方法を提供する。
【0016】
本開示はまた、阻害の必要がある対象のPCSK9活性を阻害する方法であって、式(I)[式中、Aは、薬学的に許容されるアニオンである]の化合物を、ある量で対象に経口投与することを含み、量が約5mg~約300mgである量の式(I)の化合物である、方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、式(I)の化合物の特定の塩に関する。
【0018】
本発明はまた、式(I)の化合物の特定の塩を含む、式(I)の化合物と、透過促進剤と、を含む医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】約10~約300mgの様々な用量での、式(I)の化合物である化合物1の単回投与の薬物動態を示す。
図2】健常な男性参加者への10~300mgの化合物1の単回経口用量を投与した後の血漿薬物動態の統計の集計である。
図3】式(I)の化合物の製剤、並びに既知の抗PCSK9モノクローナル抗体、及び抗PCSK9 siRNA活性、及びプラセボについてのベースラインLDL-Cからの変化%を示す。
図4】化合物1の単回投与後の、ベースラインと比較した遊離PCSK9の血漿レベルの低下を示す。
図5】化合物1と、化合物2と、化合物3との間の安定性の差分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、高コレステロール血症、並びに例えば、アテローム性動脈硬化、アテローム性動脈硬化性心血管疾患、冠動脈心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群又は関連する心血管疾患及び心血管代謝状態といったPCSK9活性に関連するその他の状態を治療する方法に関する。本開示の方法によれば、式(I):
【化2】
[式中、Aは、薬学的に許容されるアニオンである]
の化合物は、治療の必要がある対象に経口投与される。
【0021】
一実施形態では、本開示は、治療の必要がある対象の高コレステロール血症を治療する方法であって、式(I)[式中、Aは、薬学的に許容されるアニオンである]の化合物を、ある量で対象に経口投与することを含み、量が約5mg~約300mgの式(I)の化合物である、方法を提供する。
【0022】
一実施形態では、本開示は、低下の必要がある対象のLDL-Cを低下する方法であって、式(I)[式中、Aは薬学的に許容されるアニオンである]の化合物を、ある量で対象に経口投与することを含み、量が約5mg~約300mgの式(I)の化合物である、方法に一般には関する。
【0023】
一実施形態では、本開示は、治療の必要がある対象のアテローム性動脈硬化性心血管疾患を治療する方法であって、式(I)[式中、Aは薬学的に許容されるアニオンである]の化合物を、ある量で対象に経口投与することを含み、量が約5mg~約300mgの式(I)の化合物である、方法に関する。
【0024】
一実施形態では、本開示は一般に、阻害の必要がある対象のPCSK9活性を阻害する方法であって、式(I)[式中、Aは薬学的に許容されるアニオンである]の化合物を、ある量で対象に経口投与することを含み、量が約5mg~約300mgの式(I)の化合物である、方法に関する。本明細書で使用される場合、「阻害する」又は「拮抗する」は、1又は複数の罹患組織でのPCSK9の1つ以上の活性若しくは機能の作用に対抗する、活性若しくは機能を阻害する、活性若しくは機能を相殺する、活性若しくは機能を中和する、又は活性若しくは機能を低減する、式(I)の化合物を1又は複数の罹患組織に提供することを指す。いくつかの実施形態では、PCSK9活性を阻害するための方法は、上記のようなPCSK9活性に関連する状態の治療のためのものであり、又は代替的には、PCSK9拮抗薬の効果によって利益を得る疾患、障害又は状態の療法を提供するためのものである。
【0025】
式(I)の化合物、その薬学的に許容されるアニオン、その量、治療される対象、経口投与、経口剤形、製剤、薬学的に許容される賦形剤、LDL-C低下、PCSK9阻害などに関する以下の詳細は、上記又は以下に記載される本開示の方法のすべてに関連する。
【0026】
「化合物A」とも称される式(I):
【化3】
[式中、Aは薬学的に許容されるアニオンである]
の化合物は、本開示の方法のすべてで使用される。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容されるアニオン」は、薬学的に許容される塩を形成するのに好適なアニオンを指す。
【0027】
「1又は複数の塩」という用語及び本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という語句での使用は、無機酸及び/又は有機酸で形成された酸性塩、無機塩基及び/又は有機塩基で形成された塩基性塩、双性イオン型第四級アンモニウム複合体のいずれかを含む。本発明の化合物の塩は、例えば、本発明の化合物を、塩が沈殿する媒体中にて、又は水性媒体中にて、当量などの量の酸又は塩基と反応させ、その後凍結乾燥を行うといった当業者に公知の方法で形成され得る。
【0028】
本発明の化合物は、正に荷電した四配位窒素原子を含有しており、塩を形成するアニオンの付加によって、又は双性イオンを生成する分子の異なる部分のアニオンの形成を介して、安定化することができるものであり、内部塩と称されることがある。そのため、本発明の化合物は、第四級アンモニウム塩又は第四級アンモニウム双性イオンの形態で調製され得る。
【0029】
したがって、本発明の化合物の構造の提示は、塩形態であるか双性イオン形態であるかにかかわらず、上記のかかる化合物の他のすべての形態もまた含む。それゆえ、本発明の一態様は、薬学的に許容される塩又は双性イオンの形態である本発明の化合物の提供である。当業者は、本発明の化合物が、かかる塩を形成し得る例であって、四配位窒素が四級化され、荷電した窒素形態が結合したアニオンによって安定化され得る場合を含む例を認識するであろう。「薬学的に許容される塩」という用語は、生物学的にもその他の場合でも非常に望ましい(例えば、レシピエントに対して毒性がなく、またそれ以外の場合にも有毒ではない)任意の塩(塩と双性イオンとして内部塩とを含む)を指す。
【0030】
塩基性(又は酸性)薬学的化合物からの薬学的に許容される塩の形成は、例えば、S.Berge et al.,Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1-19;P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201-217;Anderson et al,The Practice of Medicinal Chemistry(1996),Academic Press,New York;in The Orange Book(Food&Drug Administration,Washington,D.C.on their website);及びP.Heinrich Stahl,Camille G.Wermuth(Eds.),Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(2002)Int’l.Union of Pure and Applied Chemistry,pp.330-331によって一般には記述されている。これらの開示は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容全体を援用する。
【0031】
本開示は、医薬製剤の調製での使用にとって安全であると一般に認識されている塩及び当業者の範囲内で現在形成されることができ、医薬製剤の調製での使用にとって「一般的に安全であると認識されている」ものとして後に分類され、「薬学的に許容される塩」として本明細書で称されているものを含む、式(I)の化合物として利用可能なすべての塩を企図している。
【0032】
薬学的に許容される酸性塩の例としては、トリフルオロ酢酸塩を含む酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、カプリン酸塩(デカン酸塩としても公知である)、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩(本明細書で言及するものなど)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩としても公知である)、ウンデカン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、これらの塩のそれぞれに対応する薬学的に許容されるアニオンは、本開示によれば、Aであり得る。
【0033】
本開示で使用され得る薬学的に許容される塩、及び対応する薬学的に許容されるアニオンの更なる例としては、フッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン、アセテートアニオン及びカプレートアニオンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、薬学的に許容されるアニオンは、塩化物アニオン、アセテートアニオン又はカプレートアニオンから選択される。本明細書で使用される場合、カプレート及びデカノエートは互換的に使用される。
【0034】
本発明の一実施形態では、薬学的に許容されるアニオンは塩化物アニオンであり、式(I)の化合物は、下記:
【化4】
である。
【0035】
一実施形態では、化合物1は、式(I)の化合物の塩化物塩の非晶質形態である。図5では、「API非晶質塩化物」は化合物1を指す。
【0036】
本発明の一実施形態では、薬学的に許容されるアニオンはカプレートアニオンであり、式(I)の化合物は、下記:
【化5】
であり、本明細書では「化合物2」と称される。一実施形態では、化合物2は、式(I)の化合物のカプリン酸塩の非晶質形態である。
【0037】
本発明の一実施形態では、薬学的に許容されるアニオンはアセテートアニオンであり、式(I)の化合物は、下記:
【化6】
であり、本明細書では「化合物3」と称される。一実施形態では、化合物3は、式(I)の化合物の酢酸塩の非晶質形態である。
【0038】
一実施形態では、本発明の方法は、式(I)の化合物を投与することを含み、式(I)の化合物は、下記:
【化7】
【化8】
又は
【化9】
から選択される。
【0039】
非晶質塩化物塩(化合物1)の調製は、酸性化工程を利用し、それによって、超臨界流体クロマトグラフィー及び蒸発後に生成物に塩酸を添加することで塩化物が導入される。図5は、図5の非晶質酢酸塩又は非晶質カプリン酸塩のいずれか以外の非晶質塩化物塩について示されるより高い不純物レベルによって観察されるように、強酸であるこうした過剰な塩酸は、分子の化学分解の増加をもたらし得ることによる、化合物1(「API非晶質塩化物」と称される)の所与のバッチに過剰なHClを添加することに関連するリスクを実証している。非晶質塩化物塩の安定性は、この塩を合成するために使用されるプロセスに応じて変動するものの、非晶質酢酸塩及び非晶質カプリン酸塩は、こうしたリスクによって変わることがなく、使用される合成プロセスにかかわらない、安定性を実証している。
【0040】
本開示はまた、阻害の必要がある対象のPCSK9活性を阻害する方法であって、式(I)[式中、Aは、薬学的に許容されるアニオンである]の化合物を、ある量で対象に経口投与することを含み、量が約5mg~約300mgである量の式(I)の化合物である、方法を提供する。
【0041】
式(I)の化合物は、PCSK9機能に拮抗する特性を有した化合物であるため、これはPCSK9特異的拮抗薬又は阻害剤である。式(I)の化合物は、化合物を作製する方法と同様に、国際公開第2019/246349号に開示されており、開示全体が、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する。
【0042】
式(I)の化合物は、いくつかの不斉炭素中心については従来の立体化学表記を使用して提示されている。そのため、黒い実線の「楔形」結合は、再現手段の平面から突出している結合を表しており、その一方で「破線楔形」結合は、再現手段の平面へと結合が加工していることを表している。従来のように、平坦な実線は、描かれた結合についてのすべての空間的構成を表している。したがって、特に立体化学表記が提示されていない場合には、こうした表示は、構造的特徴のすべての立体化学的及び空間的な向きを企図する。
【0043】
式(I)の化合物は安定状態である。本明細書で使用される場合、「安定な」は、調製かつ単離することが可能であり、その構造及び特性が維持されているか、本明細書に記載の目的(例えば、対象への治療投与)への化合物の使用を可能にする、十分な期間にわたって本質的には変化しない状態を維持することができる化合物を指す。
【0044】
式(I)の化合物は、生体利用可能であり、特に経口的に生体利用可能である。本明細書で使用される場合、「生体利用可能」は、身体に吸収かつ利用される式(I)の化合物の能力を指す。本明細書で使用される場合、「経口的に生体利用可能」は、口からの摂取時に、式(I)の化合物が身体に吸収かつ利用されることができることを意味している。
【0045】
本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療」という用語は、疾患、状態又は障害の病態又は症状を経験又は示す対象における、疾患、状態又は障害の阻害又は緩和を指す。例えば、疾患、状態又は障害の阻害は、当該疾患、当該状態又は当該障害の状態及び/又は症状の更なる発症を抑止することを指す。更には、疾患、状態又は障害の緩和は、例えば、疾患の重症度の低下など、病態及び/又は症状の反転を指す。
【0046】
「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」又は「予防」は、本明細書で使用される場合、予防される疾患、状態若しくは障害に関連する、又はこれらによって引き起こされる少なくとも1つの症状の予防を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「対象」は動物、好ましくは哺乳動物を指し、特に、ヒト、又はウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ネコ、イヌを含むがこれらに限定されない家畜を含む非ヒト、及び治療の必要があるその他の哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0048】
本明細書で使用される場合、式(I)の化合物に関する「投与」及びその変形(例えば、「投与する(administering)」)といった用語は、治療の必要がある対象に化合物を提供することを意味する。本明細書で使用される場合、「経口的に」及びその変形(例えば、「経口」)は、口を介した投与、すなわち口を介した式(I)の化合物の投与を指す。
【0049】
対象への式(I)の化合物を投与することは、自己投与と他者による対象への投与の両方を含む。対象は、既存の疾患若しくは医学的状態について治療の必要があり得る、若しくは治療を望むことができ、又は疾患若しくは医学的状態の発症リスクを予防若しくは低下するために予防的治療の必要があり得る、若しくは治療を望むことができる。本明細書で使用される場合、既存の状態の治療又は予防的治療を「必要とする」対象は、医療専門職による必要の決定及びこうした治療についての患者の要望の両方を包含する。
【0050】
特段明記しない限り、又は文脈から明らかである限り、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、明記された値の10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内又は0.01%以内として理解される。
【0051】
一実施形態では、対象に投与される量は、約5mg~約300mgの式(I)の化合物である。5~300mgの間の自然数及び半整数は、本発明に含まれる。一実施形態では、投与される量は、約10mg~約300mgの式(I)の化合物である。一実施形態では、投与される量は、約10mg又は約20mgの式(I)の化合物である。一実施形態では、投与される量は、約5mg、約6mg、約10mg、約12mg、約15mg、約18mg、約20mg、約24mg、約25mg、約30mg、約35mg又は約100mgの式(I)の化合物である。一実施形態では、投与される量は、約10mg、約12mg、約15mg、約18mg、約20mg、約24mg、約25mg又は約30mgの式(I)の化合物である。一実施形態では、投与される量は、約10mg、約10.5mg、約11mg、約11.5mg、約12mg、約12.5mg、約13mg、約13.5mg、約14mg、約14.5mg、約15mg、約15.5mg、約16mg、約16.5mg、約17mg、約17.5mg、約18mg、約18.5mg、約19mg、約19.5mg、約20mg、約20.5mg、約21mg、約21.5mg、約22mg、約22.5mg、約23mg、約23.5mg、約24mg、約24.5mg、約25mg、約25.5mg、約26mg、約26.5mg、約27mg、約27.5mg、約28mg、約28.5mg、約29mg、約29.5mg又は約30mgの式(I)の化合物である。一実施形態では、投与される量は、約5mg~約300mgの1日用量である。一実施形態では、投与される量は、約10mg、約10.5mg、約11mg、約11.5mg、約12mg、約12.5mg、約13mg、約13.5mg、約14mg、約14.5mg、約15mg、約15.5mg、約16mg、約16.5mg、約17mg、約17.5mg、約18mg、約18.5mg、約19mg、約19.5mg、約20mg、約20.5mg、約21mg、約21.5mg、約22mg、約22.5mg、約23mg、約23.5mg、約24mg、約24.5mg、約25mg、約25.5mg、約26mg、約26.5mg、約27mg、約27.5mg、約28mg、約28.5mg、約29mg、約29.5mg又は約30mgの式(I)の化合物の1日用量である。一実施形態では、投与される量は、約5mg、約6mg、約10mg、約12mg、約15mg、約18mg、約20mg、約24mg、約25mg又は約30mgの式(I)の化合物の1日用量である。一実施形態では、投与される量は、約10mg、約12mg、約15mg、約18mg、約20mg、約24mg、約25mg又は約30mgの式(I)の化合物の1日用量である。
【0052】
一実施形態では、対象に投与される式(I)の量は、約10mg~約30mgの式(I)の化合物である。別の実施形態では、対象に投与される量は、約12mg~約27mgの式(I)の化合物である。更に別の実施形態では、対象に投与される量は、約15mg~約25mgの式(I)の化合物である。一実施形態では、対象に投与される量は、約10mg~約20mgの式(I)の化合物である。更に別の実施形態では、対象に投与される量は、約15mg~約20mgの式(I)の化合物である。
【0053】
一実施形態では、対象に投与される量は、化合物1の約10mg~約30mgである。別の実施形態では、対象に投与される量は、化合物1の約12mg~約27mgである。更に別の実施形態では、対象に投与される量は、化合物1の約15mg~約25mgである。一実施形態では、対象に投与される量は、化合物1の約10mg~約20mgである。更に別の実施形態では、対象に投与される量は、化合物1の約15mg~約20mgである。一実施形態では、量は、化合物1の約10mg、約10.5mg、約11mg、約11.5mg、約12mg、約12.5mg、約13mg、約13.5mg、約14mg、約14.5mg、約15mg、約15.5mg、約16mg、約16.5mg、約17mg、約17.5mg、約18mg、約18.5mg、約19mg、約19.5mg、約20mg、約20.5mg、約21mg、約21.5mg、約22mg、約22.5mg、約23mg、約23.5mg、約24mg、約24.5mg、約25mg、約25.5mg、約26mg、約26.5mg、約27mg、約27.5mg、約28mg、約28.5mg、約29mg、約29.5mg又は約30mgの1日用量である。一実施形態では、量は、化合物1の約15mg、約15.5mg、約16mg、約16.5mg、約17mg、約17.5mg、約18mg、約18.5mg、約19mg、約19.5mg、約20mg、約20.5mg、約21mg、約21.5mg、約22mgの1日用量である。更に別の実施形態では、投与の必要がある対象に対する投与量は、化合物1の約15mg、約17.5mg、18mg、約20mg又は約22mgである。
【0054】
一実施形態では、対象に投与される量は、化合物2の約10mg~約30mgである。別の実施形態では、対象に投与される量は、化合物2の約12mg~約27mgである。更に別の実施形態では、対象に投与される量は、化合物2の約15mg~約25mgである。一実施形態では、対象に投与される量は、化合物2の約10mg~約20mgである。更に別の実施形態では、対象に投与される量は、化合物2の約15mg~約20mgである。一実施形態では、量は、化合物2の約10mg、約10.5mg、約11mg、約11.5mg、約12mg、約12.5mg、約13mg、約13.5mg、約14mg、約14.5mg、約15mg、約15.5mg、約16mg、約16.5mg、約17mg、約17.5mg、約18mg、約18.5mg、約19mg、約19.5mg、約20mg、約20.5mg、約21mg、約21.5mg、約22mg、約22.5mg、約23mg、約23.5mg、約24mg、約24.5mg、約25mg、約25.5mg、約26mg、約26.5mg、約27mg、約27.5mg、約28mg、約28.5mg、約29mg、約29.5mg又は約30mgの1日用量である。一実施形態では、量は、化合物2の約15mg、約15.5mg、約16mg、約16.5mg、約17mg、約17.5mg、約18mg、約18.5mg、約19mg、約19.5mg、約20mg、約20.5mg、約21mg、約21.5mg、約22mgの1日用量である。更に別の実施形態では、投与の必要がある対象に対する投与量は、化合物2の約15mg、約17.5mg、18mg、約20mg又は約22mgである。
【0055】
一実施形態では、対象に投与される量は、化合物3の約10mg~約30mgである。別の実施形態では、対象に投与される量は、化合物3の約12mg~約27mgである。更に別の実施形態では、対象に投与される量は、化合物3の約15mg~約25mgである。一実施形態では、対象に投与される量は、化合物3の約10mg~約20mgである。更に別の実施形態では、対象に投与される量は、化合物3の約15mg~約20mgである。一実施形態では、量は、化合物3の約10mg、約10.5mg、約11mg、約11.5mg、約12mg、約12.5mg、約13mg、約13.5mg、約14mg、約14.5mg、約15mg、約15.5mg、約16mg、約16.5mg、約17mg、約17.5mg、約18mg、約18.5mg、約19mg、約19.5mg、約20mg、約20.5mg、約21mg、約21.5mg、約22mg、約22.5mg、約23mg、約23.5mg、約24mg、約24.5mg、約25mg、約25.5mg、約26mg、約26.5mg、約27mg、約27.5mg、約28mg、約28.5mg、約29mg、約29.5mg又は約30mgの1日用量である。一実施形態では、量は、化合物3の約15mg、約15.5mg、約16mg、約16.5mg、約17mg、約17.5mg、約18mg、約18.5mg、約19mg、約19.5mg、約20mg、約20.5mg、約21mg、約21.5mg、約22mgの1日用量である。更に別の実施形態では、投与の必要がある対象に対する投与量は、化合物3の約15mg、約17.5mg、18mg、約20mg又は約22mgである。
【0056】
一実施形態では、本発明の方法は、ある量の式(I)の化合物を含む経口剤形を投与することを含む。更なる実施形態では、方法は、ある量の式(I)の化合物を含む単一経口剤形を投与することを含む。更なる実施形態では、方法は、ある量の式(I)の化合物を含む単一経口剤形を1日1回投与することを含む。
【0057】
一実施形態では、ある量は、式(I)の化合物の治療有効量又は予防的有効量である。本明細書で使用される場合、ある量に関して「治療有効」又は「予防的有効」は、所望の期間にわたって望ましい治療効果及び/又は予防的効果を達成するため、意図される投与量にて必要とされる量を指す。望ましい効果は、例えば、治療状態に関連する少なくとも1つの症状の軽減、寛解、低減又は休止であり得る。例えば、高コレステロール血症の治療時には、LDL-Cの低下が望ましい効果である。当業者が理解するように、量は、疾患の状態、個体の年齢、性別及び体重、並びに個体における望ましい効果を誘発するPCSK9拮抗薬の能力を含むがこれらに限定されない様々な因子に従って変化し得る。応答は、インビトロアッセイ、インビボ非ヒト動物試験によって実証されており、かつ/又は臨床試験によって更に支持され得る。
【0058】
一実施形態では、経口投与は、ある量の式(I)の化合物を含む単一経口剤形を投与することを含む。一実施形態では、経口投与は、ある量の式(I)の化合物又はその一部をそれぞれ含む、1つ又は複数の経口剤形を投与することを含む。一実施形態では、経口投与は、ある量の式(I)の化合物を含む単一経口剤形を1日1回投与することを含む。一実施形態では、経口投与は、ある量の式(I)の化合物又はその一部をそれぞれ含む1つ又は複数の経口剤形を、1日1回投与することを含む。一実施形態では、経口投与は、ある量の式(I)の化合物を含む単一経口剤形を1日2回以上、例えば、1日2回、3回又は4回投与することを含む。一実施形態では、経口投与は、ある量の式(I)の化合物又はその一部をそれぞれ含む1つ又は複数の経口剤形を、1日2回以上、例えば、1日2回、3回又は4回投与することを含む。経口剤形は、絶食の有無にかかわらず、すなわち食物の有無にかかわらず投与され得る。本発明の一実施形態では、治療の必要がある対象は、式(I)の化合物の投与の約30分前に絶食する。
【0059】
一実施形態では、単一経口剤形は、少なくとも14日間にわたって1日1回投与される。一実施形態では、単一経口剤形は、14日間にわたって1日1回投与される。一実施形態では、単一経口剤形は、対象が治療の必要がある限り、1日1回投与される。
【0060】
本明細書で使用される場合、「経口剤形」は、式(I)の化合物と、対象の口を通じた投与に適切である、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬製剤を指す。本明細書で使用される場合、「経口剤形」及び「医薬組成物」という用語は、特定の量での特定の成分の組合せと、特定の量での特定の成分の組合せから直接、又は間接的に生じる何らかの生成物の両方を包含することを意図している。経口剤形は、例えば約5mg~約300mgなど、式(I)の化合物の総量を含み得るが、これは1日用量であってもなくてもよい。経口剤形は、式(I)の化合物の1日用量の一部を含み得る。
【0061】
本開示による経口剤形は、固体、半固体又は液体であり得る。かかる経口剤形としては、粉末、分散性顆粒、ミニタブレット及びビーズ(例えば、錠剤化、封入又は直接投与用に使用され得る)、ピル、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、ゼラチンカプセルを含む硬質及び軟質カプセル剤、薬用ドロップ、速溶性錠剤、水溶液、アルコール溶液若しくは油性溶液、ゲル、シロップ、エマルション又は懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。本開示による経口剤形は、例えば、遅延放出をもたらすコーティング又は徐放特性を有する製剤といった、放出特性を加減する1種以上のコーティングを更に含み得る。使用直前に、懸濁液又は溶液に変換されることが意図されている製剤もまた、本開示に含まれており、例としては、凍結乾燥製剤及び固体の吸収性媒体に吸収される液体製剤が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、経口剤形は、例えば、Labrasol(登録商標)とプロピレングリコールを例えば2:1の比率で組み合わせた式(I)の化合物で充填された硬質ゼラチンカプセル剤といった、液体充填カプセル剤である。一実施形態では、経口剤形は、例えば、Labrasol(登録商標)とプロピレングリコールを例えば2:1の比率で組み合わせた式(I)の化合物で充填され、例えば、HPMC Vcaps(登録商標)腸溶性カプセル(Capsugel(登録商標)、Lonza)といった腸溶性カプセルでカプセル封入された硬質ゼラチンカプセル剤である。一実施形態では、経口剤形は、例えば、OraBlend SFとプロピレングリコールを例えば2:1の比率で組み合わせて懸濁させた式(I)の化合物といった懸濁液である。一実施形態では、経口剤形は、例えば、乾燥充填HPMC Vcaps(登録商標)腸溶性カプセルといった、乾燥充填腸溶性コーティングカプセル剤である。一実施形態では、経口剤形は錠剤である。一実施形態では、経口剤形は錠剤である。更なる実施形態では、経口剤形は、フィルムコーティングされた錠剤である。
【0062】
当業者によって理解されるように、薬学的に許容される賦形剤は、組成物を特定の投与経路に適合させるか、それ自体は有効な医薬効果を発揮することなく、剤形への薬剤の加工を支援する任意の成分である。一般には、組成物は2種以上の薬学的に許容される賦形剤を含み、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤は、経口剤形の形態に基づいて選択される。薬学的に許容される賦形剤及び上述の経口剤形などの製造方法の例としては、A.Gennaro(ed.),Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,(2000),Lippincott Williams&Wilkins,Baltimore,MDに見出され得る。
【0063】
本開示での使用に好適な薬学的に許容される賦形剤としては、担体(例えば、ピル、錠剤、糖衣錠及び硬質ゼラチンカプセル剤のためのラクトース、デンプン、デンプン誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩など;軟質ゼラチンカプセル剤のための脂肪、ワックス、半固体及び液体ポリオール、天然油又は硬化油など;溶液(エマルション又はシロップ)、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、加圧助剤、湿潤剤、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、浸透促進剤、透過促進剤、分散剤、防腐剤、甘味料、着色料、香料、芳香剤、増粘剤、希釈剤、緩衝物質、溶媒、可溶化剤、デポー効果を達成するための薬剤、浸透圧を変更するための塩、コーティング材及び/又は酸化防止剤のための水、生理的に許容される塩化ナトリウム溶液、アルコール、グリセロール、ポリオール、スクロース、転化糖、グルコース、マンニトール、植物油などが挙げられるが、これらに限定されない。特定の1又は複数の薬学的に許容される賦形剤及びその1又は複数の量は、経口剤形が投与される対象内で許容期間にわたって有効な治療血清レベルを提供することができ、かつ経口剤形が、許容期間にわたって許容される温度範囲内で保存中に生物学的活性を維持するような許容量の経口剤形にて所望の量の式(I)の化合物を提供するように、経口剤形での使用のために選択される。
【0064】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、(3000超の様々な分子量の)ポリエチレングリコール、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース又はそれらの組合せから選択される希釈剤を含有する。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、マクロゴール(PEG4000)、結晶セルロース、マンニトール、ラクトース又はそれらの組合せから選択される希釈剤を含有する。更なる実施形態では、希釈剤は、マクロゴール(PEG4000)、結晶セルロース又はラクトースから選択される。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン又はグリコール酸デンプンナトリウムから選択される崩壊剤を含有する。更なる実施形態では、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムである。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、二酸化ケイ素、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム又はリン酸三カルシウムから選択される滑剤を含有する。更なる実施形態では、滑剤は、二酸化ケイ素又はリン酸三カルシウムから選択される。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、ステアリン酸マグネシウム又はフマル酸ステアリルナトリウム又はその両方から選択される潤滑剤を含有する。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、プロピレングリコール、ポリソルベート80、ソルビトール、クレモホールEL、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、大豆油、ペパーミント油、オリーブ油、ミグリオール、グリセリン又はそれらの組合せから選択される可溶化剤を含有する。更なる実施形態では、可溶化剤はプロピレングリコールである。
【0065】
一実施形態では、経口剤形は、透過促進剤を更に含む。本明細書で使用される場合、「透過促進剤」は、胃腸管から、例えば式(I)の化合物といった有効な薬剤の吸収を改善させる薬学的に許容される賦形剤を指す。透過促進剤は、腸管上皮細胞間の密着結合によるサイズ限定通過を促進させることで、細胞非透過性化合物の吸収をもたらす。(D.J.Drucker,Advances in oral peptide therapeutics,Nat Rev Drug Discov,19,pp 277-289(2020))。好適な透過促進剤としては、カプリン酸ナトリウム、Labrasol(登録商標)、サルカプロザートナトリウム(SNAC)及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。Labrasol(登録商標)は、カプリルカプロイルマクロゴール-8グリセリドとしても公知であり、Gattefosse,Saint Priest,Lyon,Franceによって製造される。一実施形態では、経口剤形は、Labrasol(登録商標)を含む。一実施形態では、経口剤形は、カプリン酸ナトリウムを含む。経口剤形で存在する場合、最大1800mgの量、最大約720mgの量、最大約540mgの量、最大約360mgの量、約90mg~約360mgの範囲の量、約180~360mgの範囲の量、又は90mg、180mg若しくは360mgの透過促進剤が使用される。本発明の一実施形態では、経口剤形は、最大約360mgの量、約90mg~約360mgの範囲の量、約180~約360mgの範囲の量、又は90mg、180mg若しくは360mgの量の透過促進剤を含む。一実施形態では、本発明の経口剤形は、90mg、180mg又は360mgの量の透過促進剤を含む。一実施形態では、本発明の経口剤形は、180mg又は360mgの量の透過促進剤を含む。
【0066】
経口剤形で存在する場合、最大約360mgの量、約90mg~約360mgの範囲の量、約180~約360mgの範囲の量、又は90mg、180mg若しくは360mgの量のカプリン酸ナトリウムが使用される。一実施形態では、本発明の経口剤形は、90mg、180mg又は360mgの量で透過促進剤であるカプリン酸ナトリウムを含む。一実施形態では、180mgのカプリン酸ナトリウムが経口剤形に使用される。一実施形態では、360mgのカプリン酸ナトリウムが経口剤形に使用される。
【0067】
本発明の一実施形態では、乾燥充填カプセル剤又は錠剤は、式(I)の化合物を投与の必要がある対象に投与するために使用され得る。本発明の医薬組成物では、透過促進剤が含まれ得る。一実施形態では、カプリン酸ナトリウムなどの透過促進剤の量は、1重量%~75重量%の範囲であり得る。本明細書で使用される場合、重量%は、医薬組成物の総重量に対する成分の重量パーセントを指す。別の実施形態では、医薬組成物中の透過促進剤の量は、約18重量%~約65重量%である。錠剤については、カプリン酸ナトリウムなどの透過促進剤の量は、約22重量%~約65重量%の範囲であり得る。経口剤形は、湿式造粒及び乾式造粒を含む標準的な方法によって製造され得る。
【0068】
【表1】
【0069】
一実施形態では、本発明は、式(I):
【化10】
[式中、Aが薬学的に許容されるアニオンである]
の化合物及び透過促進剤を含む、医薬組成物である。更なる実施形態では、透過促進剤はカプリン酸ナトリウムである。別の実施形態では、医薬組成物は、更に希釈剤を含む。更なる実施形態では、組成物は、2種以上の希釈剤を含み、2種以上の希釈剤は、結晶セルロースと、マクロゴール(PEG4000)と、ラクトースとの組合せを含む。
【0070】
本発明の一実施形態では、医薬組成物は、a)医薬組成物の総重量に対して1重量%~7重量%の式(I)の化合物と、b)医薬組成物の総重量に対して約1重量%~75重量%の透過促進剤と、c)少なくとも1種の希釈剤と、を含み、d)滑剤及び/又は潤滑剤を含んでもよい。一実施形態では、医薬組成物の総重量に対して約18重量%~74重量%の透過促進剤は、医薬組成物中に存在する。本発明の別の実施形態では、医薬組成物は、a)医薬組成物の総重量に対して約1重量%~約7重量%の式(I)の化合物と、b)医薬組成物の総重量に対して約22重量%~約67重量%である、カプリン酸ナトリウム又はLabrasol(登録商標)から選択される透過促進剤と、c)PEG4000、結晶セルロース、プロピレングリコール及びラクトースから選択される少なくとも1種の希釈剤又は可溶化剤と、を含み、d)滑剤を含んでもよく、e)潤滑剤を含んでもよい。
【0071】
本発明の一実施形態では、医薬組成物は、a)医薬組成物の総重量に対して約2重量%~6重量%の式(I)の化合物と、b)医薬組成物の総重量に対して約18重量%~74重量%の、カプリン酸ナトリウムである透過促進剤と、c)PEG4000、結晶セルロース又はラクトースから選択される少なくとも1種の希釈剤と、d)医薬組成物の総重量に対して0重量%~約3重量%の、二酸化ケイ素である滑剤と、e)医薬組成物の総重量に対して0重量%~約2重量%の、ステアリン酸マグネシウムである潤滑剤と、を含み、f)少なくとも1種の崩壊剤、を含んでもよい。
【0072】
一実施形態では、対象は、中止した、又は中止していない1種以上のスタチン剤を用いた高コレステロール血症の治療歴を有する。言い換えれば、式(I)の化合物を用いて治療された対象は、スタチン療法で現在治療されている、又は以前に治療されていた。一実施形態では、対象は、スタチン未投与である。言い換えれば、対象はスタチン療法で治療されたことがない。一実施形態では、対象は、スタチン療法で同時に治療されているが、これは治療目標を達成している、又は達成していない。
【0073】
一実施形態では、1つ以上の追加の薬理学的に有効な薬剤は、式Iの化合物と併用投与され得る。本明細書で使用される場合、「1又は複数の追加の薬理学的に有効な薬剤」は、身体内で有効である1又は複数の薬学的に有効な薬剤を意味することを意図しているが、これは、式Iの化合物とは異なり、投与後に薬理学的に有効な形態に転換するプロドラッグを含み、かつ追加の薬理学的に有効な薬剤の遊離酸、遊離塩基及び薬学的に許容される塩もまた含む。一般には、抗高血圧薬、脂質修飾化合物などの脂質抗アテローム性動脈硬化薬、抗糖尿病薬及び/又は抗肥満薬を含むが、これらに限定されない、1又は複数の任意の好適な追加の薬理学的に有効な薬剤は、単一経口剤形(固定用量の複合薬)中で式Iの化合物と何らかの形で併用して使用され得るか、1つ以上の別個の投与製剤で対象に投与される。これによって式(I)の化合物及び1又は複数の追加の薬理学的に有効な薬剤の同時投与又は連続投与(別個の有効な薬剤の同時投与)が可能になり得る。
【0074】
使用され得る追加の薬理学的に有効な薬剤の例としては、アンギオテンシン転換酵素阻害剤(例えば、アラセプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラット、ホシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルチプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリル又はトランドラプリル)、アンギオテンシンII受容体拮抗薬(例えば、ロサルタン、すなわち、COZAAR(登録商標)、バルサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、テルメサルタン及びHYZAAR(登録商標)などのヒドロクロロチアジドと併用して使用されるこれらの薬物のいずれか)、中性エンドペプチダーゼ阻害剤(例えば、チオルファン及びホスホラミドン)、アルドステロン拮抗薬、アルドステロンシンターゼ阻害剤、レニン阻害剤(例えば、ジペプチド及びトリペプチドの尿素誘導体(米国特許第5,116,835号)、アミノ酸及び誘導体(米国特許第5,095,119号及び同5,104,869号)、非ペプチド結合によって結合したアミノ酸鎖(米国特許第5,114,937号)、ジペプチド誘導体及びトリペプチド誘導体、ペプチジルアミノジオール及びペプチジルベータ-アミノアシルアミノジオールカルバメート、並びに小分子レニン阻害剤(ジオールスルホンアミド及びスルフィニル)、N-モルホリノ誘導体、N-ヘテロ環アルコール及びピロールイミダゾロン、ペプスタチン誘導体及びスタトン含有ペプチドのフルオロ誘導体及びクロロ誘導体、エナルクレイン、RO42-5892、A65317、CP80794、ES1005、ES8891、SQ34017、アリスキレン(2(S),4(S),5(S),7(S)-N-(2-カルバモイル-2-メチルプロピル)-5-アミノ-4-ヒドロキシ-2,7-ジイソプロピル-8-[4-メトキシ-3-(3-メトキシプロポキシ)-フェニル]-オクタンアミドヘミフマレート)SPP600、SPP630及びSPP635)、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ-5阻害剤(例えば、シルデナフィル、タダルフィル及びバルデナフィル)、血管拡張剤、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、アムロジピン、ニフェジピン、ベラパルミル、ジルチアゼム、ガロパミル、ニルジピン、ニモジピン、ニカルジピン)、カリウムチャネル活性化剤(例えば、ニコランジル、ピナシジル、クロマカリム、ミノキシジル、アプリルカリム、ロプラゾラム)、利尿薬(例えば、ヒドロクロロチアジド)、交感神経遮断剤、ベータアドレナリン遮断剤(例えば、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、メトプロロール又はメトプロロール酒石酸塩)、アルファアドレナリン遮断剤(例えば、ドキサゾシン、プラゾチン又はアルファメチルドパ)、中枢性アルファアドレナリン作動薬、末梢血管拡張剤(例えば、ヒドラジン)、ラクトンプロドラッグ形態にてZOCOR(登録商標)及びMEVACOR(登録商標)として市販されており、投与後に阻害剤として機能するシンバスタチン及びロバスタチンなどの、例えばHMG-CoA還元酵素阻害剤といった脂質低下剤、アトルバスタチン(特に、LIPITOR(登録商標)で販売されているカルシウム塩)、ロスバスタチン(特に、CRESTOR(登録商標)で販売されているカルシウム塩)、プラバスタチン(特に、PRAVACHOL(登録商標)で販売されているナトリウム塩)、フルバスタチン(特に、LESCOL(登録商標)で販売されているナトリウム塩)、クリバスタチン及びピタバスタチンなどのジヒドロキシ開環酸HMG-CoA還元酵素阻害剤の薬学的に許容される塩、並びにエゼチミブ(ZETIA(登録商標))、及び上記HMG-CoA還元酵素阻害剤などの任意の他の脂質低下剤と併用される、特にシンバスタチン(VYTORIN(登録商標))又はアトルバスタチンカルシウムと併用されるエゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤、即時放出形態若しくは制御放出形態の、及び/又はHMG-CoA還元酵素阻害剤と併用されるナイアシン、アシピモックス及びアシフランなどのナイアシン受容体作動薬、並びにナイアシン受容体部分的作動薬、インスリン及びインスリン模倣物(例えば、インスリンデグルデク、インスリングラルギン、インスリンリスプロ)を含む代謝変化剤、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-4)阻害剤(例えば、シタグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、ビルダグリプチン)、(i)グリタゾン(例えば、ピオグリタゾン、AMG131、MBX2044、ミトグリタゾン、ロベグリタゾン、IDR-105、ロシグリタゾン及びバラグリタゾン)などのPPARγ作動薬、並びに(1)PPARアルファ/γデュアル作動薬(例えば、ZYH2、ZYH1、GFT505、チグリタザール、ムラグリタザール、アレグリタザール、ソデルグリタザール及びナベグリタザール)、(2)フェノフィブリン酸誘導体(例えば、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、シプロフィブラート、フェノフィブラート、ベザフィブラート)などのPPARα作動薬、(3)選択的PPARγ修飾薬(SPPARγM’s)、(例えば、国際公開第02/060388号、同02/08188号、同2004/019869号、同2004/020409号、同2004/020408号及び同2004/066963号に開示されているものなど)及び(4)PPARγ部分的作動薬を含む他のPPARリガンド、(ii)メトホルミン及びその薬学的に許容される塩、特にメトホルミン塩酸塩などのビグアナイド、及びGlumetza(商標)、Fortamet(商標)及びGlucophageXR(商標)などのその徐放性製剤、並びに(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ-1B(PTP-1B)阻害剤(例えば、ISIS-113715及びTTP814)、インスリン又はインスリン類似体(例えば、インスリンデテミル、インスリングルリジン、インスリンデグルデク、インスリングラルギン、インスリンリスプロ及びそれぞれの吸入製剤)、レプチン及びレプチン誘導体及びレプチン作動薬、アミリン及びアミリン類似体(例えば、プラムリンチド)、スルホニル尿素及び非スルホニル尿素インスリン分泌促進物質(例えば、トルブタミド、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、ミチグリニド、メグリチニド、ナテグリニド及びレパグリニド)、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ボグリボース及びミグリトール)、グルカゴン受容体拮抗薬(例えば、MK-3577、MK-0893、LY-2409021及びKT6-971)、GLP-1、GLP-1類似体、GLP-1誘導体及びGLP-1模倣物などのインクレチン模倣物、GLP-1受容体作動薬(例えば、その鼻腔内製剤、経皮内製剤及び週1回投与製剤を含む、デュラグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、タスポグルチド、CJC-1131及びBIM-51077)、胆汁酸封鎖剤(例えば、コレスチラン、コレスチミド、コレセベラム塩酸塩、コレスチポール、コレスチルアミン及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、アバシミブ)、抗肥満化合物、アスピリンなどの炎症状態での使用が意図されている薬剤、非ステロイド性抗炎症薬剤又はNSAIDs、グルココルチコイド、及び選択的シクロオキシゲナーゼ-2又はCOX-2阻害剤、グルコキナーゼ活性化剤(GKAs)(例えば、AZD6370)、I型11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの阻害剤(例えば、米国特許第6,730,690号に開示されているもの及びLY-2523199)、CETP阻害剤(例えば、アナセトラピブ、トルセトラピブ及びエバセトラピブ)、フルクトース 1,6-ビスホスファターゼ(例えば、米国特許第6,054,587号、同6,110,903号、同6,284,748号、同6,399,782号及び同6,489,476号に開示されているもの)、アセチルCoAカルボキシラーゼ-1又は2(ACC1又はACC2)の阻害剤、AMP-活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)活性化剤、G-タンパク質結合受容体のその他の作動薬:(i)GPR-109、(ii)GPR-119(例えば、MBX2982及びPSN821)及び(iii)GPR-40(例えば、TAK875)、SSTR3拮抗薬(例えば、国際公開第2009/001836号に開示されているものなど)、ニューロメジンU受容体作動薬(例えば、ニューロメジンS(NMS)を含むがこれに限定されない、国際公開第2009/042053号に開示されているもの)、SCD修飾薬、GPR-105拮抗薬(例えば、国際公開第2009/000087号に開示されているものなど)、SGLT阻害剤(例えば、ASP1941、SGLT-3、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、BI-10773、エルツグリフロジン、レモグロフロジン、TS-071、トホグリフロジン、イプラグリフロジン及びLX-4211)、アシル補酵素Aの阻害剤:ジアシルグリセロルアシルトランスフェラーゼ1及び2(DGAT-1及びDGAT-2)、脂肪酸シンターゼの阻害剤、アシル補酵素Aの阻害剤:モノアシルグリセロルアシルトランスフェラーゼ1及び2(MGAT-1及びMGAT-2)、TGR5受容体の作動薬(GPBAR1、BG37、GPCR19、GPR131及びM-BARとしても公知である)、TGR5受容体の作動薬(GPBAR1、BG37、GPCR19、GPR131及びM-BAR)、回腸胆汁酸輸送体阻害剤、PACAP、PACAP模倣物及びPACAP受容体3作動薬、PPAR作動薬、タンパク質チロシンホスファターゼ-1B(PTP-1B)阻害剤、IL-1b抗体(例えば、XOMA052及びカナキヌマブ)、ブロモクリプチンメチル酸塩及びその急速放出型製剤、及びベンペド酸、並びに化学的に可能である場合、上記追加の薬理学的に有効な薬剤の遊離酸、遊離塩基及び薬学的に許容される塩形態を含む、上述の状態又は障害の治療にとって有益なその他の薬剤が挙げられる。
【0075】
一実施形態では、追加の薬理学的に有効な薬剤は、スタチン、エゼチミブ、ベンペド酸、標準治療であると考えられる任意の他のコレステロール低下剤、又はそれらの任意の組合せである。
【0076】
一実施形態では、本開示の方法は、スタチン剤を投与する工程を更に含む。したがって、式(I)の化合物は、少なくとも1つのスタチン剤と同時投与される。式(I)の化合物は、同時に、又は別々にスタチン剤と投与され得る。この併用投与は、同一の経口剤形中での式(I)の化合物とスタチン剤の同時投与、別個の剤形での同時投与及び別個の投与を含み得る。すなわち、式(I)の化合物及びスタチン剤は、同一の経口剤形中に一緒に製剤化され、同時に投与され得る。代替的には、式(I)の化合物及びスタチン剤は、同時投与されることができ、その両方は別個の製剤中に存在する。別の代替形態では、式(I)の化合物は、スタチン剤投与の直後に投与されるか、又はその逆であり得る。別個の投与プロトコールのいくつかの実施形態では、式(I)の化合物及びスタチンは、数分差で、又は数時間差で、又は数日差で投与される。
【0077】
一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDLコレステロールのベースラインレベルから低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDL-Cのベースラインレベルから少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、50%超、少なくとも60%、60%超、少なくとも65%、65%超、少なくとも70%、70%超、少なくとも75%、75%超、少なくとも80%、80%超、少なくとも85%、85%超又は少なくとも90%低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDL-Cのベースラインレベルから50%超低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDL-Cのベースラインレベルから60%超低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDL-Cのベースラインレベルから65%超低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDL-Cのベースラインレベルから70%超低下する。一実施形態では、対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて対象を治療した14日後のLDL-Cのベースラインレベルから50%超低下する。一実施形態では、対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて対象を治療した14日後のLDL-Cのベースラインレベルから60%超低下する。一実施形態では、対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて対象を治療した14日後のLDL-Cのベースラインレベルから65%超低下する。一実施形態では、対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて対象を治療した14日後のLDL-Cのベースラインレベルから70%超低下する。LDL-Cのベースラインレベルと治療後レベルとの両方は、血中コレステロールを測定するために使用された標準的な臨床検査によって決定され得る。
【0078】
一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDL-Cのベースラインレベルから少なくとも50%低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDL-Cのベースラインレベルから少なくとも60%低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDL-Cのベースラインレベルから少なくとも65%低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のLDL-Cのベースラインレベルから少なくとも70%低下する。一実施形態では、対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて対象を治療した14日後のLDL-Cのベースラインレベルから少なくとも50%超低下する。一実施形態では、対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて対象を治療した14日後のLDL-Cのベースラインレベルから少なくとも60%超低下する。一実施形態では、対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて対象を治療した14日後のLDL-Cのベースラインレベルから少なくとも65%超低下する。一実施形態では、対象のLDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて対象を治療した14日後のLDL-Cのベースラインレベルから少なくとも70%超低下する。LDL-Cのベースラインレベルと治療後レベルとの両方は、血中コレステロールを測定するために使用された標準的な臨床検査によって決定され得る。
【0079】
一実施形態では、本発明は、ある量の式(I)の化合物の量を対象に経口投与することを含む、投与の必要がある対象のアポリポタンパク質B(アポB)レベルを低下する方法に関する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を用いた治療後、治療の必要がある対象のアポリポタンパク質B(アポB)レベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のアポBのベースラインレベルから低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象のアポBレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前のアポBのベースラインレベルから少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、50%超、少なくとも60%、60%超、少なくとも65%、65%超、少なくとも70%、70%超、少なくとも75%、75%超、少なくとも80%、80%超、少なくとも85%、85%超又は少なくとも90%低下する。
【0080】
一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象の非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL-C)レベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前の非HDL-Cのベースラインレベルから低下する。一実施形態では、式(I)の化合物を用いて治療した後の対象の非HDL-Cレベルは、式(I)の化合物を用いて治療する前の非HDL-Cのベースラインレベルから少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、50%超、少なくとも60%、60%超、少なくとも65%、65%超、少なくとも70%、70%超、少なくとも75%、75%超、少なくとも80%、80%超、少なくとも85%、85%超又は少なくとも90%低下する。
【0081】
PCSK9関連の機能的特性のうちの1つ以上の阻害又は拮抗作用は、当技術分野に公知である方法論(例えば、Barak&Webb,1981 J.Cell Biol.90:595-604;Stephan&Yurachek,1993 J.Lipid Res.34:325330;及びMcNamara et al.,2006 Clinica Chimica Acta 369:158-167を参照されたい)並びに本明細書に記載の方法論に従って容易に決定することができる。阻害又は拮抗作用は、拮抗薬が存在しない状態で見られる活性と比較して、又は例えば無関係な特異性の制御拮抗薬が存在するときに観察される活性と比較して、PCSK9活性の減少を実現する。好ましくは、式(I)の化合物は、本明細書に開示された活性を含むがこれらに限定されない測定パラメータが少なくとも10%減少する点まで、機能するPCSK9を拮抗し、より好ましくは、測定パラメータの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%及び95%減少する点まで、機能するPCSK9を拮抗する。
【0082】
式(I)の化合物は、LDLコレステロールの低下に非常に有効であり、一般には健康ボランティアにおける単回及び複数回経口投与後の忍容性が良好である。式(I)の化合物は、式(I)の化合物の単回投与での治療後、高LDLコレステロールに寄与する遊離PCSK9タンパク質のレベルをベースラインから90%超低下させる。14日間の1日1回経口投与後、式(I)の化合物は、既に中等度~高強度スタチン基礎療法を受けている参加者におけるベースラインレベルから約65%、血中LDLコレステロールを低下させる。これらの参加者は、自身のコレステロールレベルを制御するためにスタチン薬剤を既に服用していた。式(I)の化合物は、高コレステロールに苦しんでいる患者にとって非常に効果的な治療であり得る。
【0083】
これらの実施例は、更なる例のみを目的として提供されており、本開示に関する限定を意図したものではない。
【0084】
[実施例]
[実施例1]
化合物1(非晶質塩化物塩)の調製
【化11】
【0085】
50Lの円筒形反応器に、0.5Lのアセトニトリル(MeCN)、続いて化合物4(294.7g,206mmol)を室温で投入した(出発材料である化合物4を合成する方法は、国際公開第2019/246349号に記載されており、実施例1を参照されたい)。追加の2.4LのMeCNを使用し、固体すべてをすすいで反応器の底部に入れた。化合物5(5-カルボキシ-N,N,N-トリメチルペンタンー1-アミニウムクロリド,47.5g,227mmol)を添加した。追加の2.0LのMeCNを使用し、固体すべてをすすいで反応器の底部に入れた。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(iPrNEt,216mL,1236mmol)を添加し、0.5LのMeCNを使用して液体をすすぎ、反応器の底部に入れた。反応器に、1ー[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム-3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU,94g,247mmol)を投入し、0.5LのMeCNを使用し、固体のすべてをすすいで反応器の底部に入れた。室温で3時間の後、酢酸イソプロピル(iPrOAc,17.7L)を1時間にわたって滴下した。スラリーを濾過し、湿潤ケーキを2.9LのiPrOAcで3回洗浄した。N掃引を用いて固体を真空下で乾燥させ、337gの粗生成物を得た。
【0086】
超臨界流体クロマトグラフィー(固定相:DIACEL DCpak P4VP[30×250mm,5μm];移動相:45%改質剤(MeOH中0.25% NHOH及び5% HO)及び55% CO)を使用して粗生成物を精製した。回転蒸発を使用し、生成物を含有する画分を濃縮した。蒸発後の残渣を水(3.2L)に溶解し、0.1M HCl水溶液(1389mL,139mmol)を室温で添加した(pH紙を使用して添加終了時のpHを6と測定した)。得られた溶液を0.22μmラインフィルタに通して濾過し、濾液を凍結乾燥して238gの化合物1(非晶質塩化物塩)を得た。
【0087】
[実施例2]
凍結した化合物2(非晶質カプリン酸塩)の調製
多孔質陰イオン交換樹脂AG MP-1M(6g,100~200メッシュ、塩化物形態)を、60mL漏斗に充填した。アセトニトリルと水の混合物(1:1)9mLを用いて、充填した樹脂を5回洗浄した。200mLの1M NaOH、次いで10mLの水を用いて、樹脂を2回洗浄した。樹脂をガラス製カラムに移し、10mLの水を用いて3回洗浄した。次いで、10mLのEtOHを用いて2回、続いて9mLの1M カプリル酸EtOH溶液を用いて5回、続いて9mLのEtOHを用いて3回、樹脂を洗浄した。化合物1(0.3g)を6mL MeCN/水(1:1)に溶解し、樹脂充填カラムに入れた。濾液を20mLのバイアルに回収した。15mLのMeCNと水との溶液(1:1)を用いて、カラムを3回洗浄し、濾液を20mLのバイアルに回収した。化合物2のカプリン酸塩を含有する画分を合わせて濃縮し、MeCNを除去した。次いで、凍結乾燥によって、所望の非晶質化合物2(0.29g)を単離した。
【0088】
[実施例3]
凍結乾燥した化合物3(非晶質酢酸塩)の調製
多孔質陰イオン交換樹脂AG MP-1M(6g,100~200メッシュ、塩化物形態)を、60mL漏斗に充填した。アセトニトリル/水混合物(1:1の比率)9mLを用いて、充填した樹脂を5回洗浄した。200mLの1M NaOH、次いで50mLの水中1M AcOHを用いて、樹脂を2回洗浄した。樹脂を、6mLのアセトニトリルと水との1:1混合物中の化合物1(塩化物塩,0.3g)の溶液を含有する100mLの丸底フラスコに移した。追加の18mLのMeCN/水(1:1)を添加した。混合物を室温で30分間熟成させ、得られた混合物を60mL漏斗に移した。濾液を回収し、10mL MeCN/水(1/1)を用いて、樹脂を3回洗浄し、濾液を20mLのバイアルに回収した。化合物3を含有する画分を合わせて濃縮し、MeCNを除去した。次いで、溶液の凍結乾燥によって、所望の非晶質化合物3(0.304g)を単離した。
【0089】
[実施例4]
式(I)の化合物を含有する錠剤の調製
カプリン酸ナトリウム(1.5kg)及びマクロゴール(499.9g)を、10Lの高せん断造粒機に入れた。2つの成分を、183rpmのインペラ速度にて、高せん断グレータ内で1分間乾式混合した。高せん断造粒機での連続混合中、適切な造粒度に達するまで水を添加した。湿潤粉体を2.0mmのスクリーンサイズのコーンミルで粉砕し、次いで流動層乾燥機にこれを移し、70℃の入口温度を使用し、湿潤粉体の乾燥について所定の損失に達するまで(3.00%未満)乾燥させた。乾燥粉体を1.0mmのスクリーンサイズのコーンミルで粉砕した。次いで、乾燥粉体(1.275kg)を、10Lの拡散ブレンダ内で、化合物1(26.96g)、ラクトース(150.4g)及び二酸化ケイ素(22.58g)とともに920回転で混合した。次いで、0.8mmのスクリーンサイズのコーンミルで粉砕した。次いで、混合したブレンドを、10Lの拡散ブレンダ内で、ステアリン酸マグネシウム(22.58g)とともに460回転で混合した。最後に潤滑化した粉体を、564.9mgの目標重量で、ロータリー式打錠機を使用して錠剤に圧縮した。
【0090】
[実施例5]
乾燥充填カプセル剤の製造プロセス
結晶セルロース(179.7g)、カプリン酸ナトリウム(661g)、化合物1(41g)及び二酸化ケイ素(8.996g)を、10Lの拡散ブレンダを使用して375回転で混合した。次いで、ステアリン酸マグネシウム(4.498g)をブレンダに添加し、250回転にわたって混合した。次いで、21バールのロール圧力、2.0mmの粗いスクリーン及び1mmの細かいスクリーンを使用するローラ圧縮によって、ブレンドを造粒した。ローラ圧縮された粉体(761.9g)を、5Lの拡散ブレンダを使用し、250回転でステアリン酸マグネシウム(3.8g)とともに混合した。次いで、最後に潤滑化した粉体を、490mgの充填重量を目標として手動で封入した。
【0091】
[実施例6]
液体充填カプセル剤製造プロセス
Labrasol(登録商標)ALF(カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、100mL)及びプロピレングリコール(50mL)の溶液を、撹拌プレートを使用して250mLのボトルで溶媒として調製した。化合物1(0.7747g)を、撹拌プレートを使用して5分間、125mLのボトルにて溶媒(49.7mL)に溶解し、続いて15分間超音波処理した。最終溶液を、548mgの目標重量まで硬質ゼラチンカプセル剤中に充填した。次いで、50%エタノール水溶液を使用して硬質ゼラチンカプセル剤を手動で封止し、漏れについて検査した。最終硬質ゼラチンカプセル剤を、90%エタノール水溶液を使用して手動で封止した腸溶性カプセル中にカプセル封入した。50%エタノール水溶液を、30mLのボトルで、撹拌プレートを使用して15分間、10.4mLのエタノール(96%)と9.6mLの水と混合することで調製した。90%エタノール水溶液を、30mLのボトルで、撹拌プレートを使用して15分間、18.8mLのエタノール(96%)と1.2mLの水と混合することで調製した。
【0092】
試験
化学的に安定し、かつ胃腸管(GI)分解に耐性がある、化合物1:
【化12】
といった式(I)の化合物の非晶質塩化物塩は、ヒトPCSK9に対するピコモル濃度での結合親和性を示した。化合物1のGI吸収は、ラット、非ヒト霊長類における透過促進剤(Labrasol,カプリン酸ナトリウム)との同時投与によって改善された。ラット及び非ヒト霊長類の発症前の優良試験所規範(Good Laboratory Practice、GLP)毒性試験は、臨床開発を支持しており、皮下投与(化合物1の高い前進曝露を達成するため)及び口腕(局所/GI忍容性を評価するため)の両方を使用して、これらの試験を実施した。これらのGLP毒性試験では、投与された最高用量まで/を含めて、有害事象は一切観察されなかった。
【0093】
安全性試験
18~50歳の正常で健康な男性ボランティアにおいて、薬物動態、薬力学(ベースラインからの遊離PCSK9の低下)並びに式(I)の化合物の単回投与の安全性及び忍容性を試験した。本試験の目的は、化合物1の単回投与(約10mg~約300mg)の安全性及び忍容性、並びに化合物1の薬物動態(PK)を評価することであった。更には、この試験では、PKにおける透過促進剤投与の効果、PKにおける食物の効果、並びにPKにおける様々なカプセル製剤の効果を試験した。本試験で測定された薬力学エンドポイントは、ターゲットエンゲージメント(遊離PCSK9における変化%)であった。本試験における各パネルについては、参加者は、9:3無作為化スキーム(n=9 化合物1:n=3 PBO)で化合物1又はプラセボ(PBO)のいずれかを受けるように無作為化された。本試験における参加者のベースライン特性を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
式(I)の化合物の非晶質塩化物塩である化合物1の単回投与を、液体充填硬質ゼラチンカプセル剤で投与した。カプセル剤は、様々な力価の化合物1、又は化合物1を含まない(プラセボ)、及び液体透過促進剤であるLabrasol(登録商標)とプロピレングリコールの比率2:1の混合物であって、最大1800mgまでの様々な量のLabrasol(登録商標)を含む混合物を含有していた。カプセル剤は、腸溶性カプセル(HPMC Vcaps(登録商標)Enteric,Capsugel(登録商標),Lonza)でカプセル封入した。
【0096】
本試験はまた、シリンジ/PO投与を介して投与される、透過促進剤を含まないOraBlend SFとプロピレングリコールが2:1の比率で存在する化合物1の懸濁液40mg/mLと、様々な力価の最大1800mgの化合物1とカプリン酸ナトリウムを含有する乾燥充填腸溶性コーティングカプセル剤(HPMC Vcaps(登録商標)Enteric,Capsugel(登録商標),Lonza)とを評価した。本試験での化合物1の最小用量は10mgであり、投与される最高用量は300mgであった。化合物1は、最大300mgの用量で良好に忍容され、死亡、重篤な有害事象又は試験治療の目的として臨床安全性検査、バイタルサイン若しくはECGにおける臨床的に意味のある傾向は有さなかった。本試験では、死亡又は重篤な有害事象(severe adverse events、SAE)は存在しなかった。60名の総参加者のうち、6名は中断したが、そのうち3名は有害事象(斑点状丘疹、震盪/外傷に関連する創傷、腰痛)によるものであり、2名はプロトコール違反によるものであり、1名は参加者の職業との葛藤による辞退によるものであった。本試験の治験責任医師によって報告された化合物1に関連する有害事象(Adverse Events、AE)は、腹部不快感、下痢、消化不良、頭痛及び斑点状丘疹を含んでいた。治療に関連するすべてのAEは、投与に関連しない重篤な腰痛を有する1名の参加者を除いては軽度/中等度であった。
【0097】
化合物1(式(I)の化合物の非晶質塩化物塩)は、血漿曝露での用量依存増加と、試験したすべての投与レベルにおける、ベースラインからの遊離血漿PCSK9レベルが90%を超える平均最大低下とを呈した。図2及び以下の表3を参照されたい。
【0098】
薬物動態結果を図1に示す。本試験はまた、透過促進剤が吸収を改善することも実証したが、これはCmax及びAUC0~24の増加によって証明された(図2を参照されたい)。透過促進剤であるLabrasol(登録商標)とカプリン酸ナトリウムの存在時の化合物1のPKは、類似している(図2に示されている通りである)。本試験はまた、投与の30分前に消費された食物によって、絶食状態と比較して低い血漿曝露が生じ、投与の30分後に消費された食物は、血漿曝露に関してはごくわずかな影響を有していたことも実証した(図2を参照されたい)。
【0099】
図4に見られるように、化合物1の投与は、遊離PCSK9タンパク質の血漿レベルにおける低下に関連しているが、これは、ベースラインレベルと比較して90%を超える高LDLコレステロールに寄与している。
【0100】
【表3】
【0101】
LDLコレステロール低下試験
目標とする50%超のLDL-C低下を達成するための化合物1の投与を、血中コレステロールを制御するためのスタチン基礎療法を受けている18~65歳の男性及び女性参加者の複数回投与試験を使用して評価した。参加者のベースライン平均LDL-Cは、約87mg/dLであり、85%の参加者は中等度又は高強度スタチンを受けていた。プラセボ又は化合物1のいずれかを、一晩絶食した後、午前中に14日間にわたって1日1回投与した。1日1回の投与を受けた後、標準的な持ち帰り用の食事を参加者に提供して30分のみ消費させた。臨床安全性検査を含む、バイタルサイン、ECG及び標準的な安全性モニタリングに加え、血漿脂質(総コレステロール、LDL-C、HDL-C及びTG)を測定した。LDL-Cを安全性研究室の一部としてモニタリングした。
【0102】
20mgの化合物1と360mgのカプリン酸ナトリウムの開始用量は、約62%の血漿LDL-Cの平均低下に関連していた。10mgの化合物1と360mgのカプリン酸ナトリウムは、試験される次の用量であった。10mgの化合物1と360mgのカプリン酸ナトリウムは、約64%のLDL-Cの平均低下に関連していた。第3の用量レベルもまた、10mgの化合物1であったが、製剤は180mgのカプリン酸ナトリウムを含有していた。10mgの化合物1と180mgのカプリン酸ナトリウム用量は、約60%のLDL-Cの平均低下に関連していた。この用量からのPKは、10mgの化合物1と360mgのカプリン酸ナトリウム用量のPKに類似していたが、これはLDL-C低下の類似性を支持していた。カプリル酸ナトリウム単独(プラセボ)又はカプリン酸ナトリウムと化合物1との両方のいずれかを含有するすべての製剤は、乾燥充填腸溶性コーティングカプセル剤(HPMC Vcaps(登録商標)Enteric,Capsugel(登録商標),Lonza)の形態であった。
【0103】
血中LDLコレステロールレベルを、標準的な臨床検査手順を使用し、投与前及び投与後3日目、7日目、14日目、15日目及び21日目に測定した。本試験の結果を図3に提示する。図3に示されているように、10mg及び20mgの用量で観察されたLDLコレステロールの最大低下は、抗PCSK9モノクローナル抗体であるRepatha及びPraluentを用いて観察されたLDL-C低下の範囲である。これは、第III相心血管試験及び抗PCSK9 siRNAであるInclisiranの第III相脂質試験で報告されている。Repatha cardiovascular outcomes trial FOURIER reporting 59% reduction in LDL-C,N Engl J Med 2017 May 4,376(18):1713-1722;Praluent cardiovascular outcomes trial ODYSSEY reporting 59% reduction in LDL-C,N Engl J Med 2018,379:2097-2107;及びInclisiran phase 3 lipid trials reporting 49-52% reduction in LDL-C,N Engl J Med 2020,382:1507-1519を参照されたい。対照的に、プラセボ治療参加者は、ベースラインから5%未満のLDL-C低下を呈した。
【0104】
5MGの化合物1と、180MGのカプリン酸ナトリウムを含有する硬質ゼラチンカプセル剤を、別個の試験にてコレステロールを制御するためにスタチンを服用する男性及び女性参加者に投与した。LDL-C低下%は、上にて報告された試験では一切観察されなかった(ベースラインから50%未満低下)。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5
【国際調査報告】