(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】シリンダ管アセンブリ及びシリンダ管アセンブリを製造する方法
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20240910BHJP
B21D 28/28 20060101ALI20240910BHJP
B21D 28/34 20060101ALI20240910BHJP
B23K 11/14 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F15B15/14 380C
B21D28/28
B21D28/34 C
B21D28/34 D
B23K11/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505397
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 DE2021000136
(87)【国際公開番号】W WO2023020642
(87)【国際公開日】2023-02-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューマッハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブエター、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
3H081
4E048
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081CC20
3H081DD28
4E048KA02
4E048KA04
4E048LA13
(57)【要約】
本発明は、シリンダ管1と、接続ピース2とを有するシリンダ管アセンブリに関する。シリンダ管1は、シリンダ本体と、接続部分1.3とを有する。接続部分1.3は、シリンダ管外殻1.1に外殻キャロット3と、シリンダ管内殻1.2に内殻キャロット4と、構造強化ゾーンと、接続貫通部5とを有する。キャロット3、4は、冷間成形凹状エンボス部分の形態であり、構造強化ゾーン1.4は、キャロット3、4間の成形エリアに配置され、接続貫通部5は、打ち抜き孔の形態であり、キャロット3、4を通り、構造強化ゾーンは、接続貫通部5を囲む。接続ピース2は、接続部分1.3に配置され、圧力媒体チューブ6と、連結部分とを有し、連結部分は、環状軸方向境界輪郭7.1を有し、環状軸方向境界輪郭7.1と、外殻キャロット3の環状合せ面3.1とが、環状タッチング接触面を形成し、シリンダ管1及び接続ピース2は、環状溶接シーム8によって環状タッチング接触面において材料結合式に接続され、環状溶接シーム8は、封止面を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ管(1)と接続ピース(2)とを有するシリンダ管アセンブリであって、
前記シリンダ管(1)は、シリンダ本体と、接続部分(1.3)とを有し、
前記接続部分(1.3)は、外殻キャロット(3)と、内殻キャロット(4)と、構造強化ゾーンと、接続ボア孔(5)とを有し、
前記外殻キャロット(3)はシリンダ管外殻(1.1)上に配置され、前記内殻キャロット(4)はシリンダ管内殻(1.2)上に配置され、前記キャロット(3、4)は、冷間成形凹状エンボス形態部分として設計され、
前記構造強化ゾーン(1.4)は、前記キャロット(3、4)間の成形エリアに配置され、
前記接続ボア孔(5)は、圧力媒体の圧力媒体通路のために打ち抜き孔として設計され、且つ前記キャロット(3、4)を通過しており、また前記構造強化ゾーンは、前記接続ボア孔(5)を取り囲んでおり、
前記接続ピース(2)は、前記接続部分(1.3)に配置され、且つ圧力媒体チューブ(6)と、連結部分とを有し、
前記圧力媒体チューブ(6)は、前記圧力媒体の圧力媒体通路のために設計され、
前記連結部分は、環状軸方向境界輪郭(7.1)を有し、
前記環状軸方向境界輪郭(7.1)と、前記外殻キャロット(3)の環状合せ面(3.1)とが、環状接触面を形成し、
前記シリンダ管(1)及び前記接続ピース(2)は、環状溶接シーム(8)によって前記環状接触面において材料結合式に接続され、前記環状溶接シーム(8)は、封止面を形成し、また前記圧力媒体チューブ(6)及び前記接続ボア孔(5)は、共通の圧力媒体チャネルを形成する、シリンダ管アセンブリ。
【請求項2】
前記シリンダ管アセンブリは、作動シリンダの一部として設計されることを特徴とする、請求項1に記載のシリンダ管アセンブリ。
【請求項3】
前記環状溶接シームは、圧接シームとして形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシリンダ管アセンブリ。
【請求項4】
前記環状溶接シームは、溶接材料なしに形成されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のシリンダ管アセンブリ。
【請求項5】
前記外殻キャロット(3)は、球面断面として設計されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のシリンダ管アセンブリ。
【請求項6】
前記内殻キャロット(4)は、減衰圧力媒体チャネルとして設計されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のシリンダ管アセンブリ。
【請求項7】
シリンダ管アセンブリを製造する方法であって、
前記シリンダ管アセンブリは、請求項1から6までのいずれか一項に従って設計され、且つ以下のプロセス・ステップ、すなわち、
a)前記シリンダ管(1)を提供するステップと、
b)冷間成形プロセスにおいて打ち抜き成形ダイ(9.1)及び対向ダイ(9.2)を使用することによって、前記接続ボア孔(5)を打ち抜き且つ前記キャロットを成形するステップと、
c)前記接続ピース(2)を前記外殻キャロット(3)上に位置決めし且つ固定位置関係を確立するとともに、前記環状接触面を形成してプリアセンブリを得るステップと、
d)前記シリンダ管(1)及び前記接続ピース(2)を溶接して、前記環状溶接シーム(8)を作るステップと
を有することを特徴とする、シリンダ管アセンブリを製造する方法。
【請求項8】
前記プロセス・ステップb)において、打ち抜くこと及び成形することが、硬化球として設計された対向ダイ(9.2)によって実行されることを特徴とする、請求項7に記載のシリンダ管アセンブリを製造する方法。
【請求項9】
前記プロセス・ステップd)において、前記溶接は、抵抗圧接として実行されることを特徴とする、請求項7又は8に記載のシリンダ管アセンブリを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ管アセンブリ、特に接続ピースとのシリンダ管の接続、及びシリンダ管アセンブリの製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、接続ピースをシリンダ管と接続する種々のやり方が説明されている。ねじ接続が可能であり、また、例えば溶接によって達成される材料結合接続も知られている。
【0003】
ねじ接続はたいてい、雌ねじがシリンダ管に存在するとともに対応する雄ねじが接続ピースに存在するように設計される。シリンダ管における雌ねじは通常、シリンダ軸に対して直交につくり出された半径方向ボア孔である。この解決策の不都合点は、シリンダ管のねじ込みエリアが、ねじ接続の十分な機械的長さを確保するために最小限のねじ深さを有しなくてはならないことである。したがって、シリンダ管のエリアは、大きな肉厚を有しなくてはならないか、又は費用がかかるともに時間がかかるやり方で機械加工されねばならない。その上、大きな肉厚は、材料効率的な設計には逆効果である。
【0004】
代替的な設計では、接続ピースをシリンダ管に直接溶接することができる。TIG、MAG又はレーザ溶接などの通常の溶接プロセスを用いることができる。たいていの場合、シリンダ管の外側曲率によって生じる接合隙間を埋めるためにフィラー材料が添加される。代替的に、外側曲率をフライス加工する(milling off)こともまた既知のプロセスであるが、この方法は不都合には、シリンダ管の断面の局所的な弱化に関連する。さらに、シリンダ管材料に導入される高熱もまた、述べた溶接プロセスの不都合点である。この結果、強度に悪影響を及ぼす構造変化が生じる。その上、このエリアにおいてシリンダ管の望ましくない変形のリスクも存在する。
【0005】
別の不都合点は、圧力媒体接続又は圧力媒体流のためのボア孔又はねじが穿孔又はフライス加工によってつくり出されることである。結果として生じる切削屑及び塵埃がシリンダ内部に蓄積する可能性があり、作動シリンダの後続動作時に、オイル、及び、弁又は同様の部材などの他の周辺部材を汚染する可能性がある。この不都合点を回避するために、広範の洗浄が実行されねばならない。
【0006】
すべての既知の解決策の別の不都合点は、ボア孔がシリンダ内壁に達する通過点が、輪郭であって、ピストンにおけるシール若しくはガイドの摩耗の増加を引き起こすか、又はそのような望ましくない影響を防ぐように広範に再加工される必要がある輪郭を形成することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、接続ピースが配置されたシリンダ管を有する、さらには、時間節約的及び費用効果的に製造することができる、高品質で頑丈なシリンダ管アセンブリを提供することによって、従来技術の不都合点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
シリンダ管アセンブリに関して、課題は、請求項1に記載する構成によって解決され、シリンダ管アセンブリの製造のための方法に関して、課題は、請求項7に記載する構成によって解決される。好ましい実施例は、対応する従属請求項から生じる。
【0009】
シリンダ管アセンブリは、その基本構成要素として、シリンダ管と、接続ピースとを有する。
【0010】
シリンダ管は、油圧若しくは空気圧アセンブリの任意の中空シリンダ殻、好ましくは、油圧作動シリンダのシリンダ管、又は、油圧弁、特に油圧制御弁若しくは逆止弁のシリンダ管であると理解される。
【0011】
シリンダ管が油圧作動シリンダのシリンダ管である場合、ピストン・ユニットが、軸方向に移動することができるようにシリンダ管内に配置される。ケーシング内でのピストン・ユニットの移動を達成するために、シリンダ管に圧力媒体が加えられる。開示されるシリンダ管アセンブリによれば、圧力媒体は、シリンダ管を通って側方に内外に導かれる。
【0012】
本発明によれば、シリンダ管は、シリンダ本体と、接続部分とを有する。
【0013】
シリンダ本体は、シリンダ管の基本的な管状構造であると理解される。
【0014】
流体が、シリンダ管の一部としての接続部分を介して、シリンダ内部としても知られている、シリンダ管によって形成された圧力媒体作動チャンバ内にガイドされる。接続部分は順に、シリンダ管外殻に配置される外殻キャロット(calotte)と、シリンダ管内殻に配置される内殻キャロットとを有する。外殻キャロット及び内殻キャロットは、まとめてキャロットとも呼ばれる。
【0015】
本発明によるシリンダ管アセンブリは、特に、キャロットが冷間成形凹状エンボス部分として設計され、キャロット間の成形エリアに構造強化ゾーンをつくり出すことを特徴とする。
【0016】
幾何学的観点から、キャロットは、シリンダ管外殻及びシリンダ管内殻の残りの表面輪郭に対して凹状である成形部分として設計され、したがって、リセスを形成し、好ましくは楕円形状を有する。
【0017】
構造強化ゾーンの構造強化は有利には、キャロットのエンボス成形の結果としてそこで冷間成形法でシリンダ管材料がその構造を高められることにより、機械的により安定したエリアを形成する。
【0018】
さらに、接続部分は、圧力媒体がシリンダ管を通ることができるように設計されている接続ボア孔(貫通部)を有しており、そのため、動作状態に応じて、前記ボア孔は、圧力媒体入口又は圧力媒体出口として機能する。本発明によれば、接続ボア孔は、打ち抜きボア孔として設計され、2つのキャロットと、それらキャロット間に位置付けられたシリンダ管とを通る。ボア孔を介してシリンダ内部へ作動圧力媒体をガイドすることができる。
【0019】
本発明による解決策はさらに、特に、接続ボア孔が構造強化ゾーンによって囲まれることを特徴とする。
【0020】
したがって、圧力媒体入口の重要なエリア及び圧力媒体接続が、より大きな機械的強度を提供する。
【0021】
接続ピースは、接続部分に配置され、圧力媒体チューブを有しており、この圧力媒体チューブは圧力媒体の圧力媒体通路のために設計されている。
【0022】
例えば、ねじ部分として設計された、接続ピースの圧力媒体接続部は、圧力媒体ホースを接続ピースと接続するとともにシリンダと間接的に接続し、したがって、圧力媒体を供給又は排出する実現性を提供する。取り付け状態及び動作状況に応じて、そのような圧力媒体ホースは、シリンダの動的移動時に変形する可能性があり、そのため、接続ピースに機械的負荷をかけ、いずれにしてもボア孔によって必然的に弱化させられるエリアにおいてシリンダ管に間接的に機械的負荷をかける。ここで、より高い耐負荷能力を有する、より耐久性のある接続オプションが、構造強化によって提供される。
【0023】
さらに、接続部分は、圧力媒体チャネルを囲む環状軸方向境界輪郭を有する連結部分を有する。
【0024】
さらに、外殻キャロットはまた、接続ピースの環状軸方向境界輪郭に環状合せ面を形成する環状輪郭を有する。
【0025】
本発明による環状軸方向輪郭と、外殻キャロットの環状合せ面とが、環状接触面を形成する。有利には、環状接触面は実際的に、隙間がない。環状接触及びキャロット形状エンボス加工により、接続ピースが高公差で嵌め込まれる可能性があるが、封止接触が可能である。特に球面断面として設計される外殻キャロットにより、接続ピースがシリンダ管の長手方向軸に対する理想半径から逸脱する場合であっても、実際的に隙間のない環状接触面が常に達成される。
【0026】
シリンダ管及び接続ピースは、環状溶接シームによって環状接触面において互いに接続される。以下、シリンダ管及び接続ピースは、まとめて接合パートナーとも呼ばれる。環状溶接シームはまた、封止面を形成する。
【0027】
さらに、シリンダ壁を通る圧力媒体通路として、圧力媒体チューブ及び接続ボア孔は、共通の圧力媒体チャネルを形成する。
【0028】
本発明によるシリンダ管アセンブリによって、驚くべきことに、以下でより詳細に説明される有利な態様に基づいて技術的に単純確実なやり方で先行技術の多数の課題を解決する解決策が見出された。
【0029】
有利には、本発明によるシリンダ管アセンブリは、シリンダ内部に入り込むとともに損傷を引き起こす可能性がある切削屑が生じることがないように、切削屑のない製造によって得られる。このことは、清潔さ及び製造品質を高める。
【0030】
接続ボア孔におけるバリ形成が両面エンボス加工によってあり得なくなることもまた有利である。特に、これにより、バリを除去するために再加工する必要性がなくなる。再加工後に多くの場合に残る研削条痕も回避される。有利には、接続ボア孔に滑らかな壁が存在し、そのため、圧力媒体の流れが、妨げられることがなく、均一且つ低騒音で生じることができる。
【0031】
この文脈において、さらなる措置なく、エンボス成形によりシリンダの内殻面と内殻キャロットとの間の遷移部にもバリがないという利点もある。このように、接続ボア孔が内殻キャロットまで達する地点もまた有利には、シリンダ内殻面の輪郭に対して半径方向に僅かに凹んでおり、そのため、ピストンにおけるシール又はガイドなどの、影響を受けやすい構成要素が、接続ボア孔を通る際に特に保護される。
【0032】
エンボス成形はまた、構造強化ゾーン、すなわち、接続ボア孔の周りのエリアにおける材料圧縮により、有利な構造変化をもたらす。これは、接続ボア孔が必然的に結果としてシリンダ管壁の構造的弱化を生じさせることになり、この構造的弱化が接続ボア孔の周りに座屈応力及び軸方向引張応力を分布させると考えられるという点で、特に有利である。さらに、用途に応じて、接続ピースを介して曲げ力がもたらされる可能性がある。この重要なエリアは、有利な構造変化によって強化され、したがって、接続ボア孔によって引き起こされる構造的弱化をより良好に補償することができる。
【0033】
さらに、外殻キャロットは有利には、接続ピースの面一の且つ隙間のない接触のための輪郭面として環状合せ面を提供し、それにより、溶接材料もない特に高品質の溶接接合のための最適な条件がつくり出される。
【0034】
さらなる利点は、外殻キャロット及び内殻キャロットの形状又は輪郭が互いとは異なることもでき、そのため、さらなるステップなしに、シリンダ内殻面に減衰圧力媒体チャネルを形成する、長手方向に延びた内殻キャロットのような特別な形状を提供することが可能であることである。
【0035】
さらに、接続ボア孔と、構造強化ゾーンと、外殻キャロットの環状合せ面と、シリンダ内殻面への接続ボア孔のバリなし通過とが、たった1回の一定の作業ステップで行われ、したがって、費用効果的且つ効率的な製造を可能にすることが有利である。
【0036】
打ち抜きによる接続ボア孔製造は、クリーンな固体スクラップとして完全に再利用することができる、スラグとも呼ばれるプラグをもたらす。さらに、開示される打ち抜き及びエンボス加工プロセスについての製造におけるエネルギー消費は、先行技術による多段機械加工プロセスについてよりも著しく低い。また、有利には、処分に費用がかかる汚染された切削屑が生じない。
【0037】
有利なさらなる展開によれば、シリンダ管アセンブリは、シリンダ管アセンブリが作動シリンダの一部として設計されることを特徴とする。
【0038】
特に好ましい実施例では、このさらなる展開は、油圧作動シリンダのシリンダ・アセンブリである。このシリンダ・タイプは、極度に高い負荷に晒されるため、高品質及び高強度の記載の利点が特に効果的である。そのような作動シリンダは、シリンダ管アセンブリと、ピストン・ユニットとを有し、多くの用途分野において一次圧力流コンシューマとして用いられる。
【0039】
別の有利なさらなる展開によれば、シリンダ管アセンブリは、環状溶接シームが圧接シームとして形成されることを特徴とする。
【0040】
圧接シームは、特に溶接パートナーの材料に導入される熱が極度に低いため、溶接を囲むエリアにおける構造が、他の溶接プロセスにおけるほど変化しないという利点を提供する。
【0041】
本発明による解決策は、外殻キャロットの環状合せ面を接続ピースの環状軸方向境界輪郭にもたらすことによって実際的に隙間のない接触面をつくり出すため、圧接シームとしての有利なさらなる展開が可能である。
【0042】
さらなる有利な展開によれば、シリンダ管アセンブリは、環状溶接シームが溶接材料なしに形成されることを特徴とする。この展開の利点は、溶接にフィラー材料が全く必要とされないことである。
【0043】
したがって、溶接は有利には、より低いエネルギー入力で、技術的により単純且つより高速に、溶接スパッタの発生なく実行することができる。さらに、腐食又は構造的歪みの増加を引き起こす可能性がある、添加される溶接材料による材料汚染が、溶接接合において生じない。
【0044】
別の有利なさらなる展開によれば、シリンダ管アセンブリは、外殻キャロットが球面断面として設計されることを特徴とする。
【0045】
球面形状により、圧力媒体チャネルの一部として接続ボア孔の方向においてシリンダ管壁に沿う構造遷移は、構造亀裂を防ぐ漸進的遷移である。これによりクラックの形成又は動的破壊が回避される。
【0046】
球面断面としての外殻キャロットの成形はまた、外殻キャロットの表面に円形ラインが幾何学的に刻まれ得るという利点を有する。さらに、この円形ラインの平面は、接続ピースを特に簡単なやり方で位置合わせすることができるとともに、隙間のない環状接触面を常に達成することができるように、種々の角度で配置することができる。
【0047】
別の有利なさらなる展開によれば、シリンダ管アセンブリは、内殻キャロットが減衰圧力媒体チャネルとして設計されることを特徴とする。
【0048】
このさらなる展開は、減衰解決策であって、ピストンがピストン・リングを有しており、シリンダ端部領域における接続ボア孔が軸方向近位方向にオフセットされ、そのため、ピストンは、端部位置に接近する際にそのピストン・リングとともに接続ボア孔を越え、したがって、シリンダ端部領域における圧力媒体容積を囲む、減衰解決策に関する。ピストンがそのピストン・リングとともに内殻キャロットを越える場合、圧力媒体チャネルは、ピストンによって完全には閉じられない。代わりに、このように成形された内殻キャロットにおいて、少量の圧力媒体がピストンのピストン・リングを越えて流れることができる。したがって、ピストン移動の減衰を達成することができる。減衰圧力媒体チャネルの断面が、減衰の程度を決定し、その軸方向範囲が減衰経路を決定する。特別な実施例では、可変軸方向範囲を有する断面によって段階的な減衰も達成することができる。
【0049】
本発明のさらなる態様によれば、シリンダ管アセンブリは、以下でより詳細に説明する製造方法によって得られる。
【0050】
シリンダ管アセンブリを製造する方法は、シリンダ管アセンブリが請求項1から6までのいずれか一項に従って設計され、以下のプロセス・ステップを有することを特徴とする。
【0051】
a)シリンダ管を準備するステップ
プロセスの開始点は、シリンダ管であり、シリンダ管は、所定の長さに切断、回転することによって、また、必要であれば他の作業ステップによって、ロッド材料から得られる。
【0052】
このように準備されたシリンダ管が、デバイス内に配置される。デバイスは、昇降移動を行うことができるプレスと、管のための規定されたホルダを有するツールとからなる。このように、管は常に、連続生産時に同じ位置に挿入され、加工は常に、管の同じ地点で行われる。
【0053】
b)冷間成形プロセスにおいて打ち抜き成形ダイ及び対向ダイを使用することによって、接続ボア孔を打ち抜くとともにキャロットを成形するステップ
打ち抜き成形ダイは、好適な球断面形状エンボス輪郭と、球断面の中心を貫通する円筒切削ピンとを有する。ダイはまた、少なくともシリンダ管の単一の肉厚の長さだけ球断面から突出する。
【0054】
プロセス・ステップb)の打ち抜き段階において、切削ダイ輪郭がシリンダ管に貫入し、円筒穴として接続ボア孔を打ち抜く。
【0055】
ダイの連続した動きの後、エンボス加工段階において、好適な球断面が、外殻キャロットをシリンダ管の外側にエンボス加工する。対向ダイが反力をもたらす。これをなすため、対向ダイはシリンダ管の内部形状を呈する。対向ダイはまた、好適な球凸状輪郭を有し、したがって、外殻キャロットが成形されるのと同時に内殻キャロットを成形する。さらに、打ち抜かれたシリンダ・スラグ及び切削ダイ断面が沈み込む円筒穴が、対向ダイを通る。
【0056】
エンボス加工段階時、接続ボア孔内に依然としてある切削ダイは有利には、接続ボア孔の内壁を支持し、そのため、エンボス加工時に構造強化ゾーンにおいて塑性成形するシリンダ管材料が内壁において特に圧縮される。同時に、接続ボア孔の穴断面が変形から保護される。
【0057】
さらに、接続ボア孔からいかなるバリも除去するために、又はキャロットを続けて成形するために、プロセス・ステップb)の後、異なるエンボス加工ツールによりさらなるエンボス加工ステップを実行することができる。
【0058】
本発明のさらなる態様によれば、プロセス・ステップb)はまた、2つのサブステップで実行することができる。第1のサブステップにおいて、接続ボア孔が、打ち抜きダイによって打ち抜かれ、第2のサブステップにおいて、キャロットが、エンボス加工ダイによってエンボス加工され、それにより、いかなる打ち抜きバリも同時に圧入され、したがって除去される。
【0059】
有利な変形例において、プロセス・ステップb)はまた、このプロセス・ステップの後に、一方の端部領域に接続部分と、他方の端部領域にさらなる接続部分とを有するシリンダ管がもたらされるように、両端部領域に圧力媒体接続部が1つずつ、2つの側方圧力媒体接続部を有するべきシリンダ管の場合に、両方の圧力媒体接続について同時に実行することができる。このため、プレスは、エンボス加工ダイ及び対向ダイに加え、このさらなる展開では、さらなるエンボス加工ダイと、さらなる対向ダイとを有する。2つの対向ダイが、それぞれの接続部分が製造されるべき、シリンダ管内部における両方の側面に位置決めされる。したがって、両方のエンボス加工ダイを1回のプレス・ストロークで作動させることができる。これは特に、差動シリンダ、又は、連続ピストン・ロッド、したがって、拡張及び収縮のために2つの等しい大きな有効表面を有するシリンダなど、複動式作動シリンダのためのシリンダ管アセンブリに当てはまる。
【0060】
c)接続ピースを外殻キャロットに位置決めし、環状接触面を形成するとともにプリアセンブリを得つつ固定位置関係を確立するステップ
接続ピースは、その環状接触面を有する外殻キャロットのエリアに位置決めされる。外殻キャロットの形状と接続ピースの環状接触面との組み合わせにより、位置決め及び嵌め込み時に高い角度公差が存在する。接合パートナー幾何学形状間に全く隙間のない接触が常に存在し、これは、次のプロセス・ステップの後に均質な材料結合接続をもたらす。
【0061】
d)シリンダ管及び接続ピースを溶接し、したがって、環状溶接シームをつくり出すステップ
溶接は好ましくは、接合パートナーのプレス加工により抵抗圧接をつくり出すことによって実行される。
溶接は、シリンダ管と接続ピースとの間の密な材料結合接続部をつくり出すために用いられる。さらに、接続部は、圧力媒体に対して不透過性である。接合パートナー幾何学形状の隙間のない事前位置決めにより、費用を生じさせる再加工の必要なく高品質で溶接を実行することができる。
【0062】
ここで、ホース又はチューブの形態の圧力媒体流体供給系をシリンダ管に取り付けることができる。接続ピースとシリンダ管との間の接続部はまた、圧力サージ又はシリンダ移動によって引き起こされるホースの動きに起因する動的負荷に対して十分な耐性を提供する。
【0063】
プロセス・ステップb)のように、2つのプロセス・ステップc)又はd)は任意選択で、2つの接続部分について同時に実行することができる。
【0064】
有利なさらなる展開では、シリンダ管アセンブリを製造するプロセスは、プロセス・ステップb)において、打ち抜き及び成形が、硬化球として設計された対向ダイによって実行されることを特徴とする。
【0065】
したがって、対向ダイもまた、球断面のように形作られた凸状エリアを有する。これは、シリンダ管の内側にエンボス加工され、ここでは凹状キャロットも成形する。
【0066】
硬化球を有する対向ダイを形成することによって、有利には、プロセス安定性が高い、費用効果的なエンボス加工ツールを提供することができる。
【0067】
別の有利なさらなる展開によれば、シリンダ管アセンブリを製造するプロセスは、プロセス・ステップd)において、溶接が抵抗圧接として実行されることを特徴とする。
【0068】
外殻キャロットの形状における、接続ピースの連続した環状の隙間のない支持により、供給されるエネルギーが均一に分布される。結果として、さらなる材料を導入する必要なく、正確で流体密の溶接シームが達成される。
【0069】
本発明を、添付の図面によって例示的な実施例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図4】シリンダ管軸に対して垂直な概略断面図である。
【
図5】打ち抜き及びエンボス加工ツールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
様々な図における同じ参照番号は、同じ構成又は構成要素を指すことに留意されたい。参照番号はまた、関連の図において示されていない場合でも本明細書において用いられる。
【0072】
図1は、シリンダ管アセンブリ全体の概略斜視図を示す。
図1において、シリンダ管1が接続ピース2に接続されている。外殻キャロット3のエリアにおいて、接続ピース2は、環状溶接シーム8によって材料結合式に接合されている。
【0073】
図2は、接合準備が整ったシリンダ管1の概略斜視図を示す。ここでは、球断面形状外殻キャロット3が、シリンダ管の外殻表面にエンボス加工されている。圧力媒体の流れのために接続ボア孔5も打ち抜かれている。
【0074】
図3は、シリンダ管の長手方向軸に沿って切断された、シリンダ管アセンブリ全体の概略図を示す。
【0075】
接続部分1.3のエリアにおいて、球断面形状外殻キャロット3は、シリンダ管1にシリンダ管外殻1.1においてエンボス加工されている。これとは反対に、同様に球断面形状輪郭を有する内殻キャロット4がシリンダ管1にシリンダ管内殻1.2においてエンボス加工されている。貫通深さに応じて、シリンダ管材料の構造は規定値だけ圧迫される。この圧迫の結果、材料の局所硬化が生じる。これが構造強化ゾーン1.4である。
【0076】
同時に、圧力媒体流のために設けられる接続ボア孔5が打ち抜かれている。
【0077】
接続ピース2は、圧力媒体通過のための圧力媒体チューブ6を有する。さらに、接続ピース2は、環状端部輪郭を有する連結部分7を有する。この輪郭が環状軸方向境界輪郭7.1である。接合位置において、この環状軸方向境界輪郭7.1と対向側に外殻キャロット3の環状合せ面3.1が位置する。
【0078】
接続ピースは、外殻キャロット3に配置され、環状溶接シーム8によって材料結合式に接合され、この環状溶接シーム8は、圧接によってつくり出されており、圧力媒体のための封止面も形成する。その場合、圧力媒体が接続ピース2を介して接続ボア孔5を通ってシリンダ管1の内部に流れ込むことができ、その逆も同じである。
【0079】
図4は、シリンダ管の長手方向軸を斜めに切断された、シリンダ管アセンブリの概略図を示す。
【0080】
図3と組み合わせて、
図4は特に、外殻キャロット3及び内殻キャロット4の球断面形状輪郭を示す。プロセス・ステップc)においてシリンダ管1が接続ピース2に接合されると、接続ピース2の環状軸方向境界輪郭7.1と、外殻キャロット3の球断面凹状面の表面断面としての環状合せ面3.1とが、隙間を有さずに互いに対向する。接合パートナー1、2が大きな角度偏差で互いに対して傾けられた場合であっても、外殻キャロット3の形状が、溶接後に隙間のない封止接触を確実にする。
【0081】
プロセス・ステップd)における次の圧接時、均一なエネルギー入力、結果として、耐圧性の材料結合接続が、環状溶接シーム8によって達成される。圧力媒体は、接続ボア孔5及び下流の内殻キャロット4を介して干渉なしにシリンダ管1の内部に流れ込むことができる。
【0082】
図5は、接続ピース2の次の接合のためにシリンダ管1の接続部分1.3を機械加工するプロセスのための打ち抜き及びエンボス加工ツールの概略断面図を示す。
【0083】
ここでは、プロセス・ステップa)において準備されたシリンダ管1が、対向ダイ9.2に位置決めされる。プロセス・ステップb)において、ダイがシリンダ管1の外側から挿入される。打ち抜き成形ダイ9.1が、球断面として設計された打ち抜き断面に配置される円筒形の打ち抜き断面からなる。したがって、接続ボア孔5を打ち抜き成形ダイ9.1によりシリンダ管1に打ち抜くことができ、外殻キャロット3及び内殻キャロット4が同じプレス・ストロークで同時にエンボス加工される。
【0084】
本例示的な実施例では、対向ダイ9.2はまた、球断面形状エンボス輪郭を有する。これは、内殻キャロット4を同じ作業ステップにおいてエンボス加工することができることを意味する。さらに、対向ダイ9.2は、中心に円錐ボア孔を有し、この円錐ボア孔が、打ち抜きスラグと、打ち抜き成形ダイ9.1の円筒形断面とを受け入れる。このツール構造を用いて、たった1回のプレス・ストロークでシリンダ管1に所要の接合輪郭全体をつくり出すことができる。
【符号の説明】
【0085】
1 シリンダ管
1.1 シリンダ管外殻
1.2 シリンダ管内殻
1.3 接続部分
1.4 構造強化ゾーン
2 接続ピース
3 外殻キャロット
3.1 環状合せ面
4 内殻キャロット
5 接続ボア孔
6 圧力媒体チューブ
7 接続部分
7.1 環状軸方向境界輪郭
8 環状溶接シーム
9.1 打ち抜き成形ダイ
9.2 対向ダイ
【国際調査報告】