(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】設定可能な流量制御システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20240920BHJP
A61M 39/24 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61M5/168 506
A61M39/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522507
(86)(22)【出願日】2022-01-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022011001
(87)【国際公開番号】W WO2023063978
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516059547
【氏名又は名称】コル メディカル システムズ、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】タッデオ、ピーター
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066JJ02
4C066JJ04
4C066QQ27
(57)【要約】
【解決手段】リザーバ(1004)から患者(1008)への液体(1006)投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器(100)が与えられる。流量制御器(100)は、チューブライン(1002)への接続のための入口ポート(108)および出口ポート(110)を備えたモジュラーハウジング(102)を備える。1つ以上の固定ジオメトリパッシブ逆止弁(136)を含む複数の流路セグメント(106)によって定義される設定可能な流路(124)が、モジュラーハウジング内の入口ポート(108)と出口ポート(110)との間に配置される。流路セグメント(106)の各々は、所定の流れ抵抗を有する。流路セグメント(106)の選択されたサブセットは、出口ポート(110)から流出する液体(1006)の所定の流量を提供する。キット(900)および使用方法(110)もまた与えられる。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器であって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えたモジュラーハウジングと、
前記モジュラーハウジング内の前記入口ポートと前記出口ポートとの間に配置され、1つ以上の固定ジオメトリパッシブ逆止弁を含む複数の流路セグメントによって定義される設定可能な流路と、
を備え、
前記流路セグメントの各々は、所定の流れ抵抗を有し、
前記流路セグメントの選択されたサブセットは、前記出口ポートから流出する液体の所定の流量を提供することを特徴とする流量制御器。
【請求項2】
前記固定ジオメトリパッシブ逆止弁はテスラ弁であることを特徴とする請求項1に記載の流量制御器。
【請求項3】
前記設定可能な流路を提供する複数の流量調節器を備え、
前記流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供し、
前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁であることを特徴とする請求項1に記載の流量制御器。
【請求項4】
1つ以上の前記流量調節器が、選択可能な流路セグメントとして貫通穴を備えることを特徴とする請求項3に記載の流量制御器。
【請求項5】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項4に記載の流量制御器。
【請求項6】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器であって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えたモジュラーハウジングと、
1つ以上の第1の流量調節器および1つ以上の第2の流量調節器によって提供される設定可能な流路と、
を備え、
前記第1の流量調節器および第2の流量調節器の各々は、選択可能な流路セグメントを提供し、
前記選択可能な流路セグメントは、1つ以上の固定ジオメトリパッシブ逆止弁と、1つ以上の貫通穴と、を備え、
前記流路セグメントの各々は、所定の流れ抵抗を有し、
前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して整列することにより、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントが提供され、
前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供されることを特徴とする流量制御器。
【請求項7】
前記固定ジオメトリパッシブ逆止弁はテスラ弁であることを特徴とする請求項6に記載の流量制御器。
【請求項8】
前記固定ジオメトリパッシブ逆止弁は、第1の方向に対する第1の流量と、第2の方向に対する第2の流量と、を有し、
前記第1の流量は、前記第2の流量とは異なることを特徴とする請求項6に記載の流量制御器。
【請求項9】
前記第1の流量調節器と前記第2の流量調節器とは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項6に記載の流量制御器。
【請求項10】
前記第1の流量調節器は、第1の流量を有する第1の固定ジオメトリパッシブ逆止弁を提供し、
前記第2の流量調節器は、前記第1の流量とは異なる第2の流量を有する第2の固定ジオメトリパッシブ逆止弁を提供することを特徴とする請求項6に記載の流量制御器。
【請求項11】
前記モジュラーハウジングはスナップ結合ハウジングであることを特徴とする請求項6に記載の流量制御器。
【請求項12】
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器は、内部に定義された選択可能な流路セグメントを有するガスケットであり、
前記ガスケットの各々は、1つ以上のアライナを有し、
前記アライナは、前記ガスケットの所定の整列を維持することを特徴とする請求項6に記載の流量制御器。
【請求項13】
前記1つ以上のアライナは、互いに嵌合する隆起部および溝で構成されることを特徴とする請求項12に記載の流量制御器。
【請求項14】
前記1つ以上のアライナは、互いに嵌合するペグおよびソケットで構成されることを特徴とする請求項12に記載の流量制御器。
【請求項15】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項6に記載の流量制御器。
【請求項16】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器であって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えた分割式ハウジングと、
前記分割式ハウジング内に配置された第1の流量調節器および第2の流量調節器と、
を備え、
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供し、
前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁であり、
前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して選択的に整列することにより、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントが提供され、
前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供されることを特徴とする流量制御器。
【請求項17】
前記固定ジオメトリパッシブ逆止弁はテスラ弁であることを特徴とする請求項16に記載の流量制御器。
【請求項18】
1つ以上の前記流量調節器が、選択可能な流路セグメントとして貫通穴を備えることを特徴とする請求項16に記載の流量制御器。
【請求項19】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項18に記載の流量制御器。
【請求項20】
前記第1の流量調節器と前記第2の流量調節器とは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項16に記載の流量制御器。
【請求項21】
前記分割式ハウジングはスナップ結合ハウジングであることを特徴とする請求項16に記載の流量制御器。
【請求項22】
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器は、内部に定義された選択可能な流路セグメントを有するガスケットであり、
前記ガスケットの各々は、1つ以上のアライナを有し、
前記アライナは、前記ガスケットの所定の整列を維持することを特徴とする請求項16に記載の流量制御器。
【請求項23】
前記1つ以上のアライナは、互いに嵌合する隆起部および溝で構成されることを特徴とする請求項22に記載の流量制御器。
【請求項24】
前記1つ以上のアライナは、互いに嵌合するペグおよびソケットで構成されることを特徴とする請求項22に記載の流量制御器。
【請求項25】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器を製造するためのキットであって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えた分割式ハウジングと、
前記分割式ハウジング内に配置された第1の流量調節器および第2の流量調節器と、
を備え、
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供し、
前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁であり、
前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して整列することにより、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントが提供され、
前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供されることを特徴とするキット。
【請求項26】
前記固定ジオメトリパッシブ逆止弁はテスラ弁であることを特徴とする請求項25に記載のキット。
【請求項27】
1つ以上の前記流量調節器が、選択可能な流路セグメントとして貫通穴を備えることを特徴とする請求項25に記載のキット。
【請求項28】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記第1の流量調節器と前記第2の流量調節器とは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項26に記載のキット。
【請求項30】
前記分割式ハウジングはスナップ結合ハウジングであることを特徴とする請求項26に記載のキット。
【請求項31】
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器は、内部に定義された選択可能な流路セグメントを有するガスケットであり、
前記ガスケットの各々は、1つ以上のアライナを有し、
前記アライナは、前記ガスケットの所定の整列を維持することを特徴とする請求項26に記載のキット。
【請求項32】
前記1つ以上のアライナは、互いに嵌合する隆起部および溝で構成されることを特徴とする請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記1つ以上のアライナは、互いに嵌合するペグおよびソケットで構成されることを特徴とする請求項31に記載のキット。
【請求項34】
1本以上の針およびチューブを含む針セットをさらに含むことを特徴とする請求項26に記載のキット。
【請求項35】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器を使用する方法であって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えたモジュラーハウジングを与えるステップと、
分割式ハウジング内に配置された第1の流量調節器および第2の流量調節器とを与えるステップと、
前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して選択的に整列させることにより、前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供するために、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントを提供するステップと、
前記入口ポートから前記リザーバまでのチューブラインを形成するステップと、
前記患者に液体を投与するために、前記出口ポートから針セットまでのチューブラインを形成するステップと、
を含み、
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供し、
前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁であることを特徴とする方法。
【請求項36】
前記固定ジオメトリパッシブ逆止弁はテスラ弁であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
1つ以上の前記流量調節器が、選択可能な流路セグメントとして貫通穴を備えることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の流量調節器と前記第2の流量調節器とは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記分割式ハウジングはスナップ結合ハウジングであることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器は、内部に定義された選択可能な流路セグメントを有するガスケットであり、
前記ガスケットの各々は、1つ以上のアライナを有し、
前記アライナは、前記ガスケットの所定の整列を維持することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記1つ以上のアライナは、互いに嵌合する隆起部および溝で構成されることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記1つ以上のアライナは、互いに嵌合するペグおよびソケットで構成されることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に患者への注入用液体の投与に望ましい流量制御のためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、異なる流量を実現するために様々な設定を設定可能な、固定的ジオメトリの流路セグメントを組み込んだ改良された流量制御器に関する。
【0002】
液体医薬品の投与のための注入システムは、患者および介護者に広く使われ、信頼されている。このような投与は、一般に、2つの方法のいずれかで行われる。1つは、医療提供者または他の操作者から、患者の組織に直接配置された注射器および注射針を用いて実行される単純な注射の形態での即時投与である。このタイプの即時投与では、医薬品の量は、通常医療従事者または他の操作者が測定する。このとき投与速度は、通常プランジャーを押し下げる速度に基づく。過剰投与が起こる可能性はあるものの、即時投与で投与速度が問題になることはほとんどない。
【0003】
もう1つは、段階的投与である。この方法では、注射器または他のリザーバが特定の医療用チューブに接続され、時間をかけて投与される。このような時間ベースの投与では、医薬品の過剰投薬および/または過剰投与が起こる確率は非常に現実的である。注射器または流体バッグのような他の医薬用リザーバは、一般に、多くの異なるタイプの医薬に容易かつ共通に適合される。しかし、そのような医薬品の適切な投与のための流量は、製造業者によって決められ、大きく変動する可能性がある。さらに、患者のニーズや状況はしばしば異なるため、同じ種類の医薬品を扱う場合であっても、患者によって異なる流量が必要となる場合がある。この場合の流量も、製造業者の指定する最大投与速度以下となる。
【0004】
医療費を削減したいという要望がますます高まる中、静脈内投与や皮下投与のコストを低減したいという市場の要望がある。経時的輸液には、基本的に2つの大きなカテゴリーがある。1つは一定流量/可変圧力で、もう1つは可変流量/一定圧力である。
【0005】
いずれのシステムも、チューブと針のセットを介して、一定量の輸液を一定時間かけて患者に供給することを目的とする。流路を流れる流体の流量は、流路を横切る圧力勾配と流路を通る流体の抵抗によって決まる。この関係は次式で表される。
Q=ΔP/R
【0006】
最初のシステム(定流量/可変圧力)では、流量制御のためにプログラマブル・ポンプが使われる。こうしたのシステムはプログラマブル・ポンプを用いて流量を正確に測定した後、正しい流量を維持するために圧力をアルゴリズムで調整する。
【背景技術】
【0007】
こうしたシステムは、圧力に関係なく同じ流量を維持しようとする。このためこうしたシステムには、一般に、ポンプが一定の流量を維持しようとする際に、危険な圧力の上昇をユーザおよび/または操作者に警告する警告システムが組み込まれている。しかし投与時に閉塞があると、警報があっても、患者が傷害を受けたり、医薬品の過剰投与を受けたりする可能性がある。
【0008】
定流量ポンプとは対照的に、第2の選択肢である可変流量/定圧ポンプシステムは、より安全であり、多くの場合ユーザにとって経済的に受け入れやすいことが分かっている。可変流量/定圧ポンプシステムには、定流量/可変圧力ポンプシステムと比べたとき、比較的単純な2つの課題がある。第1には一定の圧力勾配を作り出すことであり、第2には意図した流量を維持するために、正確な抵抗を維持することである。
【0009】
現在のところ、抵抗は一般に、チューブとニードルセットを通した注入によって制御されている。チューブとニードルセット、およびコネクターはすべて、直径と長さの異なるチューブエレメントであるという単純化した見方で理解することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
チューブ流路の抵抗は、長さ、システム内を移動する流体の粘度をチューブの半径で割った値で決まる。この関係は次式で表される。
R=8Lη/πr^4
抵抗の圧倒的な決定要因は半径であることに注意する。
【0011】
一般的な点滴チューブのような標準的医療用チューブの内径、より詳細には内半径「r」は、通常の実用的な使用において無制限の流量を効果的に与えられるような大きなサイズである。より具体的には、ポアズイユの法則に基づき、このようなチューブの長さおよび内部半径は、標準的なチューブまたはIVチューブが、特に最大投与流量と比べて、実質的な流量の減少をもたらさないような大きさである。このような一般的なチューブは、10メートルまたは100メートルの長さで提供される場合には確かに流量を支配するかもしれないが、このような長さは通常の使用で実用的ではない。
【0012】
従って、輸液システム、最も具体的には可変流量/定圧ポンプシステムは、非常に特殊でかつ常に維持される内径、より具体的には内半径「r」を持つように特別に製造された流量制御チューブを使う。
【0013】
上の式から理解されるように、抵抗の圧倒的な決定要因は半径「r」である。言い換えれば、流量制御チューブの製造時に半径にばらつきがあると、製品に大きなばらつきが生じることになる。これは問題である。なぜなら、流量制御チューブは可撓性のためプラスチックを使う必要があるが、プラスチックは、製造のための高い公差を実現するのに多大なコストをかけなければ、一貫した内径の形成の制御が難しいからである。
【0014】
また、このようなチューブは、既知の圧力に対して既知の流量を一貫して供給するために、慎重に検査し、再校正のために再加工する可能性があり、特定の長さを非常に慎重に特定しなければならない。
【0015】
このような条件を満たすにはコストがかかる上、単純な誤りや不一致ですら、チューブのバッチを不良品にしてしまう可能性がある。さらに、内径が高い精度で一定している場合であっても、長さを不用意に変更すると、所与の圧力に対して所望の流量が増減するという意図しない結果を招くことがある。
【0016】
従って、上記の課題の1つ以上を克服できる方法およびシステムが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示は、新規な設定可能な流量制御器、キットおよび使用方法を与えることにより、従来技術の問題を解決する。
【0018】
1つの例に過ぎないが、本開示の一態様として、リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器が与えられる。この流量制御器は、前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えたモジュラーハウジングと、前記モジュラーハウジング内の前記入口ポートと前記出口ポートとの間に配置され、1つ以上の固定ジオメトリパッシブ逆止弁を含む複数の流路セグメントによって定義される設定可能な流路と、を備える。前記流路セグメントの各々は、所定の流れ抵抗を有する。前記流路セグメントの選択されたサブセットは、前記出口ポートから流出する液体の所定の流量を提供する。
【0019】
本開示の別の態様もまた、リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器である。この流量制御器は、前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えたモジュラーハウジングと、1つ以上の第1の流量調節器および1つ以上の第2の流量調節器によって提供される設定可能な流路と、を備える。前記第1の流量調節器および第2の流量調節器の各々は、選択可能な流路セグメントを提供する。前記選択可能な流路セグメントは、1つ以上の固定ジオメトリパッシブ逆止弁と、1つ以上の貫通穴と、を備える。前記流路セグメントの各々は、所定の流れ抵抗を有する。前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して整列することにより、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントが提供される。前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供される。
【0020】
本開示のさらに別の態様もまた、リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器である。この流量制御器は、前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えた分割式ハウジングと、前記分割式ハウジング内に配置された第1の流量調節器および第2の流量調節器と、を備える。前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供する。前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁である。前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して選択的に整列することにより、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントが提供される。前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供される。
【0021】
本開示のさらに別の態様は、リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器を製造するためのキットである。このキットは、前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えた分割式ハウジングと、前記分割式ハウジング内に配置された第1の流量調節器および第2の流量調節器と、を備える。前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供する。前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁である。前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して整列することにより、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントが提供される。前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供される。
【0022】
本開示のさらに別の態様は、リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器を使用する方法である。この方法は、前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えたモジュラーハウジングを与えるステップと、前記分割式ハウジング内に配置された第1の流量調節器および第2の流量調節器とを与えるステップと、前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して選択的に整列させることにより、前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供するために、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントを提供するステップと、前記入口ポートから前記リザーバまでのチューブラインを形成するステップと、 前記患者に液体を投与するために、前記出口ポートから針セットまでのチューブラインを形成するステップと、を含む。前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供する。前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】ある実施の形態に係る可能な流量コントローラの側面図解図である
【0024】
【
図1B】
図1Aに示される設定可能な流量制御器の正面透視図である。
【0025】
【
図1C】
図1Bに示される設定可能な流量制御器の分解透視図である。
【0026】
【
図1D】
図1Cに示される設定可能な流量制御器の正面平面図であり、選択可能な流路セグメントを固定ジオメトリパッシブ逆止弁流路セグメントおよび貫通穴として示す図である。
【0027】
【
図2】実施の形態において、
図1A~1Cに示される設定可能な流量制御器によって許容される6つの異なる設定可能な流路オプションの説明図である。
【0028】
【
図3A】実施の形態に係る2つの設定可能な流量制御器によって与えられる第1の流路構成の拡大図である。
【0029】
【
図3B】実施の形態に係る2つの設定可能な流量制御器によって与えられる第2の流路構成の拡大図である。
【0030】
【
図3C】実施の形態に係る2つの設定可能な流量制御器によって与えられる第3の流路構成の拡大図である。
【0031】
【
図3D】実施の形態に係る2つの設定可能な流量制御器によって与えられる第4の流路構成の拡大図である。
【0032】
【
図3E】実施の形態に係る2つの設定可能な流量制御器によって与えられる第5の流路構成の拡大図である。
【0033】
【
図3F】実施の形態に係る2つの設定可能な流量制御器によって与えられる第6の流路構成の拡大図である。
【0034】
【
図4】
図3Aに示される流路構成に設定された流量制御器の透視分解図である。
【0035】
【
図5】
図3Cに示される流路構成に設定された流量制御器の透視分解図である。
【0036】
【
図6】
図3Eに示される流路構成に設定された流量制御器の透視分解図である。
【0037】
【
図7】
図3Eおよび
図6に示される流路構成に設定された流量制御器の透視正面図である。
【0038】
【
図8】実施の形態に係る6つの流量制御器を組み込んだ代替的な設定可能な流量制御器の透視分解図である。
【0039】
【
図9】実施の形態に係る設定可能な流量制御器を与えるキットの概念図である。
【0040】
【
図10】実施の形態に係る設定可能な流量制御器を組み込んだ注入システムの概念図である。
【0041】
【
図11】実施の形態に係る流量制御器を製造する方法の高レベルフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明に進む前に、本開示は例示であり限定ではないことに留意する。本明細書のアイデアは、証明書、より具体的にはネットワークアクセス用の証明書を与えるための特定のシステムまたは方法に使われるものではない。従って、本明細書における装置は、説明の便宜上、例示的な実施の形態を用いて説明されるが、その原理は他のタイプの可変流量注入システムおよび方法にも同様に適用される。
【0043】
以下、図面を参照して本開示の好ましい実施の形態に関して説明する。これらの図面における同様の番号は、同一または類似の要素を表す。さらに同一または類似の要素の番号付けに関し、先頭の値は、要素が最初に識別され記載される図で使われる。例えば、要素100は
図1に登場する。
【0044】
図1A~
図1Cを参照する。これらは、ある実施の形態に係る設定可能な流量制御器(以下、「CFC100」と表す)を、側面図(
図1A)および正面透視図(
図1B)で示す。CFC100は、初期流出速度を有するリザーバから患者に液体を投与する輸液システムに関し、流量制御のための有用な構成要素と理解される。
【0045】
説明を容易にするため、
図1に示されるように、CFC100の向きは、互いに直交する3つの座標軸を有する座標系を基本とする。各座標軸は、CFC100の中心で定義された原点で互いに交差する。しかし明瞭化および簡単化のために、各図の座標軸は実際の位置からオフセットされている。
【0046】
説明を容易にするため、
図1Cに、
図1Aおよび1BのCFC100を透視分解図で示す。CFC100は、迅速かつ容易に組み立て可能なモジュール式装置(以下、「モジュラー装置」ともいう)である。
図1A~1Cに示されるように、ある実施の形態では、CFC100は、分割されたハウジング(以下、「分割式ハウジング」という)またはモジュール化されたハウジング(以下、「モジュラーハウジング」という)102と、その中に配置される1つ以上の流量調節器104(例えば、第1の流量調節器104Aおよび第2の流量調節器104B)と、を備える。流量調節器104の各々は、2つ以上の選択可能な流路セグメント106を含む。選択可能な流路セグメント106の各々は、流れに対する所定の抵抗を有するか、内部を通る液体の流れに所定の抵抗を生むような特定の形状の構成および配置を有する。
【0047】
ハウジング102は、入口ポート108と、出口ポート110と、を備える。ある実施の形態のハウジング102は、入口ポート108を備えた第1の端部構成要素112と、出口ポート110を備えた第2の端部構成要素114と、中間部構成要素116と、を備える。
【0048】
ある実施の形態では、第1の端部構成要素112と、第2の端部構成要素114とは実質的に同一であってもよい。この場合、製造された1つの部品が、第1の端部構成要素112または第2の端部構成要素114のいずれかとして機能できるように、交換可能であってもよい。あるいは、モジュラーハウジング102を固定するための係合具の態様は様々であるため、第1の端部構成要素112および第2の端部構成要素114は、CFC100がどのように組み立てられるかに関わらず、交換可能であってよい。しかし、異なる係合具/取付具/締結具(例えば、限定されないがスナップ結合締結具など)を実装可能なモジュラーハウジング102を形成できるように、各構成要素が若干異なっていてもよい。
【0049】
図1Cから読み取れるように、第1の端部構成要素112、第2の端部構成要素114および中間部構成要素116は、流量調節器104を、特定の選択された整列状態を受容し、これを保持する。より具体的には、ある実施の形態では、モジュラーハウジング102の構成部品は、入口ポート108と出口ポート110との間でCFC100を通る設定可能な流路124を定義するように整列された流量調節器104を受容および/または保持するよう、特別に寸法決めされた空洞領域118を有する。
【0050】
また、ある実施の形態では、モジュラーハウジング102はスナップ結合ハウジングである。より具体的には、図示されるように、第1の端部構成要素112、第2の端部構成要素114および中間部構成要素116は、十分な力で押し付けられると、漏れ防止アセンブリで構成部品を互いにしっかりと結合するためのラッチペグ120および受け穴122を有する。
【0051】
ある1つの実施の形態では、第1の端部構成要素112と中間部構成要素116の合わせ面において、約60°間隔で、3つ以上のラッチペグ120と、3つ以上の受け穴122とが存在する。第2の端部構成要素114は第1の端部構成要素112と実質的に同一であってもよいので、ある実施の形態では、中間部構成要素は、2つの形態で与えられてもよい。1つは、両方の対向面に受け穴122を有するものである。もう1つは、一方の嵌合面にラッチペグ120を有し、他方の嵌合面に受け穴122を有するものである。あるいは、第2の端部構成要素114は、ラッチペグ120が受け穴122に置き換えられていることを除いて、第1の端部構成要素と本質的に同じであってもよい。
【0052】
組み立てに必要な力は、平均的な成人の力、例えば35ポンドの圧縮力であってよいが、これに限定されない。さらに、埋め込みがモジュラーハウジング102は使用後に分解されない、1回限り使用の装置であってもよい。
【0053】
CFC100の各構成要素、具体的には、第1の端部構成要素112、第2の端部構成要素114、流量調節器104および中間部構成要素116は、ユーザが、接着剤、クランプその他の組立工具を使わずに組み立てられるように、1つ以上の無菌パッケージのキットとして提供されてもよい。さらに、CFC100のある実施の形態は、臨床的または非臨床的な環境下で、一般人が容易に組み立て可能なものである。
【0054】
図1A~1Cでは、2つの流量調節器104が示される。しかし、ハウジング102のモジュール設計によっては、第1の端部構成要素112および第2の端部構成要素114が1つの流量調節器104を取り囲み、中間部構成要素116が省略されてもよい。本明細書では、異なる流量が許容される有利な構成オプションがよりよく理解できるように、2つの流量調節器104を使って説明する。
【0055】
さらに、内部に2、3、4、…個ないしn個の流量調節器104が配置されたCFC100を実現するために、追加的な中間部構成要素116および入れ子式流量調節器104が備えられてもよい。
【0056】
設定可能な流路124は、所定の圧力に対して所定の流量を提供できるように、CFC100を迅速かつ容易に設定することができる。さらに、従来の流量制御チューブでは、流量制御チューブが特定の長さにわたって正確かつ一定に維持される内径を持つことが前提であるのと対照的に、CFC100では、CFC100内の流路124の形状を変更するだけで、低コストで正確かつ設定可能な流れ抵抗を実現できる。
【0057】
より具体的には、本開示では、例えばCFC100の抵抗は、流路の内径のみで決まるのではなく、流量調節器104で与えられる選択可能な流路セグメント106で実現される交差流路から生じる任意の乱流で決まる。
【0058】
さらに、長くて精密なチューブ(例えば、流量制御チューブ)を作成することに対する顕著な利点として、本開示のCFC100は、流量調節器104として機能するガスケット126のような平坦な要素に切断される流路セグメント106を使って、設定可能な流量制御が実現できるという点がある。実際、各流路セグメント106は、各流路セグメント106に関して予め定められた流れに対する抵抗を生じるように、特定の形状を有する。さらに後述するように、所定の流路セグメント106の特定の物理的形状が、そこを流れる流体に対する抵抗を発生する。この流れに対する抵抗が、所定の流路セグメント106に対して有利な所定の既知の流量、または流量に対する減少を生じさせる。異なる流量調節器104の流路セグメント106を選択的に組み合わせることにより、設定可能な流路124を構成することができ、これにより全体的な流量を制御できる。
【0059】
実際、流れに対する所定の抵抗を有する流路セグメント106を使うことで、所望の予め選択された流量を提供するのに、CFC100の入口ポート108および出口ポート110を流量制御チューブにつなぐ必要がなくなる。
【0060】
図示されるように、ある実施の形態では、流量調節器104は円形である。しかし、正方形、三角形、五角形、六角形、星形(これらに限定されない)のような他の幾何学的断面形状が使われてもよい。適切な形状を選ぶことで、1つの流量調節器104の選択された流路セグメント106と、別の流量調節器104の選択された流路セグメント106との整列が容易になることもある。
【0061】
実質的に円形の流量調節器104を用いた実施の形態の場合、各流量調節器104は、流量調節器104が配置された第1の端部構成要素112、第2の端部構成要素114、および/または中間部構成要素(単数または複数)116の空洞領域118の内面に与えられる、互いに対応する隆起部またはペグ132を受容する1つ以上の溝またはソケット130など、1つ以上の整列器128を備えてもよい。
【0062】
流量調節器104および空洞領域118は、三角形、五角形、八角形(これらに限定されない)のような実質的に非円形の幾何学形状を有する場合、選択可能な流路セグメント106の所望の構成が確実かつ容易に実現できるように、アライナ(心合せ器)128を備えてもよい。
【0063】
図を参照して後述するように、設定可能な流路124は、入口ポート108と出口ポート110との間で、流量調節器によって与えられる選択可能な流路セグメント106を整列させることによって確立される。2つ以上の流量調節器104を組み込んだCFC100の場合、中間部構成要素116は、1つの流量調節器104から次の流量調節器104への流体が流れるように選択可能な流路セグメント106を整列させることができる貫通穴134をさらに備える。
【0064】
中間部構成要素116を横方向に貫通する1つ以上の通路(貫通穴134、貫通ポート、液体導管、パイプなどとも呼ばれる)は、各流量調節器104によって与えられる設定可能な流路セグメントとは明らかに異なるものである。
【0065】
ある実施の形態では、各流量調節器104は、2つ以上の異なる流路セグメント106を備える。
図1Dから分かるように、一方は、固定ジオメトリパッシブ逆止弁(本明細書では「FGPCV」と呼ぶ)136である。他方は、貫通穴138である。
【0066】
具体的には、FGPCV136は、流体が順方向(本明細書では、「第1の方向」または「通常方向」ともいう)に流れるとき、圧力および流量を減少させる乱流を引き起こす。逆に流体が逆方向(本明細書では、「第2の方向」または「反対方向」ともいう)に流れるとき、FGPCV136は、乱流を引き起こさない。ある実施の形態では、FGPCV136は、弁式導管としても知られるテスラ弁である。
【0067】
ある実施の形態では、FGPCV136は、2つ以上の流体導管、例えば流体導管140および流体導管142を備える。これらの流体導管は、ある方向に流れる流体は乱流を経るが、それと逆の方向に流れる流体は乱流を経ないように、流路セグメント106への2つのアクセスポート144と146との間に構成され配置される。
【0068】
図1Dに示されるように、流体導管140は、ポート144からポート146まで本質的に直線流路である。一方、流体導管142は、ポート144がFGPCV136の入口ポートとして選ばれたとき、流体導管142を流れる流体が流体導管140を逆方向に流れる流体と衝突するように、ポート144に向かって折り返す。このような構成では、ポート146がFGPCV136の出口となる。本開示では、これはFGPCV136の順方向である。
【0069】
この向きが逆転する(すなわち、ポート146が入口ポートとなり、ポート144が出口ポートとなる)と、FGPCV136内の流れの向きも逆転する。この場合、流体導管142内には実質的に流れが存在しない。あるいは流体導管142内に若干の流れがあったとしても、それは順方向の場合とは異なり、流体導管140内の流れとの衝突により十分な乱流を生じさせない程度のものである。
【0070】
流体導管140および142を有するFGPCV136は、実施の形態の一例に過ぎない。実際、代替的または追加的に、複数の流体導管を持つ他の構成、または、バッフル、バケット、カップ、拡大、突起などを有する単一の流体導管を持つ構成が使われてもよい。これらの構成は、本明細書で使われる固定ジオメトリパッシブ逆止弁の技術思想の範囲内にある。すなわちこれらの構成は、CFC100が持つ利点である、ある方向には大きな抵抗を付与し、反対方向には小さな抵抗を付与する(または全く付与しない)という設定可能性を備える点で共通する。
【0071】
言い換えれば、FGPCV136は、一方向の流れ(逆方向に流れ、その後順方向の流れと衝突するようなもの)に関して、より高い圧力低下を有する。この流動抵抗の差により、正味の流量が得られる。この効率は、方向抵抗の比であるダイオード特性Diで表されることが多い。
【0072】
流動抵抗は、結果として生じる流量に対する印加圧力損失の比として定義される。これは電気抵抗に関するオームの法則に似ている。FGPCVは、ダイオードの挙動(本質的に電流の一方向スイッチとして機能する電気半導体デバイス)に対比することで理解できる。これは、以下の式でさらによく理解できる。
【0073】
R=Δp/Q
ここで、Δpは導管の両端間における圧力差であり、Qは流量である。
【0074】
ダイオード特性は以下で表される。
Di=Rr/Rf
Di>1ならば、導管はダイオード的挙動を有する。
【0075】
より簡単には、流量調節器104の例示的な実施の形態は、2つの選択可能な流路セグメント106と理解できる。1つは貫通穴138である。これは、流れに対して実質的に抵抗を与えない(0%)。もう1つはFGPCV136である。これは、流体が乱流を経ない(すなわち、流体が流体導管140を通ってポート146からポート144に流れる)ときの流量に対する抵抗が2%であり、流体が乱流を経る(すなわち、流体が流体導管140および142を通ってポート144から146に流れる)ときの流量に対する抵抗が10%である。流量に関するこれらの減少値は、議論を容易にするための単なる例示であり、限定ではない。各選択可能な流路セグメント106によって課される流量に対する抵抗は、本質的に累積的である。従って、所望の全体流路を確立するために、流量調節器104を選択的に整列させることによって、CFC100の様々な異なる所定の全体流量を制御できる。流量に対する抵抗は、流路セグメント106の1つの段階から次の段階までは本質的に同じである。流路セグメント106の第1段階を通る実際の流量は、同じ流路セグメント106の第2段階を通る実際の流量とは本質的に異なる場合がある。
【0076】
上記の概要に関し、CFC100のある実施の形態は、入口ポート108(これは、リザーバからの第1のチューブラインに接続する)および出口ポート110(これは、患者への第2のチューブラインに接続する)と、ユーザ設定可能な流路124と、を備えたモジュラーハウジング102であってもよい。ユーザ設定可能な流路124は、入口ポート108と出口ポート110との間で、モジュラーハウジング102内に配置され、1つ以上の固定ジオメトリパッシブ逆止弁136を含む複数の選択的流路セグメント106によって定義される。選択的流路セグメント106の各々は、流れに対する所定の抵抗を有する。選択的流路セグメント106の選択されたサブセットが、出口ポート110から流れる液体の、選択された所定の流量を提供する。
【0077】
古典的な実装では、テスラ弁で代表されるFGPCV流路は、一方向(第1の方向)に非常に大きな流れ抵抗を有し、反対の第2の方向に実質的な流れ抵抗を有さない。これに対しCFC100のある実施の形態では、FGPCV136は、所定の圧力に対し、いずれかの方向への所定の流量制限、すなわち、ポート144からポート146への第1の方向への第1の流量制限、およびポート146からポート144への第2の方向への第2の流量制限を与える。第1の流量制限は、第2の流量制限よりも大きい。
【0078】
ある実施の形態では、流量調節器104はまた、選択可能な流路セグメント106として貫通穴138を有する。この場合、FGPCV136とは対照的に、流体は流量調節器104を素通りして移動できるので、貫通穴138は本質的に流量制限を与えない。流路のほぼすべての要素は、全体的な流量に何らかの影響を与えることができ、また実際与えることが多い。しかし流量制御チューブと比較した場合、従来の医療用チューブと同様、貫通穴138による流量制限は、CFC100の性能に関しては実質的に無視できる。
【0079】
さらに別の実施の形態では、選択可能な流路セグメント106としての貫通穴138は、特定の輸液療法に使われる所与の薬剤の最大流速か、またはそれをわずかに下回る流速を与える。
【0080】
CFC100のある実施の形態では、流量調節器104の各々は、3つ以上の異なる設定可能な流量を提供する。本明細書で説明するCFC100の実施の形態は、1個ないしn個の流量調節器104を用いる。この場合、3n個の可能な流量構成が考えられる。しかし、2つの異なる構成が、同じ流量を提供する場合もある。これは、一方の構成が他の構成と本質的に同じである場合である。
【0081】
特にテスラ弁に代表されるように、ある流量調節器104では、FGPCV136は単一の段階のみを有する。しかし、別の実施の形態では、複数のこうした固定ジオメトリパッシブ逆止弁流路セグメント136を、流量調節器104の各々に設けることもできる。
図1C、1Aおよび1Bに示されるように、複数のFGPCV136を直列に配置することの利点は、複数の流量調節器104の整列を選択的に構成できる点にある。
【0082】
図1Aおよび
図1Cに示されるように、2つの流量調節器104(例えば、104Aおよび104B)の場合、9つの異なる流路構成が存在する。このうち3つは実質的に同じなので、実際には6つの異なる流量構成が残る。
図2は、上述した2つの流量調節器104を用いて構成される、6つの異なる設定可能な流路オプションの高レベルの概要を示す。流量調節器104の各々は、2つの向きを有する貫通穴(「TH」)のセグメントと、固定ジオメトリパッシブ逆止弁(「FGPCV」)のセグメントと、を有する。このとき、逆方向の流れの方が、順方向の流れより高速である。
【0083】
より具体的には、
図2はこれら6つの異なる構成を並べて示し、
図3A~3Fはこれらの構成を拡大して示す。さらに明確に区別するために、
図2では、選択された流路セグメント106を太線で示す。
【0084】
図2の各オプションは、以下の通りである。
オプション200は、アラインメント構成1:TH+TH=最速の流れを示す。
オプション202は、アラインメント構成2:FGPCV(逆方向)+TH=2番目に速い流れを示す。
オプション204は、アラインメント構成3:FGPCV(順方向)+TH=3番目に速い流れを示す。
オプション206は、アラインメント構成4:FGPCV(逆方向)+FGPCV(逆方向)=4番目に速い流れを示す:
オプション208は、アラインメント構成5:FGPCV(順方向)+FGPCV(逆方向)=5番目に速い流れを示す。
オプション210は、アラインメント構成6:FGPCV(順方向)+FGPCV(順方向)=6番目に速い流れを示す。
各構成200~210では、構成された流路124が一連の矢印212で示される。
【0085】
図3A~3Fは、これらの整列構成オプションをさらに説明する図である。縮尺は、図示および説明を容易にするために調節されており、選択可能な流路セグメント106のサイズおよび縮尺の限定を示唆も暗示もしない。
【0086】
図2と同様に、
図3A~3Fは、
図3Aに示される最も速い設定可能流量から、
図3Fに示される最も遅い設定可能流量まで減少する流量を示す。入口ポート108と出口ポート110(これらは、図示されない)との間に配置された設定可能な流路124を実現する整列配置をより明確に示すために、
図3A~3Fは、基本的にFC100の第1の端部構成要素112や第2の端部構成要素114を欠いた第1の流量調節器104Aおよび第2の流量調節器104Bを。平面図で示す。
図3A~3Fでは、左側の第1の流量調節器104Aおよび右側の第2の流量調節器104Bに関する要素を示すために、それぞれ「A」および「B」の接尾辞を各要素番号に付す。さらにCFC100に流入する元の流量は、
図3Aから
図3Fを通して流量300で共通する。
【0087】
より具体的には、
図3Aに示されるように、第1の流量調節器104Aは、矢印で示される初期流量300の流入流体を受け取るために、選択可能な流路セグメント106Aとして貫通穴138Aを提示する。同様に第2の流量調節器104Bは、破線の矢印で示される流量調節器104Aから出る流入流体を受け取るために、選択可能な流路セグメント106Bとして貫通穴138Bを提示する。流出流体は、出口ポート110(
図1Aおよび
図1Bに示される)を通ってCFC100の外に流出する。このときの設定可能な流路124は、貫通穴138Aから貫通穴138Bに設定されているため、最も速い流れ、すなわち最も制限の少ない流れを生む。従ってこのときの流出流量は、流量300で示される元の流入流量と実質的に同じである。
【0088】
図3Bでは、左図に示されるように、第1の流量調節器104Aは、FGPCV136Aのポート144Aを第2の流量調節器104Bの貫通穴138Bに整合させるように回転されている。このとき、矢印で示される初期流量300の流入流体は、第1の流量調節器104Aのポート146Aで受け取られた後、小さな矢印で示すように流体導管140Aをたどってポート144Aに至る。その後流体は、流量302を表す矢印に従い、第1の流量調節器104Aから第2の流量調節器104Bに入る。このとき流体の流量は、導管140Aを通る通路によって減少している。これは、FGPCV136Aが第2の向き(すなわち逆向き)であるため、導管142Aを通る流れがない(あったとしても、ほとんどない)ことによる。このことは、小さな矢印320がないことによって示される。
【0089】
図3Bの右図に示されるように、第2の流量調節器104Bは、流量302の流体を貫通穴138Bで受け入れる向きに配置されている。流体は、出口ポート110(
図1Aおよび
図1Bに示される)を通ってCFC100の外に流出する。この設定可能な流路124は、導管140Aから貫通穴138Bに設定されているため、2番目に速い流れ、すなわち2番目に制限の少ない流れを生む。このときの流出流量は、基本的に流体導管140Aによって付与される流量であり、流量302で示される。
【0090】
図3Cでは、左図に示されるように、第1の流量調節器104Aは、FGPCV136Aのポート146Aを第2の流量調節器104Bの貫通穴138Bに整合させるように回転されている。このとき、矢印で示される初期流量300の流入流体は、流量調節器104Aのポート144Aによって受け取られた後、意図された乱流322を経て、小さな矢印320で示されるように両方の流体導管140Aおよび142Aをたどってポート146Aに至る。その後流体は、流量304を表す矢印に従い、第2の流量調節器104Bに入る。このとき流体の流量は、流体導管140Aおよび流体導管142Aの両方を通過することによる乱流によって減少している。
【0091】
図3Cの右図に示されるように、第2の流量調節器104Bは、流量306の流体を貫通穴138Bで受け入れる向きに配置されている。流体は、出口ポート110(
図1Aおよび
図1Bに示される)を通してCFC100の外に流出する。この設定可能な流路124は、貫通穴138Bへの流体導管140Aおよび142A(意図された乱流を経る)に設定されているため、3番目に速い流れ、すなわち3番目に制限の少ない流れを生む。このときの流出流量は、基本的に、両方の流体導管140Aおよび142Aならびにそれらの結果として生じる乱流を有するFGPCV136Aによって付与される流量であり、流量304で示される。
【0092】
図3Dでは、左図に示されるように、第1の流量調節器104Aは、FGPCV136Aのポート144Aを第2の流量調節器104BのFGPCV136Bのポート146Bと整列させるように回転されている。このとき、矢印で示される初期流量300の流入流体は、第1の流量調節器104Aのポート146Aによって受け取られた後、小さな矢印320で示されるように流体導管140Aをたどってポート144Aに至る。流体は、そこから第1の流量調節器104Aを出て、流量302を表す矢印に従い、第2の流量調節器104Bに入る。
【0093】
図3Dの右図に示されるように、第2の流量調節器104Bは、減少した流量302の流体をポート146Bで受け入れる向きに配置されている。次に流体は、小さな矢印320で示されるように、さらに減少した流量306で、第2の流量調節器104Bのポート144Bまで流体導管140Bをたどる。この設定可能な流路124は、導管140Aから導管140Bに設定されているため、4番目に最も速い流れ、すなわち4番目に制限の少ない流れを生む。このときの流出流量は、流体導管140Aおよび140Bによって付与される流量であり、流量306で示される
【0094】
図3Eの左図では、第1の流量調節器104Aは、FGPCV136Aのポート146Aを第2の流量調節器104BのFGPCV136Bのポート146Bと整合させるように回転されている。このとき、矢印で示される初期流量300の流入流体は、第1の流量調節器104Aのポート144Aによって受け取られた後、小さな矢印320で示されるように、流体導管140Aおよび142Aをたどって、意図された乱流322を経た後、ポート146Aに至る。流体は、流量304を表す矢印に従い、第1の流量調節器104Aから第2の流量調節器104Bに入る。このときの流出流量は、流体導管140Aおよび流体導管142Aの両方を通過することによる乱流によって減少している。
【0095】
図3Eの右図に示されるように、第2の流量調節器104Bは、減少した流量304の流体をポート146Bで受け入れる向きに配置されている。次に流体は、小さな矢印320で示されるように、流体導管140Bをたどって、さらに減少した流量308で、第2の流量調節器104Bのポート144Bに至る。この設定可能な流路124は、(意図された乱流を経る)流体導管140Aおよび142Aから導管140Bに設定されているため、5番目に速い流れ、すなわち5番目に制限されない流れを生む。このときの流出流量は、流体導管140Aおよび142Aの両方と、それらの結果として生じる乱流と、導管140Bとによって付与される流量であり、流量308で示される。
【0096】
図3Fの左図では、第1の流量調節器104Aは、FGPCV136Aのポート146Aを第2の流量調節器104BのFGPCV146Bのポート144Bと整列させるように回転されている。このとき、矢印で示される初期流量300の流入流体は、第1の流量調節器104Aのポート144Aによって受け取られた後、意図された乱流322を経ながら、小さな矢印320で示されるように、流体導管140Aおよび142Aをたどってポート146Aに至る。流体は、流量304を表す矢印に従い、第1の流量調節器104Aから第2の流量調節器104Bに入る。このときの流出流量は、流体導管140Aおよび流体導管142Aの両方を通過することによる乱流によって減少している。
【0097】
図3Fの右図に示されるように、第2の流量調節器104Bは、低減した流量304の流体をポート144Bで受け入れる向きに配置されている。次に流体は、小さな矢印320で示されるように、意図された乱流322を経て、両方の流体導管140Bおよび142Bをたどって、さらに低減された流量310で、第2の流量調節器104Bのポート146Bに到達する向きに配置されている。
【0098】
この設定可能な流路124は、流体導管140Aおよび142A(意図された乱流を経る)から流体導管140Bおよび142B(意図された乱流を経る)に設定されているため、6番目に速い流れ、すなわち最も制限された流れを生む。このときの流出流量は、流体導管140Aおよび142Aの両方およびそれらの結果として生じる乱流を有するFGPCV136Aによって付与される流量、さらに流体導管140Bおよび142Bの両方およびそれらの結果として生じる乱流を有するFGPCV136Bによって付与される流量であり、流量310で示される。
【0099】
さらに上記の説明および図に関し、ある実施の形態では、CFC100は、モジュラーハウジング102と、設定可能な流路124と、を備える。ここでモジュラーハウジング102は、リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポート108と、患者への第2のチューブラインに接続する出口ポート110と、を備える。設定可能な流路124は、第1の流量調節器104と第2の流量調節器104によって提供される。流量調節器104の各々は、1つ以上の固定ジオメトリパッシブ逆止弁と、1つ以上の貫通穴を含む選択可能な流路セグメント106と、を与える。各流路セグメントは、流れに対して所定の抵抗を有する。第1の流量調節器104Aと第2の流量調節器104Bの選択可能な整列は、入口ポート108と出口ポート110との間の2つ以上の流路セグメント106を整列させ、出口ポート110から通過する液体に対して選択された既知の流量を提供する。
【0100】
図2に示され、
図3Aから
図3Fにより詳細に示される設定可能な流路124の構成をさらに理解するために、
図4を参照して説明する。
図4は、オプション200におけるCFC100の分解透視図であり、具体的には、ハウジング102の入口ポート108と出口ポート110との間における、流量調節器104Aの貫通穴TH138Aから流量調節器104Bの貫通穴TH138Bに至る流路を示す。
【0101】
同様に
図5は、オプション204におけるCFC100の分解透視図であり、具体的には、ハウジング102の入口ポート108と出口ポート110との間における、流量調節器104AのFGPCV136A(順方向)から流量調節器104Bの貫通穴TH138Bに至る流路を示す。
【0102】
さらに
図6は、オプション208におけるCFC100の分解透視図であり、具体的には、ハウジング102の入口ポート108と出口ポート110との間における、流量調節器104AのFGPCV136A(順方向)から流量調節器104BのFGPCV136A(逆方向)に至る流路を示す。
【0103】
CFC100の実際の構造をさらに理解するために、
図7は、
図6に示したオプション208でのCFC100の内部構成要素を点線で示した透視図である。
図7では、CFC100内の存在を強調するために、FGPCV136AおよびFGPCV136Bを太い破線で示す。設定可能流路124は、FGPCV136Aでは両方の流体導管を通過するが、FGPCV136Bでは直線導管のみを通過するように、太い破線で示されている。
【0104】
図8は、CFC100’のさらに別の実施の形態を示す。この場合、流量調節器104が6つ(例えば、流量調節器104A、104B、104C、104D、104Eおよび104F)存在する。図を簡単化するため、各流量調節器104A、104B、104C、104Dおよび104Eは、隣接する中間部構成部品116A、116B、116C、116Dおよび116Eの空洞領域内に配置された状態で示す。流量調節器104Fは、第2の端部構成要素114の空洞領域内に配置された状態で示す。CFC100を通って実現された設定可能な流路124も示されている。
【0105】
医療環境の内外を問わず、ユーザが簡単に組み立て可能という上述の概念を拡張するために、ある代替的な実施の形態では、CFC100は、輸液療法のための所定の圧力レートに対して選択された流量を提供するための、ユーザ/操作者によって選択的に組み立て可能なキットとして提供される。
図9は、このようなキット900の実施の形態を概念的に示す。
【0106】
図9に示されるように、ある実施の形態のキット900は、1つの第1の端部構成要素112と、1つの第2の端部構成要素114と、複数の中間部構成要素116と、複数の流量調節器104と、を含む。
【0107】
前述の図に例示された様々な構成に関して、流量調節器104Aおよび流量調節器104Bは実質的に同一であると考えてよい。このような実施の形態は、例えば、複数の流量調節器104が同じテンプレートから作製されてもよい。また、すべてが実質的に同一であるため別個のラベリングが不要などといった、製造の簡略化のために望ましい特徴がある。
【0108】
しかし別の実施の形態のCFC100は、実質的に同一でない2つ以上の流量調節器104が組み込まれていてもよい。実際、ある実施の形態では、順方向および逆方向のいずれかまたは両方においてFGPCV136とは異なる流量を提供するFGPCVが内部に設けられた代替的な流量調節器を与えてもよい。例えばキット900は、1つ以上の選択可能な流路セグメント106がFGPCV136とは異なる固定ジオメトリで与えられる、代替的なFGPCV902を備えた代替的な流量調節器104’を含んでもよい。代替的なFGPCV902は、一方向の流れに対する抵抗の問題を強調するが、他方向の流れに対する抵抗の問題を強調しないように、バッフル、バケット、カップ、拡大、突起など(図示と説明を簡単にするため、図示しない)が組み込まれてもよい。もちろん、ある代替的な流量調節器104’は、FGPCV902のような単なる代替的なテスラ弁(例えば、より大型の、またはより小型の、あるいは前述のFGPCV136が実現するものとは異なる流動抵抗を与えるテスラ弁)を与えてもよい。
【0109】
このようなキット900は、リザーバから患者への液体投与のための、所定の圧力レートに対して選択された流量を提供するためのCFC100のためのキットである。このキットは、入口ポート108および出口ポート110を備えたセグメント化されたハウジング102と、分割式ハウジング102内にユーザによって配置される複数の流量調節器104と、を備える。入口ポート108は、リザーバからの第1のチューブラインに接続する。出口ポート110は、患者への第2のチューブラインに接続する。流量調節器104の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメント106を提供する。1つ以上の選択可能な流路セグメント106は、固定ジオメトリパッシブ逆止弁136である。第1の流量調節器104と第2の流量調節器104とのユーザによる選択可能な整列が、入口ポート108と出口ポート110との間で、2つ以上の流路セグメント106を設定可能な流路124として整列させ、出口ポート110から流出する液体に対して選択された所定の流量を提供する。
【0110】
図10は、上記の導入部および輸液システムに設定可能な流量を適応的に提供するために使われるCFC100を備えたシステム1000を概念的に示す。
【0111】
より具体的には、
図10には、
図1A~1Dを参照して説明したCFC100が示されている。
図1A~1DのCFC100は、液体1006のリザーバ1004と患者1008との間のチューブシステム1002内に配置された形で示されている。チューブシステム1002は、通常の医療用チューブで構成でき、リザーバ1004への接続を容易にするルアー1010や、輸液療法を受ける患者1008に配置される針セット1012などの様々なコネクタが取り付けられている。
【0112】
1つ以上の実施の形態では、CFC100の設定可能な流路124(
図1A~1Dに示される)の貫通穴138のセグメントは、液体1006の流量を最大規定流量に制限するように予め設定されてもよい。そのように構成されることにより、CFC100が推奨流量を超える流量を許容しないという保証が与えられる。さらに他の実施の形態では、CFC100の設定可能な流路124の貫通穴138セグメント106は、CFC100内の1つ以上のFGPCV136(
図1A~1Dに示される)の配置によって適切な流量が実現されるように、極端な流れの制限を与えない真の貫通穴である。
【0113】
図示されるように、リザーバ1004は、ポンプ1014内に配置される注射器によって与えられる。ある実施の形態では、ポンプ1014は、ニューヨーク州チェスターのRMS Medical Products、DBA Koru Medical Systems(登録商標)によって提供されるFreedom60(登録商標)シリンジ注入ポンプなどの定圧ポンプ1014である。定圧ポンプ1014のような定圧システムは、CFC100と組み合わせた場合、患者1008への液体1006の意図しないおよび/または安全でない投与速度を防止する上で非常に有用である。
【0114】
定流量システムでは、あらゆる流量制限に応答して(そのような制限が患者の組織内の圧力の蓄積であろうと、投与システムの要素であろうと)圧力が上昇する。その結果、液体が安全でない圧力で投与される可能性がある。その結果、患者は、静脈虚脱、アナフィラキシー、過量投与、ヒスタミン反応、罹患、死亡を含むがこれらに限定されない様々な症状に苦しむおそれがある。
【0115】
これとは対照的に、定圧ポンプ1014のような定圧レートシステムでは、チューブにつまみがある場合や、輸液システムに閉塞がある場合や、患者の体内に閉塞がある場合(組織の飽和などによる)、流れに対する抵抗が生じる。これは、圧力ではなく流量に影響する。すなわち、流量は圧力が増加するにつれて減少する。定圧システムは、
図10に示す電気システム1016の理論モデルと比較できる。
【0116】
電気システム1016では、抵抗1018が増加すると、電流は即座にこれに比例して減少する。定圧注入システムはこれと同じ結果をもたらす。すなわち、流れに対する抵抗が増加すると、システムは直ちに流量を下げることによって調節を行う。従って、設計上、患者1008が液体1006の危機的に高い圧力にさらされることはない。
【0117】
さらにCFC100は、リザーバ1004からの液体1006の流量の上限を、予め定められた流量以下に設定できる。従ってCFC100の実施の形態は、定圧システムによる注入治療に適している。CFC100の実施の形態がFreedom60(登録商標)のような定圧ポンプ1014と組み合わされた場合、さらなる利点が得られる。
【0118】
以上、CFC100のいくつかの物理的な実施の形態について説明した。次に、CFC100を使用する方法1100に関する他の実施の形態を
図9を参照して説明する。方法1100は、本明細書で説明する順序で実行する必要はない。これはCFC100を使用する方法の一例に過ぎない。
【0119】
図11は、
図1~8に示されるCFC100を製造および/または使用するための少なくとも1つの方法1100を示す概念的な高レベルフローチャートである。一般に方法1100は、液体医薬品のリザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポート108と、患者への第2のチューブラインに接続する出口ポート110と、を有するモジュラーハウジング102を与えることから始まる(ブロック1102)。
【0120】
方法1100は、モジュラーハウジング内に配置される少なくとも2つ以上の流量調節器104を与えることによって続けられる(ブロック1104)。各流量調節器104は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供する。1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁136である。
【0121】
次にユーザは、第1の流量調節器104Aを第2の流量調節器104Bに選択的に整列させ、それらをモジュラーハウジング内に配置して、入口ポート108と出口ポート110との間の2つ以上の流路セグメント106を、出口ポート110から通過する液体に対して選択された所定の流量を提供するための設定可能な流路124として整列させ配置する(ブロック1106)。
【0122】
次に、ユーザまたは操作者は、入口ポート108から液体リザーバにチューブを接続する(ブロック1108)。その後、出口ポート110から患者に液体を供給するための針セットにチューブを接続する(ブロック1110)。
【0123】
リザーバから患者への薬液の流れを適切に調節するために、CFC100が今組み立てられて輸液システム内に配置された状態で、輸液治療を開始することができる(ブロック1112)。
【0124】
本明細書の範囲を逸脱することなく、上記の方法、システムおよび構造に変更を加えることができる。従って、上記の説明に含まれる事項および/または添付図面に示される事項は、例示的なものであり、限定的なものではない。実際、当業者には明らかなように、他の多くの実施の形態が実現可能である。以下の特許請求の範囲は、本明細書で論じた実施の形態によって限定されず、その条件および均等の原則によってのみ限定される。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器であって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えたモジュラーハウジングと、
前記モジュラーハウジング内の前記入口ポートと前記出口ポートとの間に配置され、1つ以上の固定ジオメトリパッシブ逆止弁を含む複数の流路セグメントによって定義される設定可能な流路と、
を備え、
前記流路セグメントの各々は、所定の流れ抵抗を有し、
前記流路セグメントの選択されたサブセットは、前記出口ポートから流出する液体の所定の流量を提供することを特徴とする流量制御器。
【請求項2】
前記設定可能な流路を提供する複数の流量調節器を備え、
前記流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供し、
前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁であることを特徴とする請求項1に記載の流量制御器。
【請求項3】
1つ以上の前記流量調節器が、選択可能な流路セグメントとして貫通穴を備えることを特徴とする請求項
2に記載の流量制御器。
【請求項4】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項
3に記載の流量制御器。
【請求項5】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器であって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えたモジュラーハウジングと、
1つ以上の第1の流量調節器および1つ以上の第2の流量調節器によって提供される設定可能な流路と、
を備え、
前記第1の流量調節器および第2の流量調節器の各々は、選択可能な流路セグメントを提供し、
前記選択可能な流路セグメントは、1つ以上の固定ジオメトリパッシブ逆止弁と、1つ以上の貫通穴と、を備え、
前記流路セグメントの各々は、所定の流れ抵抗を有し、
前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して整列することにより、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントが提供され、
前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供されることを特徴とする流量制御器。
【請求項6】
前記固定ジオメトリパッシブ逆止弁は、第1の方向に対する第1の流量と、第2の方向に対する第2の流量と、を有し、
前記第1の流量は、前記第2の流量とは異なることを特徴とする請求項
5に記載の流量制御器。
【請求項7】
前記第1の流量調節器と前記第2の流量調節器とは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項
5に記載の流量制御器。
【請求項8】
前記第1の流量調節器は、第1の流量を有する第1の固定ジオメトリパッシブ逆止弁を提供し、
前記第2の流量調節器は、前記第1の流量とは異なる第2の流量を有する第2の固定ジオメトリパッシブ逆止弁を提供することを特徴とする請求項
5に記載の流量制御器。
【請求項9】
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器は、内部に定義された選択可能な流路セグメントを有するガスケットであり、
前記ガスケットの各々は、1つ以上のアライナを有し、
前記アライナは、前記ガスケットの所定の整列を維持することを特徴とする請求項
5に記載の流量制御器。
【請求項10】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項
5に記載の流量制御器。
【請求項11】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器であって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えた分割式ハウジングと、
前記分割式ハウジング内に配置された第1の流量調節器および第2の流量調節器と、
を備え、
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供し、
前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁であり、
前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して選択的に整列することにより、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントが提供され、
前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供されることを特徴とする流量制御器。
【請求項12】
1つ以上の前記流量調節器が、選択可能な流路セグメントとして貫通穴を備えることを特徴とする請求項
11に記載の流量制御器。
【請求項13】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項
13に記載の流量制御器。
【請求項14】
前記第1の流量調節器と前記第2の流量調節器とは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項
11に記載の流量制御器。
【請求項15】
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器は、内部に定義された選択可能な流路セグメントを有するガスケットであり、
前記ガスケットの各々は、1つ以上のアライナを有し、
前記アライナは、前記ガスケットの所定の整列を維持することを特徴とする請求項
11に記載の流量制御器。
【請求項16】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器を製造するためのキットであって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えた分割式ハウジングと、
前記分割式ハウジング内に配置された第1の流量調節器および第2の流量調節器と、
を備え、
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供し、
前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁であり、
前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して整列することにより、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントが提供され、
前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供されることを特徴とするキット。
【請求項17】
1つ以上の前記流量調節器が、選択可能な流路セグメントとして貫通穴を備えることを特徴とする請求項
16に記載のキット。
【請求項18】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項
17に記載のキット。
【請求項19】
前記第1の流量調節器と前記第2の流量調節器とは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項
16に記載のキット。
【請求項20】
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器は、内部に定義された選択可能な流路セグメントを有するガスケットであり、
前記ガスケットの各々は、1つ以上のアライナを有し、
前記アライナは、前記ガスケットの所定の整列を維持することを特徴とする請求項
16に記載のキット。
【請求項21】
1本以上の針およびチューブを含む針セットをさらに含むことを特徴とする請求項
16に記載のキット。
【請求項22】
リザーバから患者への液体投与のために、所定の圧力に対して選択された所定の流量を提供する設定可能な流量制御器を使用する方法であって、
前記リザーバからの第1のチューブラインに接続する入口ポートおよび前記患者への第2のチューブラインに接続する出口ポートを備えたモジュラーハウジングを与えるステップと、
分割式ハウジング内に配置された第1の流量調節器および第2の流量調節器とを与えるステップと、
前記第1の流量調節器を前記第2の流量調節器に対して選択的に整列させることにより、前記出口ポートから流出する液体の所定の流量が提供するために、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に2つ以上の流路セグメントを提供するステップと、
前記入口ポートから前記リザーバまでのチューブラインを形成するステップと、
前記患者に液体を投与するために、前記出口ポートから針セットまでのチューブラインを形成するステップと、
を含み、
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器の各々は、1つ以上の選択可能な流路セグメントを提供し、
前記1つ以上の選択可能な流路セグメントは、固定ジオメトリパッシブ逆止弁であることを特徴とする方法。
【請求項23】
1つ以上の前記流量調節器が、選択可能な流路セグメントとして貫通穴を備えることを特徴とする請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記貫通穴は、前記1つ以上の流量調節器を通る流体の妨げられない流れを提供することを特徴とする請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の流量調節器と前記第2の流量調節器とは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項
22に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の流量調節器および前記第2の流量調節器は、内部に定義された選択可能な流路セグメントを有するガスケットであり、
前記ガスケットの各々は、1つ以上のアライナを有し、
前記アライナは、前記ガスケットの所定の整列を維持することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【国際調査報告】