(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】リチウム硫黄電池用のセパレータ及びこれを含むリチウム硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/449 20210101AFI20240925BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/437 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/431 20210101ALI20240925BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240925BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240925BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240925BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240925BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240925BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240925BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20240925BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/491
H01M50/489
H01M50/457
H01M50/414
H01M50/44
H01M50/437
H01M50/431
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M50/46
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/36 A
H01M4/40
H01M10/0568
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516671
(86)(22)【出願日】2023-02-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 KR2023002359
(87)【国際公開番号】W WO2023158272
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0022383
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0183787
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン-ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ヒョ・パク
(72)【発明者】
【氏名】イン-テ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-フィ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミョン-ジュン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ラン・チェ
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021CC02
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE15
5H021EE21
5H021EE28
5H021HH02
5H021HH03
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK18
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA11
5H050CA29
5H050CB12
5H050HA01
(57)【要約】
本発明によるリチウム硫黄電池は、正極材料の少ない使用量でも硫黄(S)の高い放電容量を実現することができる。本発明によるリチウム硫黄電池は、電極活物質層用のスラリーの製造工程なしに正極活物質粉末を所定の形状に圧着する乾式製造方法により正極を製造することにより、正極の製造のための工程コストを減縮することができる。本発明によるリチウム硫黄電池は、多層セパレータを用いることにより、乾式製造方法により製造された正極の反応のバラツキを解消することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム硫黄電池用のセパレータであって、
前記セパレータは、気孔度が50vol%以上である第1の層を含み、
前記第1の層は、セパレータの一方の表面に配置され、
前記第1の層の層厚は、セパレータの厚さ100%に比べて50%以上である、リチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項2】
前記第1の層は、気孔度が80vol%以下である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項3】
前記セパレータは、気孔度が25vol%以上かつ50vol%未満である第2の層を含み、前記第2の層は、前記セパレータの前記一方の表面の反対面である他方の表面に配置されている、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項4】
前記セパレータは、前記第1の層及び第2の層から構成され、前記第1の層及び第2の層がこの順に積層されている、請求項3に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項5】
前記第1の層は単一層(monolayer)であるか、あるいは、2以上のユニット層(unit layer)を含む多重層(multilayer)であるものであり、2以上のユニット層を含む場合、前記各ユニット層は、気孔度が50vol%以上かつ80vol%以下である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項6】
前記第1の層が多重層である場合、セパレータの厚手方向を基準として一方の表面に向かって気孔度が増加するようにユニット層が配置されている、請求項5に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項7】
前記第2の層は単一層(monolayer)であるか、あるいは、2以上のユニット層(unit layer)を含む多重層(multilayer)であるものであり、前記第2の層が2以上のユニット層を含む場合、前記各ユニット層は、気孔度が50vol%未満かつ25vol%以上である、請求項3に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項8】
前記第2の層が多重層である場合、セパレータの厚手方向を基準として他方の表面に向かって気孔度が減少するようにユニット層が配置されている、請求項7に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項9】
前記セパレータの厚さは、20μm~500μmである、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項10】
前記第1の層は多孔性の高分子フィルム、高分子材料を含む多孔性不織布、ガラス繊維及び炭素ペーパーのうちから選択された1種以上を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項11】
前記第2の層は、多孔性の高分子フィルム、高分子材料を含む多孔性不織布又はこれらを両方とも含む、請求項3に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータ。
【請求項12】
電極組立体及び電解質を含み、
前記電極組立体は、正極、負極及び前記負極及び正極の間に介在するセパレータを含み、
前記正極は、正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、硫黄及び/又は硫黄化合物を含む硫黄系材料を含み、前記セパレータは、請求項1から11のいずれか一項に記載のものであり、
前記セパレータの第1の層は、前記正極活物質層と対面している、リチウム硫黄電池。
【請求項13】
前記電解質は、リチウム塩と有機溶媒を含み、前記有機溶媒は、フッ素系エーテル化合物を含む第1の有機溶媒及びグライム系化合物を含む第2の有機溶媒を含む、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項14】
前記硫黄及び/又は硫黄化合物を含む硫黄系材料は、硫黄-炭素複合体の形態で正極活物質層に含まれ、前記硫黄系材料は、正極活物質層100wt%に対して、60wt%以上含まれる、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項15】
前記硫黄-炭素複合体は、硫黄と炭素とが重量比を基準として60:40~80:20の割合で含まれている、請求項14に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項16】
前記正極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一面に配置された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、前記正極活物質層100wt%に対して、99wt%以上含まれ、前記正極活物質は、正極活物質層100wt%に対して、硫黄-炭素複合体を90wt%以上含み、前記硫黄-炭素複合体は、硫黄及び/又は硫黄化合物を含む硫黄系材料を含む、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項17】
前記負極は、負極活物質としてリチウム金属及び/又はリチウム合金を含み、前記リチウム合金は、リチウムと他の金属との合金である、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項18】
前記第1及び第2の有機溶媒は、全体の有機溶媒100vol%に対して、90vol%以上含まれる、請求項13に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項19】
前記第1の有機溶媒は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(フルオロメチル)エーテル、2-フルオロメチルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、プロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、イソプロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルイソブチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、1H,1H,2’H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル及び1H,1H,2’H-ペルフルオロジプロピルエーテルのうちのいずれか1種以上を含む、請求項13に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項20】
前記第2の有機溶媒は、フッ素を含まず、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルのうちのいずれか1種以上を含む、請求項13に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項21】
前記電解質は、リチウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジメトキシエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルを含む、請求項13に記載のリチウム硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム硫黄電池用のセパレータ及び前記セパレータを含み、エネルギー密度が高いリチウム硫黄電池に関する。
【0002】
本出願は、2022年2月21日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0022383号及び2022年12月23日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0183787号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池の適用範囲が携帯型電子機器のみならず、電気自動車(Electric vehicles、EV)、電気貯蔵装置(Electric storage system、ESS)へと広がることに伴い、高容量、高エネルギー密度、長寿命のリチウム二次電池への需要が伸びている。
【0004】
多種多様なリチウム二次電池の中でも、リチウム硫黄電池は、硫黄-硫黄(S-S)結合を含む硫黄系物質を正極活物質として用いる電池システムであって、負極としてはリチウム金属、リチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素系物質、又はリチウムと合金を形成するシリコン、スズなどを用いる。
【0005】
リチウム硫黄電池において、正極活物質の主材料である硫黄は、原子量が低く、資源が非常に豊富であることから需給し易く、安価であり、非毒性であり、しかも、環境にやさしいという点でメリットがある。
【0006】
また、リチウム硫黄電池は、正極においてリチウムイオンと硫黄との転換反応(S8+16Li++16e-→8Li2S)により1,675mAh/gの理論的な比容量を有し、リチウム金属が負極として用いられる場合、理論的なエネルギー密度2,600Wh/kgを示す。リチウム硫黄電池の理論的なエネルギー密度は、他の電池システム(Ni-MH電池:450Wh/kg、Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO2電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)及びリチウムイオン電池(250Wh/kg)の研究が進められており、これまで開発されてきた二次電池の中でも、リチウム硫黄電池は、高容量、環境へのやさしさ、安価なリチウム二次電池であることから注目を浴びている。
【0007】
具体的には、リチウム硫黄電池の場合、リチウム金属を負極活物質として用いる場合、理論比容量が3,860mAh/gと非常に高く、標準還元電位(Standard Hydrogen Electrode、SHE)もまた-3.045Vと非常に低いことから、高容量、高エネルギー密度の電池が実現可能であるので、次世代の電池ステムとして多種多様な研究・開発への取り組みが行われている。
【0008】
しかしながら、負極活物質であるリチウム金属は、化学的/電気化学的な反応性が高くて電解液と反応し易いため、負極の表面に保護膜が形成される。このようなパッシベーション層は、電流密度の局部的な差を生じさせてリチウム金属の表面にリチウムデンドライト(トゲの様な樹枝状結晶)を形成する。また、このようにして形成されたリチウムデンドライトは、電池の内部短絡及び不活性リチウム(dead lithium)を生じさせてリチウム二次電池の物理的・化学的な不安定性を増加させるのみならず、電池の容量及びサイクル寿命(cycle life time)を削減する。
【0009】
したがって、リチウム硫黄電池は、放電時に正極においては硫黄が電子を受け入れる還元反応と負極においてリチウムがイオン化される酸化反応とを経る。
【0010】
リチウム硫黄電池は、放電時に正極においてリチウムポリスルフィド(Li2Sx,x=2~8)が生成され、リチウムポリスルフィドのうちの一部は電解液に溶解されて電池内の副反応を引き起こしてさらに早い電池の劣化を引き起こす。また、充電中にシャトル反応が起きて充放電効率が大幅に低下する虞がある。さらに、上述したように、負極に用いられるリチウム金属は、電解液と持続的に反応し続けてリチウム塩及び電解質添加剤の分解を促す。
【0011】
前述したように、ポリスルフィドの形成は、バッテリーの寿命特性を低下させる。
【0012】
近頃には、ポリスルフィドの放出を防ぐために、SSE(sparingly solvating Electrolyte、控えめに溶媒和させる電解質)システムが提案されており、1500m2/g以上のBET比表面積を有する高比表面積の炭素素材を用いることにより、理論容量の90%以上を成し遂げることができるということが判明された。しかしながら、リチウム硫黄電池の寿命特性及び出力特性の改善は依然として必要であるのが現状である。
【0013】
これに関連して、400Wh/kg又は600Wh/L以上の高エネルギー密度のバッテリーシステムを実現するためには、4.0mAh/cm2以上において作動可能なリチウム硫黄バッテリーの開発が必要である。
【0014】
リチウム硫黄電池は、正極材を乾式製造法により製造する場合があり、正極材の反応性のバラツキが生じる虞がある。
【0015】
正極、正極活物質、負極、負極-活物質、正極と負極との間に介在するセパレータ及び電解質から構成されるリチウム硫黄電池において、セパレータは、電池が高エネルギー密度にて駆動され、硫黄(S)の理論的な容量に近づいて寿命特性が改善されるようにするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、従来の技術の欠点を克服したリチウム硫黄電池用のセパレータの開発に取り込み、特に、400Wh/kg及び600Wh/L以上の高エネルギー密度を有するリチウム硫黄電池用のセパレータを提供してリチウム硫黄電池が硫黄(S)の理論容量に最大限に近づくように駆動されるようにし、リチウム硫黄電池の寿命特性を向上させることを目的とする。
【0017】
また、前記セパレータを含むリチウム硫黄電池を提供することを目的とする。さらには、電池の駆動時に、特に、正極活物質の反応性のバラツキが低減されるリチウム硫黄電池を提供することを本発明のさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、リチウム硫黄電池用のセパレータに関するものであり、本発明の第1の態様は、リチウム硫黄電池用のセパレータにおいて、前記セパレータは、気孔度が50vol%以上である第1の層を含み、前記第1の層は、セパレータの一方の表面に配置され、前記第1の層の層厚は、セパレータの厚さ100%に比べて50%以上である。
【0019】
本発明の第2の態様は、前記第1の層は、気孔度が80vol%以下であるものである前記第1の態様に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0020】
本発明の第3の態様は、前記セパレータは、気孔度が25vol%以上かつ50vol%未満である第2の層を含み、前記第2の層は、前記セパレータの一方の表面の反対面である他方の表面に配置されているものである前記第1の態様又は第2の態様に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0021】
本発明の第4の態様は、前記セパレータは、前記第1の層及び第2の層から構成され、前記第1の層及び第2の層がこの順に積層されているものである前記第3の態様に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0022】
本発明の第5の態様は、前記第1の層は単一層(monolayer)であるか、あるいは、2以上のユニット層(unit layer)を含む多重層(multilayer)であるものであり、2以上のユニット層を含む場合、前記各ユニット層は、気孔度が50vol%以上かつ80vol%以下であるものである前記第1の態様から第4の態様のうちのいずれか一つに記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0023】
本発明の第6の態様は、前記第1の層が多重層である場合、セパレータの厚手方向を基準として一方の表面に向かって気孔度が増加するようにユニット層が配置されるものである前記第5の態様に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0024】
本発明の第7の態様は、前記第2の層は単一層(monolayer)であるか、あるいは、2以上のユニット層(unit layer)を含む多重層(multilayer)であるものであり、前記第2の層が2以上のユニット層を含む場合、前記各ユニット層は、気孔度が50vol%未満かつ25vol%以上であるものである前記第1の態様から第5の態様のうちのいずれか一つに記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0025】
本発明の第8の態様は、前記第2の層が多重層である場合、セパレータの厚手方向を基準として他方の表面に向かって気孔度が減少するようにユニット層が配置されるものである前記第7の態様に記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0026】
本発明の第9の態様は、前記セパレータの厚さは、20μm~500μmであるものである前記第1の態様から第8の態様のうちのいずれか一つに記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0027】
本発明の第10の態様は、前記第1の層は多孔性の高分子フィルム、高分子材料を含む多孔性不織布、ガラス繊維及び炭素ペーパーのうちから選択された1種以上を含むものである前記第1の態様から第9の態様のうちのいずれか一つに記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0028】
本発明の第11の態様は、前記第2の層は、多孔性の高分子フィルム、高分子材料を含む多孔性不織布又はこれらを両方とも含むものである前記第3の態様から第10の態様のうちのいずれか一つに記載のリチウム硫黄電池用のセパレータである。
【0029】
本発明の第12の態様は、リチウム硫黄電池に関するものである。本発明によるリチウム硫黄電池は、電極組立体及び電解質を含み、前記電極組立体は、正極、負極及び前記負極及び正極の間に介在するセパレータを含み、前記正極は、正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、硫黄及び/又は硫黄化合物を含む硫黄系材料を含み、前記セパレータは、第1の態様から第10の態様のうちのいずれか一項に記載のものであり、前記セパレータの第1の層は、前記正極活物質層と対面するものである。
【0030】
本発明の第13の態様は、前記電解質は、リチウム塩と有機溶媒を含み、前記有機溶媒は、フッ素系エーテル化合物を含む第1の有機溶媒及びグライム系化合物を含む第2の有機溶媒を含むものである前記第12の態様に記載のリチウム硫黄電池である。
【0031】
本発明の第14の態様は、前記硫黄及び/又は硫黄化合物を含む硫黄系材料は、硫黄-炭素複合体の形態で正極活物質層に含まれ、前記硫黄系材料は、正極活物質層100wt%に対して、60wt%以上含まれるものである前記第12の態様又は第13の態様に記載のリチウム硫黄電池である。
【0032】
本発明の第15の態様は、前記硫黄-炭素複合体は、硫黄と炭素とが重量比を基準として60:40~80:20の割合で含まれているものである前記第14の態様に記載のリチウム硫黄電池である。
【0033】
本発明の第16の態様は、前記正極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一面に配置された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、前記正極活物質層100wt%に対して、99wt%以上含まれ、前記正極活物質は、正極活物質100wt%に対して、硫黄-炭素複合体を90wt%以上含み、前記硫黄-炭素複合体は、硫黄及び/又は硫黄化合物を含む硫黄系材料を含むものである前記第12の態様から第15の態様のうちのいずれか一つの態様に記載のリチウム硫黄電池である。
【0034】
本発明の第17の態様は、前記負極は、負極活物質としてリチウム金属及び/又はリチウム合金を含み、前記リチウム合金は、リチウムと他の金属との合金であるものである前記第12の態様から第16の態様のうちのいずれか一つの態様に記載のリチウム硫黄電池である。
【0035】
本発明の第18の態様は、前記第1及び第2の有機溶媒は、全体の有機溶媒100vol%に対して、90vol%以上含まれるものである前記第12の態様から第17の態様のうちのいずれか一つの態様に記載のリチウム硫黄電池である。
【0036】
本発明の第19の態様は、前記第1の有機溶媒は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(フルオロメチル)エーテル、2-フルオロメチルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、プロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、イソプロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルイソブチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、1H,1H,2’H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル及び1H,1H,2’H-ペルフルオロジプロピルエーテルのうちのいずれか1種以上を含むものである前記第12の態様から第18の態様のうちのいずれか一つの態様に記載のリチウム硫黄電池である。
【0037】
本発明の第20の態様は、前記第2の有機溶媒は、フッ素を含まず、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルのうちのいずれか1種以上を含むものである前記第12の態様から第19の態様のうちのいずれか一つの態様に記載のリチウム硫黄電池である。
【0038】
本発明の第21の態様は、前記電解質は、リチウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジメトキシエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルを含むものである前記第12の態様から第20の態様のうちのいずれか一つの態様に記載のリチウム硫黄電池である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によるセパレータが適用されたリチウム硫黄電池は、400Wh/kg及び600Wh/L以上の高いエネルギー密度を成し遂げ、硫黄の理論容量に近づくように作動することができる。したがって、少ない量の正極材料を用いても硫黄(S)の高い放電容量を実現することができる。また、リチウム硫黄電池の寿命特性が向上することができ、特に、正極活物質粉末を所定の形状に圧着する乾式製造方法により製造された正極が適用される場合、正極の反応性のバラツキが低減されてリチウム硫黄電池の高容量及び寿命特性が改善されるという効果がある。
【0040】
本発明の最上の結果は、以下に述べられている本発明の特定の実施形態及びこれらの組み合わせにより成し遂げられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】実施例1のリチウム硫黄電池のサイクリックボルタンメトリー評価結果を示すグラフである。
【
図2】実施例2のリチウム硫黄電池のサイクリックボルタンメトリー評価結果を示すグラフである。
【
図3】実施例3のリチウム硫黄電池のサイクリックボルタンメトリー評価結果を示すグラフである。
【
図4】実施例4のリチウム硫黄電池のサイクリックボルタンメトリー評価結果を示すグラフである。
【
図5】比較例1のリチウム硫黄電池のサイクリックボルタンメトリー評価結果を示すグラフである。
【
図6】比較例2のリチウム硫黄電池のサイクリックボルタンメトリー評価結果を示すグラフである。
【
図7】比較例3のリチウム硫黄電池のサイクリックボルタンメトリー評価結果を示すグラフである。
【
図8】比較例4のリチウム硫黄電池のサイクリックボルタンメトリー評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0043】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されるものである。
【0044】
本明細書中において使われた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図はない。本明細書中において使われた「備える、含む(comprise)」または「有する(have)」などの用語は、明細書に明示されている特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在を示そうとする意図をもったものであると理解されるべきであり、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、一つ以上の他の機能、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または追加の可能性を予め排除しないものと理解すべきである。「備える、含む(comprise)」という用語は、必ずしもそれにより制限されるとは限られるものではなくても、明示的に「からなるやから構成される(consists of)」という意味を含む。
【0045】
また、本明細書の全般にわたって使われる用語や言い回し「約」、「実質的に」などは、言及された意味ならではの製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値において、またはその数値に近づいた意味として使われ、本発明の理解への一助となるために正確な、あるいは絶対的な数値が言及された開示の内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防ぐために使われる。
【0046】
本明細書の全般にわたって、「A及び/又はB」という記載は、「AまたはBまたはこれらの両方」を意味する。
【0047】
本発明において、「比表面積」は、BET法により測定したものであって、具体的には、BEL Japan社のBELSORP-mini IIを用いて液体窒素温度下(77K)での窒素ガスの吸着量から算出され得る。
【0048】
本明細書中において使われるターミノロジー「ポリスルフィド」は、ポリスルフィドイオン(Sx2-,x=2-8)」及び「リチウムポリスルフィド(Li2Sx又はLiSx
-,x=2-8)」を両方とも網羅する概念である。
【0049】
本明細書中において使われるターミノロジー「複合体(composite)」とは、2種以上の材料が組み合わせられて物理的・化学的に互いに異なる相(phase)を形成しながらさらに有効な機能を発現する物質を意味する。
【0050】
本明細書中において使われたターミノロジー「気孔度(porosity)」は、ある構造体において全体の体積に対して気孔が占める体積の割合を意味し、その単位としてvol%を使用し、空隙率、多孔度などの用語と相互間に置換して使用可能である。
【0051】
本発明において、前記気孔度の測定は、特定の方法に何ら限定されるものではない。本発明の一実施形態において、前記気孔度は、窒素などの吸着気体を用いてBEL JAPAN社のBELSORP(BET装備)などの細孔径分布測定装置(Porosimetry analyzer)を用いて測定され得る。
【0052】
本発明において、「粒径(D50)」は、粒子の体積累積粒度分布の50%基準での粒子径を意味するものである。前記粒径(D50)は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定され得る。例えば、粒子を分散媒中に分散させた後、市販中のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に取り込ませて約28kHzの超音波を出力60Wにて照射した後、体積累積粒度分布グラフを得た後、体積累積量の50%に相当する粒子径を求めることにより測定され得る。
【0053】
また、図示の各構成要素の大きさ及び厚さは、説明のしやすさのために任意に示したものであるため、本発明が必ずしも図示の事項に限定されるとは限らない。図中、色々な層及び領域を明確に示すために、厚さを拡大して示している。なお、図中、説明のしやすさのために、一部の層及び領域の厚さを誇張して示している。
【0054】
本発明は、リチウム硫黄電池用のセパレータに関するものであり、前記セパレータは、第1の層及び第2の層が互いに積層されており、前記第1の層は、気孔度が50vol%以上であるものである。また、本発明は、リチウム硫黄電池に関するものであり、前記リチウム硫黄電池は、正極活物質層を含む正極(positive electrode又はcathode)、負極活物質層を含む負極(negative electrode又はanode)、正極と負極との間に介在しているセパレータ及び電解質を含む電極組立体を含み、前記セパレータは、本発明によるものであり、前記第2の層は負極活物質層と対面し、前記第1の層は正極活物質層と対面する。
【0055】
次いで、本発明によるリチウム硫黄電池用のセパレータ及び前記リチウム硫黄電池についてさらに詳しく説明する。
【0056】
セパレータ
前記セパレータは、複数の多孔膜が積層されている構造を有し得る。本発明において、前記セパレータは、第1の層及び第2の層を含み得、本発明によるリチウム硫黄電池において、前記第1の層は、電極組立体の製造時に正極活物質層と対面するように配置される。前記正極活物質層は、以下において説明された構成的な特徴を有し得る。本発明において、前記第1の層の気孔度は、第2の層の気孔度よりも大きいことがある。前記第1の層の気孔度は、50vol%以上であり得る。一方、前記第2の層の気孔度は、50vol%未満であり得る。
【0057】
本発明の一実施形態において、前記セパレータの厚さは、20μm~500μmであり得る。
【0058】
第1の多孔性セパレータ層
前記第1の多孔性セパレータ層は、セパレータの両方の表面のうちの一方の表面に配置されて正極活物質層と対面するものである。本明細書中において、前記「第1の多孔性セパレータ層(first porous separator layer)」は、第1の層(first layer)と略称し得る。後述するように、本発明によるリチウム硫黄電池において、前記正極活物質層は、バインダーが含まれないか、あるいは、極く少量で含まれている可能性があり、粉末圧着方式により製造されたものであり得、このような方法により製造された正極の場合、充電時に充電バラツキが生じる虞がある。
【0059】
このように、圧縮粉末状の正極の充電バラツキを防ぐ側面からみて、前記セパレータの第1の層は、気孔度が50vol%以上であることが好ましい。好ましくは、気孔度が50vol%~80vol%であるものである。前記第1の層の気孔度が50vol%未満である場合には、充電バラツキの改善の効果が微々たるものであり、このため、電池が正常に駆動されない虞がある。これに対し、気孔度が80vol%を超える場合にはセパレータの物理的な強度が低下し、形状が崩れやすくなることが懸念される。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記第1の層の層厚は、セパレータの全体の厚さ100%に比べて、50%以上の厚さを有し得る。具体的には、前記第1の層の層厚は、20μm~500μm、20μm~400μm又は25μm~350μmであり得る。好ましくは、40μm~400μmであり得る。前記第1の層の層厚がセパレータの全体の厚さを基準として、50%に満たないか、あるいは、20μm未満と薄い場合には、正極の充電バラツキの改善効果が微々たるものであり、このため、電池が正常に駆動できなくなる虞がある。一方、前記厚さが500μmを超えて過剰に厚過ぎる場合には、電池の適用時に電池のエネルギー密度が減少して好ましくない。
【0061】
一方、前記第1の層は、非伝導性であるか、あるいは、伝導性を示し得る。本発明において、前記第1の層は、前述した構成的な特徴を満たすものであって、例えば、多孔性の高分子フィルムや不織布など高分子材料を含む多孔膜と、ガラス繊維と、炭素ペーパーとからなる群から選択された1種以上を含み得る。本発明の一実施形態において、前記高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独にて、又はこれらを混合した高分子から形成した膜が挙げられる。前記ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの高分子材料が挙げられる。
【0062】
本発明の一実施形態において、前記高分子フィルムは、高分子樹脂を溶融及び押出した後、延伸工程を用いて微小気孔を形成する乾式製造方法やパラフィンなど気孔形成剤を高分子樹脂とともに混合して成膜した後、前記気孔形成剤を溶け出すことにより微小気孔を形成する湿式製造方法により製造されたものであり得る。
【0063】
前記不織布は、高分子材料を含むものであって、前記高分子材料としては、例えば、ポリフェニレンオキサイド(polyphenylene oxide)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetherether ketone)、ポリエステル(polyester)などが挙げられ、これらのうちの1種又はこれらから選択された2種以上の混合物を含み得る。
【0064】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第1の層は、単一層(monolayer)であり得る。あるいは、前記第1の層は、2以上のユニット層(unit layer)を含む多重層(multilayer)の形態を有し得る。仮に、前記セパレータが2以上のユニット層を含む場合、前記ユニット層は、それぞれ独立して気孔度が50vol%以上かつ80vol%以下であることが好ましい。
【0065】
また、各ユニット層は、多孔性の高分子フィルムや不織布など高分子材料を含む多孔膜と、ガラス繊維と、炭素ペーパーとからなる群から選択された1種以上を含み得、これらについての説明は、前述した内容を参照されたい。
【0066】
一実施形態において、前記第1の層が多重層である場合、セパレータの厚手方向を基準として一方の表面に向かって気孔度が増加するようにユニット層が配置されて最も高い気孔度を有するユニット層が正極と対面するように配置され得る。
【0067】
第2の多孔性セパレータ層
本発明によるセパレータは、前記一方の表面の反対面である他方の表面に第2の多孔性セパレータ層が配置され得る。前記第2の層は、前記気孔度が25vol%以上かつ50vol%未満であり、電極組立体の製造時に負極と対面するように配置される。本明細書中において、前記「第2の多孔性セパレータ層(second porous separator layer)」は、第2の層(second layer)と略称し得る。
【0068】
前記第2の層は、電気化学素子に用いられる絶縁性素材であるものであれば、特に限定されるものではない。このような第2の層は、負極と正極とを電気的に分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウム二次電池においてセパレータとして用いられるものであれば、特に制限なしに使用可能である。
【0069】
本発明の一実施形態において、前記第2の層は、多孔性高分子フィルムを含み得る。
【0070】
本発明の一実施形態において、前記高分子フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独にて、又はこれらを混合した高分子から形成した膜が挙げられる。前記ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどといった種類が挙げられる。
【0071】
前記高分子フィルムは、高分子樹脂を溶融及び押出した後、延伸工程を用いて微小気孔を形成する乾式製造方法やパラフィンなど気孔形成剤を高分子樹脂とともに混合して成膜した後、前記気孔形成剤を溶け出すことにより、微小気孔を形成する湿式製造方法により製造されたものであり得る。
【0072】
また、前記第2の層として、多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、高分子材料を含む不織布が用いられることもある。前記高分子材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィン系高分子、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド(polyphenylene oxide)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリエーテルスルホン(polyether sulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetherether ketone)、ポリエステル(polyester)などが挙げられ、これらのうちの一種又はこれらから選択された2種以上の混合物を含み得る。あるいは、第2の層としては、耐熱性又は機械的な強度の確保のために、セラミック成分又は高分子物質が含まれているコーティングされた多孔性シートが用いられることもある。
【0073】
本発明の一実施形態において、前記第2の層は、単一層(monolayer)であり得る。あるいは、前記第2の層は、2以上のユニット層(unit layer)を含む多重層(multilayer)であるものであり、前記第2の層が2以上のユニット層を含む場合、前記各ユニット層は、気孔度が50vol%未満かつ25vol%以上であることが好ましい。さらに具体的な一実施形態において、前記第2の層が多重層である場合、セパレータの厚手方向を基準として他方の表面に向かって気孔度が減少するようにユニット層が配置され得る。
【0074】
本発明において、前記第2の層に含まれるユニット層は、前述したような多孔性の高分子フィルム及び多孔性の高分子不織布のうちの1種以上であり得、これについて前述した内容を参照されたい。
【0075】
本発明の具体的な一実施形態において、前記第2の層は、絶縁性特性、抵抗特性及びイオン伝導性の側面からみて、気孔度が25vol以上かつ50vol%未満、又は35vol%以かつ上50vol%未満であるものである。
【0076】
一方、本発明の具体的な一実施形態において、前記セパレータは、前記第1の層及び第2の層から構成され、前記第1の層及び第2の層がこの順に積層されているものである。ここで、第1の層は、単一層であるか、あるいは、多重層の形態を有し得る。あるいは、前記第2の層は、単一層であるか、あるいは、多重層の形態を有し得る。具体的な一実施形態において、前記第1及び第2の層は、両方とも単一層の形態を有し得る。
【0077】
前記第2の層は、層厚が5μm~30μm、5μm~25μm、10μm~25μm、10μm~20μm、又は15μm~20μmであり得る。
【0078】
前記第2の層は、気孔度が25vol%以上かつ50vol%未満、30vol%以上かつ50vol%未満、35vol%以上かつ50vol%未満、又は40vol%以上かつ50vol%未満であり得る。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記セパレータにおいてセパレータを構成する各層は、ラミネーション工程による結果、層間結着(bonding)されている可能性がある。あるいは、ラミネーションなしに、又はラミネーション工程が行われたとしても、層間結着(bonding)なしに各層同士が単に積層された(stacked)状態で保持されている可能性がある。一方、各層が単に積層されたものであっても、電池ケースなど外部の形状固定要素によりセパレータの積層された(stacked)構造が安定的に保持されることが可能になる。前記ラミネーション工程は、例えば、電極とセパレータとを積層した後、密着又は結着(bonding)する押し付け工程を意味し得る。一実施形態において、前記押し付け工程は、熱間押し付けの方法により行われ得る。
【0080】
リチウムイオン二次電池
次いで、本発明によるリチウム硫黄電池の各構成要素についてさらに詳しく説明する。
【0081】
正極
本発明による正極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一方の表面に配置された正極活物質層を含む。
【0082】
集電体
前記集電体は、当該技術分野において用いられるものであって、電気伝導性を有し、集電成分として用いられるものであれば、制限なしにいずれも使用可能である。例えば、前記正極集電体としては、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素又はアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などにより表面処理を施したものが使用可能である。前記正極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し得、前記正極集電体の表面の上に微小な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めてもよい。前記正極集電体は、例えば、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多種多様な形態のものが使用可能である。
【0083】
正極活物質層
前記正極活物質層は、正極活物質を含む。前記正極活物質層は、必要に応じて、導電材を含むか、あるいは、導電材を含まないことがある。前記導電材は、後述する硫黄-炭素複合体中の炭素材料とは異なる構成要素であって、硫黄-炭素複合体である正極活物質とは別個の他の構成要素を意味する。例えば、導電材を含むということは、硫黄-炭素複合体に含まれている炭素材料とは別個に別途の導電材成分が含まれ得るということである。また、別の例を挙げると、前記正極活物質層が導電材を含まなくても、硫黄-炭素複合体の炭素材料は、正極活物質成分として含まれる。
【0084】
前記正極活物質層100wt%中に、正極活物質は、60wt%以上、又は70wt%以上又は80wt%以上含まれ得る。例えば、前記正極活物質層100wt%に対して、正極活物質が90wt%以上又は99wt%以上含まれ得る。
【0085】
前記正極活物質層は、ローディング量が電極活物質層の面積を基準として4.0mAh/cm2以上であることが好ましい。また、前記正極活物質層は、気孔度が60vol%以下であることが好ましい。このようなローディング量及び気孔度の範囲は、本発明によるリチウム硫黄電池が400Wh/kg及び600Wh/L以上の高いエネルギー密度を実現するのに有利である。
【0086】
一方、本発明の一実施形態において、前記正極活物質層は、正極活物質のみからなることもある。すなわち、前記正極活物質層は、正極活物質に加えて、他の材料、例えば、バインダー材料及び導電材を含まないこともある。正極活物質以外の成分を含むのであれば、正極活物質層中に1wt%未満又は0.1wt%未満、又は0.05wt%未満の範囲に制御されることが好ましい。本発明の具体的な一実施形態において、前記正極活物質層は、正極活物質のみからなるものである。
【0087】
一方、本発明において、前記正極活物質層は、乾式製造方法により製造されたものである。本明細書中において、「乾式製造方法」は、正極活物質層の形成時に「電極材料を溶媒に投入して流動状のスラリーを製造する方式」が適用されず、粉末状の正極活物質が圧縮されるなど押し付けにより一定の形状に成形することを意味するものである。本発明の一実施形態において、前記正極活物質層は、正極活物質を含む粉末状の電極材料を集電体の表面に塗布し、圧縮して層状の構造に成形するとともに、集電体と接合させ得る。あるいは、前記正極活物質を含む粉末状の電極材料を単独で圧着して電極フィルムを成形した後、前記電極フィルムと集電体とを圧力により接合する方法により電極を製造し得る。一方、本発明の一実施形態において、前記電極材料は、正極活物質のみからなる場合もある。
【0088】
本発明の一態様によれば、用意された電極材料をスクリューフィーダーなどの供給装置によりロール式押し付け成形装置に供給する方式により電極を製造し得る。このとき、集電体を電極材料の供給と同時に圧縮ローラーなどの成形装置に送ることにより、集電体の上に直接的に電極活物質層を形成し得る。あるいは、電極材料を集電体の上に散布し、ブレードなどにより一様に均して厚さを整えた後、押し付け装置により成形する方法が適用され得る。
【0089】
一方、本発明の一実施形態において、前記正極活物質を含む粉末状の電極材料は、集電体に塗布される前に100℃以上の温度において所定の時間の間に熱処理され得る。前記熱処理時間は、特定の時間に何ら限定されるものではないが、約10分~1時間ほどかかり得る。
【0090】
正極活物質
本発明による正極活物質は、硫黄系材料(例えば、硫黄及び/又は硫黄化合物)を含み、前記硫黄系材料は、硫黄-炭素複合体の形態で含まれ得る。
【0091】
本明細書中において、前記硫黄系材料は、硫黄及び/又は硫黄化合物を含むものであって、硫黄元素を含む材料をいずれもまとめて称するものとする。
【0092】
本発明において、前記硫黄系材料は、正極活物質層100wt%に対して、60wt%以上含まれ得る。
【0093】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質は、正極活物質層100wt%に対して、硫黄-炭素複合体を80wt%以上、好ましくは、90wt%以上含み得、さらに好ましくは、前記正極活物質は、硫黄-炭素複合体のみからなる場合もある。
【0094】
リチウム硫黄電池は、色々な二次電池の中で、高い放電容量及び理論エネルギー密度を有するだけではなく、正極活物質として用いられる硫黄は、埋蔵量が豊富であり、安価であることから、電池の製造コストを削減することができ、環境にやさしいという長所を有することから、次世代の二次電池として脚光を浴びている。
【0095】
リチウム硫黄電池において、正極活物質である硫黄は不導体であるため、低い電気伝導度を補うために伝導性物質である炭素材料と複合化させた硫黄-炭素複合体が一般に用いられている。
【0096】
前記硫黄-炭素複合体は、多孔性の炭素材料及び硫黄を含み、前記多孔性炭素材料の気孔に硫黄が担持されているものである。
【0097】
本発明の一実施形態において、前記硫黄-炭素複合体は、硫黄と炭素とが重量比を基準として60:40~80:20の割合で含まれ得る。前記硫黄-炭素複合体において、炭素の含量が40wt%を超える場合、接着力が低下する虞がある。これに対し、炭素の含量が20wt%に満たない場合には、硫黄の低い電気伝導度を補い難い。
【0098】
前記炭素材料は、表面及び内部に一定していない多数の気孔を含む多孔性構造を有するものであって、硫黄が均一にかつ安定的に固定化できる骨格を提供する担持体の役割を果たし、硫黄の低い電気伝導度を補って電気化学反応が円滑に進められるようにするものである。特に、硫黄-炭素複合体において、硫黄の担持体の役割を果たす炭素材料が、気孔体積が大きく、BET比表面積が広く、適正な粒径(D50)を有する場合、硫黄の担持量が高いながらも、非可逆容量が低く、エネルギー密度を高めて電気化学的な反応時に硫黄の利用率を高めることができる。
【0099】
本発明の硫黄-炭素複合体において、硫黄の担持体として用いられる炭素材料は、一般に、多種多様な炭素材質の前駆体を炭化させることにより製造され得る。
【0100】
一方、本発明の一実施形態において、前記炭素材料の気孔は、最長径を基準として直径が0.5nm~10nmの範囲を有し得る。前記炭素材料は、それぞれ球状、棒状、針状、板状、チューブ状又はバルク状などといったように、リチウム硫黄電池の正極に通常使用可能なものであれば、制限なしに使用可能である。
【0101】
前記炭素材料は、多孔性及び導電性を有する炭素系物質として当業界において通常用いられるものであれば、いかなるものであっても構わない。例えば、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);酸化グラフェン(rGO);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化カーボンファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛(graphite);カーボンナノリボン;カーボンナノベルト、カーボンナノロッド及び活性炭(activated carbon)からなる群から選択された1種以上を含み得る。
【0102】
前記硫黄系材料、例えば、硫黄及び/又は硫黄化合物は、単独では電気伝導性がないため、上述した炭素材料と複合化させて用いられる。本発明の一実施形態において、前記硫黄系材料は、無機硫黄(S8)、Li2Sn(n≧1)、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(2,5-dimercapto-1,3,4-thiadiazole)、1,3,5-トリチオシアヌル酸(1,3,5-trithiocyanuic acid)などといったジスルフィド化合物、及び有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n,x=2.5~50,n≧2)からなる群から選択される1種以上であり得る。好ましくは、無機硫黄(S8)を含み得る。
【0103】
本発明による硫黄-炭素複合体において、前記硫黄系材料は、前記炭素材料の気孔の内部及び外部の表面のうちの少なくともどちらか一方の表面に位置し、このとき、前記炭素材の内部及び外部の全体の表面の100%未満、好ましくは、1~95%、さらに好ましくは、60~90%の領域に存在し得る。前記硫黄及び/又は硫黄化合物が炭素材の表面に前記範囲内にあるとき、電子の受け渡し(授受)面積及び電解質の濡れ性の面からみて最大の効果を奏する。具体的には、前記範囲領域において硫黄系材料が炭素材の表面に薄くてかつ一様に含浸されるので、充・放電過程において電子の受け渡し接触面積を増加させることができる。仮に、前記硫黄系材料が炭素材料の全体の表面の100%の領域に位置する場合、前記炭素材が完全に硫黄により覆いかぶさって電解質の濡れ性が低下し、電極内に含まれる導電材との接触性に劣っていて、電子が受け渡しできず、その結果、反応に与ることができなくなる。
【0104】
一方、本発明の一実施形態において、前記硫黄-炭素複合体は、前記硫黄及び/又は硫黄化合物のような硫黄系材料と炭素材とが単に混合されて複合化されたり、コア-シェル構造のコーティング形態又は担持形態を有したりし得る。前記コア-シェル構造のコーティング形態は、硫黄系材料である硫黄及び/又は硫黄化合物、又は炭素材のうちのいずれか一つが他の物質をコーティングしたものであって、一例を挙げると、炭素材料の表面を硫黄系材料により包み込むか、あるいは、これとは逆になり得る。また、担持の形態は、炭素材の内部、特に、内部の気孔に硫黄系材料が充填された形態であり得る。前記硫黄-炭素複合体の形態は、前記提示した硫黄系化合物と炭素材料との含量比を満たすものであれば、いかなる形態でも使用可能であり、本発明において特に限定しない。
【0105】
一方、本発明の一実施形態において、前記硫黄-炭素複合体は、適切な強度と反応性を確保する側面からみて、粒径(D50)が20μm~80μmの範囲を有し得る。前記粒径(D50)が20μmに満たない場合、強度が低下する虞があり、粒径(D50)が80μmを過剰に超え過ぎる場合、反応性が低下する虞がある。
【0106】
また、本発明の一実施形態において、前記硫黄-炭素複合体は、下記のような製造方法により得られる。
【0107】
本発明による硫黄-炭素複合体の製造方法は、特に限定されず、当業界において通常周知となっており、(S1)炭素材料と硫黄系材料である硫黄及び/又は硫黄化合物とを混合した後、(S2)複合化させるステップからなる複合化方法により製造され得る。
【0108】
前記ステップ(S1)における混合は、硫黄系材料と炭素材料との混合度を高めるためのことであり、当業界において通常用いられる攪拌装置を用いて行い得る。このとき、混合時間及び速度もまた、原料の含量及び条件に応じて選択的に調節され得る。
【0109】
前記ステップ(S2)における複合化方法は、本発明において特に限定されず、当業界において通常用いられる方法が利用可能である。一例を挙げると、乾式複合化又はスプレーコーティングなどといった湿式複合化など当業界において通常用いられる方法が利用可能である。一例を挙げると、混合後に得られた硫黄系材料と炭素材料との混合物をボールミリングして粉砕した後、120℃~160℃のオーブンに20分~1時間かけて放置して溶融された硫黄が炭素材料の内部及び外部の表面に一様にコーティングできるようにする方法が利用可能である。
【0110】
前述した製造方法を用いて製造された硫黄-炭素複合体は、比表面積が高いつつも、硫黄系材料の担持量が高く、硫黄の利用率が改善される構造を有することから、硫黄の電気化学的な反応性が改善されるのみならず、電解液の接近性及び接触性を向上させることにより、リチウム硫黄電池の容量及び寿命特性を向上させることができる。
【0111】
その他の正極材
本発明の一実施形態において、前記正極活物質は、前記硫黄-炭素複合体のみから構成され得る。また、前記硫黄-炭素複合体に加えて、遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれら元素と硫黄との合金のうちから選択されるいずれか1種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0112】
本発明の具体的な一実施形態において、前記正極活物質層は、下記の化学式1で表わされるリチウム遷移金属複合酸化物を含むものであり得る。
[化学式1]
LiaNibCocM1
dM2
eO2
前記化学式1において、M1は、Mn、Al又はこれらの組み合わせであり得、好ましくは、Mn又はMn及びAlであり得る。
【0113】
前記M2は、Zr、W、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、Ta及びNbからなる群から選択される1種以上であり、好ましくは、Zr、Y、Mg、及びTiからなる群から選択された1種以上であり得、さらに好ましくは、Zr、Y又はこれらの組み合わせであり得る。M2元素は、必須的に含まれるものではないが、適切な量で含まれる場合、焼成時の粒子の成長を促したり、結晶構造の安定性を向上させたりする役割を果たし得る。
【0114】
負極
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一面の上に形成された負極活物質層と、を含む。本発明の一実施形態において、前記負極活物質層は、負極活物質として、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1種以上を含み得る。前記リチウム合金は、リチウムと異種金属とが合金化されたものであって、前記異種金属としては、Al、Mgのうちから選択された1種以上が含まれ得る。本発明の具体的な一実施形態によれば、前記負極活物質層は、負極集電体の表面に薄膜の形状に形成されたものであり得る。前記形成方法は、所定の膜厚を有するリチウム金属薄膜を用意し、前記薄膜と集電体とを貼り合わせ(ラミネート)加工して前記集電体の表面にリチウム金属が蒸着される工程による方法であり得る。前記蒸着には、例えば、電子ビーム蒸着法、有機金属化学気相蒸着法、反応性スパッタリング、高周波スパッタリング、及びマグネトロンスパッタリングなど多種多様な蒸着法が利用可能であり、これらに何ら限定されるものではない。前記例示された各蒸着法は、公知の方法であるため、これについての具体的な説明は本明細書中において省略する。
【0115】
前記負極集電体としては、当該技術分野において通常用いられる負極集電体などが使用可能であり、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などにより表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用可能である。前記負極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微小な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもある。例えば、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多種多様な形態のものが使用可能である。
【0116】
前記導電材は、負極に導電性を与えるために用いられるものであって、構成される電池において化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なしに使用可能である。具体例には、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうちの1種単独又は2種以上の混合物が使用可能である。前記導電材は、通常、負極活物質層の総重量に対して1~30wt%、好ましくは、1~20wt%、さらに好ましくは、1~10wt%で含まれ得る。
【0117】
電解質
本発明において、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含み得る。
【0118】
有機溶媒
前記有機溶媒は、電池の電気化学的な反応に与るイオンが移動可能な媒質の役割を果たすものである。
【0119】
本発明において、前記有機溶媒は、フッ素系エーテル化合物を含む第1の有機溶媒及びグライム系化合物を含む第2の有機溶媒を含む。前記第1及び第2の有機溶媒は、全体の有機溶媒100vol%に対して、90vol%以上、好ましくは、95vol%以上、さらに好ましくは、99vol%以上の割合にて含まれ得る。本発明の一実施形態において、前記有機溶媒は、前記第1及び第2の有機溶媒のみを含み得る。
【0120】
前記有機溶媒は、正極活物質の成分として用いられる硫黄の理論容量である1675mAh/gの80%以上の活用を可能にする点で好ましい。また、前述した正極に対して常温条件下で放電電圧2.0V以上及び放電容量1300mAh/g以上の高電圧及び高容量を実現できるようにするため好ましい。
【0121】
具体的には、前記第1の有機溶媒は、フッ素系エーテル系化合物であるものであって、ポリスルフィドの溶解及び分解の抑制効果を有することにより、電池のクーロン効率(coulombic efficiency、C.E.)などを向上させて究極的には電池の寿命を向上させる役割を果たす。より具体的には、前記フッ素系エーテル化合物を含む第1の溶媒は、フッ素置換によってアルケインを含む通常の有機溶媒に比べて溶媒の構造安定性が抜群であるため、安定性が非常に高い。これにより、これをリチウム硫黄電池の電解質に用いると、電解質の安定性を格段に向上させることができ、それにより、リチウム硫黄電池の寿命性能を向上させることができるのである。前記フッ素系エーテル系化合物は、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(フルオロメチル)エーテル、2-フルオロメチルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、プロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、イソプロピル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルイソブチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、1H,1H,2’H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル及び1H,1H,2’H-ペルフルオロジプロピルエーテルからなる群から選択される1種以上を含み得る。
【0122】
一方、前記第2の溶媒は、グライム系化合物を含む(但し、フッ素は含まない)電解質溶媒であって、リチウム塩を溶解して電解液にリチウムイオン伝導度を持たせるだけではなく、正極活物質である硫黄を溶出させてリチウムとの電気化学的な反応が円滑に進められるようにする役割を果たす。前記グライム系化合物の具体例としては、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群から選択される1種以上を含み得る。一方、本発明の一実施形態において、前記第2の溶媒は、ジメトキシエタンを含むことが好ましい場合がある。
【0123】
本発明において、前記第1及び第2の溶媒は、特に限定されるものではないが、1:99~99:1の体積比を有し得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記有機溶媒は、フッ素系エーテル化合物を含む第1の溶媒が、グライム系化合物を含む第2の溶媒に比べて高い含量比で含まれることが好ましい。このように、フッ素系エーテル化合物を含む第1の溶媒が、グライム系化合物を含む第2の溶媒に比べて高い含量比で含まれる場合、ポリスルフィドの生成を抑えて硫黄の理論容量に近い電池容量の実現を可能にし、電池の使用に伴う電池容量の減少を抑える側面からみてメリットがある。このため、フッ素系エーテル化合物を含む第1の溶媒が、グライム系化合物を含む第2の溶媒に比べて高い含量比で含まれるように設定することが好ましい。
【0124】
本発明の一実施形態において、好ましくは、前記第1の溶媒は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)を含み、前記第2の溶媒は、ジメトキシエタンを含み得る。
【0125】
一方、本発明の一実施形態において、前記第1及び第2の有機溶媒に加えて、必要に応じて、さらなる第3の有機溶媒をさらに含み得る。このような第3の有機溶媒は、特に制限されるものではなく、例えば、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)又はテトラヒドロフラン(tetrahydro furan)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、C2~C20の直鎖状、分枝状又は環状の構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環又はエーテル結合を含み得る)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;又はスルホラン(sulfolane)類などが使用可能である。
【0126】
リチウム塩
前記リチウム塩は、電解質中のリチウムイオンを提供可能な化合物である。このようなリチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3CO2、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiCH3SO3、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiC4BO8、LiCl、LiBr、LiB10Cl10、LiI又はLiB(C2O4)2などが使用可能である。本発明において、硫黄の活用可能性を高め、高容量及び高電圧電池の実現の側面からみて、前記リチウム塩としては、Li-TFSIを含むことが好ましい。さらに好ましくは、前記リチウム塩は、総リチウム塩100wt%に対して、80wt%以上、又は90wt%以上又は100%の含量でLiN(CF3SO2)2(Li-TFSI)を含み得る。
【0127】
前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0M、好ましくは、0.5~1M、さらに好ましくは、0.5~0.75Mの範囲であるものである。リチウム塩の濃度が前記範囲に収まると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが有効に移動することができる。前記リチウム塩の濃度が前記範囲未満である場合、電池の駆動に適したイオン伝導度を確保し難くなる虞があり、前記範囲を超える場合には電解質の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が低下したり、リチウム塩それ自体の分解反応が増加したりして電池の性能が低下する虞がある。
【0128】
本発明の具体的な一実施形態において、第1の溶媒、第2の溶媒及びリチウム塩を含む電解質において、前記リチウム塩、第2の溶媒及び第1の溶媒のモル比は、1:0.5~3:4.1~15であり得る。また、本発明の一実施形態において、前記リチウム塩、第2の溶媒及び第1の溶媒のモル比は、1:2:4~13又は1:3:3~10又は1:4:5~10であり得るなど、本発明のリチウム硫黄電池に含まれる電解質には、フッ素系エーテル化合物を含む第1の溶媒が、グライム系化合物を含む第2の溶媒に比べて高い含量比で含まれ得る。
【0129】
その他の添加剤
前記電解質には、前記電解質構成成分に加えて、電池の寿命特性の向上、電池の容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目指して添加剤をさらに含み得る。例えば、前記添加剤としては、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール又は三塩化アルミニウムなどを単独で又は混合して使用可能であるが、これらに何ら限定されるものではない。前記添加剤は、電解質の総重量に対して、0.1~10wt%、好ましくは、0.1~5wt%で含まれ得る。
【0130】
本発明において、電極組立体は、負極、正極及び負極と正極との間に介在しているセパレータを含む。例えば、セパレータが負極と正極との間に介在している状態で積層されてスタック型又はスタック/フォールディングの構造体を形成したり、巻き取られてジェリー-ロールタイプの構造体を形成したりし得る。併せて、ジェリー-ロール構造体を形成したとき、負極と正極とが互いに接し合うことを防ぐために、外側にセパレータがさらに配置され得る。
【0131】
本発明のさらに他の態様は、前記電極組立体を含む電気化学素子に関するものである。前記電気化学素子は、電池ケースに電極組立体と電解質とが一緒に収容されているものであって、前記電池ケースとしては、パウチタイプや金属缶タイプなどこの技術分野において通常用いられるものであれば、特に制限なしに適宜なものが選択され得る。
【0132】
前記リチウム硫黄電池の形状は、特に制限されず、円筒状、積層状、コイン状など多種多様な形状を呈し得る。
【0133】
また、本発明は、前記リチウム硫黄電池を単位電池として含む電池モジュールを提供する。前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが求められる中大型デバイスの電源として使用可能である。
【0134】
前記中大型デバイスの例としては、電池的なモーターにより動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(plug-in hybrid electric vehicle、PHEV)などを含む電気車;電動自転車(E-bike)、電動スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
【0135】
以下、本発明の理解を深めるために好適な実施例を挙げるが、下記の実施例は単に本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範ちゅう及び技術思想の範囲内において多種多様な変更及び修正を加えることが可能であるということは当業者にとって明らかなことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属することも当然なことである。
【0136】
製造例
[硫黄-炭素複合体の製造]
CNT(カーボンナノチューブ、平均壁数6個)と硫黄とを一様に混合し、ボールミリングにより粉砕した後、155℃のオーブンに30分間放置して硫黄-炭素複合体を製造した。前記硫黄-炭素複合体100wt%中の硫黄の含量は、75wt%であった。前記CNTは、比表面積が約3000m2/gであり、気孔体積は約1.9cm3/gであった。また、前記CNTの気孔の孔径は、約0.5~0.75nmであった。
【0137】
[正極の製造]
前記製造例において得られた硫黄-炭素複合体を155℃において35分間熱処理した。用意されたアルミニウム薄膜(膜厚10μm)に前記熱処理された硫黄-炭素複合体を塗布した後、圧着して正極を製造した。製造された正極は、3mAh/cm2であり、気孔度は、60vol%であった。
【0138】
[電池の製造]
前記正極とともに、負極として35μmの膜厚のリチウム金属薄膜を併用した。
【0139】
電解質としては、LiN(CF3SO2)2(濃度:0.65M)、ジメトキシエタン(第2の溶媒)及び1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)(第1の溶媒)を常温(20℃~25℃)下で1:2:9のモル比で混合して用意した。
【0140】
具体的には、前記製造された正極と負極とを対面するように位置させ、これらの間にセパレータを介在させた後、前記製造された電解質を注入してリチウム硫黄電池を製造した。前記電池において、セパレータの第1の層は正極の正極活物質層と対面し、第2の層は負極の負極活物質と対面するようにした。前記電池において、正極及び負極は、それぞれ7枚が含まれて構成された。各実施例及び比較例において用いられたセパレータについては、下記の実施例1~実施例4及び比較例1~比較例4に記載し、下記の[表1]及び[表2]のようにまとめて示す。
【0141】
実施例1
第2の層としてのポリエチレン素材の多孔性フィルム(厚さ20μm、気孔度46vol%)と第1の層としてのポリエチレンテレフタレート素材の不織布(厚さ30μm、気孔度50vol%)とを用意し、これらを接合してセパレータを用意した。
【0142】
実施例2
第2の層としてのポリエチレン素材の多孔性フィルム(厚さ20μm、気孔度46vol%)と第1の層としてのポリエチレンテレフタレート素材の不織布(厚さ90μm、気孔度60vol%)とを用意し、これらを接合してセパレータを用意した。
【0143】
実施例3
第2の層としてのポリエチレン素材の多孔性フィルム(厚さ20μm、気孔度46vol%)と第1の層としての炭素ペーパー(厚さ120μm、気孔度75vol%)とを用意し、これらを接合してセパレータを用意した。
【0144】
実施例4
第2の層としてのポリエチレン素材の多孔性フィルム(厚さ20μm、気孔度46vol%)と第1の層としてのガラス繊維(厚さ300μm、気孔度50vol%)とを用意し、これらを接合してセパレータを用意した。
【0145】
比較例1
ポリエチレン素材の多孔性フィルム(厚さ20μm、気孔度46vol%)のみをセパレータとして用意した。
【0146】
比較例2
ポリエチレンテレフタレート素材の不織布(厚さ90μm、気孔度60vol%)のみをセパレータとして用意した。
【0147】
比較例3
ガラス繊維(厚さ300μm、気孔度75vol%)のみをセパレータとして用意した。
【0148】
比較例4
第2の層としてのポリエチレン素材の多孔性フィルム(厚さ20μm、気孔度46vol%)と第1の層としてのポリエチレン素材の多孔性フィルム(厚さ20μm、気孔度46vol%)とを用意し、これらを接合してセパレータを用意した。
【0149】
【0150】
【0151】
[評価]
本発明によるリチウム硫黄電池は、通常の電極を用いた電池のサイクリックボルタンメトリーと略同様の傾向を示しており、電池の駆動が円滑であった。
図1乃至
図4は、それぞれ順番に実施例1~実施例4の結果を示すものである。このことから、エネルギー密度の高い電池が製造可能であることを確認した。一方、二重層構造のセパレータが用いられていないか、あるいは、二重層構造のセパレータを用いるとしても、本発明による構成的な特徴が与えられていない比較例の電池は、電池の駆動が不可能であった。
図5乃至
図8は、それぞれ順番に比較例1~比較例4の結果を示すものである。
【0152】
粒径の測定方法
粒度分布測定装置(型番:Bluewave、製造社:マイクロトラック(Microtrac))を用いて、乾式方式によりD50に相当する粒径を測定した。炭素材料が凝集により2次粒子化されている場合には電子走査顕微鏡(型番:SEM、製造社:日本電子株式会社製)を用いて1次粒径を観察・測定した。
【0153】
気孔度の測定方法
TESA μ-hite装備を用いてセパレータの各多孔膜の膜厚を測定した。
【0154】
サイクリックボルタンメトリーの測定方法
サイクリックボルタンメトリーは、電圧範囲0.5V~4.0Vにおいて0.5mV/sの走査速度、3サイクルの条件下で測定した。
【0155】
前述した説明と従属項に開示されている特徴は、両方とも又は個別的に、そしてこれらの任意の組み合わせにより独立請求項において行われた開示の態様を多種多様な形態で実現する上で重要な要素となり得る。
【国際調査報告】