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特表2024-537360流体を加熱及び/又は冷却するための装置並びに空調システム
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  • 特表-流体を加熱及び/又は冷却するための装置並びに空調システム 図1
  • 特表-流体を加熱及び/又は冷却するための装置並びに空調システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】流体を加熱及び/又は冷却するための装置並びに空調システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 23/00 20060101AFI20241003BHJP
   B60H 1/03 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F25B23/00 Z
B60H1/03 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522285
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 DE2022200231
(87)【国際公開番号】W WO2023061538
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】102021211702.3
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522296653
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートモーティヴ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1, 30175 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス キルヒャー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン ユングベッカー
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA60
3L211DA49
(57)【要約】
本発明は、流体を加熱及び/又は冷却するための装置であって、それぞれの弾性熱量要素(41、42)を有する1つ以上のチャンバ(31、32)、作動ユニット(70)及び弁ユニット(80)を有し、流体は、チャンバを通して選択的に伝達される、装置に関する。本発明は、そのような装置を含む空調システムにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を加熱及び/又は冷却するためのデバイス(10)であって、
-1つ以上のチャンバ(31、32、33、34)と、
-1つ以上の弾性熱量要素(41、42、43、44)であって、各弾性熱量要素(41、42、43、44)は、チャンバ(31、32、33、34)と流体接触する、1つ以上の弾性熱量要素(41、42、43、44)と、
-前記弾性熱量要素(41、42、43、44)を交互に伸長及び緩和させるように構成される作動ユニット(70)と、
-前記チャンバ(31、32、33、34)又は前記複数のチャンバ(31、32、33、34)を通して流体を選択的に伝達するように構成される弁ユニット(80)と
を有するデバイス(10)。
【請求項2】
円に沿って配置される複数のチャンバ(31、32、33、34)を有する、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
前記チャンバ(31、32、33、34)は、前記流体の通過流方向に対して横方向の円形断面を有する、請求項1又は2に記載のデバイス(10)。
【請求項4】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、それぞれのチャンバ(31、32、33、34)内に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項5】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、それぞれのチャンバ(31、32、33、34)を取り囲み且つ/又は形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項6】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、ワイヤの形態又はワイヤ束の形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項7】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、細長い及び/又はロッド状の形態のものであり、且つ引張伸びを受ける、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項8】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、螺旋状の形態のものであり、及び/又は巻きばねの形態であり、且つねじり伸びを受ける、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項9】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、形状記憶材料から形成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項10】
前記作動ユニット(70)は、カムディスクの形態である、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項11】
-前記弁ユニット(80)は、冷却入口(83)及び冷却出口(85)を有し、
-前記弁ユニット(80)は、弾性熱量要素(41、42、43、44)の前記緩和中又は前記緩和の直後に、前記弁ユニット(80)が、前記弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触するチャンバ(31、32、33、34)を前記冷却入口(83)及び前記冷却出口(85)に接続するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項12】
-前記弁ユニット(80)は、加熱入口(82)及び加熱出口(84)を有し、
-前記弁ユニット(80)は、弾性熱量要素(41、42、43、44)の前記伸長中又は前記伸長の直後に、前記弁ユニット(80)が、前記弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触するチャンバ(31、32、33、34)を前記加熱入口(82)及び前記加熱出口(84)に接続するように構成される、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項13】
-前記弁ユニット(80)は、加熱入口(82)及び加熱出口(84)を有し、
-前記弁ユニット(80)は、第1の弾性熱量要素(41、42、43、44)及び第2の弾性熱量要素(41、42、43、44)の前記伸長中又は前記伸長の直後に、前記弁ユニット(80)が、前記第1の弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触する第1のチャンバ(31、32、33、34)を前記加熱入口(82)に接続し、前記弁ユニット(80)が、前記第1のチャンバ(31、32、33、34)を、前記第2の弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触する第2のチャンバ(31、32、33、34)に少なくとも部分的に接続し、及び前記弁ユニット(80)が前記第2のチャンバ(31、32、33、34)を前記加熱出口(84)に接続するように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項14】
-前記弁ユニット(80)は、冷却入口(83)及び冷却出口(85)を有し、
-前記弁ユニット(80)は、第1の弾性熱量要素(41、42、43、44)及び第2の弾性熱量要素(41、42、43、44)の前記緩和中又は前記緩和の直後に、前記弁ユニット(80)が、前記第1の弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触する第1のチャンバ(31、32、33、34)を前記冷却入口(83)に接続し、前記弁ユニット(80)が、前記第1のチャンバ(31、32、33、34)を、前記第2の弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触する第2のチャンバ(31、32、33、34)に少なくとも部分的に接続し、及び前記弁ユニット(80)が前記第2のチャンバ(31、32、33、34)を前記冷却出口(85)に接続するように構成される、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項15】
前記弁ユニット(80)は、前記作動ユニット(70)に回転連結される、請求項1~14のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項16】
前記弁ユニット(80)は、シャフト内に形成されている、スロット制御を受ける複数の流体チャネル(86、87)を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項17】
複数の弾性熱量要素(41、42、43、44)は、1つ、いくつか又は全ての前記チャンバ(31、32、33、34)内に配置される、請求項1~16のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のデバイス(10)を有する、自動車両のための空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を加熱及び/又は冷却するためのデバイス並びにそのようなデバイスを有する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの状況では、例えば、空気、水又はいくつかの他の流体などの流体は、意図した通りに冷却又は加熱される必要がある。例えば、自動車両の内部コンパートメントの温度は、外部温度とは独立に快適な内部コンパートメント環境を生成するために制御される。同じことは、例えば、居住用建物及び商業用建物に当てはまり、これらの建物は、典型的には、少なくとも冬に加熱され、特に夏の暑さが厳しい国では冷却もされる。
【0003】
今日、加熱機能及び冷却機能の両方を提供することが意図される場合、ヒートポンプの使用が典型的である。ヒートポンプは、典型的には、リザーバと共に機能し、熱をリザーバから引き出すか又は熱をリザーバ内に放出することができ、このリザーバは、温度が制御される領域の外側に位置する。ヒートポンプは、典型的には、冷却剤を使用し、冷却剤は、尽きる可能性があり、保守経費を生じさせ、設計に応じて冷却剤が逃げた場合に気候に有害となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、既知のデバイスと比較して代替の又はより良好な方法で設計された、流体を加熱及び/又は冷却するためのデバイスを提供することである。更に、そのようなデバイスを有する空調システムを提供することが本発明の目的である。これは、それぞれの主請求項の主題により、本発明に従って達成される。有利な構成は、例えば、それぞれの従属請求項において見出され得る。特許請求の範囲の内容は、明示的な参照により本明細書の内容に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、流体を加熱及び/又は冷却するためのデバイスに関する。デバイスは、1つ以上のチャンバを有する。デバイスは、1つ以上の弾性熱量要素を有し、各弾性熱量要素は、チャンバと流体接触する。デバイスは、弾性熱量要素を交互に伸長及び緩和させるように構成される作動ユニットを有する。デバイスは、1つのチャンバ又は複数のチャンバを通して流体を選択的に伝達するように構成される弁ユニットを有する。
【0006】
このようなデバイスは、様々な材料で生じる弾性熱量効果の使用を可能にする。この場合、材料は、伸長状態に応じて加熱され、それに応じて再び冷却もされる。したがって、周期的な伸長及び緩和により、熱が1つのリザーバから別のリザーバに意図した通りに伝達されることが可能になり、それにより意図した通りの加熱及び意図した通りの冷却も可能になる。この場合、典型的には、それぞれのチャンバを通して伝達されるのは、意図した通りに適宜加熱又は冷却され得る流体である。既知のヒートポンプとは対照的に、この場合には冷却剤が使用されず、それにより保守の影響が低減され、冷却剤の漏洩に起因する予想される損傷が回避される。
【0007】
流体は、具体的には、ガス状物質又は液体物質を意味するものと理解され得る。例えば、空気が加熱又は冷却され得るか、或いは水若しくは特別な冷却剤又は何らかの他の液体が加熱又は冷却され得る。
【0008】
チャンバは、特に、流体が加熱又は冷却される空間を意味するものとして理解され得る。
【0009】
弾性熱量要素は、特に、伸長状態に応じて加熱又は冷却される要素を意味するものとして理解されるべきである。したがって、弾性熱量要素は、周囲に熱を放出するか又は周囲から熱を吸収することができる。例が以下で更に言及される。
【0010】
作動ユニットは、特に、弁ユニットに機能的に連結され得る。例が以下で更に言及される。流体の選択的伝達は、具体的には、弁ユニットの現在の状態に応じて、流体が特定のチャンバを通して伝達されるか又は伝達されないことを意味するものと理解され得る。
【0011】
具体的には、本明細書で説明される実施形態により、デバイス内での弾性熱量要素の移動を不要にすることが可能である。したがって、これは、例えば、冷却機能から加熱機能への切替えがある場合、弾性熱量要素が他のチャンバに移動する場合ではない。これは、むしろ、選択的に冷却されるか又は選択的に加熱される流体がチャンバを通して伝達され、チャンバ内には、冷却又は加熱のそれぞれの所望のタスクを特に実施することができる弾性熱量要素が存在する場合である。
【0012】
具体的には、デバイスは、特に円に沿って配置され得る複数のチャンバを有し得る。しかしながら、他の構成も可能である。原則として、1つのみのチャンバの使用も可能である。
【0013】
チャンバは、特に流体の通過流方向に対して横方向の円形断面を有し得る。これにより、単純な実施形態が可能になる。しかしながら、原則として他の断面も可能である。
【0014】
一実施形態によれば、1つ、いくつか又は全ての弾性熱量要素は、それぞれのチャンバ内に配置される。換言すれば、そのような弾性熱量要素は、チャンバ内に位置し、チャンバは、流体が利用可能な空間を画定する。
【0015】
一実施形態によれば、1つ、いくつか又は全ての弾性熱量要素は、それぞれのチャンバを取り囲み且つ/又は形成する。このように、弾性熱量要素自体を使用して、それぞれのチャンバを完全に又は部分的に画定することができる。チャンバは、例えば、弾性熱量要素内で中空空間の形態であり得る。
【0016】
一実施形態によれば、1つ、いくつか又は全ての弾性熱量要素は、ワイヤの形態又はワイヤ束の形態である。そのようなワイヤは、特に細長くてもよい。ワイヤ束は、具体的には、複数の直接隣接するワイヤを凝集させたものであり得る。これにより、単純な方法で伸長及び緩和させることもできる単純な実施形態が可能になる。
【0017】
一実施形態によれば、1つ、いくつか又は全ての弾性熱量要素は、細長い及び/又はロッド状の形態のものであり、且つ便宜上、引張伸びを受ける。これにより、弾性熱量要素がそのそれぞれの長手方向に沿って伸長及び緩和されることが可能になる。
【0018】
一実施形態によれば、1つ、いくつか又は全ての弾性熱量要素は、螺旋状の形態のものであり、及び/又は巻きばねの形態であり、且つ便宜上、ねじり伸びを受ける。これにより、回転運動による伸長及び緩和が可能になり、それにより例えば設置空間の異なる利用又はより良好な利用が実現され得る。
【0019】
一実施形態によれば、1つ、いくつか又は全ての弾性熱量要素は、形状記憶材料から形成される。そのような形状記憶材料は、典型的には、伸長状態に応じた冷却及び加熱特性を有する。特に、ニッケル-チタン合金が使用され得る。例えば、少なくとも50%及び/又は最大60%のニッケル-チタン合金のニッケル比率が使用され得る。特に、55%のニッケル比率及びそれに応じて45%のチタン比率が使用され得る。そのような材料が典型的な設計にとって有利であることが判明している。しかしながら、他の対応する材料も可能である。
【0020】
作動ユニットは、特にカムディスクの形態であり得る。これは、単純な作動、すなわちカムディスクの回転状態に応じた弾性熱量要素の伸長及び緩和を可能にする。
【0021】
代わりに、例えばワイヤ束又はワイヤごとに、より一般的には弾性熱量要素ごとに及び/又はチャンバごとにそれぞれのアクチュエータを使用することも可能である。これにより、弾性熱量要素の別々の作動が可能になる。回転するカムディスクは、カムプロファイルを介して弾性熱量要素への距離の変化を周期的に伝達することができる。カムディスクの移動は、特に弁ユニットと同期され得る。
【0022】
弁ユニットは、特に冷却入口及び冷却出口を有し得る。弁ユニットは、特に、弾性熱量要素の緩和中又は緩和の直後に、弁ユニットが、弾性熱量要素と流体接触するチャンバを冷却入口及び冷却出口に接続するように構成され得る。これは、冷却入口に入り、冷却出口から再び出る、冷却される流体の意図した通りの冷却を可能にする。弾性熱量要素は、緩和すると、典型的には冷却され、その結果、周囲から熱を吸収することができる。これは、流体の冷却のために利用され得る。
【0023】
弁ユニットは、特に加熱入口及び加熱出口を有し得る。弁ユニットは、特に、弾性熱量要素の伸長中又は伸長の直後に、弁ユニットが、弾性熱量要素と流体接触するチャンバを加熱入口及び加熱出口に接続するように構成され得る。このように、加熱入口に入り、加熱出口から出る流体を意図した通りに加熱することができる。その結果、典型的な弾性熱量要素が伸長中に加熱され、したがって周囲に熱を放出することができるという効果が利用される。
【0024】
弁ユニットは、特に加熱入口及び加熱出口を有し得る。弁ユニットは、第1の弾性熱量要素及び第2の弾性熱量要素の伸長中又は伸長の直後に、弁ユニットが、第1の弾性熱量要素と流体接触する第1のチャンバを加熱入口に接続し、弁ユニットが、第1のチャンバを、第2の弾性熱量要素と流体接触する第2のチャンバに少なくとも部分的に接続し、及び弁ユニットが第2のチャンバを加熱出口に接続するように構成され得る。このように、流体のカスケード式加熱を実現することができ、それに応じて、言及した実施形態がカスケード形式であることも可能である。すなわち、それに応じて、複数のチャンバが相互接続されることも可能である。第1のチャンバは、第2のチャンバに完全に又は部分的にのみ流体的に接続され得る。部分的な接続とは、具体的には、それぞれのチャンバから出てきた流体のある部分が別のチャンバ内に伝達され、出てきた流体の別の部分が何らかの別の方法で使用されるか、例えば加熱出口に直接供給されるか又は何らかの別の方法で加熱のために使用されることを意味すると理解され得る。
【0025】
弁ユニットは、特に冷却入口及び冷却出口を有し得る。弁ユニットは、第1の弾性熱量要素及び第2の弾性熱量要素の緩和中又は緩和の直後に、弁ユニットが、第1の弾性熱量要素と流体接触する第1のチャンバを冷却入口に接続し、弁ユニットが、第1のチャンバを、第2の弾性熱量要素と流体接触する第2のチャンバに少なくとも部分的に接続し、及び弁ユニットが第2のチャンバを冷却出口に接続するように構成され得る。対応するカスケード接続も可能である。その結果、カスケード式冷却を提供することができ、加熱に関連して説明した実施形態が参照される。
【0026】
弁ユニットは、作動ユニットに回転連結され得る。少なくとも、これは、弁ユニットの回転する部分に当てはまり得る。これにより、作動ユニットと弁ユニットとの間の直接同期が可能になり、その結果、流体を常に正しいチャンバに伝達することが単純な方法で確実になる。
【0027】
弁ユニットは、特に、シャフト内に形成されている、スロット制御を受ける複数の流体チャネルを有し得る。これにより、接続部とチャンバとを単純な方法で接続することが可能になる。具体的には、接続部は、それぞれの回転角度に応じて実現される。
【0028】
特に、いずれの場合にも、複数の弾性熱量要素は、1つ、いくつか又は全てのチャンバ内に配置され得る。このようにして、加熱及び冷却効果を強化することができる。しかしながら、それぞれの弾性熱量要素を1つのみ使用することも可能である。
【0029】
本発明は、本明細書で説明されるデバイスを有する、自動車両のための空調システムに更に関する。デバイスに関して、本明細書で説明する全ての実施形態及び変形形態を参照することができる。空調システムは、特に、自動車両の内部コンパートメントの冷却及び加熱の両方のために構成され得る。しかしながら、これは、唯一の予想される用途ではない。例えば、住宅、航空機、船舶又は飲料水若しくは上水を冷却及び加熱する他の用途も考えられる。
【0030】
極めて一般的には、本明細書で説明されるデバイスは、代替的な概念を有するヒートポンプであると理解することができる。それは、静止状態及び移動状態の両方で加熱及び冷却することができる。それは、例えば、例えば自動車両のドライブトレイン内の更なる構成要素を加熱及び/又は冷却するためにも使用され得る。
【0031】
本明細書で説明される弁ユニットを省略して、代わりに弾性熱量要素を移動させる実施形態では、特に、冷たい媒体が低温で高い粘度を有する可能性があること及び弾性熱量要素が媒体中での移動を介して追加の負荷(流動抵抗)を受けることが分かっている。本明細書で説明されるデバイスでは、弾性熱量要素は、対照的に静止し、適切なチャンバを通して意図した通りに媒体のみが移動するか又は伝達される。
【0032】
具体的には、弾性熱量要素は、それぞれの別々のフローチャネル内で静止する。弾性熱量要素は、例えば、メインシャフトに締結され得、且つ回転され得るカムディスクによって周期的に伸長及び緩和され得る。冷たい媒体又は暖かい媒体をチャネルの弾性熱量要素に回転しながら周期的に適用するスロット制御手段は、メインシャフト上において、特に吸入及び排出領域に位置し得る。具体的には、1回転ごとに1回の冷たい用途及び1回の暖かい用途、すなわち対になった用途を実現することができる。1回転ごとに複数の暖かい/冷たいサイクルがあることも可能である。
【0033】
同様に回転可能シャフトに締結され得るカムディスクは、弾性熱量要素又はワイヤへの距離を付与することができる。これは、具体的には、これらが場合により動力伝達要素を介して周期的に伸長及び緩和され得ることを意味し得る。典型的には、弾性熱量要素は、冷たいチャネル内で緩和し、暖かいチャネル内で伸長する。暖かい媒体又は冷たい媒体が弾性熱量要素の周辺を流れた厳密な瞬間に延伸及び緩和の過程が生じることが絶対に必須というわけではない。流れの回り込みが僅かな遅延を伴って生じる場合もある。
【0034】
有利には、フローチャネル自体が弾性熱量要素を形成し得る。次いで、流れは、弾性熱量要素の内部を通して伝達され得る。
【0035】
厳密に軸方向に平行な流れの通過が絶対に必須というわけではなく、半径方向への流れの回り込み又は組み合わせも可能である。チャネルごとに複数の弾性熱量要素が存在することが考えられる。典型的には、その中に弾性熱量要素又はワイヤが位置する少なくとも1つのフローチャネルが提供される。
【0036】
出ていく暖かい媒体の一部は、暖かい媒体の流入内に方向転換され得る。また、出ていく暖かい媒体の一部は、暖かい媒体の流入内に伝達され得る。これは、弁を介して調節可能な方法で制御され得るか、又は流れ断面積により固定された方法で制御され得る。機械内への流入のスロット制御を実施する静的伝達要素では、流入及び流出を制御することが可能であり、したがって機械を通る媒体のマスフローを制御する要素が導入され得る。
【0037】
特に、本明細書で説明される実施形態は、電力及び効率の追加的な調節可能性及び回転運動によるワイヤへの負荷を回避するという利点をもたらす。本明細書で説明されるデバイスは、原則として、何らかのものが加熱及び/又は冷却されるべきである大部分のいかなる場所でも使用され得る。
【0038】
全体として、冷却剤が不必要であるという利点の他に、冷却剤ベースのヒートポンプの場合よりも高い効率を実現できることも分かった。
【0039】
添付の図面を参照して後述する例示的な実施形態を読むことで更なる特徴及び利点が当業者によって見出されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】例示的実施形態によるデバイスを側面断面図で示す。
図2】デバイスの概略平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明の例示的な実施形態による加熱流体及び冷却流体のためのデバイス10を示す。図2は、同じデバイス10の詳細を純粋に概略的な平面図で示す。
【0042】
デバイス10は、ハウジング20を有する。ハウジングは、デバイス10の外側を取り囲み、その内部に位置する要素を画定する。複数の機能を有する中央シャフト15は、ハウジング20内に回転可能に取り付けられ、これについて後述する。
【0043】
ハウジング20内に複数のチャンバが形成され、図1には第1のチャンバ31及び第2のチャンバ32が示されている。デバイス10は、第3のチャンバ33及び第4のチャンバ34も追加的に有する。これらのチャンバは、図2では概略平面図で示され、これらが円に沿って配置されることも分かる。これは、例示的実施形態を構成し、チャンバの他の数及びチャンバの他の構成も可能である。
【0044】
第1のチャンバ31内に第1の弾性熱量要素41が配置される。第2のチャンバ32内に第2の弾性熱量要素42が配置される。対応する第3及び第4の弾性熱量要素43、44も更なるチャンバ33、34内に配置され、それらの機能は、第1及び第2の弾性熱量要素41、42に関して後述する機能と同一である。
【0045】
この場合、弾性熱量要素41、42は、細長い形状、すなわちロッド形状又はワイヤ形状である。弾性熱量要素は、垂直に延び、弾性熱量効果を呈する形状記憶材料から形成される。これは、具体的には、弾性熱量要素は伸長するときに加熱され、緩和するときに冷却されることを意味する。
【0046】
チャンバ31、32の下方には、それぞれの供給ライン51、52が配置される。チャンバの上方には、それぞれの排出ライン61、62が配置される。これらは、弁ユニット80に接続する役割を果たし、これについて更に以下でより詳細に論じる。
【0047】
シャフト15の上部に作動ユニット70が配置される。これは、この場合、カムディスクの形態であり、1つのカム71が示されている。作動ユニット70又はそれぞれのカム71と弾性熱量要素41、42との間に配置されるのは、いずれの場合にも1つのスペーサ要素75である。スペーサ要素75により、カム71から弾性熱量要素41、42に力が伝達される。したがって、カムディスクの形態であり、距離の変化が予め定められた作動要素70の回転により、弾性熱量要素41、42は、周期的に反復する方法で伸長され、且つ再び緩和される。このように、上述した弾性熱量効果が引き起こされる。すなわち、弾性熱量要素41、42は、伸長状態に応じて周期的に加熱され、且つ応じて再び冷却される。特に、スペーサ要素75は、常に接続を有するように作動ユニット70に接続され得る。予想される実施形態によれば、弾性熱量要素41、42が上向きの力を印加することによりスペーサ要素75を作動ユニット70に当接させるように、弾性熱量要素41、42を構成することも可能である。しかしながら、他の実施形態も可能である。カムディスクの代替として、例えば、円に沿って並ぶアクチュエータも考えられる。
【0048】
デバイス10は、上述した弁ユニット80を更に有し、その機能について以下で論じる。弁ユニット80は、静止要素81を有し、静止要素は、上部側及び底部側の両方に形成され、後述する入口及び出口が形成される。
【0049】
加熱入口82及び冷却入口83は、底部側に形成される。加熱される流体は、加熱入口82内に導入され得る。冷却される流体は、冷却入口83内に導入され得る。加熱出口84及び冷却出口85は、上部側に形成される。加熱される流体は、加熱入口82を通して導入され得、加熱出口84を通して再び出る。冷却される流体は、冷却入口83を通して導入され得、冷却出口85を通して再び出る。デバイス10の適切な使用のために、冷却及び加熱される流体のためのラインが、この目的のために提供される接続部、すなわち入口及び出口に接続されれば十分である。
【0050】
シャフト15内には、スロット制御を受ける下側流体チャネル86及びスロット制御を受ける上側流体チャネル87が形成される。これらのチャネルは、シャフト15の角度位置に応じて入口82、83及び出口84、85と流体接触し、その結果、伸長に起因して加熱された又は加熱される弾性熱量要素41、42、43、44が、加熱される流体と接触し、緩和に起因して冷却される弾性熱量要素41、42、43、44が、冷却される流体と接触するように、チャネルがチャンバ31、32、33、34に接続される。このようにして、弾性熱量要素41、42、43、44の位置変化をなくすことができ、むしろ言及した流体制御により、流体が必要に応じて加熱又は冷却されることが確実になる場合である。
【0051】
冷却出口85からの冷却媒体の一部を冷却入口83に再び供給する接続部は、冷却出口85と冷却入口83との間に永続的又は一時的に存在し得る。一時的な接続部の場合、接続部は、特に伸長及び緩和サイクルと特に同期され得る。
【0052】
例えば、理解を容易にするために、特許請求の範囲及び本明細書の記述において、各特徴が組み合わされて記述されることがあるが、これらの特徴を互いに別々に使用し得ることが指摘されるべきである。そのような特徴が互いに独立して他の特徴又は特徴の組み合わせと組み合わされ得ることも当業者は理解するであろう。
【0053】
従属請求項における依存関係の参照は、それぞれの特徴の好ましい組み合わせを特徴付けることができるが、他の特徴の組み合わせを除外するものではない。
【符号の説明】
【0054】
10 デバイス
15 シャフト
20 ハウジング
31、32、33、34 チャンバ
41、42、43、44 弾性熱量要素
51、52 供給ライン
61、62 排出ライン
70 作動ユニット
71 カム
80 弁ユニット
81 静止要素
82 加熱入口
83 冷却入口
84 加熱出口
85 冷却出口
86 下側流体チャネル
87 上側流体チャネル
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を加熱及び/又は冷却するためのデバイス(10)であって、
-1つ以上のチャンバ(31、32、33、34)と、
-1つ以上の弾性熱量要素(41、42、43、44)であって、各弾性熱量要素(41、42、43、44)は、チャンバ(31、32、33、34)と流体接触する、1つ以上の弾性熱量要素(41、42、43、44)と、
-前記弾性熱量要素(41、42、43、44)を交互に伸長及び緩和させるように構成される作動ユニット(70)と、
-前記チャンバ(31、32、33、34)又は前記複数のチャンバ(31、32、33、34)を通して流体を選択的に伝達するように構成される弁ユニット(80)と
を有するデバイス(10)。
【請求項2】
円に沿って配置される複数のチャンバ(31、32、33、34)を有する、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
前記チャンバ(31、32、33、34)は、前記流体の通過流方向に対して横方向の円形断面を有する、請求項1又は2に記載のデバイス(10)。
【請求項4】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、それぞれのチャンバ(31、32、33、34)内に配置される、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項5】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、それぞれのチャンバ(31、32、33、34)を取り囲み且つ/又は形成する、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項6】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、ワイヤの形態又はワイヤ束の形態である、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項7】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、細長い及び/又はロッド状の形態のものであり、且つ引張伸びを受ける、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項8】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、螺旋状の形態のものであり、及び/又は巻きばねの形態であり、且つねじり伸びを受ける、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項9】
1つ、いくつか又は全ての前記弾性熱量要素(41、42、43、44)は、形状記憶材料から形成される、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項10】
前記作動ユニット(70)は、カムディスクの形態である、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項11】
-前記弁ユニット(80)は、冷却入口(83)及び冷却出口(85)を有し、
-前記弁ユニット(80)は、弾性熱量要素(41、42、43、44)の前記緩和中又は前記緩和の直後に、前記弁ユニット(80)が、前記弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触するチャンバ(31、32、33、34)を前記冷却入口(83)及び前記冷却出口(85)に接続するように構成される、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項12】
-前記弁ユニット(80)は、加熱入口(82)及び加熱出口(84)を有し、
-前記弁ユニット(80)は、弾性熱量要素(41、42、43、44)の前記伸長中又は前記伸長の直後に、前記弁ユニット(80)が、前記弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触するチャンバ(31、32、33、34)を前記加熱入口(82)及び前記加熱出口(84)に接続するように構成される、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項13】
-前記弁ユニット(80)は、加熱入口(82)及び加熱出口(84)を有し、
-前記弁ユニット(80)は、第1の弾性熱量要素(41、42、43、44)及び第2の弾性熱量要素(41、42、43、44)の前記伸長中又は前記伸長の直後に、前記弁ユニット(80)が、前記第1の弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触する第1のチャンバ(31、32、33、34)を前記加熱入口(82)に接続し、前記弁ユニット(80)が、前記第1のチャンバ(31、32、33、34)を、前記第2の弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触する第2のチャンバ(31、32、33、34)に少なくとも部分的に接続し、及び前記弁ユニット(80)が前記第2のチャンバ(31、32、33、34)を前記加熱出口(84)に接続するように構成される、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項14】
-前記弁ユニット(80)は、冷却入口(83)及び冷却出口(85)を有し、
-前記弁ユニット(80)は、第1の弾性熱量要素(41、42、43、44)及び第2の弾性熱量要素(41、42、43、44)の前記緩和中又は前記緩和の直後に、前記弁ユニット(80)が、前記第1の弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触する第1のチャンバ(31、32、33、34)を前記冷却入口(83)に接続し、前記弁ユニット(80)が、前記第1のチャンバ(31、32、33、34)を、前記第2の弾性熱量要素(41、42、43、44)と流体接触する第2のチャンバ(31、32、33、34)に少なくとも部分的に接続し、及び前記弁ユニット(80)が前記第2のチャンバ(31、32、33、34)を前記冷却出口(85)に接続するように構成される、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項15】
前記弁ユニット(80)は、前記作動ユニット(70)に回転連結される、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項16】
前記弁ユニット(80)は、シャフト内に形成されている、スロット制御を受ける複数の流体チャネル(86、87)を有する、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項17】
複数の弾性熱量要素(41、42、43、44)は、1つ、いくつか又は全ての前記チャンバ(31、32、33、34)内に配置される、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項18】
請求項1に記載のデバイス(10)を有する、自動車両のための空調システム。
【国際調査報告】