(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ピエゾ電気式の駆動部
(51)【国際特許分類】
A61C 17/22 20060101AFI20241024BHJP
A46B 13/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61C17/22 A
A46B13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525277
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022080297
(87)【国際公開番号】W WO2023073217
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515148387
【氏名又は名称】キュラデン・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ブライトシュミット・ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ランター・ヨシュア
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA07
3B202AA16
3B202AB26
3B202BE09
3B202CA02
(57)【要約】
身体ケア機器用の駆動ユニットを備えるグリップにおいて、駆動ユニットは、駆動運動を発生させるピエゾ電気式の駆動部(100)を有している。ピエゾ電気式の駆動部(100)は、第1の端部と第2の端部とを有するピエゾ電気式の素子(120)を備え、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施され、その結果、第1及び第2の端部間の間隔が変化する。ピエゾ電気式の素子(120)には、第1のばねヨーク(110)が、ばねヨークの第1の端部がピエゾ電気式の素子の第1の端部に固定されており、かつばねヨークの第2の端部がピエゾ電気式の素子の第2の端部に固定されており、これにより長さ変化がY方向での第1のヨークストロークに変換されているように取着されている。ばねヨーク(110)の中央の領域において、第1のヨークストロークを取り出すべく、結合要素(130)が取り付けられており、結合要素(130)は、駆動運動を身体ケア機器に伝達する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体ケア機器用、特にスキンケア及びデンタルケア用の清掃機器用の駆動ユニットを備えるグリップであって、前記駆動ユニットは、駆動運動を発生させるピエゾ電気式の駆動部(100)を有し、前記ピエゾ電気式の駆動部(100)は、
a)第1の端部と第2の端部とを有するピエゾ電気式の素子(120)を有し、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施され、その結果、第1及び第2の端部間の間隔が変化し、
b)前記ピエゾ電気式の素子(120)には、第1のばねヨーク(110)が、前記ばねヨークの第1の端部が前記ピエゾ電気式の素子の前記第1の端部に固定されており、かつ前記ばねヨークの第2の端部が前記ピエゾ電気式の素子の前記第2の端部に固定されており、これにより前記長さ変化がY方向での第1のヨークストロークに変換されているように取着されており、
c)前記ばねヨーク(110)の中央の領域において、前記第1のヨークストロークを取り出すべく、結合要素(130)が取り付けられており、前記結合要素(130)は、前記駆動運動を前記身体ケア機器に伝達する、
グリップ。
【請求項2】
偏向伝動機構を備え、前記ピエゾ電気式の素子(120)の前記長さ変化は、前記偏向伝動機構を介して、回転可能なシャフト(140)、特にブラシヘッド用のシャフトの回転運動に変換されており、前記シャフトは、特に前記X方向に配向されていることを特徴とする、請求項1に記載のグリップ。
【請求項3】
身体ケア機器用、特にスキンケア及びデンタルケア用の清掃機器用の駆動ユニットを備えるグリップであって、前記駆動ユニットは、ピエゾ電気式の素子(120)を有し、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施され、かつ偏向伝動機構を有し、前記ピエゾ電気式の素子(120)の前記長さ変化は、前記偏向伝動機構を介してブラシヘッド用のシャフト(140)の回転運動に変換されており、前記シャフトは、特に前記X方向に配向されている、グリップ。
【請求項4】
前記偏向伝動機構は、前記ピエゾ電気式の素子(120)に第1のばねヨーク(110)を有し、これにより、前記長さ変化は、Y方向での第1のヨークストロークに変換可能であり、かつ前記第1のばねヨーク(110)は、結合要素(130)を介して、前記第1のヨークストロークが前記シャフト(140)の回転運動に変換可能であるように前記シャフト(140)に結合されていることを特徴とする、請求項3に記載のグリップ。
【請求項5】
前記結合要素(130)は、堅固に前記シャフト(140)に偏心的に結合されていることを特徴とする、請求項2又は4に記載のグリップ。
【請求項6】
前記結合要素(130)は、ばね、好ましくは、ばね薄板を有することを特徴とする、請求項5に記載のグリップ。
【請求項7】
前記シャフト(140)は、ブラシヘッドのアダプタ内に導入するピンセクションを有することを特徴とする、請求項5又は6に記載のグリップ。
【請求項8】
前記シャフト(140)の前記回転運動は、100ヘルツ~500ヘルツ、好ましくは、180ヘルツ~300ヘルツの振動数を有する振動運動であることを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載のグリップ。
【請求項9】
スイッチを備え、前記スイッチは、前記シャフトのX方向でのリニアな振動運動を発生させることを特徴とする、請求項3から8のいずれか一項に記載のグリップ。
【請求項10】
回転運動を発生させる、特に回転振動を発生させるピエゾ電気式の駆動部(100)であって、ピエゾ電気式の素子(120)を備え、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施され、前記ピエゾ電気式の素子(120)には、第1のばねヨーク(110)が、前記長さ変化がY方向での第1のヨークストロークに変換されているように取着されており、前記第1のばねヨーク(110)は、結合要素(130)を介して、回転可能なシャフト(140)に、前記第1のヨークストロークが前記シャフト(140)の回転運動に変換されているように結合されており、かつ前記シャフト(140)は、回転軸線を有し、前記回転軸線は、前記x方向に対して平行な一平面内に位置する、好ましくは、前記X方向に対して平行に配向されている、ピエゾ電気式の駆動部(100)。
【請求項11】
前記第1のばねヨーク(110)とは反対側に、前記ピエゾ電気式の素子(120)に、第2のばねヨーク(111)が設けられていることを特徴とする、請求項10に記載のピエゾ電気式の駆動部(100)。
【請求項12】
前記第1のばねヨーク(110)は、特に、前記第1のばねヨーク(110)と、前記第2のばねヨーク(111)とは、2つの脚片を有し、前記脚片は、ベース面を囲い、前記ピエゾ電気式の素子(120)の長さは、前記ベース面より大きいことを特徴とする、請求項10又は11に記載のピエゾ電気式の駆動部(100)。
【請求項13】
前記ベース面は、前記X方向に対して平行に配向されていることを特徴とする、請求項12に記載のピエゾ電気式の駆動部(100)。
【請求項14】
前記結合要素(130)は、ばねを有することを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載のピエゾ電気式の駆動部(100)。
【請求項15】
前記ばねは、ばね薄板として形成されていることを特徴とする、請求項14に記載のピエゾ電気式の駆動部(100)。
【請求項16】
前記ばね薄板は、偏心的に前記シャフト(140)に堅固に結合されていることを特徴とする、請求項7に記載のピエゾ電気式の駆動部(100)。
【請求項17】
請求項1から9のいずれか一項に記載のグリップと、ブラシヘッドと、を備える身体ケア機器、特に音波歯ブラシ。
【請求項18】
前記シャフト(140)は、前記ブラシヘッドのアダプタ内に導入するピンセクションを有し、前記ピンセクションにより、特に前記ピンセクションによってのみ、前記シャフト(140)の振動は、清掃要素に、特に前記ブラシヘッドのブラシに伝達可能であることを特徴とする、請求項2との関連での請求項17に記載の身体ケア機器。
【請求項19】
前記アダプタ(120,220)と前記ピン(310)とは、前記ピン(310)が前記アダプタ(120,220)内に導入されると、回り止め及び/又はアダプタ軸線(221)内での固定が達成可能であるように形成されていることを特徴とする、請求項18に記載の身体ケア機器。
【請求項20】
前記アダプタ軸線(221)内での前記固定は、前記アダプタ(220)の係止ノーズ(222)により形成されており、前記係止ノーズ(222)は、前記ピン(310)の溝(312)内に係止可能であることを特徴とする、請求項19に記載の身体ケア機器。
【請求項21】
前記回り止めは、前記ピン(310)の側方の扁平化部(311)により、かつ前記アダプタ(220)の対応する形状により形成されていることを特徴とする、請求項19又は20に記載の身体ケア機器。
【請求項22】
前記ピン(310)は、遠位の端部に、前記溝(312)に続いて、前記扁平化部(311)を有することを特徴とする、請求項19及び20に記載の身体ケア機器。
【請求項23】
前記ブラシヘッドは、ブラシネック(210)を有し、前記ブラシネック(210)は、遠位の領域に、配向軸線を有する清掃要素、特に歯の清掃用の複数のフィラメントを有し、
a)近位の領域に、前記ブラシヘッド(200)を振動発生器(300)に連結し、前記振動発生器(300)の振動を前記清掃要素に伝達する、アダプタ軸線(221)を有するアダプタ(220)を有する、
ことを特徴とする、請求項17から22のいずれか一項に記載の身体ケア機器であって、
b)前記アダプタ軸線(221)は、前記配向軸線(231)と、90°より大きい角度、好ましくは、91°~120°の角度、さらに好ましくは、95°~105°の角度、特に好ましくは、98°~102°の角度を形成する、
ことを特徴とする、身体ケア機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体ケア機器用の駆動ユニットを備えるグリップであって、駆動ユニットは、駆動運動を発生させるピエゾ電気式の駆動部を有し、ピエゾ電気式の駆動部は、ピエゾ電気式の素子を有し、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施される、グリップに関する。さらに本発明は、回転運動を発生させるピエゾ電気式の駆動部であって、ピエゾ電気式の素子を備え、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施される、ピエゾ電気式の駆動部に関する。
【背景技術】
【0002】
清掃要素がモータにより動かされる歯ブラシは、以前から知られている。駆動部として、とりわけ電気モータ、電磁石及びピエゾ電気式の素子が使用される。研究は、いわゆる電動歯ブラシにより、手動歯ブラシに比して、大幅に良好な清掃作用が達成可能であることを示している。
【0003】
様々な種類の電気式に駆動される歯ブラシが存在する。
【0004】
特許文献1、特許文献2、特許文献3等の刊行物から、毛方向に対して平行な軸線回りに回転することができ、この軸線回りに往復動される円いブラシヘッドの原理が公知である。このアッセンブリの利点は、動かされる部分(すなわち、円いブラシヘッド)が極めて小さいことである。この小さな部分は、多くの駆動エネルギを必要とせず、生じる力(トルク)は、小さいという傾向がある。この原理の欠点は、毛運動が回転軸線に対する距離に依存していることにある。毛がブラシヘッドの軸線に対して近ければ近いほど、往復運動は小さくなってしまう。この運動パターンは、つまり、毛領域にわたって極めて不均一に分布している。
【0005】
特許文献4、特許文献5、特許文献6等の刊行物からは、揺動運動の原理が公知である。この場合、ブラシは、揺動軸線を中心に揺動し、揺動軸線は、手持ち器具(駆動部)及び載置されたブラシに対して垂直であり、かつ手持ち器具及びブラシの長手方向延在軸線と、ブラシを手持ち器具に連結するところで交差している。利点は、運動強度が毛領域全体にわたって均一に分布していることである。すべての毛は、すなわち、程度の差こそあれ同じ間隔を揺動軸線から有している。欠点は、しかし、ブラシヘッドの質量が比較的遠く揺動軸線から離れているため、比較的大きな力(モーメント)が生じてしまうことにある。
【0006】
特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11等の刊行物からは、筐体バイブレーションの原理が公知である。手持ち器具内又はブラシネック内に設けられた駆動部が、詳しくは規定されないバイブレーションを発生させ、バイブレーションは、毛に伝達される。この設計の利点は、運動伝達の技術的な詳細に煩わされずに済むことである。欠点は、しかし、筐体全体をバイブレーションさせなければならず、かつ相応に、小さな部分をバイブレーションさせるだけで済む場合と比較して、多くの駆動エネルギを必要としてしまうことである。加えて、バイブレーションは、強すぎると、手持ち器具を保持したときの快適性を損なわせることになるため、強すぎてはならない。つまるところ、毛の効果的な運動は、不明であり、規定されても、コントロールされてもいないバイブレーションによるこの種の清掃の作用は、とても最適とは言い難い。
【0007】
1つの別の原理は、特許文献12、特許文献13等の刊行物において公知である。ここでは、手持ち器具は、連結ピンを有し、連結ピンは、長手方向軸線回りに往復回転する。連結ピン上に載置されたブラシは、真っ直ぐなネックを有し、端部には毛プレートを有し、毛プレートからは、毛が手持ち器具あるいはブラシネックの長手方向軸線に対して横方向で立っている。この幾何学形状の利点は、アタッチメントブラシの質量(ネック、毛プレート)が長手方向軸線(運動中心)の比較的近傍にあるので、生じる力(モーメント)が比較的僅かであることにある。運動強度も、比較的一様に毛領域にわたって分布している。この原理の欠点は、しかし、毛が1次元の運動(往復)しか実施しないことである。一方では、これにより、歯磨き剤のための発泡効果は、満足のいくものではなく、他方では、専門家によって手動歯ブラシとの関連で数十年来推奨されてきた、円を描くような、ひいてはやさしくもありながら、効率的でもある運動の利点は、失われてしまう。
【0008】
特許文献14は、圧電結晶の寸法変化が揺動ロッドの一方の端部により走査されることにより動かされる歯ブラシを示している。揺動ロッドは、ロッド方向に対して横方向の軸線回りに回転し得るので、揺動ロッドの反対側に位置する端部に設けられたブラシは、側方の揺動運動を実施する。
【0009】
圧電素子を備える公知の駆動部は、僅かな力/トルクしか実行可能でなく、その結果、毛領域に対する圧力が高められると、振幅が減じられ、これにより、他方、清掃性能が低下してしまうという欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE 10 2016 011477(Schiffer)
【特許文献2】欧州特許出願公開第2454967号明細書(Braun)
【特許文献3】国際公開第2005/046508号(Trisa)
【特許文献4】JP H04-43127(Kao)
【特許文献5】米国特許出願公開第2006168744号明細書(Butler)
【特許文献6】US 2012/0291212(Montagnino)
【特許文献7】JP 2012-161368(Sanion)
【特許文献8】独国実用新案第29913406号明細書(Rowenta)
【特許文献9】米国特許第6766548号明細書(Rowenta)
【特許文献10】国際公開第2005/046508号(Trisa)
【特許文献11】国際公開第2013/104020号(Erskine)
【特許文献12】国際公開第2012/151259号(Water Pik)
【特許文献13】欧州特許第2548531号明細書(Trisa)
【特許文献14】独国特許出願公開第4002199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、高められたトルクの点で優れた、駆動運動を発生させるピエゾ電気式の駆動部を備える、冒頭で挙げた技術分野に属する身体ケア機器用の駆動ユニットを備えるグリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
身体ケア機器用のグリップの第1の変化態様において、上記課題の解決手段は、請求項1の特徴により規定されている。本発明によれば、ピエゾ電気式の素子は、第1の端部と第2の端部とを有し、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施され、その結果、第1及び第2の端部間の間隔が変化する。ピエゾ電気式の素子には、第1のばねヨークが、ばねヨークの第1の端部がピエゾ電気式の素子の第1の端部に固定されており、かつばねヨークの第2の端部がピエゾ電気式の素子の第2の端部に固定されており、これにより長さ変化がY方向での第1のヨークストロークに変換されているように取着されている。ばねヨークの中央の領域において、第1のヨークストロークを取り出すべく、結合要素が取り付けられており、結合要素は、駆動運動を身体ケア機器に伝達する。
【0013】
駆動ユニットをこのように形成することは、これにより、特にトルクの強い駆動部が実現可能であるという利点を有している。さらに、これにより、特に単純な構造で、可動の部材の少ない頑強な駆動部が実現される。動かされる部材、特にばねヨークは、これにより、曲げが小さな角度変化で実施されるという点で優れている。これにより、急速な材料疲労は回避され得る。
【0014】
好ましくは、偏向伝動機構が設けられており、ピエゾ電気式の素子の長さ変化は、偏向伝動機構を介して、回転可能なシャフト、特にブラシヘッド用のシャフトの回転運動に変換されており、シャフトは、特にX方向に配向されている。好ましくは、これにより、ブラシヘッドは、ブラシヘッドの長手方向軸線に沿って回転され、これにより、ブラシは、ブラシ長手方向軸線回りの旋回運動を実施する。変化態様において、偏向伝動機構は省略されてもよい。この場合、ブラシヘッドは、直接的に結合要素に結合されていてもよく、これにより、ヨークストロークは、直接的にブラシヘッドの並進的な運動へ伝達される。
【0015】
別の一変化態様において、ブラシヘッドは、清掃要素軸線に対して平行回りに回転されてもよい。この回転軸線は、ブラシ、特に円いブラシの中心に配置されていてもよい。本変化態様において、ブラシ自体は、中心のブラシ軸線回りに回転される。他方、軸線は、清掃要素軸線に対して平行に配向され、かつブラシに対して離間されていてもよく、これにより、回転は、ブラシの揺動運動に変換されている。
【0016】
別の一変化態様において、ピエゾ電気式の素子の長さ変化は、好ましくは、直接的に(上記参照)、又は間接的にも、発振する長手方向運動へ伝達されてもよく、その結果、駆動運動により、身体ケア機器の長手方向運動が発生され得る。運動の間接的な伝達により、例えば好適な偏向伝動機構により、運動の振幅が最適化され得る。本変化態様において、長手方向運動は、好ましくは、Y方向に配向されている。これにより、ブラシは、特にY方向で前後動され得る。当業者にとって、しかし、例えば好適な偏向伝動機構によって、別の方向での長手方向運動が達成されてもよいことは、自明である。
【0017】
身体ケア機器用のグリップの第2の実施の形態において、上記課題の解決手段は、請求項3の特徴により規定されている。本発明によれば、グリップは、身体ケア機器用、特にスキンケア及びデンタルケア用の清掃機器用の駆動ユニットを備え、駆動ユニットは、ピエゾ電気式の素子を有し、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施され、かつ偏向伝動機構を有し、ピエゾ電気式の素子の長さ変化は、偏向伝動機構を介してブラシヘッド用のシャフトの回転運動に変換されており、シャフトは、特にX方向に配向されている。好ましくは、ピエゾ電気式の素子は、この第2の変化態様でも、第1の端部と第2の端部とを有し、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施され、その結果、第1及び第2の端部間の間隔が変化する。第1及び第2の端部間の間隔の変化により、ストロークが発生され得る。
【0018】
第2の実施の形態の一変化態様において、ブラシヘッドは、直接的にX方向で同軸にピエゾ電気式の素子に、X方向でのピエゾ電気式の素子の長さ変化が、X方向でのブラシヘッドの同じ長さ変化に至るように連結されている。運転中、これにより、ブラシヘッドの並進的な発振が発生される。
【0019】
第2の実施の形態の別の一変化態様において、ブラシヘッドは、揺動式に軸承されるブラシネックを有し、揺動式に軸承されるネックは、ピエゾ電気式の素子のストロークを介して揺動運動させられる。
【0020】
好ましい一実施の形態において、ばねヨークは、結合要素を介して、回転可能なシャフトに、第1のヨークストロークがシャフトの回転運動に変換されているように結合されている。
【0021】
ピエゾ電気式の素子の長さ変化は、ばねヨークを介して第1のヨークストロークに変換される。ヨークの好適な寸法設定により、これにより、ピエゾ電気式の素子の長さ変化の、ストローク運動への理想的な変換が実現され得る。これにより、一方では、シャフトを回転させるストロークが最適化され、他方では、シャフトのトルクが最適化され得る。揺動運動とは異なり、シャフトの回転により、動かされる質量あるいは質量の変位は、僅かに保たれることができ、これにより、省エネルギの駆動部が提供される。さらに、これにより、回転振動を発生させる特に迅速に動作制御可能な駆動部が提供され、これにより、他方、精緻なパルスが発生され得る(例えば矩形パルス、正弦振動等)。而して、例えば駆動部の用途に応じ、回転振動の様々な振動挙動が発生され得る。駆動部を歯ブラシとして使用する場合、これにより、例えば様々な清掃モードが設けられていることができる。
【0022】
ばねヨークは、様々な形態で実現可能である。原則、ばねヨークは、ばねヨークが形状的に弧を(例えば、曲げられたロッド又は曲げられたプレートの形態で)形成し、かつ力の作用を受けて弾性変形(すなわち、より強く湾曲)することを特徴とする。一方では、ばねヨークの特性は、ばねヨークの幾何学形状(さらに下記参照)を介して、他方では、材料選択を介して変更され得る。好ましくは、ばねヨークは、弧状のばねロッドとして、又は湾曲したばねリーフとして形成されている。特に好ましくは、ばねヨークは、U字形の要素を有している。U字形の要素は、好ましくは、両自由端部を介してピエゾ電気式の素子に、X方向でのピエゾ電気式の素子の長さ変化により、U字形の要素の自由端部間の間隔が変化するように結合されている。ばねヨークは、好ましくは、U字形を呈するばね弾性的な帯材形の材料を有している。
【0023】
好ましい一実施の形態において、ばねヨークは、全長にわたって一定の横断面寸法及び材料組成を有するばね弾性的な帯材形の材料から形成されている。これにより、特に低コストのばねヨークが提供される。而して、ばねヨークは、例えば帯材形の材料が例えばロールから切り出され、かつ曲げられることにより実現され得る。
【0024】
別の好ましい一実施の形態において、ばねヨークの中央の領域は、外側の領域よりも低いばね弾性的な特性を有している。これにより、結合要素の組み付けが簡単化される。加えて、中央の領域は、例えばより大きな材料厚さ(例えばより大きな横断面)を有していてもよい。中央の領域は、しかし、別の材料組成を有していてもよいし、又は製造プロセスにより、中央の領域のばね弾性的な特性が、ばねヨークの外側の領域とは相違しているように影響を及ぼされていてもよい(熱処理、材料除去による外側の領域における横断面変化、圧延工程による外側の領域における横断面変化等)。
【0025】
ピエゾ電気式の駆動部は、様々な目的のために使用可能である。例えば、これにより、歯ブラシヘッドが駆動可能である。歯ブラシヘッドは、駆動部により、軸線、例えば毛アダプタプレート(すなわち、歯ブラシのフィラメントが取り付けられているアダプタプレート)に対して垂直なかつ/又は平行な軸線回りに回転され得る。垂直な軸線回りの回転時、ブラシ体は、一方向で回転運動させられてもよい、又は発振されてもよい。毛アダプタプレートに対して平行な軸線回りのブラシヘッドの回転時、好ましくは、発振運動が発生され、このとき、軸線は、好ましくは、ブラシネックに対して平行に配向されており、その結果、ブラシ体は、旋回運動あるいは払拭運動を歯の上で実施する。さらにブラシヘッドは、典型的なブラシ体の他、いわゆるUブラシを有していてもよい。Uブラシは、その名の通り、U字形に形成されており、断面H字形を呈している。Uブラシは、このH字形の内部に毛を有している。この用途において、Uブラシは、歯の印象採得時のように口腔内に導入され、歯は、UブラシのH字形内に導入される。Uブラシは、続いて運動あるいはバイブレーションさせられ、その結果、毛は、歯に対して相対運動を実施し、而して歯を清掃する。原則、ここで言及するすべての駆動部は、Uブラシのバイブレーションにも使用可能である。
【0026】
さらに駆動部は、フェイスケア用の装置にも使用可能であり、ケア要素は、音波運動させられる。フェイスケア用の装置は、例えばフェイスクリーナ、ピーリング機器又はこれに類するものを包含し得る。
【0027】
本発明の別の課題は、高められたトルクの点で優れた、冒頭で挙げた技術分野に属する回転運動を発生させるピエゾ電気式の駆動部を提供することである。
【0028】
本発明により、ピエゾ電気式の駆動部は、ピエゾ電気式の素子を備え、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施され、ピエゾ電気式の素子には、第1のばねヨークが、長さ変化がY方向での第1のヨークストロークに変換されているように取着されており、第1のばねヨークは、結合要素を介して、回転可能なシャフトに、第1のヨークストロークがシャフトの回転運動に変換されているように結合されており、かつシャフトは、回転軸線を有し、回転軸線は、X方向に対して平行な一平面内に位置する、好ましくは、X方向に対して平行に配向されている。
【0029】
この駆動部は、身体ケア機器、特に歯ブラシでの用途の他、別の用途でも使用可能であり、特に、例えばマイクロテクノロジ、例えばドリルを回転させる穴あけ装置でも使用可能である。さらに駆動部は、研削装置又はこれに類するものを駆動するために使用可能である。駆動部は、さらにロボット工学におけるマイクロ駆動部として、例えば外科学用のグリッパ、運動駆動部、切断ツール等、又はこれに類するものとして使用可能である。駆動部は、例えば機械式の時計機構の駆動部としても使用可能である。当業者には、ピエゾ電気式の素子の長さ変化に由来する回転運動の本発明による発生が使用可能なさらなる用途が知られている。
【0030】
回転運動とは、特に1°より大きい、特に5°以下の、好ましくは、2°より大きい、特に3°以下の回転角度を有する軸線回りの運動と解される。振幅は、この場合、0°の静止位置あるいは中央位置に関する。特に好ましくは、回転運動は、振動運動、特に、例えば1°~5°、好ましくは、2°~3°の振幅を有する回転振動である。回転振動とは、例えば振り子時計の脱進機において知られている回転軸線回りの交互の回転と解される。これにより、例えば歯ブラシ用の駆動部として用途において、最適な清掃作用のためのブラシ体の特に効果的な運動が達成されることができ、例えば回転軸線は、歯ブラシのブラシネックに対して平行に、又は毛領域に対して直角(回転式歯ブラシ)に配向されている。変化態様において、回転角度は、しかし、5°未満であってもよい。
【0031】
結合要素は、ばねヨークの運動をシャフトに伝達する。このために結合要素は、心を外してシャフトに堅固に又は着脱自在に結合されている。回転角度は、この場合、ばねヨークのストロークと、結合要素の作用点の、シャフトの回転軸線に対する間隔と、に依存している。ばねヨークのストロークは、例えば、結合要素の作用点の、シャフトの回転軸線に対する間隔の2倍に相当していてもよく、これにより、クランク機構が実現され、クランク機構では、シャフトの連続的な回転が達成され得る。別の一変化態様において、ストロークは、より小さく選択されていてもよく、これにより、シャフトの発振運動が達成され得る(下記参照)。
【0032】
好ましくは、ピエゾ電気式の素子の長さ変化は、特に歯ブラシにおける用途では、50~500マイクロメートル、特に好ましくは、100~300マイクロメートル、特に好ましくは、150~250マイクロメートルの範囲内にある。一方では、大きな長さ変化により、相応に大きなヨークストロークが達成され得る。他方では、より大きな長さ変化により、ピエゾ電気式の素子も、より大きく寸法設定されており、このことは、他方、コンパクトな構造形式に逆行する。而るに、長さ変化の上記範囲により、構造サイズと性能との間の理想的な折衷が達成され得ることがわかっている。
【0033】
好ましくは、シャフトは、回転軸線を有し、回転軸線は、x方向に対して平行な一平面内に位置する、好ましくは、X方向に対して平行に配向されている。ピエゾ電気式の素子は、典型的には、長さ変化の方向で最大の寸法を有している。同じく典型的には、シャフトは、シャフト軸線の方向で最大の寸法を有している。平行な配向により、駆動部のこれらの両構成部材は、僅かな容積内に格納されることができ、これにより、特にコンパクトな駆動部が実現される。
【0034】
変化態様において、シャフトと、ピエゾ電気式の素子とは、異なって配置されていてもよい。特に歯ブラシにおける駆動部の用途の場合、結合要素の、回転軸線に対して斜めの配置により、ブラシヘッドの例えばZ運動が達成され得る。
【0035】
好ましくは、第1のばねヨークとは反対側に、ピエゾ電気式の素子に、第2のばねヨークが設けられている。第2のばねヨークの第2のヨークストロークは、好ましくは、第1のばねヨークの第1のヨークストロークの方向に配向されている。これにより、第1のヨークストロークと第2のヨークストロークとの合計としての、ストロークの最大の拡大が達成される。さらに、ピエゾ電気式の素子に対する曲げ力は、回避され得る。正確に1つのばねヨークを有する実施の形態では、好ましくは、ピエゾ電気式の素子が、回転可能なシャフトに対して相対的に位置固定に配置されているのに対し、互いに反対側に位置する2つの、特に鏡面対称に配置されるばねヨークを有する実施の形態では、第2のばねヨーク、より正確にいえば、第2のばねヨークの一部領域が、回転可能なシャフトに対して相対的に位置固定に配置されている。当業者にとって、正確に1つのばねヨークを有する実施の形態において、ピエゾ電気式の素子の代わりに、第1のばねヨークの一部領域が、回転可能なシャフトに対して相対的に位置固定に配置され、かつピエゾ電気式の素子が、結合要素を介して、回転可能なシャフトに結合されていてもよく、これにより、ピエゾ電気式の素子の長さ変化により、ヨークストロークを介して、ピエゾ電気式の素子自体が、回転可能なシャフトに対して相対的に動かされることは、自明である。本変化態様において、ばねヨークは、間接的に(ピエゾ電気式の素子を介して)、結合要素を介して、回転可能なシャフトに結合されている。好ましくは、正確に1つのばねヨークを有する実施の形態では、しかし、ばねヨークは、直接的に結合要素に結合されている。
【0036】
変化態様において、第2のばねヨークは、別の方向に配向されていてもよい。第1のヨークストロークの方向と、第2のヨークストロークの方向とは、例えば90°の角度又は45°の角度を形成し得る。これにより、単一のピエゾ電気式の素子により、異なる方向での複数のストロークが達成されることができ、これにより、単一のピエゾ電気式の素子により、複数のシャフトが、回転運動させられ得る。
【0037】
変化態様において、第2のばねヨークも省略可能である。これにより、ピエゾ電気式の素子は、X方向に対して横方向で固定されることができ、これにより、駆動部は、より単純に、かつより低コストに構成され得る。第1のばねヨークは、さらなるばねヨークなしに、所望のストロークが達成され得るように寸法設定されていてもよい。
【0038】
好ましくは、第1のばねヨークは、2つの脚片を有し、脚片は、ベース面を囲い、ピエゾ電気式の素子の長さは、ベース面より大きい。ばねヨークは、これにより、ピエゾ電気式の素子とともに、好ましくは、台形、特に好ましくは、等脚台形の形状を呈し、ベース面は、ピエゾ電気式の素子あるいはX方向に対して平行に延びている。
【0039】
ピエゾ電気式の素子の長さxと、ベース面cと、両脚片bと、に基づくストローク量hは、以下のように算出される(剛体の脚片と剛体のベース面とを有する理想化されたばねヨークの場合):
【数1】
【0040】
ベース面cは、ストロークにとって重要ではないが、結合要素との結合のためのベースとして有用である。原則、これによりベース面も省略可能である。
【0041】
【0042】
変化率は、これにより、h(x)が0に近付くにつれ、大きい。このことは、x-cが2bに近付くケース、あるいはベース面を差し引いたピエゾ電気式の素子の長さが、下から両脚片の2倍の長さに近付くケースである。これにより、ばねヨークにより、特にコンパクトな構造形式で、最大のヨークストロークが達成され得る。ベース面cが小さく選択されると、明らかに、大きなヨークストロークにとって有利である。
【0043】
しかし、回転運動のトルクにより高いウェイトを置くことが望ましいときは、両脚片がより大きく選択されてもよい。
【0044】
原則、脚片は、必ずしも真っ直ぐである必要はなく、別の形状を呈していてもよい(曲げられている等)。重要なのは、脚片と脚片との間、及び脚片とピエゾ電気式の素子との間の旋回点である。さらに台形形状も省略可能である。その代わりに、弧形の要素又はこれに類するものが、ばねヨークとして設けられていてもよい。
【0045】
好ましくは、ばねヨークは、鋼から形成されている。変化態様において、ばねヨークは、プラスチック又は複合材料から製作されていてもよい。
【0046】
好ましくは、ベース面は、X方向に対して平行に配向されている。2つの脚片の長さが同じである場合、これにより、X方向に対して直角なヨークストロークが達成される。これにより、特に簡単に回転運動に変換可能な直線状のストロークが達成される。
【0047】
変化態様において、ベース面は、X方向に対してゼロではない角度を形成してもよい。これにより、より複雑な運動、例えばZ運動が発生されることができ、この運動は、特に歯ブラシとしての用途において良好な清掃結果に至り得る。
【0048】
好ましくは、結合要素は、ばねを有している。ばねにより、振動挙動が補助され得る。ばねは、外部からシャフトに作用する力が、ばねにより吸収されることができ、これにより駆動部の負担が軽減され得るという利点ももたらす。さらに、これにより、ピエゾ電気式の素子により発生される振動が、変調されることができ、これにより、歯ブラシとしての用途において、ブラシヘッドのよりやさしい運動(より低い加速度)が達成され得る。
【0049】
変化態様において、結合要素は、剛体に形成されていてもよい。さらにヨークストロークは、別の方法で、例えば歯車/ラック結合を介して、シャフトの回転運動へ伝達されてもよい。さらにシャフトは、ぜんまいばねにより付勢されてもよく、これにより、回転は、ヨークストロークの引っ張り力を介してのみ達成され得る。これにより結合要素は、フレキシブルな、かつ非弾性の要素(例えばコード)として形成されていてもよい。当業者には、さらなる可能性が知られている。
【0050】
好ましくは、ばねは、ばね薄板として形成されている。ばね薄板とは、ここでは、ばね弾性的な材料から、特に鋼又はこれに類するものからなるストリップ形の要素と解される。ばね薄板は、弛緩された状態で必ずしも平らに形成されている必要はなく、曲げられていてもよいし、ジグザグ形状を呈していてもよいし、又はそれとは異なって成形されていてもよい。形状及び材料選択を介して、ばね作用は、調整され得る。ばね薄板により、特に単純かつ低コストのばねが提供される。加えてばね薄板により、簡単に長手方向エッジを介して、シャフトとの結合が提供され得る。
【0051】
変化態様において、ばね薄板の代わりに、コイルばね、引っ張り弾性的な要素又はこれに類するものが使用されてもよい。
【0052】
ばね薄板は、好ましい実施の形態では、曲げられており、その結果、力は、両方向で良好に吸収され、かつ振動は、良好に伝達され得る。変化態様において、ばね薄板は、真っ直ぐであってもよい。
【0053】
好ましくは、結合要素は、ばね、特にばね薄板を有している。これにより、ヨークストロークの、回転運動への特に簡単な変換が達成される。シャフトの駆動部は、これにより、特に頑強となる。それというのも、ばねあるいはばね薄板は、外部からのインパルスを、ピエゾ電気式の駆動部を損傷させることなく、吸収し得るからである、ばねあるいはばね薄板は、このようなケースでは、エネルギ緩衝器として用いられ得る。ばねの使用は、さらに、可動の部材、例えば旋回軸受等が省略可能であるという利点を有している。ばねは、特に堅固にシャフトに結合されていることができる(下記参照)。ばねは、原則、らせんばね又はこれに類するものとして形成されていてもよい。変化態様では、ばねも省略可能である。この場合、ばねヨークは、剛体の要素を介してシャフトに結合されていてもよく、この場合、典型的には、しかし、剛体の要素をシャフトに結合すべく、旋回軸受を設けることになろう。
【0054】
好ましくは、結合要素、特にばね薄板は、偏心的にシャフトに、好ましくは堅固に、結合されている。これにより、特に簡単に、ヨークストロークの、回転運動への変換が達成される。これにより、一方では、構造的に単純な解決手段が提供され、他方では、特に頑強な駆動部が実現される。それというのも、特にヒンジが設けられている必要がないからである。特に好ましくは、ばね薄板は、直接的にかつ堅固にシャフトに結合されている。これにより、僅かなストロークで、比較的大きな角度の回転運動が達成され得る。
【0055】
変化態様において、シャフトは、半径方向に配向されたレバーを有していてもよく、レバーには、ばねあるいはばね薄板が作用する。ヨークストロークは、別の方法で、例えば歯車/ラック結合を介して、シャフトの回転運動へ伝達されてもよい。さらにシャフトは、ぜんまいばねにより付勢されてもよく、これにより、回転は、ヨークストロークの引っ張り力を介してのみ達成され得る。これにより結合要素は、フレキシブルな、かつ非弾性の要素(例えばコード)として形成されていてもよい。当業者には、さらなる可能性が知られている。
【0056】
ピエゾ電気式の駆動部は、様々な分野で使用可能である。好ましい一実施の形態において、ピエゾ電気式の駆動部は、身体ケア機器用、特にスキンケア及びデンタルケア用の清掃機器用の駆動ユニットを有するグリップ内で使用される。ピエゾ電気式の駆動部は、ピエゾ電気式の素子を備え、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施され、かつ偏向伝動機構を備え、ピエゾ電気式の素子の長さ変化は、偏向伝動機構を介してブラシヘッド用のシャフトの回転運動に変換されており、シャフトは、特にX方向に配向されている。
【0057】
好ましい実施の形態において、ピエゾ電気式の駆動部は、身体ケア機器、特にスキンケア及びデンタルケア用の清掃機器、特に好ましくは、音波歯ブラシのグリップ内で上記説明にしたがって形成されており、ピエゾ電気式の素子を備え、これにより、電気式の作動時、X方向での長さ変化が実施可能であり、ピエゾ電気式の素子には、第1のばねヨークが、長さ変化がY方向でのヨークストロークに変換可能であるように取着されており、ばねヨークは、結合要素を介して、回転可能なシャフトに、ヨークストロークがシャフトの回転運動に変換可能であるように結合されている。
【0058】
別の実施の形態において、ピエゾ電気式の素子は、簡単なケースでは、直接的に偏心的にシャフトに結合されていてもよく、これにより、X方向でのピエゾ電気式の素子の長さ変化が、直接的にシャフトの回転運動に変換される。ピエゾ電気式の素子の、典型的には僅かなストロークに基づき、このために、ピエゾ電気式の素子は、十分な回転運動を実施することができるように、シャフトの回転軸線の近くに作用しなければならない。さらにピエゾ電気式の素子は、結合要素を介して偏心的にシャフトに結合され得る。これらの場合、ピエゾ電気式の素子は、シャフトの回転軸線に対して直角に配向されていてもよい。別の実施の形態において、ピエゾ電気式の素子は、それとは異なってシャフトに対して配向されていてもよい。ピエゾ電気式の駆動部は、さらに偏向伝動機構を備えていてもよく、これにより、ピエゾ電気式の素子は、シャフトに対して平行に配置されてもよい。さらに、ピエゾ電気式の素子の長さ変化をシャフトの回転に変換すべく、アングル伝動機構又はこれに類するものが設けられていてもよい。当業者には、さらなる可能性も知られている。
【0059】
好ましくは、シャフトは、清掃機器、特に音波歯ブラシのブラシネックに結合されており、その結果、ブラシネックは、ブラシネック軸線回りに回転運動を実施する。特に好ましくは、ブラシネック軸線は、シャフトの回転軸線に対して同軸に配向されている。これにより、好ましくは、ブラシネック軸線に対して略直角に配向されているタフトにより、払拭運動が実施されることができ、これにより、特に最適な形式で清掃、特に歯の清掃が達成され得る。変化態様において、シャフトとブラシネック軸線との間には、別の偏向伝動機構が設けられていてもよい。さらにシャフトにより、毛領域も、毛方向に配向された軸線回りに回転され得る。
【0060】
好ましくは、グリップ、特に身体ケア機器用、特に好ましくは、振動発生器を有する音波歯ブラシ用のグリップは、ブラシヘッドのアダプタ内に導入するピンを備え、特にピンにより、振動発生器の振動が、ブラシヘッドの清掃要素に伝達可能である。ピンにより、好ましくは、ピン軸線あるいはX方向回りの振動が、清掃要素に伝達可能である。変化態様において、ピン軸線あるいはX方向での振動も実施され得る。ピエゾ電気式の駆動部は、ピンが旋回運動を例えばX,Y平面内で実施するように形成されていてもよい。これにより、技術的に簡単な、それにもかかわらず特に効率的な振動伝達が達成される。振動発生器は、例えば1つ又は複数の圧電素子又は電磁石により実現されていてもよい。特に好ましくは、振動発生器は、上で説明したピエゾ電気式の駆動部を有している。さらに好ましくは、振動は、ピンを介してのみ清掃手段に伝達される。この場合、ブラシアタッチメントは、振動発生器のピンのみと接触し、ひいてはグリップの別の部材とは接触しない。特に筐体は、身体ケア機器、特に音波歯ブラシあるいは身体ケア機器の運転中、好ましくは、ピンだけで、ブラシアタッチメントと接触している。
【0061】
変化態様において、ブラシヘッドがピンを有していてもよい。さらに当業者には、振動のための別の伝達手段も知られている。特にピンの代わりに、バヨネット継手又は当業者に知られる別の結合技術が使用されてもよい。
【0062】
好ましくは、アダプタとピンとは、ピンがアダプタ内に導入されると、回り止め及びアダプタ軸線内での固定が達成可能であるように形成されている。これにより、ピンとアダプタとは、振動の伝達のためだけに用いられるのではなく、振動発生器へのブラシヘッドの組み付けにも用いられる。これにより、他方、特に簡単に構成される、ひいては低コストの身体ケア機器、特に清掃機器、例えば音波歯ブラシが実現される。それというのも、別途の取り付け手段が設けられている必要がないからである。
【0063】
変化態様において、回り止めは、アダプタの領域におけるブラシヘッドの外側輪郭を介して達成されてもよい。このために、外側輪郭は、振動発生器の筐体の、対応するように成形された空所内に収容されていてもよい。さらにブラシヘッドは、ロックを有するねじ締結部を介して筐体に結合可能であってもよい。
【0064】
好ましくは、アダプタ軸線内での固定は、アダプタの係止ノーズにより形成されており、係止ノーズは、ピンの溝内に係止可能である。これにより、ブラシヘッドの、ピンへの特に簡単な軸方向の固定が達成される。係止ノーズは、このために、例えば側方でスリットが入れられたスリーブの内面に形成されていてもよい。
【0065】
代替的には、ブラシヘッドは、係止ノーズを介して振動発生器の筐体に係止可能であってもよい。さらに係止ノーズの代わりに、アダプタ軸線内での固定を達成すべく、摩擦結合が設けられていてもよい。摩擦結合は、しかし、身体ケア機器、特に音波歯ブラシの運転時、ブラシヘッドがピンから離脱し得ないように形成されていなければならないであろう。
【0066】
好ましくは、回り止めは、ピンの側方の扁平化部により、かつアダプタの対応する形状により形成されている。これによっても、ブラシヘッドの、ピンへの特に簡単かつ低コストの取り付けが達成される。
【0067】
変化態様では、回り止めが、ブラシヘッドと音波発生器の筐体との間で達成されてもよい。
【0068】
好ましくは、ピンは、遠位の端部に、溝に続いて、扁平化部を有している。
【0069】
変化態様において、扁平化部は、中央の領域において、ピンの側方に形成されていてもよい。これにより扁平化部は、回り止めとしても、係止ノーズのための受け部としても用いられ得る。
【0070】
好ましくは、シャフトの回転運動は、100ヘルツ~500ヘルツ、好ましくは、180ヘルツ~300ヘルツの振動数を有する振動運動である。これにより、特に効率的な清掃が達成される。代替的には、振動数は、100ヘルツ未満又は500ヘルツより高くてもよい。理想的な振動数は、とりわけ、清掃要素の端部の、回転軸線からの間隔、ひいては清掃要素の長さ、ブラシネックの屈曲角度等に依存している。
【0071】
好ましい一実施の形態において、スイッチがグリップに設けられており、スイッチは、シャフトのX方向(ブラシ長手方向)でのリニアな振動運動を発生させる。これにより、Y軸方向(つまり、X軸に対して横方向)で延びるブラシヘッドの払拭運動に対して付加的に、X軸内の並進運動が達成され得る。両運動が合成されると、これにより、著名な歯科医により薦められるような円を描く運動が達成され得る。変化態様では、スイッチを省略してもよい。さらにグリップは、回転振動と並進振動との永続的な合成が実施されるように形成されていてもよい。円運動は、別の方法で、例えばピエゾ電気式の駆動部における好適な不釣り合いにより、若しくは結合要素の、回転可能なシャフトへの非対称の連結により、又はブラシネック内における屈曲の選択により達成されてもよい。
【0072】
好ましい一実施の形態において、身体ケア機器、特に音波歯ブラシは、このようなグリップと、ブラシヘッドと、を備えている。
【0073】
好ましくは、シャフトは、ブラシヘッドのアダプタ内に導入するピンセクションを有し、ピンセクションにより、特にピンセクションによってのみ、シャフトの振動は、ブラシヘッドの清掃要素に伝達可能である。これにより、適当にブラシヘッドは、振動させられることができ、これにより、特に効果的な清掃、特に歯の清掃を実施する特にエネルギ面で効率的な音波歯ブラシが実現され得る。
【0074】
好ましくは、ブラシヘッドは、ブラシネックを有し、ブラシネックは、遠位の領域に、配向軸線を有する清掃要素、特に複数のフィラメント、好ましくは、歯の清掃用のフィラメントを有し、
a)近位の領域に、ブラシヘッドを振動発生器に連結し、振動発生器の振動を清掃要素に伝達する、アダプタ軸線を有するアダプタを有し、かつ
b)アダプタ軸線は、配向軸線と、90°より大きい角度、好ましくは、91°~120°の角度、さらに好ましくは、95°~105°の角度、特に好ましくは、98°~102°の角度を形成する。
【0075】
これにより、特に効率的な清掃、特に歯の特に効率的な清掃が達成され得る身体ケア機器、特に音波歯ブラシが達成される。
【0076】
清掃要素の方向での(すなわち前方への)屈曲は、とりわけ下側の前歯の内側におけるより良好なアクセス性を可能にする。さらに、これにより、清掃要素あるいはフィラメントは、側方に強く振動し、その結果、特に下顎において大幅に良好な清掃が達成され得る。毛において測定すると、加えてより大きな振幅が達成され、その結果、振動運動内でより大きな運動でもって清掃され得る。屈曲が反対方向(後方)を向いているとき、この屈曲は、他方、歯間の最適な清掃を可能にする。本実施の形態でも、上述の効果が生じる。
【0077】
明らかに、振動は、折曲した清掃要素により、改善された清掃作用が音波歯ブラシにより達成され得るように最適に伝達される。アダプタ軸線と配向軸線との間の角度を90°より大きく、好ましくは、91°~120°、さらに好ましくは、95°~105°、特に好ましくは、98°~102°の間で選択することにより、加えて、ブラシヘッドが、特にピエゾ電気式の駆動部により駆動されて、円運動させられ得ることが達成される。これにより、歯の特に理想的な清掃が達成される。円運動は、数十年来、特に効果的であると知られており、多数の名の知れた歯科医により薦められている。
【0078】
加えて、多数の実験において、配向軸線とアダプタ軸線との間の最適な角度が、91°~120°の角度、好ましくは、95°~105°の角度、特に好ましくは、98°~102°の角度をなすことがわかっている。この角度は、典型的には、しかし、必須というわけではないが、ブラシネック内の屈曲としても存在する。
【0079】
配向軸線は、ここでは、清掃要素の軸線と解すべきである。従来慣用の歯ブラシの場合、配向軸線は、1つのフィラメントの軸線を指す。例えば曲面上に配置されている複数のフィラメントの場合、配向軸線により、個々の軸線の平均値と解される。他方、配向軸線は、しかし、歯間を清掃する単一の毛の場合、周囲を取り巻くようにフィラメントが取り付けられているワイヤの方向とも称呼され得る。
【0080】
清掃要素は、91°~120°の角度を有していても、60°~89°の相補的な角度を有していてもよい。清掃要素が前方に屈曲されている(90°より小さい角度)か、又は後方に屈曲されている(90°より大きい角度)かは、清掃要素の種類に依存している。例えば複数のフィラメントタフトを有するブラシヘッドが使用される場合、屈曲は、好ましくは、90°未満の角度を有し、清掃要素は、これにより内向きに、ブラシネックに対して屈むように曲げられており、これにより、理想的に下側の前歯の内側に到達し得る。
【0081】
しかし、単一のフィラメントタフト、例えば歯間を清掃する単一のフィラメントタフトが使用される場合、屈曲は、好ましくは、90°より大きい角度を有し、これにより、清掃要素は、後方に、ブラシネックに対して反るように屈曲されている。この配置は、特に歯頸部あるいは歯肉の輪郭に沿った清掃のために人間工学的である。好ましくは、それゆえ、清掃要素は、第2のセクションの、形成された角度とは反対側に位置する側に配置されている。これにより屈曲は、後方を向いており、その結果、清掃要素は、第1のセクションから背いている。
【0082】
好ましくは、ブラシネックは、アダプタを有する第1のセクションと、清掃要素を有する第2のセクションと、を有し、第1のセクションの第1の主軸線と、第2のセクションの第2の主軸線とは、150°~179°の角度、好ましくは、165°~175°の角度、特に好ましくは、169°~171°の角度を形成する。
【0083】
変化態様において、ブラシネックは、直接的にはアダプタの作用線を反映しない別の形状を呈していてもよい。当業者には、多数のこのような形状が知られている。
【0084】
特に好ましい一実施の形態において、第2の主軸線と配向軸線とは、互いに直角に方向付けられている。しかし、変化態様では、別の方向付けが、両軸線間に存在していてもよい。
【0085】
好ましくは、清掃要素は、複数のフィラメントタフトを有し、外側に位置するフィラメントタフトは、内側に位置するフィラメントタフトから突出している。これにより清掃要素は、好ましくは、凹の表面を有している。実験において、これにより、特に良好な清掃作用が達成され得ることがわかっている。
【0086】
変化態様において、しかし、フィラメントタフトの別の配置が計画されていてもよい。特に正確に1つのフィラメントタフトが設けられていてもよく、これは、必ずしも凹の表面を有している必要はない。
【0087】
以下の詳細な説明と、特許請求の範囲の全体とから、本発明の別の有利な実施の形態及び特徴組み合わせが看取可能である。
【0088】
図面は、実施例の説明に利用する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1a】無電圧の状態でのピエゾ電気式の駆動部の概略側面図である。
【
図1b】
図1aの線A-Aに沿った概略断面図である。
【
図2a】電圧をかけたときのピエゾ電気式の駆動部の概略側面図である。
【
図2b】
図2aの線A-Aに沿った概略断面図である。
【
図3】駆動部を備える音波歯ブラシの概略側面図である。
【
図4】長手方向でアダプタを見た第1の実施の形態の概略図である。
【
図5】アダプタを通る長手方向軸線に沿った概略断面図である。
【
図6a】ピンを有する振動発生器の概略側面図である。
【
図6b】
図6aに示す図示を90°の角度の分だけ長手方向軸線回りに回転させた図である。
【
図7b】
図7aに示す身体ケア機器の概略平面図である。
【
図8a】並進的に発振するブラシヘッドを備える身体ケア機器の、振動の第1の折り返し点における概略側面図である。
【
図8b】
図8aに示す図示の、振動の第2の折り返し点における図である。
【
図9a】揺動するブラシヘッドを備える身体ケア機器の、振動の第1の折り返し点における概略側面図である。
【
図9b】
図9aに示す図示の、振動の第2の折り返し点における図である。
【
図10a】回転するブラシ体を備える身体ケア機器の、振動の第1の折り返し点における概略側面図である。
【
図10b】
図10aに示す図示の、振動の第2の折り返し点における図である。
【
図11a】実質的に
図1aに示す、しかし、ばねヨークなしの、無電圧の状態でのピエゾ電気式の駆動部の概略側面図である。
【
図12a】毛体の代わりにUブラシが設けられている
図8aに示す身体ケア機器の概略側面図である。
【
図12b】
図12aに示す図示の、振動の第2の折り返し点における図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
原則、図中、同じ部材には、同じ符号を付した。
【0091】
図1aは、無電圧の状態でのピエゾ電気式の駆動部100の概略側面図を示している。ピエゾ電気式の駆動部100は、ピエゾ電気式の素子120を備え、ピエゾ電気式の素子120は、互いに反対側に位置する2つの側に、ばねヨーク110あるいは111を有している。ばねヨーク110も、ばねヨーク111も、ピエゾ電気式の素子とともに台形形状を形成している。ばねヨーク110及び111は、曲げられた金属薄板からなる、それぞれ2つの脚片と1つのベース面とを有している。これらの脚片間にピエゾ電気式の素子120が収容されており、ピエゾ電気式の素子120は、ばねヨーク110あるいは111のベース面より大きな長さを有している。これにより、ピエゾ電気式の素子120は、ピエゾ電気式の素子120と、ばねヨーク110あるいは111と、により形成される台形の最長の辺を形成している。ピエゾ電気式の素子120は、両ばねヨーク110及び111のベース面に対して平行に配向されている。
【0092】
ピエゾ電気式の素子120の印加時、ばねヨーク110あるいは111の両脚片間のX方向での長さは、変化する。これに伴い、同時に、ベース面と、ピエゾ電気式の素子との間の間隔は、変化する。間隔のこの変化をヨークストロークと称呼する。而るに、2つのばねヨーク110及び111が設けられているため、ピエゾ電気式の素子120に電圧を印加すると、2倍のヨークストロークが、ばねヨーク110及び111の両ベース面間で達成される。さらに、2つのばねヨーク110及び111を、ピエゾ電気式の素子120の、互いに反対側に位置する側に配置することで、曲げ力が減じられ、ひいてはピエゾ電気式の素子の負担が軽減される。
【0093】
ピエゾ電気式の素子120に対して平行に、シャフト140が配置されており、シャフト140は、互いに離間した2つのシャフト軸受150及び151内で回転可能に軸承されている。シャフト140は、中央の領域に切欠き141を有し、切欠き141は、シャフト140の横断面で見て弓形の形状を呈している。この弓形の高さは、ここでは、シャフト140の半径より小さいが、別の実施の形態では、この高さは、シャフト140の半径と同じか、又はそれよりも大きくてもよい。
【0094】
ばねヨーク110のベース面は、ばね薄板130として形成される結合要素を介してシャフトの切欠き141に結合されている。ばね薄板130の平面は、シャフト140の回転軸線に対して平行に延びている。ばね薄板130は、偏心的に、すなわち、ここでは、切欠き141の縁部領域でシャフト140に結合されている(下記、
図1b参照)。ピエゾ電気式の素子120の長さ変化時、而るにヨークストロークが、両ばねヨーク110及び111により発生され、これにより、ばね薄板130を介して、シャフト140は、回転運動させられる。
【0095】
図1bは、
図1aの線A-Aに沿った概略断面図を示している。
図1bには、付加的に、ばね薄板130が、シャフト140の切欠き141の縁部領域に作用し、而してばねヨーク110及び111のストローク運動時、シャフト140を回転運動させ得ることが看取可能である。
【0096】
図2aは、電圧をかけたときの、
図1aに示すピエゾ電気式の駆動部の概略側面図を示している。
図1aとは異なり、而るにピエゾ電気式の素子120は、X方向でシャフト140の回転軸線に対して平行に短縮されている。これにより、ばねヨーク110及び111の両ベース面間の間隔は、拡大し、これにより、他方、ばね薄板130は、シャフト140に向かって動かされ、ひいてはシャフト140を回転運動させる。ばねヨーク111のベース面は、ここでは、シャフト140に対して相対的に固定に配置されている。
【0097】
図2bは、
図2aの線A-Aに沿った概略断面図を示すとともに、
図1bに対して、シャフト140が、両ばねヨーク110及び111のヨークストロークに基づき回転していることを示している。
【0098】
ピエゾ電気式の駆動部は、多数の用途に使用可能である。1つの好ましい用途において、駆動部は、電気式の歯ブラシ内、好ましくは、音波歯ブラシ内で使用される。
図3は、
図1aに示す駆動部100を備える音波歯ブラシ200の概略側面図を示している。シャフト140は、軸受151の、軸受150とは反対側に位置する側に、アダプタ142を有し、アダプタ142には、ブラシネック160が、アダプタ142に適合した相手側部材161を介して相対回動不能に取り付けられ得る。近位の領域に、ブラシネック160は、毛領域170を有している。而るにピエゾ電気式の素子120に交互に電圧を印加すると、両ばねヨーク110及び111は、発振し、これにより、他方、ばね薄板130を介して、シャフト140は、回転するように発振される。この発振は、シャフト140からブラシネック160に伝達され、これにより最終的に、毛領域170は、ブラシネック軸線回りに振動あるいは払拭運動させられる。
【0099】
図4は、ブラシネック210の一実施の形態を長手方向で見たアダプタの概略平面図を示している。
図4には、アダプタ220が略円柱状に形成されていることが看取可能である。アダプタ220は、4つの係止ノーズ222を有し、これらの係止ノーズ222は、それぞれ、スリット223により中断されている。
【0100】
図5は、アダプタ220を長手方向軸線に沿った概略断面図として示している。
【0101】
アダプタ220は、扁平化部311と溝312とを有するピン310を受け入れるために用いられる(
図6a,6b参照)。このためにアダプタ220は、略円柱状の受け部を有し、受け部は、受け入れ底部内に、側方の扁平化部と、係止ノーズ222と、を有している。受け部は、開口方向に少なくとも1つの側方のスリット223と、内向きに突入する係止ノーズ223と、を有する実質的にシリンダライナの形状を呈している。スリット223に基づき、受け部は、縁部領域においてばね弾性的に形成され、ひいては係止ノーズ223は、ばね弾性的に形成されている。受け入れ底部内に設けられた側方の扁平化部は、ピン310の、側方で扁平化された端部領域を受け入れるために用いられる。最終的にアダプタ220は、ピン310が付加的に摩擦結合を介して保持され得るように形成されており、その結果、振動伝達は損なわれない。
【0102】
図6aは、ピン310を備えるピエゾ電気式の駆動部300の概略側面図を示している。
図6aは、最終的に、
図6aに示した図示を示しているが、90°の角度の分だけ長手方向軸線回りに回転させてある。
【0103】
ピエゾ電気式の駆動部300は、振動をピン310に伝達する。ピン310は、固定にピエゾ電気式の駆動部300に結合されている。ブラシヘッド200は、好ましくは、このピン310を介してのみピエゾ電気式の駆動部300に結合される。遠位の領域に、ピン310は、扁平化部311を有している。さらにピン310は、係止ノーズ222を受け入れる溝312を有している。ピン310とアダプタ220とは、ピン310が、扁平化部311により回り止めされて、かつ溝312あるいは係止ノーズ222により軸方向で止められて保持され得るように形成されている。さらにピン310は、付加的に摩擦結合も介してアダプタ220,220内に保持されていることができ、その結果、振動伝達は損なわれない。
【0104】
ピエゾ電気式の駆動部300は、ここでは、概略的に示してある。典型的には、ピエゾ電気式の駆動部300は、筐体内に組み込まれており、筐体は、人間工学的にユーザにより把持されることができ、さらなる構成部材、例えば二次電池、電源網部品、制御装置、ユーザ用の表示装置等を有していてもよい。
【0105】
図7aは、身体ケア機器の概略側面図を示している。身体ケア機器は、ここでは、ハンドグリップ410と、ブラシ430を有するここでは交換可能なブラシアタッチメント420と、を備える身体ケア機器400として形成されている。ハンドグリップ410内には、ピエゾ電気式の駆動部(図示せず)が配置されており、ピエゾ電気式の駆動部は、X軸440回りの回転振動を発生させ、この回転振動は、ブラシアタッチメント420に伝達される。これによりブラシアタッチメント420は、運転中、ハンドグリップ410に対して相対的にX軸440回りの回転振動を実施する。毛領域430により発生される不釣り合いに基づき、Y方向450及び/又はZ方向460での運動成分(下記、
図7b参照)が達成され得る。この効果は、例えばブラシネック内の屈曲により、又はその他の好適な質量分布により(例えば重りを付けたり、又は適当に空洞を設けたりすることによっても)達成され得る。
図7bは、
図7aに示す身体ケア機器の概略平面図を示している。この図示には、Z方向460が看取可能である。
【0106】
図8aは、並進的に発振するブラシヘッド520を備える身体ケア機器500の、振動の第1の折り返し点における概略側面図を示している。身体ケア機器500は、歯ブラシとして形成されており、ハンドグリップ510と、清掃体530を有するブラシネック520と、を備えている。ハンドグリップ510内には、ピエゾ電気式の駆動部540が配置されており、ピエゾ電気式の駆動部540は、ピエゾ電気式の素子541と、互いに反対側に位置する2つの側に、ばねヨーク542,543と、を備えている(これに加えて
図1も参照)。第1のばねヨーク542は、堅固にハンドグリップ510に結合されている一方、第2のばねヨーク543は、結合要素550を介してブラシネック520に結合されている。ブラシネック520は、受け部を有し、その結果、ブラシネック520は、結合要素550上に着脱自在に差し嵌め可能である。ハンドグリップ510からブラシネック520への振動の伝達は、結合要素550を介してのみ実施される。
【0107】
ピエゾ電気式の素子541の電気式の作動時、ピエゾ電気式の素子541の長さ変化が実施され、これにより、X方向あるいは身体ケア機器500の長手方向でのばねヨーク542及び543のヨークストロークが発生される。このことは、他方、結合要素550が、ひいては、ブラシネック520がブラシ体530とともに、X方向で摺動するに至らしめる。
図8aでは、ピエゾ電気式の素子541が作動されておらず、ブラシ体530を有するブラシネック520は、ブラシネック520/ブラシ体530によりハンドグリップに対して相対的に運転中に実施される振動の第1の折り返し点にあり、第1の折り返し点において、ブラシネック520は、ハンドグリップ510に対して最小の間隔を占めている。
図8bは、
図8aに示す図示を、この振動の第2の折り返し点において示しており、このとき、ブラシネック520は、ハンドグリップ510に対して最大の間隔を占めている。
【0108】
図9aは、揺動するブラシヘッドを備える身体ケア機器600の、振動の第1の折り返し点における概略側面図を示している。身体ケア機器600は、歯ブラシとして形成されており、ハンドグリップ610と、清掃体630を有するブラシネック620と、を備えている。ハンドグリップ610内には、ピエゾ電気式の駆動部640が配置されており、ピエゾ電気式の駆動部640は、
図8aに示す駆動部540と同様に形成されている。ピエゾ電気式の駆動部640は、ピエゾ電気式の素子641と、互いに反対側に位置する2つの側に、ばねヨーク642,643と、を備えている。第1のばねヨーク642は、堅固にハンドグリップに結合されている一方、第2のばねヨーク643は、結合要素を介して、第1の旋回軸受651を介してレバー650に結合されている。レバー650は、他方、ハンドグリップ610に対して相対的に固定に配置される旋回軸受652に旋回可能に軸承されている。レバー650は、第2の旋回軸受652に関して一方の側で着脱自在にブラシネック620に結合され(差し嵌められ)、反対側に位置する側で第1の旋回軸受651を介してピエゾ電気式の駆動部640の結合要素に結合されている。ハンドグリップ610からブラシネック620への振動の伝達は、結合要素650を介してのみ実施される。
【0109】
ピエゾ電気式の素子641の作動時、ばねヨーク642及び643により、Y方向であるいは身体ケア機器600の長手方向に対して横方向で、ヨークストロークが発生される。このことは、他方、レバー650が、旋回軸受652の固定の回転点回りに変位するに至らしめる。これによりブラシネック620は、払拭運動を実施する。
図9aでは、ピエゾ電気式の素子641が作動されておらず、ブラシ体630を有するブラシネック620は、ブラシネック620/ブラシ体630によりハンドグリップに対して相対的に運転中に実施される振動の第1の折り返し点にあり、第1の折り返し点において、ブラシネック620は、上から見て左方に旋回されている。
図9bは、
図9aに示す図示を、この振動の第2の折り返し点において示しており、このとき、ブラシネック620は、上から見て右方に旋回されている。
【0110】
図10aは、回転するブラシ体730を備える身体ケア機器700の、振動の第1の折り返し点における概略側面図を示している。身体ケア機器700は、歯ブラシとして形成されており、ハンドグリップ710と、清掃体730を有するブラシネック720と、を備えている。ハンドグリップ710内には、ピエゾ電気式の駆動部740が配置されており、ピエゾ電気式の駆動部740は、
図8aに示す駆動部540と同様に形成されている。ピエゾ電気式の駆動部740は、ピエゾ電気式の素子741と、互いに反対側に位置する2つの側に、ばねヨーク742,743と、を備えている。第1のばねヨーク742は、堅固にハンドグリップに結合されている一方、第2のばねヨーク743は、結合要素750を介して、Y方向に配向され、ブラシネック720の遠位の端部に設けられたシャフト731に結合されている。結合要素750は、偏心的にシャフトに結合されており、その結果、X方向での結合要素750の運動は、シャフト731の回転に至らしめる。ブラシネック720は、ここでは、公知の手段を介して直接的にハンドグリップ710の筐体に結合されているが、ブラシネック720は、結合要素750には結合されておらず、その結果、結合要素は、ブラシネック720に対して相対的にX方向あるいは長手方向で可動である。回転可能なシャフト731には、ここでは円形のブラシ体730が結合されている。
【0111】
ピエゾ電気式の素子741の作動時、ばねヨーク742及び743により、X方向であるいは身体ケア機器700の長手方向で、ヨークストロークが発生される。このことは、他方、X方向での結合要素750の運動に至らしめ、これにより、結合要素750が、シャフト731に偏心的に取り付けられていることに基づき、回転運動が実施される。この回転運動は、他方、ブラシ体730の回転に至らしめる。
図10aでは、ピエゾ電気式の素子741が作動されておらず、これにより、シャフト731は、上からブラシ体730を見て時計回りに回転振動の第1の折り返し点に存在し、この第1の折り返し点には、反時計回りの回転が後続する。
図10bは、相応に、
図10aに示す図示を、この振動の第2の折り返し点において示しており、このとき、ブラシ体730は、上から見て一方の回転ストッパに反時計回りに当接している。
【0112】
図11aは、実質的に
図1aに示す、しかし、ばねヨークなしの、無電圧の状態でのピエゾ電気式の駆動部の概略側面図を示している。ピエゾ電気式の駆動部は、ピエゾ電気式の素子820を備え、ピエゾ電気式の素子820は、作動時、その長さをY方向で変化させる(
図1の実施例では、長さがX方向で変化し、ばねヨークが、他方、Y方向で変化する)。
【0113】
ピエゾ電気式の素子820に対して平行に、シャフト840が配置されており、シャフト840は、互いに離間した2つのシャフト軸受850及び851内で回転可能に軸承されている。シャフト840は、
図1の実施の形態と同様に、中央の領域に切欠き841を有している。
【0114】
ピエゾ電気式の素子は、ばね薄板830を介してシャフトの切欠き841に結合されている。ばね薄板830は、偏心的に切欠き841の縁部領域でシャフト840に結合されている。ピエゾ電気式の素子820の長さ変化時、而るにストロークが発生され、これにより、ばね薄板830を介して、シャフト840は、回転運動させられる。
【0115】
図11bは、
図11aの線A-Aに沿った概略断面図を示している。
図11bには、付加的に、ばね薄板830が、シャフト840の切欠き841の縁部領域に作用し、而してピエゾ電気式の素子820のストローク運動時、シャフト840を回転運動させ得ることが看取可能である。
【0116】
図12aは、毛体の代わりにUブラシ930が設けられている
図8aに示す身体ケア機器の概略側面図を示している。Uブラシ930は、内部に毛を具備した断面H字形を呈するU字形のブラシであり、その結果、互いに反対側に位置する溝内に、上顎あるいは下顎の歯がポジショニングされ得る。Uブラシ930のバイブレーションにより、これにより同時にすべての歯が清掃され得る。
【0117】
身体ケア機器900は、これにより歯ブラシとして形成されており、ハンドグリップ910と、ブラシネック920と、を備え、ブラシネック920の遠位の端部には、Uブラシが取り付けられている。Uブラシ930のU字形の開口は、ブラシネック920から離反している。ハンドグリップ910内には、ピエゾ電気式の駆動部940が配置されており、ピエゾ電気式の駆動部940は、ピエゾ電気式の素子941と、互いに反対側に位置する2つの側に、ばねヨーク942,943と、を備えている(これに加えて
図1も参照)。第1のばねヨーク942は、堅固にハンドグリップ910に結合されている一方、第2のばねヨーク943は、結合要素950を介してブラシネック920に結合されている。ブラシネック920は、受け部を有し、その結果、ブラシネック920は、結合要素950上に着脱自在に差し嵌め可能である。ハンドグリップ910からブラシネック920への振動の伝達は、結合要素950を介してのみ実施される。
【0118】
ピエゾ電気式の素子941の電気式の作動時、ピエゾ電気式の素子941の長さ変化が実施され、これにより、X方向あるいは歯ブラシ900の長手方向でのばねヨーク942及び943のヨークストロークが発生される。このことは、他方、結合要素950が、ひいては、ブラシネック920がUブラシ930とともに、X方向で摺動するに至らしめる。
図12aでは、ピエゾ電気式の素子941が作動されておらず、ブラシネック520、ブラシネック520は、ハンドグリップ910に対して最小の間隔を有している。
図12bは、
図12aに示す図示を、この振動の第2の折り返し点において示しており、このとき、ブラシネック920は、ハンドグリップ910に対して最大の間隔を占めている。
【0119】
確認しておくと、要するに、本発明により、ピエゾ電気式の駆動部であって、ピエゾ電気式の素子の長さ変化がブラシ体を動かすことができ、ピエゾ電気式の駆動部は、特にコンパクトな寸法と同時に、比較的高いトルクの点で優れたピエゾ電気式の駆動部が提供される。
【国際調査報告】