(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】脊髄性筋萎縮症の治療に使用する、SMN発現を回復させるための有効成分と組み合わせたフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソン誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20241108BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241108BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241108BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241108BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20241108BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20241108BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20241108BHJP
A61K 31/57 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61K45/06
C12N15/113 Z ZNA
A61P21/00
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K31/7125
A61K31/712
A61K31/7115
A61K31/57
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528525
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022080839
(87)【国際公開番号】W WO2023083718
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513285907
【氏名又は名称】ビオフィティス
(71)【出願人】
【識別番号】507416908
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】524180266
【氏名又は名称】アンスティテュー・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ラティル,マチルド
(72)【発明者】
【氏名】ベジエール,シンシア
(72)【発明者】
【氏名】ディルダ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ラフォン,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイエ,スタニスラス
(72)【発明者】
【氏名】シャルボニエ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ビオンディ,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA94
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、哺乳動物における脊髄性筋萎縮症を治療する際に併用療法で使用するための、少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における脊髄性筋萎縮症の治療に使用するための、少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的運動ニューロン生存(SMN)タンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項2】
脊髄性筋萎縮症の原因となる運動ニューロン疾患の治療に使用するために請求項1に従って使用するための、請求項1に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項3】
前記運動ニューロン疾患は運動ニューロンの機能的変化又はその変性であり、請求項2に従って使用するための、請求項2に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項4】
前記有効成分は遺伝子療法又は遺伝子の治療により機能的SMNタンパク質の生成を増加させる能力を有し、請求項1~3のいずれか1項に従って使用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項5】
前記有効成分は、SMN1遺伝子を提供することにより、又はSMN2遺伝子の成熟に作用することにより、機能的SMNタンパク質の生成を増加させる能力を有し、請求項1~3のいずれか1項に従って使用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項6】
機能的SMNタンパク質の生成を増加できる前記有効成分はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、請求項1~3のいずれか1項に従って使用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項7】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは10~30個のヌクレオチドを含み、請求項6に従って使用するための、請求項6に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項8】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトSMN2遺伝子のプレmRNAをコードする核酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、好ましくは100%相補的であり、請求項6又は7に従って使用するための、請求項6又は7に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項9】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトSMN2遺伝子のプレmRNAをコードする核酸のイントロン6、イントロン7、又はエクソン7に属する配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは98%、好ましくは100%相補的であり、請求項6~8のいずれか1項に従って使用するための、請求項6~8のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項10】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは配列番号:1と少なくとも50%一致又は類似し、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%一致又は類似しており、好ましくは100%一致又は類似している配列であり、請求項6~9のいずれか1項に従って使用するための、請求項6~9のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項11】
前記ASOは、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29から選択される配列であり、請求項6~9のいずれか1項に従って使用するための、請求項6~9のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項12】
前記ASOは以下から選択される少なくとも1つの修飾:
‐ ホスホロチオエート、メチルホスファネート、又はホスホロアミダートなどのリン酸基における修飾、
‐ 2’O‐メチル(2’OMe)、2’O‐メトキシエチル(2’MOE)、又は2’フルオロ(2’F)などの、リボースの2’位の化学修飾、
‐ 5’メチルシトシン、5‐メチルウリジン/リボチミジン、又は「G‐クランプ」型ピリミジンのメチル化などの、核酸塩基の少なくとも1つの修飾、
‐ モルホリノ、ペプチド核酸、又は拘束型オリゴヌクレオチドなどの、種々の分子を生成する糖構造の少なくとも1つの実質的な変化
を含み、請求項6~11のいずれか1項に従って使用するための、請求項6~11のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項13】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは配列番号:23と、少なくとも50%一致又は類似し、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%一致又は類似し、特に100%一致又は類似している配列であり、請求項6~9のいずれか1項に従って使用するための、請求項6~9のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項14】
前記少なくとも1種のフィトエクジソンは20‐ヒドロキシエクジソンであり、請求項1~13のいずれか1項に従って使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項15】
前記20‐ヒドロキシエクジソンは植物抽出物又は植物の一部の形態であり、前記抽出物は少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の20‐ヒドロキシエクジソンを含み、請求項14に従って使用するための、請求項14に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項16】
20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1種の半合成誘導体は:
‐ 一般式(I)の化合物:
【化1】
式中:
R
1は:(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)CO
2(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)A基(Aは、OH、OMe、(C
1‐C
6)、N(C
1‐C
6)、CO
2(C
1‐C
6)型の基で任意に置換された複素環を表す);及びCH
2Br基から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはSである;並びに
‐ 式(II)を有する化合物
【化2】
から選択され、請求項1~15のいずれか1項に従って使用するための、請求項1~15のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項17】
一般式(I)中:
R
1は:(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)CO
2(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)A基(Aは、OH、OMe、(C
1‐C
6)、N(C
1‐C
6)、CO
2(C
1‐C
6)型の基で任意に置換された複素環を表す)から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはSであり、請求項16に従って使用するための、請求項16に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項18】
一般式(I)の少なくとも1種の化合物は:
No.1:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐17‐(2‐モルホリノアセチル)‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン(phenanthren)‐6‐オン;
No.2:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(3‐ヒドロキシピロリジン‐1‐イル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.3:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(4‐ヒドロキシ‐1‐ピペリジル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.4:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐[4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐ピペリジル]アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.5:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐[2‐(3‐ジメチルアミノプロピル(メチル)アミノ)アセチル]‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.6:2‐[2‐オキソ‐2‐[(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐6‐オキソ‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル]エチル]エチルスルファニルアセテート;
No.7:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐(2‐エチルスルファニルアセチル)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.8:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(2‐ヒドロキシエチルスルファニル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン
から選択され、請求項16又は17に従って使用するための、請求項16又は17に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項19】
哺乳動物における脊髄性筋萎縮症の治療に使用するための、
‐ 少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体;
‐ 機能性SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分
を含むことを特徴とする組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊髄性筋萎縮症を治療するための、運動ニューロン生存(SMN)タンパク質の発現を回復させることを目的とする有効成分と組み合わせたフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの半合成誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経筋疾患は、運動ニューロン、神経筋接合部、及び骨格筋から成る運動単位の機能が変化することを特徴とする。疾患の起源に関わらず、即ち、脊髄性筋萎縮症や筋萎縮性側索硬化症のような神経性であっても、又は筋性であっても、それら疾患は全て患者の運動機能を変化させ、生命維持に重要な筋肉が冒された場合、障害から早世にまで至らしめる可能性がある。
【0003】
これらの神経筋疾患のうち、運動ニューロンを特に影響を及ぼす疾患として2種の疾患:小児期に症状が現れる小児脊髄性筋萎縮症(又はSMA)、及び成人期に症状が現れる筋萎縮性側索硬化症(又はALS)が挙げられる。これら2つの神経変性疾患は、原因も臨床症状も異なるが、筋萎縮の要因となる進行性の筋脱神経が共通している(Al‐Chalabi及びHardiman、2013年;Crawford及びPardo、1996年)。
【0004】
脊髄性筋萎縮症は、遺伝子由来の乳児死亡の最も多い原因であり、有病率は、出生数に対して1/6,000~1/10,000である(Crawford及びPardo、1996年)。症状の発現年齢や臨床的障害の進行度により重症度には主に3タイプあり、最も重篤な1型から平均余命が40歳を超え得る3型まである。SMA患者では、孤立しているか又は線維束にまとまっている筋線維の萎縮により骨格筋が左右対称に障害を受ける。ほぼ全てのSMAは、主に体幹及びその近傍の筋肉に影響を及ぼすと言われている近位性である。運動欠陥は徐々に拡大し、初めに下肢の筋肉に、次に上肢の筋肉に、特に伸筋に影響を及ぼす。SMAの要因となる遺伝子は1995年に第5染色体上で同定され、「運動ニューロンの生存」を意味するSMNと命名された(Lefebvreら、1995年)。
【0005】
臨床的に多様性が大きいが、遺伝子解析から、SMAの全形態はSMN1(運動ニューロンの生存)テロメア遺伝子の同種接合変化により引き起こされ、Smnタンパク質の生成を妨げ、運動ニューロンの変性、筋萎縮、及び脱力を誘導することが実証できている。ヒトゲノムでは、この遺伝子の逆セントロメアコピーであるSMN2遺伝子が存在し、この遺伝子のコピーは数種あるが(Lorsonら、1998年)、SMN1遺伝子の機能喪失を部分的に補うことしかできない。実際、SMN2はSMN1と異なるヌクレオチドを5つ有し、そのうちの1つはエクソン7にあり、SMN2遺伝子が生成するmRNAの90%においてスプライシングによりそのヌクレオチドは切除される傾向にある。この代替的スプライシングにより、切断された不安定なSMNΔ7タンパク質が生成される。従って、SMN2遺伝子に生成されたタンパク質のうち、完全かつ機能的なものは10%しかない(Lefebvreら、1997年;Vitteら、2007年)。SMN2遺伝子のコピー数、その発現レベル、及び疾患の重症度の間に関連性があることは実証されている。
【0006】
SMN1に関連する近位型脊髄性筋萎縮症では、異なる開発段階において、治療戦略がいくつか検討されている。SMN2メッセンジャーRNAの成熟を修飾し、欠損したエクソン7を再統合することにより(ヌシネルセン、リスジプラム、ブラナプラム)、又は遺伝子療法でSMN1遺伝子を導入することにより(ZOLOGENSMA(登録商標))、機能的SMNタンパク質の量を増加することを目的とした研究戦略もある。
【0007】
その他に、運動ニューロンを保護することにより、又は神経筋接合部の機能(サルブタモール、ピリドスチグミン)もしくは筋肉の性能(SRK‐015、身体訓練)を改善することにより、疾患の進行を遅らせることを目的とする戦略もある。それにも関わらず、SMAで試験した治療アプローチの大部分は、中枢神経系で局所的に、及び/又はより一般的には他の器官で末梢的に、SMNタンパク質の発現レベルを増加させることを目的としている。
【0008】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いてSMN1遺伝子を送達する遺伝子療法により、マウスにおける前臨床試験やヒトにおける臨床試験において有意な有益効果が示されている(Mendellら、2017年;Passiniら、2010年;Lowesら、2018年)。SMN2スプライシングの調節に焦点を当てた他のアプローチも、その有効性を証明している(Naryshkinら、2014年;Palacinoら、2015年;Finkelら、2016年;Finkelら、2017年)。これらの非常に肯定的な結果により、規制当局による認可が特定の分子について可能になった。
【0009】
現在、SMAでは3種の治療法が利用可能である:
‐ SMAについて認可された最初の治療薬はSPINRAZA(登録商標)(ヌシネルセン)である。この治療薬は、米国では2016年12月に、欧州では2017年6月に販売承認(MA)を取得した。これは、SMN2遺伝子の成熟(スプライシング)に作用することにより、機能的SMNタンパク質の生成を増加させることを目的として開発されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは血液脳関門を通過しないため、ヌシネルセンは定期的に髄腔内投与する必要がある。そうすることで、運動ニューロンにおいてSMNタンパク質が再発現し、現実的な臨床利益が得られるが、その再発現はSMAのタイプ及び治療開始年齢により重要性が変わる。SMN2遺伝子のスプライシングを修飾できるアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、国際公開第2007/002390号及び国際公開第2018/014041号の出願に示されている。
‐ 近年では、ウイルスベクター(AAV)を用いてSMN1遺伝子を送達することを目的とした遺伝子治療製品であるZOLGENSMA(登録商標)(オナセムノゲンアベパルボベク又はAVXS‐101)が認可された(米国では2019年5月にMA、欧州では2020年5月に条件付きMA)。静脈内投与であるため、単独投与が容易である。
‐ 最後に、EVRYSDI(登録商標)(リスジプラム又はRO7034067)が更に最近認可された(米国では2020年8月、欧州では2021年3月にMA)。EVRYSDIはSMN2遺伝子の成熟に作用する小分子であり、経口又は栄養管で毎日投与する。
【0010】
SMN遺伝子の回復により患者の機能的評価や運動機能はこれまでにない程に改善されたが、SMA患者は、治療後に、しかも介入が早期であっても、著しい欠陥が持続する(Mercuriら、2018年;Finkelら、2017年;Baranelloら、2018年)。
【0011】
前臨床研究から、これらの治療後欠陥がSMAマウスモデルにおいて認められ、治療した動物は健康な動物と比較して平均余命が短く、体重、筋肉量、及び機能が低下することが分かった(Passiniら、2010年;Huaら、2010年、2011年;Fengら、2016年)。
【0012】
また、これらの治療に関する他の制限や重大な懸念が依然として存在する。例えば、ヌシネルセンは、侵襲性の高い髄腔内注射で年に数回投与しなければならない。この投与方法は、脊柱側弯症の手術を受けた患者にとっては非常に困難であり、時には不可能な場合もあるため、これらの患者ではヌシネルセンは治療の選択肢から除外される。また、髄腔内投与では中枢神経系に特異的に分布し、このことは全ての症状を完全にカバーできるわけではないことを意味する。この最後の点で、オナセムノゲンは静脈内投与であり、全身への分布が可能であることから利点がある。それにも関わらず、AAV9血清型の生物学的利用能の問題は、長期的な導入遺伝子発現がニューロンなどの有糸分裂後細胞に限定されるべきであるということと共に、まだ未解決である(Chaytowら、2021年)。オナセムノゲンは単回の注射だけで済む療法として宣伝されているが、治療が患者の生涯に渡って持続するかどうか、あるいは追加免疫が必要になるかどうかは不明のままである。
【0013】
リスジプラムとしては、全身療法であり、毎日経口投与するために低侵襲性である。しかし、リスジプラムがスプライシング機構を標的とする程に、リスジプラムは他の転写産物にも影響を及ぼし、未知で制御不能な非標的副作用を引き起こす可能性がある。実際、リスジプラムは高濃度で細胞分裂の制御因子に影響を及ぼすようであると報告されており、発癌性の副作用が懸念されている(Ratniら、2018年)。
【0014】
フィトエクジソンは、ポリヒドロキシル化ステロールの重要なファミリーである。これらの分子は、様々な種の植物(シダ植物、裸子植物、被子植物)により生成され、害虫に対する防御に関与する。植物界におけるフィトエクジソンの大部分は20‐ヒドロキシエクジソンである。
【0015】
仏国特許出願公開第3021318号明細書は、フィトエクジソン、より具体的には20‐ヒドロキシエクジソン(20E)が多くの薬理学的研究の対象であることを開示している。これらの研究は、この分子の抗糖尿病特性及び同化作用特性を強調している。筋肉内のタンパク質合成に対する刺激効果がインビボではラットで観察され(Syrovら、2000年;Tothら、2008年;Lawrenceら、2012年)、インビトロではC2C12マウス筋管で観察された(Gorelick‐Feldmanら、2008年)。動物モデルで上述した効果のいくつかは臨床研究で認められているが、まだ数は少ない。従って、20Eは若い運動選手の筋肉量増加を促進する(Simakinら、1988年)。
【0016】
最後に、仏国特許出願公開第1902726号明細書は、神経筋疾患、特に小児脊髄性筋萎縮症及び筋萎縮性側索硬化症を治療するためのフィトエクジソン及びその半合成誘導体の使用を更に報告している(Latilら、2020年)。
【0017】
上記の要素から、SMNタンパク質発現を増加させる治療法は疾患の進行及び患者の生活の質に有意な効果をもたらす可能性があるが、既に認可されている治療薬の投与量、又はその投与回数を低減し、又は最終的に機能的利益を改善して疾患の負担を更に軽減する補足的な治療アプローチを見出すことが依然として有用であることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2007/002390号
【特許文献2】国際公開第2018/014041号
【特許文献3】仏国特許出願公開第3021318号明細書
【非特許文献】
【0019】
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【非特許文献25】Latil, M., Dilda, P., Lafont, R. & Veillet, S. (2019). Phytoecdysones and their derivatives for use in the treatment of neuromuscular diseases. Patent Application WO2020187678.
【発明の概要】
【0020】
本発明は、既存の治療薬と比較して改善されている脊髄性筋萎縮症治療薬を提供することを目的とする。
【0021】
本発明者らは、脊髄性筋萎縮症に罹患した哺乳動物において、機能的SMNタンパク質の生成を増加できる有効成分との併用療法に利用する場合に、フィトエクジソン(特に20E及びその半合成誘導体)が有益かつ相乗的な効果を示すことを予期せず発見した。実際、フィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体と、機能的SMNタンパク質の生成を増加できる有効成分を用いた治療薬とを組み合わせて使用すると、これらの要素の相乗効果により脊髄性筋萎縮症(SMA)に罹患した動物の運動性能及び機能的性能、並びに生存率及び体重が改善される。
【0022】
この目標を達成するために、本発明は、脊髄性筋萎縮症の治療において併用療法で使用するための、少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分を目的とする。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、本発明は、SMAに関与する運動ニューロン疾患の治療において併用療法で使用するための、少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は少なくとも1種の20‐ヒドロキシエクジソンの半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分に関する。
【0024】
本出願の文脈では、用語「併用療法」とは、少なくとも2種の生物学的に活性な薬剤の同時投与を指す。本発明の場合、第1活性剤は、フィトエクジソン又は20‐ヒドロキシエクジソンの半合成誘導体から選択するか、又は少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は少なくとも1種の20‐ヒドロキシエクジソンの半合成誘導体を含む組成物であり、第2活性剤は、機能的SMNタンパク質の生成を増加できる有効成分である。併用療法は、単一の製剤又は数種の製剤を含んでよい。同時投与は、同時に、又は連続的に行うことが可能である。同時投与は同じ投与経路又は異なる投与経路で行ってもよい。被験体において2種(又は2種以上)の薬剤の効果が重なり、付加的、相加的、又は相乗的な臨床効果が得られる限り、その療法は併用療法と見なす。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は更に以下の特徴を満たす。これら特徴は別個に、又は技術的に操作可能にそれぞれ組み合わせて実施する。
【0026】
特定の実施形態では、前記少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる前記少なくとも1種の有効成分を同時投与する。
【0027】
特定の実施形態では、前記少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる前記少なくとも1種の有効成分を同じ組成物内で同時投与する。
【0028】
特定の実施形態では、前記少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1種の半合成誘導体を哺乳動物に経口投与又は全身投与し、機能的SMNタンパク質の生成を増加できる前記少なくとも1種の有効成分を哺乳動物に経口投与及び/又は髄腔内投与及び/又は静脈内投与する。
【0029】
経口投与の場合、前記少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1種の半合成誘導体及び/又は機能的SMNタンパク質の生成を増加できる有効成分を、経口投与可能な薬学的に許容される製剤に組み込むことが好ましい。
【0030】
遺伝子療法又は遺伝子の治療により、SMNタンパク質の生成を増加できる。遺伝子治療の1実施態様によれば、SMNタンパク質の生成を増加できる有効成分はSMN1遺伝子を提供することを目的とする。遺伝子療法の1実施態様によれば、SMNタンパク質の生成を増加できる有効成分は、SMN2遺伝子の成熟に作用する小分子、又はSMN2遺伝子のスプライシング(成熟)に作用することで機能的SMNタンパク質の生成を増加させることを目的として開発されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のいずれかである。後者の場合、ASOはSMN2のスプライシングを調節する。これにより、SMN2のmRNAへのエクソン7の取り込みが増加し、従って、エクソン7に対応し、ひいては機能的SMNタンパク質に対応するアミノ酸を有するSMNタンパク質の生成数が増加する。
【0031】
従って、本発明の特定の実施形態では、有効成分は、遺伝子療法又は遺伝子の治療により機能的SMNタンパク質の生成を増加させる能力を有する。
【0032】
本発明の特定の実施形態では、有効成分は、SMN1遺伝子を提供することにより機能的SMNタンパク質の生成を増加させる能力を有する。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、有効成分は、SMN2遺伝子の成熟に作用することにより機能的SMNタンパク質の生成を増加させる能力を有する。
【0034】
特定の実施形態では、機能的SMNタンパク質の生成を増加できる有効成分はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。このASOは、好ましくは10~30ヌクレオチド、より好ましくは12~30ヌクレオチド、好ましくは12~25ヌクレオチド、更に好ましくは15~20ヌクレオチドの配列を有する。本発明の好ましい実施形態によれば、ASOは18ヌクレオチドの配列を有する。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、ASOはエクソン7をSMN2遺伝子の配列中に誘導する能力を有する。
【0036】
本発明の特定の実施形態では、ASOは、ヒトSMN2遺伝子のプレmRNAをコードする核酸配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは98%、好ましくは100%相補的である。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、ASOは、ヒトSMN2遺伝子のプレmRNAをコードする核酸の、イントロン6、イントロン7、又はエクソン7の一部、及びエクソン7に隣接するイントロンの一部に属する配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは98%、好ましくは100%相補的である。このように、エクソン7はSMN2のmRNAに含まれており、これにより機能的SMNタンパク質を得ることが可能となる。
【0038】
ヒトSMN2遺伝子のプレmRNAをコードする核酸の配列は、Genbankから、参照番号NG_008728、バージョンNG_008728.1で入手可能である。
【0039】
特定の実施形態では、ASOは、本出願に添付した配列リストにある配列番号:1(5’‐TCACTTTCATAATGCTGG‐3’)と少なくとも50%一致又は類似した配列であり、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%一致又は類似し、また好ましくは100%一致又は類似した配列である。配列番号:1は、SMN2遺伝子のイントロン7の18塩基(塩基10~27)と相補的である。
【0040】
特定の実施形態では、ASOは、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29から選択された配列を有する。これらの配列により、ASOはSMN2遺伝子のイントロン7を標的とする。
【0041】
ASO配列と上記で収載した配列の1つとの同一性又は類似性の割合が100%未満である場合、ASO配列は、この参照配列が挿入、欠失、及び/又は置換された配列であると言える。
【0042】
2つのASO配列間の同一性の割合は、最適に位置合わせした2つの配列を比較ウインドウを通して比較することにより決定する。従って、比較ウインドウ内のASOの配列の一部は参照配列の付加又は欠失を含み、2つの配列間で最適に位置合わせができる。
【0043】
一致の割合は、2つの比較した配列において核酸塩基が一致している位置の数を決定し、次にこの位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で除算し、得られた数を100倍することにより計算する。
【0044】
ASOはホスホジエステル骨格から成ることが好ましい。ASOは、その安定性及び/又はRNAに対する親和性を増加させるために、また/あるいは薬物動態の点で大幅に有利にするために、その骨格及び/又はその化学構造を様々に修飾してもよい。
【0045】
特定の実施形態では、ASOは、以下から選択される少なくとも1つの修飾を含む:
‐ ホスホロチオエート、メチルホスファネート(methylphosphanate)、又はホスホロアミダートなどのリン酸基における修飾、
‐ 2’O‐メチル(2’OMe)、2’O‐メトキシエチル(2’MOE)、又は2’フルオロ(2’F)などの、リボースの2’位の化学修飾、
‐ 5’メチルシトシン、5‐メチルウリジン/リボチミジン、又は「G‐クランプ」型ピリミジンのメチル化などの、核酸塩基の少なくとも1つの修飾、
‐ モルホリノ(「ホスホロアミダートモルホリノオリゴマー」(PMO))、ペプチド核酸(PNA)、又は拘束型オリゴヌクレオチド(「ロックド核酸」(LNA)、「2’‐4’‐拘束型エチル」(cEt)、又はトリシクロ‐DNA(tc‐DNA))などの、種々の分子を生成する糖構造の少なくとも1つの実質的な変化。
【0046】
特定の実施形態では、ASOは、配列番号:23と少なくとも50%一致又は類似しており、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%一致又は類似しており、また好ましくは100%一致又は類似している配列である。配列番号:23は、各塩基でデオキシリボースの2’炭素原子上に2’‐O‐メトキシエチルを有し、更にホスホロチオエート骨格、及びシトシンの代わりに5‐メチルシトシンを有する配列番号:1に対応する。ホスホロチオエート骨格は有利にもASOの安定性を改善し、5‐メチルシトシンは有利にもヌクレアーゼに対するASOの感受性を低減し、デオキシリボースの2’炭素原子上の2’‐O‐メトキシエチルは有利にもASOの投与により誘導された免疫応答を低減する。
【0047】
本発明の特定の実施形態では、ASOは、ヒト1kg当たり0.01~10mgの用量で投与する。この用量は1日又は1週間に1回投与することが好ましい。
【0048】
フィトエクジソン及び20‐ヒドロキシエクジソンの半合成誘導体は、本発明において使用するために医薬グレードまで精製することが有利である。
【0049】
本発明に従って使用可能なフィトエクジソンは、例えば20‐ヒドロキシエクジソンである。
【0050】
この目的のために、本発明の特定の実施形態によれば、前記少なくとも1種のフィトエクジソンは20‐ヒドロキシエクジソンである。
【0051】
20‐ヒドロキシエクジソン及びその半合成誘導体は医薬グレードまで精製することが有利である。
【0052】
使用する20‐ヒドロキシエクジソンは、活性剤として20‐ヒドロキシエクジソンに富む植物抽出物、又は20‐ヒドロキシエクジソンを含む組成物の形態であることが好ましい。20‐ヒドロキシエクジソンに富む植物抽出物は、例えばステマカンサ・カルタモイデス(Stemmacantha carthamoides)(別名ルージァ・カルタモイデス(Leuzea carthamoides))、シアノチス・アラクノイデア(Cyanotis arachnoidea)、及びシアノチス・ヴァガ(Cyanotis vaga)の抽出物である。
【0053】
得られた抽出物は医薬グレードまで精製することが好ましい。
【0054】
1実施形態では、20‐ヒドロキシエクジソンは植物抽出物又は植物の一部の形態であり、前記抽出物は少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の20‐ヒドロキシエクジソンを含む。前記植物は、前記植物の乾燥重量で少なくとも0.5%の20‐ヒドロキシエクジソンを含有する植物から選択することが好ましい。前記抽出物は医薬グレードまで精製することが好ましい。
【0055】
その後の前記抽出物をBIO101と呼ぶ。BIO101は、抽出物中乾燥重量で0~0.5%の不純物、例えば、前記抽出物の医薬用途の安全性、入手可能性、又は有効性に影響を及ぼす可能性のある微量化合物を含むことが顕著である。
【0056】
BIO101を生成する植物は、ステマカンサ・カルタモイデス、シアノチス・アラクノイデア、及びシアノチス・ヴァガから選択することが好ましい。
【0057】
20‐ヒドロキシエクジソンの半合成誘導体は半合成により得られ、特に、欧州特許出願公開第15732785.9号明細書に記載されている方法で得ることが可能である。
【0058】
特定の実施形態では、フィトエクジソンは1日にヒト1キログラム当たり3~15ミリグラムの用量で投与する。本明細書では、用語「フィトエクジソン」は、一般に両方のフィトエクジソン、20‐ヒドロキシエクジソン(特に抽出物の形態)及びその半合成誘導体を意味する。
【0059】
好ましくは、フィトエクジソンは、ヒト成人では、200~1000mg/日の用量を1回で又は複数回に分けて、またヒト小児又は乳児では、5~350mg/日の用量を1回で又は複数回に分けて投与する。本明細書では、用語「フィトエクジソン」は、一般に両方のフィトエクジソン、20‐ヒドロキシエクジソン(特に抽出物の形態)及びその半合成誘導体を意味する。
【0060】
本発明の特定の実施形態では、20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1種の半合成誘導体は以下から選択される:
‐ 一般式(I)の化合物:
【0061】
【0062】
式中:
R1は:(C1‐C6)W(C1‐C6)基;(C1‐C6)W(C1‐C6)W(C1‐C6)基;(C1‐C6)W(C1‐C6)CO2(C1‐C6)基;(C1‐C6)A基(Aは、OH、OMe、(C1‐C6)、N(C1‐C6)、CO2(C1‐C6)型の基で任意に置換された複素環を表す);及びCH2Br基から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはS°である;並びに
‐ 式(II)を有する化合物。
【0063】
【0064】
本発明の範囲内で、用語「(C1‐C6)」は、1~6個の直鎖又は分枝炭素原子の任意のアルキル基、特にメチル、エチル、n‐プロピル、イソ‐プロピル、n‐ブチル、イソ‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、n‐ペンチル、n‐ヘキシルを意味する。メチル基、エチル基、イソ‐プロピル基、又はt‐ブチル基、特にメチル基又はエチル基、より具体的にはメチル基であることが有利である。
【0065】
本発明の範囲内で、用語「複素環」は、好ましくは、5個又は6個の原子が1個又は2個のヘテロ原子(O、S、又はN)を含み、残りの原子が炭素原子である環を意味する。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、一般式(I)において:R1は:(C1‐C6)W(C1‐C6)基;(C1‐C6)W(C1‐C6)W(C1‐C6)基;(C1‐C6)W(C1‐C6)CO2(C1‐C6)基;及び(C1‐C6)A基(AはOH、OMe、(C1‐C6)、N(C1‐C6)、CO2(C1‐C6)型の基で任意に置換された複素環を表す)から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはSである。
【0067】
本発明の特定の実施形態では、20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1種の半合成誘導体は、以下の化合物から選択される化合物である:
No.1:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐17‐(2‐モルホリノアセチル)‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン(phenanthren)‐6‐オン;
No.2:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(3‐ヒドロキシピロリドン‐1‐イル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.3:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(4‐ヒドロキシ‐1‐ピペリジル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.4:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐[4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐ピペリジル]アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.5:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐[2‐(3‐ジメチルアミノプロピル(メチル)アミノ)アセチル]‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.6:2‐[2‐オキソ‐2‐[(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐6‐オキソ‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル]エチル]エチルスルファニルアセテート;
No.7:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐(2‐エチルスルファニルアセチル)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.8:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(2‐ヒドロキシエチルスルファニル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1Hシクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン。
【0068】
別の態様によれば、本発明は、以下:
‐ 少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、
‐ 機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分
を含み、哺乳動物における神経筋疾患、特に脊髄性筋萎縮症の治療おいて使用するための組成物を目的とする。
【0069】
前記組成物のこのような使用は、併用療法における、前記少なくとも1種のフィトエクジゾン及び/又は20‐ヒドロキシエクジゾンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる前記少なくとも1種の有効成分の使用を参照して上述した特徴の1つ以上を満たす可能性がある。
【0070】
実施形態では、組成物は、経口投与、髄腔内投与、又は全身投与が可能な薬学的に許容される製剤に組み込む。
【0071】
本発明の範囲内において、用語「薬学的に許容される」とは、医薬組成物の調製に有用であり、一般に安全であり、毒性がなく、ヒト医薬用途だけでなく獣医学的用途にも許容されることを意味する。
【0072】
本発明は、非限定的な例として、以下を表す図を参照して説明する以下の記述を読み取ることで、より深く理解されるであろう。
各図について、結果は平均値±SEMで示し、*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表し、****はp<0.0001を表す。
他の説明としては、nは試料サイズに対応し、pは結果の統計的有意性を定量化するために使用する「p値」に対応する。また、p=nsはp値が有意でないことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】BIO101単独もしくはミスマッチASOもしくはASO10‐27単独もしくはASO10‐27とBIO101との併用で処置したSMAマウス(Smn
Δ7/Δ7;huSMN2
+/-)の、マウス出生(P0)から死亡までの体重推移の曲線である。本明細書、及び他の説明では、Pは出生後(生後)の日数に対応する。
【
図2】BIO101単独もしくはミスマッチASOもしくはASO10‐27単独もしくはASO10‐27とBIO101との併用で処置したSMAマウス(Smn
Δ7/Δ7;huSMN2
+/-)の、出生(P0)からの生存率曲線のカプランマイヤー表示である。
【
図3】BIO101単独もしくはミスマッチASOもしくはASO10‐27単独もしくはASO10‐27とBIO101との併用で処置したSMAマウス(Smn
Δ7/Δ7;huSMN2
+/-)について、出生時(P0)からオープンフィールド試験により評価した運動性能(運動能力)を示す。
【
図4】BIO101単独もしくはミスマッチASOもしくはASO10‐27単独もしくはASO10‐27とBIO101との併用で処置したSMAマウス(Smn
Δ7/Δ7;huSMN2
+/-)について、出生時(P0)から握力試験により評価した運動性能(筋肉疲労)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明を、その好ましい非限定的な1適用分野の特定の文脈において以下に説明する。
【0075】
1.アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の説明及び注射
ISIS‐SMNRxの名でも知られ、他の説明としてASO10‐27とも呼ばれ、各塩基でデオキシリボースの2’炭素原子上に修飾ヌクレオチド2’‐O‐メトキシエチルを有するSMN2遺伝子のイントロン7の18塩基(塩基10~27)に相補的である(SMN2遺伝子のプレメッセンジャーRNA(プレmRNA)のエクソン7の取り込みを抑制するISS‐N1と呼ばれる、イントロン7内のある部位を標的とする)参照番号ISIS396443の配列番号:23(5’‐TCACTTTCATAATGCTGG‐3’)のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を、配列番号:24(5’‐TTAGTTTAATCACGCTCG‐3’)のホスホロチオエート骨格及び5‐メチルシトシン及び制御ASO(ミスマッチを意味する)と共に(Singhら、2006年;Williamsら、2009年)、先行論文(Bakerら、1997年;Huaら、2008年;Passiniら、2011年)と同様に合成及び精製した。オリゴヌクレオチドを、0.9%NaCl中に8μg/μLの濃度で再懸濁し、-20℃で保存する。
【0076】
注射当日、ASO原液を0.9%NaClで2μg/μLの濃度に希釈する。注射対照としてメチレンブルー0.04%を溶液に添加する。生後1日目(P0)の新生仔SMAマウスに、8μgのASO10‐27又はASOミスマッチを、ハミルトン注射器及び32G注射針を用いて片側脳室内注射で単回投与する。P0では、注射部位はブレグマとラムダとの間で矢状縫合から1mmの位置にある。注射針は、皮膚表面の注射部位に垂直に配置し、約3mmの深さまで刺入し、側脳室に到達させる。
【0077】
2.BIO101の同時投与
シクロデキストリンと複合体化した補足的治療薬BIO101を、出生後1日目(P0)からマウスに50mg/kgの用量でピペットを用いて毎日経口投与する。
【0078】
3.ASOと組み合わせたBIO101の生物学的活性
a.体重及び生存率に対する併用治療薬ASO10‐27+BIO101の効果の分析
マウスSmn遺伝子のエクソン7を無効化し、ヒトSMN2導入遺伝子(Smn
Δ7/Δ7;huSMN2
-/+)のコピーを2つ発現することを特徴とするフレンド白血病ウイルスB/NOD・Rag‐2・Jak3欠損(FVB/NRj)遺伝的背景で重症SMAマウスモデルを使用した(Hsiehら、2000年)。遺伝子型「FVB/NRj‐Smn
Δ7/Δ7huSMN2
-/+の2つのコピー」を有するこれらの交雑から得られたマウスを「SMA」と記述する(Hsiehら、2000年)。SMAマウスは、P0からBIO101単独もしくはミスマッチASO、又はASO10‐27単独もしくはASO10‐27とBIO101との併用治療のいずれかで処置した。マウスの生存率(
図1)及び体重(
図2)を毎日分析した。
【0079】
BIO101単独で処置した仔マウス(
図1)の平均寿命(11日)は、ミスマッチASOで処置した仔マウスの平均寿命(13日)とほぼ同一である。2011年にPassiniらが報告しているように、用量8μgのASO10‐27単独治療は、SMA仔マウスの平均寿命を有意に延長し、生存期間の中央値は18日(動物の生存率が38%改善)であったのに対し、ミスマッチASO対照群の生存期間の中央値は13日である。BIO101治療薬をASO10‐27と組み合わせて投与すると、生存期間の中央値は22.5日に増加し、即ち動物生存率が73%改善している。
【0080】
BIO101単独で処置した仔マウスの体重(
図2)は、その生涯を通じて、ミスマッチASOで処置した仔マウスの体重と同等である。
【0081】
P7において、ASO10‐27単独で治療すると、ミスマッチASOによる対照治療と比較してSMAマウスの平均体重は増加していないが、P8では9.9%、P9では13.9%有意に増加している。ASO10‐27とBIO101とを併用すると、SMA仔マウスの体重に相乗効果が誘導され、P7で11.3%、P8で16.5%、P9で24.9%有意に増加している。
【0082】
P10において、ASO10‐27単独で治療すると、ミスマッチASOによる対照治療と比較してSMA仔マウスの平均体重は有意に増加している(+16%)。ASO10‐27との併用ではBIO101はSMA仔マウスの体重に相乗効果を誘導し、体重はP10で+30.9%有意に増加しており(p<0.05)、即ちASO10‐27単独で観察された体重のほぼ2倍高い増加率である。
【0083】
ASO10‐27+BIO101で処置した仔マウスの体重がASO10‐27単独で処置した仔マウスの体重より増加したことは死亡まで続いており、特に、P15で33%(p<0.05)、P20で49.4%(p<0.05)、P25で57.6%(p<0.01)と有意な増加を示している。
【0084】
b.ASO10‐27+BIO101併用治療の機能的効果の分析
BIO101単独もしくはミスマッチASO、又はASO10‐27単独もしくはASO10‐27とBIO101との併用治療で処置した重症SMA2型のマウスについて、P0で表現型分析を行った。マウスの運動能力について水平方向にモニタリングした。一方、先行論文(Biondiら、2008年;Branchuら、2013年;Chaliら、2016年)と同様に、オープンフィールド試験(
図3)により運動能力を評価し、グリップ試験(
図4)により筋肉疲労を評価した。
【0085】
オープンフィールド試験に使用した装置は、7cm×7cmの16タイルに分割されたフィールド格子を備えたサイズ28×28×5cmのプラスチックボックスから構成されている。マウスらを個別に試験し、各処置後に評価装置を洗浄した。最初は、フィールドの中央に置かれた各マウスは、15秒ごとに尾をつまむ刺激を与えられながら、5分間自由に動くことができた。この5分間の間に実験者は行動測定値を記録し、通ったタイルの総数を記録した。
【0086】
BIO101処置は単独投与、又はASO10‐27との併用投与のいずれであっても、歩行を促進している。これは、P15で、ASO10‐27単独で処置した仔マウス(70±20タイル)より、マウスの移動を増加させる傾向にある(BIO101単独治療では110±18タイル又は+58%、ASO10‐27+BIO101治療では100±19タイル又は+44%)。
【0087】
P23から、ASO10‐27+BIO101で処置した仔マウスの運動能力は、ASO10‐27単独で処置した仔マウスの運動能力(+51.3%、p=ns)より増加する傾向があり、P25で(+38.4%、p<0.05)、又はP27でさえ(+44.9%、p<0.01)有意に増加している(
図3)。
【0088】
筋肉疲労を評価するために、マウスの前肢の握力を試験した。空中に水平に吊るされた細い金属棒から、前肢によりマウスがぶら下がる。ぶら下がっている時間を記録する。各マウスは2回のテスト間に1分間休憩させ、5回連続して試験した。筋機能の評価には、最良の試験結果のみを残す。
【0089】
P7では、ASO10‐27単独で処置した仔マウスの疲労に対する耐性は、ミスマッチASOで処置した仔マウスの疲労耐性と比較して改善はされなかった。BIO101単独で処置したマウスの疲労耐性自体は19.3%改善した。P15において、ASO10‐27単独及びBIO101単独で処置したマウスの疲労耐性は両方とも、ミスマッチASOで処置した仔マウスの疲労耐性より高かった(+7.7%)。驚くべきことに、そして有利にも、BIO101とASO10‐27との相乗効果が併用治療中に働き、治療したSMA動物の疲労耐性は、P7で26.3%、P15で21.2%増加している。
【0090】
P19から、ASO10‐27+BIO101で処置した仔マウスの疲労耐性は、ASO10‐27単独で処置したマウスの疲労耐性より増加傾向にある。この差はP21から明らかになり(ASO10‐27単独と比較してASO10‐27+BIO101併用で処置した群では+54%、p=ns)、その後P23で(+159.2%、p<0.05)、P25で(+337.7%、p<0.05)、又はP27でさえ(+296.7%、p=0.07)増加している。これらの有意差はP35まで維持される。P39からは、これらの差は顕著ではなくなるが、それでもASO10‐27+BIO101の併用で処置したマウス群は、ASO10‐27単独で処置した群で観察されたものより高い疲労耐性を維持している(
図4)。
【0091】
4.結論
特にSMNタンパク質の発現を回復させる効果を有するASOを使用する治療アプローチにより、これらの結果は、SMNタンパク質の発現を回復させることを目的とする有効成分と併用するBIO101治療薬の重要性を実証している。
【0092】
実際、この併用療法は、SMAのマウスモデルにおいて、特に動物の体重の点で、更に顕著には、動物の運動能力又は疲労耐性いずれかのこれらの動物の身体的性能の点で、有意な有益効果を示す。
【0093】
ASO10‐27+BIO101治療の併用は、単独療法としてのASO10‐27の治療により得られる性能改善以上に、間違いなく相乗効果を有する。
【0094】
より一般的には、上記で考察した本発明の実施態様及び実施形態は非限定的な実施例により説明しており、従って他の変形が可能であることに留意されたい。
【0095】
特に、本発明は、主に配列番号:23のASO10‐27を考察することで説明してきた。しかし、他のタイプの実施形態では、SMNタンパク質の生成を増加できる他の有効成分、例えばSMNタンパク質の生成を増加できる他のASOを考察することを排除してはいない。このようなASOは、例えば、以下から選択される配列のASOである:配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29。
【0096】
これらの配列を特に以下の表1に示す:
【0097】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における脊髄性筋萎縮症の治療に使用するための、少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的運動ニューロン生存(SMN)タンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項2】
脊髄性筋萎縮症の原因となる運動ニューロン疾患の治療に使用するために請求項1に従って使用するための、請求項1に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項3】
前記運動ニューロン疾患は運動ニューロンの機能的変化又はその変性であり、請求項2に従って使用するための、請求項2に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項4】
前記有効成分は遺伝子療法又は遺伝子の治療により機能的SMNタンパク質の生成を増加させる能力を有し、請求項1~3のいずれか1項に従って使用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項5】
前記有効成分は、SMN1遺伝子を提供することにより、又はSMN2遺伝子の成熟に作用することにより、機能的SMNタンパク質の生成を増加させる能力を有し、請求項1~3のいずれか1項に従って使用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項6】
機能的SMNタンパク質の生成を増加できる前記有効成分はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、請求項1~3のいずれか1項に従って使用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項7】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは10~30個のヌクレオチドを含み、請求項6に従って使用するための、請求項6に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項8】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトSMN2遺伝子のプレmRNAをコードする核酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、好ましくは100%相補的であり、請求項6に従って使用するための、請求項6に記載の1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項9】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトSMN2遺伝子のプレmRNAをコードする核酸のイントロン6、イントロン7、又はエクソン7に属する配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは98%、好ましくは100%相補的であり、請求項6に従って使用するための、請求項6に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項10】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは配列番号:1と少なくとも50%一致又は類似し、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%一致又は類似しており、好ましくは100%一致又は類似している配列であり、請求項6に従って使用するための、請求項6に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項11】
前記ASOは、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29から選択される配列であり、請求項6に従って使用するための、請求項6に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項12】
前記ASOは以下から選択される少なくとも1つの修飾:
‐ ホスホロチオエート、メチルホスファネート、又はホスホロアミダートなどのリン酸基における修飾、
‐ 2’O‐メチル(2’OMe)、2’O‐メトキシエチル(2’MOE)、又は2’フルオロ(2’F)などの、リボースの2’位の化学修飾、
‐ 5’メチルシトシン、5‐メチルウリジン/リボチミジン、又は「G‐クランプ」型ピリミジンのメチル化などの、核酸塩基の少なくとも1つの修飾、
‐ モルホリノ、ペプチド核酸、又は拘束型オリゴヌクレオチドなどの、種々の分子を生成する糖構造の少なくとも1つの実質的な変化
を含み、請求項6に従って使用するための、請求項6に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項13】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは配列番号:23と、少なくとも50%一致又は類似し、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%一致又は類似し、特に100%一致又は類似している配列であり、請求項6に従って使用するための、請求項6に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項14】
前記少なくとも1種のフィトエクジソンは20‐ヒドロキシエクジソンであり、請求項1に従って使用するための、請求項1に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項15】
前記20‐ヒドロキシエクジソンは植物抽出物又は植物の一部の形態であり、前記抽出物は少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の20‐ヒドロキシエクジソンを含み、請求項14に従って使用するための、請求項14に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項16】
20‐ヒドロキシエクジソンの前記少なくとも1種の半合成誘導体は:
‐ 一般式(I)の化合物:
【化1】
式中:
R
1は:(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)CO
2(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)A基(Aは、OH、OMe、(C
1‐C
6)、N(C
1‐C
6)、CO
2(C
1‐C
6)型の基で任意に置換された複素環を表す);及びCH
2Br基から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはSである;並びに
‐ 式(II)を有する化合物
【化2】
から選択され、請求項1に従って使用するための、請求項1に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項17】
一般式(I)中:
R
1は:(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)W(C
1‐C
6)CO
2(C
1‐C
6)基;(C
1‐C
6)A基(Aは、OH、OMe、(C
1‐C
6)、N(C
1‐C
6)、CO
2(C
1‐C
6)型の基で任意に置換された複素環を表す)から選択され;
Wは、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子であり、好ましくはOであり、より好ましくはSであり、請求項16に従って使用するための、請求項16に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項18】
一般式(I)の少なくとも1種の化合物は:
No.1:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐17‐(2‐モルホリノアセチル)‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン(phenanthren)‐6‐オン;
No.2:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(3‐ヒドロキシピロリジン‐1‐イル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.3:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(4‐ヒドロキシ‐1‐ピペリジル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.4:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐[4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐ピペリジル]アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.5:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐[2‐(3‐ジメチルアミノプロピル(メチル)アミノ)アセチル]‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.6:2‐[2‐オキソ‐2‐[(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐6‐オキソ‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル]エチル]エチルスルファニルアセテート;
No.7:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐(2‐エチルスルファニルアセチル)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.8:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(2‐ヒドロキシエチルスルファニル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン
から選択され、請求項16又は17に従って使用するための、請求項16又は17に記載の少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体、並びに機能的SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分。
【請求項19】
哺乳動物における脊髄性筋萎縮症の治療に使用するための、
‐ 少なくとも1種のフィトエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1種の半合成誘導体;
‐ 機能性SMNタンパク質の生成を増加できる少なくとも1種の有効成分
を含むことを特徴とする組成物。
【国際調査報告】