(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】接地接続の喪失を検出する方法、コントローラ、及びブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20241114BHJP
【FI】
G01R31/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533990
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 DE2022200299
(87)【国際公開番号】W WO2023116990
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021214955.3
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522296653
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートモーティヴ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1, 30175 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー・パトリック
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AA13
2G014AB24
2G014AC18
(57)【要約】
本発明は、車両のためのコントローラ(101)において、接地接続の喪失を検出する方法に関する。コントローラ(101)が、第1のユニット(103)と第2のユニット(105)とを有し、第1のユニット(103)及び/又は第2のユニット(105)が、マイクロコントローラ(107、109)を備え、第1のユニット(103)が、第1の接地線(111)によって第1の接地端子(115)に接続され、第2のユニットが、第2の接地線(119)によって第2の接地端子(117)に接続され、コントローラ(101)が、第1の接地線(111)又は第2の接地線(119)に配置された単一の接地喪失検出抵抗器(113)を備える。本方法は、第1の接地線(111)及び/又は第2の接地線(119)の電流を確認するステップと、接続の喪失が接地端子(115、117)のうちの一方で発生したか否かを判定するために、マイクロコントローラ(107、109)を使用して測定電流を評価するステップとを含む。本発明は、追加的に、車両のためのコントローラとブレーキシステムとに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のためのコントローラ(101)において、接地接続の喪失、特に冗長接地接続における接地接続の喪失を検出する方法であって、前記コントローラ(101)が、第1のユニット(103)と第2のユニット(105)とを有し、前記第1のユニット(103)及び/又は前記第2のユニット(105)が、マイクロコントローラ(107、109)を備え、前記第1のユニット(103)が、第1の接地線(111)によって第1の接地端子(115)に接続され、前記第2のユニット(105)が、第2の接地線(119)によって第2の接地端子(117)に接続される、方法において、
前記コントローラ(101)が、前記第1の接地線(111)又は前記第2の接地線(119)に配置された単一の接地喪失検出抵抗器(113)を備え、以下のステップ、すなわち、
前記第1の接地線(111)及び/又は前記第2の接地線(119)における電流を確認するステップと、
前記接続の喪失が前記接地端子(115、117)のうちの一方で発生したか否かを判定するために、前記マイクロコントローラ(107、109)によって測定電流を評価するステップと
が実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記評価するマイクロコントローラ(107、109)及び前記接地喪失検出抵抗器(113)が前記第2のユニットに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
特に前記コントローラ(101)のコンポーネントとして、又は前記コントローラ(101)内において、前記第1のユニット(103)が第1のプリント回路基板を備え、前記第2のユニット(105)が第2のプリント回路基板を備え、前記第1のプリント回路基板が前記第1の接地線(111)によって前記第1の接地端子(115)に接続され、前記第2のプリント回路基板が前記第2の接地線(119)によって前記第2の接地端子(117)に接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
接地の遮断が、正常動作条件下で、且つ/又は純粋に動作電流を使用して、特に試験電流を使用せずに検出され得ることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
実際に流れている電流が測定されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
2つの電流閾値が定義され、前記第1の接地線(111)を介した前記接続の喪失が、前記電流が第2の電流閾値を上回ったという事実によって特定されることを特徴とし、
前記第2の接地線(119)を介した前記接続の喪失が、前記電流が第1の電流閾値を下回ったという事実によって特定されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記評価のための最低限必要な電流のレベルが、アナログ-デジタル変換器のオフセット誤差に応じて選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記最低限の電流が、前記オフセット誤差が大きいほど大きくなるように選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記接地喪失検出抵抗器(113)の抵抗値が周囲温度によって補正されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接地喪失検出抵抗器の公称抵抗が前記プリント回路基板の公差によって補正されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
車両のためのコントローラであって、前記コントローラ(101)が、第1のユニット(103)と第2のユニット(105)とを有し、前記第1のユニット(103)及び/又は前記第2のユニット(105)が、マイクロコントローラ(107、109)を備え、前記第1のユニット(103)が、第1の接地線(111)によって第1の接地端子(115)に接続され、前記第2のユニット(105)が、第2の接地線(119)によって第2の接地端子(117)に接続される、コントローラにおいて、
前記コントローラ(101)が、前記第1の接地線(111)又は前記第2の接地線(119)に配置される単一の接地喪失検出抵抗器(113)を備え、前記コントローラ(101)が、前記接続の喪失が前記接地端子(115、117)のうちの一方で発生したか否かを、前記第1の接地線(111)又は前記第2の接地線(119)における電流を測定することによって前記マイクロコントローラ(107、109)が検出することができるように設計されることを特徴とする、コントローラ。
【請求項12】
前記接地喪失検出抵抗器が、プリント回路基板の抵抗器の形態であることを特徴とする、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のコントローラを有する、車両のためのブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文による、接地接続の喪失、特に冗長接地接続における接地接続の喪失を検出する方法、車両のためのコントローラ、及び車両のためのブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
接地喪失検出(GLD)のための従来の回路、特に、車両のブレーキシステムのためのコントローラにおける従来の回路は、電流、特に動作電流を測定するために2つの抵抗器を使用する。コントローラと車体との間の冗長接地線接続における異常を検出するために、ここでは各接地線に1つずつ抵抗器が配置される。このような回路は、例えば独国特許出願公表第112016002693T5号明細書に記載されている。
【0003】
図1は、1つのメッシュ及び2つのノードを有する二重すなわち冗長接地接続の等価回路図を示している。メッシュの計算は、使用されるプリント回路基板の数に依存しない。従来のコントローラは、アクチュエータ用と変調器用との2つのプリント回路基板を使用する。それぞれのプリント回路基板上にある2つの接地面は、クロス接続を介して接続される。このクロス接続は抵抗器Rccで表されている。
【0004】
この場合の電流Ipは、アクチュエータから左側のノードに流れる電流を表す。Ivsは変調器から右側のノードに流れる電流を表す。この場合の2つの電流I1及びI2は、分流器、接点系、及び接地線から構成される直列回路を介して車体の方向にそれぞれ流れ出る電流を表す。分かりやすくするために、これら3つの個々の抵抗器をまとめて、抵抗器R1及びR2としてグループ化してある。
【0005】
電流を測定するための分流器(抵抗器)は、全抵抗に占める割合が最も小さい。接地の遮断が発生した場合には、全抵抗における線路抵抗の寄与が優勢になる。これは無限に大きく、電流はこの接地経路を経由して流れることができなくなる。
【0006】
接地の遮断は、車体とのそれぞれの接地線における電流がゼロであることに基づいて検出される。正常な状態であれば接地線を介して車体の方向に流れ出る電流は、直列に接続された分流器において電圧降下を引き起こす。上記電圧降下が、増幅されデジタル変換された形態で、マイクロコントローラが評価に利用できるようにされる。次いで、電圧降下は、ソフトウェアによって再び電流へと計算し直される。この電流がゼロで測定される場合、結果的にすべての電流が第2の接地経路を介して車体に流れる。
【0007】
接地、特にアクチュエータの接地線が遮断されると、抵抗器R2は、より高い抵抗(無限大)を有するようになる。したがって、I2はゼロである。したがって、左側のノードに流れる電流Ipは、Rccを介して右側のノードの方向に流れ、そこからR1を介して車体の方向に流れなければならない。このことはすべて逆にも当てはまる。変調器の接地が遮断されると、抵抗器R1は、より高い抵抗(無限大)を有するようになる。電流Ivsは、右側のノードからクロス接続Rccを介して左側のノードに流れ、そこからR2を介して車体の方向に流れる。接地接続がある限り、少なくともアクチュエータ及び変調器のロジック部分は機能の点で維持され得る。つまり、アクチュエータ及び変調器は、「ゼロ」電流が測定されることを介して、関連する接地線の遮断を検出することができる。
【0008】
接地喪失を正常に検出するためには、試験パルスの印加中に2つの電流を同期して測定しなければならない。そのためには、動作電流を両方の接地線に分けなければならない。従来の解決策の欠点は、個々のコンポーネントが比較的高いコストを伴い、プリント回路基板上でスペースを取ることである。評価プロセスには、ソフトウェアでの複雑な計算も必要となる。通常、アプリケーション固有のパラメータ適応が必要となる。
【0009】
独国特許出願公開第19836734A1号明細書には、乗員保護システムのイグニッション回路の機能を試験する方法の例を用いる別の回路装置が記載されている。しかしながら、提案されている回路装置は、1つの接地線しか備えておらず、第2の接地線は第1の接地線に対する基準として機能する。第2の接地は、第1の接地線の基板を使用した最大抵抗値をエミュレートしており、これは、イグナイタのみをトリガし得るように行われ得る。第1の接地線に障害が発生した場合、電流は補助接地に迂回される。基板抵抗は電位上昇をもたらし、これが比較器によって評価され得る。したがって、冗長接地接続は利用することができず、このことは、例えば第1の接地線に故障が発生した場合、回路装置の機能が保証されなくなるなり得るという事実につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、接地喪失の検出を改善して、特にコストを削減し、プリント回路基板上のスペースを節約することにある。
【0011】
ここでは、接地線が故障しても、回路装置の機能は可能な限り維持されるべきである。
【0012】
したがって、例えば第1の接地線などの接地線に故障又は欠陥が発生した場合に、接続されたコントローラが動作を継続することができれば有利である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は独立請求項によって達成される。
【0014】
本発明は、車両のためのコントローラにおいて、接地接続の喪失、特に冗長接地接続における接地接続の喪失を検出する方法であって、コントローラが、第1のユニットと第2のユニットとを有し、第1のユニット及び/又は第2のユニットが、マイクロコントローラを備え、第1のユニットが、第1の接地線によって第1の接地端子に接続され、第2のユニットが、第2の接地線によって第2の接地端子に接続され、
コントローラが、第1の接地線又は第2の接地線に配置された単一の接地喪失検出抵抗器を備え、以下のステップ、すなわち、
- 第1の接地線及び/又は第2の接地線における電流を確認するステップと、
- 接続の喪失が接地端子のうちの一方で発生したか否かを判定するために、マイクロコントローラによって測定電流を評価するステップと
が実行される、方法を提示する。
【0015】
単一の接地喪失検出抵抗器ということは、接地喪失検出抵抗器は1つしかなく、つまり他にはないということである。したがって、本発明は、接地喪失を特定するために単一の接地喪失検出抵抗器(分流器)しか必要としない。これにより、2つ目の分流器のコストが削減され、プリント回路基板上のスペースを他のコンポーネントのために空けることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、コントローラの第1のユニットが第1のプリント回路基板を備え、第2のユニットが第2のプリント回路基板を備える。したがって、本発明の意義の範囲内でのコントローラは、第1のプリント回路基板を有する第1のユニットと、第2のプリント回路基板を有する第2のユニットとを備え得る。したがって、2つのプリント回路基板は構造的に互いに分離され得るが、2つのプリント回路基板が他のコンポーネント又は電気配線によって互いに接続され得るという事実を排除するものではない。
【0017】
よって、両方のユニットが2つの異なるプリント回路基板を備えることができ、ここでは単一のコントローラと関係し得る。第1のプリント回路基板はここで第1の接地線によって第1の接地端子に接続され得、第2のプリント回路基板はここで第2の接地線によって第2の接地端子に接続され得る。したがって、コントローラは、車体に対して、物理的に分離された2つの外部接地線を有し得る。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の接地線と第2の接地線とは、クロス接続(「相互接続」)を介して互いに接続され得、これにより、特に接地の遮断の場合、電流を逆流させることができる。
【0019】
コントローラの動作中、動作電流は、このように両方の接地線に分けられ、これは通常の動作挙動に対応する。例えば、独国特許出願公開第19836734A1号明細書の回路装置で必要とされるような試験電流は必要ではない。換言すれば、本発明は、正常動作条件下で、また動作電流のみを用いて接地の遮断を検出するために使用され得る。第1の接地線又は第2の接地線に欠陥、例えば断裂があるとすぐに、この欠陥は本発明による仕方で検出され得る。特に第1の接地線において接地の遮断が発生した場合、ここで電位は上昇しない。
【0020】
本発明は、冗長接地接続の利点を提供する。これにより、第1の接地線などの接地線の故障又は欠陥が発生した場合でもコントローラ又は対応する機能を維持することができ、このことは、特にブレーキシステムに関しては非常に有利である。このことは、独国特許出願公開第19836734A1号明細書の回路装置の場合では当てはまらず、それは、主な接地線に欠陥がある場合に機能を有効化できないためである。
【0021】
本発明の好ましい発展形態では、評価するマイクロコントローラ及び接地喪失検出抵抗器が第2のユニット、つまり第2のプリント回路基板に配置される。このことにより、評価プロセスを実施することが簡素になり且つ費用対効果も高くなる。
【0022】
本発明の好ましい発展形態では、2つの電流閾値が定義され、第2の接地線における電流が測定され、第2の接地線を介した接続の喪失が、電流が第1の電流閾値を下回ったという事実によって特定され、第1の接地線を介した接続の喪失が、電流が第2の電流閾値を上回ったという事実によって特定される。
【0023】
代替的に、好ましくは、第1の接地線における電流が測定され、第1の接地線を介した接続の喪失が、電流が第1の電流閾値を下回ったという事実によって特定され、第2の接地線を介した接続の喪失が、電流が第2の電流閾値を上回ったという事実によって特定される。
【0024】
本発明の好ましい発展形態では、評価のための最低限必要な電流のレベルが、アナログ-デジタル変換器のオフセット誤差に応じて選択される。特に好ましくは、最低限の電流は、オフセット誤差が大きいほど大きくなるように選択される。本発明の好ましい発展形態では、接地喪失検出抵抗器の抵抗値が周囲温度によって補正される。
【0025】
本発明の好ましい発展形態では、接地喪失検出抵抗器の公称抵抗がプリント回路基板の公差によって補正される。最低限必要な電流のレベルを補正して選択することにより、信号の評価において、ひいては接地の遮断の特定において、より正確な結果が有利なことに獲得される。
【0026】
本発明の好ましい発展形態では、測定電流が、2乗平均平方根値として処理される。2乗平均平方根値はまた、ここでは「真のRMS変数」とも呼ばれ得る。本発展形態によって、有用な信号を最大の品質で処理することが可能になる。加えて、特定の制御機能(例えば、ABS)のために、隠蔽を目的とした更なるソフトウェアアルゴリズムを実装する必要もない。
【0027】
上記の目的はまた、車両のためのコントローラであって、コントローラが第1のユニットと第2のユニットとを有し、第1のユニット及び/又は第2のユニットがマイクロコントローラを備え、第1のユニットが第1の接地線によって接地端子に接続され、第2のユニットが第2の接地線によって接地端子に接続され、コントローラが第1の接地線又は第2の接地線に配置される単一の接地喪失検出抵抗器を備え、コントローラが、接続の喪失が接地端子のうちの一方で発生したか否かを、第1の接地線及び/又は第2の接地線の電流を測定することによってマイクロコントローラが検出することができるように設計される、コントローラによって達成される。
【0028】
本発明の1つの発展形態では、接地喪失検出抵抗器が、プリント回路基板の抵抗器の形態である。つまり、分流器はプリント回路基板にコンポーネントとして搭載されないが、銅の助けを借りて実現される。これにより、追加コストを削減できる。
【0029】
上記の目的はまた、上記のコントローラを有する、車両のためのブレーキシステムによっても達成される。
【0030】
更に好ましい実施形態は、従属請求項及び以下の図面に基づく例示的な実施形態の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】接地喪失の検出のための回路(従来技術)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、従来技術による回路1の図である。回路は、第1のユニットに割り当てられた第1の接地線3と、第2のユニットに割り当てられた第2の接地線5とを備える。第1の接地線3と第2の接地線5とは、クロス接続7を介して互いに接続される。また、第1の接地線3は第1の接地端子9に接続され、第2の接地線5は第2の接地端子11に接続される。クロス接続7には抵抗器13が配置される。更に、第1の接地線3において、抵抗器R2内に第1の分流器15が配置され、第2の接地線5において、抵抗器R1内に第2の分流器17が配置される。各抵抗器R1及びR2は、分流器、接触抵抗器、及び線路抵抗器から構成される直列回路を備える。
【0033】
この従来の概念では、同期及び試験パルスが必要とされる。試験パルスは十分に大きな動作電流である。全体的に、この概念は高価であり、分流器が2つあることに起因してプリント回路基板上にスペースを取る。
【0034】
図2は、本発明による例示的な図を示している。
図2では、第1のプリント回路基板を備える第1のユニット103と、第2のプリント回路基板を備える第2のユニット105とを有するコントローラ101の概略図が示されている。第1のユニット103は、例えば、アクチュエータユニットの形態であってもよい。第2のユニット105は、例えば、変調器ユニットの形態であってもよい。第1のマイクロコントローラ107が第1のユニット103に配置される。第2のマイクロコントローラ109が第2のユニット105に配置される。第2の接地線119には、第2の接地端子117に接続される接地喪失検出抵抗器113が設けられる。第2の接地端子117は車両の本体との接続部である。第1の接地端子115が、第1のユニット103において第1の接地線111に設けられ、同様に車両の本体との接続部を表す。第1のユニット103及び第2のユニット105はそれぞれ電源123及び125に接続される。ここで電源123、125は、様々な個々の電源を含み得る。コントローラ101はまた、コネクタを有してもよく、コネクタを介して電源123、125に接続される。同じことが接地との接続部にも当てはまり、この場合、コントローラはまた、コネクタを有してもよく、コネクタを介して接地(車両の本体)に接続される。
【0035】
接地、特に接地線111、119が遮断されると、電流の流れはそれぞれ他方の接地経路(接地線111、119)に流される。よって、一方の経路で「ゼロ」電流が測定されることは、他方の接地経路での「最大」電流として変換される。したがって、1つの接地経路で2つの限界値を検出することが可能である。換言すれば、単一の接地喪失検出抵抗器しか使用せずに、それぞれの一方又は他方の接地線の遮断を検出することができる。第1のケースは、電流閾値を下回るケースである(電流ゼロ)。一方のアセンブリ(第1のユニット103、第2のユニット105)の接地(接地端子115、117)が遮断されている。第2のケースは、電流閾値を上回るケースである(最大電流)。他方のアセンブリの接地が遮断されている。つまり、1つのアセンブリの分流器を省略することが可能である。
【0036】
換言すれば、2つの接地線のうちの一方、例えば分流器を持たない第1の接地線に断裂などの欠陥がある場合、電流が流れなくなるため、又はこの接地線に分流器が存在しないため、そこでは電流を測定できなくなる。断裂の結果、全電流は、分流器を介する残りの接地、つまり第2の接地線のみを介して流れるようになる。よって、欠陥のある接地線におけるゼロ電流は、分流器を有する線路における最大電流に変換される。その結果、本発明によれば、基板の電位上昇ではなく実際に流れている電流も測定することができる。この場合、本発明の回路装置は、試験電流が基板を介して流れ出る場合、基板抵抗の電位上昇の評価とは異なる。この場合、接地の遮断を検出する準デジタル信号が生成される。
【0037】
対照的に、本発明の回路装置では、実際に流れている電流が準アナログ的に測定され、測定電流を介して冗長接地端子の機能について結論を導き出すことができる。
【0038】
本発明の1つの発展形態では、電流分布の非対称性を特定することも考慮される。これにより、接地線の故障の可能性を予測することが可能となる。
【0039】
接地端子115、117が遮断されたり又は利用できなくなったりしたか否かの評価は、好ましくは第2のマイクロコントローラ109によって実行される。そうすると、第1のマイクロコントローラ107を省略することが可能となる。複数のマイクロコントローラ107、109が存在する場合、評価は、常に、接地喪失検出抵抗器113も配置されたユニット103、105に配置されたマイクロコントローラ107、109によって行われる。接地喪失検出抵抗器113が例えば(
図2に示すように)第2のユニット105に収容される場合、評価はマイクロコントローラ109によって行われる。代替的に、接地喪失検出抵抗器113を第1のユニット103に収容することもできる。この場合、マイクロコントローラ107が、好ましくは評価を引き受ける。そのような場合には、ハードウェアの要件及び個々のプロセスステップに関して、簡素且つコスト効率よく評価を行うことができる。
【0040】
接地の遮断検出の評価においては、電流が狭く許容されるという事実を含めることが好ましい。したがって、電流は、GLDが評価において最小限の労力で実施され得るように、ウィンドウの中、つまり最小値と最大値との間にあるべきである。評価において最低限必要な電流のレベルは、この評価手順におけるアナログ-デジタル変換器のオフセット誤差に依存する。オフセット誤差が大きいほど、評価時の電流が大きい。小さなオフセット誤差では、連続測定が行われる。小さなオフセット誤差を達成するために、オフセット誤差がソフトウェアで補正され得る、又はオートゼロ機能が機能として測定チェーンに組み込まれる。
【0041】
分流器又は接地喪失検出抵抗器は、コスト上の理由からプリント回路基板分流器の形態である。したがって、分流器の公称抵抗値は、プリント回路基板の層厚及び使用されるプリント回路基板の使用される層数の公差に依存する。分流器の設計によっては、公差は、最大数10%になることもある。
【0042】
一方で、分流器の抵抗値は周囲温度によって影響される。したがって、接地の遮断を検出するには、抵抗値は、コントローラにおいて既知の周囲温度を用いて補正される。
【0043】
実装の別の部分として、電流は、真のRMS変数(2乗平均平方根)として処理される。これには、有用な信号を最大量で処理することができるという利点がある。したがって、更に、ABSなどのブレーキコントローラの特定の制御機能に対する評価を隠蔽するための更なるSWアルゴリズムの実装が省略され得る。
【0044】
分流器をただ1つとする本発明による解決策には、次のいくつかの利点がある。
- アプリケーションが測定精度の異なる2つのチップセットから構成される場合、接地喪失の検出は最も精度の高いチップセットに移され得る。
- 例えば電流比などの複雑な計算は必要なくなる。
- 2つのプリント回路基板の設計の実装は、電流比に基づいて計算された接地喪失の検出(例えば、Mk100又はMkC1)に比べて非常に簡素になる。
- 両方の電流の同期測定は必要なくなる。
- 実装には、チップセットに実装された電流測定のためのユニットが使用される。
【0045】
分流器を流れる電流は電圧降下で表され、ADC(アナログ-デジタル変換器)を使用して測定され得る。その後、デジタル信号は電流に変換される。
【0046】
個々の分流器は、第1のユニット103又は第2のユニット105のいずれかに配置され得る。その判断基準は、第1のユニット103のプリント回路基板と第2のユニット105のプリント回路基板とのどちらが、接地喪失を検出するためにより良好なアナログ-デジタル変換器を有するかであり得る。ここでは、低電流で高精度のADCを選択することが好ましい。
【0047】
測定原理は以下の通りである。
【0048】
両方の接地線が正常な状態である場合、ECUの絶対電流は両方の接地線に略均等に分配される(I1及びI2)。そうすると、変換されたデジタル電流値は、第1の閾値と第2の閾値との間になる。
【0049】
接地線R1が遮断された場合、デジタル電流値I1は第1の電流閾値を下回る。これにより、R1の接地線における接地の喪失を検出することが可能となる。
【0050】
接地線R2が遮断された場合、デジタル電流値I1は第2の電流閾値を超える。これにより、R2の接地線における接地の喪失を検出することが可能となる。
【0051】
接地喪失検出抵抗器113は、2つのプリント回路基板のうちの一方で、コントローラ101内に配置される。接地線111、119は、車体側の取り付け点とコントローラのコネクタとの間の(可動)ケーブル接続部であると理解されたい。接地喪失検出抵抗器113は、接地線111、119と直列に配置される。したがって、「コントローラ101が、第1の接地線111又は第2の接地線119に配置された単一の接地喪失検出抵抗器113を備える」という文は、上記のように理解されたい。
【0052】
接地端子115、117の一方における接続の喪失は、例えば、接地線の断裂、又は更にはコントローラのコネクタにおける接続不良である。
【符号の説明】
【0053】
1 回路
3 第1の接地線
5 第2の接地線
7 クロス接続
9 第1の接地端子
11 第2の接地端子
13 クロス接続における抵抗器
15 第1の分流器
17 第2の分流器
R1 抵抗器
R2 抵抗器
101 コントローラ
103 第1のユニット
105 第2のユニット
107 第1のマイクロコントローラ
109 第2のマイクロコントローラ
111 第1の接地線
113 接地喪失検出抵抗器
115 第1の接地端子
117 第2の接地端子
119 第2の接地線
123 電源(第1のユニット)
125 電源(第2のユニット)
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
接地端子115、117の一方における接続の喪失は、例えば、接地線の断裂、又は更にはコントローラのコネクタにおける接続不良である。
なお、本発明は以下の態様も包含し得る:
1.車両のためのコントローラ(101)において、接地接続の喪失、特に冗長接地接続における接地接続の喪失を検出する方法であって、前記コントローラ(101)が、第1のユニット(103)と第2のユニット(105)とを有し、前記第1のユニット(103)及び/又は前記第2のユニット(105)が、マイクロコントローラ(107、109)を備え、前記第1のユニット(103)が、第1の接地線(111)によって第1の接地端子(115)に接続され、前記第2のユニット(105)が、第2の接地線(119)によって第2の接地端子(117)に接続される、方法において、
前記コントローラ(101)が、前記第1の接地線(111)又は前記第2の接地線(119)に配置された単一の接地喪失検出抵抗器(113)を備え、以下のステップ、すなわち、
前記第1の接地線(111)及び/又は前記第2の接地線(119)における電流を確認するステップと、
前記接続の喪失が前記接地端子(115、117)のうちの一方で発生したか否かを判定するために、前記マイクロコントローラ(107、109)によって測定電流を評価するステップと
が実行されることを特徴とする、方法。
2.前記評価するマイクロコントローラ(107、109)及び前記接地喪失検出抵抗器(113)が前記第2のユニットに配置されることを特徴とする、上記1.に記載の方法。
3.特に前記コントローラ(101)のコンポーネントとして、又は前記コントローラ(101)内において、前記第1のユニット(103)が第1のプリント回路基板を備え、前記第2のユニット(105)が第2のプリント回路基板を備え、前記第1のプリント回路基板が前記第1の接地線(111)によって前記第1の接地端子(115)に接続され、前記第2のプリント回路基板が前記第2の接地線(119)によって前記第2の接地端子(117)に接続されることを特徴とする、上記1.又は2.に記載の方法。
4.接地の遮断が、正常動作条件下で、且つ/又は純粋に動作電流を使用して、特に試験電流を使用せずに検出され得ることを特徴とする、上記1.~3.のいずれか一つに記載の方法。
5.実際に流れている電流が測定されることを特徴とする、上記1.~4.のいずれか一つに記載の方法。
6.2つの電流閾値が定義され、前記第1の接地線(111)を介した前記接続の喪失が、前記電流が第2の電流閾値を上回ったという事実によって特定されることを特徴とし、
前記第2の接地線(119)を介した前記接続の喪失が、前記電流が第1の電流閾値を下回ったという事実によって特定されることを特徴とする、上記1.~5.のいずれか一つに記載の方法。
7.前記評価のための最低限必要な電流のレベルが、アナログ-デジタル変換器のオフセット誤差に応じて選択されることを特徴とする、上記1.~6.のいずれか一つに記載の方法。
8.前記最低限の電流が、前記オフセット誤差が大きいほど大きくなるように選択されることを特徴とする、上記7.に記載の方法。
9.前記接地喪失検出抵抗器(113)の抵抗値が周囲温度によって補正されることを特徴とする、上記1.~8.のいずれか一つに記載の方法。
10.前記接地喪失検出抵抗器の公称抵抗が前記プリント回路基板の公差によって補正されることを特徴とする、上記1.~9.のいずれか一つに記載の方法。
11.車両のためのコントローラであって、前記コントローラ(101)が、第1のユニット(103)と第2のユニット(105)とを有し、前記第1のユニット(103)及び/又は前記第2のユニット(105)が、マイクロコントローラ(107、109)を備え、前記第1のユニット(103)が、第1の接地線(111)によって第1の接地端子(115)に接続され、前記第2のユニット(105)が、第2の接地線(119)によって第2の接地端子(117)に接続される、コントローラにおいて、
前記コントローラ(101)が、前記第1の接地線(111)又は前記第2の接地線(119)に配置される単一の接地喪失検出抵抗器(113)を備え、前記コントローラ(101)が、前記接続の喪失が前記接地端子(115、117)のうちの一方で発生したか否かを、前記第1の接地線(111)又は前記第2の接地線(119)における電流を測定することによって前記マイクロコントローラ(107、109)が検出することができるように設計されることを特徴とする、コントローラ。
12.前記接地喪失検出抵抗器が、プリント回路基板の抵抗器の形態であることを特徴とする、上記11.に記載のコントローラ。
13.上記11.又は12.に記載のコントローラを有する、車両のためのブレーキシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のためのコントローラ(101)において、接地接続の喪失、特に冗長接地接続における接地接続の喪失を検出する方法であって、前記コントローラ(101)が、第1のユニット(103)と第2のユニット(105)とを有し、前記第1のユニット(103)及び/又は前記第2のユニット(105)が、マイクロコントローラ(107、109)を備え、前記第1のユニット(103)が、第1の接地線(111)によって第1の接地端子(115)に接続され、前記第2のユニット(105)が、第2の接地線(119)によって第2の接地端子(117)に接続される、方法において、
前記コントローラ(101)が、前記第1の接地線(111)又は前記第2の接地線(119)に配置された単一の接地喪失検出抵抗器(113)を備え、以下のステップ、すなわち、
前記第1の接地線(111)及び/又は前記第2の接地線(119)における電流を確認するステップと、
前記接続の喪失が前記接地端子(115、117)のうちの一方で発生したか否かを判定するために、前記マイクロコントローラ(107、109)によって測定電流を評価するステップと
が実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記評価するマイクロコントローラ(107、109)及び前記接地喪失検出抵抗器(113)が前記第2のユニットに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
特に前記コントローラ(101)のコンポーネントとして、又は前記コントローラ(101)内において、前記第1のユニット(103)が第1のプリント回路基板を備え、前記第2のユニット(105)が第2のプリント回路基板を備え、前記第1のプリント回路基板が前記第1の接地線(111)によって前記第1の接地端子(115)に接続され、前記第2のプリント回路基板が前記第2の接地線(119)によって前記第2の接地端子(117)に接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
接地の遮断が、正常動作条件下で、且つ/又は純粋に動作電流を使用して、特に試験電流を使用せずに検出され得ることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項5】
実際に流れている電流が測定されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項6】
2つの電流閾値が定義され、前記第1の接地線(111)を介した前記接続の喪失が、前記電流が第2の電流閾値を上回ったという事実によって特定されることを特徴とし、
前記第2の接地線(119)を介した前記接続の喪失が、前記電流が第1の電流閾値を下回ったという事実によって特定されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記評価のための最低限必要な電流のレベルが、アナログ-デジタル変換器のオフセット誤差に応じて選択されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記最低限の電流が、前記オフセット誤差が大きいほど大きくなるように選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記接地喪失検出抵抗器(113)の抵抗値が周囲温度によって補正されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記接地喪失検出抵抗器の公称抵抗が前記プリント回路基板の公差によって補正されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項11】
車両のためのコントローラであって、前記コントローラ(101)が、第1のユニット(103)と第2のユニット(105)とを有し、前記第1のユニット(103)及び/又は前記第2のユニット(105)が、マイクロコントローラ(107、109)を備え、前記第1のユニット(103)が、第1の接地線(111)によって第1の接地端子(115)に接続され、前記第2のユニット(105)が、第2の接地線(119)によって第2の接地端子(117)に接続される、コントローラにおいて、
前記コントローラ(101)が、前記第1の接地線(111)又は前記第2の接地線(119)に配置される単一の接地喪失検出抵抗器(113)を備え、前記コントローラ(101)が、前記接続の喪失が前記接地端子(115、117)のうちの一方で発生したか否かを、前記第1の接地線(111)又は前記第2の接地線(119)における電流を測定することによって前記マイクロコントローラ(107、109)が検出することができるように設計されることを特徴とする、コントローラ。
【請求項12】
前記接地喪失検出抵抗器が、プリント回路基板の抵抗器の形態であることを特徴とする、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のコントローラを有する、車両のためのブレーキシステム。
【国際調査報告】