(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】肥満の治療における使用のためのIL-4由来ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/54 20060101AFI20241226BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241226BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20241226BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C07K14/54 ZNA
A61P3/04
A61K38/20
C07K19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024535790
(86)(22)【出願日】2023-01-04
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2023050109
(87)【国際公開番号】W WO2023131619
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524225143
【氏名又は名称】セロダス アンパーツセルスケープ
【氏名又は名称原語表記】SERODUS APS
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ スタイネス
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA18
4C084BA50
4C084CA59
4C084DA16
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA702
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、肥満の治療のためのインターロイキン-4(IL-4)に由来するペプチドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満の治療における使用のための、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、前記ペプチドが、2つの断片を含む二量体であり、各断片が、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA
71-AA
94に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基(すなわち、IL-4のα-ヘリックスC)からなる断片、又は1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントであり、各断片が、リンカーを介して共有結合的に連結している、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
各断片が、14~18個の連続するアミノ酸残基、好ましくは15~17個の連続するアミノ酸残基、最も好ましくは16個の連続するアミノ酸残基からなる、請求項1に記載の使用のためのペプチド。
【請求項3】
前記アミノ酸残基が、アミノ酸領域AA
71-AA
89、最も好ましくはAA
71-AA
86に由来する、前出請求項のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが、I型IL-4RについてのアゴニストかつII型IL-4Rについてのアンタゴニストである、前出請求項のいずれかに記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドの少なくとも一部が、α-ヘリックスを形成する、前出請求項のいずれかに記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドが、2つの断片を含む二量体であり、各断片が、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA
71-AA
94に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基(すなわち、IL-4のα-Cヘリックス)からなる断片、又は1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントであり、各断片が、リンカーを介して共有結合的に連結され、前記ペプチドが、I型IL-4RについてのアゴニストかつII型IL-4Rについてのアンタゴニストであり、さらに、前記ペプチドの少なくとも一部が、α-ヘリックスを形成する、請求項1に記載の使用のためのペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが、式(I):
【化1】
の構造を有するか、又は、各ペプチド断片において1又は2個の置換を有するそのバリアントである、前出請求項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドが、式(II):
【化2】
の構造を有するか、又は、各ペプチド断片において1又は2個の置換を有するそのバリアントである、前出請求項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肥満の治療のためのIL-4に由来するペプチドに関する。特に、本開示は、肥満の治療における使用のための、配列番号1のアミノ酸配列又はそのバリアントを含むペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
過体重及び肥満は、健康に対するリスクを提示する異常な又は過剰な脂肪蓄積として定義される。ボディマスインデックス(BMI)は、体重及び身長に基づいて計算される。25を超えるBMIは過体重とみなされ、30を超えるBMIは肥満とみなされる。肥満は流行の大きさを有し、過去50年間にパンデミックレベルに達した。世界中の肥満は、1975年以来ほぼ3倍になっている。2016年には、18歳以上の19億人以上の成人が過体重であった。これらのうち6億5000万人以上が肥満であった。5~19歳の3億4000万人を超える小児及び青年は、2016年に過体重又は肥満であった(Roglic, G. 2016)。
【0003】
過体重及び肥満の両方は、2型糖尿病、心臓病、脳卒中、及びいくつかのタイプの癌を含む、米国における罹患及び死亡の主要原因と関連する全身性疾患である(Roglic, G. 2016)。したがって、肥満は精神的健康状態の悪化、生活の質の低下にも関連し、平均余命の低下に寄与するので、重篤な状態である(Abdelaal 2017)。
【0004】
いくつかの薬剤が、肥満の治療のために承認されている。一例は、商品名Wegovyで販売されているセマグルチドである。セマグルチドは、2型糖尿病の治療のために最初に開発され、承認されたグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アゴニストである。GLP-1アゴニストの最も注目すべき効果は、膵臓β細胞上に発現されるGLP-1受容体に結合することによって、グルコース依存的にインスリン分泌を促進するそれらの能力である。ほとんど重要なことに、GLP-1アゴニストは、空腹時レベルを超える血糖値でグルカゴン分泌を阻害することが示されている。重要なことに、これは、低血糖に対するグルカゴン応答に影響を及ぼさず、GLP-1アゴニストを、インスリンと比較して非常に低い低血糖の発生率を有する安全な抗糖尿病薬にする。
【0005】
2021年6月、セマグルチドは少なくとも1つの体重関連状態(例えば、高血圧、2型糖尿病、又は高コレステロール)を有する肥満又は過体重の成人における慢性体重管理について米国食品医薬品局によって承認された。抗肥満薬として、GLP-1アゴニストは視床下部のGLP-1受容体に結合することによって作用し、それによって食欲を抑制する。さらに、GLP-1アゴニストは胃のGLP-1受容体に結合し、胃内容排出、酸分泌、及び運動性を阻害し、これらは集合的に満腹感を促進する。結果として、GLP-1受容体アゴニストで処理された糖尿病対象はまた、しばしば、それらの血糖レベルの制御に加えて、有益な重量減少を経験する。しかしながら、当技術分野では、肥満の新規かつより効果的な治療が依然として必要とされている。
【0006】
ヒトインターロイキン-4(IL-4)は、下記アミノ酸配列(シグナルペプチド、すなわちアミノ酸AA1-24を含む)を有する抗炎症性サイトカインである。
MGLTSQLLPP LFFLLACAGN FVHGHKCDIT LQEIIKTLNS LTEQKTLCTE LTVTDIFAAS KNTTEKETFC RAATVLRQFY SHHEKDTRCL GATAQQFHRH KQLIRFLKRL DRNLWGLAGL NSCPVKEANQ STLENFLERL KTIMREKYSK CSS (UniProtKB - P05112;配列番号3)
【0007】
成熟IL-4は、129個のアミノ酸残基を有し、下記アミノ酸配列を有する3つの分子内ジスルフィド結合(Cys3-Cys127; Cys46-Cys99; Cys24-Cys65)を含有する。
HKCDITLQEI IKTLNSLTEQ KTLCTELTVT DIFAASKNTT EKETFCRAAT VLRQFYSHHE KDTRCLGATA QQFHRHKQLI RFLKRLDRNL WGLAGLNSCP VKEANQSTLE NFLERLKTIM REKYSKCSS (配列番号4)
【0008】
他のサイトカインと同様に、IL-4は、細胞表面上の受容体に結合することによってその生物学的活性を発揮する。IL-4の2つの受容体型が知られており、I型IL-4R及びII型IL-4Rと称される。I型IL-4RはIL-4Rα鎖及びIL-2Rγ(γc)鎖の2つの成分から構成され、一方、II型IL-4RはIL-4Rα及びIL-13α1鎖から構成される。IL-4は、活性化されたB細胞及びT細胞増殖の刺激、ならびにB細胞の形質細胞への分化を含む、多くの生物学的役割を有する。血管外組織におけるIL-4の存在はM2細胞へのマクロファージの代替活性化を促進し、M1細胞へのマクロファージの古典的活性化を阻害し、病理学的炎症の減少をもたらす。IL-4は主にCD4+ T細胞(Th2細胞)によって分泌され、これは、ヒト免疫応答を調節するために、特定のサイトカインヒビター及び可溶性サイトカイン受容体の協調を制御し、炎症促進活性と抗炎症活性との間の適切なバランスを維持することによって、急性及び慢性炎症の病因において重要な役割を果たす。したがって、IL-4シグナル伝達の変調は、自己免疫疾患及び炎症性疾患において大いに研究されている。最近、IL-4は、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)活性の増強を介して脂肪分解を促進することが示された(Scientific Reports, 2019 9:11974参照)。
【0009】
IL-4模倣体として作用するIL-4に由来する小ペプチド断片は以前に、マクロファージからのTNF-α放出を阻害し、一次ニューロンからの神経突起形成応答を誘導することが示されている(国際公開第2010/054667号参照)。1つのそのような例は、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)を有するペプチドである。このペプチドはIL-4受容体に結合し、マクロファージ活性化を阻害することができ、それによって炎症反応の発症を防止することができ、したがって、関節リウマチ、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、及びハンチントン病などの多くの炎症性疾患及び自己免疫疾患において有用であると提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(要旨)
本発明はSEQ ID NO:1を含むペプチドを投与されたマウス(すなわち、処理群)が、プラセボ群と比較して体重増加に対する感受性が低いという驚くべき観察に関する。したがって、本発明はIL-4に由来し、IL-4模倣物として作用するペプチドが、以前は抗炎症効果と関連していたにもかかわらず、肥満の治療に使用され得るという認識に関する。したがって、IL-4に由来し、IL-4模倣体として作用するペプチド断片は配列番号1のペプチド断片としての新規な作用様式を有する抗肥満薬の新世代として有望な可能性を有し得ることが、I型IL-4Rについての高親和性部分的アゴニストかつII型IL-4Rについてのアンタゴニストであることが示されている(Klementiv 2013)。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本開示が肥満の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、13~19個のアミノ酸残基を含み、さらに、アミノ酸配列AQAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)を有する断片、又は1、2、又は3個のアミノ酸置換及び/又は欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含むペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0012】
第2の態様では本開示が肥満の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関し、前記ペプチドは第1の態様による2つ以上の共有結合したペプチド断片を含む。
【0013】
第3の態様では、本開示が肥満の治療における使用のための医薬組成物であって、第1及び/又は第2の態様によるペプチドを含む医薬組成物に関する。
【0014】
第4の態様では本開示が肥満の治療のための方法に関し、この方法は本明細書に開示される態様及び実施形態のいずれかに従って、有効量のペプチド又は医薬組成物を、それを必要とする個々に投与することを含む。
【0015】
(定義及び略称)
「個体」という用語は、脊椎動物、哺乳動物種の特定のメンバー、好ましくはヒトを含む霊長類を指す。本明細書で使用される場合、「対象」及び「個体」は、互換的に使用され得る。
【0016】
「それを必要とする個体」は、本開示から恩恵を発明個体を指す。一実施形態では、それを必要とする個体が肥満(BMI>30超)であり、好ましくは少なくとも1つの体重関連状態(例えば、高血圧、2型糖尿病、又は高コレステロール)を有する個体である。別の実施形態では、それを必要とする個体が過体重(BMI>25超)、好ましくは少なくとも1つの体重関連状態(例えば、高血圧、2型糖尿病、又は高コレステロール)を有する個体である。したがって、本文脈において、「肥満」は好ましくは少なくとも1つの体重関連状態(例えば、高血圧、2型糖尿病、又は高コレステロール)を伴う過体重(BMI>25超)を含むと広い意味で理解されるべきである。
【0017】
ペプチドの「有効量」は、1回の投与で、又は例えば24時間以内に有効量を合計する量の複数回の投与を介して投与することができる。それは、適切な量及び投与のタイミングを決定するための標準的な臨床手順を用いて決定することができる。「有効量」は、治療する医療専門家及び/又は個々の側における経験的及び/又は個別化(ケースバイケース)判定の結果であり得ることが理解される。
【0018】
本発明の文脈において、本発明がいくつかの連続するアミノ酸残基がアミノ酸領域、例えば、インターロイキン-4(配列番号4)のAA68-AA97に由来するペプチド断片を指す場合、インターロイキン-4(配列番号4)のそれぞれの領域から選択されるアミノ酸の小ストレッチ(すなわち、連続する配列)として理解されるべきである。したがって、サイトカインIL-4(配列番号4)は、本発明の一部を形成しない。例えば、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA68-AA89 に由来する16個の連続するアミノ酸残基を含むペプチド断片は、以下に太字で強調された連続する配列から得ることができる。
【0019】
HKCDITLQEI IKTLNSLTEQ KTLCTELTVT DIFAASKNTT EKETFCRAAT VLRQFYSHHE KDTRCLGATA QQFHRHKQLI RFLKRLDRNL WGLAGLNSCP VKEANQSTLE NFLERLKTIM REKYSKCSS (配列番号4)。
【0020】
したがって、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA
68-AA
89 に由来する16個の連続するアミノ酸残基は、断片/配列ATAQQFHRHKQLIRFL;TAQQFHRHKQLIRFLK;AQQFHRHKQLIRFLKR、QQFHRHKQLIRFLKRL、QFHRHKQLIRFLKRLD、FHRHKQLIRFLKRLDR、HRHKQLI RFLKRLDRN、及びRHKQLI RFLKRLDRNLを含む。ペプチドは、インターロイキン-4(配列番号4)に由来する断片/配列のバリアントであってもよい。非限定的な例として、AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)は断片/配列QQFHRHKQLIRFLKRLのバリアントであり、ここで、末端アミノ酸Q及びLはAで置換されている(すなわち、AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)は、2つのアミノ酸置換を有する)。したがって、本文脈において、本開示が例えば、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA
68-AA
97に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基の断片を含むペプチドを指す場合、連続するアミノ酸の数は13個未満であってはならず、単一のアミノ酸ストレッチ(すなわち、存在する場合、いかなるリンカーも考慮しない断片)において19個を超えてはならないが、ペプチドはリンカー(スペーサー)を介して連結された2つ以上のそのような断片を含み得ることが理解されるべきである。非限定的な例として、式(I)の以下のペプチドは、そのC末端でリンカーを介して連結された、各16個の連続するアミノ酸の2つのペプチド断片を含む。
【化1】
【0021】
ペプチド断片はまた、ペプチドの薬物動態学的特性を変化させるために脂質化され得る。
【0022】
本明細書で使用される「配列同一性」は、比較される2つの異なる配列間で正確に一致するアミノ酸残基の数である。バリアントが10個のアミノ酸残基を有する配列と90%同一である場合、バリアントは、1つのアミノ酸置換によって配列と異なり得る。
【0023】
本明細書で使用される「治療する」、「治療」、及び「療法」という用語は、治癒的療法、予防的療法、予防的療法、又は改善的療法を同等に指す。この用語は有益な又は所望の生理学的結果を得るためのアプローチを含み、これは、例えば、体重減少又は脂肪割合の減少など、臨床的に確立され得る。
【0024】
「共有結合した」という用語は、リンカー又はスペーサーを介して互いに共有結合した、本開示による少なくとも2つのペプチド/断片として理解されるべきである。共有結合したペプチドは、同じ配列又は異なる配列を有し得る。様々なタイプのリンカー(スペーサー)を使用して、ペプチドを一緒に連結することができ、例えば、ペプチドデンドリマー、融合ペプチド/タンパク質、又はハイブリッドペプチドについて当技術分野で一般に知られているものを連結することができる。例えば、リンカー(スペーサー)はペプチドリンカー、例えば、本明細書に例示されるようなリジン-ベータアラニン、単一アミノ酸、例えばリジン、又はアミノ酸の小ストレッチであり得る(例えば、Adv Drug Deliv Rev. 2013 Oct 15; 65(10): 1357-1369を参照)。リンカーはまた、非ペプチドリンカー、例えばPEG鎖、又はエチレンジアミンなどのジアミンであってもよい。当業者は、使用されるリンカー(スペーサー)が本発明の概念から逸脱することなく、他のリンカー(スペーサー)に変更され得ることを理解するのであろう。最も好ましくは、ペプチド/断片が本明細書に例示されるように、それらのN端末装置又はC端末装置、最も好ましくはそれらのC端末装置を介して共有結合される。最も好ましくは、2つのペプチド/断片が本明細書に例示されるように、リジンによって連結される。リジンリンカー部分のベータアラニンは合成中の立体障害を低減するために、SPPSにおいて使用されるリンクリンクリンカー間のスペーサーとして作用するにすぎない。したがって、ベータアラニン部分は、SPPSの技術分野で使用される他の一般的なスペーサと置き換えられてもよい。リジンに基づく様々な分岐デンドリマーは例えば、(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol 85, pp. 5409-5413, August 1988)に記載されているように得ることができる。本明細書に開示される二量体は、単量体よりも良好に機能することが見出された。
【0025】
「バリアント」という用語は、ペプチド配列が例えば、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって修飾され得ることを意味する。L-アミノ酸及びD-アミノ酸の両方が使用されてもよく、非天然アミノ酸、好ましくはL-アミノ酸が使用される。本文脈において、1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換及び/又は欠失を有するバリアントに言及する場合、置換及び/又は欠失の合計は最大3つことを理解されたい。一例として、バリアントは例えば、2つの置換及び1つの欠失(合計=3)を有し得る。同様に、バリアントは3つの置換及びゼロ削除(合計=3)を有してもよく、又はバリアントは3つの削除及びゼロ置換(合計=3)を有する可能性がある。一例として、本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドが例えば13アミノ酸残基を有し、さらに前記ペプチドがAQFHRHKQLIRFLKRAのバリアント(配列番号1、すなわち16アミノ酸)を含む場合、それは3つの欠失(16-3=13アミノ酸)を有するバリアントでなければならないことになる。好ましくは、バリアントにおける置換が保存的アミノ酸に対する保存的置換である。保存的アミノ酸の群は以下のとおりである。
A、G(中性、弱疎水性)、
Q、N、S、T(親水性、非荷電)
E、D(親水性、酸性)
H、K、R(親水性、塩基性)
A、L、P、I、V、M、F、Y、W(疎水性、芳香族)
C(架橋形成)
【0026】
保存的置換は本開示による使用のために、ペプチドの任意の位置に導入され得る。しかしながら、本開示による使用のために、ペプチドの任意の位置に非保存的置換を導入することも望ましい場合がある。
【0027】
本開示のペプチド配列は、固相ペプチド合成(SPPS)などの任意の従来の合成方法によって調製することができる。
【0028】
本発明によるペプチドは、薬学的に許容される塩の形成であってもよい。したがって、薬学的に許容される塩は、ペプチドの配合において一般的に使用される任意の塩を含むことが意図される。このような塩としては、酸付加塩及び塩基性塩の両方が挙げられ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th editionに見出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面の簡単な説明
【
図1A】
図1Aは、αへリックスC(AA
71-AA
94)の一部を構成する領域AA
71-AA
86に示されるアミノ酸残基を有するIL-4(PDB識別子:1CYL)の結晶構造を示す。
【
図1B】
図1Bは、αへリックスC(AA
71-AA
94)の一部を構成する領域AA
71-AA
86に示されるアミノ酸残基を有するIL-4(PDB識別子:1CYL)の結晶構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
本発明はIL-4に由来する小さなペプチド断片、より具体的には、抗炎症効果に関連するのみであったIL-4のα-ヘリックスC(すなわち、IL-4R I型アゴニスト)が投与時に動物の体重を有意に減少させることが見出されたという驚くべき発見に関する。
【0031】
したがって、本開示は、肥満の治療における使用のためのペプチドであって、IL-4受容体I型アゴニスト、好ましくはIL-4受容体II型アンタゴニストであるペプチドに関する。
【0032】
成熟IL-4は、129アミノ酸残基を有し、3つの分子内ジスルフィド結合(Cys3-Cys127; Cys46-Cys99; Cys24-Cys65)を含有する。本明細書の実験の節で使用されるペプチドはリンカー(スペーサ)(すなわち、リジン-ベータアラニン)を介してAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)(すなわち、第2の断片)のアミノ酸配列を有する別のペプチドに共有結合したAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)(すなわち、第1の断片)のアミノ酸配列を有する。配列番号1のペプチドは、配列番号4のアミノ酸AA71-AA86(シグナル配列を含まないIL-4)に由来するペプチドのバリアントである(以下に太字で強調する)。
【0033】
HKCDITLQEI IKTLNSLTEQ KTLCTELTVT DIFAASKNTT EKETFCRAAT VLRQFYSHHE KDTRCLGATA QQFHRHKQLI RFLKRLDRNL WGLAGLNSCP VKEANQSTLE NFLERLKTIM REKYSKCSS (配列番号4)
【0034】
配列番号1と配列番号4のアミノ酸AA71 -AA86とのアラインメントから分かるように、配列番号1は、2つのアミノ酸置換を有するこの部位に由来するペプチド断片のバリアントである(太字で強調表示)。
【0035】
QQFHRHKQLIRFLKRL IL-4のAA71-AA86(配列番号4)
AQFHRHKQLIRFLKRA (配列番号1)。
【0036】
配列番号4の領域AA
71-AA
86は
図1A/Bの結晶構造に示されるように、IL-4のαヘリックスC(AA
71-AA
94)の一部を形成する(PDB識別子:1CYL)。このα-ヘリックスCはIL-4 Rα1の外部ドメイン部分と相互作用し、したがって、α-ヘリックスC(AA
71 -AA
94)に由来するペプチド断片は、配列番号1と同様の結合特徴及び薬理学を有する可能性が高い。言い換えると、AA
71-AA
94、好ましくは配列番号4のAA
71-AA
86の領域又はその近傍に由来するペプチドは、肥満の治療における使用に適している。α-ヘリックスC(AA
71-AA
94)に由来するペプチド断片は、少なくともアミノ酸配列の一部について、α-ヘリックスを形成し得る。短いペプチドがα-ヘリックスを形成する傾向はPROTEUS Structure Prediction Server等のソフトウェアを使用して予測することができ、又は例えばX線結晶学を使用して実験的に決定することができる。分かるように、PROTEUS Structure Prediction Serverは、太字のAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)で強調されたアミノ酸がα-ヘリックスを形成する高い傾向を有することを予測する(0~9の範囲のスケールにおける信頼スコア9、9が最高信頼度である)。したがって、最も好ましくは、IL-4のα-ヘリックスC(AA
71-AA
94)に由来する断片の少なくとも一部がα-ヘリックスを形成する。
【0037】
特に、本発明は、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)を有する断片を含むペプチドが本明細書の実験の項に示すように、投与時に動物の体重増加を有意に減少させるという知見に関する。
【0038】
したがって、第1の態様において、本開示は肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは13~19個のアミノ酸残基を含み、さらに、前記ペプチドは、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)を有する断片、又は1、2、もしくは3個のアミノ酸置換及び/もしくは欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含む。
【0039】
好ましい実施形態では、本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドであって、14~18個のアミノ酸残基を含み、さらに、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)を有する断片、又は1、2、又は3個のアミノ酸置換及び/又は欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含むペプチドに関する。
【0040】
より好ましい実施形態では、本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドであって、15~17個のアミノ酸残基を含み、さらに、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)を有する断片、又は1、2、又は3個のアミノ酸置換及び/又は欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含むペプチドに関する。
【0041】
さらにより好ましい実施形態では、本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドであって、16個のアミノ酸残基を含み、さらに、1、2又は3個のアミノ酸置換を有する配列番号1(AQFHRHKQLIRFLKRA)又は配列番号1(AQFHRHKQLIRFLKRA)のバリアントを含むペプチドに関する。
【0042】
別の実施形態では本発明が肥満の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関し、ここで、ペプチドはアミノ酸部位AA68-AA97、好ましくはAA71-AA94、より好ましくはAA71-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA71-AA86に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基を含むか、又は1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。より好ましい実施形態では、ペプチドがアミノ酸領域AA68-AA97、好ましくはAA71-AA94、好ましくはAA71-AA89、最も好ましくはAA71-AA86、インターロイキン-4(配列番号4)に由来する14~18個の連続するアミノ酸残基を有するか、又は1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。より好ましい実施形態では、ペプチドがアミノ酸領域AA68-AA97、好ましくはAA71-AA94、好ましくはAA71-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4のAA71-AA86(配列番号4)に由来する15~17個の連続するアミノ酸残基を有するか、又は1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。さらにより好ましい実施形態では、ペプチドがアミノ酸領域AA68-AA97、好ましくはAA71-AA94、より好ましくはAA71-AA89、最も好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA71-AA86に由来する16個の連続するアミノ酸残基を有するか、又は1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。上述の実施形態では、ペプチドがアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又は1つ又は2つの置換を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含むことが非常に好ましい。
【0043】
上述の実施形態のいずれかにおいて、バリアントは、好ましくは2つのアミノ酸置換及び/又は欠失、さらにより好ましくは1つのアミノ酸置換又は欠失を有する。
【0044】
本発明による使用のためのペプチドは、C末端(-CONH2)でアミド化されていてもよく、遊離カルボン酸(-COOH)、又はメチルエステル(-COOMe)などの別の翻訳後修飾を有していてもよい。本発明によるペプチドは、遊離アミン(-NH2)、N-アシル化(-NHCOR)、N-メチル化(-NHCH3又は-N(CH3)2)、又はN末端で脱アミノ化されていてもよい。ペプチドはまた、ペプチドのPK特性を変化させるために、例えば、N端末装置及び/又は1つもしくは複数のリジン残基で脂質化され得る。
【0045】
したがって、本開示の一実施形態では、C末端アミノ酸が遊離カルボン酸(「-COOH」)として存在する。別の実施形態において、C末端アミノ酸は、アミド化誘導体(「-CONH2」)である。別の実施形態では、N末端アミノ酸が遊離アミノ基(「NH2」)を含む。別の実施形態において、N末端アミノ酸は、アセチル化誘導体(COCH3)である。最も好ましくは、C末端がC末端を介してリンカーを介して別のペプチド/断片に連結されていない限り、アミド化されている(「-CONH2」)。最も好ましくは、N端末装置は遊離アミノ基(「NH2」)を含む。
【0046】
非常に好ましい実施形態では本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは16個のアミノ酸残基を含み、さらに、前記ペプチドは配列番号1の断片(AQFHRHKQLIRFLKRA)を含む。配列番号1が16個のアミノ酸を有するという事実を考慮すると、ペプチドは例えば、脂質付加され得、及び/又は当技術分野で一般に使用される翻訳後修飾を含み得ることが、「含む(comprising)」という文言から理解されるべきである。
【0047】
別の非常に好ましい実施形態では本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは1、2又は3個のアミノ酸置換を有する配列番号1(AQFHRHKQLIRFLKRA)又は配列番号1のバリアント(AQFHRHKQLIRFLKRA)からなる。
【0048】
さらに非常に好ましい実施形態では本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドはAc-AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号2)からなるペプチドである。
【0049】
最も好ましい実施形態では、本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドであって、AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)からなるペプチドであるペプチドに関する。
【0050】
本発明によるペプチドはI型IL-4Rについてのアゴニストであり、好ましくはII型IL-4Rについてのアンタゴニストである。アゴニストは、スーパーアゴニスト、完全アゴニスト又は部分的アゴニストのいずれかであり得る。
【0051】
本発明のペプチドは、二量体、三量体、又は四量体などの多量体の一部を形成し得る。本開示のペプチドを組み込んだ多量体、例えばペプチドデンドリマーも使用することができる。最も好ましくは、ペプチドが単量体又は二量体、最も好ましくは二量体の形成である。本開示によるペプチドは融合ペプチド又はタンパク質のために当技術分野で一般に使用されるものなどの各種リンカー(スペーサー)を介してペプチドを共有結合させることによって、共有結合して多量体(例えば、二量体)を形成することができる。
【0052】
本開示の第2の態様は肥満の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩に関し、前記ペプチドは、IL-4のα-ヘリックスCに由来する2つ以上の共有結合したペプチド断片を含む。
【0053】
したがって、第2の態様では、本発明が肥満の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容される塩に関し、前記ペプチドは2つ以上の共有結合した断片を含み、それぞれの断片はアミノ酸部位AA68-AA97、好ましくはAA68-AA89、より好ましくはAA71-AA94(すなわち、IL-4のα-ヘリックスC)、さらにより好ましくはAA71-AA89、最も好ましくはAA71-AA86のインターロイキン-4(配列番号4)、又は1、2、3もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントに由来する13~19個の連続するアミノ酸残基からなる。第2の態様の好ましい実施形態において、各断片は、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA68-AA97、好ましくはAA68-AA89、より好ましくはAA71-AA94、さらにより好ましくはAA71-AA89、最も好ましくはAA71-AA86に由来する14~18個の連続するアミノ酸残基からなるか、又は1、2、3もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。第2の態様のより好ましい実施形態において、各断片は、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA68-AA97、好ましくはAA68-AA89、より好ましくはAA71-AA94、さらにより好ましくはAA71-AA89、最も好ましくはAA71-AA86に由来する15~17個の連続するアミノ酸残基からなるか、又は1、2、3もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。第2の態様のさらにより好ましい実施形態では、各断片がインターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA68-AA89、より好ましくはAA71-AA94、さらにより好ましくはAA71-AA89、最も好ましくはAA71-AA86に由来する16個の連続するアミノ酸残基からなるか、又は1、2、3もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントである。第2の態様の上述の実施形態では、各断片が1つ又は2つの置換を有するアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又はAQFHRHKQLIRFLKRAのバリアント(配列番号1)を含むことが非常に好ましい。最も好ましくは、共有結合した断片は同一である。最も好ましくは、ペプチドは二量体(すなわち、2つの共有結合した断片)である。
【0054】
第2の態様の好ましい実施形態では本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドであって、前記ペプチドは2つ以上の共有結合した断片を含み、各断片は13~19個のアミノ酸残基からなり、さらに、前記ペプチドはアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又は1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換及び/又は欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含む、ペプチドに関する。
【0055】
第2の態様のより好ましい実施形態では本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは2つ以上の共有結合した断片を含み、各断片は14~18個のアミノ酸残基からなり、さらに、各断片はアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又は1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換及び/もしくは欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含む。
【0056】
第2の態様のさらにより好ましい実施形態では本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは2つ以上の共有結合した断片を含み、各断片は15~17個のアミノ酸残基からなり、さらに、各断片はアミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)、又は1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換及び/又は欠失を有するAQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)のバリアントを含む。
【0057】
第2の態様のさらにより好ましい実施形態では本開示が肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは2つ以上の共有結合した断片を含み、各断片は16個のアミノ酸残基からなり、さらに、前記ペプチドは1、2、又は3個のアミノ酸置換を有する配列番号1(AQFHRHKQLIRFLKRA)又は配列番号1のバリアント(AQFHRHKQLIRFLKRA)を含む。
【0058】
第2の態様の上述の実施形態のいずれかにおいて、バリアントは、好ましくは2つのアミノ酸置換及び/又は欠失、さらにより好ましくは1つのアミノ酸置換又は欠失を有する。第2の態様の上述の実施形態のいずれかにおいて、ペプチドは最も好ましくは2つの共有結合した断片(すなわち、二量体)を含み、各断片は、同じ配列からなる。
【0059】
第2の態様の最も好ましい実施形態では、本発明は、肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは、式(I):
【化2】
の構造を有するか、又は、各ペプチド断片において1又は2個の置換を有するそのバリアントである。
【0060】
式(I)の二量体ペプチド中の配列番号1の各断片(すなわち、AQFHRHKQLIRFLKRA)は、それらのC末端でリンカーを介して共有結合的に連結している。
【0061】
第2の態様の別の最も好ましい実施形態では本発明が肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは以下の構造(化合物A)に示されるリンカー(リジン-ベータアラニン)を介して連結された配列番号1の二量体である:
【化3】
【0062】
第2の態様の別の実施形態では本発明が肥満の治療における使用のためのペプチドに関し、前記ペプチドは配列番号1及び/もしくは配列番号2の4つのコピーを含む四量体デンドリマー、又は1、2、もしくは3つのアミノ酸置換を含むそのバリアントの一部を形成する。別の好ましい実施形態では、ペプチドが配列番号1の2つのコピーを含む二量体デンドリマー、又は配列番号2の1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含むそのバリアント、又は配列番号2の2つのコピー、又は1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含むそのバリアントである。別の実施形態では、ペプチドが4コピーの配列番号1を含む四量体デンドリマー、又は1、2、もしくは3個のアミノ酸置換を含むそのバリアント、又は4コピーの配列番号2、又は1、2、もしくは3個のアミノ酸置換を含むそのバリアントである。
【0063】
第3の態様では本開示が肥満の治療における使用のための医薬組成物に関し、前記医薬組成物は本明細書に開示される態様及び実施形態による1つ又は複数のペプチドを含む。薬学的組成物は、許容される薬学的担体、及び場合により1つ以上の賦形剤を含み得る。医薬組成物(すなわち、製剤)は投与前に溶解することを意図した錠剤、丸剤、カプセル剤、乳剤、懸濁剤、徐放性製剤、溶液、又は凍結乾燥粉末を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、製剤は、徐放性を提供するデポー製剤であってもよい。ポリペプチドの製剤ならびに化学的及び/又は代謝的安定性の選択に応じて、異なる投与経路を使用してもよいことを理解されたい。そのような投与経路には経口投与、非経口投与(静脈内(IV)、皮下(SC)、皮内(ID)及び筋肉内(IM))、又は吸入が含まれ得るが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態では、投与経路は非経口投与である。さらにより好ましい実施形態では、投与経路は皮下である。
【0064】
第4の態様では、本開示が肥満の治療のための方法であって、本明細書に開示される態様及び実施形態のいずれかに従って、有効量のペプチドを、それを必要とする個々に投与することを含む方法に関する。
【実施例】
【0065】
実施例
(実施例1:体重に対するIL-4由来ペプチドの効果)
(材料及び方法)
(動物)
30匹の雌マウス(BKS.Cg-Dock7m +/+ Leptin db/db BLKS、5週齢)をデンマークのGubra Research動物ユニットに移した。馴化期間及び試験期間を通して、動物は、食物及び水を自由に摂取できる、光、温度、及び湿度を制御した部屋に収容した。すべての動物実験は、実験動物のケア及び使用に関する国際的に認められた原理に完全に準拠したGubra生命倫理ガイドラインに従って実施した。試験開始時(基準)、13日目、27日目、34日目、43日目、60日目及び77日目(試験終了)に動物の体重を記録した。
【0066】
(化合物)
化合物Aは、標準的な固相ペプチド合成(SPPS)手順を用いて調製した。化合物Aは、Phlogo ApS、コペンハーゲン、デンマーク(10mg/ml miliQ水で用量処方に希釈した)によって提供された。ベヒクルは、miliQ:PBS 1:5であった。
【0067】
(インビボ手順)
マウスをベヒクル群(n=15)及び10mg/kgの化合物A(n=15)に無作為化した。化合物及びベヒクルを1日1回皮下投与した。27日目に、用量を5mg/kgの化合物A(n=15)に低下させ、43日目に、用量を2.5mg/kgの化合物A(n=15)に低下させた。
【0068】
(結果)
ベヒクルと比較して、試験した化合物Aは、化合物Aを受けた処理群において重量を有意に減少させた。重量結果(平均値)を以下の表1に示す。
【0069】
【0070】
(考察)
興味深いことに、体重増加は、プラセボ群と比較して処理群において有意に小さい。プラセボ群の動物の平均体重は、試験期間中に5.76g(12.8%)増加した。対照的に、処理群は、それらの重量を3.51g(7.8%)増加させただけであった。したがって、化合物A(配列番号1)は、体重増加を減少させた。
【0071】
(配列の概要)
配列番号1
AQFHRHKQLIRFLKRA
【0072】
配列番号2
Ac-AQFHRHKQLIRFLKRA
【0073】
配列番号3(シグナルペプチド、153アミノ酸を含むIL-4ペプチド)
MGLTSQLLPP LFFLLACAGN FVHGHKCDIT LQEIIKTLNS LTEQKTLCTE LTVTDIFAAS KNTTEKETFC RAATVLRQFY SHHEKDTRCL GATAQQFHRH KQLIRFLKRL DRNLWGLAGL NSCPVKEANQ STLENFLERL KTIMREKYSK CSS
【0074】
配列番号4(シグナルペプチドを含まないIL-4ペプチド、129アミノ酸)
HKCDIT LQEIIKTLNS LTEQKTLCTE LTVTDIFAAS KNTTEKETFC RAATVLRQFY SHHEKDTRCL GATAQQFHRH KQLIRFLKRL DRNLWGLAGL NSCPVKEANQ STLENFLERL KTIMREKYSK CSS
【0075】
(参考文献)
Roglic, G. World Health Organization. (2016). Global report on diabetes. ISBN 9789241565257.
Abdelaal M. et al. Morbidity and mortality associated with obesity. Ann Transl Med. 2017 Apr;5(7):161, p.1-12.
Klementiev B. et al. Antiinflammatory properties of a peptide derived from interleukin-4. Cytokine, Vol. 64, No. 1, 10.2013, p. 112-21.
【0076】
(項目)
1. AA68-AA97、好ましくはインターロイキン-4(配列番号4)のAA68-AA89に由来する13~19隣接のするアミノ酸残基からなる断片、又は1、2、3もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントを含む、肥満の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容される塩。
【0077】
2. 前記ペプチドが、好ましくはインターロイキン-4のAA68-AA89(配列番号4)のアミノ酸領域AA68-AA97に由来する14~18個の連続するアミノ酸残基からなる断片、又は1、2、3もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントを含む、前記項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0078】
3. 前記ペプチドが、好ましくはインターロイキン-4のAA68-AA89(配列番号4)のアミノ酸領域AA68-AA97に由来する15~17個の連続するアミノ酸残基からなる断片、又は1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントを含む、前記項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0079】
4. 前記ペプチドが、好ましくはインターロイキン-4のAA68-AA89 (配列番号4)のアミノ酸領域AA68-AA97に由来する16個の連続するアミノ酸残基からなる断片、又は1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントを含む、前記項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0080】
5. 前記アミノ酸残基がアミノ酸領域AA71-AA94(すなわち、IL-4のα-ヘリックスC)、好ましくはAA71-AA89、最も好ましくはAA71-AA86に由来する、前記項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0081】
6. 前記ペプチドが、アミノ酸配列AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号1)からなる断片、又は1つもしくは2つの置換を有するそのバリアントを含む、前記項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0082】
7. 前記ペプチドが、リンカーを介して共有結合された2つ以上の同一の断片を含む、前記項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0083】
8. 肥満の治療における使用のためのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、前記ペプチドが2つの断片を含む二量体であり、各断片がインターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA71-AA94に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基からなる、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩(すなわち、IL-4のα-ヘリックスC)、又は1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントであり、各断片がリンカーを介して共有結合的に連結している、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【0084】
9. アミノ酸残基がアミノ酸領域AA71-AA89に由来し、最も好ましくはAA71-AA86である、項目8に記載の使用のためのペプチド。
【0085】
10. 各断片が、14~18個の連続するアミノ酸残基、好ましくは15~17個の連続するアミノ酸残基、最も好ましくは16個のアミノ酸残基からなる、項目8~9のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【0086】
11. 2つの同一の断片を含む、項目8~10のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【0087】
12. 式(I)の構造を有する、前項のいずれかに記載の使用のためのペプチド:
【化4】
の構造を有するか、又は、各ペプチド断片において1又は2個の置換を有するそのバリアントである。
【0088】
13. 前記ペプチドが、I型IL-4RについてのアゴニストかつII型IL-4Rについてのアンタゴニストで前記項のいずれかに記載のペプチド。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満の治療における使用のための、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、前記ペプチドが、2つの断片を含む二量体であり、各断片が、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA
71-AA
94に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基(すなわち、IL-4のα-ヘリックスC)からなる断片、又は1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントであり、
前記2つの断片が、リンカーを介して共有結合的に連結
され、
前記ペプチドが、I型IL-4RについてのアゴニストかつII型IL-4Rについてのアンタゴニストであり、さらに、前記ペプチドの少なくとも一部が、α-ヘリックスを形成する、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
各断片が、14~18個の連続するアミノ酸残基、好ましくは15~17個の連続するアミノ酸残基、最も好ましくは16個の連続するアミノ酸残基からなる、請求項1に記載の使用のためのペプチド。
【請求項3】
前記アミノ酸残基が、アミノ酸領域AA
71-AA
89、最も好ましくはAA
71-AA
86に由来する、前出請求項のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが、式(I):
【化1】
の構造を有するか、又は、各ペプチド断片において1又は2個の置換を有するそのバリアントである、前出請求項のいずれかに記載の使用のためのペプチド。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む、肥満の治療における使用のための
医薬組成物であって、前記ペプチドが、2つの断片を含む二量体であり、各断片が、インターロイキン-4(配列番号4)のアミノ酸領域AA
71-AA
94に由来する13~19個の連続するアミノ酸残基(すなわち、IL-4のα-ヘリックスC)からなる断片、又は1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を有するそのバリアントであり、前記2つの断片が、リンカーを介して共有結合的に連結され、前記ペプチドが、I型IL-4RについてのアゴニストかつII型IL-4Rについてのアンタゴニストであり、さらに、前記ペプチドの少なくとも一部が、α-ヘリックスを形成する、
医薬組成物。
【請求項2】
各断片が、14~18個の連続するアミノ酸
残基からなる、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
各断片が、15~17個の連続するアミノ酸残基からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
各断片が、16個の連続するアミノ酸残基からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記アミノ酸残基が、アミノ酸領域
AA
71
-AA
89
に由来する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記アミノ酸残基が、アミノ酸領域AA
71
-AA
86
に由来する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む、肥満の治療における使用のための医薬組成物であって、前記ペプチドが、2つの断片を含む二量体であり、前記ペプチドが、式(I):
【化1】
の構造を有するか、又は、各ペプチド断片において
1個の置換を有するそのバリアントである、
医薬組成物。
【国際調査報告】