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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】核生成剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/06 20060101AFI20250121BHJP
   F28D 20/02 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
C09K5/06 Z
F28D20/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536398
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 IL2022051383
(87)【国際公開番号】W WO2023119299
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/292,519
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521122153
【氏名又は名称】ノストローモ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOSTROMO LTD.
【住所又は居所原語表記】21 Bnei Binyamin Street, P.O. Box 6051, Even-Yehuda, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マレリ,リオル
(72)【発明者】
【氏名】ベン ナン,ヤロン
(72)【発明者】
【氏名】ブラスラフスキー,イド
(57)【要約】
相変化材料(PCM)と、PCMと接触している核生成温度上昇核生成剤とを含み、核生成剤が、ポリアミド(PA)ポリマーを含む、蓄熱ユニット(TSU)。相変化流体を凍結させる方法であって、方法は、相変化流体を供給することと、相変化流体が核生成するまで相変化流体を冷却することとを含み、相変化流体が、相変化材料(PCM)と核生成剤との混合物を含み、核生成剤が、ポリアミド(PA)ポリマーを含む。相変化流体を生成する方法であって、方法は、水を供給することと、ポリアミド(PA)ポリマー材料を核生成剤として水に加え、それによって核生成剤を含まない水の核生成温度よりも高い核生成温度を有する核生成温度上昇混合物を生成することとを含む。関連する装置および方法についても記載する。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化材料(PCM)と、
前記PCMと接触している核生成温度上昇核生成剤とを備え、
前記核生成剤が、ポリアミド(PA)ポリマーを含む、
蓄熱ユニット(TSU)。
【請求項2】
前記核生成剤が前記PCMと混合される、請求項1に記載のTSU。
【請求項3】
前記PCMが水を含む、請求項1に記載のTSU。
【請求項4】
前記核生成剤が、粒状ポリアミド(PA)ポリマーを含む、請求項1に記載のTSU。
【請求項5】
前記粒状ポリアミド(PA)ポリマーが、直径最大5ミリメートルの粒子サイズを有する、請求項4に記載のTSU。
【請求項6】
前記粒状ポリアミド(PA)ポリマーが、直径0.01~1.5ミリメートルの粒子サイズを有する、請求項4に記載のTSU。
【請求項7】
前記核生成剤が、ポリアミド(PA)ポリマーフィラメントを含む、請求項1に記載のTSU。
【請求項8】
前記核生成剤が、絡まったフィラメントを含む、請求項1に記載のTSU。
【請求項9】
前記核生成剤が、ポリアミド(PA)ポリマースポンジを含む、請求項1に記載のTSU。
【請求項10】
前記TSUがカプセルを含み、前記カプセルが、前記PCMと、前記PCMと接触している前記核生成剤とを含む、請求項1に記載のTSU。
【請求項11】
相変化流体を凍結させる方法であって、
相変化流体を供給することと、
前記相変化流体が核生成するまで前記相変化流体を冷却することとを含み、
前記相変化流体が、相変化材料(PCM)と核生成剤との混合物を含み、
前記核生成剤が、ポリアミド(PA)ポリマーを含む、
方法。
【請求項12】
前記PCMが水を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記核生成剤が粉砕されたPAである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記粉砕されたPAが、最大5mmの粒子サイズを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
相変化流体を生成する方法であって、
水を供給することと、
ポリアミド(PA)ポリマー材料を核生成剤として前記水に加え、それによって核生成剤を含まない水の前記核生成温度よりも高い核生成温度を有する核生成温度上昇混合物を生成することと
を含む方法。
【請求項16】
前記水および前記ポリアミド(PA)ポリマー材料が、蓄熱ユニット(TSU)で使用するためにカプセルに入れられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水が、蓄熱ユニット(TSU)で使用するためにカプセルに供給され、前記(PA)ポリマー材料が前記カプセルに加えられる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記水と前記PAポリマー材料とを混合することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記PAポリマー材料が粒状PAポリマー材料である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記粒状PAポリマー材料の粒子が、直径最大5ミリメートルの粒子サイズを有する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、相変化材料の核生成温度に影響を与えるために使用される方法および材料に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、核生成剤を水に加えると、水の初期凍結温度が上昇する。初期凍結温度は核生成温度と呼ばれることもある。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、そのいくつかの実施形態では、相変化材料の核生成温度を上昇させるための核生成材料の使用に関する。
【0004】
相変化材料のいくつかの非限定的な例には、蓄熱ユニット内または蓄熱ユニット中のカプセル内の流体、例えば水、などがある。
【0005】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によれば、相変化材料(PCM)と、PCMと接触している核生成温度上昇核生成剤とを含み、核生成剤が、ポリアミド(PA)ポリマーを含む、蓄熱ユニット(TSU)が提供される。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態によれば、核生成剤はPCMと混合される。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態によれば、PCMは水を含む。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態によれば、核生成剤は、粒状ポリアミド(PA)ポリマーを含む。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態によれば、粒状ポリアミド(PA)ポリマーは、直径最大5ミリメートルの粒子サイズを有する。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態によれば、粒状ポリアミド(PA)ポリマーは、直径0.01~1.5ミリメートルの粒子サイズを有する。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態によれば、核生成剤は、ポリアミド(PA)ポリマーフィラメントを含む。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態によれば、核生成剤は、絡まったフィラメントを含む。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態によれば、核生成剤は、ポリアミド(PA)ポリマースポンジを含む。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態によれば、TSUはカプセルを含み、カプセルは、PCMと、PCMと接触している核生成剤とを含む。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によれば、相変化流体を凍結させる方法が提供され、方法は、相変化流体を供給することと、相変化流体が核生成するまで相変化流体を冷却することとを含み、相変化流体は、相変化材料(PCM)と核生成剤との混合物を含み、核生成剤は、ポリアミド(PA)ポリマーを含む。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態によれば、PCMは水を含む。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態によれば、核生成剤は粉砕されたPAである。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態によれば、粉砕されたPAは、最大5mmの粒子サイズを含む。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によれば、相変化流体を生成する方法が提供され、方法は、水を供給することと、ポリアミド(PA)ポリマー材料を核生成剤として水に加え、それによって核生成剤を含まない水の核生成温度よりも高い核生成温度を有する核生成温度上昇混合物を生成することとを含む。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態によれば、水およびポリアミド(PA)ポリマー材料が、蓄熱ユニット(TSU)で使用するためにカプセルに入れられる。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態によれば、水が、蓄熱ユニット(TSU)で使用するためにカプセルに供給され、(PA)ポリマー材料がカプセルに加えられる。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態によれば、水とPAポリマー材料とを混合することを含む。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態によれば、PAポリマー材料は、粒状PAポリマー材料である。
【0024】
本開示のいくつかの実施形態によれば、粒状PAポリマー材料の粒子は、直径最大5ミリメートルの粒子サイズを有する。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によれば、水の凍結温度を上昇させる方法が提供され、方法は、水を供給することと、ポリアミド(PA)ポリマー材料を水に加え、それによって同様の条件下での水の凍結温度よりも高い凍結温度を有する凍結温度が上昇した混合物を生成することとを含む。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態によれば、方法は、水とPAポリマー材料とを混合することを含む。
【0027】
本開示のいくつかの実施形態によれば、PAポリマー材料は、粒状PAポリマー材料である。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態によれば、粒状PAポリマー材料の粒子は、直径最大5.0ミリメートルの粒子サイズを有する。
【0029】
本開示のいくつかの実施形態によれば、混合物は、凍結温度が上昇した混合物として使用される前に、特定の期間、水の少なくとも一部を吸収することができる。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態の一態様によれば、相変化流体と、相変化流体と接触している凍結温度上昇核生成剤とを含む蓄熱ユニット(TSU)が提供される。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態によれば、凍結温度上昇核生成剤が相変化流体と混合される。
【0032】
本開示のいくつかの実施形態によれば、相変化流体が水を含む。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態によれば、凍結温度上昇核生成剤は、ポリアミド(PA)ポリマーを含む。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態によれば、凍結温度上昇核生成剤は、粒状ポリアミド(PA)ポリマーを含む。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態によれば、粒状ポリアミド(PA)ポリマーは、直径最大5.0ミリメートルの粒子サイズを有する。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態によれば、TSUはカプセルを含み、カプセルは相変化流体と、相変化流体と接触している凍結温度上昇核生成剤とを含む。
【0037】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が関係する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を、本開示の実施形態の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含めて、特許明細書が優先する。加えて、材料、方法、および例は、例示にすぎず、必ずしも限定を意図するものではない。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態は、単なる例として、添付の図面を参照して記載される。次に、図面を詳細に参照すると、示された詳細は、例示であり、本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであることが強調される。この点に関して、図面と併せて説明すれば、本発明の実施形態がどのように実施され得るかが当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A】例示的な一実施形態による、ポリアミド(PA)ポリマー材料を核生成剤として加えることによって、相変化材料(PCM)としての水の核生成温度を変更する方法の簡略化されたフローチャート図である。
図1B】例示的な一実施形態による、PCMとして水、および核生成剤としてPAポリマー材料を含む蓄熱ユニット(TSU)の簡略化されたブロック図である。
図1C】例示的な一実施形態による、PCMとして水、および核生成剤としてPAポリマー材料を含むカプセルを含むTSUの簡略化されたブロック図である。
図2】PCMに核形成剤が加えられていないときの、PCM、この例では水の経時的な温度を示すグラフである。
図3】例示的な一実施形態による、PCMに核生成剤、この例ではポリアミド(PA)ポリマーが加えられたときの、PCM、この例では水の経時的な温度を示すグラフである。
図4】例示的な一実施形態による、核生成剤が加えられた水と核生成剤が加えられていない水との経時的な温度の比較を示すグラフである。
図5】例示的な一実施形態による、核生成剤が加えられた水と核生成剤が加えられていない水との経時的な温度の比較を示すグラフである。
図6】例示的な一実施形態による相変化流体の凍結方法の簡略化されたフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、相変化材料の核生成温度に影響を与えるために使用される方法および材料に関する。

導入
【0041】
本開示は、そのいくつかの実施形態では、相変化材料(PCM)に核生成剤、すなわち核生成材料を加えることに関し、核生成材料は、PCMの初期凍結段階の温度を上昇させるために選択される。そのすべての文法的形態における「核生成剤」という用語は、本明細書および特許請求の範囲を通して、「核生成材料」という用語およびその対応する文法的形態と互換的に使用される。いくつかの実施形態では、PCMは、非限定的な例として、例えば水などの流体とすることができる。いくつかの実施形態では、PCMは、オプションで、蓄熱ユニット内、および/または蓄熱ユニット内のカプセル内にあり得る。

概要
【0042】
いくつかの実施形態の一態様は、相変化材料として作用する水の初期凍結温度を上昇させるための核生成材料の使用に関する。凍結した水は大量のエネルギーを吸収することができ、氷(凍結した水)は、そうでなければ熱エネルギーを利用できない期間、またはより高価な熱エネルギーの期間の間に、例えば冷却システムを冷却するための熱エネルギーを供給する役割を果たすことができる。

核生成材料の特性
【0043】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、以下の特性のうちの1つ以上を有する。
【0044】
核生成材料は、潜在的に複数サイクルの相変化に耐える。いくつかの実施形態では、核生成材料は、潜在的に凍結と融解の複数サイクルに耐える。このような特性により、潜在的に、システムは、何百回、あるいは何千回もの相変化、例えば凍結および融解のサイクルにわたって、交換および/またはメンテナンスを必要とせず、何度でもPCMを使用できる可能性がある。
【0045】
核生成材料は、潜在的に、PCMを吸収することができ、または例えば水などのPCMによって吸収することができ、依然として凍結および融解の複数サイクルに耐えることができるため、数百回、あるいは数千回の凍結および融解のサイクルにわたって交換またはメンテナンスを必要としない。
【0046】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、核生成材料と混合された水が-3.0℃を超える温度で核生成することを潜在的に可能にする。例えば、純水を冷却する例の場合、過冷却水(HO)を-6.5℃で核生成することができる。水に核生成剤を加えると、水の核生成温度はより高くなり得、例えば-3.0℃まで上昇する。
【0047】
核生成材料がPCM(例えば水)の核生成温度を上昇させるとき、PCM(水)を凍結させるためのシステムは、相変化のエネルギーを蓄積し始める前に低い温度に到達する必要はない。水1グラムが1℃につき1カロリー程度のエネルギーを吸収するが、凍結水は相変化(凍結)のために80カロリー程度のエネルギーを吸収することが指摘されている。水が凍結し始める前に相変化温度未満に冷却されるほど、冷却のための工学的課題は大きくなり、潜在的にエネルギー損失が大きくなることが予想される。
【0048】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載され、ならびに/あるいは図面および/または実施例に示される構成要素および/または方法の構成および配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能である、または様々な方法で実施もしくは実行することができる。
【0049】
次に、図1Aを参照し、図1Aは、例示的な一実施形態による、ポリアミド(PA)ポリマー材料を核生成剤として加えることによって、相変化材料(PCM)としての水の核生成温度を変更する方法の簡略化されたフローチャート図である。
【0050】
図1Aは、水の核生成温度を上昇させる方法の一例を示している。
【0051】
図1Aに示す方法は、
水を供給すること(102)と、
ポリアミド(PA)ポリマー材料を水に加え(104)、それによって同様の条件下における水の核生成温度よりも高い核生成温度を有する核生成温度上昇混合物を生成することとを含む。
【0052】
次に、図1Bを参照し、図1Bは、例示的な一実施形態による、PCMとして水、および核生成剤としてPAポリマー材料を含む蓄熱ユニット(TSU)の簡略化されたブロック図である。
【0053】
図1Bは、核生成剤を含むことによってPCMの核生成温度を上昇させるように適合されたPCMを含むように構築されたTSUの一例を示す。
【0054】
図1Bは、水112と核生成剤としてのポリアミド(PA)ポリマー材料を含むTSU110を示している。
【0055】
次に、図1Cを参照し、図1Cは、例示的な一実施形態による、PCMとして水、および核生成剤としてPAポリマー材料を含むカプセルを含むTSUの簡略化されたブロック図である。
【0056】
図1Cは、核生成剤を含むことによってPCMの核生成温度を上昇させるように適合されたPCMを各々含む蓄熱カプセルを含むように構成されたTSUの一例を示す。
【0057】
図1Cは、任意の数の蓄熱カプセル121を含むTSU120を示し、各蓄熱カプセルは、水112と核生成剤としてのポリアミド(PA)ポリマー材料とを含む。非限定的な例として、2つの蓄熱カプセル121Aおよび121Zが示されているが、1つ以上の任意の数のカプセルが企図される。
【0058】
次に、図2を参照し、図2は、PCMに核形成剤が加えられていないときの、PCM、この例では水の経時的な温度を示すグラフである。
【0059】
図2のグラフと、PCMに核生成材料が加えられたときの相変化材料(PCM)の経時的な温度を示すグラフ(図3図4図5のグラフ)を比較することによって、核生成材料の効果を見ることができる。
【0060】
図2は、X軸202に時間(時間)、Y軸204に摂氏温度を有するグラフである。
【0061】
図2は、核生成剤を含まない水の経時的な温度を示す線206を示す。
【0062】
図2は、水とグリコールの冷却された混合物などの冷却剤によって冷却される容器(試験管またはカプセル、蓄熱ユニットなど)内の冷却される水の温度を示している。時刻04:15頃(参照番号208)、水が冷却され始めていることがわかる。水の温度は、時刻05:45頃(参照番号210)に約-3℃まで下がり、その後冷却が終了し、水温は徐々に上昇する。
【0063】
図2のグラフは、凍結と解凍/融解のサイクルを示すために作成された。サイクルは、+10.0℃に設定された融解段階から始まり、ある期間の後、テストされたサンプルが10℃に達すると、容器の周囲の温度は-2.0℃まで下がった。-2.0℃の温度はある期間維持され、次いで、各段階で-0.5℃ずつ低下した。サイクルは、最低温度-4.0°minに達した。
【0064】
冷却段階は合計で1.5時間、融解時間も1.5時間かかった。
【0065】
図2に示すサイクルは、所望のサイクルゲインおよび/またはエネルギー測定などに基づく所望の試験ターゲットに応じて変更し得る。
【0066】
次に図3を参照すると、図3は、PCMに核生成剤、この例ではポリアミド(PA)ポリマーが加えられたときの、PCM、この例では水の経時的な温度を示すグラフである。
【0067】
図2のグラフと図3のグラフを比較することによって、核生成材料の効果がわかり得る。
【0068】
図3は、X軸302に時間(時間)、Y軸304に摂氏温度を有するグラフである。
【0069】
図3は、核生成剤と混合された水の経時的な温度を示す線306を示す。
【0070】
図3は、時刻04:15頃(参照番号308)に水が冷却され始めることを示している。水の温度は、時刻05:15頃(参照番号310)に約-2.5℃まで下がり、その時点で水は凍結する(参照番号312)。凍結によって熱が放出され、水の氷結温度である0℃になる。この時点で必ずしもすべての水が凍結しているわけではなく、水と氷(および核生成剤)の混合物が存在する可能性があることに留意されたい。
【0071】
図3は、水の少なくとも一部が凍り始めた後(参照番号312)、温度が0℃のままであることを示している。
【0072】
いくつかの実施形態では、冷却が継続され、より多くの水が凍結して氷になる場合がある。
【0073】
次に、図4を参照し、図4は、例示的な一実施形態による、核生成剤が加えられた水と核生成剤が加えられていない水との経時的な温度の比較を示すグラフである。
【0074】
図4は、核生成材料を含まない第1の材料である水、および核生成剤と混合された第2の材料である水の2つの材料の、冷却および凍結下での挙動を比較している。
【0075】
図4は、X軸402に時間(時間)、Y軸404に摂氏温度を有するグラフである。
【0076】
図4は、核生成材料を含まない第1の材料である水の温度を示す第1の線406、および核生成材料と混合された第2の材料である水の温度を示す第2の線408を経時的に示す。
【0077】
13:20頃、第1の材料と第2の材料の両方が冷却され、時間の経過とともに温度が低下した。冷却は、同様のシステムによって、同様の電力設定で実行され、同様の容器に含まれる同様の体積の2つの材料が冷却された。
【0078】
第1の線406で示される第1の材料は、14:42頃(参照番号410)まで冷却され、その温度は低下し続け、最低約-3℃に達した。14:42頃(参照番号410)に冷却が停止し、第1の材料は徐々に温まり始めた。
【0079】
第2の線408で示される第2の材料は、第2の材料が凍結する14:15頃(参照番号412)まで冷却され、その温度は水の氷結温度、約0℃まで上昇した。冷却は14:42頃(参照番号410)まで継続し、氷と水の混合物の温度はあまり変化することなく、より多くの水が凍結して氷になった。14:42頃(参照番号410)、冷却は停止したが、第2の材料の温度は約0℃のままであった。第2の材料が吸収した熱により、水と氷の混合物の氷の一部が溶けて水に戻ったが、混合物に氷がある限り、水と氷の混合物の温度は約0℃に保持された。氷の全部または大部分が溶けると、第2の材料の温度も上昇する。
【0080】
次に、図5を参照し、図5は、例示的な一実施形態による、核生成剤が加えられた水と核生成剤が加えられていない水との経時的な温度の比較を示すグラフである。
【0081】
図5は、核生成材料を含まない第1の材料である水、および核生成剤と混合された第2の材料である水の2つの材料の、冷却および凍結下での挙動を比較している。
【0082】
図5は、X軸502に時間(時間)、Y軸504に摂氏温度を有するグラフである。
【0083】
図5は、核生成材料を含まない第1の材料である水の温度を示す第1の線506、および核生成材料と混合された第2の材料である水の温度を示す第2の線508を経時的に示す。
【0084】
02:50頃、第1の材料と第2の材料の両方が冷却され、時間の経過とともに温度が低下した。冷却は、同一のシステムによって、同一の電力設定で実行され、同一の容器に含まれる同一の体積の2つの材料が冷却された。
【0085】
第1の線506で示される第1の材料は、04:12頃(参照番号510)まで冷却され、その温度は低下し続け、最低約-3℃に達した。04:12頃(参照番号510)に冷却が停止し、第1の材料は徐々に温まり始めた。
【0086】
第2の線508で示される第2の材料は、第2の材料が凍結する03:25頃(参照番号512)まで冷却され、その温度は氷結温度、約0℃まで上昇した。冷却は04:12頃(参照番号510)まで継続し、氷と水の混合物の温度はあまり変化することなく、より多くの水が凍結して氷になった。04:12頃(参照番号510)、冷却は停止したが、第2の材料の温度は04:22頃(参照番号514)まで約0℃のままであった。第2の材料が吸収した熱により、水と氷の混合物の氷の一部が溶けて水に戻ったが、水と氷の混合物の温度は約0℃に保持された。04:22(参照番号514)以降、第2の材料はほとんど凍結しておらず、第2の材料の温度は上昇している。
核生成材料の例示的な実施形態
【0087】
次に、核生成材料の実施形態に1つ以上の特性が属する可能性のある上記の望ましい特性のリストを要約する。
核生成材料は、PCMの核生成温度を上昇させる能力を著しく低下させることなく、相変化の複数サイクルに耐える可能性がある、および
核生成材料は、PCMを潜在的に吸収および/または吸収する可能性があり、あるいはPCMによって吸収される可能性がある。
【0088】
上述した特性の少なくとも一部を有する核生成材料のいくつかの非限定的な例には、ナイロンと名付けられた材料群、例えばポリアミド(PA)ポリマーがある。
【0089】
核生成剤として有用ないくつかのPAポリマーは、ナイロン6、例えば、
PA6および/またはPA66および/またはPA6/6および/またはPA6/9および/またはPA6/10および/またはPA6/11および/またはPA6/12および/またはPA101および/またはPA10/12および/またはPA510および/またはPA46および/またはPA12、および/または他のナイロンタイプを含む。
【0090】
上記のポリマーは、核生成を生じさせることができる吸水能力を有する。
【0091】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、上記のPAポリマーの混合物を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、上記のPAポリマーの1つ以上と、1つ以上の追加の鉱物との混合物を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、上記のPAポリマーの1つ以上と、非限定的な例として石英との混合物を含む。

核生成材料の物理的状態の例示的な実施形態
【0094】
いくつかの実施形態では、使用される核生成材料は、粉末のような微細な粒子サイズを有するように選択される。
【0095】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、0.01ミリメートルから1.5ミリメートル、場合によっては直径が最大5.0ミリメートルの範囲の粒子サイズを有し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、微細な粒子サイズを有する粒状核生成材料に粉砕される。いくつかの実施形態では、粒状核生成材料は、特定の所望の最大値、例えば1.5mmを超えない粒子サイズを維持するようにふるいに通される。
【0097】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、粗く不規則な形状を有するように選択され、潜在的に、その有効性、すなわちPCMと核生成剤の組合せの核生成点を上昇させる温度を増加させる。
【0098】
いくつかの実施形態では、PAが粉砕されて核生成剤の粒子が取得される。
【0099】
いくつかの実施形態では、粗い形状は、粉砕粒子のその後の平滑化なしに、核生成材料を粉砕することによって取得される。
【0100】
いくつかの実施形態では、使用される核生成材料は、フィラメントおよび/または細い糸の形態であるように選択され、いくつかの非限定的な例として、吊り下げられたPA糸、PA糸のパッド、PA糸のウェブ、およびPA糸の絡み合いが挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、使用される核生成材料は、非限定的な例として、PAスポンジなどの多孔質材料の形態となるように選択される。
【0102】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、PCM、例えば水に加えられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、水などのPCMが核生成材料に加えられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、PCMと核生成剤の組合せ、例えば水とPAポリマーの組合せは、核生成剤がPCMを吸収するための時間が与えられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、PCMと核生成剤の組合せ、例えば水とPAポリマーの組合せは、核生成剤がPCMを吸収するための時間が与えられ、その後、核生成剤はPCMの容器の底に沈む。
【0106】
いくつかの実施形態では、PCMと核生成の組合せ、例えば水とPAポリマーの組合せは、冷却前に振盪または撹拌される。

PCMと核生成材料(NM)の混合物におけるNMの濃度の例示的な実施形態
【0107】
いくつかの実施形態では、PAポリマーを、水2リットルあたり0.5グラム~25グラムの核生成材料の濃度で水と混合する。

蓄熱ユニットの例示的な実施形態
【0108】
いくつかの実施形態では、PCMおよび核生成材料は蓄熱ユニット(TSU)に含まれる。
【0109】
いくつかの実施形態では、TSUはTSU内に蓄熱カプセルを含み、PCMおよび核生成材料は蓄熱カプセルに含まれる。
【0110】
いくつかの実施形態では、TSUは、熱交換流体(水とグリコールの混合物など)が蓄熱カプセルの周囲を流れるように設計されている。
【0111】
いくつかの実施形態では、TSUはアイスオンコイルTSUであり、PCMおよび核生成剤はTSU内に含まれ、流体導管「コイル」はPCMおよび核生成剤と熱交換するための熱交換流体の流れを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、核生成剤は、オプションで、TSUの流体導管「コイル」と接触しないように構成されたスポンジまたはウェブとして提供される。

いくつかの技術的注記
【0113】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、核生成温度の最大の上昇の完全な効果を達成するには時間がかかる。核生成材料は、水を吸収するにつれて効果が高まり、吸水能力の限界に達したときに最大の効果を発揮するようになり得る。

PCMの凍結温度の上昇のいくつかの非限定的な使用例
【0114】
いくつかの実施形態では、核生成材料は、例えば、蓄熱ユニット、スノーガン、アイススケートのようなアイスアリーナ、および他の用途で、水を凍結させるときの核生成に使用される。
【0115】
いくつかの実施形態では、核生成材料は熱エネルギー貯蔵システムで使用され、蓄熱ユニット、および/または蓄熱ユニット内の密封カプセルで使用される水の核生成温度を潜在的に上昇させる。
【0116】
次に、図6を参照し、図6は、例示的な一実施形態による相変化流体の凍結方法の簡略化したフローチャート図である。
【0117】
図6の方法は、
相変化流体を供給すること(602)と、
相変化流体が核生成するまで相変化流体を冷却することとを含み、
相変化流体が、相変化材料と核生成剤との混合物を含み、
核生成剤が、ポリアミド(PA)ポリマーを含む。
【0118】
本出願から成熟する特許の有効期間中に、多くの関連する核生成材料が開発されることが予想され、核生成材料という用語の範囲は、そのようなすべての新技術を先験的に含むことを意図している。
【0119】
本出願から成熟する特許の存続期間中に、関連する多くの相変化材料が開発されることが予想され、相変化材料という用語の範囲は、そのようなすべての新技術を先験的に含むことを意図している。
【0120】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」は、それらの活用形とともに、「~を含むが、それらに限定されない」を意味する。
【0121】
「~からなる」という用語は、「~を含み、それらに限定される」を意味するものとする。
【0122】
「本質的に~からなる」という用語は、組成物、方法または構造が、追加の成分、ステップ、および/または部分を含み得るが、追加の成分、ステップ、および/または部分が、特許請求される組成物、方法、または構造の基本的および新規な特徴を実質的に変更しない場合のみであることを意味する。
【0123】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。例えば、用語「ユニット」または「少なくとも1つのユニット」は、その組合せを含む複数のユニットを含み得る。
【0124】
さらに、「例」または「例示的」という用語は、本明細書では「例、事例、または例示としての役割を果たす」ことを意味するために使用される。「例」または「例示的」として記載された任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるものではなく、および/または他の実施形態からの特徴の組み込みを排除するものでもない。
【0125】
本明細書において「オプションで」という語は、「一部の実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」という意味で使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾しない限り、複数の「オプション」の特徴を含むことができる。
【0126】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態が範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上および簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと見なされるものとする。例えば、1から6までなどの範囲の記述は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6までのような部分範囲、およびその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、および6が具体的に開示されていると見なされるものとする。これは範囲の広さに関係なく適用される。
【0127】
本明細書において数値範囲が示される場合(例えば「10~15」、「10から15」、またはこれら別のこのような範囲表示によって連結された任意の数値の対)には、文脈上明らかに別段の指示がない限り、範囲制限を含む、示された範囲制限内の任意の数値(分数または整数)を含むことを意味する。本明細書では、第1の指示数と第2の指示数の「範囲(range)/範囲(ranging)/間の範囲(ranges between)」、および第1の指示数から第2の指示数「まで(to)」、「まで(up to)」、「まで(until)」、または「を通して(through)」(または別のそのような範囲を示す用語)という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1の指示数と第2の指示数、およびその間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0128】
特に断りのない限り、本明細書で使用される数値およびそれに基づく任意の数値範囲は、当業者によって理解される合理的な測定および丸め誤差の精度の範囲内での近似値である。
【0129】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々に、または任意の適切な部分組合せで、または本発明の任意の他の記載された実施形態において適切なものとして提供することもできる。様々な実施形態の文脈で説明されるいくつかの特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作しない場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴とは見なされないものとする。
【0130】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者には明らかであろうことは明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に入るそのような代替、修正、および変形のすべてを包含するものとする。
【0131】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が、参照により本明細書に組み込まれるように具体的かつ個別に示されたかのように、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。加えて、本出願における任意の参照の引用または特定は、そのような参照が本発明の従来技術として利用可能であることを認めるものと解釈されないものとする。セクションの見出しが使用されている限りにおいて、それは必ずしも限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0132】
さらに、本出願の任意の優先権文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】