(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム、改質ポリプロピレン材料およびその使用
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20250121BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20250121BHJP
C08F 255/02 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B29C55/12
C08F255/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540690
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-09-03
(86)【国際出願番号】 CN2022133482
(87)【国際公開番号】W WO2023130848
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210013459.X
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210014198.3
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210945062.4
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210945889.5
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523187158
【氏名又は名称】中石化(北京)化工研究院有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】506259634
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Qinghuayuan,Haidian District,Beijing 100084,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張雅茹
(72)【発明者】
【氏名】李▲キ▼
(72)【発明者】
【氏名】張▲キ▼
(72)【発明者】
【氏名】袁浩
(72)【発明者】
【氏名】何金良
(72)【発明者】
【氏名】邵清
(72)【発明者】
【氏名】李君洛
(72)【発明者】
【氏名】権慧
(72)【発明者】
【氏名】王銘▲ティ▼
(72)【発明者】
【氏名】胡軍
(72)【発明者】
【氏名】李娟
(72)【発明者】
【氏名】高達利
(72)【発明者】
【氏名】張竜貴
(72)【発明者】
【氏名】胡世勲
(72)【発明者】
【氏名】盧洪超
(72)【発明者】
【氏名】夏礼棟
【テーマコード(参考)】
4F071
4F210
4J026
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA22X
4F071AA33X
4F071AA77
4F071AA78
4F071AA84
4F071AA88
4F071AC11
4F071AC15
4F071AE05
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF36Y
4F071AF39
4F071AF40
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F210AA11
4F210AG01
4F210AR01
4F210AR12
4F210AR20
4F210QA08
4F210QC07
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG17
4J026AA13
4J026BA05
4J026BA25
4J026BA27
4J026BA30
4J026BA35
4J026BA40
4J026BA43
4J026BB01
4J026DB05
4J026DB15
4J026FA08
4J026GA08
(57)【要約】
本発明は、ポリマーの分野に属し、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム、改質ポリプロピレン材料およびその使用に関する。二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムの調製原料は、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを含む。アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、マトリックス相としてポリプロピレンに由来する構造単位および分散相としてアルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位を含む。アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの灰分含有量は50ppm未満である。アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位に対する質量比が1.0以上である。分散相のD50は450nm未満である。本発明の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムは、比較的高い作動温度で良好な誘電性能およびエネルギー貯蔵性能を維持することができ、高温および高作動電界強度の作動条件に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムであって、前記二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを調製するための原料が、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを含み;
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンが、マトリックス相としてポリプロピレンに由来する構造単位、および分散相としてアルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位を含み;前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、50ppm未満、好ましくは36ppm未満、および、より好ましくは30ppm未満の灰分含有量を有し;前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の質量に対する比が、1.0以上であり;前記分散相のD50は450nm未満、好ましくは50~400nmであることを特徴とする、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項2】
前記二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムの最高作動温度が100℃以上、好ましくは110~160℃、および、より好ましくは120~145℃である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項3】
前記二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムが、以下の特徴のうち少なくと1つを有する、請求項1または2に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム:
120℃での降伏電界強度E
gが、500MV/m以上、好ましくは550~800MV/mである;
120℃かつ200MV/mの電界強度での直流体積抵抗率ρ
vgが、6.0×10
13Ω・m以上、好ましくは1.0×10
14Ω・m~1.0×10
20Ω・m、好ましくは1.5×10
14Ω・m~0.9×10
20Ω・m、より好ましくは2.0×10
14Ω・m~1.0×10
17Ω・mである;
120℃かつ100Hzでの誘電率が2.25より大きく、好ましくは2.26~2.65である;
120℃かつ100Hzでの誘電損失が1.55E-3未満、好ましくは1.5E-3未満、好ましくは1.0E-3以下、より好ましくは1.0E-6~1.3E-3、およびさらに好ましくは1.0E-6~9E-4である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵密度が、0.720J/cm
3より大きく、好ましくは0.740~2.0J/cm
3、より好ましくは0.780~2.0J/cm
3、およびさらに好ましくは0.80~2.0J/cm
3である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵効率が90.0%より大きく、および好ましくは92.0~99.0%である。
【請求項4】
前記二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムが、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム:縦方向の引張強度が140MPa以上、および好ましくは140~170MPaである;横方向の引張強度が200MPa以上、および好ましくは205~250MPaである;縦方向の破断伸度が210%以上、好ましくは225%以上である;横方向の破断伸度が60%以上、好ましくは62%以上である;厚さが、0.5~15μm、好ましくは4~10μmである。
【請求項5】
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の前記質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の前記質量に対する比が、1.1~1.0、好ましくは1.2~6である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項6】
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の前記質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の前記質量に対する比が、1.5以上、好ましくは2以上である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項7】
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンが、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム:2.16kg荷重下の230℃でのメルトフローレートが1~10g/10分、好ましくは1.5~8g/10分、およびさらに好ましくは2~5g/10分である;融解温度T
mが155~168℃、および好ましくは157~165℃である;曲げ弾性率が1400~2000MPa、好ましくは1500~1800MPaである。
【請求項8】
前記アルケニル含有官能性モノマーが、式1:
【化1】
で表される構造を有するモノマーから選択される、少なくとも1つであり、
式1中、R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のアルキルから選択され;R
aは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルコキシ、置換または非置換のアリール、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のカルボキシル、置換もしくは非置換のシクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のシリルから選択され;R
aおよびR
dは、任意に環を形成する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項9】
R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC
1-C
6アルキルから選択され;R
aは、置換または非置換のC
1-C
20アルキル、置換または非置換のC
1-C
20アルコキシ、置換または非置換のC
6-C
20アリール、置換または非置換のC
1-C
20エステル基、置換または非置換のC
1-C
20カルボキシル、置換もしくは非置換のC
3-C
20シクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のC
3-C
20シリルから選択され;前記置換基は、ハロゲン、-OH、-NH
2、=O、C
1-C
12アルキル、C
3-C
6シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12アシルオキシであり;R
aおよびR
dは、任意に、二重結合で一緒になって4~6員複素環を形成する、
請求項8に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項10】
R
b、R
c、R
dが、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC
1-C
6アルキルから選択され;
R
aは、式2で表される基、式3で表される基、式4で表される基、式5で表される基、式6で表される基、および複素環基から選択される少なくとも1つであり;
【化2】
式2中、R
4-R
8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC
1-C
12アルキル、置換または非置換のC
3-C
12シクロアルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換C
1-C
12エステル基、置換または非置換のC
1-C
12アミン基から選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
12アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12エステル基、C
1-C
12アミン基から選択され;好ましくは、R
4-R
8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC
1-C
6アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシから選択される;
【化3】
式3中、R
4-R
10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC
1-C
12アルキル、置換または非置換のC
3-C
12シクロアルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換C
1-C
12エステル基、置換または非置換のC
1-C
12アミン基から選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
12アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12エステル基、C
1-C
12アミン基から選択され;好ましくは、R
4-R
10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC
1-C
6アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシから選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシから選択される;
【化4】
式4中、R
4’-R
10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC
1-C
12アルキル、置換または非置換のC
3-C
12シクロアルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
12エステル基、置換または非置換のC
1-C
12アミン基から選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
12アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12エステル基、C
1-C
12アミン基から選択され;好ましくは、R
4’-R
10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC
1-C
6アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシから選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシから選択される;
【化5】
式5中、R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立して、置換または非置換のC
1-C
12直鎖アルキル、置換または非置換のC
3-C
12分岐アルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
12アシルオキシから選択され;好ましくは、R
1は、C
2-C
6アルケニル、好ましくは一価不飽和アルケニルであり;R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、置換または非置換のC
1-C
6直鎖アルキル、置換または非置換のC
3-C
6分岐アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
6アシルオキシから選択される;
【化6】
式6中、R
mは、水素、および/または、置換もしくは非置換の以下の基:C
1-C
20直鎖アルキル、C
3-C
20分岐アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
3-C
12エポキシアルキル、C
3-C
12エポキシアルキルアルキル、から選択され、前記置換基はハロゲン、アミノおよびヒドロキシから選択される少なくとも1つである;
前記複素環基は、イミダゾリル、ピラゾリル、カルバゾリル、ピロリジノニル、ピリジル、ピペリジニル、カプロラクタミル、ピラジニル、チアゾリル、プリニル、モルホリニル、オキサゾリニルから選択される、
請求項9に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項11】
前記アルケニル含有官能性モノマーが、スチレンモノマーであり、前記スチレンモノマーが、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、モノまたはポリ置換スチレン、モノまたはポリ置換α-メチルスチレン、モノまたはポリ置換1-ビニルナフタレンおよびモノまたはポリ置換2-ビニルナフタレンから選択される少なくとも1つであり;前記置換基が、好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
8直鎖アルキル、C
3-C
8分岐アルキルまたはシクロアルキル、C
1-C
6直鎖アルコキシ、C
3-C
8分岐アルコキシまたはシクロアルコキシ、C
1-C
8直鎖エステル基、C
3-C
8分岐エステル基または環状エステル基、C
1-C
8直鎖アミン基およびC
3-C
8分岐アミン基または環状アミン基から選択される少なくとも1つであり;好ましくは、前記スチレンモノマーが、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび4-メチルスチレンから選択される少なくとも1つである、
請求項10に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項12】
前記アルケニル含有官能性モノマーが、アルケニル含有シランモノマーであり、前記アルケニル含有シランモノマーが、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリ-tert-ブトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、メチルアリルジメトキシシラン、および、エチルアリルジエトキシシランから選択される少なくとも1つである、請求項10に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項13】
前記アルケニル含有官能性モノマーが、アクリレートモノマーおよび/またはアクリルモノマーであり、好ましくは、前記アクリレートモノマーが、メチル(メチル)アクリレート、sec-ブチル(メチル)アクリレート、エチル(メチル)アクリレート、n-ブチル(メチル)アクリレート、イソブチル(メチル)アクリレート、tert-ブチル(メチル)アクリレート、イソオクチル(メチル)アクリレート、ドデシル(メチル)アクリレート、コシニン(メチル)アクリレート、オクタデシル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メチル)アクリレート、および、グリシジル(メチル)アクリレートから選択される少なくとも1つであり;好ましくは、前記アクリルモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸および2-エチルアクリル酸から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項14】
前記アルケニル含有官能性モノマーが、無水マレイン酸、マレイミドおよびその誘導体、無水イタコン酸、ならびにα-メチレン-γ-ブチロラクトンから選択される少なくとも1つであり;好ましくは、前記アルケニル含有官能性モノマーが無水マレイン酸である、請求項9に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項15】
前記ポリプロピレンが以下の特徴を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム:粒径が16~50メッシュであり;灰分含有量が55ppm未満、好ましくは40ppm未満、より好ましくは35ppm未満であり;曲げ弾性率が1400~2000MPa、好ましくは1500~1800MPaである。
【請求項16】
前記ポリプロピレンが、ホモポリプロピレンまたはプロピレンコポリマーであり、好ましくは以下の特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム:
2.16kg荷重下の230℃でのメルトフローレートが0.5~10g/10分、好ましくは1~5g/10分、およびさらに好ましくは2~4g/10分である;
融解温度T
mが150℃以上、好ましくは153~180℃、さらに好ましくは155~167℃である;
アイソタクティシティが96%より大きく、好ましくは96.5%より大きく;または、エチレン単位およびブテン単位の合計含有量が3.0mol%未満、好ましくは0より大きくかつ0.1mol%未満、または0.1mol%より大きくかつ3.0mol%以下である。
【請求項17】
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンが、以下の工程を含む方法により調製される、請求項1~16のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム:不活性ガスの存在下で、ポリプロピレン粉末およびアルケニル含有官能性モノマーを含む反応混合物をグラフト化反応に供し、任意に洗浄用溶媒で洗浄し、前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された前記改質ポリプロピレンを得る工程。
【請求項18】
前記反応混合物が、フリーラジカル開始剤と、次の成分:脱イオン水および/または有機溶媒のうち少なくとも1つの成分とをさらに含み、前記脱イオン水の質量含有量が前記ポリプロピレン粉末および前記アルケニル含有官能性モノマーの質量の合計の300~800%であり、ならびに、前記有機溶媒の質量含有量が、前記ポリプロピレン粉末の質量の1~35%である、請求項17に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項19】
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法が、以下の工程:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.フリーラジカル開始剤およびアルケニル含有官能性モノマーを前記密閉反応器に加え、撹拌しながら混合する工程;
c.脱イオン水を加え、反応系をグラフト化反応温度まで加熱し、グラフト化反応を行い;任意に、脱イオン水を加える前または脱イオン水を加えた後に反応系を膨潤させる工程;
d.反応終了後、濾過し、および、任意に乾燥させて、粉末を得る工程;
e.任意に、前記粉末を洗浄用溶媒で洗浄し、濾過し、乾燥させる工程;
f.前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程;
を含むか、または
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法が、以下の工程:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.有機溶媒およびフリーラジカル開始剤を混合し、前記混合物を前記密閉反応器に加える工程;
c.前記有機溶媒を除去し、アルケニル含有官能性モノマーを加え、任意に反応系を膨潤させる工程;
d.脱イオン水を加え、前記反応系をグラフト化反応温度まで加熱し、グラフト化反応を行う工程;
e.反応終了後、濾過し、および、任意に乾燥させて、粉末を得る工程;
f.任意に、前記粉末を洗浄用溶媒で洗浄し、濾過し、乾燥させる工程;
g.前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程;
を含み、
前記グラフト化反応の温度が30~110℃、および好ましくは60~95℃であり;その時間が0.5~10時間、および、好ましくは1~6時間である、請求項18に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項20】
前記方法が、前記ポリプロピレン粉末をスクリーニング前処理する工程をさらに含み、好ましくは、前記スクリーニング前処理が、対応するメッシュ数のスクリーンメッシュを有する二層振動スクリーンまたはリニアスクリーンを用いて前記粉末をスクリーニングする工程、および、前記スクリーンの中間層の前記ポリプロピレン粉末を反応材料として使用する工程を含む、請求項17に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項21】
前記洗浄用溶媒が、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、石油エーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される1つ、または2つ以上の混合物であり;好ましくは、前記洗浄用溶媒が溶媒Aおよび溶媒Bの混合物であり、前記溶媒Aが、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、石油エーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、および2-メチルテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記溶媒Bがトルエンおよびキシレンからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記洗浄用溶媒の質量が、前記グラフト化されたポリプロピレン粉末の質量の2~20倍である、請求項17に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項22】
洗浄温度が40~130℃、好ましくは55~100℃であり、洗浄時間が0.5~10時間、好ましくは1~8時間である、請求項17に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項23】
前記二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを調製するための原料がさらに酸化防止剤および任意に加工助剤を含み、前記改質ポリプロピレンの100重量部に基づき、前記酸化防止剤の含有量が0.1~0.8重量部、好ましくは0.1~0.6重量部であり、前記加工助剤の含有量が0.05~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部であり;前記誘電体フィルムの重量に基づき、前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの含有量が50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である、請求項1~22に記載のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項24】
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、ホスファイト類、チオ類、ベンゾフラノン類からなる群から選択される1つ、または2つ以上の混合物であり;
好ましくは、前記酸化防止剤が、酸化防止剤成分Aおよび酸化防止剤成分Bを混ぜ合わせることによって得られ、前記酸化防止剤成分Aが、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、ホスファイト類およびチオ類からなる群から選択される少なくとも1つであり、ならびに、前記酸化防止剤成分Bが、少なくとも1つのベンゾフラノンであり;
より好ましくは、前記酸化防止剤成分Aが、ペンタエリスリチルテトラキス[β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス[2,4-ジ-t-ブチルフェニル]ホスファイト、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる群から選択される少なくとも1つであり;前記酸化防止剤成分Bが、3-ブチル-1-(3-ヒドロゲン)-イソベンゾフラノン、5-メチル-7-tert-ブチル-3-(3,4-ジメチル)-3-ヒドロゲン-ベンゾフラン-2-オン、5-メチル-7-tert-ブチル-3-(2,5-ジメチル)-3-ヒドロゲン-ベンゾフラン-2-オンおよび5-メチル-7-tert-ブチル-3-(2-ヒドロキシ-5-メチル)-3-ヒドロゲン-ベンゾフラン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記酸化防止剤成分Aと前記酸化防止剤成分Bとの重量比が、1:0.01~0.03である、請求項23に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項25】
前記加工助剤が、潤滑剤、酸受容剤、スリップ剤、帯電防止剤およびアンチブロック剤からなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記潤滑剤が、ポリエチレングリコール潤滑剤、フッ素系ポリマー潤滑剤、有機ケイ素潤滑剤、脂肪アルコール潤滑剤、脂肪酸潤滑剤、脂肪酸エステル潤滑剤、ステアリン酸アミド潤滑剤、脂肪酸金属石鹸潤滑剤、アルカンおよび酸化アルカン潤滑剤、ならびにマイクロナノ粒子潤滑剤からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項23に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム。
【請求項26】
前記二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムが、以下の工程を含む方法によって調製される、請求項1~25のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム:
(1)調製のために原料を混合し、ペレット化する工程;
(2)工程(1)で得られたペレットを溶融押出し、キャストし、改質ポリプロピレンキャストシートを得る工程;
(3)前記改質ポリプロピレンキャストシートを二軸延伸し、前記二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを得る工程。
【請求項27】
誘電体フィルムを調製するための改質ポリプロピレン材料であって、
前記改質ポリプロピレン材料が、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを含み、前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンが、マトリックス相としてポリプロピレンに由来する構造単位、および分散相としてアルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位を含み;前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、50ppm未満、好ましくは36ppm未満、より好ましくは30ppm未満の灰分含有量を有し;前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の質量に対する比が、1.0以上であり;前記分散相のD50が450nm未満、好ましくは50~400nmであることを特徴とする、改質ポリプロピレン材料。
【請求項28】
前記改質ポリプロピレン材料の最高作動温度が、100℃以上、好ましくは110~160℃、および、より好ましくは120~145℃である、請求項27に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項29】
前記改質ポリプロピレン材料が、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項27または28に記載の改質ポリプロピレン材料
120℃での降伏電界強度E
gが、500MV/m以上、好ましくは550~800MV/mである;
120℃かつ200MV/mの電界強度での直流体積抵抗率ρ
vgが、6.0×10
13Ω・m以上、好ましくは1.0×10
14Ω・m~1.0×10
20Ω・m、好ましくは1.5×10
14Ω・m~0.9×10
20Ω・m、より好ましくは2.0×10
14Ω・m~1.0×10
17Ω・mである;
120℃かつ100Hzでの誘電率が2.25より大きく、好ましくは2.26~2.65である;
120℃かつ100Hzでの誘電損失が1.55E-3未満、好ましくは1.5E-3未満、好ましくは1.0E-3以下であり、より好ましくは1.0E-6~1.3E-3、および、さらに好ましくは1.0E-6~9E-4である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵密度が、0.720J/cm
3より大きく、好ましくは0.740~2.0J/cm
3、より好ましくは0.780~2.0J/cm
3、およびさらに好ましくは0.80~2.0J/cm
3である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵効率が90.0%より大きく、および、好ましくは92.0~99.0%である。
【請求項30】
アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の前記質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の前記質量に対する比が、1.1~1.0、好ましくは1.2~6である、請求項27に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項31】
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の前記質量に対する比が、1.5以上、好ましくは2以上である、請求項27に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項32】
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンが、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項27~31のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料:2.16kg荷重下の230℃でのメルトフローレートが1~10g/10分、好ましくは1.5~8g/10分、およびさらに好ましくは2~5g/10分である;融解温度T
mが155~168℃、および好ましくは157~165℃である;曲げ弾性率が1400~2000MPa、好ましくは1500~1800MPaである。
【請求項33】
前記アルケニル含有官能性モノマーが、式1:
【化7】
で表される構造を有するモノマーから選択される、少なくとも1つであり、
式1中、R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のアルキルから選択され;R
aは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルコキシ、置換または非置換のアリール、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のカルボキシル、置換もしくは非置換のシクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のシリルから選択され;R
aおよびR
dは、任意に環を形成する、
請求項27~32のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項34】
R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC
1-C
6アルキルから選択され、;R
aは、置換または非置換のC
1-C
20アルキル、置換または非置換のC
1-C
20アルコキシ、置換または非置換のC
6-C
20アリール、置換または非置換のC
1-C
20エステル基、置換または非置換のC
1-C
20カルボキシル、置換もしくは非置換のC
3-C
20シクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のC
3-C
20シリルから選択され;前記置換基は、ハロゲン、-OH、-NH
2、=O、C
1-C
12アルキル、C
3-C
6シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12アシルオキシであり;R
aおよびR
dは、任意に、二重結合で一緒になって4~6員複素環を形成する、
請求項33に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項35】
R
b、R
c、R
dが、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC
1-C
6アルキルから選択され;
R
aは、式2で表される基、式3で表される基、式4で表される基、式5で表される基、式6で表される基、および複素環基から選択される少なくとも1つであり;
【化8】
式2中、R
4-R
8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC
1-C
12アルキル、置換または非置換のC
3-C
12シクロアルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換C
1-C
12エステル基、置換または非置換C
1-C
12アミン基から選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
12アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12エステル基、C
1-C
12アミン基から選択される;好ましくは、R
4-R
8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC
1-C
6アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシから選択される;
【化9】
式3中、R
4-R
10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC
1-C
12アルキル、置換または非置換のC
3-C
12シクロアルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換C
1-C
12エステル基、置換または非置換のC
1-C
12アミン基から選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
12アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12エステル基、C
1-C
12アミン基から選択され;好ましくは、R
4-R
10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC
1-C
6アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシから選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシから選択される;
【化10】
式4中、R
4’-R
10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC
1-C
12アルキル、置換または非置換のC
3-C
12シクロアルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
12エステル基、置換または非置換のC
1-C
12アミン基から選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
12アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12エステル基、C
1-C
12アミン基から選択され;好ましくは、R
4’-R
10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC
1-C
6アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシから選択され、前記置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシから選択される;
【化11】
式5中、R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立して、置換または非置換のC
1-C
12直鎖アルキル、置換または非置換のC
3-C
12分岐アルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
12アシルオキシから選択され;好ましくは、R
1は、C
2-C
6アルケニル、好ましくは一価不飽和アルケニルであり;R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、置換または非置換のC
1-C
6直鎖アルキル、置換または非置換のC
3-C
6分岐アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
6アシルオキシから選択される;
【化12】
式6中、R
mは、水素および/または、置換もしくは非置換の以下の基:C
1-C
20直鎖アルキル、C
3-C
20分岐アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
3-C
12エポキシアルキル、C
3-C
12エポキシアルキルアルキル、から選択され、前記置換基はハロゲン、アミノおよびヒドロキシから選択される少なくとも1つである;
前記複素環基は、イミダゾリル、ピラゾリル、カルバゾリル、ピロリジノニル、ピリジル、ピペリジニル、カプロラクタミル、ピラジニル、チアゾリル、プリニル、モルホリニル、オキサゾリニルから選択される、
請求項34に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項36】
前記アルケニル含有官能性モノマーがスチレンモノマーであり、前記スチレンモノマーが、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、モノまたはポリ置換スチレン、モノまたはポリ置換α-メチルスチレン、モノまたはポリ置換1-ビニルナフタレンおよびモノまたはポリ置換2-ビニルナフタレンから選択される少なくとも1つである;前記置換基は、好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
8直鎖アルキル、C
3-C
8分岐アルキルまたはシクロアルキル、C
1-C
6直鎖アルコキシ、C
3-C
8分岐アルコキシまたはシクロアルコキシ、C
1-C
8直鎖エステル基、C
3-C
8分岐エステル基または環状エステル基、C
1-C
8直鎖アミン基およびC
3-C
8分岐アミン基または環状アミン基から選択される少なくとも1つであり;好ましくは、前記スチレンモノマーが、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび4-メチルスチレンから選択される少なくとも1つである、
請求項35に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項37】
前記アルケニル含有官能性モノマーが、アルケニル含有シランモノマーであり、前記アルケニル含有シランモノマーが、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリ-tert-ブトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、メチルアリルジメトキシシラン、および、エチルアリルジエトキシシランから選択される少なくとも1つである、請求項35に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項38】
前記アルケニル含有官能性モノマーが、アクリレートモノマーおよび/またはアクリルモノマーであり、好ましくは、前記アクリレートモノマーが、メチル(メチル)アクリレート、sec-ブチル(メチル)アクリレート、エチル(メチル)アクリレート、n-ブチル(メチル)アクリレート、イソブチル(メチル)アクリレート、tert-ブチル(メチル)アクリレート、イソオクチル(メチル)アクリレート、ドデシル(メチル)アクリレート、コシニン(メチル)アクリレート、オクタデシル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メチル)アクリレート、および、グリシジル(メチル)アクリレートから選択される少なくとも1つであり;好ましくは、前記アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸および2-エチルアクリル酸から選択される少なくとも1つである、請求項35に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項39】
前記アルケニル含有官能性モノマーが、無水マレイン酸、マレイミドおよびその誘導体、無水イタコン酸、ならびにα-メチレン-γ-ブチロラクトンから選択される少なくとも1つであり;好ましくは、前記アルケニル含有官能性モノマーが無水マレイン酸である、請求項34に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項40】
前記ポリプロピレンが以下の特徴を有する、請求項27~39のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料:粒径が16~50メッシュであり;灰分含有量が55ppm未満、好ましくは40ppm未満、より好ましくは35ppm未満であり;曲げ弾性率が1400~2000MPa、好ましくは1500~1800MPaである。
【請求項41】
前記ポリプロピレンが、ホモポリプロピレンまたはプロピレンコポリマーであり、好ましくは以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項27~40のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料:
2.16kg荷重下の230℃でのメルトフローレートが0.5~10g/10分、好ましくは1~5g/10分、およびさらに好ましくは2~4g/10分である;
融解温度T
mが150℃以上、好ましくは153~180℃、さらに好ましくは155~167℃である;
アイソタクティシティが96%より大きく、好ましくは96.5%より大きく;または、エチレン単位およびブテン単位の合計含有量が3.0mol%未満、好ましくは0より大きくかつ0.1mol%未満、または0.1mol%より大きくかつ3.0mol%以下である。
【請求項42】
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンが、以下の工程を含む方法により調製される、請求項27~41のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料:不活性ガスの存在下で、ポリプロピレン粉末およびアルケニル含有官能性モノマーを含む反応混合物をグラフト化反応に供し、任意に洗浄用溶媒で洗浄して、前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された前記改質ポリプロピレンを得る。
【請求項43】
前記反応混合物が、フリーラジカル開始剤と、次の成分:脱イオン水および/または有機溶媒のうち少なくとも1つの成分とをさらに含み、前記脱イオン水の質量含有量が前記ポリプロピレン粉末および前記アルケニル含有官能性モノマーの質量の合計の300~800%であり、ならびに、前記有機溶媒の質量含有量が、前記ポリプロピレン粉末の質量の1~35%である、請求項42に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項44】
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法が、以下の工程:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.フリーラジカル開始剤およびアルケニル含有官能性モノマーを前記密閉反応器に加え、撹拌しながら混合する工程;
c.脱イオン水を加え、反応系をグラフト化反応温度まで加熱し、グラフト化反応を行い;任意に、脱イオン水を加える前または脱イオン水を加えた後に反応系を膨潤させる工程;
d.反応終了後、濾過しおよび任意に乾燥させて、粉末を得る工程;
e.任意に、前記粉末を洗浄用溶媒で洗浄し、濾過しおよび乾燥させる工程;
f.前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程;
を含むか、または
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法が、以下の工程:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.有機溶媒およびフリーラジカル開始剤を混合し、前記混合物を前記密閉反応器に加える工程;
c.前記有機溶媒を除去し、アルケニル含有官能性モノマーを加え、任意に反応系を膨潤させる工程;
d.脱イオン水を加え、前記反応系をグラフト化反応温度まで加熱し、グラフト化反応を行う工程;
e.反応終了後、濾過しおよび任意に乾燥させて、粉末を得る工程;
f.任意に、前記粉末を洗浄用溶媒で洗浄し、濾過および乾燥させる工程;
g.前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程;
を含み、
前記グラフト化反応の温度が30~110℃、および好ましくは60~95℃であり;その時間が0.5~10時間、および、好ましくは1~6時間である、請求項43に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項45】
前記方法が、前記ポリプロピレン粉末をスクリーニング前処理する工程をさらに含み、好ましくは、前記スクリーニング前処理が、対応するメッシュ数のスクリーンメッシュを有する二層振動スクリーンまたはリニアスクリーンを用いて前記粉末をスクリーニングする工程、および、前記スクリーンの中間層の前記ポリプロピレン粉末を反応材料として使用する工程を含む、請求項42に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項46】
前記洗浄用溶媒が、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、石油エーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される1つ、または2つ以上の混合物であり;好ましくは、前記洗浄用溶媒が溶媒Aおよび溶媒Bの混合物であり、前記溶媒Aが、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、石油エーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、および2-メチルテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記溶媒Bがトルエンおよびキシレンからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記洗浄用溶媒の質量が、前記グラフト化されたポリプロピレン粉末の質量の2~20倍である、請求項42に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項47】
洗浄温度が40~130℃、好ましくは55~100℃であり、洗浄時間が0.5~10時間、好ましくは1~8時間である、請求項42に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項48】
前記改質ポリプロピレン材料がさらに酸化防止剤および任意に加工助剤を含み、前記改質ポリプロピレンの100重量部に基づき、前記酸化防止剤の含有量が0.1~0.8重量部、好ましくは0.1~0.6重量部であり、前記加工助剤の含有量が0.05~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部であることを特徴とする、請求項27~47のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項49】
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト、チオ、ベンゾフラノンからなる群から選択される1つ、または2つ以上の混合物であり;
好ましくは、前記酸化防止剤が、酸化防止剤成分Aおよび酸化防止剤成分Bを混ぜ合わせることによって得られ、前記酸化防止剤成分Aが、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイトおよびチオからなる群から選択される少なくとも1つであり、ならびに、前記酸化防止剤成分Bが、少なくとも1つのベンゾフラノンであり;
より好ましくは、前記酸化防止剤成分Aが、ペンタエリスリチルテトラキス[β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス[2,4-ジ-t-ブチルフェニル]ホスファイト、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる群から選択される少なくとも1つであり;前記酸化防止剤成分Bが、3-ブチル-1-(3-ヒドロゲン)-イソベンゾフラノン、5-メチル-7-tert-ブチル-3-(3,4-ジメチル)-3-ヒドロゲン-ベンゾフラン-2-オン、5-メチル-7-tert-ブチル-3-(2,5-ジメチル)-3-ヒドロゲン-ベンゾフラン-2-オンおよび5-メチル-7-tert-ブチル-3-(2-ヒドロキシ-5-メチル)-3-ヒドロゲン-ベンゾフラン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記酸化防止剤成分Aと前記酸化防止剤成分Bとの重量比が、1:0.01~0.03である、請求項48に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項50】
前記加工助剤が、潤滑剤、酸受容剤、スリップ剤、帯電防止剤およびアンチブロック剤からなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記潤滑剤が、ポリエチレングリコール潤滑剤、フッ素系ポリマー潤滑剤、有機ケイ素潤滑剤、脂肪アルコール潤滑剤、脂肪酸潤滑剤、脂肪酸エステル潤滑剤、ステアリン酸アミド潤滑剤、脂肪酸金属石鹸潤滑剤、アルカンおよび酸化アルカン潤滑剤、ならびにマイクロナノ粒子潤滑剤からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項48に記載の改質ポリプロピレン材料。
【請求項51】
エネルギー貯蔵誘電体媒体、特に高温エネルギー貯蔵誘電体媒体の製造における、請求項1~26のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム、請求項27~50のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料の使用であって、前記誘電体媒体が、好ましくは単層/多層誘電体フィルム、好ましくはコンデンサフィルム、電気フィルム、粗面フィルム、スーパーコンデンサフィルム、静電フィルム、または電池セパレータフィルムである、使用。
【請求項52】
単層または多層である、ポリプロピレンコンデンサフィルムであって、少なくとも1つの層が、請求項1~26のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムであるか、または、少なくとも1つの層が、請求項27~50のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料を含む原料から、好ましくは二軸延伸によって製造され、好ましくは、少なくとも1つの層が、請求項27~50のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料から二軸延伸によって製造される、ポリプロピレンコンデンサフィルム。
【請求項53】
単層または多層である、ポリプロピレン電気フィルムであって、少なくとも1つの層が、請求項1~26のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムであるか、または、少なくとも1つの層が、請求項27~50のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料を含む原料から、好ましくは二軸延伸によって製造され、好ましくは、少なくとも1つの層が、請求項27~50のいずれか1項に記載の改質ポリプロピレン材料から二軸延伸によって製造される、ポリプロピレン電気フィルム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、重合体の分野に属し、特に、高作動温度を有する二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム、誘電体フィルムを調製するための改質ポリプロピレン材料、高温エネルギー貯蔵誘電体媒体における二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムおよび改質ポリプロピレン材料の使用、ならびに高作動温度を有するポリプロピレンコンデンサフィルムおよびポリプロピレン電気フィルムに関する。
【0002】
[背景技術]
エネルギーは現代社会の発展の活力である。近年、新エネルギー、航空宇宙、地下資源開発、国防、および軍事産業、ならびに他の科学技術分野の急速な発展に伴い、誘電体コンデンサに対する需要は年々高まっているだけでなく、より厳しい温度条件下でも使用できることが求められている。しかし、高分子誘電体材料をベースにした薄膜コンデンサは熱安定性が悪く、高温環境下で安定的に動作させることができない。特に高電界の作用下では、温度上昇により高分子誘電体媒質内部に漏れ電流が指数関数的に増加し、その結果、充放電効率とエネルギー貯蔵密度が急激に低下し、アプリケーションの要求を満たすことができない。さらに深刻なことに、漏れ電流はジュール熱に変換されるため、コンデンサの温度は継続的に上昇し、最終的にはコンデンサの損傷を引き起こす。
【0003】
二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)は高分子フィルムコンデンサ誘電体材料であり、現在最も商業化性が高く、最も広範に適用され、総合的な優れた性能と成熟した大規模な調製プロセスを有し、現在電気自動車、風力発電、太陽光発電、照明、鉄道機関車等の産業に広く応用されている。
【0004】
しかし、ポリプロピレンフィルムコンデンサは、高温条件下では誘電体のエネルギー貯蔵性能が低く、信頼性が大幅に低下するという固有の欠点がある。例えば、BOPPは室温では降伏電界強度付近でも95%以上の高い充放電効率を達成できるが、120℃では70%程度に低下する。これはエネルギー貯蔵密度を著しく低下させるだけでなく、デバイス内部に蓄積する大量の廃熱を発生させ、最終的にはデバイスの過熱損傷(熱暴走)につながる。
【0005】
現在、材料の観点で、高分子コンデンサフィルムの作動温度を上げる主な2つの方法がある。第1の方法は、高分子誘電体材料の熱安定性を向上させること、すなわち高いガラス転移温度(Tg)を有する高分子誘電体材料を合成することである。第2の方法は、高分子媒質材料に第2相のフィラーを導入して複合材料を作製する方法であり、フィラー粒子のキャリアに対する捕獲および散乱効果を利用して、高温かつ高電界の作用下における高分子の漏れ電流を抑制する。しかし、いずれの方法も調製工程が複雑であり、大規模な工業生産が困難であるという問題がある。
【0006】
したがって、誘電体エネルギー貯蔵特性を制御および調整する能力が明らかで、調製工程が簡単で、実用的な工学的応用に適した新規な改質ポリプロピレン組成物を見出す必要がある。
【0007】
グラフト改質は、ポリプロピレンの官能基化の一般的な方法である。一般的に用いられる方法には、溶融グラフト法および固相グラフト法がある。溶融グラフト法は装置が簡単でコストも低いが、反応温度が高く、プロセスの制御が難しく、副生成物が比較的多く、適用できるモノマーの種類が少ないという特徴がある。現在のところ、溶融グラフト法は、無水物系または少数のアクリレート系グラフト相溶化剤の調製にのみ使用されている。固相グラフト法は、反応温度がポリプロピレンの融点より低いこと、副反応が少ないこと、グラフト化効率が高いこと、およびグラフトモノマーの適用範囲が広いことが特徴である。例えば、Y.Panらは、“Solid-phase grafting of glycidyl methacrylate onto polypropylene”(Journal of Applied Polymer Science,1997,65(10):1905-1912)で、ポリプロピレンにグリシジルメタクリレート(GMA)を固相グラフトする際の反応条件を検討し、固相グラフトと溶融グラフトとの影響因子が大きく異なることを指摘している。懸濁グラフトは特殊な固相グラフトであり、反応系に分散剤として水相媒体を導入することで、反応温度をさらに低下させ、グラフトの均一性を向上させ、副生成物の発生を抑える。さらに、Li Qiaojunらは、“Studies on Suspension Grafting of Styrene onto Polypropylene”(Synthetic Resins and Plastics,1996,13(1):7-10)で、ポリプロピレンのスチレンとの懸濁グラフト化の反応条件と影響因子とについて論じている。Zhu Baodongらは、“Grafting of Styrene and Maleic Anhydride onto Polypropylene in Water Suspension System”(Modern Plastics Processing and Applications,2009,5:3)で、水性懸濁グラフト化により、グラフト率8.97%のポリプロピレン二重単量体グラフトが得られたと報告している。現在のところ、誘電体エネルギー貯蔵の主材料としての固相または懸濁グラフト改質ポリプロピレンに関する報告はない。
【0008】
酸化防止剤の配合によりポリプロピレンの耐熱酸化老化性を向上させることは一般的な方法である。CN111378229Aは、長期耐熱老化性ポリプロピレン組成物およびその調製方法を開示しており、当該組成物は、ポリプロピレン84.55~57.9%、タルカム粉末15~40%、主酸化防止剤0.1~0.3%、補助酸化防止剤0.1~0.3%、ヒンダードアミン系酸化防止剤0.05~0.2%、チオエステル系酸化防止剤0.1~0.3%および酸受容剤0.1~1%を含む。CN202011292440.0は、高分子量のヒンダードフェノール系酸化防止剤と低分子量のヒンダードフェノール系酸化防止剤との配合物である主酸化防止剤を含む、低密度、高光線透過率および長期耐熱酸化老化性を有するポリプロピレン材料を開示している。
【0009】
[発明の内容]
本発明の目的は、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化した新規な改質ポリプロピレン材料である、高い作動温度を有する二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを提供することである。この改質ポリプロピレン材料は、二軸延伸プロセスによってポリプロピレン誘電体フィルムを調製するために使用することができる。このポリプロピレン誘電体フィルムおよび改質ポリプロピレン材料は、より高い作動温度において高いエネルギー貯蔵効率とエネルギー貯蔵密度とを維持することができる。
【0010】
本発明の第1の態様は、高い作動温度を伴う、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを提供することであり、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを調製するための原料は、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを含み;
前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、マトリックス相としてポリプロピレンに由来する構造単位、および分散相としてアルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位を含み;前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、50ppm未満、好ましくは36ppm未満、および、より好ましくは30ppm未満の灰分含有量を有し;前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の質量に対する比が、1.0以上であり;前記分散相のD50は450nm未満、好ましくは50~400nmである。
【0011】
二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムの最高作動温度は、100℃以上、好ましくは110~160℃、および、より好ましくは120~145℃である。
【0012】
二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムは、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する:
120℃での降伏電界強度Egは、500MV/m以上、好ましくは550~800MV/mである;
120℃かつ200MV/mの電界強度での直流体積抵抗率ρvgは、6.0×1013Ω・m以上、好ましくは1.0×1014Ω・m~1.0×1020Ω・m、好ましくは1.5×1014Ω・m~0.9×1020Ω・m、およびより好ましくは2.0×1014Ω・m~1.0×1017Ω・mである;
120℃かつ100Hzでの誘電率は2.25より大きく、好ましくは2.26~2.65である;
120℃かつ100Hzでの誘電損失は1.55E-3未満、好ましくは1.5E-3未満、好ましくは1.0E-3以下であり、より好ましくは1.0E-6~1.3E-3、およびさらに好ましくは1.0E-6~9E-4である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵密度は、0.720J/cm3より大きく、好ましくは0.740~2.0J/cm3、好ましくは0.780J/cm3より大きく、より好ましくは0.780~2.0J/cm3、およびさらに好ましくは0.80~2.0J/cm3である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵効率は、90.0%より大きく、および、好ましくは92.0~99.0%である。
【0013】
二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムは、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する:縦方向の引張強度は140MPa以上、および好ましくは140~170MPaである;横方向の引張強度は200MPa以上、および好ましくは205~250MPaである;縦方向の破断伸度は210%以上、好ましくは225%以上である;横方向の破断伸度は60%以上、好ましくは62%以上である;厚さは0.5~15μm、好ましくは4~10μmである。
【0014】
本発明の第2の態様は、誘電体フィルムの調製に有用な改質ポリプロピレン材料を提供することであり、当該改質ポリプロピレン材料は、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを含み;アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、マトリックス相としてポリプロピレンに由来する構造単位、および分散相としてアルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位を含み;アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、50ppm未満、好ましくは36ppm未満、より好ましくは30ppm未満の灰分含有量を有し;アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、グラフト化された状態にある構造単位の質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、自己重合状態にある構造単位の質量に対する比は、1.0以上であり;分散相のD50は450nm未満、好ましくは50~400nmである。
【0015】
改質ポリプロピレン材料の最高作動温度は、100℃以上、好ましくは110~160℃、および、より好ましくは120~145℃である。
【0016】
改質ポリプロピレン材料は、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する:
120℃における降伏電界強度Egは、500MV/m以上、好ましくは550~800MV/mである;
120℃かつ200MV/mの電界強度での直流体積抵抗率ρvgは、6.0×1013Ω・m以上、好ましくは1.0×1014Ω・m~1.0×1020Ω・m、好ましくは1.5×1014Ω・m~0.9×1020Ω・m、より好ましくは2.0×1014Ω・m~1.0×1017Ω・mである;
120℃かつ100Hzでの誘電率は2.25より大きく、好ましくは2.26~2.65である;
120℃かつ100Hzでの誘電損失は1.55E-3未満、好ましくは1.5E-3未満、好ましくは1.0E-3以下であり、より好ましくは1.0E-6~1.3E-3、および、さらに好ましくは1.0E-6~9E-4である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵密度は、0.720J/cm3より大きく、好ましくは0.740~2.0J/cm3、好ましくは0.780J/cm3より大きく、より好ましくは0.780~2.0J/cm3、およびさらに好ましくは0.80~2.0J/cm3である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵効率は90.0%より大きく、および、好ましくは92.0~99.0%である。
【0017】
本発明の第3の態様は、エネルギー貯蔵誘電体媒体、特に高温エネルギー貯蔵誘電体媒体における、上述の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムまたは改質ポリプロピレン材料の使用を提供することである。
【0018】
本発明の第4の態様は、1つ以上の層である、ポリプロピレンコンデンサフィルムを提供することであり、少なくとも1つの層は、上述の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムであるか、または、少なくとも1つの層は、上述の改質ポリプロピレン材料を含む原料から、好ましくは二軸延伸によって製造され、および、好ましくは少なくとも1つの層は、上述の改質ポリプロピレン材料から二軸延伸によって製造される。
【0019】
本発明の第5の態様は、1つ以上の層である、ポリプロピレン電気フィルムを提供することであり、少なくとも1つの層は、上述の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムであるか、または、少なくとも1つの層は、上述の改質ポリプロピレン材料を含む原料から、好ましくは二軸延伸によって製造され、および、好ましくは少なくとも1つの層は、上述の改質ポリプロピレン材料から二軸延伸によって製造される。
【0020】
本発明の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム、改質ポリプロピレン材料、ポリプロピレンコンデンサフィルムおよびポリプロピレン電気フィルムは、作動温度範囲が広く、特に、高い作動温度で良好な誘電特性およびエネルギー貯蔵特性を維持できるため、特に高温および高作動電界強度の使用条件に適している。二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムおよび高性能ポリプロピレンコンデンサフィルムおよびポリプロピレン電気フィルムは、良好な引張特性の利点を有し、より高い作動温度で機械的特性および電気的特性の両方を考慮することができ、また、高温および高作動電界強度の作業条件に適している。
【0021】
本発明の追加的な特徴および利点は、以下の具体的な実施形態の詳細な説明に記載される。
【0022】
[図面の簡単な説明]
本発明の例示的な実施形態について、図を参照してより詳細に説明する。
【0023】
図1は、実施例1の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、球状分散相はスチレン構造単位の集合体である。
【0024】
図2は、実施例2の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。
【0025】
図3は、実施例3の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。
【0026】
図4は、実施例10の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。
【0027】
図5は、比較例1の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、分散相は認識できない。
【0028】
図6は、実施例15および比較例7の生成物のTSDC試験結果を示す。
【0029】
[発明の詳細な説明]
以下、本発明の特定の実施形態について詳細に説明する。本明細書で記載される具体的な実施形態は、本発明を例示し説明するためのものであって、本発明を限定するためのものではないことを理解されたい。
【0030】
本発明は、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを提供し、当該二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを調製するための原料は、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを含み;前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、マトリックス相としてポリプロピレンに由来する構造単位および分散相としてアルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位を含み;前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、50ppm未満、好ましくは36ppm未満、および、より好ましくは30ppm未満の灰分含有量を有し;前記アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の質量に対する比は、1.0以上であり;前記分散相のD50は450nm未満、好ましくは50~400nmである。
【0031】
二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムの最高作動温度は、100℃以上、好ましくは110~160℃、および、より好ましくは120~145℃である。
【0032】
本発明の誘電体フィルムは、120℃で測定された上述の優れた誘電特性を有しており、例えば、後述する実施例で測定されたフィルムの120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵効率は、いずれも90%以上であり、エネルギー貯蔵効率が90%に達する上限温度を最高作動温度の指標とすることができ、これにより、本発明の誘電体フィルムが、少なくとも120℃の最高作動温度を有していることが確認できる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムは、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する:
120℃での降伏電界強度Egは、500MV/m以上、好ましくは550~800MV/mである;
120℃かつ200MV/mの電界強度での直流体積抵抗率ρvgは、6.0×1013Ω・m以上、好ましくは1.0×1014Ω・m~1.0×1020Ω・m、好ましくは1.5×1014Ω・m~0.9×1020Ω・m、より好ましくは2.0×1014Ω・m~1.0×1017Ω・m、例えば、1.0×1015Ω・m、1.0×1016Ω・m、およびこの範囲における任意の値である;
120℃かつ100Hzでの誘電率は2.25より大きく、好ましくは2.26~2.65である;
120℃かつ100Hzでの誘電損失は1.55E-3未満、好ましくは1.5E-3未満、好ましくは1.0E-3以下であり、より好ましくは1.0E-6~1.3E-3、およびさらに好ましくは1.0E-6~9E-4である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵密度は、0.720J/cm3より大きく、好ましくは0.740~2.0J/cm3、より好ましくは0.780~2.0J/cm3、およびさらに好ましくは0.80~2.0J/cm3である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵効率は90.0%より大きく、および、好ましくは92.0~99.0%である。
【0034】
本発明の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムは、以下の特徴を有する:縦方向の引張強度が、140MPa以上、および好ましくは140~170MPaである;横方向の引張強度が、200MPa以上、および好ましくは205~250MPaである;縦方向の破断伸度が、210%以上、好ましくは225%以上である;横方向の破断伸度が、60%以上、好ましくは62%以上である;厚さが、0.5~15μm、好ましくは4~10μmである。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の質量に対する比は、1.1~1.0、好ましくは1.2~6である。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の質量に対する比は、1.5以上、好ましくは2以上である。
【0037】
本発明によれば、好ましくは、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する:2.16kg荷重下の230℃でのメルトフローレートは、1~10g/10分、好ましくは1.5~8g/10分、およびさらに好ましくは2~5g/10分である;融解温度Tmは、155~168℃、および好ましくは157~165℃である;曲げ弾性率は、1400~2000MPa、好ましくは1500~1800MPaである。
【0038】
用語「構造単位」とは、改質ポリプロピレンの一部であることを意味し、その形態は限定されない。具体的には、用語「ポリプロピレンに由来する構造単位」という用語は、ポリプロピレンから形成される生成物を指し、「ラジカル」形態のものだけでなく、「ポリマー」形態のものも含む。用語「アルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位」は、アルケニル含有官能性モノマーから形成された生成物を指し、「ラジカル」の形態のものだけでなく、「自己重合状態」の形態のものも含む。前記「構造単位」は、繰り返し単位であっても、繰り返しでない独立単位であってもよい。アルケニル含有官能性モノマーに由来し「グラフト化された状態」の構造単位とは、そのポリプロピレンと共有結合(グラフト)を形成するアルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位を指す。
【0039】
具体的には、ポリプロピレン誘電体エネルギー貯蔵材料は、
図1に示すように、海-島構造である。ここで、「海」は、ポリプロピレンに由来する構造単位から形成されるマトリックス相であり、「島」は、アルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位から形成される分散相である。
【0040】
グラフト改質は、無機フィラーのドーピング技術と比較して、複合材料中に均一に分散したナノスケールの分散相を形成させることができ、これにより、無機フィラーの添加が困難で分散しにくいこと等の問題を回避することができる。表面改質と比較して、バルク改質のプロセスは簡単になり、分散相は均一に分散し、構造は安定し、機能性モノマー層は使用中の外力により脱落しにくい。
【0041】
本発明によれば、好ましくは、改質ポリプロピレンは、ポリプロピレンとアルケニル含有官能性モノマーとのグラフト化反応、好ましくは懸濁グラフト化反応によって調製される。本発明のグラフト化反応はラジカル重合反応であり、したがって、用語「グラフト化された状態」とは、ラジカル重合後にモノマーが他の反応物と連結を形成した状態を意味する。「自己重合状態」とは、モノマーが自己重合体を形成し、他の反応体と連結(グラフト)していない状態を意味する。連結には直接連結と間接連結との両方が含まれる。
【0042】
本発明のアルケニル含有官能性モノマー中のアルケニル基は、ポリプロピレンとのグラフト化に使用されるため、反応可能な位置にアルケニル基を有するアルケニル含有官能性モノマーは、いずれも本発明での使用に適している。
【0043】
具体的には、アルケニル含有官能性モノマーは、式1で表される構造を有するモノマーから選ばれる少なくとも1つである:
【化1】
式1中、R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のアルキルから選択される;R
aは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルコキシ、置換または非置換のアリール、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のカルボキシル、置換もしくは非置換のシクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のシリルから選択され;R
aおよびR
dは、任意に環を形成する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、Rb、Rc、Rdは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC1-C6アルキルから選択され;Raは、置換または非置換のC1-C20アルキル、置換または非置換のC1-C20アルコキシ、置換または非置換のC6-C20アリール、置換または非置換のC1-C20エステル基、置換または非置換のC1-C20カルボキシル、置換もしくは非置換のC3-C20シクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のC3-C20シリルから選択され;置換基は、ハロゲン、-OH、-NH2、=O、C1-C12アルキル、C3-C6シクロアルキル、C1-C12アルコキシ、C1-C12アシルオキシであり;RaおよびRdは、任意に、二重結合で一緒になって4~6員複素環を形成する。
【0045】
本発明のより好ましい実施形態によれば、ここで、R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC
1-C
6アルキルから選択され;
R
aは、式2で表される基、式3で表される基、式4で表される基、式5で表される基、式6で表される基、および複素環基から選択される少なくとも1つであり;
【化2】
式2中、R
4-R
8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC
1-C
12アルキル、置換または非置換のC
3-C
12シクロアルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
12エステル基、置換または非置換のC
1-C
12アミン基から選択され、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
12アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12エステル基、C
1-C
12アミン基から選択され;好ましくは、R
4-R
8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC
1-C
6アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシから選択される;
【化3】
式3中、R
4-R
10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC
1-C
12アルキル、置換または非置換のC
3-C
12シクロアルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換C
1-C
12のエステル基、置換または非置換のC
1-C
12アミン基から選択され、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
12アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12エステル基、C
1-C
12アミン基から選択され;好ましくは、R
4-R
10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC
1-C
6アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシから選択され、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシから選択される;
【化4】
式4中、R
4’-R
10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC
1-C
12アルキル、置換または非置換のC
3-C
12シクロアルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
12エステル基、置換または非置換のC
1-C
12アミン基から選択され、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C
1-C
12アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
1-C
12アルコキシ、C
1-C
12エステル基、C
1-C
12アミン基から選択され;好ましくは、R
4’-R
10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC
1-C
6アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシから選択され、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシから選択される;
【化5】
式5中、R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立して、置換または非置換のC
1-C
12直鎖アルキル、置換または非置換のC
3-C
12分岐アルキル、置換または非置換のC
1-C
12アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
12アシルオキシから選択され;好ましくは、R
1は、C
2-C
6アルケニル、好ましくは一価不飽和アルケニルであり;R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、置換または非置換のC
1-C
6直鎖アルキル、置換または非置換のC
3-C
6分岐アルキル、置換または非置換のC
1-C
6アルコキシ、置換または非置換のC
1-C
6アシルオキシから選択される;
【化6】
式6中、R
mは、水素、および/または、置換もしくは非置換の以下の基:C
1-C
20直鎖アルキル、C
3-C
20分岐アルキル、C
3-C
12シクロアルキル、C
3-C
12エポキシアルキル、C
3-C
12エポキシアルキルアルキルから選択され、置換基はハロゲン、アミノおよびヒドロキシから選択される少なくとも1つである;
複素環基は、イミダゾリル、ピラゾリル、カルバゾリル、ピロリジノニル、ピリジル、ピペリジニル、カプロラクタミル、ピラジニル、チアゾリル、プリニル、モルホリニル、オキサゾリニルから選択される。
【0046】
本発明の特定の実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーは、スチレンモノマーであり、スチレンモノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、モノまたはポリ置換スチレン、モノまたはポリ置換α-メチルスチレン、モノまたはポリ置換1-ビニルナフタレンおよびモノまたはポリ置換2-ビニルナフタレンから選択される少なくとも1つであり;置換基は、好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C1-C8直鎖アルキル、C3-C8分岐アルキルまたはシクロアルキル、C1-C6直鎖アルコキシ、C3-C8分岐アルコキシまたはシクロアルコキシ、C1-C8直鎖エステル基、C3-C8分岐エステル基または環状エステル基、C1-C8直鎖アミン基、およびC3-C8分岐アミン基または環状アミン基から選択される少なくとも1つであり;好ましくは、スチレンモノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび4-メチルスチレンから選択される少なくとも1つである。
【0047】
本発明の特定の実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーは、アルケニル含有シランモノマーであり、アルケニル含有シランモノマーは、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリ-tert-ブトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、メチルアリルジメトキシシラン、および、エチルアリルジエトキシシランから選択される少なくとも1つである。
【0048】
本発明の特定の実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーは、アクリレートモノマーおよび/またはアクリルモノマーであり、好ましくは、アクリレートモノマーは、メチル(メチル)アクリレート、sec-ブチル(メチル)アクリレート、エチル(メチル)アクリレート、n-ブチル(メチル)アクリレート、イソブチル(メチル)アクリレート、tert-ブチル(メチル)アクリレート、イソオクチル(メチル)アクリレート、ドデシル(メチル)アクリレート、コシニン(メチル)アクリレート、オクタデシル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メチル)アクリレート、およびグリシジル(メチル)アクリレートから選択される少なくとも1つである。好ましくは、アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸および2-エチルアクリル酸から選択される少なくとも1つである。
【0049】
本発明において、C3-C12エポキシアルキルアルキルとは、3~12個の炭素原子を有するエポキシアルキル置換アルキル、例えばオキシラニルメチルを指す。
【0050】
本発明の特定の実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーは、アルケニル含有複素環モノマーである。本発明のアルケニル含有複素環モノマーは、ラジカル重合を受けることができる任意のアルケニル含有複素環式化合物であってもよく、アルケニル置換基含有イミダゾール、アルケニル置換基含有ピラゾール、アルケニル置換基含有カルバゾール、アルケニル置換基含有ピロリドン、アルケニル置換基含有ピリジンまたはピリジニウム、アルケニル置換基含有ピペリジン、アルケニル置換基含有カプロラクタム、アルケニル置換基含有ピラジン、アルケニル置換基含有チアゾール、アルケニル置換基含有プリン、アルケニル置換基含有モルホリンおよびアルケニル置換基含有オキサゾリンから選択される少なくとも1つであってもよく;好ましくは、アルケニル含有複素環モノマーはモノアルケニル含有複素環モノマーである。
【0051】
具体的には、アルケニル含有複素環モノマーは:1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、N-アリルイミダゾール、1-ビニルピラゾール、3-メチル-1-ビニルピラゾール、ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、ビニルピリジンN-オキシド、ビニルピリジニウム、ビニルピペリジン、N-ビニルカプロラクタム、2-ビニルピラジン、N-ビニルピペラジン、4-メチル-5-ビニルチアゾール、N-ビニルプリン、ビニルモルホリン、および、ビニルオキサゾリンから選択される少なくとも1つである。
【0052】
本発明によれば、アルケニル含有官能性モノマーはまた、無水マレイン酸、マレイミドおよびその誘導体、無水イタコン酸、ならびにα-メチレン-γ-ブチロラクトンから選択される少なくとも1つであってもよい。好ましくは、アルケニル含有官能性モノマーは無水マレイン酸である。
【0053】
本発明においては、種々のアルケニル含有官能性モノマーを単独で、または1つ以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
好ましくは、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレン中のアルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位の含有量は、1.0~28重量%、好ましくは1.5~24重量%、より好ましくは2.0~20重量%である。
【0055】
本発明における改質ポリプロピレンのポリプロピレン部分はまた、エチレン単位またはブチレン単位を含むプロピレンホモポリマーまたはプロピレンコポリマーであってもよい、グラフト化されていないポリプロピレンを指すこともできる。より好ましくは、ポリプロピレン粉末は、アイソタクティシティが96%より大きい、好ましくは96.5%より大きいホモポリプロピレン;または、エチレン単位およびブテン単位の合計含有量が構造単位の合計モル含有量に基づいて、3.0モル%未満、例えば、2.5モル%、2モル%、1.5モル%、1モル%、0.9モル%、0.8モル%、0.7モル%、0.6モル%、0.5モル%、0.4モル%、0.3モル%、0.2モル%、0.1モル%であるプロピレンコポリマーである。好ましくは、プロピレンコポリマーは、0より大きくかつ0.1モル%未満、または0.1モル%より大きくかつ3.0モル%以下であるエチレン単位およびブテン単位の合計含有量を有する。
【0056】
本発明によれば、上述の特徴を有する改質ポリプロピレンを得るために、以下の特徴を有するポリプロピレンを使用することが好ましい:粒径が16~50メッシュであり;灰分含有量が55ppm未満、好ましくは40ppm未満、より好ましくは35ppm未満であり;曲げ弾性率が1400~2000MPa、好ましくは1500~1800MPaである。
【0057】
上述の特徴を有することに加えて、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンまたはプロピレンコポリマーであってもよく、好ましくは以下の特徴のうち少なくとも1つを有する:
2.16kg荷重下の230℃でのメルトフローレートが0.5~10g/10分、好ましくは1~5g/10分、およびさらに好ましくは2~4g/10分である;
融解温度Tmが150℃以上、好ましくは153~180℃、さらに好ましくは155~167℃である;
アイソタクティシティが96%より大きく、好ましくは96.5%より大きく;または、エチレン単位およびブテン単位の合計含有量が3.0mol%未満、好ましくは0より大きくかつ0.1mol%未満、または0.1mol%より大きくかつ3.0mol%以下である。
【0058】
本発明に適したポリプロピレン粉末は、市販されているか、または中国特許CN109694427A、CN109694428A、CN104558813A、CN109912734A、CN111019025AおよびCN105431459Aに記載の方法によって調製することができる。
【0059】
アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、以下の工程:不活性ガスの存在下で、ポリプロピレン粉末およびアルケニル含有官能性モノマーを含む反応混合物をグラフト化反応に供し、任意に洗浄用溶媒で洗浄して、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る、工程を含む方法により調製することができる。
【0060】
本発明のグラフト化反応は、当該技術分野での種々の従来法、好ましくは懸濁グラフト化反応、例えば、グラフト化するための、アルケニル含有官能性モノマーの存在下でのポリプロピレン上への活性グラフト化部位(active grafting site)の形成、または最初にポリプロピレン上への活性グラフト化部位の形成、続いてグラフト化のためのモノマーによる処理を参照して実施することができる。グラフト化部位は、フリーラジカル開始剤による処理、または高エネルギー電離放射線もしくはマイクロ波による処理によって形成してもよい。化学処理または放射線処理の結果、ポリマー中に生成したフリーラジカルがポリマー上にグラフト化部位を形成し、これらの部位でモノマーの重合を開始する。
【0061】
好ましくは、グラフト化部位はフリーラジカル開始剤によって開始され、グラフト化反応はさらに進行する。この場合、反応混合物はフリーラジカル開始剤を含み;さらに好ましくは、フリーラジカル開始剤は過酸化物系のフリーラジカル開始剤および/またはアゾ系のフリーラジカル開始剤から選択される。
【0062】
ここで、過酸化物系のラジカル開始剤は、好ましくは、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ドデシルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)およびジシクロヘキシルペルオキシジカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つであり;アゾ系のラジカル開始剤は、好ましくは、アゾビスイソブチロニトリルおよび/またはアゾビスイソヘプトニトリルである。
【0063】
より好ましくは、グラフト化部位は過酸化物系のフリーラジカル開始剤によって開始され、グラフト化反応はさらに進行する。
【0064】
さらに、本発明のグラフト化反応は、CN106543369A、CN104499281A、CN102108112A、CN109251270A、CN1884326AおよびCN101492517Bに記載の方法に従って実施することもできる。
【0065】
本発明のグラフト化反応で使用される各成分の量は、上記生成物の特徴を満たすことを前提に特に限定されるものではなく、具体的には、フリーラジカル開始剤とアルケニル含有官能性モノマーとの質量比は、0.1~10:100、好ましくは0.5~5:100である得る。アルケニル含有官能性モノマーとポリプロピレンとの質量比は、0.5~25:100、好ましくは1~20:100であり得る。
【0066】
本発明はまた、グラフト化反応の技術的条件に特別な制限はなく、具体的には、グラフト化反応の温度は30~110℃、好ましくは60~95℃であり得;時間は0.5~10時間、および好ましくは1~6時間であり得る。
【0067】
本発明において、用語「反応混合物」は、グラフト化反応系に添加される全ての材料を含み、材料は一度にまたは反応の異なる段階で添加されてもよい。
【0068】
本発明の反応混合物は、分散剤として脱イオン水をさらに含んでもよい。脱イオン水の質量含有量は、ポリプロピレン粉末およびアルケニル含有官能性モノマーの質量の合計の300~800%である。
【0069】
本発明の反応混合物は、固形のラジカル開始剤を溶解するための溶媒として有機溶媒をさらに含んでもよく、有機溶媒は、好ましくは、C2-C5アルコール、C2-C4エーテルおよびC3-C5ケトンから選択される少なくとも1つ、より好ましくはC2-C4アルコール、C2-C3エーテルおよびC3-C5ケトンから選択される少なくとも1つ、ならびに最も好ましくはエタノール、ジエチルエーテルおよびアセトンから選択される少なくとも1つを含む。有機溶媒の質量含有量は、好ましくはポリプロピレン粉末の質量の1~35%である。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法は、以下の工程を含む:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.フリーラジカル開始剤およびアルケニル含有官能性モノマーを密閉反応器に加え、撹拌しながら混合する工程;
c.脱イオン水を加え、反応系をグラフト化反応温度まで加熱し、グラフト化反応を行い;任意に、脱イオン水を加える前または脱イオン水を加えた後に反応系を膨潤させる工程;
d.反応終了後、濾過しおよび任意に乾燥させて、粉末を得る工程;
e.任意に、粉末を洗浄用溶媒で洗浄し、濾過し、および乾燥させる工程;
f.アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程;または
アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法は、以下の工程を含む:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.有機溶媒およびフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に加える工程;
c.有機溶媒を除去し、アルケニル含有官能性モノマーを加え、任意に反応系を膨潤させる工程;
d.脱イオン水を加え、反応系をグラフト化反応温度まで加熱し、グラフト化反応を行う工程;
e.反応終了後、濾過し、および、任意に乾燥させて、粉末を得る工程;
f.任意に、粉末を洗浄用溶媒で洗浄し、濾過し、乾燥させる工程;
g.アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法は、以下の工程を含む。
【0072】
アプローチI、調製方法は以下の工程を含む:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.フリーラジカル開始剤およびアルケニル含有官能性モノマーを密閉反応器に加え、撹拌しながら混合する工程;
c.脱イオン水を加え、反応系をグラフト化反応温度まで加熱して、グラフト化反応を行い;任意に、脱イオン水を添加する前または脱イオン水を添加した後に反応系を膨潤させる工程;
d.反応終了後、濾過し、乾燥して、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【0073】
アプローチIIでは、調製方法は以下の工程を含む:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.有機溶媒およびフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に加える工程;
c.有機溶媒を除去し、アルケニル含有官能性モノマーを加え、任意に反応系を膨潤させる工程;
d.脱イオン水を加え、反応系をグラフト化反応温度まで加熱し、グラフト化反応を行う工程;
e.反応終了後、濾過し、乾燥させて、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【0074】
本発明の別の実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法は、以下の工程を含む。
【0075】
アプローチI、調製方法は以下の工程を含む:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.フリーラジカル開始剤およびアルケニル含有官能性モノマーを密閉反応器に加え、撹拌しながら混合する工程;
c.脱イオン水を加え、反応系をグラフト化反応温度まで加熱し、グラフト化反応を行い;任意に、脱イオン水を加える前または脱イオン水を加えた後に反応系を膨潤させる工程;
d.反応終了後、濾過し、および、任意で乾燥させて、粉末を得る工程;
e.粉末を洗浄用溶媒で洗浄し、濾過し、乾燥させて、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【0076】
アプローチIIでは、調製方法は以下の工程を含む:
a.ポリプロピレン粉末を密閉反応器に入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
b.有機溶媒およびフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に加える工程;
c.有機溶媒を除去し、アルケニル含有官能性モノマーを加え、任意に反応系を膨潤させる工程;
d.脱イオン水を加え、反応系をグラフト化反応温度まで加熱して、グラフト化反応を行う工程;
e.反応終了後、濾過し、および、任意で乾燥させて、粉末を得る工程;
f.洗浄用溶媒で粉末を洗浄し、濾過し、乾燥させて、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【0077】
本発明の方法によれば、使用されるポリプロピレン粉末は、適切な粒径を有する製品を直接購入してもよく、または、購入もしくは自作後にスクリーニングしてもよい。したがって、本発明は、ポリプロピレン粉末のスクリーニング前処理工程を含むこともできる。スクリーニングは、従来のスクリーニング方法を用いて達成することができる。好ましい実施形態によれば、スクリーニング前処理は、対応するメッシュ数のスクリーンメッシュを有する二層振動スクリーンまたはリニアスクリーンを用いて粉末をスクリーニングする工程、およびスクリーンの中間層のポリプロピレン粉末を反応材料として用いて、対応する粒径の範囲の原料粉末を得る工程を含む。
【0078】
本発明のより具体的な実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法は、以下のアプローチの1つから選択される。
【0079】
アプローチI、調製方法は以下の工程を含む:
a.二層振動スクリーンまたは16メッシュおよび48メッシュのスクリーンを有するリニアスクリーンを使用して粉末をスクリーニングし、スクリーンの中間層のポリプロピレン粉末を反応材料として使用する工程;
b.密閉反応器のスクリーンの中間層にポリプロピレン粉末を入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
c.フリーラジカル開始剤をアルケニル含有官能性モノマーに溶解して溶液を調製し、ポリプロピレンを充填した密閉反応器にこの溶液を加え、撹拌しながら混合する工程;
d.脱イオン水を加え、その系をグラフト化反応温度30~110℃に加熱して、0.5~10時間反応させ;任意に、脱イオン水を加える前または脱イオン水を加えた後に反応系を膨潤させる工程;
e.反応終了後、濾過し、乾燥させて、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【0080】
アプローチII、調製方法は以下の工程を含む:
a.二層振動スクリーンまたは16メッシュおよび48メッシュのスクリーンを有するリニアスクリーンを使用して粉末をスクリーニングし、スクリーンの中間層のポリプロピレン粉末を反応材料として使用する工程;
b.密閉反応器のスクリーンの中間層にポリプロピレン粉末を入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
c.有機溶媒およびフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に加える工程;
c.有機溶媒を除去し、アルケニル含有官能性モノマーを加え、任意に反応系を膨潤させる工程;
d.脱イオン水を加え、その系をグラフト化反応温度30~110℃に加熱し、0.5~10時間反応させる工程;
e.反応終了後、濾過し、乾燥させて、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【0081】
本発明のより具体的な実施形態によれば、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの調製方法は、以下のアプローチの1つから選択される。
【0082】
アプローチI、調製方法は以下の工程を含む:
a.二層振動スクリーンまたは16メッシュおよび48メッシュのスクリーンを有するリニアスクリーンを使用して粉末をスクリーニングし、スクリーンの中間層のポリプロピレン粉末を反応材料として使用する工程;
b.密閉反応器のスクリーンの中間層にポリプロピレン粉末を入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
c.フリーラジカル開始剤をアルケニル含有官能性モノマーに溶解して溶液を調製し、この溶液を、ポリプロピレンを充填した密閉反応器に加え、撹拌しながら混合する工程;
d.脱イオン水を加え、その系をグラフト化反応温度30~110℃に加熱し、0.5~10時間反応させ;任意に、脱イオン水を加える前または脱イオン水を加えた後に反応系を膨潤させる工程;
e.反応終了後、濾過し、および、任意で乾燥させて、粉末を得る工程;
f.粉末を洗浄用溶媒で40~130℃の温度で0.5~10時間洗浄し、濾過し、乾燥させて、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【0083】
アプローチII、調製方法は以下の工程を含む:
a.二層振動スクリーンまたは16メッシュおよび48メッシュのスクリーンを有するリニアスクリーンを使用して粉末をスクリーニングし、スクリーンの中間層のポリプロピレン粉末を反応材料として使用する工程;
b.密閉反応器のスクリーンの中間層にポリプロピレン粉末を入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
c.有機溶媒およびフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に加える工程;
d.有機溶媒を除去し、アルケニル含有官能性モノマーを加え、任意に反応系を膨潤させる工程;
e.脱イオン水を加え、その系をグラフト化反応温度30~110℃に加熱して、0.5~10時間反応させる工程;
f.反応終了後、濾過し、および、任意で乾燥させて、粉末を得る工程;
g.粉末を洗浄用溶媒で40~130℃の温度で0.5~10時間洗浄し、濾過し、乾燥させて、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【0084】
本発明での不活性ガスは、当該技術分野で一般的に使用される様々な不活性ガスであってもよく、これに限定されないが窒素、アルゴンが挙げられる。
【0085】
本発明の好ましい実施形態によれば、洗浄用溶媒は、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、石油エーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合物である。好ましくは、洗浄用溶媒は、溶媒Aおよび溶媒Bの混合物であり、溶媒Aは、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、石油エーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、および2-メチルテトラヒドロフランからなる群から選択される1つであり、溶媒Bは、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0086】
本発明の好ましい実施形態によれば、洗浄用溶媒の質量は、グラフト化ポリプロピレン粉末の質量の2~20倍である。
【0087】
上述したように、洗浄温度は40~130℃、好ましくは55~100℃であり得、洗浄時間は0.5~10時間、好ましくは1~8時間であり得る。
【0088】
反応後の乾燥工程は、予め実施される。反応後の乾燥工程および洗浄用溶媒による洗浄後の乾燥工程は、好ましくは真空乾燥により行われ、温度は60~90℃であり得る。
【0089】
本発明によれば、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムは、改質ポリプロピレンを主成分または唯一の樹脂成分として含み、さらに、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを調製するための原料は、酸化防止剤および任意に加工助剤、または制御された量の他の樹脂成分をさらに含んでもよい。好ましくは、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの含有量は、誘電体フィルムの重量に基づいて、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、例えば75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%である。
【0090】
改質ポリプロピレンからポリマー誘電体フィルムを調製する方法は、従来技術を参照して実施することができる。本発明の一実施形態によれば、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムは、以下の工程を含む方法によって調製される:
(1)アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを、酸化防止剤および任意に加工助剤と混合し、ペレット化する工程;
(2)工程(1)で得られたペレットを溶融押出し、キャストして、改質ポリプロピレンキャストシートを得る工程;
(3)改質ポリプロピレンキャストシートを二軸延伸して、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを得る工程。
【0091】
本発明はさらに、誘電体フィルムを調製するための改質ポリプロピレン材料を提供し、この改質ポリプロピレン材料は、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを含み、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、マトリックス相としてポリプロピレンに由来する構造単位、および、分散相としてアルケニル含有官能性モノマーに由来する構造単位を含み;アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンは、50ppm未満、好ましくは36ppm未満、およびより好ましくは30ppm未満の灰分含有量を有し;アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンにおいて、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつグラフト化された状態にある構造単位の質量の、アルケニル含有官能性モノマーに由来し、かつ自己重合状態にある構造単位の質量に対する比は、1.0以上であり;分散相のD50は450nm未満、好ましくは50~400nmである。
【0092】
改質ポリプロピレン材料の最高作動温度は、100℃以上、好ましくは110~160℃、およびより好ましくは120~145℃である。
【0093】
本発明の好ましい実施形態によれば、改質ポリプロピレン材料は、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する:
120℃での降伏電界強度Egは、500MV/m以上、好ましくは550~800MV/mである;
120℃かつ200MV/mの電界強度での直流体積抵抗率ρvgは、6.0×1013Ω・m以上、好ましくは1.0×1014Ω・m、~1.0×1020Ω・m、好ましくは1.5×1014Ω・m~0.9×1020Ω・m、より好ましくは2.0×1014Ω・m~1.0×1017Ω・m、例えば1.0×1015Ω・m、1.0×1016Ω・m、およびこの範囲の任意の値である;
120℃かつ100Hzでの誘電率は2.25より大きく、好ましくは2.26~2.65である;
120℃かつ100Hzでの誘電損失は、1.55E-3未満、好ましくは1.5E-3未満、好ましくは1.0E-3以下であり、さらに好ましくは1.0E-6~1.3E-3、およびさらに好ましくは1.0E-6~9E-4である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵密度は、0.720J/cm3より大きく、好ましくは0.740~2.0J/cm3、より好ましくは0.780~2.0J/cm3、およびさらに好ましくは0.80~2.0J/cm3である;
120℃かつ300MV/mでのエネルギー貯蔵効率は90.0%より大きく、および好ましくは92.0~99.0%である。
【0094】
アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンの他の具体的な定義は、上述の通りであり、本明細書では再度説明しない。
【0095】
さらに、改質ポリプロピレン材料は、酸化防止剤および任意で加工助剤も含むことができる。
【0096】
本発明によれば、好ましくは、酸化防止剤の含有量は、改質ポリプロピレン100重量部に基づき、0.1~0.8重量部、好ましくは0.1~0.6重量部であり、加工助剤の含有量は、0.05~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部である。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態によれば、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト、チオ、ベンゾフラノンからなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合物である。酸化防止剤の含有量は、改質ポリプロピレン100重量部に基づき、0.1~0.8重量部、好ましくは0.1~0.6重量部であり得る。
【0098】
この研究において、本発明の発明者は、適切な酸化防止剤の配合組み合わせおよび配合割合が、改質ポリプロピレン材料の耐熱酸化老化性を明らかに向上させ、調製されたフィルム製品が優れた熱安定性を有することを見出した。具体的には、酸化防止剤は、酸化防止剤成分Aおよび酸化防止剤成分Bを混ぜ合わせることによって得られ、酸化防止剤成分Aは、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイトおよびチオからなる群から選択される少なくとも1つであり、ならびに、酸化防止剤成分Bは少なくとも1つのベンゾフラノンである。好ましくは、酸化防止剤成分Aと酸化防止剤成分Bとの重量比は1:0.01~0.03である。
【0099】
より具体的には、酸化防止剤成分Aは、ペンタエリスリチルテトラキス[β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](酸化防止剤1010)、トリス[2,4-ジ-t-ブチルフェニル]ホスファイト(酸化防止剤168)、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(酸化防止剤1076)、2,2’-チオビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](酸化防止剤1035)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(酸化防止剤2246)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン(酸化防止剤CA)、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)ペンタエリスリトールジホスファイト(酸化防止剤626)からなる群から選択される1つである。酸化防止剤成分Bは、3-ブチル-1-(3-ヒドロゲン)-イソベンゾフラノン(酸化防止剤501)、5-メチル-7-tert-ブチル-3-(3,4-ジメチル)-3-ヒドロゲン-ベンゾフラン-2-オン、5-メチル-7-tert-ブチル-3-(2,5-ジメチル)-3-ヒドロゲン-ベンゾフラン-2-オンおよび5-メチル-7-tert-ブチル-3-(2-ヒドロキシ-5-メチル)-3-ヒドロゲン-ベンゾフラン-2-オンからなる群から選択される1つである。
【0100】
本発明の特定の実施形態によれば、酸化防止剤は、酸化防止剤1010および/または酸化防止剤168および/または酸化防止剤501の組み合わせから選択される。本発明の好ましい実施形態によれば、改質ポリプロピレン材料中の酸化防止剤の含有量は、改質ポリプロピレン材料100重量部に基づき、好ましくは0.2~0.4重量部である。
【0101】
本発明によれば、加工助剤としては、潤滑剤、酸受容剤、スリップ剤、帯電防止剤、アンチブロック剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。各助剤の量は、当該技術分野において従来から選択することができ、当業者には公知であり、本明細書では説明しない。使用される加工助剤は、改質ポリプロピレン材料の引張フィルム形成特性および機械的特性に悪影響を及ぼさない。加工助剤の含有量は、改質ポリプロピレン100重量部に基づき、0.05~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部であってもよい。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態によれば、加工助剤は潤滑剤である。潤滑剤は、ポリエチレングリコール潤滑剤、フッ素系ポリマー潤滑剤、有機ケイ素潤滑剤、脂肪アルコール潤滑剤、脂肪酸潤滑剤、脂肪酸エステル潤滑剤、ステアリン酸アミド潤滑剤、脂肪酸金属石鹸潤滑剤、アルカンおよび酸化アルカン潤滑剤、ならびにマイクロナノ粒子潤滑剤から選択される1つ以上であり得る。
【0103】
具体的には、PEG潤滑剤としては、例えば、分子量500~50000のPEG分子であり、これは末端キャッピング処理、グラフト化処理、および架橋処理を施したものであってもよく、また、その他の化学修飾または物理修飾を施したものであってもよい。フッ素系ポリマー潤滑剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等から選択される少なくとも1つであってもよく、または他の単峰性または多峰性のフッ素系ポリマー、結晶性または半結晶性のフッ素系ポリマーであってもよい。有機ケイ素潤滑剤は、分子の主鎖として炭素原子およびケイ素原子を含み、側鎖としてメチル、フェニル、アルコキシ、およびビニル等の有機基のオリゴマーまたはオリゴポリマーを含む種々の既存の化合物であってもよい。脂肪アルコール潤滑剤としては、例えば、軟質脂肪アルコール、硬質脂肪アルコール、獣脂脂肪アルコール等から選択される少なくとも1つであってもよい。脂肪酸潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸および/または12-ヒドロキシステアリン酸から選択される少なくとも1つであってもよい。脂肪酸エステル潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル等から選択される少なくとも1つであってもよい。ステアリン酸アミド潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、n,n-エチレンビスステアリン酸アミド(EBS)等から選択される少なくとも1つであってもよい。脂肪酸金属石鹸潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、合成酢酸カルシウム等から選択される少なくとも1つであってもよい。アルカンおよび酸化アルカン潤滑剤としては、例えば、流動パラフィン、固形パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化エチレンワックス等から選択される少なくとも1つであってもよい。マイクロナノ粒子潤滑剤としては、例えば、粉末ゴムおよび/またはシリカゲル粒子であってもよい。
【0104】
本発明の具体的な実施形態によれば、加工助剤はフッ素系ポリマーである。
【0105】
上記の各種加工助剤は市販されている。
【0106】
本発明の改質ポリプロピレン材料は、様々な成分を混合することによって調製される。
【0107】
改質ポリプロピレン材料のペレットを高分子誘電体フィルムに調製する方法は、従来技術に従って行うことができ、例えば、ペレットを加熱加圧成形または押出キャスティングによって加工することができ、またはペレットを二軸延伸によって加工して誘電体フィルムを形成することができる。
【0108】
ペレットは、当該技術分野における従来の造粒方法に従って調製することができ、例えば、二軸スクリュー押出機によるペレット化によって調製することができる。
【0109】
本発明の具体的な実施形態によれば、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムは、以下の工程を含む方法によって調製される:
(1)改質ポリプロピレン材料を混合し、ペレット化する工程;
(2)工程(1)で得られたペレットを溶融押出し、キャストして、改質ポリプロピレンキャストシートを得る工程;
(3)改質ポリプロピレンキャストシートを二軸延伸して、二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムを得る工程。
【0110】
工程(1)において、改質ポリプロピレン材料を酸化防止剤、加工助剤と混合し、ペレット化する工程は、一般に、改質ポリプロピレン材料を高速撹拌機で均一に混合し、均一に混合した材料を二軸押出機または単軸押出機に添加し、溶融、混合、均一に押出およびペレット化して、乾燥させることによって、ペレットを得る工程を含んでもよい。ここで、二軸押出機の処理温度は190~230℃に制御することができる。
【0111】
本発明によれば、工程(2)において、溶融押出温度は190~230℃であり、キャスト用急冷ローラーの温度は15~50℃である。改質ポリプロピレンキャストシートは、単層構造または多層構造であってもよい。
【0112】
本発明の特定の実施形態によれば、誘電体フィルムを調製するための方法は、改質ポリプロピレン材料ペレットを熱風オーブンに入れて乾燥させる工程、乾燥させたペレットを溶融押出用押出キャスティング機に入れてキャスティングし、キャストシートを得る工程を含み、この場合、溶融押出用押出機の温度は230℃であり、スクリーン交換領域の温度を230℃に制御し、装置ヘッドの温度を230℃に制御し、キャスティングローラーの温度を25℃に制御し、および厚さ230±20μmの厚みのあるキャストシートを作製する。上述のポリプロピレンの厚みのあるキャストシートをフィルム二軸延伸装置の延伸治具に入れ、二軸同期延伸を行う。
【0113】
誘電体フィルムの特性を向上させるために、誘電体フィルムは、好ましくは、フィルム形成助剤をさらに含有する。フィルム形成助剤は、耐ハロゲン剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤、充填剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、および帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。フィルム形成助剤の特定のタイプは、当該技術分野における日常的な選択事項であり、本明細書では詳述しない。
【0114】
本発明による二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルム、改質ポリプロピレン材料は、エネルギー貯蔵誘電体媒体として使用することができ、その高い作動温度により高温エネルギー貯蔵誘電体媒体として使用するのに特に適している。誘電体媒体は、好ましくは、単層または多層、例えば、これに限定されないが、コンデンサフィルム、電気フィルム、粗フィルム、スーパーコンデンサフィルム、静電フィルム、または電池セパレータフィルム等であってもよい、フィルム誘電体媒体である。本発明のポリプロピレン系誘電体エネルギー貯蔵材料は、コンデンサフィルムの作製に特に適している。電気分極を基本電気特性とする機能性フィルム材料であるコンデンサフィルムは、絶縁性および誘電性に優れるため、薄膜コンデンサの誘電体材料として使用される。電気フィルムは、厚さが350μm以下でかつ電気的性能に優れたフィルムであり、通常、原料として高分子ポリマーを使用して製造され、電気製品の耐食性、耐放射線性等の要件を満たす補助材料を一部含んでいてもよく、また、一般に電子部品の絶縁材、自動車用配線、電線巻取り、絶縁保護等に使用されている。
【0115】
具体的には、本発明は、1層以上のポリプロピレンコンデンサフィルムを提供し、このポリプロピレンコンデンサフィルムは、少なくとも1層の少なくとも一部が、上述の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムであるか、または少なくとも1層が、上述の改質ポリプロピレン材料を含む原料から、好ましくは二軸延伸によって製造され、好ましくは、少なくとも1層が、上述の改質ポリプロピレン材料から、二軸延伸によって製造される。
【0116】
さらに、本発明は、1層以上のポリプロピレン電気フィルムを提供し、このポリプロピレン電気フィルムは、少なくとも1層の少なくとも一部が、上述の二軸延伸ポリプロピレン誘電体フィルムであるか、または少なくとも1層が、上述の改質ポリプロピレン材料を含む原料から、好ましくは二軸延伸によって製造され、好ましくは、少なくとも1層が、上述の改質ポリプロピレン材料から、二軸延伸によって製造される。
【0117】
ポリプロピレンコンデンサフィルム/電気フィルムの調製方法は、工程(1)において得られた改質ポリプロピレン材料のペレットを押出キャスト用キャスティング装置に加えてキャストシートを得る工程、および、その後、得られたキャストシートをフィルム二軸延伸装置で延伸する工程を有する。押出キャスティングに際しては、得ようとするフィルムの構造に応じてキャストシートのダイを選択すればよく、例えば、単層構造を有するフィルムを得ようとする場合には単層ダイを用いればよく、また、多層構造を有するフィルム(例えば、上面層、コア層および下面層の3層構造のフィルム)を得ようとする場合には多層複合ダイを用いればよく、当該多層コンポジットダイの少なくとも1層(例えば、コア層)を、上述の改質ポリプロピレン材料が収容された押出機ホッパーと連通させることにより、得られるフィルムの少なくとも1層(例えば、コア層)を、上記改質ポリプロピレン材料で形成された改質ポリプロピレン層とすることができる。押出工程においては、押出温度は100~200℃であり得、キャスト急冷ローラーの温度は15~50℃であり得る。
【0118】
本発明において、二軸延伸は、同期延伸(すなわち、フィルムを縦方向(MD)および横方向(TD)に同時に延伸すること)または段階延伸(すなわち、フィルムを最初にMDに延伸し、次にTDに延伸すること)を含む。
【0119】
同期延伸は、改質ポリプロピレン材料のキャストシートを120~170℃であってもよい予熱温度で予熱する工程、次いで、MD延伸およびTD延伸を同時に行う工程を含み、同期延伸条件は、延伸温度が150~175℃、MD延伸倍率が3倍以上、TD延伸倍率が3倍以上、MD延伸速度が50~300%/秒、およびTD延伸速度が50~300%/秒であることを含む。
【0120】
段階延伸は、改質ポリプロピレン系材料のキャストシートを予熱した後、MD延伸を行う工程、および次いでTD延伸を行う工程を含み、段階延伸条件としては、MD延伸温度が150~170℃、TD延伸温度が155~175℃、MD延伸倍率が3倍以上、TD延伸倍率が5倍以上、MD延伸速度が50~300%/秒、およびTD延伸速度が50~300%/秒であることを含む。
【0121】
本発明によれば、前記方法は、延伸フィルムのアニールセット処理を行うことを含んでも含まなくてもよく、好ましくは、方法は、延伸フィルムのアニールセット処理を行うことを含み、アニールセット処理を行う場合、アニールセット処理の温度は、好ましくは160~180℃である。アニールセット処理の時間は、好ましくは5~60秒である。延伸フィルムのアニールセット処理を行うことにより、フィルムの寸法安定性を向上させることができる。
【0122】
本発明によれば、前記方法は、得られたポリプロピレンフィルムに表面コロナ処理、エッジカット処理および巻取り処理を施すことをさらに含んでいてもよく、これらは当該技術分野における慣用の操作であり、本発明はこれらに特別な制限を有しない。
【0123】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0124】
以下の実施例および比較例では、
モデルLCR400のフィルムキャスティング装置は、スウェーデンのLabtech社から購入した。
モデルKaroIVのフィルム二軸延伸装置は、ドイツのBruckner社から購入した。
【0125】
改質ポリプロピレン材料およびフィルムの特性は、以下の方法に従って測定した。
【0126】
(1.ポリプロピレン/改質ポリプロピレン材料の灰分含有量の測定)
測定は、GB/T 9345-2008に規定される方法に従って実施した。
【0127】
(2.ポリプロピレンのアイソタクティシティの測定)
測定は、GB/T 2412-2008に規定される方法に従って実施した。
【0128】
(3.メルトフローレートMFRの測定)
ポリプロピレン/改質ポリプロピレン材料のMFRは、GB/T3682-2018に規定される方法に従い、CEASTの7026型メルトインデックス装置を使用して、2.16kgの荷重下、230℃で測定した。
【0129】
(4.融解温度Tmの決定)
示差走査熱量計によって、ポリプロピレン/改質ポリプロピレン材料の融解処理および結晶化処理を分析した。具体的な手順を以下に示す。窒素保護下で、試料5mgをるつぼに入れ、昇温速度10℃/分で20℃から200℃まで昇温し、5分間保持して熱履歴を除去した。次に、降温速度10℃/分で20℃まで降温し、1分間保持し、最後に10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、3回目の昇温時のスキャンデータを記録し、GB/T19466.3-2004に従って融解温度Tmを算出した。
【0130】
(5.パラメーターηの決定)
1~2gのグラフト化された生成物を、粒子が完全に溶解するまで適量のキシレンで還流した。キシレン溶液を熱いまま、沈殿のために6倍の有機溶媒(酢酸エチルまたはアセトン)に注いだ。不溶物が完全に沈殿するまで、混合液を1時間放置した。混合液を真空漏斗で濾過し、濾過された不溶物(すなわち、純粋なグラフト化された生成物)を乾燥し、秤量した。官能性モノマー由来の構造単位の自己重合部分に対するグラフト化された部分の比率は以下のとおりであった。
【数1】
式中、w
0はグラフト化されていないポリプロピレンの質量、w
1はグラフト化された生成物の質量、w
2は不溶物の質量である。
【0131】
(6.曲げ弾性率の測定)
測定は、GB/T9341-2008に規定される方法に従って実施した。
【0132】
(7.直流体積抵抗率の測定)
測定は、GB/T13542.2-2009に規定される方法に従って実施し、測定方法は接触電極法であり、電極材料は導電性ゴムであった。
【0133】
(8.降伏電界強度の測定)
測定は、GB/T13542.2-2009に規定される方法に従って実施し、測定方法は50点電極法であった。
【0134】
(9.エネルギー貯蔵密度およびエネルギー貯蔵効率の測定)
測定は、以下の文献に規定される方法を参考に実施した:Yuan, C., Zhou, Y., Zhu, Y. et al. Polymer/molecular semiconductor all-organic composites for high-temperature dielectric energy storage. Nat. Commun. 11, 3919 (2020)。
【0135】
(10.誘電率および誘電損失係数の測定)
測定は、以下の文献に規定される方法を参考に実施した:Yuan, C., Zhou, Y., Zhu, Y. et al. Polymer/molecular semiconductor all-organic composites for high-temperature dielectric energy storage. Nat. Commun. 11, 3919 (2020)。
【0136】
(11.フィルムの厚さの測定)
測定は、GB/T13542.3-2006に規定される方法に従って実施し、測定方法はマイクロメーター法であった。
【0137】
(12.分散相の特性付けおよびD50の算出)
改質ポリプロピレンのホットプレスおよび押出しにより得られた試料片を液体窒素に15分間浸漬した後、脆性破壊に供した。破壊面を金属溶射処理に供した後、熱電界放出型走査電子顕微鏡(NanoSEM 450、FEI、米国)によって特性付けを行い、マイクロモルフォロジー画像を得た。Nano Measurer 1.2解析ソフトウェアを通して、各試料について200個の分散相を採取し、直径を測定し、データ処理ソフトウェアを使用してD50を算出した。D50はメジアン粒径、すなわち累積粒径分布率が50%に達する試料の粒径を表す。
【0138】
(13.フィルムの引張強度および破断伸度の測定)
測定は、GB/T 13542.2-2009に規定される方法に従って実施した。
【0139】
(14.TSDCの測定)
測定は、以下の文献に規定される方法を参考に実施した:Tian Fuqiang, Bu Wenbin, Shi Linshuang, et al.Theory of modified thermally stimulated current and direct determination of trap level distribution[J]. Journal of Electrostatics, 2011, 69 (1) : 7-10。
【0140】
材料を平均厚さ50μmのフィルムにプレスし、その表面に直径20mmの円形金電極をスパッタリングした。測定中、まず20kV/mmの直流電界を使用して試料を一定の分極温度で30分間分極した後、電界を維持したまま温度を-100℃まで急速に下げた。その後、15分間電界を除去し、未凍結のトラップ電荷を除去した。その後、-100℃から150℃まで3℃/分の昇温速度で直線的に昇温し、同時に脱分極電流を測定した。
【0141】
〔実施例〕
実施例で使用した原料を以下の表Aおよび表Bに示す。
【0142】
【0143】
【0144】
すべての実施例で使用したポリプロピレン粉末は、グラフト化反応前に16メッシュおよび48メッシュのふるいを備えた振動ふるいによってふるい分けした。
【0145】
[実施例1]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)7.2gとスチレン400gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、30分間粉末と共に撹拌しながら混合した。その後、脱気された脱イオン水17.8kgを加え、反応混合物を50℃に加熱して2時間膨潤させた。膨潤した粉末を95℃に加熱して4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-スチレン粉末を得た。
図1は、実施例1の生成物の微細構造を20000倍の電子顕微鏡で観察した写真であり、輝度の高い球状部分がスチレン構造単位によって形成された分散相である。分散相の粒径が小さく、形態が規則的であることが分かる。得られたグラフト改質ポリプロピレンについて、グラフト/自己重合比η、D50、灰分、MFR、Tmおよび曲げ弾性率を試験した。結果を表1に示す。
【0146】
得られたポリプロピレン-g-スチレン粉末および酸化防止剤1010/168(重量比1:1)を秤量し、高速撹拌機に加えて均一に混合した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-220℃、スクリュー速度300rpmでペレット化し、ポリプロピレン-g-スチレンペレットを得た。酸化防止剤の添加量は、ポリプロピレン-g-スチレン粉末100重量部を基準として0.3重量部であった。
【0147】
得られたペレットを熱風オーブンで乾燥させ、溶融押出およびキャストしてキャストシートを得るために、スウェーデンのLabtech Co.のLCR400型の押出キャスティング装置に乾燥させたペレットを加え、溶融押出用押出機の温度は230℃であり、スクリーン交換領域の温度は230℃に制御し、装置ヘッドの温度は230℃に制御し、キャスティングローラーの温度は25℃に制御し、厚さ230±20μmの厚みのあるキャストシートを調製した。
【0148】
得られた厚みのあるポリプロピレンキャストシートをフィルム二軸延伸装置の延伸治具に入れ、二軸同期延伸工程に供した。各工程の加工条件は以下を含んでいた:予熱温度が160℃であり、延伸温度が160℃であり、延伸倍率が5.5×5.5倍であり、フィルム延伸速度が100%/秒であり、フィルム設定温度が160℃であった。得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の電気特性パラメーターを試験した。結果を表2に示す。
【0149】
[実施例2]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)13.5gとスチレン1001gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。反応混合物を40℃に加熱して3時間膨潤させた。次に、脱気し40℃に予め加熱された脱イオン水36.0kgを、充填タンクを通じて加え、反応釜を90℃に加熱し、反応を6時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-スチレン粉末を得た。
図2は、実施例2の生成物の微細構造を20000倍の電子顕微鏡で観察した写真であり、輝度の高い球状部分がスチレン構造単位によって形成された分散相である。
【0150】
得られた粉末をペレット化し、実施例1と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0151】
[実施例3]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド3.1gとスチレン112gと無水マレイン酸13.9gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。得られた混合物を室温で8時間膨潤させた後、92℃に加熱した。次に、脱気し92℃に予め加熱された脱イオン水16.4kgを、充填タンクを通じて加え、反応釜を92℃に加熱し、反応を4時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-無水マレイン酸/スチレン粉末を得た。
図3は、実施例3の粉末の微細構造を20000倍の電子顕微鏡で観察した写真であり、輝度の高い球状部分が無水マレイン酸/スチレン構造単位によって形成された分散相である。
【0152】
得られた粉末をペレット化し、実施例1と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0153】
[実施例4]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド2.5gとメチルメタクリレート250.5gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、30分間粉末と共に撹拌しながら混合し、脱気された脱イオン水26.3kgを加えた。反応釜を91℃に加熱し、反応を3時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末を得た。
【0154】
得られた粉末をペレット化し、実施例1と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0155】
[実施例5]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド6.2gとスチレン198.0gと無水マレイン酸52.0gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。得られた混合物を室温で6時間膨潤させ、90℃に加熱した。次に、脱気し90℃に予め加熱された脱イオン水22.6kgを、充填タンクを通じて加え、反応を4時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-無水マレイン酸/スチレン粉末を得た。
【0156】
得られた粉末をペレット化し、実施例1と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0157】
[実施例6]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ラウロイルペルオキシド31gとビニルトリエトキシシラン603gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、20分間粉末と共に撹拌しながら混合し、脱気された脱イオン水19.6kgを加えた。反応釜を91℃に加熱し、反応を7時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-ビニルトリエトキシシラン粉末を得た。
【0158】
得られた粉末をペレット化し、実施例1と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0159】
[実施例7]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド6.2gとメチルアクリレート115.0gとアクリル酸38.0gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら40分間混合した。得られた混合物を95℃に加熱した。次に、脱気し90℃に予め加熱された脱イオン水36.1kgを、充填タンクを通じて加え、反応を4時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-メチルアクリレート/アクリル酸粉末を得た。
【0160】
得られた粉末をペレット化し、実施例1と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0161】
[実施例8]
実施例1のPP1粉末を、ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP3粉末に置き換え、その他の調製条件および方法は実施例1と同一にして、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0162】
[実施例9]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド8.8gと4-ビニルピリジン355gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら30分間混合し、脱気された脱イオン水27.8kgを加え、反応混合物を50℃に加熱し、2時間膨潤させた。反応釜を92℃に加熱し、反応を6時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-4-ビニルピリジン粉末を得た。
【0163】
得られた粉末をペレット化し、実施例1と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0164】
[実施例10]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド1.35gとグリシジルメタクリレート76gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら30分間混合し、脱気された脱イオン水16.7kgを加えた。反応釜を93℃に加熱し、反応を2.5時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-グリシジルメタクリレート粉末を得た。
図4は、実施例10の粉末の微細構造を20000倍の電子顕微鏡で観察した写真であり、輝度の高い球状部分が分散相である。
【0165】
得られた粉末をペレット化し、実施例1と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0166】
[実施例11]
実施例1のふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末を、ふるい分け装置の上層からふるい分けされたPP1粉末に置き換え、その他の調製条件および方法は実施例1と同一にして、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0167】
[実施例12]
実施例1のふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末を、ふるい分け装置の下層からふるい分けされたPP1粉末に置き換え、その他の調製条件および方法は実施例1と同一にして、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0168】
[実施例13]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去し、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)7.2gとスチレン400gとを均一な溶液に調合し、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら30分間混合し、これに17.8kgの脱気された脱イオン水を加え、反応混合物を50℃に加熱して2時間膨潤させた。膨潤した粉末を95℃に加熱して4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去し、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-スチレン粉末C13を得た。得られたグラフト改質ポリプロピレンについて、グラフト/自己重合比η、D50、灰分含有量、MFR、Tmおよび曲げ弾性率の性質を試験した。結果を表1に示す。
【0169】
上記ポリプロピレン-g-スチレン粉末C13を1.5kg秤量し、キシレン3kg、THF20kgを加えた後、反応系を密閉し、70℃に加熱し、洗浄のために5時間撹拌した。撹拌終了後、濾過により液相を除去し、生成物を70℃で10時間真空乾燥させて、ポリプロピレン-g-スチレン粉末B13を得た。得られたグラフト改質ポリプロピレンについて、グラフト/自己重合比η、D50、灰分含有量、MFR、Tmおよび曲げ弾性率の性質を試験した。結果を表1に示す。
【0170】
上記ポリプロピレン-g-スチレン粉末(C13またはB13)および酸化防止剤1010/168(重量比1:1)を秤量し、高速撹拌機に加え均一に混合した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-220℃、スクリュー速度300rpmでペレット化し、ポリプロピレン-g-スチレンペレットを得た。酸化防止剤の添加量は、ポリプロピレン-g-スチレン粉末100重量部を基準として0.3重量部であった。
【0171】
得られたペレットを熱風オーブンで乾燥させ、溶融押出およびキャストしてキャストシートを得るために、スウェーデンのLabtech Co.のLCR400型の押出キャスティング装置に乾燥させたペレットを加え、溶融押出用押出機の温度は230℃であり、スクリーン交換領域の温度は230℃に制御し、装置ヘッドの温度は230℃に制御し、キャスティングローラーの温度は25℃に制御し、厚さ230±20μmの厚みのあるキャストシートを調製した。
【0172】
得られた厚みのあるポリプロピレンキャストシートをフィルム二軸延伸装置の延伸治具に入れ、二軸同期延伸工程に供した。各工程の加工条件は以下を含んでいた:予熱温度が160℃であり、延伸温度が160℃であり、延伸倍率が5.5×5.5倍であり、フィルム延伸速度が100%/秒であり、フィルム設定温度が160℃であった。得られたポリプロピレンフィルムC13およびB13について、種々の電気特性パラメーターを試験した。結果を表2に示す。
【0173】
[実施例14]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末3.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。8.2gのtert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)と63gのスチレンと470gのメチルメタクリレートとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。反応混合物を60℃で2時間膨潤させた。次に、脱気し60℃に予め加熱された脱イオン水18.1kgを、充填タンクを通じて加えた。反応釜を90℃に加熱し、反応を6時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した。アセトン23kgおよびn-ヘプタン2kgを加え、得られた混合物を55℃に加熱し、3時間撹拌した。撹拌終了後、濾過により液相を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート/スチレン粉末B14を得た。
【0174】
得られた粉末をペレット化し、実施例13と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムB14について、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0175】
[実施例15]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド2.5gとメチルメタクリレート250.5gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、30分間粉末と共に撹拌しながら混合し、これに脱気された脱イオン水26.3kgを加えた。反応釜を91℃に加熱し、反応を3時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末C15を得た。
【0176】
3kgの上記ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末C15を秤量し、キシレン10kgおよび酢酸エチル20kgを加えた後、反応系を密閉し、70℃に加熱し、洗浄のために7時間撹拌した。撹拌終了後、濾過により液相を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、2.965kgのポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末B15を得た。TSDCの測定結果を
図6に示す。
【0177】
得られた粉末をペレット化し、実施例13と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムC15およびB15について、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0178】
[実施例16]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末1.5kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド1.9gとスチレン59.7gと無水マレイン酸15.6gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。得られた混合物を室温で6時間膨潤させ、90℃に加熱した。次に、脱気し90℃に予め加熱された脱イオン水7.0kgを、充填タンクを通じて加え、反応を4時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した。アセトン25kgを加え、得られた溶液を55℃に加熱し、5時間撹拌した。撹拌終了後、濾過により液相を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、ポリプロピレン-g-無水マレイン酸/スチレン粉末B16を得た。
【0179】
得られた粉末をペレット化し、実施例13と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムB16について、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0180】
[比較例1]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgをペレット化し、フィルム生成物を調製した。調製条件および方法は実施例1と同一である。ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
図5は、PP1粉末の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、分散相は観察されない。
【0181】
[比較例2]
実施例1のPP1粉末をふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP4粉末に置き換え、脱イオン水10.8kgを加え、その他の調製条件および方法は実施例1と同一にした。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および電気特性パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0182】
[比較例3]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド18.6gと4-ビニルピリジン735gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に30分間撹拌しながら混合し、これに脱気された脱イオン水36.7kgを加え、反応混合物を50℃に加熱し、2時間膨潤させた。反応釜を92℃に加熱し、反応を6時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去し、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-4-ビニルピリジン粉末を得た。
【0183】
得られた粉末をペレット化し、実施例1と同様にしてフィルム生成物を作製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および電気特性パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0184】
[比較例4]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgと400gのポリスチレンGPPS-123とをペレット化し、フィルム生成物を調製した。その他の調製条件および方法は実施例1と同一であった。得られたポリプロピレンフィルムについて、各種電気特性パラメーターを試験した。結果を表2に示す。
【0185】
[比較例5]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgと1000gのポリスチレンGPPS-123とをペレット化し、フィルム生成物を作製した。その他の作製条件および方法は実施例2と同一であった。二軸配向させたときに、フィルムが破断した。
【0186】
[比較例6]
Tongfeng MPP03高温フィルムについて、種々の性能パラメーターを試験した。結果を表2に示す。
【0187】
[比較例7]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド2.0gとメチルメタクリレート188.2gとを均一な溶液に調合し、反応釜に加え、30分間粉末と共に撹拌しながら混合し、これに脱気された脱イオン水25.9kgを加えた。反応釜を90℃に加熱し、反応を3時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させて、5.168kgのポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末D7を得た。TSDC測定の結果を
図6に示す。
【0188】
得られた粉末をペレット化し、実施例13と同様にしてフィルム生成物を調製し、得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムD7について、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表1および表2に示す。
【0189】
【0190】
【0191】
D1とC1とを比較すると、グラフト改質によってポリプロピレンの誘電特性およびエネルギー貯蔵特性を大幅に改善できることが分かる。
【0192】
D2とC1とを比較すると、反応原料として高灰分であるポリプロピレンを使用すると、グラフト化された相のサイズが小さくなり、同一の調製条件であっても低灰分であるポリプロピレン改質材を使用した場合よりもエネルギー貯蔵効率およびエネルギー貯蔵特性が著しく低下することが分かる。
【0193】
D3をC9およびD1と比較すると、分散相のサイズが大き過ぎる場合は、生成物の破断強度はD1と比べてほとんど改善されず、他の誘電特性およびエネルギー貯蔵特性はD1と比べて明らかに改善されず、生成物の特性はグラフト改質を伴う実施例C9と大きく異なることが分かる。
【0194】
D4とC1~C12とを比較すると、グラフトモノマーポリマーを直接加えた場合、D1に比べてグラフトモノマーポリマーとポリプロピレンとの混合物の界面作用力が弱いこと、破断強度が低いこと、および、エネルギー貯蔵特性がある程度低下していることが分かる。
【0195】
D5とC2とを比較すると、グラフト改質ポリプロピレン材料は、官能性モノマーの添加量が多くなると、通常通りフィルムを形成することができるが、官能性モノマーポリマーを多量に加えた後、加工中にフィルムが破壊されたため、フィルムを形成できないことが分かる。
【0196】
D6とC1~C12とを比較すると、本発明に係るフィルムは、120℃におけるエネルギー貯蔵効率が市販の高温コンデンサフィルムよりも明らかに高く、エネルギー貯蔵密度および誘電特性が市販の高温コンデンサフィルムと同等またはわずかに優れているという利点を有することが分かる。
【0197】
C11~C12から、ポリプロピレン基材の粒径を好ましい範囲に制御することで、より優れた断熱性およびエネルギー貯蔵特性を有する生成物を得ることができることが分かる。
【0198】
B13とC13、B15とC15とを比較すると、溶剤洗浄工程により自己重合生成物の影響を低減することによって、材料の誘電特性を効果的に改善(直流体積抵抗率を大幅に改善)できることが分かる。
【0199】
B15およびD7の最終生成物は、グラフトモノマーの総量が同一である。B15とD7との比較およびTSDCの測定を通じて、グラフトモノマーの合計含有量が同一という条件下で、グラフト/自己重合比ηが高いB15は、グラフト化された相の組成が明らかに変化しているため、異なる電荷トラップが発生し、最終的に材料の誘電特性を効果的に改善できることが分かる。
【0200】
[実施例17]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去し、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)7.2gとスチレン400gとを均一な溶液に調合し、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら30分間混合し、これに17.8kgの脱気された脱イオン水を加え、反応混合物を50℃に加熱して2時間膨潤させた。膨潤した粉末を95℃に加熱して4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去し、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-スチレン粉末を得た。得られたグラフト改質ポリプロピレンについて、グラフト/自己重合比η、D50、灰分含有量、MFR、Tmおよび曲げ弾性率の性質を試験した。結果を表4に示す。
【0201】
上記ポリプロピレン-g-スチレン粉末、酸化防止剤1010/168/501(重量比1:1:0.03)および加工助剤を秤量し、高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.3重量部、加工助剤としてのフッ素系ポリマーは0.1重量部であった。
【0202】
得られたペレットを熱風オーブンで乾燥させ、溶融押出およびキャストしてキャストシートを得るために、スウェーデンのLabtech Co.のLCR400型の押出キャスティング装置に乾燥させたペレットを加え、溶融押出用押出機の温度は230℃であり、スクリーン交換領域の温度は230℃に制御し、装置ヘッドの温度は230℃に制御し、キャスティングローラーの温度は25℃に制御し、厚みのあるキャストシートを調製した。
【0203】
上記厚みのあるキャストシートをフィルム二軸延伸装置の延伸治具に入れ、二軸段階延伸工程(すなわち、最初にMD延伸し、次にTD延伸する)に供した。各工程の加工条件は表3に示すとおりであった:MD予熱温度が155℃であり、MD延伸温度が155℃であり、MD延伸倍率が5倍であり、MD延伸速度が200%/秒であり、TD予熱温度が170℃であり、TD延伸温度が170℃であり、TD延伸倍率が7倍であり、TD延伸速度が300%/秒であり、フィルム設定温度が175℃であった。そしてそれによって、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0204】
得られたフィルムの引張特性、電気特性等を試験した。得られたポリプロピレンフィルムの性能パラメーターを表5、6に示す。
【0205】
[実施例18]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)13.5gとスチレン1001gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。反応混合物を40℃に加熱して3時間膨潤させた。次に、脱気し40℃に予め加熱された脱イオン水36.0kgを、充填タンクを通じて加えた。反応釜を90℃に加熱し、反応を6時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-スチレン粉末を得た。
【0206】
上記ポリプロピレン-g-スチレン粉末、酸化防止剤1035/168/501(重量比1:1:0.03)および加工助剤を高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.5重量部、加工助剤としてのフッ素系ポリマーは0.2重量部であった。
【0207】
本実施例では、表3に示すように、二軸延伸加工条件が異なること以外は、実施例17と同一の方法に従ってフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0208】
[実施例19]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド3.1gとスチレン112gと無水マレイン酸13.9gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。得られた混合物を室温で8時間膨潤させた後、92℃に加熱した。次に、脱気し92℃に予め加熱された脱イオン水16.4kgを、充填タンクを通じて加え、反応釜を92℃に加熱し、反応を4時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-無水マレイン酸/スチレン粉末を得た。
【0209】
上記改質ポリプロピレン、酸化防止剤1010/168/501(重量比1:1:0.05)およびフッ素系ポリマーを秤量し、高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.3重量部、フッ素系ポリマーは0.1重量部であった。
【0210】
本実施例では、表3に示すように、二軸延伸加工条件が異なること以外は、実施例17と同一の方法に従ってフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0211】
[実施例20]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド2.5gとメチルメタクリレート250.5gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、30分間粉末と共に撹拌しながら混合し、脱気された脱イオン水26.3kgを加えた。反応釜を91℃に加熱し、反応を3時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末を得た。
【0212】
上記ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート、酸化防止剤1076/168/501(重量比1:1:0.04)およびフッ素系ポリマーを秤量し、高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.3重量部、フッ素系ポリマーは0.1重量部であった。
【0213】
本実施例では、表3に示すように、二軸延伸加工条件が異なること以外は、実施例17と同一の方法に従ってフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0214】
[実施例21]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド6.2gとスチレン198.0gと無水マレイン酸52.0gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。得られた混合物を室温で6時間膨潤させ、90℃に加熱した。次に、脱気し90℃に予め加熱された脱イオン水22.6kgを、充填タンクを通じて加え、反応を4時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-無水マレイン酸/スチレン粉末を得た。
【0215】
上記ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸、酸化防止剤1010/168/501(重量比1:1:0.05)およびフッ素系ポリマーを秤量し、高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.3重量部、フッ素系ポリマーは0.1重量部であった。
【0216】
本実施例では、表3に示すように、二軸延伸加工条件が異なること以外は、実施例17と同一の方法に従ってフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0217】
[実施例22]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ラウロイルペルオキシド31gとビニルトリエトキシシラン603gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、20分間粉末と共に撹拌しながら混合し、脱気された脱イオン水19.6kgを加えた。反応釜を91℃に加熱し、反応を7時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-ビニルトリエトキシシラン粉末を得た。
【0218】
得られた粉末をペレット化し、実施例17と同一の方法および条件でフィルム生成物を調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0219】
[実施例23]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド6.2gとメチルアクリレート115.0gとアクリル酸38.0gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら40分間混合し、95℃で加熱した。次に、脱気し90℃に予め加熱された脱イオン水36.1kgを、充填タンクを通じて加え、反応を4時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-メチルアクリレート/アクリル酸粉末を得た。
【0220】
得られた粉末をペレット化し、実施例17と同一の方法および条件でフィルム生成物を調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0221】
[実施例24]
実施例17のPP1粉末を、ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP3粉末に置き換え、他の調製条件および方法は実施例17と同一にした。得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の性能パラメーターを試験した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0222】
[実施例25]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド8.8gと4-ビニルピリジン355gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら30分間混合し、脱気された脱イオン水27.8kgを加え、反応混合物を50℃に加熱し、2時間膨潤させた。反応釜を92℃に加熱し、反応を6時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-4-ビニルピリジン粉末を得た。
【0223】
得られた粉末をペレット化し、実施例17と同一の方法および条件でフィルム生成物を調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0224】
[実施例26]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド1.35gとグリシジルメタクリレート76gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら30分間混合し、脱気された脱イオン水16.7kgを加えた。反応釜を93℃に加熱し、反応を2.5時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した後、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-グリシジルメタクリレート粉末を得た。
【0225】
得られた粉末をペレット化し、実施例17と同一の方法および条件でフィルム生成物を調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0226】
[実施例27]
酸化防止剤を酸化防止剤1010/168(重量比1:1)としたこと以外は、実施例17の方法に従って、改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0227】
[実施例28]
酸化防止剤を酸化防止剤501としたこと以外は、実施例18の方法に従って、改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0228】
[実施例29]
酸化防止剤を酸化防止剤1010/168/501(重量比1:1:0.01)としたこと以外は、実施例19の方法に従って、改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0229】
[実施例30]
実施例17のふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末を、ふるい分け装置の上層からふるい分けされたPP1粉末に置き換え、その他の調製条件および方法は実施例17と同一にした。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0230】
[実施例31]
実施例17のふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末を、ふるい分け装置の下層からふるい分けされたPP1粉末に置き換え、その他の調製条件および方法は実施例17と同一にした。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0231】
[実施例32]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去し、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)7.2gとスチレン400gとを均一な溶液に調合し、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら30分間混合し、これに17.8kgの脱気された脱イオン水を加え、反応混合物を50℃に加熱して2時間膨潤させた。膨潤した粉末を95℃に加熱して4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去し、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-スチレン粉末C32を得た。得られたグラフト改質ポリプロピレンについて、グラフト/自己重合比η、D50、灰分含有量、MFR、Tmおよび曲げ弾性率の性質を試験した。結果を表4に示す。
【0232】
上記ポリプロピレン-g-スチレン粉末C32を1.5kg秤量し、キシレン3kgおよびTHF20kgを加えた後、反応系を密閉し、70℃に加熱し、洗浄のために5時間撹拌した。撹拌終了後、濾過により液相を除去し、生成物を70℃で10時間真空乾燥させて、ポリプロピレン-g-スチレン粉末B32を得た。得られたグラフト改質ポリプロピレンについて、グラフト/自己重合比η、D50、灰分含有量、MFR、Tmおよび曲げ弾性率の性質を試験した。結果を表4に示す。
【0233】
上記ポリプロピレン-g-スチレン粉末(C32またはB32)、酸化防止剤1010/168/501(重量比1:1:0.3)および加工助剤を秤量し、高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.3重量部、加工助剤としてのフッ素系ポリマーは0.1重量部であった。
【0234】
得られたペレットを熱風オーブンで乾燥させ、溶融押出およびキャストしてキャストシートを得るために、スウェーデンのLabtech Co.のLCR400型の押出キャスティング装置に乾燥させたペレットを加え、溶融押出用押出機の温度は230℃であり、スクリーン交換領域の温度は230℃に制御し、装置ヘッドの温度は230℃に制御し、キャスティングローラーの温度は25℃に制御し、厚みのあるキャストシートを調製した。
【0235】
上記厚みのあるキャストシートをフィルム二軸延伸装置の延伸治具に入れ、二軸段階延伸工程(すなわち、最初にMD延伸し、次にTD延伸する)に供した。各工程の加工条件は表3に示すとおりであった:MD予熱温度が155℃であり、MD延伸温度が155℃であり、MD延伸倍率が5倍であり、MD延伸速度が200%/秒であり、TD予熱温度が170℃であり、TD延伸温度が170℃であり、TD延伸倍率が7倍であり、TD延伸速度が300%/秒であり、フィルム設定温度が175℃であった。そしてそれによって、二軸延伸ポリプロピレンフィルムC32およびB32を得た。
【0236】
得られたフィルムの引張特性、電気特性等を試験した。得られたポリプロピレンフィルムの性能パラメーターを表5、6に示す。
【0237】
[実施例33]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末3.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。8.2gのtert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)と63gのスチレンと470gのメチルメタクリレートとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。反応混合物を60℃に加熱し、2時間膨潤させた。次に、脱気し60℃に予め加熱された脱イオン水18.1kgを、充填タンクを通じて加えた。反応釜を90℃に加熱し、反応を6時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した。アセトン23kgおよびn-ヘプタン2kgを加え、得られた溶液を55℃に加熱し、3時間撹拌した。撹拌終了後、濾過により液相を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート/スチレン粉末B33を得た。
【0238】
上記ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート/スチレン粉末、酸化防止剤1035/168/501(重量比1:1:0.03)および加工助剤を秤量し、高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.5重量部、加工助剤としてのフッ素系ポリマーは0.2重量部であった。
【0239】
表3に示すように、二軸延伸加工条件が異なること以外は、実施例32と同一の方法に従ってフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムB33の構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0240】
[実施例34]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド2.5gとメチルメタクリレート250.5gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、30分間粉末と共に撹拌しながら混合し、これに脱気された脱イオン水26.3kgを加えた。反応釜を91℃に加熱し、反応を3時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末C34を得た。
【0241】
3kgの上記ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末C34を秤量し、キシレン10kgおよび酢酸エチル20kgを加えた後、反応系を密閉し、70℃に加熱し、洗浄のために7時間撹拌した。撹拌終了後、濾過により液相を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、2.965kgのポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末B34を得た。
【0242】
上記ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末(C34またはB34)、酸化防止剤1076/168/501(重量比1:1:0.04)およびフッ素系ポリマーを秤量し、高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.3重量部、フッ素系ポリマーは0.1重量部であった。
【0243】
表3に示すように、二軸延伸加工条件が異なること以外は、実施例32と同一の方法に従ってフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムC34およびB34の構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0244】
[実施例35]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末1.5kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド1.9gとスチレン59.7gと無水マレイン酸15.6gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に撹拌しながら混合した。得られた混合物を室温で6時間膨潤させ、90℃に加熱した。次に、脱気し90℃に予め加熱された脱イオン水7.0kgを、充填タンクを通じて加え、反応を4時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去した。アセトン25kgを加え、得られた溶液を55℃に加熱し、5時間撹拌した。撹拌終了後、濾過により液相を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、ポリプロピレン-g-無水マレイン酸/スチレン粉末B35を得た。
【0245】
上記ポリプロピレン-g-無水マレイン酸/スチレン粉末、酸化防止剤1010/168/501(重量比1:1:0.05)およびフッ素系ポリマーを秤量し、高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.3重量部、フッ素系ポリマーは0.1重量部であった。
【0246】
表3に示すように、二軸延伸加工条件が異なること以外は、実施例32と同一の方法に従ってフィルムを調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルB35の構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0247】
[比較例8]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgをペレット化し、フィルム生成物を調製した。酸化防止剤は酸化防止剤1010/168(重量比1:1)とし、その他の調製条件および方法は実施例17と同一だった。得られた生成物について、種々の性能パラメーターを試験した。得られたポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0248】
[比較例9]
実施例17のPP1粉末を、ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP4粉末に置き換え、脱イオン水10.8kgを加え、他の調製条件および方法は実施例1と同一だった。得られた生成物について、種々の性能パラメーターを試験した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0249】
[比較例10]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP2粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド18.6gと4-ビニルピリジン735gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、粉末と共に30分間撹拌しながら混合し、これに脱気された脱イオン水36.7kgを加え、反応混合物を50℃に加熱し、2時間膨潤させた。反応釜を92℃に加熱し、反応を6時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去し、70℃で10時間真空乾燥させてポリプロピレン-g-4-ビニルピリジン粉末を得た。
【0250】
得られた粉末をペレット化し、フィルム生成物を調製した。酸化防止剤は酸化防止剤1010/168(重量比1:1)とし、方法および条件は実施例17と同一だった。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよび得られたポリプロピレンフィルムの構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0251】
[比較例11]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgおよびポリスチレンGPPS-123 400gをペレット化し、フィルム生成物を調製した。その他の調製条件および方法は実施例17と同一だった。得られた生成物について、種々の性能パラメーターを試験した。得られたポリプロピレンフィルムの性能パラメーターを表5、6に示す。
【0252】
[比較例12]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgおよびポリスチレンGPPS-123 1000gをペレット化し、フィルム生成物を調製した。酸化防止剤は酸化防止剤1010/168(重量比1:1)とし、その他の調製条件および方法は実施例18と同一だった。二軸延伸したときに、フィルムが破断した。
【0253】
[比較例13]
Tongfeng MPP03高温フィルムについて、種々の性能パラメーターを試験した。結果を表5、6に示す。
【0254】
[比較例14]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。ジベンゾイルペルオキシド2.0gとメチルメタクリレート188.2gとを均一な溶液に調合し、反応釜に加え、30分間粉末と共に撹拌しながら混合し、これに脱気された脱イオン水25.9kgを加えた。反応釜を90℃に加熱し、反応を3時間実施した。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、5.168kgのポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末D14を得た。
【0255】
上記ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末、酸化防止剤1076/168/501(重量比1:1:0.04)およびフッ素系ポリマーを秤量し、高速撹拌機に加えて、30秒間高速撹拌した。当該材料をCoperion Co.のWP25型二軸押出機を使用して、仕切り温度190-200-210-220-230-230-210℃、スクリュー速度300rpmでペレット化した。改質ポリプロピレン100重量部を基準として、酸化防止剤の総量は0.3重量部、フッ素系ポリマーは0.1重量部であった。
【0256】
フィルムは、実施例32と同一の方法に従って調製した。得られたグラフト改質ポリプロピレンおよびポリプロピレンフィルムD14の構造および性能パラメーターを表4、5、6に示す。
【0257】
[比較例15]
ふるい分け装置の中間層からふるい分けされたPP1粉末5.0kgを、二重層の4枚羽根撹拌パドルとバッフルとを備えた50Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)3.9gとスチレン200gとを均一な溶液に調合した後、反応釜に加え、30分間粉末と共に撹拌しながら混合し、これに脱気された脱イオン水17.2kgを加え、反応混合物を50℃に加熱し、2時間膨潤させた。膨潤した粉末を95℃に加熱し、4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して液体成分を除去し、70℃で10時間真空乾燥させて、グラフト/自己重合比ηが2.11であるポリプロピレン-g-スチレン粉末5.168kgを得た。
【0258】
得られたポリプロピレン-g-スチレン粉末と159gのポリスチレンGPPS-123とを混合し、ペレット化して、フィルム生成物を調製した。他の調製条件および方法は実施例17と同一だった。得られた混合物および得られたポリプロピレンフィルムについて、種々の構造および性能パラメーターを試験した。結果を表4、5、6に示す。
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
D8とC17とを比較すると、グラフト改質によってポリプロピレンの誘電特性およびエネルギー貯蔵特性を大幅に改善できることが分かる。
【0264】
D9とC17とを比較すると、反応原料として高灰分であるポリプロピレンを使用すると、グラフト化された相のサイズが小さくなり、同一の調製条件であっても低灰分であるポリプロピレン改質材を使用した場合よりもエネルギー貯蔵効率およびエネルギー貯蔵特性が著しく低下することが分かる。
【0265】
D10をC25およびD8と比較すると、分散相のサイズが大き過ぎる場合は、生成物の破断強度はD8と比べてほとんど改善されず、他の誘電特性およびエネルギー貯蔵特性はD8と比べて明らかに改善されず、生成物の特性はグラフト改質を伴う実施例C25と大きく異なることが分かる。
【0266】
D11とC17~C31とを比較すると、グラフトモノマーポリマーを直接加えた場合、D8に比べてグラフトモノマーポリマーとポリプロピレンとの混合物の界面作用力が弱いこと、破断強度が低いこと、および、エネルギー貯蔵特性がある程度低下していることが分かる。
【0267】
D12とC18とを比較すると、グラフト改質ポリプロピレン材料は、官能性モノマーの添加量が多くなると、通常通りフィルムを形成することができるが、官能性モノマーポリマーを多量に加えた後、加工中にフィルムが破壊されたため、フィルムを形成できないことが分かる。
【0268】
D13とC17~C31とを比較すると、本発明に係るフィルムは、120℃におけるエネルギー貯蔵効率が市販の高温コンデンサフィルムよりも明らかに高く、エネルギー貯蔵密度および誘電特性が市販の高温コンデンサフィルムと同等またはわずかに優れているという利点を有することが分かる。
【0269】
C30~C31から、ポリプロピレン基材の粒径を好ましい範囲に制御することで、より優れた断熱性およびエネルギー貯蔵特性を有する生成物を得ることができることが分かる。
【0270】
B32とC32、B34とC34とを比較すると、溶剤洗浄工程により自己重合生成物の影響を低減することによって、材料の誘電特性を効果的に改善(直流体積抵抗率を大幅に改善)できることが分かる。
【0271】
B34およびD14の最終生成物は、グラフトモノマーの総量が同一である。B34とD14との比較およびTSDCの測定を通じて、グラフトモノマーの合計含有量が同一という条件下で、グラフト/自己重合比ηが高いB34は、グラフト化された相の組成が明らかに変化しているため、異なる電荷トラップが発生し、最終的に材料の誘電特性を効果的に改善できることが分かる。
【0272】
D15とC17とを比較すると、スチレンの合計含有量が同一であるとき、グラフト/自己重合比ηが高い生成物の方が、断熱性およびエネルギー貯蔵特性が優れていることが分かる。
【0273】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記の説明は例示的なものであり、網羅的なものではなく、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には多くの改変および変更が明らかである。
【0274】
本明細書で開示される範囲の端点および任意の値は、正確な範囲または値に限定されるものではなく、それらの範囲または値に近い値を包含するものと理解されたい。数値範囲については、各範囲の端点、各範囲の端点および個々の点の値、ならびに個々の点の値は、1つ以上の新しい数値範囲をもたらすために互いに組み合わされてもよく、これらの数値範囲は、本明細書に具体的に開示されているとみなされるべきである。
【0275】
本明細書において、用語「含む」および「含有する」は互換的に使用され、「~から本質的になる」、「~からなる」、および「~である」を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0276】
【
図1】実施例1の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、球状分散相はスチレン構造単位の集合体である。
【
図2】実施例2の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。
【
図3】実施例3の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。
【
図4】実施例10の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。
【
図5】比較例1の改質ポリプロピレンの試料の微細構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、分散相は認識できない。
【
図6】実施例15および比較例7の生成物のTSDC試験結果を示す。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
アプローチII、調製方法は以下の工程を含む:
a.二層振動スクリーンまたは16メッシュおよび48メッシュのスクリーンを有するリニアスクリーンを使用して粉末をスクリーニングし、スクリーンの中間層のポリプロピレン粉末を反応材料として使用する工程;
b.密閉反応器のスクリーンの中間層にポリプロピレン粉末を入れ、その後不活性ガスにより置換する工程;
c.有機溶媒およびフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に加える工程;
d.有機溶媒を除去し、アルケニル含有官能性モノマーを加え、任意に反応系を膨潤させる工程;
e.脱イオン水を加え、その系をグラフト化反応温度30~110℃に加熱し、0.5~10時間反応させる工程;
f.反応終了後、濾過し、乾燥させて、アルケニル含有官能性モノマーでグラフト化された改質ポリプロピレンを得る工程。
【国際調査報告】