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特表2025-503515改良されたワクシニアウイルスベクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】改良されたワクシニアウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20250128BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/39 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20250128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/863 Z ZNA
C12N15/39
C12N15/12
C12N15/33
C12N7/01
A61K35/768
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538675
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2022087815
(87)【国際公開番号】W WO2023118603
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2119008.7
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524238822
【氏名又は名称】ストラトスヴィル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】STRATOSVIR LIMITED
【住所又は居所原語表記】Stevenage Bioscience Catalyst, Gunnels Wood Road, Stevenage Hertfordshire SG1 2FX United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルマン, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ポスティゴ, フアン アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】マーサー, ジェイソン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本明細書では、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、融合タンパク質は、A13又はその一部などのワクシニアウイルスエンベロープタンパク質と、CD35、CD55、CD59、CD46、CR1、H因子、VCP、MOPICE、SPICE及びCCPHなどの少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片とを含む、ポリヌクレオチドが開示される。改変されたワクシニアウイルスベクター及びワクシニアウイルスビリオンも開示され、癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害の治療のための治療的使用及び方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合ポリペプチドをコードする単離された核酸であって、前記融合ポリペプチドは、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質又はその一部と、少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片とを含む、単離された核酸。
【請求項2】
前記ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、A13及びA27又はそれらの一部から選択される、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
前記ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、A13である、請求項1又は2に記載の単離された核酸。
【請求項4】
前記ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、ワクシニア成熟ビリオン(MV)からのエンベロープタンパク質である、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項5】
前記少なくとも1つの補体制御タンパク質は、
(i)CD35、CD55、CD59、CD46、CR1、H因子、VCP、MOPICE、SPICE、CCPH、C4結合タンパク質、CD35、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスKaposica/KCP、ヘルペスウイルス・サイミリ(HVS)及びHVS-CD59、アカゲザルラジノウイルスRCP-H及びRCP-1、マウスガンマヘルペスウイルス68(γHV-68)RCA、インフルエンザウイルスM1、EMICE及びIMP並びにそれらの改変配列又はそれらの機能的断片
からなる群の1つ以上から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補体制御タンパク質は、CD35、CD55、VCP、変異VCP、SPICE、CCPH及びORF4又はそれらの機能的断片からなる群の1つ以上から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項7】
前記少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片は、ワクシニアウイルスMVエンベロープタンパク質の膜貫通領域に融合されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項8】
前記ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質の膜貫通領域は、H3又はD8ではない、請求項7に記載の単離された核酸。
【請求項9】
前記ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質A13は、
(i)ワクシニアコペンハーゲンウイルス、ラクダ痘ウイルス、天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、タテラポックスウイルス、サル痘ウイルスZaire-96-I-16、ハタネズミ痘ウイルス、アクメタウイルス、エクトロメリアウイルス、オルソポックスウイルスAbatinoウイルス、スカンク痘ウイルス、アライグマ痘ウイルス、ヨカポックスウイルス、ムルマンスクポックスウイルス、NY_014ポックスウイルス及びヤバサル腫瘍ウイルス又はそれらの一部からのA13タンパク質配列から選択されるか;又は
(ii)配列番号1~16の1つから選択される配列の少なくともアミノ酸2~21又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項10】
前記融合ポリペプチドは、VCPに融合されたA13、タンデムに配置された2つのV
CPタンパク質に融合されたA13、連続して配置された4つのVCPタンパク質に融合されたA13、変異VCPに融合されたA13、CD55に融合されたA13、CD35に融合されたA13、CCPHに融合されたA13若しくはORF4に融合されたA13又はその機能的断片から選択され;
任意選択により、前記変異VCPは、配列番号31を含むか;CD55は、CD55のアミノ酸35~284を含むか(例えば、配列番号71)、前記CD35は、CD35のアミノ酸42~1584を含むか(例えば、配列番号72)、前記CCPHは、CCPHのアミノ酸21~266を含むか(例えば、配列番号73)、又は前記ORF4は、ORF4のアミノ酸22~268を含み(例えば、配列番号74);
任意選択により、前記VCPタンパク質は、SPICE(配列番号32)、MOPICE(配列番号33)、EMICE(配列番号75、76、特に配列番号76)又はIMP(配列番号77、78、特に配列番号78)から選択されるポックスウイルス補体制御タンパク質又は改変ポックスウイルス補体制御タンパク質である、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項11】
前記1つ以上の補体制御タンパク質又はその機能的断片は、A13のC末端に融合されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項12】
配列番号37~46のいずれか1つから選択される配列又はそれと少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有するか;又は配列番号47~56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有する融合ポリペプチドをコードする、請求項10又は11に記載の単離された核酸。
【請求項13】
前記融合ポリペプチドは、VCPに融合されたA27、変異VCPに融合されたA27、CD55に融合されたA27、CD35に融合されたA27、CCPHに融合されたA27若しくはORF4に融合されたA27又はその機能的断片から選択され;
任意選択により、前記変異VCPは、配列番号31を含むか;CD55は、CD55のアミノ酸35~284を含むか(例えば、配列番号71)、前記CD35は、CD35のアミノ酸42~1584を含むか(例えば、配列番号72)、前記CCPHは、CCPHのアミノ酸21~266を含むか(例えば、配列番号73)、又は前記ORF4は、ORF4のアミノ酸22~268を含み(例えば、配列番号74);
任意選択により、前記VCPタンパク質は、SPICE(配列番号32)、MOPICE(配列番号33)、EMICE(配列番号75、76、特に配列番号76)又はIMP(配列番号77、78、特に配列番号78)から選択されるポックスウイルス補体制御タンパク質又は改変ポックスウイルス補体制御タンパク質である、請求項1若しくは2又は請求項1若しくは2に従属する場合の請求項4~8のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項14】
前記1つ以上の補体制御タンパク質又はその機能的断片は、A27のN末端に融合されている、請求項13に記載の単離された核酸。
【請求項15】
配列番号57~62のいずれか1つから選択される配列又はそれと少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有するか;又は配列番号63~68のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有する融合ポリペプチドをコードする、請求項13又は14に記載の単離された核酸。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸を含む、操作されたワクシニアウイルスベクター。
【請求項17】
ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質又はその一部と、少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片とを含む融合ポリペプチドをコードする前記核酸は、対応する野生型ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質遺伝子座の外側の遺伝子座で前記ベクターに挿入されている、請求項16に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター。
【請求項18】
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子の欠失又は不活性なチミジンキナーゼ(TK)遺伝子を含む、請求項16又は17に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター。
【請求項19】
前記融合ポリペプチドをコードする前記核酸は、前記TK遺伝子の遺伝子座に挿入されており;任意選択により、前記TK遺伝子は、欠失又は不活性化されている、請求項18に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター。
【請求項20】
前記融合ポリペプチドをコードする前記核酸は、対応するワクシニアウイルスエンベロープタンパク質の天然プロモーターに作動可能に連結されている、請求項16~19のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は請求項1~15のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項21】
(i)コペンハーゲン、ウェスタンリザーブ、ワイス、リスター若しくは改変ワクシニア・アンカラ株;
(ii)コペンハーゲン若しくはウェスタンリザーブ株;又は
(iii)コペンハーゲン株
から選択される操作されたワクシニアウイルスゲノムを含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は請求項1~15のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の核酸を含む、改変されたワクシニアウイルスビリオン。
【請求項23】
請求項16~21のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター、請求項1~15、20若しくは21のいずれか一項に記載の単離された核酸又は請求項22に記載の改変されたワクシニアウイルスビリオンと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項24】
全身又は局所若しくは局部投与のために製剤化されている、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
改変されたワクシニアウイルスビリオンを含み、及び
(i)1mlあたり約1×10~約1×1015pfu;
(ii)1mlあたり約1×10~約1×1014pfu;又は
(iii)1mlあたり約1×10~約1×1012pfu
の単位用量を有するように製剤化されている、請求項23又は24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
対象における癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害を治療する方法で使用するための、請求項16~21のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター、請求項1~15、20若しくは21のいずれか一項に記載の単離された核酸、請求項22に記載の改変されたワクシニアウイルスビリオン又は請求項23~25のいずれか一項に記載
の医薬組成物。
【請求項27】
哺乳動物対象における癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害を治療する方法であって、治療有効量の、請求項16~21のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター、請求項1~15、20若しくは21のいずれか一項に記載の単離された核酸、請求項22に記載の改変されたワクシニアウイルスビリオン又は請求項23~25のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項28】
前記癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害は、肺癌(例えば、肺腺癌)、子宮頸癌、乳癌、心臓癌、結腸癌、前立腺癌、脳神経膠芽腫、膵臓癌、白血病(例えば、急性単球性白血病)、リンパ腫、腎臓癌、結腸直腸癌、膀胱癌、精巣癌、胃腸癌、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)及び/又は神経膠芽腫から選択される、請求項26に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、改変されたワクシニアウイルスビリオン若しくは医薬組成物又は請求項27に記載の方法。本発明は、皮膚癌(例えば、黒色腫)、頭部及び/又は頸部癌、胆嚢癌、子宮癌、胃癌、甲状腺癌、喉頭癌、唇及び/又は口腔癌、咽頭癌、眼癌並びに骨癌の1つ以上の治療にも有用であり得る。
【請求項29】
前記ワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物は、前記対象に全身又は局所投与され;任意選択により、投与は、皮内、経皮、非経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、局部(例えば、腫瘍の近く、特に腫瘍の血管系又は隣接血管系)、経皮、気管内、腹腔内、動脈内、膀胱内、腫瘍内、吸入、灌流、洗浄又は経口から選択される経路によるものである、請求項26若しくは28に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、改変されたワクシニアウイルスビリオン若しくは医薬組成物又は請求項27若しくは28に記載の方法。
【請求項30】
前記ワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤又は療法と組み合わせて投与され、前記1つ以上の追加の治療剤又は療法の投与は、前記ワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物の前記投与と同時、別々又は連続的である、請求項26、28若しくは29のいずれか一項に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、改変されたワクシニアウイルスビリオン若しくは医薬組成物又は請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記癌は、原発癌、二次癌又は転移である、請求項26若しくは28~30のいずれか一項に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、改変されたワクシニアウイルスビリオン若しくは医薬組成物又は請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記改変されたワクシニアウイルスビリオンは、
(i)1kgあたり約1×10~約1×1015pfu;
(ii)1kgあたり約1×10~約1×1014pfu;又は
(iii)1kgあたり約1×10~約1×1012pfu
の用量で前記対象に投与される、請求項26若しくは28~31のいずれか一項に記載の使用のための改変されたワクシニアウイルスビリオン又は請求項27~31のいずれか一項に記載の改変されたワクシニアウイルスビリオンを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ウイルスを使用して癌及び/又は細胞増殖性疾患若しくは障害を治療するためのウイルス免疫療法の分野に関する。特に、本発明は、操作された核酸及び遺伝子改変されたワクシニアウイルス並びにそれらを使用して癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害を治療する治療的使用及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新しい治療法の進歩にもかかわらず、多くの癌タイプ(特に固形腫瘍)を有する患者の生存率は、今日の医学における最大の課題の1つとして残っている。
【0003】
腫瘍溶解性ウイルスは、癌、特に現在の従来的療法に耐性を有し得る癌の治療について魅力的な治療法である(Wong et al.,(2010),Viruses 2,78-106)。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞に選択的に感染して複製し、細胞死を引き起こし、自然免疫及び獲得免疫の両方の反応を通して免疫系を刺激する。これは、ウイルス免疫療法として知られており、癌研究で急速に成長している。しかし、異なる腫瘍タイプに対するウイルスの選択的活性を改良するための多大な努力にもかかわらず、ウイルスは、標的細胞に到達して感染する前に免疫系によってインビボで急速に認識及び排除されるため、ウイルス免疫療法には限界がある。ウイルス免疫療法の使用を、ウイルスボーラスを直接注入できる腫瘍だけでなく、より内臓性又は播種性の腫瘍まで拡大するには、この問題に効果的に対処する新しいアプローチが必要である。
【0004】
ワクシニアウイルスは、天然痘に対する免疫付与及び最終的に天然痘の根絶に効果的に使用されてきた。さらに、改変された形態は、ヒト臨床試験で癌の治療又は抗原の送達に有望であると示されている。ワクシニアワクチンがヒト集団から天然痘を根絶することに成功したため、この疾患に対する免疫をつける必要がなくなり、そのため、現在、多くの人がワクシニアウイルスに対する免疫及び抗体を欠いている。このため、ワクシニアは、免疫療法の興味深い選択肢となるが、初回投与時の中和抗体の欠如にもかかわらず、主にウイルスエンベロープに対する自然免疫系の成分の作用により、静脈内投与されると、ワクシニアは、急速に不活性化される。
【0005】
したがって、例えば宿主生物内で生存可能なウイルスを長期間曝露することができる操作されたワクシニアウイルスを提供することにより、癌療法などの治療処置のための改良された系及びウイルスを得ることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術に見られる問題の1つ以上を克服するか又は少なくとも軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的には、本発明は、インビトロ及び/又はインビボでの疾患又は病状の治療に使用され得る、新しい操作されたワクシニアウイルス及びそれをコードする核酸分子、組成物並びに関連する用途及び方法を提供する。特に、本発明は、補体制御タンパク質を、露出したウイルスエンベロープタンパク質との融合体として操作することにより、例えばインビボで全身投与された場合に動物対象の免疫応答を回避できる操作されたウイルスを提供する。したがって、本発明は、対象又は患者の血流中など、インビボでの生存能力が延長されたワクシニアウイルスを提供する。このようにして、本発明の操作されたワクシニア
ウイルスは、感染を維持し、標的の遠位腫瘍細胞に拡散し、標的の遠位腫瘍細胞内に広がるのに十分な期間、インビボで生存し得る。
【0008】
本発明のウイルス、組成物及び方法は、活性剤、特に本発明による治療用ワクシニアウイルスを標的細胞に提供することによって治療可能であり得る、あらゆる疾患の治療に好適であり得る。
【0009】
本発明の組成物及び方法は、癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害の治療に特に有用であり得る。
【0010】
一態様では、融合ポリペプチドをコードする単離された核酸であって、融合ポリペプチドは、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質又はその一部と、少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片とを含む、単離された核酸が提供される。好適には、補体制御タンパク質の機能的断片は、生理系で補体タンパク質の破壊を直接的又は間接的に引き起こすのに十分な全長補体制御タンパク質の断片である。特に、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、A13及びA27又はそれらの一部から選択され得る。最も好適には、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、A13である。
【0011】
様々な実施形態では、少なくとも1つの補体制御タンパク質は、(i)CD35、CD55、CD59、CD46、CR1、H因子、VCP、MOPICE、SPICE、CCPH、C4結合タンパク質、CD35、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスKaposica/KCP、ヘルペスウイルス・サイミリ(HVS)及びHVS-CD59、アカゲザルラジノウイルスRCP-H及びRCP-1、マウスガンマヘルペスウイルス68(γHV-68)RCA、インフルエンザウイルスM1、EMICE及びIMP並びにそれらの改変配列若しくはそれらの機能的断片;又は(ii)CD35、CD55、VCP、変異VCP、SPICE、CCPH及びORF4若しくはそれらの機能的断片からなる群の1つ以上から選択される。
【0012】
実施形態では、少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片は、ワクシニアウイルスMVエンベロープタンパク質の膜貫通領域に融合されている。
【0013】
この態様及び任意の他の態様の実施形態では、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質の膜貫通領域は、H3又はD8ではない。
【0014】
ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質A13は、ワクシニアコペンハーゲンウイルス、ラクダ痘ウイルス、天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、タテラポックスウイルス、サル痘ウイルスZaire-96-I-16、ハタネズミ痘(Volepox)ウイルス、アクメタ(Akhmeta)ウイルス、エクトロメリアウイルス、オルソポックスウイルスAbatinoウイルス、スカンク痘(Skunkpox)ウイルス、アライグマ痘(Raccoonpox)ウイルス、ヨカポックス(Yokapox)ウイルス、ムルマンスク(Murmansk)ポックスウイルス、NY_014ポックスウイルス及びヤバサル腫瘍ウイルス又はそれらの一部からのA13タンパク質配列から選択され得る。ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質A13は、配列番号1~16の1つから選択される配列の少なくともアミノ酸2~21又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含み得る。
【0015】
本開示の様々な実施形態は、VCPに融合されたA13、タンデムに配置された2つのVCPタンパク質に融合されたA13、連続して配置された4つのVCPタンパク質に融合されたA13、変異VCPに融合されたA13、CD55に融合されたA13、CD3
5に融合されたA13、CCPHに融合されたA13若しくはORF4に融合されたA13又はその機能的断片から選択される融合ポリペプチドを提供し;任意選択により、変異VCPは、配列番号31を含むか;CD55は、CD55のアミノ酸35~284を含むか(例えば、配列番号71)、CD35は、CD35のアミノ酸42~1584を含むか(例えば、配列番号72)、CCPHは、CCPHのアミノ酸21~266を含むか(例えば、配列番号73)、又はORF4は、ORF4のアミノ酸22~268を含む(例えば、配列番号74)。実施形態では、VCPタンパク質は、SPICE(配列番号32)、MOPICE(配列番号33)、EMICE(配列番号75、76、特に配列番号76)又はIMP(配列番号77、78、特に配列番号78)から選択されるポックスウイルス補体制御タンパク質又は改変ポックスウイルス補体制御タンパク質である。
【0016】
実施形態では、1つ以上の補体制御タンパク質又はその機能的断片は、A13タンパク質のC末端に融合されている。他の実施形態では、1つ以上の補体制御タンパク質又はその機能的断片は、A27タンパク質のN末端に融合されている。
【0017】
本開示は、本明細書に開示されるものと機能及び/又は配列が類似する(ただし、同一ではない)ポリペプチドをコードする核酸分子を包含する。したがって、配列番号37~46若しくは57~62のいずれか1つの配列を有するポリヌクレオチド又は本明細書に開示される特定の配列のいずれかと少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列が包含される。
【0018】
本開示の態様及び実施形態では、本開示による1つ以上の核酸;特に本明細書に開示される単離された核酸を含む、操作されたワクシニアウイルスベクターが提供される。
【0019】
実施形態では、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質又はその一部と、少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片とを含む融合ポリペプチドをコードする核酸は、対応する野生型ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質遺伝子座の外側の遺伝子座でワクシニアウイルスベクターに挿入されている。例えば、融合構築物は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子座に挿入され得る。様々な実施形態では、挿入の結果として、TK遺伝子は、欠失又は不活性化される。
【0020】
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドをコードする核酸は、対応するワクシニアウイルスエンベロープタンパク質の天然プロモーターに作動可能に連結されている。
【0021】
好適には、実施形態によれば、操作されたワクシニアウイルスゲノムは、コペンハーゲン、ウェスタンリザーブ、ワイス(Wyeth)、リスター又は改変ワクシニア・アンカラ株の1つから選択される。いくつかの実施形態では、ワクシニアウイルス株は、コペンハーゲン又はウェスタンリザーブ株であり;特にコペンハーゲン株である。
【0022】
態様及び実施形態では、本開示による核酸を含む、改変されたワクシニアウイルスビリオンが提供される。
【0023】
態様及び実施形態では、本開示による核酸によってコードされる融合ポリペプチドが提供される。本開示によるポリペプチドは、配列番号47~56若しくは63~68のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有し得る。
【0024】
態様及び実施形態では、本開示による核酸、操作されたワクシニアウイルスベクター、
改変されたワクシニアウイルスビリオン又はポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0025】
様々な実施形態では、本開示の医薬組成物は、全身又は局所若しくは局部投与のために製剤化され得る。
【0026】
改変されたワクシニアウイルスビリオンを含む、本開示の態様及び実施形態による医薬組成物は、(i)1mlあたり約1×10~約1×1015pfu;(ii)1mlあたり約1×10~約1×1014pfu;又は(iii)1mlあたり約1×10~約1×1012pfuの単位用量を提供するように製剤化され得る。
【0027】
本開示は、1つ以上の疾患を治療するための治療用組成物及び方法を提供する。態様及び実施形態では、対象における癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害を治療する方法で使用するための、本開示による操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物が提供される。同様に、態様及び実施形態では、哺乳動物対象における癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害を治療する方法であって、治療有効量の、本開示による操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0028】
本開示による治療用途及び治療方法では、癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害は、肺癌(例えば、肺腺癌)、子宮頸癌、乳癌、心臓癌、結腸癌、前立腺癌、脳神経膠芽腫、膵臓癌、白血病(例えば、急性単球性白血病)、リンパ腫、腎臓癌、結腸直腸癌、膀胱癌、精巣癌、胃腸癌、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)及び/又は神経膠芽腫から選択される。本発明は、皮膚癌(例えば、黒色腫)、頭部及び/又は頸部癌、胆嚢癌、子宮癌、胃癌、甲状腺癌、喉頭癌、唇及び/又は口腔癌、咽頭癌、眼癌並びに骨癌の1つ以上の治療にも有用であり得る。実施形態では、癌は、原発癌、二次癌又は転移であり得る。特に有益な実施形態では、癌は、転移である。
【0029】
本開示による組成物は、対象に全身又は局所投与され得る。好適な投与経路は、皮内、経皮(transdermal)、非経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、局部(例えば、腫瘍の近く、特に腫瘍の血管系又は隣接血管系)、経皮(percutaneous)、気管内、腹腔内、動脈内、膀胱内、腫瘍内、吸入、灌流、洗浄又は経口から選択され得る。実施形態では、治療用組成物は、1つ以上の追加の治療剤又は療法と組み合わせて投与され得る。使用する場合、追加の治療剤又は療法は、本開示の治療用組成物又は医療組成物の投与と同時に、別々に又は連続的に投与され得る。
【0030】
本発明の1つの態様又は実施形態の任意の特徴は、別段の記載がない限り、本発明の他の任意の態様又は実施形態の特徴の任意の組み合わせと組み合わされ得、そのような組み合わせは、特許請求される本発明の範囲内であることが理解されるであろう。したがって、本開示の範囲内において、先の段落、条項及び特許請求の範囲並びに/又は以下の説明及び図面に記載される様々な態様、実施形態、例及び代替形態、特にそれらの個々の特徴は、独立して又は任意の組み合わせで採用され得ることが明示的に意図される。すなわち、全ての実施形態及び/又は任意の実施形態の特徴は、そのような特徴が非両立でない限り、任意の方法及び/又は組み合わせで組み合わされ得る。より具体的には、任意の態様の任意の実施形態が他の任意の態様の実施形態を形成し得、そのような組み合わせは、全て本発明の範囲内に包含されることが具体的に意図される。本出願人は、当初提出した特許請求の範囲を変更するか、又はそれに応じて新しい特許請求の範囲を提出する権利を留保する。これは、当初、そのように特許請求されていなかったとしても、他の特許請求の範囲の特徴に依存し、且つ/又はそれを組み込むように、当初提出した特許請求の範囲を
補正する権利を含む。
【0031】
本発明は、添付の図面によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】補体活性化経路と、補体制御タンパク質ドメイン(ENV-CRP)で構成される操作されたエンベロープタンパク質によるその制御との概略図。
図2】エンベロープタンパク質の分布及び複合体を示すワクシニアウイルスエンベロープの概略図。
図3】様々なワクシニアウイルス種からのA13Lタンパク質の配列アライメント。キー:ref|YP_233014.1|(ワクシニアウイルス;配列番号1);ref|NP_570520.1|CMLV130(ラクダ痘ウイルス;配列番号2);ref|NP_042161.1|VARVgp117(天然痘ウイルス;配列番号3);ref|NP_619928.1|CPXV145タンパク質(牛痘ウイルス;配列番号4);ref|YP_717441.1|タテラポックスウイルス(配列番号5);ref|NP_536551.1|A14L(サル痘ウイルス・ザイール-96-I-16;配列番号6);ref|YP_009281879.1|(ハタネズミ痘ウイルス;配列番号7);ref|YP_010085590.1|(アクメタウイルス;配列番号8);ref|NP_671634.1|EVM116(エクトロメリアウイルス;配列番号9);ref|YP_010085800.1|推定A13Lタンパク質(オルソポックスウイルスAbatinoウイルス;配列番号10);ref|YP_009282825.1|(スカンク痘ウイルス;配列番号11);ref|YP_009143440.1|(アライグマ痘ウイルス;配列番号12);ref|YP_004821469.1|(ヨカポックスウイルス;配列番号13);ref|YP_009408310.1|(ムルマンスクポックスウイルス;配列番号14);ref|YP_009408512.1|NY_014ポックスウイルス(配列番号15);及びref|NP_938359.1|(ヤバサル腫瘍ウイルス;配列番号16)。
図4】様々なワクシニアウイルス種からのA27Lタンパク質の配列アライメント。キー:P20535.1ワクシニアコペンハーゲンウイルスA27(配列番号17);YP_233032.1ワクシニアウイルスA27(配列番号18);NP_619946.1CPXV162牛痘ウイルスA27(配列番号19);NP_570536.1CMLV146ラクダ痘ウイルスA27(配列番号20);NP_042178.1VARVgp134天然痘ウイルス(配列番号21);YP_010085815.1オルソポックスAbatinoウイルス(配列番号22);YP_010085606.1アクメタウイルス(配列番号23);NP_671648.1EVM129エクトロメリアウイルス(配列番号24);YP_717458.1タテラポックスウイルス(配列番号25);NP_536566.1A29Lサル痘ウイルス(配列番号26);YP_009281894.1ハタネズミ痘ウイルス(配列番号27);YP_009143455.1アライグマ痘ウイルス(配列番号28);YP_009282840.1スカンク痘ウイルス(配列番号29)。
図5】ワクシニアウイルスのA13L遺伝子座から本開示の融合タンパク質を発現するための様々なワクシニアウイルス発現カセットの製造を示す概略図。
図6】ワクシニアウイルスのJ2R(TK)遺伝子座から本開示の融合タンパク質を発現するための様々なワクシニアウイルス発現カセットの製造を示す概略図。
図7】ヒト血清インキュベーション後のウイルス感染性アッセイ。(A)親対照ウイルス(WT;左側の列、青色)又は本発明の実施形態によるA13-CD55-V5融合タンパク質をコードするウイルス(vA13-CD55;右側の列、赤色)をヒト血清とともに30分間又は60分間プレインキュベートする。データによると、WTとは対照的に、本発明の操作されたウイルス(vA13-CD55)は、血清媒介性中和に対する耐性が有意に増加し、ヒト血清とのインキュベーション後にはるかに高い感染性を示すことが示される。(B)WT又はvA13-CD55ウイルスに感染した細胞の全細胞溶解物をV5アフィニティータグに対する抗体でプローブして、融合タンパク質の発現を明らかにした。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学及び生化学)の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0034】
別段の指示がない限り、本発明の実施には、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、化学的方法、医薬製剤並びに動物の送達及び治療の従来の技術が採用され、これらは、当業者の能力の範囲内である。このような技術は、文献、例えばJ.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books 1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements;Current Protocols
in Molecular Biology,ch.9,13,and 16,John Wiley&Sons,New York,N.Y.);B.Roe,J.Crabtree,and A.Kahn,1996,DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley&Sons;J.M.Polak and James O’D.McGee,1990,In Situ Hybridisation:Principles and Practice,Oxford University Press;M.J.Gait(Editor),1984,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;and D.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg,1992,Methods of
Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Pressでも説明されている。これらの一般的な文書は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明の理解を促進するために、本明細書ではいくつかの用語が定義される。
【0036】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、線状又は環状の構造の、一本鎖又は二本鎖の形態であるデオキシリボヌクレオチド(DNA)又はリボヌクレオチド(RNA)ポリマーを指す。本発明の目的では、このようなDNA又はRNAポリマーは、天然ヌクレオチド、非天然又は合成ヌクレオチド及びそれらの混合物を含み得る。非天然ヌクレオチドは、天然ヌクレオチドの類似体及び塩基、糖及び/又はリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)が改変されたヌクレオチドを含み得る。改変核酸の例は、PNA及びモルホリノ核酸である。一般的に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対形成特異性を有し、すなわち、Gの類似体は、Cと塩基対形成する。本発明の目的では、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的なものとみなされるべきではない。
【0037】
本明細書で使用される「遺伝子」は、ポリペプチド又はリボ核酸遺伝子産物の産生に関与する核酸(典型的にはDNA)のセグメントである。これには、コーディング領域の前後の領域(リーダー及びトレーラー)及び個々のコーディングセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)が含まれる。好都合には、この用語は、遺伝子発現に必要な制
御配列(例えば、エンハンサー、サイレンサー、プロモーター、ターミネーターなど)も含み、これらは、関連するコード配列並びに遺伝子産物をコードするコード及び/又は転写領域に隣接しているか又はそれから離れていてもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、核酸ベクター、例えばプラスミドなどのDNAベクター、RNAベクター、ウイルス又は他の好適なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)を指すために使用される。外因性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞又は真核細胞に送達するための様々なベクターが開発されている。このような発現ベクターの例は、例えば、国際公開第1994/11026号パンフレットに開示されている。本発明の発現ベクターは、タンパク質の発現及び/又はこれらのポリヌクレオチド配列の、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)などの宿主細胞のゲノムへの組み込みに使用される1つ以上の追加の配列要素を含有し得る。本明細書に記載される抗体及び抗体断片の発現に使用できる例示的なベクターとしては、遺伝子転写を導くプロモーター及びエンハンサー領域などの制御配列を含有するプラスミドが挙げられる。ベクターは、標的遺伝子の翻訳速度を調節するか、又は遺伝子転写の結果として生じるmRNAの安定性若しくは核輸出を改良する核酸を含有し得る。これらの配列要素には、例えば、5’及び3’非翻訳領域、内部リボソーム進入部位(IRES)、ピコルナウイルス2A配列(T2A、F2A、E2A)などのリボソームスキッピング配列並びに発現ベクター上に保有される遺伝子の効率的な転写を導くためのポリアデニル化シグナル部位が含まれ得る。本明細書に記載のベクターは、そのようなベクターを含有する細胞の選択のためのマーカーをコードするポリヌクレオチドも含有し得る。好適なマーカーの例としては、ネオマイシン、ジェネテシン、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン又はノーセオトリシンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「A13L」は、ワクシニアウイルス膜の主成分の1つであるおよそ70アミノ酸のタンパク質をコードするワクシニアウイルス遺伝子を指す(図2、また例えばUnger&Traktman(2004),J Virol.,78(16):8885-8901を参照されたい)。これは、ビリオンの形態形成に不可欠であり、未熟ビリオン(IV)から細胞内成熟ビリオン(IMV)への移行で主要な役割を果たすと考えられている。様々な種におけるA13Lの例には、YP_233014.1ワクシニアウイルス、NP_570520.1 CMLV130ラクダ痘ウイルス;NP_042161.1 VARVgp117天然痘ウイルス;NP_619928.1 CPXV145タンパク質牛痘ウイルス;YP_717441.1タテラポックスウイルス;NP_536551.1 A14Lサル痘ウイルス・ザイール-96-I-16;YP_009281879.1ハタネズミ痘ウイルス;YP_010085590.1アクメタウイルス;NP_671634.1 EVM116エクトロメリアウイルス;YP_010085800.1推定A13Lタンパク質オルソポックスウイルスAbatino;YP_009282825.1スカンク痘ウイルス;YP_009143440.1アライグマ痘ウイルス;YP_004821469.1ヨカポックスウイルス;YP_009408310.1ムルマンスクポックスウイルス;YP_009408512.1 NY_014ポックスウイルス;及びNP_938359.1ヤバサル腫瘍ウイルスが含まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「A27L」は、ワクシニアウイルス膜の主要成分の1つであるおよそ110アミノ酸のタンパク質をコードするワクシニアウイルス遺伝子を指す(図2、また例えばVazquez et al.,(1998),J Virol.,72(12):10126-10137を参照されたい)。これは、細胞内成熟ウイルス(IMV)形態の表面に位置し、細胞外エンベロープウイルス(EEV)の細胞からの放出及びウイルスの拡散の両方に不可欠であると考えられている。様々な種のA27Lの例としては、P20535.1A27_VACCC RecName:全長=14kDa融
合タンパク質;YP_233032.1 IMV表面タンパク質ワクシニアウイルス;NP_619946.1 CPXV162タンパク質牛痘ウイルス;NP_570536.1 CMLV146ラクダ痘ウイルス;NP_042178.1仮想タンパク質VARVgp134天然痘ウイルス;YP_010085815.1推定A27Lタンパク質オルソポックスウイルスAbatino;YP_010085606.1 IMV表面タンパク質アクメタウイルス;NP_671648.1 EVM129エクトロメリアウイルス;YP_717458.1 IMV表面タンパク質タテラポックスウイルス;NP_536566.1 A29Lサル痘ウイルス・ザイール-96-I-16;YP_009281894.1 imv表面タンパク質ハタネズミ痘ウイルス;YP_009143455.1 IMV表面タンパク質アライグマ痘ウイルス;YP_009282840.1 imv表面タンパク質スカンク痘ウイルス;YP_009408527.1 IMV表面タンパク質NY_014ポックスウイルス;YP_009408325.1 IMV表面タンパク質ムルマンスクポックスウイルス;YP_004821484.1 IMV表面タンパク質ヨカポックスウイルス;YP_009408075.1 IMV膜タンパク質、融合Eptesipoxウイルス;YP_008658541.1 IMV細胞付着、融合及び微小管輸送リス痘(Squirrelpox)ウイルス;YP_009389390.1推定融合タンパク質様タンパク質アザラシパラポックスウイルス;YP_009177162.1A型封入体様/融合タンパク質シチメンチョウ痘ウイルス;YP_009112843.1推定融合タンパク質パラポックスウイルス・アカシカ/HL953;YP_009268837.1 imv表面タンパク質、融合タンパク質Pteropoxウイルス;NP_044084.1 MC133L伝染性軟属腫ウイルスサブタイプ1;YP_009480655.1 IMV表面タンパク質ラッコポックスウイルス;NP_957881.1 ORF104融合タンパク質Orfウイルス;YP_010085255.1 P4c前駆体クロカンガルー痘(Western grey kangaroopox)ウイルス;YP_010085419.1 P4c前駆体オオカンガルー痘(Eastern grey kangaroopox)ウイルス;NP_955288.1 CNPV265 A型封入体様/融合タンパク質カナリア痘ウイルス;YP_009046422.1 A型封入体タンパク質鳩痘ウイルス;YP_009046188.1
A型封入体タンパク質ペンギン痘(Penguinpox)ウイルス;YP_009448114.1A型封入体タンパク質フラミンゴ痘(Flamingopox)ウイルスFGPVKD09;NP_039154.1 A型封入体タンパク質鶏痘(Fowlpox)ウイルス;NP_958013.1 ORF104融合タンパク質ウシ丘疹性口内炎ウイルス;YP_005296322.1 MV付着タンパク質コチア(Cotia)ウイルスSPAn232;YP_003457410.1ウイルス融合ペプチド偽牛痘ウイルス;YP_009329750.1推定融合タンパク質BeAn 58058ウイルス;NP_570274.1仮想タンパク質SWPVgp114豚痘ウイルス;NP_150551.1仮想タンパク質LSDVgp117塊皮病ウイルスNI-2490;NP_073502.1 117Lタンパク質ヤバ様疾患ウイルス;YP_227501.1融合タンパク質鹿痘(Deerpox)ウイルスW-848-83;NP_938372.1仮想タンパク質YMTVg117Lヤバサル腫瘍ウイルス;NP_052004.1仮想タンパク質SFV_s115Lウサギ線維腫ウイルス;NP_659689.1仮想タンパク質SPPV_112羊痘ウイルス;YP_001293308.1仮想タンパク質GTPV_gp112山羊痘ウイルスPellor;NP_051829.1仮想タンパク質MYXV_gp119粘液腫ウイルスが挙げられる。
【0041】
本明細書では、「VCP」は、ワクシニアウイルスに感染した細胞の表面から分泌され、発現する主要なタンパク質であるおよそ243アミノ酸のタンパク質をコードするワクシニアウイルス遺伝子を指す(Girgis et al.,(2008),J Virol.,82(9):4205-4214)。これは、補体活性化の制御因子と配列が類似しており、天然痘ウイルスによってコードされる天然痘補体酵素阻害剤(SPICE)
及びサル痘補体酵素阻害剤(MoPICE)と相同性がある(Liszewski et
al.,(2006),J Immunol.,176(6):3725-3734)。その役割は、古典的及び代替的経路の両方で産生される補体を阻害することにより、宿主の補体系による攻撃からウイルスを守ることである(図2、また例えばSahu et
al.,(1998),J Immunol.,160(11):5596-5604を参照されたい)。様々な種のVCPの例としては、YP_232907.1分泌補体結合C3b/C4b C3Lワクシニアウイルス:NP_570413.1分泌補体結合タンパク質ラクダ痘ウイルス:NP_042056.1分泌補体結合タンパク質D15L B19L SPICE天然痘ウイルス:NP_619823.1 CPXV034牛痘ウイルス:NP_671535.1分泌補体結合タンパク質エクトロメリアウイルス:YP_010085695.1推定C3Lタンパク質オルソポックスウイルスAbatino:YP_010085478.1補体結合タンパク質アクメタウイルス:NP_536444.1 D14L MOPICEサル痘ウイルス・ザイール-96-I-16:YP_009282718.1補体結合スカンク痘ウイルス:YP_009281772.1補体結合ハタネズミ痘ウイルス:YP_009143334.1分泌補体結合タンパク質C3b/C4bアライグマ痘ウイルス:YP_717333.1分泌タンパク質タテラポックスウイルス:YP_005296214.1補体結合タンパク質コチアウイルスSPAn232:YP_009408407.1補体結合NY_014ポックスウイルス:YP_009408205.1補体結合ムルマンスクポックスウイルス;NP_051858.1 m144R粘液腫ウイルスが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヘルペスウイルス補体制御タンパク質」とは、NP_570746.1補体結合タンパク質マカクガンマヘルペスウイルス5;NP_040205.1補体制御タンパク質相同体リスザルガンマヘルペスウイルス2;YP_010084365.1 ORF4後腹膜線維腫症関連ヘルペスウイルス;NP_040206.1補体制御タンパク質相同体リスザルガンマヘルペスウイルス2;NP_047979.1補体制御タンパク質相同体ccphクモザルガンマヘルペスウイルス3;YP_010084544.1 ORF4ブタオザルラジノウイルス2;YP_010084543.1
ORF4Aブタオザルラジノウイルス2;YP_009551812.1仮想タンパク質キクガシラコウモリガンマヘルペスウイルス1;YP_238307.1 JM4ニホンザルラジノウイルス;YP_001129351.1 ORF4;KCPヒトガンマヘルペスウイルス8;YP_009408125.1分泌補体結合タンパク質C3b/C4b Eptesipoxウイルス;YP_009229839.1補体制御タンパク質様タンパク質ホオヒゲコウモリガンマヘルペスウイルス8;YP_009552470.1補体制御タンパク質オオクビワコウモリガンマヘルペスウイルス;NP_044845.1補体制御タンパク質ネズミ科ガンマヘルペスウイルス4;YP_010085882.1補体制御タンパク質アカネズミヘルペスウイルス;YP_004207839.1補体制御タンパク質キヌゲネズミガンマヘルペスウイルス2;YP_004207845.1補体制御タンパク質キヌゲネズミガンマヘルペスウイルス2などのヘルペスウイルスによって発現される補体制御タンパク質(VCPに類似)である。
【0043】
本発明に関連して、「アミノ酸」という用語は、最も広い意味で使用され、天然に存在するL α-アミノ酸又は残基を含むことを意味する。本明細書では、天然アミノ酸の一般的に使用される1文字及び3文字の略語が使用される:A=Ala;C=Cys;D=Asp;E=Glu;F=Phe;G=Gly;H=His;I=Ile;K=Lys;L=Leu;M=Met;N=Asn;P=Pro;Q=Gln;R=Arg;S=Ser;T=Thr;V=Val;W=Trp;及びY=Tyr(Lehninger,A.L.,(1975)Biochemistry,2d ed.,pp.71-92,Worth Publishers,New York)。「アミノ酸」という一般的用語は、D-アミノ酸、レトロインベルソアミノ酸並びにアミノ酸類似体などの化学的に改変さ
れたアミノ酸、ノルロイシンなど、通常、タンパク質に組み込まれない天然アミノ酸及びβ-アミノ酸などのアミノ酸に特徴的であることが当技術分野で知られている特性を有する化学合成化合物をさらに含む。例えば、天然のフェニルアラニン又はプロリンと同じペプチド化合物の立体構造的制限を可能にするフェニルアラニン又はプロリンの類似体又は模倣体は、アミノ酸の定義に含まれる。このような類似体及び模倣体は、本明細書では、それぞれのアミノ酸の「機能的均等物」と呼ばれる。アミノ酸の他の例は、参照により本明細書に組み込まれるRoberts and Vellaccio,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,Gross and Meiehofer,eds.,Vol.5 p.341,Academic Press,Inc.,N.Y.1983に列挙されている。
【0044】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、(例えば、本開示のウイルスエンベロープタンパク質又は融合タンパク質に関連して)線状又は環状の鎖で一緒に結合された複数のアミノ酸を指す。オリゴペプチドという用語は、典型的には、2~約50個以上のアミノ酸を有するペプチドを表すために使用される。約50アミノ酸よりも大きいペプチドは、多くの場合、ポリペプチド又はタンパク質と呼ばれる。しかし、本発明の目的では、「ペプチド」という用語は、特定のアミノ酸数に限定されず、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語と互換的に使用される。
【0045】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド/タンパク質に関連して、「キメラ」又は「融合」という用語は、少なくとも互いに共有結合(例えば、C末端とN末端)した第1及び第2のポリペプチド配列を含むポリペプチド配列を指し、第1及び第2のポリペプチド配列は、天然には同じポリペプチド/タンパク質内に存在しない。第1及び第2のポリペプチド配列は、それぞれ単一のタンパク質ドメインであり得るか、又は機能を実行するために組み合わされる複数のタンパク質ドメインを含み得る。典型的には、このような第1及び第2のポリペプチド配列は、任意の好適な長さを有し得るが、典型的には5~50アミノ酸であるアミノ酸/ペプチドリンカーによって互いに結合される。有益には、このようなペプチドリンカーは、比較的不活性であり、すなわち融合タンパク質の機能又は第1及び第2のポリペプチド配列の機能に干渉せず、Gly及び/又はSer残基を支配的に含み得る。同様に、「キメラ」又は「融合」という用語は、キメラ又は融合ポリペプチド/タンパク質をコードする核酸/ポリヌクレオチド配列を指すためにも使用され得る。
【0046】
「補体制御因子タンパク質」又は「補体制御タンパク質」は、ヒト及び動物で(自然)免疫の補体系が過剰活性化して自己組織に害を及ぼさないように制御する役割を果たすタンパク質である。C1阻害剤、C4b結合タンパク質、H因子、B、D及びIなどの可溶性の制御タンパク質がいくつか存在する。さらに、膜結合型補体制御タンパク質(mCRP)は、CD35(補体受容体1、CR1)、CD46(膜補因子タンパク質、MCP)、CD55(崩壊促進因子、DAF)及びCD59(プロテクチン)を含む別の補体制御メカニズムを提供する。補体制御タンパク質は、人体の全ての細胞で発現するが、これらのmCRPの発現は、組織タイプによって異なる。体内では、異なる組織が異なる免疫相互作用に直面するため、組織タイプ間のmCRP発現も変化し得るという仮説が立てられている(Qin et al.,(2001),Mamm.Genome,12:582-589)。
【0047】
本開示に関連して、「個体」、「対象」又は「患者」という用語は、医学的(病理学的)状態に罹患している可能性があり、本開示の分子、組成物、方法、使用、医学的処置又は治療処置レジメンに応答し得る動物を示すために互換的に使用される。動物は、好適には、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、コウモリ、マウス又はラットなどの哺乳動物である。特に、対象は、ヒト、ウサギ又はマウスであり得、特にヒトである。
【0048】
本開示のウイルス、核酸、組成物又は薬剤は、1つ以上の疾患、感染症又は障害を治療するために使用され得る。本明細書では、疾患の状態又は病状に関連して使用される「治療する」、「治療すること」又は「療法」という用語は、治療される疾患又は障害の有害作用を治癒、阻害、緩和、低減又は予防するのに療法が有効であるか、又は生理学的若しくは生化学的に検出可能な効果を達成するのに十分であるような疾患若しくは病状又は病原性症状の重症度の軽減を指す。したがって、疾患又は障害に関して、改善、阻害又は予防効果が達成され得る。様々な実施形態では、このような治療には、腫瘍細胞の腫瘍溶解若しくは死滅、腫瘍細胞の成長若しくは転移の阻害、腫瘍サイズの減少及び/又は他に腫瘍細胞の悪性表現型の逆転若しくは軽減が含まれ得る。例えば、癌の治療において、腫瘍成長は、最大約100%、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%又は最大約10%低減され得る。実施形態では、腫瘍成長は、約10%~約90%、約20%~約80%又は約30%~約70%低減され得る。したがって、いくつかの実施形態では、ウイルス、核酸、ペプチド又は組成物(すなわち本開示による治療剤)は、医薬に製造され得るか、又は医薬組成物に組み込まれる得るか若しくは医薬組成物に製剤化され得る。
【0049】
ワクシニアウイルス
ワクシニアウイルスは、オルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)又はポックスウイルス(Poxviridae)科、コードポックスウイルス(Chordopoxvirinae)亜科及びオルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)属に属する。オルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)属は、コードポックスウイルス(Chordopoxvirinae)亜科の他のメンバーよりも均質であり、ワクシニアウイルス、天然痘ウイルス(天然痘の原因物質)、牛痘ウイルス、水牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、マウス痘ウイルス及び馬痘ウイルス種並びに他のものを含む、異なるが、密接に関連する11種を含む(Moss,1996を参照されたい)。本明細書に記載されるように、本発明の特定の実施形態は、オルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)属の他のメンバー並びにパラポックスウイルス(Parapoxvirus)属、アビポックスウイルス(Avipoxvirus)属、カプリポックスウイルス(Capripoxvirus)属、レポリポックスウイルス(Leporipoxvirus)属、スイポックスウイルス(Suipoxvirus)属、モルシポックスウイルス(Molluscipoxvirus)属及びヤタポックスウイルス(Yatapoxvirus)属にも拡張され得る。コードポックスウイルス(Chordopoxvirinae)亜科の属は、一般的に、実験動物における中和及び交差反応性を含む血清学的手段によって定義される。
【0050】
ワクシニアウイルスは、約190kbpの線状二本鎖DNAゲノムを有し、およそ250の遺伝子をコードする大きいエンベロープウイルスである。ワクシニアは、DNAウイルスとしては珍しく、宿主細胞の細胞質内でのみ複製されるため、非組み込み型ベクターである。ワクシニアゲノムは、ウイルスDNA複製に必要な酵素及びタンパク質をコードする。複製中、ワクシニアは、外膜の構成が異なるいくつかの感染形態:細胞内成熟ビリオン(IMV、成熟ビリオン、MVとしても知られる)、細胞内エンベロープビリオン(IEV)、細胞関連エンベロープビリオン(CEV)及び細胞外エンベロープビリオン(EEV、細胞外ビリオンEVとしても知られる)を産生する。IMVは、最も感染力の強い形態であり、宿主間の拡散の原因であると考えられている。一方、CEVは、細胞間の拡散において役割を果たしていると考えられており、EEVは、宿主生物内での長距離伝播に重要であると考えられている。
【0051】
ワクシニアウイルス免疫療法
ワクシニアウイルスを治療に使用する利点としては、ワクシニアベクターがウイルス欠
失を必要とせずに最大25kbの外来DNAを運び得ること;一次培養物及び多くの異なる細胞株への感染を可能にする広い宿主範囲を有すること;細胞質複製を示すこと;及びウイルスゲノムが一次転写物をスプライシングしないことが挙げられる。宿主細胞内でのウイルスの複製は、ウイルス放出時に細胞溶解を引き起こす。
【0052】
臨床ウイルス免疫療法ベクターとしてのワクシニアウイルスの使用は、癌治療に有望であることが示されているが、効率的な全身送達及びウイルス拡散の欠如により、これまでのところ、臨床的な成功は、わずかにのみ達成されてる。典型的には、ウイルス免疫療法ベクターは、(a)静脈注射により全身投与するか、(b)腫瘍の近くに接種するか(「局所領域」送達)又は腫瘍に直接注入する(「腫瘍内送達」)ことによって局所投与され得る。ウイルスの全身投与は、原発腫瘍と、播種性の診断されていない可能性のある転移性病巣との両方を同時に治療するのに有益であろう。しかし、ウイルス免疫療法は、全身送達後の活性が低いため、局所注射で到達できる腫瘍に有効性が制限される。この急速な不活性化は、主に非免疫の、抗原刺激を受けていない個体の自然免疫応答の結果である。補体系は、自然免疫応答の主要な調整役であり、病原体に対する重要な防御メカニズムであり、ウイルス膜を認識し、免疫細胞による認識又はウイルス溶解をもたらすオプソニン化を行う。エンベロープを有するRNA及びDNAウイルスは、補体カスケードの作用に対して特に感受性である。
【0053】
転移は、癌患者の死亡の主な原因であるため、ウイルスが原発腫瘍の血管の奥深くまで達することができるか又は播種性転移に達することができるように、血流中での不活性化を回避するためのよりよい解決策が必要である。したがって、ワクシニアウイルスの不活性化を十分に制御できる方法により、活性な治療用ウイルスの、腫瘍内の標的細胞への送達の向上が可能になり、癌の治療に大きい利益をもたらす。さらに、腫瘍内への送達は、注入前に病変組織を正確に画像化し、位置を特定する必要があり、また腫瘍内の間質圧が高いために針を介した局所送達が妨げられ、注入点で漏れ出す可能性があるため、複雑である。したがって、全身送達の利便性及び治療の活性向上と併せて、宿主の免疫系を回避できる改変されたワクシニアウイルスにより、改良されたワクシニア療法が達成され得る。
【0054】
したがって、補体攻撃に対してより頑強であり、したがって全身に送達され、腫瘍内の感染点から遠位転移までより容易に拡散できる操作されたワクシニアウイルスが喫緊に必要とされている。本発明は、この需要に対処し、腫瘍を標的としたウイルスの全身送達、腫瘍内及び腫瘍間のウイルス拡散並びに腫瘍特異的なウイルスの複製の強化を促進するためのウイルスタンパク質、特にウイルスエンベロープタンパク質の改変により、ワクシニアウイルスの全身送達に対する解決策を提供する。有利には、本開示の改変及び操作されたウイルスは、ウイルス免疫療法のための全身送達用のプラットフォームベクターとして利用することができる。
【0055】
ワクシニアウイルスの異なる株のものを含むポックスウイルスのゲノムの多くは、配列決定されている。ワクシニアウイルスウェスタンリザーブ(WR)株のゲノムは、218個の潜在的なオープンリーディングフレームを含有する。細胞内成熟ビリオン(IMV)のタンパク質を分析したところ、構造タンパク質、酵素、転写因子を含む少なくとも81のウイルスタンパク質を含有することが示され、これには、A2.5L、A3L、A4L、A5R、A6L、A7L、A9L、A10L、A12L、A13L、A14L、A14.5L、A15L、A16L、A17L、A18R、A21L、A22R、A24R、A25L、A26L、A27L、A28L、A29L、A30L、A31R、A32L、A42R、A45R、A46R、B1R、C6L、D1R、D2R、D6R、D7R、D8L、D11L、D12L、D13L、E1L、E4L、E6R、E8R、ElOR、E11L、F8L、F9L、F10L、F17R、G1L、G3L、G4L、G5R、G5.
5R、G7L、G9R、H1L、H2R、H3L、H4L、H5R、H6R、I1L、I2L、I3L、I5L、I6L、I7L、I8R、J1R、J3R、J4R、K4L、L1R、L3L、L4R、L5R、02Lが含まれる。これらの中には、結合、ビリオン融合及び構造的完全性に関与する重要なタンパク質がある。それらの知られた機能には、4つの付着タンパク質A27、H3、D8、A26;11個の構成要素A16、A21、A28、G3、G9、H2、J5、L5、O3、L1及びF9のエントリー融合複合体(EFC)並びにA13などの構造タンパク質が含まれる。A27L、H3L、L1R及びD8Lによってコードされるタンパク質は、主要な免疫原性タンパク質として同定されており、適応免疫系による中和を回避するためにこれらのタンパク質を操作することに集中的な努力がなされてきた(例えば、国際公開第2020/086423A1号パンフレットを参照されたい)。タンパク質A27、H3及びD8は、宿主のグリコサミノグリカン(GAG)、ヘパラン硫酸(HS)及びコンドロイチン硫酸(CS)に結合し、ウイルスの宿主細胞へのエンドサイトーシスを媒介する接着分子である。L1タンパク質は、ウイルス成熟に関与している。
【0056】
オルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)属の様々なメンバー及びコードウイルス(Chordovirinae)亜科の他のメンバーは、本明細書に示されるように、エンベロープタンパク質で保存性を示す(それぞれA13及びA27の配列アライメントを示す図3及び4を参照されたい)。
【0057】
ウイルスのEEV形態は、感染初期に放出され、成熟ビリオンのものに加えて、宿主補体タンパク質CD46、CD55、CD59(Vanderplasschen et al.(1998)PNAS)及びMHCIなどの他のタンパク質を隔離することにより、ウイルスを補体から保護する追加の膜を有する。EEVエンベロープ上のA56は、分泌ワクシニア補体制御タンパク質VCPとジスルフィド結合して、ウイルスの補体媒介性破壊をさらに低減することもできる。これにより、より広範囲に拡散し、新たな組織に感染する能力がウイルスに提供されると考えられている。対照的に、IMVには、補体を回避する天然の又は獲得した能力が全くなく、ウイルスエンベロープ又はエンベロープに関連するタンパク質の改変は、パッケージングに影響を与え、標的細胞に対するウイルスの感染性を低下させる可能性がある。その結果、これらのタンパク質を改変する多くの試みは、生存可能なウイルスを生成することに失敗している(Paul et al.,(2007),Viral Immunol.)。
【0058】
本開示は、免疫系、例えば宿主動物対象の自然免疫系を回避する能力が向上した、操作されたワクシニアウイルスを提供する。本開示は、好適に操作された任意の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス株を包含する。本開示に従って使用され得る潜在的なワクシニアウイルスゲノムには、Abatino macacapoxウイルス、アクメタウイルス、ラクダ痘ウイルス903、ラクダ痘ウイルスCMG、ラクダ痘ウイルスCMS、ラクダ痘ウイルスCP1、ラクダ痘ウイルスCP5、ラクダ痘ウイルスM-96、牛痘ウイルス(Brighton Red)、牛痘ウイルス(GRI-90株)、牛痘ウイルス(ハンブルク-1985株)、牛痘ウイルス(トルクメニア-1974株)、ゾウ痘(Elephantpox)ウイルス、ベロオリゾンテウイルス、エクトロメリアウイルスERPV、エクトロメリアウイルス・モスクワ、エクトロメリアウイルスNaval、エクトロメリアウイルスWH、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)オルソポックスウイルス、サル痘ウイルス(シエラレオネ70-0266株)、サル痘ウイルス(ザイール77-0666株)、サル痘ウイルス・ザイール-96-I-16、アライグマ痘ウイルス、スカンク痘ウイルス、タテラポックスウイルス、Aracatubaウイルス、バッファローポックス(Buffalopox)ウイルス、Cantagaloウイルス、Guarani P1ウイルス、Guarani P2ウイルス、馬痘ウイルス、改変ワクシニア・アンカラウイルス、ウサギ痘(Rabbitpox)ウイルス、ウサギ痘
ウイルス・ユトレヒト、SPAN 232ウイルス、ワクシニアウイルスAcambis
3000 MVA、ワクシニアウイルス・アンカラ、ワクシニアウイルス・コペンハーゲン、ワクシニアウイルス・大連I、ワクシニアウイルスGLV-1h68、ワクシニアウイルスIHD-J、ワクシニアウイルスL-IPV、ワクシニアウイルスLC16M8、ワクシニアウイルスLC16MO、ワクシニアウイルス・リスター、ワクシニアウイルスLIVP、ワクシニアウイルス・マリアナ、ワクシニアウイルス・タシケント、ワクシニアウイルスTian Tan、ワクシニアウイルスWAU86/88-1、ワクシニアウイルスウェスタンリザーブ、ワクシニアウイルスWR、ワクシニアウイルスWR 65-16、ワクシニアウイルス・ワイス、天然痘(Variola major)ウイルス、天然痘(Variola minor)ウイルス、天然痘ウイルス・ヒト/インド/Ind3/1967、ハタネズミ痘ウイルス、アラスカポックスウイルス、クジラポックスウイルス1、イルカポックスウイルス1、クジラポックスウイルス2、牛痘ワクシニアウイルス、ネコポックスウイルスITA1_PG、ネコポックスウイルスITA2_BC、オルソポックスウイルスGCP2010、オルソポックスウイルスGCP2013、オルソポックスウイルスNY99014/1999、オルソポックスウイルスOH08/2008、オルソポックスウイルスTena Dona、オルソポックスウイルスVPXV_CA85、オルソポックスウイルスWA01960/2001、トドポックスウイルス、オルソポックスウイルス種(NCBI分類データベースに記載)が含まれる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示に従う使用のためのワクシニアウイルスは、コペンハーゲン、ウェスタンリザーブ、ワイス、リスター又は改変ワクシニア・アンカラ株に基づく。有益には、遺伝子改変ウイルスは、コペンハーゲン又はウェスタンリザーブウイルス株に基づき、特にコペンハーゲン由来のワクシニアウイルスである。このような操作されたウイルスは、様々な癌の治療のための使用及び方法について好適に提供され得る。本明細書に記載されるワクシニアウイルスは、哺乳動物患者(例えば、ヒト患者)などの患者に投与して、広範な癌を含む様々な細胞増殖障害を治療することができる。
【0060】
改変されたワクシニアウイルス
ワクシニアウイルス及びワクシニアウイルスゲノムの改変に関する研究により、癌療法に効果を示す多数の操作/改変されたウイルスが特定されている。
【0061】
野生型のワクシニアウイルスは、腫瘍選択性を有しないが、ウイルス株は、ウイルスチミジンキナーゼ(遺伝子J2R)又はリボヌクレオチド還元酵素(F4L)などの遺伝子の不活性化変異又は欠失により、癌細胞に対する選択性のために改変されている。
【0062】
例えば、操作されたワクシニアウイルスは、ワクシニアウイルス遺伝子:C2L、C1L、N1L、N2L、M1L、M2L、K1L、K2L、K3L、K4L、K5L、K6L、K7R、J2R、F1L、F2L、F3L、B14R、B15R、B16R、B17L、B18R、B19R、B20R、K ORF A、K ORF B、B ORF E、B ORF F、B ORF G、B21R、B22R、B23R、B24R、B25R、B26R、B27R、B28R及びB29Rの1つ以上又は全てに欠失が含まれるように操作された場合、著しく改良された腫瘍溶解活性、腫瘍内複製、感染性、免疫回避、腫瘍持続性、外来DNA配列の組み込み能力及び大規模製造への適合性の1つ以上を示すことが特定されている(例えば、国際公開第2019/134049号パンフレットを参照されたい)。したがって、本開示の態様及び実施形態は、上記遺伝子の1つ以上の欠失を含む、操作されたワクシニアウイルス又はウイルス核酸ゲノムに関し、すなわちワクシニアウイルスの腫瘍溶解活性を高めるために様々な野生型ワクシニアウイルス遺伝子が欠失されている。様々な実施形態では、上記遺伝子の少なくとも1つが組換えワクシニアウイルスゲノムから欠失される。様々な実施形態では、上記の遺伝子の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上が組換えワクシニアゲノムから欠失される。
【0063】
様々な実施形態では、改変されたワクシニアウイルスは、少なくともB8R遺伝子の欠失を含有する。ワクシニアウイルスB8R遺伝子は、ガンマインターフェロン受容体(IFN-g)に対して相同性を有する分泌タンパク質をコードする。B8Rタンパク質は、インビトロで、ヒト及びラットガンマインターフェロンを含むいくつかの種のガンマインターフェロンに結合し、その抗ウイルス活性を中和する。B8R遺伝子の欠失は、マウスでは不活性である一方、ヒトではIFNガンマの機能障害を防ぐ。したがって、B8R遺伝子の欠失により、免疫原性の低下を伴うことなく安全性が向上する。
【0064】
本開示の操作されたウイルス又はウイルスゲノムが1つ以上の内因性遺伝子の欠失を含む場合、本明細書の他の箇所で説明されているように、例えば相同組換え又は他の好適なメカニズムにより、1つ以上の異種遺伝子、発現構築物又はポリヌクレオチド配列がゲノムに挿入され得ることが理解されるであろう。
【0065】
腫瘍溶解療法における使用のためのワクシニアウイルスに対する様々な有益な改変は、当業者に知られており、そのいくつかが本開示で説明されるが、当業者にとって有用且つ明白であり得る他のいかなる改変も本明細書で想定される。
【0066】
ワクシニアウイルスを腫瘍溶解性ウイルスとして試験するいくつかの現在の臨床研究は、ウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子に欠失を有する。この欠失により、ウイルスが弱毒化され、DNA複製及びウイルス増殖について細胞チミジンキナーゼの活性に依存するようになる。細胞チミジンキナーゼは、大半の正常組織では低レベルで発現するが、多くの癌細胞では高レベルで発現する。このような代謝標的化により、TKウイルスは、高い代謝率を有する細胞(例えば、健康細胞又は腫瘍細胞)で効率的に成長し、チミジンキナーゼのレベルが低い細胞では十分に成長しない。しかし、一部の腫瘍細胞は、静止状態にあるため(例えば、癌幹細胞)、一部のTKウイルスは、全ての癌細胞集団を死滅させることができない可能性がある。実際に、多くの化学療法薬もこのような静止細胞に対してほとんど効果がない。
【0067】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の操作されたワクシニアウイルスベクター及びウイルスは、急速に分裂する細胞(特に癌細胞)に対する活性(例えば、優先的な複製)を促進するために、TK遺伝子を欠くか又はTK遺伝子を無効化若しくは不活性にし得る。一方、いくつかの代替的実施形態では、本開示の操作されたウイルスベクター及びウイルスは、静止癌細胞における増殖/複製を可能にするためにTKを含み得る。
【0068】
さらなる実施形態では、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、ワクシニアウイルス成長因子(VGF)も欠くように(又はいくつかの実施形態では代替的に)操作され得る。VGFは、感染プロセスの初期に産生される分泌タンパク質であり、これは、周囲の細胞を感染について予備刺激するマイトジェンとして作用する。したがって、いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、VGF及びTK活性の両方を欠くように操作され得る。
【0069】
リボヌクレオチド還元酵素(F4L又はRR)など、他のいくつかのワクシニアウイルス遺伝子における欠失も生成されている。実際に、RR及び/又はVGFなどのウイルス遺伝子をTKとともに二重(又は三重)欠失すると、ワクシニアウイルスの厳密な腫瘍特異性が付与されることが示されている。
【0070】
様々な異なる改変されたワクシニアウイルス株が開発されており、本発明の基礎となるワクシニアウイルスゲノムが提供され得る。臨床段階及び前臨床段階の好適なワクシニアウイルスの例としては、例えば、TKが欠失したワイス株のPexa-Vec(JX-5
94);TK VGFが欠失したウェスタンリザーブ株のvvDD;TK、F14.5L及びA65Rが欠失したリスター株のLV-1 h68;TKが欠失したTiantan
Guang9株のVG9-GMCSF;F4L及びTKが欠失したウェスタンリザーブ株のΔF4LΔJ2R;TKが欠失した反復選択によって単離されたワイス由来株のCVV;TKが欠失したワイス、改変Ankara、ウェスタンリザーブ及びCopenhagen株のキメラウイルスのdeVV5が挙げられる。他の好適な候補ワクシニアウイルスには、例えば、米国特許出願公開第20190218522A号明細書に開示されているもの(CF33ウイルスなど)が含まれる。
【0071】
様々な実施形態では、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、E3L、K3L、B18R又はB8Rなどの宿主インターフェロン(IFN)応答の回避に関与する1つ以上の遺伝子を欠くように操作され得る。B18Rは、分泌I型IFNを中和することが知られている。抗アポトーシスウイルス遺伝子を改変する他の改変は、SPI-1及び/又はSPI-2の欠失である。癌選択的腫瘍溶解剤としての使用のためのウイルスの弱毒化には、Lister株のF14.5L及びJ2Rの背景におけるA56R(ヘマグルチニン)の欠失が含まれる。脱キャップ酵素D9及びD10を除去することによってmRNAの崩壊を促進する戦略も宿主防御の活性化を制限するために使用されている。代謝、増殖及びシグナル伝達経路でタンデムに作用する複合欠失であるウェスタンリザーブウイルス・デルタ4(A48R、B18R、C11R及びJ2R)も生成されている(例えば、Guo et
al.(2019),J.Immunotherapy Cancer,7,6を参照されたい)。
【0072】
補体媒介性中和を克服するためのワクシニアウイルスの改変
補体は、自然免疫系の重要な構成要素であり、中和及び循環系からのクリアランスに関してウイルスを標的とする(図1)。補体の不存在下で天然痘に対する中和効果が低下することで実証されるように、補体は、抗体の効力を増強する。したがって、補体は、ワクシニアウイルスに対する自然免疫応答で非常に重要である。補体成分C1は、ウイルスエピトープに結合した抗体のFc領域を認識し、タンパク質の酵素カスケードを活性化し、その結果、C3転換酵素C4b2bが形成され、C3が切断され、オプソニンC3b断片が表面に沈着する。代わりに、C3は、内部のチオエステル結合の加水分解及び病原体の表面のヒドロキシル基又はアミノ基との反応によって自然に活性化され得る。結合したC3bは、貪食細胞のオプソニンとして且つC3転換酵素C3bBb(補体活性化の代替経路)の構成要素として機能する。C3bのさらなる切断及び結合により、C5転換酵素の形成、C5の切断、膜攻撃複合体(C5b、6、7、8、9)の組み立てが起こり、ワクシニアエンベロープなどの脂質二重層が破壊される。
【0073】
C3bは、正常な細胞膜に結合し得、抑制されていない活性化は、不適切な炎症を引き起こし得る。したがって、動物には、補体活性化を調節するメカニズムが存在する。ヒトでは、補体は、いくつかの補体活性化膜調節因子(RCA)によって負に制御され得る。RCAは、異なる方法(C及び35(補体受容体1)とCD55(崩壊促進因子)とによるC3転換酵素の形成阻害及び崩壊促進;C3転換酵素C4b2a及びC3bBbの形成を阻害するために、制御タンパク質であるH因子及びI因子の補因子としての役割を果たすCD35とCD46(膜補因子タンパク質)との作用を介してC3bとC4bとを異化すること、並びにCD59活性によって膜攻撃複合体の形成を防ぐこと)により、補体活性化を下方制御する。細胞外エンベロープワクシニアウイルス(EEV)は、これらのタンパク質をそのウイルスエンベロープ内に隔離することで補体に対して耐性であり、CD55をIMVのA27に組み込むことで一定の補体保護が得られることが報告されている。
【0074】
14kDaのA27タンパク質は、N末端ドメイン(残基21~30)を介して宿主細
胞表面のHS受容体に結合し、C末端ドメインを介してエンベロープタンパク質A17と相互作用してワクシニアウイルスエンベロープに付着する(図2を参照されたい)。しかし、A27は、ウイルスのライフスタイルで複数の役割を有し、特に、A27は、ウイルスの結合、融合並びにIMVの細胞内輸送及びラッピングに関与している。A27L欠失変異体は、IMV産生を欠損しないが、そのEFCは、極性を失う。これは、このような欠失バリアントが、野生型(WT)ビリオンよりも細胞間融合を媒介する能力が8倍低い理由の根底にあると考えられる(Gray et al.,2019)
【0075】
A27がワクシニアウイルスのライフサイクルで果たす役割は多岐にわたるため、コードされたタンパク質に対する何らかの変化は、1つ以上のワクシニアウイルスの機能に有害であり得る。
【0076】
しかし、驚くべきことに、本明細書に開示されているように、A27の特定の変異は、補体回避という有益な効果をもたらすと同時に、ウイルスの成長及び/又は感染性の好適なレベルを維持できることが見出された。したがって、本開示は、有益には、A27機能に有害ではなく、したがってウイルス感染性の喪失又は望ましくない凝集をもたらさない、A27とともに補体阻害剤を含む融合/キメラタンパク質(及びそれをコードする核酸)を提供する。本開示の様々な実施形態は、A27のN末端に融合された改変された天然ワクシニアウイルス補体制御タンパク質VCPと、コード化核酸分子、特に天然A27Lプロモーターに作動可能に連結されるか又はその制御下にある、核酸又は遺伝子をコードする核酸分子とを提供する。さらに、本発明は、このような融合/キメラA27L遺伝子を含む、操作されたウイルスゲノム及び操作されたウイルス粒子を提供する。このような操作されたワクシニアウイルスは、A27-CD55融合ウイルスタンパク質を発現する操作されたワクシニアウイルスと比較して、補体のより大きい阻害及び/又は感染性の向上を示し得る。
【0077】
本開示の態様及び実施形態は、A13L遺伝子を有する補体阻害剤を含む融合/キメラタンパク質(及びコード化核酸)にも関する。したがって、A13タンパク質と融合してキメラタンパク質を生成する天然の又は改変されたワクシニアウイルス補体制御タンパク質VCP(Liszewski et al.,(2009),J.Immunol.,183:3150-3159)が提供される。A13は、成熟ビリオン膜の不可欠な構成要素であるA13L後期遺伝子によってコードされる構造タンパク質である。ワクシニアウイルスの表面上のA13タンパク質の広範/偏在的な位置(図2)に照らして、本発明者らは、ビリオンエンベロープ内のその位置に明確な極性がなく、そのため、膜融合及び結合に関与するタンパク質に影響しないまま、補体制御タンパク質でIMVエンベロープを広く装飾する機会が提供されると考える。このようなキメラタンパク質の生理学的効果を、このような融合タンパク質を発現する成熟ビリオンの活性と組み合わせて最適化するために、VCPは、所望の効果に応じて、A13のN末端に向かって又はそのN末端において又はC末端に向かって又はそのC末端において都合よく融合され得る。この点に関して、本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載されるように、A13がVCPとの融合に適合できること及び融合物の両方の活性成分が意図された自然な機能を発揮できることを発見した。特に、融合VCPは、C3に結合し、C3転換酵素の活性を阻害することができる。したがって、本開示は、本明細書に記載のものなど、A13-VCP(又はVCP-A13)融合タンパク質をコードする核酸分子、特に天然A13Lプロモーターに作動可能に連結されるか又はその制御下にある核酸又は遺伝子も包含する。さらに、本開示は、対応する融合/キメラA13L遺伝子を含む、操作されたウイルスゲノム及び操作されたウイルス粒子を提供する。
【0078】
いくつかの好適な実施形態では、補体制御タンパク質のオープンリーディングフレームは、A13L遺伝子の3’末端(発現タンパク質のC末端に対応)に向かって融合され、
結果として得られる融合構築物は、その両側に天然ウイルスゲノム配列、例えばその5’末端にA14L遺伝子及びA13Lプロモーター配列並びにその3’末端にA12L遺伝子が隣接している。
【0079】
本発明は、コンプスタチン、CD55、CD59、CD46、CD35、H因子、C4結合タンパク質、CD35、VCP、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスKaposica/KCP、ヘルペスウイルス・サイミリ(HVS)CCPH及びHVS-CD59、アカゲザルラジノウイルスRCP-H及びRCP-1、マウスガンマヘルペスウイルス68(γHV-68)RCA、インフルエンザウイルスM1、SPICE、MOPICE、EMICE又はIMPなどの補体活性化モジュレーターをコードする異種核酸を含む組換えワクシニアウイルス核酸、ゲノム及びビリオン又はそれらの改変配列をさらに提供する。例えば、宿主細胞内のウイルス遺伝物質からの補体活性化モジュレーターの発現は、宿主/対象における補体活性化を調節する能力を組み換えワクシニアウイルスに提供し、野生型ウイルスと比較して補体媒介性ウイルス中和を低減し得る。いくつかの実施形態では、本開示による操作された/組み換えワクシニアウイルスによって運搬される異種核酸は、ヒトCD55、CD59、CD46、CD35、H因子、C4結合タンパク質、CD35若しくはVCPのドメイン又はそれらの活性改変配列或いは他の同定された補体活性化モジュレーターをコードする。いくつかの実施形態では、異種核酸は、VCP若しくは改変VCPタンパク質(配列番号30及び配列番号31)又はSPICE(配列番号32、D15L遺伝子によってコードされる天然痘ウイルスVCP)、MOPICE(配列番号33、D14L遺伝子によってコードされるサル痘ウイルス・ザイール-96-I-16 VCP)、EMICE(配列番号75、76;ヌクレオチド27,564及び26,776間のエクトロメリアウイルス(ECTV)モスクワ株ECTV-MOS;Chen et
al.(2003)Virology,317:165-186)若しくはIMP(配列番号77、78;Miller et al.(1997)Virology,229:126-133に記載される牛痘からのCPV-IMPタンパク質)などの別のポックスウイルス補体制御タンパク質をコードする。
【0080】
ワクシニアウイルスの遺伝子組換え
標的ゲノムに対する核酸の挿入又は欠失の方法には、本明細書に記載されるもの及び当技術分野で知られているものが含まれる。
【0081】
本開示によれば、内因性の標的ウイルス遺伝子は、改変されたタンパク質と、相同組換えにつながる改変の両側に隣接するおよそ250~300bpの相同配列とをコードするシャトルベクターを使用した組換えによって変異させることができる。
【0082】
標的ゲノムに対する核酸の挿入又は欠失の代替方法には、CRISPR、ジンクフィンガー媒介性遺伝子編集、TALENSなどが含まれる。
【0083】
他の実施形態では、所望の表現型を促進及び同定するために、変異が生成され、選択圧下での自然選択のプロセスによって選択され得る。
【0084】
当業者に知られている任意の好適な方法は、本開示に従って核酸及び/又はウイルスゲノムの発現を達成するための核酸送達に使用され得る。例えば、核酸(例えば、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターを含むDNA又はRNA)を細胞小器官、細胞、組織又は生物に導入できる任意の適切な方法が使用され得る。このような方法には、マイクロインジェクション(Harland and Weintraub,1985;米国特許第5,789,215号明細書)を含む注射(米国特許第5,994,624号明細書及び同第5,981,274号明細書);エレクトロポレーション(米国特許第5,384,253号明細書)、リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der E
b,1973;Rippe et al.,1990)、DEAEデキストランに続いてポリエチレングリコールを使用すること(Gopal,1985)、直接超音波ローディング(Fechheimer et al.,1987);リポソーム媒介性トランスフェクション(Nicolau and Sene,1982;Kato et al.,1991);微粒子銃(国際公開第94/09699号パンフレット、米国特許第5,610,042号明細書);炭化ケイ素繊維による撹拌(Kaeppler et al.,1990;米国特許第5,302,523号明細書);アグロバクテリウム媒介性形質転換(米国特許第5,591,616号明細書及び同第5,563,055号明細書);プロトプラストのPEG媒介性形質転換(Omirulleh et al.,1993;米国特許第4,684,611号明細書);又は乾燥/阻害媒介性DNA取り込み(Potrykus et al.,1985)による核酸の直接送達が含まれるが、これらに限定されない。このような技術を適用することで、細胞小器官、細胞、組織又は生物が必要に応じて安定的又は一時的に変換され得る。
【0085】
トランスジーンの挿入
様々な実施形態では、追加のトランスジーンが核酸又はウイルスベクターに挿入され得る。例えば、実施形態では、欠失された野生型ウイルス遺伝子の以前の遺伝子座に1つ、2つ又は3つのトランスジーンが挿入され得る。欠失/置換に好適な候補遺伝子には、B8R又は特にTK(J2Rとしても知られる)が含まれ得る。一部の株では、TK(及び/又はB8R)欠失部位に存在するトランスジーンに加えて、操作されたウイルスゲノムは、欠失したTK(又は他の)遺伝子の遺伝子座ではないワクシニアウイルスゲノム上の追加の遺伝子座に挿入された少なくとも1つのトランスジーンも有し得る。好適には、置換/挿入は、ワクシニアウイルスの感染及び複製に必須ではない遺伝子の遺伝子座に位置する。このようなトランスジーンのいくつかは、GM-CSFなどのサイトカイン;シトシンデアミナーゼ(CD)などのプロドラッグ転換酵素;ヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)などのセラノスティックペイロード;二重特異性抗体などのアフィニティー試薬;及びルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ-GFP融合タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ又は緑色蛍光タンパク質などのイメージング/検出剤を有益にコードし得る。
【0086】
本開示の操作されたワクシニアウイルス/ウイルスゲノムの様々な実施形態では、少なくとも1つのトランスジーンは、欠失したウイルス遺伝子座の5’及び/若しくは3’境界又は切断された内因性ウイルス遺伝子の5’末端及び/若しくは3’末端に向かって挿入され得る。
【0087】
様々な実施形態では、少なくとも3つ、4つ、5つ又はそれを超える数のトランスジーンが、改変されたワクシニアウイルスゲノムに挿入される。
【0088】
特に好適な実施形態では、本明細書に記載の融合/キメラ遺伝子が導入される腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、機能的なTK遺伝子を欠き、ヒトGM-CSFを発現するトランスジーンを有するコペンハーゲン株腫瘍溶解性ワクシニアウイルスである(例えば、現在の臨床例は、「Pexa-vec」として知られている)。したがって、本開示は、宿主免疫系を回避する能力の向上、したがって感染性及び/又は腫瘍溶解活性の向上など、先行技術の臨床例に対して1つ以上の有益な効果/実証可能な改良を有し得る、操作されたワクシニアウイルス、特に操作されたコペンハーゲン株ワクシニアウイルスを提供する。
【0089】
ウイルス増殖
本発明は、対応する野生型ゲノムと比較した1つ以上の遺伝子欠失とともに構築されたものを含むワクシニアウイルスに関し、その結果、このウイルスは、特に癌細胞に対する
使用に関して望ましい特性を示し(すなわち、いわゆる「腫瘍溶解性ウイルス」)、非癌細胞に対して毒性が低いか又は無毒性である。
【0090】
一例として、本明細書に記載の組換えワクシニアウイルスを産生するために使用できる多数の異なるプロトコルが当業者に知られており、そのような方法は、全て本開示に関連する使用を想定されている。
【0091】
まず、組換えDNA技術を使用して、変異した/操作されたウイルスを生成するために、任意の好適な分子生物学的方法を採用することができる。例えば、ワクシニアウイルスは、Ausubel et al.,1994のEarl及びMossによって記載された方法又は国際公開第2013/022764号パンフレットに記載された方法を使用して増殖され得る。
【0092】
例えば、ワクシニアウイルスゲノムに変異を生じさせるために、ベクターに含まれる核酸分子によって天然ポリペプチド及び改変ポリペプチドがコードされ得る。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、植物ウイルス)及び人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者であれば、Sambrook et al.,(1989)及びAusubel et al.,1994に記載されているような標準的な組み換え技術によってベクターを構築するのに十分な能力を備えているはずであり、これらの文献は、いずれも参照により本明細書に組み込まれる。ベクターは、改変されたポリペプチドをコードすることに加えて、タグ又は標的分子などの非改変ポリペプチド配列もコードし得る。ベクターを宿主細胞内で増殖させるために、これは、好適には、ポリヌクレオチドの複製が開始される特定の核酸配列である1つ以上の複製起点部位(「ori」と呼ばれることが多い)を含む。代わりに、宿主細胞が酵母である場合、自己複製配列(ARS)を使用することができる。
【0093】
異種核酸配列の発現に関連して、「宿主細胞」という用語は、原核細胞又は真核細胞を指し、これは、ベクターを複製し、且つ/又はベクターによってコードされる異種遺伝子を発現することができる、あらゆる形質転換可能な生物を含む。宿主細胞は、ベクター又はウイルスの受容体として使用され得る。
【0094】
宿主細胞は、「トランスフェクト」又は「形質転換」され得、これは、操作された遺伝子、ベクター又はウイルスゲノムなどの外因性核酸が宿主細胞に転送又は導入されるプロセスを指す。形質転換された細胞には、初代対象細胞及びその子孫が含まれる。宿主細胞は、所望の結果がベクターの複製であるか、又はベクターにコードされた核酸配列の一部若しくは全部の発現であるかに応じて、酵母細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含む原核生物又は真核生物から得ることができる。宿主細胞として使用できる細胞株及び培養物は、数多くあり、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC;www.atcc.org)を通して入手され得る。適切な宿主は、ベクターバックボーン及び所望の結果に基づいて当業者によって決定され得る。例えば、プラスミド又はコスミドは、多くのベクターの複製のために原核生物の宿主細胞に導入することができる。
【0095】
様々な細胞型及び生物からの多くの宿主細胞が入手可能であり、当業者に公知であり得る。同様に、ウイルスベクターは、真核生物又は原核生物の宿主細胞、特にベクターの複製又は発現が許容される細胞と組み合わせて使用され得る。いくつかのベクターでは、原核細胞及び真核細胞の両方でそれを複製及び/又は発現できるようにする制御配列が使用され得る。当業者は、好適な宿主細胞を維持し、ベクターの複製を可能にするために、好適な宿主細胞を培養する条件をさらに理解するであろう。ベクターの大規模生産並びにベクターによってコードされる核酸及びその同族ポリペプチド、タンパク質又はペプチドの
生産を可能にし得る技術及び条件も理解され、知られている。
【0096】
本開示の操作されたワクシニアウイルスは、当業者に知られている方法によって産生することができる。特定の実施形態では、改変された腫瘍溶解性ウイルスは、例えば、HeLa細胞、293細胞又はVero細胞から選択される好適な宿主細胞内で増殖させることができる。操作されたウイルスビリオンは、発現して宿主細胞から放出されると、宿主細胞から単離され、ウイルスの安定性及び完全性を促進する条件で保存され、経時的な感染性の喪失が最小限に抑えられ得る。特定の例示的な方法では、改変された腫瘍溶解性ウイルスは、セルスタック、ローラーボトル又は灌流バイオリアクターを使用して宿主細胞内で増殖される。いくつかの例では、改変された腫瘍溶解性ウイルスの精製のための下流の方法は、濾過(例えば、深層濾過、接線流濾過又はそれらの組み合わせ)、超遠心分離又はクロマトグラフィー捕捉を含み得る。
【0097】
このようにして得られた操作されたワクシニアウイルスは、例えば、凍結又は乾燥(凍結乾燥など)によって保存することができる。特定の実施形態では、対象若しくはインビトロ細胞又は細胞培養培地への投与前に、保存された操作されたワクシニアウイルスを再構成し(保存のために乾燥させた場合)、投与のために薬学的に許容される担体で希釈することができる。
【0098】
治療用ペプチド及び核酸
「活性剤」又は治療用分子は、本明細書に記載の任意の好適な操作されたワクシニアウイルス粒子又は本開示に従う操作されたウイルスゲノムによって発現される任意のポリペプチド部分を含み得る。このようなポリペプチド(部分)には、操作されたワクシニアウイルス粒子の構造成分を形成するポリペプチド又は操作されたワクシニアウイルスゲノム、例えばウイルス粒子又は宿主細胞から放出される遊離ポリペプチドとして発現されるポリペプチドが含まれ得る。特に有益なポリペプチドには、抗原又はサイトカインなど、免疫応答を誘発するものが含まれる。
【0099】
本発明は、本発明のペプチド配列をコードする核酸分子も包含する。コドンの冗長性を考慮すると、わずかに異なる多くの核酸配列が本発明の融合タンパク質のそれぞれを正確にコードし得、これらのバリアントのそれぞれが本発明の範囲内に包含されることが理解されるであろう。当業者は、本発明の融合タンパク質のそれぞれをコードするのに好適な核酸配列を容易に決定することができ、融合タンパク質が発現される系(例えば、マウス、ウサギ又はヒト)に応じて好適なコドンコードを選択し得る。本発明のペプチドをコードするあらゆる核酸配列は、本発明に包含される。
【0100】
本発明のペプチド/タンパク質の一次配列に対する軽微な改変は、特許請求される本発明の範囲を実質的に変更することなく行われ得ることを考慮すると、本発明は、本明細書に開示された特定のアミノ酸配列と実質的に同じである任意のポリペプチド配列をさらに包含するものとみなされるべきである。例えば、特許請求される本発明は、本明細書に開示されるポリペプチド配列の配列番号と少なくとも80%の同一性;本明細書に明示的に開示される配列番号のポリペプチド配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性又はおよそ100%の同一性を有するポリペプチド配列を包含する。
【0101】
同様に、特許請求される本発明は、特にコドン冗長性の影響を考慮して、本明細書に開示されるポリヌクレオチド配列番号と少なくとも70%の同一性;本明細書に明示的に開示される配列番号をコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性又はおよそ100%の同一性を有するポ
リヌクレオチド配列を包含する。
【0102】
好都合には、本発明による操作されたワクシニアウイルスゲノムは、ウイルスコートタンパク質をコードする少なくとも1つの改変された遺伝子を含む。特に、改変されたウイルス遺伝子は、ウイルスエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列と、補体制御タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド配列とを含む融合又はキメラ遺伝子であり得る。したがって、異種ポリヌクレオチドは、共有結合ポリペプチドリンカー配列をコードするポリヌクレオチド配列によってウイルスコートタンパク質に連結される。任意の好適なポリペプチドリンカー配列を使用することができ、例えば、好適なリンカー配列は、約4~約50アミノ酸、例えば約5~約40アミノ酸又は約8~約30アミノ酸、約10~約25アミノ酸又は約12~約20アミノ酸を有し得る。
【0103】
本開示の融合タンパク質のそれぞれの部分/半分を結合するためのポリペプチドリンカー配列の非限定的な例としては、反復的なGlySer又はGlySer配列に基づくものなど、主にGly及びSer残基に基づくリンカーが挙げられる。特に好適なリンカー配列には、(GlySer)、(GlySer)及び(GlySer)(それぞれ配列番号34、35及び36)が含まれる。
【0104】
核酸及びペプチドの発現
本発明による核酸分子及び適切な場合には本発明の操作されたウイルスは、組換えDNA技術並びに標準的なウイルス発現及び精製手順によって産生され得る。したがって、本発明は、本発明の操作されたウイルスコートタンパク質及び/又は異種(非ウイルス性)タンパク質並びにそれらの誘導体をコードする核酸分子;及び本発明によるペプチド及び誘導体をコードする核酸を含む発現ベクターなどの核酸構築物をさらに提供する。典型的には、本開示によれば、本開示の核酸構築物は、操作されたワクシニアウイルス粒子の産生に協調して操作されたポリペプチドを発現するための好適なワクシニアウイルスベクターに組み込まれる。しかし、いくつかの場合、本開示の操作されたポリペプチドの発現は、非ウイルス発現源からのものであることが望ましい可能性がある。
【0105】
例えば、関連するポリペプチドをコードするDNAを好適な発現ベクター(例えば、pGEM(登録商標),Promega Corp.,USA)に挿入し、適切な発現配列に作動可能に連結し、従来技術(Sambrook J.et al.,Molecular Cloning:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY)に従ってタンパク質発現に好適な宿主細胞に形質転換することができる。好適な宿主細胞は、培養で成長することができ、外来DNAによる形質転換が可能な細胞であり、細菌、真菌細胞及び高等真核生物起源の細胞、好ましくは哺乳動物細胞(特にマウス又はヒトなど)を含む。
【0106】
「作動可能に連結された」という用語は、本開示の核酸配列、例えば発現ベクター又は構築物に適用される場合、意図された目的を達成するために配列が協調して機能するように配置されていることを示し、すなわち、プロモーター配列は、連結されたコード配列を通して終結配列まで進行する転写の開始を可能にする。
【0107】
用途に応じて、本発明の融合タンパク質又は他の異種タンパク質は、本発明の意図するウイルスコート融合ペプチドなどの最終的なポリペプチド配列の配列を変更することなく、タンパク質発現、クローニング及び/又はペプチド若しくはRNAの安定性を容易にするために、N末端及び/又はC末端に追加のペプチド配列を含み得ることが理解されるであろう。適切であると考えられる場合、本発明のペプチドへの組み込みに好適なN末端リーダーペプチド配列は、入手可能な文献から当業者に知られている。
【0108】
いくつかの用途では、誘導性プロモーターの使用又は改変された野生型/天然ウイルスプロモーター配列の使用により、本発明の融合ポリペプチド又は他の異種ポリペプチドの発現を制御することが望ましい場合がある。このようにして、例えば、異種/融合タンパク質の発現パターンを、例えばウイルスの形態形成の異なる段階で発生するように望ましく変更することが可能となり得る。いくつかの実施形態では、異種又は融合タンパク質をコードする核酸配列の1つ以上と操作可能に結合されているネイティブプロモーター配列は、発現を改良又は低減するように、特に遺伝子産物の発現を、それが基づく野生型プロモーター配列よりもウイルスの形態形成においてより早く又はより遅くするように改変される。
【0109】
操作されたウイルスコートタンパク質などの本発明のキメラ又は融合ペプチドを、例えば治療用途(遺伝子治療)のためのインビボ又はエクスビボにおける使用に好適なベクター、特にウイルスベクターから発現させることが特に望ましい。本発明が、インビボでのタンパク質の発現について、操作された核酸構築物の使用を伴う治療法に関する場合、選択された発現系は、治療法の効果を発揮する適切な組織/細胞内でタンパク質を発現できるものでなければならない。望ましくは、本発明に従う使用のための発現系は、本発明の核酸構築物又はペプチドを、ウイルスの組み立て及び/又は最終的な治療処置が意図される身体の適切な領域、組織又は細胞に標的化することもできる。
【0110】
好適な医学的用途及び治療法は、本開示に従い、2つ以上の異なる操作されたウイルスベクターの別々、連続的又は同時のいずれかでの組み合わせ使用を包含し得る。他の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の1つ以上の操作されたウイルスベクターの、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせた使用を包含する。
【0111】
当業者であれば理解し得るように、機能的要素(例えば、エンハンサー)及びそれらの空間的関係が本質的に維持される限り、提供された配列に厳密に準拠することは、いかなるプロモーターの機能にも必要ではない。特に、本明細書で提供されるプロモーター配列は、ベクターにクローニングするための隣接制限部位を含み得る。適切な場合、当業者は、これらの制限部位を、使用される特定のクローニング系に適合させるとともに、例えば潜在性制限部位を取り除くためにプロモーターの配列に必要となり得る点変異を行う方法を知っているであろう。
【0112】
好適な誘導系では、テトラサイクリン制御系(tet-on及びtet-off)、放射線誘導性早期成長応答遺伝子1(EGR1)プロモーター及び当技術分野で知られている他の好適な誘導系などの小分子誘導が使用され得る。
【0113】
疾患及び障害
本発明の薬剤、組成物、方法及び使用は、例えば、疾患表現型又は疾患進行に関連する細胞数を標的として減少させることで利益が得られるあらゆる疾患又は障害を含む、広範囲の疾患及び障害の治療に特に好適であり得る。特に、本発明に従って治療され得る疾患及び障害には、造血起源の癌又は固形腫瘍などの癌及び/又は増殖性若しくは腫瘍性疾患が含まれる。
【0114】
当業者は、増殖性疾患が、(1)通常静止しているか若しくは通常増殖している細胞の病的な増殖;(2)細胞の正常な位置からの病的な移動(例えば、腫瘍細胞の転移);(3)細胞マトリックスの望ましくないターンオーバーにつながり得る、マトリックスメタロプロテイナーゼ(例えば、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ及びエラスターゼ)などのタンパク質分解酵素の病的な発現;並びに/又は(4)増殖性網膜症及び腫瘍転移で発生するような病的な血管新生と関連し得ることを理解するであろう。例示的な増殖性疾患として
は、癌、良性新生物及び疾患状態に伴って促進する血管新生(上記では病的血管新生として定義)が挙げられる。
【0115】
本発明の組成物、薬剤、方法及び使用は、例えば、細胞増殖を防止し、特に病原細胞の細胞死を促進することにより、広範な増殖性疾患及び障害を治療し、且つ/又はその症状を低減するのに有益な効果を有し得る。
【0116】
本発明は、複数の癌タイプにおいて有用性を有し、且つ/又はインビボ及び/若しくはインビトロでの腫瘍の進行に対する有益な効果(例えば、腫瘍の進行を逆転させるなど)を有し得る。特に、本発明は、肺癌(特に肺腺癌)、子宮頸癌、乳癌、心臓癌、結腸癌、前立腺癌、脳神経膠芽腫、膵臓癌、白血病(例えば、急性単球性白血病)、リンパ腫、腎臓癌、結腸直腸癌、膀胱癌、精巣癌、胃腸癌、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)及び/又は神経膠芽腫の治療に有用であり得る。本発明は、皮膚癌(例えば、黒色腫)、頭部及び/又は頸部癌、胆嚢癌、子宮癌、胃癌、甲状腺癌、喉頭癌、唇及び/又は口腔癌、咽頭癌、眼癌並びに骨癌の1つ以上の治療にも有用であり得る。
【0117】
いくつかの特定の実施形態では、癌は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、非典型奇形/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、肝外癌、ユーイング肉腫ファミリー、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、中枢神経系胚芽腫、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発性リンパ腫、脊索腫、慢性骨髄増殖性新生物、結腸癌、肝外胆管癌、非浸潤性乳管癌(DCIS)、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、嗅神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵管癌、骨線維性組織球腫、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、精巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、小児脳幹神経膠腫、有毛細胞白血病、肝細胞癌、ランゲルハンス細胞組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、ウィルムス腫瘍及び他の小児腎腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、小細胞肺癌、皮膚T細胞リンパ腫、眼内黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性扁平上皮頸部癌、正中線癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、非小細胞肺癌(NSCLC)、上皮性卵巣癌、胚細胞性卵巣癌、低悪性度卵巣癌、膵神経内分泌腫瘍、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性腹膜癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、カポジ肉腫、横紋筋肉腫、セザリー症候群、小腸癌、軟部肉腫、咽頭癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行上皮癌、尿道癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症からなる群のいずれか1つ以上から選択され得る。
【0118】
さらに、本開示は、本発明の治療剤及び組成物の治療的使用並びにあらゆる種類の原発癌の局所浸潤性若しくは転移又はその両方を阻害又は予防する方法も包含する。例えば、原発癌は、黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺癌、肝臓癌、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、神経膠芽腫、歯肉癌、舌癌、白血病、神経芽細胞腫、頭部癌、頸部癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、骨癌、精巣癌、卵巣癌、中皮腫、子宮頸癌、胃腸癌、リンパ腫、脳癌、結腸癌又は膀胱癌であり得る。特定の実施形態では、原発性癌は、肝臓癌であり得る。例えば、肝臓癌は、肝細胞癌(HCC)及び/又は肝臓への転移であり得る。
【0119】
さらに、本開示は、癌を予防するか、又は化生、異形成及び過形成を含む前癌若しくは前悪性細胞を治療するために使用され得る。これは、扁平上皮化生、異形成、良性前立腺肥大細胞、過形成性病変など、望ましくないが、良性の細胞を抑制するためにも使用され
得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療剤を含む本開示の使用及び方法により、癌又はより重篤な形態の癌への進行を停止、中断又は遅延させることができる。
【0120】
したがって、本発明は、医薬における使用のための、特に肺癌(特に肺腺癌又は肺扁平上皮癌)、膀胱癌、子宮頸癌、乳癌、結腸癌、脳神経膠芽腫、膵臓癌、急性単球性白血病、腎臓癌、結腸直腸癌、皮膚癌(例えば、黒色腫)、胃癌、甲状腺癌、骨癌及び肝臓癌から選択される癌の治療における使用のための薬剤及び組成物を提供する。このような疾患を治療する方法も提供される。使用及び方法は、本発明による薬剤を、それを必要とする患者に投与することを含み得る。
【0121】
本発明の組成物、薬剤、方法及び使用は、そのような疾患及び障害のいずれか又は全ての治療において利益を提供し得る。
【0122】
治療用組成物
本発明の融合ペプチド、核酸又は操作されたウイルス粒子(例えば、「治療剤」)は、動物;好ましくはヒトの治療における使用のための医薬組成物に組み込まれ得る。本発明の治療用ペプチド、核酸又は操作されたウイルス(又はその誘導体)は、操作された核酸構築物、融合ペプチド又はウイルスの活性/特性に応じて、1つ以上の疾患又は感染症を治療するために使用され得る。様々な実施形態では、治療用ペプチドをコードする核酸は、発現構築物/ベクター、特にワクシニアウイルスベクターに挿入され、同じ目的で医薬製剤/医薬品に組み込まれ得る。
【0123】
当業者に理解されるように、本開示に従うもののような潜在的な治療剤は、ヒト対象における使用が承認され得る前に、ウサギ又はマウスなどの動物モデルで試験され得る。したがって、本発明の融合タンパク質又はウイルスは、ウサギ若しくはマウスにおいてインビボで発現され得るか、又はウサギ若しくはマウス細胞及びヒト/ヒト細胞においてエクスビボで発現され得る。本発明によれば、各動物系に特有の適切な発現カセット及び発現構築物/ベクターを設計することができる。したがって、本開示の操作された融合タンパク質は、選択された動物宿主における補体経路を阻害する公知の又は同定された能力に応じて改変され得る。
【0124】
本発明の治療用ペプチド及び核酸は、例えば、ワクシニアウイルスを動物細胞に標的化することにより、細胞内で標的化(及び治療)できる疾患、状態及び/又は感染症の治療に特に適しており、且つインビトロ及びエクスビボでの適用にも好適であり得る。本明細書で使用される場合、「治療剤」及び「活性剤」という用語は、本発明のペプチドをコードするペプチド及び核酸並びに本明細書に記載されるペプチド及び/又は核酸を含むウイルス粒子を包含する。本発明の治療用核酸は、本開示によるウイルスコート融合タンパク質をコードする核酸配列と、任意選択により1つ以上の追加の異種遺伝子及び/又はタンパク質とを含む、改変/操作されたワクシニアウイルスゲノムを包含する。
【0125】
本発明の治療剤の治療的使用及び用途には、治療される対象において、操作されたワクシニアウイルスを発現させることによって治療され得るあらゆる疾患、障害又は他の病状が含まれる。
【0126】
本発明の態様及び実施形態によれば、特に好ましい疾患には、本明細書の他の箇所で開示されているように、癌及び他の増殖性疾患又は障害が含まれる。
【0127】
1つ以上の追加の薬学的に許容される「担体」(希釈剤、アジュバント、賦形剤又は媒体など)は、医薬組成物中で本発明の治療剤と組み合わされ得る。好適な医薬担体は、E
.W.Martin著「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。本発明の医薬製剤及び組成物は、規制基準に準拠するように製剤化されており、経口、静脈内、局所又は他の標準的な経路で投与することができる。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、あらゆる溶媒、分散媒体、媒体、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。医薬活性物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。従来の媒体又は薬剤が有効成分と適合しない場合を除き、治療用組成物におけるその使用が企図される。補助的な有効成分も組成物に組み込むことができる。「薬学的に許容される」又は「薬理学的に許容される」という語句は、ヒトに投与された場合にアレルギー反応又は同様の好ましくない反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0128】
本発明によれば、治療剤は、医薬として製造され得るか又は医薬組成物に製剤化され得る。対象に投与される場合、治療剤は、薬学的に許容される媒体を含む組成物の成分として好適に投与される。本発明の分子、化合物及び組成物は、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、膣内、経皮、経直腸、吸入又は皮膚への局所投与など、任意の好都合な経路で投与され得る。投与は、全身又は局所であり得る。公知の送達系には、例えば、マイクロゲル、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、カプセルなどへの封入も含まれ、これらは、いずれも本発明の薬剤を投与するためにいくつかの実施形態で使用され得る。当技術分野で公知の任意の他の好適な送達系も本発明の使用で想定される。
【0129】
許容される医薬媒体は、水などの液体及び石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油(ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など)などであり得る。医薬媒体は、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであり得る。さらに、助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤及び着色剤も使用され得る。対象に投与される場合、薬学的に許容される媒体は、好ましくは、無菌である。水は、特に本発明の化合物が静脈内投与される場合に好適な媒体である。生理食塩水並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液も特に注射用液の液体媒体として使用され得る。好適な医薬媒体には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂乾燥乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどの賦形剤も含まれる。本発明の組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤、乳化剤又は緩衝剤も含み得る。
【0130】
本発明の薬剤及び医薬組成物は、液体、溶液、懸濁液、ローション、ゲル、錠剤、丸剤、ペレット、粉末、放出調節製剤(例えば、徐放性又は持続放出性)、坐剤、エマルジョン、エアロゾル、スプレー、カプセル(例えば、液体又は粉末を含有するカプセル)、リポソーム、微粒子又は当技術分野で知られている他の任意の好適な製剤の形態をとることができる。好適な医薬媒体の他の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Alfonso R.Gennaro ed.,Mack
Publishing Co.Easton,Pa.,19th ed.,1995に記載されており、例えば1447~1676頁を参照されたい。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の治療用組成物又は薬剤は、経口投与(より適切にはヒト用)に好適な医薬組成物として、通常の手順に従って製剤化される。経口送達用の組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、顆粒、粉末、エマルジョン、カプセル、シロップ又はエリキシル剤の形態であり得る。したがって、様々な実施形態では、薬学的に許容される媒体は、カプセル、錠剤又は丸剤であり得る。
【0132】
経口投与される組成物は、薬学的に口当たりのよい調製物を提供するために、例えばフルクトース、アスパルテーム又はサッカリンなどの甘味料、ペパーミント、ウィンターグリーンオイル又はチェリーなどの香味剤、着色剤及び保存剤などの1つ以上の薬剤を含有し得る。組成物が錠剤又は丸剤の形態である場合、組成物をコーティングして、消化管内での崩壊及び吸収を遅延させ、長期間にわたって活性剤を持続的に放出できるようにし得る。浸透活性駆動化合物を囲む選択透過性膜も経口投与組成物に好適である。これらの剤形では、カプセルの周囲の環境からの液体が駆動化合物に吸収され、駆動化合物が膨張して、開口部を通して薬剤又は薬剤組成物を押し出す。これらの剤形は、即時放出製剤のスパイクプロファイルとは対照的に、本質的にゼロ次の送達プロファイルを提供することができる。グリセロールモノステアレート又はグリセロールステアレートなどの時間遅延物質も使用され得る。経口組成物には、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な媒体が含まれ得る。このような媒体は、好ましくは、医薬品グレードのものである。経口製剤の場合、放出される位置は、胃、小腸(十二指腸、空腸又は回腸)又は大腸である。当業者は、胃内で溶解しないが、十二指腸又は腸内の他の箇所で物質を放出する製剤を調製することができる。好適には、放出は、ペプチド(又は誘導体)を保護するか、又はペプチド(又は誘導体)を、胃環境を越えて腸内などに放出することにより、胃環境の有害な影響を回避する。完全な胃耐性を確保するには、少なくともpH5.0まで不浸透性のコーティングが不可欠である。腸溶性コーティングとして使用されるより一般的な不活性成分の例としては、トリメリット酸セルロースアセテート(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、フタル酸ポリビニルアセテート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、フタル酸セルロースアセテート(CAP)、Eudragit L、Eudragit S及びシェラックが挙げられ、これらは、混合フィルムとして使用され得る。
【0133】
治療剤の水性環境への溶解を促進するために、界面活性剤が湿潤剤として添加され得る。界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤を含み得る。陽イオン性界面活性剤が使用される場合があり、これは、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトミウムを含み得る。界面活性剤として製剤に含まれ得る潜在的な非イオン性界面活性剤は、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート20、40、60、65及び80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース並びにカルボキシメチルセルロースを含む。これらの界面活性剤は、使用される場合、ペプチド若しくは核酸又は誘導体の製剤中に単独で又は異なる比率の混合物として存在し得る。
【0134】
典型的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張水性緩衝液を含む。必要に応じて、組成物は、可溶化剤も含み得る。
【0135】
本明細書に記載のウイルス粒子又は核酸の混合物は、1つ以上の賦形剤、担体又は希釈剤と好適に混合された水中で調製され得る。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物並びに油中でも調製され得る。通常の保存及び使用条件下において、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐための保存剤を含有し得る。注射に好適な薬剤形態には、滅菌水溶液又は分散液及び滅菌注射用液又は分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、形態は、滅菌されており、適切なシリンジで注射できるほど十分に流動的であり得る。好適には、組成物は、製造及び保存条件下で安定であり、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物及び/又は植物油を含有する溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティ
ングの使用、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤及び抗真菌剤によって実現され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖類又は塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中における、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって実現され得る。
【0136】
例えば、水溶液での非経口投与の場合、必要に応じて溶液を好適に緩衝化することができ、液体希釈剤をまず十分な生理食塩水又はグルコースで等張にする。これらの特定の水溶液は、特に静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内及び腹腔内投与に好適である。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は、当業者に知られている。
【0137】
本発明の治療用組成物の別の好適な投与経路は、肺又は鼻腔送達によるものである。
【0138】
本発明の治療剤の細胞取り込みを強化するために、脂肪酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸などの添加剤が含まれ得る。
【0139】
本発明の治療剤は、いくつかの実施形態では、対象の皮膚への局所適用のための組成物に製剤化され得る。
【0140】
本発明の実施形態では、治療用組成物は、本発明の治療剤を1つのみ含み得るか、又は本発明の2つ以上、例えば2つの相補的な治療剤を含み得る。例えば、標的動物の補体経路に関与する異なるタンパク質の阻害は、本開示の複数の操作されたタンパク質によって達成され得る。特に、本開示による操作されたウイルスは、2つの異なるウイルスエンベロープ/構造タンパク質など、発現されたワクシニアタンパク質に融合された、異なる段階又は異なる補体経路を標的とする異種タンパク質又はタンパク質ドメインをそれぞれ含む2つのキメラ/融合タンパク質を発現し得る。2つ(以上)の治療剤が企図される場合、異なるペプチド又はウイルスベクター若しくはウイルス粒子などのコード化核酸構築物を同じ医薬組成物に組み込むか又は別々に製造し得る。2つ(以上)の医薬組成物が同じ個人への投与のために製造される場合、指示又は必要に応じて、組成物は、同時に、順次又は別々に投与され得ることが理解されるであろう。
【0141】
操作されたワクシニアウイルスの送達方法
ワクシニアウイルス感染による免疫化は、典型的には、極めて安全であり、健康な個体では軽度又は無症状の感染を生じる。合併症及び有害作用は、一般的に、免疫不全者などの脆弱な個体にのみ見られる。ワクチンとして、ウイルスは、典型的には、二股針を使用した複数の皮膚穿刺技術によって投与される。しかし、ウイルスを固形腫瘍に効率的に送達するには、異なる投与経路が必要である。
【0142】
本発明の治療剤、操作されたワクシニアウイルス又は治療用組成物を投与するための任意の好適な送達方法は、本開示に従って使用され得る。好適な投与経路は、熟練した医師によって決定され、1つ以上の要因に依存し得る。
【0143】
本発明の治療剤又は組成物の送達は、全身又は局所であり得る。例えば、投与経路は、疾患、例えば治療される癌の位置及び/又は性質によって決定され得、例えば米国特許第5,543,158号明細書、米国特許第5,641,515号明細書及び米国特許第5,399,363号明細書に記載されているように、皮内、経皮(transdermal)、非経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、局部(例えば、腫瘍の近く、特に腫瘍の血管系又は隣接血管系)、経皮(percutaneous)、気管内、腹腔内、動脈内、膀胱内、腫瘍内、吸入、灌流、洗浄及び経口投与を含み得る。典型的には、全身投与の
簡便な形態は、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、舌下投与、直腸投与、経皮投与又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0144】
様々な実施形態では、治療用組成物は、腫瘍の部位に直接投与され得る。特に有益な実施形態では、本開示の治療用組成物は、対象の血管系への注射によって送達され得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、(連続)投与/長期間にわたる投与が好ましく、これは、例えば、腫瘍又は腫瘍血管系にカテーテルを埋め込むなどの任意の好適なメカニズムによって達成され得る。好適には、連続灌流による治療用組成物の用量は、単回又は複数回の注射によって投与される用量と均等であり得、灌流を行う期間にわたって調整される。さらに、四肢灌流は、特に黒色腫及び肉腫の治療で本発明の治療用組成物を投与するために使用され得ることが企図される。
【0146】
核酸構築物の注射は、発現構築物(例えば、ウイルス)が、注射に必要な特定のゲージの針を通過できる限り、シリンジ又は溶液の注射に使用される他の方法によって送達され得る。いくつかの実施形態では、当業者に知られているように、例えば米国特許第5,846,233号明細書に記載されているような無針注射システムが使用され得る。
【0147】
治療的処置レジメン及び用量
処置レジメンは、異なるものであり得、多くの場合、腫瘍のタイプ及び/若しくは位置、疾患の段階/進行並びに/又は患者の健康状態及び年齢に依存する。例えば、一部の腫瘍は、治療用組成物の局所用量及び/又は高濃度用量による治療によりよく応答し得るが、他の疾患(及び個体)は、治療剤のより広範な且つ/若しくは低用量の投与及び/又は長期の投与から利益を得る可能性がある。熟練した臨床医は、各状況下で好適な治療処置を決定することができる。
【0148】
様々な態様及び実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるように、1つ以上の操作されたワクシニアウイルスの投与によって対象を治療するための治療的使用及び方法を提供する。標的細胞又は第1の標的細胞集団を、操作されたワクシニアウイルスと接触させることにより、ウイルスが標的細胞/第1の標的細胞集団に感染し、それらの標的細胞内で繁殖して、標的細胞を死滅させるのに十分な毒性効果を引き起こし得る。したがって、本開示は、標的癌細胞内の操作されたウイルスによって引き起こされる毒性効果を介して標的感染細胞を死滅させることにより、腫瘍のサイズ及び/又は成長を低減させるための使用及び方法を提供する。使用及び方法は、個体又は個体の癌細胞若しくは第1の標的細胞集団に、治療有効量の、本開示の操作されたワクシニアウイルス又は上記のように本発明の操作されたワクシニアウイルス若しくは他の治療剤を含有する医薬組成物を投与することを含む。本発明の治療方法によれば、第1の標的細胞(又は第1の標的細胞集団)が感染すると、ワクシニアウイルスは、第1の標的細胞(集団)内で繁殖し得、第1の標的細胞(又は第1の標的細胞集団)から新たなウイルスが放出されると、第2の標的細胞又は第2の標的細胞集団は、放出されたウイルスに感染し得る。したがって、有益には、このような操作されたウイルスの使用により、腫瘍又は対象内の全ての標的細胞に、操作されたワクシニアウイルスの初期集団を直接投与するか又は感染させる必要はない。むしろ、操作されたウイルスが標的細胞内で増殖能力を維持しながら、宿主(個体)の免疫系による急速な破壊を回避できるようにすることで、治療剤の最初の単回投与で可能となるよりもはるかに多くの標的癌細胞に感染して、破壊することが可能になる。さらに、ワクシニアウイルスが近隣又は遠隔の標的細胞に侵入して感染する自然な能力を利用することで、本発明の使用及び方法は、治療剤を直接投与することが容易ではないか又は不可能である癌細胞の破壊を可能にし得る。
【0149】
したがって、本開示は、本開示に従う操作されたワクシニアウイルスを第1の癌細胞に
投与して、第1の癌細胞がウイルスに感染し、続いて第2の癌細胞がウイルスに感染することを含む、癌若しくは腫瘍を治療する方法又は第2の癌細胞の成長及び/若しくは増殖を阻害する方法をさらに提供する。第2の癌細胞は、第1の癌細胞から離れていてもよく;例えば、第2の癌細胞は、第1の癌細胞が位置する固形腫瘍から離れた固形腫瘍内にあり得るか;又は第2の癌細胞は、第1の癌細胞の転移であり得る。
【0150】
本開示の操作されたワクシニアウイルス又はその医薬組成物の有効量は、標的癌細胞の腫瘍溶解/死滅及び/又は標的癌細胞の溶解若しくは増殖の阻害或いは標的癌細胞又は腫瘍の成長又はサイズの阻害又は縮小を導くのに十分な量を含み得る。腫瘍又は標的癌細胞の成長の低減は、例えば、細胞死又は細胞を含む腫瘍の複製速度若しくは成長速度の低下或いは癌細胞を含有する対象の生存期間の延長として現れ得る。
【0151】
したがって、いくつかの実施形態では、有効量の、本開示の操作されたワクシニアウイルスを対象に投与することを含む、癌又は腫瘍を有する対象を治療する治療的使用及び方法が提供される。このような使用及び方法における有効量には、癌の成長速度若しくは拡散を低下させる量又は対象の生存期間を延長させる量が含まれ得る。いくつかの実施形態では、腫瘍は、完全に又は実質的に根絶され得る。本開示の使用及び方法は、操作されたワクシニアウイルスを対象又は個体に投与することを含み得る。投与は、任意の好適な手段、例えば注射又は経口摂取などによって行われ得る。投与は、全身又は局所、例えば腫瘍の部位に直接的なものであり得る。一実施形態では、全身送達が好ましい。
【0152】
治療用組成物及び/又は療法には、様々な「単位用量」が含まれ得、単位用量は、所定量の治療剤又は組成物を含有するものとして定義することができる。投与する好適な量並びに特定の投与経路及び製剤を特定することは、臨床技術における当業者の技能の範囲内である。単位用量は、例えば、単回注射又は錠剤として投与され得るが、一定期間にわたる連続注入など、長期間にわたって投与され得る。
【0153】
操作されたワクシニアウイルスを含む実施形態に関して、単位用量は、重量又はモル濃度よりもウイルス構築物のプラーク形成単位(pfu)で都合よく説明することができる。単位用量は、代替的に、ウイルス粒子、感染性ウイルス(PFU)又は組織培養阻害剤用量50%(TCID50)と示され得る。単位用量は、1mLあたり、1kgあたり、1剤形あたり(例えば、1錠あたり又は1注射あたり)1×10~1×1015PFUの範囲;例えば、約1×10、約1×10、約1×10、約1×1010、約1×1012又は約1×1014以上であり得る。このような投与量の送達は、腫瘍又は腫瘍部位に直接的なものであり得るか、又は送達は、全身的なものであり得る。
【0154】
特定の実施形態では、改変された腫瘍溶解性ウイルスは、設定された期間(例えば、12時間又は24時間)にわたって1回以上の用量で投与することができ、これらは、ともに「単位用量」を構成する。他の実施形態では、各個別の投与は、「単位用量」とみなされ得る。
【0155】
本開示に従う操作されたワクシニアウイルスは、本明細書に記載される改変を有しない比較ワクシニアウイルスよりも長くインビボで生存し得るが、本開示の治療用組成物及び/又は薬剤は、好適な治療期間内(例えば、好適とみなされる約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12日、週、月又は年の期間にわたる)において、適切とみなされる複数回用量(例えば、2、3、4、5、6回以上の用量)で投与され得る。本明細書に記載される操作されたワクシニアウイルス又は医薬組成物の投与頻度は、熟練した医師によって決定され得るが、例えば1日1回、1日2回、毎週1回、2週間に1回、毎月1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回などであり得る。
【0156】
さらに、考案され得る治療処置レジメンに従い、単位用量は、治療の段階又はタイプに応じて、且つ対象のサイズ及び/又は年齢又は治療が意図される癌若しくは腫瘍のタイプを考慮して変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、対象に投与される本開示の操作されたワクシニアウイルス、治療剤又は医薬組成物の第1の用量は、投与され得る第2、第3又はそれ以降の用量より少ないか又は多くてもよい。他の実施形態では、第1の投与期間中の用量は、第2、第3又はそれ以降の投与期間中に投与される用量より少ないか又は多くてもよい。熟練した実施者は、このような投与期間の継続期間、例えば約1日、約1週間、約1ヶ月又は中間の期間若しくはより長い期間を決定することができる。
【0157】
いくつかの例では、治療される対象は、1つ以上の追加の治療剤を投与されるか、又は1つ以上の追加の従来的療法(放射線治療又は化学療法など)若しくは補完療法を受け得る。例えば、いくつかの実施形態では、対象には、本明細書に開示される治療用組成物の投与前、投与と同時及び/又は投与後に、炭水化物が低減された食事、例えばケトン食を摂取させることができる。
【0158】
組み合わせ療法
様々な実施形態では、本開示の使用及び方法は、本開示の治療剤(例えば、本明細書に開示される操作されたワクシニアウイルス又は操作されたワクシニアウイルスベクター)又は本開示の治療剤を含有する医薬組成物を1つ以上の追加の療法又は治療剤と組み合わせて投与することを含む。本明細書に開示されているように、1つ以上の追加の療法又は治療剤は、本開示に従い、治療剤と同時に、連続的に又は別々に(前又は後に)投与され得る。
【0159】
追加の治療剤は、本開示に従う操作されたワクシニアウイルス又は操作されたワクシニアウイルスベクターであり得、その結果、本発明の1つ若しくは2つの操作されたワクシニアウイルス及び/又は1つ若しくは2つのウイルスベクターが組み合わせて投与される。さらなる療法又は治療剤の他の例としては、化学療法、放射線療法、追加のウイルスによる腫瘍溶解性ウイルス療法、免疫調節タンパク質による治療、抗癌剤又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
特定の実施形態では、追加の治療剤は、抗癌剤又は癌療法である。抗癌剤には、化学療法剤、放射線療法剤、サイトカイン、免疫チェックポイント阻害剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、抗癌抗体及び/又は抗サイクリン依存性キナーゼ剤が含まれ得るが、これらに限定されない。癌療法には、化学療法、生物学的療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、抗血管療法、クライオセラピー、毒素療法及び/若しくは外科的手術又はそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0161】
改変された腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと化学療法とを組み合わせると、追加の治療剤との相乗効果が有利に達成され、追加の治療剤単独の典型的な用量を減らすことができる。したがって、本開示の治療的使用及び方法は、本発明の治療上の利益を低減させることなく、化学療法に関連する毒性を軽減し得る。
【0162】
様々な実施形態では、癌の治療は、外科手術を伴い得る。このような手術には、癌組織の全部又は一部を対象から物理的に除去(例えば、切除による)し、且つ/又は他の方法で破壊する摘除が含まれ得る。腫瘍切除は、腫瘍の少なくとも一部の物理的な除去を指す。手術による治療には、腫瘍切除に加えて、レーザー手術、凍結手術、電気手術及び顕微鏡制御手術(モース術)が含まれる。いくつかの実施形態では、腫瘍(又はその一部)を切除によって除去する必要があるか、又は腫瘍が切除に好適でないと決定され得る。このような状況では、本発明の実施形態は、切除の結果を改良するか又は腫瘍若しくはその一部の切除を可能にするために、本開示の治療剤又は組成物を用いて対象を治療することを
含み得る。したがって、本開示の治療処置は、例えば、腫瘍縁の縮小又は浸潤部分の除去により、腫瘍の切除可能性を高め得る。切除後の追加の治療は、腫瘍部位の顕微鏡的遺残病変を排除するのに役立つ。
【0163】
本開示の治療剤は、特に、癌の外科的治療と組み合わせて(すなわちその前及び/又は後に)、例えば癌組織の部位を取り囲む腫瘍縁の治療及び/又は破壊のために使用され得る。実施形態では、癌細胞、組織又は腫瘍の一部又は全部を切除した後、本開示の1つ以上の治療剤、例えば操作されたワクシニアウイルスは、灌流、直接注射又は領域、例えば腫瘍の除去によって残された空洞又は空間を囲む細胞壁への局所適用により、除去した部位に投与され得る。処置レジメンに応じて、このような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6若しくは7日ごと、又は1、2、3、4、5若しくは6週間ごと、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12ヶ月ごとに繰り返され得る。
【0164】
有効性を決定する方法
本開示の態様及び実施形態は、本開示の治療剤(例えば、操作されたワクシニアウイルス)の有効性を決定する方法も包含する。例えば、方法は、本開示の操作されたワクシニアウイルスの感染性、抗腫瘍活性又は腫瘍特異的ウイルス複製の量を決定することを含み得る。この目的のために、このような操作されたワクシニアウイルスは、本開示の操作されたウイルスを識別することができるレポーター遺伝子構築物をさらに含み得る。このようなレポーター遺伝子構築物は、例えば、ルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ-GFP融合タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ又は緑色蛍光タンパク質などのレポータータンパク質を発現し得る。
【0165】
方法は、(i)治療有効量の治療剤(本開示による操作されたワクシニアウイルス又は医薬組成物であって、そのウイルス、ベクター又は核酸がレポータータンパク質をさらに発現することができるものなど)を単独で又はさらなる治療剤と組み合わせて対象に投与すること;(ii)ウイルス、ベクター又は核酸を投与した直後に対象から第1の生物学的サンプルを収集し、第1の生物学的サンプル中のルシフェラーゼレポーターのレベルを決定すること;(iii)ステップ(i)での投与後に対象から第2の生物学的サンプルを収集し、第2の生物学的サンプル中のレポーターのレベルを決定/検出することを含み得、ステップ(iii)におけるルシフェラーゼのレベルがステップ(ii)よりも高い場合、治療剤(例えば、操作されたワクシニアウイルス)は、有効である(例えば、感染性、抗腫瘍活性を示し、且つ/又は腫瘍特異的ウイルス複製を示す)と決定される。第2の生物学的サンプルは、第1のサンプルが収集されてから所定の時間後、例えば第1のサンプルが収集されてから最大1日、最大1週間又は最大1ヶ月後に収集される。実施形態では、第2のサンプルは、ステップ(i)における投与から約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約24時間、約2日、約4日、約7日、約14日、約1ヶ月又は約2ヶ月後に収集され得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、治療剤(例えば、本開示の操作されたウイルス)の有効性を決定する方法は、ステップ(ii)及び(iii)において、1つ以上のサイトカインのレベルを検出することをさらに含み得る。サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-8、IL-10、IFN-γ、GM-CSF、TF-a、IL-6、IL-4、IL-5及びIL-13の1つ以上から選択され得る。
【0167】
これらの態様及び実施形態による方法は、本開示による治療剤(例えば、操作されたワクシニアウイルス)の有効性を、本明細書に記載の融合タンパク質及び任意選択の追加の異種遺伝子発現構築物を欠いている点を除いて、レポーター構築物を含み、本開示の操作された治療剤(例えば、ワクシニアウイルス)と同一である比較治療剤(例えば、ワクシニアウイルス)と比較することをさらに含み得る。好適には、比較又は対照ワクシニアウ
イルスのレポーター構築物は、本開示に従う操作された治療剤(例えば、ワクシニアウイルス)のものと異なるレポーターを発現する。したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(ii)及び(iii)間のレポーター遺伝子発現の増加が比較又は対照治療剤(例えば、ワクシニアウイルス)のレポーター遺伝子発現の差と比較される。
【0168】
したがって、方法は、ステップ(iv)対象(ステップ(i)の対象と同じであるか又は異なり得る)に、治療有効量の、レポーター構築物を発現する比較又は対照治療剤(例えば、ワクシニアウイルス)を投与すること;(v)ステップ(iv)の治療剤(例えば、ウイルス)を投与した直後に対象から第1の生物学的サンプルを採取し、第1の生物学的サンプル中のレポーターのレベルを決定すること;及び(vi)ステップ(iv)での投与後に対象から第2の生物学的サンプルを収集し、第2の生物学的サンプル中のレポーターのレベルを決定/検出することをさらに含み、ステップ(iv)~(vi)は、ステップ(i)~(iii)と同時に実行され得る。
【0169】
本開示の操作された治療剤及びワクシニアウイルスの投与後にウイルス量を検出及びモニタリングするための、当業者に知られている他の例示的な技術を代わりに使用し得る。例示的な代替技術は、リアルタイム定量PCRであり、ウイルス量を決定するステップは、レポーター構築物の量を決定するのではなく、収集された生物学的サンプルのリアルタイム定量PCRを実施して、操作されたウイルスを検出することを含む。
【0170】
キット
実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるように、操作されたワクシニアウイルス、操作されたワクシニアウイルスベクター又は核酸を投与するためのキットを提供する。特定の実施形態では、本開示のキットは、上述のように、操作されたワクシニアウイルス、操作されたワクシニアウイルスベクター若しくは核酸又はそのような治療剤を含む(医薬)組成物を含み得る。特定の実施形態では、本開示のキットは、使用説明書、装置及び追加の試薬などの1つ以上の構成要素並びに上記で開示された方法を実施するためのチューブ、容器及びシリンジなどの構成要素をさらに含み得る。様々な実施形態では、本開示のキットは、操作されたウイルスと組み合わせて(別々に、連続的に又は同時に)投与され得る1つ以上の活性剤、例えば抗癌剤、免疫調節剤又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つをさらに含み得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、本開示によるキットは、本発明による操作されたウイルス、及び/又は操作されたウイルスベクター、及び/又は核酸若しくはタンパク質、1つ以上の追加の活性剤並びに/或いは本明細書に記載の任意の試薬を収容する1つ以上の容器を含み得る。
【0172】
いくつかの実施形態では、キットは、本開示の治療剤(例えば、操作されたワクシニアウイルス)及び/又は任意の追加の活性剤を対象に投与するための装置又はデバイスをさらに含み得る。好適な器具又は装置には、皮下注射針、静脈注射針、カテーテル、無針注射装置、吸入器及び/又は液体ディスペンサーの1つ以上が含まれ得る。
【0173】
キットの使用説明書には、好適には、キットに何が含まれているべきか、どのように適切に使用すべきか;例えば、キットの様々な構成要素を個体にどのように投与すべきか(タイミング、濃度及び量を含む)、適切な投与方法及び使用中又は治療中に個体をモニタリングする必要があるかどうかについての説明が含まれ得る。
【0174】
宿主生物の毒性及び免疫原性
宿主生物内で発現した異種ペプチドの毒性及び免疫原性(免疫毒性)は、一次ペプチド配列を天然宿主ペプチドの一次ペプチド配列とマッチするように最適化することによって
低減され得ることが提唱された。
【0175】
本発明による融合/キメラタンパク質を含むポリペプチドは、宿主生物に見られる内因性/天然ペプチド配列と最大20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%又は10%同一でなく;例えば、本発明のペプチドは、宿主生物の内因性ペプチド配列とおよそ1%~25%、およそ3%~20%又はおよそ5%~15%同一でない可能性がある。宿主生物は、ウイルス若しくはポリペプチドが投与されるか又はポリペプチドが発現される動物対象であると考えられ得る。
【0176】
配列同一性は、Lipman&Pearson(1985),Science 227,pp1435;又は配列アライメントに記載されているアルゴリズムを使用するなど、当業者に知られている任意の方法で評価することができる。
【0177】
本明細書で使用される場合、「同一性パーセント」は、整列させた場合、2つの配列を比較したときにアミノ酸残基(又は核酸配列に関連して塩基)のパーセンテージが同じであることを意味する。アミノ酸配列は、同一ではなく、参照配列と比較してアミノ酸が置換、欠失又は付加されている。本発明に関連して、対象タンパク質は、モジュール型であり、すなわちいくつかの異なるドメイン又はエフェクター及び補助配列(NLS配列、ペプチド発現配列及びウイルスコートタンパク質配列など)を含むと考えられるため、ポリペプチドが融合/キメラタンパク質である可能性があり得ることも含め、配列同一性は、宿主生物で知られている任意の相同な内因性又は天然ペプチドドメイン/モジュールと比較して、ペプチドの各ドメイン/モジュールについて別個に簡便に評価され得る。これは、任意の宿主発現ペプチドの比較的短いペプチド断片(エピトープ)がインビボで宿主生物において発現された場合、自己/非自己ペプチドの認識などを通して免疫原性を決定する役割を果たし得るため、許容できるアプローチであると考えられる。一例として、第1の宿主タンパク質ドメインが第2の宿主タンパク質ドメインに直接融合され、いずれのタンパク質ドメイン配列も変異によって改変されていない(ただし、融合タンパク質は、天然タンパク質ではない)100アミノ酸のペプチド配列は、宿主ペプチド配列と100%同一であるとみなされ得る。この評価では、このような別個の融合ドメインが、宿主内で発現される天然のより大きいタンパク質配列の断片のみを表しているかどうか又は融合自体が自然発生していないかどうかは、問題ではない。しかし、100個のアミノ酸の1つが天然配列から改変されている場合、改変された配列は、宿主の天然タンパク質配列と99%同一であるとみなされる。
【0178】
したがって、クエリ配列と参照配列との間の配列同一性の程度は、当業者が利用可能な任意の手段、例えば配列アライメントによって決定され得る。
【0179】
ペプチド配列がマウス又はヒトなどの内因性宿主配列とマッチするように(又は最もよくマッチするように)設計/操作されている場合、それは、「マウス化」又は「ヒト化」とみなされ得る。実際には、「ヒト化」又は例えば「マウス化」は、本発明のペプチド配列における外来エピトープの可能性を低減させることを意図する。同様に、ペプチド配列は、当然のことながら、ウサギなどの他の動物発現系にも適合され得る。このような意図的な配列変更は、ワクシニアウイルスの表面に融合/キメラタンパク質を提示するためのウイルス粒子の組み立てに使用され得る、完全に活性な(又は少なくとも好適に生存可能な)ウイルスコートタンパク質を達成するという制約内で実行することが望ましい。
【0180】
配列同一性を向上させるために、ヒトにおける使用のための好適に「宿主にマッチした」融合/キメラタンパク質配列を、マウス研究のための好適なマウス類似タンパク質に置き換え得る。同様に、宿主最適化をさらに改良するために、関連するペプチド配列は、好ましくは、それぞれヒト又はマウスでの発現のためにヒト及びマウス配列から選択される
【実施例
【0181】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【0182】
別段の記載がない限り、市販の試薬並びに分子生物学及び生化学における標準技術が使用された。
【0183】
材料及び装置
本出願人が使用した以下の手順は、Sambrook,J.et al.,1989(上掲):analysis of restriction enzyme digestion products on agarose gels and preparation of phosphate buffered salineに記載されている。汎用試薬、オリゴヌクレオチド、化学薬品及び溶媒は、Merck Life Science Ltd(英国)から購入した。酵素及びポリメラーゼは、New England Biolabs(NEB Inc.;UK)から入手した。
【0184】
表1に記載されるpUC57-Amp A27L融合物及びpUC57-Amp A13L融合物(GENEWIZ)。BSC-1細胞(ATCC、カタログ番号CCL-26)、HeLa細胞(ATCC、カタログ番号CCL-2)。VACV-COP ΔJ2R(TK)ワクシニアウイルス株。Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬(ThermoFisher、カタログ番号11668027)。DMEM培地(Gibco(商標)41965039)、FBS(Gibco(商標)10500064)、DPBS(Gibco(商標)20012027)。G418(Gibco(商標)11811031)、超音波ウォーターバス、6ウェル組織培養プレート(Corning(商標)3516)、6cmディッシュ(ThermoScientific(商標)150288)、15mlポリプロピレンチューブ(Falcon(商標)352196)、使い捨てスクレーパー、Dounce型ホモジナイザー、滅菌2mlマイクロ遠心チューブ。
【0185】
方法
細胞調製及び野生型ワクシニアウイルスの感染
BSC-40細胞(2×10細胞/ウェル)(RRID:CVCL_3656)、BSC-1細胞(Hruby,et al.,1979)由来のアフリカミドリザル腎細胞の連続株を、完全DMEM培地中、6ウェル組織培養プレートのウェルに播種し、50~80%コンフルエントになるまでインキュベートした(37℃、5%COで一晩)。親ウイルス(コペンハーゲン株)の最大100μlのアリコートを解凍し、超音波ウォーターバスで1分間超音波処理してウイルス凝集体を分散させた。ウイルスを完全DMEMで1.2×10pfu/mlに希釈した。コンフルエントな細胞単層から培地を除去し、細胞を0.5mlの希釈ワクシニアウイルス(0.03pfu/細胞)で感染させ、37℃で3時間インキュベートした。感染させた単層を15分ごとに混合した。3時間後、接種物を1回洗浄し、次いで2mlの完全DMEM(DMEM、10%FBS、非必須アミノ酸を含む1%DMEM、1%ピルビン酸ナトリウム、1%Glutamax)に交換した。
【0186】
遺伝子標的プラスミドによるトランスフェクション
トランスフェクトする各ウェルについて、250μlの無血清培地を2本の滅菌チューブに加えた。6μlのLipofectamine 2000をチューブAの無血清培地に直接滴下し、転倒混和し、その後、5分間インキュベートした。3μgのDNAを、250μlの無血清培地を含有する第2のチューブ(チューブB)に加え、チューブBをチ
ューブAに滴下してチューブBの内容物をチューブAの内容物と混合し、その後、室温で15分間インキュベートした。次いで、感染後3時間で完全DMEM培地中の感染細胞にLipofectamine 2000/DNA混合物の全量を滴下した。均等に分散されるように、ディッシュを穏やかに揺動した。少なくとも12時間のインキュベーション後にトランスフェクション混合物を除去し、2.8mg/mlのG418を含有する完全DMEM培地に交換し、その後、37℃(5%CO2)で24~48時間インキュベートした。48~72時間後、細胞スクレーパーを使用して細胞をウェルから剥がし、2mlのスクリュートップ滅菌マイクロ遠心チューブに移した。次いで、細胞懸濁液を-80℃で凍結し、37℃のウォーターバスで解凍し、ボルテックスするという凍結融解サイクルを3回実施して溶解した。細胞溶解物を、必要になるまで-80℃で保存した。
【0187】
プラーク精製
ワクシニアゲノムへの全遺伝子標的プラスミドの組込み後、6ウェルディッシュに播種したBSC-40細胞に感染させてウイルスを精製した。感染した細胞溶解物を解凍し、遠心分離して細胞残骸を沈降させた。BSC-40細胞が50~80%コンフルエントになった時点で、1μlの感染溶解物で2回及びその無血清培地中10倍希釈液で2回、ウェルに感染させた。1時間後、接種物を、2.8mg/mlのG418を含有する完全DMEM培地に交換し、37℃(5%CO)において24~48時間インキュベートした。48時間後、細胞をPBSで洗浄し、その後、ピペットチップを使用してプラークを回収した。プラークを100μlの1mM Tris pH9に溶解し、3回凍結/解凍した。プラーク採取は、3回実施した。
【0188】
最終ウイルスは、上記のように3ラウンドのプラーク精製を経て回収されたが、クローンの純度が達成されなかった場合、さらに精製が行われた。候補ウイルスにおける標的遺伝子の組換えは、PCRアッセイ及び配列決定によって検証した。
【0189】
実施例1
相同組換えによるワクシニアウイルスゲノムへの改変成熟ビリオン(MV)遺伝子A13L及びA27Lの導入
補体媒介性のビリオンの溶解又はオプソニン化及びマクロファージによる取り込みを阻害するために、補体制御タンパク質がワクシニアエンベロープタンパク質と融合して操作された。候補となるエンベロープタンパク質は、A13及びA27であった。上で考察したように、A27タンパク質は、A17タンパク質との複合体としてワクシニアエンベロープ内に局在し、ウイルス粒子に対して極性分布しているが、A13は、非極性分布を有するため、エンベロープ全体に見られる。
【0190】
各ビリオンエンベロープ遺伝子は、ビリオン表面に露出している末端に応じて、A13及びA27遺伝子のアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかに融合タンパク質をコードするDNAを導入することによって改変され、結果として得られる融合タンパク質の遺伝子は、それぞれ天然のA13L及びA27Lプロモーターによって駆動されることが確認された。いくつかの実施形態では、V5タグもタンパク質に融合され、発現された産物の検出を促進するために使用された。いくつかの実施形態では、ウイルス遺伝子とそれぞれの融合パートナー遺伝子との間の融合は、Gly/Serリンカーペプチドの挿入によって確立された。本明細書に記載されるように、Gly/Serに基づく様々なリンカーが想定されているが、任意の好適なペプチドリンカーが代わりに使用され得、主な要件は、リンカー配列により、ビリオンの表面で融合ペアの各タンパク質が適切に折り畳まれ、組み立てられ、提示され、リンカーは、各タンパク質ドメインの意図された機能を妨げないことが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、任意選択によるものであり、そのため、融合タンパク質/核酸パートナーは、追加のリンカー配列を使用せずに互いに直接融合され得る。
【0191】
本実施形態では、(GlySer)リンカー、すなわち4つの隣接するGly残基及びそれに続くSer残基に基づくリンカーペプチドが使用され、このパターンは、必要に応じて1回以上リピートされ得る。本発明のこれらの例では、以下に説明されるように、単一のGlySerリンカーペプチドを使用して、A13タンパク質配列を各トランスジーン配列のN末端に融合し、(GlySer)リンカーを使用して、A27タンパク質配列を各トランスジーン配列のC末端に融合した。
【0192】
いくつかの例示的な実施形態では、ウイルス遺伝子A13L又はA27L(改変を伴うか又は伴わない、すなわち各タンパク質の野生型又は変異配列)をコードする標的構築物が、適切なリンカー配列(使用される場合)により、意図された融合パートナーに結合され、およそ250bpsのワクシニアゲノムに由来する相同領域に挟まれ、Genewizによって合成され、いずれも陽性mCherry-Neo選択カセットを含有するプラスミド(pUC57)にクローニングされた。しかし、隣接配列の正確な長さは、ある程度任意であり、例えば200bp以上の相同配列を代わりに使用し得ることが理解されるであろう。その要件は、トランスジーン構築物の両側の相同性の長さが標的ウイルスゲノムとの相同組換えを導くのに十分であることである。
【0193】
いくつかの実施形態では、適切なワクシニアウイルスゲノムとの相同組換えのための隣接配列は、対応する野生型遺伝子の代わりに操作された融合構築物を挿入するために、必要に応じて、それぞれのA13L又はA27Lウイルス遺伝子の天然の遺伝子座に隣接する配列領域に対応する(すなわち相同である)(例えば、図5を参照されたい)。これらの例では、結果として得られる改変されたワクシニアウイルスには、野生型A13L及び/又はA27L遺伝子が含まれず(産生されたバリアント株による(下記を参照されたい))、そのため、ウイルスエンベロープで産生されたA13及び/又はA27タンパク質は、全て操作された融合タンパク質である。
【0194】
いくつかの用途では、操作されたワクシニアウイルスが野生型A13及び/又はA27の発現レベルを維持することが望ましい場合があり;例えば、ウイルスの組み立ての改良及び/又は補体カスケードに対するウイルスの影響の調整などである。したがって、本発明のいくつかの代替的な実施形態では、A13L又はA27L融合構築物がJ2R/TK遺伝子に組み換えられる(図6)。このようにして、TKコード配列(の大部分)が除去され、これは、既に考察され、当業者に知られている理由により有益であり得る。しかし、この場合、それぞれの遺伝子(A13L及び/又はA27)の野生型コピーが依然として存在するため、ウイルスによって発現されるA13又はA27タンパク質の少なくとも一部は、野生型である。一方、野生型のA13及びA27遺伝子の存在は、挿入されたA13L/A27L融合構築物との相同組換えのテンプレートを提供するが、これは、一般的に望ましくない。したがって、特にTK遺伝子座にA13L及びA27L融合配列を挿入するために使用されるプラスミド構築物は、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化されたA13L及びA27Lヌクレオチド配列を含有し得、これにより野生型遺伝子配列との意図しない組換えの可能性が減少する。
【0195】
BSC40細胞は、Lipofectamine 2000を使用して線状化された標的構築物でトランスフェクトされ、続いてコペンハーゲン(COP)、ウェスタンリザーブ(WR)及びリスターを含む様々なワクシニアウイルス株で(個別に)感染され、各ワクシニア株のウイルスゲノムとの組換えが達成された。得られた細胞溶解物を、1.0%メチルセルロース又はG418を含有するbacto寒天/DMEMを重ねたBSC40細胞層で滴定した。mCherry陽性クローンは、G418での蛍光プラークの選択を3又は4ラウンド行うことによりプラーク精製した。
【0196】
トランスジーン遺伝子融合物の正しい挿入は、PCR及び遺伝子配列決定によって確認された。
【0197】
構築物
相同組換えのための融合構築物を調製するために、以下のA13遺伝子融合物(表1)がGenewizによって合成され、pUC57-Ampプラスミドに挿入された。
【0198】
【表1】
【0199】
同様に、相同組換えのための追加の融合構築物を調製するために、以下のA27遺伝子融合物(表2)がGenewizによって合成され、pUC57-Ampプラスミドに挿入された。
【0200】
【表2】
【0201】
この実施例では、ワクシニアコペンハーゲン株からのA13及びA27タンパク質配列を使用した。しかし、他の任意の望ましいワクシニア株からのA13L及びA27L遺伝
子配列は、特に全ての遺伝子配列がオルソロガスであり、同様に挙動することが予想されるため、他のワクシニアウイルス株を操作するために使用され得る。実証のために、異なるワクシニア株からのA13及びA27の配列アライメントがそれぞれ図3及び4に示され、これらの遺伝子の配列がウイルスゲノム全体でどの程度よく保存されているかが示されている。さらに、タンパク質の自然な挙動を何らかの方法で改変することが望ましい場合又は例えば融合パートナーとの効率的若しくは最適な融合を達成することが望ましい場合、いくつかの実施形態では、A13及びA27タンパク質配列が改変/変異され得る。
【0202】
他の様々な実施形態では、それぞれのドメイン間にGGGGSリンカーを有しない融合構築物及び本明細書に記載されるものと異なる柔軟なリンカー又は構造化されたリンカーを有する融合構築物も包含されるが、ただし、融合ペアの各メンバーは、その意図された機能を実行できるものとする。
【0203】
遺伝子標的構築物を生成するために、それぞれの挿入物を切り出し、好適な標的ベクター、特に陽性mCherry-Neo選択カセットと、ワクシニアウイルスの所望の遺伝子座に組み換えるための適切な相同組換え配列とを含む含有するプラスミド、例えばpUC57にクローニングした。
【0204】
相同組み換えによる遺伝子ターゲティング、それに続くウイルスの選択及び精製により、Envタンパク質1がA13、Envタンパク質2がA27である、以下の29の操作されたワクシニアウイルスが得られた(表3)。以下の各実施形態では、A13L融合構築物を対応するA13L遺伝子座に挿入し、A27L融合構築物を対応するA27L遺伝子座に挿入して、操作されたウイルスを生成した。
【0205】

【表3】
【0206】
実施例2
ウイルスの精製及び定量
HeLa細胞は、5%FBSを含有する完全DMEMを含有するT175フラスコ中で成長させた。50~70%コンフルエントに達したとき、細胞をPBSで1回洗浄し、ウイルスを含有する5mlの無血清培地で感染させた(MOI=0.02)。1.5時間後、接種物を除去し、20mlの完全培地と交換した。感染後48~72時間で細胞を培地から掻き取り、4℃で5分間、1,500rpmで回転させた。細胞ペレットを冷PBSで2回洗浄した後、10mlの10mM Tris-HCl pH9に再懸濁し、氷上で15分間インキュベートした。Dounce型ホモジナイザーを使用して、懸濁液を氷上で溶解した。
【0207】
細胞核を4℃において1,500rpmで5分間ペレット化し、上清(除核後上清、PNSと呼ばれる)を10mM Tris-HCl pH9中の等量の36%スクロース(w/v)とともに超遠心管に充填した。
【0208】
ウイルスを24,000rpmで90分間ペレット化し、上清を廃棄し、1mM Tris-HCl pH9に再懸濁し、アリコートを-80℃で凍結した。アリコートをBSC40細胞で滴定した。BSC40細胞を6ウェルプラスチックプレートでコンフルエントになるまで成長させた後、ウイルスのアリコートを1mlの無血清培地で10倍に希釈した。次いで、6ウェルプラスチックプレートのサンプルを無血清培地で洗浄し、接種物を加えた。1.5時間後、培地を除去し、ウェルをPBSで2回洗浄し、5%FBSを含有するDMEM中の1%メチルセルロース層を重ねた。3日後、重ねた層を吸引除去し、ウェルをPBSで2回洗浄した後、4%ホルマリンで固定した。ウェルを20%エタノール中の1%クリスタルバイオレットで室温において30分間染色し、水で洗浄し、乾燥させた。
【0209】
プラークを計数し、力価を1mlあたりのプラーク形成単位として計算した。
【0210】
実施例3
ウェスタンブロットによるタンパク質発現
全強度エンベロープタンパク質-補体制御タンパク質融合体の発現を決定するために、ウェスタンブロットを実施した。
【0211】
氷冷したPBSで細胞を1回洗浄し、0.5M DTT及び1×プロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤混合物(Thermo Fisher Scientific)を補充した1×ドデシル硫酸リチウム緩衝液でウェルを溶解した。細胞溶解物を1分間超音波処理して粘度を下げた。タンパク質は、4~12%NuPAGE Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)で分離し、ブロッティングによって
ニトロセルロース膜に転写した。膜をトリス緩衝生理食塩水(TBS)中の5%無脂肪乳で1時間ブロッキングし、次いで0.1%のTween20を含むTBS(TBST)中の5%無脂肪乳で希釈した抗V5ウサギ抗体(Clone Poly29038 Biolegend)とともに4℃で一晩インキュベートした。膜をTBSで3回洗浄し、次いで5%の無脂肪乳を含有するTBSTで1/3000に希釈したヤギ抗ウサギIgG H&L(HRP)(Abcam ab6721)で室温において1時間処置した。膜を、0.1%のTween20を含むTBS(TBST)で3回洗浄し、水で2回洗浄した。
【0212】
結合したタンパク質は、Novex(商標)HRP発色基質(TMB)(Invitrogen(商標)WP20004)を使用して検出された。
【0213】
実施例4
ウイルス成長分析
プラークの形態
いくつかの場合、エンベロープタンパク質の融合により、ウイルスの複製、感染性及び拡散が変化し得る。これは、例えば、プラークの形態の変化から明らかであり得、以下の方法を使用して決定することができる。
【0214】
ウイルスをBSC40細胞上で段階希釈により滴定し、上記のように1%メチルセルロース半固体培地層を重ねた。6ウェル組織培養プレートの1ウェルあたり20~50個のプラークが得られる適切な希釈物が確立され、これを使用して平均プラークサイズが決定された。
【0215】
BSC40細胞内のそれぞれのウイルス株によって形成されたプラークの代表的な画像を感染から4日後にクリスタルバイオレットで視覚化した。このような低密度滴定からの少なくとも125個の個々のプラークの直径を、NIH ImageJソフトウェアを使用して感染後約48時間(hpi)で決定した。次いで、感染後24時間で指定されたウイルス株の培養上清中に存在する感染性ウイルス(1mlあたりのプラーク形成単位)の定量分析を、BSC40細胞での標準プラークアッセイを使用して決定する。
【0216】
結果(図示せず)は、改変されたA13L遺伝子を含有するウイルスのいずれも、改変されていない遺伝子及びA13L-EGFP融合ウイルスと比較して、プラークのサイズが縮小する増殖欠陥を示さないことを示している。
【0217】
ステップ成長分析
候補ウイルスの複製能力も成長曲線の実施によって決定された。
【0218】
一段階曲線の場合、HeLa細胞は、6ウェルプレートにおいて感染多重度10(MOI=10)で感染されたが、多段階曲線の場合、細胞は、0.02のMOIで感染された。個々のウェルからの細胞は、感染から0、2、4、6、8、12、16及び24時間後(一段階)又は感染から0、8、12、24、48、72及び96時間後(多段階)に1mlの無血清培地で採取された。多段階成長のために、放出されたウイルス集団を、重ねた培地層とともに収集し、その後、細胞を1mlの培地に採取した。上清及び掻き取った細胞をそれぞれ別々に3回凍結融解し、13,000kで30分間遠心分離し、得られた清澄化した上清をBSC40細胞で3回滴定した。結果として得られた感染性をプロットし(pfu/ml)、データから、全てのA13融合タンパク質発現ウイルスが、親ウイルス(すなわち関連するA13L融合遺伝子構築物を欠く同等のウイルス)と同等のレベルで細胞内増殖及び細胞間拡散を示すことが明らかになった。
【0219】
実施例5
インビトロ補体阻害アッセイ
ヒト血清アッセイ
ワクシニア成熟ビリオン(MV)のタンパク質融合バリアントが血清補体阻害を回避する能力をヒト血清で調査した。
【0220】
ウイルス(2×10~2×10pfu)を、50%プールヒト補体血清(Merck S1764)を含有する無血清培地中、37℃で60分間インキュベートした。対照血清サンプルを56℃で30分間、熱失活させた。感染性のレベルを決定するために、サンプルを1mlの無血清DMEMで段階的に希釈し、6ウェルプラスチックプレート内のコンフルエントなBSC40細胞に1時間にわたり加えた。この後、培地を除去し、ウェルをPBSで2回洗浄し、5%FBSを含有するDMEM中の1%メチルセルロース層を重ねた。2日後、重ねた層を吸引除去し、ウェルをPBSで2回洗浄した後、4%ホルムアルデヒド(Merck)で固定した。ウェルを15%エタノール中の1%クリスタルバイオレットで室温において30分間染色し、水で洗浄し、乾燥させた。
【0221】
プラークを計数し、中和率を計算した。
【0222】
プールされたヒト血清は、野生型コペンハーゲンウイルス株及びA13L-EGFP変異ウイルス株の感染性を80%超阻害した。しかし、熱失活させた血清とともにウイルスをインキュベートした場合、ウイルス感染性の阻害は、10%未満であることが観察された。
【0223】
対応する実験は、以下の融合物:A13-VCP、A13-VCPmut、A13-CD55、A13-CD35、A13-コンプスタチン、A13-CCPH及びA13-ORF4を発現する、本明細書に記載される以下の操作されたウイルスのぞれぞれで実施した。結果(示さず)は、本開示の補体阻害融合タンパク質を発現する各試験ウイルスが、補体を含有するプールされたヒト血清の存在下で感染力を有意に保持できることを示している。図7は、例として提供されており、vA13-CD55/A13-CD55又は対応する野生型(WT)ウイルスのいずれかをヒト血清とともにインキュベートした結果を示し、本開示の操作されたウイルスが血清媒介性中和に対する耐性の有意な増加を示すことを示している。さらに、VCP-A27、SPICE-A27、CD55-A27、CD35-A27、コンプスタチン-A27、CCPH-A27及びORF4-A27ウイルスでは、野生型及びレポーターウイルスに比べて感染性の保持が改良されていることも観察され、本開示の操作されたワクシニアウイルスは、ヒト血清中で補体回避が改良されていることを実証した。さらに、結果は、A13又はA27エンベロープタンパク質のいずれかが、補体誘導性不活性化を回避するように設計された融合タンパク質の好適な候補であることを示している。
【0224】
ウサギ補体アッセイ
MVタンパク質融合バリアントが血清補体阻害を回避する能力もウサギ血清で調査した。
【0225】
ウイルス(2×10~2×10pfu)を、50%ウサギ補体(Merck S7764)を含有する1ml PBS中、37℃で60分間インキュベートした。対照血清サンプルを56℃で30分間、熱失活させた。感染性のレベルを決定するために、サンプルを1mlの無血清DMEMで段階的に希釈し、6ウェルプラスチックプレート内のコンフルエントなBSC40細胞に1時間にわたり加えた。この後、培地を除去し、ウェルをPBSで2回洗浄し、5%FBSを含有するDMEM中の1%メチルセルロース層を重ねた。2日後、重ねた層を吸引除去し、ウェルをPBSで2回洗浄した後、4%ホルムアルデヒドで固定した。ウェルを15%エタノール中の1%クリスタルバイオレットで室温に
おいて30分間染色し、水で洗浄し、乾燥させた。
【0226】
プラークを計数し、中和率を計算した。
【0227】
ヒト血清を使用した上記のアッセイと同様に、ウサギ血清は、野生型並びにA27-GFP及びA13-GFPウイルスの感染性を80%超阻害したが、熱失活させた血清でウイルスをインキュベートすると、10%未満の阻害のみが得られた。結果は、試験変異ウイルス(A13-VCP、A13-VCPmut、A13-CD55、A13-CD35、A13-コンプスタチン、A13-CCPH及びA13-ORF4)が全て補体含有ウサギ血清の存在下で感染性を著しく保持できることを示している。この効果は、VCP-A27、SPICE-A27、CD55-A27及びCD35-A27、コンプスタチン-A27、CCPH-A27及びORF4-A27ウイルスでも観察され、本開示の操作されたワクシニアウイルスがウサギ血清中で改良された補体回避を示すことを再び実証した。
【0228】
抗体中和
MV融合変異体が抗体中和を回避する能力を調査した。
【0229】
BSC40細胞を6ウェルプレートに播種し、コンフルエンスに達したときに感染させた。ウイルス(2×10pfu)を50%ウサギ補体血清の存在下又は不存在下で1mlの無血清培地に希釈し、以下の抗体40μgとともに37℃で1時間インキュベートした:9503-2057(BioRad)、PA1-7258(Invitrogen)、いずれも抗ワクシニア;及び対照ウサギIgG抗体ab37415(Abcam)。段階希釈液を1mlの無血清培地で調製し、BSC40を含有するウェルに加えた。2時間後、接種物を除去し、ウェルをPBSで2回洗浄し、5%FBSを含有する完全DMEM中の1%メチルセルロース層を重ねた。2日後、重ねた層を吸引除去し、ウェルをPBSで2回洗浄した後、4%ホルムアルデヒドで固定した。ウェルを15%エタノール中の1%クリスタルバイオレットで室温において30分間染色し、水で洗浄し、乾燥させた。
【0230】
プラークを計数し、中和率を計算した。
【0231】
結果は、融合構築物が補体の存在下で抗体媒介性中和を低減することを示している。
【0232】
添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、上記の例に対する多くの改変形態がなされ得る。
【0233】
考察及び結論
ワクシニアウイルス融合タンパク質/キメラ遺伝子は、ウイルス内で発現し、ウイルスエンベロープ内に局在するように設計されている。融合タンパク質は、天然(又は操作された)ウイルスタンパク質配列である1つの部分(又はドメイン)と、異種遺伝子である1つの部分(又はドメイン)とを含む。
【0234】
本明細書に開示されるように、融合/キメラ遺伝子のウイルス遺伝子部分は、ウイルスエンベロープにおいて異なる分布パターンで発現され、見出されるワクシニアウイルスタンパク質A13又はA27をコードし得る。A13は、ウイルスエンベロープの周囲に広く分布している一方、A27は、より偏った分布を示す。
【0235】
これらの実施例では、異種遺伝子は、本明細書の他の箇所で説明されているように、補体活性を阻害することが知られているVCP、SPICEなどの補体制御因子(又は補体制御)タンパク質である。そのため、A13及び/又はA27融合タンパク質は、それら
のVCP(又は機能的に均等なドメイン)が補体と相互作用し得るように、そのような融合タンパク質がウイルスエンベロープ上で好適に発現及び提示されることを条件として、操作されたワクシニアウイルス粒子が補体媒介性不活化を回避できるようにし得るという仮説が立てられた。
【0236】
1つ又は様々な補体阻害ペプチドドメインを有する、関連するワクシニアエンベロープタンパク質、A13及び/又はA27を含む融合タンパク質をコードする融合/キメラ核酸構築物配列が産生され、操作されたワクシニアウイルス粒子の発現に使用されている。結果として得られた操作されたウイルスの研究では、補体阻害融合タンパク質をコードする核酸を様々なワクシニアウイルスベクターに挿入することができ、コードされた融合タンパク質が発現され、操作されたワクシニアウイルスのエンベロープ上に提示されることが実証されている。
【0237】
当業者に理解されるように、融合/キメラ核酸配列の適切な設計により、異種キメラ遺伝子構築物をウイルスベクター内の任意の所望の位置に挿入することが可能である。これらの研究では、キメラ遺伝子構築物がチミジンキナーゼ(TK)遺伝子座(J2R)に挿入され、同時にワクシニアウイルスTK欠失変異体が生成した。ワクシニアウイルスのTK欠失変異体は、複製のために宿主細胞のTK活性に依存する必要があり、この活性は、静止細胞と比較して増殖細胞で有意に多く見られるため、特に増殖性障害(癌など)の治療に関して疾患治療に有益な挙動を示し得る。本開示のキメラ遺伝子をTK遺伝子座に挿入することにより、ウイルスベクターは、(さらに改変されない限り)野生型A13L及び/又はA27L遺伝子及び関連する発現要素を保持し、その結果、これらの態様及び実施形態における操作されたウイルスは、野生型エンベロープタンパク質(すなわちA13又はA27)の混合物及び補体制御タンパク質配列に融合されたA13又はA27タンパク質配列を含む対応する異種融合タンパク質を発現し得る。このように、野生型ウイルスの複製、組み立て及び感染性の有益な特性は、いくつかの実施形態では、発現されたA13又はA27タンパク質配列の全てが補体制御タンパク質に融合されている、比較のための操作されたウイルスよりも良好に維持され得る。
【0238】
いくつかの態様及び実施形態では、キメラ遺伝子構築物は、異種遺伝子配列を対応するエンベロープタンパク質遺伝子座に挿入するように設計されており、その結果、A13融合タンパク質をコードする遺伝子がA13L野生型遺伝子に挿入されて置換され、A27融合タンパク質をコードする遺伝子がA27L野生型遺伝子に挿入されて置換される。このような実施形態では、結果として得られる操作されたウイルス粒子からそれぞれの野生型タンパク質が全て除去されるが、本研究では、そのような操作されたウイルス粒子は、A13又はA27融合タンパク質のいずれを含有するかにかかわらず、複製、組み立て及び細胞への感染が可能であることが実証されている。さらに、いくつかの態様及び実施形態によれば、このような操作されたウイルスは、表面に補体制御タンパク質の数/濃度をより多く提示し、したがって、表面にそれぞれ野生型A13又はA27の一定割合の発現を保持する操作されたウイルスと比較してより強い補体回避/不活性化に対する耐性を示す点で有益であり得る。このように、操作されたウイルスベクターを生成するためのこれらの2つの異なるアプローチは、補体回避及び特定の治療用途に最適な操作されたウイルスの生成のための代替的戦略を提供する。
【0239】
これらの研究は、補体制御タンパク質配列とA13又はA27タンパク質配列との融合の正確な位置が、結果として得られるタンパク質及び対応する操作されたウイルス粒子の有効性にとって重要ではないようであるが、補体制御タンパク質配列をA13タンパク質のC末端(又はその近く)に融合させることにより、新規で生存可能な補体制御融合タンパク質を産生できること、及び補体制御タンパク質配列をA27タンパク質のN末端(又はその近く)に融合させることによっても、新規で生存可能な補体制御融合タンパク質を
産生できることをデータが示すことをさらに実証している。
【0240】
さらに、様々な操作されたウイルス粒子を生成して、その表面(特にMV粒子の表面)に広範な異なる融合タンパク質を発現できることが立証されている。融合タンパク質は、ウイルスエンベロープタンパク質配列(特にA13及び/又はA27)と融合したいくつかの異なる補体制御タンパク質配列(本明細書に開示される)のいずれか1つを含み得、このような融合タンパク質は、操作されたウイルス粒子に補体阻害/回避活性をそれぞれ付与することができる。
【0241】
したがって、本開示は、治療剤として有望な一連の新規な操作されたウイルス並びに対応するウイルスベクター、核酸配列及び新規融合タンパク質の産生を記載する。特に、本開示の治療剤は、様々な増殖性疾患及び癌(上記に記載)の治療に有用であり得る。
【0242】
【表4】
【0243】
条項
本発明の概念のさらなる表現は、以下の番号付きの条項に記載される。
【0244】
C1.融合ポリペプチドをコードする単離された核酸であって、融合ポリペプチドは、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質又はその一部と、少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片とを含む、単離された核酸。
【0245】
C2.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、A13及びA27又はそれらの一部から選択される、条項C1に記載の単離された核酸。
【0246】
C3.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、A13である、条項C1又はC2に記載の単離された核酸。
【0247】
C4.(i)ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、H3、D8及び/若しくはA27又はそれらの一部ではなく;及び/又は
(ii)融合ポリペプチドは、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質H3、D8又はA27と、CD55、CD59、CD46、CD35、H因子及びC4結合タンパク質から選択される補体制御タンパク質との融合物ではなく;及び/又は
(iii)融合ポリペプチドは、A27のN末端に結合したCD55、CD59、CD46、CD35、H因子及びC4結合タンパク質から選択される補体制御タンパク質を含まない、条項C1~C3のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0248】
C5.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、ワクシニア成熟ビリオン(MV)からのエンベロープタンパク質である、条項C1~C4のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0249】
C6.少なくとも1つの補体制御タンパク質は、
(i)CD35、CD55、CD59、CD46、CR1、H因子、VCP、MOPICE、SPICE、CCPH、C4結合タンパク質、CD35、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスKaposica/KCP、ヘルペスウイルス・サイミリ(HVS)及びHVS-CD59、アカゲザルラジノウイルスRCP-H及びRCP-1、マウスガンマヘルペスウイルス68(γHV-68)RCA、インフルエンザウイルスM1、EMICE及びIMP並びにそれらの改変配列又はそれらの機能的断片
からなる群の1つ以上から選択される、条項C1~C5のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0250】
C7.少なくとも1つの補体制御タンパク質は、CD35、CD55、VCP、変異VCP、SPICE、CCPH及びORF4又はそれらの機能的断片からなる群の1つ以上から選択される、条項C1~C6のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0251】
C8.少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片は、ワクシニアウイルスMVエンベロープタンパク質の膜貫通領域に融合されている、条項C1~C7のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0252】
C9.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質の膜貫通領域は、H3又はD8ではない、条項8に記載の単離された核酸。
【0253】
C10.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質又はその一部は、ペプチド結合を介して少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片に融合されている、条項C1~C9のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0254】
C11.ペプチド結合は、配列(GlySer)の1つ以上のリピートを含み;任意選択により、ペプチド結合は、(GlySer)、(GlySer)又は(GlySer)を含む、条項C1~C10のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0255】
C12.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質A13は、
(i)ワクシニアコペンハーゲンウイルス、ラクダ痘ウイルス、天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、タテラポックスウイルス、サル痘ウイルスZaire-96-I-16、ハタネズミ痘ウイルス、アクメタウイルス、エクトロメリアウイルス、オルソポックスウイルスAbatinoウイルス、スカンク痘ウイルス、アライグマ痘ウイルス、ヨカポックスウイルス、ムルマンスクポックスウイルス、NY_014ポックスウイルス及びヤバサル腫瘍ウイルス又はそれらの一部からのA13タンパク質配列から選択されるか;又は
(ii)配列番号1~16の1つから選択される配列の少なくともアミノ酸2~21又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む、条項C1~C11のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0256】
C13.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質A13Lは、
(i)配列番号1~16のいずれか1つから選択される配列のアミノ酸2~23;
(ii)配列番号1~16のいずれか1つから選択される配列のアミノ酸2~25;
(iii)配列番号1~16のいずれか1つから選択される配列のアミノ酸2~30;
(iv)配列番号1~16のいずれか1つから選択される配列のアミノ酸2~40;
(v)配列番号1~16のいずれか1つから選択される配列のアミノ酸2~50;
(vi)配列番号1~16のいずれか1つから選択される配列のアミノ酸2~60;
(vii)配列番号1~16のいずれか1つから選択される配列のアミノ酸2~70;
(viii)配列番号1~16のいずれかから選択される配列のアミノ酸1~21;又は(ix)配列番号1~16のいずれか1つ;
又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列
から選択される配列を含む、条項C1~C12のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0257】
C14.(i)少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片は、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質又はその一部のC末端又はその方向に結合されており、任意選択により、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、A13であるか;又は
(ii)少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片は、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質又はその一部のN末端又はその方向に結合されており、任意選択により、ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質は、A27である、条項C1~C13のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0258】
C15.少なくとも1つの補体制御タンパク質は、連続して配置された2つ、3つ若しくは4つの補体制御タンパク質又はその機能的断片を含み;任意選択により、2つ、3つ又は4つの補体制御タンパク質は、GGGGS又はその複数リピートなどの柔軟なリンカーペプチドを介して互いに結合されている、条項C1~C14のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0259】
C16.少なくとも1つの補体制御タンパク質は、連続して配置された2つのVCP若しくは4つのVCPタンパク質又はその機能的断片を含む、条項C15に記載の単離された核酸。
【0260】
C17.融合ポリペプチドは、VCPに融合されたA13、タンデムに配置された2つのVCPタンパク質に融合されたA13、連続して配置された4つのVCPタンパク質に融合されたA13、変異VCPに融合されたA13、CD55に融合されたA13、CD35に融合されたA13、CCPHに融合されたA13若しくはORF4に融合されたA13又はその機能的断片から選択され;
任意選択により、変異VCPは、配列番号31を含み、CD55は、CD55のアミノ酸35~284を含み(例えば、配列番号71)、CD35は、CD35のアミノ酸42~1584を含み(例えば、配列番号72)、CCPHは、CCPHのアミノ酸21~266を含み(例えば、配列番号73)、ORF4は、ORF4のアミノ酸22~268を含み(例えば、配列番号74);
任意選択により、VCPタンパク質は、SPICE(配列番号32)、MOPICE(配列番号33)、EMICE(配列番号75、76、特に配列番号76)又はIMP(配列番号77、78、特に配列番号78)から選択されるポックスウイルス補体制御タンパク質又は改変ポックスウイルス補体制御タンパク質である、条項C1~C16のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0261】
C18.1つ以上の補体制御タンパク質又はその機能的断片は、A13のC末端に融合されている、条項C18に記載の単離された核酸。
【0262】
C19.配列番号37~46のいずれか1つから選択される配列又はそれと少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有するか;又は配列番号47~56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有する融合ポリペプチドをコードする、条項C17又は条項C18に記載の単離された核酸。
【0263】
C20.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質A27又はその一部は、
(i)ワクシニアコペンハーゲンウイルス、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、ラクダ痘ウイルス、天然痘ウイルス、オルソポックスAbatinoアバチノウイルス、アクメタウイルス、エクトロメリアウイルス、タテラポックスウイルス、サル痘ウイルス、ハタネズミ痘ウイルス、アライグマ痘ウイルス、スカンク痘ウイルス又はその一部からのA27タンパク質配列から選択され;
(ii)配列番号17~29のいずれか1つから選択される配列の少なくとも90個の連続したアミノ酸又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む、条項C1若しくは条項C2又は条項C1若しくはC2に従属する場合の条項C5~C16のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0264】
C21.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質A27は、配列番号17~29の
いずれか1つから選択される配列又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む、条項C20に記載の単離された核酸。
【0265】
C22.融合ポリペプチドは、VCPに融合されたA27、変異VCPに融合されたA27、CD55に融合されたA27、CD35に融合されたA27、CCPHに融合されたA27若しくはORF4に融合されたA27又はその機能的断片から選択され;
任意選択により、変異VCPは、配列番号31を含むか;CD55は、CD55のアミノ酸35~284を含むか(例えば、配列番号71)、CD35は、CD35のアミノ酸42~1584を含むか(例えば、配列番号72)、CCPHは、CCPHのアミノ酸21~266を含むか(例えば、配列番号73)、又はORF4は、ORF4のアミノ酸22~268を含み(例えば、配列番号74);
任意選択により、VCPタンパク質は、SPICE(配列番号32)、MOPICE(配列番号33)、EMICE(配列番号75、76、特に配列番号76)又はIMP(配列番号77、78、特に配列番号78)から選択されるポックスウイルス補体制御タンパク質又は改変ポックスウイルス補体制御タンパク質である、条項C20又は条項C21に記載の単離された核酸。
【0266】
C23.1つ以上の補体制御タンパク質又はその機能的断片は、A27のN末端に融合されている、条項C22に記載の単離された核酸。
【0267】
C24.配列番号57~62のいずれか1つから選択される配列又はそれと少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有するか;又は配列番号63~68のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有する融合ポリペプチドをコードする、条項C22又は条項C23に記載の単離された核酸。
【0268】
C25.操作されたワクシニアウイルスゲノム又はベクターを含む、条項C1~C24のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0269】
C26.条項C1~C25のいずれかに記載の核酸を含む、操作されたワクシニアウイルスベクター。
【0270】
C27.ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質又はその一部と、少なくとも1つの補体制御タンパク質又はその機能的断片とを含む融合ポリペプチドをコードする核酸は、対応する野生型ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質遺伝子座の外側の遺伝子座でベクターに挿入されている、条項C26に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター。
【0271】
C28.チミジンキナーゼ(TK)遺伝子の欠失又は不活性なチミジンキナーゼ(TK)遺伝子を含む、条項C26又は条項C27に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター。
【0272】
C29.融合ポリペプチドをコードする核酸は、TK遺伝子の遺伝子座に挿入されており;任意選択により、TK遺伝子は、欠失又は不活性化されている、条項28に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター。
【0273】
C30.融合ポリペプチドをコードする核酸は、対応するエンベロープタンパク質遺伝子座に挿入されており;任意選択により、対応するエンベロープタンパク質遺伝子は、欠
失又は不活性化されている、条項26又は条項27に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター。
【0274】
C31.(i)融合ポリペプチドは、A13又はその一部を含み、対応するエンベロープタンパク質遺伝子座は、A13L遺伝子座であるか;又は
(ii)融合ポリペプチドは、A27又はその一部を含み、対応するエンベロープタンパク質遺伝子座は、A27L遺伝子座である、条項C30に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター。
【0275】
C32.融合ポリペプチドをコードする核酸は、ワクシニアウイルスの初期又は後期転写プロモーター配列を含み、初期又は後期転写プロモーター配列は、融合ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されている、条項C26~C31のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は条項C1~C25のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0276】
C33.融合ポリペプチドをコードする核酸は、対応するワクシニアウイルスエンベロープタンパク質の天然プロモーターに作動可能に連結されている、条項C26~C31のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は条項C1~C25のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【0277】
C34.C2L、C1L、N1L、N2L、M1L、M2L、K1L、K2L、K3L、K4L、K5L、K6L、K7R、J2R、F1L、F2L、F3L、B14R、B15R、B16R、B17L、B18R、B19R、B20R、K ORF A、K ORF B、B ORF E、B ORF F、B ORF G、B21R、B22R、B23R、B24R、B25R、B26R、B27R、B28R及びB29Rの群から選択される1つ以上のワクシニアウイルス遺伝子の欠失又は不活性ワクシニアウイルス遺伝子を含む、条項C26~C33のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は条項C25に記載の単離された核酸。
【0278】
C35.操作されたワクシニアウイルスベクターは、
(i)サイトカインであって、任意選択によりGM-CSFである、サイトカイン;
(ii)プロドラッグ変換酵素であって、任意選択によりシトシンデアミナーゼ(CD)である、プロドラッグ変換酵素;
(iii)セラノスティックペイロードであって、任意選択によりヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)である、セラノスティックペイロード;
(iv)親和性試薬であって、任意選択により二重特異性抗体である、親和性試薬;
(v)イメージング剤又はレポーター剤であって、任意選択によりルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ-GFP融合タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ又は緑色蛍光タンパク質である、イメージング剤又はレポーター剤
をコードする核酸配列を含む、条項C26~C34のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は条項C25に記載の単離された核酸。
【0279】
C36.操作されたワクシニアウイルスベクターは、サイトカインをコードする核酸配列を含み;任意選択により、サイトカインは、GM-CSFである、条項C26~C35のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は条項C25に記載の単離された核酸。
【0280】
C37.Abatino macacapoxウイルス、アクメタウイルス、ラクダ痘ウイルス903、ラクダ痘ウイルスCMG、ラクダ痘ウイルスCMS、ラクダ痘ウイルスCP1、ラクダ痘ウイルスCP5、ラクダ痘ウイルスM-96、牛痘ウイルス(Brig
hton Red)、牛痘ウイルス(GRI-90株)、牛痘ウイルス(ハンブルク-1985株)、牛痘ウイルス(トルクメニア-1974株)、ゾウ痘ウイルス、ベロオリゾンテウイルス、エクトロメリアウイルスERPV、エクトロメリアウイルス・モスクワ、エクトロメリアウイルスNaval、エクトロメリアウイルスWH、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)オルソポックスウイルス、サル痘ウイルス(シエラレオネ70-0266株)、サル痘ウイルス(ザイール77-0666株)、サル痘ウイルス・ザイール-96-I-16、アライグマ痘ウイルス、スカンク痘ウイルス、タテラポックスウイルス、Aracatubaウイルス、バッファローポックスウイルス、Cantagaloウイルス、Guarani P1ウイルス、Guarani P2ウイルス、馬痘ウイルス、改変ワクシニア・アンカラウイルス、ウサギ痘ウイルス、ウサギ痘ウイルス・ユトレヒト、SPAN 232ウイルス、ワクシニアウイルスAcambis 3000 MVA、ワクシニアウイルス・アンカラ、ワクシニアウイルス・コペンハーゲン、ワクシニアウイルス・大連I、ワクシニアウイルスGLV-1h68、ワクシニアウイルスIHD-J、ワクシニアウイルスL-IPV、ワクシニアウイルスLC16M8、ワクシニアウイルスLC16MO、ワクシニアウイルス・リスター、ワクシニアウイルスLIVP、ワクシニアウイルス・マリアナ、ワクシニアウイルス・タシケント、ワクシニアウイルスTian Tan、ワクシニアウイルスWAU86/88-1、ワクシニアウイルスウェスタンリザーブ、ワクシニアウイルスWR、ワクシニアウイルスWR 65-16、ワクシニアウイルス・ワイス、天然痘(Variola major)ウイルス、天然痘(Variola minor)ウイルス、天然痘ウイルス・ヒト/インド/Ind3/1967、ハタネズミ痘ウイルス、アラスカポックスウイルス、クジラポックスウイルス1、イルカポックスウイルス1、クジラポックスウイルス2、牛痘ワクシニアウイルス、ネコポックスウイルスITA1_PG、ネコポックスウイルスITA2_BC、オルソポックスウイルスGCP2010、オルソポックスウイルスGCP2013、オルソポックスウイルスNY99014/1999、オルソポックスウイルスOH08/2008、オルソポックスウイルスTena Dona、オルソポックスウイルスVPXV_CA85、オルソポックスウイルスWA01960/2001、トドポックスウイルス、オルソポックスウイルス種から選択される操作されたワクシニアウイルスゲノムを含む、条項C26~C36のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は条項C25に記載の単離された核酸。
【0281】
C38.(i)コペンハーゲン、ウェスタンリザーブ、ワイス、リスター若しくは改変ワクシニア・アンカラ株;
(ii)コペンハーゲン若しくはウェスタンリザーブ株;又は
(iii)コペンハーゲン株
から選択される操作されたワクシニアウイルスゲノムを含む、条項C26~C37のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は条項C25に記載の単離された核酸。
【0282】
C39.条項C25~C38のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター又は単離された核酸から得られる、改変されたワクシニアウイルスビリオン。
【0283】
C40.条項C1~C38のいずれか一項に記載の核酸を含む、改変されたワクシニアウイルスビリオン。
【0284】
C41.条項C26~C38のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター、条項C1~C25及びC32~C38のいずれか一項に記載の単離された核酸、条項C26~C38のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター、条項C39に記載の操作されたワクシニアウイルスビリオン又は条項C40に記載の改変されたワクシニアウイルスビリオンと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【0285】
C42.全身又は局所若しくは局部投与のために製剤化されている、条項C41に記載の医薬組成物。
【0286】
C43.改変又は操作されたワクシニアウイルスビリオンを含み、及び
(i)1mlあたり約1×10~約1×1015pfu;
(ii)1mlあたり約1×10~約1×1014pfu;又は
(iii)1mlあたり約1×10~約1×1012pfu
の単位用量を有するように製剤化されている、条項C41又は条項C42に記載の医薬組成物。
【0287】
C44.対象における癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害を治療する方法で使用するための、条項C26~C38のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター、条項C1~C25及びC32~C38のいずれか一項に記載の単離された核酸、条項C39若しくは条項C40に記載の操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は条項C41~C43のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0288】
C45.哺乳動物対象における癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害を治療する方法であって、治療有効量の、条項C26~C38のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター、条項C1~C25及びC32~C38のいずれか一項に記載の単離された核酸、条項C39若しくは条項C40に記載の操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は条項C41~C43のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【0289】
C46.癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害は、肺癌(例えば、肺腺癌)、子宮頸癌、乳癌、心臓癌、結腸癌、前立腺癌、脳神経膠芽腫、膵臓癌、白血病(例えば、急性単球性白血病)、リンパ腫、腎臓癌、結腸直腸癌、膀胱癌、精巣癌、胃腸癌、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)及び/又は神経膠芽腫から選択される、条項C44に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物或いは条項C45に記載の方法。本発明は、皮膚癌(例えば、黒色腫)、頭部及び/又は頸部癌、胆嚢癌、子宮癌、胃癌、甲状腺癌、喉頭癌、唇及び/又は口腔癌、咽頭癌、眼癌並びに骨癌の1つ以上の治療にも有用であり得る。
【0290】
C47.癌及び/又は増殖性疾患若しくは障害は、肝臓癌(HC)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、非典型奇形/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、肝外癌、ユーイング肉腫ファミリー、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、中枢神経系胚芽腫、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発性リンパ腫、脊索腫、慢性骨髄増殖性新生物、結腸癌、肝外胆管癌、非浸潤性乳管癌(DCIS)、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、嗅神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵管癌、骨線維性組織球腫、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、精巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、小児脳幹神経膠腫、有毛細胞白血病、肝細胞癌、ランゲルハンス細胞組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、ウィルムス腫瘍及び他の小児腎腫瘍、小細胞肺癌、皮膚T細胞リンパ腫、眼内黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性扁平上皮頸部癌、正中線癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、非小細胞肺癌(NSCLC)、上皮性卵巣癌、胚細胞性卵巣癌、低悪性度卵巣癌、膵神経内分泌腫瘍、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞
腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性腹膜癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、カポジ肉腫、横紋筋肉腫、セザリー症候群、小腸癌、軟部肉腫、咽頭癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行上皮癌、尿道癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症からなる群のいずれか1つ以上から選択される、条項C44に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物或いは条項C45に記載の方法。
【0291】
C48.対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、コウモリ、マウス又はラットから選択され;任意選択により、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウサギ又はマウスであり;任意選択により、対象は、ヒトである、条項C44、C46又はC47のいずれか一項に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物或いは条項C45~C47のいずれか一項に記載の方法。
【0292】
C49.ワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物は、対象に全身又は局所投与され;任意選択により、投与は、皮内、経皮(transdermal)、非経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、局部(例えば、腫瘍の近く、特に腫瘍の血管系又は隣接血管系)、経皮(percutaneous)、気管内、腹腔内、動脈内、膀胱内、腫瘍内、吸入、灌流、洗浄又は経口から選択される経路によるものである、条項C44又はC46~C48のいずれか一項に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物或いは条項C45~C48のいずれか一項に記載の方法。
【0293】
C50.ワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤又は療法と組み合わせて投与され、1つ以上の追加の治療剤又は療法の投与は、ワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物の投与と同時、別々又は連続的である、条項C44又はC46~C49のいずれか一項に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物或いは条項C45~C49のいずれか一項に記載の方法。
【0294】
C51.1つ以上の追加の治療剤又は療法は、化学療法、放射線療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、免疫調節タンパク質、抗癌剤又はそれらの任意の組み合わせを含む、条項C50に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物或いは条項C50に記載の方法。
【0295】
C52.抗癌剤は、1つ以上の化学療法剤、放射線療法剤、サイトカイン、免疫チェックポイント阻害剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、抗癌抗体及び/又は抗サイクリン依存性キナーゼ剤から選択される、条項C51に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物或いは方法。
【0296】
C53.療法は、化学療法、生物学的療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、抗血管療法、クライオセラピー、毒素療法及び/若しくは外科的手術又はそれらの組み合わせの1つ以上から選択される、条項C51又はC52に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイル
スビリオン又は医薬組成物或いは方法。
【0297】
C54.癌は、原発癌、二次癌又は転移である、条項C44又はC46~C53のいずれか一項に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物或いは条項C45~C53のいずれか一項に記載の方法。
【0298】
C55.対象における腫瘍のサイズ又は腫瘍細胞の割合若しくは増殖を約10%~約100%、約20%~約90%、約30%~約80%又は約40%~約70%減少させる、条項C44又はC46~C54のいずれか一項に記載の使用のための操作されたワクシニアウイルスベクター、単離された核酸、操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は医薬組成物或いは条項C45~C54のいずれか一項に記載の方法。
【0299】
C56.操作又は改変されたワクシニアウイルスビリオンは、
(i)1kgあたり約1×10~約1×1015pfu;
(ii)1kgあたり約1×10~約1×1014pfu;又は
(iii)1kgあたり約1×10~約1×1012pfu
の用量で対象に投与される、条項C44若しくはC46~C55のいずれか一項に記載の使用のための操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は条項C45~C55のいずれか一項に記載の操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオンを含む方法。
【0300】
C57.条項C26~C38のいずれか一項に記載の操作されたワクシニアウイルスベクター、条項C1~C25及びC32~C38のいずれか一項に記載の単離された核酸、条項C39若しくは条項C40に記載の操作若しくは改変されたワクシニアウイルスビリオン又は条項C41~C43のいずれか一項に記載の医薬組成物から選択される1つ以上の第1の活性剤及び第1の活性剤を収容する容器と;任意選択により、
抗癌剤、免疫調節剤又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、1つ以上の第1の活性剤と組み合わせて対象に投与され得る1つ以上の第2の活性剤;
少なくとも1つの第1の活性剤及び任意選択の第2の活性剤を投与するための1つ以上のデバイス又は装置;及び
キットの使用説明書
の1つ以上とを含むキット。
【0301】
C58.条項C1~C25のいずれか一項に記載の核酸によってコードされる、単離されたポリペプチド。
【0302】
C59.配列番号47~56若しくは63~68のいずれか1つから選択される配列又はそれと少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有する、条項A58に記載の単離されたポリペプチド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】