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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】TrkA抗体とその応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250128BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20250128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250128BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20250128BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K48/00
A61K35/12
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P25/00
A61P21/00
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539492
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2022142180
(87)【国際公開番号】W WO2023125477
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/142017
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524243941
【氏名又は名称】4ビー テクノロジーズ(スーヂョウ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グァン シャオミン
(72)【発明者】
【氏名】リュイ チェン
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ バイ
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ ガン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ドン
(72)【発明者】
【氏名】シエ ジエ
(72)【発明者】
【氏名】スー ジン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA31
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA08
4C084ZA20
4C084ZA21
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB11
4C084ZB15
4C084ZC02
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG08
4C085GG10
4C087AA01
4C087AA02
4C087MA17
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA28
4C087MA31
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA52
4C087MA60
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA08
4C087ZA20
4C087ZA21
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZC02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、TrkA抗体、前記抗体を含む組成物、および疼痛などのTrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害の予防および/または治療のために前記抗体を使用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体またはその抗原結合断片であって、TrkAに特異的に結合し、以下からなる群より選択される1つ以上の特性:
1) OctetまたはSPRで測定した場合、約5*10-8M未満のKでTrkAに結合できること、
2) NGFによって誘導されるTrkAの活性化を阻害する能力があること、
3) TrkAとNGFとの間の結合を実質的に阻害しないこと、
4) TrkAへの結合においてNGFと実質的に競合しないこと、および
5) NGFによる神経細胞の成長と生存への影響を実質的に損なうことなく、NGFを介した疼痛感作を選択的に緩和することができること、
を示す、
抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
TrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープを認識することができ、前記エピトープが配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、およびP187を含む、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号119のQ176、H178、G179、Q180および/またはP187に特異的に結合できる、
請求項1~2のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体および多重特異性抗体からなる群より選択される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗原結合断片が、Fab断片、Fab’断片、F(ab)断片、Fv断片、VHHおよびScFvからなる群より選択される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記TrkAがヒトTrkAである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記TrkAへの結合に関して参照抗体と競合することができ、前記参照抗体が、軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、前記軽鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号96~98に記載されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号93~95に記載されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
軽鎖可変領域の軽鎖CDR1~3のうち少なくとも1つを含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号132、134、15、および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
重鎖可変領域の重鎖CDR1~3のうち少なくとも1つを含み、前記重鎖可変領域が、配列番号131、133、14および51のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
軽鎖CDR1を含み、前記軽鎖CDR1が、配列番号96、117、9、および50のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
軽鎖CDR1を含み、前記軽鎖CDR1が、配列番号9、28、50、56、80、および88のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
軽鎖CDR2を含み、前記軽鎖CDR2が、配列番号97、118、および11のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
軽鎖CDR2を含み、前記軽鎖CDR2が、配列番号11、30、39、58、77、82、103、および108のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
軽鎖CDR3を含み、前記軽鎖CDR3が、配列番号98、13、および41のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
軽鎖CDR3を含み、前記軽鎖CDR3が、配列番号13、32、41、および60のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号132、134、15、および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号15、18、44、53、61、78、85、90、91、100、104、107、および113のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~16のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
軽鎖定常領域を含み、前記軽鎖定常領域が、ヒトIgκ定常領域またはヒトIgλ定常領域を含む、
請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
重鎖CDR1を含み、前記重鎖CDR1が、配列番号93、114(SXWXQ、ここで、XはHまたはYであり、XはIまたはMである)、1、および47のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
重鎖CDR1を含み、前記重鎖CDR1が、配列番号1、20、45、47、62、101、および109のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~19のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
重鎖CDR2を含み、前記重鎖CDR2が、配列番号94、115、4、および48のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~20のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項22】
重鎖CDR2を含み、前記重鎖CDR2が、配列番号4、23、46、48、65、73、75、87、102、および110のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項23】
重鎖CDR3を含み、前記重鎖CDR3が、配列番号95、116、7、および49のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~22のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項24】
重鎖CDR3を含み、前記重鎖CDR3が、配列番号7、26、37、49、68、および111のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~23のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項25】
重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号131、133、14、および51のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~24のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項26】
重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号14、16、42、51、70、74、76、84、86、89、92、99、105、106、および112のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項27】
重鎖定常領域を含み、前記重鎖定常領域が、ヒトIgG定常領域を含む、
請求項1~26のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項28】
1)配列番号96、97、および98にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号93、94、および95にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
2)配列番号117、118、および41にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号114(SXWXQ、ここでXはHまたはYであり、XはIまたはMである)、115、および116にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
3)配列番号9、11、および13にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号1、4、および7にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
4)配列番号28、30、および32にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号20、23、および26にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
5)配列番号56、58、および60にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号62、65、および68にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
6)配列番号56、58、および60にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号20、73、および68にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
7)配列番号56、58、および60にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号20、75、および68にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
8)配列番号56、77、および60にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号62、65、および68にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
9)配列番号56、77、および60にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号20、73、および68にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
10)配列番号56、77、および60にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号20、75、および68にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
11)配列番号80、82、および32にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号62、79、および26にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
12)配列番号88、30、および32にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号20、87、および26にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
13)配列番号28、39、および41にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号45、46、および37にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
14)配列番号88、103、および41にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号101、102、および37にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
15)配列番号88、103、および41にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号109、110、および111にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
16)配列番号88、39、および41にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号45、46、および37にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
17)配列番号39、108および41にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号109、110および111にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、または
18)配列番号50、39、および41にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびに配列番号47、48、および49にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、
を含む、
請求項1~27のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項29】
1)配列番号132に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号131に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
2)配列番号134に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号133に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
3)配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
4)配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
5)配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
6)配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号86に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
7)配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号92に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
8)配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
9)配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
10)配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
11)配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
12)配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
13)配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
14)配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
15)配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号42に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
16)配列番号100に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号99に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
17)配列番号104に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号105に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
18)配列番号104に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号112に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
19)配列番号107に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号106に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
20)配列番号113に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号112に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または
21)配列番号53に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号51に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
を含む、
請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、融合タンパク質。
【請求項31】
請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、または請求項30に記載の融合タンパク質を含む、タンパク質複合体。
【請求項32】
請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、または請求項30に記載の融合タンパク質をコードする、単離された核酸分子。
【請求項33】
請求項32に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
【請求項34】
請求項32に記載の単離された核酸分子または請求項33に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項35】
請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項30に記載の融合タンパク質、請求項31に記載のタンパク質複合体、請求項32に記載の単離された核酸分子、請求項33に記載のベクター、および/または請求項34に記載の細胞、ならびに任意に薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物。
【請求項36】
前記薬学的に許容される賦形剤が緩衝剤を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物のpHが約1~13である、請求項35~36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項30に記載の融合タンパク質、請求項31に記載のタンパク質複合体、請求項32に記載の単離された核酸分子、請求項33に記載のベクター、請求項34に記載の細胞、および/または請求項35~37のいずれか1項に記載の組成物の、TrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害を予防および/または治療するための医薬品の製造における、使用。
【請求項39】
前記疾患または障害が疼痛を含む、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記疼痛が慢性疼痛を含む、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記疾患または障害が、侵害受容性、炎症性、神経障害性、増殖性または混合性病因による慢性疼痛を含む、
請求項38~40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
前記疾患または障害が、筋骨格系または神経障害に起因する慢性疼痛を含む、
請求項38~41のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
前記疾患または障害が、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、神経障害性疼痛および/または変形性関節症疼痛を含む、
請求項38~42のいずれか1項に記載の使用。
【請求項44】
請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、または請求項30に記載の融合タンパク質の発現を可能にする条件下で請求項34に記載の細胞を培養することを含む、
請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、または請求項30に記載の融合タンパク質を製造する方法。
【請求項45】
請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項30に記載の融合タンパク質、請求項31に記載のタンパク質複合体、請求項32に記載の単離された核酸分子、請求項33に記載のベクター、請求項34に記載の細胞、および/または請求項35~37のいずれか1項に記載の組成物の有効量を対象に投与することを含み、疾患または障害が、TrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害である、
必要とする対象における疾患または障害を予防および/または治療する方法。
【請求項46】
前記疾患または障害が疼痛を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記疼痛が慢性疼痛を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記疾患または障害が、侵害受容性、炎症性、神経障害性、増殖性または混合性病因による慢性疼痛を含む、
請求項45~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記疾患または障害が、筋骨格系または神経障害に起因する慢性疼痛を含む、
請求項45~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記疾患または障害が、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、神経障害性疼痛および/または変形性関節症疼痛を含む、
請求項45~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
TrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害を予防および/または治療するための、請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項30に記載の融合タンパク質、請求項31に記載のタンパク質複合体、請求項32に記載の単離された核酸分子、請求項33に記載のベクター、請求項34に記載の細胞、または請求項35~37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
TrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープを使用することを含み、前記エピトープが、配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、およびP187を含む、TrkAとNGFとの結合を実質的に阻害しないTrkA抗体をスクリーニングまたは取得する、方法。
【請求項53】
前記TrkA抗体が、以下からなる群より選択される1つ以上の特性:
1) OctetまたはSPRで測定した場合、約5*10-8M未満のKでTrkAに結合できること、
2) NGFによって誘導されるTrkAの活性化を阻害する能力があること、
3) TrkAとNGFとの間の結合を実質的に阻害しないこと、
4) TrkAへの結合においてNGFと実質的に競合しないこと、および
5) NGFによる神経細胞の成長と生存への影響を実質的に損なうことなく、NGFを介した疼痛感作を選択的に緩和することができること、
を示す、
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
インビトロ法またはイクスビボ法である、請求項52~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記エピトープが、配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、およびP187を含む、TrkAとNGFとの結合を実質的に阻害しないTrkA抗体を取得またはスクリーニングするための薬剤の製造における、TrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープの使用。
【請求項56】
前記TrkA抗体が、以下からなる群より選択される1つ以上の特性:
1) OctetまたはSPRで測定した場合、約5*10-8M未満のKでTrkAに結合できること、
2) NGFによって誘導されるTrkAの活性化を阻害する能力があること、
3) TrkAとNGFとの間の結合を実質的に阻害しないこと、
4) TrkAへの結合においてNGFと実質的に競合しないこと、および
5) NGFによる神経細胞の成長と生存への影響を実質的に損なうことなく、NGFを介した疼痛感作を選択的に緩和することができること、
を示す、
請求項55に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
TrkA抗体とその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロトロフィンはペプチド成長因子のファミリーであり、前記ファミリーの最初のメンバーであるNGF(神経成長因子)と構造的に関連している。ニューロトロフィンは、末梢神経と中枢神経系の両方の神経分化と生存、およびシナプス伝達を調節する。さらに、NGFは免疫系細胞として、様々な非神経組織や細胞に作用する。
【0003】
NGFは、標的細胞に存在する2つの膜受容体、つまり低親和性のp75受容体と、チロシンキナーゼ活性を持つ140kDaの高親和性膜貫通糖タンパク質TrkA(トロポミオシン受容体キナーゼA)を介して作用する。TrkAは、神経堤ニューロン、交感神経ニューロン、ならびに前脳基底部および線条体のコリン作動性ニューロンで発現しており、NGF活性の重要なメディエーターとして機能する。TrkAは、Bリンパ球を含む一部の非神経組織および細胞でも発現する。
【0004】
研究では、疼痛とTrkAシステムの間に直接的な関係があることが示され、関連のない4つのタイプ4疼痛慢性無感覚症例において、TrkA遺伝子の変異が存在し、その結果、機能的なNGF受容体が存在しないことが実証された。したがって、NGF-TrkAシステムは、疼痛に対する治療法、すなわち、TrkA有効拮抗薬を介して疼痛関連神経障害症候群に拮抗できる治療法を設計するための潜在的なターゲットを提供する。
【0005】
報告されている抗TrkA抗体は、NGFとTrkAの結合を阻害することが多く、望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
【0006】
したがって、治療効果がありながら前記副作用を引き起こさないTrkA拮抗薬の開発が強く求められている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、TrkA抗体およびその使用を提供する。特に、本開示は、抗TrkA抗体、前記抗体を含む組成物、および侵害受容性、非侵害受容性、炎症性、外傷性、神経障害性、侵害形成性、または混合病因による慢性疼痛などの疼痛の治療に前記抗体を使用する方法を提供する。
【0008】
一態様では、本開示は、TrkAに特異的に結合することができ、OctetまたはSPRによって測定して約5*10-8M未満のKでTrkAに結合することができること、NGFによって誘導されるTrkAの活性化を阻害することができること、TrkAとNGFとの結合を実質的に遮断しないこと、TrkAへの結合に関してNGFと実質的に競合しないこと、およびNGFを介した疼痛感作を軽減できることからなる群より選択される1つ以上の特性を示す、抗体またはその抗原結合断片を提供する。特に、本開示の抗体またはその抗原結合断片は、神経細胞の成長および生存に対するNGFの効果を実質的に損なうことなく、NGF媒介性疼痛感作を軽減することができ、すなわち、NGF媒介性疼痛感作を選択的に軽減することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、TrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープを認識することができ、エピトープは、配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、およびP187を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号119のQ176、H178、G179、Q180および/またはP187に特異的に結合することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、および多重特異性抗体(二重特異性抗体、または三重特異性抗体など)からなる群より選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab)2断片、Fv断片、VHHおよびScFvからなる群より選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、TrkAはヒトTrkAである。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、TrkAへの結合に関して参照抗体と競合することができ、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号96~98に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号93~95に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖可変領域の軽鎖CDR1~3のうちの少なくとも1つを含み、軽鎖可変領域は、配列番号132、134、15、および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域の重鎖CDR1~3のうちの少なくとも1つを含み、重鎖可変領域は、配列番号131、133、14および51のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR1を含み、軽鎖CDR1は配列番号96、117、9、および50のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR1を含み、軽鎖CDR1は配列番号9、28、50、56、80、および88のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR2を含み、軽鎖CDR2は配列番号97、118、および11のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR2を含み、軽鎖CDR2は配列番号11、30、39、58、77、82、103、および108のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR3を含み、軽鎖CDR3は配列番号98、13、および41のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR3を含み、軽鎖CDR3は配列番号13、32、41、60のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域は配列番号132、134、15、および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域は、配列番号15、18、44、53、61、78、85、90、91、100、104、107、および113のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖定常領域を含み、軽鎖定常領域はヒトIgκ定常領域またはヒトIgλ定常領域を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR1を含み、重鎖CDR1は配列番号93、114(SXWXQ、ここでXはHまたはYであり、XはIまたはMである)、1、および47のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR1を含み、重鎖CDR1は配列番号1、20、45、47、62、101、および109のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR2を含み、重鎖CDR2は配列番号94、115、4、および48のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR2を含み、重鎖CDR2は配列番号4、23、46、48、65、73、75、87、102、および110のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR3を含み、重鎖CDR3は配列番号95、116、7、および49のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR3を含み、重鎖CDR3は配列番号7、26、37、49、68、および111のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は配列番号131、133、14、および51のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号14、16、42、51、70、74、76、84、86、89、92、99、105、106、および112のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖定常領域を含み、重鎖定常領域はヒトIgG定常領域を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1)それぞれ配列番号96、97、および98に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号93、94、および95に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、2)それぞれ配列番号117、118、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号114(SXWXQ、ここでXはHまたはYであり、XはIまたはMである)、115、および116に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、3)それぞれ配列番号9、11、および13に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号1、4、および7に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、4)それぞれ配列番号28、30、および32に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号20、23、および26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、5)それぞれ配列番号56、58、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号62、65、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、6)それぞれ配列番号56、58、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号20、73、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、7)それぞれ配列番号56、58、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号20、75、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、8)それぞれ配列番号56、77、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号62、65、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、9)それぞれ配列番号56、77、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号20、73、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、10)それぞれ配列番号56、77、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号20、75、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、11)それぞれ配列番号80、82、および32に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号62、79、および26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、12)それぞれ配列番号88、30、および32に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号20、87、および26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、13)それぞれ配列番号28、39、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号45、46、および37に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、14)それぞれ配列番号88、103、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号101、102、および37に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、15)それぞれ配列番号88、103、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号109、110、および111に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、16)それぞれ配列番号88、39、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号45、46、および37に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、17)それぞれ配列番号39、108、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号109、110、および111に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、または18)それぞれ配列番号50、39、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号47、48、および49に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1)配列番号132に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号131に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、2)配列番号134に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号133に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、3)配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、4)配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、5)配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、6)配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号86に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、7)配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号92に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、8)配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、9)配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、10)配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、11)配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、12)配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、13)配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、14)配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、15)配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号42に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、16)配列番号100に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号99に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、17)配列番号104に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号105に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、18)配列番号104に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号112に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、19)配列番号107に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号106に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、20)配列番号113に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号112に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または21)配列番号53に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号51に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、を含む。
【0037】
別の態様では、本開示は、本開示の抗体または抗原結合断片を含む融合タンパク質を提供する。
【0038】
別の態様では、本開示は、本開示の抗体または抗原結合断片、または本開示の融合タンパク質を含むタンパク質複合体を提供する。
【0039】
別の態様では、本開示は、本開示の抗体または抗原結合断片、または本開示の融合タンパク質をコードする1つまたは複数の単離された核酸分子を提供する。
【0040】
別の態様では、本開示は、本開示の1つまたは複数の単離された核酸分子を含む1つまたは複数のベクターを提供する。
【0041】
別の態様では、本開示は、本開示の単離された核酸分子またはベクターを含む細胞を提供する。
【0042】
別の態様では、本開示は、本開示の抗体または抗原結合断片、融合タンパク質、タンパク質複合体、単離された核酸分子、ベクター、および/または細胞、および任意に薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、組成物中の薬学的に許容される賦形剤は緩衝剤を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物のpHは約1~13である。
【0045】
別の態様では、本発明は、TrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害を予防および/または治療するための医薬品の製造における、本発明の抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、タンパク質複合体、単離された核酸分子、ベクター、細胞、および/または組成物の使用を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は疼痛を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、疼痛は慢性疼痛を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、侵害受容性、炎症性、神経障害性、増殖性、または混合性病因による慢性疼痛を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、筋骨格系または神経障害に起因する慢性疼痛を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、神経障害性疼痛、および/または変形性関節症疼痛を含む。
【0051】
別の態様では、本開示は、サンプル中のTrkAの存在および/または量を決定するための薬剤の製造における抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、またはタンパク質複合体の使用を提供する。
【0052】
別の態様では、本開示は、本開示の抗体またはその抗原結合断片、または融合タンパク質を産生する方法を提供し、前記方法は、本開示の細胞を、抗体またはその抗原結合断片、または融合タンパク質の発現を可能にする条件下で培養することを含む。
【0053】
別の態様では、本開示は、対象に、本開示の抗体または抗原結合断片、融合タンパク質、タンパク質複合体、単離された核酸分子、ベクター、細胞、および/または組成物の有効量を投与することを含む、それを必要とする対象における疾患または障害を予防および/または治療する方法を提供し、ここで、疾患または障害は、TrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害である。
【0054】
この方法のいくつかの実施形態では、疾患または障害は疼痛を含む。
【0055】
この方法のいくつかの実施形態では、疼痛は慢性疼痛を含む。
【0056】
この方法のいくつかの実施形態では、疾患または障害は、侵害受容性、炎症性、神経障害性、増殖性、または混合性病因による慢性疼痛を含む。
【0057】
この方法のいくつかの実施形態では、疾患または障害は、筋骨格系または神経障害に起因する慢性疼痛を含む。
【0058】
この方法のいくつかの実施形態では、疾患または障害には、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、神経障害性疼痛、および/または変形性関節症疼痛を含む。
【0059】
別の態様では、本開示は、サンプル中のTrkAの存在および/または量を決定する方法を提供し、前記方法は、a)サンプルを本開示の抗体または抗原結合断片、融合タンパク質、またはタンパク質複合体と接触させること、およびb)サンプルに結合した抗体または抗原結合断片、融合タンパク質、またはタンパク質複合体の存在および/または量を決定することを含む。
【0060】
別の態様では、本開示は、a)疾患または障害を予防および/または治療するため、および/またはb)サンプル中のTrkAの存在および/または量を決定するための、本開示の抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、タンパク質複合体、単離された核酸分子、ベクター、細胞、または組成物を提供し、ここで、疾患または障害は、TrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害である。
【0061】
別の態様では、本開示は、配列番号119のアミノ酸残基:Q176、H178、G179、Q180、およびP187を含むTrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープを使用することを含む、TrkAとNGFとの結合を実質的に阻害しないTrkA抗体をスクリーニングまたは取得する方法を提供する。
【0062】
この方法のいくつかの実施形態では、TrkA抗体は、以下からなる群より選択される1つ以上の特性を示す:OctetまたはSPRで測定して約5*10-8M未満のKDでTrkAに結合できること、NGFによって誘導されるTrkAの活性化を阻害できること、TrkAへの結合に関してNGFと実質的に競合しないこと、NGFを介した疼痛感作などの疼痛感作を軽減できること(例えば、神経細胞の成長および生存に対するNGFの効果を実質的に損なうことなく、NGFを介した疼痛感作を選択的に軽減できること)。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記方法は、インビトロまたはエクスビボの方法である。
【0064】
別の態様では、本開示は、TrkAとNGFとの結合を実質的に阻害しないTrkA抗体を取得またはスクリーニングするための薬剤の製造におけるTrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープの使用を提供し、ここで、エピトープは、配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、およびP187を含む。
【0065】
使用のいくつかの実施形態では、TrkA抗体は、以下からなる群より選択される1つ以上の特性を示す:OctetまたはSPRで測定して約5*10-8M未満のKDでTrkAに結合できること、NGFによって誘導されるTrkAの活性化を阻害できること、TrkA への結合に関してNGFと実質的に競合しないこと、NGFを介した疼痛感作などの疼痛感作を軽減できること(例えば、神経細胞の成長および生存に対するNGFの効果を実質的に損なうことなく、NGFを介した疼痛感作を選択的に軽減できること)。
【0066】
本開示の追加の態様および利点は、本開示の例示的実施形態のみが図示および説明される以下の詳細の説明から、当業者には速やかに明らかとなろう。理解されるように、本開示は他の、および異なる実施形態をとることが可能であり、その詳細のいくつかは、全て、本開示を逸脱することなく、様々な明らかな観点から変更を行うことができる。したがって、図面および説明は、本質的に実例とみなされるべきであり、限定としてみなされるべきではない。
【0067】
参照による援用
本明細書にて言及される全ての出版物、特許、および特許出願は、それぞれの個々の出版物、特許、または特許出願が参照により援用されることを明確にかつ個別に指示したかのごとく、参考として同程度に本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲において具体的に記載する。本発明の原理が用いられる、例示的実施形態を説明する以下の詳細の説明、ならびに、添付図面(本明細書では「図」とも言う)を参照することで、本開示の特徴および利点がより良く理解される。
図1】本開示の例示的な抗体のELISA結合分析の結果を示す。
図2】本開示の例示的な抗体のFACS結合分析の結果を示す。
図3A-3B】本開示の例示的な抗体のNFAT機能解析の結果を示す。
図4A-4B】本開示の例示的な抗体の結合特性および機能特性を示す。
図5A-5B】本開示の例示的な抗体の結合特性および機能特性を示す。
図6】TrkA(ECD)および本開示の例示的な抗体のエピトープ分析を示す。
図7A-7D】TrkA抗体競合アッセイのセンサーグラムを示す。
図8A-8C】本発明の抗体がTrkAとNGFとの結合を阻害しないことを示す。
図9】本開示の例示的な抗体のNFAT機能解析の結果を示す。
図10】DRG播種後72時間後の明視野写真を示す。
図11】DRG播種後72時間後の明視野軸索長統計を示す。
図12】NGF誘発性過敏症モデルの足底内注射のスキームを示す。
図13A-13B】本開示の例示的な抗体を用いたNGF誘発性の機械的感受性および熱感受性の薬理学的評価を示す。
図14】ホルマリン誘発性の疼痛試験の概略図を示す。
図15A-15B】はホルマリン誘発性の疼痛試験における本発明の例示的な抗体の抗侵害受容作用を示す。
図16】MIA注射および機械的過敏性試験によって誘発される変形性関節症(OA)の疼痛の概略を示す。
図17A-17G】本開示の例示的な抗体がMIA注射によって誘発されるOA疼痛に及ぼす効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の様々な実施形態が本明細書で図示および説明されるものの、当業者には、このような実施形態は、単に例示として示されるものであることが明らかであろう。本発明から逸脱することなく、当業者には、様々な変更、変化、および置換が生じ得る。本明細書に記載する本発明の実施形態に、様々な代替物を用いることができることが理解されなければならない。
【0070】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、一般に、抗原を特異的に認識または結合することができる免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子を指す。抗体は軽鎖(L)と重鎖(H)を含んでもよい。抗体の軽鎖はκ軽鎖とλ軽鎖に分類できる。重鎖は、μ、δ、γ、αまたはεに分類され、そして抗体のアイソタイプは、それぞれIgM、IgD、IgG(IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプなど)、IgAおよびIgEと定義される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)を含んでもよい。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を含んでもよい。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)を含んでもよい。軽鎖定常領域は、CLドメインを含んでもよい。VH領域とVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる変動性の高い領域にさらに分割することもできる。各VHおよびVLは、N末端からC末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDRと4つのFRで構成される。各重鎖/軽鎖ペアの可変領域(VHおよびVL)は、それぞれ抗体結合部位を形成する。アミノ酸の領域またはドメインへの分布は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(免疫学的関心のあるタンパク質のKabat配列)(アメリカ国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ、(1987年および1991年))、またはChothia&Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901~917、Chothia et al.(1989)Nature 342:878~883の定義に従う。「抗体」という用語は、抗体の産生方法によって制限されるものではない。例えば、組み換え抗体、モノクローナル抗体、その他の形態の抗体が含まれる。場合によっては、本開示の抗体は単離された抗体である。
【0071】
本明細書で使用される「抗原結合断片」という用語は、一般に、抗体が結合する同じ抗原(例えば、TrkA)に結合する能力を保持し、および/または抗原特異的結合に関して完全な抗体と競合する、全長抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗原結合断片は、組み換えDNA技術によって、または正常な抗体の酵素的もしくは化学的切断によって産生できる。場合によっては、抗原結合断片には、Fab、Fab’、F(ab’)、F(ab)、VHH、Fd、Fv、dAb、および相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(例:ScFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、およびポリペプチドに特定の抗原結合能力を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むポリペプチドが含まれる。
【0072】
本明細書で使用される用語「TrkA」は、一般に、高親和性神経成長因子受容体、神経栄養性チロシンキナーゼ受容体1型、TRK1変換チロシンキナーゼタンパク質、トロポミオシン関連キナーゼA、チロシンキナーゼ受容体、チロシンキナーゼ受容体A、Trk-A、gp140trk、p140-TrkA、MTC、またはTRKを指す。TrkAは、交感神経ニューロンと神経ニューロンの増殖、分化、生存の調節を通じて、中枢神経系と末梢神経系の発達と成熟に関与する受容体チロシンキナーゼである。TrkAは、その主要なリガンドであるNGFに対する高親和性受容体であり、NTF3/ニューロトロフィン-3に結合して活性化される可能性もある。本明細書で使用されるTrkAには、ヒトTrkAの機能的断片、変異体、アイソフォーム、およびホモログ種が含まれる可能性がある。したがって、本開示の抗体は、場合によっては、ヒト以外の種のTrkAと交差反応する可能性がある。特定の実施形態では、抗体は、1つ以上のヒトTrkAタンパク質に対して完全に特異的であり、種または他のタイプの非ヒト交差反応性を示さない可能性がある。既知の4つのヒトTrkAアイソフォームの完全なアミノ酸配列は、UniProt/Swiss-Protアクセッション番号P04629(Consortium TU、(2012)Nucleic Acids Res.(核酸研究))40(D1):D71-D5)で見出される。4つのアイソフォームは選択的スプライシングによって生成される。アイソフォームTrkA-Iはほとんどの非神経組織に存在し(UniProt/Swiss-Protアクセッション番号P04629-2)、アイソフォームTrkA-IIは主に神経細胞に発現する(UniProt/Swiss-Protアクセッション番号P04629-1)、アイソフォームTrkA-IIIは多能性神経幹および神経堤前駆細胞に特異的に発現する(UniProt/Swiss-Protアクセッション番号P04629-4)。残基1~71がアイソフォームTrkA-IIと異なり、残基393~398が欠落している4番目のアイソフォームは、アイソフォーム3(UniProt/Swiss-Protアクセッション番号P04629-3)として知られている。TrkA-IIアイソフォームは、TrkAの主要な既知のアイソフォームである。アイソフォームTrkA-IはNTF3ニューロトロフィンに対する応答性が強化されているが、アイソフォームTrkA-IIIは恒常的に活性であり、NGFに結合しない。
【0073】
本明細書で使用される「TrkAの生物学的活性」または「TrkAの生物学的活性」という用語は、一般に、NGFまたは他のニューロトロフィンに結合する能力、NGF誘導シグナル伝達経路を活性化する能力、細胞の分化、増殖、生存、成長、移動、および細胞生理学におけるその他の変化を促進する能力(末梢ニューロンおよび中枢ニューロンを含むニューロンの場合)ニューロンの形態、シナプス形成、シナプス機能、神経伝達物質および/または神経ペプチドの放出および損傷後の再生の変化を含む)、および骨転移に関連する疼痛および癌性疼痛を媒介する能力のうちの1つ以上を指す。
【0074】
本明細書で使用される用語「TrkA/NGFシグナル伝達経路」は、一般的に、神経成長因子(NGF)およびチロシンキナーゼA(TrkA)に関連するシグナル伝達経路を指す。NGFペプチドは、TrkAリン酸化、ShcC/PI3KおよびPlc-γ/MAPKシグナル伝達の活性化を介してNGF経路に関与し、AKT依存性の生存とCREB駆動型ニューロン活動を促進する可能性がある。TrkA/NGFシグナル伝達経路は、交感神経および感覚ニューロンの生存と神経支配を促進する可能性があり、例えば、神経細胞の生存と発達に関与するNGF誘導性遺伝子発現の活性化のために、軸索末端から細胞体へのNGF/TrkA含有エンドソームのエンドサイトーシスと逆行性輸送に関連している可能性がある。
【0075】
本明細書で使用される「結合特異性」という用語は、一般的に、ある物質が別の物質に特異的に結合し、他の物質にランダムに結合しない能力を指す。例えば、あるタンパク質は、その特定の構造により、別のタンパク質に特異的に結合することがある。結合特異性は、例えば、交差競合アッセイまたは当技術分野で知られている他の結合アッセイによって測定することができる。
【0076】
本明細書で使用される「K」という用語は、一般的に解離定数を指す。解離定数は、複合体がその構成分子に分解する場合のように、より大きな物体がより小さな成分に可逆的に分離(解離)する傾向を測定する特定の種類の平衡定数である。解離定数は結合定数の逆数である。抗体(Ab)が抗原(Ag)に結合する特定のケースでは、通常、親和定数という用語は結合定数を指す。
【0077】
本明細書で使用される「Kon」という用語は、一般に、結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)が抗原に結合して結合複合体(例えば、抗体/抗原複合体)を形成するためのオン速度定数を指す。「Kon」という用語は、本明細書では互換的に使用される「会合速度定数」または「ka」も意味する。この値は、結合タンパク質とその標的抗原との結合速度、または結合タンパク質(抗体など)と対応する抗原との複合体形成速度を示す。
【0078】
本明細書で使用される「IC50」という用語は、一般に、生物学的機能の阻害における化合物の有効性の尺度である半数阻害濃度(IC50)、例えば、TrkA抗体がNGF誘導性TrkA活性化を阻害する能力を指す。
【0079】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、一般的に、全て固有の親細胞のクローンである同一の免疫細胞によって生成される抗体を指す。モノクローナル抗体は、同じエピトープ(抗体によって認識される抗原の部分)に結合するという点で、一価の親和性を持つことができる。場合によっては、モノクローナル抗体は二重特異性や三重特異性など、多重特異性を持つこともある。それは、生化学、分子生物学、医学において重要なツールとなっている。最近、ファージディスプレイ、単一B細胞培養、様々なB細胞集団からの単一細胞増幅、単一形質細胞検査技術など、いくつかのモノクローナル抗体技術が開発された。
【0080】
本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、一般的に、軽鎖および重鎖の可変(V)領域がマウス由来であり、定常(C)領域がヒト由来である抗体を指す。一般に、キメラ抗体は元のマウスモノクローナル抗体の特異性と親和性を保持するが、HAMA応答は大幅に低下する可能性がある。
【0081】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、一般的に、タンパク質配列が改変され、ヒトで自然に生成される抗体変異体との類似性を高めた非ヒト種由来の抗体を指す。ヒト化抗体のアミノ酸配列は、抗体が標的抗原に結合する能力を担う相補性決定領域(CDR)セグメントの一部が非ヒト由来であるにもかかわらず、ヒト変異体のアミノ酸配列と本質的に同一である可能性がある。
【0082】
本明細書では、「完全ヒト抗体」および「ヒト抗体」という用語は互換的に使用され、一般的に、ヒト可変領域、最も好ましくはヒト定常領域を含む抗体を指す。特定の実施形態では、これらの用語は、ヒト由来の可変領域および定常領域を含む抗体を指す。「完全ヒト抗体」という用語には、Kabatらによって説明されているように、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列に対応する可変領域と定常領域を持つ抗体が含まれる。(Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、アメリカ合衆国保健福祉省、NIH出版物番号91-3242を参照)。
【0083】
本明細書で使用される「Fab断片」という用語は、一般的に、免疫グロブリン分子の一部(抗原結合断片など)を指す。Fab断片は、1つの軽鎖と、単一の抗原結合部位を持つ重鎖の一部で構成される場合がある。Fab断片は、免疫グロブリン分子のパパイン消化によって得られる場合がある。例えば、Fab断片は、重鎖と軽鎖のそれぞれに1つの定常ドメインと1つの可変ドメインで構成される場合がある。可変ドメインには、免疫グロブリン分子のアミノ末端に、相補性決定領域のセットを含むパラトープ(抗原結合部位)が含まれる場合がある。パパイン酵素は、免疫グロブリン分子を2つのFab断片と1つのFc断片に切断するために使用される場合がある。ペプシン酵素はヒンジ領域の下で切断し、F(ab’)断片とpFc’断片が形成される。二価のF(ab)またはF(ab’)断片には、ジスルフィド結合によって連結された2つの抗原結合領域がある。F(ab)またはF(ab’)断片を還元すると、他の分子への結合に有用な遊離スルフィドリル基を持つ2つの一価FabまたはFab’断片が生成される。
【0084】
本明細書で使用される「Fv断片」という用語は、一般に、IgGおよびIgMクラスの抗体の酵素切断から生成される最小の断片を指す。Fv断片には、VH領域とVL領域からなる抗原結合部位があるが、CH1領域とCL領域はない。VH鎖とVL鎖は、非共有結合的な相互作用によってFv断片内で一緒に保持される場合がある。
【0085】
本明細書で使用される「ScFv」という用語は、一般に単鎖抗体断片を指す。ScFvは、抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域が直接またはペプチドリンカーを介して結合された組み換え単鎖ポリペプチド分子である。単鎖抗体(ScFv)には一般的に、抗体のFc前記領域の一部は含まれないが、必要に応じて、既知のScFv分子に前記領域を追加する方法が知られている。Helfrichら et al.、A rapid and versatile method for harnessing ScFv antibody fragments with various biological functions.J Immunol Methods 237:131~145(2000)およびde Haardらet al.、Creating and engineering human antibodies for immunotherapyを参照。Advanced Drug Delivery Reviews 31:5~31(1998)。
【0086】
本明細書で使用される「融合タンパク質」という用語は、一般的に、異種ポリペプチド(すなわち、異なる起源、配列または構造のポリペプチド)のアミノ酸配列に直接または間接的に(例えば、リンカーを介して)融合されたポリペプチドのアミノ酸配列を含む、または代替的にそれからなるポリペプチドを指す。
【0087】
本明細書で使用される「タンパク質複合体」という用語は、一般的に、細胞毒性剤、例えば化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素活性毒素、またはその断片)、標識(例えば、蛍光標識)および/または放射性同位体(すなわち、放射性複合体)などの1つ以上の追加部分に結合したタンパク質(例えば、抗体またはその機能的断片)を含む複合体を指す。
【0088】
多数のCDR定義が使用されており、本明細書に含まれている。Kabatの定義は配列の変異性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat EA et al.、同上)。Chothiaの定義は構造ループの位置に基づいている(Chothia&Lesk J.(1987)Mol.Biol.196:901~917)AbM定義は、Kabat定義とChothia定義の折衷案であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用されている(Martin ACR et al.、(1989)PNAS USA 86:9268~9272、Martin ACR et al.、(1991)Methods Enzymol.203:121~153、Pedersen JT et al.、(1992)Immunomethods1:126~136、Rees AR et al.、(1996)Sternberg M.J.E.(編)、Protein Structure Prediction.Oxford University Press、Oxford、141~172)。接触定義は最近導入された(MacCallum RM et al.(1996)J.Mol.Biol.262:732~745)、この論文は、Protein Databankで入手可能な複合体構造の分析に基づいて作成されている。IMGT(登録商標)、国際免疫遺伝子情報システム(登録商標)(http://www.imgt.org)によるCDRの定義は、全ての種の全ての免疫グロブリンおよびT細胞受容体V領域に対するIMGT番号に基づいている(IMGT(登録商標)、国際免疫遺伝子情報システム(登録商標)、Lefranc MP et al.、(1999)Nucleic Acids Res.27(1):209-12、Ruiz M et al.、(2000)Nucleic Acids Res.28(1):219-21、Lefranc MP(2001)Nucleic Acids Res.29(1):207-9、Lefranc MP(2003)Nucleic Acids Res.31(1):307-10、Lefranc MP et al.(2005)Dev.Comp.Immunol.29(3):185-203、Kaas Q et al.、(2007)Briefings in Functional Genomics&Proteomics、6(4):253-64)。
【0089】
本明細書で使用される「単離された核酸分子」という用語は、一般的に、天然環境から単離された、または人工的に合成された、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはその類似体のいずれかである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。
【0090】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、一般的に、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入して発現させることができる核酸媒体を指す。ベクターに運ばれる遺伝物質要素は、ベクターで宿主細胞を形質転換、形質導入、またはトランスフェクトすることによって宿主細胞内で発現することができる。ベクターには、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択要素、レポーター遺伝子など、発現を制御する様々な要素が含まれる場合がある。さらに、ベクターには複製起点も含まれる場合がある。ベクターには、ウイルス粒子、リポソーム、タンパク質シェルなど、細胞への侵入を助ける成分が含まれている可能性もあるが、これらの物質だけが含まれるわけではない。
【0091】
本明細書で使用される「細胞」という用語は、一般的に、本発明のベクターを運ぶために使用され得る、または本発明の抗体、抗原結合断片を発現または生成するために使用され得る細胞を指す。本開示の細胞は宿主細胞であってもよい。
【0092】
本明細書では、「疾患」と「障害」という用語は互換的に使用され、一般的に身体の正常な機能を損なうあらゆる状態を指す。病気は多くの場合、特定の症状や兆候を伴う医学的状態として解釈される。それは、病原体などの外的要因、または免疫不全などの免疫系の内部機能不全、あるいはアレルギーや自己免疫などの過敏症によって引き起こされることがある。
【0093】
本明細書で使用される「対象」という用語には、あらゆるヒトまたは非ヒト動物が含まれる。「非ヒト動物」という用語には、霊長類、ヒツジイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳類および非哺乳類など、全ての脊椎動物が含まれる。例えば、対象はヒトである可能性がある。
【0094】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、一般的に、レシピエントに有益な効果を与えるのに十分な濃度を提供するのに十分な投与量を指す。特定の対象に対する特定の治療有効投与量レベルは、治療対象となる疾患または障害、疾患または障害の重症度、特定の成分の活性、投与経路、クリアランス速度、治療期間、対象の年齢、体重、性別、食事、および全般的な健康状態、およびその他の関連要因を含む様々な要因によって異なる。
【0095】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、一般的に、薬学的投与に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、等張剤、吸収遅延剤などを指す。
【0096】
本明細書で使用される「約」という用語は、通常、当該技術分野における通常の技術に基づいて合理的に推測される所定の値に対する近似値を指し、かかる所定の値に対する実験および/または測定条件による同等値および近似値も含まれる。例えば、用語によって変更される値より10%以内の上または下の値を参照する場合がある。
【0097】
本明細書で使用される「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、一般的に、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する高分子、すなわち、自然に発生する非組み換え細胞によって生成されるタンパク質、または遺伝子操作された細胞または組み換え細胞によって生成され、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然配列の1つ以上のアミノ酸の欠失、追加、および/または置換を有する分子を含むタンパク質を指す。この用語には、1つ以上のアミノ酸が対応する天然アミノ酸およびポリマーの化学的類似体であるアミノ酸ポリマーも含まれる。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、具体的には、抗原結合タンパク質の1つ以上のアミノ酸の欠失、追加、および/または置換を有するTrkA抗原結合タンパク質、抗体、または配列を包含する。「ポリペプチド断片」という用語は、全長天然タンパク質と比較して、アミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、および/または内部欠失を有するポリペプチドを指す。このような断片には、天然のタンパク質と比較して、修飾アミノ酸も含まれる可能性がある。特定の実施形態では、断片は約5~500個のアミノ酸の長さである。例えば、断片は、少なくとも5、6、8、10、14、20、50、70、100、110、150、200、250、300、350、400、または450個のアミノ酸の長さになる。有用なポリペプチド断片には、結合ドメインを含む抗体の免疫学的に機能的な断片が含まれる。TrkA結合抗体の場合、有用な断片には、CDR領域、重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン、抗体鎖の一部、または2つのCDRを含むその可変領域のみなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0098】
本明細書で使用される「分離したタンパク質」(分離した抗体など)という用語は、一般的に、対象タンパク質が(1)通常一緒に存在する他のタンパク質の少なくとも一部を含まない、(2)同じ供給源、例えば同じ種からの他のタンパク質が本質的に含まない、(3)異なる種の細胞によって発現される、(4)自然界で関連するポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、または他の物質の少なくとも約50%から分離されている、(5)自然界で関連しないポリペプチドと機能的に関連している(共有結合または非共有結合による相互作用によって)、または(6)自然界に存在しないことを指す。通常、「単離されたタンパク質」は、与えられたサンプルの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、または少なくとも約50%を構成する。合成起源のゲノムDNA、cDNA、mRNAまたはその他のRNA、またはそれらの任意の組み合わせは、このような分離したタンパク質をコードできる。好ましくは、単離されたタンパク質には、その治療、診断、予防、研究、またはその他の用途を妨げるような、自然環境中に見られるタンパク質またはポリペプチドまたはその他の汚染物質が実質的に含まれていない。
【0099】
ポリペプチド(例えば、抗原結合タンパク質または抗体)の「変異体」は、別のポリペプチド配列と比較して、1つ以上のアミノ酸残基が挿入、削除および/または置換されたアミノ酸配列を含む。変異体には融合タンパク質が含まれる。
【0100】
本明細書で使用される「同一性」という用語は、一般的に、配列を整列させて比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。「同一性パーセント」とは、比較される分子内のアミノ酸またはヌクレオチド間の同一残基の割合を意味し、比較される分子の最小のサイズに基づいて計算される。これらの計算では、アライメントのギャップ(存在する場合)は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって対処されることが望ましい。アラインメントされた核酸またはポリペプチドの同一性を計算するために使用できる方法としては、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.、編)、1988、New York:Oxford University Press、Biocomputing Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.編)、1993、New York: Academic Press、Computer Analysis of Sequence Data、Part I、(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編)、1994、New Jersey: Humana Press、von Heinje,G.著、1987、Sequence Analysis in Molecular Biology、York:Academic Press、Sequence Analysis Primer、(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)、1991、New York: M. Stockton Press、およびCarillo et al,、1988、SIAMJ.Applied Math.48:1073、に記載されている方法を含む。
【0101】
同一性パーセントを計算する場合、比較される配列は通常、配列間の一致が最大になるように整列される。同一性パーセントを決定するために使用できるコンピュータプログラムの一例として、GAP(Devereux et al.、1984、Nucl.Acid Res.12:387、Genetics Computer Group、University of Wisconsin、Madison、WI)を含むGCGプログラムパッケージがある。コンピュータアルゴリズムGAPは、配列同一性のパーセントを決定する2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを整列させるために使用される。配列は、それぞれのアミノ酸またはヌクレオチドが最適に一致するように整列される(アルゴリズムによって決定される「一致する範囲」)。ギャップ開始ペナルティ(平均対角線の3倍として計算される。ここで、「平均対角線」は、使用されている比較マトリックスの対角線の平均である。「対角線」は、特定の比較マトリックスによって各完全なアミノ酸一致に割り当てられるスコアまたは数値である)とギャップ拡張ペナルティ(通常はギャップ開始ペナルティの1/10倍)に加えて、PAM 250やBLOSUM 62などの比較マトリックスがアルゴリズムと組み合わせて使用される。特定の実施形態では、標準比較マトリックス(PAM 250比較マトリックスについては、Dayhoff et al.、1978、Atlas of Protein Sequence and Structure5:345~352を参照、Henikoff et al.、1992、Proc.Natl.Acad.ScL U.S.A.89:10915~10919(BLOSUM 62比較マトリックス用)も、このアルゴリズムで使用される。
【0102】
保存的アミノ酸置換には、通常、生物系での合成ではなく、化学ペプチド合成によって組み込まれる、天然に存在しないアミノ酸残基が含まれる場合がある。これらには、ペプチド模倣体や、アミノ酸部分の他の逆または反転した形態が含まれる。
【0103】
「Fc」領域は、抗体のCH1ドメインとCH2ドメインを含む2つの重鎖断片で構成される。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合とCH3ドメインの疎水性相互作用によって結合されている。
【0104】
「多重特異性抗原結合タンパク質」または「多重特異性抗体」とは、複数の抗原またはエピトープを標的とするタンパク質である。
【0105】
「二重特異性(bispecific)」、「二重特異性(dual-specific)」または「二重機能性」の抗原結合タンパク質または抗体は、それぞれ2つの異なる抗原結合部位を持つハイブリッド抗原結合タンパク質または抗体である。二重特異性抗原結合タンパク質および抗体は、多重特異性抗原結合タンパク質抗体の一種であり、ハイブリドーマの融合やFab’断片の結合など、様々な方法によって生成できる。例えば、SongsivilaiよびLachmann、1990、Clin.Exp.Immunol.79:315~321、Kostelny et al.、1992、J. Immunol.148:1547~1553を参照。二重特異性抗原結合タンパク質または抗体の2つの結合部位は、同じまたは異なるタンパク質ターゲット上に存在する2つの異なるエピトープに結合する。
【0106】
抗原結合タンパク質は、解離定数(Ka)が10-7M未満の場合に、標的抗原に「特異的に結合する」と言われる。抗原結合タンパク質は、Kが5×10-8M未満の場合に「高親和性」で抗原に特異的に結合し、Kが1×10-8M未満の場合に「非常に高親和性」で抗原に特異的に結合する。
【0107】
抗原結合タンパク質は、ある標的への結合が他の標的への結合よりも強固である場合に「選択的」である。
【0108】
「抗原結合領域」または「抗原結合断片」とは、特定の抗原(例えば、パラトープ)に特異的に結合するタンパク質またはタンパク質の一部を意味する。例えば、抗原と相互作用し、抗原結合タンパク質に抗原に対する特異性および親和性を付与するアミノ酸残基を含む抗原結合タンパク質の部分は、「抗原結合領域」と呼ばれる。抗原結合領域には通常、1つ以上の「相補結合領域」(「CDR」)が含まれる。「CDR」は、抗原結合の特異性と親和性に寄与するアミノ酸配列である。
【0109】
特に明記しない限り、「抗体」という用語には、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、それらの誘導体、変異体、断片、および突然変異タンパク質が含まれ、それらの例は以下に記載される。さらに、明示的に除外されない限り、抗体には、それぞれモノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣体」と呼ばれることもある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合(本明細書では「抗体コンジュゲート」と呼ばれることもある)、およびそれらの断片が含まれる。いくつかの実施形態では、前記用語にはペプチボディも含まれる。
【0110】
特定の実施形態では、抗体の重鎖は抗体の軽鎖が存在しない状態で抗原に結合する。特定の実施形態では、抗体の軽鎖は抗体の重鎖が存在しない状態で抗原に結合する。特定の実施形態では、抗体結合領域は抗体軽鎖が存在しない状態で抗原に結合する。特定の実施形態では、抗体結合領域は抗体重鎖が存在しない状態で抗原に結合する。特定の実施形態では、個々の可変領域は他の可変領域が存在しない状態で抗原に特異的に結合する。
【0111】
特定の実施形態では、抗体の構造を解明し、および/または抗体-リガンド複合体の構造を解明することによって、CDRの明確な描写および抗体の結合部位を構成する残基の同定が達成される。特定の実施形態では、これは、X線結晶構造解析など、当業者に知られている様々な技術のいずれかによって達成できる。特定の実施形態では、CDR領域を識別または近似するために、様々な分析方法が採用される。このような方法の例には、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、接触定義などがあるが、これらに限定されない。
【0112】
「競合」という用語は、同じエピトープに対して競合する抗原結合タンパク質(抗原結合タンパク質または抗体など)の文脈で使用される場合、試験される抗原結合タンパク質(抗体またはその免疫学的に機能する断片など)が、参照抗原結合タンパク質(リガンドまたは参照抗体など)と共通抗原(TrkAまたはその断片、例えばそのECDなど)との特異的結合を防止または阻害(例えば、低減)するアッセイによって決定される抗原結合タンパク質間の競合を意味する。ある抗原結合タンパク質が他の抗原結合タンパク質と競合するかどうかを決定するために、多数のタイプの競合結合アッセイを使用することができる。例えば、固相直接または間接放射免疫測定法(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合測定法(例えば、Stahli et al、1983、Methods in Enzymology 9:242~253を参照)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al、1986、J.Immunol.137:3614~3619)固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、HarlowおよびLane、1988、Antibodies,A Laboratory Manual、コールドスプリングハーバープレスを参照)、1-125標識を使用する固相直接標識RIA(例えば、Morel et al、1988、Molec.Immunol.25:7~15を参照)、固相直接ビオチン-アビジン EIA(例えば、Cheung et al、1990、Virology 176:546~552を参照)、および直接標識RIA(Moldenhauer et al、1990、Scand.J.Immunol.32:77~82)を参照)。通常、このようなアッセイでは、固体表面に結合した精製抗原、またはこれらのいずれか、標識されていない試験抗原結合タンパク質、および標識された参照抗原結合タンパク質を含む細胞を使用する。競合阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合したラベルの量を決定することによって測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって同定された抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)には、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質、および立体障害が発生するほど参照抗原結合タンパク質が結合するエピトープに十分近い隣接エピトープに結合する抗原結合タンパク質が含まれる。通常、競合する抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、共通抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的結合が少なくとも40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%、または75%以上阻害される(例:減少する)。場合によっては、結合は少なくとも80~85%、85~90%、90~95%、95~97%、または97%以上阻害される。
【0113】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、一般的に、抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその免疫学的機能断片を含む)などの選択的結合剤によって結合することができる分子または分子の一部を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、その抗原に結合できる抗体を生成するために動物内で使用することができる。抗原は、抗体などの異なる抗原結合タンパク質と相互作用できる1つ以上のエピトープを持つことができる。
【0114】
「エピトープ」という用語には、抗体やT細胞受容体などの抗原結合タンパク質に結合できるあらゆる決定因子が含まれる。エピトープとは、その抗原を標的とする抗原結合タンパク質が結合する抗原の領域であり、抗原がタンパク質である場合、抗原結合タンパク質と直接接触する特定のアミノ酸が含まれる。ほとんどの場合、エピトープはタンパク質上に存在するが、場合によっては核酸などの他の種類の分子上に存在することもある。エピトープ決定因子には、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、スルホニル基などの化学的に活性な分子の表面グループが含まれ、特定の三次元構造特性や特定の電荷特性を持つ場合がある。一般的に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質や高分子の複雑な混合物中の標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0115】
本明細書において、「実質的に」または「実質的な」とは、一般的に、大きなまたは非常な程度(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%以上の程度)を意味する。
【0116】
本明細書において、「薬剤」という用語は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的材料から作られた抽出物を指すために使用される。
【0117】
「治療する」および「治療」という用語には、治療的処置、予防的処置、および対象者が障害またはその他の危険因子を発症するリスクを軽減する応用が含まれる。治療は、疾患の完全な治癒を必要とせず、症状または根本的な危険因子を軽減する実施形態を包含する。
【0118】
「防止する」という用語は、事象の可能性を100%排除することを要求するものではない。むしろ、化合物または方法の存在下では事象の発生の可能性が減少したことを示す。
【0119】
組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養および形質転換(例:エレクトロポレーション、リポフェクション)には標準的な技術を使用できる。酵素反応および精製技術は、製造元の仕様に従って、または当該技術分野で一般的に行われている方法、あるいは本明細書に記載されている方法に従って実行することができる。前述の技術および手順は、一般的に、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、また本明細書全体にわたって引用および説明されている様々な一般的な参考文献およびより具体的な参考文献に記載されているように実行することができる。例えば、Sambrook et al、Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、コールドスプリングハーバー、N.Y.(1989))を参照。これは、いかなる目的においても参照により本明細書に組み込まれる。特定の定義が提供されていない限り、本明細書に記載の分析化学、有機合成化学、医薬化学および製薬化学に関連して使用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当該技術分野でよく知られており、一般的に使用されているものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、処方、投与、および患者の治療に使用できる。
【0120】
抗体またはその抗原結合断片
一態様では、本開示は、TrkAに結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0121】
抗体またはその抗原結合断片は、TrkAに特異的に結合することができ、トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)、トロポミオシン受容体キナーゼC(TrkC)、またはp75受容体には実質的に結合しない。
【0122】
抗体またはその抗原結合断片は、OctetまたはSPRで測定した場合、約5.0×10-8M未満のKでTrkAに結合することができる。例えば、Kが約4.5×10-8M未満、約4×10-8M未満、約3.5×10-8M未満、約3×10-8M未満、約2.8×10-8M未満、約2.7×10-8M未満、約2.5×10-8M未満、約2×10-8M未満、約1.5×10-8M未満、約1×10-8M未満、約8×10-9M未満、約5×10-9M未満、約5×10-9M未満、約4.5×10-9M未満、約4×10-9M未満、約3.5×10-9M未満、約3×10-9M未満、約2.5×10-9M未満、約2×10-9M未満、約1.5×10-9M未満、約1×10-9M未満、約1×10-10M未満、約1×10-11M未満、または約1×10-12M未満、あるいはさらに小さいK値である。
【0123】
抗体、またはその抗原結合断片は、OctetまたはSPRによって測定されるように、約1.5×10(1/Ms)を超えるKonでTrkAに結合し得、例えば、約2×10(1/Ms)を超える、約3×10(1/Ms)を超える、約4×10(1/Ms)を超える、約5×10(1/Ms)を超える、約6×10(1/Ms)を超える、約7×10(1/Ms)を超える、約8×10(1/Ms)を超える、約9×10(1/Ms)を超える、約1×10(1/Ms)を超える、またはそれ以上のKonでTrkAに結合し得る。
【0124】
抗体またはその抗原結合断片は、TrkA/NGFシグナル伝達経路を阻害することができる。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、NGFによって誘導されるTrkAの活性化を阻害することができる。
【0125】
抗体またはその抗原結合断片は、TrkAとNGFとの間の結合を実質的に阻害しない可能性がある。
【0126】
抗体またはその抗原結合断片は、TrkAへの結合に関してNGFと実質的に競合しない可能性がある。
【0127】
抗体またはその抗原結合断片は、NGFを介した疼痛シグナル伝達を遮断することができる。
【0128】
抗体またはその抗原結合断片は、NGFを介した機械的感受性および/または熱感受性を軽減することができる。
【0129】
抗体またはその抗原結合断片は、ホルマリン試験において抗侵害受容作用を誘発することができる。
【0130】
この抗体またはその抗原結合断片は、MIA注射によって誘発される変形性関節症の疼痛における機械的過敏症を改善することができる。
【0131】
抗体またはその抗原結合断片は、神経細胞の成長および生存に対するNGFの効果を実質的に損なうことなく、NGFを介した疼痛感作を選択的に緩和することができる可能性がある。
【0132】
TrkAは、高親和性神経成長因子受容体、神経栄養性チロシンキナーゼ受容体タイプ1、またはTRK1変換チロシンキナーゼタンパク質としても知られ、ヒトではNTRK1遺伝子によってコード化されるタンパク質である。例示的なヒトTrkAアミノ酸配列は、配列番号119に示されるとおりである。本明細書に記載のとおり、TrkAタンパク質には、全長TrkAタンパク質の断片、例えばその細胞外ドメイン(ECD)も含まれる場合がある。例示的なヒトTrkA ECDアミノ酸配列は、配列番号120に示されるとおりである。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1つ以上のCDR(例えば、1、2、3、4、5または6個のCDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、(a)ポリペプチド構造と、(b)ポリペプチド構造に挿入および/または結合された1つ以上のCDRとを含む。ポリペプチド構造は様々な形態をとることができる。例えば、それは、天然に存在する抗体、またはその断片もしくは変異体のフレームワークであるか、またはそれを含むことができ、あるいは、完全に合成されたものであってもよい。
【0134】
特定の実施形態では、抗体のポリペプチド構造、またはその抗原結合断片は、抗体であるか、または抗体に由来し、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣物」と呼ばれることもある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合体(「抗体コンジュゲート」と呼ばれることもある)、およびそれぞれの一部または断片を含むが、これらに限定されない。場合によっては、抗体またはその抗原結合断片は、抗体の免疫学的断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、またはScFv)である。
【0135】
抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖定常領域を含み得る。軽鎖定常領域は、ヒトIgκ定常領域またはヒトIgλ定常領域を含み得る。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域はヒトIgκ定常領域を含み得る。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域は、配列番号121に記載のアミノ酸配列を含む。
【0136】
抗体またはその抗原結合断片は、重鎖定常領域を含み得る。重鎖定常領域は、ヒトIgG定常領域(ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4定常領域など)を含み得る。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域はヒトIgG4定常領域を含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号122に記載のアミノ酸配列を含む。
【0137】
免疫グロブリン鎖の可変領域は、一般的に同じ全体構造を示し、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)と、より一般的には「相補性決定領域」またはCDRと呼ばれる3つの超可変領域が結合した構成になっている。前述の各重鎖/軽鎖ペアの2つの鎖のCDRは、通常、フレームワーク領域によって整列され、標的タンパク質(例:TrkA)上の特定のエピトープと特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端まで、自然に発生する軽鎖および重鎖可変領域はどちらも、通常、これらの要素の次の順序に従う:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4。これらの各ドメイン内の位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるための番号付けシステムが考案されている。この番号付けシステムは、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987および1991、アメリカ国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ)、またはChothia&Lesk、1987、J.MoL Biol.196:901~917、Chothia et al.、1989、Nature 342:878~883、で定義されている。
【0138】
本明細書では、様々な重鎖および軽鎖可変領域が提供される。いくつかの実施形態では、これらの可変領域のそれぞれを重鎖定常領域および軽鎖定常領域に結合して、それぞれ完全な抗体重鎖および軽鎖を形成することができる。さらに、このように生成された重鎖配列と軽鎖配列のそれぞれを組み合わせて、完全な抗体構造を形成することができる。
【0139】
抗体の軽鎖(VL)および重鎖(VH)の可変領域のいくつかの具体的な例が提供され、それらの対応するアミノ酸配列が以下の表1にまとめられている。
【0140】
【表1】
表1に列挙された例示的な可変重鎖のそれぞれは、表1に列挙された例示的な可変軽鎖のいずれかと組み合わせて抗体を形成することができる。表1は、本明細書に開示される抗体のいくつかに見られる例示的な軽鎖および重鎖のペアを示している。場合によっては、抗体には、表1に記載されているもののうち少なくとも1つの可変重鎖と1つの可変軽鎖が含まれる。他の例では、抗体には2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖が含まれる。一例として、抗体またはその抗原結合断片には、重鎖および軽鎖、2つの重鎖、または2つの軽鎖が含まれ得る。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、表1に列挙された配列の少なくとも1つからの1、2、および/または3個の重鎖および/または軽鎖CDRを含む(および/またはそれらからなる)。いくつかの実施形態では、6つのCDR全て(軽鎖のCDR1~3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)および重鎖のCDR1~3(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3))が、抗体またはその抗原結合断片の一部である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片に1、2、3、4、5個、またはそれ以上のCDRが含まれる。いくつかの実施形態では、表1の配列中のCDRのうちの1つの重鎖CDRと1つの軽鎖CDRが抗体またはその抗原結合断片に含まれる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片に追加のセクションも含まれる。任意の軽鎖可変配列(CDR1、CDR2、およびCDR3を含む)は、以下の配列番号132、134、15、および53から選択できる。任意の重鎖可変配列(CDR1、CDR2、およびCDR3を含む)は、以下の配列番号131、133、14、および51から選択できる。
【0141】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、表1に列挙された配列の少なくとも1つからのLCDR1およびLCDR3を含む(および/またはそれらからなる)。
【0142】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、表1に列挙された配列の少なくとも1つからのHCDR1およびHCDR3を含む(および/またはそれらからなる)。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、表1に列挙された配列(例えば、配列番号91および86)の少なくとも1つからのLCDR1、LCDR3、HCDR1およびHCDR3を含む(および/またはそれらからなる)。
【0144】
表1に示される抗体のCDRの例(Kabat法に従って決定)を以下の表2に示す。
【0145】
【表2】
本開示で提供される例示的な抗体のいくつかは、互いの代替物または変異体であると考えられる。例えば、muPHD48、PHD48-01、PHD48、PHD48-08、PHD22、PHD24、PHD25、PHD26、PHD28、PHD29、およびPHD30は、互いの変異体または代替物として考えられる。別の例として、muPHD49、PHD49-01、PHD49-05、PHD49、PHD49-11、およびPHD49-21は、互いの変異体または代替物として考えられる。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、表1に記載される抗体の1つによって認識されるエピトープに結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、TrkAの特定の立体構造状態に結合して、TrkAへのNGFの結合を遮断せずに、TrkAの活性化(例えば、NGFによって誘導されるTrkAの活性化)を阻害することができる。
【0147】
本明細書に記載のとおり、TrkA抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化抗体および/またはその一部を含むことができる。このような戦略の重要な実用化は、マウスの体液性免疫システムの「ヒト化」である。特定の実施形態では、ヒト化抗体はヒトにおいて実質的に非免疫原性である。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化抗体が由来する別の種からの抗体と実質的に同じ標的に対する親和性を有する。
【0148】
特定の実施形態では、抗原結合ドメインの本来の親和性を低下させることなく、その免疫原性を低下させることなく改変することができる抗体可変ドメインのアミノ酸が特定される。
【0149】
特定の実施形態では、当該技術分野で既知の方法による抗体の改変は、典型的には、標的に対する結合親和性の向上、および/または受容体における抗体の免疫原性の低下を達成するように設計される。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、抗体の同族抗原に対する親和性を高めるために、グリコシル化部位を除去するように改変される。例えば、Co et al.、MoI.Immunol、30:1361~1367(1993)を参照。特定の実施形態では、「再形成」、「ハイパーキメラ化」または「ベニアリング/再表面化」などの技術を使用して、ヒト化抗体が生成される。例えば、Vaswami et al.、Annals of Allergy、Asthma、&Immunol.81:105(1998)、Roguska et al.、Prot. Engineer.9:895~904(1996)、および米国特許第6,072,035号を参照。特定の実施形態では、このような技術は、典型的には、外来残基の数を減らすことによって抗体の免疫原性を低下させるが、抗体の繰り返し投与後の抗イディオタイプおよび抗アロタイプ応答を防ぐことはできない。
【0150】
場合によっては、抗体をヒト化すると抗原結合能力が失われる。特定の実施形態では、ヒト化抗体は「復帰変異」される。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、ドナー抗体に見られるアミノ酸残基の1つ以上を含むように変異される。例えばSaldanha et al.、MoI Immunol 36:709-19(1999)を参照。
【0151】
特定の実施形態では、TrkAに対する抗体の軽鎖および重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)を、同じ種または別の種のフレームワーク領域(FR)に移植することができる。特定の実施形態では、TrkAに対する抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDRをコンセンサスヒトFRに移植することができる。コンセンサスヒトFRを作成するために、特定の実施形態では、いくつかのヒト重鎖または軽鎖アミノ酸配列からのFRが整列され、コンセンサスアミノ酸配列が識別される。特定の実施形態では、TrkA重鎖または軽鎖に対する抗体のFRは、異なる重鎖または軽鎖のFRに置き換えられる。特定の実施形態では、TrkAに対する抗体の重鎖および軽鎖のFR内の希少アミノ酸は置換されず、残りのFRアミノ酸は置換される。希少アミノ酸とは、FRに通常存在しない位置にある特定のアミノ酸である。特定の実施形態では、TrkAに対する抗体からの移植された可変領域は、TrkAに対する抗体の定常領域とは異なる定常領域とともに使用することができる。特定の実施形態では、移植された可変領域は、単鎖Fv抗体の一部である。CDR移植については、例えば、米国特許第6,180,370号、第6,054,297号、第5,693,762号、第5,859,205号、第5,693,761号、第5,565,332号、第5,585,089号、および第5,530,101号、ならびにJones et al、Nature、321:522~525(1986)、Riechmann et al、Nature、332:323~327(1988)、Verhoeyen et al、Science、239:1534~1536(1988)、Winter、FEBS Letts.、430:92~94(1998)に記載されており、これらは、いかなる目的であっても参照により本明細書に組み込まれる。
【0152】
本明細書に記載のように、TrkAに結合する抗体またはその抗原結合断片は、ヒト(すなわち、完全ヒト)抗体および/またはその一部を含み得る。特定の実施形態では、重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列、およびそれらを含むアミノ酸配列、特に可変領域に対応する配列が提供される。特定の実施形態では、相補性決定領域(CDR)、具体的にはCDR1からCDR3までに対応する配列が提供される。特定の実施形態によれば、免疫グロブリン分子を発現するハイブリドーマ細胞株が提供される。特定の実施形態によれば、このようなモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞株が提供される。特定の実施形態では、ハイブリドーマ細胞株は、表1に記載の細胞株、例えばmuPHD31、muPHD48、muPHD49および/またはmuPHD50のうちの少なくとも1つから選択される。特定の実施形態では、ヒトTrkAに対する精製されたヒトモノクローナル抗体が提供される。
【0153】
マウス抗体の産生が欠損したマウス系統を、ヒトIg遺伝子座の大きな断片で操作すれば、マウスはマウス抗体がなくてもヒト抗体を産生するだろうと予想できる。大きなヒトIg断片は、大きな可変遺伝子の多様性と、抗体の産生および発現の適切な調節を維持することができる。マウスの抗体の多様化と選択の仕組みと、ヒトタンパク質に対する免疫学的寛容性の欠如を利用することで、これらのマウス系統で再現されたヒト抗体レパートリーは、ヒト抗原を含む任意の対象抗原に対する高親和性の完全ヒト抗体を生み出すことができる。ハイブリドーマ技術を使用することで、望ましい特異性を持つ抗原特異的ヒトMAbsを生成し、選択することができる。特定の例示的な方法は、WO 98/24893、米国特許第5,545,807号、EP 546073、およびEP 546073に記載されている。
【0154】
特定の実施形態では、ヒト可変領域とともに、ヒト以外の種からの定常領域を使用することができる。
【0155】
メガベースサイズのヒト遺伝子座を酵母人工染色体(YAC)にクローン化して再構築し、それをマウスの生殖細胞系列に導入する能力は、非常に大きな遺伝子座や大まかにマッピングされた遺伝子座の機能的構成要素を解明するとともに、ヒト疾患の有用なモデルを生成するためのアプローチを提供する。さらに、マウス遺伝子座をヒトの遺伝子座と置換するこのような技術を利用することで、発達中のヒト遺伝子産物の発現と調節、他のシステムとのコミュニケーション、および疾患の誘発と進行への関与についての洞察が得られる可能性がある。
【0156】
ヒト抗体は、マウスまたはラットの可変領域および/または定常領域を持つ抗体に関連する問題の一部を回避する。このようなマウスまたはラット由来のタンパク質が存在すると、抗体が急速に消失したり、患者による抗体に対する免疫反応が発生したりする可能性がある。マウスまたはラット由来の抗体の利用を避けるために、機能的なヒト抗体遺伝子座をげっ歯類、他の哺乳動物または動物に導入し、げっ歯類、他の哺乳動物または動物が完全ヒト抗体を産生するようにすることで、完全ヒト抗体を生成することができる。
【0157】
ヒト化抗体とは、当初はヒト以外の抗体アミノ酸配列を含んでいたものの、これらの非ヒト抗体アミノ酸配列の少なくとも一部がヒト抗体配列に置き換えられた抗体である。これは、抗体がヒトが持つ遺伝子によってコード化される(またはコード化される可能性がある)ヒト抗体とは対照的である。
【0158】
提供される他の抗体は、表1に示される可変重鎖および可変軽鎖の組み合わせまたはサブ部分によって形成された、上記に列挙された抗体またはその抗原結合断片の変異体であり、それぞれが表1の配列のアミノ酸配列(配列全体または配列のサブ部分、例えば1つ以上のCDR)に対して少なくとも50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、95%~97%、97%~99%、または99%以上の同一性を有する可変軽鎖および/または可変重鎖を含む。いくつかの例では、このような抗体には少なくとも1つの重鎖と1つの軽鎖が含まれるが、他の例では、変異体には2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖(またはそのサブ部分)が含まれる。いくつかの実施形態では、結合に影響を与える変異と結合に影響を与えないと思われる変異を観察することによって、変更できる抗体のセクションを識別するために、配列比較を使用することができる。例えば、類似の配列を比較することで、変更可能なセクション(特定のアミノ酸など)を特定し、抗体またはその抗原結合断片の機能性を維持(または向上)しながら変更する方法を特定できる。いくつかの実施形態では、抗体の変異体には、上記のように、選択肢間のコンセンサスグループおよび配列が含まれる。表2に示されるCDRは、Kabat法(配列の変動性に基づく、例えばSequences of Proteins of Immunological Interest、第5版)NIH出版物番号91-3242、Kabat et al.、(1991)を参照)に基づいて定義されている。。
【0159】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号131、133、14および51の配列のうちの少なくとも1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む重鎖を含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号131、133、14および51の配列のうちの少なくとも1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む重鎖を含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号131、133、14および51の配列のうちの少なくとも1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む重鎖を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号131、133、14および51の配列のうち少なくとも1つの配列中のCDRからの1つ以上のCDRと少なくとも90%、90~95%、および/または95~99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、または6個のCDR(それぞれ上記配列と少なくとも90%、90~95%、および/または95~99%同一である)が存在する。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号131、133、14および51の配列のうち少なくとも1つの配列中のFRからの1つ以上のFRと少なくとも90%、90~95%、および/または95~99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、1、2、3、または4つのFR(それぞれ上記配列と少なくとも90%、90~95%、および/または95~99%同一である)が存在する。
【0162】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号132、134、15、および53の配列のうちの少なくとも1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む軽鎖を含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号132、134、15、および53の配列のうちの少なくとも1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む軽鎖を含む。特定の実施形態では、その抗原結合断片は、配列番号132、134、15、および53の配列のうちの少なくとも1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む軽鎖を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号132、134、15、および53の配列のうち少なくとも1つの配列中のCDRからの1つ以上のCDRと少なくとも90%、90~95%、および/または95~99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、または6個のCDR(それぞれ上記配列と少なくとも90%、90~95%、および/または95~99%同一である)が存在する。
【0164】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号132、134、15、および53の配列のうち少なくとも1つの配列中のFRからの1つ以上のFRと少なくとも90%、90~95%、および/または95~99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、1、2、3、または4つのFR(それぞれ上記配列と少なくとも90%、90~95%、および/または95~99%同一である)が存在する。
【0165】
本開示に鑑みて、熟練した技術者は、周知の技術を使用して、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片の適切な変異体を決定することができるであろう。特定の実施形態では、当業者は、活性に対して重要ではないと考えられる領域を標的とすることにより、活性を損なうことなく変更できる分子の適切な領域を特定することができる。特定の実施形態では、類似のポリペプチド間で保存されている分子の残基および部分を識別することができる。特定の実施形態では、生物学的活性または構造に対して重要となり得る領域であっても、生物学的活性を破壊したりポリペプチド構造に悪影響を与えたりすることなく、保存的アミノ酸置換を施すことができる。
【0166】
さらに、当業者は、活性または構造に対して重要な類似のポリペプチド内の残基を特定する構造機能研究を検討することができる。このような比較を考慮すると、類似のタンパク質の活性や構造に重要なアミノ酸残基に対応する、タンパク質内のアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、そのような予測される重要なアミノ酸残基に対して化学的に類似したアミノ酸置換を選択することができる。
【0167】
当業者は、類似の抗体におけるその構造に関連して三次元構造およびアミノ酸配列を分析することもできる。このような情報を考慮すると、当業者は抗体の三次元構造に関して抗体のアミノ酸残基の配置を予測することができる。特定の実施形態では、当業者は、タンパク質の表面にあると予測されるアミノ酸残基が他の分子との重要な相互作用に関与している可能性があるため、前記残基に根本的な変更を加えないことを選択できる。さらに、当業者は、各所望のアミノ酸残基に単一のアミノ酸置換を含む試験変異体を生成することができる。次に、当業者に知られている活性アッセイを使用して変異体をスクリーニングすることができる。前記変異体は、適切な変異体に関する情報を収集するために使用できる。例えば、特定のアミノ酸残基の変化によって、活性が破壊されたり、望ましくないほど低下したり、不適切な活性が生じたりすることがわかった場合、前記変化を伴う変異体を避けることができる。言い換えれば、このような日常的な実験から収集された情報に基づいて、当業者は、単独または他の変異と組み合わせてさらなる置換を避けるべきアミノ酸を容易に決定することができる。
【0168】
特定の実施形態では、その抗原結合断片変異体は、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較してグリコシル化部位の数および/またはタイプが変更されたグリコシル化変異体が含む。特定の実施形態では、タンパク質変異体は、天然タンパク質よりも多くのまたはより少ない数のN結合型グリコシル化部位を含む。N結合型グリコシル化部位は、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrの配列によって特徴付けられ、ここで、Xとして指定されるアミノ酸残基は、プロリン以外の任意のアミノ酸残基であり得る。この配列を作成するためにアミノ酸残基を置換すると、N結合型炭水化物鎖を追加するための潜在的な新しい場所が提供される。あるいは、この配列を除去する置換により、既存のN結合型炭水化物鎖が除去される。また、1つ以上のN結合型グリコシル化部位(通常は天然に存在するもの)が除去され、1つ以上の新しいN結合型部位が生成されるN結合型炭水化物鎖の再配置も提供される。追加の好ましい抗体変異体には、親アミノ酸配列と比較して、1つ以上のシステイン残基が削除されているか、または別のアミノ酸(例えば、セリン)に置換されているシステイン変異体が含まれる。システイン変異体は、不溶性封入体の分離後など、抗体を生物学的に活性な構造に再折り畳む必要がある場合に役立つ。システイン変異体は、通常、天然タンパク質よりもシステイン残基の数が少なく、通常は不対システインによる相互作用を最小限に抑えるために偶数個になる。
【0169】
特定の実施形態によれば、アミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させる、(4)結合親和性を変化させる、および/または(4)前記ポリペプチドに他の物理化学的または機能的特性を付与または変更するものである。特定の実施形態によれば、単一または複数のアミノ酸置換(特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換)を天然配列(特定の実施形態では、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分)に行うことができる。特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、通常、親配列の構造特性を実質的に変更しない可能性がある(例えば、置換アミノ酸は、親配列で発生するらせんを破壊したり、親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造を破壊したりする傾向があってはならない)。当該技術分野で認識されているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton編、W.H.Freeman and Company、New York(1984))、Introduction to Protein Structure(C.Branden&J.Tooze編、Garland Publishing、New York、N.Y.(1991))およびThornton et al.、Nature、354:105(1991)に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0170】
いくつかの実施形態では、変異体は、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合断片の核酸配列の変異体である。当業者であれば、上記の説明は、抗体およびタンパク質変異体の識別、評価、および/または作成、ならびにそれらのタンパク質変異体をコードできる核酸配列にも使用できることを理解するであろう。したがって、それらのタンパク質変異体をコードする核酸配列(ならびに表1の抗体またはその抗原結合断片をコードするが、本明細書に明示的に開示されているものとは異なる核酸配列)が考慮される。
【0171】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、抗原(例えば、TrkA)による免疫化によって生成される。特定の実施形態では、全長TrkA、可溶性形態のTrkA、細胞外ドメインのみ、TrkAのスプライス変異体形態、またはその断片による免疫化によって抗体を産生することができる。特定の実施形態では、本開示の抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得、および/または組み換え抗体であり得る。特定の実施形態では、本開示の抗体は、例えば、ヒト抗体を産生することができるトランスジェニック動物の免疫化によって調製されたヒト抗体である(例えば、PCT出願番号WO 93/12227を参照)。
【0172】
特定の実施形態では、特定の戦略を採用して、抗体の標的に対する親和性など、抗体の固有の特性を操作することができる。このような戦略には、抗体をコードするポリヌクレオチド分子の部位特異的またはランダムな突然変異誘発を利用して抗体変異体を生成することが含まれるが、これに限定されない。特定の実施形態では、このような生成の後に、所望の変化、例えば親和性の増加または減少を示す抗体変異体のスクリーニングが行われる。
【0173】
特定の実施形態では、変異誘発戦略で標的とされるアミノ酸残基は、CDR内のアミノ酸残基である。特定の実施形態では、可変ドメインのフレームワーク領域内のアミノ酸が標的とされる。特定の実施形態では、このようなフレームワーク領域は、特定の抗体の標的結合特性に寄与することが示されている。例えば、Hudson、Curr.Opin.Biotech.、9:395~402(1999)およびその中の参考文献を参照。
【0174】
理解されるように、抗体はハイブリドーマ細胞株以外の細胞株でも発現され得る。特定の抗体をコードする配列は、適切な哺乳動物宿主細胞を形質転換するために使用できる。形質転換は、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(またはウイルスベクター)にパッケージングし、ウイルス(またはベクター)で宿主細胞を形質導入することを含む、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の既知の方法によって行うことができ、または米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号、および第4,959,455号(これらの特許は参照により本明細書に組み込まれる)に例示されるような、当該技術分野で既知のトランスフェクション手順によって行うこともできる。使用される変換手順は、変換されるホストによって異なる。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入する方法は、当該技術分野でよく知られており、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リポソームへのポリヌクレオチドのカプセル化、および核へのDNAの直接マイクロインジェクションが含まれる。
【0175】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該技術分野で周知であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を含み、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例、Hep G2)、ヒト上皮腎臓293細胞、および他の多数の細胞株を含むが、これらに限定されない。特に好ましい細胞株は、どの細胞株の発現レベルが高く、恒常的なTrkA結合特性を持つ抗体を産生するかを決定することによって選択される。
【0176】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgA、IgD、およびIgMアイソタイプのうちの少なくとも1つの免疫グロブリン分子を含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトκ軽鎖および/またはヒト重鎖を含む。特定の実施形態では、重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgA、IgD、またはIgMアイソタイプである。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、哺乳動物細胞での発現のためにクローン化されている。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgA、IgD、およびIgMアイソタイプの定常領域のいずれか以外の定常領域を含む。
【0177】
抗TrkA抗体が結合するエピトープが提供される。いくつかの実施形態では、本発明で開示される抗体が結合するエピトープが特に有用である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体が結合するエピトープのいずれかに結合する抗体、またはその抗原結合断片が有用である。いくつかの実施形態では、表1に列挙された抗体のいずれかによって結合されるエピトープが特に有用である。いくつかの実施形態では、エピトープはTrkAの細胞外ドメイン上にある。
【0178】
特定の実施形態では、TrkAエピトープは、抗TrkA抗体またはその抗原結合断片のTrkAへの結合を防止(例えば、低減)するために利用することができる。特定の実施形態では、TrkAエピトープを利用して、抗TrkA抗体またはその抗原結合断片のTrkAへの結合を減少させることができる。特定の実施形態では、TrkAエピトープを利用して、抗TrkA抗体またはその抗原結合断片のTrkAへの結合を実質的に阻害することができる。
【0179】
特定の実施形態では、TrkAエピトープを利用して、TrkAに結合する抗体または抗体、またはその抗原結合断片を単離することができる。特定の実施形態では、TrkAエピトープを利用して、TrkAに結合する抗体またはその抗原結合断片を生成することができる。特定の実施形態では、TrkAエピトープまたはTrkAエピトープを含む配列を免疫原として利用して、TrkAに結合する抗体を生成することができる。特定の実施形態では、TrkAエピトープを動物に投与し、その後、TrkAに結合する抗体を動物から得ることができる。特定の実施形態では、TrkAエピトープまたはTrkAエピトープを含む配列を利用して、NGFによって誘導されるTrkA活性化などの通常のTrkA媒介活性を妨害することができる。
【0180】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合断片は、TrkA ECDに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体と接触している、または抗体によって埋め込まれている残基を含むドメイン/領域は、TrkA(例えば、野生型抗原)内の特定の残基を変異させ、その抗原結合断片が変異または変異型TrkAタンパク質に結合できるかどうかを判定することによって識別することができる。多数の個別の変異を作製することにより、結合に直接的な役割を果たす残基、または抗体に十分近接しているために変異が抗原結合断片と抗原との間の結合に影響を与える可能性がある残基を特定することができる。これらのアミノ酸に関する知識から、抗原結合断片と接触する残基、または抗体によってカバーされる残基を含む抗原のドメインまたは領域を解明することができる。前記ドメインには、その抗原結合断片の結合エピトープが含まれ得る。この一般的なアプローチの具体的な例としては、アルギニン/グルタミン酸スキャンプロトコルを利用するものがある(例えば、Nanevicz,T.、et al.、1995、J. Biol.Chem.、270:37,21619-21625およびZupnick,A.、et al、2006、J.Biol.Chem.、28_L:29,20464-20473を参照)。一般に、アルギニンおよびグルタミン酸は、野生型ポリペプチドのアミノ酸の代わりに(通常は個別に)使用されるが、これは、これらのアミノ酸が荷電しており、かさばっているため、変異が導入された抗原の領域において、その抗原結合断片と抗原との間の結合を破壊する可能性があるからである。野生型抗原に存在するアルギニンはグルタミン酸に置き換えられる。このような様々な個々の変異体が得られ、収集された結合結果が分析され、どの残基が結合に影響を与えるかが決定される。
【0181】
前述のように、結合に直接関与する残基またはその抗原結合断片によって覆われている残基は、スキャン結果またはCryo-EMから識別できる。したがって、これらの残基は、本発明の抗体またはその抗原結合断片が結合する結合領域を含む配列番号119(または配列番号120)のドメインまたは領域の指標を提供することができる。実施例8にまとめられた結果から分かるように、いくつかの実施形態では、その抗原結合断片は、配列番号119のアミノ酸Q176、H178、G179、Q180、およびP187のうちの少なくとも1つを含むドメインに結合する。
【0182】
本出願において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号119のアミノ酸残基:Q176、H178、G179、Q180、および/またはP187を含むTrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープを認識することができる。例えば、エピトープは、配列番号119のQ176、H178、G179、Q180、およびP187の1つ以上(例えば、2、3、4、または5つ)のアミノ酸残基を含み得る。
【0183】
場合によっては、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号119のQ176、H178、G179、Q180および/またはP187に特異的に結合できる可能性がある。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号119のQ176、H178、G179、Q180、およびP187の1つ以上(例えば、2、3、4、または5つ)のアミノ酸残基に特異的に結合することができる。
【0184】
場合によっては、TrkAのECDは、配列番号120に記載のアミノ酸配列を含む。本出願において、TrkAは配列番号119に記載のアミノ酸配列を含むことができる。
【0185】
場合によっては、抗原原子と、前記抗体または抗原結合断片の対応する相互作用部位との間の距離は、約4.00Å以下、例えば、3.76Å、3.62Å、3.43Å、3.36Å、3.13Å、3.06Å、および/または2.68Åであってもよい。
【0186】
場合によっては、抗原原子Q176に結合する抗体の相互作用部位は、配列番号86の重鎖W33または対応する残基であってもよい(例えば、対応は配列アライメントによって決定できる)。場合によっては、抗原原子H178に結合する抗体の相互作用部位は、配列番号91の軽鎖Y90または対応する残基であってもよい。場合によっては、抗原原子G179に結合する抗体の相互作用部位は、配列番号86の重鎖H35または対応する残基であってもよい。場合によっては、抗原原子G179に結合する抗体の相互作用部位は、配列番号91の軽鎖Y90または対応する残基であってもよい。場合によっては、抗原原子Q180に結合する抗体の相互作用部位は、配列番号86の重鎖W104または対応する残基であってもよい。場合によっては、抗原原子Q180に結合する抗体の相互作用部位は、配列番号91の軽鎖Y90または対応する残基であってもよい。場合によっては、抗原原子P187に結合する抗体の相互作用部位は、配列番号91の軽鎖Y31または対応する残基であってもよい。
【0187】
別の態様では、本出願は、TrkAとNGFとの結合を実質的に阻害しないTrkA抗体をスクリーニングまたは取得する方法を提供する。この方法は、配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、および/またはP187を含むTrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープを使用することを含み得る。例えば、TrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープは、配列番号119のQ176、H178、G179、Q180、およびP187の1つ以上の(例えば、2、3、4、または5つ)アミノ酸残基を含み得る。例えば、TrkA抗体は、以下の特性の1つ以上を備えていてもよい:OctetまたはSPRで測定して約5*10-8M未満のKでTrkAに結合することができること、NGFによって誘導されるTrkAの活性化を阻害することができること、TrkAへの結合に関してNGFと実質的に競合しないこと、および疼痛感作(例えば、NGFを介した疼痛感化を軽減できること(例えば、NGFの神経細胞の成長および生存に対する効果を実質的に損なうことなく、NGFを介した疼痛感化を軽減できること)。例えば、この方法は、インビトロまたはエクスビボの方法であってもよい。抗体またはその抗原結合断片は、TrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープを特異的に認識または結合してもよく、エピトープは、配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、および/またはP187を含んでもよい。
【0188】
いくつかの実施形態では、短縮または切断されたTrkAタンパク質(例えば、ヒトTrkAタンパク質)またはそのECDは、動物(例えば、マウス、ウサギ、または他の非ヒト動物)を免疫化するために使用され、または抗体生成細胞(例えば、B細胞、例えば、ヒトB細胞)に導入され、切断されたTrkAタンパク質に特異的に結合する抗体がさらに分析または選択されてもよい。切断型TrkAタンパク質は、配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、および/またはP187を含む。
【0189】
場合によっては、配列番号119のQ176、H178、G179、Q180、および/またはP187に対応する1つ以上の残基が異なる残基に変異しているか、または欠失している、変異または改変されたTrkAタンパク質が使用されてもよい。候補抗体またはその抗原結合断片が変異または改変されたTrkAタンパク質に結合しないか、または著しく低い親和性で結合する場合(例えば、K値が20%高い、25%高い、30%高い、35%高い、40%高い、45%高い、50%高い、55%高い、60%高い、65%高い、70%以上高い)、抗体またはその抗原結合断片は、所望の特性(例えば、本開示の抗体または抗原結合断片に含まれる特性)を有する抗体(またはその抗原結合断片)とみなされる可能性があるため、さらに分析または選択されてもよい。
【0190】
別の態様では、本出願は、TrkAとNGFとの結合を実質的に阻害しないTrkA抗体を取得またはスクリーニングするためのTrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープの使用を提供し、前記エピトープは、配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、および/またはP187を含む。
【0191】
別の態様では、本開示は、TrkAとNGFとの結合を実質的に阻害しないTrkA抗体を取得またはスクリーニングするための薬剤の製造におけるTrkA細胞外ドメイン(ECD)のエピトープの使用を提供し、ここで、エピトープは、配列番号119のアミノ酸残基Q176、H178、G179、Q180、および/またはP187を含む。
【0192】
場合によっては、抗体またはその抗原結合断片は、TrkAへの結合に関して参照抗体と競合してもよく、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号96、97、および98に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号93、94、および95に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0193】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号117、118、および41に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号114(SXWXQ、ここでXはHまたはY、XはIまたはM)、115、および116に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0194】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号9、11、および13に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号1、4、および7に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0195】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号28、30、および32に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号20、23、および26に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0196】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1-3はそれぞれ配列番号56、58、および60に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号62、65、および68に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0197】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号56、58、および60に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号20、73、および68に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0198】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号56、58、および60に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号20、75、および68に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0199】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号56、77、および60に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号62、65、および68に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0200】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号56、77、および60に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号20、、73および68に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0201】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号56、77、および60に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号20、75、および68に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0202】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号80、82、および32に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号62、79、および26に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0203】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号88、30、および32に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号20、87、および26に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0204】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号28、39、および41に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号45、46、および37に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0205】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号88、103、および41に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号101、102、および37に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0206】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号88、103、および41に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号109、110、および111に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0207】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号88、39、および41に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号45、46、および37に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0208】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号39、108および41に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号109、110および111に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0209】
場合によっては、参照抗体は軽鎖CDR1~3および重鎖CDR1~3を含み、軽鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号50、39、および41に記載されるアミノ酸配列を含み、重鎖CDR1~3はそれぞれ配列番号47、48、および49に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖可変領域の軽鎖CDR1~3のうちの少なくとも1つを含み、軽鎖可変領域は、配列番号132、134、15、および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域の重鎖CDR1~3のうちの少なくとも1つを含み、重鎖可変領域は、配列番号131、133、14および51のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR1を含み、軽鎖CDR1は配列番号96、117、9、および50のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR1を含み、軽鎖CDR1は配列番号9、28、50、56、80、および88のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR2を含み、軽鎖CDR2は配列番号97、118、および11のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR2を含み、軽鎖CDR2は配列番号11、30、39、58、77、82、103、および108のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR3を含み、軽鎖CDR3は配列番号98、13、および41のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖CDR3を含み、軽鎖CDR3は配列番号13、32、41、60のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域は配列番号132、134、15、および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR1を含み、重鎖CDR1は配列番号93、114(SXWXQ、ここでXはHまたはYであり、XはIまたはMである)、1、および47のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR1を含み、重鎖CDR1は配列番号1、20、45、47、62、101、および109のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR2を含み、重鎖CDR2は配列番号94、115、4、および48のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR2を含み、重鎖CDR2は配列番号4、23、46、48、65、73、75、87、102、および110のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR3を含み、重鎖CDR3は配列番号95、116、7、および49のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖CDR3を含み、重鎖CDR3は配列番号7、26、37、49、68、および111のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0225】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は配列番号131、133、14、および51のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0226】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1)それぞれ配列番号96、97、および98に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号93、94、および95に示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、2)それぞれ配列番号117、118、および41に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、ならびにそれぞれ配列番号114(SXWXQ、ここで、XHまたはYであり、XはIまたはMである)、115、および116に示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、3)それぞれ配列番号9、11、および13に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号1、4、および7に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、4)それぞれ配列番号28、30、および32に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号20、23、および26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、5)それぞれ配列番号56、58、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号62、65、68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、6)それぞれ配列番号56、58、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号20、73、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、7)それぞれ配列番号56、58、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号20、75、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、8)それぞれ配列番号56、77、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号62、65、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、9)それぞれ配列番号56、77、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号20、73、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、10)それぞれ配列番号56、77、および60に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号20、75、および68に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、11)それぞれ配列番号80、82、および32に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号62、79、および26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、12)それぞれ配列番号88、30、および32に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号20、87、および26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、13)それぞれ配列番号28、39、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号45、46、および37に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、14)それぞれ配列番号88、103、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号101、102、および37に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、15)それぞれ配列番号88、103、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号109、110、および111に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、16)それぞれ配列番号88、39、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR~3、およびそれぞれ配列番号45、46、および37に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、17)それぞれ配列番号39、108、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号109、110、および111に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、または18)それぞれ配列番号50、39、および41に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3、およびそれぞれ配列番号47、48、および49に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3、を含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1)配列番号132に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号131に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、2)配列番号134に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号133に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、3)配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、4)配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、5)配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、6)配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号86に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、7)配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号92に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、8)配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、9)配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、10)配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、11)配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、12)配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、13)配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、14)配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、15)配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号42に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、16)配列番号100に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号99に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、17)配列番号104に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号105に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、18)配列番号104に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号112に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、19)配列番号107に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号106に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、20)配列番号113に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号112に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または21)配列番号53に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号51に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、を含む。
【0228】
抗体または抗原結合断片には、実質的に同じ機能/特性を有するそれらの相同体または変異体も含まれてもよい。場合によっては、相同体または変異体は、本開示の抗体または抗原結合断片のアミノ酸配列とは少なくとも1つのアミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を有してもよい。例えば、相同体または変異体は、1~50、1~40、1~30、1~20、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2個のアミノ酸などの1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換によって抗体またはその抗原結合断片とは異なるポリペプチドであってもよい。場合によっては、相同体または変異体は、抗体またはその抗原結合断片と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドであってもよい。例えば、相同体または変異体は、抗体またはその抗原結合断片に対して80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%以上)の配列同一性を有するポリペプチドであってもよい。
【0229】
本明細書で特定されるポリペプチド配列の文脈で使用される「パーセント(%)配列同一性」という用語は、一般に、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して最大のパーセント配列同一性を達成し、いかなる保守的置換も配列同一性の一部として考慮しない後に、第2の参照ポリペプチド配列またはその一部のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一であるクエリ配列内のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージを指す。アミノ酸/ヌクレオチド配列の同一性のパーセントを決定するためのアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、NEEDLE、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用するなど、当該技術分野の技術範囲内のさまざまな方法で達成できる。当業者は、比較される配列の全長にわたる最大のアライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を整列するための適切なパラメータを決定することができる。同一性パーセントは、定義されたポリペプチド/ポリヌクレオチド配列全体の長さにわたって測定されてもよく、より短い長さ、例えば、より大きな定義されたポリペプチド/ポリヌクレオチド配列から採取された断片の長さにわたって測定されてもよい。本明細書、表、図、または配列リストに示される配列によってサポートされる任意の断片長は、同一性のパーセンテージを測定できる長さを記述するために使用できることが理解される。
【0230】
場合によっては、その親配列と比較して、抗体またはその抗原結合断片の変異体または相同体において、以下の残基または対応する残基の1つ以上(例えば、2、3、4、または5つ)は変更または変異していない:配列番号86の重鎖W33または対応する残基(例えば、対応は配列アライメントによって決定され得る)、配列番号91の軽鎖Y90または対応する残基、配列番号86の重鎖H35または対応する残基、配列番号86の重鎖W104または対応する残基、および/または配列番号91の軽鎖Y31または対応する残基。
【0231】
本出願では、CDR配列は、特定のCDR分類基準(例えば、Kabat法)に従って分類されてもよい。なお、特定のCDR分類基準(例えば、Kabat法)に従って決定されたTrkA抗体またはその抗原結合断片のアミノ酸配列が、本出願で定義されたCDR配列と同じである場合、TrkA抗体またはその抗原結合断片も本出願の保護範囲内にあることに留意すべきである。異なるCDR分類基準に従って、CDR位置の正確な識別は若干異なる場合があり、したがって、本出願には、配列リストに示されるCDRだけでなく、Chothia、拡張Chothia、またはIMGTなどの他の分類方法を使用してVHおよびVLドメインに含まれるCDRも含まれる。
【0232】
別の態様において、本出願は、本開示の抗体またはその抗原結合断片を含む融合タンパク質を提供する。
【0233】
別の態様では、本出願は、本開示の抗体またはその抗原結合断片を含むタンパク質複合体(免疫複合体など)を提供する。
【0234】
核酸、ベクター、細胞および調製方法
別の態様では、本開示は、抗体またはその抗原結合断片、または融合タンパク質をコードする単離された核酸または分子を提供する。
【0235】
単離された核酸は、1つ以上の核酸分子を含み、各々が本開示の抗体またはその抗原結合断片の少なくとも一部をコードする。例えば、単離された核酸は、少なくとも2つの核酸分子を含み、そのうちの1つは抗体重鎖またはその断片をコードし、もう1つは抗体軽鎖またはその断片をコードする。場合によっては、単離された核酸が融合タンパク質をコードすることもある。
【0236】
単離された核酸または単離された核酸群は、当該技術分野で周知の組み換え技術を使用して合成することができる。例えば、単離された核酸または単離された核酸群は、自動DNA合成装置を使用して合成することができる。標準的な組み換えDNAおよび分子クローニング技術には、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.、Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、1989)(Maniatis)およびT.J.Silhavy、M.L.Bennan、L.W.Enquist、Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1984)およびAusubel,F.M.et al.、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscienceより出版(1987)、で説明されているものがある。簡単に言えば、本発明の核酸は、ゲノムDNA断片、cDNA、およびRNAから調製することができ、これらは全て細胞から直接抽出することも、PCRおよびRT-PCRを含むが、これらに限定されない様々な増幅プロセスによって組み換え生成することもできる。
【0237】
核酸の直接化学合成では、通常、3’ブロックおよび5’ブロックヌクレオチドモノマーを、成長中のヌクレオチドポリマー鎖の末端5’ヒドロキシル基に順次付加する。各付加は、成長中の鎖の末端5’ヒドロキシル基による、付加されたモノマーの3’位への求核攻撃によって影響を受ける。付加されたモノマーは、通常、ホスホトリエステル、ホスホラミダイトなどのリン誘導体である。例えば、Matteuci et al.、Tet.Lett.521:719(1980)を参照、また、Caruthers et al.に対する米国特許第4,500,707号、Southern et al.に対する米国特許第5,436,327号および第5,700,637号を参照。
【0238】
別の態様では、本開示は、単離された核酸分子を含むベクターを提供する。
【0239】
ベクターは、任意の線状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクターなどであり得る。ウイルスベクターの非限定的な例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどが挙げられる。場合によっては、ベクターは発現ベクター、例えば、ファージディスプレイベクターである。
【0240】
発現ベクターは、特定の種類の宿主細胞には適しているが、他の種類の宿主細胞には適していない場合がある。例えば、発現ベクターを宿主生物に導入し、ベクターに含まれる遺伝子/ポリヌクレオチドの生存率と発現をモニタリングすることができる。
【0241】
発現ベクターには、発現すると、発現ベクターを保持する宿主細胞を選択または識別するために有用な1つ以上の表現型特性を付与する1つ以上の選択マーカー遺伝子も含まれている場合がある。真核細胞に適した選択マーカーの非限定的な例としては、ジヒドロ葉酸還元酵素およびネオマイシン耐性が挙げられる。
【0242】
対象ベクターは、様々な確立された技術によって安定的にまたは一時的に宿主細胞に導入することができる。例えば、一つの方法は、塩化カルシウム処理を含み、発現ベクターはカルシウム沈殿物を介して導入される。同様の手順に従って、リン酸カルシウムなどの他の塩も使用できる。さらに、電気穿孔法(つまり、電流を流して細胞の核酸の透過性を高める方法)も使用できる。形質転換方法の他の例としては、マイクロインジェクション、DEAEデキストランを介した形質転換、酢酸リチウム存在下での熱ショックなどがある。脂質複合体、リポソーム、およびデンドリマーも宿主細胞へのトランスフェクションに使用できる。
【0243】
別の態様では、本開示は、本開示の単離された核酸分子または本開示のベクターを含む細胞(例えば、宿主細胞などの単離された細胞)を提供する。
【0244】
細胞は、本発明の抗体、またはその抗原結合断片、または本発明の融合タンパク質を発現し得る。細胞は真核細胞であっても原核細胞であってもよい。適切な細胞は、本発明の核酸またはベクターで形質転換またはトランスフェクトされ、抗体、その抗原結合断片、または融合タンパク質の発現および/または分泌に利用され得る。例えば、細胞は、大腸菌細胞、他の細菌宿主細胞、酵母細胞、または様々な高等真核細胞である可能性がある。
【0245】
別の態様において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片、または融合タンパク質を産生する方法を提供し、前記方法は、本発明の細胞を、抗体、その抗原結合断片、または融合タンパク質の発現を可能にする条件下で培養することを含む。
【0246】
この方法は、任意に、抗体またはその抗原結合断片、または本開示の融合タンパク質を採取することをさらに含んでもよい。
【0247】
組成物
別の態様では、本開示は、抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、タンパク質複合体、単離された核酸分子、ベクター、および/または本開示の細胞、および任意に薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物を提供する。
【0248】
場合によっては、薬学的に許容される賦形剤は緩衝剤を含んでもよい。場合によっては、薬学的に許容される賦形剤はアミノ酸を含んでもよい。
【0249】
いくつかの実施形態では、組成物のpHは1~13であってもよく、例えば、pHは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13であってもよい。
【0250】
場合によっては、組成物は、さらに、有効量の追加の治療活性成分、例えば、TrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害を治療するための追加の治療活性成分を含んでもよい。各活性成分は、医薬組成物中に医薬的に活性な量で存在してもよい。組成物において、本出願の抗体、その断片は、追加の活性成分と結合していても、結合していなくてもよい。
【0251】
以下に、限定されない例示的な医薬組成物およびその製造方法を説明する。医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、徐放性製剤、溶液、懸濁液として経口投与に適した形態、滅菌溶液、懸濁液または乳剤として非経口注射に適した形態、軟膏またはクリームとして局所投与に適した形態、または坐剤として直腸投与に適した形態であってもよい。医薬組成物は、正確な投与量を単回投与するのに適した単位投与形態であってもよい。場合によっては、医薬組成物は、液体医薬組成物であってもよい。
【0252】
本開示の医薬組成物は、個別の剤形として提供することができ、各剤形には、水性または非水性液体中の粉末または顆粒、溶液、または懸濁液として所定量の有効成分が含まれる。このような剤形は、当業者に知られている方法のいずれかによって調製することができ、例えば、活性成分を、1つ以上の他の成分を構成する担体と組み合わせるステップを含むことができる。一般に、組成物は、有効成分を液体担体または細かく分割された固体担体、あるいはその両方と均一かつ緊密に混合し、その後、必要に応じて、製品を所望の形状に成形することによって調製される。
【0253】
本発明の抗体、その抗原結合断片、または融合タンパク質は、従来の医薬配合技術に従って医薬担体と緊密に混合して組み合わせることができる。担体は、投与に望ましい製剤の形態に応じて、様々な形態をとることができる。
【0254】
組成物はさらに、1種以上の薬学的に許容される添加剤および賦形剤を含むことができる。このような添加剤および賦形剤には、粘着防止剤、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、抗酸化剤、防腐剤、キレート剤、粘性調節剤、等張化剤、香味剤、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、および/またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0255】
本開示の医薬組成物は、治療有効量の活性剤(例えば、抗体、その抗原結合断片、または本開示の融合タンパク質)を含んでもよい。治療有効量とは、当該状態または障害を患っているか、または発症するリスクがある対象において、状態または障害(例えば、慢性疼痛)および/またはその合併症を(少なくとも部分的に)予防および/または治癒することができる対象医薬組成物の量である。含まれる活性剤の具体的な量/濃度は、投与方法および患者の必要性に応じて異なり、例えば、患者の体積、粘度、および/または体重などに基づいて決定することができる。例えば、適切な投与量は、約0.1mgまたは1mg/kg/日から約50mg/kg/日であり得るが、場合によっては、投与量はさらに高くなることもある。これらの特定の投与量は、特定の患者の状態、製剤、および/または疾患に基づいて、当業者(例えば、医師または薬剤師)によって都合よく調整され得ることが理解されるべきである。
【0256】
医療用途と治療方法
別の態様では、本発明は、TrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害を予防および/または治療するための医薬品の製造における、本発明の抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、タンパク質複合体、単離された核酸分子、ベクター、および/または細胞の使用を提供する。
【0257】
さらなる態様において、本出願は、対象に、本開示の抗体または抗原結合断片、融合タンパク質、タンパク質複合体、単離された核酸分子、ベクター、細胞、および/または組成物の有効量を投与することを含む、それを必要とする対象における疾患または障害を予防および/または治療する方法を提供し、ここで、疾患または障害は、TrkAの不適切な発現または機能に関連する疾患または障害である。
【0258】
例えば、疾患または障害は、疼痛を含んでもよい。
【0259】
例えば、疼痛は、慢性的な疼痛を含んでもよい。
【0260】
例えば、疾患または障害は、侵害受容性、非侵害受容性、外傷性、炎症性、神経障害性、増殖性、または混合の病因による慢性疼痛を含んでもよい。例えば、疾患または障害は、筋骨格系または神経障害に起因する慢性疼痛を含んでもよい。
【0261】
例えば、疾患または障害は、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、神経障害性疼痛、および/または変形性関節症疼痛を含んでもよい。
【0262】
他の実施形態では、疼痛は筋骨格系または神経障害に起因する急性または慢性の疼痛である。本出願によって予防および/または治療され得る疼痛の具体的な非限定的な例としては、例えば、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、神経障害性疼痛(根性疼痛CLBP、DNP、およびLSRを含む)、および変形性関節症疼痛(非根性疼痛を含む)が挙げられる。場合によっては、疼痛は筋骨格系と神経障害の両方に起因する慢性の疼痛である。他の実施形態では、疼痛は内臓痛(例えば、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎、または慢性骨盤痛など)である。
【0263】
例えば、前記疾患または障害は、膵炎、腎臓結石、子宮内膜症、IBD、クローン病、術後癒着、胆嚢結石、頭痛、月経困難症、筋骨格痛、捻挫、内臓痛、卵巣嚢胞、前立腺炎、膀胱炎、間質性膀胱炎、術後痛、片頭痛、三叉神経痛、火傷および/または創傷による疼痛、外傷による疼痛、神経障害性疼痛、筋骨格疾患による疼痛、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、関節周囲病変、腫瘍性疼痛、骨転移による疼痛、および/またはHIV感染による疼痛など、いずれかに関連する疼痛である可能性があるが、これらに限定されない。
【0264】
別の態様では、本開示は、サンプル中のTrkAの存在および/または量を決定するための薬剤の製造における抗体またはその抗原結合断片、融合タンパク質、またはタンパク質複合体の使用を提供する。
【0265】
別の態様では、本開示は、サンプル中のTrkAの存在および/または量を決定する方法を提供し、前記方法は、a)サンプルを本開示の抗体または抗原結合断片、融合タンパク質、またはタンパク質複合体と接触させること、およびb)サンプルに結合した抗体または抗原結合断片、融合タンパク質、またはタンパク質複合体の存在および/または量を決定することを含む。
【実施例
【0266】
以下の実施例は、当業者に、本出願をどのように作成し、用いるかについての完全な開示および記載を提供するために記載され、発明者らがその発明としてみなす範囲を限定することを意図するわけではなく、また、以下の実験が全てである、もしくはその実験のみが実施されたということを意図するものでもない。使用した数(例えば量、温度など)の正確性を確保するための努力はなされているが、いくつかの実験の誤差およびずれは存在する。
【0267】
実施例1.抗TrkAモノクローナル抗体の生成
免疫、結合、機能アッセイ用のTrkA組み換えタンパク質
ヒトTrkAタンパク質(配列番号120)の細胞外ドメイン(ECD)を遺伝子合成し、C末端にHisタグを融合し、N末端にシグナルペプチドおよびフラグタグ(PHA)を融合したpcDNA3.4ベースの発現ベクターにサブクローニングした。得られたプラスミドを293-F細胞に一時的にトランスフェクトし、回転振とう機を備えたCOインキュベーターで5~7日間培養した。組み換えタンパク質を含む上清を収集し、遠心分離により清澄化し、その後、タンパク質をワンステップ固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製した。精製されたタンパク質はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に緩衝剤交換され、小分けにして-80℃の冷凍庫に保存された。
【0268】
免疫化、ハイブリドーマ融合およびクローニング
BALB/cマウスの1つのグループ(5匹のマウス/グループ)を、表3のスケジュールに従って、上記の精製タンパク質で免疫した。TrkA ECDタンパク質を完全フロイントアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA)と1:1で混合し、安定した水中油型エマルジョンを得た。CFAは最初の予防接種でのみ使用された。その後の免疫化はIFAを含むPBSで実施された。注射用量はマウス1匹あたり25~50μg/200Lであった。免疫後、血清サンプルを採取し、間接ELISAおよびFACSによって免疫抗原に対する抗体反応(力価)を測定した(下記参照)。ブーストから4日後、脾臓細胞を分離し、電気細胞融合法によってSP2/0骨髄腫細胞と融合させて細胞融合を誘導し、ハイブリドーマを形成した。融合細胞は96ウェルプレートに播種され、各融合に50枚のプレートが使用された。
【0269】
【表3】
TrkA抗体の結合活性を決定する
ハイブリドーマ上清は、最初に間接ELISAによってヒトTrkAでスクリーニングされた。簡単に説明すると、精製されたPHAをPBS緩衝剤で最終濃度1μg/mLに希釈した。希釈された抗原100μLを96ウェルプレートの各ウェルに加え、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBST(0.05% Tween-20を含むPBS、pH7.4)で3回洗浄し、次にPBSTで希釈した2%ウシ血清アルブミン(BSA)を200μL/ウェル加え、室温で2時間インキュベートしてブロッキングした。ブロッキング溶液を除去し、プレートを300μLのPBSTで3回洗浄した。一次抗体と二次抗体の希釈溶液、および基質溶液を調製した。希釈された一次抗体100μLを各ウェルにピペットで分注し、室温で1時間インキュベートした。ウェルの内容物を取り除き、300μLのPBST緩衝剤で3回洗浄した。PBSをプレートから除去した。希釈されたペルオキシダーゼ-AffiniPureヤギ抗マウスIgG 100μLを各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。ウェルの内容物を除去し、ウェルを300μLのPBSTで3回洗浄した。100μLのTMB基質溶液をウェルに加えた。十分に発色した後、反応停止液100μLをウェルに加えて反応を停止した。マイクロプレートリーダーで各ウェルの吸光度(OD:450)を読み取り、データを分析した。
【0270】
ELISA陽性抗体産生クローンについては、従来の方法を用いて蛍光活性化細胞選別(FACS)によってさらに検証された。簡単に説明すると、CellSensor(登録商標) TrkA-NFAT-bla CHO-K1細胞(ヒトTrkAを過剰発現する細胞)をU底96ウェルプレートで抗TrkA抗体で染色した。細胞を氷冷PBSで2×10細胞/mLに再懸濁した。一次抗体と二次抗体の希釈溶液を調製し、希釈された一次抗体100μLを各ウェルに加え、暗所で4℃で1時間インキュベートした。細胞を2500rpmで3分間遠心分離して2回洗浄し、氷冷PBSに再懸濁した。APCヤギ抗マウスIgGを冷PBSで1μg/mLに希釈し、その後、細胞をこの溶液100μLに再懸濁した。細胞を2500rpmで3分間遠心分離して2回洗浄し、100μLの氷冷PBSに再懸濁した。細胞懸濁液は直ちに暗所で4℃で保存した。細胞はできるだけ早くフローサイトメーターで分析された。
【0271】
サブクローニング
ELISAとFACSアッセイの両方で陽性結合を示したハイブリドーマは、その後、機能アッセイでテストされ、目的の機能活性を持つ抗体が特定された。機能活性が陽性の抗体は限界希釈法によってさらにサブクローニングされ、FACSおよび機能アッセイによって特性評価された。機能アッセイを通じて選択されたサブクローンはモノクローナル抗体として定義された。選択されたサブクローンはハイブリドーマ-SFM培地で培養された。
【0272】
モノクローナル抗体の発現と精製
陽性ハイブリドーマはまずハイブリドーマ-SFM培地で培養され、その後細胞はハイブリドーマ-SFM培地で5%のCOおよび37℃のインキュベーター内で4日間培養された。培養後、細胞生存率とタンパク質産生を評価した。
【0273】
発現させる抗体の重鎖および軽鎖可変領域配列をそれぞれpCDNA3.4-hIgG4またはpCDNA3.4-hKappaベクターに挿入した。得られたベクタープラスミドを抽出し、配列決定によって検証した。検証されたプラスミドは、PEIを含むヒト293F細胞にトランスフェクトされ、継続的に培養された。293F細胞は、細胞トランスフェクションのために無血清培地(上海OPMバイオサイエンス、OPM-293CD03)で対数増殖期まで培養された。抗体軽鎖プラスミド3μgと抗体重鎖プラスミド2μgをOpti-MEM(登録商標) I還元血清培地(GIBCO、31985-070)1mLに溶解し、よく混合し、PEI 20μgを加えてよく混合し、室温で15分間インキュベートし、5mLの細胞に加えた。細胞培養条件は以下のとおり:5%のCO、37℃、125rpm/分。フィーダー培地は1日目に補充された。細胞はさらに4日間培養された。
【0274】
全ての細胞を収集し、4000rpm、4℃で30分間遠心分離した。抗体を含む上清を収集した。抗体の精製は、製造元の指示に従ってGenScript Protein A MagBeadsを使用して実行された。簡単に言うと、1)結合。目的の抗体を含む清澄化された上清を、MagBeadsとともに室温で2時間インキュベートした。2)洗浄。磁気分離ラックを使用してビーズを収集し、上清を廃棄した。1mLのPBS緩衝剤をチューブに加えてよく混ぜ、磁気分離ラックを使用してビーズを収集し、上清を捨てた。洗浄ステップを3回以上繰り返した。3)溶出。100μLの溶出緩衝剤(0.1Mグリシン、pH3.0)をチューブに加え、よく混合した。時々混ぜながら室温で5分間インキュベートした。磁気分離ラックを使用してビーズを収集し、溶出されたIgGを含む上清をきれいなチューブに移した。pHを中和するために、各100μLの溶出液に10μLの中和緩衝剤(1MのTris、pH8.5)を加えた。タンパク質濃度は280nmでの吸光度を測定することによって決定され、精製された抗体は小分けされて-80℃の冷凍庫に保存された。3つのコントロール抗体、抗TNP(それぞれ配列番号125および126に示すVHおよびVLを持つ)、タネズマブ(それぞれ配列番号127および128に示すVHおよびVLを持つ)、およびファシヌマブ(それぞれ配列番号129および130に示すVHおよびVLを持つ)も、上記の方法によって調製された。
【0275】
NFATレポーターアッセイを用いたTrkA活性化に対する拮抗効果
CellSensor(登録商標) TrkA-NFAT-bla CHO-K1細胞(K1516、Life Technologies)には、NFAT応答エレメントの制御下にあるベータラクタマーゼレポーター遺伝子が含まれており、この遺伝子は、CHO-K1細胞に安定的に組み込まれており、ヒトTrkA遺伝子も安定的に発現している。したがって、細胞が神経成長因子2.5s(NGF2.5s)で刺激されると、TrkAシグナル伝達が活性化され、ベータラクタマーゼの特殊な蛍光基質で検出できるようになる。この細胞株を使用すると、サンプルのNGF-TrkAシグナル伝達経路に対する拮抗作用をテストできる。Invitrogen cellsensor_TrkA NFAT bla_CHOK1_manualに従って、Cellsensor TrkA-NFAT-bla CHO-K1細胞(K1516、Life Technologies)を実験の前日に32μLの培地とともに384ウェルプレートに播種した。細胞は、37℃/5%のCOの加湿インキュベーター内で30分間、3倍段階希釈した抗体とともにプレインキュベートされた。次に、NGFの11X EC80ストック溶液4μLを加えました。拮抗薬アッセイプレートを加湿された37℃/5%のCOインキュベーター内で5時間インキュベートした。6X LiveBLAzerTM-FRET B/G 基質(CCF4-AM)混合物は、製造元の指示に従って調製された。各ウェルに8μLの6X基質混合物を加えた。プレートは光と蒸発から保護するために覆われ、室温で2時間培養された。背景として無細胞ウェルを使用した。FRETシグナル(405nm励起、および460nmと530nm発光)はマイクロプレートリーダー(C5、Biotek)から取得され、バックグラウンドシグナルが差し引かれた。460nmと530nmの蛍光信号の比率は、TrkA活性化のレベルを反映している。
【0276】
実施例2.TrkA拮抗モノクローナル抗体の開発
スクリーニング後、目的のクローンをサブクローニングして同定した。これらのクローンは、高い特異性と強度でヒトTrkAに結合し、TrkA依存性NFAT拮抗薬レポーターアッセイでも強力な阻害を示した。ELISAアッセイ結果(図1)およびFACS分析結果(図2)に示されているように、選択されたクローンmuPHD50、muPHD48、およびmuPHD49は、ヒトTrkAに対して望ましい結合を示した。さらに、アンタゴニストNFATアッセイ(図3Aおよび3B)に示されているように、選択された抗体muPHD31、muPHD50、muPHD48、およびmuPHD49は、ヒトNGFによって誘導されるTrkAシグナル伝達の活性化を阻害することができる。
【0277】
実施例3.抗体可変領域遺伝子のクローニング
ハイブリドーマ細胞は10cmディッシュで培養され、対数増殖期に採取された。全細胞RNAは、製造元の指示に従ってTrizol(Invitrogen、15596-018)を使用して抽出された。RNAをヌクレアーゼフリー水に再懸濁した。RNA濃度は、bioTEK装置で260nmの吸光度を使用して測定した。cDNAテンプレートを得るために、各RNA4μgをHiFiScript cDNA合成キット(CWBIO、CW2569)を使用して逆転写した。次に、抗体の可変遺伝子をクローン化するためにPCR反応を2回実行した。PCR産物は直接配列決定された。キメラ抗体の発現プラスミドを構築するために、VH遺伝子をpCNDA3.4-hIgG4ベクターにサブクローニングし、VL遺伝子をpCDNA3.4-hKappaベクターにサブクローニングし、さらにDNA配列決定によって配列を確認した。抗体の相補性決定領域(CDR)は、Kabat、Enhanced Chothia(強化Chothia)、およびIMGTシステム(Dunbar J et al、Bioinformatics.2016、32(2):298~300)に従って同定された。
【0278】
muPHD48の重鎖および軽鎖可変領域配列は、それぞれ配列番号16および18に示されている。
【0279】
muPHD48のCDRは次のとおりである:
【0280】
【表4】
PHD49の重鎖および軽鎖可変領域配列は、それぞれ配列番号42および44に示されている。
【0281】
muPHD49のCDRは次のとおりである:
【0282】
【表5】
muPHD50の重鎖および軽鎖可変領域配列は、それぞれ配列番号51および53に示されている。
【0283】
muPHD50のCDRは次のとおりである:
【0284】
【表6】
muPHD31の重鎖および軽鎖可変領域配列は、それぞれ配列番号14および15に示されている。
【0285】
muPHD31のCDRは次のとおりである:
【0286】
【表7】
【0287】
実施例4.ヒト化
マウス抗体のヒト化は、以前に報告されたように、CDR移植を使用して実行された。簡単に言えば、親(マウス抗体)可変領域(VHおよびVL)フレームワークを、選択されたヒト生殖細胞系列VおよびJ遺伝子のVHおよびVLのフレームワークに置き換えた。生殖細胞遺伝子は、親抗体と生殖細胞VおよびJ遺伝子間の相同性に基づいて選択された。ヒトHC生殖細胞系遺伝子IGHV1-46*01およびIGHJ3*01は、muPHD48 VHのヒト化のためのFRドナーとして選択され、ヒトLC生殖細胞系遺伝子IGKV1-39*01およびIGKJ4*01は、muPHD48 VLのヒト化のためのFRドナーとして選択された。ヒトHC生殖細胞系遺伝子IGHV1-69*01およびIGHJ5*01は、muPHD49 VHのヒト化のためのFRドナーとして選択され、ヒトLC生殖細胞系遺伝子IGKV1-39*01およびIGKJ2*01は、muPHD49 VLのヒト化のためのFRドナーとして選択された。
【0288】
ヒト化muPHD48(すなわち、PHD48-01)のVHおよびVL配列は次のとおりである:
PHD48-01のVH
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFTTYWMHWVRQAPGQGLEWIGTIYPGNSDSSNNQKFKGRATLTADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRFYYEDWYFDVWGQGTMVTVSS(配列番号:89)
PHD48-01のVL
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASSSVSYMYWFQQKPGKAPKPWIYRTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQYHSYPPTFGGGTKVEIK(配列番号:90)
【0289】
ヒト化muPHD49(すなわち、PHD49-01)のVHおよびVL配列は次のとおりである:
PHD49-01のVH
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSSYWMQWVRQAPGQGLEWIGAIYPGDDDTIYTQKFKGRATLTADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNYDYQAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号:99)
PHD49-01のVL
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASSSVSYMYWYQQKPGKAPKPWIYLTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQWSSNPLTFGQGTKLEIK(配列番号:100)
【0290】
対応するコード化核酸配列を合成し、それぞれpCDNA3.4-hIgG4またはpCDNA3.4-hKappaベクターにサブクローニングし、その後配列決定した(GeneWiz)。PHD48-01およびPHD49-01の発現プラスミドは、ヒトIgG4定常領域に融合したヒト化VHと、ヒトIgカッパ定常領域に融合したヒト化VLで構成されている。全ての組み換え抗体は、実施例1に記載のとおり発現され、精製された。
【0291】
図4Aおよび4Bに示すように、FACS分析におけるPHD48-01のEC50値は約142ng/mLで、chi-PHD48(muPHD48由来のキメラ抗体)の112ng/mlに匹敵し、NFAT拮抗アッセイにおけるPHD48-01のIC50値は約345pMで、muPHD48(411pM)に匹敵した。これらの結果は、PHD48-01がmuPHD48およびchi-PHD48の結合および生物学的活性を完全に保持していることを示唆している。
【0292】
図5Aおよび5Bに示すように、PHD49-01もchi-PHD49と同様の機能を保持していた。FACS分析におけるPHD49-01のEC50値は約198ng/mLで、chi-PHD49の157ng/mLに匹敵した。NFATアッセイにおけるPHD49-01のIC50値は約604pMで、muPHD49の値(404pM)と同等であった。
【0293】
Octet Red384を用いたバイオレイヤー干渉法(BLI)を使用して抗体の親和性を決定した。簡単に説明すると、抗ヒトFcコーティングされたバイオセンサーAHQチップ(ForteBio)を、事前湿潤プレート内で0.1%のw/vウシ血清アルブミンおよび0.05%のTween-20を含むPBSに最低10分間浸した。精製された抗体(0.1%のウシ血清アルブミンおよび0.05%のTween-20(アッセイ緩衝剤)を含むPBS中の100nM)は、約1nmのレベルでAHQバイオセンサー(ForteBio)で捕捉された。ロードされたバイオセンサーはアッセイ緩衝剤で洗浄し、結合していないタンパク質を除去した。次に、100nMの抗原(0.1%のウシ血清アルブミンおよび0.05%のTween-20を含むPBS中)を使用して、結合率、解離率、および応答を測定した。結果は以下の表に示されている。
【0294】
【表8】
PHD48-01抗体はキメラ抗体と同様の親和性を示した。一方、PHD49-01抗体はキメラ抗体の親和性よりは低かったものの、K値で示されるようにキメラ抗体の親和性に匹敵していた。
【0295】
さらに2回のヒト化が行われた。最初のラウンドでは、キメラ抗体に匹敵する高い親和性を維持しながら、変異したマウスアミノ酸残基は少なくなっていた。第2ラウンドでは、他の多くの変異体(CDR配列のいくつかの変異を含む)がさらに構築された。クイックチェンジベースの部位特異的変異誘発またはオーバーラップPCRを実行して、第2ラウンドのヒト化抗体の新しいバージョンの発現プラスミドを作成した。全ての組み換え抗体は、実施例1で説明したように発現および精製され、その後、前述のOctet Red384機器を使用してBLI技術を使用して抗原結合親和性を測定された。ヒト化抗体とキメラ抗体の機能活性を比較するために、NFATアッセイも実施した。結果は下の表にまとめられている。
【0296】
【表9】
【0297】
実施例5.親和性の成熟
抗体親和性成熟は、以前に報告されたようにファージディスプレイによって行われたThie H et.al、Methods Mol Biol.2009、525:309-xv、Bostrom J et.al.、Methods Mol Biol.2009、525:353-xiii)。ランダム変異は、GeneMorph II Random突然変異誘発キット(Stratagene)を使用して、製造元の指示に従ってエラーを起こしやすいPCRによって挿入された。変異したPCR産物とファージディスプレイベクターをNcoI-HF(NEB)とEcoRI(NEB)で37℃で一晩消化した。完全に消化されたDNAはAxygen(登録商標) AxyPrep PCRクリーンアップキットを使用して精製され、ベクターおよびPCR産物のそれぞれのDNA濃度は260nmでの吸光度を測定することによって決定された。次に、ベクター:インサートのモル比が1:3となるように500μLの容量でライゲーションを行い、16℃で一晩インキュベートした。その後、ライゲーション産物はAxYGen(登録商標) AxYPrep PCRクリーンアップキットを使用して脱塩され、XL1-blue電気変換効率の高い細胞に導入された。形質転換細胞は、15mLの予め温めた2X YT培地で37℃、250rpmで2時間培養された。形質転換効率は、各希釈液の一部を30℃で一晩インキュベートした後に播種して計算した。残りの細胞懸濁液は15×15cm 2xYT寒天培地プレートに播種した。翌日、プレートから細胞をスパチュラで慎重に掻き取った。高親和性クローンを選択し、配列を決定した。
【0298】
抗体の親和性は以下の表にまとめられている。
【0299】
【表10】
【0300】
実施例6.表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性の測定
ヒト化抗体の結合速度と親和性は、BIAcoreT200TM SPRシステムを使用して決定された。約30RUのヒト化抗体をタンパク質Gセンサーチップ上に固定化し、1xHBS-EP+緩衝剤中のPHA(0.625~20nM)の連続2倍希釈液を、抗体結合表面に30μL/分の流速で注入した。結果は以下のようにまとめられる。
【0301】
【表11】
【0302】
実施例7.TrkA抗体のインビトロ機能解析
本発明のヒト化TrkA抗体の活性を評価するために、CellSensor(登録商標) TrkA-NFAT-bla CHO-K1細胞を用いて、NGF誘導性TrkA活性化の阻害を評価した。Cellsensor TrkA-NFAT-bla CHO-K1細胞(K1516、Life TechnoloGies)を、実験の前日に100μLの培地とともに96ウェルプレートに播種した。細胞は、37℃/5%のCOの加湿インキュベーター内で30分間、3倍段階希釈した抗体とともにプレインキュベートされた。次に細胞上清を除去し、50μL/ウェルの2×NGFを添加した。プレートを37℃/5%のCOインキュベーター内で30分間インキュベートした。細胞上清は、上清を吸引するか、プレートを軽くたたくことによって慎重に除去された。補充溶解緩衝剤(1X)50μLを直ちに添加し、振とうしながら室温で30分間インキュベートした。ピペッティングによる均質化後、16μLの細胞溶解物を96ウェルプレートから384ウェルプレートに移した。補充溶解緩衝剤(1X)16μLを細胞フリーコントロールウェルに分注した。16μLの均質化細胞溶解液を試験サンプルウェル、非刺激コントロールウェル、および刺激コントロールウェルに分注し、室温で少なくとも4時間インキュベートした。Eu3+ CrYptateのリーダーをセットアップし、2つの異なる波長665nmと620nm)での蛍光発光を互換性のあるHTRF(登録商標)リーダーで読み取った。NGF用量反応曲線は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して4パラメータフィットで分析された。結果は下の表にまとめられている。
【0303】
【表12】
【0304】
実施例8.抗TrkA抗体の結合エピトープの決定
全長PHD48抗体は、モル比1:200(ペプシン:抗体タンパク質)のペプシンで37℃で240分間消化された。最終濃度50mMの2-メルカプトエチルアミンHCl(2-MEA)を試料に加え、試料を37℃で30分間インキュベートした。その後、PHD48 Fabはサイズ排除カラムによって精製された。TrkA(ECD)-PHD48 Fab-抗ヒトFab VHH(モル比 1:2:6)は、3つの成分を氷上で2時間インキュベートして調製した。
【0305】
Cryo-EMデータは、カウントモードで動作するK3直接電子検出器(Gatan、米国)を備えた300kV Titan Krios電子顕微鏡(Thermo Fisher Scientific、米国)を使用して収集された。全ての動画は、EPUを使用して、倍率105K、物理ピクセルサイズ0.819Åで自動的に記録された。総線量55.8e-/Å2が40フレームに分割された。全ての画像処理は、cryoSPARC v3.3.1を使用して実行され、パッチCTF推定、2D分類、異種改良、同種改良は全てcryoSPARCで実行された。合計61,777,707個の粒子がテンプレートピッカーを使用して自動的に選択され、2×2ビニング(180ピクセルのボックスサイズ、ピクセルあたり1.638Å)で抽出された。良好な粒子のデータセットを選択するために、2D分類を2回実行した。次に、選択された粒子を不均一な精製にかけた。改良された座標は、ビン化されていない粒子(ピクセルあたり0.819Å、360ピクセルのボックスサイズ)の再中心化と再抽出に使用された。これらの粒子はさらに均一に精製され、最終的な密度マップは3.11Åになった。
【0306】
TrkA(ECD)-PHD48 Fab-抗ヒトFab VHH複合体のモデルを構築するために、TrkA(ECD)(AlphaFold PDBより)とPHD48 Fab(PDB 6WW2からFrizzled-5タンパク質を削除)の構造を、UCSF Chimera(UCSF Chimera Home PaGe)を使用してcryo-EMマップに当てはめた。このモデルは、cryo-EMマップのガイダンスと、CCPEMを使用した実空間改良を組み合わせて、Coot(Emsley et.al.、2010)で手動で構築された。
【0307】
TrkA(ECD)とPHD48の相互作用はUCSF Chimeraによって解析された。図6に示すように。抗原抗体相互作用は主に水素結合によって媒介され、相互作用領域は、TrkA(ECD)の残基176(Q)、178~180(HGQ)、および187(P)、PHD48重鎖(そのVHは配列番号86に記載のアミノ酸配列を有する)の残基33(W)、35(H)、および104(W)、PHD48軽鎖(そのVLは配列番号91に記載のアミノ酸配列を有する、Y31は図6のKabat番号付けシステムに従ってY32に対応し、Y90は図6のKabat番号付けシステムに従ってY91に対応する)の残基31(Y)および90(Y)である。相互作用残基部位は次の表に示されている。
【0308】
【表13】
【0309】
実施例9.TrkA抗体変異体の親和性と機能の決定
追加のTrkA抗体変異体の親和性は、バイオレイヤー干渉法(BLI)ベースの方法(Fortebio)によって決定された。全ての抗体変異体は、上記の実施例1および実施例4に記載のとおり調製した。
【0310】
TrkA抗体変異体のアミノ酸配列を以下に示す。
【0311】
【表14】
PHD22のVH内のCDRは以下のとおりである。
【0312】
【表15】
PHD24のVH内のCDRは以下のとおりである。
【0313】
【表16】
PHD25のVH内のCDRは以下のとおりである。
【0314】
【表17】
PHD30のVH内のCDRは以下のとおりである。
【0315】
【表18】
PHD25のVL内のCDRは以下のとおりである。
【0316】
【表19】
PHD26のVH内のCDRは以下のとおりである。
【0317】
【表20】
PHD30のVL内のCDRは以下のとおりである。
【0318】
【表21】
親和性データは次の表に示されている。
【0319】
【表22】
さらに、アンタゴニストNFATアッセイ(図9)に示されているように、TrkA抗体PHD22、PHD24、PHD25、PHD26、PHD28、PHD29、PHD30、およびPHD48は、ヒトNGFによって誘導されるTrkAシグナル伝達の活性化を阻害することができ、その阻害活性は対照抗体pAb01よりも大幅に優れている。
【0320】
実施例10.TrkA抗体競合アッセイ
TrkA抗体が標的への結合に関して互いに競合するかどうかを決定する。Octet Red384に対して、バイオレイヤー干渉法(BLI)に基づく競合アッセイを実施した。簡単に説明すると、抗ペンタHIS(HIS1K)バイオセンサー(Fortebio)を、0.1%のw/vウシ血清アルブミンおよび0.05%のTween-20(アッセイ緩衝剤)を含むPBSに、事前湿潤プレート内で最低10分間浸した。アッセイ緩衝剤中の100nMのTrkA ECDタンパク質をセンサー上に捕捉し、0.3~1nmの捕捉レベルを得た。次に、ロードされたバイオセンサーをアッセイ緩衝剤で最低30秒間平衡化し、続いて最初の抗体を90秒間結合した。2回目の平衡化後、2番目の抗体を90秒間ロードした。抗体PHD22、PHD24、PHD25、PHD26、PHD28、PHD29、PHD30、およびPHD48は、TrkAへの結合をめぐって互いに競合する。対照抗体pAb01(配列番号123に示すVHと配列番号124に示すVLを持つ)は、PHD22、PHD24、PHD25、PHD26、PHD28、PHD29、PHD30、またはPHD48と競合しない(図7A~7D)。
【0321】
実施例11.NGF阻害アッセイ
TrkA抗体がTrkAとNGFとの間の結合を阻害できるかどうかを決定する。Octet Red384に対して、バイオレイヤー干渉法(BLI)に基づく競合アッセイを実施した。簡単に説明すると、抗ヒトFc(AHC)バイオセンサー(Fortebio)を、0.1%のw/vウシ血清アルブミンおよび0.05%のTween-20(アッセイ緩衝剤)を含むPBSに、事前湿潤プレート内で最低10分間浸した。アッセイ緩衝剤中の100nMの抗体をセンサー上に捕捉し、0.5~1.5nmの捕捉レベルを得た。次に、ロードされたバイオセンサーをアッセイ緩衝剤内で最低15秒間平衡化し、続いてTrkA ECDを最低60秒間結合させた。2回目の平衡化後、NGFを最低60秒間ロードした。抗体PHD22、PHD24、PHD25、PHD26、PHD28、PHD29、PHD30、PHD48、およびPHD49は、TrkAとNGFとの間の結合を遮断しない。対照的に、対照抗体pAb01はTrkAとNGFとの間の結合を阻害する(図8A~8C)。
【0322】
実施例12.TrkA抗体のDRGニューロンの生存と軸索伸展への影響
DRG分離一次ニューロンはヒト化胎児マウスから調製された。DRGを採取し、0.05%のトリプシン-EDTAで37℃で5~8分間インキュベートし、単一細胞にピペットで移し、ポリ-D-リジンとラミニンで前処理したペトリ皿に、異なるDRG馴化培地(NGF 0nM、NGF 0.3nM、NGF 0.3nM/PHD48 3nM、NGF0.3nM/タネズマブ 3nM、NGF 0.3nM/ファシヌマブ 3nM)を含む24ウェルプレート上に5000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。48時間後にDRG馴化培地の半分を交換し、グリア細胞の過剰な増殖を抑制するために5-フルオロ-2’-デオキシウリジンを最終濃度5μg/mLで添加した。DRG播種の72時間後、10倍および20倍の明視野撮影を実施した。図10に示すように、明視野写真では、NGF 0.3nM群およびNGF 0.3nM/PHD48 3nM群のDRGニューロンの正常な生存および軸索伸展が示された。NGF 0nMグループ、タネズマブ 3nMグループ、NGF 0.3nM/ファシヌマブグループでは、生存したDRGニューロンはごく少数であり、生存したニューロンの軸索は極めて短かった。
【0323】
DRG播種後72時間経過後、実験群の各ウェルの中間視野を撮影し(20倍)、DRGニューロンの軸索経路をトレースしてImageJで長さを計算し、各視野の平均長さを上記の統計に使用した。グラフはGraphPadソフトウェアを使用して生成され、データは平均±平均の標準誤差(SEM)として報告された。データの分析には一元配置分散分析が使用された。****P<0.0001。図11に示すように、NGF 0.3nM群とNGF 0.3nM/PHD48 3nM群は400μmを超えており、2つのグループ間で軸索の長さに有意差はなかった。NGF 0nM群、NGF 0.3nM/3nMタネズマブ群、NGF 0.3nM/3nMファシヌマブ群の平均軸索長は全て100μm未満であり、NGF 0.3nM/3nMファシヌマブ群のDRGニューロンの軸索長は有意に短かった。これらの結果は、PHD48がNGF中和抗体(タネズマブおよびファシヌマブ)とは異なり、DRGニューロンのNGF媒介生存および軸索伸展に対して有意な阻害効果を及ぼさなかったことを示している。
【0324】
実施例13.TrkA抗体はマウスのNGF誘発性疼痛を軽減する
炎症とニューロンの損傷は、インビボでのNGFレベルの早期かつ持続的な上昇をもたらす。成人では、NGFは有害刺激に対する感受性を高め、痛覚過敏を引き起こす可能性がある。外因性NGFを注射すると、げっ歯類およびヒトに機械的および熱的過敏性の変化が生じる。NGFの足底内注射により、機械的過敏性が比較的短時間の増加をもたらす。
【0325】
本発明のTrkA抗体(例えばPHD48)の抗侵害受容作用を理解するために、NGF誘発過敏症モデル(NGFの足底内注射による)をモデルとして使用した(図12)。結果は、ファシヌマブの皮下注射により、熱過敏症(NGF注射後24時間、図13A)および機械的過敏症(NGF注射後72時間~120時間、図13B)が著しく軽減されたことを実証しており、これは過敏症がNGFシグナル経路によって媒介されていることを示している。このモデルでは、PHD48はNGF/TrkAシグナル伝達を阻害することで、熱過敏症(NGF誘導後24時間、図13A)と機械的過敏症(NGF注入後48時間~120時間、図13B)も大幅に軽減した。
【0326】
実施例14.TrkA抗体はマウスのホルマリン誘発性疼痛を軽減する
神経成長因子(NGF)は、主にその受容体TrkAを介して末梢神経系に強力な鎮痛作用を発揮する。
【0327】
マウスのホルマリン試験は、痛覚の信頼できるモデルであり、様々な種類の鎮痛薬に対して感度がある。有害刺激は、右後足の背側皮膚の下に希釈ホルマリンを注射することである。痛覚行動は、ホルマリン注射後0~45分までの動作回数(足をなめる動作)として記録された。そして、炎症性疼痛を表す後期相(ホルマリン注射後20~30分)の総動作回数を計算し、異なるグループ間で分析した。
【0328】
本発明のTrkA抗体(例えば、PHD48)の抗侵害受容作用を理解するために、ホルマリン誘発性炎症性疼痛マウスモデルが確立され(図14)、ファシヌマブの皮下注射によりホルマリン媒介性運動カウントの増加が著しく緩和されることがわかった(図15Aおよび15B)。これは、ホルマリン誘発性疼痛がNGFシグナル経路によって媒介されることを示している。一方、PHD48はホルマリン媒介運動カウントの増加も大幅に軽減した(図15Aおよび15B)。これは、本開示のTrkA抗体がこの疼痛モデルに有効であることを示している。
【0329】
実施例15.TrkA抗体はマウスのMIA誘発OA疼痛を改善した
膝関節へのモノヨード酢酸(MIA)注射は、軟骨の進行性の破壊を引き起こし、それが疼痛のような行動の発症につながる。MIAによって誘発される病理学的変化は、軟骨の喪失や軟骨下骨の変化など、ヒトのOAで観察されるものと多くの共通点を持っている。
【0330】
本発明のTrkA抗体(例えばPHD48)のOA疼痛に対する効果を研究するために、MIAをマウスの膝関節に注射してOA疼痛モデルを誘発した(図16)。対照群を除き、他の群の動物には膝関節にMIAが注射され、MIA注射の9日後にベースラインスクリーニングが実施された。各グループでモデル基準を満たしたマウス(足引っ込め閾値<0.6g)を選択し、試験薬を投与した。セレコキシブ(TCI、ロット番号:CJDBF-RG)陽性対照として100mg/kg、経口投与したところ、MIA投与マウスの機械的過敏症が有意に軽減した(図17A~17G)。ファシヌマブの皮下注射は、MIA治療を受けたマウスの機械的過敏症も有意に抑制した(図17A~17G)。これは、MIA誘発性疼痛がNGFシグナル経路によって媒介されることを示している。一方、本開示のTrkA抗体(例えば、PHD48)による治療は、MIA治療マウスにおける機械的過敏症を著しく緩和した(図17A~17G)。これは、本開示のTrkA抗体がOA疼痛治療に有望な抗侵害受容作用を示したことを意味する。
【0331】
本願の好ましい実施形態が本明細書で図示および説明されるものの、当業者には、このような実施形態は、単に例示として示されるものであることが明らかであろう。本発明が、本明細書内で提供される特定の実施例により制限されることは、意図されてはいない。上述の記載を参照して本発明が記載されているものの、本明細書の実施形態の記載および図面は、限定の意味で解釈されることを意味していない。本発明から逸脱することなく、当業者には、様々な変更、変化、および置換が生じる。さらに、本発明の態様は全て、種々の条件および変数に依存する、本明細書で説明した特定の描写、構成または相対的な比率に限定されないものと理解されなければならない。本発明の実践において、本明細書に記載する本発明の実施形態に様々な代替物を用いることができることが理解されなければならない。それ故、本発明は、前記任意の代替物、変更、変化、および均等物もまた含まなければならないことが想到される。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲の範囲内の方法および構造、ならびにこれらの均等物が特許請求の範囲に含まれることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図17G
【配列表】
2025503539000001.xml
【国際調査報告】