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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】アルコール飲料の熟成促進
(51)【国際特許分類】
   C12H 1/22 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
C12H1/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541077
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(85)【翻訳文提出日】2024-09-05
(86)【国際出願番号】 US2023060155
(87)【国際公開番号】W WO2023133454
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】17/647,110
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524255944
【氏名又は名称】アルデンダーファー,マシュー・ティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルデンダーファー,マシュー・ティー
【テーマコード(参考)】
4B128
【Fターム(参考)】
4B128AC15
4B128AG05
4B128AG07
4B128AG08
4B128AP01
4B128AP04
4B128AP08
4B128AP21
4B128AS04
4B128AS15
4B128AT08
4B128AT09
4B128AT10
(57)【要約】
最終風味プロファイルに対する選択的管理を行うアルコール飲料の熟成促進及び統合風味付けのためのプロセスが、気体、液体、または固体導入の利用能と共に、大気圧以上で迅速循環系において、サイズが低減された木材及び植物ベースのバイオマス製品を使用して説明され、このプロセスは、固体超音波処理及び/または超音波によるアルコール飲料均一化及び/または化学反応の増進ならびに木材及び植物ベースのバイオマスの消費の大幅な低減によって卓越したものとなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールを熟成させるプロセスであって、
1体積%~95体積%アルコールの範囲のアルコールの供給源を供給するステップと、
バイオマス粒子を含む層質量塊格納エリアを通過する連続流において前記アルコールを循環させるステップと、
1分~約6ヶ月の範囲の時間間隔の間、前記層質量塊格納エリアを通過させる前記アルコールの循環を維持するステップと、
前記連続流から前記アルコールを分離するステップと、
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
10時間未満の時間の間エタノールを循環させるステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記層質量塊格納エリアを通過させて前記アルコールを循環させる前記ステップが、超音波振動を使用して前記バイオマスの層を撹拌するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記連続流に酸素を注入するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルコールを加熱するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記バイオマス粒子がチャーリングされている、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
複数の層質量塊格納エリアを供給し、その結果、前記アルコールの連続流が、前記複数の層質量塊格納エリアのすべてを通過するようにするステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
各複数の層質量塊格納エリアが、異なる種類のバイオマス粒子を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記複数の層質量塊格納エリアが、並行に構成されている、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記層質量塊格納エリアのうちの少なくとも1つが、モレキュラーシーブを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
前記層質量塊格納エリアのうちの少なくとも1つが、粒子フィルターを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項12】
分光学的センサーを供給して前記連続流を監視するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
流速メーターを供給して前記連続流を監視するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記木材粒子が、約1ミクロン~約150立方インチの体積の範囲の粒度を有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項15】
前記バイオマスが、木材を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記バイオマスが、チャーリングされた木材、植物バイオマス、ピート、及びバニラ豆からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記層質量塊格納エリアを通過させて前記アルコールを循環させる前記ステップが、機械的振動を使用して前記バイオマスの層を撹拌するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
化学的センサーを供給して前記連続流を監視するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月30日出願のアルコール飲料の成熟促進と題する米国仮特許出願第63216756号の非仮出願である。前出の仮特許出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
チャーリング(charing)された状態またはチャーリングされていない状態で新品または使用済のオーク樽を使用するさまざまなアルコール飲料の熟成、風味付け、及び成熟のプロセスはよく知られており、アルコール飲料業界全体に広まっている。ワイン、ビール、ポート、リキュール、及びさまざまなスピリッツなど(これらに限定されない)の多くのアルコール飲料では、このプロセスを使用して、望ましい風味を付与し、望ましくない化合物を除去し、色を付与し、風味及び香りの向上のための後続の反応のための化学種を加える。
【0003】
下記の参考文献は、アルコール飲料を熟成させるためのさまざまなプロセスの例としての役目を果たし、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0004】
特許文献1 Accelerated Aging of Wines and Sprits
伝統的な樽熟成に要する期間の1/10~1/100の期間で同等の熟成を達成する量で1mm未満のサイズの細かく砕かれた木材を使用する、飲む前の即時熟成を目的とするワイン及びスピリッツを熟成させるための方法及び系が開示されている。
【0005】
特許文献2 All Natural Accelerated Aging of Distilled Spirits
木材と接触させて熟成される熟成飲料、好ましくは、蒸留スピリッツを生産するためのプロセスであり、このプロセスでは、熱及び酸素レベルが管理された閉鎖系において飲料熟成木材製品と接触させて、未熟性の飲料または部分的に熟成された飲料が処理される。ある特定の実施形態では、熟成プロセスの前に、未熟性飲料に酢酸エチルが添加される。
【0006】
特許文献3 Apparatus and Method for Aging Wine
ワインの成熟のための系は、タンク及び1つ以上の木製樽、ならびにタンクと1つ以上の樽との間での成熟中のワインの循環を可能にするためのフローコネクタを含む。樽は、木製外部及び内部容積、ならびに木製外部を内部容積へと内側に伸長させて木材表面積を増やす複数の内部木製表面を含み得る。樽は、伝統的なオーク樽であり得る。
【0007】
特許文献4 Aging of Alcoholic Beverages Using
Controlled Mechanically Induced Cavitation
熟成された酒を得るためのスピリッツ熟成プロセスを極度の促進は、管理されたキャビテーション反応器内のキャビテーションゾーンを通過させてスピリッツを循環させ、その中で、高エネルギーキャビテーションによって誘導される衝撃波にスピリッツを曝露することを含む。チャーリングされた木材チップなどの風味及び色の発生源をスピリッツに添加することで、伝統的なチャーリングされたオーク樽の中で数年間熟成させた酒の色及び風味を得ることができる。この発明の方法及び装置では、オーク樽中で数年間熟成させた
ものと同じく望ましくないアルコールの変換、風味抽出、及び色が得られるが、それに要する時間は数分または数時間足らずである。装置及び方法は、伝統的な熟成手法及び方法と併せて使用することもでき、それでもなお、総熟成時間は劇的に短くなる。
【0008】
特許文献5 Method for Production of Base for Preparation of Strong Alcoholic Beverages
物質:水-アルコール溶液を50~55℃の温度で原木層に4日間通して絶え間なく再循環させることによって抽出物が得られる。この水-アルコール溶液は、エタノールを60~65体積%の体積分率で含む1:1:1の比のオオムギ、ライモルト、及びトウモロコシの混合物の蒸留液に相当する。このベースは、チップなしで10日間維持される。
効果:発明は、強いアルコール飲料の調製用のベースの官能的特性及び物理化学的特性の改良によって、最終完成製品の品質を高めることを可能にする。
【0009】
特許文献6 Method to Manufacture Alcoholic Drink Using Oak Charcoal
黒色オーク炭を使用して酒を生産するための方法は、黒色オーク炭を充填したカラムに酒用の水を通すか、または酒用の水の中に黒色オーク炭を浸漬し、それをろ過するステップと、黒色オーク炭処理水でアルコールを希釈してアルコール濃度を10~45%(v/v)とするステップと、黒色オーク炭を充填したカラムに希釈アルコールを通すか、または希釈アルコール中に黒色オーク炭を浸漬し、それをろ過するステップと、ろ過した希釈アルコールに50~200ppmの活性炭を添加し、それを3時間撹拌し、それを珪藻土に通して悪臭を除去するステップと、希釈アルコールに添加剤を添加するステップと、混合中の希釈アルコールに酒用の水を添加してそのアルコール濃度を調整するステップと、希釈アルコールに10~30ppmの活性炭を添加し、それを2時間撹拌し、それを0.3~0.8マイクロメートルのろ紙でろ過するステップと、を含む。
【0010】
特許文献7 Pumping Wine of Brandy Through Wooden Barrel from Vessel
容器(8)中に含まれるワインまたはブランデーが循環され、木製樽(3)中で寝かされる。ワインは、自動のプログラム可能なコントローラー(1)の管理下で、容器(4)から樽(5)へとゆっくりとポンプで送液(2)され、その後に容器(6)に戻される。デバイス全体は、ワイン貯蔵容器とは別になっている。1つ以上の直列の樽への送液には単一のポンプが使用され得る。統合コントローラーは、容器へ戻す前の樽中のワインの滞留時間を調節する。デバイスには、他の機械も接続され得る。
【0011】
特許文献8 Aging Accelerator Exchanger
デバイスは、アルコールの熟成時間を短くするためのツールに関する。この発明は、大量処理を行い、いくつかのアルコールタンクの熟成プロセスを代わる代わる自在に停止及び再開させることを可能にする。それは、木製プレート(2)、ワインプレート(3)、及び空気プレート(4)のセットを挟み込む固定部(15)及び可動部(16)を含むフレームからなる。それは、各木製プレート(2)の片面上と接してワインを循環させ(11~12)、ワイン回路とは決して混ざることなく各木製プレートの反対側上と接して圧縮空気を循環させること(13~14)を可能にする二重ネットワークを有する。このツールは、ワインの熟成、または木材が付加価値を与える任意の他の種類のアルコールの熟成を可能にする。要約書用の図:図1
【0012】
特許文献9 Method of Aging Whiskey
ウイスキーは、ウイスキーが染み込んでいる微粉化木材とそれを接触させることによって熟成され、この微粉化木材は、好ましくは、内部がチャーリングされたオーク製樽(熟
成ウイスキーを入れてきたもの)から得られる。ウイスキーは、好ましくは、加熱され、処理中はそれに空気が吹き込まれる。示されるように、木材が入っている有孔入れ物4、5、6、及び9が入った容器4、5、6、及び樽3があり、これらの有孔入れ物のうちのいずれかまたはすべてにウイスキーがポンプで通液される。樽3は、新たな樽であり得、したがって、迅速に「熟成」され得るものであり、記載のプロセスにおいて迅速に使用可能にすべき新たな木材を含み得る。
【0013】
この伝統的な飲料熟成様式には多くの不利な点が伴う。何よりもまず、樽に飲料を導入してから、プロセスが完了したと見なされ、瓶詰め及び販売に向けて内容物を空にするまでに要する時間が長い。この時間は、月単位で測定され得るものか、または場合によっては、30年以上にもなり得る。典型的な時間は、合理的には2~15年と言われ得る。これは、それが瓶詰めされ、販売されるようになるまで、生産者が投資し、費用を負担するには長い期間である。これには、投資に対する見返りが実現するまで、かなりの資金量を投資し、維持することが必要である。
【0014】
ロットが瓶詰め及び販売される段になっても、次の最古のロットを熟成を迎え、瓶詰め及び販売が可能になるまでは替えの在庫がすぐには存在せず、替えのロットが販売可能になるまで、最初の製品ロットに対する追加販売の可能性はいずれも失われる。こうしたものは、永遠に取り返しのつかない売上である。
【0015】
また、いずれかの実験をするにしても、実験の結果が判明し、データが使用可能になるまでには熟成プロセス自体と同様の期間の投資が必要であり、これには、実験(及びそこに投入される維持費用)が失敗に終わり、投資されるこうした費用及び時間に見切りをつけなくてはならなくなるリスクも伴う。全体として、実験及び製品の拡販及び差別化は大幅に遅れる。
【0016】
さらに、最終製品に影響し得るこの熟成プロセスには固有の自然の管理不可能な可変要素が存在する:どの樽も、自然の変化を伴う木材(典型的にはオーク)から構成され、通常、風味プロファイルをもたらすために、ある程度にまで内部がチャーリングされる。このチャーリングプロセス自体が樽ごと及びロットごとに変わり得る。製品が樽に仕込まれ、樽が貯蔵庫に入れられた後にも、温度、湿度、及び大気圧の変化の形態での追加の管理不可能な変動要因、ならびにより長期的な気候サイクルによって自体が変わる上記のものの自然の地域的変動が存在する。こうした変動要因はすべて、多大な変動にさらされ、通常は長期的なプロセスの終わりまで現実化しない所期の風味プロファイルからの差異が正味の結果となる。この最終製品差異は、複数のバッチを一緒に混ぜて相違を平均化することによって対処され得る。不幸なことに、これは、この製品平均化が機能するには、複数のバッチが同時に利用可能でなくてはならないことを意味し、再び、これによって在庫維持費用がかさむ。
【0017】
「天使の分け前」として知られる単純な継続的製品損失もよく知られている。樽自体を介する水及びエタノールの一方または両方の蒸発は、典型的には、貯蔵年当たり3%の範囲内であり、この製品は失われ、収益を得る上で永久に利用不可能なものである。樽貯蔵の年を経るごとに、この収益損失が膨らむ。
【0018】
何年にも及ぶ可能性のあるこうした樽の貯蔵は、この試みに専用の空間を必要とし、ここでもまた、53ガロン樽の重量はそれぞれ数百ポンドであり、典型的には、必要に迫られて専用の倉庫が使用されることから、維持費用及び物流負担が膨らむ。この構造物は、購入または建築しなくてはならないものであり、これに伴う継続的な保守費用、税金、保険料などが費用負担にさらに加わる。
【0019】
樽の調製には異なる方法が存在し、それに施される調製のレベルの程度は異なるものの、飲料製造者に与えられる飲料の風味付け、色付け、貯蔵、及び成熟を行う系は依然として不変のままである。樽は運び込まれ、それに液体内容物が加えられ、熟成プロセスが生じる間、数ヶ月、そうでないなら数年の間、受動的にそのままにされる。この受動的な系に変更が加えられることは通常はない。木材を変えることは不可能であり、チャー(char)を変えることも不可能であり、そしてその後の化学種の酸化及び生成を変えることも不可能であり、少なくとも大きく変えることは不可能ある。成し得ることといえば、せいぜい、ローテーションまたはある貯蔵場所から別の貯蔵場所への移動によって樽を動かして熟成プロセスに影響を与えることぐらいであり、そのような変更の影響はよくても非常に軽微なものである。熟成系は本質的には固定されており、変更不可能である上に、その目標の達成は比較的遅いものである。酒造家は、この融通の利かない事実、及び最終製品の変動をもたらし得るこの熟成プロセスの固有自然変動の予測不可能な変化にさらされ、この最終製品の変動は樽を空にした後に修正する必要がある。ステップごとに費用がかさみ、ある入れ物から別の入れ物へと飲料を移すステップごとに、こぼれたり、吸収されたり、蒸発したりすることで常に製品損失が生じる。
【0020】
樽熟成の基本的な機構はよく知られている。飲料は、チャーリングされた木製樽に導入され、その後、飲料は木材に染み込み、風味、香り、色などを飲料に付加するさまざまな物質及び化合物を溶解、抽出、及び浸出させる。こうした化合物のいくつかは、酸素及び元の飲料中に既に存在する他の化合物とのさらなる化学反応にもさらにさらされて、追加の風味及び香りを加える追加の化合物を生成させる。チャー層の炭化部分は、望ましくない化合物(典型的には、導入される飲料に由来する含硫化合物)の吸収もすると考えられる。
【0021】
これは、ゆっくりとしたプロセスになって、完全に受動的な環境において大気圧及び環境温度の下で生じる。酸化反応は、始まりはヘッドスペースから利用可能な酸素の量に限られ、その後は、木材の多孔性及び樽構造自体を介して樽の内部へと徐々に浸透する酸素に由来する。溶媒和及び抽出のプロセスもまた、受動的な環境及び環境温度が与える制限に起因して効率がより限られる。さらに、内部チャー層から遠ざかり、樽の構造内へと入っていくほど、木目は次第に引き締まり、その木目構造の透過性は低下する。このこともまた、木材から出て飲料中に入ることのできる化合物の量を制限する効果を有する。プロセス全体は、木材化合物の抽出及び拡散を助ける大気圧変化及び熱サイクリングにさらされるが、プロセスは依然として、基本的にはゆっくりとしたものである。
【0022】
カスクのチャーリングされた木材内部は、樽の内部全体が一定時間(典型的には、1分以下)炎に包まれたときの急冷直前に存在する温度勾配が凍り付いた像となる。こうして得られるチャー及び温度勾配は、抽出に利用可能な可溶性及び不溶性の固体及び揮発性物質の種類及び濃度に対する強い影響を有している。温度勾配は、燃焼が生じている活性チャー層における最高木材温度から自然に始まり、活性チャー層から遠ざかる方向で木材樽構造の深部に向かうほど、環境温度に到達するまで温度低下が進む。
【0023】
燃焼温度におけるものではない、または激しく燃焼していない木材の加熱のよく研究された効果は、熱の存在下での、木材自体に存在する物質からのさまざまな化学種の形成である。こうした化学種は、木材の種類及びそれが曝露される温度ならびにどのくらいの時間この曝露が生じるかに応じてかなり予測可能な様式で性質及び含量が異なる。もっと正確に言えば、温度の範囲が狭いと、アルコール飲料の風味付け、熟成、及び成熟に望ましいある特定の化合物が選択的に生成される:ラクトン、バニリン、オイゲノール、グアヤコール、及びフルフラールが挙げられるが、より周知のものの少数例にすぎない。加熱及び好ましい化合物の創出を行うこのプロセスは、業界では「トースティング」として知られている。チャーリングされた樽に刻み込まれる凍り付いた温度勾配は、チャー層、その
次には、燃焼は生じなかったが、異なる化合物の形成が優先し、優勢となる高温領域、その次には、いま一度、異なる化合物の形成が優先し、そうした化合物が優勢となる中~高温領域、このように下っていき、非処理のトースティングされていない新木にまで至るこれらの領域に存在する化合物及びそこで創出される化合物にまたがる「トースト」(及びひいては化合物)のスペクトルを与える。このチャー/トーストプロファイルの各温度領域は、その他の領域と比較して、異なる化合物の形成を優先的に生じさせ、そうした化合物は、そうした領域において優勢となる。
【0024】
このチャーリングプロセスは、抽出及び拡散の速度に直接的に影響を及ぼすことから、特筆すべきその別の側面は、チャーリングプロセスが、トースティングされていない木材に固有の引き締まった木目を「広げる」という事実である。温度、すなわち「トーストレベル」が高くなるほど、木目の「広がり」が進むようになって、化合物への到達及びその抽出が生じ得る利用可能性及び速度が上昇する。これによって、チャーからさらに離れた領域よりも高いレベルで既に飲料に曝露されている、より高温のチャー/トースト層領域において始まる抽出速度の優先性が生じる。このように、より高温の領域が飲料により近接していることは、飲料中へのその抽出物の拡散速度も後押しする。木目の広がりの度合い及びトーストレベルに対するその依存ならびに潜在的な拡散速度勾配に関するこれら2つの事実は、最低温度領域(トースティングされていない木材を含む)が、それに先行する領域と比較して平均で抽出利用可能性低く、潜在的に抑制された拡散速度勾配を有することを意味し、チャー層に向かって内部に先行する漸増温度トーストレベル領域のそれぞれについても同じことが当てはまる。
【0025】
これが、業界において定義される木材樽において利用可能な「チャーレベル」が異なると、導入される飲料に対する風味付け、熟成、成熟、及び色付けの効果が異なるようになる理由である。こうした温度領域はそれぞれ、異なる風味を付与する明確に異なる化合物、ならびに長期的な抽出相、拡散相、及び成熟相にわたって利用可能であり得る化学種を与え、こうした温度領域は、チャーレベルに応じて、その他のものと比較して深さ及び厚みに関して影響を受ける。
【0026】
チャーレベルは、原始的に管理されたトーストスペクトルと考えることができる。これは、樽が急冷される瞬間から固定され、この瞬間に、どの化合物が抽出され得るか、抽出され得る化合物の量、及びこうした化合物が抽出され、その後に拡散し得る速度が効果的に固定される。飲料の生産者は、チャーリングされた木製樽にそれを入れた後には、それを貯蔵し、待つこと以外には、その製品の熟成、風味付け、及び成熟に対して管理できることはほぼない。そのため、現在使用されている熟成プロセスは、数百年の間機能してきた一方で、限定されないが、下記のことを含めて、飲料生産者への厳しい制限に悩まされる手法に基づいている:
・遅いこと、
・数ヶ月及び数年の間、大量の運転資金が拘束されること、
・数ヶ月及び数年の間、大量の貯蔵空間が拘束されて、必要資金及びさまざまな継続的支出が増えること、
・販売需要の増加に応じる生産者の能力が制限されること、
・著しい自然の管理不可能な環境変動にさらされること、
・数ヶ月及び数年の間、来る日も来る日もほぼ一定の回避不可能な速度で、販売可能な製品が失われること、
・複数の取り扱いステップを要することで、製品損失及び汚染の機会が増すこと、
・研究開発の試みが実質的に遅くなることで、新たな製品の柔軟性及び開発が制限されること、
・樽に由来する風味プロファイルに対して生産者が管理できることが非常に限られること-生産者ではなく、使用する樽及びそのチャーレベルによって風味プロファイルが設定及
び固定されること、
・風味プロファイルの付与に生産者が使用できる木材が非常に少なく、限られること-樽作りにすべての木材が使用できるわけではないこと、
・木材化合物抽出速度に対して生産者が管理できることが非常に限られること-チャーレベル及び貯蔵環境が管理要素であること、
・酸化化学反応速度に対して生産者が管理できることがほぼないか、または全くなく、制限されること、
・非酸化化学反応(複数可)及び速度(複数可)に対して生産者が管理できることがほぼないか、または全くなく、制限されること、
・拡張性において生産者が制限を受けること-2リットルラボバッチの熟成から始めて5,000ガロンタンク車へと移行することは現実的に不可能に近いこと、ならびに
・使用できる天然資源の量がかなり限られること-木材が特定の種のものであること。
【0027】
本明細書に記載の本プロセスは、こうしたネガティブな問題に対処し、それらに改良を加え、場合によっては、こうした改良は、実質的かつ劇的なものであり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0164300号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2001/0018086号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0177675号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2016/0289619号明細書
【特許文献5】ロシア国特許第RU2432391C2号明細書
【特許文献6】韓国特許第KR20020082305A号
【特許文献7】仏国特許第FR2712300A号明細書
【特許文献8】仏国特許第FR3098578A号明細書
【特許文献9】英国特許第GB500081A号明細書
【発明の概要】
【0029】
本発明の一態様によれば、アルコール飲料の熟成促進のための改良プロセスは、主に下記の3つの主要領域においてさまざまなステップを含む:
1)木材及び植物バイオマス化合物の溶媒和、浸出、抽出、及びその後の飲料を介する拡散の速度を加速させること。
2)飲料における酸化化学反応及び非酸化化学反応の速度を加速させること。
3)抽出及び拡散の速度に対する管理を含めて、風味付け及び熟成された飲料を生産するプロセス全体に対する管理を向上させ、酸化反応及び非酸化反応の速度に対する管理をもたらし、伝統的な樽熟成を介しては達成不可能な方法で最終的製品風味プロファイルに対する管理を卓越したものにすること。
【0030】
樽熟成プロセスが生じる速度の遅さに対処し、それを実質的に促進するために、下記の概念(本明細書では「ステップ」とも称される)がさまざまな組み合わせで使用される:
A)木材または他のバイオマスの単位質量当たりの利用可能な表面積を増加させて、飲料の単位体積での対比で化合物の溶媒和及び抽出の速度が上昇するようにすること。
この改変は、所与の木材または植物バイオマス製品のサイズ低減を含む。一般に、名目粒度が小さいほど、湿潤及び抽出の速度が向上する。
B)使用すべき得られるサイズ低減粒子をいずれも、その最大厚さを減らして、その粒子の中心までの距離を最短にして湿潤及び抽出が加速されるようにする。
これは、球体の理想(1:1:1 x:y:z軸)に向かうように縦横比(長さ対幅対高さ)を低減しようと試みることを意味する。
C)木材/バイオマスの固定化層(「層質量塊(bed mass)」)を撹拌して、
未利用表面の再生を達成する。
このステップは、連続的または間欠的に実施され得る。未利用表面の再生は、抽出/拡散プロセスを支援し得る。これは、直接的または間接的に働き得る任意の利用可能な手段によって実施され得る。
D)木材/バイオマス層の超音波処理を実施する。
このステップは、細胞壁及び他の構造を壊し、化合物の抽出度向上及び抽出速度向上を可能にすることによって抽出プロセスを支援し得る。
E)木材/バイオマスの固定層の上及び中を流れる連続ストリームへと飲料の受動プールを変換する。
ここでの目標は、固定木材/バイオマス層上を飲料が通過するようにして、受動プールと比較して溶媒和、抽出、浸出、及び拡散速度を高めることである。
F)可能な限り均一に飲料が層質量塊を通過するようにあらゆる努力をする。
目標は、すべての層粒子の飲料曝露時間を同じにすることであり、入れ物形状、層質量塊、及び入口/出口設計が重要因子になり得る。
G)系が飲料を再循環させるものである場合、質量塊を通過する飲料流速を、可能な限り、合理的かつ実用的になるように速めて、抽出及び拡散プロセスを加速させる。
系が再循環させるものである場合、少なくとも1バッチサイズ体積/分の「バッチ回転」速度、優先的には、4バッチ体積/分越を目指す。
H)飲料を加熱する。
溶媒和及び抽出及び拡散のプロセスは、それによって環境温度で増進されるものであるが、飲料を加熱することによってその速度がかなり増す。飲料を加熱することで、酸化化学反応及び非酸化化学反応の速度も増加して、熟成プロセスがさらに促進される。
I)処理中の飲料に対して、好ましくは、管理された様式で、酸素を供給する。
酸化反応を生じさせるためには、酸素を供給しなくてはならない。酸素が多すぎると、思わしくない結果を招き得ることから、量、速度、及びタイミングを管理することが望まれる。
J)超音波を使用して化学反応速度を増進させる。
超音波を使用することで、飲料の均一性が向上し、さらには、化学反応に追加のエネルギーが付与され、これに加えて、望ましい化学種が創出され得る。
K)追加の気体、液体、または固体をプロセスに添加する能力を与える。
活性プロセスへの添加に物質の追加が望まれ得る理由は多くのものが考えられ、挙げるとすれば、風味付け、色付け、酸化、触媒作用、反応物の追加、酸化反応及び非酸化反応の抑制が挙げられるが、これらは少数例にすぎず、これらに限定されない。
L)飲料を「洗練する」能力を与える。
典型的には、望ましくない化合物を隔離または中和するためには、木炭または活性炭または他のモレキュラーシーブを使用できるが、任意の物質または方法が導入され得る。
M)排気気体を凝縮させ、プロセスに戻して、製品のいかなる損失も低減するか、またはなくす。
こうした気体及び蒸気は、アルコール、水、及び望ましい風味/香り化合物を含み得るものであり、いずれの気体排出ストリームからもそれらを凝縮させ、それらをプロセスに戻す。
【0031】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、下記の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面と関連付けることで理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】アルコール飲料の熟成を促進するためのプロセスの一実施形態の概略図であり、アルコール飲料は、サイズが低減された木材またはバイオマスを含む層質量塊格納エリアを通過させて一次保持容器からポンプで送液され、その後に二次保持容器へとポンプで送液される。
図2】アルコール飲料の熟成を促進するためのプロセスの別の実施形態の概略図であり、アルコール飲料は、サイズが低減された木材またはバイオマスを含む層質量塊格納エリアを通過させて一次保持容器からポンプで送液され、その後に一次保持容器へとポンプで送液し戻される。
図3図2に示されるアルコール飲料の熟成を促進するためのプロセスの別の実施形態の概略図であり、層質量塊格納エリア内での超音波処理及び機械的撹拌のためのステップ、ならびに飲料がそこを均一に通過して流れるようにするための対策をさらに含むものである。
図4】アルコール飲料の熟成を促進するためのプロセスの別の実施形態の概略図であり、アルコール飲料は、一次保持容器内で熱、超音波処理、及び気体(酸素など)の添加に供され、その後に、さらなる超音波処理、機械的撹拌、及びサイズが低減された木材またはバイオマスへの曝露のための層質量塊格納エリアへとポンプで送液された後、一次保持容器へとポンプで送液し戻される。
図5】アルコール飲料の熟成を促進するためのプロセスの別の実施形態の概略図であり、アルコール飲料は、一次保持容器内で熱、超音波処理、及び気体(酸素など)の添加に供され、一次保持容器は蒸気凝縮器を含み、飲料は、その後、並列構成の層質量塊格納エリアのペアへとポンプで送液され、第1の層質量塊格納エリアは、さらなる超音波処理、機械的撹拌、及びサイズが低減された木材またはバイオマスへの曝露を与え、第2の層質量塊格納エリアは、モレキュラーシーブへの曝露及び機械的撹拌を与え、飲料は、その後、気体注入点及び液体注入点を含む導管を通過させてポンプで送液された後、一次保持容器へとポンプで送液し戻される。
図6図5に示されるアルコール飲料の熟成を促進するためのプロセスの実施形態の概略図であるが、飲料は、9つの層質量塊格納エリアを通過させてポンプで送液され、層質量塊格納エリアへと繋がっている各導管は、バルブ、次いで、流量計を含み、各層質量塊格納エリアは、撹拌及び超音波のための対策を含み、各層質量塊格納エリアは、異なる木材、バイオマス、粒子フィルター、モレキュラーシーブ、及び別の反応器を所望の組み合わせで含み得る。
図7】一次保持容器、各層質量塊格納エリアが特定の機能を有する並列に存在する9つの層質量塊格納エリアを通過させて飲料をポンプで送液するための導管を含むと共に、直列に存在する二次容器及び三次容器、これと併せて、液体注入及び気体注入、超音波、化学的/分光学的センサーを与えるための導管沿いのさまざまな点、ならびに一次保持容器内で電磁エネルギーの付与をさらに含む、アルコール飲料の熟成を促進するためのプロセスの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
プロセス:促進
図面に示される下記の参照番号は、下記のコンポーネントを指す。
10 一次保持容器
12 ポンプ
14 層質量塊格納エリア
16 バイオマス層
18 二次保持容器
20 導管
22 機械的撹拌機
24 超音波チャンバー/振動子
26 追加の保持容器
28 ホットプレート/バーナー(熱源)
30 酸素/気体供給口
32 蒸気凝縮器
34 流量計/センサー
36 制御バルブ
38 導入点
40 化学的/分光学的センサー
42 電磁エネルギー
44 液体供給口
【0034】
上記の1)及び2)に与えられる速度の促進と関連する上記の改良概念を参照すると、プロセスは、所望の任意の組み合わせで簡潔に与えられるいずれか、またはすべての態様を使用することができ、唯一の絶対要件は項目A)及びE)である。とは言え、上記のその他のステップ及び改変を使用することで速度及び管理の顕著な改良が達成され、最終飲料の熟成促進及び管理に関して利益の最大化を実現する上では、可能な限り多くの方法でこれらを可能な限り多く含めることが好ましいであろう。その最も簡単な形態では、プロセスは図1に示されるものになるであろう。
【0035】
図1及び2は、最初のアルコール飲料を含む一次保持容器10、一次保持容器10から飲料を引き出し、サイズが低減された木材及び/または植物バイオマス16の固定層を含む層質量塊格納エリア14へと導管20を通過させて加圧下で飲料を送り込むポンプ12、ならびに選択されるプロセスニーズに応じて、一次保持容器(図2に示されるもの)または二次保持容器18(図1に示されるもの)に集められる得られる飲料を例示する。いずれかのヘッドスペースが系に必要なわけでもなく、プロセスが厳密に大気圧下で行われなくてはならないわけでもない。系は、閉鎖または密封されたものであり得、空気がパージされてもされなくてもよく、望まれる場合は、大気圧を超える圧力の下で進行し得る。パージされる空気はいずれも、別の気体製品で置き換えることができ、その理由には、限定されないが、酸化促進、追加の風味の対策、触媒または他の化学反応速度増進剤の添加、不活性ガスブランケットなどが含まれる。密封/開放系、空気のパージ、気体の置き換え、プロセス圧力、及び同様のものに関するこうした変動要因は、すべての後述の系の説明にも適用される。飲料体積に対して十分に大きく、十分にサイズが低減されている層質量塊は、増進の実施の有無にかかわらず、溶媒和し、層からの抽出を十分なものにして、酸化法及び非酸化法を介する追加の後続の熟成のための基礎となり得ることから、飲料の再循環を行う必要はない。一例を挙げるとすれば、ポンプで送液される飲料を収集し、化学的な熟成ステップにおいて酸化化学反応及び非酸化化学反応を生じさせるまたは支援する処理に供すことが挙げられ、そのような反応は、望まれる場合は、追加のエネルギー投入法の使用によってさらに支援され得る。こうした追加のエネルギー投入法には、熱、超音波撹拌/キャビテーション、機械的キャビテーション、可視光及びより短い波長に重点を置いた部分的または全体的な電磁スペクトルへの曝露などが含まれるが、これらがすべてを包括するわけではない。そのような抽出後手順は、すべての後述のプロセス系の説明に適用され得る。
【0036】
より小さな層質量塊が使用され、得られる飲料が、1回目のパス後の層質量塊からの抽出が未だ不十分なものである場合、再循環系を使用することができ、必要に応じて、または層質量塊が消耗して役割を果たさなくなるまで、何度でも飲料が再循環される(図2)。
【0037】
ここまで上述した通り、飲料は一次保持容器10から引き出され、加圧下で、固定層質量塊16を含む層質量塊格納エリア14を通され、その後に再循環に向けて一次保持容器10に戻される。この系バージョンの利点は、より小さな層質量塊を使用できる能力、及び層質量塊に含まれる化合物をはるかに高度に系が使い切る能力である。このことによって、木材/バイオマスに含まれる極めて重要な風味化合物及び化合物の効率が最大化され、残りの非抽出物は、生産者によってそこに積極的に残されるものから主になる。この方法は、こうした植物バイオマスが有する利用可能なものの利用をはるかに向上させること
が可能であり、伝統的な樽熟成と比較して必要な植物バイオマスの量を大幅に低減する。典型的なアメリカンホワイトオーク樽熟成製品の場合、「木材効率」の向上が5~30倍の範囲内となり、このことは、同じ体積の熟成最終飲料を得るために使用する木材の質量を1/5~1/30にできることを意味する。このバイオマス低減は、材料質量を大幅に節約し、さらには、限られた天然資源を強力に保全することから環境に優しいものでもある。
【0038】
この再循環系バージョンは、上に概要を示したB)~D)及びF)~M)に与えられる機構及び概念の適用によってプロセスをさらに促進し得る。可能な限り多くのこうした選択肢を可能な限り多くの方法及び組み合わせで使用することによって熟成及び成熟プロセスの促進における顕著な向上が達成され得る。第1のバージョンは、図3に示される。
【0039】
上記のA)~D)に従うことで、固定層質量塊はサイズが低減されており、その結果、その最大の名目粒子寸法は約10mmであり、最大の名目最大厚さは5mmを超えない。これらよりも寸法を小さくすることで、湿潤、溶媒和、及び抽出の速度がさらに増加する。より大きな層質量塊粒子を使用してもよいが、これらよりも寸法が大きくなると、湿潤、溶媒和、及び抽出の速度が減少して、プロセスが遅くなる傾向がある。この層質量塊は、未利用表面を飲料流に曝露及び再曝露するために撹拌(示される振動性逆ピッチオーガー)に供すことができ、超音波エネルギーで超音波処理してバイオマス構造の破壊を支援し、抽出を加速及び向上させることもできる。
【0040】
図3に示されるように、飲料は、ポンプ12を介して一次保持容器10から引き出され、加圧下で層質量塊閉じ込めエリア14へと送り込まれ、閉じ込めエリアから流れ出るまで層質量塊16を通され、一次保持容器10に戻される。分離して行われるが、同時の熟成操作を実施するために、(図7に示されるように)望まれる場合は複数の追加の保持容器26が使用され得る。その後、飲料は、好ましくは、一次保持容器10に戻されて、再びポンプ12によって取り込まれ、サイクルが繰り返される。
【0041】
ステップE)~G)によれば、層質量塊格納エリア14は、好ましくは、流れに対して垂直な軸にわたって均一な飲料流を促進するように設計され、この理由は、この構成にすると層質量塊16がより均一に曝露され、全処理時間が短くなることに加えて、層質量塊自体の利用が向上することにある。このプロセスは、分配マニホールド、導入点38の複数化、異なる断面での導入点38の複数化などの方法を含む。
【0042】
処理されている飲料の単位体積当たりで、流速が速いほど溶媒和、抽出、及び拡散の速度が速くなり、熟成プロセスが大幅に促進されることから、飲料の流速は、好ましくは、可能な限り、合理的かつ実用的になるように速められる。目標流速は、好ましくは、系飲料体積の1×~10×/分の範囲内であり、すなわち、総系体積が1リットルであった場合は、1~10リットル/分の流速が好ましい目標である。望まれる場合は流速を遅くすることも速くすることもできることを理解されたい。流速を遅くすると抽出時間が長くなる傾向がある一方で、流速を速くすると抽出時間が短くなる。生産者の最終製品目標に応じて、流速を遅くすることを選択して処理時間を長くしてもよく、例として、これによって、プロセスの抽出部分よりも時間がかかり得る追加の熟成手法及び手順の選択肢が生産者に認められ得る。流速を遅くすることを選択する別の選択理由は、層質量塊からの背圧の発生を限定することであり得る。いずれの場合にしても、流速を遅くすることを選択できる。流速を速くすると抽出プロセスは加速することになるが、他の熟成反応の適切な完了が妨げられ得る。これは許容可能であり得、この理由は、適切な完了の段階に飲料があり得るためであるか、またはそうでない場合でも、生産者は、酸化及び他の化学反応と典型的には関係する追加の熟成ステップを用いて飲料を後処理することを選べるためである。また、流速を速めると、層質量塊が流れに抗うに伴って系の圧力がはるかに速く高まる
ことから、そのような圧力発生に由来する任意の発熱またはその他の様式で望ましくない効果に加えて、ポンプ送液能力も考慮される。
【0043】
ステップH)、I)、及びJ)は、レイアウト例として図4で見ることができるが、配置及び方法論において、示されるものに限定されるわけではない。
【0044】
飲料は、生産者に好都合な任意の様式で加熱することができ、簡単な例として、ホットプレート/バーナー構成28を介して加熱されている一次保持容器が示される。飲料を加熱することで、層質量塊からの抽出のプロセス及び飲料を通じての抽出物の拡散が大幅に促進され、後続の化学反応の速度が上昇する。プロセスは、事実上任意の温度で機能するが、好ましい範囲は、環境の温度を超える温度のものである。温度が上昇すると、溶媒和及び抽出ならびに後続の化学反応の速度が速くなり、温度に対する上限は、プロセス設定または処理されている飲料に応じて自然に決まる。例えば、大気圧下では、エタノールまたは他のアルコールの沸騰温度によって上限が設定され得る。この限界は、加圧し、それによって沸騰温度を上昇させることが可能な系プロセスをつくることによって対処され得る。または、処理されている親飲料は、所与の温度で分解するある特定の必要既存化合物を有し得ることから、その点未満のあるレベルにプロセス温度が制限される。大気圧下かつ大気への開放状態での合理的な通常の慣行では、可能な限り高いが、エタノール及び他の貴重な成分の沸点には満たない温度が望ましいであろう。実用面では、このプロセスは、149F~173Fの範囲内で非常に有効となっている。これ未満の温度も使用できるが、熟成プロセスが生じる時間が長くなる一方で、そうして抽出される化合物の総量が限られる可能性もあり得る。
【0045】
任意の存在ヘッドスペースに加えて、酸素/気体供給口30からのプロセスへの酵素の導入は、それが望まれる場合、酸化反応を支援し得る。このステップは、さまざまな方法及びさまざまな位置で実施され得る。例としては、限定されないが、大気ガス、純粋な酸素、酸素/他の気体の組み合わせが挙げられ、これらは、プロセス中の任意の点またはプロセス中の複数の点において導入点38を用いて導入される。例えば、層質量塊格納エリアの後のみに位置する気体注入ポート、またはその位置のものに加えて、一次(または二次など)容器中に位置する気体分散用構成物が存在し得る。生産者は、酸化生成物の管理の必要に応じて酸素導入の量、速度、及びタイミングを管理できる。この構成は、望まれる場合は、先行酸化反応とは別の酸化及び他の後続の反応を限定することができ、逆に、生産者は、酸素添加の速度、濃度、及び全体時間を増やすことによって化学反応プロセスを延長することもできる。
【0046】
超音波チャンバー24由来の超音波エネルギーは、混合、均一化、分散、ならびに全化学反応の種類及び速度をさらに支援し得る。こうした種類のプロセスについて、種類、周波数、振幅、入力エネルギー、及び位置に関して処理者がとり得る選択肢及び案は数多く存在する。典型的には、周波数の範囲は、数ワット~数千ワットのエネルギー散逸で20kHz~1MHzであるが、これらがすべてを含むわけではなく、他の規格及び周波数も選択され得る。酸素の導入のためのさまざまな導入点38と同様に、超音波励起の適用に1つ以上の位置を選択することができ、各位置は、その点での装置構成/形状及び所期の超音波エネルギー適用理由に応じて異なる周波数、振幅、及びエネルギー投入量を有し得る。この理由のためだけに追加の超音波チャンバー24を系に設計導入することができ、一次保持容器、二次保持容器などにおいて超音波を使用することができ、それぞれが、同じまたは異なる適用超音波設計基準を有する。
【0047】
図5は、上記の項目K)、L)、及びM)を統合することによる系への追加を示す。
【0048】
対策は、好ましくは、導入点38を通過させての他の気体/蒸気、液体、及び固体を導
入するためになされる。そのような導入には考えられる理由が多く存在し、こうした理由には、限定されないが、風味付け、酸化の付与、酸化の抑制、化学反応触媒作用及び/または増進、色付け、脱色、混合などが含まれる。例えば、プロセスの開始時点では窒素ブランケットパージがなされ、その後に、ある点で酸素が添加されることが望ましくあり得、そのようなステップに向けて対策がなされ得る。別の実施形態では、プロセスのある点では液体酸化剤が好ましくあり得、導入され得る。プロセスの他の実施形態は、望ましいものに至らなかった先行製品製造分を混ぜ込むこと、または2つの風味を一緒にするために全く異なる飲料製品を混ぜ込むことを含み得る。さらに、いくつかの実施形態は、溶媒和または摩耗などが生じるようにフローストリーム中に固体を導入することを含み得、この理由としては、色付けの理由、化学反応速度の増進、または風味付けの理由が挙げられるが、これらは少数例にすぎない。
【0049】
固体をフローストリームに導入する能力は、望ましくない化合物を除去するための活性炭、木炭、または他のモレキュラーシーブもしくは反応物などの物質を添加する能力も含む。望ましくない化合物を飲料から除去、隔離、またはその他の様式で中和するものはいずれも、作用機構にかかわらず使用され得る。そのような処理エリアへの投入及びそのタイミングは生産者の裁量によるものである。
【0050】
プロセス系は、好ましくは、連続的に行われるものか、または閉鎖捕捉容器を介して他の時点で行われるものかを問わず、いずれの現存蒸気または漏出蒸気も捕捉して、親飲料への再導入のためにそれらを凝縮させる能力を含む。プロセスにおいていずれかの点でプロセスへの気体/液体/固体の添加が行われる場合、いずれの物質導入も系体積を置き換える傾向があり、系の排気が必要になり得ることから、漏出蒸気を捕捉するためのこの機構は、より一層重要になる。連続的な気体注入は排気手順を必要とし得、任意の気体または蒸気の排出は、それに水蒸気、アルコールなどを伴い、こうした蒸気は、好ましくは、凝縮され、生産者の裁量でプロセスまたは最終飲料に再導入して戻される。
【0051】
プロセス:管理
ステップA)~M)は、改良1)及び2)の基本領域を参照して記載及び議論されているが、それらは、本質的には、飲料熟成プロセスに対する生産者管理の向上を付与及び維持ための努力全体に寄与し、その一部となるものでもある。一方で、プロセス系は、既に説明したそうした管理領域を優に超えて拡張される、最終飲料風味プロファイルに対する顕著かつ異例のレベルの管理を与えることも可能なものである。こうした風味プロファイル管理方法は、上記の3)に記載の改良領域に準じて与えられる。
【0052】
樽チャーリングプロセスの効果及びトーストのスペクトルの創出、そしてそれ故に飲料への溶媒和及び抽出及び拡散に利用可能な化合物が異なり、そのレベルも異なることに関する背景議論において、樽チャーリングプロセスによってそのスペクトルが急冷及び環境温度への復帰の時点で効率的に「凍結」されることについても記載した。記載のように、こうした伝統的なプロセスは、その木材及びチャーレベルについて利用可能及び可能な風味プロファイルを効率的に限定すると共に、生産者が最終飲料風味プロファイルに対して有し得る管理の程度に明確な制約を課す。
【0053】
本明細書に記載の新規の熟成プロセスの使用によって、そうした生産者制約は大幅に低減され、新規の程度の管理が導入される。
【0054】
図3を再度参照すると、層質量塊格納エリアは、サイズが低減された木材またはバイオマス製品を含むように記載されており、複数の製品を含むように拡張されてはいないが、複数のバイオマス製品も使用され得る。
【0055】
チャーリング及び急冷された木材基材の昇温プロファイルのチャーレベル及び木材トースティング効果を再度参照すると、トーストのスペクトルをいくつかの範囲へと分けることができる。簡潔には、チャーリングプロセスの間のおよその温度曝露に従ってこうした範囲を定義することができる:低(200~280F)、低~中(280~340F)、中(340~420F)、中~高(420~500F)、及び高(500F+)。こうした範囲はそれぞれ、その他と比較して風味の発生に好ましいある特定の化合物を多く優勢に有する。これはよく知られた機構であり、各温度範囲には、よく知られた特徴的な化合物及び風味が伴い、一般に、上記の漸増温度スケールと関連してラクトン→バニリン→、オイゲノール→グアヤコール→フルフラールと進む。フェノールは別の非常に重要な化合物群であり、これもまた存在しており、特により高い温度範囲に存在する。
【0056】
このスペクトルは、チャーリングプロセスによって固定及び管理されるものである一方で、樽を構成する元の木材製品(トースティングされていない木材)を利用し、管理された非破壊様式でそれをある特定の温度に加熱した後、温度依存的化学反応及び他の変化が生じるように、木材の等温化に十分な長さとなるある特定の時間、それをその温度で保持することが有利であり得る。異なるレベルの温度曝露を別々のロットの木材製品に対して実施し、それによって、所定の時間特定の温度にそれぞれが加熱及び保持された利用可能な木材トーストのスペクトルまたはパレットを創出することができる。各トースト温度は、それ独自の化合物及び風味特徴を有することになる。その後、こうしたトーストは、サイズが低減され(それがトースティング前に行われていない場合)、飲料製品の風味プロファイリングに利用可能にされ得る。このステップは、チャーリングされた木製樽の凍結されたトーストスペクトルから生産者を開放し、生産者が望むトースト風味を生産者が選択することを可能にするだけでなく、伝統的な樽熟成を介しては利用不可能な風味プロファイルを創出するために、生産者が望む比率がどのようなものであれ、それらを混合し、調和させることも可能にする。例として、トースティングされていない木材及び軽くトースティングされた木材は、樽中の飲料から最も離れているものであり、その特定の化合物の溶媒和及び抽出をさらに限定する最も引き締まった木目構造を与えるものでもあることから、生産者は、新規の風味プロファイルを創出するには、その他のものに対するそのサイズ低減層質量塊の比率を上げることができる。代替的には、生産者は、単に、通常なら存在することになる他のトーストを排除することでもまた、伝統的なチャーリングされた木製樽では利用不可能な新規の風味プロファイルを得ることができる。おそらく、生産者は、樽熟成を介して利用可能であったものよりもスモーキーな風味プロファイルを望むであろう。その場合は、生産者は、選択するその他のトーストに対する、よりチャーリングされたトーストの比率を上げることができる。上記の例は、無数にある利用可能な可能性のうちの少数にすぎない。
【0057】
ただ1つの単一のサイズ低減トーストではなく、サイズ低減トースト(生産者によって選択される)のすべて及びそれらのそれぞれの比率(生産者によって選択される)を、すべて層質量塊格納エリアに含めることができる。この構成では、伝統的な樽熟成と比較して、最終飲料風味プロファイルに対して、これまでは利用不可能であったレベルで生産者が管理を行うことが可能になる。
【0058】
粒度を大きくした場合と比較して、粒度を小さくするとその湿潤、溶媒和、及び抽出が加速することから、粒度を大きくまたは小さくすることを選択及び使用することによってさらなるレベルの管理が与えられ得る。この粒度選択は、所与のトーストの抽出速度ならびにそのトーストの抽出物に依存し得る後続の酸化反応及び非酸化反応を加速または遅延させるための方法として使用できるものである。
【0059】
この概念をさらに拡張し、生産者の管理を向上させ、系の能力を拡張するためには、図6を参照されたい。
【0060】
図3、4、及び5に示される単一の層質量塊格納エリアの代わりに、流量分配マニホールド構成を使用することで、複数の層質量塊格納エリアに飲料流が同時に供給される。各格納エリアは、特定の木材トーストのうちの1つ以上を異なる比率で有し得る。この構成では、特に各格納エリアへの流れが管理及び監視される場合に、最終風味プロファイルに対する管理をさらに向上させることが可能になる。例として、これまでに述べたトースト温度スキームに従うことで、生産者は、5つの層質量塊格納エリア14を提供することができ、それぞれに対して、生産者によって決定される低温から高温までのトーストのそれぞれの異なる質量塊が充填され、それぞれを通過する全飲料流が確立される。このプロセスでは、伝統的な樽熟成と比較して、木材トースト質量比の変更によって生産者が前例のない管理を行って最終風味プロファイルを事前選択及び管理することが可能になる。代替的には、上記のものの変形形態として、すべての層質量塊格納エリア14に対して異なる木材トーストの同じ質量塊16を充填し、個々に制御バルブ調節及び流速監視を行うことで、各格納エリアの飲料通過流速を全速または制限速とするかを生産者が決定及び管理することが可能になる。また、この手順では、抽出物、抽出速度、及び量の比率、ひいては任意の後続の反応が変更され、これらの要因はすべて、生産者の管理下に置かれる。
【0061】
そうした要因は、その必要性に応じて生産者によって選択され得ることから、これらの層質量塊格納エリアの数及びサイズに厳密な上限は存在しない。
【0062】
逆に、例えば、生産者は、多様な飲料製品に対応するために多くの層質量塊格納エリアを有してよく、単に、必要な飲料製品風味プロファイルに応じて制御バルブ36を介してこうしたエリアのいずれかへの飲料流を自在に停止すればよい。
【0063】
伝統的な樽熟成法ではあまり利用されない様式で生産者が風味プロファイルを変更し得る別の方法は、層質量塊格納エリアにおいて代替の木材を使用することによるものであり、こうした代替の木材もまた、異なるトーストレベルまたはチャーリングレベルを有することから、新規の風味プロファイルが創出され得る。こうした代替の木材及び/またはトーストもまた、サイズを低減することで、その抽出速度が増進し得る。伝統的なアメリカンホワイトオークまたはフレンチオークには存在しない他の化合物を抽出することもでき、こうした化合物を酸化またはその他の様式で反応させることで、異なる最終化合物、ひいては異なる風味及び香りを生成させることができる。他の木材製品には、サイズが低減されている使用済の木製樽、ワインまたはブランデーまたはラムなどを以前に含んでいたものなどの物品が含まれ、こうしたものは、特有の風味を与え、さらには、廃棄される可能性のある物品を完全に再利用する点で環境に優しいものであり得る。
【0064】
こうした複数の層質量塊格納エリア14は、トースティングされた木材製品を必ずしも厳密に含む必要はなく、この特徴は、最終風味プロファイルに対する管理を与える別の方法であり得る。こうした複数の層質量塊格納エリア14は、他の風味付け要素を含めるためにも使用することができ、他の風味付け要素は、例えば、限定されないが、ピート(薫製処理ありまたは薫製処理なしのもの)、コーヒー豆、バニラ豆、シナモンスティック、ローストピーナッツ、クローブ、フルーツ、ジュニパーベリー、ココアなどである。生産者が使用したい任意の固体を代替の風味または化合物の付加に使用することができ、その質量及び飲料流速が、所望のレベルの付加がもたらされるように管理される。代替の木材と同様に、抽出物は、後続の化学反応を受けて追加の新規の風味または香りを与えている化合物を含み得る。
【0065】
上述の通り、こうした複数の層質量塊格納エリアのうちの1つ以上は、活性炭または木炭または他のモレキュラーシーブまたは中和剤を介して望ましくない風味または香り化合物を除去するために使用され得るが、こうした例は、すべてを包括するものではない。こ
うした層質量塊格納エリア14のうちの1つ以上の質量塊16、及び飲料流速は、生産者によって規定及び管理されて、その有益な効果が最大化され得る。
【0066】
こうした複数の層質量塊格納エリア14のうちの1つ以上を使用することで、既に使用済のサイズ低減木材及び他のバイオマスから化合物を最後の最後まで抽出しきることができる。このステップでは、特に伝統的な樽熟成法と比較して、こうしたバイオマスをはるかに完全に利用することが可能である。先行生産分において使用されていた木材またはバイオマス材料16をすべて収集し、もはや経済的に抽出するものがなくなるまで系を介して再処理することができ、このことによって、このプロセスが、包括的な経済的利益を備えた環境的に魅力ある選択肢となっている。
【0067】
こうした複数の層質量塊格納エリアのうちの1つ以上に対して、他の飲料、アルコール、またはその他のものを処理するために既に使用されていた既に使用済の木材及びバイオマス製品を充填することもできる。このステップでは、追加の微妙な風味及び香りがもたらされることで、処理されている一次飲料が拡張される。
【0068】
オンライン粒子ろ過のために複数の層質量塊格納エリア14のうちの1つ以上を使用することで、付随粒子物質を絶えずろ過によって除去することができ、その結果、プロセス後のろ過操作が時間的にも物的にも低減されるか、または完全になくなる。
【0069】
次に、こうした利用済の木材及び他のバイオマス製品は、例えば蒸気凝縮器32を使用して、エタノール回収プロセスに供すことができ、回収した物質は、このプロセスを使用している現在進行中の飲料生産分への液体注入または気体注入を含めて、再使用される。その後、残りの利用済の脱気固体は、揮発性物質は残っていないであろうから、そのリサイクルに用いる選択肢が潜在的に増え得る。
【0070】
ステップA)~G)に記載の概念のより完全な拡張となる上記の複数の層質量塊格納系を残りのステップH)~M)と統合すると、図7に示されるプロセス系能力が得られる。そのような系は要件でもなければ、行えるすべてを包括するものでもなく、より発展した系能力の一例を示すものである。この提案図では、記載の要素の多くが使用されており、いくつかは複数の位置で使用されていることで、可能な限り多くの方法で飲料の熟成全体が増進されるようになる。明確化するために記載すると、可能になり得るすべての管理機構(バルブ調節、流量センサー、排水及び採水バルブ、ポンプ、圧力センサー、化学的/分光学的センサーまたは他のセンサー、カップリングなど)が示されているわけではなく、さまざまなコンポーネントについて示されている位置は、生産者によって自在に変更され得る。
【0071】
一次保持容器10から始まって、飲料に熱が加えられる。その後、加熱された飲料はポンプ12へと引き出された後、ポンプ12は加圧下で導管20を通過させて飲料を流量分配マニホールドに送り出し、流量分配マニホールドは複数の層質量塊格納エリア14へと飲料を供給する。マニホールドに到達する前に、例えば、1つ以上の振動子24の形態での超音波エネルギーに飲料を曝露することができ、波長及びエネルギーは均一化/乳化を促進するように選択されるか、または波長及び/もしくはエネルギーは化学反応を促進するように選択される。流速計34に加えて、流量制御バルブ36及び圧力リードアウトが示されている。
【0072】
次に、飲料は流量分配マニホールドに到達し、流量分配マニホールドによって、流れに開放されている層質量塊格納エリア14へと流れが進む。各層質量塊格納エリア14は、それ自体の流量制御バルブ36、圧力センサー、及び流速リードアウトを有するものとして示されている。層質量塊格納エリア14に入る前に、気体または液体をフローストリー
ムに導入して飲料に含ませることができ、飲料は、望まれる場合は超音波処理にも供され得る。図面は、並行流マニホールド構成を示すが、これは、所望の任意の流れの組み合わせで構成することができる:並行-並行、並行-直列、直列-並行、直列-直列。層質量塊格納エリア14と並行に存在する追加の層質量塊格納エリアへの代替の流路を設けることで、例えば、バイパスバルブを介してその回路の流路へと組み込むことによって未利用の新たな層質量塊16を用いて所与の層質量塊の予測される消耗の一助とすることができる。別の例は、粒子フィルターの充填であり、この場合、一杯になったフィルターをバイパスし、新たな並行配置のフィルター格納エリアが現在進行中のプロセスへと組み込まれるようにバルブが切り替えられる。
【0073】
その後、飲料は1つ以上の層質量塊格納エリア14に流れ込み、各格納エリア14は、選択される質量塊がどのようなものであれ、任意の所望の固体物品を含み得る。考えられる例は、1つ以上の格納エリア14が単一もしくは混合のトースト比率及び木材種類でサイズ低減木材トースト(複数可)を含むもの、または前述のような他の植物バイオマス物品(ピートなど)もしくは別の風味付け物品(例えば、バニラ豆など)を含むもの、または望ましくない風味もしくは香りの除去のための化合物ろ過用質量塊(活性炭など)を含むもの、または望ましくない粒子をろ過して除去するための物理的なろ過用媒体を含むものであろう。生産者が適すると見なすやり方で、ありとあらゆる組み合わせが用いられ得る。層質量塊格納エリア14のうちの1つ以上は、撹拌もしくは超音波処理に供されるか、または望まれる場合は、こうした理由及び他の理由で代わりとなる完全に異なる容器であり得る。
【0074】
飲料が層質量塊格納エリア14を出た後は、気体または液体が導入され得、得られる混合物は別の超音波処理エリアに曝露される。典型的なバルブ調節及び圧力/流速リードアウト構成が示される。別のバージョンは、超音波処理エリアの後に気体及び/または液体がフローストリームに導入され、その後に超音波処理が再び行われるか、または行われ得ない場合であり得る。他の層質量塊格納エリアを出るすべての他のフローストリームが再度一緒になる前に、必要に応じて、連続的な化学的/分光学的監視デバイス40を使用することで、所望の特徴及び影響のある変化について、各層質量塊格納エリアを出るフローストリームを生産者が連続的に分析することが支援され得る。このセンサーはプロセス系中の任意の場所に配置できることが企図され、この構成は、そのような使用のより具体的な例となる。
【0075】
フローストリームが1つに再統合された後、再統合フローストリーム全体に対して、上記の操作のうちのいずれかまたはすべてが実施され得る:例としては、気体または液体導入、超音波エネルギー曝露、化学分析が挙げられる。
【0076】
その後、再統合されたフローストリームは、望まれる場合、さらなる操作のための二次保持容器18へと向かう。望まれる場合、追加の保持容器26を直列または並列で加えることができ、図面は、直列構成を示す。こうした他の保持容器26を、継続される熟成及び処理操作(気体または液体導入、超音波エネルギー曝露、電磁スペクトルの照射(これらに限定されない)など)のためのエリアとして使用することができる。各容器は、気体排気及び蒸気凝縮/回収能力と共に示されるが、こうした特徴を含めることは、純粋に生産者の裁量によるものである。
【0077】
各容器送り出し先は、監視目的で望まれる場合に挿入される化学的/分光学的監視デバイス40も含み得る。
【0078】
こうした直列または並列の代替容器26から送り出された後、フローストリームは、一次保持容器への系回収の前に、気体または液体導入、超音波エネルギー曝露、及び連続的
化学分析に再び供され得る。一次保持容器10自体もまた、サイクルが再び開始される前に、気体または液体導入、超音波エネルギー曝露、及び電磁エネルギー照射のための能力を有し得る。
【0079】
追加のポンプ送液能力及び管理を導入する必要があろうことを踏まえて、任意の時点でプロセスを大気圧へと減圧することができる。
【0080】
示されてはいないが、さまざまな他のプロセスループを付加することが1つのプロセス選択肢であることが理解されよう。一例は、任意の保持容器から飲料を引き出し、望まれる場合は任意の組み合わせで上記のステップのいずれかまたはすべてを含む別のプロセスループを通じてポンプで送液することで、管理及び系の能力がさらに向上する場合である。
【0081】
系は、非バッチ式(すなわち、連続式)操作用に設計することができ、それによって、個々または全体の抽出物及び化学反応産物のレベルが監視され、適切なレベルに達した時点で完了製品の連続ストリームが流路変更される。その後、新たな未熟性飲料を連続ベースで系に導入することができ、現在使用されているものに抽出物の枯渇が生じると同時に系及び個々の二次層質量塊格納エリアが使用されるようになり、この枯渇再生サイクルが連続的に実施される。
【0082】
使用される装置/プロセスパラメーター
このプロセスの複数のラボバージョン及び小スケールバージョンを構築し、試験、モデリング、及び検証の目的で使用し、ここまでに記載した原理に基づいた。実施した試験に応じて、さまざまな時点で異なる物理構成を使用した。さまざまな時点で使用した主なコンポーネントには、下記のものが含まれる:
保持容器:500ml、600ml、750ml、1ガロン、2ガロン、5ガロン、55ガロン体積
ポンプ:Pentair Shur-Flo #8005-233-236、Pedrollo PVm 55、Tellarini ALM20、Pedrollo AL-RED135m
熱源:Dido 1500W シングルバーナーホットプレート、105,000BTUプロパンバーナー
熱交換器:3”×8”×12 ブレージングプレート式、5”×12”×10 ブレージングプレート式
層質量塊格納体積:3.14in、4.91in、7.07in、12.56in、590in
層質量塊固定化:1メッシュ、20メッシュ、60メッシュスクリーン
信号発生器:Tenma#72-5015
増幅器:Crown DC300A,Techron 7560 改良型MRF101AN LF/MF 100W 0.136MHz~10.15MHz増幅器
超音波振動子:28kHz/100W、40kHz/60W Beijing Ultrasonic 200kHz/30W
ほとんどの場合、プロセス条件は、典型的には、下記によって定めた:
-環境温度~170Fの飲料温度
-バッチ回転が最小で1×/分、通常は5×以上/分となる飲料流速
-層質量塊1g/飲料120ml超
-最長軸で1.3mm~10mmの層名目粒度
実施した任意選択の手順は下記のものを含む:
-層質量塊格納エリア、機械的振動による撹拌、3Hz~30Hz、最大で40,000mm/sのRMS加速度
-層質量塊格納エリア、パッキン押え逆ピッチ層オーガーによる機械的撹拌、1~30RPM
-層質量塊格納エリア、28kHz~100Wまたは40kHz~60Wによる層質量塊の超音波処理
-1L/分/飲料2Lでの酸化反応利用能のための大気酸素の供給
・層質量塊後の注入
・一次保持容器中への気体分散
・酸素パージ及び不活性ガスブランケット付与には、約0.3L/分で一次保持容器に100%アルゴンの形態で不活性な気体を導入
-飲料超音波曝露、現在進行中の飲料体積約1リットルを含む一次保持容器、28kHz及び/または40kHz、200W~400W 0.2MHz~120W
-冷却凝縮チャンバー及びプロセスへの液体の戻しによる蒸気の分離回収または連続回収
【0083】
プロセスは、好ましくは、Hanna Model HI759比色計を使用して飲料の光透過率の変化について定期的に点検され、こうした結果を使用して、熟成プロセス完了のレベルが測られる。
【0084】
プロセス完了時間は、存在する変動要因に応じて5分~24時間の範囲であった。平均処理時間は、1~2時間であると考えられた。抽出プロセスは、一般に、6時間以内に完了したことから、最大で24時間までの処理時間の延長は、任意選択で、所望の二次反応の産物に対するレベルに依存するものであった。層質量塊の量を減らして使用すると、層質量塊の消耗時間及び得られる抽出物の総量が減った。
【0085】
本発明は、そのある特定の好ましいバージョンと関連付けてかなり詳細に説明されているが、他のバージョンも可能である。それ故に、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲を、本明細書に含まれる好ましいバージョンの説明に限定すべきでなはない。本明細書に開示される特徴はすべて、別段の明確な記載がない限り、同じ、均等、または同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えることができる。したがって、別段の明確な記載がない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の均等または同様の特徴の一例にすぎない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール溶液を熟成させるプロセスであって、
1体積%~95体積%アルコールの範囲のエタノール溶液を供給するステップと、
バイオマスを供給するステップと、
約200F以上の範囲内で前記バイオマスを加熱するステップと、
前記加熱するステップの後の前記バイオマスを、1メッシュスクリーンを通過する粒子サイズに低減するステップと、
少なくとも一度は、前記低減されたバイオマス粒子を含む層質量塊格納エリアを通過させて前記エタノール溶液を流すステップと、
前記バイオマス粒子から前記エタノール溶液を分離するステップと、
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
10時間未満の時間の間、連続流において前記層質量塊格納エリア中の前記バイオマス粒子を通過させて前記エタノール溶液を流すステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記層質量塊格納エリアを通過させて前記エタノール溶液を流す前記ステップが、超音波振動を使用して前記バイオマスの層を撹拌するステップをさらに含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記エタノール溶液を超音波エネルギーに曝露するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
少なくとも1つの気体を前記連続流に注入するステップをさらに含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記エタノール溶液を加熱するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記バイオマス粒子をチャーリングするステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
複数の層質量塊格納エリアを供給し、その結果、前記エタノール溶液の流れが、前記複数の層質量塊格納エリアのうちの1つ以上を通過するようにするステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記複数の層質量塊格納エリアのうちの少なくとも1つが、非バイオマス液体または非バイオマス固体を含み、バイオマスを含まない、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記非バイオマス液体または前記非バイオマス固体が、石灰石、ドロマイト、カルシウム含有鉱物、酸、硫酸、塩酸、硝酸、及びカルボン酸からなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記複数の層質量塊格納エリアのうちの少なくとも2つが、異なる種類のバイオマス粒子を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項12】
前記複数の層質量塊格納エリアが、並行に構成されている、請求項8に記載のプロセス。
【請求項13】
前記層質量塊格納エリアのうちの少なくとも1つが、モレキュラーシーブを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項14】
前記層質量塊格納エリアのうちの少なくとも1つが、粒子フィルターを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項15】
前記バイオマス材料が、木材を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記バイオマス粒子の少なくとも一部に対して少なくとも1つの処理を実施するステップをさらに含み、前記処理が、熱処理、熱分解処理、及び燃焼処理からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【国際調査報告】