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特表2025-503648β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患の処置のための化合物及びその使用
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  • 特表-β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患の処置のための化合物及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患の処置のための化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 303/48 20060101AFI20250128BHJP
   A61K 31/336 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07D303/48 CSP
A61K31/336
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P25/28
A61P17/02
A61P21/00
A61P3/00
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541224
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-30
(86)【国際出願番号】 IB2022062740
(87)【国際公開番号】W WO2023135480
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】22151412.8
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】524258509
【氏名又は名称】ドルファン エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ロシャ ヴィルジニー
(72)【発明者】
【氏名】マルティ ロジェ
(72)【発明者】
【氏名】デスクロー メラニー
(72)【発明者】
【氏名】デモッツ ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ムテル ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC202
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA02
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA16
4C086ZA94
4C086ZC20
4C086ZC21
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、治療、特にβ-ガラクトシダーゼの活性の低下に関連する疾患、例えば、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、アルツハイマー病及び外傷性脳損傷の処置に有効な新規カテプシンB阻害剤に関する。本発明の化合物は、a)患者への投与後、化合物が全身の血流に到達することを可能にする、良好な吸収、b)処置されるべき異なる組織/臓器への良好な分布、c)化合物の活性を維持し、有害な代謝産物を生成しないように化合物が体内で代謝される、適切な代謝、及び/又はd)化合物及びその代謝産物の適切な排泄といった有利な特性によって特徴付けられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I又は式IIの化合物であって、
【化1】
【化2】
式中、
が、3-メチルブチル、2-メトキシエチル、2-フルオロフェニルメチル、3-(ピペリジン-1-イル)プロピル及び2-(ピリジン-2-イル)エチルから選択され、
が、水素及びメチルから選択され、
が、2-メチルプロピル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選択され、
が、水素であり、
前記化合物が、Rが3-メチルブチルである場合、
i.Rは2-メチルプロピルではないか、又は
ii.Rは2-メチルプロピルであり、Rはメチルであることを特徴とし、
前記化合物が、Rが2,2,2-トリフルオロエチルである場合、Rは水素であることをさらに特徴とする、化合物。
【請求項2】
が、3-メチルブチル、3-(ピペリジン-1-イル)プロピル及び2-(ピリジン-2-イル)エチルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、3-(ピペリジン-1-イル)プロピル又は2-(ピリジン-2-イル)エチルであり、Rが、2-メチルプロピルであるか、又はRが、3-メチルブチルであり、Rが、2,2,2-トリフルオロエチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記式Iの化合物が、エチル(2S,3S)-3-(((S)-1-(イソペンチル(メチル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレート、エチル(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((2-(ピリジン-2-イル)エチル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレート、エチル(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレート、エチル(2S,3S)-3-(((S)-1-((2-2-メトキシエチル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレート、エチル(2S,3S)-3-(((S)-1-((2-フルオロベンジル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレート、エチル(2S,3S)-3-(((S)-4,4,4-トリフルオロ-1-(イソペンチルアミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレート及びエチル(2S,3S)-3-(((S)-4,4,4-トリフルオロ-1-((2-フルオロベンジル)アミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレートからなる群から選択され、好ましくは、エチル(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((2-(ピリジン-2-イル)エチル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレート、エチル(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレート及びエチル(2S,3S)-3-(((S)-4,4,4-トリフルオロ-1-(イソペンチルアミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレートからなる群から選択されるか、
又は前記式IIの化合物が、(2S,3S)-3-(((S)-1-(イソペンチル(メチル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸、(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((2-(ピリジン-2-イル)エチル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸、(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸、(2S,3S)-3-(((S)-1-((2-2-メトキシエチル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸、(2S,3S)-3-(((S)-1-((2-フルオロベンジル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸、(2S,3S)-3-(((S)-4,4,4-トリフルオロ-1-(イソペンチルアミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸及び(2S,3S)-3-(((S)-4,4,4-トリフルオロ-1-((2-フルオロベンジル)アミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸からなる群から選択され、好ましくは、(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((2-(ピリジン-2-イル)エチル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸、(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸及び(2S,3S)-3-(((S)-4,4,4-トリフルオロ-1-(イソペンチルアミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物であって、治療における使用のための化合物。
【請求項6】
β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患を処置する方法における使用のための式I又は式IIの化合物であって、
【化3】
【化4】
式中、
が、3-メチルブチル、2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、2-フルオロフェニルメチル、3-(ピペリジン-1-イル)プロピル及び2-(ピリジン-2-イル)エチルから選択され、
が、水素及びメチルから選択され、
が、2-メチルプロピル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選択され、
が、水素であり、
前記化合物が、Rが3-メチルブチルである場合、
i.Rは2-メチルプロピルではないか、又は
ii.Rは2-メチルプロピルであり、Rはメチルであることを特徴とし、
前記化合物が、Rが2,2,2-トリフルオロエチルである場合、Rは水素であることをさらに特徴とする、使用のための化合物。
【請求項7】
前記式I又は式IIの化合物が、請求項2~4のいずれか一項に定義されている通りであるか、又は前記式Iの化合物が、エチル(2S,3S)-3-(((S)-1-((3-3-メトキシプロピル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレートであり、前記式IIの化合物が、(2S,3S)-3-(((S)-1-((3-3-メトキシプロピル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸である、請求項6に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患が、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、アルツハイマー病及び外傷性脳損傷から選択される、請求項6又は7に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患が、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー及びゴーシェ病から選択される、請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記化合物が、カテプシンBの活性の阻害によって、β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患を処置する方法における使用のためである、請求項6~9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記化合物が式Iの化合物であり、前記化合物がそれを必要とする患者に経腸投与される、請求項5~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記化合物が式IIの化合物であり、前記化合物が、経腸投与ではない投与経路によって、それを必要とする患者に投与される、請求項5~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記式Iの化合物又は式IIの化合物が、それを必要とする患者に、β-ガラクトシダーゼの薬理学的シャペロン、グルコセレブロシダーゼの薬理学的シャペロン、カルシウムチャネル遮断薬、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの追加の化合物と組み合わせて、投与される、請求項5~12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの追加の化合物が、N-置換5-アミノ-1-ヒドロキシメチル-シクロペンタントリオール、N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミン(NOEV)、アンブロキソール、シス-(+)-[2-(2-ジメチルアミノエチル)-5-(4-メトキシフェニル)-3-オキソ-6-チア-2-アザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7,9,11-トリエン-4-イル]エタノエート(ジルチアゼム)、[(3S)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]N-[2-[2-(4-フルオロフェニル)-1,3-チアゾール-4-イル]プロパン-2-イル]カルバメート(ベングルスタット)、イミノ糖及びそれらの混合物からなる群から選択され、このようなイミノ糖が、好ましくは、N-ブチル-デオキシガラクトノジリマイシン(ミガーラスタット)、4-エピ-イソファゴミン、5a-C-ペンチル4-エピ-イソファゴミン、5a-C-メチル4-エピ-イソファゴミン、1,5-ジデオキシ-1,5-イミノ-(L)-リビトール(DIR)、5-C-アルキル-イミノ-L-リビトール、N-(ダンシルアミノ)ヘキシルアミノカルボニルペンチル-1,5-ジデオキシ-1,5-イミノ-D-ガラクチトール、5N,6S-(N’-ブチルイミノメチリデン)-6-チオ-1-デオキシガラクトノジリマイシン(6S-NBI-DGJ)、N-ノニル-デオキシガラクトノジリマイシン、N-ブチルデオキシノジリマイシン(ミグルスタット)、イソファゴミン(アフェゴスタット)、AZ-3102及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を生成するためのプロセスであって、
a)式IIの化合物
【化5】
を、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などの塩基で脱プロトン化するするステップと、
b)ステップa)で得られた脱プロトン化した化合物を、塩基性媒体中で1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロ-ホスフェート(HATU)と反応させるステップと、
c)ステップb)で得られた化合物を、塩基性媒体中でテトラメチル尿素(TMU)と反応させるステップと、
d)ステップc)で得られた化合物を、塩基性媒体中で式IIIのアミン
【化6】
と反応させて、例えば式IVのジペプチド
【化7】
を形成するステップと、
e)式IVのような化合物を、酸性媒体中でトリフルオロ酢酸と反応させることによって式IVの化合物からBoc基を除去して、式Vの化合物
【化8】
を得るステップと、
f)前記式Vの化合物を、DIPEAなどの塩基で脱プロトン化するステップと、
g)ステップf)で得られた脱プロトン化した化合物を、塩基性媒体中でHATUと反応させるステップと、
h)ステップg)で得られた化合物を、塩基性媒体中でTMUと反応させるステップと、
i)ステップh)で得られた化合物を、式VIの化合物
【化9】
と反応させて、例えば式Iの化合物を得るステップと、
j)任意選択で、前記式Iの化合物のエステル部分を加水分解して、例えば式IIの化合物を得るステップと
を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療、特にβ-ガラクトシダーゼの活性の低下に関連する疾患、例えば、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、アルツハイマー病及び外傷性脳損傷の処置に有効な新規カテプシンB阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトβ-ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.23、ラクターゼとも呼ばれる)は、グリコシドヒドロラーゼファミリーのメンバーとして分類されるリソソーム酵素であり、動物及び植物の両方にも、多くの微生物にも存在する。その機能は、加水分解によりラクトース、オリゴ糖、糖脂質及び糖タンパク質を含む様々な基質から、末端β-D-ガラクトース残基の加水分解を触媒することである。この酵素は、ラクトースをグルコース及びガラクトースに加水分解するその能力について特に知られている。
【0003】
β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患としては、GM1-ガングリオシドーシス及びムコ多糖症(MPS)IVB型(モルキオ症候群B型としても知られている)の2つのリソソーム蓄積症が挙げられ得る。より具体的には、β-galはスフィンゴ糖脂質のGM1-ガングリオシド及びムコ多糖体のケラタン硫酸を分解することが知られている。この酵素をコードする遺伝子上での病原性変異は以下を引き起こし得る。
(i)触媒部位の強い変形により、不活性酵素が生じる。
(ii)触媒部位又はその近傍内の構造のわずかな障害により、酵素活性の減少が生じる。
(iii)ポリペプチドの適切なフォールディングを妨げる構造変化により、酵素の早期分解が生じる。
【0004】
これらのいずれもが、細胞内の機能的β-galの量を低下させ、したがって生体内の基質の蓄積を引き起こす。GM1の貯蔵はGM1-ガングリオシドーシスを引き起こすが、ケラタン硫酸の蓄積はモルキオ症候群B型に関連する。
【0005】
GM1-ガングリオシドーシスの特定の場合、β-galの活性が低下したことにより、GM1の分解が阻害される。これにより、リソソーム内に基質の蓄積が生じ、その機能性の破壊を受ける。最も高い濃度のGM1はCNSに存在するため、GM1の過剰な蓄積が神経細胞の死滅を引き起こし、その結果、神経変性が進行する。GM1-ガングリオシドーシスが中枢神経系に及ぼす壊滅的な影響により、血液脳関門を通過することができる治療アプローチを見つけることが不可欠である。β-galはβ-ガラクトシル残基を加水分解するために使用されるので、その欠乏は、糖脂質GA1、糖タンパク質由来のオリゴ糖、及びグリコサミノグリカンのような他の基質の貯蔵を引き起こす。これらの基質が産生される臓器に応じて、β-gal欠損は、顔面形成異常、骨の発達障害(骨形成不全として知られている)、又は脾臓及び肝臓の両方の腫大(腹部腫脹を示す肝脾腫大症と呼ばれる状態)などのいくつかの非神経学的症状も引き起こす。
【0006】
GM1-ガングリオシドーシスを処置するために、いくつかの治療戦略が実施されてきた。しかしながら、従来の治療法は中枢神経系における症状の処置を達成できず、したがって神経変性の軽減という点では効果が得られない。造血幹細胞治療(HSCT)は、乳児型である患者において試みられたが失敗に終わった(非特許文献1)。組換え酵素も使用されているが、血液脳関門を通過することはできない。蓄積した基質の生合成を部分的に阻害する小分子の投与からなる基質抑制療法(SRT)が、II型及びIII型のGM1ガングリオシドーシスを有する3人に患者で試みられた。特に、ミグルスタットの投与により、変性進行を遅らせること、又はそれを逆行させることさえ可能となった(非特許文献2)。遺伝子治療は、操作されたアデノ随伴ウイルス/GLB1ベクターの脳室内注射により、マウス(非特許文献3)及びネコ(非特許文献4)の両方のモデルにおいて確証的であった。これまで多くのシャペロンが開発され、ミガーラスタットが最初に試験されている。GM1-ガングリオシドーシスに対する特異性が十分でなかったため、他のイミノ糖が開発され、特にN-オクチル-4-エピ-β-バリエナミン(NOEV)及び5N,6S-(N’-ブチルイミノメチリデン)-6-チオ-1-デオキシガラクトノジリマイシン(6S-NBI-DGJ)がマウスモデルにおいて有望な結果を示した(非特許文献5及び非特許文献6)。残念なことに、シャペロン療法はミスフォールドしたβ-galの残存活性に基づき、その結果として、酵素が全く不活性な場合には、このような処置は全く効果がない。
【0007】
したがって、中枢神経系に到達することができ、β-galが全く不活性である場合でさえも適用可能である、GM1-ガングリオシドーシスを標的とする治療戦略をさらに開発する必要がある。
【0008】
モルキオ症候群B型(ムコ多糖症IVB型、MPS IVBとしても知られている)は、いくつかのムコ多糖の分解を触媒する、β-galをコードするGLB1遺伝子におけるいくつかの特異的変異によって引き起こされる。この欠陥の結果として、ケラタン硫酸が蓄積し、主に骨格形成異常及び頻繁な呼吸器感染症を引き起こす。患者は神経認知機能の正常な発達を示すが、疾患のいくらか進行した段階では、骨格変形のために脊髄圧迫が起こり、中枢神経系の障害を引き起こす可能性がある。骨の問題だけでなく、MPS IVBは、角膜混濁、網膜症又は緑内障などのいくつかの眼症状、及び心肺疾患を特徴とする。
【0009】
現在、MPS IVBに対して承認された治療がないだけではなく、この状態の極度の希少性と関連して、疾患及びその臨床症状に関する知識も不足しており、いくつかの分子が医薬シャペロンとして有望な結果を示したとしても、十分に設計された臨床試験の可能性が制限されている。GM1ガングリオシドーシスに関しては、今のところ利用可能な唯一の治療法は対症療法である。したがって、根治的な治療戦略を開発する緊急の必要性が存在している。
【0010】
チェディアック-東症候群(Chediak-Higashi Syndrome)、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、アルツハイマー病及び外傷性脳損傷などの他の疾患は、β-ガラクトシダーゼの活性の低下に関連していることが示されている。
【0011】
多くのこのような疾患によって影響を受ける重要な系の1つは中枢神経系である。これは、脳が、その限られた再生能力及び神経細胞の感受性に起因して、すなわちLSD、特にGM1-ガングリオシドーシスに対して非常に脆弱であるという事実に由来する可能性がある。中枢神経系への損傷は、アルツハイマー病及び外傷性脳損傷の場合にも顕著である。中枢神経系のこの感受性は、脳への侵入が血液脳関門によって高度に保護されているため、小さな分子しか通過できず、例えば血流を介して脳内に酵素を送達することが不可能なため、処置に関して大きな問題を引き起こす。したがって、神経症状を引き起こす疾患の処置は重要な課題である。
【0012】
β-ガラクトシダーゼの活性に関連する刊行物の中で、カテプシンB(catB)がβ-ガラクトシダーゼの成熟及び分解において調節的な役割を有することが記載されている(非特許文献7)。これらの著者らは、カテプシンBの阻害がβ-ガラクトシダーゼの活性を促進することを明らかにした。β-ガラクトシダーゼの活性の減少又はβ-ガラクトシダーゼの活性の欠如を伴う疾患に対する新しい治療法を開発する観点から、カテプシンBの新しい阻害剤を特定することが望まれる。薬物としての使用に適した特性を示すこのような阻害剤、すなわち、良好な化学安定性、細胞膜透過性、溶解性、代謝安定性、血漿安定性及び/又はトランスポーター親和性を示す阻害剤を提供することがさらに有益であろう。
【0013】
最初に特定されたcatB阻害剤の1つは、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)に見出された天然のエポキシスクシニルジペプチドであるオキシランE64であり、これは不可逆的かつ非選択的にカテプシンを阻害する(非特許文献8)。E64の化学構造を表1に示す。
【0014】
E64の発見以来、多くの類似物が開発されてきた。このクラスの化合物の最も有名な代表例は以下の表1に示されており、以下の刊行物に開示されている:非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、及び非特許文献14。
【0015】
【表1】
【0016】
現在、良好な吸収、分布、代謝及び排泄を示しながら、catB阻害特性を示した唯一の分子は、ロキシスタチンとして知られているE64dである。この化合物はE64cのエステルプロドラッグであり、筋ジストロフィーの治療として日本において臨床研究の対象であった。不明確な有効性のために研究が中止されたにもかかわらず、この3年間の試験(小児患者を含む)では、広範な薬物動態学(PK)及び薬力学(PD)のデータが得られ、同時にヒトに対する無毒性も実証された(非特許文献15、非特許文献16及び非特許文献17)。
【0017】
残念なことに、この化合物は血液脳関門の低い透過性を示し、中枢神経系(CNS)における治療標的に到達する可能性が著しく減少する。このため、この化合物は、GM-1ガングリオシドーシス、アルツハイマー病及び外傷性脳損傷のような、脳内のcatBの存在に関連する病理に対する関連性が低くなる。
【0018】
したがって、catBを不可逆的に阻害することができる新規化合物を開発する必要がある。さらに、血液脳関門を透過することにより中枢神経系に到達することができる、そのような化合物を特定するさらなる必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】N.Brunetti-Pierri and F.Scaglia,GM1 gangliosidosis:Review of clinical,molecular,and therapeutic aspects,Mol.Genet.Metab.,2008,94(4),391-396
【非特許文献2】F.Deodato et al.,The treatment of juvenile/adult GM1-gangliosidosis with Miglustat may reverse disease progression,Metab.Brain Dis.,2017,32(5),1529-1536
【非特許文献3】R.C.Baek et al.,AAV-Mediated Gene Delivery in Adult GM1-Gangliosidosis Mice Corrects Lysosomal Storage in CNS and Improves Survival,PLoS One,2010,5(10),e13468
【非特許文献4】V.J.McCurdy et al.,Sustained normalization of neurological disease after intracranial gene therapy in a feline model,Sci.Transl.Med.,2014,6(231),231-279
【非特許文献5】Y.Suzuki et al.,Therapeutic chaperone effect of N-Octyl 4-Epi-β-valienamine on murine GM1-gangliosidosis,Mol.Genet.Metab.,2012,106(1),92-98
【非特許文献6】T.Takai et al.,A Bicyclic 1-Deoxygalactonojirimycin Derivative as a Novel Pharmacological Chaperone for GM1 Gangliosidosis,Mol.Ther.,2013,21(3),526-532
【非特許文献7】Y.Okamura-Oho et al.,Maturation and degradation of β-galactosidase in the post-Golgi compartment are regulated by cathepsin B and a non-cysteine protease,FEBS Lett.,1997,419(2-3),231-234
【非特許文献8】K.Hanada et al.,Isolation and Characterization of E-64,a New Thiol Protease Inhibitor,Agric.Biol.Chem.,1978,42(3),523-528
【非特許文献9】T.Otsuka et al.,WF14865A and B,new cathepsins B and L inhibitors produced by Aphanoascus fulvescens.I.Taxonomy,production,purification and biological properties,J.Antibiot.(Tokyo).,2000,53(5),449-458
【非特許文献10】A.J.Barrett et al.,L-trans-Epoxysuccinyl-leucylamido(4-guanidino)butane(E-64) and its analogues as inhibitors of cysteine proteinases including cathepsins B,H and L,Biochem.J.,1982,201(1),189-198
【非特許文献11】M.Murata et al.,Novel epoxysuccinyl peptides.Selective inhibitors of cathepsin B,in vitro,FEBS Lett.,1991,280(2),307-310
【非特許文献12】D.J.Buttle and J.Saklatvala,Lysosomal cysteine endopeptidases mediate interleukin 1-stimulated cartilage proteoglycan degradation,Biochem.J.,1992,287(2),657-661
【非特許文献13】D.J.Buttle et al.,CA074 methyl ester:a proinhibitor for intracellular cathepsin B,Arch.Biochem.Biophys.,1992,299(2),377-380
【非特許文献14】N.Schaschke et al.,Substrate/propeptide-derived endo-epoxysuccinyl peptides as highly potent and selective cathepsin B inhibitors,FEBS Lett.,1998,421(1),80-82
【非特許文献15】E.Satoyoshi,Therapeutic Trials on Progressive Muscular Dystrophy,Intern.Med.,1992,31(7),841-846
【非特許文献16】G.Hook et al.,Cathepsin B is a New Drug Target for Traumatic Brain Injury Therapeutics:Evidence for E64d as a Promising Lead Drug Candidate,Front.Neurol.,2015,6,178
【非特許文献17】T.Miyahara et al.,Phase I study of EST,a new thiol protease inhibitor.The 1st report:Safety and pharmacokinetics at single administration,Rinsho yakuri/Japanese J.Clin.Pharmacol.Ther.,1985,16(2),357-365
【発明の概要】
【0020】
第一の態様では、本発明は、式I又は式IIの化合物であって、
【化1】
【化2】
式中、
が、3-メチルブチル、2-メトキシエチル、2-フルオロフェニルメチル、3-(ピペリジン-1-イル)プロピル及び2-(ピリジン-2-イル)エチルから選択され、
が、水素及びメチルから選択され、
が、2-メチルプロピル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選択され、
が、水素であり、
前記化合物が、Rが3-メチルブチルである場合、
i.Rは2-メチルプロピルではないか、又は
ii.Rは2-メチルプロピルであり、Rはメチルであることを特徴とし、
前記化合物が、Rが2,2,2-トリフルオロエチルである場合、Rは水素であることをさらに特徴とする、化合物を提供する。
【0021】
第二の態様では、本発明は、治療における使用のため、特にβ-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患の処置のための本発明の化合物を提供する。
【0022】
第三の態様では、本発明は、β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患を処置する方法における使用のための式I又は式IIの化合物であって、
【化3】
【化4】
式中、
が、3-メチルブチル、2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、2-フルオロフェニルメチル、3-(ピペリジン-1-イル)プロピル及び2-(ピリジン-2-イル)エチルから選択され、
が、水素及びメチルから選択され、
が、2-メチルプロピル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選択され、
が、水素であり、
前記化合物が、Rが3-メチルブチルである場合、
i.Rは2-メチルプロピルではないか、又は
ii.Rは2-メチルプロピルであり、Rはメチルであることを特徴とし、
前記化合物が、Rが2,2,2-トリフルオロエチルである場合、Rは水素であることをさらに特徴とする、使用のための化合物を提供する。
【0023】
第四の態様では、本発明は、本発明による化合物を生成するためのプロセスであって、
a)式IIIの化合物
【化5】
を、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などの塩基で脱プロトン化するするステップと、
b)ステップa)で得られた脱プロトン化した化合物を、塩基性媒体中で1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロ-ホスフェート(HATU)と反応させるステップと、
c)ステップb)で得られた化合物を、塩基性媒体中でテトラメチル尿素(TMU)と反応させるステップと、
d)ステップc)で得られた化合物を、塩基性媒体中で式IVのアミン
【化6】
と反応させて、例えば式Vのジペプチド
【化7】
を形成するステップと、
e)式Vのような化合物を、酸性媒体中でトリフルオロ酢酸と反応させることによって式Vの化合物からBoc基を除去して、式VIの化合物
【化8】
を得るステップと、
f)式VIの化合物を、DIPEAなどの塩基で脱プロトン化するステップと、
g)ステップf)で得られた脱プロトン化した化合物を、塩基性媒体中でHATUと反応させるステップと、
h)ステップg)で得られた化合物を、塩基性媒体中でTMUと反応させるステップと、
i)ステップh)で得られた化合物を、式VIIの化合物
【化9】
と反応させて、例えば式Iの化合物を得るステップと、
j)任意選択で、式Iの化合物のエステル部分を加水分解して、例えば式IIの化合物を得るステップと
を含む、プロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】VRO006-ハイドロール、VRO052-ハイドロール、VRO059_ハイドロール、VRO042_ハイドロール、VRO047_ハイドロール、VRO073_ハイドロール、VRO109_ハイドロール及びVRO244_ハイドロール(好適な阻害活性(IC50≦100nM)を有する化合物)についてのブタ肝臓ホモジネートにおけるカテプシンB(catB)活性の阻害を表すグラフである。
図2】VRO001_ハイドロール、VRO035_ハイドロール、VRO082_ハイドロール、VRO119_ハイドロール、VRO243_ハイドロール、VRO073_ハイドロール、VRO109_ハイドロール及びVRO244_ハイドロール(好適ではない阻害活性(IC50>100nM)を有する化合物)についてのブタ肝臓ホモジネートにおけるカテプシンB(catB)活性の阻害を表すグラフである。
図3】全細胞アッセイにおけるE64c、VRO052-ハイドロール及びVRO059-ハイドロールによるヒトカテプシンBの阻害を表すグラフである。
図4】本発明のプロセスのステップa)~d)におけるジペプチドの形成のメカニズムを表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、カテプシンBの阻害剤として活性であり、したがってβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)活性の低下に関連する疾患の処置に有益である新規化合物を有利に開発した。さらに、特定された化合物は、医薬としての使用に特に適した特性を有する。特に、そのような化合物は、以下の有利な特性のうちの1つ以上によって特徴付けられる。
a)患者への投与後、化合物が全身の血流に到達することを可能にする、良好な吸収、
b)処置されるべき異なる組織/臓器への良好な分布、
c)化合物の活性を維持し、有害な代謝産物を生成しないように化合物が体内で代謝される、適切な代謝、及び/又は
d)化合物及びその代謝産物の適切な排泄。
【0026】
本発明の化合物は、血液脳関門を通過するのに適しており、中枢神経系に影響を及ぼす疾患を処置することを可能にするという点でさらに有利である。これは、先行技術の化合物であるE64dよりも大きな改善を表す。さらに、本発明の化合物は、カテプシンファミリーの他の酵素よりもcatBの阻害に対して良好な選択性を示す。
【0027】
本発明の化合物は、式I又は式IIの化合物であり、
【化10】
【化11】
式中、
が、3-メチルブチル、2-メトキシエチル、2-フルオロフェニルメチル、3-(ピペリジン-1-イル)プロピル及び2-(ピリジン-2-イル)エチルから選択され、
が、水素及びメチルから選択され、
が、2-メチルプロピル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選択され、
が、水素であり、
前記化合物が、Rが3-メチルブチルである場合、
i.Rは2-メチルプロピルではないか、又は
ii.Rは2-メチルプロピルであり、Rはメチルであることを特徴とし、
前記化合物が、Rが2,2,2-トリフルオロエチルである場合、Rは水素であることをさらに特徴とする。
【0028】
本発明の化合物の構造は、窒素原子とラジカルR、R及びRとの両方を含むジペプチド構造を有する2つのブロックからなり、前記ジペプチド構造はエポキシ頭部(epoxy warhead)に連結されている。先行技術のE64dの場合のように、本発明の式Iの化合物はプロドラッグであり、これは経腸投与により消化管内で加水分解される。エポキシ頭部の最末端のエステル部分が切断されて、遊離酸が放出される。化合物が治療活性であるのは、この切断された形態である。したがって、式Iの化合物は有利にはプロドラッグとしての使用のためであり、一方、式IIの化合物は有利には治療剤としての使用のためである。
【0029】
本発明による化合物の例は以下の表2に提供される:
【0030】
【表2(1)】
【表2(2)】
【0031】
本発明による式IIの化合物の例は、遊離酸の形態で表2に提供される化合物の対応物である。そのような化合物としては、(2S,3S)-3-(((S)-1-((2-2-メトキシエチル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸(VRO047_ハイドロール)、(2S,3S)-3-(((S)-1-(イソペンチル(メチル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸(VRO006_ハイドロール)、(2S,3S)-3-(((S)-1-((2-フルオロベンジル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸(VRO073_ハイドロール)、(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸(VRO059_ハイドロール)、(2S,3S)-3-(((S)-4-メチル-1-オキソ-1-((2-(ピリジン-2-イル)エチル)アミノ)ペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸(VRO052_ハイドロール)、(2S,3S)-3-(((S)-4,4,4-トリフルオロ-1-(イソペンチルアミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸(VRO109_ハイドロール)及び(2S,3S)-3-(((S)-4,4,4-トリフルオロ-1-((2-フルオロベンジル)アミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸(VRO244_ハイドロール)が挙げられる。
【0032】
本発明の化合物は、有利には治療における使用のためである。
【0033】
本発明の化合物はまた、β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患の処置における使用にも有利である。上記に列挙した本発明による化合物に加えて、Rが3-メトキシプロピルであり、R、R及びRが上記の通りである、式I又は式IIの化合物も、β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患の処置における使用のためである。好ましくは、低下したβ-ガラクトシダーゼ活性に関連する疾患の処置における使用のための式Iのそのような化合物は、エチル(2S,3S)-3-(((S)-1-((3-3-メトキシプロピル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボキシレート(VRO042)であり、以下に提供される構造を有し、低下したβ-ガラクトシダーゼ活性に関連する疾患の処置における使用のための式IIのそのような化合物は、遊離酸対応物である(2S,3S)-3-(((S)-1-((3-3-メトキシプロピル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)オキシラン-2-カルボン酸(VRO042_ハイドロール)である。
【0034】
【化12】
【0035】
式IIの化合物の多様な特性により、それらがE64b及びその公知の誘導体などの先行技術のcatB阻害剤よりも血液脳関門を通過することをより好適にする。特に、本発明の化合物は、有利には以下の特徴がある。
a)血液脳関門の良好な受動的透過をもたらす、例えばcLogPとして表される、より高い親油性、
b)水素結合ドナー原子及び/又は水素結合アクセプター原子の数の減少の結果として、及び/又は分子内水素結合の形成の結果として、それにより、改善された透過性及び血漿糖タンパク質に対する親和性の減少がもたらされる、他の化合物と水素結合を形成する低下した能力、
c)改善された代謝安定性及び/又はcatBのS2ポケットの良好な占有によるcatBに対する増強した親和性をもたらす、よりペプチド模倣的な構造。
【0036】
本発明者らによって実証されるように、上記の特定のラジカルR、R及びRは、catBの阻害剤として活性でありながら、E64cと比較して式IIの化合物の薬物類似性及び血液脳関門を通過する能力を改善するという点で有利である。Rが水素原子であることが必須であることも示されている。理論によって拘束されることを望むものではないが、この水素原子はタンパク質との水素結合に関与していると考えられる。
【0037】
位の水素とは異なり、R位の水素は、図1で実証されているように、化合物の阻害活性を害することなくメチルで置き換えることができ、R位にメチルを有するVR006_ハイドロールの、単離されたcatBを阻害する能力は、E64cの能力と同様であることを理解することができる。この先行技術の構造の修飾は、水素原子のメチルによる置換により、VRO006_ハイドロールがE64cよりも親油性になり(cLogPは約2)、分子内の水素供与体を1つ取り除き、分子のトポロジカル極性表面積(TPSA)を90Å以下に減少させるという点でさらに有利である。これらの違いにより、VRO006_ハイドロールはより薬物のような性質を示し、細胞膜を通して細胞内に侵入するのにより適しており、血液脳関門を通過するのにE64cよりも適している。
【0038】
本発明者らはまた、化合物とcatBのS3ポケットとの間の相互作用を害することなく、本明細書に列挙されているようなR位に、より嵩高いラジカルを有利に使用することができることを特定した(図1を参照のこと)。この結果、catBの効率的な阻害を維持しながら、先行技術のE64cよりも薬物類似性が改善され、血液脳関門を通過する能力が改善される。これは、Rが2-メトキシエチル(VRO047_ハイドロール)の場合、及びRが3-メトキシプロピル(VRO042_ハイドロール)の場合であった。同様のことが、Rが2-(ピリジン-2-イル)エチル(VRO052_ハイドロール)又は3-(ピペリジン-1-イル)プロピル(VRO059_ハイドロール)でも観察された。なぜなら、これらの化合物の両方は、単離されたcatBに対してE64cとほぼ同様の阻害活性を示したからである。R位の嵩高いラジカル2-(2-フルオロフェニル)エチル(VRO073_ハイドロール)でさえ、単離されたcatBに対する阻害活性を維持することができ、この化合物はE64cと比較してcatB阻害活性をわずかに減少させているだけであった。酵素の阻害のこのような最小限の減少は、薬物類似性に関する利点、及び細胞膜を通して細胞内部に到達し、血液脳関門を通過する能力に関する利点によって補われる。
【0039】
しかしながら、全ての嵩高い置換基が、catBの十分な阻害を維持するのに適しているわけではなく、例えば、本発明者らは、嵩高く、高度に電気陰性である3,3,3-トリフルオロエチルが、単離されたcatBに対する酵素アッセイにおいて、VRO035_ハイドロールの効率を著しく減少させることを実証した(図2を参照のこと)。
【0040】
位に特に好ましいラジカルは、2-(ピリジン-2-イル)エチル及び3-(ピリジン-1-イル)プロピルである。実際に、これらのラジカルがR位に存在する化合物VRO052_ハイドロール及びVRO059_ハイドロールは、全細胞アッセイにおいてcatBに対する阻害活性を著しく改善したことを示した。理論によって拘束されることを望むものではないが、これはこれらの化合物の親油性が増加し、細胞膜をより容易に通過するようになったためであると考えられる。したがって、これらのラジカルをR位に有する化合物のインビボでの効率は、E64cの効率よりも高いと予想される。
【0041】
catBのS2ポケットと相互作用するRに関して、本発明者らはまた、E64dに存在する3-メチルブチルを多様なラジカルで置換することにより、化合物の薬物類似性を改善することを達成した。ほとんどの嵩高いラジカルは、図2により実証されているように、例えばピリジニル部分(VRO119_ハイドロール)のように、化合物の阻害活性にマイナスの影響を与える。しかしながら、R位の3-メチルブチルを2,2,2-トリフルオロエチルで置換すると、予想外に、図1に示されるように、catBに対するVRO109_ハイドロールの阻害活性の著しい増加が生じた。このトリフルオロエチル部分は、他の分子と水素結合を生成し得るという望ましくない性質を有する酸素原子又は窒素原子を含まないという点でも、E64cと比較してVRO109_ハイドロールの親油性及び薬物類似性を著しく増加させるという点でも、さらに有利である。
【0042】
位の好適なラジカルをR位の好適なラジカルと組み合わせると、図2に示されるように、化合物が依然として好適な阻害活性を示し、化合物VRO244_ハイドロールは、先行技術のE64cよりもわずかに低い阻害活性しか示さないが、親油性が増加し、細胞内に侵入し、血液脳関門を通過する能力が増加するという特徴があり、このため、VRO244_ハイドロールがE64cよりも薬物として適していることになる。
【0043】
しかしながら、R3位の嵩高い2,2,2-トリフルオロエチルをR2位のメチルと組み合わせないことが重要である。なぜなら、この特有の組み合わせは、単離された酵素に対する阻害活性をVRO243_ハイドロールから奪うためである(図2を参照のこと)。
【0044】
上記で特定した式IIの化合物の利点により、対応する式Iの化合物の有利なプロドラッグとなる。
【0045】
catBを阻害するそれらの能力により、上記のような式I及び式IIの化合物は、β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患の処置に有利に使用することができる。これは、背景技術のセクションで詳細に説明したように、β-ガラクトシダーゼの成熟及び分解におけるcatBの調節的役割が以前に実証されていることによる。
【0046】
β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患の例としては、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、アルツハイマー病及び外傷性脳損傷が挙げられる。好ましくは、本発明の化合物は、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー及びゴーシェ病から選択される疾患、より好ましくはGM-1ガングリオシドーシス及びモルキオ症候群B型、最も好ましくはGM-1ガングリオシドーシスの処置における使用のためである。
【0047】
換言すれば、本発明は医薬の製造のための本発明の化合物の使用に関する。好ましくは、本発明は、β-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患の処置のための医薬、好ましくは、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、アルツハイマー病及び外傷性脳損傷から選択される疾患、より好ましくは、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー及びゴーシェ病から選択される疾患、さらにより好ましくは、GM-1ガングリオシドーシス及びモルキオ症候群B型から選択される疾患、最も好ましくは、GM-1ガングリオシドーシスの処置のための医薬の製造のための、上記のような式I又は式IIの化合物の使用に関する。
【0048】
さらに換言すれば、本発明は、疾患の処置を必要とする患者における疾患を処置する方法であって、そのような患者に本発明の化合物を投与することを含む、方法に関する。本発明はまた、疾患の処置を必要とする患者におけるβ-ガラクトシダーゼ活性の低下に関連する疾患を処置する方法であって、そのような患者に上記のような式I又は式IIの化合物を投与することを含む、方法に関する。より好ましくは、そのような疾患は、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、アルツハイマー病及び外傷性脳損傷から選択され、より好ましくは、そのような疾患は、GM-1ガングリオシドーシス、モルキオ症候群B型、チェディアック-東症候群、ガラクトシアリドーシス、異染性白質ジストロフィー及びゴーシェ病から選択され、さらにより好ましくは、そのような疾患は、GM-1ガングリオシドーシス及びモルキオ症候群B型から選択され、最も好ましくはGM-1ガングリオシドーシスである。
【0049】
特定の態様では、式I又は式IIの化合物は、catBを阻害する方法における使用のためである。換言すれば、本発明は、catBを阻害するための式I又は式IIの化合物の使用に関する。さらに換言すれば、本発明は、対象においてcatBを阻害する方法であって、そのような化合物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0050】
別の特定の態様では、式I又は式IIの化合物は、それを必要とする患者に、上述したβ-ガラクトシダーゼの低下に関連する疾患の1つを処置するために活性である少なくとも1つの追加の化合物と組み合わせて、投与される。好ましい態様では、そのような追加の化合物は、β-ガラクトシダーゼの薬理学的シャペロン、グルコセレブロシダーゼの薬理学的シャペロン、カルシウムチャネル遮断薬及び/又はグルコシルセラミド合成酵素阻害剤、及びそれらの混合物から選択される。別の好ましい態様では、そのような追加の化合物は、N-置換5-アミノ-1-ヒドロキシメチル-シクロペンタントリオール、N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミン(NOEV)、アンブロキソール、シス-(+)-[2-(2-ジメチルアミノエチル)-5-(4-メトキシフェニル)-3-オキソ-6-チア-2-アザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7,9,11-トリエン-4-イル]エタノエート(ジルチアゼム)、[(3S)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]N-[2-[2-(4-フルオロフェニル)-1,3-チアゾール-4-イル]プロパン-2-イル]カルバメート(ベングルスタット)、イミノ糖及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、そのようなイミノ糖は、好ましくは、N-ブチル-デオキシガラクトノジリマイシン(ミガーラスタット)、4-エピ-イソファゴミン、5a-C-ペンチル4-エピ-イソファゴミン、5a-C-メチル4-エピ-イソファゴミン、1,5-ジデオキシ-1,5-イミノ-(L)-リビトール(DIR)、5-C-アルキル-イミノ-L-リビトール、N-(ダンシルアミノ)ヘキシルアミノカルボニルペンチル-1,5-ジデオキシ-1,5-イミノ-D-ガラクチトール、5N,6S-(N’-ブチルイミノメチリデン)-6-チオ-1-デオキシガラクトノジリマイシン(6S-NBI-DGJ)、N-ノニル-デオキシガラクトノジリマイシン、N-ブチルデオキシノジリマイシン(ミグルスタット)、イソファゴミン(アフェゴスタット)、AZ-3102及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
本発明の式Iの化合物は、好ましくは、経腸投与により投与される。経腸投与とは、式Iの化合物が消化管に運搬される任意の投与手段を意図する。式Iの化合物の経腸投与は、そのような化合物が消化管内で遊離酸に加水分解されるので有利である。本発明の式IIの化合物は、任意の経路によって投与され得、好ましくは、経腸投与ではない投与経路によって投与される。
【0052】
好ましい態様では、式I又は式IIの化合物は、好ましくは、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される。
【0053】
「担体」という用語は、適用を容易にし、増強し、又は可能にするために活性成分が配合される、天然又は合成の性質の有機又は無機の成分を指す。本発明によれば、「担体」という用語は、患者への投与に適した1つ以上の適合性のある固体又は液体の充填剤、希釈剤又はカプセル化物質も含む。
【0054】
非経口投与のための可能な担体物質は、例えば、滅菌水、リンゲル、乳酸リンゲル、滅菌塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー又はポリオキシエチレン/ポリオキシ-プロピレンコポリマーである。
【0055】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、本明細書に記載される組成物中に存在し得、例えば、担体、結合剤、滑沢剤、増粘剤、表面活性剤、保存剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、又は着色剤などの有効成分ではない全ての物質を示すことを意図する。
【0056】
組成物の賦形剤は、特定の細胞又は組織を標的とすることができる特定の担体を含む、任意の薬学的に許容される賦形剤であり得る。先に述べたように、可能な医薬組成物は、経口、直腸、局所、経皮、頬、舌下、又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与に適したものを含む。これらの製剤には、当業者に周知の技術に従って従来の賦形剤を使用することができる。非経口投与用の組成物は、一般に、生理学的に適合性のある滅菌溶液又は懸濁液であり、任意選択で、固体又は凍結乾燥形態から使用直前に調製することができる。経口投与の場合、組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、並びにシロップ剤、エリキシル剤、及び濃縮点滴剤などの液体製剤などの従来の経口剤形に製剤化することができる。無毒性の固体担体又は希釈剤を使用することができ、これらには、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカン、セルロース、グルコース、スクロース、マグネシウム、炭酸塩などが含まれる。圧縮錠剤には、粉末材料に凝集性を付与する薬剤である結合剤も必要である。例えば、デンプン、ゼラチン、ラクトース又はブドウ糖などの糖類、及び天然又は合成のガムを結合剤として使用することができる。錠剤の崩壊を促進するために、錠剤には崩壊剤も必要である。崩壊剤には、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガム及び架橋ポリマーが含まれる。さらに、製造プロセスにおける錠剤材料の表面への付着を防止し、製造中の粉末材料の流動特性を改善するために、錠剤には滑沢剤及び流動促進剤も含まれる。コロイド状二酸化ケイ素が流動促進剤として最も一般的に使用され、タルク又はステアリン酸などの化合物が滑沢剤として最も一般的に使用される。経皮投与の場合、組成物は軟膏、クリーム又はゲルの形態に製剤化することができ、浸透を促進するために適切な浸透剤又は洗浄剤、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドを使用することができる。経粘膜投与の場合、点鼻薬、直腸坐薬、又は膣坐薬を使用することができる。活性化合物を、当該技術分野で公知の方法により、公知の坐薬基剤のいずれかに組み込むことができる。このような基剤の例としては、ココアバター、ポリエチレングリコール(カルボワックス)、ポリエチレンソルビタンモノステアレート、及び融点又は溶解速度を変更するための他の適合材料とのこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
医薬組成物は、投与時に直ちに、あるいは投与後の任意の所定の時間又は一定の期間に活性薬物を実質的に放出するように製剤化され得る。
【0058】
式I又は式IIの化合物は有効量で投与される。「有効量」という用語は、生理学的効果を得るのに必要な量を指す。生理学的効果は、1回の適用用量によって達成されてもよいか、又は反復適用によって達成されてもよい。投与される投薬量は、当然、特定の組成物の生理学的特性;対象の年齢、健康及び体重;症状の性質及び程度;同時処置の種類;処置の頻度;並びに所望の効果などの既知の要因に応じて変化し得、当業者によって調整され得る。特定の実施形態では、医薬組成物は、式I又は式IIの化合物を0.1mg~5gの量、好ましくは1mg~2gの量、より好ましくは10mg~1gの量で含む。別の特定の実施形態では、式I又は式IIの化合物は、1日当たり0.1mg~5gの量、好ましくは1mg~2gの量、より好ましくは10mg~1gの量で投与される。
【0059】
本発明の化合物は、2つのアミノ酸間にアミド結合を形成してジペプチド構造を生成し、形成されたジペプチドをエポキシ頭部とカップリングすることを含むプロセスによって生成することができる。
【0060】
したがって、本発明は、本発明の化合物を生成するためのプロセスに関し、そのプロセスは、
a)式IIの化合物
【化13】
を、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などの塩基で脱プロトン化するするステップと、
b)ステップa)で得られた脱プロトン化した化合物を、塩基性媒体中で1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロ-ホスフェート(HATU)と反応させるステップと、
c)ステップb)で得られた化合物を、塩基性媒体中でテトラメチル尿素(TMU)と反応させるステップと、
d)ステップc)で得られた化合物を、塩基性媒体中で式IIIのアミン
【化14】
と反応させて、例えば式IVのジペプチド
【化15】
を形成するステップと、
e)式IVのような化合物を、酸性媒体中でトリフルオロ酢酸と反応させることによって式IVの化合物からBoc基を除去して、式Vの化合物
【化16】
を得るステップと、
f)式Vの化合物を、DIPEAなどの塩基で脱プロトン化するステップと、
g)ステップf)で得られた脱プロトン化した化合物を、塩基性媒体中でHATUと反応させるステップと、
h)ステップg)で得られた化合物を、塩基性媒体中でTMUと反応させるステップと、
i)ステップh)で得られた化合物を、式VIの化合物
【化17】
と反応させるステップと
を含む。
【0061】
ステップa)からd)は、本発明の化合物の合成の第一段階のサブステップであり、構造のジペプチド部分が形成される。これは酸と塩基との間のアミド結合の形成を含み、一般にペプチドカップリングと呼ばれる。多くのカップリング試薬を使用することができ、当業者に周知である。しかしながら、HATUは、異なるタイプのカップリング出発物質に対して比較的寛容であるため、特に好適である。好ましくは、このようなステップは塩基性媒体中で実施され、より好ましくは0℃で実施される。HATUによって媒介されるアミド結合形成のメカニズムは図4に示される。それは、好ましくはDIPEAである塩基による酸の脱プロトン化によって開始する。次いで形成されたカルボキシレートがHATUからの電子不足炭素を攻撃し、それにより、不安定なO-アシル(テトラメチル)イソウロニウム塩を形成し、7-アザベンゾトリアゾール(OAt)を放出する。後者は直ちにイソウロニウム塩を攻撃して、テトラメチル尿素(TMU)及びOAt活性化エステルを形成する。式IIIのアミンによる求核付加を受けるのはこの活性種である。次いで、決定的なアミド結合が形成されて、式IVの化合物が生成する。理論によって拘束されることを望むものではないが、このメカニズムはおそらく、アミド結合が形成される間、アミンを安定化させる可能性のある7員の環状遷移状態の形成を介して行われる。
【0062】
ステップe)では、好ましくはDCM中の25%TFAを含む酸性媒体中でBoc保護基が除去される。このメカニズムは、t-ブチルカルバメートのプロトン化によって開始する。これにより、t-ブチルカチオンの喪失、及びカルバミン酸の形成が生じる。次いでTFAからのカルボキシレートがカルバミン酸を脱プロトン化し、それにより、遊離アミンを放出し、1当量の二酸化炭素を形成する。ワークアップ中、第一の酸性抽出により、いくつかの有機不純物を除去することができるが、アミンはTFA塩として水層に留まる。遊離アミンは塩基性化により有機層に回収され得る。
【0063】
ステップf)~i)では、エポキシ頭部を脱保護されたジペプチド構造に結合させる。これもアミド結合形成を伴うので、ジペプチド構造の形成と同様の方法で行われる。式Iの化合物が得られる。ここでも、当業者に周知の様々なカップリング剤を使用することができる。このようなカップリング剤としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又はHATUが挙げられる。しかしながら、DCCはアレルギーを起こすと記載されているため、HATUを使用することが好ましい。HATUはDCCと同じ能力を示し、DCCよりも優れた収率さえ示した。
【0064】
式IIの化合物を形成することが所望される場合には、このプロセスは、式Iの化合物のエステル部分を加水分解して、式IIの遊離酸を放出する1つのさらなるステップを含む。このような加水分解に適した条件は当業者に周知である。例えば、式Iの化合物は塩基性媒体中で得ることができる。
【実施例
【0065】
<分析方法>
H及び13C NMR並びに2D-NMR(COSY、HSQC及びHMBC)は、Bruker Ascend 300MHzスペクトロメーターで得た。測定は全て室温で行った。化学シフト(δ、ppmで表される)は溶媒ピークを基準にした。全ての合成は、UV検出器を備え、SQD2に結合したWaters製のACQUITY UPLCシステムを使用してUPLC-MSにより追跡した。カラムはUPLC BEH C18(50×2.1mm、1.7μm)であり、検出は214nmで行い、分析は40℃、0.5mL/分の流速で行い、溶出は溶離液Aとして水中の0.06%ギ酸、及び溶離液Bとしてアセトニトリル中の0.06%ギ酸を使用した。勾配は5分間でBを5%から100%にし、Bを100%で2分間維持し、次いで5%に30秒間再平衡化した。
【0066】
TLC分析は全て、Merck Silica Gel F254プレートで行い、254nm及び366nmの両方の下で明らかにし、次いでハネシアン染色を使用した。
【0067】
<実施例1:VRO006の合成>
まず、ジペプチドを形成した。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、500mgのBoc-L-Leu(2.162mmol、1.0当量)及び10mLのDCMを導入し、得られた無色の溶液を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。1.051gのHATU(3.243mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで312mgのN,3-ジメチルブタン-1-アミン塩酸塩(2.270mmol、1.05当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、1.1mLのDIPEA(6.485mmol、3.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。濁ったわずかに黄色の混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0068】
透明な黄色がかった溶液である反応混合物を、10mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaCl 2.6%で洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaCl 2.6%で洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、50mLのHCl 0.25Mで1回、50mLのNaHCO3 10%で1回、及び最後に50mLのNaCl 11.6%で洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(rotavapor)(40℃、850~70mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、766mg(生の収率(raw yield):112.7%)のオレンジ色のペースト状の物質を362-VRO006-01-001粗製物1#1として得た。
【0069】
粗物質を、40gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=13.5cmのカラム)を使用したCCによって精製し、続いて溶離液としてヘプタン-EtOAc(7:3)を使用したTLCを使用して溶出した;Rf=0.44。純粋なヘプタンからヘプタン-EtOAc(6:4)への勾配で生成物を溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、200~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で1時間乾燥させて、610mg(生の収率:89.7%)のほぼ無色の油状物を362-VRO006-01-001 CC1#1として得た。
【0070】
H-NMR(300MHz,CDCl)δ=5.37-5.11(m,1H,4),4.73-4.54(m,1H,5),3.50-3.23(m,2H,11),3.03(s,2H,10),2.92(s,1H,10),1.55(br.m,4H,6,7,13),1.42(s,9H,1,2,3),1.40-1.30(m,2H,12),0.98(dd,J=12.7,6.4,6H,8,9,14,15),0.92(dd,J=6.6,2.5,6H,8,9,14,15)。
【0071】
13C NMR(75MHz,CDCl)δ=48.72(5),48.26(5),46.50(11),43.33(12),42.70(12),37.28(6),35.73(6),34.83(10),33.61(10),28.29(1,2,3),26.12(7,13),25.92(7,13),24.56(7,13),23.46(8,9,14,15),23.41(8,9,14,15),22.51(8,9,14,15),22.47(8,9,14,15),22.43(8,9,14,15),22.40(8,9,14,15),21.75(8,9,14,15),21.71(8,9,14,15)。
【0072】
次いでBoc保護基を以下のように除去した。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、601mgの362-VRO006-01-001 CC1#1(1.911mmol、1.0当量)及び2.1mLのEtOAc中の10%HCl溶液を導入し、得られた無色の溶液を室温で3時間30分間撹拌した。反応混合物を25mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、25mLの水で洗浄した。APを6mLのNaOH 25%を使用してpH>10になるように塩基性化し、次いで25mLのEtOAcで3回抽出した。OPを合わせ、25mLのNaCl 11.6%を使用して洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、250~70mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で1時間乾燥させて、371mg(生の収率:90.6%)のほぼ無色の油状物を362-VRO006-02-001粗製物1#1として得た。この物質を次のステップにおいてさらに精製することなく「そのまま」使用した。
【0073】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=3.88-3.57(m,1H,2),3.33(br.m,2H,8),2.99(s,1H,7),2.93(s,1H,7),2.01(br.s,J=18.9,2H,1),1.95-1.77(m,1H,3’),1.42(br.m,5H,3’’,4,9,10),1.09-0.79(m,12H,5,6,11,12)。
【0074】
最後に、ジペプチドをエポキシ頭部にカップリングさせた。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、282mgの362-BB01-03-001粗製物1#1(1.759mmol、当量)及び5mLのDCMを導入し、得られた白色の懸濁液を5分間室温で撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。814mgのHATU(2.512mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで5mLのDCM中の溶液中の359mgの362-VRO006-02-001粗製物1#1(1.675mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、875μLのDIPEA(5.024mmol、3.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた黄色の混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0075】
透明な黄色の溶液である反応混合物を、10mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaCl 2.6%で洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaCl 2.6%で1回洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、50mLのHCl 0.25Mで1回、50mLのNaHCO 10%で1回、及び50mLのNaCl 11.6%で1回洗浄した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~30mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、701mg(生の収率:117.4%)の淡黄色がかった油状物を362-VRO006-03-001粗製物1#1として得た。
【0076】
粗物質を、40gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=13.5cmのカラム)を使用したCCにより精製し、続いて溶離液としてヘプタン-EtOAc(1:1)を使用したTLCを使用して溶出した;R=0.53。生成物をヘプタン-EtOAc(9:1)からヘプタン-EtOAc(1:1)への勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、200~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間30分乾燥させて、334mg(生の収率:55.9%)の無色の油状物を362-VRO006-03-001 CC1#1として得た。
【0077】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=6.84(dd,J=16.2,8.8,1H,5),5.02-4.87(m,1H,6),4.37-4.17(m,2H,2),3.65(dd,J=1.8,0.8,1H,4),3.46(dd,J=1.8,0.9,1H,3),3.34(br.m,2H,12),3.04(s,2H,11),2.92(s,1H,11),1.48(br.m,6H,7,8,13,14),1.31(t,J=7.1,3H,1),1.05-0.86(m,12H,9,10,15,16)。
【0078】
13C-NMR(75MHz,CDCl3)δ=62.20(2),53.88(4),52.81(3),48.28(12),47.06(6),46.72(6),46.64(12),42.81(7),42.32(7),37.27(13),35.67(13),34.86(11),33.70(11),26.07(8,14),25.94(8,14),24.72(9,10,15,16),23.44(9,10,15,16),23.41(9,10,15,16),22.50(9,10,15,16),22.45(9,10,15,16),22.38(9,10,15,16),22.36(9,10,15,16),21.69(9,10,15,16),21.60(9,10,15,16),14.00(1)。
【0079】
<実施例2:VRO047の合成>
まず、ジペプチドを形成した。マグネチックスターラーを備えた50mLの丸底フラスコに、3.232gのBoc-L-Leu(13.975mmol、1.05当量)及び35mLのDCMを導入し、得られた濁った溶液を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。6.471gのHATU(19.946mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで1157μLの2-2-メトキシエチルアミン(13.309mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、4.6mLのDIPEA(26.618mmol、2.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた濁った黄色がかった溶液を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0080】
透明な黄色の溶液である反応混合物を、10mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaCl 2.6%で洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、50mLのHCl 0.5Mで1回、50mLのNaHCO3 10%で1回、及び最後に50mLのNaCl 11.6%で洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、850~70mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間40分乾燥させて、6.986g(生の収率:182.0%)の淡黄色の油状物を362-VRO047-01-001粗製物1#1として得た。
【0081】
粗物質を、35gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=11.8cmのカラム)を使用したCCにより精製し、続いて溶離液としてヘプタン-EtOAc(1:1)を使用したTLCを使用して溶出した;Rf=0.46。純粋なヘプタンからヘプタン-EtOAc(1:1)への勾配で生成物を溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、220~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で1時間乾燥させて、1.267g(生の収率:33.0)の白色の粘着性のある泡状物を362-VRO047-01-001 CC1#1として得た。
【0082】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=6.37(br.s,1H,10),4.88(br.s,1H,4),4.24-3.89(m,1H,5),3.50-3.38(m,4H,11,12),3.35(s,3H,13),1.76-1.56(m,2H,6’’,7),1.56-1.35(m,1H,6’),1.44(s,9H,1,2,3),0.93(dd,J=6.2,1.1,6H,8,9)。
【0083】
次いでBoc保護基を以下のように除去した。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、1.267gの362-VRO047-01-001 CC1#1(4.393mmol、当量)及び4.4mLのEtOAc中の10%HCl溶液を導入し、得られた無色の溶液を室温で3時間撹拌した。反応混合物を25mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、25mLの水で洗浄した。APを、4.5mLのNaOH 25%を使用してpH>10になるように塩基性化し、次いで25mLのEtOAcで3回抽出した。OPを合わせ、25mLのNaCl 11.6%を使用して洗浄した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、250~70mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で3時間乾燥させて、337mg(生の収率:40.7%)の淡黄色の油状物を362-VRO047-02-001粗製物1#1として得た。この物質を次のステップにおいてさらに精製することなく「そのまま」使用した。
【0084】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=7.49(br.s,1H,7),3.57-3.37(m,5H,2,8,9),3.36(s,3H,10),1.83-1.57(m,4H,1,3’’,4),1.47-1.28(m,1H,3’),0.95(dd,J=8.4,6.2,6H,5,6)。
【0085】
最後に、ジペプチドをエポキシ頭部にカップリングさせた。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、290mgの362-BB01-03-001粗製物1#1(1.813mmol、1.05当量)及び5mLのDCMを導入し、得られた白色の懸濁液を5分間室温で撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。839mgのHATU(2.589mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで5mLのDCM中の溶液中の325mgの362-VRO047-02-001粗製物1#1(1.726mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、601μLのDIPEA(3.452mmol、2.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0086】
透明な黄色の溶液である反応混合物を、10mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaCl 5.8%で洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaCl 5.8%で1回洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、50mLのHCl 0.25Mで1回、50mLのNaHCO 10%で1回、及び50mLのNaCl 11.6%で1回洗浄した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~30mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、560mg(生の収率:98.2%)の黄色がかった粘性のある固体を362-VRO047-03-001粗製物1#1として得た。
【0087】
粗物質を、45gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=15.2cmのカラム)を使用したCCにより精製し、続いて溶離液としてヘプタン-EtOAc(3:7)を使用したTLCを使用して溶出した;R=0.41。生成物をヘプタン-EtOAc(7:3)からヘプタン-EtOAc(2:8)への勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、200~40mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、220mg(生の収率:38.6%)のわずかに淡黄色の固体を362-VRO047-03-001 CC1#1として得た。
【0088】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=6.58(d,J=8.6,1H,5),6.23(br.s,1H,11),4.41(td,J=8.5,5.6,1H,6),4.26(qq,J=7.1,3.6,2H,2),3.69(d,J=1.8,1H,4),3.51-3.39(m,5H,3,12,13),3.36(s,3H,14),1.56(br.m,J=23.2,13.4,9.5,5.2,3H,7,8),1.31(t,J=7.1,3H,1),0.93(dd,J=6.1,2.9,6H,9,10)。
【0089】
13C-NMR(75MHz,CDCl3)δ=70.75(13),62.30(2),58.76(14),53.77(4),52.88(3),51.16(6),41.51(7),39.26(12),24.76(8),22.78(9,10),22.05(9,10),13.99(1)。
【0090】
<実施例3:VRO052の合成>
まず、ジペプチドを形成した。マグネチックスターラーを備えた50mLの丸底フラスコに、2.235gのBoc-L-Leu(9.661mmol、1.1当量)及び25mLのDCMを導入し、得られた懸濁液を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。8.540gのHATU(26.348mmol、3.0当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで1.1mLの2-(2-アミノエチル)ピリジン(8.783mmol、1.0当量)及び10mLのDCM(HATUの量のために懸濁液が濃すぎた)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、7.6mLのDIPEA(43.914mmol、5.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた強い黄色の混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0091】
白色の固体を含む褐色がかったオレンジ色の溶液である反応混合物を、P3焼結ガラスフィルター上で濾過して塩を除去した。濾液を5mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaCl 5.8%で洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。この操作をさらに2回繰り返し、次いでOPを合わせ、50mLのNaHCO3 10%で1回洗浄し、最後に50mLのNaCl 11.6%で洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、850~70mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間30分乾燥させて、8.462g(生の収率:287.2%)の褐色がかったオレンジ色の油状物質を362-VRO052-01-001粗製物1#1として得た。
【0092】
CCによる精製の最初の試みを、50gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=16.9cmのカラム)を使用して行い、続いて溶離液として1%Et3Nを含むDCMを使用したTLCを使用して溶出した;Rf=0.51。生成物を、1%Et3Nを含むDCMから0.5%のMeOH及び1%Et3Nを含むDCMへの勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、800~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で3時間乾燥させて、6.666g(生の収率:226.3%)の黄色がかった油状物質を362-VRO052-01-001 CC1#1として得た。
【0093】
CCによりTMUを除去するための精製の2回目の試みを、55gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=16.9cmのカラム)を使用して行い、続いて溶離液としてヘプタン-EtOAc(2:8)及び1%Et3Nを使用したTLCを使用して溶出した;Rf=0.45。生成物を、1%Et3Nを含むヘプタン-EtOAc(7:3)から1%Et3Nを含むヘプタン-EtOAc(1:9)への勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、220~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、3.228g(生の収率:109.6%)の黄色がかった油状物質を362-VRO052-01-001 CC2#1として得た。
【0094】
TMUを除去するために、2回目のCCから回収した物質を再抽出した。この物質を15mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、次いで50mLのNaHCO3 10%で4回洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~40mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で3時間乾燥させて、2.416g(生の収率:82.0%)の黄色がかった油状物質を362-VRO052-01-001粗製物2#1として得た。
【0095】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=8.52(dt,J=4.8,1.5,1H,16),7.64(td,J=7.7,1.9,1H,14),7.23-7.12(m,2H,13,15),7.02(br.s,1H,10),5.09-4.77(m,1H,4),4.18-3.92(m,1H,5),3.78-3.56(m,2H,11),3.11-2.91(m,2H,12),1.61(dd,J=16.0,5.9,2H,6’’,7),1.45(d,J=7.4,1H,6’),1.40(s,9H,1,2,3),0.90(d,J=6.1,6H,8,9)。
【0096】
13C NMR(75MHz,CDCl3)δ=148.61(16),137.04(14),123.65(13,15),121.68(13,15),53.11(5),41.77(6),38.50(11),36.44(12),28.25(1,2,3),24.70(7),22.79(8,9),21.99(8,9)。
【0097】
次いでBoc保護基を以下のように除去した。マグネチックスターラーを備えた50mLの丸底フラスコに、2.416gの362-VRO052-01-001 CC1#1(7.202mmol、当量)及び18.1mLのDCMを導入し、得られた無色の溶液を室温で15分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。6.0mLのTFA(78.875mmol、10.95当量)を0~5℃で滴下して添加した。反応混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物を5mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLの水で洗浄した。APを20mLのNaOH 25%を使用してpH>10になるように塩基性化し、次いで20mLのDCMで3回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaCl 11.6%を使用して洗浄した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、800~70mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で6時間乾燥させて、1.470g(生の収率:86.7%)の淡黄色の固体を362-VRO052-02-001粗製物1#1として得た。この物質を次のステップにおいてさらに精製することなく「そのまま」使用した。
【0098】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=8.54(d,J=4.5,1H,13),7.70(br.s,1H,7),7.60(td,J=7.7,1.8,1H,11),7.21-7.08(m,2H,10,12),3.66(q,J=6.4,2H,8),3.38(d,J=6.1,1H,2),3.00(t,J=6.6,2H,9),1.74(br.s,2H,1),1.76-1.51(m,2H,3’’,4),1.42-1.22(m,1H,3’),0.91(dd,J=8.5,6.2,6H,5,6)。
【0099】
最後に、ジペプチドをエポキシ頭部にカップリングさせた。マグネチックスターラーを備えた100mLの丸底フラスコに、970mgの362-BB01-03-004粗製物1#1(6.055mmol、1.05当量)及び15mLのDMFを導入し、得られた溶液を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。5.607gのHATU(17.299mmol、3.0当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで15mLのDMF中の溶液中の1.357gの362-VRO052-02-001粗製物1#1(5.766mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、5.0mLのDIPEA(28.832mmol、5.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた黄褐色がかった混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0100】
透明な暗褐色溶液である反応混合物を、30mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、100mLのNaCl 5.8%で洗浄し、次いでAPを30mLのEtOAcで4回抽出した。OPを合わせ、100mLのNaHCO 5%で1回洗浄し、次いでAPを20mLのEtOAcで1回抽出した。OPを合わせ、100mLのNaHCO 10%で1回洗浄し、次いでAPを20mLのEtOAcで1回抽出した。OPを合わせ、最後の操作をもう1回繰り返した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~30mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で1時間30分乾燥させて、2.296g(生の収率:105.5%)の暗褐色の粘着性のある泡状物を362-VRO052-03-002粗製物1#1として得た。
【0101】
粗物質をまず、20mLのEtOAcを使用してスラリーを通して精製した。懸濁液を約30分間室温で撹拌し、次いで0~5℃に冷却し、P3焼結ガラスフィルター上で濾過した。濾過ケーキを6mLの冷EtOAcで2回洗浄し、次いで高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、1.114g(生の収率:51.2%)のわずかにベージュ色の粉末を362-VRO052-03-002スラリー1#1として得た。
【0102】
この物質を、50gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=16.9cmのカラム)を使用したCCにより再精製し、続いて溶離液として1%EtNを含む純粋なEtOAcを使用したTLCを使用して溶出した;R=0.52。生成物をヘプタン-EtOAc(1:1)から常に1%EtNを含む純粋なEtOAcへの勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、240~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で3時間乾燥させて、966mg(生の収率:44.4%)の白色の固体を362-VRO052-03-002 CC1#1として得た。
【0103】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=8.55(d,J=4.9,1H,17),7.69(t,J=7.6,1H,16),7.25-7.12(m,3H,11,14,15),6.60(d,J=8.5,1H,5),4.45-4.33(m,1H,6),4.27(qd,J=7.2,3.2,2H,2),3.70(t,J=6.3,2H,12),3.66(d,J=1.9,1H,4),3.46(d,J=1.9,1H,3),3.03(t,J=6.1,2H,13),1.53(br.m,3H,7,8),1.32(t,J=7.1,3H,1),0.89(d,J=5.8,6H,9,10)。
【0104】
13C-NMR(75MHz,CDCl3)δ=147.39(17),138.40(15),124.33(14,16),122.27(14,16),62.26(2),53.86(4),52.88(3),51.38(6),41.57(7),38.56(12),35.49(13),24.82(8),22.74(9,10),22.01(9,10),14.00(1)。
【0105】
<実施例4:VRO059の合成>
まず、ジペプチドを形成した。マグネチックスターラーを備えた50mLの丸底フラスコに、1.320gのBoc-L-Leu(5.707mmol、1.1当量)及び25mLのDCMを導入し、得られた濁った溶液を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。5.045gのHATU(15.565mmol、3.0当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで825μLの3-(ピペリジニル)プロパンアミン(5.188mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、4.5mLのDIPEA(25.941mmol、5.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた黄色がかった混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0106】
懸濁液中に白色の固体を含む褐色がかった赤色の溶液である反応混合物を、P3焼結ガラスフィルター上で濾過して塩を除去した。濾液を5mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaCl 5.8%で洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、以前の洗浄を2回繰り返した。OPを合わせ、50mLのNaHCO3 10%で1回洗浄し、最後に50mLのNaCl 11.6%で洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、850~70mbar)内に乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間30分乾燥させて、4.113g(生の収率:223.0%)の褐色がかった赤色の油状物質を362-VRO059-01-002粗製物1#1として得た。
【0107】
粗物質を、50gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=16.9cmのカラム)を使用したCCにより精製し、続いて溶離液として1.5%のMeOH及び1%のEt3Nを含むDCMを使用したTLCを使用して溶出した;Rf=0.56。生成物を、純粋なDCMから常に1%のEt3Nを含む2%のMeOHを含むDCMへの勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、750~60mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、1.557g(生の収率:84.4%)の黄色がかった油状物を362-VRO059-01-002 CC1#1として得た。
【0108】
TMUを除去するために、CCから回収した物質を再抽出した。この物質を10mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、次いで50mLのNaHCO3 10%で2回洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~40mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で3時間乾燥させて、1.181g(生の収率:64.0%)の黄色がかった粘性のある物質を362-VRO059-01-001粗製物2#1として得た。
【0109】
再抽出した物質を、50gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=16.9cmのカラム)を使用した2回目のCCにより精製し、続いて溶離液として1%のEt3Nを含む純粋なEtOAcを使用したTLCを使用して溶出した;Rf=0.47。生成物をヘプタン-EtOAc(1:1)から純粋なEtOAcへの勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、220~60mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、1.038g(生の収率:56.3%)の淡黄色がかった固体を362-VRO059-01-002 CC2#1として得た。
【0110】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=7.63(br.s,1H,10),4.98(d,J=7.7,1H,4),4.10(br.s,1H,5),3.46-3.21(m,2H,11),2.71-2.13(m,6H,13,14,15),1.79-1.55(m,8H,6’’,7,12,16,17),1.54-1.35(m,3H,6’,18),1.43(s,9H,1,2,3),0.94(dd,J=6.2,3.5,6H,8,9)。
【0111】
13C NMR(75MHz,CDCl3)δ=58.15(13),54.56(14,15),53.15(5),42.32(6),39.62(11),28.27(1,2,3),25.84(12,16,17),24.66(7),24.61(12,16,17),24.11(18),23.05(8,9),21.97(8,9)。
【0112】
次いでBoc保護基を以下のように除去した。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、1.024gの362-VRO059-01-001 CC2#1(2.880mmol、当量)及び7.7mLのDCMを導入し、得られた無色の溶液を室温で10分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。2.6mLのTFA(33.430mmol、11.61当量)を0~5℃で滴下して添加した。反応混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物を5mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLの水で洗浄した。APを8mLのNaOH 25%を使用してpH>10になるように塩基性化し、次いで20mLのDCMで3回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaCl 11.6%で洗浄した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、800~70mbar)内に乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で6時間乾燥させて、654mg(生の収率:88.9%)の淡黄色がかった油状物を362-VRO059-02-002粗製物1#1として得た。この物質を次のステップにおいてさらに精製することなく「そのまま」使用した。
【0113】
H-NMR(300MHz,CDCl)δ=7.90(br.s,1H,7),3.44-3.21(m,3H,2,8),2.61-2.26(m,6H,10,11,12),1.66(br.m,10H,1,3’,4,9’,9’’,13,14),1.51-1.41(m,2H,15),1.40-1.27(m,1H,3’’),0.94(dd,J=8.0,6.5,6H,5,6)。
【0114】
13C-NMR(75MHz,CDCl)δ=57.78(10),54.58(11,12),53.74(2),44.32(3),38.64(8),25.75(9,13,14),25.59(9,13,14),24.80(4),24.18(15),23.39(5,6),21.37(5,6)。
【0115】
最後に、ジペプチドをエポキシ頭部にカップリングさせた。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、356mgの362-BB01-03-004粗製物1#1(2.241mmol、1.05当量)及び7.5mLのDMFを導入し、得られた溶液を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。2.075gのHATU(6.402mmol、3.0当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで7.5mLのDMF中の溶液中の545mgの362-VRO059-02-002粗製物1#1(2.134mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、1.9mLのDIPEA(10.699mmol、5.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた黄褐色がかった混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0116】
透明な暗褐色の溶液である反応混合物を、15mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaCl 5.8%で洗浄し、次いでAPを15mLのEtOAcで4回抽出する。OPを合わせ、50mLのNaHCO 10%で4回洗浄する。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~30mbar)内に乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で1時間30分乾燥させて、1.063g(生の収率:125.3%)の暗褐色の粘着性のある固体を362-VRO059-03-003粗製物1#1として得た。
【0117】
粗物質を、50gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=16.9cmのカラム)を使用したCCにより精製し、続いて溶離液として1%MeOH及び1%EtNを含むDCMを使用したTLCを使用して溶出した;R=0.36。生成物を、純粋なDCMから常に1%EtNを含む1%MeOHを含むDCMへの勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、800~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、397mg(生の収率:46.8%)の粘性のある褐色がかったオレンジ色の固体を362-VRO059-03-003 CC1#1として得た。
【0118】
この物質を、50gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=16.9cmのカラム)を使用したCCにより再精製し、続いて溶離液として1%EtNを含むヘプタン-アセトン(3:7)を使用したTLCを使用して溶出した;R=0.57。生成物をヘプタン-アセトン(8:2)から常に1%EtNを含むヘプタン-アセトン(3:7)への勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、320~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で1時間乾燥させて、116mg(生の収率:17.4%)の褐色がかったベージュ色の固体を362-VRO059-03-003 CC2#1として得た。この物質を再抽出した。これを20mLのEtOAc及び20mLの水を使用して分液漏斗に移し、次いでHCl 1Mを添加してpHを1にした。APをpH9に塩基性化し、20mLのEtOAcで3回抽出した。OPを合わせ、NaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~30mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で3時間乾燥させて、111mg(生の収率:13.7%)の粘性のあるオレンジ色がかった黄色の固体を362-VRO059-03-003抽出物1#1として得た。
【0119】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=8.17(t,J=5.0,1H,11),6.69(d,J=8.5,1H,5),4.43-4.31(m,1H,6),4.25(qq,J=7.1,3.6,2H,2),3.67(d,J=1.9,1H,4),3.46(d,J=1.9,1H,3),3.44-3.23(m,2H,12),2.73-2.30(m,6H,14,15,16),1.63(br.m,11H,7,8,13,17,18,19),1.30(t,J=7.1,3H,1),0.93(d,J=5.3,6H,9,10)。
【0120】
13C-NMR(75MHz,CDCl3)δ=62.20(2),58.25(14),54.47(15,16),53.89(4),52.84(3),51.43(6),42.09(7),40.01(12),25.79(13,17,18,19),24.76(8),23.98(13,17,18,19),23.87(13,17,18,19),22.95(9,10),22.02(9,10),13.99(1)。
【0121】
<実施例5:VRO073の合成>
まず、ジペプチドを形成した。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、970mgのBoc-L-Leu(4.195mmol、1.05当量)及び10mLのDCMを導入し、得られた濁った溶液を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。1.943gのHATU(5.993mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで457μLの2-フルオロベンジルアミン(3.995mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、1.4mLのDIPEA(7.991mmol、2.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた濁った強い黄色の溶液を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0122】
わずかに濁った黄色の溶液である反応混合物を、10mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaCl 5.8%で洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。この操作をさらに2回繰り返し、次いでOPを合わせ、50mLのNaHCO3 10%で1回洗浄し、最後に50mLのNaCl 11.6%で洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、850~70mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で3時間乾燥させて、1.841g(生の収率:136.2%)のベージュ色がかった黄色の粘性のある固体を362-VRO073-01-001粗製物1#1として得た。
【0123】
粗物質を、45gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=15.2cmのカラム)を使用したCCにより精製し、続いて溶離液としてヘプタン-EtOAc(7:3)を使用したTLCを使用して溶出した;Rf=0.49。生成物を純粋なヘプタンからヘプタン-EtOAc(6:4)への勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、220~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、1.261g(生の収率:93.3%)の白色の泡状物を362-VRO073-01-001 CC1#1として得た。
【0124】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=7.31(td,J=7.8,1.6,1H,14),7.27-7.18(m,1H,12),7.14-6.96(m,2H,13,15),6.54(br.s,1H,10),4.85(s,1H,4),4.85(br.s,J=6.8,1H),4.48(d,J=4.6,2H,11),4.10(br.s,1H,5),1.77-1.57(m,2H,6’,7),1.55-1.45(m,1H,6’’),1.41(s,9H,1,2,3),0.92(dd,J=6.3,2.9,6H,8,9)。
【0125】
13C NMR(75MHz,CDCl3)δ=129.95(12,14),129.23(12,14),129.12(12,14),124.24(13),124.19(13),115.41(15),115.13(15),53.04(5),40.90(6),37.40(11),37.34(11),28.18(1,2,3),24.68(7),22.85(8,9),21.92(8,9)。
【0126】
次いでBoc保護基を以下のように除去した。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、1.249gの362-VRO073-01-001 CC1#1(3.691mmol、1.0当量)及び9.4mLのDCMを導入し、得られた無色の溶液を室温で10分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。3.1mLのTFA(40.48mmol、10.97当量)を0~5℃で滴下して添加した。反応混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で2時間30分撹拌した。反応混合物を25mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、25mLの水で洗浄した。APを3mLのNaOH 25%を使用してpH>10になるように塩基性化し、次いで25mLのDCMで3回抽出した。OPを合わせ、25mLのNaCl 11.6%を使用して洗浄した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、800~70mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で1時間乾燥させて、465mg(生の収率:52.9%)のほぼ無色の油状物を362-VRO073-02-001粗製物1#1として得た。この物質を次のステップにおいてさらに精製することなく「そのまま」使用した。
【0127】
H-NMR(300MHz,CDCl)δ=7.67(br.s,1H,7),7.32(td,J=7.7,1.7,1H,11),7.29-7.18(m,1H,9),7.15-6.98(m,2H,10,12),4.49(d,J=6.1,2H,8),3.42(dd,J=9.9,3.4,1H,2),1.83-1.62(m,2H,3’’,4),1.57-1.21(m,3H,1,3’),0.94(dd,J=8.7,6.0,6H,5,6)。
【0128】
最後に、ジペプチドをエポキシ頭部にカップリングさせた。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、320mgの362-BB01-03-001粗製物1#1(1.996mmol、1.05当量)及び5mLのDCMを導入し、得られた白色の懸濁液を5分間室温で撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。924mgのHATU(2.851mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで5mLのDCM中の溶液中の453mgの362-VRO073-02-001粗製物1#1(1.901mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、993μLのDIPEA(5.703mmol、3.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた黄色がかった混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0129】
黄色がかったオレンジ色の溶液である反応混合物を、10mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaCl 2.6%で洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaCl 2.6%で1回洗浄し、次いでAPを10mLのDCMで1回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaCl 5.8%及び5mLのHCl 1Mで洗浄した結果、セライトで濾過する必要があるエマルジョンが生じた。濾液を10mLのDCMを使用して再び分液漏斗に移し、50mLのNaHCO 10%で1回、及び50mLのNaCl 11.6%で1回洗浄した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~30mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、835mg(生の収率:115.5%)のペースト状のオレンジ色の固体を362-VRO073-03-001粗製物1#1として得た。
【0130】
粗物質を、45gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=15.2cmのカラム)を使用したCCにより精製し、続いて溶離液としてヘプタン-EtOAc(1:1)を使用したTLCを使用して溶出した;R=0.50。生成物を純粋なヘプタンからヘプタン-EtOAc(2:8)への勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、200~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で3時間乾燥させて、110mg(生の収率:15.2%)の白色の固体を362-VRO073-03-001 CC1#1として得た。
【0131】
H-NMR(300MHz,CDCl)δ=7.36-7.21(m,2H,13,15),7.17-6.99(m,2H,14,16),6.51(d,J=8.6,1H,5),6.35(t,J=5.5,1H,11),4.48(dd,J=5.8,2.5,2H,12),4.41(td,J=8.5,5.8,1H,6),4.27(qq,J=6.9,3.6,2H,2),3.66(d,J=1.9,1H,4),3.44(d,J=1.9,1H,3),1.75-1.60(m,1H,7’’),1.60-1.44(m,2H,7’,8),1.31(t,J=7.1,3H,1),0.90(dd,J=6.2,4.5,6H,9,10)。
【0132】
<実施例6:VRO109の合成>
まず、ジペプチドを形成した。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、190mgの(S)-Boc-2-アミノ-4,4,4-トリフルオロ-酪酸(0.739mmol、1.0当量)及び10mLのDCMを導入し、得られた混合物を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。359mgのHATU(1.108mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで94μLのIAA(0.813mmol、1.1当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、257μLのDIPEA(1.477mmol、2.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られたわずかに淡黄色の混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0133】
黄色がかったオレンジ色の溶液である反応混合物を、ロタベーパー(40℃、750~400mbar)内で乾燥するまで濃縮した。残渣を20mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaHCO3 5%で洗浄し、次いでAPを15mLのEtOAcで2回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaHCO3 5%で2回、50mLのNaHCO3 10%で1回、及び50mLのNaCl 11.6%で1回洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~30mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で6時間乾燥させて、224mg(生の収率:92.9%)のオフホワイトの結晶化固体を362-VRO109-01-001粗製物1#1として得た。
【0134】
粗物質を、50gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=16.9cmのカラム)を使用したCCにより精製し、続いて溶離液としてヘプタン-EtOAc(7:3)を使用したTLCを使用して溶出した;Rf=0.46。純粋なヘプタンからヘプタン-EtOAc(6:4)への勾配で生成物を溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、220~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で4時間乾燥させて、204mg(生の収率:84.6%)の白色の泡状物を362-109-01-001 CC1#1として得た。
【0135】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=6.26(br.s,1H,7),4.97(d,J=6.6,1H,4),4.49-4.26(m,1H,5),3.39-3.16(m,2H,8),2.93-2.69(m,1H,6’),2.62-2.37(m,1H,6’’),1.69-1.51(m,1H,10),1.45(s,9H,1,2,3),1.39(q,J=7.3,2H,9),0.91(d,J=6.6,6H,11,12)。
【0136】
13C NMR(75MHz,CDCl3)δ=49.48(5),38.12(9),38.00(8),28.15(1,2,3),25.67(10),22.32(11,12)。
【0137】
次いでBoc保護基を以下のように除去した。マグネチックスターラーを備えた10mLの丸底フラスコに、201mgの362-VRO109-01-001 CC1#1(0.616mmol、当量)及び5mLのDCMを導入し、得られた無色の溶液を室温で10分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。1.7mLのTFA(22.200mmol、36.045当量)を0~5℃で滴下して添加した。反応混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を25mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLの水で洗浄した。APを4mLのNaOH 25%を使用してpH>10になるように塩基性化し、次いで15mLのDCMで3回抽出した。OPを合わせ、NaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、750~400mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で6時間乾燥させて、256mg(生の収率:96.6%)のほぼ無色の油状物を362-VRO109-02-001粗製物1#1として得た。この物質を次のステップにおいてさらに精製することなく「そのまま」使用した。
【0138】
H-NMR(300MHz,DMSO-d6-d6)δ=8.07(t,J=5.3,1H,4),3.48(dd,J=7.5,5.4,1H,2),3.19-2.97(m,2H,5),2.78-2.53(m,1H,3’’),2.49-2.24(m,1H,3’),1.56(hept,J=6.7,1H,7),1.30(q,J=7.2,2H,6),0.86(dd,J=6.6,0.6,6H,8,9)。
【0139】
13C-NMR(75MHz,DMSO-d6)δ=49.20(2),49.16(2),37.62(6),37.46(3),37.11(3),36.57(5),24.78(7),22.07(8,9),22.05(8,9)。
【0140】
最後に、ジペプチドをエポキシ頭部にカップリングさせた。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、115mgの362-BB01-03-004粗製物1#1(0.720mmol、当量)及び5mLのDMFを導入し、得られた溶液を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。318mgのHATU(0.981mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで5mLのDMF中の溶液中の148mgの362-VRO109-02-001粗製物1#1(0.654mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、228μLのDIPEA(1.308mmol、2.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた黄色の混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0141】
オレンジ色の溶液である反応混合物を、20mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaHCO 5%で洗浄し、次いでAPを15mLのEtOAcで2回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaHCO 5%で3回、及び50mLのNaCl 11.6%で1回洗浄した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~140mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で6時間乾燥させて、237mg(生の収率:102.5%)の非常に淡いオレンジ色の固体を362-VRO109-03-001粗製物1#1として得た。
【0142】
粗物質を、5mLのEtOAc-ヘプタン(1:1)を使用したスラリーを通して精製した。懸濁液を室温で20分間撹拌し、次いで0~5℃に冷却し、15分間撹拌した。懸濁液を、ナイロン膜(0.45μm)を備えた限外濾過装置で濾過し、濾過ケーキを冷EtOAc-ヘプタン(1:9)で3回洗浄し、次いで高真空下(室温、10~3mbar)で3時間乾燥させて、175mg(生の収率:72.6%)の白色の粉末を362-VRO109-03-001スラリー1#1として得た。
【0143】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=6.59(d,J=8.6,1H,5),6.18(s,1H,8),4.70(td,J=8.9,4.8,1H,6),4.28(qd,J=7.1,2.5,2H,2),3.72(d,J=1.9,1H,4),3.45(d,J=1.8,1H,3),3.27(tdd,J=7.4,5.8,4.7,2H,9),2.74(ddt,J=16.4,10.7,5.3,1H,7’),2.65-2.40(m,1H,7’’),1.60(dt,J=13.4,7.0,2H,11),1.40(q,J=7.2,2H,10),1.32(t,J=7.2,3H,1),1.25(d,J=1.8,0H),0.91(d,J=6.6,6H,12,13)。
【0144】
<実施例7:VRO244の合成>
まず、ジペプチドを形成した。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、190mgのBoc-(S)-2-アミノ-4,4,4-酪酸(0.739mmol、1.0当量)及び10mLのDCMを導入し、得られた混合物を室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。359mgのHATU(1.108mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで93μLの2-フルオロベンジルアミン(0.813mmol、1.1当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、257μLのDIPEA(1.477mmol、2.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られたわずかに淡い黄色の混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0145】
透明な黄色の溶液である反応混合物を、ロタベーパー(40℃、750~400mbar)内で乾燥するまで濃縮した。残渣を20mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaHCO3 5%で洗浄し、次いでAPを15mLのEtOAcで2回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaHCO3 5%で2回、50mLのNaHCO3 10%で1回、及び50mLのNaCl 11.6%で1回洗浄した。OPをNa2SO4上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~140mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で6時間乾燥させて、279mg(生の収率:103.7%)のオレンジ色の固体を362-VRO244-01-001粗製物1#1として得た。
【0146】
粗物質を、50gのシリカゲル(φ=3.2cm及びh=16.9cmのカラム)を使用したCCにより精製し、続いて溶離液としてヘプタン-アセトン(7:3)を使用したTLCを使用して溶出した;Rf=0.45。生成物を純粋なヘプタンからヘプタン-アセトン(6:4)への勾配で溶出し、所望の生成物を含有する画分を合わせ、ロタベーパー(40℃、350~50mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、259mg(生の収率:96.2%)のわずかに淡い黄色の固体を362-VRO243-01-001 CC1#1として得た。
【0147】
H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=7.36-7.20(m,2H,9,11),7.14-7.06(m,1H,10),7.09-6.98(m,1H,12),6.73(br.s,1H,7),4.95(br.s,1H,4),4.61-4.31(m,3H,5,8),2.96-2.72(m,1H,6’),2.65-2.38(m,1H,6’’),1.42(s,9H,1,2,3)。
【0148】
13C NMR(75MHz,CDCl3)δ=130.01(9,11),129.53(9,11),129.41(9,11),124.33,(10),124.28(10),115.54(12),115.26(12),49.56(5),37.81(6,8),37.76(6,8),28.10(1,2,3)。
【0149】
次いでBoc保護基を以下のように除去した。マグネチックスターラーを備えた10mLの丸底フラスコに、252mgの362-VRO244-01-001 CC1#1(0.692mmol、1.0当量)及び5mLのDCMを導入し、得られた無色の溶液を室温で10分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。1.7mLのTFA(22.200mmol、32.10当量)を0~5℃で滴下して添加した。反応混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を25mLのDCMを使用して分液漏斗に移し、50mLの水で洗浄した。APを4mLのNaOH 25%を使用してpH>10になるように塩基性化し、次いで15mLのDCMで3回抽出した。OPを合わせ、NaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、750~400mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で4時間乾燥させて、172mg(生の収率:94.1%)のほぼ無色の油状物を362-VRO244-02-001粗製物1#1として得た。この物質を次のステップにおいてさらに精製することなく「そのまま」使用した。
【0150】
H-NMR(300MHz,DMSO-d6)δ=8.62(t,J=4.7,1H,4),7.39-7.23(m,2H,6,8),7.22-7.05(m,2H,7,9),4.34(d,J=5.9,2H,5),3.58(dd,J=7.8,5.1,1H,2),3.03(s,2H,1),2.82-2.58(m,1H,3’’),2.48-2.30(m,1H,3’)。
【0151】
13C-NMR(75MHz,DMSO-d6)δ=129.26(8),129.21(8),128.69(6),128.58(6),124.00(7),123.95(7),114.86(9),114.58(9),49.29(2),49.25(2),37.78(3),37.43(3),37.08(3),36.73(3),35.85(5),35.79(5)。
【0152】
最後に、ジペプチドをエポキシ頭部にカップリングさせた。マグネチックスターラーを備えた25mLの丸底フラスコに、111mgの362-BB01-03-005粗製物1#1(0.695mmol、当量)及び5mLのDMFを導入し、得られたDMFを室温で5分間撹拌し、次いで氷浴を使用して0~5℃に冷却した。307mgのHATU(0.948mmol、1.5当量)を0~5℃で添加し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。次いで5mLのDMF中の溶液中の167mgの362-VRO244-02-001粗製物1#1(0.632mmol、1.0当量)を0~5℃で導入し、反応混合物をこの温度で5分間撹拌した。最後に、220μLのDIPEA(1.264mmol、2.0当量)を0~5℃で滴下して添加した。得られた黄色の混合物を0~5℃で5分間撹拌し、次いで氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。
【0153】
オレンジ色の溶液である反応混合物を、20mLのEtOAcを使用して分液漏斗に移し、50mLのNaHCO 5%で洗浄し、次いでAPを15mLのEtOAcで2回抽出した。OPを合わせ、50mLのNaHCO 5%で3回、及び50mLのNaCl 11.6%で1回洗浄した。OPをNaSO上で乾燥させ、P3焼結ガラスフィルター上で濾過し、ロタベーパー(40℃、220~30mbar)内で乾燥するまで濃縮した。この物質を高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、274mg(生の収率:106.7%)の褐色がかったオレンジ色の固体を362-VRO244-03-001粗製物1#1として得た。
【0154】
粗物質を3mLのEtOAc-ヘプタン(2:1)を使用してスラリーを通して精製した。粒状懸濁液を40℃で10分間撹拌し、次いで室温で15分間撹拌し、最後に氷浴を使用して0~5℃に冷却した後、濾過した。懸濁液を、ナイロン膜(0.45μm)を備えた限外濾過装置で濾過し、濾過ケーキを洗浄し、1mLの冷EtOAc-ヘプタン(1:1)で5回粉砕し、次いで高真空下(室温、10~3mbar)で2時間乾燥させて、131mg(生の収率:51.0%)のオフホワイトの顆粒を362-VRO244-03-001スラリー1#1として得た。
【0155】
H-NMR(300MHz,DMSO-d6)δ=8.89(d,J=8.6,1H,5),8.76(t,J=5.8,1H,8),7.38-7.24(m,2H,10,12),7.24-7.11(m,2H,11,13),4.70(td,J=9.0,4.0,1H,6),4.33(d,J=5.8,2H,9),4.27-4.10(m,2H,2),3.69(d,J=1.8,1H,4),3.57(d,J=1.8,1H,3),2.91-2.55(br.m,2H,7),1.23(t,J=7.1,3H,1)。
【0156】
13C-NMR(75MHz,DMSO-d6)δ=129.08(10,12),129.02(10,12),128.76(10,12),128.65(10,12),124.02(11),114.92(13),114.64(13),61.37(2),52.87(4),51.09(3),46.83(6),35.99(9),35.93(9),34.39(7),34.05(7),13.63(1)。
【0157】
<実施例8:単離された酵素に対するインビトロ酵素活性アッセイ>
単離されたカテプシンBを阻害する、化合物VRO006_ハイドロール、VRO047_ハイドロール、VRO052_ハイドロール、VRO059_ハイドロール、VRO073_ハイドロール、VRO109_ハイドロール、VRO244_ハイドロール、VRO001_ハイドロール、VRO082_ハイドロール、VRO035_ハイドロール、VRO119_ハイドロール、及びVRO243_ハイドロールの能力を、酵素アッセイにおいて評価し、先行技術のE64cの阻害活性と比較した。このアッセイにおいて、化合物VRO006、VRO042、VRO047、VRO052、VRO059、VRO073、VRO109、VRO244、VRO001、VRO082、VRO035、VRO119、及びVRO243を使用し、消化管内で起こるエステル切断を模倣し、プロドラッグ(対応するVROxxx化合物)から遊離酸(VROxxx_ハイドロール化合物)を放出させるために、アッセイをNaOHの存在下で行った。化合物VRO006、VRO042、VRO047、VRO052、VRO059、VRO073、VRO109及びVRO244の化学構造及びそれらの化学名を上記の表2に示す。VRO001、VRO082、VRO035、VRO119及びVRO243の構造は以下の表3に示す。カテプシンBはブタ肝臓ホモジネート由来であった。
【0158】
【表3】
【0159】
酵素アッセイを以下のように行った。ホモジナイズしたブタ肝臓の試料(1つの試料当たり75mgの新鮮な組織)を、2.5mMのEDTA、2.5mMのDTT及び0.1%のTriton X-100、並びに段階的濃度の試験物質(0.1nM~50mM)を補足した、1Mの酢酸ナトリウム(pH6)中で50mMにてZ-FR-AMC(ベンジルオキシカルボニル-L-アルギニル-L-アルギニン-4-メチルクマリル-7-アミド)と37℃で1時間インキュベートした。試験物質のストック溶液はDMSO中で20mMであった。蛍光は365nmを励起波長として使用して445nmで測定した。
【0160】
本発明の化合物であるVRO006_ハイドロール、VRO047_ハイドロール、VRO052_ハイドロール、VRO059_ハイドロール、VRO073_ハイドロール、VRO109_ハイドロール及びVRO244_ハイドロールは、約100nM以下のIC50で好適な阻害活性を示したが(図1を参照のこと)、比較化合物であるVRO001_ハイドロール、VRO082_ハイドロール、VRO035_ハイドロール、VRO119_ハイドロール及びVRO243_ハイドロールは、図2から理解できるように、100超のIC50でcatBを効果的に阻害しなかった。
【0161】
このアッセイにより、分子の中心にあるアミドからの水素が酵素親和性にとって重要であり、おそらくタンパク質とのH結合に関与していることが実証された。実際に、VRO001_ハイドロールはcatBを阻害できないことが証明された。他方で、VRO006からの活性はE64cの活性とかなり似ているので、イソアミルアミン部分の隣のアミド上の水素は結合には関与していない。
【0162】
で行った修飾は全て良好な耐容性を示した。メトキシ化合物VRO047_ハイドロールは、E64cとほぼ同じ活性を示した。VRO052_ハイドロール及びVRO059_ハイドロール、並びにVRO073_ハイドロールも同様である。VRO052_ハイドロール及びVRO073_ハイドロールのように嵩高い芳香族部分を用いても、活性はわずかに減少するだけである。しかしながら、catBのS3ポケットの耐容性には限界がある。実際に、VRO035_ハイドロールに存在する嵩高く、高度に電気陰性である、-CF部分は受け入れられず、この化合物の阻害活性は喪失した。
【0163】
catBのS2ポケットに結合するRに関して、耐容性はかなり低かった。VRO082_ハイドロールへのエーテルの導入のようなわずかな変化でさえ、阻害活性を維持することはできなかった。VRO119_ハイドロールに追加されたピリジニル部分からの嵩高さも許容されなかった。しかしながら、特にR位の他の部分で得られた結果を考慮すると、ある候補が驚きをもたらした。VRO109_ハイドロールは、E64cに存在するロイシンの代わりにトリフルオロ部分を含む。R位にこのようなトリフルオロ部分を加えると、阻害活性が喪失したが、他のいくつかの部分、及びさらには嵩高い部分はこのような活性を何とか維持した。ここで、驚くべきことに、VRO109_ハイドロールはE64cと比較して増加した阻害活性を示すことが実証された。本明細書で試験した全ての候補の中で、先行技術のE64cと比較して、わずかではあるが有意な阻害活性の増加を示したものはVRO109_ハイドロールだけである。トリフルオロ部分は、水素結合を生成しにくく、E64cと比較して化合物の親油性を著しく増加させるため、特に有利である。
【0164】
VRO244_ハイドロールを用いて行ったアッセイは、R3位のトリフルオロ部分がR位の嵩高い部分(この場合、2-フルオロフェニルメチル)と適合するという証拠をもたらす。
【0165】
個々に、ロイシンのトリフルオロ部分による置換、及びイソアミルアミン部分に近いアミドのメチル化は、上記で説明したように、活性及び薬物類似性の両方に関して有望な結果を示した。しかしながら、VRO243_ハイドロールにおけるこれらの組み合わせは活性の大幅な喪失を示した。これは確かに、酵素の触媒部位の3D立体構造、及びトリフルオロ部分がそこにどのように配置されているかに起因する。この特殊な3Dレイアウトは、おそらく窒素がメチル化されたときに得られるものとは不適合である。
【0166】
<実施例10:インビトロでの全細胞酵素活性アッセイ>
単離されたcatBで得られた結果(実施例9を参照のこと)を確認するために、catBに対する本発明の化合物の阻害活性を全細胞アッセイにおいて評価した。この場合、本発明の化合物の遊離酸(加水分解された)形態を使用した。
【0167】
様々な濃度(50、10、2、0.4、0.08、0.016、0.0032、及び0mM)の試験物質を96ウェルプレートに入れ、50’000個のHEK293T細胞を各ウェルに加えた。次いでプレートを37℃で1時間インキュベートした。プレートを2000rpmで7分間遠心分離し、上清を除去した。100mlの新しく調製したZ-FR-AMC基質は、1Mの酢酸ナトリウム(pH6.0)、2.5mMのEDTA、2.5mMのDTT、0.1%のTriton X-100及びZ-FR-AMC 20mMを含む。1時間のインキュベーション後、励起波長として365nmを使用して445nmで蛍光を測定した。
【0168】
図3に示すように、VRO052_ハイドロール及びVRO059_ハイドロールの阻害活性を全細胞アッセイにおいて確認した。このような活性は、単離された酵素でのアッセイよりもさらにE64cの活性に近かった。VRO052_ハイドロール及びVRO059_ハイドロールの活性は、単離酵素を用いたアッセイではE64cの活性よりもわずかに低かったが、これらの化合物は全細胞アッセイにおいてE64cの活性と同様の阻害活性を示す。VRO052_ハイドロール及びVRO059_ハイドロールの相対的阻害活性のこの改善は、本発明の化合物がより親油性であるため、先行技術の化合物よりも細胞膜を通過することによって容易に細胞内に侵入するという事実のためであると考えられる。したがって、この試験により、単離された酵素での阻害活性のわずかな減少を、改善された親油性が補っていることが確認される。これらの知見に基づくと、VRO052_ハイドロール及びVRO059_ハイドロールは、インビボにおいてE64dと同様の阻害活性を示すことが予想される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】