(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】VEGF及びTIE2を結合する融合タンパク質並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250128BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250128BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20250128BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250128BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250128BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250128BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250128BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250128BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250128BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250128BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20250128BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20250128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250128BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20250128BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K14/71
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 Z
A61K38/17
A61K39/395 N
A61K47/60
A61P9/00
A61P27/02
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542028
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 US2023060582
(87)【国際公開番号】W WO2023137395
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524263743
【氏名又は名称】インゲニア・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ミンキュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,クワンス
(72)【発明者】
【氏名】ハン,サンヨル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥロスト,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
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4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
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4H045BA57
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、Tie-2に対する抗体又はその抗原結合断片と血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインとを有する融合タンパク質、該融合タンパク質を作製するための方法、並びに該融合タンパク質を含む、血管新生疾患を予防若しくは処置するための、又は血管新生、内皮シグナル伝達、炎症及び/若しくは血管漏出を調節するための薬学的組成物及び方法に言及する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗Tie2抗体又はその抗原結合断片と血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインとを含む融合タンパク質であって、ここで、前記融合タンパク質は、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメイン及びVEGFに結合する、融合タンパク質。
【請求項2】
前記VEGF結合ドメインがVEGF受容体細胞外ドメインを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインであって、配列番号13のVEGF受容体1(VEGFR1)の血管内皮増殖因子(VEGF)-A結合領域及び配列番号14のVEGF受容体2(VEGFR2)の血管内皮増殖因子(VEGF)-A結合領域を含む、血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインと、
抗Tie2抗体又はその抗体結合断片と、
を含む融合タンパク質であって、
ここで、前記融合タンパク質は、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメイン及びVEGFに結合する、
融合タンパク質。
【請求項4】
前記VEGF結合ドメインが、前記抗Tie2抗体又はその抗原結合断片の重鎖(HC)のC末端に連結されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記融合タンパク質が、Tie2の配列番号20のアミノ酸配列及び/又はTie2の配列番号21のアミノ酸配列を結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記抗Tie2抗体がIgG1アイソタイプを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記抗Tie2抗体又はその抗原結合断片が、配列番号5~7のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを含む重鎖可変領域と、配列番号8~10のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域とを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記VEGF結合ドメインが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記VEGF結合ドメインが配列番号15のアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、前記VEGF結合ドメインと前記抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、ここで、前記リンカーは、5~50個のアミノ酸残基、10~40個の残基、15~30個の残基又は20個の残基を有する配列を含んでもよい、請求項1~9のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記融合タンパク質が、前記VEGF結合ドメインと前記抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、そしてここで、前記リンカーは、配列番号16の前記アミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記融合タンパク質が、前記VEGF結合ドメインと前記抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、そしてここで、前記リンカーは、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記融合タンパク質が、前記VEGF結合ドメインと前記抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、そしてここで、前記リンカーは、配列番号25のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含み、ここで、前記VEGF結合ドメインはVEGF受容体であってもよい、請求項1~10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記融合タンパク質が、前記VEGF結合ドメインと前記抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、そしてここで、前記リンカーは、配列番号25のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記融合タンパク質が、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含むCHドメインを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
前記融合タンパク質が、配列番号17のアミノ酸配列を含むCHドメインを含む、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記融合タンパク質が、Fc受容体との相互作用を低下させるか又は排除する1以上の変異を重鎖定常領域中に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
前記1以上の変異が、L234、L235、G236及びG237(EUナンバリング)を、LAGA変異、FEGG変異、AAGG変異、AAGA変異、LALA変異又はそれらの組み合わせに変化させることを含む、請求項17に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
前記1以上の変異が、LALA変異、並びに、K322A及びP331S(EUナンバリング)であってもよいK322及びP331(EUナンバリング)における変異を含む、請求項18に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
前記融合タンパク質が、L234、L235、H310、M252、I253、S254、T256、H433、N434及び/又はH435(EUナンバリング)に1以上の変異を含み、ここで、前記変異は、a)L234A、L235A及びH310A;又はb)M252Y;I253A、I253M若しくはI253V;S254T;T256D;H433K;N434F;及び/若しくはH435A、H435Q若しくはH435RであってもよいM252、I253、S254、T256、H433、N434及び/若しくはH435であってもよい、請求項1~18のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
前記融合タンパク質が、前記抗Tie2抗体又はその抗原結合断片の1以上の重鎖定常ドメインのC末端側に及びN末端からC末端への順序で、前記VEGF結合ドメインと前記抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記リンカーが、配列番号16又は25のアミノ酸配列を含み、そして、前記VEGF結合ドメインが、配列番号15のアミノ酸配列を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
前記融合タンパク質が、配列番号17のアミノ酸配列を含むCHドメインと、前記VEGF結合ドメインと前記抗Tie2抗体又はその抗体断片との間に配列番号16又は25のアミノ酸配列を含むリンカーと、配列番号15のアミノ酸配列を含むVEGF結合ドメインとを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
前記融合タンパク質が、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
前記融合タンパク質が、配列番号11又は26のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を含む重鎖を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
前記融合タンパク質が、配列番号11又は26のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項25に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
前記融合タンパク質が、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を含む軽鎖を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
前記融合タンパク質が、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項27に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
前記融合タンパク質が、配列番号11又は26のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
前記融合タンパク質が、3E
-9M未満の親和性K
D(M)で、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメインに結合する、請求項1~29のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
前記融合タンパク質がペグ化されている、請求項1~30のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
前記融合タンパク質が、部位特異的にペグ化されている、請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
前記融合タンパク質が、システイン残基上で部位特異的にペグ化されている、請求項32に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
前記融合タンパク質が、配列番号22の配列をさらに含み、そして、配列番号22の配列のシステイン残基上で部位特異的にペグ化されている、請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
配列番号22の配列が重鎖のC末端に存在する、請求項34に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
前記重鎖が配列番号23の配列を含む、請求項34に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
前記重鎖が配列番号24の配列を含む、請求項34に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
前記PEGが約40kDaの分子量を有する、請求項31~37のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項39】
前記融合タンパク質が、1以上の半減期延長モジュレータをさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
前記1以上の半減期延長モジュレータが、前記融合タンパク質の半減期を増加させる化学物質、バイオポリマー又はペプチドを含む、請求項39に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
前記1以上の半減期延長モジュレータが、PEG(ポリエチレングリコール)、ヒアルロン酸(HA)又はホスホリルコリンを含有するバイオポリマー;アルブミン;アルブミン結合ペプチド及び/又はHA結合タンパク質断片を含む、請求項39又は請求項40に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項43】
請求項42に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項44】
ヒトサイトメガロウイルスIE1(CMV-IE1)プロモーター/エンハンサーをさらに含む、請求項43に記載の発現ベクター。
【請求項45】
請求項43又は請求項44に記載の発現ベクターで形質転換された細胞。
【請求項46】
Tie2及びVEGFを結合する融合タンパク質を製造する方法であって、
請求項45に記載の細胞を培養する工程と、
培養された細胞から融合タンパク質を回収する工程と
を含む、方法。
【請求項47】
血管新生疾患又は血管疾患を予防又は処置するための方法であって、血管新生疾患又は血管疾患を予防又は処置することを必要とする対象に有効量の請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質を投与することを含む、方法。
【請求項48】
血管新生疾患又は血管疾患を処置することを必要とする対象における血管新生疾患又は血管疾患を処置するための医薬の製造のための、請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項49】
血管新生疾患又は血管疾患を処置することを必要とする対象における血管新生疾患又は血管疾患の処置において使用するための、請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項50】
前記血管新生疾患又は血管疾患が、癌、転移、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、角膜移植片拒絶反応、黄斑変性、血管新生緑内障であってもよい緑内障、全身性紅皮症、増殖性網膜症、乾癬、血友病性関節症、類縁硬化症、アテローム性プラークの毛細血管形成、ケロイド、創傷肉芽形成、血管接着、関節リウマチ、骨関節炎、自己免疫疾患、クローン病、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、腸管癒着、ネコ引っ掻き病、潰瘍、肝硬変、腎炎、糖尿病性腎症、糖尿病、炎症性疾患又は神経変性疾患である、請求項47~49のいずれか一項に記載の使用のための方法、使用又は融合タンパク質。
【請求項51】
前記癌が、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、肺癌、結腸癌、乳癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、骨癌、結合組織癌、皮膚癌、脳癌、甲状腺癌、白血病、ホジキンリンパ腫、リンパ腫又は多発性骨髄性血液癌である、請求項50に記載の使用のための方法、使用又は融合タンパク質。
【請求項52】
血管新生、内皮シグナル伝達、炎症、無酸素症及び/又は血管漏出を調節するための方法であって、血管新生、内皮シグナル伝達、炎症、無酸素症及び/又は血管漏出を調節することを必要とする対象に有効量の請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質を投与することを含む、方法。
【請求項53】
前記炎症が敗血症、急性呼吸促迫症候群及び/又はウイルス感染性疾患に由来する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記対象がヒトである、請求項47~53のいずれか一項に記載の使用のための方法、使用又は融合タンパク質。
【請求項55】
前記対象が愛玩動物であり、哺乳動物の愛玩動物であってもよい、請求項47~53のいずれか一項に記載の使用のための方法、使用又は融合タンパク質。
【請求項56】
前記愛玩動物が、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、ウマ、ラバ、ロバ又はハムスターである、請求項55に記載の使用のための方法、使用又は融合タンパク質。
【請求項57】
請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む薬学的組成物。
【請求項58】
請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質の鎖状単量体を含むポリペプチド。
【請求項59】
前記ポリペプチドが、請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質の重鎖単量体を含む、請求項58に記載のポリペプチド。
【請求項60】
前記ポリペプチドが、配列番号11又は26の配列に対して少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項59に記載のポリペプチド。
【請求項61】
前記ポリペプチドが配列番号11又は26を含む、請求項60に記載のポリペプチド。
【請求項62】
前記ポリペプチドが配列番号11又は26からなる、請求項61に記載のポリペプチド。
【請求項63】
前記ポリペプチドが、請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質の軽鎖単量体を含む、請求項58に記載のポリペプチド。
【請求項64】
前記ポリペプチドが、配列番号12に対して少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項63に記載のポリペプチド。
【請求項65】
前記ポリペプチドが配列番号12を含む、請求項64に記載のポリペプチド。
【請求項66】
前記ポリペプチドが配列番号12からなる、請求項65に記載のポリペプチド。
【請求項67】
請求項58~66のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項68】
前記核酸分子が、請求項59~62のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、請求項67に記載の核酸分子。
【請求項69】
前記核酸分子が、配列番号27又は29に対して少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性又は少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項68に記載の核酸分子。
【請求項70】
前記核酸分子が配列番号27又は29を含む、請求項69に記載の核酸分子。
【請求項71】
前記核酸分子が配列番号27又は29からなる、請求項70に記載の核酸分子。
【請求項72】
前記核酸分子が、請求項63~66のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、請求項67に記載の核酸分子。
【請求項73】
前記核酸分子が、配列番号28に対して少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性又は少なくとも99%の同一性を有する配列を含む、請求項72に記載の核酸分子。
【請求項74】
前記核酸分子が配列番号28を含む、請求項73に記載の核酸分子。
【請求項75】
前記核酸分子が配列番号28からなる、請求項74に記載の核酸分子。
【請求項76】
請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質の両方の鎖(すなわち、軽鎖及び重鎖)がコードされるように、各ポリヌクレオチドが前記融合タンパク質の単量体鎖の少なくとも1つをコードする、1以上のポリヌクレオチドのセット。
【請求項77】
請求項67~75のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項78】
前記ベクターが、前記融合タンパク質の1つの重鎖配列及び1つの軽鎖配列をコードする核酸を含む、請求項77に記載のベクター。
【請求項79】
前記融合タンパク質の両方の鎖(すなわち、軽鎖及び重鎖)がベクターの前記セットにおいてコードされるように、請求項76に記載の1以上のポリヌクレオチドのセットを集団的に含む1以上のベクターのセット。
【請求項80】
前記ベクターが、動物ウイルス、例えば逆転写酵素ウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、水痘ウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、アネロウイルス及びパポバウイルスから選択されるウイルスである、請求項77~79のいずれか一項に記載のベクター又はベクターのセット。
【請求項81】
請求項77~80のいずれか一項に記載のベクターを発現する宿主細胞。
【請求項82】
請求項67~75のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項76に記載の1以上のポリヌクレオチドのセット、又は請求項77~79のいずれか一項に記載のベクター若しくはベクターのセットと、薬学的に許容され得る担体、希釈剤又は賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項83】
ベクター又はベクターのセットからの発現による、請求項1~41のいずれか一項に記載の融合タンパク質の生産のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月13日に出願された米国仮特許出願第63/299,177号、2022年2月15日に出願された米国仮特許出願第63/310,359号及び2022年4月28日に出願された米国仮特許出願第63/335,805号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張する。これらの先の出願の全開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含む。2023年1月11日に作成された前記XMLコピーは、「2023-01-12_01262-0004-00PCT_ST26.xml」という名前であり、48,489バイトのサイズである。配列表の電子形式中の情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
本開示は、抗Tie-2抗体又はその抗原結合断片と血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインとを含む融合タンパク質であって、Tie2及びVEGFに同時に結合する融合タンパク質、該融合タンパク質をコードする核酸、該核酸を含有するベクター、該ベクターで形質転換された細胞、前記融合タンパク質を調製するための方法、血管新生、炎症及び血管漏出を調節する方法及び組成物に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、血管新生疾患及び血管疾患を予防又は処置するための方法及び薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
序論及び概要
血管新生は、生物の発生、成長、維持及び恒常性の間に様々な調節因子によって動的に起こる。この過程において新たに形成された血管は、周囲の細胞中の栄養素、酸素及びホルモンなどの様々な生体材料のための輸送チャネルとして機能する。機能的及び構造的に異常な血管は、様々な疾患の開始及び進行の直接的又は間接的な原因である。腫瘍血管は、それらの機能及び構造の欠陥の故に低酸素を悪化させ、腫瘍の進行及び他の組織への転移をもたらし、腫瘍塊の中心部への抗癌剤の送達を不良にする。欠陥を有する血管は、癌の他、他の様々な疾患及び症状においても見られる。その例には、様々な眼疾患(例えば、糖尿病性黄斑浮腫、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症)、ウイルス感染症及び敗血症などの急性炎症反応などが含まれる。したがって、病的な血管を正常化することができる治療薬が利用可能であれば、血管異常を有する様々な患者/患畜の処置に適用することができる。
【0005】
アンジオポエチンファミリーは、血管の形成及び維持において重要な役割を果たしており、4つのアンジオポエチン(Ang1、Ang2、Ang3、Ang4)から構成される。アンジオポエチン-1(Ang1)は、血管内皮細胞の表面に存在するTie2受容体に結合してTie2受容体をリン酸化及び活性化し、血管の安定化及び血管漏出の抑制をもたらす。他方、アンジオポエチン-2(Ang2)は、Tie2受容体に結合するが、アンタゴニストとして作用してTie2受容体の不活性化を誘導し、Ang1による結合を阻害し、血管の不安定化及び血管の漏出をもたらし、それによって新しい血管の成長を促進する傾向がある。Ang2の発現レベルは、癌患者、眼疾患、ウイルス及び細菌感染症並びに炎症性疾患の血液中で高度に増加することが報告された(Saharinen P et al.,2017,Nature Review Drug Discovery 16:635-661)。しかしながら、Ang2は、リンパ管形成及び維持を含むいくつかの過程でTie2受容体の活性化を誘導するアゴニストとして作用することも知られており、Ang2は状況に応じて様々な機能を果たすと考えられている。
【0006】
これまで、様々な抗Ang2抗体の開発及び臨床試験に、多くのバイオ医薬品企業の関心が寄せられてきた(例えば、米国特許第7,658,924号及び同第8,987,420号)。これらのAng2抗体は、Tie2へのAng2の結合を阻害することが報告されており、Ang2中和効果は、新しい血管の形成を妨げることが報告された。これらの抗Ang2抗体の抗血管新生活性及び抗癌活性は、多くの前臨床モデルで実証されており、多様な抗Ang2抗体が様々な癌患者で臨床的に試験されている。しかしながら、それらの抗癌効果は不十分であることが実証されている。例えば、Amgenによって実施された第3相臨床試験は、卵巣癌患者におけるAng2抗体の抗癌効果がわずかであることを示した(Marth C et al,2017,Eur.J.Cancer,70:111-121)。癌モデルに加えて、Ang2中和抗体であるネスバクマブは眼患者において試験されたが、臨床第2相試験においてアイリーア(EYLEA)(R)(抗VEGF)の有効性を改善することができなかった。例えば、investor.regeneron.com/news-releases/news-release-details/regeneron-provides-update-eylear-aflibercept-injection-andで入手可能な「Regeneron provides update on EYLEA(R)(aflibercept)injection and nesvacumab(ang2 antibody)combination program」プレスリリースを参照されたい。
【0007】
上述のAng2中和アプローチとは対照的に、直接的なTie2活性化もまた、血管新生を阻害し、血管透過性を抑制するための代替アプローチと考えられてきた。Tie2受容体に直接結合し、Tie2のリン酸化及び活性化を誘導する組換えタンパク質も、多くの前臨床癌及び眼モデルにおいて開発及び試験されてきた。その例としては、軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)-Angl(Cho et al.,2004,PNAS 101(15):5547-5552)及びバスキュロチド(David S et al.,2011,Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 300(6):L851-L862)が挙げられる。これらの薬剤は抗血管新生活性及び抗透過性活性を示したが、これらは非常に短い半減期及び不安定な物理化学的特性を有する傾向がある。さらに、リン酸化されたTie2からリン酸基を除去することによってTie2を不活性化するホスファターゼであるVE-PTPの阻害剤として、小分子化合物(AKB-9778)が開発された(Goel S et al.,2013,J Natl Cancer Inst 105(16):1188-1201)。この化合物は、VE-PTPを阻害することによってTie2活性を間接的に増加させるが、他の受容体も活性化するという欠点を有する。例えば、Frye M.et al.,2015,J Exp.Med.,212(13):2267-2287;Hayashi M,et al.,2013,Nature Communication,4:1672;及びMellberg S.et al.,2009,FASEB J.,23(5):1490-1502)を参照されたい。さらに、アゴニスト作用を有するTie2抗体が開発されてきた。例えば、米国特許第6365154号及び米国特許出願公開第20170174789号を参照されたい。これらの抗体は、内皮細胞の生存を増加させ、血管漏出を阻害した。興味深いことに、ハーブ抽出物がTie2活性を活性化することが示され、スキンケア化粧品として使用されることにつき権利が請求された。例えば、特開第2011102273号、特開第2018043949号、特開第2015168656号を参照されたい。
【0008】
Tie2は、血管の分化及び安定化を促進する受容体タンパク質であり、血管において高度に発現されている。活性化されると、Tie2受容体は血管を安定化させ、周囲の支持細胞を集めることが可能となる。例えば、癌血管中の活性化されたTie2は、癌血管を正常化し、血管漏出を低下させ、腫瘍内の増加した低酸素を排除し、腫瘍内への血流を増加させることによって十分な酸素を供給し、他の抗癌剤の送達及び免疫細胞の浸透を増加させる。
【0009】
血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)及び滲出型加齢黄斑変性(wAMD)に対する標準治療の第一選択処置であるが、少なくない頻度の眼内投与及びかなりの不十分な応答の集団によって、これらの処置の有効性は制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,658,924号
【特許文献2】米国特許第8,987,420号
【特許文献3】米国特許第6.365,154号
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0174789号
【特許文献5】特開第2011102273号
【特許文献6】特開第2018043949号
【特許文献7】特開第2015168656号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Saharinen P et al.,2017,Nature Review Drug Discovery 16:635-661
【非特許文献2】Marth C et al,2017,Eur.J.Cancer,70:111-121
【非特許文献3】Cho et al.,2004,PNAS 101(15):5547-5552
【非特許文献4】David S et al.,2011,Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 300(6):L851-L862
【非特許文献5】Goel S et al.,2013,J Natl Cancer Inst 105(16):1188-1201
【非特許文献6】Frye M.et al.,2015,J Exp.Med.,212(13):2267-2287
【非特許文献7】Hayashi M,et al.,2013,Nature Communication,4:1672
【非特許文献8】Mellberg S.et al.,2009,FASEB J.,23(5):1490-1502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、血管新生、内皮シグナル伝達、炎症及び/若しくは血管漏出を調節するための、並びに/又は血管新生疾患を処置するための改善された方法が必要とされている。例えば、改善された有効性、親和性、半減期、安定性、薬力学、持続性、並びに/又は患者の負担及び服薬遵守の問題を軽減するための処置の頻度の減少を伴う、癌などの血管新生疾患のための処置が必要とされている。本開示は、これらのニーズの1以上を満たすこと、他の利益を提供すること、又は少なくとも有用な選択肢を公衆に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片と血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインとを含む融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメイン及びVEGFに結合する。
【0014】
一実施形態では、VEGF結合ドメインは、VEGF受容体細胞外ドメインを含む。
【0015】
一実施形態では、VEGF結合ドメインは、アンタゴニストVEGF結合ドメインである。したがって、一実施形態では、VEGF結合ドメインは、細胞中のVEGFの活性を拮抗する(すなわち、阻害する)。VEGF結合ドメインは、VEGFを結合し、その結果、VEGFがその活性を発揮するのを妨げることによってそのアンタゴニスト効果を達成する。
【0016】
一実施形態では、VEGF結合ドメインは、2つのVEGF受容体アイソフォームの細胞外ドメイン、例えばVEGF受容体1及びVEGF受容体2の両方の細胞外ドメイン(例えば、VEGF受容体1のIg2ドメイン及びVEGF受容体2のIg3ドメイン)を含む。
【0017】
一実施形態では、VEGF結合ドメインは、抗VEGF抗体又はその抗体結合断片を含む。さらなる実施形態では、抗VEGF抗体又はその断片は、ベバシズマブ、ラニビズマブ又はHuMab G6-31(米国特許出願公開第2007/0141065号)の可変結合ドメインを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示は、血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインであって、配列番号13のVEGF受容体1(VEGFR1)の血管内皮増殖因子(VEGF)-A結合領域及び配列番号14のVEGF受容体2(VEGFR2)の血管内皮増殖因子(VEGF)-A結合領域を含む、血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインと、
抗Tie2抗体又はその抗体結合断片と、
を含む融合タンパク質であって、
ここで、前記融合タンパク質は、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメイン及びVEGFに結合する、融合タンパク質を提供する。
【0019】
一実施形態では、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片は、アゴニスト抗Tie2抗体又はその抗原結合断片である。したがって、一実施形態では、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片はTie2を結合し、細胞表面膜においてTie2又はTie2活性を提供し、保存し、又は増強する。
【0020】
一実施形態では、VEGF結合ドメインは、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片の重鎖(HC)のC末端に連結されている。
【0021】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列のTie2のアミノ酸633~644(配列番号19)及び/又はアミノ酸713~726(配列番号20)を結合する。一実施形態では、抗Tie2抗体又はその抗体結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列のTie2のアミノ酸633~644(配列番号19)及び/又はアミノ酸713~726(配列番号20)を結合する。
【0022】
一実施形態では、抗Tie2抗体はIgG1アイソタイプを有する。
【0023】
一実施形態では、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号5~7のアミノ酸配列を含む重鎖CDRを含む重鎖可変領域と、配列番号8~10のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0024】
一実施形態では、VEGF結合ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含む。
【0025】
一実施形態では、VEGF結合ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0026】
一実施形態では、融合タンパク質は、VEGF結合ドメイン(例えば、VEGF受容体)と抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含む。さらなる実施形態では、リンカーは、5~50個のアミノ酸残基、例えば10~40個の残基、例えば15~30個の残基、例えば20個の残基を含む。
【0027】
一実施形態では、融合タンパク質は、VEGF結合ドメイン(例えば、VEGF受容体)と抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、リンカーは、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含む。
【0028】
一実施形態では、融合タンパク質は、VEGF結合ドメイン(例えば、VEGF受容体)と抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、リンカーは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0029】
一実施形態では、融合タンパク質は、VEGF結合ドメイン(例えば、VEGF受容体)と抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、リンカーは、配列番号25のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含む。
【0030】
一実施形態では、融合タンパク質は、VEGF結合ドメイン(例えば、VEGF受容体)と抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、リンカーは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0031】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含むCHドメインを含む。
【0032】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を含むCHドメインを含む。
【0033】
一実施形態では、融合タンパク質は、体内の他の免疫細胞上のFc受容体との効率的な相互作用を低下させるか又は排除するために、重鎖の定常領域ドメイン中に1以上の変異を含む。一実施形態では、1以上の変異は、L234、L235、G236及びG237(EUナンバリング)をLAGA変異、FEGG変異、AAGG変異、AAGA変異、LALA変異又はそれらの組み合わせに変化させることを含む。一実施形態では、1以上の変異は、LALA変異と、K322における変異(例えば、K322A)及びP331における変異(例えば、P331S)とを含む(EUナンバリング)。
【0034】
一実施形態では、融合タンパク質は、L234、L235、H310、M252、I253、S254、T256、H433、N434及び/又はH435(EUナンバリング)に1以上の変異を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、L234A、L235A及び/又はH310Aに1以上の変異を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、M252(例えば、M252Y)、I253(例えば、I253A、I253M又はI253V)、S254(例えば、S254T)、T256(例えば、T256D)、H433(例えば、H433K)、N434(例えば、N434F)及び/又はH435(例えば、H435A、H435Q又はH435R)に1以上の変異を含む。
【0035】
一実施形態では、融合タンパク質は、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片の1以上の重鎖定常ドメインのC末端側に及びN末端からC末端への順序で、VEGF結合ドメインと抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、例えばリンカーは、5~50残基、例えば10~40残基、例えば15~30残基、例えば20残基を有する配列を含み、VEGF結合ドメインは配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0036】
一実施形態では、融合タンパク質は、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片の1以上の重鎖定常ドメインのC末端側に及びN末端からC末端への順序で、VEGF結合ドメインと抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、リンカーは、配列番号16又は25のアミノ酸配列を含み、VEGF結合ドメインは配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0037】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を含むCHドメインと、VEGF結合ドメインと抗Tie2抗体又はその抗体断片との間に配列番号16又は25のアミノ酸配列を含むリンカーを含み、VEGF結合ドメインは配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0038】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0039】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を含む重鎖を含む。
【0040】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を含む重鎖を含む。
【0041】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0042】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0043】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を含む軽鎖を含む。
【0044】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0045】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0046】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0047】
一実施形態では、融合タンパク質は、3E-9M未満の親和性KD(M)で、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメインに結合する。
【0048】
一実施形態では、融合タンパク質はペグ化されている。PEG化(又はペグ化)は、複数のポリエチレングリコール(PEG、マクロゴールとも呼ばれる)単位(例えば、PEGポリマー)を含む鎖の共有結合的な付着又は融合を指す。一実施形態では、PEGは、約40kDa又は約20kDaの分子量を有する。
【0049】
一実施形態では、融合タンパク質は、部位特異的にペグ化されている。一実施形態では、融合タンパク質は、システイン残基上で部位特異的にペグ化されている。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号22の配列をさらに含み、配列番号22の配列のシステイン残基上で部位特異的にペグ化されている。
【0050】
一実施形態では、配列番号22の配列は、重鎖のC末端に存在する。一実施形態では、重鎖は、配列番号23の配列を含む。一実施形態では、重鎖は、配列番号24の配列を含む。
【0051】
一実施形態では、融合タンパク質は、1以上の半減期延長モジュレータをさらに含む。一実施形態では、1以上の半減期延長モジュレータは、融合タンパク質の半減期を増加させる化学物質、バイオポリマー又はペプチドを含む。
【0052】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質の鎖状単量体を含むポリペプチドが提供される。
【0053】
一実施形態では、ポリペプチドは、本発明の融合タンパク質の重鎖単量体を含む。さらなる実施形態では、ポリペプチドは、配列番号11又は26の配列に対して少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも75%の同一性、例えば少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性、例えば少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも91%の同一性、例えば少なくとも92%の同一性、例えば少なくとも93%の同一性、例えば少なくとも94%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、例えば少なくとも97%の同一性、例えば少なくとも98%の同一性、例えば少なくとも99%の同一性、例えば100%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号11の配列からなる。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号26の配列からなる。
【0054】
一実施形態では、ポリペプチドは、本発明の融合タンパク質の軽鎖単量体を含む。さらなる実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12に対して少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも75%の同一性、例えば少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性、例えば少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも91%の同一性、例えば少なくとも92%の同一性、例えば少なくとも93%の同一性、例えば少なくとも94%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、例えば少なくとも97%の同一性、例えば少なくとも98%の同一性、例えば少なくとも99%の同一性、例えば100%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12の配列からなる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「バイオポリマー」は、生物学的材料から化学的に合成されるか、又は生物若しくは微生物によって完全に生合成されるかのいずれかの、天然源から生産されるポリマーを指す。いくつかの実施形態では、バイオポリマーは、ポリペプチド又はタンパク質(すなわち、アミノ酸のポリマー、例えば、コラーゲン、アクチン及びフィブリン)、ポリヌクレオチド(すなわち、核酸のポリマー、例えばDNA又はRNA)、多糖(すなわち、炭水化物及びグリコシル化分子、例えば、セルロース、デンプン又はアルギネート)、天然ゴム(イソプレンのポリマー)、スバリン、リグニン(複合ポリフェノールポリマー)、クチン及びクタン(長鎖脂肪酸の複合ポリマー)、メラニン、代謝産物及びその他の構造分子を含むが、これらに限定されない。
【0056】
一実施形態では、1以上の半減期延長モジュレータは、PEG(ポリエチレングリコール)、ヒアルロン酸(HA)又はホスホリルコリンを含有するバイオポリマー;アルブミン;アルブミン結合ペプチド及び/又はHA結合タンパク質断片を含む。
【0057】
別の実施形態では、本開示は、融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0058】
別の実施形態では、本開示は、本発明の融合タンパク質の鎖状単量体を含むポリペプチドをコードする核酸を提供する。一実施形態では、本開示は、融合タンパク質の重鎖をコードする核酸を提供する。別の実施形態では、本開示は、融合タンパク質の軽鎖をコードする核酸を提供する。
【0059】
一実施形態では、核酸分子は、配列番号27又は29に対して少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも75%の同一性、例えば少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性、例えば少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも91%の同一性、例えば少なくとも92%の同一性、例えば少なくとも93%の同一性、例えば少なくとも94%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、例えば少なくとも97%の同一性、例えば少なくとも98%の同一性、例えば少なくとも99%の同一性、例えば100%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号27又は29からなる。
【0060】
一実施形態では、核酸分子は、配列番号28に対して少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも75%の同一性、例えば少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性、例えば少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも91%の同一性、例えば少なくとも92%の同一性、例えば少なくとも93%の同一性、例えば少なくとも94%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、例えば少なくとも97%の同一性、例えば少なくとも98%の同一性、例えば少なくとも99%の同一性、例えば100%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号28からなる。
【0061】
一実施形態では、本開示は、各ポリヌクレオチドが本発明の融合タンパク質の単量体鎖の少なくとも1つをコードする、1以上のポリヌクレオチドのセットを提供し、前記融合タンパク質のこのような両方の鎖(すなわち、軽鎖及び重鎖)がコードされる。
【0062】
別の実施形態では、本開示は、核酸を含む発現ベクターを提供する。別の実施形態では、融合タンパク質の1つの重鎖配列及び1つの軽鎖配列をコードする核酸を含むベクターが提供される。
【0063】
一実施形態では、融合タンパク質の両方の鎖(すなわち、軽鎖及び重鎖)がベクターの前記セットにおいてコードされるように、本発明の1以上のポリヌクレオチドのセットを集団的に含む1以上のベクターのセットが提供される。
【0064】
一実施形態では、ベクターは、動物ウイルス、例えば逆転写酵素ウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、水痘ウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、アネロウイルス及びパポバウイルスから選択されるウイルスである。
【0065】
一実施形態では、発現ベクターは、ヒトサイトメガロウイルスIE1(CMV-IE1)プロモーター/エンハンサーをさらに含む。
【0066】
別の実施形態では、本開示は、発現ベクターで形質転換された細胞を提供する。
【0067】
別の実施形態では、本開示は、Tie2及びVEGFを結合する融合タンパク質を製造する方法であって、発現ベクターで形質転換された細胞を培養する工程と、培養された細胞から融合タンパク質を回収する工程とを含む、方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、ベクター又はベクターのセットからの発現による本発明の融合タンパク質の生産のための方法を提供する。
【0068】
別の実施形態では、本開示は、血管新生疾患を予防又は処置するための方法であって、血管新生疾患を予防又は処置することを必要とする対象に、有効量の融合タンパク質を投与することを含む、方法を提供する。
【0069】
別の実施形態では、本開示は、血管新生疾患を処置することを必要とする対象における血管新生疾患を処置するための医薬の製造のための、融合タンパク質の使用を提供する。
【0070】
別の実施形態では、本開示は、血管新生疾患又は血管疾患を処置することを必要とする対象における血管新生疾患又は血管疾患の処置において使用するための融合タンパク質を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態では、血管新生疾患又は血管疾患は、癌、転移、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、角膜移植片拒絶反応、黄斑変性、血管新生緑内障などの緑内障、全身性紅皮症、増殖性網膜症、乾癬、血友病性関節症、類縁硬化症、アテローム性プラークの毛細血管形成、ケロイド、創傷肉芽形成、血管接着、関節リウマチ、骨関節炎、自己免疫疾患、クローン病、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、腸管癒着、ネコ引っ掻き病、潰瘍、肝硬変、腎炎、糖尿病性腎症、糖尿病、炎症性疾患又は神経変性疾患である。
【0072】
いくつかの実施形態では、癌は、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、肺癌、結腸癌、乳癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、骨癌、結合組織癌、皮膚癌、脳癌、甲状腺癌、白血病、ホジキンリンパ腫、リンパ腫又は多発性骨髄性血液癌である。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示は、血管新生、内皮シグナル伝達、炎症及び/又は血管漏出を調節するための方法であって、血管新生、内皮シグナル伝達、炎症及び/又は血管漏出を調節することを必要とする対象に有効量の融合タンパク質を投与することを含む、方法を提供する。
【0074】
いくつかの実施形態では、炎症は、敗血症、急性呼吸促迫症候群及び/又はウイルス感染性疾患に由来する。
【0075】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物の愛玩動物などの愛玩動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物の愛玩動物は、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、ウマ、ラバ、ロバ若しくはハムスター又はその他の家畜化されたペットである。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示は、融合タンパク質を含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、薬学的に許容され得る担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含む。
【0077】
追加の目的及び利点は、以下の説明において部分的に記載されており、説明から部分的に理解されるか、又は実践によって習得され得る。目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘されている要素及び組み合わせによって実現及び達成される。
【0078】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。セクションの見出しは、単に読者の便宜のために提供されており、本開示を限定するものではない。
【0079】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、特定の実施形態を図示し、説明と共に、本明細書に記載されている原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1A】
図1A~1Cは、ヒト(
図1A)、ウサギ(
図1B)及びマウス(
図1C)Tie2-Fc融合タンパク質へのIGT-427の結合についてのセンサーグラムを提供する。
【
図1B】
図1A~1Cは、ヒト(
図1A)、ウサギ(
図1B)及びマウス(
図1C)Tie2-Fc融合タンパク質へのIGT-427の結合についてのセンサーグラムを提供する。
【
図1C】
図1A~1Cは、ヒト(
図1A)、ウサギ(
図1B)及びマウス(
図1C)Tie2-Fc融合タンパク質へのIGT-427の結合についてのセンサーグラムを提供する。
【
図2A】
図2A~2Cは、IGT-427によるVEGFR2リン酸化及びAKT活性化の阻害を示す。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を4時間血清飢餓状態にし、表記された濃度のIGT-427(
図2A)又はアフリベルセプト(
図2B)とともに30分間インキュベートし、次いで、組換えヒトVEGFで2分間処理した。細胞可溶化物をSDS-PAGE/ウェスタンブロッティングに供し、抗ホスホ-VEGFR2(Tyr1175)、抗VEGFR2、抗ホスホ-Akt(S473)又は総Akt抗体でブロットをプローブした。VEGFレポーターアッセイは、IGT-427、ファリシマブ及びアフリベルセプトの同等の阻害効果を示す(
図2C)。
【
図2B】
図2A~2Cは、IGT-427によるVEGFR2リン酸化及びAKT活性化の阻害を示す。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を4時間血清飢餓状態にし、表記された濃度のIGT-427(
図2A)又はアフリベルセプト(
図2B)とともに30分間インキュベートし、次いで、組換えヒトVEGFで2分間処理した。細胞可溶化物をSDS-PAGE/ウェスタンブロッティングに供し、抗ホスホ-VEGFR2(Tyr1175)、抗VEGFR2、抗ホスホ-Akt(S473)又は総Akt抗体でブロットをプローブした。VEGFレポーターアッセイは、IGT-427、ファリシマブ及びアフリベルセプトの同等の阻害効果を示す(
図2C)。
【
図2C】
図2A~2Cは、IGT-427によるVEGFR2リン酸化及びAKT活性化の阻害を示す。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を4時間血清飢餓状態にし、表記された濃度のIGT-427(
図2A)又はアフリベルセプト(
図2B)とともに30分間インキュベートし、次いで、組換えヒトVEGFで2分間処理した。細胞可溶化物をSDS-PAGE/ウェスタンブロッティングに供し、抗ホスホ-VEGFR2(Tyr1175)、抗VEGFR2、抗ホスホ-Akt(S473)又は総Akt抗体でブロットをプローブした。VEGFレポーターアッセイは、IGT-427、ファリシマブ及びアフリベルセプトの同等の阻害効果を示す(
図2C)。
【
図3】
図3は、アンジオポエチン-1と比較した場合の、IGT-427によるホスホ-Tie2シグナル伝達のより強力かつより持続的なレベルを示す。ヒトTie2を過剰発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を4時間血清飢餓状態にし、次いで、10nMのIGT-427又はアンジオポエチン-1で表記の期間処理した。可溶化物をホスホ-Tie2及び総Tie2 ELISAアッセイに供した。
【
図4】
図4は、HUVECにおけるIGT-427によるAktシグナル伝達の用量依存的活性化を示す。
【
図5】
図5は、IGT-427が、HUVECにおいて、Tie2シグナル伝達に対するアンジオポエチン-2の効果を乗り越え、回避し、前処理されたAng2の存在下でAktシグナル伝達のさらなる活性化をもたらすことを示す。
【
図6】
図6は、IGT-427がAng2と複合体を形成したTie2及びVEGFに同時に結合することを示す。Ang2をCM5チップに捕捉し、続いて、ヒトTie2、IGT-427及びヒトVEGFを表面プラズモン共鳴(SPR)(Biocore(商標))分析において注入した。
【
図7】
図7は、IGT-427によるTNF-α誘導性アポトーシスの阻害を示す。IGT-427又はアイリーア(R)でHUVECを1時間前処理し、次いで、TNF(50ng/ml)で24時間処理した。APO-BrdU(商標)TUNEL Assay Kit(Thermo Fisher、A23210)によってアポトーシス細胞を染色し、Attune(Thermo Fisher)によって判定した。値は平均±標準誤差である。一元配置ANOVAにより***p<0.001、****p<0.0001。
【
図8】
図8は、様々な時点で様々な薬剤で処理された、ヒトTie2を過剰発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-Tie2)上のTie2の細胞表面レベルを示す。
【
図9】
図9は、IGT-427がMMP14によるTie2切断を阻止することを示す。組換えヒトMMP14、ヒトTie2-ECD-ヒトIgG Fc融合タンパク質又はIGT-427を混合し、示されているようにインキュベートした。
【
図10】
図10は、IGT-427が、基礎のHUVEC又はTNF-α処理されたHUVECにおけるsTie2生成を阻害することを示す。sTie2のレベルは、Tie2 ELISAアッセイによって測定された。
【
図11】
図11は、IGT-427がVEGF処置による損なわれた内皮バリア完全性を回復することを示す。HUVECにおいて、TEER(経内皮電気抵抗)を評価した。
【
図12】
図12は、レーザー誘発CNVモデルにおける硝子体内注射されたIGT-427又はアイリーア(R)によるCNV(脈絡膜新生血管形成)の抑制を示す。抗体(50μlの注入体積/眼、アイリーア(R)(800μg)、IGT-427(885μg)、対照IgG(716μg))の硝子体内投与をレーザー光凝固後0日目に行った。アイリーア(R)、IGT-427及び対照IgGのモル比は、1:0.65:0.68である。レーザー光凝固後14日目に撮影したFA画像において、CNV周辺の漏出領域における蛍光強度を測定した。各群について、4~7匹のウサギを試験し、6つのレーザー誘発CNV病変を各ウサギについて試験した。CNV病変(n=24~42)を各群について画像化した。値は平均±SEMである。一方向ANOVAにより*p<0.05、**p<0.001。
【
図13】
図13は、PEG化のためのIGT-427バリアントの概略図を示す。すべての構築物は、抗体あたり2つの不安定なシステインを生成する5つの異なる重鎖を有する共通の軽鎖を有する。
【
図14】
図14は、5つのIGT-427バリアントに対する最適化されたPEG化条件のSDS-PAGEデータを示す。PRO593、PRO594及びPRO595は、反応混合物中に非修飾抗体を有さずに完全な変換を受ける。PRO592及びPRO596の反応混合物は、反応の終了時にいくらかの非修飾抗体を有する。
【
図15】
図15は、Tie2及びVEGF表面へのIGT-427及びPEG化バリアントのSPR結合を示す。いずれかの抗原への結合シグナルにわずかな差が存在するが、非修飾IGT-427と比較して、PEG化バリアントは両抗原を同じように結合する。
【
図16】
図16は、5つの眼のPK研究被験物質のSEC-HPLCクロマトグラムを示す。15%の高分子量種を含有する20kDaのPEG化種を除いて、すべての構築物は、90%を超えて純粋であった。
【
図17】
図17は、眼のPK研究被験物質の非還元型SDS-PAGEデータを示す。レーン1:アイリーア(R);レーン2:ファリシマブ;レーン3:IGT-427;レーン4:(2×20kDaの直鎖状PEG)-IGT-427;レーン5:(2×40kDa分枝状PEG)-IGT-427。
【
図18A】
図18A~18Cは、ウサギVEGF(
図18A)、Tie2(
図18B)及びAng2(
図18C)への眼のPK被験物質のSPR結合データを示す。測定された結合定数の要約が表として記載されている。
【
図18B】
図18A~18Cは、ウサギVEGF(
図18A)、Tie2(
図18B)及びAng2(
図18C)への眼のPK被験物質のSPR結合データを示す。測定された結合定数の要約が表として記載されている。
【
図18C】
図18A~18Cは、ウサギVEGF(
図18A)、Tie2(
図18B)及びAng2(
図18C)への眼のPK被験物質のSPR結合データを示す。測定された結合定数の要約が表として記載されている。
【
図19-1】
図19は、ニュージーランド白ウサギ硝子体からの総薬物測定の要約を示す。ELISA定量からの測定された薬物レベルを経時的にプロットした。各データ点は、単一のウサギの眼からの2つ組の測定を表す。各データセットへの指数関数フィットが、フィットされたパラメータとともに赤色で示されており、抽出された眼の半減期が各曲線の下に示されている。PEG化IGT-427バリアントについては、14日間の測定値がプロットに含まれているが、フィッティング及び抽出された半減期分析からは除外されている。各被験物質について観察された半減期の要約が右下に示されている。
【
図19-2】
図19は、ニュージーランド白ウサギ硝子体からの総薬物測定の要約を示す。ELISA定量からの測定された薬物レベルを経時的にプロットした。各データ点は、単一のウサギの眼からの2つ組の測定を表す。各データセットへの指数関数フィットが、フィットされたパラメータとともに赤色で示されており、抽出された眼の半減期が各曲線の下に示されている。PEG化IGT-427バリアントについては、14日間の測定値がプロットに含まれているが、フィッティング及び抽出された半減期分析からは除外されている。各被験物質について観察された半減期の要約が右下に示されている。
【
図19-3】
図19は、ニュージーランド白ウサギ硝子体からの総薬物測定の要約を示す。ELISA定量からの測定された薬物レベルを経時的にプロットした。各データ点は、単一のウサギの眼からの2つ組の測定を表す。各データセットへの指数関数フィットが、フィットされたパラメータとともに赤色で示されており、抽出された眼の半減期が各曲線の下に示されている。PEG化IGT-427バリアントについては、14日間の測定値がプロットに含まれているが、フィッティング及び抽出された半減期分析からは除外されている。各被験物質について観察された半減期の要約が右下に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0081】
配列の説明
表1は、本明細書で参照される特定の配列のリストを提供する。
【表1】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
実施形態の説明
定義
特に明記しない限り、本明細書で使用される以下の用語及び語句は、以下の意味を有することが意図される。
【0088】
本明細書で使用される場合、「抗Tie2抗体」という用語は、Tie2に特異的に結合する抗体を意味し、Tie2に特異的に結合する完全な抗体に加えて、抗体分子の抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、完全な抗体は、2つの完全長軽鎖及び2つの完全長重鎖の構造を有し、各軽鎖はジスルフィド結合によって重鎖に接続されている。重鎖の定常領域は、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)のサブクラスを有する、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びイプシロン(ε)型を有する。軽鎖の定常領域は、カッパ(κ)型及びラムダ(λ)型を有する。
【0089】
「抗原結合断片」又は「抗体の抗体断片」は、抗原に結合することができる断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvを含む。抗体断片のうち、Fabは、軽鎖及び重鎖の可変領域、軽鎖の定常領域並びに重鎖の第1のCH1の構造を有する1つの抗原結合部位を有する。
【0090】
Fab’は、CH1ドメインのC末端に1以上のシステイン残基を含むヒンジ領域を有するという点でFabとは異なる。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域内のシステイン残基間でのジスルフィド結合形成によって産生される。Fvは、重鎖の可変領域及び軽鎖の可変領域のみを有する最小の抗体断片である。二重鎖Fv(二本鎖Fv)は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間での非共有結合によって形成され、単鎖Fv(scFv)は、一般に、重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域との間で共有結合したペプチドリンカーを介して形成されるか、又は二重鎖Fvのような二量体様構造を形成することによってC末端において直接接続される。この断片は、タンパク質加水分解酵素によって得ることができ(例えば、パパインを使用した全抗体の制限消化によってFabを得ることができ、ペプシンで切断することによってF(ab’)2断片を得ることができる。)、遺伝子操作技術によっても作製される。
【0091】
抗体は、例えば、Fv形態(例えば、scFv)又は完全な抗体形態であり得る。さらに、重鎖の定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)又はイプシロン(ε)の任意のアイソタイプから選択され得る。例えば、定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ3(IgG3)又はガンマ4(IgG4)である。軽鎖定常領域は、カッパ型又はラムダ型のものであり得る。
【0092】
抗体には、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fv(scFV)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(sdFV)及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、又は上記抗体のエピトープ結合断片などが含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
「HC」の「重鎖」という用語は、抗原特異性を提供するために十分な可変領域を有するアミノ酸配列を有する、可変領域ドメインVH及び3つの定常領域ドメインCH1、CH2及びCH3を含む完全長重鎖又はその断片を意味する。さらに、本明細書で使用される場合、「軽鎖」又は「LC」は、抗原特異性を提供するために十分な可変領域を有するアミノ酸配列を有する、可変領域ドメインVL及び定常領域ドメインCLを含む完全長軽鎖又はその断片を意味する。(例えば、ヒトIgG1の)重鎖定常領域ドメインは、体内の免疫細胞上のFc受容体との効率的な相互作用を低下させるか又は排除するために、1以上の修飾を含有することができる。(1又は複数の)このような変異は、Fc受容体へのその結合を抑制し、抗体誘導性細胞傷害を低下又は消失させることができる。このような修飾は、L234L235G236G237残基(EUナンバリング)をLAGA変異、FEGG変異、AAGG変異、AAGA変異、LALA変異又はそれらの組み合わせに変更することを含むことができる。いくつかの実施形態では、IgG定常領域は、免疫細胞によって媒介される細胞傷害を低下又は消失させるために、(例えば、前述の変異のいずれかと組み合わせて)K322及びP331(EUナンバリング)に変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG定常領域は、免疫細胞によって媒介される細胞傷害を低下又は消失させるために、LALA変異並びにK322及びP331における変異(例えば、K322A及びP331S)(EUナンバリング)を含む。
【0094】
「モノクローナル抗体」は、細胞又は細胞株の単一クローンによって産生され、同一の抗体分子からなる抗体である。モノクローナル抗体は、一価の親和性を有することができ、同じエピトープにのみ結合する。対照的に、ポリクローナル抗体は複数のエピトープに結合し、通常、いくつかの異なる抗体分泌形質細胞系統によって作製される。1つのモノクローナル抗体の標的を2つのエピトープに増加させることによって、二重特異性モノクローナル抗体を設計することもできる。
【0095】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合することができるタンパク質決定基(例えば、抗体によって認識される抗原の一部)を意味する。エピトープは、化学的に活性な表面分子、例えばアミノ酸又は糖側鎖の群であり得、一般に、特定の電荷特性及び特定の三次元構造特性を有する。
【0096】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体(ドナー又はソース抗体)由来の1以上のアミノ酸配列(例えば、6つのCDR配列などの1以上のCDR配列)と、非ヒト免疫グロブリンに由来する他の最小配列とを含むキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、その超可変領域が、レシピエントの超可変領域由来の残基の所望の特異性、親和性及び能力を有する、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類(受容体抗体)の超可変領域由来の残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(受容体抗体)である。ヒト化のために、フレームワークドメイン(FR)中の1以上の残基が、非ヒトドナー抗体の対応する残基によって置き換えられ得る。これは、(1又は複数の)移植されたCDRの適切な三次元立体配置を維持し、それによって親和性及び抗体安定性を改善するのに役立ち得る。ヒト化抗体は、例えば、代替的に又は追加的に、抗体のさらなる性能をさらに改良するために、元のレシピエント抗体又はドナー抗体には現れない新しい残基を含むことができる。
【0097】
重鎖及び/若しくは軽鎖の一部が特定の種に由来するか、又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同であるのに対して、(1又は複数の)残りの鎖は別の種に由来するか、又は他の抗体クラスに属するか、又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一である、所望の生物学的活性を示す任意の「キメラ」抗体(免疫グロブリン)及び上記抗体の断片が含まれる。
【0098】
本明細書で使用される「抗体可変ドメイン」は、相補性決定領域(CDR;例えば、CDR1、CDR2及びCDR3)及びフレームワーク領域(FR)を含むドメインを指す。VHは、重鎖の可変ドメインを指す。VLは、軽鎖の可変ドメインを指す。「フレームワーク領域」(FR)は、CDRの外側の可変ドメインセグメントである。各可変ドメインは、典型的には、FR1、FR2、FR3及びFR4として特定される4つのFRを有する。
【0099】
「相補性決定領域」(CDR;すなわち、CDR1、CDR2及びCDR3)は、抗原結合のために必要である、抗体の可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは、典型的には、CDR1、CDR2及びCDR3として特定される3つのCDR領域を含む。
【0100】
本明細書で使用される「半減期延長モジュレータ」は、抗体又は抗体断片の半減期を増加させるために抗体又は抗体断片に付加することができる化学物質、バイオポリマー、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質断片を指す。半減期延長モジュレータは、PEG(ポリエチレングリコール)、ヒアルロン酸(HA)又はホスホリルコリンを含有するバイオポリマー;アルブミン;アルブミン結合ペプチド;又はHA結合タンパク質断片を含み得る。
【0101】
半減期はまた、例えば、抗体又は抗体断片と新生児型Fc受容体(FcRn)媒介性再利用との相互作用を消失させることによって減少させ得る。例えば、複数の部位におけるコンビナトリアル変異は、抗体の半減期に影響を及ぼすことが知られている。いくつかの実施形態では、変異は、M252(例えば、M252Y)、I253(例えば、I253A、I253M又はI253V)、S254(例えば、S254T)、T256(例えば、T256D)、H310(例えば、H310A)、H433(例えば、H433K)、N434(例えば、N434F)及び/又はH435(例えば、H435A、H435Q又はH435R)(EUナンバリング)を含む。いくつかの実施形態では、変異は、L235A、L236A及びH310A(EUナンバリング)を含む。全身半減期の減少は、VEGF阻害の確立されたオンターゲット毒性問題(出血、高血圧など)のために最小の全身曝露及び減少した全身半減期が望まれる、眼疾患処置などの非全身性疾患処置に有利であり得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、「又は」は、文脈が明らかに包括的な意味でないことを示さない限り、包括的な意味(すなわち、及び/又はに等しい)を有する。
【0103】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」は、複数の源からの配列を含む任意のポリペプチドを包含する。融合タンパク質は、例えば、遺伝子融合物(例えば、融合タンパク質の配列をコードするポリヌクレオチド)から、又は別々に生産若しくは合成されたポリペプチドを化学的に連結することによって生産され得る。
【0104】
「血管新生関連疾患」とも呼ばれる「血管新生疾患」は、血管新生の発生、又は血管新生の進行に関連する疾患を意味する。
【0105】
本明細書で使用される場合、「対象」はヒト又は動物であり得る。例えば、対象はヒトであり得る。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、愛玩動物(「ペット」とも呼ばれる)を含み得る。「愛玩動物」という用語は、ペットとして、又はその他愛玩目的のために飼育され得る家畜化された動物を指し、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、ウマ、ロバ、ラバ及びハムスターが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、愛玩動物は、哺乳動物の愛玩動物である。
【0106】
本明細書で使用される「予防」という用語は、融合タンパク質又は組成物を投与することによって、目的の疾患を阻害する、その発症を遅延させる、又はその発生の可能性を低下させる任意の行為を表す。「処置」又は「治療」という用語は、目的の疾患の症候を軽減する、遅延させる、若しくは緩和するか、又は目的の疾患を治癒する、目的の疾患の重症度を低下させる、若しくは目的の疾患の進行を遅延させる任意の行為を示す。
【0107】
本開示は、それぞれ所与の核酸配列又はアミノ酸配列(参照配列)に対してある程度の同一性を有する核酸配列及びアミノ酸配列を記載する。
【0108】
2つの核酸配列間の「配列同一性」は、それらの配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、それらの配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。
【0109】
「%同一の」、「%同一性」という用語又は類似の用語は、特に、比較されるべき配列間での最適なアラインメントにおいて同一であるヌクレオチド又はアミノ酸のパーセンテージを指すことが意図される。前記パーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間での差は、比較されるべき配列の全長にわたってランダムに分布し得るが、必ずしも比較されるべき配列の長さ全体にわたってランダムに分布するとは限らない。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を特定するために、最適なアラインメント後に、セグメント又は「比較のウィンドウ」に関して前記配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアラインメントは、手作業で、又はSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所的相動性アルゴリズムの助けを借りて、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所的相動性アルゴリズムの助けを借りて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444による類似性検索アルゴリズムの助けを借りて、又は前記アルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 サイエンスドライブ、マジソン、ウィスコンシン州のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)の助けを借りて実施され得る。
【0110】
パーセンテージ同一性は、比較されるべき配列が一致する同一の位置の数を決定し、この数を比較される位置の数(例えば、参照配列中の位置の数)で割り、この結果に100を掛けることによって得られる。
【0111】
いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は約100%である領域に対して与えられる。例えば、参照核酸配列が200ヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、いくつかの実施形態では連続ヌクレオチド中の少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180又は約200ヌクレオチドに対して与えられる。いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長に対して与えられる。
【0112】
それぞれ所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対して特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、前記所与の配列の少なくとも1つの機能的特性を有し得、例えば、いくつかの例では、前記所与の配列と機能的に等価である。1つの重要な特性には、特に対象に投与された場合にサイトカインとして作用する能力が含まれる。いくつかの実施形態では、所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対して特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、前記所与の配列と機能的に等価である。
【0113】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載された主題の特性に実質的に影響を及ぼさない、例えば10%、5%、2%又は1%以内の変動の程度を示す。したがって、反対のことが示されていない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、得ることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、及び特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、及び通常の丸め技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0114】
概要
Tie2及びVEGFの両方に特異的に結合する融合タンパク質が本明細書において提供される。融合タンパク質は、Tie2及びVEGFの現在の治療の制限並びに血管新生疾患又は血管疾患のための他の現在利用可能な治療の制限の両方に対処するように設計された。その結果、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片と血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインとを含む融合タンパク質が提供される。これらの融合タンパク質は、VEGF阻害及びTie2活性化という二重の機能の故に、血管新生疾患又は血管疾患のための治療剤として有益な役割を果たすことができる。
【0115】
融合タンパク質
本開示は、Tie2抗体又はその抗原結合断片とVEGF結合ドメインとを含む融合タンパク質に関する。いくつかの実施形態では、Tie-2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号2の配列を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメインに結合する。
【0116】
いくつかの実施形態では、Tie2抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号5~7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8~10のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメイン及びVEGFに結合する。
【0118】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインであって、前記VEGF結合ドメインは、配列番号13のVEGF受容体1(VEGFR1)の血管内皮増殖因子(VEGF)-A結合領域及び配列番号14のVEGF受容体2(VEGFR2)の血管内皮増殖因子(VEGF)-A結合領域を含む、血管内皮増殖因子(VEGF)結合ドメインと、抗Tie2抗体又はその抗体結合断片とを含み、前記融合タンパク質は、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメイン及びVEGFに結合する。
【0119】
いくつかの実施形態では、VEGF結合ドメインは、抗VEGF抗体又はその抗体結合断片を含む。さらなる実施形態では、抗VEGF抗体又はその断片は、ベバシズマブ、ラニビズマブ又はHuMab G6-31(米国特許出願公開第2007/0141065号)の可変結合ドメインを含む。
【0120】
一実施形態では、VEGF結合ドメインは、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片の重鎖(HC)のC末端に連結されている。
【0121】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有するTie2のアミノ酸633~644(配列番号20)及び/又はアミノ酸713~726(配列番号21)を結合する。一実施形態では、抗Tie2抗体又はその抗体結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列のTie2のアミノ酸633~644(配列番号19)及び/又はアミノ酸713~726(配列番号20)を結合する。
【0122】
一実施形態では、抗Tie2抗体はIgG1アイソタイプを有する。
【0123】
一実施形態では、VEGF結合ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、VEGF結合ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0124】
一実施形態では、融合タンパク質は4つのポリペプチド鎖を含み、2つの鎖は一対の重鎖であり、2つの鎖は一対の軽鎖である。適切には、重鎖は、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメインに結合するTie2結合ドメインをN末端に含み、VEGF結合ドメインをC末端に含む。適切には、Tie2結合ドメインは抗Tie2抗体であり、融合タンパク質の重鎖の対は抗体の重鎖を含み、融合タンパク質の軽鎖の対は抗体の軽鎖を含む。
【0125】
一実施形態では、融合タンパク質は、
a.第1及び第2の重鎖単量体の二量体であって、各重鎖単量体は、N末端からC末端へ、
i.ii.の定常重鎖ドメイン(CH)に連結された、軽鎖可変ドメインと一緒にTie2を結合する重鎖可変ドメイン(VH)ドメインと、
ii.iii.のVEGF結合ドメインに連結された、CH1ドメイン及びFc領域又はその断片を含む定常重鎖ドメイン(CH)と、
iii.VEGF受容体細胞外ドメインを含むVEGF結合ドメイン(VEGF受容体1(VEGFR1)及びVEGF受容体2(VEGFR2)のVEGF-A結合領域など)と
を含む一本鎖ポリペプチドを含む、第1及び第2の重鎖単量体の二量体と;
b.第1及び第2の軽鎖単量体であって、各軽鎖単量体は、N末端からC末端へ、定常軽鎖ドメイン(CL1)に連結された、VHと一緒にTie2を結合する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、第1及び第2の軽鎖単量体と;
を含み、
前記第1及び第2の単量体は、それらのFc領域又はその断片を介して二量体化し;
前記Tie2結合ドメインは、各重鎖単量体の前記VH及びCH1が前記軽鎖単量体の前記VL及びCL1ドメインと対を形成するように、各重鎖単量体と前記軽鎖単量体の1つとの対形成によって形成される。
【0126】
一実施形態では、融合タンパク質は、VEGF受容体と抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含む。さらなる実施形態では、リンカーは、5~50残基、例えば10~40残基、例えば15~30残基、例えば20残基を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、VEGF結合ドメインと抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、リンカーは、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号16の配列を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、VEGF受容体と抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、リンカーは、配列番号25のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号25の配列を含む。
【0129】
一実施形態では、融合タンパク質は、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片の1以上の重鎖定常ドメインのC末端側に及びN末端からC末端への順序で、VEGF結合ドメインと抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、例えばリンカーは、5~50アミノ酸残基、例えば10~40残基、例えば15~30残基、例えば20残基を有する配列を含む。
【0130】
一実施形態では、融合タンパク質は、抗Tie2抗体又はその抗原結合断片の1以上の重鎖定常ドメインのC末端側に及びN末端からC末端への順序で、VEGF結合ドメインと抗Tie2抗体又はその抗体断片との間にリンカーを含み、リンカーは、配列番号16又は25のアミノ酸配列を含み、VEGF結合ドメインは配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0131】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を含むCHドメインと、VEGF結合ドメインと抗Tie2抗体又はその抗体断片との間に配列番号16又は25のアミノ酸配列を含むリンカーを含み、VEGF結合ドメインは配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0132】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0133】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を含む重鎖を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0134】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を含む重鎖を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0135】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を含む軽鎖を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0136】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含むCHドメインを含む。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を含むCHドメインを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、体定常領域ドメインにおいて他の免疫細胞上のFc受容体との効率的な相互作用を低下させるか又は排除するために、重鎖中の定常領域ドメインに1以上の修飾又は変異を含む。いくつかの実施形態では、1以上の修飾又は変異は、L234L235G236G237(EUナンバリング)をLAGA変異、FEGG変異、AAGG変異、AAGA変異、LALA変異又はそれらの組み合わせに変化させることを含む。いくつかの実施形態では、IgG定常領域は、免疫細胞によって媒介される細胞傷害を低下及び消失させるために、前述の変異のいずれか(例えば、LALA変異)並びにK322及びP331(EUナンバリング)における変異を含む。
【0137】
Tie2抗体は、一価又は二価であり、一本鎖又は二本鎖を含有する。機能的には、結合親和性又は解離定数(KD)は、系平衡状態においてタンパク質上のリガンド結合部位の半分が占有される、リガンドのモル(M)濃度である。解離定数(KD)は、解離速度(Koff)値を会合速度(Kon)値で割ることにより算出される。解離定数の文脈では、より低い値はより強い結合と一致する。Tie2抗体のKDは、10-5M~10-12Mの範囲内である。例えば、Tie2抗体の結合親和性(KD)は、10-6M~10-12M、10-7M~10-12M、10-8M~10-12M、10-9M~10-12M、10-5M~10-11M、10-6M~10-11M、10-7M~10-11M、10-8M~10-11M、10-9M~10-11M、10-10M~10-11M、10-5M~10-10M、10-6M~10-10M、10-7M~10-10M、10-8M~10-10M、10-9M~10-10M、10-5M~10-9M、10-6M~10-9M、10-7M~10-9M、10-8M~10-9M、10-5M~10-8M、10-6M~10-8M、10-7M~10-8M、10-5M~10-7M、10-6M~10-7M又は10-5M~10-6Mである。
【0138】
本明細書に記載の例示的な融合タンパク質であるIGT-427は、同時に、VEGFシグナル伝達を抑制し、Tie2シグナル伝達経路を活性化する。IGT-427は、細胞表面相互作用と同様に、二価の相互作用において1nM未満のKDでヒトTie-2を結合し、10pM未満のKDでヒトVEGFを結合する。表面上のVEGFとは、IGT-427は、500pM未満の見かけの親和性で結合する。表面上のIGT-427とは、KDは10pM未満である。IGT-427は、ウサギオルソログに対して同等の高い親和性を示す。
【0139】
一実施形態では、融合タンパク質は、3E-9M(ここで、E-Xは負の指数及びゼロの数を表し、例えば3E-9は、.0000000003と同じである。)未満、3.5E-9M未満、4E-10M未満、又はそれ未満の親和性KD(M)で、配列番号2、3又は4を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメインに結合する。所与の量より未満のKD値は、そのKDが所与の量より数値的に小さいことを意味し、これはより強い結合を示す。
【0140】
IGT-427は、VEGFのみを阻害する薬剤と比較して優れた有効性を提供する、及び/又はAng2阻害剤と比較してより強力なTie-2アゴニスト活性を有する可能性を有する。
【0141】
融合タンパク質中のTie2抗体又は抗体断片は、Tie2を特異的に認識することができる範囲内でその生物学的等価物を含むことができる。例えば、融合タンパク質中のTie2抗体又は抗体断片は、抗体の結合親和性及び/又はその他の生物学的特性をさらに改善するために、アミノ酸配列への変化を含むことができる。そのような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/又は置換が含まれ得る。これらのアミノ酸変動は、保存的置換を提供するために、アミノ酸側鎖の疎水性、親水性、電荷、サイズなどのアミノ酸置換基の相対的類似性に基づいて行われ得る。アミノ酸側鎖置換基のサイズ、形状及び種類の分析により、アルギニン、リジン及びヒスチジンはすべて正に帯電した残基であり、アラニン、グリシン及びセリンは同様のサイズを有し、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは類似の形状を有することが知られている。したがって、これらの考察に基づいて、アルギニン、リジン及びヒスチジンアラニン、グリシン及びセリン;並びにフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは保存的置換であると言うことができる。
【0142】
生物学的に等価な活性を有する上記の変動を考慮して、いくつかの実施形態では、融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号5~10中の6つのCDRの配列、並びに/又は配列番号11及び12の重鎖及び軽鎖、又は実質的な同一性を示す任意の配列を含む。実質的な同一性は、少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性、90%の同一性、95%の同一性、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の配列同一性を意味する。
【0143】
これに基づいて、融合タンパク質又はその構成要素は、本明細書に記載されている指定された又はすべての配列と比較した場合、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれを超える同一性を有し得る。
【0144】
一実施形態では、融合タンパク質はペグ化されている。一実施形態では、融合タンパク質は、半減期延長モジュレータ、例えばPEG、ヒアルロン酸又はホスホリルコリンで修飾されている。一実施形態では、融合タンパク質は、部位特異的にペグ化されている。一実施形態では、融合タンパク質は、システイン残基上で部位特異的にペグ化されている。一実施形態では、融合タンパク質は、PEG、ヒアルロン酸又はホスホリルコリンを含み得る半減期延長モジュレータで部位特異的に(例えば、システイン残基上で)修飾されている。あるいは、半減期延長モジュレータはアルブミン、アルブミン結合ペプチド及び/又はHA結合タンパク質断片を含み得る。
【0145】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号22の配列をさらに含み、配列番号22の配列のシステイン残基上で、本明細書に記載されている半減期延長モジュレータのいずれかで部位特異的に修飾(例えば、ペグ化)されている。一実施形態では、配列番号22の配列は、重鎖のC末端に存在する。一実施形態では、重鎖は、配列番号23の配列を含む。一実施形態では、重鎖は、配列番号24の配列を含む。
【0146】
一実施形態では、PEGは約40kDaの分子量を有する。
【0147】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質の鎖状単量体を含むポリペプチドが提供される。
【0148】
一実施形態では、ポリペプチドは、本発明の融合タンパク質の重鎖単量体を含む。さらなる実施形態では、ポリペプチドは、配列番号11又は26の配列に対して少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも75%の同一性、例えば少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性、例えば少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも91%の同一性、例えば少なくとも92%の同一性、例えば少なくとも93%の同一性、例えば少なくとも94%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、例えば少なくとも97%の同一性、例えば少なくとも98%の同一性、例えば少なくとも99%の同一性、例えば100%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号11の配列からなる。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号26の配列からなる。
【0149】
一実施形態では、ポリペプチドは、本発明の融合タンパク質の軽鎖単量体を含む。さらなる実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12に対して少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも75%の同一性、例えば少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性、例えば少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも91%の同一性、例えば少なくとも92%の同一性、例えば少なくとも93%の同一性、例えば少なくとも94%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、例えば少なくとも97%の同一性、例えば少なくとも98%の同一性、例えば少なくとも99%の同一性、例えば100%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12の配列からなる。
【0150】
ポリヌクレオチド;製造方法;ベクター及び宿主細胞
別の態様では、本開示は、融合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0151】
別の実施形態では、本開示は、本発明の融合タンパク質の鎖状単量体を含むポリペプチドをコードする核酸を提供する。一実施形態では、本開示は、融合タンパク質の重鎖をコードする核酸を提供する。別の実施形態では、本開示は、融合タンパク質の軽鎖をコードする核酸を提供する。
【0152】
一実施形態では、核酸分子は、配列番号27又は29に対して少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも75%の同一性、例えば少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性、例えば少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも91%の同一性、例えば少なくとも92%の同一性、例えば少なくとも93%の同一性、例えば少なくとも94%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、例えば少なくとも97%の同一性、例えば少なくとも98%の同一性、例えば少なくとも99%の同一性、例えば100%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号27又は29からなる。
【0153】
一実施形態では、核酸分子は、配列番号28に対して少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも75%の同一性、例えば少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性、例えば少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも91%の同一性、例えば少なくとも92%の同一性、例えば少なくとも93%の同一性、例えば少なくとも94%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、例えば少なくとも97%の同一性、例えば少なくとも98%の同一性、例えば少なくとも99%の同一性、例えば100%の同一性を有する配列を含む。一実施形態では、核酸分子は、配列番号28からなる。
【0154】
一実施形態では、本開示は、各ポリヌクレオチドが本発明の融合タンパク質の単量体鎖の少なくとも1つをコードする、1以上のポリヌクレオチドのセットを提供し、前記融合タンパク質のこのような両方の鎖(すなわち、軽鎖及び重鎖)がコードされる。
【0155】
融合タンパク質は、融合タンパク質をコードする核酸を構築又は単離することによって組換え的に生産され得る。核酸を単離し、それを複製可能なベクターに挿入することによるさらなるクローニング(DNA増幅)を行ってもよく、又はさらなる発現を行ってもよい。これに基づいて、本開示は、別の態様において、核酸を含有するベクターに関する。
【0156】
いくつかの実施形態では、本開示は、融合タンパク質を含む核酸に関する。「核酸」は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に包含するものとし、核酸の基本構造単位であるヌクレオチドは、天然のヌクレオチド及び修飾された糖又は塩基部分を有する類似体を含む。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする核酸の配列は、修飾され得る。修飾には、ヌクレオチドの付加、欠失、又は非保存的若しくは保存的置換が含まれる。
【0157】
融合タンパク質をコードするDNAは、従来のプロセスを用いて(例えば、重鎖及び軽鎖をコードするDNAに特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に分離又は合成される。多くのベクターが利用可能である。ベクター構成要素は、一般に、以下のもの:シグナル配列、複製起点、1以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター及び転写終結配列のうちの1以上を含むが、これらに限定されない。
【0158】
いくつかの実施形態では、本開示は、融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを提供する。別の実施形態では、融合タンパク質の1つの重鎖配列及び1つの軽鎖配列をコードする核酸を含むベクターが提供される。
【0159】
一実施形態では、融合タンパク質の両方の鎖(すなわち、軽鎖及び重鎖)がベクターの前記セットにおいてコードされるように、本発明の1以上のポリヌクレオチドのセットを集団的に含む1以上のベクターのセットが提供される。
【0160】
一実施形態では、ベクターは、動物ウイルス、例えば逆転写酵素ウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、水痘ウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス及びパポバウイルスから選択されるウイルスである。
【0161】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、ヒトサイトメガロウイルスIE1(CMV-IE1)プロモーター/エンハンサーなどのプロモーター/エンハンサーをさらに含む。
【0162】
本明細書で使用される場合、宿主細胞において目的の遺伝子を発現させるための手段としての、「ベクター」という用語は、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターを含む。ベクター中の抗体をコードする核酸は、プロモーターに動作可能に連結されている。
【0163】
本明細書で使用される場合、「動作可能に連結された」又は「連結された」という用語は、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、シグナル配列又は転写調節因子結合部位のアレイ)と異なる核酸配列との間での機能的な連結を意味し、それにより、制御配列は他の核酸配列の転写及び/又は翻訳を制御する。
【0164】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む宿主細胞が本明細書で提供される。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であり得る。宿主細胞は、単離されてもよく、例えば、培養されてもよく、又は多細胞生物の一部でなくてもよい。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、細胞株のメンバーである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、不死化された哺乳動物細胞である。
【0165】
宿主としての原核細胞の場合、転写を処理することができる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター及びT7プロモーターなど)、翻訳の開始のためのリボソーム結合部位及び転写/翻訳終結配列が一般に含まれる。さらに、例えば宿主としての真核細胞の場合、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例:メタロチオニンプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)又は哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター)を用いることができ、一般的には、転写終結配列としてポリアデニル化配列を含めることができる。
【0166】
いくつかの事例では、ベクターは、発現された抗体の精製を容易にするために他の配列と融合され得る。融合される配列は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia、米国)、マルトース結合タンパク質(NEB、米国)、FLAG(IBI、米国)及び6×His(ヘキサヒスチジン;Qiagen、米国)である。
【0167】
ベクターは、選択マーカーとして当技術分野で一般的に使用される抗生物質耐性遺伝子、例えばアンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子を含有する。
【0168】
別の態様では、本開示は、上記発現ベクターで形質転換された細胞に関する。抗体を生産するために使用される細胞は、原核生物、酵母及び高等真核生物の細胞であり得るが、これらに限定されない。
【0169】
大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)などのバチルス(Bacillus)株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida))、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及びスタフィロコカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylococcus carnosus))などの原核宿主細胞を使用することができる。
【0170】
例示的な有用な動物宿主細胞株は、COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL 3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC 5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S又はHT1080であるが、これらに限定されない。
【0171】
一実施形態では、本開示は、Tie2及びVEGFを結合する融合タンパク質を製造する方法であって、融合タンパク質をコードする、発現ベクターなどの核酸を含む(例えば、融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターで形質転換された)細胞を培養する工程と、前記培養された細胞から融合タンパク質を回収する工程とを含む、方法を提供する。
【0172】
細胞は、様々な培地中で培養され得る。任意の市販の培養培地を制限なく使用することができる。当業者に公知のすべての他の必須サプリメントは、適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件、及び選択される宿主細胞は、当業者に公知である。
【0173】
抗体又はその抗原結合断片の回収は、例えば遠心分離又は限外濾過を用いて、及び例えばアフィニティークロマトグラフィーなどを用いて不純物を除去することによって行うことができる。アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどのさらなる追加の精製技術を使用することができる。
【0174】
融合タンパク質の使用;治療
別の態様では、本開示は、有効量の融合タンパク質を投与することによって血管新生疾患又は血管疾患を予防又は処置するための方法及び組成物に関する。他の態様では、本実施形態は、血管新生、内皮シグナル伝達、炎症及び/又は血管漏出を調節することを必要とする対象に融合タンパク質を投与することによって、血管新生、内皮シグナル伝達、炎症及び/又は血管漏出を調節するための方法及び組成物に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている融合タンパク質は、治療において使用するためのものである。
【0175】
血管新生は、既存の血管からの新しい血管の形成又は成長を意味する。血管新生疾患又は血管新生関連疾患の例には、癌、転移、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、未熟児網膜症、角膜移植片拒絶反応、黄斑変性、血管新生緑内障などの緑内障、全身性紅皮症、増殖性網膜症、乾癬、血友病性関節症、アテローム性プラークにおける毛細血管形成、ケロイド、創傷肉芽形成、血管接着、関節リウマチ、変形性骨関節炎、自己免疫疾患、クローン病、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、腸管癒着、ネコ引っ掻き病、潰瘍、肝硬変、腎炎、糖尿病性腎症、糖尿病、炎症性疾患及び神経変性疾患が含まれるが、これらに限定されない。さらに、例示的な癌には、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、肺癌、結腸癌、乳癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、骨癌、結合組織癌、皮膚癌、脳癌、甲状腺癌、白血病、ホジキンリンパ腫、リンパ腫及び多発性骨髄性血液癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
融合タンパク質は、血管新生、内皮シグナル伝達、炎症及び/又は血管漏出を調節するために投与され得る。例えば、融合タンパク質は、血管内皮細胞膜の完全性を増加させ、及び/又は血管漏出を低下させるために投与され得る。血管漏出は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症(DR)及び加齢黄斑変性(AMD)を含むがこれらに限定されないいくつかの一般的な眼障害における視覚障害の一因であることが知られている。いくつかの実施形態では、炎症は、敗血症、呼吸促迫症候群及び/又はウイルス感染性疾患に由来する。
【0177】
融合タンパク質及びその組成物は、ラット、マウス、家畜、愛玩動物、ヒトなどを含む哺乳動物に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物の愛玩動物などの愛玩動物である。いくつかの実施形態では、愛玩動物は、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、ウマ、ラバ、ロバ又はハムスターである。融合タンパク質又はその組成物は、毎日投与され得る。融合タンパク質又はその組成物は、1、2、3、4、6又は12ヶ月ごとに1回投与され得る。一実施形態では、融合タンパク質は、6ヶ月に1回(すなわち、1年に2回)投与される。投与は、典型的に受け入れられた経路、例えば、経口、直腸、硝子体内、静脈内、皮下、子宮内、又は脳血管内投与によるものである。いくつかの実施形態では、投与は硝子体内注射によるものである。一実施形態では、1mg~10mgの融合タンパク質が、毎日、毎月又は6ヶ月ごとに硝子体内注射によって投与される。一実施形態では、10mg未満の融合タンパク質が、6ヶ月ごとに約1回(例えば、1年に2回)の硝子体内注射によって投与される。
【0178】
薬学的組成物;投与
いくつかの実施形態では、融合タンパク質を含む組成物は薬学的組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、当分野で典型的に使用される適切なビヒクル、賦形剤又は希釈剤を含む。
【0179】
適切なビヒクル、賦形剤、希釈剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,Pa.1995に記載されている。適切な薬学的に許容され得るビヒクル、賦形剤又は希釈剤としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、ヒスチジン、グリセロール、スクロース、ポリソルベート、エタノールなどの1以上、及びそれらの組み合わせが挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約6~約7である。例えば、投与経路及び濃度に応じて、ある種の担体がより好ましい場合があることは、当業者には明らかであろう。
【0180】
薬学的に許容され得るビヒクルを有する薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、経口溶液、エマルジョン、シロップ、無菌水溶液、非水溶液、懸濁剤、凍結乾燥物及び坐剤などの様々な経口又は非経口剤形であり得る。薬学的組成物は、充填剤、増粘剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの、組み合わせで調合され得る希釈剤又は賦形剤を含むことができる。経口投与用の固体調製物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などの形態であり得る。結束との関連で、化合物は、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース又はゼラチンなどの1以上の賦形剤を組み合わせることによって製剤化され得る。単純な賦形剤及びステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤がさらに使用され得る。
【0181】
経口投与用液体調製物は、懸濁液、経口溶液、エマルジョン、シロップなどであり得る。賦形剤、例えば水又は湿潤パラフィンのような単純な希釈剤、様々な湿潤剤、甘味料、芳香剤、防腐剤などを液体製剤中に含めることができる。さらに、薬学的組成物は、無菌水溶液、非水性溶媒、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥物、坐剤などの非経口剤形であり得る。注射可能なプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油及びオレイン酸エチルなどのエステルは、不溶性溶媒及び懸濁液に適し得る。坐剤の基本物質としては、ウイテプゾール、マクロゴール、Tween 61、カカオバター、ラウリンバター、グリセロゼラチンが挙げられる。
【0182】
組成物は、薬学的有効量で投与される。「薬学的有効量」などの本明細書で使用される用語は、すべての医学的処置に適用可能であり得る適切な利益/リスク比を有する、疾患処置のための薬学的組成物の十分な量を指す。有効量は、疾患の重症度、患者/患畜の年齢及び性別、疾患の種類、薬物活性、薬物感受性、投与時間、投与経路、分泌速度、処置の期間及び他の要因などのパラメータを含む様々な要因に応じて異なり得る。また、上記組成物は、単一用量で投与され得るか、又は複数用量に分割され得る。これらの要因を十分に考慮すると、副作用なしで最大の効果を得るのに十分な最小量を投与することが重要である。薬学的組成物の投与量は、特に限定されないが、患者/患畜の健康状態及び体重、疾患の重症度、薬物の種類、投与経路及び投与時間を含む種々の要因に応じて変動する。
【0183】
組成物は、典型的に受け入れられた経路、例えば、経口、直腸、静脈内、皮下、子宮内、硝子体内又は脳血管内を介して、1日に1回又は複数回、ラット、マウス、家畜、愛玩動物、ヒトなどを含む哺乳動物に投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、硝子体内注射によって投与される。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物の愛玩動物などの愛玩動物である。いくつかの実施形態では、愛玩動物は、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、ウマ、ラバ、ロバ、ハムスター又はその他の家畜化されたペットである。
【0184】
他の観点での本開示は、抗体又は上記組成物を必要とする個体中に投与するための工程を含む、血管新生疾患又は血管疾患のための予防又は処置方法、及び抗血管新生方法に言及する。
【0185】
融合タンパク質は、薬学的組成物で提供され得る。
【0186】
本開示の方法は、血管新生の阻害を必要とする個体に対して薬学的有効用量の薬学的組成物を投与するための手順を含む。個体は、イヌ、ネコ、フェレット、ウシ、ウマ、ウサギ、マウス、ラット又はヒトなどの哺乳動物であり得るが、これらに限定されない。例えば、一実施形態では、個体は、ニワトリ、シチメンチョウ又はその他の非哺乳動物であり得る。薬学的組成物は、非経口、皮下、腹腔内、肺内又は鼻腔内、及び必要に応じて局所処置のための病変内を含む適切な方法で投与され得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物の投与量は、個体の健康状態及び体重、疾患の重症度、薬物の種類、投与経路及び投与時間を含むがこれらに限定されない様々な要因に応じて変化し、当業者によって容易に決定され得る。
【0187】
他の態様では、本開示は、抗体及び抗体を含む癌の予防又は処置のための組成物又は薬学的組成物を必要とする個体への組成物又は抗体の投与手順を含む、癌の予防又は処置の方法に言及する。
【0188】
癌は、本開示の抗体で処置可能である限り、限定されない。具体的には、抗体は、血管新生を阻害することにより、癌の発生又は進行を予防することができる。癌の例には、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、肺癌、結腸癌、乳癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、骨癌、結合組織癌、皮膚癌、脳癌、甲状腺癌、白血病、ホジキンリンパ腫、リンパ腫及び多発性骨髄性癌血液癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0189】
別段の定義がなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。
【0190】
[実施例]
以下の実施例は、単に本発明を例示することを意図しており、本発明を限定するように構成されていない。
【0191】
[実施例1]
融合タンパク質の調製
A.構築物の設計
VEGF受容体1(VEGFR1)及びVEGF受容体2(VEGFR2)のVEGF-A結合領域が抗Tie2抗体の重鎖(HC)のC末端に融合された融合タンパク質、IGT-427を設計した。構築物を、ヒトサイトメガロウイルスIE1(CMV-IE1)プロモーター/エンハンサーを含有するタンパク質発現ベクターにした。重鎖(HC)及び軽鎖(LC)のアミノ酸配列が、上記の表1に示されている。
【0192】
B.IGT-427の発現及び精製
製造者の説明書(Gibco)に基づいて、IGT-427をコードするプラスミドDNAをExpiCHO-S細胞に一過性に同時トランスフェクトした。等量の重鎖及び軽鎖DNAを使用した。次いで、Max力価プロトコルのために、振盪しながら空気中5%CO2の加湿雰囲気で、32℃で、トランスフェクトされた細胞をインキュベートした。12日間のインキュベーション後、分泌された融合タンパク質を含有する培養培地を回収し、遠心分離して細胞を除去し、培養上清を回収し、濾過した。結合/洗浄緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH7.2及び150mM NaCl)及び溶出緩衝液(25mM酢酸ナトリウム、pH3.3)中で、HiTrap MabSelect Sure Protein A(Cytiva)のアフィニティーカラムを有するAKTAPure精製システム(Cytiva)を使用して融合タンパク質を精製し、したがって1ミリリットルの画分当たり100μlの1M Tris-HCl、pH8.8を添加することによって直ちに中和した。次いで、遠心フィルターユニット(Amicon)を使用して、プールされた画分をPBS、pH7.4に緩衝液交換した。その結果得られた最終試料をさらに使用するまで保存した。同時に、SDS-PAGE(Invitrogen(商標)Novex(商標)WedgeWell)、SEC-HPLC(Agilent Infinity 1260及び300Å細孔径のカラム)及び内毒素測定(Charles River Cartridge<0.05EU/ml感度)及び表面プラズモン共鳴(SPR Biacore)などの品質管理研究に融合タンパク質を供した。
【0193】
[実施例2]
オルソロガスなTie2タンパク質の調製
A.構築物の設計
Tie2の3つのオルソロガスなタンパク質(ヒト、ウサギ及びマウス)のIg3ドメイン及びFNIII(1-3)ドメインを、IGT-427への結合タンパク質として選択した。Tie2とIgG1 Fc配列との間の連続するC末端ヘキサ-ヒスチジン及びトロンビンプロテアーゼ切断部位(LVPRGS)と共に、伸長因子1-アルファ(EF-1α)プロモーター及びIL2シグナルペプチドから構成されるpFuse-マウスIgG1 Fc2ベクターに各Tie2オルソログのドメインをクローニングした。ヒト(配列番号2)、ウサギ(配列番号3)及びマウス(配列番号4)Tie2オルソログの配列が上記の表1に示されている。
【0194】
B.Tie2オルソログの発現及び精製
Tie2オルソログを生産するために、組換えタンパク質を高効率で生産することができるExpi293F(Gibco)細胞を使用した。製造者の取扱説明書(Gibco)を参照することによって、Expi293F細胞株において、オルソロガスなTie2タンパク質を一過性に発現させた。4日のトランスフェクション及び振盪しながら空気中8%CO2の加湿雰囲気での、37℃でのインキュベーション後、得られた培養培地を回収し、遠心分離して細胞を除去した。分泌された抗体を含有する培養上清を単離し、4℃で保存するか、又は結合及び洗浄(20mMリン酸ナトリウム、pH7.2及び150mM NaCl)並びに溶出緩衝液(25mM酢酸ナトリウム、pH3.3)という2つの異なる緩衝液系中で、アフィニティーカラム(HiTrap MabSelect Sure Protein A、Cytiva)を備えたAKTAPure精製装置(Cytiva)を使用して直ちに精製した。1ミリリットルの画分当たり100μlの1M Tris-HCl、pH8.8を添加することによって、Tie2タンパク質を直ちに中和した。画分をプールし、次いで、タンパク質遠心分離フィルター(Amicon)を通してPBS、pH7.4に緩衝液交換し、-80℃で保存した。次のプロセスとして、SDS-PAGE(Invitrogen(商標)Novex(商標)WedgeWell)、SEC-HPLC(Agilent Infinity 1260及び300Å孔径のカラム)及び表面プラズモン共鳴(SPR)などの品質管理研究のためにタンパク質を分析した。
【0195】
[実施例3]
Tie2オルソログに対する融合タンパク質(IGT-427)の親和性測定
SPRシステム(Biacore 3000)によって、オルソロガスなTie2タンパク質に対する融合タンパク質の親和性を測定した。EDC/NHS化学を使用して、ヒト、ウサギ又はマウスTie2の単量体又は二量体形態のいずれかで、CM5 SPRチップ(Cytiva)を修飾した(ここでは、二量体形態はFc融合物であった)。センサーチップをEDC(0.2M)及びNHS(0.05M)で7分間活性化した後、約200RUの抗原表面密度に達するように、pH5の10mM酢酸ナトリウム中2.5μg mL
-1のTie2構築物を注入した。次いで、1Mエタノールアミン・HCl pH8.5の7分間の注入で表面を非活性化した。活性化及び非活性化試薬は、Cytivaから購入した。Tie2構築物の固定化後、300mMリン酸の2回の5秒間パルスで表面の状態を整えた。これらの固定化されたTie2表面上に、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM及び1.2nMで、30μL/分で5分間、ランニング緩衝液(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、2mg/mL BSA及び0.05%ポリソルベート-20)中の融合タンパク質を注入し、解離を20分間監視した。300mMリン酸の10秒間の注入で表面再生を行った。Scrubberソフトウェア(BioLogic)を使用して、センサーグラムを1:1ラングミュア結合モデルに当てはめた。K
D値及びSPRセンサーグラムが、それぞれ以下の表2及び
図1A~1Cに示した。
【表2】
【0196】
[実施例4]
IGT-427によるVEGFR2リン酸化の阻害
60mm培養皿において、EGM-2培地(Lonza)中、37℃で、HUVEC(1×105細胞/ml)を培養した。飢餓状態にするために、サプリメントを含まないEBM-2培地とともに4時間、90%コンフルエントの細胞をインキュベートした。表記された濃度のIGT-427又はアイリーア(R)で、飢餓状態にしたHUVECを30分間前処理し、次いで組換えヒトVEGFで2分間処理した。冷PBSで細胞を洗浄し、溶解緩衝液(10mM Tris-Cl pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、10%グリセロール、1%Triton X-100、プロテアーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤)で処理し、4℃で20分間溶解した。次いで、13000rpmで15分間の遠心分離によって細胞可溶化物を調製した。上清中のタンパク質濃度をBCAアッセイによって定量した。4×SDS試料緩衝液を添加することによって細胞可溶化物を調製し、細胞可溶化物をSDS PAGEに供し、タンパク質をニトロセルロース膜(GE)に転写した。
【0197】
VEGFR2及びAktのリン酸化を調べるために、5%スキムミルク含有TBS-Tにより室温(RT)で1時間ブロットをブロッキングし、抗ホスホ-VEGFR2抗体(Tyr1175)又は抗ホスホAkt(S473)抗体とともに、4℃で約16時間インキュベートした。増感化学発光(ECL)によって、ホスホ-VEGFR2(Tyr1175)又はpAkt(S473)のシグナルを、可視化した。次いで、ストリッピング緩衝液(Thermo)中で15分間、膜をインキュベートし、その後、抗VEGFR2抗体又は抗Akt抗体により再度プローブして、総VEGFR2及び総Aktの量を決定した。Tyr1175におけるVEGF誘導性VEGFR2リン酸化は、IGT-427によって濃度依存的に阻害され、その阻害は、アイリーア(R)による阻害に匹敵する(
図2A及び2B)。さらに、IGT-427は、Aktのリン酸化を用量依存的様式で誘導した。
【0198】
VEGFレポーターバイオアッセイキット(PROMEGA(商標))を使用して、VEGFレポーターアッセイを行った。簡潔には、10%FBS(アッセイ緩衝液)を含有する4.6mlのDMEM培地に、0.4mlのKDR/NFAT-RE HEK293細胞を加え、25μlの細胞懸濁液を白色平底96ウェルアッセイプレート(Corning)に蒔いた。50nMの3倍高濃度の濃度及び25μlのアッセイ緩衝液中での3倍連続希釈で、IGT-427、ファリシマブ又はアフリベルセプトを添加し、25μlのアッセイ緩衝液中の40ng/mlの3倍高濃度の組換えヒトVEGFをプレートに添加した。37℃で6時間インキュベートした後、75μlのキットに付属のBIO-GLO(商標)試薬を加え、GloMax(R)Discovery System(PROMEGA(商標))を用いて発光を測定した。IGT-427、ファリシマブ又はアフリベルセプトのIC50値は、それぞれ約0.48nM、0.32nM又は0.75nMであり(
図2C)、IGT-427によるVEGF阻害がファリシマブ又はアフリベルセプトのいずれかによる阻害と同等であることを示唆した。
【0199】
[実施例5]
IGT-427によるTie2のより強くかつより持続的な活性化
完全長のヒトTie2を過剰発現するCHO細胞(CHO-hTie2、1×105細胞/ml)を、60mm培養皿中において、37℃でDMDM培地(Thermo Fisher)中で培養した。飢餓状態にするために、サプリメントを含まないDMEM培地とともに4時間、90%コンフルエントの細胞をインキュベートした。飢餓状態にされたCHO細胞を、様々な期間(30分、1時間、2時間、6時間及び24時間)、10nMの濃度のIGT-427又は組換えヒトアンジオポエチン-1(R&D Systems(R))で処理した。細胞を冷PBSで洗浄し、溶解緩衝液(10mM Tris-Cl pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、10%グリセロール、1%Triton X-100、プロテアーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤)で処理し、4℃で20分間溶解した。次いで、13000rpmで15分間の遠心分離によって細胞可溶化物を調製した。次いで、可溶化物を使用して、pTie2及び総Tie2 ELISAアッセイキット(R&D Systems(R))を使用して、ホスホ-Tie2及び総Tie2シグナルのレベルを検出した。総Tie2シグナルによってホスホ-Tie2シグナルを正規化した。IGT-427は、アンジオポエチン-1と比較して、より強くかつより持続的なpTie2シグナルを示した(
図3)。
【0200】
[実施例6]
IGT-427によるAktシグナル伝達の用量依存的活性化
60mm培養皿において、EGM-2培地(Lonza)中、37℃で、HUVEC(1×105細胞/ml)を培養した。飢餓状態にするために、サプリメントを含まないEBM-2培地とともに4時間、90%コンフルエントの細胞をインキュベートした。飢餓状態にされたHUVECを様々な濃度のIGT-427(0.3、1、3、10、30、100nM)で30分間処理した。冷PBSで細胞を洗浄し、溶解緩衝液(10mM Tris-Cl pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、10%グリセロール、1%Triton X-100、プロテアーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤)で処理し、4℃で20分間溶解した。次いで、13000rpmで15分間の遠心分離によって細胞可溶化物を調製した。タンパク質濃度をBCAアッセイによって定量した。4×SDS試料緩衝液を添加することによって細胞可溶化物を調製し、細胞可溶化物をSDS PAGEに供し、タンパク質をニトロセルロース膜(GE)に転写した。Aktのリン酸化を調べるために、5%スキムミルク含有TBS-Tにより室温(RT)で1時間ブロットをブロッキングし、抗ホスホAkt(S473)抗体とともに、4℃で約16時間インキュベートした。増感化学発光(ECL)によって、pAkt(S473)のシグナルを可視化した。次いで、ストリッピング緩衝液(Thermo)中で15分間、膜をインキュベートし、その後、抗Akt抗体により再度プローブして、総Aktの量を決定した。
図4に示されているように、IGT-427によるホスホ-Aktシグナル伝達の用量依存的な漸増が存在した。
【0201】
[実施例7]
IGT-427によってAng2シグナル伝達を回避する
60mm培養皿において、EGM-2培地(Lonza)中、37℃で、HUVEC(1×105細胞/ml)を培養した。飢餓状態にするために、サプリメントを含まないEBM-2培地とともに4時間、90%コンフルエントの細胞をインキュベートした。0.01、0.1、1nMの濃度の組換えヒトアンジオポエチン-2(R&D Systems(R))で30分間、飢餓状態にされたHUVECを前処理し、次いで、30nMの濃度の2×20kDaのペグ化IGT-427で60分間処理した。冷PBSで細胞を洗浄し、溶解緩衝液(10mM Tris-Cl pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、10%グリセロール、1%Triton X-100、プロテアーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤)で処理し、4℃で20分間溶解した。次いで、13000rpmで15分間の遠心分離によって細胞可溶化物を調製した。タンパク質濃度をBCAアッセイによって定量した。4×SDS試料緩衝液を添加することによって細胞可溶化物を調製し、細胞可溶化物をSDS PAGEに供し、タンパク質をニトロセルロース膜(GE)に転写した。Aktのリン酸化を調べるために、5%スキムミルク含有TBS-Tにより室温(RT)で1時間ブロットをブロッキングし、抗ホスホAkt(S473)抗体とともに、4℃で約16時間インキュベートした。増感化学発光(ECL)によって、pAkt(S473)のシグナルを可視化した。次いで、ストリッピング緩衝液(Thermo)中で15分間、膜をインキュベートし、その後、抗Akt抗体により再度プローブして、総Aktの量を決定した。組換えアンジオポエチン-2(Ang2)は、Aktの弱いリン酸化を濃度依存的様式で誘導した。しかしながら、IGT-427は、組換えアンジオポエチン-2の存在下でAktリン酸化をさらに増加させ、IGT-427がAng2シグナル伝達を乗り越えることを実証した(
図5)。
【0202】
[実施例8]
IGT-427の二重結合能力
表面プラズモン共鳴(SPR)システム(BIACORE(商標)3000)によって、IGT-427の、その抗原であるTie2及びVEGFへの二重結合特性を調べた。組換えヒト完全長Ang2(R&D Systems(R))をCM5 SPRチップ(Cytiva)上に捕捉し、まずヒト二量体型のTie2(100nM)を注射した後、IGT-427(150nM)及びヒトVEGF(20nM)(R&D Systems(R))を順次注射した。センサーグラムは、シグナルの逐次の増加を示し、IGT-427がAng2-Tie2複合体及びVEGFに同時に結合することができることを実証した(
図6)。
【0203】
[実施例9]
IGT-427によるTNF-α誘導性アポトーシスの阻害
60mm培養皿において、EGM-2培地(Lonza)中、37℃で、HUVEC(1×10 5細胞/ml)を培養した。IGT-427又はアイリーア(R)で60分間、90%コンフルエントの細胞を前処理し、次いで、組換えヒトTNF-α(50ng/ml)で24時間処理した。APO-BrdU(商標)TUNEL Assay Kit(Thermo Fisher、A23210)によってアポトーシス細胞を染色し、Attune(Thermo Fisher)によって判定した。簡潔には、0.5mLのPBSに細胞を懸濁し、PBS中の5mLの1%(w/v)パラホルムアルデヒドを細胞懸濁液に添加し、次いで、細胞懸濁液を氷上に15分間置いた。細胞を300×gで5分間遠心分離し、5mLのPBSで2回洗浄した。0.5mLのPBSに細胞を再懸濁し、5mLの氷冷70%(v/v)エタノールを細胞懸濁液に添加し、細胞懸濁液を最低30分間、-20℃の冷凍庫内に置いた。70%(v/v)エタノールを除去するために、細胞懸濁液を300×gで5分間遠心分離し、次いで、キットに付属の1mLの洗浄緩衝液で細胞ペレットを再懸濁した。50μLのDNA標識溶液(10μLの反応緩衝液、0.75μLのTdT酵素、8.0μLのBrdUTP及び31.25μLのdH2O)中で、37℃で60分間、細胞ペレットをインキュベートした。インキュベーション時間の最後に、1.0mLのリンス緩衝液を細胞に添加し、細胞を300×gで5分間遠心分離した。リンス緩衝液でさらに洗浄した後、100μLの抗体染色溶液(5.0μLのAlexa Fluor(商標)488色素標識抗BrdU抗体)と95μLのリンス緩衝液)中で、室温で30分間、細胞をインキュベートした。Attuneフローサイトメトリー(Thermo Fisher)によってアポトーシス細胞を分析した。TNF-αはHUVEC細胞のアポトーシスを誘導し、IGT-427は、TNF-αによって誘導されたアポトーシスを有意に阻害したが、アイリーア(R)は阻害しなかった(
図7)。
【0204】
[実施例10]
表面Tie2レベルの測定
アッセイの準備として、10cm組織培養皿上で、コンフルエントになるまでCHO-hTie2細胞を増殖させた。ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)でCHO-hTie2細胞を洗浄し、トリプシンで処理して細胞を剥離し、計数し、200gで5分間遠心分離し、0.05×106細胞/mLの密度で再懸濁した。アッセイプレートに播種するために、24ウェル組織培養プレートの各ウェルに1mLの細胞懸濁液を分注し、プレートを370℃で一晩インキュベートした。翌日、組織培養プレートから培地を取り出し、非刺激群についてはDMEMのみ、又は10nMアンジオポエチン1(R&D Systems(R)#923-AN)、10nM IGT-301(ITP-006)若しくは10nM IGT-427(ITP-016)を含有するDMEMのいずれかの0.5mLと交換した。アッセイプレートを370℃の組織培養インキュベータに所定の時間(0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間又は24時間)戻した。
【0205】
インキュベーション後、組織培養プレートを氷上に置き、冷DPBSで洗浄し、0.5mLの非酵素的細胞解離緩衝液(PeproTech(R)#CPD-125)を添加することによって剥離させた。細胞を氷上で5分間インキュベートし、1mLのFACS緩衝液(DPBS中0.5%BSA)を添加し、培養表面になお付着している細胞を剥離させるために穏やかにピペット操作を行うことによって回収した。得られた細胞懸濁液を5mL Falcon FACSチューブに回収し、300gで5分間遠心分離して細胞をペレット化し、上清を吸引した。1mLのFACS緩衝液で細胞を1回洗浄し、上清を吸引すると、チューブ内に約100uLの残留FACS緩衝液が残存した。次いで、99.5uLのFACS緩衝液及び0.5uLのPE-Tie2(BioLegend(R)#334205)からなる100uLの染色カクテルを添加することによって細胞を染色した。パラフィルムで試料を覆い、暗所において40℃で30分間インキュベートした。
【0206】
インキュベーション後、上記のように1mLのFACS緩衝液で細胞を2回洗浄し、次いで400uLの最終体積のFACS緩衝液に再懸濁し、直ちに分析するか又は翌日の分析のために固定した。固定のために、上記のように細胞を2回洗浄し、暗所において40℃で30分間、200uLの4%パラホルムアルデヒドに再懸濁し、1mLのFACS緩衝液で1回洗浄し、400uLの最終体積のFACS緩衝液で再懸濁し、40℃で一晩被覆して保存した。Attune NXT Acousticフローサイトメーター(Thermo Fisher)を用いて試料を取得し、FlowJo(商標)(Tree Star,Inc.)を用いてファイルを分析した。IGT-427処理は、内因性Tie2アゴニストであるアンジオポエチン-1(Ang1)と比較して、表面Tie2のより遅い消失及びより多い存在をもたらした(
図8)。
【0207】
[実施例11]
Tie2切断を遮断する
Tie2は、様々な炎症症状でヒト、マウス及び内皮細胞において切断及び下方制御され、可溶性Tie2(sTie2)のレベルの増加をもたらすことが知られている(Thamm et al.,Critical Care Medicine,2018.46:e928-e936)。広範囲のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を遮断することは、Tie2切断及び血管漏出を防ぐのに十分であることが知られている(Thamm et al.,Critical Care Medicine,2018.46:e928-e936;Sung et al.,2011.The Journal of Clinical Endocrinology&Metabolism 96:E1148-E1152;Findley et al.,2007,Arteriosclerosis,Thrombosis,and Vascular Biology 27:2619-2626)。MMP-14は、主要なTie2切断であるとされており、Tie2は、マトリックスメタロプロテアーゼ-14によってフィブロネクチン3型ドメイン内の複数の部位において切断される(Idowu,TO et al.,eLife,August 24,2020,9:e59520)。
【0208】
IGT-427(hTie2-ECDの同じモル濃度)の非存在下又は存在下で、組換えヒトMMP-14(R&D Systems(R)、カタログ#、918-MP-010,0.5ug)を二量体ヒトTie2細胞外ドメイン(ECD)-ヒトIgG融合タンパク質(hTie2-ECD、5ug)と混合した。混合物を30℃で16時間インキュベートし、SDS-PAGE(還元条件)に供した。以前の報告と一致して、MMP-14及びヒトTie2の共インキュベーションは、無傷のhTie2-ECDの有意な低下をもたらし、より短い切断された断片が出現した。しかしながら、IGT-427は、MMP-14による無傷のヒトTie2-ECDタンパク質の切断及び低下を有意に遮断した(
図9)。
【0209】
理論に拘束されることを望むものではないが、この証拠に基づくと、配列番号2、3若しくは4、又はより具体的には配列番号20のアミノ酸配列及び/若しくは配列番号21のアミノ酸配列を含むTie2 Ig3-FNIII(1-3)ドメインに結合する抗Tie2抗体又は抗原結合断片と、VEGF結合ドメインとを含む二重特異性は、ヒトTie2へのMMP-14の結合を遮断するという効果と、VEGFによって引き起こされるヒトTie2-ECDタンパク質の切断を阻害するという効果とを組み合わせることによって、Tie2のシェディンングを低下させると考えられる。これは、Tie2を細胞表面膜に保つという特に有益な結果を提供する。
【0210】
[実施例12]
可溶性Tie2(sTie2)測定
60mm培養皿において、EGM-2培地(Lonza)中、37℃で、HUVEC(1×105細胞/ml)を培養した。10nMの濃度のIGT-427、ファリシマブ又は組換えヒトアンジオポエチン-1(R&D Systems(R))で、90%コンフルエントの細胞を60分間前処理し、次いで、組換えヒトTNF-α(50ng/ml)で24時間処理した。細胞上清を回収し、13000rpmで10分間遠心分離した。総Tie2 ELISAアッセイキット(R&D Systems(R))によって細胞上清中の可溶性Tie2を測定した。IGT-427は、基礎条件及びTNF-αによって誘導された条件の両方で可溶性Tie2レベルを抑制したが、他の薬剤は抑制しなかった(
図10)。
【0211】
[実施例13]
TEER(経内皮電気抵抗)アッセイ
EGM-2培地(Lonza)中の24ウェルプレート(Corning)中の細胞培養インサート中で、HUVEC(2×105細胞)を37℃で培養した。2日間のインキュベーション後、培地を、0.5%FBSを含有するEGM-2培地に変えた。その後の2日間のインキュベーション後に、細胞培養インサートをCellZscope(R)(NanoAnalytics)の中に入れ、TEER(経内皮電気抵抗)を37℃のCO2インキュベータ中で連続的に測定した。細胞バリア形成を確認した後、10ng/mlの濃度の組換えヒトVEGF(R&D)を下方の区画に添加した。種々の薬剤、例えば10nMの濃度のIGT-427、ファリシマブ、アフリベルセプト又は組換えヒトアンジオポエチン-1(R&D)を下方の区画に添加し、VEGF処理後48時間にわたってTEERをモニターした。VEGFは内皮バリアの完全性を破壊し、IGT-427は、VEGFによって誘発された損傷から内皮バリアの完全性を回復させる上で、ファリシマブ及びアフリベルセプト、並びにAng1よりも優れていた(
図11)。
【0212】
[実施例14]
硝子体内注射されたIGT-427によるCNV(脈絡膜新生血管形成)の抑制
点眼剤(Mydriacyl点眼液、1%)を右眼球に適用することによってチンチラウサギ(雄、2.0~2.5kg)に麻酔をかけ、532nm、出力150mW、持続時間0.1秒で右眼球にレーザー(Elite、Lumenis(R)、米国)を照射して、視神経の周囲に6つのスポットを生成した。麻酔をかけた動物の右眼に、3ゲージ針を備えたシリンジを使用して、脈絡膜新生血管形成(CNV)誘発の日に、IGT-427、アイリーア(R)又は対照IgG(50μl注入体積/眼、アイリーア(R)(800μg)、IGT-427(885μg)、対照IgG(716μg))を硝子体内投与した。アイリーア(R)、IGT-427及び対照IgGのモル比は、1:0.65:0.68である。濃度及び体積に対するいくつかの制限のために、異なるモルを使用した。0日目、7日目及び14日目に、右眼球に点眼剤(Mydriacyl点眼液、1%)を適用することによって動物に麻酔をかけ、1mLのフルオレセインナトリウム塩溶液(2%)を静脈内注射して2分以内に眼底カメラ(TRC-50IX、TOPCON、日本)を用いて眼底画像を撮影した。網膜フルオレセイン眼底写真を用いて網膜CNV面積及び有効性の評価を行い、CNV病変部位の蛍光強度を検証するために、ImageJソフトウェア(NIH、ベセスダ、メリーランド州)を用いて画像解析を行った。IGT-427は、対照IgGと比較して網膜漏出を30%抑制した。一方、アイリーア(R)は網膜漏出を20%阻害することができた(
図12)。
【0213】
[実施例15]
PEG化のためのIGT-427バリアント
IGT-427の眼半減期を延長するために、IGT-427の重鎖及び軽鎖プラスミドを改変して、PEG化のための5つの異なる抗体構築物を作製した(
図13に概説されている)。5つバリアントはすべて、各重鎖上のC218S変異(EUナンバリング)と組み合わせて、重鎖と軽鎖間の鎖間ジスルフィド結合を除去する変異C214S(EUナンバリング)を有する軽鎖を有する。さらに、IGT-427のヒンジ領域内の一方又は両方の重鎖システインをセリンで置換し、重鎖間の鎖間ジスルフィド結合の1つを残すか、又は全く残さなかった。PRO592及びPRO596の場合には、単一のジスルフィド結合が還元及びPEG化された状態を保つ。PRO593、PRO594及びPRO595の場合には、すべての鎖間ジスルフィド結合が除去され、PEG化のために新しいシステイン残基が導入される。PRO593は、重鎖のC末端にシステインが導入されているのに対して、PRO594及びPRO595はそれぞれ、FcドメインとVEGFトラップドメインの間のリンカードメインにシステインが導入されている。合わせて、これらのバリアントは、PEG化効率、抗原結合及び生物活性について試験された多様なPEG化部位を有する一組の構築物となる。Expi293一過性発現系を使用して、各IGT-427バリアントを発現させた。清澄化した細胞培養上清をHiTrap mAbselect PrismAカラム(Cytiva)で精製した。溶出した抗体を1×PBS中に透析し、PEG化研究のために10mg/mLに濃縮した。
【0214】
[実施例16]
PEG化反応スクリーニング
10mg/mLのIGT-427バリアントのそれぞれを10又は20mMシステアミンで、室温で1時間還元し、次いでPEG化緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、2.5mM EDTA、pH7.2)に緩衝液交換した。緩衝液交換した抗体に10モル当量の20kDa直鎖状PEG-マレイミドを加え、室温で1.5時間PEG化反応を進行させた。非還元SDS-PAGEによって反応混合物を分析すると、これらのバリアントは、二重にPEG化された種への、最大で約50%の転化を示すことが明らかになった。
【0215】
PEG化効率をさらに最適化するために、穏やかな還元条件下で最も優れた転化を示したバリアントであるPRO593を使用して還元条件をスクリーニングした。10若しくは100mMのシステアミンで1時間、1若しくは10mMのDTTで15分間、又は2若しくは20倍モル過剰のTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)で15分間、10mg/mLのPRO593を還元した。それぞれの還元後、PRO593をPEG化緩衝液に緩衝液交換し、10倍モル過剰の20kDa直鎖状PEG-マレイミドで1.5時間PEG化した。この一連の還元条件から、20倍モル過剰のTCEPが、2つのPEG付加を有する種へのPRO593のほぼ完全な転化をもたらしたことが観察された。次いで、室温で15分間、20倍モル過剰のTCEPで5つのIGT-427バリアントすべてを還元し、続いてPEG化緩衝液に緩衝液交換し、10倍モル過剰の20kDa直鎖状PEG-マレイミドでPEG化した。最適化された反応条件の結果を
図14に示す。HiTrap SP-HP陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(Cytiva)及びグラジエント塩溶出を使用して、2つのPEG付加を有する抗体を反応混合物から精製した。PEG化抗体を1×PBS中に透析し、10mg/mLに濃縮し、0.01%ポリソルベート-20とともに製剤化し、0.2μmフィルターに通して濾過した。
【0216】
[実施例17]
PEG化IGT-427バリアントの特徴付け
Tie2又はVEGFの結合をSPRによって特徴付けた(
図15)。固定化されたTie2又はVEGFを含有する表面上に、30μL/分で300秒間、各抗体の100nM溶液を注入した。300秒後の相対結合シグナルを使用して、結合の差を決定した。
【0217】
[実施例18]
眼のPK研究
IGT-427の眼の薬物動態に対するPEG化及びPEG分子量の効果を評価するために、アイリーア(R)、ファリシマブ、IGT-427、(2×20kDa PEG)-IGT-427及び(2×40kDa PEG)-IGT-427の500μg硝子体内注射を雄のニュージーランドホワイトウサギに投与した。各被験物質群について、3匹又は4匹の動物が0日目に投薬された。投薬後1日目、3日目、7日目及び14日目に、3匹又は4匹のいずれかの動物から血液を採取し、次いで、静脈内バルビツレート過量投与によって安楽死させた後、両眼を採取し、液体窒素中で急速凍結し、房水、硝子体液、網膜及び脈絡膜の採取のために解剖した。ホモイナイズせずに硝子体液試料を1×PBSTで1:5希釈し、さらなる分析まで-70℃で保存した。
【0218】
ザルトラップ(R)を商業的供給源から購入し、アイリーア(R)製剤緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、40mM NaCl、0.03%ポリソルベート-20、5%スクロース)に対して透析し、同じ緩衝液で10mg/mLに希釈した。
【0219】
Expi293一過性発現系(ThermoFisher)を使用して、ファリシマブを発現させた。内毒素を除去するために2%エタノール洗浄を含むHiTrap MabSelect PrismAカラム(Cytiva)で、清澄化した細胞培養上清を精製し、続いて不完全に組み立てられた抗体を除去するためにpH勾配溶出を行った。溶出した抗体を1×PBS中に透析し、10mg/mLに濃縮し、0.01%ポリソルベート-20とともに製剤化し、0.2μmフィルターに通して濾過した。
【0220】
Expi293一過性発現系を使用して、IGT-427を発現させた。内毒素を除去するために2%エタノール洗浄を含むHiTrap MabSelect PrismAカラム(Cytiva)で、清澄化した細胞培養上清を精製した。溶出した抗体を1×PBS中に透析し、10mg/mLに濃縮し、0.01%ポリソルベート-20とともに製剤化し、0.2μmフィルターに通して濾過した。
【0221】
ペグ化IGT-427。Expi293一過性発現系(ThermoFisher)を使用して、PRO593を発現させた。内毒素を除去するために2%エタノール洗浄を含むHiTrap MabSelect PrismAカラム(Cytiva)で、清澄化した細胞培養上清を精製した。溶出した抗体を1×PBS中に透析し、PEG化のために10mg/mLに濃縮した。濃縮された抗体を20倍モル過剰のTCEPで還元し、次いでPEG化緩衝液に脱塩し、10倍モル過剰の20kDa直鎖状又は40kDa分枝状PEGマレイミドのいずれかとともに、室温で1.5時間インキュベートした。NaCl勾配を用いてpH4.6でHiTrap SP-HPカラム(Cytiva)を使用して、PEG化反応混合物を精製した。溶出中のPEG化抗体をPBS中に透析し、10mg/mLに濃縮し、0.01%ポリソルベート-20とともに製剤化し、0.2μmフィルターに通して濾過した。
【0222】
[実施例19]
PK研究用の試料の特徴付け
5μgのタンパク質を4×LDS(ドデシル硫酸リチウム)と混合し、4~12%のビス-トリスゲル上で、150Vで60分間、加熱せずに試料を泳動し、続いてSafeStain(ThermoFisher)で染色することによって、各被験物質の非還元SDS-PAGE分析を行った。100mMアルギニン、1×PBS、pH6.7中、0.5mL/分でZenix(R)サイズ排除カラム(SEC)-300に5μgの各被験物質をロードすることによって、SEC-HPLC分析を行った。ウサギTie2及びVEGFへの結合をSPRによって特徴付けた。
【0223】
SPRを使用して、Tie2又はVEGFのいずれかへのPEG化IGT-427バリアントの結合を評価した。
図3は、ヒトTie2又はVEGF表面上へのバリアントの100nM注射から得られたセンサーグラムを示す。非修飾IGT-427と比較して、PEGの存在に起因する結合シグナルの劇的な低下が存在する。しかしながら、残りのバリアントに対する各バリアントの相対的結合シグナルは、抗原に対する相対的親和性の尺度として使用することができる。各バリアントの結合シグナルにはわずかな差が存在するが、総じて、Tie2又はVEGFのいずれかへの結合はPEG化部位とは概ね無関係である。
【0224】
すべての被験物質は10mg/mLで製剤化され、15%の高分子量種を含有した20kDaのPEG化IGT-427を除いて、SEC-HPLC(
図16)及び非還元SDS-PAGE(
図17)によって90%超の純度であった。内毒素レベルはすべて0.1EU/mg未満であり、すべての被験物質は予想された親和性でそれらのそれぞれの抗原を結合した(
図18A~18C)。
【0225】
[実施例20]
硝子体液測定のための総薬物ELISA
投与された薬物に応じて、3つの異なるELISAによって、硝子体液中の総薬物レベルを定量した。IGT-427及びIGT-427のPEG化バージョンをマウス抗ヒトIgG被覆プレート上に捕捉し、Tie2-HRPコンジュゲートで検出した。アイリーア(R)をマウス抗ヒトIgG被覆プレート上に捕捉し、ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG-HRPコンジュゲートで検出した。最後に、ファリシマブをVEGF被覆プレート上に捕捉し、ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG-HRPコンジュゲートで検出した。すべてのELISA分析について、試料を1:1250~1:62500希釈で、2つ組でアッセイし、Molecular Devices SpectraMax(R)M5プレートリーダーを使用してアッセイプレートの発光を読み取った。すべてのELISA分析について、試料発光値は標準曲線の線形範囲内であった。4パラメータ式を使用して標準曲線全体をフィッティングし、4パラメータフィットによって試料発光値を濃度に変換した。
【0226】
抗ヒトIgG捕捉/Tie2検出ELISA。炭酸塩緩衝液(pH9.5)中の1μg/mL抗ヒトIgGを使用して、4℃で一晩、高結合プレートをコーティングした。コーティングしたプレートを洗浄緩衝液(150mM NaClを含む1×PBST(Phosphate Buffered Saline with TWEEN(R)20))で洗浄し、PBST中5%BSAを用いて37℃で1時間ブロッキングした(420RPMで振盪)。ブロッキングしたプレートを洗浄し、試料、標準曲線及びブランクを室温で1.5時間プレート上でインキュベートした(420RPMで振盪)。試料のインキュベーション後、プレートを洗浄し、室温で1時間、1μg/mLのビオチン化ヒトTie2とともにインキュベートした(蓋をして、420RPMで振盪)。プレートを再度洗浄し、遮光してストレプトアビジン-HRPと1時間インキュベートした。プレートに最後の洗浄を行い、次いで、化学発光HRP基質で発色させた。30秒後にすべての発光波長をプレートリーダーで読み取った。
【0227】
抗ヒトIgG捕捉/抗huFc検出ELISA。炭酸塩緩衝液(pH9.5)中の1μg/mL抗ヒトIgGを使用して、4℃で一晩、高結合プレートをコーティングした。コーティングしたプレートを洗浄緩衝液で洗浄し、PBST中1%BSAを用いて4℃で4時間ブロッキングした。ブロッキングしたプレートを洗浄し、最終洗浄後にプレートを4℃で乾燥させた。試料、標準曲線及びブランクをプレート上で、4℃で一晩インキュベートした。試料のインキュベーション後、プレートを洗浄し、室温で1時間、ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG-HRPコンジュゲートとともにインキュベートした(蓋をして、420RPMで振盪)。プレートに最後の洗浄を行い、次いで、化学発光HRP基質で発色させた。30秒後にすべての発光波長をプレートリーダーで読み取った。
【0228】
VEGF捕捉/抗huFc検出ELISA。炭酸塩緩衝液(pH9.5)中の1μg/mLのVEGFを使用して、4℃で一晩、高結合プレートをコーティングした。コーティングしたプレートを洗浄緩衝液で洗浄し、PBST中1%BSAを用いて4℃で4時間ブロッキングした。ブロッキングしたプレートを洗浄し、最終洗浄後にプレートを4℃で乾燥させた。試料、標準曲線及びブランクをプレート上で、4℃で一晩インキュベートした。試料のインキュベーション後、プレートを洗浄し、室温で1時間、ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG-HRPコンジュゲートとともにインキュベートした(蓋をして、420RPMで振盪)。プレートに最後の洗浄を行い、次いで、化学発光HRP基質で発色させた。30秒後にすべての発光波長をプレートリーダーで読み取った。
【0229】
[実施例21]
眼のPKの測定
投薬後1、3、7及び14日目に、硝子体液中で各被験物質の総薬物レベルを測定した。各時点で、3匹又は4匹の動物から眼を採取し、1時点当たり被験物質当たり6つ又は8つのいずれかの硝子体液試料を得た。抗ヒトIgG捕捉及びTie2検出ELISAによって、IGT-427又はPEG化IGT-427を投薬された動物からの総薬物レベルを定量した。抗ヒトIgG捕捉及び抗ヒトFc検出ELISAによって、アイリーア(R)を投薬された動物からの総薬物レベルを定量した。最後に、VEGF捕捉及び抗ヒトFc検出ELISAによって、ファリシマブを投薬された動物からの総薬物レベルを定量した。これらのELISAのそれぞれの結果を
図19に示す。硝子体内でアイリーア(R)を測定し、433.8μg/mLのCmax値及び4.2日の半減期であった。硝子体内でファリシマブを測定し、154.2μg/mLのCmax及び4.4日の半減期での崩壊であった。硝子体内でIGT-427を測定し、217.3μg/mLのCmax値及び3.8日の半減期であった。硝子体内で2つの20kDaの直鎖状PEG分子で修飾されたIGT-427を測定し、406.6μg/mLのCmax及び8.3日の半減期での崩壊であった。硝子体内で2つの40kDaの分枝状PEG分子で修飾されたIGT-427を測定し、268.8μg/mLのCmax値及び8.0日の半減期であった。
【産業上の利用可能性】
【0230】
Tie2及びVEGFに結合する融合タンパク質は、Tie2及びVEGFに高い親和性で結合し、ヒト、マウス及びウサギに対する交差反応性を維持し、所望の抗原反応性を示すことができる。さらに、Tie2リン酸化、Tie2受容体の活性化及びVEGFの阻害を誘導することによって、Tie2及びVEGFに結合する融合タンパク質は、目的の血管新生疾患又は血管疾患を予防又は処置するために使用され得る。
【0231】
均等物
前述の明細書は、当業者が実施形態を実施することを可能にするのに十分であると考えられる。前述の説明及び実施例は、特定の実施形態を詳述し、本発明者らが企図する最良の態様を記載する。しかしながら、前述の内容がいかに詳細に文章で記載されていても、実施形態は多くの様式で実施され得、添付の特許請求の範囲及びその均等物に従って解釈されるべきであることが理解されよう。
【0232】
少なくとも及び約などの用語が数値又は範囲のリストの前に存在する場合、それらの用語は、リストに提供された値又は範囲のすべてを修飾する。場合によっては、約という用語は、最も近い有効数字に丸められた数値を含み得る。任意の記載された範囲は、反対のことを明示する文言が存在しなければ、端点を含み、例えば、「5~50」は、値5及び50を包含する。
【配列表】
【国際調査報告】