IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 江蘇亞堯生物科技有限公司の特許一覧

特表2025-503771新規ピラゾロピリミジン化合物及びその組成物、製造方法、並びに使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】新規ピラゾロピリミジン化合物及びその組成物、製造方法、並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20250128BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 31/5386 20060101ALI20250128BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
A61K39/39
A61K45/00 101
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/5386
C07D487/04 142
A61K31/519
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543190
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 CN2022143770
(87)【国際公開番号】W WO2023138343
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202210053350.9
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524271829
【氏名又は名称】江蘇亞堯生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】肖飛
(72)【発明者】
【氏名】翁亜麗
(72)【発明者】
【氏名】呉萌
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA38
4C085EE06
4C085FF24
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB06
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、新規ピラゾロピリミジン化合物及びその組成物、製造方法及びその抗腫瘍活性を有することによる抗癌剤としての使用に関する。前記新規ピラゾロピリミジン化合物は、以下に示されるような構造の一般式(I)を有し、ATR阻害剤として、優れた腫瘍阻害活性を有し、選択性が強く、水溶性がよく、毒性が低く、経口投与又は静脈注射投与に適用可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示される化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩:
ここで、
は、
から選ばれ、
は、H、5-6員ヘテロアリール基又は5-6員複素環基から選ばれ、ここで、前記5-6員ヘテロアリール基又は5-6員複素環基は、Rで任意に置換されていてもよく、
は、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれ、且つ、
は、H、ハロゲン、NH、C1-4アルキル基又はC1-4アルコキシ基から選ばれる。
【請求項2】
は、
から選ばれる
請求項1に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
は、H、6員ヘテロアリール基又は6員複素環基から選ばれ、ここで、前記6員ヘテロアリール基又は6員複素環基は、Rで任意に置換されていてもよく、
は、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれる
請求項1又は2に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
は、H又はC1-4アルキル基から選ばれる
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
一般式(II)の構造を有する化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩であって、
ここで、
は、
から選ばれ、
は、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれ、且つ、
は、H又はメチル基から選ばれる
請求項1に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記化合物は、
から選ばれる
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
治療有効量の請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容されるアジュバントを含む医薬組成物。
【請求項8】
癌の治療に適用可能な他の活性剤をさらに含む
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物は、例えば滅菌水性溶液、非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳剤のような注射剤、例えば錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤又は丸剤のような固形経口製剤、例えば溶液、乳剤、懸濁液又はシロップ剤のような液体経口製剤として調製される
請求項7又は8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
癌を治療するための薬物の製造における請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩又は請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
前記癌は、乳癌、腎癌、肺癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、結腸直腸癌、肝癌、膵臓癌、前立腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫及び骨肉腫から選ばれる
請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に属し、新規ピラゾロピリミジン化合物及びその組成物、製造方法及び抗癌剤の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、ヒトの健康及び生命を脅す。近年、抗癌剤の研究は、特異的な分子標的治療薬の研究開発に転向している。
【0003】
ATRは、毛細血管拡張性運動失調症及びRad3関連キナーゼ(ataxia telangiectasia and Rad3-related kinase)と呼ばれ、2644個のアミノ酸からなり、DNA損傷後に細胞応答を活性化させることができ、さらに細胞周期の進行を阻止するとともに複製フォークの安定化及びDNA修復を行うことによりアポトーシスを回避する重要なキナーゼである。細胞内においてDNA複製圧力やDNA損傷が発生した場合、ATRは、DNA損傷部位にリクルートされ、多種のタンパク質がATRの活性化の調節に関与する。ATRが活性化された後、多種のシグナルによって、細胞周期ブロック、複製起点の阻害、デオキシヌクレオチドの合成の促進、複製フォークの起動、DNA二本鎖切断の修復を含む細胞の生物学的プロセスを調節することができる。
【0004】
腫瘍細胞の多種のDNA修復経路に欠陥があるので、腫瘍細胞は、正常細胞よりもATR修復経路に依存し、且つATR阻害剤に対してより敏感である。「合成致死」とは、腫瘍細胞において、ある経路が突然変異することによる欠陥によって、腫瘍細胞が正常細胞よりも別の相補的な経路に依存するので、相補的な経路が阻害される場合、腫瘍細胞に「合成致死」をもたらすことを指す。これに対して、正常細胞にはもう一つの経路が正常であるので、薬物により阻害されて死滅することはない。ATRが部分的に突然変異した合成致死の標的であり、例えば、ATM欠損の腫瘍細胞がATR阻害剤に対してより敏感であり、X線が交錯して遺伝子Iの欠損を相補的に修復することによっても、腫瘍細胞がATR阻害作用に対してより敏感であることが、研究によって見出された。このため、ATR阻害剤は、腫瘍細胞に選択的に影響を与えるが、正常細胞への干渉が少ないという特徴から、腫瘍を治療するための優れた潜在薬として有望である。
【0005】
PARP阻害剤に次ぐ最も有望な「合成致死」療法として、ATR阻害剤は、メルク社、バイエル社、アストラゼネカ社などを含む一部の巨大な多国籍企業のレイアウトを誘致し、その中、メルク社のBerzosertibの臨床的進展が前にあり、現在、第II相臨床段階にある。国内にATR阻害剤をレイアウトする企業は少ないが、英派薬業(IMPACT Therapeutics)のIMP9064は、2021年10月29日にFDAの第I/II相臨床研究の許可を獲得し、中国国家薬品監督管理局(NMPA)による承認を獲得して臨床研究を行うATR阻害剤は、メルク社のBerzosertib、バイエル社のBAY1895344及び石家荘智康弘仁新薬社のATR阻害剤を含み、それらはいずれも第I相臨床段階にある。現在の臨床研究薬の一つは、アストラゼネカ株式会社のAZD6738であり、その構造が、以下の通りである:
本発明の実験部分ではATRキナーゼ活性試験の陽性対照とする。しかし、現在まで、承認されて市販されているATR阻害剤はない。このため、選択性がより強く、活性がより良い新規ATR阻害剤の開発が依然として求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一つの目的は、優れた腫瘍阻害活性を有し、選択性が強く、水溶性がよく、毒性が低く、経口投与又は静脈注射投与に適用可能な新規ATR阻害剤を提供することである。
【0007】
一形態によれば、本発明は、一般式(I)で示される化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩を提供する:
ここで、
は、
から選ばれ、
は、H、5-6員ヘテロアリール基又は5-6員複素環基から選ばれ、ここで、前記5-6員ヘテロアリール基又は5-6員複素環基は、Rで任意に置換されていてもよく、
は、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれ、且つ、
は、H、ハロゲン、NH、C1-4アルキル基又はC1-4アルコキシ基から選ばれる。
【0008】
一つの実施形態において、一般式(I)において、Rは、以下の基から選ばれる:
【0009】
一つの実施形態において、一般式(I)において、Rは、H、6員ヘテロアリール基又は6員複素環基から選ばれ、ここで、前記6員ヘテロアリール基又は6員複素環基は、Rで任意に置換されていてもよく、且つ、Rは、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれる。
【0010】
一つの実施形態において、一般式(I)において、Rは、H又はC1-4アルキル基から選ばれる。
【0011】
一つの実施形態において、前記化合物は、一般式(II)の構造を有する:
ここで、
は、以下の基から選ばれる:
は、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれ、且つ、
は、H又はメチル基から選ばれる。
【0012】
一つの実施形態において、本発明の前記化合物は、以下のような化合物から選ばれる:
【0013】
他の一形態によれば、本発明は、治療有効量の本発明の前記一般式(I)又は(II)の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容されるアジュバントを含む医薬組成物を提供する。
【0014】
一つの実施形態において、前記医薬組成物は、癌の治療に適用可能な他の活性剤をさらに含む。
【0015】
一つの実施形態において、前記医薬組成物は、例えば滅菌水性溶液、非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳剤のような注射剤、例えば錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤又は丸剤のような固形経口製剤、例えば溶液、乳剤、懸濁液又はシロップ剤のような液体経口製剤として調製されてもよい。
【0016】
さらに他の一形態によれば、本発明は、癌を治療するための薬物の製造における本発明の前記一般式(I)又は(II)の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。本発明は、癌を治療するための薬物の製造における本発明の前記医薬組成物の使用をさらに提供する。
【0017】
一つの実施形態において、前記癌は、乳癌、腎癌、肺癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、結腸直腸癌、肝癌、膵臓癌、前立腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫及び骨肉腫から選ばれる。
【0018】
本発明は、以下のような有益な効果を備える:
1.本発明は、新規ピラゾロピリミジン化合物を提供する。
【0019】
2.本発明により提供されるピラゾロピリミジン化合物は、ATRキナーゼを阻害する優れた活性を有し、その活性が臨床研究薬AZD6738の活性と同等であるかそれ以上であり、本発明の化合物がATR阻害剤としてATR介在性疾患の治療に適用可能であることが示されている。
【0020】
3.本発明により提供されるピラゾロピリミジン化合物は、多種の癌細胞の増殖を阻害する優れた作用を有し、多種の癌の治療又は予防に適用可能である。
【0021】
4.本発明により提供されるピラゾロピリミジン化合物は、マウス及びヒトの肝ミクロソームにおいて非常に高い安定性を有し、インビボでの代謝が遅いことが示されている。
【0022】
5.本発明により提供されるピラゾロピリミジン化合物は、マウスに経口投与された後に非常に高いインビボでの暴露量を有し、臨床的にはより低い投与量で優れた抗腫瘍効果をもたらすことが期待される。
【0023】
6.本発明により提供されるピラゾロピリミジン化合物は、ATRに対して高度な選択性を有し、ファミリー内の他のキナーゼに対する阻害活性が低く、これにより、より高い安全性のメリットをもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0024】
別途定義されない限り、本発明の全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
なお、上記の簡単な説明及び以下の詳細な説明は例示的な目的のために利用され、本発明の主題を限定するものではない。
【0026】
定義
本明細書で使用される用語である「C1-4アルキル基」とは、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を指す。その例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基及びt-ブチル基を含むが、これらに限定されなく、メチル基が好ましい。
【0027】
本明細書で使用される用語である「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指し、フッ素、塩素、臭素が好ましい。
【0028】
本明細書で使用される用語である「C1-4アルコキシ基」とは、式-O-C1-4アルキル基を有する基を指し、ここで、C1-4アルキル基は、上記のように定義されたものである。C1-4アルコキシ基の例として、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などを含むが、これらに限定されなく、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0029】
本明細書で使用される用語である「C1-4ハロゲン化アルキル基」とは、1つ又は複数のハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基を指す。その例として、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、ジクロロメチル基、1,2-ジクロロエチル基などを含むが、これらに限定されなく、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0030】
本明細書で使用される用語である「5-6員ヘテロアリール基」とは、窒素、酸素及び硫黄から選ばれるヘテロ原子を1~3個、好ましくは1~2個を含む安定な5~6員芳香族性単環基を指す。ヘテロ原子の位置又は複素環の炭素原子によりヘテロアリール基と結合してもよい。5-6員ヘテロアリール基の例として、チエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基、1,2,5-オキサジアゾリル基、1,2,3-オキサジアゾリル基、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基、1,2,5-チアジアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、ピリジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピリミジニル基及びピリダジニル基などを含むが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される用語である「5-6員複素環基」とは、窒素、酸素及び硫黄から選ばれるヘテロ原子を1~3個、好ましくは1~2個を含む安定な5~6員非芳香族単環基を指す。複素環基は、部分的に又は完全に飽和してもよい。ヘテロ原子の位置又は複素環の炭素原子により複素環基と結合してもよい。5-6員複素環基の例として、ジヒドロフラニル基、ジヒドロチエニル基、3-ピロリニル基、2-ピロリニル基、2-イミダゾリニル基、2-ピラゾリジニル基、ジヒドロオキサゾリル基、ジヒドロチアゾリル基、ジヒドロイソオキサゾリル基、ジヒドロイソチアゾリル基、ジヒドロ-1,2,3-トリアゾリル基(triazolyl)、ジヒドロ-1,2,4-トリアゾリル基、ジヒドロ-1,2,5-オキサジアゾリル基(oxadiazolyl)、ジヒドロ-1,2,3-オキサジアゾリル基、ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾリル基、ジヒドロ-1,3,4-オキサジアゾリル基、ジヒドロ-1,2,5-チアジアゾリル基(thiadiazolyl)、ジヒドロ-1,2,3-チアジアゾリル基、ジヒドロ-1,2,4-チアジアゾリル基、ジヒドロ-1,3,4-チアジアゾリル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、オキサゾリジニル基、チアゾリジニル基、イソオキサゾリジニル基、イソチアゾリジニル基、1,2,3-トリアゾリジニル基(triazolidinyl)、1,2,4-トリアゾリジニル基、1,2,5-オキサジアゾリジニル基(oxadiazolidinyl)、1,2,3-オキサジアゾリジニル基、1,3,4-オキサジアゾリジニル基、1,2,5-チアジアゾリジニル基(thiadiazolidinyl)、1,2,3-チアジアゾリジニル基、1,3,4-チアジアゾリジニル基、1,2-オキサチアシクロペンチル基、1,3-オキサチアシクロペンチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ピペリジニル基、1,4-ジオキサニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基及びピペラジニル基などを含むが、これらに限定されない。
【0032】
「立体異性体」とは、同じ原子からなり、同一の結合によって結合しているが、異なる三次元構造を有する化合物を意味する。本発明は、種々の立体異性体及びそれらの混合物を含む。
【0033】
本明細書で使用される用語である「被験者」は、哺乳動物と非哺乳動物とを含む。哺乳動物の実施例として、哺乳動物綱のあらゆるメンバーを含むが、これらに限定されなく、ヒト、ヒト以外の霊長類動物(例えばチンパンジー、その他の猿類及びサル)、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜、例えばウサギ、イヌ、ネコなどの家庭動物、例えばラット、マウス、モルモットなどのげっ歯類の動物を含む実験動物が挙げられる。いつかの実施形態において、前記被験者はヒトである。
【0034】
本明細書で使用される用語である「治療」とその他の類似の同義語は、疾患又は病症の症状を緩解、軽減又は改善すること、及び、疾患又は病症を抑制すること、例えば、疾患又は病症の発展を阻止すること、疾患又は病症を緩解すること、疾患又は病症を好転させること、疾患又は病症による症状を緩解すること、或いは疾患又は病症の症状を中止すること、その他の症状を予防すること、症状に繋がる潜在的な代謝要因を改善又は予防することを含み、ここで、当該用語は予防の目的を含む。当該用語は治療効果及び/又は予防効果を得ることをさらに含む。前記治療効果とは、治療される潜在的な疾患を治癒又は改善することを意味する。なお、潜在的な疾患に関連する1種又は複数種の生理症状に対する治癒又は改善も治療効果であり、例えば、被験者は依然として潜在的な疾患の影響を受ける可能性があるものの、被験者の状況の改善がみられる。予防効果について、特定の疾患に罹患するリスクがある被験者に本発明の前記化合物又は組成物を投与し、又は、疾患が未だ診断されていないものの、当該疾患の1つ又は複数の生理症状が現れる被験者に本発明の前記化合物又は組成物を投与することができる。
【0035】
本明細書で使用される用語である「治療有効量」とは、服用後に治療される疾患又は病症の1つ又は複数の症状をある程度緩解するのに十分な少なくとも1種の活物質(例えば本発明の前記化合物)の量を意味する。その結果は、兆候、症状又は病因の削減及び/又は緩解であってもよいし、又は生物系の任意のその他の所要変化であってもよい。例えば、「治療有効量」は、臨床的に顕著な病症緩解効果を提供するのに必要な、本明細書で公開されている化合物を含む組成物の量である。例えば用量漸増実験の技術を使用して任意の個体の症例に最適な治療有効量を測定することができる。
【0036】
本明細書で使用される用語である「施用」、「投与」などとは、化合物又は組成物を生物学的作用が必要されるサイトに送達できる方法を意味する。これらの方法は経口投与、十二指腸経由投与、腸管外注射(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、動脈内注射若しくは注入を含む)、外用、及び直腸経由投与を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載の化合物及び方法に使用される施用技術は、当業者によく知られている。
【0037】
本明細書で使用される用語である「薬学的に許容されるアジュバント」とは、本発明の化合物の生物活性又は性質に影響しない物質を意味し、且つ、前記物質は相対的に無毒であり、即ち、当該物質は、不良な生物反応をもたらさなく、又は不良な方式で組成物に含まれる任意の成分と相互作用しないように、個体に投与される。前記薬学的に許容されるアジュバントは、担体、安定剤、希釈剤、粉剤、懸濁化剤、増粘剤及び/又は賦形剤を含むが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される用語である「任意」、「任意の」又は「任意に」は、後に記載の事件又は状況が発生しても発生しなくてもよいことを示し、且つ、当該記載が当該事件又は状况が発生する場合及び発生しない場合を同時に含む。例えば、「Rで任意に置換されていてもよい」は、置換されていないこと、或いは、Rで置換されていることを示し、且つ、当該記載が置換されていない場合及びRで置換された場合を同時に含む。
【0039】
一般式(I)の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩
本発明は、癌を治療、改善又は予防するための化合物を提供する。本明細書に記載されるように、ATRキナーゼを阻害することは、腫瘍細胞に選択的に影響を与えることができるが、正常細胞への干渉が少ない。本発明の化合物は、ATRキナーゼの活性を効果的に阻害することができ、臨床研究薬AZD6738の活性と同等であるかそれ以上であり、腫瘍を治療するための優れた潜在薬として有望である。
【0040】
一形態によれば、本発明は、一般式(I)の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩を提供する:
ここで、
は、
から選ばれる;
は、H、5-6員ヘテロアリール基又は5-6員複素環基から選ばれ、ここで、前記5-6員ヘテロアリール基又は5-6員複素環基は、Rで任意に置換されていてもよく、
は、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれ、且つ、
は、H、ハロゲン、NH、C1-4アルキル基又はC1-4アルコキシ基から選ばれる。
【0041】
一つの実施形態において、前記Rは、以下の基から選ばれる:
【0042】
一つの実施形態において、前記Rは、以下の基又はその立体異性形態から選ばれる(適用時):
【0043】
一つの実施形態において、前記Rは、以下の基又はその立体異性形態から選ばれる(適用時):
【0044】
一つの実施形態において、Rは、
から選ばれる。
【0045】
一つの実施形態において、Rは、
である。
【0046】
一つの実施形態において、Rは、H、5-6員ヘテロアリール基又は5-6員複素環基から選ばれ、ここで、前記5-6員ヘテロアリール基又は5-6員複素環基は、Rで任意に置換されていてもよい。
【0047】
いつかの実施形態において、Rは、Hである。
【0048】
いつかの実施形態において、Rは、5-6員ヘテロアリール基である。いつかの実施形態において、Rは、窒素、酸素及び硫黄から選ばれる1個又は2個のヘテロ原子を含む5-6員ヘテロアリール基である。いつかの実施形態において、Rは、窒素及び酸素から選ばれる1個又は2個のヘテロ原子を含む5-6員ヘテロアリール基である。いつかの実施形態において、Rは、1個又は2個の窒素原子を含む6員ヘテロアリール基である。いつかの実施形態において、Rは、ピリジル基、ピリミジニル基又はイソオキサゾリル基から選ばれる。いくつかの実施形態において、前記ヘテロアリール基は、Rで任意に置換されていてもよい。
【0049】
いつかの実施形態において、Rは、5-6員複素環基である。いつかの実施形態において、Rは、窒素、酸素及び硫黄から選ばれる1個又は2個のヘテロ原子を含む5-6員複素環基である。いつかの実施形態において、Rは、窒素及び酸素から選ばれる1個又は2個のヘテロ原子を含む6員複素環基である。いつかの実施形態において、Rは、1個又は2個の窒素原子を含む6員複素環基である。いつかの実施形態において、Rは、1個の窒素原子を含む6員複素環基である。いつかの実施形態において、Rは、ピペリジニル基である。いくつかの実施形態において、前記複素環基は、Rで任意に置換されていてもよい。
【0050】
いつかの実施形態において、Rは、
から選ばれ、Rで任意に置換されていてもよく、ここで、
ピラゾール環との結合位置を表す。
【0051】
いつかの実施形態において、Rは、
であり、Rで任意に置換されていてもよく、ここで、
ピラゾール環との結合位置を表す。
【0052】
前記実施形態において、Rは、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれる。
【0053】
前記実施形態において、Rは、H、F、Cl、Br、-CN、-NH、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、ジフルオロメチル基又はジフルオロエチル基から選ばれる。
【0054】
いつかの実施形態において、Rは、H、ハロゲン、NH、C1-4アルキル基又はC1-4アルコキシ基から選ばれる。
【0055】
いつかの実施形態において、Rは、H又はC1-4アルキル基から選ばれる。
【0056】
いつかの実施形態において、Rは、H又はメチル基から選ばれる。
【0057】
一つの実施形態において、一般式(I)において:
は、以下の基から選ばれる:
は、H、5-6員ヘテロアリール基又は6員複素環基から選ばれ、ここで、前記5-6員ヘテロアリール基は、Rで任意に置換されていてもよく、
は、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれ、且つ、
は、H又はC1-4アルキル基から選ばれ、例えばメチル基である。
【0058】
一つの実施形態において、本発明の前記化合物は、一般式(II)の構造を有する:
ここで、
は、以下の基から選ばれる:
は、H、ハロゲン、-CN、-NH、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又はC1-4ハロゲン化アルキル基から選ばれ、且つ、
は、H又はメチル基から選ばれる。
【0059】
一つの実施形態において、本発明の前記一般式(I)の化合物は、以下の化合物から選ばれる:
【0060】
本発明の前記一般式(I)又は(II)の化合物が1つ又は複数のキラル中心を含む場合、特別な説明がない限り、言及されているこれらの化合物のいずれかには純粋なエナンチオマー又は純粋なジアステレオマーである化合物、及び任意の比率のエナンチオマー又はジアステレオマーの混合物が含まれる。
【0061】
本発明の前記一般式(I)又は(II)の化合物は、通常、遊離物質として、又はその薬学的に許容される塩として利用される。薬学的に許容される塩とは、無毒であり、即ち生理的に許容される塩を指す。一つの実施形態において、本発明の前記一般式(I)又は(II)の化合物又はその立体異性体の薬学的に許容される塩は、塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、グリセロリン塩、亜硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ヘミ硫酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、グルコヘプトン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、ピログルタミン酸塩、サリチル酸塩、スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩及びベンゼンスルホン酸塩)などを含むが、これらに限定されない。
【0062】
医薬組成物及び医薬品製剤
一形態によれば、本発明は、治療有効量の上記のように定義された一般式(I)又は(II)の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容されるアジュバントを含む医薬組成物をさらに提供する。
【0063】
本発明において、用語「薬学的に許容されるアジュバント」とは、本発明の化合物の生物活性又は性質に影響しない物質を指し、且つ、前記物質は相対的に無毒であり、即ち、当該物質は、不良な生物反応をもたらさなく、又は不良な方式で組成物に含まれる任意の成分と相互作用しないように、個体に投与される。前記薬学的に許容されるアジュバントは、担体、安定剤、希釈剤、粉剤、懸濁化剤、増粘剤及び/又は賦形剤を含むが、これらに限定されない。
【0064】
一つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、癌を治療するための他の活性剤をさらに含んでもよい。前記活性剤の例として、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ゲムシタビン、オラパリブ(Olaparib)、ノギテカン、イリノテカン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、アドリアマイシン、PD-1又はPD-L1モノクローナル抗体類薬物(例えば、ニボルマブ(Nivolumab)モノクローナル抗体、アテゾリズマブ(Atezolizumab)モノクローナル抗体など)を含むが、これらに限定されない。
【0065】
一つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、任意の適切な経路で投与される製剤として調製されてもよい。前記適切な経路は、経口投与、十二指腸経由投与、注射(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、動脈内注射若しくは注入を含む)、外用、及び直腸経由投与などを含むが、これらに限定されない。
【0066】
経口投与に使用される医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤のような固体経口剤型、例えば溶液、乳剤、懸濁液、シロップ剤のような液体経口剤型、及び適切な液体に溶解又は懸濁している粉剤と顆粒剤を含む。
【0067】
固体経口剤型は、それぞれ所定量の活性成分を含有する離散単位(例えば、錠剤又は硬カプセル剤又はソフトカプセル剤)の形態としてもよく、且つ、好ましくは、1種又は複数種の適切な薬学的に許容されるアジュバントを含有する。適用時、当分野における公知の方法に従って、これらの固体剤型は、腸溶性コーティングなどのコーティングを有するように調製されてもよいし、放出の遅延や延長などの活性成分の改良放出を提供するように調製されてもよい。
【0068】
固体経口剤型に適している薬学的に許容されるアジュバントの例として、微晶セルロース、コーンスターチ、乳糖、マンニトール、ポリビニルピロリドン、クロスカルメロースナトリウム、ショ糖、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、ペクチン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及びセルロースの低級アルキルエーテルを含むが、これらに限定されない。同様に、固体製剤は、例えばグリセロールモノステアレート又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのような当分野で知られている製剤の放出を遅延又は延長させるための賦形剤を含むことができる。
【0069】
固体経口剤型は、例えば、活性成分と固体賦形剤とを混合した後、通常の打錠機で圧縮することにより製造されてもよく、又は、例えばこの製剤を例えば粉剤、丸剤又はマイクロ錠剤として硬カプセル剤に入れることにより製造されてもよい。
【0070】
液体経口剤型は、例えば溶液、乳剤、懸濁液、エリキシル剤、シロップ剤、経口投与滴剤又は液体充填カプセル剤の形態としてもよい。液体経口剤型は、使用前に水性又は非水性の液体に溶解して溶液又は懸濁液を形成するための粉剤としてもよい。液体経口製剤に適している賦形剤の例として、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ソルビトール、ポリソルベート、モノグリセリド、ジグリセリド、シクロデキストリン、ヤシ油、パーム油及び水を含むが、これらに限定されない。液体経口剤型は、例えば活性成分を水性又は非水性の液体に溶解又は懸濁させたり、活性成分を水中油又は油中水液体乳剤に配合することにより調製されてもよい。
【0071】
非経口投与用の医薬組成物は、滅菌注射製剤の形態、例えば注射又は注入用の滅菌水性溶液及び非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳剤、注射又は注入用の濃縮物、及び使用前に注射又は注入用の滅菌溶液又は分散液に再溶解する滅菌粉剤としてもよい。非経口製剤に適している薬学的に許容されるアジュバントの例として、水、ヤシ油、パーム油、シクロデキストリン溶液、リンゲル溶液及び等張塩化ナトリウム溶液などを含むが、これらに限定されない。滅菌注射製剤は、既知の技術に基づいて適切な薬学的に許容されるアジュバントにより調製されてもよい。
【0072】
いかなる医薬品製剤に使用される薬学的に許容されるアジュバントは、期待される投与経路を満たし、且つ活性成分と相容性を有する必要がある。
【0073】
一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、注射剤、好ましくは静脈内注射剤として調製されてもよい。一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、注射用滅菌水性溶液、非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳剤として調製されてもよい。
【0074】
一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、固形経口製剤として調製されてもよい。一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、錠剤として調製されてもよい。一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、硬カプセル剤及びソフトカプセル剤を含むカプセル剤として調製されてもよい。一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、粉剤として調製されてもよい。一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、顆粒剤として調製されてもよい。一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、丸剤として調製されてもよい。
【0075】
一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、液体経口製剤として調製されてもよい。一つの実施形態において、本発明の前記医薬組成物は、経口投与溶液、乳剤、懸濁液又はシロップ剤として調製されてもよい。
【0076】
用途
本発明の前記一般式(I)又は(II)の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩又は本発明の前記医薬組成物は、ATRキナーゼ活性を効果的に阻害することができ、臨床研究薬AZD6738と同等であるかそれ以上であり、ATRキナーゼ介在性疾患の治療に使用可能であることが示された。
【0077】
本発明の前記一般式(I)又は(II)の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩又は本発明の前記医薬組成物は、腫瘍細胞の増殖を効果的に阻害することができるので、腫瘍又は癌の治療に使用可能である。
【0078】
一形態によれば、本発明は、被験者の癌を治療するための薬物の製造における、本発明の前記一般式(I)又は(II)の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩又は本発明の前記医薬組成物の使用を提供する。
【0079】
一つの実施形態において、前記癌は、乳癌、腎癌、肺癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、結腸直腸癌、肝癌、膵臓癌、前立腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫及び骨肉腫を含むが、これらに限定されない。
【0080】
一つの実施形態において、前記癌は、乳癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、腎癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、肺癌、例えば非小細胞肺癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、卵巣癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、膀胱癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、胃癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、結腸直腸癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、肝癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、膵臓癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、前立腺癌から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、白血病から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、リンパ腫、例えばマントル細胞リンパ腫から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、黒色腫から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、骨髄腫から選ばれる。一つの実施形態において、前記癌は、骨肉腫から選ばれる。
【0081】
製造方法
一形態によれば、本発明は、本発明の前記一般式(I)の化合物を製造する方法を提供する:
【0082】
具体的には、上記の方法は、以下のステップを含む:
ステップ1:
とN-ヨードスクシンイミドNISとを反応させてX2化合物を得た。
【0083】
ステップ2:X2化合物と
とをSukuzi反応させて
を得た。
【0084】
ステップ3:X3化合物からBoc保護基を取り除き、
を得た。
【0085】
ステップ4:X4化合物と
とをUllmann反応(又は置換反応)させて
を得た。
【0086】
ステップ5:X6化合物からTHP保護基を取り除き、本発明の前記一般式(I)の化合物を得た。
【0087】
一つの実施形態において、本発明の一般式(I)の化合物を製造する例示的な反応スキームを提供する:
ここで、R、R及びRは、一般式(I)で定義されたものである。
【0088】
上記のスキームに従って、X1化合物を出発原料として、N-ヨードスクシンイミドNISと適当な溶剤例えばジクロロメタン中で反応させ、X2化合物を得て、X2化合物及び1-(2-テトラヒドロピラニル)-1H-ピラゾール-5-ボロン酸ピナコールエステル類似物質N6と、リン酸カリウム及びXphos-Pd-G3とを適当な溶剤例えば1,4-ジオキサン/水の混合溶液中で反応させてX3化合物を得て、X3化合物と、アルカリ例えばNaOHとを適当な溶剤、例えばテトラヒドロフラン中で反応させてX4化合物を得て、X4化合物とX5化合物とを、リン酸カリウム、CuI及びN,N-ジメチル-1,2-シクロヘキサンジアミンの存在下で反応させてX6化合物を得て、X6化合物を酸性条件下で脱保護して一般式(I)の化合物を得た。
【0089】
一つの実施形態において、本発明の一般式(II)の化合物を製造する方法を提供する:
【0090】
ステップ1:
とN-ブロモスクシンイミドNBSとを反応させて
を得た。
【0091】
ステップ2:N2化合物と
とを適当な溶剤中でSuzuki反応させて
を得た。
【0092】
ステップ3:N3化合物と
とをUllmann反応させて
を得た。
【0093】
ステップ4:N4化合物からTHP保護基を取り除き、本発明の前記一般式(II)の化合物を得た。
【0094】
一つの実施形態において、本発明の一般式(II)の化合物を製造する例示的な反応スキームを提供する:
【0095】
上記のスキームに従って、N1化合物を出発原料として、N-ブロモスクシンイミドNBSを適当な溶剤、例えばDMF中で反応させてN2化合物を得て、N2化合物及び1H-ピラゾール-5-ボロン酸ピナコールエステル類似物質N6と、リン酸カリウム及びPd(dtbpf)Clとを適当な溶剤、例えば1,4-ジオキサン/水の混合溶液中で反応させてN3化合物を得て、N3化合物とN5化合物とを、リン酸カリウム、CuI及びN,N-ジメチル-1,2-シクロヘキサンジアミンの存在下で反応させてN4化合物を得て、N4化合物を酸性条件下で脱保護して一般式(II)の化合物を得た。
【0096】
本発明の一般式(I)又は(II)の化合物の立体異性体は、以下の方式により得ることができる:得られたラセミ混合物又は他の混合物を、それらの異なる物理化学的性質に基づいて、周知の手段、例えば分別結晶化又はHPLC技術により分離する。キラルカラムにより分離してエナンチオマーを得ることもできる。光学活性原料を用いてラセミ又はエピマー化を起こさずに反応させてもよい。
【0097】
本発明の一般式(I)又は(II)の化合物又はその立体異性体の薬学的に許容される塩は、当分野における既知の方法により化合物又はその立体異性体構造上のN原子と無機酸又は有機酸とから形成されてもよい。前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、グリセリンリン酸、ヘミ硫酸、硫酸、硫酸水素、ヨウ化水素酸、亜硝酸などを含むが、これらに限定されない。前記有機酸は、安息香酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、グルコヘプトン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、グルタミン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、スルホン酸(例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸)などを含むが、これらに限定されない。
【0098】
その他の詳細に言及されていない中間体又は反応物は、購入により得られてもよいし、当分野で一般的に知られている合成方法により製造されてもよい。
【0099】
上記の一般的な合成経路は、多くの実施例における一般的な方法を示すことに過ぎなく、特別な置換基を有する化合物の場合、あるステップの反応で当業者に知られている変更を行ったり、反応順序を変えたりすることができる。
【0100】
実施例
以下的実施例は、本発明の前記化合物の製造及び生物活性の評価を挙げて説明する。
【0101】
以下のこれらの実施例は、当業者が本発明をより明確に理解して実践できるように、提供される。これらは、本発明の範囲を限定するものとして見なされるべきではなく、単にその例示及び代表的なものとされている。
【0102】
本明細書で使用される材料又は試薬は、購入により得られてもよいし、当分野で一般的に知られている合成方法により製造されてもよい。以下の反応経路は、本発明の化合物の具体的な合成方法を例示する。
【0103】
具体的には以下の通りである:
主要な中間体a1-a3の製造:
中間体a1の製造:
【0104】
中間体a1-1(60.6mmol、8.5g)及びカルボニルジイミダゾール(CDI、19.6g、121.2mmol)を100mLの無水テトラヒドロフランに溶解し、室温で2時間反応させた後、55℃まで昇温して4時間攪拌を続け、室温まで冷却した。反応液に中間体a1-2(17.2g、121.2mmol)をゆっくりと分割添加し、且つ、55℃まで昇温して40時間反応を続けた。反応を停止し、濾過し、溶剤を減圧下で蒸留除去し、水50mLを加え、酢酸エチルで抽出し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより分離し、中間体a1(9.1g、収率72%)を得た。LC-MS:[M+H]:211。
【0105】
中間体a2の製造:
【0106】
ステップ1:中間体a1(43.3mmol、9.1g)を60mLのピリジンに溶解し、3-アミノピラゾールa2-1(34.0mmol、2.82g)を加え、110℃まで昇温して12時間反応させ、室温まで冷却した。溶剤を減圧下で蒸留除去し、粗生成物としての中間体a2-2(LC-MS:[M+H]:248)9.0gを得た。
【0107】
ステップ2:粗生成物としての中間体a2-2(9.0g)を80mLのエタノールに溶解し、ピリジニウムp-トルエンスルホナートPPTS(54.6mmol、13.7g)を加え、90℃まで昇温して36時間反応させ、反応を停止した。溶剤を減圧下で蒸留除去し、系中に水100mLを加え、酢酸エチルで抽出し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより分離し、中間体a2-3(7.5g、二段階収率76%)を得た。LC-MS:[M+H]:230。
【0108】
ステップ3:氷浴で、中間体a2-3(19.6mmol、4.5g)を25mLのオキシ三塩化リンに溶解し、10分間攪拌した後、氷浴を外し、110℃まで昇温し、且つ、2時間攪拌を続けた。反応を停止し、室温まで冷却し、反応液に氷水150mLをゆっくりと加え、飽和炭酸水素ナトリウム溶液でpHを8程度に調整し、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより分離し、中間体a2(3.5g、収率72%)を得た。LC-MS:[M+H]:248。
【0109】
中間体a3の製造:
【0110】
中間体a2(6.01mmol、1.5g)及び4-ジメチルアミノピリジンDMAP(0.6mmol、73mg)を20mLのテトラヒドロフランに溶解し、ジ-t-ブチルジカーボネート(9.01mmol、1.97g)をゆっくりと加え、室温で2時間反応させた後、反応を停止した。系中に50mLの水を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、中間体a3(1.9g、収率91%)を得た。LC-MS:[M+H]:348。
【0111】
主要な中間体b1の製造:
【0112】
ステップ1:窒素ガス雰囲気下で、-5℃で、原料b1-1(5mmol、1.05g)を15mLのフルオロベンゼンに溶解し、ジエチル亜鉛(2mmol/Lのトルエン溶液、12.5mL、25mmol)及びクロロヨードメタンのフルオロベンゼン溶液(4.4g/1.8mL、25mmol)をゆっくりと加え、室温で12時間反応させた。系を氷浴に入れ、飽和塩化アンモニウム水溶液40mLを加えて反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより分離し、中間体b1-2(730mg、収率65%)を得た。
【0113】
ステップ2:窒素ガス雰囲気下で、中間体b1-2(3.23mmol、730mg)を16mLのメタノール/アセトニトリル(1/1、v/v)の混合液に溶解し、フッ化カリウム水溶液(749mg/3mL)をゆっくりと加えた。この混合物を10分間攪拌した後、L-酒石酸(6.46mmol、968mg)及びテトラヒドロフラン(350μL)を加え、室温で1.5h反応を続けた。反応を停止し、濾過し、濾液を濃縮し、中間体b1-3(600mg、粗生成物)を得た。
【0114】
ステップ3:窒素ガス雰囲気下で、中間体b1-3(7.9mmol、1.6g)、中間体a3(7.9mmol、2.75g)及び炭酸セシウム(23.7mmol、7.7g)を30mLのトルエン/水(6/1、v/v)の混合液に溶解し、Pd(dppf)Cl(0.8mmol、586mg)を加えた。110℃まで昇温して12時間反応させ、反応を停止し、濾過し、系中に水70mLを加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより分離し、中間体b1(1.3g、収率41%)を得た。LC-MS:[M+H]:410。
【0115】
主要な中間体c1-c8の製造:
中間体c1の製造:
【0116】
ステップ1:原料5,7-ジクロロピラゾロ[1,5-a]ピリミジンc1-1(37.2mmol、7.0g)及び炭酸カリウム(55.85mmol、7.72g)をアセトニトリル50mLに溶解し、トリフルオロエタノール(40.96mmol、4.1g)を加え、室温で16時間反応させ、反応を停止した。溶剤を減圧下で蒸留除去し、混合物に100mLの水を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(PE/EA=6/1)により分離して精製し、化合物c1-2(7.90g、収率84%)を得た。LC-MS:[M+H]:252.0。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.28(d,J=2.0Hz,1H),7.01(s,1H),6.72-6.70(m,1H),5.36(q,J=8.4Hz,2H)。
【0117】
ステップ2:化合物5-クロロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジンc1-2(31.4、79.0g)及びフッ化カリウム(157.0mmol、9.12g)を80mLの乾燥DMSOに溶解し、140℃まで昇温して4時間反応させ、室温まで冷却し、反応を停止した。混合物に水100mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(PE/EA=10/1)により分離して精製し、化合物c1-3(3.5g、収率47%)を得た。LC-MS:[M+H]:236.1。
【0118】
ステップ3:化合物5-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジンc1-3(14.88mmol、3.5g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミンDIEA(44.65mmol、5.77g)及び8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン塩酸塩(14.88mmol、2.23g)を80mLの乾燥DMSOに溶解し、5分間攪拌した後、120℃まで昇温して2時間反応を続け、室温まで冷却し、反応を停止した。反応液に水120mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(PE/EA=10/1)により分離して精製し、化合物c1(3.0g、収率61%)を得た。LC-MS:[M+H]:329.0。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.87(d,J=2.0Hz,1H),6.25(s,1H),6.05(d,J=2.0Hz,1H),5.21(q,J=8.8Hz,2H),4.45(d,J=2.4Hz,2H),4.02(d,J=12.4Hz,2H),3.08(dd,J=12.8Hz,2.0Hz,2H),1.87-1.81(m,2H),1.74-1.67(m,2H)。
【0119】
中間体c1の合成を参照し、類似した原料を使用して、以下のような中間体c2~c4を合成した:
【0120】
中間体c5の製造:
【0121】
ステップ1:中間体3-(7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンc1(9.14mmol、3.0g)及び水酸化ナトリウム(18.28mmol、0.73g)を20mLのテトラヒドロフランに溶解し、70℃まで昇温して16時間反応させ、室温まで冷却し、反応を停止し、濾過した。溶剤を減圧下で蒸留除去し、粗生成物をフラッシュ逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)により分離して精製し、化合物c5-1(2.0g、収率89%)を得た。LC-MS:[M+H]:247.2。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.48(d,J=2.0Hz,1H),5.65(d,J=1.6Hz,1H),4.89(s,1H),4.35(s,2H),3.71(d,J=12.4Hz,2H),2.83(dd,J=12.0Hz,1.6Hz,2H),1.81-1.68(m,4H)。
【0122】
ステップ2:化合物5-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-ヒドロキシc5-1(8.12mmol、2.00g)を10mLのオキシ三塩化リンに溶解し、110℃まで昇温して4時間反応させ、室温まで冷却し、反応を停止した。反応液を50mLの氷水混合物にゆっくりと入れ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを9程度に調整し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(PE/EA=6/1)により分離して精製し、化合物c5-2(1.3g、収率61%)を得た。LC-MS:[M+H]:265.1。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.98(d,J=2.4Hz,1H),7.03(s,1H),6.19(d,J=2.4Hz,1H),4.44(d,J=2.0Hz,2H),4.00(d,J=12.4Hz,2H),3.10(dd,J=12.4Hz,2.0Hz,2H),1.87-1.81(m,2H),1.74-1.66(m,2H)。
【0123】
ステップ3:窒素ガス雰囲気下で、化合物3-(7-クロロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンc5-2(4.91mmol、1.30g)、炭酸ナトリウム(14.73mmol、1.56g)、原料c5-3(1.64g、7.37mmol)及び触媒Pd(dppf)Cl(0.49mmol、0.36g)を10mLの1,4-ジオキサンに溶解し、水2mLを加え、5分間攪拌した後、90℃まで昇温して16時間反応を続け、室温まで冷却し、反応を停止し、濾過した。混合液に水35mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1)により分離して精製し、化合物c5(0.7g、収率44%)を得た。LC-MS:[M+H]:325.3。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.63(s,1H),7.84(d,J=2.4Hz,1H),6.50(s,1H),6.09(d,J=2.0Hz,1H),4.43(s,2H),4.01(d,J=13.2Hz,2H),3.08(dd,J=12.4Hz,2.0Hz,2H),2.18(d,J=28.0Hz,6H),1.89-1.81(m,2H),1.77-1.69(m,2H)。
【0124】
中間体c5の合成を参照し、類似した原料/中間体を使用して、以下のような中間体化合物c6~c8を合成した:
【0125】
実施例1:化合物M3の製造
【0126】
中間体a3(1.29mmol、450mg)及び原料M3-1(1.43mmol、161mg)を10mLのN-メチルピロリドンに溶解し、トリエチルアミン(2.60mmol、263mg)を加え、180℃のマイクロ波加熱で2時間反応させた。反応を停止し、系中に水40mLを加え、ジクロロメタンで抽出した。この混合物及び4-ジメチルアミノピリジンDMAP(0.06mmol、8mg)を12mLのジクロロメタンに溶解し、トリエチルアミン(1.29mmol、131mg)及びジ-t-ブチルジカーボネート(1.29mmol、282mg)を加え、室温で2時間反応させた後、反応を停止した。系中に水30mLを加え、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、粗生成物としての中間体M3-2を得た。LC-MS:[M+H]:425。
【0127】
氷浴で、直前のステップで得られた粗生成物としての中間体M3-2を12mLの無水ジクロロメタンに溶解し、N-ヨードスクシンイミドNIS(1.29mmol、290mg)をゆっくりと分割添加し、且つ、2時間攪拌を続けた。反応を停止し、飽和塩化アンモニウム水溶液30mLを加え、ジクロロメタンで抽出した。無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=2/1)により分離し、化合物M3-3(450mg、二段階収率64%)を得た。LC-MS:[M+H]:551。
【0128】
窒素ガス雰囲気下で、中間体M3-3(0.82mmol、450mg)及び原料M1-4(1.23mmol、342mg)を1,4-ジオキサン及び水の混合液(v/v:9/1)10mLに溶解し、リン酸カリウム(1.64mmol、348mg)及びXphos-Pd-G3(0.08mmol、68mg)を加えた。95℃のマイクロ波加熱で2時間反応させた。反応を停止し、濾過し、系中に水30mLを加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=2/1)により分離し、化合物M3-4(260mg、収率56%)を得た。LC-MS:[M+H]:575。
【0129】
中間体M3-4(260mg)を10mLのテトラヒドロフランに溶解し、1NのNaOH水溶液5mLを加え、70℃まで昇温して1時間反応させた。反応を停止し、溶剤を減圧下で蒸留除去し、水40mLを加え、ジクロロメタンで抽出し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=1/1)により分離し、化合物M3-5(200mg、収率94%)を得た。LC-MS:[M+H]:475。
【0130】
窒素ガス雰囲気下で、マイクロ波反応瓶に中間体M3-5(0.42mmol、200mg)、3-ブロモピリジンM1-7(0.63mmol、100mg)、リン酸カリウム(1.26mmol、268mg)及びCuI(0.08mmol、15mg)を加え、6mLのDMFで溶解させた。5分間攪拌した後、N,N-ジメチル-1,2-シクロヘキサンジアミン(0.08mmol、12mg)をゆっくりと加えた。マイクロ波で110℃まで昇温して1.5時間反応させ、室温まで冷却し、反応液に水30mLを加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=2/1)により分離し、化合物M3-6(100mg、収率44%)を得た。LC-MS:[M+H]:552。
【0131】
直前のステップで得られた中間体M3-6(100mg)を4mLのジクロロメタンに溶解し、2mLのトリフルオロ酢酸を加え、室温で2時間反応させた。反応を停止し、溶剤を減圧下で蒸留除去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpH10に調整し、ジクロロメタンで抽出し、HPLC分取クロマトグラフィー(0.1%トリフルオロ酢酸の水溶液)により分離し、目的化合物M3(30mg、収率37%)を得た。LC-MS:[M+H]:468。
M3:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.71(s,1H),8.83(d,J=2.6Hz,1H),8.68(d,J=4.7Hz,1H),8.27(s,1H),8.09-8.02(m,1H),7.63(dd,J=8.2,4.8Hz,2H),6.72-6.76(m,2H),4.49(s,2H),4.17(s,2H),3.20(d,J=12.6Hz,2H),2.34(s,3H),2.24(s,3H),1.86-1.89(m,2H),1.76-1.81(m,2H)。
【0132】
実施例2:化合物M4-M15の製造
【0133】
ステップ1:窒素ガス雰囲気下で、中間体3-(7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンc5(1.85mmol、600.0mg)を10mLのDMFに溶解し、N-ブロモスクシンイミドNBS(2.22mmol、395.1mg)をゆっくりと加え、室温で2時間反応させ、反応を停止した。反応液に水50mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1)により分離して精製し、化合物3-(3-ブロモ-7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンM4-1(600mg、収率80%)を得た。LC-MS:[M+H]:403.1。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.67(s,1H),7.95(s,1H),6.58(s,1H),4.46(s,2H),4.09(d,J=12.4Hz,2H),3.18-3.07(dd,J=12.4Hz,1.2Hz,2H),2.17(d,J=21.2Hz,7H),1.90-1.81(m,2H),1.77-1.67(m,2H)。
【0134】
ステップ2:窒素ガス雰囲気下で、化合物M4-1(1.24mmol、500mg)、リン酸カリウム(3.72mmol、789.5mg)、化合物M1-4(1.86mmol、571.3mg)及び触媒Pd(dtbpf)Cl(0.24mmol、155mg)を10mLの1,4-ジオキサンに溶解し、水2mLを加え、5分間攪拌した後、90℃まで昇温して16時間反応を続け、室温まで冷却し、反応を停止し、濾過した。混合液に水45mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1)により分離して精製し、化合物3-(7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンM4-2(420mg、収率71%)を得た。LC-MS:[M+H]:475.5。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.61(s,1H),7.89(d,J=8.0Hz,1H),4.23(q,J=7.2Hz,3H),1.29(t,J=6.8Hz,3H),1.20-1.14(m,2H),1.06-0.98(m,2H)。
【0135】
ステップ3:窒素ガス雰囲気下で、化合物M4-2(0.32mmol、150mg)、リン酸カリウム(0.63mmol、131mg)、3-ブロモ-5-クロロピリジンM4-3(0.63mmol、122mg)及びリガンドN1,N2-ジメチル1,2-シクロヘキサンジアミン(0.063mmol、8.99mg)を5mLのDMFに溶解し、触媒CuI(0.03mmol、6.02mg)を加え、110℃まで昇温して4時間攪拌を続け、室温まで冷却し、反応を停止した。混合液に水40mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=15/1)により分離して精製し、化合物3-(7-(1-(5-クロロピリジン-3-イル)-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンM4-4(80mg、収率44%)を得た。LC-MS:[M+H]:586.3。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.61(s,1H),7.89(d,J=8.0Hz,1H),4.23(q,J=7.2Hz,3H),1.29(t,J=6.8Hz,3H),1.20-1.14(m,2H),1.06-0.98(m,2H)。
【0136】
ステップ3:窒素ガス雰囲気下で、化合物M4-4(0.14mmol、80mg)をジクロロメタン及びトリフルオロ酢酸の混合溶剤(v/v=3/1)4mLに溶解し、室温で2時間反応させた。混合液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを9程度に調整し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物を分取クロマトグラフィーHPLCにより分離して精製し、化合物M4(13.1mg)を得た。LC-MS:[M+H]:502.2。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.79(br s,1H),8.83(d,J=2.4Hz,1H),8.75(d,J=2.0Hz,1H),8.27(t,J=2.4Hz,2H),7.59(br s,1H),6.75(br s,1H),6.69(s,1H),4.50(s,2H),4.15(s,2H),3.20(d,J=11.6Hz,2H),2.38(s,3H),2.24(s,3H),1.90-1.74(m,4H)。
【0137】
化合物M4の合成を参照し、類似した原料/中間体を使用して、以下のような目的化合物M5~M15を合成した:
【0138】
実施例3:化合物M16-M18の製造
【0139】
ステップ1:窒素ガス雰囲気下で、中間体(1S,4S)-5-(7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンc6(0.73mmol、300.0mg)を5mLのDMFに溶解し、N-ブロモスクシンイミドNBS(0.89mmol、156.1mg)をゆっくりと加え、室温で2時間反応させ、反応を停止した。反応液に水30mLを加え、ジクロロメタンで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をフラッシュ逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)により分離して精製し、化合物(1S,4S)-5-(3-ブロモ-7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンM16-1(5.0mg、収率6%)を得た。LC-MS:[M+H]:309.9。この反応を繰り返し増幅して、M16-1(2.0g)を得た。
【0140】
ステップ2:窒素ガス雰囲気下で、化合物M16-1(0.59mmol、230mg)、リン酸カリウム(1.77mmol、376mg)、化合物M1-4(1.18mmol、329mg)及び触媒Pd(dtbpf)Cl(0.12mmol、76mg)を4mLの1,4-ジオキサンに溶解し、水0.8mLを加え、5分間攪拌した後、90℃まで昇温して16時間攪拌を続け、室温まで冷却し、反応を停止し、濾過した。混合液に水30mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=50/1)により分離して精製し、化合物(1S,4S)-5-(7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンM16-2(150mg、収率55%)を得た。LC-MS:[M+H]:461.1。
【0141】
ステップ3:窒素ガス雰囲気下で、化合物M16-2(0.33mmol、150mg)、リン酸カリウム(0.65mmol、138mg)、3-ブロモピリジンM1-7(0.65mmol、103mg)及びリガンドN1,N2-ジメチル1,2-シクロヘキサンジアミン(0.65mmol、142mg)を5mLのDMFに溶解し、触媒CuI(0.33mmol、62mg)を加え、110℃まで昇温して16時間攪拌を続け、室温まで冷却し、反応を停止した。混合液に水40mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物としての化合物M16-3を得た。LC-MS:[M+H]:538.3。
【0142】
ステップ4:窒素ガス雰囲気下で、ステップ3で得られた粗生成物としての化合物M16-3をジクロロメタン及びトリフルオロ酢酸の混合溶剤(v/v=3/1)4mLに溶解し、室温で2時間反応させた。混合液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを9程度に調整し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物を分取クロマトグラフィーHPLCにより分離して精製し、化合物M16(13.8mg)を得た。LC-MS:[M+H]:454.2。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.64(s,1H),8.83(d,J=2.4Hz,1H),8.67(d,J=4.8Hz,1H),8.25(s,1H),8.08-8.02(m,1H),7.63(dd,J=8.0Hz,4.8Hz,2H),6.64(br s,2H),5.06(s,1H),4.75(s,1H),3.83(d,J=15.6Hz,2H),3.63(d,J=10.0Hz,2H),2.34(s,3H),2.24(s,3H),1.97(dd,J=25.2,9.2Hz,2H)。
【0143】
化合物M16の合成を参照し、類似した原料/中間体を使用して、以下のような目的化合物M17~M18を合成した:
【0144】
実施例4:化合物M1a及びM1bの製造
【0145】
窒素ガス雰囲気下で、中間体a3(3.75mmol、1.3g)及び原料M1-1(5.63mmol、1.18g)を1,4-ジオキサン及び水の混合液(v/v:9/1)30mLに溶解し、炭酸カリウム(11.25mmol、1.55g)及びPd(dppf)Cl(0.4mmol、292mg)を加え、100℃で加熱して10時間反応させた。反応を停止し、濾過し、系中に水80mLを加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=2/1)により分離し、化合物M1-2(1.1g、収率75%)を得た。LC-MS:[M+H]:396。
【0146】
氷浴で、中間体M1-2(2.78mmol、1.1g)を25mLの無水ジクロロメタンに溶解し、N-ヨードスクシンイミドNIS(3.06mmol、688mg)をゆっくりと分割添加し、且つ、2時間攪拌を続けた。反応を停止し、飽和塩化アンモニウム水溶液30mLを加え、ジクロロメタンで抽出した。無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=2/1)により分離し、化合物M1-3(1.4g、収率97%)を得た。LC-MS:[M+H]:522。
【0147】
窒素ガス雰囲気下で、中間体M1-3(2.69mmol、1.4g)及び原料M1-4(4.03mmol、1.1g)を1,4-ジオキサン及び水の混合液(v/v:9/1)20mLに溶解し、リン酸カリウム(5.38mmol、1.1g)及びXphos-Pd-G3(0.27mmol、229mg)を加えた。95℃のマイクロ波加熱で2時間反応させた。反応を停止し、濾過し、系中に水60mLを加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=4/1)により分離し、化合物M1-5(700mg、収率48%)を得た。LC-MS:[M+H]:546。
【0148】
中間体M1-5(700mg)を15mLのテトラヒドロフランに溶解し、1NのNaOH水溶液6mLを加え、70℃まで昇温して1時間反応させた。反応を停止し、溶剤を減圧下で蒸留除去し、水30mLを加え、ジクロロメタンで抽出し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=1/1)により分離し、化合物M1-6(530mg、収率93%)を得た。LC-MS:[M+H]:446。
【0149】
窒素ガス雰囲気下で、マイクロ波反応瓶に中間体M1-6(1.19mmol、530mg)、3-ブロモピリジンM1-7(1.78mmol、282mg)、リン酸カリウム(2.38mmol、505mg)及びCuI(0.12mmol、23mg)を加え、10mLのDMFで溶解させた。5分間攪拌した後、N,N-ジメチル-1,2-シクロヘキサンジアミン(0.24mmol、34mg)をゆっくりと加えた。マイクロ波で110℃まで昇温して1.5時間反応させ、室温まで冷却し、濾過し、反応液に水50mLを加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより分離し、化合物M1-8(240mg、収率39%)を得た。LC-MS:[M+H]:523。
【0150】
窒素ガス雰囲気下で、将NaH(1.66mmol、60%、40mg)及びトリメチルスルホキソニウムクロリド(1.0mmol、129mg)を反応瓶に加え、系中に1mLの無水DMSOをゆっくりと加えて20分間攪拌した。中間体M1-8(0.46mmol、240mg)を1mLのDMSOに溶解し、且つ、この混合液を反応液にゆっくりと注入した。65℃まで昇温して4時間反応させ、反応を停止した。反応液に水20mLを加え、酢酸エチルで抽出し、粗生成物としての中間体M1-9200mgを得た。LC-MS:[M+H]:537。
【0151】
粗生成物としての中間体M1-9(200mg)を4mLのジクロロメタンに溶解し、2mLのトリフルオロ酢酸を加え、室温で2時間反応させた。反応を停止し、溶剤を減圧下で蒸留除去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpH10に調整し、ジクロロメタンで抽出し、HPLC分取クロマトグラフィーにより分離し、化合物M1(70mg、二段階収率34%)を得た。LC-MS:[M+H]:453。
【0152】
化合物M1をキラル分取クロマトグラフィーにより分離し、目的化合物であるM1a及びM1bを得た。
M1b:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.91(d,J=111.8Hz,1H),8.85(d,J=2.5Hz,1H),8.68(d,J=4.7Hz,1H),8.50(s,1H),8.10-8.03(m,1H),7.77(s,1H),7.64(dd,J=8.2,4.8Hz,1H),6.92(s,2H),3.90-3.97(m,2H),3.65-3.70(m,1H),3.38-3.41(m,1H),2.91-2.97(m,1H),2.34(s,3H),2.24(s,3H),1.99-2.01(m,1H),1.91(s,1H),1.55(dd,J=9.3,4.2Hz,1H),1.23(d,J=5.5Hz,1H)。
【0153】
実施例5:化合物M2a及びM2bの製造
【0154】
氷浴で、中間体b1(3.18mmol、1.3g)を25mLの無水ジクロロメタンに溶解し、N-ヨードスクシンイミドNIS(3.50mmol、787mg)をゆっくりと分割添加し、且つ、2時間攪拌を続けた。反応を停止し、飽和塩化アンモニウム水溶液35mLを加え、ジクロロメタンで抽出した。無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=2/1)により分離し、化合物M2-1(1.3g、収率77%)を得た。LC-MS:[M+H]:536。
【0155】
窒素ガス雰囲気下で、中間体M2-1(2.43mmol、1.3g)及び原料M1-4(3.65mmol、1.01g)を1,4-ジオキサン及び水の混合液(v/v:9/1)20mLに溶解し、リン酸カリウム(4.86mmol、1.03g)及びXphos-Pd-G3(0.24mmol、203mg)を加えた。95℃のマイクロ波加熱で2時間反応させた。反応を停止し、濾過し、系中に水60mLを加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=4/1)により分離し、化合物M2-2(1.3g、収率96%)を得た。LC-MS:[M+H]:560。
【0156】
中間体M2-2(1300mg)を20mLのテトラヒドロフランに溶解し、1NのNaOH水溶液8mLを加え、70℃まで昇温して1時間反応させた。反応を停止し、溶剤を減圧下で蒸留除去し、水40mLを加え、ジクロロメタンで抽出し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=1/1)により分離し、化合物M2-3(1.0g、収率94%)を得た。LC-MS:[M+H]:460。
【0157】
窒素ガス雰囲気下で、マイクロ波反応瓶に中間体M2-3(0.65mmol、300mg)、3-ブロモ-5-フルオロ-ピリジンM2-4(0.98mmol、172mg)、リン酸カリウム(1.30mmol、276mg)及びCuI(0.06mmol、12mg)を加え、8mLのDMFで溶解させた。5分間攪拌した後、N,N-ジメチル-1,2-シクロヘキサンジアミン(0.12mmol、17mg)をゆっくりと加えた。マイクロ波で110℃まで昇温して1.5時間反応させた後、反応を停止し、濾過した。反応液に水30mLを加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=3/1)により分離し、化合物M2-5(200mg、収率56%)を得た。LC-MS:[M+H]:555。
【0158】
中間体M2-5(0.36mmol、200mg)を4mLのジクロロメタンに溶解し、2mLのトリフルオロ酢酸を加え、室温で2時間反応させた。反応を停止し、溶剤を減圧下で蒸留除去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpH10に調整し、ジクロロメタンで抽出し、HPLC分取クロマトグラフィーにより分離し、化合物M2(80mg、収率48%)を得た。LC-MS:[M+H]:471。
【0159】
化合物M2をキラル分取クロマトグラフィーにより分離し、目的化合物であるM2a及びM2bを得た。
M2b:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.91(d,J=117.3Hz,1H),8.77(s,1H),8.73(d,J=2.6Hz,1H),8.49(s,1H),8.14(dd,J=9.6,2.7Hz,1H),7.69(d,J=79.0Hz,1H),6.90(s,2H),3.90-3.97(m,2H),3.65-3.70(m,1H),3.35-3.41(m,1H),2.94(dt,J=14.4,4.6Hz,1H),2.38(s,3H),2.24(s,3H),2.01-2.08(m,1H),1.91(s,1H),1.54(dd,J=9.2,4.2Hz,1H),1.22-1.26(m,1H)。
【0160】
実施例6:化合物M19の製造
【0161】
ステップ1:窒素ガス雰囲気下で、化合物3-(3-ブロモ-7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンM4-1(1.24mmol、500mg)、リン酸カリウム(3.72mmol、789.5mg)、化合物M19-1(1.49mmol、434.7mg)及び触媒Pd(dtbpf)Cl(0.12mmol、80mg)を10mLの1,4-ジオキサンに溶解し、水2mLを加え、5分間攪拌した後、90℃まで昇温して16時間攪拌を続け、室温まで冷却し、反応を停止し、濾過した。混合液に水40mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1)により分離して精製し、化合物3-(7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(3-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンM19-2(460mg、収率76%)を得た。LC-MS:[M+H]:489.3。
【0162】
ステップ2:窒素ガス雰囲気下で、化合物M19-2(0.41mmol、200mg)、リン酸カリウム(0.82mmol、174mg)、3-ブロモ-ピリジンM1-7(0.82mmol、130mg)及びリガンドN1,N2-ジメチル1,2-シクロヘキサンジアミン(0.41mmol、58mg)を5mLのDMFに溶解し、触媒CuI(0.20mmol、39mg)を加え、110℃まで昇温して16時間攪拌を続け、室温まで冷却し、反応を停止した。混合液に水40mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物としての化合物M19-3を得た。LC-MS:[M+H]:566.3。
【0163】
ステップ3:窒素ガス雰囲気下で、ステップ2で得られた粗生成物M19-3をジクロロメタン及びトリフルオロ酢酸の混合溶剤(v/v=3/1)6mLに溶解し、室温で2時間反応させ、反応を停止した。混合液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを9程度に調整し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物を分取クロマトグラフィーHPLCにより分離して精製し、化合物M19(79.5mg)を得た。LC-MS:[M+H]:482.3。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.30(s,1H),8.83(d,J=2.4Hz,1H),8.67(dd,J=4.8Hz,1.2Hz,1H),8.23(s,1H),8.07-8.02(m,1H),7.65-7.60(m,1H),6.70(s,1H),6.51(s,1H),4.50(d,J=2.0Hz,2H),4.16(d,J=12.4Hz,2H),3.19(d,J=11.2Hz,2H),2.33(s,3H),2.23(s,6H),1.92-1.73(m,4H)。
【0164】
実施例7:化合物M20の製造
【0165】
窒素ガス雰囲気下で、化合物3-(7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンM4-2(0.11mmol、50mg)をジクロロメタン及びトリフルオロ酢酸の混合溶剤(v/v=3/1)4mLに溶解し、室温で2時間反応させ、反応を停止した。混合液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを9程度に調整し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物を分取クロマトグラフィーHPLCにより分離して精製し、化合物M20(18.0mg)を得た。LC-MS:[M+H]:391.2。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.67(s,2H),8.23(s,1H),7.58(s,1H),6.73(s,1H),6.56(s,1H),4.48(s,2H),4.14(s,2H),3.16(d,J=10.8Hz,2H),2.20(s,6H),1.90-1.73(m,4H)。
【0166】
実施例8:化合物M21-M22の製造
【0167】
ステップ1:窒素ガス雰囲気下で、化合物3-(7-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタンM4-2(0.32mmol、150mg)を5mLの無水DMFに溶解し、NaH(0.47mmol、18.96mg)を加え、5分間攪拌した後、原料M21-1(0.47mmol、132.4mg)を加え、70℃まで昇温して16時間攪拌を続け、室温まで冷却し、反応を停止し、濾過した。混合液に水40mLを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物としての化合物M21-2を得た。LC-MS:[M+H]:658.5。
【0168】
ステップ2:窒素ガス雰囲気下で、ステップ1で得られた粗生成物M21-2をジクロロメタン及びトリフルオロ酢酸の混合溶剤(v/v=3/1)4mLに溶解し、室温で2時間反応させ、反応を停止した。混合液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを9程度に調整し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濃縮し、粗生成物を分取クロマトグラフィーHPLCにより分離して精製し、化合物M21(38.89mg)を得た。LC-MS:[M+H]:474.3。
H NMR(400MHz,CDCl3)δ8.34(s,1H),8.23(s,1H),7.59(s,1H),6.74(s,1H),6.57(s,1H),4.48(s,2H),4.44-4.35(m,1H),4.15(d,J=12.0Hz,2H),3.25(d,J=11.2Hz,2H),3.16(d,J=11.6Hz,2H),2.87(t,J=11.6Hz,2H),2.25(s,3H),2.15-2.03(m,5H),1.94-1.82(m,4H),1.80-1.72(m,2H)。
【0169】
化合物M21の合成を参照し、類似した原料/中間体を使用して、以下のような目的化合物M22を合成した:
【0170】
実施例9:ATRキナーゼ活性実験
ATRキナーゼのリン酸化の下流基質p53タンパク質を検出することにより、ATRキナーゼ活性実験を行った。GSTで標識した全長P53タンパク質は、Sigma(カタログ番号:14-865)から購入され、Anti-phospho-p53(ser15)-K抗体とAnti-GST-d2抗体は、いずれもCisbio(カタログ番号:61GSTDLA;61P08KAE)から購入された。時間分解-蛍光システムによりリン酸化P53タンパク質の量を測定した。実験開始前に、必要に応じて以下のような作動液を調製した:1×反応緩衝液(20mM HEPES PH8.0、1%グリセリン、0.01%Brij-35)、希釈された緩衝液(20mMのHEPES PH8.0、1%グリセリン、0.01%Brij-35、5mMのDTT及び1%BSA)、終了液(20mMのHEPES PH8.0、1%グリセリン、0.01%Brij-35、250mMのEDTA)、検出用緩衝液(50mMのHEPES PH7.0、150mMのNaCl、267mMのKF、0.1%コール酸ナトリウム、0.01%Tween-20、0.0125%アジ化ナトリウム)。臨床研究薬AZD6738(selleck社から購入)を陽性対照として使用した。
【0171】
実験の具体的なステップは以下の通りである:
1×反応緩衝液で4×段階希釈された化合物溶液を製造し、異なる濃度の9つの化合物を得て、2.5μLの4×段階希釈された化合物溶液を384ウェル分析プレート(784075、Greiner)に加えた。1×反応緩衝液で4× p53基質作動液(40nM)を製造し、2.5μLの4×p53基質作動液を384ウェル分析プレートに加えた。希釈された緩衝液で4×ATR/ATRIP作動液(12.8ng/μL)を製造し、2.5μLの4×ATR/ATRIP作動液を384ウェル分析プレートに加えた。脱イオン水で4×ATP作動液(2mM)を製造し、2.5μLの4×ATP作動液を384ウェル分析プレートに加え、遮光下で、室温で30分間培養した。終了液5μLを384分析プレートに加えた。最後に、5μLの検出混合物(0.09ng/μLのAnti-phospho-p53(ser15)-K及び6ng/μLのAnti-GST-d2)を384ウェル分析プレートに加えた。室温で一晩インキュベートし、M5e(Molecular Device)機器により蛍光シグナル(励起波長は320nm、発光波長は620nmと665nm)を検出した。各ウェルの蛍光強度値により各ウェルにおける阻害率を算出した:ER(Emission Ratio、発光比率)=(665nmでの蛍光強度/620nmでの蛍光強度);阻害率=(ER陽性-ER被験化合物)/(ER陽性-ER陰性)×100%。パラメータフィッティング標準ソフト(GraphPad Prism 8.0)により化合物のIC50数値(IC50は、効果が最大の50%である場合の阻害濃度である)を算出した。結果を表1に示す。
【0172】
表1
【0173】
表1のデータによれば、本発明の化合物は、ATRキナーゼを阻害する優れた活性を有し、活性が臨床研究薬AZD6738と同等であるかそれ以上であり、本発明の化合物はATR阻害剤として腫瘍細胞に選択的に作用し、腫瘍を治療するための優れた潜在薬として有望であることが示された。
【0174】
実施例10:インビトロでの細胞増殖阻害実験1
22Rv1細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection、ATCC)から購入された。
【0175】
実験の具体的な操作ステップは以下の通りである:
22Rv1細胞をRPMI 1640培地(10%のFBS及び1%のペニシリン・ストレプトマイシン(ps)を含有)で培養し、細胞融合度が85%以上に達した場合、試験に使用した。96ウェル培養プレートに1ウェルあたり約2000個の細胞を接種し、24時間培養し、異なる濃度の被験化合物(0-50μM)で処理した細胞を加え、各グループに3つの平行な複数のウェルを設置した。ブランクウェル(培地のみを含有)及び対照ウェル(細胞が接種され、薬物なし)を設置した。120時間培養し、各ウェルに10μLのCCK8溶液(Beyotime、#C0037)を加え、遮光で4hインキュベートし、Biotek Synergy H1多機能マイクロプレートリーダーでOD値を読み取った。
【0176】
阻害率(%)=100%×(対照ウェル-実験ウェル)/(対照ウェル-ブランクウェル)
パラメータフィッティング標準ソフト(GraphPad Prism 8.0)により化合物のIC50数値を算出した。結果を表2に示す。
【0177】
表2
【0178】
この増殖阻害実験の結果から、本発明の化合物がATM突然変異のヒト前立腺癌細胞22Rv1に対して良好な阻害効果を有することが確認され、一部のIC50値は、1μM未満、さらには0.3μM未満とすることができる。
【0179】
実施例11:インビトロでの細胞増殖阻害実験2
本実験では、腫瘍細胞株TOV21G、SK-OV-3(卵巣癌)、Rec-1(リンパ腫)、HCT-116(結腸癌)、MDA-MB-231(乳癌)、NCI-H23(非小細胞肺癌)、SNU216(胃癌)、OS-RC-2(腎癌)、T24(膀胱癌)、AsPC-1(膵臓癌)、M14(黒色腫)及びU2OS(骨肉腫)においてインビトロでの細胞増殖に対する本発明の化合物の影響を検出することにより、腫瘍細胞の増殖に対する本発明の化合物の阻害作用を研究した。
【0180】
TOV21G細胞とRec-1細胞は、いずれもアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection、ATCC)から購入され、他の細胞は、上海メディシロン生物医薬株式会社から購入された。
【0181】
TOV21G細胞をMCDB105/M199培地(15%のFBS及び1%のpsを含有)で培養し、細胞融合度が85%以上に達した場合、試験に使用した。96ウェル培養プレートに1ウェルあたり約1000個の細胞を接種し、24時間培養し、異なる濃度の被験化合物(0-10μM)で処理した細胞を加え、各グループに3つの平行な複数のウェルを設置した。ブランクウェル(培地のみを含有)及び対照ウェル(細胞が接種され、薬物なし)を設置した。120時間培養し、各ウェルに40μLのCell Titer-Glo溶液(Promega、#G7573)を加え、遮光で25min振とうインキュベートし、1ウェルあたり100μLを取って96ウェルブランクプレート(Corning、#3917)に移し、Biotek Synergy H1多機能マイクロプレートリーダーで発光値を読み取った。
【0182】
Rec-1細胞をRPMI1640培地(10%のFBS及び1%のpsを含有)で培養し、96ウェル培養プレートに1ウェルあたり約6000個の細胞を接種し、異なる濃度の被験化合物(0-10μM)で処理した細胞を加え、各グループに3つの平行な複数のウェルを設置した。ブランクウェル(培地のみを含有)及び対照ウェル(細胞が接種され、薬物で処理しない)を設置した。120時間培養し、各ウェルに40μLのCell Titer-Glo溶液を加え、遮光で20min振とうインキュベートし、1ウェルあたり100μLを取って96ウェルブランクプレートに移し、Biotek Synergy H1多機能マイクロプレートリーダーで発光値を読み取った。
【0183】
他の細胞培養と実験スキームは、上記の2種類の細胞株の実験スキームを参照し、細胞培地は、ATCCにより推奨された通常培地を使用した。
【0184】
阻害率(%)=100%×(対照ウェル-実験ウェル)/(対照ウェル-ブランクウェル)
パラメータフィッティング標準ソフト(GraphPad Prism 8.0)により化合物のIC50数値を算出した。結果を表3、表4に示す。
【0185】
表3
【0186】
表4 多種の腫瘍細胞に対する化合物M3の増殖抑制効果。
【0187】
この増殖阻害実験の結果から、本発明の化合物は、研究されているヒト腫瘍細胞において良好な阻害効果を有することが確認された。
【0188】
実施例12:化合物のインビトロでの肝ミクロソーム安定性実験
本発明の化合物に対して肝ミクロソーム安定性実験の研究を行った。被験化合物(終濃度2.0nM)を、NADPHを添加した場合又は添加しなかった場合にヒト/マウスの肝ミクロソームと共インキュベートし、60分間以内にインキュベート上清中の化合物の濃度を検出した。代表的な化合物の結果を下記の表5に示す。
【0189】
表5
【0190】
以上の結果から、本発明の分子は、マウス及びヒトの肝ミクロソームにおいて非常に高い安定性を有し、インビボでの代謝が遅いことが示された。
【0191】
実施例13:化合物のインビボでの薬物動態学の実験
本発明の化合物に対してインビボでの薬物動態学の研究を行った。
【0192】
実験方法:
雄ICRマウス(3匹/群)に10mg/kgの投与量で強制経口投与した。投与前(0時間)及び投与後(0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間)の血漿サンプルを収集し、収集されたサンプルをLC/MS分析してデータを採取し、採取された分析データをAnalyst v1.6.2(AB Applied Biosystems Company、USA)ソフトにより薬物動態学の関連するパラメータを算出した。
【0193】
代表的な化合物の結果を下記の表6に示す。
【0194】
表6
【0195】
以上の結果から、本発明の分子は、マウスに経口投与された後に非常に高いインビボでの暴露量を有し、臨床的にはより低い投与量で優れた抗腫瘍効果をもたらすことが期待される。
【0196】
実施例14:ATRキナーゼに対する化合物の選択性の研究
本発明の化合物に対して同じファミリー(ATM、DNA-PK)阻害実験を行った:
文献に報告されている実験方法に基づいて、被験化合物を10μMを起点として、0.51nM(合計10個の濃度)まで3倍で希釈し、キナーゼATM及びDNA-PKに対するその阻害活性をそれぞれ測定し、結果を下記の表7に示す。
【0197】
表7:
【0198】
以上の結果から、本発明の前記化合物は、ATRに対して高度な選択性を有し、ファミリー内の他のキナーゼに対する阻害活性が低く、これにより、より高い安全性のメリットをもたらすことが示された。
【0199】
上記内容は、具体的に好ましい実施形態を参考しながら、本発明をさらに詳しく説明したが、本発明の具体的な実施例はこれに限定されるものではない。当業者にとって、本発明の構想から逸脱しない範囲において種々の単純な推論又は置換を行うこともでき、それらのすべては、本発明の保護範囲内のものに該当すると、見なされるべきである。
【0200】
参考文献:
[1]Discovery of Novel 3-Quinoline Carboxamides as Potent,Selective and Orally Bioavailable Inhibitors of Ataxia Telangiectasia Mutated(ATM)Kinase,J. Med. Chem. 2016,56,6281-6292;
[2]The Discovery of 7-Methyl-2-[(7-methyl[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyridin-6-yl)amino]- 9-(tetrahydro-2H-pyran-4-yl)-7,9-dihydro-8H-purin-8-one(AZD7648),a Potent and Selective DNA-Dependent Protein Kinase(DNA-PK)Inhibitor,J. Med. Chem. 2020,63,3461-3471。
【国際調査報告】