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▶ サーキュラス、バイ、ジュリー、ホーン、プロプライエタリー、リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-05
(54)【発明の名称】皮膚充填用の湾曲した針
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
A61M5/158 500F
A61M5/158 500D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024543216
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-09-13
(86)【国際出願番号】 AU2023050024
(87)【国際公開番号】W WO2023137516
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】2022900089
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524272642
【氏名又は名称】サーキュラス、バイ、ジュリー、ホーン、プロプライエタリー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Circulus by Julie Horne Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】エルディハン、アブジオグル
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066CC04
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF05
4C066KK03
4C066KK04
(57)【要約】
本発明は、唇および口囲領域に皮膚充填剤を注入するための湾曲した針に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真皮に皮膚充填剤を注入するための針であって、
シリンジに結合するための近位端と、
鋭利な先端を含む遠位端と
を備え、
前記近位端と前記遠位端の間に湾曲領域を含む、針。
【請求項2】
前記湾曲領域の頂角が、130°~179°の間である、請求項1に記載の針。
【請求項3】
前記近位端から前記湾曲領域まで延びる第1の直線領域をさらに含む、請求項1または2に記載の針。
【請求項4】
前記第1の直線領域が、4mm~18mmの間、任意選択で4mm~12mmの間、任意選択で4mm~8mmの間の長さを含む、請求項3に記載の針。
【請求項5】
前記湾曲領域が、前記遠位端で終端する、請求項1から4のいずれか一項に記載の針。
【請求項6】
前記湾曲領域の前記頂角が、160°~179°の間、任意選択で165°~175°の間である、請求項5に記載の針。
【請求項7】
前記湾曲領域が、8mm~18mmの間、任意選択で11mm~16mmの間、任意選択で12mm~14mmの間の弧長を含む、請求項5または6に記載の針。
【請求項8】
前記湾曲領域から前記遠位端まで延びる第2の直線領域をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の針。
【請求項9】
前記第2の直線領域が、7mm~12mmの間、任意選択で8mm~11mmの間、任意選択で9mm~10mmの間の長さを含む、請求項8に記載の針。
【請求項10】
前記湾曲領域の前記頂角が、140°~160°の間である、請求項8または9に記載の針。
【請求項11】
前記湾曲領域が、2mm~5mmの間、任意選択で3mm~4mmの間の弧長を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の針。
【請求項12】
前記先端が、外向きベベルを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の針。
【請求項13】
前記先端が、内向きベベルを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の針。
【請求項14】
0.235mm~0.362mmの間の外径を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の針。
【請求項15】
およそ0.312mmの外径を含む、請求項14に記載の針。
【請求項16】
0.09mm未満、任意選択で0.05mm~0.09mmの間の壁厚を含む、請求項14または15に記載の針。
【請求項17】
前記針の前記壁厚が、前記針の長さの少なくとも一部に沿って前記遠位端に向かって漸減する、請求項1から16のいずれか一項に記載の針。
【請求項18】
非毒性、非腐食性、耐久性のある材料から構成される、請求項1から17のいずれか一項に記載の針。
【請求項19】
前記針の材料が、ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム、および白金から選択される、請求項18に記載の針。
【請求項20】
ステンレス鋼から構成される、請求項18または19に記載の針。
【請求項21】
およそ25ゲージ~およそ32ゲージの間である、請求項1から20のいずれか一項に記載の針。
【請求項22】
およそ30ゲージである、請求項1から21のいずれか一項に記載の針。
【請求項23】
ブリスターパックに包装された、請求項1から22のいずれか一項に記載の針。
【請求項24】
真皮に皮膚充填剤を注入する方法であって、請求項1から23のいずれか一項に記載の針を介して前記皮膚充填剤を注入することを含む、方法。
【請求項25】
唇または顔の口囲領域に前記皮膚充填剤を注入することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
唇に前記皮膚充填剤を注入することを含み、前記針は、唇の本体(湿潤/乾燥境界)を狙って、紅唇に(またはそれに近接して)挿入される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記針が皮膚から少なくとも部分的に引き抜かれるときに、皮膚充填剤を逆行して堆積させることを含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記針が皮膚にさらに挿入されるときに、皮膚充填剤を順行して堆積させることを含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記針が静止している間に、皮膚充填剤のボーラス堆積物を注入することを含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、皮膚充填剤を注入するための皮下針に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚充填剤(注入可能な充填剤、顔用充填剤、または化粧用充填剤としても知られている)は、顔のボリュームを与え、顔の特徴を増強し、顔のしわを埋めるために皮膚に注入されるゲル様材料である。一般的に使用される皮膚充填剤としては、ヒアルロン酸、コラーゲン、および生合成ポリマーが挙げられる。
【0003】
皮膚充填剤を使用して唇および顔の口領域にボリュームを加えることは特に一般的であり、その目的は以下を含む:
加齢により唇が小さくなるかまたは薄くなり得ることに留意して唇のサイズを復元すること;
唇の形状を矯正して非対称性を回避すること;
口の横の周りのしわを滑らかにすること;および
概して、より滑らかでふっくらとした、唇および口領域の外観を作出すること。
【0004】
唇領域で使用する皮膚充填剤は、一般に唇充填剤と呼ばれる。典型的な唇充填剤処置は、以下のように進む。
皮膚/唇充填剤の注入前に、唇に局所麻酔薬を塗布する。局所麻酔薬により唇を麻痺させ、痛みを取り除くかまたは軽減させて、確実にこの処置ができるだけ快適になるようにする。レシピエントが、関連する局所麻酔薬にアレルギーを有する場合は、代わりに神経ブロック注入を行って唇を麻痺させる。麻酔薬の塗布または注入から約15~30分後(状況に応じて)、唇は麻痺するはずである;
次に、皮膚充填剤を唇の関連部分に注入し、唇の関連部分は、唇の縁(紅唇)、上唇の中央の曲線(キューピッドボウ)、および口角(口の角)を場合により含む。平均して、約1mLの唇充填剤が唇に注入され;
腫脹および皮下出血を最小限に抑えるために、処置全体にわたっておよび処置後に、唇にアイスパックが適用される場合がある。
【0005】
図1に示されるように、皮膚充填剤処置に最も関連する皮膚1および組織層は、以下を含む:
表皮2-皮膚1の最外層であり、体の表面を覆う防水保護ラップを形成する。とりわけ、表皮2は、感染に対するバリアを提供し、皮膚1が体温を調節するのに役立つ。表皮2は血管を含有せず、真皮からの拡散によって栄養が供給される。表皮2の厚さは場所によって異なる場合があるが、唇領域ではおよそ60μmの厚さである;
真皮3-表皮2の下の層であり、基底膜によって表皮2としっかりと結合されている。真皮3は、皮膚1に触覚および熱感を与える神経終末、ならびに毛包、汗腺、皮脂腺、アポクリン腺、リンパ管、および血管を含有する。真皮3の血管は、自身の細胞ならびに表皮2の基底層に栄養を提供しそれらから老廃物を除去する。真皮3の厚さは場所によって異なる場合があるが、唇領域では、典型的には600~1000μmの範囲の厚さである;また
皮下組織(hypodermis)4は皮下組織(sub-cutaneous tissue)としても知られている。真皮3の下にある皮下組織4は、皮膚1の一部を形成しない。皮下組織4の目的は、皮膚1をその下の骨および筋肉に取り付けること、ならびに骨および筋肉に血管および神経を供給することである。皮下組織4は、疎性結合組織、脂肪組織、およびエラスチンからなる。
【0006】
皮膚充填剤は、目的の用途に応じて種々の層に注入することができるが、真皮3は、皮膚充填剤が最も一般的に注入される層である。特に、真皮3の表層~中層に注入することによって、しわを作出する皮膚がひだ状になるプロセスを停止させることができ、また、真皮3は最表層の牽引力または支持力も提供し、このことは、真皮3に注入することは、皮膚1の弱点および重力の影響を矯正するのに役立つことを意味する。真皮3は、重要な血管に近接していないため、一般には比較的安全な注入の場所であると考えられている。一般に、唇充填処置を行う際、真皮3は、皮膚充填剤を注入するための層として選択される。
【0007】
皮膚充填剤の注入は、慣習的に短い針を使用して行われ、多くの市販の充填剤は、実際に、使用のためにそのような針が2本入ったパックで販売されている。針の利点は、以下の点であると考えられている:
針は、皮膚充填剤が堆積される目的の層に到達するのに必要なだけの顔の組織平面を穿刺する;
針は、顔の正確な場所に注入され得るため、繊細な作業に好適である。
【0008】
針が組織平面を穿刺する能力は、ある特定の状況では利点とみなされ得るが、針の使用にはリスクもある。例えば、針が真皮の下にある血管を突き刺し、皮下出血が起こるリスクがある。より深刻なことには、針が血管に充填剤を注入し、これが血管閉塞を引き起こす場合がある。それほど深刻ではないが、望ましくないのは、針が挿入される角度によって、皮膚充填剤が皮膚内または皮膚下の異なる深さでおよび異なる層内に注入され、一部の皮膚充填剤は深すぎ、また一部の皮膚充填剤は浅すぎて堆積されて、不均一な美容上の結果につながり、その結果、でこぼこした望ましくない美容上の結果につながる可能性があることである。
【0009】
これは図2に例示されており、図2Aは、針5が表皮2、真皮3、および皮下組織4を通過しているのを示す。図2Bに示すように、針5が皮膚から抜けるときに皮膚充填剤6を注入すると、皮下組織4内を含む種々の深さに皮膚充填剤6が堆積する可能性がある。
【0010】
図3を参照すると、唇は、唇の本体(湿潤/乾燥境界)14を狙って紅唇9から垂直注入を使用して一般的に注入される。図3には、粘膜下層8、外唇10、皮脂腺11、筋層12、および唾液腺13も示されている。図4に例示されているように、従来技術による針5の使用では、針5が組織平面を穿刺し、皮膚充填剤6が皮膚1内または皮膚1下の異なる深さでおよび異なる層内に堆積し、美容上の結果が不均一になるリスクが増大するとみなされる場合がある。
【0011】
最近では、カニューレを使用して皮膚充填剤を注入することが一般的になっている。皮膚充填剤処置で使用される針と比較して、カニューレはより長く、より薄く、柔軟であり、鈍い末端を備えている。カニューレを使用するには、まず針を使用して皮膚を穿刺し、カニューレが通過する入口点を作出する。カニューレは先端が鈍く、構成が柔軟なため、血管を突き刺す可能性は低い。むしろ、カニューレは特定の皮膚層内に留まる可能性の方が高い。カニューレの長さおよび柔軟性は、カニューレが、処置領域全体に皮膚充填剤を送達するのに必要とするのは皮膚へのより少ない入口点であることをさらに意味する。しかし、カニューレの長さおよび柔軟性は、それ自体の欠点を生み出す可能性がある。カニューレは、精密さを必要とする領域、例えば、唇の周りの細い「スモーカーズライン」を処置する場合、ごく少量の皮膚充填剤をごく浅く送達するために手先の器用さが必要となる領域では、制御および精度が低いとみなされている。
【発明の概要】
【0012】
既存技術の1もしくは2以上の問題に対処する、または少なくともそれに対する実行可能な代替手段を提供する、皮膚充填剤送達用の新製品を開発することが望ましいであろう。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、真皮に皮膚充填剤を注入するための針であって、
シリンジに結合するための近位端と、
鋭利な先端を含む遠位端と
を備え、
近位端と遠位端の間に湾曲領域を含む、針が提供される。
【0014】
一実施形態では、湾曲領域の頂角は130°~179°の間である。
【0015】
一実施形態では、針は近位端から湾曲領域まで延びる第1の直線領域を含む。
【0016】
一実施形態では、第1の直線領域は、4mm~18mmの間、任意選択で4mm~12mmの間、任意選択で4mm~8mmの間の長さを含む。
【0017】
一実施形態では、湾曲領域は、遠位端で終端する。
【0018】
一実施形態では、湾曲領域の頂角は160°~180°の間、任意選択で165°~175°の間である。
【0019】
一実施形態では、湾曲領域の曲げ度数は5°~50°の間、任意選択で10°~45°の間、さらに任意選択で15°~40°の間、なおさらに任意選択で20°~35°の間である。
【0020】
一実施形態では、湾曲領域は、8mm~18mmの間、任意選択で11mm~16mmの間、任意選択で12mm~14mmの間の弧長を含む。
【0021】
一実施形態では、針は、湾曲領域から遠位端まで延びる第2の直線領域を含む。
【0022】
一実施形態では、第2の直線領域は、7mm~12mmの間、任意選択で8mm~11mmの間、任意選択で9mm~10mmの間の長さを含む。
【0023】
一実施形態では、湾曲領域の頂角は140°~160°の間である。
【0024】
一実施形態では、湾曲領域は、2mm~5mmの間、任意選択で3mm~4mmの間の弧長を含む。
【0025】
一実施形態では、先端は外向きベベルを含む。
【0026】
一実施形態では、先端は内向きベベルを含む。
【0027】
一実施形態では、針は、0.235mm~0.362mmの間の外径を含む。
【0028】
一実施形態では、針は、およそ0.312mmの外径を含む。
【0029】
一実施形態では、針はISO6009:2016壁標準定義の通常壁厚、薄壁、極薄壁、または超極薄壁に準拠した壁厚を含む。
【0030】
一実施形態では、針は、0.09mm未満、任意選択で0.05mm~0.09mmの間の壁厚を含む。
【0031】
一実施形態では、針の壁厚は、針の長さの少なくとも一部に沿って遠位端に向かって漸減する。
【0032】
一実施形態では、針は、非毒性、非腐食性、耐久性のある材料から構成される。
【0033】
一実施形態では、針の材料は、ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム、および白金から選択される。
【0034】
一実施形態では、針はステンレス鋼から構成される。
【0035】
一実施形態では、針は、およそ25ゲージ~およそ32ゲージの間である。任意選択で、針は、およそ30ゲージである。
【0036】
一実施形態では、針は、ブリスターパックに包装されている。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の実施形態に従って針を介して皮膚の皮膚層に皮膚充填剤を注入することを含む方法が提供される。
【0038】
一実施形態では、方法は、唇または顔の口囲領域に皮膚充填剤を注入することを含む。
【0039】
一実施形態では、方法は、唇に皮膚充填剤を注入することを含み、針は、唇の本体(湿潤/乾燥境界)を狙って、紅唇に(またはそれに近接して)挿入される。
【0040】
一実施形態では、方法は、針が皮膚から少なくとも部分的に引き抜かれるときに、皮膚充填剤を逆行して堆積させることを含む。
【0041】
一実施形態では、方法は、針が皮膚にさらに挿入されるときに、皮膚充填剤を順行して堆積させることを含む。
【0042】
一実施形態では、方法は、針が静止している間に皮膚充填剤のボーラス堆積物を注入することを含む。
【0043】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、文脈上別段の要求がない限り:
「含む(comprise)」という用語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などのその変形は、記載された整数またはステップまたは整数もしくはステップの群を含むが、他の整数またはステップまたは整数もしくはステップの群を除外するものではないと理解される;
「a」または「an」という用語は、1または2以上を意味することが意図される;また
「第1の」、「第2の」、「第3の」という用語は、単に標識として使用されるものであり、それらの対象に数値要件を課すこと、またはそれらの対象の重要性のある特定の順位付けを確立することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、表皮、真皮および皮下組織を含む皮膚の層を示す図である。
図2図2は、皮膚の層に皮膚充填剤を注入する従来技術による針を示す図である。
図3図3は、ヒトの唇の構成要素を示す図である。
図4図4は、ヒトの唇に皮膚充填剤を注入する従来技術による針を示す図である。
図5図5は、皮膚に皮膚充填剤を注入する本発明の実施形態による針を示す図である。
図6図6は、ヒトの唇に皮膚充填剤を注入する本発明の実施形態による針を示す図である。
図7図7は、弧長、弦長、および頂角に基づく針の曲率の計算を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態による針の種々の表現を示す図である。
図9図9は、本発明の一実施形態による針の種々の表現を示す。
図10図10は、本発明の一実施形態による針の種々の表現を示す。
図11図11は、「通常の厚さ」の壁を有する針と、「薄い」壁を有する第2の針の断面積を示す。
図12図12は、本発明の実施形態による2つの針の写真を示す。
【符号の説明】
【0045】
1. 皮膚
2. 表皮
3. 真皮
4. 皮下組織
5. 針
6. 皮膚充填剤
7. 針先端
8. 粘膜下組織
9. 紅唇
10. 外唇
11. 皮脂腺
12. 筋層
13. 唾液腺
14. 湿潤/乾燥境界
15. 弦長
16. 頂角
17. 弧長
18. 第1の直線領域
19. 湾曲領域
20. 第2の直線領域
21. 内径
22. 外径
【発明を実施するための形態】
【0046】
一般に、本発明は、皮膚充填剤および他の化合物を皮膚に注入するための湾曲した針に関する。ある特定の実施形態では、針は、唇およびヒトの顔の口囲領域に皮膚充填剤を注入するように構成されている。
【0047】
図2および図4を参照して前述したように、従来技術による針5を使用すると、皮膚充填剤6が皮膚1の望ましくない層に注入される可能性があり、これにより不必要な皮下出血、血管閉塞、および不均一な美容上の結果のリスクが生じることが確認されている。
【0048】
図3Aおよび3Bは、本発明の実施形態による湾曲した針5を使用して、従来技術の針に関連するリスクを軽減させることができる方法を示している。図3Aに示すように、湾曲した針5(すなわち、湾曲領域を含む針)を使用すると、針が皮膚層を通過して皮膚層に沿って進む角度を変えることができ、針5が真皮3内などの皮膚1の所望の層に留まる可能性が高くなることが確認されている。すなわち、従来技術による針では、針の先端7は、一般に表皮2への進入角度をたどり続けるため、針5を、別の皮膚層に進入させることなく皮膚1の層に沿って通過させることは困難になる。湾曲した針5を使用すると、針先端7と針5の遠位端の角度をより一般に変えることが可能になり、それぞれが皮膚1の特定の層に沿って通過することができる。さらに図3Bに示すように、このような構成により、皮膚充填剤6が皮膚1の所望の層に注入されて留まる可能性が高くなり、したがって所望の美容効果が得られると考えられる。
【0049】
図3Aおよび3Bは、皮膚充填剤6を堆積させる逆行法を示しており、この方法では、まず針5を所望の位置に挿入し(図3Aを参照のこと)、針5が皮膚1から(少なくとも)部分的に引き抜かれるときに皮膚充填剤6が注入される(図3Bを参照のこと)。本発明の代替実施形態では、皮膚充填剤6は順行法を使用して堆積させることができ、この方法では、針5が皮膚1に挿入されるときに皮膚充填剤6が注入される。逆行法および順行法はそれぞれ、「リニアスレッディング」または「トンネリング」堆積法と考えられる。順行法は、医療専門家が皮膚充填剤の追跡をより良好に視覚化できるため、ティアトラフまたは紅唇に一般的に実行され得る。逆行法は、より深いしわ(鼻唇溝およびマリオネットラインの周囲など)を埋めるか、または唇をふっくらさせるために一般的に使用され得る。本発明の実施形態による湾曲した針5は、上述のようにリニアスレッディング法に特に適している場合があるが、このような針5は、「複数注入」方法、例としてデポ法、またはより一般には針5が静止している間に皮膚充填剤6のボーラス堆積物が注入される方法にも使用され得る。
【0050】
図6Aおよび6Bは、皮膚充填剤6を唇に注入する際の湾曲した針5の有用性をさらに示している。図6Aに示されるように、本発明の実施形態による湾曲した針5を使用すると、針5の先端7が唇の形状に沿って、真皮3などの所望の皮膚層に沿って進むことができると考えられる。図6Bに示されるように、これにより、さらに、皮膚充填剤6を唇の皮膚の所望の層に注入して、皮膚充填剤6の望ましい堆積を提供することがさらに可能になり、その結果、皮下出血、血管閉塞、および美容上の不良な結果のリスクが軽減されると考えられる。
【0051】
図7を参照して、針5の湾曲領域19の湾曲の特性を記述する方式が、ここで説明される。針5の湾曲は、円周のセグメントに近似しているとみなされ得、したがって湾曲は以下を含む:
弧長17、すなわち2つの端点間の弧に沿った距離を表すものであり、例えば、点Aと点Bの間の湾曲に沿った距離、または点Cと点Dの間の湾曲に沿った距離を表す。
弦長15、すなわち端点が弧に沿って端点と交差する線分に沿った距離を表すものである。
頂角16、すなわち二等辺三角形の頂角を表すものであり、二等辺三角形は、弧の端点(弦長全体が三角形の斜辺を表す)と、端点から等距離にある点(頂角がこの等距離の点で弧に接する)で弧に接する。この明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、「頂角」という用語はこの定義に従って解釈されるものとする。
【0052】
針の湾曲を「弧長」、「弦長」および「頂角」などの用語への言及によって説明する場合、湾曲領域の湾曲が必ずしも円形であることは意図されていない。むしろ、湾曲領域は、円形、楕円形、放物線形、双曲線形、および例えば上記の任意の1または複数の組み合わせなど、ほぼ湾曲した形状を採用することができる。この文脈において、可能な限り、「弧長」、「弦長」および「頂角」という用語は、湾曲領域の文脈において、湾曲領域が円形または他の特定の湾曲形状である必要はなく、より一般には、曲線に準ずる湾曲領域の長さを表すものとして解釈される。
【0053】
湾曲領域の特性または範囲を決定する別の方式は、曲げ度数を定義することによるものであり、これは、湾曲領域の開始から湾曲領域の終了までの針の方向の変化の範囲に単純に関係し、次のように度数で測定される:
湾曲のない直線領域の曲げ度数は0°である;
湾曲領域の終了方向が湾曲領域の開始方向に対して直角である湾曲領域の曲げ度数は90°である;および
湾曲領域の終了方向が湾曲領域の開始方向と平行だが反対である湾曲領域の曲げ度数は180°である。
【0054】
本発明のある特定の実施形態によれば、針5の湾曲領域19は、以下を含む:
8mm~18mmの間、任意選択で11mm~16mmの間、さらに任意選択で12mm~14mmの間の弧長17;
160°~179°の間、任意選択で165°~175°の間の頂角16;
9~11mmの間の弦長15、および/または
5°~50°の間、任意選択で10°~45°の間、さらに任意選択で15°~40°の間、なおさらに任意選択で20°~35°の間の曲げ度数。
このような配置は、図8を参照してさらに考察される。
【0055】
図8A図8B、および図8Cはそれぞれ、本発明の実施形態による針を示しており、それぞれが湾曲領域19と第1の直線領域18を含み、したがって、
図8Aでは、針5は以下を含む:
長さ6.5mmの第1の直線領域18;および
弦長15が6.5mm、および頂角16が165°(および曲げ度数がおよそ35°)である湾曲領域19;
図8Bでは、針5は以下を含む:
長さ4mmの第1の直線領域18;および
弦長15が9mm、および頂角16が165°、および曲げ度数がおよそ35°である湾曲領域19(換言すれば、図8Aの針5は、曲げ度数がほぼ同じであるにもかかわらず、図8Aのものよりも長い第1の直線領域18と短い湾曲領域19とを含む);ならびに
図8Cでは、外向きベベルを備えた針先端7を有する針5が示されている。すなわち、本発明のある特定の実施形態によれば、針5の先端7は、皮膚1の層に挿入するためのより鋭い縁を提供するために「ベベルが付けられて」いるかまたは「角度が付けられて」いる。図8Cに示されているベベル付き先端7は、湾曲領域18の湾曲から離れた方向を向いており、これは、先端7は外向きベベルを有することを意味する。代替実施形態(例えば図9に示されるように)では、先端7は内向きベベルを有し、これにより、ベベルは湾曲領域19の湾曲方向に向いている。いくつかの実施形態では、針5は、(理論に拘束されることを望むものではないが)痛みの少ない注入を提供することができるダブルベベル設計を組み込むなどにより、複数のベベルを含むことができる。
【0056】
図9は、本発明の実施形態による針5を示しており、これは、第1の直線領域18、湾曲領域19、および外向きベベルを含む先端7を含む。直線領域18はおよそ10mmの長さであり、一方、湾曲領域19は、弦長15がおよそ9mm、頂角16がおよそ165°、および曲げ度数がおよそ15°である。図9は、針5の外径および内径も示しており、それによって、外径22はおよそ0.309mmであり、内径21はおよそ0.165mmである(およそ0.072mmの壁厚を提供する)。これは、薄壁の「30ゲージ」針厚プロファイルに近似している。壁厚および針径について言及する場合、湾曲領域19を提供するプロセスによって、湾曲領域19内およびその付近の針の壁厚および直径がわずかに変化する場合があることが留意される。例えば、湾曲領域19を提供するプロセスによって、湾曲領域19内の針5の直径が小さくなるか、または針5の断面形状がほぼ「平坦化」されて、より楕円形の断面が提供される場合がある。したがって、直径、壁厚、およびゲージへの言及は、製造プロセスの結果として、特に湾曲領域19内およびその付近で、妥当な変動が可能になるものと解釈される。
【0057】
図10は、本発明の実施形態による針5を示しており、これは、第1の直線領域18、湾曲領域19、第2の直線領域20、および内向きベベルを含む先端7を含む。第1の直線領域18の長さはおよそ6mmであり、第2の直線領域20の長さはおよそ6mmであり、湾曲領域19の弦長15はおよそ4mmであり、湾曲領域19の頂角16はおよそ150°であり、曲げ度数はおよそ30°である。図9と同様に、図10は、針5の外径22および内径21も示しており、それによって、外径22はおよそ0.309mmであり、内径21はおよそ0.165mmである(およそ0.072mmの壁厚を提供する)。これは、薄壁の「30ゲージ」針厚プロファイルに近似している。代替的実施形態では、針5は、25ゲージ~32ゲージの間の標準厚、または25ゲージ~32ゲージの間の薄壁厚プロファイルを含んでもよい。図11は、針5の標準厚プロファイルに対する薄壁厚プロファイルを対比している。
【0058】
上述した図9および図10に示されているように、本発明のある特定の実施形態では、第2の直線領域20を含む針5の湾曲領域19は、第2の直線領域20を含まない針5において見出され得るよりも短い弦長15を有する場合がある。
【0059】
針5が人体への注入に使用され得ることを保証するために、本発明の実施形態による針5は、ステンレス鋼、チタン、コバルト、クロム、または白金などの非毒性、非腐食性、耐久性のある材料で構成され得る。一実施形態では、針5はステンレス鋼から構成される。さらなる実施形態では、針5はステンレス鋼440から構成され、これにより非常に鋭い先端7を製造することができる。
【0060】
本発明の実施形態による針5は、当業者によって理解される任意の好適なプロセスに従って製造され得る。直針を製造するための一般的なプロセスは、チューブ引き抜きを伴い、チューブ引き抜きでは、チューブが徐々に小さくなるダイを通って引き抜かれて直針が製造され、針の末端にはベベルが付けられて鋭く尖った先端が形成される。ある特定の実施形態によれば、配管などの職業との関係でより大きなパイプおよびチューブに使用される圧縮曲げ工具と同様の工具を使用して、直針を曲げて湾曲領域19を設けることができる。ある特定の実施形態によれば、曲げる前に直針を加熱して、曲げ針5の強度またはその他の物理的特性に影響を与えることがある金属疲労などの問題に対処することができる。代替実施形態では、例えば、回転引き曲げ、マンドレル曲げ、圧縮曲げ、またはロール曲げの原理を適用して、曲げ針5を提供する他の方法が利用され得る。ある特定の実施形態によれば、針5の強度を維持し、湾曲領域19内およびその周囲の針5の直径および壁厚の減少を防止または最小限に抑える湾曲領域19を提供する方法が利用される。
【0061】
一実施形態では、提案された針5は、先端が鋭いため、針5を安全かつ簡便に保管できるようにブリスターパックに包装されている。代替実施形態では、針は、針5の形状に一致するように適合された湾曲したまたは柔軟なキャップまたはシースとともに包装されていてもよい。代替実施形態では、針5は、シリンジを取り付けることができるようなねじ取り外し式ハブカバーを伴って自己完結型の箱型容器に包装されていてもよい。
【0062】
本発明の実施形態はまた、上記のような湾曲領域19を含む針5を使用して皮膚充填剤6を注入する方法に関する。特定の実施形態では、本発明は、唇の真皮層3または顔の口囲領域に皮膚充填剤6を注入する方法に関する。これらの実施形態のある特定のものによれば、針5は、唇の本体(湿潤/乾燥)境界を狙って、紅唇9にまたはそれに近接して挿入される。さらに、これらの実施形態のある特定のものによれば、針5が皮膚1から部分的に引き抜かれるときに皮膚充填剤6が注入される。一実施形態では、針5が皮膚1にさらに挿入されるときに皮膚充填剤6が注入され、および/または針5が静止している間に皮膚充填剤6のボーラス堆積物が注入される。
【0063】
図12は、提案された針5のプロトタイプを示しており、針5は、それぞれの針5の近位端に位置するルアーロックを備えている。
【0064】
本発明が関係する分野の当業者には、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の構造の多くの変更ならびに大きく異なる実施形態および用途が自ずと明らかになるであろう。さらに、開示され説明されている針5は、皮膚充填剤6の注入に限定されない他の用途にも好適でありうる。したがって、文脈上別段の要求がない限り、開示されている針5の使用は、皮膚充填剤6の注入に限定される必要はなく、他の用途も可能である。本明細書の開示および説明は、純粋に例示的であり、いかなる意味でも限定することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12A
図12B
【手続補正書】
【提出日】2023-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、皮膚充填剤を注入するための皮下針に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚充填剤(注入可能な充填剤、顔用充填剤、または化粧用充填剤としても知られている)は、顔のボリュームを与え、顔の特徴を増強し、顔のしわを埋めるために皮膚に注入されるゲル様材料である。一般的に使用される皮膚充填剤としては、ヒアルロン酸、コラーゲン、および生合成ポリマーが挙げられる。皮膚充填剤はゲル形態で提供され、注入された場所に留まって特徴を埋め、希望に応じたボリュームを与える。
【0003】
皮膚充填剤を使用して唇および顔の口領域にボリュームを加えることは特に一般的であり、その目的は以下を含む:
加齢により唇が小さくなるかまたは薄くなり得ることに留意して唇のサイズを復元すること;
唇の形状を矯正して非対称性を回避すること;
口の横の周りのしわを滑らかにすること;および
概して、より滑らかでふっくらとした、唇および口領域の外観を作出すること。
【0004】
唇領域で使用する皮膚充填剤は、一般に唇充填剤と呼ばれる。典型的な唇充填剤処置は、以下のように進む:
皮膚/唇充填剤の注入前に、唇に局所麻酔薬を塗布する。局所麻酔薬により唇を麻痺させ、痛みを取り除くかまたは軽減させて、確実にこの処置ができるだけ快適になるようにする。レシピエントが、関連する局所麻酔薬にアレルギーを有する場合は、代わりに神経ブロック注入を行って唇を麻痺させる。麻酔薬の塗布または注入から約15~30分後(状況に応じて)、唇は麻痺するはずである;
次に、皮膚充填剤を唇の関連部分に注入し、唇の関連部分は、唇の縁(紅唇)、上唇の中央の曲線(キューピッドボウ)、および口角(口の角)を場合により含む。平均して、約1mLの唇充填剤が唇に注入され;
腫脹および皮下出血を最小限に抑えるために、処置全体にわたっておよび処置後に、唇にアイスパックが適用される場合がある。
【0005】
図1に示されるように、皮膚充填剤処置に最も関連する皮膚1および組織層は、以下を含む:
表皮2-皮膚1の最外層であり、体の表面を覆う防水保護ラップを形成する。とりわけ、表皮2は、感染に対するバリアを提供し、皮膚1が体温を調節するのに役立つ。表皮2は血管を含有せず、真皮からの拡散によって栄養が供給される。表皮2の厚さは場所によって異なる場合があるが、唇領域ではおよそ60μmの厚さである;
真皮3-表皮2の下の層であり、基底膜によって表皮2としっかりと結合されている。真皮3は、皮膚1に触覚および熱感を与える神経終末、ならびに毛包、汗腺、皮脂腺、アポクリン腺、リンパ管、および血管を含有する。真皮3の血管は、自身の細胞ならびに表皮2の基底層に栄養を提供しそれらから老廃物を除去する。真皮3の厚さは場所によって異なる場合があるが、唇領域では、典型的には600~1000μmの範囲の厚さである;また
皮下組織(hypodermis)4は皮下組織(sub-cutaneous tissue)としても知られている。真皮3の下にある皮下組織4は、皮膚1の一部を形成しない。皮下組織4の目的は、皮膚1をその下の骨および筋肉に取り付けること、ならびに骨および筋肉に血管および神経を供給することである。皮下組織4は、疎性結合組織、脂肪組織、およびエラスチンからなる。
【0006】
皮膚充填剤は、目的の用途に応じて種々の層に注入することができるが、真皮3は、皮膚充填剤が最も一般的に注入される層である。特に、真皮3の表層~中層に注入することによって、しわを作出する皮膚がひだ状になるプロセスを停止させることができ、また、真皮3は最表層の牽引力または支持力も提供し、このことは、真皮3に注入することは、皮膚1の弱点および重力の影響を矯正するのに役立つことを意味する。真皮3は、重要な血管に近接していないため、一般には比較的安全な注入の場所であると考えられている。一般に、唇充填処置を行う際、真皮3は、皮膚充填剤を注入するための層として選択される。
【0007】
皮膚充填剤の注入は、慣習的に短い針を使用して行われ、多くの市販の充填剤は、実際に、使用のためにそのような針が2本入ったパックで販売されている。針の利点は、以下の点であると考えられている:
針は、皮膚充填剤が堆積される目的の層に到達するのに必要なだけの顔の組織平面を穿刺する;
針は、顔の正確な場所に注入され得るため、繊細な作業に好適である。
【0008】
針が組織平面を穿刺する能力は、ある特定の状況では利点とみなされ得るが、針の使用にはリスクもある。例えば、針が真皮の下にある血管を突き刺し、皮下出血が起こるリスクがある。より深刻なことには、針が血管に充填剤を注入し、これが血管閉塞を引き起こす場合がある。それほど深刻ではないが、望ましくないのは、針が挿入される角度によって、皮膚充填剤が皮膚内または皮膚下の異なる深さでおよび異なる層内に注入され、一部の皮膚充填剤は深すぎ、また一部の皮膚充填剤は浅すぎて堆積されて、不均一な美容上の結果につながり、その結果、でこぼこした望ましくない美容上の結果につながる可能性があることである。
【0009】
これは図2に例示されており、図2Aは、針5が表皮2、真皮3、および皮下組織4を通過しているのを示す。図2Bに示すように、針5が皮膚から抜けるときに皮膚充填剤6を注入すると、皮下組織4内を含む種々の深さに皮膚充填剤6が堆積する可能性がある。
【0010】
図3を参照すると、唇は、唇の本体(湿潤/乾燥境界)14を狙って紅唇9から垂直注入を使用して一般的に注入される。図3には、粘膜下層8、外唇10、皮脂腺11、筋層12、および唾液腺13も示されている。図4に例示されているように、従来技術による針5の使用では、針5が組織平面を穿刺し、皮膚充填剤6が皮膚1内または皮膚1下の異なる深さでおよび異なる層内に堆積し、美容上の結果が不均一になるリスクが増大するとみなされる場合がある。
【0011】
既存の針の使用は、現在議論されているように、皮膚充填剤処置の美容的効果をさらに制限する可能性がある。上述したように、皮膚充填剤処置は、顔のボリュームを与え、顔の特徴を増強するために一般的に使用される。顔のボリュームを与える際には、例えば、平坦な又は四角い形状の充填剤プロファイルを提供するのとは対照的に、人間の顔に見られる丸い形状を反映した丸みを帯びたふくよかな形状プロファイルを提供することが一般的に望ましい。唇を例にとると、図13Aは、結節23、キューピッドの弓、および朱色の境界線9を詳細に示すヒトの唇を示す。一般的な真皮充填プロセスでは、左下および右下の結節23を充填する。このようなプロセスでは、丸くふくよかな下部の結節を提供することが望ましく、それによって複合的な効果が一般的に2つの下部の結節23にわたって「ハート形」を提供する。これを可能にするために、各下部結節23に概ね円形/円形のボーラス領域をもたらす方法で皮膚充填剤を堆積させることが望まれる。各下部結節に円形/円形のボーラス領域を提供することは、一般に真皮層3への挿入および真皮層3に沿って直線的に通過するのに適している既存の針では実現が困難である。すなわち、既存の針は、皮膚充填剤を真皮3に一直線に注入するのに適しており、それによって皮膚充填剤の一直線が堆積される。このような針は、正方形または長方形のボーラスを提供するのに適しているが、図13Bに例示されているように、皮膚充填剤の直線的な堆積から概ね円形のボーラスを得ることは非常に困難である。
【0012】
図13C図13Dは、既存の針を使用した堆積が望ましくない結果をもたらし得るシナリオをさらに示している。図13Cは、キューピッドの弓に沿った皮膚充填剤の堆積を示す。顔面および皮膚の構造によっては、キューピッドの弓に直接沿うように充填剤のラインを堆積することが一般的に望ましいことがある。図13Cに示されるように、充填剤の望ましいラインを提供することは、そのような針が皮膚充填剤を直線状に堆積させるのに適しているため、既存の針ではかなり困難であり得る。図13Dは、下唇への垂直注射の使用を示しており、これは、高さと明瞭さを増加させるために下唇を「埋める」ために一般的に実行される。既存の注射針を使用すると、皮膚充填剤が直線状に堆積することが多く、より豊かで丸みを帯びた効果をもたらす代わりに、堆積によって下唇が平坦になるという、所望の結果とは逆の結果をもたらす。
【0013】
最近では、カニューレを使用して皮膚充填剤を注入することが一般的になっている。皮膚充填剤処置で使用される針と比較して、カニューレはより長く、より薄く、柔軟であり、鈍い末端を備えている。カニューレを使用するには、まず針を使用して皮膚を穿刺し、カニューレが通過する入口点を作出する。カニューレは先端が鈍く、構成が柔軟なため、血管を突き刺す可能性は低い。むしろ、カニューレは特定の皮膚層内に留まる可能性の方が高い。カニューレの長さおよび柔軟性は、カニューレが、処置領域全体に皮膚充填剤を送達するのに必要とするのは皮膚へのより少ない入口点であることをさらに意味する。しかし、カニューレの長さおよび柔軟性は、それ自体の欠点を生み出す可能性がある。カニューレは、精密さを必要とする領域、例えば、唇の周りの細い「スモーカーズライン」を処置する場合、ごく少量の皮膚充填剤をごく浅く送達するために手先の器用さが必要となる領域では、制御および精度が低いとみなされている。
【発明の概要】
【0014】
既存技術の1もしくは2以上の問題に対処する、または少なくともそれに対する実行可能な代替手段を提供する、皮膚充填剤送達用の新製品を開発することが望ましいであろう。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、真皮に皮膚充填剤を注入するための針であって、
シリンジに結合するための近位端と、
鋭利な先端を含む遠位端と
を備え、
近位端と遠位端の間に湾曲領域を含む、針が提供される。
【0016】
一実施形態では、湾曲領域の頂角は130°~179°の間である。
【0017】
一実施形態では、針は近位端から湾曲領域まで延びる第1の直線領域を含む。
【0018】
一実施形態では、第1の直線領域は、4mm~18mmの間、任意選択で4mm~12mmの間、任意選択で4mm~8mmの間の長さを含む。
【0019】
一実施形態では、湾曲領域は、遠位端で終端する。
【0020】
一実施形態では、湾曲領域の頂角は160°~180°の間、任意選択で165°~175°の間である。
【0021】
一実施形態では、湾曲領域の曲げ度数は5°~50°の間、任意選択で10°~45°の間、さらに任意選択で15°~40°の間、なおさらに任意選択で20°~35°の間である。
【0022】
一実施形態では、湾曲領域は、8mm~18mmの間、任意選択で11mm~16mmの間、任意選択で12mm~14mmの間の弧長を含む。
【0023】
一実施形態では、針は、湾曲領域から遠位端まで延びる第2の直線領域を含む。
【0024】
一実施形態では、第2の直線領域は、7mm~12mmの間、任意選択で8mm~11mmの間、任意選択で9mm~10mmの間の長さを含む。
【0025】
一実施形態では、湾曲領域の頂角は140°~160°の間である。
【0026】
一実施形態では、湾曲領域は、2mm~5mmの間、任意選択で3mm~4mmの間の弧長を含む。
【0027】
一実施形態では、先端は外向きベベルを含む。
【0028】
一実施形態では、先端は内向きベベルを含む。
【0029】
一実施形態では、針は、0.235mm~0.362mmの間の外径を含む。
【0030】
一実施形態では、針は、およそ0.312mmの外径を含む。
【0031】
一実施形態では、針はISO6009:2016壁標準定義の通常壁厚、薄壁、極薄壁、または超極薄壁に準拠した壁厚を含む。
【0032】
一実施形態では、針は、0.09mm未満、任意選択で0.05mm~0.09mmの間の壁厚を含む。
【0033】
一実施形態では、針の壁厚は、針の長さの少なくとも一部に沿って遠位端に向かって漸減する。
【0034】
一実施形態では、針は、非毒性、非腐食性、耐久性のある材料から構成される。
【0035】
一実施形態では、針の材料は、ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム、および白金から選択される。
【0036】
一実施形態では、針はステンレス鋼から構成される。
【0037】
一実施形態では、針は、およそ25ゲージ~およそ32ゲージの間である。任意選択で、針は、およそ30ゲージである。
【0038】
一実施形態では、針は、ブリスターパックに包装されている。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の実施形態に従って針を介して皮膚の皮膚層に皮膚充填剤を注入することを含む方法が提供される。
【0040】
一実施形態では、方法は、唇または顔の口囲領域に皮膚充填剤を注入することを含む。
【0041】
一実施形態では、方法は、唇に皮膚充填剤を注入することを含み、針は、唇の本体(湿潤/乾燥境界)を狙って、紅唇に(またはそれに近接して)挿入される。
【0042】
一実施形態では、方法は、針が皮膚から少なくとも部分的に引き抜かれるときに、皮膚充填剤を逆行して堆積させることを含む。
【0043】
一実施形態では、方法は、針が皮膚にさらに挿入されるときに、皮膚充填剤を順行して堆積させることを含む。
【0044】
一実施形態では、方法は、針が静止している間に皮膚充填剤のボーラス堆積物を注入することを含む。
【0045】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、文脈上別段の要求がない限り:
「含む(comprise)」という用語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などのその変形は、記載された整数またはステップまたは整数もしくはステップの群を含むが、他の整数またはステップまたは整数もしくはステップの群を除外するものではないと理解される;
「a」または「an」という用語は、1または2以上を意味することが意図される;また
「第1の」、「第2の」、「第3の」という用語は、単に標識として使用されるものであり、それらの対象に数値要件を課すこと、またはそれらの対象の重要性のある特定の順位付けを確立することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、表皮、真皮および皮下組織を含む皮膚の層を示す図である。
図2図2は、皮膚の層に皮膚充填剤を注入する従来技術による針を示す図である。
図3図3は、ヒトの唇の構成要素を示す図である。
図4図4は、ヒトの唇に皮膚充填剤を注入する従来技術による針を示す図である。
図5図5は、皮膚に皮膚充填剤を注入する本発明の実施形態による針を示す図である。
図6図6は、ヒトの唇に皮膚充填剤を注入する本発明の実施形態による針を示す図である。
図7図7は、弧長、弦長、および頂角に基づく針の曲率の計算を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態による針の種々の表現を示す図である。
図9図9は、本発明の一実施形態による針の種々の表現を示す。
図10図10は、本発明の一実施形態による針の種々の表現を示す。
図11図11は、「通常の厚さ」の壁を有する針と、「薄い」壁を有する第2の針の断面積を示す。
図12図12は、本発明の実施形態による2つの針の写真を示す。
図13A図13Aは、結節、キューピッド・リボン、朱色の境界を詳細に示すヒトの唇を示す図である。
図13B図13Bは、直針を用いて皮膚充填剤を直線状に堆積させたヒトの唇を示す図である。
図13C図13Cは、キューピッドの弓に沿って直針で皮膚充填剤を注入したヒトの唇を示す図である。
図13D図13Dは、皮膚充填材を直線状に、直針を用いて堆積させた結果、下唇が平らになっているヒトの唇を示す図である。
図14A図14Aは、皮膚充填剤の丸いボーラスを容易にするために湾曲した針を用いて皮膚充填剤を堆積させたヒトの唇を示す図である。
図14B図14Bは、キューピッドの弓に沿って湾曲した針を用いて皮膚充填剤を注入したヒトの唇を示す図である。
図14C図14Cは、皮膚充填材のより丸くふっくらとした堆積を提供するために湾曲した針を使用して皮膚充填材を堆積させたヒトの唇を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1. 皮膚
2. 表皮
3. 真皮
4. 皮下組織
5. 針
6. 皮膚充填剤
7. 針先端
8. 粘膜下組織
9. 紅唇
10. 外唇
11. 皮脂腺
12. 筋層
13. 唾液腺
14. 湿潤/乾燥境界
15. 弦長
16. 頂角
17. 弧長
18. 第1の直線領域
19. 湾曲領域
20. 第2の直線領域
21. 内径
22. 外径
23. 結節
24. キューピッドの弓
25. 皮膚充填剤の堆積
【発明を実施するための形態】
【0048】
一般に、本発明は、皮膚充填剤および他の化合物を皮膚に注入するための湾曲した針に関する。ある特定の実施形態では、針は、唇およびヒトの顔の口囲領域に皮膚充填剤を注入するように構成されている。
【0049】
図2および図4を参照して前述したように、従来技術による針5を使用すると、皮膚充填剤6が皮膚1の望ましくない層に注入される可能性があり、これにより不必要な皮下出血、血管閉塞、および不均一な美容上の結果のリスクが生じることが確認されている。
【0050】
図3Aおよび3Bは、本発明の実施形態による湾曲した針5を使用して、従来技術の針に関連するリスクを軽減させることができる方法を示している。図3Aに示すように、湾曲した針5(すなわち、湾曲領域を含む針)を使用すると、針が皮膚層を通過して皮膚層に沿って進む角度を変えることができ、針5が真皮3内などの皮膚1の所望の層に留まる可能性が高くなることが確認されている。すなわち、従来技術による針では、針の先端7は、一般に表皮2への進入角度をたどり続けるため、針5を、別の皮膚層に進入させることなく皮膚1の層に沿って通過させることは困難になる。湾曲した針5を使用すると、針先端7と針5の遠位端の角度をより一般に変えることが可能になり、それぞれが皮膚1の特定の層に沿って通過することができる。さらに図3Bに示すように、このような構成により、皮膚充填剤6が皮膚1の所望の層に注入されて留まる可能性が高くなり、したがって所望の美容効果が得られると考えられる。
【0051】
図3Aおよび3Bは、皮膚充填剤6を堆積させる逆行法を示しており、この方法では、まず針5を所望の位置に挿入し(図3Aを参照のこと)、針5が皮膚1から(少なくとも)部分的に引き抜かれるときに皮膚充填剤6が注入される(図3Bを参照のこと)。本発明の代替実施形態では、皮膚充填剤6は順行法を使用して堆積させることができ、この方法では、針5が皮膚1に挿入されるときに皮膚充填剤6が注入される。逆行法および順行法はそれぞれ、「リニアスレッディング」または「トンネリング」堆積法と考えられる。順行法は、医療専門家が皮膚充填剤の追跡をより良好に視覚化できるため、ティアトラフまたは紅唇に一般的に実行され得る。逆行法は、より深いしわ(鼻唇溝およびマリオネットラインの周囲など)を埋めるか、または唇をふっくらさせるために一般的に使用され得る。本発明の実施形態による湾曲した針5は、上述のようにリニアスレッディング法に特に適している場合があるが、このような針5は、「複数注入」方法、例としてデポ法、またはより一般には針5が静止している間に皮膚充填剤6のボーラス堆積物が注入される方法にも使用され得る。
【0052】
図6Aおよび6Bは、皮膚充填剤6を唇に注入する際の湾曲した針5の有用性をさらに示している。図6Aに示されるように、本発明の実施形態による湾曲した針5を使用すると、針5の先端7が唇の形状に沿って、真皮3などの所望の皮膚層に沿って進むことができると考えられる。図6Bに示されるように、これにより、さらに、皮膚充填剤6を唇の皮膚の所望の層に注入して、皮膚充填剤6の望ましい堆積を提供することがさらに可能になり、その結果、皮下出血、血管閉塞、および美容上の不良な結果のリスクが軽減されると考えられる。
【0053】
上記で言及した安全上の利点に加えて、本発明の実施形態による湾曲した針の使用は、人間の顔の特徴に一致する湾曲した線での皮膚充填剤の堆積を容易にすることによって、改善された美容上の結果を提供し得ることが驚くべきことに見出されている。先行技術に関して述べたように、直線的な針を使用することで、充填剤を直線状に堆積させやすくなり、その結果、顔の特徴を直線状に充填することができる。これは、皮膚充填剤が、丸い唇のような、より豊かで丸い特徴を提供することを意図している、望まれることとは対照的である。
【0054】
図14は、皮膚充填材が曲線状に堆積された顔の様々な特徴を示している。
【0055】
図14Aに示すように、本発明の実施形態による湾曲した針を使用すると、2つの下部結節23を充填する際に皮膚充填剤の丸いボーラスを容易にする。すなわち、本発明による湾曲した針を使用して丸いボーラスを提供するために、施術者は一回の挿入を行い、湾曲した針5の自然な経路に従って第1の外側の湾曲した堆積を提供することができる。針5を完全に抜去することなく、施術者は、湾曲した針5の自然な軌跡に従うだけで、以前の位置まで後退し、さらに湾曲した堆積を行うことができる。図14Aは、4本の湾曲した堆積線から生成された丸いボーラスを示す。針は、4本の(図示の例では)堆積線の完了後に取り外すことができる。
【0056】
図14Bに示すように、湾曲した針5の使用は、皮膚充填剤25の堆積を行う際に、施術者がキューピッドの弓に従うことを容易にする。すなわち、キューピッドの弓24の湾曲線は、単に、堆積25の経路が湾曲した針5の自然なコースに従うようにすることによって従うことができる。
【0057】
図14Cに示すように、湾曲した針5を使用することにより、施術者は皮膚充填剤25の丸く充実した堆積を提供することも容易になる。図13Dに関して前述したように、施術者は、下唇の高さと輪郭を増加させるために下唇を「埋める」ために下唇に垂直注射を行うことが多い。既存の注射針を使用すると、皮膚充填剤が直線状に堆積することが多く、より豊かで丸みを帯びた効果を提供する代わりに、堆積によって下唇が平坦になるという所望の結果とは逆の結果をもたらす。先行技術とは対照的に、本発明による湾曲した針の使用は、下唇への充填剤25の丸みを帯びた堆積を容易にし、より充実した丸い下唇構造を可能にする。
【0058】
図7を参照して、針5の湾曲領域19の湾曲の特性を記述する方式が、ここで説明される。針5の湾曲は、円周のセグメントに近似しているとみなされ得、したがって湾曲は以下を含む:
弧長17、すなわち2つの端点間の弧に沿った距離を表すものであり、例えば、点Aと点Bの間の湾曲に沿った距離、または点Cと点Dの間の湾曲に沿った距離を表す。
弦長15、すなわち端点が弧に沿って端点と交差する線分に沿った距離を表すものである。
頂角16、すなわち二等辺三角形の頂角を表すものであり、二等辺三角形は、弧の端点(弦長全体が三角形の斜辺を表す)と、端点から等距離にある点(頂角がこの等距離の点で弧に接する)で弧に接する。この明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、「頂角」という用語はこの定義に従って解釈されるものとする。
【0059】
針の湾曲を「弧長」、「弦長」および「頂角」などの用語への言及によって説明する場合、湾曲領域の湾曲が必ずしも円形であることは意図されていない。むしろ、湾曲領域は、円形、楕円形、放物線形、双曲線形、および例えば上記の任意の1または複数の組み合わせなど、ほぼ湾曲した形状を採用することができる。この文脈において、可能な限り、「弧長」、「弦長」および「頂角」という用語は、湾曲領域の文脈において、湾曲領域が円形または他の特定の湾曲形状である必要はなく、より一般には、曲線に準ずる湾曲領域の長さを表すものとして解釈される。
【0060】
湾曲領域の特性または範囲を決定する別の方式は、曲げ度数を定義することによるものであり、これは、湾曲領域の開始から湾曲領域の終了までの針の方向の変化の範囲に単純に関係し、次のように度数で測定される:
湾曲のない直線領域の曲げ度数は0°である;
湾曲領域の終了方向が湾曲領域の開始方向に対して直角である湾曲領域の曲げ度数は90°である;および
湾曲領域の終了方向が湾曲領域の開始方向と平行だが反対である湾曲領域の曲げ度数は180°である。
【0061】
本発明のある特定の実施形態によれば、針5の湾曲領域19は、以下を含む:
8mm~18mmの間、任意選択で11mm~16mmの間、さらに任意選択で12mm~14mmの間の弧長17;
160°~179°の間、任意選択で165°~175°の間の頂角16;
9~11mmの間の弦長15、および/または
5°~50°の間、任意選択で10°~45°の間、さらに任意選択で15°~40°の間、なおさらに任意選択で20°~35°の間の曲げ度数。
このような配置は、図8を参照してさらに考察される。
【0062】
図8A図8B、および図8Cはそれぞれ、本発明の実施形態による針を示しており、それぞれが湾曲領域19と第1の直線領域18を含み、したがって、
図8Aでは、針5は以下を含む:
長さ6.5mmの第1の直線領域18;および
弦長15が6.5mm、および頂角16が165°(および曲げ度数がおよそ35°)である湾曲領域19;
図8Bでは、針5は以下を含む:
長さ4mmの第1の直線領域18;および
弦長15が9mm、および頂角16が165°、および曲げ度数がおよそ35°である湾曲領域19(換言すれば、図8Aの針5は、曲げ度数がほぼ同じであるにもかかわらず、図8Aのものよりも長い第1の直線領域18と短い湾曲領域19とを含む);ならびに
図8Cでは、外向きベベルを備えた針先端7を有する針5が示されている。すなわち、本発明のある特定の実施形態によれば、針5の先端7は、皮膚1の層に挿入するためのより鋭い縁を提供するために「ベベルが付けられて」いるかまたは「角度が付けられて」いる。図8Cに示されているベベル付き先端7は、湾曲領域18の湾曲から離れた方向を向いており、これは、先端7は外向きベベルを有することを意味する。代替実施形態(例えば図9に示されるように)では、先端7は内向きベベルを有し、これにより、ベベルは湾曲領域19の湾曲方向に向いている。いくつかの実施形態では、針5は、(理論に拘束されることを望むものではないが)痛みの少ない注入を提供することができるダブルベベル設計を組み込むなどにより、複数のベベルを含むことができる。
【0063】
図9は、本発明の実施形態による針5を示しており、これは、第1の直線領域18、湾曲領域19、および外向きベベルを含む先端7を含む。直線領域18はおよそ10mmの長さであり、一方、湾曲領域19は、弦長15がおよそ9mm、頂角16がおよそ165°、および曲げ度数がおよそ15°である。図9は、針5の外径および内径も示しており、それによって、外径22はおよそ0.309mmであり、内径21はおよそ0.165mmである(およそ0.072mmの壁厚を提供する)。これは、薄壁の「30ゲージ」針厚プロファイルに近似している。壁厚および針径について言及する場合、湾曲領域19を提供するプロセスによって、湾曲領域19内およびその付近の針の壁厚および直径がわずかに変化する場合があることが留意される。例えば、湾曲領域19を提供するプロセスによって、湾曲領域19内の針5の直径が小さくなるか、または針5の断面形状がほぼ「平坦化」されて、より楕円形の断面が提供される場合がある。したがって、直径、壁厚、およびゲージへの言及は、製造プロセスの結果として、特に湾曲領域19内およびその付近で、妥当な変動が可能になるものと解釈される。
【0064】
図10は、本発明の実施形態による針5を示しており、これは、第1の直線領域18、湾曲領域19、第2の直線領域20、および内向きベベルを含む先端7を含む。第1の直線領域18の長さはおよそ6mmであり、第2の直線領域20の長さはおよそ6mmであり、湾曲領域19の弦長15はおよそ4mmであり、湾曲領域19の頂角16はおよそ150°であり、曲げ度数はおよそ30°である。図9と同様に、図10は、針5の外径22および内径21も示しており、それによって、外径22はおよそ0.309mmであり、内径21はおよそ0.165mmである(およそ0.072mmの壁厚を提供する)。これは、薄壁の「30ゲージ」針厚プロファイルに近似している。代替的実施形態では、針5は、25ゲージ~32ゲージの間の標準厚、または25ゲージ~32ゲージの間の薄壁厚プロファイルを含んでもよい。図11は、針5の標準厚プロファイルに対する薄壁厚プロファイルを対比している。
【0065】
上述した図9および図10に示されているように、本発明のある特定の実施形態では、第2の直線領域20を含む針5の湾曲領域19は、第2の直線領域20を含まない針5において見出され得るよりも短い弦長15を有する場合がある。
【0066】
針5が人体への注入に使用され得ることを保証するために、本発明の実施形態による針5は、ステンレス鋼、チタン、コバルト、クロム、または白金などの非毒性、非腐食性、耐久性のある材料で構成され得る。一実施形態では、針5はステンレス鋼から構成される。さらなる実施形態では、針5はステンレス鋼440から構成され、これにより非常に鋭い先端7を製造することができる。
【0067】
本発明の実施形態による針5は、当業者によって理解される任意の好適なプロセスに従って製造され得る。直針を製造するための一般的なプロセスは、チューブ引き抜きを伴い、チューブ引き抜きでは、チューブが徐々に小さくなるダイを通って引き抜かれて直針が製造され、針の末端にはベベルが付けられて鋭く尖った先端が形成される。ある特定の実施形態によれば、配管などの職業との関係でより大きなパイプおよびチューブに使用される圧縮曲げ工具と同様の工具を使用して、直針を曲げて湾曲領域19を設けることができる。ある特定の実施形態によれば、曲げる前に直針を加熱して、曲げ針5の強度またはその他の物理的特性に影響を与えることがある金属疲労などの問題に対処することができる。代替実施形態では、例えば、回転引き曲げ、マンドレル曲げ、圧縮曲げ、またはロール曲げの原理を適用して、曲げ針5を提供する他の方法が利用され得る。ある特定の実施形態によれば、針5の強度を維持し、湾曲領域19内およびその周囲の針5の直径および壁厚の減少を防止または最小限に抑える湾曲領域19を提供する方法が利用される。
【0068】
一実施形態では、提案された針5は、先端が鋭いため、針5を安全かつ簡便に保管できるようにブリスターパックに包装されている。代替実施形態では、針は、針5の形状に一致するように適合された湾曲したまたは柔軟なキャップまたはシースとともに包装されていてもよい。代替実施形態では、針5は、シリンジを取り付けることができるようなねじ取り外し式ハブカバーを伴って自己完結型の箱型容器に包装されていてもよい。
【0069】
本発明の実施形態はまた、上記のような湾曲領域19を含む針5を使用して皮膚充填剤6を注入する方法に関する。特定の実施形態では、本発明は、唇の真皮層3または顔の口囲領域に皮膚充填剤6を注入する方法に関する。これらの実施形態のある特定のものによれば、針5は、唇の本体(湿潤/乾燥)境界を狙って、紅唇9にまたはそれに近接して挿入される。さらに、これらの実施形態のある特定のものによれば、針5が皮膚1から部分的に引き抜かれるときに皮膚充填剤6が注入される。一実施形態では、針5が皮膚1にさらに挿入されるときに皮膚充填剤6が注入され、および/または針5が静止している間に皮膚充填剤6のボーラス堆積物が注入される。
【0070】
図12は、提案された針5のプロトタイプを示しており、針5は、それぞれの針5の近位端に位置するルアーロックを備えている。
【0071】
本発明が関係する分野の当業者には、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の構造の多くの変更ならびに大きく異なる実施形態および用途が自ずと明らかになるであろう。さらに、開示され説明されている針5は、皮膚充填剤6の注入に限定されない他の用途にも好適でありうる。したがって、文脈上別段の要求がない限り、開示されている針5の使用は、皮膚充填剤6の注入に限定される必要はなく、他の用途も可能である。本明細書の開示および説明は、純粋に例示的であり、いかなる意味でも限定することを意図するものではない。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
【国際調査報告】