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特表2025-503816蜜蝋を含むバイオ複合材料及び蜜蝋を使用したバイオ複合材料を得る方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-05
(54)【発明の名称】蜜蝋を含むバイオ複合材料及び蜜蝋を使用したバイオ複合材料を得る方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20250129BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20250129BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20250129BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20250129BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20250129BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08L101/16 ZAB
C08K3/34
C08L91/00
C08J5/00
C08J3/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545217
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-09-26
(86)【国際出願番号】 PL2023050004
(87)【国際公開番号】W WO2023146424
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P.440241
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524283235
【氏名又は名称】ポリテヒニカ・ワルシャワスカ
(71)【出願人】
【識別番号】524283246
【氏名又は名称】ウニウェルシテト・イム・アダマ・ミツキェビチ・ブ・ポズナン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】プツェコプ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ドブルーカ,レナータ
(72)【発明者】
【氏名】ドブロシエルスカ,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】クルツィドロウスキー,クリツィツォフ
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AC22
4F070AC32
4F070AC40
4F070AC43
4F070AC94
4F070DA41
4F071AA43
4F071AA71
4F071AB26
4F071AC02
4F071AC09
4F071AC10
4F071AF15
4F071AF17
4F071AF21
4F071AF23
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB05
4F071BC07
4J002AE052
4J002CF191
4J002DJ036
4J002FD016
4J002GC00
4J002GG01
4J200AA04
4J200BA17
4J200CA01
4J200DA17
4J200DA18
4J200DA24
4J200EA04
(57)【要約】
本発明は、蜜蝋を含むバイオ複合材料と、蜜蝋を使用したバイオ複合材料の製造法に関する。蜜蝋を使用することによって加工添加剤として使用されている合成(石油由来)蝋の排除/置換が可能となり、複合材料のカーボンフットプリントを削減できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ複合材料(バイオコンポジット)であって、複合材料のマトリックスを構成する生分解性ポリ(乳酸)、フィラーを構成する珪藻土、及びレオロジー因子を構成する蜜蝋からなり、各成分の含量がそれぞれ84~97%、2.5~15%、及び0.5~1%であるバイオ複合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の複合材料の製造法であって、
a)顆粒の形態のポリ(乳酸)、ホモジナイズ物(homogenizate)の5%、10%、20%又は30%を構成する粗珪藻土、及びホモジナイズ物の1%又は2%を構成する蜜蝋を180℃~230℃、好ましくは205℃~215℃の範囲の温度でホモジナイズし;
b)成分を微粉砕し;
c)微粉砕生成物を195℃~210℃の温度で射出し;
d)微粉砕生成物を純ポリラクチドで1:1に希釈し、珪藻土含量2.5%、5%、10%又は15%、及び蜜蝋含量0.5%又は1%を有するバイオ複合材料を得;
e)そのバイオ複合材料を室温で5日間及び/又は気候室で5日間、10回の加熱-冷却サイクル(各サイクルで+50℃6時間及び-10℃6時間)でコンディショニングする
複合材料の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリ(乳酸)、珪藻土、及び蜜蝋からなるバイオ複合材料、ならびに蜜蝋を使用した複合材料を得る方法に関する。バイオ複合材料を製造するための蜜蝋の使用についても開示する。蜜蝋を使用すると、加工添加剤として使用されている合成(石油由来)蝋(ワックス)の排除が可能となる。
【背景技術】
【0002】
複合材料は不均質構造を有する材料で、少なくとも2つの相からなる。それらの組合せによって、初期の個別成分の性質とは異なる性質を有する材料が得られる。多くの場合、複合材料は2つの成分、すなわち構造要素と充填要素からなるが、時に追加成分が使用されることもある。構造成分すなわち連続相を構成する主要成分は、増量剤の断片を圧着(consolidate)し、製品が適切に成形されることを可能にし、そして材料の物理的及び化学的性質の大部分を決定する。分散相の機能は材料の特定の性質を改良することである。追加成分は、マトリックスと増量剤との間の相互作用を増強するために使用され、それによって材料の凝集性と均質性に影響を及ぼす。典型的な複合材料は、スチレンポリマー、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリプロピレンなどのポリマーを基にしており、その製造は環境保護的(エコロジカル)なものではでない。
【0003】
ここ数十年、様々な用途のための従来のポリマー複合材料は、バイオ複合材料(バイオコンポジット)と呼ばれる再生可能原料を使用して得られる複合材料に置き換えられることが増えてきた。
【0004】
プラスチック廃棄物の排出制限、持続可能な製造法の重視、及びエネルギー消費削減などの必要性から、近年、環境に優しいポリマー及びポリマー複合材料の開発傾向が主流になっている。複合材料は、有機物由来の一つ又は複数の相を含む材料である。複合材料の製造と販売のマーケットは、数年間にわたって監視され続けており、それらの製造と改良に関する研究の強化進展に貢献している。こうした理由から、天然資源から得られるバイオポリマーが現在、石油由来ポリマーに代わるものとなっている。それらは製品のカーボンフットプリントの削減にも貢献しうる。バイオポリエステルの中でも、ポリラクチド(PLA)は、その加工性、持続可能な性質及び比較的低価格のために、よく確立された地位を獲得している。
【0005】
2019年のAguero Aらによる発表論文には、押出の後に射出成形をする方法によって製造された環境に優しいポリ(乳酸)(PLA)と珪藻土(DE)の複合材料が提示されている。DEはフィラー(充填剤)として使用された。相溶化剤/カップリング剤の役割を果たすいくつかの薬剤、例えば(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、エポキシスチレン-アクリルオリゴマー、及びマレイン化アマニ油が、ポリマーとフィラー間の相互作用を改良するために使用されている。DEは、延伸時の良好な弾性モジュールを保証し、応力集中現象のためにより脆い複合材料を生成する。他方、相溶化剤は延性の改良に貢献し、持続可能な機械的特性を有する環境性能の高い材料を生成する。2020年のDobrosielskaらによる発表論文には、ポリラクチド(PLA)の新規複合材料が提示されている。これは、珪藻のシェル(細胞壁)(被殻)から製造された、PLAで構成されるマトリックスの改質を可能にする天然フィラーを含んでおり、熱溶解積層法(3Dプリント)によって製造されている。それらの製造法についても記載されている。
【0006】
WO2012106006A1の出願には、バイオラミネートの一つ又は複数の層を含むバイオラミネート複合アセンブリが開示されている。その少なくとも一つの層はポリ(乳酸)と天然蝋を含み、その蝋は大豆ワックスで、バイオラミネート複合アセンブリの約5重量%を構成する。
【0007】
2019年のRighettiらによる発表論文には、85重量%のPLA、10重量%の可塑剤のアセチルクエン酸トリ-n-ブチル(ATBC)、及び5重量%の濃度のCaCOを含み、その後20重量%のポテトパルプ粉末が添加されたポリマーマトリックスから製造されたバイオ複合材料が記載されている。ポテトパルプ粉末を含むPLAを基に、蝋(ワックス)で覆われたバイオ複合材料を得るために、市販の蜜蝋、カルナバワックス又は変性ポリプロピレンワックスの非イオン性水性エマルションが5%w/v濃度でパルプに添加された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許公開第2012/106006号(WO2012106006A1)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Aguero A et al.; 2019. Effect of different compatibilizers on environmentally friendly composites from poly(lactic acid) and diatomaceous earth. Polymer Int. 68(5): 893-903
【非特許文献2】Dobrosielska et al.; 2020. Biogenic Composite Filaments Based on Polylactide and Diatomaceous Earth for 3D Printing. Materials; 13(20). 4632.
【非特許文献3】Righetti MC. Cinelli P. Mallegni N. Massa CA. Aliotta L. Lazzeri A. Thermal. Mechanical. Viscoelastic and Morphological Properties of Poly(lactic acid) based Biocomposites with Potato Pulp Powder Treated with Waxes. Materials (Basel). 2019;12(6):990.
【発明の概要】
【0010】
従来のポリマー複合材料に代わる代替品の模索に関連して、本研究では、生分解性ポリ(乳酸)、珪藻土、及び蜜蝋(ビーズワックス)のみからなる複合材料を得た。開発された発明は、天然の原料、すなわち、PLAであるバイオポリマー、天然の増量剤(珪藻土)、及び蜜蝋のみからなる3成分材料である。
【0011】
本発明の目的は、PLAと珪藻土を基にした複合材料の製造工程に求められる加工特性(メルトフローレート、溶融流量)を改良する物質として天然蜜蝋を使用し、それによって最先端の複合材料を改良することである。記載の複合材料系に蜜蝋を使用すると、加工業界で一般的に使用されているポリアミドワックスと比べて良好なレオロジー特性を提供する。同時に、蜜蝋は低アレルゲン性であり完全に天然由来でもある。本発明において、ワックス(蝋)は、PLAを含む2成分系のバイオ複合材料の粘度を調節し、均一構造を確保する独立したレオロジー因子となる。
【0012】
蜜蝋を用いて得られる、標準的な加工技術を用いて製造された複合材料は、改良された機械的特性と加工能力を有するため、多くの産業部門においてその広範な用途を提供するだけでなく、従来のプラスチックに代わる新しい解決策の模索に関連する現存の傾向(現在のトレンド)に応えるものでもある。使用されるワックスは、生物起源のためカーボンフットプリントがなく、非毒性であり、生理学的に中性であるので、合成加工添加剤とは異なり、食品やヒトの皮膚に接触する製品、動物餌皿など、玩具、家庭用品などの製造に使用できる。プラスチック(バイオポリマーのポリラクチド、PLA)の加工業界における添加剤としてのワックスは、MFR(マスフローレート、質量流量)を増大するので、射出、押出、吹込成形、プレス又は流し込みの工程における加工速度を増大する。
【0013】
本発明は、追加的に蜜蝋を含むことを特徴とする生分解性ポリ(乳酸)と珪藻土のバイオ複合材料に関する。ここで、珪藻土の含量は混合物の2.5~15%であり、蜜蝋の含量は混合物の0.5~1%である。
【0014】
本発明はまた、バイオ複合材料の製造法にも関し、該方法は、顆粒の形態のポリ(乳酸)、粗珪藻土、及び蜜蝋を180℃~230℃、好ましくは205℃~215℃の範囲の温度でホモジナイズし、その後、成分を微粉砕し、微粉砕生成物を195℃~210℃の温度で射出し、次いで顆粒を純ポリラクチドで1:1に希釈し、得られた複合材料を室温で5日間及び/又は気候室で5日間、10回の加熱-冷却サイクル(+50℃、-10℃)でコンディショニングする。
【0015】
本発明によれば、バイオ複合材料を得るために蜜蝋を使用すると、ワックス(蜜蝋)がポリ(乳酸)を含む2成分系において独立したレオロジー因子となることが記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、射出工程後の顆粒のメルトフローレートの結果を示す。
図2図2は、室温でコンディショニングされた複合材料の引張強さを示す。
図3図3は、室温でコンディショニングされた複合材料の破断点伸びを示す。
図4図4は、室温でコンディショニングされた複合材料の曲げ強さ(弾性モジュール)の試験結果を示す。
図5図5は、室温でコンディショニングされた複合材料の曲げ強さ(最大曲げ応力)の試験結果を示す。
図6図6は、室温でコンディショニングされた複合材料の衝撃強さを示す。
図7図7は、気候室で5日間コンディショニングされた複合材料の引張強さを示す。
図8図8は、気候室で5日間コンディショニングされた複合材料の破断点伸びを示す。
図9図9は、気候室で5日間コンディショニングされた複合材料の曲げ強さ(弾性モジュール)の試験結果を示す。
図10図10は、気候室で5日間コンディショニングされた複合材料の曲げ強さ(最大曲げ応力)の試験結果を示す。
図11図11は、気候室で5日間コンディショニングされた複合材料の衝撃強さを示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0017】
実施例1
バイオ複合材料の製造
複合材料は、PLA4043D顆粒(Minnetonka、米国ミネソタ州)、粗珪藻土(Perma Guard,Inc.,Bountiful,UT 4010,USA)、及び蜜蝋の形態の成分を180℃~230℃の温度、好ましくは205℃~215℃の温度でホモジナイズすることによって得た。
【0018】
使用されるワックスは、100%天然蜜蝋を含有し、‘蜂の巣(ハニカム)’の溶融製品である。蜂蜜を抽出した後、蜜蝋を溶かすためにコーム(乾燥ハニカムのフレーム)を加熱する。蜜蝋は比較的融点が低く、62℃~64℃である。試験に使用された材料は、ルブリンのAPIS Apiculture Cooperativeのものである。実験室用ローリングミル(VM-150/280 Zamak Mercator)を用いて210℃の温度で標準化されたワックスであった(5kg塊の形態)。
【0019】
様々な含量の珪藻土(5%、10%、20%、30%)と1%及び2%の蜜蝋又は合成WTH-Bワックス入り、又はワックス添加なしの混合物を得た。次に、得られた系をプラスチック用ミルを用いて微粉砕した。強度試験用サンプルは、調製された混合物を純PLA4043Dで1:1に希釈し、2.5%、5%、10%及び15%の含量の珪藻土と0.5%又は1%の含量の蜜蝋の系を得ることにより、195℃~210℃の温度で射出成形機によって調製した。同じ方法を用いて、0.5%の合成WTH-Bワックスを含有する系と、ワックス添加による改質をしなかった系も調製した。
【0020】
【数1】
【0021】
実施例2
製造されたバイオ複合材料のメルトフローレート(MFR.210℃、荷重2.16kg)の試験。
【0022】
射出によって得られた強度試験用の複合材料をプラスチック用ミルで微粉砕し、60℃の温度で24時間乾燥させた後、試験した。
未改質PLA4043Dで測定されたメルトフローレート(MFR)は8.47g/10分であった。珪藻土(DE)のみを添加すると、濃度に関わらずMFRパラメーターの増加を引き起こした。10%及び15%の濃度でほぼ2倍の増加であった。合成WTH-Bワックスマイクロビーズの添加もMFRの増加を引き起こしたが、最高濃度の珪藻土で最大値14.9g/10分までであった。増加は、ワックスを添加していない系の場合と類似しており、溶融(流体)状態の複合材料のレオロジーに及ぼす合成蝋の追加的影響は観察されなかった。それどころか、高濃度では、ワックスを添加していない複合材料の方でより高いMFR値が観察されている。天然蝋を添加すると、その濃度(0.5%、1%)に関係なく、毎回メルトフローレートは直線的に増加し、1%の濃度の添加剤で34.4g/10分(4倍以上の増加)という値に達した(図1、表1)。
【0023】
表1.射出工程後の顆粒のメルトフローレート(MFR)
【0024】
【表1】
【0025】
実施例3
得られたバイオ複合材料の機械的試験(破断強さ、曲げ強さ、衝撃強さ)。
射出法によって製造されたバイオ複合材料を、室温で、又は5日間気候室で(加熱-冷却サイクル、-10℃、+50℃、10サイクル、各サイクルで-10℃6時間、+50℃6時間ずつの12時間)コンディショニングした。
【0026】
アモルファス珪藻土の添加もワックスの添加も、製造された複合材料の機械的特性に影響を及ぼし、純PLAと比べてパラメーターの低下を引き起こす。これは材料の脆性の増大と関係し、まさに珪藻土の特徴によってもたらされる。
【0027】
製造されたPLA/DE複合材料は、ワックスで改質された系よりも高い破断点伸びの値、従って低い脆性を特徴としていた(表2)。珪藻土の含量が2.5%であると、ワックスを添加していない系の破断点伸びは2.549%であり、合成蝋を添加した系では2.105%であった。ところが、天然蝋を0.5%及び1%添加した系の場合、それぞれ2.138%及び2.114%であった。系内のDE濃度が増加するに従ってサンプルの強度は減少した(図2)。しかしながら、蜜蝋で改質されたサンプルの材料強度の減少は、合成蝋の場合よりも著しく小さかった。蜜蝋添加剤の場合、引張強さの最大の減少(濃度に応じてシリーズで観察された)は、蜜蝋の含量が0.5%の系では2.45MPaで、1%の含量では3.06MPaであった。一方、合成蝋の場合、これらの値は最大10.28MPaに上った。
【0028】
未改質PLAの曲げ強さモジュールは3.5GPaであった(表3)。PLAを珪藻土で改質すると、それぞれの場合で濃度とは無関係にパラメーターの値に増加を引き起こした。合成蝋0.5%WTH-Bの添加では、機械的パラメーターに顕著な変化は生じなかったが(濃度に関係なく)、天然蝋を添加すると曲げモジュールの値が顕著に増加した。最大値の5.16GPaは、DEが最高濃度(15%)で蜜蝋を1%添加した系で示された(図3)。合成蝋による改質と比べて、800MPaもの増加が最高濃度のDEの系で観察された。
【0029】
純PLAの衝撃強さは19.54kJ/mであった(表4)。珪藻土の添加(2.5%)は当初衝撃強さの増加をもたらした(20.76kJ/m)。珪藻土の濃度が増加すると材料の脆性の増大を招き、衝撃強さは減少した。同様の傾向が、天然蝋を添加した複合材料でも観察された(図4)。珪藻土が最高濃度(15%)の場合の衝撃強さの最高値は、0.5%の蜜蝋含量で改質されたサンプルで得られた。その衝撃強さは16.21kJ/mのレベルであったが、合成蝋で改質された系の同じ充填量ではわずかに低い値16.18kJ/mが得られた。ワックスなしの純珪藻土の場合、15.53kJ/mであった。
【0030】
気候室での複合材料の5日間のコンディショニングは、純PLAの破断点伸びと引張強さの値にわずかな差しかもたらさなかった。珪藻土で改質された系は伸びのパラメーターに改良を示した。最高値は天然蝋1%を添加した系で観察され、最大3.25%の値であった(約70%の増加)(図5)。同時に、気候室での複合材料のコンディショニングは、曲げ強さに顕著な影響を及ぼさなかった。試験された系はすべて、曲げ強さ及び最大曲げ応力ともに同様の値であった(図6)。
【0031】
気候室でのコンディショニングは複合材料の衝撃強さに増加を引き起こした。最大の結果は、0.5%の天然蝋を添加した複合材料によって達成され、使用された濃度に関係なく、最大衝撃強さは29.43kJ/mであった(図7)。
【0032】
珪藻土と蜜蝋で改質された複合材料は、大部分の場合、室温でコンディショニングされた系でも、有害な大気条件(高温、高湿度)の影響にさらされた系でも機械的特性に改良を示した。合成蝋を天然蝋で置き換えると、完全なバイオ複合材料が得られるだけでなく、加工パラメーターなどのパラメーターも改良できるので(高いMFR)、複合材料の製造工程が容易になる。
【0033】
表2.引張強さ - 室温(RT)で、及び5日間気候室(CC)でコンディショニングされた系
【0034】
【表2】
【0035】
表3.曲げ強さ - 室温(RT)で、及び5日間気候室(CC)でコンディショニングされたサンプル
【0036】
【表3-1】
【0037】
【表3-2】
【0038】
表4.衝撃強さ - 室温(RT)で、及び5日間気候室(CC)でコンディショニングされたサンプル
【0039】
【表4】
【0040】
文献:
1.Aguero A et al.; 2019. Effect of different compatibilizers on environmentally friendly composites from poly(lactic acid) and diatomaceous earth. Polymer Int. 68(5): 893-903
2.Dobrosielska et al.; 2020. Biogenic Composite Filaments Based on Polylactide and Diatomaceous Earth for 3D Printing. Materials; 13(20). 4632.
3.Righetti MC. Cinelli P. Mallegni N. Massa CA. Aliotta L. Lazzeri A. Thermal. Mechanical. Viscoelastic and Morphological Properties of Poly(lactic acid) based Biocomposites with Potato Pulp Powder Treated with Waxes. Materials (Basel). 2019;12(6):990.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】