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特表2025-503862食用栄養組成物を調製するための方法およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】食用栄養組成物を調製するための方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20250130BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20250130BHJP
【FI】
A23L33/10
C12N5/077
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539511
(86)(22)【出願日】2023-01-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2023052154
(87)【国際公開番号】W WO2023144369
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】22154336.6
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524244144
【氏名又は名称】ザ カルティヴェイテッド ベー. ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】上田 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】バリ,ジティン
(72)【発明者】
【氏名】ダブナー,ヘリット
(72)【発明者】
【氏名】コロジュディ,マテウス
(72)【発明者】
【氏名】ガリペリン,イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ビッテンコルト メラーニ,ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】ブルタルト,ニコライ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
【Fターム(参考)】
4B018MD69
4B018MD70
4B018ME02
4B018ME14
4B018MF13
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA41
(57)【要約】
本発明は、
(i)目的の増殖中の非ヒト動物細胞を、細胞の細胞数が少なくとも2倍以上増殖するまで、in vitroで培養するステップと;
(ii)細胞を採取して、細胞由来材料を得るステップと;
(iii)ステップ(ii)で採取した細胞からの細胞由来材料を腐敗しないように保存するステップと;を含む食用栄養組成物を調製するための方法に関する。さらに、本発明は、そのような方法から得られる食用栄養組成物、および明確に定義された栄養組成物を提供するためのその使用に言及する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用栄養組成物を調製するための方法であって、
(i)目的の増殖中の非ヒト動物細胞を、細胞の細胞数が少なくとも2倍以上増殖するまで、in vitroで培養するステップと;
(ii)前記細胞を採取して、細胞由来材料を得るステップと;
(iii)ステップ(ii)で採取した前記細胞からの前記細胞由来材料を腐敗しないように保存するステップと;
(iv)任意により、ステップ(iii)の前記細胞由来材料を、1つ以上のビタミン、1つ以上のミネラル、1つ以上の芳香化合物、1つ以上の食品着色料、1種以上の繊維、エタノール、酢酸、炭酸、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のさらなる消費可能な成分と混合するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(i)が、動物由来血清の非存在下で行われる培養するステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(iii)が、前記細胞由来材料を粉末に加工することを含み、好ましくは、前記細胞由来材料を粉末に加工することが、液体内容物を少なくとも部分的に除去することによって得られ、特に、前記細胞由来材料を粉末に加工することが、凍結乾燥によって得られる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(iii)が、低温殺菌を含み、好ましくは、ステップ(ii)で採取された前記細胞からの前記細胞由来材料は、なおも細胞培養培地を含有し、液体またはペースト状の組成物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記食用栄養組成物が、
(a)飲料用組成物であって、特に、目的の前記細胞由来の死滅材料:目的の生存細胞の質量比が少なくとも2:1以上である、飲料用組成物;
(b)水溶液および水に懸濁可能な粉末または顆粒であって、特に、目的の前記細胞由来の死滅材料:目的の生存細胞の質量比が少なくとも2:1以上である、水溶液および水に懸濁可能な粉末または顆粒;または
(c)細胞培養培地および生細胞および/または死細胞を含む液体またはペースト状の組成物であって、好ましくは、ステップ(ii)からの細胞由来材料が、先行するステップ(i)で前記細胞が培養された細胞培養培地を含有し、特に、前記液体またはペースト状の組成物が低温殺菌されている、細胞培養培地および生細胞および/または死細胞を含む液体またはペースト状の組成物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記目的の細胞が、
心筋細胞もしくはその前駆細胞、特に衛星細胞;
脂肪細胞もしくはその前駆細胞;
肝細胞もしくはその前駆細胞;
誘導多能性幹細胞;
非ヒト胚性幹細胞;
またはそれらの2つ以上の組み合わせである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記目的の細胞が、初代細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記目的の細胞が、長期細胞培養の細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(i)で培養された細胞の含有比率およびタイプを調節して、目的の定義された栄養素含有量、特に目的の定義されたタンパク質含有量を得るステップを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(ii)が、クエン酸塩、特にクエン酸ナトリウムを含有する溶液を採取すべき細胞に投与することを含む、請求項1または9に記載の方法。
【請求項11】
クエン酸塩を含有する前記溶液が、緩衝液、特にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記クエン酸塩を含有する前記溶液を、前記細胞を洗い流す前に2~20分、5~10分、または10~15分間前記細胞に投与する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(ii)が、好ましくは遠心沈降、濾過、透析、または接着細胞のすすぎ洗い、特に遠心沈降および1つ以上の緩衝液による任意の洗浄ステップによって、細胞培養培地を除去することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(ii)が、細胞培養培地の少なくとも一部を維持することおよび低温殺菌するステップを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(iv)が、
全食用栄養組成物を基準として、少なくとも0.01重量%、少なくとも1つの食品着色料;
発泡性飲料を得るために、全食用栄養組成物を基準として、少なくとも0.2重量%の炭酸;
全食用栄養組成物を基準として、少なくとも5容積%のエタノール;
全食用栄養組成物を基準として、少なくとも0.01重量%の少なくとも1つの医薬活性成分;または
2つ以上の組み合わせを添加すること含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記食用栄養組成物が、飲料用組成物であり、ステップ(iii)が、前記細胞由来材料を粉末に加工することを含み、前記方法が、粉末を水性液体、特にミネラル水または水道水に懸濁するさらなるステップを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(a)前記食用栄養組成物を発酵させるステップ;
(b)前記食用栄養組成物を燻製にするステップ;
(c)食品を、前記食用栄養組成物を含む組成物によって、好ましくは、1種以上のさらなる成分、例えば、前記組成物を基準として少なくとも1重量%の塩化ナトリウム、前記組成物を基準として少なくとも1重量%の1種以上の糖、前記組成物を基準として少なくとも1重量%の酢酸、前記組成物を基準として少なくとも0.5重量%のエタノール、または前記組成物を基準として少なくとも5重量%の1種以上の食用油と組み合わせて漬けるステップ;および/または;
(d)前記食用栄養組成物を増粘して、シロップを得るステップであって、特に、砂糖および/または他の甘味料を添加して甘いシロップを得るステップをさらに含む、
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
好ましくは、前記得られる栄養組成物が、
(a)飲料用組成物;
(b)粉末または顆粒組成物;
(c)ゲル;または
(d)凍結または部分的に凍結した組成物を特徴とし、
前記食用栄養組成物が、任意によりカプセルの充填物の一部を形成してもよく、任意により飲料、乳製品、非乳製品クリーム、ソース、またはベーカリー製品の一部を形成してもよい、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法から得られる食用栄養組成物。
【請求項19】
嚥下障害を患う患者を処置する方法に使用するための請求項18に記載の食用栄養組成物。
【請求項20】
前記患者に、経腸栄養、飲料用食用栄養組成物を嚥下すること、またはそれらの組み合わせによって、前記食用栄養組成物を投与する、請求項19に記載の使用のための食用栄養組成物。
【請求項21】
嚥下障害を患う患者を処置する方法であって、前記患者に請求項18に記載の食用栄養組成物を十分な量、経腸栄養により投与する方法。
【請求項22】
前記患者に、経腸栄養、飲料用食用栄養組成物を嚥下すること、またはそれらの組み合わせによって、前記食用栄養組成物を投与する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
明確に定義された栄養組成物、特に明確に定義されたタンパク質組成物を消費者に提供するための、請求項18に記載の食用栄養組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)目的の増殖中の非ヒト動物細胞を、前記細胞の細胞数が少なくとも2倍以上増殖するまで、in vitroで培養するステップと;(ii)細胞を採取して、細胞由来材料を得るステップと;(iii)ステップ(ii)で採取した細胞からの細胞由来材料を腐敗しないように保存するステップと、を含む、食用栄養組成物を調製するための方法に関する。さらに、本発明は、そのような方法から得られる食用栄養組成物、および明確に定義された栄養組成物を提供するためのその使用に言及する。
【0002】
高タンパク質内容物および健康的な栄養素内容物などの栄養価を提供する食用製品に対する世界的需要が高まっている。この需要は、多くの場合、肉などの屠殺された動物の製品によって満たされる。多くの場合、肉は、ビタミン(ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB6、およびビタミンB12など)、植物ベースの食用栄養組成物には存在しないリジン、メチオニン、イソロイシン、トリプトファンなどの肉特有のアミノ酸、セレン、およびパントテン酸などの貴重な栄養素の比較的高い含有量を含有する。さらに、肝臓組織は、多くの場合、栄養素であるビタミンA、銅、コラーゲン、ポリリジン、ヒアルロン酸の高い含有量を含む。
【0003】
しかし、屠殺された動物由来の肉を使用する場合、倫理的かつ経済的な制約および懸念が高まっている。動物由来の肉には、生体異物、ホルモンおよびその前駆物質、高カロリー成分などの望ましくない物質が必然的に存在する。主要栄養素(例えば、タンパク質、脂肪酸、および炭水化物、および食物繊維)ならびに微量栄養素組成物(例えば、ミネラル、ビタミン)を含む栄養素含有量は、制御できず、必要に応じて調節できない。さらに、肉の生産には、多くの場合、温室効果ガスの大量生産および環境汚染(富栄養化など)、および広い面積が必要であることが関係している。世界において、人口は70億人を超えて増加しており、すべてに肉を供給することはほとんど不可能であり、望ましいことですらない。
【0004】
そのため、屠殺された動物の肉に代わる製品に大きな関心が寄せられている。
【0005】
2013年には、培養されたウシの筋細胞からの細胞培養材料をベースにしたハンバーガーが導入された。動物の筋肉組織の一部を模倣した固形の肉の代替品も検討される。この文脈では、骨格筋細胞または幹細胞として培養されたブタ胚細胞のいずれかから豚肉を生産し、筋線維に成熟させて、足場と組み合わせて、肉のような製品を得ることが検討されている(Kurt et al.,Austin Food Sci,2021,6(1):1041を参照)。鶏肉細胞、鴨肉細胞、牛肉細胞、豚肉細胞から細胞培養由来の肉を得ることには、清潔かつ安全な肉が提供されることなどの複数の利点を有することが見出されている(Hong et al.,Food Sci.of Anim.Resour.,2021,41(3):355-372を参照)。しかし、そのような材料を調製するには、多大な労力を要し、コストも、非常に高額であった。3D成形には、エネルギーおよびリソースを要し、典型的には、足場構造を必要とする。
【0006】
さらに、固形の肉様製品は、高齢者および嚥下障害患者など、咀嚼するおよび/または嚥下することに問題を有する個体にとっては好適でない。これらの個体にとって、高タンパク質ミルクタンパク質濃縮物など、多くの場合、特定の精製タンパク質または牛乳から得られる一般的なタンパク質シェイクが知られている(Sikand et al.,J.Diary Sci.,2011,94:6194-6202を参照のこと)。
【0007】
患者が、嚥下障害などの咀嚼および/または嚥下困難に関連する病的状況、食事を妨げる手術、または食欲減退などの理由で食物をまったくまたは十分に摂取できない場合、経腸栄養(例えば、経鼻胃栄養(すなわち、鼻から胃または小腸へのチューブを介する、経鼻胃挿管とも呼ばれる)、胃造瘻(すなわち、皮膚から胃へのチューブを介する)、空腸造瘻(すなわち、皮膚から空腸へのチューブを介する)、またはそのようなタンパク質組成物を使用した他のタイプの経管栄養が考慮され得る。このような場合、投与される組成物は、タンパク質、炭水化物(糖)、脂肪、ビタミン、およびミネラルを含有してもよく、チューブを介して胃または小腸に与えられる。例示の組成物は、Malone,2005(「Enteral Formula Selection:A Review of Selected Product Categories」、Nutrition Issues in Gastroenterology,Series #28,ed.Carol Rees Parrish,Practical Gastroenterology)に記載されている。
【0008】
前述の目的に使用可能なタンパク質組成物は、栄養素内容物が、肉状ではなく、肉にとって典型的なミネラル、必須アミノ酸(例えば、リジン、イソロイシン、トリプトファンなど)、およびビタミンなどの貴重な栄養素ではないという欠点を有する。むしろ、上記に参照された目的に関して公知であるこのようなタンパク質組成物は、典型的には、ミルク(例えば、ミルク、脱脂乳、ミルクタンパク質濃縮物、カゼイン、カゼイン酸塩、ラクトアルブミンを含有する)に由来するか、またはMalone,2005に記載されるように植物材料(例えば、大豆タンパク質分離物、ホエータンパク質濃縮物を含む)もしくはそれらの加水分解物もしくは分離物に由来する。これは、ヒトおよび動物の栄養としては最適ではない場合がある。
【0009】
さらに、当該技術分野で公知の組成物は、多くの対象が、当技術分野で公知のタンパク質組成物中の主要なタンパク質源である大豆、小麦、または乳製品に対して不耐性を有するという欠点を有する。これは、高齢者および経腸栄養の文脈において特に興味深い。
【0010】
肉の代替となり得、有益かつ調節可能な栄養素内容物を提供し得、同時に効率的に調製できる食用製品に対するニーズは、依然として満たされていない。
【0011】
驚くべきことに、食用栄養組成物は、その後のステップで腐敗しないように保存され、任意によりステップ(iii)の細胞由来材料を1つ以上のさらなる消費可能な成分と混合され得る細胞培養物に基づいて、効率よく調製できることが見出されている。
【0012】
本発明の一態様は、
(i)目的の増殖中の非ヒト動物細胞を、前記細胞の細胞数が少なくとも2倍以上に増殖するまで、in vitroで培養するステップと;
(ii)細胞を採取して、細胞由来材料を得るステップと;
(iii)ステップ(ii)で採取した細胞からの細胞由来材料を腐敗しないように保存するステップと;
(iv)任意により、ステップ(iii)の細胞由来材料を、1つ以上のビタミン、1つ以上のミネラル、1つ以上の芳香化合物、1つ以上の食品着色料、1種以上の繊維、エタノール、酢酸、炭酸、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のさらなる消費可能な成分と混合するステップと、を含む食用栄養組成物を調製するための方法に関する。
【0013】
このような方法から得られる(または得られた)食用栄養組成物は、例えば、減量のサポート、代謝率の向上、身体の解毒、および臓器機能の改善などの潜在的な利点を有し得る。主要栄養素(例えば、タンパク質、脂肪酸、および炭水化物、および食物繊維)ならびに微量栄養素組成物(例えば、ミネラル、ビタミン、アミノ酸)などの栄養素の含有量は、十分に制御され得、必要に応じて調節可能であり得る。制御された実験室環境条件を使用することにより、生体異物(例えば、抗生物質などの残留薬物など)、ホルモンおよびその前駆物質、病原体、および高カロリー成分などの望ましくない材料が大幅に回避され得る。したがって、調製および食用栄養組成物において特に清潔な状態が達成され得る。化学的および生化学的に定義された細胞培養培地および細胞を使用できることにより、外部要因に広く依存しない安定した信頼性の高い生産が可能になる。前述の利点は、肉などの天然の動物由来製品と比較して優れている。さらに、本発明の食用栄養組成物は、特に効率的な方法で調製される。
【0014】
このような方法から得られる(または得られた)食用栄養組成物は、高齢者の栄養、ならびに経腸栄養(また、経腸栄養(enteral feeding)、例えば、経鼻胃栄養、例えば、経鼻胃挿管、胃造瘻、空腸造瘻、または他のタイプの経管栄養など)にも好適であり得る。
【0015】
食用栄養組成物は、様々な人口統計学および食事の嗜好に応える飲料を設計するために、動物細胞(非ヒト)からの細胞由来材料を含有し得る。このプロセスでは、原料物質として必要なのは、少数の細胞のみである。これにより、供給源が大幅に節約され得、より持続可能になると考えられる。本発明の食用栄養組成物の細胞バイオマス1kgを調製するために必要な土地/空間は、動物肉の細胞バイオマス1kgを調製する場合よりもより少ない。水の消費がより少ない。さらに、水のリサイクルおよび効率的な廃棄物管理が可能になる。
【0016】
メタンガスの排出など、望ましくない排出物の放出は、肉などの動物由来の細胞生産で同量の生産時に放出される量と比較すると、典型的には、大幅に少なくなる。
【0017】
本発明の方法は、所望の程度まで規模拡大することができる。
【0018】
個々の要求を満たすことが可能になり、食用栄養組成物の消化は、同等の肉片よりも効果的(容易)になる。栄養素含有量は、個体の栄養要求に合わせて自由に調整可能であり得る。食用栄養組成物は、他の投与経路よりも優れた、貴重な栄養成分を吸収するための非常に効率的または最適な経路を可能にし得る。
【0019】
利用性および再吸収性が改善され得る。これは、医療の分野において、有益な影響を有し得る。この文脈では、プレバイオティクスおよび薬剤(サイレンサーRNA(siRNA)などのリボ核酸ベースの薬物など)も添加され、消費者に適用され得る。
【0020】
本発明の文脈で使用される「食用」という用語は、本明細書で示されるように、適切な量を消費する場合に、(実質的な)健康リスクなく、消費できるものとして、当該技術分野で一般的に理解されているものと理解され得る。好ましくは、「食用」とは、動物、特にヒトの食物消費に好適である成分を意味する。これは、公的規制当局の認定という文脈でも解釈され得る。
【0021】
(非ヒト)動物細胞およびその細胞外マトリックス(ECM)成分は、任意によりさらなる消費可能成分(「添加物」も含む)と共に、清潔でありかつ制御されたバイオプロセシングからの細胞ベースの飲料として調製することができ、これは、新しい形態の栄養消費物/サプリメントとして、個々のライフスタイル、さらには臨床的および治療的要求に適合する。
【0022】
本明細書において使用される「飲料」および「飲み物」という用語は、液体またはシロップ状の経口消費可能な組成物として、当該技術分野で一般に理解されている最も広い意味で互換的に理解され得る。これは、アルコールを含有しても含有しなくてもよい。
【0023】
任意により、食用栄養組成物は、エタノール/水混合物を含んでもよい。本発明の特定の実施形態では、食用栄養組成物は、全組成物に基づいて、エタノールを0~80重量%、0~40重量%、0~6重量%、1~15重量%、5~15重量%、または10~40重量%含むことができる。任意により、食用栄養組成物は、水/脂肪エマルジョンを含んでもよい。好ましい実施形態では、食用栄養組成物は、組成物の全重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、または少なくとも25重量%の細胞由来材料を含み得る。
【0024】
本発明の方法は、バイオプロセシングまたは細胞農業法としても考えられ得る。本発明の方法は、消費できるものとしての培養細胞をベースにしていると考えられ得る。本発明の方法は、細胞ベースの栄養を提供し得る。
【0025】
食用栄養組成物の味は、甘味、塩味、苦味、酸味、うま味、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり得る。
【0026】
目的の増殖中の非ヒト動物細胞を培養するステップ(i)
本明細書で使用される用語「目的の細胞」は、プロセスで使用されることが意図されている1つ以上の細胞型として理解され得る。好ましくは、これらの細胞に由来する材料は、食用栄養組成物に含有されなければならない。目的の細胞は、任意の非ヒト動物細胞であり得る。
【0027】
好ましい実施形態では、目的の細胞は、
筋細胞またはその前駆細胞、特に(筋)衛星細胞;
脂肪細胞またはその前駆細胞;
肝細胞またはその前駆細胞;
人工多能性幹細胞(iPSC);
非ヒト胚性幹細胞;
またはそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0028】
目的の細胞は、任意の手段によって得られ得る。初代細胞を使用する場合、組織片は、ドナー動物または動物由来材料(例えば、卵子、胎盤(生殖組織)、皮膚、および/または毛髪など)から得られ得る。任意により、これを洗浄する、かつ/または小片に切断する。任意により、細胞を、せん断力および/または酵素(例えば、コラーゲナーゼIおよび/またはディスパーゼおよび/または(キモ)トリプシン)および/または高張液(例えば、最終浸透圧570mOsm/kgの塩化カリウム/塩化ナトリウム中の1mMクエン酸ナトリウム)によって、少なくとも部分的に互いに分離してもよい。任意により、細胞を錯化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)および/またはクエン酸ナトリウム)でさらに処理してもよい。任意により、細胞を懸濁媒体(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))に懸濁してもよい。任意により、1つ以上の抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンなど)を添加してもよい。任意により、細胞を、洗浄するために遠心沈降/再懸濁サイクルに供してもよい。細胞を、好適な培養条件に添加してもよい。
【0029】
例えば衛星細胞などの成体幹細胞は、任意の手段によって得ることができる。例えば、そのような成体幹細胞は、Schmidt et al(Cellular and Molecular Life Sciences,2019,76:2559-2570)、Hindi et al.(Science Signaling,2013,6(272):DOI:10.1126/scisignal.2003832),Choi et al.(Food Sci.Anim.Resour.,2020,40(5):852-859)、および/またはNie et al.(PlosONE,2014,9(1):e88012)に記載されているように得ることができる。これは、任意により、例えば、衛星細胞の場合はPax3および/またはPax7、筋芽細胞の場合はMyoDおよび/またはMyf5などの細胞因子を含み得る。筋細胞は、任意によりミオゲニンによって検出され得る。筋管は、ミオシン重鎖(MyHC)陽性であり得る。
【0030】
さらに、成熟筋管を多核化してもよく、これは例えばDAPIおよびHoechstなどの核特異的染料を使用して検出され得る。任意により、磁気活性化細胞選別(MACS)を使用して、細胞を互いに分離する、および/または特定の所望の細胞型(例えば、CD29を細胞マーカーとして使用し、CD29および/またはPax7による免疫染色によって識別可能なCD29陽性衛星細胞など)を分離することも可能である。
【0031】
細胞(例えば、衛星細胞)を、任意により、Benedetti et al(SkeletalMuscle,2021,11(7):doi.org/10.1186/s13395-021-00261-w)に説明されているとおりに氷冷処理に供してもよく、したがって、細胞を継代する際に、任意により、氷冷緩衝液(例えば、氷冷PBS)をフラスコに添加してもよい。
【0032】
好ましい実施形態では、目的の細胞は、筋細胞またはその前駆細胞、特に(筋)衛星細胞であるか、または筋細胞またはその前駆細胞を含む。例えば、ウシ衛星細胞は、当該技術分野で記載されている条件下で培養され得る(Skrivergaard et al.,Int.J.Mol.Sci.,2021,22:8376を参照)。一実施形態では、筋細胞またはその前駆細胞(例えば、(筋)衛星細胞)などの細胞、または他の細胞型を、骨格筋組織から採取してもよい。これは、以下の実験セクションで例示される。
【0033】
さらなる実施形態では、細胞は、卵(例えば、鶏卵などの鳥類の卵)を起源とし得る。卵細胞を、孵化前に採取してもよい(例えば、約21日齢以下の鶏胚)。これにより、胚性幹細胞、胚性生殖幹細胞、前駆細胞、および完全に発達した機能細胞などの任意の発達段階の細胞を得ることが可能になる。
【0034】
さらなる実施形態では、細胞は、骨髄を起源とし得る。骨髄からは、大量の間葉系幹細胞を採取することができる。例えば、間葉系幹細胞は、筋細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、ニューロン、および軟骨細胞に分化し得る。間葉系幹細胞は、細胞の培養にとって有益な1つ以上の成長因子/サイトカインを分泌し得る。さらなる実施形態では、細胞は、例えば、間葉系幹細胞と同様の特性を有し得る、例えば卵胞細胞などの家禽の羽毛を起源としてもよい。
【0035】
さらなる実施形態では、細胞を培養して増殖させ、ならびに主要および微量栄養素を得るために、例えば、1種以上の動物、1種以上の植物、1種以上の真菌、1種以上の原生生物、1種以上の真正細菌、および/または1種以上の古細菌の器官または組織などの任意の生物界の生物の任意の器官/組織から細胞を採取してもよい。このような細胞を、本発明の食用栄養組成物に添加してもよい。
【0036】
目的の細胞は、初代細胞または長期細胞培養物の細胞であり得る。一実施形態では、目的の細胞は、初代細胞である。別の実施形態では、目的の細胞は、長期細胞培養物である。
【0037】
初代細胞は、生検または剖検を起源としてもよい。細胞培養を確立してもよい。長期細胞培養は、(任意により市販の)細胞バンクであり得る。長期細胞培養は、不死化細胞株を含み得る。任意により、人工多能性幹細胞(iPSC)および/または非ヒト胚性幹細胞を誘導して、所望の細胞型を形成してもよい。このようなステップも本発明に含まれ得る。一実施形態では、目的の細胞は、体細胞成熟細胞である。動物の屠殺が低減または回避され得る。これは倫理的な理由および動物福祉の観点から望ましいであろう。
【0038】
目的の細胞は、任意の非ヒト動物種(「ドナー」)を起源とし得る。例えば、目的の細胞は、哺乳類(哺乳動物)(例えば、ヒツジ、ウシ(cow/beef)、ヤギ、ブタ、スイギュウ、シカ、ウマ、ラクダ、ウサギなど)、鳥類(家禽、鳥類細胞)(例えば、アヒル、鶏、ガチョウ、七面鳥、ガチョウ、ハト、成鶏など)、爬虫類(例えば、ワニ、クロコダイル、ヘビなど)、魚類(例えば、鮭)、または昆虫(例えば、ミールワーム、ハチの幼虫など)に由来し得る。鳥類細胞は、ワクチンの製造のために使用されており、これにより、商業的供給元から比較的大規模で、規模拡大可能な懸濁液中の無血清製造細胞を得ることが可能であり得る。
【0039】
一実施形態では、目的の細胞は、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ、およびスイギュウの細胞からなる群から選択され得る反芻動物を起源としてもよい。一実施形態では、目的の細胞は、例えばブタ細胞などの非反芻動物を起源とし得る。一実施形態では、目的の細胞は、例えば、ウマ、ラクダ、およびウサギの細胞からなる群から選択され得る偽反芻動物を起源とし得る。目的の細胞は、任意の非ヒト動物種(「ドナー」)を起源とし得る。
【0040】
一実施形態では、目的の細胞は、哺乳類(哺乳動物)、鳥類、爬虫類、魚類、または昆虫を起源とする初代細胞であり得る。別の実施形態では、目的の細胞は、哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類、または昆虫の長期細胞培養からの細胞であり得る。一実施形態では、本発明の文脈で使用される細胞は、初代哺乳動物細胞(同様に哺乳類細胞)である。一実施形態では、本発明の文脈で使用される細胞は、哺乳動物細胞培養物(同様に哺乳類細胞培養物)からのものである。
【0041】
細胞は、任意により、冷蔵庫(例えば、1~10℃、例えば(約)4℃)、冷凍庫(例えば、-30~0℃、例えば(約)-20℃)、高性能冷凍庫(例えば、-90~-70℃、例えば(約)-80℃)、または液体窒素(N2)中など、そのような目的に使用可能な任意の条件で、細胞ストックとして保存され得る。任意により、凍結ストックは、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有しても含有しなくてもよい。
【0042】
任意により、異なる細胞型および/または異なる種の細胞を互いに組み合わせてもよい。これにより、食用栄養組成物の栄養素含有量が最適化され得る。
【0043】
例えば、細胞を、互いに組み合わせてもよく、その際、少なくとも2つの異なる細胞型の細胞を互いに組み合わせてもよい。これらは、任意により、同じ種または異なる種の起源であり得る。例えば、以下の細胞を互いに組み合わせてよく、少なくとも2つの異なる種の細胞、例えば;
2種以上の異なる鳥類の細胞、
2種以上の異なる哺乳類の細胞、
2種以上の異なる魚種の細胞、
2種以上の爬虫類の細胞、
2種以上の異なる昆虫種の細胞、
少なくとも1種の鳥類と少なくとも1種の哺乳類の細胞、
少なくとも1種の鳥類と少なくとも1種の魚類の細胞、
少なくとも1種の鳥類と少なくとも1種の爬虫類の細胞、
少なくとも1種の鳥類と少なくとも1種の昆虫類の細胞、
少なくとも1種の哺乳類と少なくとも1種の魚類の細胞、
少なくとも1種の哺乳類と少なくとも1種の爬虫類の細胞、
少なくとも1種の哺乳類と少なくとも1種の昆虫の細胞、
少なくとも1種の魚類と少なくとも1種の爬虫類の細胞、または
少なくとも1種の魚類と少なくとも1種類の昆虫の細胞
を、互いに組み合わせてもよい。
【0044】
2つの細胞型の細胞数の比は、任意の範囲であり得る。例えば、細胞数の比は、1:1~1:1000、1:1.5~1:500、1:2~1:200、1:3~1:100、1:5~1:50、または1:5~1:10の範囲内であり得る。
【0045】
例えば、細胞を、互いに組み合わせてもよく、その際、少なくとも3つの異なる細胞型の細胞を互いに組み合わせてもよい。これらは、任意により、同じ種または異なる種の起源であり得る。例えば、細胞を互いに組み合わせてもよく、少なくとも3つの異なる種の細胞、例えば;
3種以上の異なる鳥類の細胞、
3種以上の異なる哺乳類の細胞、
3種以上の魚類の細胞、
3種以上の爬虫類の細胞、
3種以上の異なる昆虫の細胞、
少なくとも2種の鳥類と少なくとも1種の哺乳類の細胞、
少なくとも2種の鳥類と少なくとも1種の魚類の細胞、
少なくとも2種の鳥類と少なくとも1種の爬虫類の細胞、
少なくとも2種の鳥類と少なくとも1種の昆虫の細胞、
少なくとも2種の哺乳類と少なくとも1種の鳥類の細胞、
少なくとも2種の哺乳類と少なくとも1種の魚類の細胞、
少なくとも2種の哺乳類と少なくとも1種の爬虫類の細胞、
少なくとも2種の哺乳類と少なくとも1種の昆虫の細胞、
少なくとも2種の魚類と少なくとも1種の鳥類の細胞、
少なくとも2種の魚類と少なくとも1種の哺乳類の細胞、
少なくとも2種の魚類と少なくとも1種の爬虫類の細胞、
少なくとも2種の魚類と少なくとも1種の昆虫の細胞、
少なくとも2種の爬虫類と少なくとも1種の鳥類の細胞、
少なくとも2種の爬虫類と少なくとも1種の哺乳類の細胞、
少なくとも2種の爬虫類と少なくとも1種の魚類の細胞、
少なくとも2種の爬虫類と少なくとも1種の昆虫の細胞、
少なくとも2種の昆虫と少なくとも1種の鳥類の細胞、
少なくとも2種の昆虫と少なくとも1種の哺乳類種からの細胞、
少なくとも2種の昆虫と少なくとも1種の魚類からの細胞、または
少なくとも2種の昆虫と少なくとも1種の爬虫類の細胞
を、互いに組み合わせてもよい。
【0046】
3つの細胞型の細胞数の比は、任意の範囲であり得る。例えば、細胞数の比は、1:1:1、2:1:1、2:2:1、3:2:1、4:2:1、4:2:1、4:3:1、4:4:1、4:2:1、4:1:1、4:3:2、4:4:2、5:1:1などの範囲内であり得る。
【0047】
異なる種起源のこのような細胞は、同じ細胞起源の細胞であっても、異なる細胞起源の細胞であってもよい。一実施形態では、すべての細胞は、同じ細胞型起源の細胞である。別の実施形態では、細胞は、異なる同じ細胞型起源の細胞である。一実施形態では、すべての細胞は、筋細胞(特に(筋)衛星細胞)である。例えば、家禽類および哺乳類の筋細胞(特に(筋)衛星細胞)を混ぜ合わせてもよい。例えば、家禽類および魚類の筋細胞(特に(筋)衛星細胞)を混ぜ合わせてもよい。例えば、豚肉および鮭の筋細胞(特に(筋)衛星細胞)を混ぜ合わせてもよい。例えば、牛肉および鮭の筋細胞(特に(筋)衛星細胞)を混ぜ合わせてもよい。例えば、豚肉および鮭の筋細胞(特に(筋)衛星細胞)を混ぜ合わせてもよい。例えば、豚肉および牛肉の細胞の筋細胞(特に(筋)衛星細胞)を混ぜ合わせてもよい。例えば、豚肉、鮭、および牛肉の筋細胞(特に(筋)衛星細胞)を混ぜ合わせてもよい(例えば、1:1:1の比率で)。
【0048】
細胞は、細胞の増殖に好適である任意の条件で培養され得る。好ましい実施形態では、細胞を培養することは、前記細胞の細胞数が少なくとも2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、または25倍以上増殖するまで行われる。
【0049】
好ましくは、汚染を防ぎ、有益な成長条件を提供するために、目的の細胞は、無菌的で制御された条件下で培養される。温度、pH、および湿度などの外部要因は、制御され得る。培養は、実験室レベルのインキュベーター、または工業用大規模で行ってもよい。哺乳動物細胞の場合、細胞の成長条件は、例えば:37℃、約5重量%のCO2、約95%の空気、および相対湿度約85~95%であり得る。培養条件を、目的のそれぞれの細胞に適合させてもよい。鳥類細胞の場合、培養温度は、40~42℃であり得る。例えば、実験室規模では、細胞は、ガラス製またはプラスチック製のペトリ皿、ガラス製フラスコ、またはプラスチック製フラスコなどのプラスチック容器で培養され得る。典型的には、pH範囲は、細胞生理学的範囲(pH7.0~7.4)である。任意により、細胞培養デバイスを、事前にコーティングしてもよく(例えば、コラーゲン(I型)、ゼラチンなどのタンパク質などで)、これは、細胞の初期付着を改善し得る。
【0050】
また、バイオリアクターを細胞の培養に使用してもよい。これは、任意のタイプのバイオリアクターであり得る。例えば、好適なバイオリアクターは、撹拌タンクバイオリアクター、ウェーブバイオリアクター、エアリフトバイオリアクター、充填床バイオリアクター、垂直ホイールバイオリアクター、または中空糸バイオリアクターであり得る。
【0051】
本発明の方法を、所望の程度まで規模拡大することができる。バイオリアクターは、容積が10L未満、10~50L、20~100L、50~250L、100~1000L、1000L超など、任意のサイズを有し得る。
【0052】
培養条件(例えば、pH、ガス、温度など)を制御することができる。従来の2D単層培養よりもバイオリアクターを使用する利点は、任意により最大109個の細胞/mL細胞培養培地まで細胞密度を増加させることができることであり得る。
【0053】
細胞は、懸濁細胞、接着細胞、半接着細胞、またはそれらの組み合わせとして培養させ得る。任意により、接着細胞の場合、表面をプラズマ処理、コラーゲンコーティングなどによって処理して、細胞の初期付着を改善し、増殖状態(分裂およびサイズの増加)または最終分化状態もしくは休止期状態に到達させて、その後の成長ステップの(表面に付着させる)ための細胞単層を達成することができる。
【0054】
それぞれの細胞型に好適である任意の好適な細胞培養培地を使用してもよい。典型的には、動物細胞の増殖に好適である細胞培養培地は、糖などの1つ以上の炭素源を含む。任意により、細胞培養培地は、例えばアミノ酸、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、成長因子、微量元素などの補充物を含み得る。当業者であれば、複数の細胞型に好適である細胞培養培地を承知しているであろう。例えば、(筋)衛星細胞の場合、基礎培地としてDMEM/F-12培地などの最小限の成分を含み、組換えインスリン、L-アスコルビン酸2-リン酸、組み換えトランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、NRG1、FGF2、TGF-β1、HEPES、および重炭酸塩を組み合わせたB8培地およびBeefy-9培地を使用してもよく、特定の成長条件に応じて変更してもよい。
【0055】
任意により、培地成分、例えば、グルコース、アミノ酸、代謝物:乳酸塩、アンモニア、活性成長因子:FGF2および/またはTFG-b1は、培養中に測定され、管理され得る。
【0056】
細胞培養培地は、ウシ胎児血清(FBS)(またはウシ胎仔血清(FCS))を含んでも含まなくてもよい。細胞培養培地は、動物由来血清を含んでも含まなくてもよい。好ましい実施形態では、ステップ(i)は、動物由来血清の非存在下で培養を行う。ウシ胎児血清(FBS)は、従来の細胞培養では、細胞培養の総コストを削減するために、5~20重量%で一般的に使用されている。FBSの使用の欠点は複数あり、ウシ胎児の屠殺、細菌および病原体などの動物源を起源とする汚染の可能性、ならびに加工および保管コストが高いことなどが挙げられる。
【0057】
上述のとおり、本発明の有益な技術的効果は、食用栄養組成物中の成分含有量を制御できることあり得る。したがって、好ましい実施形態では、方法は、ステップ(i)で培養された細胞の含有比率およびタイプを調整して、目的の定義された栄養素含有量、特に目的の定義されたタンパク質含有量を得るステップを含む。したがって、目的の細胞として使用される細胞のタイプに応じて、目的のタンパク質および任意によりその代謝産物(例えば、ペプチドおよびアミノ酸)のタイプおよび含有量の範囲を調節してもよい。
【0058】
細胞を採取するステップ(ii)
細胞を採取して、細胞由来材料を得るステップ(ii)は、当該技術分野で公知の任意の手段によって実施され得る。細胞が接着細胞または半接着細胞として培養される場合、細胞を採取して細胞由来材料を得るステップ(ii)は、細胞を基質から剥離することを含み得る。これは、機械的に(例えば、引っ掻くことによって)行ってもよく、または、当該技術分野で一般的に公知であるとおり、1つ以上の酵素(例えば、トリプシン)によって補助してもよい。細胞懸濁液が、得られ得る。
【0059】
一実施形態では、ステップ(ii)は、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)を含有する溶液を、採取すべき細胞に投与することを含む。一実施形態では、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)を含む溶液は、緩衝液、特にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。一実施形態では、クエン酸塩は、水溶性クエン酸塩である。一実施形態では、クエン酸塩は、クエン酸ナトリウムである。一実施形態では、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)を含む溶液を、細胞に2~20分、5~10分、または10~15分間細胞に投与した後、細胞を洗い流す。それにより、特に細胞がステップ(i)において(少なくとも部分的にまたは完全に)接着して成長した場合、細胞はその基質から剥離され得る。クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)の濃度を調節してもよい。一実施形態では、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)の濃度は、クエン酸イオン(完全に脱プロトン化されたクエン酸、クエン酸水素、およびクエン酸二水素を含む)の0.01~10mM、または0.05~5mM、または0.1~4mM、または0.2~3mM、または0.5~5mM、または(約1mM)の範囲であってもよい。一実施形態では、クエン酸ナトリウムは、0.01~10mM、または0.05~5mM、または0.1~4mM、または0.2~3mM、または0.5~5mM、または(約1mM)の範囲で使用され得る。
【0060】
一実施形態では、細胞を採取するステップ(ii)は、細胞を細胞培養培地から少なくとも部分的に分離することをさらに含む。これは、任意の手段によって達成され得る。好ましい実施形態では、ステップ(ii)は、細胞培養培地を除去することを含む。こうしたステップでは、培養ステップ(i)の終了時に存在する細胞培養培地の全量を基準として、少なくとも10重量%、少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、もしくは少なくとも99重量%、または(本質的に)培養ステップ(i)の終了時に存在するすべての細胞培養培地が除去され得る。
【0061】
細胞からの細胞培養培地を少なくとも部分的に除去することは、任意の手段によって達成され得る。好ましい実施形態では、ステップ(ii)は、遠心分離、濾過、透析、または接着細胞のすすぎ洗いによって細胞培養培地を除去することを含む。このようなステップは、任意により、1つ以上の緩衝液を使用した任意の洗浄ステップを含んでもよい。このような洗浄ステップはまた、残留物および代謝物も除去し得る。好ましい実施形態では、ステップ(ii)は、遠心分離による細胞培養培地の除去および1つ以上の緩衝液による任意の洗浄ステップを含む。
【0062】
任意により、除去された細胞培養培地またはその水をリサイクルしてもよい。任意により、これは、ステップ(i)の細胞培養培地としてプロセスにおいて使用され得る。廃棄物管理を使用して、消費された細胞培養培地に含有される栄養素をさらに使用してもよい。したがって、任意により、まだ消費されていない栄養素もステップ(i)にリサイクルしてもよい。
【0063】
代替的実施形態では、ステップ(ii)は、細胞培養培地の少なくとも一部を維持することと、低温殺菌することを含む。
【0064】
任意により、細胞を緩衝溶液などに再溶解してもよい。好ましくは、このような緩衝液に含まれる1つ以上の緩衝剤は、中程度の濃度で消費可能である。任意により、このような緩衝溶液は、ヒスチジン、酢酸塩、クエン酸塩、グリシン、リン酸塩、またはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)からなる群から選択される緩衝剤を含有し得る。
【0065】
任意により、細胞を採取して細胞由来材料を得るステップ(ii)は、細胞の少なくとも一部を生存不能にする、特に細胞を破壊するさらなるステップを含む。これは、例えば、凍結融解サイクル、凍結乾燥、超音波の適用、機械的ストレス(フレンチプレスまたはホモジナイザーなど)などの任意の手段によって達成され得る。これにより、死細胞由来材料を含有する細胞由来材料が提供され得る。このような死細胞由来材料は、細胞膜およびその断片、ならびに細胞質および/または細胞オルガネラを含む細胞溶解物などの細胞の内部部分を含み得る。
【0066】
好ましい実施形態では、放出されたタンパク質は、好ましくは、食用栄養組成物中に少なくとも部分的に溶解している。タンパク質は、等電点付近では沈殿を受けやすく、または不安定にさえもなり得るため、このようなpH範囲を回避することが好ましい。好ましい実施形態では、本発明の方法は、細胞の特定の部分を廃棄することを含まない。好ましい実施形態では、細胞由来材料および最終的に得られる食用栄養組成物は、細胞膜およびその画分、ならびに細胞質および/または細胞オルガネラを含む細胞溶解物などの細胞の内部部分を含む。好ましい実施形態では、細胞由来材料(および最終的に得られる食用栄養組成物)は、(本質的に)細胞の全内容物を含む。
【0067】
好ましい実施形態では、目的の細胞は、筋細胞であり得る。目的のタンパク質は、筋原線維タンパク質であり得る、食用栄養組成物中に存在するタンパク質であり得る。筋原線維タンパク質は、筋肉組織で最も一般的なタンパク質であり、pH5.5付近の等電点を有する。したがって、約5.5のpH範囲(例えば、pH5~6、好ましくはpH5.2~5.8、特にpH5.4~5.6)を回避することが好ましい。
【0068】
任意により、細胞由来材料を超音波処理してもしなくてもよい(例えば、Chen et al.,Ultrasonics Sonochemistry,2021,76:105652に記載されているとおり)。
【0069】
タンパク質を溶液中に維持するための緩衝液は、任意により、溶液を安定化させる添加物を含み得る。例えば、このような緩衝液は、タンパク質(例えば、筋原線維タンパク質)を安定化するための塩(例えば、塩化ナトリウム)を含み得る。任意により、液体中のタンパク質の溶解度を確保するために、塩(例えば、塩化ナトリウム)/乾燥細胞由来材料の質量比を100:4~4.5に設定してもよい。あるいはまたは加えて、トリポリリン酸、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、またはトリポリリン酸カリウム、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどの安定剤を添加して、タンパク質(例えば、筋原線維タンパク質)の溶解度を増加させてもよい。
【0070】
代替的実施形態では、生存細胞を採取してもよい。これは、任意により、懸濁培養で細胞を培養することによって達成され得る。細胞培養培地を含む細胞を、細胞由来材料としてさらに使用してもよい。
【0071】
代替的実施形態では、懸濁培養で培養された細胞、または酵素などの穏やかな手段によって事前に剥離された接着細胞に、中程度の遠心力または低せん断応力での濾過を適用することによって、生存細胞を採取してもよい。細胞は、Nienow et al.,(Biochemical Engineering Journal,2014,85:79-88)に記載のとおりに採取してもよい。
【0072】
一実施形態では、細胞またはその断片は、培地から分離され、細胞培養培地を含まない細胞由来材料を表す。別の実施形態では、細胞由来材料は、細胞培養培地の少なくとも一部をなおも含有する。
【0073】
細胞由来材料を腐敗しないように保存するステップ(iii)
細胞由来材料を腐敗しないように保存するステップ(iii)は、任意の手段によって実施され得る。例えば、細胞由来材料を、微生物の成長を回避するために、凍結乾燥、発酵、漬け込み、燻製、または乾燥してもよい。あるいはまたは加えて、製品を加熱して、加熱中にメイラード反応を達成するために、グルコース、ラクトース、およびマルトースなどの還元糖を任意により添加してもよい。あるいはまたは加えて、保存剤(例えば、安息香酸)を任意により添加してもよい。
【0074】
好ましい実施形態では、ステップ(iii)は、細胞由来材料を粉末に加工することを含む。これは、当該技術分野で公知の任意の手段によって達成することができる。好ましい実施形態では、細胞由来材料を粉末に加工することは、液体内容物を少なくとも部分的に除去することによって得られる。これは、当該技術分野で公知の任意の手段によって達成することができる。細胞由来材料を粉末に加工することは、凍結乾燥または別の乾燥ステップによって達成され得る。好ましい実施形態では、細胞由来材料を粉末に加工することは、凍結乾燥によって得られる。
【0075】
凍結乾燥は、最も広い意味で理解され、(古典的な)フリーズドライまたはスプレーフリーズドライを含み得る。凍結乾燥は、懸濁液を事前に均質化して、または均質化することなく実施され得る。フリーズドライの手順は、数十年前から当業者には一般的に公知である(米国特許第3,964,174号参照)。フリーズドライは、ハムなどの肉由来の製品を、その栄養素内容物を本質的に維持しながら保存する場合にも好適である(Ma et al.,Saudi Journal of Biological Sciences,2018,25:724-732を参照)。例えば、Ma et al.または米国特許第3,964,174号に記載の条件を本発明の文脈で使用してもよい。
【0076】
凍結乾燥ステップを実施する場合には、任意により、凍結保存剤および凍結乾燥保存剤を添加してもよい。凍結保存剤および凍結乾燥保存剤は、例えば、トレハロース、スクロース、ソルビトール、デキストラン、塩化ナトリウム、硫酸二ナトリウム、硫酸二アンモニウム、グリセロール、ポリフェノール、プロリン、グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、4-ヒドロキシプロリン、L-セリン、β-アラニン、リジン、塩酸塩、サルコシン、またはγ-アミノ酪酸、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される剤を含み得る。さらに、このような凍結乾燥ステップでは、1つ以上の増量剤を、任意により添加してもよい。これらは、最終凍結乾燥製品の機械的特性および外観を改善し得る。増量剤は、任意により、マンニトール、ラクトース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0077】
好ましい実施形態では、細胞培養培地は、ステップ(ii)で採取された細胞由来材料から少なくとも部分的に除去される。好ましい代替的実施形態では、ステップ(ii)で採取された細胞からの細胞由来材料は、なおも細胞培養培地を含有し、液体またはペースト状の組成物である。
【0078】
好ましい実施形態では、ステップ(iii)は、低温殺菌を含む。低温殺菌は、食用栄養組成物を、微生物の成長を防ぐために、通常は150℃未満(例えば、45~150℃、50~125℃、55~100℃、または60~95℃)の穏やかな熱で処理する方法として、最も広い意味で理解され得る。低温殺菌は、腐敗または疾患のリスクに寄与する微生物および/または酵素を破壊または不活性化することが意図され得る。好ましい実施形態では、ステップ(iii)は、低温殺菌を含み、ここで、ステップ(ii)で採取された細胞からの細胞由来材料は、なおも細胞培養培地を含有し、液体またはペースト状の組成物である。
【0079】
例えば、凍結乾燥または乾燥を含む保存するステップ(iii)では、例えば、酸化を防ぐために添加され得るビタミンD、ビタミンE、タンパク質加水分解物、亜硫酸ナトリウム、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどの1つ以上の抗酸化剤を添加するステップも任意により含み得る。
【0080】
任意により、凍結乾燥または乾燥生成物(例えば、粉末または泡状であってもよい)を粉砕して、均質な粉末を形成してもよい。このような任意の粉砕プロセスは、粉砕機を使用して適用され得る。
【0081】
任意により、得られた乾燥粉末は、最終製品(食用栄養組成物)であり得る。あるいはまたは加えて、このような粉末を、例えば水、消費可能な水性緩衝液、またはエタノールを含むそれらの混合物などの好適な液体に再溶解するかまたは再懸濁してもよい。したがって、好ましい実施形態では、食用栄養組成物は、飲料用組成物であり、ステップ(iii)は、細胞由来材料を粉末に加工することを含み、方法は、粉末を水性液体、特にミネラル水または水道水に懸濁するさらなるステップを含む。
【0082】
あるいはまたは加えて、このような粉末を、さらに顆粒に加工してもよい。
【0083】
ステップ(iii)から得られた生成物(例えば、粉末、または液体、またはゲル)を、任意により、密封してもよい。生成物を、室温以下(すなわち、20℃未満)、室温(例えば、(およそ)20℃)、または高温(20℃より高い、例えば、より速く溶解するために60~120℃)で調製し、および/またはその後処理してもよい。生成物を、任意により滅菌してもよい(例えば、低温殺菌、加熱、紫外線(UV)またはX線、ガンマ線などの照射)。
【0084】
好ましい実施形態では、方法は、
(a)食用栄養組成物を発酵させるステップ;
(b)食用栄養組成物を燻製にするステップ;
(c)食品を、食用栄養組成物を含む組成物によって、好ましくは、1種以上のさらなる成分、例えば、組成物を基準として少なくとも1重量%の塩化ナトリウム、組成物を基準として少なくとも1重量%の1種以上の糖、組成物を基準にして少なくとも1重量%の酢酸、組成物を基準として少なくとも0.5重量%のエタノール、または組成物を基準として少なくとも5重量%の1種以上の食用油と組み合わせて漬けるステップ;および/または;
(d)食用栄養組成物を増粘して、シロップを得るステップであって、特に糖および/または他の甘味料を添加して甘いシロップを得るステップをさらに含む。
【0085】
本明細書で使用される場合、発酵することは、酵素の作用を通して組成物中に含有される有機基質に化学変化を生じる任意の種類の代謝プロセスとして、最も広い意味で理解され得る。このような酵素は、任意により細胞由来材料を起源としてもよく、添加されてもよく、および/または微生物の形態で存在してもよく、および/またはそのようなものから分泌されてもよい。一実施形態では、発酵は、うま味を増大させるために使用され得る。一実施形態では、発酵は、保存期間を延長させるために使用され得る。一実施形態では、発酵食用栄養組成物は、発酵させるステップの後に、組成物の全重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%の細胞由来材料を含み得る。
【0086】
好ましい実施形態では、食用栄養組成物は、目的の細胞に由来する死滅材料を相当量含む。好ましい実施形態では、食用栄養組成物は、目的の細胞由来の死滅材料と、目的の生細胞を少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも50:1、少なくとも100:1の質量比で含むか、または生細胞を(本質的に)含まない細胞に由来する死滅材料を含む。
【0087】
増粘するステップは、任意の手段によって実施され得る。これは、水を部分的に除去すること、および/または、例えば、1種以上の糖類、1種以上の他の(多)糖類(例えば、デンプン、難消化性デンプン、寒天、ペクチン、イヌリン、フルクタン、ラフィノース、ポリデキストロース)、1種以上の増粘甘味料、1種以上の増粘剤(例えば、セルロース、ヘミセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、キチン、ベータグルカン、生グアーガム、キサンタンガム、リグニン、ポリウロニド、アルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)、またはそれらの2種以上の組み合わせ)などの増粘特性を有するさらなる成分を添加することを含み得る。
【0088】
食用栄養組成物の増粘は、飲み込む特性を改善することがあり、望ましい程度に調節した場合に、誤嚥を防止し得る(Nishinary et al.,npj Science of Food,2019,3:5を参照されたい)。増粘剤(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)と混合することは、タンパク質(例えば、筋原線維タンパク質など)の溶解度を改善するために任意に使用され得る(Li et al.,Food Biophysics,2020,15:113-121を参照されたい)。任意により、没食子酸を混ぜ合わせて、加熱することによって、筋原線維タンパク質の可溶性凝集体を増粘させることも得られ得る(Chen et al.,J.Agric.Food Chem.,2020,68:11535-11544を参照されたい)。これらの方法とは対照的に、本発明の好ましい実施形態では、筋原線維タンパク質は、培養細胞の他のタンパク質または成分から精製されないかまたは分離されない。これにより、細胞の全栄養素内容物を得ることが可能になる。
【0089】
本発明の文脈において、目的の細胞に由来する死滅材料は、ステップ(ii)で採取された目的の細胞に元々含まれていた物質(任意により、生存細胞にはもはや存在し得ない)として理解され得る。本発明の文脈において、細胞生存率は、好適な条件下で増殖する能力として理解され得る。
【0090】
好ましい実施形態では、食用栄養組成物は、
(a)飲料用組成物であって、特に、目的の細胞由来の死滅材料と目的の生存細胞との質量比が少なくとも2:1以上である飲料用組成物;
(b)水溶液および水に懸濁可能な粉末または顆粒であって、特に、目的の細胞由来の死滅材料と、目的の生存細胞との質量比が少なくとも2:1以上である、水溶液および水に懸濁可能な粉末または顆粒;または
(c)細胞培養培地および生細胞および/または死細胞を含む液体またはペースト状の組成物であって、好ましくは、ステップ(ii)に由来する細胞由来材料が、先行するステップ(i)で細胞が培養された細胞培養培地を含有し、特に、液体またはペースト状の組成物が低温殺菌されている、細胞培養培地および生細胞および/または死細胞を含む液体またはペースト状の組成物である。
【0091】
代替的実施形態では、目的の細胞は、目的の生成物内で(本質的に)生存可能なままである。例えば、ステップ(ii)で採取された全細胞に基づいて、細胞の50%より多くまたは75%より多くが生存したままであり得る。
【0092】
1つ以上の追加の消費可能な成分を混ぜ合わせる任意のステップ(iv)
上記のとおり、食用栄養組成物は、任意により、1つ以上のビタミン、1つ以上のミネラル、1つ以上の芳香化合物、1つ以上の食品着色料、1種以上の繊維、エタノール、酢酸、炭酸、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のさらなる消費可能な成分をさらに含み得る。成分は、互換的に、コンポーネント、添加物などとも呼ばれ得る。
【0093】
これは、消費者の一般的な微量栄養素の欠乏(例えば、鉄分、ビタミンA、およびヨウ素など、あるいは亜鉛、葉酸、ビタミンB12、他のビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、カルシウム、セレン、およびフッ化物など)を補うことを可能にし得る。一実施形態では、これは、高齢消費者の微量栄養素欠乏を補うことを可能にし得る。一実施形態では、これは、咀嚼および/または嚥下の問題を有する消費者、おそらくさらには嚥下障害を患っている消費者の微量栄養素欠乏を補うことを可能にし得る。したがって、大量の肉を咀嚼および/または嚥下することが困難な消費者に、栄養素を効率よく補給することができる。食用栄養組成物は、任意により経腸栄養(経鼻胃栄養、例えば、経鼻胃挿管、胃造瘻、空腸造瘻、または他のタイプの経管栄養など)にも使用され得る。
【0094】
ビタミンは、当該技術分野で公知の任意のビタミンであり得る。例えば、添加され得るビタミンは、ビタミンA、ビタミンB(例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12)、ビタミンC、ビタミンD、および代謝前駆物質、ならびにそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。ビタミンまたはその代謝前駆体は、天然起源であっても合成起源(構造が天然と同一であるか、または構造が人工的)であってもよい。これらは、市販されていてもよい。
【0095】
好ましくは、食用栄養組成物は、食用栄養組成物の全質量を基準として、ビタミンを全量の20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下含む。
【0096】
ミネラルとは、消費者にとって栄養価があり得る任意の栄養素であり得る。典型的におよび好ましくは、ミネラルは、例えば、鉄、銅、カルシウム、亜鉛、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される金属などの金属のイオンまたは錯体を含む。さらに、ミネラルは、セレン、ヨウ素、および/またはフッ化物であり得る。ミネラルは、市販されていてもよい。好ましくは、食用栄養組成物は、食用栄養組成物の全質量を基準として、ミネラルを全量の20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下含む。
【0097】
芳香化合物は、風味または味を変更する、当該技術分野で公知の任意の食用化合物であり得る。したがって、風味または味は、むしろ自由に選択可能であり、任意により、肉以外の風味、さらにはエキゾチックな風味も含み得る。好ましくは、芳香化合物は、少量で適用される場合、食用栄養組成物の味に顕著な影響を有する。好ましくは、食用栄養組成物は、食用栄養組成物の全質量を基準として、芳香化合物を全量の20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下含む。芳香化合物は、天然起源であっても合成起源(構造が天然と同一であるか、または構造が人工的)であってもよい。例えば、芳香化合物は、メントール、フラネオールヘキシル、シンナムアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、グルタミン酸、フルクトン、エチルメチルフェニルグリシデート、ジヒドロジャスモン、オクト-1-エン-3-オン、2-アセチル-1-ピロリン、6-アセチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン、デルタ-オクタラクトン、マッソイアラクトン、ジアセチルアセトイン、ネロリン、およびそれらの2つ以上の組み合わせであり得る。多くの芳香化合物は、当業者に公知であり、市販されていてもよい。
【0098】
食品着色料は、食品の色を変更する当該技術分野で公知の任意の食用染料であり、食品着色剤とも呼ばれる。好ましくは、食品着色料は、少量で適用された場合、食用栄養組成物の色に顕著な影響を有する。着色は、自由に選択可能であり得、任意により肉以外の着色でもあり得る。
【0099】
食用栄養組成物は、食用栄養組成物に任意により添加することによって定義され得る任意のテクスチャを有してもよい。例えば、テクスチャリングおよび/または栄養素として、細胞外マトリックスの1つ以上のポリペプチド(例えば、コラーゲン、エラスチンなど)を食用栄養組成物に添加してもよい。栄養価は、肉と同等であってもよく、または肉よりも優れていてもよい。
【0100】
好ましくは、食用栄養組成物は、食用栄養組成物の全質量を基準として、食品着色料を全量の20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下含む。食品着色料は、天然起源であっても合成起源(構造が天然と同一であるか、または構造が人工的)であってもよい。例えば、食品着色料としては、ビートルートジュース、ベータカロチン、キノリンイエロー、ポンソー4R、パテントブルーV、グリーンS、ブリリアントブルーFCF、シトラスレッド2、オレンジBインディゴチン、ファストグリーンFCF、エリスロシン、アルラレッドAC、タートラジン、サンセットイエローFCF、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。食品着色料は、フルオレセインなどの蛍光性でさえあり得る。多くの食品着色料は、当業者に公知であり、市販されていてもよい。
【0101】
繊維は、任意の食用繊維であり、食物繊維としても呼ばれ得る。典型的には、本発明の文脈における繊維は、ヒトの消化酵素によって完全に分解され得ない植物由来の食品成分である。例えば、繊維は、マメ科植物、全粒穀物、および穀類、野菜、果物、ナッツ、または種子を起源とし得る。例えば、繊維は、セルロース、ヘミセルロース、キチン、ペクチン、難消化性デンプン、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み得るか、またはそれらから構成され得る。繊維はまた、イヌリン、ベータグルカン、生グアーガム、キサンタンガム、フルクタン、リグニン、ポリウロニド、アルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)、寒天、カラギーナン、ラフィノース、ポリデキストロース、またはそれらの2つ以上の組み合わせも含み得る。多くの繊維が当業者に公知であり、市販されていてもよい。
【0102】
本発明の製造プロセスに基づいて、また混ぜ合わせた完成食料品の成分として、例えばコラーゲンI型、ヒアルロン酸、ピオリジン、ビンキュリン、ラミニン、フィブロネクチンなどの細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質が、組成物中に含まれていてもよい。
【0103】
食用栄養組成物は、任意により、Malone,2005(「Enteral Formula Selection:A Review of Selected Product Categories」,Nutrition Issues in Gastroenterology,Series #28,ed.Carol Rees Parrish,Practical Gastroenterology)に記載の1つ以上の成分をさらに含み得る。含有量の範囲は、任意により、Malone、2005で教示されているものと同様であってもよいが、好ましくは、ミルク由来および/または植物由来のタンパク質源を、(好ましくは主または唯一の)タンパク質源として細胞由来材料に置き換える。好ましくは、食用栄養組成物は、タンパク質源として細胞由来材料を含み、好ましくは、ミルク由来および/または植物由来のタンパク質源を含まず、特に(本質的に)ミルク由来を含まず、および(本質的に)植物由来のタンパク質源を含まない。
【0104】
一実施形態では、食用栄養組成物は、任意により本明細書に記載のさらなる成分のうちの1つ以上に加えて、エタノールを含んでもよい。本発明の特定の実施形態では、食用栄養組成物は、食用栄養組成物の総質量を基準として、エタノールを全量の0~80重量%、0~40重量%、0~6重量%、1~15重量%、5~15重量%、または10~40重量%含み得る。
【0105】
一実施形態では、食用栄養組成物は、任意により本明細書に記載のさらなる成分のうちの1つ以上に加えて酢酸を含んでもよい。本発明の特定の実施形態では、食用栄養組成物の全質量を基準として、酢酸を全量の0~20重量%、0~6重量%、1~15重量%、5~15重量%、または10~20重量%含み得る。
【0106】
一実施形態では、食用栄養組成物は、任意により本明細書に記載のさらなる成分のうちの1つ以上に加えて、炭酸を含み得る。本発明の特定の実施形態では、食用栄養組成物の全質量を基準として、炭酸の総量を0~5重量%、0.1~2重量%、0.2~1重量%、0.3~0.8重量%、または0.4~0.7重量%含むことができる。これらの内容物は、好ましくは、(本質的に)密封された容器(例えば、ボトル)で提供される新鮮な生成物を指す。炭酸の存在は、発泡性飲料を提供し得る。一実施形態では、食用栄養組成物を、このような容器(例えば、ボトル)内で発酵させてもよく、すなわち、容器が、任意により発酵槽として機能してもよい。
【0107】
任意により、食用栄養組成物は、任意により、本明細書に記載の1つ以上のさらなる成分に加えて、1つ以上の糖を含んでもよい。例えば、サッカロース、グルコース、フルクトース、トレハロース、スクロース、ソルビトール、デキストランなどの1つ以上の糖類を含んでもよい。これは、異なるpH値での細胞由来材料の溶解度を改善することができ、および/または味も改善することができる。例えば、食用栄養組成物は、食用栄養組成物の全質量を基準として、糖類を総量の0~80重量%、0~40重量%、0~6重量%、1~15重量%、5~15重量%、または10~40重量%含み得る。
【0108】
任意により、食用栄養組成物は、任意により、本明細書に記載の1つ以上のさらなる成分に加えて、1つ以上のアミノ酸を含んでもよい。例えば、1つ以上の天然アミノ酸を含んでもよい。これは、それを必要とする消費者を補充し得る。例えば、食用栄養組成物は、食用栄養組成物の全質量を基準として、アミノ酸を全量の0~80重量%、0~40重量%、0~6重量%、1~15重量%、5~15重量%、または10~40重量%含み得る。
【0109】
任意により、食用栄養組成物は、任意により、本明細書に記載の1つ以上のさらなる成分に加えて、1つ以上のポリペプチド(またはタンパク質)を含んでもよい。例えば、食用栄養組成物は、天然起源の1つ以上のポリペプチド(例えば、ミルク、細菌、植物ベースの発現システムなどから得られるもの)を含み得る。これは、アミノ酸を必要とする消費者を補充し得る。例えば、食用栄養組成物は、食用栄養組成物の全質量を基準として、ポリペプチドを全量の0~80重量%、0~40重量%、0~6重量%、1~15重量%、5~15重量%、または10~40重量%含み得る。
【0110】
任意により、食用栄養組成物は、任意により本明細書に記載されるさらなる成分の1つ以上に加えて、1つ以上の脂肪(同様に脂質)および/または脂肪酸を含んでもよい。例えば、天然起源(例えば、植物、魚、および/またはミルクから得られる)の1つ以上の脂肪および/または脂肪酸を含み得る。これは、必須脂肪酸を含有し得る。これは、不飽和脂肪酸または多重不飽和脂肪酸を含有し得る。これは、脂肪酸、特に必須脂肪酸を必要とする消費者を補充し得る。例えば、食用栄養組成物は、食用栄養組成物の全質量を基準として、脂肪および/または脂肪酸を全量の0~80重量%、0~40重量%、0~6重量%、1~15重量%、5~15重量%、または10~40重量%含み得る。
【0111】
任意により、食用栄養組成物は、任意により、本明細書に記載の1つ以上のさらなる成分に加えて、1つ以上の電解質を含んでもよい。その浸透圧は、ヒトの血液と比較して、低張性、等張性、または高張性であり得る(ここでは、水と0.9重量%の塩化ナトリウムからなる水性生理食塩水の浸透圧として理解される)。浸透圧は、食用栄養組成物中の溶解成分の総含有量によって適合され、調節され得る。
【0112】
任意により、食用栄養組成物は、例えば、アダプトゲン、成長因子、ポリフェノール、抗体またはその抗原結合断片、低分子薬、プレバイオティクス、および/または核酸(例えば、リボ核酸(RNA)(例えば、siRNA)、デオキシリボ核酸(DNA))などの薬学的活性成分を、任意により、本明細書で言及されるさらなる成分のうちの1つ以上に加えて含んでもよい。
【0113】
一実施形態では、食用栄養組成物は、経腸栄養(経鼻胃栄養、例えば、経鼻胃挿管、胃造瘻、空腸造瘻、または他のタイプの経管栄養など)などの経腸投与にも好適であり得る。
【0114】
一代替的実施形態では、食用栄養組成物は、任意により本明細書に記載の更なる成分のうちの1つ以上に加えて、非経口投与にも好適であり得る。一実施形態では、食用栄養組成物は、静脈内注射/点滴にも好適であり得る。この場合、食用栄養組成物を、濾過してもよい。食用栄養組成物は、任意により、細胞の脱水または血液量過多のいずれかを処置するために好適であり得る。
【0115】
任意により、食用栄養組成物は、任意により、本明細書に記載の1つ以上のさらなる成分に加えて、1つ以上のジュースを含んでもよい。例えば、食用栄養組成物は、1つ以上の果物ジュースまたは野菜ジュースを含み得る。
【0116】
食用栄養組成物のpHは、所望の範囲に調節され得る。好ましくは、pHは、本質的に中性または酸性である。一実施形態では、pHは、pH2~9、pH2~8、pH3~7、pH4~7、pH5~7、またはpH4~6の範囲内である。pHは、食用酸、塩基、緩衝剤、および/または酸性度調整剤によって調節され得る。
【0117】
好ましい実施形態では、個々の要求に応じた高品質の栄養液体生成物が得られ得る。食用栄養組成物は、個体のライフスタイルの要求に合わせて調節され得るため、その含有量の範囲を、特定の消費者または消費者グループの要望に合わせて適合させてもよい。これは、「カスタマイズ可能な食品」および/または「個別化された食品」と見なされ得る。
【0118】
食用栄養組成物は、細胞ベース飲料であってもよい。これは、「動物ドリンク」または「細胞ドリンク」ともみなされ得る。これは「クリーンミート」、すなわち屠殺された動物からの肉として得られたものではない動物様栄養源としても理解され得る。
【0119】
好ましい実施形態では、ステップ(iv)は、
全食用栄養組成物に対して、少なくとも0.01重量%、少なくとも1つの食品着色料;
発泡性飲料を得るために、全食用栄養組成物に対して、少なくとも0.2重量%の炭酸;
全食用栄養組成物に対して、少なくとも5容積%のエタノール;
全食用栄養組成物に対して、少なくとも0.01重量%の少なくとも1つの医薬活性成分;または
2つ以上の組み合わせを添加することを含む。
【0120】
一実施形態では、ステップ(iv)は、全食用栄養組成物を基準として、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.02重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.5重量%の少なくとも1種の食品着色料を添加することを含む。好ましくは、ステップ(iv)は、全食用栄養組成物に対して、5重量%を超える、2重量%を超える、または1重量%を超える食品着色料の総含有量を含まない。
【0121】
一実施形態では、ステップ(iv)は、全食用栄養組成物を基準として、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、0.1~2重量%、0.2~1重量%、0.3~0.8重量%、または0.4~0.7重量%の炭酸を添加することを含む。これにより、発泡性飲料が提供され得る。
【0122】
一実施形態では、ステップ(iv)は、全食用栄養組成物を基準として少なくとも3体積%のエタノールを添加することを含む。一実施形態では、ステップ(iv)は、全食用栄養組成物を基準として少なくとも5体積%のエタノールを添加することを含む。食用栄養組成物の総質量を基準として、エタノールを全量の5~15重量%または10~40重量%添加することを含み得る。
【0123】
一実施形態では、ステップ(iv)は、全食用栄養組成物を基準として、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.02重量%、少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.5重量%の少なくとも1つの薬学的活性成分を添加することを含む。薬学的活性成分としては、例えば、アダプトゲン、成長因子、ポリフェノール、抗体またはその抗原結合断片、低分子薬、プレバイオティクス、または核酸(例えば、リボ核酸(RNA)(例えば、siRNA)、デオキシリボ核酸(DNA))などであり得る。
【0124】
任意により、食用栄養組成物を、密封してもよい。例えば、食用栄養組成物は、ボトル、密閉ガラス、密封ビーカー、または液体包装ボードなどの容器に包装され得る。食用栄養組成物が粉末または顆粒であれば、段ボール箱内に梱包する、および/またはフィルムによって密封することも可能である。
【0125】
本発明の方法から得られる(または得られた)食用栄養組成物も、特に有益な技術的特性を有することが理解されるであろう。
【0126】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明の方法から得られる(または得られた)食用栄養組成物に言及する。
【0127】
本発明の方法の文脈で行われた定義および実施形態は、そのような方法から得られる食用栄養組成物に準用されることが理解されるであろう。
【0128】
上述のとおり、食用栄養組成物は、任意の形態を有し得る。好ましい実施形態では、食用栄養組成物は、
(a)飲料用組成物;
(b)粉末または顆粒組成物;
(c)ゲル;または
(d)凍結または部分的に凍結した組成物であり、
ここで、食用栄養組成物は、任意によりカプセルの充填物の一部を形成してもよく、任意により飲料、乳製品、非乳製品クリーム、ソース、またはベーカリー製品の一部を形成してもよい。
【0129】
飲料用組成物は、液体またはペースト状形態であってもよく、好ましくは、液体形態である。
【0130】
本明細書において使用される「ゲル」という用語は、最も広い意味で理解され得、ゲルそのもの、任意の種類のゼリー組成物、カプセルの中身、ベーカリー製品の中身、プリンの形態なども含み得る。
【0131】
食用栄養組成物は、氷キューブ、フローズンヨーグルト状、ソフトアイス状、スラッシュ状など、凍結されたまたは部分的に凍結された組成物であってもよい。
【0132】
本発明のさらなる態様は、明確に定義された栄養組成物、特に明確に定義されたタンパク質組成物を消費者に提供するための、本発明の食用栄養組成物の使用に言及する。
【0133】
本発明の方法およびそのような方法から得られる食用栄養組成物の文脈でなされた定義および実施形態は、それらの使用にも準用されることが理解されるであろう。明確に定義されたタンパク質組成物を消費者に投与することは、任意により、個別化された栄養となり得る。したがって、その栄養組成物は、個体に合わせて最適化され得る。
【0134】
本発明の食用栄養組成物は、患者および/または高齢者に適用するのに有用である。特に、本発明の食用栄養組成物は、患者および/または高齢者に飲料として適用するのに特に有用である。これはまた、咀嚼および/または嚥下の問題を有するヒトによる消費を可能にする。本発明はまた、本発明の食用栄養組成物を経腸栄養(例えば、経鼻胃挿管、胃造瘻、空腸造瘻、または他のタイプの経管栄養などの経鼻胃栄養)に使用することにも言及する。
【0135】
上述のとおり、多くの対象は、当該技術分野で公知のタンパク質組成物中において主要なタンパク質源である大豆、小麦、または乳製品に対して不耐性を有する。本発明の食用栄養組成物は、このような欠点を回避することを可能にする。したがって、本発明は、大豆、小麦、または乳製品に対して不耐性を有する対象の栄養のために、本発明の食用栄養組成物を使用することにも言及する。したがって、本発明はまた、大豆、小麦、または乳製品に対して不耐性を有する対象の経腸栄養のために、本発明の食用栄養組成物を使用することにも言及する。
【0136】
本発明の食用栄養組成物は、肉ならびに/または牛乳、卵、1種以上の植物源(例えば大豆)、1種以上の細菌源、魚、および/もしくは類似の源、またはそれらの組み合わせから得られるタンパク質を消化できないか、またはほとんど消化できないが、特定の個別化された栄養による最適な栄養を必要とする対象者にとって代替品となり得る。
【0137】
食用栄養組成物は、嚥下の問題(例えば、疾病および関連保健問題の国際統計分類(ICD)第10版(ICD-10)のR13に病的状態として記載されている嚥下障害など)に罹患している患者に十分な栄養を提供するために使用され得る。したがって、本発明はまた、明確に定義された栄養組成物を用いて嚥下障害を患っている患者を治療する方法において使用するための、本発明の食用栄養組成物にも言及する。換言すれば、本発明は、嚥下障害を患う患者を明確に定義された栄養組成物により治療するための方法であって、患者に、十分な量の本発明の食用栄養組成物が投与される方法にも言及する。好ましくは、患者に、食用栄養組成物を経口投与する。
【0138】
さらなる態様は、嚥下障害を患う患者を治療する方法において使用するための本発明の食用栄養組成物であって、患者が、好ましくは、食用栄養組成物を経腸栄養(例えば、経鼻胃栄養、例えば、経鼻胃挿管、胃造瘻、空腸造瘻、または他のタイプの経管栄養)、飲用用食用栄養組成物を嚥下することによって、またはそれらの組み合わせによって投与される方法に言及する。
【0139】
本発明の方法およびそのような方法から得られる食用栄養組成物の文脈でなされた定義および実施形態は、それらの医療的使用にも準用されることが理解されるであろう。
【0140】
換言すれば、本発明は、嚥下障害を患う患者を処置する方法であって、患者が、経腸栄養(例えば、経鼻胃栄養、例えば、経鼻胃挿管、胃造瘻、空腸造瘻、または他のタイプの経管栄養)、飲料用食用栄養組成物を嚥下すること、またはそれらの組み合わせによって、十分な量の食用栄養組成物を投与される方法にも言及する。
【0141】
食用栄養組成物は、胃造瘻患者、外科手術により胃の容積を縮小した患者、咀嚼および嚥下能力が低下した患者(歯科補綴物を含む)によっても消費され得る。
【0142】
食用栄養組成物は、ライフスタイル製品としても消費され得る。したがって、本発明は、食用栄養組成物をライフスタイル製品として使用することにも言及する。
【0143】
以下の実施例では、本発明をさらに説明する。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0144】
図1】異なる試薬を使用して、コラーゲンをコーティングした6ウェルプレートからブタの筋細胞CD29++Bio8.1、継代9/10の剥離を示す図である。図1Aは、剥離していない、すなわち接着細胞(t=0分)を示す。図1Bは、Ca2+およびMg2+を含むPBSによる処置後の細胞を示す(t=15分)。図1Cは、Ca2+およびMg2+を含まないPBSによる処置後の細胞を示す(t=15分)。図1Dは、Ca2+およびMg2+を含まない270mOsm/L PBS中の1mMクエン酸ナトリウムによる処理後の細胞を示す(t=15分)。図1Eは、Ca2+およびMg2+を含まない570mOsm/L PBS中の1mMクエン酸ナトリウムによる処置後の細胞を示す(t=15分)。図1Fは、TrypLEによる処置後の細胞を示す(t=15分)。スケールバーは、100μmを表す。
図2】CD29++ブタ筋細胞(CD29++Bio8.1継代14(P14))のCytodex3マイクロキャリアへの付着を示す。細胞を、Cytodex3マイクロキャリアを使用して、細胞対ビーズ比13で播種した表面撥水性6ウェルプレートで培養した。培養培地DMEM/F-12+20%FBS。図2Aは、インキュベーション前の細胞(t=0時間)を示す。図2Bは、37℃、5%CO2でインキュベーション後の細胞を示す(t=28時間)。図2Cは、37℃、5%CO2でインキュベーション後の細胞を示す(t=48時間)。スケールバーは、100μmを表す。
図3】37℃、5%CO2で48時間インキュベーション後のブタの筋細胞CD29++Bio8.1P14の付着を示す。異なる細胞/ビーズ比(C/B)を相互に比較し、DAPIを使用して細胞の核を染色した。Cytodex3マイクロキャリアを使用した表面撥水性6ウェルプレートでの培養を使用した。培養培地は、DMEM/F-12+20%FBSであった。図3Aは、細胞/ビーズ比3を使用した場合の細胞を示す。図3Bは、細胞/ビーズ比7を使用した場合の細胞を示す。図3Cは、細胞/ビーズ比13を使用した場合の細胞を示す。スケールバーは、100μmを表す。
図4】異なる細胞/ビーズ比(C/B)および異なる剥離溶液を示す。細胞を、Cytodex3マイクロキャリアを使用した表面撥水6ウェルプレートで培養した。培養培地は、DMEM/F-12+20%FBSであった。図4Aは、剥離前に37℃で48時間インキュベーション後のブタの筋細胞CD29++Bio8.1P14を示す(C/B約7)。図4Bは、37℃で48時間インキュベートし、再懸濁前にCa2+およびMg2+を含まない570mOsm/L PBS(C/B約7)中の15mMクエン酸ナトリウムを使用して剥離したブタの筋細胞CD29++Bio8.1P14を示す。図4Cは、再懸濁後に、Ca2+およびMg2+を含まない570mOsm/L PBS中の15mMクエン酸ナトリウムを使用した剥離手順後のブタの筋細胞CD29++Bio8.1P14を示す(C/B約7)。図4Dは、再懸濁後にCa2+およびMg2+を含まない570mOsm/L PBS中の1mMクエン酸ナトリウムを使用した剥離手順後のブタの筋細胞CD29++Bio8.1P14を示す(C/B約8)。図4Eは、再懸濁後にCa2+およびMg2+を含まないPBSのみを使用した剥離手順後のブタの筋細胞CD29++Bio8.1P14を示す(C/B約13)。図4Fは、再懸濁後にCa2+およびMg2+を含まないPBS中の1mMクエン酸ナトリウムを使用した剥離手順後のブタの筋細胞CD29++Bio8.1P14を示す(C/B約10)。スケールバーは、100μmを表す。
図5】ドキソルビシン(図5A、IC50=0.079μM、n=3/SD、R2=0.9483、Sy.x=8.153)ニュートラルレッドアッセイ(図5B、IC50=0.116μM、n=4/SD、R2=0.9660、Sy.x=7.001)によるHepG2細胞の用量反応曲線を示す。CellTiter Glo 2.0。
図6】細胞溶解物の漸増量とのCellTiterGlo2.0の直線性を示し、直線性は、細胞溶解物の量、および多くのHepG2細胞数(図6A、n=3/SD)、および少ないHepG2細胞数(図6B、n=4/SD)に依存する。
【0145】
実施例
実施例1
衛星細胞の単離および凍結保存のための骨格筋組織の採取(哺乳動物細胞の例)
1.組織採取(TCB)
約2g片の骨格筋組織を、反芻動物(ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ、スイギュウなど)、非反芻動物(例えば、ブタなど)、または偽反芻動物(ウマ、ラクダ、ウサギなど)から採取する。15mLチューブ内の保存媒体(抗生物質を補充した氷中のリン酸緩衝生理食塩水(PBS))で洗浄した後、材料を、さらなる処理のために新たに調製した10mLの保存媒体に移す加工。
【0146】
2.組織の加工/消化(CLS)
各筋肉組織は、滅菌メスを使用して小片(約1~3mm3)に切断する。その後、コラーゲナーゼIおよびディスパーゼを用いた酵素消化を行い、50倍希釈したPen/Strep溶液(通常の濃度の2倍、市販の100倍溶液:5000単位/mLペニシリンGおよび5mg/mLストレプトマイシン)を補充したPBSですすぎ洗浄ステップを行い、コラーゲンI型をコーティングした6ウェルプレートにプレーティングする。各ウェルを、1000μLピペットを用いて粉砕し、単一細胞および細胞クラスターを得る。単一細胞集団を得るために、代わりに40μmセルソーターを使用することもできる。細胞懸濁液を300xgで5分間遠心沈降させる。上清を除去し、抗生物質(1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液)を補充したPBS 8mL中にペレットを再懸濁し、15mLチューブにプールする。300xgで3分間遠心沈降後、細胞ペレットを、任意により、5%ウシ胎児血清(FBS)および抗生物質を補充したDMEM/F-12 4.5mLに再懸濁し、12ウェルプレートの3つのウェルにピペットで移す(1.5mL/ウェル)。
【0147】
3.細胞培養/増殖(CLS)
筋肉組織からの不均一な細胞集団を、37℃、5%CO2、95%空気、85~95%湿度の条件下で培養する。
【0148】
培養ウェルの表面を、細胞の初期付着のためにI型コラーゲンでコーティングする。5%FBSおよび抗生物質を補充したDMEM/F-12による培養の間に、不均一な細胞集団は、単層(表面に付着)として増殖相(分裂およびサイズの増加)、または分化相または休止相のいずれかである。
【0149】
4.細胞精製/衛星細胞
4.1.成体幹細胞の培養
衛星細胞の細胞精製は、Schmidt et al.(Cellular and Molecular Life Sciences,2019,76:2559-2570)またはHindi et al.(Science Signaling,2013,6(272):DOI:10.1126/scisignal.2003832)の記載に従って得られ得る。衛星細胞から筋芽細胞および筋細胞を経て筋管に至る発達は、筋肉特有のバイオマーカーを使用してモニターすることができる。これらは、衛星細胞に関してPax3およびPax7、筋芽細胞に関してMyoDおよびMyf5を含む。筋細胞は、ミオゲニンによって検出することができる。筋管は、ミオシン重鎖(MyHC)陽性である。さらに、成熟した筋管は、多核化しており、これをDAPIおよびHoechstなどの核特異的染料を使用して検出することができる。別の筋特異的マーカーであるデスミンの発現は、筋形成の過程で増加し、これを筋芽細胞段階の開始時に検出することができる。
【0150】
4.2.CD29(表面マーカー)によるMACS(磁気活性化細胞選別)
MACSによるさらなる加工は、Choi et al.(Food Sci.Anim.Resour.,2020,40(5):852-859)によって記載されている方法を含み得る。CD29陽性衛星細胞を、MACS細胞分離システム(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)を使用して選別し、集団を精製する。細胞が、80~90%コンフルエンシーに達した場合、TrypLE(商標)Express(Gibco)またはAccutase(Innovative Cell Technologies,Inc.)、または1mM高張性(塩化カリウムで最終浸透圧570mOsm/kgに調節)クエン酸ナトリウム溶液(Nie et al.,(PlosONE,2014,9(1):e88012)を使用して、細胞を分離する。分離した衛星細胞を抗CD29抗体(MAB17783,Novus Biologicals)および抗マウスIgGマイクロビーズ(1:5、MiltenyiBiotec)と反応させる。CD29陽性細胞を、製造業者の指示に従って、MSカラム(容量、1x107磁気標識細胞、Miltenyi Biotec)で選別する。選別されたCD29陽性細胞の筋幹細胞としての同定を、CD29およびPax7による免疫染色によって確認する。
【0151】
4.3.氷冷処置
細胞を、任意により、Benedetti et al.(SkeletalMuscle,2021,11(7):doi.org/10.1186/s13395-021-00261-w)によって説明されているように、氷冷処理に供する。衛星細胞は、処理された細胞懸濁液中の他のいずれの細胞集団よりも冷気に対する感受性が高く、表面からより早く剥離する。採取または培養した不均一な細胞集団を非コーティングT-25フラスコに適用し、37℃で1時間インキュベートする(プレーティング番号1)。非接着細胞を含有する上清を新しい15mLチューブに収集する。新鮮増殖培地(10%FBSおよび抗生物質を補充したDMEM)を、主に線維芽細胞、ならびに筋芽細胞および筋細胞などの後期発達段階にある筋原細胞である接着細胞を含有するフラスコに添加する。
【0152】
ファルコンチューブを180xgで10分間遠心沈降させ、上清を廃棄し、ペレット化した細胞を3mL(T-25の場合3mL、T-75の場合6mL)の増殖培地に再懸濁する。プレーティング手順を繰り返す(プレーティング番号2)。非接着細胞を含有する上清を新しい15mLファルコンチューブに収集する。接着細胞を含有するフラスコに新鮮増殖培地を添加する。15mLチューブを180xgで10分間遠心沈降させ、上清を廃棄し、ペレット化した細胞を所望の量の増殖培地に再懸濁する。得られた細胞を0.1%ゼラチンでコーティングしたT-25またはT-75フラスコにプレーティングし、37℃で一晩インキュベートする。翌日、フラスコを5mL(T-25の場合、T-75の場合10mL)のPBSで3回洗浄する。5mL(T-25の場合)および10mL(T-75の場合)の氷冷PBSをフラスコに添加する。フラスコを氷上(約0℃)に30分間置き、時々手で軽く振盪(旋回運動)させる。剥離した細胞を含有する上清を15mLチューブに収集し、180xgで10分間遠心沈降させる。上清を廃棄し、細胞をT-25の場合3mLまたはそれより少ない量の増殖培地に再懸濁する。0.1%ゼラチンでコーティングした容器に再懸濁した細胞を播種し、37℃でインキュベートする。各継代時に、氷冷手順(プレーティング番号2の後)を任意により実施する。
【0153】
5.細胞バンクのための細胞保存/凍結保存
5.1.DMSOを含む場合
単細胞懸濁液を、PBSによる洗浄プロセス、および酵素消化(コラーゲナーゼ)またはキレート処理(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸ナトリウム)のいずれかの後に、2Dまたは3D培養から収集する。懸濁液を180xgで5分間遠心沈降させ、上清を廃棄する。
【0154】
ペレットを10%(v/v)DMSOおよび90%(v/v)培養培地で再懸濁し、4℃で1mL/クライオチューブに分注する。得られたチューブを-80℃で保管する(Mr.Frosty(Nalgene,Merck))。24時間以上経過後、チューブを液体N2タンクに移す。細胞を使用する場合、細胞を、保存状態から解凍する。バイアルを、デュワー容器内の液体N2中で解凍されるように維持する。解凍を、液体N2から取り出した直後に、予め加温した(37℃)水浴で実施してもよい。凍結保存培地の80%の液化が観察されたときに、1mLの予め加温した培地をクライオチューブに添加する。細胞を、穏やかにピペッティングし、15mLチューブに8mLの基本培地(4℃または氷上)を添加することによってさらに処理し得てもよい。懸濁液を遠心分離(4℃)し、培養皿にプレーティングして、インキュベーターで培養する。
【0155】
5.2.DMSOを含まない場合
単細胞懸濁液を、PBSによる洗浄プロセス、および酵素消化(コラーゲナーゼ)またはキレート処理(EDTA、クエン酸ナトリウム)のいずれかの後に、2Dまたは3D培養から収集する。懸濁液を180xgで5分間遠心沈降させ、上清を廃棄する。5x105~5x106個の細胞について、細胞ペレットを200μLのDMSOフリー凍結培地、StemCellKeep(Abnova)に再懸濁する。クライオチューブを、液体N2チャンバー(-196℃)に移す。保存状態からの解凍は、解凍するバイアルをデュワー容器内の液体N2中で維持することによって行われる。液体N2から取り出した直後に、予め加温した(37℃)培地(1mL)をバイアルに直接添加する。溶液を軽くピペッティングすることによって解凍し、15mLチューブ内の9mLの基本培地(4℃または氷上)に添加する。懸濁液を遠心沈降(4℃)させ、培養皿にプレーティングして、インキュベーターで培養する。
【0156】
実施例2
鳥類の筋細胞の採取および培養
他の非反芻動物(例えば、家禽、トリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ニワトリ、ハトなど)も細胞の原料として使用され得る。その骨格筋を、上記と同じ方法で採取する。鳥類細胞は、ワクチン製造に使用される(規模拡大可能な懸濁液無血清ワクチン製造)。鳥類細胞の培養は、元々の体温(ニワトリ:約41~42℃、新たに孵化したニワトリは約40℃)のため培養温度が哺乳動物細胞よりもわずかに高くなり得ることを除いて、前述の哺乳動物細胞の培養と同等である。
【0157】
実施例3
非筋肉鳥類細胞の採取および培養
鳥類(家禽類)の卵および羽毛を、細胞源として使用することができる。鶏卵(孵化前、約21日齢の鶏胚)から、胚性幹細胞、胚性生殖幹細胞、前駆細胞、完全に発達/機能した細胞を、任意の発達段階で採取する。鶏胚性幹細胞は、無限に増殖することができ、所望の任意の細胞型に分化し得る。細胞はまた、骨髄からも採取される。骨髄からは、大量の間葉系幹細胞を採取することができる。間葉系幹細胞は、筋細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、ニューロン、および軟骨細胞に分化することができる。間葉系幹細胞は、細胞の培養に有益な成長因子/サイトカインを分泌することもできる。細胞はまた、家禽の羽毛からも採取することができる。卵胞細胞は、羽毛から採取することができる。卵胞細胞は、間葉系幹細胞と同様の特性を有する。
【0158】
実施例4
非筋肉性鳥類細胞の採取および培養
細胞を増殖させるためならびに主要栄養素および微量栄養素を得るための培養のために、細胞を、動物、植物、真菌、原生生物、真正細菌、および古細菌など、あらゆる生物界の任意の器官/組織から採取することができる。
【0159】
実施例5用途例:
タンパク質/セレンを豊富に含む細胞ベースの組成物(豚肉の筋細胞および脂肪細胞ベースの溶液を含む水)
豚肉の筋肉の主成分は筋線維であり、白色脂肪組織を含む筋細胞で構成されている。バイオリアクターから新たに採取された細胞および細胞外マトリックス(ECM)の場合、10%(w/v)豚肉の筋細胞(約10億個の細胞、10g)は、高タンパク質(1.7g、3.4%DV(パーセントでの参照1日摂取量、すなわち推奨される1日摂取量のパーセント))および高セレン(0.24mg、4.5%DV)が予想され、炭水化物量は少ない(0g)水性100mL溶液を含有する。健康な成人男性の1日の推奨水分摂取量は、3.7Lである。1.8Lの水分の半分を豚肉の筋細胞ベースの溶液を含む水に置き換えると、タンパク質30.6g(61%DV)およびセレン4.32mg(81%DV)に達することができる。飽和脂肪酸の量(1.8Lあたり14.2g、70%DV)は、調節可能である。
【0160】
実施例6用途例:
タンパク質/ビタミンB12/Dを豊富に含む細胞ベースの組成物(鮭の筋細胞および脂肪細胞ベースの溶液を含む水)
【0161】
実施例1と同じ逆計算を適用した場合、1.8Lの鮭細胞ベースの飲料からは、タンパク質36.9g(73.8%DV)、ビタミンB12 4.74mg(311%DV)、ビタミンD 19.63mg(97.2%DV)が予想可能である。
【0162】
実施例7用途例:
タンパク質/ビタミンB12/亜鉛/鉄を豊富に含む細胞ベースの組成物(水と牛肉の筋細胞および脂肪細胞ベースの溶液)
1.8Lの牛肉細胞ベース飲料からは、タンパク質35g(70.2%DV)、ビタミンB12 3.55mg(147.6%DV)、亜鉛8.19mg(73.8%DV)、鉄3.58mg(19.8%DV)が予想される。
【0163】
上記の3つの例(豚肉、鮭、および牛肉)を1:1:1の比率で混合した場合に、1.8Lの細胞ベースの飲料は、タンパク質34.08g(68.4%DV)、セレン42.12mg(76.8%DV)、ビタミンB12 4.092mg(170.4%DV)、ビタミンD 6.54mg(32.4%DV)、亜鉛4.284mg(39%DV)、および鉄8mg(10.8%DV)となる。この細胞ベースの混合飲料に鉄分、ビタミンC、食物繊維、および香料を補充したものは、機能性食品としてのみでなく、個体のライフスタイルのニーズに合わせて消費され得る。栄養価を向上させる/管理するために、例えば地元の農作物、果物、および野菜などの添加物を任意により添加してもよい。
【0164】
実施例8用途例:肝細胞ベースの組成物
ビタミンA、ビタミンB12、銅を豊富に含むガチョウ肝細胞ベースの飲料(1.8L)は、ビタミンA16.8mg(1861%DV)、ビタミンB12 97.2μg(4050%DV)、銅13.5mg(1505%DV)を含有し、健康な成人男性の15倍を超えるDV(%)を超えることが示されている。したがって、このような肝細胞ベースの飲料は、推奨として、少ない量である120mL(銅100%DV)で消費され得る。肝細胞は、他の細胞ベースの組成物のためのこれらの栄養補助食品の貴重な供給源となり得る。
【0165】
実施例9用途例:
異なる細胞型を含有する細胞ベースの組成物
細胞ベースの飲料は、豚肉、鮭、および牛肉の筋細胞を1:1:1の質量比で混ぜ合わせることによって調製される。これを、1つの細胞タイプのみの同等の含有量を含む同等の組成物と比較する。得ることができる栄養成分含有量を、以下の表に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0166】
実施例10細胞の培養および剥離
様々なリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、例えば、等張または高張浸透圧のCa2+、Mg2+、クエン酸ナトリウムを含むまたは含まないPBSを使用して、CD29++選別(CD29抗体による磁気活性化細胞分離法、MACSで2回)ブタ筋細胞が、細胞培養6ウェルプレート(コラーゲンコーティングおよび非コーティング)からどのように剥離するかを調べた。さらに、CD29++ブタ筋細胞を、事前に試験を行った剥離溶液を使用して、Cytodex3マイクロキャリアへの接着および剥離について試験した。
【0167】
1.材料および方法
1.1.試薬および消耗品
実施した実験に使用した試薬および消耗品を以下に示す。すべての化学物質および試薬、ならびに接種物を、クリーンなフード下で調製した。
DMEM/F-12 グルタミンなし、Hepesなし(VWR、LOT/品番392-0409P)、
Glutamax(商標)-I(100x)(Life Technologies Corporation,LOT/品番2390275)、
ウシ胎児血清(FBS)(Sigma、ロット番号/品番0001650386)、
TrypLE(商標)Express(1x)(TrypLE)(組換え酵素、Life Technologies Corp.、LOT/品番12604013)、
Mg2+、Ca2およびフェノールレッドを含まない(w/o)PBS(Hi-Media Laboratories Pvt.Ltd.,ロット番号/品番TL1006)、
Mg2+およびCa2を含むPBS(PBSw/Mg2+、Ca2)、フェノールレッドなし(Hi-Media Laboratories Pvt.Ltd.,ロット番号/品番TL1023)、
グルコース一水和物(NeoLab,ロット番号/品番TC208-1KG)、
KCl(Biofroxx、ロット番号/品番1617KG001)、
クエン酸三ナトリウム二水和物(Sigma,ロット番号/品番W302600)、
アクリジンオレンジプロピジウムヨウ化物染色(Aligned Genetics Inc.、ロット番号/品番APOBAK1001)、
6ウェル培養プレート(neoLab、ロット番号/品番GF-0074)、
子牛皮由来コラーゲン(Sigma,ロット番号C8919)、
固相支持体として使用可能なCytodex3マイクロキャリアビーズ(Cytiva、LOT/品番GEHE17_0485-02_P)、および
再蒸留水(H2Odd)。
【0168】
PBS溶液を、等浸透圧(約270 Osm/L)にすることができ、または浸透圧濃度570mOsm/Lを有することができる。別途記載がない限り、PBSは、浸透圧濃度270 Osm/Lを有する。
【0169】
1.2.さらなる機器
CO2インキュベーター、顕微鏡、Luna-fl(商標)デュアル蛍光細胞カウンター
【0170】
2.異なる浸透圧のクエン酸ナトリウム溶液/PBSの調製
1mM高張クエン酸ナトリウム溶液は、0.2941gのクエン酸三ナトリウム二水和物および11.487gのKClを、Ca、Mgを含まないPBSに溶解することによって調製した。溶液の量を、PBSで1リットルに調節した。Nie et al.,(「Scalable Passaging of Adherent Human Pluripotent Stem Cells」,PLoS ONE,2014,9(1):e88012.doi:10.1371/journal.pone.0088012)によれば、蒸留水の代わりにPBSを使用した場合、溶液の浸透圧は、570mOsm/Lと推定された。異なる浸透圧を有するクエン酸ナトリウム溶液の調製は、PBSに少量のKClを溶解することによって実施し、PBSによって提供される浸透圧(約270mOsm/L)を減算した。クエン酸ナトリウムの量をそれぞれ調整した。
【0171】
3.6ウェルプレートでのブタの筋細胞(CD29++)のインキュベーション
クエン酸ナトリウム/PBSおよび他の試薬を使用して、CD29++ブタ筋細胞の剥離を調べるために、最初に細胞を6ウェルプレート(コラーゲンコーティング済みおよび非コーティング)でインキュベートした。このために、生存率が99.30%および98.60%である継代数10および11のCD29++ブタ筋細胞を使用して、ウェルに15000細胞/cm2で播種した。次に、ウェルにDMEM/F12+20%FBSを2mLまで満たし、80~90%コンフルエンシーに達するまで、37℃、5%CO2で72時間インキュベートした(播種密度に応じたインキュベーション時間)。
【0172】
各剥離を、生物学的反復実験で実施した。剥離媒体(Rdetach)および剥離時間(tincubation)を含む6ウェルプレートを使用する実験セットアップは次のとおりである:
1.Rdetach=H2Odd,tincubation=15分;
2.Rdetach=Ca2+およびMg2+を含むPBS、tincubation=15分;
3.Rdetach=Ca2+およびMg2+を含まないPBS、tincubation=15分;
4.Rdetach=TrypLE、tincubation=15分;
5.Rdetach=1mMクエン酸ナトリウム/270mOsm/L PBS、tincubation=15分;
6.Rdetach=1mMクエン酸ナトリウム/570mOsm/L PBS、tincubation=15分;
【0173】
4.6ウェルプレートからの剥離手順の例
6ウェルプレートでのCD29++ブタ筋細胞の剥離を、以下のとおり実施する:
(i)細胞培養培地を吸引する;
(ii)剥離に使用する予定の溶液2mLで細胞を2回洗浄する(TrypLE処理の場合はCa2+およびMg2+を含まないPBSで洗浄する)(溶液を37℃まで予熱する);
(iii)それぞれの剥離溶液2mL(TrypLEの場合は0.5mL)を添加し、37℃、5%CO2で15分間インキュベートする(剥離溶液は、pH7.2であり、37℃まで予熱する);
(iv)完全培養培地(DMEM/F 12+20%FBS)2mLを添加する;
(v)ピペッティングにより穏やかに上下に動かして、表面から細胞を再懸濁する/洗い流す(10回)(任意による);
(vi)剥離した細胞/凝集体の写真を撮る;
(vii)6ウェルプレートから細胞懸濁液を15mLファルコンチューブに移し、300xgで5分間遠心沈降させる;
(viii)上清を除去し、細胞を約0.4mLの培養培地に再懸濁させる;
(ix)アクリジンオレンジ/ヨウ化プロピジウムを使用したLuna-fl(商標)デュアル蛍光細胞カウンターにより細胞生存率を測定する。
【0174】
5.6ウェルプレートのCytodex3でのCD29++Bio 8.1ブタ筋細胞の培養
CD29++Bio 8.1ブタ筋細胞のCytodex3マイクロキャリアへの付着を調べるために、継代数14のブタ筋細胞(生存率98.60%)を表面撥水6 ウェルプレートにおいてCytodex3マイクロキャリア上に播種した。次の図に示すとおり、播種密度を調節して、異なる細胞対ビーズ比を得た。6 ウェルを37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。培地としてDMEM/F-12+20%FBSを使用した。1つのウェルの総容量は2mLであった。細胞の付着を、顕微鏡写真を撮ることによってモニターした。
表面撥水性6ウェルプレート中のCytodex3マイクロキャリアに、CD29++Bio
8.1ブタ筋細胞を接着させるための実験セットアップを以下に示す。約3~13の範囲内の異なる細胞対ビーズ比(RatioCell/Bead)を、細胞の付着に関して試験する。対応する剥離試薬(剥離培地、Rdetach)による細胞の剥離は、次のとおりである:
1.RatioCell/Bead=13.33、Rdetach=Ca2+およびMg2+を含まないPBS;
2.RatioCell/Bead=10.00、Rdetach=1mMクエン酸ナトリウム/Ca2+およびMg2+を含まないPBS。
2.RatioCell/Bead=8.00、Rdetach=1mMクエン酸ナトリウム/Ca2+およびMg2+を含まない570mOsm/L PBS。
3.RatioCell/Bead=8.00、Rdetach=1mMクエン酸ナトリウム/Ca2+およびMg2+を含まない570mOsm/L PBS。
4.RatioCell/Bead=6.67、Rdetach=15mMクエン酸ナトリウム/Ca2+およびMg2+を含まない570mOsm/L PBS。
5.RatioCell/Bead=5.00、Rdetach=低張液(8g/L NaCl、0.4g KCl、1g/Lグルコース/H2Odd(Lai et al.,「ESR studies on membrane fluidity of Chinese hamster ovary cells grown on microcarriers and in suspension」,Exp.Cell Res.,1980,130:437-442による);および
6.RatioCell/Bead=3.00、Rdetach=TrypLE。
【0175】
Cytodex3からの細胞の剥離は、次のとおりに実施した:
(i)プレートを傾けて、培養培地を可能な限り吸引する;
(ii)Ca2+およびMg2+を含まない1~2mLのPBSで細胞を洗浄する;
(iii)それぞれの剥離試薬2mLを添加する(37℃に予熱、pH7.2)
(iv)37℃、5%CO2で15分間インキュベートする;
(v)プレートを穏やかに振盪させるか、またはピペッティングにより上下に穏やかに動かすことによって、マイクロキャリアから細胞を洗い流す。
【0176】
結果を図1に示す。特にクエン酸ナトリウムを添加した場合に、Mg2+およびCa2+を含まないPBSによって細胞を剥離できることが認められる。
【0177】
6.コラーゲンコーティングされた6ウェルプレートから剥離させた細胞の生存率
PBS中のクエン酸ナトリウムの各溶液を使用して、剥離させた細胞の生存率を次の表3に示す。
【表4】
【0178】
結果として、クエン酸ナトリウムなどのクエン酸塩を添加することにより、細胞の剥離が改善され得ることが認められる。
【0179】
さらに、比較のために、非コーティング6ウェルプレート上で、CD29++ブタ筋細胞の剥離を試験した。このため、H2Oddの使用を、水道水中の1mMクエン酸ナトリウム(SC)の使用に置き換えた。さらに、標準偏差(SD)を示す。
【表5】
【0180】
結果として、クエン酸ナトリウムなどのクエン酸塩を添加することにより、細胞の剥離が改善され得ることが認められる。クエン酸ナトリウムなどのクエン酸塩を単に加えるだけであっても、細胞の著しい剥離をもたらすことができる。これは、水と1mMクエン酸ナトリウムを含む水の比較から明らかである(表3および4の最初の列を参照)。
【0181】
7.CD29++ブタ筋細胞のCytodex3マイクロキャリアへの付着
可視化実験では、CD29++Bio8.1P14細胞を、Cytodex3マイクロキャリアに播種した。細胞/ビーズ比13を使用した。インキュベーション前、インキュベーション中、インキュベーション後の結果を図2に示す。細胞/ビーズ比13を使用して、48時間インキュベーション後、細胞は、Cytodex3マイクロキャリア上でコンフルエントになった。
【0182】
さらに、異なる細胞/ビーズ比を相互に比較した。インキュベーション前、インキュベーション中、インキュベーション後の結果を図3に示す。DAPIを使用して細胞を染色した場合、マイクロキャリア上の細胞密度は、細胞/ビーズ比が13(C/B13)のときに最も可視化された。
【0183】
8.Cytodex3マイクロキャリアからのCD29++Bio 8.1ブタ筋細胞の剥離
CD29++Bio8.1P14を37℃で48時間インキュベーション後、Cytodex3マイクロキャリアからの剥離を行った。結果を、図4に示す。
【0184】
9.結論
9.1.培養プレートからの剥離
様々な緩衝液(PBS緩衝液をベースとして例示)を使用した細胞(CD29++ブタ筋細胞、継代P10およびP11として例示)の剥離により、細胞の付着は、おそらくCa2+イオンに依存するように思われることが示された。実施例では、クエン酸塩(ここでは、1mMクエン酸ナトリウムとして例示)を含む高浸透圧緩衝液(ここでは、570mOsm/L PBSとして例示)を使用することで、最高の生存率を達成できた(ここでは:95.65%±2.15%)。対照的に、非コーティング6ウェルプレートから剥離する場合、Ca2+およびMg2+を含まないPBSのみを使用することにより、95.95%±1.45%の生存率に達した。要約すると、コラーゲンコーティング表面と非コラーゲンコーティング表面との間の剥離に有意な差は観察されなかった。この理論に拘束されるものではないが、細胞数の差は、TrypLEが細胞を単細胞として表面から剥離するのに対し、クエン酸ナトリウムとPBSまたはその両方の組み合わせ(1mMクエン酸ナトリウム/Ca2+およびMg2+を含まないPBS、または15mMクエン酸ナトリウム/Ca2+およびMg2+を含まないPBS)は、細胞をより大きな凝集体として表面から剥離することによるものと考えられる。顕微鏡画像を比較した場合に、PBSのみ、またはCa2+とMg2+を含まないクエン酸ナトリウムとPBSの組み合わせにより剥離する間に、6つのウェルの本質的に表面全体が細胞から剥離されたことが確認できた。
【0185】
9.2.Cytodex3マイクロキャリアからの剥離
細胞(CD29++Bio8.1ブタ筋細胞として例示)の付着が固体キャリア(Cytodex3マイクロキャリアとして例示)上で観察された。細胞対ビーズ比約13を含有するウェルは、37℃および5%CO2で48時間インキュベーション後にコンフルエントになった。CD29++Bio8.1の場合、好適な細胞対ビーズ比は7以上であると定性的に決定できる。CD29++Bio8.1の剥離は、15mMクエン酸ナトリウム/Ca2+およびMg2+を含まない570mOsm/LPBSを使用して行った。CD29++ブタ筋細胞を、15mMクエン酸ナトリウム/Ca2+およびMg2+を含まない570mOsm/LPBS溶液を使用して、Cytodex3マイクロキャリアから剥離した。例えば、CD29+ブタ筋細胞などの細胞は、Cytodex1などの異なるマイクロキャリアに付着可能であり、剥離可能であることが科学的に合理的であると予想される。
【0186】
実施例11細胞パルプ処理(Cell pulp processing)
凍結乾燥した肉細胞含有材料(鶏肉細胞含有物材料として例示)のタンパク質可溶化挙動を、異なる条件下で実施した。
【0187】
1.材料および方法
凍結乾燥した鶏肉サンプルを乳鉢で微粉状にし、250mLガラスビーカーに保存した。
酢酸(CAS7647-01-0)、
酢酸ナトリウム(CAS127-09-3)、
リン酸一ナトリウム(CAS10028-24-7)、
リン酸二ナトリウム(CAS13472-35-0)、および
塩化ナトリウム(CAS 7647-14-5)。
【0188】
凍結乾燥肉の溶解度を、以前の分析に基づいて、以下の要因および濃度を使用して試験した:0.2~1MのNaCl、2~10重量%のグルコース、pH範囲4~8(0.05M)。
【0189】
DesignExpert13ソフトウェアの試用版を使用して、行列を作成し、デザインは、表5に示すとおり、2回の反復および3つの中心点を有する完全実施要因23である。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0190】
チキンパウダーの可溶化
タンパク質の溶解度を試験するために、一例として、文献報告に基づいて、肉粉末の濃度100mg/mLを選択した。約500mgの粉末を表5(上記参照)に従って、5mLの溶液に均質化した。この溶液を軽くボルテックスし、チューブローテーター中で1時間ホモジナイズした。ホモジナイゼーションには、速度14rpmのチューブローテーターStuart Tube Rotator SB3を使用した。ホモジナイゼーション後、チューブを遠心分離し、ブラッドフォードアッセイのために500μLの上清を収集した。遠心分離には、5810Rエッペンドルフ遠心分離機を、相対遠心力(RCF)3214、4℃、10分間で使用した。
【0191】
ブラッドフォードアッセイ
Quick Start(商標)Bradfordタンパク質アッセイを、96ウェルプレートで実施した。手順は、アッセイキットの製造業者(Bio Rad)の取扱説明書に従って実施した。サンプルは、ブラッドフォードアッセイのタンパク質限界検出濃度の要件を満たすように適切に希釈した。タンパク質濃度の結果をさらに分析した。結果を、表9に示す。
【0192】
2.結果
【表10】
【0193】
3.結論
結果を、信頼区間の95%で示した。NaCl濃度は、細胞含有材料の溶解度に影響を与え得る。
【0194】
実施例12生体適合性および毒性の欠如
本発明による細胞ベース材料は、いかなる毒性効果も有することなく、生体適合性であり、したがって摂取可能であることが保証された。この目的のために、本発明による組成物(ここでは「液体肉」)の様々な製造段階における毒性を評価するための細胞アッセイを確立した。標準3T3げっ歯類細胞の代わりに、薬物代謝および肝毒性の試験に一般的に使用される、肝臓組織から単離されたヒトHepG2細胞を使用した。細胞傷害性および細胞生存率を測定するために、2つの異なるアッセイを評価した。
【0195】
ニュートラルレッドアッセイは、3T3細胞の文脈において、EURL ECVAMによって検証されている確立された方法である。これは、生存細胞のリソソームを染色するユーロジン染料をベースにした細胞アッセイである。
【0196】
CellTiter Gloアッセイは、Promegaが商品化した生存率アッセイである。この細胞アッセイは、細胞生存率と相関し得るATPの量を定量化する。
【0197】
両方のアッセイを、DNAとインターカレートし、DNA転写に必須の酵素であるトポイソメラーゼIIIを阻害する強力な化学療法剤であるドキソルビシンを使用して設定した。
【0198】
次のステップとして、本発明による組成物の初期製造ステップ(ここでは「液体肉」)を使用する、再置換された凍結乾燥細胞溶解物の毒性を試験した。このサンプルは、それ以上加工されなかったため、不溶性細胞分画を大量に含有した。
【0199】
1.材料および方法
細胞培養
HepG2細胞は、ATCC(HB-8065)から提供され、10%FBSを補充したDMEMで培養し、37℃、5%CO2に設定されたインキュベーター中で成長させた。両方のアッセイに関して、96ウェルプレートにおいて中央の32個のウェルのみを使用して、5,000個/ウェルの細胞を播種した。HepG2細胞は、本質的に凝集するため、細胞量を適切に測定できず、アッセイ間でばらつきが生じた。IDOTを使用して、細胞を0.2μLの細胞量で播種した18時間後に、様々な濃度のドキソルビシンを添加した。化合物を添加して2日後に細胞を加工した。
【0200】
成長曲線の時点を3時間ごとに測定し、IncuCyteを使用して、1ウェルあたり4枚の画像を記録した。
【0201】
ニュートラルレッドアッセイ
ニュートラルレッドアッセイキット-細胞生存率/細胞傷害性(ab234039、Abcam)を使用した。キットのすべての溶液を等分し、推奨どおり-20℃で保存した。実験当日、20mMドキソルビシン、洗浄液、可溶化液、ニュートラルレッド染色液のアリコートを室温(RT)で解凍し、製造業者の説明書に従って調製した。細胞培地を除去し、細胞を200μLの1x洗浄液で洗浄した。150μLの1xニュートラルレッド染色溶液を添加後、細胞をインキュベーター内で2時間染色した。細胞を250μLの1x洗浄液で洗浄し、プレート上に液体が見えなくなるまで、約10分間風乾させた。150μLの1x可溶化液を添加後、プレートを500rpm、室温で20分間振盪させた。次に、96ウェルプレートをマイクロプレートリーダーで、OD540nmで読み取った。
【0202】
Cell Titer Gloアッセイ
CellTiter-Glo2.0細胞生存率アッセイ(G9242、Promega)を使用した。溶液を解凍し、推奨どおり4℃で保存した。細胞培地を除去し、細胞を100μLのPBSで2回洗浄した。最後の洗浄後、50μLのPBS、次いで50μLのCellTiter-Glo2.0試薬を添加した。96ウェルプレートをオービタルシェーカーで2分間混合し、室温で10分間インキュベートした。発光を、1.000msの積分時間を使用して、マイクロプレートリーダーで記録した。両方のアッセイにおいて、用量反応実験データを、Prismを使用して、「Log(アゴニスト)vs反応-可変傾斜(4つのパラメータ)」の式にフィットさせた。Cell TiterGloアッセイの用量反応曲線では、2つのデータポイントを外れ値として削除した。
【0203】
2.結果
ニュートラルレッドアッセイは、0.079μMのIC50を示したのに対し、CellTiter Glo2.0は、0.116μMのIC50を示した。これは、HepG2細胞を用いたニュートラルレッドアッセイの取扱説明書に記載されている0.69μMという予想文献値よりも高いが、細胞アッセイで、この程度の変動が示されることも予想外ではない。結果を、図5に示す。
【0204】
結果として、粒子がユーロジン染料に干渉したため、ニュートラルレッドアッセイを使用して毒性を評価することができなかった。CellTiter Gloは、より成功しており、細胞数に応じて、最大100μgの細胞溶解物までの細胞生存率を評価することができた(図6を参照)。毒性作用は、観察されなかった。不溶性画分が、本発明による組成物(ここでは「液体肉」)の不可欠な特徴を構成し、濾過または遠心分離によって除去されない場合、アッセイ中の細胞数を慎重に調節し、最終的な細胞溶解物濃度が100μg未満であれば、CellTiter Gloアッセイを使用することができる。
【0205】
要約すると、毒性を評価するための異なる方法論を備えた2つのアッセイを設定したが、両方とも、大きく調節することなく、低小分子の毒性を評価するために使用できる。前者は精製されていない細胞溶解物中の毒性を検出できないが、後者は、慎重に調節した場合に、最大100μgのタンパク質細胞溶解物との適合性を示す。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2025-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用栄養組成物を調製するための方法であって、
(i)目的の増殖中の非ヒト動物細胞を、細胞の細胞数が少なくとも2倍以上増殖するまで、in vitroで培養するステップと;
(ii)前記細胞を採取して、細胞由来材料を得るステップと;
(iii)ステップ(ii)で採取した前記細胞からの前記細胞由来材料を腐敗しないように保存するステップと;
(iv)任意により、ステップ(iii)の前記細胞由来材料を、1つ以上のビタミン、1つ以上のミネラル、1つ以上の芳香化合物、1つ以上の食品着色料、1種以上の繊維、エタノール、酢酸、炭酸、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のさらなる消費可能な成分と混合するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(i)が、動物由来血清の非存在下で行われる培養するステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(iii)が、前記細胞由来材料を粉末に加工することを含み、好ましくは、前記細胞由来材料を粉末に加工することが、液体内容物を少なくとも部分的に除去することによって得られ、特に、前記細胞由来材料を粉末に加工することが、凍結乾燥によって得られる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(iii)が、低温殺菌を含み、好ましくは、ステップ(ii)で採取された前記細胞からの前記細胞由来材料は、なおも細胞培養培地を含有し、液体またはペースト状の組成物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記食用栄養組成物が、
(a)飲料用組成物であって、特に、目的の前記細胞由来の死滅材料:目的の生存細胞の質量比が少なくとも2:1以上である、飲料用組成物;
(b)水溶液および水に懸濁可能な粉末または顆粒であって、特に、目的の前記細胞由来の死滅材料:目的の生存細胞の質量比が少なくとも2:1以上である、水溶液および水に懸濁可能な粉末または顆粒;または
(c)細胞培養培地および生細胞および/または死細胞を含む液体またはペースト状の組成物であって、好ましくは、ステップ(ii)からの細胞由来材料が、先行するステップ(i)で前記細胞が培養された細胞培養培地を含有し、特に、前記液体またはペースト状の組成物が低温殺菌されている、細胞培養培地および生細胞および/または死細胞を含む液体またはペースト状の組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記目的の細胞が、
心筋細胞もしくはその前駆細胞、特に衛星細胞;
脂肪細胞もしくはその前駆細胞;
肝細胞もしくはその前駆細胞;
誘導多能性幹細胞;
非ヒト胚性幹細胞;
またはそれらの2つ以上の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記目的の細胞が、初代細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記目的の細胞が、長期細胞培養の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(i)で培養された細胞の含有比率およびタイプを調節して、目的の定義された栄養素含有量、特に目的の定義されたタンパク質含有量を得るステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(ii)が、クエン酸塩、特にクエン酸ナトリウムを含有する溶液を採取すべき細胞に投与することを含む、請求項1または9に記載の方法。
【請求項11】
クエン酸塩を含有する前記溶液が、緩衝液、特にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記クエン酸塩を含有する前記溶液を、前記細胞を洗い流す前に2~20分、5~10分、または10~15分間前記細胞に投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(ii)が、好ましくは遠心沈降、濾過、透析、または接着細胞のすすぎ洗い、特に遠心沈降および1つ以上の緩衝液による任意の洗浄ステップによって、細胞培養培地を除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(ii)が、細胞培養培地の少なくとも一部を維持することおよび低温殺菌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(iv)が、
全食用栄養組成物を基準として、少なくとも0.01重量%、少なくとも1つの食品着色料;
発泡性飲料を得るために、全食用栄養組成物を基準として、少なくとも0.2重量%の炭酸;
全食用栄養組成物を基準として、少なくとも5容積%のエタノール;
全食用栄養組成物を基準として、少なくとも0.01重量%の少なくとも1つの医薬活性成分;または
2つ以上の組み合わせを添加すること含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記食用栄養組成物が、飲料用組成物であり、ステップ(iii)が、前記細胞由来材料を粉末に加工することを含み、前記方法が、粉末を水性液体、特にミネラル水または水道水に懸濁するさらなるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
(a)前記食用栄養組成物を発酵させるステップ;
(b)前記食用栄養組成物を燻製にするステップ;
(c)食品を、前記食用栄養組成物を含む組成物によって、好ましくは、1種以上のさらなる成分、例えば、前記組成物を基準として少なくとも1重量%の塩化ナトリウム、前記組成物を基準として少なくとも1重量%の1種以上の糖、前記組成物を基準として少なくとも1重量%の酢酸、前記組成物を基準として少なくとも0.5重量%のエタノール、または前記組成物を基準として少なくとも5重量%の1種以上の食用油と組み合わせて漬けるステップ;および/または;
(d)前記食用栄養組成物を増粘して、シロップを得るステップであって、特に、砂糖および/または他の甘味料を添加して甘いシロップを得るステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
好ましくは、前記得られる栄養組成物が、
(a)飲料用組成物;
(b)粉末または顆粒組成物;
(c)ゲル;または
(d)凍結または部分的に凍結した組成物を特徴とし、
前記食用栄養組成物が、任意によりカプセルの充填物の一部を形成してもよく、任意により飲料、乳製品、非乳製品クリーム、ソース、またはベーカリー製品の一部を形成してもよい、請求項1に記載の方法から得られる食用栄養組成物。
【請求項19】
嚥下障害を患う患者を処置する方法に使用するための請求項18に記載の食用栄養組成物。
【請求項20】
前記患者に、経腸栄養、飲料用食用栄養組成物を嚥下すること、またはそれらの組み合わせによって、前記食用栄養組成物を投与する、請求項19に記載の使用のための食用栄養組成物。
【請求項21】
嚥下障害を患う患者を処置する方法であって、前記患者に請求項18に記載の食用栄養組成物を十分な量、経腸栄養により投与する方法。
【請求項22】
前記患者に、経腸栄養、飲料用食用栄養組成物を嚥下すること、またはそれらの組み合わせによって、前記食用栄養組成物を投与する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
明確に定義された栄養組成物、特に明確に定義されたタンパク質組成物を消費者に提供するための、請求項18に記載の食用栄養組成物の使用。
【国際調査報告】