(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】試料の生体内全視野干渉撮像のための撮像装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20250130BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 630
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543076
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2023051400
(87)【国際公開番号】W WO2023139226
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524270224
【氏名又は名称】シャープアイ
【氏名又は名称原語表記】SHARPEYE
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】マズリン、ヴャチェスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ボッカラ、アルベール クロード
(72)【発明者】
【氏名】ベン アイサ、 アフマド
(72)【発明者】
【氏名】グリエブ、カトリーヌ フランセス
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】サヘル、ジョゼ-アラン
(72)【発明者】
【氏名】フィンク、マティアス アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
2G059
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF02
2G059GG01
2G059GG09
2G059HH01
2G059JJ15
2G059JJ22
2G059LL01
2G059MM01
2G059MM10
4C316AA03
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB03
4C316AB04
4C316AB11
4C316AB17
4C316FA06
4C316FA07
4C316FB21
4C316FB23
4C316FY01
4C316FY05
4C316FY06
(57)【要約】
本発明は、試料の生体内全視野干渉撮像のための撮像装置(2)に関し、撮像装置が、-低い空間コヒーレンスと低い時間的コヒーレンス長を有し、プローブビーム(20)を出力するように構成された一次光源(14);-試料アーム(26);・参照反射面(30)からなる参照アーム(28)、・一次ビームスプリッタ(24)を少なくとも備えてなる一次干渉計(16);-一次干渉計(16)によって提供され、試料アーム(26)に配置された試料を代表する少なくとも1つの干渉画像を取得するように構成されたカメラ(18);-試料アームに配置された試料ビームスプリッタ(19);を備える全視野OCTイメージングシステム(8)と、試料アームの外側に配置され、試料ビームスプリッタ(19)と交差する検出軸を有する試料位置検出システム(10)であって、検出軸に沿って試料の位置を代表する位置信号を出力するように構成された試料位置検出システムとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱試料(4)の生体内全視野干渉撮像のための撮像装置(2)であって、当該撮像装置(2)が:
前記試料の正面画像を代表する少なくとも1つの干渉画像を提供するための全視野OCTイメージングシステム(8)を備えてなり、当該全視野OCTイメージングシステム(8)が:
- 低い空間コヒーレンスと低い時間的コヒーレンス長を有し、プローブビーム(20)を出力するように構成された一次光源(14);
- 一次干渉計(16)であって、
・ 試料(4)を受けるための試料アーム(26)、
・ 参照反射面(30)を備えた参照アーム(28)、
・ 前記試料アーム(26)と前記参照アーム(28)を分離するための一次ビームスプリッタ(24)
を少なくとも備えた一次干渉計(16):
- 少なくとも1つの干渉画像を取得するように構成されたカメラ(18)であって、
各干渉画像が、前記試料(4)が前記試料アーム(26)内に配置されたときに、撮像フィールドの各点で生じる干渉から生じる一次光干渉信号を代表するものであり、当該干渉が
・ 前記プローブビーム(20)の入射光波の、前記撮像フィールドの前記点に共役な前記参照反射面(30)の基本面上での反射によって得られる参照波と
・ 前記プローブビーム(20)の入射光波が、所定の深さにおける試料(4)のスライスの基本体積で散乱されることによって得られる試料波であって、前記基本体積が、撮像フィールドの前記点に共役である、試料波と
の間で発生するものであるカメラ(18);
とを備え、
当該撮像装置(2)が、さらに、
- 前記一次光源(14)から前記一次ビームスプリッタ(24)に向かう方向において、前記一次ビームスプリッタ(24)の下流側で、前記試料アーム(26)に配置された試料ビームスプリッタ(19);
- 前記試料アーム(26)の外側に配置された試料位置特定システム(10)であって、試料位置特定システム(10)が、試料ビームスプリッタ(19)と交差するそれぞれの検出軸(Δ)を有し、試料位置特定システム(10)が、検出軸(Δ)に沿った試料(4)の位置を代表する位置信号を出力するように構成される試料位置特定システム(10)
を備えることを特徴とする、撮像装置(2)。
【請求項2】
試料位置特定システム(10)が光学式試料位置特定であり、試料位置特定システム(10)の検出軸(Δ)が光軸である、請求項1記載の撮像装置(2)。
【請求項3】
試料ビームスプリッタ(19)がダイクロイックミラーである、請求項2に記載の撮像装置(2)。
【請求項4】
前記参照アーム(28)において、前記一次ビームスプリッタ(24)と前記参照反射面(30)との間に配置された、参照ビームスプリッタ(33)をさらに備え、前記参照ビームスプリッタ(33)が、前記試料ビームスプリッタ(19)と同じ光学特性を有する、請求項2または3に記載の撮像装置(2)。
【請求項5】
前記参照ビームスプリッタ(33)が前記試料ビームスプリッタ(19)と同一であり、前記参照ビームスプリッタ(33)および前記試料ビームスプリッタ(19)が、それぞれを伝搬する前記プローブビーム(20)の光波の伝搬方向に対して相対的に同様の方向を有する、請求項4に記載の撮像装置(2)。
【請求項6】
前記光学試料位置特定システム(10)が、前記全視野OCT撮像システム(8)によって取得された各干渉画像について、前記干渉画像の取得時における前記試料(4)の少なくとも1つの断面画像を決定するように構成されたOCT撮像システムを含む、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の撮像装置(2)。
【請求項7】
前記OCT撮像システム(10)が、
- 位置ビーム(51)を出力するように構成された二次光源(46);
- 二次干渉計(48)であって、
・ 前記試料(4)を受けるための二次試料アーム(56)であって、当該二次試料アーム(56)の光軸が前記光学式試料位置決めシステム(10)の光軸である、二次試料アーム(56)と、
・ 二次反射鏡(66)からなる二次参照アーム(58)と、
・ 前記二次試料アーム(56)と前記二次参照アーム(58)を分離するための二次ビームスプリッタ(54)と
を備えた二次干渉計(48);
- 前記位置信号を出力するように構成された検出器(50)であって、前記試料(4)が前記二次試料アーム(56)に配置されたときに、前記位置信号が、
・ 二次反射鏡(66)での位置ビームの入射光波の反射によって得られる二次参照波と
・ ロケーションビームの最初の部分が、ロケーションビーム(51)の最初の部分の伝搬方向に沿って位置する試料(4)の体積によって散乱されることによって得られる二次試料波
の間に干渉から生じる結果としての二次光干渉信号を代表するものである、検出器(50):
を含む、請求項6に記載の撮像装置(2)。
【請求項8】
前記全視野OCT撮像システム(8)が、前記一次光源(14)から前記一次ビームスプリッタ(24)に向かう方向において、前記一次ビームスプリッタ(24)の下流側で、前記試料アーム(26)内に配置された第1のレンズ系(34)を含み、前記OCT撮像システムが、さらに、
- 位置ビーム(51)を偏向させるための光偏向素子(74)を含むビームスキャナ(70)であって、当該ビームスキャナ(70)が、前記二次試料アーム(56)において、前記試料ビームスプリッタ(19)と前記二次ビームスプリッタ(54)との間に配置されている、ビームスキャナ(70);
- 4F構成で配置された2つのレンズを含む共役装置(53)であって、前記第1レンズ系(34)の後側焦点面が共役装置(53)の第1焦点面(F1)と一致し、前記光偏向素子(74)が前記共役装置(53)の第2焦点面(F2)に配置される、共役装置(53);
とを含む、請求項7に記載の撮像装置(2)。
【請求項9】
前記一次干渉計(16)の前記試料アーム(26)に配置された少なくとも1つの補償レンズおよび/または可変形レンズおよび/または可変焦点レンズ(45)をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の撮像装置(2)。
【請求項10】
取得された各干渉画像および対応する位置信号に基づいて、前記試料(4)の少なくとも1つの正面画像を決定するように構成された処理ユニット(12)をさらに備える、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の撮像装置(2)。
【請求項11】
前記処理ユニット(12)が、各正面画像に対してノイズ除去を実行するようにさらに構成され、当該ノイズ除去が、前記正面画像を、Noise2Noiseモデルであって、
- 前記全視野OCTイメージングシステム(8)を用いて、少なくとも1つのトレーニング用正面画像セットを取得し、ここで各トレーニング用正面画像セットが、トレーニング用試料(4)の同じセクションの異なる取得時間における第1の正面画像と第2の正面画像とが含まれ;
- 各トレーニングセットについて、Noise2Noiseモデルに前記第1の正面画像を入力として提供し、前記第2の正面画像をターゲット出力として提供する
ことにより予め学習させたNoise2Noiseニューラルネットワークに提供することを含む、請求項10に記載の撮像装置(2)。
【請求項12】
散乱試料(4)の生体内全視野干渉イメージング方法であって、該方法が、
- 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の全視野OCTイメージングシステム(8)の試料アーム(26)に試料(4)を配置し;
- 検出軸に沿った前記試料(4)の位置を時間的に代表する少なくとも1つの位置信号を取得し;
- 各位置信号に基づいて、時間経過に伴う試料(4)の位置を決定し;
- 決定された試料の位置に基づいて、試料の撮像されたスライスの位置を調整することを含んでなる、方法。
【請求項13】
前記試料(4)が、被験者の生体内眼球である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記全視野OCT撮像システム(8)の前記試料アーム(26)が、前記プローブビーム(20)を眼の角膜(6)上または網膜(7)上に集束させるように構成された第1のレンズシステム(34)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Noise2Noiseニューラルネットワークをトレーニングさせる工程をさらに含んでなり、当該工程が
- 前記全視野OCTイメージング・システム(8)を用いて、少なくとも1つのトレーニング用正面画像セットを取得し、ここで各トレーニング用正面画像セットが、トレーニング用試料の同じセクションの異なる取得時間における第1の正面画像と第2の正面画像とが含まれ;
- 各トレーニングセットについて、Noise2Noiseモデルに前記第1の正面画像を入力として提供し、前記第2の正面画像をターゲット出力として提供することを含み、
さらに
- 取得された各干渉画像と対応する位置信号に基づいて、現在の試料(4)の少なくとも1つの正面画像を決定し、
- 各決定された正面画像が、ノイズ除去のために当該訓練されたNoise2Noiseニューラルネットワークに提供されること
を含む、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱試料を生体内で全視野干渉イメージングするイメージング装置に関する。
【0002】
本発明は、生体内撮像の分野に関し、より詳細には眼科組織の生体内撮像に関する。
【背景技術】
【0003】
光干渉断層計(OCT)は、強力なイメージング・モダリティとなった干渉計技術である。OCTは広範な分野で応用されており、特に眼科、皮膚科、心臓血管分野、消化器科などの生物医学分野での応用が多い。光コヒーレンストモグラフィには、例えば全視野OCTがある。
【0004】
例えば、文献 WO2020/065068A1には、眼科組織の生体内撮像用に設計された全視野OCT用撮像装置が開示されている。
【0005】
イメージング装置は、全視野OCT(FF-OCT)システムを含む。さらに、この装置で実施される撮像技術は、FF-OCTシステムの光源によって放射されるプローブビームによって照射されたときに試料(すなわち、生物学的試料の場合には、当該試料の微視的な細胞及び組織構造)によって後方散乱される光の使用に基づいており、当該光源は、低い空間的及び時間的コヒーレンス長を有する。試料は、典型的には、被験者の眼である。
【0006】
顕微鏡対物レンズは、光源からの光を試料、特に角膜に集束させるために、試料の前に設置される。あるいは、網膜撮像の場合、顕微鏡対物レンズは取り外され、眼球の角膜と水晶体によってプローブビームの網膜への集束が確保される。
【0007】
FF-OCTシステムは、ビームスプリッタによって分離された参照アームと試料アームとを含む干渉計をさらに備える。この場合、試料は干渉計の試料アームに配置される。干渉計の存在により、干渉現象によって、試料体積の所定のスライスから選択的に発生する光を代表する干渉光信号を生成し、試料の残りの部分から発生する光を除去することが可能になる。これは、光源の時間的コヒーレンスが低いため、試料内の深さ方向の仮想スライスで後方散乱された光を分離することができるためである。
【0008】
FF-OCTシステムは、干渉光信号を代表する2次元干渉画像を経時的に撮影するカメラをさらに含む。
【0009】
次に、光干渉信号に基づいて取得された干渉画像を処理することにより、少なくとも1つのFF-OCT画像を取得することができ、前記FF-OCT画像は、試料の正面画像、すなわち、試料アームの光軸に直交する平面における試料の画像である。
【0010】
さらに、眼球の位置を追跡するために、スペクトル領域OCT(SD-OCT)システムが提供される。このSD-OCTシステムは二次光源を含み、その二次ビームはプローブビームに沿って伝播し、試料に衝突するようにFF-OCT装置の照明アームを通して結合される。二次ビームによる照明に応答して試料によって後方散乱された光子の分析により、試料の位置をリアルタイムで知ることができる。眼球の位置を知ることで、眼球の動き(特にプローブビームの伝播方向)をリアルタイムで補正することができる。
【0011】
さらに、スキャナーを使って二次ビームをスキャンすることで、試料の断面も見ることができる。
【0012】
しかし、このような撮像装置は十分に満足できるものではない。
【0013】
実際、このような撮像装置では、複数の光学素子が共有されているため、FF-OCTシステムとSD-OCTシステムは強く相互関連しており、このような装置の組み立てとアライメントは非常に困難である。
【0014】
さらに、このような既知のアーキテクチャでは、SD-OCTシステムのスキャナーは、顕微鏡対物レンズから遠く(典型的には30cm)に位置している。その結果、プローブビームの伝搬方向に対して小さな角度で伝搬する光のみが顕微鏡対物レンズの入射瞳に入射する。その結果、SD-OCTシステムが提供する断面画像は、横方向(すなわち、干渉計の試料アームにおけるプローブビームの伝搬方向と直交する方向)に数百ピクセルしかない。この結果、SD-OCTシステムは、満足できない品質のSD-OCT画像を提供することになる。さらに、このようなSD-OCTシステムは、視野が小さい(約1mm)。
【0015】
さらに、このような構成では、 スキャナーは対物レンズの後側焦点面に光学的に共役していない 。その結果、二次ビームは試料表面に対して垂直に入射しないため、SD-OCT画像は低シグナルとなる。その結果、断面のS/N比が低すぎて、眼球層の健康状態をリアルタイムで評価することができない。
【0016】
さらに、このような公知の装置では、対物レンズの後側焦点面に対するスキャナーの共役を達成することは非常に非現実的である。実際、SD-OCTシステム側に4Fセットアップを追加すれば、そのような共役を実現できるとしても、FF-OCTシステムにおけるSD-OCTビームの経路が長くなる(約20cm)ため、4Fセットアップが許容できないほど長くなり(約80cm)、商業的利用が困難になる。
【0017】
さらに、SD-OCTシステムは、FF-OCT装置の照明アームを介して結合されているため、前記FF-OCT装置の干渉計に配置されたビームスプリッタは、SD-OCTシステムによって出力された二次ビームが試料に直接入射する場合に比べて、SD-OCTシステム側で75%の信号損失を引き起こす。これは、試料の高品質な断面画像の計算や、移動する試料の正確な位置決めに不利である。
【0018】
本発明の目的は、このような問題を克服した画像形成装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0019】
この目的のために、本発明は、前述のタイプの撮像装置であって:
前記試料の正面画像を代表する少なくとも1つの干渉画像を提供するための全視野OCTイメージングシステムを備えてなり、当該全視野OCTイメージングシステムが:
- 低い空間コヒーレンスと低い時間的コヒーレンス長を有し、プローブビームを出力するように構成された一次光源;
- 一次干渉計であって、
・ 試料を受けるための試料アーム、
・ 参照反射面を備えた参照アーム、
・ 前記試料アームと前記参照アームを分離するための一次ビームスプリッタ
を少なくとも備えた一次干渉計:
- 少なくとも1つの干渉画像を取得するように構成されたカメラであって、
各干渉画像が、前記試料が前記試料アーム内に配置されたときに、撮像フィールドの各点で生じる干渉から生じる一次光干渉信号を代表するものであり、当該干渉が
・ 前記プローブビームの入射光波の、前記撮像フィールドの前記点に共役な前記参照反射面の基本面上での反射によって得られる参照波と
・ 前記プローブビームの入射光波が、所定の深さにおける試料のスライスの基本体積で散乱されることによって得られる試料波であって、前記基本体積が、撮像フィールドの前記点に共役である、試料波と
の間で発生するものであるカメラ;
とを備え、
当該撮像装置が、さらに、
- 前記一次光源から前記一次ビームスプリッタに向かう方向において、前記一次ビームスプリッタの下流側で、前記試料アームに配置された試料ビームスプリッタ;
- 前記試料アームの外側に配置された試料位置特定システムであって、試料位置特定システムが、試料ビームスプリッタと交差するそれぞれの検出軸(Δ)を有し、試料位置特定システムが、検出軸(Δ)に沿った試料の位置を代表する位置信号を出力するように構成される試料位置特定システム
を備える。
【0020】
実際、このような構造により、全視野OCTイメージングシステムと試料位置検出システムが最小限のコンポーネント(すなわち、試料ビームスプリッタ)を共有し、これら2つのシステムが光学的にほぼ独立したものとなる。これにより、製造、組み立て、メンテナンスが容易になる。
【0021】
さらに、このような設計では、試料位置決めシステムと試料との間の距離が非常に短いため、試料位置決めシステムと試料内の焦点面との間の光学的共役が改善され、走査角の方向が垂直に近くなり、信号が改善される。
【0022】
さらに、この設計により、最高の光学性能と信号を得るために、ビームスキャナと試料の間に短いフットプリントを持つ共役デバイスを構築することができる。その結果、試料のスキャニングを非常に正確に行うことができ、試料の位置決めがしやすくなる。さらに、より大きな視野(約4~5mm)が得られる。
【0023】
さらに、試料位置検出システムは全視野OCTイメージングシステムの照明アームを介して結合されていないため、前述の試料位置検出システム側の信号の低下は生じない。
【0024】
本発明の他の有利な態様によれば、撮像装置は、単独で又は技術的に可能な任意の組み合わせで、以下の特徴の1つ以上を含む:
【0025】
試料位置特定システムが光学式試料位置特定であり、試料位置特定システムの検出軸(Δ)が光軸である。
【0026】
試料ビームスプリッタがダイクロイックミラーである。
【0027】
前記参照アームにおいて、前記一次ビームスプリッタと前記参照反射面との間に配置された、参照ビームスプリッタをさらに備え、前記参照ビームスプリッタが、前記試料ビームスプリッタと同じ光学特性を有する。
【0028】
前記参照ビームスプリッタが前記試料ビームスプリッタと同一であり、前記参照ビームスプリッタおよび前記試料ビームスプリッタが、それぞれを伝搬する前記プローブビームの光波の伝搬方向に対して相対的に同様の方向を有する。
【0029】
前記光学試料位置特定システムが、前記全視野OCT撮像システムによって取得された各干渉画像について、前記干渉画像の取得時における前記試料の少なくとも1つの断面画像を決定するように構成されたOCT撮像システムを含む。
【0030】
前記OCT撮像システムが、
- 位置ビームを出力するように構成された二次光源;
- 二次干渉計であって、
・ 前記試料を受けるための二次試料アームであって、当該二次試料アームの光軸が前記光学式試料位置決めシステムの光軸である、二次試料アームと、
・ 二次反射鏡からなる二次参照アームと、
・ 前記二次試料アームと前記二次参照アームを分離するための二次ビームスプリッタと
を備えた二次干渉計;
- 前記位置信号を出力するように構成された検出器であって、前記試料が前記二次試料アームに配置されたときに、前記位置信号が、
・ 二次反射鏡での位置ビームの入射光波の反射によって得られる二次参照波と
・ ロケーションビームの最初の部分が、ロケーションビームの最初の部分の伝搬方向に沿って位置する試料の体積によって散乱されることによって得られる二次試料波
の間に干渉から生じる結果としての二次光干渉信号を代表するものである、検出器:
を含む。
【0031】
前記全視野OCT撮像システムが、前記一次光源から前記一次ビームスプリッタに向かう方向において、前記一次ビームスプリッタの下流側で、前記試料アーム内に配置された第1のレンズ系を含み、前記OCT撮像システムが、さらに、
- 位置ビームを偏向させるための光偏向素子を含むビームスキャナであって、当該ビームスキャナが、前記二次試料アームにおいて、前記試料ビームスプリッタと前記二次ビームスプリッタとの間に配置されている、ビームスキャナ;
- 4F構成で配置された2つのレンズを含む共役装置であって、前記第1レンズ系の後側焦点面が共役装置の第1焦点面と一致し、前記光偏向素子が前記共役装置の第2焦点面(F2)に配置される、共役装置;
とを含む。
【0032】
前記一次干渉計の前記試料アームに配置された少なくとも1つの補償レンズおよび/または可変形レンズおよび/または可変焦点レンズをさらに備える。
【0033】
取得された各干渉画像および対応する位置信号に基づいて、前記試料の少なくとも1つの正面画像を決定するように構成された処理ユニットをさらに備える。
【0034】
前記処理ユニットが、各正面画像に対してノイズ除去を実行するようにさらに構成され、当該ノイズ除去が、前記正面画像を、Noise2Noiseモデルであって、
- 前記全視野OCTイメージングシステムを用いて、少なくとも1つのトレーニング用正面画像セットを取得し、ここで各トレーニング用正面画像セットが、トレーニング用試料の同じセクションの異なる取得時間における第1の正面画像と第2の正面画像とが含まれ;
- 各トレーニングセットについて、Noise2Noiseモデルに前記第1の正面画像を入力として提供し、前記第2の正面画像をターゲット出力として提供する
ことにより予め学習させたNoise2Noiseニューラルネットワークに提供することを含む。
【0035】
本発明はさらに散乱試料の生体内全視野干渉イメージング方法であって、該方法が、
- 上で規定した全視野OCTイメージングシステムの試料アームに試料を配置し;
- 検出軸に沿った前記試料の位置を時間的に代表する少なくとも1つの位置信号を取得し;
- 各位置信号に基づいて、時間経過に伴う試料の位置を決定し;
- 決定された試料の位置に基づいて、試料の撮像されたスライスの位置を調整することを含んでなる。
【0036】
本発明の他の有利な態様によれば、撮像方法は、単独で、または技術的に可能な任意の組み合わせで、以下の特徴の1つ以上を含む。
【0037】
前記試料が、被験者の生体内眼球である。
【0038】
前記全視野OCT撮像システムの前記試料アームが、前記プローブビームを眼の角膜上または網膜上に集束させるように構成された第1のレンズシステムを含む。
【0039】
Noise2Noiseニューラルネットワークをトレーニングさせる工程をさらに含んでなり、当該工程が
- 前記全視野OCTイメージングシステムを用いて、少なくとも1つのトレーニング用正面画像セットを取得し、ここで各トレーニング用正面画像セットが、トレーニング用試料の同じセクションの異なる取得時間における第1の正面画像と第2の正面画像とが含まれ;
- 各トレーニングセットについて、Noise2Noiseモデルに前記第1の正面画像を入力として提供し、前記第2の正面画像をターゲット出力として提供することを含み、
さらに
- 取得された各干渉画像と対応する位置信号に基づいて、現在の試料の少なくとも1つの正面画像を決定し、
- 各決定された正面画像が、ノイズ除去のために当該訓練されたNoise2Noiseニューラルネットワークに提供されることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明による撮像装置の第1の実施形態の概略図である。
【
図2】
図1の画像形成装置の4F共役デバイスの概略図である。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bはそれぞれ、
図1の撮像装置によって取得された角膜間質および海綿網膜の正面画像であり、
図3Cは
図1の撮像装置によって取得された角膜の断面画像である。
【
図4】
図1の撮像装置の処理部によって実行されるノイズ除去ステップの前後の正面画像の例である。
【
図5】本発明による撮像装置の第2の実施形態の概略図である。
【
図6】本発明による撮像装置の第3の実施形態の概略図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、本発明による撮像装置の第4の実施形態の概略図である。
【
図8】本発明による撮像装置の第5の実施形態の概略図である。本発明は、添付図によってよりよく理解されるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0041】
第一実施形態
本発明による撮像装置2が
図1に示される。
【0042】
撮像装置2は、散乱試料4、特に動く試料、典型的には被験者の眼の生体内撮像に特に適するものである。より正確には、撮像装置2は、試料4の全視野干渉撮像のために構成される。
【0043】
特に、撮像装置2は、生体内眼球4の角膜6などの試料4の少なくとも一部の少なくとも1つの正面(en-face)画像(および、好ましくは、少なくとも1つの断面画像)を決定するように構成される。好ましくは、撮像装置2はまた、例えば、決定された正面画像および断面画像に基づいて、試料4の少なくとも一部の少なくとも1つの3D画像を提供するように構成される。
【0044】
撮像装置2は、全視野OCT撮像装置8(「FF-OCT撮像装置」ともいう)と、光学試料位置検出装置10と、処理装置12とから構成される。
【0045】
FF-OCT撮像システム8は、試料4の正面画像を代表する少なくとも1つの干渉画像を提供するように構成され、前記正面画像は処理ユニット12によって計算される。
【0046】
本発明によれば、試料4の正面画像は、試料4の深さ方向の断面の画像である。このような深さ方向の断面は、FF-OCT撮像システム8の光軸Z-Zに直交する平面による試料4の断面に対応する。
【0047】
さらに、光学試料位置特定システム10は、光軸Z-Zに沿った試料4の位置を代表する位置信号を出力するように構成されている。位置信号は、例えば、光スペクトル、または試料の動きを代表する変化を有する時間信号である。
【0048】
好ましくは、処理ユニット12はまた、位置信号に基づいて、試料4の少なくとも一部の少なくとも1つの断面画像を計算するように構成される。
【0049】
好ましくは、処理ユニット12はまた、正面画像および関連する断面画像の時間シーケンスに基づいて、試料4の少なくとも一部の少なくとも1つの3D画像を計算するように構成される。
【0050】
好ましくは、撮像装置2は、FF-OCT撮像システム8及び光学試料位置決めシステム10を搭載するための主可動プラットフォーム13(例えば、電動プラットフォーム、又は、オペレータによって手で制御される手動プラットフォーム)を更に備え、主可動プラットフォームは、FF-OCT撮像システム8及び光学試料位置決めシステム10を共同で並進させるように、3つの独立した(例えば、垂直な)方向に沿って移動可能である。
【0051】
FF-OCTイメージングシステム8
FF-OCTイメージングシステム8について説明する。
【0052】
FF-OCTイメージングシステム8は、一次光源14、一次干渉計16、カメラ18、および試料ビームスプリッタ19から構成される。
【0053】
一次光源14
一次光源14はプローブビーム20(図の破線)を出力するように構成されており、一次干渉計16の入力に配置されている。
【0054】
好ましくは、プローブビーム20のスペクトルは、[0.4μm;1μm]区間、さらに好ましくは[0.75μm;1μm]区間に属する波長に中心ピークを有する。
スダチ
【0055】
一次光源14は、低い空間コヒーレンス(波長の半分程度、例えば0.3の開口数を有する第2レンズ系36を使用する場合には1.5μmより低い)及び低い時間的コヒーレンス長(例えば20μm未満)を有する光源である。例えば、一次光源14は、熱光源(ハロゲンランプなど)、発光ダイオード、またはレーザーに続くモード混合マルチモードファイバである。
【0056】
好ましくは、光学素子22が一次光源14の出力に配置され、ケーラー照明を実現する。
【0057】
一次光源14は、当該一次光源14によって放射されたプローブビーム20が一次干渉計16の一次ビームスプリッタ24(後述)に到達するように配置され、それによって、その第1の部分が一次干渉計16の試料アーム26内を伝搬し、その第2の部分(プローブビーム20の第1の部分とは異なる)が一次干渉計16の参照アーム28内を伝搬する。
【0058】
プライマリ干渉計16
一次干渉計16は、前述の一次ビームスプリッタ24、試料アーム26、参照アーム28を含む。試料アーム26は試料4を受けるためのものである。
【0059】
一次干渉計16は、試料4が試料アーム26に配置されたときに、FF-OCT撮像システム8の撮像フィールドの各点において、試料アーム26から得られる試料波と参照アーム28から受信される参照波との間に生じる干渉から生じる一次光干渉信号を生成するように構成される。試料波及び参照波については、以下で更に説明する。
【0060】
一次光源14の時間的コヒーレンスが低いため、干渉現象は、一次干渉計16の試料アーム26と参照アーム28がミクロン精度(典型的には1~10ミクロン)で一致する場合にのみ起こる。本実施形態では、試料4が一次干渉計16の試料アーム26内に配置されると、干渉は数ミクロン厚の試料層からの反射光に対してのみ起こる。他の試料層からの反射光は、参照アーム28から来る参照光と干渉しない。
【0061】
好ましくは、
図1に示すように、一次干渉計16はリニク干渉計である。しかしながら、一次干渉計16は、マイケルソン干渉計のような他の適切なタイプの干渉計であってもよい。
【0062】
次に、一次干渉計16の各要素をより詳細に説明する。
【0063】
一次ビームスプリッタ24
試料アーム26と参照アーム28を分離する一次ビームスプリッタ24は、例えば非偏光スプリッタキューブである。
【0064】
試料アーム26
前述のように、試料アーム26は試料4を受けるためのものである。試料アームは、FF-OCTイメージングシステム8の光軸Z-Zを規定するそれぞれの光軸を有する。
【0065】
試料アーム26は、試料4が一次ビームスプリッタ24からプローブビーム20の前述の最初の部分を受けるように配置されている。
【0066】
さらに、前述の試料波は、試料4によるプローブビーム20の前記第1の部分の入射光波の散乱によって得られる。より正確には、撮像フィールドの各点において、対応する試料波は、試料4のスライスの基本体積による前記プローブビーム20の前記第1部分の入射光波の散乱(例えば、後方散乱)によって得られ、前記基本体積は、撮像フィールドの前記点に共役であり、全ての基本体積は、同じ所定の深さ、すなわち、光軸Z-Zに沿った同じ座標を有する。
【0067】
参照アーム28
参照アーム28は光軸X-Xを有し、参照反射面30を構成する。
【0068】
参照アーム28は、参照反射面30が一次ビームスプリッタ24から、プローブビーム20の前述した第2の部分を受光するように配置され、第1の部分とは区別される。
【0069】
この場合、前述の参照波は、参照反射面30上でのプローブビーム20の前記第2の部分の入射光波の反射によって得られる。より正確には、撮像フィールドの各点において、対応する参照波は、撮像フィールドの前記点に共役な参照反射面30の基本面上での前記プローブビーム20の前記第2の部分の入射光波の反射によって得られる。
【0070】
好ましくは、参照反射面30は平らである。例えば、参照反射面30は、金属ミラー、ニュートラルデンシティフィルターガラス、またはガラス板である。
【0071】
あるいは、参照反射面30は湾曲しており、好ましくは角膜の凸曲率に一致する曲率を有する。この特徴は、Z-Z軸に直交する平面内にあるのではなく、角膜の全細胞層を一度に表す正面画像をもたらすので有利である。
【0072】
有利には、参照反射面30は圧電ステージ32に取り付けられている。このような圧電ステージ32は、後に処理ユニット12に関連して説明するように、位相変調のために使用することができる。好ましくは、圧電ステージ32は[100Hz;10kHz]の範囲で動作するように構成される。
【0073】
カメラ18
カメラ18は一次干渉計16の出力に配置されている。
【0074】
カメラ18は、試料4が試料アーム26に配置されたときに、参照波と試料波との間の撮像フィールドにおける干渉から生じる前述の一次光干渉信号を代表する少なくとも1つの干渉画像を取得するように構成される。
【0075】
各干渉画像は2次元画像であり、一旦処理ユニット12によって処理されると、試料4の正面画像、すなわち、試料アーム28の光軸Z-Zに直交し、撮像フィールドに共役な平面における試料の画像を取得することができる。
【0076】
好ましくは、カメラ18は、試料4の動態、より具体的には試料4内の動きの動態に応じて、高速、例えば100Hzと1kHzの間、あるいはそれ以上の周波数で干渉画像を取得するように構成される。
【0077】
例えば、カメラ18は、電荷結合素子(CCD)カメラまたは相補性金属酸化膜半導体(CMOS)カメラである。
【0078】
試料ビームスプリッタ19
【0079】
試料ビームスプリッタ19は、試料アーム26内に配置され、試料アーム26の光軸Z-Zを横切る。より正確には、試料ビームスプリッタ19は、一次光源14から一次ビームスプリッタ24に向かう方向において、一次ビームスプリッタ24の下流側に配置されている。すなわち、
図1に示すように、試料4が試料アーム26に配置されているとき、試料ビームスプリッタ19は、一次ビームスプリッタ24と試料4との間に配置されている。
【0080】
試料ビームスプリッタ19は、好ましくは、一次光源14の中心波長を中心とする所定範囲内の波長を有する光を透過し、光学試料位置特定システム10の二次光源46(後述する)の中心波長を中心とする所定範囲内の波長を有する光を反射するように構成される。例えば、試料ビームスプリッタ19はダイクロイックミラーである。
【0081】
追加オプション光学エレメント
リファレンス・ビームスプリッター 33
有利には、一次干渉計16は、一次ビームスプリッタ24と参照反射面30との間の参照アーム28に配置された参照ビームスプリッタ33も含んでいる。これは、このような参照ビームスプリッタ33が、参照アーム28において、試料アーム26内の試料ビームスプリッタ19によって引き起こされる分散と同様の分散を導入し、それによって、FF-OCTイメージングシステム8によって取得された干渉画像から正面画像を抽出する能力を向上させることから、有利である。
【0082】
参照ビームスプリッタ33は、試料ビームスプリッタ19と同じ光学特性を持つ。例えば、参照ビームスプリッタ33は、試料ビームスプリッタ19と同一である。
【0083】
好ましくは、参照ビームスプリッタ33および試料ビームスプリッタ19は、それぞれを伝播するプローブビーム20の光波の伝播方向と同じ角度を規定するように配向される。言い換えれば、参照ビームスプリッタ33および試料ビームスプリッタ19は、試料ビームスプリッタ19が延びる平面とプローブビーム20の第1部分の伝搬方向との間の角度が、参照ビームスプリッタ33が延びる平面とプローブビーム20の第2部分の伝搬方向との間の角度に等しくなるように配向される。
【0084】
より正確には、プローブビーム20の照射野の各点について、
- 一方の、プローブビーム20の第1の部分の伝搬方向と、照明野の前記点から発せられた光が入射する試料ビームスプリッタ19の基本面がある平面との間の角度と、
- 一方の、プローブビーム20の第2部分の伝搬方向と、参照ビームスプリッタ33の基本面であって照明野の前記点から発せられた光が入射する面との間の角度と
が実質的に等しい。
【0085】
FF-OCT撮像システム8は、(従来のSD-OCTシステムとは逆に)試料アーム26と参照アーム28との間の小さな不一致に敏感である可能性があるので、この特徴は有利である。実際、試料アーム26と参照アーム28の同一のビームスプリッタ19、33の間の角度が一致することによって、一次干渉計16のアーム26、28の分散がバランスされる。その結果、適切な調整により、試料アーム26と参照アーム28との間の光路長差は、一次光源14のコヒーレンス長(例えば、8μm)よりも小さくなり、それにより、FF-OCTイメージングシステム8は、信頼性の高い干渉画像を取得することができる。
【0086】
この特徴はまた、試料アーム26及び参照アーム28において横方向(すなわち、光の伝搬に対して垂直方向)の光学的整合を提供することを可能にし、それにより、FF-OCT撮像システム8が信頼性の高い干渉画像を取得する能力をさらに向上させる。
【0087】
第1および第2レンズ系34、36
好ましくは、一次干渉計16は、試料アーム26と参照アーム28のそれぞれにそれぞれ配置された第1レンズ系34と第2レンズ系36をさらに備える。
【0088】
より正確には、第1のレンズ系34は、試料4が試料アーム26に配置されたときに、当該第1のレンズ系34の焦点面が、撮像される試料4の断面と一致するように配置される。さらに、第1のレンズ系34は、対応する光軸が試料アーム26の光軸Z-Zと一致するように配置される。
【0089】
実際には、第一のレンズ系34の焦点深度は、第一の光源14の低い時間的コヒーレンスにより、実際に干渉を引き起こすスライス幅よりも、光軸Z-Zに沿って、常に、より拡大される。言い換えれば、カメラ18は試料4の比較的厚い領域から光を取り込むが、正面画像に生じる光干渉信号は焦点深度の薄い部分領域に位置し、その厚さは一次光源14によって決定される。位相の異なる複数のカメラフレームを取得することにより、薄い干渉縞部分のみを抽出することができる。
【0090】
好ましくは、第1レンズ系34は、一次ビームスプリッタ24から試料ビームスプリッタ19に向かう方向において、試料ビームスプリッタ19の下流側に配置される。
【0091】
さらに、第2レンズ系36は、参照反射面30が第2レンズ系36の焦点面に位置するように配置される。
【0092】
さらに、第2のレンズ系36は、対応する光軸が参照アーム28の光軸X-Xと一致するように配置される。
【0093】
有利には、各レンズ系34、36は、大きな視野(典型的には約1mm)を提供しながら細胞解像度を確保するために、高い開口数(典型的には約0.3)を有する。例えば、第一レンズ系34と第二レンズ系36の各々は顕微鏡対物レンズである。
【0094】
有利には、参照反射面30と第2レンズ系36は、参照アーム28の光軸X-Xに沿って移動可能な電動プラットフォーム40に取り付けられている。
【0095】
これは、光軸X-Xに沿った電動プラットフォーム40の変位により、試料の位置に基づいて撮像スライスを位置決めすることができるので有利である。より正確には、眼球4の網膜を撮像するとき、光軸X-Xに沿った電動プラットフォーム40の変位により、撮像スライスの深さ(すなわち、FF-OCT撮像システム8により撮像される光軸Z-Zに直交する平面)を選択することができる。さらに、角膜を撮像する場合、電動プラットフォーム40の変位によって、眼球において、スネルの法則によって引き起こされ、FF-OCT撮像システム8に対する眼球の位置に依存するデフォーカスを補正することができ、撮像されたスライスが現在の焦点面に収まるようにすることができる。
【0096】
プライマリースペクトラルフィルター42
好ましくは、一次干渉計16は、当該一次干渉計16の出力とカメラ18との間に配置された一次スペクトルフィルター42をさらに備える。
【0097】
一次分光フィルター42は、一次光源14の中心波長を中心とする所定範囲内の波長を有する光を透過させ、光学試料位置特定システム10から発せられる光のような、前記所定範囲外の波長を有する光を遮断するように構成されている。これにより、カメラ18は、位置特定システム10から発せられた光子を検出することができない。
【0098】
例えば、一次分光フィルター42は光学バンドパスフィルタである。
【0099】
第3レンズシステム44
好ましくは、一次干渉計16は、一次干渉計16の出力とカメラ18との間に配置されたアクロマティックダブレットなどの第3のレンズ系44も含む。
【0100】
第3のレンズ系44は、カメラ18の検出面と第1および第2の光学系34、36の焦点に位置する平面とを共役にするように選択された焦点距離を有する。例えば、第3レンズ系44の焦点距離は数百ミリメートルであり、典型的には300ミリメートルである。
【0101】
このような第3のレンズ系44(典型的にはチューブレンズ)は、カメラが18を見る倍率および視野を変更することも可能であり、また有利である。実際、第1および第2レンズ系34、36は一般に「無限遠補正」されている。例えば、ニコンの顕微鏡対物レンズ34(チューブレンズの焦点距離が200mmに等しい)と200mmのチューブレンズ44を組み合わせたシステムでは10倍の拡大視野が得られ、300mmのチューブレンズ44を組み合わせたシステムでは15倍の拡大視野が得られる。
【0102】
チューナブルレンズ45
好ましくは、一次干渉計16は、試料アーム26に配置された調整可能(すなわち、適応)レンズ45をさらに含む。
【0103】
チューナブルレンズ45は、眼球が空気と同じ屈折率を持たないという事実に起因する、FF-OCT撮像システム側のデフォーカスを補正するために、有利には電動プラットフォーム40と組み合わせて、処理ユニット12によって操作可能である。より正確には、チューナブルレンズ45は、試料4に衝突するプローブビーム20の最初の部分の焦点位置を制御するように動作可能である。
【0104】
オプションとして、調整可能レンズ45は、第3レンズ系44と同様の機能を提供するように構成されてもよい。この場合、第3のレンズ系44は取り外すことができる。
【0105】
光学式試料位置測定システム10
次に、位置特定システム10について説明する。
【0106】
前述したように、光学試料位置特定システム10(「位置特定システム」とも呼ばれる)は、光軸Z-Zに沿って試料4の位置を代表する位置信号を出力するように構成されている。
【0107】
位置特定システム10は、試料アーム26の外側に配置され、試料ビームスプリッタ19と交差するそれぞれの光軸Δを有している。試料ビームスプリッタ19の存在により、位置決めシステム10によってその光軸Δに沿って放射された位置決めビーム51は、FF-OCTイメージングシステム8の光軸Z-Zに実質的に平行に伝搬するように試料ビームスプリッタ19によって反射される。したがって、試料ビームスプリッタ19で反射された後、光軸Δと光軸Z-Zは同軸に配置される。
【0108】
位置決めビーム51の伝搬方向(すなわち、光軸Δ)が光軸Z-Zに真に平行であるのは、位置決めシステム10の偏向素子74(後述する)の単一の方向についてのみであることに留意がされる。偏向素子74の他の全ての位置(それらの全ては、試料4の二次元断面画像につながる位置信号の取得中に使用される)については、光軸Δと光軸Z-Zとの間に角度が存在する。
【0109】
逆に、試料4からの光(適切な波長)は、試料ビームスプリッタ19で反射された後、位置検出システム10に到達することができる。
【0110】
好ましくは、位置特定システム10、後述するようにOCTイメージングシステム(スペクトル領域OCTシステム(「SD-OCTシステム」とも呼ばれる)、掃引光源OCTシステムまたは時間領域OCTシステムなど)を含む。
【0111】
この場合、位置特定システム10は、前述の二次光源46、二次干渉計48、検出器50を含む。
【0112】
好ましくは、位置特定システム10は、
図2に示す共役装置53をさらに含む。
【0113】
二次光源46
二次光源46は、前述の位置ビーム51(図中点線)を出力するように構成されており、二次干渉計48の入力側に配置されている。
【0114】
有利には、位置ビームは、一次光源14によって放射される光のスペクトルと少なくとも部分的に重ならないスペクトルを有する。
【0115】
例えば、位置ビーム51のスペクトルは、[870nm;1000nm]区間に属する波長に中心ピークを有するが、一次光源14は[750nm;860nm]区間の光を発する。
【0116】
好ましくは、二次光源46は空間的にコヒーレントな光源である。例えば、二次光源46は、スーパールミネッセントダイオードまたは掃引レーザー光源(掃引光源OCTシステムを使用する場合)である。
【0117】
好ましくは、位置決めシステム10がSD-OCTシステムを含む場合には、二次光源46は、低い時間的コヒーレンス(すなわち、その中心波長と比較して広いスペクトル)を有する。さらに、掃引レーザー光源の場合、各瞬間において、位置決めビームはかなり大きな時間的コヒーレンスを有するが、広いスペクトルにわたって掃引される。
【0118】
二次光源46は、例えば第1の光ファイバー52を介して二次干渉計48の入力に結合される。
【0119】
二次光源46は、二次光源46によって放射された位置ビーム51が二次干渉計48の二次ビーム分割器54(後述)に到達するように配置され、それによって、その第1の部分が二次干渉計48の二次試料アーム56内を伝搬し、その第2の部分(位置ビーム51の第1の部分とは異なる)が二次干渉計48の二次参照アーム58内を伝搬する。
【0120】
二次干渉計48
二次干渉計48には、前述の二次ビームスプリッタ54、二次試料アーム56、二次参照アーム58が含まれる。
【0121】
二次ビームスプリッタ54は、二次試料アーム56と二次リファレンスアーム58を分離する。さらに、二次試料アーム56は試料4を受けるためのものである。
【0122】
二次干渉計48は、試料4が二次試料アーム56に配置されているとき、二次試料アーム56から得られる二次試料波と、二次参照アーム58から受信される二次参照波との間に生じる干渉から生じる二次光干渉信号を生成するように構成される。
二次試料波と二次参照波については後述する。
【0123】
撮像装置2の構造上、試料4を一次干渉計16の試料アーム26に配置することは、試料4を二次干渉計48の二次試料アーム56に配置することと等価である。
【0124】
二次参照アーム58
好ましくは、二次参照アーム58は、直列に配置された光ファイバー60、任意のレンズ62、任意の分散補償板64および二次反射鏡66(金属化ミラーなど)を含む。
【0125】
この場合、ロケーションビームの第2部分の入射光波が2次反射鏡66で反射されることにより、前述の2次参照波が得られる。
【0126】
有利には、光ファイバー60の長さは、二次ビームスプリッタ54と二次反射鏡66との間の光路が、二次ビームスプリッタ54と第一レンズ系34のシャープフォーカス内の細胞層、すなわち現在撮像されている細胞層との間の光路に等しくなるように選択される。好ましくは、光ファイバー60の長さは、二次ビームスプリッタ54と二次反射鏡66との間の光路が、二次ビームスプリッタ54と、撮像装置2の動作中に試料4が位置すると想定される所定の位置との間の光路と等しくなるように選択される。
【0127】
二次試料アーム56
好ましくは、二次試料アーム56は、直列に配置された光ファイバー68、ビームスキャナ70および二次分光フィルター72を含む。
【0128】
この場合、前述の二次試料波は、ロケーションビームの最初の部分の入射光波が試料4によって散乱されることによって得られる。より正確には、試料波は、ビームスキャナ70による偏向の後、ロケーションビームの第1部分の伝搬方向に沿って位置する試料4の基本体積によるロケーションビームの第1部分の入射光波の散乱によって得られる。
【0129】
ビームスキャナ70は、試料ビームスプリッタ19とセカンダリビームスプリッタ54の間に配置されている。ビームスキャナ70は、光軸X-Xに直交する面内でロケーションビームを走査するように構成されている。より正確には、ビームスキャナ70は、ロケーションビーム51を偏向するための偏向素子74(典型的には、ミラー)を含む。その結果、試料ビームスプリッタ19でのロケーションビームの反射により、ビームスキャナ70の動作(すなわち、偏向素子74の移動)は、試料4において、光軸Z-Zに直交する平面内でのロケーションビームの走査、より正確には、光軸Z-Zに直交する平面内の複数の線(各線はロケーションビーム51の最初の部分の伝播方向に対応する)に沿ったロケーションビームの走査をもたらす。
【0130】
例えば、ビームスキャナ70は、ほぼ10μs毎に1ラインを走査するように構成されている。換言すれば、ビームスキャナ70は、眼球位置の変動時定数よりも短い時間間隔、すなわち、眼球位置が大きな範囲(10μm以上)で変動し得る典型的な時間よりも短い時間、典型的には10ms程度の時間間隔で眼球4を走査するように構成されている。
【0131】
次分光フィルター72は、2次光源46の中心波長を中心とする所定範囲内の波長を有する光を透過させ、当該所定範囲外の波長を有する光、例えばFF-OCT撮像装置8から出射される光を遮断するように構成されている。例えば、二次分光フィルター72は、光学バンドパスフィルタである。これにより、検出器50は、FF-OCT撮像システム8から発せられた光子を検出することができない。
【0132】
検出器50
検出器50は二次干渉計48の出力に結合されている。
【0133】
検出器50は、二次光干渉信号を検出し、対応する位置信号を経時的に出力するように構成されている。
【0134】
例えば、位置決めシステム10が掃引光源OCTシステムの時間領域OCTシステムである場合、検出器50はフォトダイオードのような光検出器である。あるいは、位置特定システム10がスペクトル領域OCTシステムである場合、検出器50は分光器である。
【0135】
コンジュゲーションデバイス53
コンジュゲーションデバイス53は、
図2に示すように、4F配置された2つのレンズを含む。
【0136】
より正確には、共役装置53は、第1レンズ系34の後側焦点面が共役装置53の第1焦点面F1と一致するように配置され、ビームスキャナ70の偏向素子74は、共役装置53の第2焦点面F2 に配置される。
【0137】
共役素子56の存在により、位置決めビーム51は、ビームスキャナ70によって、光軸X-Xに直交する平面内で走査され、第1のレンズ系34によって決定される撮像フィールドとほぼ同じ深さに位置する。これは、偏向素子74の2つの異なる偏向角度における位置決めビーム51の経路に対応する、
図3の十字のビームと点線のビームによって示されている。その結果、偏向素子74は実質的に第1レンズ系34の後側焦点面に位置する。その結果、ビームスキャナ70が前記後方焦点面から離れた位置にある場合でも、プローブビームの伝搬方向に対して小さな角度で伝搬する光のみが第1レンズ系34の入射瞳に入射するという問題が解決される。さらに、短い焦点距離(約3cm)を有するレンズを使用することができ、その結果、非常にコンパクトな共役装置53が得られる。
【0138】
FF-OCTイメージングシステム8と、SD-OCTバージョンの光学試料位置検出システム10との相違点
前述したように、一次光源14の時間的コヒーレンスが低いため、干渉現象は、一次干渉計16の試料アーム26と参照アーム28がミクロン精度(通常1~10ミクロン)で一致したときにのみ起こる。
【0139】
第一印象から、SD-OCTシステムの二次光源46の低時間的コヒーレンスのために、干渉現象は、二次干渉計48の二次試料アーム56および二次参照アーム58がミクロン精度で一致する場合にのみ起こるように思われるかもしれない(FF-OCTシステムのように)。しかしながら、本発明者らは、検出器が回折格子と検出器とから構成される分光器であるSD-OCTバージョンの光学試料位置特定システム10では、そうではないことを発見した。この場合、回折格子は、反射された二次光源46(二次試料アーム56及び二次参照アーム58からそれぞれ来る)の広帯域低時間的コヒーレントスペクトルを、薄い高時間的コヒーレントバンドに分離する。これらの帯域のそれぞれは、次に別々の検出器によって検出される。したがって、干渉計の二次試料アーム56と二次参照アーム58が(1~10ミリメートル程度)大きく不一致であっても、各検出器では干渉が起こるように見える。
【0140】
それでもなお断層画像を再構成するために、SD-OCTは、異なるミスマッチ距離に対して干渉周波数が異なるという事実に依存する。干渉周波数は、二次試料アーム56と二次参照アーム58が密接にマッチしている場合には小さく、ミスマッチが大きいほど大きくなる。測定されたスペクトルをフーリエ変換することで、すべての周波数が抽出され、距離に変換することができる。その結果、SD-OCTは試料内部の散乱体の1次元詳細プロファイル(Aライン)を再構成することができる。
【0141】
二次元断面画像は、偏向素子74のように二次試料アーム56にビームスキャナを配置することで再構成できる。二次参照アーム58には走査がなく、異なる二次試料ビーム(二次試料アーム56から来る)が単一の二次参照ビーム(二次参照アーム58から来る)と干渉することに注意する。
【0142】
したがって、SD-OCTは、正面断層画像の全画素を同時に撮像するFF OCTシステム8とは逆に、二次試料アーム56および二次参照アーム58の波面不整合の影響を受けないポイント・バイ・ポイントの撮像システムである。
【0143】
さらに、本発明者らは、SD-OCTシステムおよびFF-OCTシステム8は、試料ビームスプリッタ19のように、試料アーム26および二次試料アーム56にダイクロイックミラーを挿入しても同様の影響を受けないことを発見した。例えば、1mmのガラス板となるダイクロイックミラーの場合、ガラス板は、試料(それぞれ二次試料)アームと参照(それぞれ二次参照)アームとの間に1*1.5-1*1=0.5mm(厚さ*屈折率)の光路差をもたらす。SD-OCTシステムは依然として干渉を示し、最終的な画像は、深度シフトと軸分解能の低下につながる若干の分散を除いて影響を受けないようである。このように、SD-OCTシステムの波面は、点画像システムであるため、補正の必要はない。
【0144】
一方、FF-OCTシステム8では、数ミクロンの精度で光学アームの位置合わせを行う必要があるため、0.5mmの不一致がすべての干渉信号を破壊するように見えることを発明者らは発見した。画像を再試行することはできなかった。さらに、FF-OCTシステム8は、全視野であり、信号を点ごとに撮像するシステムではないため、波面の不一致に悩まされる。
【0145】
さらに、本発明者らは、FF-OCTシステム8内に配置されたガラス板が波面の湾曲をもたらすことを発見した。FF-OCTにおける光学的不整合、分散及び波面の不整合を補償する1つの方法は、参照アーム28に試料アーム26と全く同じダイクロイックミラー(第2の実施形態で後述する)を挿入し、全く同じ角度に回転させることである。
【0146】
ミクロン単位の光路精度で正確に同じ角度を得ることは容易ではないため、アライメントステップを追加する必要がありる。まず、FF-OCTシステム8干渉計を通常の方法でアライメントするが、光の光路に対して垂直な試料アーム26と参照アーム28に配置された2つのダイクロイックミラー19と33を使用する。スクリーン上に干渉像を得た後、一方のダイクロイックミラー19または33を傾ける。その結果、ミスマッチにより干渉信号が消失する。次に、2番目のダイクロイックミラー33またはそれぞれ19を傾けて信号を回復する。その後、このプロセスが段階的に続けられる。1つのダイクロイックミラーを少し傾けた後、別のダイクロイックミラーを少し傾けて信号を回復する。最終的なアライメントは、ダイクロイックミラー19と33の両方が45度に傾いたときに達成される。
【0147】
WO2020/065068A1のFF-OCTシステムに関しては、ダイクロイックミラーが照明アーム(すなわちプローブビーム20)内に配置されているため、信号損失の問題は適用されず、したがって試料アームと参照アームは位置合わせされたままであることに留意されたい。FF-OCTシステムはSD-OCTシステムと比較して感度が高いため、本発明の背景で引用した技術的問題を解決する別の構成は、本発明以前には不可能と思われた。
【0148】
処理ユニット12
本発明によれば、「処理ユニット」という表現は、ソフトウェアを実行できるハードウェアに限定して解釈されるべきではなく、例えばマイクロプロセッサ、集積回路、またはプログラマブルロジックデバイス(PLD)を含むことができる処理デバイスを一般的に指す。処理装置はまた、コンピュータグラフィックスおよび画像処理または他の機能のために利用されるかどうかにかかわらず、1つまたは複数のグラフィック処理ユニット(GPU)またはテンソル処理ユニット(TSU)を包含することができる。さらに、関連する及び/又は結果として生じる機能を実行することを可能にする命令及び/又はデータは、例えば、集積回路、ハードディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスク、RAM(Random-Access Memory)又はROM(Read-Only Memory)などの任意のプロセッサ読み取り可能な媒体に記憶され得る。命令は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせに記憶させることができる。
【0149】
処理部12は、FF-OCT撮像装置8が出力する各干渉画像に基づいて、各面内画像を算出するように構成されている。
【0150】
そのために、処理ユニットは、参照反射面30を光軸X-Xに沿って変位させるように圧電ステージ32を制御し、それによって基準波を変調するように構成される。このような変調の振幅は、所定の位相復調方式、例えば2相復調方式または4相復調方式に従って設定される。
【0151】
例えば、2相方式では、処理ユニット12は、カメラ18によって取得された2つの干渉画像から正面画像を決定するように構成される:第1の干渉画像は、参照反射面30が第1の位置にある状態でキャプチャされ、第2の干渉画像は、参照反射面30がπの光学位相、すなわちプローブビーム20の中心波長の半分だけシフトした状態でキャプチャされる。
【0152】
先に述べたように、干渉は数ミクロン厚の試料層からの反射光に対してのみ発生する。他の試料層からの反射光は参照アーム28からの参照光と干渉しない。このように参照反射面30を時間的に変調することで、複数の干渉パターン(光学位相)を取得することができる。最も単純な復調スキームでは、2つの反対(π位相シフト)の干渉パターンが減算され、他の試料層からの非干渉光が除去され、目的の層からの信号が2倍になる(トモグラフィ)。
【0153】
別の例として、4位相方式では、処理ユニット12は、カメラ18によって取得された4つの干渉画像から正面画像を決定するように構成され、画像は順次キャプチャされる。最初のフレームの位相が0であると仮定すると、処理ユニット12は、最初のフレームに対する次のフレームの位相シフトが、π/2、πおよび3π/2となるように、圧電ステージ32およびカメラ18を制御するように構成される。
【0154】
処理ユニット12はさらに、前記位相シフトされた画像を対で減算した結果に基づいて、コヒーレンスボリューム(すなわち、関心平面)内のサンプル構造の反射率を計算するように構成される。結果として得られる正面画像(
図3Aにその一例を示す)は、関心平面全体にわたる計算された反射率の値を表すものである。より正確には、
図3Aは、ヒト眼の健康な角膜間質を示す。
【0155】
さらに、
図3Bは、角膜内皮と虹彩とが合流する部分に位置する眼球辺縁部の領域であるトラベキュラーメッシュワークを示している。
図3Bは、撮像装置2が、この正確に位置を特定することが困難な小領域(長さ約0.5mm)の準細胞解像度で画像を提供できることを証明している。これは、位置決めシステム10の最適化された使用により、眼球4の位置を正確に追跡する撮像装置の能力のおかげで達成される。
【0156】
緑内障は視力に悪影響を及ぼす疾患であり、早期診断が極めて困難な疾患である。既知のイメージングシステムでは得られない)高解像度で海綿網を画像化する能力により、緑内障を早期に発見し、視力を失うリスクを回避することができる。
【0157】
代替的に、又は加えて、Z-Z軸に沿って移動する試料(典型的には、自然な生理的眼球運動を示す眼球)の場合、処理ユニット12は、参照反射面30の位置を変調することなく、FF-OCT撮像システム8によって出力される各干渉画像に基づいて各円顔画像を計算するように構成される。この場合、Z-Z軸に沿った試料のわずかな動きにより、互いに対して位相がずれた干渉画像が得られ、それにより、正面画像の計算が可能になる。
【0158】
好ましくは、処理ユニット12はまた、位置信号に基づいて電動プラットフォーム40の位置を制御し、試料の移動を補償して、同じ試料スライスが経時的に撮像されるように構成される。
【0159】
より正確には、偏向素子74の所与の位置に対して、検出器50は、位置ビーム51の第1の部分の伝搬方向に対応する線を代表する位置信号を取得する。処理ユニット12は、典型的には、前記線によって交差される試料の部分を再構成するように構成される。
【0160】
好ましくは、処理ユニット12は、偏向素子74の様々な位置(すなわち、様々な隣接線)の位置信号を取得するようにビームスキャナ70をさらに制御する。処理ユニット12はさらに、前記複数の位置信号に基づいて、試料4の少なくとも一部の少なくとも1つの断面画像を計算するように構成される。角膜のそのような断面画像の例を
図3Cに示す。
【0161】
さらに、処理ユニット12は、試料4の少なくとも1つの所定の構造(細胞構造など)の位置を特定するように、断面画像をセグメント化するように構成されている。その結果、各分割された断面画像 を所定の目標中心位置 と比較することにより、処理ユニット12は、光軸Z-Zに沿って、各分割された構造の位置を経時的に決定することができる。
【0162】
好ましくは、処理ユニット12はさらに、FF-OCT撮像システム8の動作から生じるノイズを補正するために、各コンピューティングされた正面画像に対して画像処理を実行するように構成される。
【0163】
実際、
図4Aに示すように、顔画像は一般にノイズが多い。このようなノイズには、主にガウスノイズと干渉縞ノイズと背景が含まれる。
【0164】
ガウスノイズは検出、すなわちカメラ18に由来する。この種のノイズは、FF-OCTに特有なものではなく、カメラによって撮影されたどの画像にも存在する。ガウスノイズは無相関であり、ある画素のノイズが他の画素のノイズから独立していることを意味する。
【0165】
干渉縞ノイズは、
図4A上で、低強度と高強度の交互の縞として見ることができ、試料4(眼のような)の動きのために、圧電ステージ132によって引き起こされるものに加えて、カメラ18によって取得された干渉画像にランダムな位相変動が導入されるという事実に起因する。これらの揺らぎの結果、干渉縞の位置と頻度が時間と共にランダムになる。さらに、これらの位相ゆらぎはランダムであるため、例えば4相復調方式を使用して単純に除去することはできず、干渉縞が残存する。
【0166】
干渉縞には相関関係がある。例えば、ある画素が非常に明るい場合、近くの画素も明るい可能性が高い。
【0167】
ノイズ補正を行うために、処理部12は、Noise2Noiseディープラーニングモデルなどの人工知能モデルを実装するように構成される。
【0168】
より正確には、モデルは、例えば生体内ヒト角膜FF-OCT画像(間質および内皮など)のようなトレーニング画像セットを使用して事前にトレーニングされている。
【0169】
より正確には、全視野OCTイメージングシステム10を使用して、トレーニング試料の正面画像の少なくとも1つのトレーニングセットが取得される。各トレーニングセットには、トレーニング試料4の同じセクションの第一の正面画像と第二の正面画像が異なる取得時間で含まれる。カメラ18の高速度(約500フレーム/秒)により、前記正面画像は、あたかも眼球運動が数フレームの間フリーズしている(すなわち、同じ位置にある)とみなすことができる。この場合、各トレーニングセットにおいて、第1の正面画像と第2の正面画像は異なるノイズを示す。これは、一方ではガウスノイズ(カメラフレームごとに異なる)、他方では干渉ノイズ(不完全な復調スキームおよび/またはフレーム間の眼のサブミクロン単位の動きにより、取得された干渉画像から他の干渉画像への位相変動が生じる)によるものである。
【0170】
そして、Noise2Noiseモデルを学習するために、各トレーニングセットに対して、第1の顔画像が入力として提供され、第2の顔画像がターゲット出力として提供される。
【0171】
有利な点である。実際、このような学習中、Noise2Noiseモデルは、ある特定のノイズパターンを別のノイズパターンから生成する方法を学習しようとする。ノイズはランダムであるため、モデルはこの変換を効率的に学習することができず、結局ノイズの多いパターンをすべてのノイズの多いパターンの平均、つまりクリーンな画像に変換する学習をしてしまう。このような学習のおかげで、
図4Aの顔画像をノイズ除去した結果である
図4Bに示すように、空間的に無相関なノイズ(ガウス)と相関のあるノイズ(干渉縞)の両方が除去される。これは、相関ノイズの統計量と、画像に見える試料の典型的な構造(目の構造など)の統計量を学習するモデルの能力によるものである。
【0172】
オペレーション
次に、撮像装置2の動作について説明する。
【0173】
設定ステップでは、FF-OCT撮像システム8と光学試料位置決めシステム10の位置合わせが行われる。
【0174】
さらに、設定ステップの間、変調/復調スキームは、好ましくはオペレータによって選択され、処理ユニット12に格納される。
【0175】
好ましくは、処理ユニット12がノイズ補正を実行することを意図している場合、Noise2Noiseニューラルネットワークの設定は、設定ステップ中に実行される。より正確には、前述のように、ニューラルネットワークが学習される。
【0176】
次に、試料4は、FF-OCTイメージングシステム8の試料アーム26と光学試料位置決めシステム10の二次試料アーム56に配置される。
【0177】
そして、処理部12は、圧電ステージ32を制御して参照反射面30を光軸X-Xに沿って変位させ、これにより基準波を変調する。また、処理部12は、所定の変調方式に従って干渉画像を取得するように、すなわち、参照反射面30が参照波の所定の位相シフトをもたらす位置にあるときに干渉画像を取得するように、カメラ18を制御する。
【0178】
処理ユニット12はまた、ロケーションビーム51が試料4を走査するようにビームスキャナ70を制御する。処理ユニット12は同時に、ロケーションビーム51によって現在走査されている各ラインを代表するロケーション信号が出力されるように検出器50を制御する。
【0179】
そして、処理部12は、FF-OCT撮像装置8が出力する各干渉画像に基づいて、各正面画像を算出する。
【0180】
また、処理ユニット12は、前記複数の位置信号に基づいて、試料4の断面画像を計算する。さらに、処理ユニット12は、試料4の少なくとも1つの所定の構造の位置を特定するように、計算された断面画像をセグメント化する。
【0181】
処理部12は、さらに、分割された断面画像の位置を所定の目標中心位置と比較して、各分割構造の位置が経時的に変化するか否かを判定する。
【0182】
位置が変化した場合、処理ユニット12は、デフォーカスを補正するように、試料の移動を補正するために電動プラットフォーム40の位置を制御する。
【0183】
好ましくは、処理ユニット12は、訓練されたNoise2Noiseニューラルネットワークをさらに実装し、各計算された正面画像に対してノイズ補正を実行する。より正確には、各計算された正面画像は、ノイズ除去された画像を出力するニューラルネットワークの入力に提供される。
【0184】
あるいは、前述のように、参照反射面30の変調は実行されない。この場合、処理ユニット12は、光軸Z-Zに沿った試料の自然な動きによって、一方の干渉像から他方の干渉像に導入される位相シフトに依存して、正面画像を計算する。
【0185】
第二実施形態
本発明による撮像装置の第2の実施形態を
図5に示す。
図1と共通する参照番号は、同じ要素に対応する。
【0186】
図5の撮像装置2は、生体内眼球4の網膜7の少なくとも1つの正面画像、好ましくは少なくとも1つの断面画像を決定するように構成されている。
【0187】
そのために、
図5の撮像装置2は、第1のレンズ系34が顕微鏡対物レンズから構成されていない点で、
図1の撮像装置と異なる。この場合、眼の屈折要素がプローブビーム20の最初の部分を網膜上に集束させ、それによって第1のレンズ系34として動作する。
【0188】
好ましくは、撮像装置は、参照アーム28内の第2レンズ系36の分散に関して眼4によって導入される収差及び分散の不一致を補償するために、試料アーム26内に挿入される適応レンズ76(例えば液体レンズ)及び/又は回転ガラス板78を更に含む。
【0189】
オプションの共役装置53が提供される場合、共役装置53は、共役装置53の第1の焦点面F1 が眼球4の角膜レンズと一致するように配置される。
【0190】
さらに、このような撮像装置において、処理ユニット12は、有利には、動作中に、処理ユニット12が試料4が移動したと判定した場合(例えば、試料の断面のセグメント構造が所定の目標中心位置に対して移動したと判定することによって)、処理ユニット12が、(FF-OCT撮像システム8の)干渉像が生じる網膜7の平面が試料4内の同じ位置に留まるように電動プラットフォーム40を制御するように構成される。
【0191】
第三の実施形態
本発明による撮像装置の第3の実施形態を
図6に示す。
図1と共通する数値参照は、同じ要素に対応する。
【0192】
図6の撮像装置2が
図1の撮像装置と異なるのは、プローブビーム20が試料ビームスプリッタ19で反射されて試料4に入射し、位置決めビーム51が試料ビームスプリッタ19を伝播して試料4に入射するように、FF-OCT撮像システム8、位置決めシステム10および試料ビームスプリッタ19が配置されている点だけである。
【0193】
この場合、試料アーム26内のプローブビーム20は、補償を必要とする分散を引き起こす試料ビームスプリッタ19を通過する伝搬を受けないため、参照アーム28は参照ビームスプリッタを含まない。
【0194】
このような構成は、網膜撮像のために特別に構成された
図5の撮像装置2のFF-OCT撮像システム8を用いて適用することもできる。
【0195】
第四実施形態
本発明による撮像装置の第4の実施形態を
図7に示す。
図1と共通する数値参照は、同じ要素に対応する。
【0196】
図7の撮像装置2は、位置決めシステム10がOCT撮像システムを含まず、光軸として光軸Δを有する立体撮像装置80を含む点で、
図1の撮像装置と異なるだけである。この場合、立体視によって提供される深さ決定能力のおかげで、光軸Z-Zに沿った試料4の位置の位置決めが達成される。
【0197】
例えば、
図7Aに示すように、立体撮像装置80は、ビームスプリッタ84を介して結合された2つのカメラ82A、82Bから構成され、これにより立体視を提供する。
あるいは、
図7Bに示すように、カメラ82A、82Bは光軸Δの両側に配置され、それによって立体視が実現される。
【0198】
第五実施形態
本発明による撮像装置の第5の実施形態を
図8に示す。
図1と共通する数値参照は、同じ要素に対応する。
【0199】
この実施形態では、位置検出システム10は、軸Δ(または「検出軸」)に沿って質問波90を放射するように構成された能動位置検出装置を含む。質問波は試料ビームスプリッタ19によって反射され、試料4に入射する。
【0200】
アクティブポジションセンシングはさらに、試料4によって後方散乱され、試料ビームスプリッタ19によって反射され、検出軸Δに沿って位置特定システム10に向かって伝搬する応答波92を検出するように構成される。その結果、検出された応答波92に基づいて、位置検出システム10は、Z-Z軸に沿った試料4の位置を代表する位置信号を出力する。
【0201】
質問波は、光(例えば、レーザー光)または音響波であってもよい。
【0202】
例えば、位置特定システム10は、飛行時間に基づいて位置信号を決定するように構成される。
【国際調査報告】