IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ズプフィーナ グリースハーバー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲーの特許一覧

特表2025-503917両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法
<>
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図1
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図2
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図3
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図4
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図5
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図6a
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図6b
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図6c
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図6d
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図6e
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図7a
  • 特表-両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法 図7b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】両面研削機、及びブレーキディスクを研削加工する方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/16 20060101AFI20250130BHJP
   B24B 37/08 20120101ALI20250130BHJP
   B24B 7/17 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B24B49/16
B24B37/08
B24B7/17 A
B24B7/17 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543386
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2023051131
(87)【国際公開番号】W WO2023139124
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22152456.4
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524273959
【氏名又は名称】ズプフィーナ グリースハーバー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーレ、ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034AA13
3C034BB74
3C034CA16
3C034CB02
3C034DD20
3C043BC04
3C043BC06
3C043CC04
3C043CC11
3C043DD05
3C043DD06
3C158AA04
3C158AA12
3C158AA18
3C158AB01
3C158AB04
3C158AC02
3C158BA04
3C158BA06
3C158BB02
3C158BC02
3C158CA01
3C158CB01
3C158EA01
3C158EB02
(57)【要約】
本発明は、第1の研削ディスク(18)を有する第1の機械部分(16)と、第2の研削ディスク(22)を有する第2の機械部分(20)とを含み、第1の研削ディスクと第2の研削ディスクの間の間隔を機械軸(14)に沿って調整可能であり、さらに、工作物(26)を保持するための工作物保持装置(30)を含む、両面研削機(10)に関し、工作物保持装置は、工作物を研削加工するときに工作物保持装置に対して作用する力を検出するための少なくとも1つの力センサを含む。さらに、本発明はブレーキディスクを研削加工する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の研削ディスク(18)を有する第1の機械部分(16)と、第2の研削ディスク(22)を有する第2の機械部分(20)とを含み、前記第1の研削ディスク(18)と前記第2の研削ディスク(22)の間の間隔を機械軸(14)に沿って調整可能であり、さらに、工作物(26)を保持するための工作物保持装置(30)を含む、両面研削機(10)において、前記工作物保持装置(30)が、工作物(26)を研削加工するときに前記工作物保持装置(30)に対して作用する力を検出するための少なくとも1つの力センサ(46)を含むことを特徴とする、両面研削機。
【請求項2】
少なくとも1つの前記力センサ(46)は前記両面研削機(10)の制御装置とリンクされることを特徴とする、請求項1に記載の両面研削機(10)。
【請求項3】
前記第1の機械部分(16)は前記機械軸(14)に沿って前記第1の研削ディスク(18)を動かすための第1の送り駆動部を有し、前記第2の機械部分(20)は前記機械軸(14)に沿って前記第2の研削ディスク(22)を動かすための第2の送り駆動部を有し、前記送り駆動部は少なくとも1つの前記力センサ(46)の信号に依存して、前記第1の研削ディスク(18)と前記第2の研削ディスク(22)とにより工作物(26)に対して作用する加工力を互いに平衡化可能であるように、前記制御装置によって制御可能であることを特徴とする、請求項2に記載の両面研削機(10)。
【請求項4】
前記工作物保持装置(30)は研削加工されるべき工作物(26)との結合のために工作物ホルダ(34)を含むことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の両面研削機(10)。
【請求項5】
前記工作物ホルダ(34)はブレーキディスクホルダとして構成されることを特徴とする、請求項4に記載の両面研削機(10)。
【請求項6】
前記工作物保持装置(30)は前記工作物ホルダ(34)を回転させるための回転駆動部(36)を有することを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の両面研削機。
【請求項7】
前記工作物保持装置(30)は前記工作物ホルダ(34)を支承するための保持構造(40)を有することを特徴とする、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の両面研削機(10)。
【請求項8】
前記両面研削機(10)は送り駆動部を含み、これによって前記保持構造(40)を前記機械軸(14)に対して横向きに、特に垂直に、可動であることを特徴とする、請求項7に記載の両面研削機(10)。
【請求項9】
少なくとも1つの前記力センサ(46)はひずみゲージとして構成されることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の両面研削機(10)。
【請求項10】
前記力センサ(46)は前記保持構造(40)に配置されることを特徴とする、請求項7又は8を引用する請求項9に記載の両面研削機(10)。
【請求項11】
前記工作物保持装置(30)はリニアガイド(48)を含んでおり、前記リニアガイド(48)のリニアガイド軸(50)は前記機械軸(14)と平行に延び、前記リニアガイド(48)は2つのガイド部材(52,54)を有し、第1のガイド部材(52)は前記保持構造(40)と結合され、第2のガイド部材(54)はフレーム(56)と結合され、少なくとも1つの前記力センサ(46)は前記保持構造(40)及び前記フレーム(56)と結合されて、前記保持構造(40)と前記フレーム(56)との間で作用する力を検出することを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の両面研削機(10)。
【請求項12】
前記ガイド部材(52,54)は、少なくとも1つのレールと、前記レールに沿って案内される少なくとも1つのキャリッジとを含むことを特徴とする、請求項11に記載の両面研削機(10)。
【請求項13】
少なくとも1つの前記力センサ(46)のセンサ軸は前記機械軸(14)と平行に延びることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の両面研削機(10)。
【請求項14】
少なくとも1つの前記力センサ(46)は圧電式の力センサであることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の両面研削機(10)。
【請求項15】
少なくとも1つの前記力センサ(46)は、圧縮力センサ、又は初期応力をかけられた圧縮力センサ、又は圧縮力と引張力を検出するためのセンサであることを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の両面研削機(10)。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の両面研削機(10)を使用してブレーキディスク(28)を、特に自動車ブレーキディスクを、研削加工する方法において、
a)前記第1の研削ディスク(18)と前記第2の研削ディスク(22)の間に配置される作業空間(24)で前記ブレーキディスク(28)の部分区域が位置決めされることと、
b)少なくとも1つの前記力センサ(46)及び/又は追加のセンサによって接触が検出されるまで、前記第1の研削ディスク(18)のほうを向く第1のブレーキディスク表面(60)に向かう方向へ前記第1の研削ディスク(18)が送られて、後退ストローク経路(66)の分だけ前記第1の研削ディスク(18)の後退ストロークがなされることと、
c)少なくとも1つの前記力センサ(46)及び/又は追加のセンサによって接触が検出されるまで、前記第2の研削ディスク(22)のほうを向く第2のブレーキディスク表面(62)に向かう方向へ前記第2の研削ディスク(22)が送られて、前記後退ストローク経路(66)の分だけ前記第1の研削ディスク(18)の前進ストロークがなされることと、
d)互いに接近していく方向へ同じ値の切込み速度をもって前記第1の研削ディスク(18)及び前記第2の研削ディスク(22)の両方の切込みがなされることと、
e)前記力センサ(46)の信号に依存して前記第1の研削ディスク(18)及び前記第2の研削ディスク(22)のうちの少なくとも一方の切込み速度が適合化されること、と、
を含む、方法。
【請求項17】
前記d)に基づく値の等しい切込み速度は最大の切込み速度であり、前記e)に基づく切込み速度の適合化は、前記第1の研削ディスク(18)及び前記第2の研削ディスク(22)のうちの一方の切込み速度の低減を伴うことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の研削ディスクを有する第1の機械部分と、第2の研削ディスクを有する第2の機械部分とを含み、第1の研削ディスクと第2の研削ディスクの間の間隔を機械軸に沿って調整可能であり、さらに、工作物を保持するための工作物保持装置を含む、両面研削機に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の課題は、非常に硬い表面を有しているが、比較的低い形状安定性を有する工作物を研削加工するために、特別に良く適した両面研削機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題は、冒頭に述べた種類の両面研削機において、工作物保持装置が、工作物を研削加工するときに工作物保持装置に対して作用する力を検出するための少なくとも1つの力センサを含むことによって解決される。
【0004】
工作物保持装置に対して作用する力の検出は、工作物そのものに対して作用する力の推定を可能にする。これらの力の知見は、工作物の研削加工を、ないしは両面研削機の加工パラメータを、検出された力に依存して制御できるようにすることを可能にする。
【0005】
特に、工作物保持装置で検出される力の検出は、工作物の研削加工中に両面研削機の両方の側から工作物に対して作用する力を均等化することを可能にするための前提条件である。
【0006】
少なくとも1つの力センサは、両面研削機の制御装置とリンクされるのが好ましい。このことは、力センサの信号を、制御装置での当該信号の考慮のために直接的にフィードバックすることを可能にする。
【0007】
特に、第1の機械部分は機械軸に沿って第1の研削ディスクを動かすための第1の送り駆動部を有し、第2の機械部分は機械軸に沿って第2の研削ディスクを動かすための第2の送り駆動部を有し、これらの送り駆動部は少なくとも1つの力センサの信号に依存して、第1の研削ディスクと第2の研削ディスクとにより工作物に対して作用する加工力を互いに平衡化可能であるように、制御装置によって制御可能であるのが好ましい。それにより、工作物保持装置に対して作用する力を送り駆動部の作動のための入力量として利用して、両方の研削ディスクから工作物に対して作用する加工力を均等化することが可能である。
【0008】
工作物保持装置は、研削加工されるべき工作物との結合のための工作物ホルダを含むのが好ましい。このような工作物ホルダは、特定のインターフェースジオメトリーを有する、工作物との機械的なインターフェースを有するアダプタによって構成されていてよい。
【0009】
工作物ホルダは、ブレーキディスクホルダとして構成されるのが好ましい。自動車のためのブレーキディスクは、その中心の回転軸に沿って(すなわち軸方向に)見たとき、特に、環状のブレーキディスク区域と中央のブレーキディスクハブとの間の径方向内側の移行部の領域で、比較的低い安定性を有している。環状のブレーキディスク区域の表面の研削加工には、特に、このような区域の表面が非常に硬質の摩耗防止層を有している場合、高い要求が課せられる。このことは特に、微細ダストの回避のために低摩耗であるべきブレーキディスクに該当する。この目的のために、硬質のカーバイド粒子を埋め込むための支持材料を有するコーティングが利用される。支持材料は腐食防止の理由からたとえばステンレス鋼合金であるが、これは比較的軟質で可撓性であり、少なくとも、高い加工力が、ブレーキディスクハブに対して相対的な環状のブレーキディスク区域の変形を伴う可能性がある場合には、カーバイド粒子に対する高い加工力の印加を難しくする。
【0010】
つまり、上で説明したブレーキディスクの研削加工では、硬質のカーバイド粒子の研削加工を可能にするために、研削ディスクの作用面が、ブレーキディスク区域の表面のそれぞれのブレーキディスク層に対して高い力で押し付けられなければならない。しかしブレーキディスクは、上で説明したとおり、ブレーキディスクの中心軸と平行の方向に可撓性であるため、ブレーキディスクが研削加工中に第1の研削ディスクと第2の研削ディスクの間で軸方向に、すなわち機械軸と平行に、変形して、ブレーキディスクが変形した状態のまま両方のブレーキパッド層の研削加工が行われるということが起こり得る。このようにして、ブレーキパッドコーティングを満足のいく品質で研削することは可能である。しかし、研削加工の終了後、ブレーキディスクが再び元に戻るように変形すると、不正確な回転振れを有することになる。
【0011】
本発明による両面研削機は、上で説明した変形効果のある力を検出し、両面研削機の加工パラメータに影響を及ぼして、このような力が最小化されるようにすることを可能にする。このようにして、ブレーキディスクコーティングの塗布にも関わらず、高い研削力をもってブレーキディスクを研削加工することができ、それにより、研削されたブレーキディスクコーティングが最大粗さ値を順守し、研削加工の終了後にブレーキディスクが高い精度を有するようになる。
【0012】
工作物保持装置は、工作物ホルダを回転させるためのスピンドル駆動部を有するのが好ましい。このようなスピンドル駆動部は、工作物の回転軸に対して同軸に配置されていてよく、あるいはこれに対してオフセットされていてもよい。
【0013】
さらに工作物保持装置は、工作物ホルダを支承するための保持構造を有していると好ましい。このような保持構造は、少なくとも1つの力センサを配置するのに特別に良く適している。保持構造は、工作物が研削加工されるときに静止しているか、又は、少なくとも回転軸を中心として動くことがないからである。
【0014】
さらに、両面研削機は送り駆動部も含むのが好ましく、これによって保持構造を機械軸に対して横向きに、特に垂直に、可動である。このことは、両面研削機のそれぞれの研削ディスクの間に形成される作業空間での工作物の位置決めを簡易化する。送りは研削ディスクの回転軸に関してたとえば径方向に行うことができ、あるいは、機械軸と平行かつ空間的にオフセットされて延びる旋回軸を中心とする旋回経路に沿って行うことができる。
【0015】
少なくとも1つの力センサはたとえばひずみゲージとして構成されていてよい。これは、引張負荷及び/又は圧縮負荷によって工作物保持装置の1つの区域に作用する応力を検出することを可能にする。力センサは保持構造に配置されるのが特別に好ましい。このことが特に好ましいのは、保持構造が非常に高い剛性で構成されていて、研削ディスクから工作物へ、及び工作物から工作物保持装置へ、及ぼされる力が、保持構造の無視できるほど小さい変形しか惹起しないが、それにもかかわらず、保持構造の内部での、又は保持構造の表面での、応力の測定によって、工作物の研削加工により引き起こされる力を検出可能な場合である。
【0016】
ひずみゲージとして構成される力センサは、加工力の間接的な検出を可能にする。その追加又は代替として、工作物保持装置に対して作用する力の直接的な測定も可能である。
【0017】
この目的のために、工作物保持装置がリニアガイドを含んでいると好ましく、リニアガイドのリニアガイド軸は機械軸と平行に延び、リニアガイドは2つのガイド部材を有し、第1のガイド部材は保持構造と結合され、第2のガイド部材はフレームと結合され、少なくとも1つの力センサは第1のガイド部材及び第2のガイド部材と結合されて、それぞれのガイド部材の間で作用する力を検出する。このとき保持構造は合力を受け、その値と方向は、第1の研削ディスクによる加工力と第2の加工ディスクによる加工力との差異によってもたらされる。この合力が工作物から工作物ホルダを介して保持構造へ、及びそこからガイド部材のうちの一方へ、伝達される。そこからこの力が、第2のガイド部材を介して、フレームに支持される力センサへと伝達される。
【0018】
好ましいガイド部材は、少なくとも1つのレールと、レールに沿って案内される少なくとも1つのキャリッジとを含む。
【0019】
さらに、少なくとも1つの力センサのセンサ軸は機械軸と平行に延びるのが好ましい。このことは、研削ディスクによって引き起こされる、機械軸と平行に作用する加工力の特別に簡易な検出を可能にする。
【0020】
特別に好ましい1つの力センサは、最小の変形で非常に高い力を検出し、高い解像度で電気信号へと変換することができる、圧電式の力センサである。
【0021】
力センサは、圧縮力センサ、又は初期応力をかけられた圧縮力センサ、又は圧縮力と引張力を検出するためのセンサであってよい。経済的な理由からは、圧縮力センサ又は初期応力をかけられた圧縮力センサを使用するのが好ましい。
【0022】
適切なセンサの選択は、両面研削機の機械軸がどのような向きを有しているかにも左右される。垂直方向を向く機械軸を両面研削機が有している場合、工作物保持装置の少なくとも1つの部分がその重量をもって力センサの上で荷重をかけ、力センサは、第1の研削ディスク及び第2の研削ディスクによる加工力に依存して、追加の負荷(いっそう高い圧力)を受けるか、又は負荷軽減(いっそう低い圧力)を受け得る。工作物保持装置の自重が十分ではない場合には、工場出荷時に初期応力をかけられてキャリブレーションされた圧縮力センサを使用することもでき、又は、両面研削機への取付時に初めて(たとえばエクスパンションボルトを用いて)初期応力をかけられ、引き続いてキャリブレーションされる圧縮力センサを使用することもできる。圧縮力センサの初期応力は、圧縮力だけでなく引張力も検出できるようにすることを可能にする。
【0023】
両面研削機の機械軸が水平方向に向いているケースでは、特に、初期応力をかけられた圧縮力センサ、又は圧縮力と引張力を検出するためのセンサを使用することができる。水平方向を向く機械軸については、研削ディスクの送り駆動部を比較的低出力に設計することができる。付属の機械部分を、及び研削ディスクを回転駆動するためにそこに組み込まれる回転駆動部を、機械軸に沿った重力に抗して持ち上げなくてすむからである。
【0024】
さらに本発明は、上で説明した両面研削機を使用してブレーキディスクを、特に自動車ブレーキディスクを、研削加工する方法に関し、この方法は、
a)第1の研削ディスクと第2の研削ディスクの間に配置される作業空間でブレーキディスクの部分区域が位置決めされることと、
b)少なくとも1つの力センサ及び/又は追加のセンサによって接触が検出されるまで、第1の研削ディスクのほうを向く第1のブレーキディスク表面に向かう方向へ第1の研削ディスクが送られて、後退ストローク経路の分だけ第1の研削ディスクの後退ストロークがなされることと、
c)少なくとも1つの力センサ及び/又は追加のセンサによって接触が検出されるまで、第2の研削ディスクのほうを向く第2のブレーキディスク表面に向かう方向へ第2の研削ディスクが送られて、後退ストローク経路の分だけ第1の研削ディスクの前進ストロークがなされることと、
d)互いに接近していく方向へ同じ値の切込み速度をもって両方の研削ディスクの切込みがなされることと、
e)力センサの信号に依存して研削ディスクのうちの少なくとも一方の切込み速度が適合化されること、
とを含む。
【0025】
本発明による方法では、両方のブレーキディスク表面への接触により、最初の剥離が両方のブレーキディスク表面で同時に行われることが保証される。このようにして、研削ディスクのうちの一方だけがブレーキディスクと接触することが回避される。このような接触は、すでに説明したブレーキディスクの不安定性により、これが軸方向で強く変形することに帰結しかねない。
【0026】
研削ディスクとブレーキディスク表面との間の接触の検出は、このような接触によって引き起こされる接触力を検出する、少なくとも1つの力センサを利用して行うことができる。その追加又は代替として、追加のセンサを用いて、たとえば固体伝搬音センサを用いて、接触の検出を行うことが可能である。
【0027】
互いに反対を向くブレーキディスク面との接触は、研削ディスクの最初の基準位置を定義できるようにすることを可能にする。それぞれ他方の研削ディスクによって基準位置の判定が影響を受けないようにするために、第1の研削ディスクが第1のブレーキディスク表面と接触した後に、特定の後退ストロークの分だけ第1の研削ディスクの後退ストロークが行われる。このことは、第2の研削ディスクが-第1の研削ディスクにより妨げられることなく-反対側の第2のブレーキディスク表面に接触し、そのようにして第2の研削ディスクの基準位置を規定することを可能にする。引き続いて第1の研削ディスクが前述の後退ストロークの分だけ再び第1のブレーキディスク表面に向かって送られ、それによりブレーキディスクの研削加工の開始時に、両方の研削ディスクが両方のブレーキディスク表面とそれぞれ接触する。以上を前提としたうえで、互いに近づいていく方向へ同じ値の切込み速度をもって、両方の研削ディスクの切込みが行われる。
【0028】
両方のブレーキディスク表面の表面品質が互いに同一であるケースでは、工具保持装置の少なくとも1つの力センサが、研削ディスクの切込み速度の適合化を必要にする力を受けることはない。しかし、両方のブレーキディスク表面のジオメトリー及び/又は品質が互いに相違したときにはただちに、研削ディスクのうちの一方がこれに付属するブレーキディスク表面に対して、他方の研削ディスクが他方のブレーキディスク表面に対して及ぼすよりも高い加工力を及ぼしていると考えられる。それぞれの加工力の間のこのような相違を、少なくとも1つの力センサによって検出することができ、それによりこの力センサが信号を生成して、高い加工力をブレーキディスク表面に対して及ぼしている研削ディスクをいっそう低い切込み速度で作動させるために、この信号を利用することができる。このようにして、高すぎる加工力を低減することができる。
【0029】
d)に基づく等しい値の切込み速度は最大の送り速度であり、e)に基づく送り速度の適合化は、研削ディスクのうちの一方の切込み速度の低減を伴うのが好ましい。それが意味するのは、理想的な場合にはブレーキディスクの加工が両方の側から最大の切込み速度をもって行われるが、必要に応じて、付属のブレーキディスク表面に対して高すぎる加工力で押圧をしている研削ディスクの切込み速度が低減されるということである。
【0030】
本発明のその他の構成要件や利点は、以下の説明及び実施例の図面の説明の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、両面研削機の1つの実施形態を示す斜視図である。
図2図2は、図1の両面研削機のモジュールを示す斜視図である。
図3図3は、両面研削機の別の実施形態を示す斜視図である。
図4図4は、図3の両面研削機を示す側面図である。
図5図5は、両面研削機の別の実施形態を示す斜視図である。
図6a図6aは、図5の両面研削機を示す前面図である。
図6b図6bは、図5の両面研削機を示す前面図である。
図6c図6cは、図5の両面研削機を示す前面図である。
図6d図6dは、図5の両面研削機を示す前面図である。
図6e図6eは、図5の両面研削機を示す前面図である。
図7a図7aは、図5の両面研削機の工作物保持装置における力推移と、研削ディスクの切込み速度とを表すグラフである。
図7b図7bは、図5の両面研削機の工作物保持装置における力推移と、研削ディスクの切込み速度とを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
両面研削機の実施形態が、図面では全体として符号10で表されている。機械10は、垂直方向の機械軸14を有する機械フレーム12を含んでおり、この機械軸に沿って、第1の研削ディスク18を有する第1の機械部分16と、第2の研削ディスク22を有すると第2の機械部分20とが可動に配置されている。
【0033】
第1の研削ディスク18と第2の研削ディスク22はハブディスクとして構成されていてよく、すなわち環状の作用面をそれぞれ有する。
【0034】
研削ディスク18及び22の互いに向き合う作用面の間で作業空間24が形成され、その中へ、特にブレーキディスク28の形態の工作物26を区域的に挿入可能である。
【0035】
工作物26は工作物保持装置30で保持され、これは工作物26を作業空間24の中へ、及びこの作業空間24から外へ、動かすために、水平方向の送り軸32に沿って可動である。
【0036】
工作物26は、たとえばねじ止めにより、工作物ホルダ34と結合される。工作物ホルダ34は、スピンドル駆動部36により、工作物26の中心軸38を中心として回転可能であり、それにより、工作物ホルダ34と結合されている工作物26も中心軸38を中心として回転する。中心軸38は機械軸14と平行に延びている。
【0037】
工作物ホルダ34は、(それ自体周知であるので図示しない)送り駆動部によって送り軸32に沿って可動である保持構造40で支承されている。
【0038】
保持構造40は、図2に示す両面研削機10のモジュールの一部として、下からの視点で示されている。
【0039】
保持構造40は、図示した実施例では、スピンドル駆動部36のハウジング42を含んでいる。保持構造40は少なくとも1つの壁区域44を有していて、中心軸38に沿って作用する力の結果として、この壁区域が伸長又は圧縮を受ける。壁区域44に、ひずみゲージとして構成された力センサ46が配置されている。
【0040】
図3及び4に示す両面研削機10の実施形態は、図1及び2を参照して上記で説明した両面研削機10に匹敵する構造を有している。以下においては、図1及び2の両面研削機10との相違点だけを説明する。
【0041】
図3及び4の両面研削機10は、機械軸14と延びるリニアガイド軸50を定義するリニアガイド48を有する工作物保持装置30を含んでいる。リニアガイド48は、リニアガイド軸50に沿って相互に案内される2つのガイド部材52及び54を含んでいる。第1のガイド部材52は、スピンドル駆動部36のハウジング42も含む保持構造40に付属している。第2のガイド部材54は、送り軸32に対して垂直かつ機械軸14と平行に不動であるフレーム56に付属している。
【0042】
この両面研削機10は、センサ軸(符号なし、リニアガイド軸50と平行に延びる)に沿って、一方で保持構造40及び他方でフレーム56と結合される、特に圧電式の力センサの形態の力センサ46を含んでいる。例示として、この力センサ46は圧縮力センサ又は初期応力をかけられた圧縮力センサである。
【0043】
このように、原則として保持構造40はリニアガイド軸50に沿って可動なようにフレーム56に支承される。ただし、比較的剛性の高い力センサ46が保持構造40ともフレーム56とも結合されているので、フレーム56に対して相対的なリニアガイド軸50に沿った保持構造40の実際の運動経路は無視できる。このことが意図される理由は、第1の研削ディスク及び第2の研削ディスク22による研削加工によって、特にブレーキディスク28の形態の工作物26へ導入される力を、最小の変形のもとで力センサ46が検出するのがよいからである。
【0044】
図5に示す両面研削機10は、図3及び4の両面研削機10に匹敵する構造を有しているが、これとは異なり水平方向の機械軸14を有している。図5の両面研削機10は、同じく機械軸14と平行に延びて水平であるリニアガイド軸50を有するリニアガイド48を同じく有している。
【0045】
リニアガイド装置48は、ガイドレールとして、及びレールに沿って案内されるキャリッジとして、それぞれ構成されたガイド部材52,54を含んでいる。このようなガイド部材は、図3及び4の両面研削機10のリニアガイド48の場合にも設けられる。
【0046】
図5の両面研削機10の力センサ46も、圧電式のセンサである。例示として、この力センサ46は初期応力をかけられた圧縮力センサであり、又は圧縮力と引張力を検出するために構成されたセンサである。
【0047】
以下において図5の両面研削機を参照しながら、ブレーキディスク28の形態の工作物26を研削加工する方法について説明する。
【0048】
図6aから6eには、ブレーキディスク28を含む工作物保持装置30と、研削ディスク18及び22だけがそれぞれ示されている。研削ディスクはそれぞれの作用面56及び58を有していて、これらがブレーキディスクの対応するブレーキディスク表面60ないし62とそれぞれ協同作用する。
【0049】
初期状態にあるとき(図6a参照)、研削ディスク18及び22の両方の作用面56及び58は、両方のブレーキディスク表面60及び62に対して間隔をおいている。
【0050】
ブレーキディスク28は作業空間24へ挿入されている(図6aを参照)。以上を前提としたうえで、第1の研削ディスク18の作用面56がブレーキディスク28の第1のブレーキディスク表面60と接触するまで、第1の研削ディスク18が第1の機械部分16の第1の送り駆動部により、機械軸14に沿ってブレーキディスク28に向かう方向へ送られる(図6bを参照)。この接触中に、ブレーキディスク28がスピンドル駆動部36により回転駆動される。研削ディスク18も回転し、それ自体周知なので図示しない回転駆動部により機械軸14を中心として駆動される。
【0051】
第1の研削ディスク18の作用面56と第1のブレーキディスク表面60との接触は、第1のブレーキディスク表面60に対して及ぼされる圧縮力を惹起し、これが工具ホルダ34を介して工作物保持装置30の保持構造40へと伝達され、そこから力センサ46に対して作用する。力センサ46は他方ではフレーム56に支持されており、そのようにして、図7a及び7bに力64として示す圧縮力を受ける。
【0052】
引き続き(図6c参照)、第1の研削ディスク18が第1の機械部分16の第1の送り駆動部により後退ストローク66の分だけ後退運動し、それにより、第1の研削ディスク18は再びブレーキディスク28に対して間隔をおく。このことは図7a及び7bでは、力推移の領域68と対応する力センサ46の負荷軽減につながる。
【0053】
引き続いて(図6d参照)、第2の研削ディスク22の作用面58がブレーキディスク28の第2のブレーキディスク表面62と接触するまで、第2の研削ディスク22が第2の機械部分20の第2の送り駆動部により機械軸14に沿って動く。この接触中に、ブレーキディスク28がスピンドル駆動部36により回転駆動される。研削ディスク22も回転し、それ自体周知なので図示しない回転駆動部により機械軸14を中心として駆動される。この接触は、図7a及び7bでは力推移の領域70に対応する引張力を、保持構造40が力センサ46に対して及ぼすことにつながる。
【0054】
引き続いて、第1の研削ディスク18がブレーキディスク28と再び接触するまで、第1の研削ディスク18が再び後退ストローク66の分だけ送られる(図6d及び6eを参照)。この状態は図7a,7bにおける力推移の領域72に対応し、この領域では力センサ46が理想的には引張力も圧縮力も受けない。
【0055】
図6eに示す状態を前提としたうえで、ブレーキディスク28の本来の研削加工が開始され、その際には研削ディスク18及び22が互いに近づく方向へ等しい値の切込み速度で動いて、ブレーキディスク表面60及び62の表面コーティングを剥離するが、それぞれ異なる大きさの加工力によって引き起こされる変形力は回避されるべきである。ブレーキディスク表面60及び62の品質とジオメトリーが同一である限りにおいて、両方の研削ディスクの等しい値の切込み速度を維持することができ、力センサ46が圧縮力又は引張力を受けることはない。このような理想状態が図7aに示されており、ここでは切込み速度74は第1の研削ディスク18の切込み速度に対応し、切込み速度76は第2の研削ディスク22の切込み速度に対応する。
【0056】
図7bには、送り速度74及び76の適合化につながる、理想状態から外れた力推移が示されている。図6eに示す状態と、圧縮力及び引張力を受けない力センサ46とを前提としたうえで、ブレーキディスク28を加工する過程でたとえば第1の研削ディスク18の作用面56が第1のブレーキディスク表面60の表面コーティングとの間で、第2の研削ディスク22の作用面58が第2のブレーキディスク表面62の表面コーティングと接触するよりも広い接触面にわたって接触するということが起こり得る。このことは、第1の研削ディスク18が第2の研削ディスク22よりも高い加工力をブレーキディスク28に対して及ぼすことにつながる。このことが力センサ46によって検出され、すなわちゼロとは相違する圧縮力78として検出される(図7b参照)。
【0057】
両方の研削ディスク18及び22の切込み速度74及び76をそのまま維持すると、ブレーキディスク28が研削ディスク18による高い圧力に従って、工作物ホルダ34に対して相対的に第2の研削ディスク22に向かう方向へと変形することになる。これを回避するために、第1の研削ディスク18の切込み速度が低減され(図7bに符号80で表した領域を参照)、力センサ46が再び力を受けなくなるまでこれを続ける。
【0058】
これに続いて、最大の切込み速度74及び76での加工を行うことができる。たとえば第2の研削ディスク22が、第1の研削ディスク18と比較して高い力をもってブレーキディスク28に作用している場合、力センサ46は引張力を受ける(図7bの符号82を参照)。第1の研削ディスク18に向かう方向へのブレーキディスク28の変形を回避するために、このケースでは第2の研削ディスク22の切込み速度が低減され(図7bに符号84で表した領域を参照)、力センサ46が再び力を受けなくなるまでこれが続けられる。
【0059】
図7bに示すように、上記で説明した切込み速度の変更を複数回実行することができる;たとえば第1の研削ディスク18の切込み速度74及び/又は第2の研削ディスク22の切込み速度76を複数回低減し、再び上昇させることができる。
【0060】
切込み速度74及び/又は76の低減は、必要時には「ゼロ」まで行うこともでき、すなわち、機械軸14に沿って研削ディスク18及び/又は22が停止するまで行うこともできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
【国際調査報告】