(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20250130BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20250130BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20250130BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B1/00 101
C22B3/22
C22B23/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543445
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 IN2023050091
(87)【国際公開番号】W WO2023148760
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】202211005731
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524274576
【氏名又は名称】メタステーブル・マテリアルズ・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシュワカルマ,シュバム
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA19
4K001BA22
4K001CA02
4K001CA04
4K001CA09
4K001EA06
4K001GA19
(57)【要約】
本発明の様々な実施形態は、リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するためのシステムおよび方法を提供する。本システムは、分離モジュールおよび抽出モジュールを備える。抽出モジュールは、不活性容器、炉装置、急冷装置、ろ過機構、および湿式磁気分離装置をさらに備える。分離プロセスから獲得される黒い塊は、炉内で加熱され、次いで急冷される。次いで懸濁液は、ろ過され、次いで溶液は、リチウム有価物を抽出するために気化される。ろ過残留物は、湿式磁気分離に供され、磁性物質は、コバルト、ニッケル、および非磁性の塊の形態にある複数の他の元素を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するためのシステムであって、
リチウムイオン電池から活物質を分離するように設計される分離モジュールと、
前記分離モジュールから獲得される黒い塊を収納するように設計される不活性容器と、
前記黒い塊からの水分の除去を促進するため、および前記不活性容器内で複数の化学反応を促進するために、前記不活性容器内の前記黒い塊を複数の異なる予め設定された温度範囲に維持するように設計される炉装置と、
冷水により前記活物質の急冷を可能にし、懸濁液の作製を促進する急冷装置と、
ろ過機構と、
ろ過した物質からの磁性物質および非磁性物質の分離を促進する湿式磁気分離装置と、を備える、システム。
【請求項2】
前記不活性容器は、好ましくは、ステンレス鋼(SS330)などの物質で作製され、前記不活性容器に含有される前記黒い塊は、リチウムイオン電池の正極および負極活物質、黒鉛、ならびに複数の不可避の汚染物を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記炉装置は、好ましくは、連続炉またはマッフル炉であり、前記炉は、前記不活性容器を数時間にわたって予め設定された温度範囲に維持するように設計され、前記炉の前記温度は、任意の選択的元素が前記黒い塊から抽出されるかどうかに応じて調節される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ろ過機構は、前記急冷後に前記懸濁液を保持するように設計される密閉容器であり、前記懸濁液は、前記懸濁液中の前記活物質が急冷中に過剰な炭素内でかき混ぜられた後、炭酸リチウム、金属、および二酸化炭素を含み、前記密閉容器内の前記懸濁液は、予め設定された固体-液体(S/L)比に維持され、二酸化炭素環境において大気圧よりも高い圧力下で一定のかき混ぜに供され、固体および液体物質の分離、ならびに二酸化炭素ガスの吸収は、前記密閉容器内でより高い圧力下での前記一定のかき混ぜによって可能になり、前記液体は、次いで、圧力下で分離され、その後、リチウム有価物を獲得抽出するために気化され、ろ過残留物は、湿式磁気分離に供される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記湿式磁気分離装置は、前記ろ過した物質内に磁性物質としてコバルトおよびニッケルならびに複数の非磁性物質を含み、コバルトおよびニッケルの割合が非磁性物質において高いとき、前記ろ過した物質は、リチウムイオン電池の新たな活物質と一緒に、もう一度抽出プロセスに供され、磁性物質の純度が低いと見なされるとき、それは、複数回磁気分離にさらに供される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するための方法であって、
リチウムイオン電池からの活物質の分離から獲得される黒い塊のための不活性容器を提供するステップと、
水分を除去して反応を促進するための炉装置内に前記不活性容器を置くことによって、前記黒い塊(物質)および前記不活性容器をより高い温度に維持するステップと、
懸濁液を作製するために急冷装置内の冷水中で前記物質を急冷し、高圧で二酸化炭素雰囲気内でかき混ぜるステップと、
固体および液体物質をろ過するために、高圧で特定の固体-液体比で、ろ過機構内で前記懸濁液をかき混ぜるステップと、
リチウム有価物を抽出するために液状物質を蒸発させるステップと、
磁性および非磁性物質のさらなる分離のため、前記ろ過残留物を湿式磁気分離装置内での湿式磁気分離に供するステップと、を含む、方法。
【請求項7】
前記炉装置は、前記不活性容器を数時間にわたって予め設定された温度範囲に維持するように設計され、前記炉の前記温度は、任意の選択的元素が前記黒い塊から抽出されるかどうかに応じて調節される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ろ過機構は、前記急冷後に前記懸濁液を保持するように設計される密閉容器であり、前記懸濁液は、前記活物質が急冷中に過剰な炭素と反応した後、炭酸リチウム、金属、および二酸化炭素を含み、前記密閉容器内の前記懸濁液は、予め設定された固体-液体(S/L)比に維持され、大気圧よりも高い圧力下で一定のかき混ぜに供され、固体および液体物質の分離、ならびに二酸化炭素ガスの吸収は、前記密閉容器内でより高い圧力下での前記一定のかき混ぜによって可能になる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記湿式磁気分離装置は、前記ろ過した物質からの磁性物質および非磁性物質の分離を促進し、前記湿式磁気分離装置は、前記ろ過した物質内に磁性物質としてコバルトおよびニッケルならびに複数の非磁性物質を含み、コバルトおよびニッケルの割合が高いとき、前記ろ過した物質は、リチウムイオン電池の新たな活物質と一緒に、もう一度抽出プロセスに供される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本明細書の実施形態は、番号202211005731、および表題「SYSTEM AND METHOD FOR EXTRACTION OF METAL VALUES FROM ACTIVE MATERIAL OF LITHIUM-ION BATTERIES」の2022年2月3日に出願されたインド仮特許出願の優先権を主張するものであり、その内容は、全体が参照により本明細書に含まれる。
【0002】
[0002]本発明は、概して、リチウムイオン電池に関する。本発明は、特に、リチウムイオン電池のリサイクルを可能にするシステムおよび方法に関する。本発明は、より詳細には、リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]使用済みリチウムイオン電池の安全な廃棄は、様々なデバイスおよび家電に電力供給するためのリチウムイオン電池の大規模生産が理由で、近年非常に重要性を帯びている。現在、使用済みリチウムイオン電池の安全な廃棄は、主として使用済み電池内の活物質の存在が理由で、難題がないとは言えない。
【0004】
[0004]リチウムイオン電池の活性金属から有価物を抽出するために使用される現在のプロセスは、大きく2つのカテゴリー、具体的には湿式精錬および乾式製錬に該当している。湿式精錬は、活物質を浸出する酸、およびその後、溶媒-溶媒抽出を使用して有価物を抽出することを含んでいる。乾式製錬は、電気アーク炉を使用すること、および活物質を溶融することを含んでいる。軽金属がスラグを形成する一方で、重金属は沈むため、重金属が抽出される。しかしながら、これらのプロセスは、非効率的であり、複数の動作および設定の複雑性および困難性を有する。
【0005】
[0005]故に、リチウムイオン電池から活物質を抽出するための効率的な方法が必要とされている。
【0006】
[0006]上述の短所、欠点、および問題は、本明細書で対処され、これは、以下の詳細な説明を読むことおよび研究することにより理解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]本発明の主目的は、リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するためのシステムおよび方法を提供することである。
【0008】
[0008]本発明のさらに別の目的は、工業環境において炭素熱抽出プロセスを提供することである。
【0009】
[0009]本発明のさらに別の目的は、より低温度、および現在の抽出方法において慣習的に利用されていない新たな一連の反応を使用するプロセスを提供することである。
【0010】
[0010]本発明のこれらおよび他の目的および利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から容易に明らかになるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011]本発明の様々な実施形態は、リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するためのシステムおよび方法を提供する。本システムは、分離モジュールおよび抽出モジュールを備える。抽出モジュールは、不活性容器、炉装置、急冷装置、ろ過機構、および湿式磁気分離装置をさらに備える。
【0012】
[0012]本発明の1つの実施形態によれば、分離モジュールが提供される。電池は、何らかの不可避の汚染物と一緒に、NMC、LCO LMO、および黒鉛などの電池の活物質を含む黒い塊を産出するために、複数の電気、機械、および化学プロセスに供される。
【0013】
[0013]本発明の1つの実施形態によれば、黒い塊は、蓋付きの不活性容器内に収納される。不活性容器は、次いで、炉(連続またはマッフル型)内に置かれ、以下の反応を促進するために2~5時間にわたって摂氏800±100度の温度まで加熱される。黒い塊は、典型的には、反応を促進するために必要量のすべての反応物を含有するということに留意されたい。
【0014】
【0015】
[0015](式中、M=Co,Niなど。)
【0016】
[0016]物質は、冷水(好ましくは、CaOH溶液2%W/W)中で急冷され、次いで溶液は、飽和までCaOHを絶えず追加しながら数時間にわたって加熱され、かき混ぜられる。
【0017】
【0018】
[0018]本発明のさらに別の代替の実施形態によれば、急冷後、密閉容器内の懸濁液は、予め設定された固体-液体-気体(S/L/G)比に維持され、大気圧よりも高い圧力下で一定のかき混ぜに供される。固体および液体物質の分離、ならびに二酸化炭素ガスの吸収は、密閉容器内でより高い圧力下での一定のかき混ぜにより可能になる。懸濁液は、高圧下でろ過され、次いで溶液/液体は、リチウム有価物を獲得するために気化される。ろ過残留物は、湿式磁気分離に供され、磁性物質は、コバルト、ニッケル、および非磁性の塊の形態にある複数の他の元素を含む。炭素熱還元ステップの温度は、非磁性の塊が、その中に存在する異なる金属を抽出するために再び処理される間、選択的元素を抽出するために調節される。
【0019】
[0019]本明細書の実施形態のこれらおよび他の態様は、以下の説明および添付の図面と併せて検討されるときにより良く認識および理解されるものとする。しかしながら、以下の説明は、好ましい実施形態およびそれらの多数の特定の詳細を示すが、限定ではなく例示として提供されるということを理解されたい。多くの変更および修正が、本明細書の実施形態の範囲内で、その趣旨から逸脱することなくなされ得、本明細書の実施形態は、すべてのそのような修正を含む。
【0020】
[0020]他の目的、特徴、および利点は、好ましい実施形態の以下の説明および添付の図面から当業者に想起されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】[0021]本発明の1つの実施形態による、リチウムイオン電池から活物質を抽出するためのシステムを例示する図である。
【
図2】[0022]本発明の1つの例示的な実施形態による、リチウムイオン電池からの抽出後のリチウムのSEMおよびXRD画像を例示する図である。
【
図3】[0023]本発明の1つの例示的な実施形態による、リチウムイオン電池から抽出される磁性および非磁性物質の特徴付け結果を例示する図である。
【
図4】[0024]本発明の1つの例示的な実施形態による、後続の精製におけるリチウムイオン電池から抽出される非磁性物質のXRD画像を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0025]本発明の特定の特徴は、いくつかの図面に示されるが、他の図面には示されていない。これは、各特徴が本発明に従って他の特徴のうちのいずれかまたはすべてと組み合わせ得るため、簡便性のためだけになされる。
【0023】
[0026]以下の詳細な説明において、その一部を形成する添付の図面に対して参照がなされ、添付の図面には、実践され得る特定の実施形態が例示として示される。これらの実施形態は、当業者が実施形態を実践することを可能にするために十分に詳細に説明され、他の変更が実施形態の範囲から逸脱することなくなされ得るということを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的意味にとられるべきではない。
【0024】
[0027]本発明の様々な実施形態は、リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するためのシステムおよび方法を提供する。本システムは、分離モジュールおよび抽出モジュールを備える。抽出モジュールは、不活性容器、炉装置、急冷装置、ろ過機構、および湿式磁気分離装置をさらに備える。分離モジュールは、リチウムイオン電池から活物質を分離するように設計される。不活性容器は、分離モジュールから獲得される黒い塊を収納するように設計される。炉装置は、黒い塊からの水分の除去を促進するため、および不活性容器内で複数の化学反応を促進するために、不活性容器内の黒い塊を複数の異なる予め設定された温度範囲に維持するように設計される。急冷装置は、冷水により活物質の急冷を可能にし、懸濁液の作製を促進する。湿式磁気分離装置は、ろ過した物質からの磁性物質および非磁性物質の分離を促進する。
【0025】
[0028]本発明の1つの実施形態によれば、不活性容器は、好ましくは、ステンレス鋼(SS330)などの物質で作製される。不活性容器内に含まれる黒い塊は、リチウムイオン電池の正極および負極活物質、黒鉛、ならびに複数の不可避の汚染物を含む。
【0026】
[0029]本発明の1つの実施形態によれば、炉装置は、好ましくは、連続炉またはマッフル炉である。炉は、不活性容器を数時間にわたって予め設定された温度範囲に維持するように設計される。炉の温度は、任意の選択的元素が黒い塊から抽出されるかどうかに応じて調節される。
【0027】
[0030]本発明の1つの実施形態によれば、ろ過機構は、急冷後に懸濁液を保持するように設計される密閉容器である。懸濁液は、懸濁液中の活物質が急冷中に過剰な炭素内でかき混ぜられた後、炭酸リチウム、金属、および二酸化炭素を含む。密閉容器内の懸濁液は、予め設定された固体-液体(S/L)比に維持され、二酸化炭素環境において大気圧よりも高い圧力下で一定のかき混ぜに供される。固体および液体物質の分離、ならびに二酸化炭素ガスの吸収は、密閉容器内でより高い圧力下での一定のかき混ぜによって可能になる。液体は、次いで、圧力下で分離され、その後、リチウム有価物を獲得抽出するために気化され、ろ過残留物は、湿式磁気分離に供される。
【0028】
[0031]本発明の1つの実施形態によれば、湿式磁気分離装置は、ろ過した物質内に磁性物質としてコバルトおよびニッケルならびに複数の非磁性物質を含む。コバルトおよびニッケルの割合が非磁性物質において高いとき、ろ過した物質は、リチウムイオン電池の新たな活物質と一緒に、もう一度抽出プロセスに供される。また、磁性物質の純度が低いと見なされるとき、それは、複数回磁気分離にさらに供される。
【0029】
[0032]本発明の1つの実施形態によれば、リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するための方法が提供される。本方法は、リチウムイオン電池からの活物質の分離から獲得される黒い塊のための不活性容器を提供するステップと、水分を除去して反応を促進するための炉装置内に不活性容器を置くことによって、黒い塊(物質)および不活性容器をより高い温度に維持するステップと、懸濁液を作製するために急冷装置内の冷水中で物質を急冷し、高圧で二酸化炭素雰囲気内でかき混ぜるステップと、固体および液体物質をろ過するために、高圧で特定の固体-液体比で、ろ過機構内で懸濁液をかき混ぜるステップと、リチウム有価物を抽出するために液状物質を蒸発させるステップと、磁性および非磁性物質のさらなる分離のため、ろ過残留物を湿式磁気分離装置内での湿式磁気分離に供するステップと、を含む。
【0030】
[0033]本発明の1つの実施形態によれば、分離モジュールが提供される。電池は、何らかの不可避の汚染物と一緒に、NMC、LCO LMO、および黒鉛などの電池の活物質を含む黒い塊を産出するために、複数の電気、機械、および化学プロセスに供される。
【0031】
[0034]本発明の1つの実施形態によれば、黒い塊は、蓋付きの不活性容器内に収納される。不活性容器は、次いで、炉(連続またはマッフル型)内に置かれ、以下の反応を促進するために2~5時間にわたって摂氏800±100度の温度まで加熱される。黒い塊は、典型的には、反応を促進するために必要量のすべての反応物を含有するということに留意されたい。
【0032】
【0033】
[0036](式中、M=Co,Niなど。)
【0034】
[0037]物質は、冷水(好ましくは、CaOH溶液2%W/W)中で急冷され、次いで溶液は、飽和までCaOHを絶えず追加しながら数時間にわたって加熱され、かき混ぜられる。
【0035】
【0036】
[0039]本発明のさらに別の代替の実施形態によれば、急冷後、密閉容器内の懸濁液は、予め設定された固体-液体-気体(S/L/G)比に維持され、大気圧よりも高い圧力下で一定のかき混ぜに供される。固体および液体物質の分離、ならびに二酸化炭素ガスの吸収は、密閉容器内でより高い圧力下での一定のかき混ぜにより可能になる。懸濁液は、高圧下でろ過され、次いで溶液/液体は、リチウム有価物を獲得抽出するために気化される。ろ過残留物は、湿式磁気分離に供され、磁性物質は、コバルト、ニッケル、および非磁性の塊の形態にある複数の他の元素を含む。炭素熱還元ステップの温度は、非磁性の塊が、その中に存在する異なる金属を抽出するために再び処理される間、選択的元素を抽出するために調節される。
【0037】
[0040]本発明の1つの例示的な実施形態によれば、実験条件、およびリチウムイオン電池の活物質からの金属有価物の抽出の結果が提供される。黒い塊の物質の500kgバッチを、オーステナイトステンレス鋼製の容器の内側の炉内に置き、6時間にわたって摂氏300度、2時間にわたって摂氏850度、および30分間にわたって摂氏400度の温度まで加熱した。続いて、黒い塊の物質を急冷し、圧力が安定するまで1:3のS/L比で純粋な二酸化炭素ガス環境を常に供給することによって、12バールの圧力で、圧力容器内でかき混ぜた。
図2は、リチウムイオン電池からの抽出後のリチウムのSEMおよびXRD画像を例示し、高品質リチウムの抽出の証を例示する。次いで、ろ過物を湿式磁気分離に供し、磁性および非磁性物質は、
図3および
図4に例示されるように、分離される。純度を上げるため、および不純物を除去するために、磁性物質を、湿式磁気分離器を介して処理した。
【0038】
[0041]
図1は、リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するためのシステムを例示する。本システムは、分離モジュール101および抽出モジュール102を備える。抽出モジュールは、不活性容器102a、炉装置102b、急冷装置102c、ろ過機構102d、および湿式磁気分離装置102eをさらに備える。
【0039】
[0042]
図2は、本発明の1つの例示的な実施形態による、リチウムイオン電池からの抽出後のリチウムのSEMおよびXRD画像を例示する。
【0040】
[0043]
図3は、本発明の1つの例示的な実施形態による、リチウムイオン電池から抽出される磁性および非磁性物質の特徴付け結果を例示する。
【0041】
[0044]
図4は、本発明の1つの例示的な実施形態による、後続の精製におけるリチウムイオン電池から抽出される非磁性物質のXRD画像を例示する。
【0042】
[0045]本明細書の実施形態は、様々な特定の実施形態を用いて説明されるが、当業者が本明細書の実施形態を、修正を伴って実践することは明白である。
【0043】
発明の効果
[0046]本発明の様々な実施形態は、リチウムイオン電池の活物質から金属有価物を抽出するためのシステムおよび方法を提供する。抽出プロセスは、金属を金属の形態で、およびリチウムを直接的に炭酸リチウムまたは酸化物の形態で抽出し、このことが追加の要件または処理を最小限にし、故に、設定および動作目的のために必要なリソースを最小限にする。
【0044】
[0047]特定の実施形態の先述の説明は、現在の知識を適用することによって、上位概念から逸脱することなく特定の実施形態などの様々な応用のために容易に修正することおよび/または適応させることができる本明細書の実施形態の一般的性質を、そのように完全に明らかにし、したがって、そのような適応および修正は、開示された実施形態の等価物の意味および範囲内で理解されることが意図される。本明細書で用いられる表現または用語は、限定ではなく説明の目的のためであるということを理解されたい。したがって、本明細書の実施形態は、好ましい実施形態に関して説明されているが、当業者は、本明細書の実施形態が修正を伴って実践され得ることを認識するものとする。しかしながら、すべてのそのような修正は、特許請求の範囲内であると見なされる。
【国際調査報告】