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▶ ベルナップ ファーマシューティカルズ, エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】オキシトシンを使用した治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/095 20190101AFI20250130BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/48 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/49 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61K38/095
A61K31/58
A61K31/57
A61K31/135
A61K31/36
A61K31/4045
A61K31/485
A61K31/48
A61K31/137
A61K45/00
A61K31/407
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/04
A61P25/06
A61P1/00
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K31/675
A61K31/49
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545240
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-08-30
(86)【国際出願番号】 US2022035860
(87)【国際公開番号】W WO2023146579
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/303,807
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524283442
【氏名又は名称】ベルナップ ファーマシューティカルズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベルナップ, ドリュー グラント
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA24
4C084DB03
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA081
4C084ZA181
4C084ZA661
4C084ZC041
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA13
4C086BC13
4C086BC28
4C086CB20
4C086CB23
4C086DA10
4C086DA12
4C086DA38
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA08
4C086ZA18
4C086ZA66
4C086ZC04
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA27
4C206FA29
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA79
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZA08
4C206ZA18
4C206ZA66
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、オキシトシン標的剤を使用して疾患及び障害を治療及び/又は予防するための方法、並びにそれに関連する組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における重度の不安、大うつ病性障害(MDD)単発又は再発、持続性うつ病性障害(気分循環性障害)、治療抵抗性うつ病(TRD)、破壊的気分調節障害、双極性障害1、双極性障害2、月経前不快障害、統合失調性障害、調整障害、複雑性局所疼痛症候群(CRPS)1型、CRPS2型、慢性神経障害性疼痛、慢性疼痛症候群、慢性腰痛、線維筋痛、片頭痛、慢性神経障害性疼痛、急性神経障害性疼痛、又は過敏性腸症候群から選択される1つ以上の疾患又は障害を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン、有効量の神経可塑性剤、及び任意に、有効量の抗炎症剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記神経可塑性剤が、ラセミケタミン、エスケタミン、(R)-ケタミン、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)、サイロシビン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、N,N-ジメチルトリプタミン(DMT又はN,N-DMT)、リセルギン酸ジエチルアミド(LSD)、デキストロメトルファン、ニューデクスタ(デキストロメトルファンとキニジンの組み合わせ)、デューデキストロメトルファン(AVP-786)、アクサム(AXS-05)、デキストロメタドン(REL-1017)、又はズラノロン(SAGE-217)のうちの1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象における産後うつ病又は周産期うつ病を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン、有効量の神経可塑性剤、及び有効量の抗炎症剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項4】
前記神経可塑性剤が、ブレキサノロン又はズラノロン(SAGE-217)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、急性期及び維持期を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記急性期が、前記神経可塑性剤を投与する前に、第1の用量のオキシトシンを投与することを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記急性期が、オキシトシンを投与する前に、第1の用量の前記神経可塑性剤を投与することを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記オキシトシンが、静脈内に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記オキシトシンが、鼻腔内に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記神経可塑性剤が、静脈内に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記神経可塑性剤が、鼻腔内に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記オキシトシンの用量が、0.1~100国際単位(IU)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記急性期が、ラセミケタミン、エスケタミン、又は(R)-ケタミンを投与することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記急性期が、ラセミケタミン、エスケタミン、又は(R)-ケタミンを、約60mgの総用量で、任意に、50分にわたって静脈内に投与することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記急性期が、ラセミケタミン、エスケタミン、又は(R)-ケタミンを、0.1~300mgの初回用量で鼻腔内に投与され、任意に、10~15分後に0.1~300mgの用量で、第2の鼻腔内ケタミン用量で投与することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記急性期が、3~5週間、1週間に2回の治療である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記維持期が、2~4週間、1週間に1回の治療、次いで2週間に1回の治療、又は最初の6カ月間、2~4週間ごとに1回の治療を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記維持期の各治療用量が、以前の治療から減少するか、変化しないままであるか、又は増加する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記維持期の各治療用量が、以前の治療からの前記患者の応答に基づいて、5mg、10mg、又は15mg増加する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
対象における全般性不安障害(GAD)、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、分離不安障害、強迫性障害(OCD)、社会不安障害、身体醜形障害、神経性食欲不振、神経性過食症、過食性障害を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン及び有効量の神経可塑性剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記対象が、16~18歳又は66~75歳である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
急性期及び維持期を含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記急性期が、前記神経可塑性剤を投与する前に、第1の用量のオキシトシンを投与することを含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記急性期が、オキシトシンを投与する前に、第1の用量の前記神経可塑性剤を投与することを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記オキシトシンが、静脈内に投与される、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記オキシトシンが、鼻腔内に投与される、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記神経可塑性剤が、静脈内に投与される、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記神経可塑性剤が、鼻腔内に投与される、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記オキシトシンの用量が、0.1~75国際単位(IU)である、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記急性期が、ラセミケタミン、エスケタミン、又は(R)-ケタミンを投与することを含む、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記急性期が、ラセミケタミン、エスケタミン、又は(R)-ケタミンを、約40mgの総用量で、任意に、50分にわたって静脈内に投与することを含む、請求項20~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記急性期が、ラセミケタミン、エスケタミン、又は(R)-ケタミンを、0.1~200mgの初回用量で鼻腔内に投与され、任意に、10~15分後に0.1~200mgの用量で、第2の鼻腔内ケタミン用量で投与することを含む、請求項20~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記急性期が、3~5週間、1週間に2回の治療である、請求項20~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記維持期が、2~4週間、1週間に1回の治療、次いで2週間に1回の治療、又は最初の6カ月間、2~4週間ごとに1回の治療を含む、請求項20~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記維持期の各治療用量が、以前の治療から減少するか、変化しないままであるか、又は増加する、請求項20~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記維持期の各治療用量が、以前の治療からの前記患者の応答に基づいて、5mg、10mg、又は15mg増加する、請求項20~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、抗炎症剤を投与することを更に含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与することを更に含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、ケトロラックを投与することを更に含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する5つの出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が組み込まれる、2022年1月27日に出願された米国仮出願第63/303,807号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張する。
(技術分野)
【0002】
本開示は、オキシトシン標的剤を使用して疾患及び障害を治療及び/又は予防するための方法、並びにそれに関連する組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
毎年、米国の成人の20人に1人が深刻な精神疾患を経験していると推定されている。精神疾患に対する治療の選択は、ヒトによって異なる。同じ診断を受けたヒトでも、治療のための異なる経験、ニーズ、目標、及び目的を有するであろう。「万能」な治療法はない。重症患者の場合、治療のための選択肢及び成功率は限定され得、回復率も低い。重篤な精神疾患を持つ人々は、心血管疾患及び代謝性疾患を発症する可能性が一般集団のほぼ2倍であり、失業率が高く、学校を中退する可能性が高く、薬物使用障害を発症する可能性が高く、入院する可能性が高く、更には投獄される可能性も高い。
【0004】
したがって、精神疾患及び他の精神疾患の治療のための新しい治療レジメンに対する絶え間ない需要がある。
【発明の概要】
【0005】
対象における重度の不安、大うつ病性障害(MDD)単発又は再発、持続性うつ病性障害(気分循環性障害)、治療抵抗性うつ病(TRD)、破壊的気分調節障害、双極性障害1、双極性障害2、月経前不快障害、統合失調性障害、調整障害、複雑性局所疼痛症候群(CRPS)1型、CRPS2型、慢性神経障害性疼痛、慢性疼痛症候群、慢性腰痛、線維筋痛、片頭痛、慢性神経障害性疼痛、急性神経障害性疼痛、又は過敏性腸症候群から選択される治療するための方法であって、有効量のオキシトシン、有効量の神経可塑性剤、及び任意に、有効量の抗炎症剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法が、本明細書において提供される。
【0006】
いくつかの実施形態では、神経可塑性剤は、ラセミケタミン、エスケタミン(Spravato)、(R)-ケタミン、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)、サイロシビン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、N,N-ジメチルトリプタミン(DMT又はN,N-DMT)、リセルギン酸ジエチルアミド(LSD)、デキストロメトルファン、ニューデクスタ(デキストロメトルファン及びキニジンの組み合わせ)、デューデキストロメトルファン(AVP-786)、アクサム(AXS-05)、デキストロメタドン(REL-1017)、又はズラノロン(SAGE-217)のうちの1つ以上である。
【0007】
対象における産後うつ病又は周産期うつ病を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン及び有効量の神経可塑性剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法もまた、本明細書において提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、神経可塑性剤は、ブレキサノロン又はズラノロン(SAGE-217)である。
【0009】
対象における全般性不安障害(GAD)、パニック障害、外傷後ストレス障害、分離不安障害、強迫性障害(OCD)、社会不安障害、身体醜形障害、神経性食欲不振、神経性過食症、過食性障害を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン及び有効量の神経可塑性剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法もまた、提供される。
【0010】
対象における慢性疲労症候群を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン及び有効量の神経可塑性剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法もまた、提供される。
【0011】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、治療は、急性期、又は安定化期、及び維持期を含み、任意に、急性期は、神経可塑性剤を投与する前に第1の用量のオキシトシンを投与し、任意に、その後に抗炎症剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、オキシトシン、神経可塑性剤、及び/又は抗炎症剤は、鼻腔内に投与される。
【0012】
開示された治療は、前述の疾患又は障害のうちの1つ以上に罹患している対象が、精神的及び/又は身体的健康にプラスの効果を有する脳内の神経接続を刺激及び再生、又はより迅速に刺激及び再生することを可能にすることが企図される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明は、本発明の技術の例示的な実施形態を説明する。しかしながら、そのような説明は、本開示の範囲の限定として意図されるものではなく、代わりに、例示的な実施形態の説明として提供されることが認識されるべきである。
【0014】
別途定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0015】
本明細書に例示的に記載される開示は、本明細書に特に開示されていないいずれかの要素又は複数の要素、限定又は複数の限定がない場合にも好適に実施することができる。したがって、例えば、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「含有すること(containing)」などの用語は、広義かつ限定されずに、読み取られるべきである。更に、本明細書で使用される用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、かかる用語及び表現の使用には、示され、記載された特徴又はそれらの一部の任意の等価物を除外する意図はないが、開示された特許請求の範囲内で様々な変更が可能であることは認識される。
【0016】
「約」という用語は、指定された値の±1%、±3%、±5%、又は±10%の変動を指す。例えば、「約50」は、いくつかの実施形態では、45~55の範囲を含むことができる。整数範囲について、「約」という用語は、範囲の各端部で、列挙される整数よりも大きい、及び/又はそれよりも小さい1つ又は2つの整数を含むことができる。本明細書で別途示されない限り、「約」という用語は、個々の成分、組成物、又は実施形態の官能性に関して等価である、列挙される範囲に近接する値、例えば、重量パーセンテージを含むことが意図される。また、「a」及び「the」という単数形は、文脈が別段に明示しない限り、複数の参照物を含む。したがって、例えば、「カンナビノイド」への言及は、複数のそのような化合物を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」は、臨床結果などの有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。本開示の目的のために、有益な又は所望の臨床結果は、症状の緩和及び/又は症状の程度の低下及び/又は疾患若しくは病態に関連する症状の悪化を予防することを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用するために、有益な又は所望の臨床結果は、症状の緩和及び/又は症状の程度の低下、及び/又は所与の疾患若しくは障害に関連する症状の悪化を予防することを含むが、これらに限定されない。好ましくは、本明細書に記載の方法を使用した対象の治療は、疾患若しくは病態及び/又は障害、特に、治療抵抗性対象、一般的な治療薬に重篤な副作用を有する対象、又は典型的な標準治療が無効又は禁忌である対象などの対象の生活の質のための現在利用可能な治療に関連する副作用を伴わないか、又はそれ以下の副作用を伴う。典型的な標準治療は、薬物療法、物理療法又は心理療法を含む療法、又はその両方が挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、有効性及び毒性のそのパラメータと組み合わせて、並びに開業医の知識に基づいて、所与の治療形態で有効であるべきである本開示の化合物又は組成物のそのような量を意図する。当該技術分野で理解されるように、有効量は、1つ以上の用量であってもよく、すなわち、所望の治療エンドポイントを達成するために単回用量又は複数回用量が必要とされ得る。有効量は、1つ以上の治療剤を投与する文脈において考慮されてもよく、1つ以上の他の薬剤と併せて、所望の又は有益な結果が得られ得るか、又は達成される場合、単一の薬剤は、有効量で投与されると考えてもよい。
【0019】
「神経可塑性剤」という用語は、樹状突起の密度、成長を増加する、又は形態を増強する化合物又は物質を指すことが意図される。ある特定の例では、薬剤は、シナプス前又はシナプス後の可塑性関連タンパク質の発現の増加、並びに軸索棘間シナプスの密度及び/又は機能を提供することによって、シナプス可塑性又は樹状突起形態の変化を与え得る。ヒト及び動物モデルの両方での研究は、うつ病及び他のストレス関連疾患を含むいくつかの精神障害における異常な樹状突起脊椎構造を実証している。樹状突起の密度及び組織に対するストレスの負の影響はまた、ストレス曝露によって引き起こされる行動障害に寄与すると考えられている。
【0020】
特定の神経可塑性剤を、以下の表1に示す。かかる薬剤は、市販されているか、又は公開されている方法に従って調製及び製剤化され得る。


【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0021】
治療方法
神経ペプチドオキシトシンは、哺乳類の社会的行動において進化的に保存された役割を果たす。脳室内薬物送達後の動物の社会的行動に対する顕著な効果にもかかわらず、この送達モードは、ヒトでは実用的ではない。商業的供給源から購入することができる鼻腔内オキシトシンは、中枢オキシトシン活性を増加させるための非侵襲性の代替物を提供し、精神疾患の治療として有望であることが示されている。例えば、研究は、鼻腔内オキシトシン投与が心の理論、社会的手がかりのための記憶を改善し、目の領域への視線を増加させることを示している。鼻腔内オキシトシン送達は、三叉神経線維及び嗅神経線維を取り囲むチャネルを介して中枢のオキシトシン濃度を増加させ、中枢のオキシトシン受容体における活性の増加を促進し得ると考えられている。これらの知見は、とりわけ、社会的機能障害を特徴とする精神疾患を治療するための鼻腔内オキシトシンの使用への関心を引き起こしたが、臨床集団におけるオキシトシンの効果のメタアナリシスでは、現在までに様々な結果が得られている。
【0022】
対象における重度の不安、大うつ病性障害(MDD)単発又は再発、持続性うつ病性障害(気分循環性障害)、治療抵抗性うつ病(TRD)、破壊的気分調節障害、双極性障害1、双極性障害2、月経前不快障害、統合失調性障害、調整障害、複雑性局所疼痛症候群(CRPS)1型、CRPS2型、慢性神経障害性疼痛、慢性疼痛症候群、慢性腰痛、線維筋痛、片頭痛、慢性神経障害性疼痛、急性神経障害性疼痛、又は過敏性腸症候群から選択される1つ以上の疾患又は障害を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン及び有効量の神経可塑性剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法が、本明細書において提供される。
【0023】
本明細書に記載の方法を必要とする対象は、標準的な方法によって識別され得る。疼痛は、対象がそれを報告することによって決定されるが、精神疾患はより主観的な診断であり得る。精神疾患を診断し、治療及びフォローアップを支援するために、長年にわたって多くの精神医学的検査、尺度、及び書式が作られてきた。これらの尺度は、高いレベルの精度及び妥当性を実証しており、結果は、本明細書に記載の方法を介して治療を保証し得る可能性のある精神障害に対する重要な手がかりを得ることができる。
【0024】
大うつ病検査(MDI)は、DSM-IVに従って、臨床医がうつ病の存在を評価することを可能にする、簡単な自己報告式の気分質問票である。また、抑うつ症状の重症度を評価するためにも用いられる。
【0025】
Robert M.A.Hirschfeld博士らによって開発された気分障害尺度(MDQ)は、双極性障害のスクリーニング装置である。これには、双極性症状に関する13のはい/いいえで答えられる質問と、症状の同時発生及び機能障害に関する2つの追加の質問が含まれる。
【0026】
全般性不安障害7項目(GAD-7)は、全般性不安障害を診断するために開発され、2740人のプライマリケア患者で検証されている。それは、89%の感度及び82%の特異度を有する。3つの他の一般的な不安障害:パニック障害(感度74%、特異度81%)、社会不安障害(感度72%、特異度80%)、及び外傷後ストレス障害(感度66%、特異度81%)のスクリーニングに適度に優れている。
【0027】
臨床全般印象尺度-CGIは、症状の重症度、全般的な改善、及び治療応答を測定するために一般的に使用される3項目の観察者評価尺度である。CGIの各要素は、個別に評価され、グローバルスコアは得られない。項目1及び2は、7ポイントのスケールで評価され、項目3は、0~4で評価される(項目3を評価する場合、治療効果及び治療関連有害事象を考慮に入れるべきである)。
【0028】
ハミルトンうつ病評価尺度は、治療前、その中、及びその後のうつ病のレベルを決定するのに有用であることが証明されている。これは、患者との臨床医の面接に基づいており、抑うつ気分、罪悪感、自殺、睡眠障害、不安レベル、体重減少などの症状を調査する。面接及び採点には、約15分かかる。評価者は、0(存在しない)から4(極端な症状)の範囲の各症状構築物の番号を入力する。
【0029】
双極性臨床尺度又は双極性スペクトラム診断尺度(BSDS)は、Ronald Pies,MDによって開発され、後にS.Nassir Ghaemi,MD,MPHらによって改良され、試験された。BSDSは、Piesが、「治療抵抗性うつ病」の症例を管理するように頻繁に求められたときの、精神薬理学コンサルタントとしてのPiesの経験から生まれた。Piesの経験では、これらの症例のほとんどは、最終的に診断されていない双極性スペクトル障害であることが証明された。BSDSの質問項目は、Piesが双極性障害の重篤な症例だけでなく、双極性スペクトルの「ソフト」な方に分類される患者(例えば、大うつ病エピソードの病歴があり、わずか1~3日間しか持続しない気分及びエネルギーの上昇エピソードが1つ又は2つあるため、軽躁病のDSM-IV基準を満たしていない患者)の検出に最も役立つと判断した質問に基づいていた。BSDSは、オリジナル版で検証され、高い感度を示した(双極性障害I型では0.75、双極性障害II型及び特に指定のない人では0.79)。その特異度は、高く(0.85)、双極性スペクトラムの幅広い提示を検出する上で、この診断ツールに大きな価値を与えている。Ghaemiらは、13のスコアが双極性スペクトル障害の検出における特異度及び感度の最適な閾値であると判断した。BSDSには、2つのセクションがある。最初の部分には、双極性スペクトラム障害の主な症状を説明する一連の19の文章が含まれている。各文章は、空欄にリンクされており、患者はその文が自分の感情又は行動の正確な説明であると判断した場合にチェックを入れるようになっている。チェックされた各文には1ポイントが割り当てられる。BSDSの第2の部分は、19項目の物語が彼又は彼女自身の経験に「適合する」程度を選択するように患者に求める。この尺度には、以下の4つの可能性がある:「この話は私に非常に当てはまるか、又はほぼ完璧に当てはまる」(6点)、「この話は私にかなり当てはまる」(4点)、「この話はある程度まで私に当てはまるが、ほとんどの点では当てはまらない」(2点)、及び「この話は私を全く説明していない」(0点)。
【0030】
ハミルトン不安尺度(HAM-A)は、広く用いられている面接尺度であり、不安な気分、緊張、恐怖、不眠症、身体的訴え、及び面接時の行動などの14のパラメータに基づいて、患者の不安の重症度を測定する。1959年にM.Hamiltonによって開発されたこの尺度は、当然ながら、現在の全般性不安障害(GAD)の定義よりも先行している。しかしながら、GADの多くの機能を網羅しており、その重症度の評価にも役立ち得る。HAM-Aの主な価値は、診断又はスクリーニングツールとしてではなく、薬物療法又は心理療法の結果を文書化することである。面接及び採点を完了するのに15~20分かかる。各項目には、0(存在せず)から4(重度)の5点スコアが単に与えられる。
【0031】
簡易精神医学的評価尺度(BPRS)は、臨床医又は研究者が不安、うつ病、精神病などの精神科的症状を測定するために使用するツールである。統合失調症又は他の精神病性障害を有するか、又はそれを有する疑いのあるヒトは、複数の方法でその障害を明らかにする。BPRSは、敵意、不信感、幻覚、及び壮大さなどの18の症状構築物のレベルを評価する。中等度から重度の精神病を有する患者における治療の有効性を測定するのに特に有用である。これは、患者との臨床医の面接、及び過去2~3日間の患者の行動の観察に基づいている。患者の家族は、行動レポートを提供することもできる。評価者は、1(存在しない)から7(非常に重度)の範囲の各症状構築物の番号を入力する。面接及び採点を完了するのに必要な時間は、わずか20~30分であり得る。
【0032】
あらゆる種類の抗精神病薬を服用しているヒトは、運動障害を監視する必要がある。AIMS(異常不随意運動尺度)は、遅発性ジスキネジーの早期発見を支援し、継続的な監視のための方法を提供する。TDの発生率は、近年比較的低いが、処方の変更により発生率が増加し得る。臨床医は、これらの可能性に注意を払い、できるだけ早く発生している問題に対処するのに役立つツールを使用する必要がある。この簡単なチェックリストは、わずか10分で完了し、顔、唇、顎、舌、上肢、下肢、及び胴体の7つの身体領域のスコアを記録するために5つのポイントの評価尺度を使用する。
【0033】
患者健康質問票(PHQ-9)は、9つのDSM-IV基準の各々を「0」(全くない)から「3」(ほぼ毎日)として採点するうつ病モジュールである。プライマリケアでの使用について検証されている。概して、うつ病のスクリーニングツールではないが、うつ病の重症度及び治療への応答を監視するために使用される。
【0034】
Burns Anxiety Inventory(BAI)は、不安を測定するための評価ツールである。Burn Anxiety Inventoryは、心配、緊張、パニック感、又は心拍数などの不安症状を評価する自己報告式不安評価ツールである。スコアが高いほど、不安の重症度は高くなる。
【0035】
高齢者用うつ尺度短縮版(GDS-S)は、高齢者のうつ病の基本的なスクリーニング尺度として開発された15問の尺度であり、5以上のスコアは、より詳細な臨床調査が必要であることを示す。
【0036】
試験は、大うつ病性障害(MDD)における炎症が評価され理解されるべき要因であり、とりわけ、インターロイキン1-ベータ(IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、及びインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)などの炎症誘発性サイトカインの増加に関連していることを示している(Howren et al.Psychosom Med,2009,71,171-186、Maes et al.Metab Brain Dis,2009,24,27-53、Wong et al.Mol Psychiatry,2008,13,800-812)。
【0037】
成長因子の神経栄養性ファミリーのタンパク質である脳由来神経栄養因子(BDNF)の減少は、様々な神経精神疾患において報告されている。BDNF血中濃度は、大うつ病性障害の対象では低下し、抗うつ薬治療後に増加する。Binder et al.,Growth Factors,2004,22,123-131、Ventriglia et al.,BioMed Res Int,2013,2013,901082、Pezet et al.,Brain Res Rev,2002,40,240-249、Bjoerkholm et al.,Neuropharmacology,2016,102,72-79、Pandya et al.,Asian J Psychiatr,2013,6,22-28、Sen et al.,Biol Psychiatry,2008,64,527-532、Molendijk et al.,Mol Psychiatry,2014,19,791-800を参照されたい。したがって、脳が慢性的なストレス及び不安にさらされるとき、脳の特定の部分におけるシナプス接続の数は、減少する。神経可塑性剤を投与することは、樹状突起の成長を刺激し、それによって失われたシナプス接続を回復し、既存のシナプス接続を強化し、更には新しいニューロンの成長を刺激することができることが本明細書で企図される。
【0038】
いくつかの実施形態では、神経可塑性剤は、ケタミン、エスケタミン、及び(R)-ケタミン、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)、サイロシビン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、N,N-ジメチルトリプタミン(DMT又はN,N-DMT)、リセルギン酸ジエチルアミド(LSD)、デキストロメトルファン、ニューデクスタ(デキストロメトルファンとキニジンの組み合わせ)、デューデキストロメトルファン(AVP-786)、アクサム(AXS-05)、デキストロメタドン(REL-1017)、又はズラノロン(SAGE-217)を含むが、これらに限定されないケタミンのうちの1つ以上である。
【0039】
例えば、静脈内ケタミンは、脳内のシナプス接続の数を増加させることによって、新しい脳の成長を促進する。慢性ストレスは、炎症性サイトカインの放出を継続する視床下部下垂体軸(HPA)を刺激し続ける。炎症性サイトカインは、脳にアクセスし、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、及びBDNFの産生の減少及び再取り込みの減少を引き起こす。減少したBDNFは、様々なニューロンのシナプス接続の正常な成長、修復、及び維持を妨げる。ドーパミンニューロンは、ドーパミンの強直性放出を減少させ、様々なレベルの快感消失及び抑うつ気分をもたらす。セロトニンの産生及び再取り込みの減少により、患者は、抑うつ気分を経験する。ノルエピネフリンの産生及び再取り込みの減少により、患者は、集中及び集中力が低下する。慢性ストレスの最も重大な影響は、ドーパミンの減少及び再取り込みの減少であり、このことは以下で更に考察する。
【0040】
神経可塑性剤を投与することによって、脳内の樹状突起を再成長させ、失われた接続を回復させることができる。IVケタミン単独では、ほとんどの状況下で、一連の注入(例えば、6回)は、1カ月から数カ月(例えば、4~6カ月)のいずれかの場所で持続し得ることが決定されている。ポジティブな効果が消失し始めると、ポジティブな効果を更に1カ月以上持続させるために、1回のブースター注入が必要になることが多い。本明細書に記載の方法を使用することによって企図され、ポジティブな効果は、ケタミン単独よりも延長又は増強され得る。記載される方法はまた、樹状突起及び他のニューロンとのそれらのシナプス接続のより速い成長を提供する。
【0041】
いくつかの実施形態では、対象における重度の不安、大うつ病性障害(MDD)単発又は再発、持続性うつ病性障害(気分循環性障害)、治療抵抗性うつ病(TRD)、破壊的気分調節障害、双極性障害1、双極性障害2、月経前不快障害、統合失調性障害、調整障害、複雑性局所疼痛症候群(CRPS)1型、CRPS2型、慢性神経障害性疼痛、慢性疼痛症候群、慢性腰痛、線維筋痛、片頭痛、慢性神経障害性疼痛、急性神経障害性疼痛、又は過敏性腸症候群から選択される1つ以上の疾患又は障害を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン、有効量の神経可塑性剤、及び任意に、有効量の抗炎症剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法が、提供される。
【0042】
いくつかの実施形態では、対象における重度の不安、大うつ病性障害(MDD)単発又は再発、持続性うつ病性障害(気分循環性障害)、治療抵抗性うつ病(TRD)、破壊的気分調節障害、双極性障害1、双極性障害2、月経前不快障害、統合失調性障害、調整障害、複雑性局所疼痛症候群(CRPS)1型、CRPS2型、慢性神経障害性疼痛、慢性疼痛症候群、慢性腰痛、線維筋痛、片頭痛、慢性神経障害性疼痛、急性神経障害性疼痛、又は過敏性腸症候群から選択される1つ以上の疾患又は障害を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン、及び有効量の神経可塑性剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法が、提供される。
【0043】
いくつかの実施形態では、対象における重度の不安、大うつ病性障害(MDD)単発又は再発、持続性うつ病性障害(気分循環性障害)、治療抵抗性うつ病(TRD)、破壊的気分調節障害、双極性障害1、双極性障害2、月経前不快障害、統合失調性障害、調整障害、複雑性局所疼痛症候群(CRPS)1型、CRPS2型、慢性神経障害性疼痛、慢性疼痛症候群、慢性腰痛、線維筋痛、片頭痛、慢性神経障害性疼痛、急性神経障害性疼痛、又は過敏性腸症候群のうちの1つを治療するための方法であって、有効量のオキシトシン、及び有効量の、ラセミケタミン(エナンチオマーの混合物)、エスケタミン、又は(R)-ケタミンを含むが、これらに限定されないケタミンを、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法が、提供される。
【0044】
対象における産後うつ病又は周産期うつ病を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン、有効量の神経可塑性剤、及び任意に、有効量の抗炎症剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法もまた、本明細書において提供される。
【0045】
いくつかの実施形態では、神経可塑性剤は、ブレキサノロン又はズラノロン(SAGE-217)である。
【0046】
対象における全般性不安障害(GAD)、パニック障害、外傷後ストレス障害、分離不安障害、強迫性障害(OCD)、社会不安障害、身体醜形障害、神経性食欲不振、神経性過食症、過食性障害を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン、有効量の神経可塑性剤、及び任意に、有効量の抗炎症剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法もまた、本明細書において提供される。
【0047】
対象における慢性疲労症候群を治療するための方法であって、有効量のオキシトシン、有効量の神経可塑性剤、及び任意に、有効量の抗炎症剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法もまた、提供される。
【0048】
いくつかの実施形態では、対象は、成人前又は青年(例えば、16~18歳)の対象である。いくつかの実施形態では、対象は、18~65歳の成人である。いくつかの実施形態では、対象は、高齢者(例えば、65歳以上、又は66~75歳)である。いくつかの実施形態では、対象は、男性である。いくつかの実施形態では、対象は、女性である。
【0049】
いくつかの実施形態では、オキシトシンは、静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、オキシトシンは、鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態では、神経可塑性剤は、静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、神経可塑性剤は、鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態では、抗炎症剤は、静脈内、筋肉内、又は鼻腔内に投与される。
【0050】
これらの試験の多くに対する対象の応答を評価するために臨床試験で使用される理想的なアウトカム測定についての疑問が残っていることに留意されたい。上記のものを含む、現在使用されている多くのアウトカム測定は、数時間から数日ではなく、数週間から数カ月にわたって発生する症状の変化を測定するように設計された。例えば、不眠症又は食欲の変化を数時間かけて合理的に評価することはできない。しかし、ほとんどのケア提供者(例えば、医師又はセラピスト)は、これらのスケールを使用しており、これらの薬剤の臨床的効果を捕捉するためのより正確な方法が必要であることを示唆している。うつ症状の不均一性を解析するのに役立ち得る一次元的な構成要素を同定することは、最終的に、より洗練された評価尺度スコアを作成して、特定の症状と基礎となる病態生理学との間の接続をよりうまく照らし出すことが可能である(Ioline et al.,Current Status 1 CNS Drugs,2021,35(5),527-543、Wilkinson et al.,Drug Discov Today,2019,24,606-615、Ballard et al.,J Affect Disord,2018,231,51-57。
【0051】
大うつ病性障害は、典型的には、少なくとも2週間の間、ほとんど全ての活性における関心及び快感の喪失を伴う抑うつ気分を特徴とする。
【0052】
いくつかの実施形態では、対象は、睡眠障害、エネルギーレベルの変化、又は集中困難、無快感症状(喜びを感じることができない)、不快症状(不安又は不満の状態)、解離症状、怒りの外在化、又は攻撃的症状などの1つ以上のうつ病の症状を示す。
【0053】
いくつかの実施形態では、対象は、強迫性障害、外傷又はストレス因子関連障害、解離性障害、急性ストレス障害、適応障害、抑制性社会的関与障害、反応性愛着障害、身体症状、摂食(feeding)又は摂食(eating)障害、睡眠障害、又は物質関連障害若しくは中毒性障害のうちの1つ以上を更に患っている。
【0054】
いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、オピオイド使用障害(OUD)、コカイン使用障害(CUD)、単極性産後うつ病(PPD)、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される神経精神疾患ではない。
【0055】
大うつ病性障害を含むが、これに限定されない、「報酬/楽しさ尺度」と称される精神疾患又は障害の重症度を決定するための評価スケールが、本明細書において記載される。本明細書に記載される報酬/楽しさ尺度(実施例4を参照)は、治療方法、並びに「慢性」治療、すなわち「維持」期に移行する場合と比較して、急性期又は安定化期における対象の治療を継続する場合を決定するために使用することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、方法は、急性「安定化」期及び「維持」期を含む。
【0057】
急性「安定化」期
急性「安定化」期は、典型的には、一連の治療を含み、各治療において、対象は、オキシトシン及び神経可塑性剤、任意に続いて抗炎症剤を、1~6週間、又は1~5週間、又は1~4週間、又は1~3週間、又は1~2週間、又は2~6週間、又は2~5週間、又は2~4週間、又は2~3週間、又は3~5週間、又は4~5週間、又は3~6週間、又は3~5週間、又は3~4週間、又は4~5週間、又は4~6週間、又は5~6週間の期間、1週間に1回以上、例えば、1週間に1、2、又は3回投与され、これは、最初の病気の重症度及び/又は病気の改善度によって異なる。ある特定の実施形態では、急性「安定化」期は、約4~5回の治療、又は2~3週間続く。重症度及び改善度は、本明細書に記載されるものなどであるが、これらに限定されず、当該技術分野で既知の臨床方法によって決定され得る。患者がネガティブ(報酬/楽しさ尺度で-1~-10)であるほど、患者をポジティブゾーンに入れるためにより多くの治療が行われる。ポジティブな対処スキル(マインドフルネス、瞑想、心理療法、適切な食事、運動、睡眠の調節など)を適用するための患者の努力の量は、全体的な抗うつ薬応答と直接相関する。
【0058】
「ネガティブ」ゾーンは、様々な程度の無快感、並びに思考、発言、又は否定的なことからの報酬又は解放を表す。-1は最もマイナスであり、-10は報酬/楽しさ尺度のネガティブゾーンで最もマイナスである。患者が脳の報酬経路でシナプス接続を失うと、ドーパミンニューロンは一見非活性状態になり、ドーパミンの強直性放出が減少する。十分なドーパミンニューロンが不活性になると、低ドーパミン(低ドーパミン作動性)状態は、患者に無快感、不快感、精神運動減速、及び肯定的な報酬を求めるモチベーションの欠如を経験させる。これらの感情は、患者がネガティブゾーンでよりマイナス(-10に向かって)になるにつれて悪化し続ける。
【0059】
患者は、否定的な考え、発言、又は行動からのみ報酬を得るか又は解放されていることに気づく。彼らは、自分が感じている情動不安から解放されるために、ネガティブな報酬を求め始める。患者は、否定的な考え、発言、又は行動を支持するために、しばしば、誤った物語を作り上げる。彼らの誤った物語が他者(通常は愛するヒトによって挑戦されると、患者は、自分の誤った物語を擁護し、他者から更に孤立したいと思う可能性があり得る。ネガティブゾーンは、医学文献ではまだ定義されておらず、観察されてきた現象である。
【0060】
患者がより多くのシナプス接続を失い、ネガティブゾーンにより深く進むにつれて、否定的な考え、発言、及び行動からより多くの報酬を得る及び/又は解放されるように見える。ドーパミンニューロンは、患者がシナプス接続を失い続けるにつれて活性が低下しているため、患者は、μオピオイド受容体の上方制御(又は増殖の増加)によってより多くの解放感を経験すると仮定される。放出されるドーパミンの量が減少するにつれて、それらのドーパミン受容体の上方制御(又は増殖の増加)が存在する可能性もある。患者がネガティブゾーンに深く入っていくにつれて、より感情的、更には肉体的な苦痛を引き起こすものから更に解放されるのだ。この理論は、ネガティブゾーンの奥深くにいる人々が、非自傷的自傷行為(NSSI)からすぐに解放される理由を支持するだろう。この理論はまた、ネガティブゾーンが深いヒトが自殺願望から解放される理由も説明するだろう。自殺を考えると、痛み及び苦しみが終わるような気分になり、気持ちが楽になる。
【0061】
患者自身のオキシトシンがケタミン注入中に放出されていたと仮定され、これは、ケタミンが辺縁系に対するその既知の鎮静効果を考慮して、不安を緩和するのにどのように役立っていたかについての重要な理由であった可能性が高い。次いで、オキシトシンの放出も刺激する他の迅速な神経可塑性剤(すなわち、サイロシビン、MDMA)が、神経新生において役割を果たし、不安レベルの低下をもたらし得ることが企図された。次いで、ケタミン治療の前にオキシトシンを投与することは、はるかに穏やかで陶酔的なケタミン経験をもたらすことが観察された。余分な鎮静効果は、不安障害に苦しんでいる患者によって非常に高く評価された。次いで、患者は、ケタミン単独よりもうつ病及び不安からはるかに早く回復していることが観察された。患者ができるだけ早くポジティブゾーンに到達することが不可欠である。ケタミン治療単独では、患者がうつ病を有するよりも不安の影響を緩和するのがはるかに遅いことが分かっていた。オキシトシン治療の追加により、患者は、ケタミン注入単独よりもはるかに速く不安から回復することが観察された。不安は、慢性炎症の主な原因であり、BDNF及びシナプス接続の継続的な喪失を減少させる。外因性オキシトシンの添加による不安の軽減は、脳内の炎症を有意に軽減し、それによってケタミンからの神経可塑性効果を高めることが企図されている。
【0062】
オキシトシンは、大脳辺縁系を強化し、「安全」又は「危険」とみなされるものを強化する。これは、ヒト、場所、物事に当てはまる。「安全」及び「危険」のレベルは、異なる。大脳辺縁系が脅威を検出し、オキシトシンが存在すると、「安全でない」という感覚が高まり、そのヒト、場所、又は物事から避けたり、戦ったり、逃げたりする動機になる。大脳辺縁系が、オキシトシンの存在下で、ヒト、場所、又は物事が「安全」であると判断すると、そのヒトは、ヒト、場所、又は物事に関与しようという気になる。ヒトが誰かとつながりを感じ、そのヒトが安全であると感じると、身体的な接触は、追加のオキシトシンの放出が促進され、心が落ち着き、癒される。その逆もあり得る。「安全でない」とみなされたヒトが個人に触れると、より多くのオキシトシンが放出され、そのヒトはその「安全でない」個人と戦うか、又は逃げようとする衝動が強まる。患者が神経可塑性剤の前にオキシトシンを受けるべきかどうかを決定するとき、患者の反応性レベルは、最初に医師によって評価されるべきである。オキシトシンの投与は、反応性の高い患者(すなわち、急性自殺、殺人)を扱うときに避けるべきである。
【0063】
抗炎症剤は、神経可塑性剤の後に使用され、存在する炎症の量を減少させ、それによって神経新生が阻害されずに進行することを可能にする。神経新生は、炎症がBDNFの放出を減少させる効果を減少させることによって増強される。抗炎症剤は、ケタミンとともに投与されると、サイケデリック効果を増大させ得る。したがって、いくつかの実施形態では、抗炎症剤は、神経可塑性剤からのサイケデリック効果が減少した後に投与される。
【0064】
いくつかの実施形態では、急性「安定化」期は、神経可塑性剤を投与する前に、第1の用量のオキシトシンを投与することを含む。いくつかの実施形態では、急性期は、神経可塑性剤を静脈内に投与する前に、第1の用量のオキシトシンを静脈内に投与することを含む。いくつかの実施形態では、急性期は、神経可塑性剤を静脈内に投与する前に、第1の用量のオキシトシンを鼻腔内に投与することを含む。いくつかの実施形態では、急性期は、神経可塑性剤を鼻腔内に投与する前に、第1の用量のオキシトシンを静脈内に投与することを含む。いくつかの実施形態では、急性期は、神経可塑性剤を鼻腔内に投与する前に、第1の用量のオキシトシンを鼻腔内に投与することを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、急性期は、オキシトシンを投与する前に、第1の用量の神経可塑性剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、急性期は、オキシトシンを静脈内に投与する前に、第1の用量の神経可塑性剤を静脈内に投与することを含む。いくつかの実施形態では、急性期は、オキシトシンを静脈内投与する前に、第1の用量の神経可塑性剤を鼻腔内に投与することを含む。いくつかの実施形態では、急性期は、オキシトシンを鼻腔内に投与する前に、第1の用量の神経可塑性剤を静脈内に投与することを含む。いくつかの実施形態では、急性期は、オキシトシンを鼻腔内に投与する前に、第1の用量の神経可塑性剤を鼻腔内に投与することを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、急性期の各治療で投与されるオキシトシンの用量は、約0.1~約100国際単位(IU)である。いくつかの実施形態では、急性期の各治療で投与されるオキシトシンの用量は0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100国際単位(IU)である。オキシトシンは、各治療中に単回投与(IV又は鼻腔内投与を介して)又は複数回(すなわち、2回以上)投与として投与され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、ケタミンである。いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、エスケタミンである。いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、(R)-ケタミンである。
【0068】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)である。
【0069】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、サイロシビンである。
【0070】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)である。
【0071】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、N,N-ジメチルトリプタミン(DMT又はN,N-DMT)である。
【0072】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、リセルギン酸ジエチルアミド(LSD)である。
【0073】
いくつかの実施形態では、急性期は、デキストロメトルファンを投与することを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、ニューデクスタ(デキストロメトルファンとキニジンの組み合わせ)である。
【0075】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、デューデキストロメトルファン(AVP-786)である。
【0076】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、アクサム(AXS-05)である。
【0077】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、デキストロメタドン(REL-1017)である。
【0078】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、ズラノロン(SAGE-217)である。
【0079】
いくつかの実施形態では、急性期に投与される神経可塑性剤は、ブレキサノロンである。
【0080】
いくつかの実施形態では、急性期の各治療で投与される神経可塑性剤の用量は、約0.1~約300mgである。いくつかの実施形態では、急性期の各治療で投与されるケタミンの用量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、又は300mgである。
【0081】
いくつかの実施形態では、神経可塑性剤は、ケタミン(例えば、ラセミケタミン、エスケタミン、又は(R)-ケタミン)を含み、初回用量の0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、又は300mgで鼻腔内に投与され、任意に、10~15分後に、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、又は300mgの用量で第2の鼻腔内用量が投与される。
【0082】
いくつかの実施形態では、急性「安定化」期は、1週間に約2回、又は1週間に2~3回の治療を含み、各治療は、前の注入から約2~4日、又は3日、又は約72時間、間隔をあけて行われる。
【0083】
急性「安定化」期の間、オキシトシンは、各治療で投与されても、投与されなくてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、急性「安定化」期は、約30~100mg、又は約45~90mg、又は約50~75mg、又は約60mgの総用量で、任意に、約45~60分、又は約50分にわたって神経可塑性剤を静脈内に投与することを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、急性「安定化」期は、ケタミン(例えば、ラセミケタミン、エスケタミン、又は(R)-ケタミン)を、約30~100mg、又は約45~90mg、又は約50~75mg、又は約60mgの総用量で、任意に、約45~60分、又は約50分にわたって静脈内に投与することを含む。
【0086】
9つの無作為化プラセボ対照研究の1つのメタアナリシスは、単回投与後の(R,S)-ケタミンの抗うつ効果が、典型的には、注入後40分で始まり、約24時間後にピークに達し、注入後10~12日でプラセボに優位性を失うことを見出した。他のメタアナリシスでも、これらの所見を裏付けている。Kishimoto et al.,Psychol Med,2016,46(7),1459-1472、Caddy et al.,Ther Adv Psychopharmacol,2014,4(2),75-99、McGirr et al.,Psychol Med,2015,45(4),693-704、Newport et al.,Am J Psychiatry,2015,172(10),950-966を参照されたい。
【0087】
いくつかの実施形態では、方法は、急性「安定化」期中に抗炎症剤を更に投与することを含む。抗炎症剤は、神経可塑性剤の前、同時、及び/又は後に投与することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、方法は、急性「安定化」期中に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を更に投与することを含む。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、神経可塑性剤の前、同時、及び/又は後に投与することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、方法は、急性「安定化」期中にアセトアミノフェンを更に投与することを含む。アセトアミノフェンは、神経可塑性剤の前、同時、及び/又は後に投与することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はアセトアミノフェンは、経口投与される。いくつかの実施形態では、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はアセトアミノフェンは、静脈内に投与される。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はアセトアミノフェンは、約2~5g/日、又は約3~5g/日、又は約3~4g/日、又は約2g/日、又は約3g/日、又は約4g/日、又は約5g/日の用量で投与される。
【0092】
いくつかの実施形態では、方法は、ケトロラック(とりわけ、Toradol(登録商標)及びBiorolac(登録商標)のブランド名で販売されている)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を更に投与することを含む。ある特定の実施形態では、ケトロラックは、静脈内に投与される。ある特定の実施形態では、ケトロラックは、筋肉内に投与される。ある特定の実施形態では、ケトロラックは、鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態では、ケトロラックは、約10mg/日、又は約15mg/日、又は約20mg/日、又は約25mg/日、又は約30mg/日、又は約35mg/日、又は約40mg/日、又は約15~30mg/日の用量で投与される。
【0093】
急性期では、患者は、本明細書に記載されるものなどの1つ以上の試験で改善されたスコアリングを示し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、PHQ-9及び/又はBurns Anxiety Inventoryスコアによって評価されるように、患者のうつ病及び/又は不安感を著しく減少させる。ある特定の患者では、トータルスコアはレッサー効果を示し得るが、患者は、より回復力を感じ、ある程度の感情の一貫性を維持できるようになり、人生のストレス(例えば、分裂、動き、喪失、仕事のストレスなど)の後により効果的に「立ち直る」ことができるようになることが多い。例えば、治療前(0日目)に51~99(極度の不安又はパニック)のBurns Anxiety Inventoryスコアで開始し、治療後に21~30(中等度の不安)のBurns Anxiety Inventoryスコアを示す患者は、患者が依然として中等度の不安を有する場合でも、より回復力を感じる可能性が高い。したがって、急性期は、スコアがストレス因子に反映していなくても、患者がストレス因子(複数可)に対して十分又は強化された回復力、むしろ症状の改善を感じると開始し得る。
【0094】
ある特定の実施形態では、患者のPHQ-9スコアは、PHQ-9によって決定されるように、少なくとも約10%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%改善する。ある特定の実施形態では、患者のPHQ-9スコアは、治療4の後に、PHQ-9によって決定されるように、少なくとも約10%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%改善する。
【0095】
ある特定の実施形態では、患者のBurns Anxiety Inventoryスコアは、Burns Anxiety Inventoryによって決定されるように、少なくとも約20%、少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%改善する。ある特定の実施形態では、患者のBurns Anxiety Inventoryスコアは、治療4の後に、Burns Anxiety Inventoryによって決定されるように、少なくとも約20%、少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%改善する。
【0096】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、急性「安定化」期のみを含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、本方法は、「維持」期を更に含む。患者の自己評価スコア及び医師の評価に基づいて、患者が例えば、ポジティブゾーンで十分に改善されていると判断されると、維持期を開始することができる。
【0097】
維持期
いくつかの実施形態では、本方法は、1つ以上の追加の治療を含む維持期を含み、オキシトシンは、各治療で全く投与されても、投与されなくてもよい。治療は、急性期に使用されたのと同じ又は異なる用量及び/又は経路投与のオキシトシン又は神経可塑性剤を含むことができる。維持期中、維持期の各治療用量は、以前の治療から減少するか、変化しないままであるか、又は増加する。
【0098】
いくつかの実施形態では、維持期は、急性期に投与されたのと実質的に同じ用量で、1つ以上の治療でオキシトシンを投与することを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、維持期は、急性期に投与された用量よりも低い用量で、1つ以上の治療でオキシトシンを投与することを含む。ある特定の実施形態では、維持期は、急性期に投与された用量よりも5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は25%、又は30%、又は40%、又は45%、又は50%低い用量で、1つ以上の治療でオキシトシンを投与することを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、維持期は、急性期に投与されたより高い用量で、1つ以上の治療でオキシトシンを投与することを含む。ある特定の実施形態では、維持期は、急性期に投与された用量よりも5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は25%、又は30%、又は40%、又は45%、又は50%高い用量で、1つ以上の治療でオキシトシンを投与することを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、維持期間中に投与されるオキシトシンの用量は、維持期の開始と比較して減少する。
【0102】
典型的には、維持期は、任意の所与の治療においてオキシトシンの有無にかかわらず、神経可塑性剤を投与することを含む1つ以上の治療を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、維持期は、急性期に投与されたのと実質的に同じ用量で、1つ以上の治療で神経可塑性剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期は、急性期に投与されたよりも低い用量で、1つ以上の治療で神経可塑性剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期は、急性期に投与されたより高い用量で、1つ以上の治療で神経可塑性剤を投与することを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、維持期は、急性期に投与されたよりも低い用量で、1つ以上の治療で神経可塑性剤を投与することを含む。ある特定の実施形態では、維持期は、急性期に投与された用量よりも5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は25%、又は30%、又は40%、又は45%、又は50%低い用量で、1つ以上の治療で神経可塑性剤を投与することを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、維持期は、急性期に投与されたよりも低い用量で、1つ以上の治療で神経可塑性剤を投与することを含む。ある特定の実施形態では、維持期は、急性期に投与された用量よりも5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は25%、又は30%、又は40%、又は45%、又は50%高い用量で、1つ以上の治療で神経可塑性剤を投与することを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、維持期中に投与される神経可塑性剤の用量は、維持期の開始と比較して減少する。いくつかの実施形態では、用量は、維持期にわたって約5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は25%、又は30%、又は40%、又は45%、又は50%減少する。
【0107】
治療間の期間が延長されるもの(例えば、2~4週間ごとから2~6カ月ごと)などの維持期のいくつかの実施形態では、治療用量は、神経可塑性剤及び/又はオキシトシンの一方若しくは両方について増加させることができる。いくつかの実施形態では、維持期の各治療用量は、前の治療からの患者の応答に基づいて、5mg、10mg、又は15mg増加する。
【0108】
いくつかの実施形態では、本方法は、維持期中で抗炎症剤を更に投与することを含む。抗炎症剤は、神経可塑性剤及び/又はオキシトシンの前、同時、及び/又は後に投与することができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、本方法は、維持期中に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を更に投与することを含む。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、神経可塑性剤及び/又はオキシトシンの前、同時、及び/又は後に投与することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本方法は、維持期中にアセトアミノフェンを更に投与することを含む。アセトアミノフェンは、神経可塑性剤及び/又はオキシトシンの前、同時、及び/又は後に投与することができる。
【0111】
維持期のいくつかの実施形態では、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はアセトアミノフェンは、経口投与される。維持期のいくつかの実施形態では、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はアセトアミノフェンは、静脈内に投与される。
【0112】
維持期のいくつかの実施形態では、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はアセトアミノフェンは、約2~5g/日、又は約3~5g/日、又は約3~4g/日、又は約2g/日、又は約3g/日、又は約4g/日、又は約5g/日の用量で投与される。
【0113】
維持期のいくつかの実施形態では、本方法は、ケトロラック(とりわけ、Toradol(登録商標)及びBiorolac(登録商標)のブランド名で販売されている)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を更に投与することを含む。
【0114】
維持期のある特定の実施形態では、ケトロラックは、静脈内に投与される。維持期のある特定の実施形態では、ケトロラックは、筋肉内に投与される。ある特定の実施形態では、ケトロラックは、鼻腔内に投与される。
【0115】
維持期のいくつかの実施形態では、ケトロラックは、約10mg/日、又は約15mg/日、又は約20mg/日、又は約25mg/日、又は約30mg/日、又は約35mg/日、又は約40mg/日、又は約15~30mg/日の用量で投与される。
【0116】
いくつかの実施形態では、維持期は、2~4週間、1週間に1回の治療、次いで最初の6カ月間、2~4週間ごとに1回の治療を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒト相互作用から単離されている。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の方法とともに1つ以上の補助療法を使用することを更に含む。補助療法の例としては、例えば、心理療法、社会的支援グループへの参加、及び/又は1つ以上の追加の薬剤を用いた追加の療法が挙げられる。
【0118】
組成物
任意の特定の対象のための特定の投薬量及び治療レジメンは、製剤、投与経路、使用される特定の神経可塑性剤の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、及び治療する医師の判断、並びに治療される特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存することも理解されるべきである。
【0119】
オキシトシン、抗炎症剤、及び神経可塑性剤は、任意の数の賦形剤を含むことができる薬学的組成物として、任意の好適な経路によって別々に又は一緒に送達することができる。使用することができる賦形剤としては、担体、表面活性剤、増粘剤、又は乳化剤、固体結合剤、分散剤又は懸濁剤、可溶化剤、着色剤、調味剤、コーティング剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、保存剤、等張剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な賦形剤の選択及び使用は、Gennaro,ed.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 2003)(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において教示されている。ある特定の実施形態では、オキシトシン、抗炎症剤、及び神経可塑性剤の投与は、各々独立して、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、硝子体内、又は表皮投与(例えば、注射又は注入)に適している。本明細書で使用される場合、「非経口投与」という語句は、通常、注射による、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、硝子体内、及び胸腔内注射及び注入を含むが、これらに限定されない。代替的に、オキシトシン、抗炎症剤、及び神経可塑性剤のうちの1つ以上の投与は、独立して、局所、表皮、又は粘膜の投与経路などの非経口経路、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸、舌下、又は局所を介して行うことができる。
【0120】
吸入又は鼻腔内経路による投与のために、オキシトシン、抗炎症剤、及び神経可塑性剤は、各々独立して、通常、推進剤、例えば、メタン及びエタンから誘導されるハロゲン化炭素、二酸化炭素、又は任意の他の好適なガスを使用して、加圧パック又はネブライザーからの溶液、懸濁液、エマルジョン、又は半固体エアロゾルの形態で送達され得る。局所用エアゾロルには、ブタン、イソブテン、及びペンタンなどの炭化水素が有用である。加圧エアロゾルの場合、適切な剤形は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器及び気腹器で使用するための、例えば、ゼラチンのカプセル及びカートリッジを製剤化することができる。これらは通常、化合物と、ラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する。
【0121】
オキシトシン及び神経可塑性剤を含む薬学的組成物は、任意に、抗炎症剤とともに、各々独立して、無菌水溶液又は分散液の形態であり得る。それらはまた、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の規則構造において製剤化され得る。
【0122】
単回投与形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される対象及び特定の投与様式に依存して異なることになり、概して、治療効果を生む組成物の量である。概して、この量は、100%中、薬学的に許容される担体と組み合わせて、活性成分の約0.01%~約99%、又は約0.1%~約70%、又は約1%~約30%の活性成分の範囲となる。
【0123】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)が得られるように調整される。例えば、いくつかの分割用量が経時的に投与され得るか、又は用量は、治療状況の緊急事態によって示されるように比例的に減少又は増加され得る。投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形で調合することが特に有利である。
【実施例
【0124】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施において十分に機能する技術を表し、したがって、その実施のための特定の態様を構成するとみなすことができることを当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでも本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく類似又は同様の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0125】
実施例1
大うつ病性障害(MDD)単発又は再発、持続性うつ病性障害(気分循環性障害)、治療抵抗性うつ病(TRD)、破壊的気分調節障害、双極性障害1、双極性障害2、月経前不快障害、統合失調性障害、調整障害、複雑性局所疼痛症候群(CRPS)1型、CRPS2型、慢性神経障害性疼痛、慢性疼痛症候群、慢性腰痛、線維筋痛、片頭痛、慢性神経障害性疼痛、急性神経障害性疼痛、又は過敏性腸症候群のうちの1つ以上と診断されている18~65歳の成人男性又は女性対象のための治療。
【0126】
タイミング:
急性(安定化)期は、最初の疾患の重症度に応じて、1週間に2回、3~5週間である。患者がネガティブ(報酬/楽しさ尺度で-1~-10)であるほど、患者をポジティブゾーンに入れるためにより多くの治療が行われる。ポジティブな対処スキル(マインドフルネス、瞑想、心理療法、適切な食事、運動、睡眠の調節など)を適用するための患者の努力の量は、全体的な抗うつ薬応答と直接相関する。患者の自己評価スコア及び医師の評価に基づいて、患者が例えば、ポジティブゾーンで明らかであると、維持期が開始する。
【0127】
慢性(維持)期は、急性(安定化)期の後に開始し、最初は1週間に1回、2~4週間であり、次いで隔週に移行することができる。患者が利益を維持すると、最初の6カ月間、2~4週間ごとに1回、治療が、必要され得る。医師は、患者のニーズを満たすために維持スケジュールを変更し得るが、1週間に1回以下の治療を行うことができる。医師は、ポジティブな対処スキルを維持し、定期的に(毎週が好ましい)心理療法に従事する患者の能力に基づいて、治療スケジュールを延長することができる。医師は、患者に重大なストレス要因又はストレス要因群を予測している場合、通常のスケジュールを休んで治療の予定を決めることができる。
【0128】
急性期の治療レジメンは、以下の表1a及び1bに示されるとおりである。
【表1a-1】
【表1a-2】
【表1a-3】
【表1b-1】
【表1b-2】
【0129】
用量:
鼻腔内オキシトシンは、第2の薬物が静脈内又は吸入的であるかにかかわらず、主に第2の薬物の前に投与される。オキシトシンは、第2の薬物の前又は後に静脈内に投与され得る。オキシトシンの用量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、最大100国際単位(IU)である。
【0130】
静脈内(IV)のケタミンは、最初の治療では非常に低い用量で最初に投与される。60mgのケタミンは、生理食塩水を含む60mLの注射器で希釈される。60mlのシリンジは、患者のIVに延びるマイクロチューブを備えたシリンジポンプに取り付けられる。初期速度は、治療の適応に応じて10~20mL/時に設定される。不安に基づく障害のある全ての対象は、10mL/時で開始する必要がある。8~10分ごとに、医師は、患者の経験に対する耐性に基づいて、用量を少量増加させることができる。典型的な用量増加は、50分まで8~10分ごとに5~10mL/時である。
【0131】
患者は、回復するために必要に応じて少なくとも10~15分以上投与される。治療後のバイタルは、患者の治療前のバイタルの25%以内に戻らなければならない。治療後のバイタル(心拍数、血圧、パルスオキシメトリ、呼吸数)は、患者モニターを取り外す前に、治療前のバイタルの25%以内でなければならない。モニターを早期に取り外す唯一の例外は、バイタルが患者の治療前値の25%以内に戻る前に患者がトイレを使用しなければならない場合である。患者をトイレまで車椅子で移動させ、いかなる転倒の可能性も避けるため、必要に応じて介助する。患者を退院させる前に、患者モニターに再接続し、適切な退院基準を満たす必要がある。治療後、患者は、責任ある大人の運転で帰宅する必要がある。患者は、治療後24時間、車の運転、いかなる危険な活動への参加、法的文書への署名はできない。
【0132】
その後の予約ごとに、ケタミン用量は、前の治療用量から減少するか、変化しないか、又は増加するかのいずれかである。典型的な増加は、前の治療からの患者の応答に基づいて、5mg、10mg又は15mgである。患者が最適な利益を達成すると、ケタミンの用量は、そのままであるか、又は治療用量に対する患者の快適さに基づいてわずかに減少させるべきである。
【0133】
鼻腔内ケタミン:初期用量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、最大300mgのいずれかである。
【0134】
患者の耐性に基づいて、10~15分後に第2の鼻腔内ケタミン用量を投与した(医師が決定した)。それは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、最大300mgのいずれかである。
【0135】
ケタミン治療の最初の鼻腔内用量は、薬物に対する患者の感受性を決定するために非常に低い導入用量である。第2の用量は、第1の用量に対する患者の応答に基づいてより高くなるであろう。第3の低い用量は、第1の治療のためにのみ与えられ得る。
【0136】
初期治療後、監督医によって決定されるように、10~15分間の間隔をあけて鼻腔内ケタミンの2回の用量のみが投与される。オキシトシンの用量は、治療プロセス全体を通して一定のままである。用量は、患者の全体的な応答及び治療経験に対する耐性に基づいて、各治療で増加する。
【0137】
維持期に入ると、患者は、週1回のオキシトシン鼻腔内治療のために治療クリニックに来てもよい。
【0138】
オキシトシンと組み合わせた上記の他の薬物の用量は、将来の研究試験によって決定される。
【0139】
実施例2
産後うつ病又は周産期うつ病のうちの1つ以上と診断されている18~65歳の成人女性対象のための治療。
【0140】
タイミング:
急性(安定化)期は、最初の疾患の重症度に応じて、1週間に2回、3~5週間である。患者がネガティブ(報酬/楽しさ尺度で-1~-10)であるほど、患者をポジティブゾーンに入れるためにより多くの治療が行われる。ポジティブな対処スキル(マインドフルネス、瞑想、心理療法、適切な食事、運動、睡眠の調節など)を適用するための患者の努力の量は、全体的な抗うつ薬応答と直接相関する。患者の自己評価スコア及び医師の評価に基づいて、患者が例えば、ポジティブゾーンで明らかであると、維持期が開始する。
【0141】
慢性(維持)期は、急性期の後に開始し、最初は1週間に1回、2~4週間であり、次いで隔週に移行することができる。患者が利益を維持すると、最初の6カ月間、2~4週間ごとに1回、治療が、必要され得る。医師は、患者のニーズを満たすために維持スケジュールを変更し得るが、1週間に1回以下の治療を行うことができる。医師は、ポジティブな対処スキルを維持し、定期的に(毎週が好ましい)心理療法に従事する患者の能力に基づいて、治療スケジュールを延長することができる。医師は、患者に重大なストレス要因又はストレス要因群を予測している場合、通常のスケジュールを休んで治療の予定を決めることができる。
【0142】
急性期の治療レジメンは、以下の表1c及び1dに示されるとおりである。
【表1c】
【表1d】
【0143】
用量:
鼻腔内オキシトシンは、第2の薬物が静脈内又は吸入的であるかにかかわらず、主に第2の薬物の前に投与される。オキシトシンは、第2の薬物の前又は後に静脈内に投与され得る。オキシトシンの用量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、最大100国際単位(IU)である。
【0144】
静脈内(IV)のケタミンは、最初の治療では非常に低い用量で最初に投与される。60mgのケタミンは、生理食塩水を含む60mLの注射器で希釈される。60mlのシリンジは、患者のIVに延びるマイクロチューブを備えたシリンジポンプに取り付けられる。初期速度は、治療の適応に応じて10~20mL/時に設定される。不安に基づく障害のある全ての対象は、10mL/時で開始する必要がある。8~10分ごとに、医師は、患者の経験に対する耐性に基づいて、用量を少量増加させることができる。典型的な用量増加は、50分まで8~10分ごとに5~10mL/時である。
【0145】
患者は、回復するために必要に応じて10~15分又はそれ以上で投与される。治療後のバイタルは、患者の治療前のバイタルの25%以内に戻らなければならない。治療後のバイタル(心拍数、血圧、パルスオキシメトリ、呼吸数)は、患者モニターを取り外す前に、治療前のバイタルの25%以内でなければならない。モニターを早期に取り外す唯一の例外は、バイタルが患者の治療前値の25%以内に戻る前に患者がトイレを使用しなければならない場合である。患者をトイレまで車椅子で移動させ、いかなる転倒の可能性も避けるため、必要に応じて介助する。患者を退院させる前に、患者モニターに再接続し、適切な退院基準を満たす必要がある。治療後、患者は、責任ある大人の運転で帰宅する必要がある。患者は、治療後24時間、車の運転、いかなる危険な活動への参加、法的文書への署名はできない。
【0146】
その後の予約ごとに、ケタミン用量は、前の治療用量から減少するか、変化しないか、又は増加するかのいずれかである。典型的な増加は、前の治療からの患者の応答に基づいて、5mg、10mg又は15mgである。患者が最適な利益を達成すると、ケタミンの用量は、そのままであるか、又は治療用量に対する患者の快適さに基づいてわずかに減少させるべきである。
【0147】
鼻腔内ケタミン:初期用量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、最大300mgのいずれかである。
【0148】
患者の耐性に基づいて、10~15分後に第2の鼻腔内ケタミン用量を投与した(医師が決定した)。それは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、最大300mgのいずれかである。
【0149】
ケタミン治療の最初の鼻腔内用量は、薬物に対する患者の感受性を決定するために非常に低い導入用量である。第2の用量は、第1の用量に対する患者の応答に基づいてより高くなるであろう。第3の低い用量は、第1の治療のためにのみ与えられ得る。
【0150】
初期治療後、監督医によって決定されるように、10~15分間の間隔をあけて鼻腔内ケタミンの2回の用量のみが投与される。オキシトシンの用量は、治療プロセス全体を通して一定のままである。用量は、患者の全体的な応答及び治療経験に対する耐性に基づいて、各治療で増加する。
【0151】
維持期に入ると、患者は、週1回のオキシトシン鼻腔内治療のために治療クリニックに来てもよい。
【0152】
オキシトシンと組み合わせた上記の他の薬物の用量は、将来の研究試験によって決定される。
【0153】
実施例3
全般性不安障害(GAD)、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、分離不安障害、強迫性障害(OCD)、社会不安障害、身体変形性障害、神経性食欲不振、神経過食症、過食症、又は慢性疲労症候群のうちの1つ以上と診断されている男性又は女性対象のための治療。
【0154】
治療:実施例1及び2を参照されたい。
【0155】
経路:実施例1及び2を参照されたい。
【0156】
タイミング:実施例1及び2を参照されたい。
【0157】
成人前の対象(18歳未満、例えば、16~18歳)又は高齢者(65歳以上、例えば、66~75歳)の場合
【0158】
用量:これらの障害のための初期用量は、はるかに小さいであろう。患者の快適性レベルに基づいて、用量の進行がはるかに遅くなる。
【0159】
成人前の対象の場合、治療は、大うつ病性障害(MDD)よりも低い初回用量の神経可塑性薬物で行われる。
【0160】
高齢者の対象の場合、治療は、より低い用量の神経可塑性剤で行われる。
【0161】
実施例4
以下の実施例は、いくつかの患者の治療結果を示す。表2は、治療開始時の患者情報及び診断を示す。
【表2】
【0162】
以下の結果は、患者健康質問票(PHQ-9)及びBurn Anxiety Inventoryを使用して決定された。以下では、Burn Anxiety Inventoryの用量は、PHQ-9データ表に示されているものと同じ用量であった。表のPHQ-9データでは、重症度は、次のように報告される:EXT又はED(非常に困難)、VD(非常に困難)、SD(やや困難)、及びND(困難ではない)。PHQ-9質問票は、それらの期間中の改善を評価するために、治療間の短縮された期間を反映するためにのみ修正された。
【0163】
患者1:患者は、4つの異なる自殺未遂及び4つの強制入院を経験している。患者は、緩和なしに15以上の抗うつ薬を試した。患者は、重度の自殺傾向、うつ病、及び不安を呈した。現在の薬剤:ミルタザピン15mg、1日1回、必要に応じてプロプラノロール10mg、経口避妊薬。患者は、治療3後に、ポジティブゾーンに入った。患者は、これほど早く解放感を味わったことはなかった。患者は、維持期中にいくつかの困難なストレス要因を経験し、良好に回復した。患者は、非常に安定していると感じている。

PHQ-9うつ病データ
【表5】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表6】
【0164】
患者2:患者は、4年間1日1回セルトラリン200mgを服用していた。患者は、現在の治療の約1年前のストレスのない期間中に離脱することができた。ストレスにより、患者のOCDは、再発し、以前に経験したよりも悪化した。患者は、治療4後に、セルトラリンを再開した。患者は、治療6後に、ポジティブゾーンに入った。治療10~12は、鼻腔内ケタミンであった。患者は、100mgのセルトラリンを超えず、最後の治療後により安定していた。
PHQ-9うつ病データ
【表7】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表8】
【0165】
患者3:患者は、18歳から活動的なアルコール依存症であった。患者は、以前からいくつかの抗うつ薬を服用していたが、効果がなかった。Meds:夜間にセロクエル100mg、夜間にクロノピン1mg、1日1回、Latuda50mg。患者は、治療4後に、ポジティブゾーンに入った。次いで、患者は、オキシトシン治療を開始した。患者は、オキシトシンの添加が鎮静状態を維持するのに役立つと考えられている。患者は、18カ月間、鎮静状態を維持し続けた。患者は、薬物療法を中止し、夜間に50~100mgのセロクエルのみを服用する。

PHQ-9うつ病データ
【表9】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表10】
【0166】
患者4:患者は、いかなる抗うつ薬を耐えることができなかった(ゾロフトを試したが成功せず、治療開始時に20mgのレクサプロを1年間服用していた)。患者は、治療5後に、ポジティブゾーンに入った。全ての治療は、鼻腔内ケタミン及び筋肉内トラドールを用いるものであった。ケタミンの一部が喉の後ろ又は鼻から滴下するため、より高い用量が必要であったことが観察された。安定すると、患者は、情緒的にも社会的にも順調に進み、学年の終わりには全てAを取るようになった。患者は、ケタミンがどのように彼の命を救ったか、そして彼がもはや自殺を感じなくなったかについて公の場で話すことができた。

PHQ-9うつ病データ
【表11】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表12】
【0167】
患者5:患者は、重度のうつ病及び軽度の精神病を患っていた。現在の投薬レジメンは、役に立たなかった。Meds:Latuda120mg、夜間セロクエル25mg。患者は、治療5後に、ポジティブゾーンに入った。患者は、治療後に、Latuda及びセロクエルを中止し、仕事とロマンチックな関係を維持している。

PHQ-9うつ病データ
【表13】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表14】
【0168】
患者6:患者は、サプリメントを服用していただけで、いかなる経口抗うつ薬も服用したくなかった。患者は、治療2後に、ポジティブゾーンに入った。前回の治療以降、患者は、何も必要としない。
PHQ-9うつ病データ
【表15】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表16】
【0169】
患者10:この患者は、17歳からPTSDを発症し、治療の約1年前に新たな心的外傷事象を経験するまで、うつ病及び不安に苦しんでいた。Meds:レクサプロ20mgを1日1回、必要に応じてザナックス0.5mg。患者の不安は、ケタミン単独治療で見られたものよりもオキシトシンではるかに速く応答した。
PHQ-9うつ病データ
【表17】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表18】
【0170】
患者11:患者は、2つの抗うつ薬を試したが、効果がなかった。患者の現在の投薬レジメンも、役に立たなかった。現在のMeds:アデロール(持続放出)30mgを1日1回、集中力及び集中のために必要に応じて、アデロール(即時放出)10mgを1日3回まで、レクサプロ20mgを1日1回、トラゾドン50mgを夜間、必要に応じてNexium、必要に応じてアレグラ。患者は、よく応答し、治療4後に、ポジティブゾーンに入った。患者は、最初にポジティブゾーンに入ったときに、いくつかの重要なストレス要因を有していた。患者は、最後の治療以降、いかなる治療も必要としない。
PHQ-9うつ病データ
【表19】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表20】
【0171】
患者14:患者は、経口抗うつ薬が過去に役立たなかったため、いかなる経口抗うつ薬も服用したくなかった。患者は、治療3後に、ポジティブゾーンに入った。患者は、前回の治療後、とても良くなり、もはや必要としなくなった。
PHQ-9うつ病データ
【表21】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表22】
【0172】
患者15:患者は、慢性疼痛、うつ病、及び不安を有していた。高用量のオピオイドを服用した患者は、減量を希望していたが、離乳時にうつ病及び不安が多すぎた。患者は、経口抗うつ薬が過去に役立たなかったと感じた。Meds:フェンタニルパッチを2日ごとに75mcg、必要に応じて、オキシコドン30mgの錠剤を1日3~5回。患者は、治療4後に、ポジティブゾーンに入った。
PHQ-9うつ病データ
【表23】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表24】
【0173】
患者16:患者は、外傷性脳損傷及びL5破裂骨折を引き起こした壊滅的な交通事故からの慢性疼痛を有していた。患者は、12歳からうつ病と闘っていた。患者は、いかなる経口抗うつ薬でも成功しなかったため、服用を望まなかった。Meds:ニキビ用スピロノラクトン。患者は、治療2後に、ポジティブゾーンに入った。患者は、ポジティブゾーンに適応することが困難であったが、痛み、うつ病、及び不安でははるかによくなっている。
PHQ-9うつ病データ
【表25】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表26】
【0174】
患者18:患者は、最初の治療と同じ日にメンタルヘルス病棟を退院した。患者は、切り傷による自傷行為をしていた。この患者は、ネガティブゾーンの奥深くにいて、抗うつ薬を望まなかった。Meds:なし。患者は、治療4後に、ポジティブゾーンに入った。患者は、ケタミン治療を継続できるかどうかわからなかったため、治療2後に、Buspar 10mgを1日2回、レクサプロ10mgを1日1回開始した。患者は、結果に非常に満足しており、重大なストレス要因にもかかわらず、より回復力を感じた。
PHQ-9うつ病データ
【表27】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表28】
【0175】
患者19:この患者は、10代の頃からうつ病及び不安に苦しんでいた。患者は、何年にもわたって抗うつ薬を試したが、あまり緩和しなかった。現在のMeds:セレクサ60mgを1日1回、Armor甲状腺90mgを1日1回。患者は、治療3後に、ポジティブゾーンに入った。患者は、引き続き良好であり、セレクサをやめることを計画している。

PHQ-9うつ病データ
【表29】
BURNS ANXIETY INVENTORYデータ
【表30】
【0176】
表3及び4は、治療3、4、5、及び6の後に本明細書に記載の方法を使用して達成された患者情報及び症状の改善率を示す。患者は、4~5回の治療(又は2~3週間)において、急性「安定化」期から維持期に移行することが可能であり得るが、特定の患者に基づいて変化し得る。
【表3】
【表4】
* * *
【0177】
したがって、本開示は、好ましい実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示される本明細書に組み込まれる開示の修正、改善、及び変形は、当業者によって頼りにされ得、そのような修正、改善、及び変形は、本開示の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。本明細書で提供される材料、方法、及び実施例は、好ましい実施形態の代表であり、例示的であり、本開示の範囲の限定として意図されない。
【0178】
本開示は、本明細書において広範かつ包括的に説明されている。一般的な開示に該当する狭義の種及び亜属の各グループのそれぞれもまた、本開示の一部を構成する。これは、除去された材料が本明細書に具体的に記載されているかどうかにかかわらず、その属から任意の主題を除去する但し書き又は負の制限を伴う本開示の包括的な明細書を含む。
【0179】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群の観点から記載される場合、当業者は、本開示が、それによってマーカッシュ群のいずれかの個々のメンバー又はメンバーのサブグループの観点からも記載されることを認識するであろう。
【0180】
本明細書に記載されている全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、各々が参照により個々に組み込まれているのと同じ程度に、それらの全体が参照により明示的に組み込まれる。矛盾する場合には、本明細書が、定義を含めて優先される。
【0181】
本開示は、先の実施形態と併せて説明されているが、先の説明及び例は、本開示の範囲を例示することを意図しており、本開示の範囲を限定するものではないと理解されたい。本開示の範囲内の他の態様、利点、及び変形形態は、本開示が関連する当業者には明白であろう。
【国際調査報告】