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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置用電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20250130BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20250130BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250130BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250130BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20250130BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20250130BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20250130BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250130BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250130BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250130BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/66 A
H01M4/139
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/525
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545749
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-09-05
(86)【国際出願番号】 US2023011991
(87)【国際公開番号】W WO2023147173
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/304,907
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/713,722
(32)【優先日】2022-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524284519
【氏名又は名称】アム バッテリーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー,ジェイ,ジー
(72)【発明者】
【氏名】フレイシャー,オムリ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】パン,ヘン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017BB11
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE05
5H017HH03
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA07
5H050DA08
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA26
5H050HA05
(57)【要約】
静電堆積処理から形成される電気化学的エネルギー貯蔵装置用電極は、静電帯電、流動化及び/又は機械的搬送の間、粒子分離を乗り越えることができる、効果的な複合粒子を形成するのに十分な個々の成分粒子間の相互作用力によって形成された、活物質(AM)粒子とともに、付着したバインダ及び場合により導電性粒子を含む、複合粒子を用いる。二次バインダ粒子は、解凝集を受けて、所定のモルフォロジーを有するAM粒子に付着したサブ粒子を形成する。より小さな導電性粒子、典型的にはカーボンブラック(CB)又は同様の炭素が、バインダに結合し、AM粒子に付着する。その結果が、静電堆積によって集電体に課される分離力に耐えるように付着した、複合粒子である。複数の複合粒子を、一様なパターン及び規定の装填量において、導電性集電体上に適用することは、電気化学的エネルギー貯蔵装置について、堅牢なエネルギー密度、出力密度及びサイクル寿命を促進する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性集電体基材、
導電性集電体基材上に堆積し、導電性集電体基材に対して付着した、1つ以上の静電堆積コーティング層
を含む電極であって、
1つ以上の静電堆積コーティング層が、複数の乾燥混合複合粒子を含み、複数の乾燥混合複合粒子の各乾燥複合粒子が、(i)1つ以上の活物質粒子及び(ii)1つ以上の活物質粒子の各々を包囲する解凝集バインダ粒子を含み、
解凝集バインダ粒子が、1つ以上の活物質粒子の中の一活物質粒子の表面に対して、乾燥複合粒子の形成に関係する混合に耐え、導電性集電体基材上の1つ以上の静電堆積コーティング層の堆積から引き起こされる分離力を乗り越えるのに十分な相互作用を通じて付着し、
これによって、導電性集電体基材上に適用された場合に、複合粒子の構造が維持される、電極。
【請求項2】
1つ以上の活物質粒子がカソード材料として機能する、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
1つ以上の活物質粒子が、(i)リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属硫化物(lithium transition metal sulfides)、リチウム遷移金属リン酸塩(lithium transition metal phosphates)を含むリチウムポリアニオンカソード材料、リチウム遷移金属ケイ酸塩(transition metal silicates)若しくはこれらの組み合わせ、又は(ii)ナトリウム遷移金属酸化物、ナトリウムポリアニオンカソード材料、プルシアンブルー類似体カソード材料若しくはこれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の電極。
【請求項4】
1つ以上の活物質粒子がアノード材料として機能する、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
1つ以上の活物質粒子が、(i)炭素質アノード材料、グラファイト、Si、Si系複合体、SiOx、リチウムと合金形成可能な材料、若しくはリチウム遷移金属酸化物アノード材料、若しくはこれらの組み合わせ、又は(ii)ナトリウムと合金形成可能な材料、若しくはプルシアンブルー類似体アノードを含むイオンインターカレーションアノード材料、及びナトリウム金属遷移金属酸化物(sodium metal transition metal oxide)アノードから選択される、請求項4に記載の電極。
【請求項6】
構造が、充電式リチウム電池、Liイオン電池、充電式リチウム硫黄電池、固体状態電池、充電式ナトリウム電池及びナトリウムイオン電池からなる群から選択されるアセンブリに組み込まれる、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
解凝集バインダ粒子が、ポリマー性材料、ポリマー電解質及び固体状態電解質複合体の1つ以上から形成される、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
ポリマー性材料が、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリスチレンブタジエンゴムバインダ、カルボキシメチルセルロースバインダ、ポリアクリル酸又はこれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の電極。
【請求項9】
乾燥混合複合粒子が、1つ以上の活物質粒子及び解凝集バインダ粒子の少なくとも1つの表面に付着した導電性粒子をさらに含む、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
導電性粒子が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン、グラファイト又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の電極。
【請求項11】
導電性集電体基材がAl又はCu箔から選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項12】
1つ以上の静電堆積コーティング層と導電性集電体基材との間の付着を強化するためのプライム層をさらに含む、請求項11に記載の電極。
【請求項13】
解凝集バインダ粒子のサイズが、1つ以上の活物質粒子の平均サイズの0.1%~70%の間である、請求項1に記載の電極。
【請求項14】
1つ以上の活物質粒子の平均サイズが5μm超であり、解凝集バインダ粒子の平均サイズが、1つ以上の活物質粒子の平均サイズの10%未満である、請求項1に記載の電極。
【請求項15】
1つ以上の活物質粒子の平均サイズが5μm未満であり、解凝集バインダ粒子の平均サイズが、1つ以上の活物質粒子の平均サイズの70%未満である、請求項1に記載の電極。
【請求項16】
乾燥混合複合粒子が導電性粒子をさらに含み、解凝集バインダ粒子及び導電性粒子の50%超が、1つ以上の活物質粒子の中の一活物質粒子に対して付着している、請求項1に記載の電極。
【請求項17】
電極を形成する方法であって、
1つ以上の活物質粒子及び解凝集バインダ粒子を組み合わせて、複数の乾燥混合複合粒子を形成する工程であり、解凝集バインダ粒子が、1つ以上の活物質粒子の各々を包囲する、工程、
複数の乾燥混合複合粒子を導電性基材の表面に対して、静電堆積処理によって付着する工程
を含む、方法。
【請求項18】
バインダ材料の凝集体を解凝集して、解凝集バインダ粒子を形成する工程
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
導電性粒子を、1つ以上の活物質粒子及び解凝集バインダ粒子と組み合わせる工程であり、導電性粒子を解凝集バインダ粒子の表面に対して付着させる、工程、並びに
続いて、組み合わせたバインダ及び導電性粒子を、1つ以上の活物質粒子の表面に付着させることによって、複合粒子を形成する工程
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
静電堆積処理が、コロナ帯電静電堆積、摩擦帯電静電堆積及び直接電極誘導帯電堆積からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上の活物質粒子及びバインダ材料を組み合わせること、並びに凝集力を乗り越え、バインダ材料から解凝集バインダ粒子を形成するように、これらの乾燥混合物を撹拌することによって、バインダ材料から解凝集バインダ粒子を形成し、これによって、解凝集バインダ粒子が1つ以上の活物質粒子の表面に付着して、解凝集バインダ粒子及び1つ以上の活物質粒子の間に、静電帯電、流動化及び機械的搬送の間の付着を維持するのに十分な相互作用力を有する複合粒子を形成する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
撹拌が、乾燥混合物を粉砕するのに十分な力を与える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数の乾燥混合複合粒子を導電性基材の表面に対して付着させることが、所定の活物質装填量を有するコーティング層を形成するために、複数の複合粒子を導電性基材上に堆積させることを含み、
(i)コーティング層及び導電性基材を予熱した後、緻密化処理すること、(ii)コーティング層及び導電性基材を予熱した後、加熱下で緻密化すること、並びに(iii)加熱下でのコーティング層及び導電性基材の緻密化からなる群から選択される緻密化処理を通じて、コーティング層及び導電性基材を緻密化することをさらに含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
緻密化処理が繰り返し行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
撹拌が、200~1000nmの間のサイズの解凝集バインダ粒子をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
組み合わせる工程が、導電性粒子を、1つ以上の活物質粒子及び解凝集バインダ粒子と組み合わせて、複数の乾燥混合複合粒子を形成することを含み、これによって、導電性粒子が、解凝集バインダ粒子に対して付着する、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
解凝集バインダ粒子が、1つ以上の活物質粒子及びバインダ材料を組み合わせること、並びに凝集力を乗り越え、バインダ材料から解凝集バインダ粒子を形成するように、これらの乾燥混合物を撹拌することによって、バインダ材料から形成され、
撹拌及び導電性基材の表面に対する付着の間、1つ以上の活性粒子の構造が維持され、
解凝集バインダ粒子が、バインダ材料の凝集体を解離することによって形成され、
1つ以上の活物質粒子及び解凝集バインダ粒子を組み合わせて、複数の乾燥混合複合粒子を形成することが、解凝集バインダ粒子を付着させ、撹拌中、1つ以上の活物質粒子のモルフォロジーを維持するために、1つ以上の活物質粒子及び解凝集バインダ粒子を無溶媒の方法で撹拌することを含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項28】
導電性粒子が解凝集バインダ粒子に対して付着するように、解凝集バインダ粒子を導電性粒子と組み合わせる工程、並びに
組み合わせた解凝集バインダ粒子及び導電性粒子を、1つ以上の活物質粒子の表面に付着させて、乾燥混合複合粒子を形成する工程
をさらに含み、
乾燥混合複合粒子が、導電性粒子及び解凝集バインダ粒子の合計の20重量未満%を有し、
バインダ粒子の平均サイズが、平均活物質粒子サイズの50%未満であり、
導電性粒子の平均サイズが、解凝集バインダ粒子の平均サイズの30%未満である、
請求項17に記載の方法。
【請求項29】
乾燥混合複合粒子が付着した導電性基材から、電極を形成することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
乾燥混合複合粒子が付着した導電性基材を、電池に含むことをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月31日に出願され、通し番号第63/304,907号を割り当てられた「エネルギー貯蔵装置用電極」と題する米国仮特許出願、及び2022年4月5日に出願され、通し番号第17/713,722号を割り当てられた「エネルギー貯蔵装置用電極」と題する米国非仮特許出願に対する優先権の利益を主張する。前述の仮出願及び非仮出願の内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.技術分野
本開示は、電気化学的エネルギー装置及び関連する製造する方法を対象とする。開示する電気化学的エネルギー装置は、一般に電極を含み、ここで電極は、少なくとも部分的に、乾燥複合粒子を導電性基材上に、静電堆積処理によって堆積させることによって形成されたコーティング層を含む。複合粒子は、活物質粒子、及び活物質粒子を包囲するバインダ粒子を含み、バインダ粒子は一般に、バインダ凝集体の解凝集から形成され、粒子対粒子付着力を通じて活物質粒子の表面に対して付着している。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術
電気化学的エネルギー貯蔵装置は、導電性集電体層、典型的には銅又はアルミニウムシートと連通したコーティング層を含有する、電極を有する。コーティング層は、カソード活物質及びアノード活物質を含んでもよく、導電性材料及びバインダ材料としばしば組み合わせられて、印加される電気的負荷又は充電電位に応じて、容易に放電し、電荷を受け取る(充電される)構造を形成する。電気化学的活物質、バインダ及び導電性粒子の形成は、適用できる電池の化学的性質及び生産方法によって変動し得る。
【0004】
電池製造に対する従来のアプローチは、溶媒ベースアプローチを用いて電極を形成する。これには、典型的には、電気化学的活物質及び導電性粒子を導電性集電体箔上に流す又は適用するために、バインダ溶液又は懸濁液が関与する。従来の方法には、一般に、取り扱い、換気、安全性の問題を課す溶媒が関与し、液体溶媒が蒸発するため、又はコーティングされた層内の成分を融合させるための乾燥時間を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、最適なエネルギー密度、出力密度及びサイクル寿命を有する電池を生産するために、電気化学的活物質、導電性粒子及びバインダが、電気化学的活物質及び集電体の間の電気的連通を促進する密度で均一に分散したコーティング層を形成することが望ましい。コーティング層を適用する方法、及びそれによって形成される電気化学的活物質において、改善が所望される。これらの及び他の目的が、本開示の方法及び装置によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
静電堆積処理における静電帯電及び流動化の間、粒子を分離する力を乗り越える/その力に抵抗することができる、効果的な複合粒子を形成するのに十分な個々の成分粒子の間の相互作用によって形成された、電気化学的活物質(又は活物質「AM」)粒子と、付着したバインダ粒子、及び場合により導電性粒子とを含む複合粒子を用いた、静電堆積処理から形成される電気化学的エネルギー貯蔵装置用電極が提供される。
【0007】
市販のバインダ材料又は導電性材料は一般に、二次粒子としばしば呼ばれる、複数の一次粒子の物理的相互作用によって形成された凝集体の形態で入手できる。本開示によれば、バインダ凝集体は解凝集を受けてサブ粒子を形成し、所定の及び/又は望ましいモルフォロジーを有するAM粒子に付着する。留意すべきこととして、導電性凝集体も、解凝集を通じてサブ粒子を形成する。サブ粒子は、当初の凝集体よりも小さなサイズを有する、1つ以上の一次粒子を含む。本開示の有利なエネルギー貯蔵装置の形成において、バインダ粒子及び導電性粒子は、サブ粒子の形態で組み込まれる。
【0008】
典型的には、本開示によれば、カーボンブラック(CB)又は同様の炭素は、バインダに結合しており、バインダとともにAM粒子に付着する。その結果が、静電堆積処理の間に課される分離力に耐えるのに十分な付着力を呈する複合粒子である。典型的な静電噴霧堆積(ESD)処理では、本明細書で開示する複合粒子が、ガス流によって曝気及び流動化され、ガス流によって運ばれて、一様なパターン及び密度で導電性集電体上に堆積する。代替的な静電堆積アプローチも使用され得る。
【0009】
集電体上に堆積した複合粒子層は、本開示に従ってさらに緻密化させて、電池用電極を形成してもよい。堆積した複合粒子層の一様性は、得られる電池の性能に重大である。堆積した複合粒子層の一様性には、とりわけ、堆積層と供給原料粉末混合物との間の化学量論の一致、並びに堆積層内の化学量論の一致及び形状の一致を伴う。
【0010】
電池産業において、静電堆積技法を適用してLiイオン電池用無溶媒電極コーティングを形成することに対する、相当の商業的関心がある。とりわけ、ESD技術は、製造方法におけるエネルギー消費を大幅に低減することができ、電池の製造コストを大幅に低減することができるため、無溶媒電極コーティング技法は魅力的である。静電噴霧堆積処理を通じて、金属集電体上に複合体電極粉末が直接堆積するため、原則的に、静電堆積技法の使用によって、エネルギー貯蔵装置の製造における、より単純でより融通の利く電極コーティングが可能となる。
【0011】
従来の応用では、静電堆積技法は、導電性部品の乾燥粉末コーティングにおいて、広く使用されている。静電堆積コーティング技法の従来の応用では、コーティング層の品質、とりわけコーティング層の一様性は、コーティング粉末に含まれる粒子の特性に直接的に関連し、これに依存する。これらの特性としては、粒子サイズ、比誘電率、導電性、密度及びモルフォロジー等が挙げられる。本開示によれば、コーティング粉末に関係する粒子の特性は、開示する複合粒子で形成される静電堆積コーティングが、有利には、電池用途のための一様な電極を促進する/もたらすように選択される。
【0012】
本明細書での構成は、有利には、十分な自動車性能を提供するために相当の電流引き込み(current draw)が課される、電気自動車(EV)を特に含む、最終使用用途の範囲全体にわたって信頼できる電池の必要性を満たすことができる。残念なことに、上に述べた通り、電池製造に対する従来のアプローチは、電極を形成するために溶媒ベースアプローチを用いる。これには、典型的には、電気化学的活物質及び導電性粒子を導電性集電体箔上に流す又は適用するために、バインダ溶液又は懸濁液が関与する。従来の方法には、取り扱い、換気、安全性の問題を課す溶媒が関与し、液体溶媒が蒸発するため、又はコーティングされた層内の成分を融合させるための乾燥時間を要する。したがって、本明細書での構成は、静電堆積アプローチを使用して、乾燥粉末用途のための複合粒子を導電性集電体上に含む電極を提供することによって、溶媒ベースの電池調合物の上記短所を実質的に克服する。
【0013】
本明細書で開示する通り、複合粒子の望ましいモルフォロジー又は構造が、成分粒子間の解凝集、混合及び付着から生じて、静電堆積処理に耐える形態で、バインダ及び場合により導電性粒子が付着した活物質(AM)粒子を形成する。導電性集電体基材上に堆積すると、開示するAM粒子は、高性能電池のための正確な装填量及び微細構造を形成/画定する。留意すべきこととして、「装填量」は、特定の面積にわたる単位コーティング層質量であり、通常はmg/cm2単位である。
【0014】
本明細書で開示する通り、有利な電極が、複合粒子の静電堆積によって導電性集電体上に形成され、これによって、非常に効果的な電極/電気化学的エネルギー貯蔵装置が形成される。開示する電極/電気化学的エネルギー貯蔵装置は、一般に、静電堆積に適合した複数の複合粒子を導電性集電体基材上に含み、各複合粒子は、1つ以上の活物質粒子(one or more active material particles)、活物質粒子を包囲するバインダ粒子、及びバインダ粒子に付着した導電性粒子を含む。開示するバインダ粒子は一般に、バインダ凝集体の解凝集を通じて形成され、サブ粒子を形成する。バインダ粒子は、粉末混合処理に耐えるのに十分な相互作用力を通じて、活物質粒子の表面に付着する。相互作用は、静電堆積処理によって引き起こされる分離力を乗り越えるにも十分であり、これは、静電堆積処理によって導電性集電体基材上に形成された場合に、複合粒子の構造を維持するのに理想的である。
【発明の効果】
【0015】
開示する電気化学的エネルギー貯蔵装置及びその生産方法は、溶媒ベースの製造方法を必要とせずに、効果的なエネルギー貯蔵機能を提供するのに非常に有利である。
【0016】
開示する電気化学的エネルギー貯蔵装置及び関係する製造方法の追加の特徴、機能及び便益は、後続の詳細な記載から、特に付属の図面と併せて読むと明らかとなる。
【0017】
前述の及び他の特徴は、添付図面に図示される、本明細書で記載する以下の特定の実施形態の記載から明らかとなり、図面における同様の参照文字は、種々の図の全体を通じて同じ部分を指す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本発明の原理を説明することに強調が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】複合粒子の図であり、複合粒子101Cは、本明細書で開示する複合粒子を表す。
図2図1の複合粒子(複合粒子101C)を、電気化学的エネルギー貯蔵装置中に展開する文脈/例示的システムを示す図である。
図3A図1の複合粒子の例となる組成物を示す図である。
図3B図1の複合粒子の例となる組成物を示す図である。
図4図1~3Bの複合粒子の形成を通した進展を示す図である。
図5A】試料1についての混合粉末のSEM画像である。
図5B】試料3についての混合粉末のSEM画像である。
図5C】試料4についての混合粉末のSEM画像である。
図6A】試料1についての混合粉末のより大きな領域のSEM画像である。
図6B】試料3についての混合粉末のより大きな領域のSEM画像である。
図6C】試料4についての混合粉末のより大きな領域のSEM画像である。
図7A】試料1についての混合粉末のEDS画像(ニッケルマッピング)である。
図7B】試料3についての混合粉末のEDS画像(ニッケルマッピング)である。
図7C】試料4についての混合粉末のEDS画像(ニッケルマッピング)である。
図8A】試料1についての混合粉末のEDS画像(フッ素マッピング)である。
図8B】試料3についての混合粉末のEDS画像(フッ素マッピング)である。
図8C】試料4についての混合粉末のEDS画像(フッ素マッピング)である。
図9】本開示による、様々な混合時間及び速度で、粉末を用いた静電噴霧堆積によって調製された電極についての結合強度を示すプロットである。
図10】本開示による、Al基材上に堆積した複合粒子(NCM 622/PVDF/炭素)のSEM画像である。
図11】本開示による、Ni活性粒子の分布を示す、Al基材上に堆積した複合粒子(NCM 622/PVDF/炭素)のEDSマッピング画像である。
図12】本開示による、Ni活性粒子に対する炭素粒子の分布を示す、Al基材上に堆積した複合粒子(NCM 622/PVDF/炭素)のEDSマッピング画像である。
図13】本開示による、Ni活性粒子に対するPVDFバインダ粒子の分布を示す、Al基材上に堆積した複合粒子(NCM 622/PVDF/炭素)のEDSマッピング画像である。
図14】ESDを使用して基材上に複合粒子を堆積させることによって作製された電極についての、抵抗対混合時間のプロットである。
図15】ESDを使用して基材上に複合粒子を堆積させることによって作製された電極についての、結合強度対混合時間のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に描写されるものは、電気化学的エネルギー貯蔵装置、例えば充電式電池において、複合粒子を形成し、展開する、例となる方法及び機械である。複合粒子を、集電体、又は制御された、効率的な方法で電流を提供するための、電気エネルギー(電子)を貯蔵及び放出する他のエネルギー貯蔵装置に連結するための、他の粒子堆積アプローチが用いられてもよい。
【0020】
本明細書で記載する通り、「粒子」という用語は一般に、他の粒子と混合し、相互作用させるのに適合した、ある粒状での量の粒子状物質を示す。粒子のモルフォロジーは、球状又は任意の他の形態であってもよい。個々の粒子を参照した例は、粉末及び顆粒形態を含む、ある粒状での量の粒子における、粒子の存在、又はその一部若しくはすべてに影響を及ぼす相互作用の説明であることが意図される。電池の術語において、「活性電荷材料」は、「電気化学的活物質」又は「電極活物質」としばしば呼ばれることが、さらに留意されるべきである。本明細書で開示する通りこのように堆積させた静電堆積材料は、文脈に応じて、「コーティング層」と呼ばれることもある。
【0021】
粒子の凝集は、本開示による電気化学的エネルギー貯蔵装置の製造に関係する、電気化学的活物質、バインダ材料及び導電性材料を含む、バルク粒状材料でしばしば起こる。これらの材料のすべてが粒子の形態を取り、それは撹拌及び混合を通じて破壊される比較的弱い力を通じて複数の一次粒子が相互作用していることを意味する、凝集体の形態であってもよい。一般的な命名法では、凝集体は二次粒子を示し、撹拌すると破壊されて一次粒子又はサブ粒子となる。本明細書で論じる方法(process)及び方法(method)は、一般に、破壊された、かき混ぜられた又は撹拌された凝集体のサブ粒子から個別の一次粒子を形成する働きをするが、本明細書で定義する粒子は、一次粒子、二次粒子、凝集体のサブ粒子、及び特定のタイプの粒子間の任意の相互作用又は結合を含む。別の言い方をすれば、二次粒子又は凝集体としばしば呼ばれる一次粒子のクラスタは、一般に、撹拌すると分離して、より小さな粒子となることが予想されるが、ある特定の凝集体はそのままであって、それでもやはり、それぞれの活物質、バインダ又は導電性材料の粒子を画定することができ、その粒子及び/又は任意の形態のそのサブ粒子を意味する。そのため、粒子は、破壊されて複数のサブ粒子となることがあるが、それでもやはり、その各々は依然として粒子である。加えて、撹拌処理中に印加される力は、凝集した粒子を粉砕するのに十分であり得る。
【0022】
図1は、本明細書で開示する複合粒子の図である。本明細書での構成は、高い一様性を有する電池複合体電極製造のために、無溶媒(乾式)静電噴霧堆積(ESD)コーティング技法を適用する。本開示はさらに、ESD電極コーティング用の好適な複合体粉末混合物を生成する、複合体粉末混合処理を可能にする。代わりの用途としては、任意の電気化学的貯蔵装置、例えば燃料電池等が挙げられる。
【0023】
電池は、カソード及びアノードを有する。典型的なLiイオン電池では、カソード及びアノードは、複合体電極粉末混合物をベースとする。複合体電極粉末混合物は一般に、活性電極材料粒子(AM)、バインダ材料粒子(バインダ)及び導電性材料粒子(CB)を含有する。活性電極材料としては、カソード材料、例えば、リチウム金属酸化物系カソード材料:NCM(リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)、LMO(リチウムマンガン酸化物)、NCA(リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物)、LCO(コバルト酸リチウム)、及びリチウムポリアニオン(lithium polyanion)型カソード材料:LFP(リン酸鉄リチウム)、LiMnxFe1-xPO4、Li2FeSiO4、並びに炭素質アノード材料、グラファイト、Si、Si系複合体、SiOx、リチウムと合金形成可能な材料(lithium alloyable materials)、又はリチウム遷移金属酸化物(lithium transition metal oxide)アノード材料をベースとするアノード材料が挙げられる。典型的なナトリウムイオン電池では、カソード材料としては、ナトリウム遷移金属酸化物(sodium transition metal oxide)、例えば、Na2/3Fe1/2Mn1/2O2、ナトリウムポリアニオン(sodium polyanion)材料、例えばNa2MnSiO4、プルシアンブルー類似体(Prussian Blue Analogues)カソード材料、例えばNa2MnFe(CN)6が挙げられる。そしてアノード材料としては、炭素質アノード、ナトリウムと合金形成可能な材料、ナトリウム遷移金属酸化物又はプルシアンブルー類似体アノード材料が挙げられる。遷移金属酸化物系カソード材料、例えばNCMは、10-6~10-7S/cmの電子伝導率を有する半導体である。
【0024】
典型的なバインダ材料は、ポリマー性材料、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PEO(ポリエチレンオキシド)若しくはPMMA(ポリ(メタクリル酸メチル))、SBR(ポリスチレンブタジエンゴムバインダ)、CMC(カルボキシメチルセルロースバインダ)又はPAA(ポリアクリル酸)であり、これらは電気絶縁体である。バインダ材料はまた、ポリマー電解質、例えば、PEO/リチウムトリフラート(lithium triflate)ポリマー電解質であってもよい。さらに、バインダは、無機固体電解質及びポリマー性バインダ、ポリマー電解質バインダ又は有機バインダからなる固体状態電解質複合体、例えばLi3InCl6/PMMA複合体、LLZO/ポリマー電解質複合体であってもよい。
【0025】
導電性材料としては、電気伝導性である、カーボンブラック(CB)、カーボンナノチューブ又はグラフェンを挙げることができる。加えて、いくつかの機能性添加剤が、複合体電極中に含まれてもよい。これらの添加剤は、例えば、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0026】
カソード材料の真密度は一般に、NCMの場合は4~5g/ccであり、LFPの場合は3.6g/ccである。バインダの真密度は、典型的には1~2g/ccの範囲内である。活物質についての典型的な粒子サイズは、1~40μmの範囲内である。バインダ材料は、典型的には、100~1000nmの一次粒子サイズ及び5~30μmの凝集体サイズを有する。導電性材料は、典型的には40~80nmの一次粒子サイズを有する。導電性集電体は、典型的には、コーティングされた層と導電性基材との間の付着を強化するためのプライム層を有する又は有しない、Al箔及びCu箔である。このような付着層は、堆積の前に、導電性基材に適用されてもよい。
【0027】
図1を参照すると、本開示による電気化学的エネルギー貯蔵装置用の、静電噴霧堆積(ESD)によって形成された電極は、導電性集電体基材上への静電堆積に適合した複数の複合粒子を含む。複数の複合粒子(又は少なくとも複合粒子の大多数)の各複合粒子は、活物質粒子、及び活物質粒子を包囲するバインダ粒子を含む。本開示によれば、バインダ粒子は、バインダ凝集体をサブ粒子に分解すること、又は事前に作製されたサブ粒子を直接導入することのいずれかによって形成される。いずれの場合も、バインダ粒子は、バインダ凝集体の撹拌を通じて系に導入される力に基づいて、このような撹拌中に破壊される相互作用力よりも大きな結合力を通じて、活物質粒子の表面に付着する。複合体を形成するために、導電性添加剤を加えてもよい。
【0028】
図1において、範囲100の粒子は、電気化学的エネルギー貯蔵装置用の例となるカソード材料を描いている。複合体電極粉末混合物において、電池のために十分な重量エネルギー密度及び許容できる/有益な出力密度を可能にするために、活物質の重量比は通常は80%超であり、バインダ及び導電性材料の重量比は20%未満である。複合体電極粉末混合物は、成分粒子の一様な分散を可能にするための混合処理によって調製される。図1は、乾式混合を通じて十分に混合された複合体電極粉末混合物中の成分粒子の粒子101A、101B及び101Cという、いくつかの分散パターンを図示している。成分粒子は、AM、バインダ及び導電性粒子を含むが、しかしながら、以下の議論において明らかとなるように、いくつかの構成では、導電性材料は複合体電極に必要ではない及び/又は含まれない。
【0029】
一般に、AM粒子111が最大の粒子であり、バインダ粒子112はより小さい粒子であるがまちまちであり(ハッチング付きの陰影付きとして示す)、導電性粒子113(実線で示す)が最小の粒子サイズ範囲のものである。しかしながら、特定の実施態様では、サイズ及びサイズの関係は大きく変動し得る。粒子101Aにおいて、バインダ112は、大きなサブ粒子サイズを有するか、又は凝集体の形態であるかのいずれかである。活物質111粒子は、乾式混合中にその当初のモルフォロジーを保つ。静的な粉末形態では、すべての粒子が十分に分散しているが、AM111、バインダ112及びCB(導電性)粒子113の間に強い相互作用は存在しない。
【0030】
粒子101Bは、バインダ112凝集体が、有利には混合処理において破壊され、サブ粒子サイズが活物質111よりも小さいことを示す。活物質粒子は、乾式混合中にその当初のモルフォロジーを保つ。101Aを用いる場合、静的な粉末形態において、粒子111、112及び113は、十分に分散していることもあるが、AM、バインダ及びCB粒子の間に強い相互作用力は存在しない。
【0031】
粒子101Cは、バインダ凝集体が混合処理において破壊され、サブ粒子112のサイズが活物質111よりも小さい、複合粒子を描いている。活物質粒子は、混合中、その当初のモルフォロジーのままである。静的な粉末形態では、バインダ粒子及び導電性粒子は、表面溶融、ファンデルワールス引力、又は多様な潜在的物理的相互作用及び化学結合によって、活物質粒子の表面上に個別にコーティングされている。複合粒子101Cは、凝集体を分解するために撹拌されたバインダのサブ粒子をベースとする、集電体基材上への静電堆積に適合しており、その相互作用力は、複合粒子101Cのモルフォロジーを維持するために、材料の取り扱い、基材上への静電堆積及び堆積後の取り扱いによって引き起こされる分離力に耐えるのに十分である。
【0032】
留意すべきこととして、本明細書で開示する混合処理を通じたバインダ粒子の解凝集に関係する、バインダ/活物質粒子比に対する重大な影響は、理論に基づいて計算され得る。したがって、以下の表1に示す通り、0.5μmであるバインダ粒子の場合の431、及び54μmであるバインダ粒子の場合の54と比較して、バインダ粒子についての0.1μmという平均粒子サイズでは、バインダ/活物質粒子比が53,819に上昇する。したがって、活性粒子(10μmであると仮定する)に対するバインダ粒子の分散は、本開示によれば数桁上昇する。
【0033】
【表1】
【0034】
多様なAM粒子及び複合粒子の調合物が達成され得る。一般に均一なバルク粒状材料として得られる、AM、バインダ及び導電性材料の成分粒子と、粒子対粒子相互作用力によって形成される、静電堆積のために形成された複合粒子との間の区別に留意するべきである。例となる手配では、活物質は、カソード材料として電気化学的エネルギー貯蔵装置用に、遷移金属酸化物から形成される。典型的なカソード材料としては、典型的には、リチウムイオンを受け取ること及び放出することができる形態に基づき、NCM(リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)、LFP(リン酸鉄リチウム)、LCO(コバルト酸リチウム)、又は他の好適な調合化学(chemistry)が挙げられる。カソード材料は、バルク品とは反対の独自の方法によって、堆積前にしばしば調合され得る。開示する方法によって形成される活物質はまた、電気化学的エネルギー貯蔵装置用アノード材料でもあり得る。活物質の例示的な展開は、充電式リチウム電池、Liイオン電池、充電式Li-S電池、固体状態電池、充電式ナトリウム電池及びナトリウムイオン電池によって定義される化学的性質を有する、充電式電池用である。バインダ粒子は一般に、ポリマー性材料、ポリマー電解質及び固体状態電解質複合体の1つ以上から形成され、複数の特定の化合物の名を上に挙げる。
【0035】
図2は、図1の複合粒子を電池中に展開する文脈/例示的システムを示す。ESD製造方法200は、静電堆積アプリケーター215及びホッパー216を含む。供給原料214は、あるバルク量の上記複合粒子101Cを含む。複合粒子101Cは、撹拌器132を有するミキサー130、又は複合粒子101Cを混合し、組み合わせ、付着させるための同様のアプローチによって発生する。バルク粒子の供給源としては、活物質150-1、バインダ粒子150-2、及び場合により導電性粒子150-3(一般に150)が挙げられる。供給源150は、所定の量、一般には少なくとも80%の重量比の活物質で、ミキサー130に供給される。供給源150は、典型的には均一なバルクストックとして、任意の好適な市販の又は産業的供給品から得られ、粒状、微粒子状又は粉末の構造を有する。粒子及び粉末は、本明細書での議論においては互換的であるとみなされるべきである。
【0036】
撹拌後、バインダ粒子は通常は200~1000nmの間であり、導電性粒子は100~500nmの間である。撹拌されると、ミキサー130は、供給原料214用の複合体電極混合物160を含有する。AM粒子は、典型的には一般に1~40μmの範囲にわたり、さらに以下で論じる、付着したバインダ及び導電性粒子よりも相当に大きい。
【0037】
図2の通り、静電堆積装置250において、カソード材料用の構成粒子として、図1Cの複合粒子が描かれている。活物質は、カソード材料又はアノード材料のいずれかであり得、それぞれ、カソード材料又はアノード材料粒子から形成される。供給原料214からの複合粒子は、加圧ガス流、通常は乾燥空気によって曝気及び流動化される。流動化された複合粒子は、ガス流によって運ばれて静電アプリケーター215を通過して帯電し、電場中を移動して、最終的に接地した導電性集電体254上に堆積して、複合粒子層252を形成する。ガス流によって流動化され、運ばれた複合粒子は、静電アプリケーター215において、コロナ帯電又は摩擦帯電によって帯電する。
【0038】
静電堆積製造方法200によって出力された生成物は、複合粒子層252及び基材254を含む、コーティングされたシート253である。静電堆積アプリケーター215は、任意の好適な静電堆積装置であり得る。噴霧処理がしばしば関与するが、他の静電堆積アプローチが行使されてもよい。コーティングされたシート253は緻密化されて、電気化学的エネルギー貯蔵装置用電極を形成する。コーティングされたシート253は、緻密化前に予熱することもできる。緻密化処理は、加熱下であっても、加熱しなくてもよい。上記処理によって、カソード又はアノードを作製することができる。緻密化処理は、例えば複数回繰り返してもよい。複合粒子の静電帯電のため、静電アプリケーターは、任意の好適な静電的アプローチを用いることができる。静電印加としては、コロナ帯電、摩擦帯電、直接電極誘導帯電又は他の好適な帯電処理が挙げられる。
【0039】
電気化学的エネルギー貯蔵装置、例えばLiイオン電池は、カソード、アノード、セパレータ及び電解質を有する。カソードは典型的には、活物質、例えばNCM、バインダ材料、例えばPVDF、及び導電性材料、例えばカーボンブラックを含む。アノードは典型的には、活物質、例えばグラファイト、バインダ材料、例えばPVDF若しくはSBR/CMCバインダ、及び/又は導電性材料、例えばカーボンブラックを含む。セパレータは典型的には、カソードとアノードとを隔て、カソードとアノードとの間のイオン輸送を可能にする、多孔質ポリマーフィルムである。電解質は典型的には、リチウム塩溶液、例えば、LiPF6塩とEC/DMC/EMC溶媒との溶液であり、カソードとアノードとの間にイオン性伝導を提供する。
【0040】
負荷モード、又は放電モードにおいて、アノードは酸化を受け、カソードは還元を受ける。充電において、アノードは還元を受け、カソードは酸化を受ける。電気化学的貯蔵装置に貯蔵されるエネルギーは、活物質によって貯蔵される電気化学的エネルギーだけでなく、電極中の活物質の含有量にも依存する。さらに、電気化学的エネルギー貯蔵装置における電流分布の一様性は、装置のサイクル寿命に有意に影響を及ぼす。電流分布の一様性は、電極の一様性に直接的に関連する。電極の構造特性、例えば多孔性及び厚さは、電気化学的エネルギー貯蔵装置の電力容量に影響を及ぼす。
【0041】
帯電材料を形成すること及び重ねることによって影響される特徴としては、エネルギー密度に直接的に関連する、電極の一様性、電極中の活物質装填量、電極の多孔性、電気伝導率、電極の加工性、得られる電池の出力密度及びサイクル寿命が挙げられる。
【0042】
静電処理200において、粒子の帯電は、以下の式
【0043】
【数1】
(式中、
r=粒子の半径、
E=電場強度、
e=電子の電荷、
k=電子移動度、
n=電子濃度、
t=時間、
ε0=絶対誘電率、及び
εr=粉末の比誘電率)
を通じて、その比誘電率及びサイズと相関がある。
【0044】
カソード材料についての典型的な粒子サイズ範囲は、1~40μmの範囲内である。PVDFバインダの典型的な一次粒子サイズは、200~300nmである。導電性カーボンの典型的な一次粒子サイズは、40~50nmである。上の等式から、粒子の最大電荷は、粒子半径の2乗に直接的に関連するため、静電堆積中の個々の粉末成分の電荷は、数桁異なることになる。
【0045】
カソード材料は通常、ポリマー性バインダ材料よりも遥かに大きな比誘電率を有する。例えば、21℃におけるPVDFの比誘電率は約8~10であり、リチウムニッケル酸化物系カソード材料の比誘電率は1000のオーダ(order)である。
【0046】
理想的な帯電体からの電荷放散についての緩和時間tは、
τ=ε0εr
(式中、
εr=粉末の比誘電率、及び
σ=粉末の電子伝導率)
によって与えられる。
【0047】
NCMカソード材料の電子伝導率は、一般に10-6~10-7S/cmであり、PVDFは10-14S/cm未満であり、これは、電荷放散についての緩和時間における数オーダ(order)の差をもたらす。
【0048】
上記分析に基づいて、伝導率、誘電率、粒子サイズ及び密度における差から生じる、帯電性及び電荷放散時間における大幅な差に起因して、活物質粒子、バインダ粒子及び導電性材料粒子は、静電堆積処理において異なる静電堆積挙動を有する。
【0049】
加えて、粒子サイズ、粒子密度、モルフォロジー、表面粗さ、及びしたがって表面エネルギーにおける差は、粉末流動化及びコーティングされる表面への機械的搬送の間の空気力学的効果に関係するため、これらは異なる挙動を呈することになる。
【0050】
混合物中の粒子間に強い相互作用力が存在しない場合、粉末の特性に関係する、静電堆積及び流動化における挙動の差に起因して、コーティング中に有意な分離が起こることがあり、これは、組成、微細構造及び寸法に関するコーティングの一様性に対する、有害な効果につながる。従来のアプローチは、例えば、供給原料214から、個々の成分粒子由来の異なる堆積パターンに起因して、まちまちの化学量論を有する堆積層252をもたらす。
【0051】
従来の技法を使用した静電堆積処理200において、活物質粒子、バインダ粒子及び導電性材料粒子(101A及び101Bのように形成される)は、コロナ帯電、摩擦帯電又は直接平板電極静電帯電システムにおける空間帯電ゾーンを粉末粒子が通過するとき、個々に帯電する。帯電性及び電荷放散時間の差に起因して、個々の帯電粒子は、堆積層に非一様性をもたらしながら、集電体に堆積する。
【0052】
本開示による複合粒子101Cの形成中、小さなバインダ粒子及び導電性材料粒子は、活物質粒子の表面上に付加/付着し、複合粒子を形成する。バインダ及び導電性材料粒子が表面に付加した活物質粒子からなる複合粒子の曝気又は機械的搬送、及び堆積中、複合粒子が帯電及び堆積し、集電体基材254上に一様な堆積をもたらす。さらに、バインダ粒子112の高い抵抗率に起因して、複合粒子の電荷放散時間は純粋な活物質粒子よりも長く、これによって、コーティング後の取り扱い中、バインダの硬化操作を行うことができるまで、静電力が効果を有することができる。したがって、供給原料214電極粉末混合物中の複合粒子101Cの組成は、高度の一様性を達成するための静電堆積に特に有益である。
【0053】
図3A及び3Bは、図1の複合粒子の例となる組成物を示す。図1から3A~3Bを参照すると、図3Aは、AM粒子111及び付着したバインダ粒子112を有する複合粒子101Cを示す。図3Bは、複合粒子101Cが導電性粒子113をさらに含むことを示す。ミキサー130の手配に応じて、複合粒子101Cは、導電性粒子113、活物質粒子111及びバインダ粒子112を同時に混合することから形成され得る。代わりの構成では、複合粒子101Cは、バインダ粒子112の表面に付着させるために、導電性粒子113を組み合わせること、及び続いて、組み合わせたバインダ及び導電性粒子をAM粒子111の表面に付着させることによって、複合粒子101Cを形成することをさらに含む。
【0054】
複合粒子101Cで形成される複合体電極粉末混合物を達成するために、任意の混合/粒子コーティング機器、例えば、インパクトミキサー又はせん断ミキサーを使用することができる。バインダ凝集体は分解されてサブ粒子を形成し、導電性材料凝集体は分解されてより小さな粒子となる。これらのサブ粒子は、表面溶融、ファンデルワールス引力、又は多様な潜在的物理的相互作用若しくは化学結合によって、活物質粒子の表面に対して付加/付着して、個々の粒子間に十分に大きな相互作用力を生じて、静電帯電、流動化、機械的搬送及び/又は堆積処理の間の粒子の分離を乗り越えることができる、効果的な複合粒子を形成する。
【0055】
図4は、図1~3Bの複合粒子(例えば複合粒子101C)の形成を通した進展を示す。混合及び撹拌の重要な特性は、バインダの凝集体112'が原材料供給源中に存在する場合、このような凝集体を破壊して、サブ粒子112とすることである。撹拌はまた、導電性粒子113'を、AM粒子111に対する付着により適した、より小さなサブ粒子113に縮小させる。本明細書で開示する混合/撹拌は、凝集体の間の相互作用力401を破壊し、しかもバインダ112をAM粒子111に対して、静電堆積システム200を通じて遭遇する分離力よりも大きな結合力402によって付着させるのに十分であり、これによって、複合粒子101Cのモルフォロジーを維持し、層252の一様な堆積を提供する。
【0056】
図4に示すサイズは説明のためのものであり、例としての目的に過ぎない。実際の生産では、バインダサブ粒子112のサイズは、活物質粒子111の平均サイズの0.1%~70%の間の範囲にわたることが予想される。活物質の平均粒子サイズが5μm超である場合、バインダの平均サブ粒子サイズは、活物質の10%未満であるならば有益である。活物質の平均粒子サイズが5μm未満である場合、バインダの好ましい平均サブ粒子サイズは、活物質の70%未満である。
【0057】
粒状供給原料150は、粒子サイズにばらつきを呈することを予想することができ、一般に、ある範囲のサイズにあることが予想され、それは通常である。全体的な範囲が典型的な分布及び平均を呈する限り、本明細書で示す範囲を外れた離れ粒子は、否定的な効果を有しそうにない。同様の分布範囲を、上記で論じた凝集体及びサブ粒子について許容でき、すべての凝集体/二次粒子が、常に厳格な一様性で分解されることを期待できるわけではない。
【0058】
導電性材料のサブ粒子サイズは、バインダの平均サブ粒子サイズの1~100%である。導電性材料のサブ粒子サイズは、バインダの平均サブ粒子サイズの30%未満であることが好ましい。構成粒子又は成分粒子から、バインダ112及び導電性粒子113のすべてが、活物質粒子111に対して付着するわけではないこともある。電極粉末混合物中、バインダサブ粒子の50重量%超が、活物質粒子の表面に対して付加するべきである。バインダサブ粒子の80重量%超が、活物質粒子の表面に対して付加することが好ましい。導電性サブ粒子の50重量%超が、バインダのサブ粒子の表面に対して付加される。そして、50%超のバインダ/導電性複合粒子が、活物質粒子の表面に対して付加される。重量比で80%超のバインダ及び導電性材料が、活物質粒子の表面に対して付加されることが好ましい。
【0059】
複合体電極混合物が導電性材料を含有しない場合、バインダサブ粒子を、活物質粒子の表面に対して直接付加させる。
【0060】
活物質粉末、バインダ粉末及び/又は導電性材料粉末は、同時にミキサーに装填し、混合することができる。バインダ及び導電性凝集体をより良好に破壊し、バインダのサブ粒子と導電性材料との間の相互作用を増大させることができるように、バインダ及び導電性材料を予備混合し、続いて活物質粉末と混合することが好ましい。
【0061】
いくつかの追加の粒子ストックのサイジングは、次の通りである。導電性材料のサブ粒子サイズは、バインダの平均サブ粒子サイズの1~100%である。導電性材料のサブ粒子サイズは、バインダの平均サブ粒子サイズの30%未満であることが好ましい。
【0062】
代わりの手配では、バインダ/導電性粒子を活物質粒子に対して付加/付着させる方法は、本明細書で記載する乾式粉末混合に限定されない。例えば、例示的一実施形態では、バインダ/導電性材料粒子は、バインダ/導電性材料の懸濁液又は溶液と、活物質粉末との混合を通じて、活物質粒子上にコーティングすることができる。別の例示的実施形態では、バインダ粒子は、噴霧乾燥法を通じて、活物質粒子の表面上に/表面に対してコーティングすることができる。
【0063】
特定の使用の事例では、ミキサー130は、高せん断ミキサーを用いて、静電堆積用の標準バインダサブ粒子サイズを有するNCM/バインダ/CB粉末混合物を撹拌する。高せん断ミキサーは、偏心混合ツールを内蔵した特有の回転混合パン(rotating mixing pan)を提供する。異なるサイズを有する粒子を分散させ、混合するために、1~30m/sの範囲内の混合速度に設定することができる。この例では、10μm前後のサイズを有する活物質(NCM)、200~300nmの一次サイズを有するPVDFバインダ、及び40~50nmの一次サイズを有する導電性カーボンを使用した。96:2:2の重量比を有するAM/バインダ/CB粒子を、高せん断ミキサーを使用して30分間混合した。混合された粒子のSEM撮像は、AMの表面上のCB及びバインダのコーティングを示している。
【実施例
【0064】
1.材料調製及び静電噴霧堆積による電極調製
90:7:3の重量比で、熱処理NMC、PVDF及びカーボンブラックを含有する700gの粉末混合物のバッチを、高せん断ミキサーに装填した。異なる混合速度及び混合時間で、混合の検討を実施した(試料1:12m/s、10分;試料3:20m/s、20分;試料4:25m/s、20分)。
【0065】
混合されたNMC粉末を、静電噴霧堆積システムにおけるホッパーに装填した。振動下でガスを運ぶことによって、乾燥粉末を流動化させた。流動化粉末を、コロナ静電噴霧ガンによって帯電させ、15μm厚の接地したAl箔上に堆積させた。Al箔のコーティング面には、静電噴霧堆積技法によって適用される、1μm未満の厚さを有するPVDF界面層をプレコーティングした。堆積させた試料を、ホットプレートにおいて約1時間、250℃で加熱して、バインダを溶融させた。最後に、アニーリングした試料を、ローラープレスを使用して所望の厚さまでプレスして、35%の多孔性を達成した。この電極試料は、SEM/EDS、付着及び電気化学的試験ができる状態にある。
【0066】
2.試料1、3及び4のSEM/EDS試験
混合粉末試料をSEM/EDSによって分析して、PVDF/炭素粒子の解凝集、及びNMC粒子上のPVDF/炭素のコーティングを評価した。図5Aに示す通り、PVDF/炭素のわずかな凝集体がNMC表面に付加していることを認めることができるが、NMC表面の大部分は露出している。NMC表面の構造が明瞭に視認される。これは、12m/s、10分の混合のもとでは、NMCの表面が、PVDF/炭素粒子によってかろうじて覆われていることを示す。
【0067】
混合強度が20m/s、20分(試料3、図5B)及び25m/s、20分(試料4、図5C)へ上昇するにつれて、NMC粒子の表面がPVDF/炭素によって全面的に覆われる。
【0068】
図6A~6Cは、試料1(図6A)、試料3(図6B)及び試料4(図6C)についての混合粉末のより大きな領域のSEM画像を示す。
【0069】
対応するEDS結果を、図7A(試料1、ニッケルマッピング)、図7B(試料3、ニッケルマッピング)及び図7C(試料4、ニッケルマッピング)、並びに図8A(試料1、フッ素マッピング)、図8B(試料3、フッ素マッピング)及び図8C(試料4、フッ素マッピング)に示す。ImageJを使用して、元素マッピング画像を処理し、画像品質に対する信号強度の効果を除去した。各元素の最大強度が画像に報告される。
【0070】
図7A~7Cに示す通り、対応するSEM画像に対して、ニッケルの分布を完全にマッピングすることができる。個々のNMC粒子の全体的形状が、ニッケルマッピングによってキャプチャされる。PVDF含有量の指標であるフッ素のマッピング(図8A~8C)は、3つの混合材料間の際立った違いを示している。
【0071】
12m/s、10分混合のフッ素マッピング画像(図8A)からは、NMC粒子の全体的に球状形状は視認されない。これは、PVDF粒子のほとんどが、NMC粒子に付加するのではなく、混合粉末中で依然としてランダムに位置していることを示す。画像の左下角の辺りに緊密に集合した黒いスポット(矢印で示した)も、いくつかのPVDF粒子の凝集体が、低強度混合のもとで破壊されていないことを示す。
【0072】
20m/s、20分(試料3、図8B)及び25m/s、20分(試料4、図8C)に示される通り、より高強度の混合を用いると、フッ素が集中し始めて、NMC粒子の球状形状を示す。20m/s、20分混合(試料3、図8B)のフッ素マッピングの中央左の辺りに緊密に集合した黒いスポット(矢印で示した)は、PVDF粒子の大きな凝集体を示す。図6Bにおける対応するSEM画像から、NMC粒子が、この大きなPVDF粒子の凝集体の後ろにあることが視認されるが、PVDF凝集体は、検出器によって収集されるものであるニッケルのx線スペクトルを完全に遮る。そのため、対応するニッケルマッピング画像においては、空間として示される(矢印で示した)。大きなPVDF凝集体は、25m/s、20分(試料4)で混合した粉末には視認されない。PVDF粒子の比較的均一な分布が達成され、図8Cの対応するフッ素マッピング画像から視認される。
【0073】
3.付着試験
プルオフ試験を使用して、電極の結合強度が評価された。電極試料を、14.3mmの直径を有する円板状に切断した。電極の円板を、12.7mmの直径を有するフラットヘッドチップ上に、両面テープを使用して付加させた。円板を、15Nの圧縮力を有する両面テープで基部に付加させ、続いて引っ張り、円板の崩壊をもたらす最大引張力を記録した。図9は、様々な混合時間及び速度で、粉末を用いた静電噴霧堆積によって調製された電極、すなわち、試料1、3及び4についての結合強度を示すプロットである。図9のプロットは、より長い混合時間で調製した試料が、より良好な付着を実証したことを示す。
【0074】
4.電極のEDSマッピング
本開示のさらなる例示的実施態様では、バインダ粒子が解凝集を受けて、本明細書で上に記載した複合粒子を形成し、複合粒子を、静電噴霧堆積によってアルミニウム箔基材上に堆積させ、続いて熱カレンダー加工した。この例示的実施態様は、20mg/cm2の装填量及び3.7g/ccの密度を有するNCM 622/PVDF/炭素から作製した電極中の複合粒子を特徴とする。PVDF及び炭素は活性粒子と相互作用して、強い付着及び導電性を提供する。
【0075】
図10のSEM画像に示される通り、複合粒子は、Al基材への強い付着を示す。
【0076】
図11のEDSマッピング画像に示される通り、Ni活性粒子は一様に分布しており、Al基材に対して付着している。
【0077】
図12のEDSマッピング画像に示される通り、炭素粒子は一様に分布しており、Ni活性粒子に対して付着している。
【0078】
図13のEDSマッピング画像に示される通り、PVDFバインダ粒子は一様に分布しており、Ni活性粒子に対して付着している(フッ素分布を示す画像法に基づく)。
【0079】
5.混合の検討の結果
一連の試験を実施して、ESDによって基材上に堆積させた場合の、複合粒子の形成に関係する混合条件と、これらの複合粒子の性能との間の関係を、決定した。96:2:2の重量比で、熱処理NMC、PVDF及びカーボンブラックを含有する700gの粉末混合物のバッチを、高せん断ミキサーに装填した。混合の検討を、種々の混合速度及び混合時間を用いて実施した。作製した電極の厚さを横切る抵抗を、2つの測定プレートの間に電極円板を挟むことによって測定した。
【0080】
図14のプロットに示される通り、基材上に堆積させた複合粒子に関係する抵抗(基材上に堆積させた複合粒子についての炭素分布の一様性の尺度である)は、約8分から35分の間の混合時間の場合に、有利な動作窓が確立されることを示す。8分未満の混合時間では、許容できないほどに高い抵抗レベル(およそ33オーム)を得た。著しくより長い混合時間(およそ50分)では、結果が改善しなかったが、より短い継続期間の混合、例えばおよそ30分の混合と比較すれば、およそ同等の抵抗性能がむしろ立証された。
【0081】
図15に目を向けると、基材上に堆積させた複合粒子に関係する結合強度(基材上に堆積させた複合粒子についてのバインダ分布の一様性及び有効性の尺度である)は、約8分から35分の間の混合時間の場合に、有利な動作窓が確立されることを示す-図14を参照して上に記載した抵抗測定によって特定されるものと同じ動作窓。8分未満の混合時間では、許容できないほどに低い結合強度を得た。著しくより長い混合時間(およそ50分)では、結果が改善しなかったが、より短い継続期間の混合、例えばおよそ30分の混合と比較すれば、およそ同等の平均結合強度及び遥かに幅広い範囲の性能がむしろ立証された。
【0082】
図14及び15に示す試験結果に基づいて、約8分から約35分の間の混合時間は、優れた分布を呈する複合粒子の形成、並びに本開示による活性粒子に対する、バインダ粒子及び導電性粒子の付着/付加の保持において有効である。
【0083】
開示する電気化学的エネルギー貯蔵装置は、様々なアセンブリ/サブアセンブリ、例えば、充電式リチウム電池、Liイオン電池、充電式リチウム硫黄電池、固体状態電池(solid state battery)、充電式ナトリウム電池及び/又はナトリウムイオン電池に組み込まれ得る。
【0084】
本明細書で定義するシステム及び方法を、それらの実施形態を参照して特に示し、記載してきたが、当業者は、添付する特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更が、これにおいてなされ得ることを理解する。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】