(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】送達カテーテルおよびシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20250130BHJP
A61M 25/01 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61F2/966
A61M25/01 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546212
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(85)【翻訳文提出日】2024-09-26
(86)【国際出願番号】 IL2023050122
(87)【国際公開番号】W WO2023148739
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524290060
【氏名又は名称】ブイ-フロー 21 リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】ハラリ,ボアズ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA11
4C267AA28
4C267AA31
4C267AA45
4C267AA47
4C267AA53
4C267AA55
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC09
4C267DD01
(57)【要約】
ステント送達カテーテルは内側カテーテル管を取り囲む外側カテーテルを有する細長いカテーテル本体を備える。細長いカテーテル本体は、任意に近位に隣接する部分よりも弾性である遠位部を有する。本カテーテルは、近位に隣接する部分においてステントを外側カテーテル管内に保持するためのステントホルダーと、ステントを遠位部の中まで前方に前進させるための第1の機構と、外側カテーテル管を後ろに引いてそれによりステントを展開させるための第2の機構とをさらに備える。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)内側カテーテル管を取り囲む外側カテーテルを有する細長いカテーテル本体と、
(b)遠位部に近位に隣接する部分においてステントを前記外側カテーテル管内に保持するためのステントホルダーと、
(c)前記ステントを前記遠位部の中まで前方に前進させるための第1の機構と、
(d)前記外側カテーテル管を後ろに引いてそれにより前記ステントを展開するための第2の機構と
を備える、ステント送達カテーテル。
【請求項2】
前記遠位部は、前記細長いカテーテル本体の前記遠位部に近位に隣接する前記部分よりも弾性である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記内側カテーテル管はガイドワイヤールーメンを備える、請求項1または請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記ガイドワイヤールーメンは、前記細長いカテーテル本体の遠位先端にある第1の開口部から前記外側カテーテル管の側壁にある第2の開口部まで延在している、請求項1~3のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項5】
前記細長いカテーテル本体の遠位端に取り付けられたノーズコーンをさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項6】
前記ステントを前記ノーズコーンに逆らって前方に前進させる、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記外側カテーテル管を後ろに引いて、それにより前記ステントを展開することにより前記ステントホルダーからそれを離脱させる、請求項1~6のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項8】
前記遠位部は20~80mmの長さである、請求項1~7のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項9】
前記遠位部は170~513mPaの弾性を有する、請求項1~8のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項10】
前記第1および前記第2の機構を作動させるためのハンドルをさらに備える、請求項1~9のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項11】
(a)カテーテルを蛇行した血管を通して前進させる工程であって、前記カテーテルはステントを遠位部に近位に隣接する部分内に保持している工程と、
(b)前記ステントを前記遠位部の中まで前方に前進させる工程と、
(c)前記ステントを展開する工程と
を含む、蛇行した血管を通してステントを送達させる方法。
【請求項12】
前記遠位部は、前記細長いカテーテル本体の前記遠位部に近位に隣接する前記部分よりも弾性である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カテーテルは内側カテーテル管を取り囲む外側カテーテルを有する細長いカテーテル本体を備える、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記内側カテーテル管はガイドワイヤールーメンを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ガイドワイヤールーメンは、前記細長いカテーテル本体の遠位先端にある第1の開口部から前記外側カテーテル管の側壁にある第2の開口部まで延在している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細長いカテーテル本体はその遠位端に取り付けられたノーズコーンをさらに備える、請求項13~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ステントを前記ノーズコーンに逆らって前方に前進させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(d)は前記外側カテーテル管を後ろに引くことにより行う、請求項13~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記遠位部は20~80mmの長さである、請求項11~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記遠位部は170~513mPaの弾性を有する、請求項11~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
露出されたワイヤー端部を有する管状の編を含むステントであって、前記端部のそれぞれはボール状突起部を含むステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年2月2日に出願された米国仮特許出願第63/305,782号の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、蛇行した解剖学的構造を通して装置を送達するためのカテーテルおよびそれによって送達可能なステントに関する。本発明の実施形態は、蛇行した血管を通してステントなどの展開可能な装置を送達するために構成されたカテーテルに関する。
【0003】
低侵襲的診断もしくは治療処置では、血管、尿路管、卵管および胆管などの管を通して誘導されるカテーテルを利用することが多い。
【0004】
血管内カテーテルを、アクセス部位(例えば大腿動脈)に位置決めされたイントロデューサーを介して挿入し、かつ前進させ、脈管構造を通して所望の位置まで手動で案内する。
【0005】
血管内カテーテルは、組織を損傷することなく蛇行した脈管構造を通して誘導するのに十分な柔軟性を有しながらも、脈管構造を通した前進のために必要な押し込み性を提供し、かつステントなどの内部誘導型医療装置を支持するのに十分な硬さを有していなければならない。
【0006】
蛇行した解剖学的構造を通した誘導を可能にするために、カテーテルは硬い本体部分と、より柔軟な遠位部とを有することができる。硬い本体部分はカテーテルに十分な押し込み性およびトルク性を与え、遠位部は、ガイドワイヤー上での追従および脈管構造における蛇行した経路を通した操作を可能にするのに十分な柔軟性を有する。
【0007】
そのようなカテーテルは蛇行した解剖学的構造を通して上手くガイドして治療薬を送達することができるが、ステントなどの展開可能な装置を保持している場合、そのようなカテーテルは、ステントがカテーテルの遠位部に保持されており、従ってそれによりカテーテル遠位部の剛性が増加するという事実により、それらの操作性のいくつかを失う。
【0008】
従って、上記限界を有しない蛇行した解剖学的構造を通して容易に操作することができるカテーテルが必要とされており、それがあれば非常に有利である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様によれば、内側カテーテル管を取り囲む外側カテーテルを有する細長いカテーテル本体であって、細長いカテーテル本体の近位に隣接する部分よりも弾性である遠位部を有する細長いカテーテル本体と、近位に隣接する部分においてステントを外側カテーテル管内に保持するためのステントホルダーと、ステントを遠位部の中まで前方に前進させるための第1の機構と、外側カテーテル管を後ろに引いてそれによりステントを展開させるための第2の機構とを備えるステント送達カテーテルが提供される。
【0010】
本発明の実施形態によれば、内側カテーテル管はガイドワイヤールーメンを備える。
【0011】
本発明の実施形態によれば、ガイドワイヤールーメンは、細長いカテーテル本体の遠位先端にある第1の開口部から外側カテーテル管の側壁にある第2の開口部まで延在している。
【0012】
本発明の実施形態によれば、本カテーテルは、細長いカテーテル本体の遠位端に取り付けられたノーズコーンをさらに備える。
【0013】
本発明の実施形態によれば、ステントをノーズコーンに逆らって前方に前進させる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、外側カテーテル管を後ろに引いてそれによりステントを展開させることによりステントホルダーからそれを離脱させる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、遠位部は20~80mmの長さである。
【0016】
本発明の実施形態によれば、遠位部は170~513mPaの弾性を有する。
【0017】
本発明の実施形態によれば、本カテーテルは、第1および第2の機構を作動させるためのハンドルをさらに備える。
【0018】
本発明の一態様によれば、近位に隣接する部分よりも弾性である遠位部を有するカテーテルを蛇行した血管を通して前進させる工程であって、本カテーテルはステントを近位に隣接する部分内に保持している工程と、ステントを遠位部の中まで前方に前進させる工程と、ステントを展開させる工程とを含む、蛇行した血管を通してステントを送達させる方法が提供される。
【0019】
本発明の実施形態によれば、本カテーテルは内側カテーテル管を取り囲む外側カテーテルを有する細長いカテーテル本体を備える。
【0020】
本発明の実施形態によれば、内側カテーテル管はガイドワイヤールーメンを備える。
【0021】
本発明の実施形態によれば、ガイドワイヤールーメンは、細長いカテーテル本体の遠位先端にある第1の開口部から外側カテーテル管の側壁にある第2の開口部まで延在している。
【0022】
本発明の実施形態によれば、本カテーテルは、細長いカテーテル本体の遠位端に取り付けられたノーズコーンをさらに備える。
【0023】
本発明の実施形態によれば、ステントをノーズコーンに逆らって前方に前進させる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、ステントを展開させる工程は外側カテーテル管を後ろに引くことによって行う。
【0025】
本発明の実施形態によれば、遠位部は20~80mmの長さである。
【0026】
本発明の実施形態によれば、遠位部は170~513mPaの弾性を有する。
【0027】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、以下に好適な方法および材料が記載されている。矛盾がある場合には、定義を含む本出願が優先される。またそれらの材料、方法および実施例は単に例示であって限定を意図するものではない。
【0028】
本発明は、添付の図面を参照しながら単なる例として本明細書に記載されている。次に図面を詳細に具体的に参照するが、図示されている特徴は例としてのものであり、単に本発明の好ましい実施形態の例示的な考察のためのものであり、本発明の原理および概念的側面の最も有用かつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するという大義名分のために示されていることを強調しておく。この点に関しては、本発明の構造的詳細を本発明の基本的な理解のために必要とされる以上により詳細に示そうとする試みはなされておらず、本明細書を図面と共に解釈すれば、本発明のいくつかの形態をどのように実際に具体化することができるかは当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】標準的なオーバーザワイヤー構成を有する本送達カテーテルの一実施形態を示す。
【
図1B】
図1Aの送達カテーテルによって保持されたステントの前進および展開を示す。
【
図1C】
図1Aの送達カテーテルによって保持されたステントの前進および展開を示す。
【
図1D】
図1Aの送達カテーテルによって保持されたステントの前進および展開を示す。
【
図1E】
図1Aの送達カテーテルによって保持されたステントの前進および展開を示す。
【
図2A】ステント事前装填位置(
図2A)および前方展開位置(
図2B)にあるスライダーボタンを有するハンドルに接続された本カテーテルとステントをシースから取り出すために後退位置にあるY字コネクター(
図2C)とを示す。
【
図2B】ステント事前装填位置(
図2A)および前方展開位置(
図2B)にあるスライダーボタンを有するハンドルに接続された本カテーテルとステントをシースから取り出すために後退位置にあるY字コネクター(
図2C)とを示す。
【
図2C】ステント事前装填位置(
図2A)および前方展開位置(
図2B)にあるスライダーボタンを有するハンドルに接続された本カテーテルとステントをシースから取り出すために後退位置にあるY字コネクター(
図2C)とを示す。
【
図3】本送達カテーテルのラピッドエクスチェンジ実施形態のガイドワイヤールーメンおよびステント前進機構を示す。
【
図4】
図4A~
図4Dは、本送達カテーテルのラピッドエクスチェンジ実施形態によって保持されたステントの前進および展開を示す。
【
図5】本発明の教示に従って構築され、かつ本カテーテルシステムを用いて送達可能なステントを概略的に示す。
【
図6】本発明の教示に従って構築されたプロトタイプのステントである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、蛇行した解剖学的構造を通して展開可能な装置を送達するために使用することができる送達カテーテルのものである。具体的には本発明は、ステントを蛇行した解剖学的構造における部位またはそれを超えた部位に送達するために使用することができる。
【0031】
本発明の原理および動作は、図面および付随する説明を参照しながらより良く理解することができる。
【0032】
本発明の少なくとも一実施形態を詳細に説明する前に、当然のことながら本発明はその適用において、以下の説明に記載されているか実施例によって例示されている詳細に限定されない。本発明は他の実施形態が可能であり、すなわち様々な方法で実践または実施することができる。また当然のことながら、本明細書に用いられている語句および用語は説明のためのものであって限定とみなすべきではない。
【0033】
脈管構造においてステントなどの装置を展開するためのカテーテルは典型的に、そのような装置をカテーテルの遠位端またはその近くに保持する。適所に位置決めしたら、ステントを自己展開のためにシースから取り出すかバルーン膨張により拡張させる。
【0034】
そのようなカテーテルを蛇行していない脈管構造において操作することは簡単であるが、蛇行した脈管構造は、遠位に装着されたステントがカテーテル遠位部の剛性を実質的に増加させ、かつ従って操作性を低下させるという事実により課題をもたらす可能性がある。
【0035】
本発明を実施化する間に本発明者は、蛇行した管を通して容易に操作することができながらも、ステントまたはあらゆる他の展開可能な装置を蛇行した管にある体内管部位またはそれを過ぎた部位まで送達可能なカテーテルシステムを考案した。
【0036】
従って本発明の一態様によれば、ステントなどの展開可能な装置を体内管の中に送達するためのカテーテルが提供される。
【0037】
本明細書で使用される「展開可能な装置」という語句は、血管の内腔などの解剖学的位置において送達カテーテルから展開することができるあらゆる装置を指す。例としては、ステント(ステントグラフトを含む)およびコイルなどが挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される「体内管」という語句は、体内のあらゆる血管または導管を指す。例としては血管(例えば動脈、静脈)、尿路管、脊柱管、卵管および胆管などが挙げられる。
【0039】
本カテーテルは、内側カテーテル管を取り囲む外側カテーテルを有する細長いカテーテル本体を備える。細長いカテーテル本体は近位端においてハンドルに取り付けられており、かつ遠位端においてノーズコーンに取り付けられている。細長いカテーテル本体は、細長いカテーテル本体の近位に隣接する部分よりも弾性である遠位部を備える。そのような遠位部は20~80mmの長さであってもよく、12~170mPaの弾性率を有する(Pebax2533またはPebax5533あるはそのようなデュロメータ値を有する任意の他のポリマーなど)。カテーテル本体の弾性かつ柔軟な部分は、血管壁を損傷することなく蛇行した管を通した誘導を容易にする。
【0040】
近位に隣接する部分を含むカテーテル本体の残りの部分は、20~2000mmの長さであってもよく、170~513mPaの弾性率を有する(Pebax5533またはPebax7233あるいはそのようなデュロメータ値を有するあらゆる任意の他のポリマーなど)。細長いカテーテル本体の外径は1.0~8.0mmであってもよい。
【0041】
外側カテーテル管は0.8~7.8mmの内径を有していてもよく、内側カテーテル管は0.5~2mmの外径および0.3~1.8mmの内径を有していてもよい。内側カテーテル管は、カテーテル本体の長さまたは外側カテーテル管の長さに沿って開口部まで(外側管の遠位端から100~400mm)続いていてもよい。内側カテーテル管のルーメンは、標準的なオーバーザワイヤー構成またはラピッドエクスチェンジ構成ではガイドワイヤールーメンとして機能する。
【0042】
本カテーテルは、展開可能な装置(例えばステント)を前進させ、かつ任意に近位に隣接する部分において外側カテーテル管内および内側カテーテル管周囲に保持するためのホルダーも備えることができる。従って、本カテーテルをアクセス部位から標的解剖学的構造まで前進させる場合、本カテーテルはステントを本カテーテル本体の柔軟な遠位部に対して近位に(近位に隣接する部分に)維持し、かつ蛇行した解剖学的構造を通した誘導を可能にする。
【0043】
本カテーテルは、ステントを遠位部の中まで(そしてノーズコーンに逆らって)前方に前進させるための第1の機構もさらに備えることができる。そのような機構はハンドルから展開可能であり、かつハンドル作動機構からステントホルダーまで続くプッシュロッド/ワイヤーを(スリーブ内に)備える。
【0044】
本カテーテルは、外側カテーテル管を(内側カテーテル管に逆らって)後ろに引いて、それによりステントを展開させるための第2の機構もさらに備えることができる。そのような機構はハンドルから展開可能であり、かつ外側カテーテル管に取り付けられたハンドル作動機構を備える。ステントの展開(半径方向への拡張)によりステントをステントホルダーから離脱させ(ステントがそこに係合されている場合)、かつ血管ルーメンへのその送達を可能にする。
【0045】
本カテーテルのラピッドエクスチェンジ構成は、ルーメンを取り囲む外面内に一方を他方に対して移動させるために2つの隣接するルーメンを必要とする。またガイドワイヤールーメンは、ステント装填(前方への前進)を可能にするためにステントホルダーの遠位において同心である。
【0046】
本明細書において言及されているように、本カテーテルは、蛇行した解剖学的構造を通して展開可能な装置の送達に特に適している。1つのそのような展開可能な装置は、狭窄部を拡張させるという目的のために脳の蛇行した血管(例えば静脈)を通して送達させることができるステントである。
【0047】
次に図面を参照すると、
図1~
図4Dは、ステントなどの装置を脈管構造系内の位置まで送達させるのに適したカテーテル(以下ではカテーテル10と呼ぶ)のいくつかの実施形態を示す。
【0048】
図1A~
図1Eはカテーテル10のオーバーザワイヤー構成を示し、
図3および
図4A~
図4Dはカテーテル10のラピッドエクスチェンジ構成を示す。
図2A~
図2Dはカテーテル10のラピッドエクスチェンジ構成と共に使用することができるハンドルを示す。
【0049】
カテーテル10は、内側カテーテル管16を取り囲む外側カテーテル管14を有する細長いカテーテル本体12を備える。内側カテーテル管16のルーメンはガイドワイヤー17ルーメンとして機能する。細長いカテーテル本体12は近位端18において、ノーズコーン22は遠位端23においてハンドル50(
図2)に取り付けられている。細長いカテーテル本体12は近位に隣接する部分26よりも弾性である遠位部24を備えることができるが、その長さ全体にわたって単一の弾性を有する細長いカテーテル本体12を有するカテーテル10も本明細書において想定することができる。カテーテル本体12の遠位部24は、血管壁を損傷することなく蛇行した管を通した誘導を容易にすることができる。
【0050】
細長いカテーテル本体12は、近位に隣接する部分26においてステント30を外側カテーテル管14内および内側カテーテル管16上に保持するために構成されている。ステント30は自己展開型ステントまたはバルーン拡張型ステントであってもよく、自己展開型ステントが図に示されている。ステント30は、15~80mmの長さ、1~8mmの直径(外側管14内に装填されている場合、
図1A)、拡張されている場合(
図1Eに示されている)に2~24mmの直径であってもよい。図に示されている構成のステント30は、狭窄症または狭窄部を治療するという目的のために脳血管内で展開させるために設計されている。
【0051】
カテーテル10は、ステントを前方に前進させるためのステントホルダー32をさらに備える。ステントホルダーは、ステント30の近位ストラット内に形成されたアイレットに係合するために、例えば半径方向突起部を介してステントに係合することもできる。シースから取り出すこと(本明細書の下にさらに記載されているように、外側カテーテル管14を後ろに引くこと)によって引き起こされるステント30の拡張(
図1E)により、アイレットを半径方向突起部から解放し、かつステント30をホルダー32から解放する。
【0052】
ホルダー32は、ハンドル内の第1の機構に接続されたワイヤー/ロッド34により、内側カテーテル管16上(および外側カテーテル管14内)で移動可能である(
図2A~
図2Dを参照しながら、以下にさらに説明されている)。ホルダーを前進させて、ステント30を遠位部24の中まで前方に移動させ、かつ必要になった場合(例えば、展開を中止するかカテーテル10を再位置決めするため)に後退させてステント30を近位に隣接する部分26の中に引き戻す。
【0053】
外側カテーテル管14は、外側カテーテル管14を内側カテーテル管16に対して後ろに引くことによりステント30のシースからの取り出しを作動させるハンドル内で第2の機構に接続されている。内側カテーテル管16は、ハンドル本体52(
図2A)に接続する中央管36に接続されている。
【0054】
ステント30が近位に隣接する部分26内に保持されている状態(
図1B)で、カテーテル10を血管を通してワイヤー上で誘導する。適所に配置したら、ステント30をノーズコーン22(
図1C、明確性のために断面図で示されている外側カテーテル管)に逆らって遠位部24まで前進させ、かつ第2のハンドル機構を用いて外側カテーテル管14を後ろに引いてステント30が拡張するのを可能にする(
図1D~
図1E)。そのような拡張により、ステント30をホルダー32から解放してそれにより治療部位においてそれを展開する。次いで、外側カテーテル管14を前方に前進させて遠位部24を覆うことができ、カテーテル10を体内から取り出すことができる。
【0055】
図2A~
図2Dは、カテーテル10と共に使用することができるハンドル(本明細書ではハンドル50と呼ぶ)を示す。
【0056】
ハンドル50は、ステント30を前進および後退させるための第1の機構54を収容するハンドル本体52(2つの半分体から形成されている)と、外側カテーテル管14を内側カテーテル管16に対して長手方向に移動させるための第2の機構56(Y字コネクター56)とを備える。Y字コネクター56は灌流ポート57も備えることができる。外側カテーテル管16は中央カテーテル管36に接続されている。管36は、外側カテーテル管14およびホルダー32がカテーテル管36に対して移動可能な状態で、円錐体58(
図2D)を介してハンドル52に固定されている。
【0057】
図2Aは、ハンドル52に対してボタン/スライダー前進機構54が近位位置にあり、かつY字コネクター56が遠位位置にある初期ハンドル位置を示す。ボタン/スライダー前進機構54はワイヤー/ロッド34に接続されている。
【0058】
ステント30を展開するために、前進機構54を遠位に移動させて(
図2B)ステント30を遠位部24まで前進させる。次いで、Y字コネクター56をハンドル52に対して(近位に)引くことによりステント30をシースから取り出す(
図2C)。この位置で、ステント30をシースから完全に取り出し、自由に自己拡張させ、かつホルダー/プッシャー32から解放する。
【0059】
図2E~
図2Gは、カテーテル10と共に使用することができるハンドル100の別の実施形態を示す。ハンドル100はハンドル本体102およびラチェット様前進機構104を備える(
図2E)。
図2F~
図2Gはハンドル100の内部構成要素、特に前進機構104を示す。
【0060】
ハンドル100は、ステント30を前進および後退させるための機構104を収容するハンドル本体102(2つの半分体から形成されている)と、外側カテーテル管14を内側カテーテル管36に対して長手方向に平行移動させるためのノブ106、ギア112およびラック111を備えたギア機構105とを備える。機構104は灌流ポート109も備える。外側カテーテル管14はカテーテル管18に接続されている。管36は、外側カテーテル管18およびホルダー32がカテーテル管36に対して移動可能な状態で、フラッシュポート108を介してハンドル102に固定されている(
図2F~
図2G)。機構104は、ワイヤー/ロッド34に接続された装填前進アクチュエーター110およびステント30の時期尚早の離脱を防止する解放ボタン107も備える。
【0061】
図2Fは、ハンドル102に対して装填/前進アクチュエーター110が近位位置にあり、かつラック111が遠位位置にある初期ハンドル位置を示す。アクチュエーター110はワイヤー/ロッド34に接続されている。
【0062】
ステント30を展開するために、アクチュエーター110を遠位に移動させて(
図2G)ステント30を遠位部24まで前進させる。次いで、ノブ106をハンドル102に対して(時計回りに)回転させることにより、ステント30をシースから取り出す(
図2G)。この位置でステント30をシースから完全に取り出し、自由に自己拡張させ、かつホルダー/プッシャー32から解放する。
【0063】
図3および
図4A~
図4Dはカテーテル10のラピッドエクスチェンジ構成を示す。カテーテル10は細長いカテーテル本体12と、外側カテーテル管14と、内側カテーテル管16とを備える。内側カテーテル管16は、(
図1A~
図1Eに示されている構成を有する場合のように)細長いカテーテル本体12の長さ全体にわたって延在しているのではなく、外側カテーテル管14の長さ(遠位端23から100~300mm)に沿ってノーズコーン22から開口部29(
図4A)まで延在している。内側カテーテル管のルーメン21は、ガイドワイヤールーメンとして機能し、従ってガイドワイヤーはノーズコーン22において開口部39に挿入され、開口部29において排出される。
【0064】
標準的な構成と同様に、ワイヤー/ロッド34によりホルダー32およびそれにより内側管16上に保持されたステント30を平行移動させて、カテーテル誘導に従い、ステント30を近位に隣接する部分26から遠位部24の中まで移動させた(
図4B)後にステント30を展開させる(
図4C~
図4D)。
【0065】
カテーテル10のラピッドエクスチェンジ構成は、
(i)病変部または狭窄部を横切るのを助けるための向上した押し込み性、
(ii)より素早いガイドワイヤーの螺入による減少した蛍光透視時間、
(iii)1人の操作者がワイヤー位置を維持するのを可能にすること、
(iv)より短いガイドワイヤーを用いたより容易な装置交換
を含むいくつかの利点を提供する。
【0066】
本発明のカテーテル10は、大脳静脈、大脳動脈、腎動脈、腎静脈および冠状動脈またはあらゆる他の好適な血管に使用することができる。本システムの利点は、蛇行した解剖学的構造を横切るその能力である。ガイドワイヤーを適所に固定して保持し、カテーテル10をワイヤーの上で前進させて、カテーテル10の遠位部を治療部位に位置決めする。次いで、展開機構54を遠位に押すこと(
図2B)によりステント30をカテーテル14内で遠位部24まで前進させる(
図1C、
図4B)。次いでY字コネクター56をハンドル本体52に向かって近位に引いて(
図2C)、外側管14を後ろに引き、かつステント30をシースから取り出し、それが拡張するのを可能にする。ステント30を完全に露出させると、それはホルダー32から解放される。次いで、本カテーテルを血管から抜き出す。
【0067】
本明細書において言及されているように、送達カテーテル10を使用してあらゆるステント30を送達することができる。開放網構造を有するステントは、優れた耐キンク性を有し、かつ容易にシースから取り出すことができるため好ましい。以下の実施例の箇所の実施例1に記載されているように、本発明のプロトタイプを試験する間に本発明者は、開放網ステントが装填中に遠位に押された場合に送達シース(外側カテーテル管14)に絡まる可能性があることに気づいた。開放網ステントのこの限界を克服するために、本発明者はそのように絡まる可能性を低下させるために、ステント30の編(
図5に示されている)を形成しているワイヤー31の端部を処理してボール状突起部33を形成した。
【0068】
本明細書で使用される「約」という用語は±10%を指す。
【0069】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、限定を意図するものではない以下の実施例を考察すれば当業者に明らかになるであろう。
【実施例】
【0070】
次に、上記説明と共に本発明を非限定的に示す以下の実施例を参照する。
【0071】
実施例1
修正されたステント
インビトロ試験モデルを用いて本発明のステント装填機構を試験したところ、直線的なカテーテルにステント装填を行った場合に装填はスムーズであり、かつ操作者が大きな力をかける必要がないことが判明した。しかしこのカテーテルの遠位端を比較的小さい半径(10~20mm)で曲げた場合、操作者は装填のためにより大きい力が必要であることを観察した。これらの実験を通して本発明者は、露出された編の端部(機械的に切断されている)が非常に鋭利であり、かつカテーテル外側管の内側軟質PTFE層に絡まる傾向があることを観察した。この問題を改善するために、本発明者はレーザー溶接機を利用してワイヤー端部を溶融し、かつ以前に観察された絡まる現象を無くすボール状突起部を形成した。
【0072】
実施例2
動物研究
本送達カテーテルのプロトタイプおよび既成の送達カテーテル(Cordis Pro-Rxステントシステム)を使用して、ステントをブタの内胸静脈に送達した。両方のカテーテルについて送達の容易さおよび静脈組織に対する組織学的影響を評価した。
【0073】
手順
各動物を背側臥位で置き、ハルトマン溶液(1リットル×2)を定速注入により静脈内投与した。血圧およびバイタルサインの測定のために、イントロデューサーシースを大腿動脈内に留置した。ヘパリンを静脈内投与して、処置中は250~350秒の活性化凝固時間(ACT)を維持した。適当なサイズのイントロデューサーシースを大腿静脈内に留置し、ピッグテール/多目的カテーテルを大腿静脈内のシースを通してガイドワイヤー上に挿入し、X線不透過性溶液を注入して蛍光透視血管造影を行った。
【0074】
ステント(Cordis Pro RX8×40)が装填された既成の送達カテーテルを大腿静脈内のイントロデューサーシースを通して、右もしくは左内胸静脈までガイドワイヤー上で前進させた。次いで、ステントをシースから取り出すことにより自己拡張させた。埋め込みのために選択した部位における静脈直径を測定し、埋め込み前に記録し、3~7mmの範囲であった。
【0075】
本カテーテルを使用して、
図6に示されている新しく設計したステント(7×50)を上に記載されている手順を用いてブタの乳房静脈の中に送達した。埋め込みのために選択した部位における静脈直径を測定し、埋め込み前に記録し、3~7mmの範囲であった。
【0076】
結果および結論
右乳房静脈への前進中に、ワイヤー上で前進させた既成のカテーテルは曲げることができず、かつ小さい半径に耐えることができないことが観察された。カテーテル先端をガイドするためにガイディングカテーテルを乳房静脈の中に押し込む試みも、小さい静脈直径が原因で失敗した。
【0077】
本カテーテルを同じワイヤー上で前進させ、狭い開口部を通して乳房静脈の中に容易に誘導した。本カテーテルの柔軟な遠位部は、既成のカテーテルと比較した場合に優れた操作性を示し、乳房静脈に到達するためにより大きいガイディングカテーテルを必要としなかった。
【0078】
本カテーテルによって送達されたステントおよび既成のカテーテルによって送達されたステントを動物の体内に2週間維持し、次いで組織病理検査に送った。新しく設計したステントは、既成のステントと同様の組織病理検査結果を示した。
【0079】
明確性のために、別個の実施形態の文脈に記載されている本発明の特定の特徴が単一の実施形態において組み合わせで提供される場合もあることが理解される。逆に簡潔のために、単一の実施形態の文脈に記載されている本発明の様々な特徴は別々に、あるいは任意の好適な部分的組み合わせで提供される場合もある。
【0080】
本発明についてその具体的な実施形態と共に説明してきたが、多くの代替、修飾および変形が当業者に明らかであることは明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲に含まれる全てのそのような代替、修飾および変形を包含することが意図されている。
【0081】
本出願人は、本明細書において参照されている全ての刊行物、特許および特許出願は、それが参照により本明細書に組み込まれることが言及されている場合には、各個々の刊行物、特許または特許出願が具体的かつ個々に記載されているかのように、それら全体が参照により本明細書に組み込まれることを意図している。また本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が先行技術として本発明に利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用されている限り、それらは必ずしも限定的なものとして解釈されるべきではない。また本出願のあらゆる優先権証明書は、その/それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】