(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ヒト誘導性間葉系幹細胞を生成するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20250130BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250130BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20250130BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/10
C12N5/0735
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024547071
(86)(22)【出願日】2023-02-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2023000071
(87)【国際公開番号】W WO2023148556
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524295191
【氏名又は名称】スマートセラ ソリューションズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ラン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ケネス,アール.
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BB04
4B065CA44
(57)【要約】
ヒト誘導性間葉系幹細胞(iMSC)をヒト多能性幹細胞(例えば、胚性幹細胞)から生成するための方法を提供する。iMSCの前駆細胞は、最初に2ステッププロトコルにおいて生成され、さらに第3ステップ培養によりiMSCへの分化が達成される。iMSCは間葉系表面マーカーを発現し、脂肪細胞、骨細胞、及び軟骨細胞への三系列分化を示す。また、培養基、iMSCから細胞外小胞を単離する方法、及びキットも提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成する方法であって、
(a)ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む培養基中で少なくとも2日間培養して、誘導性細胞を生成することと、
(b)ステップ(a)からの前記誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で少なくとも10日間培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することとを含む、前記方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、前記ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む前記培養基中で0日目から4日目まで培養して、誘導性細胞を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの前記誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で4日目から14日目まで培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト多能性幹細胞がヒト胚性幹細胞である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記WNT経路アゴニストがグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3)阻害剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記WNT経路アゴニストがCHIR98014である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記WNT経路アゴニストが、CHIR98014、CHIR99021、SB 216763、SB 415286、LY2090314、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、AZD1080、WNT3A、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記WNT経路アゴニストが、0.25~0.75μMの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記WNT経路アゴニストが、0.5μMの濃度で前記培養基中に存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記WNT経路アゴニストが、0.5μMの濃度のCHIR98014である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記BET経路アンタゴニストがトリアゾロ-ジアゼピン化合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記トリアゾロ-ジアゼピン化合物が(+)-JQ1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記BET経路アンタゴニストが、(+)-JQ1、TEN-010、OTX015、I-BET762、I-BET151、BAY1238097、ABBV-744、ABBV-075、iBET-BD1、iBET-BD2、SJ432、RVX-208、MS417、AZD5153、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記BET経路アンタゴニストが、25~75nMの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記BET経路アンタゴニストが、50nMの濃度の(+)-JQ1である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PDGF経路アゴニストがPDGF-BBである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
PDGF-BBが、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PDGF-BBが、10ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記IGF1経路アゴニストがIGF1である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
IGF1が、15~25ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
IGF1が、20ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記FGF-ベータ経路アゴニストがFGF-ベータである、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
FGF-ベータが、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
FGF-ベータが、10ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(a)及びステップ(b)の前記培養基が、血清を含む基本培地を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
血清を含む前記基本培地が、10~15%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を少なくとも7日間、L-グルタミンサプリメントを含む基本培地を含む培養基中で培養することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記L-グルタミンサプリメントがL-アラニン-L-グルタミンジペプチドである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
L-グルタミンサプリメントを含む前記基本培地が、GlutaMAX(商標)を補充した10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ヒト誘導性間葉系幹細胞(iMSC)を生成する方法であって、
(a)ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む培養基中で少なくとも2日間培養して、誘導性細胞を生成することと、
(b)ステップ(a)からの前記誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で少なくとも10日間培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することと、
(c)ステップ(b)の前記ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を、基本培地と、L-グルタミンサプリメントとを含む培養基中で少なくとも7日間培養して、iMSCを生成することとを含む、前記方法。
【請求項31】
ステップ(a)が、前記ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む前記培養基中で0日目から4日目まで培養して、誘導性細胞を生成することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの前記誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で4日目から14日目まで培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(c)が、前記ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を少なくとも14日間、前記基本培地及びL-グルタミンサプリメント中で培養することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト多能性幹細胞がヒト胚性幹細胞である、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記iMSCが、CD73、CD90、CD105、CD29、CD44、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の表面マーカーを発現する、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記iMSCが、脂肪細胞、骨細胞、または軟骨細胞へのさらなる分化が可能である、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記WNT経路アゴニストがグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3)阻害剤である、請求項30~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記WNT経路アゴニストがCHIR98014である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記WNT経路アゴニストが、CHIR98014、CHIR99021、SB 216763、SB 415286、LY2090314、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、AZD1080、WNT3A、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項30~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記WNT経路アゴニストが、0.25~0.75μMの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記WNT経路アゴニストが、0.5μMの濃度で前記培養基中に存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記WNT経路アゴニストが、0.5μMの濃度のCHIR98014である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記BET経路アンタゴニストがトリアゾロ-ジアゼピン化合物である、請求項30~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記トリアゾロ-ジアゼピン化合物が(+)-JQ1である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記BET経路アンタゴニストが、(+)-JQ1、TEN-010、OTX015、I-BET762、I-BET151、BAY1238097、ABBV-744、ABBV-075、iBET-BD1、iBET-BD2、SJ432、RVX-208、MS417、AZD5153、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項30~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記BET経路アンタゴニストが、25~75nMの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記BET経路アンタゴニストが、50nMの濃度の(+)-JQ1である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記PDGF経路アゴニストがPDGF-BBである、請求項30~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
PDGF-BBが、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
PDGF-BBが、10ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記IGF1経路アゴニストがIGF1である、請求項30~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
IGF1が、15~25ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
IGF1が、20ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記FGF-ベータ経路アゴニストがFGF-ベータである、請求項30~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
FGF-ベータが、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
FGF-ベータが、10ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
ステップ(a)、(b)、及び(c)の前記培養基が、血清を含む基本培地を含む、請求項30~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
血清を含む前記基本培地が、10~15%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記L-グルタミンサプリメントがL-アラニン-L-グルタミンジペプチドである、請求項30~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(c)のL-グルタミンサプリメントを含む前記基本培地が、GlutaMAX(商標)を補充した10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記iMSCにより生成される細胞外小胞を培養物から単離することをさらに含む、請求項30~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を得るための2段階培養基であって、(i)WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む第1段階培地、及び(ii)PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む第2段階培地を含む、前記2段階培養基。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年2月7日に出願された米国仮出願第63/307,368号に対する優先権を主張する。先行出願の内容は、参照により全体として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞(MSC)は、自己再生能力を有し多系統分化も示す非造血性の成体幹細胞である。MSCは、様々な組織(例えば、臍帯、骨髄、及び脂肪組織、ならびに羊水、月経血、及び子宮内膜)から単離することができる。MSCは、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞、及び脂肪細胞を含む様々な細胞タイプに分化することができる多能性間質細胞である。また、MSCは免疫調節効果(免疫調節分子(例えば、サイトカイン)の産生能力を含む)を有することも示されている。MSCは、その多能性特性により、臨床応用において想定される開発を行う上で魅力的な選択肢となっている。
【0003】
しかし、ex vivoで単離された成体MSCをin vitroで精力的に拡大するには、経時的な可塑性及び効力の低下、ならびにDNA異常及び複製老化の蓄積を含めて多数の制約が存在する(例えば、Rombouts and Ploemacher(2003)Leukemia 17:160-170;Miura et al.(2006)Stem Cells 24:1095-1103;Kyriakou et al.(2008)Haematologica 93:1457-1465;Liu et al.(2012)PLoS One 7:e33225を参照)。さらに、ドナー及び組織供給源にわたって細胞の質にばらつきがあることにより、MSCのin vivo有効性の報告は一貫性がない(例えば、Wagner and Ho(2007)Stem Cell Rev.3:239-248;Galipeau(2013)Cytotherapy 15:2-8;Kimbrel(2014)Stem Cells and Develop.23:1611-1624;Tyndall(2014)Nat.Rev.Rheumatol.10:117-124を参照)。したがって、当技術分野では、信頼性及び一貫性がより高いMSCの供給源が依然必要とされている。
【0004】
他の幹細胞からin vitroでMSCを生成する試みも行われている。例えば、ヒト誘導性多能性幹細胞(iPSC)からMSCを生成するためのアプローチについて説明されている(例えば、Hynes et al.(2014)Stem Cells.Dev.23:1084-1096;Yang et al.(2014)PLoS One 9:e100285;Kang et al.(2015)Stem Cell Res.Ther.6:144;Lin et al.(2016)Curr.Stem Cell Res.Ther.11:122-130;Spitzhorn et al.(2018)Stem Cells Dev.27:1702-1714;Wang et al.(2018)Stem Cells 36:903-914;Yang et al.(2019)Cell Death & Disease 10:718;Xu et al.(2019)Stem Cells 37:754-765;Spitzhorn et al.(2019)Stem Cell Res.Ther.10:100を参照)。このような細胞は、当技術分野ではiPSC-MSCと称される。
【0005】
いくらかの進歩が見られるものの、培養下でヒト多能性幹細胞からヒト誘導性間葉系幹細胞を生成するための効率的かつロバストな方法及び組成物は依然必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、わずか21日間の培養でiMSCを生成する3ステッププロトコルを用いて、ヒト多能性幹細胞(例えば、ヒト胚性幹細胞)からヒト誘導性間葉系幹細胞(iMSC)及びその前駆細胞を生成する方法を提供する。本開示では最初に、わずか14日間の培養でiMSC前駆細胞を得ることを可能にする2ステッププロトコルを提供する。第3ステップは、少なくとも7日以上さらに培養することにより、間葉系表面マーカーを発現し、適切な細胞特異的分化条件下のさらなる培養で脂肪細胞、骨細胞、及び軟骨細胞への三系列分化能を有する、成熟iMSCを得ることを可能にする。また、iMSCは免疫調節能力も示す。本開示の方法は、iMSC前駆細胞、ならびに成熟iMSC、及びiMSCから得られるさらなる分化細胞を得るために使用することができる。
【0007】
したがって、1つの態様において、本開示は、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成する方法であって、
(a)ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む培養基中で少なくとも2日間(または少なくとも3日間もしくは4日間)、例えば、0日目から4日目まで培養して、誘導性細胞を生成することと、
(b)ステップ(a)からの誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で少なくとも10日間(または少なくとも11、12、13、もしくは14日間)、例えば、4日目から14日目まで培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することとを含む、方法に関する。
【0008】
諸実施形態において、ヒト多能性幹細胞はヒト胚性幹細胞である。
【0009】
諸実施形態において、WNT経路アゴニストはグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3)阻害剤(例えば、CHIR98014)である。諸実施形態において、WNT経路アゴニストは、CHIR98014、CHIR99021、SB 216763、SB 415286、LY2090314、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、AZD1080、WNT3A、及びこれらの組合せからなる群より選択される。諸実施形態において、WNT経路アゴニストは、0.25~0.75μMの範囲内の濃度で培養基中に存在する。諸実施形態において、WNT経路アゴニストは、0.5μMの濃度で培養基中に存在する。諸実施形態において、WNT経路アゴニストは、0.5μMの濃度のCHIR98014である。
【0010】
諸実施形態において、BET経路アンタゴニストはトリアゾロ-ジアゼピン化合物(例えば、(+)-JQ1)である。諸実施形態において、BET経路アンタゴニストは、(+)-JQ1、TEN-010、OTX015、I-BET762、I-BET151、BAY1238097、ABBV-744、ABBV-075、iBET-BD1、iBET-BD2、SJ432、RVX-208、MS417、AZD5153、及びこれらの組合せからなる群より選択される。諸実施形態において、BET経路アンタゴニストは、25~75nMの範囲内の濃度で培養基中に存在する。1つの実施形態において、BET経路アンタゴニストは50nMの濃度の(+)-JQ1である。
【0011】
諸実施形態において、PDGF経路アゴニストはPDGF-BBである。諸実施形態において、PDGF-BBは、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で培養基中に存在する。1つの実施形態において、PDGF経路アゴニストはPDGF-BBであり、これは培養基中に10ng/mlの濃度で存在する。
【0012】
諸実施形態において、IGF1経路アゴニストはIGF1である。諸実施形態において、IGF1は、15~25ng/mlの範囲内の濃度で培養基中に存在する。1つの実施形態において、IGF1経路アゴニストはIGF1であり、これは培養基中に20ng/mlの濃度で存在する。
【0013】
諸実施形態において、FGF-ベータ経路アゴニストはFGF-ベータである。諸実施形態において、FGF-ベータは、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で培養基中に存在する。1つの実施形態において、FGF-ベータ経路アゴニストはFGF-ベータであり、これは培養基中に10ng/mlの濃度で存在する。
【0014】
諸実施形態において、この方法のステップ(a)及びステップ(b)の培養基は、血清を含む基本培地を含む。1つの実施形態において、血清を含む基本培地は、10~15%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である。
【0015】
1つの実施形態において、この方法はさらに、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を少なくとも7日間(例えば、14日間以上)、L-グルタミンサプリメントを含む基本培地を含む培養基中で培養することを含む。1つの実施形態において、L-グルタミンサプリメントはL-アラニン-L-グルタミンジペプチドである。1つの実施形態において、L-グルタミンサプリメントを含む基本培地は、GlutaMAX(商標)を補充した10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である。
【0016】
別の態様において、本開示は、ヒト誘導性間葉系幹細胞(iMSC)を生成する方法であって、
(a)ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む培養基中で少なくとも2日間(または少なくとも3日間、もしくは4日間)、例えば、0日目から4日目まで培養して、誘導性細胞を生成することと、
(b)ステップ(a)からの誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で少なくとも10日間(または少なくとも11、12、13、もしくは14日間)、例えば、4日目から14日目まで培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することと、
(c)ステップ(b)からのヒト間葉系幹細胞前駆細胞を、基本培地と、L-グルタミンサプリメントとを含む培養基中で少なくとも7日間培養して、iMSCを生成することとを含む、方法に関する。
【0017】
諸実施形態において、ステップ(c)は、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を7日間より長く、例えば、少なくとも14日間、少なくとも21日間、または少なくとも28日間もしくはそれ以上の間、基本培地及びL-グルタミンサプリメント中で培養することを含む。
【0018】
諸実施形態において、ヒト多能性幹細胞はヒト胚性幹細胞である。
【0019】
諸実施形態において、ステップ(c)で生成されるiMSCは、CD73、CD90、CD105、CD29、CD44、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の表面マーカーを発現する。
【0020】
諸実施形態において、ステップ(c)で生成されるiMSCは、脂肪細胞、骨細胞、または軟骨細胞へのさらなる分化が可能である。
【0021】
好適なWNT経路アゴニスト、BET経路アンタゴニスト、PDGF経路アゴニスト、IGF1経路アゴニスト、及びFGF-ベータ経路アゴニスト、ならびにこれらの濃度については、上記及び本明細書でさらに説明する。
【0022】
諸実施形態において、ステップ(a)、(b)、及び(c)の培養基は、血清を含む基本培地を含む。諸実施形態において、血清を含む基本培地は、10~15%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である。
【0023】
諸実施形態において、ステップ(c)で使用されるL-グルタミンサプリメントはL-アラニン-L-グルタミンジペプチドである。1つの実施形態において、ステップ(c)のL-グルタミンサプリメントを含む基本培地は、GlutaMAX(商標)を補充した10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である。
【0024】
また別の態様において、この方法は、ステップ(c)の後、iMSCにより生成される細胞外小胞を培養物から単離することを含む。追加または代替として、iMSC前駆細胞により生成される細胞外小胞をステップ(b)の後に単離してもよい。
【0025】
また別の態様において、本開示は、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を得るための2段階培養基であって、(i)WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む第1段階培地、及び(ii)PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む第2段階培地を含む、2段階培養基に関する。好適なWNT経路アゴニスト、BET経路アンタゴニスト、PDGF経路アゴニスト、IGF1経路アゴニスト、及びFGF-ベータ経路アゴニスト、ならびにこれらの濃度については、上記及び本明細書でさらに説明する。
【0026】
本発明における他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本開示の代表的な3段階iMSC分化プロトコルの模式図である。
【
図2】iMSC分化プロトコル中の細胞の形態を示す写真である。A(左右のパネル)は中胚葉期の細胞を示している。Bは、低密度(10倍)(左パネル)または高密度(5倍)(右パネル)における間葉期の細胞を示している。
【
図3】陽性MSCマーカー(A)及び陰性MSCマーカー(B)のFACS分析の結果を示すグラフである。試験したマーカーはグラフの上に示されている。陰性カクテルには抗CD11b、抗CD19、抗CD34、抗CD45、抗HLA-DRの各抗体が含まれていた。
【
図4】脂肪細胞(A)、骨細胞(B)、または軟骨細胞(C)に分化した後のiMSCの形態を示す写真である。
【
図5】免疫刺激物質(ds-RNAまたはIFNr)で処理することによりiMSCの免疫調節遺伝子の発現が増加することを示す棒グラフである。
【
図6】hPBMCのみ(左パネル)、hPBMC+不活性化iMSC(中パネル)、またはhPBMC+活性化MSC(右パネル)を用いた混合リンパ球反応の結果を示すグラフである。結果は、hPBMCの増殖を示している。
【
図7】低用量または高用量のIFNrで処理したiMSCによるIL-10分泌についてのELISA試験結果を示す棒グラフである。
【
図8】テトラスパニンタンパク質を標的としてiMSCによる細胞外小胞産生を定量化したFACSベース分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書では、まずiMSC前駆細胞を生成し、次いで成熟iMSCにさらに分化させることができるマルチステッププロトコルを用いて、規定された培養条件下でヒト誘導性間葉系幹細胞(iMSC)を生成することを可能にする、方法論及び組成物について説明する。実施例1で説明するように、ヒト多能性幹細胞(例えば、ヒト胚性幹細胞)からiMSCを生成するための3ステッププロトコル(
図1で模式的に示す)を開発した。実施例2で説明するように、iMSCは間葉系表面マーカーを発現し、多能性マーカー及び造血マーカーの発現が欠如している。実施例3で説明するように、iMSCは、適切な細胞特異的分化条件下で培養すると三系列分化が可能であり、脂肪細胞、骨細胞、または軟骨細胞に成熟する。実施例4で説明するように、iMSCは、免疫調節能力(免疫刺激物質で処理したときの免疫調節遺伝子の上方調節、混合リンパ球反応の調節能力、及びインターフェロン-ガンマ(IFNr)で刺激したときの抗炎症因子の分泌能力を含む)を示す。さらに、実施例5で説明するように、本明細書に記載のiMSC及びその前駆細胞は、細胞培養物から採取することができる細胞外小胞(EV)(例えば、エクソソーム)の供給源である。
【0029】
本発明の様々な態様については、以下のサブセクションでさらに詳細に説明する。
【0030】
I.細胞
本開示の培養で使用される出発細胞はヒト多能性幹細胞である。本明細書で使用する場合、「ヒト多能性幹細胞」(hPSCと略記)という用語は、様々な異なる細胞タイプに分化する能力を有するヒト幹細胞を指す。本明細書で使用する場合、「多能性」という用語は、異なる条件下で、3胚葉全て(内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)に特徴的な細胞タイプに分化する能力を有する細胞を指す。多能性細胞は、例えば、ヌードマウス及び奇形腫形成アッセイを用いて、3胚葉の全てに分化する能力によって主に特徴付けられる。多能性は、胚性幹細胞(ES細胞)マーカーの発現により証明することもできるものの、好ましい多能性の試験は、3胚葉の各細胞に分化する能力を実証することである。
【0031】
ヒト多能性幹細胞としては、例えば、ヒト胚性幹細胞(例えば、ES細胞株)及び誘導性多能性幹細胞(iPSC)が挙げられる。ヒト胚性幹細胞株の非限定的な例としては、ES03細胞(WiCell Research Institute)及びH9細胞(Thomson,J.A.et al.(1998)Science 282:1145-1147)、ならびに低免疫性胚性幹細胞(hESC SKO-CIITA、SKO-B2M、またはDKOを含む)(Petrus-Reurer et al.(2020)Stem Cell Reports 14:648-662)が挙げられる。誘導性多能性幹細胞(iPSC)の非限定的な例としては、19-11-1、19-9-7、または6-9-9細胞(例えば、Yu,J.et al.(2009)Science 324:797-801に記載)、Foreskin(クローン1からクローン4)、及びIMR90(クローン1からクローン4)(Yu et al.(2007)Science 318:1917-20)が挙げられる。ヒト多能性幹細胞(PSC)は、PSCとして細胞を識別するために使用することができる細胞マーカーを発現する。多能性幹細胞マーカーの非限定的な例としては、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-54、SSEA1、SSEA3、SSEA4、CD9、CD24、OCT3、OCT4、NANOG、及び/またはSOX2が挙げられる。諸実施形態において、本開示の方法により生成される成熟iMSCは、多能性幹細胞マーカーTRA-1-60の発現が欠如している。
【0032】
多能性幹細胞は、本明細書に記載のように、細胞分化を誘導する培養条件に供される。本明細書で使用する場合、「分化」という用語は、より原始的な段階からより成熟した(すなわち、より原始的でない)細胞に細胞が発達することを指し、典型的には、特定の細胞系列へのコミットメントの表現型特徴を示す。本明細書に記載のiMSC分化方法では、最初にiMSCの前駆細胞を生成し、次に成熟iMSCにさらに分化させる。
【0033】
実施例2に記載しているように、分化の方法により生成される成熟iMSCは、間葉系表面マーカー(例えば、CD73、CD90、CD105、CD29、及び/またはCD44)を発現する。諸実施形態において、iMSCは、CD73、CD90、CD105、CD29、CD44、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の間葉系表面マーカーを発現する。諸実施形態において、iMSCの集団において、生細胞の少なくとも90%(または少なくとも95%、または少なくとも98%、または少なくとも99%)が、CD73、CD90、CD105、CD29、CD44、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の間葉系表面マーカーを発現する。
【0034】
また、実施例2に記載しているように、分化法により生成される成熟iMSCは、少なくとも1つの多能性幹細胞マーカー(例えば、TRA-1-60)及び/または少なくとも1つの造血細胞マーカー(例えば、CD34、CD45、及び/またはHLA-DR)の発現が欠如している。諸実施形態において、成熟iMSCは、TRA-1-60、CD11b、CD19、CD34、CD45、HLA-DR、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のマーカーの発現が欠如している。諸実施形態において、iMSCの集団において、生細胞の5%未満(または3%未満、または2%未満、または1%未満)が、TRA-1-60、CD11b、CD19、CD34、CD45、HLA-DR、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の表面マーカーを発現する。
【0035】
II.培養基の成分
ヒト誘導性間葉系幹細胞を生成するための本開示の方法は、ヒト多能性幹細胞(例えば、ヒトESC)を、細胞受容体及び/またはシグナル伝達経路の特異的アゴニスト及び/またはアンタゴニストを含む培養基中で培養することを含む。
【0036】
マルチステッププロトコル(
図1で模式的に示す)における第1のステップ(本明細書ではステップ(a)と称される)では、ヒト多能性幹細胞を少なくとも2日間、または少なくとも3日間、または4日間(0日目~4日目)、WNT経路アゴニストとBET経路アンタゴニストとを含む誘導培地中で培養する。第2ステップ(本明細書ではステップ(b)と称される)では、ステップ(a)からの誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む強化培地中で少なくとも10日間(または少なくとも11、12、13、もしくは14日間)、例えば、(4日間の誘導ステップの後に)4日目から14日目までさらに培養して、iMSC前駆細胞を生成する。最後に、第3ステップ(本明細書ではステップ(c)と称される)では、ステップ(b)からのiMSC前駆細胞を、L-グルタミンサプリメントを含む維持培地中でさらに少なくとも7日間以上培養して、成熟iMSCを生成する。
【0037】
本明細書で使用する場合、細胞受容体またはシグナル伝達経路の「アゴニスト」とは、細胞受容体またはシグナル伝達経路を刺激(上方調節)する薬剤を指す。細胞シグナル伝達経路の刺激は、例えば、シグナル伝達経路に関与する細胞表面受容体を活性化するアゴニスト(例えば、アゴニストは受容体リガンドであり得る)を使用することにより、細胞外で開始することができる。追加または代替として、細胞内シグナル伝達の刺激は、例えば、シグナル伝達経路の成分(複数可)と細胞内で相互作用する低分子アゴニストを使用することにより、細胞内で開始することができる。
【0038】
本明細書で使用する場合、細胞シグナル伝達経路の「アンタゴニスト」は、細胞シグナル伝達経路を阻害(下方調節)する薬剤を指すことが意図されている。細胞内シグナル伝達経路の阻害は、例えば、シグナル伝達経路に関与する細胞表面受容体を遮断するアンタゴニストを使用することにより、細胞外で開始することができる。追加または代替として、細胞内シグナル伝達の阻害は、例えば、シグナル伝達経路の成分(複数可)と細胞内で相互作用する低分子アンタゴニストを使用することにより、細胞内で開始することができる。
【0039】
WNT経路のアゴニストとしては、カノニカルWnt/β-カテニンシグナル伝達経路を刺激(上方調節)可能な薬剤、分子、化合物、または物質が挙げられる。この経路は、Wntタンパク質リガンドがFrizzledファミリー受容体に結合することにより生物学的に活性化される。1つの実施形態において、WNT経路アゴニストはグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3)阻害剤(例えば、CHIR98014)である。1つの実施形態において、WNT経路アゴニストは、CHIR98014、CHIR99021、SB 216763、SB 415286、LY2090314、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、AZD1080、WNT3A、及びこれらの組合せからなる群より選択される。1つの実施形態において、WNT経路アゴニストは、0.25~0.75μM、0.3~0.7μM、0.4~0.6μM、または0.45~0.55μMの範囲内の濃度で培養基中に存在する。1つの実施形態において、WNT経路アゴニストは、0.5μMの濃度で培養基中に存在する。1つの実施形態において、WNT経路アゴニストはCHIR98014である。1つの実施形態において、WNT経路アゴニストはCHIR98014であり、これは、0.25~0.75μM、0.3~0.7μM、0.4~0.6μM、または0.45~0.55μMの範囲内の濃度で培養基中に存在する。1つの実施形態において、WNT経路アゴニストはCHIR98014であり、これは培養基中に0.5μMの濃度で存在する。
【0040】
BET経路のアンタゴニストとしては、ブロモドメイン(複数可)を含むBETタンパク質(「ブロモドメイン及び末端外モチーフ」タンパク質)を阻害(下方調節)可能な薬剤、分子、化合物、または物質が挙げられる。ブロモドメインは、e-N-アセチル化リジン残基(Kac)を選択的に認識するタンパク質相互作用モジュールである。ヒトBETファミリー(BRD2、BRD3、BRD4、及びBRDT)は、いずれも標的ごとに2つの保存されたブロモドメインを含み、成長刺激遺伝子の転写を制御する重要な役割を担っている。
【0041】
1つの実施形態において、BET経路アンタゴニストはトリアゾロ-ジアゼピン化合物であり、その非限定的な例としては、(+)-JQ1(例えば、Filippakopoulos et al.(2010)Nature 468:1067-1073に記載)、TEN-010(例えば、Finley and Copeland(2014)Chem.Biol.21:1196-1210に記載)、OTX015(例えば、Seal et al.(2012)Bioorg.Med.Chem.Lett.22:2968-2972に記載)、及び構造的に関連する化合物が挙げられる。1つの実施形態において、トリアゾロ-ジアゼピン化合物は(+)-JQ1(Sigma Aldrich;カタログ番号SML1524)である。他にも様々なBET経路アンタゴニストが記載されている(例えば、Cochran et al.(2019)Nat.Rev.Drug Disc.18:609-628;及びZaware et al.(2019)Nat.Struct.Mol.Biol.26:870-879で概説されている)。諸実施形態において、BET経路アンタゴニストは、(+)-JQ1、TEN-010、OTX015、I-BET762、I-BET151、BAY1238097、ABBV-744、ABBV-075、iBET-BD1、iBET-BD2、SJ432、RVX-208、MS417、AZD5153、及びこれらの組合せからなる群より選択される。諸実施形態において、BET経路アンタゴニストは、25~75nM、30~70nM、40~60nM、または45~55nMの範囲内の濃度で培養基中に存在する。1つの実施形態において、BET経路アンタゴニストは、培養基中に50nMの濃度で存在する。諸実施形態において、BET経路アンタゴニストは(+)-JQ1であり、これは25~75nM、30~70nM、40~60nM、または45~55nMの範囲内の濃度で培養基中に存在する。1つの実施形態において、BET経路アンタゴニストは50nMの濃度の(+)-JQ1である。
【0042】
PDGF(血小板由来成長因子)経路のアゴニストとしては、PDGF(例えば、PDGF-AA、PDGF-AB、またはPDGF-BB)とその受容体との結合により開始されるシグナル伝達経路を刺激(上方調節)可能な薬剤、分子、化合物、または物質が挙げられる。1つの実施形態において、PDGF経路アゴニストはPDGF-BB(例えば、R&D Systems;カタログ番号220-BB)である。1つの実施形態において、PDGFアゴニストは740Y-P(Tocris;カタログ番号1983)である。1つの実施形態において、PDGF経路アゴニストはPDGF-BBであり、これは培養基中に7.5~12.5ng/ml、8.0~12.0ng/ml、9.0~11.0ng/ml、9.5~10.5ng/ml、または10ng/mlの範囲内の濃度で存在する。
【0043】
IGF1(インスリン様成長因子1)経路のアゴニストとしては、IGF1とその受容体との結合により開始されるシグナル伝達経路を刺激(上方調節)可能な薬剤、分子、化合物、または物質が挙げられる。1つの実施形態において、IGF1経路アゴニストはIGF1(例えば、R&D Systems;カタログ番号291-G1)である。IGF1経路アゴニストの他の例としては、アゴニストペプチド(例えば、IGF1 30-41ペプチド及びIGF1 24-41ペプチド)が挙げられる。1つの実施形態において、IGF1経路アゴニストはIGF1であり、これは培養基中に15~25ng/ml、16.5~23.5ng/ml、17.5~22.0ng/ml、19.0~21.0ng/ml、または20ng/mlの範囲内の濃度で存在する。
【0044】
FGF-ベータ(線維芽細胞成長因子-ベータ)経路のアゴニストとしては、FGF-ベータとその受容体との結合により開始されるシグナル伝達経路を刺激(上方調節)可能な薬剤、分子、化合物、または物質が挙げられる。1つの実施形態において、FGF-ベータ経路アゴニストはFGF-ベータ(例えば、R&D Systems;カタログ番号3718-FB)である。1つの実施形態において、FGF-ベータ経路アゴニストはFGF-ベータであり、これは培養基中に7.5~12.5ng/ml、8.0~12.0ng/ml、9.0~11.0ng/ml、9.5~10.5ng/mlまたは10ng/mlの範囲内の濃度で存在する。
【0045】
諸実施形態において、iMSC分化プロトコルのステップ(a)及びステップ(b)の培養基は、基本培地を含む。1つの実施形態において、基本培地はDMEM/F12培地であるが、DMEM/F12に類似する成分から構成された他の培地も基本培地としての使用に適している。諸実施形態において、基本培地は血清を含む。諸実施形態において、血清は、ウシ胎児血清及びヒト血清から選択される。1つの実施形態において、基本培地(ステップ(a)、ステップ(b)、またはステップ(a)及び(b)の両方の基本培地)は、10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である。
【0046】
分化プロトコルのステップ(a)及び(b)により生成されるiMSC前駆細胞を、さらに第3ステップ(本明細書ではステップ(c)と称される)で培養して成熟iMSCを生成する。このステップは、ステップ(b)からのヒト間葉系幹細胞前駆細胞を、基本培地と、L-グルタミンサプリメントとを含む培養基中で少なくとも7日間培養して、iMSCを生成することとを含む。諸実施形態において、前駆細胞を、少なくとも14日間、少なくとも21日間、少なくとも28日間、少なくとも1か月間、または少なくとも2か月間培養してiMSCを生成する。
【0047】
諸実施形態において、L-グルタミンサプリメントはL-アラニン-L-グルタミンジペプチドである。1つの実施形態において、L-アラニン-L-グルタミンジペプチドは、GlutaMAX(商標)(例えば、Thermo Fisher;カタログ番号35050-061)である。1つの実施形態において、L-グルタミンサプリメントはL-グルタミン(例えば、Thermo Fisher;カタログ番号25030081)である。
【0048】
1つの実施形態において、基本培地はDMEM/F12培地であるが、DMEM/F12に類似する成分から構成された他の培地も基本培地としての使用に適している。諸実施形態において、基本培地は血清を含む。諸実施形態において、血清は、ウシ胎児血清及びヒト血清から選択される。1つの実施形態において、ステップ(c)の基本培地は、10~15%ウシ胎児血清(例えば、10%FBS)を含むDMEM/F12培地である。1つの実施形態において、ステップ(c)で使用される培養基は、GlutaMAX(商標)を補充した10~15%ウシ胎児血清(例えば、10%FBS)を含むDMEM/F12培地を含む。
【0049】
III.培養条件
上記のサブセクションIIに記載している規定された培養基と組み合わせて、本開示のiMSCを生成する方法は、細胞培養における当技術分野で確立された標準的な培養条件を利用する。例えば、細胞は、37℃ならびに20% O2及び5% CO2の条件下で培養することができる。基本培地を出発培地として使用し、これに補充剤を加えることができる。例えば、1つの実施形態において、L-グルタミンを含む市販のDMEM/F12培地(Thermo Fisher;カタログ番号11320033)を基本培地として使用することができる。代替手段として、L-グルタミンを含まないDMEM/F12培地(Thermo Fisher;カタログ番号21331046)を基本培地として使用し、L-グルタミンまたは安定化形態のグルタミンサプリメント(例えば、GlutaMAX(商標))で補充してもよい。同様の基本培地の他の例としては、Advanced DMEM/F12培地(Thermo Fisher;カタログ番号12364-010)、HPLM培地(Thermo Fisher;カタログ番号A4899101)、及びaMEM培地(Thermo Fisher;カタログ番号22571020)が挙げられる。
【0050】
ヒト多能性幹細胞の培養のための基本培地として使用するのに適した当技術分野で知られている他の培地としては、限定されるものではないが、mTeSR1(STEMCELL Technologies)、Essential 8(商標)Medium(Thermo Fisher)、PeproGrow(商標)hESC Basal Media(PeproTech)、及びStemFlex Medium(Thermo Fisher)が挙げられる。細胞は、標準的な培養容器またはプレート(例えば、培養皿、培養フラスコ、または96ウェルプレート)で培養することができる。出発ヒト多能性細胞は、当技術分野で確立された細胞株(例えば、ヒトESCまたはiPSC)として得ることができる。
【0051】
本開示の方法の様々な実施形態において、実施例1に記載の3ステッププロトコルから得られる細胞は、細胞集団内の細胞の少なくとも90%(より好ましくは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)が、少なくとも1つの、好ましくは複数の(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つ)の間葉系細胞表面マーカーを発現するように、十分な時間の間培養される。間葉系細胞表面マーカーの非限定的な例としては、CD73、CD90、CD105、CD29、CD44、及びこれらの組合せが挙げられる。諸実施形態において、実施例1に記載の3ステッププロトコルから得られる細胞は、細胞集団内の細胞の5%未満(より好ましくは、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、または0.5%未満)が、TRA-1-60、CD34、CD45、HLA-DR、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のマーカーを発現するように、十分な時間の間培養される。
【0052】
諸実施形態において、実施例1に記載のプロトコルにより生成されるiMSCは、免疫調節効果のためにさらに処理され得る(実施例4を参照)。例えば、iMSCの免疫調節遺伝子を上方調節するために、細胞は、免疫刺激物質(例えば、二重鎖RNA(ds-RNA)またはインターフェロン-ガンマ(IFN-r))で処理され得る。iMSCは、IFN-rで処理することにより、抗炎症因子(例えば、インターロイキン-10(IL-10))を分泌するように刺激することができる。
【0053】
諸実施形態において、実施例1に記載のプロトコルにより生成されるiMSCは、特定の細胞タイプ(限定されるものではないが、脂肪細胞、骨細胞、または軟骨細胞を含む)を生成する条件下で、さらなる分化に供することができる。このような細胞をiMSCから生成するための条件は、当技術分野で十分に確立されている(例えば、実施例3を参照)。
【0054】
IV.用途
ヒト誘導性間葉系幹細胞及びその前駆細胞を生成するための本開示の方法及び組成物は、これらの細胞集団を様々な用途で効率的かつロバストに利用することを可能にする。例えば、本方法及び組成物を用いて生成されるiMSCは、様々な他の細胞タイプへの分化を含めて、ヒト間葉系細胞の発生及び分化の研究に使用することができる。したがって、本開示の方法により生成されるiMSCは、研究目的及び臨床用のいずれにも用途を有する、さらに分化した様々な細胞タイプを生成するための幹細胞の供給源としての役割も果たす。
【0055】
本開示の方法により生成されるiMSCは、in vitroで培養することができ、他の薬剤を得るための供給源(例えば、iMSCにより分泌され得る免疫調節剤(例えば、IL-10)の供給源、またはiMSCにより生成される細胞外小胞(EV)(例えば、エクソソーム)の供給源)として使用することができる。このような薬剤は、当技術分野で知られている標準的な方法により、iMSCから、または細胞が成長する培養基から精製することができる。
【0056】
さらに、本開示の方法により生成されるiMSCは、治療目的で、例えば、他の方法により誘導される間葉系幹細胞が使用されている臨床的状況、または使用のための検討もしくは試験が行われている臨床的状況で、使用することができる。治療目的に使用されるiMSCは、未修飾細胞である場合も、(例えば、治療薬剤(例えば、組換え分泌タンパク質またはmRNA薬剤)を発現するように)修飾された細胞である場合もある。間葉系幹細胞が使用され、現在も試験が継続されている非限定的な臨床状況の例としては、心臓損傷(例えば、虚血性心筋症)及び自己免疫疾患(例えば、クローン病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症)が挙げられる。
【0057】
V.組成物
他の態様において、本開示は、ヒト誘導性間葉系幹細胞の生成方法に関連する組成物であって、培養基とキットとを含む組成物を提供する。
【0058】
1つの態様において、本開示は、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を得るための2段階培養基であって、(i)WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む第1段階培地、及び(ii)PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む第2段階培地を含む、2段階培養基を提供する。好適な薬剤及びその濃度の非限定的な例としては、上記のサブセクションIIに記載されているものが挙げられる。1つの実施形態において、第1段階培地は、CHIR98014(例えば、0.5uM)と、(+)-JQ1(例えば、50nM)とを含み、第2段階培地は、PDGF-BB(例えば、10ng/ml)と、IGF1(例えば、20ng/ml)と、FGF-ベータ(例えば、10ng/ml)とを含む。第1段階培地及び第2段階培地は、上記のセクションII及びIIIに記載されているような基本培地(例えば、10%FBSを含むDMEM/F12)を含むことができる。
【0059】
別の態様において、本開示は、ヒト誘導性間葉系幹細胞を生成するためのキットであって、上述の2段階培養基と、ヒト多能性幹細胞(例えば、hESC株またはiPSC株)の試料とを、(例えば、本明細書に記載のプロトコルに従って)2段階培養基を用いてヒト多能性幹細胞を培養して、iMSCを生成するための説明書とともに含む、キットを提供する。
【0060】
本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これらはさらなる限定として解釈されるべきではない。本出願全体で引用された図ならびに全ての参考文献、特許、及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
【実施例】
【0061】
実施例1:誘導性間葉系幹細胞を生成するための培養プロトコル
ヒト胚性幹細胞(hESC)から誘導性間葉系幹細胞(iMSC)を生成するための3段階プロトコルを開発した。プロトコルを
図1で模式的に示す。このプロトコルは、最初に誘導培地を用いた4日間の誘導段階、次に強化培地を用いた10日間の強化段階を伴う。これら最初の2段階により、成熟したiMSCにさらに分化可能なヒトiMSC前駆細胞の培養物がもたらされる。第3段階は、維持培地中でさらなる期間(例えば、少なくとも1~2週間)培養することにより、iMSC前駆細胞を成熟iMSCにさらに分化させることを伴う。
【0062】
iMSCプロトコルの開始前に培養下でhESCを維持するため、hESCを、1%マトリゲル(Corning;カタログ番号354277)でコーティングした6ウェルプレートにおいて、mTeSR1培養基(STEMCELL Technologies;カタログ番号85850)中で成長させた。培養基を毎日新たに交換した。細胞が80~90%のコンフルエントに達したら培養基を吸引し、1mL/ウェルのVersene(Thermo Fisher;カタログ番号15040066)を加えた。培養プレートを37℃で6~7分間インキュベートし、Verseneを静かに吸引し、mTeSR1培地(5uMのY-27632(Tocris;カタログ番号1254)を補充)に細胞を再懸濁した。細胞をカウントし、新たなプレートに100k/ウェル生細胞で播種した。細胞を、iMSCプロトコルで使用するまでmTeSR1培地中で維持し、培養基は毎日交換した。
【0063】
第1段階の導入プロトコル
iMSCプロトコルの第1段階において、1日目(分化プロトコル開始の前日)に、60~100k/ウェルの生hESCを、1% Geltrex(Thermo Fisher;カタログ番号1413301)でコーティングした6ウェルプレート(2mL/ウェルのmTeSR1培養基(5μMのY-27632を補充)使用)に播種した(およそ8000細胞/cm2)。この継代を継代0(P0)と表示した。次いで0日目(分化の開始日)に、培地を2mL/ウェルの誘導培地に交換した。誘導培地のレシピは以下の通り:DMEM/F12(Thermo Fisher;カタログ番号11320033)+10%ウシ胎児血清(FBS;Thermo Fisher;カタログ番号10082147)に50nM(+)-JQ1(Sigma Aldrich;カタログ番号SML1524)及び0.5μM Chir98014(Tocris;カタログ番号6695)を補充。(+)-JQ1は、BET(ブロモドメイン及び末端外モチーフ)ファミリーの阻害剤(アンタゴニスト)である。Chir98014は、(GSK阻害を通じた)WNT経路の活性化物質(アゴニスト)である。細胞を誘導培地中で2日間(0日目から2日目)維持し、次に培養基を交換し、新鮮な誘導培地中でさらに2日間(2日目から4日目)培養し、合計4日間、第1段階における誘導培地中での培養を行った。
【0064】
第2段階の強化プロトコル
4日目に、培養物から誘導培地を吸引し、2mL/ウェルの強化培地を加えた。強化培地のレシピは以下の通り:DMEM/F12培地+10% FBSに10ng/mLのPDGF-BB(R&D Systems;カタログ番号220-BB)、20ng/mLのIGF1(R&D Systems;カタログ番号291-G1)、及び10ng/mLのFGF-ベータ(R&D Systems;カタログ番号3718-FB)を補充。細胞を強化培地中で4日目から14日目まで維持し、培地は2日ごとに交換した。
【0065】
細胞が強化培地中で90%コンフルエントに達したら(典型的には6日目から8日目の間(最初の播種密度による))、細胞をP1に継代した。継代のために強化培地を吸引し、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄した。細胞を1mL/ウェルのアキュターゼ(Thermo Fisher;カタログ番号A1110501)で処理し、37℃のインキュベーターで5~6分間インキュベートした。10% FBSを含むDMEM/F12培地を加えて細胞の分離を停止させた。細胞を浮遊させ、遠心管に移し、300gで3分間スピンダウンした。遠心分離後、上清を廃棄し、細胞ペレットを、5uMのY-27632を補充した強化培地に再浮遊させた。細胞を約150k/ウェル生細胞で、1% Geltrexでコーティングした新たな6ウェルプレートに播種した(およそ15,000細胞/cm2)。細胞を強化培地中で14日目まで維持し、2日ごとに新しい培地に交換した。細胞が14日目より前に再び90%コンフルエントに達したら、細胞を上記のように強化培地中で再び継代した。
【0066】
第3段階の維持プロトコル
14日目に培養基を維持培地に交換し、次いで4日ごとに交換した。維持培地のレシピは以下の通り:DMEM/F12+10% FBSに2mM GlutaMax(Thermo Fisher;カタログ番号35050-061)を補充。細胞が90%コンフルエントに達したら、細胞を継代した。
【0067】
細胞が強化段階(すなわち、14日目より前)にP2に継代しなかった場合、以下のように維持培地を用いて14日目にP2継代を行った。細胞培養基を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄した。アキュターゼ(1mL/ウェル)を加え、細胞を37℃のインキュベーターで5~6分間インキュベートした。DMEM/F12+10% FBSを加えて分離を停止させ、浮遊細胞を遠心管に移した。細胞を300gで3分間遠心分離し、上清を廃棄し、細胞ペレットを、5μMのY-27632を補充した維持培地に再浮遊させた。細胞を、ウェルから0.1%ゼラチン(Millipore;カタログ番号ES-006)でコーティングした10cmのディッシュに移した(およそ10,000細胞/cm2)。さらなる培地を加えて、総体積が8~10mL/ディッシュに達するようにした。
【0068】
次いで細胞を維持培地(4日ごとに交換)中で維持し、細胞密度が90%コンフルエントに達するたびに、以下のようにして細胞を次の継代に分割した。細胞培養基を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄した。TrypLE Select(5mL/ディッシュ)を加え、細胞を37℃のインキュベーターで8~10分間インキュベートした。DMEM/F12+10% FBSを加えて分離を停止させ、浮遊細胞を遠心管に移した。細胞を300gで3分間遠心分離し、上清を廃棄し、細胞ペレットを、5μMのY-27632を補充した維持培地に再浮遊させた。細胞を300k/ディッシュの生細胞で、0.1%ゼラチンでコーティングした10cmのディッシュに播種した(およそ5,000細胞/cm2)。さらなる培地を加えて、総体積が8~10mL/ディッシュに達するようにした。間葉系幹細胞様細胞が培養21日目から出現を開始した。
【0069】
細胞形態を、分化プロトコルの異なる段階で顕微鏡的に調べた。結果を
図2A~Bに示す。4日目から14日目までの細胞は中胚葉期であった。その代表例を
図2A(左右のパネル)に示す。この段階の細胞は、比較的大きな核を有する初期の中胚葉様形態を示し、一部の細胞はフィロポディアを有した。21日目以降、細胞は、
図2B(左パネル)(低密度10倍)に示すように、間葉系/線維芽細胞様形態を獲得し始めた。高密度では、細胞は紡錘様の形状となり、
図2B(右パネル)(高密度5倍)に示すように、波状パターンを観察することができた。
【0070】
誘導性MSCは少なくとも3か月間、培養下で一定の増殖率を維持した。細胞を拡大して、検証試験(下記でさらに説明する)に用いた。
【0071】
実施例2:誘導性間葉系幹細胞の表面マーカー発現
誘導性間葉系幹細胞(iMSC)の表面マーカー発現を標準的なFACS分析によって調べた。調べたMSCの陽性マーカーはCD73、CD90、CD105、CD29、及びCD44であった。
図3Aに示すように、実施例1に記載の分化プロトコルにより生成したiMSCは、これらの間葉系マーカーの各々の表面発現を示した。調べた陰性マーカーにはTRA-1-60、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA-DRが含まれた。
図3Bに示すように、iMSCは、試験した陰性マーカーのいずれも発現しなかった(「陰性カクテル」は、抗CD11b、抗CD19、抗CD34、抗CD45、及び抗HLA-DR抗体を含む)。
【0072】
実施例3:誘導性間葉系幹細胞の三系列分化
実施例1に記載のプロトコルに従って生成したiMSCの分化能力を調べるため、脂肪細胞、骨細胞、または軟骨細胞の分化プロトコルを用いて、細胞をさらに処理した。
【0073】
脂肪形成については、Adipogenesis Differentiation Kit(Thermo Fisher;カタログ番号A1007001)をメーカーの指示に従って用いてiMSCを培養した。脂肪細胞分化から21日後、脂肪細胞内の脂質粒子を赤色に染色するOil Red solution(Sigma Aldrich;カタログ番号O1391)により細胞を染色した。結果を
図4Aに示す。この図は、iMSCが脂肪細胞に分化する能力を示している。
【0074】
骨形成については、Osteogenesis Differentiation Kit(Thermo Fisher;カタログ番号A1007201)をメーカーの指示に従って用いてiMSCを培養した。骨細胞分化から14日後、骨細胞を赤色に染色するAlizarin Red solution(Sigma Aldrich;カタログ番号TMS-008-C)により細胞を染色した。結果を
図4Bに示す。この図は、iMSCが骨細胞に分化する能力を示している。
【0075】
軟骨形成については、Chondrogenesis Differenciation Kit(Thermo Fisher;カタログ番号A1007101)をメーカーの指示に従って用いてiMSCを培養した。軟骨細胞分化から14日後、軟骨細胞を青色に染色するAlcian Blue solution(Sigma Aldrich;カタログ番号B8438)により細胞を染色した。結果を
図4Cに示す。この図は、iMSCが軟骨細胞に分化する能力を示している。
【0076】
全体として、
図4A~Cの結果は、iMSCの三系列分化における能力を実証するものである。
【0077】
実施例4:誘導性間葉系幹細胞の免疫調節
この実施例では、様々な試験を行って、実施例1に記載の分化プロトコルに従って生成したiMSCの免疫調節能力を調べた。
【0078】
第1の試験セットでは、iMSCを免疫刺激物質(二重鎖RNA(dsRNA)または組換えヒトインターフェロンガンマ(IFNr)(R&E Systems;カタログ番号35-IF-100))で処理した。iMSC(100k細胞/試料)をdsRNA(500ng/試料)またはIFNr(10ng/ml)とともに24時間培養した。処理後、iMSCの免疫調節能力を、試験した免疫刺激物質により上方調節される可能性があるマーカー遺伝子の定量的リアルタイムPCRによって分析した。調べた免疫刺激マーカー遺伝子は以下の通り:RIG1、TLR3、COX2、IDO1、HGF、及びTGF-ベータ。対照遺伝子(MSC表面マーカー用)は以下の通り:CD73、CD90、及びCD105。結果を
図5に示す。この結果から、iMSCを免疫刺激物質で処理すると、免疫刺激に関連する複数の遺伝子(特にIDO1、TLR3、及びHGF)の発現が増加し、一方対照マーカー遺伝子は上方調節されなかった。
【0079】
第2の実験セットでは、iMSCを混合リンパ球反応(MLR)で使用した。ヒト末梢血単核球(hPBMC)(Lonza;カタログ番号cc-2702)をCellTrack Violet(Thermo Fisher;カタログ番号C34557)で標識して、細胞増殖を示した。iMSC(24ウェルプレートの50k細胞/ウェル;およそ25,000細胞/cm
2を)10ng/mlのIFNrで3日間前処理した。これを「活性化iMSC」と称し、これに対しIFNrによる前処理なしのiMSCを「不活性化iMSC」と称する。MLRのために、iMSCの上にhPBMCを加え、組換えヒトIL-2(R&D Systems;カタログ番号202-IL)及び抗CD3(eBioscience;カタログ番号16-0037-81)を補充した共培養基中で3日間共培養して、T細胞の増殖を促進した。3日後、hPBMCを回収し、フローサイトメトリーにより分析した。
図6に示すように、5つのピークが「hPBMCのみ」群で観察された。これは、細胞が4回増殖したことを示している。「+不活性化iMSC」群ではピークが区別不可能であった。このことから、不活性化iMSCとの共培養によりhPBMCの増殖が妨害されたことが示唆される。「+活性化iMSC」群における単一の優勢なピークは、細胞増殖が1回のみ起こり、次いで活性化iMSCとの共培養中に増殖が停止したことを示している。
【0080】
第3の実験セットでは、IFNr処理後のiMSCによる抗炎症因子IL-10の産生量を調べた。iMSC(24ウェルプレートの50k細胞/ウェル;およそ25,000細胞/cm
2)を低濃度(20ng/mL)または高濃度(50ng/mL)のIFNrで3日間処理して、IL-10の分泌を刺激した。対照群は同じ培養条件であったが、IFNr処理は行わなかった。3日後、培地上清を回収し、標準的なELISA分析(ヒトIL-10 Quantikine ELISA kit;R&D Systems;カタログ番号D1000B)によりIL-10分泌のレベルを定量化した。
図7に示すように、iMSCによるIL-10の分泌は、IFNr処理の濃度に対し用量依存的であった。
【0081】
実施例5:誘導性間葉系幹細胞による細胞外小胞の産生
この実施例では、iMSCによる細胞外小胞の産生を定量化した。細胞を最初にPBSで洗浄し、次いでエクソソーム枯渇FBSを含む維持培地(実施例1に記載)中で培養した。培養から4日後に培地を回収し、全体積を測定した。iMSCを培養小胞から分離し、細胞数をカウントした。小胞膜上のテトラスパニンタンパク質を標的とするFACSベース分析を用いて、細胞外小胞を定量化した。代表的な3つの試料の結果を
図8に示す(PBS及び培地のみの対照あり)。これは、iMSCによる細胞外小胞の産生を実証するものである。
【0082】
等価物
当業者は、本明細書に記載の特定の態様における多くの等価物を認識し、または単なる通例的実験を用いてこれらを確認することができる。このような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成する方法であって、
(a)ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む培養基中で少なくとも2日間培養して、誘導性細胞を生成することと、
(b)ステップ(a)からの前記誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で少なくとも10日間培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することとを含む、前記方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、前記ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む前記培養基中で0日目から4日目まで培養して、誘導性細胞を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの前記誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で4日目から14日目まで培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト多能性幹細胞がヒト胚性幹細胞である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記WNT経路アゴニストがグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3)阻害剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記WNT経路アゴニストがCHIR98014である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記WNT経路アゴニストが、CHIR98014、CHIR99021、SB 216763、SB 415286、LY2090314、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、AZD1080、WNT3A、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記WNT経路アゴニストが、0.25~0.75μMの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記WNT経路アゴニストが、0.5μMの濃度で前記培養基中に存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記WNT経路アゴニストが、0.5μMの濃度のCHIR98014である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記BET経路アンタゴニストがトリアゾロ-ジアゼピン化合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記トリアゾロ-ジアゼピン化合物が(+)-JQ1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記BET経路アンタゴニストが、(+)-JQ1、TEN-010、OTX015、I-BET762、I-BET151、BAY1238097、ABBV-744、ABBV-075、iBET-BD1、iBET-BD2、SJ432、RVX-208、MS417、AZD5153、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
BET経路アンタゴニストが、25~75nMの範囲内の濃度で培養基中に存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記BET経路アンタゴニストが、50nMの濃度の(+)-JQ1である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PDGF経路アゴニストがPDGF-BBである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
PDGF-BBが、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PDGF-BBが、10ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記IGF1経路アゴニストがIGF1である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
IGF1が、前記培養基中に15~25ng/mlの範囲内の濃度で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
IGF1が、20ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記FGF-ベータ経路アゴニストがFGF-ベータである、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
FGF-ベータが、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
FGF-ベータが、10ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(a)及びステップ(b)の前記培養基が、血清を含む基本培地を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
血清を含む前記基本培地が、10~15%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を少なくとも7日間、L-グルタミンサプリメントを含む基本培地を含む培養基中で培養することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記L-グルタミンサプリメントがL-アラニン-L-グルタミンジペプチドである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
L-グルタミンサプリメントを含む前記基本培地が、GlutaMAX(商標)を補充した10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ヒト誘導性間葉系幹細胞(iMSC)を生成する方法であって、
(a)ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む培養基中で少なくとも2日間培養して、誘導性細胞を生成することと、
(b)ステップ(a)からの前記誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で少なくとも10日間培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することと、
(c)ステップ(b)の前記ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を、基本培地と、L-グルタミンサプリメントとを含む培養基中で少なくとも7日間培養して、iMSCを生成することとを含む、前記方法。
【請求項31】
ステップ(a)が、前記ヒト多能性幹細胞を、WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む前記培養基中で0日目から4日目まで培養して、誘導性細胞を生成することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの前記誘導性細胞を、PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む培養基中で4日目から14日目まで培養して、ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を生成することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(c)が、前記ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を少なくとも14日間、前記基本培地及びL-グルタミンサプリメント中で培養することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト多能性幹細胞がヒト胚性幹細胞である、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記iMSCが、CD73、CD90、CD105、CD29、CD44、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の表面マーカーを発現する、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記iMSCが、脂肪細胞、骨細胞、または軟骨細胞へのさらなる分化が可能である、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記WNT経路アゴニストがグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3)阻害剤である、請求項30~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記WNT経路アゴニストがCHIR98014である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記WNT経路アゴニストが、CHIR98014、CHIR99021、SB 216763、SB 415286、LY2090314、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、AZD1080、WNT3A、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項30~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記WNT経路アゴニストが、0.25~0.75μMの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記WNT経路アゴニストが、0.5μMの濃度で前記培養基中に存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記WNT経路アゴニストが、0.5μMの濃度のCHIR98014である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記BET経路アンタゴニストがトリアゾロ-ジアゼピン化合物である、請求項30~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記トリアゾロ-ジアゼピン化合物が(+)-JQ1である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記BET経路アンタゴニストが、(+)-JQ1、TEN-010、OTX015、I-BET762、I-BET151、BAY1238097、ABBV-744、ABBV-075、iBET-BD1、iBET-BD2、SJ432、RVX-208、MS417、AZD5153、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項30~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記BET経路アンタゴニストが、25~75nMの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記BET経路アンタゴニストが、50nMの濃度の(+)-JQ1である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記PDGF経路アゴニストがPDGF-BBである、請求項30~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
PDGF-BBが、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
PDGF-BBが、10ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記IGF1経路アゴニストがIGF1である、請求項30~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
IGF1が、15~25ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
IGF1が、20ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記FGF-ベータ経路アゴニストがFGF-ベータである、請求項30~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
FGF-ベータが、7.5~12.5ng/mlの範囲内の濃度で前記培養基中に存在する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
FGF-ベータが、10ng/mlの濃度で前記培養基中に存在する、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
ステップ(a)、(b)、及び(c)の前記培養基が、血清を含む基本培地を含む、請求項30~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
血清を含む前記基本培地が、10~15%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記L-グルタミンサプリメントがL-アラニン-L-グルタミンジペプチドである、請求項30~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(c)のL-グルタミンサプリメントを含む前記基本培地が、GlutaMAX(商標)を補充した10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記iMSCにより生成される細胞外小胞を培養物から単離することをさらに含む、請求項30~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
ヒト間葉系幹細胞前駆細胞を得るための2段階培養基であって、前記2段階培養基が、(i)WNT経路アゴニストと、BET経路アンタゴニストとを含む第1段階培養基、及び(ii)PDGF経路アゴニストと、IGF1経路アゴニストと、FGF-ベータ経路アゴニストとを含む第2段階培養基を含む、前記2段階培養基。
【国際調査報告】