(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】トランスグルタミナーゼの阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 295/185 20060101AFI20250204BHJP
C07D 295/26 20060101ALI20250204BHJP
C07D 241/04 20060101ALI20250204BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20250204BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20250204BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20250204BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250204BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250204BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250204BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250204BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20250204BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 5/48 20060101ALI20250204BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20250204BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20250204BHJP
A61K 31/4995 20060101ALI20250204BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20250204BHJP
C07D 487/08 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C07D295/185
C07D295/26 CSP
C07D241/04
A61P43/00 111
A61P37/02
A61P29/00
A61P17/06
A61P7/02
A61P9/10
A61P35/00
A61P13/12
A61P9/00
A61P25/28
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/00
A61P5/48
A61P1/04
A61P11/00
A61P25/16
A61K31/4995
A61K31/495
C07D487/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542317
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 GB2023050055
(87)【国際公開番号】W WO2023135425
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524266607
【氏名又は名称】アストン ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】ASTON UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジュオ
(72)【発明者】
【氏名】ラズボーン ダニエル エル
(72)【発明者】
【氏名】アキル レハン
(72)【発明者】
【氏名】ラトクリフ アンドリュー ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC50
4C086CB11
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086ZA01
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA36
4C086ZA54
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC21
4C086ZC41
4C086ZC55
(57)【要約】
本発明は、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物に関し、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8a、R
8b、R
9、A及びLは、本明細書に定義される通りであり、前記化合物は、トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する疾患又は状態の治療において有用である。
【化1】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物であって、
【化1】
式中、
Aは、-C(O)-及び-S(O)
2-からなる群から選択され、
Lは、C
1~3アルキレン、4~6員シクロアルキレン、4~6員ヘテロシクロアルキレン、アリーレン及びヘテロアリーレンからなる群から選択され、
R
1は、ハロゲン、-C(O)OR
10、-C(O)N(R
11a)R
11b、-OR
12、-N(R
13a)R
13b、C
1~3アルキル及びフェニルからなる群から選択され、C
1~3アルキル及びフェニル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
R
2及びR
3は各々独立して、水素、ハロゲン、-N(R
13a)R
13b、及びC
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
R
4及びR
5は各々独立して、水素及びC
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、又は
R
4及びR
5は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5又は6員ヘテロシクロアルキルを形成し、
R
6、R
9、R
10、R
11a、R
11b、R
12、R
13a、及びR
13bは各々独立して、水素及びC
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
又は
R
11a及びR
11b、及び/又はR
13a及びR
13bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~6員ヘテロシクロアルキルを形成し、
R
7は、水素、ハロゲン、C
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子、-CH
2N(R
14)Ph及び-CH
2OCH
2Phによって置換され、
R
8a及びR
8bは各々独立して、水素、ハロゲン、メチル、及び重水素からなる群から選択され、
R
14は、水素及びC
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
Phは任意選択で、1つ以上のハロゲン原子又はC
1~3アルキル基によって置換されたフェニルであり、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換された
化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
R
1は、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、フェニル、-CF
3、-C(O)OCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OCH
3及び-OCH
2CH
3からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
2及びR
3は各々独立して、水素及びフッ素からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記-A-L-リンカーは、
【化2】
を表し、
式中、
【化3】
は、式Iの化合物との結合点を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
4及びR
5は各々独立して、水素、メチル及びエチルからなる群から選択され、又は
R
4及びR
5は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5-員ヘテロシクロアルキルを形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
6は、水素及びメチルからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R
7は、水素及びハロゲンからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R
7、R
8a、R
8b及びR
9は、各々水素である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R
1は、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、フェニル、-CF
3、-C(O)OCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OCH
3及び-OCH
2CH
3からなる群から選択され、
R
2は、フッ素であり、
R
3は、水素及びフッ素からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、
【化4】
【化5】
からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤を含む医薬製剤。
【請求項12】
医薬に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する疾患又は状態の治療又は予防における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項14】
トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する疾患又は状態の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1~10のいずれか一項に記載の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は請求項11に記載の医薬製剤の使用。
【請求項15】
トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する疾患又は状態を治療又は予防する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は請求項11に記載の医薬製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項16】
トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する前記疾患又は状態は、線維症、瘢痕、神経変性疾患、自己免疫疾患、血栓症、増殖性障害、AIDS、乾癬、炎症及び病理学的血管新生に関連する疾患又は状態からなる群から選択される、請求項13に記載の使用のための化合物、請求項14に記載の使用又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記疾患又は状態は、嚢胞性線維症、心線維症、腎臓の線維症、慢性腎疾患、糖尿病性腎症、肺線維症、特発性肺線維症、瘢痕、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、セリアック病、血栓症、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、メラノーマ、膀胱癌、脳/CNS癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、頭部/頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、リンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、肉腫、AIDS、乾癬、慢性炎症性疾患、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、未熟児網膜症、網膜中心静脈閉塞、鎌状赤血球網膜症、分枝及び網膜中心静脈閉塞、並びに網膜外傷からなる群から選択される、請求項16に記載の使用のための化合物、使用又は方法。
【請求項18】
移植された臓器の拒絶の予防又は治療における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項19】
移植された臓器の拒絶の予防又は治療のための医薬の調製における、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は請求項11に記載の医薬製剤の使用。
【請求項20】
移植された臓器の拒絶を予防又は治療する方法であって、前記臓器を、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又は請求項11に記載の医薬製剤と接触させることを含む、方法。
【請求項21】
前記臓器は、
(a)移植前、又は
(b)患者への移植の間及び/又は後に治療される、請求項18に記載の使用のための化合物、請求項19に記載の使用、又は請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記臓器は、心臓、肺、腎臓又は肝臓である、請求項18に記載の使用のための化合物、請求項19に記載の使用、請求項20に記載の方法、又は請求項21に記載の使用のための化合物、使用若しくは方法。
【請求項23】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、式IIの化合物
【化6】
と、式IIIの化合物
【化7】
との反応を含み、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8a、R
8b、R
9、A及びLは、請求項1~9のいずれか一項で記載された通りであり、Xは、適切な脱離基である、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、及び医薬におけるそのような化合物の使用に関する。特に、本発明は、トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する障害又は状態を治療するのに有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスグルタミナーゼ(TG又はTGase)は、ペプチド結合グルタミンのγ-カルボキサミド基と第一級アミンとの間のアシル転移反応を媒介することによってタンパク質を修飾することができる酵素群である。この反応の結果は、アミンがペプチド結合リジンのε-アミノ基である場合、タンパク質架橋による翻訳後修飾、又はポリアミンなどの第一級アミンへの架橋によるペプチドグルタミンの修飾のいずれかである。特定の条件下及び適切な第一級アミンの非存在下で、ペプチド結合グルタミンの脱アミド化も起こり得る。タンパク質を架橋して高分子量タンパク質凝集体にするそれらの能力のために、TGは「Nature’s Biological glue」と呼ばれている(Griffin et al.,2002)。TGは自然界に広く見出されるが、哺乳動物では、その酵素活性はCa2+-依存性であり、GTP/GDPを含む他の因子もまた、哺乳動物TGの一部の活性に影響を及ぼし得る(Verderio et al.,2004)。哺乳動物TGファミリーの8つの活性メンバー(TG1~7及び第XIII因子)の全てが完全に特徴付けられているわけではない(Collighan and Griffin,2009)。このファミリーの別のメンバーであるバンド4.2は、触媒的に不活性であり、主に赤血球細胞骨格の調節に関連する。TG2(組織トランスグルタミナーゼ、TG2M、tTG)は、おそらく、細胞内及び細胞外環境の両方において見出される哺乳動物TGファミリーの最も普遍的なメンバーである。そのトランスアミド化、GTPアーゼ及びATPアーゼ活性(Nakaoka et al.,1994)に加えて、更なる新規な活性、例えば、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)(Hasegawa et al.,2003)及びプロテインキナーゼ活性(Mishra and Murphy,2004)がTG2について最近、報告されており、したがって、この多様な酵素群の潜在的な生理学的及び病理学的重要度を更に拡大する。トランスグルタミナーゼ、特にTG2及び/又は活性の異常なレベルは、セリアックスプルー、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病)、線維症、白内障、癌転移のような多くの疾患状態において観察されており、このリストは確かに網羅的であることを意図していない。更に、TG2-/-動物モデル(Bailey and Johnson,2005;Mastroberardino et al.,2002)又は阻害剤試験(Huang et al.,2009;Johnson et al.,2008)のいずれかを使用した概念実証試験は、この酵素が治療的介入のための潜在的な新規候補であることを示した。
【0003】
多種多様な生物学的プロセス及び病理におけるその関与に起因して、TG2の多機能的役割を更に調査するための化学ツールの開発は、活発な研究領域である。これまでに開発された阻害剤のほとんどは、酵素の触媒部位を標的とするが、TG2補因子結合部位について競合する小分子の報告もある。触媒システイン残基(hTG2の場合はCYS277)に到達し、それと反応するそれらの能力に応じて、それらは更に可逆的阻害剤及び不可逆的阻害剤に分類することができる。様々な求電子部分を有するペプチド阻害剤(例えば、クロロアセトアミド(Pardin et al.,2006)、α,β-不飽和アミド(Pardin et al.,2006)、マレイミド(Halim et al.,2007)、スルホニルメチルケトン(Griffin et al.,2008)、ジヒドロイソオキサゾール(Dafik and Khosla,2011)、シンナモイル誘導体(Pardin et al.,2008a;Pardin et al.,2008b)、オキシインドール(Klock et al.,2011)、スルホンアミドピペラジン(Prime et al.,2012)は、そのような誘導体の最近の例である。分解されたTG2構造は、非可逆的阻害剤(Lindemann et al.,2012;Pinkas et al.,2007)又はヌクレオチド(Han et al.,2010;Liu et al.,2002)のいずれかと共結晶化し、不活性状態から活性状態に移行する際の酵素の巨大な立体構造変化を明らかにし、将来、より強力な阻害剤の設計を確実に強化するであろう。
【0004】
TG2の小分子阻害剤は、様々な線維性疾患の有効な治療であり得ることが示されている。例えば、Wang et al.,2018は、選択的小分子阻害剤を使用してTG2の活性を遮断することによって、心線維症を減弱させることができることを報告している。更に、Huang et al.,2009及びJohnson et al.,2007の両方は、TG2阻害が線維性腎疾患を改善することを報告している。更に、Fell et al.,2021は、特発性肺線維症の治療標的としてTD2を同定した。
【0005】
本発明は、医薬における使用のための、トランスグルタミナーゼ活性を阻害する新規化合物を提供しようとするものである。
【0006】
本明細書で見たところ先に公表された文献のリスト又は議論は、その文献が最新技術の一部であるか、又は共通の全般知識であることを認めるものと必ずしも解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の第1の態様において、式I
【0008】
【化1】
(式中、
Aは、-C(O)-及び-S(O)
2-からなる群から選択され、
Lは、C
1~3アルキレン、4~6員シクロアルキレン、4~6員ヘテロシクロアルキレン、アリーレン及びヘテロアリーレンからなる群から選択され、
R
1は、ハロゲン、-C(O)OR
10、-C(O)N(R
11a)R
11b、-OR
12、-N(R
13a)R
13b、C
1~3アルキル及びフェニルからなる群から選択され、C
1~3アルキル及びフェニル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
R
2及びR
3は各々独立して、水素、ハロゲン及びC
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
R
4及びR
5は各々独立して、水素及びC
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、又は
R
4及びR
5は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5又は6員ヘテロシクロアルキルを形成し、
R
6、R
9、R
10、R
11a、R
11b、R
12、R
13a、及びR
13bは各々独立して、水素及びC
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキルは任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
又は
R
11a及びR
11b、及び/又はR
13a及びR
13bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~6員ヘテロシクロアルキルを形成し、
R
7は、水素、ハロゲン、C
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子、-CH
2N(R
14)Ph及び-CH
2OCH
2Phによって置換され、
R
14は、水素及びC
1~3アルキルからなる群から選択され、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
Phは任意選択で、1つ以上のハロゲン原子又はC
1~3アルキル基によって置換されたフェニルであり、C
1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
R
8a及びR
8bは各々独立して、水素、ハロゲン、メチル、及び重水素からなる群から選択される)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0009】
これらの化合物、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む化合物は、本明細書において「本発明の化合物」と称されてもよい。
【0010】
潜在的有用性のある薬学的に許容される塩には、J.Pharmaceutical Sciences,66:1-19(1977),by Berge et alで論じられているものが含まれる。式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、当業者に周知の技術に従って調製されてもよい。
【0011】
薬学的に許容される付加塩の例としては、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸と、カルボン酸と、又は有機スルホン酸と形成される塩;塩基付加塩;塩基で形成される金属塩、例えばナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0012】
特に明記しない限り、本明細書で定義されるアルキル基は直鎖であってもよく、又は十分な数の炭素原子がある場合、分岐鎖であってもよい。
【0013】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」(すなわちアルカンジイル)は、直鎖であってもよく、又は十分な数の炭素原子がある場合、分岐鎖であってもよい二価のアルキル基を指す。言及され得る特定のアルキレン基としては、プロピレン(n-プロピレン又はイソプロピレン)、エチレン、及び特にメチレン(すなわち、-CH2-)が挙げられる。
【0014】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキレン」は、二価シクロアルキル基を指す。言及され得るシクロアルキレン基には、単環式基が含まれる。そのようなシクロアルキレン基は、1つ以上の二重結合又は三重結合を含む飽和又は不飽和であり得る(例えば、シクロアルケニレン又はシクロアルキニレン基を形成する)。更に、十分な数(すなわち、最低4つ)がある場合、そのようなシクロアルキレン基は、部分的に環状であってもよく、例えば、アルキレン-シクロアルキル基(例えば、-CH2-C3H4-)を形成する。シクロアルキレン基の結合点は、環系の任意の原子を介していてもよい。
【0015】
言及され得るヘテロシクロアルキル基には、環系内の原子の少なくとも1つ(例えば、1~4つ)が炭素(すなわち、ヘテロ原子、例えば、硫黄、酸素、又は特に窒素)以外であり、環系内の原子の総数が4~6である、非芳香族単環系ヘテロシクロアルキル基が含まれる。更に、そのようなヘテロシクロアルキレン基は、ヘテロシクロアルケニレン又はヘテロシクロアルキニレン基を形成する、1つ以上の二重及び/又は三重結合を含む飽和又は不飽和であり得る。ヘテロシクロアルキル基の結合点(複数可)は、(適切な場合)ヘテロ原子(窒素原子など)、又は環系の一部として存在する可能性のある任意の縮合炭素環上の原子を含む、環系内の任意の原子を介してもよい。ヘテロシクロアルキル基は、N-又はS-酸化型であってもよい(すなわち、それらのヘテロ原子は、必要に応じて1つ又は2つの=O置換基で置換されていてもよい)。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキレン」は、二価ヘテロシクロアルキル基を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アリーレン」は、二価アリール基を指す。言及され得るアリーレン基には、C6~10アリーレン基が含まれる。そのような基は、単環式又は二環式であってよく、少なくとも1つの環が芳香族である6~10個の環炭素原子を有する。C6~10アリーレン基としては、フェニレン、ナフチレンなどが挙げられる。アリーレン基の結合点は、環系の任意の原子を介していてもよい。しかしながら、アリーレン基が二環式である場合、それらは芳香環を介して分子の残りの部分に結合する。
【0018】
「ヘテロアリーレン」という用語は、本明細書で使用される場合、好ましくはN、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子(例えば、1~4個のヘテロ原子)を含む二価の芳香族基を指す。ヘテロアリーレン基には、5~10員を有し、環の少なくとも1つが芳香族であるという条件で、単環式又は二環式であってもよい(したがって、例えば、単環式又は二環式ヘテロ芳香族基を形成する)ものが含まれる。ヘテロアリーレン基の結合点は、(適切な場合)ヘテロ原子(窒素原子など)、又は環系の一部として存在する可能性のある任意の縮合炭素環上の原子を含む、環系内の任意の原子を介してもよい。
【0019】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を含む。
【0020】
疑義を避けるためであるが、式Iの化合物中の2個以上の置換基の同一性が同じであり得る場合、各々の置換基の実際の同一性は決して相互に依存しない。
【0021】
基が任意選択で置換されていると本明細書で言及される場合、かかる任意の置換基は存在しなくてもよい(すなわち、かかる任意の置換基への言及が除去されてもよい)ことが特に意図され、その場合、任意選択で置換されていてもよい基は、特定の実施形態では非置換として称され得る。
【0022】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、当業者に周知の技術に従って調製されてもよい。例えば、式Iの化合物を適当な有機酸又は鉱酸と反応させてもよい。塩スイッチング技術もまた、1つの塩を別の塩に変換するために使用され得る。
【0023】
本明細書に開示される化合物は、水及びエタノールといった薬学的に許容される溶媒との非溶媒和形態及び溶媒和形態で存在してもよく、本発明は、本発明の化合物の溶媒和形態及び非溶媒和形態の両方を包含することが意図される。
【0024】
「溶媒和物」という用語は、溶質及び溶媒によって形成される変動的な化学量論の複合体を指す。発明の目的のためのそのような溶媒は、溶質の生物学的活性を妨害することがない。適切な溶媒の例としては、限定されないが、水、メタノール、エタノール、及び酢酸が挙げられる。水が溶媒分子である溶媒和物は、典型的には水和物と称される。水和物としては、化学量論量の水を含有する組成物、並びに変動的な量の水を含有する組成物が挙げられる。
【0025】
式Iの化合物は、二重結合を含んでいてもよく、したがって、各個々の二重結合についてE(entgegen)及びZ(zusammen)幾何異性体として存在してもよい。全てのそのような異性体及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
式Iの化合物は、位置異性体として存在する可能性があり、互変異性を示す可能性もある。全ての互変異性型及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0027】
本発明の化合物はまた、1つ以上の不斉炭素原子を含有していてもよく、したがって、光学異性及び/又はジアステレオ異性を示してもよい。ジアステレオ異性体は、慣用的な技法、例えばクロマトグラフィー又は分別結晶化を用いて分離され得る。種々の立体異性体は、慣用的な、例えば分別結晶化又はHPLCなどの技法を用いて、化合物のラセミ混合物又は他の混合物を分離することによって単離されてもよい。代替的には、所望の光学異性体は、ラセミ化又はエピマー化を引き起こさない条件下での適切な光学活性をもつ出発物質の反応(すなわち、「キラルプール」法)によって、適切な出発物質とその後に好適な段階で除去され得る「キラル補助剤」との反応によって、例えば、ホモキラル酸を用いた誘導体化(すなわち、動的分解を含む分解)に続いて、クロマトグラフィーなどの慣用的手段によるジアステレオマー誘導体の分離によって、又は適切なキラル試薬若しくはキラル触媒との反応によって、全て当業者に既知の条件下で作製されてもよい。
【0028】
全ての立体異性体(ジアステレオ異性体、鏡像異性体、及びアトロプ異性体を含むがこれらに限定されない)並びにそれらの混合物(例えば、ラセミ混合物)が、本発明の範囲内に含まれる。
【0029】
本明細書に示される構造において、任意の特定のキラル原子の立体化学が特定されていない場合、全ての立体異性体が意図され、本発明の化合物として含まれる。立体化学が特定の配置を表す実線のくさび又は破線で指定されている場合、その立体異性体は、そのように指定及び定義される。
【0030】
本発明はまた、1つ以上の原子が、通常自然界で見出される(若しくは自然界で最も豊富に存在するものの)原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で、実際には置き換えられてはいるが、本明細書に記載されたものと同一である、同位体標識された式Iの化合物も包含する。本明細書で特定される任意の特定の原子又は元素の全ての同位体は、本発明の範囲内であると考えられる。したがって、式Iの化合物は、重水素化化合物、すなわち、1つ以上の水素原子が水素同位体重水素で代置されている式Iの化合物も含む。
【0031】
当業者は、本発明の主題である本発明の化合物には、安定なものが含まれることを理解するであろう。すなわち、本発明の化合物は、例えば、反応混合物から有用な純度までの単離を切り抜けて存続するのに十分に頑強であるものを含む。
【0032】
この明細書全体を通して、構造は、化学名と共に表示される場合があるか、又は表示されない場合がある。命名法に関して任意の疑問が生じた場合は、構造が優先する。化合物が互変異性体として(例えば、代替共鳴形態で)存在する可能性がある場合、描写された構造は、可能な互変異性体の形態の1つを表し、観察された実際の互変異性体の形態は、溶媒、温度、又はpHなどの環境要因に依存して変わる可能性がある。全ての互変異性体(及び共鳴)形態並びにそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0033】
別段の指示がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって理解される一般的な意味を有する。
【0034】
誤解を避けるために、当業者は、本発明の特定の態様の化合物(例えば、本発明の第1の態様)への本明細書での言及が、その全ての実施形態及び特定の特徴への言及を含み、その実施形態及び特定の特徴を組み合わせて、本発明の更なる実施形態及び特徴を形成し得ることを理解するであろう。
【0035】
言及され得る本発明の特定の化合物は、R1が、ハロゲン、-C(O)OR10、-C(O)N(R11a)R11b、-OR12、C1~3アルキル及びフェニルからなる群から選択され、C1~3アルキル及びフェニル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換されているものである。
【0036】
特定の実施形態では、R1は、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、フェニル、-CF3、-C(O)OCH3、-C(O)N(CH3)2、-OCH3及び-OCH2CH3からなる群から選択される。
【0037】
特定の実施形態では、R1は、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、フェニル、-CF3、-C(O)OCH3、-C(O)N(CH3)2、及び-OCH3からなる群から選択される。
【0038】
言及され得る本発明の他の化合物は、R2及びR3が各々独立して、水素及びフッ素からなる群から選択されるものである。特定の実施形態では、R2はフッ素であり、R3は水素である。他の実施形態では、R2はフッ素であり、R3はフッ素である。
【0039】
本発明の特定の実施形態では、Aは-C(O)-であり、LはC1~3アルキレン(例えばメチレン)である。代替的な実施形態では、Aは-S(O)2-であり、Lはアリーレン(例えばフェニレン)である。
【0040】
特定の実施形態では、-A-L-リンカーは、
【0041】
【0042】
【0043】
したがって、言及され得る本発明の特定の化合物には、式I-Aの化合物:
【0044】
【化4】
が含まれ、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8a、R
8b及びR
9は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグに関して定義されている通りである。
【0045】
言及され得る本発明の他の特定の化合物には、式IBの化合物:
【0046】
【化5】
が含まれ、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8a、R
8b及びR
9は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくはプロドラッグに関して定義されている通りである。
【0047】
特定の実施形態では、R4及びR5は各々独立して、水素、メチル及びエチルからなる群から選択され、又は
R4及びR5は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5-員ヘテロシクロアルキルを形成する。
【0048】
本明細書に記載されるように、本発明の第1の態様の化合物はまた、1つ以上の不斉炭素原子を含有し得、ひいては光学異性及び/又はジアステレオ異性を呈し得る。例えば、R4及びR5が独立してC1~3アルキル(例えば、メチル又はエチル)である式Iの化合物。誤解を避けるために、R4及びR5の両方がC1~3アルキル基である場合、C1~3アルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
例えば、式Iの化合物は、式I-Cの化合物、式I-Dの化合物、式I-Eの化合物、又は式I-Fの化合物:
【0050】
【化6】
であってもよく、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8a、R
8b、R
9、A及びLは、本明細書に記載の通りである(すなわち、本発明の第1の態様に記載されているように、全ての実施形態及び特定の特徴、並びにそれらの組み合わせを含む)。
【0051】
特定の実施形態では、R6は、水素及びメチルからなる群から選択される。
【0052】
特定の実施形態では、R6がC1~3アルキル(例えば、メチル)である式Iの化合物はまた、1つ以上の不斉炭素原子を含有し得、ひいては光学異性及び/又はジアステレオ異性を呈し得る。例えば、式Iの化合物は、式I-Gの化合物、又は式I-Hの化合物であってもよい。
【0053】
【化7】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8a、R
8b、R
9、A及びLは、本明細書に記載の通りである(すなわち、本発明の第1の態様に記載されているように、全ての実施形態及び特定の特徴、並びにそれらの組み合わせを含む)。
【0054】
言及され得る本発明の第1の態様の特定の化合物(全ての実施形態及び特定の特徴、並びにそれらの組み合わせを含む)は、R7が水素及びハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ又はブロモ基)からなる群から選択される化合物である。
【0055】
他の実施形態では、R7は、C1~3アルキル(例えば、メチル、エチル又はプロピル)からなる群から選択され、C1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子(例えば、-CF3)、-CH2N(R14)Ph及び-CH2OCH2Phによって置換されている。
【0056】
特定の実施形態では、R14は、メチルである。
【0057】
特定の実施形態では、Ph、はフェニルである。
【0058】
特定の実施形態では、R7は、水素、-F、-Cl、-Br、-CH3、-CF3、
【0059】
【0060】
特定の実施形態では、R8a、R8b及びR9は、各々水素である。
【0061】
特定の実施形態では、R7、R8a、R8b及びR9は、各々水素である。
【0062】
本発明の特定の実施形態は、式Iの化合物(全ての実施形態及び特定の特徴、並びにそれらの組み合わせを含む)を含み、式中、
R1は、ハロゲン、-C(O)OR10、-C(O)N(R11a)R11b、-OR12、C1~3アルキル及びフェニルからなる群から選択され、C1~3アルキル及びフェニル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
R2は、ハロゲン及びC1~3アルキルからなる群から選択され、C1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換され、
R3は、ハロゲン及びC1~3アルキルからなる群から選択され、C1~3アルキル基は任意選択で、1つ以上のハロゲン原子によって置換されている。
【0063】
特定の実施形態において、
R1は、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、フェニル、-CF3、-C(O)OCH3、-C(O)N(CH3)2、-OCH3及び-OCH2CH3からなる群から選択され、
R2は、フッ素及びメチルからなる群から選択され、
R3は、水素、フッ素及びメチルからなる群から選択される。
【0064】
更なる特定の実施形態では、
R1は、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、フェニル、-CF3、-C(O)OCH3、-C(O)N(CH3)2、-OCH3及び-OCH2CH3からなる群から選択され、
R2は、フッ素であり、
R3は、水素及びフッ素からなる群から選択される。
【0065】
別の実施形態では、
R1は、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、-C(O)OCH3、-C(O)N(CH3)2及び-OCH3からなる群から選択され、
R2は、フッ素であり、
R3は、水素及びフッ素からなる群から選択される。
【0066】
本発明の特に好ましい化合物は、
【0067】
【0068】
【化10】
化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【0069】
本明細書に記載の本発明の化合物は、以下に提供される実施例に記載されるものなどの、当業者に周知の技法に従って調製することができる。
【0070】
式Iの化合物は、文献で公知のプロセスでの類推によって、又は従来の合成手順によって、標準技法に従い、入手可能な出発材料から適切な試薬及び反応条件を使用して得ることができる。この点に関して、当業者は、なかでも、「Comprehensive Organic Synthesis」by B.M.Trost and I.Fleming,Pergamon Press,1991を参照してもよい。
【0071】
例えば、先に定義した本発明の化合物の調製のためのプロセスが提供され、このプロセスは、式IIの化合物
【0072】
【0073】
【化12】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8a、R
8b、R
9、A及びLは、上記で定義された通りであり、Xは、適切な脱離基(塩素原子など)である)との反応であって、当業者に公知の手順に従って、適切な塩基(例えば、トリエチルアミン)及び適切な溶媒(例えば、ジクロロメタン)の存在下での反応を含む。
【0074】
同様に、式IIの化合物は市販されているか、文献において既知であるか、又は本明細書に記載のプロセスと同様にして若しくは従来の合成手順によるかのいずれかで、標準的な方法に従って、適当な試薬及び反応条件を用いて入手可能な出発物質から得られてもよい。
【0075】
例えば、Aが-C(O)-であり、LがC1~3アルキル(例えば、メチル)である式IIの化合物は、式IV
【0076】
【化13】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
9は上記で定義された通りであり、P
1は、適切な保護基(tert-ブチルオキシカルボニル基など)である)の化合物との反応であって、当業者に公知の手順に従って、適切な脱保護剤(例えば、トリフルオロ酢酸)を用いた、適切な溶媒(例えば、ジクロロメタン)の存在下での反応によって調製されてもよい。
【0077】
式IVの化合物は、式V
【0078】
【化14】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、上記で定義した通りである)の化合物と、式VI
【0079】
【化15】
(式中、R
9は上記で定義した通りであり、P
1は、適切な保護基(例えば、tert-ブチルオキシカルボニル基)である)の化合物との反応であって、当業者に公知の手順に従って、適切なカップリング試薬(例えば1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート)を用いた、塩基(例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン)及び適切な溶媒(例えば、ジクロロメタン及びジメチルホルムアミド)の存在下での反応によって調製されてもよい。
【0080】
式Vの化合物は、式VII
【0081】
【化16】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、上記で定義した通りであり、P
2は、適切な保護基(tert-ブチルオキシカルボニル基など)である)の化合物の反応であって、当業者に公知の手順に従って、適切な脱保護剤(例えば、トリフルオロ酢酸)を用いた、適切な溶媒(例えば、ジクロロメタン)の存在下での反応よって調製されてもよい。
【0082】
例えば、式VIIの化合物は、式VIII
【0083】
【0084】
【化18】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びP
2は、上記で定義した通りである)の化合物との反応であって、当業者に公知の手順に従って、適切なカップリング試薬(例えば、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート)を用いた、塩基(例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン)及び適切な溶媒(例えば、ジクロロメタン及びジメチルホルムアミド)の存在下での反応よって調製されてもよい。
【0085】
式III~IXの化合物はまた、市販されているか、文献において既知であるか、又は従来の合成手順によって、標準技法に従い、入手可能な出発材料から適切な試薬及び反応条件を使用して得られてもよい。
【0086】
R9が水素であり、Aが-S(O)2-であり、Lがアリール(例えば、フェニル)である式IIの化合物は、式X
【0087】
【化19】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は上記で定義した通りである)の化合物の反応であって、当業者に公知の手順に従って、適切な還元剤(例えば、塩化スズ(II)二水和物)を用いた、適切な溶媒(例えば、エタノール)の存在下での反応によって調製されてもよい。
【0088】
式Xの化合物は、式VIII
【0089】
【0090】
【化21】
の化合物又はその塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩)
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、上記で定義した通りである)との反応であって、当業者に公知の手順に従って、適切なカップリング剤(例えば、ヒドロキシベンゾトリアゾール及び/又はN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩)を用いた、適切な塩基(例えば、トリエチルアミン)及び適切な溶媒(例えば、ジクロロメタン)の存在下での反応によって調製されてもよい。
【0091】
式X~XIの化合物はまた、市販されているか、文献において既知であるか、又は従来の合成手順によって、標準技法に従い、入手可能な出発材料から適切な試薬及び反応条件を使用して得られてもよい。
【0092】
上記及び下記のプロセスにおいて、中間体化合物の官能基を保護基で保護する必要があり得ることは、当業者に理解されるであろう。官能基の保護及び脱保護は、上記の反応の前又は後に行うことができる。
【0093】
保護基は、当業者に周知の技法及び下記の技法に従って除去されてもよい。例えば、本明細書に記載される保護された化合物/中間体は、標準的な脱保護技術を用いて、保護されていない化合物に化学的に変換され得る。保護基の使用は、「Protective Groups in Organic Synthesis」,3rd edition,T.W.Greene & P.G.M.Wutz、Wiley-Interscience(1999)に詳しく記載されている。
【0094】
したがって、式Iの化合物を形成するために使用され得る特定の変換工程は、酸の存在下での反応によるN-Boc保護基の脱保護などの特定の脱保護工程を含み、又はシリルエーテルとして保護されたヒドロキシ基(例えば、tert-ブチル-ジメチルシリル保護基)は、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)試薬を用いることによって、酸又はフッ化物イオン源との反応によって脱保護され得る。
【0095】
本発明の化合物は、それらの反応混合物から単離され、必要な場合には当業者に既知のもの等の従来技術を使用して精製することができる。したがって、本明細書に記載の本発明の化合物の調製プロセスは、最終ステップとして、本発明の化合物の単離及び任意選択で精製を含んでもよい。
【0096】
医薬製剤
本明細書に示されるように、本発明の化合物は、様々な医学的障害又は状態を治療するための治療薬として有用である。典型的には、本発明の化合物は、それを必要とする対象に医薬製剤の形態で投与されるであろう。
【0097】
本発明の第2の態様によれば、式Iの化合物(又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物)を含む医薬製剤が提供される。そのような製剤は、以後「本発明の製剤」と称される。本発明の第1の態様に関して本明細書に記載されている全ての実施形態及び特定の特徴は、本発明の第3の態様に関して本明細書に開示されている。
【0098】
本発明の第2の態様の医薬製剤は、標準的及び/又は受け入れられている薬学的に慣行に従って調製され得る。
【0099】
本発明の第2の態様の製剤は、一般に、本発明の化合物(又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物)、及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤を含む混合物として提供される。1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤は、標準的な薬学的慣行に従って、意図された投与経路を十分に考慮して選択され得る。そのような薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤は、好ましくは、活性化合物に対して化学的に不活性であり、好ましくは、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有しない。適切な医薬製剤は、例えば、Remington The Science and Practice of Pharmacy,19th ed.,Mack Printing Company,Easton,Pennsylvania(1995)に見出され得る。薬物送達の方法の簡単なレビューはまた、例えば、Langer,Science 249,1527(1990)に見出されるかも知れない。
【0100】
適切な薬学的担体は、薬学の分野で周知である。担体は、本発明の化合物と適合性があり、そのレシピエントに対して有害でないという意味において「許容される」ものでなければならない。典型的には、担体は、水又は生理食塩水であり、無菌でパイロジェンフリーであるが、しかしながら、他の許容される担体を使用してもよい。したがって、「薬学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される賦形剤」は、単に担体として作用することを意図した、すなわち、それ自体生物学的活性を有することを意図しない、製剤の一部を形成するのに使用される任意の化合物(複数可)を含む。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、一般的に安全であり、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない。本明細書で使用される薬学的に許容される担体又は賦形剤は、1つ及び2つ以上のそのような担体又は賦形剤の両方を含む。
【0101】
賦形剤は、炭水化物、ポリマー、脂質、及びミネラルのうちの1つ以上であり得る。炭水化物の例として、例えば、凍結乾燥を容易にするために、組成物に添加されるラクトース、スクロース、マンニトール、及びシクロデキストリンが挙げられる。ポリマーの例は、デンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸塩、カラギーナン、ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸、ポリスルホン酸塩、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、異なる程度の加水分解のポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート、並びにポリビニルピロリドンであり、全て分子量が異なり、これらは例えば、粘度制御のため、生体接着を達成するため、又は化学分解及びタンパク質分解から脂質を保護するために、組成物に添加される。脂質の例は、脂肪酸、リン脂質、モノ-、ジ-、及びトリグリセリド、セラミド、スフィンゴ脂質、及び糖脂質(全てアシル鎖長及び飽和が異なる)、卵レシチン、大豆レシチン、水素添加卵及び大豆レシチンであり、これらは、ポリマーと同様の理由で組成物に添加される。ミネラルの例は、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び酸化チタンであり、これらは、液体蓄積の低減又は有利な顔料特性などの利点を得るために組成物に添加される。
【0102】
「希釈剤」という用語は、医薬調製物にペプチドを希釈することを目的とした水溶液又は非水溶液を意味することを意図している。希釈剤は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、又は油(ベニバナ油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、若しくはゴマ油など)のうちの1つ以上であり得る。
【0103】
希釈剤は、緩衝剤としても機能し得る。「緩衝液」という用語は、pHを安定化する目的で酸-塩基混合物を含有する水溶液を意味することを意図している。緩衝液の例として、トリズマ、ビシン、トリシン、MOPS、MOPSO、MOBS、トリス、ヘペス、HEPBS、MES、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ホウ酸塩、ACES、ADA、酒石酸塩、AMP、AMPD、AMPSO、BES、CABS、カコジル酸塩、CHES、DIPSO、EPPS、エタノールアミン、グリシン、HEPPSO、イミダゾール、イミダゾール乳酸、PIPES、SSC、SSPE、POPSO、TAPS、TABS、TAPSO、及びTESが挙げられる。
【0104】
本発明の第2の態様による製剤は、好都合には単位剤形で提供されてもよく、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製されてもよい。そのような方法は、活性成分(すなわち、本発明の第1の態様による化合物)を、1つ以上の補助成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体若しくは微粉化固体担体又はその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要であれば、生成物を成形することによって調製される。
【0105】
経口投与に適切な本発明による製剤は、別個の単位として、例えば、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤又は錠剤として;粉末又は顆粒として;水性液体又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として;又は水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョンとして。活性成分は、ボーラス、舐剤又はペーストとして提供されてもよい。経口投与のための化合物は、好ましくは、腸内で保護され、生体吸着を可能にするように製剤化されるべきであることが当業者によって理解されるであろう。
【0106】
好ましい単位投与の製剤は、有効成分の、1日用量又は単位、1日部分用量又はその適切な画分を含有するものである。
【0107】
非経口投与に適切な製剤として、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の無菌注射液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量又は複数回用量の容器、例えば、密封アンプル及びバイアルで提示されてもよく、使用直前に、例えば、注射用水などの滅菌液体担体の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時注射液及び懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。
【0108】
眼の疾患及び状態の治療のために、化合物は、眼への適用に適合された医薬組成物として、慣用的な手順に従って処方されてもよい。したがって、医薬組成物は、局所眼科用途、例えば、水性点眼剤、油性点眼剤、眼軟膏、眼ローション、オキュサート、ヒドロゲルコンタクトレンズ、コラーゲンシールド及び眼科用ロッドであってもよい。
【0109】
眼用の局所組成物は、典型的には、4.5~8.0の範囲のpHを有する。眼用組成物はまた、眼の房水及び眼組織と適合する浸透圧値を有するように製剤化されなければならない。このような浸透圧値は、一般に、水1キログラム当たり約200~約400ミリオスモル(「mOsm/kg」)の範囲であるが、好ましくは約300mOsm/kgである。
【0110】
更に別の実施形態では、本発明の化合物は、制御放出系で送達することができる。例えば、ポンプが使用されてもよい(Langer,supra;Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwald et al.,Surgery 88:507(1980);Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照;その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0111】
別の実施形態では、ポリマー材料を使用され得る(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,スモレンand Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983);see also Levy et al.,Science 228:190(1985);During et al.,Ann.Neurol.25:351(1989);Howard et al.,J.Neurosurg.71:105(1989)を参照;その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0112】
当業者であれば、本発明の製剤が、抗炎症剤、局所麻酔薬及び抗生物質などの1つ以上の追加の活性剤を含んでもよいことを理解するであろう。
【0113】
本発明の化合物は、使用される特定の化合物の有効性に応じて、様々な濃度で製剤化することができる。好ましくは、組成物は化合物を、約1nM~約1M、例えば、約0.1μM~約1mM、約1μM又は約100μM、約5μM~約50μM、約10μM~約50μM、約20μM~40μM又は約30μMの濃度で含む。エクスビボ及びインビトロ用途のために、組成物は、より低濃度の、例えば約0.0025μM~約1μMの修飾オステオポンチンポリペプチドを含んでいてもよい。
【0114】
化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、又はわずか0.1%の変動を指す。各場合において、かかる用語は、表記「±10%」などと(又は関連する値に基づいて計算された特定量の変動を示すことによって)置き換えてもよいことが企図される。また、各場合において、かかる用語は削除されてもよいと考えられる。
【0115】
誤解を避けるために、本発明の文脈における、対象、特にヒト対象に投与される用量は、妥当な時間枠にわたって対象において治療応答に影響を与えるのに十分であるべきである。当業者は、正確な用量及び組成並びに最も適切な送達レジメンの選択が、とりわけ、製剤の薬理学的特性、治療を受ける病態の性質及び重症度、並びに投薬を受ける者の身体的状態及び精神的鋭敏さ、並びに特定の化合物の力価、治療される対象の年齢、状態、体重、性別及び反応、並びに疾患の病期/重症度によっても影響を受けることを認識するであろう。
【0116】
いずれにしても、医師又は他の熟練者は、個々の対象に最も好適な実際の投与量を日常的に決定することができるであろう。上記の投与量は、平均的な場合の例であり、当然のことながら、より高い又はより低い投薬量範囲が妥当である個々の事例があり得、それらも本発明の範囲内である。
【0117】
医学的使用
本明細書に示されるように、本発明の化合物は、医薬品として有用である。本発明の化合物は、薬理学的活性を有する、及び/又は経口若しくは非経口投与後に体内で代謝されて薬理学的活性を有する化合物を形成するため有用である。
【0118】
したがって、本発明の第3の態様によれば、医薬に使用するための、上記で定義された通りである本発明の化合物(すなわち、本発明の第1の態様で定義される通りである化合物)、又は本発明の第2の態様に関して定義された医薬製剤が提供される。疑義を避けるために、本発明の第1の態様に定義される化合物への言及には、式Iの化合物(その全ての実施形態を含む)及びその薬学的に許容される塩及び溶媒和物への言及が含まれる。
【0119】
本発明の化合物(すなわち、本発明の第1の態様において定義される化合物)は、実施例におけるデータによって証明されるように、TG2(すなわち、組織トランスグルタミナーゼ)などのトランスグルタミナーゼ酵素の阻害剤である。8つのトランスグルタミナーゼ酵素が現在知られている(TG1-7及び第XIII因子)。「トランスグルタミナーゼ」には、酵素委員会分類2.3.2.13に従って定義される酵素が含まれる。
【0120】
「トランスグルタミナーゼ酵素の阻害剤」(又は「トランスグルタミナーゼ阻害剤」)という用語には、トランスグルタミナーゼ酵素のアミド基転移活性を部分的に又は全体的に(好ましくは、インビボで)阻害する任意の化合物が含まれる。
【0121】
好ましい実施形態では、トランスグルタミナーゼ酵素はTG2である。
【0122】
TG2のアミド基転移活性の阻害はまた、酵素のGTP結合活性の一部又は全部の阻害をもたらす。TG2のトランスアミダーゼ活性は、トランスアミダーゼ部位で結合する阻害剤によって阻害され、GTP結合は、トランスアミダーゼ部位での阻害剤相互作用がタンパク質を伸長/開放コンフォメーションにロックしてGTP結合/GTPase部位を解体/不活性化するので、遮断される(Kerr et al.2017;Seo et al.2019)。
【0123】
トランスグルタミナーゼ酵素、例えばTG2は、好ましくはヒトである。
【0124】
一実施形態では、本発明の化合物は、TG2の不可逆的阻害剤である。
【0125】
一実施形態では、本発明の化合物は、TG2の選択的阻害剤である。「選択的」とは、化合物が他のトランスグルタミナーゼ酵素、例えば第XIII因子、TG1及びTG3を阻害するよりも大きな程度までTG2(好ましくはヒトTG2)を阻害することを意味する。有利には、化合物は、TG2(好ましくはヒトTG2)に対して、第XIIIa因子、TG1及びTG3などの他のトランスグルタミナーゼ酵素に対するIC50よりも少なくとも1桁低いIC50を示す。
【0126】
したがって、本発明の化合物及びそれを含有する製剤は、トランスグルタミナーゼ阻害剤による治療に応答する障害又は状態を治療するのに特に有用であってもよい。したがって、本発明の第4の態様では、トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する疾患又は状態の治療又は予防に使用するための、本発明の化合物、又は化合物を含む製剤が提供される。
【0127】
同様に、トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する疾患又は状態の治療又は予防のための医薬の製造における、本発明の化合物又は化合物を含む製剤の使用が提供される。本発明の更なる代替的な第4の態様では、本発明の化合物(又は化合物を含む製剤)を、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に投与することを含む、トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する疾患又は状態を治療又は予防する方法が提供される。
【0128】
例えば、疾患又は状態は、TG2の阻害剤による治療に応答性であってもよい。
【0129】
一実施形態において、疾患又は状態は、血管新生阻害剤による治療に応答性である。したがって、本発明の化合物は、血管新生、特に病理学的血管新生(すなわち、疾患又は障害に関連する新たな脈管構造の形成;Chung & Ferrera,2011,Ann.Rev.Cell Dev.Biol.27:563-584を参照、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)を阻害するために使用されてもよい。
【0130】
「血管新生を阻害する」とは、化合物の投与が、少なくとも部分的に、インビボでの新たな血管の形成を減少させることができることを意味する。したがって、化合物は、化合物の非存在下での血管新生のレベルと比較して、インビボでの血管新生を、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上阻害してもよい。阻害は、化合物の反復(すなわち、慢性)投与を必要としてもよいことが理解されるであろう。
【0131】
更なる実施形態では、疾患又は状態は、線維症(嚢胞性線維症、心線維症、腎臓の線維症及び肺線維症など)、瘢痕化、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病及びパーキンソン病など)、自己免疫疾患(多発性硬化症及びセリアック病など)、血栓症、増殖性障害(癌など)、AIDS、乾癬及び炎症(慢性炎症性疾患など)、並びに病理学的血管新生に関連する疾患又は状態からなる群から選択される。
【0132】
例えば、疾患又は状態は、線維症であってもよい。言及され得る特定の線維性疾患としては、嚢胞性線維症、心線維症、腎臓の線維症(例えば、慢性腎疾患及び糖尿病性腎症)、及び肺線維症(例えば、特発性肺線維症)が挙げられる。
【0133】
あるいは、疾患又は状態は、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病又はパーキンソン病)であってもよい。
【0134】
更なる代替的な実施形態において、疾患又は状態は、自己免疫疾患(多発性硬化症又はセリアック病など)である。
【0135】
一実施形態において、疾患又は状態は、病理学的血管新生に関連する。「病理学的血管新生に関連する疾患又は障害」とは、血管新生の部分的又は完全な阻害が患者に有益な効果を提供するように、異常な又は他の望ましくない血管新生が起こる疾患又は障害を意味する(例えば、1つ以上の症状を緩和し、及び/又は疾患若しくは障害の進行を遅らせるか若しくは予防する)。
【0136】
例えば、疾患又は状態は、血管腫、乾癬、カポジ肉腫、眼血管新生、関節リウマチ、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症並びに腫瘍増殖及び転移からなる群から選択されてもよい。
【0137】
一実施形態では、疾患又は状態は、癌であってもよい。
【0138】
例えば、癌は、固形腫瘍(例えば、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、メラノーマ、膀胱癌、脳/CNS癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、頭部/頚部癌、腎臓癌、肝臓癌、リンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、及び肉腫)に関連していてもよい。
【0139】
更なる実施形態では、疾患又は状態は、網膜及び/又は脈絡膜の疾患又は障害などの眼のものである。
【0140】
したがって、疾患又は状態は、網膜症であってもよい。
【0141】
例えば、疾患又は状態は、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、未熟児網膜症、網膜中心静脈閉塞、鎌状赤血球網膜症、分枝及び網膜中心静脈閉塞、並びに網膜外傷からなる群から選択されてもよい。
【0142】
あるいは、疾患又は状態は、慢性炎症又は感染症(例えば、血管形成をもたらす眼表面のHSV感染)、角膜瘢痕化、創傷修復、翼状片及び血管新生緑内障(すなわち、虹彩上及び前房隅角内への血管の成長;黒皮症)からなる群から選択されてもよい。
【0143】
更なる実施形態において、疾患又は状態は、第XIII因子の阻害剤による治療に応答性であってもよい。例えば、疾患又は状態は、フィブリン塊の形成に関連していてもよい。
【0144】
化合物は、トランスグルタミナーゼ活性を(少なくとも部分的に)阻害するために治療有効量で投与されるべきであることが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「有効量」又は「治療上有効な」は、(トランスグルタミナーゼ活性の阻害を介して)所与の条件及び投与レジメンに対して治療効果を提供する量を指す。これは、必要とされる添加剤及び希釈剤、すなわち担体又は投与ビヒクルに関連して所望の治療効果をもたらすように計算された、本発明の化合物の所定の量である。更に、対象の活性、機能、及び応答の臨床的に有意な欠損を低減させ、最も好ましくは予防するために十分な量を意味することが意図される。代替的に、治療有効量は、対象の臨床的に有意な状態を改善させるために十分である。当業者によって理解されるように、化合物の量は、その特異的活性に応じて変動し得る。好適な投与量は、必要とされる希釈剤に関連して、所望の治療効果をもたらすように計算された、所定量の活性組成物を含有し得る。本発明の化合物の製造のための方法及び使用において、治療有効量の活性構成成分が提供される。治療有効量は、当該技術分野において周知であるように、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患などの患者の特徴に基づいて、通常の技能を有する医療又は獣医学従事者によって決定され得る。
【0145】
化合物が使用され得る適切な疾患及び状態は、本発明の第4の態様に関連して上記で特定されている。
【0146】
好ましくは、本発明の第1の態様による化合物又は本発明の第2の態様による医薬製剤は、tTGase媒介タンパク質修飾(すなわち、架橋)を少なくとも部分的に阻害するのに十分な量で投与される。より好ましくは、化合物又は製剤は、tTGase媒介性タンパク質架橋を少なくとも10%、例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%阻害するのに十分な量で投与される。最も好ましくは、化合物又は製剤は、tTGase媒介タンパク質架橋を完全に阻害するのに十分な量で投与される。
【0147】
TGase媒介タンパク質修飾は、当技術分野で公知の方法によって測定されてもよい。例えば、体液中のイソジペプチドε(γ-グルタミル)リジンの検出は、このタンパク質架橋が関与する疾患における架橋の頻度の間接的尺度として使用することができる。したがって、体液中のイソジペプチドの減少は、減少したタンパク質架橋の間接的な尺度を提供する(Nemes et al.,2002,Minerva Biotechnology 14,183を参照)。
【0148】
あるいは、組織生検を採取し、例えば材料のタンパク質分解消化後にイオン交換又は逆相HPLCによって(Griffin & Wilson,1984,Mol.Cell Biochem.58:37-49)、又は生検切片を染色し、免疫組織化学によって分析することによって(Skill et al.,2001,81:705-716)分析してもよい。
【0149】
更なる実施形態において、化合物又は製剤は、血管新生を少なくとも部分的に阻害するのに十分な量で投与される。
【0150】
例えば、対象は、線維症(嚢胞性線維症、心線維症、腎臓の線維症及び肺線維症など)、瘢痕化、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病及びパーキンソン病など)、自己免疫疾患(多発性硬化症及びセリアック病など)、血栓症、増殖性障害(癌など)、AIDS、乾癬及び炎症(慢性炎症性疾患など)、並びに病理学的血管新生に関連する疾患又は状態からなる群から選択される疾患又は状態を有してもよく、又は発症するリスクがあってもよい。
【0151】
治療は予防的及び/又は治療的であってもよいことが当業者によって理解されるであろう。例えば、本発明の化合物及び製剤は、治療される対象における疾患/障害の発症を遅延及び/又は予防するために使用されてもよい。あるいは、又は更に、本発明の化合物及び製剤は、治療される対象における疾患/障害の症状を軽減又は根絶するために使用されてもよい。
【0152】
誤解を避けるために、当業者は、そのような治療又は予防がそれを必要とする対象において行われることを理解するであろう。対象がそのような治療又は予防を必要とすることは、日常的な技法を使用して当業者によって評価され得る。本発明の文脈において、本発明の化合物の「必要とする対象」は、トランスグルタミナーゼの阻害剤による治療に応答する疾患又は状態に罹患している対象を含む。本明細書で使用される場合、「疾患」及び「状態」という用語(及び同様に、障害、病気、医学的課題などの用語)は、交換可能に使用されてもよい。
【0153】
更に、本発明の第1及び第2の態様の化合物又は製剤は各々、当技術分野で公知又は開発された任意の経路によって投与することができることが、当業者には理解されよう。例えば、化合物又は製剤は、非経口注射(例えば、静脈内、皮下又は筋肉内)、経口、局所又は吸入によって投与されてもよい。
【0154】
一実施形態では、化合物又は製剤は、全身投与され、例えば静脈内投与される。あるいは、化合物又は製剤は、例えば、TGase媒介タンパク質修飾が阻害される標的部位又はその近傍に局所投与される。
【0155】
本発明による化合物又は製剤による治療は、一定期間にわたる単回投与又は複数回投与からなってもよい。有利には、化合物又は製剤は繰り返し投与される。
【0156】
本発明の化合物及び製剤はまた、化合物又は製剤を必要な部位、例えば固形腫瘍の近傍に直接放出する外科的に埋め込まれた装置によって投与されてもよい。
【0157】
当業者であれば、本発明の化合物を任意の哺乳動物の治療に使用してもよいことを理解するであろう。好ましくは、対象はヒトである。あるいは、対象は、イヌ、ネコ、ウマ、又は他の家畜若しくは農場の哺乳動物であってもよい。
【0158】
本発明の更なる態様は、臓器を、本発明の第1の態様による化合物又は本発明の第2の態様による製剤と接触させることを含む、移植された臓器の拒絶を予防又は治療するための方法を提供する。したがって、本発明は、移植された臓器の拒絶を予防又は治療するための医薬の調製における本発明の第1の態様による化合物の使用を提供する。
【0159】
一実施形態では、臓器は心臓、肺、腎臓又は肝臓である。
【0160】
したがって、臓器は腎臓であってもよい。移植される腎臓は、しばしば、TG2及びおそらく他のトランスグルタミナーゼのいくらかのアップレギュレーションを示す。更に、移植後に拒絶された腎臓は、過剰な瘢痕化並びにトランスグルタミナーゼ活性及び架橋のアップレギュレーションを示すことが多い(Abo-Zenah et al.,2001,J.Am.Soc.Nephrol.12,4454A)。このような組織変性及びその後の臓器拒絶は、トランスグルタミナーゼ阻害剤で腎臓(又は他の臓器)を治療することによって予防されてもよい。
【0161】
化合物又は製剤は、臓器の移植の前、移植の間及び/又は後に送達されてもよいことが理解されるであろう。したがって、一実施形態では、臓器は、移植前に、例えば、本発明の第1の態様による化合物を含有する溶液で灌流及び/又は浸漬することによって治療される。
【0162】
代替の実施形態において、臓器は、患者への移植の間及び/又は後に治療される。有利には、化合物又は製剤は、移植部位又はその近傍に、例えば局所投与によって送達される。
【0163】
理論に束縛されるものではないが、本発明の化合物は、実施例中のデータによって証明されるように、トランスグルタミナーゼの強力な阻害剤であると考えられる。更に、本発明の化合物は、肝細胞及びミクロソームに対して比較的安定であり、並びに比較的生物学的に利用可能であると考えられる。
【0164】
本発明の化合物(及びその製剤)は、上記の適応症における使用のため、又は別様の使用のためであるかにかかわらず、先行技術で既知の他の療法よりも、より効果的であり、より毒性が低く、より長く作用し、より効力があり、より副作用が少なく、より吸収されやすく、かつ/又はより良好な薬物動態プロファイル(例えば、より高い経口生物学的利用能及び/若しくはより低いクリアランス)を有し、かつ/又は他の有用な薬理学的、物理的、若しくは化学的特性を有し得るという利点を有し得る。特に、本発明の化合物は、インビボでより有効であり、かつ/又は有利な特性を呈するという利点を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0165】
以下の図面は、本発明の概念の様々な態様を説明するために提供されており、本明細書で指定されない限り、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【
図1】化合物Ex-1を用いた経口薬物動態試験の結果を示す。
【実施例】
【0166】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてより詳細に説明される。
【0167】
以下に記載の反応スキームは、発明の化合物の調製に用いられる方法論の一般的な説明を提供することを意図している。本明細書に提供される実施例は、発明の化合物、並びにそのような化合物及び中間体の調製を限定するためではなく、説明するために提供される。
【0168】
発明の化合物を合成するために利用される全ての出発物質、ビルディングブロック、試薬、酸、塩基、脱水剤、溶媒、及び触媒は、市販されているか、又は文献、例えばHouben-Weyl「Science of Synthesis」volumes 1-48,Georg Thieme Verlag、及びその後の版に記載の手順によって通常通り調製することができるかのいずれかである。市販の試薬は、更に精製することなく使用された。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、予め充填されたBiotage(商標)Sfarシリカ(High Capacity Duo 20μm)カートリッジを用いて行った。イオン交換クロマトグラフィーは、Isolute(商標)SCX 2カートリッジを用いて行った。
【0169】
反応は、好適な溶媒若しくは希釈剤、又はそれらの混合物の存在下で、有機合成の当業者に既知の様式で実行され得る。反応はまた、必要に応じて、酸又は塩基の存在下で、冷却又は加熱しながら、例えば、約-30℃~約150℃の温度範囲で実行され得る。いくつかの実施形態では、反応は、約0℃~約100℃の温度範囲で、より具体的には、室温~約80℃の温度範囲で、開放若しくは閉鎖反応容器内で、及び/又は不活性ガス、例えば窒素雰囲気中で実行される。
【0170】
略語
本明細書で使用される略語は、当業者には既知であろう。特に、以下の略語が本明細書で使用され得る。
aq.:水性
as:見かけの一重線
br:ブロード
CDCl3:重水素化クロロホルム
CV:カラム容積
d:二重線
dd:二重線の二重線
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO-d6:ジメチルスルホキシド-d6
ESI:エレクトロスプレーイオン化
EtOAc:酢酸エチル
h:時間
HATU:N-[(ジメチルアミノ)(3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-イルオキシ)メチリデン]-N-メチルメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
HPLC-MS:高速液体クロマトグラフィー-質量分析
J:結合定数
LC-MS:液体クロマトグラフィー-質量分析
m:多重線
MeCN:アセトニトリル
MeOH:メタノール
min:分
m/z:質量/電荷比
NH3:アンモニア
NMR:核磁気共鳴
PS:ポリマー担持
q:四重線
quant:定量的
RT:室温
Rt:保持時間
s:一重線
satd.:飽和
SCX-2:強カチオン交換、Si-プロピルスルホン酸
Na2SO4:硫酸ナトリウム
t:三重線
td:二重線の三重線
TFA:トリフルオロ酢酸
【0171】
分析方法
いくつかの化合物を、逆相分取HPLC-MS:分取C-18カラム(Phenomenex Luna C18(2)、250×21.2mm、5μm又はWaters Exbridge OBD C18、250×19mm、5μm)を使用する分取LC-MSによる質量指向精製によって精製した。
【0172】
生成物及び中間体の分析は、逆相分析HPLC-MSを用いて、以下に示すパラメータを用いて行った。
【0173】
HPLC分析方法:
方法A:AnalpH2_MeCN_2分:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、50×2.1mm;A=水+0.1% ギ酸;B=MeCN;45℃;%B:0.0分5%0.6mL/分、0.05分5%0.6mL/分、1.6分95%0.6mL/分、2.25分95%0.75mL/分、2.26分5%0.6mL/分、2.6分5%0.6mL/分。
【0174】
方法B:AnalpH9_MeCN_2分:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、50×2.1mm;A=10mM重炭酸アンモニウム;B=MeCN;45℃;%B:0.0分5%0.6mL/分、0.05分5%0.6mL/分、1.6分95%0.6mL/分、2.25分95%0.75mL/分、2.26分5%0.6mL/分、2.6分5%0.6mL/分。
【0175】
方法C:AnalpH2_MeOH_4分:Phenomenex Luna C18(2)3μm、50×4.6mm;A=水+0.1% ギ酸;B=MeOH+0.1% ギ酸;45℃;%B:0分5%2.25mL/分、1分37.5%2.2mL/分、3分95%2.2mL/分、3.50分95%2.30mL/分、3.51分5%2.3mL/分、4.0分5%;2.25mL/分。
【0176】
方法D:AnalpH2_MeCN_4分:Waters Sunfire C18 3.5μm、50×4.6mm;A=水+0.1% ギ酸;B=MeCN;45℃;%B:0.0分5%2.25mL/分、1.0分37.5%2.2mL/分、3.0分95%2.2mL/分、3.5分95%2.3mL/分、3.51分100%2.3mL/分、4.0分100%2.3mL/分。
【0177】
方法E:AnalpH2_MeCN_4分:LUNA C18(2)3μm 100Å、50×4.6mm;A=水+0.1% ギ酸;B=MeCN;45℃;%B:0.0分5%2.25mL/分、1.0分37.5%2.2mL/分、3.0分95%2.2mL/分、3.5分95%2.3mL/分、3.51分5%2.3mL/分、4.0分5%2.25mL/分。
【0178】
方法F:AnalpH2_MeOH_4分:LUNA C18(2)3μm 100Å、50×4.6mm;A=水+0.1% ギ酸;B=MeOH;45℃;%B:0.0分5%2.25mL/分、1.0分37.5%2.2mL/分、3.0分95%2.2mL/分、3.5分95%2.3mL/分、3.51分5%2.3mL/分、4.0分5%2.25mL/分。
【0179】
方法G:QC_AnalpH2_MeCN_8分:ACQUITY UPLC CSH C18 1.7μm、100×2.1mm;A=水+0.1% ギ酸;B=MeCN;45℃;%B:0.0分5%0.35mL/分、0.05分5%0.35mL/分、5分95%0.35mL/分、6.5分95%0.35mL/分、6.6分5%0.35mL/分、9分5%0.35mL/分。
【0180】
方法H:AnalpH2_MeOH_QC_V1:Phenomenex Gemini NX C18(2)5μm、150×4.6mm;A=水+0.1% ギ酸;B=MeOH+0.1% ギ酸;40℃;%B:0分5%1.5mL/分、0.5分5%1.5mL/分、7.5分95%1.5mL/分、10分95%1.5mL/分、10.10分5%1.5mL/分、13.0分5%1.5mL/分。
【0181】
方法I:AnalpH2_MeCN_QC_V1:Phenomenex Gemini NX C18(2)5μm、150×4.6mm;A=水+0.1% ギ酸;B=MeCN+0.1% ギ酸;45℃;%B:0.0分5%1.5mL/分、0.50分5%1.5mL/分、7.5分95%1.5mL/分、10.0分95%1.5mL/分、10.1分5%1.5mL/分、13.0分5%;1.5mL/分。
【0182】
一般的な手順
経路1-例示化合物Ex-1~Ex-22の合成
Aが-C(O)-であり、LがC1~3アルキル(例えば、メチル)である式Iの化合物を、以下のスキーム1に示す経路に従って合成した。
【0183】
【0184】
酸中間体の合成
酸中間体A1~A3は、以下の表1に示されるように、文献の方法に従って合成した。
【0185】
【0186】
実施例工程1:アミドカップリング
tert-ブチルN-[2-[4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-エチル]カルバメート(B1)の合成
【0187】
【化23】
3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボン酸(A4;995mg、4.60mmol)、HATU(2.10g、5.52mmol)及びDIPEA(2.4mL、13.8mmol)のDCM(30mL)及びDMF(5mL)中混合物を5分間撹拌し、その後、1-(Boc-アミノ-アセチル)-ピペラジン(A5;1.12g(4.60mmol)を加えた。得られた混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物をDCM(10mL)で希釈し、飽和NaHCO
3水溶液(30mL)で洗浄した。層を分離し、有機層をブライン(40mL)で洗浄し、乾燥させ(無水Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物を、DCM中の0~5%MeOHで溶出するSiO
2カラムクロマトグラフィー(Sfar 50g)により精製して、tert-ブチルN-[2-[4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-エチル]カルバメート(B1;2.03g、定量的)を灰白色固体として得た。
LCMS(方法A)。R
t 1.63分、(ESI
+)m/z 464.2[M+Na]
+;
1H NMR(400MHz,CDCl
3):5.43(as,1H),3.97(d,J=4.4Hz,2H),3.72-3.61(m,6H),3.46-3.38(m,2H),2.59-2.52(m,1H),2.15-2.03(m,6H),1.92-1.78(m,6H),1.45(s,9H)。
【0188】
以下の表2に示される中間体化合物B2~B21を、対応する酸及びアミン中間体から、実施例工程1と類似の手順を使用して(化合物B1へ)、4~16時間の範囲の反応時間で調製した。
【0189】
【0190】
【0191】
実施例工程2:Boc脱保護
(3,5-ジフルオロ-1-アダマンチル)-[(2S)-2-メチルピペラジン-1-イル]メタノン(C1)の合成
【0192】
【化24】
TFA(176μL、2.30mmol)を、tert-ブチル(3S)-4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)-3-メチル-ピペラジン-1-カルボキシレート(B19;92mg、0.23mmol)のDCM(2.0mL)中撹拌溶液に室温で滴下添加した。得られた混合物を30分間撹拌した。次いで、反応混合物を真空中で濃縮して残渣を得、これをDCM(5mL)に溶解し、SCX-2カートリッジ(5g)に通し、MeOH(3CV)、続いてDCM(3CV)で洗浄した。生成物をMeOH(6CV)中の1M NH
3で溶出し、有機物を真空中で濃縮して、(3,5-ジフルオロ-1-アダマンチル)-[(2S)-2-メチルピペラジン-1-イル]メタノン(C1;68.5mg、定量的)を淡褐色固体として得た。
LC-MS(方法D):R
t 1.21分、(ESI
+)m/z 299.3[M+H]
+。
【0193】
以下の表3に示される中間体化合物C2~C7を、実施例工程2と類似の手順を使用して(化合物C1へ)、30分~4時間の範囲の反応時間で調製した。
【0194】
【0195】
実施例工程3:アミドカップリング
tert-ブチルN-[2-[(3S)-4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)-3-メチル-ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-エチル]カルバメート(B22)の合成
【0196】
【化25】
BOC-グリシン(40mg、0.228mmol)、HATU(86.7mg、0.23mmol)及びDIPEA(119μL、0.680mmol)のDCM(3mL)及びDMF(1mL)中の混合物を5分間撹拌し、その後、(3,5-ジフルオロ-1-アダマンチル)-[(2S)-2-メチルピペラジン-1-イル]メタノン(C1;68mg、0.228mmol)を加えた。得られた混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物をDCM(10mL)で希釈し、飽和NaHCO
3(30mL)で洗浄した。層を分離し、有機層をブライン(40mL)で洗浄し、乾燥させ(無水Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物を、DCM中の0~10%MeOHで溶出するSiO
2カラムクロマトグラフィー(Sfar 25g)により精製して、tert-ブチルN-[2-[(3S)-4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)-3-メチル-ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-エチル]カルバメート(B22;86mg、82%)を灰白色固体として得た。
LC-MS(方法D)。R
t 2.44分、(ESI
+)m/z 456.3[M+H]
+。
【0197】
以下の表4に示される中間体化合物B23~B28を、実施例工程3と類似の手順を使用して(化合物B22へ)、3~16時間の範囲の反応時間で調製した。
【0198】
【0199】
中間体(B30)の調製
3-[4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)アセチル]ピペラジン-1-カルボニル]アダマンタン-1-カルボン酸(B29)の合成
【0200】
【化26】
メチル3-[4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)アセチル]ピペラジン-1-カルボニル]アダマンタン-1-カルボキシレート(B12;222mg、0.479mmol)のMeOH(5mL)中溶液に、水酸化ナトリウム(19mg、0.479mmol)を加えた。次いで、反応混合物を50℃で16時間撹拌し、次に30℃で真空中で濃縮した。残渣を水に溶解し、1M HClで酸性化し、EtOAcで抽出した。有機層を乾燥させ(無水Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮して、3-[4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)アセチル]ピペラジン-1-カルボニル]アダマンタン-1-カルボン酸(B29;74mg、35%)を灰白色固体として得て、これを更に精製することなく次の工程で使用した。
LC-MS(方法C)。Rt 2.84分、(ESI
+)m/z 450.4[M+H]
+。
【0201】
tert-ブチルN-[2-[4-[3-(ジメチルカルバモイル)アダマンタン-1-カルボニル]ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-エチル]カルバメート(B30)の合成
【0202】
【化27】
3-[4-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)アセチル]ピペラジン-1-カルボニル]アダマンタン-1-カルボン酸(B29;72mg、0.160mmol)及びDIPEA(0.11mL、0.641mmol)のDCM(3.0mL)中混合物を5分間撹拌し、その後、ジメチルアミン塩酸塩(14.4mg、0.180mmol)を添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物をDCM(10mL)で希釈し、飽和NaHCO
3水溶液(30mL)で洗浄した。層を分離し、有機層をブライン(40mL)で洗浄し、乾燥させ(無水Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物を、DCM中の0-10%MeOHで溶出するSiO
2カラムクロマトグラフィー(Sfar 10g)により精製して、tert-ブチルN-[2-[4-[3-(ジメチルカルバモイル)アダマンタン-1-カルボニル]ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-エチル]カルバメート(B30;49.7mg、65%)を灰白色固体として得た。
LC-MS(方法C)。R
t 2.23分、(ESI
+)m/z 499.2[M+Na]
+。
【0203】
実施例工程4:Boc脱保護
2-アミノ-1-[4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル]エテノン(D1)の合成
【0204】
【化28】
TFA(3.5mL、46.0mmol)を、tert-ブチルN-[2-[4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-エチル]カルバメート(B1;2.03g、4.6mmol)のDCM(10mL)中撹拌溶液に室温で滴下添加した。得られた混合物を30分間撹拌した。次いで、反応混合物を真空中で濃縮して残渣を得、これをDCM(5mL)に溶解し、SCX-2カートリッジ(5g)に通し、MeOH(3CV)、続いてDCM(3CV)で洗浄した。生成物をMeOH(6CV)中の1M NH
3で溶出し、有機物を真空中で濃縮して、2-アミノ-1-[4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル]エタノン(D1;1.42g、90%)を淡褐色固体として得た。
LC-MS(方法B)。R
t 1.30分、(ESI
+)m/z 342.2[M+H]
+;
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 3.72-3.62(m,6H),3.52(s,2H),3.44-3.37(m,2H),2.59-2.52(m,1H),2.29-1.79(m,14H)。
【0205】
以下の表5に示される中間体化合物D2~D22を、実施例工程4と類似の手順を使用して(化合物D1へ)、反応時間を30分~2時間で変化させて調製した。
【0206】
【0207】
【0208】
実施例工程5:アクリルアミドの調製
N-[2-[4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-エチル]プロパ-2-エナミド(Ex-1)の合成
【0209】
【化29】
2-アミノ-1-[4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル]エタノン(D1;1.42g、4.16mmol)のDCM(20mL)中撹拌溶液に、トリエチルアミン(1.74mL、12.48mmol)を添加し、続いて塩化アクリロイル(504.19μL、6.24mmol)を0℃で滴下添加した。溶液を室温に加温し、1時間撹拌した。反応混合物をDCM(10mL)と飽和NaHCO
3(10mL)との間で分配した。有機相を分離し、乾燥させ(無水Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物を、DCM中0~10%MeOHで溶出するSiO
2カラムクロマトグラフィー(Sfar 10g)により精製し、続いて逆層クロマトグラフィーにより精製して、N-[2-[4-(3,5-ジフルオロアダマンタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル]-2-オキソ-エチル]プロパ-2-エナミド(Ex-1;900mg、55%)を白色固体として得た。
LC-MS(方法G)。R
t 3.52分、(ESI
+)m/z 396.3[M+H]
+;
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 6.64(as,1H),6.32(dd,J=16.8,2.0Hz 1H),6.19(dd,J=16.8,10.0Hz 1H),5.69(dd,J=10.0,2.0Hz,1H),4.16(d,J=4.0Hz,2H),3.74-3.65(m,6H),3.49-3.44(m,2H),2.60-2.52(m,1H),2.18-2.04(m,6H),1.92-1.79(m,6H)。
【0210】
以下の表6に示される実施例化合物Ex-2~Ex-22を、実施例工程5と類似の手順を使用して(化合物D1へ)、反応時間を30分~2時間で変化させて調製した。
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
経路2-例示化合物Ex-23~Ex-24の合成
Aが-S(O)2-であり、Lがアリール(例えば、フェニル)である式Iの化合物を、以下のスキーム2に示す経路に従って合成した。
【0217】
【0218】
中間体(A6)を、修正された後処理手順を使用する文献の手順を使用して調製した(J.Med.Chem.,2012,55,1021-1046)。
【0219】
実施例工程6:アミドカップリング
(4-((4-ニトロフェニル)スルホニル)ピペラジン-1-イル)((3s,5s,7s)-3,5,7-トリフルオロアダマンタン-1-イル)メタノン(C8)の合成
【0220】
【化31】
4-((4-ニトロフェニル)スルホニル)ピペラジン-1-イウム2,2,2-トリフルオロアセテート(A6;316mg、0.82mmol)及びトリエチルアミン(190μL、1.37mmol)のDCM(10mL)中撹拌溶液に、3,5,7-トリフルオロアダマンタン-1-カルボン酸(160mg、0.68mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(105mg、0.78mmol)、次いでN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(163mg、0.85mmol)を一度に加えた。反応物を室温で14時間撹拌した後、反応混合物をNaHCO
3及びブラインの溶液で洗浄した。溶媒を除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(70%Et
2O/ヘキサン)を介して精製して、標題化合物(C8)を白色固体として得た(88mg、26%)。
1H NMR(400MHz,CD
3OD)δ 8.24(d,J=8.9Hz,2H),7.79(d,J=8.9Hz,2H),3.67-3.49(m,4H),2.96-2.82(m,4H),1.99-1.85(m,6H),1.80-1.71(m,6H)。
【0221】
以下の表7に示される中間体化合物C9を、化合物C8の合成と類似の手順を使用して調製した。
【0222】
【0223】
実施例工程7:ニトロ基の還元
(4-((4-アミノフェニル)スルホニル)ピペラジン-1-イル)((3s,5s,7s)-3,5,7-トリフルオロアダマンタン-1-イル)メタノン(D23)の合成
【0224】
【化32】
(4-((4-ニトロフェニル)スルホニル)ピペラジン-1-イル)((3s,5s,7s)-3,5,7-トリフルオロアダマンタン-1-イル)メタノン(C8;86mg、0.18mmol)のEtOH溶液中の撹拌溶液に、SnCl
2×2H
2O(1.20g、0.90mmol)を加えた。反応物を6時間還流した後、溶媒を蒸発させ、残渣を水とEtOAcとに分配した。混合物をNaOHでアルカリ性にし、セライト(商標)のプラグを通して濾過した。有機相を分離し、溶媒を真空中で除去して、ベージュ色の固体(D23)を得て、これを更に精製することなく次の工程で使用した(0.065g、79%)。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 7.49(d,J=8.8Hz,2H),6.70(d,J=8.8Hz,2H),4.33(s,2H),3.77-3.67(m,4H),3.02-2.90(m,4H),2.21-2.05(m,6H),2.02-1.96(s,6H)。
【0225】
以下の表8に示される中間体化合物D24を、中間体化合物D23の合成と類似の手順を使用して調製した。
【0226】
【0227】
実施例工程8:アクリルアミドの調製
N-(4-((4-((3s,5s,7s)-3,5,7-トリフルオロアダマンタン-1-カルボニル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)フェニル)アクリルアミド(Ex-23)の合成
【0228】
【化33】
(4-((4-アミノフェニル)スルホニル)ピペラジン-1-イル)((3s,5s,7s)-3,5,7-トリフルオロアダマンタン-1-イル)メタノン(D23;65mg、0.14mmol)及びDIPEA(0.07mL、0.43mmol)のTHF中氷冷溶液に、塩化アクリロイル(0.02mL、0.28mmol)を滴下添加した。次いで、得られた反応混合物を60℃に14時間加熱した。溶媒を蒸発させ、残った残渣をDCMに溶解し、NaHSO
4、NaHCO
3及びブラインの溶液で洗浄した。有機相を分離し、溶媒を真空中で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(20%EtOAC/DCM)を介して精製して、標題化合物(Ex-23)を白色固体として得た(59mg、81%)。
LC-MS(方法G)。R
t 4.53分、(ESI
+)m/z 512.1[M+H]
+。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 7.80(d,J=8.9Hz,2H),7.71(d,J=8.8Hz,2H),7.62(s,1H),6.50(dd,J=16.8,1.0Hz,1H),6.28(dd,J=16.8,10.3Hz,1H),5.87(dd,J=10.3,1.0Hz,1H),3.81-3.67(m,4H),3.09-2.94(m,4H),2.15(s,3H),2.10-1.91(m,9H)。
【0229】
以下の表9に示される実施例化合物Ex-24を、化合物Ex-23の合成と類似の手順を使用して調製した。
【0230】
【0231】
実施例9-TG2活性の阻害
方法論
TG2活性を、組換えヒトトランスグルタミナーゼ2(rhTG2)を使用して、N,N’-ジメチルカゼインへのビオチンX-カダベリン取り込みによって測定した。50mM Tris-HCl(pH 8.0)中の10mg/mL N,N’-ジメチルカゼイン50μLで96ウェルプレートをコーティングした後、プレートをTBS/Tween(pH 7.6)及びTBS(pH 7.6)で洗浄した。試験化合物(様々な濃度)の有無にかかわらず、50mM Tris-HCl、pH 7.4中に400ng/mLのrhTG2、0.1mMビオチン-カダベリン(BTC)、1mM DTT及び10mM CaCl2を含む100μL/ウェルのrhTG2反応液を各ウェルに添加した。反応を37℃で90分間進行させた。次いで、プレートをTBS/Tween(pH 7.6)及びTBS(pH 7.6)で1回洗浄した後、100μLのSuperBlock試薬で37℃にて30分間ブロッキングした。Superblock緩衝液で1:2000に希釈した100μLのExtravidin-peroxidaseと共に37℃で1時間インキュベートすることによって、N,N’-ジメチルカゼインへのBTC取り込みを検出した。別の一組の洗浄後、ABTS基質を用いてTG2活性を測定した。マイクロプレートリーダーを用いて405nmでの吸光度を測定した。
【0232】
結果
TG2 IC50アッセイの結果を以下の表10に示す。
【0233】
結果は、式Iの化合物がTG2の強力な阻害剤であることを示している。
【0234】
【0235】
実施例10:マウス肝細胞試験
方法論
試験化合物の代謝安定性は、薬物代謝に関与する最も重要な酵素(シトクロムP450)の主要な供給源であるマウス肝細胞の存在下でインキュベートした場合の化合物の消失速度の決定によって測定した。初代肝細胞の存在下での薬物安定性の試験は、インビボ薬物安定性の迅速な予測を可能にする有益なモデルとして受け入れられている。
【0236】
以下のプロトコルを使用した。
【0237】
凍結保存されたプール肝細胞は、信頼できる商業的供給業者から入手される。凍結保存肝細胞の懸濁液(2mM L-グルタミン及び25mM HEPESを添加したWilliams E培地中、最終細胞密度0.5×106生存細胞/mL)を37℃でプレインキュベートした後、試験化合物(最終基質濃度1μM;最終DMSO濃度0.25%)を添加して反応を開始させた。最終インキュベーション体積は500μLである。2つの対照化合物(ベラパミル及びラロキシフェン)を各肝細胞試験に含める。
【0238】
各化合物を37℃で0、5、10、20、40及び60分間インキュベートする。適切な時点で、1:3の比でアセトニトリル中にインキュベート物を移すことによって反応を停止させる。終結プレートを4℃で30分間3000rpmで遠心分離して、タンパク質を沈殿させる。
【0239】
タンパク質沈殿後、試料上清を最大4つの化合物のカセット中で合わせ、内部標準を添加し、試料をLC-MS/MS条件を用いて分析する。
【0240】
データが処理される。時間に対するlnピーク面積比(化合物ピーク面積/内部標準ピーク面積)のプロットから、線の勾配を決定する。続いて、半減期(t1/2)及び固有クリアランス(CLint)を以下の式を用いて計算する:
消失速度定数(k)=(-勾配)
【0241】
【数1】
ここで、V=インキュベーション体積(μL)/細胞数である。
アッセイ感度の下限(t
1/2>3×インキュベーション時間に基づいて計算される)を下回るCL
int値は、定量化の下限未満(<LOQ)として分類される。
【0242】
各々の種について2つの対照化合物をアッセイに含め、これらの化合物についての値が特定の限界内にない場合、結果を棄却し、実験を繰り返す。
【0243】
結果
マウス肝細胞試験の結果を以下の表11にまとめる。
【0244】
結果は、式Iのいくつかの例示的な化合物が、マウス肝細胞に対して妥当な安定度を示し、妥当な固有クリアランスを有することを示す。
【0245】
【0246】
実施例11:マウス及びヒトミクロソーム試験
方法論
試験化合物の代謝安定性は、薬物代謝に関与する最も重要な酵素(シトクロムP450)の主要な供給源であるマウス及びヒトミクロソームの存在下でインキュベートした場合の化合物の消失速度の決定によって測定した。肝ミクロソームの存在下での薬物安定性の試験は、第I相代謝及びインビボ薬物安定性の迅速な予測を可能にする有益なモデルとして受け入れられている。
【0247】
以下のプロトコルを使用した。
【0248】
凍結保存された肝ミクロソームは、信頼できる商業的供給業者から入手される。ミクロソームの懸濁液(DPBS緩衝液中0.5mg/mLタンパク質濃度)を1mM NADPHと共に37℃でプレインキュベートした後、試験化合物を添加して(最終基質濃度2μM;最終DMSO濃度0.02%)反応を開始させた。最終インキュベーション体積は200μLである。2つの対照化合物(ベラパミル及びデキストロメトルファン)を各ミクロソーム安定性試験に含める。
【0249】
各化合物を37℃で0、2、15、30及び60分間インキュベートする。適切な時点で、1:100の比で冷アセトニトリル/水中にインキュベート物を移すことによって反応を停止させる。プレートを混合し、LC-MS/MS条件を用いて試料を分析する。
【0250】
データが処理される。各化合物を標準曲線に対して定量化する。時間に対するln化合物濃度のプロットから、線の勾配を決定する。続いて、半減期(t1/2)及び内因性
クリアランス(CLint)は、以下の式を用いて計算される:
消失速度定数(k)=(-勾配)
【0251】
【数2】
V=インキュベーション体積(mL)/インキュベーション中のタンパク質(mg)
【0252】
各々の種について2つの対照化合物をアッセイに含め、これらの化合物についての値が特定の限界内にない場合、結果を棄却し、実験を繰り返す。
【0253】
結果
マウス及びヒトミクロソーム試験の結果を以下の表11にまとめる。
【0254】
結果は、式Iの例示的な化合物が、マウス及びヒトミクロソームに対して良好な安定性を示し、低い固有クリアランスを有することを示す。
【0255】
【0256】
実施例12:C57Bl/6マウスにおけるEx-1の皮下投与の薬物動態試験
方法論
雄C57Bl/6マウスからの血漿試料を、2.5%DMSO/97.5%クレプトースの溶液(PBS pH 7.4中5%w/v)として製剤化された5mg/kgのEx-1を皮下投与した動物から収集した。皮下投与後の8つの時点(投与後5、15、30分、1時間、2時間、4時間、6時間及び8時間)で、麻酔(イソフルラン)下で末端心臓穿刺によって血液試料を採取した。血液試料を、各時点で3匹のマウスのセットから、抗凝固剤としてヘパリンを含有する標識された微量遠心分離チューブに収集した。血漿試料を全血の遠心分離によって分離した。実施例12に詳述した方法に従って試料を処理した。
【0257】
結果
マウスにおける皮下投与薬物動態試験についての結果を、以下の表13及び14に表にし、
図1にグラフで示す。
【0258】
結果は、皮下投与後のEx-1の平均血漿最大濃度(Cmax)が約4957nMであることを示す。
【0259】
【0260】
【0261】
実施例13-FXIIaI、TG1及びTG3活性の阻害
方法論-FXIIIa及びTG1
市販のマイクロアッセイを製造者の指示に従って使用した(TG-CovTest;Covalab)(Hitomi et al.,2009,Amino Acids 36,619-624)。同様の目的のために、このアッセイを使用していくつかのTG2アッセイも行った。簡潔には、pepF11KA(トロンビンで予め活性化されたFXIII)及びpepK5(TG1)(Hitomi et al.,2009)を含むTG特異的ビオチン化ペプチドを、96ウェルマイクロプレート上に固定されたポリアミン基質の存在下で、適切なTGファミリーメンバーと共にインキュベートした。取り込まれたビオチン化ペプチドを、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを用いて測定し、次いで、o-フェニレンジアミン二塩酸塩基質を用いて測定した。マイクロプレートリーダーを用いて490nmで吸光度を測定した。
【0262】
方法論-TG3
蛍光TG3アッセイを記載のように実施した。アッセイ条件は、37℃で、50mM Hepes、pH 8.0、20mM CaCl2、0.2mM DTT、0.05%Pluronic F-127中の10nM予備活性化TG3であった。速度論的測定を記録した(励起、350nm;発光、535nm)、線形フィットから得られた反応速度を酵素活性の尺度として使用した。全てのデータ点を、適切な陽性(完全阻害)及び陰性(阻害なし)対照を使用して0%~100%阻害の間で正規化した。
【0263】
結果
FXIIIa、TG1及びTG3IC50アッセイの結果を以下の表15に示す。
【0264】
結果は、式Iの例示的な化合物についてTG2の選択的阻害を明らかにした。
【0265】
【0266】
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