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特表2025-504468トリフルオロアミンオキシドの製造装置及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】トリフルオロアミンオキシドの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/084 20060101AFI20250204BHJP
   B01D 8/00 20060101ALI20250204BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C01B21/084
B01D8/00
H01L21/205
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543075
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2023000925
(87)【国際公開番号】W WO2023140637
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0009443
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.MONEL
(71)【出願人】
【識別番号】523062062
【氏名又は名称】エスケイ スペシャルティ コンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】チョン ソン ウン
(72)【発明者】
【氏名】クァク ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】クォン ビョン ヒャン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨン ジュン
【テーマコード(参考)】
4D076
5F045
【Fターム(参考)】
4D076BE10
4D076FA02
4D076FA12
4D076FA33
4D076HA12
4D076JA03
5F045AC02
5F045BB15
5F045EB06
(57)【要約】
本発明のトリフルオロアミンオキシドの製造装置は、気相のFNOとFを出発物質としてトリフルオロアミンオキシドを生成する光化学反応が行われる反応器と、前記反応器内に300nm~400nmの波長帯域でピーク波長を有する紫外線を照射する紫外線照射手段と、前記反応器内に気相連通し、前記反応生成物のうち生成されたトリフルオロアミンオキシドを分離捕集するための分離捕集手段を含み、前記紫外線は300nm未満の波長帯域の光の強度が300nm~400nmの波長帯域の光の強度の5%未満であることを特徴とする。【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロアミンオキシドの製造装置であって、
気相のFNOとFを出発物質としてトリフルオロアミンオキシドを生成する光化学反応が行われる反応器と、
前記反応器内に300nm~400nmの波長帯域でピーク波長を有する紫外線を照射する紫外線照射手段と、
前記反応器に気相連通し、前記反応器内で生成された反応生成物のうち生成されたトリフルオロアミンオキシドを分離捕集するための分離捕集手段とを含み、
前記紫外線は、300nm未満の波長帯域の光の強度が300nm~400nmの波長帯域の光の強度の5%未満であることを特徴とするトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項2】
前記紫外線は、350nm~370nmの波長帯域でピーク波長を有し、
前記紫外線は、300nm未満の波長帯域の光の強度が300nm~400nmの波長帯域の光の強度の1%未満であることを特徴とする請求項1に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項3】
前記紫外線は、365nmの単波長であることを特徴とする請求項2に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項4】
前記紫外線照射手段は、ピーク波長が300nm~400nmの波長帯域である放出スペクトルを有する紫外線光源と、前記紫外線光源から放出された光のうち300nm~400nmの波長帯域の成分を通過させる帯域通過フィルターを含むことを特徴とする請求項1に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項5】
前記帯域通過フィルターは、300nm未満の波長帯域を遮断する第1フィルターと、400nm超の波長帯域を遮断する第2フィルターを含むことを特徴とする請求項4に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項6】
前記帯域通過フィルターは、実質的に365nmの単波長の紫外線のみを通過させる単波長フィルターであることを特徴とする請求項4に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項7】
前記紫外線光源は、金属ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、キセノンランプまたはハロゲンランプであることを特徴とする請求項4に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項8】
前記紫外線照射手段は、紫外線(UV)LEDであることを特徴とする請求項1に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項9】
前記紫外線照射手段は、単波長の紫外線を放出するエキシマレーザであることを特徴とする請求項1に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項10】
前記分離捕集手段は、コールドトラップであることを特徴とする請求項1に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項11】
前記コールドトラップは、前記反応生成物から未反応出発物質を捕集するための第1のコールドトラップと、トリフルオロアミンオキシドを捕集するための第2のコールドトラップとを含むことを特徴とする請求項10に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項12】
前記反応器は、円筒形の胴体部と、前記胴体部の長手方向の両端部に配置された端部プレートとを含み、
前記端部プレートの少なくとも一つは紫外線に対して透明な材質で形成され、
前記紫外線照射手段は、透明な前記少なくとも一つの端部プレートを介して紫外線を照射するように配置されることを特徴とする請求項1に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項13】
前記端部プレートは、前記胴体部の前記長手方向の一端部に設置される第1端部プレートと他端部に配置される第2端部プレートとを含み、
前記第1端部プレートと前記第2端部プレートは、いずれも紫外線に対して透明な材質で形成され、
前記紫外線照射手段は、前記第1端部プレートを介して紫外線を照射する第1紫外線照射手段と、前記第2端部プレートを介して紫外線を照射する第2紫外線照射手段とを含むことを特徴とする請求項12に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項14】
前記反応器は、円筒形の胴体部と、前記胴体部の長手方向の両端部に配置された端部プレートとを含み、
前記胴体部は、紫外線に対して透明な材質からなる窓を有することを特徴とする請求項1に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造装置。
【請求項15】
トリフルオロアミンオキシドの製造方法であって、
気相のFNOとFを反応器内に供給するステップと、
前記反応器内に300nm~400nmの波長帯域でピーク波長を有する紫外線を照射するステップと、
生成物を前記反応器から排出するステップと、
排出された前記生成物からFNOを分離して捕集するステップとを含み、
前記紫外線は、300nm未満の波長帯域の光の強度が300nm~400nmの波長帯域の光の強度の5%未満であることを特徴とするトリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【請求項16】
前記紫外線は、350nm~370nmの波長帯域でピーク波長を有し、
前記紫外線は、300nm未満の波長帯域の光の強度が300nm~400nmの波長帯域の光の強度の1%未満であることを特徴とする請求項15に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【請求項17】
前記紫外線は、365nmの単波長であることを特徴とする請求項16に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【請求項18】
前記供給するステップの前に、前記反応器内を不活性ガスでパージするステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【請求項19】
前記供給するステップにおいて、前記反応器内の反応領域をFおよびFNOのうち少なくとも一つによりフラッシング(Flushing)することを特徴とする請求項15に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【請求項20】
前記紫外線を照射するステップにおいて、紫外線照射時間を前記反応器内でのFNOの生成量に基づいてリアルタイムフィードバック制御することを特徴とする請求項15に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【請求項21】
前記反応器内でのFNOの生成量は赤外線分光法によって測定することを特徴とする請求項20に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリフルオロアミンオキシド(FNO)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子またはディスプレイ素子製造のための薄膜製造工程として化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition、CVD)工程技術が広く知られている。CVDチャンバ内で半導体素子またはディスプレイ素子の薄膜を形成する場合、薄膜がCVDチャンバ内の目標物にのみ形成されることが好ましいが、薄膜形成物質は不要にもCVDチャンバ内の他の露出された表面にも堆積することになる。例えば、CVDチャンバ内の壁面などにも薄膜形成物質が堆積される。また、CVD工程の途中に目標物以外に堆積された物質が剥がれ落ちて目標物上に蒸着された薄膜の表面または薄膜が形成される目標物の表面を汚染させることがある。このような汚染は、半導体素子またはディスプレイ素子の不良を引き起こし、歩留まりを低下させる要因となる。したがって、適切な周期でCVDチャンバ内に堆積された不要な堆積物を除去する洗浄(cleaning)工程を行うことになる。このようなCVDチャンバ内の洗浄過程は手作業で行われるか、または洗浄ガスを用いて行われる。
【0003】
従来のCF、C、SF、NFのような過フッ化物が半導体あるいは電子素子の製造工程においてのチャンバの洗浄ガス、あるいは蒸着された薄膜のエッチングガスとして使われてきた。
【0004】
しかし、このような過フッ化物質は安定した物質であり、大気中に非常に長期間滞在する。また、使用後の廃ガスは、高濃度の未分解の過フッ化物質を含んでいるため、このような廃ガスを許容基準値以下に処理して大気中に放出するのに多くの費用がかかる。さらに、このような通常の過フッ化物質は、非常に高い地球温暖化指数(Global Warming Potential、GWP)値を有することが知られており(ITH100年、CO基準CF6,630、SF23,500、NF16,100)、環境に相当な負荷を与える。したがって、洗浄あるいはエッチング工程に用いられ、GWP値が低い代替ガスに対する要求が非常に高い。
【0005】
特に、三フッ化窒素(NF)ガスは、全世界的に使用量が多いだけでなく、地球温暖化指数も非常に高い。したがって、環境への負荷を減らし、半導体産業の持続的維的発展の側面でNFガスの使用量の縮小および代替できる物質開発が要求される。
このような代替ガス候補群の中、予想GWPが極めて低く、性能面で現在洗浄ガスとして用いられているNFを代替可能な物質としてトリフルオロアミンオキシド(FNO)が挙げられる。FNOは、エッチングおよび洗浄性能を左右する「F」含量が非常に高く、難分解性であるPFC、HFC、NF、SFとは異なって、地球温暖化指数が低いと予想され、未反応残存FNOの処理時に必要なエネルギーおよび環境負荷が少ないと予想され、漏洩した場合にも非刺激性である。
【0006】
代替ガス候補物質であるトリフルオロアミンオキシド(FNO)を製造する方法は、極めて限られている。
【0007】
特許文献1(米国公開特許2003/0143846A1)は、反応器の内部洗浄およびケイ素含有化合物の膜をエッチングするためのガス組成物に関する技術に関するもので、FNOを含むガス組成物を開示しており、FNOを合成する方法については、SbF触媒の下、150℃の温度でNFとNOを反応させて、NFOSb11塩を合成した後、高温(>200℃)で熱分解してFNOを得る方法を開示している。しかし、原料であるNFおよびNOに対する収率が20%程度で低く、最終生成物の純度が低い問題がある。
【0008】
本出願の出願人は、特許文献2(韓国登録特許10-2010460B1)と特許文献3(韓国登録特許10-2010466B1)でそれぞれ、前記特許文献1と同じSbF/NF/NO反応システムを用いながらも高い収率および純度でトリフルオロアミンオキシドが製造できる新しい方法を提示した。例えば、特許文献2に開示された方法によれば、NFとNOとをSbFの下で反応させて、中間生成物であるNFOSbFを得、この中間生成物をNaFと接触させて真空雰囲気で熱分解反応させる2ステップ反応を通じてトリフルオロアミンオキシド(FNO)を合成する。そして、特許文献3に開示された方法によれば、NFとNOをSbFの下で反応させて中間生成物であるNFOSbFを得るが、この反応で生成される窒素(N)を含む反応ガスを除去し、三フッ化窒素および亜酸化窒素を追加投入して前記中間生成物を製造し、この中間生成物をNaFと反応させる2ステップ反応を通じてトリフルオロアミンオキシド(FNO)を合成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国公開特許2003/0143846 A1
【特許文献2】韓国登録特許10-2010460 B1
【特許文献3】韓国登録特許10-2010466 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、前述した特許文献2と特許文献3に開示されたトリフルオロアミンオキシドの合成方法によれば、中間生成物をNaFと反応させる2番目のステップの反応のためには、真空雰囲気下で約150℃~200℃の温度に加熱しなければならない。その結果、真空工程が可能な高価な反応器を用いなければならないだけでなく、熱分解のために加熱工程が必須になるため、トリフルオロアミンオキシドの製造費用を上昇させる要因となる。また、熱分解反応の進行速度が遅く、熱分解反応に相当な時間がかかり、固相反応であり連続式反応ではないため生産性が高くない。また、配管詰まりによる製造設備の安定性の問題がある。
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする一つの課題は、製造コストの上昇を抑制することができ、生産性が高く、製造設備への影響を低減することができ、収率を改善することができるトリフルオロアミンオキシドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するための本発明の一実施形態に係るトリフルオロアミンオキシドの製造装置は、気相のFNOとFを出発物質としてトリフルオロアミンオキシドを生成する光化学反応が行われる反応器と、前記反応器内に300nm~400nmの波長帯域でピーク波長を有する紫外線を照射する紫外線照射手段と、前記反応器に気相連通され、前記反応器内で生成された反応生成物のうち、生成されたトリフルオロアミンオキシドを分離捕集するための分離捕集手段を含み、前記紫外線は300nm未満の波長帯域の光の強度が300nm~400nmの波長帯域の光の強度の5%未満であることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の実施形態に係るトリフルオロアミンオキシドの製造方法は、気相のFNOとFを反応器内に供給するステップと、前記反応器内に300nm~400nmの波長帯域でピーク波長を有する紫外線を照射するステップと、生成物を反応器から排出するステップと、排出された前記生成物からFNOを分離して捕集するステップを含み、前記紫外線は300nm未満の波長帯域の光の強度が300nm~400nmの波長帯域の光の強度の5%未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トリフルオロアミンオキシドの製造コストの上昇を抑制することができ、生産性が高く、配管詰まりなどの製造設備への影響を低減することができる。特に、本発明の製造方法によれば、トリフルオロアミンオキシドの収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例に係るトリフルオロアミンオキシドの製造装置を示す模式図である。
図2】本発明の一実施例に係る製造装置の紫外線光源の放出スペクトルと帯域通過フィルターによってフィルタリングされた照射紫外線のスペクトルを示すグラフである。
図3】本発明の他の実施例に係る製造装置の紫外線照射手段としての紫外線LEDの放出スペクトルである。
図4】本発明の一実施例に係るトリフルオロアミンオキシドの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態および実施例を説明する。ただし、以下の実施形態および実施例は、本発明の好ましい構成を例示的に説明するものに過ぎず、本発明の範囲はこれらの構成に限定されない。そして、以下の説明において、装置のハードウェア構成およびソフトウェア構成、処理の流れ、製造条件、大きさ、材質、形状等は、特に特定の記載がない限り、本発明の範囲をこれに限定しようとする趣旨ではない。
【0017】
本発明のトリフルオロアミンオキシドの製造方法によれば、気相のFNOとFを出発物質とし、これらの出発物質の混合物に、実質的に300nm未満の波長成分を持たず、300nm~400nmの波長帯域でピーク波長を有する紫外線を照射して光化学的フルオロ化によりトリフルオロアミンオキシドを製造する。すなわち、本発明のトリフルオロアミンオキシドの製造方法は、以下のような反応式によって行われる。
【0018】
【化1】
【0019】
これによれば、反応器として真空設備が必要なく、また反応のために追加加熱が必要でないため、製造費用を下げることができる。また、反応速度が速く、生産性も向上させることが可能であり、気相反応なので、配管詰まりのような製造設備の安定性の低下を低減することができる。
【0020】
特に、本発明のトリフルオロアミンオキシドの製造方法では、出発物質の混合物に照射される紫外線が実質的に300nm未満の波長成分を持たないので、生成物FNO以外の副反応を抑制することができ、FNOの収率を向上させることができる。
【0021】
以下の図面を参照して、本発明のトリフルオロアミンオキシドの製造装置及びこれを用いた製造方法について具体的に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施例に係るトリフルオロアミンオキシドの製造装置を示す模式図である。
本発明の一実施例に係るトリフルオロアミンオキシドの製造装置1は、反応器10、紫外線照射手段20およびトリフルオロアミンオキシドの分離捕集手段30を含む。
【0023】
反応器10は、図1に示すように、両端が閉塞した細長いチューブ形状を有し、例えば、円筒状の胴体部と胴体部の両端部に設けられた端部プレート11、12を含む。
【0024】
反応器10は、FNOおよびFのような出発物質やFNOのような生成物に対して耐腐食性の素材からなることが好ましい。例えば、反応器10は、モネル(Monel)、ニッケル、ステンレススチールやテフロンからなることが好ましい。
【0025】
反応器10には、紫外線に対して透明な1つ以上の窓が設けられる。例えば、反応器10の胴体部の長手方向の両端に設けられた端部プレート11、12のうち、少なくとも一つは紫外線照射手段20から照射された所定の波長帯域の紫外線が反応器10内の反応空間に入射されることを許容するように紫外線に対して透明な素材から成る。具体的に、反応器10の両端部プレート11、12のうち、出発物質の導入口から近い端部プレート11が紫外線に対して透明な素材、例えばフッ化バリウムやフッ化カルシウムから成る。
【0026】
ただし、本発明はこのような構成に限定されず、両端部プレート11、12の全てが紫外線に対して透明な素材からなってもよく、また、反応器10の長手方向の円筒面に一つ以上の透明窓がさらに設けられてもよい。
【0027】
反応器10の長手方向の円筒面には、紫外線照射手段20に隣接した位置にFNOおよびFのような出発物質またはパージガス(He)を導入するための導入口および導入バルブ13が設けられ、反対側端に生成物質を排出するための排出口および排出バルブ14が設けられる。
【0028】
紫外線照射手段20は、出発物質であるFNOおよびFが反応してFNOを生成するように、反応器10内に所定の波長帯域の紫外線を照射する。
【0029】
紫外線照射手段20により照射される紫外線は、実質的に300nm未満の波長帯域の成分を持たず、300nm~400nmの波長帯域でピーク波長を有する。例えば、紫外線照射手段20により照射される紫外線は、300nm未満の波長帯域の光の強度が300nm~400nmの波長帯域の光の強度の5%未満である。
【0030】
このように、紫外線照射手段20により照射される紫外線は、300nm未満の波長帯域の高エネルギー成分(深紫外線、DeepUV)を持たないので、これらの波長帯域の高エネルギー成分によって副反応を抑制することができ、FNOの収得収率の低下を抑制することができる。
【0031】
このために、本発明の一実施形態に係るトリフルオロアミンオキシドの製造装置1の紫外線照射手段20は、紫外線光源(不図示)と、紫外線光源から放出された紫外線のうち少なくとも300nm未満の深紫外線成分を遮断するフィルター(不図示)または300nm~400nm波長帯域の成分のみを通過させる帯域通過フィルター(不図示)を含む。
【0032】
紫外線光源としては、紫外線波長域でピーク波長を有する金属ハロゲンランプ(紫外線波長域で発光特性を持つ金属として、Fe、Tl、Sn、Zn、Hgなどが挙げられる)、キセノンランプ、水銀キセノンランプやハロゲンランプなどが用いられる。このような紫外線光源は、図2の(a)に示すように、300nm~400nmの波長帯域でピーク波長を有するが、300nm未満の深紫外線波長帯域の成分および400nm超の可視光/赤外光成分も有する。
【0033】
ここで、300nm未満の深紫外線波長帯域の成分は上述したように、反応器10内でFNOを生成する時に副反応を引き起こすようになり、FNOの収得収率を低下させる。また、400nm超の可視光/赤外光成分は、紫外線照射手段20の温度を増加させ、帯域通過フィルターの機能を低下させる。
【0034】
そこで、本発明の一実施例において、帯域通過フィルターは、300nm未満の深紫外線成分を遮断するための深紫外線遮断フィルター(第1フィルター)と、400nm超の可視光/赤外光を遮断するための可視光/赤外光遮断フィルター(第2フィルター)を含む。例えば、深紫外線遮断フィルターは、TiOのように深紫外線波長域の成分を散乱ないし反射させることができる酸化物光学フィルターで構成することができ、可視光/赤外光遮断フィルターは、SiOとZrOまたはCeOのように400nm超の波長成分を反射ないし吸収できる光学フィルターで構成することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、深紫外線及び可視光/赤外光を遮断することができれば、他の素材からなる光学フィルターを用いてもよい。例えば、銀(Ag)の薄膜を含む光学フィルターを用いてもよい。
【0035】
ここで、深紫外線遮断フィルターは、300nm未満の波長域の紫外線の透過率が300nm~400nm波長域の紫外線の透過率の5%未満になるようにするTiOの膜厚を有する。
【0036】
このような、本発明の一実施例に係る帯域通過フィルターを通過した紫外線は、図2の(b)に示すように、実質的に300nm~400nmの波長帯域の紫外線成分を有する。
【0037】
紫外線照射手段20により照射される紫外線は、より好ましくは、350nm~370nmの波長帯域でピーク波長を有し、300nm未満の波長帯域の光の強度が300nm~400nmの波長帯域の光の強度の1%未満である。このために、紫外線照射手段20の帯域通過フィルターは、300nm未満の波長帯域の紫外線の透過率が300nm~400nm波長域の紫外線の透過率の1%未満になるような構成を有する。
【0038】
最も好ましくは、紫外線照射手段20により照射される紫外線は365nmの単波長(所謂i-line)である。このために、本発明の一実施例に係る紫外線照射手段20は、紫外線光源(不図示)と単波長通過フィルター(不図示)を含む。ここで、単波長通過フィルターは、TaおよびSiOを含む狭帯域の通過フィルターであり、実質的に365nmの紫外線成分(i-line)のみを通過させる。
【0039】
本実施例では、紫外線照射手段20が金属ハロゲンランプなどの紫外線光源を用いると説明したが、本発明はこれに限定されず、300nm~400nmの波長帯域で、より好ましくは、350~370nmの波長帯域でピーク波長を有するUV-LEDを用いてもよい。
【0040】
例えば、本発明の他の実施形態による製造装置1の紫外線照射手段20は、図3に示すような放出スペクトルを有するUV-LEDを用いることができる。
【0041】
このような放出特性を持つUV-LEDは、350~370nmの波長帯域でピーク波長を有するので、これより短い波長帯域(例えば、300nm~350nm)でピーク波長を有する場合に比べて、反応結果の副反応を効果的に抑制して、FNOの収率をさらに改善することができる。また、LEDは発光を制御する基板回路に電流を流してから、光の出力が安定するまでの時間が短く、紫外線ランプのように常時発光させる必要がないため、省エネかつ長寿命というメリットを持つ。また、発光スペクトルが紫外線ランプに比べて狭い波長帯域に集中するので、帯域通過フィルターの構造を単純にできたり、帯域通過フィルターを省略することができ、帯域通過フィルターを通過した紫外線の照度の減少を抑制することができ、これにより、紫外線照射時間を減少させて生産性を向上させることもできる。
【0042】
紫外線照射手段20の他の例として、エキシマレーザを用いてもよい。例えば、300nm~400nmの波長帯域で単波長レーザを放出するものとして、XeClエキシマレーザ(波長308nm)、XeFエキシマレーザ(波長351nm)などを用いることができる。
【0043】
図1では、紫外線照射手段20が反応器10の長手方向の一端部に設置された端部プレート11近傍に配置されることが示されているが、本発明はこれに限定されない。
【0044】
例えば、本発明の他の実施形態に係るトリフルオロアミンオキシドの製造装置1においては、反応器10の長手方向の一端部に設置される端部プレート(11、第1端部プレート)と他端部に配置される端部プレート(12、第2端部プレート)が全て紫外線に対して透明な材質で形成され、紫外線照射手段20は端部プレート11を介して紫外線を照射する第1紫外線照射手段と、端部プレート12を介して紫外線を照射する第2紫外線照射手段を含んでもよい。
【0045】
このような構成により、反応器10の両端部プレート11、12の全てを介して反応空間内に紫外線を十分に照射することができ、生成物の収得収率をさらに向上させることができる。
【0046】
本発明の一実施例に係るトリフルオロアミンオキシドの製造装置1は、気体状態で反応器10外部に排出された生成物からトリフルオロアミンオキシドを分離して捕集するためのトリフルオロアミンオキシド分離捕集手段30としてコールドトラップを含む。
【0047】
反応器10から排出された気体状態の生成物には、トリフルオロアミンオキシドの他に、未反応のFNO、F等が含まれていることができ、トリフルオロアミンオキシドの沸点が-89℃で、FNOの沸点(-56℃)とFの沸点(-188℃)の間にあるので、トリフルオロアミンオキシドの分離捕集手段30としてのコールドトラップは少なくとも2段で構成されることが好ましい。すなわち、第1のコールドトラップは、まず、反応器10の排出バルブ14を介して排出された気相生成物からFNOを凝縮させて分離し、第2のコールドトラップが第1のコールドトラップから排出された気相ストリームからトリフルオロアミンオキシドを凝縮させて分離することができる。第2のコールドトラップから排出された気相ストリームに含まれたFは、スクラバーにより除去処理することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、気体状に排出されたトリフルオロアミンオキシドを分離して捕集できる他の手段を用いてもよい。
【0048】
図1に図示しなかったが、本発明の一実施例に係るトリフルオロアミンオキシドの製造装置1は、紫外線照射手段20及び反応器10を適切な温度に調節するための温度調節手段(不図示)をさらに含むことができる。例えば、温度調節手段として、送風手段やチラーを用いることができる。チラーの冷媒により反応器10の温度を調節する場合には、反応器10の長手方向の円筒面にチラーの冷媒管を設けることが好ましい。
【0049】
以下、図4を参照して、本発明の一実施例に係るトリフルオロアミンオキシドの製造方法を各ステップ別に詳しく説明する。本発明の一実施例に係る製造方法は、バッチ(batch)式であることを前提に説明するが、本発明はこれに限定されず、連続式またはこれらを組み合わせた方式で行われることができる。
【0050】
まず、反応器10内に不活性ガス(例えば、ヘリウム)を供給して反応器10内の反応空間をパージする(S10)。これにより、以前のバッチ工程で反応器10内に残っていた気相生成物を反応器10から完全に除去することができる。
【0051】
次いで、反応器10内に出発物質として気相のFとFNOを供給する(S20)。このとき、導入バルブ13だけでなく排出バルブ14も開放して、反応器10内の反応領域が出発物質の混合物によりフラッシングされるようにし、フラッシングが完了すると、導入バルブ13と排出バルブ14を閉じ、反応器10内の反応領域が出発物質の混合物で満たされるようにする。
【0052】
出発物質の供給ステップでは、出発物質としてのFとFNOをFNO1モル当たりF0.5~2.5モルの比で供給する。より好ましくは、FとFNOとのモル比が0.5~1.2:1となるように供給され、さらに好ましくは1:1のモル比で供給される。
【0053】
本実施例では、出発物質としてのFとFNOを同時に(またはその混合物を)導入バルブ13を介して供給してフラッシングすると説明したが、本発明はこれに限定されず、出発物質のいずれか一つを先に供給して反応器10内の反応領域をフラッシングし、次いで他の一つの出発物質を供給して反応器10内の反応領域を二つの出発物質で満たしてもよい。例えば、Fを先に反応器10内に供給して反応領域をフラッシングし、次いでFNOを反応器10内に供給してもよい。
【0054】
出発物質の供給が完了すると、紫外線照射手段20によって所定の波長帯域の紫外線を反応器10の端部プレート11に設置された透明窓を介して照射する(S30)。紫外線照射ステップ(S30)で照射される紫外線は、上述のように、300nm~400nmの波長帯域でピーク波長を有し、実質的に300nm未満の波長帯域の紫外線成分を含まない。例えば、紫外線照射ステップ(S30)で照射される紫外線は、図2の(b)または図3に示すように、365nmでピーク波長を有し、300nm未満の波長帯域の紫外線の強度が300nm~400nm波長帯域の紫外線の強度の5%以下であり、より好ましくは300nm~400nm波長帯域の紫外線強度の1%以下である。最も好ましくは、紫外線は365nmの波長を有する単波長であり、300nm未満の波長帯域の紫外線成分を含まない。
【0055】
紫外線照射ステップ(S30)は、反応器10内の出発物質が十分に反応してFNOを生成できるように2~6時間行われることが好ましい。2時間より小さい場合には、量産規模の反応器10内で十分な量のFNOが生成されないことがあり、6時間より長い場合には、紫外線照射時間が長くなるにつれて、FNOの生成速度が遅くなるので、不経済的になる可能性がある。本実施例では、1:1のモル比で反応器10内に満たされた出発物質に3時間365nmの単波長紫外線を照射し、反応圧力基準80%の収率を達成した。
【0056】
より好ましくは、初期バッチ工程において、紫外線照射時間に応じた生成量(または収率)データを取得し、FNOの生成量(または収率)と生産性のバランスを考慮して最適な紫外線照射時間を決定し、後続バッチ工程では、決定された紫外線照射時間の間に紫外線照射を行うことができる。
【0057】
ただし、紫外線照射手段20は、時間が経つにつれて放出される紫外線の照度が落ちることがあり、反応器10の透明窓の透過率が紫外線への持続的な露出によって低下する場合があるので、紫外線照射手段20の累積使用時間に応じて紫外線照射時間を調整することが好ましい。例えば、所定回数のバッチ工程毎に、紫外線照射時間とFNOの生成量(収率)との関係に対するデータを取得し、その後のバッチ工程の紫外線照射時間を調整することが好ましい。
【0058】
より正確な紫外線照射時間ないし反応器10内での反応進行程度の制御のために、紫外線照射ステップ(S30)の間、赤外線分光法によって反応器10内に生成されたFNOの量をリアルタイムで測定し、これに基づいて、紫外線照射時間をリアルタイムフィードバック制御することもできる。
【0059】
紫外線照射ステップ(S30)の間、反応器10内の温度は、15℃~75℃に維持され、より好ましくは25℃~50℃に維持される。紫外線照射によって反応器10内の温度は、合成反応の反応熱および紫外線照射手段20からの熱伝達によって変動することがあるので、送風機やチラーのような温度調節手段によって上述した所定の温度範囲に維持されるようにすることが好ましい。
【0060】
紫外線照射が終了すると、排出バルブ14を開放して反応器10内の反応生成物混合物を反応器10外部に排出する(S40)。この際、圧力差によって反応器10内の反応生成物が排出されるようにしてもよく、導入バルブ13を開放して不活性ガス(例えば、ヘリウム)を吹き込んで反応生成物の排出を促進してもよい。
【0061】
NOを含む反応生成物が十分に排出されると、トリフルオロアミンオキシド分離捕集手段30としてのコールドトラップによりFNOを反応生成物ストリームから分離して捕集する(S50)。上述したように、反応生成物ストリーム内には、FNOの他に未反応のFNOやFが含有されることがあるので、第1のコールドトラップによりFNOよりも沸点が高いFNOを反応生成物ストリームから先に分離し、次いで、第2のコールドトラップにより、FNOを分離して捕集する。分離捕集されたFNOは、必要に応じて分別蒸留法により精製を行ってもよい。
【0062】
これにより、一つのバッチ工程が完了すると、再び、パージステップ(S10)に進行して次のバッチ工程が行われる。
【0063】
前述したように、以上の説明は実施例に過ぎず、これにより限定されるものと解釈されてはならない。本発明の技術思想は、後述する特許請求の範囲に記載された発明によってのみ特定されなければならず、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。したがって、前述した実施例が多様な形態に変形されて具現できるということは通常の技術者に自明である。
【符号の説明】
【0064】
10…反応器
20…紫外線照射手段
30…分離捕集手段
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】