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特表2025-504587ドライアイ症候群を処置するためのレスベラトロールを含む眼科用組成物
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  • 特表-ドライアイ症候群を処置するためのレスベラトロールを含む眼科用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】ドライアイ症候群を処置するためのレスベラトロールを含む眼科用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/728 20060101AFI20250204BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250204BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20250204BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 31/7016 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20250204BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250204BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
A61K31/728
A61P27/02
A61P27/04
A61P43/00 121
A61K31/05
A61K31/7016
A61K9/08
A61K47/44
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024545837
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2023052367
(87)【国際公開番号】W WO2023148180
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】22305113.7
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507286127
【氏名又は名称】ラボラトワール・テアッシュウア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リュック・ルブルトン
(72)【発明者】
【氏名】ファニー・アラン
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド・ナジ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22
4C076DD22Z
4C076DD23
4C076DD23D
4C076DD26
4C076DD26Q
4C076DD43
4C076DD43Z
4C076DD67
4C076DD67Q
4C076EE37
4C076EE37Q
4C076EE53
4C076EE53E
4C076FF11
4C076FF36
4C076FF46
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086EA25
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA78
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZA33
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ヒアルロン酸又はその塩の1つ、有利には100~800kDaの分子量であるものと;オリゴ糖、有利にはジホロシド、より有利にはトレハロースと;レスベラトロールとを含む眼科用組成物、及びDED等の眼疾患を処置するためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ヒアルロン酸又はその塩の1つ、有利には100~800kDaの分子量であるものと;
- オリゴ糖、有利にはジホロシド、より有利にはトレハロースと;
- レスベラトロールと
を含む眼科用組成物。
【請求項2】
水溶液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
可溶化剤、有利にはマクロゴールヒドロキシステアレート、より有利にはポリオキシル40硬化ヒマシ油を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
可溶化剤が、0.1~20%(w/v)、有利には0.5~5%(w/v)、より有利には0.5%又は1%(w/v)を示す、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
7より下、有利には5.5~6.9、より有利には6.0に等しいpHを示す、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
クエン酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩からなる群で選択され、有利にはクエン酸塩である緩衝剤を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ヒアルロン酸又はその塩の1つが、組成物100ml中0.05~0.5g、有利には0.1~0.2g/100ml、更に有利には0.15g/100mlを示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
オリゴ糖が、組成物100ml中0.5~5g、有利には2~4g/100ml、更に有利には3g/100mlを示す、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
レスベラトロsールが、組成物100ml中0.01~0.1g、有利には0.04~0.06g/100ml、更に有利には0.05g/100mlを示す、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
抗菌型の保存剤が含まれない、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
眼疾患、有利にはドライアイ疾患(DED)の処置において使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
眼投与される、請求項11に規定のその使用のための組成物。
【請求項13】
ヒト又は動物の発症した目のそれぞれに、1日あたり少なくとも1回から1日あたり少なくとも10回の間、有利には毎日2~4回投与される、請求項11又は12に規定のその使用のための組成物。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物を含む単回使用又は保存剤を含まない複数回投与バイアル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にドライアイを処置することを意図した、局所的施用のための眼科用組成物に関する。そのような組成物は、ヒアルロン酸又はその塩と、オリゴ糖と、レスベラトロールとを組み合わせたものである。
【背景技術】
【0002】
眼の乾燥又は乾燥角結膜炎又は乾性角結膜炎(KCS)としても知られるドライアイ症候群は、目の不快感、視覚障害、及び涙液層の不安定性を引き起こし、かゆみ、刺痛、及び/又は灼熱感を伴う。
【0003】
これは、多因子疾患である。ドライアイは、涙腺の異常、まぶたの炎症、アレルギー関連性の目の炎症、屈折矯正手術(レーザー手術を含む)、毎日の食事中の特定の脂質の欠乏、コンタクトレンズの長時間装用、ホルモンの変化、自己免疫疾患、又は特定の薬物の副作用から生じうる。
【0004】
ドライアイの発生は年齢とともに高まり、老化は酸化ストレスの増加と関連している。更に、汚染、ブルーライト、紫外線(UV)照射、及びオゾンへの曝露等の環境因子がドライアイの病態生理に関係づけられている。これらの因子は、酸化ストレス及び眼表面の炎症を増加させる。酸化ストレスは、角膜及び結膜上皮細胞のデオキシリボ核酸、脂質、及びタンパク質の有害変化を引き起こしうる活性酸素種(ROS)を生み出し、これによりドライアイ疾患(DED)等の眼表面疾患(OSD)を引き起こす可能性がある。
【0005】
いくつかの眼疾患の予防的な方法及び/又は初期段階では、ビタミン、微量元素、カロテノイド、オメガ3脂肪酸、及びレスベラトロールを含むWO2016/151269に開示されているもの等の栄養補助食品を毎日摂取することが推奨される。
【0006】
ドライアイの処置において、潤滑点眼薬又は保湿点眼薬としても知られる人工涙液の施用は、局所的緩和を与えるが、短時間である。低~中程度の粘性の人工涙液は、一般に、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をベースとしており、一方で高い粘性のものは、カルボマー又はヒアルロン酸を含む。
【0007】
ヒアルロン酸(HA)は、角膜の保湿のために点眼薬に使用され、摩擦に関するその「バリア」効果は、ドライアイによって引き起こされる痛みを低減する。それは目の表面に透明な、潤滑性の湿潤膜を形成し、角膜を乾燥から保護する。これらの特性は、機能的徴候の効果的な緩和を提供し、患者が毎日点眼する回数をより少なくすることを可能にする。
【0008】
HA点眼薬は、最も乾燥した目にも非常によく受け入れられることが研究によって示された。点眼後、数秒~数分の間のわずかな不快感が生じる可能性がある。視覚はわずかにぼやけた状態になる。そのため、この製品を、運転する前、「緊急時」に使用しないほうがよい。不快感は非常に早く消失し、この製品は単純な点眼薬よりもはるかに長く持続する。作用時間は目がどれくらい乾燥しているかによる。一般的な規準として、単純な点眼薬は10~15分間効果があるのに対し、ヒアルロン酸の作用はそれどころか45分~1時間持続する。
【0009】
結論は、ヒアルロン酸をベースとした点眼薬は、軽~中程度のドライアイに効果的である。目の乾燥が重度の患者も、この点眼薬を使用する価値がある可能性があるが、一般に、シクロスポリン等の免疫抑制点眼薬等の異なる製品に頼らなければならない。
【0010】
ヒアルロン酸をベースとした点眼薬の効能を向上させるために、文献WO2015/136186は、局所製剤において、HA、有利には低分子量(100~800kDa)のものを、オリゴ糖、有利にはジホロシド(diholoside)と組み合わせて、持続性、すなわち眼表面での保持時間を増加させることを提案している。
【0011】
加えて、VisuFarma社は、DEDの酸化成分を向上するための製品を売り出した。Visu XL(登録商標)点眼薬製品は、ビタミンE TPGSと一緒に抗酸化剤コエンザイムQ(ユビキノンQ10)及び架橋ヒアルロン酸ナトリウムを含む。
【0012】
レスベラトロール及びヒアルロン酸を含む局所眼科用組成物もまた開示されており、例えば、文献WO 2009/084069を参照されたい。
【0013】
しかし、眼表面疾患、特にDEDを処置するために効能を向上させた眼科用製剤を開発する必要性が引き続きある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2016/151269
【特許文献2】WO2015/136186
【特許文献3】WO 2009/084069
【特許文献4】WO2009087229
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】https://www.nature.com/articles/s41598-017-18211-2
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、潤滑性ポリマー、特にこの用途においてその使用が既に知られているヒアルロン酸と、オリゴ糖を組み合わせることによってドライアイの処置において有用な組成物を提案し、これら両方はレスベラトロールの残存性及び生物学的利用能を向上し、そして、組織損傷の根本的原因であるフリーラジカルの生成を防ぎ、フリーラジカルを阻害することによって、外部環境によって誘発される、又はドライアイ疾患によって誘発される酸化ストレスから眼表面を保護する。
【0017】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。説明において使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、限定することを意図していない。
【0018】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つ又は複数の(すなわち、少なくとも1つの)冠詞の文法上の目的語を指すために使用される。例として、「an element」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0019】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」は、量、時間的持続等の測定可能な値を指すとき、特定の値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、更に好ましくは±1%、更により好ましくは±0.1%の変動を、そのような変動が開示された方法を実行するのに適切であるとして包含することを意味する。
【0020】
範囲:本開示全体を通して、本発明の様々な態様を範囲のフォーマットで示すことができる。範囲のフォーマットの記載は、単に便宜及び簡潔さのためであり、本発明の範囲の確固たる制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、すべての可能性のある部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1~6等の範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲、並びにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を具体的に開示していると考えられるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0021】
「異常な」という用語は、生物、組織、細胞、又はそれらの成分の文脈で使用されるとき、少なくとも1つの観察可能な又は検出可能な特徴(例えば、年齢、処置、時刻等)において「正常な」(予想される)それぞれの特徴を示す生物、組織、細胞、又はそれらの成分とは異なる生物、組織、細胞、又はそれらの成分を指す。ある細胞又は組織型では正常である又は正常であると予想される特徴は、異なる細胞又は組織型では異常である可能性がある。
【0022】
「患者」、「対象」、「個体」等の用語は、本明細書では交換可能に使用され、in vitroであろうとin situであろうと、本明細書に記載の方法に従うあらゆる動物又はその細胞を指す。対象は、動物、有利には哺乳動物でありうる。特定の非限定的実施形態において、患者、対象、又は個体は、ヒトである。
【0023】
「疾患」又は「病態」は、対象が恒常性を維持できない対象の健康状態であり、ここで、疾患が改善されなければ、対象の健康は悪化し続ける。対照的に、対象の「障害」は、対象が恒常性を維持することができる健康状態であるが、対象の健康状態は障害がないときよりあまり良くない。未処置のままにしておいても、障害は対象の健康状態の更なる低下を必ずしも引き起こさない。
【0024】
疾患若しくは障害の症状の重症度、患者が経験するそのような症状の頻度、又はその両方が減少する場合、疾患又は障害は「軽減」、「改善」、又は「緩和」される。これは、疾患又は障害の進行の停止も含む。疾患若しくは障害の症状の重症度、患者が経験するそのような症状の頻度、又はその両方がなくなる場合、疾患又は障害は「治癒」される。
【0025】
「治療的」処置は、病態の徴候を示す対象に、その徴候を減らす又はなくす目的のために投与される処置である。「予防的」処置は、病態の徴候を示さない又は病態がまだ診断されていない対象に、その徴候の出現を予防する又は延ばす目的のために投与される処置である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「疾患又は障害を処置する」とは、対象が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を低減することを意味する。疾患及び障害は、処置の文脈で、本明細書で交換可能に使用される。
【0027】
本発明の文脈において、「活性成分」又は「活性化合物」又は「活性剤」又は「活性物質」又は「有効成分」又は「活性体(active)」は、生物学的に活性な医薬品薬物中の分子又は成分である。
【0028】
化合物の「有効量」は、化合物が投与される対象に有益な効果を提供するのに十分な化合物の量である。「治療有効量」という句は、本明細書で使用される場合、そのような疾患の症状の軽減を含め、疾患又は状態を予防又は処置する(疾患又は状態の発症を遅らせる又は予防する、疾患又は状態の進行を妨げる、疾患又は状態を抑制する、低減する、又は逆転させる)のに十分又は有効な量を指す。送達ビヒクルの「有効量」は、化合物を効果的に結合又は送達するのに十分な量である。
【0029】
したがって、第1の態様では、この出願は、潤滑性ポリマーと、オリゴ糖と、抗酸化剤とを含む眼科用組成物を記載する。本発明の好ましい実施形態によれば、組成物は、ヒアルロン酸又はその塩の1つ、有利には100~800kDaの分子量を有するものと;オリゴ糖、有利にはジホロシド、より有利にはトレハロースと;レスベラトロールとを含む。
【0030】
本出願の文脈において、潤滑ポリマー、有利には保湿ポリマーは、特にその保水能力のために目の表面に透明な膜を形成することができるものと定義される。
【0031】
有利には、前記ポリマーは、多糖、すなわちO-オシド結合(O-osidic bond)によってともに連結されたいくつかの糖(ose)からなるポリマーである。更に有利には、それはグリコサミノグリカン(GAG)である。
【0032】
更に、特権的な方法では、潤滑性ポリマーは、天然で非合成由来の化合物である。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、このポリマーは、セルロース誘導体ではなく、特に、このポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)ではない。
【0034】
特定の実施形態によれば、前記グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、へパラン硫酸(又はヘパリン)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0035】
ヒアルロン酸は、O-硫酸化がないことによって特徴付けられ、特にヒアルロン酸ナトリウムの形態で本発明で使用される。ヒアルロン酸ナトリウムは、ヒトの目に自然に見られ、水を保持して目の表面を水和し、滑らかにする。それは、溶液を目の表面に維持し、長時間の緩和を与え、眼表面の治癒時間を短縮する。
【0036】
使用されるポリマーが、眼科用組成物の粘性を実際に決定する。この粘性はポリマーの濃度とこのポリマーの分子量の両方に依存するため、組成物が使用者に(点眼時又は点眼後に)不快感を引き起こさない適切な粘性を有するように、これら2つの因子が調節される。
【0037】
したがって、且つ適切な方法で、特にヒアルロン酸の場合、潤滑性ポリマー中の組成物の百分法の濃度は、0.5%以下、有利には0.2%以下である。言い換えれば、潤滑性ポリマーの質量は、組成物100ml中、多くて0.5g又は更には0.2gを有利には示す。更に、且つ効率の目的のために、潤滑性ポリマーの百分法の濃度は、有利には0.05%(0.05g/100ml)以上又は更には0.1%(0.1g/100ml)以上である。言い換えれば、且つ好ましい実施形態によれば、潤滑性ポリマー、好ましくはHA又はヒアルロン酸ナトリウム等のその塩の1つは、組成物100mlあたり0.05~0.5g、有利には0.1~0.2g/100ml、例えば0.15g/100mlを示す。
【0038】
既に述べたように、ポリマーは、好ましくは非網状形態である。更に、ヒアルロン酸の場合、好ましい分子量(MW)は、100kDa~800kDa(中間MW)である。
【0039】
本発明の製剤の別の成分は、オリゴ糖である。オリゴホロシド(oligoholoside)又はオリゴシド(oligoside)とも呼ばれるオリゴ糖は、n個の糖(又は単糖)単位によって形成されるオリゴマーであり、nは一般に2~10の範囲である。オリゴシドは、直鎖状、分岐状、又は環状でありうる。
【0040】
したがって、それは、グリセロール又はグリセリン型のポリオールではない。
【0041】
特定の実施形態によれば、オリゴ糖は、ジホロシドであり、これは2つの同じ(ホモ)又は異なる(ヘテロ)糖を含むことができる。目的のオリゴ糖は、トレハロース、ルチノーシス(rutinosis)(ラムノースα(1-6)グルコース)、コージビオーシス(kojibiosis)、ニゲローシス(nigerosis)、マルトース、イソマルトース、ソホローシス(sophorosis)、ラミナリビオーシス(laminaribiosis)、セロビオーシス(cellobiosis)、及びゲンチビオーシス(gentibiosis)、又は更にはトレハルロース、スクロース、ツラノース、マルツロース、ロイクロース、イソマルツロース、ゲンチオビオーシス(gentiobiosis)、メリビオーシス(melibiosis)、ラクツロース、ラクトース、ルチノース、イヌロビオーシス(inulobiosis)、2-アルファ-マンノビオーシス(2-alpha-Mannobiosis)、若しくは3-アルファ-マンノビオースを含むが、これらに限定されない。
【0042】
これらのオリゴ糖は、眼科分野において注目されている特性、特に抗炎症活性、抗アポトーシス活性、又はオスモル濃度制御活性を内在している可能性があることに留意されたい。加えて、且つ実施例に示されるように、それは、本発明による組成物の安定性及び活性に寄与する。
【0043】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴ糖は、トレハロースである。トレハロースは、多くの植物及び動物に存在する天然物質であり、極めて乾燥した条件でも耐えることができる。これは、保護特性及び水和特性を与える。
【0044】
別の実施形態では、オリゴ糖の百分法の濃度は、組成物の5質量%以下、有利には4質量%以下である。言い換えれば、オリゴ糖の含有量は、組成物100ml中、多くて5g又は更には4gを有利には示す。更に、且つ効率の目的のために、オリゴ糖の百分法の濃度は、有利には0.5%(0.5g/100ml)以上又は更には2%(2g/100ml)以上である。言い換えれば、且つ好ましい実施形態によれば、オリゴ糖、好ましくはトレハロースは、組成物100mlあたり0.5~5g、有利には2~4g/100ml、例えば3g/100mlを示す。
【0045】
本発明による組成物の第3の成分は、レスベラトロールである。レスベラトロールは、その抗酸化特性及び抗フリーラジカル特性で知られる天然物である。
【0046】
これは、スチルベンに由来する、式:
【化1】
のポリフェノール化合物である。
【0047】
2つの異性体があるが、trans型が主に活性を示す。以下の説明において、「レスベラトロール」という用語は、したがって、trans-レスベラトロールの代わりに使用することができる。
【0048】
高濃度のレスベラトロール、理想的には0.1%w/vが強力な抗酸化活性には好ましいが、良い効率及び眼の耐性を保証する濃度であれば許容される。次に、レスベラトロールは、組成物100ml中0.01~0.1g、有利には0.04~0.06g/100ml、更に有利には0.05g/100mlを有利には示す。言い換えれば、レスベラトロールの濃度は、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、又は0.1g/100mlと同等でありうる。具体的な実施形態によれば、レスベラトロールの濃度は、0.08g/100ml以下である。
【0049】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、液体の形態、好ましくは溶液である。その文脈において、溶液は、一般に、化合物が少なくとも部分的に溶解しており、好ましくは完全に溶解しており、液体として投与することができる液体の医薬組成物を指す。具体的な実施形態によれば、且つその眼への点眼に関連して、組成物は、有利には水溶液、すなわち水を主なビヒクルとして含む溶液である。
【0050】
レスベラトロールの疎水性の性質を考慮すると、本発明の組成物は、可溶化剤を有利に更に含む。
【0051】
好ましい実施形態によれば、可溶化剤は、レスベラトロールを水に可溶化することができる。別の好ましい実施形態によれば、可溶化剤は、眼投与と適合性があり、すなわち、投与される濃度で毒性を示さない。
【0052】
そのような可溶化剤は、有利には、マクロゴールヒドロキシステアレート、より有利にはマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート(ポリオキシル40硬化ヒマシ油又は水素化エトキシル化ヒマシ油又はPEG-40硬化ヒマシ油又はCremophor(登録商標)RH40又はKolliphor(登録商標)RH40;CAS番号61788-85-0)である。
【0053】
他の潜在的候補は、例えば:
- ポリオキシル15ヒドロキシステアレート(マクロゴール15ヒドロキシステアレート、又はKolliphor(登録商標)HS15、又はSolutol(登録商標)HS15;CAS番号70142-34-6);
- ポリソルベート20(CAS番号9005-64-5)、ポリソルベート60(CAS番号9005-67-8)、又はポリソルベート80(CAS番号9005-65-6);
- マクロゴールグリセロールリシノレート(又はポリオキシル35ヒマシ油、又はPEG-35ヒマシ油、又はCremophor(登録商標)EL、又はKolliphor(登録商標)EL;CAS番号61791-12-6);
- ビタミンE TPGS(TPGS、又はビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、又はD-α-トコフェロールポリエチレングリコール(1000)スクシネート;CAS番号9002-96-4)である。
【0054】
溶液中の可溶化剤の濃度は、典型的に0.1~20%(w/v)、有利には0.5~5%(w/v)、より有利には0.5%又は1%(w/v)である。
【0055】
当然のことながら、本発明による組成物は、非イオン性等張剤、抗酸化剤、及び/又は緩衝系の群から選ばれる少なくとも1つの添加剤成分を更に含むこともできる。
【0056】
好ましくは、本発明による組成物は、弱酸性のpHを有し、有利には7より下であるが、有利には5又は更には5.5より上である。組成物のpHは、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、又は6.9であり得る。それは、有利には5.5~6.9から構成され、より有利には6.0に等しい。
【0057】
弱酸性のpHは、酸、例えば塩酸(HCl)を加えることによって得ることができる。
【0058】
フェノールのフェノレートへの変換を妨げ、望ましくない黄色を呈することを妨げる所望の弱酸性のpHに関して、適切な緩衝剤は、クエン酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩からなる群で有利に選択され、より有利にはクエン酸塩である。例として、クエン酸三ナトリウム、2H2Oを使用することができる。その適した量は、当業者が決定することができ、例えば20mM溶液の場合0.588g/100mlである。
【0059】
具体的な実施形態によれば、そのような緩衝剤は、WO2015/136186に開示されているThealoz(登録商標)duo製剤に存在するトロメタモールのようなTris緩衝剤ではない。
【0060】
有利な方法において、本発明による組成物は、局所点眼用途に適応した粘性を有する。
【0061】
したがって、本発明による組成物は、50mPa.s(cP)以下、又は更には20、15、10以下、又は更には5mPa.s以下の粘性を好ましくは有する。適応により、それは2~50mPa.s、有利には2~15mPa.s、更に有利には2~10mPa.s、例えば5mPa.sのオーダーである。これらの値は、BROOKFIELD RVDV III移動式回転粘度計によって25℃で測定された値に対応する。
【0062】
実際のところ、この粘性は、有利にはヒトの涙の粘性に近く、20℃で約6.5mPa.sであると推定され、速度勾配はゼロに近い。したがって、本発明による組成物の施用は、不快感又は刺激の感覚を引き起こさない。実際に、眼科用組成物の粘性が50mPa.s未満である場合にのみ容易で妨げられない排除が可能であることが明らかにされている。
【0063】
別の特定の実施形態によれば、それは、オスモル濃度が有利には170~350mosmol/kg、より有利には200~300mosmol/kg、例えば約250mosmol/kgである低張性~等張性の製剤に相当する。この特徴は、例えば塩化ナトリウム(NaCl)を加えることによって得ることができる。使用される濃度のオリゴ糖は、溶液の浸透圧の制御にも寄与することができる。
【0064】
別の実施形態によれば、本発明による組成物は、抗菌保存剤、特に第4級アンモニウム保存剤、特に眼表面へのその有害な影響が知られている塩化ベンザルコニウム(BAK)を含まない。言い換えれば、それは、有利には、いわゆる保存処理がなされていない組成物又は保存剤を含まない組成物である。
【0065】
本発明の文脈において、「抗菌剤又は抗菌保存剤又は保存剤」は、抗菌特性を有する保存剤、すなわち眼科用組成物を起こりうる微生物汚染から保護することができる化合物を指す。
【0066】
第4級アンモニウム化合物、特に塩化ベンザルコニウム(BAK)又はPolyquad(登録商標)は、場合によりEDTAと合わせて、保存剤として一般に使用される。他の保存剤は、例えば:
- グアニジンをベースとした保存剤(PHMB、クロルヘキシジン);
- ベンジルアルコール;
- パラベン(メチル、エチル、プロピル等);
- 水銀をベースとした保存剤、例えばチメロサール;
- クロロブタノール;
- 塩化ベンゼトニウム;
- 酸化保存剤(Purite等)である。
【0067】
保存処理がなされていない組成物の場合、それは、単回使用バイアル(単回投与(unidose))又は保存剤を含まない複数回投与バイアル、例えばAbak(登録商標)、Novelia(登録商標)、Comod(登録商標)バイアル又は相当するもの、すなわち保存剤を含まない点眼薬を数日送達できるバイアルで有利には提示される。
【0068】
本発明は、したがって、既に説明した眼科用組成物を含む保存処理がなされていない組成物に適合した単回使用(単一用量)又は複数回投与バイアルにも関する。この分野で知られているように、そのようなバイアル、容器、又は滴下ディスペンサーは、低密度ポリエチレン(LDPE)、有利にはヨーロッパ薬局方(EP)品質のもので作ることができ、添加剤を含まない。
【0069】
本発明の別の態様は、目の障害及び病態の処置におけるそのような組成物の使用に関する。言い換えれば、本発明は、本発明の組成物を投与する工程を含む眼疾患の処置の方法に関する。
【0070】
したがって、ポリマー潤滑剤と、オリゴ糖と、レスベラトロールとの組合せは、ドライアイ疾患(DED又はドライアイ症候群(DES))の文脈において、特に軽度~中程度の形態の場合に使用することができ、場合によっては目の炎症の処置のため使用することができる。
【0071】
更なる眼炎症状態は、例えば、非感染性ぶどう膜炎(前部、中間部、後部、汎)、非感染性結膜炎、虹彩炎、又は強膜炎である。
【0072】
より一般には、本発明の眼科用組成物は、目のレベルでの酸化ストレスの影響を低減するために、且つ角膜実質細胞の部分のアポトーシスに関連する病態の発現の処置のために使用することができる。
【0073】
したがって、本発明の更なる態様は、虚血性混濁(ischemic opticopathy)、老年性水晶体混濁、白内障、ぶどう膜炎、並びに家族遺伝性、代謝異常、及び老年性の加齢に伴う変性病態を含む変性病態の処置、並びに緑内障、加齢黄斑変性、網膜色素変性症、シュタルガルト病、卵黄様黄斑嚢胞(vitelliform macular cyst)、錐体ジストロフィー、増殖性糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、網膜剥離、網膜芽細胞腫を含む網膜及び視神経の神経変性病態、並びに毒性、炎症性、及び変性に由来する神経炎及び視力の神経障害の処置のための前記組成物の使用である。
【0074】
本発明の組成物は、同じ病態又は別の眼疾患、例えば眼感染症、眼アレルギー、又は緑内障を処置するために更なる活性剤を含んでもよい。
【0075】
言い換えれば、本発明による組成物は、治療有効量の1つ又は複数の他の活性剤を含んでもよい。これらは、抗生物質、例えば、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、免疫抑制薬、抗炎症剤、又は抗緑内障剤、例えばプロスタグランジン、ベータ遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、又はアルファアドレナリン作動薬を含んでもよい。
【0076】
そのような活性剤は、以下の群から選ぶことができる:アセクリジン、アセタゾラミド、アシクロビル、アネコルタブ、アプラクロニジン、アトロピン、アザペンタセン、アゼラスチン、バシトラシン、ベフノロール、ベタメタゾン、ベタキソロール、ビマトプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド、カルバコール、カルテオロール、セレコキシブ、クロラムフェニコール、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、クロモグリケート、シクロペントレート、シクロスポリン、ダピプラゾール、デメカリウム、デキサメタゾン、ジクロフェナク、ジクロルフェナミド、ジピベフリン、ドルゾラミド、エコチオフェート、エメダスチン、エピナスチン、エピネフリン、エリスロマイシン、エトキシゾラミド、ユーカトロピン、フルドロコルチゾン、フルオロメトロン、フルルビプロフェン、ホモビルセン、フラマイセチン、ガンシクロビル、ガチフロキサシン、ゲンタマイシン、ホマトロピン、ヒドロコルチゾン、イドクスウリジン、インドメタシン、イソフルロフェート、ケトロラク、ケトチフェン、ラタノプロスト、レボベタキソロール、レボブノロール、レボカバスチン、レボフロキサシン、ロドキサミド、ロテプレドノール、メドリゾン、メタゾラミド、メチプラノロール、モキシフロキサシン、ナファゾリン、ナタマイシン、ネドクロミル、ネオマイシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オロパタジン、オキシメタゾリン、ペミロラスト、ペガプタニブ、フェニレフリン、フィゾスチグミン、ピロカルピン、ピンドロール、ピレノキシン、ポリミキシンB、プレドニゾロン、プロパラカイン、ラニビズマブ、リメキソロン、スコポラミン、セゾラミド(sezolamide)、スクアラミン、スルファセタミド、スプロフェン、テトラカイン、テトラサイクリン、テトラヒドロゾリン、テトリゾリン、チモロール、トブラマイシン、トラボプロスト、トリアムシノロン、トリフルオロメタゾラミド、トリフルリジン、トリメトプリム、トロピカミド、ウノプロストン、ビダラビン、キシロメタゾリン、薬学的に許容される塩、又はそれらの組合せ。
【0077】
本発明による組成物は、ヒト及び動物において使用することができる。成人、小児、妊娠中又は授乳中の女性、あらゆる種類のコンタクトレンズの装用者といった広い範囲の個体を処置することができる。
【0078】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、有利には目への点眼又は眼表面への噴霧による局所的施用が意図されている。言い換えれば、本発明の組成物は、有利には発症した目に眼投与される。
【0079】
投与量は、疾患の重症度に合わせられるが、一般に、1日あたり1~数滴を発症した目に投与することからなる。したがって、1日1眼あたり10滴、又は更には1日1眼あたり9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは更には1滴の投与量が考えられる。一実施形態によれば、組成物は、液滴の形態で、1日あたり少なくとも1回から1日あたり少なくとも10回の間、有利には毎日2~4回投与される。
【0080】
本明細書で引用されている特許、特許出願、及び出版物のすべての開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0081】
更なる説明なしに、当業者は、前述の説明及び以下の説明的な例を使用して、本発明の化合物を作製し、利用し、特許請求された方法を実施することができると考えられる。
【0082】
実験例
以下の実験例及び添付の図を参照することによって本発明を更に詳細に説明する。これらの例は例証の目的のためだけに提供され、限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】8時間+一晩でのアポトーシス細胞と全細胞の比率(%)を示す図である。
図2】陰性対照に対する異なる製剤の抗酸化プロファイル(%)を示す図である。
図3】アポトーシス細胞と全細胞の比率(%)の反復平均値を示す図である。
図4】UV照射後24時間でのIL8放出の定量化を示す図である。NC=陰性対照:0.9%NaClで処理、照射なしPC=陽性対照:0.9%NaClで処理、照射あり
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0084】
本発明による組成物の例
1.組成物
【表1】
【0085】
調製後、組成物は、例えば0.2μmnの滅菌フィルターで有利には滅菌される。
【0086】
滅菌後、そのような組成物は単回投与(又は単回使用)バイアル又は保存剤を含まない複数回投与バイアル、例えばABAK(登録商標)又はNOVELIA(登録商標)に包装することができる。単回投与は、従来から添加剤を含まずに低密度ポリエチレン(LDPE)で作られている。
【0087】
2.組成物の特徴
a/様々な保存条件で3カ月後の組成物の安定性
結果は、下記のTable 1(表2)に示される。
【表2】
【0088】
b/保存剤を含まない複数回投与バイアルで3カ月保存後の組成物の安定性
結果は、下記のTable 2(表3)に示される。
【表3】
【0089】
c/結論
結論として、本発明による組成物は、眼投与と適合性がある以下の特徴を示す:
- 弱酸性のpH;
- 低張性~等張性の製剤;
- ヒトの涙に近い粘性(20℃で約6.5mPa.s)。
【0090】
更に、安定性研究は、このような組成物が少なくとも3カ月後安定であることを示す。組成物の特徴は、室内条件での保存後も変化しない。より極限の条件では、レスベラトロールの含有量が著しくはなく減少し、わずかに黄変するにもかかわらず、組成物は依然として適性を保つ。
【0091】
これに加えて、それは、保存剤を含まない送達系で安定に保存されうる。
【実施例2】
【0092】
本発明による組成物の有効性の研究
1.細胞毒性/刺激可能性
UVA+B光(290~400nm)によって誘発される表層角膜上皮酸化ストレス損傷に対する涙代替物の保護を更に評価するために、ヒト角膜上皮(HCE)での初めの研究を行い、涙代替物から選択したものの細胞毒性を確認した。
【0093】
予備細胞毒性を、涙代替物に4時間急性曝露後及び8時間曝露後(1日2回繰り返し、最終的な読み出しはその翌日;0.015J/cm2)に、2つのアッセイ:MTT試験及びTUNELアッセイを使用して行った。
【0094】
予備細胞毒性を、以下の涙代替物について、塩化ベンザルコニウム(BAK)0.1%溶液(陽性対照)及び生理食塩水(NaCl 0.9%;陰性対照)と比較したHCEモデルで、in vitroで試験した:
- 実施例Iによる組成物
- Visu XL(0.1%コエンザイムQ10、0.1%架橋ヒアルロン酸(HA)、0.5%ビタミンE TPGS;pH6.9を含む市販基準)。
【0095】
方法
0.5cm2のEPISKIN社再構築ヒト角膜上皮(HCE)を評価に使用した。ヒト上皮不死化細胞(HICEC)をポリカーボネートフィルター上に置き、構造化された上皮を形成するために既知組成培地中、気液界面で5日間培養した。5日目の組織を含むインサート(厚さ:55μm;5.5細胞層)をアガロース栄養溶液で満たしたマルチウェルプレートに室温で移し、その中に埋め込んだ。
【0096】
HCEを1mLの維持培地とともに6ウェルプレートに37℃及び90%湿度のCO2インキュベーター内に一晩置いた。それから、その組織を、急性の4時間曝露並びに8時間の繰り返し曝露及び一晩プロトコルに従って、翌日使用した。
【0097】
涙代替物30μLをヒト角膜上皮(HCE)に直接施用し、生理食塩水及びBAK0.1%30μLをそれぞれ陰性対照及び陽性対照として使用した。
【0098】
2つの曝露プロトコルを続行した:
・ 急性曝露プロトコル(4時間): 4時間曝露に続いて組織をすすぐ
・ 繰り返し曝露及び一晩プロトコル(8時間+一晩):毎日2回の曝露で、2回の処置の間は少なくとも4時間空け、一晩インキュベーション後に読み出す。
【0099】
このプロトコルを3連の組織で行った。
【0100】
曝露の最後に、以下のエンドポイントを調査した:
・ MTTによる細胞毒性分析
・ アポトーシス細胞を検出するためのTUNELアッセイによる免疫蛍光分析。
【0101】
生存率アッセイ:改変MTT試験
本方法の原理
本方法は、比色アッセイによって毒性事象及び関連細胞毒性の評価を可能にする。平衡塩類溶液中のMTTの溶液は、黄色がかった色である。生細胞のミトコンドリアデヒドロゲナーゼは、テトラゾリウム環を切断し、水溶液に不溶の青色/紫色のMTT結晶をもたらす。
【0102】
手順
MTT試験による処理後の残りの生存率を、表層の評価を含む改変プロトコルで、SOP M 04に従って行った。
【0103】
データ取得
分光光度測定の精度は、0~2ODの範囲である: <+/-(1%+10mOD)。ODの生データは、マイクロプレートオートリーダー(TECAN社INFINITE M-200)で直接記録され、ソフトウェアMagellan 6.5によって更に処理される。
【0104】
ブランクODの平均値が、一つ一つのOD値から減じられている。各生物学的反復(biological replicate)の生存率は、陰性対照(NC)生物学的反復の光学密度平均についてのそれぞれのOD平均値を割って計算されている。同じ物質で処理した組織の生存率%平均値が計算されている。
【0105】
許容基準
2つの組織のOD陰性対照平均値が≧1であり、%生存率の標準偏差値(SD)が<18%である場合、NCは許容される。
2つの組織反復間の細胞生存率%(NCと比較してパーセンテージで表される)の標準偏差値(SD)が<18%である場合、試験物質は許容基準を満たす。
【0106】
TUNELアッセイ:アポトーシス細胞検出
本方法の原理
アポトーシスの間のゲノムDNAの切断は、二本鎖、低分子量DNA断片(モノヌクレオソーム及びオリゴヌクレオソーム)及び高分子量DNA中の一本鎖切断(「ニック」)をもたらす可能性がある。これらのDNA鎖切断は、酵素反応において、遊離3'-OH末端を修飾ヌクレオチドで標識することによって確認することができる。
【0107】
手順
鋳型非依存的方法での遊離3'-OH DNA末端への標識ヌクレオチドの重合を触媒する末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)によるDNA鎖切断の標識(TUNEL-反応)を、In Situ細胞死検出キット(Roche社、カタログ番号11684795910)によって、製造会社の説明書に従い、パラフィン切片で行った。核をDAPIを用いて対比染色し、顕微鏡スライドにのせ、LEICA社DMi8 THUNDERイメージャー3D、カメラK5で蛍光で分析し、LASX 3.7.1ソフトウェアで処理する準備をした。各試料について、全体の染色切片を20倍の拡大率で取得し(試料につき12~13回取得)、組織内に存在するTunel(緑色)陽性細胞の数及び全細胞(青色、DAPI)の数を数え、更に、陽性細胞と全細胞の比率%を評価した。
【0108】
結果
結果は、下記のTable 3(表4)に示される。
【表4】
【0109】
MTT試験の結果は、以下を示した。
・ 予想通り、BAK0.1%は、両方の曝露で重度の細胞毒性を引き起こした。
・ 実施例Iの組成物は、考慮した両方の時点で著しい細胞毒性を誘発しなかった。
・ Visu XLは、4時間急性曝露後著しい細胞毒性効果を誘発しなかったが、8時間とそれに続く一晩のインキュベーション後、MTT値は細胞毒性カットオフ(60%細胞生存率)の境界線上であった。
【0110】
TUNELアッセイに基づき、且つ図1に示されるように、実施例Iの製剤によって、長期曝露においてでさえ全アポトーシス細胞数の減少が観察され、保護効能を示唆することは興味深い。
【0111】
2.抗酸化活性
2-1In vitroアッセイ
この研究の目的は、ABTSアッセイによって、実施例Iの組成物を含む異なる製剤の潜在的抗酸化特性を調査することであった。
【0112】
方法
本方法の原理
過硫酸カリウムと反応すると、ABTS即ち2,2'-アジノビス-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)は、ABTS.+ラジカルを形成し、これは青色~緑色である。抗酸化試験品の添加は、このラジカルを減少させ、混合物の変色を引き起こすはずである。分光光度法によって測定されたラジカルの変色は、試験品の抗酸化特性に比例した。
【0113】
このアッセイは、Antioxidant Assayキット(Sigma Aldrich社)を使用して、製造会社の説明書に従って行った。
【0114】
この方法は、陽性対照トロロックス(Sigma Aldrich社)と比較して標準化した。
【0115】
試験物質
以下の製剤を試験した。
・ 3種類の濃度(純粋、アッセイ緩衝液で希釈後50%及び25%)のVisu XL
・ 3種類の濃度(純粋、アッセイ緩衝液で希釈後50%及び25%)のThealoz(登録商標)duo
・ 3種類の濃度(純粋、アッセイ緩衝液で希釈後50%及び25%)の実施例Iの組成物(0.05%レスベラトロールを含む)
・ 3種類の濃度(純粋、アッセイ緩衝液で希釈後50%及び25%)の実施例Iの組成物だが0.01%レスベラトロールを含む
・ 陰性対照:アッセイ緩衝液
・ 陽性対照:5種類の濃度(23.4、47、94、188、及び375μg/ml)のトロロックス
【0116】
結果
式100-(OD試験品/OD陰性対照×100)に従って陰性対照に対して相対的に示したデータが図2に示される。
【0117】
結論
25%、50%、及び100%でのVisu XLは、穏やかな抗酸化効果を示す。
【0118】
Thealoz(登録商標)duoは、アッセイの条件において抗酸化効果を示さない。
【0119】
25%、50%、又は100%の濃度で試験した実施例Iの組成物は、高いレベルの抗酸化効果を示し、0.01%レスベラトロールを含む組成物よりも0.05%レスベラトロールを含む組成物でわずかに高い。
【0120】
2-2 In vivoアッセイ
5MEDに相当する線量125mJ/cm2でのUVA+UVB光(290~400nm)によって誘発される角膜上皮酸化ストレス損傷に対する、涙代替物によって提供される保護を評価するために、ヒト角膜上皮(HCE)の実験モデルを行った。
【0121】
実施例Iの製剤をVisu XL(0.1%コエンザイムQ10、0.1%架橋ヒアルロン酸(HA)、0.5%ビタミンE TPGS;pH6.9を含む市販基準)と比較して試験した。
【0122】
GSH含有量、アポトーシス及びDNA損傷、炎症促進性及び細胞毒性反応として、UV光が誘発した酸化ストレス損傷を、HCE表面に5MEDを直接照射後2時間及び24時間に調査した。
【0123】
方法
0.5cm2のEPISKIN社再構築ヒト角膜上皮(HCE)を評価に使用した。ヒト上皮不死化細胞(HICEC)をポリカーボネートフィルター上に置き、構造化された上皮を形成するために既知組成培地中、気液界面で5日間培養した。5日目の組織を含むインサート(厚さ:55μm;5細胞層)をアガロース栄養溶液で満たしたマルチウェルプレートに室温で移し、その中に埋め込んだ。
【0124】
HCEを1mLの維持培地とともに6ウェルプレートに37℃及び90%湿度のCO2インキュベーター内に一晩置いた。
【0125】
このプロトコルを3連の組織で行った。
【0126】
以下のシリーズが研究の一部であった:
陰性対照(NC): PBS 30μLで処理し暗所で保存(照射期間と同じ時間)したHCE
陽性対照(IRR): PBS 30μLをUV曝露前にHCE表面に施用した。HCEを125mJ/cm2に相当する5MEDで照射した。
試験品:実施例Iの組成物及びVisu XL 30μLをUV曝露前にHCE表面に施用した。
【0127】
以下の手順に従ってUV曝露前にHCEを処理した: 2回の施用の間に少なくとも4時間空けて30μLで2回処理し、続いて一晩インキュベーションする。
【0128】
UVA+UVB照射は、翌日、キセノンアークランプ、フィルターWG320 [mW/cm2]を備えたOrielソーラーシミュレーターによって125mJ/cm2で行った。
【0129】
異なるHCEシリーズへのUV照射後、涙代替物を30μL再度施用し、それからHCEを37℃、90%湿度で2時間及び24時間インキュベートした。
【0130】
それから、以下の試験をHCEに対して1つ又は両方の時点で行った。
I.TUNELアッセイ-IHC:アポトーシス細胞検出(24時間で)
II.ELISAによるIL-8放出:炎症促進性ケモカイン(2時間及び24時間で)
III.Toxilightアッセイ:アデニル酸キナーゼ放出による膜完全性及び細胞毒性の測定(2時間及び24時間で)
【0131】
I/TUNELアッセイ:アポトーシス細胞検出
上記項目II1.を参照のこと。
【0132】
II/TOXILIGHTバイオアッセイキット、カタログ番号LT27-060
本方法の原理
ToxiLight(商標)バイオアッセイは、培養中の哺乳動物細胞及び細胞株において毒性を測定するために設計された、非破壊生物発光細胞毒性アッセイである。このキットは、損傷細胞からのアデニル酸キナーゼ(AK)の放出を定量的に測定する。
このキットは、すべての細胞に存在するAKの生物発光測定に基づいている。原形質膜への損傷を通して、細胞完全性が失われると、in vitroで培養されている細胞から複数の因子が周囲の培地に漏出する。細胞からのAKの放出の測定は、細胞毒性及び細胞溶解の正確で感度の良い測定を可能にする。
【0133】
手順
処理の最後に、培地20μLを96ウェルプレートに移し、アデニル酸キナーゼ(AK)検出試薬100μlを培地に加える。室温で5分インキュベーション後、AK濃度を各ウェルにおいて測定する。
【0134】
データ取得及び分析
発光データ取得をTECAN社INFINITE M-200によって行った。
【0135】
III/IL-8のELISA定量化、カタログ番号RAB 0319
本方法の原理
ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)キットは、生物試料における標的タンパク質を定量的に測定するためのin vitroアッセイである。このアッセイは、96ウェルプレートにコートされた特異的な捕捉抗体を用いる。標準物質及び試料を、ピペットでウェルに移し、試料中に存在する標的タンパク質を固定化抗体によってウェルに結合させる。ウェルを洗浄し、標的タンパク質に特異的なビオチン化検出抗体を加える。結合していないビオチン化抗体を洗い流した後、HRPにコジュゲートさせたストレプトアビジンをピペットでウェルに移す。ウェルを再び洗浄し、TMB溶液をウェルに加えると、結合した標的タンパク質の量に比例して発色する。停止溶液は色を青色から黄色に変化させ、色の強度を450nmで測定する。
【0136】
手順
IL-8のELISA定量を、プロトコルA及びBの処理から回収した培地培養物で行った。試料を-20℃で保存した。ヒトIL-8/CXCL8 Elisaキットを、Millipore Elisaキット(#RAB0319)の説明書に従って実行した。試料を1:20(2時間)及び1:35(24時間)に希釈した。
【0137】
データ取得及び許容基準
マイクロプレートオートリーダー(TECAN社INFINITE M-200)を使用してODを取得した。標準曲線を、4パラメーターロジスティック回帰(4PL)によって得た。感度範囲は0.8~600pg/mlであった。ヒトIL-8の最小検出可能用量は、1pg/mlであると決定された。ANOVAによる統計分析。
【0138】
結果
1/TOXILIGHTによる細胞膜損傷:アデニル酸キナーゼ(AK)の放出
UV照射後2時間及び24時間での相対発光単位(Relative Luminescence Unit)(RLU)データが、下記のTable 4(表5)に示される。
【表5】
【0139】
HCE照射対照では、照射していない陰性対照と比較して、両時点でAKの放出の増加が定量化され、5MED UVの細胞毒性効果が確認された。
【0140】
UV曝露後24時間及びUV直後に行った新しい処理により、UV誘発損傷からの本発明の組成物の実際の保護効果を強調することが可能であった。実際、本製品は、IRR対照と比較して、更にNCと比較した場合でもAKの著しい減少を誘発しており、細胞膜完全性に与える明白な保護効果を示唆している。この時点で、Visu XLは、細胞膜のUV誘発損傷からの保護効果を示していない。
【0141】
2/IL-8のELISA定量化
UV照射後2時間及び24時間でのデータが、下記のTable 5(表6)に示される。
【表6】
【0142】
UV後2時間では、照射効果(IRR)による著しいIL-8放出は決定されていないが、放出は24時間の時点では著しく増加した。
【0143】
製品Visu XLは、IL-8放出を短時間だけ遮断する(照射後2時間だけ観察された)。一方、両時点で、本発明による組成物は非常に顕著な抗炎症活性を示しており、少なくとも照射後24時間の間はIL-8を検出することができなかった。
【0144】
3/TUNEL染色:アポトーシス
UV照射後24時間のデータが、図3に示される。
【0145】
これは、照射対照(IRR)及びVisu XL製品の存在下において、約30%のアポトーシス細胞を示している。一方、実施例Iの組成物(本発明による)は、アポトーシス細胞の形成を阻害し(約10%まで)、関連するDNA損傷を阻害する。
【0146】
結論
上記に示したデータは、実施例Iの組成物の抗酸化特性を、in vitroだけでなくin vivoでも確認するものである。更に、これらは、実施例Iの組成物が、
- 炎症に対する保護(IL-8放出の著しい減少);
- UVによる著しい損傷の低減(アデニル酸キナーゼの放出の著しい減少);
- アポトーシス細胞形成及び関連するDNA損傷の阻害(陰性対照と類似したTUNEL陽性核の%)を与えることを示している。
【0147】
一方、Visu XL製品は、もっぱら抗炎症薬として照射後2時間だけ有効であり、IL-8放出の著しい減少が観察された。
【実施例3】
【0148】
他の抗酸化剤との比較
実施例IIは、Thealoz(登録商標)duo製剤とレスベラトロールを組み合わせた組成物が市販基準Visu XL(0.1%コエンザイムQ10、0.1%架橋ヒアルロン酸(HA)、0.5%ビタミンE TPGS;pH6.9)よりも優れていることを明らかにしたのに対して、Thealoz(登録商標)duoをバックグラウンドに更なる抗酸化剤を試験することを決定した。
【0149】
本研究は、直接的な抗酸化効果(細胞内フリーラジカルの中和)を生きているヒトHepG2細胞で評価するために、点眼薬4試料の抗酸化力をLUCS法(AOP1)によって明らかにすることに主眼をおいた。
【0150】
方法
LUCS法(AOP1)
本方法の原理
AOP社が所有するLUCS法は、培養培地中の核酸を標的とする蛍光バイオセンサーを加えた後の、細胞によるフリーラジカル種の生成に基づいている。光とバイオセンサーの存在の複合効果(光誘起)は、一重項酸素の生成を引き起こし、次にこれが活性酸素種(ROS)の生成、生化学反応のカスケードを引き起こし、発光される蛍光に正の変化をもたらす。
【0151】
LUCS試験は、細胞内酸化ストレスを中和する抗酸化剤の能力を測定する。この効果は、蛍光発光の増加の速度論において生じる遅延によって測定される。この方法は、ハイスループットで信頼できる統計分析を保証するために、96ウェル細胞培養プレートのフォーマットに標準化されている(WO2009087229; https://www.nature.com/articles/s41598-017-18211-2)。
【0152】
手順
この研究は、培養ヒトHepG2肝細胞で行われた。細胞を、SVFの存在下、完全DMEM培地中、1ウェルあたり75,000細胞で96ウェルプレートにそれぞれ播種し、37℃/5%CO2で24時間インキュベーターに置いた。
【0153】
実験をSVFなしのDMEM培地で行った。細胞を異なる試料(2段階の連続希釈によって得られた8つの希釈物)とともに37℃/5%CO2で4時間インキュベートした。2つの独立した実験を、96ウェルプレートで、それぞれ三連で行った。4時間インキュベーション後、HepG2細胞を蛍光バイオマーカーで1時間処理し、それから測定(535nmでのRFU)を、480nmでの96ウェルプレートの照射及び蛍光読み取りの反復プロトコル(20回繰り返し)に従って行った。
【0154】
細胞の抗酸化効果指数(AOP指数)を式:
【数1】
に従って正規化した速度論から計算する。
【0155】
試料濃度のlog(10)の関数としてAOP指数を収集することによって得られた用量反応曲線を、
式:AOP指数=AOP指数min+(AOP指数max-AOP指数min)/1+10(Log(EC50-CE)*(HS))
に従ってシグモイドにあてはめることによって処理し、EC50(試験化合物が全効果の50%又は半分の効果を発揮する濃度)、EC10、及びEC90を計算する。
【0156】
試料
この研究で試験した試料は、以下である。
- 試料番号1=Thealoz(登録商標)duo+TPNa(トコフェロールリン酸ナトリウム)0.5%
- 試料番号2=Thealoz(登録商標)duo+TPGS VitE(ビタミンEポリエチレングリコールスクシネート)0.5%
- 試料番号3=Thealoz(登録商標)duo+レスベラトロール0.01%
- 試料番号4=Thealoz(登録商標)duo+ケルセチン0.01%
【表7】
【表8】
【0157】
試料1、2、3及び4とラベルを貼られた琥珀色の瓶に入った液体の形態の試料は、実験まで暗所で4℃に維持した。
【0158】
結果
結果は、下記のTable 6(表9)に示される。
【表9】
【0159】
結論
製剤Thealoz(登録商標)duo+TPNa及びThealoz(登録商標)duo+TPGS VitEは、抗酸化活性を示さない。
【0160】
Thealoz(登録商標)duo+レスベラトロールは、細胞内フリーラジカルを中和することによって強力な、直接的な抗酸化活性を示し、希釈倍率≧1/32で抗酸化指数(AI)は1000(理論上の最大値)に近い。
【0161】
Thealoz(登録商標)duo+ケルセチンは、強力な、直接的な抗酸化活性を示し、希釈倍率≧1/2で抗酸化指数(AI)は1000(理論上の最大値)に近い。
【0162】
この活性は、このモデルにおいて、ケルセチンよりもレスベラトロールを用いた製剤でより強力であるように思われる。
【0163】
結論として、Thealoz(登録商標)duoをバックグラウンドとした場合、レスベラトロールは、同じ濃度のケルセチンよりも良い抗酸化効果を有する。言い換えれば、レスベラトロールはこの文脈において最も強力な抗酸化剤である。
【実施例4】
【0164】
本発明による組成物におけるトレハロースの寄与
1.安定性
トレハロース(T)又はトレハロース+ヒアルロン酸(T+HA)の存在下でのレスベラトロール(R)の安定性を研究するために、60℃で7日間保存後、レスベラトロールの量を決定した。
【0165】
試験をより感度の良いものにするために、レスベラトロールを約0.08g/100mL試験製剤の濃度で使用した。
【0166】
試験した異なる製剤の組成、及び前記製剤中のレスベラトロールの終量(end amount)が、下記のTable 7(表10)に示される。
【表10】
【0167】
前記データは、これらの保存の条件下で、レスベラトロールが、トレハロースがない場合、著しく不安定であることを明らかにしている(最後の列)。
【0168】
2.活性
本発明による組成物の活性へのトレハロースの影響を評価するために、実施例II-2-2に開示されている実験(IL-8放出定量化によるin vivoで試験した抗酸化活性-ELISA試験)を、下記のTable 8(表11)に開示されている製剤を使用して再現した。
【表11】
【0169】
図4に示されるように、照射後24時間で、IL-8放出の減少が、トレハロース単独存在下で観察される(P4)。次いで、トレハロースは、レスベラトロールに加えて、炎症を阻害するのに寄与することになる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ヒアルロン酸又はその塩の1つ、有利には100~800kDaの分子量であるものと;
- トレハロースであるオリゴ糖と;
- レスベラトロールと
を含む眼科用組成物。
【請求項2】
水溶液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
可溶化剤、有利にはマクロゴールヒドロキシステアレート、より有利にはポリオキシル40硬化ヒマシ油を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
可溶化剤が、0.1~20%(w/v)、有利には0.5~5%(w/v)、より有利には0.5%又は1%(w/v)を示す、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
7より下、有利には5.5~6.9、より有利には6.0に等しいpHを示す、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
クエン酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩からなる群で選択され、有利にはクエン酸塩である緩衝剤を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ヒアルロン酸又はその塩の1つが、組成物100ml中0.05~0.5g、有利には0.1~0.2g/100ml、更に有利には0.15g/100mlを示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
オリゴ糖が、組成物100ml中0.5~5g、有利には2~4g/100ml、更に有利には3g/100mlを示す、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
レスベラトロsールが、組成物100ml中0.01~0.1g、有利には0.04~0.06g/100ml、更に有利には0.05g/100mlを示す、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
抗菌型の保存剤が含まれない、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
眼疾患、有利にはドライアイ疾患(DED)の処置において使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
眼投与される、請求項11に規定のその使用のための組成物。
【請求項13】
ヒト又は動物の発症した目のそれぞれに、1日あたり少なくとも1回から1日あたり少なくとも10回の間、有利には毎日2~4回投与される、請求項11又は12に規定のその使用のための組成物。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物を含む単回使用又は保存剤を含まない複数回投与バイアル。
【国際調査報告】